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P-SCD361 1 中越沖地震の柏崎刈羽原子力発電所への影響評価研究分科会 (4)余裕の考え方 日本機械学会 動力エネルギーシステム部門 ○正宮野廣(東芝プラントシステム) 正 植木 孝 (東芝) 正 高木 敏行(東北大) 正 酒井 信介(東大)

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P-SCD361 1

中越沖地震の柏崎刈羽原子力発電所への影響評価研究分科会

(4)余裕の考え方

日本機械学会 動力エネルギーシステム部門

○正 宮野 廣 (東芝プラントシステム)正 植木 孝 (東芝)正 高木 敏行(東北大)正 酒井 信介(東大)

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内容

1.はじめに2.設計と耐震評価3.耐震設計評価の手順4.耐震解析における減衰率5.地震時の構造健全性評価6.耐震実証試験7.余裕の考え方と今後の設計8.まとめと提言

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はじめに基本的に公表ベースのデータを基に耐震設計における余裕についてまとめた。元々の議論のはじめは、

「なぜ、設計地震動を越える地震動であったにもかかわらず、耐震重要度分類の高いAs、Aクラスの機器・システムが健全であったのか」はもちろんのこと、「影響の小さいBクラス、一般産業の施設と同等の耐震性が求められるCクラスの機器・システムも、ほとんどにおいてその健全性が確保されたが、その理由はなぜか。」を明らかにすることを目的とした。議論は多々あるが、なに

が課題かを明確にした。今後の議論を進める中で、余裕は排除されるべきか、の議論

を展開していくことを期待したい。

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設計と耐震評価

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地震動の伝播と耐震設計評価の手順

耐震設計の各段階

機器応答解析

建屋応答解析

地盤伝播解析

設計用地震動の作成

BWR発電所

地表面

解放基盤

地震動

地盤

耐震設計の各段階

機器応答解析

建屋応答解析

地盤伝播解析

設計用地震動の作成

BWR発電所

地表面

解放基盤

地震動

地盤

耐震設計の各段階

機器応答解析

建屋応答解析

地盤伝播解析

設計用地震動の作成

BWR発電所

地表面

解放基盤

地震動

地盤

耐震設計の各段階

発生

振動応答

振動応答解析 健全性評価

振動伝播

振動応答

振動応答

振動応答

健全性評価

健全性評価

どこで、いつ、どれくらいの大きさ

地層中の伝播モデル耐震設計建屋設計機器設計

(地震入力)

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構造設計から耐震設計評価への流れ

健全性評価

重要度分類

YES

許容値

プラント基本計画(配置計画、機器配管システム計画、機器配管基本計画)

荷重の組合せ

機器設計

・荷重の組合せ(自重、外力、圧力、温度)

建屋設計 配管設計

・機能維持・許容応力

耐震設計評価

構造設計

個別設計での余裕

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構造設計と耐震設計

経済産業省 原子力安全・保安院 中越沖地震における原子力施設に関する調査・検討会「運営管理・設備健全性評価ワー キング グ ルー プ設備健全性評価サブワー キング グ ルー プ第10回(H20.6.6)

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耐震設計評価の手順

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終了

耐震性評価

耐震重要度分類

YES

NO

許容限界

プラント基本計画(配置計画、機器配管システム計画、機器配管基本計画)

設計用地震力荷重の組合せ

耐震設計評価

基準地震動Ss弾性設計用地震動Sd

・荷重の組合せ・許容値-機能維持(Ss)-許容応力(Sd,静的)

・荷重の組合せ・許容値-機能維持(Ss)-許容応力(Sd,静的)

必要に応じて確率論的評価方法を参考

断層モデル

応答スペクトル

観測記録をベースにした検討

(敷地ごとに震源を特定して策定する地震動)

(震源を特定せず策定する地震動)

地質・地盤調査・地表地質調査・ボーリング調査・海上音波探査 等

① Ss地震動 (機能維持:水平,鉛直)

