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化学工学実験 I 工業物理化学実験テキスト (三島・松山 担当)

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  • 化学工学実験 I

    工業物理化学実験テキスト (三島・松山 担当)

  • 目 次 頁

    1 実験を始めるにあたって 3 2 実験実施要項 4

    2. 1 実験担当 4 2. 2 実験日時 4 2. 3 実験場所 4 2. 4 実験に際し持参するもの 4 2. 5 実験開始前日までの用意(予備学習) 4 2. 6 実験日の出欠について 4 2. 7 実験報告書の提出について 5 2. 8 実験実施上の注意 5 2. 9 実験報告書、実験ノート 5

    3. 吸着 8 3.1 はじめに 8

    3.2 吸着操作 8 3.3 実験目的 10 3.4 実験方法 10 3.5 実験結果のまとめ方 14 3.6 エクセルによる吸着データの整理法 16 3.7 実験結果の考察方法 17 3.8 Langmuirの等温吸着式による相関 22 3.9 Freundlichの等温吸着式による相関 26 3.10 吸着等温線とは 29 3.11 吸着等温式 30 3.12 活性炭の批評面積の計算 36

    4. 粘度・密度測定 37

    4.1 はじめに 37 4.2 低分子溶液の粘度 37 4.3 密度測定 39 4.4 高分子溶液の粘度 41

    5. 植物からの DNAの抽出 44 5.1 はじめに 44 5.2 試薬および器具 44 5.3 実験方法 44 5.4 電気泳動装置による DNAの観察 44 5.5 電気泳動装置の原理 45 5.6 制限酵素とは 46 6. 染色 48 6.1 はじめに 48

  • 6.2 試薬および使用器具 48 6.3 実験方法 48 7. ガスクロマトグラフ質量分析計による茶葉中の

    カフェインの分析染色 50 7.1 はじめに 50 7.2 原理および装置 50 7.3 実験サンプルの設置と GCMS装置の操作方法 53 7.4 マススペクトルによる物質の構造解析 54 付表 最小二乗法 56

  • 1. 実験を始めるにあたって 工業物理化学実験の重要性 化学工学では、蒸留、抽出、調湿、乾燥、吸着、粉砕、ろ過、機械的分離(遠心力、重力)、

    混合、撹拌などの単位操作が中心であるが、それらの分離および混合操作は、すべて物理化

    学の原理に基づいて行われる。物理化学は、単位操作の基礎となる学問である。3年後期に

    行われる化学工学実験Ⅱ、4年次の卒業研究および就職後の生活においても、工業物理化学

    実験の経験が役に立つ。したがって、2年前期に工業物理化学実験として、物理化学に接し

    馴染むことの意義は大きい。 また、ケミカルエンジニアは、大量の混合物を扱い、各単位操作を統合して系全体のプロ

    セスを設計・操作しなければならない。大量の混合物を扱うためには、より正確な温度、圧

    力、流量、組成の制御が必要となる。これらに関する測定の基礎技術を拾得することは、有

    意義である。工業物理化学実験を通じて、ケミカルエンジニアとしての基礎力を養われたい。 講義および化学工学実験Ⅱとの関係 工業物理化学実験は、3年後期の化学工学実験Ⅱと密接な関係にある。また、個々の実験

    に関わる理論については、既に講義されているものもあるが、3年前・後期に講義されるも

    のもある。大学での学習は、高校までの受動的なものと異なり、自主的なものである。この

    機会に、おおいに独創性を養われたい。 工業物理化学実験は、一年次において受講した基礎物理化学、化学工学計算法およびその

    他の基礎的な知識、今までの実験的経験および予備学習をもとに、安全かつ円滑に実験を進

    めてもらいたい。

  • 2. 実験実施要項 本指針書の実験(工業物理化学実験)は、配布の実験日程にしたがって行います。 2.1 実験担当 化学システム工学科 三島健司 松山清 2.2 実験日時 火曜日 : 4限・5限 金曜日 : 4限・5限 2.3 実験場所 617実験室(6号館 1階西側)の所定の実験台で実験を行います。 2.4 実験に際し持参するもの 工業物理化学実験指針書、レポート提出用のレポート用紙(A4サイズ)、実験ノート(形式は自由です。)、グラフ用紙(A4方眼紙)、筆記具(自在定規、テンプレートなども含む)、計算用具(関数電卓)、白衣(清潔なもの)、名札。 実験に必要な物品以外の物(バッグ,衣服など)は所定のロッカーに納め、白衣を必ず着

    用する。実験に必要なものだけをもって実験室に入る。退出の際、忘れ物がないことを確認

    する。 注) 実験ノートは、実験中に指導担当者がチェックするので指示に従うこと。

    また、物品にはすべて氏名、学籍番号を記入し紛失を避ける。 2.5 実験開始前日までの用意(予備学習) 実験を行う前にその内容を熟知しておくことは、事故の防止、円滑な実験、内容に対する

    より深い理解などの観点からきわめて重要です。 1)指針書を熟読する。 2)実験開始前に既に記述できることがら(目的、実験方法、実験結果を記入するデータシートなど)を実験ノートおよびレポート用紙に事前に記入しておく。実験終了時から提

    出までの期間が短いので、問題点に関する質問は、早期に行う。 3)持参すべき物品の確認をする。 2.6 実験日の出欠について 出欠のチェックは時限開始直後と時限終了時(実験終了時)の 2回を行う。「2回目のチェック時に不在の者」は当日を「欠席扱い」となります。遅刻者は必ず指導担当者に報告する。

    遅刻および欠席は、減点の対象となるので注意する。実験時間中の「不在が著しいとき」は

    当日を「欠席扱い」とする。 2.7 実験報告書(レポート)の提出について 1)提出期限:各実験報告書提出の締切日は「実験終了日より 7 日後(15 時まで)」です。例えば、1 テーマについて火曜、金曜と実験を行った場合、翌週の木曜日の午後 3 時までに提出してください。金曜、火曜と実験を行った場合は、翌週の月曜日の午後 3時までの提出です。提出期限(締切の日時)に遅れた報告書は受理しないので注意して下さい。

    2)再提出:報告書の記載およびその内容によっては「再提出」を指示される場合がありま

    す。再提出の提出締切日は、「返却日を含めてその日より 7日後(15時まで)」です。提出

  • 期限(締切の日時)に遅れた報告書は受理しない。 2.8 実験実施上の注意 1)実験時間中は白衣着用、履物は靴とする(サンダル類は不可)。また、白衣のボタンはか

    ならずとめ、袖などもしっかりとめる。器具に袖などをひっかけて、事故を起こすことの

    ないように事前に注意する。 2)試薬・機器具については、使用目的を指導担当者に報告のうえ受け取る。返却時の報告

    も確実におこなう。 3)計測機器具などの使用(操作)は「取扱説明書」にしたがって行う。 4)機器具類の保管は班(グループ)全員でこれにあたる。破損または紛失したときは指導

    担当者に口頭で報告して下さい。実験終了時には、各物品と実験台の整理整頓を行い指導

    担当者の確認を受けて下さい。 5)脱塩水製造装置(イオン交換)の使用に際しては、指導担当者の指示を受ける。 6)ガラス器具の洗浄法:

    a)ガラス器具は、水道水で予洗の後クレンザーで十分に汚れを落とし再び水道水で良くすすぐ。ただし、ガラス体積秤量器はこの限りにあらず下記のbの方法による。洗浄の終了

    はガラスの表面が一様に水膜で濡れていることにより判定する。その後イオン交換水ある

    いは蒸留純水で最低3回以上すすぎ加熱乾燥あるいは風乾させる。乾燥後は、所定の場所

    に器具を返還する。 b)ガラス体積秤量器は水道水で予洗の後、洗浄槽に一昼夜浸漬し、その後、水道水で十分すすぐ。以後は aの場合と同様であるが、乾燥に関しては風乾とし加熱乾燥は絶対に行ってはならない。

    7)プラスチック製器具の洗浄法: プラスチック製器具は材質が軟質であるので洗浄には、液体洗剤を使用し加熱乾燥はさけ

    風乾とする。乾燥後は、所定の場所に器具を返還する。 8)実験廃液の処置法: 実験廃液は、有機溶剤廃液、含有機溶剤水溶液廃液、無機廃液、含重金属廃液に分類し各々

    所定の廃液タンクに保管する。不明の場合には教員の指示を受けること。みだりに流しに

    は流さないこと。 9)固体廃棄物の処置法: 固体廃棄物は、紙屑・木材類、ビニール・ゴム類、金属類、ガラス類に分類し所定の容器

    に廃棄する。 10)空になった試薬瓶は捨てないで、教員の指示を受けること。 11)電源の確保に関しては電気容量、電線の容量等に関して教員の指示を受けること。 12)天秤室への入室は各班(グループ)の秤量担当者のみとする。(多人数の入室は秤量操

    作の妨げとなる。また、天秤転落事故の原因ともなる)。 13)喫煙は「指定の場所」でおこなう。実験室または指定場所以外での喫煙はしないこと。 14)本実験では1テーマを各班とも数グループにわかれて実験をおこなうのでチームワー

    クが必要である。実験を始める前に互に話し合って実験上の手順すなわちデータの取り方

    をきめておくとよい。 15)機器の取り扱いは、使用説明書をよく読んでから使用する。 2.9 実験報告書、実験ノート 実験報告書(レポート)は、レポート用紙(市販の A4サイズ)を用いて提出して下さい。報告内容は、特に指示がない場合は、次の項目とします。

  • 1)緒言(チョゲン) 3)実験方法 4)実験結果および考察 5)結言 6)使用記号(式や変数を使用した場合に必要) 7)引用文献(参考にした文献があれば)

    レポートの内容の各項目に関して、以下にその記述上の注意点を説明します。 1)緒言 実験の目的、意義を示す。何をどうしようとするのかを示すもので、その実験の直接の目

