地域再生人材創出拠点の形成 中間評価 「十勝アグリバイオ産業 ... · 2019....

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地域再生人材創出拠点の形成 中間評価 「十勝アグリバイオ産業創出のための人材育成」 機関名:帯広畜産大学 代表者名:関川 三男 連携自治体:帯広市 実施期間:平成19年度~平成23年度

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地域再生人材創出拠点の形成 中間評価

「十勝アグリバイオ産業創出のための人材育成」

機関名:帯広畜産大学

代表者名:関川 三男

連携自治体:帯広市

実施期間:平成19年度~平成23年度

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目次

Ⅰ.計画の概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1

Ⅱ.所要経費 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4

Ⅲ.拠点形成の成果

1.拠点形成計画の進捗状況の概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5

2.中間目標の達成度

(1)養成人数以外(拠点形成)の中間目標と実績 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7

(2)養成人数の中間目標と実績・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8

3.人材養成の実施内容

(1)人材養成の手法・方法と実施結果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8

(2)養成対象者の到達度評価の仕組みと実施結果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14

(3)人材養成システムの改善状況(被養成者の評価等の反映)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15

(4)養成修了人材が地域で活躍する仕組み ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・17

4.地域再生人材養成ユニットの有効性

(1)有用性 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・17

(2)波及効果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・19

(3)情報発信の状況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・19

5.実施体制・自治体等との連携状況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・21

6.成果の発表状況

(1)養成された人材による成果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・22

(2)システム構築に関する成果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・22

Ⅳ.今後の計画

1.本プログラム終了時の達成目標について ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・23

2.本プログラム終了後の取組み方針・見通し・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・23

Ⅴ.自己評価 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・24

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Ⅰ.計画の概要

■プログラム名:地域再生人材創出拠点の形成(中間評価)

■課題名:十勝アグリバイオ産業創出のための人材育成

■機関名:帯広畜産大学

■代表者名(役職):関川 三男(地域共同研究センター長)

■連携自治体:帯広市

■実施期間:5年間

■実施経費:これまでの総額 115.1百万円(間接経費込み)

1.課題概要

地域の現状と地域再生に向けた取組状況 ◎地域の現状と課題、これまでの取り組み : 北海道十勝管内では,年間産出額が 2,500 億円前後の農畜産業が主産業である。この主産業においては近年の異常気象や外圧(日豪経済連携協定交渉等)による影響が懸念され,さらに食料自給率の向上や環境調和型への移行が喫緊に要請されている。このため,従来からの原材料供給に加え,環境に配慮した付加価値の高い製品等への転換を推進することが急務であり,持続可能な事業展開や業態転換による雇用創出を伴う地域独自のイノベーションに駆動された自立的経済基盤を確立することが必須である。

十勝管内では複数の公設試験研究機関が「スクラム十勝」と称する包括的連携協定を締結して,効果的な基礎・応用研究,技術開発および普及・啓発活動が行われているが,ここから生じた「シーズ」が地域へ十分に還元されている状況にはない。これは,個別の技術開発等には優れた役割を果たしてきたが,企業等においてより付加価値の高い農畜産物や加工品を生産し得る専門的知識を有する職業人が不足していることに加えて,特に現場と試験研究機関,企業と行政等の調整に当たる企画力,行動力,見識を備えたコーディネーターが不足していたことに大きく起因する。

地域再生人材創出構想 ◎人材育成の目指すもの : 新たなアグリバイオ産業による持続的自立的経済基盤を確立するために,十勝管内で生産される農畜産物やバイオマスなどの地域資源に対して,より付加価値の高い製品等への転換を目指したビジネスモデルや新規プロジェクトを企画・推進できる人材(コーディネーター)と生産現場におけるリーダー(プレイヤー)を養成する。 ◎人材育成の手法と目標人数 : 本事業では,本学の夏季・冬季休業を主に利用し,座学と実務教育等(OJT)を組み合わせて短期集中型で行うプレイヤー研修と,講義と個別指導・グループ討議を中心に進めるコーディネーター研修を開講する。講師陣は,本学をはじめとする「スクラム十勝」構成機関により,農学・生物学・衛生学を担当し,経営学,ビジネスモデル構築,知的財産管理については,主に小樽商科大学,金融機関,民間コンサルタントの外部講師で,またバイオエネルギーや工学関連は,主に北見工大,釧路高専からの外部講師で構成する。3 年後には,5 名のコーディネーターと 15 名のプレイヤー,5 年後の終了時には,15 名のコーディネーターと 25 名のプレイヤーの育成を目指す。

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十勝アグリバイオ産業創出のための人材育成実施体制

食品製造等を行う地元中小企業や,業態転換を検討している建設土木事業の従業員等を対象に,「アグリバイオ産業」における生産現場のリーダーとなる人材

プ レ イ ヤ ー

大学や公的試験研究機関のシーズと地元企業のニーズを結びつけて,新規事業の創造に資するコーディネート能力を有する人材

コ ー デ ィ ネ ー タ ー

食品製造業者建設業者新規就農者団体等職員活性化プラン修了者

など

対象分野

エネルギー食品製造企画担当農畜産学(業)ベンチャー関連

など

育 成 す る 人 材

生物学,衛生学,環境学の最新の知識を基盤とし,十勝に内在する経済問題と地球温暖化に代表される環境問題をバランス良く解決するための人材を育成。

◎構成:本学・帯広市・北海道十勝支庁・(財)十勝圏振興機構・公設試験研究機関・金融機関・中小企業家同友会等

◎役割:本事業の目標と推進体制の策定・管理および進捗状況と成果の評価・管理を行う。このため人材育成事業事務局と事業化推進タスクフォースを統括する。

事 業 運 営 委 員 会

人材育成事業事務局 事業化推進タスクフォース

地域再生へ

アグリバイオ産業とは

•食料用農林水畜産物•バイオマス•バイテク関連産物等の生物資源全般について,

食の安全確保やバイオエネルギー等の環境保全に寄与する経済活動を行う産業群

帯広市

アグリバイオ産業

持続可能な事業展開や業態転換による雇用創出を伴う地域独自のイノベーションに駆動された

自立的経済基盤を確立

育成対象者

講師陣:本学・北見工大・ 小樽商大・釧路高専・

スクラム十勝構成機関・ 金融機関・帯広市・民間コンサルタント

自治体との連携・地域再生の観点 ◎自治体や関係機関との連携 : 本学と帯広市はすでに包括的連携協定を締結し充分な協力関係が構築されており,また,(財)十勝圏振興機構は平成 17 年度からの文部科学省「都市エリア産学官連携促進事業:機能性を重視した十勝産農畜産物の高付加価値化に関する技術開発」の中核機関として,コア研究機関である本学と密接な連携を図かり当該事業を推進している。 ◎地域のニーズ : 十勝管内各地の産業クラスター研究会等では,新規事業を目指して積極的な議論が展開されている。この中で,現在の大規模畑作・畜産を背景とした原材料供給から,地域において農畜産物の高付加価値化を図り、持続的な地域経済の確立が望まれている。 ◎地域再生に向けて : 本事業によって養成される「プレイヤー」により,アグリバイオ産業における企業等内のイノベーションを推進するとともに,コーディネーターにより地域に存在する研究成果(シーズ)等と産業界のニーズとの社会的で適正なマッチングによるアグリバイオ産業の創出をより効率的に推進することが期待される。 本事業により,北海道・十勝地域の資源・特性を活かし、食の安全、環境保全を理解し高い倫理観

による企業活動を展開できる人材を育成することにより,自立的経済基盤の確立による地域再生を目指す。

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アグリバイオ産業駆動による環境調和型持続的地域社会の再生・創生アグリバイオ産業駆動による環境調和型持続的地域社会の再生・創生

■十勝アグリバイオ産業創出のための人材育成実施内容

アグリバイオ産業基盤生物学環境学

食の安全食品衛生学リスク分析

バイオマスの基盤バイオマス利用

コミュニケーションの基盤コミュニケーション論異業種交流

食品衛生実習

先端施設見学

プレゼン演習

IT,統計演習

など

アグリバイオ産業の生産現場において、経済性と食の安全あるいは環境保全との連関を理解し,高い倫理感と見識による企業活動を推進し,さらに良好な人間関係を構築でき,行動力をも備えたプレイヤーとなる。

対象者

食品製造業者建設業者新規就農者団体等職員活性化プラン修了者

学ぶ(座学) 験す(実習) 活かす(現場)

コーディネーター研修へ・自ら起業を目指す者・事業主の推薦を受けた者

信頼と絆

自立促進

コーディネーター 学ぶ(座学) 験す(演習) 活かす(事業化)

