これからの病棟業務は · 2013-03-18 ·...

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ファーマスコープは病院、保険薬局で輝く薬剤師の声をお届けする情報誌です。 特別号 広島県版 これからの病棟業務はいかにあるべきか ~「病棟薬剤業務実施加算」創設がもたらすインパクト~ 座談会 広島大学病院 薬剤部長 木平 健治 先生 中国中央病院 薬剤部長 景子 先生 マツダ病院 薬剤部長 西原 昌幸 先生 JA広島総合病院 薬剤部長 大田 博子 先生 [司会] (発言順)

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Page 1: これからの病棟業務は · 2013-03-18 · て効率化したり、ハイリスク薬管理のための業務フローを看護 師と一緒に考えたりしてなんとかクリアできています。

発行月 : 平成24年9月発 行 : 田辺三菱製薬株式会社    〒541-8505 大阪市中央区北浜2-6-18    お問い合せ先 : 営業推進部 06-6227-4666

田辺三菱製薬株式会社ホームページ http://www.mt-pharma.co.jp

ファーマスコープは病院、保険薬局で輝く薬剤師の声をお届けする情報誌です。

特別号 広島県版

特別号 広島県版

これからの病棟業務はいかにあるべきか~「病棟薬剤業務実施加算」創設がもたらすインパクト~

座談会

広島大学病院 薬剤部長木平 健治 先生中国中央病院 薬剤部長原 景子 先生マツダ病院 薬剤部長西原 昌幸 先生JA広島総合病院 薬剤部長大田 博子 先生

[司会]

(発言順)

広島大学病院 薬剤部長

き  ひら  けん じ

木平 健治 先生(司会)

JA広島総合病院 薬剤部長

おお  た   ひろ  こ

大田 博子 先生マツダ病院 薬剤部長

にし はら  まさ ゆき

西原 昌幸 先生中国中央病院 薬剤部長

 はら    けい こ

原 景子 先生

特別号 広島県版

これからの病棟業務はいかにあるべきか~「病棟薬剤業務実施加算」創設がもたらすインパクト~

座談会

座談会

■各施設における病棟薬剤業務の現状木平 最初に、各施設における病棟業務の基本方針とこれまでの取り組みについて、原先生から順にお話しいただけますか。

原  中国中央病院は277床、薬剤師は定数15人ですが、現在は欠員があり12人です。病棟業務の基本的な方針として、薬剤師がいなければ患者さんが入院できないと言われる存在になることを目指しました。以前は服薬指導が必要であると看護師が判断した時だけ薬剤師が病棟に呼ばれていたのですが、薬がそこにあれば、まず薬剤師を呼ぼうと思ってもらえるようにすること、そのための体制を作ることが必要だと思いました。そこで、持参薬

への関与、注射薬の個人セット(注射カート)、退院時指導、抗がん剤無菌調製など少しずつ病棟業務を広げてきました。その結果、当院では4月から病棟薬剤業務実施加算を算定できる体制まで漕ぎ付けることができました(資料1)。

西原 マツダ病院は270床で薬剤師は18人、他に補助スタッフが3人います。この4月から病棟薬剤業務実施加算を算定していますが、私が着任した2004年当時は、病棟に薬剤師がいることが標準的ではありませんでした。服薬指導には行くのですが、指導したらすぐ薬剤部に戻ってきていました。そのころ薬剤部は厚生科学研究報告の与薬関連ヒヤリ・ハット事例報告率に着目しており、特に内服関連における当院との差を問題としていました。そ

こで薬剤師が配薬に関わる必要性を病院側に訴え、まず1病棟で配薬準備に参画することになりました。それが病棟業務拡大への第一歩になりました。配薬準備のプロセス改善のために「シックスシグマ」という品質管理の手法を用い、原因の特定や対策を行ってエラーを削減しました。さらに業務効率化のため配薬カートの導入を提案し、臨床現場に薬剤師が必要だという認識を院内で高めてきた経緯があります。

大田 JA広島総合病院は561床に対し薬剤師は30人います。ただし、当院は院外処方せんを発行していませんので、病棟業務に費やす時間はどうしても限られます。それに対して、他職種からの要望は年々増えてきている状況で、うれしい反面すべてに応えられないというジレンマもあります。当院では薬のセーフティマネジメントを最大のコンセプトとし、これまで薬剤管理指導件数を犠牲にしてでも、医師や看護師との協働業務を優先してきました。今回、病棟薬剤業務に該当する時間を計ったところ、算定要件の20時間に達していましたので、これまでの病棟での活動が評価されたように感じています。現在、病棟薬剤業務実施加算の算定のための準備中で、状況が整い次第開始する予定です。

木平 広島大学病院は746床で、薬剤師は56人です。当院では4月から病棟薬剤業務実施加算を算定しています。42国立大学病院の中で、4月に算定したのは広島大学病院だけです。私自身、ずっと薬剤師の病棟業務が診療報酬で評価されることを目標に業務を拡大してきて、やっと認められたのですから、「絶対に算定するぞ」と薬剤部員全員で取り組んできました。病棟業務の体制ですが、当院では17人の専任薬剤師が4つのグループを形成し、一般病棟では基本的に3~4フロアをそれぞれ3~4人で担当し、誰かが休んでもフォローできるようにしています。このほか専任として、救命センター・ICU・HCUに1人、手術室に1人います。NICU・GCUは小児病棟担当グループがカバーしています(資料2)。

■病棟薬剤業務実施加算算定のための 業務体制木平 各病院の現状をひと通りお聞きしましたが、病棟業務にしても外来にしても薬物療法が行われているところには必ず薬剤師が関与するということを基本にしていることは共通していますね。次は、病棟薬剤業務を実施するためのマンパワー確保や業務体制をどう進めてこられたのか、西原先生から話していただけますか。

西原 医療安全と医療従事者の業務削減に前向きに取り組んできたことが認められ、この2年で薬剤師は5人程増えています。薬剤部の業務体制は、15分単位のジョブローテーションで非常に細かく設定しています(資料3)。病棟業務については、5病棟に各1人の専任薬剤師を配置し、病棟薬剤業務を中心に1日5時間実施します。服薬指導業務などのサポート要員として、1病棟につきフォロー担当者を3人配置し、専任者が当直明けで不在でも、サブ担当者が対応できるように教育しています。この2年間、当院では加算を算定するのは当然という意気込みで病棟業務の拡充に邁進してきました。これからは、どのように業務の効率化を図るかが課題です。特にハイリスク薬の管理やモニタリングなどの標準化に取り組んでいきたいと思っています。

原 当院は1病棟2人の体制で、5病棟を10人でカバーしています。2人が交代で半日ずつ病棟業務を担当できるようにローテーションを組んでいるので、常に薬剤師が1人は病棟にいることになります。ただし残った人数で調剤をはじめさまざまな業務を行うことになりますから、決して楽ではありません。しかし、これまでやってきたことが評価された結果ですから、みんなで頑張ってやろうと前向きに取り組んでいます。病棟薬剤業務をするために薬剤管理指導件数が減ることがないように、業務内容を整理し

て効率化したり、ハイリスク薬管理のための業務フローを看護師と一緒に考えたりしてなんとかクリアできています。

大田 当院は西棟と東棟にそれぞれ6病棟ずつ、合計12病棟あります。2つの棟は連絡しており1フロアには各棟担当1人ずつとフォロー担当1人の計3人の薬剤師を配置しています。ただ、当院の場合、院内調剤を行っているため病棟活動時間が限られます。病棟薬剤師は少なくとも週1回は終日病棟にいますが、外来調剤を行わなければならない日は朝10時半頃から15時頃までは病棟に滞在することができませんので、その分残業して病棟業務を行っています。そこで、病棟業務を効率化し、外来調剤を行うメリットを生かす業務方法、つまり外来から入院まで切れ目なく薬剤師が関わるという方法をとっています。例えばがん化学療法を行う場合、初回は入院・外来を問わずがん化学療法担当者が患者さんに1時間近くかけて説明と服薬指導を行い、その内容は病棟薬剤師にも伝えます。休薬期間や抗がん剤の用量・支持療法などはがん化学療法担当者が管理しています(資料4)。外来患者さんの場合、指導料は算定できませんが、薬剤師としてやるべきことは入院・外来に関わらず行おうという方針です。

木平 病棟薬剤業務は、今までの薬剤管理指導にどれだけ上乗せした業務ができるかということを問われているのです。そのためには業務の効率化が必要ですから、当院でもさまざまな取り組みをしました。すべての病棟専任薬剤師に医療端末・PHSを配布し、薬剤管理指導システムに院内のどこからでもアクセス可能にしました。また、病棟薬剤業務日誌はできるだけ書式を簡略化し、本来の病棟薬剤業務に注力できるようにしています。当院の場合、病棟薬剤業務とされた業務については既に実施していたものがほとんどですが、それをさらに進化させ、継続させていくためには、人員の増加と薬剤師のレベルアップは不

可欠だと考えています。最終的には人材育成がこれからの病棟業務の質を左右すると認識しています。

■医師、看護師の負担軽減に貢献する 病棟業務木平 今回の病棟薬剤業務実施加算においては、医療従事者の負担軽減への貢献が強く求められています。その点についてはどのような取り組みをされていますか。

西原 当院では、看護師との協働による配薬準備業務を2005年から開始しており、現在は全病棟で配薬カートを用いた配薬準備を行っています。週に1回、薬剤部で薬剤師4人がかりで配薬カートに1週間分の薬をセットして病棟に上げます。実際にデータを取ったところ、52%の看護業務の削減につながっていました。また、整形外科病棟では薬剤師が定期処方日前、処方提案を指示箋という書式にまとめて行います。紙面上では看護師、医師と情報共有し「この患者さんは痛みが軽減しています」ということ等を追記し、医師の承認の下指示箋に基づき定期処方の入力支援を行っています。いまでは医師の負担も減り高い評価を受けています。

大田 当院の場合、以前は配薬カートのセットをほぼ全病棟で実施していたのですが、今は看護師にかなり任せるようになりました。というのも看護師から配合変化に関する問い合わせや、持参薬の情報提供を要求されるようになり、そちらへの対応に徐々にシフトしているためです。医師に対しては、電子カルテになったことで、薬剤師が医師よりも先にデータを確認することができるようになり、情報提供や処方提案がこれまで以上に容易になっています。当院は外来調剤を行っていますから、外来の

段階で持参薬を鑑別して電子カルテに保存します。手術目的の患者さんが麻酔科を受診する時には薬剤の内容が判別できますし、入院したら病棟薬剤師がその情報を元に服用薬の中止指示が守られているか、それ以外の服薬状況はどうかなどを把握し、必要があれば医師に提案しています。

原  当院も薬剤師ができることは何でもやろうと、いろいろなことに取り組んでいます。注射薬カートは看護師が分かりやすいように1患者1トレーでセットするほか、払い出しの時間もぎりぎりまで遅らせることで処方変更に薬剤師が対応し、看護師が交換する必要がないようにしました。ハイリスク薬については、投与後に注意すべき観察項目を一覧表にして看護師に提供しています。外来ではがん患者さんに対して薬剤師が問診して、内服抗がん剤や麻薬の評価、副作用モニタリングを行い、その情報を基に医者が診察をします。また、入院が決まった時点で薬剤師がお薬手帳などを確認して術前中止薬のチェックをしています。最近の傾向として、外来患者さんの指導を医師から依頼されるケースが増えており、インスリンや吸入薬の指導を行っています。

■病院経営に貢献する病棟薬剤業務とは木平 皆さんのお話を伺うと、処方の内容を薬剤師が精査し、薬剤の適正使用に積極的に取り組んでいらっしゃいます。医師の負担軽減はもちろんですが、それ以上に薬物療法の質の向上に貢献していると思います。では、病院経営への貢献という面ではいかがでしょうか。データ化しにくい部分だと思いますが、西原先生はどうお考えですか。

西原 薬に関するヒヤリハットがなかなか減らないという問題があるのですが、持参薬のチェックなど潜在効果として薬剤師が関与することで減らせるはずです。そういった安全への貢献をどう表現するかだと思います。

大田 以前は他科や地域の医療機関からの紹介患者さんの薬は、例えば手術目的で入院したらほとんどがDo処方であり、一律に1週間分の薬を処方していました。それを薬剤師がチェックして「これは3日分でいいですよ」とか「同種同効薬ですから必要ありません」などと提案できるようになったので、安全性の向上だけでなく、適正使用の推進につながりました。また、薬剤師が病棟の薬に関与するようになってから、薬剤部からのヒヤリハットが増えたのですが、それは、それまで看護師が見過ごしていたことも、薬剤師が見るとヒヤリハットだったという例があったためです。

木平 薬剤師により新たな視点で見ることができるということですね。医薬品の適正使用により、病院経営への貢献につながりますし、最終的には医療費の削減にもつながるということです。

■病院薬剤師としての展望と夢木平 最後に、皆さんの今後の展望や病院薬剤師としての夢について話していただきましょう。

原  最近、病院薬剤師になろうという人が減っています。「当直があるから嫌だ」とか、「土日は休みたい」という声も聞きます。しかし、医療には土日も祝日もありませんから、医師や看護師と同じように、薬剤師も一人の医療人として責任を果たすべきだと考えています。ですから、365日切れ目ない勤務体制が構築できたら、というのが目標です。私自身は、病院薬剤師という素晴らしい仕事をすることができ、幸せだったと思っています。後輩たちにも同じようにその幸せを味わってほしいというのが夢ですね。

大田 同感です。私は病棟に行き始めた最初の世代なのですが、病棟に行くと本当に楽しくて時間を忘れました。それが徐々に病棟業務がルーティン化するにつれて、若い薬剤師が楽しさを実感することが少なくなったように思います。医師からは「薬剤師に任せたら安心だ」と信頼されている実感はありますが、まだまだ薬剤師が主体的に関与できる薬物療法はたくさんあります。将来、薬剤師が処方の提案だけではなく、処方を決定するところまで専門性を評価されるようになれば、病院薬剤師としてのやりがいがさらに広がると思います。

