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「環境問題をどう科学する?~ 一ポスドクのつぶやき~」 常田岳志 [email protected] 日本学術振興会特別研究員PD (独)農業環境技術研究所 話題提供@土壌ゼミ合宿 2007/12/8

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「環境問題をどう科学する?~一ポスドクのつぶやき~」

常田岳志

[email protected]日本学術振興会特別研究員PD(独)農業環境技術研究所

話題提供@土壌ゼミ合宿 2007/12/8

• 東大院農生物・環境工学専攻博士課程修了(2007年3月)• 現在、日本学術振興会特別研究員PDという身分で、つくば

にある(独)農業環境技術研究所で働いています

現在の研究テーマ

自己紹介自己紹介自己紹介

D論テーマ

環境問題研究の特徴環境問題研究の特徴

• 問題先行型・現場ありき

– 地球温暖化、土壌汚染、酸性雨、土壌劣化・・・

– 対策・予測への社会要請強い

• 何らかの「物質」が関与(化学)

– 温室効果ガス、汚染物質(硝酸、重金属、油、etc…)

• その物質が「動く」 、しかも通常すごく動く(物理)

– 媒体:水、大気、土壌空気、etc…

複雑すぎて、一部しか研究できない自分でスケールを指定出来ない(ラボ内だけじゃ誰も満足しない)

色んなことをしっていないといけない

複雑すぎて、一部しか研究できない自分でスケールを指定出来ない(ラボ内だけじゃ誰も満足しない)

色んなことをしっていないといけない

最近のわたし

もんもんもん。。。もんもんもん。。。

1. 細かい研究は沢山やられているけど、ホントに役にたつんか??

2. 「地球(直径4万キロ)」環境問題とかいうけど、実験してるスケールは cm単位だし・・・

3. 研究室で学んだことだけじゃ全然対応できんぞ!(まとまった学会もなし)

1. 細かい研究は沢山やられているけど、ホントに役にたつんか??

2. 「地球(直径4万キロ)」環境問題とかいうけど、実験してるスケールは cm単位だし・・・

3. 研究室で学んだことだけじゃ全然対応できんぞ!(まとまった学会もなし)

今日のお話の目的とコンテンツ今日のお話の目的とコンテンツ

• このもんもんとした気分をみんなにぶちまけてスッキリする

• もしくはみんなにもんもんとしてもらう

• ともかく何が問題なんだか、整理してみよう

• このもんもんとした気分をみんなにぶちまけてスッキリする

• もしくはみんなにもんもんとしてもらう

• ともかく何が問題なんだか、整理してみよう

1.細かい研究を巡るもんもん(特定のプロセスに注目

した研究ってどういう意味があるんだろう?)

2.スケールを巡るもんもん(そもそも何が問題?)

3.学問分野を巡るもんもん(何を学ぶ?何学を作る?)

1.細かい研究を巡るもんもん(特定のプロセスに注目

した研究ってどういう意味があるんだろう?)

2.スケールを巡るもんもん(そもそも何が問題?)

3.学問分野を巡るもんもん(何を学ぶ?何学を作る?)

トピック1: 細かい研究(プロセス研究)を巡る

もんもん

トピック1: 細かい研究(プロセス研究)を巡る

もんもん

• 水田の「メタン」を例にします

こういった目的に対して、プロセス研究は何ができるか?要素還元主義でいいのか?

こういった目的に対して、プロセス研究は何ができるか?要素還元主義でいいのか?

まずは大きな視点でみてみる:まずは大きな視点でみてみる:

