「現代哲学の最前線Ⅱ ──存在論・言語論・欲望論」2016/02/27  · 1...

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1 NHK文化センター青山 「現代哲学の最前線Ⅱ ──存在論・言語論・欲望論」 竹田青嗣 20160227

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1

NHK文化センター青山

「現代哲学の最前線Ⅱ

──存在論・言語論・欲望論」

竹田青嗣

20160227

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序 現代哲学連続講義について

(1) 2014年から、現代哲学連続講義

①2014年8月 「現代思想の三大対立点」(NHK文化センター青山)

②2014年11月 「現象学・存在論・欲望論Ⅰ」(淑徳大学公開講座) 意味と価値

③2015年6月 「現象学・存在論・欲望論Ⅱ」(淑徳大学講義) 生活世界の一般構成

④2015年8月 「現代哲学の最前線Ⅰ」(NHK文化センター青山)

⑤2015年10月 「哲学はどこへゆくかⅠ」(朝日カルチャー東京)

⑥2015年12月19日(土) 「現象学・存在論・欲望論Ⅲ」 (淑徳大学講義)

⑦2016年2月27日(土) 「現代哲学の最前線Ⅱ」(NHK文化センター青山)

⑧2016年5月7日(土) 「哲学はどこへゆくかⅡ」(朝日カルチャー東京)

⑨2016年7月30日(土) 「現象学・存在論・欲望論Ⅳ」(淑徳大学講義)

⑩2016年10月(土) 「『欲望論』 総括」 (NHK文化センター青山)

(2) 現代哲学を中心に

→現象学 存在論 分析哲学(言語哲学) ポストモダン思想 欲望論

(3) 『欲望論』について 現在執筆中

(4) 講義内容 重複もあり

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「現象学・存在論・欲望論 Ⅲ」──哲学の現代的地平

現代哲学の三つの大きな潮流がある。

第一に、近代哲学の伝統的な問題意識、すなわち認識問題、倫理学を引き継ぐ現

象学・存在論(フッサール・ハイデガー・メルロー=ポンティほか)

第二に、「言語論的転回」の指標のもと、伝統哲学の形而上学性に対する批判の上

に哲学批判を展開する分析哲学(ラッセル・ヴィトゲンシュタイン・クワインほか) 。

第三に、反ヘーゲル・マルクス主義を旗印として、徹底的相対主義を武器に現代社

会批判をめがけたポストモダン思想。

この三つの現代哲学(思想)の陣営は、それぞれが互いに、きわめて先鋭な哲学的

対立を露わにしつつ、現代哲学の全体的問題構成の地平を形成してきた。ヨーロッパ

に長く続いてきた哲学の思考はいまやある限界に達したのか、あるいはその隘路を越

えて哲学的思考の新しい可能性を切りひらくことができるか。

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講義の進行(1) 哲学の根本問題 哲学の三つの謎

近代哲学 現代哲学の概要 ポストモダン思想pass

(2) 近代哲学の到達点

認識問題の解明 本体論の解体

(休憩)

(3) 『欲望論』

① 欲望相関性

② 現前意識の現象学

③ 認識対象の本質論

④ 意味と価値の本質洞察

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哲学の根本問題

「「「存在の謎」 「認識の謎」 「言語の謎」

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(1) 哲学の根本問題 *ヨーロッパ哲学の遠い道

1)古代哲学の中心主題 →「存在の謎」*哲学の方法は、宗教に代わる(神話=物語)独自の世界説明の方法

として登場。 ギリシャ哲学は宗教から分離

*世界の根本原理(アルケー) 究極原因 →基本単位と根本動因

⇒根本原理を言いあてる言語ゲーム →水 火 土 空気 愛と憎 ヌース

⇒諸説の対立 一元論-多元論 「一」-「万物変化」 感覚論-超感覚論

*ついに三つの謎

①存在の謎 (世界とは何か 世界の存在原理)

②認識の謎 (なぜ諸説の対立が?)

③言語の謎 (言葉と真理)

⇒ゴルギアスの謎 (普遍認識の不可能性)

1)存在はありえない

2)存在があっても、認識できない。

3)認識できても、言語で表現できない

⇒プラトンとアリストテレスの総括 (普遍認識の可能性)

*プラトン→世界の原理は事物存在の本質ではなく、真善美(価値)の本質

*アリストテレス→すべての認識を総括(綜合)すると普遍認識は可能

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2) 近代哲学の中心問題 →「認識の謎」

①自由は可能か →社会哲学

②認識は可能か →認識問題 (主観­客観問題)

③生(人間)の意味は何か? →キリスト教の没落

★ デカルトの難問呈示

主観­客観は一致しない。

②認識は可能か →認識問題 (主観­客観問題)

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認識論(主観­客観一致問題)

「一致」はあるか?