    的を具体的に書く。 2)実験方法 実験の方法は、実際に行った実験を第三者にも再現できるように書くべきです。自分達が

    行った操作について、表や図などを交えて明確に示しておくとよいでしょう。 実験方法の文章は、過去形で書くことが一般的です。

    3)実験結果および考察 結果(数値、図表)と考察は、レポートの中で最も重要な部分です。指針書を参考にして、

    各自が工夫して記述して下さい。 結果では、得られた事実に忠実に書かねばなりません。

    また、関連のあるものをまとめて図や表に示すとわかりやすいです。ただし、結果の図や

    表についての説明の文章も本文に必要です。 結果おより考察の文章は、現在形で書くことが一般的です。 また、単位や有効数字に誤りがあると誤解を招く恐れがあります。図、表、単位および有

    効数字に関しては、指針書を再読すること。考察では、得られた実権データを理論的な計算

    などと比較して現象を検討する習慣も身につけましょう。独自のものを書くようにこころが

    けましょう。 4)結言 結果および考察でえられた事柄をまとめて示します。 主な記述上の注意事項 ※1. 表については、標題の位置:表の上に書く。注の位置:表の下に書く。 ※2. 図については、標題の位置:図の下に書く。注の位置:図の下に書く。 図を描く場合には、A4の各種方眼紙1枚に1つの図を描き、本文を参照しなくても

    図の内容がわかるように必要な条件などを全て記入することが望ましい。図および表

    は、最後にまとめて示すのではなく、関係の深い文の直後の頁に挿入する。 ※3. その他、記述上の注意は、指針書や配布された資料を参考にされたい。また、レポー

    トにつける通しページ番号なども忘れぬよう。 ※4. 次元、単位の付記に留意する。「SI」は、これから必然的に使用される単位系であ

    り、その使用については、留意してもらいたい。 ※5. 単位の記入においては、変数の後には[ ]を付け、数の後には[ ]を付けない。例え

    ば、Cp [J・mol-1・K-1], Cp = 1.98 J・mol-1・K-1 ※6. 引用文献、使用参考の記入については、「化学工学論文集」,「化学工学会誌」を参照

    されたい。 ※7. 「化学工学論文集」,「化学工学会誌」などは、工学部の各図書館にあるので有効に活

    用してもらいたい。 ※8. レポートに記載する図・表などは、「化学工学論文集」,「化学工学会誌」の表現に準

    じた記載方法を用いること。 ※9. 図については、Excelなどの表計算ソフトで作成したものでもよい。

  • 実験ノートは、市販の大学ノートを使用して下さい。各実験内容について、ページを変

    えて、後で見て分かりやすいように書いて下さい。上から5行程度に、実験条件,その他

    必要事項,日付などを記入する。右端5cm程度の幅を備考欄とし、実験中に気付いたこ

    と,その他必要事項を記入する。使用した溶液の濃度、ファクターなどが記録されていない場合がよくあります。レポート作成時に困りますので、忘れずに各自が実験ノートに記入

    しましょう。 レポート表紙 レポートの表紙(市販の A4 のレポート用紙でよい)には、以下のような表紙をつけること。各ページにページナンバーを記入すること。提出時には、上端をホッチキスで閉じるこ

    と。記入は、ワープロ、鉛筆でもよい。

    工業物理化学実験レポート(三島担当分)

    実験項目 実 験 名 提出者 福岡大学工学部化学システム工学科 A組 5班 TK0315001 七隈太郎 共同実験者 福大次郎 干隈三郎 城南花子 早良五郎 実験日 平成 年 月 日 ~ 月 日 実験場所 化学工学共同実験室 B(6号館 1階 617室) 条件 気温 気圧 湿度 天候 提出日 平成 年 月 日

  • 3. 吸着 3.1 はじめに 活性炭; 多孔質(多くの小さい穴がある)の吸着剤 酢酸 ; 活性炭に吸着されるモデル分子

    吸着実験データの整理によく使用する記号 n ;溶質の吸着量 、 C ;溶液中の溶質の濃度 単位は、 [ ] [ ] 考えてみよう。 1) 右図のような低い濃度の酢酸水溶液の入ったビーカーに活性炭 をを加えた場合、濃度はどうなるでしょうか。

    2)吸着された酢酸の物質量(n[mol])を測定するには、どのような 実験をすればよいでしょうか。 図 1 活性炭

    3.2 吸着操作 工場排液中の微量は有機物などを活性炭などの吸着剤で除去する工業操作を吸着操作と言

    います。蒸留、抽出、乾燥、撹拌などの単位操作と同様に化学工業プロセスの重要な分離技

    術です。吸着操作は、他の分離操作に比べてきわめて低濃度の範囲まで物質分離ができる特

    徴があります。そのため、近年問題となっている大気および水質の汚染、汚濁に対する有力

    な対策技術として注目されています。 本実験では、活性炭に対する酢酸の吸着挙動を調べることにより、活性炭の吸着特性(吸

    着平衡定数)を知り、吸着操作の理論的な取り扱いについて学習しましょう。 吸着量を求めてみましょう。この例では、濃度換算が容易になるように、溶液濃度をℓ でなく m3 単位とした。) 低濃度のフェノールを含む排水の活性炭吸着実験を行って、図 1のような吸着等温線(一

    定温度で測定した溶液濃度と吸着量の関係)を得た。いま、フェノール濃度が 40mol/ m3の排水 40m3に 60kgの新しい活性炭を投入して平衡に達したとき、水中のフェノール濃度(mol/ m3)および 1gの活性炭のフェノール吸着量(mol/g)を求めよ。

    活性炭 1gに吸着するフェノールの物質量を、n[mol/g]、活性炭の量を W[g]とすると、

    フェノール排水 V[m3] 吸着前のフェノール濃度 C0[mol/ m3] △:フェノール分子

    +

    活性炭に吸着した溶質(フェノール)の量 n・W (1)

    溶液から取り除かれた溶質の量 (C0-C)V (2)

    物質収支式より、

    n・W=(C0-C)V (3) よって、

    VW

    CCn

    −= 0 = )( 0CCW

    V−− (4)

  • 図3 吸着等温度線と操作線

    この操作からわかるように、吸着データ(この実験で求める)が存在すれば、

    吸着等温線と操作線の交点から、吸着処理しようとする溶液の体積 V と初濃度 C0に対して、使用する活性炭の質量 W により、活性炭に吸着する溶質の量 n および吸着後の溶液の溶質濃度 C が計算で予測できます。この吸着データから、吸着装置を設計することができます。実際に吸着装置(吸着塔)の設計の様子を次ペー

    ジの例題1に示しておきます。興味のある人は、5 段に積み重ねた吸着層を 0.4 mol/ ℓの濃度の廃液が通過すると、濃度が 0.02 mol/ ℓ 以下になることを確認し、吸着塔の設計方法を考えてみて下さい。 なお、先ほど求めた式 (4)は、皆さんが行う吸着実験データ(吸着等温線を作るもととなる吸着後の溶質濃度 C と各濃度に対する吸着量 n の関係)を求める場合にも使用します。 問題1 質量 W=1gの活性炭を用いて、体積 V=100cm3の酢酸溶液の吸着実験を行った

    ところ、活性炭と接触する前の酢酸溶液の初濃度は、C0=0.512mol/dm3であった。(dm3;デッシメータ 3 乗= ℓ;リットル)吸着後の溶液を活性炭と分離して、その酢酸溶液の濃度を 0.1N(0.1 規定の)水酸化ナトリウム水溶液で滴定して求めたところ、C=0.478mol/dm3 であった。1gの活性炭に吸着された酢酸の物質量n [mol]を式 (4)より求めよ。

    活性炭 1kg当たりに吸着された

    フェノールの量: n[mol/g]

    吸着操作後

    の溶液のフ

    ェノール濃

    度 C

    吸着等温線の一例 Langmuir式

    KCKCnn

    +=

    1

    操作線

    )( 0CCWVn −−=

    傾き-2/3

    初濃度 C0

    [mol/m3]

    吸着後の濃度 Cと吸着量 n

    初濃度C0と傾き-V/Wを用いて、操作線を引き、

    吸着等温線との交点を

    求める。

    ここで、(3)式の傾きWV

    − で、図 1 における横軸

    を通過する直線式(操作線)である。すなわち、

    )(=- 4032

    )40(6040)()/( 0

    −−=−−=

    C

    CCCWVgmoln

  • 10

    解答(計算式) )( 0CCWVn −−=

       

     −= ( ) (答) [mol]

    例題 1 吸着塔の設計 濃度 C0[mol/m3]の不純物を含む工業排水(流量 V[m3/hr])から不純物を除去するために、下図

    に示すような各 i段に活性炭を wi[g]含む5段の吸着塔を設計しましょう。 各 i 段の出口と入口でのそれぞれの物質濃度 Ci,Ci-1[mol/m3]と,その段での活性炭単位質

    量当たりの吸着量 ni[mol/g]との間に物質収支がなりたち,他の部分への吸着は無視できるとする.また,溶液中の平衡濃度Ci[mol/m3]と吸着量ni[mol/g]の関係は,ラングミアー(Langmuir)の等温吸着式で与えられるものとする.ラングミアーの等温吸着式における吸着平衡定数 K

    と飽和吸着量 ∞n としては,K=8.611, ∞n =0.003262の値を用いる.誤差を判定する定数 EPS

    としては,EPS=0.00001を用いよ. 図4 吸着塔の段数計算 図5 吸着塔 3.3 実験目的 一定の温度において、活性炭による希酢酸の等温平衡吸着量 nを一定の温度において測定

    し、それら測定値の Freundlich 式および Langmuir 式への適合性を比較検討する。また、Langmuir式により活性炭の比表面積を求める。 3.4 実験方法 レポートでの実験方法の記述では、次のように説明文を必ず付けて下さい。 また、行った方法については、過去形「~した。」のように記述して下さい。 例) 活性炭による酢酸水溶液からの酢酸の吸着実験に、次の器具および試薬を使用した。 [器具] 1000mlメスフラスコ(1)、500mlメスシリンダ(1)、500ml試薬瓶(5)、共栓三

