すべての人々が 豊かで幸せになる 世界をめざして -...

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ジェンダー 関連の 参考資料 2011年5月 〒102-8012 東京都千代田区二番町5-25 二番町センタービル1階~6階 TEL:03-5226-6660(代) http://www.jica.go.jp/ 経済基盤開発部 ジェンダー平等・貧困削減推進室 すべての人々 豊かで幸せにな 世界をめざして JICAが取り組むジェンダー平等と女性のエンパワーメント 課題別指針 課題別指針「ジェンダーと開発」 (2009年11月) ジェンダーに関する国際的な潮流 ジェンダーと開発に関する潮流と取り組み (2007年3月) マルチメディア教材 ・ジェンダー主流化のためのツール~ジェンダーの視点に立ったPCM手法入門~ (2010年2月) ・ジェンダー主流化への取り組みの好例 ~イエメン女子教育~ (2010年2月) ・ジェンダー主流化への取り組みの好例 ~タンザニアKATC2~ (2008年4月) ・30分でわかる!開発に役立つジェンダー入門 (2005年11月) 国別ジェンダー情報整備調査(2011年現在 74ヵ国) 上記はすべてJICAホームページでご覧いただけます。 http://www.jica.go.jp/activities/issues/gender/index.html photo: (表紙左より) 渋谷敦志、レイモンド ウィルキンソン、吉田勝美、長倉洋海、吉田勝美

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Page 1: すべての人々が 豊かで幸せになる 世界をめざして - JICA...JICAが取り組む「ジェンダーと開発」のアプローチ 世界の潮流 JICAの基本方針

ジェンダー関連の参考資料

2011年5月

〒102-8012 東京都千代田区二番町5-25 二番町センタービル1階~6階

TEL:03-5226-6660(代) http://www.jica.go.jp/

経済基盤開発部 ジェンダー平等・貧困削減推進室

すべての人々が

豊かで幸せになる

世界をめざして

JICAが取り組むジェンダー平等と女性のエンパワーメント課題別指針

・課題別指針「ジェンダーと開発」 (2009年11月)

ジェンダーに関する国際的な潮流

・ジェンダーと開発に関する潮流と取り組み (2007年3月)

マルチメディア教材

・ジェンダー主流化のためのツール~ジェンダーの視点に立ったPCM手法入門~ (2010年2月)

・ジェンダー主流化への取り組みの好例 ~イエメン女子教育~ (2010年2月)

・ジェンダー主流化への取り組みの好例 ~タンザニアKATC2~ (2008年4月)

・30分でわかる!開発に役立つジェンダー入門 (2005年11月)

国別ジェンダー情報整備調査 (2011年現在 74ヵ国)

上記はすべてJICAホームページでご覧いただけます。

http://www.jica.go.jp/activities/issues/gender/index.html

photo: (表紙左より)

渋谷敦志、レイモンド ウィルキンソン、吉田勝美、長倉洋海、吉田勝美

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JICAが取り組む「ジェンダーと開発」のアプローチ

世界の潮流 JICAの基本方針 新たな課題への

対応

国際協力におけるジェンダーをめぐる動

きとしては、以前は、開発途上国の“女性

の開発への参加”に着目した「開発と女

性(WID)」というアプローチがとられて

いました。しかしながら、最近では、社会

の中で女性と男性が置かれている状況を

把握し、不平等や暴力を生み出す制度や

仕組みを変革しようとする「ジェンダーと

開発(GAD)」というアプローチが重視さ

れるように変化してきています。また、こ

のGADアプローチを定着させ、あらゆる

分野においてジェンダー平等を達成する

ために、「ジェンダー主流化」(注)を促進す

る動きが加速しています。

2015年までに達成すべき国際開発目標

である国連ミレニアム開発目標(MDGs)

の1つに「ジェンダー平等の推進と女性の

エンパワーメント」が掲げられています

が、教育や保健、貧困削減、環境といった

MDGsのほかの目標の達成に向けても、

ジェンダー視点に立った取り組みが必要

であることが認識されています。

日本政府は2005年、「ジェンダーと開発

(GAD)イニシアティブ」を策定し、開発

援助のあらゆる段階で、ジェンダーの視

点に立った政府開発援助(ODA)を進め

ることを表明しました。(コラム参照)

(注) すべての開発政策、施策、事業の計画・実施・モニタリング・評価のあらゆる段階でジェンダーの視点に立って、開発の課題のニーズ、インパクトを明らかにしていく取り組みを進めること。

