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日本の直接投資と国際貿易 3 つの疑問 慶應義塾大学・経済産業研究所(RIETI清田耕造 2017 6 25 http://user.keio.ac.jp/kiyota/jea.pdf 慶應義塾大学・RIETI 清田耕造 2017 年石川賞講演 1 / 61

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日本の直接投資と国際貿易3つの疑問

慶應義塾大学・経済産業研究所(RIETI)

清田耕造

2017年 6月 25日

http://user.keio.ac.jp/∼kiyota/jea.pdf 慶應義塾大学・RIETI 清田耕造 2017 年石川賞講演 1 / 61

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Special thanks to...石川経夫先生・石川賞関係者の皆様

恩師・共同研究者の皆様(敬称略)

▶ 木村福成,浦田秀次郎,中島隆信,Robert Stern▶ 及川啓太,岡崎哲二,岳希明,神林龍, 魏玉紅,黒川義教,佐々波楊子,神事直人,

滝澤美帆,堤雅彦,西村清彦,長谷川誠,早川和伸,樋口美雄,深尾京司,前田芳昭,

松浦寿幸,丸山佐和子,山ノ内健太,吉岡克啓,義村政治, Flora Bellone, Drusilla K.

Brown, Sabien Dobbelaere, Doan Thi Thanh Ha, Jacques Mairesse, Margit Molnar,

Patrick Musso, Lionel Nesta, Barbara Peitsch

慶應義塾大学,横浜国立大学(前任校)の先生方

JIP データベース,経済産業研究所(RIETI)関係者の皆様

科学研究費の研究プロジェクトでご一緒頂いた先生方

これまで学会・ワークショップで討論者としてコメントを頂戴した先生方

セミナー・ワークショップにお招き頂いた大学・研究機関の皆様,編集者の皆様(敬称略)

▶ 小樽商科大学,北海道大学,東北大学,日本貿易振興機構アジア経済研究所,財務省財

務総合政策研究所,政策研究大学院大学,東京大学,東京工業大学,中央大学,日本銀

行,日本経済研究センター,日本政策投資銀行設備投資研究所,日本大学,一橋大学,

武蔵大学,名古屋大学,中京大学,京都大学,大阪大学,近畿大学,神戸大学,岡山大

学,沖縄大学,東京労働経済学研究会,経済理論・政策ワークショップ,関西労働研究会▶ 尾崎大輔,永田透,増山修,渡部一樹

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はじめに:本日の内容

これまで,多くの経済学者が貿易自由化や経済統合の利益を主張してきた.しかし,保護主義を支持する動きは根強く残っている...

▶ 2016年 6月:英国は国民投票によって EUからの離脱を選択.▶ 2017年 1月:米新政権は政権発足直後に環太平洋経済連携協定(TPP)からの離脱と北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉を宣言.

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はじめに:本日の内容

日本でも,経済のグローバル化の進展に漠然とした不安を持つ人は少なくない.

▶ 企業の海外進出は国内経済にどのような影響を及ぼすのか?▶ 日本の比較優位はどこにあるのか?▶ 日本の貿易政策はどのような要因で決まっているのか?

→ 日本の国際経済学の実証研究は,これらの疑問に対する答えを蓄積しつつある.

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はじめに:本日の内容

日本の直接投資と国際貿易の中でも特に社会的に関心の高い(と思われる)次の 3つの疑問に注目.これまでの研究で何がわかっているのか,また,何が研究課題として残っているのかをざっくり紹介.

直接投資

...1 企業の海外進出に伴い,雇用は失われていないのか?

国際貿易

...2 日本はどのような財に比較優位を持っているのか?

...3 日本の貿易政策はどのような要因によって決まっているのか?

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直接投資とは?

ある国の企業が海外で現地法人を設立・拡大したり,既存の外国企業の株式の一定割合以上を取得したりして,その経営に参加するために行う国際資本移動.

▶ トヨタ自動車が米国に現地生産のための子会社を設立▶ 米アップルが横浜に研究開発拠点を設立

日本企業による直接投資は過去最大の規模.

財務省『本邦対外資産負債残高』によれば,2016年末時点の直接投資の残高は

159.2兆円(!)

前年の 152兆円(2015年)から 4.8%増.10年前の 54兆円(2006年)の約 3倍に上る.

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シンプルなモデルの帰結:日本企業の直接投資が進むとしても,海外で得た利益が日本に還流すれば,投資先国だけでなく日本の経済厚生にもプラス.

図 1 直接投資の効果�� ��

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参考:石川城太・椋寛・菊地徹(2013)『国際経済学をつかむ,第 2 版』,有斐閣.

直接投資を通じて得た利益の国内への還流が重要な意味を持つ.

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図 2 海外子会社の内部留保残高の推移(一社当たり,100万円)

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注:海外生産比率は全売上に占める現地法人の売上の比率を表している.

出所:経済産業省(各年)『海外事業活動基本調査』.

2015年の日本の海外子会社の当期純利益は 6兆 5千億円(経済産業省『海外事業活動基本調査』).

▶ これは,日本国内の企業の当期純利益 21兆 3千億円の 31%に相当(経済産業省『企業活動基本調査』).

海外子会社に蓄積された内部留保残高は 32兆円!(2015年度末)http://user.keio.ac.jp/∼kiyota/jea.pdf 慶應義塾大学・RIETI 清田耕造 2017 年石川賞講演 7 / 61

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政策研究大学院大学の長谷川誠助教授との共同研究� �Hasegawa and Kiyota (2017, JPubE)

海外子会社の配当送金と国際課税制度の制度変更に注目し,配当源泉税率の引き下げが利益還流に有効であることを確認.