    実験レポートを書く場合、この「実験目的」を利

    用して、「緒言」を作成して下さい。

    実験方法は過去形にて記述

  • 11

    角フラスコ(5)、2mlホ-ルピペット(2)、5mlホ-ルピペット(2)、10mlホ-ルピペット(1)、100ml ホ-ルピペット(1)、50ml ビュレット(1)、電子天秤、直示天秤(注;( )内の数値は個数を表す。) [試薬] N/10、N/100-水酸化ナトリウム(NaOH)、N/10-塩酸(HCl)、フェノ-ルフタレイン、酢酸、活性炭 1)、2)および 7)については、予め調整済み。8)は、2日目に実験する。 1)酢酸 28mℓ をメスシリンダにて採集し、これを 1000mℓ メスフラスコに入れて蒸留水を加えて 1000mℓとし、N/2-酢酸を調整した。(調整済み)

    2)N/2-酢酸より順次、溶液 500mℓをメスシリンダに取り、1000mℓメスフラスコを用いて

    N/4、N/8、N/16、N/32酢酸溶液を調整し、500mℓ試薬瓶保持した。 3)共栓三角フラスコ(100mℓ)の空重量を直示天秤にて正確に測定した。これに電子天秤にて測定した活性炭試料約 1gを入れて、再び直示天秤にてその重量を正確に測り前後の差から投入した活性炭量を知る。

    4)活性炭を入れた各々の三角フラスコに各濃度の酢酸溶液 100mℓを正確にホ-ルピペットを用いて入れた。(このとき気泡が混入しないように注意した。)

    5)上記に準備した三角フラスコに栓をして、これらを所定の温度に設定した恒温槽に浸し

    た。浸した三角フラスコは、約 20分間隔で気泡が混入しないように注意して振り混ぜる。この操作を約 2時間行った。

    6)次に、滴定に用いて約 N/10-,N/100-水酸化ナトリウム溶液 1000mℓを調整し、濃度既知の塩酸溶液を用いてその正確な濃度を決定しておく。(調整済み)

    7)調整された酢酸溶液の各々を、6)において標定した N/10-水酸化ナトリウム水溶液にフェノ-ルフタレインを指示薬として滴定し、各酢酸溶液の濃度を求めた。(標定に要する

    酢酸量は N/2-と N/4-の場合は 2mℓ、N/8-と N/16-の場合は 5mℓ、N/32では 5mℓをホ-ルピペットで採集する。ただし、N/32についての滴定は、N/100水酸化ナトリウムで滴定した。(各濃度について 3回ずつ滴定する)

    注)ビュレットは、各班に 2 本ある。濃度の高い N/2 酢酸から測定するので、両方のビュレットには、N/10-水酸化ナトリウム水溶液を入れて開始する。

    *** 最重要注意事項 ***

    滴定を行う場合、安全確保のため、必ず安全メガネを着用すること。 8)次に、各試料溶液を一つずつ手早くろ過し、ろ過液を N/10-水酸化ナトリウムで滴定して、平衡濃度を決定した。(標定に要する酢酸量は N/2-と N/4-の場合は 2mℓ、N/8-とN/16-の場合は 5mℓ、N/32-では 5mℓをホ-ルピペットで採集した。ただし、N/32 ーの場合は N/100 ー水酸化ナトリウムで滴定した。)

  • 12

    1) 酢酸溶液の濃度の測定(1日目;レポートにこの図は不要) 酢酸 28mℓをメスシリンダにて採集し、これを 1000mℓメスフラスコに入れて蒸留水を加えて 1000mℓとし、N/2-酢酸を調整する。

    N/2-酢酸より順次、溶液500mℓをメスシリンダに取り、1000mℓメスフラスコを用いて N/4-、N/8-、N/16-、N/32-酢酸溶液を調整し、500mℓ試薬瓶に保持する。

    滴定用のビュレットを N/10-,N/100-水酸化 ナトリウム溶液で共洗いする(3回)。

    ビーカーに酢酸溶液を少量入れて、共洗いを行う (3回)。試薬瓶からビーカーに酢酸溶液を滴定に 必要な量だけ取り出す。

    ホールピペットをビーカーの酢酸溶液を 使用して共洗いを行う(3回)。

    滴定用の三角フラスコに酢酸溶液を分取する。

    滴定(滴定は同じ濃度の酢酸溶液を 3回 以上滴定して平均する)。

    酢酸溶液の濃度計算

    滴定による酢酸濃度の決定

    1000'

    1000vfNvx ××=× (3.3)

    x:酢酸の仕込み液濃度 [mol/ℓ] v:酢酸の仕込み液の分取量 [mℓ] N:NaOHの規定度 [N] f:NaOHのファクター [-] v’:NaOHの滴定量 [mℓ] 注)酢酸は 1価の酸なので 1mol/ℓ=1N(1規定)

  • 13

    式(3.3)の使用例 酢酸の仕込み液の分取量 v =2 mℓ , NaOHの規定度 N = 0.1 N NaOHのファクター f = 0.998 , NaOHの滴定量 v’ = 9.85 mℓ である場合、 式(3.3)を利用して、酢酸の仕込み液濃度 x[mol/ℓ]を求める。

    1000'

    1000vfNvx ××=×

    vvfNx '××=

    492.0285.9998.01.0 =××= mol/ℓ (この xが濃度 C または C0 です。)

    2)酢酸溶液と活性炭の接触のフローチャート(1日目) 共栓三角フラスコ(100mℓ)の空重量を 直示天秤にて正確に測定する。

    電子天秤にて活性炭試料約 1g測る

    共栓三角フラスコ(100mℓ)に 活性炭試料約 1gを入れる。

    活性炭試料約 1gを入れた 共栓三角フラスコ(100mℓ) を直示天秤にてその重量を測る

    共栓三角フラスコ(100mℓ)の前後の 差から投入した活性炭量を計算する。

    活性炭を入れた各々の三角フラスコに 各濃度の酢酸溶液 100mℓを正確にホ-ルピペットを用いて入れる。(このとき 気泡が混入しないように注意する。)

    三角フラスコに栓をして、これらを所定の温度に 設定した恒温槽に浸す。浸した三角フラスコは、 約 20分間隔で気泡が混入しないように注意して 振り混ぜる。この操作を約 2時間行う。

  • 14

    3)吸着量の測定(2日目) 恒温槽の温度を測る

    恒温槽から三角フラスコを一つずつ取り出す

    各試料溶液を一つずつ手早くろ過する

    活性炭

    ろ液を滴定して平衡濃度を決定する

    回収

    吸着量の計算

    Langmuirの吸着等温式,Freundlich式のパラメータの決定

    グラフの作成

    吸着量の計算:10001000 ×

    −=

    wCC

    n (3.4)

    n:吸着量 [mol/g] C0: 酢酸水溶液中の酢酸の濃度 [mol/ℓ] C : ろ液中の酢酸の濃度 [mol/ℓ] w : 活性炭の量 [g]

    3.5 実験結果のまとめ方 実験結果は、実験レポートを書く場合に、考察と並んで重要な部分ですので、主な注意事

    項をここで説明しておきます。 グラフの作成:n vs C 、 n/C vs C、 ln n vs ln C の 3つのグラフの作成 配布された Excel ファイルを利用し、下図のような図を作成してみましょう。

  • 15

    レポートの間違いやすい場所 ①表や図を示す場合、次の例のように文章でもその旨を示す。 [実験結果] 共栓付三角フラスコに活性炭約 1g入れた試料の重量 w[g]を Table1に示す。

    Table1 調整酢酸濃度を入れる活性炭試料の重量 w [g]

    酢酸規定度[N]

    活性炭試料の質量w [g]

    1/2 1.0300

    1/4 1.0001

    1/8 1.0126

    1/16 1.0011

    1/32 1.0109 酢酸(1)-水(2)-活性炭(3)の 12℃における吸着平衡の結果を Table 6および Fig.1に示す。ただし、活性炭 1gに吸着された酢酸のモル数 n[mol/g]は次式より求めた。

    ( )10001001

    0 ××−= wCCn b

    C0:仕込み液中の酢酸濃度 [mol/ℓ] Cb:バルク相中の酢酸濃度 [mol/ℓ] w:活性炭試料の質量 [g] n:吸着量 [mol/g]

    例えば、Cb=0.4621、C0=0.4894、w=1.0300の時は次のように計算できる。

    ( ) 0265.01000100

    0300.114621.04894.0 =××−=n

    Table6 酢酸(1)-水(2)-活性炭(3)の 12℃における吸着平衡

    吸着された溶質のモル数n[mol/g]

    バルク相中の濃度Cb[mol/l]

    0.0205 0.4621

    0.0175 0.241

    0.0139 0.1139

    0.0105 0.0519

    0.0081 0.0243 ②得られた図や表の解釈(読者に、それらから読み取ってもらいたい事柄)の説明文を次の

    例のように、文章で記述する。数字や図だけ示して読者に「理解しろ」というようなレポー

    トではよくありません。 Table 6および Fig.1より、バルク相中の酢酸濃度 Cbの増加にともない、吸着量 nも増加することがわかった。また、吸着量 n の値は、酢酸濃度 Cbの増加にともない n=○○○に漸近することがわかる。

    グラフ(Fig.)は次ペ

    ージに掲載すること

    グラフや表の後には、それらの結果より得られた知見を文章でも

    記入すること

  • 16

    3.6 エクセルによる吸着データの整理法 ○注コンピュータの画面は、WindowsXP上での操作になっています。他の OS(Windows98, 2000,

    NT)搭載のパソコンでも同様の作業が可能です) 先ほど問1で説明したように、溶液濃度の濃度変化から吸着量 nを求めました。実験では、吸着後の水溶液中の酢酸の濃度 Cと吸着量 nの関係を各濃度の溶液(5種類)について測定し、その値を計算します。 このようなデータの整理には、表計算ソフトであるマイクロソフト社の Excelが便利です。