西原 私の夢は「薬あるところに薬剤師あり」なのですが、まだまだ十分に関わりきれていません。重大な副作用のある薬について、病棟薬剤師が追跡し評価するところまでできておらず、今後、そこを変革していける若い人材を育成することが課題です。中期的には、薬剤師外来などで、医師の片腕になって処方支援ができる薬剤師を育てることを目標にしており、さらにその先には、大田先生がおっしゃるように、薬剤師が処方に責任を持つところまで信頼される時がくるのではないかと期待しています。

木平 ここ数年のチーム医療と多職種協働の流れの中で、薬剤師に対する医療スタッフの認識は大きく変わってきました。病棟の運営もチーム医療も、もはや薬剤師抜きでは考えられない状況になっています。そして今回、これまで多くの薬剤師が努力してきた結果が診療報酬として評価されたのです。しかし、まだまだ発展途上であり、むしろこれからが正念場です。そのことを各施設の共通認識として前進していかなければなりません。かじ取りをする薬剤部長は、しっかりとした方向性と将来への希望を明確に示さなければいけないと、皆さんとの話し合いを通じて痛感しました。本日は貴重なお話をありがとうございました。

 「薬剤管理指導業務」が診療報酬で点数化されてから24年。多くの薬剤師の努力により、薬物療法の質向上や医療従事者の負担軽減などにおける医療への貢献が認められ、2012年度の診療報酬改定で「病棟薬剤業務実施加算」が新設されました。本日の座談会には、広島県内でも先駆的に病棟業務に取り組んできた病院の薬剤部長にご参加いただきました。3施設は4月から病棟薬剤業務実施加算を申請しており、1施設も今年度中には申請の予定です。どのようにして病棟薬剤業務の体制を築いてこられたのか、また、どのような課題に直面されているのか、実践に基づいた貴重なお話を伺うことができると思います。本座談会を、広島県内の多くの施設の参考に供することができれば幸いです。

座談会開催にあたって [司会] 広島大学病院 薬剤部長 木平 健治 先生

病棟薬剤業務の内容(中国中央病院)資料1 病棟薬剤業務の体制(広島大学病院)資料2 1日の業務スケジュール(マツダ病院)資料3 入院から外来まで一貫した関わり(JA広島総合病院)資料4

●病棟薬剤業務実施加算(→特定入院費にふくまれるもの)半日:2時間(病棟管理)入院時 過去の投薬、注射、副作用歴等の聴取

→当院及び他院における投薬、注射の基礎的事項の把握→持参薬確認及び服薬計画の立案(継続、中止の確認)

入院中 相互作用(禁忌、重複)の有無確認ハイリスク薬の説明(プロトコールを含む)(投与前) →病棟担当者が薬をもってあがる。ハイリスク薬の流量、投与量の計算(投与前) →注射室でする?抗がん剤のレジメン作成TDM(処方設計)配合変化定期処方薬のチェック在庫確保抗がん剤、TPNのミキシング麻薬の管理(カンファレンスへの参加)

薬剤部長をのぞく常勤薬剤師17人分の1日の業務割り当て時間を各々15分単位で決めた「病棟薬剤業務担当一覧表」。

右端の数字は、個々の薬剤師の1日の病棟業務時間1:病棟業務 ●:注射・内服調剤業務 ○:外来窓口

広島大学病院 病棟薬剤業務について

〈4月1日より、病棟薬剤業務実施加算算定〉

●病棟配置(17人)743床 ■一般病棟:3グループ(4フロアーを4名が担当)※1人約50床を担当       1グループ(3フロアーを3名が担当) ■救命センター・ICU(26床)、HCU(10床):1名 ■手術室:1名 ■NICU(6床)・GCU:小児病棟担当グループ

●業務内容 ■病棟業務 ■調剤応援(週1回約2時間)、院内医療チーム ■院内の取り決め事項   ■代行オーダー(定数配置薬処方、薬物血中濃度測定)   ■持参薬取り扱いに関する体制整備(全入院患者の持参薬を確認)

病棟専任者

フォロー担当者

3F A(d)4F B(e)5F C(h)6F D(g)7F E(f)ope F調剤室1(a)調剤室2(b)調剤室3(c)調剤室4(d)調剤室5(e)調剤室6(f)調剤室7(g)調剤室8(h)調剤室9( i)調剤室10(j)  k

111111○1111111111

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5555554.254.54.54.53.54.754.53.754.54.53.5

薬剤師 8:15 8:30 8:45 9:00 9:15 9:30 9:45 10:00 10:15 16:15 16:30 16:45 合計時間16:00<がん化学療法業務における薬剤師の役割>

外来 入院

外来化学療法室 病棟活動がん化学療法施行前レジメン監査(前日までに制吐剤等支持療法の妥当性吟味検査データ確認・データベース作成(医師に検査依頼を行う場合あり)施行日の患者指導の必要の有無検討

施行時

レジメン妥当性吟味持参薬確認・薬歴作成検査データ確認 データベース作成(医師に検査依頼を行う場合あり)

がん化学療法施行中の注意点 当日再確認看護師・医師への情報提供

患者に対するレジメン説明投与内容・投与間隔使用薬剤 用法用量副作用(急性・遅発性)がん化学療法施行日(通常業務)

レジメン管理抗がん剤調製・監査検査データ確認薬歴作成

がん化学療法施行日(必要時のみ)がん化学療法施行後 退院まで服薬指導

抗がん剤内服薬アドヒアランス評価導入時の副作用モニタリング(特に嘔吐・疼痛コントロール)必要時医師へ処方依頼

レジメン変更時

副作用等で入院時

データベースによる一連の情報管理がん化学療法導入前

急性期の副作用評価検査データ確認退院前指導 副作用の注意点等説明抗がん剤内服薬 用法用量再確認

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座談会

広島大学病院 薬剤部長木平 健治 先生中国中央病院 薬剤部長原 景子 先生マツダ病院 薬剤部長西原 昌幸 先生JA広島総合病院 薬剤部長大田 博子 先生

[司会]

(発言順)

広島大学病院 薬剤部長

き  ひら  けん じ

木平 健治 先生(司会)

JA広島総合病院 薬剤部長

おお  た   ひろ  こ

大田 博子 先生マツダ病院 薬剤部長

にし はら  まさ ゆき

西原 昌幸 先生中国中央病院 薬剤部長

 はら    けい こ

原 景子 先生

特別号 広島県版

これからの病棟業務はいかにあるべきか~「病棟薬剤業務実施加算」創設がもたらすインパクト~

座談会

座談会

■各施設における病棟薬剤業務の現状木平 最初に、各施設における病棟業務の基本方針とこれまでの取り組みについて、原先生から順にお話しいただけますか。

原  中国中央病院は277床、薬剤師は定数15人ですが、現在は欠員があり12人です。病棟業務の基本的な方針として、薬剤師がいなければ患者さんが入院できないと言われる存在になることを目指しました。以前は服薬指導が必要であると看護師が判断した時だけ薬剤師が病棟に呼ばれていたのですが、薬がそこにあれば、まず薬剤師を呼ぼうと思ってもらえるようにすること、そのための体制を作ることが必要だと思いました。そこで、持参薬

への関与、注射薬の個人セット(注射カート)、退院時指導、抗がん剤無菌調製など少しずつ病棟業務を広げてきました。その結果、当院では4月から病棟薬剤業務実施加算を算定できる体制まで漕ぎ付けることができました(資料1)。

西原 マツダ病院は270床で薬剤師は18人、他に補助スタッフが3人います。この4月から病棟薬剤業務実施加算を算定していますが、私が着任した2004年当時は、病棟に薬剤師がいることが標準的ではありませんでした。服薬指導には行くのですが、指導したらすぐ薬剤部に戻ってきていました。そのころ薬剤部は厚生科学研究報告の与薬関連ヒヤリ・ハット事例報告率に着目しており、特に内服関連における当院との差を問題としていました。そ

こで薬剤師が配薬に関わる必要性を病院側に訴え、まず1病棟で配薬準備に参画することになりました。それが病棟業務拡大への第一歩になりました。配薬準備のプロセス改善のために「シックスシグマ」という品質管理の手法を用い、原因の特定や対策を行ってエラーを削減しました。さらに業務効率化のため配薬カートの導入を提案し、臨床現場に薬剤師が必要だという認識を院内で高めてきた経緯があります。

大田 JA広島総合病院は561床に対し薬剤師は30人います。ただし、当院は院外処方せんを発行していませんので、病棟業務に費やす時間はどうしても限られます。それに対して、他職種からの要望は年々増えてきている状況で、うれしい反面すべてに応えられないというジレンマもあります。当院では薬のセーフティマネジメントを最大のコンセプトとし、これまで薬剤管理指導件数を犠牲にしてでも、医師や看護師との協働業務を優先してきました。今回、病棟薬剤業務に該当する時間を計ったところ、算定要件の20時間に達していましたので、これまでの病棟での活動が評価されたように感じています。現在、病棟薬剤業務実施加算の算定のための準備中で、状況が整い次第開始する予定です。

木平 広島大学病院は746床で、薬剤師は56人です。当院では4月から病棟薬剤業務実施加算を算定しています。42国立大学病院の中で、4月に算定したのは広島大学病院だけです。私自身、ずっと薬剤師の病棟業務が診療報酬で評価されることを目標に業務を拡大してきて、やっと認められたのですから、「絶対に算定するぞ」と薬剤部員全員で取り組んできました。病棟業務の体制ですが、当院では17人の専任薬剤師が4つのグループを形成し、一般病棟では基本的に3~4フロアをそれぞれ3~4人で担当し、誰かが休んでもフォローできるようにしています。このほか専任として、救命センター・ICU・HCUに1人、手術室に1人います。NICU・GCUは小児病棟担当グループがカバーしています(資料2)。

■病棟薬剤業務実施加算算定のための 業務体制木平 各病院の現状をひと通りお聞きしましたが、病棟業務にしても外来にしても薬物療法が行われているところには必ず薬剤師が関与するということを基本にしていることは共通していますね。次は、病棟薬剤業務を実施するためのマンパワー確保や業務体制をどう進めてこられたのか、西原先生から話していただけますか。

西原 医療安全と医療従事者の業務削減に前向きに取り組んできたことが認められ、この2年で薬剤師は5人程増えています。薬剤部の業務体制は、15分単位のジョブローテーションで非常に細かく設定しています(資料3)。病棟業務については、5病棟に各1人の専任薬剤師を配置し、病棟薬剤業務を中心に1日5時間実施します。服薬指導業務などのサポート要員として、1病棟につきフォロー担当者を3人配置し、専任者が当直明けで不在でも、サブ担当者が対応できるように教育しています。この2年間、当院では加算を算定するのは当然という意気込みで病棟業務の拡充に邁進してきました。これからは、どのように業務の効率化を図るかが課題です。特にハイリスク薬の管理やモニタリングなどの標準化に取り組んでいきたいと思っています。

原 当院は1病棟2人の体制で、5病棟を10人でカバーしています。2人が交代で半日ずつ病棟業務を担当できるようにローテーションを組んでいるので、常に薬剤師が1人は病棟にいることになります。ただし残った人数で調剤をはじめさまざまな業務を行うことになりますから、決して楽ではありません。しかし、これまでやってきたことが評価された結果ですから、みんなで頑張ってやろうと前向きに取り組んでいます。病棟薬剤業務をするために薬剤管理指導件数が減ることがないように、業務内容を整理し

て効率化したり、ハイリスク薬管理のための業務フローを看護師と一緒に考えたりしてなんとかクリアできています。

大田 当院は西棟と東棟にそれぞれ6病棟ずつ、合計12病棟あります。2つの棟は連絡しており1フロアには各棟担当1人ずつとフォロー担当1人の計3人の薬剤師を配置しています。ただ、当院の場合、院内調剤を行っているため病棟活動時間が限られます。病棟薬剤師は少なくとも週1回は終日病棟にいますが、外来調剤を行わなければならない日は朝10時半頃から15時頃までは病棟に滞在することができませんので、その分残業して病棟業務を行っています。そこで、病棟業務を効率化し、外来調剤を行うメリットを生かす業務方法、つまり外来から入院まで切れ目なく薬剤師が関わるという方法をとっています。例えばがん化学療法を行う場合、初回は入院・外来を問わずがん化学療法担当者が患者さんに1時間近くかけて説明と服薬指導を行い、その内容は病棟薬剤師にも伝えます。休薬期間や抗がん剤の用量・支持療法などはがん化学療法担当者が管理しています(資料4)。外来患者さんの場合、指導料は算定できませんが、薬剤師としてやるべきことは入院・外来に関わらず行おうという方針です。

木平 病棟薬剤業務は、今までの薬剤管理指導にどれだけ上乗せした業務ができるかということを問われているのです。そのためには業務の効率化が必要ですから、当院でもさまざまな取り組みをしました。すべての病棟専任薬剤師に医療端末・PHSを配布し、薬剤管理指導システムに院内のどこからでもアクセス可能にしました。また、病棟薬剤業務日誌はできるだけ書式を簡略化し、本来の病棟薬剤業務に注力できるようにしています。当院の場合、病棟薬剤業務とされた業務については既に実施していたものがほとんどですが、それをさらに進化させ、継続させていくためには、人員の増加と薬剤師のレベルアップは不

可欠だと考えています。最終的には人材育成がこれからの病棟業務の質を左右すると認識しています。

■医師、看護師の負担軽減に貢献する 病棟業務木平 今回の病棟薬剤業務実施加算においては、医療従事者の負担軽減への貢献が強く求められています。その点についてはどのような取り組みをされていますか。

西原 当院では、看護師との協働による配薬準備業務を2005年から開始しており、現在は全病棟で配薬カートを用いた配薬準備を行っています。週に1回、薬剤部で薬剤師4人がかりで配薬カートに1週間分の薬をセットして病棟に上げます。実際にデータを取ったところ、52%の看護業務の削減につながっていました。また、整形外科病棟では薬剤師が定期処方日前、処方提案を指示箋という書式にまとめて行います。紙面上では看護師、医師と情報共有し「この患者さんは痛みが軽減しています」ということ等を追記し、医師の承認の下指示箋に基づき定期処方の入力支援を行っています。いまでは医師の負担も減り高い評価を受けています。

大田 当院の場合、以前は配薬カートのセットをほぼ全病棟で実施していたのですが、今は看護師にかなり任せるようになりました。というのも看護師から配合変化に関する問い合わせや、持参薬の情報提供を要求されるようになり、そちらへの対応に徐々にシフトしているためです。医師に対しては、電子カルテになったことで、薬剤師が医師よりも先にデータを確認することができるようになり、情報提供や処方提案がこれまで以上に容易になっています。当院は外来調剤を行っていますから、外来の