主観=認識Subject

客観Object

認識論 リンゴ図式

世界それ自体

世界認識

「一致」はありえない!

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2) 近代哲学の中心問題 →「認識の謎」

①自由は可能か →社会哲学

②認識は可能か →認識問題 (主観­客観問題)

③生(人間)の意味は何か? →キリスト教の没落

★ デカルトの難問呈示 主観­客観は一致しない。

→ ① 客観認識 正しい認識 真理は一切存在しない

⇒自然科学の客観認識は? 数学は?

② 相対主義(不可知論) どんな認識も立場、観点による

絶対的な観点はない

⇒その帰結は?

善悪、正しさ・不正の基準は存在せず⇒一切は力の論理に帰結する!

②認識は可能か →認識問題 (主観­客観問題)

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2)近代哲学の中心問題 →「認識の謎」

① 独断論

*スピノザ ライプニッツ

合理的推論によって世界は必ず認識できる

十七世紀 十八世紀 理神論・汎神論の成立

② 相対主義

*ヒューム あらゆる認識は、習慣的経験からの世界像形成

唯一の正しい世界認識は存在しない

③ 超越論哲学*カント 「物自体」 アンチノミーによる形而上学批判

超越世界の不可知性 現象世界の客観性

認識問題は、現代哲学にもちこされる→言語論的転回 「客観論」 対 「相対主義」

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3)現代思想の三つの柱 「言語の謎」

①いかに社会を変えうるか

*マルクス主義 (全体主義 国家主義 宗教原理主義)

*ポストモダン思想 論理相対主義によって現代社会批判 (イロニー)

*社会正義論 アメリカ社会学 ロールズ

②言語は真理に届きうるか 認識問題 →言語の謎

*論理哲学 フレーゲ・ラッセル 論理実証主義(ウィーン学団)

*後期ヴィトゲンシュタイン 言語相対主義 分析哲学 クワイン 「言語学的転回」

*科学哲学 ポパー

*認知科学 サール 電脳理論

③倫理の根拠はどこにあるか

*ハイデガー 実存の「本来性」 存在の真理

*レヴィナス 絶対的他者

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3)現代思想の三つの柱

①現象学 存在論

*フッサール

*ハイデガー 実存の「本来性」 存在の真理

*メルロー=ポンティ ・ サルトル

*レヴィナス 絶対的他者

②分析哲学

*論理哲学 フレーゲ・ラッセル 論理実証主義(ウィーン学団)

*ヴィトゲンシュタイン →分析哲学 クワイン 「言語学的転回」

*科学哲学 ポパー

*認知科学 サール 電脳理論

③ポストモダン思想*反マルクス主義 論理相対主義による形而上学批判 反資本主義

*デリダ ドゥルーズ フーコー

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☆近代哲学はどこまで進んだか?

① 認識問題の解明

② 本体論の解体

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☆ 認識問題の解明⇒ 何が解明されるべきか?

(1) あらゆる認識は相対的か? →自然科学の認識は?

(2)主観­客観の一致は不可能なのに、なぜ客観認識は成立可能?

(3) 信念対立の根本的理由は? その克服の可能性の原理は?

(4) 「善・悪」、「正・不正」 の 「正しい」 基準は存在しない?

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3) 現代哲学の中心問題 認識の不可能性・反形而上学

① ポストモダン思想 ⇒反形而上学 反本体論?*デリダの論理相対主義による、反-形而上学 反理性主義 反認識

→ゴルギアス的相対主義 →存在・認識・言語の不可能性

② 分析哲学 「言語論的転回」 言語は真理に届きうるか 認識問題*論理哲学 フレーゲ・ラッセル

*ヴィトゲンシュタイン 前期→厳密論理主義 (後期 →言語的相対主義)

