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by Dr. H. James Harrington, CEO of Harrington Associates FrankVoehl, CEO of Strategy Associates Christopher F.Voehl, CIO of Strategy Associates WHITE PAPER 持続可能な 変革モデル

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Page 1: 持続可能な 変革モデル - 一般社団法人 PMI日本支部...Pulse of the Profession® In-Depth Report: Enabling Organizational Change Through Strategic Initiatives』(PMI,

by Dr. H. James Harrington, CEO of Harrington Associates FrankVoehl, CEO of Strategy Associates

Christopher F. Voehl, CIO of Strategy Associates

WHITE PAPER

持続可能な 変革モデル

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持続可能な変革モデル(The Model for Sustainable Change)

2 ©2014 Project Management Institute, Inc.

目次

はじめに . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .3

変革の維持. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .4

維持可能な変革のモデル . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .5

上層部からの支援 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 6

変革維持手法の活用 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 6

必要に応じたパラダイムシフト . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 8

会話と伝達 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 8

吸収と統合 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 8

結果を維持する計画への投資 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 8

ポートフォリオマネジメント手法を用いた結果の取決め . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 9

まとめ . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .11

参考文献 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .12

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はじめに

人類初期の書物に変革に重点を置いているものがいくつかあります。紀元前三千年に遡ると、易経では変革

の概念は不可避であり、変革に抵抗することは人類の最も大きな苦痛の原因の一つであると考えました。こ

れら初期の変革エ—ジェント(*注1)たちは、積極的に変革に影響を与えるには、内的な力と外的な力との間

のバランスが必要であると書いています。しかしそれは瞬間的な変革を生み出すだけのものであり、変革を維

持することとは全くの別物です。

ステークホルダーは、変革とは何か、なぜ重要なのかを理解しなければなりません。変革の方向に動くため、

そして組織の将来と同様に、彼ら自身の将来にとっても必要なものとして変革を受け入れるためのモチベー

ションも、彼らには必要です。実績に対する報奨も設けられるべきであり、これは戦略計画の一部として描か

れる将来の状況に必要な望ましい行動を増進させます。そして最後に、ステークホルダーはリスク、失敗の因

果関係、成功に伴う恩恵を把握しなければなりません。

トヨタの最近の例を取り上げましょう。トヨタは先駆的な総合的品質管理(TQM)概念を中心としたブランド

力と競争力を築き上げました。新入社員トレーニングとして、従業員はある種の欠陥を見つけるまで生産

ラインを見張らなければなりませんでした。欠陥を見つけられたら、研修員はコードを引っ張り、アラーム

を鳴らすことになっていて、オペレーションが停止します。品質リーダーたちが欠陥を調べに来て、件の

欠陥であると認められた際には誰もが称賛します。その後、その研修員はラインから離れトレーニング・プ

ログラムが修了します。その他の研修員たちは潜んだ欠陥を特定するまで続けなければなりません。企

業文化に浸透したこの慣習は、世界的成長を後押ししました。ならばトヨタが深刻な自動車欠陥の結果と

して、政府当局に訴えられ、罰金を科せられ、著しく損傷したブランド・イメージにテコ入れをすることにな

ったのはどういうわけでしょう。企業はなぜTQM変革を維持できなかったのでしょう。

ほとんどの組織文化は転換する必要に迫られています。最善の結果を期待しながら、チェンジマネジメント

はプロジェクト開始時の変革の伝達から始まり、新しいプロセスやツールや製品の訓練で終わることがよく

あります。この形式を捨てて維持可能な変革モデルを採用するため、プロジェクトやプログラム・マネジャー

を含む組織のリーダーたちはすべてのステークホルダーと連絡しあい巻き込むだけでなく、より多くのことを

しなければなりません。彼らは戦略的な組織変革の設計、実行、継続的改善において、積極的にチームに

関与する必要があります。

*注1:変革を委任されて実行する人、『変革を積極的に支持する者、あるいは推進する要因』(PMI, 2013a)

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変革の維持

変革マネジメントは、長期間持続する改善を目的とし、現行の状態から未来の状態への移行を可能にする

ために行う、先を見越した複数の手段から成り立ちます。この白書は変革の維持を達成するための前向き

な方向性を提案します。

PMIの『Pulse of the Profession® In-Depth Report: Enabling Organizational Change Through Strategic

