日本溶接協会60年史 ― 1. 溶接棒部会 - jwes(2件) wrc bulletin (1件)...

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1. 溶接棒部会 67 溶接棒部会の活動は,1956(昭和31)年の第1 回会合以来,2009年で53年の歴史を重ねる。当 部会は,現在,溶接材料メーカー 10社が会員で あり,本部会,業務委員会,技術委員会の 3 部門 で構成されている。本部会および業務委員会のメ ンバーは溶接材料メーカー 10社および事務局で ある。また,活動の中心である技術委員会は,牛 尾誠夫大阪大学名誉教授を委員長とし,溶接材料 メーカー 9 社 15 名,ガスメーカー 2 社 2 名,溶接 機メーカー 2社2名,ファブリケータ5社5名, 中立部門(官庁など)8機関8名,事務局2名の 合わせて 35 名で運営されている。 以下に各委員会の活動状況を示す。 毎年 5 月ごろに部会総会が開催されるが,それ に先立ち,業務委員会で活動経費の収支決算に対 して監査が行われる。部会総会では,年度の事業 報告および収支決算報告,次年度の事業計画案お よび収支予算案の報告が行われ,審議および承認 を受ける。また,期毎(2年毎)の役員改選や部 会運営に係わる懸案事項の審議も行われる。 1998年度までの活動は協会50年史に詳述され ているので,ここでは1999年度から2008年度に 至る間の研究成果を分野別に報告する。 技術委員会の主たる活動は,①各種溶接材料の 特性調査,②溶接材料あるいは溶接金属の品質評 価方法の検討・確立,③溶接材料の市場動向調査, ④ISO(国際標準化機構)規格あるいはJIS(日 本工業規格)の新規制定・改正であり,分野別に 分科会を設けて活動している。各分科会は年間 5 回~ 10回程度開催され,その結果は年間4回の 技術委員会で審議される。表 1.1 に1999年度か ら2008年度までの分科会の活動状況をまとめる とともに,詳細を以下に示す。 1.2.1 分野別研究報告 1999年度以降の主たる活動は,①溶接材料の 市場動向調査,②ISO規格あるいはJISの新規制 定・改正への対応,③建築構造用溶接材料の検討, ④ステンレス鋼溶接材料の検討(高温特性,建築 用材料,FCWの適用性),⑤溶接ヒュームに関す る研究,⑥マグ・ミグ溶接のガスシールドに関す る研究,の 6 分野である。それらの活動成果を以 下にまとめる。 (1)溶接材料の市場動向調査 (a )鉄骨・橋梁ファブリケータにおけるマグ・ ミグ溶接材料の使用動向とニーズ調査 ㈳全国鐵構工業協会,㈳鉄骨建設業協会,㈳ 日本橋梁建設協会の加盟会社を対象として 1999 年 度 に 調 査 を 実 施 し,201 件( 回 収 率 36%)の回答を得た。その結果,国内溶材およ び海外溶材の使用状況(種類,採用理由,適用 箇所,使用量など)について多くの情報が得ら れた。また,2000年の国際溶接学会(IIW)年 次大会第Ⅻ委員会で結果を発表するとともに, 欧米メーカーに働きかけて「世界の溶材動向調 査」を実施した。 (b )業種別に見た各種溶接材料の現状と今後 の動向に関する調査 1971 年度から実施している標記調査の第 8 回 を2000年度~ 2002年度にかけて行い,202件(回 溶接棒部会 1 本部会および業務委員会 1.1 技術委員会 1.2

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  • 1. 溶接棒部会 67

     溶接棒部会の活動は,1956(昭和31)年の第1回会合以来,2009年で53年の歴史を重ねる。当部会は,現在,溶接材料メーカー 10社が会員であり,本部会,業務委員会,技術委員会の3部門で構成されている。本部会および業務委員会のメンバーは溶接材料メーカー 10社および事務局である。また,活動の中心である技術委員会は,牛

    尾誠夫大阪大学名誉教授を委員長とし,溶接材料メーカー 9社15名,ガスメーカー 2社2名,溶接機メーカー 2社2名,ファブリケータ5社5名,中立部門(官庁など)8機関8名,事務局2名の合わせて35名で運営されている。 以下に各委員会の活動状況を示す。

     毎年5月ごろに部会総会が開催されるが,それに先立ち,業務委員会で活動経費の収支決算に対して監査が行われる。部会総会では,年度の事業報告および収支決算報告,次年度の事業計画案お