知的財産管理

マーケティング論

企業戦略論など

実践的ビジネスモデル・プロジェクト案の構築

マーケティングの実際

など

対象分野

食廃油リサイクル

肉骨粉の肥料化

十勝産生ハム

2年目 個別指導1年目

循環型社会の構築

特産品の創出

BSE対策

市場開拓

想定される事例と効果

エ ネ ル ギ ー

食 品 製 造

ベンチャー関連

企 画 担 当

プレイヤー

チーズ販促戦略

2.採択時コメント

研究実績のある帯広畜産大学のプログラムとして、地域のニーズに対応した高度な人材育成が

期待できる。一方、提案されたアグリバイオ産業創出はもっと広い視点でこれを捉えるべきであ

り、カリキュラムもこれに対応させて充実することが求められる。また、当該地域は、生産者・

企業の提案が活発な地域であるため、地域の提案を積極的に取り入れることが求められる。 さらに、当該地域が日本有数の食料生産基地であることから、より高いレベルの人材の養成を含

めるような戦略も望まれる。

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Ⅱ.所要経費

(単位:百万円)

19年度 20年度 21年度 備考

1.人件費

(1)業務担当職員

(2)補助員

(3)社会保険料事業主

負担分

2.備品、試作品費等

(1)教育環境の整備

据置型真空包装機

全有機炭素計

パスタマシーン

微生物培養装置

カラーラベルプリンター

その他

3.消耗品等

4.旅費

5.その他

(1)諸謝金

(2)会議開催費

(3)通信運搬費

(4)印刷製本費

(5)借損料

(6)雑役務費

(7)消費税相当額

6.間接経費

5.4

2.3

(1名)

2.5

(2名)

0.6

13.8

13.8

6.5

2.3

4.4

1.1

0.0

0.0

0.2

2.8

0.3

9.7

42.2

13.3

5.4

(1名)

6.6

(2名)

1.4

4.6

4.6

1.7

2.3

6.1

1.8

0.0

0.0

0.8

2.8

0.7

8.5

36.8

13.2

6.0

(1名)

7.1

(2名)

1.1

1.1

3.9

3.6

6.0

2.0

0.0

0.0

0.8

3.2

8.3

36.1

食肉加工実習用

環境測定実習用

技術開発実習用

個別演習用

実習等用

講義・演習等用

総計 115.1

自己資金 0 0.4

注:人件費は、科学技術振興調整費により人件費を支出している本人材養成業務に従事する者を職階

(教授、准教授、主任研究員、研究補助員等)に分けて、年度毎に従事人数とともに記載

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Ⅲ.拠点形成の成果

1.拠点形成計画の進捗状況の概要

本事業では、北海道・十勝地域の資源・特性を活かし、食の安全、環境保全を理解し高い倫理観に

よる企業活動を展開できる人材を育成することにより,新たなアグリバイオ産業に駆動された自立的経

済基盤の確立による地域再生を目指している。これを実現するために十勝の産学官及び金融のトップ

で「事業運営委員会」を組織し、人材育成の重要性についての認識を共有し、本事業の効率的な運営

と育成された人材による効率的な地域の課題解決に向けての連携体制について検討することとした。

人材育成プログラムとして2つの研修コースを設定した。

研修の進捗に伴い、アグリバイオ産業、特に「食」・「エネルギー」に関わる産業からの要請を受けて、

カリキュラムを随時見直し、多様な業種から参画する受講生に対して柔軟に対応し得る人材育成プロ

グラムの作成に努めてきた。その結果、これまでの受講生の研修全般に対する評価は高く、所属企業

の評価も良好である。

帯広市は、地域再生計画の一環として、『帯広リサーチ&ビジネスパーク構想』※や、『地域中核産学

官連携拠点』※事業の推進を目指し、本人材育成事業の発展継続を企図している。本学では、本事業

が提示した社会人教育の重要性や社会的要請の高まりを受けて、現在、本事業と同様の他の2つの社

会人教育事業との連携を図り、得られた成果(カリキュラムや連携や推進体制)を活用して、大学院教

育への組み込みや新たな短期研修制度について検討を開始した。

本事業で養成された人材は、課題解決への意識が高く、研修を通じてコミュニケーションの能力が

高まり、人的ネットワークの広がりから、所属企業に戻り活躍している。

(※以下、各省庁及び自治体の事業名を 『 』で表す。)

中間時点での総括

・ 現在までの修了生の地域定着率(及び就職率)は 100%である。コーディネーター修了生につい

ては、現在 2 名が、帯広市内の企業で活躍している。事業 3 年終了時には、帯広市をはじめとし

て管内1市1町1村で 11 名のコーディネーター修了生が活躍する見込である。

・ カリキュラムは、本事業が目指す地域資源を活用して付加価値の高い製品を生み出すビジネス

モデルや新規プロジェクトにおける企画を行う能力(コーディネーター)や生産現場でのリーダー

に必要な能力(プレイヤー)を身に付けるために十分な内容で構成されており、修了者はそれらを

修得できたと判定している。

・ 本事業は、帯広市の地域再生計画に基づき実施された厚生労働省の『地域提案型雇用創造促

進事業』(以下、『パッケージプラン』)と連携し、「食」を中心とした地場産業の振興と雇用の促進に

貢献してきた。さらに、帯広市の策定した「中小企業振興条例」、「産業振興ビジョン」、『田園環境

モデル都市・おびひろ』等の施策を実現する上で必要な人材を育成する役割を担い始めている。

この事業を通じ、本学の教育・研究資源を活用した産学官及び金融の連携による社会人人材育成

の拠点が形成されつつある状況である。

以下に年度ごとの概要を示す。

○ 平成19年度(第1期)

・ 事務局内に設置したカリキュラム作成チームにおいて、カリキュラム(シラバス、教材等)の検討、

他大学等の人材を含む講師の人選、受講生の募集・選考等を行い、10月よりプレイヤー研修10

名、コーディネーター研修1年目3名の計13名に対する研修を開始した。

・ 講師には本学教員のほか、他大学等、公設試験研究機関、企業等からの人材を配した。

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・ 運営に当たる「事業運営委員会」、「人材育成事務局」会議、「事業化推進タスクフォース」会議の

メンバーには、行政機関、公設試験研究機関、金融機関、企業等から参加を求め、地域のニーズ

が運営に反映されるように配慮した。

・ 本事業を円滑に実施するため、本学地域共同研究センター内に「人材育成事業室」を設置した。

・ 講義・実習は質疑・討論等を通じた双方向性を重視し、演習は個別指導を徹底した。また受講生

との事務連絡体制等を整備した。これらは関係者の意向を踏まえ、実践の中で更に改善を図っ

た。

・ 講義、実習では受講生、講師に各回アンケート調査を実施した。実習の受講生の満足度は概ね

高かったが、講義の難易の評価には個人差が見受けられたため、質問用紙による個別対応も可

能な限り実施した。

・ 講義では、毎回、終了時に講師が小テストを実施し、5段階評価を行い、6割程度理解したと認め

られる3以上を合格とし、実習では、参加態度、修得スキル等を講師が5段階評価し3以上を合格

基準として、合格した者のみ出席扱いとした。

・ ホームページを整備して情報発信、広報及び受講生への連絡の徹底を図った。

・ 付随した活動としては、第1回人材育成シンポジウム「十勝におけるアグリビジネスの未来」を11月

に、特別セミナー「ビジネスモデル演習」を3月に開催した。

・ 最終的に、「80%以上」の講義科目に出席し、所定の実習、演習科目も履修した10名を平成19年

度のプレイヤー研修修了生と認定した。

○ 平成20年度(第2期)

・ プレイヤー研修10名、コーディネーター研修1年目8名、2年目3名、合計21名の受講生に対して5

月から研修を行った。修了要件を明確化するために、講義、実習、演習の1単位を90分と定義した。

なお、この修了要件は選択科目を最少とすると、プレイヤー研修60単位(1年間)、コーディネータ

ー研修98単位(2年間)となる。

・ 講師、受講生へのアンケート調査の結果を踏まえ継続してカリキュラムの改善を図った。

・ 講師には前年度同様、本学のほか外部機関から適切な人材を迎え、運営にかかる各会議にも地

域の関係機関等から参加を得て計画通りに開催した。

・ 本年度新たに「帯広畜産大学・北見工業大学合同特別セミナー」を9月に開催した。

・ 第2回人材育成シンポジウム「食材の宝庫から人材の宝庫へ」を北見工業大学、鹿児島大学と連

携して10月に開催した。

・ プレイヤー研修については前年度同様の基準により、最終的に9名を修了生と認定した。コーデ

ィネーター研修については、同様に講義等の成績及び出席要件を満たし、かつ「ビジネスモデ

ル」や「新事業プロジェクト案」(以下、「企画案」)が事業化推進タスクフォースに合格と判断された

2名を2年間の研修の修了生と認定した。

○ 平成21年度(第3期)

・ プレイヤー研修12名、コーディネーター研修1年目5名、2年目8名、研修期間延長2名、合計27名

の受講生に対して5月から研修を行った。第2期末に改善した新規カリキュラムの修了要件では、

選択科目を最少とすると、プレイヤー研修54単位(1年間)、コーディネーター研修90単位(2年間)