Initiatives』(PMI, 2014)に、戦略施策の48パーセントが不成功に終わり、結果的に『戦略施策に費やす1ド

ルにつき約15パーセントが損失する』(p. 4)と示されています。良いニュースとしては、組織の変革マネジメ

ントが極めて効果的であると報告した組織の成功率が素晴らしく高いことです。また、実施と改善に効果的

に関与した組織のチームは、大幅な変革を要するプロジェクトを受け入れ、発展させることができることも良

いニュースの一つです。ホーンスタイン(2008)は、ITプログラムに関連した課題をまとめました。

IT導入における組織変革への取組みの中で最も重要で大きな成果の一つは、コミュニテ

ィの能力とコミュニティの行動力を証明して見せることです。つまり、組織の人材から成る

変革エージェントの役割を生み出すことにより、互いに関わり合う全てのスタッフを団結さ

せ、未来像を発展させるための対話にリーダーシップをもたらし、それらすべては従業員

のプライドと責任感を引き出します。さらに、組織そのものがどのように改善できるかにつ

いて、組織の誰もが素晴らしいアイデアを持っていることが明らかになります。従業員た

ちは貢献できる機会をいつでも待っているのです。

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維持可能な変革のモデル

上層部からの支援 組織内の振る舞いが変わりつつあるとき、経営層からのスポンサーと、経営層によるリーダーシップの結果

責任を開始する必要があります。明確な変革課題を設定することにより、プロジェクト成功の基盤が築かれ

ます。経営層のリーダーもまた、望ましい変革が文化とスタッフの行動に深く確実に根付くことを目標に、

改善努力の継続を支援する必要があります。

変革維持手法の活用 プロジェクトの終結時やプログラムの全ライフサイクルにおいて、重要な変革を維持する努力は移行

計画やライフサイクルの次の段階に組み込まれるべきです。

必要に応じた

パラダイムシフト

ビジネスが今行われている状態から、将来的に行われる状態に心構えを変えるには、数分しかかからない

場合もあれば、数十年かかる場合もあります。このように、組織は個人が新しい状態に適応し続けられるよ

う、変革による利益を伝える絶え間ない取組みを計画する必要があります。

会話と伝達 変革を維持するためには、特定の行動、プロセス、振る舞いが求められる理由を個人個人が理解でき

るように、対話とコミュニケーションを続けることが必要です。

吸収と統合 変革を維持するために変革エージェントを活用しましょう。

結果を維持する

計画への投資

変革の実践と反復を通して、プロジェクトの確実な投資利益が得られるので、変革への投資効果を実感す

るでしょう。新たな能力が使えるようになり、組織が変革に適応することに慣れていき、その経験は利益を得

るために必要なもの、刷新への投資、新しい力量や製品群とサービス群を維持することに変えることができ

る豊富な資源を生み出します。これは市場での競争上の優位性につながり、変革や刷新を繰り返すため

のさらなる力量を構築します。

ポートフォリオ手法を

用いた結果の取決め

戦略を実施する前に変革の準備状況を評価し、その結果として新しい状態に適応します。

図1: 維持可能な変革のモデル

次に示す維持可能な変革のためのモデルに

従うことにより、組織が単なる導入から戦略の

整合、利益実現、変革アジリティへ移行するこ

とは可能であると前述の研究が立証していま

す。

図1のモデルは一連の行動を示すものでも、

段階的な手法を示すものでもありません。むし

ろ、モデルの全要素が注目され続けることを

意図しており、実際、それら要素は強い相互

関係を持ち、ポートフォリオのプロジェクトやプ

ログラムが実行される時に調整されます。

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上層部からの支援 スタッフとやり取りするときに、プロジェクトやプログラムの最終目標を視覚的にも聴覚的にも支持をすると

