化学工学実験 i - 福岡大学mishima/experiment05.pdf5...
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化学工学実験 I
工業物理化学実験テキスト (三島松山 担当)
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目 次 頁
1 実験を始めるにあたって 3 2 実験実施要項 4
2 1 実験担当 4 2 2 実験日時 4 2 3 実験場所 4 2 4 実験に際し持参するもの 4 2 5 実験開始前日までの用意(予備学習) 4 2 6 実験日の出欠について 4 2 7 実験報告書の提出について 5 2 8 実験実施上の注意 5 2 9 実験報告書実験ノート 5
3 吸着 8 31 はじめに 8
32 吸着操作 8 33 実験目的 10 34 実験方法 10 35 実験結果のまとめ方 14 36 エクセルによる吸着データの整理法 16 37 実験結果の考察方法 17 38 Langmuirの等温吸着式による相関 22 39 Freundlichの等温吸着式による相関 26 310 吸着等温線とは 29 311 吸着等温式 30 312 活性炭の批評面積の計算 36
4 粘度密度測定 37
41 はじめに 37 42 低分子溶液の粘度 37 43 密度測定 39 44 高分子溶液の粘度 41
5 植物からの DNAの抽出 44 51 はじめに 44 52 試薬および器具 44 53 実験方法 44 54 電気泳動装置による DNAの観察 44 55 電気泳動装置の原理 45 56 制限酵素とは 46 6 染色 48 61 はじめに 48
2
62 試薬および使用器具 48 63 実験方法 48 7 ガスクロマトグラフ質量分析計による茶葉中の
カフェインの分析染色 50 71 はじめに 50 72 原理および装置 50 73 実験サンプルの設置と GCMS装置の操作方法 53 74 マススペクトルによる物質の構造解析 54 付表 最小二乗法 56
3
1 実験を始めるにあたって 工業物理化学実験の重要性 化学工学では蒸留抽出調湿乾燥吸着粉砕ろ過機械的分離(遠心力重力)
混合撹拌などの単位操作が中心であるがそれらの分離および混合操作はすべて物理化
学の原理に基づいて行われる物理化学は単位操作の基礎となる学問である3年後期に
行われる化学工学実験Ⅱ4年次の卒業研究および就職後の生活においても工業物理化学
実験の経験が役に立つしたがって2年前期に工業物理化学実験として物理化学に接し
馴染むことの意義は大きい またケミカルエンジニアは大量の混合物を扱い各単位操作を統合して系全体のプロ
セスを設計操作しなければならない大量の混合物を扱うためにはより正確な温度圧
力流量組成の制御が必要となるこれらに関する測定の基礎技術を拾得することは有
意義である工業物理化学実験を通じてケミカルエンジニアとしての基礎力を養われたい 講義および化学工学実験Ⅱとの関係 工業物理化学実験は3年後期の化学工学実験Ⅱと密接な関係にあるまた個々の実験
に関わる理論については既に講義されているものもあるが3年前後期に講義されるも
のもある大学での学習は高校までの受動的なものと異なり自主的なものであるこの
機会におおいに独創性を養われたい 工業物理化学実験は一年次において受講した基礎物理化学化学工学計算法およびその
他の基礎的な知識今までの実験的経験および予備学習をもとに安全かつ円滑に実験を進
めてもらいたい
4
2 実験実施要項 本指針書の実験(工業物理化学実験)は配布の実験日程にしたがって行います 21 実験担当 化学システム工学科 三島健司 松山清 22 実験日時 火曜日 4限5限 金曜日 4限5限 23 実験場所 617実験室(6号館 1階西側)の所定の実験台で実験を行います 24 実験に際し持参するもの 工業物理化学実験指針書レポート提出用のレポート用紙(A4サイズ)実験ノート(形式は自由です)グラフ用紙(A4方眼紙)筆記具(自在定規テンプレートなども含む)計算用具(関数電卓)白衣(清潔なもの)名札 実験に必要な物品以外の物(バッグ衣服など)は所定のロッカーに納め白衣を必ず着
用する実験に必要なものだけをもって実験室に入る退出の際忘れ物がないことを確認
する 注) 実験ノートは実験中に指導担当者がチェックするので指示に従うこと
また物品にはすべて氏名学籍番号を記入し紛失を避ける 25 実験開始前日までの用意(予備学習) 実験を行う前にその内容を熟知しておくことは事故の防止円滑な実験内容に対する
より深い理解などの観点からきわめて重要です 1)指針書を熟読する 2)実験開始前に既に記述できることがら(目的実験方法実験結果を記入するデータシートなど)を実験ノートおよびレポート用紙に事前に記入しておく実験終了時から提
出までの期間が短いので問題点に関する質問は早期に行う 3)持参すべき物品の確認をする 26 実験日の出欠について 出欠のチェックは時限開始直後と時限終了時(実験終了時)の 2回を行う「2回目のチェック時に不在の者」は当日を「欠席扱い」となります遅刻者は必ず指導担当者に報告する
遅刻および欠席は減点の対象となるので注意する実験時間中の「不在が著しいとき」は
当日を「欠席扱い」とする 27 実験報告書(レポート)の提出について 1)提出期限各実験報告書提出の締切日は「実験終了日より 7 日後(15 時まで)」です例えば1 テーマについて火曜金曜と実験を行った場合翌週の木曜日の午後 3 時までに提出してください金曜火曜と実験を行った場合は翌週の月曜日の午後 3時までの提出です提出期限(締切の日時)に遅れた報告書は受理しないので注意して下さい
2)再提出報告書の記載およびその内容によっては「再提出」を指示される場合がありま
す再提出の提出締切日は「返却日を含めてその日より 7日後(15時まで)」です提出
5
期限(締切の日時)に遅れた報告書は受理しない 28 実験実施上の注意 1)実験時間中は白衣着用履物は靴とする(サンダル類は不可)また白衣のボタンはか
ならずとめ袖などもしっかりとめる器具に袖などをひっかけて事故を起こすことの
ないように事前に注意する 2)試薬機器具については使用目的を指導担当者に報告のうえ受け取る返却時の報告
も確実におこなう 3)計測機器具などの使用(操作)は「取扱説明書」にしたがって行う 4)機器具類の保管は班(グループ)全員でこれにあたる破損または紛失したときは指導
担当者に口頭で報告して下さい実験終了時には各物品と実験台の整理整頓を行い指導
担当者の確認を受けて下さい 5)脱塩水製造装置(イオン交換)の使用に際しては指導担当者の指示を受ける 6)ガラス器具の洗浄法
a)ガラス器具は水道水で予洗の後クレンザーで十分に汚れを落とし再び水道水で良くすすぐただしガラス体積秤量器はこの限りにあらず下記のbの方法による洗浄の終了
はガラスの表面が一様に水膜で濡れていることにより判定するその後イオン交換水ある
いは蒸留純水で最低3回以上すすぎ加熱乾燥あるいは風乾させる乾燥後は所定の場所
に器具を返還する b)ガラス体積秤量器は水道水で予洗の後洗浄槽に一昼夜浸漬しその後水道水で十分すすぐ以後は aの場合と同様であるが乾燥に関しては風乾とし加熱乾燥は絶対に行ってはならない
7)プラスチック製器具の洗浄法 プラスチック製器具は材質が軟質であるので洗浄には液体洗剤を使用し加熱乾燥はさけ
風乾とする乾燥後は所定の場所に器具を返還する 8)実験廃液の処置法 実験廃液は有機溶剤廃液含有機溶剤水溶液廃液無機廃液含重金属廃液に分類し各々
所定の廃液タンクに保管する不明の場合には教員の指示を受けることみだりに流しに
は流さないこと 9)固体廃棄物の処置法 固体廃棄物は紙屑木材類ビニールゴム類金属類ガラス類に分類し所定の容器
に廃棄する 10)空になった試薬瓶は捨てないで教員の指示を受けること 11)電源の確保に関しては電気容量電線の容量等に関して教員の指示を受けること 12)天秤室への入室は各班(グループ)の秤量担当者のみとする(多人数の入室は秤量操
作の妨げとなるまた天秤転落事故の原因ともなる) 13)喫煙は「指定の場所」でおこなう実験室または指定場所以外での喫煙はしないこと 14)本実験では1テーマを各班とも数グループにわかれて実験をおこなうのでチームワー
クが必要である実験を始める前に互に話し合って実験上の手順すなわちデータの取り方
をきめておくとよい 15)機器の取り扱いは使用説明書をよく読んでから使用する 29 実験報告書実験ノート 実験報告書(レポート)はレポート用紙(市販の A4サイズ)を用いて提出して下さい報告内容は特に指示がない場合は次の項目とします
6
1)緒言(チョゲン) 3)実験方法 4)実験結果および考察 5)結言 6)使用記号(式や変数を使用した場合に必要) 7)引用文献(参考にした文献があれば)
レポートの内容の各項目に関して以下にその記述上の注意点を説明します 1)緒言 実験の目的意義を示す何をどうしようとするのかを示すものでその実験の直接の目
的を具体的に書く 2)実験方法 実験の方法は実際に行った実験を第三者にも再現できるように書くべきです自分達が
行った操作について表や図などを交えて明確に示しておくとよいでしょう 実験方法の文章は過去形で書くことが一般的です
3)実験結果および考察 結果(数値図表)と考察はレポートの中で最も重要な部分です指針書を参考にして
各自が工夫して記述して下さい 結果では得られた事実に忠実に書かねばなりません
また関連のあるものをまとめて図や表に示すとわかりやすいですただし結果の図や
表についての説明の文章も本文に必要です 結果おより考察の文章は現在形で書くことが一般的です また単位や有効数字に誤りがあると誤解を招く恐れがあります図表単位および有
効数字に関しては指針書を再読すること考察では得られた実権データを理論的な計算
などと比較して現象を検討する習慣も身につけましょう独自のものを書くようにこころが
けましょう 4)結言 結果および考察でえられた事柄をまとめて示します 主な記述上の注意事項 1 表については標題の位置表の上に書く注の位置表の下に書く 2 図については標題の位置図の下に書く注の位置図の下に書く 図を描く場合にはA4の各種方眼紙1枚に1つの図を描き本文を参照しなくても
図の内容がわかるように必要な条件などを全て記入することが望ましい図および表
は最後にまとめて示すのではなく関係の深い文の直後の頁に挿入する 3 その他記述上の注意は指針書や配布された資料を参考にされたいまたレポー
トにつける通しページ番号なども忘れぬよう 4 次元単位の付記に留意する「SI」はこれから必然的に使用される単位系であ
りその使用については留意してもらいたい 5 単位の記入においては変数の後には[ ]を付け数の後には[ ]を付けない例え
ばCp [Jmol-1K-1] Cp = 198 Jmol-1K-1 6 引用文献使用参考の記入については「化学工学論文集」「化学工学会誌」を参照
されたい 7 「化学工学論文集」「化学工学会誌」などは工学部の各図書館にあるので有効に活
用してもらいたい 8 レポートに記載する図表などは「化学工学論文集」「化学工学会誌」の表現に準
じた記載方法を用いること 9 図についてはExcelなどの表計算ソフトで作成したものでもよい
7
実験ノートは市販の大学ノートを使用して下さい各実験内容についてページを変
えて後で見て分かりやすいように書いて下さい上から5行程度に実験条件その他
必要事項日付などを記入する右端5cm程度の幅を備考欄とし実験中に気付いたこ
とその他必要事項を記入する使用した溶液の濃度ファクターなどが記録されていない場合がよくありますレポート作成時に困りますので忘れずに各自が実験ノートに記入
しましょう レポート表紙 レポートの表紙(市販の A4 のレポート用紙でよい)には以下のような表紙をつけること各ページにページナンバーを記入すること提出時には上端をホッチキスで閉じるこ
と記入はワープロ鉛筆でもよい
工業物理化学実験レポート(三島担当分)
実験項目 実 験 名 提出者 福岡大学工学部化学システム工学科 A組 5班 TK0315001 七隈太郎 共同実験者 福大次郎 干隈三郎 城南花子 早良五郎 実験日 平成 年 月 日 ~ 月 日 実験場所 化学工学共同実験室 B(6号館 1階 617室) 条件 気温 気圧 湿度 天候 提出日 平成 年 月 日
8
3 吸着 31 はじめに 活性炭 多孔質(多くの小さい穴がある)の吸着剤 酢酸 活性炭に吸着されるモデル分子
吸着実験データの整理によく使用する記号 n 溶質の吸着量 C 溶液中の溶質の濃度 単位は [ ] [ ] 考えてみよう 1) 右図のような低い濃度の酢酸水溶液の入ったビーカーに活性炭 をを加えた場合濃度はどうなるでしょうか
2)吸着された酢酸の物質量(n[mol])を測定するにはどのような 実験をすればよいでしょうか 図 1 活性炭
32 吸着操作 工場排液中の微量は有機物などを活性炭などの吸着剤で除去する工業操作を吸着操作と言
います蒸留抽出乾燥撹拌などの単位操作と同様に化学工業プロセスの重要な分離技
術です吸着操作は他の分離操作に比べてきわめて低濃度の範囲まで物質分離ができる特
徴がありますそのため近年問題となっている大気および水質の汚染汚濁に対する有力
な対策技術として注目されています 本実験では活性炭に対する酢酸の吸着挙動を調べることにより活性炭の吸着特性(吸
着平衡定数)を知り吸着操作の理論的な取り扱いについて学習しましょう 吸着量を求めてみましょうこの例では濃度換算が容易になるように溶液濃度をℓ でなく m3 単位とした) 低濃度のフェノールを含む排水の活性炭吸着実験を行って図 1のような吸着等温線(一
定温度で測定した溶液濃度と吸着量の関係)を得たいまフェノール濃度が 40mol m3の
排水 40m3に 60kgの新しい活性炭を投入して平衡に達したとき水中のフェノール濃度(mol m3)および 1gの活性炭のフェノール吸着量(molg)を求めよ
活性炭 1gに吸着するフェノールの物質量をn[molg]活性炭の量を W[g]とすると
フェノール排水 V[m3] 吸着前のフェノール濃度 C0[mol m3] フェノール分子
+
活性炭に吸着した溶質(フェノール)の量 nW (1)
溶液から取り除かれた溶質の量 (C0-C)V (2)
物質収支式より
nW=(C0-C)V (3) よって
VW
CCn
minus= 0 = )( 0CC
WV
minusminus (4)
9
図3 吸着等温度線と操作線
この操作からわかるように吸着データ(この実験で求める)が存在すれば
吸着等温線と操作線の交点から吸着処理しようとする溶液の体積 V と初濃度 C0
に対して使用する活性炭の質量 W により活性炭に吸着する溶質の量 n および吸着後の溶液の溶質濃度 C が計算で予測できますこの吸着データから吸着装置を設計することができます実際に吸着装置(吸着塔)の設計の様子を次ペー
ジの例題1に示しておきます興味のある人は5 段に積み重ねた吸着層を 04 mol ℓの濃度の廃液が通過すると濃度が 002 mol ℓ 以下になることを確認し吸着塔の設計方法を考えてみて下さい なお先ほど求めた式 (4)は皆さんが行う吸着実験データ(吸着等温線を作るもととなる吸着後の溶質濃度 C と各濃度に対する吸着量 n の関係)を求める場合にも使用します 問題1 質量 W=1gの活性炭を用いて体積 V=100cm3の酢酸溶液の吸着実験を行った
ところ活性炭と接触する前の酢酸溶液の初濃度はC0=0512moldm3であった
(dm3デッシメータ 3 乗= ℓリットル)吸着後の溶液を活性炭と分離してその酢酸溶液の濃度を 01N(01 規定の)水酸化ナトリウム水溶液で滴定して求めたところC=0478moldm3 であった1gの活性炭に吸着された酢酸の物質量n [mol]を式 (4)より求めよ
活性炭 1kg当たりに吸着された
フェノールの量 n[molg]
吸着操作後
の溶液のフ
ェノール濃
度 C
吸着等温線の一例 Langmuir式
KCKCnn
+=
infin
1
操作線
)( 0CCWVn minusminus=
傾き-23
初濃度 C0
[molm3]
吸着後の濃度 Cと吸着量 n
初濃度C0と傾き-VWを用いて操作線を引き
吸着等温線との交点を
求める
ここで(3)式の傾きWV
minus で図 1 における横軸
を通過する直線式(操作線)であるすなわち
)(=- 4032
)40(6040)()( 0
minus
minusminus=minusminus=
C
CCCWVgmoln
10
解答(計算式) )( 0CCWVn minusminus=
minus= ( ) (答) [mol]
例題 1 吸着塔の設計 濃度 C0[molm3]の不純物を含む工業排水(流量 V[m3hr])から不純物を除去するために下図
に示すような各 i段に活性炭を wi[g]含む5段の吸着塔を設計しましょう 各 i 段の出口と入口でのそれぞれの物質濃度 CiCi-1[molm3]とその段での活性炭単位質
量当たりの吸着量 ni[molg]との間に物質収支がなりたち他の部分への吸着は無視できるとするまた溶液中の平衡濃度Ci[molm3]と吸着量ni[molg]の関係はラングミアー(Langmuir)の等温吸着式で与えられるものとするラングミアーの等温吸着式における吸着平衡定数 K
と飽和吸着量 infinn としてはK=8611 infinn =0003262の値を用いる誤差を判定する定数 EPS
としてはEPS=000001を用いよ 図4 吸着塔の段数計算 図5 吸着塔 33 実験目的 一定の温度において活性炭による希酢酸の等温平衡吸着量 nを一定の温度において測定
しそれら測定値の Freundlich 式および Langmuir 式への適合性を比較検討するまたLangmuir式により活性炭の比表面積を求める 34 実験方法 レポートでの実験方法の記述では次のように説明文を必ず付けて下さい また行った方法については過去形「~した」のように記述して下さい 例) 活性炭による酢酸水溶液からの酢酸の吸着実験に次の器具および試薬を使用した [器具] 1000mlメスフラスコ(1)500mlメスシリンダ(1)500ml試薬瓶(5)共栓三
実験レポートを書く場合この「実験目的」を利
用して「緒言」を作成して下さい
実験方法は過去形にて記述
11
角フラスコ(5)2mlホ-ルピペット(2)5mlホ-ルピペット(2)10mlホ-ルピペット(1)100ml ホ-ルピペット(1)50ml ビュレット(1)電子天秤直示天秤(注( )内の数値は個数を表す) [試薬] N10N100-水酸化ナトリウム(NaOH)N10-塩酸(HCl)フェノ-ルフタレイン酢酸活性炭 1)2)および 7)については予め調整済み8)は2日目に実験する 1)酢酸 28mℓ をメスシリンダにて採集しこれを 1000mℓ メスフラスコに入れて蒸留水を加えて 1000mℓとしN2-酢酸を調整した(調整済み)
2)N2-酢酸より順次溶液 500mℓをメスシリンダに取り1000mℓメスフラスコを用いて
N4N8N16N32酢酸溶液を調整し500mℓ試薬瓶保持した 3)共栓三角フラスコ(100mℓ)の空重量を直示天秤にて正確に測定したこれに電子天秤にて測定した活性炭試料約 1gを入れて再び直示天秤にてその重量を正確に測り前後の差から投入した活性炭量を知る
4)活性炭を入れた各々の三角フラスコに各濃度の酢酸溶液 100mℓを正確にホ-ルピペットを用いて入れた(このとき気泡が混入しないように注意した)
5)上記に準備した三角フラスコに栓をしてこれらを所定の温度に設定した恒温槽に浸し
た浸した三角フラスコは約 20分間隔で気泡が混入しないように注意して振り混ぜるこの操作を約 2時間行った
6)次に滴定に用いて約 N10-N100-水酸化ナトリウム溶液 1000mℓを調整し濃度既知の塩酸溶液を用いてその正確な濃度を決定しておく(調整済み)
7)調整された酢酸溶液の各々を6)において標定した N10-水酸化ナトリウム水溶液にフェノ-ルフタレインを指示薬として滴定し各酢酸溶液の濃度を求めた(標定に要する
酢酸量は N2-と N4-の場合は 2mℓN8-と N16-の場合は 5mℓN32では 5mℓをホ-ルピペットで採集するただしN32についての滴定はN100水酸化ナトリウムで滴定した(各濃度について 3回ずつ滴定する)
注)ビュレットは各班に 2 本ある濃度の高い N2 酢酸から測定するので両方のビュレットにはN10-水酸化ナトリウム水溶液を入れて開始する
最重要注意事項
滴定を行う場合安全確保のため必ず安全メガネを着用すること 8)次に各試料溶液を一つずつ手早くろ過しろ過液を N10-水酸化ナトリウムで滴定して平衡濃度を決定した(標定に要する酢酸量は N2-と N4-の場合は 2mℓN8-とN16-の場合は 5mℓN32-では 5mℓをホ-ルピペットで採集したただしN32 ーの場合は N100 ー水酸化ナトリウムで滴定した)
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1) 酢酸溶液の濃度の測定(1日目レポートにこの図は不要) 酢酸 28mℓをメスシリンダにて採集しこれを 1000mℓメスフラスコに入れて蒸留水を加えて 1000mℓとしN2-酢酸を調整する
N2-酢酸より順次溶液500mℓをメスシリンダに取り1000mℓメスフラスコを用いて N4-N8-N16-N32-酢酸溶液を調整し500mℓ試薬瓶に保持する
滴定用のビュレットを N10-N100-水酸化 ナトリウム溶液で共洗いする(3回)
ビーカーに酢酸溶液を少量入れて共洗いを行う (3回)試薬瓶からビーカーに酢酸溶液を滴定に 必要な量だけ取り出す
ホールピペットをビーカーの酢酸溶液を 使用して共洗いを行う(3回)
滴定用の三角フラスコに酢酸溶液を分取する
滴定(滴定は同じ濃度の酢酸溶液を 3回 以上滴定して平均する)
酢酸溶液の濃度計算
滴定による酢酸濃度の決定
1000
1000vfNvx timestimes=times (33)
x酢酸の仕込み液濃度 [molℓ] v酢酸の仕込み液の分取量 [mℓ] NNaOHの規定度 [N] fNaOHのファクター [-] vrsquoNaOHの滴定量 [mℓ] 注)酢酸は 1価の酸なので 1molℓ=1N(1規定)
13
式(33)の使用例 酢酸の仕込み液の分取量 v =2 mℓ NaOHの規定度 N = 01 N NaOHのファクター f = 0998 NaOHの滴定量 vrsquo = 985 mℓ である場合 式(33)を利用して酢酸の仕込み液濃度 x[molℓ]を求める
1000
1000vfNvx timestimes=times
vvfNx
timestimes=
49202859998010 =timestimes= molℓ (この xが濃度 C または C0 です)
2)酢酸溶液と活性炭の接触のフローチャート(1日目) 共栓三角フラスコ(100mℓ)の空重量を 直示天秤にて正確に測定する
電子天秤にて活性炭試料約 1g測る
共栓三角フラスコ(100mℓ)に 活性炭試料約 1gを入れる
活性炭試料約 1gを入れた 共栓三角フラスコ(100mℓ) を直示天秤にてその重量を測る
共栓三角フラスコ(100mℓ)の前後の 差から投入した活性炭量を計算する
活性炭を入れた各々の三角フラスコに 各濃度の酢酸溶液 100mℓを正確にホ-ルピペットを用いて入れる(このとき 気泡が混入しないように注意する)
三角フラスコに栓をしてこれらを所定の温度に 設定した恒温槽に浸す浸した三角フラスコは 約 20分間隔で気泡が混入しないように注意して 振り混ぜるこの操作を約 2時間行う
14
3)吸着量の測定(2日目) 恒温槽の温度を測る
恒温槽から三角フラスコを一つずつ取り出す
各試料溶液を一つずつ手早くろ過する
活性炭
ろ液を滴定して平衡濃度を決定する
回収
吸着量の計算
Langmuirの吸着等温式Freundlich式のパラメータの決定
グラフの作成
吸着量の計算10001000 times
minus=
wCC
n (34)
n吸着量 [molg] C0 酢酸水溶液中の酢酸の濃度 [molℓ] C ろ液中の酢酸の濃度 [molℓ] w 活性炭の量 [g]
35 実験結果のまとめ方 実験結果は実験レポートを書く場合に考察と並んで重要な部分ですので主な注意事
項をここで説明しておきます グラフの作成n vs C nC vs C ln n vs ln C の 3つのグラフの作成 配布された Excel ファイルを利用し下図のような図を作成してみましょう
15
レポートの間違いやすい場所 ①表や図を示す場合次の例のように文章でもその旨を示す [実験結果] 共栓付三角フラスコに活性炭約 1g入れた試料の重量 w[g]を Table1に示す
Table1 調整酢酸濃度を入れる活性炭試料の重量 w [g]
酢酸規定度[N]
活性炭試料の質量w [g]
12 10300
14 10001
18 10126
116 10011
132 10109 酢酸(1)-水(2)-活性炭(3)の 12における吸着平衡の結果を Table 6および Fig1に示すただし活性炭 1gに吸着された酢酸のモル数 n[molg]は次式より求めた
( )10001001
0 timestimesminus=w
CCn b
C0仕込み液中の酢酸濃度 [molℓ] Cbバルク相中の酢酸濃度 [molℓ] w活性炭試料の質量 [g] n吸着量 [molg]
例えばCb=04621C0=04894w=10300の時は次のように計算できる
( ) 026501000100
0300114621048940 =timestimesminus=n
Table6 酢酸(1)-水(2)-活性炭(3)の 12における吸着平衡
吸着された溶質のモル数n[molg]
バルク相中の濃度Cb[moll]
00205 04621
00175 0241
00139 01139
00105 00519
00081 00243 ②得られた図や表の解釈(読者にそれらから読み取ってもらいたい事柄)の説明文を次の
例のように文章で記述する数字や図だけ示して読者に「理解しろ」というようなレポー
トではよくありません Table 6および Fig1よりバルク相中の酢酸濃度 Cbの増加にともない吸着量 nも増加することがわかったまた吸着量 n の値は酢酸濃度 Cbの増加にともない n=に漸近することがわかる
グラフ(Fig)は次ペ
ージに掲載すること
グラフや表の後にはそれらの結果より得られた知見を文章でも
記入すること
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36 エクセルによる吸着データの整理法 注コンピュータの画面はWindowsXP上での操作になっています他の OS(Windows98 2000
NT)搭載のパソコンでも同様の作業が可能です) 先ほど問1で説明したように溶液濃度の濃度変化から吸着量 nを求めました実験では吸着後の水溶液中の酢酸の濃度 Cと吸着量 nの関係を各濃度の溶液(5種類)について測定しその値を計算します このようなデータの整理には表計算ソフトであるマイクロソフト社の Excelが便利です
Excel の起動方法はそのソフトがインストール(設定)されているコンピュータにより若干方法が異なることがありますがほとんど同じですここでは福岡大学の総合情報処理
センターのコンピュータの設定に従って説明します 表計算をしてみましょう セルとは セルというのは最小単位の四角のことです例えば「(Aの1)またはA1というセルセル
B1」のようにセルという言葉を使いますセル A1に1という数字を入れてみましょうセルA1をクリックしてキーボードから「1」と入力しキーボードの「Enter」キーを押します
図 5 Excelの入力例1 図 6 Excelの入力例2
次にセル B1に「5」という数字を入れましょう次にセル C1にセル A1と B1に記入された数値の和を表示させてみましょう 下の図のようにセル C1をクリックします上の「 fx 」と書かれた右のボックス(何かを書くところに)「 =A1+B1 」と書きましょうそして Enterを押すとセル C1に 6と表示されます
図 Excelを用いた関数計算 実験では吸着後の水溶液中の酢酸の濃度 Cと吸着量 nの関係を各濃度の溶液(5種類)について測定しましたこのデータに対してExcelを用いて表計算してみましょうまず先ほど記述したセル A1~A3は「Delete」(デリート)キーで値を削除しましょう
17
次にセル A5~A9に活性炭と接触する前の酢酸水溶液の初濃度 C0[moldm3]セル
B5~B9に活性炭と接触後分離した酢酸水溶液の濃度 C[moldm3]セル E5~E9に活性炭の質量 W[g]をキーボードから入力します作成した一例を次に示します
図 8 Excelによる吸着量nの計算 ここで1gの活性炭に吸着された酢酸の物質量n [mol]を式 (4)より計算できるのでセル C 5~C9に次の関数式を記述します式の内容としては
)( 0CCWVn minusminus=
となるように記述するので実際の Excelの関数としては次のように行います セル C 5をクリックし関数ボックス(fxの右)に「=(A5 ndash B5)01E5」と記述(半角または直接入力形式で)し「Enter」キーを押し確定しますこの関数はフィルハンドルを利用してセル C 6~C9にコピーしますただし実験で溶液は 100cm3使用しましたが
溶液の濃度 C が[moldm3]の単位ですので100cm3=01dm3 となり関数式の中では
V=01 dm3としています なおグラフの記述方法やフィルハンドルの使用方法については化学工学プログラミ
ングなどの補助資料を参考にして下さいまた実験の際に配布した Excel ファイル(ファイル名ad_graxls)を使用すると実験データの理論的な解析も容易にできますので試してみましょうExcelファイル(ファイル名)「ad_graxls」の使用方法は次節で説明します 36 実験結果の考察方法 (吸着実験について) 実験結果の考察方法は種々の方法がありますがここでは一例として理論と比較する
方法を示します実験結果として下図(左)のようなグラフができましたこのような実
験結果に対して理論的な考察を行ってみましょうここでは次節で説明するラングミュ
ア(Langmuir)の単分子吸着モデルで計算した理論線と実験と比較したものを下図右に示しますこの図を作る方法は次節で説明しますレポートの考察の部分はラングミュア
(Langmuir)の単分子吸着モデルの式の導出から書いて下さい 理論を作る場合幾つかの仮定をしますがその理論が多くの実験結果をうまく説明でき
ている場合その仮定がある程度妥当なものであったことがわかります指針書に書いてあ
った以外の理論についても興味があれいばためしてみましょう
セル C5をクリックし関数ボックス( fx の右)に「=(A5 ndash B5)01E5」と記述(半角または直接入力
形式で)します
18
ラングミュア(Langmuir)の単分子吸着モデルを用いて理論値を計算するには配布され
た Excelファイル(ファイル名)「ad_graxls」を使用すると便利ですその使用方法を以下に示します配布プログラムは化学工学プログラミングの講義の場合と同様に総合情報処
理センターの共通領域にあります各自コピーして使用して下さいコピーするには化
学工学プログラミングの講義の場合と同様にコピーしようとするファイルを共通領域から
自分の使用しているコンピュータのデスクトップにドラッグドロップします共通領域で
ファイルを開くとファイルの消去などで他の人が使えなくなりますので共通領域でファイ
ルをダブルクリックしないようにして下さい誤って共通領域でファイルをダブルクリック
した場合はそのファイルを閉じるボタンをクリックし閉じて下さい 各自のコンピュータに保存した Excelのファイル(ファイル名ad_graxls)をダブルクリ
ックして開きます自宅へ持ち帰る場合各自のフラッシュメモリーやフロッピーディスク
を使用しまたはメールを使用して添付ファイルで送信できます各自のフラッシュメモ
リーやフロッピーディスクに保存してあるファイルを再編集する場合はフラッシュメモリ
ーやフロッピーディスクをコンピュータの USB 端子またはフロッピーディスクドライブに挿入します次にデスクトップ上にあるマイコンピュータのアイコンをダブルクリックし
ます もしデスクトップ上に上のアイコンが無ければ画
面左下の「スタート」ボタンからマイコンピュータをク
リックしてくださいすると次のような画面が立ち上が
ります
ラングミュア(Langmuir)の単分子吸着モデルで計算した
理論線
19
その中からフラッシュメモリーの場合は「リムーバブルディスク」をフロッピーディ
スクの場合は「35インチ FD」のアイコンをダブルクリックしてくださいファイルが保存されていれば次の画面が出てきます
この画面の中の「ad_graxls」ファイルをデスクト
ップにコピーしますまず「ad_graxls」ファイルを左クリックしますこの時クリックした指はは
ずさないようにしますその状態のままデスクトッ
プまでファイルを移動させますそしてデスクト
ップ上の任意の場所でクリックした指をはずします
これでデスクトップ上に「ad_graxls」のファイルがコピーされましたのでデスクトップにコピーさ
れたファイルをダブルクリックして開きますコピ
ー操作が上手くいかなかった場合もう一度移動の操作を行ってください
必ずデスクトップにコピーしてから開く操作を行って下さいフロッピーディスクから直接
開いて操作を行った場合正しく保存されない可能性があります 「ad_graxls」のファイルを開くと次のような画面が立ち上がりますもし画面が違う場合は画面の下部にある「吸着データ」のタグ をクリックしてくださいこの画面
でデータの処理や計算を行いますでは実際の操作に入る前に予めこのファイルに名前
を付けて保存しておきますまずExcelの画面のツールバー「ファイル」から「名前を付けて保存」をクリックします下のような画面が起動します
20
ファイルの保存先を変えたい場合画面上部のボタンをクリックし保存先にデスクトッ
プを選択します次にファイル名の部分に各自ファイル名を入力しますファイル名は何
でも良いですが分かり易い名前にしておくとファイルの管理がやり易くなります日付や
数字を入れると同名のファイルをいくつも管理する場合に便利ですここでは「吸着実験デ
ータ整理 4月 01」とし「保存」ボタンをクリックします
ファイル名変更後Excelの画面上部のタイトルバーのタイトルが先ほどの名前(上の図とは異なります)になっていることを確認してください
この操作を行うことによって元のデータである「ad_graxls」を変更してしまう心配がなくなります元のデータである「ad_graxls」はファイルが破損しまたは間違った操作の結果を誤って保存してしまった場合などの補助ファイルとなりますので大切に保管しておいて
下さい今後配布するデータは先ほど説明した手順で名前を変えて保存し元のデータに
直接変更を加えないようにして下さい ここから実際の作業に入ります初期状態では模擬のデータが入力されています入力
データは予め計算しておいた酢酸濃度Cb[moll](濃度を Cと表示している場合もあります)と活性炭吸着量 n[molg]になります下の画面の丸で囲んだ部分がそれぞれの値でBCカラム(列)の 4~9行には数値が入力されています関数ではありませんこのデータを利用して実際のデータ解析を行ってみましょう下記のように行うと幾つかのグラフが
現れ実験データに対してラングミアーの単分子吸着を仮定したモデルを用いて精度よ
く計算線が描けることがわかります 今回はCbnの値を入力する必要はありませんExcelが自動的に計算を行って結果を表示するようになっていますつ
まりセル D5に「=B5C5」と関数を入力しこの関数に対してフィルハンド
ルを利用してセル D6~D9へコピーし
ファイルの保存先を変えたい場合画面
上部のボタンをクリックし保存先に
デスクトップを選択します
変更するファイル名はここをクリッ
クして書き換えます
名前を変更したらここをク
リックして保存します
21
まています 次に酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着量 n[molg]の関係および酢酸濃度 Cb[molL]と Cbn[gL]の関係をグラフ化します今回は自動的にグラフが作成されるようになっていますので複
雑な操作は必要ありません ここではデータに対してそれを精度よく表現する近似式をグラフ上に描きその関数
を数値として求める方法を Excelで練習してみましょう
グラフを表示させるには画面の下にある「Graph1」もしくは「Graph2」のタグ
をクリックします「Graph1」には酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着量n[molg]の関係のグラフが「Graph2」には酢酸濃度 Cb[molL]と Cbn[gL]の関係のグラフが表示されます「Graph2」はLangmuir の等温吸着式による相関を表したもので横軸に酢酸濃度 Cb[molL]をとり縦軸に酢酸濃度 Cb[molL]を活性炭吸着量 n[molg]で除した値 Cbn[gL]を示していますLangmuir の等温吸着式についてはこの後の章で説明してありますので各自読んで理解して下さいLangmuirの等温吸着式では式中の定数 ninfin(飽和吸着量)と K(吸着平衡定数)を実験データから最小二乗近似で決定する場合が多くありますここでは
その例を取り上げてデータに対してそれを精度よく表現する近似式をグラフ上に描き
その関数を数値として求める方法(最小二乗法最小二乗については付録に示しており
また化学工学プログラミングの講義においても説明します)を Excelで練習します 配布された Excel ファイル「ad_graxls」では実験点が表示されているだけでそれを精度よく表現する近似式の直線のグラフは「Graph2」に表示されていません今から次の手順で「Graph2」の図(グラフ)に近似式の直線のグラフを表示しますExcel の場合近似曲線(ここでは直線)を求める場合コンピュータが自動的に最小二乗法を使って近似曲線
を計算しています
「Graph1」の画面 「Graph2」の画面
Excelの sheetが表示されたらまずファイル名を変えデスク
トップに保存して下さい次
にGraph2のタックを左クリックして最小二乗法のグラフを
確認して下さい
22
38 Langmuirの等温吸着式による相関 はじめにLangmuir式の定数 ninfinと Kを決定するために「Graph2」酢酸濃度 Cb[molL]と
Cbn[gL]の関係のグラフから最小二乗法により直線の式を求めますExcelを用いてデータに対して近似直線のグラフを描き最小二乗法の直線の式を求めます
次のような「近似曲線の追加」のウィンドウが現れたら今回は線形近似(直線で近似
y=ax+b の式)を選びますので線形近似が黒色に反転していることを確認して「近似曲線の追加」のウィンドウの右下の「OK」ボタンをクリックして下さい
実験点の何れかにポインタをあわせて
右クリックする
近似曲線の追加(R)を選択して左クリックする
「線形近似」であること
を確認して「OK」ボタンをクリックします
23
「近似曲線の書式設定」
のウィンドウでオプシ
ョンから「グラブの書式
を表示する」の前を選ん
でチェック(前のチェッ
クボックスをクリック)
した後「OK」を押す
現れた直線にポインタをあわせて
左クリックすると「近似曲線の書式
設定」のウインドウが表示されます
ここをクリックします
この「オプション」のタ
グをクリックします
「y=」の関数
が現れるのでここ
をクリックする
式の文字フォントが初期値
「8」と小さいのでここ
のボタンをクリックし
フォントサイズを選ぶリス
トボックスを表示し「22」程度の大きなサイズを選択
しクリックする
24
「Graph2」酢酸濃度 Cb[molL]と Cbn[gL]の関係のグラフから最小二乗法により直線の式がこのように求められましたExcel を用いてデータに対して近似直線のグラフを描き最小二乗法の直線の式を求めるこの方法は他の実験データの解析などにも利用できますので
各自活用して下さい 表示された関数式「y=43865+2654」はノートにメモして下さいこの傾き 43865と
切片 2654からLangmuir式の定数 ninfinと Kを決定します決定方法の詳細はこの後の 36 の Langmuir式のパラメータ決定法に示しています ラングミュアの等温吸着式を変形すると次式となる
CCnKnCKn
CCKn
Cβ+α+
==
+= infininfininfin
11)1(
ただしα=1ninfinβ=1(ninfinK)とするこの式より Cnを縦軸Cを横軸とした関係のグラフは傾きα=1ninfin切片β=1(ninfinK)の直線関係を与えることを示しています そこでExcelのシートを利用してこの値からLangmuir式の定数 ninfinと Kを次のように決定しますセル C18D18に Graph2で求めた数値 2654と 43865を代入しますその後D19と C19に関数を ldquo=1D18rdquoとrdquo=D18C18ldquoを代入しますセル内の式は半角で入力してください
現れた関数の文字フォン
トを大きく(例えば 22)してその数字をメモし
吸着データシートの C18と D18に記入する
C18D18 に Graph2 で求めた値 2654 と 43865 を代入した後D19 と C19 に関数を ldquo=1D18rdquoとrdquo=D18C18ldquoを代入する
25
この Excel表示では最小二乗法を用いて決定した傾きαと切片βを用いて α=1ninfin=43865 β=1(ninfinK)=2654 得られた傾きおよび切片よりninfinおよび Kは次のように求まる
ninfin=1α=1D18=000228 molg-1 K =(1ninfin)β=αβ=D18C18=165
つまりセル D19にはninfinの値がセル C19にはKの値が表示されますこれらの値はラングミュア(Langmuir)の単分子吸着モデルで計算した理論線と実験と比較する場合に利用します実験結果に対して理論的な考察を行う例としてラングミュア(Langmuir)の単分子吸着モデルで理論線を計算し実験と比較するにはこの Excelファイルを利用して次のように計算しグラフに表示します セル F5~F30 には溶液中に残る酢酸濃度 Cb[molL]に対する活性炭に吸着された吸着量n[molg]の関係のグラフ「Graph1」の横軸の酢酸濃度 Cb[molL]の適当な値が既に入力してありますこれらのそれぞの酢酸濃度 Cb[molL]に対する吸着された酢酸の吸着量 n[molg]の理論値をラングミュア(Langmuir)式で計算しますラングミュア式は次式で与えられます
KCKCnn
+=
infin
1 (310)
ここでこの実験データを最も精度よく計算できるように決定した ninfinおよび K は上述のようにninfin=1α=1D18=000228 molg-1 K =(1ninfin)β=αβ=D18C18=165 でありこれらの値はセル D19にninfinの値がセル C19にKの値が表示されていますこの値を利用して「Graph1」に計算線を描くにはまずセル G5~G30 にセル F5~F30 のそれぞれの酢酸濃度 Cb[molL]に対する吸着された酢酸の吸着量 n[molg]の理論値をラングミュア式で計算しますそのためにはセル G5 にラングミュア式を次のように記述しますただしセル D19の ninfinの値セル C19の Kの値は常に同じセルから参照するので絶対参照($マークを付けて$D$19 $C$19と記述します)で記述します
Langmuir式をセル G5に記述するただし濃度はF5の値を相対参照しD19と C19は絶対参照($マークが必要)することを忘れないように
セルG5に記述すべき数式
=$D$19$C$19F5(1+$C$19F5)
26
G5記述後フィルハンドルを使用してG5の関数を G6~G30までコピーします Sheet1から Graph1 のタグをクリックしGraph1 に計算線が表示されたことを確認しましょうこれでラングミュア式によるデータの解析は終了です実験値と理論値を比較して現象
について考察してみて下さいラングミュア式を理論的に導く場合にある仮定をしている
のですがその仮定をしているラングミュア式が実験データを精度よく計算できていれば
その仮定が妥当なもとであったと考察できます 与えられたモデルデータでラングミュア式によるデータ解析ができれば他の理論(例え
ばフロインドリッヒFreundlich式や BET式レポートはどちらか一方でも可です) についてもExcel で計算してみましょうレポートには自分のデータについてここで行った内容と同様に計算しその結果を考察に記述して下さい 自分のデータについて同様の計算をするにはまずいままで計算を行った Excel ファ
イルを保存しますデータを自分の実験データに置き換える前に Excel ファイルをさらに別の名前で保存します与えられた Excel ファイルは初期状態では模擬のデータが入力されているので今回自分達の実験したデータを入力していきます入力するデータは予め計算
しておいた酢酸濃度 Cb[moll]と活性炭吸着量 n[molg]になります下の画面の丸で囲んだ部分にそれぞれ自分の実験データを入力していきます
今回はCbnの値を入力する必要はありませんExcelが自動的に計算を行って結果を表示するようになっています 次に酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着
量 n[molg]の関係および酢酸濃度Cb[molL]と Cbn[gL]の関係をグラフ化します今回は自動的にグラフが作成
されるようになっていますので操作は必
要ありません 39 Freundlichの等温吸着式による相関 今回の実験で得られた酢酸濃度 Cbと活性炭吸着量 nのデータを利用してFreundlichの等温吸着式の定数 abの値を求めFreundlichの等温吸着式の理論線をグラフに追加します ここでFreundlich式は次式で表されます
bbaCn1
=
このままでは定数 abの値を決定することが難しいので上式の両辺の対数をとり線形化しますすると次式となります
bCb
an ln1lnln +=
ここでln Cbと ln nの関係をグラフにプロットすれば傾き 1b切片 ln aの直線関係が得られますしたがって実験データである酢酸濃度 Cbと活性炭吸着量 nの値の対数をそれぞれ計算します配布した「ad_graxls」ファイルを開き「吸着データ」シートの任意の部分に以下のような表を作成します
27
次にln Cb[-]の列の最初のセルに以下の数式を入力します
=ln(B5) 上式中の「B5」は Cb の値の最初のセルの位置を指します各個人の位置によって変更してください
次にln n[-]の列の最初のセルに以下の数式を入力します
=ln(C5) 上式中の「C5」は nの値の最初のセルの位置を指します各個人の位置によって変更してください
ここでln Cb[-]ln n[-]の値に対しそれぞれオートフィルを行い計算させますすると以下のようなデータが完成します
計算した ln Cb[-]ln n[-]の値をグラフにプロットし最小二乗法による直線式を求めます
28
ここで以下のような直線の式が得られたとします
9135ln31690ln913531690 minus=there4minus= bCnxy
上式より切片は-5913傾きは 03169となるので以下の要領で定数 a1bを計算します ==there4minus= minus 91359135ln eaa 000270
316901=
b
a の値を Excel で計算させる場合は任意のセルに以下のような数式を入力することで求めることができます
=exp(-5913) これでFerundlich等温吸着式の定数 a1bの値が決定しましたこの値は後で使うのでノートなどにメモしておいてください 次に決定した Ferundlich 等温吸着式の定数 a1b の値を用いてFerundlich 等温吸着式のグラフを作成します先ほども示したように Ferundlich等温吸着式は次式で表されます
bbaCn1
=
従って定数 aと 1bの値はすでに決定しているので任意の Cbの値に対する nの値を数点求めればFerundlich等温吸着式で求めた理論線が得られます以下の操作で理論線を引くことができます Langmuir 等温吸着式による相関のときと同様にExcel の「吸着データ」のシート上の任意の場所に以下のような表を作成します
次に Ferundlich等温吸着式に従いnの値を計算します
bbaCn1
=
式中の定数 a1bは先ほど計算した値を用いますしたがって式は次のようになります
31690002700 bCn times=
この式を Excelのセル内に記入すれば計算ができます次の
29
ように記入します
=00027G5^03169 ここで式中の「G5」は Cbの値が 0のセルを指しています各個人の位置によって変えてください 次に式を記入したセルを Cbの値が 05のところまでオートフィルを行いますそうするとすべての Cbに対して nの値が計算されます
これで Freundlich等温吸着式のデータが完成しましたので次に「Graph1」酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着量 n[molg]の関係のグラフにこのデータを追加し理論線を引きます理論線の引き方は Langmuirによる相関のときと同様の操作を行ってください グラフの書式等を変更し整理すると以下のようなグラフが出来上がります
310 吸着等温線とは 固体の吸着剤を溶液と接触させる時一定量の吸着剤によって吸着される溶質の量は温度一定ならば溶質の濃度の関数になる一定温度での吸着量を温度に対してプロットした時に
得られる曲線を吸着等温線というこの吸着等温線を比較的よく表す経験式として次の
Freundlich式がある
n=aC1b (1) ここで n は吸着剤の質量あたりの吸着量C は吸着平衡濃度a と b は実験から決定されるパラメータであるがその物理的意味は多少希薄である これに対し理論的な意味を持つものに次のラングニュア(Langmuir)の吸着等温式がある
30
KCKCnn
+=
infin
1 (2)
ただしninfinは飽和吸着量Kは吸着平衡定数であるこの式は
1)吸着分子が固体表面で単分子以上の厚い層を作ることはない 2)吸着分子同士の間の相互作用はない
という二つの仮定にもとに導かれたものである 結果の整理および報告 Freundlich吸着等温式Langmuir吸着等温式の各々のパラメータの最適値を求めよまた活性炭の吸着特性および表面積について考察し化学工学における吸着操作の重要性につい
ても検討せよ 311 吸着等温式 (a) ヘンリー(Henry)型吸着等温式 液相の濃度あるいは気相の圧力が小さい場合吸着分子間の距離が十分に長いため吸着
分子同士の相互作用が無視でき固体表面と吸着分子のみの相互作用で吸着量を決定できる
とき次式のように表される
n=KC (3)
ここでKは比例定数である図 3-1の(a)に示すように濃度 Cと吸着量 nは比例関係があり一般に吸着量が小さい範囲で成立する気体の場合は溶液濃度 Cの代わりに気相圧力 pを用いればよい
濃度(分圧)
濃度(分圧)
濃度(分圧)
濃度(分圧)
吸着量
吸着量
吸着量
吸着量
(a)ヘンリー型 (b)ラングミュア型
(d)BET型(c)フロインドリッヒ型
0
0
0
0
図 3-1 吸着等温式
31
(b)ラングミュア(Langmuir)型吸着等温式 ラングミュアは図 3-2 に示すように固体表面に同等な吸着力を示す吸着サイトがあり
表面に 1分子層だけ吸着する(単分子層吸着)と仮定して平衡状態における吸着量と溶質濃度(気相分圧)のと関係を導いた全吸着点のうち吸着分子に覆われている吸着点の割合
をθ[-]とすると分子の脱着速度 rrsquo[mols-1]はθに比例する比例定数を a[mols-1]とすると次式のように表される
吸着剤
吸着分子
吸着サイト
図 3-2 固体表面上の吸着サイト(Langmuir式の導出) r=aθ (6) また気相からの吸着速度 r[mols-1]は空いている吸着点の割合(1-θ)[-]と溶液濃度 C[molm-3]に比例する rrsquo= b(1-θ)C (7) このときの比例定数を b[m3s-1]とするまた平衡状態では両速度は見かけ上等しいため以下の式が成り立つ aθ=b(1-θ)C (8) これを変形する
CbaCbsdot+
sdot=θ (9)
ここで飽和吸着量を ninfin[molkg-1] ba を K[m3mol-1](Kは吸着平衡定数)とおくと infin=nnθ
となるので次式が得られる
32
KCKCnn
+=
infin
1 (10)
これをラングミュア式と呼ぶ
(c)フロインドリッヒ(Freundlich)型吸着等温式 フロインドリッヒの吸着等温線は図 3-1(c)のように示される
n=aC1b (11) nは吸着量[molkg-1]で aと bはともに吸着定数[-]である (d)BET(Brunauer-Emmett-Teller) 型吸着等温式
BET型の吸着等温線は図 3-1(d)に示されるラングミュア式は表面に 1分子層だけ吸着すると仮定したものであるがBET式は無限分子層まで吸着できる式である図 3-3に示すように吸着した分子がそれぞれ次の層の吸着サイトとなり分子は積み重なって多分子
層に無限層まで吸着できるものとし各層への吸着にラングミュア式を適用すれば次式の
ように表せる
( ) ( )CKCCCKqq
minus+sdotminussdotsdot
=infin
11 (12)
この式は多孔質固体の細孔表面積を窒素ガスの吸着によって測定する際に利用される重要な式
である
表面の吸着サイト
分子上の吸着サイト
図 3-3 多分層吸着モデル
Langmuir式のパラメータ決定法 水溶液からの酢酸の活性炭に対する吸着平衡データ(吸着平衡温度 12)は表 3-1のよ
うに与えられる実験データよりラングミュア式のパラメータ(K吸着平衡定数ninfin飽和吸着量)を最小二乗法で決定せよさらにラングミュア式より決定した ninfinKの値を用いて吸着等温線を計算し計算線として図に示し実験点と比較せよ
33
表 3-1 n C Cnの関係
ラングミュア式は式(310)で与えられるこの式を変形すると次式となる
CKnCK
n infinsdot+
=11
(313)
両辺に Cをかけると以下の式が導出される
CCnKnCKn
CCKn
Cβ+α+
==
+= infininfininfin
11)1( (314)
ただしα=1ninfinβ=1(ninfinK)とする式(314)より Cn と C の関係のグラフプロットは傾きα=1ninfin切片β=1(ninfinK)の直線関係を与えることを示している表 3-1の値を用いて計算した Cnと Cの関係を表 3-1および図 3-4に示す 最小二乗法を用いて傾きαと切片βを決定した α=1ninfin=43865 β=1(ninfinK)=2654 得られた傾きおよび切片よりninfinおよび Kは次のように求まる
ninfin=1α=1D18=000228 molg-1 K =(1ninfin)β=αβ=D18C18=165
0
50
100
150
200
0 200 400 600
C [ molm-3 ]
Cn [ kgm-3 ]
傾き = 1 ninfin
1 ninfinK
切片0
05
1
15
2
25
3
0 100 200 300 400 500
液相の溶質濃度 C [ molm-3 ]
吸着量 n [ molkg-1]
液相と溶質濃度 C [ molm-3 ]
吸着量
n[ m
olk
g-1]
実験点
Langmuir式パラメータninfin 00033 [ molg-1 ]K 00086 [ m3 mol -1 ]
図 3-4 ラングミュア定数の決定 図 3-5 12における酢酸濃度 Cと
吸着量 nの関係
C [molm-3] n [molkg-1] Cn [kgm-3] 460 225 109 529 214
268 199 149 105 060
172 128 732 504 357
34
Freundlich式のパラメータ決定法 酢酸水溶液中における酢酸の活性炭に対する吸着実験を行ったところ以下のような実験デー
タを得たただしCbはバルク相における酢酸濃度n は活性炭に対する酢酸の吸着量を示す
Cb[molL] n[molg] log10Cb log10n 04621 000205 02410 000175 01139 000139 00519 000105 00243 000081
実験データを利用して次式で与えられる Freundlichの等温吸着式の定数 abの値を求めたい
bbaCn1
= (1)
このままでは定数 abの値を決定することが難しいので上式の両辺の対数をとる
bbb
bb
Cb
aCa
aCn
ln1lnlnln
)ln(ln1
1
+=+=
=
(2)
ここで横軸に ln Cb縦軸に ln nの関係をグラフにプロットするすなわち x=ln Cby=ln nと考える
bCb
an ln1lnln += (3)
ここで直線式 y=a0+a1xと比較するすなわち
)(1)(ln
1
00
傾き
切片
ba
eaaa a
=
=rarr= (4)
a0および a1は最小二乗法により数値で求められる与えられたデータでは a1= a0= なので a= b= となる この値を n=acb
1bに代入してcb=0~05の範囲で nの値を計算する
35
BET式のパラメータ決定法 BET式は次式で与えられる
)1)(1( KCCCKCnn
+minusminus=
infin
(17)
以下のように BET式の変形を行う
)1()1(
KCCKCnCn+minus
=minusinfin
(18)
(18)式の逆数をとると
KCnCK
KCnKCC
Cn infininfin
minus+=
+minus=
minus)1(1)1(
)1(1
(19)
(19)式の両辺に Cをかえると
KCnCKC
CnC
infin
minus+=
minus))1(1(
)1( (20)
(20)式を変形すると次式が得られる
CKn
KKnCn
Cinfininfin
minus+=
minus11
)1( (21)
C と)-(1 Cn
Cのプロットは傾き
KnKinfin
minus1切片
Kninfin
1の直線関係を与えることを示している
これをグラフにプロットし最小二乗法に傾きおよび切片を求める
36
312 活性炭の比表面積の決定 酢酸分子の構造を以下に示す
Hc-Cb-Ca
Hd
Hb Oa
Ob-Ha
1219deg
Ca Oa
Ob
図 36 酢酸の構造
酢酸の 1分子の吸着面積srsquo [m2]を図 3-6に示すこのとき文献より
Caと Oaの結合距離 1321Å Caと Obの結合距離 1206Å OaCaObの角度 1219deg Cの原子半径 077Å Oの原子半径 062Å
したがって吸着面積 Slsquoは次のようになる
( ) ( ) 2088 10376109931036321 minusminusminus times=timestimestimestimes=s m2
ここで活性炭の比表面積 S[m2g]は次式で示される 10026 23 snS timestimestimes= infin
S活性炭の比表面積 [m2g] ninfin飽和吸着量 [molg] srsquo酢酸 1分子の吸着面積 [m2] 602times1023アボガドロ数 [個mol] したがって活性炭の比表面積 S[m2g]は
003350=infinn molg 2010376 minustimes=s m2 より
51281037610026003350 2023 =timestimestimestimes= minusS m2g
37
4 粘度密度測定 41 はじめに 大量生産を目的とした工業的化学プロセスはほとんど流れ系(流通系)であるそれらの系において操作対象となる各物質の粘度は装置を設計操作する場合きわめて重要
な物性値である 本実験では低分子溶液および高分子溶液の粘度測定を通じて液体の粘度について考察するさらに演習問題を通じて気体液体高分子溶液などの化学プロセスで対象となる物
質の輸送物性(粘度拡散係数)の重要性を認識されたい 42 低分子溶液の粘度 [目的] 種々の濃度のエタノール水溶液の粘度を測定しその溶液の粘度について考察する [概要] 25におけるエチルアルコール濃度 02040506080100 wt の水溶液について流下時間を測定しこの結果より相対粘度絶対粘度運動粘度を求めグラフにするま
た水の密度水-エチルアルコール溶液の密度についてはピクノメーターを用いて決
定する報告書には相対粘度絶対粘度運動粘度 vsエチルアルコール濃度の関係をそれぞれグラフにして提出する
[計算方法] 相対粘度絶対粘度運動粘度の定義は次のようになる
相対粘度 ww
w tdtd
ηη = (41)
η 混合溶液の粘度 [gcms] ηw水の粘度(8007times10-3 gcms) [gcms](25における粘度) d エチルアルコール水溶液の密度 [gcm3] dw水の密度(099704gcm3) [gcm3](25における密度) t エチルアルコール水溶液の流下時間 [s] tw水の流下時間 [s] 下付添字 W 水
絶対粘度 www td
tdη
η= (42)
運動粘度 ν=ηd [cm2s] (43)
38
[実験方法] 1) 粘度計を洗浄し粘度計内 に二連球で空気を送り込み
乾燥させる乾燥しにくい 場合はアセトンを滴下し た後再度二連球で空気 を送り込み乾燥させる 2)ピペットで一定体積(10mℓ) の純水を取り広い口 f から 粘度計に水を入れる 3)粘度計を恒温槽(25)に つけ約 10 分静置する 4)安全ピペッターを口 a に 取り付け液面が b 上部に 到達するまで吸い上げる 5)安全ピペッターを外すと 液面が降下しだす液面が bd 間を通過する時間をスト ップウォッチで測定する
6)純水での測定を 3 回繰り返す 7)純水を粘度計から取り除くその後粘度計内に二連球を用いて空気を送り込み乾燥させる 8)粘度計乾燥後複数の濃度に調整済みのエチルアルコール水溶液(10mℓ)を粘度計にいれ4)~6)の作業を繰り返し行う(3 回)なお濃度の異なるエチルアルコール水溶液を粘度計内に導入する場合には7)と同様に二連球を用いて粘度計内に空気を送り込み乾燥させる
表 4-1 エチルアルコール水溶液の濃度密度相対粘度の関係 エチルアルコール濃度
[wt] 密度 d[gcm3] 相対粘度
η ηw[-] 0
20 40 50 60 80
100
安全ピペッター接続
図 4-1 粘度計
液面の bd間の通過時
間を測定
f
39
43 密度測定 [目的] 本実験では水とエタノールの種々の組成の混合液体について密度を測定し分子間相互
作用について考察する [実験方法] 1)ピクノメーターの容積測定
図 4-2のピクノメーターの空の重量 wg を秤量する
ピクノメーターの蓋を取り外し
ピクノメーターを水で満たす
設定温度を 25として恒温槽 の電源を入れ恒温槽内の温 度が一定になるまで待つな お水温は恒温槽中の水銀温 度計から読む
恒温槽中に水を満たしたピク
ノメーターを入れる
約 10分間静置する
ピクノメーターに蓋をするこのときピクノメーターの容量
よりも余分の水は蓋の上部より排出される
ピクノメーターの外側を乾いた布で拭い秤量する(その重量を
wwg とする)
恒温槽の温度(25)における水の密度 dwgcm3(=099704gcm3)
より次式を用いてピクノメーターの容積を求める
w
w
dww
Vminus
= (44)
図 4-2 ピクノメーター
蓋
40
表 4-2 エチルアルコール水溶液の濃度と密度の測定結果(25) エチルアルコ
ール濃度[wt]
wrsquo[g] ww[g] V[cm3] w[g]
d[gcm3]
0 20 40 50 60 80
100
099704
エチルアルコール濃度[wt] 空のピクノメーターの重量 wrsquo[g] 水を入れたときのピクノメーターの重量 ww[g] ピクノメーターの体積 V[cm3] エタノール水溶液の入れたときのピクノメータの重さ w[g] エタノール水溶液の密度 d[gcm3]
容積 Vを求めたピクノメーターに混合溶液(調整済み)を入れてその重量 wgを秤量し次式で混合溶液の密度を求める
Vwwd minus
= (45)
エタノール濃度と密度 d の関係をグラフにプロットする
41
44 高分子溶液の粘度 [目的] 高分子溶液の粘度測定から分子量の粘度に与える影響について考察する [概要 ] オストワルド粘度計を用い種々の濃度のポリビニルアルコール(PVA ((-CH2CHOH-)n))水溶液の粘度を測定し粘度データよりポリビニルアルコールの分
子量を求める まず 05g100cc の濃度のポリビニルアルコール水溶液を調製する次にこれを原液
とし23 12 13 15の濃度の溶液を調製するこれらの溶液についてオストワルド粘度計を用いてそれぞれ流下時間を測定し相対粘度絶対粘度運動粘度を求め実験デ
ータより極限粘度[η]を求めるまた報告書には相対粘度絶対粘度運動粘度C
)ln( wηη
Cw
w-η
ηη vsポリビニルアルコール濃度の関係をそれぞれグラフにして提出する
[計算方法] エチルアルコール水溶液の粘度測定と同様の手法を用いて粘度の計算を行うなおポリビニルアルコール水溶液の密度はピクノメーターを用いて測定すること 表 4-3 ポリビニルアルコール水溶液の濃度密度相対粘度の関係 ポリビニルアルコール
濃度 [g100cc] 密度 d[gcm3] 相対粘度
η ηw[-] 05times(15) 05times(13) 05times(12) 05times(23)
05
42
[分子量の計算方法] 実験を行った結果以下のような粘度データを得られるとする実験データより極限粘度
を求めポリビニルアルコール(PVA)の分子量Mを決定せよ
PVA 水溶液濃度
C[g100cc]
相対粘度
ηηw[-]
絶対粘度
η[gcms]Cw
w-η
ηη
C)ln( wηη
05times(15) 1031 0008255 031 0305
05times(13) 039 0378
05times(12) 03 0289
05times(23) 0375 0353
05 0364 0334
ηw=8007times10-3 gcms 線状高分子の極限粘度[η]と分子量Mの関係は次式で与えられる [η]=KMα (46) ただしポリビニルアルコールの場合K=666times10-4α=064であるなお極限粘度[η]は次式で定義される
CC w
w
0
-][ limη
ηηη
rarr
= (47)
または
CC
)ln(][ w
0lim
ηηη
rarr
= (48)
よって濃度 CとCw
w-η
ηηまたは濃度 Cと
C)ln( wηη の関係をグラフ化し最小二乗法によ
り切片の値を求めると極限粘度[η]が決定される
Cw
w-η
ηηと C の関係より最小二乗法を用いて切片の値を決定すると(図 43 参照)切片=
03242傾き=00874となるよって極限粘度は以下のようになる[η]=03242同様
にC
)ln( wηη とcの関係より最小二乗法を用いて切片の値を決定する
(図 44参照)と切片=03249傾き=00256となり極限粘度は以下のようになる[η]=03249
Cw
w-η
ηηと Cの関係より決定した[η]=03242を用いてポリビニルアルコール(PVA)の
分子量 Mを計算する(46)式より以下のように PVAの分子量 Mを計算することができるM=([η]K)1α
=(03242(666times10-4))(1064)
=15811
43
y = 00874x + 03242
0
02
04
06
08
1
0 01 02 03 04 05 06 07
c[g100cc]
(η-ηw)(ηwc)
cw
w
η
ηηminus
極限粘度[η]
図 43 298Kにおける PVA濃度 CとCw
w-η
ηηの関係
y = 00256x + 03249
0
02
04
06
08
1
0 01 02 03 04 05 06 07
c[g100cc]
(ln(ηη
w))c
c)ln( wηη
極限粘度[η]
図 44 298Kにおける PVA濃度 CとC
)ln( wηη の関係
44
5 植物からの DNAの抽出 51 はじめに 分子レベルでの遺伝子の構造解明や遺伝子の発現に関する研究は近年急速に発展している
これら生命現象のしくみを分子レベルで解明しようという分子生物学の分野ではさまざま
な遺伝子の解析や応用方法が開発され我々の生活に身近なものになりつつある 本実験では初歩的な分子生物学に関する実験として植物(タマネギ)からの DNA の
抽出を行い抽出した遺伝子の電気泳動法による分離実験を試みる 52 試薬および器具 試薬 タマネギ(細胞中から遺伝子の抽出を行う) 台所用洗剤(洗剤中に含まれる界面活性剤には植物の細胞膜およびタンパク質を破壊す
る働きがある) 塩化ナトリウム(DNAは塩化ナトリウム水溶液に溶解し易い性質がある) エタノール(予め冷やしておくDNAはエタノールにほとんど溶解しない) 制限酵素(DNAを一定の部位で切断する働きを働きがある) TE緩衝液(pH緩衝剤が入った溶液) 器具 ビーカーミキサーフィルターメスシリンダー駒込ピペットガラス棒 マイクロピペット電気泳動装置ポラロイドカメラ 53 実験方法 1)タマネギは 1回の実験で半個のうち内側の半分程度を使用するタマネギ水 30ml台所用洗剤数滴をミキサー用ガラス容器に入れ40~60秒程度(固体状のタマネギがなくなる頃が目安)ミキサーにて混合する
2) 1)で作成した混合溶液をビーカーに移し約5g程度の塩化ナトリウムを加えガラス棒で静かに攪拌する粘性の大きな溶液が得られる
3) 2)で作成した溶液をフィルターを用いて濾過し濾液を回収する 4) 濾液の約2倍程度の量の冷エタノールをビーカーの壁伝いに静かに注ぐ 5) ビーカーを揺するとエタノール層に白くふわふわしたものが浮いてくるこれが DNAであるガラス棒で DNAを巻き取りシャーレ上にて DNAを回収する顕微鏡を用いて回収した DNAの状態を観察する
6)マイクロチューブ(容量 15ml)中に用意した 70エタノールを 8 分目程度まで注ぐ5)にて回収された DNAをマイクロピペットを用いて70エタノールの入ったマイクロチューブ中に移す軽く混ぜることによりDNA から不要な物質を洗い流す遠心分離してDNA をマイクロチューブの底に沈めた後溶液を捨てて DNA を乾かす乾いたらTE緩衝溶液を 1ml加えて放置するDNAの溶液が得られる
54 電気泳動装置による DNAの観察
本実験は職員と一緒に行うこと 実験を行う人はビニール手袋をすること 1) 抽出した DNAを電気泳動装置で観察するマイクロピペットを用いて以下のように調製した DNAの混合溶液を調製する(いずれの溶液も調製済)
45
2) マイクロピペットを用いてアガロースゲルの試料を流し込む穴(ウェル)に1)にて調製した溶液 Aおよび Bを注ぎ込む注入量は20μℓとする電気泳動装置のスイッチを入れて100Vの電流を流しアガロースゲル内にて DNAを電気泳動させる
3) 試料に予め加えられておいた青色の色素が 7 分目程度まで進んだら電気泳動を中止する(約 30分程度)
4) (ここでの作業は職員が行う) アガロースゲルを取り出し染色液に浸す染色後ゲルを取り出しポラロイドカメラで
DNAの泳動状態を撮影する
+ -
アガロースゲル
試料を流し込む穴(ウェル)
図 51 電気泳動装置
6 5 4 3 2 1
図 52 DNAの電気泳動写真の一例
55 電気泳動装置の原理 電気泳動装置の原理図を以下に示すアガロースゲル(寒天から不純物を除いたもの)中
に DNAをセットし電流を流すとDNAは電流の向きとは逆にマイナスからプラス方向
調製済 溶液 A(制限酵素なし) 水 11μℓ 10timesH Buffer 2microℓ 植物 DNA 5μℓ
調製済 溶液 B(制限酵素 Eco RI入り) 水 11μℓ 10timesH Buffer 2microℓ 植物 DNA 5μℓ 制限酵素 2μℓ
1 DNA(タマネギ)+制限酵素 2 DNA(タマネギ)+制限酵素 3 DNA(タマネギ) 4 λ-DNA(大腸菌)+制限酵素 5 λ-DNA(大腸菌) 6 サイズマーカー
500bp
46
に動く(このことを電気泳動という)これはDNA のリン酸部分が負に帯電しているためでありまたDNAはその長さにより泳動距離が異なる(短い遺伝子ほど長く泳動する)電気泳動ではこの性質を利用してDNAを大きさごとに分離することができる
塩基対数によってDNAを分離
EtBr (蛍光試薬)DNAの二本鎖内に入り込む
発光
UVλ=302nm
励起
分離後のアガロースゲルをエチジウムブロマイド(EtBr)溶液に浸す
DNAを含んだ溶液
アガロースゲル
リン酸部分が負に帯電
塩基 (ATGC)-
+
カメラで撮影
電圧
DNA構成成分(dNTPs)
バンドが明る
DNA量が
バンド(DNAの存在)
図 53 電気泳動の原理
56 制限酵素とは DNA は4 種類のヌクレオチド(GATC)が不規則につながってできている制限酵素はDNAの特定のヌクレオチドが並んでいる部分を切断する制限酵素には様々な種類がありEco RI(エコアールワン)と呼ばれる酵素は「GAATTC」といった並びの部分だけを切断することができる
GAATTC
CTTAAG
制限酵素
Eco RI
AAGCTT
TTCGAA
制限酵素
Hin dIII
図 54 制限酵素による DNAの切断
レポートについて 1 実験方法および実験結果の整理方法については指針書を参考にすること 2 実験結果については電気泳動の結果について考察すること(制限酵素の影響などにつ
いてまとめてください)
47
6 染色実験
61 はじめに
現在私達の身の周りでは様々な染料が使われている例えばT シャツやジーンズな
どの衣服は橙黄赤青など様々な色に染められている他にも私達が気付かないと
ころで多くの染色された製品を使用しているそこで本実験では高校の化学で学んだ
アゾ染料を合成してみるアゾ染料はアニリンを原料として作られているアニリンはベ
ンゼン環にアミノ基(-NH2)がついたものであるアニリンは無色の液体で水に溶けにく
くアンモニアより弱い塩基性を示すまたさらし粉(CaClO(ClO)H2O)水溶液を加えると
赤紫色を呈するこの呈色反応はアニリン特有のものであるので検出反応に用いられる
このアニリンを出発物質としてアゾ染料を合成してみる
62 試薬および使用器具
【試薬】 ①05moll 水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液
②2-ナフトール ③フェノール ④6moll 塩酸
⑤亜硝酸ナトリウム ⑥アニリン ⑦氷
【器具類】 ①電子天秤 ②50mℓビーカー ③100mℓビーカー
④ガラス棒 ⑤布(ガーゼなど) ⑥ピンセット
⑦ポリ手袋 ⑧ドライヤー ⑨シャーレ
10駒込ピペット(10ml ガラス製)
11駒込ピペット(1ml プラスチック製)
63 実験方法
1) 50mℓビーカーの中に 05molℓ水酸化ナトリウム水溶液 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回
NaOH 水溶液を分取するほぼ 20 mℓ分取できれば可)と 2-ナフトールを約 01g 入れ
よくかき混ぜる調製した溶液の中に布をつけその布はガラス棒でしぼってから(布
をガラス棒ですくいあげればよい)シャーレに広げる温度の異なる条件下(常温およ
び低温)で染料の合成実験を行うため布は最低 2枚調製した溶液と接触させそれ
ぞれ別々のシャーレ(低温用および常温用)に広げる
2) 新しいビーカーに水を約 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回分取)と 6molℓ塩酸約 4mℓ(10m
ℓ駒込ピペットで目分量で可)さらにアニリン約 1mℓ(プラスチック製 1 mℓ駒込ピペッ
ト)を入れてよくかき混ぜる染料の合成を常温および低温下で行うためこの溶液を
2つ調整する
低温下で反応させる溶液は恒温槽で 10~15 分ほどよく冷やした後亜硝酸ナトリウ
ム 05g を加えてよくかき混ぜる
常温下で反応させる溶液には冷却作業を行わずに亜硝酸ナトリウム 05g を加えて
よくかき混ぜる
3) 2)でつくった水溶液をシャーレに広げた布に注ぎ生成される染料を布によく染み
込ませ5分程放置する
4) 色の付いた布を取り出してポリ手袋をした手できれいに水洗いをし乾燥させる
48
5) 色差計を用いて乾燥した布の Lab(L明度aおよび b色度)を測定する
2)で作った溶液は5以下では無色の溶液ですが5以上になると淡い黄色になりま
す
【解説】
アゾ染料はアゾ基(-N=N-)を持っていてこのアゾ基によって鮮やかな橙色を呈色し
ます今回合成したアゾ染料は図の 1-フェニルアゾ-2-ナフトールです意外かもしれ
ませんが指示薬として使われているフェノールフタレインもアゾ化合物ですフェノール
フタレインは pH の変化によって色が出てきす染料の中でも最初は無色のものもありますが
温度を変化させたり酸性やアルカリ性にすると色が出てきます
ベンゼン ニトロベンゼン
N2Cl
ニトロ化 濃硫酸(濃硝酸)
還元反応 濃塩酸
(Sn又は Fe)
アニリン塩酸塩
遊離反応 NaOH
アニリン塩酸塩に強塩基を反応させる
と弱塩基であるアニリンが遊離する
氷冷+亜硝酸ナトリウム アニリン
塩酸
ジアゾ化
塩化ベンゼンジアゾニウム
塩化ベンゼンジアゾニウム
は熱によって窒素とフェノー
ルに分解される
カップリング
C10H7ONa (ナトリウム 2-ナフトキシド)
O
N =
1-フェニルアゾ 2-ナフトール
NH3Cl NH2
49
7 ガスクロマトグラフ質量分析計による茶葉中のカフェインの分析 71 はじめに ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)は極めて低い濃度の化学物質の同定や未知物質の構造決定に極めて強力な分析機器の一つであるGCMSを用いるとサンプルの中に含まれているある成分の分子構造(カフェインの分子構造を図 71に示す)やその量が分かりますもちろん分析機器ですので測定できる物質対象となる系や測定条件にはある
程度の制約があります混合物質を分離するガスクロマトグラフ(Gas ChromatographGC)と分離された成分(物質)を分析(構造決定と濃度測定)する質量分析計(Mass SpectrometerMS)を組み合わせた装置であるこの装置は有機化学生化学環境化学などの多くの分野で非常に多用されている例えば極めて低い濃度でも生体へ強い影響が懸念されるダイ
オキシン類などの土壌や河川の水中での含有率の決定や食品や医薬品中の微量成分の決定
にも利用されている 一方日本人に長い間親しまれてきた緑茶が近年産業界や医学
界で注目されている茶葉にはカフェイン(分子構造図 71)カテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドなどの有用成分が多く含まれておりその効能が注目されている 本実験では茶葉中に含まれるカフェインに対してGCMSを用いて分析する茶葉中には種々の物質が含まれておりGCMS分析を容易にするため前処理として超臨界二酸化炭素抽出(4015MPa程度の高圧力の二酸化炭素を溶剤として利用)により茶葉からカフェインの抽出を行いそのサンプルを GCMSにて分析する
図 71 カフェインの分子構造 図 72 物質の分析 個々の物質や装置についてはインターネットにより下記のWebサイトのフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』などにより調べるとよいカフェイン(caffeine)はアルカロイドの一種プリン環を持つプリンアルカロイドの一種でコーヒー類に含まれることか
らこの名がある化学名は137-トリメチルキサンチン(C8H10N4O2) コーヒーコーラ緑茶紅茶ガラナココアなどに含まれる(量は緑茶が一番多い)結晶は一水和物(C8H10N4O2bullH2O)もしくは無水物(無水カフェインC8H10N4O2)として得られ
る白色の針状または六角柱状結晶で匂いはなく味は苦い融点は 238昇華性がある出典フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』httpwwwwikipediaorg 装置「GCMS」httpwwwanshimadzucojpproductsgcmsqp2010htm (島津) 「超臨界抽出装置」httpwwwkagakucomjasco39-49html (日本分光)
50
レポート課題 1茶葉中に含まれるカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドの中から3つの物質を選びその物質について調べた結果を A4 レポート用紙2枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
2GCMS についてA4 レポート用紙1枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
3与えられたサンプルは茶葉1gから抽出されたのである実験結果よりもとの茶葉
1g中に含まれるカフェインの量を推算し計算式とあわせて示すこと 72 原理および装置 実験で使用する島津製の GCMS装置の全体図を図 73に原理の概略を図 74に示す
1
23
4
5
67 8
9
10
キャリアーガス
試料物質
1ボンベ(He)2圧力計3マイクロシリンジ4サンプラー5試料導入部6分離カラム
7セパレーター8イオン化室9磁石10電子増倍管11記録計
11
図 74 ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)の概略図
サンプルフォルダー
51
GCMS 装置は分離部である図中の 1~6 のガスクロマトグラフ(GC)と7~11 の検出部である質量分析計(MS)から構成される 3のマイクロシリンジを用いて試料を GCMSに導入する導入された試料は5試料導入部でガス化され6分離カラムに導入される分離カラムには吸着剤が充填されおり混合物の試料を導入した場合各物質と吸着剤との
親和性の違いにより各物質の分離カラムから排出されるタイミングは異なる分離カラム
を排出された試料は8イオン化室でイオン化され10電子倍増管にて検出される アセトンに溶解したカフェインの GCMSによる分析結果の一例を以下に示す図 75にク
ロマトグラム図 76にカフェインのピークのマススペクトルを示す
図 75 GCMSにより得られたクロマトグラム
横軸がリテンションタイムで縦軸がピーク強度を表す
図 76 カフェインのマススペクトルとカフェイン(分子量MW=194)の構造
(図 75中のリテンションタイム 126min付近のピークに起因するマススペクトル) 茶葉中にはカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイド以外にも繊維であるセルロースなど多くの物質が含まれているため茶葉そのものを
そのままサンプルとしてGCMSで分析することは困難であるセルロースなどの分子量の大きな物質はカラムに詰まってしまい分析できないそこで今回は超臨界二酸化炭素
による抽出により主にカフェインを他の物質と分離抽出した通常よく利用されるアセ
トン抽出(アセトンに茶葉を浸し特定の成分を抽出する)ではカフェイン以外にも多く
の物質が抽出されるため図 75 のような単独のピークを得ることは難しく複数のピークがクロマトグラムに見られるこのサンプル(この場合茶葉からの抽出物)にはカフェ
イン以外の不純物は少なかったがガスクロマトグラフの分離カラムによりさらにそれ
らの混合物が精度よく分離されるクロマトグラムのピークはそれらサンプル中に含まれ
ていた個々の物質を表しているクロマトグラムのピークを選択することで分子構造解析
したい物質を選んだことになる選択したクロマトグラムのピークの表している物質(ここ
ではカフェイン)に対応するマススペクトルが図 76 に表示されているマススペクトル
52
で横軸がその成分(ここではカフェイン)分子を構成している原子の原子量で縦軸がそ
の量を表しているのでマススペクトルから分子構造を解析するためにコンピュータ内
に蓄えられた物質ごとのマススペクトルデータと今回測定したマススペクトル(分子内に含
まれている各原子の数)を比較することで測定したサンプル中のクロマトピークを選択し
た分子がどのような原子をどれだけ含んだ分子であったかがわかりそれからその物質
がどのような分子構造の物質である可能性が高いかをコンピュータが検索し結果を示す 73 実験サンプルの設置と GCMS装置の操作方法 実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS装置のサンプルフォルダ
ー(図 73)にセットするこのサンプルは茶葉 1gを 50ccの高圧セルにて超臨界二酸化炭素を利用して4015MPa2時間接触の条件で抽出した固体を10gのアセトンに溶かしたものである またコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に装置および装置制
御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 本実験で使用する GCMS の操作は全てコンピュータのモニター上で GCMS の解析プログラムソフトを使用することで行うコンピュータの操作方法を以下に示す なおコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS 装置のサンプルフォルダー(図 73)にセットするまた装置および装置制御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 1)パソコンのデスクトップ上のアイコン「GCMS 分析」をクリックすると以下のようにGCMS制御プログラムを起動するその後「OK」ボタンをクリックする
図 77 GCMD分析用ソフトウェア「GCMS分析」の起動
まず「GC-MS分析」をクリック
「OK」ボタンをクリック
53
2)制御プログラムが起動されパソコンと GCMSの接続が開始される
図 78 「GCMS分析」の接続確認画面 3)GCMSとパソコンの接続が完了すると以下のような画面が表示される
図 79 「GCMS分析」操作画面
4)マススペクトルによる分子構造の解析 サンプル(この場合茶葉からの抽出物)には多くの物質が混じり合っていたがガス
クロマトグラフの分離カラムによりそれらの混合物が精度よく分離されるクロマトグラ
ムのピークはそれらサンプル中に含まれていた個々の物質を表しているクロマトグラム
のピークを選択することで分子構造解析したい物質を選んだことになる選択したクロマ
トグラムのピークの表している物質(ここではカフェイン)に対応するマススペクトルを選
択するマススペクトルは横軸が原子量で縦軸がその量を表しているのでマススペク
トルから分子構造を解析するために「定性処理」を行う シミラリティ検索結果が表示され分析により得られたスペクトルと類似のスペクトルを有
する物質の一覧が表示される上部に表示される物質ほどスペクトルが一致していること
を示す
接続状況が表示される
「トップへ」
をクリック
54
図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果
図 711 表示スペクトルのシミラリティ検索結果 10)図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果の印刷 「レポート(R)」をクリックし「検索結果(R)」をクリックすると検索結果が印刷される
GC-MS 分析で得られたマスス
ペクトル
データベース中
のマススペクト
ル
55
参考資料 生理活性物質の精製 カフェインの利尿作用のように生物活動に影響を与える物質を生理活性物質といいます
天然物には生理活性物質を多く含むものがあります一般に天然物は多くの成分を含ん
でおり特定の生理活性物質を分離抽出するには種々の分離技術が必要ですまた生
理活性物質には60以上の温度でその生理活性を失う(失活)ものや溶剤として広く用いられているクロロホルムなどの有機溶剤中で失活するものが多いそこでこれら生理活性
物質の分離精製技術の開発が望まれており30~60程度のマイルドな温度条件で操作できる二酸化炭素を機能性溶媒として利用する超臨界抽出も有効な分離技術として注目されて
いる超臨界二酸化炭素は気体と液体の中間の性質を持ち物質の分離に役立っています 臨界点付近の高密度気体は超臨界ガスまたは超臨界流体と呼ばれ臨界圧力前後でそ
の溶解能力が著しく変化することから工業的にも種々の分野で利用されています一例と
して超臨界二酸化炭素(SC-CO2)によるコーヒー豆からのカフェインの抽出プロセス(a)
ならびに超臨界二酸化炭素に対するカフェインの溶解度(b)を図に示します図(c)に示す
ように固体のカフェインがガスである超臨界二酸化炭素に溶解します
このように超臨界二酸化炭素を用いた技術はコーヒー豆からのカフェインの抽出プロ
ポリスからの生理活性物質の抽出に利用されています
図 超臨界二酸化炭素抽出を用いたコーヒー豆からのカフェインの抽出
56
付表 最小二乗法について 直線で近似する場合 f (x) = a0 + a1x (A1-1) 式(A1-1)のように近似させるとする測定値 yiとの残差を eiとすると式(A1-2)のようになる ei = yi - f (xi) = yi - ( a0 + a1xi ) (A1-2) ここで式(A1-2)の両辺を二乗してその i に関する総和をとりその値を S とすると次式となる
sumsum==
+minus==n
iii
n
ii xaayeS
1
210
1
2 )( (A1-3)
S を最小化するような a0a1を求める式(A1-3)を a0a1について偏微分すると次式とな
る
sum=
+minuspartpart
=partpart n
iii xaay
aaS
1
210
00)( sum
=
+minusminus=n
iii xaay
110 )(2 (A1-4)
同様にa1について編微分すると次式のようになる
sum=
+minusminus=partpart n
iiii xxaay
aS
110
1])([2 (A1-5)
Sが最小となる時は次式が同時に満たされる時である
00=
partpartaS
01=
partpartaS
(A1-6)
よって誤差が最小となる a0a1を求めるためには式(A1-6)を連立して解けばよい
sumsumsum===
+=n
ii
n
i
n
ii xaay
111
10 1 (A1-7)
sumsumsum===
+=n
ii
n
ii
n
iii xaxaxy
1
2
11
10 (A1-8)
式(A1-7)と式(A1-8)を a0a1を変数とみなし連立して解くと次式を得る
n組のデータ(xiyi)(i=12hellipn)に対して回帰直線 y= a0 + a1x を最小二乗法で求めて出力しデータ番号 iデータ yi直線で推定した値 )( ii bxay += および残差
iii yy minus=ε を出力するようなプログラムをつくりたい基礎式を導出せよ (ヒント残差の二乗の和が最小になるように係数 a0a1)を定めるのが最小二乗法
である)
57
sumsum
sumsumsumsum
==
====
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
n
ii
n
ii
xxn
xxyyxa
1
2
1
2
1111
2
0
)(
))(())(( (A1-9)
sumsum
sumsumsum
==
===
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
xxn
yxxyna
1
2
1
2
1111
)(
))(()( (A1-10)
よって式(A1-9)(A1-10)を用いれば最も誤差を小さくするような直線 y = a0 + a1x が求められる
y=a1x+a0 にて近似
誤差 ei
x
y
誤差が最小になる関数(直線 y=a1x+a0の場合)
図1 最小二乗による近似
誤差の和Sが最小
S
a0
a1
直線 y=a1x+a0 の近似
誤差の全体の和はS=Σei=Σyi-(a1xi+a0)
Sは変曲点にて最小値を示すすなわち(partSparta0)=0 (partSparta1)=0
図2 a0a1とSの関係
1
目 次 頁
1 実験を始めるにあたって 3 2 実験実施要項 4
2 1 実験担当 4 2 2 実験日時 4 2 3 実験場所 4 2 4 実験に際し持参するもの 4 2 5 実験開始前日までの用意(予備学習) 4 2 6 実験日の出欠について 4 2 7 実験報告書の提出について 5 2 8 実験実施上の注意 5 2 9 実験報告書実験ノート 5
3 吸着 8 31 はじめに 8
32 吸着操作 8 33 実験目的 10 34 実験方法 10 35 実験結果のまとめ方 14 36 エクセルによる吸着データの整理法 16 37 実験結果の考察方法 17 38 Langmuirの等温吸着式による相関 22 39 Freundlichの等温吸着式による相関 26 310 吸着等温線とは 29 311 吸着等温式 30 312 活性炭の批評面積の計算 36
4 粘度密度測定 37
41 はじめに 37 42 低分子溶液の粘度 37 43 密度測定 39 44 高分子溶液の粘度 41
5 植物からの DNAの抽出 44 51 はじめに 44 52 試薬および器具 44 53 実験方法 44 54 電気泳動装置による DNAの観察 44 55 電気泳動装置の原理 45 56 制限酵素とは 46 6 染色 48 61 はじめに 48
2
62 試薬および使用器具 48 63 実験方法 48 7 ガスクロマトグラフ質量分析計による茶葉中の
カフェインの分析染色 50 71 はじめに 50 72 原理および装置 50 73 実験サンプルの設置と GCMS装置の操作方法 53 74 マススペクトルによる物質の構造解析 54 付表 最小二乗法 56
3
1 実験を始めるにあたって 工業物理化学実験の重要性 化学工学では蒸留抽出調湿乾燥吸着粉砕ろ過機械的分離(遠心力重力)
混合撹拌などの単位操作が中心であるがそれらの分離および混合操作はすべて物理化
学の原理に基づいて行われる物理化学は単位操作の基礎となる学問である3年後期に
行われる化学工学実験Ⅱ4年次の卒業研究および就職後の生活においても工業物理化学
実験の経験が役に立つしたがって2年前期に工業物理化学実験として物理化学に接し
馴染むことの意義は大きい またケミカルエンジニアは大量の混合物を扱い各単位操作を統合して系全体のプロ
セスを設計操作しなければならない大量の混合物を扱うためにはより正確な温度圧
力流量組成の制御が必要となるこれらに関する測定の基礎技術を拾得することは有
意義である工業物理化学実験を通じてケミカルエンジニアとしての基礎力を養われたい 講義および化学工学実験Ⅱとの関係 工業物理化学実験は3年後期の化学工学実験Ⅱと密接な関係にあるまた個々の実験
に関わる理論については既に講義されているものもあるが3年前後期に講義されるも
のもある大学での学習は高校までの受動的なものと異なり自主的なものであるこの
機会におおいに独創性を養われたい 工業物理化学実験は一年次において受講した基礎物理化学化学工学計算法およびその
他の基礎的な知識今までの実験的経験および予備学習をもとに安全かつ円滑に実験を進
めてもらいたい