となる。

・ 第2回「帯広畜産大学・北見工業大学合同特別セミナー」を7月に開催した。

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2.中間目標の達成度

(1)養成人数以外(拠点形成)の中間目標と実績

○ 養成する人材像と到達レベル

本事業は、1 年間の「プレイヤー研修」と 2 年間の「コーディネーター研修」の 2 コースで実施し

ており、申請時に目指した各コースの養成する人材像と到達レベルは以下の通りである。

* プレイヤー研修【アグリバイオ産業従事者】

・ 養成人材像:食品製造等を行う地元中小企業や、業種転換を検討している建設土木業者の

従業員を対象にアグリバイオ産業の現場を担う人材を育成する。

・ 到達レベル:食に関する基礎的知識や応用知識の獲得。特に食品素材となる農畜産物を始

めとするバイオマス理解のための生物学の基礎的知識、ヒトへの健康被害を防止する

ための食品衛生及びリスク分析に関する考え方、環境及び経済的に持続可能な地域

の発展を目指した基礎的知識を習得させ、生産現場のリーダーとして諸課題につい

て自ら考え対処できる能力を涵養する。

* コーディネーター研修【アグリバイオ産業の中で新規事業を目指す中核的人材】

・ 養成人材像:大学や公的試験研究機関のシーズと地元企業のニーズを結びつけて、新規

事業の創造に資するコーディネート能力を有する人材を育成する。研究成果と産業

界との連携を図り、十勝管内で生産される農畜産物やバイオマスなどの地域資源に

対して、より高次な付加価値の高い製品への転換を目指した企画案を企画・推進でき

る人材を育成する。

・ 到達レベル:消費者及び生産者、両者の視点から農畜産物を始めとするバイオマスの多段

階利用に関する重要性を理解し、これに伴う環境アセスメント及び食品のリスク・コミュ

ニケーションの基礎的手法を習得する。これらを基礎として、個々に設定した企画案

を作成し、口頭発表を実施させて、コーディネーターとして新事業創造に向けての企

画調整能力と行動力を涵養する。

○ 達成状況

本事業では、これまでプレイヤー19 名、コーディネーター2 名の修了を認定した。上記目標に対

する達成状況は以下の通りである。

また、具体的な活躍事例の詳細は 15P(ページ)【Ⅲ4.(1)有用性】で後述する。

* プレイヤー人材育成の成果

これまで、農業関係者、食品製造業者、バイオマス利用業者、飼料製造業者、アグリバイオ産

業参入を目指す建設業・サービス業経営者など、幅広い人材を受け入れた。修了生は上記到達

レベルを目指すカリキュラムにより、習得した知識技能を活かして、それぞれが所属企業において、

アグリバイオ関連事業の中心的役割を担っている。

* コーディネーター人材育成の成果

これまで、報道関係者、IT関連業者、農業関係者、食品製造業者、バイオマス利用業者など、

幅広い人材を受け入れた。修了生は、上記到達レベルを目指したカリキュラムにより習得した知識

技能を活かして、それぞれが所属企業を中心としたアグリバイオ関連事業の企画・推進に取り組

み、成果を挙げている。

* その他の成果

本事業の現時点における成果としては、上記以外に以下の点が挙げられる。

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8

・ アグリバイオ人材育成に関するカリキュラムの構築 (9P に後述)

・ 上記カリキュラムにおけるテキストの整備と研修手法の確立 (9-11P・22P に後述)

・ 修了生による同窓会組織を中心とした人的ネットワークの形成 (15P に後述)

・ 社会人教育の重要性・必要性について学内及び学外への周知 (17Pに後述)

・ 地域における産学官が連携した事業推進体制の構築 (19Pに後述)

(2)養成人数の中間目標と実績 (3年目)

※「実績」は、成果報告書作成時点で既に修了している実績数(予定は含まない)

※「予定」は、成果報告書作成時点では修了していないが、3年度目末までに修了する予定数

3.人材養成の実施内容

(1)人材養成の手法・方法と実施結果

○ 実施体制

以下に、本事業の実施体制の図を示す。

「事業運営委員会」を頂点に「人材育成事業事務局」と「事業化推進タスクフォース」からなる実施

体制を構築し、地域の多様なニーズを十分に運営に反映させるとともに関係機関の連携の強化に

も資するものとし、また講師には本学のほか多くの分野の外部講師を迎え、幅広い知識技能を教授

する実践的なカリキュラムを実施できる体制を整えた。

本事業の実施体制を以下に示す。

養成修了者数(3年目) 十勝アグリバイオ産業創出

のための人材育成 実 績※ 予 定※ 計(実績+予定) 目標(3年目)

プレイヤー研修 19人 13人 32人 15人

コーディネーター研修 2人 9人 11人 5人

合 計 21人 22人 43人 20人

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それぞれの組織の詳細は以下の通りである。

* 「事業運営委員会」

本学、帯広市・北海道十勝支庁・(財)十勝圏振興機構(以下、「とかち財団」)・スクラム十勝(本

学を中心とした管内6公設試験機関の連携協議体)・金融機関・帯広商工会議所・中小企業家同

友会等により構成している。この委員会が事業全体を統括することとし、事業目標、推進体制、進

捗状況、成果を制定・管理している。本学が事業運営の中心的役割を果たしながら、特に帯広市

及びとかち財団とは充分な連携をとり、地域再生に向けた人材育成を目指している。

* 「人材育成事業事務局及びカリキュラム作成チーム」

人材育成事業事務局は、受講生の募集、応募者の選考、プレイヤー研修生の修了認定の他、

事務局内にカリキュラム作成チームを設け、カリキュラム内容や講師の決定等を行っている。帯広

市やとかち財団の職員も参画するカリキュラム作成チームでは、帯広市産業クラスター研究会やヒ

ューマンネット十勝※などの人的ネットワークを通して、地域産業が抱えるニーズの把握を心掛け、

新産業創出を意識したカリキュラムの構成に努めている。

また、この事業を円滑に取り進めるため、平成19年10月に本学地域共同研究センター内に、

「人材育成事業室」を設置した。室の体制としては、専任の業務担当者1名、補助者2名の他、金

融機関から事業渉外担当役として1名の派遣を受けて、計4名が研究代表者及び人材育成事業

事務局の方針のもと、業務を実行する体制を構築した。

(※「ヒューマンネット十勝」:管内の様々な組織、個人の連携を推進するための交流組織)

* 「事業化推進タスクフォース」

事業化推進タスクフォースは、主に外部の有識者で構成し、コーディネーター研修生の選考、

企画案の評価及び指導並びに修了評価を行う。事業全体についても助言及び評価する。事業化

推進タスクフォースは、コーディネーター研修生の企画案について、運営、管理、予算確保、事業

化、商品化等の観点から、定期的な会議開催時に受講生への指導と助言を行っている。また、ま

た企画案の最終評価も行う。

上記3組織の体制図を以下に示す。

外部機関からの協力者は以下の通りである。

【人材育成事業事務局】

(構成員は、受講生の募集・選考・修了評価、予

算管理及び事業実施のための関係事務にかかる

決定を行う)

《カリキュラム作成チーム》

(構成員は、事業の講義カリキュラムの作成及

び内容充実のための変更について決定する)

【事業運営委員会】

(事業運営全体の決定機関としての委員会)

【事業化推進タスクフォース】

(構成員は、コーディネーター研修生の選

考、企画案の評価及び指導並びに修了評

価業務を行う。事業全体について助言及び

評価する。)

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○ 委員会等の実施状況の概要

平成19年度から現在に至るまでの、委員会等の開催状況を以下の表に示す。

平成19年度は、事業運営委員会を1回、事業化推進タスクフォース会議を3回、人材育成事業事務

局会議を4回開催した。平成20年度は、事業運営委員会を1回、事業化推進タスクフォース会議を4

回、人材育成事業事務局会議を5回開催した。平成21年度は6月末日現在で、事業運営委員会を

1回、事業化推進タスクフォース会議を1回、人材育成事業事務局会議を1回開催し、各上記所掌

にかかる審議、決定を行った。

○ 実施状況

実施日程 委員会等開催 受講生募集選考・講義等実施

平成19年7月27日 第1回事業運営委員会 企業への事業説明開始

平成19年8月6日

第1回人材育成事業事務局会議・カリ

キュラム作成チーム会議

(以下、本表においては、「人材育成

事業事務局会議」に省略)

平成19年9月7日~ 平成19年度受講生募集

平成19年9月20日

平成19年9月27日 第2回人材育成事業事務局会議

第1回事業化推進タスクフォース会議

平成19年9月30日 平成19年度受講生決定通知

平成19年10月11日 平成19年度開講式

オープニングセミナー

平成19年10月17日 平成19年度講義等開始

平成19年11月29日 第1回人材育成シンポジウム

平成19年12月11日 第2回事業化推進タスクフォース会議

第3回人材育成事業事務局会議

平成19年12月25日 第4回人材育成事業事務局会議

平成20年3月8日 平成19年度特別セミナー

(ビジネスモデル演習)

