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1 「災害医療救護通信エキスパート育成事業」 これまでの実施状況 1 災害医療救護通信エキスパート育成事業とは 災害医療救護通信エキスパート育成事業は、首都直下地震、南海トラフ地震 等の大規模災害時において、国民の生命・身体を守るために行われる医療・救 護活動等を円滑に行うために必要とされる情報伝達の手段として使用される衛 星携帯電話及び衛星データ通信をはじめとする各種無線機器等を適正かつ有 効に取り扱うことができる人材を育成し、災害医療・救護活動等の維持を図り、 被災者の医療活動等の支援に寄与することを目的として、平成 29 年度から「災 害医療救護通信エキスパート育成協議会(会長:相田仁東京大学工学系研究 科教授)」が実施しているものです。 2 これまでの実施状況 「災害医療救護通信エキスパート育成協議会」が実施しました通信エキスパ ート研修の実施状況を紹介します。 衛星系通信機器としては、データ通信が可能なVSAT、ワイドスターⅡ、 BGAN、また、音声電話ではスラヤ、イリジウム、 IsatPhone の研修を行いました。 業務用無線機器としては、デジタルMCA無線機、デジタル簡易無線機(登録 局)の研修を行いました。研修の状況を各機器別に紹介します。 1.VSAT(Very Small Aperture Terminal) (スカパーJSAT) 静止衛星を利用した通信システムで、この研修の中では一番大きな機材です。 ODU(Out Door Unit)、IDU(In Door Unit)、パラボラアンテナなどの通信機材を展開・ 設置します。静止衛星を確実に捕捉するためにはアンテナ方向の正確な調整が必要 ですが、研修・訓練を受けることにより、機器展開から通信確保まで、2名で 30 分間か ら 40 分間程度で調整することができるようになりました。 インターネットに接続し、EMIS(Emergency Medical Information System:広域災害 救急医療情報システム)の画面も、ほぼ、スムーズに閲覧・入力できる通信速度が得 られます。

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「災害医療救護通信エキスパート育成事業」

これまでの実施状況

1 災害医療救護通信エキスパート育成事業とは

災害医療救護通信エキスパート育成事業は、首都直下地震、南海トラフ地震

等の大規模災害時において、国民の生命・身体を守るために行われる医療・救

護活動等を円滑に行うために必要とされる情報伝達の手段として使用される衛

星携帯電話及び衛星データ通信をはじめとする各種無線機器等を適正かつ有

効に取り扱うことができる人材を育成し、災害医療・救護活動等の維持を図り、

被災者の医療活動等の支援に寄与することを目的として、平成 29 年度から「災

害医療救護通信エキスパート育成協議会(会長:相田仁東京大学工学系研究

科教授)」が実施しているものです。

2 これまでの実施状況

「災害医療救護通信エキスパート育成協議会」が実施しました通信エキスパ

ート研修の実施状況を紹介します。

衛星系通信機器としては、データ通信が可能なVSAT、ワイドスターⅡ、

BGAN、また、音声電話ではスラヤ、イリジウム、 IsatPhoneの研修を行いました。

業務用無線機器としては、デジタルMCA無線機、デジタル簡易無線機(登録

局)の研修を行いました。研修の状況を各機器別に紹介します。

1.VSAT(Very Small Aperture Terminal) (スカパーJSAT)

静止衛星を利用した通信システムで、この研修の中では一番大きな機材です。

ODU(Out Door Unit)、 IDU(In Door Unit)、パラボラアンテナなどの通信機材を展開・

設置します。静止衛星を確実に捕捉するためにはアンテナ方向の正確な調整が必要

ですが、研修・訓練を受けることにより、機器展開から通信確保まで、2名で 30 分間か

ら 40 分間程度で調整することができるようになりました。

インターネットに接続し、EMIS(Emergency Medical Information System:広域災害

救急医療情報システム)の画面も、ほぼ、スムーズに閲覧・入力できる通信速度が得

られます。

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写真1: パラボラアンテナや ODU などの機器が 写真2: ケースの水平を取り、アームを立てて、

