医療経営エグゼクティブ・セミナー semi nar r eport€¦ · 65...

65 フェイズ・スリー 2012.11 2012.11 フェイズ・スリー 64 12 Medical Conti- nuity Planning 調12 12 調大成建設の神賀良明氏 大成建設の関山雄介氏 9月15日に開かれた医療経営エグゼクティブ・セミナー S em i nar Report 医療経営エグゼクティブ・セミナー 医療経営エグゼクティブ・セミナー 2012年医療経営エグゼクティブ・セミナー「2012年度診 療報酬改定の病院経営への影響分析─連携時代に求められ る病院経営戦略」(日本医療企画主催、大成建設株式会社共 催)が9月15日、東京・新宿区で開かれた。東日本税理士法 人副所長の長英一郎氏が「2012年度診療報酬改定が示す医 療経営の方向性」、大成建設の関山雄介、神賀良明両氏は 「MCP策定に向けたリスク評価と対策立案」、社会医療法人 ペガサス理事長の馬場武彦氏が「W改定後の経営戦略と地域 連携のあり方」をテーマにそれぞれ講演した。 診療・介護報酬W改定踏まえ 病院の これから を徹底分析 社会医療法人ペガサスの馬場武彦理 事長は、自法人の取り組みを中心に講 演した 講演する長英一郎・東日本税理士法人 副所長

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Page 1: 医療経営エグゼクティブ・セミナー Semi nar R eport€¦ · 65 フェイズ・スリー 2012.11フェイズ・スリー64 東日本税理士法人副所長の長英