    Excel の起動方法は、そのソフトがインストール(設定)されているコンピュータにより若干方法が異なることがありますが、ほとんど同じです。ここでは、福岡大学の総合情報処理

    センターのコンピュータの設定に従って説明します。 表計算をしてみましょう。 セルとは? セルというのは最小単位の四角のことです。例えば「(Aの1)または、A1というセル、セル

    B1」のようにセルという言葉を使います。セル A1に1という数字を入れてみましょう。セルA1をクリックして、キーボードから「1」と入力し、キーボードの「Enter」キーを押します。

    図 5 Excelの入力例1 図 6 Excelの入力例2

    次にセル B1に「5」という数字を入れましょう。次に、セル C1にセル A1と B1に記入された数値の和を、表示させてみましょう。 下の図のようにセル C1をクリックします。上の「 fx 」と書かれた右のボックス(何かを書くところに)「 =A1+B1 」と書きましょう。そして Enterを押すと、セル C1に 6と表示されます。

    図 Excelを用いた関数計算 実験では、吸着後の水溶液中の酢酸の濃度 Cと吸着量 nの関係を各濃度の溶液(5種類)について測定しました。このデータに対して、Excelを用いて表計算してみましょう。まず、先ほど記述したセル A1~A3は「Delete」(デリート)キーで値を削除しましょう。

  • 17

    次に、セル A5~A9に活性炭と接触する前の酢酸水溶液の初濃度 C0[mol/dm3]、セルB5~B9に活性炭と接触後分離した酢酸水溶液の濃度 C[mol/dm3]、セル E5~E9に活性炭の質量 W[g]をキーボードから入力します。作成した一例を次に示します。

    図 8 Excelによる吸着量nの計算 ここで、1gの活性炭に吸着された酢酸の物質量n [mol]を式 (4)より計算できるので、セル C 5~C9に次の関数式を記述します。式の内容としては、

    )( 0CCWVn −−=

    となるように記述するので、実際の Excelの関数としては、次のように行います。 セル C 5をクリックし、関数ボックス(fxの右)に「=(A5 – B5)*0.1/E5」と記述(半角または直接入力形式で)し、「Enter」キーを押し確定します。この関数は、フィルハンドルを利用して、セル C 6~C9にコピーします。ただし、実験で、溶液は 100cm3使用しましたが、溶液の濃度 C が[mol/dm3]の単位ですので、100cm3=0.1dm3 となり、関数式の中では、V=0.1 dm3としています。 なお、グラフの記述方法や、フィルハンドルの使用方法については、化学工学プログラミ

    ングなどの補助資料を参考にして下さい。また、実験の際に配布した Excel ファイル(ファイル名:ad_gra.xls)を使用すると、実験データの理論的な解析も容易にできますので、試してみましょう。Excelファイル(ファイル名)「ad_gra.xls」の使用方法は、次節で説明します。 3.6 実験結果の考察方法 (吸着実験について) 実験結果の考察方法は、種々の方法がありますが、ここでは、一例として理論と比較する

    方法を示します。実験結果として、下図(左)のようなグラフができました。このような実

    験結果に対して、理論的な考察を行ってみましょう。ここでは、次節で説明するラングミュ

    ア(Langmuir)の単分子吸着モデルで計算した理論線と実験と比較したものを下図右に示します。この図を作る方法は、次節で説明します。レポートの考察の部分は、ラングミュア

    (Langmuir)の単分子吸着モデルの式の導出から書いて下さい。 理論を作る場合、幾つかの仮定をしますが、その理論が多くの実験結果をうまく説明でき

    ている場合、その仮定がある程度妥当なものであったことがわかります。指針書に書いてあ

    った以外の理論についても、興味があれいばためしてみましょう。

    セル C5をクリックし、関数ボックス( fx の右)に「=(A5 – B5)*0.1/E5」と記述(半角または直接入力

    形式で)します。

  • 18

    ラングミュア(Langmuir)の単分子吸着モデルを用いて理論値を計算するには、配布され

    た Excelファイル(ファイル名)「ad_gra.xls」を使用すると便利です。その使用方法を以下に示します。配布プログラムは、化学工学プログラミングの講義の場合と同様に、総合情報処

    理センターの共通領域にあります。各自、コピーして使用して下さい。コピーするには、化

    学工学プログラミングの講義の場合と同様に、コピーしようとするファイルを共通領域から

    自分の使用しているコンピュータのデスクトップにドラッグ&ドロップします。共通領域で

    ファイルを開くとファイルの消去などで他の人が使えなくなりますので、共通領域でファイ

    ルをダブルクリックしないようにして下さい。誤って共通領域でファイルをダブルクリック

    した場合は、そのファイルを閉じるボタンをクリックし、閉じて下さい。 各自のコンピュータに保存した Excelのファイル(ファイル名:ad_gra.xls)をダブルクリ

    ックして開きます。自宅へ持ち帰る場合、各自のフラッシュメモリーやフロッピーディスク

    を使用し、または、メールを使用して添付ファイルで送信できます。各自のフラッシュメモ

    リーやフロッピーディスクに保存してあるファイルを再編集する場合は、フラッシュメモリ

    ーやフロッピーディスクをコンピュータの USB 端子またはフロッピーディスクドライブに挿入します。次に、デスクトップ上にあるマイコンピュータのアイコンをダブルクリックし

    ます。 もし、デスクトップ上に上のアイコンが無ければ、画

    面左下の「スタート」ボタンからマイコンピュータをク

    リックしてください。すると次のような画面が立ち上が

    ります。

    ラングミュア(Langmuir)の単分子吸着モデルで計算した

    理論線

  • 19

    その中から、フラッシュメモリーの場合は、「リムーバブルディスク」を、フロッピーディ

    スクの場合は、「3.5インチ FD」のアイコンをダブルクリックしてください。ファイルが保存されていれば、次の画面が出てきます。

    この画面の中の「ad_gra.xls」ファイルをデスクト

    ップにコピーします。まず、「ad_gra.xls」ファイルを左クリックします。この時、クリックした指はは

    ずさないようにします。その状態のままデスクトッ

    プまでファイルを移動させます。そして、デスクト

    ップ上の任意の場所でクリックした指をはずします。

    これで、デスクトップ上に「ad_gra.xls」のファイルがコピーされましたので、デスクトップにコピーさ

    れたファイルをダブルクリックして開きます。コピ

    ー操作が上手くいかなかった場合、もう一度移動の操作を行ってください。

    必ずデスクトップにコピーしてから開く操作を行って下さい。フロッピーディスクから直接

    開いて操作を行った場合、正しく保存されない可能性があります。 「ad_gra.xls」のファイルを開くと、次のような画面が立ち上がります。もし画面が違う場合は画面の下部にある「吸着データ」のタグ をクリックしてください。この画面

    でデータの処理や計算を行います。では、実際の操作に入る前に、予めこのファイルに名前

    を付けて保存しておきます。まず、Excelの画面のツールバー「ファイル」から「名前を付けて保存」をクリックします。下のような画面が起動します。

  • 20

    ファイルの保存先を変えたい場合、画面上部の▼ボタンをクリックし、保存先にデスクトッ

    プを選択します。次に、ファイル名の部分に各自ファイル名を入力します。ファイル名は何

    でも良いですが、分かり易い名前にしておくとファイルの管理がやり易くなります。日付や

    数字を入れると同名のファイルをいくつも管理する場合に便利です。ここでは「吸着実験デ

    ータ整理 4月 01」とし、「保存」ボタンをクリックします。

    ファイル名変更後、Excelの画面上部のタイトルバーのタイトルが先ほどの名前(上の図とは異なります)になっていることを確認してください。

    この操作を行うことによって元のデータである「ad_gra.xls」を変更してしまう心配がなくなります。元のデータである「ad_gra.xls」は、ファイルが破損し、または、間違った操作の結果を誤って保存してしまった場合などの補助ファイルとなりますので大切に保管しておいて

    下さい。今後配布するデータは、先ほど説明した手順で名前を変えて保存し、元のデータに

    直接変更を加えないようにして下さい。 ここから、実際の作業に入ります。初期状態では模擬のデータが入力されています。入力

    データは予め計算しておいた、酢酸濃度Cb[mol/l](濃度を Cと表示している場合もあります。)と活性炭吸着量 n[mol/g]になります。下の画面の丸で囲んだ部分が、それぞれの値で、B,Cカラム(列)の 4~9行には、数値が入力されています。関数ではありません。このデータを利用して、実際のデータ解析を行ってみましょう。下記のように行うと幾つかのグラフが

    現れ、実験データに対して、ラングミアーの単分子吸着を仮定したモデルを用いて、精度よ

    く計算線が描けることがわかります。 今回は、Cb/nの値を入力する必要はありません。Excelが自動的に計算を行って結果を表示するようになっています。つ

    まり、セル D5に「=B5/C5」と関数を入力し、この関数に対して、フィルハンド

    ルを利用して、セル D6~D9へコピーし

    ファイルの保存先を変えたい場合、画面

    上部の▼ボタンをクリックし、保存先に

    デスクトップを選択します。

    変更するファイル名は、ここをクリッ

    クして書き換えます。

    名前を変更したら、ここをク

    リックして保存します。

  • 21

    まています。 次に酢酸濃度 Cb[mol/L]と活性炭吸着量 n[mol/g]の関係および、酢酸濃度 Cb[mol/L]と Cb/n[g/L]の関係をグラフ化します。今回は、自動的にグラフが作成されるようになっていますので複

