医療業界のデジタル化： テクノロジーを活用して医療を変革する

医療業界のデジタル化：テクノロジーを活用して医療を変革する 2

目次

エグゼクティブ サマリー .............................................................................................................................. 3

医療のデジタル変革 ................................................................................................................................... 4

質の高い医療の提供 ........................................................................................................................... 4

医療データに基づく分析の促進 ........................................................................................................... 5

重要なデータの保護 ........................................................................................................................... 5

革新的な機能：遠隔医療 ...................................................................................................................... 6

一元化された運用と管理 ..................................................................................................................... 7

デジタル化に必須の 5 大戦略 .................................................................................................................... 8

ビジネス成果を変革する方法 ................................................................................................................... 10

まとめ ...................................................................................................................................................... 12

エグゼクティブ サマリー医療業界はここ数年で劇的な変化を遂げました。米国において医療は、3.2 兆ドルの市場規模があり、急成長しています。1

混乱の末にようやく決まった医療費負担適正化法によって、1,000 万人を超えるアメリカ人に新しく保険が適用され、2

業界に大きな収益をもたらしています。これにより、医療業界の医療業務モデルは小売業のようなビジネス モデルにシフトしています。

このようなディスラプション（改革）を経験している分野は他にほとんどありません。医療業界の新しいビジネス モデルは競争が激しく、コスト削減や厳しい顧客の要求に応えるためのプレッシャーが増え続けています。多くの被保険者は、リスク共有型・コスト パフォーマンス重視のプランに移行しています。医療提供者、保険者、従業員からなる新たなタスク フォースは、2020 年までに、ビジネスの 75 % を、健康状態、品質、コスト管理に対するインセンティブ付き契約に移行することを表明しています。3それに加えて各企業は、非常に重要なデータである患者の電子カルテを、 闇市場から保護し続ける必要があります。

医療事業者はこれらの課題に対処すべく、デジタル変革への投資を増やし、業務や患者全体に及ぶ各データを結びつけ、分析する動きを加速させています。パーソナライズされた医療オプションの提供から、遠隔医療、外来医療などの新たな医療形態への対応において、デジタル テクノロジーは、医療提供者、保険者、医療サービス業界にとって重要なツールです。医療事業者は、縦割りの組織を取り払い、 相互に連携可能なモデルを構築することで、収益を増やすことができます。

しかしそのようなメリットがあるにもかかわらず、シスコの調査では、45 % の企業がデジタル改革をまだ取締役会レベルの問題と認識していないことが判明しています。競合に打ち勝つために自社を改革する意欲がある企業は 25 % にすぎません。これらの数字を見ると、今後 10 年間で数十億ドルに相当する経済価値を医療関連企業は逃そうとしているようです。4

デジタル変革によって、ビジネスの方法が大きく変わることは間違いありません。多くの医療関連企業は、今も古いテクノロジー、縦割り化された情報、複雑なネットワークをベースにして業務を行なっています。変革を実現するには、価値をもたらし、ビジネスの必須要件に対応できる新しいテクノロジーやベンダーの採用という重要な意思決定を下す必要があります。

シスコは、お客様と連携して、成功戦略の構築と実行を支援します。シスコは Gartner からトップ「デジタル アクセラレータ」と認定され、5世界の医療関連企業で数十年にわたってサービスを提供してきた経験から、デジタル ビジネス変革でも新しいビジョンと共に業界を先導しています。広範な専門知識と成功事例、そしてデジタル改革の可能性をフルに活用して最先端のヘルスケアを実現すべく、医療機関を支援しています。

最新のシスコの調査では、45 % の企業が、デジタル改革をまだ取締役会レベルの問題と認識していないことが判明しています。競合に打ち勝つために自社を変革する意思がある企業は 25 % にすぎません。

1 『HRI’s Top Ten Health Industry Issues of 2016,（HRI の上位 10 個の医療業界の問題 2016）』、PriceWaterhouseCoopers（2016 年）2 『America’s New Healthcare Economy: 3 Trends to Watch,（米国の新しい医療機関経済：チェックすべき 3 つのトレンド）』、Bob Moritz、Fortune （2015 年 1 月 21 日）

3 『Where Healthcare Is Now on March to Value-Based Pay,（医療機関は価値ベースの支払いへのプロセスのどこに位置するか）』、Melanie Evans、 Bob Herman、Modern Healthcare（2015 年 1 月 28 日）

4 『Where to Begin Your Journey to Digital Value in the Private Sector（民間企業におけるデジタル価値の実現を始めるポイント）』、シスコ（2016 年）5 『Cisco a Leader in Gartner’s Magic Quadrant,（シスコが Gartner Magic Quadrant でリーダーに認定）』、Je� Campbell、シスコ ブログ（2016 年 6 月）