平成20年3月13日 平成19年度開催講義等終了

平成20年3月14日 第3回事業化推進タスクフォース会議 平成19年度修了生内定

平成20年3月21日 平成19年度修了式

平成20年4月9日 第1回事業運営委員会

事務局・タスクフォース構成員 事業講師(講義・実習・演習他)

小樽商科大学 1名

北見工業大学 1名

釧路工業高等専門学校 1名

公設試験機関 3名

民間企業 6名

金融機関 1名

小樽商科大学 3名

北見工業大学 3名

釧路工業高等専門学校 3名

室蘭工業大学 1名

公設試験機関 2名

民間企業 7名

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平成20年4月15日~ 平成20年度受講生募集

平成20年5月8日

平成20年5月14日 第1回人材育成事業事務局会議

第1回事業化推進タスクフォース会議

平成20年5月15日 平成20年度受講生決定通知

平成20年5月22日 平成20年度開講式

オープニングセミナー

平成20年5月28日 平成20年度コーディネーター

研修講義等開始

平成20年5月29日 平成20年度プレイヤー研修

講義等開始

平成20年8月19日 第2回人材育成事業事務局会議

平成20年9月6-7日 第1回帯広畜産大学・北見工業

大学合同特別セミナー

平成20年9月25日 第2回事業化推進タスクフォース会議

平成20年10月31日 第2回人材育成シンポジウム

平成20年11月20日 第3回人材育成事業事務局会議

第3回事業化推進タスクフォース会議

平成20年12月18日 第4回人材育成事業事務局会議

平成21年3月10日 第5回人材育成事業事務局会議 平成20年度開催講義等終了

第4回事業化推進タスクフォース会議 平成20年度修了生内定

平成21年3月17日 平成20年度修了式

平成21年4月1日~ 平成21年度受講生募集

平成21年4月15日

平成21年4月22日 第1回事業運営委員会

第1回人材育成事業事務局会議

第1回事業化推進タスクフォース会議

平成21年4月24日 平成21年度受講生決定通知

平成21年5月14日 平成21年度開講式

オープニングセミナー

平成21年5月20日 平成21年度プレイヤー研修

講義等開始

平成21年5月21日 平成21年度コーディネーター

研修講義等開始

平成21年7月3-4日 第2回帯広畜産大学・北見工業

大学合同特別セミナー

○ 研修カリキュラム(シラバス・教材等)の作成

カリキュラムは、アグリバイオ、エネルギー、食品製造、コミュニケーションなどの分野の科目をバラン

スよく、限られた時間内で効率的に学べるように作成した。

コーディネーター・プレイヤーの両研修共に、基本科目を設け、今日的な基礎知識を習得させてい

る。各研修が目指す人材像に受講生を近づけ、かつ各々の受講生に合ったカリキュラムが編成できる

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基本科目

コミュニケーション分野

アグリバイオ産業分野

食品製造分野

エネルギー分野

受講生の研修イメージ

コミュニケーション分野

アグリバイオ産業分野

企業経営分野

食品製造分野

エネルギー分野

アグリバイオ産業分野 食品製造分野

コミュニケーション分野 エネルギー分野選択科目

プレイヤー研修 コーディネーター研修

「企画案」の演習

コーディネーター研修受講パターン1

2研修受講パターン

コー ディネーター研修受講パターン2

プレイヤー研修受講パターン1

プレイヤー研修受講パターン2

よう整備を続けている。

平成19年度は、必修講義13科目・選択講義4科目・選択実習8科目・選択演習2科目、

平成20年度は、必修講義28科目・選択講義5科目・選択実習10科目・選択演習2科目、

平成21年度は、基本講義33科目・選択講義6科目・選択実習12科目・選択演習2科目

について整備した。

受講生の研修イメージ(基本科目・選択科目・演習科目)を以下に示す。

○ 各研修の取組内容1(習得すべき知識・スキルと到達レベルについて)

プレイヤーおよびコーディネーター研修コース共に、主に講師が作成した教材を用いて実施され

る。講義では内容の説明・解説に加えて、受講生と講師とのコミュニケーション(講義内ディスカッショ

ンや質問用紙)を通じて、講師は受講生の興味や疑問に応えている。受講生の理解度は、小テスト

を実施し、講師がその到達レベルを評価する。

* 「プレイヤー」研修

プレイヤー研修では、環境及び経済的に持続可能な地域の発展を目指して、環境科学、バイ

オマス利用論(バイオマス関連エネルギーの推進)の基礎を習得することを目指している。

講義終了後にも、講義内で受講生から発された疑問に講師が調査して応えるケース、専門性

の高いコーディネーター研修の講義を聴講するケース等、研修期間を通じて受講生のニーズに

合わせた指導を行っている。

* 「コーディネーター」研修

コーディネーター研修の講義については、前述プレイヤー研修より専門性を高く設定し、また事

業化を想定して知的財産管理やMOTの手法についても理解できるようにする。さらに希望に応じ

て、修士の学位が取得できる程度まで教育することを目指している。

コーディネーター研修では、個別指導を中心とした演習で、受講生が持ち寄る課題に合わせて

テキスト以外の教材も指導講師が選択する。演習として受講生に、関連イベント(講習会・展示会

等)参加による情報収集、関連施設の見学、関連市場の調査、試験研究によるデータ取得等を指

示する場合もあり、受講生は課題解決型の企画案の完成に向けて種々の取組みを行うこととなる。

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この演習の進捗状況は随時指導講師が評価する。さらに事業化推進タスクフォースは、受講生が

立案する企画案を、指導講師立ち会いの下、事業企画の運営、管理、予算確保、事業化、商品

化等の観点から評価する。

○ 各研修の取組内容2(機材の活用状況について)

* 「プレイヤー」研修

本事業で導入された機材は両研修において、プロジェクターや液晶モニターなどのように講義

の都度使用するものを除き、その多くは専門的な加工技術や分析技術を学ぶことを目的とする実

習で活用されている。十勝産の原料を使い付加価値の高い加工品の製造・商品化を想定した「据

置式真空包装機」・「パスタマシーン」・「カラーラベルプリンター」の導入、また、食の安全確保を技

術的・意識的に習得するための「リアルタイム濁度計」や「て・きれいき(手の消毒器)」といった機

材も実習に合わせて導入している。さらに、環境問題を学ぶ際には、水道法の改訂に合わせ、現

場の検査業務担当者が扱う機材と同等レベルの性能を持つ「全有機炭素計」も導入するなど、1

年間のプレイヤー研修生にも研修期間を通じて機会を設け、後にアグリバイオ産業の現場を担う

人材として、様々な視点から地域の課題を認識できるよう、効果的に機材を導入し活用している。

* 「コーディネーター」研修

2年間のコーディネーター研修では、前述のように両研修での使用を目的として導入された機

材の他に、研修特有の演習及び個別指導に必要な機材の導入も行ってきた。企画案「古紙のバ

イオエタノール化」に取り組む受講生の試験研究用には「微生物培養装置」を導入している。また

平成21年度は、実習で導入した「小型アイスクリームパステライザー」等を活用して、高付加価値

化・商品化に取り組む意欲の高い受講生が、導入機材を効率よく活用している。

○ 各研修の募集・選考方法

* 各研修共通事項

両研修の募集は、新年度研修開講の約1ヶ月前から、専用ホームページ、帯広市の広報、新聞

などを媒体に行っている。

応募書類は、志願書、履歴書、志望動機、推薦書の4種である。(但しコーディネーター応募者

には「事業案企画書」の提出も加える。)選考は人材育成事業事務局が行っており、受講生として

の資質についても十分に考慮して選考している。募集にあたり、事業渉外担当役(帯広信用金庫

派遣・人材育成事業室員)が事前に応募者の企業を訪問し、事業説明を行い、所属責任者の十分

な理解が得られていることを確認している。

応募条件として両研修とも、講義の「80%以上」に出席可能な者としている。

* 「プレイヤー」研修

新規就農希望者、新規食関連産業参画希望者及び建設業等からの異業種転換希望者、農・

食関連企業における企画担当候補者を想定し募集活動を行った。

* 「コーディネーター」研修

農業・食品加工関連企業等の研究員、中間管理職者、企画部門経験者、経営者、建設土木業

から新事業を展開する企業の中間管理職者、経営者、地域の牽引的農業者、地方公務員、団体

職員、プレイヤー修了生でコーディネーターの資質を有する者などを想定し、募集活動を行った。

この中には、平成19年度・平成20年度プレイヤー修了生も含まれている。

コーディネーター研修では、企画案の評価も修了要件に含まれることから、事業渉外担当役が、

本人および上司との面会を重ね、企画案の選定に関し十分な説明を実施した後、「事業案企画

書」として受け取っている。

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○ 各研修の選考結果

前述の方法で募集を行ったところ、両研修ともに定員を大幅に上回る応募があり、それぞれ選考

した後、下記の通り受け入れた。

* 「プレイヤー」研修

年度 募集定員 応募者 合格者

平成19年度 5名 10名 10名

平成20年度 5名 10名 10名

平成21年度 5名 12名 12名

* 「コーディネーター」研修

年 度 募集定員 応募者 合格者 備 考

平成19年度 若干名 3名 3名 募集予定はなかったが3名受入れした。

平成20年度 5名 8名 8名 うち19年度プレイヤー修了生から3名

平成21年度 5名 5名 5名 うち20年度プレイヤー修了生から3名

なお、受講開始時の受講生の所属業種別内訳を以下の表に示す。

所属業種 平成19年度

(第1期)

