「生活経営」のすすめ ·...

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豊田尚吾 「生活経営」のすすめ

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Page 1: 「生活経営」のすすめ · なぜ「生活経営」が必要か①-生活環境の悪化(1) i. 所得の減少 ii. 雇用状況の悪化 iii. 資産の減少 iv. 自己破産件数

豊田尚吾

「生活経営」のすすめ

Page 2: 「生活経営」のすすめ · なぜ「生活経営」が必要か①-生活環境の悪化(1) i. 所得の減少 ii. 雇用状況の悪化 iii. 資産の減少 iv. 自己破産件数

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目次 テーマ名:「生活経営」のすすめ

I. メッセージ1:生活を経営するという視点を持つ生活を経営するとは?なぜ「生活経営」が必要か

II. メッセージ2:「生活経営」の領域を拡張するこれからの「生活経営」とは3方向(私的領域、公的領域、理念領域)への領域拡張

III. メッセージ3:消費を見直すケース:新しい消費の形~倫理的消費~

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メッセージ1:生活を経営するという視点を持つ

問題意識と方向性

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問題意識:生活に経営の視点が必要

I. 「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」(岩崎夏海氏著 2009年ダイヤモンド社)=野球部の運営(※)をマネジメント(経営管理)する(※)これも生活の営みの一つ

II. 生活経営という言葉があったかどうかは別として、生活の効果的運営自体は特に新しい考え方ではない

III. 生活=世帯という組織の運営→生活をマネジメント(経営管理)する生活生活「人が世の中で暮らしていくこと」

×経営経営「事業目的を達成するために、継続的・計画的に意思決定を行って実行に移し、事業を管理・遂行する」

×管理管理「ある規準などから外れないよう、

全体を統制すること」 ⇒ 「生活経営」

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なぜ「生活経営」が必要か①-生活環境の悪化(1)

I. 所得の減少II. 雇用状況の悪化III. 資産の減少

IV. 自己破産件数V. 自殺者数VI. 生活保護世帯数VII. ホームレス人数VIII. 相対的貧困率

IX. 人口減少X. 少子高齢化

2000年 2001年 2002年 2003年 2004年 2005年 2006年 2007年 2008年 2009年 2010年

390

400

410

420

430

440

450

460

470

万円

461

454

448

444

439437

435437

430

406

412

~~

0

平均給与の推移

出所)民間給与実態統計調査(国税庁)

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1978

1979

1980

1981

1982

1983

1984

1985

1986

1987

1988

1989

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1991

1992

1993

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1995

1996

1997

1998

1999

2000

2001

2002

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

2010

0

5000

10000

15000

20000

25000

30000

35000

総数(人) 男性(人) 女性(人)

なぜ「生活経営」が必要か①-生活環境の悪化(2)

I. 所得の減少II. 雇用状況の悪化III. 資産の減少

IV. 自己破産件数V. 自殺者数VI. 生活保護世帯数VII. ホームレス人数VIII. 相対的貧困率

IX. 人口減少X. 少子高齢化

自殺者数の推移

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なぜ「生活経営」が必要か①-生活環境の悪化(3)

経済の成熟化

(全体が豊かになる時代の終焉)

生活リスクの顕在化

→生活経営力の高度化が必要→「生活経営」へ

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なぜ「生活経営」が必要か②-生活基盤の揺らぎ(1)

I. 政府の債務残高

II. 年金、医療、介護制度の状況悪化

III. エネルギー・環境問題の制約

IV. コミュニティの崩壊(東日本大震災が問題提起した、生活リスク)

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政府の債務残高:公債残高と対GDP比率

出所)財務省資料

1965

1966

1967

1968

1969

1970

1971

1972

1973

1974

1975

1976

1977

1978

1979

1980

1981

1982

1983

1984

1985

1986

1987

1988

1989

1990

1991

1992

1993

1994

1995

1996

1997

1998

1999

2000

2001

2002

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

2010

2011

0

100

200

300

400

500

600

700

0

20

40

60

80

100

120

140

160

建設公債残高(兆円)