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医療のデジタル変革定期的に医療機関を訪れる人は、かつてない勢いで増えています。しかし、 新しい患者の急増を管理することは、医療業界にとって課題でもあります。医療業界は、利用者の増加に対応できるよう設計された、拡張性の高いビジネス モデルに移行する必要に迫られています。そのようなシステムは、リスクを軽減し、ビジネスとデータ管理の新しい戦略を実現できるように設計する必要があります。

デジタル変革は、サービスやデータの増強や拡張を可能にし、 組織の壁を超えてサービスを統合し、よりよい医療の実現をサポートします。Population Health 戦略とは、個々の良好な健康状態を維持するための方法です。そこには、健康状態を底上げすることも含まれています。デジタル化は、医療の提供と業務という各側面で影響力を秘めています。デジタル化により、時間やリソースをよりスマートに選択・活用し、医療関係者が医療現場でより多くの時間を患者と向き合うことに費やせるようになります。

質の高い医療の提供

質の高い医療を提供するプロセスの構築は、多くの顧客接点や、データソースが絡むため、非常に複雑かつ緻密です。1 度限りの購入やサービスで完結する業界とは異なり、医療業界では顧客である患者とのカスタマー ジャーニーは継続的なものになります。また、そのカスタマー ジャーニーが患者の生や死を意味する点も他の業界と異なります。したがって、各患者との長期に渡る誠実な関係を築くことが重要です。

現在、すべての業界は、「Amazon 効果」に対応する必要があります。利用者は、オンライン小売業者である Amazon と同じレベルのパーソナライズされたサービスや強い結びつきを期待しているのです。特に現在は、ベビー ブーム世代がより技術に精通しており、要求が厳しくなっています。彼らは控除額が高いプランによって自己負担で支払い、これまでとは異なる新たな機関から定期的な医療を受けられるという点で、多くのオプションを持っています。

その結果として、彼らの要求は厳しくなっています。この世代の患者は、従来のプロセスや書類作成に時間を費やすのを好まず、医師、検査結果やコンタクト センターにすぐにアクセスできることを求めています。Amazon のような価格の透明性と、医療上の判断に役立つデータを必要としています。また、小売店や銀行と同じレベルの利便性を求めており6、ソーシャル メディアを利用して満足度を周囲と共有します。

このような背景は、医療事業者にとって新たなチャンスだと言えます。たとえばシスコでは、インテリジェント コンタクト センターとリアルタイム コミュニケーション ソリューションを提供し、医療機関側から患者中心のアプローチを取れるようにしています。あらゆるデバイスから医療サービスへのアクセスが促進され、音声、チャット、ビデオ、ドキュメント共有をサポートするコラボレーション ツールが提供されています。これらのツールを利用することで、医療提供者は、患者の各データをリアルタイムで把握できます。一方の患者は、全体的なオムニチャネル エクスペリエンスを得られます。

デジタル変革によって、患者の満足度が高まり、得られる情報のレベルも向上します。今後数年で、何百万もの患者が、仮想診療予約、ウェアラブルの健康関連アプリケーション、スマートフォンを利用した診断を経験することになるでしょう。Internet of Things（IoT）で接続されている FDA 承認の医療機器がすでに使用されており、医療機関が患者の状態をトラッキング/モニタし、長期的な健康状態や薬剤利用を管理しています。また、外来では基本的な手順をサポートしています。より革新的な医療へのアプローチを促進することで、新しい体験が患者の期待をさらに高め、場所や時間を問わない医療という夢を実現しようとしています。7

デジタル化は、医療の提供と業務という各側面で影響力を秘めています。デジタル化により、時間やリソースをよりスマートに選択・活用し、医療関係者が医療現場でより多くの時間を患者と向き合うことに費やせるようになります。

6 『New Health Economy,（新しい健康関連経済）」、PricewaterhouseCoopers Health Research Institute（2014 年 4 月）7 『HRI’s Top Ten Health Industry Issues,（HRI の上位 10 個の医療業界の問題）』、PriceWaterhouseCoopers

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医療データに基づく分析の促進2009 年以来、医療業界は電子カルテ（EMR）の導入による大きな変革を進めています。医療提供者や保険者などの医療関連機関は、規制を遵守するため、患者の電子カルテを保護するという長期的なプロジェクトに取り組んでいます。

しかし、規制の遵守にはとどまりません。デジタル化は想像以上に複雑なプロセスであり、あらゆる関係、データ、ビジネスに長期的な影響を与えます。たとえば、分析機能を活用し、位置情報（患者や資産のトラッキングに使用）や地図、予定表などのアプリケーションにおけるゲスト エクスペリエンスの改善に取り組んでいる医療機関もあります。しかし、テクノロジーはもっと多くのことを実現できます。ビッグデータが持つ莫大な兆候や大量のレコードを分析することで、高品質の医療を提供できるのです。