JICAは「ジェンダー」を重要な開発課題そ

のものであると同時に、あらゆる分野で認識

すべき重要な視点として捉え、様 な々活動を

行っています。

例えば、ジェンダーの不平等が顕著で社会

の発展や人々のエンパワーメントが阻害され

ている国においては、ジェンダー平等と女性

のエンパワーメントを進めるための政策の立

案能力や、行政機関の能力の向上支援を

行っています。

また、貧困女性や少数民族・先住民族の女

性、難民女性、女児など、社会の中でより不

利な立場に置かれている女性を対象に、職

業訓練や雇用・起業促進、教育・健康の向上

JICAでは、近年、女性や子どもの人身取

引(トラフィッキング)、女性への暴力、

HIV/エイズの女性に偏った被害など、

女性や子どもの社会的な脆弱性により引

き起こされている諸問題に関し、開発と

ジェンダーにかかわる新たな課題として、

支援を実施しています。また、ジェンダー

とのかかわりが見えにくい課題や地球規

模の課題、例えば気候変動、平和構築、

災害復興、ガバナンス、インフラ整備など

といった分野においてもジェンダー視点

に立った国際協力を目指しています。

JICAはジェンダー視点の幅を広げつつ、

新たな課題にも柔軟に対応していきます。

日本政府の「GADイニシアティブ」とは

2005年2月28日から3月11日まで、ニューヨークの国連本部で第49回国連女性の地位委員会(北京+10会合)が開催されまし

た。ここでは、1995年に北京で開催された第4回世界女性会議(北京会議)後の10年間にどのような進捗があったのかを評価

し、今後の方向性を確認しました。本会合で日本政府は「ジェンダーと開発(GAD)イニシアティブ」を発表し、日本政府がODA

事業全般にわたってジェンダー主流化を図ることを明記しています。同イニシアティブは、1995年の北京会議で発表された「WI

Dイニシアティブ」を改定したもので、女性の教育、健康、経済・社会活動への参加を重点分野としたWIDイニシアティブに代わ

り、「特に女性を直接に裨益対象としない開発政策においてもジェンダーの視点に立って策定すること」や、「男女の生活状況

やニーズの違いに配慮して開発事業を実施すること」の重要性を謳っています。以下の外務省のホームページに詳細が掲載され

ています。(http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/bunya/archive/gad_initiative.html)

JICAの取り組み

女性を主な裨益対象とする案件

ジェンダー平等政策・制度支援案件

ジェンダー活動統合案件

などの支援も行っています。

さらに、ジェンダー平等と女性のエンパワーメ

ントは、国の経済や社会発展にとって不可欠

な課題です。あらゆる分野や課題への支援

にあたっては、特定の地域社会において男女

それぞれが担っている多様な役割や責任の

違いから生じる異なる問題、ニーズを把握し

て取り組むことが重要であり、JICAではこの

ようなジェンダー視点を組み込んだ支援を

様 な々分野で実施しています。

女性のエンパワーメントの推進

女子教育や母子保健、女性の起業家支援など女性のエンパワーメントや保護を主目的とした支援

ジェンダー平等を実現するための政策・制度・組織の強化

ジェンダー主流化のための政策や財政・法制度改革、ナショナル・マシーナリー(男女共同参画を推進する組織)の強化や人材育成を含めた行政機関の能力強化を主目的とした支援

開発援助事業におけるジェンダー主流化の推進

ジェンダー平等や女性のエンパワーメントへの取り組みをプロジェクトの一環として組み入れたもの

photo: 渋谷敦志

43

Page 4: すべての人々が 豊かで幸せになる 世界をめざして - JICA...JICAが取り組む「ジェンダーと開発」のアプローチ 世界の潮流 JICAの基本方針