鉛直方向も動的解析で地震力評価

② Sd地震動 (弾性設計用地震動: 水平,鉛直)

Sd=α×Ss (α≧0.5)

③ 静的地震力

設計における耐震設計評価への流れ

建屋・配管・機器 設計

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旧指針旧指針

新指針新指針

As

4分類

原子炉圧力容器・原子炉格納容器など

安全注入系・格納容器スプレイ系など

廃棄物処理系など

上記以外の設備

3分類

Asクラス … S2 に対して弾塑性設計

S1 に対して弾性設計

Aクラス … S1 に対して弾性設計

(安全機能の保持)

(弾性挙動の維持)

(弾性挙動の維持)

Sクラス … Ss に対して弾塑性設計

Sd に対して弾性設計

(安全機能の保持)

(弾性挙動の維持)

◆Aクラスを廃止し、Asクラスに統合して、呼称を変更

※設計用に弾性設計用地震動Sd を設定する。

SdはSs に係数を乗じて設定する。

重要度分類(耐震設計審査針)

動的評価

静的評価

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応答スペクトルに基づく評価

新耐震指針

敷地ごとに震源を特定して策定する地震動

震源を特定せず策定する地震動

内陸地殻内地震プレート間地震

海洋プレート内地震

活断層の性質地震の発生状況中・小・微小地震の分布既往研究成果 等

複数の検討用地震の選定

基準地震動Ss

断層モデルを用いた評価

旧耐震指針

過去の地 震

活断層による地震

地震地体構造に基づく地震

設計用最強地震

設計用限界地震

基準地震動S1 基準地震動S2

地震動評価一本化

引用文献「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針」 平成18年9月19日 原子力安全委員会「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針について」 昭和56年7月20日 原子力安全委員会

基準地震動の策定

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引用文献「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針」平成18年9月19日 原子力安全委員会

耐震クラス地震動

層せん断力係数

静的地震力

建物・構築物 機器・配管系

水平 鉛直 水平 鉛直

Sクラス

基準地震動 Ss Ss Ss Ss

弾性設計用地震動 Sd Sd Sd Sd

層せん断力係数

静的地震力3.0Ci Cv 3.6Ci Cv

Bクラス地震動 - - -(*) -(*)

層せん断力係数 1.5Ci - 1.8Ci-

Cクラス地震動 - - - -

層せん断力係数 1.0Ci - 1.2Ci -

*:建物・構築物と共振の恐れがある場合は地震動1/2Sdを考慮する

耐震指針における地震力の算定法

Ci :地震層せん断力係数(建築基準法ほかにより算出)静的評価の余裕

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機器配管系基本計画

B,CクラスS,Bクラス*

静的解析

応力評価・機能維持評価

応力解析

建屋との連成

振動挙動多質点系連成モデル

多質点系モデル,連続体モデル 1質点モデル

剛構造

固有値解析

地震応答解析

時刻歴地震(応答)波形床応答スペクトル

耐震重要度分類

動的評価(連成) (非連成)

(複雑) (単純)

剛柔

*:Bクラスで動的解析を必要とするもの

引用文献 「原子力発電所耐震設計技術指針JEAG4601」(日本電気協会)