配当源泉税率:海外子会社が得た利益を親会社に配当する際に課される税率.通常,日本と投資先国の租税条約で定められている.� �租税条約の改正が進めば,日本への利益還流は拡大する可能性.

→ 直接投資を通じて得た利益の国内への還流は税制と密接な関係があることから,国際経済学と公共経済学の知見が今後の研究の発展に有効.

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日本企業の海外進出が進むことで、日本の雇用は失われていると思いますか?

この疑問に対し、多くの人は「はい」と答えるだろう.

企業が工場を国内から海外へと移転することで,国内の工場を閉鎖してしまい,それが雇用の削減につながる,というイメージが定着してしまっているため.

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日本企業の海外進出が進むことで、日本の雇用は失われていると思いますか?

この疑問に対し、多くの人は「はい」と答えるだろう.

企業が工場を国内から海外へと移転することで,国内の工場を閉鎖してしまい,それが雇用の削減につながる,というイメージが定着してしまっているため.

http://user.keio.ac.jp/∼kiyota/jea.pdf 慶應義塾大学・RIETI 清田耕造 2017 年石川賞講演 9 / 61

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図 3 海外生産比率の推移:製造業,1995–2015

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出所:経済産業省(各年)『海外事業活動基本調査』.

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図 4 国内の事業所数と従業者数の推移:製造業,1995–2014

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注:従業者(常用労働者)4人以上.常用労働者には,パート・アルバイト,出向・派遣受入者を含む.

出所:経済産業省(各年)『工業統計調査』.

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.Question 1........企業の海外進出に伴い,雇用は失われていないのか?

これまでの多くの研究では,「海外に進出している企業が国内にとどまる企業よりも雇用を削減している」という事実は(少なくとも平均的には)確認されていない.

豪 RMIT大学の山下直輝准教授と一橋大学の深尾京司教授の研究� �Yamashita and Fukao (2010, JWE)

日本の親会社と海外子会社の情報を接続し,企業レベルで両者の雇用の代替関係に注目.

労働需要関数の推定を通じて,海外従業者数と国内従業者数には,統計的に有意な負の関係が見られないことを確認.� �

→ ...取引先に影響?

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.Question 1........企業の海外進出に伴い,雇用は失われていないのか?

これまでの多くの研究では,「海外に進出している企業が国内にとどまる企業よりも雇用を削減している」という事実は(少なくとも平均的には)確認されていない.

豪 RMIT大学の山下直輝准教授と一橋大学の深尾京司教授の研究� �Yamashita and Fukao (2010, JWE)

日本の親会社と海外子会社の情報を接続し,企業レベルで両者の雇用の代替関係に注目.

労働需要関数の推定を通じて,海外従業者数と国内従業者数には,統計的に有意な負の関係が見られないことを確認.� �

→ ...取引先に影響?

http://user.keio.ac.jp/∼kiyota/jea.pdf 慶應義塾大学・RIETI 清田耕造 2017 年石川賞講演 12 / 61

Page 16: 日本の直接投資と国際貿易 - user.keio.ac.jpuser.keio.ac.jp/~kiyota/jea.pdf · Hasegawa and Kiyota (2017, JPubE) 海外子会社の配当送金と国際課税制度の制度変更に注目し,配

.Question 1........企業の海外進出に伴い,雇用は失われていないのか?

これまでの多くの研究では,「海外に進出している企業が国内にとどまる企業よりも雇用を削減している」という事実は(少なくとも平均的には)確認されていない.

豪 RMIT大学の山下直輝准教授と一橋大学の深尾京司教授の研究� �Yamashita and Fukao (2010, JWE)

日本の親会社と海外子会社の情報を接続し,企業レベルで両者の雇用の代替関係に注目.

労働需要関数の推定を通じて,海外従業者数と国内従業者数には,統計的に有意な負の関係が見られないことを確認.� �

→ ...取引先に影響?

http://user.keio.ac.jp/∼kiyota/jea.pdf 慶應義塾大学・RIETI 清田耕造 2017 年石川賞講演 12 / 61

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取引先への影響を見た研究でも,「海外に進出している企業が国内にとどまる企業よりも雇用を削減している」という事実は確認できず.

専修大学の伊藤恵子教授と中央大学の田中鮎夢准教授の研究� �Ito and Tanaka (2014, RIETI DP)

企業の取引関係の情報を利用し,企業の海外進出と取引先の雇用の関係を分析.

海外進出企業と取引のある企業は(取引のない企業と比べて)雇用の削減率が低い.� �

→ ...低スキル労働者に影響?

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取引先への影響を見た研究でも,「海外に進出している企業が国内にとどまる企業よりも雇用を削減している」という事実は確認できず.

専修大学の伊藤恵子教授と中央大学の田中鮎夢准教授の研究� �Ito and Tanaka (2014, RIETI DP)

企業の取引関係の情報を利用し,企業の海外進出と取引先の雇用の関係を分析.

海外進出企業と取引のある企業は(取引のない企業と比べて)雇用の削減率が低い.� �

→ ...低スキル労働者に影響?

http://user.keio.ac.jp/∼kiyota/jea.pdf 慶應義塾大学・RIETI 清田耕造 2017 年石川賞講演 13 / 61

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低スキル労働者の需要への影響を見た研究でも,企業の海外進出の負の効果は確認されていない.