4
2 実験実施要項 本指針書の実験(工業物理化学実験)は配布の実験日程にしたがって行います 21 実験担当 化学システム工学科 三島健司 松山清 22 実験日時 火曜日 4限5限 金曜日 4限5限 23 実験場所 617実験室(6号館 1階西側)の所定の実験台で実験を行います 24 実験に際し持参するもの 工業物理化学実験指針書レポート提出用のレポート用紙(A4サイズ)実験ノート(形式は自由です)グラフ用紙(A4方眼紙)筆記具(自在定規テンプレートなども含む)計算用具(関数電卓)白衣(清潔なもの)名札 実験に必要な物品以外の物(バッグ衣服など)は所定のロッカーに納め白衣を必ず着
用する実験に必要なものだけをもって実験室に入る退出の際忘れ物がないことを確認
する 注) 実験ノートは実験中に指導担当者がチェックするので指示に従うこと
また物品にはすべて氏名学籍番号を記入し紛失を避ける 25 実験開始前日までの用意(予備学習) 実験を行う前にその内容を熟知しておくことは事故の防止円滑な実験内容に対する
より深い理解などの観点からきわめて重要です 1)指針書を熟読する 2)実験開始前に既に記述できることがら(目的実験方法実験結果を記入するデータシートなど)を実験ノートおよびレポート用紙に事前に記入しておく実験終了時から提
出までの期間が短いので問題点に関する質問は早期に行う 3)持参すべき物品の確認をする 26 実験日の出欠について 出欠のチェックは時限開始直後と時限終了時(実験終了時)の 2回を行う「2回目のチェック時に不在の者」は当日を「欠席扱い」となります遅刻者は必ず指導担当者に報告する
遅刻および欠席は減点の対象となるので注意する実験時間中の「不在が著しいとき」は
当日を「欠席扱い」とする 27 実験報告書(レポート)の提出について 1)提出期限各実験報告書提出の締切日は「実験終了日より 7 日後(15 時まで)」です例えば1 テーマについて火曜金曜と実験を行った場合翌週の木曜日の午後 3 時までに提出してください金曜火曜と実験を行った場合は翌週の月曜日の午後 3時までの提出です提出期限(締切の日時)に遅れた報告書は受理しないので注意して下さい
2)再提出報告書の記載およびその内容によっては「再提出」を指示される場合がありま
す再提出の提出締切日は「返却日を含めてその日より 7日後(15時まで)」です提出
5
期限(締切の日時)に遅れた報告書は受理しない 28 実験実施上の注意 1)実験時間中は白衣着用履物は靴とする(サンダル類は不可)また白衣のボタンはか
ならずとめ袖などもしっかりとめる器具に袖などをひっかけて事故を起こすことの
ないように事前に注意する 2)試薬機器具については使用目的を指導担当者に報告のうえ受け取る返却時の報告
も確実におこなう 3)計測機器具などの使用(操作)は「取扱説明書」にしたがって行う 4)機器具類の保管は班(グループ)全員でこれにあたる破損または紛失したときは指導
担当者に口頭で報告して下さい実験終了時には各物品と実験台の整理整頓を行い指導
担当者の確認を受けて下さい 5)脱塩水製造装置(イオン交換)の使用に際しては指導担当者の指示を受ける 6)ガラス器具の洗浄法
a)ガラス器具は水道水で予洗の後クレンザーで十分に汚れを落とし再び水道水で良くすすぐただしガラス体積秤量器はこの限りにあらず下記のbの方法による洗浄の終了
はガラスの表面が一様に水膜で濡れていることにより判定するその後イオン交換水ある
いは蒸留純水で最低3回以上すすぎ加熱乾燥あるいは風乾させる乾燥後は所定の場所
に器具を返還する b)ガラス体積秤量器は水道水で予洗の後洗浄槽に一昼夜浸漬しその後水道水で十分すすぐ以後は aの場合と同様であるが乾燥に関しては風乾とし加熱乾燥は絶対に行ってはならない
7)プラスチック製器具の洗浄法 プラスチック製器具は材質が軟質であるので洗浄には液体洗剤を使用し加熱乾燥はさけ
風乾とする乾燥後は所定の場所に器具を返還する 8)実験廃液の処置法 実験廃液は有機溶剤廃液含有機溶剤水溶液廃液無機廃液含重金属廃液に分類し各々
所定の廃液タンクに保管する不明の場合には教員の指示を受けることみだりに流しに
は流さないこと 9)固体廃棄物の処置法 固体廃棄物は紙屑木材類ビニールゴム類金属類ガラス類に分類し所定の容器
に廃棄する 10)空になった試薬瓶は捨てないで教員の指示を受けること 11)電源の確保に関しては電気容量電線の容量等に関して教員の指示を受けること 12)天秤室への入室は各班(グループ)の秤量担当者のみとする(多人数の入室は秤量操
作の妨げとなるまた天秤転落事故の原因ともなる) 13)喫煙は「指定の場所」でおこなう実験室または指定場所以外での喫煙はしないこと 14)本実験では1テーマを各班とも数グループにわかれて実験をおこなうのでチームワー
クが必要である実験を始める前に互に話し合って実験上の手順すなわちデータの取り方
をきめておくとよい 15)機器の取り扱いは使用説明書をよく読んでから使用する 29 実験報告書実験ノート 実験報告書(レポート)はレポート用紙(市販の A4サイズ)を用いて提出して下さい報告内容は特に指示がない場合は次の項目とします
6
1)緒言(チョゲン) 3)実験方法 4)実験結果および考察 5)結言 6)使用記号(式や変数を使用した場合に必要) 7)引用文献(参考にした文献があれば)
レポートの内容の各項目に関して以下にその記述上の注意点を説明します 1)緒言 実験の目的意義を示す何をどうしようとするのかを示すものでその実験の直接の目
的を具体的に書く 2)実験方法 実験の方法は実際に行った実験を第三者にも再現できるように書くべきです自分達が
行った操作について表や図などを交えて明確に示しておくとよいでしょう 実験方法の文章は過去形で書くことが一般的です
3)実験結果および考察 結果(数値図表)と考察はレポートの中で最も重要な部分です指針書を参考にして
各自が工夫して記述して下さい 結果では得られた事実に忠実に書かねばなりません
また関連のあるものをまとめて図や表に示すとわかりやすいですただし結果の図や
表についての説明の文章も本文に必要です 結果おより考察の文章は現在形で書くことが一般的です また単位や有効数字に誤りがあると誤解を招く恐れがあります図表単位および有
効数字に関しては指針書を再読すること考察では得られた実権データを理論的な計算
などと比較して現象を検討する習慣も身につけましょう独自のものを書くようにこころが
けましょう 4)結言 結果および考察でえられた事柄をまとめて示します 主な記述上の注意事項 1 表については標題の位置表の上に書く注の位置表の下に書く 2 図については標題の位置図の下に書く注の位置図の下に書く 図を描く場合にはA4の各種方眼紙1枚に1つの図を描き本文を参照しなくても
図の内容がわかるように必要な条件などを全て記入することが望ましい図および表
は最後にまとめて示すのではなく関係の深い文の直後の頁に挿入する 3 その他記述上の注意は指針書や配布された資料を参考にされたいまたレポー
トにつける通しページ番号なども忘れぬよう 4 次元単位の付記に留意する「SI」はこれから必然的に使用される単位系であ
りその使用については留意してもらいたい 5 単位の記入においては変数の後には[ ]を付け数の後には[ ]を付けない例え
ばCp [Jmol-1K-1] Cp = 198 Jmol-1K-1 6 引用文献使用参考の記入については「化学工学論文集」「化学工学会誌」を参照
されたい 7 「化学工学論文集」「化学工学会誌」などは工学部の各図書館にあるので有効に活
用してもらいたい 8 レポートに記載する図表などは「化学工学論文集」「化学工学会誌」の表現に準
じた記載方法を用いること 9 図についてはExcelなどの表計算ソフトで作成したものでもよい
7
実験ノートは市販の大学ノートを使用して下さい各実験内容についてページを変
えて後で見て分かりやすいように書いて下さい上から5行程度に実験条件その他
必要事項日付などを記入する右端5cm程度の幅を備考欄とし実験中に気付いたこ
とその他必要事項を記入する使用した溶液の濃度ファクターなどが記録されていない場合がよくありますレポート作成時に困りますので忘れずに各自が実験ノートに記入
しましょう レポート表紙 レポートの表紙(市販の A4 のレポート用紙でよい)には以下のような表紙をつけること各ページにページナンバーを記入すること提出時には上端をホッチキスで閉じるこ
と記入はワープロ鉛筆でもよい
工業物理化学実験レポート(三島担当分)
実験項目 実 験 名 提出者 福岡大学工学部化学システム工学科 A組 5班 TK0315001 七隈太郎 共同実験者 福大次郎 干隈三郎 城南花子 早良五郎 実験日 平成 年 月 日 ~ 月 日 実験場所 化学工学共同実験室 B(6号館 1階 617室) 条件 気温 気圧 湿度 天候 提出日 平成 年 月 日
8
3 吸着 31 はじめに 活性炭 多孔質(多くの小さい穴がある)の吸着剤 酢酸 活性炭に吸着されるモデル分子
吸着実験データの整理によく使用する記号 n 溶質の吸着量 C 溶液中の溶質の濃度 単位は [ ] [ ] 考えてみよう 1) 右図のような低い濃度の酢酸水溶液の入ったビーカーに活性炭 をを加えた場合濃度はどうなるでしょうか
2)吸着された酢酸の物質量(n[mol])を測定するにはどのような 実験をすればよいでしょうか 図 1 活性炭
32 吸着操作 工場排液中の微量は有機物などを活性炭などの吸着剤で除去する工業操作を吸着操作と言
います蒸留抽出乾燥撹拌などの単位操作と同様に化学工業プロセスの重要な分離技
術です吸着操作は他の分離操作に比べてきわめて低濃度の範囲まで物質分離ができる特
徴がありますそのため近年問題となっている大気および水質の汚染汚濁に対する有力
な対策技術として注目されています 本実験では活性炭に対する酢酸の吸着挙動を調べることにより活性炭の吸着特性(吸
着平衡定数)を知り吸着操作の理論的な取り扱いについて学習しましょう 吸着量を求めてみましょうこの例では濃度換算が容易になるように溶液濃度をℓ でなく m3 単位とした) 低濃度のフェノールを含む排水の活性炭吸着実験を行って図 1のような吸着等温線(一
定温度で測定した溶液濃度と吸着量の関係)を得たいまフェノール濃度が 40mol m3の
排水 40m3に 60kgの新しい活性炭を投入して平衡に達したとき水中のフェノール濃度(mol m3)および 1gの活性炭のフェノール吸着量(molg)を求めよ
活性炭 1gに吸着するフェノールの物質量をn[molg]活性炭の量を W[g]とすると
フェノール排水 V[m3] 吸着前のフェノール濃度 C0[mol m3] フェノール分子
+
活性炭に吸着した溶質(フェノール)の量 nW (1)
溶液から取り除かれた溶質の量 (C0-C)V (2)
物質収支式より
nW=(C0-C)V (3) よって
VW
CCn
minus= 0 = )( 0CC
WV
minusminus (4)
9
図3 吸着等温度線と操作線
この操作からわかるように吸着データ(この実験で求める)が存在すれば
吸着等温線と操作線の交点から吸着処理しようとする溶液の体積 V と初濃度 C0
に対して使用する活性炭の質量 W により活性炭に吸着する溶質の量 n および吸着後の溶液の溶質濃度 C が計算で予測できますこの吸着データから吸着装置を設計することができます実際に吸着装置(吸着塔)の設計の様子を次ペー
ジの例題1に示しておきます興味のある人は5 段に積み重ねた吸着層を 04 mol ℓの濃度の廃液が通過すると濃度が 002 mol ℓ 以下になることを確認し吸着塔の設計方法を考えてみて下さい なお先ほど求めた式 (4)は皆さんが行う吸着実験データ(吸着等温線を作るもととなる吸着後の溶質濃度 C と各濃度に対する吸着量 n の関係)を求める場合にも使用します 問題1 質量 W=1gの活性炭を用いて体積 V=100cm3の酢酸溶液の吸着実験を行った
ところ活性炭と接触する前の酢酸溶液の初濃度はC0=0512moldm3であった
(dm3デッシメータ 3 乗= ℓリットル)吸着後の溶液を活性炭と分離してその酢酸溶液の濃度を 01N(01 規定の)水酸化ナトリウム水溶液で滴定して求めたところC=0478moldm3 であった1gの活性炭に吸着された酢酸の物質量n [mol]を式 (4)より求めよ
活性炭 1kg当たりに吸着された
フェノールの量 n[molg]
吸着操作後
の溶液のフ
ェノール濃
度 C
吸着等温線の一例 Langmuir式
KCKCnn
+=
infin
1
操作線
)( 0CCWVn minusminus=
傾き-23
初濃度 C0
[molm3]
吸着後の濃度 Cと吸着量 n
初濃度C0と傾き-VWを用いて操作線を引き
吸着等温線との交点を
求める
ここで(3)式の傾きWV
minus で図 1 における横軸
を通過する直線式(操作線)であるすなわち
)(=- 4032
)40(6040)()( 0
minus
minusminus=minusminus=
C
CCCWVgmoln
10
解答(計算式) )( 0CCWVn minusminus=
minus= ( ) (答) [mol]
例題 1 吸着塔の設計 濃度 C0[molm3]の不純物を含む工業排水(流量 V[m3hr])から不純物を除去するために下図
に示すような各 i段に活性炭を wi[g]含む5段の吸着塔を設計しましょう 各 i 段の出口と入口でのそれぞれの物質濃度 CiCi-1[molm3]とその段での活性炭単位質
量当たりの吸着量 ni[molg]との間に物質収支がなりたち他の部分への吸着は無視できるとするまた溶液中の平衡濃度Ci[molm3]と吸着量ni[molg]の関係はラングミアー(Langmuir)の等温吸着式で与えられるものとするラングミアーの等温吸着式における吸着平衡定数 K
と飽和吸着量 infinn としてはK=8611 infinn =0003262の値を用いる誤差を判定する定数 EPS
としてはEPS=000001を用いよ 図4 吸着塔の段数計算 図5 吸着塔 33 実験目的 一定の温度において活性炭による希酢酸の等温平衡吸着量 nを一定の温度において測定
しそれら測定値の Freundlich 式および Langmuir 式への適合性を比較検討するまたLangmuir式により活性炭の比表面積を求める 34 実験方法 レポートでの実験方法の記述では次のように説明文を必ず付けて下さい また行った方法については過去形「~した」のように記述して下さい 例) 活性炭による酢酸水溶液からの酢酸の吸着実験に次の器具および試薬を使用した [器具] 1000mlメスフラスコ(1)500mlメスシリンダ(1)500ml試薬瓶(5)共栓三
実験レポートを書く場合この「実験目的」を利
用して「緒言」を作成して下さい
実験方法は過去形にて記述
11
角フラスコ(5)2mlホ-ルピペット(2)5mlホ-ルピペット(2)10mlホ-ルピペット(1)100ml ホ-ルピペット(1)50ml ビュレット(1)電子天秤直示天秤(注( )内の数値は個数を表す) [試薬] N10N100-水酸化ナトリウム(NaOH)N10-塩酸(HCl)フェノ-ルフタレイン酢酸活性炭 1)2)および 7)については予め調整済み8)は2日目に実験する 1)酢酸 28mℓ をメスシリンダにて採集しこれを 1000mℓ メスフラスコに入れて蒸留水を加えて 1000mℓとしN2-酢酸を調整した(調整済み)
2)N2-酢酸より順次溶液 500mℓをメスシリンダに取り1000mℓメスフラスコを用いて
N4N8N16N32酢酸溶液を調整し500mℓ試薬瓶保持した 3)共栓三角フラスコ(100mℓ)の空重量を直示天秤にて正確に測定したこれに電子天秤にて測定した活性炭試料約 1gを入れて再び直示天秤にてその重量を正確に測り前後の差から投入した活性炭量を知る
4)活性炭を入れた各々の三角フラスコに各濃度の酢酸溶液 100mℓを正確にホ-ルピペットを用いて入れた(このとき気泡が混入しないように注意した)
5)上記に準備した三角フラスコに栓をしてこれらを所定の温度に設定した恒温槽に浸し
た浸した三角フラスコは約 20分間隔で気泡が混入しないように注意して振り混ぜるこの操作を約 2時間行った
6)次に滴定に用いて約 N10-N100-水酸化ナトリウム溶液 1000mℓを調整し濃度既知の塩酸溶液を用いてその正確な濃度を決定しておく(調整済み)
7)調整された酢酸溶液の各々を6)において標定した N10-水酸化ナトリウム水溶液にフェノ-ルフタレインを指示薬として滴定し各酢酸溶液の濃度を求めた(標定に要する
酢酸量は N2-と N4-の場合は 2mℓN8-と N16-の場合は 5mℓN32では 5mℓをホ-ルピペットで採集するただしN32についての滴定はN100水酸化ナトリウムで滴定した(各濃度について 3回ずつ滴定する)
注)ビュレットは各班に 2 本ある濃度の高い N2 酢酸から測定するので両方のビュレットにはN10-水酸化ナトリウム水溶液を入れて開始する
最重要注意事項
滴定を行う場合安全確保のため必ず安全メガネを着用すること 8)次に各試料溶液を一つずつ手早くろ過しろ過液を N10-水酸化ナトリウムで滴定して平衡濃度を決定した(標定に要する酢酸量は N2-と N4-の場合は 2mℓN8-とN16-の場合は 5mℓN32-では 5mℓをホ-ルピペットで採集したただしN32 ーの場合は N100 ー水酸化ナトリウムで滴定した)
12
1) 酢酸溶液の濃度の測定(1日目レポートにこの図は不要) 酢酸 28mℓをメスシリンダにて採集しこれを 1000mℓメスフラスコに入れて蒸留水を加えて 1000mℓとしN2-酢酸を調整する
N2-酢酸より順次溶液500mℓをメスシリンダに取り1000mℓメスフラスコを用いて N4-N8-N16-N32-酢酸溶液を調整し500mℓ試薬瓶に保持する
滴定用のビュレットを N10-N100-水酸化 ナトリウム溶液で共洗いする(3回)
ビーカーに酢酸溶液を少量入れて共洗いを行う (3回)試薬瓶からビーカーに酢酸溶液を滴定に 必要な量だけ取り出す
ホールピペットをビーカーの酢酸溶液を 使用して共洗いを行う(3回)
滴定用の三角フラスコに酢酸溶液を分取する
滴定(滴定は同じ濃度の酢酸溶液を 3回 以上滴定して平均する)
酢酸溶液の濃度計算
滴定による酢酸濃度の決定
1000
1000vfNvx timestimes=times (33)
x酢酸の仕込み液濃度 [molℓ] v酢酸の仕込み液の分取量 [mℓ] NNaOHの規定度 [N] fNaOHのファクター [-] vrsquoNaOHの滴定量 [mℓ] 注)酢酸は 1価の酸なので 1molℓ=1N(1規定)
13
式(33)の使用例 酢酸の仕込み液の分取量 v =2 mℓ NaOHの規定度 N = 01 N NaOHのファクター f = 0998 NaOHの滴定量 vrsquo = 985 mℓ である場合 式(33)を利用して酢酸の仕込み液濃度 x[molℓ]を求める
1000
1000vfNvx timestimes=times
vvfNx
timestimes=
49202859998010 =timestimes= molℓ (この xが濃度 C または C0 です)
2)酢酸溶液と活性炭の接触のフローチャート(1日目) 共栓三角フラスコ(100mℓ)の空重量を 直示天秤にて正確に測定する
電子天秤にて活性炭試料約 1g測る
共栓三角フラスコ(100mℓ)に 活性炭試料約 1gを入れる
活性炭試料約 1gを入れた 共栓三角フラスコ(100mℓ) を直示天秤にてその重量を測る
共栓三角フラスコ(100mℓ)の前後の 差から投入した活性炭量を計算する
活性炭を入れた各々の三角フラスコに 各濃度の酢酸溶液 100mℓを正確にホ-ルピペットを用いて入れる(このとき 気泡が混入しないように注意する)
三角フラスコに栓をしてこれらを所定の温度に 設定した恒温槽に浸す浸した三角フラスコは 約 20分間隔で気泡が混入しないように注意して 振り混ぜるこの操作を約 2時間行う
14
3)吸着量の測定(2日目) 恒温槽の温度を測る
恒温槽から三角フラスコを一つずつ取り出す
各試料溶液を一つずつ手早くろ過する
活性炭
ろ液を滴定して平衡濃度を決定する
回収
吸着量の計算
Langmuirの吸着等温式Freundlich式のパラメータの決定
グラフの作成
吸着量の計算10001000 times
minus=
wCC
n (34)
n吸着量 [molg] C0 酢酸水溶液中の酢酸の濃度 [molℓ] C ろ液中の酢酸の濃度 [molℓ] w 活性炭の量 [g]
35 実験結果のまとめ方 実験結果は実験レポートを書く場合に考察と並んで重要な部分ですので主な注意事
項をここで説明しておきます グラフの作成n vs C nC vs C ln n vs ln C の 3つのグラフの作成 配布された Excel ファイルを利用し下図のような図を作成してみましょう
15
レポートの間違いやすい場所 ①表や図を示す場合次の例のように文章でもその旨を示す [実験結果] 共栓付三角フラスコに活性炭約 1g入れた試料の重量 w[g]を Table1に示す
Table1 調整酢酸濃度を入れる活性炭試料の重量 w [g]
酢酸規定度[N]
活性炭試料の質量w [g]
12 10300
14 10001
18 10126
116 10011
132 10109 酢酸(1)-水(2)-活性炭(3)の 12における吸着平衡の結果を Table 6および Fig1に示すただし活性炭 1gに吸着された酢酸のモル数 n[molg]は次式より求めた
( )10001001
0 timestimesminus=w
CCn b
C0仕込み液中の酢酸濃度 [molℓ] Cbバルク相中の酢酸濃度 [molℓ] w活性炭試料の質量 [g] n吸着量 [molg]
例えばCb=04621C0=04894w=10300の時は次のように計算できる
( ) 026501000100
0300114621048940 =timestimesminus=n
Table6 酢酸(1)-水(2)-活性炭(3)の 12における吸着平衡
吸着された溶質のモル数n[molg]
バルク相中の濃度Cb[moll]
00205 04621
00175 0241
00139 01139
00105 00519
00081 00243 ②得られた図や表の解釈(読者にそれらから読み取ってもらいたい事柄)の説明文を次の
例のように文章で記述する数字や図だけ示して読者に「理解しろ」というようなレポー
トではよくありません Table 6および Fig1よりバルク相中の酢酸濃度 Cbの増加にともない吸着量 nも増加することがわかったまた吸着量 n の値は酢酸濃度 Cbの増加にともない n=に漸近することがわかる
グラフ(Fig)は次ペ
ージに掲載すること
グラフや表の後にはそれらの結果より得られた知見を文章でも
記入すること
16
36 エクセルによる吸着データの整理法 注コンピュータの画面はWindowsXP上での操作になっています他の OS(Windows98 2000
NT)搭載のパソコンでも同様の作業が可能です) 先ほど問1で説明したように溶液濃度の濃度変化から吸着量 nを求めました実験では吸着後の水溶液中の酢酸の濃度 Cと吸着量 nの関係を各濃度の溶液(5種類)について測定しその値を計算します このようなデータの整理には表計算ソフトであるマイクロソフト社の Excelが便利です
Excel の起動方法はそのソフトがインストール(設定)されているコンピュータにより若干方法が異なることがありますがほとんど同じですここでは福岡大学の総合情報処理
センターのコンピュータの設定に従って説明します 表計算をしてみましょう セルとは セルというのは最小単位の四角のことです例えば「(Aの1)またはA1というセルセル
B1」のようにセルという言葉を使いますセル A1に1という数字を入れてみましょうセルA1をクリックしてキーボードから「1」と入力しキーボードの「Enter」キーを押します
図 5 Excelの入力例1 図 6 Excelの入力例2
次にセル B1に「5」という数字を入れましょう次にセル C1にセル A1と B1に記入された数値の和を表示させてみましょう 下の図のようにセル C1をクリックします上の「 fx 」と書かれた右のボックス(何かを書くところに)「 =A1+B1 」と書きましょうそして Enterを押すとセル C1に 6と表示されます
図 Excelを用いた関数計算 実験では吸着後の水溶液中の酢酸の濃度 Cと吸着量 nの関係を各濃度の溶液(5種類)について測定しましたこのデータに対してExcelを用いて表計算してみましょうまず先ほど記述したセル A1~A3は「Delete」(デリート)キーで値を削除しましょう
17
次にセル A5~A9に活性炭と接触する前の酢酸水溶液の初濃度 C0[moldm3]セル
B5~B9に活性炭と接触後分離した酢酸水溶液の濃度 C[moldm3]セル E5~E9に活性炭の質量 W[g]をキーボードから入力します作成した一例を次に示します
図 8 Excelによる吸着量nの計算 ここで1gの活性炭に吸着された酢酸の物質量n [mol]を式 (4)より計算できるのでセル C 5~C9に次の関数式を記述します式の内容としては
)( 0CCWVn minusminus=
となるように記述するので実際の Excelの関数としては次のように行います セル C 5をクリックし関数ボックス(fxの右)に「=(A5 ndash B5)01E5」と記述(半角または直接入力形式で)し「Enter」キーを押し確定しますこの関数はフィルハンドルを利用してセル C 6~C9にコピーしますただし実験で溶液は 100cm3使用しましたが
溶液の濃度 C が[moldm3]の単位ですので100cm3=01dm3 となり関数式の中では
V=01 dm3としています なおグラフの記述方法やフィルハンドルの使用方法については化学工学プログラミ
ングなどの補助資料を参考にして下さいまた実験の際に配布した Excel ファイル(ファイル名ad_graxls)を使用すると実験データの理論的な解析も容易にできますので試してみましょうExcelファイル(ファイル名)「ad_graxls」の使用方法は次節で説明します 36 実験結果の考察方法 (吸着実験について) 実験結果の考察方法は種々の方法がありますがここでは一例として理論と比較する
方法を示します実験結果として下図(左)のようなグラフができましたこのような実
験結果に対して理論的な考察を行ってみましょうここでは次節で説明するラングミュ
ア(Langmuir)の単分子吸着モデルで計算した理論線と実験と比較したものを下図右に示しますこの図を作る方法は次節で説明しますレポートの考察の部分はラングミュア
(Langmuir)の単分子吸着モデルの式の導出から書いて下さい 理論を作る場合幾つかの仮定をしますがその理論が多くの実験結果をうまく説明でき
ている場合その仮定がある程度妥当なものであったことがわかります指針書に書いてあ
った以外の理論についても興味があれいばためしてみましょう
セル C5をクリックし関数ボックス( fx の右)に「=(A5 ndash B5)01E5」と記述(半角または直接入力
形式で)します
18
ラングミュア(Langmuir)の単分子吸着モデルを用いて理論値を計算するには配布され
た Excelファイル(ファイル名)「ad_graxls」を使用すると便利ですその使用方法を以下に示します配布プログラムは化学工学プログラミングの講義の場合と同様に総合情報処
理センターの共通領域にあります各自コピーして使用して下さいコピーするには化
学工学プログラミングの講義の場合と同様にコピーしようとするファイルを共通領域から
自分の使用しているコンピュータのデスクトップにドラッグドロップします共通領域で
ファイルを開くとファイルの消去などで他の人が使えなくなりますので共通領域でファイ
ルをダブルクリックしないようにして下さい誤って共通領域でファイルをダブルクリック
した場合はそのファイルを閉じるボタンをクリックし閉じて下さい 各自のコンピュータに保存した Excelのファイル(ファイル名ad_graxls)をダブルクリ
ックして開きます自宅へ持ち帰る場合各自のフラッシュメモリーやフロッピーディスク
を使用しまたはメールを使用して添付ファイルで送信できます各自のフラッシュメモ
リーやフロッピーディスクに保存してあるファイルを再編集する場合はフラッシュメモリ
ーやフロッピーディスクをコンピュータの USB 端子またはフロッピーディスクドライブに挿入します次にデスクトップ上にあるマイコンピュータのアイコンをダブルクリックし
ます もしデスクトップ上に上のアイコンが無ければ画
面左下の「スタート」ボタンからマイコンピュータをク
リックしてくださいすると次のような画面が立ち上が
ります
ラングミュア(Langmuir)の単分子吸着モデルで計算した
理論線
19
その中からフラッシュメモリーの場合は「リムーバブルディスク」をフロッピーディ
スクの場合は「35インチ FD」のアイコンをダブルクリックしてくださいファイルが保存されていれば次の画面が出てきます
この画面の中の「ad_graxls」ファイルをデスクト
ップにコピーしますまず「ad_graxls」ファイルを左クリックしますこの時クリックした指はは
ずさないようにしますその状態のままデスクトッ
プまでファイルを移動させますそしてデスクト
ップ上の任意の場所でクリックした指をはずします
これでデスクトップ上に「ad_graxls」のファイルがコピーされましたのでデスクトップにコピーさ
れたファイルをダブルクリックして開きますコピ
ー操作が上手くいかなかった場合もう一度移動の操作を行ってください
必ずデスクトップにコピーしてから開く操作を行って下さいフロッピーディスクから直接
開いて操作を行った場合正しく保存されない可能性があります 「ad_graxls」のファイルを開くと次のような画面が立ち上がりますもし画面が違う場合は画面の下部にある「吸着データ」のタグ をクリックしてくださいこの画面
でデータの処理や計算を行いますでは実際の操作に入る前に予めこのファイルに名前
を付けて保存しておきますまずExcelの画面のツールバー「ファイル」から「名前を付けて保存」をクリックします下のような画面が起動します
20
ファイルの保存先を変えたい場合画面上部のボタンをクリックし保存先にデスクトッ
プを選択します次にファイル名の部分に各自ファイル名を入力しますファイル名は何
でも良いですが分かり易い名前にしておくとファイルの管理がやり易くなります日付や
数字を入れると同名のファイルをいくつも管理する場合に便利ですここでは「吸着実験デ
ータ整理 4月 01」とし「保存」ボタンをクリックします
ファイル名変更後Excelの画面上部のタイトルバーのタイトルが先ほどの名前(上の図とは異なります)になっていることを確認してください
この操作を行うことによって元のデータである「ad_graxls」を変更してしまう心配がなくなります元のデータである「ad_graxls」はファイルが破損しまたは間違った操作の結果を誤って保存してしまった場合などの補助ファイルとなりますので大切に保管しておいて
下さい今後配布するデータは先ほど説明した手順で名前を変えて保存し元のデータに
直接変更を加えないようにして下さい ここから実際の作業に入ります初期状態では模擬のデータが入力されています入力
データは予め計算しておいた酢酸濃度Cb[moll](濃度を Cと表示している場合もあります)と活性炭吸着量 n[molg]になります下の画面の丸で囲んだ部分がそれぞれの値でBCカラム(列)の 4~9行には数値が入力されています関数ではありませんこのデータを利用して実際のデータ解析を行ってみましょう下記のように行うと幾つかのグラフが
現れ実験データに対してラングミアーの単分子吸着を仮定したモデルを用いて精度よ
く計算線が描けることがわかります 今回はCbnの値を入力する必要はありませんExcelが自動的に計算を行って結果を表示するようになっていますつ
まりセル D5に「=B5C5」と関数を入力しこの関数に対してフィルハンド
ルを利用してセル D6~D9へコピーし
ファイルの保存先を変えたい場合画面
上部のボタンをクリックし保存先に
デスクトップを選択します
変更するファイル名はここをクリッ
クして書き換えます
名前を変更したらここをク
リックして保存します
21
まています 次に酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着量 n[molg]の関係および酢酸濃度 Cb[molL]と Cbn[gL]の関係をグラフ化します今回は自動的にグラフが作成されるようになっていますので複
雑な操作は必要ありません ここではデータに対してそれを精度よく表現する近似式をグラフ上に描きその関数
を数値として求める方法を Excelで練習してみましょう
グラフを表示させるには画面の下にある「Graph1」もしくは「Graph2」のタグ
をクリックします「Graph1」には酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着量n[molg]の関係のグラフが「Graph2」には酢酸濃度 Cb[molL]と Cbn[gL]の関係のグラフが表示されます「Graph2」はLangmuir の等温吸着式による相関を表したもので横軸に酢酸濃度 Cb[molL]をとり縦軸に酢酸濃度 Cb[molL]を活性炭吸着量 n[molg]で除した値 Cbn[gL]を示していますLangmuir の等温吸着式についてはこの後の章で説明してありますので各自読んで理解して下さいLangmuirの等温吸着式では式中の定数 ninfin(飽和吸着量)と K(吸着平衡定数)を実験データから最小二乗近似で決定する場合が多くありますここでは
その例を取り上げてデータに対してそれを精度よく表現する近似式をグラフ上に描き
その関数を数値として求める方法(最小二乗法最小二乗については付録に示しており
また化学工学プログラミングの講義においても説明します)を Excelで練習します 配布された Excel ファイル「ad_graxls」では実験点が表示されているだけでそれを精度よく表現する近似式の直線のグラフは「Graph2」に表示されていません今から次の手順で「Graph2」の図(グラフ)に近似式の直線のグラフを表示しますExcel の場合近似曲線(ここでは直線)を求める場合コンピュータが自動的に最小二乗法を使って近似曲線
を計算しています
「Graph1」の画面 「Graph2」の画面
Excelの sheetが表示されたらまずファイル名を変えデスク
トップに保存して下さい次
にGraph2のタックを左クリックして最小二乗法のグラフを
確認して下さい
22
38 Langmuirの等温吸着式による相関 はじめにLangmuir式の定数 ninfinと Kを決定するために「Graph2」酢酸濃度 Cb[molL]と
Cbn[gL]の関係のグラフから最小二乗法により直線の式を求めますExcelを用いてデータに対して近似直線のグラフを描き最小二乗法の直線の式を求めます
次のような「近似曲線の追加」のウィンドウが現れたら今回は線形近似(直線で近似
y=ax+b の式)を選びますので線形近似が黒色に反転していることを確認して「近似曲線の追加」のウィンドウの右下の「OK」ボタンをクリックして下さい
実験点の何れかにポインタをあわせて
右クリックする
近似曲線の追加(R)を選択して左クリックする
「線形近似」であること
を確認して「OK」ボタンをクリックします
23
「近似曲線の書式設定」
のウィンドウでオプシ
ョンから「グラブの書式
を表示する」の前を選ん
でチェック(前のチェッ
クボックスをクリック)
した後「OK」を押す
現れた直線にポインタをあわせて
左クリックすると「近似曲線の書式
設定」のウインドウが表示されます
ここをクリックします
この「オプション」のタ
グをクリックします
「y=」の関数
が現れるのでここ
をクリックする
式の文字フォントが初期値
「8」と小さいのでここ
のボタンをクリックし
フォントサイズを選ぶリス
トボックスを表示し「22」程度の大きなサイズを選択
しクリックする
24
「Graph2」酢酸濃度 Cb[molL]と Cbn[gL]の関係のグラフから最小二乗法により直線の式がこのように求められましたExcel を用いてデータに対して近似直線のグラフを描き最小二乗法の直線の式を求めるこの方法は他の実験データの解析などにも利用できますので
各自活用して下さい 表示された関数式「y=43865+2654」はノートにメモして下さいこの傾き 43865と
切片 2654からLangmuir式の定数 ninfinと Kを決定します決定方法の詳細はこの後の 36 の Langmuir式のパラメータ決定法に示しています ラングミュアの等温吸着式を変形すると次式となる
CCnKnCKn
CCKn
Cβ+α+
==
+= infininfininfin
11)1(
ただしα=1ninfinβ=1(ninfinK)とするこの式より Cnを縦軸Cを横軸とした関係のグラフは傾きα=1ninfin切片β=1(ninfinK)の直線関係を与えることを示しています そこでExcelのシートを利用してこの値からLangmuir式の定数 ninfinと Kを次のように決定しますセル C18D18に Graph2で求めた数値 2654と 43865を代入しますその後D19と C19に関数を ldquo=1D18rdquoとrdquo=D18C18ldquoを代入しますセル内の式は半角で入力してください
現れた関数の文字フォン
トを大きく(例えば 22)してその数字をメモし
吸着データシートの C18と D18に記入する
C18D18 に Graph2 で求めた値 2654 と 43865 を代入した後D19 と C19 に関数を ldquo=1D18rdquoとrdquo=D18C18ldquoを代入する
25
この Excel表示では最小二乗法を用いて決定した傾きαと切片βを用いて α=1ninfin=43865 β=1(ninfinK)=2654 得られた傾きおよび切片よりninfinおよび Kは次のように求まる
ninfin=1α=1D18=000228 molg-1 K =(1ninfin)β=αβ=D18C18=165
つまりセル D19にはninfinの値がセル C19にはKの値が表示されますこれらの値はラングミュア(Langmuir)の単分子吸着モデルで計算した理論線と実験と比較する場合に利用します実験結果に対して理論的な考察を行う例としてラングミュア(Langmuir)の単分子吸着モデルで理論線を計算し実験と比較するにはこの Excelファイルを利用して次のように計算しグラフに表示します セル F5~F30 には溶液中に残る酢酸濃度 Cb[molL]に対する活性炭に吸着された吸着量n[molg]の関係のグラフ「Graph1」の横軸の酢酸濃度 Cb[molL]の適当な値が既に入力してありますこれらのそれぞの酢酸濃度 Cb[molL]に対する吸着された酢酸の吸着量 n[molg]の理論値をラングミュア(Langmuir)式で計算しますラングミュア式は次式で与えられます
KCKCnn
+=
infin
1 (310)
ここでこの実験データを最も精度よく計算できるように決定した ninfinおよび K は上述のようにninfin=1α=1D18=000228 molg-1 K =(1ninfin)β=αβ=D18C18=165 でありこれらの値はセル D19にninfinの値がセル C19にKの値が表示されていますこの値を利用して「Graph1」に計算線を描くにはまずセル G5~G30 にセル F5~F30 のそれぞれの酢酸濃度 Cb[molL]に対する吸着された酢酸の吸着量 n[molg]の理論値をラングミュア式で計算しますそのためにはセル G5 にラングミュア式を次のように記述しますただしセル D19の ninfinの値セル C19の Kの値は常に同じセルから参照するので絶対参照($マークを付けて$D$19 $C$19と記述します)で記述します
Langmuir式をセル G5に記述するただし濃度はF5の値を相対参照しD19と C19は絶対参照($マークが必要)することを忘れないように
セルG5に記述すべき数式
=$D$19$C$19F5(1+$C$19F5)
26
G5記述後フィルハンドルを使用してG5の関数を G6~G30までコピーします Sheet1から Graph1 のタグをクリックしGraph1 に計算線が表示されたことを確認しましょうこれでラングミュア式によるデータの解析は終了です実験値と理論値を比較して現象
について考察してみて下さいラングミュア式を理論的に導く場合にある仮定をしている
のですがその仮定をしているラングミュア式が実験データを精度よく計算できていれば
その仮定が妥当なもとであったと考察できます 与えられたモデルデータでラングミュア式によるデータ解析ができれば他の理論(例え
ばフロインドリッヒFreundlich式や BET式レポートはどちらか一方でも可です) についてもExcel で計算してみましょうレポートには自分のデータについてここで行った内容と同様に計算しその結果を考察に記述して下さい 自分のデータについて同様の計算をするにはまずいままで計算を行った Excel ファ
イルを保存しますデータを自分の実験データに置き換える前に Excel ファイルをさらに別の名前で保存します与えられた Excel ファイルは初期状態では模擬のデータが入力されているので今回自分達の実験したデータを入力していきます入力するデータは予め計算
しておいた酢酸濃度 Cb[moll]と活性炭吸着量 n[molg]になります下の画面の丸で囲んだ部分にそれぞれ自分の実験データを入力していきます
今回はCbnの値を入力する必要はありませんExcelが自動的に計算を行って結果を表示するようになっています 次に酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着
量 n[molg]の関係および酢酸濃度Cb[molL]と Cbn[gL]の関係をグラフ化します今回は自動的にグラフが作成
されるようになっていますので操作は必
要ありません 39 Freundlichの等温吸着式による相関 今回の実験で得られた酢酸濃度 Cbと活性炭吸着量 nのデータを利用してFreundlichの等温吸着式の定数 abの値を求めFreundlichの等温吸着式の理論線をグラフに追加します ここでFreundlich式は次式で表されます
bbaCn1
=
このままでは定数 abの値を決定することが難しいので上式の両辺の対数をとり線形化しますすると次式となります
bCb
an ln1lnln +=
ここでln Cbと ln nの関係をグラフにプロットすれば傾き 1b切片 ln aの直線関係が得られますしたがって実験データである酢酸濃度 Cbと活性炭吸着量 nの値の対数をそれぞれ計算します配布した「ad_graxls」ファイルを開き「吸着データ」シートの任意の部分に以下のような表を作成します
27
次にln Cb[-]の列の最初のセルに以下の数式を入力します
=ln(B5) 上式中の「B5」は Cb の値の最初のセルの位置を指します各個人の位置によって変更してください
次にln n[-]の列の最初のセルに以下の数式を入力します
=ln(C5) 上式中の「C5」は nの値の最初のセルの位置を指します各個人の位置によって変更してください
ここでln Cb[-]ln n[-]の値に対しそれぞれオートフィルを行い計算させますすると以下のようなデータが完成します
計算した ln Cb[-]ln n[-]の値をグラフにプロットし最小二乗法による直線式を求めます
28
ここで以下のような直線の式が得られたとします
9135ln31690ln913531690 minus=there4minus= bCnxy
上式より切片は-5913傾きは 03169となるので以下の要領で定数 a1bを計算します ==there4minus= minus 91359135ln eaa 000270
316901=
b
a の値を Excel で計算させる場合は任意のセルに以下のような数式を入力することで求めることができます
=exp(-5913) これでFerundlich等温吸着式の定数 a1bの値が決定しましたこの値は後で使うのでノートなどにメモしておいてください 次に決定した Ferundlich 等温吸着式の定数 a1b の値を用いてFerundlich 等温吸着式のグラフを作成します先ほども示したように Ferundlich等温吸着式は次式で表されます
bbaCn1
=
従って定数 aと 1bの値はすでに決定しているので任意の Cbの値に対する nの値を数点求めればFerundlich等温吸着式で求めた理論線が得られます以下の操作で理論線を引くことができます Langmuir 等温吸着式による相関のときと同様にExcel の「吸着データ」のシート上の任意の場所に以下のような表を作成します
次に Ferundlich等温吸着式に従いnの値を計算します
bbaCn1
=
式中の定数 a1bは先ほど計算した値を用いますしたがって式は次のようになります
31690002700 bCn times=
この式を Excelのセル内に記入すれば計算ができます次の
29
ように記入します
=00027G5^03169 ここで式中の「G5」は Cbの値が 0のセルを指しています各個人の位置によって変えてください 次に式を記入したセルを Cbの値が 05のところまでオートフィルを行いますそうするとすべての Cbに対して nの値が計算されます
これで Freundlich等温吸着式のデータが完成しましたので次に「Graph1」酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着量 n[molg]の関係のグラフにこのデータを追加し理論線を引きます理論線の引き方は Langmuirによる相関のときと同様の操作を行ってください グラフの書式等を変更し整理すると以下のようなグラフが出来上がります
310 吸着等温線とは 固体の吸着剤を溶液と接触させる時一定量の吸着剤によって吸着される溶質の量は温度一定ならば溶質の濃度の関数になる一定温度での吸着量を温度に対してプロットした時に
得られる曲線を吸着等温線というこの吸着等温線を比較的よく表す経験式として次の
Freundlich式がある
n=aC1b (1) ここで n は吸着剤の質量あたりの吸着量C は吸着平衡濃度a と b は実験から決定されるパラメータであるがその物理的意味は多少希薄である これに対し理論的な意味を持つものに次のラングニュア(Langmuir)の吸着等温式がある
30
KCKCnn
+=
infin
1 (2)
ただしninfinは飽和吸着量Kは吸着平衡定数であるこの式は
1)吸着分子が固体表面で単分子以上の厚い層を作ることはない 2)吸着分子同士の間の相互作用はない
という二つの仮定にもとに導かれたものである 結果の整理および報告 Freundlich吸着等温式Langmuir吸着等温式の各々のパラメータの最適値を求めよまた活性炭の吸着特性および表面積について考察し化学工学における吸着操作の重要性につい
ても検討せよ 311 吸着等温式 (a) ヘンリー(Henry)型吸着等温式 液相の濃度あるいは気相の圧力が小さい場合吸着分子間の距離が十分に長いため吸着
分子同士の相互作用が無視でき固体表面と吸着分子のみの相互作用で吸着量を決定できる
とき次式のように表される
n=KC (3)
ここでKは比例定数である図 3-1の(a)に示すように濃度 Cと吸着量 nは比例関係があり一般に吸着量が小さい範囲で成立する気体の場合は溶液濃度 Cの代わりに気相圧力 pを用いればよい
濃度(分圧)
濃度(分圧)
濃度(分圧)
濃度(分圧)
吸着量
吸着量
吸着量
吸着量
(a)ヘンリー型 (b)ラングミュア型
(d)BET型(c)フロインドリッヒ型
0
0
0
0
図 3-1 吸着等温式
31
(b)ラングミュア(Langmuir)型吸着等温式 ラングミュアは図 3-2 に示すように固体表面に同等な吸着力を示す吸着サイトがあり
表面に 1分子層だけ吸着する(単分子層吸着)と仮定して平衡状態における吸着量と溶質濃度(気相分圧)のと関係を導いた全吸着点のうち吸着分子に覆われている吸着点の割合
をθ[-]とすると分子の脱着速度 rrsquo[mols-1]はθに比例する比例定数を a[mols-1]とすると次式のように表される
吸着剤
吸着分子
吸着サイト
図 3-2 固体表面上の吸着サイト(Langmuir式の導出) r=aθ (6) また気相からの吸着速度 r[mols-1]は空いている吸着点の割合(1-θ)[-]と溶液濃度 C[molm-3]に比例する rrsquo= b(1-θ)C (7) このときの比例定数を b[m3s-1]とするまた平衡状態では両速度は見かけ上等しいため以下の式が成り立つ aθ=b(1-θ)C (8) これを変形する
CbaCbsdot+
sdot=θ (9)
ここで飽和吸着量を ninfin[molkg-1] ba を K[m3mol-1](Kは吸着平衡定数)とおくと infin=nnθ
となるので次式が得られる
32
KCKCnn
+=
infin
1 (10)
これをラングミュア式と呼ぶ
(c)フロインドリッヒ(Freundlich)型吸着等温式 フロインドリッヒの吸着等温線は図 3-1(c)のように示される
n=aC1b (11) nは吸着量[molkg-1]で aと bはともに吸着定数[-]である (d)BET(Brunauer-Emmett-Teller) 型吸着等温式
BET型の吸着等温線は図 3-1(d)に示されるラングミュア式は表面に 1分子層だけ吸着すると仮定したものであるがBET式は無限分子層まで吸着できる式である図 3-3に示すように吸着した分子がそれぞれ次の層の吸着サイトとなり分子は積み重なって多分子
層に無限層まで吸着できるものとし各層への吸着にラングミュア式を適用すれば次式の
ように表せる
( ) ( )CKCCCKqq
minus+sdotminussdotsdot
=infin
11 (12)
この式は多孔質固体の細孔表面積を窒素ガスの吸着によって測定する際に利用される重要な式
である
表面の吸着サイト
分子上の吸着サイト
図 3-3 多分層吸着モデル
Langmuir式のパラメータ決定法 水溶液からの酢酸の活性炭に対する吸着平衡データ(吸着平衡温度 12)は表 3-1のよ
うに与えられる実験データよりラングミュア式のパラメータ(K吸着平衡定数ninfin飽和吸着量)を最小二乗法で決定せよさらにラングミュア式より決定した ninfinKの値を用いて吸着等温線を計算し計算線として図に示し実験点と比較せよ
33
表 3-1 n C Cnの関係
ラングミュア式は式(310)で与えられるこの式を変形すると次式となる
CKnCK
n infinsdot+
=11
(313)
両辺に Cをかけると以下の式が導出される
CCnKnCKn
CCKn
Cβ+α+
==
+= infininfininfin
11)1( (314)
ただしα=1ninfinβ=1(ninfinK)とする式(314)より Cn と C の関係のグラフプロットは傾きα=1ninfin切片β=1(ninfinK)の直線関係を与えることを示している表 3-1の値を用いて計算した Cnと Cの関係を表 3-1および図 3-4に示す 最小二乗法を用いて傾きαと切片βを決定した α=1ninfin=43865 β=1(ninfinK)=2654 得られた傾きおよび切片よりninfinおよび Kは次のように求まる
ninfin=1α=1D18=000228 molg-1 K =(1ninfin)β=αβ=D18C18=165
0
50
100
150
200
0 200 400 600
C [ molm-3 ]
Cn [ kgm-3 ]
傾き = 1 ninfin
1 ninfinK
切片0
05
1
15
2
25
3
0 100 200 300 400 500
液相の溶質濃度 C [ molm-3 ]
吸着量 n [ molkg-1]
液相と溶質濃度 C [ molm-3 ]
吸着量
n[ m
olk
g-1]
実験点
Langmuir式パラメータninfin 00033 [ molg-1 ]K 00086 [ m3 mol -1 ]
図 3-4 ラングミュア定数の決定 図 3-5 12における酢酸濃度 Cと
吸着量 nの関係
C [molm-3] n [molkg-1] Cn [kgm-3] 460 225 109 529 214
268 199 149 105 060
172 128 732 504 357
34
Freundlich式のパラメータ決定法 酢酸水溶液中における酢酸の活性炭に対する吸着実験を行ったところ以下のような実験デー
タを得たただしCbはバルク相における酢酸濃度n は活性炭に対する酢酸の吸着量を示す
Cb[molL] n[molg] log10Cb log10n 04621 000205 02410 000175 01139 000139 00519 000105 00243 000081
実験データを利用して次式で与えられる Freundlichの等温吸着式の定数 abの値を求めたい
bbaCn1
= (1)
このままでは定数 abの値を決定することが難しいので上式の両辺の対数をとる
bbb
bb
Cb
aCa
aCn
ln1lnlnln
)ln(ln1
1
+=+=
=
(2)
ここで横軸に ln Cb縦軸に ln nの関係をグラフにプロットするすなわち x=ln Cby=ln nと考える
bCb
an ln1lnln += (3)
ここで直線式 y=a0+a1xと比較するすなわち
)(1)(ln
1
00
傾き
切片
ba
eaaa a
=
=rarr= (4)
a0および a1は最小二乗法により数値で求められる与えられたデータでは a1= a0= なので a= b= となる この値を n=acb
1bに代入してcb=0~05の範囲で nの値を計算する
35
BET式のパラメータ決定法 BET式は次式で与えられる
)1)(1( KCCCKCnn
+minusminus=
infin
(17)
以下のように BET式の変形を行う
)1()1(
KCCKCnCn+minus
=minusinfin
(18)
(18)式の逆数をとると
KCnCK
KCnKCC
Cn infininfin
minus+=
+minus=
minus)1(1)1(
)1(1
(19)
(19)式の両辺に Cをかえると
KCnCKC
CnC
infin
minus+=
minus))1(1(
)1( (20)
(20)式を変形すると次式が得られる
CKn
KKnCn
Cinfininfin
minus+=
minus11
)1( (21)
C と)-(1 Cn
Cのプロットは傾き
KnKinfin
minus1切片
Kninfin
1の直線関係を与えることを示している
これをグラフにプロットし最小二乗法に傾きおよび切片を求める
36
312 活性炭の比表面積の決定 酢酸分子の構造を以下に示す
Hc-Cb-Ca
Hd
Hb Oa
Ob-Ha
1219deg
Ca Oa
Ob
図 36 酢酸の構造
酢酸の 1分子の吸着面積srsquo [m2]を図 3-6に示すこのとき文献より
Caと Oaの結合距離 1321Å Caと Obの結合距離 1206Å OaCaObの角度 1219deg Cの原子半径 077Å Oの原子半径 062Å
したがって吸着面積 Slsquoは次のようになる
( ) ( ) 2088 10376109931036321 minusminusminus times=timestimestimestimes=s m2
ここで活性炭の比表面積 S[m2g]は次式で示される 10026 23 snS timestimestimes= infin
S活性炭の比表面積 [m2g] ninfin飽和吸着量 [molg] srsquo酢酸 1分子の吸着面積 [m2] 602times1023アボガドロ数 [個mol] したがって活性炭の比表面積 S[m2g]は
003350=infinn molg 2010376 minustimes=s m2 より
51281037610026003350 2023 =timestimestimestimes= minusS m2g
37
4 粘度密度測定 41 はじめに 大量生産を目的とした工業的化学プロセスはほとんど流れ系(流通系)であるそれらの系において操作対象となる各物質の粘度は装置を設計操作する場合きわめて重要
な物性値である 本実験では低分子溶液および高分子溶液の粘度測定を通じて液体の粘度について考察するさらに演習問題を通じて気体液体高分子溶液などの化学プロセスで対象となる物
質の輸送物性(粘度拡散係数)の重要性を認識されたい 42 低分子溶液の粘度 [目的] 種々の濃度のエタノール水溶液の粘度を測定しその溶液の粘度について考察する [概要] 25におけるエチルアルコール濃度 02040506080100 wt の水溶液について流下時間を測定しこの結果より相対粘度絶対粘度運動粘度を求めグラフにするま
た水の密度水-エチルアルコール溶液の密度についてはピクノメーターを用いて決
定する報告書には相対粘度絶対粘度運動粘度 vsエチルアルコール濃度の関係をそれぞれグラフにして提出する
[計算方法] 相対粘度絶対粘度運動粘度の定義は次のようになる
相対粘度 ww
w tdtd
ηη = (41)
η 混合溶液の粘度 [gcms] ηw水の粘度(8007times10-3 gcms) [gcms](25における粘度) d エチルアルコール水溶液の密度 [gcm3] dw水の密度(099704gcm3) [gcm3](25における密度) t エチルアルコール水溶液の流下時間 [s] tw水の流下時間 [s] 下付添字 W 水
絶対粘度 www td
tdη
η= (42)
運動粘度 ν=ηd [cm2s] (43)
38
[実験方法] 1) 粘度計を洗浄し粘度計内 に二連球で空気を送り込み
乾燥させる乾燥しにくい 場合はアセトンを滴下し た後再度二連球で空気 を送り込み乾燥させる 2)ピペットで一定体積(10mℓ) の純水を取り広い口 f から 粘度計に水を入れる 3)粘度計を恒温槽(25)に つけ約 10 分静置する 4)安全ピペッターを口 a に 取り付け液面が b 上部に 到達するまで吸い上げる 5)安全ピペッターを外すと 液面が降下しだす液面が bd 間を通過する時間をスト ップウォッチで測定する
6)純水での測定を 3 回繰り返す 7)純水を粘度計から取り除くその後粘度計内に二連球を用いて空気を送り込み乾燥させる 8)粘度計乾燥後複数の濃度に調整済みのエチルアルコール水溶液(10mℓ)を粘度計にいれ4)~6)の作業を繰り返し行う(3 回)なお濃度の異なるエチルアルコール水溶液を粘度計内に導入する場合には7)と同様に二連球を用いて粘度計内に空気を送り込み乾燥させる
表 4-1 エチルアルコール水溶液の濃度密度相対粘度の関係 エチルアルコール濃度
[wt] 密度 d[gcm3] 相対粘度
η ηw[-] 0
20 40 50 60 80
100
安全ピペッター接続
図 4-1 粘度計
液面の bd間の通過時
間を測定
f
39
43 密度測定 [目的] 本実験では水とエタノールの種々の組成の混合液体について密度を測定し分子間相互
作用について考察する [実験方法] 1)ピクノメーターの容積測定
図 4-2のピクノメーターの空の重量 wg を秤量する
ピクノメーターの蓋を取り外し
ピクノメーターを水で満たす
設定温度を 25として恒温槽 の電源を入れ恒温槽内の温 度が一定になるまで待つな お水温は恒温槽中の水銀温 度計から読む
恒温槽中に水を満たしたピク
ノメーターを入れる
約 10分間静置する
ピクノメーターに蓋をするこのときピクノメーターの容量
よりも余分の水は蓋の上部より排出される
ピクノメーターの外側を乾いた布で拭い秤量する(その重量を
wwg とする)
恒温槽の温度(25)における水の密度 dwgcm3(=099704gcm3)
より次式を用いてピクノメーターの容積を求める
w
w
dww
Vminus
= (44)
図 4-2 ピクノメーター
蓋
40
表 4-2 エチルアルコール水溶液の濃度と密度の測定結果(25) エチルアルコ
ール濃度[wt]
wrsquo[g] ww[g] V[cm3] w[g]
d[gcm3]
0 20 40 50 60 80
100
099704
エチルアルコール濃度[wt] 空のピクノメーターの重量 wrsquo[g] 水を入れたときのピクノメーターの重量 ww[g] ピクノメーターの体積 V[cm3] エタノール水溶液の入れたときのピクノメータの重さ w[g] エタノール水溶液の密度 d[gcm3]
容積 Vを求めたピクノメーターに混合溶液(調整済み)を入れてその重量 wgを秤量し次式で混合溶液の密度を求める
Vwwd minus
= (45)
エタノール濃度と密度 d の関係をグラフにプロットする
41
44 高分子溶液の粘度 [目的] 高分子溶液の粘度測定から分子量の粘度に与える影響について考察する [概要 ] オストワルド粘度計を用い種々の濃度のポリビニルアルコール(PVA ((-CH2CHOH-)n))水溶液の粘度を測定し粘度データよりポリビニルアルコールの分
子量を求める まず 05g100cc の濃度のポリビニルアルコール水溶液を調製する次にこれを原液
とし23 12 13 15の濃度の溶液を調製するこれらの溶液についてオストワルド粘度計を用いてそれぞれ流下時間を測定し相対粘度絶対粘度運動粘度を求め実験デ
ータより極限粘度[η]を求めるまた報告書には相対粘度絶対粘度運動粘度C
)ln( wηη
Cw
w-η
ηη vsポリビニルアルコール濃度の関係をそれぞれグラフにして提出する
[計算方法] エチルアルコール水溶液の粘度測定と同様の手法を用いて粘度の計算を行うなおポリビニルアルコール水溶液の密度はピクノメーターを用いて測定すること 表 4-3 ポリビニルアルコール水溶液の濃度密度相対粘度の関係 ポリビニルアルコール
濃度 [g100cc] 密度 d[gcm3] 相対粘度
η ηw[-] 05times(15) 05times(13) 05times(12) 05times(23)
05
42
[分子量の計算方法] 実験を行った結果以下のような粘度データを得られるとする実験データより極限粘度
を求めポリビニルアルコール(PVA)の分子量Mを決定せよ
PVA 水溶液濃度
C[g100cc]
相対粘度
ηηw[-]
絶対粘度
η[gcms]Cw
w-η
ηη
C)ln( wηη
05times(15) 1031 0008255 031 0305
05times(13) 039 0378
05times(12) 03 0289
05times(23) 0375 0353
05 0364 0334
ηw=8007times10-3 gcms 線状高分子の極限粘度[η]と分子量Mの関係は次式で与えられる [η]=KMα (46) ただしポリビニルアルコールの場合K=666times10-4α=064であるなお極限粘度[η]は次式で定義される
CC w
w
0
-][ limη
ηηη
rarr
= (47)
または
CC
)ln(][ w
0lim
ηηη
rarr
= (48)
よって濃度 CとCw
w-η
ηηまたは濃度 Cと
C)ln( wηη の関係をグラフ化し最小二乗法によ
り切片の値を求めると極限粘度[η]が決定される
Cw
w-η
ηηと C の関係より最小二乗法を用いて切片の値を決定すると(図 43 参照)切片=
03242傾き=00874となるよって極限粘度は以下のようになる[η]=03242同様
にC
)ln( wηη とcの関係より最小二乗法を用いて切片の値を決定する
(図 44参照)と切片=03249傾き=00256となり極限粘度は以下のようになる[η]=03249
Cw
w-η
ηηと Cの関係より決定した[η]=03242を用いてポリビニルアルコール(PVA)の
分子量 Mを計算する(46)式より以下のように PVAの分子量 Mを計算することができるM=([η]K)1α
=(03242(666times10-4))(1064)
=15811
43
y = 00874x + 03242
0
02
04
06
08
1
0 01 02 03 04 05 06 07
c[g100cc]
(η-ηw)(ηwc)
cw
w
η
ηηminus
極限粘度[η]
図 43 298Kにおける PVA濃度 CとCw
w-η
ηηの関係
y = 00256x + 03249
0
02
04
06
08
1
0 01 02 03 04 05 06 07
c[g100cc]
(ln(ηη
w))c
c)ln( wηη
極限粘度[η]
図 44 298Kにおける PVA濃度 CとC
)ln( wηη の関係
44
5 植物からの DNAの抽出 51 はじめに 分子レベルでの遺伝子の構造解明や遺伝子の発現に関する研究は近年急速に発展している
これら生命現象のしくみを分子レベルで解明しようという分子生物学の分野ではさまざま
な遺伝子の解析や応用方法が開発され我々の生活に身近なものになりつつある 本実験では初歩的な分子生物学に関する実験として植物(タマネギ)からの DNA の
抽出を行い抽出した遺伝子の電気泳動法による分離実験を試みる 52 試薬および器具 試薬 タマネギ(細胞中から遺伝子の抽出を行う) 台所用洗剤(洗剤中に含まれる界面活性剤には植物の細胞膜およびタンパク質を破壊す
る働きがある) 塩化ナトリウム(DNAは塩化ナトリウム水溶液に溶解し易い性質がある) エタノール(予め冷やしておくDNAはエタノールにほとんど溶解しない) 制限酵素(DNAを一定の部位で切断する働きを働きがある) TE緩衝液(pH緩衝剤が入った溶液) 器具 ビーカーミキサーフィルターメスシリンダー駒込ピペットガラス棒 マイクロピペット電気泳動装置ポラロイドカメラ 53 実験方法 1)タマネギは 1回の実験で半個のうち内側の半分程度を使用するタマネギ水 30ml台所用洗剤数滴をミキサー用ガラス容器に入れ40~60秒程度(固体状のタマネギがなくなる頃が目安)ミキサーにて混合する
2) 1)で作成した混合溶液をビーカーに移し約5g程度の塩化ナトリウムを加えガラス棒で静かに攪拌する粘性の大きな溶液が得られる
3) 2)で作成した溶液をフィルターを用いて濾過し濾液を回収する 4) 濾液の約2倍程度の量の冷エタノールをビーカーの壁伝いに静かに注ぐ 5) ビーカーを揺するとエタノール層に白くふわふわしたものが浮いてくるこれが DNAであるガラス棒で DNAを巻き取りシャーレ上にて DNAを回収する顕微鏡を用いて回収した DNAの状態を観察する
6)マイクロチューブ(容量 15ml)中に用意した 70エタノールを 8 分目程度まで注ぐ5)にて回収された DNAをマイクロピペットを用いて70エタノールの入ったマイクロチューブ中に移す軽く混ぜることによりDNA から不要な物質を洗い流す遠心分離してDNA をマイクロチューブの底に沈めた後溶液を捨てて DNA を乾かす乾いたらTE緩衝溶液を 1ml加えて放置するDNAの溶液が得られる
54 電気泳動装置による DNAの観察
本実験は職員と一緒に行うこと 実験を行う人はビニール手袋をすること 1) 抽出した DNAを電気泳動装置で観察するマイクロピペットを用いて以下のように調製した DNAの混合溶液を調製する(いずれの溶液も調製済)
45
2) マイクロピペットを用いてアガロースゲルの試料を流し込む穴(ウェル)に1)にて調製した溶液 Aおよび Bを注ぎ込む注入量は20μℓとする電気泳動装置のスイッチを入れて100Vの電流を流しアガロースゲル内にて DNAを電気泳動させる
3) 試料に予め加えられておいた青色の色素が 7 分目程度まで進んだら電気泳動を中止する(約 30分程度)
4) (ここでの作業は職員が行う) アガロースゲルを取り出し染色液に浸す染色後ゲルを取り出しポラロイドカメラで
DNAの泳動状態を撮影する
+ -
アガロースゲル
試料を流し込む穴(ウェル)
図 51 電気泳動装置
6 5 4 3 2 1
図 52 DNAの電気泳動写真の一例
55 電気泳動装置の原理 電気泳動装置の原理図を以下に示すアガロースゲル(寒天から不純物を除いたもの)中
に DNAをセットし電流を流すとDNAは電流の向きとは逆にマイナスからプラス方向
調製済 溶液 A(制限酵素なし) 水 11μℓ 10timesH Buffer 2microℓ 植物 DNA 5μℓ
調製済 溶液 B(制限酵素 Eco RI入り) 水 11μℓ 10timesH Buffer 2microℓ 植物 DNA 5μℓ 制限酵素 2μℓ
1 DNA(タマネギ)+制限酵素 2 DNA(タマネギ)+制限酵素 3 DNA(タマネギ) 4 λ-DNA(大腸菌)+制限酵素 5 λ-DNA(大腸菌) 6 サイズマーカー
500bp
46
に動く(このことを電気泳動という)これはDNA のリン酸部分が負に帯電しているためでありまたDNAはその長さにより泳動距離が異なる(短い遺伝子ほど長く泳動する)電気泳動ではこの性質を利用してDNAを大きさごとに分離することができる
塩基対数によってDNAを分離
EtBr (蛍光試薬)DNAの二本鎖内に入り込む
発光
UVλ=302nm
励起
分離後のアガロースゲルをエチジウムブロマイド(EtBr)溶液に浸す
DNAを含んだ溶液
アガロースゲル
リン酸部分が負に帯電
塩基 (ATGC)-
+
カメラで撮影
電圧
DNA構成成分(dNTPs)
バンドが明る
DNA量が
バンド(DNAの存在)
図 53 電気泳動の原理
56 制限酵素とは DNA は4 種類のヌクレオチド(GATC)が不規則につながってできている制限酵素はDNAの特定のヌクレオチドが並んでいる部分を切断する制限酵素には様々な種類がありEco RI(エコアールワン)と呼ばれる酵素は「GAATTC」といった並びの部分だけを切断することができる
GAATTC
CTTAAG
制限酵素
Eco RI
AAGCTT
TTCGAA
制限酵素
Hin dIII
図 54 制限酵素による DNAの切断
レポートについて 1 実験方法および実験結果の整理方法については指針書を参考にすること 2 実験結果については電気泳動の結果について考察すること(制限酵素の影響などにつ
いてまとめてください)
47
6 染色実験
61 はじめに
現在私達の身の周りでは様々な染料が使われている例えばT シャツやジーンズな
どの衣服は橙黄赤青など様々な色に染められている他にも私達が気付かないと
ころで多くの染色された製品を使用しているそこで本実験では高校の化学で学んだ
アゾ染料を合成してみるアゾ染料はアニリンを原料として作られているアニリンはベ
ンゼン環にアミノ基(-NH2)がついたものであるアニリンは無色の液体で水に溶けにく
くアンモニアより弱い塩基性を示すまたさらし粉(CaClO(ClO)H2O)水溶液を加えると
赤紫色を呈するこの呈色反応はアニリン特有のものであるので検出反応に用いられる
このアニリンを出発物質としてアゾ染料を合成してみる
62 試薬および使用器具
【試薬】 ①05moll 水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液
②2-ナフトール ③フェノール ④6moll 塩酸
⑤亜硝酸ナトリウム ⑥アニリン ⑦氷
【器具類】 ①電子天秤 ②50mℓビーカー ③100mℓビーカー
④ガラス棒 ⑤布(ガーゼなど) ⑥ピンセット
⑦ポリ手袋 ⑧ドライヤー ⑨シャーレ
10駒込ピペット(10ml ガラス製)
11駒込ピペット(1ml プラスチック製)
63 実験方法
1) 50mℓビーカーの中に 05molℓ水酸化ナトリウム水溶液 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回
NaOH 水溶液を分取するほぼ 20 mℓ分取できれば可)と 2-ナフトールを約 01g 入れ
よくかき混ぜる調製した溶液の中に布をつけその布はガラス棒でしぼってから(布
をガラス棒ですくいあげればよい)シャーレに広げる温度の異なる条件下(常温およ
び低温)で染料の合成実験を行うため布は最低 2枚調製した溶液と接触させそれ
ぞれ別々のシャーレ(低温用および常温用)に広げる
2) 新しいビーカーに水を約 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回分取)と 6molℓ塩酸約 4mℓ(10m
ℓ駒込ピペットで目分量で可)さらにアニリン約 1mℓ(プラスチック製 1 mℓ駒込ピペッ
ト)を入れてよくかき混ぜる染料の合成を常温および低温下で行うためこの溶液を
2つ調整する
低温下で反応させる溶液は恒温槽で 10~15 分ほどよく冷やした後亜硝酸ナトリウ
ム 05g を加えてよくかき混ぜる
常温下で反応させる溶液には冷却作業を行わずに亜硝酸ナトリウム 05g を加えて
よくかき混ぜる
3) 2)でつくった水溶液をシャーレに広げた布に注ぎ生成される染料を布によく染み
込ませ5分程放置する
4) 色の付いた布を取り出してポリ手袋をした手できれいに水洗いをし乾燥させる
48
5) 色差計を用いて乾燥した布の Lab(L明度aおよび b色度)を測定する
2)で作った溶液は5以下では無色の溶液ですが5以上になると淡い黄色になりま
す
【解説】
アゾ染料はアゾ基(-N=N-)を持っていてこのアゾ基によって鮮やかな橙色を呈色し
ます今回合成したアゾ染料は図の 1-フェニルアゾ-2-ナフトールです意外かもしれ
ませんが指示薬として使われているフェノールフタレインもアゾ化合物ですフェノール
フタレインは pH の変化によって色が出てきす染料の中でも最初は無色のものもありますが
温度を変化させたり酸性やアルカリ性にすると色が出てきます
ベンゼン ニトロベンゼン
N2Cl
ニトロ化 濃硫酸(濃硝酸)
還元反応 濃塩酸
(Sn又は Fe)
アニリン塩酸塩
遊離反応 NaOH
アニリン塩酸塩に強塩基を反応させる
と弱塩基であるアニリンが遊離する
氷冷+亜硝酸ナトリウム アニリン
塩酸
ジアゾ化
塩化ベンゼンジアゾニウム
塩化ベンゼンジアゾニウム
は熱によって窒素とフェノー
ルに分解される
カップリング
C10H7ONa (ナトリウム 2-ナフトキシド)
O
N =
1-フェニルアゾ 2-ナフトール
NH3Cl NH2
49
7 ガスクロマトグラフ質量分析計による茶葉中のカフェインの分析 71 はじめに ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)は極めて低い濃度の化学物質の同定や未知物質の構造決定に極めて強力な分析機器の一つであるGCMSを用いるとサンプルの中に含まれているある成分の分子構造(カフェインの分子構造を図 71に示す)やその量が分かりますもちろん分析機器ですので測定できる物質対象となる系や測定条件にはある
程度の制約があります混合物質を分離するガスクロマトグラフ(Gas ChromatographGC)と分離された成分(物質)を分析(構造決定と濃度測定)する質量分析計(Mass SpectrometerMS)を組み合わせた装置であるこの装置は有機化学生化学環境化学などの多くの分野で非常に多用されている例えば極めて低い濃度でも生体へ強い影響が懸念されるダイ
オキシン類などの土壌や河川の水中での含有率の決定や食品や医薬品中の微量成分の決定
にも利用されている 一方日本人に長い間親しまれてきた緑茶が近年産業界や医学
界で注目されている茶葉にはカフェイン(分子構造図 71)カテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドなどの有用成分が多く含まれておりその効能が注目されている 本実験では茶葉中に含まれるカフェインに対してGCMSを用いて分析する茶葉中には種々の物質が含まれておりGCMS分析を容易にするため前処理として超臨界二酸化炭素抽出(4015MPa程度の高圧力の二酸化炭素を溶剤として利用)により茶葉からカフェインの抽出を行いそのサンプルを GCMSにて分析する
図 71 カフェインの分子構造 図 72 物質の分析 個々の物質や装置についてはインターネットにより下記のWebサイトのフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』などにより調べるとよいカフェイン(caffeine)はアルカロイドの一種プリン環を持つプリンアルカロイドの一種でコーヒー類に含まれることか
らこの名がある化学名は137-トリメチルキサンチン(C8H10N4O2) コーヒーコーラ緑茶紅茶ガラナココアなどに含まれる(量は緑茶が一番多い)結晶は一水和物(C8H10N4O2bullH2O)もしくは無水物(無水カフェインC8H10N4O2)として得られ
る白色の針状または六角柱状結晶で匂いはなく味は苦い融点は 238昇華性がある出典フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』httpwwwwikipediaorg 装置「GCMS」httpwwwanshimadzucojpproductsgcmsqp2010htm (島津) 「超臨界抽出装置」httpwwwkagakucomjasco39-49html (日本分光)
50
レポート課題 1茶葉中に含まれるカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドの中から3つの物質を選びその物質について調べた結果を A4 レポート用紙2枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
2GCMS についてA4 レポート用紙1枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
3与えられたサンプルは茶葉1gから抽出されたのである実験結果よりもとの茶葉
1g中に含まれるカフェインの量を推算し計算式とあわせて示すこと 72 原理および装置 実験で使用する島津製の GCMS装置の全体図を図 73に原理の概略を図 74に示す
1
23
4
5
67 8
9
10
キャリアーガス
試料物質
1ボンベ(He)2圧力計3マイクロシリンジ4サンプラー5試料導入部6分離カラム
7セパレーター8イオン化室9磁石10電子増倍管11記録計
11
図 74 ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)の概略図
サンプルフォルダー
51
GCMS 装置は分離部である図中の 1~6 のガスクロマトグラフ(GC)と7~11 の検出部である質量分析計(MS)から構成される 3のマイクロシリンジを用いて試料を GCMSに導入する導入された試料は5試料導入部でガス化され6分離カラムに導入される分離カラムには吸着剤が充填されおり混合物の試料を導入した場合各物質と吸着剤との
親和性の違いにより各物質の分離カラムから排出されるタイミングは異なる分離カラム
を排出された試料は8イオン化室でイオン化され10電子倍増管にて検出される アセトンに溶解したカフェインの GCMSによる分析結果の一例を以下に示す図 75にク
ロマトグラム図 76にカフェインのピークのマススペクトルを示す
図 75 GCMSにより得られたクロマトグラム
横軸がリテンションタイムで縦軸がピーク強度を表す
図 76 カフェインのマススペクトルとカフェイン(分子量MW=194)の構造
(図 75中のリテンションタイム 126min付近のピークに起因するマススペクトル) 茶葉中にはカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイド以外にも繊維であるセルロースなど多くの物質が含まれているため茶葉そのものを
そのままサンプルとしてGCMSで分析することは困難であるセルロースなどの分子量の大きな物質はカラムに詰まってしまい分析できないそこで今回は超臨界二酸化炭素
による抽出により主にカフェインを他の物質と分離抽出した通常よく利用されるアセ
トン抽出(アセトンに茶葉を浸し特定の成分を抽出する)ではカフェイン以外にも多く
の物質が抽出されるため図 75 のような単独のピークを得ることは難しく複数のピークがクロマトグラムに見られるこのサンプル(この場合茶葉からの抽出物)にはカフェ
イン以外の不純物は少なかったがガスクロマトグラフの分離カラムによりさらにそれ
らの混合物が精度よく分離されるクロマトグラムのピークはそれらサンプル中に含まれ
ていた個々の物質を表しているクロマトグラムのピークを選択することで分子構造解析
したい物質を選んだことになる選択したクロマトグラムのピークの表している物質(ここ
ではカフェイン)に対応するマススペクトルが図 76 に表示されているマススペクトル
52
で横軸がその成分(ここではカフェイン)分子を構成している原子の原子量で縦軸がそ
の量を表しているのでマススペクトルから分子構造を解析するためにコンピュータ内
に蓄えられた物質ごとのマススペクトルデータと今回測定したマススペクトル(分子内に含
まれている各原子の数)を比較することで測定したサンプル中のクロマトピークを選択し
た分子がどのような原子をどれだけ含んだ分子であったかがわかりそれからその物質
がどのような分子構造の物質である可能性が高いかをコンピュータが検索し結果を示す 73 実験サンプルの設置と GCMS装置の操作方法 実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS装置のサンプルフォルダ
ー(図 73)にセットするこのサンプルは茶葉 1gを 50ccの高圧セルにて超臨界二酸化炭素を利用して4015MPa2時間接触の条件で抽出した固体を10gのアセトンに溶かしたものである またコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に装置および装置制
御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 本実験で使用する GCMS の操作は全てコンピュータのモニター上で GCMS の解析プログラムソフトを使用することで行うコンピュータの操作方法を以下に示す なおコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS 装置のサンプルフォルダー(図 73)にセットするまた装置および装置制御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 1)パソコンのデスクトップ上のアイコン「GCMS 分析」をクリックすると以下のようにGCMS制御プログラムを起動するその後「OK」ボタンをクリックする
図 77 GCMD分析用ソフトウェア「GCMS分析」の起動
まず「GC-MS分析」をクリック
「OK」ボタンをクリック
53
2)制御プログラムが起動されパソコンと GCMSの接続が開始される
図 78 「GCMS分析」の接続確認画面 3)GCMSとパソコンの接続が完了すると以下のような画面が表示される
図 79 「GCMS分析」操作画面
4)マススペクトルによる分子構造の解析 サンプル(この場合茶葉からの抽出物)には多くの物質が混じり合っていたがガス
クロマトグラフの分離カラムによりそれらの混合物が精度よく分離されるクロマトグラ
ムのピークはそれらサンプル中に含まれていた個々の物質を表しているクロマトグラム
のピークを選択することで分子構造解析したい物質を選んだことになる選択したクロマ
トグラムのピークの表している物質(ここではカフェイン)に対応するマススペクトルを選
択するマススペクトルは横軸が原子量で縦軸がその量を表しているのでマススペク
トルから分子構造を解析するために「定性処理」を行う シミラリティ検索結果が表示され分析により得られたスペクトルと類似のスペクトルを有
する物質の一覧が表示される上部に表示される物質ほどスペクトルが一致していること
を示す
接続状況が表示される
「トップへ」
をクリック
54
図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果
図 711 表示スペクトルのシミラリティ検索結果 10)図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果の印刷 「レポート(R)」をクリックし「検索結果(R)」をクリックすると検索結果が印刷される
GC-MS 分析で得られたマスス
ペクトル
データベース中
のマススペクト
ル
55
参考資料 生理活性物質の精製 カフェインの利尿作用のように生物活動に影響を与える物質を生理活性物質といいます
天然物には生理活性物質を多く含むものがあります一般に天然物は多くの成分を含ん
でおり特定の生理活性物質を分離抽出するには種々の分離技術が必要ですまた生
理活性物質には60以上の温度でその生理活性を失う(失活)ものや溶剤として広く用いられているクロロホルムなどの有機溶剤中で失活するものが多いそこでこれら生理活性
物質の分離精製技術の開発が望まれており30~60程度のマイルドな温度条件で操作できる二酸化炭素を機能性溶媒として利用する超臨界抽出も有効な分離技術として注目されて
いる超臨界二酸化炭素は気体と液体の中間の性質を持ち物質の分離に役立っています 臨界点付近の高密度気体は超臨界ガスまたは超臨界流体と呼ばれ臨界圧力前後でそ
の溶解能力が著しく変化することから工業的にも種々の分野で利用されています一例と
して超臨界二酸化炭素(SC-CO2)によるコーヒー豆からのカフェインの抽出プロセス(a)
ならびに超臨界二酸化炭素に対するカフェインの溶解度(b)を図に示します図(c)に示す
ように固体のカフェインがガスである超臨界二酸化炭素に溶解します
このように超臨界二酸化炭素を用いた技術はコーヒー豆からのカフェインの抽出プロ
ポリスからの生理活性物質の抽出に利用されています
図 超臨界二酸化炭素抽出を用いたコーヒー豆からのカフェインの抽出
56
付表 最小二乗法について 直線で近似する場合 f (x) = a0 + a1x (A1-1) 式(A1-1)のように近似させるとする測定値 yiとの残差を eiとすると式(A1-2)のようになる ei = yi - f (xi) = yi - ( a0 + a1xi ) (A1-2) ここで式(A1-2)の両辺を二乗してその i に関する総和をとりその値を S とすると次式となる
sumsum==
+minus==n
iii
n
ii xaayeS
1
210
1
2 )( (A1-3)
S を最小化するような a0a1を求める式(A1-3)を a0a1について偏微分すると次式とな
る
sum=
+minuspartpart
=partpart n
iii xaay
aaS
1
210
00)( sum
=
+minusminus=n
iii xaay
110 )(2 (A1-4)
同様にa1について編微分すると次式のようになる
sum=
+minusminus=partpart n
iiii xxaay
aS
110
1])([2 (A1-5)
Sが最小となる時は次式が同時に満たされる時である
00=
partpartaS
01=
partpartaS
(A1-6)
よって誤差が最小となる a0a1を求めるためには式(A1-6)を連立して解けばよい
sumsumsum===
+=n
ii
n
i
n
ii xaay
111
10 1 (A1-7)
sumsumsum===
+=n
ii
n
ii
n
iii xaxaxy
1
2
11
10 (A1-8)
式(A1-7)と式(A1-8)を a0a1を変数とみなし連立して解くと次式を得る
n組のデータ(xiyi)(i=12hellipn)に対して回帰直線 y= a0 + a1x を最小二乗法で求めて出力しデータ番号 iデータ yi直線で推定した値 )( ii bxay += および残差
iii yy minus=ε を出力するようなプログラムをつくりたい基礎式を導出せよ (ヒント残差の二乗の和が最小になるように係数 a0a1)を定めるのが最小二乗法
である)
57
sumsum
sumsumsumsum
==
====
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
n
ii
n
ii
xxn
xxyyxa
1
2
1
2
1111
2
0
)(
))(())(( (A1-9)
sumsum
sumsumsum
==
===
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
xxn
yxxyna
1
2
1
2
1111
)(
))(()( (A1-10)
よって式(A1-9)(A1-10)を用いれば最も誤差を小さくするような直線 y = a0 + a1x が求められる
y=a1x+a0 にて近似
誤差 ei
x
y
誤差が最小になる関数(直線 y=a1x+a0の場合)
図1 最小二乗による近似
誤差の和Sが最小
S
a0
a1
直線 y=a1x+a0 の近似
誤差の全体の和はS=Σei=Σyi-(a1xi+a0)
Sは変曲点にて最小値を示すすなわち(partSparta0)=0 (partSparta1)=0
図2 a0a1とSの関係
2
62 試薬および使用器具 48 63 実験方法 48 7 ガスクロマトグラフ質量分析計による茶葉中の
カフェインの分析染色 50 71 はじめに 50 72 原理および装置 50 73 実験サンプルの設置と GCMS装置の操作方法 53 74 マススペクトルによる物質の構造解析 54 付表 最小二乗法 56
3
1 実験を始めるにあたって 工業物理化学実験の重要性 化学工学では蒸留抽出調湿乾燥吸着粉砕ろ過機械的分離(遠心力重力)
混合撹拌などの単位操作が中心であるがそれらの分離および混合操作はすべて物理化
学の原理に基づいて行われる物理化学は単位操作の基礎となる学問である3年後期に
行われる化学工学実験Ⅱ4年次の卒業研究および就職後の生活においても工業物理化学
実験の経験が役に立つしたがって2年前期に工業物理化学実験として物理化学に接し
馴染むことの意義は大きい またケミカルエンジニアは大量の混合物を扱い各単位操作を統合して系全体のプロ
セスを設計操作しなければならない大量の混合物を扱うためにはより正確な温度圧
力流量組成の制御が必要となるこれらに関する測定の基礎技術を拾得することは有
意義である工業物理化学実験を通じてケミカルエンジニアとしての基礎力を養われたい 講義および化学工学実験Ⅱとの関係 工業物理化学実験は3年後期の化学工学実験Ⅱと密接な関係にあるまた個々の実験
に関わる理論については既に講義されているものもあるが3年前後期に講義されるも
のもある大学での学習は高校までの受動的なものと異なり自主的なものであるこの
機会におおいに独創性を養われたい 工業物理化学実験は一年次において受講した基礎物理化学化学工学計算法およびその
他の基礎的な知識今までの実験的経験および予備学習をもとに安全かつ円滑に実験を進
めてもらいたい
4
2 実験実施要項 本指針書の実験(工業物理化学実験)は配布の実験日程にしたがって行います 21 実験担当 化学システム工学科 三島健司 松山清 22 実験日時 火曜日 4限5限 金曜日 4限5限 23 実験場所 617実験室(6号館 1階西側)の所定の実験台で実験を行います 24 実験に際し持参するもの 工業物理化学実験指針書レポート提出用のレポート用紙(A4サイズ)実験ノート(形式は自由です)グラフ用紙(A4方眼紙)筆記具(自在定規テンプレートなども含む)計算用具(関数電卓)白衣(清潔なもの)名札 実験に必要な物品以外の物(バッグ衣服など)は所定のロッカーに納め白衣を必ず着
用する実験に必要なものだけをもって実験室に入る退出の際忘れ物がないことを確認
する 注) 実験ノートは実験中に指導担当者がチェックするので指示に従うこと
また物品にはすべて氏名学籍番号を記入し紛失を避ける 25 実験開始前日までの用意(予備学習) 実験を行う前にその内容を熟知しておくことは事故の防止円滑な実験内容に対する
より深い理解などの観点からきわめて重要です 1)指針書を熟読する 2)実験開始前に既に記述できることがら(目的実験方法実験結果を記入するデータシートなど)を実験ノートおよびレポート用紙に事前に記入しておく実験終了時から提
出までの期間が短いので問題点に関する質問は早期に行う 3)持参すべき物品の確認をする 26 実験日の出欠について 出欠のチェックは時限開始直後と時限終了時(実験終了時)の 2回を行う「2回目のチェック時に不在の者」は当日を「欠席扱い」となります遅刻者は必ず指導担当者に報告する
遅刻および欠席は減点の対象となるので注意する実験時間中の「不在が著しいとき」は
当日を「欠席扱い」とする 27 実験報告書(レポート)の提出について 1)提出期限各実験報告書提出の締切日は「実験終了日より 7 日後(15 時まで)」です例えば1 テーマについて火曜金曜と実験を行った場合翌週の木曜日の午後 3 時までに提出してください金曜火曜と実験を行った場合は翌週の月曜日の午後 3時までの提出です提出期限(締切の日時)に遅れた報告書は受理しないので注意して下さい
2)再提出報告書の記載およびその内容によっては「再提出」を指示される場合がありま
す再提出の提出締切日は「返却日を含めてその日より 7日後(15時まで)」です提出
5
期限(締切の日時)に遅れた報告書は受理しない 28 実験実施上の注意 1)実験時間中は白衣着用履物は靴とする(サンダル類は不可)また白衣のボタンはか
ならずとめ袖などもしっかりとめる器具に袖などをひっかけて事故を起こすことの
ないように事前に注意する 2)試薬機器具については使用目的を指導担当者に報告のうえ受け取る返却時の報告
も確実におこなう 3)計測機器具などの使用(操作)は「取扱説明書」にしたがって行う 4)機器具類の保管は班(グループ)全員でこれにあたる破損または紛失したときは指導
担当者に口頭で報告して下さい実験終了時には各物品と実験台の整理整頓を行い指導
担当者の確認を受けて下さい 5)脱塩水製造装置(イオン交換)の使用に際しては指導担当者の指示を受ける 6)ガラス器具の洗浄法
a)ガラス器具は水道水で予洗の後クレンザーで十分に汚れを落とし再び水道水で良くすすぐただしガラス体積秤量器はこの限りにあらず下記のbの方法による洗浄の終了
はガラスの表面が一様に水膜で濡れていることにより判定するその後イオン交換水ある
いは蒸留純水で最低3回以上すすぎ加熱乾燥あるいは風乾させる乾燥後は所定の場所
に器具を返還する b)ガラス体積秤量器は水道水で予洗の後洗浄槽に一昼夜浸漬しその後水道水で十分すすぐ以後は aの場合と同様であるが乾燥に関しては風乾とし加熱乾燥は絶対に行ってはならない
7)プラスチック製器具の洗浄法 プラスチック製器具は材質が軟質であるので洗浄には液体洗剤を使用し加熱乾燥はさけ
風乾とする乾燥後は所定の場所に器具を返還する 8)実験廃液の処置法 実験廃液は有機溶剤廃液含有機溶剤水溶液廃液無機廃液含重金属廃液に分類し各々
所定の廃液タンクに保管する不明の場合には教員の指示を受けることみだりに流しに
は流さないこと 9)固体廃棄物の処置法 固体廃棄物は紙屑木材類ビニールゴム類金属類ガラス類に分類し所定の容器
に廃棄する 10)空になった試薬瓶は捨てないで教員の指示を受けること 11)電源の確保に関しては電気容量電線の容量等に関して教員の指示を受けること 12)天秤室への入室は各班(グループ)の秤量担当者のみとする(多人数の入室は秤量操
作の妨げとなるまた天秤転落事故の原因ともなる) 13)喫煙は「指定の場所」でおこなう実験室または指定場所以外での喫煙はしないこと 14)本実験では1テーマを各班とも数グループにわかれて実験をおこなうのでチームワー
クが必要である実験を始める前に互に話し合って実験上の手順すなわちデータの取り方
をきめておくとよい 15)機器の取り扱いは使用説明書をよく読んでから使用する 29 実験報告書実験ノート 実験報告書(レポート)はレポート用紙(市販の A4サイズ)を用いて提出して下さい報告内容は特に指示がない場合は次の項目とします