Middle East

Asia

AfricaLatin America and

the Caribbean

■ ジェンダー主流化及び社会的包摂促進プロジェクト

中央・地方行政における政策・施策に、女性や社会的に排除された人々の声を反映

P7参照ネパール

■ ジェンダー政策立案支援計画プロジェクト■ ジェンダー主流化プロジェクト フェーズ2

女性省の行政能力向上および、その成果の定着にむけた支援

カンボジア

■ 女性起業支援プロジェクト

女性による起業家活動を促進

サウジアラビア

■ タイズ州地域女子教育向上計画プロジェクト■ 女性教育向上プロジェクト フェーズ2

イエメン

■ 小規模園芸農民組織強化計画プロジェクト

男女双方への研修機会の提供を通じて、園芸による収益の向上を図る

ケニア

■ 女性の生活向上のための女性センター

活性化支援プロジェクト フェーズ1&2

学びの場としての女性センターで、女性の多面的なエンパワーメントを推進

P8参照ナイジェリア

■ 再生可能エネルギーによる地方電化マスタープラン

再生可能エネルギーによる地方電化の推進に際して、男女別のニーズ分析を実施

ペルー

学校・コミュニティが主体となる女子教育改善の取り組み

ジェンダー平等政策・制度支援案件

女性を主な裨益対象とする案件

ジェンダー活動統合案件

凡 例

2009年度 ジェンダー関連案件実績(件)

ジェンダー平等政策・制度支援案件

女性を主な裨益対象とする案件

ジェンダー活動統合案件

無償資金協力

10

有償資金協力

11

3

技術協力

124

283

■ 安全な水とコミュニティ活動

支援計画プロジェクト

女性が給水施設の管理に積極的に参加

P9参照セネガル

■ 女性の貧困削減プロジェクト

女性の経済的エンパワーメントと貧困の削減のために、女性課題省を支援

P7参照アフガニスタン

■ 人身取引被害者保護・自立支援促進プロジェクト

被害者の保護に取り組む体制の強化と被害者の社会復帰を支援

P8参照タイ

■ タミルナド州植林事業

森林の再生と保全に女性の声を反映する

P10参照インド

■ 障害者社会参加促進プロジェクト

障害のある女性と男性のエンパワーメントを目指す

P10参照パキスタン

JICAが世界で展開する主な「ジェンダーと開発」案件の事例

photo: レイモンド ウィルキンソン photo: 奥野安彦

65

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ジェンダー平等政策・制度支援案件ジェンダー主流化に向け、政策や省庁の制度整備を支援する