*論理実証主義(ウィーン学団) シュリック・カルナップ 厳密論理主義 ロジシズム

*ポパーの「反証主義」 科学の厳密真理は証明できない。 反証可能性が重要

*分析哲学 クワイン 「ホーリズム」 クーン 「パラダイム論」→相対主義的反普遍認識論

*認知科学 人工知能論 ワトソン スキナー ミンスキー ウイナー サイモン ニューウェル

*反人口知能 ウィノグラード ギブソン ドレイファス サール 不可能性理論

*しかし、認識問題は解明されていない「主観­客観」問題は、言語問題(言語と認識の一致問題)へ

⇒自己言及 決定不可能性 のパラドクス①クレタ島人が「すべてのクレタ島人は嘘つきだ」と言った。

②目は目を見ることができない。 主観は主観それ自体を認識できない。

③説明の無限遡行 「ホムンクルスの誤謬」 「神の原因は?」

④言語規定の不可能性 概念の絶対的同一性はない。「類似性」のみ。

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☆ 認識問題の解明

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主観=認識

原因

客観

結果

結果

還元の遂行 ⇒

原因

世界がかくかくのものとして存在するので、私は世界をかくかくのものとして経験する

私は世界をかくかくのように経験するので、私は世界をかくかくのものと信じる

フッサール現象学 一切の認識の信憑への還元

私はなぜ、これこれの信念をもつのか?確信の成立の条件と構造を分析する

一切は主観の確信だと考えよ=現象学的還元

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*現象学的間主観性の理論世界信憑の三相構造

① 主観的確信個人的な確信・信念 幽霊を見る。幻視 幻聴 共有されない。

② 共同的確信2人以上 絶対愛 船乗りの伝説 民族の神 世界宗教

⇒共同的にシェアされた確信(妥当) →→ 普遍的確信にはなりえない

③普遍的確信共同的確信のうち、あるものは、普遍的確信たりうる条件(構造)をもつ⇒自然科学 数学の領域 基礎論理学 →いわゆる科学の「客観認識」

⇒「本質学」の構想へ

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C

C

C

世界観 A

世界観C

世界観 B

?

信念対立と共通了解

C: 共通了解の領域自然科学数学基礎的論理学など

X: 共通了解不成立の領域:

感受性・審美性価値観宗教人間観世界観など

X 1

X 2

X 3

確信成立の構造を吟味すると

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☆ 認識問題の解明⇒ 何が解明されるべきか?

(1) あらゆる認識は相対的か? 自然科学の認識

自然科学 数学 論理学その他

(2)主観­客観の一致は不可能なのになぜ客観認識は成立可能?

間主観的共通認識の成立

(3) 信念対立の根本的理由は? その克服の可能性の原理は?

相互承認と共通ルール (ルールに不参加?)

(4) 「善・悪」、「正・不正」 の 「正しい」 基準は?

社会的善悪、正義・不正義の基準は相互承認

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☆ 本体論の解体

1) 相対主義的解体

2) ニーチェからフッサールへ

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ニーチェ 力相関性

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Alien (火星人?)

カオス

物自体

ニーチェ: カオス-力構図

欲望-身体

解釈力客観世界という観念の解体

「真理」の観念の解体

「本体」の観念の解体

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「物自体」

「対象自体」

「性質自体」

「運動自体」

「意味自体」

「価値自体」

「善自体」

「本体」(それ自体)の観念の解体

すべてのものは、力=欲望-身体に相関して対象性を現わす

〔要するに、事物の本質はやはり事物に関する一つの私見

でしかない。ないしはむしろ、「通用する」が本来の「存在す

る」であり、唯一の「これが存在する」である。「いったい解釈

するのは誰か?」と問うてはならない、そうではなくて、解釈

するはたらき自身が、権力への意志の一形式として、現存

在を(しかし「存在」としてではなく、過程生成としての)一つ

の欲情としてもっているのである。「事物」の成立は、徹頭徹

尾、表象し、思考し、意欲し、感覚するものの作品である。〕

(556 p93~94)

あるいは「存在」概念の根本的変更⇒「存在審級」

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*

★ 「本体論の解体」をいかに理解すればよいか?

質問 1

⇒ 世界の根本原理は何か?

⇒ 世界の究極原因 (動因) は何か?

⇒ 世界それ自体を、正しく認識できるか?

☆ これら形而上学的問いは終焉する

質問 2⇒ 私が見ている 「赤」 は君が見ている 「赤」 と同じ 「赤」であるか?

いかにしてその 「同一性」 その 「正しさ」 を確かめられるか?

⇒ 私がいう 「空は青い」 と君のいう 「空は青い」 の意味は、「同じ」であるか?

いかにしてその 「同一性」 その 「正しさ」 を確かめられるか?