6
1)緒言(チョゲン) 3)実験方法 4)実験結果および考察 5)結言 6)使用記号(式や変数を使用した場合に必要) 7)引用文献(参考にした文献があれば)
レポートの内容の各項目に関して以下にその記述上の注意点を説明します 1)緒言 実験の目的意義を示す何をどうしようとするのかを示すものでその実験の直接の目
的を具体的に書く 2)実験方法 実験の方法は実際に行った実験を第三者にも再現できるように書くべきです自分達が
行った操作について表や図などを交えて明確に示しておくとよいでしょう 実験方法の文章は過去形で書くことが一般的です
3)実験結果および考察 結果(数値図表)と考察はレポートの中で最も重要な部分です指針書を参考にして
各自が工夫して記述して下さい 結果では得られた事実に忠実に書かねばなりません
また関連のあるものをまとめて図や表に示すとわかりやすいですただし結果の図や
表についての説明の文章も本文に必要です 結果おより考察の文章は現在形で書くことが一般的です また単位や有効数字に誤りがあると誤解を招く恐れがあります図表単位および有
効数字に関しては指針書を再読すること考察では得られた実権データを理論的な計算
などと比較して現象を検討する習慣も身につけましょう独自のものを書くようにこころが
けましょう 4)結言 結果および考察でえられた事柄をまとめて示します 主な記述上の注意事項 1 表については標題の位置表の上に書く注の位置表の下に書く 2 図については標題の位置図の下に書く注の位置図の下に書く 図を描く場合にはA4の各種方眼紙1枚に1つの図を描き本文を参照しなくても
図の内容がわかるように必要な条件などを全て記入することが望ましい図および表
は最後にまとめて示すのではなく関係の深い文の直後の頁に挿入する 3 その他記述上の注意は指針書や配布された資料を参考にされたいまたレポー
トにつける通しページ番号なども忘れぬよう 4 次元単位の付記に留意する「SI」はこれから必然的に使用される単位系であ
りその使用については留意してもらいたい 5 単位の記入においては変数の後には[ ]を付け数の後には[ ]を付けない例え
ばCp [Jmol-1K-1] Cp = 198 Jmol-1K-1 6 引用文献使用参考の記入については「化学工学論文集」「化学工学会誌」を参照
されたい 7 「化学工学論文集」「化学工学会誌」などは工学部の各図書館にあるので有効に活
用してもらいたい 8 レポートに記載する図表などは「化学工学論文集」「化学工学会誌」の表現に準
じた記載方法を用いること 9 図についてはExcelなどの表計算ソフトで作成したものでもよい
7
実験ノートは市販の大学ノートを使用して下さい各実験内容についてページを変
えて後で見て分かりやすいように書いて下さい上から5行程度に実験条件その他
必要事項日付などを記入する右端5cm程度の幅を備考欄とし実験中に気付いたこ
とその他必要事項を記入する使用した溶液の濃度ファクターなどが記録されていない場合がよくありますレポート作成時に困りますので忘れずに各自が実験ノートに記入
しましょう レポート表紙 レポートの表紙(市販の A4 のレポート用紙でよい)には以下のような表紙をつけること各ページにページナンバーを記入すること提出時には上端をホッチキスで閉じるこ
と記入はワープロ鉛筆でもよい
工業物理化学実験レポート(三島担当分)
実験項目 実 験 名 提出者 福岡大学工学部化学システム工学科 A組 5班 TK0315001 七隈太郎 共同実験者 福大次郎 干隈三郎 城南花子 早良五郎 実験日 平成 年 月 日 ~ 月 日 実験場所 化学工学共同実験室 B(6号館 1階 617室) 条件 気温 気圧 湿度 天候 提出日 平成 年 月 日
8
3 吸着 31 はじめに 活性炭 多孔質(多くの小さい穴がある)の吸着剤 酢酸 活性炭に吸着されるモデル分子
吸着実験データの整理によく使用する記号 n 溶質の吸着量 C 溶液中の溶質の濃度 単位は [ ] [ ] 考えてみよう 1) 右図のような低い濃度の酢酸水溶液の入ったビーカーに活性炭 をを加えた場合濃度はどうなるでしょうか
2)吸着された酢酸の物質量(n[mol])を測定するにはどのような 実験をすればよいでしょうか 図 1 活性炭
32 吸着操作 工場排液中の微量は有機物などを活性炭などの吸着剤で除去する工業操作を吸着操作と言
います蒸留抽出乾燥撹拌などの単位操作と同様に化学工業プロセスの重要な分離技
術です吸着操作は他の分離操作に比べてきわめて低濃度の範囲まで物質分離ができる特
徴がありますそのため近年問題となっている大気および水質の汚染汚濁に対する有力
な対策技術として注目されています 本実験では活性炭に対する酢酸の吸着挙動を調べることにより活性炭の吸着特性(吸
着平衡定数)を知り吸着操作の理論的な取り扱いについて学習しましょう 吸着量を求めてみましょうこの例では濃度換算が容易になるように溶液濃度をℓ でなく m3 単位とした) 低濃度のフェノールを含む排水の活性炭吸着実験を行って図 1のような吸着等温線(一
定温度で測定した溶液濃度と吸着量の関係)を得たいまフェノール濃度が 40mol m3の
排水 40m3に 60kgの新しい活性炭を投入して平衡に達したとき水中のフェノール濃度(mol m3)および 1gの活性炭のフェノール吸着量(molg)を求めよ
活性炭 1gに吸着するフェノールの物質量をn[molg]活性炭の量を W[g]とすると
フェノール排水 V[m3] 吸着前のフェノール濃度 C0[mol m3] フェノール分子
+
活性炭に吸着した溶質(フェノール)の量 nW (1)
溶液から取り除かれた溶質の量 (C0-C)V (2)
物質収支式より
nW=(C0-C)V (3) よって
VW
CCn
minus= 0 = )( 0CC
WV
minusminus (4)
9
図3 吸着等温度線と操作線
この操作からわかるように吸着データ(この実験で求める)が存在すれば
吸着等温線と操作線の交点から吸着処理しようとする溶液の体積 V と初濃度 C0
に対して使用する活性炭の質量 W により活性炭に吸着する溶質の量 n および吸着後の溶液の溶質濃度 C が計算で予測できますこの吸着データから吸着装置を設計することができます実際に吸着装置(吸着塔)の設計の様子を次ペー
ジの例題1に示しておきます興味のある人は5 段に積み重ねた吸着層を 04 mol ℓの濃度の廃液が通過すると濃度が 002 mol ℓ 以下になることを確認し吸着塔の設計方法を考えてみて下さい なお先ほど求めた式 (4)は皆さんが行う吸着実験データ(吸着等温線を作るもととなる吸着後の溶質濃度 C と各濃度に対する吸着量 n の関係)を求める場合にも使用します 問題1 質量 W=1gの活性炭を用いて体積 V=100cm3の酢酸溶液の吸着実験を行った
ところ活性炭と接触する前の酢酸溶液の初濃度はC0=0512moldm3であった
(dm3デッシメータ 3 乗= ℓリットル)吸着後の溶液を活性炭と分離してその酢酸溶液の濃度を 01N(01 規定の)水酸化ナトリウム水溶液で滴定して求めたところC=0478moldm3 であった1gの活性炭に吸着された酢酸の物質量n [mol]を式 (4)より求めよ
活性炭 1kg当たりに吸着された
フェノールの量 n[molg]
吸着操作後
の溶液のフ
ェノール濃
度 C
吸着等温線の一例 Langmuir式
KCKCnn
+=
infin
1
操作線
)( 0CCWVn minusminus=
傾き-23
初濃度 C0
[molm3]
吸着後の濃度 Cと吸着量 n
初濃度C0と傾き-VWを用いて操作線を引き
吸着等温線との交点を
求める
ここで(3)式の傾きWV
minus で図 1 における横軸
を通過する直線式(操作線)であるすなわち
)(=- 4032
)40(6040)()( 0
minus
minusminus=minusminus=
C
CCCWVgmoln
10
解答(計算式) )( 0CCWVn minusminus=
minus= ( ) (答) [mol]
例題 1 吸着塔の設計 濃度 C0[molm3]の不純物を含む工業排水(流量 V[m3hr])から不純物を除去するために下図
に示すような各 i段に活性炭を wi[g]含む5段の吸着塔を設計しましょう 各 i 段の出口と入口でのそれぞれの物質濃度 CiCi-1[molm3]とその段での活性炭単位質
量当たりの吸着量 ni[molg]との間に物質収支がなりたち他の部分への吸着は無視できるとするまた溶液中の平衡濃度Ci[molm3]と吸着量ni[molg]の関係はラングミアー(Langmuir)の等温吸着式で与えられるものとするラングミアーの等温吸着式における吸着平衡定数 K
と飽和吸着量 infinn としてはK=8611 infinn =0003262の値を用いる誤差を判定する定数 EPS
としてはEPS=000001を用いよ 図4 吸着塔の段数計算 図5 吸着塔 33 実験目的 一定の温度において活性炭による希酢酸の等温平衡吸着量 nを一定の温度において測定
しそれら測定値の Freundlich 式および Langmuir 式への適合性を比較検討するまたLangmuir式により活性炭の比表面積を求める 34 実験方法 レポートでの実験方法の記述では次のように説明文を必ず付けて下さい また行った方法については過去形「~した」のように記述して下さい 例) 活性炭による酢酸水溶液からの酢酸の吸着実験に次の器具および試薬を使用した [器具] 1000mlメスフラスコ(1)500mlメスシリンダ(1)500ml試薬瓶(5)共栓三
実験レポートを書く場合この「実験目的」を利
用して「緒言」を作成して下さい
実験方法は過去形にて記述
11
角フラスコ(5)2mlホ-ルピペット(2)5mlホ-ルピペット(2)10mlホ-ルピペット(1)100ml ホ-ルピペット(1)50ml ビュレット(1)電子天秤直示天秤(注( )内の数値は個数を表す) [試薬] N10N100-水酸化ナトリウム(NaOH)N10-塩酸(HCl)フェノ-ルフタレイン酢酸活性炭 1)2)および 7)については予め調整済み8)は2日目に実験する 1)酢酸 28mℓ をメスシリンダにて採集しこれを 1000mℓ メスフラスコに入れて蒸留水を加えて 1000mℓとしN2-酢酸を調整した(調整済み)
2)N2-酢酸より順次溶液 500mℓをメスシリンダに取り1000mℓメスフラスコを用いて
N4N8N16N32酢酸溶液を調整し500mℓ試薬瓶保持した 3)共栓三角フラスコ(100mℓ)の空重量を直示天秤にて正確に測定したこれに電子天秤にて測定した活性炭試料約 1gを入れて再び直示天秤にてその重量を正確に測り前後の差から投入した活性炭量を知る
4)活性炭を入れた各々の三角フラスコに各濃度の酢酸溶液 100mℓを正確にホ-ルピペットを用いて入れた(このとき気泡が混入しないように注意した)
5)上記に準備した三角フラスコに栓をしてこれらを所定の温度に設定した恒温槽に浸し
た浸した三角フラスコは約 20分間隔で気泡が混入しないように注意して振り混ぜるこの操作を約 2時間行った
6)次に滴定に用いて約 N10-N100-水酸化ナトリウム溶液 1000mℓを調整し濃度既知の塩酸溶液を用いてその正確な濃度を決定しておく(調整済み)
7)調整された酢酸溶液の各々を6)において標定した N10-水酸化ナトリウム水溶液にフェノ-ルフタレインを指示薬として滴定し各酢酸溶液の濃度を求めた(標定に要する
酢酸量は N2-と N4-の場合は 2mℓN8-と N16-の場合は 5mℓN32では 5mℓをホ-ルピペットで採集するただしN32についての滴定はN100水酸化ナトリウムで滴定した(各濃度について 3回ずつ滴定する)
注)ビュレットは各班に 2 本ある濃度の高い N2 酢酸から測定するので両方のビュレットにはN10-水酸化ナトリウム水溶液を入れて開始する
最重要注意事項
滴定を行う場合安全確保のため必ず安全メガネを着用すること 8)次に各試料溶液を一つずつ手早くろ過しろ過液を N10-水酸化ナトリウムで滴定して平衡濃度を決定した(標定に要する酢酸量は N2-と N4-の場合は 2mℓN8-とN16-の場合は 5mℓN32-では 5mℓをホ-ルピペットで採集したただしN32 ーの場合は N100 ー水酸化ナトリウムで滴定した)
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1) 酢酸溶液の濃度の測定(1日目レポートにこの図は不要) 酢酸 28mℓをメスシリンダにて採集しこれを 1000mℓメスフラスコに入れて蒸留水を加えて 1000mℓとしN2-酢酸を調整する
N2-酢酸より順次溶液500mℓをメスシリンダに取り1000mℓメスフラスコを用いて N4-N8-N16-N32-酢酸溶液を調整し500mℓ試薬瓶に保持する
滴定用のビュレットを N10-N100-水酸化 ナトリウム溶液で共洗いする(3回)
ビーカーに酢酸溶液を少量入れて共洗いを行う (3回)試薬瓶からビーカーに酢酸溶液を滴定に 必要な量だけ取り出す
ホールピペットをビーカーの酢酸溶液を 使用して共洗いを行う(3回)
滴定用の三角フラスコに酢酸溶液を分取する
滴定(滴定は同じ濃度の酢酸溶液を 3回 以上滴定して平均する)
酢酸溶液の濃度計算
滴定による酢酸濃度の決定
1000
1000vfNvx timestimes=times (33)
x酢酸の仕込み液濃度 [molℓ] v酢酸の仕込み液の分取量 [mℓ] NNaOHの規定度 [N] fNaOHのファクター [-] vrsquoNaOHの滴定量 [mℓ] 注)酢酸は 1価の酸なので 1molℓ=1N(1規定)
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式(33)の使用例 酢酸の仕込み液の分取量 v =2 mℓ NaOHの規定度 N = 01 N NaOHのファクター f = 0998 NaOHの滴定量 vrsquo = 985 mℓ である場合 式(33)を利用して酢酸の仕込み液濃度 x[molℓ]を求める
1000
1000vfNvx timestimes=times
vvfNx
timestimes=
49202859998010 =timestimes= molℓ (この xが濃度 C または C0 です)
2)酢酸溶液と活性炭の接触のフローチャート(1日目) 共栓三角フラスコ(100mℓ)の空重量を 直示天秤にて正確に測定する
電子天秤にて活性炭試料約 1g測る
共栓三角フラスコ(100mℓ)に 活性炭試料約 1gを入れる
活性炭試料約 1gを入れた 共栓三角フラスコ(100mℓ) を直示天秤にてその重量を測る
共栓三角フラスコ(100mℓ)の前後の 差から投入した活性炭量を計算する
活性炭を入れた各々の三角フラスコに 各濃度の酢酸溶液 100mℓを正確にホ-ルピペットを用いて入れる(このとき 気泡が混入しないように注意する)
三角フラスコに栓をしてこれらを所定の温度に 設定した恒温槽に浸す浸した三角フラスコは 約 20分間隔で気泡が混入しないように注意して 振り混ぜるこの操作を約 2時間行う
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3)吸着量の測定(2日目) 恒温槽の温度を測る
恒温槽から三角フラスコを一つずつ取り出す
各試料溶液を一つずつ手早くろ過する
活性炭
ろ液を滴定して平衡濃度を決定する
回収
吸着量の計算
Langmuirの吸着等温式Freundlich式のパラメータの決定
グラフの作成
吸着量の計算10001000 times
minus=
wCC
n (34)
n吸着量 [molg] C0 酢酸水溶液中の酢酸の濃度 [molℓ] C ろ液中の酢酸の濃度 [molℓ] w 活性炭の量 [g]
35 実験結果のまとめ方 実験結果は実験レポートを書く場合に考察と並んで重要な部分ですので主な注意事
項をここで説明しておきます グラフの作成n vs C nC vs C ln n vs ln C の 3つのグラフの作成 配布された Excel ファイルを利用し下図のような図を作成してみましょう
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レポートの間違いやすい場所 ①表や図を示す場合次の例のように文章でもその旨を示す [実験結果] 共栓付三角フラスコに活性炭約 1g入れた試料の重量 w[g]を Table1に示す
Table1 調整酢酸濃度を入れる活性炭試料の重量 w [g]
酢酸規定度[N]
活性炭試料の質量w [g]
12 10300
14 10001
18 10126
116 10011
132 10109 酢酸(1)-水(2)-活性炭(3)の 12における吸着平衡の結果を Table 6および Fig1に示すただし活性炭 1gに吸着された酢酸のモル数 n[molg]は次式より求めた
( )10001001
0 timestimesminus=w
CCn b
C0仕込み液中の酢酸濃度 [molℓ] Cbバルク相中の酢酸濃度 [molℓ] w活性炭試料の質量 [g] n吸着量 [molg]
例えばCb=04621C0=04894w=10300の時は次のように計算できる
( ) 026501000100
0300114621048940 =timestimesminus=n
Table6 酢酸(1)-水(2)-活性炭(3)の 12における吸着平衡
吸着された溶質のモル数n[molg]
バルク相中の濃度Cb[moll]
00205 04621
00175 0241
00139 01139
00105 00519
00081 00243 ②得られた図や表の解釈(読者にそれらから読み取ってもらいたい事柄)の説明文を次の
例のように文章で記述する数字や図だけ示して読者に「理解しろ」というようなレポー
トではよくありません Table 6および Fig1よりバルク相中の酢酸濃度 Cbの増加にともない吸着量 nも増加することがわかったまた吸着量 n の値は酢酸濃度 Cbの増加にともない n=に漸近することがわかる
グラフ(Fig)は次ペ
ージに掲載すること
グラフや表の後にはそれらの結果より得られた知見を文章でも
記入すること
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36 エクセルによる吸着データの整理法 注コンピュータの画面はWindowsXP上での操作になっています他の OS(Windows98 2000
NT)搭載のパソコンでも同様の作業が可能です) 先ほど問1で説明したように溶液濃度の濃度変化から吸着量 nを求めました実験では吸着後の水溶液中の酢酸の濃度 Cと吸着量 nの関係を各濃度の溶液(5種類)について測定しその値を計算します このようなデータの整理には表計算ソフトであるマイクロソフト社の Excelが便利です
Excel の起動方法はそのソフトがインストール(設定)されているコンピュータにより若干方法が異なることがありますがほとんど同じですここでは福岡大学の総合情報処理
センターのコンピュータの設定に従って説明します 表計算をしてみましょう セルとは セルというのは最小単位の四角のことです例えば「(Aの1)またはA1というセルセル
B1」のようにセルという言葉を使いますセル A1に1という数字を入れてみましょうセルA1をクリックしてキーボードから「1」と入力しキーボードの「Enter」キーを押します
図 5 Excelの入力例1 図 6 Excelの入力例2
次にセル B1に「5」という数字を入れましょう次にセル C1にセル A1と B1に記入された数値の和を表示させてみましょう 下の図のようにセル C1をクリックします上の「 fx 」と書かれた右のボックス(何かを書くところに)「 =A1+B1 」と書きましょうそして Enterを押すとセル C1に 6と表示されます
図 Excelを用いた関数計算 実験では吸着後の水溶液中の酢酸の濃度 Cと吸着量 nの関係を各濃度の溶液(5種類)について測定しましたこのデータに対してExcelを用いて表計算してみましょうまず先ほど記述したセル A1~A3は「Delete」(デリート)キーで値を削除しましょう
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次にセル A5~A9に活性炭と接触する前の酢酸水溶液の初濃度 C0[moldm3]セル
B5~B9に活性炭と接触後分離した酢酸水溶液の濃度 C[moldm3]セル E5~E9に活性炭の質量 W[g]をキーボードから入力します作成した一例を次に示します
図 8 Excelによる吸着量nの計算 ここで1gの活性炭に吸着された酢酸の物質量n [mol]を式 (4)より計算できるのでセル C 5~C9に次の関数式を記述します式の内容としては
)( 0CCWVn minusminus=
となるように記述するので実際の Excelの関数としては次のように行います セル C 5をクリックし関数ボックス(fxの右)に「=(A5 ndash B5)01E5」と記述(半角または直接入力形式で)し「Enter」キーを押し確定しますこの関数はフィルハンドルを利用してセル C 6~C9にコピーしますただし実験で溶液は 100cm3使用しましたが
溶液の濃度 C が[moldm3]の単位ですので100cm3=01dm3 となり関数式の中では
V=01 dm3としています なおグラフの記述方法やフィルハンドルの使用方法については化学工学プログラミ
ングなどの補助資料を参考にして下さいまた実験の際に配布した Excel ファイル(ファイル名ad_graxls)を使用すると実験データの理論的な解析も容易にできますので試してみましょうExcelファイル(ファイル名)「ad_graxls」の使用方法は次節で説明します 36 実験結果の考察方法 (吸着実験について) 実験結果の考察方法は種々の方法がありますがここでは一例として理論と比較する
方法を示します実験結果として下図(左)のようなグラフができましたこのような実
験結果に対して理論的な考察を行ってみましょうここでは次節で説明するラングミュ
ア(Langmuir)の単分子吸着モデルで計算した理論線と実験と比較したものを下図右に示しますこの図を作る方法は次節で説明しますレポートの考察の部分はラングミュア
(Langmuir)の単分子吸着モデルの式の導出から書いて下さい 理論を作る場合幾つかの仮定をしますがその理論が多くの実験結果をうまく説明でき
ている場合その仮定がある程度妥当なものであったことがわかります指針書に書いてあ
った以外の理論についても興味があれいばためしてみましょう
セル C5をクリックし関数ボックス( fx の右)に「=(A5 ndash B5)01E5」と記述(半角または直接入力
形式で)します
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ラングミュア(Langmuir)の単分子吸着モデルを用いて理論値を計算するには配布され
た Excelファイル(ファイル名)「ad_graxls」を使用すると便利ですその使用方法を以下に示します配布プログラムは化学工学プログラミングの講義の場合と同様に総合情報処
理センターの共通領域にあります各自コピーして使用して下さいコピーするには化
学工学プログラミングの講義の場合と同様にコピーしようとするファイルを共通領域から
自分の使用しているコンピュータのデスクトップにドラッグドロップします共通領域で
ファイルを開くとファイルの消去などで他の人が使えなくなりますので共通領域でファイ
ルをダブルクリックしないようにして下さい誤って共通領域でファイルをダブルクリック
した場合はそのファイルを閉じるボタンをクリックし閉じて下さい 各自のコンピュータに保存した Excelのファイル(ファイル名ad_graxls)をダブルクリ
ックして開きます自宅へ持ち帰る場合各自のフラッシュメモリーやフロッピーディスク
を使用しまたはメールを使用して添付ファイルで送信できます各自のフラッシュメモ
リーやフロッピーディスクに保存してあるファイルを再編集する場合はフラッシュメモリ
ーやフロッピーディスクをコンピュータの USB 端子またはフロッピーディスクドライブに挿入します次にデスクトップ上にあるマイコンピュータのアイコンをダブルクリックし
ます もしデスクトップ上に上のアイコンが無ければ画
面左下の「スタート」ボタンからマイコンピュータをク
リックしてくださいすると次のような画面が立ち上が
ります
ラングミュア(Langmuir)の単分子吸着モデルで計算した
理論線
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その中からフラッシュメモリーの場合は「リムーバブルディスク」をフロッピーディ
スクの場合は「35インチ FD」のアイコンをダブルクリックしてくださいファイルが保存されていれば次の画面が出てきます
この画面の中の「ad_graxls」ファイルをデスクト
ップにコピーしますまず「ad_graxls」ファイルを左クリックしますこの時クリックした指はは
ずさないようにしますその状態のままデスクトッ
プまでファイルを移動させますそしてデスクト
ップ上の任意の場所でクリックした指をはずします
これでデスクトップ上に「ad_graxls」のファイルがコピーされましたのでデスクトップにコピーさ
れたファイルをダブルクリックして開きますコピ
ー操作が上手くいかなかった場合もう一度移動の操作を行ってください
必ずデスクトップにコピーしてから開く操作を行って下さいフロッピーディスクから直接
開いて操作を行った場合正しく保存されない可能性があります 「ad_graxls」のファイルを開くと次のような画面が立ち上がりますもし画面が違う場合は画面の下部にある「吸着データ」のタグ をクリックしてくださいこの画面
でデータの処理や計算を行いますでは実際の操作に入る前に予めこのファイルに名前
を付けて保存しておきますまずExcelの画面のツールバー「ファイル」から「名前を付けて保存」をクリックします下のような画面が起動します
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ファイルの保存先を変えたい場合画面上部のボタンをクリックし保存先にデスクトッ
プを選択します次にファイル名の部分に各自ファイル名を入力しますファイル名は何
でも良いですが分かり易い名前にしておくとファイルの管理がやり易くなります日付や
数字を入れると同名のファイルをいくつも管理する場合に便利ですここでは「吸着実験デ
ータ整理 4月 01」とし「保存」ボタンをクリックします
ファイル名変更後Excelの画面上部のタイトルバーのタイトルが先ほどの名前(上の図とは異なります)になっていることを確認してください
この操作を行うことによって元のデータである「ad_graxls」を変更してしまう心配がなくなります元のデータである「ad_graxls」はファイルが破損しまたは間違った操作の結果を誤って保存してしまった場合などの補助ファイルとなりますので大切に保管しておいて
下さい今後配布するデータは先ほど説明した手順で名前を変えて保存し元のデータに
直接変更を加えないようにして下さい ここから実際の作業に入ります初期状態では模擬のデータが入力されています入力
データは予め計算しておいた酢酸濃度Cb[moll](濃度を Cと表示している場合もあります)と活性炭吸着量 n[molg]になります下の画面の丸で囲んだ部分がそれぞれの値でBCカラム(列)の 4~9行には数値が入力されています関数ではありませんこのデータを利用して実際のデータ解析を行ってみましょう下記のように行うと幾つかのグラフが
現れ実験データに対してラングミアーの単分子吸着を仮定したモデルを用いて精度よ
く計算線が描けることがわかります 今回はCbnの値を入力する必要はありませんExcelが自動的に計算を行って結果を表示するようになっていますつ
まりセル D5に「=B5C5」と関数を入力しこの関数に対してフィルハンド
ルを利用してセル D6~D9へコピーし
ファイルの保存先を変えたい場合画面
上部のボタンをクリックし保存先に
デスクトップを選択します
変更するファイル名はここをクリッ
クして書き換えます
名前を変更したらここをク
リックして保存します
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まています 次に酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着量 n[molg]の関係および酢酸濃度 Cb[molL]と Cbn[gL]の関係をグラフ化します今回は自動的にグラフが作成されるようになっていますので複
雑な操作は必要ありません ここではデータに対してそれを精度よく表現する近似式をグラフ上に描きその関数
を数値として求める方法を Excelで練習してみましょう
グラフを表示させるには画面の下にある「Graph1」もしくは「Graph2」のタグ
をクリックします「Graph1」には酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着量n[molg]の関係のグラフが「Graph2」には酢酸濃度 Cb[molL]と Cbn[gL]の関係のグラフが表示されます「Graph2」はLangmuir の等温吸着式による相関を表したもので横軸に酢酸濃度 Cb[molL]をとり縦軸に酢酸濃度 Cb[molL]を活性炭吸着量 n[molg]で除した値 Cbn[gL]を示していますLangmuir の等温吸着式についてはこの後の章で説明してありますので各自読んで理解して下さいLangmuirの等温吸着式では式中の定数 ninfin(飽和吸着量)と K(吸着平衡定数)を実験データから最小二乗近似で決定する場合が多くありますここでは
その例を取り上げてデータに対してそれを精度よく表現する近似式をグラフ上に描き
その関数を数値として求める方法(最小二乗法最小二乗については付録に示しており
また化学工学プログラミングの講義においても説明します)を Excelで練習します 配布された Excel ファイル「ad_graxls」では実験点が表示されているだけでそれを精度よく表現する近似式の直線のグラフは「Graph2」に表示されていません今から次の手順で「Graph2」の図(グラフ)に近似式の直線のグラフを表示しますExcel の場合近似曲線(ここでは直線)を求める場合コンピュータが自動的に最小二乗法を使って近似曲線
を計算しています
「Graph1」の画面 「Graph2」の画面
Excelの sheetが表示されたらまずファイル名を変えデスク
トップに保存して下さい次
にGraph2のタックを左クリックして最小二乗法のグラフを
確認して下さい
22
38 Langmuirの等温吸着式による相関 はじめにLangmuir式の定数 ninfinと Kを決定するために「Graph2」酢酸濃度 Cb[molL]と
Cbn[gL]の関係のグラフから最小二乗法により直線の式を求めますExcelを用いてデータに対して近似直線のグラフを描き最小二乗法の直線の式を求めます
次のような「近似曲線の追加」のウィンドウが現れたら今回は線形近似(直線で近似
y=ax+b の式)を選びますので線形近似が黒色に反転していることを確認して「近似曲線の追加」のウィンドウの右下の「OK」ボタンをクリックして下さい
実験点の何れかにポインタをあわせて
右クリックする
近似曲線の追加(R)を選択して左クリックする
「線形近似」であること
を確認して「OK」ボタンをクリックします
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「近似曲線の書式設定」
のウィンドウでオプシ
ョンから「グラブの書式
を表示する」の前を選ん
でチェック(前のチェッ
クボックスをクリック)
した後「OK」を押す
現れた直線にポインタをあわせて
左クリックすると「近似曲線の書式
設定」のウインドウが表示されます
ここをクリックします
この「オプション」のタ
グをクリックします
「y=」の関数
が現れるのでここ
をクリックする
式の文字フォントが初期値
「8」と小さいのでここ
のボタンをクリックし
フォントサイズを選ぶリス
トボックスを表示し「22」程度の大きなサイズを選択
しクリックする
24
「Graph2」酢酸濃度 Cb[molL]と Cbn[gL]の関係のグラフから最小二乗法により直線の式がこのように求められましたExcel を用いてデータに対して近似直線のグラフを描き最小二乗法の直線の式を求めるこの方法は他の実験データの解析などにも利用できますので
各自活用して下さい 表示された関数式「y=43865+2654」はノートにメモして下さいこの傾き 43865と
切片 2654からLangmuir式の定数 ninfinと Kを決定します決定方法の詳細はこの後の 36 の Langmuir式のパラメータ決定法に示しています ラングミュアの等温吸着式を変形すると次式となる
CCnKnCKn
CCKn
Cβ+α+
==
+= infininfininfin
11)1(
ただしα=1ninfinβ=1(ninfinK)とするこの式より Cnを縦軸Cを横軸とした関係のグラフは傾きα=1ninfin切片β=1(ninfinK)の直線関係を与えることを示しています そこでExcelのシートを利用してこの値からLangmuir式の定数 ninfinと Kを次のように決定しますセル C18D18に Graph2で求めた数値 2654と 43865を代入しますその後D19と C19に関数を ldquo=1D18rdquoとrdquo=D18C18ldquoを代入しますセル内の式は半角で入力してください
現れた関数の文字フォン
トを大きく(例えば 22)してその数字をメモし
吸着データシートの C18と D18に記入する
C18D18 に Graph2 で求めた値 2654 と 43865 を代入した後D19 と C19 に関数を ldquo=1D18rdquoとrdquo=D18C18ldquoを代入する
25
この Excel表示では最小二乗法を用いて決定した傾きαと切片βを用いて α=1ninfin=43865 β=1(ninfinK)=2654 得られた傾きおよび切片よりninfinおよび Kは次のように求まる
ninfin=1α=1D18=000228 molg-1 K =(1ninfin)β=αβ=D18C18=165
つまりセル D19にはninfinの値がセル C19にはKの値が表示されますこれらの値はラングミュア(Langmuir)の単分子吸着モデルで計算した理論線と実験と比較する場合に利用します実験結果に対して理論的な考察を行う例としてラングミュア(Langmuir)の単分子吸着モデルで理論線を計算し実験と比較するにはこの Excelファイルを利用して次のように計算しグラフに表示します セル F5~F30 には溶液中に残る酢酸濃度 Cb[molL]に対する活性炭に吸着された吸着量n[molg]の関係のグラフ「Graph1」の横軸の酢酸濃度 Cb[molL]の適当な値が既に入力してありますこれらのそれぞの酢酸濃度 Cb[molL]に対する吸着された酢酸の吸着量 n[molg]の理論値をラングミュア(Langmuir)式で計算しますラングミュア式は次式で与えられます
KCKCnn
+=
infin
1 (310)
ここでこの実験データを最も精度よく計算できるように決定した ninfinおよび K は上述のようにninfin=1α=1D18=000228 molg-1 K =(1ninfin)β=αβ=D18C18=165 でありこれらの値はセル D19にninfinの値がセル C19にKの値が表示されていますこの値を利用して「Graph1」に計算線を描くにはまずセル G5~G30 にセル F5~F30 のそれぞれの酢酸濃度 Cb[molL]に対する吸着された酢酸の吸着量 n[molg]の理論値をラングミュア式で計算しますそのためにはセル G5 にラングミュア式を次のように記述しますただしセル D19の ninfinの値セル C19の Kの値は常に同じセルから参照するので絶対参照($マークを付けて$D$19 $C$19と記述します)で記述します
Langmuir式をセル G5に記述するただし濃度はF5の値を相対参照しD19と C19は絶対参照($マークが必要)することを忘れないように
セルG5に記述すべき数式
=$D$19$C$19F5(1+$C$19F5)
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G5記述後フィルハンドルを使用してG5の関数を G6~G30までコピーします Sheet1から Graph1 のタグをクリックしGraph1 に計算線が表示されたことを確認しましょうこれでラングミュア式によるデータの解析は終了です実験値と理論値を比較して現象
について考察してみて下さいラングミュア式を理論的に導く場合にある仮定をしている
のですがその仮定をしているラングミュア式が実験データを精度よく計算できていれば
その仮定が妥当なもとであったと考察できます 与えられたモデルデータでラングミュア式によるデータ解析ができれば他の理論(例え
ばフロインドリッヒFreundlich式や BET式レポートはどちらか一方でも可です) についてもExcel で計算してみましょうレポートには自分のデータについてここで行った内容と同様に計算しその結果を考察に記述して下さい 自分のデータについて同様の計算をするにはまずいままで計算を行った Excel ファ
イルを保存しますデータを自分の実験データに置き換える前に Excel ファイルをさらに別の名前で保存します与えられた Excel ファイルは初期状態では模擬のデータが入力されているので今回自分達の実験したデータを入力していきます入力するデータは予め計算
しておいた酢酸濃度 Cb[moll]と活性炭吸着量 n[molg]になります下の画面の丸で囲んだ部分にそれぞれ自分の実験データを入力していきます
今回はCbnの値を入力する必要はありませんExcelが自動的に計算を行って結果を表示するようになっています 次に酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着
量 n[molg]の関係および酢酸濃度Cb[molL]と Cbn[gL]の関係をグラフ化します今回は自動的にグラフが作成
されるようになっていますので操作は必
要ありません 39 Freundlichの等温吸着式による相関 今回の実験で得られた酢酸濃度 Cbと活性炭吸着量 nのデータを利用してFreundlichの等温吸着式の定数 abの値を求めFreundlichの等温吸着式の理論線をグラフに追加します ここでFreundlich式は次式で表されます
bbaCn1
=
このままでは定数 abの値を決定することが難しいので上式の両辺の対数をとり線形化しますすると次式となります
bCb
an ln1lnln +=
ここでln Cbと ln nの関係をグラフにプロットすれば傾き 1b切片 ln aの直線関係が得られますしたがって実験データである酢酸濃度 Cbと活性炭吸着量 nの値の対数をそれぞれ計算します配布した「ad_graxls」ファイルを開き「吸着データ」シートの任意の部分に以下のような表を作成します
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次にln Cb[-]の列の最初のセルに以下の数式を入力します
=ln(B5) 上式中の「B5」は Cb の値の最初のセルの位置を指します各個人の位置によって変更してください
次にln n[-]の列の最初のセルに以下の数式を入力します
=ln(C5) 上式中の「C5」は nの値の最初のセルの位置を指します各個人の位置によって変更してください
ここでln Cb[-]ln n[-]の値に対しそれぞれオートフィルを行い計算させますすると以下のようなデータが完成します
計算した ln Cb[-]ln n[-]の値をグラフにプロットし最小二乗法による直線式を求めます
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ここで以下のような直線の式が得られたとします
9135ln31690ln913531690 minus=there4minus= bCnxy
上式より切片は-5913傾きは 03169となるので以下の要領で定数 a1bを計算します ==there4minus= minus 91359135ln eaa 000270
316901=
b
a の値を Excel で計算させる場合は任意のセルに以下のような数式を入力することで求めることができます
=exp(-5913) これでFerundlich等温吸着式の定数 a1bの値が決定しましたこの値は後で使うのでノートなどにメモしておいてください 次に決定した Ferundlich 等温吸着式の定数 a1b の値を用いてFerundlich 等温吸着式のグラフを作成します先ほども示したように Ferundlich等温吸着式は次式で表されます
bbaCn1
=
従って定数 aと 1bの値はすでに決定しているので任意の Cbの値に対する nの値を数点求めればFerundlich等温吸着式で求めた理論線が得られます以下の操作で理論線を引くことができます Langmuir 等温吸着式による相関のときと同様にExcel の「吸着データ」のシート上の任意の場所に以下のような表を作成します
次に Ferundlich等温吸着式に従いnの値を計算します
bbaCn1
=
式中の定数 a1bは先ほど計算した値を用いますしたがって式は次のようになります
31690002700 bCn times=
この式を Excelのセル内に記入すれば計算ができます次の
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ように記入します
=00027G5^03169 ここで式中の「G5」は Cbの値が 0のセルを指しています各個人の位置によって変えてください 次に式を記入したセルを Cbの値が 05のところまでオートフィルを行いますそうするとすべての Cbに対して nの値が計算されます
これで Freundlich等温吸着式のデータが完成しましたので次に「Graph1」酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着量 n[molg]の関係のグラフにこのデータを追加し理論線を引きます理論線の引き方は Langmuirによる相関のときと同様の操作を行ってください グラフの書式等を変更し整理すると以下のようなグラフが出来上がります
310 吸着等温線とは 固体の吸着剤を溶液と接触させる時一定量の吸着剤によって吸着される溶質の量は温度一定ならば溶質の濃度の関数になる一定温度での吸着量を温度に対してプロットした時に
得られる曲線を吸着等温線というこの吸着等温線を比較的よく表す経験式として次の
Freundlich式がある
n=aC1b (1) ここで n は吸着剤の質量あたりの吸着量C は吸着平衡濃度a と b は実験から決定されるパラメータであるがその物理的意味は多少希薄である これに対し理論的な意味を持つものに次のラングニュア(Langmuir)の吸着等温式がある
30
KCKCnn
+=
infin
1 (2)
ただしninfinは飽和吸着量Kは吸着平衡定数であるこの式は
1)吸着分子が固体表面で単分子以上の厚い層を作ることはない 2)吸着分子同士の間の相互作用はない
という二つの仮定にもとに導かれたものである 結果の整理および報告 Freundlich吸着等温式Langmuir吸着等温式の各々のパラメータの最適値を求めよまた活性炭の吸着特性および表面積について考察し化学工学における吸着操作の重要性につい
ても検討せよ 311 吸着等温式 (a) ヘンリー(Henry)型吸着等温式 液相の濃度あるいは気相の圧力が小さい場合吸着分子間の距離が十分に長いため吸着
分子同士の相互作用が無視でき固体表面と吸着分子のみの相互作用で吸着量を決定できる
とき次式のように表される
n=KC (3)
ここでKは比例定数である図 3-1の(a)に示すように濃度 Cと吸着量 nは比例関係があり一般に吸着量が小さい範囲で成立する気体の場合は溶液濃度 Cの代わりに気相圧力 pを用いればよい
濃度(分圧)
濃度(分圧)
濃度(分圧)
濃度(分圧)
吸着量
吸着量
吸着量
吸着量
(a)ヘンリー型 (b)ラングミュア型
(d)BET型(c)フロインドリッヒ型
0
0
0
0
図 3-1 吸着等温式
31
(b)ラングミュア(Langmuir)型吸着等温式 ラングミュアは図 3-2 に示すように固体表面に同等な吸着力を示す吸着サイトがあり
表面に 1分子層だけ吸着する(単分子層吸着)と仮定して平衡状態における吸着量と溶質濃度(気相分圧)のと関係を導いた全吸着点のうち吸着分子に覆われている吸着点の割合
をθ[-]とすると分子の脱着速度 rrsquo[mols-1]はθに比例する比例定数を a[mols-1]とすると次式のように表される
吸着剤
吸着分子
吸着サイト
図 3-2 固体表面上の吸着サイト(Langmuir式の導出) r=aθ (6) また気相からの吸着速度 r[mols-1]は空いている吸着点の割合(1-θ)[-]と溶液濃度 C[molm-3]に比例する rrsquo= b(1-θ)C (7) このときの比例定数を b[m3s-1]とするまた平衡状態では両速度は見かけ上等しいため以下の式が成り立つ aθ=b(1-θ)C (8) これを変形する
CbaCbsdot+
sdot=θ (9)
ここで飽和吸着量を ninfin[molkg-1] ba を K[m3mol-1](Kは吸着平衡定数)とおくと infin=nnθ
となるので次式が得られる
32
KCKCnn
+=
infin
1 (10)
これをラングミュア式と呼ぶ
(c)フロインドリッヒ(Freundlich)型吸着等温式 フロインドリッヒの吸着等温線は図 3-1(c)のように示される
n=aC1b (11) nは吸着量[molkg-1]で aと bはともに吸着定数[-]である (d)BET(Brunauer-Emmett-Teller) 型吸着等温式
BET型の吸着等温線は図 3-1(d)に示されるラングミュア式は表面に 1分子層だけ吸着すると仮定したものであるがBET式は無限分子層まで吸着できる式である図 3-3に示すように吸着した分子がそれぞれ次の層の吸着サイトとなり分子は積み重なって多分子
層に無限層まで吸着できるものとし各層への吸着にラングミュア式を適用すれば次式の
ように表せる
( ) ( )CKCCCKqq
minus+sdotminussdotsdot
=infin
11 (12)
この式は多孔質固体の細孔表面積を窒素ガスの吸着によって測定する際に利用される重要な式
である
表面の吸着サイト
分子上の吸着サイト
図 3-3 多分層吸着モデル
Langmuir式のパラメータ決定法 水溶液からの酢酸の活性炭に対する吸着平衡データ(吸着平衡温度 12)は表 3-1のよ
うに与えられる実験データよりラングミュア式のパラメータ(K吸着平衡定数ninfin飽和吸着量)を最小二乗法で決定せよさらにラングミュア式より決定した ninfinKの値を用いて吸着等温線を計算し計算線として図に示し実験点と比較せよ
33
表 3-1 n C Cnの関係
ラングミュア式は式(310)で与えられるこの式を変形すると次式となる
CKnCK
n infinsdot+
=11
(313)
両辺に Cをかけると以下の式が導出される
CCnKnCKn
CCKn
Cβ+α+
==
+= infininfininfin
11)1( (314)
ただしα=1ninfinβ=1(ninfinK)とする式(314)より Cn と C の関係のグラフプロットは傾きα=1ninfin切片β=1(ninfinK)の直線関係を与えることを示している表 3-1の値を用いて計算した Cnと Cの関係を表 3-1および図 3-4に示す 最小二乗法を用いて傾きαと切片βを決定した α=1ninfin=43865 β=1(ninfinK)=2654 得られた傾きおよび切片よりninfinおよび Kは次のように求まる
ninfin=1α=1D18=000228 molg-1 K =(1ninfin)β=αβ=D18C18=165
0
50
100
150
200
0 200 400 600
C [ molm-3 ]
Cn [ kgm-3 ]
傾き = 1 ninfin
1 ninfinK
切片0
05
1
15
2
25
3
0 100 200 300 400 500
液相の溶質濃度 C [ molm-3 ]
吸着量 n [ molkg-1]
液相と溶質濃度 C [ molm-3 ]
吸着量
n[ m
olk
g-1]
実験点
Langmuir式パラメータninfin 00033 [ molg-1 ]K 00086 [ m3 mol -1 ]
図 3-4 ラングミュア定数の決定 図 3-5 12における酢酸濃度 Cと
吸着量 nの関係
C [molm-3] n [molkg-1] Cn [kgm-3] 460 225 109 529 214
268 199 149 105 060
172 128 732 504 357
34
Freundlich式のパラメータ決定法 酢酸水溶液中における酢酸の活性炭に対する吸着実験を行ったところ以下のような実験デー
タを得たただしCbはバルク相における酢酸濃度n は活性炭に対する酢酸の吸着量を示す
Cb[molL] n[molg] log10Cb log10n 04621 000205 02410 000175 01139 000139 00519 000105 00243 000081
実験データを利用して次式で与えられる Freundlichの等温吸着式の定数 abの値を求めたい
bbaCn1
= (1)
このままでは定数 abの値を決定することが難しいので上式の両辺の対数をとる
bbb
bb
Cb
aCa
aCn
ln1lnlnln
)ln(ln1
1
+=+=
=
(2)
ここで横軸に ln Cb縦軸に ln nの関係をグラフにプロットするすなわち x=ln Cby=ln nと考える
bCb
an ln1lnln += (3)
ここで直線式 y=a0+a1xと比較するすなわち
)(1)(ln
1
00
傾き
切片
ba
eaaa a
=
=rarr= (4)
a0および a1は最小二乗法により数値で求められる与えられたデータでは a1= a0= なので a= b= となる この値を n=acb
1bに代入してcb=0~05の範囲で nの値を計算する
35
BET式のパラメータ決定法 BET式は次式で与えられる
)1)(1( KCCCKCnn
+minusminus=
infin
(17)
以下のように BET式の変形を行う
)1()1(
KCCKCnCn+minus
=minusinfin
(18)
(18)式の逆数をとると
KCnCK
KCnKCC
Cn infininfin
minus+=
+minus=
minus)1(1)1(
)1(1
(19)
(19)式の両辺に Cをかえると
KCnCKC
CnC
infin
minus+=
minus))1(1(
)1( (20)
(20)式を変形すると次式が得られる
CKn
KKnCn
Cinfininfin
minus+=
minus11
)1( (21)
C と)-(1 Cn
Cのプロットは傾き
KnKinfin
minus1切片
Kninfin
1の直線関係を与えることを示している
これをグラフにプロットし最小二乗法に傾きおよび切片を求める
36
312 活性炭の比表面積の決定 酢酸分子の構造を以下に示す
Hc-Cb-Ca
Hd
Hb Oa
Ob-Ha
1219deg
Ca Oa
Ob
図 36 酢酸の構造
酢酸の 1分子の吸着面積srsquo [m2]を図 3-6に示すこのとき文献より
Caと Oaの結合距離 1321Å Caと Obの結合距離 1206Å OaCaObの角度 1219deg Cの原子半径 077Å Oの原子半径 062Å
したがって吸着面積 Slsquoは次のようになる
( ) ( ) 2088 10376109931036321 minusminusminus times=timestimestimestimes=s m2
ここで活性炭の比表面積 S[m2g]は次式で示される 10026 23 snS timestimestimes= infin
S活性炭の比表面積 [m2g] ninfin飽和吸着量 [molg] srsquo酢酸 1分子の吸着面積 [m2] 602times1023アボガドロ数 [個mol] したがって活性炭の比表面積 S[m2g]は
003350=infinn molg 2010376 minustimes=s m2 より
51281037610026003350 2023 =timestimestimestimes= minusS m2g
37
4 粘度密度測定 41 はじめに 大量生産を目的とした工業的化学プロセスはほとんど流れ系(流通系)であるそれらの系において操作対象となる各物質の粘度は装置を設計操作する場合きわめて重要
な物性値である 本実験では低分子溶液および高分子溶液の粘度測定を通じて液体の粘度について考察するさらに演習問題を通じて気体液体高分子溶液などの化学プロセスで対象となる物
質の輸送物性(粘度拡散係数)の重要性を認識されたい 42 低分子溶液の粘度 [目的] 種々の濃度のエタノール水溶液の粘度を測定しその溶液の粘度について考察する [概要] 25におけるエチルアルコール濃度 02040506080100 wt の水溶液について流下時間を測定しこの結果より相対粘度絶対粘度運動粘度を求めグラフにするま
た水の密度水-エチルアルコール溶液の密度についてはピクノメーターを用いて決
定する報告書には相対粘度絶対粘度運動粘度 vsエチルアルコール濃度の関係をそれぞれグラフにして提出する
[計算方法] 相対粘度絶対粘度運動粘度の定義は次のようになる
相対粘度 ww
w tdtd
ηη = (41)
η 混合溶液の粘度 [gcms] ηw水の粘度(8007times10-3 gcms) [gcms](25における粘度) d エチルアルコール水溶液の密度 [gcm3] dw水の密度(099704gcm3) [gcm3](25における密度) t エチルアルコール水溶液の流下時間 [s] tw水の流下時間 [s] 下付添字 W 水
絶対粘度 www td
tdη
η= (42)
運動粘度 ν=ηd [cm2s] (43)
38
[実験方法] 1) 粘度計を洗浄し粘度計内 に二連球で空気を送り込み
乾燥させる乾燥しにくい 場合はアセトンを滴下し た後再度二連球で空気 を送り込み乾燥させる 2)ピペットで一定体積(10mℓ) の純水を取り広い口 f から 粘度計に水を入れる 3)粘度計を恒温槽(25)に つけ約 10 分静置する 4)安全ピペッターを口 a に 取り付け液面が b 上部に 到達するまで吸い上げる 5)安全ピペッターを外すと 液面が降下しだす液面が bd 間を通過する時間をスト ップウォッチで測定する
6)純水での測定を 3 回繰り返す 7)純水を粘度計から取り除くその後粘度計内に二連球を用いて空気を送り込み乾燥させる 8)粘度計乾燥後複数の濃度に調整済みのエチルアルコール水溶液(10mℓ)を粘度計にいれ4)~6)の作業を繰り返し行う(3 回)なお濃度の異なるエチルアルコール水溶液を粘度計内に導入する場合には7)と同様に二連球を用いて粘度計内に空気を送り込み乾燥させる
表 4-1 エチルアルコール水溶液の濃度密度相対粘度の関係 エチルアルコール濃度
[wt] 密度 d[gcm3] 相対粘度
η ηw[-] 0
20 40 50 60 80
100
安全ピペッター接続
図 4-1 粘度計
液面の bd間の通過時
間を測定
f
39
43 密度測定 [目的] 本実験では水とエタノールの種々の組成の混合液体について密度を測定し分子間相互
作用について考察する [実験方法] 1)ピクノメーターの容積測定
図 4-2のピクノメーターの空の重量 wg を秤量する
ピクノメーターの蓋を取り外し
ピクノメーターを水で満たす
設定温度を 25として恒温槽 の電源を入れ恒温槽内の温 度が一定になるまで待つな お水温は恒温槽中の水銀温 度計から読む
恒温槽中に水を満たしたピク
ノメーターを入れる
約 10分間静置する
ピクノメーターに蓋をするこのときピクノメーターの容量
よりも余分の水は蓋の上部より排出される
ピクノメーターの外側を乾いた布で拭い秤量する(その重量を
wwg とする)
恒温槽の温度(25)における水の密度 dwgcm3(=099704gcm3)
より次式を用いてピクノメーターの容積を求める
w
w
dww
Vminus
= (44)
図 4-2 ピクノメーター
蓋
40
表 4-2 エチルアルコール水溶液の濃度と密度の測定結果(25) エチルアルコ
ール濃度[wt]
wrsquo[g] ww[g] V[cm3] w[g]
d[gcm3]
0 20 40 50 60 80
100
099704
エチルアルコール濃度[wt] 空のピクノメーターの重量 wrsquo[g] 水を入れたときのピクノメーターの重量 ww[g] ピクノメーターの体積 V[cm3] エタノール水溶液の入れたときのピクノメータの重さ w[g] エタノール水溶液の密度 d[gcm3]
容積 Vを求めたピクノメーターに混合溶液(調整済み)を入れてその重量 wgを秤量し次式で混合溶液の密度を求める
Vwwd minus
= (45)
エタノール濃度と密度 d の関係をグラフにプロットする
41
44 高分子溶液の粘度 [目的] 高分子溶液の粘度測定から分子量の粘度に与える影響について考察する [概要 ] オストワルド粘度計を用い種々の濃度のポリビニルアルコール(PVA ((-CH2CHOH-)n))水溶液の粘度を測定し粘度データよりポリビニルアルコールの分
子量を求める まず 05g100cc の濃度のポリビニルアルコール水溶液を調製する次にこれを原液
とし23 12 13 15の濃度の溶液を調製するこれらの溶液についてオストワルド粘度計を用いてそれぞれ流下時間を測定し相対粘度絶対粘度運動粘度を求め実験デ
ータより極限粘度[η]を求めるまた報告書には相対粘度絶対粘度運動粘度C
)ln( wηη
Cw
w-η
ηη vsポリビニルアルコール濃度の関係をそれぞれグラフにして提出する
[計算方法] エチルアルコール水溶液の粘度測定と同様の手法を用いて粘度の計算を行うなおポリビニルアルコール水溶液の密度はピクノメーターを用いて測定すること 表 4-3 ポリビニルアルコール水溶液の濃度密度相対粘度の関係 ポリビニルアルコール
濃度 [g100cc] 密度 d[gcm3] 相対粘度
η ηw[-] 05times(15) 05times(13) 05times(12) 05times(23)
05
42
[分子量の計算方法] 実験を行った結果以下のような粘度データを得られるとする実験データより極限粘度
を求めポリビニルアルコール(PVA)の分子量Mを決定せよ
PVA 水溶液濃度
C[g100cc]
相対粘度
ηηw[-]
絶対粘度
η[gcms]Cw
w-η
ηη
C)ln( wηη
05times(15) 1031 0008255 031 0305
05times(13) 039 0378
05times(12) 03 0289
05times(23) 0375 0353
05 0364 0334
ηw=8007times10-3 gcms 線状高分子の極限粘度[η]と分子量Mの関係は次式で与えられる [η]=KMα (46) ただしポリビニルアルコールの場合K=666times10-4α=064であるなお極限粘度[η]は次式で定義される
CC w
w
0
-][ limη
ηηη
rarr
= (47)
または
CC
)ln(][ w
0lim
ηηη
rarr
= (48)
よって濃度 CとCw
w-η
ηηまたは濃度 Cと
C)ln( wηη の関係をグラフ化し最小二乗法によ
り切片の値を求めると極限粘度[η]が決定される
Cw
w-η
ηηと C の関係より最小二乗法を用いて切片の値を決定すると(図 43 参照)切片=
03242傾き=00874となるよって極限粘度は以下のようになる[η]=03242同様
にC
)ln( wηη とcの関係より最小二乗法を用いて切片の値を決定する
(図 44参照)と切片=03249傾き=00256となり極限粘度は以下のようになる[η]=03249
Cw
w-η
ηηと Cの関係より決定した[η]=03242を用いてポリビニルアルコール(PVA)の
分子量 Mを計算する(46)式より以下のように PVAの分子量 Mを計算することができるM=([η]K)1α
=(03242(666times10-4))(1064)
=15811
43
y = 00874x + 03242
0
02
04
06
08
1
0 01 02 03 04 05 06 07
c[g100cc]
(η-ηw)(ηwc)
cw
w
η
ηηminus
極限粘度[η]
図 43 298Kにおける PVA濃度 CとCw
w-η
ηηの関係
y = 00256x + 03249
0
02
04
06
08
1
0 01 02 03 04 05 06 07
c[g100cc]
(ln(ηη
w))c
c)ln( wηη
極限粘度[η]
図 44 298Kにおける PVA濃度 CとC
)ln( wηη の関係
44
5 植物からの DNAの抽出 51 はじめに 分子レベルでの遺伝子の構造解明や遺伝子の発現に関する研究は近年急速に発展している
これら生命現象のしくみを分子レベルで解明しようという分子生物学の分野ではさまざま
な遺伝子の解析や応用方法が開発され我々の生活に身近なものになりつつある 本実験では初歩的な分子生物学に関する実験として植物(タマネギ)からの DNA の
抽出を行い抽出した遺伝子の電気泳動法による分離実験を試みる 52 試薬および器具 試薬 タマネギ(細胞中から遺伝子の抽出を行う) 台所用洗剤(洗剤中に含まれる界面活性剤には植物の細胞膜およびタンパク質を破壊す
る働きがある) 塩化ナトリウム(DNAは塩化ナトリウム水溶液に溶解し易い性質がある) エタノール(予め冷やしておくDNAはエタノールにほとんど溶解しない) 制限酵素(DNAを一定の部位で切断する働きを働きがある) TE緩衝液(pH緩衝剤が入った溶液) 器具 ビーカーミキサーフィルターメスシリンダー駒込ピペットガラス棒 マイクロピペット電気泳動装置ポラロイドカメラ 53 実験方法 1)タマネギは 1回の実験で半個のうち内側の半分程度を使用するタマネギ水 30ml台所用洗剤数滴をミキサー用ガラス容器に入れ40~60秒程度(固体状のタマネギがなくなる頃が目安)ミキサーにて混合する
2) 1)で作成した混合溶液をビーカーに移し約5g程度の塩化ナトリウムを加えガラス棒で静かに攪拌する粘性の大きな溶液が得られる
3) 2)で作成した溶液をフィルターを用いて濾過し濾液を回収する 4) 濾液の約2倍程度の量の冷エタノールをビーカーの壁伝いに静かに注ぐ 5) ビーカーを揺するとエタノール層に白くふわふわしたものが浮いてくるこれが DNAであるガラス棒で DNAを巻き取りシャーレ上にて DNAを回収する顕微鏡を用いて回収した DNAの状態を観察する
6)マイクロチューブ(容量 15ml)中に用意した 70エタノールを 8 分目程度まで注ぐ5)にて回収された DNAをマイクロピペットを用いて70エタノールの入ったマイクロチューブ中に移す軽く混ぜることによりDNA から不要な物質を洗い流す遠心分離してDNA をマイクロチューブの底に沈めた後溶液を捨てて DNA を乾かす乾いたらTE緩衝溶液を 1ml加えて放置するDNAの溶液が得られる
54 電気泳動装置による DNAの観察
本実験は職員と一緒に行うこと 実験を行う人はビニール手袋をすること 1) 抽出した DNAを電気泳動装置で観察するマイクロピペットを用いて以下のように調製した DNAの混合溶液を調製する(いずれの溶液も調製済)
45
2) マイクロピペットを用いてアガロースゲルの試料を流し込む穴(ウェル)に1)にて調製した溶液 Aおよび Bを注ぎ込む注入量は20μℓとする電気泳動装置のスイッチを入れて100Vの電流を流しアガロースゲル内にて DNAを電気泳動させる
3) 試料に予め加えられておいた青色の色素が 7 分目程度まで進んだら電気泳動を中止する(約 30分程度)
4) (ここでの作業は職員が行う) アガロースゲルを取り出し染色液に浸す染色後ゲルを取り出しポラロイドカメラで
DNAの泳動状態を撮影する
+ -
アガロースゲル
試料を流し込む穴(ウェル)
図 51 電気泳動装置
6 5 4 3 2 1
図 52 DNAの電気泳動写真の一例
55 電気泳動装置の原理 電気泳動装置の原理図を以下に示すアガロースゲル(寒天から不純物を除いたもの)中
に DNAをセットし電流を流すとDNAは電流の向きとは逆にマイナスからプラス方向
調製済 溶液 A(制限酵素なし) 水 11μℓ 10timesH Buffer 2microℓ 植物 DNA 5μℓ
調製済 溶液 B(制限酵素 Eco RI入り) 水 11μℓ 10timesH Buffer 2microℓ 植物 DNA 5μℓ 制限酵素 2μℓ
1 DNA(タマネギ)+制限酵素 2 DNA(タマネギ)+制限酵素 3 DNA(タマネギ) 4 λ-DNA(大腸菌)+制限酵素 5 λ-DNA(大腸菌) 6 サイズマーカー
500bp
46
に動く(このことを電気泳動という)これはDNA のリン酸部分が負に帯電しているためでありまたDNAはその長さにより泳動距離が異なる(短い遺伝子ほど長く泳動する)電気泳動ではこの性質を利用してDNAを大きさごとに分離することができる
塩基対数によってDNAを分離
EtBr (蛍光試薬)DNAの二本鎖内に入り込む
発光
UVλ=302nm
励起
分離後のアガロースゲルをエチジウムブロマイド(EtBr)溶液に浸す
DNAを含んだ溶液
アガロースゲル
リン酸部分が負に帯電
塩基 (ATGC)-
+
カメラで撮影
電圧
DNA構成成分(dNTPs)
バンドが明る
DNA量が
バンド(DNAの存在)
図 53 電気泳動の原理
56 制限酵素とは DNA は4 種類のヌクレオチド(GATC)が不規則につながってできている制限酵素はDNAの特定のヌクレオチドが並んでいる部分を切断する制限酵素には様々な種類がありEco RI(エコアールワン)と呼ばれる酵素は「GAATTC」といった並びの部分だけを切断することができる
GAATTC
CTTAAG
制限酵素
Eco RI
AAGCTT
TTCGAA
制限酵素
Hin dIII
図 54 制限酵素による DNAの切断
レポートについて 1 実験方法および実験結果の整理方法については指針書を参考にすること 2 実験結果については電気泳動の結果について考察すること(制限酵素の影響などにつ
いてまとめてください)
47
6 染色実験
61 はじめに
現在私達の身の周りでは様々な染料が使われている例えばT シャツやジーンズな
どの衣服は橙黄赤青など様々な色に染められている他にも私達が気付かないと
ころで多くの染色された製品を使用しているそこで本実験では高校の化学で学んだ
アゾ染料を合成してみるアゾ染料はアニリンを原料として作られているアニリンはベ
ンゼン環にアミノ基(-NH2)がついたものであるアニリンは無色の液体で水に溶けにく
くアンモニアより弱い塩基性を示すまたさらし粉(CaClO(ClO)H2O)水溶液を加えると
赤紫色を呈するこの呈色反応はアニリン特有のものであるので検出反応に用いられる
このアニリンを出発物質としてアゾ染料を合成してみる
62 試薬および使用器具
【試薬】 ①05moll 水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液
②2-ナフトール ③フェノール ④6moll 塩酸
⑤亜硝酸ナトリウム ⑥アニリン ⑦氷
【器具類】 ①電子天秤 ②50mℓビーカー ③100mℓビーカー
④ガラス棒 ⑤布(ガーゼなど) ⑥ピンセット
⑦ポリ手袋 ⑧ドライヤー ⑨シャーレ
10駒込ピペット(10ml ガラス製)
11駒込ピペット(1ml プラスチック製)
63 実験方法
1) 50mℓビーカーの中に 05molℓ水酸化ナトリウム水溶液 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回
NaOH 水溶液を分取するほぼ 20 mℓ分取できれば可)と 2-ナフトールを約 01g 入れ
よくかき混ぜる調製した溶液の中に布をつけその布はガラス棒でしぼってから(布
をガラス棒ですくいあげればよい)シャーレに広げる温度の異なる条件下(常温およ
び低温)で染料の合成実験を行うため布は最低 2枚調製した溶液と接触させそれ
ぞれ別々のシャーレ(低温用および常温用)に広げる
2) 新しいビーカーに水を約 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回分取)と 6molℓ塩酸約 4mℓ(10m
ℓ駒込ピペットで目分量で可)さらにアニリン約 1mℓ(プラスチック製 1 mℓ駒込ピペッ
ト)を入れてよくかき混ぜる染料の合成を常温および低温下で行うためこの溶液を
2つ調整する
低温下で反応させる溶液は恒温槽で 10~15 分ほどよく冷やした後亜硝酸ナトリウ
ム 05g を加えてよくかき混ぜる
常温下で反応させる溶液には冷却作業を行わずに亜硝酸ナトリウム 05g を加えて
よくかき混ぜる
3) 2)でつくった水溶液をシャーレに広げた布に注ぎ生成される染料を布によく染み
込ませ5分程放置する
4) 色の付いた布を取り出してポリ手袋をした手できれいに水洗いをし乾燥させる
48
5) 色差計を用いて乾燥した布の Lab(L明度aおよび b色度)を測定する
2)で作った溶液は5以下では無色の溶液ですが5以上になると淡い黄色になりま
す
【解説】
アゾ染料はアゾ基(-N=N-)を持っていてこのアゾ基によって鮮やかな橙色を呈色し
ます今回合成したアゾ染料は図の 1-フェニルアゾ-2-ナフトールです意外かもしれ
ませんが指示薬として使われているフェノールフタレインもアゾ化合物ですフェノール
フタレインは pH の変化によって色が出てきす染料の中でも最初は無色のものもありますが
温度を変化させたり酸性やアルカリ性にすると色が出てきます
ベンゼン ニトロベンゼン
N2Cl
ニトロ化 濃硫酸(濃硝酸)
還元反応 濃塩酸
(Sn又は Fe)
アニリン塩酸塩
遊離反応 NaOH
アニリン塩酸塩に強塩基を反応させる
と弱塩基であるアニリンが遊離する
氷冷+亜硝酸ナトリウム アニリン
塩酸
ジアゾ化
塩化ベンゼンジアゾニウム
塩化ベンゼンジアゾニウム
は熱によって窒素とフェノー
ルに分解される
カップリング
C10H7ONa (ナトリウム 2-ナフトキシド)
O
N =
1-フェニルアゾ 2-ナフトール
NH3Cl NH2
49
7 ガスクロマトグラフ質量分析計による茶葉中のカフェインの分析 71 はじめに ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)は極めて低い濃度の化学物質の同定や未知物質の構造決定に極めて強力な分析機器の一つであるGCMSを用いるとサンプルの中に含まれているある成分の分子構造(カフェインの分子構造を図 71に示す)やその量が分かりますもちろん分析機器ですので測定できる物質対象となる系や測定条件にはある
程度の制約があります混合物質を分離するガスクロマトグラフ(Gas ChromatographGC)と分離された成分(物質)を分析(構造決定と濃度測定)する質量分析計(Mass SpectrometerMS)を組み合わせた装置であるこの装置は有機化学生化学環境化学などの多くの分野で非常に多用されている例えば極めて低い濃度でも生体へ強い影響が懸念されるダイ
オキシン類などの土壌や河川の水中での含有率の決定や食品や医薬品中の微量成分の決定
にも利用されている 一方日本人に長い間親しまれてきた緑茶が近年産業界や医学
界で注目されている茶葉にはカフェイン(分子構造図 71)カテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドなどの有用成分が多く含まれておりその効能が注目されている 本実験では茶葉中に含まれるカフェインに対してGCMSを用いて分析する茶葉中には種々の物質が含まれておりGCMS分析を容易にするため前処理として超臨界二酸化炭素抽出(4015MPa程度の高圧力の二酸化炭素を溶剤として利用)により茶葉からカフェインの抽出を行いそのサンプルを GCMSにて分析する
図 71 カフェインの分子構造 図 72 物質の分析 個々の物質や装置についてはインターネットにより下記のWebサイトのフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』などにより調べるとよいカフェイン(caffeine)はアルカロイドの一種プリン環を持つプリンアルカロイドの一種でコーヒー類に含まれることか
らこの名がある化学名は137-トリメチルキサンチン(C8H10N4O2) コーヒーコーラ緑茶紅茶ガラナココアなどに含まれる(量は緑茶が一番多い)結晶は一水和物(C8H10N4O2bullH2O)もしくは無水物(無水カフェインC8H10N4O2)として得られ
る白色の針状または六角柱状結晶で匂いはなく味は苦い融点は 238昇華性がある出典フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』httpwwwwikipediaorg 装置「GCMS」httpwwwanshimadzucojpproductsgcmsqp2010htm (島津) 「超臨界抽出装置」httpwwwkagakucomjasco39-49html (日本分光)
50
レポート課題 1茶葉中に含まれるカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドの中から3つの物質を選びその物質について調べた結果を A4 レポート用紙2枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
2GCMS についてA4 レポート用紙1枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
3与えられたサンプルは茶葉1gから抽出されたのである実験結果よりもとの茶葉
1g中に含まれるカフェインの量を推算し計算式とあわせて示すこと 72 原理および装置 実験で使用する島津製の GCMS装置の全体図を図 73に原理の概略を図 74に示す
1
23
4
5
67 8
9
10
キャリアーガス
試料物質
1ボンベ(He)2圧力計3マイクロシリンジ4サンプラー5試料導入部6分離カラム
7セパレーター8イオン化室9磁石10電子増倍管11記録計
11
図 74 ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)の概略図
サンプルフォルダー
51
GCMS 装置は分離部である図中の 1~6 のガスクロマトグラフ(GC)と7~11 の検出部である質量分析計(MS)から構成される 3のマイクロシリンジを用いて試料を GCMSに導入する導入された試料は5試料導入部でガス化され6分離カラムに導入される分離カラムには吸着剤が充填されおり混合物の試料を導入した場合各物質と吸着剤との
親和性の違いにより各物質の分離カラムから排出されるタイミングは異なる分離カラム
を排出された試料は8イオン化室でイオン化され10電子倍増管にて検出される アセトンに溶解したカフェインの GCMSによる分析結果の一例を以下に示す図 75にク
ロマトグラム図 76にカフェインのピークのマススペクトルを示す
図 75 GCMSにより得られたクロマトグラム
横軸がリテンションタイムで縦軸がピーク強度を表す
図 76 カフェインのマススペクトルとカフェイン(分子量MW=194)の構造
(図 75中のリテンションタイム 126min付近のピークに起因するマススペクトル) 茶葉中にはカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイド以外にも繊維であるセルロースなど多くの物質が含まれているため茶葉そのものを
そのままサンプルとしてGCMSで分析することは困難であるセルロースなどの分子量の大きな物質はカラムに詰まってしまい分析できないそこで今回は超臨界二酸化炭素
による抽出により主にカフェインを他の物質と分離抽出した通常よく利用されるアセ
トン抽出(アセトンに茶葉を浸し特定の成分を抽出する)ではカフェイン以外にも多く
の物質が抽出されるため図 75 のような単独のピークを得ることは難しく複数のピークがクロマトグラムに見られるこのサンプル(この場合茶葉からの抽出物)にはカフェ
イン以外の不純物は少なかったがガスクロマトグラフの分離カラムによりさらにそれ
らの混合物が精度よく分離されるクロマトグラムのピークはそれらサンプル中に含まれ
ていた個々の物質を表しているクロマトグラムのピークを選択することで分子構造解析
したい物質を選んだことになる選択したクロマトグラムのピークの表している物質(ここ
ではカフェイン)に対応するマススペクトルが図 76 に表示されているマススペクトル
52
で横軸がその成分(ここではカフェイン)分子を構成している原子の原子量で縦軸がそ
の量を表しているのでマススペクトルから分子構造を解析するためにコンピュータ内
に蓄えられた物質ごとのマススペクトルデータと今回測定したマススペクトル(分子内に含
まれている各原子の数)を比較することで測定したサンプル中のクロマトピークを選択し
た分子がどのような原子をどれだけ含んだ分子であったかがわかりそれからその物質
がどのような分子構造の物質である可能性が高いかをコンピュータが検索し結果を示す 73 実験サンプルの設置と GCMS装置の操作方法 実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS装置のサンプルフォルダ
ー(図 73)にセットするこのサンプルは茶葉 1gを 50ccの高圧セルにて超臨界二酸化炭素を利用して4015MPa2時間接触の条件で抽出した固体を10gのアセトンに溶かしたものである またコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に装置および装置制
御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 本実験で使用する GCMS の操作は全てコンピュータのモニター上で GCMS の解析プログラムソフトを使用することで行うコンピュータの操作方法を以下に示す なおコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS 装置のサンプルフォルダー(図 73)にセットするまた装置および装置制御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 1)パソコンのデスクトップ上のアイコン「GCMS 分析」をクリックすると以下のようにGCMS制御プログラムを起動するその後「OK」ボタンをクリックする
図 77 GCMD分析用ソフトウェア「GCMS分析」の起動
まず「GC-MS分析」をクリック
「OK」ボタンをクリック
53
2)制御プログラムが起動されパソコンと GCMSの接続が開始される
図 78 「GCMS分析」の接続確認画面 3)GCMSとパソコンの接続が完了すると以下のような画面が表示される
図 79 「GCMS分析」操作画面
4)マススペクトルによる分子構造の解析 サンプル(この場合茶葉からの抽出物)には多くの物質が混じり合っていたがガス
クロマトグラフの分離カラムによりそれらの混合物が精度よく分離されるクロマトグラ
ムのピークはそれらサンプル中に含まれていた個々の物質を表しているクロマトグラム
のピークを選択することで分子構造解析したい物質を選んだことになる選択したクロマ
トグラムのピークの表している物質(ここではカフェイン)に対応するマススペクトルを選
択するマススペクトルは横軸が原子量で縦軸がその量を表しているのでマススペク
トルから分子構造を解析するために「定性処理」を行う シミラリティ検索結果が表示され分析により得られたスペクトルと類似のスペクトルを有
する物質の一覧が表示される上部に表示される物質ほどスペクトルが一致していること
を示す
接続状況が表示される
「トップへ」
をクリック
54
図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果
図 711 表示スペクトルのシミラリティ検索結果 10)図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果の印刷 「レポート(R)」をクリックし「検索結果(R)」をクリックすると検索結果が印刷される
GC-MS 分析で得られたマスス
ペクトル
データベース中
のマススペクト
ル
55
参考資料 生理活性物質の精製 カフェインの利尿作用のように生物活動に影響を与える物質を生理活性物質といいます
天然物には生理活性物質を多く含むものがあります一般に天然物は多くの成分を含ん
でおり特定の生理活性物質を分離抽出するには種々の分離技術が必要ですまた生
理活性物質には60以上の温度でその生理活性を失う(失活)ものや溶剤として広く用いられているクロロホルムなどの有機溶剤中で失活するものが多いそこでこれら生理活性
物質の分離精製技術の開発が望まれており30~60程度のマイルドな温度条件で操作できる二酸化炭素を機能性溶媒として利用する超臨界抽出も有効な分離技術として注目されて
いる超臨界二酸化炭素は気体と液体の中間の性質を持ち物質の分離に役立っています 臨界点付近の高密度気体は超臨界ガスまたは超臨界流体と呼ばれ臨界圧力前後でそ
の溶解能力が著しく変化することから工業的にも種々の分野で利用されています一例と
して超臨界二酸化炭素(SC-CO2)によるコーヒー豆からのカフェインの抽出プロセス(a)
ならびに超臨界二酸化炭素に対するカフェインの溶解度(b)を図に示します図(c)に示す
ように固体のカフェインがガスである超臨界二酸化炭素に溶解します
このように超臨界二酸化炭素を用いた技術はコーヒー豆からのカフェインの抽出プロ
ポリスからの生理活性物質の抽出に利用されています
図 超臨界二酸化炭素抽出を用いたコーヒー豆からのカフェインの抽出
56
付表 最小二乗法について 直線で近似する場合 f (x) = a0 + a1x (A1-1) 式(A1-1)のように近似させるとする測定値 yiとの残差を eiとすると式(A1-2)のようになる ei = yi - f (xi) = yi - ( a0 + a1xi ) (A1-2) ここで式(A1-2)の両辺を二乗してその i に関する総和をとりその値を S とすると次式となる
sumsum==
+minus==n
iii
n
ii xaayeS
1
210
1
2 )( (A1-3)
S を最小化するような a0a1を求める式(A1-3)を a0a1について偏微分すると次式とな
る
sum=
+minuspartpart
=partpart n
iii xaay
aaS
1
210
00)( sum
=
+minusminus=n
iii xaay
110 )(2 (A1-4)
同様にa1について編微分すると次式のようになる
sum=
+minusminus=partpart n
iiii xxaay
aS
110
1])([2 (A1-5)
Sが最小となる時は次式が同時に満たされる時である
00=
partpartaS
01=
partpartaS
(A1-6)
よって誤差が最小となる a0a1を求めるためには式(A1-6)を連立して解けばよい
sumsumsum===
+=n
ii
n
i
n
ii xaay
111
10 1 (A1-7)
sumsumsum===
+=n
ii
n
ii
n
iii xaxaxy
1
2
11
10 (A1-8)
式(A1-7)と式(A1-8)を a0a1を変数とみなし連立して解くと次式を得る
n組のデータ(xiyi)(i=12hellipn)に対して回帰直線 y= a0 + a1x を最小二乗法で求めて出力しデータ番号 iデータ yi直線で推定した値 )( ii bxay += および残差
iii yy minus=ε を出力するようなプログラムをつくりたい基礎式を導出せよ (ヒント残差の二乗の和が最小になるように係数 a0a1)を定めるのが最小二乗法
である)
57
sumsum
sumsumsumsum
==
====
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
n
ii
n
ii
xxn
xxyyxa
1
2
1
2
1111
2
0
)(
))(())(( (A1-9)
sumsum
sumsumsum
==
===
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
xxn
yxxyna
1
2
1
2
1111
)(
))(()( (A1-10)
よって式(A1-9)(A1-10)を用いれば最も誤差を小さくするような直線 y = a0 + a1x が求められる
y=a1x+a0 にて近似
誤差 ei
x
y
誤差が最小になる関数(直線 y=a1x+a0の場合)
図1 最小二乗による近似
誤差の和Sが最小
S
a0
a1
直線 y=a1x+a0 の近似
誤差の全体の和はS=Σei=Σyi-(a1xi+a0)
Sは変曲点にて最小値を示すすなわち(partSparta0)=0 (partSparta1)=0
図2 a0a1とSの関係
3
1 実験を始めるにあたって 工業物理化学実験の重要性 化学工学では蒸留抽出調湿乾燥吸着粉砕ろ過機械的分離(遠心力重力)
混合撹拌などの単位操作が中心であるがそれらの分離および混合操作はすべて物理化
学の原理に基づいて行われる物理化学は単位操作の基礎となる学問である3年後期に
行われる化学工学実験Ⅱ4年次の卒業研究および就職後の生活においても工業物理化学
実験の経験が役に立つしたがって2年前期に工業物理化学実験として物理化学に接し
馴染むことの意義は大きい またケミカルエンジニアは大量の混合物を扱い各単位操作を統合して系全体のプロ
セスを設計操作しなければならない大量の混合物を扱うためにはより正確な温度圧
力流量組成の制御が必要となるこれらに関する測定の基礎技術を拾得することは有
意義である工業物理化学実験を通じてケミカルエンジニアとしての基礎力を養われたい 講義および化学工学実験Ⅱとの関係 工業物理化学実験は3年後期の化学工学実験Ⅱと密接な関係にあるまた個々の実験
に関わる理論については既に講義されているものもあるが3年前後期に講義されるも
のもある大学での学習は高校までの受動的なものと異なり自主的なものであるこの
機会におおいに独創性を養われたい 工業物理化学実験は一年次において受講した基礎物理化学化学工学計算法およびその
他の基礎的な知識今までの実験的経験および予備学習をもとに安全かつ円滑に実験を進
めてもらいたい
4
2 実験実施要項 本指針書の実験(工業物理化学実験)は配布の実験日程にしたがって行います 21 実験担当 化学システム工学科 三島健司 松山清 22 実験日時 火曜日 4限5限 金曜日 4限5限 23 実験場所 617実験室(6号館 1階西側)の所定の実験台で実験を行います 24 実験に際し持参するもの 工業物理化学実験指針書レポート提出用のレポート用紙(A4サイズ)実験ノート(形式は自由です)グラフ用紙(A4方眼紙)筆記具(自在定規テンプレートなども含む)計算用具(関数電卓)白衣(清潔なもの)名札 実験に必要な物品以外の物(バッグ衣服など)は所定のロッカーに納め白衣を必ず着
用する実験に必要なものだけをもって実験室に入る退出の際忘れ物がないことを確認
する 注) 実験ノートは実験中に指導担当者がチェックするので指示に従うこと
また物品にはすべて氏名学籍番号を記入し紛失を避ける 25 実験開始前日までの用意(予備学習) 実験を行う前にその内容を熟知しておくことは事故の防止円滑な実験内容に対する
より深い理解などの観点からきわめて重要です 1)指針書を熟読する 2)実験開始前に既に記述できることがら(目的実験方法実験結果を記入するデータシートなど)を実験ノートおよびレポート用紙に事前に記入しておく実験終了時から提
出までの期間が短いので問題点に関する質問は早期に行う 3)持参すべき物品の確認をする 26 実験日の出欠について 出欠のチェックは時限開始直後と時限終了時(実験終了時)の 2回を行う「2回目のチェック時に不在の者」は当日を「欠席扱い」となります遅刻者は必ず指導担当者に報告する
遅刻および欠席は減点の対象となるので注意する実験時間中の「不在が著しいとき」は
当日を「欠席扱い」とする 27 実験報告書(レポート)の提出について 1)提出期限各実験報告書提出の締切日は「実験終了日より 7 日後(15 時まで)」です例えば1 テーマについて火曜金曜と実験を行った場合翌週の木曜日の午後 3 時までに提出してください金曜火曜と実験を行った場合は翌週の月曜日の午後 3時までの提出です提出期限(締切の日時)に遅れた報告書は受理しないので注意して下さい
2)再提出報告書の記載およびその内容によっては「再提出」を指示される場合がありま
す再提出の提出締切日は「返却日を含めてその日より 7日後(15時まで)」です提出
5
期限(締切の日時)に遅れた報告書は受理しない 28 実験実施上の注意 1)実験時間中は白衣着用履物は靴とする(サンダル類は不可)また白衣のボタンはか
ならずとめ袖などもしっかりとめる器具に袖などをひっかけて事故を起こすことの
ないように事前に注意する 2)試薬機器具については使用目的を指導担当者に報告のうえ受け取る返却時の報告
も確実におこなう 3)計測機器具などの使用(操作)は「取扱説明書」にしたがって行う 4)機器具類の保管は班(グループ)全員でこれにあたる破損または紛失したときは指導
担当者に口頭で報告して下さい実験終了時には各物品と実験台の整理整頓を行い指導
担当者の確認を受けて下さい 5)脱塩水製造装置(イオン交換)の使用に際しては指導担当者の指示を受ける 6)ガラス器具の洗浄法
a)ガラス器具は水道水で予洗の後クレンザーで十分に汚れを落とし再び水道水で良くすすぐただしガラス体積秤量器はこの限りにあらず下記のbの方法による洗浄の終了
はガラスの表面が一様に水膜で濡れていることにより判定するその後イオン交換水ある
いは蒸留純水で最低3回以上すすぎ加熱乾燥あるいは風乾させる乾燥後は所定の場所
に器具を返還する b)ガラス体積秤量器は水道水で予洗の後洗浄槽に一昼夜浸漬しその後水道水で十分すすぐ以後は aの場合と同様であるが乾燥に関しては風乾とし加熱乾燥は絶対に行ってはならない
7)プラスチック製器具の洗浄法 プラスチック製器具は材質が軟質であるので洗浄には液体洗剤を使用し加熱乾燥はさけ
風乾とする乾燥後は所定の場所に器具を返還する 8)実験廃液の処置法 実験廃液は有機溶剤廃液含有機溶剤水溶液廃液無機廃液含重金属廃液に分類し各々
所定の廃液タンクに保管する不明の場合には教員の指示を受けることみだりに流しに
は流さないこと 9)固体廃棄物の処置法 固体廃棄物は紙屑木材類ビニールゴム類金属類ガラス類に分類し所定の容器
に廃棄する 10)空になった試薬瓶は捨てないで教員の指示を受けること 11)電源の確保に関しては電気容量電線の容量等に関して教員の指示を受けること 12)天秤室への入室は各班(グループ)の秤量担当者のみとする(多人数の入室は秤量操
作の妨げとなるまた天秤転落事故の原因ともなる) 13)喫煙は「指定の場所」でおこなう実験室または指定場所以外での喫煙はしないこと 14)本実験では1テーマを各班とも数グループにわかれて実験をおこなうのでチームワー
クが必要である実験を始める前に互に話し合って実験上の手順すなわちデータの取り方
をきめておくとよい 15)機器の取り扱いは使用説明書をよく読んでから使用する 29 実験報告書実験ノート 実験報告書(レポート)はレポート用紙(市販の A4サイズ)を用いて提出して下さい報告内容は特に指示がない場合は次の項目とします
6
1)緒言(チョゲン) 3)実験方法 4)実験結果および考察 5)結言 6)使用記号(式や変数を使用した場合に必要) 7)引用文献(参考にした文献があれば)
レポートの内容の各項目に関して以下にその記述上の注意点を説明します 1)緒言 実験の目的意義を示す何をどうしようとするのかを示すものでその実験の直接の目
的を具体的に書く 2)実験方法 実験の方法は実際に行った実験を第三者にも再現できるように書くべきです自分達が
行った操作について表や図などを交えて明確に示しておくとよいでしょう 実験方法の文章は過去形で書くことが一般的です
3)実験結果および考察 結果(数値図表)と考察はレポートの中で最も重要な部分です指針書を参考にして
各自が工夫して記述して下さい 結果では得られた事実に忠実に書かねばなりません
また関連のあるものをまとめて図や表に示すとわかりやすいですただし結果の図や
表についての説明の文章も本文に必要です 結果おより考察の文章は現在形で書くことが一般的です また単位や有効数字に誤りがあると誤解を招く恐れがあります図表単位および有
効数字に関しては指針書を再読すること考察では得られた実権データを理論的な計算
などと比較して現象を検討する習慣も身につけましょう独自のものを書くようにこころが
けましょう 4)結言 結果および考察でえられた事柄をまとめて示します 主な記述上の注意事項 1 表については標題の位置表の上に書く注の位置表の下に書く 2 図については標題の位置図の下に書く注の位置図の下に書く 図を描く場合にはA4の各種方眼紙1枚に1つの図を描き本文を参照しなくても
図の内容がわかるように必要な条件などを全て記入することが望ましい図および表
は最後にまとめて示すのではなく関係の深い文の直後の頁に挿入する 3 その他記述上の注意は指針書や配布された資料を参考にされたいまたレポー
トにつける通しページ番号なども忘れぬよう 4 次元単位の付記に留意する「SI」はこれから必然的に使用される単位系であ
りその使用については留意してもらいたい 5 単位の記入においては変数の後には[ ]を付け数の後には[ ]を付けない例え
ばCp [Jmol-1K-1] Cp = 198 Jmol-1K-1 6 引用文献使用参考の記入については「化学工学論文集」「化学工学会誌」を参照
されたい 7 「化学工学論文集」「化学工学会誌」などは工学部の各図書館にあるので有効に活
用してもらいたい 8 レポートに記載する図表などは「化学工学論文集」「化学工学会誌」の表現に準
じた記載方法を用いること 9 図についてはExcelなどの表計算ソフトで作成したものでもよい
7
実験ノートは市販の大学ノートを使用して下さい各実験内容についてページを変
えて後で見て分かりやすいように書いて下さい上から5行程度に実験条件その他
必要事項日付などを記入する右端5cm程度の幅を備考欄とし実験中に気付いたこ
とその他必要事項を記入する使用した溶液の濃度ファクターなどが記録されていない場合がよくありますレポート作成時に困りますので忘れずに各自が実験ノートに記入
しましょう レポート表紙 レポートの表紙(市販の A4 のレポート用紙でよい)には以下のような表紙をつけること各ページにページナンバーを記入すること提出時には上端をホッチキスで閉じるこ
と記入はワープロ鉛筆でもよい
工業物理化学実験レポート(三島担当分)
実験項目 実 験 名 提出者 福岡大学工学部化学システム工学科 A組 5班 TK0315001 七隈太郎 共同実験者 福大次郎 干隈三郎 城南花子 早良五郎 実験日 平成 年 月 日 ~ 月 日 実験場所 化学工学共同実験室 B(6号館 1階 617室) 条件 気温 気圧 湿度 天候 提出日 平成 年 月 日