ビッグデータの分析機能により、データセンターやリレーションシップ管理（CMR）といった従来の情報源から収集したデータを、モバイル ネットワーク、インカメラ ビデオ診断、医療機器、装置センサー、さらにはソーシャル メディアなどの新しい情報源からのデータと組み合わせることができます。

それによって得られた知見は、複数の専門家が参加する複雑な医療プロジェクトを管理したり、看護師が基本的な医療ニーズに対応したりする際に役立ちます。また、病院のスタッフの効率向上、機器の追跡、在庫管理の簡素化も実現します。ボトルネックの特定や、リソースをより効果的に使用するワークフローの調整にも活用できます。患者の安全管理、施設の安全確保、ビル システムの制御、調剤の監視、スケジュールのトラッキング、遠隔医療も実現します。

医療情報の収集・処理に関する従来のモデルは、改革の時を迎えています。デジタル変革によりかつてない規模の分析結果を利用できるようになり、業界は急速に変化しています。

重要なデータの保護医療情報は、世界で最もハッキングされるデータの 1 つです。闇市場では、医療情報はクレジット カード データよりも 10 ～ 20 倍の価値があると言われています。詐欺、個人情報盗用、悪用に利用しやすいことが原因です。8さらに悪いことに、セキュリティ侵害の発覚までに数年かかる場合もあります。シスコの会長であるジョン チェンバースは、「企業には 2 種類しかありません。侵害された企業と、侵害されても気づかない企業です」とコメントしています。

Ponemon Institute の予測によれば、医療業界だけでもデータ漏洩によって年間 62 億ドルのコストが発生しています。最近の調査

では、調査対象のほぼ 90 % の医療機関が過去 2 年間にデータ漏洩の被害を受けており、45 % は 5 回を超える被害に遭っています。9予想外かもしれませんが、ニュースになるような大規模な漏洩よりも、従業員の怠慢などによる小規模な漏洩の方が実際には危険です。10実際、

危険な漏洩ケースの多くは、レコード数が 500 件にも満たない小規模なものです。11

闇市場では、医療情報はクレジット カード データよりも 10 ～ 20 倍の価値があると言われています。詐欺、個人情報盗用、悪用に利用しやすいことが原因です。

8 『Your Medical Record Is Worth More to Hackers than Your Credit Card（ハッカーにとってクレジット カードよりも医療記録の方が高価』、Caroline Humer、Jim Finkle、 ロイター（2014 年 9 月 24 日）

9 『Sixth Annual Benchmark Study on Privacy and Security of Healthcare Data（第 6 回医療データのプライバシーおよびセキュリティに関する年次ベンチマーク調査）』、 Ponemon Institute（2016 年 5 月）

10 『Third Annual Data Breach Industry Forecast,（第 3 回年次データ漏洩業界予測）』、Experian（2016 年）11 『Sixth Annual Benchmark Study,（第 6 回年次ベンチマーク調査）』、Ponemon Institute（2016 年 5 月）

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医療機関は業界全体として、セキュリティに対する投資が非常に少ないと言えます。これは、最近多発している大規模な電子カルテの漏洩や、多数の HIPAA 違反、医療機関が支払った多額の罰金などからも明らかです。セキュリティ問題は患者にとっても関心事であることを忘れないでください。患者の半数以上は、医療における連携を改善する目的であれば個人情報を共有してもよいと考えていますが、プライバシーが彼らにとって大きな懸念材料であるのは変わりません。65 % を超える患者は、画像、検査結果、医師のメモ、診断結果、処方箋にアクセスできる利便性よりも、データ セキュリティのほうが重要だと回答しています。12 2012 年の調査では、ユーザの半数以上が、プライバシーの問題からアプリケーションをアンインストールした（もしくはインストールしない）ことが判明しています。13

新たなテクノロジーが登場するたびに、新しい脅威も生まれています。たとえば、Internet of Things（IoT）の拡大に伴い、専門家は医療機器のセキュリティについて懸念し始めています。これらの機器は医療の進歩にとって非常に重要ですが、悪意のある攻撃に対してはまだ脆弱です。たとえばセキュリティ研究者の最近の調査では、麻酔装置、薬剤投入システム、ペースメーカーなどを含む数千台の医療機器がオンライン攻撃に対して無防備であることが判明しています。14運用システム、組み込みデバイス、個人端末などの IoT コンポーネントに対する攻撃は、2015 年だけで約 250 % 急増しています。それに対応するため、HHS、OCR、FBI および FDA では、医療機器のセキュリティを確保する必須のガイドラインを公開しました。