段階で持参薬を鑑別して電子カルテに保存します。手術目的の患者さんが麻酔科を受診する時には薬剤の内容が判別できますし、入院したら病棟薬剤師がその情報を元に服用薬の中止指示が守られているか、それ以外の服薬状況はどうかなどを把握し、必要があれば医師に提案しています。

原  当院も薬剤師ができることは何でもやろうと、いろいろなことに取り組んでいます。注射薬カートは看護師が分かりやすいように1患者1トレーでセットするほか、払い出しの時間もぎりぎりまで遅らせることで処方変更に薬剤師が対応し、看護師が交換する必要がないようにしました。ハイリスク薬については、投与後に注意すべき観察項目を一覧表にして看護師に提供しています。外来ではがん患者さんに対して薬剤師が問診して、内服抗がん剤や麻薬の評価、副作用モニタリングを行い、その情報を基に医者が診察をします。また、入院が決まった時点で薬剤師がお薬手帳などを確認して術前中止薬のチェックをしています。最近の傾向として、外来患者さんの指導を医師から依頼されるケースが増えており、インスリンや吸入薬の指導を行っています。

■病院経営に貢献する病棟薬剤業務とは木平 皆さんのお話を伺うと、処方の内容を薬剤師が精査し、薬剤の適正使用に積極的に取り組んでいらっしゃいます。医師の負担軽減はもちろんですが、それ以上に薬物療法の質の向上に貢献していると思います。では、病院経営への貢献という面ではいかがでしょうか。データ化しにくい部分だと思いますが、西原先生はどうお考えですか。

西原 薬に関するヒヤリハットがなかなか減らないという問題があるのですが、持参薬のチェックなど潜在効果として薬剤師が関与することで減らせるはずです。そういった安全への貢献をどう表現するかだと思います。

大田 以前は他科や地域の医療機関からの紹介患者さんの薬は、例えば手術目的で入院したらほとんどがDo処方であり、一律に1週間分の薬を処方していました。それを薬剤師がチェックして「これは3日分でいいですよ」とか「同種同効薬ですから必要ありません」などと提案できるようになったので、安全性の向上だけでなく、適正使用の推進につながりました。また、薬剤師が病棟の薬に関与するようになってから、薬剤部からのヒヤリハットが増えたのですが、それは、それまで看護師が見過ごしていたことも、薬剤師が見るとヒヤリハットだったという例があったためです。

木平 薬剤師により新たな視点で見ることができるということですね。医薬品の適正使用により、病院経営への貢献につながりますし、最終的には医療費の削減にもつながるということです。

■病院薬剤師としての展望と夢木平 最後に、皆さんの今後の展望や病院薬剤師としての夢について話していただきましょう。

原  最近、病院薬剤師になろうという人が減っています。「当直があるから嫌だ」とか、「土日は休みたい」という声も聞きます。しかし、医療には土日も祝日もありませんから、医師や看護師と同じように、薬剤師も一人の医療人として責任を果たすべきだと考えています。ですから、365日切れ目ない勤務体制が構築できたら、というのが目標です。私自身は、病院薬剤師という素晴らしい仕事をすることができ、幸せだったと思っています。後輩たちにも同じようにその幸せを味わってほしいというのが夢ですね。

大田 同感です。私は病棟に行き始めた最初の世代なのですが、病棟に行くと本当に楽しくて時間を忘れました。それが徐々に病棟業務がルーティン化するにつれて、若い薬剤師が楽しさを実感することが少なくなったように思います。医師からは「薬剤師に任せたら安心だ」と信頼されている実感はありますが、まだまだ薬剤師が主体的に関与できる薬物療法はたくさんあります。将来、薬剤師が処方の提案だけではなく、処方を決定するところまで専門性を評価されるようになれば、病院薬剤師としてのやりがいがさらに広がると思います。

西原 私の夢は「薬あるところに薬剤師あり」なのですが、まだまだ十分に関わりきれていません。重大な副作用のある薬について、病棟薬剤師が追跡し評価するところまでできておらず、今後、そこを変革していける若い人材を育成することが課題です。中期的には、薬剤師外来などで、医師の片腕になって処方支援ができる薬剤師を育てることを目標にしており、さらにその先には、大田先生がおっしゃるように、薬剤師が処方に責任を持つところまで信頼される時がくるのではないかと期待しています。

木平 ここ数年のチーム医療と多職種協働の流れの中で、薬剤師に対する医療スタッフの認識は大きく変わってきました。病棟の運営もチーム医療も、もはや薬剤師抜きでは考えられない状況になっています。そして今回、これまで多くの薬剤師が努力してきた結果が診療報酬として評価されたのです。しかし、まだまだ発展途上であり、むしろこれからが正念場です。そのことを各施設の共通認識として前進していかなければなりません。かじ取りをする薬剤部長は、しっかりとした方向性と将来への希望を明確に示さなければいけないと、皆さんとの話し合いを通じて痛感しました。本日は貴重なお話をありがとうございました。

 「薬剤管理指導業務」が診療報酬で点数化されてから24年。多くの薬剤師の努力により、薬物療法の質向上や医療従事者の負担軽減などにおける医療への貢献が認められ、2012年度の診療報酬改定で「病棟薬剤業務実施加算」が新設されました。本日の座談会には、広島県内でも先駆的に病棟業務に取り組んできた病院の薬剤部長にご参加いただきました。3施設は4月から病棟薬剤業務実施加算を申請しており、1施設も今年度中には申請の予定です。どのようにして病棟薬剤業務の体制を築いてこられたのか、また、どのような課題に直面されているのか、実践に基づいた貴重なお話を伺うことができると思います。本座談会を、広島県内の多くの施設の参考に供することができれば幸いです。

座談会開催にあたって [司会] 広島大学病院 薬剤部長 木平 健治 先生

病棟薬剤業務の内容(中国中央病院)資料1 病棟薬剤業務の体制(広島大学病院)資料2 1日の業務スケジュール(マツダ病院)資料3 入院から外来まで一貫した関わり(JA広島総合病院)資料4

●病棟薬剤業務実施加算(→特定入院費にふくまれるもの)半日:2時間(病棟管理)入院時 過去の投薬、注射、副作用歴等の聴取

→当院及び他院における投薬、注射の基礎的事項の把握→持参薬確認及び服薬計画の立案(継続、中止の確認)

入院中 相互作用(禁忌、重複)の有無確認ハイリスク薬の説明(プロトコールを含む)(投与前) →病棟担当者が薬をもってあがる。ハイリスク薬の流量、投与量の計算(投与前) →注射室でする?抗がん剤のレジメン作成TDM(処方設計)配合変化定期処方薬のチェック在庫確保抗がん剤、TPNのミキシング麻薬の管理(カンファレンスへの参加)

薬剤部長をのぞく常勤薬剤師17人分の1日の業務割り当て時間を各々15分単位で決めた「病棟薬剤業務担当一覧表」。

右端の数字は、個々の薬剤師の1日の病棟業務時間1:病棟業務 ●:注射・内服調剤業務 ○:外来窓口

広島大学病院 病棟薬剤業務について

〈4月1日より、病棟薬剤業務実施加算算定〉

●病棟配置(17人)743床 ■一般病棟:3グループ(4フロアーを4名が担当)※1人約50床を担当       1グループ(3フロアーを3名が担当) ■救命センター・ICU(26床)、HCU(10床):1名 ■手術室:1名 ■NICU(6床)・GCU:小児病棟担当グループ

●業務内容 ■病棟業務 ■調剤応援(週1回約2時間)、院内医療チーム ■院内の取り決め事項   ■代行オーダー(定数配置薬処方、薬物血中濃度測定)   ■持参薬取り扱いに関する体制整備(全入院患者の持参薬を確認)

病棟専任者

フォロー担当者

3F A(d)4F B(e)5F C(h)6F D(g)7F E(f)ope F調剤室1(a)調剤室2(b)調剤室3(c)調剤室4(d)調剤室5(e)調剤室6(f)調剤室7(g)調剤室8(h)調剤室9( i)調剤室10(j)  k

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5555554.254.54.54.53.54.754.53.754.54.53.5

薬剤師 8:15 8:30 8:45 9:00 9:15 9:30 9:45 10:00 10:15 16:15 16:30 16:45 合計時間16:00<がん化学療法業務における薬剤師の役割>

外来 入院

外来化学療法室 病棟活動がん化学療法施行前レジメン監査(前日までに制吐剤等支持療法の妥当性吟味検査データ確認・データベース作成(医師に検査依頼を行う場合あり)施行日の患者指導の必要の有無検討

施行時

レジメン妥当性吟味持参薬確認・薬歴作成検査データ確認 データベース作成(医師に検査依頼を行う場合あり)

がん化学療法施行中の注意点 当日再確認看護師・医師への情報提供

患者に対するレジメン説明投与内容・投与間隔使用薬剤 用法用量副作用(急性・遅発性)がん化学療法施行日(通常業務)

レジメン管理抗がん剤調製・監査検査データ確認薬歴作成

がん化学療法施行日(必要時のみ)がん化学療法施行後 退院まで服薬指導

抗がん剤内服薬アドヒアランス評価導入時の副作用モニタリング(特に嘔吐・疼痛コントロール)必要時医師へ処方依頼

レジメン変更時

副作用等で入院時

データベースによる一連の情報管理がん化学療法導入前

急性期の副作用評価検査データ確認退院前指導 副作用の注意点等説明抗がん剤内服薬 用法用量再確認

Page 3: これからの病棟業務は · 2013-03-18 · て効率化したり、ハイリスク薬管理のための業務フローを看護 師と一緒に考えたりしてなんとかクリアできています。

発行月 : 平成24年9月発 行 : 田辺三菱製薬株式会社    〒541-8505 大阪市中央区北浜2-6-18    お問い合せ先 : 営業推進部 06-6227-4666

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特別号 広島県版

特別号 広島県版

これからの病棟業務はいかにあるべきか~「病棟薬剤業務実施加算」創設がもたらすインパクト~

座談会

広島大学病院 薬剤部長木平 健治 先生中国中央病院 薬剤部長原 景子 先生マツダ病院 薬剤部長西原 昌幸 先生JA広島総合病院 薬剤部長大田 博子 先生

[司会]

(発言順)

広島大学病院 薬剤部長

き  ひら  けん じ

木平 健治 先生(司会)

JA広島総合病院 薬剤部長

おお  た   ひろ  こ

大田 博子 先生マツダ病院 薬剤部長

にし はら  まさ ゆき

西原 昌幸 先生中国中央病院 薬剤部長

 はら    けい こ

原 景子 先生

特別号 広島県版

これからの病棟業務はいかにあるべきか~「病棟薬剤業務実施加算」創設がもたらすインパクト~

座談会

座談会

■各施設における病棟薬剤業務の現状木平 最初に、各施設における病棟業務の基本方針とこれまでの取り組みについて、原先生から順にお話しいただけますか。

原  中国中央病院は277床、薬剤師は定数15人ですが、現在は欠員があり12人です。病棟業務の基本的な方針として、薬剤師がいなければ患者さんが入院できないと言われる存在になることを目指しました。以前は服薬指導が必要であると看護師が判断した時だけ薬剤師が病棟に呼ばれていたのですが、薬がそこにあれば、まず薬剤師を呼ぼうと思ってもらえるようにすること、そのための体制を作ることが必要だと思いました。そこで、持参薬

への関与、注射薬の個人セット(注射カート)、退院時指導、抗がん剤無菌調製など少しずつ病棟業務を広げてきました。その結果、当院では4月から病棟薬剤業務実施加算を算定できる体制まで漕ぎ付けることができました(資料1)。

西原 マツダ病院は270床で薬剤師は18人、他に補助スタッフが3人います。この4月から病棟薬剤業務実施加算を算定していますが、私が着任した2004年当時は、病棟に薬剤師がいることが標準的ではありませんでした。服薬指導には行くのですが、指導したらすぐ薬剤部に戻ってきていました。そのころ薬剤部は厚生科学研究報告の与薬関連ヒヤリ・ハット事例報告率に着目しており、特に内服関連における当院との差を問題としていました。そ

こで薬剤師が配薬に関わる必要性を病院側に訴え、まず1病棟で配薬準備に参画することになりました。それが病棟業務拡大への第一歩になりました。配薬準備のプロセス改善のために「シックスシグマ」という品質管理の手法を用い、原因の特定や対策を行ってエラーを削減しました。さらに業務効率化のため配薬カートの導入を提案し、臨床現場に薬剤師が必要だという認識を院内で高めてきた経緯があります。

大田 JA広島総合病院は561床に対し薬剤師は30人います。ただし、当院は院外処方せんを発行していませんので、病棟業務に費やす時間はどうしても限られます。それに対して、他職種からの要望は年々増えてきている状況で、うれしい反面すべてに応えられないというジレンマもあります。当院では薬のセーフティマネジメントを最大のコンセプトとし、これまで薬剤管理指導件数を犠牲にしてでも、医師や看護師との協働業務を優先してきました。今回、病棟薬剤業務に該当する時間を計ったところ、算定要件の20時間に達していましたので、これまでの病棟での活動が評価されたように感じています。現在、病棟薬剤業務実施加算の算定のための準備中で、状況が整い次第開始する予定です。

木平 広島大学病院は746床で、薬剤師は56人です。当院では4月から病棟薬剤業務実施加算を算定しています。42国立大学病院の中で、4月に算定したのは広島大学病院だけです。私自身、ずっと薬剤師の病棟業務が診療報酬で評価されることを目標に業務を拡大してきて、やっと認められたのですから、「絶対に算定するぞ」と薬剤部員全員で取り組んできました。病棟業務の体制ですが、当院では17人の専任薬剤師が4つのグループを形成し、一般病棟では基本的に3~4フロアをそれぞれ3~4人で担当し、誰かが休んでもフォローできるようにしています。このほか専任として、救命センター・ICU・HCUに1人、手術室に1人います。NICU・GCUは小児病棟担当グループがカバーしています(資料2)。