神戸大学の丸山佐和子 (J)准教授との共同研究� �Kiyota and Maruyama (2017, JAE)

日本の産業レベルのデータ(JIP database)を利用して,ICTとオフショアリングの影響を考慮しつつ,労働需要関数を推定.

▶ オフショアリング:国内から海外への生産活動の移転(企業外へのアウトソーシングも含む,冨浦(2014))

オフショアリングの拡大は高スキル労働者への需要拡大につながるが,中~低スキル労働者への需要には影響しないことを確認.� �

→ なぜ雇用へのマイナスの影響が確認できないのか?

http://user.keio.ac.jp/∼kiyota/jea.pdf 慶應義塾大学・RIETI 清田耕造 2017 年石川賞講演 14 / 61

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低スキル労働者の需要への影響を見た研究でも,企業の海外進出の負の効果は確認されていない.

神戸大学の丸山佐和子 (J)准教授との共同研究� �Kiyota and Maruyama (2017, JAE)

日本の産業レベルのデータ(JIP database)を利用して,ICTとオフショアリングの影響を考慮しつつ,労働需要関数を推定.

▶ オフショアリング:国内から海外への生産活動の移転(企業外へのアウトソーシングも含む,冨浦(2014))

オフショアリングの拡大は高スキル労働者への需要拡大につながるが,中~低スキル労働者への需要には影響しないことを確認.� �

→ なぜ雇用へのマイナスの影響が確認できないのか?

http://user.keio.ac.jp/∼kiyota/jea.pdf 慶應義塾大学・RIETI 清田耕造 2017 年石川賞講演 14 / 61

Page 21: 日本の直接投資と国際貿易 - user.keio.ac.jpuser.keio.ac.jp/~kiyota/jea.pdf · Hasegawa and Kiyota (2017, JPubE) 海外子会社の配当送金と国際課税制度の制度変更に注目し,配

雇用が失われていないことの理由の一つとして,海外進出に伴い,同じ企業内で,製造部門から他部門への雇用の再配置が進んでいることが考えられる.

慶應義塾大学の安藤光代教授と木村福成教授の研究� �Ando and Kimura (2015, AEP)

1998年から 2010年までの『企業活動基本調査』の個票データから企業の海外進出と雇用創出・雇用喪失パターンを比較.海外子会社を増やしている企業が本社部門を拡大させていることを確認.

▶ ただし,労働者レベルのデータによる分析ではないため,同じ労働者が製造部門から本社部門に移っているのかは不明.� �

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...ただし,企業の海外進出と雇用創出・雇用喪失に注目した研究の中には,マイナスの効果を確認しているものもある.

一橋大学の児玉直美准教授と学習院大学の乾友彦教授の研究� �Kodama and Inui (2015, AEP)

2006年から 2009年までの『経済センサス』の個票データから企業の海外進出と雇用創出・雇用喪失パターンを比較.海外子会社数が増加していない企業については,国内雇用が減少していることを確認.

▶ ただし,分析の期間や因果関係については,検討の余地がある.� �

http://user.keio.ac.jp/∼kiyota/jea.pdf 慶應義塾大学・RIETI 清田耕造 2017 年石川賞講演 16 / 61

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.Question 1........企業の海外進出に伴い,雇用は失われていないのか?

「海外に進出している企業が国内にとどまる企業よりも雇用を削減している」という事実は(少なくとも平均的には)ほとんど確認されていない.

...と言っても,製造業全体としては,雇用が減少傾向にある点に注意.

先行研究の結果は,必ずしも海外進出企業が雇用を増やしていることを意味しているわけではない.

海外に進出している企業も国内にとどまる企業も,ともに雇用を削減しているが,両者に有意な差があるわけではないことを意味.

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それでは,何が製造業の雇用の低下の主因なのか?

一橋大学の神林龍教授との共同研究� �Kambayashi and Kiyota (2015, RWE)

日本の親会社と海外子会社の情報を接続し,両者の雇用の代替関係に注目.

国内の労働者と代替しているのは,海外の労働者ではなく,国内の資本(例えば,機械化の進展)であることを確認.� �

http://user.keio.ac.jp/∼kiyota/jea.pdf 慶應義塾大学・RIETI 清田耕造 2017 年石川賞講演 18 / 61

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それでは,何が製造業の雇用の低下の主因なのか?

一橋大学の神林龍教授との共同研究� �Kambayashi and Kiyota (2015, RWE)

日本の親会社と海外子会社の情報を接続し,両者の雇用の代替関係に注目.

国内の労働者と代替しているのは,海外の労働者ではなく,国内の資本(例えば,機械化の進展)であることを確認.� �

http://user.keio.ac.jp/∼kiyota/jea.pdf 慶應義塾大学・RIETI 清田耕造 2017 年石川賞講演 18 / 61

Page 26: 日本の直接投資と国際貿易 - user.keio.ac.jpuser.keio.ac.jp/~kiyota/jea.pdf · Hasegawa and Kiyota (2017, JPubE) 海外子会社の配当送金と国際課税制度の制度変更に注目し,配

表 1 労働需要関数の推定結果

L︸︷︷︸国内雇用

= f ( wd︸︷︷︸国内親会社賃金

, w f︸︷︷︸外国子会社賃金

, pdI︸︷︷︸国内資本財価格

, pd/pf︸ ︷︷ ︸相対製品価格

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Source: Kambayashi and Kiyota (2015)

1995年から 2009年にかけて,海外進出している日本の製造業の企業では平均して約 12%雇用が減少.

しかし,外国の賃金が国内雇用に与える影響は 1%ポイント未満...