マルウェアによる攻撃も止む気配がありません。医療機関は、高度なマルウェアの影響を他の業界よりも 4 倍受けやすいと言われています。15現時点では、病院はランサムウェア攻撃の格好のターゲットです。ランサムウェアによって組織のシステムが暗号化され、解除するのに身代金を要求される危険性があります。たとえば 2016 年初めにはロサンゼルスの病院がランサムウェア攻撃に遭い、多くのコンピュータが深刻な被害を受けたため、管理者は紙と手作業で業務を続けた程です。この病院は、システムの制御を取り戻すため、最終的に 17,000 ドル相当のビットコインを支払っています。現在、ランサムウェアには 3 つの系統（Powerware、Samsam、Maktub Locker）が存在しますが、これらのランサムウェアが大きな成功を収めているため、新たな系統が登場することが予測されます。

2015 年に PriceWaterhouseCoopers が実施した調査では、 企業の 52 % が、最終的にサイバーセキュリティ保険に加入したことが判明しています。これは、対前年比 2 桁の増加です。16しかし実際には、保険の加入だけでは不十分です。サイバー攻撃の被害額は、保険契約でカバーされる範囲を大きく超える可能性もあります。サイバーセキュリティは事業リスクに直結するため、取締役会も、サイバーリスクを定量化して損失のリスクを軽減するようリスク マネージャに指示を出しています。

革新的な機能：遠隔医療

医療業界は長年に渡って遠隔医療の実現をテーマにしてきました。導入コストの低下とオンライン ビデオ利用の激増によって、 遠隔医療は「ニッチ」から「主流」へと移りつつあります。2016 年の Reach Health の調査によると、医療専門家の 3 分の 2 が、遠隔医療やバーチャル医療を最優先事項に挙げています。これは前年比 10 % の増加です。17

デジタル変革では、ビデオ接続をベースに遠隔医療をサポートすることで、入院期間の短縮や退院後の綿密な医療に重点を置きます。たとえば、ベビー ブーム世代の人口が増加していることで、在宅介護への取り組みが促進されています。その半面、米国では、地方在住者の約 20 %が、一次医療や専門医療を簡単に受けられない状態にあります。18また Washington Post によると、8,000 万人の米国人は精神医療をほとんど受けられない地域に暮らしています。そこで活躍するのが、行動治療のための E-visits です。これはオンライン ショッピングやソーシャル メディアに慣れた若い世代の患者にとっては特に有効です。19同時に、大都市においても一定割合の患者は診察に行くことが困難だと考えています。

12 『America’s New Healthcare Economy: 3 Trends to Watch,（米国の新しい医療機関経済：チェックすべき 3 つのトレンド）』、Bob Moritz、Fortune13 『Privacy and Data Management on Mobile Devices,（モバイル デバイスのプライバシーとデータ管理）』、Pew Research Center（2012 年 9 月）14 『Thousands of Critical Medical Devices Open to Attack,（大量の重要な医療機器が攻撃に無防備）』、Katie Dvorak、Fierce Healthcare（2015 年 9 月 30 日）15 『Healthcare Environmental Security Scan Report,（医療環境のセキュリティ スキャン レポート）』、HIMSS, Vol. 1（2016 年 3 月）16 『The Global State of Information Security Survey,（情報セキュリティに関するグローバル ステータス調査）』、PriceWaterhouseCoopers（2016 年）17 米国遠隔医療業界ベンチマーク調査（2016 年）18 『The Promise of Telehealth for Hospitals, Health Systems, and Their Communities,（病院、医療システム、コミュニティのための遠隔医療の展望）』、American Hospital

Association（2015 年 1 月）19 前掲書。

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遠隔医療によって、これらの問題の多くが解決します。American Hospital Association（米国病院協会）の調査では、患者の 70 % が、医療提供者とリモートでコミュニケーションを取るというアイデアを歓迎しています。20デジタル テクノロジーには、医療の迅速な利用、健康管理の利便性の向上、専門家へのアクセスの改善といったメリットがあります。

遠隔医療は、医療提供者にもメリットがあります。医師の数が限られている場面では、ビデオ アポイントメント機能によって、診察済み患者の体調管理、専門医師の診療が必要な患者の選出、緊急治療が必要な患者の特定などに時間を有効に使えます。また、リモート アポイントメントはコスト効率も優れており、医療スタッフやサービスへの影響を最小限に抑えられます。

米国の各州では、遠隔医療サービスに関する新しい法律が施行され始めています。それに合わせて、出来高払いの診療報酬モデルに代わる支払いモデル（機関間契約など）を取り入れる医療提供者が増加しています。また、利便性に優れた価値の高いオンデマンド サービスには自己負担で支払おうとする患者も増えています。デジタル変革によって、新しい治療方法を低コストで距離を考慮せずに、容易に導入できます。