いった有言実行の経営層のリーダーたちによって、上層部からの支援が証明されます。これは他の組織

単位や部門間での機能上の域を超えて相互作用し合うときのケースにも当てはまります。非常に明瞭な戦

略的な未来像や道筋を構築し伝達することにより、成功するプロジェクトやプログラムの基礎を作ります。

戦略実行の鍵となるのは、深い関与と整合性を創り出し、その構築と実行に参加するよう、変革エージェン

トに権限を与えることです(APQC, 2014)。

変革に組織を深く整合させることを保証するため、そして維持する変革の基礎を築くために、経営層のリ

ーダーたちは投資対効果検討書に描かれ、戦略計画に結び付け支持する変革のための上級リーダーシ

ップ・チーム間に協力態勢を築くことから始めるべきです。一連の変革行為の結果を実施する際、抵抗力

の増勢と受入れ率の低下につながる二重規範にならないよう、お互いに支え合うことが、リーダーたちに

とって部門内協力の活性化と同様に重要になってきます。

一旦リーダーシップに協力態勢が整うと、それは、彼ら以下の体制を確実に整え、同時に組織の他の領

域と確実に連携する、強いリーダーシップとなります。リーダーシップの確かな協力態勢が整えば、そのリ

ーダーシップはハリントンとネルソン(2013)が描いた持続するスポンサーシップ・モデルの一部として変革

から影響を受ける人々を関与させようとします。

変革要素である経営層のリーダーシップはプロジェクトが終結してもなくなりません。たとえば、無駄を減らし

効率を改善するための贅肉のない実践方法を採用するいくつかの組織は、確実に実績を改善し維持してき

ました。彼らは常に技量を評価し、大きな改善につながる変革を特定しています。この注力および得られた利

益は経営層のリーダーシップからの継続的な支援なしでは成し遂げられなかったでしょう。

変革維持手法の活用 プログラムのライフサイクルは数年にわたりますので、長期間の中でプログラムに関与する人々が交代する

可能性があります。このように、プログラム・チーム内外でのチーム要員交代時に重要な変革要素がうっかり

混乱に陥らないよう、プログラムには変革維持計画が必要です。同様に、プログラム内のプロジェクト群では

確実に次に示す終結を行うべきです。つまり、残っている変革マネジメント活動をプログラム計画の変革活

動に組み込みます。

プロジェクト環境において、一旦プロジェクトが完結すると、その成果物は組織内に移管されます。その移

管と、関連する変革要素のために進行している全ての支援はプロジェクト計画に組み込まれるべきです。

プロジェクトの成果物をマネジメントする予定の運用スタッフは、プロジェクトが終結した時点でそのプロセ

スに関与すべきです。

『組織のチェンジマネジメント:実践ガイド』(PMI, 2013a)によると、維持可能な変革は最初のプロジェクト計

画から始まります。変革を考案することが、図2の変革ライフサイクル・フレームワークにおける最初の活動

で、このプロセスの一連の活動の一部として『変革の進め方の速さも定義する。これは、レシピエントの代

表との協働で行われ、ステークホルダーを動員することと変革を維持することを目的としている』(69ページ)。

変革の持続は変革ライフサイクル・フレームワークの中に表示されていますが、実践ガイドには、これは一

連のプロセスの最終段階ではなく、むしろ変革の方向付け活動に関連するプロセスであり、プロジェクトま

たはプログラムのライフサイクルを通して注力されると書かれています。

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図2: 変革ライフサイクル・フレームワーク

組織のビジネス戦略 現在の 状態

将来の 状態

ビジネス目的

変革を考案する

変革を計画する

変革を実行する

移行を管理する

変革を維持する

価値の実現

適応できる変革

変革必要性の特定/明確化

変革の準備状況を評価

変革のスコープを描写

変革手法の定義

ステークホルダー参画計画

移行/統合計画

組織の変革準備

ステークホルダーの動員

プロジェクト成果の納品

成果を業務に移行

受入れ率と成果/利益の測定

差異対応の調整計画

伝達、協議、説明の継続

センスメイキング活動の実施

利益実現の測定

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必要に応じたパラダイムシフト 単に変革を達成するだけでなく、過去のやり方に組織が戻る課題に取り組むことが維持可能な変革の焦点