静的評価

終了

機器配管系の解析の流れ

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建屋と機器を連成して解析する場合

建屋及び機器

地盤物性値

建屋及び機器モデル化

加速度 時間

入力地震動

最大応答加速度

最大せん断力

最大モーメント

建屋

機器

耐震設計評価での機器応答解析モデル

基礎版

地震動

地盤

加速度 時間

入力地震動

振動入力

振動応答 機能評価

構造評価

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耐震設計評価での機器応答解析モデル

建屋と機器を連成して解析する場合 機器を独立して解析する場合

時刻歴床応答波形

固有周期減衰定数

床応答スペクトル

建屋

建屋

建屋モデル化

地盤物性値加速度

固有周期

加速度 時間

機器・配管系耐震の設計

建屋及び機器

地盤物性値

建屋及び機器モデル化

建屋

機器

機器系の設置床

機器・配管系振動解析モデル

固有振動数振動モード加

速度 時間

入力地震動

機器・配管系耐震の設計 1質点系応答解析

応答評価

モデルの簡素化により余裕を見込む

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耐震解析における減衰率

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(a) 地震動の加速度時刻歴

(b) 減衰定数一定,固有周期の異なる1質点系群

床応答曲線の作成方法

設計では、周期軸方向に±10%拡幅した応答スペクトルを用いる。

周期

加速度

拡幅後のスペクトル

原スペクトル

拡幅により余裕が大きく出る場合がある

(c) 応答時刻歴 (d) 応答スペクトル

周期 (sec)

最大

加速

1T 2T 3T

0h

1h

2h

加速

度応

(Sa)1

(Sa)1(Sa)2

(Sa)3時間

(Sa)2(Sa)3

1T

2T

3T

時間

加速

応答

11 h,T

12 h,T

13 h,T

引用文献 「振動理論」大崎順彦著(彰国社)

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設計用減衰定数(1/2)JE A G 4601の基準

設 備 減衰定数*)

溶接構造物 1.0

ボルト及びリベット構造物 2.0

配 管 0.5~2.5

空調用ダクト 2.5

ケーブルトレイ 5.0

ポンプ・ファン等の機械装置 1.0

燃料集合体(BWR) 7.0

燃料集合体(PWR) 10.0~15.0

制御棒駆動機構(BWR) 3.5制御棒駆動機構(PWR) 5.01次冷却設備(PWR) 3.0

*:現行JEAG4601に記載されている水平方向の値改定案にて鉛直方向の値の導入を審議中

引用文献 「原子力発電所耐震設計技術指針JEAG4601」(日本電気協会)

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余裕の考慮余裕の考慮

条件:スナバー主体、保温材あり

減衰定数の実データ(JE A G 4601でのデータほか)

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減衰定数の実データ(論文データ)

出展:ASME PVP Vol.189 p.25-30 1989 “A Study on Structural Seismic Damping Ratio Evaluation Methods-Their Application to Vibration Test Data”Y.Kitada, K.Suzuki, et.

(正弦波加振) (ランダム波加振)

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設計用減衰定数(2/2)海外の基準との比較

引用文献 「原子力発電所の地震を起因とした確率論的安全評価実施基準:2007 AESJ-SC-P006:2007」(日本原子力学会)

減衰率の余裕

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地震時の構造健全性評価

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荷重の組み合わせ

耐震設計における荷重の組み合わせ

荷重の組み合わせにおける余裕

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異常な過渡変化時の荷重及び事故時の荷重との組み合わせ・地震による従属事象は組合せる・地震との独立事象は確率的(事象の発生確率と継続時間)に考慮

具体的な許容応力:原子力発電所耐震設計技術指針JEAG4601(日本電気協会)

耐震

クラス考慮する地震動 組み合わせる荷重 許容限界

Sクラス

基準地震動Ss・通常運転時の荷重・異常な過渡変化時の荷重

・事故時の荷重

過大な変形,き裂及び破損等を防止

弾性設計用

地震動Sd

・通常運転時の荷重・異常な過渡変化時の荷重

・事故時の荷重降伏応力又はこれと同等な安全性を有する許容応力B,Cクラ

ス静的地震荷重

・通常運転時の荷重

・異常な過渡変化時の荷重

引用文献「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針」平成18年9月19日 原子力安全委員会

機器・配管系に対する荷重の組み合わせと許容限界

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材料強度および疲労曲線の余裕

データのばらつきに対する許容値の余裕

疲労強度曲線

平均値

バラツキ

設計値

余裕

材料強度の余裕

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使用材料の強度特性例

設計応力強さ Sm=min (1/3Su、2/3Sy)

S1 =min (2/3Su、Sy)

S2 =2/3Su

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使用材料の強度特性例

設計応力強さ Sm=min (1/3Su、2/3Sy)

S1 =min (2/3Su、Sy)