むしろ大きく影響しているのは国内の資本財価格の下落であり,その要因は −15.1%ポイント.

http://user.keio.ac.jp/∼kiyota/jea.pdf 慶應義塾大学・RIETI 清田耕造 2017 年石川賞講演 19 / 61

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図 5 資本と労働の代替関係�� ������

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企業の海外進出と雇用の低下が同じ時期に起こっているため,あたかも企業の海外進出がその労働需要に大きな影響を及ぼしているかのように思われがち.

しかし,多くの研究結果は必ずしもこの主張を支持していない.

まず注意を払うべきは,海外の労働と国内の労働の代替関係ではなく,国内の資本と労働の間にある古典的な代替関係では?

http://user.keio.ac.jp/∼kiyota/jea.pdf 慶應義塾大学・RIETI 清田耕造 2017 年石川賞講演 20 / 61

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今回の分析の範囲外だが,機械化の進展は(一部の)労働との代替を促す一方,新たな雇用(業務)を生み出している点は注意が必要.

ATMの導入により銀行の行員は一支店あたり 1/3へと減少.

その分,支店開設のコストも低下し,結果的に支店の数は 40%拡大.銀行の行員の数も総計としては増加.— David Autor (2016) “Will automation take away all our jobs?”

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雇用へのマイナスの影響が大きくないとしても,直接投資に全く懸念がないわけではない.

学習院大学の乾友彦教授と慶應義塾大学の松浦寿幸准教授らの研究� �Kneller, McGowan, Inui, and Matsuura (2012, JJIE)

日本の親会社とその工場の情報を接続し,企業の海外進出と工場の閉鎖の関係を分析.

直接投資に伴い生産性の高い工場が閉鎖されており,それが日本の製造業全体の生産性を引き下げる一因になっていると指摘.

生産性:

海外進出企業の閉鎖する工場 > 国内にとどまる企業の工場� �

http://user.keio.ac.jp/∼kiyota/jea.pdf 慶應義塾大学・RIETI 清田耕造 2017 年石川賞講演 22 / 61

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今後の課題

これまでの日本の直接投資に関する研究は地域労働市場(local labormarket)や調整コストの問題までは踏み込んでいない.

▶ なお,理論研究だが,貿易自由化のスピードと調整コストについては,日本人研究者(一橋大学の古澤泰治教授)の貢献がある(Furusawa and Lai, 1999, JIE).

所得分配の問題についても,より詳細な分析が必要かもしれない(所得上位数パーセントへの影響など).

▶ Keller and Olney (2017, NBER WP):米国において,グローバル化が役員報酬にプラスの影響を与えていることを確認.

内生性への対処についても,検討の余地が残されている.

→ 労働経済学や都市経済学,計量経済学の知見を生かすことで,新たな発見につながるかもしれない.

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日本の比較優位

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Ricardo, David (1817) On the Principles of Political Economy andTaxation(『経済学および課税の原理』).

今年は比較優位の理論が誕生してから 200年目の節目の年.

...しかし,日本の比較優位がどこにあるのかはあまり知られていないのかもしれない...

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.Question 2........日本はどのような財に比較優位を持っているのか?

以下では,ヘクシャー=オリーン・モデル(国際貿易のモデルの一つ)の多数国・多数財・多数要素バージョンを利用.財の貿易を通じて間接的にどのような生産要素が取引されているかに注目(要素コンテンツ・アプローチ).

▶ 多数財・多数要素のモデルは,特殊な状況を除いて,どの財を輸出するかということまでは説明できない.

▶ しかし,どの要素に集約的な財を輸出するかということは説明できることが知られている(清田,2016,慶應義塾大学出版会).

▶ ヘクシャー=オリーンの定理:例)熟練労働豊富な国は,熟練労働集約的な財を輸出

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.Question 2........日本はどのような財に比較優位を持っているのか?

日本の資本と労働の要素コンテンツに注目した分析はこれまでにも数多く行われてきた.

▶ Tatemoto and Ichimura (1959, REStat), Syrquin and Urata (1986,JDE)など.

しかし,熟練労働と非熟練労働に注目した研究は限られており,また 2000年代後半はカバーされていない.

▶ Syrquin and Urata (1986, JDE), Sakurai (2004, JWE), Ito and Fukao(2005, NBER), Kiyota (2013, JWE),櫻井(2014,日銀WP)

以下では,資本と労働,そして熟練労働と非熟練労働に注目しつつ,1980年から 2009年をカバーした清田(2016)の結果を紹介.

http://user.keio.ac.jp/∼kiyota/jea.pdf 慶應義塾大学・RIETI 清田耕造 2017 年石川賞講演 27 / 61

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.Question 2........日本はどのような財に比較優位を持っているのか?

純輸出の資本・労働コンテンツ(relative capital content: RCC):

RCC ≡ KX/LX

KM/LM. (1)

KX と LX:それぞれ一国全体の財の輸出に含まれている資本と労働;KM と LM:それぞれ財の輸入に含まれている資本と労働.

▶ RCC > 1:輸出財の資本集約度(資本・労働比率)は輸入財の資本集約度を上回る.

▶ 貿易収支の影響を考慮するため,要素賦存と消費の関係も確認:(K/L)/(KC/LC ) > 1.

▶ 実際の分析では,ある財の生産に用いられた生産要素だけでなく,その財の中間投入の生産に用いられた生産要素も考慮.

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図 6 日本の貿易の相対的資本コンテンツ (RCC),1980–2009

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注:K/L は資本と労働の要素賦存(比率),KC/LC は資本と労働の消費(比率)を表す.