    よび収支予算案の報告が行われ,審議および承認を受ける。また,期毎(2年毎)の役員改選や部会運営に係わる懸案事項の審議も行われる。

     1998年度までの活動は協会50年史に詳述されているので,ここでは1999年度から2008年度に至る間の研究成果を分野別に報告する。 技術委員会の主たる活動は,①各種溶接材料の特性調査,②溶接材料あるいは溶接金属の品質評価方法の検討・確立,③溶接材料の市場動向調査,④ISO(国際標準化機構)規格あるいはJIS(日本工業規格)の新規制定・改正であり,分野別に分科会を設けて活動している。各分科会は年間5回~ 10回程度開催され,その結果は年間4回の技術委員会で審議される。表1.1に1999年度から2008年度までの分科会の活動状況をまとめるとともに,詳細を以下に示す。

    1.2.1 分野別研究報告

     1999年度以降の主たる活動は,①溶接材料の市場動向調査,②ISO規格あるいはJISの新規制定・改正への対応,③建築構造用溶接材料の検討,④ステンレス鋼溶接材料の検討(高温特性,建築用材料,FCWの適用性),⑤溶接ヒュームに関す

    る研究,⑥マグ・ミグ溶接のガスシールドに関する研究,の6分野である。それらの活動成果を以下にまとめる。(1)溶接材料の市場動向調査 (a�)鉄骨・橋梁ファブリケータにおけるマグ・ミグ溶接材料の使用動向とニーズ調査

     � ㈳全国鐵構工業協会,㈳鉄骨建設業協会,㈳日本橋梁建設協会の加盟会社を対象として1999年度に調査を実施し,201件(回収率36%)の回答を得た。その結果,国内溶材および海外溶材の使用状況(種類,採用理由,適用箇所,使用量など)について多くの情報が得られた。また,2000年の国際溶接学会(IIW)年次大会第Ⅻ委員会で結果を発表するとともに,欧米メーカーに働きかけて「世界の溶材動向調査」を実施した。

     (b�)業種別に見た各種溶接材料の現状と今後の動向に関する調査

     � 1971年度から実施している標記調査の第8回を2000年度~2002年度にかけて行い,202件(回

    溶接棒部会

    1

    本部会および業務委員会1.1

    技術委員会1.2

  • 第3編 専門部会68

    年 度

    1999

    2000

    2001

    2002

    2003

    2004

    2005

    2006

    2007

    2008

    部会長

    藍田  勲

    藍田  勲

    藍田  勲

    藍田  勲

    藍田  勲

    藍田  勲

    藍田  勲

    藍田  勲

    藍田  勲

    藍田  勲

    技術委員長

    桑名  武

    牛尾 誠夫

    牛尾 誠夫

    牛尾 誠夫

    牛尾 誠夫

    牛尾 誠夫

    牛尾 誠夫

    牛尾 誠夫

    牛尾 誠夫

    牛尾 誠夫

    技術委員会�

    幹事長

    菅  哲男

    松下 行伸

    松下 行伸

    松下 行伸

    松下 行伸

    中野 利彦

    中野 利彦

    中野 利彦

    中野 利彦

    中野 利彦

    分 科 会

    第 1

    分科会

    溶接材料の使用動向と

    ニーズ調査

    (鉄骨・橋梁/マグ・ミ

    グ溶接)

    溶接材料の使用動向

    とニーズ調査

    �(業種別/各種溶接

    法)

    溶接材料の使用動

    向とニーズ調査�

    (FCW)

    ―溶接材料のISO規

    格への対応(高合

    金:意見提示,JIS

    改正素案作成)

    第 2

    分科会

    溶接材料のISO規格へ

    の対応

    (意見提示,JIS改正素

    案作成)

    溶接材料のISO規格

    への対応

    (意見提示,JIS改正

    素案作成)

    溶接材料のISO規

    格への対応

    (軟鋼・HT50・低合

    金:意見提示,JIS

    改正素案作成)

    第 3

    分科会SAW溶材のJIS改正素

    案作成

    (炭素鋼,低合金鋼)

    すみ肉溶接の耐ペイ

    ント性評価方法の検

    討鋼溶接部の

    水素量測定方法の改正

    鋼溶接部の水素量

    測定方法の改正

    溶接ヒュームに関

    する研究

    第 4

    分科会建築構造用溶材の検討

    建築構造用溶材の

    検討

    ――

    「溶接の研究」

    キーワード付与

    第 5

    分科会SUS溶接金属の高温特

    性調査

    �(オーステナイト系)

    ―ステンレス鋼

    建築構造用溶材の検討

    SUSフラックス入

    りワイヤの適用性

    調査

    ―鋼溶接部の水素

    量測定に関する

    研究�(IIWラウン

    ドロビンテスト)

    第 6

    分科会

    ――

    ――

    ――

    マグ・ミグ溶接の

    シールド性に関す

    る研究

    第 9

    分科会溶材のISO,�JIS,�WES

    規格対応(ISO・IIW対

    応,JIS改正推進)

    溶材のISO,�JIS,�WES

    規格対応(ISO・IIW

    対応,JIS改正推進)