平成20年度

(第2期)

平成21年度

(第3期)

農業・食品関連製造 6名 11名 9名

バイオマス利用・製造研究 1名 4名

IT関連 2名

飼料・農産物販売 2名

団体職員等 1名 2名

報道機関 1名

土木・建設関係 2名 2名

自動車学校 1名

印刷業 2名

環境リサイクル 2名

(2)養成対象者の到達度評価の仕組みと実施結果

○ 到達度評価の方法

両研修コースでは、質疑応答や討論を活発化させて双方向性の研修となるよう講師に依頼してお

り、受講生の多様な教育ニーズに応えることに努めている。同時に、講師は受講生について、研修

科目の知識の習得状況及びスキルを測定するため、到達度の評価を行う。

講義の場合、講師は講義終了前に毎回小テストを実施する。小テストの内容は、当日講師が実施

する講義内容から出題され、採点は講師によって行われる。合格基準は5段階で3以上(6割程度)の

理解があることとし、受講生はこの小テストに合格して初めて受講科目の知識の習得を認められると

同時に「講義に出席した」と認められる。

また実習の場合、小テストは行わず、講師が受講生の技術の習得状況及び真摯な参加態度など

を総合的に判断して5段階評価を行い、3以上で受講生は「実習に出席した」と認められる。

また、演習(コーディネーター研修のみ)の場合、受講生個別の企画案によって演習内容も多岐

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に渡るため、受講生が毎回提出する、講師確認済みの演習報告書をもって「演習に出席した」と認

められる。さらに、修了年度には演習で作成した企画案の口頭発表を行い、事業化推進タスクフォ

ース構成員の2/3以上の「修了可」の評価を受けることが修了要件ともなっている。

○ 到達度評価の実施結果1(5段階評価)

前述のような方法で評価された受講生の到達度評価は、プレイヤー研修生で平成19年度平均4.6

(標準偏差:0.4)、平成20年度平均4.7(標準偏差:0.3)、コーディネーター研修生で平成19年度平

均4.4(標準偏差:0.4)、平成20年度平均4.5(標準偏差:0.4)であった。

前述の評価基準により、修了判定した結果を以下の表に示す。

修了要件の達成状況

平成19年度 平成20年度 十勝アグリバイオ産業

創出のための人材育成 達成者数 未達成者数 達成者数 未達成者数

プレイヤー研修 10名 0名 9名 1名

コーディネーター研修 ― ― 2名 1名

平成19年度はプレイヤー研修生10名全員が、修了要件を満たして研修を修了した。

平成20年度はプレイヤー研修生9名及びコーディネーター研修生2名が評価基準を達成して修了し

たが、両研修で1名ずつ計2名が出席数の不足で研修期間内に修了要件を満たすことができなかった。

この2名は、「他産業からの多角経営を目指す異業種転換希望者」と「IT関連事業者」である。前者は、

自動車学校の経営資源を活用して新たに地鶏の飼育と商品化を行い、地元と一体となって地域活性

化に取り組んでいる。後者は、帯広市中心街の活性化を目指す事業の核(事務局長)として、平成20

年度より各種イベントを企画・運営している。両者ともに地域活性化に取り組む事業が多忙となり、本研

修への出席が困難となった。そこで、本人の継続意思を確認し、さらに地域再生に関わる業務への参

画であることに鑑みて、事業化推進タスクフォース、人材育成事業事務局で、最長1年間の継続が認め

られた。この2名は平成21年度の繁忙期前に、早期に修了要件を満たすべく積極的に研修している。

(3)人材養成システムの改善状況(被養成者の評価等の反映)

○ 養成プログラムに対する評価の仕組み

本事業では、養成プログラム(カリキュラムの内容や講義等の講師の決定)の改善・検討を行う「人

材育成事業事務局及びカリキュラム作成チーム」と、養成プログラムを評価し意見する「事業化推進

タスクフォース」を組織している。

人材育成事業事務局は、人材育成事業室員が実際の講義や実習に立会って得た研修評価や、

受講生の所属組織を直接訪問して収集した意見、また、アンケートによる研修効果等の調査結果を、

養成プログラムの改善に反映させてきた。

以下にアンケートによる改善例を示す。アンケートは、講義終了直後に受講生と講師に対して実

施した「講義満足度」に関するアンケート2種(ア)(イ)と、全研修期間修了後に受講生に対して実施

した「研修満足度」に関するアンケート1種(ウ)について実施した。

* 実施しているアンケート

(ア)受講生の講義満足度のアンケート:講義等終了毎に受講生が回答

(イ)講師の講義満足度のアンケート :講義等終了毎に講師が回答

(ウ)受講生の研修満足度のアンケート:研修を修了した時に受講生が回答

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(講義満足度)

(実施回)

* アンケートによる「講義満足度」の結果概要

受講生に対しては、講義等の内容や講師の説明、自己の取組みなど、8 項目について 4 段階

(満足 2 段階・不満足 2 段階)の回答を得た。また、講師に対しては、講義等に関する要望の他、

受講生の講義等に対する理解度及び全体を通じて気付いた点など、5 項目について 4 段階の回

答を得た。この集計値を、「講義満足度」(「実習満足度」を含む)として、次年度カリキュラム作成

時の改善材料の一つとした。

・ 平成 19 年度の講義満足度の平均値は、受講生 91%、講師 88%。

・ 平成 20 年度の講義満足度の平均値は、受講生 94%(3%上昇)、講師 95%(7%上昇)

例として下のグラフに、平成 19 年度の受講生の「講義満足度」の推移を示す。

また、平成21年度はのアンケートの集計方法を変更して、受講生別に講義満足度を調査し、所

属業種や年齢等の視点から、最適な養成プログラムの構築に努める。

* 「講義満足度」の「講義内容」への反映事例

平成 19 年度は受講生の講義満足度が目立って低い科目が 2 科目あった(上記グラフ参照、6・

25 回)。これは、本学獣医学科の学生に実施する講義と同程度に専門的な内容であったため、質

的・量的にも理解が困難であり満足感が得られなかったものと考えられた。講義修了後、直ちに講

師にこの結果を伝えて、講義内容を改善した結果、同じ講師による次回の講義満足度は大幅に

改善された。

・ (初回)「食品衛生学(2 回目)」57%、「人畜共通感染症の現状と課題」59%。

・ (次回)「食品衛生学実習」91%(37%上昇)、「(次年度)人畜共通感染症の現状と課題」

83%(24%上昇)