☆意味、価値、感覚における 「それ自体」 「同一性」 は存在しない

「それ自体」「同一性」の問いとしての本体論の終焉

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5分休憩

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意味・価値の一般原理としての

欲望論

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第一部 存在と認識の方法

第一章 哲学の問い* 始元論

* 世界理説の二元対立

* 普遍者の登場

第二章 認識の謎

* 認識の謎と主客一致

* 独断論と懐疑主義

* 形而上学の挫折

* ニーチェ的“転回”

第三章 本体論の解明* 方法的独我論* 確信の審級* ハイデガー対フッサール

* 先構成批判

第二部 欲望相関性

第四章 「心的なもの」* 近代二元論* 心的なものの自然化

第五章 世界の一般構成*現前意識の地平* 時間意識の本質学*世界の一般構成

第六章 欲望相関性

* 〈欲望〉と世界分節

* 情動・感情・衝動

* 存在と真理

* 意味と価値

第三部 幻想的身体

第七章 身体性* 現象学的身体

* 身体の身体性

* 〈エロス〉〈ありうる〉〈能う〉

第八章 幻想的身体* 深層心理学、現象学、欲望論* エロス的中心性* 世界のエロス的生成 〈能う〉エロス* 自我のエロス* 関係感情

第九章 審級の生成* 感受性の生成* 禁止とルール* 審級的価値その1 善 悪

* 審級的価値その2 美 醜

『欲望論』 第一巻 実存論 『欲望論』 第二巻 関係論

第四部 自己と他者

第五部 集合性

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★欲望論の主要コンテンツ

(1) 現前意識の現象学

(2) 世界の一般構成

(3) 認識対象の本質学

(4) 時間意識の構成

(5) 欲望原理(欲望相関性)

(6) 意味と価値の原理

(7) 「身体」の本質

(8) 幻想的身体

(9) 価値審級の生成 (

(1) 現前意識の現象学

(2) 世界の一般構成

(3) 認識対象の本質学

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(5)欲望相関性原理

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欲望相関性と世界分節

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* 欲望=身体相関性: アルコアシド

欲望=身体性

① 極微小体② 高速移動体③ アルカリ領域と酸性領域 →中性領域

Correlativity相関構造

世界(対象)=分節構造

世界

〈欲望=身体〉

アルコアシドArcho-acid

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欲望­身体と世界分節

1) 認識=反映図式

2) 感覚=分節図式

マダニ

①光覚②嗅覚③温感

二(三)分割の世界

リトマス試液

身体と欲望による世界分節

反映図式

〈欲望-身体〉-原存在相関

欲望相関的分節構造

存在者

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マダニの一生

①光覚②嗅覚③温感

マダニの幼虫 →卵から孵ると、木に登り枝にしがみついて何年でもまつ。 下を、哺乳動物が通りかかると、温度を感じて手を離し、ふらふらと落下 獣の背中に。 血の臭いを頼りに暗いところへ潜りこみ、皮膚から血を吸う。生長し卵を生む。 幼虫はまた木に登り、枝にしがみつい

て獣が通りかかるのをまつ。 これがマダニの一生。光覚 嗅覚 温覚しかいらない。 あとは不必要。

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* ニーチェ 力相関性

* フッサール 意識相関性

* ハイデガー 気遣い相関性

⇒客観世界ではなく、生の世界・実存の世界が一義的

⇒世界と対象は〈欲望-身体〉相関的に生成する

⇒世界は認識されるのではなく、分節され、生成する

① 客体化的世界理解 世界は客観存在する 死んでも存在

② 内的-実存的世界理解 世界は分節・生成する 死んだら消滅

欲 望 相 関 性

では世界それ自体はどうなる? ⇒二つの世界理解

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なぜ「本体」ではなくカオスか?

本体論の解体 その2

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自然世界

価値 審美感受 倫理

宗教性

価値 審美感受 倫理

宗教性

価値 審美感受 倫理

宗教性

価値 審美感受 倫理

宗教性

価値 審美感受 倫理

宗教性

「……それ自体」「……そのもの」「同一性」

は、そもそも不可能

本体論の解体 その2

よい福祉とは?よい医療とは?よい教育とは?よい社会とは?

人間の「世界」は、

「事物」(自然)の世界ではなく「関係」の世界

耐えず刷新される意味と価値のネットワーク

「客観世界」ではなく「間主観的世界」

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*

☆「本体論の解体」「認識問題の解明」が拓く哲学の新しい地平は?