    雑な操作は必要ありません。 ここでは、データに対して、それを精度よく表現する近似式をグラフ上に描き、その関数

    を数値として求める方法を Excelで練習してみましょう。

    グラフを表示させるには画面の下にある「Graph1」もしくは「Graph2」のタグ

    をクリックします。「Graph1」には酢酸濃度 Cb[mol/L]と活性炭吸着量n[mol/g]の関係のグラフが、「Graph2」には酢酸濃度 Cb[mol/L]と Cb/n[g/L]の関係のグラフが表示されます。「Graph2」は、Langmuir の等温吸着式による相関を表したもので、横軸に酢酸濃度 Cb[mol/L]をとり、縦軸に酢酸濃度 Cb[mol/L]を活性炭吸着量 n[mol/g]で除した値 Cb/n[g/L]を示しています。Langmuir の等温吸着式については、この後の章で説明してありますので、各自読んで理解して下さい。Langmuirの等温吸着式では、式中の定数 n∞(飽和吸着量)と K(吸着平衡定数)を実験データから最小二乗近似で決定する場合が多くあります。ここでは、

    その例を取り上げて、データに対して、それを精度よく表現する近似式をグラフ上に描き、

    その関数を数値として求める方法(最小二乗法;最小二乗については、付録に示しており、

    また、化学工学プログラミングの講義においても説明します。)を Excelで練習します。 配布された Excel ファイル「ad_gra.xls」では、実験点が表示されているだけで、それを精度よく表現する近似式の直線のグラフは「Graph2」に表示されていません。今から、次の手順で「Graph2」の図(グラフ)に近似式の直線のグラフを表示します。Excel の場合、近似曲線(ここでは直線)を求める場合、コンピュータが自動的に最小二乗法を使って近似曲線

    を計算しています。

    「Graph1」の画面 「Graph2」の画面

    Excelの sheetが表示されたら、まず、ファイル名を変えデスク

    トップに保存して下さい。次

    に、Graph2のタックを左クリックして最小二乗法のグラフを

    確認して下さい。

  • 22

    3.8 Langmuirの等温吸着式による相関 はじめに、Langmuir式の定数 n∞と Kを決定するために、「Graph2」酢酸濃度 Cb[mol/L]と

    Cb/n[g/L]の関係のグラフから、最小二乗法により直線の式を求めます。Excelを用いて、データに対して近似直線のグラフを描き、最小二乗法の直線の式を求めます。

    次のような「近似曲線の追加」のウィンドウが現れたら、今回は、線形近似(直線で近似;

    y=ax+b の式)を選びますので、線形近似が黒色に反転していることを確認して、「近似曲線の追加」のウィンドウの右下の「OK」ボタンをクリックして下さい。

    実験点●の何れかにポインタをあわせて、

    右クリックする。

    近似曲線の追加(R)を選択して、左クリックする。

    「線形近似」であること

    を確認して、「OK」ボタンをクリックします。

  • 23

    「近似曲線の書式設定」

    のウィンドウで、オプシ

    ョンから「グラブの書式

    を表示する。」の前を選ん

    でチェック(前のチェッ

    クボックスをクリック)

    した後、「OK」を押す。

    現れた直線にポインタをあわせて、

    左クリックすると、「近似曲線の書式

    設定」のウインドウが表示されます。

    ここをクリックします。

    この「オプション」のタ

    グをクリックします。

    「y=・・・」の関数

    が現れるので、ここ

    をクリックする。

    式の文字フォントが初期値

    「8」と小さいので、ここ

    の▼ボタンをクリックし、

    フォントサイズを選ぶリス

    トボックスを表示し、「22」程度の大きなサイズを選択

    し、クリックする。

  • 24

    「Graph2」酢酸濃度 Cb[mol/L]と Cb/n[g/L]の関係のグラフから、最小二乗法により直線の式がこのように求められました。Excel を用いて、データに対して近似直線のグラフを描き、最小二乗法の直線の式を求めるこの方法は、他の実験データの解析などにも利用できますので、

    各自活用して下さい。 表示された関数式「y=438.65+26.54」は、ノートにメモして下さい。この傾き 438.65と

    切片 26.54から、Langmuir式の定数 n∞と Kを決定します。決定方法の詳細は、この後の 3.6 の Langmuir式のパラメータ決定法に示しています。 ラングミュアの等温吸着式を変形すると、次式となる。

    CCnKnCKn

    CCKn

    Cβ+α・+

    ・・・

    ・==

    += ∞∞∞

    11)1(

    ただし、α=1/n∞,β=1/(n∞・K)とする。この式より C/nを縦軸、Cを横軸とした関係のグラフは、傾きα=1/n∞,切片β=1/(n∞・K)の直線関係を与えることを示しています。 そこで、Excelのシートを利用して、この値から、Langmuir式の定数 n∞と Kを次のように決定します。セル C18、D18に Graph2で求めた数値 26.54と 438.65を代入します。その後、D19と C19に関数を “=1/D18”と”=D18/C18“を代入します。セル内の式は半角で入力してください。

    現れた関数の文字フォン

    トを大きく(例えば 22)して、その数字をメモし、

    吸着データシートの C18と D18に記入する。

    C18、D18 に Graph2 で求めた値 26.54 と 438.65 を代入した後、D19 と C19 に関数を “=1/D18”と”=D18/C18“を代入する。

  • 25

    この Excel表示では、最小二乗法を用いて決定した傾きαと切片βを用いて、 α=1/n∞=438.65, β=1/(n∞・K)=26.54 得られた傾きおよび切片より、n∞および Kは次のように求まる。

    n∞=1/α=1/D18=0.00228 mol・g-1, K =(1/n∞)/β=α/β=D18/C18=16.5

    つまり、セル D19には、n∞の値が、セル C19には、Kの値が表示されます。これらの値は、ラングミュア(Langmuir)の単分子吸着モデルで計算した理論線と実験と比較する場合に利用します。実験結果に対して、理論的な考察を行う例として、ラングミュア(Langmuir)の単分子吸着モデルで理論線を計算し、実験と比較するには、この Excelファイルを利用して、次のように計算し、グラフに表示します。 セル F5~F30 には、溶液中に残る酢酸濃度 Cb[mol/L]に対する活性炭に吸着された吸着量n[mol/g]の関係のグラフ「Graph1」の横軸の酢酸濃度 Cb[mol/L]の適当な値が既に入力してあります。これらのそれぞの酢酸濃度 Cb[mol/L]に対する吸着された酢酸の吸着量 n[mol/g]の理論値をラングミュア(Langmuir)式で計算します。ラングミュア式は次式で与えられます。

    KCKCnn

    +=

    1 (3.10)

    ここで、この実験データを最も精度よく計算できるように決定した n∞および K は、上述のように、n∞=1/α=1/D18=0.00228 mol・g-1, K =(1/n∞)/β=α/β=D18/C18=16.5 であり、これらの値は、セル D19に、n∞の値が、セル C19に、Kの値が表示されています。この値を利用して、「Graph1」に計算線を描くには、まず、セル G5~G30 に、セル F5~F30 のそれぞれの酢酸濃度 Cb[mol/L]に対する吸着された酢酸の吸着量 n[mol/g]の理論値をラングミュア式で計算します。そのためには、セル G5 にラングミュア式を次のように記述します。ただし、セル D19の n∞の値、セル C19の Kの値は、常に同じセルから参照するので、絶対参照($マークを付けて、$D$19, $C$19と記述します。)で記述します。

    Langmuir式をセル G5に記述する。ただし、濃度は、F5の値を相対参照し、D19と C19は絶対参照($マークが必要)することを忘れないように。

    セルG5に記述すべき数式

    =$D$19*$C$19*F5/(1+$C$19*F5)

  • 26

    G5記述後、フィルハンドルを使用して、G5の関数を G6~G30までコピーします。 Sheet1から Graph1 のタグをクリックし、Graph1 に計算線が表示されたことを確認しましょう。これで、ラングミュア式によるデータの解析は終了です。実験値と理論値を比較して、現象

    について考察してみて下さい。ラングミュア式を理論的に導く場合に、ある仮定をしている

    のですが、その仮定をしているラングミュア式が実験データを精度よく計算できていれば、

    その仮定が妥当なもとであったと考察できます。 与えられたモデルデータで、ラングミュア式によるデータ解析ができれば、他の理論(例え

    ば、フロインドリッヒ;Freundlich式や BET式;レポートはどちらか一方でも可です。) についても、Excel で計算してみましょう。レポートには、自分のデータについて、ここで行った内容と同様に計算し、その結果を考察に記述して下さい。 自分のデータについて、同様の計算をするには、まず、いままで計算を行った Excel ファ

    イルを保存します。データを自分の実験データに置き換える前に Excel ファイルをさらに別の名前で保存します。与えられた Excel ファイルは、初期状態では模擬のデータが入力されているので、今回自分達の実験したデータを入力していきます。入力するデータは予め計算

    しておいた、酢酸濃度 Cb[mol/l]と活性炭吸着量 n[mol/g]になります。下の画面の丸で囲んだ部分にそれぞれ自分の実験データを入力していきます。

    今回は、Cb/nの値を入力する必要はありません。Excelが自動的に計算を行って結果を表示するようになっています。 次に酢酸濃度 Cb[mol/L]と活性炭吸着

    量 n[mol/g]の関係および、酢酸濃度Cb[mol/L]と Cb/n[g/L]の関係をグラフ化します。今回は、自動的にグラフが作成

    されるようになっていますので操作は必

    要ありません。 3.9 Freundlichの等温吸着式による相関 今回の実験で得られた酢酸濃度 Cbと活性炭吸着量 nのデータを利用して、Freundlichの等温吸着式の定数 a、bの値を求め、Freundlichの等温吸着式の理論線をグラフに追加します。 ここで、Freundlich式は次式で表されます。

    bbaCn1

    =

    このままでは定数 a、bの値を決定することが難しいので、上式の両辺の対数をとり、線形化します。すると、次式となります。

    bCban ln1lnln +=

    ここで、ln Cbと ln nの関係をグラフにプロットすれば、傾き 1/b、切片 ln aの直線関係が得られます。したがって、実験データである酢酸濃度 Cbと活性炭吸着量 nの値の対数をそれぞれ計算します。配布した「ad_gra.xls」ファイルを開き、「吸着データ」シートの任意の部分に以下のような表を作成します。