入っているケースの蓋を開け、蓋を前に置いた パラボラアンテナを起こします

ところです(ケースは旅行用スーツケースの

約2倍の大きさ)

写真3: アームの先端に ODU を取り付けて 写真4: 専用タブレットを利用して電波が一番

います 強くなる方向にアンテナの方位角 (Azimuth)

と仰角 (Elevation)を正確に調整する必要

があります

写真5: ODU と IDU との間の通信ケーブル 写真6: 電話の通信中。クリアな音声ですが、

は、電源をいったん落としてから接続します 36,000 キロメートル離れた静止衛星を

経由して通信するため、相手からの返事が

0.5 秒ほど遅れます

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2.ワイドスターⅡ (NTT ドコモ)

静止衛星を利用した通信サービスで、サービスエリアは日本全土をカバーしています。

電話通信またはデータ通信が可能な、小型の可搬型機器です。電話番号も通常の携帯

電話と同じであり、電話をかける時も普段と同じ番号でかけられることが特長です。

写真7: 機器本体へのバッテリーの装着、 写真8: 電話の通信中。 静止衛星を経由しての

受話器の接続等、組立を行っています 通話のため生じる会話の遅れを体感しています

写真9: パソコンをインターネットに接続する 写真 10: Wi-Fi でスマホやタブレットを接続し、

ための設定をしています 衛星経由でインターネットを閲覧しています

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3.BGAN (KDDI)

インマルサット衛星を利用する通信システムで、データ通信と電話通信が同時に可能な、小

型の可搬型機器です。

写真 11: 衛星は南方向ですが、電波が一番 写真 12: 衛星通信で受講者の携帯に電話を

強く受信できる方向を探しています かけています

機器が発する音の高低で簡単に調整できます

写真 13: パソコンと接続、データ通信を行って 写真 14: 受講者が自分のノートパソコンやスマホで

います インターネットに接続しています

↑ 電話とデータ通信が同時に行えるのが特長です ↑

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4.スラヤ (ソフトバンク)

静止衛星を利用した衛星携帯電話で、サイズは一番小型です。

写真 15: GPS機能を使って衛星の捕捉中です 写真16: 電話の通信中。 通信中は、できるだけ、

アンテナが静止衛星の南西方向に向いている

ように意識する必要があります

5.イリジウム (KDDI)

低軌道周回衛星を利用し、両極地を含む全世界で利用できる、衛星携帯電話です。

写真 17: 衛星を捕捉中。周回衛星です 写真 18: 電話の通信中。 いったん衛星が捕捉

ので、高い建物から少し離れて上空が できると、アンテナを真上に向けていれば

大きく開けた場所で衛星捕捉を行う 静止衛星ほど衛星方向を気にしなくても

必要があります 大丈夫です

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6. IsatPhone (NTT ドコモ)

インマルサット衛星を使用する、衛星携帯電話です。

写真 19:衛星を補足中です 写真20:電話の通信中です

7.デジタルMCA無線局(Multi Channel Access)

(一般財団法人移動無線センター)

基地局を中心に半径30km程度の通信が可能な、加入者同士が通信を行うシステム。

写真 21: 取扱の説明を受けています 写真 22: 相互に通信中。なお、加入者の組織が

普段のメンテナンスの方法なども重要です 県外や全国に組織が広がっている場合でも

相互に通信ができます

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8.デジタル簡易無線局(登録局)

(アルインコ、ICOM、JVCケンウッド、CSR、八重洲無線、モトローラ・ソリューションズ )

1~5km程度の距離で通信が可能な無線機。したがって、災害現場の域内での連絡用に

適しています。

写真 23: 取扱の説明を受けています 写真 24: チャンネルが決まったら相互に通話。

空きチャンネルの探し方なども重要です 自分が誰であるかを名乗ることや、話し終わった

ことを相手に伝える「どうぞ」等の会話手順も

重要です