参考:清田(2016).

1980年から 2009年までの間,日本はほぼ一貫して資本集約的な財を輸出している.

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.Question 2........日本はどのような財に比較優位を持っているのか?

純輸出の熟練労働・非熟練労働コンテンツ(relative skill content:RSC):

RSC ≡ SX/UX

SM/UM. (2)

SX と SX:それぞれ一国全体の財の輸出に含まれている熟練,非熟練労働;SM と UM:それぞれ財の輸入に含まれている熟練,非熟練労働.

▶ 熟練労働:専門的・技術的職業従事者,管理的職業従事者.▶ 非熟練労働:事務従事者,販売従事者,サービス職業従事者,生産工程・労務作業者,保安職業従事者,農林漁業作業者,運輸通信従事者,分類不能.

http://user.keio.ac.jp/∼kiyota/jea.pdf 慶應義塾大学・RIETI 清田耕造 2017 年石川賞講演 30 / 61

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図 7 日本の貿易の熟練・非熟練労働コンテンツ (RSC), 1980–2009

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注:S/U は熟練・非熟練労働の要素賦存(比率),SC/UC は熟練・非熟練労働の消費(比率)を表す.

参考:清田(2016).

また,1980年から 2009年までの間,日本はほぼ一貫して熟練労働集約的な財を輸出している.

http://user.keio.ac.jp/∼kiyota/jea.pdf 慶應義塾大学・RIETI 清田耕造 2017 年石川賞講演 31 / 61

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図 7 日本の貿易の熟練・非熟練労働コンテンツ (RSC), 1980–2009

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注:S/U は熟練・非熟練労働の要素賦存(比率),SC/UC は熟練・非熟練労働の消費(比率)を表す.

出所:清田(2016).

しかし,その程度は 1990年代半ばから低下しており,2000年代は既に 1980年代の水準を下回っている.

http://user.keio.ac.jp/∼kiyota/jea.pdf 慶應義塾大学・RIETI 清田耕造 2017 年石川賞講演 32 / 61

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.Question 2........日本はどのような財に比較優位を持っているのか?

この結果は,日本が熟練労働集約的な財に対する比較優位を失いつつあることを示唆?

一橋大学の冨浦英一教授らの研究� �Tomiura, Wakasugi, and Zhu (2014, JER)

詳細な業務(task)に注目し,日本の 1995年から 2005年の貿易の業務コンテンツを推計.

日本の純輸出の技術的業務(operation and advanced technicaltasks)コンテンツがこの期間に低下していることを発見.

“the remarkable decline in the net exports of advanced technicaltasks might serve as a warning signal regarding thecompetitiveness of future Japanese manufacturing sectors” (p.243).� �

http://user.keio.ac.jp/∼kiyota/jea.pdf 慶應義塾大学・RIETI 清田耕造 2017 年石川賞講演 33 / 61

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図 8 特許申請数の推移

Hu, Zhang, and Zhao (2017, JDE, Figure 1)

ここ数年,日本の科学技術力の低下を懸念する声が上がっているが,これらの結果は,このような科学技術力の低下を示唆しているのかもしれない...

http://user.keio.ac.jp/∼kiyota/jea.pdf 慶應義塾大学・RIETI 清田耕造 2017 年石川賞講演 34 / 61

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図 9 貿易の熟練・非熟練労働コンテンツと純輸出比率

1.100

1.150

1.200

1.250

1.300

1.350

1.400

1.450

1.500

1.550

-0.100 -0.050 0.000 0.050 0.100 0.150 0.200 0.250

RSC

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注:NXR は純輸出比率((輸出 − 輸入)/(輸出 + 輸入))を表す.

出所:清田(2016).

なお,貿易収支と貿易の熟練・非熟練労働コンテンツの間には系統的な関係は確認できない.

http://user.keio.ac.jp/∼kiyota/jea.pdf 慶應義塾大学・RIETI 清田耕造 2017 年石川賞講演 35 / 61

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.Question 2........日本はどのような財に比較優位を持っているのか?

近年,企業のグローバル・バリューチェーンが拡大し,中間財貿易が活発になっている.

▶ Fragmentation, unbundling, offshoring (outsourcing)...

現在の貿易において,標準的なヘクシャー=オリーン・モデルでは貿易パターンは説明できなくなっているのでは?

▶ 例:中国から輸出される iPhoneは中国の輸出として計上されるが,その生産には,中国の生産要素だけでなく,日本やアメリカの生産要素も(中間財を通じて)投入されているため.

http://user.keio.ac.jp/∼kiyota/jea.pdf 慶應義塾大学・RIETI 清田耕造 2017 年石川賞講演 36 / 61

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.Question 2........日本はどのような財に比較優位を持っているのか?

学習院大学の伊藤匡教授らの研究� �Ito, Rotunno, and Vezina (2017, RIE)

付加価値貿易に注目し,ヘクシャー=オリーンの定理が付加価値貿易に当てはまるかを分析.

▶ 通常の貿易:輸出入は grossでとらえられており,例えば中国のiPhoneの輸出はそのまま丸々中国の輸出として計上される.

▶ 付加価値貿易:輸出入を付加価値でとらえようとしたもの.例えば中国の iPhoneの輸出のうち,中国で生み出された付加価値分のみに注目.