  • 27

    次に、ln Cb[-]の列の最初のセルに以下の数式を入力します。

    =ln(B5) 上式中の「B5」は Cb の値の最初のセルの位置を指します。各個人の位置によって変更してください。

    次に、ln n[-]の列の最初のセルに以下の数式を入力します。

    =ln(C5) 上式中の「C5」は nの値の最初のセルの位置を指します。各個人の位置によって変更してください。

    ここで、ln Cb[-]、ln n[-]の値に対しそれぞれオートフィルを行い、計算させます。すると以下のようなデータが完成します。

    計算した ln Cb[-]、ln n[-]の値をグラフにプロットし、最小二乗法による直線式を求めます。

  • 28

    ここで、以下のような直線の式が得られたとします。

    913.5ln3169.0ln913.53169.0 −=∴−= bCnxy    上式より切片は-5.913、傾きは 0.3169となるので、以下の要領で定数 a、1/bを計算します。

    ==∴−= − 913.5913.5ln eaa    0.00270

    3169.01 =b

    a の値を Excel で計算させる場合は任意のセルに以下のような数式を入力することで求めることができます。

    =exp(-5.913) これで、Ferundlich等温吸着式の定数 a、1/bの値が決定しました。この値は後で使うのでノートなどにメモしておいてください。 次に決定した Ferundlich 等温吸着式の定数 a、1/b の値を用いて、Ferundlich 等温吸着式のグラフを作成します。先ほども示したように Ferundlich等温吸着式は次式で表されます。

    bbaCn1

    =

    従って、定数 aと 1/bの値はすでに決定しているので、任意の Cbの値に対する nの値を数点求めれば、Ferundlich等温吸着式で求めた理論線が得られます。以下の操作で理論線を引くことができます。 Langmuir 等温吸着式による相関のときと同様に、Excel の「吸着データ」のシート上の任意の場所に以下のような表を作成します。

    次に Ferundlich等温吸着式に従い、nの値を計算します。

    bbaCn1

    =

    式中の定数 a、1/bは先ほど計算した値を用います。したがって式は次のようになります。

    3169.000270.0 bCn ×=

    この式を Excelのセル内に記入すれば計算ができます。次の

  • 29

    ように記入します。

    =0.0027*G5^0.3169 ここで式中の「G5」は Cbの値が 0のセルを指しています。各個人の位置によって変えてください。 次に式を記入したセルを Cbの値が 0.5のところまでオートフィルを行います。そうするとすべての Cbに対して nの値が計算されます。

    これで Freundlich等温吸着式のデータが完成しましたので、次に「Graph1」酢酸濃度 Cb[mol/L]と活性炭吸着量 n[mol/g]の関係のグラフに、このデータを追加し、理論線を引きます。理論線の引き方は Langmuirによる相関のときと同様の操作を行ってください。 グラフの書式等を変更し整理すると、以下のようなグラフが出来上がります。

    3.10 吸着等温線とは 固体の吸着剤を溶液と接触させる時、一定量の吸着剤によって吸着される溶質の量は温度一定ならば溶質の濃度の関数になる。一定温度での吸着量を温度に対してプロットした時に

    得られる曲線を吸着等温線という。この吸着等温線を比較的よく表す経験式として次の

    Freundlich式がある。

    n=aC1/b (1) ここで n は吸着剤の質量あたりの吸着量、C は吸着平衡濃度、a と b は実験から決定されるパラメータであるが、その物理的意味は多少希薄である。 これに対し、理論的な意味を持つものに次のラングニュア(Langmuir)の吸着等温式がある。

  • 30

    KCKCnn

    +=

    1 (2)

    ただし、n∞は飽和吸着量、Kは吸着平衡定数である。この式は、

    1)吸着分子が固体表面で単分子以上の厚い層を作ることはない。 2)吸着分子同士の間の相互作用はない。

    という二つの仮定にもとに導かれたものである。 結果の整理および報告 Freundlich吸着等温式、Langmuir吸着等温式の各々のパラメータの最適値を求めよ。また、活性炭の吸着特性および表面積について考察し、化学工学における吸着操作の重要性につい

    ても検討せよ。 3.11 吸着等温式 (a) ヘンリー(Henry)型吸着等温式 液相の濃度あるいは気相の圧力が小さい場合、吸着分子間の距離が十分に長いため、吸着

    分子同士の相互作用が無視でき、固体表面と吸着分子のみの相互作用で吸着量を決定できる

    とき、次式のように表される。

    n=K・C (3)

    ここで、Kは比例定数である。図 3-1の(a)に示すように濃度 Cと吸着量 nは比例関係があり、一般に吸着量が小さい範囲で成立する。気体の場合は,溶液濃度 Cの代わりに気相圧力 pを用いればよい。

    濃度(分圧)

    濃度(分圧)

    濃度(分圧)

    濃度(分圧)

    吸着量

    吸着量

    吸着量

    吸着量

    (a)ヘンリー型 (b)ラングミュア型

    (d)BET型(c)フロインドリッヒ型

    0

    0

    0

    0

    図 3-1 吸着等温式

  • 31

    (b)ラングミュア(Langmuir)型吸着等温式 ラングミュアは、図 3-2 に示すように固体表面に同等な吸着力を示す吸着サイトがあり、

    表面に 1分子層だけ吸着する(単分子層吸着)と仮定して、平衡状態における吸着量と溶質濃度(気相分圧)のと関係を導いた。全吸着点のうち吸着分子に覆われている吸着点の割合

    をθ[-]とすると、分子の脱着速度 r’[mol・s-1]はθに比例する。比例定数を a[mol・s-1]とすると次式のように表される。

    吸着剤

    吸着分子

    吸着サイト

    図 3-2 固体表面上の吸着サイト(Langmuir式の導出) r=a・θ (6) また、気相からの吸着速度 r[mol・s-1]は空いている吸着点の割合(1-θ)[-]と溶液濃度 C[mol・m-3]に比例する。 r’= b・(1-θ)・C (7) このときの比例定数を b[m3・s-1]とする。また、平衡状態では両速度は見かけ上等しいため以下の式が成り立つ。 a・θ=b・(1-θ)・C (8) これを変形する。

    CbaCb⋅+

    ⋅=θ (9)

    ここで,飽和吸着量を n∞[mol・kg-1] ,b/a を K[m3・mol-1](Kは吸着平衡定数)とおくと, ∞= nnθ

    となるので次式が得られる。

  • 32

    KCKCnn

    +=

    1 (10)

    これをラングミュア式と呼ぶ。

    (c)フロインドリッヒ(Freundlich)型吸着等温式 フロインドリッヒの吸着等温線は図 3-1(c)のように示される。

    n=a・C1/b (11) nは吸着量[mol・kg-1]で aと bはともに吸着定数[-]である。 (d)BET(Brunauer-Emmett-Teller) 型吸着等温式

    BET型の吸着等温線は、図 3-1(d)に示される。ラングミュア式は、表面に 1分子層だけ吸着すると仮定したものであるが、BET式は無限分子層まで吸着できる式である。図 3-3に示すように、吸着した分子がそれぞれ次の層の吸着サイトとなり、分子は積み重なって多分子

    層に無限層まで吸着できるものとし、各層への吸着にラングミュア式を適用すれば、次式の

    ように表せる。

    ( ) ( )CKCCCKqq

    −+⋅−⋅⋅

    =∞

    11 (12)

    この式は多孔質固体の細孔表面積を窒素ガスの吸着によって測定する際に利用される重要な式

    である。

    表面の吸着サイト

    分子上の吸着サイト

    図 3-3 多分層吸着モデル

    Langmuir式のパラメータ決定法 水溶液からの酢酸の活性炭に対する吸着平衡データ(吸着平衡温度 12℃)は,表 3-1のよ

    うに与えられる。実験データより、ラングミュア式のパラメータ(K;吸着平衡定数,n∞;飽和吸着量)を最小二乗法で決定せよ。さらに、ラングミュア式より決定した n∞、Kの値を用いて吸着等温線を計算し、計算線として図に示し実験点と比較せよ。

  • 33

    表 3-1 n, C, C/nの関係

    ラングミュア式は式(3.10)で与えられる。この式を変形すると、次式となる。

    CKnCK

    n ・・∞⋅+

    =11

    (3.13)

    両辺に Cをかけると以下の式が導出される.

    CCnKnCKn

    CCKn

    Cβ+α・+

    ・・・

    ・==

    += ∞∞∞

    11)1( (3.14)

    ただし、α=1/n∞,β=1/(n∞・K)とする。式(3.14)より C/n と C の関係のグラフプロットは傾きα=1/n∞,切片β=1/(n∞・K)の直線関係を与えることを示している。表 3-1の値を用いて計算した C/nと Cの関係を表 3-1および図 3-4に示す。 最小二乗法を用いて、傾きαと切片βを決定した。 α=1/n∞=438.65, β=1/(n∞・K)=26.54 得られた傾きおよび切片より、n∞および Kは次のように求まる。

    n∞=1/α=1/D18=0.00228 mol・g-1, K =(1/n∞)/β=α/β=D18/C18=16.5

    0

    50

    100

    150

    200

    0 200 400 600

    C [ mol・m-3 ]

    C/n [ kg・m-3 ]

    傾き = 1 / n∞

    1  n∞K  

    切片0

    0.5

    1

    1.5

    2

    2.5

    3

    0 100 200 300 400 500

    液相の溶質濃度 C [ mol・m-3 ]

    吸着量 n [ mol・kg-1]

    液相と溶質濃度 C [ mol・m-3 ]

    吸着量 

    n[ m

    ol・k

    g-1

    ]

    実験点

    Langmuir式パラメータn∞ : 0.0033 [ mol・g-1 ]K : 0.0086 [ m3・ mol -1 ]