女性を主な裨益対象とする案件社会的に不利な立場にある女性の自立を支援する

アフガニスタン 女性の貧困削減プロジェクト事例1: 技術協力

ネパール ジェンダー主流化及び社会的包摂(ソーシャル・インクルージョン)促進プロジェクト事例2: 技術協力

タイ 人身取引被害者保護・自立支援促進プロジェクト事例3: 技術協力

世界

女性の経済的エンパワーメントと貧困の削減のために、女性課題省を支援

中央・地方行政における政策・施策に、女性や社会的に排除された人々の声を反映

被害者の保護に取り組む体制の強化と被害者の社会復帰を支援

開発途上国の農村女性の自立に、日本の経験が活かされている

事例5: 研修事業

ナイジェリア 女性の生活向上のための女性センター活性化支援プロジェクト フェーズ1&2

学びの場としての女性センターで、女性の多面的なエンパワーメントを推進

事例4: 技術協力

JICAが取り組む「ジェンダーと開発」の事例

過去23年間に及ぶ紛争とその後のタリ

バン政権のもと、女性は政治的、社会

的にきわめて制限された中での生活を

余儀なくされ、女性の労働参加は進ん

でいません。また15歳以上の成人の非

識字率は男性48.1%に対し女性78.1%

と格差があります。そのため就業も難

しく、戦争で配偶者を失った女性や貧

困女性には生計を立てる手段がほとん

どありません。

このような状況に対し、2001年、女性の

権利を回復し地位向上を図るため女性

課題省が設置され、「雇用促進を通じ

て女性を世帯主とする最貧困層を20%

削減する」という目標の達成が、喫緊の

課題となっています。

JICAは2002年より短期・長期の複数

のジェンダー専門家が同省の体制整備

を図ってきました。2005年からは3年間

かけて、「女性の経済的エンパワーメン

ト支援プロジェクト」を実施し、地方の

女性のための経済活動やコミュニティ

開発を支援。2009年からは「女性の貧

困削減プロジェクト」を実施しており、

女性課題省や関連省庁の職員の行政

能力向上、そして最貧困女性の社会

的・経済的状況の改善に関する支援を

行っています。地域によっては女性の

社会参加が難しいので、社会的・文化

的背景を十分に理解し、地元の男性や

宗教リーダーなどの理解も得ながら活

動しています。このプロジェクトを通

じ、アフガニスタンの女性たちの生活

と地位の向上に貢献することが期待さ

れます。

多言語・多民族国家のネパールは、

2006年の和平合意後の暫定憲法制定

および暫定3ヵ年国家開発計画で、紛

争の原因となった特定の民族やカース

ト、女性の社会的排除という過ちを繰

り返すことがないよう、ジェンダー平等

及び社会的包摂を推進する政策を導

入しています。例えば、新しい国作りの

政治・行政プロセスに、女性、低カース

ト及び少数民族等の参加を促すととも

に、地方行政レベルでの社会的弱者支

援予算の確保、行政サービス実施体制

の構築を最大の課題として取り組んで

います。しかし、予算の不足、効果的な

調整機関の不在、関係者の知識や経

験不足、既存の地方行政制度の弱体

化等により、まだ十分な成果が出てい

ないのが現状です。

このような状況に対し、JICAは、中央

レベル及び地方の2郡において、ジェン

ダー主流化と社会的包摂の視点に

立った政策・施策を実施するための協

力を開始しました。これまでに郡の開

発委員会、女性開発事務所や市役所

等において、ジェンダー主流化と社会

的包摂について正しい理解と認識を

促すことを目的とした研修を実施しま

した。またジェンダー主流化と社会的

包摂視点に立った開発計画の計画・実

施・モニタリングを行う委員会を設置

し、その仕組みづくりを整備しました。

今後は現状調査に基づいて選定した

対象村落におけるパイロットプロジェ

クトを通じ、同視点に立った政策・施

策の策定と実施、そしてそのような地

方レベルでの経験や教訓が中央政府

の政策・施策の改善に活かされること

が期待されます。

開発途上国で農業に従事する人々の半

数以上は女性ですが、彼女たちの教育