土壌から大気への放出量を決めるプロセス土壌から大気への放出量を決めるプロセス

長期的な放出量 = 生成量 + 分解量

“輸送” は放出のタイミング (or 滞留時間) を決める

各プロセスに影響を与える因子各プロセスに影響を与える因子

プロセス毎に異なる依存性プロセス毎に異なる依存性 分離の必要性分離の必要性

プロセス分離の方法プロセス分離の方法

「生成・分解」といった生物的プロセスの分離・定量を行うためには、輸送という物理プロセスの理解が不

可欠。

「生成・分解」といった生物的プロセスの分離・定量を行うためには、輸送という物理プロセスの理解が不

可欠。

還元→統合: モデルの利用還元→統合: モデルの利用

トピック1の「もんもん」の整理トピック1の「もんもん」の整理

• 要素還元主義を進めて、個々のプロセスのメカニズムを明らかにすることは「意味がある」

• なぜなら、各プロセスは環境変化に対して異なる応答を示すから

• 還元されたプロセスは「統合」されねばならないそれには「モデル」が必要– 予測(時間 or 空間的外挿)にモデルは必須

– 実験・観測は必ずしも正しく”ない”– 「観測」結果の意味づけは、全体(モデル)に入れて始めて見えてくる

モデルを意識した、プロセス研究が大事なのかなモデルを意識した、プロセス研究が大事なのかな

トピック2. スケールをめぐるもんもんトピック2. スケールをめぐるもんもん

• 対象スケール:実際に問題が起きているスケール(数m~全球)

• 観測スケール: 測定手法により制約、ラボ実験等、

小さなスケールが通常多い

大スケール ≠ Σ小スケール大スケール ≠ Σ小スケール

1. 空間的不均一性2. 支配則がことなる

e. g. 水の流れ:マトリックス流→選択流→河川

一致しているか?一致しているか?

14Frankenberg et al., 2006, J. Geophys. Res.

トップダウンアプローチ: 人工衛星からメタンを測るトップダウンアプローチ: 人工衛星からメタンを測る

15

GOSAT (JAXA、環境研)

人工衛星から大気中メタン濃度を測る人工衛星から大気中メタン濃度を測る人工衛星から大気中メタン濃度を測る

http://www.satnavi.jaxa.jp/project/gosat/tech.html

空間スケール:ボトムアップ vs トップダウン空間スケール:ボトムアップ vs トップダウン

全球全球

ダウンスケーリング

ダウンスケーリング ボトムアップ

亜大陸亜大陸

国国

地域地域

流域流域地区地区

圃場圃場

土壌コア土壌コア

培養系培養系誤差

誤差スケールアップ

スケールアップ

トップダウン(衛星、統計)

時間スケール: 炭素収支の場合時間スケール: 炭素収支の場合

秒秒

時間積分

時間積分

連続観測(微気象、チャンバ)

生態学的手法(刈り取り、土壌コア)

気象(気温、地温、風、日射、気圧)

気象(気温、地温、風、日射、気圧)時間時間

植物生育植物生育

日日 天候(降雨)天候(降雨)

季節季節

高CO2、温暖化高CO2、温暖化

年年

系統誤差

測定誤差 高頻度高頻度

decadedecade

トピック2のもんもんの整理トピック2のもんもんの整理

• スケール問題は難しいけど、何が問題なのか整理することはできそうだ(解決は別)

• スケールによって支配因子が違う、大事なことは、対象とする「現象」と「観測」のスケールを一致させること(手法がない場合も多い。。。)

• トップダウンとボトムアップでは、誤差の広がり方が逆 手法間比較ができる場合も

トピック3 学問分野をめぐるもんもんトピック3 学問分野をめぐるもんもん

• 「環(わ)」になって、「境界」で生じている問題

• 定義からして、境界の「内側」を追究してきた既存の学問分野だけでは対応不可能 

~そもそも「環」であり「境」である~~そもそも「環」であり「境」である~環境問題環境問題

境界に要注目!境界に要注目!

• 大気-土壌 (ガス交換、大気降下物)

• 植物-土壌 (葉-土壌(ガス交換)、根-土壌(水、肥料、有機物、重金属、微量成分))

• 土壌-地下水 (硝酸態窒素など)

• etc…

すでにやっている?意識するとまだま

だあるのでは?

すでにやっている?意識するとまだま

だあるのでは?

全体をとおして~もんもんから得たこと?~全体をとおして~もんもんから得たこと?~

• 細かい研究も必要、プロセスの分離とパラメタライズを意識しよう

• スケールによって支配則は変わる 「現象」のスケールと「観測」のスケールを一致させよう

• 「境界」を意識して研究計画をたてる 研究テーマの宝庫!