*「世界」概念の変様 →「生の世界」「実存としての世界」→「実存世界」から「客観世界」の形成へ

*「物としての世界」ではなく「関係としての世界」

「欲望相関性」

「世界分節」

「存在審級」

「意味と価値」の原理論

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(1) 現前意識の現象学

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〈自然科学〉 〈社会科学〉 (習得されたもの)

↑ ↑ ↑ ↑

生活世界 自然世界↑ ↑ ↑ ↑

(現前意識の水面) (直接経験の地平) 体験流

↓ ↓ ↓

〈身体性〉 ─〈心〉 (情動・感性─判断・理性)

↓ ↓ ↓

→心理学 精神医学 刺激と行動

→深層心理学 「無意識」

「世界認識の基本構図」 「〈現前意識〉の水面」

知覚・想起・想像(形象的直観) 意味直観 情動所与 思念(思惟 判断) 意志

一切は、信憑として構成されている

客観的世界像

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(1) 「本体論」の排去の徹底

(2) 形而上学的、「寓喩-説話論的」世界哲学の禁止

(3) 人文領域における普遍認識の可能性の原理

社会とは何か 信念対立の克服→いかに合意を取り出すか

宗教 文化 教育 政治制度 法 経済 (分配) 未来社会

人間的価値 人間性の本質 生の意味とは

42

なぜ「現前意識」に定位する方法、現象学的方法が必要なのか?

本質観取 ⇒ 本質学

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哲学のテーブル (「原理創出のゲーム)

宗教のテーブル 哲学のテーブル

真理のゲーム 普遍性の言語ゲーム

原理キーワード

原理キーワード

原理キーワード

生と世界をより善くするには

この問題に関しては→だれもがこう考える以外にない?

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(2) 世界の一般構成

世界の信憑構成の一般理論

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(1) 世界認識の基本構図

(2) 世界の三層構造

(3) 世界像の第二次的形成

(4) 認識対象の本質論

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(3) 認識対象の本質学

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認識対象の本質学 (新構成 16年2月)

(1) 物

(2) 他者 (心的存在)

(3) 関係事象

(4) 心

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認識対象の本質学 (一般意味)

(1) 物 (自然科学)「物」は、構成単位、連結秩序、 因果連関性、構造、力、法則などの概念において認識される。

(自然科学) ⇒一義的な因果性と秩序

(2) ことがら (生活的・社会的事象) (社会科学 人文科学)「事象」は、ある事態が人間の社会生活にもたらす「意味」「価値」の、間主観的な“客観的総体性

社会上、生活上のルール関係、利害関係、心理関係に、何らかの意味上の変化をもたす事態。つねに、主観性と間主観性の立場のズレが存在する。

(3) 心 (心理学)「心」は「対象化」されうるが、同時に「対象化」するという本質をもつ

* 「対象化する本質としての心」の三つの契機

1) 「自己意識」2) 「幻想的身体性」 ── エロス的感受性3) 自己規範 (自己ルール) 真・善・美の内的規範

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★「物」(事物存在) とは何か?⇒一般意味存在

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知覚・認識

(1) 「物」とは何か

インクペン

ハンマー本

リンゴ

周囲世界=身の回りの世界

諸物は経験的に習得された一般存在意味として把握される

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欲望・関心

リンゴ=食べ物

読むためのもの

書くためのもの

打つためのもの

気遣い

Thing

Thing

Thing

Thing

Thing

(2) 道具存在(用在)としての「物」

周囲世界=身の回りの世界

諸物は人間の「気遣い」に応じて(相関して)存在意味を現わす

(ハイデガー)

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★「物」(事物存在)の一般認識

⇒一般意味存在

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認識

(1) 一般意味存在としての「物」

客観世界

諸物は科学的に整序された一般存在意味を与えられている

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欲望-関心

「気遣い」 (「欲望」)の相関者としての事物

関係世界

さまざまな事物は人間の「欲望」に相関してその存在意味(価値)をもつ

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(2) 「他者」とは何か (他者の本質洞察)① 事物対象=「用在」ではない 相互的対象化 (見る→見られる)

② 「環境世界」(主体→事物)⇒ 「関係世界」 ( 主体⇔他者 )

③ 「言語ゲーム」の世界 (象徴秩序)

④ 「要求—応答」 → 「関係感情」→ 「禁止・命令」 →「相互要求」 「相互承認」

⑤ 「相克(闘争)関係」 → 「普遍的相互承認」関係

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★「ことがら」(事態・出来事)の本質とは?