一元化された運用および管理

医療機関の最大の課題の 1 つは縦割り組織です。複数の部門、データ、リソース、ステークホルダー、インフルエンサ、意思決定者が、医療サービスの提供において一定の役割を担っています。一方で、縦割りになった組織が、患者の経験を複雑にしているのも事実です。調査では、デジタル変革によって、業務オペレーション、デジタル サービスの強力なバックボーン、継続的な組織の再設計が推進され、組織の壁を取り払えることが示されています。21

デジタル ビジネスの変革、 クラウド、IoT、分析は、新しいビジネス プロセスや成果を推進する大きなチャンスです。「クラウドを活用するか、しないか」を問うことが重要です。ここでの課題は、データのセキュリティとアクセシビリティとのバランスをどう取るかです。クラウド コンピューティングは、この 10 年で技術革新に大きな影響を与えました。調査会社 IDC は、パブリック クラウド コンピューティングに対する支出が 2016 年に約 700 億ドルに増加し、新しいクラウドベースのソリューションの数が今後 4 ～ 5 年で 3 倍になると予測しています。22

また、デジタル変革により、買収したシステムや情報を、単一インフラストラクチャに迅速かつ容易に統合できます。これは M&A が多い時代においては特に有効です。Dealogic のレポートによると、医療機関の M&A は 2015 年だけでも 6,875 億ドルに上っています。これは他のすべての業界を上回る規模です。23組織が患者、施設、テクノロジー インフラストラクチャを統合する際に、ビジネス戦略に大きな影響が生じます。また、患者のアクセス チャネルの管理、患者のネットワーク接続の維持、規模の経済を実現するための取り組みの中で診療所や施設を集中運用するケースも増えています。

IDC は、パブリック クラウド コンピューティングに対する支出が 2016 年に約 700 億ドルに増加し、新しいクラウドベースのソリューションの数は今後 4 ～ 5 年で 3 倍になると予測しています。

20 『The Promise of Telehealth for Hospitals, Health Systems, and Their Communities,（病院、医療システム、コミュニティのための遠隔医療の展望）』、American Hospital Association（2015 年 1 月）

21 『Designing Digital Organizations,（デジタル組織の設計）』、MIT/Sloan、Center for Information Systems Research（2016 年 5 月）22 『Public Cloud Computing to Reach Nearly $70 Billion in 2015 Worldwide, According to IDC,（パブリック クラウド コンピューティングは 2015 年に世界で約 700 億ド

ルに達する（IDC 調べ）』、IDC（2015 年 7 月 21 日）23 『2015: A Banner Year for Health Care Mergers and Acquisitions,（2015：医療機関の統合/買収が最高の年）』、John Russell、Chicago Tribune（2015 年 12 月 28 日）

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デジタル化に必須の 5 大戦略

このように急速に変化する環境において、意思決定者には、自社のビジネス モデルを大きく変えるチャンスと責任があります。今の選択は、現在のビジネスに影響を与えるだけでなく、自社の長期にわたる安定性にも影響します。

クラウド ベースかどうかを問わず、最も効果的なアーキテクチャは、医療機関全体の情報にアクセスできる必要があります。また HIPAA に遵守し、GLBA、SOX、PCI-DSS 標準規制要件を満たす次世代のレポートを提供できる必要もあります。医療提供者が情報に素早くアクセスできれば、業界の基本的なニーズ、つまり業務の効果的な管理、患者のエクスペリエンスの向上、そして患者との長期的な関係の構築に対応できます。

シスコでは、その取り組みに着手する準備として、デジタル化における 5 大要件を定義しました。

1. ビジネスを相互連携可能にする

医療機関のデジタル変革の基盤となるのは、あらゆるレベルで安全に情報共有できる相互連携可能な環境です。しかし多くの組織はデジタル プロジェクトの価値を十分に認識していません。逆にプロセスが縦割りのままで、管理不可能な状態に陥ろうとしています。IT とビジネス戦略の強力なパートナーシップを促進する企業は、コラボレーションや問題解決の改善、データ分析の活用、物理/デジタル両方の資産に及ぶセキュリティなど、多くのメリットを得ています。

全体的な戦略目標、データ、優先順位、プロセス、ツールが部門間で統一されていないと、ビジネスの喪失、オペレーショナル エクセレンスや生産性の低下、規制やコンプライアンス要件の違反の増加、運用コスト/設備投資コストの増加などのリスクが拡大します。サイロを取り払い、ビジネスと IT 間のギャップを埋めることで、IoT や分析を活用し、テクノロジーや資産のセキュリティを確保できます。これは、ビジネスのスピード向上と拡大、そして生産性の向上へとつながります。