8
3 吸着 31 はじめに 活性炭 多孔質(多くの小さい穴がある)の吸着剤 酢酸 活性炭に吸着されるモデル分子
吸着実験データの整理によく使用する記号 n 溶質の吸着量 C 溶液中の溶質の濃度 単位は [ ] [ ] 考えてみよう 1) 右図のような低い濃度の酢酸水溶液の入ったビーカーに活性炭 をを加えた場合濃度はどうなるでしょうか
2)吸着された酢酸の物質量(n[mol])を測定するにはどのような 実験をすればよいでしょうか 図 1 活性炭
32 吸着操作 工場排液中の微量は有機物などを活性炭などの吸着剤で除去する工業操作を吸着操作と言
います蒸留抽出乾燥撹拌などの単位操作と同様に化学工業プロセスの重要な分離技
術です吸着操作は他の分離操作に比べてきわめて低濃度の範囲まで物質分離ができる特
徴がありますそのため近年問題となっている大気および水質の汚染汚濁に対する有力
な対策技術として注目されています 本実験では活性炭に対する酢酸の吸着挙動を調べることにより活性炭の吸着特性(吸
着平衡定数)を知り吸着操作の理論的な取り扱いについて学習しましょう 吸着量を求めてみましょうこの例では濃度換算が容易になるように溶液濃度をℓ でなく m3 単位とした) 低濃度のフェノールを含む排水の活性炭吸着実験を行って図 1のような吸着等温線(一
定温度で測定した溶液濃度と吸着量の関係)を得たいまフェノール濃度が 40mol m3の
排水 40m3に 60kgの新しい活性炭を投入して平衡に達したとき水中のフェノール濃度(mol m3)および 1gの活性炭のフェノール吸着量(molg)を求めよ
活性炭 1gに吸着するフェノールの物質量をn[molg]活性炭の量を W[g]とすると
フェノール排水 V[m3] 吸着前のフェノール濃度 C0[mol m3] フェノール分子
+
活性炭に吸着した溶質(フェノール)の量 nW (1)
溶液から取り除かれた溶質の量 (C0-C)V (2)
物質収支式より
nW=(C0-C)V (3) よって
VW
CCn
minus= 0 = )( 0CC
WV
minusminus (4)
9
図3 吸着等温度線と操作線
この操作からわかるように吸着データ(この実験で求める)が存在すれば
吸着等温線と操作線の交点から吸着処理しようとする溶液の体積 V と初濃度 C0
に対して使用する活性炭の質量 W により活性炭に吸着する溶質の量 n および吸着後の溶液の溶質濃度 C が計算で予測できますこの吸着データから吸着装置を設計することができます実際に吸着装置(吸着塔)の設計の様子を次ペー
ジの例題1に示しておきます興味のある人は5 段に積み重ねた吸着層を 04 mol ℓの濃度の廃液が通過すると濃度が 002 mol ℓ 以下になることを確認し吸着塔の設計方法を考えてみて下さい なお先ほど求めた式 (4)は皆さんが行う吸着実験データ(吸着等温線を作るもととなる吸着後の溶質濃度 C と各濃度に対する吸着量 n の関係)を求める場合にも使用します 問題1 質量 W=1gの活性炭を用いて体積 V=100cm3の酢酸溶液の吸着実験を行った
ところ活性炭と接触する前の酢酸溶液の初濃度はC0=0512moldm3であった
(dm3デッシメータ 3 乗= ℓリットル)吸着後の溶液を活性炭と分離してその酢酸溶液の濃度を 01N(01 規定の)水酸化ナトリウム水溶液で滴定して求めたところC=0478moldm3 であった1gの活性炭に吸着された酢酸の物質量n [mol]を式 (4)より求めよ
活性炭 1kg当たりに吸着された
フェノールの量 n[molg]
吸着操作後
の溶液のフ
ェノール濃
度 C
吸着等温線の一例 Langmuir式
KCKCnn
+=
infin
1
操作線
)( 0CCWVn minusminus=
傾き-23
初濃度 C0
[molm3]
吸着後の濃度 Cと吸着量 n
初濃度C0と傾き-VWを用いて操作線を引き
吸着等温線との交点を
求める
ここで(3)式の傾きWV
minus で図 1 における横軸
を通過する直線式(操作線)であるすなわち
)(=- 4032
)40(6040)()( 0
minus
minusminus=minusminus=
C
CCCWVgmoln
10
解答(計算式) )( 0CCWVn minusminus=
minus= ( ) (答) [mol]
例題 1 吸着塔の設計 濃度 C0[molm3]の不純物を含む工業排水(流量 V[m3hr])から不純物を除去するために下図
に示すような各 i段に活性炭を wi[g]含む5段の吸着塔を設計しましょう 各 i 段の出口と入口でのそれぞれの物質濃度 CiCi-1[molm3]とその段での活性炭単位質
量当たりの吸着量 ni[molg]との間に物質収支がなりたち他の部分への吸着は無視できるとするまた溶液中の平衡濃度Ci[molm3]と吸着量ni[molg]の関係はラングミアー(Langmuir)の等温吸着式で与えられるものとするラングミアーの等温吸着式における吸着平衡定数 K
と飽和吸着量 infinn としてはK=8611 infinn =0003262の値を用いる誤差を判定する定数 EPS
としてはEPS=000001を用いよ 図4 吸着塔の段数計算 図5 吸着塔 33 実験目的 一定の温度において活性炭による希酢酸の等温平衡吸着量 nを一定の温度において測定
しそれら測定値の Freundlich 式および Langmuir 式への適合性を比較検討するまたLangmuir式により活性炭の比表面積を求める 34 実験方法 レポートでの実験方法の記述では次のように説明文を必ず付けて下さい また行った方法については過去形「~した」のように記述して下さい 例) 活性炭による酢酸水溶液からの酢酸の吸着実験に次の器具および試薬を使用した [器具] 1000mlメスフラスコ(1)500mlメスシリンダ(1)500ml試薬瓶(5)共栓三
実験レポートを書く場合この「実験目的」を利
用して「緒言」を作成して下さい
実験方法は過去形にて記述
11
角フラスコ(5)2mlホ-ルピペット(2)5mlホ-ルピペット(2)10mlホ-ルピペット(1)100ml ホ-ルピペット(1)50ml ビュレット(1)電子天秤直示天秤(注( )内の数値は個数を表す) [試薬] N10N100-水酸化ナトリウム(NaOH)N10-塩酸(HCl)フェノ-ルフタレイン酢酸活性炭 1)2)および 7)については予め調整済み8)は2日目に実験する 1)酢酸 28mℓ をメスシリンダにて採集しこれを 1000mℓ メスフラスコに入れて蒸留水を加えて 1000mℓとしN2-酢酸を調整した(調整済み)
2)N2-酢酸より順次溶液 500mℓをメスシリンダに取り1000mℓメスフラスコを用いて
N4N8N16N32酢酸溶液を調整し500mℓ試薬瓶保持した 3)共栓三角フラスコ(100mℓ)の空重量を直示天秤にて正確に測定したこれに電子天秤にて測定した活性炭試料約 1gを入れて再び直示天秤にてその重量を正確に測り前後の差から投入した活性炭量を知る
4)活性炭を入れた各々の三角フラスコに各濃度の酢酸溶液 100mℓを正確にホ-ルピペットを用いて入れた(このとき気泡が混入しないように注意した)
5)上記に準備した三角フラスコに栓をしてこれらを所定の温度に設定した恒温槽に浸し
た浸した三角フラスコは約 20分間隔で気泡が混入しないように注意して振り混ぜるこの操作を約 2時間行った
6)次に滴定に用いて約 N10-N100-水酸化ナトリウム溶液 1000mℓを調整し濃度既知の塩酸溶液を用いてその正確な濃度を決定しておく(調整済み)
7)調整された酢酸溶液の各々を6)において標定した N10-水酸化ナトリウム水溶液にフェノ-ルフタレインを指示薬として滴定し各酢酸溶液の濃度を求めた(標定に要する
酢酸量は N2-と N4-の場合は 2mℓN8-と N16-の場合は 5mℓN32では 5mℓをホ-ルピペットで採集するただしN32についての滴定はN100水酸化ナトリウムで滴定した(各濃度について 3回ずつ滴定する)
注)ビュレットは各班に 2 本ある濃度の高い N2 酢酸から測定するので両方のビュレットにはN10-水酸化ナトリウム水溶液を入れて開始する
最重要注意事項
滴定を行う場合安全確保のため必ず安全メガネを着用すること 8)次に各試料溶液を一つずつ手早くろ過しろ過液を N10-水酸化ナトリウムで滴定して平衡濃度を決定した(標定に要する酢酸量は N2-と N4-の場合は 2mℓN8-とN16-の場合は 5mℓN32-では 5mℓをホ-ルピペットで採集したただしN32 ーの場合は N100 ー水酸化ナトリウムで滴定した)
12
1) 酢酸溶液の濃度の測定(1日目レポートにこの図は不要) 酢酸 28mℓをメスシリンダにて採集しこれを 1000mℓメスフラスコに入れて蒸留水を加えて 1000mℓとしN2-酢酸を調整する
N2-酢酸より順次溶液500mℓをメスシリンダに取り1000mℓメスフラスコを用いて N4-N8-N16-N32-酢酸溶液を調整し500mℓ試薬瓶に保持する
滴定用のビュレットを N10-N100-水酸化 ナトリウム溶液で共洗いする(3回)
ビーカーに酢酸溶液を少量入れて共洗いを行う (3回)試薬瓶からビーカーに酢酸溶液を滴定に 必要な量だけ取り出す
ホールピペットをビーカーの酢酸溶液を 使用して共洗いを行う(3回)
滴定用の三角フラスコに酢酸溶液を分取する
滴定(滴定は同じ濃度の酢酸溶液を 3回 以上滴定して平均する)
酢酸溶液の濃度計算
滴定による酢酸濃度の決定
1000
1000vfNvx timestimes=times (33)
x酢酸の仕込み液濃度 [molℓ] v酢酸の仕込み液の分取量 [mℓ] NNaOHの規定度 [N] fNaOHのファクター [-] vrsquoNaOHの滴定量 [mℓ] 注)酢酸は 1価の酸なので 1molℓ=1N(1規定)
13
式(33)の使用例 酢酸の仕込み液の分取量 v =2 mℓ NaOHの規定度 N = 01 N NaOHのファクター f = 0998 NaOHの滴定量 vrsquo = 985 mℓ である場合 式(33)を利用して酢酸の仕込み液濃度 x[molℓ]を求める
1000
1000vfNvx timestimes=times
vvfNx
timestimes=
49202859998010 =timestimes= molℓ (この xが濃度 C または C0 です)
2)酢酸溶液と活性炭の接触のフローチャート(1日目) 共栓三角フラスコ(100mℓ)の空重量を 直示天秤にて正確に測定する
電子天秤にて活性炭試料約 1g測る
共栓三角フラスコ(100mℓ)に 活性炭試料約 1gを入れる
活性炭試料約 1gを入れた 共栓三角フラスコ(100mℓ) を直示天秤にてその重量を測る
共栓三角フラスコ(100mℓ)の前後の 差から投入した活性炭量を計算する
活性炭を入れた各々の三角フラスコに 各濃度の酢酸溶液 100mℓを正確にホ-ルピペットを用いて入れる(このとき 気泡が混入しないように注意する)
三角フラスコに栓をしてこれらを所定の温度に 設定した恒温槽に浸す浸した三角フラスコは 約 20分間隔で気泡が混入しないように注意して 振り混ぜるこの操作を約 2時間行う
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3)吸着量の測定(2日目) 恒温槽の温度を測る
恒温槽から三角フラスコを一つずつ取り出す
各試料溶液を一つずつ手早くろ過する
活性炭
ろ液を滴定して平衡濃度を決定する
回収
吸着量の計算
Langmuirの吸着等温式Freundlich式のパラメータの決定
グラフの作成
吸着量の計算10001000 times
minus=
wCC
n (34)
n吸着量 [molg] C0 酢酸水溶液中の酢酸の濃度 [molℓ] C ろ液中の酢酸の濃度 [molℓ] w 活性炭の量 [g]
35 実験結果のまとめ方 実験結果は実験レポートを書く場合に考察と並んで重要な部分ですので主な注意事
項をここで説明しておきます グラフの作成n vs C nC vs C ln n vs ln C の 3つのグラフの作成 配布された Excel ファイルを利用し下図のような図を作成してみましょう
15
レポートの間違いやすい場所 ①表や図を示す場合次の例のように文章でもその旨を示す [実験結果] 共栓付三角フラスコに活性炭約 1g入れた試料の重量 w[g]を Table1に示す
Table1 調整酢酸濃度を入れる活性炭試料の重量 w [g]
酢酸規定度[N]
活性炭試料の質量w [g]
12 10300
14 10001
18 10126
116 10011
132 10109 酢酸(1)-水(2)-活性炭(3)の 12における吸着平衡の結果を Table 6および Fig1に示すただし活性炭 1gに吸着された酢酸のモル数 n[molg]は次式より求めた
( )10001001
0 timestimesminus=w
CCn b
C0仕込み液中の酢酸濃度 [molℓ] Cbバルク相中の酢酸濃度 [molℓ] w活性炭試料の質量 [g] n吸着量 [molg]
例えばCb=04621C0=04894w=10300の時は次のように計算できる
( ) 026501000100
0300114621048940 =timestimesminus=n
Table6 酢酸(1)-水(2)-活性炭(3)の 12における吸着平衡
吸着された溶質のモル数n[molg]
バルク相中の濃度Cb[moll]
00205 04621
00175 0241
00139 01139
00105 00519
00081 00243 ②得られた図や表の解釈(読者にそれらから読み取ってもらいたい事柄)の説明文を次の
例のように文章で記述する数字や図だけ示して読者に「理解しろ」というようなレポー
トではよくありません Table 6および Fig1よりバルク相中の酢酸濃度 Cbの増加にともない吸着量 nも増加することがわかったまた吸着量 n の値は酢酸濃度 Cbの増加にともない n=に漸近することがわかる
グラフ(Fig)は次ペ
ージに掲載すること
グラフや表の後にはそれらの結果より得られた知見を文章でも
記入すること
16
36 エクセルによる吸着データの整理法 注コンピュータの画面はWindowsXP上での操作になっています他の OS(Windows98 2000
NT)搭載のパソコンでも同様の作業が可能です) 先ほど問1で説明したように溶液濃度の濃度変化から吸着量 nを求めました実験では吸着後の水溶液中の酢酸の濃度 Cと吸着量 nの関係を各濃度の溶液(5種類)について測定しその値を計算します このようなデータの整理には表計算ソフトであるマイクロソフト社の Excelが便利です
Excel の起動方法はそのソフトがインストール(設定)されているコンピュータにより若干方法が異なることがありますがほとんど同じですここでは福岡大学の総合情報処理
センターのコンピュータの設定に従って説明します 表計算をしてみましょう セルとは セルというのは最小単位の四角のことです例えば「(Aの1)またはA1というセルセル
B1」のようにセルという言葉を使いますセル A1に1という数字を入れてみましょうセルA1をクリックしてキーボードから「1」と入力しキーボードの「Enter」キーを押します
図 5 Excelの入力例1 図 6 Excelの入力例2
次にセル B1に「5」という数字を入れましょう次にセル C1にセル A1と B1に記入された数値の和を表示させてみましょう 下の図のようにセル C1をクリックします上の「 fx 」と書かれた右のボックス(何かを書くところに)「 =A1+B1 」と書きましょうそして Enterを押すとセル C1に 6と表示されます
図 Excelを用いた関数計算 実験では吸着後の水溶液中の酢酸の濃度 Cと吸着量 nの関係を各濃度の溶液(5種類)について測定しましたこのデータに対してExcelを用いて表計算してみましょうまず先ほど記述したセル A1~A3は「Delete」(デリート)キーで値を削除しましょう
17
次にセル A5~A9に活性炭と接触する前の酢酸水溶液の初濃度 C0[moldm3]セル
B5~B9に活性炭と接触後分離した酢酸水溶液の濃度 C[moldm3]セル E5~E9に活性炭の質量 W[g]をキーボードから入力します作成した一例を次に示します
図 8 Excelによる吸着量nの計算 ここで1gの活性炭に吸着された酢酸の物質量n [mol]を式 (4)より計算できるのでセル C 5~C9に次の関数式を記述します式の内容としては
)( 0CCWVn minusminus=
となるように記述するので実際の Excelの関数としては次のように行います セル C 5をクリックし関数ボックス(fxの右)に「=(A5 ndash B5)01E5」と記述(半角または直接入力形式で)し「Enter」キーを押し確定しますこの関数はフィルハンドルを利用してセル C 6~C9にコピーしますただし実験で溶液は 100cm3使用しましたが
溶液の濃度 C が[moldm3]の単位ですので100cm3=01dm3 となり関数式の中では
V=01 dm3としています なおグラフの記述方法やフィルハンドルの使用方法については化学工学プログラミ
ングなどの補助資料を参考にして下さいまた実験の際に配布した Excel ファイル(ファイル名ad_graxls)を使用すると実験データの理論的な解析も容易にできますので試してみましょうExcelファイル(ファイル名)「ad_graxls」の使用方法は次節で説明します 36 実験結果の考察方法 (吸着実験について) 実験結果の考察方法は種々の方法がありますがここでは一例として理論と比較する
方法を示します実験結果として下図(左)のようなグラフができましたこのような実
験結果に対して理論的な考察を行ってみましょうここでは次節で説明するラングミュ
ア(Langmuir)の単分子吸着モデルで計算した理論線と実験と比較したものを下図右に示しますこの図を作る方法は次節で説明しますレポートの考察の部分はラングミュア
(Langmuir)の単分子吸着モデルの式の導出から書いて下さい 理論を作る場合幾つかの仮定をしますがその理論が多くの実験結果をうまく説明でき
ている場合その仮定がある程度妥当なものであったことがわかります指針書に書いてあ
った以外の理論についても興味があれいばためしてみましょう
セル C5をクリックし関数ボックス( fx の右)に「=(A5 ndash B5)01E5」と記述(半角または直接入力
形式で)します
18
ラングミュア(Langmuir)の単分子吸着モデルを用いて理論値を計算するには配布され
た Excelファイル(ファイル名)「ad_graxls」を使用すると便利ですその使用方法を以下に示します配布プログラムは化学工学プログラミングの講義の場合と同様に総合情報処
理センターの共通領域にあります各自コピーして使用して下さいコピーするには化
学工学プログラミングの講義の場合と同様にコピーしようとするファイルを共通領域から
自分の使用しているコンピュータのデスクトップにドラッグドロップします共通領域で
ファイルを開くとファイルの消去などで他の人が使えなくなりますので共通領域でファイ
ルをダブルクリックしないようにして下さい誤って共通領域でファイルをダブルクリック
した場合はそのファイルを閉じるボタンをクリックし閉じて下さい 各自のコンピュータに保存した Excelのファイル(ファイル名ad_graxls)をダブルクリ
ックして開きます自宅へ持ち帰る場合各自のフラッシュメモリーやフロッピーディスク
を使用しまたはメールを使用して添付ファイルで送信できます各自のフラッシュメモ
リーやフロッピーディスクに保存してあるファイルを再編集する場合はフラッシュメモリ
ーやフロッピーディスクをコンピュータの USB 端子またはフロッピーディスクドライブに挿入します次にデスクトップ上にあるマイコンピュータのアイコンをダブルクリックし
ます もしデスクトップ上に上のアイコンが無ければ画
面左下の「スタート」ボタンからマイコンピュータをク
リックしてくださいすると次のような画面が立ち上が
ります
ラングミュア(Langmuir)の単分子吸着モデルで計算した
理論線
19
その中からフラッシュメモリーの場合は「リムーバブルディスク」をフロッピーディ
スクの場合は「35インチ FD」のアイコンをダブルクリックしてくださいファイルが保存されていれば次の画面が出てきます
この画面の中の「ad_graxls」ファイルをデスクト
ップにコピーしますまず「ad_graxls」ファイルを左クリックしますこの時クリックした指はは
ずさないようにしますその状態のままデスクトッ
プまでファイルを移動させますそしてデスクト
ップ上の任意の場所でクリックした指をはずします
これでデスクトップ上に「ad_graxls」のファイルがコピーされましたのでデスクトップにコピーさ
れたファイルをダブルクリックして開きますコピ
ー操作が上手くいかなかった場合もう一度移動の操作を行ってください
必ずデスクトップにコピーしてから開く操作を行って下さいフロッピーディスクから直接
開いて操作を行った場合正しく保存されない可能性があります 「ad_graxls」のファイルを開くと次のような画面が立ち上がりますもし画面が違う場合は画面の下部にある「吸着データ」のタグ をクリックしてくださいこの画面
でデータの処理や計算を行いますでは実際の操作に入る前に予めこのファイルに名前
を付けて保存しておきますまずExcelの画面のツールバー「ファイル」から「名前を付けて保存」をクリックします下のような画面が起動します
20
ファイルの保存先を変えたい場合画面上部のボタンをクリックし保存先にデスクトッ
プを選択します次にファイル名の部分に各自ファイル名を入力しますファイル名は何
でも良いですが分かり易い名前にしておくとファイルの管理がやり易くなります日付や
数字を入れると同名のファイルをいくつも管理する場合に便利ですここでは「吸着実験デ
ータ整理 4月 01」とし「保存」ボタンをクリックします
ファイル名変更後Excelの画面上部のタイトルバーのタイトルが先ほどの名前(上の図とは異なります)になっていることを確認してください
この操作を行うことによって元のデータである「ad_graxls」を変更してしまう心配がなくなります元のデータである「ad_graxls」はファイルが破損しまたは間違った操作の結果を誤って保存してしまった場合などの補助ファイルとなりますので大切に保管しておいて
下さい今後配布するデータは先ほど説明した手順で名前を変えて保存し元のデータに
直接変更を加えないようにして下さい ここから実際の作業に入ります初期状態では模擬のデータが入力されています入力
データは予め計算しておいた酢酸濃度Cb[moll](濃度を Cと表示している場合もあります)と活性炭吸着量 n[molg]になります下の画面の丸で囲んだ部分がそれぞれの値でBCカラム(列)の 4~9行には数値が入力されています関数ではありませんこのデータを利用して実際のデータ解析を行ってみましょう下記のように行うと幾つかのグラフが
現れ実験データに対してラングミアーの単分子吸着を仮定したモデルを用いて精度よ
く計算線が描けることがわかります 今回はCbnの値を入力する必要はありませんExcelが自動的に計算を行って結果を表示するようになっていますつ
まりセル D5に「=B5C5」と関数を入力しこの関数に対してフィルハンド
ルを利用してセル D6~D9へコピーし
ファイルの保存先を変えたい場合画面
上部のボタンをクリックし保存先に
デスクトップを選択します
変更するファイル名はここをクリッ
クして書き換えます
名前を変更したらここをク
リックして保存します
21
まています 次に酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着量 n[molg]の関係および酢酸濃度 Cb[molL]と Cbn[gL]の関係をグラフ化します今回は自動的にグラフが作成されるようになっていますので複
雑な操作は必要ありません ここではデータに対してそれを精度よく表現する近似式をグラフ上に描きその関数
を数値として求める方法を Excelで練習してみましょう
グラフを表示させるには画面の下にある「Graph1」もしくは「Graph2」のタグ
をクリックします「Graph1」には酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着量n[molg]の関係のグラフが「Graph2」には酢酸濃度 Cb[molL]と Cbn[gL]の関係のグラフが表示されます「Graph2」はLangmuir の等温吸着式による相関を表したもので横軸に酢酸濃度 Cb[molL]をとり縦軸に酢酸濃度 Cb[molL]を活性炭吸着量 n[molg]で除した値 Cbn[gL]を示していますLangmuir の等温吸着式についてはこの後の章で説明してありますので各自読んで理解して下さいLangmuirの等温吸着式では式中の定数 ninfin(飽和吸着量)と K(吸着平衡定数)を実験データから最小二乗近似で決定する場合が多くありますここでは
その例を取り上げてデータに対してそれを精度よく表現する近似式をグラフ上に描き
その関数を数値として求める方法(最小二乗法最小二乗については付録に示しており
また化学工学プログラミングの講義においても説明します)を Excelで練習します 配布された Excel ファイル「ad_graxls」では実験点が表示されているだけでそれを精度よく表現する近似式の直線のグラフは「Graph2」に表示されていません今から次の手順で「Graph2」の図(グラフ)に近似式の直線のグラフを表示しますExcel の場合近似曲線(ここでは直線)を求める場合コンピュータが自動的に最小二乗法を使って近似曲線
を計算しています
「Graph1」の画面 「Graph2」の画面
Excelの sheetが表示されたらまずファイル名を変えデスク
トップに保存して下さい次
にGraph2のタックを左クリックして最小二乗法のグラフを
確認して下さい
22
38 Langmuirの等温吸着式による相関 はじめにLangmuir式の定数 ninfinと Kを決定するために「Graph2」酢酸濃度 Cb[molL]と
Cbn[gL]の関係のグラフから最小二乗法により直線の式を求めますExcelを用いてデータに対して近似直線のグラフを描き最小二乗法の直線の式を求めます
次のような「近似曲線の追加」のウィンドウが現れたら今回は線形近似(直線で近似
y=ax+b の式)を選びますので線形近似が黒色に反転していることを確認して「近似曲線の追加」のウィンドウの右下の「OK」ボタンをクリックして下さい
実験点の何れかにポインタをあわせて
右クリックする
近似曲線の追加(R)を選択して左クリックする
「線形近似」であること
を確認して「OK」ボタンをクリックします
23
「近似曲線の書式設定」
のウィンドウでオプシ
ョンから「グラブの書式
を表示する」の前を選ん
でチェック(前のチェッ
クボックスをクリック)
した後「OK」を押す
現れた直線にポインタをあわせて
左クリックすると「近似曲線の書式
設定」のウインドウが表示されます
ここをクリックします
この「オプション」のタ
グをクリックします
「y=」の関数
が現れるのでここ
をクリックする
式の文字フォントが初期値
「8」と小さいのでここ
のボタンをクリックし
フォントサイズを選ぶリス
トボックスを表示し「22」程度の大きなサイズを選択
しクリックする
24
「Graph2」酢酸濃度 Cb[molL]と Cbn[gL]の関係のグラフから最小二乗法により直線の式がこのように求められましたExcel を用いてデータに対して近似直線のグラフを描き最小二乗法の直線の式を求めるこの方法は他の実験データの解析などにも利用できますので
各自活用して下さい 表示された関数式「y=43865+2654」はノートにメモして下さいこの傾き 43865と
切片 2654からLangmuir式の定数 ninfinと Kを決定します決定方法の詳細はこの後の 36 の Langmuir式のパラメータ決定法に示しています ラングミュアの等温吸着式を変形すると次式となる
CCnKnCKn
CCKn
Cβ+α+
==
+= infininfininfin
11)1(
ただしα=1ninfinβ=1(ninfinK)とするこの式より Cnを縦軸Cを横軸とした関係のグラフは傾きα=1ninfin切片β=1(ninfinK)の直線関係を与えることを示しています そこでExcelのシートを利用してこの値からLangmuir式の定数 ninfinと Kを次のように決定しますセル C18D18に Graph2で求めた数値 2654と 43865を代入しますその後D19と C19に関数を ldquo=1D18rdquoとrdquo=D18C18ldquoを代入しますセル内の式は半角で入力してください
現れた関数の文字フォン
トを大きく(例えば 22)してその数字をメモし
吸着データシートの C18と D18に記入する
C18D18 に Graph2 で求めた値 2654 と 43865 を代入した後D19 と C19 に関数を ldquo=1D18rdquoとrdquo=D18C18ldquoを代入する
25
この Excel表示では最小二乗法を用いて決定した傾きαと切片βを用いて α=1ninfin=43865 β=1(ninfinK)=2654 得られた傾きおよび切片よりninfinおよび Kは次のように求まる
ninfin=1α=1D18=000228 molg-1 K =(1ninfin)β=αβ=D18C18=165
つまりセル D19にはninfinの値がセル C19にはKの値が表示されますこれらの値はラングミュア(Langmuir)の単分子吸着モデルで計算した理論線と実験と比較する場合に利用します実験結果に対して理論的な考察を行う例としてラングミュア(Langmuir)の単分子吸着モデルで理論線を計算し実験と比較するにはこの Excelファイルを利用して次のように計算しグラフに表示します セル F5~F30 には溶液中に残る酢酸濃度 Cb[molL]に対する活性炭に吸着された吸着量n[molg]の関係のグラフ「Graph1」の横軸の酢酸濃度 Cb[molL]の適当な値が既に入力してありますこれらのそれぞの酢酸濃度 Cb[molL]に対する吸着された酢酸の吸着量 n[molg]の理論値をラングミュア(Langmuir)式で計算しますラングミュア式は次式で与えられます
KCKCnn
+=
infin
1 (310)
ここでこの実験データを最も精度よく計算できるように決定した ninfinおよび K は上述のようにninfin=1α=1D18=000228 molg-1 K =(1ninfin)β=αβ=D18C18=165 でありこれらの値はセル D19にninfinの値がセル C19にKの値が表示されていますこの値を利用して「Graph1」に計算線を描くにはまずセル G5~G30 にセル F5~F30 のそれぞれの酢酸濃度 Cb[molL]に対する吸着された酢酸の吸着量 n[molg]の理論値をラングミュア式で計算しますそのためにはセル G5 にラングミュア式を次のように記述しますただしセル D19の ninfinの値セル C19の Kの値は常に同じセルから参照するので絶対参照($マークを付けて$D$19 $C$19と記述します)で記述します
Langmuir式をセル G5に記述するただし濃度はF5の値を相対参照しD19と C19は絶対参照($マークが必要)することを忘れないように
セルG5に記述すべき数式
=$D$19$C$19F5(1+$C$19F5)
26
G5記述後フィルハンドルを使用してG5の関数を G6~G30までコピーします Sheet1から Graph1 のタグをクリックしGraph1 に計算線が表示されたことを確認しましょうこれでラングミュア式によるデータの解析は終了です実験値と理論値を比較して現象
について考察してみて下さいラングミュア式を理論的に導く場合にある仮定をしている
のですがその仮定をしているラングミュア式が実験データを精度よく計算できていれば
その仮定が妥当なもとであったと考察できます 与えられたモデルデータでラングミュア式によるデータ解析ができれば他の理論(例え
ばフロインドリッヒFreundlich式や BET式レポートはどちらか一方でも可です) についてもExcel で計算してみましょうレポートには自分のデータについてここで行った内容と同様に計算しその結果を考察に記述して下さい 自分のデータについて同様の計算をするにはまずいままで計算を行った Excel ファ
イルを保存しますデータを自分の実験データに置き換える前に Excel ファイルをさらに別の名前で保存します与えられた Excel ファイルは初期状態では模擬のデータが入力されているので今回自分達の実験したデータを入力していきます入力するデータは予め計算
しておいた酢酸濃度 Cb[moll]と活性炭吸着量 n[molg]になります下の画面の丸で囲んだ部分にそれぞれ自分の実験データを入力していきます
今回はCbnの値を入力する必要はありませんExcelが自動的に計算を行って結果を表示するようになっています 次に酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着
量 n[molg]の関係および酢酸濃度Cb[molL]と Cbn[gL]の関係をグラフ化します今回は自動的にグラフが作成
されるようになっていますので操作は必
要ありません 39 Freundlichの等温吸着式による相関 今回の実験で得られた酢酸濃度 Cbと活性炭吸着量 nのデータを利用してFreundlichの等温吸着式の定数 abの値を求めFreundlichの等温吸着式の理論線をグラフに追加します ここでFreundlich式は次式で表されます
bbaCn1
=
このままでは定数 abの値を決定することが難しいので上式の両辺の対数をとり線形化しますすると次式となります
bCb
an ln1lnln +=
ここでln Cbと ln nの関係をグラフにプロットすれば傾き 1b切片 ln aの直線関係が得られますしたがって実験データである酢酸濃度 Cbと活性炭吸着量 nの値の対数をそれぞれ計算します配布した「ad_graxls」ファイルを開き「吸着データ」シートの任意の部分に以下のような表を作成します
27
次にln Cb[-]の列の最初のセルに以下の数式を入力します
=ln(B5) 上式中の「B5」は Cb の値の最初のセルの位置を指します各個人の位置によって変更してください
次にln n[-]の列の最初のセルに以下の数式を入力します
=ln(C5) 上式中の「C5」は nの値の最初のセルの位置を指します各個人の位置によって変更してください
ここでln Cb[-]ln n[-]の値に対しそれぞれオートフィルを行い計算させますすると以下のようなデータが完成します
計算した ln Cb[-]ln n[-]の値をグラフにプロットし最小二乗法による直線式を求めます
28
ここで以下のような直線の式が得られたとします
9135ln31690ln913531690 minus=there4minus= bCnxy
上式より切片は-5913傾きは 03169となるので以下の要領で定数 a1bを計算します ==there4minus= minus 91359135ln eaa 000270
316901=
b
a の値を Excel で計算させる場合は任意のセルに以下のような数式を入力することで求めることができます
=exp(-5913) これでFerundlich等温吸着式の定数 a1bの値が決定しましたこの値は後で使うのでノートなどにメモしておいてください 次に決定した Ferundlich 等温吸着式の定数 a1b の値を用いてFerundlich 等温吸着式のグラフを作成します先ほども示したように Ferundlich等温吸着式は次式で表されます
bbaCn1
=
従って定数 aと 1bの値はすでに決定しているので任意の Cbの値に対する nの値を数点求めればFerundlich等温吸着式で求めた理論線が得られます以下の操作で理論線を引くことができます Langmuir 等温吸着式による相関のときと同様にExcel の「吸着データ」のシート上の任意の場所に以下のような表を作成します
次に Ferundlich等温吸着式に従いnの値を計算します
bbaCn1
=
式中の定数 a1bは先ほど計算した値を用いますしたがって式は次のようになります
31690002700 bCn times=
この式を Excelのセル内に記入すれば計算ができます次の
29
ように記入します
=00027G5^03169 ここで式中の「G5」は Cbの値が 0のセルを指しています各個人の位置によって変えてください 次に式を記入したセルを Cbの値が 05のところまでオートフィルを行いますそうするとすべての Cbに対して nの値が計算されます
これで Freundlich等温吸着式のデータが完成しましたので次に「Graph1」酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着量 n[molg]の関係のグラフにこのデータを追加し理論線を引きます理論線の引き方は Langmuirによる相関のときと同様の操作を行ってください グラフの書式等を変更し整理すると以下のようなグラフが出来上がります
310 吸着等温線とは 固体の吸着剤を溶液と接触させる時一定量の吸着剤によって吸着される溶質の量は温度一定ならば溶質の濃度の関数になる一定温度での吸着量を温度に対してプロットした時に
得られる曲線を吸着等温線というこの吸着等温線を比較的よく表す経験式として次の
Freundlich式がある
n=aC1b (1) ここで n は吸着剤の質量あたりの吸着量C は吸着平衡濃度a と b は実験から決定されるパラメータであるがその物理的意味は多少希薄である これに対し理論的な意味を持つものに次のラングニュア(Langmuir)の吸着等温式がある
30
KCKCnn
+=
infin
1 (2)
ただしninfinは飽和吸着量Kは吸着平衡定数であるこの式は
1)吸着分子が固体表面で単分子以上の厚い層を作ることはない 2)吸着分子同士の間の相互作用はない
という二つの仮定にもとに導かれたものである 結果の整理および報告 Freundlich吸着等温式Langmuir吸着等温式の各々のパラメータの最適値を求めよまた活性炭の吸着特性および表面積について考察し化学工学における吸着操作の重要性につい
ても検討せよ 311 吸着等温式 (a) ヘンリー(Henry)型吸着等温式 液相の濃度あるいは気相の圧力が小さい場合吸着分子間の距離が十分に長いため吸着
分子同士の相互作用が無視でき固体表面と吸着分子のみの相互作用で吸着量を決定できる
とき次式のように表される
n=KC (3)
ここでKは比例定数である図 3-1の(a)に示すように濃度 Cと吸着量 nは比例関係があり一般に吸着量が小さい範囲で成立する気体の場合は溶液濃度 Cの代わりに気相圧力 pを用いればよい
濃度(分圧)
濃度(分圧)
濃度(分圧)
濃度(分圧)
吸着量
吸着量
吸着量
吸着量
(a)ヘンリー型 (b)ラングミュア型
(d)BET型(c)フロインドリッヒ型
0
0
0
0
図 3-1 吸着等温式
31
(b)ラングミュア(Langmuir)型吸着等温式 ラングミュアは図 3-2 に示すように固体表面に同等な吸着力を示す吸着サイトがあり
表面に 1分子層だけ吸着する(単分子層吸着)と仮定して平衡状態における吸着量と溶質濃度(気相分圧)のと関係を導いた全吸着点のうち吸着分子に覆われている吸着点の割合
をθ[-]とすると分子の脱着速度 rrsquo[mols-1]はθに比例する比例定数を a[mols-1]とすると次式のように表される
吸着剤
吸着分子
吸着サイト
図 3-2 固体表面上の吸着サイト(Langmuir式の導出) r=aθ (6) また気相からの吸着速度 r[mols-1]は空いている吸着点の割合(1-θ)[-]と溶液濃度 C[molm-3]に比例する rrsquo= b(1-θ)C (7) このときの比例定数を b[m3s-1]とするまた平衡状態では両速度は見かけ上等しいため以下の式が成り立つ aθ=b(1-θ)C (8) これを変形する
CbaCbsdot+
sdot=θ (9)
ここで飽和吸着量を ninfin[molkg-1] ba を K[m3mol-1](Kは吸着平衡定数)とおくと infin=nnθ
となるので次式が得られる
32
KCKCnn
+=
infin
1 (10)
これをラングミュア式と呼ぶ
(c)フロインドリッヒ(Freundlich)型吸着等温式 フロインドリッヒの吸着等温線は図 3-1(c)のように示される
n=aC1b (11) nは吸着量[molkg-1]で aと bはともに吸着定数[-]である (d)BET(Brunauer-Emmett-Teller) 型吸着等温式
BET型の吸着等温線は図 3-1(d)に示されるラングミュア式は表面に 1分子層だけ吸着すると仮定したものであるがBET式は無限分子層まで吸着できる式である図 3-3に示すように吸着した分子がそれぞれ次の層の吸着サイトとなり分子は積み重なって多分子
層に無限層まで吸着できるものとし各層への吸着にラングミュア式を適用すれば次式の
ように表せる
( ) ( )CKCCCKqq
minus+sdotminussdotsdot
=infin
11 (12)
この式は多孔質固体の細孔表面積を窒素ガスの吸着によって測定する際に利用される重要な式
である
表面の吸着サイト
分子上の吸着サイト
図 3-3 多分層吸着モデル
Langmuir式のパラメータ決定法 水溶液からの酢酸の活性炭に対する吸着平衡データ(吸着平衡温度 12)は表 3-1のよ
うに与えられる実験データよりラングミュア式のパラメータ(K吸着平衡定数ninfin飽和吸着量)を最小二乗法で決定せよさらにラングミュア式より決定した ninfinKの値を用いて吸着等温線を計算し計算線として図に示し実験点と比較せよ
33
表 3-1 n C Cnの関係
ラングミュア式は式(310)で与えられるこの式を変形すると次式となる
CKnCK
n infinsdot+
=11
(313)
両辺に Cをかけると以下の式が導出される
CCnKnCKn
CCKn
Cβ+α+
==
+= infininfininfin
11)1( (314)
ただしα=1ninfinβ=1(ninfinK)とする式(314)より Cn と C の関係のグラフプロットは傾きα=1ninfin切片β=1(ninfinK)の直線関係を与えることを示している表 3-1の値を用いて計算した Cnと Cの関係を表 3-1および図 3-4に示す 最小二乗法を用いて傾きαと切片βを決定した α=1ninfin=43865 β=1(ninfinK)=2654 得られた傾きおよび切片よりninfinおよび Kは次のように求まる
ninfin=1α=1D18=000228 molg-1 K =(1ninfin)β=αβ=D18C18=165
0
50
100
150
200
0 200 400 600
C [ molm-3 ]
Cn [ kgm-3 ]
傾き = 1 ninfin
1 ninfinK
切片0
05
1
15
2
25
3
0 100 200 300 400 500
液相の溶質濃度 C [ molm-3 ]
吸着量 n [ molkg-1]
液相と溶質濃度 C [ molm-3 ]
吸着量
n[ m
olk
g-1]
実験点
Langmuir式パラメータninfin 00033 [ molg-1 ]K 00086 [ m3 mol -1 ]
図 3-4 ラングミュア定数の決定 図 3-5 12における酢酸濃度 Cと
吸着量 nの関係
C [molm-3] n [molkg-1] Cn [kgm-3] 460 225 109 529 214
268 199 149 105 060
172 128 732 504 357
34
Freundlich式のパラメータ決定法 酢酸水溶液中における酢酸の活性炭に対する吸着実験を行ったところ以下のような実験デー
タを得たただしCbはバルク相における酢酸濃度n は活性炭に対する酢酸の吸着量を示す
Cb[molL] n[molg] log10Cb log10n 04621 000205 02410 000175 01139 000139 00519 000105 00243 000081
実験データを利用して次式で与えられる Freundlichの等温吸着式の定数 abの値を求めたい
bbaCn1
= (1)
このままでは定数 abの値を決定することが難しいので上式の両辺の対数をとる
bbb
bb
Cb
aCa
aCn
ln1lnlnln
)ln(ln1
1
+=+=
=
(2)
ここで横軸に ln Cb縦軸に ln nの関係をグラフにプロットするすなわち x=ln Cby=ln nと考える
bCb
an ln1lnln += (3)
ここで直線式 y=a0+a1xと比較するすなわち
)(1)(ln
1
00
傾き
切片
ba
eaaa a
=
=rarr= (4)
a0および a1は最小二乗法により数値で求められる与えられたデータでは a1= a0= なので a= b= となる この値を n=acb
1bに代入してcb=0~05の範囲で nの値を計算する
35
BET式のパラメータ決定法 BET式は次式で与えられる
)1)(1( KCCCKCnn
+minusminus=
infin
(17)
以下のように BET式の変形を行う
)1()1(
KCCKCnCn+minus
=minusinfin
(18)
(18)式の逆数をとると
KCnCK
KCnKCC
Cn infininfin
minus+=
+minus=
minus)1(1)1(
)1(1
(19)
(19)式の両辺に Cをかえると
KCnCKC
CnC
infin
minus+=
minus))1(1(
)1( (20)
(20)式を変形すると次式が得られる
CKn
KKnCn
Cinfininfin
minus+=
minus11
)1( (21)
C と)-(1 Cn
Cのプロットは傾き
KnKinfin
minus1切片
Kninfin
1の直線関係を与えることを示している
これをグラフにプロットし最小二乗法に傾きおよび切片を求める
36
312 活性炭の比表面積の決定 酢酸分子の構造を以下に示す
Hc-Cb-Ca
Hd
Hb Oa
Ob-Ha
1219deg
Ca Oa
Ob
図 36 酢酸の構造
酢酸の 1分子の吸着面積srsquo [m2]を図 3-6に示すこのとき文献より
Caと Oaの結合距離 1321Å Caと Obの結合距離 1206Å OaCaObの角度 1219deg Cの原子半径 077Å Oの原子半径 062Å
したがって吸着面積 Slsquoは次のようになる
( ) ( ) 2088 10376109931036321 minusminusminus times=timestimestimestimes=s m2
ここで活性炭の比表面積 S[m2g]は次式で示される 10026 23 snS timestimestimes= infin
S活性炭の比表面積 [m2g] ninfin飽和吸着量 [molg] srsquo酢酸 1分子の吸着面積 [m2] 602times1023アボガドロ数 [個mol] したがって活性炭の比表面積 S[m2g]は
003350=infinn molg 2010376 minustimes=s m2 より
51281037610026003350 2023 =timestimestimestimes= minusS m2g
37
4 粘度密度測定 41 はじめに 大量生産を目的とした工業的化学プロセスはほとんど流れ系(流通系)であるそれらの系において操作対象となる各物質の粘度は装置を設計操作する場合きわめて重要
な物性値である 本実験では低分子溶液および高分子溶液の粘度測定を通じて液体の粘度について考察するさらに演習問題を通じて気体液体高分子溶液などの化学プロセスで対象となる物
質の輸送物性(粘度拡散係数)の重要性を認識されたい 42 低分子溶液の粘度 [目的] 種々の濃度のエタノール水溶液の粘度を測定しその溶液の粘度について考察する [概要] 25におけるエチルアルコール濃度 02040506080100 wt の水溶液について流下時間を測定しこの結果より相対粘度絶対粘度運動粘度を求めグラフにするま
た水の密度水-エチルアルコール溶液の密度についてはピクノメーターを用いて決
定する報告書には相対粘度絶対粘度運動粘度 vsエチルアルコール濃度の関係をそれぞれグラフにして提出する
[計算方法] 相対粘度絶対粘度運動粘度の定義は次のようになる
相対粘度 ww
w tdtd
ηη = (41)
η 混合溶液の粘度 [gcms] ηw水の粘度(8007times10-3 gcms) [gcms](25における粘度) d エチルアルコール水溶液の密度 [gcm3] dw水の密度(099704gcm3) [gcm3](25における密度) t エチルアルコール水溶液の流下時間 [s] tw水の流下時間 [s] 下付添字 W 水
絶対粘度 www td
tdη
η= (42)
運動粘度 ν=ηd [cm2s] (43)
38
[実験方法] 1) 粘度計を洗浄し粘度計内 に二連球で空気を送り込み
乾燥させる乾燥しにくい 場合はアセトンを滴下し た後再度二連球で空気 を送り込み乾燥させる 2)ピペットで一定体積(10mℓ) の純水を取り広い口 f から 粘度計に水を入れる 3)粘度計を恒温槽(25)に つけ約 10 分静置する 4)安全ピペッターを口 a に 取り付け液面が b 上部に 到達するまで吸い上げる 5)安全ピペッターを外すと 液面が降下しだす液面が bd 間を通過する時間をスト ップウォッチで測定する
6)純水での測定を 3 回繰り返す 7)純水を粘度計から取り除くその後粘度計内に二連球を用いて空気を送り込み乾燥させる 8)粘度計乾燥後複数の濃度に調整済みのエチルアルコール水溶液(10mℓ)を粘度計にいれ4)~6)の作業を繰り返し行う(3 回)なお濃度の異なるエチルアルコール水溶液を粘度計内に導入する場合には7)と同様に二連球を用いて粘度計内に空気を送り込み乾燥させる
表 4-1 エチルアルコール水溶液の濃度密度相対粘度の関係 エチルアルコール濃度
[wt] 密度 d[gcm3] 相対粘度
η ηw[-] 0
20 40 50 60 80
100
安全ピペッター接続
図 4-1 粘度計
液面の bd間の通過時
間を測定
f
39
43 密度測定 [目的] 本実験では水とエタノールの種々の組成の混合液体について密度を測定し分子間相互
作用について考察する [実験方法] 1)ピクノメーターの容積測定
図 4-2のピクノメーターの空の重量 wg を秤量する
ピクノメーターの蓋を取り外し
ピクノメーターを水で満たす
設定温度を 25として恒温槽 の電源を入れ恒温槽内の温 度が一定になるまで待つな お水温は恒温槽中の水銀温 度計から読む
恒温槽中に水を満たしたピク
ノメーターを入れる
約 10分間静置する
ピクノメーターに蓋をするこのときピクノメーターの容量
よりも余分の水は蓋の上部より排出される
ピクノメーターの外側を乾いた布で拭い秤量する(その重量を
wwg とする)
恒温槽の温度(25)における水の密度 dwgcm3(=099704gcm3)
より次式を用いてピクノメーターの容積を求める
w
w
dww
Vminus
= (44)
図 4-2 ピクノメーター
蓋
40
表 4-2 エチルアルコール水溶液の濃度と密度の測定結果(25) エチルアルコ
ール濃度[wt]
wrsquo[g] ww[g] V[cm3] w[g]
d[gcm3]
0 20 40 50 60 80
100
099704
エチルアルコール濃度[wt] 空のピクノメーターの重量 wrsquo[g] 水を入れたときのピクノメーターの重量 ww[g] ピクノメーターの体積 V[cm3] エタノール水溶液の入れたときのピクノメータの重さ w[g] エタノール水溶液の密度 d[gcm3]
容積 Vを求めたピクノメーターに混合溶液(調整済み)を入れてその重量 wgを秤量し次式で混合溶液の密度を求める
Vwwd minus
= (45)
エタノール濃度と密度 d の関係をグラフにプロットする
41
44 高分子溶液の粘度 [目的] 高分子溶液の粘度測定から分子量の粘度に与える影響について考察する [概要 ] オストワルド粘度計を用い種々の濃度のポリビニルアルコール(PVA ((-CH2CHOH-)n))水溶液の粘度を測定し粘度データよりポリビニルアルコールの分
子量を求める まず 05g100cc の濃度のポリビニルアルコール水溶液を調製する次にこれを原液
とし23 12 13 15の濃度の溶液を調製するこれらの溶液についてオストワルド粘度計を用いてそれぞれ流下時間を測定し相対粘度絶対粘度運動粘度を求め実験デ
ータより極限粘度[η]を求めるまた報告書には相対粘度絶対粘度運動粘度C
)ln( wηη
Cw
w-η
ηη vsポリビニルアルコール濃度の関係をそれぞれグラフにして提出する
[計算方法] エチルアルコール水溶液の粘度測定と同様の手法を用いて粘度の計算を行うなおポリビニルアルコール水溶液の密度はピクノメーターを用いて測定すること 表 4-3 ポリビニルアルコール水溶液の濃度密度相対粘度の関係 ポリビニルアルコール
濃度 [g100cc] 密度 d[gcm3] 相対粘度
η ηw[-] 05times(15) 05times(13) 05times(12) 05times(23)
05
42
[分子量の計算方法] 実験を行った結果以下のような粘度データを得られるとする実験データより極限粘度
を求めポリビニルアルコール(PVA)の分子量Mを決定せよ
PVA 水溶液濃度
C[g100cc]
相対粘度
ηηw[-]
絶対粘度
η[gcms]Cw
w-η
ηη
C)ln( wηη
05times(15) 1031 0008255 031 0305
05times(13) 039 0378
05times(12) 03 0289
05times(23) 0375 0353
05 0364 0334
ηw=8007times10-3 gcms 線状高分子の極限粘度[η]と分子量Mの関係は次式で与えられる [η]=KMα (46) ただしポリビニルアルコールの場合K=666times10-4α=064であるなお極限粘度[η]は次式で定義される
CC w
w
0
-][ limη
ηηη
rarr
= (47)
または
CC
)ln(][ w
0lim
ηηη
rarr
= (48)
よって濃度 CとCw
w-η
ηηまたは濃度 Cと
C)ln( wηη の関係をグラフ化し最小二乗法によ
り切片の値を求めると極限粘度[η]が決定される
Cw
w-η
ηηと C の関係より最小二乗法を用いて切片の値を決定すると(図 43 参照)切片=
03242傾き=00874となるよって極限粘度は以下のようになる[η]=03242同様
にC
)ln( wηη とcの関係より最小二乗法を用いて切片の値を決定する
(図 44参照)と切片=03249傾き=00256となり極限粘度は以下のようになる[η]=03249
Cw
w-η
ηηと Cの関係より決定した[η]=03242を用いてポリビニルアルコール(PVA)の
分子量 Mを計算する(46)式より以下のように PVAの分子量 Mを計算することができるM=([η]K)1α
=(03242(666times10-4))(1064)
=15811
43
y = 00874x + 03242
0
02
04
06
08
1
0 01 02 03 04 05 06 07
c[g100cc]
(η-ηw)(ηwc)
cw
w
η
ηηminus
極限粘度[η]
図 43 298Kにおける PVA濃度 CとCw
w-η
ηηの関係
y = 00256x + 03249
0
02
04
06
08
1
0 01 02 03 04 05 06 07
c[g100cc]
(ln(ηη
w))c
c)ln( wηη
極限粘度[η]
図 44 298Kにおける PVA濃度 CとC
)ln( wηη の関係
44
5 植物からの DNAの抽出 51 はじめに 分子レベルでの遺伝子の構造解明や遺伝子の発現に関する研究は近年急速に発展している
これら生命現象のしくみを分子レベルで解明しようという分子生物学の分野ではさまざま
な遺伝子の解析や応用方法が開発され我々の生活に身近なものになりつつある 本実験では初歩的な分子生物学に関する実験として植物(タマネギ)からの DNA の
抽出を行い抽出した遺伝子の電気泳動法による分離実験を試みる 52 試薬および器具 試薬 タマネギ(細胞中から遺伝子の抽出を行う) 台所用洗剤(洗剤中に含まれる界面活性剤には植物の細胞膜およびタンパク質を破壊す
る働きがある) 塩化ナトリウム(DNAは塩化ナトリウム水溶液に溶解し易い性質がある) エタノール(予め冷やしておくDNAはエタノールにほとんど溶解しない) 制限酵素(DNAを一定の部位で切断する働きを働きがある) TE緩衝液(pH緩衝剤が入った溶液) 器具 ビーカーミキサーフィルターメスシリンダー駒込ピペットガラス棒 マイクロピペット電気泳動装置ポラロイドカメラ 53 実験方法 1)タマネギは 1回の実験で半個のうち内側の半分程度を使用するタマネギ水 30ml台所用洗剤数滴をミキサー用ガラス容器に入れ40~60秒程度(固体状のタマネギがなくなる頃が目安)ミキサーにて混合する
2) 1)で作成した混合溶液をビーカーに移し約5g程度の塩化ナトリウムを加えガラス棒で静かに攪拌する粘性の大きな溶液が得られる
3) 2)で作成した溶液をフィルターを用いて濾過し濾液を回収する 4) 濾液の約2倍程度の量の冷エタノールをビーカーの壁伝いに静かに注ぐ 5) ビーカーを揺するとエタノール層に白くふわふわしたものが浮いてくるこれが DNAであるガラス棒で DNAを巻き取りシャーレ上にて DNAを回収する顕微鏡を用いて回収した DNAの状態を観察する
6)マイクロチューブ(容量 15ml)中に用意した 70エタノールを 8 分目程度まで注ぐ5)にて回収された DNAをマイクロピペットを用いて70エタノールの入ったマイクロチューブ中に移す軽く混ぜることによりDNA から不要な物質を洗い流す遠心分離してDNA をマイクロチューブの底に沈めた後溶液を捨てて DNA を乾かす乾いたらTE緩衝溶液を 1ml加えて放置するDNAの溶液が得られる
54 電気泳動装置による DNAの観察
本実験は職員と一緒に行うこと 実験を行う人はビニール手袋をすること 1) 抽出した DNAを電気泳動装置で観察するマイクロピペットを用いて以下のように調製した DNAの混合溶液を調製する(いずれの溶液も調製済)
45
2) マイクロピペットを用いてアガロースゲルの試料を流し込む穴(ウェル)に1)にて調製した溶液 Aおよび Bを注ぎ込む注入量は20μℓとする電気泳動装置のスイッチを入れて100Vの電流を流しアガロースゲル内にて DNAを電気泳動させる
3) 試料に予め加えられておいた青色の色素が 7 分目程度まで進んだら電気泳動を中止する(約 30分程度)
4) (ここでの作業は職員が行う) アガロースゲルを取り出し染色液に浸す染色後ゲルを取り出しポラロイドカメラで
DNAの泳動状態を撮影する
+ -
アガロースゲル
試料を流し込む穴(ウェル)
図 51 電気泳動装置
6 5 4 3 2 1
図 52 DNAの電気泳動写真の一例
55 電気泳動装置の原理 電気泳動装置の原理図を以下に示すアガロースゲル(寒天から不純物を除いたもの)中
に DNAをセットし電流を流すとDNAは電流の向きとは逆にマイナスからプラス方向
調製済 溶液 A(制限酵素なし) 水 11μℓ 10timesH Buffer 2microℓ 植物 DNA 5μℓ
調製済 溶液 B(制限酵素 Eco RI入り) 水 11μℓ 10timesH Buffer 2microℓ 植物 DNA 5μℓ 制限酵素 2μℓ
1 DNA(タマネギ)+制限酵素 2 DNA(タマネギ)+制限酵素 3 DNA(タマネギ) 4 λ-DNA(大腸菌)+制限酵素 5 λ-DNA(大腸菌) 6 サイズマーカー
500bp
46
に動く(このことを電気泳動という)これはDNA のリン酸部分が負に帯電しているためでありまたDNAはその長さにより泳動距離が異なる(短い遺伝子ほど長く泳動する)電気泳動ではこの性質を利用してDNAを大きさごとに分離することができる
塩基対数によってDNAを分離
EtBr (蛍光試薬)DNAの二本鎖内に入り込む
発光
UVλ=302nm
励起
分離後のアガロースゲルをエチジウムブロマイド(EtBr)溶液に浸す
DNAを含んだ溶液
アガロースゲル
リン酸部分が負に帯電
塩基 (ATGC)-
+
カメラで撮影
電圧
DNA構成成分(dNTPs)
バンドが明る
DNA量が
バンド(DNAの存在)
図 53 電気泳動の原理
56 制限酵素とは DNA は4 種類のヌクレオチド(GATC)が不規則につながってできている制限酵素はDNAの特定のヌクレオチドが並んでいる部分を切断する制限酵素には様々な種類がありEco RI(エコアールワン)と呼ばれる酵素は「GAATTC」といった並びの部分だけを切断することができる
GAATTC
CTTAAG
制限酵素
Eco RI
AAGCTT
TTCGAA
制限酵素
Hin dIII
図 54 制限酵素による DNAの切断
レポートについて 1 実験方法および実験結果の整理方法については指針書を参考にすること 2 実験結果については電気泳動の結果について考察すること(制限酵素の影響などにつ
いてまとめてください)
47
6 染色実験
61 はじめに
現在私達の身の周りでは様々な染料が使われている例えばT シャツやジーンズな
どの衣服は橙黄赤青など様々な色に染められている他にも私達が気付かないと
ころで多くの染色された製品を使用しているそこで本実験では高校の化学で学んだ
アゾ染料を合成してみるアゾ染料はアニリンを原料として作られているアニリンはベ
ンゼン環にアミノ基(-NH2)がついたものであるアニリンは無色の液体で水に溶けにく
くアンモニアより弱い塩基性を示すまたさらし粉(CaClO(ClO)H2O)水溶液を加えると
赤紫色を呈するこの呈色反応はアニリン特有のものであるので検出反応に用いられる
このアニリンを出発物質としてアゾ染料を合成してみる
62 試薬および使用器具
【試薬】 ①05moll 水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液
②2-ナフトール ③フェノール ④6moll 塩酸
⑤亜硝酸ナトリウム ⑥アニリン ⑦氷
【器具類】 ①電子天秤 ②50mℓビーカー ③100mℓビーカー
④ガラス棒 ⑤布(ガーゼなど) ⑥ピンセット
⑦ポリ手袋 ⑧ドライヤー ⑨シャーレ
10駒込ピペット(10ml ガラス製)
11駒込ピペット(1ml プラスチック製)
63 実験方法
1) 50mℓビーカーの中に 05molℓ水酸化ナトリウム水溶液 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回
NaOH 水溶液を分取するほぼ 20 mℓ分取できれば可)と 2-ナフトールを約 01g 入れ
よくかき混ぜる調製した溶液の中に布をつけその布はガラス棒でしぼってから(布
をガラス棒ですくいあげればよい)シャーレに広げる温度の異なる条件下(常温およ
び低温)で染料の合成実験を行うため布は最低 2枚調製した溶液と接触させそれ
ぞれ別々のシャーレ(低温用および常温用)に広げる
2) 新しいビーカーに水を約 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回分取)と 6molℓ塩酸約 4mℓ(10m
ℓ駒込ピペットで目分量で可)さらにアニリン約 1mℓ(プラスチック製 1 mℓ駒込ピペッ
ト)を入れてよくかき混ぜる染料の合成を常温および低温下で行うためこの溶液を
2つ調整する
低温下で反応させる溶液は恒温槽で 10~15 分ほどよく冷やした後亜硝酸ナトリウ
ム 05g を加えてよくかき混ぜる
常温下で反応させる溶液には冷却作業を行わずに亜硝酸ナトリウム 05g を加えて
よくかき混ぜる
3) 2)でつくった水溶液をシャーレに広げた布に注ぎ生成される染料を布によく染み
込ませ5分程放置する
4) 色の付いた布を取り出してポリ手袋をした手できれいに水洗いをし乾燥させる
48
5) 色差計を用いて乾燥した布の Lab(L明度aおよび b色度)を測定する
2)で作った溶液は5以下では無色の溶液ですが5以上になると淡い黄色になりま
す
【解説】
アゾ染料はアゾ基(-N=N-)を持っていてこのアゾ基によって鮮やかな橙色を呈色し
ます今回合成したアゾ染料は図の 1-フェニルアゾ-2-ナフトールです意外かもしれ
ませんが指示薬として使われているフェノールフタレインもアゾ化合物ですフェノール
フタレインは pH の変化によって色が出てきす染料の中でも最初は無色のものもありますが
温度を変化させたり酸性やアルカリ性にすると色が出てきます
ベンゼン ニトロベンゼン
N2Cl
ニトロ化 濃硫酸(濃硝酸)
還元反応 濃塩酸
(Sn又は Fe)
アニリン塩酸塩
遊離反応 NaOH
アニリン塩酸塩に強塩基を反応させる
と弱塩基であるアニリンが遊離する
氷冷+亜硝酸ナトリウム アニリン
塩酸
ジアゾ化
塩化ベンゼンジアゾニウム
塩化ベンゼンジアゾニウム
は熱によって窒素とフェノー
ルに分解される
カップリング
C10H7ONa (ナトリウム 2-ナフトキシド)
O
N =
1-フェニルアゾ 2-ナフトール
NH3Cl NH2
49
7 ガスクロマトグラフ質量分析計による茶葉中のカフェインの分析 71 はじめに ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)は極めて低い濃度の化学物質の同定や未知物質の構造決定に極めて強力な分析機器の一つであるGCMSを用いるとサンプルの中に含まれているある成分の分子構造(カフェインの分子構造を図 71に示す)やその量が分かりますもちろん分析機器ですので測定できる物質対象となる系や測定条件にはある
程度の制約があります混合物質を分離するガスクロマトグラフ(Gas ChromatographGC)と分離された成分(物質)を分析(構造決定と濃度測定)する質量分析計(Mass SpectrometerMS)を組み合わせた装置であるこの装置は有機化学生化学環境化学などの多くの分野で非常に多用されている例えば極めて低い濃度でも生体へ強い影響が懸念されるダイ
オキシン類などの土壌や河川の水中での含有率の決定や食品や医薬品中の微量成分の決定
にも利用されている 一方日本人に長い間親しまれてきた緑茶が近年産業界や医学
界で注目されている茶葉にはカフェイン(分子構造図 71)カテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドなどの有用成分が多く含まれておりその効能が注目されている 本実験では茶葉中に含まれるカフェインに対してGCMSを用いて分析する茶葉中には種々の物質が含まれておりGCMS分析を容易にするため前処理として超臨界二酸化炭素抽出(4015MPa程度の高圧力の二酸化炭素を溶剤として利用)により茶葉からカフェインの抽出を行いそのサンプルを GCMSにて分析する
図 71 カフェインの分子構造 図 72 物質の分析 個々の物質や装置についてはインターネットにより下記のWebサイトのフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』などにより調べるとよいカフェイン(caffeine)はアルカロイドの一種プリン環を持つプリンアルカロイドの一種でコーヒー類に含まれることか
らこの名がある化学名は137-トリメチルキサンチン(C8H10N4O2) コーヒーコーラ緑茶紅茶ガラナココアなどに含まれる(量は緑茶が一番多い)結晶は一水和物(C8H10N4O2bullH2O)もしくは無水物(無水カフェインC8H10N4O2)として得られ
る白色の針状または六角柱状結晶で匂いはなく味は苦い融点は 238昇華性がある出典フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』httpwwwwikipediaorg 装置「GCMS」httpwwwanshimadzucojpproductsgcmsqp2010htm (島津) 「超臨界抽出装置」httpwwwkagakucomjasco39-49html (日本分光)
50
レポート課題 1茶葉中に含まれるカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドの中から3つの物質を選びその物質について調べた結果を A4 レポート用紙2枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
2GCMS についてA4 レポート用紙1枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
3与えられたサンプルは茶葉1gから抽出されたのである実験結果よりもとの茶葉
1g中に含まれるカフェインの量を推算し計算式とあわせて示すこと 72 原理および装置 実験で使用する島津製の GCMS装置の全体図を図 73に原理の概略を図 74に示す
1
23
4
5
67 8
9
10
キャリアーガス
試料物質
1ボンベ(He)2圧力計3マイクロシリンジ4サンプラー5試料導入部6分離カラム
7セパレーター8イオン化室9磁石10電子増倍管11記録計
11
図 74 ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)の概略図
サンプルフォルダー
51
GCMS 装置は分離部である図中の 1~6 のガスクロマトグラフ(GC)と7~11 の検出部である質量分析計(MS)から構成される 3のマイクロシリンジを用いて試料を GCMSに導入する導入された試料は5試料導入部でガス化され6分離カラムに導入される分離カラムには吸着剤が充填されおり混合物の試料を導入した場合各物質と吸着剤との
親和性の違いにより各物質の分離カラムから排出されるタイミングは異なる分離カラム
を排出された試料は8イオン化室でイオン化され10電子倍増管にて検出される アセトンに溶解したカフェインの GCMSによる分析結果の一例を以下に示す図 75にク
ロマトグラム図 76にカフェインのピークのマススペクトルを示す
図 75 GCMSにより得られたクロマトグラム
横軸がリテンションタイムで縦軸がピーク強度を表す
図 76 カフェインのマススペクトルとカフェイン(分子量MW=194)の構造
(図 75中のリテンションタイム 126min付近のピークに起因するマススペクトル) 茶葉中にはカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイド以外にも繊維であるセルロースなど多くの物質が含まれているため茶葉そのものを
そのままサンプルとしてGCMSで分析することは困難であるセルロースなどの分子量の大きな物質はカラムに詰まってしまい分析できないそこで今回は超臨界二酸化炭素
による抽出により主にカフェインを他の物質と分離抽出した通常よく利用されるアセ
トン抽出(アセトンに茶葉を浸し特定の成分を抽出する)ではカフェイン以外にも多く
の物質が抽出されるため図 75 のような単独のピークを得ることは難しく複数のピークがクロマトグラムに見られるこのサンプル(この場合茶葉からの抽出物)にはカフェ
イン以外の不純物は少なかったがガスクロマトグラフの分離カラムによりさらにそれ
らの混合物が精度よく分離されるクロマトグラムのピークはそれらサンプル中に含まれ
ていた個々の物質を表しているクロマトグラムのピークを選択することで分子構造解析
したい物質を選んだことになる選択したクロマトグラムのピークの表している物質(ここ
ではカフェイン)に対応するマススペクトルが図 76 に表示されているマススペクトル
52
で横軸がその成分(ここではカフェイン)分子を構成している原子の原子量で縦軸がそ
の量を表しているのでマススペクトルから分子構造を解析するためにコンピュータ内
に蓄えられた物質ごとのマススペクトルデータと今回測定したマススペクトル(分子内に含
まれている各原子の数)を比較することで測定したサンプル中のクロマトピークを選択し
た分子がどのような原子をどれだけ含んだ分子であったかがわかりそれからその物質
がどのような分子構造の物質である可能性が高いかをコンピュータが検索し結果を示す 73 実験サンプルの設置と GCMS装置の操作方法 実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS装置のサンプルフォルダ
ー(図 73)にセットするこのサンプルは茶葉 1gを 50ccの高圧セルにて超臨界二酸化炭素を利用して4015MPa2時間接触の条件で抽出した固体を10gのアセトンに溶かしたものである またコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に装置および装置制
御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 本実験で使用する GCMS の操作は全てコンピュータのモニター上で GCMS の解析プログラムソフトを使用することで行うコンピュータの操作方法を以下に示す なおコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS 装置のサンプルフォルダー(図 73)にセットするまた装置および装置制御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 1)パソコンのデスクトップ上のアイコン「GCMS 分析」をクリックすると以下のようにGCMS制御プログラムを起動するその後「OK」ボタンをクリックする
図 77 GCMD分析用ソフトウェア「GCMS分析」の起動
まず「GC-MS分析」をクリック
「OK」ボタンをクリック
53
2)制御プログラムが起動されパソコンと GCMSの接続が開始される
図 78 「GCMS分析」の接続確認画面 3)GCMSとパソコンの接続が完了すると以下のような画面が表示される
図 79 「GCMS分析」操作画面
4)マススペクトルによる分子構造の解析 サンプル(この場合茶葉からの抽出物)には多くの物質が混じり合っていたがガス
クロマトグラフの分離カラムによりそれらの混合物が精度よく分離されるクロマトグラ
ムのピークはそれらサンプル中に含まれていた個々の物質を表しているクロマトグラム
のピークを選択することで分子構造解析したい物質を選んだことになる選択したクロマ
トグラムのピークの表している物質(ここではカフェイン)に対応するマススペクトルを選
択するマススペクトルは横軸が原子量で縦軸がその量を表しているのでマススペク
トルから分子構造を解析するために「定性処理」を行う シミラリティ検索結果が表示され分析により得られたスペクトルと類似のスペクトルを有
する物質の一覧が表示される上部に表示される物質ほどスペクトルが一致していること
を示す
接続状況が表示される
「トップへ」
をクリック
54
図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果
図 711 表示スペクトルのシミラリティ検索結果 10)図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果の印刷 「レポート(R)」をクリックし「検索結果(R)」をクリックすると検索結果が印刷される
GC-MS 分析で得られたマスス
ペクトル
データベース中
のマススペクト
ル
55
参考資料 生理活性物質の精製 カフェインの利尿作用のように生物活動に影響を与える物質を生理活性物質といいます
天然物には生理活性物質を多く含むものがあります一般に天然物は多くの成分を含ん
でおり特定の生理活性物質を分離抽出するには種々の分離技術が必要ですまた生
理活性物質には60以上の温度でその生理活性を失う(失活)ものや溶剤として広く用いられているクロロホルムなどの有機溶剤中で失活するものが多いそこでこれら生理活性
物質の分離精製技術の開発が望まれており30~60程度のマイルドな温度条件で操作できる二酸化炭素を機能性溶媒として利用する超臨界抽出も有効な分離技術として注目されて
いる超臨界二酸化炭素は気体と液体の中間の性質を持ち物質の分離に役立っています 臨界点付近の高密度気体は超臨界ガスまたは超臨界流体と呼ばれ臨界圧力前後でそ
の溶解能力が著しく変化することから工業的にも種々の分野で利用されています一例と
して超臨界二酸化炭素(SC-CO2)によるコーヒー豆からのカフェインの抽出プロセス(a)
ならびに超臨界二酸化炭素に対するカフェインの溶解度(b)を図に示します図(c)に示す
ように固体のカフェインがガスである超臨界二酸化炭素に溶解します
このように超臨界二酸化炭素を用いた技術はコーヒー豆からのカフェインの抽出プロ
ポリスからの生理活性物質の抽出に利用されています
図 超臨界二酸化炭素抽出を用いたコーヒー豆からのカフェインの抽出
56
付表 最小二乗法について 直線で近似する場合 f (x) = a0 + a1x (A1-1) 式(A1-1)のように近似させるとする測定値 yiとの残差を eiとすると式(A1-2)のようになる ei = yi - f (xi) = yi - ( a0 + a1xi ) (A1-2) ここで式(A1-2)の両辺を二乗してその i に関する総和をとりその値を S とすると次式となる
sumsum==
+minus==n
iii
n
ii xaayeS
1
210
1
2 )( (A1-3)
S を最小化するような a0a1を求める式(A1-3)を a0a1について偏微分すると次式とな
る
sum=
+minuspartpart
=partpart n
iii xaay
aaS
1
210
00)( sum
=
+minusminus=n
iii xaay
110 )(2 (A1-4)
同様にa1について編微分すると次式のようになる
sum=
+minusminus=partpart n
iiii xxaay
aS
110
1])([2 (A1-5)
Sが最小となる時は次式が同時に満たされる時である
00=
partpartaS
01=
partpartaS
(A1-6)
よって誤差が最小となる a0a1を求めるためには式(A1-6)を連立して解けばよい
sumsumsum===
+=n
ii
n
i
n
ii xaay
111
10 1 (A1-7)
sumsumsum===
+=n
ii
n
ii
n
iii xaxaxy
1
2
11
10 (A1-8)
式(A1-7)と式(A1-8)を a0a1を変数とみなし連立して解くと次式を得る
n組のデータ(xiyi)(i=12hellipn)に対して回帰直線 y= a0 + a1x を最小二乗法で求めて出力しデータ番号 iデータ yi直線で推定した値 )( ii bxay += および残差
iii yy minus=ε を出力するようなプログラムをつくりたい基礎式を導出せよ (ヒント残差の二乗の和が最小になるように係数 a0a1)を定めるのが最小二乗法
である)
57
sumsum
sumsumsumsum
==
====
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
n
ii
n
ii
xxn
xxyyxa
1
2
1
2
1111
2
0
)(
))(())(( (A1-9)
sumsum
sumsumsum
==
===
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
xxn
yxxyna
1
2
1
2
1111
)(
))(()( (A1-10)
よって式(A1-9)(A1-10)を用いれば最も誤差を小さくするような直線 y = a0 + a1x が求められる
y=a1x+a0 にて近似
誤差 ei
x
y
誤差が最小になる関数(直線 y=a1x+a0の場合)
図1 最小二乗による近似
誤差の和Sが最小
S
a0
a1
直線 y=a1x+a0 の近似
誤差の全体の和はS=Σei=Σyi-(a1xi+a0)
Sは変曲点にて最小値を示すすなわち(partSparta0)=0 (partSparta1)=0
図2 a0a1とSの関係
4
2 実験実施要項 本指針書の実験(工業物理化学実験)は配布の実験日程にしたがって行います 21 実験担当 化学システム工学科 三島健司 松山清 22 実験日時 火曜日 4限5限 金曜日 4限5限 23 実験場所 617実験室(6号館 1階西側)の所定の実験台で実験を行います 24 実験に際し持参するもの 工業物理化学実験指針書レポート提出用のレポート用紙(A4サイズ)実験ノート(形式は自由です)グラフ用紙(A4方眼紙)筆記具(自在定規テンプレートなども含む)計算用具(関数電卓)白衣(清潔なもの)名札 実験に必要な物品以外の物(バッグ衣服など)は所定のロッカーに納め白衣を必ず着
用する実験に必要なものだけをもって実験室に入る退出の際忘れ物がないことを確認
する 注) 実験ノートは実験中に指導担当者がチェックするので指示に従うこと
また物品にはすべて氏名学籍番号を記入し紛失を避ける 25 実験開始前日までの用意(予備学習) 実験を行う前にその内容を熟知しておくことは事故の防止円滑な実験内容に対する
より深い理解などの観点からきわめて重要です 1)指針書を熟読する 2)実験開始前に既に記述できることがら(目的実験方法実験結果を記入するデータシートなど)を実験ノートおよびレポート用紙に事前に記入しておく実験終了時から提
出までの期間が短いので問題点に関する質問は早期に行う 3)持参すべき物品の確認をする 26 実験日の出欠について 出欠のチェックは時限開始直後と時限終了時(実験終了時)の 2回を行う「2回目のチェック時に不在の者」は当日を「欠席扱い」となります遅刻者は必ず指導担当者に報告する
遅刻および欠席は減点の対象となるので注意する実験時間中の「不在が著しいとき」は
当日を「欠席扱い」とする 27 実験報告書(レポート)の提出について 1)提出期限各実験報告書提出の締切日は「実験終了日より 7 日後(15 時まで)」です例えば1 テーマについて火曜金曜と実験を行った場合翌週の木曜日の午後 3 時までに提出してください金曜火曜と実験を行った場合は翌週の月曜日の午後 3時までの提出です提出期限(締切の日時)に遅れた報告書は受理しないので注意して下さい
2)再提出報告書の記載およびその内容によっては「再提出」を指示される場合がありま
す再提出の提出締切日は「返却日を含めてその日より 7日後(15時まで)」です提出
5
期限(締切の日時)に遅れた報告書は受理しない 28 実験実施上の注意 1)実験時間中は白衣着用履物は靴とする(サンダル類は不可)また白衣のボタンはか
ならずとめ袖などもしっかりとめる器具に袖などをひっかけて事故を起こすことの
ないように事前に注意する 2)試薬機器具については使用目的を指導担当者に報告のうえ受け取る返却時の報告
も確実におこなう 3)計測機器具などの使用(操作)は「取扱説明書」にしたがって行う 4)機器具類の保管は班(グループ)全員でこれにあたる破損または紛失したときは指導
担当者に口頭で報告して下さい実験終了時には各物品と実験台の整理整頓を行い指導
担当者の確認を受けて下さい 5)脱塩水製造装置(イオン交換)の使用に際しては指導担当者の指示を受ける 6)ガラス器具の洗浄法
a)ガラス器具は水道水で予洗の後クレンザーで十分に汚れを落とし再び水道水で良くすすぐただしガラス体積秤量器はこの限りにあらず下記のbの方法による洗浄の終了
はガラスの表面が一様に水膜で濡れていることにより判定するその後イオン交換水ある
いは蒸留純水で最低3回以上すすぎ加熱乾燥あるいは風乾させる乾燥後は所定の場所
に器具を返還する b)ガラス体積秤量器は水道水で予洗の後洗浄槽に一昼夜浸漬しその後水道水で十分すすぐ以後は aの場合と同様であるが乾燥に関しては風乾とし加熱乾燥は絶対に行ってはならない
7)プラスチック製器具の洗浄法 プラスチック製器具は材質が軟質であるので洗浄には液体洗剤を使用し加熱乾燥はさけ
風乾とする乾燥後は所定の場所に器具を返還する 8)実験廃液の処置法 実験廃液は有機溶剤廃液含有機溶剤水溶液廃液無機廃液含重金属廃液に分類し各々
所定の廃液タンクに保管する不明の場合には教員の指示を受けることみだりに流しに
は流さないこと 9)固体廃棄物の処置法 固体廃棄物は紙屑木材類ビニールゴム類金属類ガラス類に分類し所定の容器
に廃棄する 10)空になった試薬瓶は捨てないで教員の指示を受けること 11)電源の確保に関しては電気容量電線の容量等に関して教員の指示を受けること 12)天秤室への入室は各班(グループ)の秤量担当者のみとする(多人数の入室は秤量操
作の妨げとなるまた天秤転落事故の原因ともなる) 13)喫煙は「指定の場所」でおこなう実験室または指定場所以外での喫煙はしないこと 14)本実験では1テーマを各班とも数グループにわかれて実験をおこなうのでチームワー
クが必要である実験を始める前に互に話し合って実験上の手順すなわちデータの取り方
をきめておくとよい 15)機器の取り扱いは使用説明書をよく読んでから使用する 29 実験報告書実験ノート 実験報告書(レポート)はレポート用紙(市販の A4サイズ)を用いて提出して下さい報告内容は特に指示がない場合は次の項目とします
6
1)緒言(チョゲン) 3)実験方法 4)実験結果および考察 5)結言 6)使用記号(式や変数を使用した場合に必要) 7)引用文献(参考にした文献があれば)
レポートの内容の各項目に関して以下にその記述上の注意点を説明します 1)緒言 実験の目的意義を示す何をどうしようとするのかを示すものでその実験の直接の目
的を具体的に書く 2)実験方法 実験の方法は実際に行った実験を第三者にも再現できるように書くべきです自分達が
行った操作について表や図などを交えて明確に示しておくとよいでしょう 実験方法の文章は過去形で書くことが一般的です
3)実験結果および考察 結果(数値図表)と考察はレポートの中で最も重要な部分です指針書を参考にして
各自が工夫して記述して下さい 結果では得られた事実に忠実に書かねばなりません
また関連のあるものをまとめて図や表に示すとわかりやすいですただし結果の図や
表についての説明の文章も本文に必要です 結果おより考察の文章は現在形で書くことが一般的です また単位や有効数字に誤りがあると誤解を招く恐れがあります図表単位および有
効数字に関しては指針書を再読すること考察では得られた実権データを理論的な計算
などと比較して現象を検討する習慣も身につけましょう独自のものを書くようにこころが
けましょう 4)結言 結果および考察でえられた事柄をまとめて示します 主な記述上の注意事項 1 表については標題の位置表の上に書く注の位置表の下に書く 2 図については標題の位置図の下に書く注の位置図の下に書く 図を描く場合にはA4の各種方眼紙1枚に1つの図を描き本文を参照しなくても
図の内容がわかるように必要な条件などを全て記入することが望ましい図および表
は最後にまとめて示すのではなく関係の深い文の直後の頁に挿入する 3 その他記述上の注意は指針書や配布された資料を参考にされたいまたレポー
トにつける通しページ番号なども忘れぬよう 4 次元単位の付記に留意する「SI」はこれから必然的に使用される単位系であ
りその使用については留意してもらいたい 5 単位の記入においては変数の後には[ ]を付け数の後には[ ]を付けない例え
ばCp [Jmol-1K-1] Cp = 198 Jmol-1K-1 6 引用文献使用参考の記入については「化学工学論文集」「化学工学会誌」を参照
されたい 7 「化学工学論文集」「化学工学会誌」などは工学部の各図書館にあるので有効に活
用してもらいたい 8 レポートに記載する図表などは「化学工学論文集」「化学工学会誌」の表現に準
じた記載方法を用いること 9 図についてはExcelなどの表計算ソフトで作成したものでもよい
7
実験ノートは市販の大学ノートを使用して下さい各実験内容についてページを変
えて後で見て分かりやすいように書いて下さい上から5行程度に実験条件その他
必要事項日付などを記入する右端5cm程度の幅を備考欄とし実験中に気付いたこ
とその他必要事項を記入する使用した溶液の濃度ファクターなどが記録されていない場合がよくありますレポート作成時に困りますので忘れずに各自が実験ノートに記入
しましょう レポート表紙 レポートの表紙(市販の A4 のレポート用紙でよい)には以下のような表紙をつけること各ページにページナンバーを記入すること提出時には上端をホッチキスで閉じるこ
と記入はワープロ鉛筆でもよい
工業物理化学実験レポート(三島担当分)
実験項目 実 験 名 提出者 福岡大学工学部化学システム工学科 A組 5班 TK0315001 七隈太郎 共同実験者 福大次郎 干隈三郎 城南花子 早良五郎 実験日 平成 年 月 日 ~ 月 日 実験場所 化学工学共同実験室 B(6号館 1階 617室) 条件 気温 気圧 湿度 天候 提出日 平成 年 月 日
8
3 吸着 31 はじめに 活性炭 多孔質(多くの小さい穴がある)の吸着剤 酢酸 活性炭に吸着されるモデル分子
吸着実験データの整理によく使用する記号 n 溶質の吸着量 C 溶液中の溶質の濃度 単位は [ ] [ ] 考えてみよう 1) 右図のような低い濃度の酢酸水溶液の入ったビーカーに活性炭 をを加えた場合濃度はどうなるでしょうか
2)吸着された酢酸の物質量(n[mol])を測定するにはどのような 実験をすればよいでしょうか 図 1 活性炭
32 吸着操作 工場排液中の微量は有機物などを活性炭などの吸着剤で除去する工業操作を吸着操作と言
います蒸留抽出乾燥撹拌などの単位操作と同様に化学工業プロセスの重要な分離技
術です吸着操作は他の分離操作に比べてきわめて低濃度の範囲まで物質分離ができる特
徴がありますそのため近年問題となっている大気および水質の汚染汚濁に対する有力
な対策技術として注目されています 本実験では活性炭に対する酢酸の吸着挙動を調べることにより活性炭の吸着特性(吸
着平衡定数)を知り吸着操作の理論的な取り扱いについて学習しましょう 吸着量を求めてみましょうこの例では濃度換算が容易になるように溶液濃度をℓ でなく m3 単位とした) 低濃度のフェノールを含む排水の活性炭吸着実験を行って図 1のような吸着等温線(一
定温度で測定した溶液濃度と吸着量の関係)を得たいまフェノール濃度が 40mol m3の
排水 40m3に 60kgの新しい活性炭を投入して平衡に達したとき水中のフェノール濃度(mol m3)および 1gの活性炭のフェノール吸着量(molg)を求めよ
活性炭 1gに吸着するフェノールの物質量をn[molg]活性炭の量を W[g]とすると
フェノール排水 V[m3] 吸着前のフェノール濃度 C0[mol m3] フェノール分子
+
活性炭に吸着した溶質(フェノール)の量 nW (1)
溶液から取り除かれた溶質の量 (C0-C)V (2)
物質収支式より
nW=(C0-C)V (3) よって
VW
CCn
minus= 0 = )( 0CC
WV
minusminus (4)
9
図3 吸着等温度線と操作線
この操作からわかるように吸着データ(この実験で求める)が存在すれば
吸着等温線と操作線の交点から吸着処理しようとする溶液の体積 V と初濃度 C0
に対して使用する活性炭の質量 W により活性炭に吸着する溶質の量 n および吸着後の溶液の溶質濃度 C が計算で予測できますこの吸着データから吸着装置を設計することができます実際に吸着装置(吸着塔)の設計の様子を次ペー
ジの例題1に示しておきます興味のある人は5 段に積み重ねた吸着層を 04 mol ℓの濃度の廃液が通過すると濃度が 002 mol ℓ 以下になることを確認し吸着塔の設計方法を考えてみて下さい なお先ほど求めた式 (4)は皆さんが行う吸着実験データ(吸着等温線を作るもととなる吸着後の溶質濃度 C と各濃度に対する吸着量 n の関係)を求める場合にも使用します 問題1 質量 W=1gの活性炭を用いて体積 V=100cm3の酢酸溶液の吸着実験を行った
ところ活性炭と接触する前の酢酸溶液の初濃度はC0=0512moldm3であった
(dm3デッシメータ 3 乗= ℓリットル)吸着後の溶液を活性炭と分離してその酢酸溶液の濃度を 01N(01 規定の)水酸化ナトリウム水溶液で滴定して求めたところC=0478moldm3 であった1gの活性炭に吸着された酢酸の物質量n [mol]を式 (4)より求めよ
活性炭 1kg当たりに吸着された
フェノールの量 n[molg]
吸着操作後
の溶液のフ
ェノール濃
度 C
吸着等温線の一例 Langmuir式
KCKCnn
+=
infin
1
操作線
)( 0CCWVn minusminus=
傾き-23
初濃度 C0
[molm3]
吸着後の濃度 Cと吸着量 n
初濃度C0と傾き-VWを用いて操作線を引き
吸着等温線との交点を
求める
ここで(3)式の傾きWV
minus で図 1 における横軸
を通過する直線式(操作線)であるすなわち
)(=- 4032
)40(6040)()( 0
minus
minusminus=minusminus=
C
CCCWVgmoln
10
解答(計算式) )( 0CCWVn minusminus=
minus= ( ) (答) [mol]
例題 1 吸着塔の設計 濃度 C0[molm3]の不純物を含む工業排水(流量 V[m3hr])から不純物を除去するために下図
に示すような各 i段に活性炭を wi[g]含む5段の吸着塔を設計しましょう 各 i 段の出口と入口でのそれぞれの物質濃度 CiCi-1[molm3]とその段での活性炭単位質
量当たりの吸着量 ni[molg]との間に物質収支がなりたち他の部分への吸着は無視できるとするまた溶液中の平衡濃度Ci[molm3]と吸着量ni[molg]の関係はラングミアー(Langmuir)の等温吸着式で与えられるものとするラングミアーの等温吸着式における吸着平衡定数 K
と飽和吸着量 infinn としてはK=8611 infinn =0003262の値を用いる誤差を判定する定数 EPS
としてはEPS=000001を用いよ 図4 吸着塔の段数計算 図5 吸着塔 33 実験目的 一定の温度において活性炭による希酢酸の等温平衡吸着量 nを一定の温度において測定
しそれら測定値の Freundlich 式および Langmuir 式への適合性を比較検討するまたLangmuir式により活性炭の比表面積を求める 34 実験方法 レポートでの実験方法の記述では次のように説明文を必ず付けて下さい また行った方法については過去形「~した」のように記述して下さい 例) 活性炭による酢酸水溶液からの酢酸の吸着実験に次の器具および試薬を使用した [器具] 1000mlメスフラスコ(1)500mlメスシリンダ(1)500ml試薬瓶(5)共栓三
実験レポートを書く場合この「実験目的」を利
用して「緒言」を作成して下さい
実験方法は過去形にて記述
11
角フラスコ(5)2mlホ-ルピペット(2)5mlホ-ルピペット(2)10mlホ-ルピペット(1)100ml ホ-ルピペット(1)50ml ビュレット(1)電子天秤直示天秤(注( )内の数値は個数を表す) [試薬] N10N100-水酸化ナトリウム(NaOH)N10-塩酸(HCl)フェノ-ルフタレイン酢酸活性炭 1)2)および 7)については予め調整済み8)は2日目に実験する 1)酢酸 28mℓ をメスシリンダにて採集しこれを 1000mℓ メスフラスコに入れて蒸留水を加えて 1000mℓとしN2-酢酸を調整した(調整済み)