①欲望-関心から生じる「目的」相関性の連関から生じる

関係性 状況性の「意味」と「価値」

②「意味・価値」の生成と変化 承認ゲーム 成功ゲーム

社会とは何か?

教育とは何か?

医療とは何か?

自由とは何か?

○○とは何か?

関係ゲーム(言語ゲーム)

意味と価値の諸連関の生成

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認識対象の本質学 ★(1) 物

身体的関心相関的「用在」 関係状況相関的「用在」生活用在的事物 →小物 調度 家具 部屋 家 →諸価値

(2) 他者 相互規定 相互対象化 相互承認競合と承認 関係における意味・価値形成の原理

(3) ことがら (生活的 社会的事象)「事象」は、ある事態が人間の生活にもたらす「意味」 「価値」の、間主観的客観

*「社会」とは何か 「国家」 「家族」とは ……

* 「制度」 「権力」 「教育」 「医療」とは……

(4) 心*自己→ 「対象化する本質としての心」の三つの契機

1) 「自己意識」2) 「幻想的身体性」 ── エロス的感受性

3) 「自己規範」 (自己ルール) 真善美の内的規範

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認識対象の本質学

(3) 心的存在

*自己→ 「対象化する本質としての心」の三つの契機

1) 「自己意識」 →自己意識の本質契機 「対他意識」 「自己欲望」 「承認」

2) 「幻想的身体性」 ── エロス的感受性

身体的〈快­苦〉の審級は、〈関係的快適­不快(苦痛)〉の審級

へと転移する → 感受性(幻想的身体)の現象学的発生論

3) 自己規範 (自己ルール) 真善美の内的規範*人間は、単なる存在可能(本来性あるいは非本来性の可能性)ではなく、

つねに本質的に自己了解­自己規定存在 (自己規範)である

何が「よいか」 「ほんとうか」を、自己規範を土台として、そのつど自己了解しつつ決定する

内的自己規範(「よい」 「美しい」 「ほんとう」の欲望論的発生論

*他者 関係における意味・価値形成の原理

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(2(4) 時間意識の構成

(自我の構成)(

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(5)欲望相関性原理

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(6)意味と価値の本質学

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★現代哲学(分析哲学)の言語理論「意味とは何か」

*意味の理論は、現代分析哲学→言語の意味の謎1) 言語は現実を正しく表現できるか

①論理実証主義 できる 厳密客観主義(独断論)

②日常言語学派 できない 相対主義

2)言語の「意味」についての問い★フレーゲ・ラッセル以降 「論理学の数学化」(厳密規定可能性の試み)言語の「意味」についてのさまざまな難問

→「言語の謎」「宵の明星」と「明けの明星」→語義の多義性 意味と意義-指示→「固有名」の問題 →ラッセル 言語の意味とは「省略された確定記述の束」である。プラトン→「国家」の著者」「ソクラテスの弟子」「アカデメイア作った」「もと兵士」…★クリプキ 固有名は「固定指示詞」可想世界説 →プラトンは弟子でなかった?

3)ヴィトゲンシュタイン『論理哲学論考』→『哲学探究』1)言語は現実と厳密に対応(『論哲』)2)その否定 さまざまな問い

*語の意味は何か、というと規定できない。*語の意味は「イメージ」ではない。対象指示ともいえない。

3)「言語ゲーム」論 言語の意味は用法である 用法の規則は示せない→謎?*石版!という言葉は「持ってこい」か「持っていけ」か「手渡せ」か「置け」か?

★デリダ『グラマトロジー』 音声中心主義批判 言語→現実の直接対応なし*しかし、ゴルギアス・テーゼの現代版1)存在はない 2)存在があるとしても認識不可能 3)認識が可能としても言語で表現できない。

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* 意味とは何か→「言語の謎」

*ゴルギアス……言語と存在は本質を異にする1) 言語は存在を表現できない→「主観-客観」不一致

2)言語はパラドクスを作り出す (なんとでもいえる)