特例公債残高(兆円) 公債残高対GDP比(%)(1980~)

%兆円

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なぜ「生活経営」が必要か②-生活基盤の揺らぎ(2)

I. 政府の債務残高

II. 年金、医療、介護制度の状況悪化

III. エネルギー・環境問題の制約

IV. コミュニティの崩壊(東日本大震災が問題提起した、生活リスク)

国民医療費の推移

(厚生労働省資料)

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なぜ「生活経営」が必要か②-生活基盤の揺らぎ(3)

私的生活の前提であった

公的な基盤の揺らぎ

→生活経営のあり方見直し→生活経営のあり方見直し

→→「「生活経営生活経営」」が必要が必要

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生活者意識の変化(1)

I. 不安の増大

II. リテラシー(基本的な知識)不足とその認識、取得への意欲

III. 公的意識の向上

CEL調査(2011)

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生活者意識の変化(2)

生活を防衛、向上させるために、

積極的に行動する必要性

→ヒントとしての「経営管理(マネジメント)」

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家政学、生活経済学との比較の中で「生活経営」を位置づける

家政学原論 児童学家政学(広義) 家族学・家庭論 老人学

家政学(狭義) 家族関係学家族史

家政史食物学

応用家政学 衣服学家庭経営学 住居学

家庭経済学家庭管理学(狭義)

矢崎(1969)

生活経済学3つの柱

家政学:家族の生活の充実・次代の生命を育てる

厚生経済学:多面的に人間生活を改善する政策を研究

社会政策学:市場経済の不安定性をチェックして人間らしい低限の生活を守る (学会WEBサイト)

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「生活経営」とは

I. 家族を「組織」としてとらえ、企業という組織の経営管理での方法論を活用するという視点を持つ

II. 生活環境、生活基盤の変化に適応し、生活の「持続可能性」の維持を明確に意識する

III. 社会とのネットワーク(絆)を重視し、社会の「持続可能性」にもコミットメントする(積極的に関わりあう)生活者像を想定する

キーワード(順不同):well-being(善き生)、幸福論、利害関係者、コミュニティ、収入創出力、ネットワーク、メディアリテラシー、倫理(社会のルール)、社会的責任、シチズンシップ、ソーシャルキャピタル

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企業経営と「生活経営」の相違

コミュニティ(地域、友人、同僚・・・)、企業

顧客、株主、取引先

生活破綻経営破綻リスク

政府、社会

利害関係者

生活活動(教育、消費労働再生産、市民)

生産活動社会的役割

家族(共同体)

経営者、被雇用者(協働、利害対立)

組織

幸福(感)(※)利益指標

well-being(善き生)企業理念目的

「生活経営」企業経営

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メッセージ2:「生活経営」の領域を拡張する

私的、公的、理念~これからの「生活経営」~

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FP(ファイナンシャルプランニング)の技術を例に(1)

I. 生活設計(収入、支出、資産)

II. 金融資産運用

III. 実物資産管理、(不動産)

IV. リスクマネジメント(保険)

V. 承継(事業承継、相続)

VI. 税金(義務)

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生活設計のためのキャッシュフロー表

2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017現在 1年後 2年後 3年後 4年後 5年後 6年後

本人 45 46 47 48 49 50 51配偶者 42 43 44 45 46 47 48子(長男) 13 14 15 16 17 18 19子(長女) 11 12 13 14 15 16 17

ライフイベント乗用車買替

長男高校入学

長女高校入学

収入 給与収入(本人) 500 500 500 500 500 500 500給与収入(配偶者) 80 85 90 95 100 100 100その他収入 0 0 0 0 30 0 30収入合計 580 585 590 595 630 600 630

支出 生活費(含住宅ローン) 460 465 460 465 470 470 480その他支出 75 235 80 45 80 60 85支出合計 535 700 540 510 550 530 565