です。そのため、慣性要素であるだけではなく、プレッシャーがかかった場合に、物事を行うのにより安心し

慣れ親しんだ方法に戻る傾向にあります。以前はどのように行っていたか(現在の状況)から、どのように行

うべきか(将来の状況)にパラダイムシフトすることには、過去に使われていたものの、もはや価値のないツー

ルや仕組みを取り除くことも含みます。

エルナン・コルテスがメキシコ内部に移動しモンテスマと交戦する時期が来たと決断したとき、軍隊による反

乱の脅威に直面しました。目標は明確でしたが、いくつかの反乱や反乱未遂が起こっていました。そこで、

『撤退はあり得ない。全てを成功に賭ける』(Marks, 1993, pp. 84–85)ことを決意します。コルテスは乗って来

た船舶を破壊することで、退却する可能性を絶ちました。選択肢は二つだけ。『戦うか死ぬか。』プロジェクト

やプログラムの戦略目的は、ここまで極端ではありませんが、持続可能性のために重要なのは、過去のツー

ルや仕組みに逆戻りする可能性を絶ち、将来の理想的な状態を維持するために、新しいプロセスの実施に

フォーカスすることです。

はじめに必要な心構えのシフトを決断し、次に行動上のシフトに取り掛かれば、組織的なシフトが起こります。

変容が伴う変革への近道はありません。変革のスコープを扱いやすい単位に分割し、変革を維持するのに

必要な鍵となる振る舞いを特定し、宣言された目標に向かう進捗を測定しながら報酬と結果の構造を変える

ことにより、積極的な振る舞いを修正し、強化しましょう。

会話と伝達 変革を維持するためには、特定の行動、プロセス、振る舞いが求められる理由を個人個人が理解できるよう

に、対話とコミュニケーションを続けることが必要です。コーチングやメンタリング、検証や評価などの教育面

の努力を行えば、組織の誰もが進展する変革の影響、変革とそれに伴う便益を維持するための継続的努

力を理解できるようになります。たとえばマクドナルドは、より健康的な食べ物の選択肢をメニューに加え、

その決意を消費者に納得させる努力を続けました。より健康的な選択肢の提供に組織が真剣に取り組んで

いることを会社はコマーシャルと店舗の中で伝達し、宣伝し続けています。

吸収と統合 『変革を積極的に支持する者、あるいは推進する要因』(PMI, 2013a)と定義される変革エージェントは変革の

維持において重要な役割を担います。彼らはチームにおいて重要な情報のパイプであり、影響を及ぼす者

であり、維持努力を増強する必要があるときには容易に識別できる者です。変革維持を支援し、『壁に耳を

置いて』人々とプロセスが調和する助けとなりえます。

結果を維持する計画への投資 変革の実践と繰り返しによって、プロジェクトの真のROIを達成することで変革への投資が実現されるでしょう。

新しく追加された能力が使えるようになり、組織は変革に適応することに慣れていき、豊富な資源を生み出し、

それは利益を得るために必要なもの、刷新への投資、新しい力量、新製品やサービスに変わります。これは

市場での競争上の優位性につながり、変革や刷新のためのさらなる力量を構築します。

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変革の維持に対して時間と注力の投資を確保する機会や必要性が大抵の組織に備わっています

(Beckhard & Pritchard, 1992)。これが本当ならば、現在のいかなる成功も将来の変革の成功要因であり、

変革は文化の一部になり、特定の成功は文化伝承の一部になります。

維持のための投資はプロジェクトそのものの中で計画した投資の範囲外です。トレーニングの継続や将来

の状態を支えることに焦点を当て、組織において持続する変革をさらに推進していく、運用計画の一部と

して、将来への投資計画が必要です。この継続した投資は、俊敏に変革する組織を発展させるための基

礎的な要素であり、得られてきたものを補強し続け、その成果を足場とし新しい能力を将来の変革のため

に活用します。行ってきたことと将来的に行い得ることに意図的に焦点を当てたとき、成功が成功を生みま

す。この投資計画はまた、抵抗勢力などの変革の障壁を最小限にします。

ポートフォリオマネジメント手法を用いた結果の取決め PMIの『Lexicon of Project Management Terms』 (PMI, 2013b)は、ポートフォリオを「戦略目標を達成するた