    ワーキング

    グループ技術委員会40年史編集

    ―JIS原案検討�(1件)

    JIS原案検討�(2件)

    ―技術委員会50年史

    編集

    日本鉄鋼連盟:

    エレスラ溶接金属

    の保有性能に関す

    る検討

    JIS改正

    原案作成

    2件―

    5件3件

    4件1件

    2件2件

    5件7件

    WES制定・

    改正

    7件1件

    ――

    ――

    ――

    ――

    関連団体

    連携

    ――

    ――

    ――

    ・�日本鋼構造協会:

    鉄骨溶接部の内

    質検査ガイドラ

    イン執筆

    ・�電溶機部会:アー

    ク溶接の世界パ

    ート4(教材)執筆

    発行資料「溶接の研究」No.38

    マグ・ミグ溶接Q&A

    「溶接の研究」No.39

    技術委員会40年史

    「溶接の研究」No.40

    「溶接の研究」No.41

    「溶接の研究」

    No.42

    「溶接の研究」

    No.43

    「溶接の研究」

    No.44

    「溶接の研究」

    No.45

    技術委員会50年史「溶接の研究」

    No.46

    「溶接の研究」

    No.47

    対外発表第9回「溶接の研究」

    講習会

    IIW�第Ⅻ委員会�(1件)

    IIW�第Ⅻ委員会

    �(2件)

    WRC�Bulletin�(1件)

    第10回「溶接の研究」

    講習会

    IIW�第Ⅻ委員会�(1件)

    特別講習会�

    IIW�第Ⅻ委員会�(1件)

    建築技術投稿�(4件)

    第11回

    「溶接の研究」

    講習会

    特別講習会

    第12回

    「溶接の研究」

    講習会

    ―第13回

    「溶接の研究」

    講習会

    表1.

    1 溶

    接棒

    部会

     技

    術委

    員会

    の活

    動状

    況(

    1999

    年度

    〜20

    08年

    度)

  • 1. 溶接棒部会 69

    収率40%)の回答を得た。アンケート内容は,前回までの調査およびIIW第Ⅻ委員会で実施した「世界の溶材動向調査」と整合性を持たせた。調査の結果,各種溶接材料および溶接機の使用比率,鋼材やシールドガスの使用状況,自動化のニーズや進展状況,包装材料やスラグの処理方法などについて多くの情報が得られた。また,本調査結果と欧米における「世界の溶材動向調査」結果(欧州90件,北米40件)を合わせ,2003年のIIW年次大会第Ⅻ委員会で成果を発表した。 (c�)フラックス入りワイヤの現状と将来に関する調査

     � フラックス入りワイヤは,溶接の自動化や能率向上の観点から使用比率が極めて高くなっている。そのため,市場動向を把握すべく2003年度にアンケート調査を行った。回答数は161件(回収率35%)であり,1998年度の調査結果と比較しながら取りまとめた。集計結果より,フラックス入りワイヤの使用状況(種類,採用理由,適用箇所,使用量など),ワイヤ特性に対する要望,溶接の自動化・ロボット化のニーズと進展状況,鋼材の使用状況,溶接従事者数の変動ならびにそれらの将来予測が判明した。

    (2)ISO規格およびJISの制定・改正への対応 技術委員会では,長年,溶接材料のJISやWES(日本溶接協会規格)の制定・改正に取り組んでいる。1998年度以降は,さらに,国際規格(ISO規格)の制定・改正ならびにISO整合化JISの改正作業を積極的に進めてきた。国際規格に関するこのような活動は,工技院の委託研究「溶接分野の国際規格適正化調査研究」の一環であり,アメリカ溶接協会規格(AWS)とも連携をとりながら遂行している。また,IIWおよびISOでの国際標準化活動は,日本溶接会議(JIW)第Ⅱ委員会と協力して進めている。 溶接材料のISO規格は,表1.2に示すように,シールドガスも含めて27種類(3種類は作成中)ある。そのうちアルミおよびアルミ合金用溶接ワイヤを除く26種類の制定・改正を技術委員会が担当しており,2009年度までにNiおよびNi合金用フラックス入りワイヤ以外の25種類が制定される予定である。また,すでに制定された規格では定期見直しが始まっており,それにも対応している。 溶接材料のISO規格の特徴は,「IIWによるISO規格案」と「欧州標準化委員会(CEN)による欧州統一規格(EN規格)」の合体という点である。規格体系上,両者は一本化が困難であった