こうした流れは、モビリティにコラボレーションやロケーション インテリジェンスを統合することで実現できます。これは最終的に収益拡大をもたらします。たとえば、Cisco® Converged Clinical

Work�ow ソリューションによって、患者、医師、管理者、家族が、データ、音声やビデオを活用してより効果的にコラボレーションできます。これは優れた判断、チームワークの向上、生産性の改善、コスト削減につながります。

2. データおよびシステムの保護

デジタル変革では、データと物理的なセキュリティをシステム全体に拡張することで、セキュリティに関する新旧の課題に対応して患者情報を保護します。財務、法的な安全性、品質、コンプライアンス リスクを管理できるようサポートする役割もあります。医療機関におけるサイバーセキュリティは、ここ数年における取締役会の優先事項です。セキュリティ投資の主眼は組織を脅威から保護することですが、ビジネスの拡大にも影響があります。

その一方で、いまだに縦割りな戦略をベースに、ポイント ソリューションを複雑に組み合わせてセキュリティを確保している医療機関も多く存在します。シスコでは、ネットワーク セキュリティにおける世界的リーダーとして、ネットワーク全体の問題を防止、防御そして修復する多層的な手法を用意しています。多層型のセキュリティによって脅威を可視化し、侵害を未然に防止できます。インシデントが発生した場合でも速やかに解決できます。医療提供者は、検証済みのセキュリティ ソリューションを選択し、各機能やチャネルで患者情報や機密情報を保護し、規制やコンプライアンス ガイドラインに準拠し、ブランドを保護する必要があります。こうした統合アプローチにより、細分化されたシステムを統合して簡素化し、低コストで容易に運用することができます。

今の選択は、現在のビジネスに影響を与えるだけでなく、自社の長期にわたる安定性にも影響します。

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シスコと連携する医療事業者では、「継続的なセキュリティ」方針が大きな成功を収めています。侵害の検出に要した平均期間は、200 日超からわずか 17.5 時間に短縮されています。ゲスト エクスペリエンスから運用管理まで、企業のすべての基盤にセキュリティを組み込むことで、あらゆる脅威からデータを保護できます。

3. ワークフォースの強化による効率性の向上

米国には、全人口に一次医療を提供できるだけの数の医師はいません。多くの調査では、2025 年までに 46,000 ～ 90,000 人の医師が不足すると予測されています。特に専門医の確保は困難です。24また、医師の時間の 3 分の 2 が、患者の診療ではなく事務作業に費やされているという調査結果もあります。25看護師の離職率も高くなっています。新たに登録された看護師（RN）の約 5 人に 1 人が 1 年以内に最初の仕事を辞めています。看護師の離職に伴うコストは、大規模な救急治療病院では 640 万ドルにも及ぶ場合があり、診療品質の著しい低下にもつながっています。26

そのため、医療提供者が管理作業ではなく患者に注意を払えるような新しい機能が注目されています。しかし、新しいアプローチについてのトレーニングを従業員に与えることなく、新しいソリューションを導入する組織があまりにも多くあります。組織がプロセスの変革に取り組む際には、その文化も併せて変える必要があります。

同時に、高齢の従業員の専門知識が退職によって失われようとしている問題もあります。ビデオ、Web 会議などのコラボレーション ソリューションを活用すれば、次世代の従業員に必要なナレッジ シェアやトレーニングを（業務の中断を最小限に抑えながら）提供できます。さらに、コラボレーション ツール、ウェアラブル、リアルタイム分析によって、テクノロジーに精通した人材を獲得・維持できる職場環境を構築できます。

シスコと連携する医療事業者では、「継続的なセキュリティ」方針が大きな成功を収めています。侵害の検出に要した平均期間は、200 日超からわずか 17.5 時間に短縮されています。

4. イノベーションを促進する環境の構築

アジャイルな IT、自動化されたビジネス プロセス、高度なコラボレーションや意思決定、リアルタイム情報などの要素をすべて統合することで、イノベーションを促進することができます。新しいアプローチによって得られる柔軟性により、市場の変化、利用者の要求、診療に対する新たなアプローチへの対応力を高めることができます。

デジタル ビジネスにおいては、変化に対応可能な管理モデルを採用することで、各従業員が意思決定者になります。そこでは、従業員が各自の仕事に取り組み、評価するのに必要なツール、データ、プロセス、インタラクションが提供されます。個人の決定に基づくコラボレーションには、さまざまなメリットがあります。事実に基づく、高度に情報化された意思決定が、あらゆる局面で生まれるようになります。