年間収支 45 -115 50 85 80 70 65金融資産 預貯金 200 201 202 203 204 205 206

株その他 50 52 54 56 58 60 62利子・利回り 3 3 3 3 3 3 3

年末時点残高 298 141 309 347 345 338 336

FP(ファイナンシャルプランニング)の技術を例に(2)

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リスクマネジメント手法

FP(ファイナンシャルプランニング)の技術を例に(3)

リスクの発見と測定 リスクの発見・確認

損害の頻度の測定

損害の強度の測定

リスク管理手段の選択・実施 リスクコントロール

リスク回避

損害軽減

リスクファイナンス

リスク転嫁

保険転嫁

保有

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FP(ファイナンシャルプランニング)の技術を例に(4)

これだけでは

これからの「生活経営」には不十分

→私的、公的、理念領域 への拡張が必要

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「生活経営」対象領域の拡大(私的領域)(1)

I. 働く(収入創出力):キャリアプランニング、失業リスクのヘッジ

II. 組織運営(家族成長):教育(人材育成)健康管理(心身)

III. 情報の収集と分析:コミュニケーション(関係構築能力)多様なネットワークからの情報収集メディア・リテラシー(メディア発の情報を判断する力)

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出所)平成22年 国民生活基礎調査(厚生労働省)http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa10/2-2.html

所得分布(給与) 400万円未満層のシェア拡大

100万

円未満

200万

円未満

300万

円未満

400万

円未満

500万

円未満

600万

円未満

700万

円未満

800万

円未満

900万

円未満

1000万

円未満

1100万

円未満

1200万

円未満

1500万

円未満

2000万

円未満

2000万

円以上

0

2

4

6

8

10

12

14

4.5

5.9 9.1

12.6

9.6

13.5

11.4

13.1

10.5

11.1

9.8

9.4

9.57.5

7.46.1

5.7

5.1

4.93.7

4.32.9

3.1

2.1 5.33.7

3.2

2.1

1.7

1.2

平成4年 平成22年

「生活経営」対象領域の拡大(私的領域)(2)

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「生活経営」対象領域の拡大(私的領域)(3)

I. 働く(収入創出力):キャリアプランニング、失業リスクのヘッジ

II. 組織運営(家族成長):教育(人材育成)健康管理(心身)

III. 情報の収集と分析:コミュニケーション(関係構築能力)多様なネットワークからの情報収集メディア・リテラシー(メディア発の情報を判断する力)

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「生活経営」対象領域の拡大(公的領域)

I. 他者配慮・倫理(社会のルール規範):倫理的消費

II. 生活者の社会的責任:企業や組織に社会的責任があるのと同様(国際規格ISO26000)に、生活者も私的領域を越えた責任が存在

III. シチズンシップ(市民としての行動):ルールを作り出す集合行動への貢献、市民としての自覚市民社会へのコミットメント

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生活を営む上での理念(理念領域)(1)

well-being(善き生)とは何か:<手がかり>I. 幸福論

マズロー(欲求段階説)-アルダファ(ERG・人間の欲求理論)-内閣府(主観的幸福度の尺度)

II. ソーシャルキャピタル(社会関係資本)「個人間のつながり、すなわち社会的ネットワーク、およびそこから生じる互酬性と信頼性の規範」(小川2011)→コミュニティの「質」を示す

III. 企業理念の援用ミッション(使命):なぜ家計を運営するのかビジョン(ゴール):善き生実現のため、どこを目指していくのかバリュー(サステイナビリティ):自らの規範は何か

well-being(善き生)とは何か:<手がかり>I. 幸福論

マズロー(欲求段階説)-アルダファ(ERG・人間の欲求理論)-内閣府(主観的幸福度の尺度)

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理念の深化(幸福論、幸福の経済学)

アルダファのERG(人間の欲求)理論

Growth Existence Relatedness

生活を営む上での理念(理念領域)(2)

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理念の深化(幸福論、幸福の経済学)

内閣府「幸福度に関する研究会報告」

生活を営む上での理念(理念領域)(3)