■病棟薬剤業務実施加算算定のための 業務体制木平 各病院の現状をひと通りお聞きしましたが、病棟業務にしても外来にしても薬物療法が行われているところには必ず薬剤師が関与するということを基本にしていることは共通していますね。次は、病棟薬剤業務を実施するためのマンパワー確保や業務体制をどう進めてこられたのか、西原先生から話していただけますか。

西原 医療安全と医療従事者の業務削減に前向きに取り組んできたことが認められ、この2年で薬剤師は5人程増えています。薬剤部の業務体制は、15分単位のジョブローテーションで非常に細かく設定しています(資料3)。病棟業務については、5病棟に各1人の専任薬剤師を配置し、病棟薬剤業務を中心に1日5時間実施します。服薬指導業務などのサポート要員として、1病棟につきフォロー担当者を3人配置し、専任者が当直明けで不在でも、サブ担当者が対応できるように教育しています。この2年間、当院では加算を算定するのは当然という意気込みで病棟業務の拡充に邁進してきました。これからは、どのように業務の効率化を図るかが課題です。特にハイリスク薬の管理やモニタリングなどの標準化に取り組んでいきたいと思っています。

原 当院は1病棟2人の体制で、5病棟を10人でカバーしています。2人が交代で半日ずつ病棟業務を担当できるようにローテーションを組んでいるので、常に薬剤師が1人は病棟にいることになります。ただし残った人数で調剤をはじめさまざまな業務を行うことになりますから、決して楽ではありません。しかし、これまでやってきたことが評価された結果ですから、みんなで頑張ってやろうと前向きに取り組んでいます。病棟薬剤業務をするために薬剤管理指導件数が減ることがないように、業務内容を整理し

て効率化したり、ハイリスク薬管理のための業務フローを看護師と一緒に考えたりしてなんとかクリアできています。

大田 当院は西棟と東棟にそれぞれ6病棟ずつ、合計12病棟あります。2つの棟は連絡しており1フロアには各棟担当1人ずつとフォロー担当1人の計3人の薬剤師を配置しています。ただ、当院の場合、院内調剤を行っているため病棟活動時間が限られます。病棟薬剤師は少なくとも週1回は終日病棟にいますが、外来調剤を行わなければならない日は朝10時半頃から15時頃までは病棟に滞在することができませんので、その分残業して病棟業務を行っています。そこで、病棟業務を効率化し、外来調剤を行うメリットを生かす業務方法、つまり外来から入院まで切れ目なく薬剤師が関わるという方法をとっています。例えばがん化学療法を行う場合、初回は入院・外来を問わずがん化学療法担当者が患者さんに1時間近くかけて説明と服薬指導を行い、その内容は病棟薬剤師にも伝えます。休薬期間や抗がん剤の用量・支持療法などはがん化学療法担当者が管理しています(資料4)。外来患者さんの場合、指導料は算定できませんが、薬剤師としてやるべきことは入院・外来に関わらず行おうという方針です。

木平 病棟薬剤業務は、今までの薬剤管理指導にどれだけ上乗せした業務ができるかということを問われているのです。そのためには業務の効率化が必要ですから、当院でもさまざまな取り組みをしました。すべての病棟専任薬剤師に医療端末・PHSを配布し、薬剤管理指導システムに院内のどこからでもアクセス可能にしました。また、病棟薬剤業務日誌はできるだけ書式を簡略化し、本来の病棟薬剤業務に注力できるようにしています。当院の場合、病棟薬剤業務とされた業務については既に実施していたものがほとんどですが、それをさらに進化させ、継続させていくためには、人員の増加と薬剤師のレベルアップは不

可欠だと考えています。最終的には人材育成がこれからの病棟業務の質を左右すると認識しています。

■医師、看護師の負担軽減に貢献する 病棟業務木平 今回の病棟薬剤業務実施加算においては、医療従事者の負担軽減への貢献が強く求められています。その点についてはどのような取り組みをされていますか。

西原 当院では、看護師との協働による配薬準備業務を2005年から開始しており、現在は全病棟で配薬カートを用いた配薬準備を行っています。週に1回、薬剤部で薬剤師4人がかりで配薬カートに1週間分の薬をセットして病棟に上げます。実際にデータを取ったところ、52%の看護業務の削減につながっていました。また、整形外科病棟では薬剤師が定期処方日前、処方提案を指示箋という書式にまとめて行います。紙面上では看護師、医師と情報共有し「この患者さんは痛みが軽減しています」ということ等を追記し、医師の承認の下指示箋に基づき定期処方の入力支援を行っています。いまでは医師の負担も減り高い評価を受けています。

大田 当院の場合、以前は配薬カートのセットをほぼ全病棟で実施していたのですが、今は看護師にかなり任せるようになりました。というのも看護師から配合変化に関する問い合わせや、持参薬の情報提供を要求されるようになり、そちらへの対応に徐々にシフトしているためです。医師に対しては、電子カルテになったことで、薬剤師が医師よりも先にデータを確認することができるようになり、情報提供や処方提案がこれまで以上に容易になっています。当院は外来調剤を行っていますから、外来の

段階で持参薬を鑑別して電子カルテに保存します。手術目的の患者さんが麻酔科を受診する時には薬剤の内容が判別できますし、入院したら病棟薬剤師がその情報を元に服用薬の中止指示が守られているか、それ以外の服薬状況はどうかなどを把握し、必要があれば医師に提案しています。

原  当院も薬剤師ができることは何でもやろうと、いろいろなことに取り組んでいます。注射薬カートは看護師が分かりやすいように1患者1トレーでセットするほか、払い出しの時間もぎりぎりまで遅らせることで処方変更に薬剤師が対応し、看護師が交換する必要がないようにしました。ハイリスク薬については、投与後に注意すべき観察項目を一覧表にして看護師に提供しています。外来ではがん患者さんに対して薬剤師が問診して、内服抗がん剤や麻薬の評価、副作用モニタリングを行い、その情報を基に医者が診察をします。また、入院が決まった時点で薬剤師がお薬手帳などを確認して術前中止薬のチェックをしています。最近の傾向として、外来患者さんの指導を医師から依頼されるケースが増えており、インスリンや吸入薬の指導を行っています。

■病院経営に貢献する病棟薬剤業務とは木平 皆さんのお話を伺うと、処方の内容を薬剤師が精査し、薬剤の適正使用に積極的に取り組んでいらっしゃいます。医師の負担軽減はもちろんですが、それ以上に薬物療法の質の向上に貢献していると思います。では、病院経営への貢献という面ではいかがでしょうか。データ化しにくい部分だと思いますが、西原先生はどうお考えですか。

西原 薬に関するヒヤリハットがなかなか減らないという問題があるのですが、持参薬のチェックなど潜在効果として薬剤師が関与することで減らせるはずです。そういった安全への貢献をどう表現するかだと思います。

大田 以前は他科や地域の医療機関からの紹介患者さんの薬は、例えば手術目的で入院したらほとんどがDo処方であり、一律に1週間分の薬を処方していました。それを薬剤師がチェックして「これは3日分でいいですよ」とか「同種同効薬ですから必要ありません」などと提案できるようになったので、安全性の向上だけでなく、適正使用の推進につながりました。また、薬剤師が病棟の薬に関与するようになってから、薬剤部からのヒヤリハットが増えたのですが、それは、それまで看護師が見過ごしていたことも、薬剤師が見るとヒヤリハットだったという例があったためです。

木平 薬剤師により新たな視点で見ることができるということですね。医薬品の適正使用により、病院経営への貢献につながりますし、最終的には医療費の削減にもつながるということです。

■病院薬剤師としての展望と夢木平 最後に、皆さんの今後の展望や病院薬剤師としての夢について話していただきましょう。

原  最近、病院薬剤師になろうという人が減っています。「当直があるから嫌だ」とか、「土日は休みたい」という声も聞きます。しかし、医療には土日も祝日もありませんから、医師や看護師と同じように、薬剤師も一人の医療人として責任を果たすべきだと考えています。ですから、365日切れ目ない勤務体制が構築できたら、というのが目標です。私自身は、病院薬剤師という素晴らしい仕事をすることができ、幸せだったと思っています。後輩たちにも同じようにその幸せを味わってほしいというのが夢ですね。

大田 同感です。私は病棟に行き始めた最初の世代なのですが、病棟に行くと本当に楽しくて時間を忘れました。それが徐々に病棟業務がルーティン化するにつれて、若い薬剤師が楽しさを実感することが少なくなったように思います。医師からは「薬剤師に任せたら安心だ」と信頼されている実感はありますが、まだまだ薬剤師が主体的に関与できる薬物療法はたくさんあります。将来、薬剤師が処方の提案だけではなく、処方を決定するところまで専門性を評価されるようになれば、病院薬剤師としてのやりがいがさらに広がると思います。

西原 私の夢は「薬あるところに薬剤師あり」なのですが、まだまだ十分に関わりきれていません。重大な副作用のある薬について、病棟薬剤師が追跡し評価するところまでできておらず、今後、そこを変革していける若い人材を育成することが課題です。中期的には、薬剤師外来などで、医師の片腕になって処方支援ができる薬剤師を育てることを目標にしており、さらにその先には、大田先生がおっしゃるように、薬剤師が処方に責任を持つところまで信頼される時がくるのではないかと期待しています。

木平 ここ数年のチーム医療と多職種協働の流れの中で、薬剤師に対する医療スタッフの認識は大きく変わってきました。病棟の運営もチーム医療も、もはや薬剤師抜きでは考えられない状況になっています。そして今回、これまで多くの薬剤師が努力してきた結果が診療報酬として評価されたのです。しかし、まだまだ発展途上であり、むしろこれからが正念場です。そのことを各施設の共通認識として前進していかなければなりません。かじ取りをする薬剤部長は、しっかりとした方向性と将来への希望を明確に示さなければいけないと、皆さんとの話し合いを通じて痛感しました。本日は貴重なお話をありがとうございました。

 「薬剤管理指導業務」が診療報酬で点数化されてから24年。多くの薬剤師の努力により、薬物療法の質向上や医療従事者の負担軽減などにおける医療への貢献が認められ、2012年度の診療報酬改定で「病棟薬剤業務実施加算」が新設されました。本日の座談会には、広島県内でも先駆的に病棟業務に取り組んできた病院の薬剤部長にご参加いただきました。3施設は4月から病棟薬剤業務実施加算を申請しており、1施設も今年度中には申請の予定です。どのようにして病棟薬剤業務の体制を築いてこられたのか、また、どのような課題に直面されているのか、実践に基づいた貴重なお話を伺うことができると思います。本座談会を、広島県内の多くの施設の参考に供することができれば幸いです。

座談会開催にあたって [司会] 広島大学病院 薬剤部長 木平 健治 先生

病棟薬剤業務の内容(中国中央病院)資料1 病棟薬剤業務の体制(広島大学病院)資料2 1日の業務スケジュール(マツダ病院)資料3 入院から外来まで一貫した関わり(JA広島総合病院)資料4

●病棟薬剤業務実施加算(→特定入院費にふくまれるもの)半日:2時間(病棟管理)入院時 過去の投薬、注射、副作用歴等の聴取

→当院及び他院における投薬、注射の基礎的事項の把握→持参薬確認及び服薬計画の立案(継続、中止の確認)

入院中 相互作用(禁忌、重複)の有無確認ハイリスク薬の説明(プロトコールを含む)(投与前) →病棟担当者が薬をもってあがる。ハイリスク薬の流量、投与量の計算(投与前) →注射室でする?抗がん剤のレジメン作成TDM(処方設計)配合変化定期処方薬のチェック在庫確保抗がん剤、TPNのミキシング麻薬の管理(カンファレンスへの参加)

薬剤部長をのぞく常勤薬剤師17人分の1日の業務割り当て時間を各々15分単位で決めた「病棟薬剤業務担当一覧表」。

右端の数字は、個々の薬剤師の1日の病棟業務時間1:病棟業務 ●:注射・内服調剤業務 ○:外来窓口

広島大学病院 病棟薬剤業務について

〈4月1日より、病棟薬剤業務実施加算算定〉

●病棟配置(17人)743床 ■一般病棟:3グループ(4フロアーを4名が担当)※1人約50床を担当       1グループ(3フロアーを3名が担当) ■救命センター・ICU(26床)、HCU(10床):1名 ■手術室:1名 ■NICU(6床)・GCU:小児病棟担当グループ

●業務内容 ■病棟業務 ■調剤応援(週1回約2時間)、院内医療チーム ■院内の取り決め事項   ■代行オーダー(定数配置薬処方、薬物血中濃度測定)   ■持参薬取り扱いに関する体制整備(全入院患者の持参薬を確認)

病棟専任者

フォロー担当者

3F A(d)4F B(e)5F C(h)6F D(g)7F E(f)ope F調剤室1(a)調剤室2(b)調剤室3(c)調剤室4(d)調剤室5(e)調剤室6(f)調剤室7(g)調剤室8(h)調剤室9( i)調剤室10(j)  k

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薬剤師 8:15 8:30 8:45 9:00 9:15 9:30 9:45 10:00 10:15 16:15 16:30 16:45 合計時間16:00<がん化学療法業務における薬剤師の役割>

外来 入院

外来化学療法室 病棟活動がん化学療法施行前レジメン監査(前日までに制吐剤等支持療法の妥当性吟味検査データ確認・データベース作成(医師に検査依頼を行う場合あり)施行日の患者指導の必要の有無検討

施行時

レジメン妥当性吟味持参薬確認・薬歴作成検査データ確認 データベース作成(医師に検査依頼を行う場合あり)

がん化学療法施行中の注意点 当日再確認看護師・医師への情報提供

患者に対するレジメン説明投与内容・投与間隔使用薬剤 用法用量副作用(急性・遅発性)がん化学療法施行日(通常業務)

レジメン管理抗がん剤調製・監査検査データ確認薬歴作成

がん化学療法施行日(必要時のみ)がん化学療法施行後 退院まで服薬指導

抗がん剤内服薬アドヒアランス評価導入時の副作用モニタリング(特に嘔吐・疼痛コントロール)必要時医師へ処方依頼

レジメン変更時

副作用等で入院時

データベースによる一連の情報管理がん化学療法導入前

急性期の副作用評価検査データ確認退院前指導 副作用の注意点等説明抗がん剤内服薬 用法用量再確認

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発行月 : 平成24年9月発 行 : 田辺三菱製薬株式会社    〒541-8505 大阪市中央区北浜2-6-18    お問い合せ先 : 営業推進部 06-6227-4666