2)N2-酢酸より順次溶液 500mℓをメスシリンダに取り1000mℓメスフラスコを用いて
N4N8N16N32酢酸溶液を調整し500mℓ試薬瓶保持した 3)共栓三角フラスコ(100mℓ)の空重量を直示天秤にて正確に測定したこれに電子天秤にて測定した活性炭試料約 1gを入れて再び直示天秤にてその重量を正確に測り前後の差から投入した活性炭量を知る
4)活性炭を入れた各々の三角フラスコに各濃度の酢酸溶液 100mℓを正確にホ-ルピペットを用いて入れた(このとき気泡が混入しないように注意した)
5)上記に準備した三角フラスコに栓をしてこれらを所定の温度に設定した恒温槽に浸し
た浸した三角フラスコは約 20分間隔で気泡が混入しないように注意して振り混ぜるこの操作を約 2時間行った
6)次に滴定に用いて約 N10-N100-水酸化ナトリウム溶液 1000mℓを調整し濃度既知の塩酸溶液を用いてその正確な濃度を決定しておく(調整済み)
7)調整された酢酸溶液の各々を6)において標定した N10-水酸化ナトリウム水溶液にフェノ-ルフタレインを指示薬として滴定し各酢酸溶液の濃度を求めた(標定に要する
酢酸量は N2-と N4-の場合は 2mℓN8-と N16-の場合は 5mℓN32では 5mℓをホ-ルピペットで採集するただしN32についての滴定はN100水酸化ナトリウムで滴定した(各濃度について 3回ずつ滴定する)
注)ビュレットは各班に 2 本ある濃度の高い N2 酢酸から測定するので両方のビュレットにはN10-水酸化ナトリウム水溶液を入れて開始する
最重要注意事項
滴定を行う場合安全確保のため必ず安全メガネを着用すること 8)次に各試料溶液を一つずつ手早くろ過しろ過液を N10-水酸化ナトリウムで滴定して平衡濃度を決定した(標定に要する酢酸量は N2-と N4-の場合は 2mℓN8-とN16-の場合は 5mℓN32-では 5mℓをホ-ルピペットで採集したただしN32 ーの場合は N100 ー水酸化ナトリウムで滴定した)
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1) 酢酸溶液の濃度の測定(1日目レポートにこの図は不要) 酢酸 28mℓをメスシリンダにて採集しこれを 1000mℓメスフラスコに入れて蒸留水を加えて 1000mℓとしN2-酢酸を調整する
N2-酢酸より順次溶液500mℓをメスシリンダに取り1000mℓメスフラスコを用いて N4-N8-N16-N32-酢酸溶液を調整し500mℓ試薬瓶に保持する
滴定用のビュレットを N10-N100-水酸化 ナトリウム溶液で共洗いする(3回)
ビーカーに酢酸溶液を少量入れて共洗いを行う (3回)試薬瓶からビーカーに酢酸溶液を滴定に 必要な量だけ取り出す
ホールピペットをビーカーの酢酸溶液を 使用して共洗いを行う(3回)
滴定用の三角フラスコに酢酸溶液を分取する
滴定(滴定は同じ濃度の酢酸溶液を 3回 以上滴定して平均する)
酢酸溶液の濃度計算
滴定による酢酸濃度の決定
1000
1000vfNvx timestimes=times (33)
x酢酸の仕込み液濃度 [molℓ] v酢酸の仕込み液の分取量 [mℓ] NNaOHの規定度 [N] fNaOHのファクター [-] vrsquoNaOHの滴定量 [mℓ] 注)酢酸は 1価の酸なので 1molℓ=1N(1規定)
13
式(33)の使用例 酢酸の仕込み液の分取量 v =2 mℓ NaOHの規定度 N = 01 N NaOHのファクター f = 0998 NaOHの滴定量 vrsquo = 985 mℓ である場合 式(33)を利用して酢酸の仕込み液濃度 x[molℓ]を求める
1000
1000vfNvx timestimes=times
vvfNx
timestimes=
49202859998010 =timestimes= molℓ (この xが濃度 C または C0 です)
2)酢酸溶液と活性炭の接触のフローチャート(1日目) 共栓三角フラスコ(100mℓ)の空重量を 直示天秤にて正確に測定する
電子天秤にて活性炭試料約 1g測る
共栓三角フラスコ(100mℓ)に 活性炭試料約 1gを入れる
活性炭試料約 1gを入れた 共栓三角フラスコ(100mℓ) を直示天秤にてその重量を測る
共栓三角フラスコ(100mℓ)の前後の 差から投入した活性炭量を計算する
活性炭を入れた各々の三角フラスコに 各濃度の酢酸溶液 100mℓを正確にホ-ルピペットを用いて入れる(このとき 気泡が混入しないように注意する)
三角フラスコに栓をしてこれらを所定の温度に 設定した恒温槽に浸す浸した三角フラスコは 約 20分間隔で気泡が混入しないように注意して 振り混ぜるこの操作を約 2時間行う
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3)吸着量の測定(2日目) 恒温槽の温度を測る
恒温槽から三角フラスコを一つずつ取り出す
各試料溶液を一つずつ手早くろ過する
活性炭
ろ液を滴定して平衡濃度を決定する
回収
吸着量の計算
Langmuirの吸着等温式Freundlich式のパラメータの決定
グラフの作成
吸着量の計算10001000 times
minus=
wCC
n (34)
n吸着量 [molg] C0 酢酸水溶液中の酢酸の濃度 [molℓ] C ろ液中の酢酸の濃度 [molℓ] w 活性炭の量 [g]
35 実験結果のまとめ方 実験結果は実験レポートを書く場合に考察と並んで重要な部分ですので主な注意事
項をここで説明しておきます グラフの作成n vs C nC vs C ln n vs ln C の 3つのグラフの作成 配布された Excel ファイルを利用し下図のような図を作成してみましょう
15
レポートの間違いやすい場所 ①表や図を示す場合次の例のように文章でもその旨を示す [実験結果] 共栓付三角フラスコに活性炭約 1g入れた試料の重量 w[g]を Table1に示す
Table1 調整酢酸濃度を入れる活性炭試料の重量 w [g]
酢酸規定度[N]
活性炭試料の質量w [g]
12 10300
14 10001
18 10126
116 10011
132 10109 酢酸(1)-水(2)-活性炭(3)の 12における吸着平衡の結果を Table 6および Fig1に示すただし活性炭 1gに吸着された酢酸のモル数 n[molg]は次式より求めた
( )10001001
0 timestimesminus=w
CCn b
C0仕込み液中の酢酸濃度 [molℓ] Cbバルク相中の酢酸濃度 [molℓ] w活性炭試料の質量 [g] n吸着量 [molg]
例えばCb=04621C0=04894w=10300の時は次のように計算できる
( ) 026501000100
0300114621048940 =timestimesminus=n
Table6 酢酸(1)-水(2)-活性炭(3)の 12における吸着平衡
吸着された溶質のモル数n[molg]
バルク相中の濃度Cb[moll]
00205 04621
00175 0241
00139 01139
00105 00519
00081 00243 ②得られた図や表の解釈(読者にそれらから読み取ってもらいたい事柄)の説明文を次の
例のように文章で記述する数字や図だけ示して読者に「理解しろ」というようなレポー
トではよくありません Table 6および Fig1よりバルク相中の酢酸濃度 Cbの増加にともない吸着量 nも増加することがわかったまた吸着量 n の値は酢酸濃度 Cbの増加にともない n=に漸近することがわかる
グラフ(Fig)は次ペ
ージに掲載すること
グラフや表の後にはそれらの結果より得られた知見を文章でも
記入すること
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36 エクセルによる吸着データの整理法 注コンピュータの画面はWindowsXP上での操作になっています他の OS(Windows98 2000
NT)搭載のパソコンでも同様の作業が可能です) 先ほど問1で説明したように溶液濃度の濃度変化から吸着量 nを求めました実験では吸着後の水溶液中の酢酸の濃度 Cと吸着量 nの関係を各濃度の溶液(5種類)について測定しその値を計算します このようなデータの整理には表計算ソフトであるマイクロソフト社の Excelが便利です
Excel の起動方法はそのソフトがインストール(設定)されているコンピュータにより若干方法が異なることがありますがほとんど同じですここでは福岡大学の総合情報処理
センターのコンピュータの設定に従って説明します 表計算をしてみましょう セルとは セルというのは最小単位の四角のことです例えば「(Aの1)またはA1というセルセル
B1」のようにセルという言葉を使いますセル A1に1という数字を入れてみましょうセルA1をクリックしてキーボードから「1」と入力しキーボードの「Enter」キーを押します
図 5 Excelの入力例1 図 6 Excelの入力例2
次にセル B1に「5」という数字を入れましょう次にセル C1にセル A1と B1に記入された数値の和を表示させてみましょう 下の図のようにセル C1をクリックします上の「 fx 」と書かれた右のボックス(何かを書くところに)「 =A1+B1 」と書きましょうそして Enterを押すとセル C1に 6と表示されます
図 Excelを用いた関数計算 実験では吸着後の水溶液中の酢酸の濃度 Cと吸着量 nの関係を各濃度の溶液(5種類)について測定しましたこのデータに対してExcelを用いて表計算してみましょうまず先ほど記述したセル A1~A3は「Delete」(デリート)キーで値を削除しましょう
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次にセル A5~A9に活性炭と接触する前の酢酸水溶液の初濃度 C0[moldm3]セル
B5~B9に活性炭と接触後分離した酢酸水溶液の濃度 C[moldm3]セル E5~E9に活性炭の質量 W[g]をキーボードから入力します作成した一例を次に示します
図 8 Excelによる吸着量nの計算 ここで1gの活性炭に吸着された酢酸の物質量n [mol]を式 (4)より計算できるのでセル C 5~C9に次の関数式を記述します式の内容としては
)( 0CCWVn minusminus=
となるように記述するので実際の Excelの関数としては次のように行います セル C 5をクリックし関数ボックス(fxの右)に「=(A5 ndash B5)01E5」と記述(半角または直接入力形式で)し「Enter」キーを押し確定しますこの関数はフィルハンドルを利用してセル C 6~C9にコピーしますただし実験で溶液は 100cm3使用しましたが
溶液の濃度 C が[moldm3]の単位ですので100cm3=01dm3 となり関数式の中では
V=01 dm3としています なおグラフの記述方法やフィルハンドルの使用方法については化学工学プログラミ
ングなどの補助資料を参考にして下さいまた実験の際に配布した Excel ファイル(ファイル名ad_graxls)を使用すると実験データの理論的な解析も容易にできますので試してみましょうExcelファイル(ファイル名)「ad_graxls」の使用方法は次節で説明します 36 実験結果の考察方法 (吸着実験について) 実験結果の考察方法は種々の方法がありますがここでは一例として理論と比較する
方法を示します実験結果として下図(左)のようなグラフができましたこのような実
験結果に対して理論的な考察を行ってみましょうここでは次節で説明するラングミュ
ア(Langmuir)の単分子吸着モデルで計算した理論線と実験と比較したものを下図右に示しますこの図を作る方法は次節で説明しますレポートの考察の部分はラングミュア
(Langmuir)の単分子吸着モデルの式の導出から書いて下さい 理論を作る場合幾つかの仮定をしますがその理論が多くの実験結果をうまく説明でき
ている場合その仮定がある程度妥当なものであったことがわかります指針書に書いてあ
った以外の理論についても興味があれいばためしてみましょう
セル C5をクリックし関数ボックス( fx の右)に「=(A5 ndash B5)01E5」と記述(半角または直接入力
形式で)します
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ラングミュア(Langmuir)の単分子吸着モデルを用いて理論値を計算するには配布され
た Excelファイル(ファイル名)「ad_graxls」を使用すると便利ですその使用方法を以下に示します配布プログラムは化学工学プログラミングの講義の場合と同様に総合情報処
理センターの共通領域にあります各自コピーして使用して下さいコピーするには化
学工学プログラミングの講義の場合と同様にコピーしようとするファイルを共通領域から
自分の使用しているコンピュータのデスクトップにドラッグドロップします共通領域で
ファイルを開くとファイルの消去などで他の人が使えなくなりますので共通領域でファイ
ルをダブルクリックしないようにして下さい誤って共通領域でファイルをダブルクリック
した場合はそのファイルを閉じるボタンをクリックし閉じて下さい 各自のコンピュータに保存した Excelのファイル(ファイル名ad_graxls)をダブルクリ
ックして開きます自宅へ持ち帰る場合各自のフラッシュメモリーやフロッピーディスク
を使用しまたはメールを使用して添付ファイルで送信できます各自のフラッシュメモ
リーやフロッピーディスクに保存してあるファイルを再編集する場合はフラッシュメモリ
ーやフロッピーディスクをコンピュータの USB 端子またはフロッピーディスクドライブに挿入します次にデスクトップ上にあるマイコンピュータのアイコンをダブルクリックし
ます もしデスクトップ上に上のアイコンが無ければ画
面左下の「スタート」ボタンからマイコンピュータをク
リックしてくださいすると次のような画面が立ち上が
ります
ラングミュア(Langmuir)の単分子吸着モデルで計算した
理論線
19
その中からフラッシュメモリーの場合は「リムーバブルディスク」をフロッピーディ
スクの場合は「35インチ FD」のアイコンをダブルクリックしてくださいファイルが保存されていれば次の画面が出てきます
この画面の中の「ad_graxls」ファイルをデスクト
ップにコピーしますまず「ad_graxls」ファイルを左クリックしますこの時クリックした指はは
ずさないようにしますその状態のままデスクトッ
プまでファイルを移動させますそしてデスクト
ップ上の任意の場所でクリックした指をはずします
これでデスクトップ上に「ad_graxls」のファイルがコピーされましたのでデスクトップにコピーさ
れたファイルをダブルクリックして開きますコピ
ー操作が上手くいかなかった場合もう一度移動の操作を行ってください
必ずデスクトップにコピーしてから開く操作を行って下さいフロッピーディスクから直接
開いて操作を行った場合正しく保存されない可能性があります 「ad_graxls」のファイルを開くと次のような画面が立ち上がりますもし画面が違う場合は画面の下部にある「吸着データ」のタグ をクリックしてくださいこの画面
でデータの処理や計算を行いますでは実際の操作に入る前に予めこのファイルに名前
を付けて保存しておきますまずExcelの画面のツールバー「ファイル」から「名前を付けて保存」をクリックします下のような画面が起動します
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ファイルの保存先を変えたい場合画面上部のボタンをクリックし保存先にデスクトッ
プを選択します次にファイル名の部分に各自ファイル名を入力しますファイル名は何
でも良いですが分かり易い名前にしておくとファイルの管理がやり易くなります日付や
数字を入れると同名のファイルをいくつも管理する場合に便利ですここでは「吸着実験デ
ータ整理 4月 01」とし「保存」ボタンをクリックします
ファイル名変更後Excelの画面上部のタイトルバーのタイトルが先ほどの名前(上の図とは異なります)になっていることを確認してください
この操作を行うことによって元のデータである「ad_graxls」を変更してしまう心配がなくなります元のデータである「ad_graxls」はファイルが破損しまたは間違った操作の結果を誤って保存してしまった場合などの補助ファイルとなりますので大切に保管しておいて
下さい今後配布するデータは先ほど説明した手順で名前を変えて保存し元のデータに
直接変更を加えないようにして下さい ここから実際の作業に入ります初期状態では模擬のデータが入力されています入力
データは予め計算しておいた酢酸濃度Cb[moll](濃度を Cと表示している場合もあります)と活性炭吸着量 n[molg]になります下の画面の丸で囲んだ部分がそれぞれの値でBCカラム(列)の 4~9行には数値が入力されています関数ではありませんこのデータを利用して実際のデータ解析を行ってみましょう下記のように行うと幾つかのグラフが
現れ実験データに対してラングミアーの単分子吸着を仮定したモデルを用いて精度よ
く計算線が描けることがわかります 今回はCbnの値を入力する必要はありませんExcelが自動的に計算を行って結果を表示するようになっていますつ
まりセル D5に「=B5C5」と関数を入力しこの関数に対してフィルハンド
ルを利用してセル D6~D9へコピーし
ファイルの保存先を変えたい場合画面
上部のボタンをクリックし保存先に
デスクトップを選択します
変更するファイル名はここをクリッ
クして書き換えます
名前を変更したらここをク
リックして保存します
21
まています 次に酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着量 n[molg]の関係および酢酸濃度 Cb[molL]と Cbn[gL]の関係をグラフ化します今回は自動的にグラフが作成されるようになっていますので複
雑な操作は必要ありません ここではデータに対してそれを精度よく表現する近似式をグラフ上に描きその関数
を数値として求める方法を Excelで練習してみましょう
グラフを表示させるには画面の下にある「Graph1」もしくは「Graph2」のタグ
をクリックします「Graph1」には酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着量n[molg]の関係のグラフが「Graph2」には酢酸濃度 Cb[molL]と Cbn[gL]の関係のグラフが表示されます「Graph2」はLangmuir の等温吸着式による相関を表したもので横軸に酢酸濃度 Cb[molL]をとり縦軸に酢酸濃度 Cb[molL]を活性炭吸着量 n[molg]で除した値 Cbn[gL]を示していますLangmuir の等温吸着式についてはこの後の章で説明してありますので各自読んで理解して下さいLangmuirの等温吸着式では式中の定数 ninfin(飽和吸着量)と K(吸着平衡定数)を実験データから最小二乗近似で決定する場合が多くありますここでは
その例を取り上げてデータに対してそれを精度よく表現する近似式をグラフ上に描き
その関数を数値として求める方法(最小二乗法最小二乗については付録に示しており
また化学工学プログラミングの講義においても説明します)を Excelで練習します 配布された Excel ファイル「ad_graxls」では実験点が表示されているだけでそれを精度よく表現する近似式の直線のグラフは「Graph2」に表示されていません今から次の手順で「Graph2」の図(グラフ)に近似式の直線のグラフを表示しますExcel の場合近似曲線(ここでは直線)を求める場合コンピュータが自動的に最小二乗法を使って近似曲線
を計算しています
「Graph1」の画面 「Graph2」の画面
Excelの sheetが表示されたらまずファイル名を変えデスク
トップに保存して下さい次
にGraph2のタックを左クリックして最小二乗法のグラフを
確認して下さい
22
38 Langmuirの等温吸着式による相関 はじめにLangmuir式の定数 ninfinと Kを決定するために「Graph2」酢酸濃度 Cb[molL]と
Cbn[gL]の関係のグラフから最小二乗法により直線の式を求めますExcelを用いてデータに対して近似直線のグラフを描き最小二乗法の直線の式を求めます
次のような「近似曲線の追加」のウィンドウが現れたら今回は線形近似(直線で近似
y=ax+b の式)を選びますので線形近似が黒色に反転していることを確認して「近似曲線の追加」のウィンドウの右下の「OK」ボタンをクリックして下さい
実験点の何れかにポインタをあわせて
右クリックする
近似曲線の追加(R)を選択して左クリックする
「線形近似」であること
を確認して「OK」ボタンをクリックします
23
「近似曲線の書式設定」
のウィンドウでオプシ
ョンから「グラブの書式
を表示する」の前を選ん
でチェック(前のチェッ
クボックスをクリック)
した後「OK」を押す
現れた直線にポインタをあわせて
左クリックすると「近似曲線の書式
設定」のウインドウが表示されます
ここをクリックします
この「オプション」のタ
グをクリックします
「y=」の関数
が現れるのでここ
をクリックする
式の文字フォントが初期値
「8」と小さいのでここ
のボタンをクリックし
フォントサイズを選ぶリス
トボックスを表示し「22」程度の大きなサイズを選択
しクリックする
24
「Graph2」酢酸濃度 Cb[molL]と Cbn[gL]の関係のグラフから最小二乗法により直線の式がこのように求められましたExcel を用いてデータに対して近似直線のグラフを描き最小二乗法の直線の式を求めるこの方法は他の実験データの解析などにも利用できますので
各自活用して下さい 表示された関数式「y=43865+2654」はノートにメモして下さいこの傾き 43865と
切片 2654からLangmuir式の定数 ninfinと Kを決定します決定方法の詳細はこの後の 36 の Langmuir式のパラメータ決定法に示しています ラングミュアの等温吸着式を変形すると次式となる
CCnKnCKn
CCKn
Cβ+α+
==
+= infininfininfin
11)1(
ただしα=1ninfinβ=1(ninfinK)とするこの式より Cnを縦軸Cを横軸とした関係のグラフは傾きα=1ninfin切片β=1(ninfinK)の直線関係を与えることを示しています そこでExcelのシートを利用してこの値からLangmuir式の定数 ninfinと Kを次のように決定しますセル C18D18に Graph2で求めた数値 2654と 43865を代入しますその後D19と C19に関数を ldquo=1D18rdquoとrdquo=D18C18ldquoを代入しますセル内の式は半角で入力してください
現れた関数の文字フォン
トを大きく(例えば 22)してその数字をメモし
吸着データシートの C18と D18に記入する
C18D18 に Graph2 で求めた値 2654 と 43865 を代入した後D19 と C19 に関数を ldquo=1D18rdquoとrdquo=D18C18ldquoを代入する
25
この Excel表示では最小二乗法を用いて決定した傾きαと切片βを用いて α=1ninfin=43865 β=1(ninfinK)=2654 得られた傾きおよび切片よりninfinおよび Kは次のように求まる
ninfin=1α=1D18=000228 molg-1 K =(1ninfin)β=αβ=D18C18=165
つまりセル D19にはninfinの値がセル C19にはKの値が表示されますこれらの値はラングミュア(Langmuir)の単分子吸着モデルで計算した理論線と実験と比較する場合に利用します実験結果に対して理論的な考察を行う例としてラングミュア(Langmuir)の単分子吸着モデルで理論線を計算し実験と比較するにはこの Excelファイルを利用して次のように計算しグラフに表示します セル F5~F30 には溶液中に残る酢酸濃度 Cb[molL]に対する活性炭に吸着された吸着量n[molg]の関係のグラフ「Graph1」の横軸の酢酸濃度 Cb[molL]の適当な値が既に入力してありますこれらのそれぞの酢酸濃度 Cb[molL]に対する吸着された酢酸の吸着量 n[molg]の理論値をラングミュア(Langmuir)式で計算しますラングミュア式は次式で与えられます
KCKCnn
+=
infin
1 (310)
ここでこの実験データを最も精度よく計算できるように決定した ninfinおよび K は上述のようにninfin=1α=1D18=000228 molg-1 K =(1ninfin)β=αβ=D18C18=165 でありこれらの値はセル D19にninfinの値がセル C19にKの値が表示されていますこの値を利用して「Graph1」に計算線を描くにはまずセル G5~G30 にセル F5~F30 のそれぞれの酢酸濃度 Cb[molL]に対する吸着された酢酸の吸着量 n[molg]の理論値をラングミュア式で計算しますそのためにはセル G5 にラングミュア式を次のように記述しますただしセル D19の ninfinの値セル C19の Kの値は常に同じセルから参照するので絶対参照($マークを付けて$D$19 $C$19と記述します)で記述します
Langmuir式をセル G5に記述するただし濃度はF5の値を相対参照しD19と C19は絶対参照($マークが必要)することを忘れないように
セルG5に記述すべき数式
=$D$19$C$19F5(1+$C$19F5)
26
G5記述後フィルハンドルを使用してG5の関数を G6~G30までコピーします Sheet1から Graph1 のタグをクリックしGraph1 に計算線が表示されたことを確認しましょうこれでラングミュア式によるデータの解析は終了です実験値と理論値を比較して現象
について考察してみて下さいラングミュア式を理論的に導く場合にある仮定をしている
のですがその仮定をしているラングミュア式が実験データを精度よく計算できていれば
その仮定が妥当なもとであったと考察できます 与えられたモデルデータでラングミュア式によるデータ解析ができれば他の理論(例え
ばフロインドリッヒFreundlich式や BET式レポートはどちらか一方でも可です) についてもExcel で計算してみましょうレポートには自分のデータについてここで行った内容と同様に計算しその結果を考察に記述して下さい 自分のデータについて同様の計算をするにはまずいままで計算を行った Excel ファ
イルを保存しますデータを自分の実験データに置き換える前に Excel ファイルをさらに別の名前で保存します与えられた Excel ファイルは初期状態では模擬のデータが入力されているので今回自分達の実験したデータを入力していきます入力するデータは予め計算
しておいた酢酸濃度 Cb[moll]と活性炭吸着量 n[molg]になります下の画面の丸で囲んだ部分にそれぞれ自分の実験データを入力していきます
今回はCbnの値を入力する必要はありませんExcelが自動的に計算を行って結果を表示するようになっています 次に酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着
量 n[molg]の関係および酢酸濃度Cb[molL]と Cbn[gL]の関係をグラフ化します今回は自動的にグラフが作成
されるようになっていますので操作は必
要ありません 39 Freundlichの等温吸着式による相関 今回の実験で得られた酢酸濃度 Cbと活性炭吸着量 nのデータを利用してFreundlichの等温吸着式の定数 abの値を求めFreundlichの等温吸着式の理論線をグラフに追加します ここでFreundlich式は次式で表されます
bbaCn1
=
このままでは定数 abの値を決定することが難しいので上式の両辺の対数をとり線形化しますすると次式となります
bCb
an ln1lnln +=
ここでln Cbと ln nの関係をグラフにプロットすれば傾き 1b切片 ln aの直線関係が得られますしたがって実験データである酢酸濃度 Cbと活性炭吸着量 nの値の対数をそれぞれ計算します配布した「ad_graxls」ファイルを開き「吸着データ」シートの任意の部分に以下のような表を作成します
27
次にln Cb[-]の列の最初のセルに以下の数式を入力します
=ln(B5) 上式中の「B5」は Cb の値の最初のセルの位置を指します各個人の位置によって変更してください
次にln n[-]の列の最初のセルに以下の数式を入力します
=ln(C5) 上式中の「C5」は nの値の最初のセルの位置を指します各個人の位置によって変更してください
ここでln Cb[-]ln n[-]の値に対しそれぞれオートフィルを行い計算させますすると以下のようなデータが完成します
計算した ln Cb[-]ln n[-]の値をグラフにプロットし最小二乗法による直線式を求めます
28
ここで以下のような直線の式が得られたとします
9135ln31690ln913531690 minus=there4minus= bCnxy
上式より切片は-5913傾きは 03169となるので以下の要領で定数 a1bを計算します ==there4minus= minus 91359135ln eaa 000270
316901=
b
a の値を Excel で計算させる場合は任意のセルに以下のような数式を入力することで求めることができます
=exp(-5913) これでFerundlich等温吸着式の定数 a1bの値が決定しましたこの値は後で使うのでノートなどにメモしておいてください 次に決定した Ferundlich 等温吸着式の定数 a1b の値を用いてFerundlich 等温吸着式のグラフを作成します先ほども示したように Ferundlich等温吸着式は次式で表されます
bbaCn1
=
従って定数 aと 1bの値はすでに決定しているので任意の Cbの値に対する nの値を数点求めればFerundlich等温吸着式で求めた理論線が得られます以下の操作で理論線を引くことができます Langmuir 等温吸着式による相関のときと同様にExcel の「吸着データ」のシート上の任意の場所に以下のような表を作成します
次に Ferundlich等温吸着式に従いnの値を計算します
bbaCn1
=
式中の定数 a1bは先ほど計算した値を用いますしたがって式は次のようになります
31690002700 bCn times=
この式を Excelのセル内に記入すれば計算ができます次の
29
ように記入します
=00027G5^03169 ここで式中の「G5」は Cbの値が 0のセルを指しています各個人の位置によって変えてください 次に式を記入したセルを Cbの値が 05のところまでオートフィルを行いますそうするとすべての Cbに対して nの値が計算されます
これで Freundlich等温吸着式のデータが完成しましたので次に「Graph1」酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着量 n[molg]の関係のグラフにこのデータを追加し理論線を引きます理論線の引き方は Langmuirによる相関のときと同様の操作を行ってください グラフの書式等を変更し整理すると以下のようなグラフが出来上がります
310 吸着等温線とは 固体の吸着剤を溶液と接触させる時一定量の吸着剤によって吸着される溶質の量は温度一定ならば溶質の濃度の関数になる一定温度での吸着量を温度に対してプロットした時に
得られる曲線を吸着等温線というこの吸着等温線を比較的よく表す経験式として次の
Freundlich式がある
n=aC1b (1) ここで n は吸着剤の質量あたりの吸着量C は吸着平衡濃度a と b は実験から決定されるパラメータであるがその物理的意味は多少希薄である これに対し理論的な意味を持つものに次のラングニュア(Langmuir)の吸着等温式がある
30
KCKCnn
+=
infin
1 (2)
ただしninfinは飽和吸着量Kは吸着平衡定数であるこの式は
1)吸着分子が固体表面で単分子以上の厚い層を作ることはない 2)吸着分子同士の間の相互作用はない
という二つの仮定にもとに導かれたものである 結果の整理および報告 Freundlich吸着等温式Langmuir吸着等温式の各々のパラメータの最適値を求めよまた活性炭の吸着特性および表面積について考察し化学工学における吸着操作の重要性につい
ても検討せよ 311 吸着等温式 (a) ヘンリー(Henry)型吸着等温式 液相の濃度あるいは気相の圧力が小さい場合吸着分子間の距離が十分に長いため吸着
分子同士の相互作用が無視でき固体表面と吸着分子のみの相互作用で吸着量を決定できる
とき次式のように表される
n=KC (3)
ここでKは比例定数である図 3-1の(a)に示すように濃度 Cと吸着量 nは比例関係があり一般に吸着量が小さい範囲で成立する気体の場合は溶液濃度 Cの代わりに気相圧力 pを用いればよい
濃度(分圧)
濃度(分圧)
濃度(分圧)
濃度(分圧)
吸着量
吸着量
吸着量
吸着量
(a)ヘンリー型 (b)ラングミュア型
(d)BET型(c)フロインドリッヒ型
0
0
0
0
図 3-1 吸着等温式
31
(b)ラングミュア(Langmuir)型吸着等温式 ラングミュアは図 3-2 に示すように固体表面に同等な吸着力を示す吸着サイトがあり
表面に 1分子層だけ吸着する(単分子層吸着)と仮定して平衡状態における吸着量と溶質濃度(気相分圧)のと関係を導いた全吸着点のうち吸着分子に覆われている吸着点の割合
をθ[-]とすると分子の脱着速度 rrsquo[mols-1]はθに比例する比例定数を a[mols-1]とすると次式のように表される
吸着剤
吸着分子
吸着サイト
図 3-2 固体表面上の吸着サイト(Langmuir式の導出) r=aθ (6) また気相からの吸着速度 r[mols-1]は空いている吸着点の割合(1-θ)[-]と溶液濃度 C[molm-3]に比例する rrsquo= b(1-θ)C (7) このときの比例定数を b[m3s-1]とするまた平衡状態では両速度は見かけ上等しいため以下の式が成り立つ aθ=b(1-θ)C (8) これを変形する
CbaCbsdot+
sdot=θ (9)
ここで飽和吸着量を ninfin[molkg-1] ba を K[m3mol-1](Kは吸着平衡定数)とおくと infin=nnθ
となるので次式が得られる
32
KCKCnn
+=
infin
1 (10)
これをラングミュア式と呼ぶ
(c)フロインドリッヒ(Freundlich)型吸着等温式 フロインドリッヒの吸着等温線は図 3-1(c)のように示される
n=aC1b (11) nは吸着量[molkg-1]で aと bはともに吸着定数[-]である (d)BET(Brunauer-Emmett-Teller) 型吸着等温式
BET型の吸着等温線は図 3-1(d)に示されるラングミュア式は表面に 1分子層だけ吸着すると仮定したものであるがBET式は無限分子層まで吸着できる式である図 3-3に示すように吸着した分子がそれぞれ次の層の吸着サイトとなり分子は積み重なって多分子
層に無限層まで吸着できるものとし各層への吸着にラングミュア式を適用すれば次式の
ように表せる
( ) ( )CKCCCKqq
minus+sdotminussdotsdot
=infin
11 (12)
この式は多孔質固体の細孔表面積を窒素ガスの吸着によって測定する際に利用される重要な式
である
表面の吸着サイト
分子上の吸着サイト
図 3-3 多分層吸着モデル
Langmuir式のパラメータ決定法 水溶液からの酢酸の活性炭に対する吸着平衡データ(吸着平衡温度 12)は表 3-1のよ
うに与えられる実験データよりラングミュア式のパラメータ(K吸着平衡定数ninfin飽和吸着量)を最小二乗法で決定せよさらにラングミュア式より決定した ninfinKの値を用いて吸着等温線を計算し計算線として図に示し実験点と比較せよ
33
表 3-1 n C Cnの関係
ラングミュア式は式(310)で与えられるこの式を変形すると次式となる
CKnCK
n infinsdot+
=11
(313)
両辺に Cをかけると以下の式が導出される
CCnKnCKn
CCKn
Cβ+α+
==
+= infininfininfin
11)1( (314)
ただしα=1ninfinβ=1(ninfinK)とする式(314)より Cn と C の関係のグラフプロットは傾きα=1ninfin切片β=1(ninfinK)の直線関係を与えることを示している表 3-1の値を用いて計算した Cnと Cの関係を表 3-1および図 3-4に示す 最小二乗法を用いて傾きαと切片βを決定した α=1ninfin=43865 β=1(ninfinK)=2654 得られた傾きおよび切片よりninfinおよび Kは次のように求まる
ninfin=1α=1D18=000228 molg-1 K =(1ninfin)β=αβ=D18C18=165
0
50
100
150
200
0 200 400 600
C [ molm-3 ]
Cn [ kgm-3 ]
傾き = 1 ninfin
1 ninfinK
切片0
05
1
15
2
25
3
0 100 200 300 400 500
液相の溶質濃度 C [ molm-3 ]
吸着量 n [ molkg-1]
液相と溶質濃度 C [ molm-3 ]
吸着量
n[ m
olk
g-1]
実験点
Langmuir式パラメータninfin 00033 [ molg-1 ]K 00086 [ m3 mol -1 ]
図 3-4 ラングミュア定数の決定 図 3-5 12における酢酸濃度 Cと
吸着量 nの関係
C [molm-3] n [molkg-1] Cn [kgm-3] 460 225 109 529 214
268 199 149 105 060
172 128 732 504 357
34
Freundlich式のパラメータ決定法 酢酸水溶液中における酢酸の活性炭に対する吸着実験を行ったところ以下のような実験デー
タを得たただしCbはバルク相における酢酸濃度n は活性炭に対する酢酸の吸着量を示す
Cb[molL] n[molg] log10Cb log10n 04621 000205 02410 000175 01139 000139 00519 000105 00243 000081
実験データを利用して次式で与えられる Freundlichの等温吸着式の定数 abの値を求めたい
bbaCn1
= (1)
このままでは定数 abの値を決定することが難しいので上式の両辺の対数をとる
bbb
bb
Cb
aCa
aCn
ln1lnlnln
)ln(ln1
1
+=+=
=
(2)
ここで横軸に ln Cb縦軸に ln nの関係をグラフにプロットするすなわち x=ln Cby=ln nと考える
bCb
an ln1lnln += (3)
ここで直線式 y=a0+a1xと比較するすなわち
)(1)(ln
1
00
傾き
切片
ba
eaaa a
=
=rarr= (4)
a0および a1は最小二乗法により数値で求められる与えられたデータでは a1= a0= なので a= b= となる この値を n=acb
1bに代入してcb=0~05の範囲で nの値を計算する
35
BET式のパラメータ決定法 BET式は次式で与えられる
)1)(1( KCCCKCnn
+minusminus=
infin
(17)
以下のように BET式の変形を行う
)1()1(
KCCKCnCn+minus
=minusinfin
(18)
(18)式の逆数をとると
KCnCK
KCnKCC
Cn infininfin
minus+=
+minus=
minus)1(1)1(
)1(1
(19)
(19)式の両辺に Cをかえると
KCnCKC
CnC
infin
minus+=
minus))1(1(
)1( (20)
(20)式を変形すると次式が得られる
CKn
KKnCn
Cinfininfin
minus+=
minus11
)1( (21)
C と)-(1 Cn
Cのプロットは傾き
KnKinfin
minus1切片
Kninfin
1の直線関係を与えることを示している
これをグラフにプロットし最小二乗法に傾きおよび切片を求める
36
312 活性炭の比表面積の決定 酢酸分子の構造を以下に示す
Hc-Cb-Ca
Hd
Hb Oa
Ob-Ha
1219deg
Ca Oa
Ob
図 36 酢酸の構造
酢酸の 1分子の吸着面積srsquo [m2]を図 3-6に示すこのとき文献より
Caと Oaの結合距離 1321Å Caと Obの結合距離 1206Å OaCaObの角度 1219deg Cの原子半径 077Å Oの原子半径 062Å
したがって吸着面積 Slsquoは次のようになる
( ) ( ) 2088 10376109931036321 minusminusminus times=timestimestimestimes=s m2
ここで活性炭の比表面積 S[m2g]は次式で示される 10026 23 snS timestimestimes= infin
S活性炭の比表面積 [m2g] ninfin飽和吸着量 [molg] srsquo酢酸 1分子の吸着面積 [m2] 602times1023アボガドロ数 [個mol] したがって活性炭の比表面積 S[m2g]は
003350=infinn molg 2010376 minustimes=s m2 より
51281037610026003350 2023 =timestimestimestimes= minusS m2g
37
4 粘度密度測定 41 はじめに 大量生産を目的とした工業的化学プロセスはほとんど流れ系(流通系)であるそれらの系において操作対象となる各物質の粘度は装置を設計操作する場合きわめて重要
な物性値である 本実験では低分子溶液および高分子溶液の粘度測定を通じて液体の粘度について考察するさらに演習問題を通じて気体液体高分子溶液などの化学プロセスで対象となる物
質の輸送物性(粘度拡散係数)の重要性を認識されたい 42 低分子溶液の粘度 [目的] 種々の濃度のエタノール水溶液の粘度を測定しその溶液の粘度について考察する [概要] 25におけるエチルアルコール濃度 02040506080100 wt の水溶液について流下時間を測定しこの結果より相対粘度絶対粘度運動粘度を求めグラフにするま
た水の密度水-エチルアルコール溶液の密度についてはピクノメーターを用いて決
定する報告書には相対粘度絶対粘度運動粘度 vsエチルアルコール濃度の関係をそれぞれグラフにして提出する
[計算方法] 相対粘度絶対粘度運動粘度の定義は次のようになる
相対粘度 ww
w tdtd
ηη = (41)
η 混合溶液の粘度 [gcms] ηw水の粘度(8007times10-3 gcms) [gcms](25における粘度) d エチルアルコール水溶液の密度 [gcm3] dw水の密度(099704gcm3) [gcm3](25における密度) t エチルアルコール水溶液の流下時間 [s] tw水の流下時間 [s] 下付添字 W 水
絶対粘度 www td
tdη
η= (42)
運動粘度 ν=ηd [cm2s] (43)
38
[実験方法] 1) 粘度計を洗浄し粘度計内 に二連球で空気を送り込み
乾燥させる乾燥しにくい 場合はアセトンを滴下し た後再度二連球で空気 を送り込み乾燥させる 2)ピペットで一定体積(10mℓ) の純水を取り広い口 f から 粘度計に水を入れる 3)粘度計を恒温槽(25)に つけ約 10 分静置する 4)安全ピペッターを口 a に 取り付け液面が b 上部に 到達するまで吸い上げる 5)安全ピペッターを外すと 液面が降下しだす液面が bd 間を通過する時間をスト ップウォッチで測定する
6)純水での測定を 3 回繰り返す 7)純水を粘度計から取り除くその後粘度計内に二連球を用いて空気を送り込み乾燥させる 8)粘度計乾燥後複数の濃度に調整済みのエチルアルコール水溶液(10mℓ)を粘度計にいれ4)~6)の作業を繰り返し行う(3 回)なお濃度の異なるエチルアルコール水溶液を粘度計内に導入する場合には7)と同様に二連球を用いて粘度計内に空気を送り込み乾燥させる
表 4-1 エチルアルコール水溶液の濃度密度相対粘度の関係 エチルアルコール濃度
[wt] 密度 d[gcm3] 相対粘度
η ηw[-] 0
20 40 50 60 80
100
安全ピペッター接続
図 4-1 粘度計
液面の bd間の通過時
間を測定
f
39
43 密度測定 [目的] 本実験では水とエタノールの種々の組成の混合液体について密度を測定し分子間相互
作用について考察する [実験方法] 1)ピクノメーターの容積測定
図 4-2のピクノメーターの空の重量 wg を秤量する
ピクノメーターの蓋を取り外し
ピクノメーターを水で満たす
設定温度を 25として恒温槽 の電源を入れ恒温槽内の温 度が一定になるまで待つな お水温は恒温槽中の水銀温 度計から読む
恒温槽中に水を満たしたピク
ノメーターを入れる
約 10分間静置する
ピクノメーターに蓋をするこのときピクノメーターの容量
よりも余分の水は蓋の上部より排出される
ピクノメーターの外側を乾いた布で拭い秤量する(その重量を
wwg とする)
恒温槽の温度(25)における水の密度 dwgcm3(=099704gcm3)
より次式を用いてピクノメーターの容積を求める
w
w
dww
Vminus
= (44)
図 4-2 ピクノメーター
蓋
40
表 4-2 エチルアルコール水溶液の濃度と密度の測定結果(25) エチルアルコ
ール濃度[wt]
wrsquo[g] ww[g] V[cm3] w[g]
d[gcm3]
0 20 40 50 60 80
100
099704
エチルアルコール濃度[wt] 空のピクノメーターの重量 wrsquo[g] 水を入れたときのピクノメーターの重量 ww[g] ピクノメーターの体積 V[cm3] エタノール水溶液の入れたときのピクノメータの重さ w[g] エタノール水溶液の密度 d[gcm3]
容積 Vを求めたピクノメーターに混合溶液(調整済み)を入れてその重量 wgを秤量し次式で混合溶液の密度を求める
Vwwd minus
= (45)
エタノール濃度と密度 d の関係をグラフにプロットする
41
44 高分子溶液の粘度 [目的] 高分子溶液の粘度測定から分子量の粘度に与える影響について考察する [概要 ] オストワルド粘度計を用い種々の濃度のポリビニルアルコール(PVA ((-CH2CHOH-)n))水溶液の粘度を測定し粘度データよりポリビニルアルコールの分
子量を求める まず 05g100cc の濃度のポリビニルアルコール水溶液を調製する次にこれを原液
とし23 12 13 15の濃度の溶液を調製するこれらの溶液についてオストワルド粘度計を用いてそれぞれ流下時間を測定し相対粘度絶対粘度運動粘度を求め実験デ
ータより極限粘度[η]を求めるまた報告書には相対粘度絶対粘度運動粘度C
)ln( wηη
Cw
w-η
ηη vsポリビニルアルコール濃度の関係をそれぞれグラフにして提出する
[計算方法] エチルアルコール水溶液の粘度測定と同様の手法を用いて粘度の計算を行うなおポリビニルアルコール水溶液の密度はピクノメーターを用いて測定すること 表 4-3 ポリビニルアルコール水溶液の濃度密度相対粘度の関係 ポリビニルアルコール
濃度 [g100cc] 密度 d[gcm3] 相対粘度
η ηw[-] 05times(15) 05times(13) 05times(12) 05times(23)
05
42
[分子量の計算方法] 実験を行った結果以下のような粘度データを得られるとする実験データより極限粘度
を求めポリビニルアルコール(PVA)の分子量Mを決定せよ
PVA 水溶液濃度
C[g100cc]
相対粘度
ηηw[-]
絶対粘度
η[gcms]Cw
w-η
ηη
C)ln( wηη
05times(15) 1031 0008255 031 0305
05times(13) 039 0378
05times(12) 03 0289
05times(23) 0375 0353
05 0364 0334
ηw=8007times10-3 gcms 線状高分子の極限粘度[η]と分子量Mの関係は次式で与えられる [η]=KMα (46) ただしポリビニルアルコールの場合K=666times10-4α=064であるなお極限粘度[η]は次式で定義される
CC w
w
0
-][ limη
ηηη
rarr
= (47)
または
CC
)ln(][ w
0lim
ηηη
rarr
= (48)
よって濃度 CとCw
w-η
ηηまたは濃度 Cと
C)ln( wηη の関係をグラフ化し最小二乗法によ
り切片の値を求めると極限粘度[η]が決定される
Cw
w-η
ηηと C の関係より最小二乗法を用いて切片の値を決定すると(図 43 参照)切片=
03242傾き=00874となるよって極限粘度は以下のようになる[η]=03242同様
にC
)ln( wηη とcの関係より最小二乗法を用いて切片の値を決定する
(図 44参照)と切片=03249傾き=00256となり極限粘度は以下のようになる[η]=03249
Cw
w-η
ηηと Cの関係より決定した[η]=03242を用いてポリビニルアルコール(PVA)の
分子量 Mを計算する(46)式より以下のように PVAの分子量 Mを計算することができるM=([η]K)1α
=(03242(666times10-4))(1064)
=15811
43
y = 00874x + 03242
0
02
04
06
08
1
0 01 02 03 04 05 06 07
c[g100cc]
(η-ηw)(ηwc)
cw
w
η
ηηminus
極限粘度[η]
図 43 298Kにおける PVA濃度 CとCw
w-η
ηηの関係
y = 00256x + 03249
0
02
04
06
08
1
0 01 02 03 04 05 06 07
c[g100cc]
(ln(ηη
w))c
c)ln( wηη
極限粘度[η]
図 44 298Kにおける PVA濃度 CとC
)ln( wηη の関係
44
5 植物からの DNAの抽出 51 はじめに 分子レベルでの遺伝子の構造解明や遺伝子の発現に関する研究は近年急速に発展している
これら生命現象のしくみを分子レベルで解明しようという分子生物学の分野ではさまざま
な遺伝子の解析や応用方法が開発され我々の生活に身近なものになりつつある 本実験では初歩的な分子生物学に関する実験として植物(タマネギ)からの DNA の
抽出を行い抽出した遺伝子の電気泳動法による分離実験を試みる 52 試薬および器具 試薬 タマネギ(細胞中から遺伝子の抽出を行う) 台所用洗剤(洗剤中に含まれる界面活性剤には植物の細胞膜およびタンパク質を破壊す
る働きがある) 塩化ナトリウム(DNAは塩化ナトリウム水溶液に溶解し易い性質がある) エタノール(予め冷やしておくDNAはエタノールにほとんど溶解しない) 制限酵素(DNAを一定の部位で切断する働きを働きがある) TE緩衝液(pH緩衝剤が入った溶液) 器具 ビーカーミキサーフィルターメスシリンダー駒込ピペットガラス棒 マイクロピペット電気泳動装置ポラロイドカメラ 53 実験方法 1)タマネギは 1回の実験で半個のうち内側の半分程度を使用するタマネギ水 30ml台所用洗剤数滴をミキサー用ガラス容器に入れ40~60秒程度(固体状のタマネギがなくなる頃が目安)ミキサーにて混合する
2) 1)で作成した混合溶液をビーカーに移し約5g程度の塩化ナトリウムを加えガラス棒で静かに攪拌する粘性の大きな溶液が得られる
3) 2)で作成した溶液をフィルターを用いて濾過し濾液を回収する 4) 濾液の約2倍程度の量の冷エタノールをビーカーの壁伝いに静かに注ぐ 5) ビーカーを揺するとエタノール層に白くふわふわしたものが浮いてくるこれが DNAであるガラス棒で DNAを巻き取りシャーレ上にて DNAを回収する顕微鏡を用いて回収した DNAの状態を観察する
6)マイクロチューブ(容量 15ml)中に用意した 70エタノールを 8 分目程度まで注ぐ5)にて回収された DNAをマイクロピペットを用いて70エタノールの入ったマイクロチューブ中に移す軽く混ぜることによりDNA から不要な物質を洗い流す遠心分離してDNA をマイクロチューブの底に沈めた後溶液を捨てて DNA を乾かす乾いたらTE緩衝溶液を 1ml加えて放置するDNAの溶液が得られる
54 電気泳動装置による DNAの観察
本実験は職員と一緒に行うこと 実験を行う人はビニール手袋をすること 1) 抽出した DNAを電気泳動装置で観察するマイクロピペットを用いて以下のように調製した DNAの混合溶液を調製する(いずれの溶液も調製済)
45
2) マイクロピペットを用いてアガロースゲルの試料を流し込む穴(ウェル)に1)にて調製した溶液 Aおよび Bを注ぎ込む注入量は20μℓとする電気泳動装置のスイッチを入れて100Vの電流を流しアガロースゲル内にて DNAを電気泳動させる
3) 試料に予め加えられておいた青色の色素が 7 分目程度まで進んだら電気泳動を中止する(約 30分程度)
4) (ここでの作業は職員が行う) アガロースゲルを取り出し染色液に浸す染色後ゲルを取り出しポラロイドカメラで
DNAの泳動状態を撮影する
+ -
アガロースゲル
試料を流し込む穴(ウェル)
図 51 電気泳動装置
6 5 4 3 2 1
図 52 DNAの電気泳動写真の一例
55 電気泳動装置の原理 電気泳動装置の原理図を以下に示すアガロースゲル(寒天から不純物を除いたもの)中
に DNAをセットし電流を流すとDNAは電流の向きとは逆にマイナスからプラス方向
調製済 溶液 A(制限酵素なし) 水 11μℓ 10timesH Buffer 2microℓ 植物 DNA 5μℓ
調製済 溶液 B(制限酵素 Eco RI入り) 水 11μℓ 10timesH Buffer 2microℓ 植物 DNA 5μℓ 制限酵素 2μℓ
1 DNA(タマネギ)+制限酵素 2 DNA(タマネギ)+制限酵素 3 DNA(タマネギ) 4 λ-DNA(大腸菌)+制限酵素 5 λ-DNA(大腸菌) 6 サイズマーカー
500bp
46
に動く(このことを電気泳動という)これはDNA のリン酸部分が負に帯電しているためでありまたDNAはその長さにより泳動距離が異なる(短い遺伝子ほど長く泳動する)電気泳動ではこの性質を利用してDNAを大きさごとに分離することができる
塩基対数によってDNAを分離
EtBr (蛍光試薬)DNAの二本鎖内に入り込む
発光
UVλ=302nm
励起
分離後のアガロースゲルをエチジウムブロマイド(EtBr)溶液に浸す
DNAを含んだ溶液
アガロースゲル
リン酸部分が負に帯電
塩基 (ATGC)-
+
カメラで撮影
電圧
DNA構成成分(dNTPs)
バンドが明る
DNA量が
バンド(DNAの存在)
図 53 電気泳動の原理
56 制限酵素とは DNA は4 種類のヌクレオチド(GATC)が不規則につながってできている制限酵素はDNAの特定のヌクレオチドが並んでいる部分を切断する制限酵素には様々な種類がありEco RI(エコアールワン)と呼ばれる酵素は「GAATTC」といった並びの部分だけを切断することができる
GAATTC
CTTAAG
制限酵素
Eco RI
AAGCTT
TTCGAA
制限酵素
Hin dIII
図 54 制限酵素による DNAの切断
レポートについて 1 実験方法および実験結果の整理方法については指針書を参考にすること 2 実験結果については電気泳動の結果について考察すること(制限酵素の影響などにつ
いてまとめてください)
47
6 染色実験
61 はじめに
現在私達の身の周りでは様々な染料が使われている例えばT シャツやジーンズな
どの衣服は橙黄赤青など様々な色に染められている他にも私達が気付かないと
ころで多くの染色された製品を使用しているそこで本実験では高校の化学で学んだ
アゾ染料を合成してみるアゾ染料はアニリンを原料として作られているアニリンはベ
ンゼン環にアミノ基(-NH2)がついたものであるアニリンは無色の液体で水に溶けにく
くアンモニアより弱い塩基性を示すまたさらし粉(CaClO(ClO)H2O)水溶液を加えると
赤紫色を呈するこの呈色反応はアニリン特有のものであるので検出反応に用いられる
このアニリンを出発物質としてアゾ染料を合成してみる
62 試薬および使用器具
【試薬】 ①05moll 水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液
②2-ナフトール ③フェノール ④6moll 塩酸
⑤亜硝酸ナトリウム ⑥アニリン ⑦氷
【器具類】 ①電子天秤 ②50mℓビーカー ③100mℓビーカー
④ガラス棒 ⑤布(ガーゼなど) ⑥ピンセット
⑦ポリ手袋 ⑧ドライヤー ⑨シャーレ
10駒込ピペット(10ml ガラス製)
11駒込ピペット(1ml プラスチック製)
63 実験方法
1) 50mℓビーカーの中に 05molℓ水酸化ナトリウム水溶液 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回
NaOH 水溶液を分取するほぼ 20 mℓ分取できれば可)と 2-ナフトールを約 01g 入れ
よくかき混ぜる調製した溶液の中に布をつけその布はガラス棒でしぼってから(布
をガラス棒ですくいあげればよい)シャーレに広げる温度の異なる条件下(常温およ
び低温)で染料の合成実験を行うため布は最低 2枚調製した溶液と接触させそれ
ぞれ別々のシャーレ(低温用および常温用)に広げる
2) 新しいビーカーに水を約 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回分取)と 6molℓ塩酸約 4mℓ(10m
ℓ駒込ピペットで目分量で可)さらにアニリン約 1mℓ(プラスチック製 1 mℓ駒込ピペッ
ト)を入れてよくかき混ぜる染料の合成を常温および低温下で行うためこの溶液を
2つ調整する
低温下で反応させる溶液は恒温槽で 10~15 分ほどよく冷やした後亜硝酸ナトリウ
ム 05g を加えてよくかき混ぜる
常温下で反応させる溶液には冷却作業を行わずに亜硝酸ナトリウム 05g を加えて
よくかき混ぜる
3) 2)でつくった水溶液をシャーレに広げた布に注ぎ生成される染料を布によく染み
込ませ5分程放置する
4) 色の付いた布を取り出してポリ手袋をした手できれいに水洗いをし乾燥させる
48
5) 色差計を用いて乾燥した布の Lab(L明度aおよび b色度)を測定する
2)で作った溶液は5以下では無色の溶液ですが5以上になると淡い黄色になりま
す
【解説】
アゾ染料はアゾ基(-N=N-)を持っていてこのアゾ基によって鮮やかな橙色を呈色し
ます今回合成したアゾ染料は図の 1-フェニルアゾ-2-ナフトールです意外かもしれ
ませんが指示薬として使われているフェノールフタレインもアゾ化合物ですフェノール
フタレインは pH の変化によって色が出てきす染料の中でも最初は無色のものもありますが
温度を変化させたり酸性やアルカリ性にすると色が出てきます
ベンゼン ニトロベンゼン
N2Cl
ニトロ化 濃硫酸(濃硝酸)
還元反応 濃塩酸
(Sn又は Fe)
アニリン塩酸塩
遊離反応 NaOH
アニリン塩酸塩に強塩基を反応させる
と弱塩基であるアニリンが遊離する
氷冷+亜硝酸ナトリウム アニリン
塩酸
ジアゾ化
塩化ベンゼンジアゾニウム
塩化ベンゼンジアゾニウム
は熱によって窒素とフェノー
ルに分解される
カップリング
C10H7ONa (ナトリウム 2-ナフトキシド)
O
N =
1-フェニルアゾ 2-ナフトール
NH3Cl NH2
49
7 ガスクロマトグラフ質量分析計による茶葉中のカフェインの分析 71 はじめに ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)は極めて低い濃度の化学物質の同定や未知物質の構造決定に極めて強力な分析機器の一つであるGCMSを用いるとサンプルの中に含まれているある成分の分子構造(カフェインの分子構造を図 71に示す)やその量が分かりますもちろん分析機器ですので測定できる物質対象となる系や測定条件にはある
程度の制約があります混合物質を分離するガスクロマトグラフ(Gas ChromatographGC)と分離された成分(物質)を分析(構造決定と濃度測定)する質量分析計(Mass SpectrometerMS)を組み合わせた装置であるこの装置は有機化学生化学環境化学などの多くの分野で非常に多用されている例えば極めて低い濃度でも生体へ強い影響が懸念されるダイ
オキシン類などの土壌や河川の水中での含有率の決定や食品や医薬品中の微量成分の決定
にも利用されている 一方日本人に長い間親しまれてきた緑茶が近年産業界や医学
界で注目されている茶葉にはカフェイン(分子構造図 71)カテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドなどの有用成分が多く含まれておりその効能が注目されている 本実験では茶葉中に含まれるカフェインに対してGCMSを用いて分析する茶葉中には種々の物質が含まれておりGCMS分析を容易にするため前処理として超臨界二酸化炭素抽出(4015MPa程度の高圧力の二酸化炭素を溶剤として利用)により茶葉からカフェインの抽出を行いそのサンプルを GCMSにて分析する
図 71 カフェインの分子構造 図 72 物質の分析 個々の物質や装置についてはインターネットにより下記のWebサイトのフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』などにより調べるとよいカフェイン(caffeine)はアルカロイドの一種プリン環を持つプリンアルカロイドの一種でコーヒー類に含まれることか
らこの名がある化学名は137-トリメチルキサンチン(C8H10N4O2) コーヒーコーラ緑茶紅茶ガラナココアなどに含まれる(量は緑茶が一番多い)結晶は一水和物(C8H10N4O2bullH2O)もしくは無水物(無水カフェインC8H10N4O2)として得られ
る白色の針状または六角柱状結晶で匂いはなく味は苦い融点は 238昇華性がある出典フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』httpwwwwikipediaorg 装置「GCMS」httpwwwanshimadzucojpproductsgcmsqp2010htm (島津) 「超臨界抽出装置」httpwwwkagakucomjasco39-49html (日本分光)
50
レポート課題 1茶葉中に含まれるカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドの中から3つの物質を選びその物質について調べた結果を A4 レポート用紙2枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
2GCMS についてA4 レポート用紙1枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
3与えられたサンプルは茶葉1gから抽出されたのである実験結果よりもとの茶葉
1g中に含まれるカフェインの量を推算し計算式とあわせて示すこと 72 原理および装置 実験で使用する島津製の GCMS装置の全体図を図 73に原理の概略を図 74に示す
1
23
4
5
67 8
9
10
キャリアーガス
試料物質
1ボンベ(He)2圧力計3マイクロシリンジ4サンプラー5試料導入部6分離カラム
7セパレーター8イオン化室9磁石10電子増倍管11記録計
11
図 74 ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)の概略図
サンプルフォルダー
51
GCMS 装置は分離部である図中の 1~6 のガスクロマトグラフ(GC)と7~11 の検出部である質量分析計(MS)から構成される 3のマイクロシリンジを用いて試料を GCMSに導入する導入された試料は5試料導入部でガス化され6分離カラムに導入される分離カラムには吸着剤が充填されおり混合物の試料を導入した場合各物質と吸着剤との
親和性の違いにより各物質の分離カラムから排出されるタイミングは異なる分離カラム
を排出された試料は8イオン化室でイオン化され10電子倍増管にて検出される アセトンに溶解したカフェインの GCMSによる分析結果の一例を以下に示す図 75にク
ロマトグラム図 76にカフェインのピークのマススペクトルを示す
図 75 GCMSにより得られたクロマトグラム
横軸がリテンションタイムで縦軸がピーク強度を表す
図 76 カフェインのマススペクトルとカフェイン(分子量MW=194)の構造
(図 75中のリテンションタイム 126min付近のピークに起因するマススペクトル) 茶葉中にはカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイド以外にも繊維であるセルロースなど多くの物質が含まれているため茶葉そのものを
そのままサンプルとしてGCMSで分析することは困難であるセルロースなどの分子量の大きな物質はカラムに詰まってしまい分析できないそこで今回は超臨界二酸化炭素
による抽出により主にカフェインを他の物質と分離抽出した通常よく利用されるアセ
トン抽出(アセトンに茶葉を浸し特定の成分を抽出する)ではカフェイン以外にも多く
の物質が抽出されるため図 75 のような単独のピークを得ることは難しく複数のピークがクロマトグラムに見られるこのサンプル(この場合茶葉からの抽出物)にはカフェ
イン以外の不純物は少なかったがガスクロマトグラフの分離カラムによりさらにそれ
らの混合物が精度よく分離されるクロマトグラムのピークはそれらサンプル中に含まれ
ていた個々の物質を表しているクロマトグラムのピークを選択することで分子構造解析
したい物質を選んだことになる選択したクロマトグラムのピークの表している物質(ここ
ではカフェイン)に対応するマススペクトルが図 76 に表示されているマススペクトル
52
で横軸がその成分(ここではカフェイン)分子を構成している原子の原子量で縦軸がそ
の量を表しているのでマススペクトルから分子構造を解析するためにコンピュータ内
に蓄えられた物質ごとのマススペクトルデータと今回測定したマススペクトル(分子内に含
まれている各原子の数)を比較することで測定したサンプル中のクロマトピークを選択し
た分子がどのような原子をどれだけ含んだ分子であったかがわかりそれからその物質
がどのような分子構造の物質である可能性が高いかをコンピュータが検索し結果を示す 73 実験サンプルの設置と GCMS装置の操作方法 実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS装置のサンプルフォルダ
ー(図 73)にセットするこのサンプルは茶葉 1gを 50ccの高圧セルにて超臨界二酸化炭素を利用して4015MPa2時間接触の条件で抽出した固体を10gのアセトンに溶かしたものである またコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に装置および装置制
御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 本実験で使用する GCMS の操作は全てコンピュータのモニター上で GCMS の解析プログラムソフトを使用することで行うコンピュータの操作方法を以下に示す なおコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS 装置のサンプルフォルダー(図 73)にセットするまた装置および装置制御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 1)パソコンのデスクトップ上のアイコン「GCMS 分析」をクリックすると以下のようにGCMS制御プログラムを起動するその後「OK」ボタンをクリックする
図 77 GCMD分析用ソフトウェア「GCMS分析」の起動
まず「GC-MS分析」をクリック
「OK」ボタンをクリック
53
2)制御プログラムが起動されパソコンと GCMSの接続が開始される
図 78 「GCMS分析」の接続確認画面 3)GCMSとパソコンの接続が完了すると以下のような画面が表示される
図 79 「GCMS分析」操作画面
4)マススペクトルによる分子構造の解析 サンプル(この場合茶葉からの抽出物)には多くの物質が混じり合っていたがガス
クロマトグラフの分離カラムによりそれらの混合物が精度よく分離されるクロマトグラ
ムのピークはそれらサンプル中に含まれていた個々の物質を表しているクロマトグラム
のピークを選択することで分子構造解析したい物質を選んだことになる選択したクロマ
トグラムのピークの表している物質(ここではカフェイン)に対応するマススペクトルを選
択するマススペクトルは横軸が原子量で縦軸がその量を表しているのでマススペク
トルから分子構造を解析するために「定性処理」を行う シミラリティ検索結果が表示され分析により得られたスペクトルと類似のスペクトルを有
する物質の一覧が表示される上部に表示される物質ほどスペクトルが一致していること
を示す
接続状況が表示される
「トップへ」
をクリック
54
図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果
図 711 表示スペクトルのシミラリティ検索結果 10)図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果の印刷 「レポート(R)」をクリックし「検索結果(R)」をクリックすると検索結果が印刷される
GC-MS 分析で得られたマスス
ペクトル
データベース中
のマススペクト
ル
55
参考資料 生理活性物質の精製 カフェインの利尿作用のように生物活動に影響を与える物質を生理活性物質といいます
天然物には生理活性物質を多く含むものがあります一般に天然物は多くの成分を含ん
でおり特定の生理活性物質を分離抽出するには種々の分離技術が必要ですまた生
理活性物質には60以上の温度でその生理活性を失う(失活)ものや溶剤として広く用いられているクロロホルムなどの有機溶剤中で失活するものが多いそこでこれら生理活性
物質の分離精製技術の開発が望まれており30~60程度のマイルドな温度条件で操作できる二酸化炭素を機能性溶媒として利用する超臨界抽出も有効な分離技術として注目されて
いる超臨界二酸化炭素は気体と液体の中間の性質を持ち物質の分離に役立っています 臨界点付近の高密度気体は超臨界ガスまたは超臨界流体と呼ばれ臨界圧力前後でそ
の溶解能力が著しく変化することから工業的にも種々の分野で利用されています一例と
して超臨界二酸化炭素(SC-CO2)によるコーヒー豆からのカフェインの抽出プロセス(a)
ならびに超臨界二酸化炭素に対するカフェインの溶解度(b)を図に示します図(c)に示す
ように固体のカフェインがガスである超臨界二酸化炭素に溶解します
このように超臨界二酸化炭素を用いた技術はコーヒー豆からのカフェインの抽出プロ
ポリスからの生理活性物質の抽出に利用されています
図 超臨界二酸化炭素抽出を用いたコーヒー豆からのカフェインの抽出
56
付表 最小二乗法について 直線で近似する場合 f (x) = a0 + a1x (A1-1) 式(A1-1)のように近似させるとする測定値 yiとの残差を eiとすると式(A1-2)のようになる ei = yi - f (xi) = yi - ( a0 + a1xi ) (A1-2) ここで式(A1-2)の両辺を二乗してその i に関する総和をとりその値を S とすると次式となる
sumsum==
+minus==n
iii
n
ii xaayeS
1
210
1
2 )( (A1-3)
S を最小化するような a0a1を求める式(A1-3)を a0a1について偏微分すると次式とな
る
sum=
+minuspartpart
=partpart n
iii xaay
aaS
1
210
00)( sum
=
+minusminus=n
iii xaay
110 )(2 (A1-4)
同様にa1について編微分すると次式のようになる
sum=
+minusminus=partpart n
iiii xxaay
aS
110
1])([2 (A1-5)
Sが最小となる時は次式が同時に満たされる時である
00=
partpartaS
01=
partpartaS
(A1-6)
よって誤差が最小となる a0a1を求めるためには式(A1-6)を連立して解けばよい
sumsumsum===
+=n
ii
n
i
n
ii xaay
111
10 1 (A1-7)
sumsumsum===
+=n
ii
n
ii
n
iii xaxaxy
1
2
11
10 (A1-8)
式(A1-7)と式(A1-8)を a0a1を変数とみなし連立して解くと次式を得る
n組のデータ(xiyi)(i=12hellipn)に対して回帰直線 y= a0 + a1x を最小二乗法で求めて出力しデータ番号 iデータ yi直線で推定した値 )( ii bxay += および残差
iii yy minus=ε を出力するようなプログラムをつくりたい基礎式を導出せよ (ヒント残差の二乗の和が最小になるように係数 a0a1)を定めるのが最小二乗法
である)
57
sumsum
sumsumsumsum
==
====
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
n
ii
n
ii
xxn
xxyyxa
1
2
1
2
1111
2
0
)(
))(())(( (A1-9)
sumsum
sumsumsum
==
===
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
xxn
yxxyna
1
2
1
2
1111
)(
))(()( (A1-10)
よって式(A1-9)(A1-10)を用いれば最も誤差を小さくするような直線 y = a0 + a1x が求められる
y=a1x+a0 にて近似
誤差 ei
x
y
誤差が最小になる関数(直線 y=a1x+a0の場合)
図1 最小二乗による近似
誤差の和Sが最小
S
a0
a1
直線 y=a1x+a0 の近似
誤差の全体の和はS=Σei=Σyi-(a1xi+a0)
Sは変曲点にて最小値を示すすなわち(partSparta0)=0 (partSparta1)=0
図2 a0a1とSの関係
5
期限(締切の日時)に遅れた報告書は受理しない 28 実験実施上の注意 1)実験時間中は白衣着用履物は靴とする(サンダル類は不可)また白衣のボタンはか
ならずとめ袖などもしっかりとめる器具に袖などをひっかけて事故を起こすことの
ないように事前に注意する 2)試薬機器具については使用目的を指導担当者に報告のうえ受け取る返却時の報告
も確実におこなう 3)計測機器具などの使用(操作)は「取扱説明書」にしたがって行う 4)機器具類の保管は班(グループ)全員でこれにあたる破損または紛失したときは指導
担当者に口頭で報告して下さい実験終了時には各物品と実験台の整理整頓を行い指導
担当者の確認を受けて下さい 5)脱塩水製造装置(イオン交換)の使用に際しては指導担当者の指示を受ける 6)ガラス器具の洗浄法
a)ガラス器具は水道水で予洗の後クレンザーで十分に汚れを落とし再び水道水で良くすすぐただしガラス体積秤量器はこの限りにあらず下記のbの方法による洗浄の終了
はガラスの表面が一様に水膜で濡れていることにより判定するその後イオン交換水ある
いは蒸留純水で最低3回以上すすぎ加熱乾燥あるいは風乾させる乾燥後は所定の場所
に器具を返還する b)ガラス体積秤量器は水道水で予洗の後洗浄槽に一昼夜浸漬しその後水道水で十分すすぐ以後は aの場合と同様であるが乾燥に関しては風乾とし加熱乾燥は絶対に行ってはならない
7)プラスチック製器具の洗浄法 プラスチック製器具は材質が軟質であるので洗浄には液体洗剤を使用し加熱乾燥はさけ
風乾とする乾燥後は所定の場所に器具を返還する 8)実験廃液の処置法 実験廃液は有機溶剤廃液含有機溶剤水溶液廃液無機廃液含重金属廃液に分類し各々
所定の廃液タンクに保管する不明の場合には教員の指示を受けることみだりに流しに
は流さないこと 9)固体廃棄物の処置法 固体廃棄物は紙屑木材類ビニールゴム類金属類ガラス類に分類し所定の容器
に廃棄する 10)空になった試薬瓶は捨てないで教員の指示を受けること 11)電源の確保に関しては電気容量電線の容量等に関して教員の指示を受けること 12)天秤室への入室は各班(グループ)の秤量担当者のみとする(多人数の入室は秤量操
作の妨げとなるまた天秤転落事故の原因ともなる) 13)喫煙は「指定の場所」でおこなう実験室または指定場所以外での喫煙はしないこと 14)本実験では1テーマを各班とも数グループにわかれて実験をおこなうのでチームワー
クが必要である実験を始める前に互に話し合って実験上の手順すなわちデータの取り方
をきめておくとよい 15)機器の取り扱いは使用説明書をよく読んでから使用する 29 実験報告書実験ノート 実験報告書(レポート)はレポート用紙(市販の A4サイズ)を用いて提出して下さい報告内容は特に指示がない場合は次の項目とします
6
1)緒言(チョゲン) 3)実験方法 4)実験結果および考察 5)結言 6)使用記号(式や変数を使用した場合に必要) 7)引用文献(参考にした文献があれば)
レポートの内容の各項目に関して以下にその記述上の注意点を説明します 1)緒言 実験の目的意義を示す何をどうしようとするのかを示すものでその実験の直接の目
的を具体的に書く 2)実験方法 実験の方法は実際に行った実験を第三者にも再現できるように書くべきです自分達が
行った操作について表や図などを交えて明確に示しておくとよいでしょう 実験方法の文章は過去形で書くことが一般的です
3)実験結果および考察 結果(数値図表)と考察はレポートの中で最も重要な部分です指針書を参考にして
各自が工夫して記述して下さい 結果では得られた事実に忠実に書かねばなりません
また関連のあるものをまとめて図や表に示すとわかりやすいですただし結果の図や
表についての説明の文章も本文に必要です 結果おより考察の文章は現在形で書くことが一般的です また単位や有効数字に誤りがあると誤解を招く恐れがあります図表単位および有
効数字に関しては指針書を再読すること考察では得られた実権データを理論的な計算
などと比較して現象を検討する習慣も身につけましょう独自のものを書くようにこころが
けましょう 4)結言 結果および考察でえられた事柄をまとめて示します 主な記述上の注意事項 1 表については標題の位置表の上に書く注の位置表の下に書く 2 図については標題の位置図の下に書く注の位置図の下に書く 図を描く場合にはA4の各種方眼紙1枚に1つの図を描き本文を参照しなくても
図の内容がわかるように必要な条件などを全て記入することが望ましい図および表
は最後にまとめて示すのではなく関係の深い文の直後の頁に挿入する 3 その他記述上の注意は指針書や配布された資料を参考にされたいまたレポー
トにつける通しページ番号なども忘れぬよう 4 次元単位の付記に留意する「SI」はこれから必然的に使用される単位系であ
りその使用については留意してもらいたい 5 単位の記入においては変数の後には[ ]を付け数の後には[ ]を付けない例え
ばCp [Jmol-1K-1] Cp = 198 Jmol-1K-1 6 引用文献使用参考の記入については「化学工学論文集」「化学工学会誌」を参照
されたい 7 「化学工学論文集」「化学工学会誌」などは工学部の各図書館にあるので有効に活
用してもらいたい 8 レポートに記載する図表などは「化学工学論文集」「化学工学会誌」の表現に準
じた記載方法を用いること 9 図についてはExcelなどの表計算ソフトで作成したものでもよい
7
実験ノートは市販の大学ノートを使用して下さい各実験内容についてページを変
えて後で見て分かりやすいように書いて下さい上から5行程度に実験条件その他
必要事項日付などを記入する右端5cm程度の幅を備考欄とし実験中に気付いたこ
とその他必要事項を記入する使用した溶液の濃度ファクターなどが記録されていない場合がよくありますレポート作成時に困りますので忘れずに各自が実験ノートに記入
しましょう レポート表紙 レポートの表紙(市販の A4 のレポート用紙でよい)には以下のような表紙をつけること各ページにページナンバーを記入すること提出時には上端をホッチキスで閉じるこ
と記入はワープロ鉛筆でもよい
工業物理化学実験レポート(三島担当分)
実験項目 実 験 名 提出者 福岡大学工学部化学システム工学科 A組 5班 TK0315001 七隈太郎 共同実験者 福大次郎 干隈三郎 城南花子 早良五郎 実験日 平成 年 月 日 ~ 月 日 実験場所 化学工学共同実験室 B(6号館 1階 617室) 条件 気温 気圧 湿度 天候 提出日 平成 年 月 日
8
3 吸着 31 はじめに 活性炭 多孔質(多くの小さい穴がある)の吸着剤 酢酸 活性炭に吸着されるモデル分子
吸着実験データの整理によく使用する記号 n 溶質の吸着量 C 溶液中の溶質の濃度 単位は [ ] [ ] 考えてみよう 1) 右図のような低い濃度の酢酸水溶液の入ったビーカーに活性炭 をを加えた場合濃度はどうなるでしょうか
2)吸着された酢酸の物質量(n[mol])を測定するにはどのような 実験をすればよいでしょうか 図 1 活性炭
32 吸着操作 工場排液中の微量は有機物などを活性炭などの吸着剤で除去する工業操作を吸着操作と言
います蒸留抽出乾燥撹拌などの単位操作と同様に化学工業プロセスの重要な分離技
術です吸着操作は他の分離操作に比べてきわめて低濃度の範囲まで物質分離ができる特
徴がありますそのため近年問題となっている大気および水質の汚染汚濁に対する有力
な対策技術として注目されています 本実験では活性炭に対する酢酸の吸着挙動を調べることにより活性炭の吸着特性(吸
着平衡定数)を知り吸着操作の理論的な取り扱いについて学習しましょう 吸着量を求めてみましょうこの例では濃度換算が容易になるように溶液濃度をℓ でなく m3 単位とした) 低濃度のフェノールを含む排水の活性炭吸着実験を行って図 1のような吸着等温線(一
定温度で測定した溶液濃度と吸着量の関係)を得たいまフェノール濃度が 40mol m3の
排水 40m3に 60kgの新しい活性炭を投入して平衡に達したとき水中のフェノール濃度(mol m3)および 1gの活性炭のフェノール吸着量(molg)を求めよ
活性炭 1gに吸着するフェノールの物質量をn[molg]活性炭の量を W[g]とすると
フェノール排水 V[m3] 吸着前のフェノール濃度 C0[mol m3] フェノール分子
+
活性炭に吸着した溶質(フェノール)の量 nW (1)
溶液から取り除かれた溶質の量 (C0-C)V (2)
物質収支式より
nW=(C0-C)V (3) よって
VW
CCn
minus= 0 = )( 0CC
WV
minusminus (4)
9
図3 吸着等温度線と操作線
この操作からわかるように吸着データ(この実験で求める)が存在すれば
吸着等温線と操作線の交点から吸着処理しようとする溶液の体積 V と初濃度 C0
に対して使用する活性炭の質量 W により活性炭に吸着する溶質の量 n および吸着後の溶液の溶質濃度 C が計算で予測できますこの吸着データから吸着装置を設計することができます実際に吸着装置(吸着塔)の設計の様子を次ペー
ジの例題1に示しておきます興味のある人は5 段に積み重ねた吸着層を 04 mol ℓの濃度の廃液が通過すると濃度が 002 mol ℓ 以下になることを確認し吸着塔の設計方法を考えてみて下さい なお先ほど求めた式 (4)は皆さんが行う吸着実験データ(吸着等温線を作るもととなる吸着後の溶質濃度 C と各濃度に対する吸着量 n の関係)を求める場合にも使用します 問題1 質量 W=1gの活性炭を用いて体積 V=100cm3の酢酸溶液の吸着実験を行った
ところ活性炭と接触する前の酢酸溶液の初濃度はC0=0512moldm3であった
(dm3デッシメータ 3 乗= ℓリットル)吸着後の溶液を活性炭と分離してその酢酸溶液の濃度を 01N(01 規定の)水酸化ナトリウム水溶液で滴定して求めたところC=0478moldm3 であった1gの活性炭に吸着された酢酸の物質量n [mol]を式 (4)より求めよ
活性炭 1kg当たりに吸着された
フェノールの量 n[molg]
吸着操作後
の溶液のフ
ェノール濃
度 C
吸着等温線の一例 Langmuir式
KCKCnn
+=
infin
1
操作線
)( 0CCWVn minusminus=
傾き-23
初濃度 C0
[molm3]
吸着後の濃度 Cと吸着量 n
初濃度C0と傾き-VWを用いて操作線を引き
吸着等温線との交点を
求める
ここで(3)式の傾きWV
minus で図 1 における横軸
を通過する直線式(操作線)であるすなわち
)(=- 4032
)40(6040)()( 0
minus
minusminus=minusminus=
C
CCCWVgmoln
10
解答(計算式) )( 0CCWVn minusminus=
minus= ( ) (答) [mol]
例題 1 吸着塔の設計 濃度 C0[molm3]の不純物を含む工業排水(流量 V[m3hr])から不純物を除去するために下図
に示すような各 i段に活性炭を wi[g]含む5段の吸着塔を設計しましょう 各 i 段の出口と入口でのそれぞれの物質濃度 CiCi-1[molm3]とその段での活性炭単位質
量当たりの吸着量 ni[molg]との間に物質収支がなりたち他の部分への吸着は無視できるとするまた溶液中の平衡濃度Ci[molm3]と吸着量ni[molg]の関係はラングミアー(Langmuir)の等温吸着式で与えられるものとするラングミアーの等温吸着式における吸着平衡定数 K
と飽和吸着量 infinn としてはK=8611 infinn =0003262の値を用いる誤差を判定する定数 EPS
としてはEPS=000001を用いよ 図4 吸着塔の段数計算 図5 吸着塔 33 実験目的 一定の温度において活性炭による希酢酸の等温平衡吸着量 nを一定の温度において測定
しそれら測定値の Freundlich 式および Langmuir 式への適合性を比較検討するまたLangmuir式により活性炭の比表面積を求める 34 実験方法 レポートでの実験方法の記述では次のように説明文を必ず付けて下さい また行った方法については過去形「~した」のように記述して下さい 例) 活性炭による酢酸水溶液からの酢酸の吸着実験に次の器具および試薬を使用した [器具] 1000mlメスフラスコ(1)500mlメスシリンダ(1)500ml試薬瓶(5)共栓三
実験レポートを書く場合この「実験目的」を利
用して「緒言」を作成して下さい
実験方法は過去形にて記述
11
角フラスコ(5)2mlホ-ルピペット(2)5mlホ-ルピペット(2)10mlホ-ルピペット(1)100ml ホ-ルピペット(1)50ml ビュレット(1)電子天秤直示天秤(注( )内の数値は個数を表す) [試薬] N10N100-水酸化ナトリウム(NaOH)N10-塩酸(HCl)フェノ-ルフタレイン酢酸活性炭 1)2)および 7)については予め調整済み8)は2日目に実験する 1)酢酸 28mℓ をメスシリンダにて採集しこれを 1000mℓ メスフラスコに入れて蒸留水を加えて 1000mℓとしN2-酢酸を調整した(調整済み)
2)N2-酢酸より順次溶液 500mℓをメスシリンダに取り1000mℓメスフラスコを用いて
N4N8N16N32酢酸溶液を調整し500mℓ試薬瓶保持した 3)共栓三角フラスコ(100mℓ)の空重量を直示天秤にて正確に測定したこれに電子天秤にて測定した活性炭試料約 1gを入れて再び直示天秤にてその重量を正確に測り前後の差から投入した活性炭量を知る
4)活性炭を入れた各々の三角フラスコに各濃度の酢酸溶液 100mℓを正確にホ-ルピペットを用いて入れた(このとき気泡が混入しないように注意した)
5)上記に準備した三角フラスコに栓をしてこれらを所定の温度に設定した恒温槽に浸し
た浸した三角フラスコは約 20分間隔で気泡が混入しないように注意して振り混ぜるこの操作を約 2時間行った
6)次に滴定に用いて約 N10-N100-水酸化ナトリウム溶液 1000mℓを調整し濃度既知の塩酸溶液を用いてその正確な濃度を決定しておく(調整済み)
7)調整された酢酸溶液の各々を6)において標定した N10-水酸化ナトリウム水溶液にフェノ-ルフタレインを指示薬として滴定し各酢酸溶液の濃度を求めた(標定に要する
酢酸量は N2-と N4-の場合は 2mℓN8-と N16-の場合は 5mℓN32では 5mℓをホ-ルピペットで採集するただしN32についての滴定はN100水酸化ナトリウムで滴定した(各濃度について 3回ずつ滴定する)
注)ビュレットは各班に 2 本ある濃度の高い N2 酢酸から測定するので両方のビュレットにはN10-水酸化ナトリウム水溶液を入れて開始する
最重要注意事項
滴定を行う場合安全確保のため必ず安全メガネを着用すること 8)次に各試料溶液を一つずつ手早くろ過しろ過液を N10-水酸化ナトリウムで滴定して平衡濃度を決定した(標定に要する酢酸量は N2-と N4-の場合は 2mℓN8-とN16-の場合は 5mℓN32-では 5mℓをホ-ルピペットで採集したただしN32 ーの場合は N100 ー水酸化ナトリウムで滴定した)
12
1) 酢酸溶液の濃度の測定(1日目レポートにこの図は不要) 酢酸 28mℓをメスシリンダにて採集しこれを 1000mℓメスフラスコに入れて蒸留水を加えて 1000mℓとしN2-酢酸を調整する
N2-酢酸より順次溶液500mℓをメスシリンダに取り1000mℓメスフラスコを用いて N4-N8-N16-N32-酢酸溶液を調整し500mℓ試薬瓶に保持する
滴定用のビュレットを N10-N100-水酸化 ナトリウム溶液で共洗いする(3回)
ビーカーに酢酸溶液を少量入れて共洗いを行う (3回)試薬瓶からビーカーに酢酸溶液を滴定に 必要な量だけ取り出す
ホールピペットをビーカーの酢酸溶液を 使用して共洗いを行う(3回)
滴定用の三角フラスコに酢酸溶液を分取する
滴定(滴定は同じ濃度の酢酸溶液を 3回 以上滴定して平均する)
酢酸溶液の濃度計算
滴定による酢酸濃度の決定
1000
1000vfNvx timestimes=times (33)
x酢酸の仕込み液濃度 [molℓ] v酢酸の仕込み液の分取量 [mℓ] NNaOHの規定度 [N] fNaOHのファクター [-] vrsquoNaOHの滴定量 [mℓ] 注)酢酸は 1価の酸なので 1molℓ=1N(1規定)
13
式(33)の使用例 酢酸の仕込み液の分取量 v =2 mℓ NaOHの規定度 N = 01 N NaOHのファクター f = 0998 NaOHの滴定量 vrsquo = 985 mℓ である場合 式(33)を利用して酢酸の仕込み液濃度 x[molℓ]を求める
1000
1000vfNvx timestimes=times
vvfNx
timestimes=
49202859998010 =timestimes= molℓ (この xが濃度 C または C0 です)
2)酢酸溶液と活性炭の接触のフローチャート(1日目) 共栓三角フラスコ(100mℓ)の空重量を 直示天秤にて正確に測定する
電子天秤にて活性炭試料約 1g測る
共栓三角フラスコ(100mℓ)に 活性炭試料約 1gを入れる
活性炭試料約 1gを入れた 共栓三角フラスコ(100mℓ) を直示天秤にてその重量を測る
共栓三角フラスコ(100mℓ)の前後の 差から投入した活性炭量を計算する
活性炭を入れた各々の三角フラスコに 各濃度の酢酸溶液 100mℓを正確にホ-ルピペットを用いて入れる(このとき 気泡が混入しないように注意する)
三角フラスコに栓をしてこれらを所定の温度に 設定した恒温槽に浸す浸した三角フラスコは 約 20分間隔で気泡が混入しないように注意して 振り混ぜるこの操作を約 2時間行う
14
3)吸着量の測定(2日目) 恒温槽の温度を測る
恒温槽から三角フラスコを一つずつ取り出す
各試料溶液を一つずつ手早くろ過する
活性炭
ろ液を滴定して平衡濃度を決定する
回収
吸着量の計算
Langmuirの吸着等温式Freundlich式のパラメータの決定
グラフの作成
吸着量の計算10001000 times
minus=
wCC
n (34)
n吸着量 [molg] C0 酢酸水溶液中の酢酸の濃度 [molℓ] C ろ液中の酢酸の濃度 [molℓ] w 活性炭の量 [g]
35 実験結果のまとめ方 実験結果は実験レポートを書く場合に考察と並んで重要な部分ですので主な注意事
項をここで説明しておきます グラフの作成n vs C nC vs C ln n vs ln C の 3つのグラフの作成 配布された Excel ファイルを利用し下図のような図を作成してみましょう
15
レポートの間違いやすい場所 ①表や図を示す場合次の例のように文章でもその旨を示す [実験結果] 共栓付三角フラスコに活性炭約 1g入れた試料の重量 w[g]を Table1に示す
Table1 調整酢酸濃度を入れる活性炭試料の重量 w [g]
酢酸規定度[N]
活性炭試料の質量w [g]
12 10300
14 10001
18 10126
116 10011
132 10109 酢酸(1)-水(2)-活性炭(3)の 12における吸着平衡の結果を Table 6および Fig1に示すただし活性炭 1gに吸着された酢酸のモル数 n[molg]は次式より求めた
( )10001001
0 timestimesminus=w
CCn b
C0仕込み液中の酢酸濃度 [molℓ] Cbバルク相中の酢酸濃度 [molℓ] w活性炭試料の質量 [g] n吸着量 [molg]
例えばCb=04621C0=04894w=10300の時は次のように計算できる
( ) 026501000100
0300114621048940 =timestimesminus=n
Table6 酢酸(1)-水(2)-活性炭(3)の 12における吸着平衡
吸着された溶質のモル数n[molg]
バルク相中の濃度Cb[moll]
00205 04621
00175 0241
00139 01139
00105 00519
00081 00243 ②得られた図や表の解釈(読者にそれらから読み取ってもらいたい事柄)の説明文を次の
例のように文章で記述する数字や図だけ示して読者に「理解しろ」というようなレポー
トではよくありません Table 6および Fig1よりバルク相中の酢酸濃度 Cbの増加にともない吸着量 nも増加することがわかったまた吸着量 n の値は酢酸濃度 Cbの増加にともない n=に漸近することがわかる
グラフ(Fig)は次ペ
ージに掲載すること
グラフや表の後にはそれらの結果より得られた知見を文章でも
記入すること
16
36 エクセルによる吸着データの整理法 注コンピュータの画面はWindowsXP上での操作になっています他の OS(Windows98 2000
NT)搭載のパソコンでも同様の作業が可能です) 先ほど問1で説明したように溶液濃度の濃度変化から吸着量 nを求めました実験では吸着後の水溶液中の酢酸の濃度 Cと吸着量 nの関係を各濃度の溶液(5種類)について測定しその値を計算します このようなデータの整理には表計算ソフトであるマイクロソフト社の Excelが便利です
Excel の起動方法はそのソフトがインストール(設定)されているコンピュータにより若干方法が異なることがありますがほとんど同じですここでは福岡大学の総合情報処理
センターのコンピュータの設定に従って説明します 表計算をしてみましょう セルとは セルというのは最小単位の四角のことです例えば「(Aの1)またはA1というセルセル
B1」のようにセルという言葉を使いますセル A1に1という数字を入れてみましょうセルA1をクリックしてキーボードから「1」と入力しキーボードの「Enter」キーを押します