    図 3-4 ラングミュア定数の決定 図 3-5 12℃における酢酸濃度 Cと

    吸着量 nの関係

    C [mol・m-3] n [mol・kg-1] C/n [kg・m-3] 460 225 109 52.9 21.4

    2.68 1.99 1.49 1.05 0.60

    172 128 73.2 50.4 35.7

  • 34

    Freundlich式のパラメータ決定法 酢酸水溶液中における酢酸の活性炭に対する吸着実験を行ったところ以下のような実験デー

    タを得た。ただし、Cbはバルク相における酢酸濃度、n は活性炭に対する酢酸の吸着量を示す。

    Cb[mol/L] n[mol/g] log10Cb log10n 0.4621 0.00205 0.2410 0.00175 0.1139 0.00139 0.0519 0.00105 0.0243 0.00081

    実験データを利用して、次式で与えられる Freundlichの等温吸着式の定数 a、bの値を求めたい。

    bbaCn1

    = (1)

    このままでは定数 a、bの値を決定することが難しいので、上式の両辺の対数をとる。

    bbb

    bb

    Cb

    aCa

    aCn

    ln1lnlnln

    )ln(ln1

    1

    +=+=

    =

        (2)

    ここで、横軸に ln Cb、縦軸に ln nの関係をグラフにプロットする。すなわち、 x=ln Cb、y=ln nと考える。

    bCban ln1lnln += (3)

    ここで、直線式 y=a0+a1xと比較する。すなわち、

    )(1)(ln

    1

    00

    傾き

      切片 

    ba

    eaaa a

    =

    =→= (4)

    a0および a1は、最小二乗法により、数値で求められる。与えられたデータでは、 a1= 、a0= なので、 a= 、b= となる。 この値を n=acb1/bに代入して、cb=0~0.5の範囲で nの値を計算する。

  • 35

    BET式のパラメータ決定法 BET式は次式で与えられる。

    )1)(1( KCCCKCnn

    +−−=

    (17)

    以下のように BET式の変形を行う。

    )1()1(

    KCCKCnCn+−

    =−∞

    (18)

    (18)式の逆数をとると、

    KCnCK

    KCnKCC

    Cn ∞∞−+

    =+−

    =−

    )1(1)1()1(

    1 (19)

    (19)式の両辺に Cをかえると

    KCnCKC

    CnC

    −+=

    −))1(1(

    )1( (20)

    (20)式を変形すると次式が得られる。

    CKn

    KKnCn

    C∞∞

    −+=

    −11

    )1( (21)

    C と)-(1 Cn

    Cのプロットは、傾き

    KnK∞

    −1、切片

    Kn∞1の直線関係を与えることを示している。

    これをグラフにプロットし、最小二乗法に傾きおよび切片を求める。

  • 36

    3.12 活性炭の比表面積の決定 酢酸分子の構造を以下に示す。

    Hc-Cb-Ca

    Hd

    Hb Oa

    Ob-Ha

    121.9°

    Ca Oa

    Ob

    図 3.6 酢酸の構造

    酢酸の 1分子の吸着面積s’ [m2]を図 3-6に示す。このとき、文献より

    Caと Oaの結合距離 1.321Å Caと Obの結合距離 1.206Å Oa、Ca、Obの角度 121.9° Cの原子半径 0.77Å Oの原子半径 0.62Å

    したがって、吸着面積 S‘は次のようになる。

    ( ) ( ) 2088 1037.61099.31036.321' −−− ×=××××=s m2

    ここで、活性炭の比表面積 S[m2/g]は次式で示される。 '1002.6 23 snS ×××= ∞

    S:活性炭の比表面積 [m2/g] n∞:飽和吸着量 [mol/g] s’:酢酸 1分子の吸着面積 [m2] 6.02×1023:アボガドロ数 [個/mol] したがって活性炭の比表面積 S[m2/g]は

    00335.0=∞n mol/g 201037.6' −×=s m2 より

    5.1281037.61002.600335.0 2023 =××××= −S m2/g

  • 37

    4. 粘度・密度測定 4.1 はじめに 大量生産を目的とした工業的化学プロセスは、ほとんど流れ系(流通系)である。それらの系において、操作対象となる各物質の粘度は、装置を設計・操作する場合、きわめて重要

    な物性値である。 本実験では低分子溶液および高分子溶液の粘度測定を通じて、液体の粘度について考察する。さらに、演習問題を通じて気体、液体、高分子溶液などの化学プロセスで対象となる物

    質の輸送物性(粘度、拡散係数)の重要性を認識されたい。 4.2 低分子溶液の粘度 [目的] 種々の濃度のエタノール水溶液の粘度を測定し、その溶液の粘度について考察する。 [概要] 25℃におけるエチルアルコール濃度 0,20,40,50,60,80,100 wt% の水溶液について流下時間を測定し、この結果より、相対粘度、絶対粘度、運動粘度を求めグラフにする。ま

    た、水の密度、水-エチルアルコール溶液の密度については、ピクノメーターを用いて決

    定する。報告書には、相対粘度、絶対粘度、運動粘度 vsエチルアルコール濃度の関係をそれぞれグラフにして提出する。

    [計算方法] 相対粘度、絶対粘度、運動粘度の定義は次のようになる。

    相対粘度 ww

    w tdtd・

    ・ηη =/ (4.1)

    η :混合溶液の粘度 [g/cm・s] ηw:水の粘度(8.007×10-3 g/cm・s) [g/cm・s](25℃における粘度) d :エチルアルコール水溶液の密度 [g/cm3] dw:水の密度(0.99704g/cm3) [g/cm3](25℃における密度) t :エチルアルコール水溶液の流下時間 [s] tw:水の流下時間 [s] 下付添字 W: 水

    絶対粘度 www td

    tdη

    ・η= (4.2)

    運動粘度 ν=η/d [cm2/s] (4.3)

  • 38

    [実験方法] 1) 粘度計を洗浄し、粘度計内 に二連球で空気を送り込み、

    乾燥させる。乾燥しにくい 場合は、アセトンを滴下し た後、再度、二連球で空気 を送り込み、乾燥させる。 2)ピペットで一定体積(10mℓ) の純水を取り、広い口 f から 粘度計に水を入れる。 3)粘度計を恒温槽(25℃)に つけ、約 10 分静置する。 4)安全ピペッターを口 a に 取り付け、液面が b 上部に 到達するまで、吸い上げる。 5)安全ピペッターを外すと、 液面が降下しだす。液面が bd 間を通過する時間をスト ップウォッチで測定する。

    6)純水での測定を 3 回繰り返す。 7)純水を粘度計から取り除く。その後、粘度計内に二連球を用いて空気を送り込み、乾燥させる。 8)粘度計乾燥後、複数の濃度に調整済みのエチルアルコール水溶液(10mℓ)を粘度計にいれ、4)~6)の作業を繰り返し行う(3 回)。なお、濃度の異なるエチルアルコール水溶液を粘度計内に導入する場合には、7)と同様に二連球を用いて粘度計内に空気を送り込み、乾燥させる。

    表 4-1 エチルアルコール水溶液の濃度、密度、相対粘度の関係 エチルアルコール濃度

    [wt.%] 密度 d[g/cm3] 相対粘度

    η /ηw[-] 0

    20 40 50 60 80

    100

    安全ピペッター接続

    図 4-1 粘度計

    液面の bd間の通過時

    間を測定

  • 39

    4.3 密度測定 [目的] 本実験では、水とエタノールの種々の組成の混合液体について密度を測定し、分子間相互

    作用について考察する。 [実験方法] 1)ピクノメーターの容積測定

    図 4-2のピクノメーターの空の重量 w'g を秤量する

    ピクノメーターの蓋を取り外し、

    ピクノメーターを水で満たす。

    設定温度を 25℃として恒温槽 の電源を入れ、恒温槽内の温 度が一定になるまで待つ。な お、水温は恒温槽中の水銀温 度計から読む。

    恒温槽中に水を満たしたピク

    ノメーターを入れる。

    約 10分間静置する。

    ピクノメーターに蓋をする。このとき、ピクノメーターの容量

    よりも余分の水は、蓋の上部より排出される。

    ピクノメーターの外側を乾いた布で拭い秤量する。(その重量を

    wwg とする)

    恒温槽の温度(25℃)における水の密度 dwg/cm3(=0.99704g/cm3)より次式を用いてピクノメーターの容積を求める。

    w

    w

    dww

    V'−

    = (4.4)

    図 4-2 ピクノメーター

  • 40

    表 4-2 エチルアルコール水溶液の濃度と密度の測定結果(25℃) エチルアルコ

    ール濃度[wt.%]

    w’[g] ww[g] V[cm3] w[g]

    d[g/cm3]

    0 20 40 50 60 80

    100

    0.99704

    エチルアルコール濃度[wt.%] 空のピクノメーターの重量 w’[g] 水を入れたときのピクノメーターの重量 ww[g] ピクノメーターの体積 V[cm3] エタノール水溶液の入れたときのピクノメータの重さ w[g] エタノール水溶液の密度 d[g/cm3]

    容積 Vを求めたピクノメーターに混合溶液(調整済み)を入れてその重量 wgを秤量し、次式で混合溶液の密度を求める。

    Vwwd '−= (4.5)

    エタノール濃度と密度 d の関係をグラフにプロットする。

  • 41

    4.4 高分子溶液の粘度 [目的] 高分子溶液の粘度測定から分子量の粘度に与える影響について考察する。 [概要 ] オストワルド粘度計を用い、種々の濃度のポリビニルアルコール(PVA; ((-CH2CHOH-)n))水溶液の粘度を測定し、粘度データよりポリビニルアルコールの分子量を求める。 まず 0.5g/100cc の濃度のポリビニルアルコール水溶液を調製する。次に、これを原液

    とし、2/3, 1/2, 1/3, 1/5の濃度の溶液を調製する。これらの溶液について、オストワルド粘度計を用いてそれぞれ流下時間を測定し、相対粘度、絶対粘度、運動粘度を求め、実験デ