3) 言語を正しく使う規則は存在しない?→ 論理学の困難

*現代分析哲学の言語論の困難1)認識問題 厳密な言語使用規則の不可能性2)言語問題

① 語の意味の多義性 規定不可能性② 文意(意味) の決定不可能性 用法規則の規定不可能性

⇒その根本原因は「意味」の本体論

*言語は「意味」を“もつ” →「語」と「文」

*この「意味」は規定されるはず 「意味がある」

→「固有名」「命題論理学」「述語論理学」等々の理論

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○意味と価値の原理論 ★

★言語的意味の本質にアクセスするには、意味の本体論を廃して意味の本質を洞察する必要あり。

→「意味」は理念性・概念性として存在するのではないし、規定されない。→「意味」は生成する。 意味は実存の企投のうちで生成する。

言語的意味は言語ゲーム(関係世界)の中で生成する。

(1)言語的意味の本質へ接近するには「言語ゲーム」の本質の把握が必要

(2)言語ゲームの本質を把握するには「対他的関係感情」の本質把握が必要

(3)関係感情の本質の把握には、生命主体とその対象との関係的本質の把握が必要

★世界分節の原理…

…あらゆる存在者の存在審級の学の起点 欲望-身体相関性

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*欲望=身体相関性: アルコアシド身体

Correlativity相関性

世界

欲望=身体

アルコアシドAlko-acid

*情動の発生→衝迫(エロス的可能性)

情動発生→衝迫(エロス的可能性)→(充足企投の予期)→企投的予期(目的創設)

→目標指標の順序・優先性の了解→その了解的秩序の分節=意味)

*近接企投 →行動 →試行(努力)

*摂食(エロス蕩尽)→欲求充足→定常性復帰

*「意味」とは欲望相関的企投における目的連関の了解可能性の秩序。空間・時間的連関*「価値」は①経験の反復によって総括された主体にとっての対象の重要性(度合い)

②目的の成就にいたる諸過程の有用性・重要性の強度(度合い)

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○意味と価値の原理論

★世界分節の原理⇒あらゆる存在者の存在審級の学の起点 欲望-身体相関性

★欲望-身体相関的な対象と世界の秩序分節*情動の発生→衝迫(エロス的可能性)→近接行動→欲求充足→鎮静→定常性復帰

→不安 →離隔行動

*この経路の反復と統覚的把握(時間化)情動発生→衝迫(エロス的可能性)→(充足企投の予期)→企投的予期(目的創設)→目標指標の順序・優先性の了解→その了解的秩序の分節=意味)

*「意味」⇒欲望相関的企投における目的連関の了解可能性の秩序。順序性・優先性、空間・時間的連関の了解

*「価値」は、①経験の反復によって総括された主体にとっての対象の重要性(度合い)②目的の成就にいたる諸過程の有用性・重要性の強度(度合い)

意味はある-ない (目的相関的) 価値は大きい-小さい (強度)

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意味 ・ 価値は実存範疇である

*意味・価値は事物的連関ではない*記号・表象連関でもない*記号の差異の戯れでももちろんない

*生の世界における原生成*第一存在審級

「衝動」→「目的指標」→「企投」→「必要性の連関」→その「了解」

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経験と意味形成 ★*情動の発生→衝迫(エロス的可能性)

*近接企投 →行動 →試行(努力)

*触る・食べる・遊ぶ(エロス蕩尽)→欲求充足

*「意味」①欲望→企投→実現過程の了解可能性 対象意味 状況意味 関係意味②対象意味 →「それが何であるか」経験集約的対象性。→言語意味へ

*「価値」①経験の反復によって総括された主体にとっての対象の重要性(強度)②目的の成就にいたる諸過程の有用性・重要性の強度(度合い)

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人間的意味と価値 ★*情動の発生→衝迫(エロス的可能性)

*近接企投 →行動 →試行(努力)

*触る・食べる・遊ぶ(エロス蕩尽)→欲求充足

*人間世界では「意味」は言語的了解=象徴秩序の構造をとる。

*世界は総じて「言語ゲーム」の本質を帯びる

*人間世界における「価値」は、生理身体的〈快-不快〉から離陸する。「目的相関的強度」⇒「自我欲望」「承認欲望」「言語ゲーム」「超越性」

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母・子の始発的言語ゲーム

それが何であるか

知覚-意味指標の形成

間主観的言語-対象指示形成

リンゴ

おいしいねだめ

(1)要求-応答ゲームミルク

禁止!逆要求→応答

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母・子の始発的言語ゲーム

(1)要求-応答ゲーム

リンゴ

??