図 5 Excelの入力例1 図 6 Excelの入力例2
次にセル B1に「5」という数字を入れましょう次にセル C1にセル A1と B1に記入された数値の和を表示させてみましょう 下の図のようにセル C1をクリックします上の「 fx 」と書かれた右のボックス(何かを書くところに)「 =A1+B1 」と書きましょうそして Enterを押すとセル C1に 6と表示されます
図 Excelを用いた関数計算 実験では吸着後の水溶液中の酢酸の濃度 Cと吸着量 nの関係を各濃度の溶液(5種類)について測定しましたこのデータに対してExcelを用いて表計算してみましょうまず先ほど記述したセル A1~A3は「Delete」(デリート)キーで値を削除しましょう
17
次にセル A5~A9に活性炭と接触する前の酢酸水溶液の初濃度 C0[moldm3]セル
B5~B9に活性炭と接触後分離した酢酸水溶液の濃度 C[moldm3]セル E5~E9に活性炭の質量 W[g]をキーボードから入力します作成した一例を次に示します
図 8 Excelによる吸着量nの計算 ここで1gの活性炭に吸着された酢酸の物質量n [mol]を式 (4)より計算できるのでセル C 5~C9に次の関数式を記述します式の内容としては
)( 0CCWVn minusminus=
となるように記述するので実際の Excelの関数としては次のように行います セル C 5をクリックし関数ボックス(fxの右)に「=(A5 ndash B5)01E5」と記述(半角または直接入力形式で)し「Enter」キーを押し確定しますこの関数はフィルハンドルを利用してセル C 6~C9にコピーしますただし実験で溶液は 100cm3使用しましたが
溶液の濃度 C が[moldm3]の単位ですので100cm3=01dm3 となり関数式の中では
V=01 dm3としています なおグラフの記述方法やフィルハンドルの使用方法については化学工学プログラミ
ングなどの補助資料を参考にして下さいまた実験の際に配布した Excel ファイル(ファイル名ad_graxls)を使用すると実験データの理論的な解析も容易にできますので試してみましょうExcelファイル(ファイル名)「ad_graxls」の使用方法は次節で説明します 36 実験結果の考察方法 (吸着実験について) 実験結果の考察方法は種々の方法がありますがここでは一例として理論と比較する
方法を示します実験結果として下図(左)のようなグラフができましたこのような実
験結果に対して理論的な考察を行ってみましょうここでは次節で説明するラングミュ
ア(Langmuir)の単分子吸着モデルで計算した理論線と実験と比較したものを下図右に示しますこの図を作る方法は次節で説明しますレポートの考察の部分はラングミュア
(Langmuir)の単分子吸着モデルの式の導出から書いて下さい 理論を作る場合幾つかの仮定をしますがその理論が多くの実験結果をうまく説明でき
ている場合その仮定がある程度妥当なものであったことがわかります指針書に書いてあ
った以外の理論についても興味があれいばためしてみましょう
セル C5をクリックし関数ボックス( fx の右)に「=(A5 ndash B5)01E5」と記述(半角または直接入力
形式で)します
18
ラングミュア(Langmuir)の単分子吸着モデルを用いて理論値を計算するには配布され
た Excelファイル(ファイル名)「ad_graxls」を使用すると便利ですその使用方法を以下に示します配布プログラムは化学工学プログラミングの講義の場合と同様に総合情報処
理センターの共通領域にあります各自コピーして使用して下さいコピーするには化
学工学プログラミングの講義の場合と同様にコピーしようとするファイルを共通領域から
自分の使用しているコンピュータのデスクトップにドラッグドロップします共通領域で
ファイルを開くとファイルの消去などで他の人が使えなくなりますので共通領域でファイ
ルをダブルクリックしないようにして下さい誤って共通領域でファイルをダブルクリック
した場合はそのファイルを閉じるボタンをクリックし閉じて下さい 各自のコンピュータに保存した Excelのファイル(ファイル名ad_graxls)をダブルクリ
ックして開きます自宅へ持ち帰る場合各自のフラッシュメモリーやフロッピーディスク
を使用しまたはメールを使用して添付ファイルで送信できます各自のフラッシュメモ
リーやフロッピーディスクに保存してあるファイルを再編集する場合はフラッシュメモリ
ーやフロッピーディスクをコンピュータの USB 端子またはフロッピーディスクドライブに挿入します次にデスクトップ上にあるマイコンピュータのアイコンをダブルクリックし
ます もしデスクトップ上に上のアイコンが無ければ画
面左下の「スタート」ボタンからマイコンピュータをク
リックしてくださいすると次のような画面が立ち上が
ります
ラングミュア(Langmuir)の単分子吸着モデルで計算した
理論線
19
その中からフラッシュメモリーの場合は「リムーバブルディスク」をフロッピーディ
スクの場合は「35インチ FD」のアイコンをダブルクリックしてくださいファイルが保存されていれば次の画面が出てきます
この画面の中の「ad_graxls」ファイルをデスクト
ップにコピーしますまず「ad_graxls」ファイルを左クリックしますこの時クリックした指はは
ずさないようにしますその状態のままデスクトッ
プまでファイルを移動させますそしてデスクト
ップ上の任意の場所でクリックした指をはずします
これでデスクトップ上に「ad_graxls」のファイルがコピーされましたのでデスクトップにコピーさ
れたファイルをダブルクリックして開きますコピ
ー操作が上手くいかなかった場合もう一度移動の操作を行ってください
必ずデスクトップにコピーしてから開く操作を行って下さいフロッピーディスクから直接
開いて操作を行った場合正しく保存されない可能性があります 「ad_graxls」のファイルを開くと次のような画面が立ち上がりますもし画面が違う場合は画面の下部にある「吸着データ」のタグ をクリックしてくださいこの画面
でデータの処理や計算を行いますでは実際の操作に入る前に予めこのファイルに名前
を付けて保存しておきますまずExcelの画面のツールバー「ファイル」から「名前を付けて保存」をクリックします下のような画面が起動します
20
ファイルの保存先を変えたい場合画面上部のボタンをクリックし保存先にデスクトッ
プを選択します次にファイル名の部分に各自ファイル名を入力しますファイル名は何
でも良いですが分かり易い名前にしておくとファイルの管理がやり易くなります日付や
数字を入れると同名のファイルをいくつも管理する場合に便利ですここでは「吸着実験デ
ータ整理 4月 01」とし「保存」ボタンをクリックします
ファイル名変更後Excelの画面上部のタイトルバーのタイトルが先ほどの名前(上の図とは異なります)になっていることを確認してください
この操作を行うことによって元のデータである「ad_graxls」を変更してしまう心配がなくなります元のデータである「ad_graxls」はファイルが破損しまたは間違った操作の結果を誤って保存してしまった場合などの補助ファイルとなりますので大切に保管しておいて
下さい今後配布するデータは先ほど説明した手順で名前を変えて保存し元のデータに
直接変更を加えないようにして下さい ここから実際の作業に入ります初期状態では模擬のデータが入力されています入力
データは予め計算しておいた酢酸濃度Cb[moll](濃度を Cと表示している場合もあります)と活性炭吸着量 n[molg]になります下の画面の丸で囲んだ部分がそれぞれの値でBCカラム(列)の 4~9行には数値が入力されています関数ではありませんこのデータを利用して実際のデータ解析を行ってみましょう下記のように行うと幾つかのグラフが
現れ実験データに対してラングミアーの単分子吸着を仮定したモデルを用いて精度よ
く計算線が描けることがわかります 今回はCbnの値を入力する必要はありませんExcelが自動的に計算を行って結果を表示するようになっていますつ
まりセル D5に「=B5C5」と関数を入力しこの関数に対してフィルハンド
ルを利用してセル D6~D9へコピーし
ファイルの保存先を変えたい場合画面
上部のボタンをクリックし保存先に
デスクトップを選択します
変更するファイル名はここをクリッ
クして書き換えます
名前を変更したらここをク
リックして保存します
21
まています 次に酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着量 n[molg]の関係および酢酸濃度 Cb[molL]と Cbn[gL]の関係をグラフ化します今回は自動的にグラフが作成されるようになっていますので複
雑な操作は必要ありません ここではデータに対してそれを精度よく表現する近似式をグラフ上に描きその関数
を数値として求める方法を Excelで練習してみましょう
グラフを表示させるには画面の下にある「Graph1」もしくは「Graph2」のタグ
をクリックします「Graph1」には酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着量n[molg]の関係のグラフが「Graph2」には酢酸濃度 Cb[molL]と Cbn[gL]の関係のグラフが表示されます「Graph2」はLangmuir の等温吸着式による相関を表したもので横軸に酢酸濃度 Cb[molL]をとり縦軸に酢酸濃度 Cb[molL]を活性炭吸着量 n[molg]で除した値 Cbn[gL]を示していますLangmuir の等温吸着式についてはこの後の章で説明してありますので各自読んで理解して下さいLangmuirの等温吸着式では式中の定数 ninfin(飽和吸着量)と K(吸着平衡定数)を実験データから最小二乗近似で決定する場合が多くありますここでは
その例を取り上げてデータに対してそれを精度よく表現する近似式をグラフ上に描き
その関数を数値として求める方法(最小二乗法最小二乗については付録に示しており
また化学工学プログラミングの講義においても説明します)を Excelで練習します 配布された Excel ファイル「ad_graxls」では実験点が表示されているだけでそれを精度よく表現する近似式の直線のグラフは「Graph2」に表示されていません今から次の手順で「Graph2」の図(グラフ)に近似式の直線のグラフを表示しますExcel の場合近似曲線(ここでは直線)を求める場合コンピュータが自動的に最小二乗法を使って近似曲線
を計算しています
「Graph1」の画面 「Graph2」の画面
Excelの sheetが表示されたらまずファイル名を変えデスク
トップに保存して下さい次
にGraph2のタックを左クリックして最小二乗法のグラフを
確認して下さい
22
38 Langmuirの等温吸着式による相関 はじめにLangmuir式の定数 ninfinと Kを決定するために「Graph2」酢酸濃度 Cb[molL]と
Cbn[gL]の関係のグラフから最小二乗法により直線の式を求めますExcelを用いてデータに対して近似直線のグラフを描き最小二乗法の直線の式を求めます
次のような「近似曲線の追加」のウィンドウが現れたら今回は線形近似(直線で近似
y=ax+b の式)を選びますので線形近似が黒色に反転していることを確認して「近似曲線の追加」のウィンドウの右下の「OK」ボタンをクリックして下さい
実験点の何れかにポインタをあわせて
右クリックする
近似曲線の追加(R)を選択して左クリックする
「線形近似」であること
を確認して「OK」ボタンをクリックします
23
「近似曲線の書式設定」
のウィンドウでオプシ
ョンから「グラブの書式
を表示する」の前を選ん
でチェック(前のチェッ
クボックスをクリック)
した後「OK」を押す
現れた直線にポインタをあわせて
左クリックすると「近似曲線の書式
設定」のウインドウが表示されます
ここをクリックします
この「オプション」のタ
グをクリックします
「y=」の関数
が現れるのでここ
をクリックする
式の文字フォントが初期値
「8」と小さいのでここ
のボタンをクリックし
フォントサイズを選ぶリス
トボックスを表示し「22」程度の大きなサイズを選択
しクリックする
24
「Graph2」酢酸濃度 Cb[molL]と Cbn[gL]の関係のグラフから最小二乗法により直線の式がこのように求められましたExcel を用いてデータに対して近似直線のグラフを描き最小二乗法の直線の式を求めるこの方法は他の実験データの解析などにも利用できますので
各自活用して下さい 表示された関数式「y=43865+2654」はノートにメモして下さいこの傾き 43865と
切片 2654からLangmuir式の定数 ninfinと Kを決定します決定方法の詳細はこの後の 36 の Langmuir式のパラメータ決定法に示しています ラングミュアの等温吸着式を変形すると次式となる
CCnKnCKn
CCKn
Cβ+α+
==
+= infininfininfin
11)1(
ただしα=1ninfinβ=1(ninfinK)とするこの式より Cnを縦軸Cを横軸とした関係のグラフは傾きα=1ninfin切片β=1(ninfinK)の直線関係を与えることを示しています そこでExcelのシートを利用してこの値からLangmuir式の定数 ninfinと Kを次のように決定しますセル C18D18に Graph2で求めた数値 2654と 43865を代入しますその後D19と C19に関数を ldquo=1D18rdquoとrdquo=D18C18ldquoを代入しますセル内の式は半角で入力してください
現れた関数の文字フォン
トを大きく(例えば 22)してその数字をメモし
吸着データシートの C18と D18に記入する
C18D18 に Graph2 で求めた値 2654 と 43865 を代入した後D19 と C19 に関数を ldquo=1D18rdquoとrdquo=D18C18ldquoを代入する
25
この Excel表示では最小二乗法を用いて決定した傾きαと切片βを用いて α=1ninfin=43865 β=1(ninfinK)=2654 得られた傾きおよび切片よりninfinおよび Kは次のように求まる
ninfin=1α=1D18=000228 molg-1 K =(1ninfin)β=αβ=D18C18=165
つまりセル D19にはninfinの値がセル C19にはKの値が表示されますこれらの値はラングミュア(Langmuir)の単分子吸着モデルで計算した理論線と実験と比較する場合に利用します実験結果に対して理論的な考察を行う例としてラングミュア(Langmuir)の単分子吸着モデルで理論線を計算し実験と比較するにはこの Excelファイルを利用して次のように計算しグラフに表示します セル F5~F30 には溶液中に残る酢酸濃度 Cb[molL]に対する活性炭に吸着された吸着量n[molg]の関係のグラフ「Graph1」の横軸の酢酸濃度 Cb[molL]の適当な値が既に入力してありますこれらのそれぞの酢酸濃度 Cb[molL]に対する吸着された酢酸の吸着量 n[molg]の理論値をラングミュア(Langmuir)式で計算しますラングミュア式は次式で与えられます
KCKCnn
+=
infin
1 (310)
ここでこの実験データを最も精度よく計算できるように決定した ninfinおよび K は上述のようにninfin=1α=1D18=000228 molg-1 K =(1ninfin)β=αβ=D18C18=165 でありこれらの値はセル D19にninfinの値がセル C19にKの値が表示されていますこの値を利用して「Graph1」に計算線を描くにはまずセル G5~G30 にセル F5~F30 のそれぞれの酢酸濃度 Cb[molL]に対する吸着された酢酸の吸着量 n[molg]の理論値をラングミュア式で計算しますそのためにはセル G5 にラングミュア式を次のように記述しますただしセル D19の ninfinの値セル C19の Kの値は常に同じセルから参照するので絶対参照($マークを付けて$D$19 $C$19と記述します)で記述します
Langmuir式をセル G5に記述するただし濃度はF5の値を相対参照しD19と C19は絶対参照($マークが必要)することを忘れないように
セルG5に記述すべき数式
=$D$19$C$19F5(1+$C$19F5)
26
G5記述後フィルハンドルを使用してG5の関数を G6~G30までコピーします Sheet1から Graph1 のタグをクリックしGraph1 に計算線が表示されたことを確認しましょうこれでラングミュア式によるデータの解析は終了です実験値と理論値を比較して現象
について考察してみて下さいラングミュア式を理論的に導く場合にある仮定をしている
のですがその仮定をしているラングミュア式が実験データを精度よく計算できていれば
その仮定が妥当なもとであったと考察できます 与えられたモデルデータでラングミュア式によるデータ解析ができれば他の理論(例え
ばフロインドリッヒFreundlich式や BET式レポートはどちらか一方でも可です) についてもExcel で計算してみましょうレポートには自分のデータについてここで行った内容と同様に計算しその結果を考察に記述して下さい 自分のデータについて同様の計算をするにはまずいままで計算を行った Excel ファ
イルを保存しますデータを自分の実験データに置き換える前に Excel ファイルをさらに別の名前で保存します与えられた Excel ファイルは初期状態では模擬のデータが入力されているので今回自分達の実験したデータを入力していきます入力するデータは予め計算
しておいた酢酸濃度 Cb[moll]と活性炭吸着量 n[molg]になります下の画面の丸で囲んだ部分にそれぞれ自分の実験データを入力していきます
今回はCbnの値を入力する必要はありませんExcelが自動的に計算を行って結果を表示するようになっています 次に酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着
量 n[molg]の関係および酢酸濃度Cb[molL]と Cbn[gL]の関係をグラフ化します今回は自動的にグラフが作成
されるようになっていますので操作は必
要ありません 39 Freundlichの等温吸着式による相関 今回の実験で得られた酢酸濃度 Cbと活性炭吸着量 nのデータを利用してFreundlichの等温吸着式の定数 abの値を求めFreundlichの等温吸着式の理論線をグラフに追加します ここでFreundlich式は次式で表されます
bbaCn1
=
このままでは定数 abの値を決定することが難しいので上式の両辺の対数をとり線形化しますすると次式となります
bCb
an ln1lnln +=
ここでln Cbと ln nの関係をグラフにプロットすれば傾き 1b切片 ln aの直線関係が得られますしたがって実験データである酢酸濃度 Cbと活性炭吸着量 nの値の対数をそれぞれ計算します配布した「ad_graxls」ファイルを開き「吸着データ」シートの任意の部分に以下のような表を作成します
27
次にln Cb[-]の列の最初のセルに以下の数式を入力します
=ln(B5) 上式中の「B5」は Cb の値の最初のセルの位置を指します各個人の位置によって変更してください
次にln n[-]の列の最初のセルに以下の数式を入力します
=ln(C5) 上式中の「C5」は nの値の最初のセルの位置を指します各個人の位置によって変更してください
ここでln Cb[-]ln n[-]の値に対しそれぞれオートフィルを行い計算させますすると以下のようなデータが完成します
計算した ln Cb[-]ln n[-]の値をグラフにプロットし最小二乗法による直線式を求めます
28
ここで以下のような直線の式が得られたとします
9135ln31690ln913531690 minus=there4minus= bCnxy
上式より切片は-5913傾きは 03169となるので以下の要領で定数 a1bを計算します ==there4minus= minus 91359135ln eaa 000270
316901=
b
a の値を Excel で計算させる場合は任意のセルに以下のような数式を入力することで求めることができます
=exp(-5913) これでFerundlich等温吸着式の定数 a1bの値が決定しましたこの値は後で使うのでノートなどにメモしておいてください 次に決定した Ferundlich 等温吸着式の定数 a1b の値を用いてFerundlich 等温吸着式のグラフを作成します先ほども示したように Ferundlich等温吸着式は次式で表されます
bbaCn1
=
従って定数 aと 1bの値はすでに決定しているので任意の Cbの値に対する nの値を数点求めればFerundlich等温吸着式で求めた理論線が得られます以下の操作で理論線を引くことができます Langmuir 等温吸着式による相関のときと同様にExcel の「吸着データ」のシート上の任意の場所に以下のような表を作成します
次に Ferundlich等温吸着式に従いnの値を計算します
bbaCn1
=
式中の定数 a1bは先ほど計算した値を用いますしたがって式は次のようになります
31690002700 bCn times=
この式を Excelのセル内に記入すれば計算ができます次の
29
ように記入します
=00027G5^03169 ここで式中の「G5」は Cbの値が 0のセルを指しています各個人の位置によって変えてください 次に式を記入したセルを Cbの値が 05のところまでオートフィルを行いますそうするとすべての Cbに対して nの値が計算されます
これで Freundlich等温吸着式のデータが完成しましたので次に「Graph1」酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着量 n[molg]の関係のグラフにこのデータを追加し理論線を引きます理論線の引き方は Langmuirによる相関のときと同様の操作を行ってください グラフの書式等を変更し整理すると以下のようなグラフが出来上がります
310 吸着等温線とは 固体の吸着剤を溶液と接触させる時一定量の吸着剤によって吸着される溶質の量は温度一定ならば溶質の濃度の関数になる一定温度での吸着量を温度に対してプロットした時に
得られる曲線を吸着等温線というこの吸着等温線を比較的よく表す経験式として次の
Freundlich式がある
n=aC1b (1) ここで n は吸着剤の質量あたりの吸着量C は吸着平衡濃度a と b は実験から決定されるパラメータであるがその物理的意味は多少希薄である これに対し理論的な意味を持つものに次のラングニュア(Langmuir)の吸着等温式がある
30
KCKCnn
+=
infin
1 (2)
ただしninfinは飽和吸着量Kは吸着平衡定数であるこの式は
1)吸着分子が固体表面で単分子以上の厚い層を作ることはない 2)吸着分子同士の間の相互作用はない
という二つの仮定にもとに導かれたものである 結果の整理および報告 Freundlich吸着等温式Langmuir吸着等温式の各々のパラメータの最適値を求めよまた活性炭の吸着特性および表面積について考察し化学工学における吸着操作の重要性につい
ても検討せよ 311 吸着等温式 (a) ヘンリー(Henry)型吸着等温式 液相の濃度あるいは気相の圧力が小さい場合吸着分子間の距離が十分に長いため吸着
分子同士の相互作用が無視でき固体表面と吸着分子のみの相互作用で吸着量を決定できる
とき次式のように表される
n=KC (3)
ここでKは比例定数である図 3-1の(a)に示すように濃度 Cと吸着量 nは比例関係があり一般に吸着量が小さい範囲で成立する気体の場合は溶液濃度 Cの代わりに気相圧力 pを用いればよい
濃度(分圧)
濃度(分圧)
濃度(分圧)
濃度(分圧)
吸着量
吸着量
吸着量
吸着量
(a)ヘンリー型 (b)ラングミュア型
(d)BET型(c)フロインドリッヒ型
0
0
0
0
図 3-1 吸着等温式
31
(b)ラングミュア(Langmuir)型吸着等温式 ラングミュアは図 3-2 に示すように固体表面に同等な吸着力を示す吸着サイトがあり
表面に 1分子層だけ吸着する(単分子層吸着)と仮定して平衡状態における吸着量と溶質濃度(気相分圧)のと関係を導いた全吸着点のうち吸着分子に覆われている吸着点の割合
をθ[-]とすると分子の脱着速度 rrsquo[mols-1]はθに比例する比例定数を a[mols-1]とすると次式のように表される
吸着剤
吸着分子
吸着サイト
図 3-2 固体表面上の吸着サイト(Langmuir式の導出) r=aθ (6) また気相からの吸着速度 r[mols-1]は空いている吸着点の割合(1-θ)[-]と溶液濃度 C[molm-3]に比例する rrsquo= b(1-θ)C (7) このときの比例定数を b[m3s-1]とするまた平衡状態では両速度は見かけ上等しいため以下の式が成り立つ aθ=b(1-θ)C (8) これを変形する
CbaCbsdot+
sdot=θ (9)
ここで飽和吸着量を ninfin[molkg-1] ba を K[m3mol-1](Kは吸着平衡定数)とおくと infin=nnθ
となるので次式が得られる
32
KCKCnn
+=
infin
1 (10)
これをラングミュア式と呼ぶ
(c)フロインドリッヒ(Freundlich)型吸着等温式 フロインドリッヒの吸着等温線は図 3-1(c)のように示される
n=aC1b (11) nは吸着量[molkg-1]で aと bはともに吸着定数[-]である (d)BET(Brunauer-Emmett-Teller) 型吸着等温式
BET型の吸着等温線は図 3-1(d)に示されるラングミュア式は表面に 1分子層だけ吸着すると仮定したものであるがBET式は無限分子層まで吸着できる式である図 3-3に示すように吸着した分子がそれぞれ次の層の吸着サイトとなり分子は積み重なって多分子
層に無限層まで吸着できるものとし各層への吸着にラングミュア式を適用すれば次式の
ように表せる
( ) ( )CKCCCKqq
minus+sdotminussdotsdot
=infin
11 (12)
この式は多孔質固体の細孔表面積を窒素ガスの吸着によって測定する際に利用される重要な式
である
表面の吸着サイト
分子上の吸着サイト
図 3-3 多分層吸着モデル
Langmuir式のパラメータ決定法 水溶液からの酢酸の活性炭に対する吸着平衡データ(吸着平衡温度 12)は表 3-1のよ
うに与えられる実験データよりラングミュア式のパラメータ(K吸着平衡定数ninfin飽和吸着量)を最小二乗法で決定せよさらにラングミュア式より決定した ninfinKの値を用いて吸着等温線を計算し計算線として図に示し実験点と比較せよ
33
表 3-1 n C Cnの関係
ラングミュア式は式(310)で与えられるこの式を変形すると次式となる
CKnCK
n infinsdot+
=11
(313)
両辺に Cをかけると以下の式が導出される
CCnKnCKn
CCKn
Cβ+α+
==
+= infininfininfin
11)1( (314)
ただしα=1ninfinβ=1(ninfinK)とする式(314)より Cn と C の関係のグラフプロットは傾きα=1ninfin切片β=1(ninfinK)の直線関係を与えることを示している表 3-1の値を用いて計算した Cnと Cの関係を表 3-1および図 3-4に示す 最小二乗法を用いて傾きαと切片βを決定した α=1ninfin=43865 β=1(ninfinK)=2654 得られた傾きおよび切片よりninfinおよび Kは次のように求まる
ninfin=1α=1D18=000228 molg-1 K =(1ninfin)β=αβ=D18C18=165
0
50
100
150
200
0 200 400 600
C [ molm-3 ]
Cn [ kgm-3 ]
傾き = 1 ninfin
1 ninfinK
切片0
05
1
15
2
25
3
0 100 200 300 400 500
液相の溶質濃度 C [ molm-3 ]
吸着量 n [ molkg-1]
液相と溶質濃度 C [ molm-3 ]
吸着量
n[ m
olk
g-1]
実験点
Langmuir式パラメータninfin 00033 [ molg-1 ]K 00086 [ m3 mol -1 ]
図 3-4 ラングミュア定数の決定 図 3-5 12における酢酸濃度 Cと
吸着量 nの関係
C [molm-3] n [molkg-1] Cn [kgm-3] 460 225 109 529 214
268 199 149 105 060
172 128 732 504 357
34
Freundlich式のパラメータ決定法 酢酸水溶液中における酢酸の活性炭に対する吸着実験を行ったところ以下のような実験デー
タを得たただしCbはバルク相における酢酸濃度n は活性炭に対する酢酸の吸着量を示す
Cb[molL] n[molg] log10Cb log10n 04621 000205 02410 000175 01139 000139 00519 000105 00243 000081
実験データを利用して次式で与えられる Freundlichの等温吸着式の定数 abの値を求めたい
bbaCn1
= (1)
このままでは定数 abの値を決定することが難しいので上式の両辺の対数をとる
bbb
bb
Cb
aCa
aCn
ln1lnlnln
)ln(ln1
1
+=+=
=
(2)
ここで横軸に ln Cb縦軸に ln nの関係をグラフにプロットするすなわち x=ln Cby=ln nと考える
bCb
an ln1lnln += (3)
ここで直線式 y=a0+a1xと比較するすなわち
)(1)(ln
1
00
傾き
切片
ba
eaaa a
=
=rarr= (4)
a0および a1は最小二乗法により数値で求められる与えられたデータでは a1= a0= なので a= b= となる この値を n=acb
1bに代入してcb=0~05の範囲で nの値を計算する
35
BET式のパラメータ決定法 BET式は次式で与えられる
)1)(1( KCCCKCnn
+minusminus=
infin
(17)
以下のように BET式の変形を行う
)1()1(
KCCKCnCn+minus
=minusinfin
(18)
(18)式の逆数をとると
KCnCK
KCnKCC
Cn infininfin
minus+=
+minus=
minus)1(1)1(
)1(1
(19)
(19)式の両辺に Cをかえると
KCnCKC
CnC
infin
minus+=
minus))1(1(
)1( (20)
(20)式を変形すると次式が得られる
CKn
KKnCn
Cinfininfin
minus+=
minus11
)1( (21)
C と)-(1 Cn
Cのプロットは傾き
KnKinfin
minus1切片
Kninfin
1の直線関係を与えることを示している
これをグラフにプロットし最小二乗法に傾きおよび切片を求める
36
312 活性炭の比表面積の決定 酢酸分子の構造を以下に示す
Hc-Cb-Ca
Hd
Hb Oa
Ob-Ha
1219deg
Ca Oa
Ob
図 36 酢酸の構造
酢酸の 1分子の吸着面積srsquo [m2]を図 3-6に示すこのとき文献より
Caと Oaの結合距離 1321Å Caと Obの結合距離 1206Å OaCaObの角度 1219deg Cの原子半径 077Å Oの原子半径 062Å
したがって吸着面積 Slsquoは次のようになる
( ) ( ) 2088 10376109931036321 minusminusminus times=timestimestimestimes=s m2
ここで活性炭の比表面積 S[m2g]は次式で示される 10026 23 snS timestimestimes= infin
S活性炭の比表面積 [m2g] ninfin飽和吸着量 [molg] srsquo酢酸 1分子の吸着面積 [m2] 602times1023アボガドロ数 [個mol] したがって活性炭の比表面積 S[m2g]は
003350=infinn molg 2010376 minustimes=s m2 より
51281037610026003350 2023 =timestimestimestimes= minusS m2g
37
4 粘度密度測定 41 はじめに 大量生産を目的とした工業的化学プロセスはほとんど流れ系(流通系)であるそれらの系において操作対象となる各物質の粘度は装置を設計操作する場合きわめて重要
な物性値である 本実験では低分子溶液および高分子溶液の粘度測定を通じて液体の粘度について考察するさらに演習問題を通じて気体液体高分子溶液などの化学プロセスで対象となる物
質の輸送物性(粘度拡散係数)の重要性を認識されたい 42 低分子溶液の粘度 [目的] 種々の濃度のエタノール水溶液の粘度を測定しその溶液の粘度について考察する [概要] 25におけるエチルアルコール濃度 02040506080100 wt の水溶液について流下時間を測定しこの結果より相対粘度絶対粘度運動粘度を求めグラフにするま
た水の密度水-エチルアルコール溶液の密度についてはピクノメーターを用いて決
定する報告書には相対粘度絶対粘度運動粘度 vsエチルアルコール濃度の関係をそれぞれグラフにして提出する
[計算方法] 相対粘度絶対粘度運動粘度の定義は次のようになる
相対粘度 ww
w tdtd
ηη = (41)
η 混合溶液の粘度 [gcms] ηw水の粘度(8007times10-3 gcms) [gcms](25における粘度) d エチルアルコール水溶液の密度 [gcm3] dw水の密度(099704gcm3) [gcm3](25における密度) t エチルアルコール水溶液の流下時間 [s] tw水の流下時間 [s] 下付添字 W 水
絶対粘度 www td
tdη
η= (42)
運動粘度 ν=ηd [cm2s] (43)
38
[実験方法] 1) 粘度計を洗浄し粘度計内 に二連球で空気を送り込み
乾燥させる乾燥しにくい 場合はアセトンを滴下し た後再度二連球で空気 を送り込み乾燥させる 2)ピペットで一定体積(10mℓ) の純水を取り広い口 f から 粘度計に水を入れる 3)粘度計を恒温槽(25)に つけ約 10 分静置する 4)安全ピペッターを口 a に 取り付け液面が b 上部に 到達するまで吸い上げる 5)安全ピペッターを外すと 液面が降下しだす液面が bd 間を通過する時間をスト ップウォッチで測定する
6)純水での測定を 3 回繰り返す 7)純水を粘度計から取り除くその後粘度計内に二連球を用いて空気を送り込み乾燥させる 8)粘度計乾燥後複数の濃度に調整済みのエチルアルコール水溶液(10mℓ)を粘度計にいれ4)~6)の作業を繰り返し行う(3 回)なお濃度の異なるエチルアルコール水溶液を粘度計内に導入する場合には7)と同様に二連球を用いて粘度計内に空気を送り込み乾燥させる
表 4-1 エチルアルコール水溶液の濃度密度相対粘度の関係 エチルアルコール濃度
[wt] 密度 d[gcm3] 相対粘度
η ηw[-] 0
20 40 50 60 80
100
安全ピペッター接続
図 4-1 粘度計
液面の bd間の通過時
間を測定
f
39
43 密度測定 [目的] 本実験では水とエタノールの種々の組成の混合液体について密度を測定し分子間相互
作用について考察する [実験方法] 1)ピクノメーターの容積測定
図 4-2のピクノメーターの空の重量 wg を秤量する
ピクノメーターの蓋を取り外し
ピクノメーターを水で満たす
設定温度を 25として恒温槽 の電源を入れ恒温槽内の温 度が一定になるまで待つな お水温は恒温槽中の水銀温 度計から読む
恒温槽中に水を満たしたピク
ノメーターを入れる
約 10分間静置する
ピクノメーターに蓋をするこのときピクノメーターの容量
よりも余分の水は蓋の上部より排出される
ピクノメーターの外側を乾いた布で拭い秤量する(その重量を
wwg とする)
恒温槽の温度(25)における水の密度 dwgcm3(=099704gcm3)
より次式を用いてピクノメーターの容積を求める
w
w
dww
Vminus
= (44)
図 4-2 ピクノメーター
蓋
40
表 4-2 エチルアルコール水溶液の濃度と密度の測定結果(25) エチルアルコ
ール濃度[wt]
wrsquo[g] ww[g] V[cm3] w[g]
d[gcm3]
0 20 40 50 60 80
100
099704
エチルアルコール濃度[wt] 空のピクノメーターの重量 wrsquo[g] 水を入れたときのピクノメーターの重量 ww[g] ピクノメーターの体積 V[cm3] エタノール水溶液の入れたときのピクノメータの重さ w[g] エタノール水溶液の密度 d[gcm3]
容積 Vを求めたピクノメーターに混合溶液(調整済み)を入れてその重量 wgを秤量し次式で混合溶液の密度を求める
Vwwd minus
= (45)
エタノール濃度と密度 d の関係をグラフにプロットする
41
44 高分子溶液の粘度 [目的] 高分子溶液の粘度測定から分子量の粘度に与える影響について考察する [概要 ] オストワルド粘度計を用い種々の濃度のポリビニルアルコール(PVA ((-CH2CHOH-)n))水溶液の粘度を測定し粘度データよりポリビニルアルコールの分
子量を求める まず 05g100cc の濃度のポリビニルアルコール水溶液を調製する次にこれを原液
とし23 12 13 15の濃度の溶液を調製するこれらの溶液についてオストワルド粘度計を用いてそれぞれ流下時間を測定し相対粘度絶対粘度運動粘度を求め実験デ
ータより極限粘度[η]を求めるまた報告書には相対粘度絶対粘度運動粘度C
)ln( wηη
Cw
w-η
ηη vsポリビニルアルコール濃度の関係をそれぞれグラフにして提出する
[計算方法] エチルアルコール水溶液の粘度測定と同様の手法を用いて粘度の計算を行うなおポリビニルアルコール水溶液の密度はピクノメーターを用いて測定すること 表 4-3 ポリビニルアルコール水溶液の濃度密度相対粘度の関係 ポリビニルアルコール
濃度 [g100cc] 密度 d[gcm3] 相対粘度
η ηw[-] 05times(15) 05times(13) 05times(12) 05times(23)
05
42
[分子量の計算方法] 実験を行った結果以下のような粘度データを得られるとする実験データより極限粘度
を求めポリビニルアルコール(PVA)の分子量Mを決定せよ
PVA 水溶液濃度
C[g100cc]
相対粘度
ηηw[-]
絶対粘度
η[gcms]Cw
w-η
ηη
C)ln( wηη
05times(15) 1031 0008255 031 0305
05times(13) 039 0378
05times(12) 03 0289
05times(23) 0375 0353
05 0364 0334
ηw=8007times10-3 gcms 線状高分子の極限粘度[η]と分子量Mの関係は次式で与えられる [η]=KMα (46) ただしポリビニルアルコールの場合K=666times10-4α=064であるなお極限粘度[η]は次式で定義される
CC w
w
0
-][ limη
ηηη
rarr
= (47)
または
CC
)ln(][ w
0lim
ηηη
rarr
= (48)
よって濃度 CとCw
w-η
ηηまたは濃度 Cと
C)ln( wηη の関係をグラフ化し最小二乗法によ
り切片の値を求めると極限粘度[η]が決定される
Cw
w-η
ηηと C の関係より最小二乗法を用いて切片の値を決定すると(図 43 参照)切片=
03242傾き=00874となるよって極限粘度は以下のようになる[η]=03242同様
にC
)ln( wηη とcの関係より最小二乗法を用いて切片の値を決定する
(図 44参照)と切片=03249傾き=00256となり極限粘度は以下のようになる[η]=03249
Cw
w-η
ηηと Cの関係より決定した[η]=03242を用いてポリビニルアルコール(PVA)の
分子量 Mを計算する(46)式より以下のように PVAの分子量 Mを計算することができるM=([η]K)1α
=(03242(666times10-4))(1064)
=15811
43
y = 00874x + 03242
0
02
04
06
08
1
0 01 02 03 04 05 06 07
c[g100cc]
(η-ηw)(ηwc)
cw
w
η
ηηminus
極限粘度[η]
図 43 298Kにおける PVA濃度 CとCw
w-η
ηηの関係
y = 00256x + 03249
0
02
04
06
08
1
0 01 02 03 04 05 06 07
c[g100cc]
(ln(ηη
w))c
c)ln( wηη
極限粘度[η]
図 44 298Kにおける PVA濃度 CとC
)ln( wηη の関係
44
5 植物からの DNAの抽出 51 はじめに 分子レベルでの遺伝子の構造解明や遺伝子の発現に関する研究は近年急速に発展している
これら生命現象のしくみを分子レベルで解明しようという分子生物学の分野ではさまざま
な遺伝子の解析や応用方法が開発され我々の生活に身近なものになりつつある 本実験では初歩的な分子生物学に関する実験として植物(タマネギ)からの DNA の
抽出を行い抽出した遺伝子の電気泳動法による分離実験を試みる 52 試薬および器具 試薬 タマネギ(細胞中から遺伝子の抽出を行う) 台所用洗剤(洗剤中に含まれる界面活性剤には植物の細胞膜およびタンパク質を破壊す
る働きがある) 塩化ナトリウム(DNAは塩化ナトリウム水溶液に溶解し易い性質がある) エタノール(予め冷やしておくDNAはエタノールにほとんど溶解しない) 制限酵素(DNAを一定の部位で切断する働きを働きがある) TE緩衝液(pH緩衝剤が入った溶液) 器具 ビーカーミキサーフィルターメスシリンダー駒込ピペットガラス棒 マイクロピペット電気泳動装置ポラロイドカメラ 53 実験方法 1)タマネギは 1回の実験で半個のうち内側の半分程度を使用するタマネギ水 30ml台所用洗剤数滴をミキサー用ガラス容器に入れ40~60秒程度(固体状のタマネギがなくなる頃が目安)ミキサーにて混合する
2) 1)で作成した混合溶液をビーカーに移し約5g程度の塩化ナトリウムを加えガラス棒で静かに攪拌する粘性の大きな溶液が得られる
3) 2)で作成した溶液をフィルターを用いて濾過し濾液を回収する 4) 濾液の約2倍程度の量の冷エタノールをビーカーの壁伝いに静かに注ぐ 5) ビーカーを揺するとエタノール層に白くふわふわしたものが浮いてくるこれが DNAであるガラス棒で DNAを巻き取りシャーレ上にて DNAを回収する顕微鏡を用いて回収した DNAの状態を観察する
6)マイクロチューブ(容量 15ml)中に用意した 70エタノールを 8 分目程度まで注ぐ5)にて回収された DNAをマイクロピペットを用いて70エタノールの入ったマイクロチューブ中に移す軽く混ぜることによりDNA から不要な物質を洗い流す遠心分離してDNA をマイクロチューブの底に沈めた後溶液を捨てて DNA を乾かす乾いたらTE緩衝溶液を 1ml加えて放置するDNAの溶液が得られる
54 電気泳動装置による DNAの観察
本実験は職員と一緒に行うこと 実験を行う人はビニール手袋をすること 1) 抽出した DNAを電気泳動装置で観察するマイクロピペットを用いて以下のように調製した DNAの混合溶液を調製する(いずれの溶液も調製済)
45
2) マイクロピペットを用いてアガロースゲルの試料を流し込む穴(ウェル)に1)にて調製した溶液 Aおよび Bを注ぎ込む注入量は20μℓとする電気泳動装置のスイッチを入れて100Vの電流を流しアガロースゲル内にて DNAを電気泳動させる
3) 試料に予め加えられておいた青色の色素が 7 分目程度まで進んだら電気泳動を中止する(約 30分程度)
4) (ここでの作業は職員が行う) アガロースゲルを取り出し染色液に浸す染色後ゲルを取り出しポラロイドカメラで
DNAの泳動状態を撮影する
+ -
アガロースゲル
試料を流し込む穴(ウェル)
図 51 電気泳動装置
6 5 4 3 2 1
図 52 DNAの電気泳動写真の一例
55 電気泳動装置の原理 電気泳動装置の原理図を以下に示すアガロースゲル(寒天から不純物を除いたもの)中
に DNAをセットし電流を流すとDNAは電流の向きとは逆にマイナスからプラス方向
調製済 溶液 A(制限酵素なし) 水 11μℓ 10timesH Buffer 2microℓ 植物 DNA 5μℓ
調製済 溶液 B(制限酵素 Eco RI入り) 水 11μℓ 10timesH Buffer 2microℓ 植物 DNA 5μℓ 制限酵素 2μℓ
1 DNA(タマネギ)+制限酵素 2 DNA(タマネギ)+制限酵素 3 DNA(タマネギ) 4 λ-DNA(大腸菌)+制限酵素 5 λ-DNA(大腸菌) 6 サイズマーカー
500bp
46
に動く(このことを電気泳動という)これはDNA のリン酸部分が負に帯電しているためでありまたDNAはその長さにより泳動距離が異なる(短い遺伝子ほど長く泳動する)電気泳動ではこの性質を利用してDNAを大きさごとに分離することができる
塩基対数によってDNAを分離
EtBr (蛍光試薬)DNAの二本鎖内に入り込む
発光
UVλ=302nm
励起
分離後のアガロースゲルをエチジウムブロマイド(EtBr)溶液に浸す
DNAを含んだ溶液
アガロースゲル
リン酸部分が負に帯電
塩基 (ATGC)-
+
カメラで撮影
電圧
DNA構成成分(dNTPs)
バンドが明る
DNA量が
バンド(DNAの存在)
図 53 電気泳動の原理
56 制限酵素とは DNA は4 種類のヌクレオチド(GATC)が不規則につながってできている制限酵素はDNAの特定のヌクレオチドが並んでいる部分を切断する制限酵素には様々な種類がありEco RI(エコアールワン)と呼ばれる酵素は「GAATTC」といった並びの部分だけを切断することができる
GAATTC
CTTAAG
制限酵素
Eco RI
AAGCTT
TTCGAA
制限酵素
Hin dIII
図 54 制限酵素による DNAの切断
レポートについて 1 実験方法および実験結果の整理方法については指針書を参考にすること 2 実験結果については電気泳動の結果について考察すること(制限酵素の影響などにつ
いてまとめてください)
47
6 染色実験
61 はじめに
現在私達の身の周りでは様々な染料が使われている例えばT シャツやジーンズな
どの衣服は橙黄赤青など様々な色に染められている他にも私達が気付かないと
ころで多くの染色された製品を使用しているそこで本実験では高校の化学で学んだ
アゾ染料を合成してみるアゾ染料はアニリンを原料として作られているアニリンはベ
ンゼン環にアミノ基(-NH2)がついたものであるアニリンは無色の液体で水に溶けにく
くアンモニアより弱い塩基性を示すまたさらし粉(CaClO(ClO)H2O)水溶液を加えると
赤紫色を呈するこの呈色反応はアニリン特有のものであるので検出反応に用いられる
このアニリンを出発物質としてアゾ染料を合成してみる
62 試薬および使用器具
【試薬】 ①05moll 水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液
②2-ナフトール ③フェノール ④6moll 塩酸
⑤亜硝酸ナトリウム ⑥アニリン ⑦氷
【器具類】 ①電子天秤 ②50mℓビーカー ③100mℓビーカー
④ガラス棒 ⑤布(ガーゼなど) ⑥ピンセット
⑦ポリ手袋 ⑧ドライヤー ⑨シャーレ
10駒込ピペット(10ml ガラス製)
11駒込ピペット(1ml プラスチック製)
63 実験方法
1) 50mℓビーカーの中に 05molℓ水酸化ナトリウム水溶液 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回
NaOH 水溶液を分取するほぼ 20 mℓ分取できれば可)と 2-ナフトールを約 01g 入れ
よくかき混ぜる調製した溶液の中に布をつけその布はガラス棒でしぼってから(布
をガラス棒ですくいあげればよい)シャーレに広げる温度の異なる条件下(常温およ
び低温)で染料の合成実験を行うため布は最低 2枚調製した溶液と接触させそれ
ぞれ別々のシャーレ(低温用および常温用)に広げる
2) 新しいビーカーに水を約 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回分取)と 6molℓ塩酸約 4mℓ(10m
ℓ駒込ピペットで目分量で可)さらにアニリン約 1mℓ(プラスチック製 1 mℓ駒込ピペッ
ト)を入れてよくかき混ぜる染料の合成を常温および低温下で行うためこの溶液を
2つ調整する
低温下で反応させる溶液は恒温槽で 10~15 分ほどよく冷やした後亜硝酸ナトリウ
ム 05g を加えてよくかき混ぜる
常温下で反応させる溶液には冷却作業を行わずに亜硝酸ナトリウム 05g を加えて
よくかき混ぜる
3) 2)でつくった水溶液をシャーレに広げた布に注ぎ生成される染料を布によく染み
込ませ5分程放置する
4) 色の付いた布を取り出してポリ手袋をした手できれいに水洗いをし乾燥させる
48
5) 色差計を用いて乾燥した布の Lab(L明度aおよび b色度)を測定する
2)で作った溶液は5以下では無色の溶液ですが5以上になると淡い黄色になりま
す
【解説】
アゾ染料はアゾ基(-N=N-)を持っていてこのアゾ基によって鮮やかな橙色を呈色し
ます今回合成したアゾ染料は図の 1-フェニルアゾ-2-ナフトールです意外かもしれ
ませんが指示薬として使われているフェノールフタレインもアゾ化合物ですフェノール
フタレインは pH の変化によって色が出てきす染料の中でも最初は無色のものもありますが
温度を変化させたり酸性やアルカリ性にすると色が出てきます
ベンゼン ニトロベンゼン
N2Cl
ニトロ化 濃硫酸(濃硝酸)
還元反応 濃塩酸
(Sn又は Fe)
アニリン塩酸塩
遊離反応 NaOH
アニリン塩酸塩に強塩基を反応させる
と弱塩基であるアニリンが遊離する
氷冷+亜硝酸ナトリウム アニリン
塩酸
ジアゾ化
塩化ベンゼンジアゾニウム
塩化ベンゼンジアゾニウム
は熱によって窒素とフェノー
ルに分解される
カップリング
C10H7ONa (ナトリウム 2-ナフトキシド)
O
N =
1-フェニルアゾ 2-ナフトール
NH3Cl NH2
49
7 ガスクロマトグラフ質量分析計による茶葉中のカフェインの分析 71 はじめに ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)は極めて低い濃度の化学物質の同定や未知物質の構造決定に極めて強力な分析機器の一つであるGCMSを用いるとサンプルの中に含まれているある成分の分子構造(カフェインの分子構造を図 71に示す)やその量が分かりますもちろん分析機器ですので測定できる物質対象となる系や測定条件にはある
程度の制約があります混合物質を分離するガスクロマトグラフ(Gas ChromatographGC)と分離された成分(物質)を分析(構造決定と濃度測定)する質量分析計(Mass SpectrometerMS)を組み合わせた装置であるこの装置は有機化学生化学環境化学などの多くの分野で非常に多用されている例えば極めて低い濃度でも生体へ強い影響が懸念されるダイ
オキシン類などの土壌や河川の水中での含有率の決定や食品や医薬品中の微量成分の決定
にも利用されている 一方日本人に長い間親しまれてきた緑茶が近年産業界や医学
界で注目されている茶葉にはカフェイン(分子構造図 71)カテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドなどの有用成分が多く含まれておりその効能が注目されている 本実験では茶葉中に含まれるカフェインに対してGCMSを用いて分析する茶葉中には種々の物質が含まれておりGCMS分析を容易にするため前処理として超臨界二酸化炭素抽出(4015MPa程度の高圧力の二酸化炭素を溶剤として利用)により茶葉からカフェインの抽出を行いそのサンプルを GCMSにて分析する
図 71 カフェインの分子構造 図 72 物質の分析 個々の物質や装置についてはインターネットにより下記のWebサイトのフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』などにより調べるとよいカフェイン(caffeine)はアルカロイドの一種プリン環を持つプリンアルカロイドの一種でコーヒー類に含まれることか
らこの名がある化学名は137-トリメチルキサンチン(C8H10N4O2) コーヒーコーラ緑茶紅茶ガラナココアなどに含まれる(量は緑茶が一番多い)結晶は一水和物(C8H10N4O2bullH2O)もしくは無水物(無水カフェインC8H10N4O2)として得られ
る白色の針状または六角柱状結晶で匂いはなく味は苦い融点は 238昇華性がある出典フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』httpwwwwikipediaorg 装置「GCMS」httpwwwanshimadzucojpproductsgcmsqp2010htm (島津) 「超臨界抽出装置」httpwwwkagakucomjasco39-49html (日本分光)
50
レポート課題 1茶葉中に含まれるカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドの中から3つの物質を選びその物質について調べた結果を A4 レポート用紙2枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
2GCMS についてA4 レポート用紙1枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
3与えられたサンプルは茶葉1gから抽出されたのである実験結果よりもとの茶葉
1g中に含まれるカフェインの量を推算し計算式とあわせて示すこと 72 原理および装置 実験で使用する島津製の GCMS装置の全体図を図 73に原理の概略を図 74に示す
1
23
4
5
67 8
9
10
キャリアーガス
試料物質
1ボンベ(He)2圧力計3マイクロシリンジ4サンプラー5試料導入部6分離カラム
7セパレーター8イオン化室9磁石10電子増倍管11記録計
11
図 74 ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)の概略図
サンプルフォルダー
51
GCMS 装置は分離部である図中の 1~6 のガスクロマトグラフ(GC)と7~11 の検出部である質量分析計(MS)から構成される 3のマイクロシリンジを用いて試料を GCMSに導入する導入された試料は5試料導入部でガス化され6分離カラムに導入される分離カラムには吸着剤が充填されおり混合物の試料を導入した場合各物質と吸着剤との
親和性の違いにより各物質の分離カラムから排出されるタイミングは異なる分離カラム
を排出された試料は8イオン化室でイオン化され10電子倍増管にて検出される アセトンに溶解したカフェインの GCMSによる分析結果の一例を以下に示す図 75にク
ロマトグラム図 76にカフェインのピークのマススペクトルを示す
図 75 GCMSにより得られたクロマトグラム
横軸がリテンションタイムで縦軸がピーク強度を表す
図 76 カフェインのマススペクトルとカフェイン(分子量MW=194)の構造
(図 75中のリテンションタイム 126min付近のピークに起因するマススペクトル) 茶葉中にはカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイド以外にも繊維であるセルロースなど多くの物質が含まれているため茶葉そのものを
そのままサンプルとしてGCMSで分析することは困難であるセルロースなどの分子量の大きな物質はカラムに詰まってしまい分析できないそこで今回は超臨界二酸化炭素
による抽出により主にカフェインを他の物質と分離抽出した通常よく利用されるアセ
トン抽出(アセトンに茶葉を浸し特定の成分を抽出する)ではカフェイン以外にも多く
の物質が抽出されるため図 75 のような単独のピークを得ることは難しく複数のピークがクロマトグラムに見られるこのサンプル(この場合茶葉からの抽出物)にはカフェ
イン以外の不純物は少なかったがガスクロマトグラフの分離カラムによりさらにそれ
らの混合物が精度よく分離されるクロマトグラムのピークはそれらサンプル中に含まれ
ていた個々の物質を表しているクロマトグラムのピークを選択することで分子構造解析
したい物質を選んだことになる選択したクロマトグラムのピークの表している物質(ここ
ではカフェイン)に対応するマススペクトルが図 76 に表示されているマススペクトル
52
で横軸がその成分(ここではカフェイン)分子を構成している原子の原子量で縦軸がそ
の量を表しているのでマススペクトルから分子構造を解析するためにコンピュータ内
に蓄えられた物質ごとのマススペクトルデータと今回測定したマススペクトル(分子内に含
まれている各原子の数)を比較することで測定したサンプル中のクロマトピークを選択し
た分子がどのような原子をどれだけ含んだ分子であったかがわかりそれからその物質
がどのような分子構造の物質である可能性が高いかをコンピュータが検索し結果を示す 73 実験サンプルの設置と GCMS装置の操作方法 実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS装置のサンプルフォルダ
ー(図 73)にセットするこのサンプルは茶葉 1gを 50ccの高圧セルにて超臨界二酸化炭素を利用して4015MPa2時間接触の条件で抽出した固体を10gのアセトンに溶かしたものである またコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に装置および装置制
御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 本実験で使用する GCMS の操作は全てコンピュータのモニター上で GCMS の解析プログラムソフトを使用することで行うコンピュータの操作方法を以下に示す なおコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS 装置のサンプルフォルダー(図 73)にセットするまた装置および装置制御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 1)パソコンのデスクトップ上のアイコン「GCMS 分析」をクリックすると以下のようにGCMS制御プログラムを起動するその後「OK」ボタンをクリックする
図 77 GCMD分析用ソフトウェア「GCMS分析」の起動
まず「GC-MS分析」をクリック
「OK」ボタンをクリック
53
2)制御プログラムが起動されパソコンと GCMSの接続が開始される
図 78 「GCMS分析」の接続確認画面 3)GCMSとパソコンの接続が完了すると以下のような画面が表示される
図 79 「GCMS分析」操作画面
4)マススペクトルによる分子構造の解析 サンプル(この場合茶葉からの抽出物)には多くの物質が混じり合っていたがガス
クロマトグラフの分離カラムによりそれらの混合物が精度よく分離されるクロマトグラ
ムのピークはそれらサンプル中に含まれていた個々の物質を表しているクロマトグラム
のピークを選択することで分子構造解析したい物質を選んだことになる選択したクロマ
トグラムのピークの表している物質(ここではカフェイン)に対応するマススペクトルを選
択するマススペクトルは横軸が原子量で縦軸がその量を表しているのでマススペク
トルから分子構造を解析するために「定性処理」を行う シミラリティ検索結果が表示され分析により得られたスペクトルと類似のスペクトルを有
する物質の一覧が表示される上部に表示される物質ほどスペクトルが一致していること
を示す
接続状況が表示される
「トップへ」
をクリック
54
図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果
図 711 表示スペクトルのシミラリティ検索結果 10)図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果の印刷 「レポート(R)」をクリックし「検索結果(R)」をクリックすると検索結果が印刷される
GC-MS 分析で得られたマスス
ペクトル
データベース中
のマススペクト
ル
55
参考資料 生理活性物質の精製 カフェインの利尿作用のように生物活動に影響を与える物質を生理活性物質といいます
天然物には生理活性物質を多く含むものがあります一般に天然物は多くの成分を含ん
でおり特定の生理活性物質を分離抽出するには種々の分離技術が必要ですまた生
理活性物質には60以上の温度でその生理活性を失う(失活)ものや溶剤として広く用いられているクロロホルムなどの有機溶剤中で失活するものが多いそこでこれら生理活性
物質の分離精製技術の開発が望まれており30~60程度のマイルドな温度条件で操作できる二酸化炭素を機能性溶媒として利用する超臨界抽出も有効な分離技術として注目されて
いる超臨界二酸化炭素は気体と液体の中間の性質を持ち物質の分離に役立っています 臨界点付近の高密度気体は超臨界ガスまたは超臨界流体と呼ばれ臨界圧力前後でそ
の溶解能力が著しく変化することから工業的にも種々の分野で利用されています一例と
して超臨界二酸化炭素(SC-CO2)によるコーヒー豆からのカフェインの抽出プロセス(a)
ならびに超臨界二酸化炭素に対するカフェインの溶解度(b)を図に示します図(c)に示す
ように固体のカフェインがガスである超臨界二酸化炭素に溶解します
このように超臨界二酸化炭素を用いた技術はコーヒー豆からのカフェインの抽出プロ
ポリスからの生理活性物質の抽出に利用されています
図 超臨界二酸化炭素抽出を用いたコーヒー豆からのカフェインの抽出
56
付表 最小二乗法について 直線で近似する場合 f (x) = a0 + a1x (A1-1) 式(A1-1)のように近似させるとする測定値 yiとの残差を eiとすると式(A1-2)のようになる ei = yi - f (xi) = yi - ( a0 + a1xi ) (A1-2) ここで式(A1-2)の両辺を二乗してその i に関する総和をとりその値を S とすると次式となる
sumsum==
+minus==n
iii
n
ii xaayeS
1
210
1
2 )( (A1-3)
S を最小化するような a0a1を求める式(A1-3)を a0a1について偏微分すると次式とな
る
sum=
+minuspartpart
=partpart n
iii xaay
aaS
1
210
00)( sum
=
+minusminus=n
iii xaay
110 )(2 (A1-4)
同様にa1について編微分すると次式のようになる
sum=
+minusminus=partpart n
iiii xxaay
aS
110
1])([2 (A1-5)
Sが最小となる時は次式が同時に満たされる時である
00=
partpartaS
01=
partpartaS
(A1-6)
よって誤差が最小となる a0a1を求めるためには式(A1-6)を連立して解けばよい
sumsumsum===
+=n
ii
n
i
n
ii xaay
111
10 1 (A1-7)
sumsumsum===
+=n
ii
n
ii
n
iii xaxaxy
1
2
11
10 (A1-8)
式(A1-7)と式(A1-8)を a0a1を変数とみなし連立して解くと次式を得る
n組のデータ(xiyi)(i=12hellipn)に対して回帰直線 y= a0 + a1x を最小二乗法で求めて出力しデータ番号 iデータ yi直線で推定した値 )( ii bxay += および残差
iii yy minus=ε を出力するようなプログラムをつくりたい基礎式を導出せよ (ヒント残差の二乗の和が最小になるように係数 a0a1)を定めるのが最小二乗法
である)
57
sumsum
sumsumsumsum
==
====
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
n
ii
n
ii
xxn
xxyyxa
1
2
1
2
1111
2
0
)(
))(())(( (A1-9)
sumsum
sumsumsum
==
===
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
xxn
yxxyna
1
2
1
2
1111
)(
))(()( (A1-10)
よって式(A1-9)(A1-10)を用いれば最も誤差を小さくするような直線 y = a0 + a1x が求められる
y=a1x+a0 にて近似
誤差 ei
x
y
誤差が最小になる関数(直線 y=a1x+a0の場合)
図1 最小二乗による近似
誤差の和Sが最小
S
a0
a1
直線 y=a1x+a0 の近似
誤差の全体の和はS=Σei=Σyi-(a1xi+a0)
Sは変曲点にて最小値を示すすなわち(partSparta0)=0 (partSparta1)=0
図2 a0a1とSの関係
6
1)緒言(チョゲン) 3)実験方法 4)実験結果および考察 5)結言 6)使用記号(式や変数を使用した場合に必要) 7)引用文献(参考にした文献があれば)
レポートの内容の各項目に関して以下にその記述上の注意点を説明します 1)緒言 実験の目的意義を示す何をどうしようとするのかを示すものでその実験の直接の目
的を具体的に書く 2)実験方法 実験の方法は実際に行った実験を第三者にも再現できるように書くべきです自分達が
行った操作について表や図などを交えて明確に示しておくとよいでしょう 実験方法の文章は過去形で書くことが一般的です
3)実験結果および考察 結果(数値図表)と考察はレポートの中で最も重要な部分です指針書を参考にして
各自が工夫して記述して下さい 結果では得られた事実に忠実に書かねばなりません
また関連のあるものをまとめて図や表に示すとわかりやすいですただし結果の図や
表についての説明の文章も本文に必要です 結果おより考察の文章は現在形で書くことが一般的です また単位や有効数字に誤りがあると誤解を招く恐れがあります図表単位および有
効数字に関しては指針書を再読すること考察では得られた実権データを理論的な計算
などと比較して現象を検討する習慣も身につけましょう独自のものを書くようにこころが
けましょう 4)結言 結果および考察でえられた事柄をまとめて示します 主な記述上の注意事項 1 表については標題の位置表の上に書く注の位置表の下に書く 2 図については標題の位置図の下に書く注の位置図の下に書く 図を描く場合にはA4の各種方眼紙1枚に1つの図を描き本文を参照しなくても
図の内容がわかるように必要な条件などを全て記入することが望ましい図および表
は最後にまとめて示すのではなく関係の深い文の直後の頁に挿入する 3 その他記述上の注意は指針書や配布された資料を参考にされたいまたレポー
トにつける通しページ番号なども忘れぬよう 4 次元単位の付記に留意する「SI」はこれから必然的に使用される単位系であ
りその使用については留意してもらいたい 5 単位の記入においては変数の後には[ ]を付け数の後には[ ]を付けない例え
ばCp [Jmol-1K-1] Cp = 198 Jmol-1K-1 6 引用文献使用参考の記入については「化学工学論文集」「化学工学会誌」を参照
されたい 7 「化学工学論文集」「化学工学会誌」などは工学部の各図書館にあるので有効に活
用してもらいたい 8 レポートに記載する図表などは「化学工学論文集」「化学工学会誌」の表現に準
じた記載方法を用いること 9 図についてはExcelなどの表計算ソフトで作成したものでもよい
7
実験ノートは市販の大学ノートを使用して下さい各実験内容についてページを変
えて後で見て分かりやすいように書いて下さい上から5行程度に実験条件その他
必要事項日付などを記入する右端5cm程度の幅を備考欄とし実験中に気付いたこ
とその他必要事項を記入する使用した溶液の濃度ファクターなどが記録されていない場合がよくありますレポート作成時に困りますので忘れずに各自が実験ノートに記入
しましょう レポート表紙 レポートの表紙(市販の A4 のレポート用紙でよい)には以下のような表紙をつけること各ページにページナンバーを記入すること提出時には上端をホッチキスで閉じるこ
と記入はワープロ鉛筆でもよい
工業物理化学実験レポート(三島担当分)
実験項目 実 験 名 提出者 福岡大学工学部化学システム工学科 A組 5班 TK0315001 七隈太郎 共同実験者 福大次郎 干隈三郎 城南花子 早良五郎 実験日 平成 年 月 日 ~ 月 日 実験場所 化学工学共同実験室 B(6号館 1階 617室) 条件 気温 気圧 湿度 天候 提出日 平成 年 月 日
8
3 吸着 31 はじめに 活性炭 多孔質(多くの小さい穴がある)の吸着剤 酢酸 活性炭に吸着されるモデル分子
吸着実験データの整理によく使用する記号 n 溶質の吸着量 C 溶液中の溶質の濃度 単位は [ ] [ ] 考えてみよう 1) 右図のような低い濃度の酢酸水溶液の入ったビーカーに活性炭 をを加えた場合濃度はどうなるでしょうか
2)吸着された酢酸の物質量(n[mol])を測定するにはどのような 実験をすればよいでしょうか 図 1 活性炭
32 吸着操作 工場排液中の微量は有機物などを活性炭などの吸着剤で除去する工業操作を吸着操作と言
います蒸留抽出乾燥撹拌などの単位操作と同様に化学工業プロセスの重要な分離技
術です吸着操作は他の分離操作に比べてきわめて低濃度の範囲まで物質分離ができる特
徴がありますそのため近年問題となっている大気および水質の汚染汚濁に対する有力
な対策技術として注目されています 本実験では活性炭に対する酢酸の吸着挙動を調べることにより活性炭の吸着特性(吸
着平衡定数)を知り吸着操作の理論的な取り扱いについて学習しましょう 吸着量を求めてみましょうこの例では濃度換算が容易になるように溶液濃度をℓ でなく m3 単位とした) 低濃度のフェノールを含む排水の活性炭吸着実験を行って図 1のような吸着等温線(一
定温度で測定した溶液濃度と吸着量の関係)を得たいまフェノール濃度が 40mol m3の
排水 40m3に 60kgの新しい活性炭を投入して平衡に達したとき水中のフェノール濃度(mol m3)および 1gの活性炭のフェノール吸着量(molg)を求めよ
活性炭 1gに吸着するフェノールの物質量をn[molg]活性炭の量を W[g]とすると
フェノール排水 V[m3] 吸着前のフェノール濃度 C0[mol m3] フェノール分子
+
活性炭に吸着した溶質(フェノール)の量 nW (1)
溶液から取り除かれた溶質の量 (C0-C)V (2)
物質収支式より
nW=(C0-C)V (3) よって
VW
CCn
minus= 0 = )( 0CC
WV
minusminus (4)
9
図3 吸着等温度線と操作線
この操作からわかるように吸着データ(この実験で求める)が存在すれば
吸着等温線と操作線の交点から吸着処理しようとする溶液の体積 V と初濃度 C0
に対して使用する活性炭の質量 W により活性炭に吸着する溶質の量 n および吸着後の溶液の溶質濃度 C が計算で予測できますこの吸着データから吸着装置を設計することができます実際に吸着装置(吸着塔)の設計の様子を次ペー
ジの例題1に示しておきます興味のある人は5 段に積み重ねた吸着層を 04 mol ℓの濃度の廃液が通過すると濃度が 002 mol ℓ 以下になることを確認し吸着塔の設計方法を考えてみて下さい なお先ほど求めた式 (4)は皆さんが行う吸着実験データ(吸着等温線を作るもととなる吸着後の溶質濃度 C と各濃度に対する吸着量 n の関係)を求める場合にも使用します 問題1 質量 W=1gの活性炭を用いて体積 V=100cm3の酢酸溶液の吸着実験を行った
ところ活性炭と接触する前の酢酸溶液の初濃度はC0=0512moldm3であった
(dm3デッシメータ 3 乗= ℓリットル)吸着後の溶液を活性炭と分離してその酢酸溶液の濃度を 01N(01 規定の)水酸化ナトリウム水溶液で滴定して求めたところC=0478moldm3 であった1gの活性炭に吸着された酢酸の物質量n [mol]を式 (4)より求めよ
活性炭 1kg当たりに吸着された
フェノールの量 n[molg]
吸着操作後
の溶液のフ
ェノール濃
度 C
吸着等温線の一例 Langmuir式
KCKCnn
+=
infin
1
操作線
)( 0CCWVn minusminus=
傾き-23
初濃度 C0
[molm3]
吸着後の濃度 Cと吸着量 n
初濃度C0と傾き-VWを用いて操作線を引き
吸着等温線との交点を
求める
ここで(3)式の傾きWV
minus で図 1 における横軸
を通過する直線式(操作線)であるすなわち
)(=- 4032
)40(6040)()( 0
minus
minusminus=minusminus=
C
CCCWVgmoln
10
解答(計算式) )( 0CCWVn minusminus=
minus= ( ) (答) [mol]
例題 1 吸着塔の設計 濃度 C0[molm3]の不純物を含む工業排水(流量 V[m3hr])から不純物を除去するために下図
に示すような各 i段に活性炭を wi[g]含む5段の吸着塔を設計しましょう 各 i 段の出口と入口でのそれぞれの物質濃度 CiCi-1[molm3]とその段での活性炭単位質
量当たりの吸着量 ni[molg]との間に物質収支がなりたち他の部分への吸着は無視できるとするまた溶液中の平衡濃度Ci[molm3]と吸着量ni[molg]の関係はラングミアー(Langmuir)の等温吸着式で与えられるものとするラングミアーの等温吸着式における吸着平衡定数 K
と飽和吸着量 infinn としてはK=8611 infinn =0003262の値を用いる誤差を判定する定数 EPS
としてはEPS=000001を用いよ 図4 吸着塔の段数計算 図5 吸着塔 33 実験目的 一定の温度において活性炭による希酢酸の等温平衡吸着量 nを一定の温度において測定
しそれら測定値の Freundlich 式および Langmuir 式への適合性を比較検討するまたLangmuir式により活性炭の比表面積を求める 34 実験方法 レポートでの実験方法の記述では次のように説明文を必ず付けて下さい また行った方法については過去形「~した」のように記述して下さい 例) 活性炭による酢酸水溶液からの酢酸の吸着実験に次の器具および試薬を使用した [器具] 1000mlメスフラスコ(1)500mlメスシリンダ(1)500ml試薬瓶(5)共栓三
実験レポートを書く場合この「実験目的」を利
用して「緒言」を作成して下さい
実験方法は過去形にて記述
11
角フラスコ(5)2mlホ-ルピペット(2)5mlホ-ルピペット(2)10mlホ-ルピペット(1)100ml ホ-ルピペット(1)50ml ビュレット(1)電子天秤直示天秤(注( )内の数値は個数を表す) [試薬] N10N100-水酸化ナトリウム(NaOH)N10-塩酸(HCl)フェノ-ルフタレイン酢酸活性炭 1)2)および 7)については予め調整済み8)は2日目に実験する 1)酢酸 28mℓ をメスシリンダにて採集しこれを 1000mℓ メスフラスコに入れて蒸留水を加えて 1000mℓとしN2-酢酸を調整した(調整済み)
2)N2-酢酸より順次溶液 500mℓをメスシリンダに取り1000mℓメスフラスコを用いて
N4N8N16N32酢酸溶液を調整し500mℓ試薬瓶保持した 3)共栓三角フラスコ(100mℓ)の空重量を直示天秤にて正確に測定したこれに電子天秤にて測定した活性炭試料約 1gを入れて再び直示天秤にてその重量を正確に測り前後の差から投入した活性炭量を知る
4)活性炭を入れた各々の三角フラスコに各濃度の酢酸溶液 100mℓを正確にホ-ルピペットを用いて入れた(このとき気泡が混入しないように注意した)
5)上記に準備した三角フラスコに栓をしてこれらを所定の温度に設定した恒温槽に浸し
た浸した三角フラスコは約 20分間隔で気泡が混入しないように注意して振り混ぜるこの操作を約 2時間行った
6)次に滴定に用いて約 N10-N100-水酸化ナトリウム溶液 1000mℓを調整し濃度既知の塩酸溶液を用いてその正確な濃度を決定しておく(調整済み)
7)調整された酢酸溶液の各々を6)において標定した N10-水酸化ナトリウム水溶液にフェノ-ルフタレインを指示薬として滴定し各酢酸溶液の濃度を求めた(標定に要する
酢酸量は N2-と N4-の場合は 2mℓN8-と N16-の場合は 5mℓN32では 5mℓをホ-ルピペットで採集するただしN32についての滴定はN100水酸化ナトリウムで滴定した(各濃度について 3回ずつ滴定する)
注)ビュレットは各班に 2 本ある濃度の高い N2 酢酸から測定するので両方のビュレットにはN10-水酸化ナトリウム水溶液を入れて開始する
最重要注意事項
滴定を行う場合安全確保のため必ず安全メガネを着用すること 8)次に各試料溶液を一つずつ手早くろ過しろ過液を N10-水酸化ナトリウムで滴定して平衡濃度を決定した(標定に要する酢酸量は N2-と N4-の場合は 2mℓN8-とN16-の場合は 5mℓN32-では 5mℓをホ-ルピペットで採集したただしN32 ーの場合は N100 ー水酸化ナトリウムで滴定した)
12
1) 酢酸溶液の濃度の測定(1日目レポートにこの図は不要) 酢酸 28mℓをメスシリンダにて採集しこれを 1000mℓメスフラスコに入れて蒸留水を加えて 1000mℓとしN2-酢酸を調整する
N2-酢酸より順次溶液500mℓをメスシリンダに取り1000mℓメスフラスコを用いて N4-N8-N16-N32-酢酸溶液を調整し500mℓ試薬瓶に保持する
滴定用のビュレットを N10-N100-水酸化 ナトリウム溶液で共洗いする(3回)
ビーカーに酢酸溶液を少量入れて共洗いを行う (3回)試薬瓶からビーカーに酢酸溶液を滴定に 必要な量だけ取り出す
ホールピペットをビーカーの酢酸溶液を 使用して共洗いを行う(3回)
滴定用の三角フラスコに酢酸溶液を分取する
滴定(滴定は同じ濃度の酢酸溶液を 3回 以上滴定して平均する)
酢酸溶液の濃度計算
滴定による酢酸濃度の決定
1000
1000vfNvx timestimes=times (33)
x酢酸の仕込み液濃度 [molℓ] v酢酸の仕込み液の分取量 [mℓ] NNaOHの規定度 [N] fNaOHのファクター [-] vrsquoNaOHの滴定量 [mℓ] 注)酢酸は 1価の酸なので 1molℓ=1N(1規定)
13
式(33)の使用例 酢酸の仕込み液の分取量 v =2 mℓ NaOHの規定度 N = 01 N NaOHのファクター f = 0998 NaOHの滴定量 vrsquo = 985 mℓ である場合 式(33)を利用して酢酸の仕込み液濃度 x[molℓ]を求める
1000
1000vfNvx timestimes=times
vvfNx
timestimes=
49202859998010 =timestimes= molℓ (この xが濃度 C または C0 です)
2)酢酸溶液と活性炭の接触のフローチャート(1日目) 共栓三角フラスコ(100mℓ)の空重量を 直示天秤にて正確に測定する
電子天秤にて活性炭試料約 1g測る
共栓三角フラスコ(100mℓ)に 活性炭試料約 1gを入れる
活性炭試料約 1gを入れた 共栓三角フラスコ(100mℓ) を直示天秤にてその重量を測る
共栓三角フラスコ(100mℓ)の前後の 差から投入した活性炭量を計算する
活性炭を入れた各々の三角フラスコに 各濃度の酢酸溶液 100mℓを正確にホ-ルピペットを用いて入れる(このとき 気泡が混入しないように注意する)
三角フラスコに栓をしてこれらを所定の温度に 設定した恒温槽に浸す浸した三角フラスコは 約 20分間隔で気泡が混入しないように注意して 振り混ぜるこの操作を約 2時間行う
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3)吸着量の測定(2日目) 恒温槽の温度を測る
恒温槽から三角フラスコを一つずつ取り出す
各試料溶液を一つずつ手早くろ過する
活性炭
ろ液を滴定して平衡濃度を決定する
回収
吸着量の計算
Langmuirの吸着等温式Freundlich式のパラメータの決定
グラフの作成
吸着量の計算10001000 times
minus=
wCC
n (34)
n吸着量 [molg] C0 酢酸水溶液中の酢酸の濃度 [molℓ] C ろ液中の酢酸の濃度 [molℓ] w 活性炭の量 [g]
35 実験結果のまとめ方 実験結果は実験レポートを書く場合に考察と並んで重要な部分ですので主な注意事
項をここで説明しておきます グラフの作成n vs C nC vs C ln n vs ln C の 3つのグラフの作成 配布された Excel ファイルを利用し下図のような図を作成してみましょう
15
レポートの間違いやすい場所 ①表や図を示す場合次の例のように文章でもその旨を示す [実験結果] 共栓付三角フラスコに活性炭約 1g入れた試料の重量 w[g]を Table1に示す
Table1 調整酢酸濃度を入れる活性炭試料の重量 w [g]
酢酸規定度[N]
活性炭試料の質量w [g]
12 10300
14 10001
18 10126
116 10011
132 10109 酢酸(1)-水(2)-活性炭(3)の 12における吸着平衡の結果を Table 6および Fig1に示すただし活性炭 1gに吸着された酢酸のモル数 n[molg]は次式より求めた
( )10001001
0 timestimesminus=w
CCn b
C0仕込み液中の酢酸濃度 [molℓ] Cbバルク相中の酢酸濃度 [molℓ] w活性炭試料の質量 [g] n吸着量 [molg]
例えばCb=04621C0=04894w=10300の時は次のように計算できる
( ) 026501000100
0300114621048940 =timestimesminus=n
Table6 酢酸(1)-水(2)-活性炭(3)の 12における吸着平衡
吸着された溶質のモル数n[molg]
バルク相中の濃度Cb[moll]
00205 04621
00175 0241
00139 01139
00105 00519
00081 00243 ②得られた図や表の解釈(読者にそれらから読み取ってもらいたい事柄)の説明文を次の
例のように文章で記述する数字や図だけ示して読者に「理解しろ」というようなレポー
トではよくありません Table 6および Fig1よりバルク相中の酢酸濃度 Cbの増加にともない吸着量 nも増加することがわかったまた吸着量 n の値は酢酸濃度 Cbの増加にともない n=に漸近することがわかる
グラフ(Fig)は次ペ
ージに掲載すること
グラフや表の後にはそれらの結果より得られた知見を文章でも
記入すること
16
36 エクセルによる吸着データの整理法 注コンピュータの画面はWindowsXP上での操作になっています他の OS(Windows98 2000
NT)搭載のパソコンでも同様の作業が可能です) 先ほど問1で説明したように溶液濃度の濃度変化から吸着量 nを求めました実験では吸着後の水溶液中の酢酸の濃度 Cと吸着量 nの関係を各濃度の溶液(5種類)について測定しその値を計算します このようなデータの整理には表計算ソフトであるマイクロソフト社の Excelが便利です
Excel の起動方法はそのソフトがインストール(設定)されているコンピュータにより若干方法が異なることがありますがほとんど同じですここでは福岡大学の総合情報処理
センターのコンピュータの設定に従って説明します 表計算をしてみましょう セルとは セルというのは最小単位の四角のことです例えば「(Aの1)またはA1というセルセル
B1」のようにセルという言葉を使いますセル A1に1という数字を入れてみましょうセルA1をクリックしてキーボードから「1」と入力しキーボードの「Enter」キーを押します
図 5 Excelの入力例1 図 6 Excelの入力例2
次にセル B1に「5」という数字を入れましょう次にセル C1にセル A1と B1に記入された数値の和を表示させてみましょう 下の図のようにセル C1をクリックします上の「 fx 」と書かれた右のボックス(何かを書くところに)「 =A1+B1 」と書きましょうそして Enterを押すとセル C1に 6と表示されます
図 Excelを用いた関数計算 実験では吸着後の水溶液中の酢酸の濃度 Cと吸着量 nの関係を各濃度の溶液(5種類)について測定しましたこのデータに対してExcelを用いて表計算してみましょうまず先ほど記述したセル A1~A3は「Delete」(デリート)キーで値を削除しましょう
17
次にセル A5~A9に活性炭と接触する前の酢酸水溶液の初濃度 C0[moldm3]セル
B5~B9に活性炭と接触後分離した酢酸水溶液の濃度 C[moldm3]セル E5~E9に活性炭の質量 W[g]をキーボードから入力します作成した一例を次に示します
図 8 Excelによる吸着量nの計算 ここで1gの活性炭に吸着された酢酸の物質量n [mol]を式 (4)より計算できるのでセル C 5~C9に次の関数式を記述します式の内容としては
)( 0CCWVn minusminus=
となるように記述するので実際の Excelの関数としては次のように行います セル C 5をクリックし関数ボックス(fxの右)に「=(A5 ndash B5)01E5」と記述(半角または直接入力形式で)し「Enter」キーを押し確定しますこの関数はフィルハンドルを利用してセル C 6~C9にコピーしますただし実験で溶液は 100cm3使用しましたが
溶液の濃度 C が[moldm3]の単位ですので100cm3=01dm3 となり関数式の中では
V=01 dm3としています なおグラフの記述方法やフィルハンドルの使用方法については化学工学プログラミ
ングなどの補助資料を参考にして下さいまた実験の際に配布した Excel ファイル(ファイル名ad_graxls)を使用すると実験データの理論的な解析も容易にできますので試してみましょうExcelファイル(ファイル名)「ad_graxls」の使用方法は次節で説明します 36 実験結果の考察方法 (吸着実験について) 実験結果の考察方法は種々の方法がありますがここでは一例として理論と比較する
方法を示します実験結果として下図(左)のようなグラフができましたこのような実
験結果に対して理論的な考察を行ってみましょうここでは次節で説明するラングミュ
ア(Langmuir)の単分子吸着モデルで計算した理論線と実験と比較したものを下図右に示しますこの図を作る方法は次節で説明しますレポートの考察の部分はラングミュア
(Langmuir)の単分子吸着モデルの式の導出から書いて下さい 理論を作る場合幾つかの仮定をしますがその理論が多くの実験結果をうまく説明でき
ている場合その仮定がある程度妥当なものであったことがわかります指針書に書いてあ
った以外の理論についても興味があれいばためしてみましょう
セル C5をクリックし関数ボックス( fx の右)に「=(A5 ndash B5)01E5」と記述(半角または直接入力
形式で)します
18
ラングミュア(Langmuir)の単分子吸着モデルを用いて理論値を計算するには配布され
た Excelファイル(ファイル名)「ad_graxls」を使用すると便利ですその使用方法を以下に示します配布プログラムは化学工学プログラミングの講義の場合と同様に総合情報処
理センターの共通領域にあります各自コピーして使用して下さいコピーするには化
学工学プログラミングの講義の場合と同様にコピーしようとするファイルを共通領域から
自分の使用しているコンピュータのデスクトップにドラッグドロップします共通領域で
ファイルを開くとファイルの消去などで他の人が使えなくなりますので共通領域でファイ
ルをダブルクリックしないようにして下さい誤って共通領域でファイルをダブルクリック
した場合はそのファイルを閉じるボタンをクリックし閉じて下さい 各自のコンピュータに保存した Excelのファイル(ファイル名ad_graxls)をダブルクリ
ックして開きます自宅へ持ち帰る場合各自のフラッシュメモリーやフロッピーディスク
を使用しまたはメールを使用して添付ファイルで送信できます各自のフラッシュメモ
リーやフロッピーディスクに保存してあるファイルを再編集する場合はフラッシュメモリ
ーやフロッピーディスクをコンピュータの USB 端子またはフロッピーディスクドライブに挿入します次にデスクトップ上にあるマイコンピュータのアイコンをダブルクリックし
ます もしデスクトップ上に上のアイコンが無ければ画
面左下の「スタート」ボタンからマイコンピュータをク
リックしてくださいすると次のような画面が立ち上が
ります
ラングミュア(Langmuir)の単分子吸着モデルで計算した
理論線
19
その中からフラッシュメモリーの場合は「リムーバブルディスク」をフロッピーディ
スクの場合は「35インチ FD」のアイコンをダブルクリックしてくださいファイルが保存されていれば次の画面が出てきます
この画面の中の「ad_graxls」ファイルをデスクト
ップにコピーしますまず「ad_graxls」ファイルを左クリックしますこの時クリックした指はは
ずさないようにしますその状態のままデスクトッ
プまでファイルを移動させますそしてデスクト
ップ上の任意の場所でクリックした指をはずします
これでデスクトップ上に「ad_graxls」のファイルがコピーされましたのでデスクトップにコピーさ
れたファイルをダブルクリックして開きますコピ
ー操作が上手くいかなかった場合もう一度移動の操作を行ってください
必ずデスクトップにコピーしてから開く操作を行って下さいフロッピーディスクから直接
開いて操作を行った場合正しく保存されない可能性があります 「ad_graxls」のファイルを開くと次のような画面が立ち上がりますもし画面が違う場合は画面の下部にある「吸着データ」のタグ をクリックしてくださいこの画面
でデータの処理や計算を行いますでは実際の操作に入る前に予めこのファイルに名前
を付けて保存しておきますまずExcelの画面のツールバー「ファイル」から「名前を付けて保存」をクリックします下のような画面が起動します
20
ファイルの保存先を変えたい場合画面上部のボタンをクリックし保存先にデスクトッ
プを選択します次にファイル名の部分に各自ファイル名を入力しますファイル名は何
でも良いですが分かり易い名前にしておくとファイルの管理がやり易くなります日付や
数字を入れると同名のファイルをいくつも管理する場合に便利ですここでは「吸着実験デ
ータ整理 4月 01」とし「保存」ボタンをクリックします
ファイル名変更後Excelの画面上部のタイトルバーのタイトルが先ほどの名前(上の図とは異なります)になっていることを確認してください
この操作を行うことによって元のデータである「ad_graxls」を変更してしまう心配がなくなります元のデータである「ad_graxls」はファイルが破損しまたは間違った操作の結果を誤って保存してしまった場合などの補助ファイルとなりますので大切に保管しておいて
下さい今後配布するデータは先ほど説明した手順で名前を変えて保存し元のデータに
直接変更を加えないようにして下さい ここから実際の作業に入ります初期状態では模擬のデータが入力されています入力
データは予め計算しておいた酢酸濃度Cb[moll](濃度を Cと表示している場合もあります)と活性炭吸着量 n[molg]になります下の画面の丸で囲んだ部分がそれぞれの値でBCカラム(列)の 4~9行には数値が入力されています関数ではありませんこのデータを利用して実際のデータ解析を行ってみましょう下記のように行うと幾つかのグラフが
現れ実験データに対してラングミアーの単分子吸着を仮定したモデルを用いて精度よ
く計算線が描けることがわかります 今回はCbnの値を入力する必要はありませんExcelが自動的に計算を行って結果を表示するようになっていますつ
まりセル D5に「=B5C5」と関数を入力しこの関数に対してフィルハンド
ルを利用してセル D6~D9へコピーし
ファイルの保存先を変えたい場合画面
上部のボタンをクリックし保存先に
デスクトップを選択します
変更するファイル名はここをクリッ
クして書き換えます
名前を変更したらここをク
リックして保存します
21
まています 次に酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着量 n[molg]の関係および酢酸濃度 Cb[molL]と Cbn[gL]の関係をグラフ化します今回は自動的にグラフが作成されるようになっていますので複
雑な操作は必要ありません ここではデータに対してそれを精度よく表現する近似式をグラフ上に描きその関数
を数値として求める方法を Excelで練習してみましょう
グラフを表示させるには画面の下にある「Graph1」もしくは「Graph2」のタグ
をクリックします「Graph1」には酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着量n[molg]の関係のグラフが「Graph2」には酢酸濃度 Cb[molL]と Cbn[gL]の関係のグラフが表示されます「Graph2」はLangmuir の等温吸着式による相関を表したもので横軸に酢酸濃度 Cb[molL]をとり縦軸に酢酸濃度 Cb[molL]を活性炭吸着量 n[molg]で除した値 Cbn[gL]を示していますLangmuir の等温吸着式についてはこの後の章で説明してありますので各自読んで理解して下さいLangmuirの等温吸着式では式中の定数 ninfin(飽和吸着量)と K(吸着平衡定数)を実験データから最小二乗近似で決定する場合が多くありますここでは
その例を取り上げてデータに対してそれを精度よく表現する近似式をグラフ上に描き
その関数を数値として求める方法(最小二乗法最小二乗については付録に示しており
また化学工学プログラミングの講義においても説明します)を Excelで練習します 配布された Excel ファイル「ad_graxls」では実験点が表示されているだけでそれを精度よく表現する近似式の直線のグラフは「Graph2」に表示されていません今から次の手順で「Graph2」の図(グラフ)に近似式の直線のグラフを表示しますExcel の場合近似曲線(ここでは直線)を求める場合コンピュータが自動的に最小二乗法を使って近似曲線
を計算しています
「Graph1」の画面 「Graph2」の画面
Excelの sheetが表示されたらまずファイル名を変えデスク
トップに保存して下さい次
にGraph2のタックを左クリックして最小二乗法のグラフを
確認して下さい
22
38 Langmuirの等温吸着式による相関 はじめにLangmuir式の定数 ninfinと Kを決定するために「Graph2」酢酸濃度 Cb[molL]と
Cbn[gL]の関係のグラフから最小二乗法により直線の式を求めますExcelを用いてデータに対して近似直線のグラフを描き最小二乗法の直線の式を求めます
次のような「近似曲線の追加」のウィンドウが現れたら今回は線形近似(直線で近似
y=ax+b の式)を選びますので線形近似が黒色に反転していることを確認して「近似曲線の追加」のウィンドウの右下の「OK」ボタンをクリックして下さい
実験点の何れかにポインタをあわせて
右クリックする
近似曲線の追加(R)を選択して左クリックする
「線形近似」であること
を確認して「OK」ボタンをクリックします
23
「近似曲線の書式設定」
のウィンドウでオプシ
ョンから「グラブの書式
を表示する」の前を選ん
でチェック(前のチェッ
クボックスをクリック)