このような情報に基づいて、患者との優れた信頼関係を構築し、改善し続けることができます。革新的な環境では、新たなサービスや機能が迅速に開発されるため、組織の状況が改善され、各ユーザのニーズに合ったサービスを提供できるようになります。

24 『Too Many Patients, Not Enough Doctors（過剰な患者、足りない医師）』、Eric Sherman、Moneywatch（2015 年 7 月 3 日）25 『Doctors Are Wasting Over Two-Thirds of Their Time Doing Paperwork,（医師は事務作業で 3 分の 2 の時間を無駄にしている）』、Bruce Lee、Forbes（2016 年 9 月 7 日）26 『Policy, Politics, and Nursing Practice,（ポリシー、政策、看護師の訓練）』、Robert Wood Johnson Foundation（2014 年 9 月）

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ビジネス成果を変革する方法医療業界における経験年数を問わず、デジタル改革という課題に常に対応する必要があります。課題は多くあり、計画は長期間に及ぶため支援するには労力が必要です。デジタル化は一本道ではなく、いくつかのプロジェクトが同時に進行します。多くの時間や労力を投資する必要があり、デジタル化の過程において予期しない変化や方向転換が発生する場合もあります。トップダウン リーダーから医療現場の従業員まで含めて、チーム内で変化を管理する方法を計画することが重要です。Chris Bradley および Clayton O’Toole によると、「改革の初期段階は予想に反して不確実で、物事の先行きはますます不透明になります」28

シスコでは、医療業界が改革に取り組み、ビジネス成果主体のアプローチを採用して、取締役会レベルの重要要件を達成する必要があると考えています。医療提供者と保険者がパートナーを選ぶ際は、ビジネス目標に合ったデジタル ソリューションを明示できる企業を選ぶべきです。これには、テクノロジーを活用したビジネス インサイトの提供、IT とビジネス チーム間の強力な関係の構築、要件に応じたソリューションの提案なども含まれます。また、投資に見合った価値を実現し、柔軟な導入モデルを利用できる必要もあります（CapEx のファイナンシングなど）。

シスコは、ビジネス成果主体のアプローチ手法を駆使してこの変革プロセスを推進します。ビジネス成果主体のアプローチは、組織の戦略目標を特定し、その実現に向かって最も効果的に推進するソリューションを導き出します。

5. 適切なパートナーの育成

組織は、パートナー エコシステムを見直す必要もあります。ベンダー、パートナー、業務委託者との最適なネットワークを培っておくことは、効果的なデジタル ビジネス変革に不可欠です。デジタル化に関するエコシステムを構築することで、他の組織における「ネットワーク効果」からもメリットを享受できます。

組織が自らのデジタル化に出遅れている場合、パートナーの最先端のイノベーションから得られるメリットはありません。優れたパートナーは、分析、セキュリティ、クラウドに関する業界固有の深い専門知識を持ち、IT サービスだけでなく、戦略的なビジネス コンサルティングを提供できる能力を備えています。パートナー選びに失敗すれば急降下が待っています。

たとえば、1 年間に発生したセキュリティ侵害（その多くは公開されています）の 56 % は、サードパーティ ベンダーの脆弱性が悪用されたことが原因です。27

経験豊富なデジタル変革のパートナーは、組織のデジタル化成熟度をベンチマークして、実現可能なことを提示できます。確立されたベスト プラクティスを最大限活用する能力も持ち合わせてい ます。

27 『HRI’s Top Ten Health Industry Issues of 2016,（HRI の上位 10 個の医療業界の問題 2016）』、PriceWaterhouseCoopers28 『An Incumbent’s Guide to Digital Disruption,（既存企業向けデジタル改革ガイド）』、Chris Bradley、Clayton O’Toole、McKinsey Quarterly（2016 年 5 月）

時間

利益

決定的な影響

ごくわずかな影響

多くのノイズが混じる、かすかな兆候

検証済みモデルの登場

クリティカル マスの導入規模に到達

大規模化、成熟

新しいビジネス モデル

既存のビジネス モデル

改革の状態検出可能 クリア 不可避 新たな基準

『An Incumbent’s Guide to Digital Disruption,（既存企業向けデジタル改革ガイド）』、McKinsey Quarterly（2016 年 5 月）

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1. 発見

ビジネス成果主体のアプローチでは、特定のビジネスにデジタル ソリューションを導入する中で、最適な成果をどうすれば達成できるかを徹底的に評価します。この取り組みは 1 回だけで終わるものではなく、パートナー コミュニティと連携して、分析、文書化、組織への適用の各プロセスを含めて繰り返し実施します。シスコはこのフェーズで、調査・診断評価に関するさまざまな技法を駆使します。関係者へのインタビュー、顧客プロセスのマッピング、各分野の専門家へのインタビュー、使用例/ベストプラクティスの調整などがあります。

