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OECDにおける農業環境政策をOECDにおける農業環境政策を巡る議論について巡る議論について
OECD日本政府代表部参事官 倉重 泰彦
資料 2
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OECD(経済協力開発機構)についてOECD(経済協力開発機構)について
設立: 1961年(日本は1964年に加盟)
加盟国: 現在30ヵ国(市場経済を原則とする先進国)
目的: 経済成長、開発途上国援助、多角的な自由貿易の拡大
機能: 加盟国間の政策の調和、政府間の意見・情報交換
特色: 経済分析を基本とした政策提言
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農業環境政策を巡る議論の経緯農業環境政策を巡る議論の経緯
欧米諸国における地下水汚染、土壌浸食等の問題を受け、 環境政策の立場からどう農業政策を改善するか19
85年から環境委員会で議論を開始
各国の農政改革における農業環境政策の重要性の高まりも踏まえ、1993年に農業環境合同作業部会を設置し、– 農業環境指標の開発
– 各国の農業環境政策の情報収集
を中心に議論
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最近の議論の方向最近の議論の方向
各国の関心の重点は「地域環境」から「地球環境」へ– 気候変動問題を契機に、従来専ら地域環境問題と考えられてき
た農業と環境の関係を、地球環境問題の一環として捉える方向に重心がシフト
– 特に、バイオエネルギー、水資源問題に各国は大きな関心
指標づくりから指標を活用した経済分析へ– 農業環境指標の開発は一段落
– 農業環境政策の環境等への影響を計測する計量モデルの開発が本格化
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各国の主要関心事項(1)各国の主要関心事項(1)
気候変動問題
– 気候変動が農産物生産に与える影響
– 気候変動に関連する政策(バイオエネルギー政策等)が、農産物需給、環境に与える影響
– 気候変動緩和に資する農業活動に対する効果的な支援の在り方
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各国の主要関心事項(2)各国の主要関心事項(2)
農業における持続的な水資源の利用– 従来は、市場原理の導入による水の効率的な利用、関連補助金の削減
が主な関心事項
– 昨今の世界各地における干ばつ、洪水の頻発により、水資源の確保に向けた政府の役割についての議論が活発化
クロス・コンプライアンス– 補助金等の受給に環境への配慮等を要件とする手法
– 米、EUで広く導入されているが、その効果・位置づけについて議論は未収斂(あくまで補助的な手段とみるか否か)
農業環境政策の環境に対する影響・効果の分析のための計量分析手法の開発– 複雑かつ地域差の強い農業環境問題の計量分析は長年の課題
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農業環境政策の主な手法(1)農業環境政策の主な手法(1)
1.経済的手法
– 農家への直接支払い(環境支払い)
– 環境税
– Tradable permits (利用権等の取引)
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農業環境政策の主な手法(2)農業環境政策の主な手法(2)
2.規制的手法– 法的規制
– クロス・コンプライアンス
3.普及・研究
4.ラベリング、認証
5.地域社会としての取組
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論点(1)-論点(1)- 農政改革の方向性との整合農政改革の方向性との整合
環境の保護を目的とする政策であっても、従来からOECDが進めてきた農政改革の基本的方向性との整合性は厳しく問われる。– 生産や貿易を歪曲せず、市場のシグナルの農家への伝達を妨
げない政策への転換
– 政府の政策介入は、市場の失敗の是正を基本とするとともに、介入する場合でも、可能な限り市場機能を活用することが必要
従来行われていた「よりデカップルされた支払いは、より環境にも良い」という議論は下火になり、現在は、環境目的にいかに「ターゲット」するかが論点化
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論点(2)論点(2) -- 環境影響の定量化環境影響の定量化
OECDは、農業が環境に及ぼす影響を客観的に把握するための試みとして、農業に関係する環境要因(窒素、リン、農薬等)の実態を定量化し、年次推移等を各国比較するための指標を長年にわたり開発
OECDにおける開発作業は一段落したが、米国、EU、カナダ等の主要国は、自前で同様の指標を開発しており、それらの指標を用いた政策分析を実施
「農村景観」、「アメニティ」等定量化が難しい分野についても、指標開発の努力は各国で継続中
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論点(3)論点(3) -- レファレンス・レベルレファレンス・レベル
定義:農家の任意負担により達成されるべき環境の質のレベル
同レベルを超える環境の質向上を農家に求める場合政策介入が正当化
「結果」又は「農家の特定の行為」で設定
P.P.P
レファレンス・レベル
ターゲット
環境の質
農家が当然費用負担
任意で農家が自己負担
政府の介入正当化(直接支払い等)
※ P.P.P: 汚染者負担原則
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論点(4)論点(4) -- 政策の費用対効果政策の費用対効果
「ある政策に要する総費用」に対する「当該政策による環境向上への効果」の比率が最大となる政策が適当
環境向上への効果は、政策をより「ターゲティング」することで向上するが、一方、政策をより「ターゲティング」すると、政策が細分化し行政コストが増大するため、両者のバランスが重要
費用の範囲をどこまで考えるかも大きな論点であり、ライフ・サイクル・アセスメント(LCA)の重要性が増大
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今後の農業環境政策を巡る議論の方向今後の農業環境政策を巡る議論の方向-- バイオエネルギーの議論からの考察(1)バイオエネルギーの議論からの考察(1) --
現在、OECDでは、バイオエネルギーについて、以下に焦点をあて横断的プロジェクトを実施中– 世界の農産物市場への影響– 気候変動緩和への貢献度、土壌、水利用等環境面への影響– エネルギー政策上の評価– バイオエネルギー関連の補助金等の評価
加盟各国は、本プロジェクトに強い支持を与えるとともに、以下の論点への配慮を要望– バイオエネルギー政策の目的の多様性– 食料安保とエネルギー安保の相互関係– 農村経済への寄与– LCAの範囲の適切な考慮– 経済効率的な政府の助成措置の探求
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今後の農業環境政策を巡る議論の方向今後の農業環境政策を巡る議論の方向-- バイオエネルギーの議論からの考察(2)バイオエネルギーの議論からの考察(2) --
地域環境問題と地球環境問題の一体化
– 双方の視点をどう調和させるか?
農業環境政策の世界標準化の進行
– 枠組み形成の議論への積極的参画が必要
政策の多目的化(農村経済、環境、エネルギー等)に適応した施策の検討の必要性増大– 農業生産活動との結合性(jointness)