通常の貿易よりも付加価値貿易において,ヘクシャー=オリーンの定理が成立しやすいことを確認.� �

http://user.keio.ac.jp/∼kiyota/jea.pdf 慶應義塾大学・RIETI 清田耕造 2017 年石川賞講演 37 / 61

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日本の貿易政策

http://user.keio.ac.jp/∼kiyota/jea.pdf 慶應義塾大学・RIETI 清田耕造 2017 年石川賞講演 38 / 61

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.Question 3........日本の貿易政策はどのような要因によって決まっているのか?

日本の貿易政策で特に注目されているのが,農業や食料品・飲料に対するもの.

日本では,工業製品よりも農産品や食料品に対して,高い関税・非関税障壁があると推計されている.

http://user.keio.ac.jp/∼kiyota/jea.pdf 慶應義塾大学・RIETI 清田耕造 2017 年石川賞講演 39 / 61

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図 10 日本の輸入関税率(従価税換算)の高い農産品

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注:輸入関税率には関税率に換算した非関税障壁も含まれる.

出所:石川・椋・菊地(2013,図 15-3).

貿易政策形成の要因についても,興味深い結果が報告されている.

http://user.keio.ac.jp/∼kiyota/jea.pdf 慶應義塾大学・RIETI 清田耕造 2017 年石川賞講演 40 / 61

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.Question 3........日本の貿易政策はどのような要因によって決まっているのか?

立命館大学の播磨谷浩三教授らの研究� �Harimaya, Kagitani, and Tominaga (2010, JER)

ウルグアイラウンド(農業保護水準の引き下げに関する合意:UR)の農業対策費の分配に注目.

▶ UR農業対策費:URの農業合意による国内農業への影響を緩和するために 1994年に確保された予算のこと.

与党に対する投票率が高い地域ほど,また与党議員の多い地域ほど,農業対策費が多く配分される傾向にあったことを確認.� �

一橋大学の水田岳志研究員の研究� �水田(2013, 国際経済)

「一票の格差」に注目し,議員定数の配分の偏りが農業保護を強める要因となっていることを確認.� �

http://user.keio.ac.jp/∼kiyota/jea.pdf 慶應義塾大学・RIETI 清田耕造 2017 年石川賞講演 41 / 61

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.Question 3........日本の貿易政策はどのような要因によって決まっているのか?

青山学院大学の伊藤萬里准教授の研究� �Ito (2015, PC)

2012年の日本の第 46回衆議院議員の候補者のデータから,候補者の支持する政策と得票の関係を分析.

選挙が接戦の場合,候補者は貿易自由化を支持しない傾向にあることを確認.� �

→ 政治学で蓄積されているデータを活用することも研究の方向性かもしれない.

▶ なお,速水・神門(2002)は保護を含む日本の農業の問題とその政策的課題について建設的な議論を行っている.

http://user.keio.ac.jp/∼kiyota/jea.pdf 慶應義塾大学・RIETI 清田耕造 2017 年石川賞講演 42 / 61

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.Question 3........日本の貿易政策はどのような要因によって決まっているのか?

さらに,近年の新しい試みの一つとして,行動経済学の知見を生かした貿易政策の研究も.一橋大学の冨浦英一教授らの研究� �Tomiura, Ito, Mukunoki, and Wakasugi (2016, RIE)

どのような人が貿易自由化に反対しているのかを 1万人を超えるアンケート調査から検証.初期保有効果に左右されやすい人ほど貿易自由化に反対する傾向にあることを確認.

▶ 初期保有効果:現在保有している財,あるいは現状により高い評価を与えることを意味しており,現状維持を好む傾向につながる.

この結果は,経済的な要因だけでなく心理的な要因も貿易政策の形成に深くかかわっているというものであり,貿易政策を議論する上で示唆に富むと言える.� �

http://user.keio.ac.jp/∼kiyota/jea.pdf 慶應義塾大学・RIETI 清田耕造 2017 年石川賞講演 43 / 61

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日本の貿易政策も含む貿易政策の実証研究については...

清田耕造・神事直人『実証から学ぶ国際経済(仮題)』 有斐閣

...2017年中になんとか出版できれば...

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をご参照下さい...

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おわりに

http://user.keio.ac.jp/∼kiyota/jea.pdf 慶應義塾大学・RIETI 清田耕造 2017 年石川賞講演 44 / 61

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おわりに

本日の内容

日本の直接投資と国際貿易に関する次の 3つの疑問に注目し,これまでの研究で何がどこまでわかっているのか,また,何が研究課題として残っているのかを紹介.

直接投資

...1 企業の海外進出に伴い,雇用は失われていないのか?

国際貿易

...2 日本はどのような財に比較優位を持っているのか?

...3 日本の貿易政策はどのような要因によって決まっているのか?

http://user.keio.ac.jp/∼kiyota/jea.pdf 慶應義塾大学・RIETI 清田耕造 2017 年石川賞講演 45 / 61

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注目した疑問

直接投資

...1 企業の海外進出に伴い,雇用は失われていないのか?

→ これまでの研究によれば企業の海外進出は必ずしも雇用の喪失につながっているとは言えない.

→ 国内の労働者と代替しているのは,海外の労働者ではなく,むしろ国内の資本(例えば,機械化の進展)の可能性.

▶ ただし,国内の労働者との代替といっても,どのような業務(task)の労働と代替しているのかを見極めることは重要.

▶ また,これまでの直接投資に関する研究は地域労働市場や調整コストの問題,さらに所得の細かな分配の問題までは踏み込んでいない.