や社会参画の機会は極めて限られてい

ます。JICAは、農業や農村開発の担当

省庁を中心に、農村女性のエンパワー

メントに力を入れ、日本の生活改善活

動に注目しました。これは、生活改良普

及員が農家とともに女性グループを組

織し、生活上の様々な課題を女性たち

自身が発見し、改善活動を決定・実践・

評価していくプロセスを後押しするも

ので、農村開発の成功例として認めら

れています。

このような手法を途上国で

も役立てようと、JICA筑

波国際センターで農村女

性能力向上研修を実施。研

修は約2ヵ月半にわたり、

途上国の政策担当官や普

及指導員に対し、日本の農

村開発のプロセスと生活

改善アプローチ等の実践的なプログラ

ムを提供しています。研修員は学んだこ

とを活かして、自国の課題解決の方法

「生活改善実行プラン」を作成し、帰国

後にはそのプランを実行することで成

果を着実に挙げています。

タイでは1980年代以降、メコン地域の住

民を被害者とする人身取引が多発して

いるため、その対策は大きな開発課題の

1つとなっています。その後の2008年に

人身取引防止法が制定され、加害者に

対する刑罰が強化されるなど、人身取引

対策に包括的に取り組む法的枠組みが

整いました。

JICAは人身取引対策にかかわる組織や

人材の能力強化を支援するため、2009

年からプロジェクトを開始。特に被害者

の「保護・自立支援」に焦点を当て、タイ

の社会開発・人間安全保障省を核とし

て、警察庁などの関係省庁や民間団体

(NGO)で構成される「多分野協働チー

ム」の機能・活動強化を目指しています。

また、日本の経験の活用に向けて、内閣

府・厚生労働省・警察庁・NGOなどと連

携して取り組みを進めています。

日本の取り組みを視察したタイ・社会開

発・人間安全保障省社

会開発福祉局のヤニー・

レートクライ副局長は、「日本では空港・

港での入国審査の強化などにより、不法

入国で被害に遭う女性の数が3年間で6

割以上も減少したと聞いた。また、NGO

や研究者、法律家によるネットワークの

活動など、参考になる点が多い。これら

の成果を、多分野協働チームでの取り組

みに活かしていきたい」と話しています。

ナイジェリアでは成人識字率や推定所

得、国会議員に占める女性の割合など

におけるジェンダー格差が顕著に見られ

ています。

このような状況に対して、ナイジェリア政

府は、連邦女性省の設立、国家ジェン

ダー政策の策定などジェンダー平等推

進のための基本的な政策・制度的枠組

みを整備。また1980年代後半からは、主

に村落部の女性対象の識字・職業訓練

の場として、女性開発センター(Women

Development Centre: WDC)を全国に

700ヵ所以上設置しました。

しかし、多くのセンターで十分なサービ

スを提供できていないことから、JICA

は、WDCが貧困層女性の生活向上に貢

献する「学びとエンパワーメントの場」と

して活用されるよう、運営モデルとして

北部のカノ州で2007年から3年間の協

力を実施しました。

プロジェクトでは、WDCで提供される

識字、裁縫、料理、染色、石鹸作りなどの

コースの質の向上を目指しました。スキ

ルを身につけた女性は、経済的な利益

を得られるようになったほか、行動範囲

の拡大により社会性が向上したり、女

性が自身の発言や決断に自信を持つよ

うになるというエンパワーメントにつな

がりました。また、男性や宗教指導者や

村落の長などコミュニティの有力者を含

めた様々な関係者へのアプローチを重

視した結果、女性がWDCへ通うことへ

の理解が進み、支援する例も多く見ら

れるようになりました。

2011年から開始したフェーズ

2では対象地域を拡大し、

WDC活性化の成果を全

国レベルに広めることを目

指しています。

農村女性能力向上

87

Page 6: すべての人々が 豊かで幸せになる 世界をめざして - JICA...JICAが取り組む「ジェンダーと開発」のアプローチ 世界の潮流 JICAの基本方針