    ータより極限粘度[η]を求める。また、報告書には相対粘度、絶対粘度、運動粘度、C

    )/ln( wηη 、

    Cww-

    η

    ηη vsポリビニルアルコール濃度の関係をそれぞれグラフにして提出する。

    [計算方法] エチルアルコール水溶液の粘度測定と同様の手法を用いて、粘度の計算を行う。なお、ポリビニルアルコール水溶液の密度は、ピクノメーターを用いて測定すること。 表 4-3 ポリビニルアルコール水溶液の濃度、密度、相対粘度の関係 ポリビニルアルコール

    濃度 [g/100cc] 密度 d[g/cm3] 相対粘度

    η /ηw[-] 0.5×(1/5) 0.5×(1/3) 0.5×(1/2) 0.5×(2/3)

    0.5

  • 42

    [分子量の計算方法] 実験を行った結果、以下のような粘度データを得られるとする。実験データより極限粘度

    を求め、ポリビニルアルコール(PVA)の分子量Mを決定せよ。

    PVA 水溶液濃度

    C[g/100cc]

    相対粘度

    η/ηw[-]

    絶対粘度

    η[g/cm・s]Cw

    w-η

    ηη

    C)/ln( wηη

    0.5×(1/5) 1.031 0.008255 0.31 0.305

    0.5×(1/3) 0.39 0.378

    0.5×(1/2) 0.3 0.289

    0.5×(2/3) 0.375 0.353

    0.5 0.364 0.334

    ηw=8.007×10-3 g/cm・s 線状高分子の極限粘度[η]と分子量Mの関係は次式で与えられる。 [η]=KMα (4.6) ただし、ポリビニルアルコールの場合、K=6.66×10-4、α=0.64である。なお、極限粘度[η]は次式で定義される。

    CC ww

    0

    -][ limη

    ηηη

    = (4.7)

    または、

    CC)/ln(

    ][ w0

    limηη

    η→

    = (4.8)

    よって、濃度 CとCw

    w-η

    ηη、または濃度 Cと

    C)/ln( wηη の関係をグラフ化し、最小二乗法によ

    り切片の値を求めると、極限粘度[η]が決定される。

    Cww-

    η

    ηηと C の関係より、最小二乗法を用いて切片の値を決定すると(図 4.3 参照)、切片=

    0.3242、傾き=0.0874となる。よって、極限粘度は、以下のようになる。[η]=0.3242同様

    に、C

    )/ln( wηη とcの関係より、最小二乗法を用いて切片の値を決定する

    (図 4.4参照)と、切片=0.3249、傾き=0.0256となり、極限粘度は以下のようになる。[η]=0.3249

    Cww-

    η

    ηηと Cの関係より決定した[η]=0.3242を用いて、ポリビニルアルコール(PVA)の

    分子量 Mを計算する。(4.6)式より、以下のように PVAの分子量 Mを計算することができる。M=([η]/K)1/α =(0.3242/(6.66×10-4))(1/0.64)=15811

  • 43

    y = 0.0874x + 0.3242

    0

    0.2

    0.4

    0.6

    0.8

    1

    0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7

    c[g/100cc]

    (η-ηw)/(ηwc)

    cww

    η

    ηη−

    極限粘度[η]

    図 4.3 298Kにおける PVA濃度 CとCw

    w-η

    ηηの関係

    y = 0.0256x + 0.3249

    0

    0.2

    0.4

    0.6

    0.8

    1

    0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7

    c[g/100cc]

    (ln(η/η

    w))/c

    c)/ln( wηη

    極限粘度[η]

    図 4.4 298Kにおける PVA濃度 CとC

    )/ln( wηη の関係

  • 44

    5. 植物からの DNAの抽出 5.1 はじめに 分子レベルでの遺伝子の構造解明や遺伝子の発現に関する研究は近年急速に発展している。

    これら生命現象のしくみを分子レベルで解明しようという分子生物学の分野では、さまざま

    な遺伝子の解析や応用方法が開発され、我々の生活に身近なものになりつつある。 本実験では、初歩的な分子生物学に関する実験として、植物(タマネギ)からの DNA の

    抽出を行い、抽出した遺伝子の電気泳動法による分離実験を試みる。 5.2 試薬および器具 試薬 ・タマネギ(細胞中から遺伝子の抽出を行う) ・台所用洗剤(洗剤中に含まれる界面活性剤には、植物の細胞膜およびタンパク質を破壊す

    る働きがある) ・塩化ナトリウム(DNAは塩化ナトリウム水溶液に溶解し易い性質がある) ・エタノール(予め冷やしておく、DNAはエタノールにほとんど溶解しない) ・制限酵素(DNAを一定の部位で切断する働きを働きがある) ・TE緩衝液(pH緩衝剤が入った溶液) 器具 ビーカー、ミキサー、フィルター、メスシリンダー、駒込ピペット、ガラス棒 マイクロピペット、電気泳動装置、ポラロイドカメラ 5.3 実験方法 1)タマネギは 1回の実験で、半個のうち内側の半分程度を使用する。タマネギ、水 30ml、台所用洗剤数滴をミキサー用ガラス容器に入れ、40~60秒程度(固体状のタマネギがなくなる頃が目安)、ミキサーにて混合する。

    2) 1)で作成した混合溶液をビーカーに移し、約5g程度の塩化ナトリウムを加え、ガラス棒で静かに攪拌する。粘性の大きな溶液が得られる。

    3) 2)で作成した溶液を、フィルターを用いて濾過し、濾液を回収する。 4) 濾液の約2倍程度の量の冷エタノールをビーカーの壁伝いに静かに注ぐ。 5) ビーカーを揺するとエタノール層に白くふわふわしたものが浮いてくる。これが DNAである。ガラス棒で DNAを巻き取り、シャーレ上にて DNAを回収する。顕微鏡を用いて、回収した DNAの状態を観察する。

    6)マイクロチューブ(容量 1.5ml)中に用意した 70%エタノールを 8 分目程度まで注ぐ。5)にて回収された DNAをマイクロピペットを用いて、70%エタノールの入ったマイクロチューブ中に移す。軽く混ぜることにより、DNA から不要な物質を洗い流す。遠心分離して、DNA をマイクロチューブの底に沈めた後、溶液を捨てて DNA を乾かす。乾いたら、TE緩衝溶液を 1ml加えて放置する。DNAの溶液が得られる。

    5.4 電気泳動装置による DNAの観察

    ・本実験は職員と一緒に行うこと ・実験を行う人は、ビニール手袋をすること 1) 抽出した DNAを電気泳動装置で観察する。マイクロピペットを用いて、以下のように調製した DNAの混合溶液を調製する(いずれの溶液も調製済)。

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    2) マイクロピペットを用いて、アガロースゲルの試料を流し込む穴(ウェル)に、1)にて調製した溶液 Aおよび Bを注ぎ込む。注入量は、20μℓとする。電気泳動装置のスイッチを入れて、100Vの電流を流し、アガロースゲル内にて DNAを電気泳動させる。

    3) 試料に予め加えられておいた青色の色素が 7 分目程度まで、進んだら電気泳動を中止する(約 30分程度)。

    4) (ここでの作業は職員が行う) アガロースゲルを取り出し、染色液に浸す。染色後、ゲルを取り出し、ポラロイドカメラで

    DNAの泳動状態を撮影する。

    + -

    アガロースゲル

    試料を流し込む穴(ウェル)

    図 5.1 電気泳動装置

    6 5 4 3 2 1

    図 5.2 DNAの電気泳動写真の一例

    5.5 電気泳動装置の原理 電気泳動装置の原理図を以下に示す。アガロースゲル(寒天から不純物を除いたもの)中

    に DNAをセットし、電流を流すと、DNAは電流の向きとは逆に、マイナスからプラス方向

    調製済 溶液 A(制限酵素なし) 水 11μℓ 10×H Buffer 2µℓ 植物 DNA 5μℓ

    調製済 溶液 B(制限酵素 Eco RI入り) 水 11μℓ 10×H Buffer 2µℓ 植物 DNA 5μℓ 制限酵素 2μℓ

    1 DNA(タマネギ)+制限酵素 2 DNA(タマネギ)+制限酵素 3 DNA(タマネギ) 4 λ-DNA(大腸菌)+制限酵素 5 λ-DNA(大腸菌) 6 サイズマーカー

    500bp

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    に動く(このことを電気泳動という)。これは、DNA のリン酸部分が負に帯電しているためであり。また、DNAは、その長さにより泳動距離が異なる(短い遺伝子ほど、長く泳動する)。電気泳動では、この性質を利用して、DNAを大きさごとに分離することができる

    塩基対数によってDNAを分離

    EtBr (蛍光試薬)DNAの二本鎖内に入り込む

    発光

    UVλ=302nm

    励起

    分離後のアガロースゲルをエチジウムブロマイド(EtBr)溶液に浸す

    DNAを含んだ溶液

    アガロースゲル

    リン酸部分が負に帯電

    塩基 (A,T,G,C)-

    カメラで撮影

    電圧

    DNA構成成分(dNTPs)

    バンドが明る

    DNA量が

    バンド(DNAの存在)

    図 5.3 電気泳動の原理

    5.6 制限酵素とは DNA は、4 種類のヌクレオチド(G・A・T・C)が不規則につながってできている。制限酵素は、DNAの特定のヌクレオチドが並んでいる部分を切断する。制限酵素には、様々な種類があり、Eco RI(エコ・アール・ワン)と呼ばれる酵素は、「GAATTC」といった並びの部分だけを切断することができる。

    GAATTC

    CTTAAG

    制限酵素

    Eco RI

    AAGCTT

    TTCGAA

    制限酵素

    Hin dIII

    図 5.4 制限酵素による DNAの切断

    レポートについて 1. 実験方法および実験結果の整理方法については、指針書を参考にすること。 2. 実験結果については、電気泳動の結果について考察すること(制限酵素の影響などにつ

    いて、まとめてください。)。

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    6. 染色実験

    6.1 はじめに

    現在、私達の身の周りでは、様々な染料が使われている。例えば、T シャツやジーンズな

    どの衣服は、橙、黄、赤、青など様々な色に