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特別号 広島県版

特別号 広島県版

これからの病棟業務はいかにあるべきか~「病棟薬剤業務実施加算」創設がもたらすインパクト~

座 談会

広島大学病院 薬剤部長木平 健治 先生中国中央病院 薬剤部長原 景子 先生マツダ病院 薬剤部長西原 昌幸 先生JA広島総合病院 薬剤部長大田 博子 先生

[司会]

(発言順)

広島大学病院 薬剤部長

き  ひら  けん じ

木平 健治 先生(司会)

JA広島総合病院 薬剤部長

おお  た   ひろ  こ

大田 博子 先生マツダ病院 薬剤部長

にし はら  まさ ゆき

西原 昌幸 先生中国中央病院 薬剤部長

 はら    けい こ

原 景子 先生

特別号 広島県版

これからの病棟業務はいかにあるべきか~「病棟薬剤業務実施加算」創設がもたらすインパクト~

座談会

座談会

■各施設における病棟薬剤業務の現状木平 最初に、各施設における病棟業務の基本方針とこれまでの取り組みについて、原先生から順にお話しいただけますか。

原  中国中央病院は277床、薬剤師は定数15人ですが、現在は欠員があり12人です。病棟業務の基本的な方針として、薬剤師がいなければ患者さんが入院できないと言われる存在になることを目指しました。以前は服薬指導が必要であると看護師が判断した時だけ薬剤師が病棟に呼ばれていたのですが、薬がそこにあれば、まず薬剤師を呼ぼうと思ってもらえるようにすること、そのための体制を作ることが必要だと思いました。そこで、持参薬

への関与、注射薬の個人セット(注射カート)、退院時指導、抗がん剤無菌調製など少しずつ病棟業務を広げてきました。その結果、当院では4月から病棟薬剤業務実施加算を算定できる体制まで漕ぎ付けることができました(資料1)。

西原 マツダ病院は270床で薬剤師は18人、他に補助スタッフが3人います。この4月から病棟薬剤業務実施加算を算定していますが、私が着任した2004年当時は、病棟に薬剤師がいることが標準的ではありませんでした。服薬指導には行くのですが、指導したらすぐ薬剤部に戻ってきていました。そのころ薬剤部は厚生科学研究報告の与薬関連ヒヤリ・ハット事例報告率に着目しており、特に内服関連における当院との差を問題としていました。そ

こで薬剤師が配薬に関わる必要性を病院側に訴え、まず1病棟で配薬準備に参画することになりました。それが病棟業務拡大への第一歩になりました。配薬準備のプロセス改善のために「シックスシグマ」という品質管理の手法を用い、原因の特定や対策を行ってエラーを削減しました。さらに業務効率化のため配薬カートの導入を提案し、臨床現場に薬剤師が必要だという認識を院内で高めてきた経緯があります。

大田 JA広島総合病院は561床に対し薬剤師は30人います。ただし、当院は院外処方せんを発行していませんので、病棟業務に費やす時間はどうしても限られます。それに対して、他職種からの要望は年々増えてきている状況で、うれしい反面すべてに応えられないというジレンマもあります。当院では薬のセーフティマネジメントを最大のコンセプトとし、これまで薬剤管理指導件数を犠牲にしてでも、医師や看護師との協働業務を優先してきました。今回、病棟薬剤業務に該当する時間を計ったところ、算定要件の20時間に達していましたので、これまでの病棟での活動が評価されたように感じています。現在、病棟薬剤業務実施加算の算定のための準備中で、状況が整い次第開始する予定です。

木平 広島大学病院は746床で、薬剤師は56人です。当院では4月から病棟薬剤業務実施加算を算定しています。42国立大学病院の中で、4月に算定したのは広島大学病院だけです。私自身、ずっと薬剤師の病棟業務が診療報酬で評価されることを目標に業務を拡大してきて、やっと認められたのですから、「絶対に算定するぞ」と薬剤部員全員で取り組んできました。病棟業務の体制ですが、当院では17人の専任薬剤師が4つのグループを形成し、一般病棟では基本的に3~4フロアをそれぞれ3~4人で担当し、誰かが休んでもフォローできるようにしています。このほか専任として、救命センター・ICU・HCUに1人、手術室に1人います。NICU・GCUは小児病棟担当グループがカバーしています(資料2)。

■病棟薬剤業務実施加算算定のための 業務体制木平 各病院の現状をひと通りお聞きしましたが、病棟業務にしても外来にしても薬物療法が行われているところには必ず薬剤師が関与するということを基本にしていることは共通していますね。次は、病棟薬剤業務を実施するためのマンパワー確保や業務体制をどう進めてこられたのか、西原先生から話していただけますか。

西原 医療安全と医療従事者の業務削減に前向きに取り組んできたことが認められ、この2年で薬剤師は5人程増えています。薬剤部の業務体制は、15分単位のジョブローテーションで非常に細かく設定しています(資料3)。病棟業務については、5病棟に各1人の専任薬剤師を配置し、病棟薬剤業務を中心に1日5時間実施します。服薬指導業務などのサポート要員として、1病棟につきフォロー担当者を3人配置し、専任者が当直明けで不在でも、サブ担当者が対応できるように教育しています。この2年間、当院では加算を算定するのは当然という意気込みで病棟業務の拡充に邁進してきました。これからは、どのように業務の効率化を図るかが課題です。特にハイリスク薬の管理やモニタリングなどの標準化に取り組んでいきたいと思っています。

原 当院は1病棟2人の体制で、5病棟を10人でカバーしています。2人が交代で半日ずつ病棟業務を担当できるようにローテーションを組んでいるので、常に薬剤師が1人は病棟にいることになります。ただし残った人数で調剤をはじめさまざまな業務を行うことになりますから、決して楽ではありません。しかし、これまでやってきたことが評価された結果ですから、みんなで頑張ってやろうと前向きに取り組んでいます。病棟薬剤業務をするために薬剤管理指導件数が減ることがないように、業務内容を整理し

て効率化したり、ハイリスク薬管理のための業務フローを看護師と一緒に考えたりしてなんとかクリアできています。

大田 当院は西棟と東棟にそれぞれ6病棟ずつ、合計12病棟あります。2つの棟は連絡しており1フロアには各棟担当1人ずつとフォロー担当1人の計3人の薬剤師を配置しています。ただ、当院の場合、院内調剤を行っているため病棟活動時間が限られます。病棟薬剤師は少なくとも週1回は終日病棟にいますが、外来調剤を行わなければならない日は朝10時半頃から15時頃までは病棟に滞在することができませんので、その分残業して病棟業務を行っています。そこで、病棟業務を効率化し、外来調剤を行うメリットを生かす業務方法、つまり外来から入院まで切れ目なく薬剤師が関わるという方法をとっています。例えばがん化学療法を行う場合、初回は入院・外来を問わずがん化学療法担当者が患者さんに1時間近くかけて説明と服薬指導を行い、その内容は病棟薬剤師にも伝えます。休薬期間や抗がん剤の用量・支持療法などはがん化学療法担当者が管理しています(資料4)。外来患者さんの場合、指導料は算定できませんが、薬剤師としてやるべきことは入院・外来に関わらず行おうという方針です。

木平 病棟薬剤業務は、今までの薬剤管理指導にどれだけ上乗せした業務ができるかということを問われているのです。そのためには業務の効率化が必要ですから、当院でもさまざまな取り組みをしました。すべての病棟専任薬剤師に医療端末・PHSを配布し、薬剤管理指導システムに院内のどこからでもアクセス可能にしました。また、病棟薬剤業務日誌はできるだけ書式を簡略化し、本来の病棟薬剤業務に注力できるようにしています。当院の場合、病棟薬剤業務とされた業務については既に実施していたものがほとんどですが、それをさらに進化させ、継続させていくためには、人員の増加と薬剤師のレベルアップは不

可欠だと考えています。最終的には人材育成がこれからの病棟業務の質を左右すると認識しています。

■医師、看護師の負担軽減に貢献する 病棟業務木平 今回の病棟薬剤業務実施加算においては、医療従事者の負担軽減への貢献が強く求められています。その点についてはどのような取り組みをされていますか。

西原 当院では、看護師との協働による配薬準備業務を2005年から開始しており、現在は全病棟で配薬カートを用いた配薬準備を行っています。週に1回、薬剤部で薬剤師4人がかりで配薬カートに1週間分の薬をセットして病棟に上げます。実際にデータを取ったところ、52%の看護業務の削減につながっていました。また、整形外科病棟では薬剤師が定期処方日前、処方提案を指示箋という書式にまとめて行います。紙面上では看護師、医師と情報共有し「この患者さんは痛みが軽減しています」ということ等を追記し、医師の承認の下指示箋に基づき定期処方の入力支援を行っています。いまでは医師の負担も減り高い評価を受けています。

大田 当院の場合、以前は配薬カートのセットをほぼ全病棟で実施していたのですが、今は看護師にかなり任せるようになりました。というのも看護師から配合変化に関する問い合わせや、持参薬の情報提供を要求されるようになり、そちらへの対応に徐々にシフトしているためです。医師に対しては、電子カルテになったことで、薬剤師が医師よりも先にデータを確認することができるようになり、情報提供や処方提案がこれまで以上に容易になっています。当院は外来調剤を行っていますから、外来の

段階で持参薬を鑑別して電子カルテに保存します。手術目的の患者さんが麻酔科を受診する時には薬剤の内容が判別できますし、入院したら病棟薬剤師がその情報を元に服用薬の中止指示が守られているか、それ以外の服薬状況はどうかなどを把握し、必要があれば医師に提案しています。

原  当院も薬剤師ができることは何でもやろうと、いろいろなことに取り組んでいます。注射薬カートは看護師が分かりやすいように1患者1トレーでセットするほか、払い出しの時間もぎりぎりまで遅らせることで処方変更に薬剤師が対応し、看護師が交換する必要がないようにしました。ハイリスク薬については、投与後に注意すべき観察項目を一覧表にして看護師に提供しています。外来ではがん患者さんに対して薬剤師が問診して、内服抗がん剤や麻薬の評価、副作用モニタリングを行い、その情報を基に医者が診察をします。また、入院が決まった時点で薬剤師がお薬手帳などを確認して術前中止薬のチェックをしています。最近の傾向として、外来患者さんの指導を医師から依頼されるケースが増えており、インスリンや吸入薬の指導を行っています。

■病院経営に貢献する病棟薬剤業務とは木平 皆さんのお話を伺うと、処方の内容を薬剤師が精査し、薬剤の適正使用に積極的に取り組んでいらっしゃいます。医師の負担軽減はもちろんですが、それ以上に薬物療法の質の向上に貢献していると思います。では、病院経営への貢献という面ではいかがでしょうか。データ化しにくい部分だと思いますが、西原先生はどうお考えですか。

西原 薬に関するヒヤリハットがなかなか減らないという問題があるのですが、持参薬のチェックなど潜在効果として薬剤師が関与することで減らせるはずです。そういった安全への貢献をどう表現するかだと思います。

大田 以前は他科や地域の医療機関からの紹介患者さんの薬は、例えば手術目的で入院したらほとんどがDo処方であり、一律に1週間分の薬を処方していました。それを薬剤師がチェックして「これは3日分でいいですよ」とか「同種同効薬ですから必要ありません」などと提案できるようになったので、安全性の向上だけでなく、適正使用の推進につながりました。また、薬剤師が病棟の薬に関与するようになってから、薬剤部からのヒヤリハットが増えたのですが、それは、それまで看護師が見過ごしていたことも、薬剤師が見るとヒヤリハットだったという例があったためです。

木平 薬剤師により新たな視点で見ることができるということですね。医薬品の適正使用により、病院経営への貢献につながりますし、最終的には医療費の削減にもつながるということです。

■病院薬剤師としての展望と夢木平 最後に、皆さんの今後の展望や病院薬剤師としての夢について話していただきましょう。

原  最近、病院薬剤師になろうという人が減っています。「当直があるから嫌だ」とか、「土日は休みたい」という声も聞きます。しかし、医療には土日も祝日もありませんから、医師や看護師と同じように、薬剤師も一人の医療人として責任を果たすべきだと考えています。ですから、365日切れ目ない勤務体制が構築できたら、というのが目標です。私自身は、病院薬剤師という素晴らしい仕事をすることができ、幸せだったと思っています。後輩たちにも同じようにその幸せを味わってほしいというのが夢ですね。

大田 同感です。私は病棟に行き始めた最初の世代なのですが、病棟に行くと本当に楽しくて時間を忘れました。それが徐々に病棟業務がルーティン化するにつれて、若い薬剤師が楽しさを実感することが少なくなったように思います。医師からは「薬剤師に任せたら安心だ」と信頼されている実感はありますが、まだまだ薬剤師が主体的に関与できる薬物療法はたくさんあります。将来、薬剤師が処方の提案だけではなく、処方を決定するところまで専門性を評価されるようになれば、病院薬剤師としてのやりがいがさらに広がると思います。

西原 私の夢は「薬あるところに薬剤師あり」なのですが、まだまだ十分に関わりきれていません。重大な副作用のある薬について、病棟薬剤師が追跡し評価するところまでできておらず、今後、そこを変革していける若い人材を育成することが課題です。中期的には、薬剤師外来などで、医師の片腕になって処方支援ができる薬剤師を育てることを目標にしており、さらにその先には、大田先生がおっしゃるように、薬剤師が処方に責任を持つところまで信頼される時がくるのではないかと期待しています。

木平 ここ数年のチーム医療と多職種協働の流れの中で、薬剤師に対する医療スタッフの認識は大きく変わってきました。病棟の運営もチーム医療も、もはや薬剤師抜きでは考えられない状況になっています。そして今回、これまで多くの薬剤師が努力してきた結果が診療報酬として評価されたのです。しかし、まだまだ発展途上であり、むしろこれからが正念場です。そのことを各施設の共通認識として前進していかなければなりません。かじ取りをする薬剤部長は、しっかりとした方向性と将来への希望を明確に示さなければいけないと、皆さんとの話し合いを通じて痛感しました。本日は貴重なお話をありがとうございました。