    が,両方を併記する「共存型」とすることでISO規格が成立した。通常,国際標準の作成は参加国の投票による多数決で議決されるため,常に投票数の過半数を占める欧州の意向が強く現れる。しかし,「共存型」とすることで日本の実情を反映した標準作成が可能となった。そこで技術委員会では,米国のAWSに働きかけてISO規格案の作成を推進し,成果を挙げてきた。 ISO規格に整合するようJISの改正作業も担当している。技術委員会では3つの分科会(その下に約10のワーキンググループ)を設置し,改正JISの素案および原案の作成を担当するとともに規格制定を推進している。表1.3および表1.4に示すように,ステンレス鋼被覆アーク溶接棒およびフラックス入りワイヤ,軟鋼・高張力鋼・低温用鋼用被覆アーク溶接棒の3種類の改正JISがすでに発行されている。軟鋼・高張力鋼・低温用鋼用フラックス入りワイヤおよびマグ溶接ソリッドワイヤも2008年度中に発行される予定である。また,残りの23件も2011年度中には発行できるよう計画している。 さらに,安全衛生の関連で,溶接ヒュームのデータシートについてもISO整合化JISの制定を担当している。2007年度に素案を作成し,2008年度から原案作成に移行している。(3)建築構造用溶接材料の検討 阪神・淡路大震災を契機として,鉄骨造建築物の耐震性向上の観点から,とくに柱-梁接合部の品質に関して産官学の各方面で検討が行われてきた。技術委員会でも1997年度から2004年度まで「建築構造用溶接材料の検討」と題して共研活動を実施した。分科会では鉄骨ファブリケータの溶接条件(入熱,パス間温度)を考慮し,従来の490MPa級CO2アーク溶接ソリッドワイヤ(JIS�Z�3312�YGW11)よりも建築鉄骨に適したワイヤを選定し,540MPa級CO2アーク溶接ソリッドワイヤとしてJIS化した(JIS�Z�3312�YGW18)。490MPa級ワイヤ(YGW11)では,母材と同等以上の強度および耐震性を考慮した高じん性(0℃で70J以上)を確保するため「入熱30kJ/cm以下,パス間温度250℃以下」の管理が必要であった。しかし,540MPa級ワイヤ(YGW18)では,図1.1に示すように「入熱40kJ/cm以下,パス間温度350℃以下」と実際の施工条件のほぼ近くまで管理範囲を拡大した。さらに,Ar-CO2アーク溶接ソリッドワイヤ,CO2およびAr-CO2アーク溶接フラックス入りワイヤについても同種のワイヤをJIS化した。

  • 第3編 専門部会70

    表1.

    2 IS

    O規

    格の

    体系

    軟鋼及び細粒鋼

    (軟鋼,~570MPa級高張力鋼,

    低温用鋼,耐候性鋼)

    高張力鋼

    耐熱鋼

    ステンレス

    鋼9%Ni鋼

    Ni・Ni合金

    硬化肉盛

    鋳鉄

    Al・Al合金

    Cu・Cu合金Ti・Ti合金

    (590MPa級

    以上)

    被覆アーク溶接棒

    2560

    18275

    3580

    3581

    14172

    CEN規格案作

    成中

    (詳細不明)

    1071

    ------

    ---フラックス入りワイヤ

    17632

    18276

    17634

    17633

    素案段階

    ------

    ---ティグ溶接材料

    636

    16834

    21952

    14343

    18274

    ---18273

    24373

    24034

    マグ溶接ソリッドワイヤ

    14341

    ---サブマージアーク溶接用ワイヤ2)

    14171

    26304

    24598

    ------

    ------

    ---サブマージアーク溶接用フラックス

    14174

    ------

    ------

    シールドガス

    14175

    1)(    )付きの番号は,現在作成中の規格を示す。

    2)耐熱鋼用サブマージアーク溶接用ワイヤにはフラックス入りワイヤも含まれる。

    左着色部分は,制定審議規格

    左着色部分は,3年・5年見直し改正審議規格

    表1.

    3 現

    行JI

    Sの体

    系軟鋼

    高張力鋼

    低温用鋼

    耐候性鋼

    耐熱鋼

    ステンレス鋼

    9%Ni鋼

    Ni・Ni合金

    硬化肉盛

    鋳鉄

    Al・Al合金

    Cu・Cu合金Ti・Ti合金

    被覆アーク溶接棒

    Z�32111)

    Z�32121),�2)

    Z�3241

    Z�3214

    Z�32231)

    Z�32211)

    Z�3225

    Z�3224

    Z�32511)

    Z�3252

    ---Z�3231

    ---フラックス入りワイヤ

    Z�33132)

    Z�3320

    Z�3318

    Z�33231)

    ------

    Z�3326

    ------

    ------

    ティグ溶接材料

    Z�33162)

    ------

    Z�3316

    Z�33211)

    Z�3332

    Z�3334

    ------

    Z�32321)

    Z�3341

    Z�3331

    マグ(ミグ)溶接ソリッドワイヤ

    Z�33121),�2)