した後「OK」を押す
現れた直線にポインタをあわせて
左クリックすると「近似曲線の書式
設定」のウインドウが表示されます
ここをクリックします
この「オプション」のタ
グをクリックします
「y=」の関数
が現れるのでここ
をクリックする
式の文字フォントが初期値
「8」と小さいのでここ
のボタンをクリックし
フォントサイズを選ぶリス
トボックスを表示し「22」程度の大きなサイズを選択
しクリックする
24
「Graph2」酢酸濃度 Cb[molL]と Cbn[gL]の関係のグラフから最小二乗法により直線の式がこのように求められましたExcel を用いてデータに対して近似直線のグラフを描き最小二乗法の直線の式を求めるこの方法は他の実験データの解析などにも利用できますので
各自活用して下さい 表示された関数式「y=43865+2654」はノートにメモして下さいこの傾き 43865と
切片 2654からLangmuir式の定数 ninfinと Kを決定します決定方法の詳細はこの後の 36 の Langmuir式のパラメータ決定法に示しています ラングミュアの等温吸着式を変形すると次式となる
CCnKnCKn
CCKn
Cβ+α+
==
+= infininfininfin
11)1(
ただしα=1ninfinβ=1(ninfinK)とするこの式より Cnを縦軸Cを横軸とした関係のグラフは傾きα=1ninfin切片β=1(ninfinK)の直線関係を与えることを示しています そこでExcelのシートを利用してこの値からLangmuir式の定数 ninfinと Kを次のように決定しますセル C18D18に Graph2で求めた数値 2654と 43865を代入しますその後D19と C19に関数を ldquo=1D18rdquoとrdquo=D18C18ldquoを代入しますセル内の式は半角で入力してください
現れた関数の文字フォン
トを大きく(例えば 22)してその数字をメモし
吸着データシートの C18と D18に記入する
C18D18 に Graph2 で求めた値 2654 と 43865 を代入した後D19 と C19 に関数を ldquo=1D18rdquoとrdquo=D18C18ldquoを代入する
25
この Excel表示では最小二乗法を用いて決定した傾きαと切片βを用いて α=1ninfin=43865 β=1(ninfinK)=2654 得られた傾きおよび切片よりninfinおよび Kは次のように求まる
ninfin=1α=1D18=000228 molg-1 K =(1ninfin)β=αβ=D18C18=165
つまりセル D19にはninfinの値がセル C19にはKの値が表示されますこれらの値はラングミュア(Langmuir)の単分子吸着モデルで計算した理論線と実験と比較する場合に利用します実験結果に対して理論的な考察を行う例としてラングミュア(Langmuir)の単分子吸着モデルで理論線を計算し実験と比較するにはこの Excelファイルを利用して次のように計算しグラフに表示します セル F5~F30 には溶液中に残る酢酸濃度 Cb[molL]に対する活性炭に吸着された吸着量n[molg]の関係のグラフ「Graph1」の横軸の酢酸濃度 Cb[molL]の適当な値が既に入力してありますこれらのそれぞの酢酸濃度 Cb[molL]に対する吸着された酢酸の吸着量 n[molg]の理論値をラングミュア(Langmuir)式で計算しますラングミュア式は次式で与えられます
KCKCnn
+=
infin
1 (310)
ここでこの実験データを最も精度よく計算できるように決定した ninfinおよび K は上述のようにninfin=1α=1D18=000228 molg-1 K =(1ninfin)β=αβ=D18C18=165 でありこれらの値はセル D19にninfinの値がセル C19にKの値が表示されていますこの値を利用して「Graph1」に計算線を描くにはまずセル G5~G30 にセル F5~F30 のそれぞれの酢酸濃度 Cb[molL]に対する吸着された酢酸の吸着量 n[molg]の理論値をラングミュア式で計算しますそのためにはセル G5 にラングミュア式を次のように記述しますただしセル D19の ninfinの値セル C19の Kの値は常に同じセルから参照するので絶対参照($マークを付けて$D$19 $C$19と記述します)で記述します
Langmuir式をセル G5に記述するただし濃度はF5の値を相対参照しD19と C19は絶対参照($マークが必要)することを忘れないように
セルG5に記述すべき数式
=$D$19$C$19F5(1+$C$19F5)
26
G5記述後フィルハンドルを使用してG5の関数を G6~G30までコピーします Sheet1から Graph1 のタグをクリックしGraph1 に計算線が表示されたことを確認しましょうこれでラングミュア式によるデータの解析は終了です実験値と理論値を比較して現象
について考察してみて下さいラングミュア式を理論的に導く場合にある仮定をしている
のですがその仮定をしているラングミュア式が実験データを精度よく計算できていれば
その仮定が妥当なもとであったと考察できます 与えられたモデルデータでラングミュア式によるデータ解析ができれば他の理論(例え
ばフロインドリッヒFreundlich式や BET式レポートはどちらか一方でも可です) についてもExcel で計算してみましょうレポートには自分のデータについてここで行った内容と同様に計算しその結果を考察に記述して下さい 自分のデータについて同様の計算をするにはまずいままで計算を行った Excel ファ
イルを保存しますデータを自分の実験データに置き換える前に Excel ファイルをさらに別の名前で保存します与えられた Excel ファイルは初期状態では模擬のデータが入力されているので今回自分達の実験したデータを入力していきます入力するデータは予め計算
しておいた酢酸濃度 Cb[moll]と活性炭吸着量 n[molg]になります下の画面の丸で囲んだ部分にそれぞれ自分の実験データを入力していきます
今回はCbnの値を入力する必要はありませんExcelが自動的に計算を行って結果を表示するようになっています 次に酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着
量 n[molg]の関係および酢酸濃度Cb[molL]と Cbn[gL]の関係をグラフ化します今回は自動的にグラフが作成
されるようになっていますので操作は必
要ありません 39 Freundlichの等温吸着式による相関 今回の実験で得られた酢酸濃度 Cbと活性炭吸着量 nのデータを利用してFreundlichの等温吸着式の定数 abの値を求めFreundlichの等温吸着式の理論線をグラフに追加します ここでFreundlich式は次式で表されます
bbaCn1
=
このままでは定数 abの値を決定することが難しいので上式の両辺の対数をとり線形化しますすると次式となります
bCb
an ln1lnln +=
ここでln Cbと ln nの関係をグラフにプロットすれば傾き 1b切片 ln aの直線関係が得られますしたがって実験データである酢酸濃度 Cbと活性炭吸着量 nの値の対数をそれぞれ計算します配布した「ad_graxls」ファイルを開き「吸着データ」シートの任意の部分に以下のような表を作成します
27
次にln Cb[-]の列の最初のセルに以下の数式を入力します
=ln(B5) 上式中の「B5」は Cb の値の最初のセルの位置を指します各個人の位置によって変更してください
次にln n[-]の列の最初のセルに以下の数式を入力します
=ln(C5) 上式中の「C5」は nの値の最初のセルの位置を指します各個人の位置によって変更してください
ここでln Cb[-]ln n[-]の値に対しそれぞれオートフィルを行い計算させますすると以下のようなデータが完成します
計算した ln Cb[-]ln n[-]の値をグラフにプロットし最小二乗法による直線式を求めます
28
ここで以下のような直線の式が得られたとします
9135ln31690ln913531690 minus=there4minus= bCnxy
上式より切片は-5913傾きは 03169となるので以下の要領で定数 a1bを計算します ==there4minus= minus 91359135ln eaa 000270
316901=
b
a の値を Excel で計算させる場合は任意のセルに以下のような数式を入力することで求めることができます
=exp(-5913) これでFerundlich等温吸着式の定数 a1bの値が決定しましたこの値は後で使うのでノートなどにメモしておいてください 次に決定した Ferundlich 等温吸着式の定数 a1b の値を用いてFerundlich 等温吸着式のグラフを作成します先ほども示したように Ferundlich等温吸着式は次式で表されます
bbaCn1
=
従って定数 aと 1bの値はすでに決定しているので任意の Cbの値に対する nの値を数点求めればFerundlich等温吸着式で求めた理論線が得られます以下の操作で理論線を引くことができます Langmuir 等温吸着式による相関のときと同様にExcel の「吸着データ」のシート上の任意の場所に以下のような表を作成します
次に Ferundlich等温吸着式に従いnの値を計算します
bbaCn1
=
式中の定数 a1bは先ほど計算した値を用いますしたがって式は次のようになります
31690002700 bCn times=
この式を Excelのセル内に記入すれば計算ができます次の
29
ように記入します
=00027G5^03169 ここで式中の「G5」は Cbの値が 0のセルを指しています各個人の位置によって変えてください 次に式を記入したセルを Cbの値が 05のところまでオートフィルを行いますそうするとすべての Cbに対して nの値が計算されます
これで Freundlich等温吸着式のデータが完成しましたので次に「Graph1」酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着量 n[molg]の関係のグラフにこのデータを追加し理論線を引きます理論線の引き方は Langmuirによる相関のときと同様の操作を行ってください グラフの書式等を変更し整理すると以下のようなグラフが出来上がります
310 吸着等温線とは 固体の吸着剤を溶液と接触させる時一定量の吸着剤によって吸着される溶質の量は温度一定ならば溶質の濃度の関数になる一定温度での吸着量を温度に対してプロットした時に
得られる曲線を吸着等温線というこの吸着等温線を比較的よく表す経験式として次の
Freundlich式がある
n=aC1b (1) ここで n は吸着剤の質量あたりの吸着量C は吸着平衡濃度a と b は実験から決定されるパラメータであるがその物理的意味は多少希薄である これに対し理論的な意味を持つものに次のラングニュア(Langmuir)の吸着等温式がある
30
KCKCnn
+=
infin
1 (2)
ただしninfinは飽和吸着量Kは吸着平衡定数であるこの式は
1)吸着分子が固体表面で単分子以上の厚い層を作ることはない 2)吸着分子同士の間の相互作用はない
という二つの仮定にもとに導かれたものである 結果の整理および報告 Freundlich吸着等温式Langmuir吸着等温式の各々のパラメータの最適値を求めよまた活性炭の吸着特性および表面積について考察し化学工学における吸着操作の重要性につい
ても検討せよ 311 吸着等温式 (a) ヘンリー(Henry)型吸着等温式 液相の濃度あるいは気相の圧力が小さい場合吸着分子間の距離が十分に長いため吸着
分子同士の相互作用が無視でき固体表面と吸着分子のみの相互作用で吸着量を決定できる
とき次式のように表される
n=KC (3)
ここでKは比例定数である図 3-1の(a)に示すように濃度 Cと吸着量 nは比例関係があり一般に吸着量が小さい範囲で成立する気体の場合は溶液濃度 Cの代わりに気相圧力 pを用いればよい
濃度(分圧)
濃度(分圧)
濃度(分圧)
濃度(分圧)
吸着量
吸着量
吸着量
吸着量
(a)ヘンリー型 (b)ラングミュア型
(d)BET型(c)フロインドリッヒ型
0
0
0
0
図 3-1 吸着等温式
31
(b)ラングミュア(Langmuir)型吸着等温式 ラングミュアは図 3-2 に示すように固体表面に同等な吸着力を示す吸着サイトがあり
表面に 1分子層だけ吸着する(単分子層吸着)と仮定して平衡状態における吸着量と溶質濃度(気相分圧)のと関係を導いた全吸着点のうち吸着分子に覆われている吸着点の割合
をθ[-]とすると分子の脱着速度 rrsquo[mols-1]はθに比例する比例定数を a[mols-1]とすると次式のように表される
吸着剤
吸着分子
吸着サイト
図 3-2 固体表面上の吸着サイト(Langmuir式の導出) r=aθ (6) また気相からの吸着速度 r[mols-1]は空いている吸着点の割合(1-θ)[-]と溶液濃度 C[molm-3]に比例する rrsquo= b(1-θ)C (7) このときの比例定数を b[m3s-1]とするまた平衡状態では両速度は見かけ上等しいため以下の式が成り立つ aθ=b(1-θ)C (8) これを変形する
CbaCbsdot+
sdot=θ (9)
ここで飽和吸着量を ninfin[molkg-1] ba を K[m3mol-1](Kは吸着平衡定数)とおくと infin=nnθ
となるので次式が得られる
32
KCKCnn
+=
infin
1 (10)
これをラングミュア式と呼ぶ
(c)フロインドリッヒ(Freundlich)型吸着等温式 フロインドリッヒの吸着等温線は図 3-1(c)のように示される
n=aC1b (11) nは吸着量[molkg-1]で aと bはともに吸着定数[-]である (d)BET(Brunauer-Emmett-Teller) 型吸着等温式
BET型の吸着等温線は図 3-1(d)に示されるラングミュア式は表面に 1分子層だけ吸着すると仮定したものであるがBET式は無限分子層まで吸着できる式である図 3-3に示すように吸着した分子がそれぞれ次の層の吸着サイトとなり分子は積み重なって多分子
層に無限層まで吸着できるものとし各層への吸着にラングミュア式を適用すれば次式の
ように表せる
( ) ( )CKCCCKqq
minus+sdotminussdotsdot
=infin
11 (12)
この式は多孔質固体の細孔表面積を窒素ガスの吸着によって測定する際に利用される重要な式
である
表面の吸着サイト
分子上の吸着サイト
図 3-3 多分層吸着モデル
Langmuir式のパラメータ決定法 水溶液からの酢酸の活性炭に対する吸着平衡データ(吸着平衡温度 12)は表 3-1のよ
うに与えられる実験データよりラングミュア式のパラメータ(K吸着平衡定数ninfin飽和吸着量)を最小二乗法で決定せよさらにラングミュア式より決定した ninfinKの値を用いて吸着等温線を計算し計算線として図に示し実験点と比較せよ
33
表 3-1 n C Cnの関係
ラングミュア式は式(310)で与えられるこの式を変形すると次式となる
CKnCK
n infinsdot+
=11
(313)
両辺に Cをかけると以下の式が導出される
CCnKnCKn
CCKn
Cβ+α+
==
+= infininfininfin
11)1( (314)
ただしα=1ninfinβ=1(ninfinK)とする式(314)より Cn と C の関係のグラフプロットは傾きα=1ninfin切片β=1(ninfinK)の直線関係を与えることを示している表 3-1の値を用いて計算した Cnと Cの関係を表 3-1および図 3-4に示す 最小二乗法を用いて傾きαと切片βを決定した α=1ninfin=43865 β=1(ninfinK)=2654 得られた傾きおよび切片よりninfinおよび Kは次のように求まる
ninfin=1α=1D18=000228 molg-1 K =(1ninfin)β=αβ=D18C18=165
0
50
100
150
200
0 200 400 600
C [ molm-3 ]
Cn [ kgm-3 ]
傾き = 1 ninfin
1 ninfinK
切片0
05
1
15
2
25
3
0 100 200 300 400 500
液相の溶質濃度 C [ molm-3 ]
吸着量 n [ molkg-1]
液相と溶質濃度 C [ molm-3 ]
吸着量
n[ m
olk
g-1]
実験点
Langmuir式パラメータninfin 00033 [ molg-1 ]K 00086 [ m3 mol -1 ]
図 3-4 ラングミュア定数の決定 図 3-5 12における酢酸濃度 Cと
吸着量 nの関係
C [molm-3] n [molkg-1] Cn [kgm-3] 460 225 109 529 214
268 199 149 105 060
172 128 732 504 357
34
Freundlich式のパラメータ決定法 酢酸水溶液中における酢酸の活性炭に対する吸着実験を行ったところ以下のような実験デー
タを得たただしCbはバルク相における酢酸濃度n は活性炭に対する酢酸の吸着量を示す
Cb[molL] n[molg] log10Cb log10n 04621 000205 02410 000175 01139 000139 00519 000105 00243 000081
実験データを利用して次式で与えられる Freundlichの等温吸着式の定数 abの値を求めたい
bbaCn1
= (1)
このままでは定数 abの値を決定することが難しいので上式の両辺の対数をとる
bbb
bb
Cb
aCa
aCn
ln1lnlnln
)ln(ln1
1
+=+=
=
(2)
ここで横軸に ln Cb縦軸に ln nの関係をグラフにプロットするすなわち x=ln Cby=ln nと考える
bCb
an ln1lnln += (3)
ここで直線式 y=a0+a1xと比較するすなわち
)(1)(ln
1
00
傾き
切片
ba
eaaa a
=
=rarr= (4)
a0および a1は最小二乗法により数値で求められる与えられたデータでは a1= a0= なので a= b= となる この値を n=acb
1bに代入してcb=0~05の範囲で nの値を計算する
35
BET式のパラメータ決定法 BET式は次式で与えられる
)1)(1( KCCCKCnn
+minusminus=
infin
(17)
以下のように BET式の変形を行う
)1()1(
KCCKCnCn+minus
=minusinfin
(18)
(18)式の逆数をとると
KCnCK
KCnKCC
Cn infininfin
minus+=
+minus=
minus)1(1)1(
)1(1
(19)
(19)式の両辺に Cをかえると
KCnCKC
CnC
infin
minus+=
minus))1(1(
)1( (20)
(20)式を変形すると次式が得られる
CKn
KKnCn
Cinfininfin
minus+=
minus11
)1( (21)
C と)-(1 Cn
Cのプロットは傾き
KnKinfin
minus1切片
Kninfin
1の直線関係を与えることを示している
これをグラフにプロットし最小二乗法に傾きおよび切片を求める
36
312 活性炭の比表面積の決定 酢酸分子の構造を以下に示す
Hc-Cb-Ca
Hd
Hb Oa
Ob-Ha
1219deg
Ca Oa
Ob
図 36 酢酸の構造
酢酸の 1分子の吸着面積srsquo [m2]を図 3-6に示すこのとき文献より
Caと Oaの結合距離 1321Å Caと Obの結合距離 1206Å OaCaObの角度 1219deg Cの原子半径 077Å Oの原子半径 062Å
したがって吸着面積 Slsquoは次のようになる
( ) ( ) 2088 10376109931036321 minusminusminus times=timestimestimestimes=s m2
ここで活性炭の比表面積 S[m2g]は次式で示される 10026 23 snS timestimestimes= infin
S活性炭の比表面積 [m2g] ninfin飽和吸着量 [molg] srsquo酢酸 1分子の吸着面積 [m2] 602times1023アボガドロ数 [個mol] したがって活性炭の比表面積 S[m2g]は
003350=infinn molg 2010376 minustimes=s m2 より
51281037610026003350 2023 =timestimestimestimes= minusS m2g
37
4 粘度密度測定 41 はじめに 大量生産を目的とした工業的化学プロセスはほとんど流れ系(流通系)であるそれらの系において操作対象となる各物質の粘度は装置を設計操作する場合きわめて重要
な物性値である 本実験では低分子溶液および高分子溶液の粘度測定を通じて液体の粘度について考察するさらに演習問題を通じて気体液体高分子溶液などの化学プロセスで対象となる物
質の輸送物性(粘度拡散係数)の重要性を認識されたい 42 低分子溶液の粘度 [目的] 種々の濃度のエタノール水溶液の粘度を測定しその溶液の粘度について考察する [概要] 25におけるエチルアルコール濃度 02040506080100 wt の水溶液について流下時間を測定しこの結果より相対粘度絶対粘度運動粘度を求めグラフにするま
た水の密度水-エチルアルコール溶液の密度についてはピクノメーターを用いて決
定する報告書には相対粘度絶対粘度運動粘度 vsエチルアルコール濃度の関係をそれぞれグラフにして提出する
[計算方法] 相対粘度絶対粘度運動粘度の定義は次のようになる
相対粘度 ww
w tdtd
ηη = (41)
η 混合溶液の粘度 [gcms] ηw水の粘度(8007times10-3 gcms) [gcms](25における粘度) d エチルアルコール水溶液の密度 [gcm3] dw水の密度(099704gcm3) [gcm3](25における密度) t エチルアルコール水溶液の流下時間 [s] tw水の流下時間 [s] 下付添字 W 水
絶対粘度 www td
tdη
η= (42)
運動粘度 ν=ηd [cm2s] (43)
38
[実験方法] 1) 粘度計を洗浄し粘度計内 に二連球で空気を送り込み
乾燥させる乾燥しにくい 場合はアセトンを滴下し た後再度二連球で空気 を送り込み乾燥させる 2)ピペットで一定体積(10mℓ) の純水を取り広い口 f から 粘度計に水を入れる 3)粘度計を恒温槽(25)に つけ約 10 分静置する 4)安全ピペッターを口 a に 取り付け液面が b 上部に 到達するまで吸い上げる 5)安全ピペッターを外すと 液面が降下しだす液面が bd 間を通過する時間をスト ップウォッチで測定する
6)純水での測定を 3 回繰り返す 7)純水を粘度計から取り除くその後粘度計内に二連球を用いて空気を送り込み乾燥させる 8)粘度計乾燥後複数の濃度に調整済みのエチルアルコール水溶液(10mℓ)を粘度計にいれ4)~6)の作業を繰り返し行う(3 回)なお濃度の異なるエチルアルコール水溶液を粘度計内に導入する場合には7)と同様に二連球を用いて粘度計内に空気を送り込み乾燥させる
表 4-1 エチルアルコール水溶液の濃度密度相対粘度の関係 エチルアルコール濃度
[wt] 密度 d[gcm3] 相対粘度
η ηw[-] 0
20 40 50 60 80
100
安全ピペッター接続
図 4-1 粘度計
液面の bd間の通過時
間を測定
f
39
43 密度測定 [目的] 本実験では水とエタノールの種々の組成の混合液体について密度を測定し分子間相互
作用について考察する [実験方法] 1)ピクノメーターの容積測定
図 4-2のピクノメーターの空の重量 wg を秤量する
ピクノメーターの蓋を取り外し
ピクノメーターを水で満たす
設定温度を 25として恒温槽 の電源を入れ恒温槽内の温 度が一定になるまで待つな お水温は恒温槽中の水銀温 度計から読む
恒温槽中に水を満たしたピク
ノメーターを入れる
約 10分間静置する
ピクノメーターに蓋をするこのときピクノメーターの容量
よりも余分の水は蓋の上部より排出される
ピクノメーターの外側を乾いた布で拭い秤量する(その重量を
wwg とする)
恒温槽の温度(25)における水の密度 dwgcm3(=099704gcm3)
より次式を用いてピクノメーターの容積を求める
w
w
dww
Vminus
= (44)
図 4-2 ピクノメーター
蓋
40
表 4-2 エチルアルコール水溶液の濃度と密度の測定結果(25) エチルアルコ
ール濃度[wt]
wrsquo[g] ww[g] V[cm3] w[g]
d[gcm3]
0 20 40 50 60 80
100
099704
エチルアルコール濃度[wt] 空のピクノメーターの重量 wrsquo[g] 水を入れたときのピクノメーターの重量 ww[g] ピクノメーターの体積 V[cm3] エタノール水溶液の入れたときのピクノメータの重さ w[g] エタノール水溶液の密度 d[gcm3]
容積 Vを求めたピクノメーターに混合溶液(調整済み)を入れてその重量 wgを秤量し次式で混合溶液の密度を求める
Vwwd minus
= (45)
エタノール濃度と密度 d の関係をグラフにプロットする
41
44 高分子溶液の粘度 [目的] 高分子溶液の粘度測定から分子量の粘度に与える影響について考察する [概要 ] オストワルド粘度計を用い種々の濃度のポリビニルアルコール(PVA ((-CH2CHOH-)n))水溶液の粘度を測定し粘度データよりポリビニルアルコールの分
子量を求める まず 05g100cc の濃度のポリビニルアルコール水溶液を調製する次にこれを原液
とし23 12 13 15の濃度の溶液を調製するこれらの溶液についてオストワルド粘度計を用いてそれぞれ流下時間を測定し相対粘度絶対粘度運動粘度を求め実験デ
ータより極限粘度[η]を求めるまた報告書には相対粘度絶対粘度運動粘度C
)ln( wηη
Cw
w-η
ηη vsポリビニルアルコール濃度の関係をそれぞれグラフにして提出する
[計算方法] エチルアルコール水溶液の粘度測定と同様の手法を用いて粘度の計算を行うなおポリビニルアルコール水溶液の密度はピクノメーターを用いて測定すること 表 4-3 ポリビニルアルコール水溶液の濃度密度相対粘度の関係 ポリビニルアルコール
濃度 [g100cc] 密度 d[gcm3] 相対粘度
η ηw[-] 05times(15) 05times(13) 05times(12) 05times(23)
05
42
[分子量の計算方法] 実験を行った結果以下のような粘度データを得られるとする実験データより極限粘度
を求めポリビニルアルコール(PVA)の分子量Mを決定せよ
PVA 水溶液濃度
C[g100cc]
相対粘度
ηηw[-]
絶対粘度
η[gcms]Cw
w-η
ηη
C)ln( wηη
05times(15) 1031 0008255 031 0305
05times(13) 039 0378
05times(12) 03 0289
05times(23) 0375 0353
05 0364 0334
ηw=8007times10-3 gcms 線状高分子の極限粘度[η]と分子量Mの関係は次式で与えられる [η]=KMα (46) ただしポリビニルアルコールの場合K=666times10-4α=064であるなお極限粘度[η]は次式で定義される
CC w
w
0
-][ limη
ηηη
rarr
= (47)
または
CC
)ln(][ w
0lim
ηηη
rarr
= (48)
よって濃度 CとCw
w-η
ηηまたは濃度 Cと
C)ln( wηη の関係をグラフ化し最小二乗法によ
り切片の値を求めると極限粘度[η]が決定される
Cw
w-η
ηηと C の関係より最小二乗法を用いて切片の値を決定すると(図 43 参照)切片=
03242傾き=00874となるよって極限粘度は以下のようになる[η]=03242同様
にC
)ln( wηη とcの関係より最小二乗法を用いて切片の値を決定する
(図 44参照)と切片=03249傾き=00256となり極限粘度は以下のようになる[η]=03249
Cw
w-η
ηηと Cの関係より決定した[η]=03242を用いてポリビニルアルコール(PVA)の
分子量 Mを計算する(46)式より以下のように PVAの分子量 Mを計算することができるM=([η]K)1α
=(03242(666times10-4))(1064)
=15811
43
y = 00874x + 03242
0
02
04
06
08
1
0 01 02 03 04 05 06 07
c[g100cc]
(η-ηw)(ηwc)
cw
w
η
ηηminus
極限粘度[η]
図 43 298Kにおける PVA濃度 CとCw
w-η
ηηの関係
y = 00256x + 03249
0
02
04
06
08
1
0 01 02 03 04 05 06 07
c[g100cc]
(ln(ηη
w))c
c)ln( wηη
極限粘度[η]
図 44 298Kにおける PVA濃度 CとC
)ln( wηη の関係
44
5 植物からの DNAの抽出 51 はじめに 分子レベルでの遺伝子の構造解明や遺伝子の発現に関する研究は近年急速に発展している
これら生命現象のしくみを分子レベルで解明しようという分子生物学の分野ではさまざま
な遺伝子の解析や応用方法が開発され我々の生活に身近なものになりつつある 本実験では初歩的な分子生物学に関する実験として植物(タマネギ)からの DNA の
抽出を行い抽出した遺伝子の電気泳動法による分離実験を試みる 52 試薬および器具 試薬 タマネギ(細胞中から遺伝子の抽出を行う) 台所用洗剤(洗剤中に含まれる界面活性剤には植物の細胞膜およびタンパク質を破壊す
る働きがある) 塩化ナトリウム(DNAは塩化ナトリウム水溶液に溶解し易い性質がある) エタノール(予め冷やしておくDNAはエタノールにほとんど溶解しない) 制限酵素(DNAを一定の部位で切断する働きを働きがある) TE緩衝液(pH緩衝剤が入った溶液) 器具 ビーカーミキサーフィルターメスシリンダー駒込ピペットガラス棒 マイクロピペット電気泳動装置ポラロイドカメラ 53 実験方法 1)タマネギは 1回の実験で半個のうち内側の半分程度を使用するタマネギ水 30ml台所用洗剤数滴をミキサー用ガラス容器に入れ40~60秒程度(固体状のタマネギがなくなる頃が目安)ミキサーにて混合する
2) 1)で作成した混合溶液をビーカーに移し約5g程度の塩化ナトリウムを加えガラス棒で静かに攪拌する粘性の大きな溶液が得られる
3) 2)で作成した溶液をフィルターを用いて濾過し濾液を回収する 4) 濾液の約2倍程度の量の冷エタノールをビーカーの壁伝いに静かに注ぐ 5) ビーカーを揺するとエタノール層に白くふわふわしたものが浮いてくるこれが DNAであるガラス棒で DNAを巻き取りシャーレ上にて DNAを回収する顕微鏡を用いて回収した DNAの状態を観察する
6)マイクロチューブ(容量 15ml)中に用意した 70エタノールを 8 分目程度まで注ぐ5)にて回収された DNAをマイクロピペットを用いて70エタノールの入ったマイクロチューブ中に移す軽く混ぜることによりDNA から不要な物質を洗い流す遠心分離してDNA をマイクロチューブの底に沈めた後溶液を捨てて DNA を乾かす乾いたらTE緩衝溶液を 1ml加えて放置するDNAの溶液が得られる
54 電気泳動装置による DNAの観察
本実験は職員と一緒に行うこと 実験を行う人はビニール手袋をすること 1) 抽出した DNAを電気泳動装置で観察するマイクロピペットを用いて以下のように調製した DNAの混合溶液を調製する(いずれの溶液も調製済)
45
2) マイクロピペットを用いてアガロースゲルの試料を流し込む穴(ウェル)に1)にて調製した溶液 Aおよび Bを注ぎ込む注入量は20μℓとする電気泳動装置のスイッチを入れて100Vの電流を流しアガロースゲル内にて DNAを電気泳動させる
3) 試料に予め加えられておいた青色の色素が 7 分目程度まで進んだら電気泳動を中止する(約 30分程度)
4) (ここでの作業は職員が行う) アガロースゲルを取り出し染色液に浸す染色後ゲルを取り出しポラロイドカメラで
DNAの泳動状態を撮影する
+ -
アガロースゲル
試料を流し込む穴(ウェル)
図 51 電気泳動装置
6 5 4 3 2 1
図 52 DNAの電気泳動写真の一例
55 電気泳動装置の原理 電気泳動装置の原理図を以下に示すアガロースゲル(寒天から不純物を除いたもの)中
に DNAをセットし電流を流すとDNAは電流の向きとは逆にマイナスからプラス方向
調製済 溶液 A(制限酵素なし) 水 11μℓ 10timesH Buffer 2microℓ 植物 DNA 5μℓ
調製済 溶液 B(制限酵素 Eco RI入り) 水 11μℓ 10timesH Buffer 2microℓ 植物 DNA 5μℓ 制限酵素 2μℓ
1 DNA(タマネギ)+制限酵素 2 DNA(タマネギ)+制限酵素 3 DNA(タマネギ) 4 λ-DNA(大腸菌)+制限酵素 5 λ-DNA(大腸菌) 6 サイズマーカー
500bp
46
に動く(このことを電気泳動という)これはDNA のリン酸部分が負に帯電しているためでありまたDNAはその長さにより泳動距離が異なる(短い遺伝子ほど長く泳動する)電気泳動ではこの性質を利用してDNAを大きさごとに分離することができる
塩基対数によってDNAを分離
EtBr (蛍光試薬)DNAの二本鎖内に入り込む
発光
UVλ=302nm
励起
分離後のアガロースゲルをエチジウムブロマイド(EtBr)溶液に浸す
DNAを含んだ溶液
アガロースゲル
リン酸部分が負に帯電
塩基 (ATGC)-
+
カメラで撮影
電圧
DNA構成成分(dNTPs)
バンドが明る
DNA量が
バンド(DNAの存在)
図 53 電気泳動の原理
56 制限酵素とは DNA は4 種類のヌクレオチド(GATC)が不規則につながってできている制限酵素はDNAの特定のヌクレオチドが並んでいる部分を切断する制限酵素には様々な種類がありEco RI(エコアールワン)と呼ばれる酵素は「GAATTC」といった並びの部分だけを切断することができる
GAATTC
CTTAAG
制限酵素
Eco RI
AAGCTT
TTCGAA
制限酵素
Hin dIII
図 54 制限酵素による DNAの切断
レポートについて 1 実験方法および実験結果の整理方法については指針書を参考にすること 2 実験結果については電気泳動の結果について考察すること(制限酵素の影響などにつ
いてまとめてください)
47
6 染色実験
61 はじめに
現在私達の身の周りでは様々な染料が使われている例えばT シャツやジーンズな
どの衣服は橙黄赤青など様々な色に染められている他にも私達が気付かないと
ころで多くの染色された製品を使用しているそこで本実験では高校の化学で学んだ
アゾ染料を合成してみるアゾ染料はアニリンを原料として作られているアニリンはベ
ンゼン環にアミノ基(-NH2)がついたものであるアニリンは無色の液体で水に溶けにく
くアンモニアより弱い塩基性を示すまたさらし粉(CaClO(ClO)H2O)水溶液を加えると
赤紫色を呈するこの呈色反応はアニリン特有のものであるので検出反応に用いられる
このアニリンを出発物質としてアゾ染料を合成してみる
62 試薬および使用器具
【試薬】 ①05moll 水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液
②2-ナフトール ③フェノール ④6moll 塩酸
⑤亜硝酸ナトリウム ⑥アニリン ⑦氷
【器具類】 ①電子天秤 ②50mℓビーカー ③100mℓビーカー
④ガラス棒 ⑤布(ガーゼなど) ⑥ピンセット
⑦ポリ手袋 ⑧ドライヤー ⑨シャーレ
10駒込ピペット(10ml ガラス製)
11駒込ピペット(1ml プラスチック製)
63 実験方法
1) 50mℓビーカーの中に 05molℓ水酸化ナトリウム水溶液 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回
NaOH 水溶液を分取するほぼ 20 mℓ分取できれば可)と 2-ナフトールを約 01g 入れ
よくかき混ぜる調製した溶液の中に布をつけその布はガラス棒でしぼってから(布
をガラス棒ですくいあげればよい)シャーレに広げる温度の異なる条件下(常温およ
び低温)で染料の合成実験を行うため布は最低 2枚調製した溶液と接触させそれ
ぞれ別々のシャーレ(低温用および常温用)に広げる
2) 新しいビーカーに水を約 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回分取)と 6molℓ塩酸約 4mℓ(10m
ℓ駒込ピペットで目分量で可)さらにアニリン約 1mℓ(プラスチック製 1 mℓ駒込ピペッ
ト)を入れてよくかき混ぜる染料の合成を常温および低温下で行うためこの溶液を
2つ調整する
低温下で反応させる溶液は恒温槽で 10~15 分ほどよく冷やした後亜硝酸ナトリウ
ム 05g を加えてよくかき混ぜる
常温下で反応させる溶液には冷却作業を行わずに亜硝酸ナトリウム 05g を加えて
よくかき混ぜる
3) 2)でつくった水溶液をシャーレに広げた布に注ぎ生成される染料を布によく染み
込ませ5分程放置する
4) 色の付いた布を取り出してポリ手袋をした手できれいに水洗いをし乾燥させる
48
5) 色差計を用いて乾燥した布の Lab(L明度aおよび b色度)を測定する
2)で作った溶液は5以下では無色の溶液ですが5以上になると淡い黄色になりま
す
【解説】
アゾ染料はアゾ基(-N=N-)を持っていてこのアゾ基によって鮮やかな橙色を呈色し
ます今回合成したアゾ染料は図の 1-フェニルアゾ-2-ナフトールです意外かもしれ
ませんが指示薬として使われているフェノールフタレインもアゾ化合物ですフェノール
フタレインは pH の変化によって色が出てきす染料の中でも最初は無色のものもありますが
温度を変化させたり酸性やアルカリ性にすると色が出てきます
ベンゼン ニトロベンゼン
N2Cl
ニトロ化 濃硫酸(濃硝酸)
還元反応 濃塩酸
(Sn又は Fe)
アニリン塩酸塩
遊離反応 NaOH
アニリン塩酸塩に強塩基を反応させる
と弱塩基であるアニリンが遊離する
氷冷+亜硝酸ナトリウム アニリン
塩酸
ジアゾ化
塩化ベンゼンジアゾニウム
塩化ベンゼンジアゾニウム
は熱によって窒素とフェノー
ルに分解される
カップリング
C10H7ONa (ナトリウム 2-ナフトキシド)
O
N =
1-フェニルアゾ 2-ナフトール
NH3Cl NH2
49
7 ガスクロマトグラフ質量分析計による茶葉中のカフェインの分析 71 はじめに ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)は極めて低い濃度の化学物質の同定や未知物質の構造決定に極めて強力な分析機器の一つであるGCMSを用いるとサンプルの中に含まれているある成分の分子構造(カフェインの分子構造を図 71に示す)やその量が分かりますもちろん分析機器ですので測定できる物質対象となる系や測定条件にはある
程度の制約があります混合物質を分離するガスクロマトグラフ(Gas ChromatographGC)と分離された成分(物質)を分析(構造決定と濃度測定)する質量分析計(Mass SpectrometerMS)を組み合わせた装置であるこの装置は有機化学生化学環境化学などの多くの分野で非常に多用されている例えば極めて低い濃度でも生体へ強い影響が懸念されるダイ
オキシン類などの土壌や河川の水中での含有率の決定や食品や医薬品中の微量成分の決定
にも利用されている 一方日本人に長い間親しまれてきた緑茶が近年産業界や医学
界で注目されている茶葉にはカフェイン(分子構造図 71)カテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドなどの有用成分が多く含まれておりその効能が注目されている 本実験では茶葉中に含まれるカフェインに対してGCMSを用いて分析する茶葉中には種々の物質が含まれておりGCMS分析を容易にするため前処理として超臨界二酸化炭素抽出(4015MPa程度の高圧力の二酸化炭素を溶剤として利用)により茶葉からカフェインの抽出を行いそのサンプルを GCMSにて分析する
図 71 カフェインの分子構造 図 72 物質の分析 個々の物質や装置についてはインターネットにより下記のWebサイトのフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』などにより調べるとよいカフェイン(caffeine)はアルカロイドの一種プリン環を持つプリンアルカロイドの一種でコーヒー類に含まれることか
らこの名がある化学名は137-トリメチルキサンチン(C8H10N4O2) コーヒーコーラ緑茶紅茶ガラナココアなどに含まれる(量は緑茶が一番多い)結晶は一水和物(C8H10N4O2bullH2O)もしくは無水物(無水カフェインC8H10N4O2)として得られ
る白色の針状または六角柱状結晶で匂いはなく味は苦い融点は 238昇華性がある出典フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』httpwwwwikipediaorg 装置「GCMS」httpwwwanshimadzucojpproductsgcmsqp2010htm (島津) 「超臨界抽出装置」httpwwwkagakucomjasco39-49html (日本分光)
50
レポート課題 1茶葉中に含まれるカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドの中から3つの物質を選びその物質について調べた結果を A4 レポート用紙2枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
2GCMS についてA4 レポート用紙1枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
3与えられたサンプルは茶葉1gから抽出されたのである実験結果よりもとの茶葉
1g中に含まれるカフェインの量を推算し計算式とあわせて示すこと 72 原理および装置 実験で使用する島津製の GCMS装置の全体図を図 73に原理の概略を図 74に示す
1
23
4
5
67 8
9
10
キャリアーガス
試料物質
1ボンベ(He)2圧力計3マイクロシリンジ4サンプラー5試料導入部6分離カラム
7セパレーター8イオン化室9磁石10電子増倍管11記録計
11
図 74 ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)の概略図
サンプルフォルダー
51
GCMS 装置は分離部である図中の 1~6 のガスクロマトグラフ(GC)と7~11 の検出部である質量分析計(MS)から構成される 3のマイクロシリンジを用いて試料を GCMSに導入する導入された試料は5試料導入部でガス化され6分離カラムに導入される分離カラムには吸着剤が充填されおり混合物の試料を導入した場合各物質と吸着剤との
親和性の違いにより各物質の分離カラムから排出されるタイミングは異なる分離カラム
を排出された試料は8イオン化室でイオン化され10電子倍増管にて検出される アセトンに溶解したカフェインの GCMSによる分析結果の一例を以下に示す図 75にク
ロマトグラム図 76にカフェインのピークのマススペクトルを示す
図 75 GCMSにより得られたクロマトグラム
横軸がリテンションタイムで縦軸がピーク強度を表す
図 76 カフェインのマススペクトルとカフェイン(分子量MW=194)の構造
(図 75中のリテンションタイム 126min付近のピークに起因するマススペクトル) 茶葉中にはカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイド以外にも繊維であるセルロースなど多くの物質が含まれているため茶葉そのものを
そのままサンプルとしてGCMSで分析することは困難であるセルロースなどの分子量の大きな物質はカラムに詰まってしまい分析できないそこで今回は超臨界二酸化炭素
による抽出により主にカフェインを他の物質と分離抽出した通常よく利用されるアセ
トン抽出(アセトンに茶葉を浸し特定の成分を抽出する)ではカフェイン以外にも多く
の物質が抽出されるため図 75 のような単独のピークを得ることは難しく複数のピークがクロマトグラムに見られるこのサンプル(この場合茶葉からの抽出物)にはカフェ
イン以外の不純物は少なかったがガスクロマトグラフの分離カラムによりさらにそれ
らの混合物が精度よく分離されるクロマトグラムのピークはそれらサンプル中に含まれ
ていた個々の物質を表しているクロマトグラムのピークを選択することで分子構造解析
したい物質を選んだことになる選択したクロマトグラムのピークの表している物質(ここ
ではカフェイン)に対応するマススペクトルが図 76 に表示されているマススペクトル
52
で横軸がその成分(ここではカフェイン)分子を構成している原子の原子量で縦軸がそ
の量を表しているのでマススペクトルから分子構造を解析するためにコンピュータ内
に蓄えられた物質ごとのマススペクトルデータと今回測定したマススペクトル(分子内に含
まれている各原子の数)を比較することで測定したサンプル中のクロマトピークを選択し
た分子がどのような原子をどれだけ含んだ分子であったかがわかりそれからその物質
がどのような分子構造の物質である可能性が高いかをコンピュータが検索し結果を示す 73 実験サンプルの設置と GCMS装置の操作方法 実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS装置のサンプルフォルダ
ー(図 73)にセットするこのサンプルは茶葉 1gを 50ccの高圧セルにて超臨界二酸化炭素を利用して4015MPa2時間接触の条件で抽出した固体を10gのアセトンに溶かしたものである またコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に装置および装置制
御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 本実験で使用する GCMS の操作は全てコンピュータのモニター上で GCMS の解析プログラムソフトを使用することで行うコンピュータの操作方法を以下に示す なおコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS 装置のサンプルフォルダー(図 73)にセットするまた装置および装置制御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 1)パソコンのデスクトップ上のアイコン「GCMS 分析」をクリックすると以下のようにGCMS制御プログラムを起動するその後「OK」ボタンをクリックする
図 77 GCMD分析用ソフトウェア「GCMS分析」の起動
まず「GC-MS分析」をクリック
「OK」ボタンをクリック
53
2)制御プログラムが起動されパソコンと GCMSの接続が開始される
図 78 「GCMS分析」の接続確認画面 3)GCMSとパソコンの接続が完了すると以下のような画面が表示される
図 79 「GCMS分析」操作画面
4)マススペクトルによる分子構造の解析 サンプル(この場合茶葉からの抽出物)には多くの物質が混じり合っていたがガス
クロマトグラフの分離カラムによりそれらの混合物が精度よく分離されるクロマトグラ
ムのピークはそれらサンプル中に含まれていた個々の物質を表しているクロマトグラム
のピークを選択することで分子構造解析したい物質を選んだことになる選択したクロマ
トグラムのピークの表している物質(ここではカフェイン)に対応するマススペクトルを選
択するマススペクトルは横軸が原子量で縦軸がその量を表しているのでマススペク
トルから分子構造を解析するために「定性処理」を行う シミラリティ検索結果が表示され分析により得られたスペクトルと類似のスペクトルを有
する物質の一覧が表示される上部に表示される物質ほどスペクトルが一致していること
を示す
接続状況が表示される
「トップへ」
をクリック
54
図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果
図 711 表示スペクトルのシミラリティ検索結果 10)図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果の印刷 「レポート(R)」をクリックし「検索結果(R)」をクリックすると検索結果が印刷される
GC-MS 分析で得られたマスス
ペクトル
データベース中
のマススペクト
ル
55
参考資料 生理活性物質の精製 カフェインの利尿作用のように生物活動に影響を与える物質を生理活性物質といいます
天然物には生理活性物質を多く含むものがあります一般に天然物は多くの成分を含ん
でおり特定の生理活性物質を分離抽出するには種々の分離技術が必要ですまた生
理活性物質には60以上の温度でその生理活性を失う(失活)ものや溶剤として広く用いられているクロロホルムなどの有機溶剤中で失活するものが多いそこでこれら生理活性
物質の分離精製技術の開発が望まれており30~60程度のマイルドな温度条件で操作できる二酸化炭素を機能性溶媒として利用する超臨界抽出も有効な分離技術として注目されて
いる超臨界二酸化炭素は気体と液体の中間の性質を持ち物質の分離に役立っています 臨界点付近の高密度気体は超臨界ガスまたは超臨界流体と呼ばれ臨界圧力前後でそ
の溶解能力が著しく変化することから工業的にも種々の分野で利用されています一例と
して超臨界二酸化炭素(SC-CO2)によるコーヒー豆からのカフェインの抽出プロセス(a)
ならびに超臨界二酸化炭素に対するカフェインの溶解度(b)を図に示します図(c)に示す
ように固体のカフェインがガスである超臨界二酸化炭素に溶解します
このように超臨界二酸化炭素を用いた技術はコーヒー豆からのカフェインの抽出プロ
ポリスからの生理活性物質の抽出に利用されています
図 超臨界二酸化炭素抽出を用いたコーヒー豆からのカフェインの抽出
56
付表 最小二乗法について 直線で近似する場合 f (x) = a0 + a1x (A1-1) 式(A1-1)のように近似させるとする測定値 yiとの残差を eiとすると式(A1-2)のようになる ei = yi - f (xi) = yi - ( a0 + a1xi ) (A1-2) ここで式(A1-2)の両辺を二乗してその i に関する総和をとりその値を S とすると次式となる
sumsum==
+minus==n
iii
n
ii xaayeS
1
210
1
2 )( (A1-3)
S を最小化するような a0a1を求める式(A1-3)を a0a1について偏微分すると次式とな
る
sum=
+minuspartpart
=partpart n
iii xaay
aaS
1
210
00)( sum
=
+minusminus=n
iii xaay
110 )(2 (A1-4)
同様にa1について編微分すると次式のようになる
sum=
+minusminus=partpart n
iiii xxaay
aS
110
1])([2 (A1-5)
Sが最小となる時は次式が同時に満たされる時である
00=
partpartaS
01=
partpartaS
(A1-6)
よって誤差が最小となる a0a1を求めるためには式(A1-6)を連立して解けばよい
sumsumsum===
+=n
ii
n
i
n
ii xaay
111
10 1 (A1-7)
sumsumsum===
+=n
ii
n
ii
n
iii xaxaxy
1
2
11
10 (A1-8)
式(A1-7)と式(A1-8)を a0a1を変数とみなし連立して解くと次式を得る
n組のデータ(xiyi)(i=12hellipn)に対して回帰直線 y= a0 + a1x を最小二乗法で求めて出力しデータ番号 iデータ yi直線で推定した値 )( ii bxay += および残差
iii yy minus=ε を出力するようなプログラムをつくりたい基礎式を導出せよ (ヒント残差の二乗の和が最小になるように係数 a0a1)を定めるのが最小二乗法
である)
57
sumsum
sumsumsumsum
==
====
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
n
ii
n
ii
xxn
xxyyxa
1
2
1
2
1111
2
0
)(
))(())(( (A1-9)
sumsum
sumsumsum
==
===
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
xxn
yxxyna
1
2
1
2
1111
)(
))(()( (A1-10)
よって式(A1-9)(A1-10)を用いれば最も誤差を小さくするような直線 y = a0 + a1x が求められる
y=a1x+a0 にて近似
誤差 ei
x
y
誤差が最小になる関数(直線 y=a1x+a0の場合)
図1 最小二乗による近似
誤差の和Sが最小
S
a0
a1
直線 y=a1x+a0 の近似
誤差の全体の和はS=Σei=Σyi-(a1xi+a0)
Sは変曲点にて最小値を示すすなわち(partSparta0)=0 (partSparta1)=0
図2 a0a1とSの関係
7
実験ノートは市販の大学ノートを使用して下さい各実験内容についてページを変
えて後で見て分かりやすいように書いて下さい上から5行程度に実験条件その他
必要事項日付などを記入する右端5cm程度の幅を備考欄とし実験中に気付いたこ
とその他必要事項を記入する使用した溶液の濃度ファクターなどが記録されていない場合がよくありますレポート作成時に困りますので忘れずに各自が実験ノートに記入
しましょう レポート表紙 レポートの表紙(市販の A4 のレポート用紙でよい)には以下のような表紙をつけること各ページにページナンバーを記入すること提出時には上端をホッチキスで閉じるこ
と記入はワープロ鉛筆でもよい
工業物理化学実験レポート(三島担当分)
実験項目 実 験 名 提出者 福岡大学工学部化学システム工学科 A組 5班 TK0315001 七隈太郎 共同実験者 福大次郎 干隈三郎 城南花子 早良五郎 実験日 平成 年 月 日 ~ 月 日 実験場所 化学工学共同実験室 B(6号館 1階 617室) 条件 気温 気圧 湿度 天候 提出日 平成 年 月 日
8
3 吸着 31 はじめに 活性炭 多孔質(多くの小さい穴がある)の吸着剤 酢酸 活性炭に吸着されるモデル分子
吸着実験データの整理によく使用する記号 n 溶質の吸着量 C 溶液中の溶質の濃度 単位は [ ] [ ] 考えてみよう 1) 右図のような低い濃度の酢酸水溶液の入ったビーカーに活性炭 をを加えた場合濃度はどうなるでしょうか
2)吸着された酢酸の物質量(n[mol])を測定するにはどのような 実験をすればよいでしょうか 図 1 活性炭
32 吸着操作 工場排液中の微量は有機物などを活性炭などの吸着剤で除去する工業操作を吸着操作と言
います蒸留抽出乾燥撹拌などの単位操作と同様に化学工業プロセスの重要な分離技
術です吸着操作は他の分離操作に比べてきわめて低濃度の範囲まで物質分離ができる特
徴がありますそのため近年問題となっている大気および水質の汚染汚濁に対する有力
な対策技術として注目されています 本実験では活性炭に対する酢酸の吸着挙動を調べることにより活性炭の吸着特性(吸
着平衡定数)を知り吸着操作の理論的な取り扱いについて学習しましょう 吸着量を求めてみましょうこの例では濃度換算が容易になるように溶液濃度をℓ でなく m3 単位とした) 低濃度のフェノールを含む排水の活性炭吸着実験を行って図 1のような吸着等温線(一
定温度で測定した溶液濃度と吸着量の関係)を得たいまフェノール濃度が 40mol m3の
排水 40m3に 60kgの新しい活性炭を投入して平衡に達したとき水中のフェノール濃度(mol m3)および 1gの活性炭のフェノール吸着量(molg)を求めよ
活性炭 1gに吸着するフェノールの物質量をn[molg]活性炭の量を W[g]とすると
フェノール排水 V[m3] 吸着前のフェノール濃度 C0[mol m3] フェノール分子
+
活性炭に吸着した溶質(フェノール)の量 nW (1)
溶液から取り除かれた溶質の量 (C0-C)V (2)
物質収支式より
nW=(C0-C)V (3) よって
VW
CCn
minus= 0 = )( 0CC
WV
minusminus (4)
9
図3 吸着等温度線と操作線
この操作からわかるように吸着データ(この実験で求める)が存在すれば
吸着等温線と操作線の交点から吸着処理しようとする溶液の体積 V と初濃度 C0
に対して使用する活性炭の質量 W により活性炭に吸着する溶質の量 n および吸着後の溶液の溶質濃度 C が計算で予測できますこの吸着データから吸着装置を設計することができます実際に吸着装置(吸着塔)の設計の様子を次ペー
ジの例題1に示しておきます興味のある人は5 段に積み重ねた吸着層を 04 mol ℓの濃度の廃液が通過すると濃度が 002 mol ℓ 以下になることを確認し吸着塔の設計方法を考えてみて下さい なお先ほど求めた式 (4)は皆さんが行う吸着実験データ(吸着等温線を作るもととなる吸着後の溶質濃度 C と各濃度に対する吸着量 n の関係)を求める場合にも使用します 問題1 質量 W=1gの活性炭を用いて体積 V=100cm3の酢酸溶液の吸着実験を行った
ところ活性炭と接触する前の酢酸溶液の初濃度はC0=0512moldm3であった
(dm3デッシメータ 3 乗= ℓリットル)吸着後の溶液を活性炭と分離してその酢酸溶液の濃度を 01N(01 規定の)水酸化ナトリウム水溶液で滴定して求めたところC=0478moldm3 であった1gの活性炭に吸着された酢酸の物質量n [mol]を式 (4)より求めよ
活性炭 1kg当たりに吸着された
フェノールの量 n[molg]
吸着操作後
の溶液のフ
ェノール濃
度 C
吸着等温線の一例 Langmuir式
KCKCnn
+=
infin
1
操作線
)( 0CCWVn minusminus=
傾き-23
初濃度 C0
[molm3]
吸着後の濃度 Cと吸着量 n
初濃度C0と傾き-VWを用いて操作線を引き
吸着等温線との交点を
求める
ここで(3)式の傾きWV
minus で図 1 における横軸
を通過する直線式(操作線)であるすなわち
)(=- 4032
)40(6040)()( 0
minus
minusminus=minusminus=
C
CCCWVgmoln
10
解答(計算式) )( 0CCWVn minusminus=
minus= ( ) (答) [mol]
例題 1 吸着塔の設計 濃度 C0[molm3]の不純物を含む工業排水(流量 V[m3hr])から不純物を除去するために下図
に示すような各 i段に活性炭を wi[g]含む5段の吸着塔を設計しましょう 各 i 段の出口と入口でのそれぞれの物質濃度 CiCi-1[molm3]とその段での活性炭単位質
量当たりの吸着量 ni[molg]との間に物質収支がなりたち他の部分への吸着は無視できるとするまた溶液中の平衡濃度Ci[molm3]と吸着量ni[molg]の関係はラングミアー(Langmuir)の等温吸着式で与えられるものとするラングミアーの等温吸着式における吸着平衡定数 K
と飽和吸着量 infinn としてはK=8611 infinn =0003262の値を用いる誤差を判定する定数 EPS
としてはEPS=000001を用いよ 図4 吸着塔の段数計算 図5 吸着塔 33 実験目的 一定の温度において活性炭による希酢酸の等温平衡吸着量 nを一定の温度において測定
しそれら測定値の Freundlich 式および Langmuir 式への適合性を比較検討するまたLangmuir式により活性炭の比表面積を求める 34 実験方法 レポートでの実験方法の記述では次のように説明文を必ず付けて下さい また行った方法については過去形「~した」のように記述して下さい 例) 活性炭による酢酸水溶液からの酢酸の吸着実験に次の器具および試薬を使用した [器具] 1000mlメスフラスコ(1)500mlメスシリンダ(1)500ml試薬瓶(5)共栓三
実験レポートを書く場合この「実験目的」を利
用して「緒言」を作成して下さい
実験方法は過去形にて記述
11
角フラスコ(5)2mlホ-ルピペット(2)5mlホ-ルピペット(2)10mlホ-ルピペット(1)100ml ホ-ルピペット(1)50ml ビュレット(1)電子天秤直示天秤(注( )内の数値は個数を表す) [試薬] N10N100-水酸化ナトリウム(NaOH)N10-塩酸(HCl)フェノ-ルフタレイン酢酸活性炭 1)2)および 7)については予め調整済み8)は2日目に実験する 1)酢酸 28mℓ をメスシリンダにて採集しこれを 1000mℓ メスフラスコに入れて蒸留水を加えて 1000mℓとしN2-酢酸を調整した(調整済み)
2)N2-酢酸より順次溶液 500mℓをメスシリンダに取り1000mℓメスフラスコを用いて
N4N8N16N32酢酸溶液を調整し500mℓ試薬瓶保持した 3)共栓三角フラスコ(100mℓ)の空重量を直示天秤にて正確に測定したこれに電子天秤にて測定した活性炭試料約 1gを入れて再び直示天秤にてその重量を正確に測り前後の差から投入した活性炭量を知る
4)活性炭を入れた各々の三角フラスコに各濃度の酢酸溶液 100mℓを正確にホ-ルピペットを用いて入れた(このとき気泡が混入しないように注意した)
5)上記に準備した三角フラスコに栓をしてこれらを所定の温度に設定した恒温槽に浸し
た浸した三角フラスコは約 20分間隔で気泡が混入しないように注意して振り混ぜるこの操作を約 2時間行った
6)次に滴定に用いて約 N10-N100-水酸化ナトリウム溶液 1000mℓを調整し濃度既知の塩酸溶液を用いてその正確な濃度を決定しておく(調整済み)
7)調整された酢酸溶液の各々を6)において標定した N10-水酸化ナトリウム水溶液にフェノ-ルフタレインを指示薬として滴定し各酢酸溶液の濃度を求めた(標定に要する
酢酸量は N2-と N4-の場合は 2mℓN8-と N16-の場合は 5mℓN32では 5mℓをホ-ルピペットで採集するただしN32についての滴定はN100水酸化ナトリウムで滴定した(各濃度について 3回ずつ滴定する)
注)ビュレットは各班に 2 本ある濃度の高い N2 酢酸から測定するので両方のビュレットにはN10-水酸化ナトリウム水溶液を入れて開始する
最重要注意事項
滴定を行う場合安全確保のため必ず安全メガネを着用すること 8)次に各試料溶液を一つずつ手早くろ過しろ過液を N10-水酸化ナトリウムで滴定して平衡濃度を決定した(標定に要する酢酸量は N2-と N4-の場合は 2mℓN8-とN16-の場合は 5mℓN32-では 5mℓをホ-ルピペットで採集したただしN32 ーの場合は N100 ー水酸化ナトリウムで滴定した)
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1) 酢酸溶液の濃度の測定(1日目レポートにこの図は不要) 酢酸 28mℓをメスシリンダにて採集しこれを 1000mℓメスフラスコに入れて蒸留水を加えて 1000mℓとしN2-酢酸を調整する
N2-酢酸より順次溶液500mℓをメスシリンダに取り1000mℓメスフラスコを用いて N4-N8-N16-N32-酢酸溶液を調整し500mℓ試薬瓶に保持する
滴定用のビュレットを N10-N100-水酸化 ナトリウム溶液で共洗いする(3回)
ビーカーに酢酸溶液を少量入れて共洗いを行う (3回)試薬瓶からビーカーに酢酸溶液を滴定に 必要な量だけ取り出す
ホールピペットをビーカーの酢酸溶液を 使用して共洗いを行う(3回)
滴定用の三角フラスコに酢酸溶液を分取する
滴定(滴定は同じ濃度の酢酸溶液を 3回 以上滴定して平均する)
酢酸溶液の濃度計算
滴定による酢酸濃度の決定
1000
1000vfNvx timestimes=times (33)
x酢酸の仕込み液濃度 [molℓ] v酢酸の仕込み液の分取量 [mℓ] NNaOHの規定度 [N] fNaOHのファクター [-] vrsquoNaOHの滴定量 [mℓ] 注)酢酸は 1価の酸なので 1molℓ=1N(1規定)
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式(33)の使用例 酢酸の仕込み液の分取量 v =2 mℓ NaOHの規定度 N = 01 N NaOHのファクター f = 0998 NaOHの滴定量 vrsquo = 985 mℓ である場合 式(33)を利用して酢酸の仕込み液濃度 x[molℓ]を求める
1000
1000vfNvx timestimes=times
vvfNx
timestimes=
49202859998010 =timestimes= molℓ (この xが濃度 C または C0 です)
2)酢酸溶液と活性炭の接触のフローチャート(1日目) 共栓三角フラスコ(100mℓ)の空重量を 直示天秤にて正確に測定する
電子天秤にて活性炭試料約 1g測る
共栓三角フラスコ(100mℓ)に 活性炭試料約 1gを入れる
活性炭試料約 1gを入れた 共栓三角フラスコ(100mℓ) を直示天秤にてその重量を測る
共栓三角フラスコ(100mℓ)の前後の 差から投入した活性炭量を計算する
活性炭を入れた各々の三角フラスコに 各濃度の酢酸溶液 100mℓを正確にホ-ルピペットを用いて入れる(このとき 気泡が混入しないように注意する)
三角フラスコに栓をしてこれらを所定の温度に 設定した恒温槽に浸す浸した三角フラスコは 約 20分間隔で気泡が混入しないように注意して 振り混ぜるこの操作を約 2時間行う
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3)吸着量の測定(2日目) 恒温槽の温度を測る
恒温槽から三角フラスコを一つずつ取り出す
各試料溶液を一つずつ手早くろ過する
活性炭
ろ液を滴定して平衡濃度を決定する
回収
吸着量の計算
Langmuirの吸着等温式Freundlich式のパラメータの決定
グラフの作成
吸着量の計算10001000 times
minus=
wCC
n (34)
n吸着量 [molg] C0 酢酸水溶液中の酢酸の濃度 [molℓ] C ろ液中の酢酸の濃度 [molℓ] w 活性炭の量 [g]
35 実験結果のまとめ方 実験結果は実験レポートを書く場合に考察と並んで重要な部分ですので主な注意事
項をここで説明しておきます グラフの作成n vs C nC vs C ln n vs ln C の 3つのグラフの作成 配布された Excel ファイルを利用し下図のような図を作成してみましょう
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レポートの間違いやすい場所 ①表や図を示す場合次の例のように文章でもその旨を示す [実験結果] 共栓付三角フラスコに活性炭約 1g入れた試料の重量 w[g]を Table1に示す
Table1 調整酢酸濃度を入れる活性炭試料の重量 w [g]
酢酸規定度[N]
活性炭試料の質量w [g]
12 10300
14 10001
18 10126
116 10011
132 10109 酢酸(1)-水(2)-活性炭(3)の 12における吸着平衡の結果を Table 6および Fig1に示すただし活性炭 1gに吸着された酢酸のモル数 n[molg]は次式より求めた
( )10001001
0 timestimesminus=w
CCn b
C0仕込み液中の酢酸濃度 [molℓ] Cbバルク相中の酢酸濃度 [molℓ] w活性炭試料の質量 [g] n吸着量 [molg]
例えばCb=04621C0=04894w=10300の時は次のように計算できる
( ) 026501000100
0300114621048940 =timestimesminus=n
Table6 酢酸(1)-水(2)-活性炭(3)の 12における吸着平衡
吸着された溶質のモル数n[molg]
バルク相中の濃度Cb[moll]
00205 04621
00175 0241
00139 01139
00105 00519
00081 00243 ②得られた図や表の解釈(読者にそれらから読み取ってもらいたい事柄)の説明文を次の
例のように文章で記述する数字や図だけ示して読者に「理解しろ」というようなレポー
トではよくありません Table 6および Fig1よりバルク相中の酢酸濃度 Cbの増加にともない吸着量 nも増加することがわかったまた吸着量 n の値は酢酸濃度 Cbの増加にともない n=に漸近することがわかる
グラフ(Fig)は次ペ
ージに掲載すること
グラフや表の後にはそれらの結果より得られた知見を文章でも
記入すること
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36 エクセルによる吸着データの整理法 注コンピュータの画面はWindowsXP上での操作になっています他の OS(Windows98 2000
NT)搭載のパソコンでも同様の作業が可能です) 先ほど問1で説明したように溶液濃度の濃度変化から吸着量 nを求めました実験では吸着後の水溶液中の酢酸の濃度 Cと吸着量 nの関係を各濃度の溶液(5種類)について測定しその値を計算します このようなデータの整理には表計算ソフトであるマイクロソフト社の Excelが便利です
Excel の起動方法はそのソフトがインストール(設定)されているコンピュータにより若干方法が異なることがありますがほとんど同じですここでは福岡大学の総合情報処理
センターのコンピュータの設定に従って説明します 表計算をしてみましょう セルとは セルというのは最小単位の四角のことです例えば「(Aの1)またはA1というセルセル
B1」のようにセルという言葉を使いますセル A1に1という数字を入れてみましょうセルA1をクリックしてキーボードから「1」と入力しキーボードの「Enter」キーを押します
図 5 Excelの入力例1 図 6 Excelの入力例2
次にセル B1に「5」という数字を入れましょう次にセル C1にセル A1と B1に記入された数値の和を表示させてみましょう 下の図のようにセル C1をクリックします上の「 fx 」と書かれた右のボックス(何かを書くところに)「 =A1+B1 」と書きましょうそして Enterを押すとセル C1に 6と表示されます
図 Excelを用いた関数計算 実験では吸着後の水溶液中の酢酸の濃度 Cと吸着量 nの関係を各濃度の溶液(5種類)について測定しましたこのデータに対してExcelを用いて表計算してみましょうまず先ほど記述したセル A1~A3は「Delete」(デリート)キーで値を削除しましょう
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次にセル A5~A9に活性炭と接触する前の酢酸水溶液の初濃度 C0[moldm3]セル
B5~B9に活性炭と接触後分離した酢酸水溶液の濃度 C[moldm3]セル E5~E9に活性炭の質量 W[g]をキーボードから入力します作成した一例を次に示します
図 8 Excelによる吸着量nの計算 ここで1gの活性炭に吸着された酢酸の物質量n [mol]を式 (4)より計算できるのでセル C 5~C9に次の関数式を記述します式の内容としては
)( 0CCWVn minusminus=
となるように記述するので実際の Excelの関数としては次のように行います セル C 5をクリックし関数ボックス(fxの右)に「=(A5 ndash B5)01E5」と記述(半角または直接入力形式で)し「Enter」キーを押し確定しますこの関数はフィルハンドルを利用してセル C 6~C9にコピーしますただし実験で溶液は 100cm3使用しましたが
溶液の濃度 C が[moldm3]の単位ですので100cm3=01dm3 となり関数式の中では
V=01 dm3としています なおグラフの記述方法やフィルハンドルの使用方法については化学工学プログラミ
ングなどの補助資料を参考にして下さいまた実験の際に配布した Excel ファイル(ファイル名ad_graxls)を使用すると実験データの理論的な解析も容易にできますので試してみましょうExcelファイル(ファイル名)「ad_graxls」の使用方法は次節で説明します 36 実験結果の考察方法 (吸着実験について) 実験結果の考察方法は種々の方法がありますがここでは一例として理論と比較する
方法を示します実験結果として下図(左)のようなグラフができましたこのような実
験結果に対して理論的な考察を行ってみましょうここでは次節で説明するラングミュ
ア(Langmuir)の単分子吸着モデルで計算した理論線と実験と比較したものを下図右に示しますこの図を作る方法は次節で説明しますレポートの考察の部分はラングミュア
(Langmuir)の単分子吸着モデルの式の導出から書いて下さい 理論を作る場合幾つかの仮定をしますがその理論が多くの実験結果をうまく説明でき
ている場合その仮定がある程度妥当なものであったことがわかります指針書に書いてあ
った以外の理論についても興味があれいばためしてみましょう
セル C5をクリックし関数ボックス( fx の右)に「=(A5 ndash B5)01E5」と記述(半角または直接入力
形式で)します
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ラングミュア(Langmuir)の単分子吸着モデルを用いて理論値を計算するには配布され
た Excelファイル(ファイル名)「ad_graxls」を使用すると便利ですその使用方法を以下に示します配布プログラムは化学工学プログラミングの講義の場合と同様に総合情報処
理センターの共通領域にあります各自コピーして使用して下さいコピーするには化
学工学プログラミングの講義の場合と同様にコピーしようとするファイルを共通領域から
自分の使用しているコンピュータのデスクトップにドラッグドロップします共通領域で
ファイルを開くとファイルの消去などで他の人が使えなくなりますので共通領域でファイ
ルをダブルクリックしないようにして下さい誤って共通領域でファイルをダブルクリック
した場合はそのファイルを閉じるボタンをクリックし閉じて下さい 各自のコンピュータに保存した Excelのファイル(ファイル名ad_graxls)をダブルクリ
ックして開きます自宅へ持ち帰る場合各自のフラッシュメモリーやフロッピーディスク
を使用しまたはメールを使用して添付ファイルで送信できます各自のフラッシュメモ
リーやフロッピーディスクに保存してあるファイルを再編集する場合はフラッシュメモリ
ーやフロッピーディスクをコンピュータの USB 端子またはフロッピーディスクドライブに挿入します次にデスクトップ上にあるマイコンピュータのアイコンをダブルクリックし
ます もしデスクトップ上に上のアイコンが無ければ画
面左下の「スタート」ボタンからマイコンピュータをク
リックしてくださいすると次のような画面が立ち上が
ります
ラングミュア(Langmuir)の単分子吸着モデルで計算した
理論線
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その中からフラッシュメモリーの場合は「リムーバブルディスク」をフロッピーディ
スクの場合は「35インチ FD」のアイコンをダブルクリックしてくださいファイルが保存されていれば次の画面が出てきます
この画面の中の「ad_graxls」ファイルをデスクト
ップにコピーしますまず「ad_graxls」ファイルを左クリックしますこの時クリックした指はは
ずさないようにしますその状態のままデスクトッ
プまでファイルを移動させますそしてデスクト
ップ上の任意の場所でクリックした指をはずします
これでデスクトップ上に「ad_graxls」のファイルがコピーされましたのでデスクトップにコピーさ
れたファイルをダブルクリックして開きますコピ
ー操作が上手くいかなかった場合もう一度移動の操作を行ってください
必ずデスクトップにコピーしてから開く操作を行って下さいフロッピーディスクから直接
開いて操作を行った場合正しく保存されない可能性があります 「ad_graxls」のファイルを開くと次のような画面が立ち上がりますもし画面が違う場合は画面の下部にある「吸着データ」のタグ をクリックしてくださいこの画面
でデータの処理や計算を行いますでは実際の操作に入る前に予めこのファイルに名前
を付けて保存しておきますまずExcelの画面のツールバー「ファイル」から「名前を付けて保存」をクリックします下のような画面が起動します
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ファイルの保存先を変えたい場合画面上部のボタンをクリックし保存先にデスクトッ
プを選択します次にファイル名の部分に各自ファイル名を入力しますファイル名は何
でも良いですが分かり易い名前にしておくとファイルの管理がやり易くなります日付や
数字を入れると同名のファイルをいくつも管理する場合に便利ですここでは「吸着実験デ
ータ整理 4月 01」とし「保存」ボタンをクリックします
ファイル名変更後Excelの画面上部のタイトルバーのタイトルが先ほどの名前(上の図とは異なります)になっていることを確認してください
この操作を行うことによって元のデータである「ad_graxls」を変更してしまう心配がなくなります元のデータである「ad_graxls」はファイルが破損しまたは間違った操作の結果を誤って保存してしまった場合などの補助ファイルとなりますので大切に保管しておいて
下さい今後配布するデータは先ほど説明した手順で名前を変えて保存し元のデータに
直接変更を加えないようにして下さい ここから実際の作業に入ります初期状態では模擬のデータが入力されています入力
データは予め計算しておいた酢酸濃度Cb[moll](濃度を Cと表示している場合もあります)と活性炭吸着量 n[molg]になります下の画面の丸で囲んだ部分がそれぞれの値でBCカラム(列)の 4~9行には数値が入力されています関数ではありませんこのデータを利用して実際のデータ解析を行ってみましょう下記のように行うと幾つかのグラフが
現れ実験データに対してラングミアーの単分子吸着を仮定したモデルを用いて精度よ
く計算線が描けることがわかります 今回はCbnの値を入力する必要はありませんExcelが自動的に計算を行って結果を表示するようになっていますつ
まりセル D5に「=B5C5」と関数を入力しこの関数に対してフィルハンド
ルを利用してセル D6~D9へコピーし
ファイルの保存先を変えたい場合画面
上部のボタンをクリックし保存先に
デスクトップを選択します
変更するファイル名はここをクリッ
クして書き換えます
名前を変更したらここをク
リックして保存します
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まています 次に酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着量 n[molg]の関係および酢酸濃度 Cb[molL]と Cbn[gL]の関係をグラフ化します今回は自動的にグラフが作成されるようになっていますので複
雑な操作は必要ありません ここではデータに対してそれを精度よく表現する近似式をグラフ上に描きその関数
を数値として求める方法を Excelで練習してみましょう
グラフを表示させるには画面の下にある「Graph1」もしくは「Graph2」のタグ
をクリックします「Graph1」には酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着量n[molg]の関係のグラフが「Graph2」には酢酸濃度 Cb[molL]と Cbn[gL]の関係のグラフが表示されます「Graph2」はLangmuir の等温吸着式による相関を表したもので横軸に酢酸濃度 Cb[molL]をとり縦軸に酢酸濃度 Cb[molL]を活性炭吸着量 n[molg]で除した値 Cbn[gL]を示していますLangmuir の等温吸着式についてはこの後の章で説明してありますので各自読んで理解して下さいLangmuirの等温吸着式では式中の定数 ninfin(飽和吸着量)と K(吸着平衡定数)を実験データから最小二乗近似で決定する場合が多くありますここでは
その例を取り上げてデータに対してそれを精度よく表現する近似式をグラフ上に描き
その関数を数値として求める方法(最小二乗法最小二乗については付録に示しており
また化学工学プログラミングの講義においても説明します)を Excelで練習します 配布された Excel ファイル「ad_graxls」では実験点が表示されているだけでそれを精度よく表現する近似式の直線のグラフは「Graph2」に表示されていません今から次の手順で「Graph2」の図(グラフ)に近似式の直線のグラフを表示しますExcel の場合近似曲線(ここでは直線)を求める場合コンピュータが自動的に最小二乗法を使って近似曲線
を計算しています
「Graph1」の画面 「Graph2」の画面
Excelの sheetが表示されたらまずファイル名を変えデスク
トップに保存して下さい次
にGraph2のタックを左クリックして最小二乗法のグラフを
確認して下さい
22
38 Langmuirの等温吸着式による相関 はじめにLangmuir式の定数 ninfinと Kを決定するために「Graph2」酢酸濃度 Cb[molL]と
Cbn[gL]の関係のグラフから最小二乗法により直線の式を求めますExcelを用いてデータに対して近似直線のグラフを描き最小二乗法の直線の式を求めます
次のような「近似曲線の追加」のウィンドウが現れたら今回は線形近似(直線で近似
y=ax+b の式)を選びますので線形近似が黒色に反転していることを確認して「近似曲線の追加」のウィンドウの右下の「OK」ボタンをクリックして下さい
実験点の何れかにポインタをあわせて
右クリックする
近似曲線の追加(R)を選択して左クリックする
「線形近似」であること
を確認して「OK」ボタンをクリックします
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「近似曲線の書式設定」
のウィンドウでオプシ
ョンから「グラブの書式
を表示する」の前を選ん
でチェック(前のチェッ
クボックスをクリック)
した後「OK」を押す
現れた直線にポインタをあわせて
左クリックすると「近似曲線の書式
設定」のウインドウが表示されます
ここをクリックします
この「オプション」のタ
グをクリックします
「y=」の関数
が現れるのでここ
をクリックする
式の文字フォントが初期値
「8」と小さいのでここ
のボタンをクリックし
フォントサイズを選ぶリス
トボックスを表示し「22」程度の大きなサイズを選択
しクリックする
24
「Graph2」酢酸濃度 Cb[molL]と Cbn[gL]の関係のグラフから最小二乗法により直線の式がこのように求められましたExcel を用いてデータに対して近似直線のグラフを描き最小二乗法の直線の式を求めるこの方法は他の実験データの解析などにも利用できますので
各自活用して下さい 表示された関数式「y=43865+2654」はノートにメモして下さいこの傾き 43865と
切片 2654からLangmuir式の定数 ninfinと Kを決定します決定方法の詳細はこの後の 36 の Langmuir式のパラメータ決定法に示しています ラングミュアの等温吸着式を変形すると次式となる
CCnKnCKn
CCKn
Cβ+α+
==
+= infininfininfin
11)1(
ただしα=1ninfinβ=1(ninfinK)とするこの式より Cnを縦軸Cを横軸とした関係のグラフは傾きα=1ninfin切片β=1(ninfinK)の直線関係を与えることを示しています そこでExcelのシートを利用してこの値からLangmuir式の定数 ninfinと Kを次のように決定しますセル C18D18に Graph2で求めた数値 2654と 43865を代入しますその後D19と C19に関数を ldquo=1D18rdquoとrdquo=D18C18ldquoを代入しますセル内の式は半角で入力してください
現れた関数の文字フォン
トを大きく(例えば 22)してその数字をメモし
吸着データシートの C18と D18に記入する
C18D18 に Graph2 で求めた値 2654 と 43865 を代入した後D19 と C19 に関数を ldquo=1D18rdquoとrdquo=D18C18ldquoを代入する
25
この Excel表示では最小二乗法を用いて決定した傾きαと切片βを用いて α=1ninfin=43865 β=1(ninfinK)=2654 得られた傾きおよび切片よりninfinおよび Kは次のように求まる
ninfin=1α=1D18=000228 molg-1 K =(1ninfin)β=αβ=D18C18=165
つまりセル D19にはninfinの値がセル C19にはKの値が表示されますこれらの値はラングミュア(Langmuir)の単分子吸着モデルで計算した理論線と実験と比較する場合に利用します実験結果に対して理論的な考察を行う例としてラングミュア(Langmuir)の単分子吸着モデルで理論線を計算し実験と比較するにはこの Excelファイルを利用して次のように計算しグラフに表示します セル F5~F30 には溶液中に残る酢酸濃度 Cb[molL]に対する活性炭に吸着された吸着量n[molg]の関係のグラフ「Graph1」の横軸の酢酸濃度 Cb[molL]の適当な値が既に入力してありますこれらのそれぞの酢酸濃度 Cb[molL]に対する吸着された酢酸の吸着量 n[molg]の理論値をラングミュア(Langmuir)式で計算しますラングミュア式は次式で与えられます
KCKCnn
+=
infin
1 (310)
ここでこの実験データを最も精度よく計算できるように決定した ninfinおよび K は上述のようにninfin=1α=1D18=000228 molg-1 K =(1ninfin)β=αβ=D18C18=165 でありこれらの値はセル D19にninfinの値がセル C19にKの値が表示されていますこの値を利用して「Graph1」に計算線を描くにはまずセル G5~G30 にセル F5~F30 のそれぞれの酢酸濃度 Cb[molL]に対する吸着された酢酸の吸着量 n[molg]の理論値をラングミュア式で計算しますそのためにはセル G5 にラングミュア式を次のように記述しますただしセル D19の ninfinの値セル C19の Kの値は常に同じセルから参照するので絶対参照($マークを付けて$D$19 $C$19と記述します)で記述します
Langmuir式をセル G5に記述するただし濃度はF5の値を相対参照しD19と C19は絶対参照($マークが必要)することを忘れないように
セルG5に記述すべき数式
=$D$19$C$19F5(1+$C$19F5)
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G5記述後フィルハンドルを使用してG5の関数を G6~G30までコピーします Sheet1から Graph1 のタグをクリックしGraph1 に計算線が表示されたことを確認しましょうこれでラングミュア式によるデータの解析は終了です実験値と理論値を比較して現象
について考察してみて下さいラングミュア式を理論的に導く場合にある仮定をしている
のですがその仮定をしているラングミュア式が実験データを精度よく計算できていれば
その仮定が妥当なもとであったと考察できます 与えられたモデルデータでラングミュア式によるデータ解析ができれば他の理論(例え
ばフロインドリッヒFreundlich式や BET式レポートはどちらか一方でも可です) についてもExcel で計算してみましょうレポートには自分のデータについてここで行った内容と同様に計算しその結果を考察に記述して下さい 自分のデータについて同様の計算をするにはまずいままで計算を行った Excel ファ
イルを保存しますデータを自分の実験データに置き換える前に Excel ファイルをさらに別の名前で保存します与えられた Excel ファイルは初期状態では模擬のデータが入力されているので今回自分達の実験したデータを入力していきます入力するデータは予め計算
しておいた酢酸濃度 Cb[moll]と活性炭吸着量 n[molg]になります下の画面の丸で囲んだ部分にそれぞれ自分の実験データを入力していきます
今回はCbnの値を入力する必要はありませんExcelが自動的に計算を行って結果を表示するようになっています 次に酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着
量 n[molg]の関係および酢酸濃度Cb[molL]と Cbn[gL]の関係をグラフ化します今回は自動的にグラフが作成
されるようになっていますので操作は必
要ありません 39 Freundlichの等温吸着式による相関 今回の実験で得られた酢酸濃度 Cbと活性炭吸着量 nのデータを利用してFreundlichの等温吸着式の定数 abの値を求めFreundlichの等温吸着式の理論線をグラフに追加します ここでFreundlich式は次式で表されます
bbaCn1
=
このままでは定数 abの値を決定することが難しいので上式の両辺の対数をとり線形化しますすると次式となります
bCb
an ln1lnln +=
ここでln Cbと ln nの関係をグラフにプロットすれば傾き 1b切片 ln aの直線関係が得られますしたがって実験データである酢酸濃度 Cbと活性炭吸着量 nの値の対数をそれぞれ計算します配布した「ad_graxls」ファイルを開き「吸着データ」シートの任意の部分に以下のような表を作成します
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次にln Cb[-]の列の最初のセルに以下の数式を入力します
=ln(B5) 上式中の「B5」は Cb の値の最初のセルの位置を指します各個人の位置によって変更してください
次にln n[-]の列の最初のセルに以下の数式を入力します
=ln(C5) 上式中の「C5」は nの値の最初のセルの位置を指します各個人の位置によって変更してください
ここでln Cb[-]ln n[-]の値に対しそれぞれオートフィルを行い計算させますすると以下のようなデータが完成します
計算した ln Cb[-]ln n[-]の値をグラフにプロットし最小二乗法による直線式を求めます
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ここで以下のような直線の式が得られたとします
9135ln31690ln913531690 minus=there4minus= bCnxy
上式より切片は-5913傾きは 03169となるので以下の要領で定数 a1bを計算します ==there4minus= minus 91359135ln eaa 000270
316901=
b
a の値を Excel で計算させる場合は任意のセルに以下のような数式を入力することで求めることができます
=exp(-5913) これでFerundlich等温吸着式の定数 a1bの値が決定しましたこの値は後で使うのでノートなどにメモしておいてください 次に決定した Ferundlich 等温吸着式の定数 a1b の値を用いてFerundlich 等温吸着式のグラフを作成します先ほども示したように Ferundlich等温吸着式は次式で表されます
bbaCn1
=
従って定数 aと 1bの値はすでに決定しているので任意の Cbの値に対する nの値を数点求めればFerundlich等温吸着式で求めた理論線が得られます以下の操作で理論線を引くことができます Langmuir 等温吸着式による相関のときと同様にExcel の「吸着データ」のシート上の任意の場所に以下のような表を作成します
次に Ferundlich等温吸着式に従いnの値を計算します
bbaCn1
=
式中の定数 a1bは先ほど計算した値を用いますしたがって式は次のようになります
31690002700 bCn times=
この式を Excelのセル内に記入すれば計算ができます次の
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ように記入します
=00027G5^03169 ここで式中の「G5」は Cbの値が 0のセルを指しています各個人の位置によって変えてください 次に式を記入したセルを Cbの値が 05のところまでオートフィルを行いますそうするとすべての Cbに対して nの値が計算されます
これで Freundlich等温吸着式のデータが完成しましたので次に「Graph1」酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着量 n[molg]の関係のグラフにこのデータを追加し理論線を引きます理論線の引き方は Langmuirによる相関のときと同様の操作を行ってください グラフの書式等を変更し整理すると以下のようなグラフが出来上がります
310 吸着等温線とは 固体の吸着剤を溶液と接触させる時一定量の吸着剤によって吸着される溶質の量は温度一定ならば溶質の濃度の関数になる一定温度での吸着量を温度に対してプロットした時に
得られる曲線を吸着等温線というこの吸着等温線を比較的よく表す経験式として次の
Freundlich式がある
n=aC1b (1) ここで n は吸着剤の質量あたりの吸着量C は吸着平衡濃度a と b は実験から決定されるパラメータであるがその物理的意味は多少希薄である これに対し理論的な意味を持つものに次のラングニュア(Langmuir)の吸着等温式がある
30
KCKCnn
+=
infin
1 (2)
ただしninfinは飽和吸着量Kは吸着平衡定数であるこの式は
1)吸着分子が固体表面で単分子以上の厚い層を作ることはない 2)吸着分子同士の間の相互作用はない
という二つの仮定にもとに導かれたものである 結果の整理および報告 Freundlich吸着等温式Langmuir吸着等温式の各々のパラメータの最適値を求めよまた活性炭の吸着特性および表面積について考察し化学工学における吸着操作の重要性につい
ても検討せよ 311 吸着等温式 (a) ヘンリー(Henry)型吸着等温式 液相の濃度あるいは気相の圧力が小さい場合吸着分子間の距離が十分に長いため吸着
分子同士の相互作用が無視でき固体表面と吸着分子のみの相互作用で吸着量を決定できる
とき次式のように表される
n=KC (3)
ここでKは比例定数である図 3-1の(a)に示すように濃度 Cと吸着量 nは比例関係があり一般に吸着量が小さい範囲で成立する気体の場合は溶液濃度 Cの代わりに気相圧力 pを用いればよい
濃度(分圧)
濃度(分圧)
濃度(分圧)
濃度(分圧)
吸着量
吸着量
吸着量
吸着量
(a)ヘンリー型 (b)ラングミュア型
(d)BET型(c)フロインドリッヒ型
0
0
0
0
図 3-1 吸着等温式
31
(b)ラングミュア(Langmuir)型吸着等温式 ラングミュアは図 3-2 に示すように固体表面に同等な吸着力を示す吸着サイトがあり
表面に 1分子層だけ吸着する(単分子層吸着)と仮定して平衡状態における吸着量と溶質濃度(気相分圧)のと関係を導いた全吸着点のうち吸着分子に覆われている吸着点の割合
をθ[-]とすると分子の脱着速度 rrsquo[mols-1]はθに比例する比例定数を a[mols-1]とすると次式のように表される