 「薬剤管理指導業務」が診療報酬で点数化されてから24年。多くの薬剤師の努力により、薬物療法の質向上や医療従事者の負担軽減などにおける医療への貢献が認められ、2012年度の診療報酬改定で「病棟薬剤業務実施加算」が新設されました。本日の座談会には、広島県内でも先駆的に病棟業務に取り組んできた病院の薬剤部長にご参加いただきました。3施設は4月から病棟薬剤業務実施加算を申請しており、1施設も今年度中には申請の予定です。どのようにして病棟薬剤業務の体制を築いてこられたのか、また、どのような課題に直面されているのか、実践に基づいた貴重なお話を伺うことができると思います。本座談会を、広島県内の多くの施設の参考に供することができれば幸いです。

座談会開催にあたって [司会] 広島大学病院 薬剤部長 木平 健治 先生

病棟薬剤業務の内容(中国中央病院)資料1 病棟薬剤業務の体制(広島大学病院)資料2 1日の業務スケジュール(マツダ病院)資料3 入院から外来まで一貫した関わり(JA広島総合病院)資料4

●病棟薬剤業務実施加算(→特定入院費にふくまれるもの)半日:2時間(病棟管理)入院時 過去の投薬、注射、副作用歴等の聴取

→当院及び他院における投薬、注射の基礎的事項の把握→持参薬確認及び服薬計画の立案(継続、中止の確認)

入院中 相互作用(禁忌、重複)の有無確認ハイリスク薬の説明(プロトコールを含む)(投与前) →病棟担当者が薬をもってあがる。ハイリスク薬の流量、投与量の計算(投与前) →注射室でする?抗がん剤のレジメン作成TDM(処方設計)配合変化定期処方薬のチェック在庫確保抗がん剤、TPNのミキシング麻薬の管理(カンファレンスへの参加)

薬剤部長をのぞく常勤薬剤師17人分の1日の業務割り当て時間を各々15分単位で決めた「病棟薬剤業務担当一覧表」。

右端の数字は、個々の薬剤師の1日の病棟業務時間1:病棟業務 ●:注射・内服調剤業務 ○:外来窓口

広島大学病院 病棟薬剤業務について

〈4月1日より、病棟薬剤業務実施加算算定〉

●病棟配置(17人)743床 ■一般病棟:3グループ(4フロアーを4名が担当)※1人約50床を担当       1グループ(3フロアーを3名が担当) ■救命センター・ICU(26床)、HCU(10床):1名 ■手術室:1名 ■NICU(6床)・GCU:小児病棟担当グループ

●業務内容 ■病棟業務 ■調剤応援(週1回約2時間)、院内医療チーム ■院内の取り決め事項   ■代行オーダー(定数配置薬処方、薬物血中濃度測定)   ■持参薬取り扱いに関する体制整備(全入院患者の持参薬を確認)

病棟専任者

フォロー担当者

3F A(d)4F B(e)5F C(h)6F D(g)7F E(f)ope F調剤室1(a)調剤室2(b)調剤室3(c)調剤室4(d)調剤室5(e)調剤室6(f)調剤室7(g)調剤室8(h)調剤室9( i)調剤室10(j)  k

111111○1111111111

111111○●●●●●●●●●●

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111111111●○●1●1●●

111111111●○●1●1●●

5555554.254.54.54.53.54.754.53.754.54.53.5

薬剤師 8:15 8:30 8:45 9:00 9:15 9:30 9:45 10:00 10:15 16:15 16:30 16:45 合計時間16:00<がん化学療法業務における薬剤師の役割>

外来 入院

外来化学療法室 病棟活動がん化学療法施行前レジメン監査(前日までに制吐剤等支持療法の妥当性吟味検査データ確認・データベース作成(医師に検査依頼を行う場合あり)施行日の患者指導の必要の有無検討

施行時

レジメン妥当性吟味持参薬確認・薬歴作成検査データ確認 データベース作成(医師に検査依頼を行う場合あり)

がん化学療法施行中の注意点 当日再確認看護師・医師への情報提供

患者に対するレジメン説明投与内容・投与間隔使用薬剤 用法用量副作用(急性・遅発性)がん化学療法施行日(通常業務)

レジメン管理抗がん剤調製・監査検査データ確認薬歴作成

がん化学療法施行日(必要時のみ)がん化学療法施行後 退院まで服薬指導

抗がん剤内服薬アドヒアランス評価導入時の副作用モニタリング(特に嘔吐・疼痛コントロール)必要時医師へ処方依頼

レジメン変更時

副作用等で入院時

データベースによる一連の情報管理がん化学療法導入前

急性期の副作用評価検査データ確認退院前指導 副作用の注意点等説明抗がん剤内服薬 用法用量再確認

Page 5: これからの病棟業務は · 2013-03-18 · て効率化したり、ハイリスク薬管理のための業務フローを看護 師と一緒に考えたりしてなんとかクリアできています。

発行月 : 平成24年9月発 行 : 田辺三菱製薬株式会社    〒541-8505 大阪市中央区北浜2-6-18    お問い合せ先 : 営業推進部 06-6227-4666

田辺三菱製薬株式会社ホームページ http://www.mt-pharma.co.jp

ファーマスコープは病院、保険薬局で輝く薬剤師の声をお届けする情報誌です。

特別号 広島県版

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これからの病棟業務はいかにあるべきか~「病棟薬剤業務実施加算」創設がもたらすインパクト~

座談会

広島大学病院 薬剤部長木平 健治 先生中国中央病院 薬剤部長原 景子 先生マツダ病院 薬剤部長西原 昌幸 先生JA広島総合病院 薬剤部長大田 博子 先生

[司会]

(発言順)

広島大学病院 薬剤部長

き  ひら  けん じ

木平 健治 先生(司会)

JA広島総合病院 薬剤部長

おお  た   ひろ  こ

大田 博子 先生マツダ病院 薬剤部長

にし はら  まさ ゆき

西原 昌幸 先生中国中央病院 薬剤部長

 はら    けい こ

原 景子 先生

特別号 広島県版

これからの病棟業務はいかにあるべきか~「病棟薬剤業務実施加算」創設がもたらすインパクト~

座談会

座談会

■各施設における病棟薬剤業務の現状木平 最初に、各施設における病棟業務の基本方針とこれまでの取り組みについて、原先生から順にお話しいただけますか。

原  中国中央病院は277床、薬剤師は定数15人ですが、現在は欠員があり12人です。病棟業務の基本的な方針として、薬剤師がいなければ患者さんが入院できないと言われる存在になることを目指しました。以前は服薬指導が必要であると看護師が判断した時だけ薬剤師が病棟に呼ばれていたのですが、薬がそこにあれば、まず薬剤師を呼ぼうと思ってもらえるようにすること、そのための体制を作ることが必要だと思いました。そこで、持参薬

への関与、注射薬の個人セット(注射カート)、退院時指導、抗がん剤無菌調製など少しずつ病棟業務を広げてきました。その結果、当院では4月から病棟薬剤業務実施加算を算定できる体制まで漕ぎ付けることができました(資料1)。

西原 マツダ病院は270床で薬剤師は18人、他に補助スタッフが3人います。この4月から病棟薬剤業務実施加算を算定していますが、私が着任した2004年当時は、病棟に薬剤師がいることが標準的ではありませんでした。服薬指導には行くのですが、指導したらすぐ薬剤部に戻ってきていました。そのころ薬剤部は厚生科学研究報告の与薬関連ヒヤリ・ハット事例報告率に着目しており、特に内服関連における当院との差を問題としていました。そ

こで薬剤師が配薬に関わる必要性を病院側に訴え、まず1病棟で配薬準備に参画することになりました。それが病棟業務拡大への第一歩になりました。配薬準備のプロセス改善のために「シックスシグマ」という品質管理の手法を用い、原因の特定や対策を行ってエラーを削減しました。さらに業務効率化のため配薬カートの導入を提案し、臨床現場に薬剤師が必要だという認識を院内で高めてきた経緯があります。

大田 JA広島総合病院は561床に対し薬剤師は30人います。ただし、当院は院外処方せんを発行していませんので、病棟業務に費やす時間はどうしても限られます。それに対して、他職種からの要望は年々増えてきている状況で、うれしい反面すべてに応えられないというジレンマもあります。当院では薬のセーフティマネジメントを最大のコンセプトとし、これまで薬剤管理指導件数を犠牲にしてでも、医師や看護師との協働業務を優先してきました。今回、病棟薬剤業務に該当する時間を計ったところ、算定要件の20時間に達していましたので、これまでの病棟での活動が評価されたように感じています。現在、病棟薬剤業務実施加算の算定のための準備中で、状況が整い次第開始する予定です。

木平 広島大学病院は746床で、薬剤師は56人です。当院では4月から病棟薬剤業務実施加算を算定しています。42国立大学病院の中で、4月に算定したのは広島大学病院だけです。私自身、ずっと薬剤師の病棟業務が診療報酬で評価されることを目標に業務を拡大してきて、やっと認められたのですから、「絶対に算定するぞ」と薬剤部員全員で取り組んできました。病棟業務の体制ですが、当院では17人の専任薬剤師が4つのグループを形成し、一般病棟では基本的に3~4フロアをそれぞれ3~4人で担当し、誰かが休んでもフォローできるようにしています。このほか専任として、救命センター・ICU・HCUに1人、手術室に1人います。NICU・GCUは小児病棟担当グループがカバーしています(資料2)。

■病棟薬剤業務実施加算算定のための 業務体制木平 各病院の現状をひと通りお聞きしましたが、病棟業務にしても外来にしても薬物療法が行われているところには必ず薬剤師が関与するということを基本にしていることは共通していますね。次は、病棟薬剤業務を実施するためのマンパワー確保や業務体制をどう進めてこられたのか、西原先生から話していただけますか。

西原 医療安全と医療従事者の業務削減に前向きに取り組んできたことが認められ、この2年で薬剤師は5人程増えています。薬剤部の業務体制は、15分単位のジョブローテーションで非常に細かく設定しています(資料3)。病棟業務については、5病棟に各1人の専任薬剤師を配置し、病棟薬剤業務を中心に1日5時間実施します。服薬指導業務などのサポート要員として、1病棟につきフォロー担当者を3人配置し、専任者が当直明けで不在でも、サブ担当者が対応できるように教育しています。この2年間、当院では加算を算定するのは当然という意気込みで病棟業務の拡充に邁進してきました。これからは、どのように業務の効率化を図るかが課題です。特にハイリスク薬の管理やモニタリングなどの標準化に取り組んでいきたいと思っています。

原 当院は1病棟2人の体制で、5病棟を10人でカバーしています。2人が交代で半日ずつ病棟業務を担当できるようにローテーションを組んでいるので、常に薬剤師が1人は病棟にいることになります。ただし残った人数で調剤をはじめさまざまな業務を行うことになりますから、決して楽ではありません。しかし、これまでやってきたことが評価された結果ですから、みんなで頑張ってやろうと前向きに取り組んでいます。病棟薬剤業務をするために薬剤管理指導件数が減ることがないように、業務内容を整理し

て効率化したり、ハイリスク薬管理のための業務フローを看護師と一緒に考えたりしてなんとかクリアできています。

大田 当院は西棟と東棟にそれぞれ6病棟ずつ、合計12病棟あります。2つの棟は連絡しており1フロアには各棟担当1人ずつとフォロー担当1人の計3人の薬剤師を配置しています。ただ、当院の場合、院内調剤を行っているため病棟活動時間が限られます。病棟薬剤師は少なくとも週1回は終日病棟にいますが、外来調剤を行わなければならない日は朝10時半頃から15時頃までは病棟に滞在することができませんので、その分残業して病棟業務を行っています。そこで、病棟業務を効率化し、外来調剤を行うメリットを生かす業務方法、つまり外来から入院まで切れ目なく薬剤師が関わるという方法をとっています。例えばがん化学療法を行う場合、初回は入院・外来を問わずがん化学療法担当者が患者さんに1時間近くかけて説明と服薬指導を行い、その内容は病棟薬剤師にも伝えます。休薬期間や抗がん剤の用量・支持療法などはがん化学療法担当者が管理しています(資料4)。外来患者さんの場合、指導料は算定できませんが、薬剤師としてやるべきことは入院・外来に関わらず行おうという方針です。

木平 病棟薬剤業務は、今までの薬剤管理指導にどれだけ上乗せした業務ができるかということを問われているのです。そのためには業務の効率化が必要ですから、当院でもさまざまな取り組みをしました。すべての病棟専任薬剤師に医療端末・PHSを配布し、薬剤管理指導システムに院内のどこからでもアクセス可能にしました。また、病棟薬剤業務日誌はできるだけ書式を簡略化し、本来の病棟薬剤業務に注力できるようにしています。当院の場合、病棟薬剤業務とされた業務については既に実施していたものがほとんどですが、それをさらに進化させ、継続させていくためには、人員の増加と薬剤師のレベルアップは不

可欠だと考えています。最終的には人材育成がこれからの病棟業務の質を左右すると認識しています。

■医師、看護師の負担軽減に貢献する 病棟業務木平 今回の病棟薬剤業務実施加算においては、医療従事者の負担軽減への貢献が強く求められています。その点についてはどのような取り組みをされていますか。

西原 当院では、看護師との協働による配薬準備業務を2005年から開始しており、現在は全病棟で配薬カートを用いた配薬準備を行っています。週に1回、薬剤部で薬剤師4人がかりで配薬カートに1週間分の薬をセットして病棟に上げます。実際にデータを取ったところ、52%の看護業務の削減につながっていました。また、整形外科病棟では薬剤師が定期処方日前、処方提案を指示箋という書式にまとめて行います。紙面上では看護師、医師と情報共有し「この患者さんは痛みが軽減しています」ということ等を追記し、医師の承認の下指示箋に基づき定期処方の入力支援を行っています。いまでは医師の負担も減り高い評価を受けています。

大田 当院の場合、以前は配薬カートのセットをほぼ全病棟で実施していたのですが、今は看護師にかなり任せるようになりました。というのも看護師から配合変化に関する問い合わせや、持参薬の情報提供を要求されるようになり、そちらへの対応に徐々にシフトしているためです。医師に対しては、電子カルテになったことで、薬剤師が医師よりも先にデータを確認することができるようになり、情報提供や処方提案がこれまで以上に容易になっています。当院は外来調剤を行っていますから、外来の