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「生活経営」の捉える生活像

生活理念

社会基盤

私的領域の拡大

公的領域への拡大生活理念の構築

「生活(経営)」

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「生活経営」によって得られるもの

I. 「生活経営」の領域を拡大し、経営(マネジメント)の知恵を活用→家庭という組織の「well-being(善き生)の向上」に貢献する

II. 企業にとって、生活者が「生活経営者」となることで、よい関係を構築し、絆を形成することができる→業績を通じて事業継続の支援、ひいては「企業理念の実現」に資する

III. 社会にとって、全体の課題にコミットメント(積極的に関わる)する生活者のシェアが高まる→社会基盤の厚み(つながりの形成)と「市民社会の成熟化」につながる

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メッセージ3: 消費を見直す

ケースとしての「倫理的消費」

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倫理的消費とはI. きれいごと、たてまえ、奇特な人の行い⇒ではない!

「倫理は社会における個々の対他関係にかかわって、個々人の間の対立を超えて、個々人の共存を可能にする規範である」塩野谷(2002)倫理 :社会の持続可能性を維持するために必要な「ルール」倫理的消費の定義:「社会を構成する人々が共存するためのルールに即した消費」

II. 倫理的消費の例積極的購入:環境配慮商品、フェアトレード商品、・・・積極的参加:カーボンオフセット旅行、節約:節電、省エネ行動、無駄を省く、長く使う・・・共有:カーシェアリング、レンタル、リース、・・・地域活性化:地産地消、震災応援消費・・・・・・・ボイコット、非消費、その他:・・・

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倫理的消費行動を説明する統合モデルの構築

図4 統合モデル

対処有効性認知 目標意図

行動に対する態度

主観的規範 行動意図 行動

行動受容 実行可能性評価

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p34

倫理的消費行動を説明する統合モデルの構築

図4 統合モデル

対処有効性認知 目標意図

行動に対する態度

主観的規範 行動意図 行動

行動受容 実行可能性評価

入院など、

他者に世話になった経験や、

コミュニティとのつながりが

多いほど、

倫理的消費に対する構造の強化と

消費促進効果がある

宗教的関心も、

倫理的消費との

距離が近い

ポジティブな情報、論理的な説得は

行動に対する態度を改善

→行動意図を高めるという、

主たる行動規定要因に

影響を与える

否定的な情報は、

消費を抑制する態度を誘発するが、

同時に課題の理解を深める

というプラスの効果も確認

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p35

倫理的消費行動を説明する統合モデルの構築

図4 統合モデル

対処有効性認知 目標意図

行動に対する態度

主観的規範 行動意図 行動

行動受容 実行可能性評価

○経験の機会や場を

提供する社会作り

○生活者への情報提供、

教育的指導のプログラム作り

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季刊誌CEL 98号

倫理的消費~持続可能な社会への投資~

2012年1月発行予定

←これは97号です

WEBサイト コラム(週2回)

Page 37: 「生活経営」のすすめ · なぜ「生活経営」が必要か①-生活環境の悪化(1) i. 所得の減少 ii. 雇用状況の悪化 iii. 資産の減少 iv. 自己破産件数

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「生活経営」のすすめ-まとめ-I. 生活を経営するという視点を持とう

生活環境、生活基盤、生活意識の変化「生活経営」:自身と社会のつながりと持続可能性に配慮しつつ、家族という組織を「well-beingの向上」のために、経営的手法を活用して運営していく

II. 「生活経営」の領域を拡張しよう私的領域:働く、育む、情報を収集し分析する公的領域:ルールとしての倫理、社会的責任、シチズンシップ理念領域:善き生、幸福論の深化、自分なりの幸せ

III. 実践的に取り組もう例としての倫理的消費

⇒ 「well-being(善き生)の向上」 「企業理念の実現」 「市民社会の成熟化(つながりの形成)」

Page 38: 「生活経営」のすすめ · なぜ「生活経営」が必要か①-生活環境の悪化(1) i. 所得の減少 ii. 雇用状況の悪化 iii. 資産の減少 iv. 自己破産件数

ご清聴、ありがとうございました