S2 =2/3Su

設計許容限界

3倍の裕度

更なる余裕

材料強度の余裕

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ひずみ配管の許容応力の例

①許容応力の裕度

設計引張強さ Su

許容応力 2Sm

発生応力

応力

実際の配管材の引張強さ

地震荷重による成分

地震以外の荷重による成分

③実材料に対する裕度

②基準運用上の裕度

ひずみ配管の許容応力の例

①許容応力の裕度

設計引張強さ Su

許容応力 2Sm

発生応力

応力

実際の配管材の引張強さ

地震荷重による成分

地震以外の荷重による成分

③実材料に対する裕度

②基準運用上の裕度

実際の材料の引っ張り強さ

実際に発生した地震荷重による成分

構造強度評価での荷重と許容応力 余裕のまとめ

余裕の存在

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耐震実証試験

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P-SCD361

(財)原子力発電技術機構:「多度津工学試験所30年のあゆみ」より

PWR原子炉格納容器

○試験体縮尺 : 1/3.7○最大加振入力 : 1.5S2

PWR炉内構造物○試験体縮尺 : 1/1○最大加振入力 : 1.5S2

(どちらも最大加振入力は振動台の加振限界)

耐震実証試験の例(PWR C /V 、C /I)

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P-SCD361

(財)原子力発電技術機構:「多度津工学試験所30年のあゆみ」より

主蒸気系等

○試験体縮尺 : 1/2.5○最大加振入力 : 1.3S2

(振動台の加振限界)

耐震実証試験の例(主蒸気系)

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P-SCD361

その他の耐震信頼性実証試験の成果

(財)原子力発電技術機構:「多度津工学試験所30年のあゆみ」より

※:破壊までの実験結果なし。実際の裕度は更に大きい。

1.5~1.7×S2耐震性,制御棒挿入性炉内構造物

1.1~2.0×S2耐震性一次冷却系

1.4~1.5×S2耐震性,気密性鋼製格納容器

1.3×S2耐震性,地震時・地震後のシステム機能

非常用D/Gシステム機能の実証

1.5×S2耐震性,地震時・地震後のシステム機能

原子炉停止時冷却系

多 大破壊強度配管系

5.0×S2以上気密性,破壊強度コンクリート製格納容器機能限界強度の実証

1.6~1.7×S2耐震性原子炉容器

機器単体の実証

裕度等実証内容対象設備試験の狙い

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P-SCD361 33

6.0

遠心直動型ファン 2.6遠心直結ファン 2.3軸流式ファン 2.4

軸方向 1.4軸直角方向 3.2

10

機能確認済加速度(G)

弁駆動部

軸受部

軸位置

コラム先端

位置

一般弁

ファン

横形ポンプ

立形ポンプ

機 器

6.0

遠心直動型ファン 2.6遠心直結ファン 2.3軸流式ファン 2.4

軸方向 1.4軸直角方向 3.2

10

機能確認済加速度(G)

弁駆動部

軸受部

軸位置

コラム先端

位置

一般弁

ファン

横形ポンプ

立形ポンプ

機 器

主な動的機器の機能確認済加速度電動機

ポンプ

加振台

動的機器の加振試験

動的機器の地震時の機能維持確認試験

(注)機能維持を確認した条件であり、限界値ではない。

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P-SCD361 34

余裕の考え方と今後の設計

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P-SCD361 35

構造設計と耐震設計と余裕

経済産業省 原子力安全・保安院 中越沖地震における原子力施設に関する調査・検討会「運営管理・設備健全性評価ワー キング グ ルー プ設備健全性評価サブワー キング グ ルー プ第10回(H20.6.6)