ジェンダー活動統合案件全てのプロジェクトにおいてジェンダー主流化を推進する

パラグアイ 貧困女性のための縫製技術向上プロジェクト事例6: 草の根技術協力

セネガル 安全な水とコミュニティ活動支援計画プロジェクト事例7: 無償資金協力・技術協力

パラグアイでは、1992年の新憲法で男女

平等が規定されていますが、女性の就学

率や識字率の低さが経済的・社会的自立

の大きな障害となっています。ラテンアメ

リカ地域において活動してきた日本の

NPO法人「フンダシォン マーノ・ア・マー

ノ」は、2007年から貧困女性の自立支援

に向けた取り組みをパラグアイで実施し

ました。

プロジェクトでは「マチスモ(男性優位主

義)」が根強く残るシウダ・デル・エステ

市において、教育や就職の機会もなく、

貧しさから抜け出せずにいた地元の女

性たち約300人に対して自立するための一

歩として、縫製や刺しゅうなどの技術訓

練の場を提供しました。

2010年のプロジェク

ト終了後も、女性

たちの貴重な

技術訓練の

場として継続して運営されており、プロ

ジェクトで学んだ女性たちは、経済的な

自立に向けて着実に歩み出しています。

また、2011年から5年間の計画で「アル

ト・パラナ州青少年を対象とした縫製

技術・コンピューター職業訓練プロジェ

クト」が始まりました。これは貧困層に

属する青少年たちに職業訓練を行い、周

辺各国から進出してくる縫製工場への

就職を促すことで貧困スパイラルからの

脱却を目指すものです。フェーズ1で技術

を習得した地元の女性たちが指導者と

して、また生産拠点としてプロジェクト

に関わることで、彼女たち自身の技術力

の確立や生産能力の向上も期待されて

います。

開発途上国の中には、安全な飲み水が

得られない地域がいまだ多くあり、国際

社会はその数を2015年までに半分にす

ることを目指して取り組んでいます。

JICAは、セネガルの村落で安全な水が

得られるように、30年以上にわたって地

方給水の施設の整備を行ってきたほか、

コミュニティの人々が給水施設を自らの

手で、持続的に維持管理するための支

援も行っています。特に、給水施設の主

たる利用者である女性の参加が、施設

の運営維持管理の面でプラスの効果が

期待されるのではないかと考え、地域の

男女が置かれた状況を確認・分析する一

方、実施の段階では女性が果たす役割

の重要性を地域の有力者に説明するな

ど地道な活動を続けました。

その結果、施設の維持管理を行う組織

の役員の女性の割合が3割を超えるま

でになりました。さらに、運営維持管理

の収支状況に透明性が増して健全な運

営が行われ、収支に関する

関心・責任が高まり料金徴

収も向上するなどの成果が

挙がっています。

長い間、セネガルの地方村

落の住民男女は、何キロも

離れた井戸や川の水に頼

らざるを得ない生活を余

儀なくされていましたが、

日本の支援を通じて30万

人以上の人たちが安全な

水にアクセスできるようになりました。ま

た多くの女性や子どもたちがこれまでの

水汲み労働から解放され、村落住民はよ

り衛生的な生活を送ることができるよう

になっています。

パキスタン 障害者社会参加促進プロジェクト事例9: 技術協力

アジア太平洋地域では、障害のある

人々が人口の約10%を占め、その大部

分が経済・社会・政治的に排除されて

います。パキスタンも同様で、障害者支

援のための政策・行動計画が策定され

ました。

その政策・計画の実効性を高めるた

め、パキスタン政府からの要請に応じ

て調査団を派遣し、ジェンダー視点に

立った様々な調査・分析が行われまし

た。具体的には、調査実施者と調査対

象者を男女同数にすることや、インタ

ビュー内容へのジェンダー

関連項目の追加、ジェン

ダー分野の専門家の調査

への参加等が行われまし

た。また、モデル地区におい

て、障害のある男女自らが

調査者となり、介助者と一

緒になって車いすで、コミュ

ニティに暮らす障害のある

男女に対する訪問調査を実

施しました。

これにより、家の中に隠されていた多

くの障害のある女性の実態調査が実

現しました。それだけでなく、調査を通

して彼女たちと彼女たちの家族が勇

気づけられ、そのことが生活に様々な

変化をもたらしました。

さらに、プロジェクト運営委員規程に

女性枠(50%)を設置する、日本から

障害のある女性の専門家を派遣する、

手工芸を通じた女性のエンパワーメン

ト活動や女子スポーツ大会を開催する

など、障害のある女性に焦点を当てた

取り組みを進めています。この結果、

障害のある女性がエンパワーされ、人

前に出る勇気がでた、就職できた、結

婚した、といった様々な変化が起こっ

ています。

JICA/UNDP連携  “気候変動とジェンダー”に関する研修の実施事例10: 国際機関との連携

近年課題となっている気候変動の影響

は、世界全体に及ぶものですが、特に

開発途上国、その中でも社会的弱者に

深刻な影響があると予測されていま

す。気候変動が女性により大きな影響

を及ぼすと考えられていること、気候

変動対策には女性の参画やジェンダー

視点が不可欠なことを理解し、ジェン

ダー視点に立った気候変動分野の案

件形成・実施に携わる即戦力の育成の

ため、UNDP(国連開発計画)との連携

の下、2010年12月に“気候変動とジェン

ダー”に関する研修を実施しました。

研修では、JICAの気候変動とジェン

ダーに対するアプローチだけでなく

UNDPから防災とジェンダーの専門家

を招き、実際のプロジェクトを用いた講

義とグループワークが行われました。

連携により更に幅広い視点が参加者

間に共有され、気候変動という新たな

分野でのジェンダーの取り組みについ

て活発な議論が交わされる研修となり

ました。

インド タミルナド州植林事業事例8: 有償資金協力

手芸品作りを通じて、女性たちに笑顔と自信を

女性が給水施設の管理に積極的に参加

障害のある女性と男性のエンパワーメントを目指す

気候変動のジェンダーへの影響について理解する

森林の再生と保全に女性の声を反映する

インドの南東部に位置するタミルナド

州では、国有林の30%が荒廃していま

した。生計を林産物に依存する住民が

多く、特に、生計を支える手段が限ら

れている女性や貧困住民による薪の

収集が荒廃の大きな原因となっていま

した。

植林事業の実施には、森林の伐採を

行っている住民の協力が不可欠であ

るため、住民参加型の要素を取り入れ

た持続可能な植林事業を展開し、①

森林を再生するための植林、②森林依

存者への収入源の多様化支援、③森

林管理能力強化〔トレーニング、モニタ

リングと評価、地理情報システム

(GIS)の拡大等〕等の活動を行い、森

林の再生、地域住民の生活水準の向

上、さらには地域の貧困削減を目指し

ました。

また、薪等の森林資源の利用が多い

女性の積極的な参加を促すために、森

林管理組合に各世帯から男女各1名の

参加を求めるなど、ジェンダー視点に

立った取り組みも行いました。植林の

実施に際して女性も雇用しました。ま

た、マイクロファイナンス(少額の融資)

を導入し、生計向上活動支援を実施し

ました。この結果、女性たちはハーブ

の栽培やミルク・ココナッツの販売など

の小規模ビジネスを始められるようにな

り、女性の約6割が他の収入源を獲得。

森林資源への依存が減り、森林への負

荷も減るなどの成果を挙げました。

これらの一連の活動により世帯所得

が増加し、女性や女子が薪の収集労

働から解放され、集

会での発言の増加

や女子の就学率

が向上するなど

のインパクトも

もたらしました。

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