→ 今後の研究の発展に労働経済学や都市経済学,計量経済学の知見が有効?

http://user.keio.ac.jp/∼kiyota/jea.pdf 慶應義塾大学・RIETI 清田耕造 2017 年石川賞講演 46 / 61

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注目した疑問

国際貿易

...2 日本はどのような財に比較優位を持っているのか?→ 現時点ではおそらく資本集約的な財と熟練労働(技能労働)集約的な財

▶ 少子高齢化が進む日本の現状を踏まえると,労働集約的な財に比較優位を見出すのは難しいと考えられる.

▶ また,巨額の財政赤字を抱えていることを踏まえると,公共投資を通じた資本蓄積にも限界.

▶ さらに,日本は天然資源も希少...▶ このような現状で日本の比較優位を見出すとすれば,それは人的資本の蓄積を通じた熟練労働集約的な財では?

▶ しかし,利用可能な指標からは,日本が熟練労働集約的な財の純輸出国ではなくなりつつあることが示唆されている...

→ 人的資本の蓄積をどのように進めていくか,それをどのように生産,貿易に反映させていくかを考えることが重要な課題.

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注目した疑問

国際貿易

...2 日本はどのような財に比較優位を持っているのか?→ 現時点ではおそらく資本集約的な財と熟練労働(技能労働)集約的な財

▶ 少子高齢化が進む日本の現状を踏まえると,労働集約的な財に比較優位を見出すのは難しいと考えられる.

▶ また,巨額の財政赤字を抱えていることを踏まえると,公共投資を通じた資本蓄積にも限界.

▶ さらに,日本は天然資源も希少...▶ このような現状で日本の比較優位を見出すとすれば,それは人的資本の蓄積を通じた熟練労働集約的な財では?

▶ しかし,利用可能な指標からは,日本が熟練労働集約的な財の純輸出国ではなくなりつつあることが示唆されている...

→ 人的資本の蓄積をどのように進めていくか,それをどのように生産,貿易に反映させていくかを考えることが重要な課題.

http://user.keio.ac.jp/∼kiyota/jea.pdf 慶應義塾大学・RIETI 清田耕造 2017 年石川賞講演 47 / 61

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注目した疑問

国際貿易

...2 日本はどのような財に比較優位を持っているのか?→ 現時点ではおそらく資本集約的な財と熟練労働(技能労働)集約的な財

▶ 少子高齢化が進む日本の現状を踏まえると,労働集約的な財に比較優位を見出すのは難しいと考えられる.

▶ また,巨額の財政赤字を抱えていることを踏まえると,公共投資を通じた資本蓄積にも限界.

▶ さらに,日本は天然資源も希少...▶ このような現状で日本の比較優位を見出すとすれば,それは人的資本の蓄積を通じた熟練労働集約的な財では?

▶ しかし,利用可能な指標からは,日本が熟練労働集約的な財の純輸出国ではなくなりつつあることが示唆されている...

→ 人的資本の蓄積をどのように進めていくか,それをどのように生産,貿易に反映させていくかを考えることが重要な課題.

http://user.keio.ac.jp/∼kiyota/jea.pdf 慶應義塾大学・RIETI 清田耕造 2017 年石川賞講演 47 / 61

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注目した疑問

国際貿易

...3 日本の貿易政策はどのような要因によって決まっているのか?

→ これまでの研究によれば,日本の貿易政策,特に農業の保護は議員定数の配分や選挙が接戦かどうかという制度的・政治的な要因が強く働いている.

→ さらに近年の研究では,経済的な要因だけでなく,心理的な要因も強く働いていることが指摘されている.

これらの結果を踏まえると,日本の貿易政策の議論では,そもそも貿易が「ゼロサム」ではなく「プラスサム」であるという点が重視されていない可能性がある.

→ 貿易が「プラスサム」であることを地道に説明していくことが必要.

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そのほかの重要な課題(1/4)

対日直接投資

海外企業による出資やM&Aが日本企業の生産性にプラスの影響を及ぼすことは一橋大学の深尾京司教授や慶應義塾大学の木村福成教授らの研究で確認されている.

▶ Fukao and Murakami (2005, JAPE), Fukao, Ito, Kwon, and Takizawa(2008, NBER Book Chapter), Kimura and Kiyota (2007, RDE)

対日直接投資の拡大は政策的にも重要とされていますが,外国企業による日本への直接投資(対日直接投資)は諸外国と比べて低い水準に留まる...

▶ 飯田(2015,経済産業研究所)によれば,2013年の対内直接投資残高・GDP比率を国際比較すると,日本は 199か国中 196位.

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そのほかの重要な課題(1/4)

対日直接投資

しかし,対日直接投資がなぜ低い水準にとどまっているのか,これまでの研究ではその原因を説明できていない...

▶ Kimino, Saal, and Driffield (2007, WE):為替レートや労働コストが対日直接投資を説明する要因になっていないことを確認.

▶ 佐藤・大木(2012,経済産業研究所):言語の違いだけでは対日直接投資の低さは説明できないことを確認.

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そのほかの重要な課題(2/4)

貿易理論の現実妥当性貿易理論の現実妥当性を検証する上で,日本の都道府県・産業レベルのデータが活用されている.

ヘクシャー=オリーン・モデルが前提とする技術が同一という仮定と整合的.

▶ Davis and Weinstein (1999, EER):比較優位と規模の経済性の重要性を比較.

▶ Tomiura (2005, JER): 標準的なヘクシャー=オリーン・モデルが前提とする「要素価格均等化」を検証.

▶ Kiyota (2012, JIE): 標準的なヘクシャー=オリーン・モデルが前提とする「要素価格均等化」とその拡張モデルを検証.