    Z�3325

    Z�3315

    Z�3317

    ------

    サブマージアーク溶接用ソリッドワイヤ

    Z�3351

    Z�33243)

    Z�3333

    ------

    ------

    ------

    サブマージアーク溶接用フラックス

    Z�3352

    ------

    ------

    ------

    サブマージアーク溶着金属

    Z�31832)

    ---Z�3183

    ------

    ------

    ------

    シールドガス

    Z�3253

    1)薄青に塗りつぶした規格は,工業標準化法第19条に基づく指定商品に指定された製品規格。旧JISマーク表示制度が適用されている。新制度では指定商品制度はなくなった。

    2)�各規格に規定されているTS範囲 Z�3212:490~780N/mm2 級HT,Z�3313:490~590N/mm2 級HT,Z�3316:490~780N/mm2 級HT,Z�3312:490~570N/mm2 級HT,Z�3183:490~780N/mm2 級HT

    3)�ステンレス鋼帯状電極肉盛溶接材料規格として,JIS�Z�3322が制定されている。

    表1.

    4 IS

    O整

    合化

    JIS改

    正案

    の体

    系軟鋼

    高張力鋼

    低温用鋼

    耐候性鋼

    耐熱鋼

    ステンレス鋼

    9%Ni鋼

    Ni・Ni合金

    硬化肉盛

    鋳鉄

    Al・Al合金

    Cu・Cu合金Ti・Ti合金

    被覆アーク溶接棒

    Z�32113)

    Z�3214

    Z�3223

    Z�3221

    Z�3225

    Z�3224

    Z�3251

    Z�3252

    ---Z�3231

    ---フラックス入りワイヤ

    Z�3313

    Z�3320

    Z�3318

    Z�3323

    ------

    Z�3326

    ------

    ---ティグ溶接材料

    Z�3316�+�(低温用鋼用ワイヤ)

    Z�CCCC

    Z�3317

    Z�3321

    Z�3332

    Z�3334

    ---Z�3232

    Z�3341

    Z�3331

    マグ溶接ソリッドワイヤ

    Z�33123)

    Z�3315

    ---サブマージアーク溶接用ワイヤ2)

    Z�3351

    Z�3333

    ------

    ------

    ---サブマージアーク溶接用フラックス

    Z�33521)

    Z�3352

    ------

    ------

    サブマージアーク溶着金属

    Z�3183

    Z�33244) 

    ------

    ------

    ------

    シールドガス

    Z�3253

    1)�ステンレス鋼帯状電極肉盛溶接材料規格としてJIS�Z�3322が制定されているが,フラックスについてはJIS�Z�3352を引用する。

    2)�フラックス入りワイヤを含む耐熱鋼用サブマージアーク溶接用ワイヤのISO規格を反映するため,ワイヤの種類を限定しない表現と

    した。

    3)�旧JISマーク制度における指定商品の製品規格番号を継続することが望ましいとの判断により,改正JISを本規格番号とした。

    4)�ステンレス鋼帯状電極肉盛溶接材料[JIS�Z�3322]を溶着金属部分の規定に改正する。

    左着色部分は,発行済みJIS

    左着色部分は,平成18年度JIS改正案件

    左着色部分は,平成19年度JIS改正案件

    左着色部分は,平成20年度JIS改正予定案件

    左着色部分は,平成21年度JIS改正予定案件

  • 1. 溶接棒部会 71

     上記の活動は,日本溶接協会と旧建設省建築研究所(現(独)建築研究所)および㈳鋼材倶楽部(現㈳日本鉄鋼連盟)の共同研究「次世代鋼構造建築物創世への基礎研究:建築構造用溶接材料と溶接接合部性能評価法の確立」として取り組んだ。また,旧建設省総合技術開発プロジェクト「次世代鋼材による鋼構造安全性向上技術の開発(破断総プロ)」とも連携を図った。その成果は,『鉄骨梁端溶接接合部のぜい性的破断防止ガイドライン・同解説』(監修:(独)建築研究所)あるいは『建築鉄骨溶接構造の性能評価基準』(発行:㈳全国鐵構工業協会)などにおいて表1.5のように適用され,柱-梁溶接接合部の耐震性向上に大きく貢献した。 さらに,㈳鋼材倶楽部と共同で『建築構造用高性能590MPa級SA440の設計・溶接施工指針』の改訂も行った。入熱・パス間温度の改正内容を表

    1.6および表1.7に示す。 これらの共同研究の成果は,鋼構造論文集(㈳日本鋼構造協会)で発表するとともに,日米ワークショップ「地震による鉄骨構造の破断問題」でも報告した。このワークショップは,日本側が旧建設省�建築研究所および旧鋼材倶楽部,米国側が連邦緊急管理庁(FEMA)によって運営され,柱-梁接合部のぜい性破断を避けるための技術が多数報告された。(4�)ステンレス鋼溶接材料の検討(高温特性,建築用材料,FCWの適用性)