* 「講義満足度」の「養成プログラム」への反映事例

講義の満足度の高い科目について分析し養成プログラムに反映させた。

・ 平成 19 年度、講義満足度が高かった実習(平均 96%)を、翌年度、7科目から 10 科目に増

やした。

・ 平成 19 年度講義「流通学」で行った、「食糧不足の世界事情と、付加価値の高い農産物生

産のジレンマ」についての意見交換で受講生から大きな反響があり、翌年度は受講生間のデ

ィスカッション及びコミュニケーションスキルを育成するための既設科目を 2 単位から 10 単位

に拡大して実施した。

・ 平成 21 年度は受講生(農業・食品製造業等)における業務閑散期(1~2 月)に特別講義を

設けることとした。この期間に、2 期連続で講義満足度が高く、2 回目実施の要望があった「対

人関係論(2 回目)」を実施する。

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* 全研修期間修了時の「研修満足度」の結果

研修を修了してから実施したアンケートでは、個人的基準以外に組織的基準の双方の視点か

ら受講科目の満足度を答える内容とした。さらに、研修を通じて所属企業への伝播効果や受講生

の行動変化などの様子も調査した。

この結果、下記に示すような科目に、研修満足度が高い傾向が見出された。

・ 「受講生自身の所属業種に関する専門的科目」の満足度が高い。

・ 「社会人としてのコミュニケーションを学ぶ科目」の満足度が高い。

・ 「地域的、今日的課題である生物資源の多段階利用に関するシステムの現場(肉骨粉製造

やバイオマスエネルギー製造)を見学・体験する科目」の満足度が高い。

また、このアンケートの結果から、講義後に講師から受講生へ9件、受講生から講師へは8件の

質疑応答等があったことが判明した。具体には、「遺伝子組換え作物の安全性と社会的受容」の

講義後に、自給飼料で畜産業を営んでいる受講生が、講師のもとで飼料用大豆種子の分析を行

い、遺伝子組換えでないことを確認した。また、「HACCP 実習」の後では、講師が受講生所属の

チーズ工房を訪問し業界の情報交換を行っていた。

* 「研修満足度」の「講義内容」及び「養成プログラム」への反映事例

平成 20 年度の「施設見学実習」のように、受講生にとって研修前後の価値観が変わるような科

目を効果的にカリキュラムに導入し、自己学習の増大にも繋げるべく取り組んでいる。この実習で

は、通常、一般人が見学する機会のない施設や、受講生の所属組織を訪問するなど、非日常的

な体験から「目からウロコ」の印象が強く残り満足度が高かったと推察された。

今後も平成 20 年度のアンケート結果を反映し、研修満足度の向上を目指して、カリキュラムの

改善を続けていく。具体には、平成 21 年度の「バイオマスエネルギー実習」で、今年竣工した北

海道バイオエタノール㈱・十勝清水工場の見学を予定している。

(4)養成修了人材が地域で活躍する仕組み

平成21年5月に、修了生による修了生(所属組織等含む)のための、新事業進出や異業種交流を企

画・推進する団体「十勝アグリバイオ産業創出のための人材育成同窓会」(以下、「同窓会」)が設立さ

れた。この同窓会では、アグリバイオに関するプロジェクトチームを作り、産学官を交えて事業に取り組

んでいる。

また、平成19年度本学を中心に産学官及び金融で構成した「十勝事業化支援評価委員会」(以下、

「評価委員会」)が組織され、地域における事業化の支援を開始している。本事業の修了生が事業化

に取り組む際には、積極的にこの評価委員会を活用することで、地域において事業化に向けた支援を

受けられる体制が整えられている。

この同窓会と評価委員会の両組織が連携することにより、農業、流通、バイオ産業における知的レベ

ルを向上させ、新規事業や新規アグリバイオ産業の創出を促進することが期待される。修了生の一部

は既に新規事業参入に向けて活動を開始し、本年6月には帯広市の地域活性化事業「ものづくり総合

支援補助金」に申請し、採択された。このように、修了生が地域で活躍する仕組みが確立されつつあ

る。

4.地域再生人材養成ユニットの有効性

(1)有用性

○ 養成修了者の活躍状況

本事業の実施体制と養成プログラムは、地域との情報交換やアンケート等を踏まえた毎年の改善

により、地域ニーズを反映したものとなっており、今後も更なる改善に努めていく。

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また、本事業の実施による効果として、これまで地域共同研究センターではあまり多くなかった土木

建設関連企業や北見・根釧地域からの共同研究・技術相談が、本事業の受講生等を介して実施さ

れ始めており、これは地域の実体に即した課題に対して、大学の知やネットワークさらに人材育成へ

の期待が従来に増して高まっていると推察される。

プレイヤー修了生は研修期間を終えて、アグリバイオ産業の生産現場におけるリーダーとして、獲

得した知識や人的ネットワークを活用して課題解決に向け活動している。また、コーディネーター修

了生は、研修中に作成した企画案をもとに取り組みを継続し、さらに新たなプロジェクトの企画・実施

やその調整に当たることで、アグリバイオ産業関連分野で地域の活性化に貢献している。両研修とも、

修了生の地元への定着率及び就職率は 100%である。

また、事業渉外担当役らは、修了生本人や所属企業に対して、継続して本事業の全体的評価や

新たな課題について情報交換を行い、フォローアップに努めている。こうした取組みからも、地域に

おいても本事業の評価が十分に高まってきていることを実感している。

各研修における修了生の活躍事例を以下に示す。

* 活躍事例 1

コーディネーター研修を平成 21 年 3 月に修了した新聞社勤務の受講生は、同社が取り組む「古紙

からバイオエタノールを生産し、新聞配達のバイク燃料として使用する」という企画案について、ビジネ

スモデル演習のテーマとして取り組み、古紙のセルロースを効率良く分解できる有望な微生物を確保

する研究において一定の成果を上げた。今後、実現に向けては産学官の連携による更なる課題解決

に向けた様々な取り組みが必要なことから、同社における本プロジェクトの中心的担当者として、競争

的資金の申請等を積極的に行っているところである。

* 活躍事例 2

コーディネーター研修を平成 21 年 3 月に修了した IT 関係企業を経営する受講生は、ビジネスモ

デル演習における本人提案の企画案「有機農産物の販売ネットワーク形成」に積極的に取り組んでお

り、在籍中には北海道の地域政策総合補助金を獲得して事業を推進した。修了後の現在は、保育所

送迎の母親をターゲットとした有機農産物の移動販売事業を立ち上げ、成果を上げている。また、この

受講生は本事業の受講生及び修了生の所属企業を中心としたビジネスマッチング事業を企画し、現

在実施準備を進めている。

* 活躍事例 3

プレイヤー研修を平成 20 年 3 月修了した穀物販売企業勤務の受講生は、受講生仲間と取り組む

「帯広まちなか歩行者天国」で食・環境部会副部会長を務め、十勝産食材を 100%使用したバーガー

を同イベントで企画・販売し、安全安心な十勝産食材を通じて、十勝の「食」の素晴らしさを伝える実感

を地元紙に語っている。毎週日曜日に開催されるこのイベントでは毎回、瞬く間に完売する人気商品と

なっている。

* 活躍事例 4

プレイヤー研修を平成 20 年 3 月修了した穀物販売企業勤務の受講生は、所属企業が新たに取り

組む小麦製粉事業の社内プロジェクトリーダーとして、施設の立上げからネーミング、広告デザイン等

の企画について中心的役割を担い、本年5月に製粉工場が稼働したところである。今後は、製造品の

営業展開等について更なる活躍が期待されている。

* 活躍事例 5

プレイヤー研修を平成 20 年 3 月に修了した、養豚からレストラン経営までを行う企業勤務の受講生

は、異業種からの参入であるが、基礎的知識の習得を目指して本研修に参加した。終了後、所属企業

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での養豚、加工販売、レストラン経営等の業態推進に貢献し、現在は経営全般の統括責任者として活

躍している。

* 活躍事例 6

プレイヤー研修を平成 20 年 3 月に修了した養豚・加工販売を行う企業に勤務する受講生は、研修

修了後、講師の紹介を通じて、自社の畜産物加工食品の関西圏への販路拡大に成功した。研修で学

んだ知識と、本研修の講師、受講生等の人的ネットワークを上手く活用し、所属企業の事業推進に貢

献している。

* 活躍事例 7

プレイヤー研修を平成 20 年 3 月に修了した農業・農産物加工品販売を行っている受講生は、昨年

度東京で実施された国産農産物を対象とした商談会に参加し、大豆およびその加工品の販売促進を

進めた。この商談会の経験を活かして、海外における商談会に参加し、十勝産の安全な農産物を PR

するなど、活動の範囲を国内から海外へと広げている。

(2)波及効果

本事業の受講生は、農業関係者、食品製造業者、バイオマス利用業者、飼料製造業者、アグリバイ

オ産業参入を目指すサービス業経営者など多様な職種からの人材であり、本事業のシラバス・カリキュ

ラム及び評価の方法とシステムは、それら受講生の多様な教育ニーズに対応できるよう改善してきた。

これらはまだ改善の余地はあるものの、他地域でも利用可能と思われる。さらに、整備したテキストは、

本学での他の人材育成事業(『社会人の学び直しニーズ対応教育推進プログラム 食品衛生にかかわ

る人材育成プログラム』」(以下、『学び直し事業』)でも5科目を共通に利用しており、汎用化を目指して

いる。すなわち、本養成プログラムは、農商工連携による地域活性化を目指す畑作・酪農地域へ十分

に移転し得る。

更に、このような地域産業を担う人材育成の目的のもとに地域の各機関が連携協力する体制を構築

し、拠点を形成するための手法は、運営に関わる機関間の情報ネットワークを密にし、課題に対する認

識を共有させる効果も生んでいる。また、地域の人材を有効活用するシステムを形成する意味でも、き

わめて有効である。農商工連携による地域振興の促進や、行政をも巻き込んだクラスター形成による地

域資源の活用促進が重要性を増している今日、本事業の手法は今後一層その強化が求められるもの

と考えられる。

(3)情報発信の状況

○ 啓蒙・宣伝活動を通じた情報発信

本事業に関する受講生募集、事業内容、実施報告についてはホームページ

(http://www.obihiro.ac.jp/~crcenter/jinzai/index.html)を作成し、公開している。また、事業渉外担

当役を中心として、地元企業等へ直接訪問し、情報の収集及び発信に努めている。

その他、各種イベント等でも積極的に情報発信を行っている。(主な例は以下の通り。)