65 フェイズ・スリー 2012.11 2012.11 フェイズ・スリー 64

東日本税理士法人副所長の長英

一郎氏は、2012年度改定後の中

央社会保険医療協議会の各分科会

での議論について触れながら、今後

の主に急性期病院経営の方向性を

提示した。

まず一般病床については、国は

ベッド数を減らしていきたいと考

と指摘。評価指標の例として、看

護必要度をはじめ、紹介率・逆紹

介率、戻し率などを挙げた。

このほか、12年度改定を踏まえ、

平均在院日数短縮や看護必要度確

保策、亜急性期病棟の戦略的位置

づけ、慢性期DPC、リハビリや

チーム医療での算定戦略について、

具体的な例を挙げながら解説した。

続いて大成建設の関山雄介、神

賀良明両氏が登壇し、医療機関に

おける事業継続計画(M

edical Conti-nuity Planning

:MCP)について

解説した。

まずMCPについて、防災計画は、

えていると指摘。さらに今後、一

般病床の機能分化を図り、高度急

性期、一般急性期、亜急性期に分

類するとした。厚生労働省の考え

としては、高度急性期がDPC/

PDPSのⅠ群とⅡ群、一般急性

期は同Ⅲ群に相当するとした。さ

らに、イメージとして高度急性期

は現在の三次救急医療機関、一般

急性期は二次救急医療機関に該当

すると述べた。

機能分類の指標としては、当面

平均在院日数と看護必要度が用い

られるとした。特に看護必要度は

徐々にハードルを上げる方向にあ

り、「ある程度重度の患者さんを入

れていること」が急性期の条件とな

ると指摘した。

さらに、診療報酬の評価の要件

について、アウトカム評価やプロ

セス評価が重視されるようになる

被害を減らすことが主眼で、事業

継続計画の一部であるとし、事業継

続計画の根本的な考え方について

は「『災害時にどのような医療を提

供するか』を想定し、それを実現可

能にすること」であると指摘した。

それを踏まえて、災害時に医療

機関が提供する機能として、①受

け入れとトリアージ、②受入れ者

と入院患者の治療、③重症患者の

搬出、④医療支援(後方支援・地域

保健活動)──の4業務が考えられ

るとした。

さらに、医療提供機能を実現す

るために必要な資源として、①運

営体制、②地域連携・情報通信、

③建築設備・医療機器、④薬剤診

材食材──の4つを提示。それぞ

れがきちんと準備されて初めて、

災害時の医療提供が可能になると

して、個別に検討すべき事項の説

明をした。

それに加えて、MCPが災害発

生時に有効に運用されるためには、

事業継続を阻害する、災害に伴う

リスクの事前評価と減災対策の実

施が重要であると強調。実際の病

院のトリアージと患者待機スペース

の事例に基づき、要因分析から

チェックリストの作成、ポイントご

とでの、①発生確率、②事業への影

響度、③復旧難易度、④人的被害

──などの項目をABCの3段階

で評価する方法を紹介した。

最後に、リスク対策の具体例と

して、地震に対する減災対策のポ

イントを解説。まず、「どの程度の

規模の地震に対し、どの程度の被

害にとどめたいか」といった「耐震

クラスの設定」が重要であると指摘

した。また、建物の1階と最上階

では揺れの大きさが2〜3倍にな

る点や、天井の耐震性は、天井内

部の設備機器や配管等と一体的に

対策を行うことも重要だとした。

社会医療法人ペガサス理事長の

馬場武彦氏は、12年度ダブル改定

を踏まえた法人全体の取り組みに

ついて講演した。

同法人は、大阪府堺市を中心に、

馬場記念病院、ペガサスリハビリ

テーション病院の2病院を中心に、

クリニック、老人保健施設、デイ

ケア、デイサービス、サービス付

き高齢者向け住宅などの事業をし

ている。馬場氏はまず、急性期医

療を担う馬場記念病院について、

DPC病院Ⅲ群ではあるものの、

機能評価係数Ⅱの高さは大阪府内

でもトップクラスで、高機能型の

急性期医療を実践しているとした。

そのうえで、12年改定では、脳

神経外科疾患について、他の疾患

に比べても平均在院日数の短縮が

より求められていると指摘。さら

に、救急の出口問題も踏まえ、医

療保険の枠組みのなかだけでは在

院日数の一層の短縮は難しく、介

護保険サービスとの組み合わせが

有効だと訴えた。

さらに、改定後のリハビリテー

ション関連の診療報酬・介護報酬に

触れ、回復期以降のリハビリは介護

保険サービスが中心になるとした。

同法人は、介護療養型老人保健

施設を2カ所運営。さらにサ付き

住宅も1カ所持っており、急性期病

棟や回復期リハビリテーション病棟

からの患者を受け入れている。これ

が、馬場記念病院の平均在院日数

短縮に大きく貢献していると馬場

氏は指摘。こうした施設の建設は、

経営戦略上重要だと強調した。

急性期一般病院の経営にとって、

回復期リハビリ病棟や介護保険サ

ービスとの連携は必須であり、必要

なピースが地域に不足している場

合、自法人で新しく建設・開設す

ることも考慮すべきだとまとめた。

大成建設の神賀良明氏 大成建設の関山雄介氏

9月15日に開かれた医療経営エグゼクティブ・セミナー

Seminar Report ①●医療経営エグゼクティブ・セミナー

医療経営エグゼクティブ・セミナー

2012年医療経営エグゼクティブ・セミナー「2012年度診療報酬改定の病院経営への影響分析─連携時代に求められる病院経営戦略」(日本医療企画主催、大成建設株式会社共催)が9月15日、東京・新宿区で開かれた。東日本税理士法人副所長の長英一郎氏が「2012年度診療報酬改定が示す医療経営の方向性」、大成建設の関山雄介、神賀良明両氏は「MCP策定に向けたリスク評価と対策立案」、社会医療法人ペガサス理事長の馬場武彦氏が「W改定後の経営戦略と地域連携のあり方」をテーマにそれぞれ講演した。

診療・介護報酬W改定踏まえ病院の「これから」を徹底分析

アウトカム評価と

プロセス評価が重要に

回リハ・介護との連携で

在院日数短縮を

医療機関の事業継続計画は

計画とリスク評価が両方必要

社会医療法人ペガサスの馬場武彦理事長は、自法人の取り組みを中心に講演した

講演する長英一郎・東日本税理士法人副所長