     (a�)オーステナイト系ステンレス鋼溶接金属の高温特性調査

     � 1997年度から1999年度まで,オーステナイト系ステンレス鋼のティグ溶接金属を対象として,高温特性に及ぼす溶接条件の影響を調査した。目的は,石油精製装置などの高温機器の製

    表 1.5 施工と材料管理の目安(TS≧ 490N/mm2,VE0℃≧ 70J)影響因子 規格または目標値

    材 料 溶接ワイヤ JIS�Z3312,Z3313 適合鋼 板 SN規格材�Bまたは C材

    冷却速度の適正化入 熱 YGW18:40kJ/cm以下YGW11:30kJ/cm以下

    パス間温度 YGW18:350℃以下YGW11:250℃以下ワイヤ添加成分の歩留り安定化 アーク電圧 適正

    (1)± 2V

    溶接金属の窒素量抑制

    (シールド性確保)

    シールドガス流量 25ℓ/min. 以上被溶接面─ノズル先端間距離 30mm以下(2)

    ウィービング幅 20mm以下(1)電圧の目安は,短絡溶滴移行が始まる電圧+ 2V。(2)但し,板厚 25mm以上の初層については 35mmが目安。

    図 1.1 溶接金属の機械的性質に及ぼす入熱,パス間温度の影響(540N/mm2 級ワイヤ:YGW18,CO2,35°レ型,板厚 25mm)

  • 第3編 専門部会72

    造に用いる溶接材料の基礎データ採取であり,クリープ破断試験および長時間時効後の衝撃試験を実施した。1998年度までの調査で,①入熱が40kJ/cmを超えるとクリープ破断延性が大きくなる,②被覆アーク溶接棒やフラックス入りワイヤの溶接金属に比べてクリープ破断延性が小さい,などの知見を得た。1999年度はクリープ破断を詳細に調査し,ぜい化機構を検討した。その結果,①ティグ溶接金属のクリープ延性低下は,他の溶接法と同様に粒界破壊が主因である,②粒界破壊の原因は粒内の硬化であり,短時間で高温損傷を引き起こすことはない,③クリープ延性の向上には入熱および酸素量の増加が有効である,ということを確認した。 (b�)ステンレス鋼建築構造用溶接材料の検討 � 2000年度に施行された改正建築基準法ではJIS�G�4321(建築構造用ステンレス鋼材)が追加された。この建築構造用ステンレス鋼の強度および耐力は,一般のステンレス鋼に比べて高く規定されている。建築鉄骨では,構造設計上,溶接接合部の引張試験において母材破断(オーバーマッチング)が一般的に要求されるため,従来よりも高強度の溶接材料が必要となった。これに対応し,2001年度から2002年度にかけて,建築構造用ステンレス鋼および既存のステンレス鋼溶接材料の機械的性質について実態調査を行った。2002年度から2003年度には溶接金属

    の高強度化を検討するとともに,㈳ステンレス構造建築協会と連携して溶接接合部の特性を調査した。調査の結果,母材破断とするには,SUS304A鋼の場合は308N2系および309Mo系溶接材料,SUS304N2A鋼の場合は329J3L系溶接材料が適切であることを明らかにした。

     (c�)ステンレス鋼フラックス入りワイヤの適用性調査

     � ステンレス鋼フラックス入りワイヤは,溶接の自動化や高能率化にともなって使用量が飛躍的に伸びており,出荷量全体の約半分を占めるに至っている。その一方で,適用溶接条件が広い故のトラブルも少なくない。また,ステンレス鋼の使用環境は幅広く,要求される性能も多岐に渡るため,フラックス入りワイヤの特性がそれに対応しきれない場合もある。そこで,2004年度から2006年度にかけて,ステンレス鋼フラックス入りワイヤによる溶接金属の諸特性を明らかにし,その特性を最大限に引き出すための適用指針を作成した。とくに,①Biによる再熱割れ,②非金属介在物(酸化物)によるじん性および耐孔食性の低下,を特有の問題として取り上げた。

     � Biによる再熱割れは,石油精製機器の中で600℃~ 700℃の環境で使用されるSUS304H製配管の溶接金属で発生した。Biはスラグ剥離性を大幅に改善するが,500℃以上で使用される機器の溶接にはBi無添加のフラックス入りワイヤ(JIS�Z�3323�TSXXX_BiF-X1X2X3)を用いるよう提言している。

     � ステンレス鋼フラックス入りワイヤの溶接金属では,他の溶接方法に比べてSi,Ti,Fe,Mn,Crなどの酸化物(非金属介在物)が多い。オーステナイト系ステンレス鋼溶接金属の機械的性質は,これらの酸化物の影響を受ける。例