* 「人材育成シンポジウム」

毎年1回、公開シンポジウムを実施しており、第1回は平成19年11月に開催し、事業の周知、啓

蒙を行った。第2回は平成20年10月に、地域再生人材創出拠点の形成プログラムを実施している

鹿児島大学及び北見工業大学から講演者を招いて実施した。なお、参集対象は一般市民のみな

らず、スクラム十勝他関係機関及び『都市エリア産官学連携促進事業(十勝エリア)』(以下、『都市

エリア』)参画組織を対象にも案内し、多数の参加を得ている。第3回は平成22年2月に実施予定

である。

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*「特別セミナー(ビジネスモデル演習)」

特別セミナーは演習科目「ビジネスモデル演習」の一環として平成19年度に、スクラム十勝他関

係機関及び『都市エリア』参画組織を対象に案内して実施した。このセミナーでは、首都圏の消費

者と流通業者を講師に招き、実習で試作した加工食品を展示し、商品開発のアイディアや企画案

について、セミナー参画の各組織を含めて議論するなど、情報を発信した。

*「帯広畜産大学・北見工業大学合同特別セミナー」

北見工業大学のメーリングリスト「地域再生-JST」を通じて、全国の『地域再生人材創出拠点の

形成』プログラムの人材育成事業関係者に、セミナー開催日程や実施内容、実施結果について

情報発信した。また、平成21年度のセミナーには、足寄町商工会青年部の参加もあり、管内への

事業周知の機会ともなった。

* 地元組織への事業周知活動

管内市町村には事業概要を示した資料を設置・配付し、必要に応じて地元企業に直接連絡を

とり、事業渉外担当役が個別に訪問・事業説明を行い、理解と協力を求めている。

また、帯広市や関係機関、団体等の主催するセミナー等では機会ある毎に、本事業の啓蒙宣

伝活動を行っている。その実施例としては、平成20年8月、北海道中小企業家同友会帯広支部、

第40期中堅幹部学校や同年11月ヒューマンネット十勝での発表等である。

* 帯広商工会議所との情報交換

本事業の認知・期待度を確認・分析し、事業推進を計るため、開始2年目の平成20年9月、帯広

商工会議所(工業委員会)を対象に「農商工連携ニーズ」合同調査を行った。その結果、本事業

のカリキュラムの中では、約3人に2人が興味のある分野として「食品衛生学」もしくは「環境科学」を

挙げた。

本事業への認知度は27%であったが、半数近くが「興味がある」と回答している。以上のように本

事業では、地域ニーズを把握しながら取り組んでいる。今後、更なる情報発信に努めることで認知

度は上昇すると確信している。

* 広報機関への情報提供

本事業の諸活動は、報道機関に度々取り上げられ、度々紹介されている。以下に、平成19年

度から現在までの本事業に関わる報道内容及び件数を示す。

内 容 件 数 報道関係機関

《平成 19 年度》 31

地元金融機関から大学に職員派遣 3 十勝毎日新聞、北海道新聞、時事通信社

平成19年度第1回事業運営委員会 1 十勝毎日新聞

人材育成事業採択・事業開始 6十勝毎日新聞、北海道新聞(2)、日経産業新

聞、日本経済新聞、日本農業新聞

平成 19 年度開講式 4十勝毎日新聞、北海道新聞、日本農業新聞、

日本食糧新聞

食肉加工実習 4十勝毎日新聞、北海道新聞、日本農業新聞、

NHK

人材育成シンポジウム 2 十勝毎日新聞、北海道新聞

コーディネーター研修企画案紹介1 1 十勝毎日新聞

コーディネーター研修企画案紹介2 5 十勝毎日新聞(3)、北海道新聞(2)、

特別セミナー 2 十勝毎日新聞、日本食糧新聞

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平成 19 年度修了式 1 十勝毎日新聞

流通の現場体感 1 十勝毎日新聞

平成 20 年度受講生を募集 1 十勝毎日新聞

《平成 20 年度》 25

平成20年度第1回事業運営委員会 1 十勝毎日新聞

コーディネーター研修生自主研修 1 十勝毎日新聞

平成 20 年度受講生募集開始 2 十勝毎日新聞、帯広市広報

平成 20 年度開講式 3 十勝毎日新聞、文教ニュース、文教速報

コーディネーター研修企画案紹介3 1 十勝毎日新聞

アグリフード EXPO 1 十勝毎日新聞

合同特別セミナー 2 文教ニュース、文教速報

人材育成シンポジウム 9十勝毎日新聞(4)、北海道新聞(2)、日本農業

新聞、日本食糧新聞、帯広市ホームページ

技術開発実習 1 十勝毎日新聞

平成 20 年度修了式 3 十勝毎日新聞、北海道新聞、日本農業新聞

修了式での受講生コメント 1 十勝毎日新聞

《平成 21 年度》 7

平成 21 年度第 1 回運営委員会 1 日本農業新聞

「同窓会」が発足 1 十勝毎日新聞

平成 21 年度開講式 4十勝毎日新聞、北海道新聞、読売新聞、文教

速報

学び直し事業共催の初実習 1 日本農業新聞

5.実施体制・自治体等との連携状況

○ 自治体等との連携状況

帯広市が策定・実施する地域再生計画は、厚生労働省の『パッケージプラン』と本人材育成事業

が2つの柱となり、「食」を中心とした地場産業の振興と雇用の促進を目指している。本人材育成事

業をパッケージプランの上位に位置付けて、両事業の連携効果を最大限に活かせるように、帯広市

と情報交換を行っている。具体には、『パッケージプラン』により新規人材を受け入れた企業に対して、

本事業が「食」に関する課題や疑問の解決に当たる人材をさらに養成することとして、これまでに3社

から受講生4名を受け入れるなど、自治体と民間企業及び本学で十分な連携体制を構築している。

帯広市では、こうした産学官連携により地域産業の活性化を一層推進し、自立的な地域経済を確

立する方策として『帯広リサーチ&ビジネスパーク構想』の実現や、文部科学省と経済産業省が実施

する『地域中核産学官連携拠点』に選定されることを目指すため、帯広地域産学官連携推進会議を

発足し、本事業や関連機関とのさらなる連携強化を図っているところである。

○ 『都市エリア産学官連携促進事業(一般型)』(文科省、平成17-19年)との連携

『都市エリア』は、とかち財団を中核機関とし、本学がコア研究機関として実施したものであるが、こ

の事業に参画した企業2社より受講生3名を本事業で受け入れている。

○ 北海道中小企業家同友会帯広支部との連携

同支部では、全国中小企業団体中央会が募集した『農商工連携等人材育成事業』に応募し、テー

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マ名「同友会帯広支部農業経営部会のメンバーを中心とした農業生産者と食品加工、流通、企画デ

ザイン企業等との連携研修」が採択された。本学はこの事業に対して連携協力することになり、随時

本事業のノウハウを提供することとしている。

○ 他大学の人材育成事業との連携

* 北見工業大学との連携

本学と北見工業大学とは両地域共同研究センター間で平成17年3月22日に連携協定を締結し

ている。北見工業大学においては、平成18年度に地域再生人材創出拠点の形成プログラム『新時

代工学的農業クリエーター人材創出プラン』が採択されている。本事業との連携として、人材育成

事業事務局構成員及び講師の派遣を依頼している。また、本学からも北見工業大学の同事業に講

師等を派遣しており、今後も連携協力体制を深めていく。昨年度から、両大学の合同特別セミナー

を企画・開催し、講師等派遣にとどまらず両事業受講生間の連携構築にも力を入れている。こうし

た場を設けることにより、受講生間の交流が促進され、将来的には圏域を超えた異業種交流等の

活性化に資すると考えられる。更に本年度は大学間に設置されたテレビ会議システムを利用した勉

強会等も実施する計画であり、より進展した相互交流を図ることとしている。

* その他の大学との連携

(人材育成シンポジウムで連携)

・『地域再生人材創出拠点の形成 かごしまルネッサンスアカデミー』鹿児島大学

(講師派遣等で連携)

・『産学連携製造中核人材育成事業 高性能食品加工機械製造技術者及び食品製造現場管理

者育成事業』釧路工業高等専門学校

(合同特別セミナーで連携)

・『地域再生人材創出拠点の形成 オホーツクものづくり・ビジネス地域創生塾』東京農業大学生

物産業学部

(今後新たに見込まれる連携)

・『地域再生人材創出拠点の形成 新水産・海洋都市はこだてを支える人材養成』北海道大学

・『イノベーション創出若手研究人材養成 北大パイオニア人材協働育成システムの構築』北海道

大学

○ 本学の他の人材育成事業との連携

本学の『学び直し事業』実施に伴い、食品衛生の専門知識を深めたいと希望する受講生が効果

的に研修することが可能となった。平成21年度は本事業受講生の2名が『学び直し事業』の受講を希

望した。

6.成果の発表状況

(1)養成された人材による成果

【成果発表等】(1件)

・平成20年・札幌:ビジネスマッチングサポートプラザ(主催:中小企業基盤整備機構)参加1社

(2)システム構築に関する成果

【成果発表等】(5件)