段階で持参薬を鑑別して電子カルテに保存します。手術目的の患者さんが麻酔科を受診する時には薬剤の内容が判別できますし、入院したら病棟薬剤師がその情報を元に服用薬の中止指示が守られているか、それ以外の服薬状況はどうかなどを把握し、必要があれば医師に提案しています。

原  当院も薬剤師ができることは何でもやろうと、いろいろなことに取り組んでいます。注射薬カートは看護師が分かりやすいように1患者1トレーでセットするほか、払い出しの時間もぎりぎりまで遅らせることで処方変更に薬剤師が対応し、看護師が交換する必要がないようにしました。ハイリスク薬については、投与後に注意すべき観察項目を一覧表にして看護師に提供しています。外来ではがん患者さんに対して薬剤師が問診して、内服抗がん剤や麻薬の評価、副作用モニタリングを行い、その情報を基に医者が診察をします。また、入院が決まった時点で薬剤師がお薬手帳などを確認して術前中止薬のチェックをしています。最近の傾向として、外来患者さんの指導を医師から依頼されるケースが増えており、インスリンや吸入薬の指導を行っています。

■病院経営に貢献する病棟薬剤業務とは木平 皆さんのお話を伺うと、処方の内容を薬剤師が精査し、薬剤の適正使用に積極的に取り組んでいらっしゃいます。医師の負担軽減はもちろんですが、それ以上に薬物療法の質の向上に貢献していると思います。では、病院経営への貢献という面ではいかがでしょうか。データ化しにくい部分だと思いますが、西原先生はどうお考えですか。

西原 薬に関するヒヤリハットがなかなか減らないという問題があるのですが、持参薬のチェックなど潜在効果として薬剤師が関与することで減らせるはずです。そういった安全への貢献をどう表現するかだと思います。

大田 以前は他科や地域の医療機関からの紹介患者さんの薬は、例えば手術目的で入院したらほとんどがDo処方であり、一律に1週間分の薬を処方していました。それを薬剤師がチェックして「これは3日分でいいですよ」とか「同種同効薬ですから必要ありません」などと提案できるようになったので、安全性の向上だけでなく、適正使用の推進につながりました。また、薬剤師が病棟の薬に関与するようになってから、薬剤部からのヒヤリハットが増えたのですが、それは、それまで看護師が見過ごしていたことも、薬剤師が見るとヒヤリハットだったという例があったためです。

木平 薬剤師により新たな視点で見ることができるということですね。医薬品の適正使用により、病院経営への貢献につながりますし、最終的には医療費の削減にもつながるということです。

■病院薬剤師としての展望と夢木平 最後に、皆さんの今後の展望や病院薬剤師としての夢について話していただきましょう。

原  最近、病院薬剤師になろうという人が減っています。「当直があるから嫌だ」とか、「土日は休みたい」という声も聞きます。しかし、医療には土日も祝日もありませんから、医師や看護師と同じように、薬剤師も一人の医療人として責任を果たすべきだと考えています。ですから、365日切れ目ない勤務体制が構築できたら、というのが目標です。私自身は、病院薬剤師という素晴らしい仕事をすることができ、幸せだったと思っています。後輩たちにも同じようにその幸せを味わってほしいというのが夢ですね。

大田 同感です。私は病棟に行き始めた最初の世代なのですが、病棟に行くと本当に楽しくて時間を忘れました。それが徐々に病棟業務がルーティン化するにつれて、若い薬剤師が楽しさを実感することが少なくなったように思います。医師からは「薬剤師に任せたら安心だ」と信頼されている実感はありますが、まだまだ薬剤師が主体的に関与できる薬物療法はたくさんあります。将来、薬剤師が処方の提案だけではなく、処方を決定するところまで専門性を評価されるようになれば、病院薬剤師としてのやりがいがさらに広がると思います。

西原 私の夢は「薬あるところに薬剤師あり」なのですが、まだまだ十分に関わりきれていません。重大な副作用のある薬について、病棟薬剤師が追跡し評価するところまでできておらず、今後、そこを変革していける若い人材を育成することが課題です。中期的には、薬剤師外来などで、医師の片腕になって処方支援ができる薬剤師を育てることを目標にしており、さらにその先には、大田先生がおっしゃるように、薬剤師が処方に責任を持つところまで信頼される時がくるのではないかと期待しています。

木平 ここ数年のチーム医療と多職種協働の流れの中で、薬剤師に対する医療スタッフの認識は大きく変わってきました。病棟の運営もチーム医療も、もはや薬剤師抜きでは考えられない状況になっています。そして今回、これまで多くの薬剤師が努力してきた結果が診療報酬として評価されたのです。しかし、まだまだ発展途上であり、むしろこれからが正念場です。そのことを各施設の共通認識として前進していかなければなりません。かじ取りをする薬剤部長は、しっかりとした方向性と将来への希望を明確に示さなければいけないと、皆さんとの話し合いを通じて痛感しました。本日は貴重なお話をありがとうございました。

 「薬剤管理指導業務」が診療報酬で点数化されてから24年。多くの薬剤師の努力により、薬物療法の質向上や医療従事者の負担軽減などにおける医療への貢献が認められ、2012年度の診療報酬改定で「病棟薬剤業務実施加算」が新設されました。本日の座談会には、広島県内でも先駆的に病棟業務に取り組んできた病院の薬剤部長にご参加いただきました。3施設は4月から病棟薬剤業務実施加算を申請しており、1施設も今年度中には申請の予定です。どのようにして病棟薬剤業務の体制を築いてこられたのか、また、どのような課題に直面されているのか、実践に基づいた貴重なお話を伺うことができると思います。本座談会を、広島県内の多くの施設の参考に供することができれば幸いです。

座談会開催にあたって [司会] 広島大学病院 薬剤部長 木平 健治 先生

病棟薬剤業務の内容(中国中央病院)資料1 病棟薬剤業務の体制(広島大学病院)資料2 1日の業務スケジュール(マツダ病院)資料3 入院から外来まで一貫した関わり(JA広島総合病院)資料4

●病棟薬剤業務実施加算(→特定入院費にふくまれるもの)半日:2時間(病棟管理)入院時 過去の投薬、注射、副作用歴等の聴取

→当院及び他院における投薬、注射の基礎的事項の把握→持参薬確認及び服薬計画の立案(継続、中止の確認)

入院中 相互作用(禁忌、重複)の有無確認ハイリスク薬の説明(プロトコールを含む)(投与前) →病棟担当者が薬をもってあがる。ハイリスク薬の流量、投与量の計算(投与前) →注射室でする?抗がん剤のレジメン作成TDM(処方設計)配合変化定期処方薬のチェック在庫確保抗がん剤、TPNのミキシング麻薬の管理(カンファレンスへの参加)

薬剤部長をのぞく常勤薬剤師17人分の1日の業務割り当て時間を各々15分単位で決めた「病棟薬剤業務担当一覧表」。

右端の数字は、個々の薬剤師の1日の病棟業務時間1:病棟業務 ●:注射・内服調剤業務 ○:外来窓口

広島大学病院 病棟薬剤業務について

〈4月1日より、病棟薬剤業務実施加算算定〉

●病棟配置(17人)743床 ■一般病棟:3グループ(4フロアーを4名が担当)※1人約50床を担当       1グループ(3フロアーを3名が担当) ■救命センター・ICU(26床)、HCU(10床):1名 ■手術室:1名 ■NICU(6床)・GCU:小児病棟担当グループ

●業務内容 ■病棟業務 ■調剤応援(週1回約2時間)、院内医療チーム ■院内の取り決め事項   ■代行オーダー(定数配置薬処方、薬物血中濃度測定)   ■持参薬取り扱いに関する体制整備(全入院患者の持参薬を確認)

病棟専任者

フォロー担当者

3F A(d)4F B(e)5F C(h)6F D(g)7F E(f)ope F調剤室1(a)調剤室2(b)調剤室3(c)調剤室4(d)調剤室5(e)調剤室6(f)調剤室7(g)調剤室8(h)調剤室9( i)調剤室10(j)  k

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5555554.254.54.54.53.54.754.53.754.54.53.5

薬剤師 8:15 8:30 8:45 9:00 9:15 9:30 9:45 10:00 10:15 16:15 16:30 16:45 合計時間16:00<がん化学療法業務における薬剤師の役割>

外来 入院

外来化学療法室 病棟活動がん化学療法施行前レジメン監査(前日までに制吐剤等支持療法の妥当性吟味検査データ確認・データベース作成(医師に検査依頼を行う場合あり)施行日の患者指導の必要の有無検討

施行時

レジメン妥当性吟味持参薬確認・薬歴作成検査データ確認 データベース作成(医師に検査依頼を行う場合あり)

がん化学療法施行中の注意点 当日再確認看護師・医師への情報提供

患者に対するレジメン説明投与内容・投与間隔使用薬剤 用法用量副作用(急性・遅発性)がん化学療法施行日(通常業務)

レジメン管理抗がん剤調製・監査検査データ確認薬歴作成

がん化学療法施行日(必要時のみ)がん化学療法施行後 退院まで服薬指導

抗がん剤内服薬アドヒアランス評価導入時の副作用モニタリング(特に嘔吐・疼痛コントロール)必要時医師へ処方依頼

レジメン変更時

副作用等で入院時

データベースによる一連の情報管理がん化学療法導入前

急性期の副作用評価検査データ確認退院前指導 副作用の注意点等説明抗がん剤内服薬 用法用量再確認

Page 6: これからの病棟業務は · 2013-03-18 · て効率化したり、ハイリスク薬管理のための業務フローを看護 師と一緒に考えたりしてなんとかクリアできています。

発行月 : 平成24年9月発 行 : 田辺三菱製薬株式会社    〒541-8505 大阪市中央区北浜2-6-18    お問い合せ先 : 営業推進部 06-6227-4666

田辺三菱製薬株式会社ホームページ http://www.mt-pharma.co.jp

ファーマスコープは病院、保険薬局で輝く薬剤師の声をお届けする情報誌です。

特別号 広島県版

特別号 広島県版

これからの病棟業務はいかにあるべきか~「病棟薬剤業務実施加算」創設がもたらすインパクト~

座談会

広島大学病院 薬剤部長木平 健治 先生中国中央病院 薬剤部長原 景子 先生マツダ病院 薬剤部長西原 昌幸 先生JA広島総合病院 薬剤部長大田 博子 先生

[司会]

(発言順)

広島大学病院 薬剤部長

き  ひら  けん じ

木平 健治 先生(司会)

JA広島総合病院 薬剤部長

おお  た   ひろ  こ

大田 博子 先生マツダ病院 薬剤部長

にし はら  まさ ゆき

西原 昌幸 先生中国中央病院 薬剤部長

 はら    けい こ

原 景子 先生

特別号 広島県版

これからの病棟業務はいかにあるべきか~「病棟薬剤業務実施加算」創設がもたらすインパクト~

座談会

座談会

■各施設における病棟薬剤業務の現状木平 最初に、各施設における病棟業務の基本方針とこれまでの取り組みについて、原先生から順にお話しいただけますか。

原  中国中央病院は277床、薬剤師は定数15人ですが、現在は欠員があり12人です。病棟業務の基本的な方針として、薬剤師がいなければ患者さんが入院できないと言われる存在になることを目指しました。以前は服薬指導が必要であると看護師が判断した時だけ薬剤師が病棟に呼ばれていたのですが、薬がそこにあれば、まず薬剤師を呼ぼうと思ってもらえるようにすること、そのための体制を作ることが必要だと思いました。そこで、持参薬

への関与、注射薬の個人セット(注射カート)、退院時指導、抗がん剤無菌調製など少しずつ病棟業務を広げてきました。その結果、当院では4月から病棟薬剤業務実施加算を算定できる体制まで漕ぎ付けることができました(資料1)。

西原 マツダ病院は270床で薬剤師は18人、他に補助スタッフが3人います。この4月から病棟薬剤業務実施加算を算定していますが、私が着任した2004年当時は、病棟に薬剤師がいることが標準的ではありませんでした。服薬指導には行くのですが、指導したらすぐ薬剤部に戻ってきていました。そのころ薬剤部は厚生科学研究報告の与薬関連ヒヤリ・ハット事例報告率に着目しており、特に内服関連における当院との差を問題としていました。そ

こで薬剤師が配薬に関わる必要性を病院側に訴え、まず1病棟で配薬準備に参画することになりました。それが病棟業務拡大への第一歩になりました。配薬準備のプロセス改善のために「シックスシグマ」という品質管理の手法を用い、原因の特定や対策を行ってエラーを削減しました。さらに業務効率化のため配薬カートの導入を提案し、臨床現場に薬剤師が必要だという認識を院内で高めてきた経緯があります。

大田 JA広島総合病院は561床に対し薬剤師は30人います。ただし、当院は院外処方せんを発行していませんので、病棟業務に費やす時間はどうしても限られます。それに対して、他職種からの要望は年々増えてきている状況で、うれしい反面すべてに応えられないというジレンマもあります。当院では薬のセーフティマネジメントを最大のコンセプトとし、これまで薬剤管理指導件数を犠牲にしてでも、医師や看護師との協働業務を優先してきました。今回、病棟薬剤業務に該当する時間を計ったところ、算定要件の20時間に達していましたので、これまでの病棟での活動が評価されたように感じています。現在、病棟薬剤業務実施加算の算定のための準備中で、状況が整い次第開始する予定です。

木平 広島大学病院は746床で、薬剤師は56人です。当院では4月から病棟薬剤業務実施加算を算定しています。42国立大学病院の中で、4月に算定したのは広島大学病院だけです。私自身、ずっと薬剤師の病棟業務が診療報酬で評価されることを目標に業務を拡大してきて、やっと認められたのですから、「絶対に算定するぞ」と薬剤部員全員で取り組んできました。病棟業務の体制ですが、当院では17人の専任薬剤師が4つのグループを形成し、一般病棟では基本的に3~4フロアをそれぞれ3~4人で担当し、誰かが休んでもフォローできるようにしています。このほか専任として、救命センター・ICU・HCUに1人、手術室に1人います。NICU・GCUは小児病棟担当グループがカバーしています(資料2)。