2. 設計および価値の定量化

次に、詳細なアーキテクチャ設計を実施し、既存の機能と優先度の高いソリューションを連携させて、評価の結果に基づいて最適な成果を導き出します。デジタル変革のこの段階を達成するために、シスコでは、お客様と連携してビジネス アーキテクチャ ロードマップ（BAR）の開発を開始します。このロードマップは、現在および今後 3 ～ 5 年間に、リスクやコンプライアンスを管理しながら企業目標を達成するための全体像です。また、モバイル中心のデジタル化時代に、優れた次世代型カスタマー エクスペリエンスを実現するために必要な投資についても規定します。

お客様の能力や経済価値をロードマップの中で時系列として示すことで、ビジネスと IT 機能間の連携を強固にします。デジタル変革プロセスの具体的な経済効果を測定するために、経済価値分析を実施します。この分析では外部からの視点を加えており、提案したソリューションによって実現されるビジネス成果を定義、検証、定量化します。これは次の 3 ステップで構成されます。

• フェーズ 1：ソリューションの使用例の仮定に基づいてバリュー マップをカスタマイズします。収益拡大につながるソリューション、ビジネス プロセス、主要なビジネス手段、関連するメトリック間の論理的な関係を示します。

• フェーズ 2：一般に利用可能なデータに、業界ベンチマークや想定数値を組み合わせた独自の財務モデルを使用します。想定される財務面での効果の大きさを算定します。

• フェーズ 3：経済価値の結果はステークホルダーに提示され、さらに詳細な検討の基盤となります。

経済価値分析は、さまざまな仮定の検証により精度が向上します。承認データやメトリックは各プロセスにより検証され、より包括的なビジネス ケースの基盤となります。

3. 推進

ビジネス成果主体のアプローチの第 3 ステージでは、導入、測定、および継続的な改善を含む、ソリューションの推進に重点を置いています。成果ベースのソリューションでは、達成目標を詳細に理解することが不可欠です。また、投資により得られる収益を把握するための詳細な追跡・評価手法も必要です。

ただし、テクノロジーの変更だけが課題の解決方法ではありません。変革とは、組織の変化、従業員の強化、明確なリーダーシップを含む 1 つの旅なのです。組織のデジタル化を推進するためには、あらゆるレベルで根本的な変革が必要となります。

まとめ

最近のシスコの調査によると、大半のエグゼクティブは、今すぐデジタル変革に取り組まなければ各業界で上位 10 社のうち 4 社が今後 10 年以内に消滅すると考えています。

シスコは世界の医療業界で 30 年以上の経験があります。高品質な医療に不可欠なインフラストラクチャの構築において、グローバルな視点や広範なバックグラウンドを提供できます。シスコの広範な専門知識とベスト プラクティスに基づいて、患者エクスペリエンスのデジタル化、セキュリティ、コンプライアンスに関する、市場構築型のソリューションを提供します。シニア リーダーとして、今こそ「混乱」から「変革」に導く、実行可能な戦略計画を立案するチャンスです。

シスコがお客様のビジネスの変革をサポートする方法の詳細については、シスコ コンタクト センターまでお問い合わせください。

29 『Where to Begin Your Journey to Digital Value in the Private Sector（民間企業におけるデジタル価値の実現を始めるポイント）』、シスコ（2016 年）30 『An Explanation and Some Re�ections,（1 つの解釈といくつかのアイデア）』、Reed Hastings、NetFlix Media Center（2011 年）

デジタル改革によって、競争優位性を確立するかつてないチャンスがもたらされます。最近のシスコの調査によると、大半のエグゼクティブは、今すぐデジタル変革に取り組まなければ各業界で上位 10 社のうち 4 社が今後 10 年以内に消滅すると考えています。29

変革は簡単なことではありません。現在うまく機能している企業の場合は、さらに難しいことでしょう。Net�ix の CEO である Reed Hastings は、数年前に、「成功している企業のほとんどは、革新的な新しいカスタマー サービスを構築することを考えていない。なぜなら、そのことによってコア ビジネスに悪影響があることを恐れているからだ」とコメントしています。さらに、「速く変化しすぎて消滅する企業はほとんどないが、変化が遅すぎて消滅する企業は多い」と付け加えています。30現在のインターネット ストリーミングへの大きな移行を見ると、彼の考えが正しかったことがわかります。

シスコは、医療サービスに関する成果の定義、文書化および測定を通して、デジタル変革を主導します。シスコのアドバイザーは、組織内のビジネス、診療、技術の各チーム間、およびソリューションを定義するサードパーティのパートナーの連携役として機能します。

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