・平成19年11月29日 第1回人材育成シンポジウム

・平成20年3月8日 平成19年度特別セミナー

・平成20年9月6-7日 第1回帯広畜産大学・北見工業大学合同特別セミナー

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・平成20年10月31日 第2回人材育成シンポジウム

・平成21年7月3-4日 第2回帯広畜産大学・北見工業大学合同特別セミナー

Ⅳ.今後の計画

1.本プログラム終了時の達成目標について

○ 現時点における目標達成の見込み

本事業は、十勝の農畜産物や種々のバイオマス資源を多段階で利用する方策を学び、環境と調

和した持続的資源循環型社会の構築を目指すプレイヤーとコーディネーターを育成することを目指

し、現時点においては当初計画通りに進捗し、特に養成人数については、3年目までの目標を達成

するのは確実である。

さらに、これまでの経過から、平成23年度(事業5年目)終了時の当初計画にある養成目標人数

(プレイヤー研修で25名・コーディネーター研修で20名)についても、大幅に上回って達成される見

込みである。

2.本プログラム終了後の取組み方針・見通し

○ 実施機関での支援(大学院構想)

本事業は社会人が対象である。本学では、今年度から、さらに社会人等を対象とした「食の安全」

に関する『学び直し事業』と、北海道大学・酪農学園大学・本学が連携して行う『戦略的大学連携支

援事業 食の安全・安心の基盤としての地域拠点型教育研究システムのネットワーク形成』(以下、

『北の3大学連携事業』)が同時に実施され、各事業の連携について協議会を設けて検討を行って

いる。

また『学び直し事業』とは、既に本事業のテキスト活用等、連携を図っており、『北の3大学連携事

業』については、短期集中コース(講義とフィードバック)として地域社会人教育を想定しており、具体

化は次年度以降となるが、本事業のテキスト活用等、連携を図ることとしている。

将来は本事業や上記各事業で構築したカリキュラムやシステムを検証して、社会人も対象としたア

グリバイオ産業を担う人材を育成する教育コースを、既設の大学院畜産学研究科に導入することを

検討している。また,アグリバイオ産業に関わる、またはこれから関わろうとする社会人を対象とした

聴講生制度によるプログラムメニューの提供や,新たな短期研修制度の実施についても検討を行う

こととしている。

○ 実施機関での支援(国際協力)

本学はJICA(国際協力機構)と、畜産分野における国際協力に資する人材の育成と開発途上国へ

の国際貢献を目的とする等、連携協力協定を締結している。これに伴い「食の安全確保のためのコ

ース」等の外国人に対して研修を実施するなど、国外に対しても教育や人材育成を展開している。

平成21年度は、JICAが実施する『日系研修:北海道における高度食品加工技術』に、パラグアイ

から3名の研修員を、地域共同研究センターを中心として受け入れ、本人材事業での一部聴講を認

めている。すなわち「国際貢献」をも視野に入れた「社会人教育」へと深化させることが可能である。

○ 取組み継続のための経費・人員確保の見通し(社会人向けプログラム修了者への支援体制)

本事業の成果を活用して、前述のように取り組みを継続していくに当たっては、当該事業を自立

的に実施するため授業料の徴収が必要である。金額の検討に当たっては、本学の既存の施設設備

や人員を活用することによる必要経費の軽減や、同窓会組織を中心とした基金の設立など、受講生

の負担を軽減する方策を検討したいと考えている。また,人員については、地域共同研究センター

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の組織改革の中で事務職員等スタッフの充実を検討しており、上記事業を継続するための体制整

備の一環と考えている。

Ⅴ.自己評価

1.進捗状況

平成19年度は、プレイヤー研修・コーディネーター研修1年目を実施し、カリキュラムの決定、講義用

テキスト、講義等マニュアルの作成を行った。各委員会の開催は、事業運営委員会1回、事業化推進タ

スクフォース3回、人材育成事業事務局5回を実施した。

平成20年度には、通年型のカリキュラムを完成させ、実習科目を充実させた。各委員会の開催は、

事業運営委員会1回、事業化推進タスクフォース4回、人材育成事業事務局5回を実施した。

平成21年度は6月末現在までのところ、計画通り順調にカリキュラムを実施遂行している。各委員会

の開催は、事業運営委員会1回、事業化推進タスクフォース1回、人材育成事業事務局1回を実施した

ところである。

平成19年養成人数は10名、平成20年度養成人数は11名であった。平成21年度の研修は、プレイヤ

ー研修3期生12名、コーディネーター研修2期生8名および研修期間延長者2名の合計27名で計画通り

実施中である。

このように養成者数は、現段階で、目標を大幅に上回っている。

両研修コースにおいても、成果を発信できるレベルの実績を残しており、人材育成拠点の形成は着

実に進捗していると評価できる。

2.拠点形成手法の妥当性

本研修は、今日的な課題に関する科学的基礎知識を学び、さらに良好な対人関係を構築し得る人

材を養成するもので、地域資源を基盤とした「アグリバイオ産業」の創出を効果的に推進する人材を育

成するため、十勝地域において必要であり、帯広市の地域再生計画における実行者の養成として必須

な研修プログラムである。その根拠は以下の通りである。

・ 本事業では、研修の実施状況を受講生や講師へのアンケート調査結果により評価し、次年度の改

善につなげるフィードバック体制を十分取っている。すなわち、カリキュラム、日程については、過年

度のカリキュラム実施結果を踏まえ、カリキュラム作成チームを中心に講師陣・受講生双方の意見

を収集し、次年度のカリキュラム・日程等の改善へつなげてきた。

・ 教材(テキスト)については、初年度からCD化して管理しており、或いは『学び直し事業』との共通

テキストとして共用し、教材の有効な活用を図ってきた。平成21年度はさらに、『北の3大学連携事

業』による動画プレゼンテーション制作ソフトを活用し、講義をデジタルコンテンツ化して、教材とし

て有効活用する試みにも着手している。

・ 機材の活用については、付加価値の高い加工品の製造商品化に役立つ機材を実習に合わせ導

入している。

・ 修了要件については、講義では小テストにより理解度を把握して評価を行い、実習でも参加態度

やスキルの習得状況に基づき評価を行い、コーディネーター研修では「企画案」の評価も行って修

了を認定している。

これらのことから、研修目的を達成する上で手法として妥当なものであると評価できる。

今後も更なる充実に努めていく。

3.拠点形成の有効性

十勝は農畜産業が基幹産業である。第一次産品を活用した高付加価値製品への転換を促進し、農

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業の多角化や地元の中小関連企業・製造業の活性化とそれによる雇用創出、すなわち農商工連携推

進が強く望まれている。付加価値の高い農畜産物や加工品を生産できる専門的知識を有する「プレイ

ヤー」や、地域資源や人材を熟知した「コーディネーター」を地域に供給することは重要な課題として要

請されており、更には建設業等からの業態転換による雇用創出に寄与することや、産学官連携に金融

を加え、受講生或いは所属企業等との連携の強化を図ることも地域から強く求められている。

このような要請を勘案して、実践的な知識・技能が身につくようカリキュラムを構成した。受講生の研

修に対する満足度は極めて高く、講師からも極めて高い満足度で評価されている。

受講生の募集選考に際してはその趣旨を建設業者等にも説明し、それらの参加も得て、地域の要

請に応えた。また、運営には地域の関係機関の方々にも委員に参加いただき、その意見を反映して逐

次改善充実を図っている。

本養成プログラムは、農商工連携による地域活性化を目指す畑作・酪農地域へ十分に移転し得る。

また「同窓会」や「評価委員会」が今後も修了生を支援する。

修了生の地域での活躍や、本事業からの情報発信により、地域での本事業に対する認識も深まって

きている。

これらのことから、地域の人材育成の拠点を形成する本事業は、地域を振興するために有効で重要

な手段として貢献しており、着実に定着してきているものと考えられる。

4.実施体制の妥当性

本事業では、帯広市を中心とした十勝管内においてアグリバイオ産業の創出に資する人材を育成す

ることを目標とし、十勝圏の産学官及び金融のトップで構成した事業運営委員会が事業の全体的な推

進や評価を行い、連携体制が整っている。

・ 帯広市や十勝支庁が推進する地域再生に関わる委員会等には本学から委員等として協力・連携

している。特に、北海道、帯広市とは、平成21年7月から開始する『都市エリア』(発展型)において、

地域の研究開発型企業から受講生の派遣を受ける等、密接な協力体制を構築することとしている。

・ 本事業の外部評価は、「事業化推進タスクフォース」を拡大して行い、外部評価とそのフィードバック

体制をより充実させていく予定である。

これらのことから、実施体制としても事業の趣旨に沿った妥当なものと評価できる。

5.継続性・発展性の見通し

本事業によって構築した養成プログラムを活用して、アグリバイオ産業に関わる人材育成を継続・発

展させていく方策としては、前述のとおり、本学で実施する他の社会人を対象とする人材育成事業の

成果も踏まえて、大学院にアグリバイオ産業を担う人材を育成する教育コースを設けることや、短期研

修制度等を設けることを目指して検討を行っている。これは,帯広市の将来構想や各種の取り組みとも

十分な連携を図って制度を構築するとともに、「スクラム十勝」構成機関や東北海道に存立する大学・

高等専門学校等、更には地域の産業界等との連携体制を更に強固なものとしていくことにより、十分実

現可能であると考えている。