    表 1.6 改訂前の最大溶接入熱 溶接部位 溶接方法 入熱(kJ/cm)

    BOX角継手 サブマージアーク溶接 ≦ 400ガスシールドアーク溶接 ≦ 70

    ダイヤフラム ガスシールドアーク溶接 ≦ 70エレクトロスラグ溶接 ≦ 1000仕 口 ガスシールドアーク溶接 ≦ 70

    突合せ サブマージアーク溶接 ≦ 200ガスシールドアーク溶接 ≦�70

    すみ肉 サブマージアーク溶接 ≦ 200ガスシールドアーク溶接 ≦ 70

    表 1.7 改訂後の最大溶接入熱および最大パス間温度溶接部位 溶接方法 入熱(kJ/cm) パス間温度(℃)

    BOX角継手サブマージアーク溶接 ≦ 400 ≦ 250

    ガスシールドアーク溶接 ≦ 30 ≦ 350≦ 40 ≦ 250

    ダイヤフラム ガスシールドアーク溶接≦ 30 ≦ 350≦ 40 ≦ 250

    エレクトロスラグ溶接 ≦ 1000 ―

    仕 口 ガスシールドアーク溶接 ≦ 30 ≦ 350≦ 40 ≦ 250

    突合せサブマージアーク溶接 ≦ 200 ≦ 250

    ガスシールドアーク溶接 ≦ 30 ≦ 350≦ 40 ≦ 250

    すみ肉サブマージアーク溶接 ≦ 200 ≦ 250

    ガスシールドアーク溶接 ≦ 30 ≦ 350≦ 40 ≦ 250

  • 1. 溶接棒部会 73

    えば,衝撃吸収エネルギーは,図1.2のように酸素量(酸化物量)の増加にともなって劣化する。一方,室温引張特性やクリープ破断延性はその影響を受けず,他の溶接材料と比較しても遜色ない品質となっている。このため,市販の製品では,衝撃吸収エネルギーや耐食性などと溶接作業性を勘案した成分設計がなされている。

    (5)溶接ヒュームに関する研究 2004年のIIW年次大会(大阪)第Ⅷ委員会にて,溶接ヒューム中の元素および化合物の暴露限界濃度に関する各国の規定が引き下げられたとの報告があった。また同時に,溶接関連企業に対し,「溶接ヒューム中のMnなど特定の元素および化合物の発生量低減を遅滞なく進めるように」との声明が発表された。さらに,ISOでは溶接ヒュームのデータシートを規格化するための検討も始まった。 そこで,溶接協会の安全衛生・環境委員会と連携し,2005年度以降,「溶接ヒュームの安全性に関わる世界の動向調査」や「ヒューム中の六価クロム分析方法の確立」に取り組んできた。また,「溶接ヒュームの捕集要領や発生量測定方法」に関するISO規格の改正,「ヒュームデータシート」のISO規格に整合したJISの素案作成などにも対応している。(6)マグ・ミグ溶接のガスシールドに関する研究 近年,鋼材の高品質化にともない,溶接金属についても高強度化や高じん性化の要求が数多く出てきた。これに対応し,溶接材料の面から積極的な検討が行われてきた。一方,マグ・ミグ溶接では,大気に対するシールド性も溶接金属のじん性に大きな影響を及ぼすことがよく知られている。しかし現状は,ブローホールなど気孔欠陥を防止する観点から,施工管理の簡単な目安が示されているに過ぎない。そのため,溶接ワイヤの設計どおりに溶接金属のじん性が確保できるよう,シー

    ルド性に関する適切な管理指針が必要となっている。とくに,さらなる大溶着量化・高速化のニーズが高まっている昨今,高能率性と良好な溶接品質を両立させるには,シールド性に対する適正管理が重要である。 そこで,2005年度から2007年度にかけて,溶接金属の機械的性質や健全性に及ぼす溶接ワイヤの化学成分,シールドガス組成,溶接条件,トーチのノズル形状・寸法などの影響を明らかにし,良好な継手品質を得るための技術指針を作成した。 新しい知見としては,①ソリッドワイヤやフラックス入りワイヤのCO2溶接では溶接金属の窒素量が100ppmを超えるとじん性低下が顕著になる(図1.3),②窒素量を100ppm以下に制御するには風速を0.5m /秒以下に管理し(図1.4),適切なシールド性を確保するにはノズル先端のガス流速を風速の2倍以上に設定する(図1.5),③鋼材や裏当金の含有窒素によって溶接金属の窒素量が増加する,などが得られた。

    1.2.2 その他の活動

    (1)技術委員会50年史発行

    図 1.2  Y308L 溶接金属(GMAW)における衝撃性能に及ぼす酸素量の影響

    SUS304 溶接金属25V,290A,3.3mm/sAr・O2(0~15%)333cm3/s0=酸素量

    0=85PPM

    0=329PPM

    0=634PPM0=830PPM

    3

    2

    1

    0 50 100 150 200 250 300 350温 度(K)