めにグループとしてマネジメントされたプロジェクト、プログラム、サブポートフォリオ、および定常業務」と定義

しています。変革にポートフォリオマネジメント手法を用いる意義は、変革がプロジェクトのアウトプットを組織

の戦略計画に戻し直接結び付くことにあります。さらに、ポートフォリオが共有する構成要素は、組織の戦略

と目的を直接反映します。ポートフォリオマネジメントには、組織の優先順位を識別し、それに合わせること、

パフォーマンス・マネジメント(および保証されている場合は継続的な改善)のための統治と枠組みの構築が

含まれます。変革マネジメントにポートフォリオマネジメント手法を用いれば、組織のプロジェクトやプログラム

には、価値、費用・便益および投資回収(ROI)に関する包括的なポートフォリオ報告や評価を実施することが

増え、同時にリスクを評価する上で、またシステム全体にわたる資源を割り当てる上で、幅広く有利な立場を

得られます。

さらにポートフォリオの観点を用いることで、戦略実行の一つのフェーズを戦略計画の中で想定する、より

大きな変革を達成するために開始するプロジェクトやプログラムに関連した他のフェーズと結び付けます。

また、それは一つのプロジェクトで可能になった機能を他のプロジェクトで求められる機能に結び付けるの

に役立ちます。そうなると、プロジェクトはもはや一度きりのプロジェクトではなく、戦略的な変革や、さらなる

戦略策定につながるプロジェクトの集まりとなります。

ポートフォリオマネジメントにおける良い実務慣行(PMI, 2013c)によると、以下の実務慣行を確実に標準化

すれば、組織に恩恵をもたらします。ほぼ組織統治機能の領域です。

■ プロジェクト、プログラム、サブポートフォリオのマネジメントに全体的な基盤を提供すること

■ 新規施策要求事項の検証と評価を支援すること、新規プロジェクトの優先順位付けと認可を促

進すること、組織戦略と目標に沿うように変革に影響するための資源を割り当てること

■ ポートフォリオ統治プロセスへの重要な成功要因判断基準、資源、費用、欠陥、関連

した是正処置に関するプロジェクトやプログラムの進捗報告を提供すること

■ プロジェクト、プログラム、他ポートフォリオ間の資源を交渉し、調整すること

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■ リスクの特定と軽減を支援すること

■ 実施中の施策に関連するリスクや課題を伝達すること

■ 方針の実施状況を監視し、組織の戦略目標に常に合わせていること

■ 教訓の収集と普及を含め、資源や記録サービスの知識管理を提供すること

計画した変革の目標がプロジェクトの成果物により達成し、報告されたら、プロジェクトを終結するときです。

プロジェクトの途中で変革に疲れてしまい、最後の段階は見逃されがちです。プロジェクトが終わりに近づき、

自然に活力が散らばる動きが見られることを理解するなら、プロジェクト終結時だけではなく、プロジェクトの

ライフサイクルを通して教訓を文書化しましょう。

組織にとって重要なのは、何をすればうまくいくかを根付かせ、針路をそらす物すべてが再現するの

を避けることです。長期間にわたりプロジェクトのポートフォリオ全体で組織の変革手段に焦点を当て、

標準化することは、変革(および改善)に適応できる組織文化を組織の日々の業務の一部として構築

するために非常に重要です。

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まとめ

過去、変革を達成し、変革の避けられない影響を取り扱うためのさまざまな(結果を多様化する)方法論が使

われてきました(Gelfand, Leslie, & Keller, 2008)。PMIの『Pulse of the Profession®』(2014)で、「組織戦略を

成功裏に実行するため、企業には変革を推進し導く技術を持つプロジェクトとプログラムのマネジャーが必要

ですが、さらに、それら変革が戦略的にビジネス目標に沿っていることを確認することも必要です。」(P.2)と指

摘しています。

プロジェクトの成功には、変容に対する組織の準備、ステークホルダーの積極的な関与、実施前、実施中、

実施後に変革を支持し、支援する経営層のスポンサーの関与を伴います。この白書で紹介する持続可能

な変革モデルに従うことにより、組織はプログラム、プロジェクト、そして人材からの投資利益を最大化して、

より良い立場を確保します。これら実践的方法により、すべてのステークホルダーの継続的な関与と支援を

通して、組織文化の発展と取込みという単なる導入から、新たな実行パラダイムへと組織は進んでいきます。

ステークホルダーが変革に刺激を受け、リスクと報酬が認識され、変革が有益であることが組織と一人一人

のステークホルダーに受け入れられたとき、変革は持続できるのです。

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参考文献

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Center. Beer, M., Eisenstat, R.A., & Spector, B. (1990) .Why change programs don’t produce change.

Harvard Business Review. Retrieved from https://hbr.org/1990/11/why-change-programs-dont-produce-change.

Beckhard, R., & Pritchard, W. (1992). Changing the essence: The art of creating and leading fundamental

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Gelfand, M. J., Leslie, L., & Keller, K. (2008). On the etiology of organizational conflict cultures. Research in Organizational Behavior, 28, 137–166.

Harrington, H. J., & Nelson, D. (2013). The sponsor as the face of organizational change. Retrieved from

www.pmi. org/ChangeManagement.

Hornstein, H. (2008). Using a change management approach to implement IT programs. Ivey Business Journal. Retrieved from http://iveybusinessjournal.com/topics/strategy/using-a-change-management-approach-to- implement-it-programs#.VIXxAIctBok.

Marks, R. L. (1993). Cortés: The great adventurer and the fate of Aztec Mexico. New York, NY: Alfred A.

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guide. Newtown Square, PA: Author.

Project Management Institute (PMI). (2013b). PMI lexicon of project management terms (2nd ed.).

Newtown Square, PA: Author.

Project Management Institute (PMI). (2013c). The standard for portfolio management (3rd ed.). Newtown Square, PA: Author.

Project Management Institute (PMI). (2014). Pulse of the Profession® in-depth report: Enabling

organizational change through strategic initiatives. Newtown Square, PA: Author.

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翻訳:PMI日本支部 PM翻訳出版研究会 山崎 千登勢

監修:PMI日本支部 PM翻訳出版研究会 松吉 靖