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P-SCD361 36

余裕の概念

荷重による発生応力からの余裕

材料による許容応力からの余裕

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P-SCD361 37

現実的な耐力の分布

十分余裕を持った設計用の限界値

現実的な応答分布

余裕

余裕を積算した発生最大応答

余裕

余裕

余裕余裕

現実的な耐力の分布

十分余裕を持った設計用の限界値十分余裕を持った設計用の限界値十分余裕を持った設計用の限界値

現実的な応答分布

現実的な応答分布

余裕

余裕を積算した発生最大応答余裕を積算した発生最大応答

余裕

余裕

余裕余裕

裕度と“ばらつき”の概念

地震動

振動応答による発生応力

最大値

減衰率モデル化

発生モデル伝播モデル振動モデル

材料強度の分布許容限界と設計許容

安全率弾性限界弾塑性

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P-SCD361 38

変位

地震力

単調荷重の場合

交番荷重の場合

荷重繰り返しによるエネルギ吸収効果

変位

地震力

単調荷重の場合

交番荷重の場合

荷重繰り返しによるエネルギ吸収効果

変位

地震力

単調荷重の場合

交番荷重の場合

荷重繰り返しによるエネルギ吸収効果

単調荷重と交番荷重の比較交番荷重に対する変形(びずみ)

地震の等価繰り返し数

繰返荷重で破損するひずみ

許容応力に対するひずみ

裕度 (加速度)

地震による破損モード↓変 形

(塑性ひずみ)を伴う

損傷は点検で確認可能

靜的荷重 動的荷重

交番荷重としての強度余裕

交番荷重としての強度余裕

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P-SCD361 39

Cumulative Absolute Velocity

交番荷重としての強度余裕

エネルギーとして考える例

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P-SCD361 40

新しい設計法への展開 (従来の設計法)

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P-SCD361 41

新しい設計法への展開 (確率の採用)

R:材料強度とS:荷重(応答)に信頼性=安全係数を分配する。

荷重(加振力による応答)・耐力(材料強度)ともにばらつきを考慮して、それぞれに安全係数を分配する。

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P-SCD361 42

新しい設計法への展開 (LR F D の導入の検討)

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まとめと提言 余裕の考え方

余裕の考え方設計は、耐圧、熱荷重に対しての健全性を確保→ 必ずしも地震動による荷重が大きくはない

地震動に対する振動応答は簡易解析モデルによる→ 余裕のある簡易解析モデル

小さな減衰率を適用→ 実データは大きな減衰率(海外ではそれを採用)

材料強度データのばらつきと裕度、安全率の考え方→ 静的評価、弾性解析、強度限界などで余裕

加速度による荷重だけでは振動による応答の健全性は評価できない→ 新たな評価指標(例:CAV)と新たな設計法(例:LRFD)の検討

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まとめと提言 余裕の考え方

提言・振動応答の重要な要素は減衰率である。現実には大きな減衰率が実験により確認されている..提言:実験データに基づく減衰率の適用や支持部でのすべりなどのエネルギー散逸を見込んだ詳

細解析による減減の適正化など、適正な減衰率の採用への見直しを行う.

・現在の振動強度の評価においては,加速度特性が加振力として与えられる.しかし,現実の構造物の強度評価を行う応答については,加速度応答の交番荷重で扱うのが強度評価として適切か,応答をエネルギーとして現す速度応答で評価すべきか,などの検討が必要な時期に来ている。提言:これまでの加速度応答評価を再検討し、地震評価指標として適正なものを見いだすことが

必要である。

・機械工学の分野では,余裕に関する取り扱いは,基本的には決定論的安全率による設計法が採用されている.提言:重要度の低いものは旧来の決定論的安全率に基づく簡易手法を採用し,より重要度の高い

ものについては荷重・耐力係数設計法(LRFD設計法) のような 確率論的手法を採用する

などの使い分けが必要になろう.

・(加えて)設計段階では,未知の情報に基づいて設計するものであるが,供用段階では,実際の検査に基づいて,設計での予測に対する確認が行われるものであり,不確定な要素が除かれる分、安全率を適正にすることが認められてもよい.提言:設計における安全率と維持の段階での安全率は,意味が異なり,使い分けが必要である.

わが国では必ずしも明確に規定されておらず,今後の改善が求められる.

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ご静聴ありがとうございました。

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