■病棟薬剤業務実施加算算定のための 業務体制木平 各病院の現状をひと通りお聞きしましたが、病棟業務にしても外来にしても薬物療法が行われているところには必ず薬剤師が関与するということを基本にしていることは共通していますね。次は、病棟薬剤業務を実施するためのマンパワー確保や業務体制をどう進めてこられたのか、西原先生から話していただけますか。

西原 医療安全と医療従事者の業務削減に前向きに取り組んできたことが認められ、この2年で薬剤師は5人程増えています。薬剤部の業務体制は、15分単位のジョブローテーションで非常に細かく設定しています(資料3)。病棟業務については、5病棟に各1人の専任薬剤師を配置し、病棟薬剤業務を中心に1日5時間実施します。服薬指導業務などのサポート要員として、1病棟につきフォロー担当者を3人配置し、専任者が当直明けで不在でも、サブ担当者が対応できるように教育しています。この2年間、当院では加算を算定するのは当然という意気込みで病棟業務の拡充に邁進してきました。これからは、どのように業務の効率化を図るかが課題です。特にハイリスク薬の管理やモニタリングなどの標準化に取り組んでいきたいと思っています。

原 当院は1病棟2人の体制で、5病棟を10人でカバーしています。2人が交代で半日ずつ病棟業務を担当できるようにローテーションを組んでいるので、常に薬剤師が1人は病棟にいることになります。ただし残った人数で調剤をはじめさまざまな業務を行うことになりますから、決して楽ではありません。しかし、これまでやってきたことが評価された結果ですから、みんなで頑張ってやろうと前向きに取り組んでいます。病棟薬剤業務をするために薬剤管理指導件数が減ることがないように、業務内容を整理し

て効率化したり、ハイリスク薬管理のための業務フローを看護師と一緒に考えたりしてなんとかクリアできています。

大田 当院は西棟と東棟にそれぞれ6病棟ずつ、合計12病棟あります。2つの棟は連絡しており1フロアには各棟担当1人ずつとフォロー担当1人の計3人の薬剤師を配置しています。ただ、当院の場合、院内調剤を行っているため病棟活動時間が限られます。病棟薬剤師は少なくとも週1回は終日病棟にいますが、外来調剤を行わなければならない日は朝10時半頃から15時頃までは病棟に滞在することができませんので、その分残業して病棟業務を行っています。そこで、病棟業務を効率化し、外来調剤を行うメリットを生かす業務方法、つまり外来から入院まで切れ目なく薬剤師が関わるという方法をとっています。例えばがん化学療法を行う場合、初回は入院・外来を問わずがん化学療法担当者が患者さんに1時間近くかけて説明と服薬指導を行い、その内容は病棟薬剤師にも伝えます。休薬期間や抗がん剤の用量・支持療法などはがん化学療法担当者が管理しています(資料4)。外来患者さんの場合、指導料は算定できませんが、薬剤師としてやるべきことは入院・外来に関わらず行おうという方針です。

木平 病棟薬剤業務は、今までの薬剤管理指導にどれだけ上乗せした業務ができるかということを問われているのです。そのためには業務の効率化が必要ですから、当院でもさまざまな取り組みをしました。すべての病棟専任薬剤師に医療端末・PHSを配布し、薬剤管理指導システムに院内のどこからでもアクセス可能にしました。また、病棟薬剤業務日誌はできるだけ書式を簡略化し、本来の病棟薬剤業務に注力できるようにしています。当院の場合、病棟薬剤業務とされた業務については既に実施していたものがほとんどですが、それをさらに進化させ、継続させていくためには、人員の増加と薬剤師のレベルアップは不

可欠だと考えています。最終的には人材育成がこれからの病棟業務の質を左右すると認識しています。

■医師、看護師の負担軽減に貢献する 病棟業務木平 今回の病棟薬剤業務実施加算においては、医療従事者の負担軽減への貢献が強く求められています。その点についてはどのような取り組みをされていますか。

西原 当院では、看護師との協働による配薬準備業務を2005年から開始しており、現在は全病棟で配薬カートを用いた配薬準備を行っています。週に1回、薬剤部で薬剤師4人がかりで配薬カートに1週間分の薬をセットして病棟に上げます。実際にデータを取ったところ、52%の看護業務の削減につながっていました。また、整形外科病棟では薬剤師が定期処方日前、処方提案を指示箋という書式にまとめて行います。紙面上では看護師、医師と情報共有し「この患者さんは痛みが軽減しています」ということ等を追記し、医師の承認の下指示箋に基づき定期処方の入力支援を行っています。いまでは医師の負担も減り高い評価を受けています。

大田 当院の場合、以前は配薬カートのセットをほぼ全病棟で実施していたのですが、今は看護師にかなり任せるようになりました。というのも看護師から配合変化に関する問い合わせや、持参薬の情報提供を要求されるようになり、そちらへの対応に徐々にシフトしているためです。医師に対しては、電子カルテになったことで、薬剤師が医師よりも先にデータを確認することができるようになり、情報提供や処方提案がこれまで以上に容易になっています。当院は外来調剤を行っていますから、外来の

段階で持参薬を鑑別して電子カルテに保存します。手術目的の患者さんが麻酔科を受診する時には薬剤の内容が判別できますし、入院したら病棟薬剤師がその情報を元に服用薬の中止指示が守られているか、それ以外の服薬状況はどうかなどを把握し、必要があれば医師に提案しています。

原  当院も薬剤師ができることは何でもやろうと、いろいろなことに取り組んでいます。注射薬カートは看護師が分かりやすいように1患者1トレーでセットするほか、払い出しの時間もぎりぎりまで遅らせることで処方変更に薬剤師が対応し、看護師が交換する必要がないようにしました。ハイリスク薬については、投与後に注意すべき観察項目を一覧表にして看護師に提供しています。外来ではがん患者さんに対して薬剤師が問診して、内服抗がん剤や麻薬の評価、副作用モニタリングを行い、その情報を基に医者が診察をします。また、入院が決まった時点で薬剤師がお薬手帳などを確認して術前中止薬のチェックをしています。最近の傾向として、外来患者さんの指導を医師から依頼されるケースが増えており、インスリンや吸入薬の指導を行っています。

■病院経営に貢献する病棟薬剤業務とは木平 皆さんのお話を伺うと、処方の内容を薬剤師が精査し、薬剤の適正使用に積極的に取り組んでいらっしゃいます。医師の負担軽減はもちろんですが、それ以上に薬物療法の質の向上に貢献していると思います。では、病院経営への貢献という面ではいかがでしょうか。データ化しにくい部分だと思いますが、西原先生はどうお考えですか。

西原 薬に関するヒヤリハットがなかなか減らないという問題があるのですが、持参薬のチェックなど潜在効果として薬剤師が関与することで減らせるはずです。そういった安全への貢献をどう表現するかだと思います。

大田 以前は他科や地域の医療機関からの紹介患者さんの薬は、例えば手術目的で入院したらほとんどがDo処方であり、一律に1週間分の薬を処方していました。それを薬剤師がチェックして「これは3日分でいいですよ」とか「同種同効薬ですから必要ありません」などと提案できるようになったので、安全性の向上だけでなく、適正使用の推進につながりました。また、薬剤師が病棟の薬に関与するようになってから、薬剤部からのヒヤリハットが増えたのですが、それは、それまで看護師が見過ごしていたことも、薬剤師が見るとヒヤリハットだったという例があったためです。

木平 薬剤師により新たな視点で見ることができるということですね。医薬品の適正使用により、病院経営への貢献につながりますし、最終的には医療費の削減にもつながるということです。

■病院薬剤師としての展望と夢木平 最後に、皆さんの今後の展望や病院薬剤師としての夢について話していただきましょう。

原  最近、病院薬剤師になろうという人が減っています。「当直があるから嫌だ」とか、「土日は休みたい」という声も聞きます。しかし、医療には土日も祝日もありませんから、医師や看護師と同じように、薬剤師も一人の医療人として責任を果たすべきだと考えています。ですから、365日切れ目ない勤務体制が構築できたら、というのが目標です。私自身は、病院薬剤師という素晴らしい仕事をすることができ、幸せだったと思っています。後輩たちにも同じようにその幸せを味わってほしいというのが夢ですね。

大田 同感です。私は病棟に行き始めた最初の世代なのですが、病棟に行くと本当に楽しくて時間を忘れました。それが徐々に病棟業務がルーティン化するにつれて、若い薬剤師が楽しさを実感することが少なくなったように思います。医師からは「薬剤師に任せたら安心だ」と信頼されている実感はありますが、まだまだ薬剤師が主体的に関与できる薬物療法はたくさんあります。将来、薬剤師が処方の提案だけではなく、処方を決定するところまで専門性を評価されるようになれば、病院薬剤師としてのやりがいがさらに広がると思います。

西原 私の夢は「薬あるところに薬剤師あり」なのですが、まだまだ十分に関わりきれていません。重大な副作用のある薬について、病棟薬剤師が追跡し評価するところまでできておらず、今後、そこを変革していける若い人材を育成することが課題です。中期的には、薬剤師外来などで、医師の片腕になって処方支援ができる薬剤師を育てることを目標にしており、さらにその先には、大田先生がおっしゃるように、薬剤師が処方に責任を持つところまで信頼される時がくるのではないかと期待しています。

木平 ここ数年のチーム医療と多職種協働の流れの中で、薬剤師に対する医療スタッフの認識は大きく変わってきました。病棟の運営もチーム医療も、もはや薬剤師抜きでは考えられない状況になっています。そして今回、これまで多くの薬剤師が努力してきた結果が診療報酬として評価されたのです。しかし、まだまだ発展途上であり、むしろこれからが正念場です。そのことを各施設の共通認識として前進していかなければなりません。かじ取りをする薬剤部長は、しっかりとした方向性と将来への希望を明確に示さなければいけないと、皆さんとの話し合いを通じて痛感しました。本日は貴重なお話をありがとうございました。

 「薬剤管理指導業務」が診療報酬で点数化されてから24年。多くの薬剤師の努力により、薬物療法の質向上や医療従事者の負担軽減などにおける医療への貢献が認められ、2012年度の診療報酬改定で「病棟薬剤業務実施加算」が新設されました。本日の座談会には、広島県内でも先駆的に病棟業務に取り組んできた病院の薬剤部長にご参加いただきました。3施設は4月から病棟薬剤業務実施加算を申請しており、1施設も今年度中には申請の予定です。どのようにして病棟薬剤業務の体制を築いてこられたのか、また、どのような課題に直面されているのか、実践に基づいた貴重なお話を伺うことができると思います。本座談会を、広島県内の多くの施設の参考に供することができれば幸いです。

座談会開催にあたって [司会] 広島大学病院 薬剤部長 木平 健治 先生

病棟薬剤業務の内容(中国中央病院)資料1 病棟薬剤業務の体制(広島大学病院)資料2 1日の業務スケジュール(マツダ病院)資料3 入院から外来まで一貫した関わり(JA広島総合病院)資料4

●病棟薬剤業務実施加算(→特定入院費にふくまれるもの)半日:2時間(病棟管理)入院時 過去の投薬、注射、副作用歴等の聴取

→当院及び他院における投薬、注射の基礎的事項の把握→持参薬確認及び服薬計画の立案(継続、中止の確認)

入院中 相互作用(禁忌、重複)の有無確認ハイリスク薬の説明(プロトコールを含む)(投与前) →病棟担当者が薬をもってあがる。ハイリスク薬の流量、投与量の計算(投与前) →注射室でする?抗がん剤のレジメン作成TDM(処方設計)配合変化定期処方薬のチェック在庫確保抗がん剤、TPNのミキシング麻薬の管理(カンファレンスへの参加)

薬剤部長をのぞく常勤薬剤師17人分の1日の業務割り当て時間を各々15分単位で決めた「病棟薬剤業務担当一覧表」。

右端の数字は、個々の薬剤師の1日の病棟業務時間1:病棟業務 ●:注射・内服調剤業務 ○:外来窓口

広島大学病院 病棟薬剤業務について

〈4月1日より、病棟薬剤業務実施加算算定〉

●病棟配置(17人)743床 ■一般病棟:3グループ(4フロアーを4名が担当)※1人約50床を担当       1グループ(3フロアーを3名が担当) ■救命センター・ICU(26床)、HCU(10床):1名 ■手術室:1名 ■NICU(6床)・GCU:小児病棟担当グループ

●業務内容 ■病棟業務 ■調剤応援(週1回約2時間)、院内医療チーム ■院内の取り決め事項   ■代行オーダー(定数配置薬処方、薬物血中濃度測定)   ■持参薬取り扱いに関する体制整備(全入院患者の持参薬を確認)

病棟専任者

フォロー担当者

3F A(d)4F B(e)5F C(h)6F D(g)7F E(f)ope F調剤室1(a)調剤室2(b)調剤室3(c)調剤室4(d)調剤室5(e)調剤室6(f)調剤室7(g)調剤室8(h)調剤室9( i)調剤室10(j)  k

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薬剤師 8:15 8:30 8:45 9:00 9:15 9:30 9:45 10:00 10:15 16:15 16:30 16:45 合計時間16:00<がん化学療法業務における薬剤師の役割>

外来 入院

外来化学療法室 病棟活動がん化学療法施行前レジメン監査(前日までに制吐剤等支持療法の妥当性吟味検査データ確認・データベース作成(医師に検査依頼を行う場合あり)施行日の患者指導の必要の有無検討

施行時

レジメン妥当性吟味持参薬確認・薬歴作成検査データ確認 データベース作成(医師に検査依頼を行う場合あり)

がん化学療法施行中の注意点 当日再確認看護師・医師への情報提供

患者に対するレジメン説明投与内容・投与間隔使用薬剤 用法用量副作用(急性・遅発性)がん化学療法施行日(通常業務)

レジメン管理抗がん剤調製・監査検査データ確認薬歴作成

がん化学療法施行日(必要時のみ)がん化学療法施行後 退院まで服薬指導

抗がん剤内服薬アドヒアランス評価導入時の副作用モニタリング(特に嘔吐・疼痛コントロール)必要時医師へ処方依頼

レジメン変更時

副作用等で入院時

データベースによる一連の情報管理がん化学療法導入前

急性期の副作用評価検査データ確認退院前指導 副作用の注意点等説明抗がん剤内服薬 用法用量再確認