▶ Kiyota and Kurokawa (2017, RIETI-DP): 標準的なヘクシャー=オリーン・モデルが前提とする「要素集約度の逆転がない」という仮定を検証.

日本のデータは様々な課題も指摘されているが,世界で評価される研究につながる可能性も...

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そのほかの重要な課題(3/4)

輸出と生産性

多くの国で,輸出を行っている企業は輸出を行っていない企業(非輸出企業)よりも生産性が高いことが確認されている.

▶ Melitz (2003, ECTA)▶ 日本のケース:Kimura and Kiyota (2006, RWE), Todo (2011, WE)

→ しかし,Todo (2011, WE)は,生産性は企業の輸出に有意な影響を及ぼしているものの,その程度が小さいことを確認.

▶ この結果は,企業の輸出は生産性だけでは十分に説明できないことを意味.

▶ これに関連して,戸堂(2011,中公新書)は生産性が高いにも関わらず,非輸出企業がかなり多く存在することを指摘.

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そのほかの重要な課題(3/4)

輸出と生産性

さらに,輸出と生産性に関する研究は一国内の輸出企業と非輸出企業の比較から,輸出企業同士の国際比較へ.

▶ Bellone, Kiyota, Matsuura, Musso, and Nesta (2014, EER)▶ Kiyota, Matsuura, and Nesta (2016, RIETI-DP)

⋆ 生産性の国際比較:Jorgenson, Kuroda, and Nishimizu (1987, JJIE)

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そのほかの重要な課題(4/4)

歴史から学ぶ

最近,歴史データを活用した数量的な分析が様々な分野で活発.▶ Okazaki, Sawada, and Yokoyama (2005, JEH); Okazaki and Sawada

(2017, EEH); Ito, Maeda, and Noda (2017, EHR)▶ Kiyota and Okazaki (2005, IJIO; 2010, JLawE), Kondo and Shigeoka

(2013, JPubE), Arimoto, Nakajima, and Okazaki (2014, RSUE),Braguinsky, Ohyama, Okazaki, and Syverson (2015, AER), Braguinsky,Miyakawa, and Okazaki (2017, WP)

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そのほかの重要な課題(4/4)

歴史から学ぶ

国際貿易の分野も例外ではない.▶ Bernhofen and Brown (2004, JPE), Kiyota (2010, RWE):比較優位の理論の妥当性を日本の開国前後のデータを利用して検証.

▶ Bernhofen and Brown (2005, AER):貿易の利益を日本の開国前後のデータを利用して検証.

▶ Kiyota and Okazaki (2016, JJIE):輸入割当撤廃の効果を 1960年代の日本のデータを利用して分析.

▶ Bernhofen and Brown (2016, AEJ Micro):ヘクシャー=オリーンの定理の妥当性を日本の開国前後のデータを利用して検証.

経済史の研究者との共同研究から現代につながる重要な示唆を得ることができるかもしれない.

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おわりに—いま,実証国際経済学もアツい!

このように,政策的に重要で学問的にも興味深いテーマがまだたくさん残されています.

▶ 非常に単純な手法でも取り組める課題(そして取り組むべき課題)がたくさん残っています.

さらに,今日取り上げたテーマは国際経済学の実証研究のほんの一部にすぎません.

▶ 貿易の決定要因(gravity model),アウトソーシング,貿易の利益,貿易と品質,自然災害と貿易,グローバル・バリュー・チェーン(生産ネットワーク),貿易自由化と死亡率・出生率,自由貿易協定の利用...

▶ 加えて,今年の John Bates Clark Medalistは empirical trade economist(and economic historian)です!(Stanford大学の Dave Donaldson氏)

ぜひ,国際経済学の実証研究への参入,あるいは国際経済学者との共同研究についてご検討下さい!

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おわりに—いま,実証国際経済学もアツい!

このように,政策的に重要で学問的にも興味深いテーマがまだたくさん残されています.

▶ 非常に単純な手法でも取り組める課題(そして取り組むべき課題)がたくさん残っています.

さらに,今日取り上げたテーマは国際経済学の実証研究のほんの一部にすぎません.

▶ 貿易の決定要因(gravity model),アウトソーシング,貿易の利益,貿易と品質,自然災害と貿易,グローバル・バリュー・チェーン(生産ネットワーク),貿易自由化と死亡率・出生率,自由貿易協定の利用...

▶ 加えて,今年の John Bates Clark Medalistは empirical trade economist(and economic historian)です!(Stanford大学の Dave Donaldson氏)

ぜひ,国際経済学の実証研究への参入,あるいは国際経済学者との共同研究についてご検討下さい!

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おわりに—いま,実証国際経済学もアツい!

このように,政策的に重要で学問的にも興味深いテーマがまだたくさん残されています.

▶ 非常に単純な手法でも取り組める課題(そして取り組むべき課題)がたくさん残っています.

さらに,今日取り上げたテーマは国際経済学の実証研究のほんの一部にすぎません.

▶ 貿易の決定要因(gravity model),アウトソーシング,貿易の利益,貿易と品質,自然災害と貿易,グローバル・バリュー・チェーン(生産ネットワーク),貿易自由化と死亡率・出生率,自由貿易協定の利用...

▶ 加えて,今年の John Bates Clark Medalistは empirical trade economist(and economic historian)です!(Stanford大学の Dave Donaldson氏)

ぜひ,国際経済学の実証研究への参入,あるいは国際経済学者との共同研究についてご検討下さい!

http://user.keio.ac.jp/∼kiyota/jea.pdf 慶應義塾大学・RIETI 清田耕造 2017 年石川賞講演 56 / 61

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