    Vシャルピー衝撃値(×102 J)

    図 1.3  溶着金属の衝撃吸収エネルギーに及ぼす窒素量の影響

    B.H.有りB.H.発生200

    150

    100

    50

    00 0.01 0.02 0.03

    YGW15YGW15

    YFW-C50DRYFW-C50DR

    YGW11YGW11

    溶着金属窒素量(mass%)

    吸収エネルギー(J)

    図 1.4  溶着金属の窒素量に及ぼす風速の影響   (YGW11,CO2,280A,下向ビードオン溶接)

    BH発生

    0.04

    0.03

    0.02

    0.01

    00 0.5 1

    風 速(m/sec)

    溶着金属窒素量(mass%)

  • 第3編 専門部会74

     2006年度に当部会が50周年を迎えるにあたり,2004年度から2005年度にかけて技術委員会50年史編集委員会を設置し,50年間の足跡を取りまとめた記念誌を発行した。(2)関連団体への対応 ㈳日本鉄鋼連盟,㈳日本鋼構造協会,当協会の溶接情報センターおよび電気溶接機部会からの要請に対応し,ワーキンググループ活動や委員派遣による技術指針作成などに協力している。それらの活動状況を以下に示す。 (a)㈳日本鉄鋼連盟 � 2006年度以降,㈳日本鉄鋼連盟の「四面ボックス柱溶接接合部の必要じん性に関する研究委員会」に参加している。技術委員会内にワーキンググループを設置し,「エレクトロスラグ溶接部ぜい性破壊防止技術指針」の作成において溶接材料および溶接金属に関する部分を担当している。 � また,建築専門委員会の要請に対応し,『新しい建築構造用鋼材(書籍)』の改訂原稿を作

    成した。 (b)㈳日本鋼構造協会 � 2006年度以降,㈳日本鋼構造協会技術・標準委員会の「鉄骨溶接部の内質検査ガイドライン作成小委員会」へ委員1名を派遣し,建築鉄骨の溶接接合部に関する品質検査方法,品質合否判定基準,補修・補強方法などについて検討している。

     (c)溶接情報センター � 溶接情報センターより,一般向けコンテンツとして掲載している「溶接の研究」(技術委員会の年間活動報告書)にキーワードを付与したいとの申入れがあり,2007年度に分科会を設置して対応した。対象はNo.1~No.41の41冊で,検索の簡便性向上に寄与した。

     (d)電気溶接機部会 � 2004年度から2009年度まで,電気溶接機部会技術委員会アーク溶接機小委員会アーク溶接技術普及ワーキンググループの要請により,視覚教材『アーク溶接の世界(パート4)ガスシールドアーク溶接施工の要点』の作成に参加した。溶接材料および溶接施工に関する部分を2名の委員で執筆した。

    1.2.3 行事

     各分科会やワーキンググループの年間活動を取りまとめ,「溶接の研究」と題して年度ごとの成果報告書を発行している。また,2年に1回の頻度で「溶接の研究」に基づく講習会も開催している。その際,関連団体の協力を得て,鋼材や溶接ロボットの技術動向などに関する特別講演も実施した。さらに,上記講習会の間の年には,業種や溶接方法,継手品質などにテーマを絞った特別講習会を開催した。

    図 1.5  シールド性に及ぼすノズル出口平均ガス流速と風速の関係

    0

    3

    2

    1

    01 2 3 4 5

    ノズル出口平均ガス流速(m/sec)

     ,  :良好 ,  :不良の可能性有り

     ,  :ノズル内径 19mm ,  :ノズル内径 10mm

    風 速(m/sec)

    良好

    不良の可能性有り不良の可能性有り

    今後の活動1.3

     鋼構造物の更なる長寿命化,健全性や意匠性の向上,製造コストの低減などの観点から,溶接の高品質化・高能率化に対するニーズは,今後さらに高まるものと予想される。技術委員会としては,そのような技術動向に対応し,溶接材料の評価や溶接技術の研究に注力していく。また,溶接材料の特性が設計どおりに発揮されるよう,ファブリケータの施工管理に対する提案なども検討していく。 溶接材料の規格については,従来どおりIIWや

    ISOの会議に積極的に参加し,ISO規格が日本にとって有益なものとなるよう,制定,改正および定期見直しに取り組む。また,ISO整合化JISの素案・原案作成および制定作業も計画に従って推進していく。 その他,溶接材料や溶接技術に関する各種調査・研究,品質評価方法の改良・開発,安全衛生に関わる管理指標の提示,溶接技術の普及支援など,溶接に関わる種々の技術課題に対してたゆまぬ努力を続けていく。