「言語ゲーム」 要求-応答関係の展開*対象世界の分節*感情世界の分節*禁止-許可・奨励 (もの・行為……)*よい-わるい 価値審級の分節

(物・状態・行為・人間)

☆関係的承認ゲーム☆普遍的言語ゲーム

知覚-意味指標の形成(対象の名→指示性)対象の概念性 (経験の縮約 →対象図式性)

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☆「言語の謎」の解明

*ゴルギアス……言語と存在は本質を異にする「言語」は「存在」を表現できない→「主観-客観」不一致

「言語」はパラドクスを作り出す (なんとでもいえる)

「言語」を正しく使う規則は存在しない?→ 論理学の困難

*現代分析哲学① 語の意味の多義性② 文意(意味) の決定不可能性

(1)語は言語ゲームのうちで「一般意味」を形成する

(2) 人間は語の一般意味を利用して要求-応答ゲーム(関係ゲーム)を遂行する

→言語ゲームの中でそのつど生成する「意味」は、「企投意味」

(3)言語の「企投意味」は、相互信憑構造をその本質とする

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リンゴ

インク・ペン

ハンマー

気遣い

事物の一般意味と「用在性」(道具存在)

(ハイデガー)

欲望・関心

食べるもの武器

まくら

諸物は人間の「気遣い」に応じて存在意味を現わすが、それは事物の「一般意味性」が予持されているから。

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言語の現象学的信憑構造

代行・表象・伝達

①「意味」=「意」(what he wants to say)②言語記号によるその「表現」

(記号の「意味」と文法ルール)③正しい表現⇒正しい伝達

ソラハアオイ

*主語+述語*対象+存在様態記述*実体+属性

*空は青い色をしているAの「意味」

自然的態度

②A①A’

言語の一般ルール①語の「意味」②シンタックス(文法)

①空は青い?②今日の天気は晴れ?③空の色が青いのは

科学的理由がある?④空は青く、空気は澄んでいる。大変快適だ?⑤空は青いが私の心は空しい?

作者の死

ジャック・デリダ

テクスト論的態度 ①「意味」=「痕跡」(What was left as a trace)②言語はシニフィアンとルールの網の目(テクスト)③正しい表現⇒正しい伝達ではなく、

テクスト(シニフィアンの網の目)とその解読⇒「言語の謎」……決定不可能性

ソラハアオイ

決定不可能性

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①②

言語の現象学的信憑構造

一致・不一致? 信憑→条件 ?

★「状況コンテクスト」1)話線のコンテクスト2)共有コンテクスト3)関係コンテクスト

言語記号=一般意味

ソラハアオイ

①空は青い?②今日の天気は晴れ?③空の色が青いのは

科学的理由がある?④空は青く、空気は澄んでいる。大変快適だ?⑤空は青いが私の心は空しい?

現象学的構造

①一般意味表象(辞書的意味)②企投意味 →「一般意味」を用いて「企投的意味」を交換しあう。③「意味」はそれ自体として存在するのではない

意味は現実関係の中で、そのつど「生成」する意味は実存範疇である →一般意味はその痕跡

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言語ゲーム

ことがら できごと

*さまざまな「物」の一般意味の形成

*一般意味を用いて「ことがら」「できごと」の意味を伝えあう 言語ゲーム

→諸「概念」の形成

*一般意味 一般概念を用いて→「おもい」 「思念」 「思想」

*「デジタル」(一般記号)の組合わせによって、 「アナログ」(再現不可能なもの)を表現

おもい 思念 思想

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★まとめ★人間や社会の本質認識では、

科学的実証主義(実在論) 、論理学主義 論理相対主義は無効(独断論-相対主義の対立)

寓喩-説話論的形而上学 形而上学的(超越的)存在論・他者論も無効

⇒欲望論-エロス論的観点からの価値と意味の原理論が必要

★ここまでのまとめ①哲学の根本問題 現代哲学の問題点②ニーチェ的本体論の解体 現象学的認識問題の解明③価値の一般理論 ⇒『欲望論』④欲望相関性原理⑤意味と価値の原理論⑥〈世界〉の一般構成⑦認識対象の本質学

物ことがら(事象) ☆心的なもの 自己 身体 幻想的身体 内的規範

他者

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2016年「欲望論」講義 予定

①2016年2月27日(土)NHK文化センター青山 「現代哲学の最前線Ⅱ」

②2016年5月7日(土)朝日カルチャー新宿 「哲学はどこへゆくかⅡ」

③2016年7月30日(土)淑徳講義 池袋 「現象学・存在論・欲望論Ⅳ」

④2016年10月未定(土)NHK文化センター 「現代哲学の最前線Ⅲ」

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