吸着剤
吸着分子
吸着サイト
図 3-2 固体表面上の吸着サイト(Langmuir式の導出) r=aθ (6) また気相からの吸着速度 r[mols-1]は空いている吸着点の割合(1-θ)[-]と溶液濃度 C[molm-3]に比例する rrsquo= b(1-θ)C (7) このときの比例定数を b[m3s-1]とするまた平衡状態では両速度は見かけ上等しいため以下の式が成り立つ aθ=b(1-θ)C (8) これを変形する
CbaCbsdot+
sdot=θ (9)
ここで飽和吸着量を ninfin[molkg-1] ba を K[m3mol-1](Kは吸着平衡定数)とおくと infin=nnθ
となるので次式が得られる
32
KCKCnn
+=
infin
1 (10)
これをラングミュア式と呼ぶ
(c)フロインドリッヒ(Freundlich)型吸着等温式 フロインドリッヒの吸着等温線は図 3-1(c)のように示される
n=aC1b (11) nは吸着量[molkg-1]で aと bはともに吸着定数[-]である (d)BET(Brunauer-Emmett-Teller) 型吸着等温式
BET型の吸着等温線は図 3-1(d)に示されるラングミュア式は表面に 1分子層だけ吸着すると仮定したものであるがBET式は無限分子層まで吸着できる式である図 3-3に示すように吸着した分子がそれぞれ次の層の吸着サイトとなり分子は積み重なって多分子
層に無限層まで吸着できるものとし各層への吸着にラングミュア式を適用すれば次式の
ように表せる
( ) ( )CKCCCKqq
minus+sdotminussdotsdot
=infin
11 (12)
この式は多孔質固体の細孔表面積を窒素ガスの吸着によって測定する際に利用される重要な式
である
表面の吸着サイト
分子上の吸着サイト
図 3-3 多分層吸着モデル
Langmuir式のパラメータ決定法 水溶液からの酢酸の活性炭に対する吸着平衡データ(吸着平衡温度 12)は表 3-1のよ
うに与えられる実験データよりラングミュア式のパラメータ(K吸着平衡定数ninfin飽和吸着量)を最小二乗法で決定せよさらにラングミュア式より決定した ninfinKの値を用いて吸着等温線を計算し計算線として図に示し実験点と比較せよ
33
表 3-1 n C Cnの関係
ラングミュア式は式(310)で与えられるこの式を変形すると次式となる
CKnCK
n infinsdot+
=11
(313)
両辺に Cをかけると以下の式が導出される
CCnKnCKn
CCKn
Cβ+α+
==
+= infininfininfin
11)1( (314)
ただしα=1ninfinβ=1(ninfinK)とする式(314)より Cn と C の関係のグラフプロットは傾きα=1ninfin切片β=1(ninfinK)の直線関係を与えることを示している表 3-1の値を用いて計算した Cnと Cの関係を表 3-1および図 3-4に示す 最小二乗法を用いて傾きαと切片βを決定した α=1ninfin=43865 β=1(ninfinK)=2654 得られた傾きおよび切片よりninfinおよび Kは次のように求まる
ninfin=1α=1D18=000228 molg-1 K =(1ninfin)β=αβ=D18C18=165
0
50
100
150
200
0 200 400 600
C [ molm-3 ]
Cn [ kgm-3 ]
傾き = 1 ninfin
1 ninfinK
切片0
05
1
15
2
25
3
0 100 200 300 400 500
液相の溶質濃度 C [ molm-3 ]
吸着量 n [ molkg-1]
液相と溶質濃度 C [ molm-3 ]
吸着量
n[ m
olk
g-1]
実験点
Langmuir式パラメータninfin 00033 [ molg-1 ]K 00086 [ m3 mol -1 ]
図 3-4 ラングミュア定数の決定 図 3-5 12における酢酸濃度 Cと
吸着量 nの関係
C [molm-3] n [molkg-1] Cn [kgm-3] 460 225 109 529 214
268 199 149 105 060
172 128 732 504 357
34
Freundlich式のパラメータ決定法 酢酸水溶液中における酢酸の活性炭に対する吸着実験を行ったところ以下のような実験デー
タを得たただしCbはバルク相における酢酸濃度n は活性炭に対する酢酸の吸着量を示す
Cb[molL] n[molg] log10Cb log10n 04621 000205 02410 000175 01139 000139 00519 000105 00243 000081
実験データを利用して次式で与えられる Freundlichの等温吸着式の定数 abの値を求めたい
bbaCn1
= (1)
このままでは定数 abの値を決定することが難しいので上式の両辺の対数をとる
bbb
bb
Cb
aCa
aCn
ln1lnlnln
)ln(ln1
1
+=+=
=
(2)
ここで横軸に ln Cb縦軸に ln nの関係をグラフにプロットするすなわち x=ln Cby=ln nと考える
bCb
an ln1lnln += (3)
ここで直線式 y=a0+a1xと比較するすなわち
)(1)(ln
1
00
傾き
切片
ba
eaaa a
=
=rarr= (4)
a0および a1は最小二乗法により数値で求められる与えられたデータでは a1= a0= なので a= b= となる この値を n=acb
1bに代入してcb=0~05の範囲で nの値を計算する
35
BET式のパラメータ決定法 BET式は次式で与えられる
)1)(1( KCCCKCnn
+minusminus=
infin
(17)
以下のように BET式の変形を行う
)1()1(
KCCKCnCn+minus
=minusinfin
(18)
(18)式の逆数をとると
KCnCK
KCnKCC
Cn infininfin
minus+=
+minus=
minus)1(1)1(
)1(1
(19)
(19)式の両辺に Cをかえると
KCnCKC
CnC
infin
minus+=
minus))1(1(
)1( (20)
(20)式を変形すると次式が得られる
CKn
KKnCn
Cinfininfin
minus+=
minus11
)1( (21)
C と)-(1 Cn
Cのプロットは傾き
KnKinfin
minus1切片
Kninfin
1の直線関係を与えることを示している
これをグラフにプロットし最小二乗法に傾きおよび切片を求める
36
312 活性炭の比表面積の決定 酢酸分子の構造を以下に示す
Hc-Cb-Ca
Hd
Hb Oa
Ob-Ha
1219deg
Ca Oa
Ob
図 36 酢酸の構造
酢酸の 1分子の吸着面積srsquo [m2]を図 3-6に示すこのとき文献より
Caと Oaの結合距離 1321Å Caと Obの結合距離 1206Å OaCaObの角度 1219deg Cの原子半径 077Å Oの原子半径 062Å
したがって吸着面積 Slsquoは次のようになる
( ) ( ) 2088 10376109931036321 minusminusminus times=timestimestimestimes=s m2
ここで活性炭の比表面積 S[m2g]は次式で示される 10026 23 snS timestimestimes= infin
S活性炭の比表面積 [m2g] ninfin飽和吸着量 [molg] srsquo酢酸 1分子の吸着面積 [m2] 602times1023アボガドロ数 [個mol] したがって活性炭の比表面積 S[m2g]は
003350=infinn molg 2010376 minustimes=s m2 より
51281037610026003350 2023 =timestimestimestimes= minusS m2g
37
4 粘度密度測定 41 はじめに 大量生産を目的とした工業的化学プロセスはほとんど流れ系(流通系)であるそれらの系において操作対象となる各物質の粘度は装置を設計操作する場合きわめて重要
な物性値である 本実験では低分子溶液および高分子溶液の粘度測定を通じて液体の粘度について考察するさらに演習問題を通じて気体液体高分子溶液などの化学プロセスで対象となる物
質の輸送物性(粘度拡散係数)の重要性を認識されたい 42 低分子溶液の粘度 [目的] 種々の濃度のエタノール水溶液の粘度を測定しその溶液の粘度について考察する [概要] 25におけるエチルアルコール濃度 02040506080100 wt の水溶液について流下時間を測定しこの結果より相対粘度絶対粘度運動粘度を求めグラフにするま
た水の密度水-エチルアルコール溶液の密度についてはピクノメーターを用いて決
定する報告書には相対粘度絶対粘度運動粘度 vsエチルアルコール濃度の関係をそれぞれグラフにして提出する
[計算方法] 相対粘度絶対粘度運動粘度の定義は次のようになる
相対粘度 ww
w tdtd
ηη = (41)
η 混合溶液の粘度 [gcms] ηw水の粘度(8007times10-3 gcms) [gcms](25における粘度) d エチルアルコール水溶液の密度 [gcm3] dw水の密度(099704gcm3) [gcm3](25における密度) t エチルアルコール水溶液の流下時間 [s] tw水の流下時間 [s] 下付添字 W 水
絶対粘度 www td
tdη
η= (42)
運動粘度 ν=ηd [cm2s] (43)
38
[実験方法] 1) 粘度計を洗浄し粘度計内 に二連球で空気を送り込み
乾燥させる乾燥しにくい 場合はアセトンを滴下し た後再度二連球で空気 を送り込み乾燥させる 2)ピペットで一定体積(10mℓ) の純水を取り広い口 f から 粘度計に水を入れる 3)粘度計を恒温槽(25)に つけ約 10 分静置する 4)安全ピペッターを口 a に 取り付け液面が b 上部に 到達するまで吸い上げる 5)安全ピペッターを外すと 液面が降下しだす液面が bd 間を通過する時間をスト ップウォッチで測定する
6)純水での測定を 3 回繰り返す 7)純水を粘度計から取り除くその後粘度計内に二連球を用いて空気を送り込み乾燥させる 8)粘度計乾燥後複数の濃度に調整済みのエチルアルコール水溶液(10mℓ)を粘度計にいれ4)~6)の作業を繰り返し行う(3 回)なお濃度の異なるエチルアルコール水溶液を粘度計内に導入する場合には7)と同様に二連球を用いて粘度計内に空気を送り込み乾燥させる
表 4-1 エチルアルコール水溶液の濃度密度相対粘度の関係 エチルアルコール濃度
[wt] 密度 d[gcm3] 相対粘度
η ηw[-] 0
20 40 50 60 80
100
安全ピペッター接続
図 4-1 粘度計
液面の bd間の通過時
間を測定
f
39
43 密度測定 [目的] 本実験では水とエタノールの種々の組成の混合液体について密度を測定し分子間相互
作用について考察する [実験方法] 1)ピクノメーターの容積測定
図 4-2のピクノメーターの空の重量 wg を秤量する
ピクノメーターの蓋を取り外し
ピクノメーターを水で満たす
設定温度を 25として恒温槽 の電源を入れ恒温槽内の温 度が一定になるまで待つな お水温は恒温槽中の水銀温 度計から読む
恒温槽中に水を満たしたピク
ノメーターを入れる
約 10分間静置する
ピクノメーターに蓋をするこのときピクノメーターの容量
よりも余分の水は蓋の上部より排出される
ピクノメーターの外側を乾いた布で拭い秤量する(その重量を
wwg とする)
恒温槽の温度(25)における水の密度 dwgcm3(=099704gcm3)
より次式を用いてピクノメーターの容積を求める
w
w
dww
Vminus
= (44)
図 4-2 ピクノメーター
蓋
40
表 4-2 エチルアルコール水溶液の濃度と密度の測定結果(25) エチルアルコ
ール濃度[wt]
wrsquo[g] ww[g] V[cm3] w[g]
d[gcm3]
0 20 40 50 60 80
100
099704
エチルアルコール濃度[wt] 空のピクノメーターの重量 wrsquo[g] 水を入れたときのピクノメーターの重量 ww[g] ピクノメーターの体積 V[cm3] エタノール水溶液の入れたときのピクノメータの重さ w[g] エタノール水溶液の密度 d[gcm3]
容積 Vを求めたピクノメーターに混合溶液(調整済み)を入れてその重量 wgを秤量し次式で混合溶液の密度を求める
Vwwd minus
= (45)
エタノール濃度と密度 d の関係をグラフにプロットする
41
44 高分子溶液の粘度 [目的] 高分子溶液の粘度測定から分子量の粘度に与える影響について考察する [概要 ] オストワルド粘度計を用い種々の濃度のポリビニルアルコール(PVA ((-CH2CHOH-)n))水溶液の粘度を測定し粘度データよりポリビニルアルコールの分
子量を求める まず 05g100cc の濃度のポリビニルアルコール水溶液を調製する次にこれを原液
とし23 12 13 15の濃度の溶液を調製するこれらの溶液についてオストワルド粘度計を用いてそれぞれ流下時間を測定し相対粘度絶対粘度運動粘度を求め実験デ
ータより極限粘度[η]を求めるまた報告書には相対粘度絶対粘度運動粘度C
)ln( wηη
Cw
w-η
ηη vsポリビニルアルコール濃度の関係をそれぞれグラフにして提出する
[計算方法] エチルアルコール水溶液の粘度測定と同様の手法を用いて粘度の計算を行うなおポリビニルアルコール水溶液の密度はピクノメーターを用いて測定すること 表 4-3 ポリビニルアルコール水溶液の濃度密度相対粘度の関係 ポリビニルアルコール
濃度 [g100cc] 密度 d[gcm3] 相対粘度
η ηw[-] 05times(15) 05times(13) 05times(12) 05times(23)
05
42
[分子量の計算方法] 実験を行った結果以下のような粘度データを得られるとする実験データより極限粘度
を求めポリビニルアルコール(PVA)の分子量Mを決定せよ
PVA 水溶液濃度
C[g100cc]
相対粘度
ηηw[-]
絶対粘度
η[gcms]Cw
w-η
ηη
C)ln( wηη
05times(15) 1031 0008255 031 0305
05times(13) 039 0378
05times(12) 03 0289
05times(23) 0375 0353
05 0364 0334
ηw=8007times10-3 gcms 線状高分子の極限粘度[η]と分子量Mの関係は次式で与えられる [η]=KMα (46) ただしポリビニルアルコールの場合K=666times10-4α=064であるなお極限粘度[η]は次式で定義される
CC w
w
0
-][ limη
ηηη
rarr
= (47)
または
CC
)ln(][ w
0lim
ηηη
rarr
= (48)
よって濃度 CとCw
w-η
ηηまたは濃度 Cと
C)ln( wηη の関係をグラフ化し最小二乗法によ
り切片の値を求めると極限粘度[η]が決定される
Cw
w-η
ηηと C の関係より最小二乗法を用いて切片の値を決定すると(図 43 参照)切片=
03242傾き=00874となるよって極限粘度は以下のようになる[η]=03242同様
にC
)ln( wηη とcの関係より最小二乗法を用いて切片の値を決定する
(図 44参照)と切片=03249傾き=00256となり極限粘度は以下のようになる[η]=03249
Cw
w-η
ηηと Cの関係より決定した[η]=03242を用いてポリビニルアルコール(PVA)の
分子量 Mを計算する(46)式より以下のように PVAの分子量 Mを計算することができるM=([η]K)1α
=(03242(666times10-4))(1064)
=15811
43
y = 00874x + 03242
0
02
04
06
08
1
0 01 02 03 04 05 06 07
c[g100cc]
(η-ηw)(ηwc)
cw
w
η
ηηminus
極限粘度[η]
図 43 298Kにおける PVA濃度 CとCw
w-η
ηηの関係
y = 00256x + 03249
0
02
04
06
08
1
0 01 02 03 04 05 06 07
c[g100cc]
(ln(ηη
w))c
c)ln( wηη
極限粘度[η]
図 44 298Kにおける PVA濃度 CとC
)ln( wηη の関係
44
5 植物からの DNAの抽出 51 はじめに 分子レベルでの遺伝子の構造解明や遺伝子の発現に関する研究は近年急速に発展している
これら生命現象のしくみを分子レベルで解明しようという分子生物学の分野ではさまざま
な遺伝子の解析や応用方法が開発され我々の生活に身近なものになりつつある 本実験では初歩的な分子生物学に関する実験として植物(タマネギ)からの DNA の
抽出を行い抽出した遺伝子の電気泳動法による分離実験を試みる 52 試薬および器具 試薬 タマネギ(細胞中から遺伝子の抽出を行う) 台所用洗剤(洗剤中に含まれる界面活性剤には植物の細胞膜およびタンパク質を破壊す
る働きがある) 塩化ナトリウム(DNAは塩化ナトリウム水溶液に溶解し易い性質がある) エタノール(予め冷やしておくDNAはエタノールにほとんど溶解しない) 制限酵素(DNAを一定の部位で切断する働きを働きがある) TE緩衝液(pH緩衝剤が入った溶液) 器具 ビーカーミキサーフィルターメスシリンダー駒込ピペットガラス棒 マイクロピペット電気泳動装置ポラロイドカメラ 53 実験方法 1)タマネギは 1回の実験で半個のうち内側の半分程度を使用するタマネギ水 30ml台所用洗剤数滴をミキサー用ガラス容器に入れ40~60秒程度(固体状のタマネギがなくなる頃が目安)ミキサーにて混合する
2) 1)で作成した混合溶液をビーカーに移し約5g程度の塩化ナトリウムを加えガラス棒で静かに攪拌する粘性の大きな溶液が得られる
3) 2)で作成した溶液をフィルターを用いて濾過し濾液を回収する 4) 濾液の約2倍程度の量の冷エタノールをビーカーの壁伝いに静かに注ぐ 5) ビーカーを揺するとエタノール層に白くふわふわしたものが浮いてくるこれが DNAであるガラス棒で DNAを巻き取りシャーレ上にて DNAを回収する顕微鏡を用いて回収した DNAの状態を観察する
6)マイクロチューブ(容量 15ml)中に用意した 70エタノールを 8 分目程度まで注ぐ5)にて回収された DNAをマイクロピペットを用いて70エタノールの入ったマイクロチューブ中に移す軽く混ぜることによりDNA から不要な物質を洗い流す遠心分離してDNA をマイクロチューブの底に沈めた後溶液を捨てて DNA を乾かす乾いたらTE緩衝溶液を 1ml加えて放置するDNAの溶液が得られる
54 電気泳動装置による DNAの観察
本実験は職員と一緒に行うこと 実験を行う人はビニール手袋をすること 1) 抽出した DNAを電気泳動装置で観察するマイクロピペットを用いて以下のように調製した DNAの混合溶液を調製する(いずれの溶液も調製済)
45
2) マイクロピペットを用いてアガロースゲルの試料を流し込む穴(ウェル)に1)にて調製した溶液 Aおよび Bを注ぎ込む注入量は20μℓとする電気泳動装置のスイッチを入れて100Vの電流を流しアガロースゲル内にて DNAを電気泳動させる
3) 試料に予め加えられておいた青色の色素が 7 分目程度まで進んだら電気泳動を中止する(約 30分程度)
4) (ここでの作業は職員が行う) アガロースゲルを取り出し染色液に浸す染色後ゲルを取り出しポラロイドカメラで
DNAの泳動状態を撮影する
+ -
アガロースゲル
試料を流し込む穴(ウェル)
図 51 電気泳動装置
6 5 4 3 2 1
図 52 DNAの電気泳動写真の一例
55 電気泳動装置の原理 電気泳動装置の原理図を以下に示すアガロースゲル(寒天から不純物を除いたもの)中
に DNAをセットし電流を流すとDNAは電流の向きとは逆にマイナスからプラス方向
調製済 溶液 A(制限酵素なし) 水 11μℓ 10timesH Buffer 2microℓ 植物 DNA 5μℓ
調製済 溶液 B(制限酵素 Eco RI入り) 水 11μℓ 10timesH Buffer 2microℓ 植物 DNA 5μℓ 制限酵素 2μℓ
1 DNA(タマネギ)+制限酵素 2 DNA(タマネギ)+制限酵素 3 DNA(タマネギ) 4 λ-DNA(大腸菌)+制限酵素 5 λ-DNA(大腸菌) 6 サイズマーカー
500bp
46
に動く(このことを電気泳動という)これはDNA のリン酸部分が負に帯電しているためでありまたDNAはその長さにより泳動距離が異なる(短い遺伝子ほど長く泳動する)電気泳動ではこの性質を利用してDNAを大きさごとに分離することができる
塩基対数によってDNAを分離
EtBr (蛍光試薬)DNAの二本鎖内に入り込む
発光
UVλ=302nm
励起
分離後のアガロースゲルをエチジウムブロマイド(EtBr)溶液に浸す
DNAを含んだ溶液
アガロースゲル
リン酸部分が負に帯電
塩基 (ATGC)-
+
カメラで撮影
電圧
DNA構成成分(dNTPs)
バンドが明る
DNA量が
バンド(DNAの存在)
図 53 電気泳動の原理
56 制限酵素とは DNA は4 種類のヌクレオチド(GATC)が不規則につながってできている制限酵素はDNAの特定のヌクレオチドが並んでいる部分を切断する制限酵素には様々な種類がありEco RI(エコアールワン)と呼ばれる酵素は「GAATTC」といった並びの部分だけを切断することができる
GAATTC
CTTAAG
制限酵素
Eco RI
AAGCTT
TTCGAA
制限酵素
Hin dIII
図 54 制限酵素による DNAの切断
レポートについて 1 実験方法および実験結果の整理方法については指針書を参考にすること 2 実験結果については電気泳動の結果について考察すること(制限酵素の影響などにつ
いてまとめてください)
47
6 染色実験
61 はじめに
現在私達の身の周りでは様々な染料が使われている例えばT シャツやジーンズな
どの衣服は橙黄赤青など様々な色に染められている他にも私達が気付かないと
ころで多くの染色された製品を使用しているそこで本実験では高校の化学で学んだ
アゾ染料を合成してみるアゾ染料はアニリンを原料として作られているアニリンはベ
ンゼン環にアミノ基(-NH2)がついたものであるアニリンは無色の液体で水に溶けにく
くアンモニアより弱い塩基性を示すまたさらし粉(CaClO(ClO)H2O)水溶液を加えると
赤紫色を呈するこの呈色反応はアニリン特有のものであるので検出反応に用いられる
このアニリンを出発物質としてアゾ染料を合成してみる
62 試薬および使用器具
【試薬】 ①05moll 水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液
②2-ナフトール ③フェノール ④6moll 塩酸
⑤亜硝酸ナトリウム ⑥アニリン ⑦氷
【器具類】 ①電子天秤 ②50mℓビーカー ③100mℓビーカー
④ガラス棒 ⑤布(ガーゼなど) ⑥ピンセット
⑦ポリ手袋 ⑧ドライヤー ⑨シャーレ
10駒込ピペット(10ml ガラス製)
11駒込ピペット(1ml プラスチック製)
63 実験方法
1) 50mℓビーカーの中に 05molℓ水酸化ナトリウム水溶液 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回
NaOH 水溶液を分取するほぼ 20 mℓ分取できれば可)と 2-ナフトールを約 01g 入れ
よくかき混ぜる調製した溶液の中に布をつけその布はガラス棒でしぼってから(布
をガラス棒ですくいあげればよい)シャーレに広げる温度の異なる条件下(常温およ
び低温)で染料の合成実験を行うため布は最低 2枚調製した溶液と接触させそれ
ぞれ別々のシャーレ(低温用および常温用)に広げる
2) 新しいビーカーに水を約 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回分取)と 6molℓ塩酸約 4mℓ(10m
ℓ駒込ピペットで目分量で可)さらにアニリン約 1mℓ(プラスチック製 1 mℓ駒込ピペッ
ト)を入れてよくかき混ぜる染料の合成を常温および低温下で行うためこの溶液を
2つ調整する
低温下で反応させる溶液は恒温槽で 10~15 分ほどよく冷やした後亜硝酸ナトリウ
ム 05g を加えてよくかき混ぜる
常温下で反応させる溶液には冷却作業を行わずに亜硝酸ナトリウム 05g を加えて
よくかき混ぜる
3) 2)でつくった水溶液をシャーレに広げた布に注ぎ生成される染料を布によく染み
込ませ5分程放置する
4) 色の付いた布を取り出してポリ手袋をした手できれいに水洗いをし乾燥させる
48
5) 色差計を用いて乾燥した布の Lab(L明度aおよび b色度)を測定する
2)で作った溶液は5以下では無色の溶液ですが5以上になると淡い黄色になりま
す
【解説】
アゾ染料はアゾ基(-N=N-)を持っていてこのアゾ基によって鮮やかな橙色を呈色し
ます今回合成したアゾ染料は図の 1-フェニルアゾ-2-ナフトールです意外かもしれ
ませんが指示薬として使われているフェノールフタレインもアゾ化合物ですフェノール
フタレインは pH の変化によって色が出てきす染料の中でも最初は無色のものもありますが
温度を変化させたり酸性やアルカリ性にすると色が出てきます
ベンゼン ニトロベンゼン
N2Cl
ニトロ化 濃硫酸(濃硝酸)
還元反応 濃塩酸
(Sn又は Fe)
アニリン塩酸塩
遊離反応 NaOH
アニリン塩酸塩に強塩基を反応させる
と弱塩基であるアニリンが遊離する
氷冷+亜硝酸ナトリウム アニリン
塩酸
ジアゾ化
塩化ベンゼンジアゾニウム
塩化ベンゼンジアゾニウム
は熱によって窒素とフェノー
ルに分解される
カップリング
C10H7ONa (ナトリウム 2-ナフトキシド)
O
N =
1-フェニルアゾ 2-ナフトール
NH3Cl NH2
49
7 ガスクロマトグラフ質量分析計による茶葉中のカフェインの分析 71 はじめに ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)は極めて低い濃度の化学物質の同定や未知物質の構造決定に極めて強力な分析機器の一つであるGCMSを用いるとサンプルの中に含まれているある成分の分子構造(カフェインの分子構造を図 71に示す)やその量が分かりますもちろん分析機器ですので測定できる物質対象となる系や測定条件にはある
程度の制約があります混合物質を分離するガスクロマトグラフ(Gas ChromatographGC)と分離された成分(物質)を分析(構造決定と濃度測定)する質量分析計(Mass SpectrometerMS)を組み合わせた装置であるこの装置は有機化学生化学環境化学などの多くの分野で非常に多用されている例えば極めて低い濃度でも生体へ強い影響が懸念されるダイ
オキシン類などの土壌や河川の水中での含有率の決定や食品や医薬品中の微量成分の決定
にも利用されている 一方日本人に長い間親しまれてきた緑茶が近年産業界や医学
界で注目されている茶葉にはカフェイン(分子構造図 71)カテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドなどの有用成分が多く含まれておりその効能が注目されている 本実験では茶葉中に含まれるカフェインに対してGCMSを用いて分析する茶葉中には種々の物質が含まれておりGCMS分析を容易にするため前処理として超臨界二酸化炭素抽出(4015MPa程度の高圧力の二酸化炭素を溶剤として利用)により茶葉からカフェインの抽出を行いそのサンプルを GCMSにて分析する
図 71 カフェインの分子構造 図 72 物質の分析 個々の物質や装置についてはインターネットにより下記のWebサイトのフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』などにより調べるとよいカフェイン(caffeine)はアルカロイドの一種プリン環を持つプリンアルカロイドの一種でコーヒー類に含まれることか
らこの名がある化学名は137-トリメチルキサンチン(C8H10N4O2) コーヒーコーラ緑茶紅茶ガラナココアなどに含まれる(量は緑茶が一番多い)結晶は一水和物(C8H10N4O2bullH2O)もしくは無水物(無水カフェインC8H10N4O2)として得られ
る白色の針状または六角柱状結晶で匂いはなく味は苦い融点は 238昇華性がある出典フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』httpwwwwikipediaorg 装置「GCMS」httpwwwanshimadzucojpproductsgcmsqp2010htm (島津) 「超臨界抽出装置」httpwwwkagakucomjasco39-49html (日本分光)
50
レポート課題 1茶葉中に含まれるカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドの中から3つの物質を選びその物質について調べた結果を A4 レポート用紙2枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
2GCMS についてA4 レポート用紙1枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
3与えられたサンプルは茶葉1gから抽出されたのである実験結果よりもとの茶葉
1g中に含まれるカフェインの量を推算し計算式とあわせて示すこと 72 原理および装置 実験で使用する島津製の GCMS装置の全体図を図 73に原理の概略を図 74に示す
1
23
4
5
67 8
9
10
キャリアーガス
試料物質
1ボンベ(He)2圧力計3マイクロシリンジ4サンプラー5試料導入部6分離カラム
7セパレーター8イオン化室9磁石10電子増倍管11記録計
11
図 74 ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)の概略図
サンプルフォルダー
51
GCMS 装置は分離部である図中の 1~6 のガスクロマトグラフ(GC)と7~11 の検出部である質量分析計(MS)から構成される 3のマイクロシリンジを用いて試料を GCMSに導入する導入された試料は5試料導入部でガス化され6分離カラムに導入される分離カラムには吸着剤が充填されおり混合物の試料を導入した場合各物質と吸着剤との
親和性の違いにより各物質の分離カラムから排出されるタイミングは異なる分離カラム
を排出された試料は8イオン化室でイオン化され10電子倍増管にて検出される アセトンに溶解したカフェインの GCMSによる分析結果の一例を以下に示す図 75にク
ロマトグラム図 76にカフェインのピークのマススペクトルを示す
図 75 GCMSにより得られたクロマトグラム
横軸がリテンションタイムで縦軸がピーク強度を表す
図 76 カフェインのマススペクトルとカフェイン(分子量MW=194)の構造
(図 75中のリテンションタイム 126min付近のピークに起因するマススペクトル) 茶葉中にはカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイド以外にも繊維であるセルロースなど多くの物質が含まれているため茶葉そのものを
そのままサンプルとしてGCMSで分析することは困難であるセルロースなどの分子量の大きな物質はカラムに詰まってしまい分析できないそこで今回は超臨界二酸化炭素
による抽出により主にカフェインを他の物質と分離抽出した通常よく利用されるアセ
トン抽出(アセトンに茶葉を浸し特定の成分を抽出する)ではカフェイン以外にも多く
の物質が抽出されるため図 75 のような単独のピークを得ることは難しく複数のピークがクロマトグラムに見られるこのサンプル(この場合茶葉からの抽出物)にはカフェ
イン以外の不純物は少なかったがガスクロマトグラフの分離カラムによりさらにそれ
らの混合物が精度よく分離されるクロマトグラムのピークはそれらサンプル中に含まれ
ていた個々の物質を表しているクロマトグラムのピークを選択することで分子構造解析
したい物質を選んだことになる選択したクロマトグラムのピークの表している物質(ここ
ではカフェイン)に対応するマススペクトルが図 76 に表示されているマススペクトル
52
で横軸がその成分(ここではカフェイン)分子を構成している原子の原子量で縦軸がそ
の量を表しているのでマススペクトルから分子構造を解析するためにコンピュータ内
に蓄えられた物質ごとのマススペクトルデータと今回測定したマススペクトル(分子内に含
まれている各原子の数)を比較することで測定したサンプル中のクロマトピークを選択し
た分子がどのような原子をどれだけ含んだ分子であったかがわかりそれからその物質
がどのような分子構造の物質である可能性が高いかをコンピュータが検索し結果を示す 73 実験サンプルの設置と GCMS装置の操作方法 実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS装置のサンプルフォルダ
ー(図 73)にセットするこのサンプルは茶葉 1gを 50ccの高圧セルにて超臨界二酸化炭素を利用して4015MPa2時間接触の条件で抽出した固体を10gのアセトンに溶かしたものである またコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に装置および装置制
御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 本実験で使用する GCMS の操作は全てコンピュータのモニター上で GCMS の解析プログラムソフトを使用することで行うコンピュータの操作方法を以下に示す なおコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS 装置のサンプルフォルダー(図 73)にセットするまた装置および装置制御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 1)パソコンのデスクトップ上のアイコン「GCMS 分析」をクリックすると以下のようにGCMS制御プログラムを起動するその後「OK」ボタンをクリックする
図 77 GCMD分析用ソフトウェア「GCMS分析」の起動
まず「GC-MS分析」をクリック
「OK」ボタンをクリック
53
2)制御プログラムが起動されパソコンと GCMSの接続が開始される
図 78 「GCMS分析」の接続確認画面 3)GCMSとパソコンの接続が完了すると以下のような画面が表示される
図 79 「GCMS分析」操作画面
4)マススペクトルによる分子構造の解析 サンプル(この場合茶葉からの抽出物)には多くの物質が混じり合っていたがガス
クロマトグラフの分離カラムによりそれらの混合物が精度よく分離されるクロマトグラ
ムのピークはそれらサンプル中に含まれていた個々の物質を表しているクロマトグラム
のピークを選択することで分子構造解析したい物質を選んだことになる選択したクロマ
トグラムのピークの表している物質(ここではカフェイン)に対応するマススペクトルを選
択するマススペクトルは横軸が原子量で縦軸がその量を表しているのでマススペク
トルから分子構造を解析するために「定性処理」を行う シミラリティ検索結果が表示され分析により得られたスペクトルと類似のスペクトルを有
する物質の一覧が表示される上部に表示される物質ほどスペクトルが一致していること
を示す
接続状況が表示される
「トップへ」
をクリック
54
図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果
図 711 表示スペクトルのシミラリティ検索結果 10)図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果の印刷 「レポート(R)」をクリックし「検索結果(R)」をクリックすると検索結果が印刷される
GC-MS 分析で得られたマスス
ペクトル
データベース中
のマススペクト
ル
55
参考資料 生理活性物質の精製 カフェインの利尿作用のように生物活動に影響を与える物質を生理活性物質といいます
天然物には生理活性物質を多く含むものがあります一般に天然物は多くの成分を含ん
でおり特定の生理活性物質を分離抽出するには種々の分離技術が必要ですまた生
理活性物質には60以上の温度でその生理活性を失う(失活)ものや溶剤として広く用いられているクロロホルムなどの有機溶剤中で失活するものが多いそこでこれら生理活性
物質の分離精製技術の開発が望まれており30~60程度のマイルドな温度条件で操作できる二酸化炭素を機能性溶媒として利用する超臨界抽出も有効な分離技術として注目されて
いる超臨界二酸化炭素は気体と液体の中間の性質を持ち物質の分離に役立っています 臨界点付近の高密度気体は超臨界ガスまたは超臨界流体と呼ばれ臨界圧力前後でそ
の溶解能力が著しく変化することから工業的にも種々の分野で利用されています一例と
して超臨界二酸化炭素(SC-CO2)によるコーヒー豆からのカフェインの抽出プロセス(a)
ならびに超臨界二酸化炭素に対するカフェインの溶解度(b)を図に示します図(c)に示す
ように固体のカフェインがガスである超臨界二酸化炭素に溶解します
このように超臨界二酸化炭素を用いた技術はコーヒー豆からのカフェインの抽出プロ
ポリスからの生理活性物質の抽出に利用されています
図 超臨界二酸化炭素抽出を用いたコーヒー豆からのカフェインの抽出
56
付表 最小二乗法について 直線で近似する場合 f (x) = a0 + a1x (A1-1) 式(A1-1)のように近似させるとする測定値 yiとの残差を eiとすると式(A1-2)のようになる ei = yi - f (xi) = yi - ( a0 + a1xi ) (A1-2) ここで式(A1-2)の両辺を二乗してその i に関する総和をとりその値を S とすると次式となる
sumsum==
+minus==n
iii
n
ii xaayeS
1
210
1
2 )( (A1-3)
S を最小化するような a0a1を求める式(A1-3)を a0a1について偏微分すると次式とな
る
sum=
+minuspartpart
=partpart n
iii xaay
aaS
1
210
00)( sum
=
+minusminus=n
iii xaay
110 )(2 (A1-4)
同様にa1について編微分すると次式のようになる
sum=
+minusminus=partpart n
iiii xxaay
aS
110
1])([2 (A1-5)
Sが最小となる時は次式が同時に満たされる時である
00=
partpartaS
01=
partpartaS
(A1-6)
よって誤差が最小となる a0a1を求めるためには式(A1-6)を連立して解けばよい
sumsumsum===
+=n
ii
n
i
n
ii xaay
111
10 1 (A1-7)
sumsumsum===
+=n
ii
n
ii
n
iii xaxaxy
1
2
11
10 (A1-8)
式(A1-7)と式(A1-8)を a0a1を変数とみなし連立して解くと次式を得る
n組のデータ(xiyi)(i=12hellipn)に対して回帰直線 y= a0 + a1x を最小二乗法で求めて出力しデータ番号 iデータ yi直線で推定した値 )( ii bxay += および残差
iii yy minus=ε を出力するようなプログラムをつくりたい基礎式を導出せよ (ヒント残差の二乗の和が最小になるように係数 a0a1)を定めるのが最小二乗法
である)
57
sumsum
sumsumsumsum
==
====
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
n
ii
n
ii
xxn
xxyyxa
1
2
1
2
1111
2
0
)(
))(())(( (A1-9)
sumsum
sumsumsum
==
===
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
xxn
yxxyna
1
2
1
2
1111
)(
))(()( (A1-10)
よって式(A1-9)(A1-10)を用いれば最も誤差を小さくするような直線 y = a0 + a1x が求められる
y=a1x+a0 にて近似
誤差 ei
x
y
誤差が最小になる関数(直線 y=a1x+a0の場合)
図1 最小二乗による近似
誤差の和Sが最小
S
a0
a1
直線 y=a1x+a0 の近似
誤差の全体の和はS=Σei=Σyi-(a1xi+a0)
Sは変曲点にて最小値を示すすなわち(partSparta0)=0 (partSparta1)=0
図2 a0a1とSの関係
8
3 吸着 31 はじめに 活性炭 多孔質(多くの小さい穴がある)の吸着剤 酢酸 活性炭に吸着されるモデル分子
吸着実験データの整理によく使用する記号 n 溶質の吸着量 C 溶液中の溶質の濃度 単位は [ ] [ ] 考えてみよう 1) 右図のような低い濃度の酢酸水溶液の入ったビーカーに活性炭 をを加えた場合濃度はどうなるでしょうか
2)吸着された酢酸の物質量(n[mol])を測定するにはどのような 実験をすればよいでしょうか 図 1 活性炭
32 吸着操作 工場排液中の微量は有機物などを活性炭などの吸着剤で除去する工業操作を吸着操作と言
います蒸留抽出乾燥撹拌などの単位操作と同様に化学工業プロセスの重要な分離技
術です吸着操作は他の分離操作に比べてきわめて低濃度の範囲まで物質分離ができる特
徴がありますそのため近年問題となっている大気および水質の汚染汚濁に対する有力
な対策技術として注目されています 本実験では活性炭に対する酢酸の吸着挙動を調べることにより活性炭の吸着特性(吸
着平衡定数)を知り吸着操作の理論的な取り扱いについて学習しましょう 吸着量を求めてみましょうこの例では濃度換算が容易になるように溶液濃度をℓ でなく m3 単位とした) 低濃度のフェノールを含む排水の活性炭吸着実験を行って図 1のような吸着等温線(一
定温度で測定した溶液濃度と吸着量の関係)を得たいまフェノール濃度が 40mol m3の
排水 40m3に 60kgの新しい活性炭を投入して平衡に達したとき水中のフェノール濃度(mol m3)および 1gの活性炭のフェノール吸着量(molg)を求めよ
活性炭 1gに吸着するフェノールの物質量をn[molg]活性炭の量を W[g]とすると
フェノール排水 V[m3] 吸着前のフェノール濃度 C0[mol m3] フェノール分子
+
活性炭に吸着した溶質(フェノール)の量 nW (1)
溶液から取り除かれた溶質の量 (C0-C)V (2)
物質収支式より
nW=(C0-C)V (3) よって
VW
CCn
minus= 0 = )( 0CC
WV
minusminus (4)
9
図3 吸着等温度線と操作線
この操作からわかるように吸着データ(この実験で求める)が存在すれば
吸着等温線と操作線の交点から吸着処理しようとする溶液の体積 V と初濃度 C0
に対して使用する活性炭の質量 W により活性炭に吸着する溶質の量 n および吸着後の溶液の溶質濃度 C が計算で予測できますこの吸着データから吸着装置を設計することができます実際に吸着装置(吸着塔)の設計の様子を次ペー
ジの例題1に示しておきます興味のある人は5 段に積み重ねた吸着層を 04 mol ℓの濃度の廃液が通過すると濃度が 002 mol ℓ 以下になることを確認し吸着塔の設計方法を考えてみて下さい なお先ほど求めた式 (4)は皆さんが行う吸着実験データ(吸着等温線を作るもととなる吸着後の溶質濃度 C と各濃度に対する吸着量 n の関係)を求める場合にも使用します 問題1 質量 W=1gの活性炭を用いて体積 V=100cm3の酢酸溶液の吸着実験を行った
ところ活性炭と接触する前の酢酸溶液の初濃度はC0=0512moldm3であった
(dm3デッシメータ 3 乗= ℓリットル)吸着後の溶液を活性炭と分離してその酢酸溶液の濃度を 01N(01 規定の)水酸化ナトリウム水溶液で滴定して求めたところC=0478moldm3 であった1gの活性炭に吸着された酢酸の物質量n [mol]を式 (4)より求めよ
活性炭 1kg当たりに吸着された
フェノールの量 n[molg]
吸着操作後
の溶液のフ
ェノール濃
度 C
吸着等温線の一例 Langmuir式
KCKCnn
+=
infin
1
操作線
)( 0CCWVn minusminus=
傾き-23
初濃度 C0
[molm3]
吸着後の濃度 Cと吸着量 n
初濃度C0と傾き-VWを用いて操作線を引き
吸着等温線との交点を
求める
ここで(3)式の傾きWV
minus で図 1 における横軸
を通過する直線式(操作線)であるすなわち
)(=- 4032
)40(6040)()( 0
minus
minusminus=minusminus=
C
CCCWVgmoln
10
解答(計算式) )( 0CCWVn minusminus=
minus= ( ) (答) [mol]
例題 1 吸着塔の設計 濃度 C0[molm3]の不純物を含む工業排水(流量 V[m3hr])から不純物を除去するために下図
に示すような各 i段に活性炭を wi[g]含む5段の吸着塔を設計しましょう 各 i 段の出口と入口でのそれぞれの物質濃度 CiCi-1[molm3]とその段での活性炭単位質
量当たりの吸着量 ni[molg]との間に物質収支がなりたち他の部分への吸着は無視できるとするまた溶液中の平衡濃度Ci[molm3]と吸着量ni[molg]の関係はラングミアー(Langmuir)の等温吸着式で与えられるものとするラングミアーの等温吸着式における吸着平衡定数 K
と飽和吸着量 infinn としてはK=8611 infinn =0003262の値を用いる誤差を判定する定数 EPS
としてはEPS=000001を用いよ 図4 吸着塔の段数計算 図5 吸着塔 33 実験目的 一定の温度において活性炭による希酢酸の等温平衡吸着量 nを一定の温度において測定
しそれら測定値の Freundlich 式および Langmuir 式への適合性を比較検討するまたLangmuir式により活性炭の比表面積を求める 34 実験方法 レポートでの実験方法の記述では次のように説明文を必ず付けて下さい また行った方法については過去形「~した」のように記述して下さい 例) 活性炭による酢酸水溶液からの酢酸の吸着実験に次の器具および試薬を使用した [器具] 1000mlメスフラスコ(1)500mlメスシリンダ(1)500ml試薬瓶(5)共栓三
実験レポートを書く場合この「実験目的」を利
用して「緒言」を作成して下さい
実験方法は過去形にて記述
11
角フラスコ(5)2mlホ-ルピペット(2)5mlホ-ルピペット(2)10mlホ-ルピペット(1)100ml ホ-ルピペット(1)50ml ビュレット(1)電子天秤直示天秤(注( )内の数値は個数を表す) [試薬] N10N100-水酸化ナトリウム(NaOH)N10-塩酸(HCl)フェノ-ルフタレイン酢酸活性炭 1)2)および 7)については予め調整済み8)は2日目に実験する 1)酢酸 28mℓ をメスシリンダにて採集しこれを 1000mℓ メスフラスコに入れて蒸留水を加えて 1000mℓとしN2-酢酸を調整した(調整済み)
2)N2-酢酸より順次溶液 500mℓをメスシリンダに取り1000mℓメスフラスコを用いて
N4N8N16N32酢酸溶液を調整し500mℓ試薬瓶保持した 3)共栓三角フラスコ(100mℓ)の空重量を直示天秤にて正確に測定したこれに電子天秤にて測定した活性炭試料約 1gを入れて再び直示天秤にてその重量を正確に測り前後の差から投入した活性炭量を知る
4)活性炭を入れた各々の三角フラスコに各濃度の酢酸溶液 100mℓを正確にホ-ルピペットを用いて入れた(このとき気泡が混入しないように注意した)
5)上記に準備した三角フラスコに栓をしてこれらを所定の温度に設定した恒温槽に浸し
た浸した三角フラスコは約 20分間隔で気泡が混入しないように注意して振り混ぜるこの操作を約 2時間行った
6)次に滴定に用いて約 N10-N100-水酸化ナトリウム溶液 1000mℓを調整し濃度既知の塩酸溶液を用いてその正確な濃度を決定しておく(調整済み)
7)調整された酢酸溶液の各々を6)において標定した N10-水酸化ナトリウム水溶液にフェノ-ルフタレインを指示薬として滴定し各酢酸溶液の濃度を求めた(標定に要する
酢酸量は N2-と N4-の場合は 2mℓN8-と N16-の場合は 5mℓN32では 5mℓをホ-ルピペットで採集するただしN32についての滴定はN100水酸化ナトリウムで滴定した(各濃度について 3回ずつ滴定する)
注)ビュレットは各班に 2 本ある濃度の高い N2 酢酸から測定するので両方のビュレットにはN10-水酸化ナトリウム水溶液を入れて開始する
最重要注意事項
滴定を行う場合安全確保のため必ず安全メガネを着用すること 8)次に各試料溶液を一つずつ手早くろ過しろ過液を N10-水酸化ナトリウムで滴定して平衡濃度を決定した(標定に要する酢酸量は N2-と N4-の場合は 2mℓN8-とN16-の場合は 5mℓN32-では 5mℓをホ-ルピペットで採集したただしN32 ーの場合は N100 ー水酸化ナトリウムで滴定した)
12
1) 酢酸溶液の濃度の測定(1日目レポートにこの図は不要) 酢酸 28mℓをメスシリンダにて採集しこれを 1000mℓメスフラスコに入れて蒸留水を加えて 1000mℓとしN2-酢酸を調整する
N2-酢酸より順次溶液500mℓをメスシリンダに取り1000mℓメスフラスコを用いて N4-N8-N16-N32-酢酸溶液を調整し500mℓ試薬瓶に保持する
滴定用のビュレットを N10-N100-水酸化 ナトリウム溶液で共洗いする(3回)
ビーカーに酢酸溶液を少量入れて共洗いを行う (3回)試薬瓶からビーカーに酢酸溶液を滴定に 必要な量だけ取り出す
ホールピペットをビーカーの酢酸溶液を 使用して共洗いを行う(3回)
滴定用の三角フラスコに酢酸溶液を分取する
滴定(滴定は同じ濃度の酢酸溶液を 3回 以上滴定して平均する)
酢酸溶液の濃度計算
滴定による酢酸濃度の決定
1000
1000vfNvx timestimes=times (33)
x酢酸の仕込み液濃度 [molℓ] v酢酸の仕込み液の分取量 [mℓ] NNaOHの規定度 [N] fNaOHのファクター [-] vrsquoNaOHの滴定量 [mℓ] 注)酢酸は 1価の酸なので 1molℓ=1N(1規定)
13
式(33)の使用例 酢酸の仕込み液の分取量 v =2 mℓ NaOHの規定度 N = 01 N NaOHのファクター f = 0998 NaOHの滴定量 vrsquo = 985 mℓ である場合 式(33)を利用して酢酸の仕込み液濃度 x[molℓ]を求める
1000
1000vfNvx timestimes=times
vvfNx
timestimes=
49202859998010 =timestimes= molℓ (この xが濃度 C または C0 です)
2)酢酸溶液と活性炭の接触のフローチャート(1日目) 共栓三角フラスコ(100mℓ)の空重量を 直示天秤にて正確に測定する
電子天秤にて活性炭試料約 1g測る
共栓三角フラスコ(100mℓ)に 活性炭試料約 1gを入れる
活性炭試料約 1gを入れた 共栓三角フラスコ(100mℓ) を直示天秤にてその重量を測る
共栓三角フラスコ(100mℓ)の前後の 差から投入した活性炭量を計算する
活性炭を入れた各々の三角フラスコに 各濃度の酢酸溶液 100mℓを正確にホ-ルピペットを用いて入れる(このとき 気泡が混入しないように注意する)
三角フラスコに栓をしてこれらを所定の温度に 設定した恒温槽に浸す浸した三角フラスコは 約 20分間隔で気泡が混入しないように注意して 振り混ぜるこの操作を約 2時間行う
14
3)吸着量の測定(2日目) 恒温槽の温度を測る
恒温槽から三角フラスコを一つずつ取り出す
各試料溶液を一つずつ手早くろ過する
活性炭
ろ液を滴定して平衡濃度を決定する
回収
吸着量の計算
Langmuirの吸着等温式Freundlich式のパラメータの決定
グラフの作成
吸着量の計算10001000 times
minus=
wCC
n (34)
n吸着量 [molg] C0 酢酸水溶液中の酢酸の濃度 [molℓ] C ろ液中の酢酸の濃度 [molℓ] w 活性炭の量 [g]
35 実験結果のまとめ方 実験結果は実験レポートを書く場合に考察と並んで重要な部分ですので主な注意事
項をここで説明しておきます グラフの作成n vs C nC vs C ln n vs ln C の 3つのグラフの作成 配布された Excel ファイルを利用し下図のような図を作成してみましょう
15
レポートの間違いやすい場所 ①表や図を示す場合次の例のように文章でもその旨を示す [実験結果] 共栓付三角フラスコに活性炭約 1g入れた試料の重量 w[g]を Table1に示す
Table1 調整酢酸濃度を入れる活性炭試料の重量 w [g]
酢酸規定度[N]
活性炭試料の質量w [g]
12 10300
14 10001
18 10126
116 10011
132 10109 酢酸(1)-水(2)-活性炭(3)の 12における吸着平衡の結果を Table 6および Fig1に示すただし活性炭 1gに吸着された酢酸のモル数 n[molg]は次式より求めた
( )10001001
0 timestimesminus=w
CCn b
C0仕込み液中の酢酸濃度 [molℓ] Cbバルク相中の酢酸濃度 [molℓ] w活性炭試料の質量 [g] n吸着量 [molg]
例えばCb=04621C0=04894w=10300の時は次のように計算できる
( ) 026501000100
0300114621048940 =timestimesminus=n
Table6 酢酸(1)-水(2)-活性炭(3)の 12における吸着平衡
吸着された溶質のモル数n[molg]
バルク相中の濃度Cb[moll]
00205 04621
00175 0241
00139 01139
00105 00519
00081 00243 ②得られた図や表の解釈(読者にそれらから読み取ってもらいたい事柄)の説明文を次の
例のように文章で記述する数字や図だけ示して読者に「理解しろ」というようなレポー
トではよくありません Table 6および Fig1よりバルク相中の酢酸濃度 Cbの増加にともない吸着量 nも増加することがわかったまた吸着量 n の値は酢酸濃度 Cbの増加にともない n=に漸近することがわかる
グラフ(Fig)は次ペ
ージに掲載すること
グラフや表の後にはそれらの結果より得られた知見を文章でも
記入すること
16
36 エクセルによる吸着データの整理法 注コンピュータの画面はWindowsXP上での操作になっています他の OS(Windows98 2000
NT)搭載のパソコンでも同様の作業が可能です) 先ほど問1で説明したように溶液濃度の濃度変化から吸着量 nを求めました実験では吸着後の水溶液中の酢酸の濃度 Cと吸着量 nの関係を各濃度の溶液(5種類)について測定しその値を計算します このようなデータの整理には表計算ソフトであるマイクロソフト社の Excelが便利です
Excel の起動方法はそのソフトがインストール(設定)されているコンピュータにより若干方法が異なることがありますがほとんど同じですここでは福岡大学の総合情報処理
センターのコンピュータの設定に従って説明します 表計算をしてみましょう セルとは セルというのは最小単位の四角のことです例えば「(Aの1)またはA1というセルセル
B1」のようにセルという言葉を使いますセル A1に1という数字を入れてみましょうセルA1をクリックしてキーボードから「1」と入力しキーボードの「Enter」キーを押します
図 5 Excelの入力例1 図 6 Excelの入力例2
次にセル B1に「5」という数字を入れましょう次にセル C1にセル A1と B1に記入された数値の和を表示させてみましょう 下の図のようにセル C1をクリックします上の「 fx 」と書かれた右のボックス(何かを書くところに)「 =A1+B1 」と書きましょうそして Enterを押すとセル C1に 6と表示されます
図 Excelを用いた関数計算 実験では吸着後の水溶液中の酢酸の濃度 Cと吸着量 nの関係を各濃度の溶液(5種類)について測定しましたこのデータに対してExcelを用いて表計算してみましょうまず先ほど記述したセル A1~A3は「Delete」(デリート)キーで値を削除しましょう
17
次にセル A5~A9に活性炭と接触する前の酢酸水溶液の初濃度 C0[moldm3]セル
B5~B9に活性炭と接触後分離した酢酸水溶液の濃度 C[moldm3]セル E5~E9に活性炭の質量 W[g]をキーボードから入力します作成した一例を次に示します
図 8 Excelによる吸着量nの計算 ここで1gの活性炭に吸着された酢酸の物質量n [mol]を式 (4)より計算できるのでセル C 5~C9に次の関数式を記述します式の内容としては
)( 0CCWVn minusminus=
となるように記述するので実際の Excelの関数としては次のように行います セル C 5をクリックし関数ボックス(fxの右)に「=(A5 ndash B5)01E5」と記述(半角または直接入力形式で)し「Enter」キーを押し確定しますこの関数はフィルハンドルを利用してセル C 6~C9にコピーしますただし実験で溶液は 100cm3使用しましたが
溶液の濃度 C が[moldm3]の単位ですので100cm3=01dm3 となり関数式の中では
V=01 dm3としています なおグラフの記述方法やフィルハンドルの使用方法については化学工学プログラミ
ングなどの補助資料を参考にして下さいまた実験の際に配布した Excel ファイル(ファイル名ad_graxls)を使用すると実験データの理論的な解析も容易にできますので試してみましょうExcelファイル(ファイル名)「ad_graxls」の使用方法は次節で説明します 36 実験結果の考察方法 (吸着実験について) 実験結果の考察方法は種々の方法がありますがここでは一例として理論と比較する
方法を示します実験結果として下図(左)のようなグラフができましたこのような実
験結果に対して理論的な考察を行ってみましょうここでは次節で説明するラングミュ
ア(Langmuir)の単分子吸着モデルで計算した理論線と実験と比較したものを下図右に示しますこの図を作る方法は次節で説明しますレポートの考察の部分はラングミュア
(Langmuir)の単分子吸着モデルの式の導出から書いて下さい 理論を作る場合幾つかの仮定をしますがその理論が多くの実験結果をうまく説明でき
ている場合その仮定がある程度妥当なものであったことがわかります指針書に書いてあ
った以外の理論についても興味があれいばためしてみましょう
セル C5をクリックし関数ボックス( fx の右)に「=(A5 ndash B5)01E5」と記述(半角または直接入力
形式で)します
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ラングミュア(Langmuir)の単分子吸着モデルを用いて理論値を計算するには配布され
た Excelファイル(ファイル名)「ad_graxls」を使用すると便利ですその使用方法を以下に示します配布プログラムは化学工学プログラミングの講義の場合と同様に総合情報処
理センターの共通領域にあります各自コピーして使用して下さいコピーするには化
学工学プログラミングの講義の場合と同様にコピーしようとするファイルを共通領域から
自分の使用しているコンピュータのデスクトップにドラッグドロップします共通領域で
ファイルを開くとファイルの消去などで他の人が使えなくなりますので共通領域でファイ
ルをダブルクリックしないようにして下さい誤って共通領域でファイルをダブルクリック
した場合はそのファイルを閉じるボタンをクリックし閉じて下さい 各自のコンピュータに保存した Excelのファイル(ファイル名ad_graxls)をダブルクリ
ックして開きます自宅へ持ち帰る場合各自のフラッシュメモリーやフロッピーディスク
を使用しまたはメールを使用して添付ファイルで送信できます各自のフラッシュメモ
リーやフロッピーディスクに保存してあるファイルを再編集する場合はフラッシュメモリ
ーやフロッピーディスクをコンピュータの USB 端子またはフロッピーディスクドライブに挿入します次にデスクトップ上にあるマイコンピュータのアイコンをダブルクリックし
ます もしデスクトップ上に上のアイコンが無ければ画
面左下の「スタート」ボタンからマイコンピュータをク
リックしてくださいすると次のような画面が立ち上が
ります
ラングミュア(Langmuir)の単分子吸着モデルで計算した
理論線
19
その中からフラッシュメモリーの場合は「リムーバブルディスク」をフロッピーディ
スクの場合は「35インチ FD」のアイコンをダブルクリックしてくださいファイルが保存されていれば次の画面が出てきます
この画面の中の「ad_graxls」ファイルをデスクト
ップにコピーしますまず「ad_graxls」ファイルを左クリックしますこの時クリックした指はは
ずさないようにしますその状態のままデスクトッ
プまでファイルを移動させますそしてデスクト
ップ上の任意の場所でクリックした指をはずします
これでデスクトップ上に「ad_graxls」のファイルがコピーされましたのでデスクトップにコピーさ
れたファイルをダブルクリックして開きますコピ
ー操作が上手くいかなかった場合もう一度移動の操作を行ってください
必ずデスクトップにコピーしてから開く操作を行って下さいフロッピーディスクから直接
開いて操作を行った場合正しく保存されない可能性があります 「ad_graxls」のファイルを開くと次のような画面が立ち上がりますもし画面が違う場合は画面の下部にある「吸着データ」のタグ をクリックしてくださいこの画面
でデータの処理や計算を行いますでは実際の操作に入る前に予めこのファイルに名前
を付けて保存しておきますまずExcelの画面のツールバー「ファイル」から「名前を付けて保存」をクリックします下のような画面が起動します
20
ファイルの保存先を変えたい場合画面上部のボタンをクリックし保存先にデスクトッ
プを選択します次にファイル名の部分に各自ファイル名を入力しますファイル名は何
でも良いですが分かり易い名前にしておくとファイルの管理がやり易くなります日付や
数字を入れると同名のファイルをいくつも管理する場合に便利ですここでは「吸着実験デ
ータ整理 4月 01」とし「保存」ボタンをクリックします
ファイル名変更後Excelの画面上部のタイトルバーのタイトルが先ほどの名前(上の図とは異なります)になっていることを確認してください
この操作を行うことによって元のデータである「ad_graxls」を変更してしまう心配がなくなります元のデータである「ad_graxls」はファイルが破損しまたは間違った操作の結果を誤って保存してしまった場合などの補助ファイルとなりますので大切に保管しておいて
下さい今後配布するデータは先ほど説明した手順で名前を変えて保存し元のデータに
直接変更を加えないようにして下さい ここから実際の作業に入ります初期状態では模擬のデータが入力されています入力
データは予め計算しておいた酢酸濃度Cb[moll](濃度を Cと表示している場合もあります)と活性炭吸着量 n[molg]になります下の画面の丸で囲んだ部分がそれぞれの値でBCカラム(列)の 4~9行には数値が入力されています関数ではありませんこのデータを利用して実際のデータ解析を行ってみましょう下記のように行うと幾つかのグラフが
現れ実験データに対してラングミアーの単分子吸着を仮定したモデルを用いて精度よ
く計算線が描けることがわかります 今回はCbnの値を入力する必要はありませんExcelが自動的に計算を行って結果を表示するようになっていますつ
まりセル D5に「=B5C5」と関数を入力しこの関数に対してフィルハンド
ルを利用してセル D6~D9へコピーし
ファイルの保存先を変えたい場合画面
上部のボタンをクリックし保存先に
デスクトップを選択します
変更するファイル名はここをクリッ
クして書き換えます
名前を変更したらここをク
リックして保存します
21
まています 次に酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着量 n[molg]の関係および酢酸濃度 Cb[molL]と Cbn[gL]の関係をグラフ化します今回は自動的にグラフが作成されるようになっていますので複
雑な操作は必要ありません ここではデータに対してそれを精度よく表現する近似式をグラフ上に描きその関数
を数値として求める方法を Excelで練習してみましょう
グラフを表示させるには画面の下にある「Graph1」もしくは「Graph2」のタグ
をクリックします「Graph1」には酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着量n[molg]の関係のグラフが「Graph2」には酢酸濃度 Cb[molL]と Cbn[gL]の関係のグラフが表示されます「Graph2」はLangmuir の等温吸着式による相関を表したもので横軸に酢酸濃度 Cb[molL]をとり縦軸に酢酸濃度 Cb[molL]を活性炭吸着量 n[molg]で除した値 Cbn[gL]を示していますLangmuir の等温吸着式についてはこの後の章で説明してありますので各自読んで理解して下さいLangmuirの等温吸着式では式中の定数 ninfin(飽和吸着量)と K(吸着平衡定数)を実験データから最小二乗近似で決定する場合が多くありますここでは
その例を取り上げてデータに対してそれを精度よく表現する近似式をグラフ上に描き
その関数を数値として求める方法(最小二乗法最小二乗については付録に示しており
また化学工学プログラミングの講義においても説明します)を Excelで練習します 配布された Excel ファイル「ad_graxls」では実験点が表示されているだけでそれを精度よく表現する近似式の直線のグラフは「Graph2」に表示されていません今から次の手順で「Graph2」の図(グラフ)に近似式の直線のグラフを表示しますExcel の場合近似曲線(ここでは直線)を求める場合コンピュータが自動的に最小二乗法を使って近似曲線
を計算しています
「Graph1」の画面 「Graph2」の画面
Excelの sheetが表示されたらまずファイル名を変えデスク
トップに保存して下さい次
にGraph2のタックを左クリックして最小二乗法のグラフを
確認して下さい
22
38 Langmuirの等温吸着式による相関 はじめにLangmuir式の定数 ninfinと Kを決定するために「Graph2」酢酸濃度 Cb[molL]と
Cbn[gL]の関係のグラフから最小二乗法により直線の式を求めますExcelを用いてデータに対して近似直線のグラフを描き最小二乗法の直線の式を求めます
次のような「近似曲線の追加」のウィンドウが現れたら今回は線形近似(直線で近似
y=ax+b の式)を選びますので線形近似が黒色に反転していることを確認して「近似曲線の追加」のウィンドウの右下の「OK」ボタンをクリックして下さい
実験点の何れかにポインタをあわせて
右クリックする
近似曲線の追加(R)を選択して左クリックする
「線形近似」であること
を確認して「OK」ボタンをクリックします
23
「近似曲線の書式設定」
のウィンドウでオプシ
ョンから「グラブの書式
を表示する」の前を選ん
でチェック(前のチェッ
クボックスをクリック)
した後「OK」を押す
現れた直線にポインタをあわせて
左クリックすると「近似曲線の書式
設定」のウインドウが表示されます
ここをクリックします
この「オプション」のタ
グをクリックします
「y=」の関数
が現れるのでここ
をクリックする
式の文字フォントが初期値
「8」と小さいのでここ
のボタンをクリックし
フォントサイズを選ぶリス
トボックスを表示し「22」程度の大きなサイズを選択
しクリックする
24
「Graph2」酢酸濃度 Cb[molL]と Cbn[gL]の関係のグラフから最小二乗法により直線の式がこのように求められましたExcel を用いてデータに対して近似直線のグラフを描き最小二乗法の直線の式を求めるこの方法は他の実験データの解析などにも利用できますので
各自活用して下さい 表示された関数式「y=43865+2654」はノートにメモして下さいこの傾き 43865と
切片 2654からLangmuir式の定数 ninfinと Kを決定します決定方法の詳細はこの後の 36 の Langmuir式のパラメータ決定法に示しています ラングミュアの等温吸着式を変形すると次式となる
CCnKnCKn
CCKn
Cβ+α+
==
+= infininfininfin
11)1(
ただしα=1ninfinβ=1(ninfinK)とするこの式より Cnを縦軸Cを横軸とした関係のグラフは傾きα=1ninfin切片β=1(ninfinK)の直線関係を与えることを示しています そこでExcelのシートを利用してこの値からLangmuir式の定数 ninfinと Kを次のように決定しますセル C18D18に Graph2で求めた数値 2654と 43865を代入しますその後D19と C19に関数を ldquo=1D18rdquoとrdquo=D18C18ldquoを代入しますセル内の式は半角で入力してください
現れた関数の文字フォン
トを大きく(例えば 22)してその数字をメモし
吸着データシートの C18と D18に記入する
C18D18 に Graph2 で求めた値 2654 と 43865 を代入した後D19 と C19 に関数を ldquo=1D18rdquoとrdquo=D18C18ldquoを代入する
25
この Excel表示では最小二乗法を用いて決定した傾きαと切片βを用いて α=1ninfin=43865 β=1(ninfinK)=2654 得られた傾きおよび切片よりninfinおよび Kは次のように求まる
ninfin=1α=1D18=000228 molg-1 K =(1ninfin)β=αβ=D18C18=165
つまりセル D19にはninfinの値がセル C19にはKの値が表示されますこれらの値はラングミュア(Langmuir)の単分子吸着モデルで計算した理論線と実験と比較する場合に利用します実験結果に対して理論的な考察を行う例としてラングミュア(Langmuir)の単分子吸着モデルで理論線を計算し実験と比較するにはこの Excelファイルを利用して次のように計算しグラフに表示します セル F5~F30 には溶液中に残る酢酸濃度 Cb[molL]に対する活性炭に吸着された吸着量n[molg]の関係のグラフ「Graph1」の横軸の酢酸濃度 Cb[molL]の適当な値が既に入力してありますこれらのそれぞの酢酸濃度 Cb[molL]に対する吸着された酢酸の吸着量 n[molg]の理論値をラングミュア(Langmuir)式で計算しますラングミュア式は次式で与えられます
KCKCnn
+=
infin
1 (310)
ここでこの実験データを最も精度よく計算できるように決定した ninfinおよび K は上述のようにninfin=1α=1D18=000228 molg-1 K =(1ninfin)β=αβ=D18C18=165 でありこれらの値はセル D19にninfinの値がセル C19にKの値が表示されていますこの値を利用して「Graph1」に計算線を描くにはまずセル G5~G30 にセル F5~F30 のそれぞれの酢酸濃度 Cb[molL]に対する吸着された酢酸の吸着量 n[molg]の理論値をラングミュア式で計算しますそのためにはセル G5 にラングミュア式を次のように記述しますただしセル D19の ninfinの値セル C19の Kの値は常に同じセルから参照するので絶対参照($マークを付けて$D$19 $C$19と記述します)で記述します
Langmuir式をセル G5に記述するただし濃度はF5の値を相対参照しD19と C19は絶対参照($マークが必要)することを忘れないように
セルG5に記述すべき数式
=$D$19$C$19F5(1+$C$19F5)
26
G5記述後フィルハンドルを使用してG5の関数を G6~G30までコピーします Sheet1から Graph1 のタグをクリックしGraph1 に計算線が表示されたことを確認しましょうこれでラングミュア式によるデータの解析は終了です実験値と理論値を比較して現象
について考察してみて下さいラングミュア式を理論的に導く場合にある仮定をしている
のですがその仮定をしているラングミュア式が実験データを精度よく計算できていれば
その仮定が妥当なもとであったと考察できます 与えられたモデルデータでラングミュア式によるデータ解析ができれば他の理論(例え
ばフロインドリッヒFreundlich式や BET式レポートはどちらか一方でも可です) についてもExcel で計算してみましょうレポートには自分のデータについてここで行った内容と同様に計算しその結果を考察に記述して下さい 自分のデータについて同様の計算をするにはまずいままで計算を行った Excel ファ
イルを保存しますデータを自分の実験データに置き換える前に Excel ファイルをさらに別の名前で保存します与えられた Excel ファイルは初期状態では模擬のデータが入力されているので今回自分達の実験したデータを入力していきます入力するデータは予め計算
しておいた酢酸濃度 Cb[moll]と活性炭吸着量 n[molg]になります下の画面の丸で囲んだ部分にそれぞれ自分の実験データを入力していきます
今回はCbnの値を入力する必要はありませんExcelが自動的に計算を行って結果を表示するようになっています 次に酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着
量 n[molg]の関係および酢酸濃度Cb[molL]と Cbn[gL]の関係をグラフ化します今回は自動的にグラフが作成
されるようになっていますので操作は必
要ありません 39 Freundlichの等温吸着式による相関 今回の実験で得られた酢酸濃度 Cbと活性炭吸着量 nのデータを利用してFreundlichの等温吸着式の定数 abの値を求めFreundlichの等温吸着式の理論線をグラフに追加します ここでFreundlich式は次式で表されます
bbaCn1
=
このままでは定数 abの値を決定することが難しいので上式の両辺の対数をとり線形化しますすると次式となります
bCb
an ln1lnln +=
ここでln Cbと ln nの関係をグラフにプロットすれば傾き 1b切片 ln aの直線関係が得られますしたがって実験データである酢酸濃度 Cbと活性炭吸着量 nの値の対数をそれぞれ計算します配布した「ad_graxls」ファイルを開き「吸着データ」シートの任意の部分に以下のような表を作成します
27
次にln Cb[-]の列の最初のセルに以下の数式を入力します
=ln(B5) 上式中の「B5」は Cb の値の最初のセルの位置を指します各個人の位置によって変更してください
次にln n[-]の列の最初のセルに以下の数式を入力します
=ln(C5) 上式中の「C5」は nの値の最初のセルの位置を指します各個人の位置によって変更してください
ここでln Cb[-]ln n[-]の値に対しそれぞれオートフィルを行い計算させますすると以下のようなデータが完成します
計算した ln Cb[-]ln n[-]の値をグラフにプロットし最小二乗法による直線式を求めます
28
ここで以下のような直線の式が得られたとします
9135ln31690ln913531690 minus=there4minus= bCnxy
上式より切片は-5913傾きは 03169となるので以下の要領で定数 a1bを計算します ==there4minus= minus 91359135ln eaa 000270
316901=
b
a の値を Excel で計算させる場合は任意のセルに以下のような数式を入力することで求めることができます
=exp(-5913) これでFerundlich等温吸着式の定数 a1bの値が決定しましたこの値は後で使うのでノートなどにメモしておいてください 次に決定した Ferundlich 等温吸着式の定数 a1b の値を用いてFerundlich 等温吸着式のグラフを作成します先ほども示したように Ferundlich等温吸着式は次式で表されます
bbaCn1
=
従って定数 aと 1bの値はすでに決定しているので任意の Cbの値に対する nの値を数点求めればFerundlich等温吸着式で求めた理論線が得られます以下の操作で理論線を引くことができます Langmuir 等温吸着式による相関のときと同様にExcel の「吸着データ」のシート上の任意の場所に以下のような表を作成します
次に Ferundlich等温吸着式に従いnの値を計算します
bbaCn1
=
式中の定数 a1bは先ほど計算した値を用いますしたがって式は次のようになります
31690002700 bCn times=
この式を Excelのセル内に記入すれば計算ができます次の
29
ように記入します
=00027G5^03169 ここで式中の「G5」は Cbの値が 0のセルを指しています各個人の位置によって変えてください 次に式を記入したセルを Cbの値が 05のところまでオートフィルを行いますそうするとすべての Cbに対して nの値が計算されます
これで Freundlich等温吸着式のデータが完成しましたので次に「Graph1」酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着量 n[molg]の関係のグラフにこのデータを追加し理論線を引きます理論線の引き方は Langmuirによる相関のときと同様の操作を行ってください グラフの書式等を変更し整理すると以下のようなグラフが出来上がります
310 吸着等温線とは 固体の吸着剤を溶液と接触させる時一定量の吸着剤によって吸着される溶質の量は温度一定ならば溶質の濃度の関数になる一定温度での吸着量を温度に対してプロットした時に
得られる曲線を吸着等温線というこの吸着等温線を比較的よく表す経験式として次の
Freundlich式がある
n=aC1b (1) ここで n は吸着剤の質量あたりの吸着量C は吸着平衡濃度a と b は実験から決定されるパラメータであるがその物理的意味は多少希薄である これに対し理論的な意味を持つものに次のラングニュア(Langmuir)の吸着等温式がある
30
KCKCnn
+=
infin
1 (2)
ただしninfinは飽和吸着量Kは吸着平衡定数であるこの式は
1)吸着分子が固体表面で単分子以上の厚い層を作ることはない 2)吸着分子同士の間の相互作用はない
という二つの仮定にもとに導かれたものである 結果の整理および報告 Freundlich吸着等温式Langmuir吸着等温式の各々のパラメータの最適値を求めよまた活性炭の吸着特性および表面積について考察し化学工学における吸着操作の重要性につい
ても検討せよ 311 吸着等温式 (a) ヘンリー(Henry)型吸着等温式 液相の濃度あるいは気相の圧力が小さい場合吸着分子間の距離が十分に長いため吸着
分子同士の相互作用が無視でき固体表面と吸着分子のみの相互作用で吸着量を決定できる
とき次式のように表される
n=KC (3)
ここでKは比例定数である図 3-1の(a)に示すように濃度 Cと吸着量 nは比例関係があり一般に吸着量が小さい範囲で成立する気体の場合は溶液濃度 Cの代わりに気相圧力 pを用いればよい
濃度(分圧)
濃度(分圧)
濃度(分圧)
濃度(分圧)
吸着量
吸着量
吸着量
吸着量
(a)ヘンリー型 (b)ラングミュア型
(d)BET型(c)フロインドリッヒ型
0
0
0
0
図 3-1 吸着等温式
31
(b)ラングミュア(Langmuir)型吸着等温式 ラングミュアは図 3-2 に示すように固体表面に同等な吸着力を示す吸着サイトがあり
表面に 1分子層だけ吸着する(単分子層吸着)と仮定して平衡状態における吸着量と溶質濃度(気相分圧)のと関係を導いた全吸着点のうち吸着分子に覆われている吸着点の割合
をθ[-]とすると分子の脱着速度 rrsquo[mols-1]はθに比例する比例定数を a[mols-1]とすると次式のように表される
吸着剤
吸着分子
吸着サイト
図 3-2 固体表面上の吸着サイト(Langmuir式の導出) r=aθ (6) また気相からの吸着速度 r[mols-1]は空いている吸着点の割合(1-θ)[-]と溶液濃度 C[molm-3]に比例する rrsquo= b(1-θ)C (7) このときの比例定数を b[m3s-1]とするまた平衡状態では両速度は見かけ上等しいため以下の式が成り立つ aθ=b(1-θ)C (8) これを変形する
CbaCbsdot+
sdot=θ (9)
ここで飽和吸着量を ninfin[molkg-1] ba を K[m3mol-1](Kは吸着平衡定数)とおくと infin=nnθ
となるので次式が得られる
32
KCKCnn
+=
infin
1 (10)
これをラングミュア式と呼ぶ
(c)フロインドリッヒ(Freundlich)型吸着等温式 フロインドリッヒの吸着等温線は図 3-1(c)のように示される
n=aC1b (11) nは吸着量[molkg-1]で aと bはともに吸着定数[-]である (d)BET(Brunauer-Emmett-Teller) 型吸着等温式
BET型の吸着等温線は図 3-1(d)に示されるラングミュア式は表面に 1分子層だけ吸着すると仮定したものであるがBET式は無限分子層まで吸着できる式である図 3-3に示すように吸着した分子がそれぞれ次の層の吸着サイトとなり分子は積み重なって多分子
層に無限層まで吸着できるものとし各層への吸着にラングミュア式を適用すれば次式の
ように表せる
( ) ( )CKCCCKqq
minus+sdotminussdotsdot
=infin
11 (12)
この式は多孔質固体の細孔表面積を窒素ガスの吸着によって測定する際に利用される重要な式
である
表面の吸着サイト
分子上の吸着サイト
図 3-3 多分層吸着モデル
Langmuir式のパラメータ決定法 水溶液からの酢酸の活性炭に対する吸着平衡データ(吸着平衡温度 12)は表 3-1のよ
うに与えられる実験データよりラングミュア式のパラメータ(K吸着平衡定数ninfin飽和吸着量)を最小二乗法で決定せよさらにラングミュア式より決定した ninfinKの値を用いて吸着等温線を計算し計算線として図に示し実験点と比較せよ
33
表 3-1 n C Cnの関係
ラングミュア式は式(310)で与えられるこの式を変形すると次式となる
CKnCK
n infinsdot+
=11
(313)
両辺に Cをかけると以下の式が導出される
CCnKnCKn
CCKn
Cβ+α+
==
+= infininfininfin
11)1( (314)
ただしα=1ninfinβ=1(ninfinK)とする式(314)より Cn と C の関係のグラフプロットは傾きα=1ninfin切片β=1(ninfinK)の直線関係を与えることを示している表 3-1の値を用いて計算した Cnと Cの関係を表 3-1および図 3-4に示す 最小二乗法を用いて傾きαと切片βを決定した α=1ninfin=43865 β=1(ninfinK)=2654 得られた傾きおよび切片よりninfinおよび Kは次のように求まる
ninfin=1α=1D18=000228 molg-1 K =(1ninfin)β=αβ=D18C18=165
0
50
100
150
200
0 200 400 600
C [ molm-3 ]
Cn [ kgm-3 ]
傾き = 1 ninfin
1 ninfinK
切片0
05
1
15
2
25
3
0 100 200 300 400 500
液相の溶質濃度 C [ molm-3 ]
吸着量 n [ molkg-1]
液相と溶質濃度 C [ molm-3 ]
吸着量
n[ m
olk
g-1]
実験点
Langmuir式パラメータninfin 00033 [ molg-1 ]K 00086 [ m3 mol -1 ]
図 3-4 ラングミュア定数の決定 図 3-5 12における酢酸濃度 Cと
吸着量 nの関係
C [molm-3] n [molkg-1] Cn [kgm-3] 460 225 109 529 214
268 199 149 105 060
172 128 732 504 357
34
Freundlich式のパラメータ決定法 酢酸水溶液中における酢酸の活性炭に対する吸着実験を行ったところ以下のような実験デー
タを得たただしCbはバルク相における酢酸濃度n は活性炭に対する酢酸の吸着量を示す
Cb[molL] n[molg] log10Cb log10n 04621 000205 02410 000175 01139 000139 00519 000105 00243 000081
実験データを利用して次式で与えられる Freundlichの等温吸着式の定数 abの値を求めたい
bbaCn1
= (1)
このままでは定数 abの値を決定することが難しいので上式の両辺の対数をとる
bbb
bb
Cb
aCa
aCn
ln1lnlnln
)ln(ln1
1
+=+=
=
(2)
ここで横軸に ln Cb縦軸に ln nの関係をグラフにプロットするすなわち x=ln Cby=ln nと考える
bCb
an ln1lnln += (3)
ここで直線式 y=a0+a1xと比較するすなわち
)(1)(ln
1
00
傾き
切片
ba
eaaa a
=
=rarr= (4)
a0および a1は最小二乗法により数値で求められる与えられたデータでは a1= a0= なので a= b= となる この値を n=acb
1bに代入してcb=0~05の範囲で nの値を計算する
35
BET式のパラメータ決定法 BET式は次式で与えられる
)1)(1( KCCCKCnn
+minusminus=
infin
(17)
以下のように BET式の変形を行う
)1()1(
KCCKCnCn+minus
=minusinfin
(18)
(18)式の逆数をとると
KCnCK
KCnKCC
Cn infininfin
minus+=
+minus=
minus)1(1)1(
)1(1
(19)
(19)式の両辺に Cをかえると
KCnCKC
CnC
infin
minus+=
minus))1(1(
)1( (20)
(20)式を変形すると次式が得られる
CKn
KKnCn
Cinfininfin
minus+=
minus11
)1( (21)
C と)-(1 Cn
Cのプロットは傾き
KnKinfin
minus1切片
Kninfin
1の直線関係を与えることを示している
これをグラフにプロットし最小二乗法に傾きおよび切片を求める
36
312 活性炭の比表面積の決定 酢酸分子の構造を以下に示す
Hc-Cb-Ca
Hd
Hb Oa
Ob-Ha
1219deg
Ca Oa
Ob
図 36 酢酸の構造
酢酸の 1分子の吸着面積srsquo [m2]を図 3-6に示すこのとき文献より
Caと Oaの結合距離 1321Å Caと Obの結合距離 1206Å OaCaObの角度 1219deg Cの原子半径 077Å Oの原子半径 062Å
したがって吸着面積 Slsquoは次のようになる
( ) ( ) 2088 10376109931036321 minusminusminus times=timestimestimestimes=s m2
ここで活性炭の比表面積 S[m2g]は次式で示される 10026 23 snS timestimestimes= infin
S活性炭の比表面積 [m2g] ninfin飽和吸着量 [molg] srsquo酢酸 1分子の吸着面積 [m2] 602times1023アボガドロ数 [個mol] したがって活性炭の比表面積 S[m2g]は
003350=infinn molg 2010376 minustimes=s m2 より
51281037610026003350 2023 =timestimestimestimes= minusS m2g
37
4 粘度密度測定 41 はじめに 大量生産を目的とした工業的化学プロセスはほとんど流れ系(流通系)であるそれらの系において操作対象となる各物質の粘度は装置を設計操作する場合きわめて重要
な物性値である 本実験では低分子溶液および高分子溶液の粘度測定を通じて液体の粘度について考察するさらに演習問題を通じて気体液体高分子溶液などの化学プロセスで対象となる物
質の輸送物性(粘度拡散係数)の重要性を認識されたい 42 低分子溶液の粘度 [目的] 種々の濃度のエタノール水溶液の粘度を測定しその溶液の粘度について考察する [概要] 25におけるエチルアルコール濃度 02040506080100 wt の水溶液について流下時間を測定しこの結果より相対粘度絶対粘度運動粘度を求めグラフにするま
た水の密度水-エチルアルコール溶液の密度についてはピクノメーターを用いて決
定する報告書には相対粘度絶対粘度運動粘度 vsエチルアルコール濃度の関係をそれぞれグラフにして提出する
[計算方法] 相対粘度絶対粘度運動粘度の定義は次のようになる
相対粘度 ww
w tdtd
ηη = (41)
η 混合溶液の粘度 [gcms] ηw水の粘度(8007times10-3 gcms) [gcms](25における粘度) d エチルアルコール水溶液の密度 [gcm3] dw水の密度(099704gcm3) [gcm3](25における密度) t エチルアルコール水溶液の流下時間 [s] tw水の流下時間 [s] 下付添字 W 水
絶対粘度 www td
tdη
η= (42)
運動粘度 ν=ηd [cm2s] (43)
38
[実験方法] 1) 粘度計を洗浄し粘度計内 に二連球で空気を送り込み
乾燥させる乾燥しにくい 場合はアセトンを滴下し た後再度二連球で空気 を送り込み乾燥させる 2)ピペットで一定体積(10mℓ) の純水を取り広い口 f から 粘度計に水を入れる 3)粘度計を恒温槽(25)に つけ約 10 分静置する 4)安全ピペッターを口 a に 取り付け液面が b 上部に 到達するまで吸い上げる 5)安全ピペッターを外すと 液面が降下しだす液面が bd 間を通過する時間をスト ップウォッチで測定する
6)純水での測定を 3 回繰り返す 7)純水を粘度計から取り除くその後粘度計内に二連球を用いて空気を送り込み乾燥させる 8)粘度計乾燥後複数の濃度に調整済みのエチルアルコール水溶液(10mℓ)を粘度計にいれ4)~6)の作業を繰り返し行う(3 回)なお濃度の異なるエチルアルコール水溶液を粘度計内に導入する場合には7)と同様に二連球を用いて粘度計内に空気を送り込み乾燥させる
表 4-1 エチルアルコール水溶液の濃度密度相対粘度の関係 エチルアルコール濃度
[wt] 密度 d[gcm3] 相対粘度
η ηw[-] 0
20 40 50 60 80
100
安全ピペッター接続
図 4-1 粘度計
液面の bd間の通過時
間を測定
f
39
43 密度測定 [目的] 本実験では水とエタノールの種々の組成の混合液体について密度を測定し分子間相互
作用について考察する [実験方法] 1)ピクノメーターの容積測定
図 4-2のピクノメーターの空の重量 wg を秤量する
ピクノメーターの蓋を取り外し
ピクノメーターを水で満たす
設定温度を 25として恒温槽 の電源を入れ恒温槽内の温 度が一定になるまで待つな お水温は恒温槽中の水銀温 度計から読む
恒温槽中に水を満たしたピク
ノメーターを入れる
約 10分間静置する
ピクノメーターに蓋をするこのときピクノメーターの容量
よりも余分の水は蓋の上部より排出される
ピクノメーターの外側を乾いた布で拭い秤量する(その重量を
wwg とする)
恒温槽の温度(25)における水の密度 dwgcm3(=099704gcm3)
より次式を用いてピクノメーターの容積を求める
w
w
dww
Vminus
= (44)
図 4-2 ピクノメーター
蓋
40
表 4-2 エチルアルコール水溶液の濃度と密度の測定結果(25) エチルアルコ
ール濃度[wt]
wrsquo[g] ww[g] V[cm3] w[g]
d[gcm3]
0 20 40 50 60 80
100
099704
エチルアルコール濃度[wt] 空のピクノメーターの重量 wrsquo[g] 水を入れたときのピクノメーターの重量 ww[g] ピクノメーターの体積 V[cm3] エタノール水溶液の入れたときのピクノメータの重さ w[g] エタノール水溶液の密度 d[gcm3]
容積 Vを求めたピクノメーターに混合溶液(調整済み)を入れてその重量 wgを秤量し次式で混合溶液の密度を求める
Vwwd minus
= (45)
エタノール濃度と密度 d の関係をグラフにプロットする
41
44 高分子溶液の粘度 [目的] 高分子溶液の粘度測定から分子量の粘度に与える影響について考察する [概要 ] オストワルド粘度計を用い種々の濃度のポリビニルアルコール(PVA ((-CH2CHOH-)n))水溶液の粘度を測定し粘度データよりポリビニルアルコールの分
子量を求める まず 05g100cc の濃度のポリビニルアルコール水溶液を調製する次にこれを原液
とし23 12 13 15の濃度の溶液を調製するこれらの溶液についてオストワルド粘度計を用いてそれぞれ流下時間を測定し相対粘度絶対粘度運動粘度を求め実験デ
ータより極限粘度[η]を求めるまた報告書には相対粘度絶対粘度運動粘度C
)ln( wηη
Cw
w-η
ηη vsポリビニルアルコール濃度の関係をそれぞれグラフにして提出する
[計算方法] エチルアルコール水溶液の粘度測定と同様の手法を用いて粘度の計算を行うなおポリビニルアルコール水溶液の密度はピクノメーターを用いて測定すること 表 4-3 ポリビニルアルコール水溶液の濃度密度相対粘度の関係 ポリビニルアルコール
濃度 [g100cc] 密度 d[gcm3] 相対粘度
η ηw[-] 05times(15) 05times(13) 05times(12) 05times(23)
05
42
[分子量の計算方法] 実験を行った結果以下のような粘度データを得られるとする実験データより極限粘度
を求めポリビニルアルコール(PVA)の分子量Mを決定せよ
PVA 水溶液濃度
C[g100cc]
相対粘度
ηηw[-]
絶対粘度
η[gcms]Cw
w-η
ηη
C)ln( wηη
05times(15) 1031 0008255 031 0305
05times(13) 039 0378
05times(12) 03 0289
05times(23) 0375 0353
05 0364 0334
ηw=8007times10-3 gcms 線状高分子の極限粘度[η]と分子量Mの関係は次式で与えられる [η]=KMα (46) ただしポリビニルアルコールの場合K=666times10-4α=064であるなお極限粘度[η]は次式で定義される
CC w
w
0
-][ limη
ηηη
rarr
= (47)
または
CC
)ln(][ w
0lim
ηηη
rarr
= (48)
よって濃度 CとCw
w-η
ηηまたは濃度 Cと
C)ln( wηη の関係をグラフ化し最小二乗法によ
り切片の値を求めると極限粘度[η]が決定される
Cw
w-η
ηηと C の関係より最小二乗法を用いて切片の値を決定すると(図 43 参照)切片=
03242傾き=00874となるよって極限粘度は以下のようになる[η]=03242同様
にC
)ln( wηη とcの関係より最小二乗法を用いて切片の値を決定する
(図 44参照)と切片=03249傾き=00256となり極限粘度は以下のようになる[η]=03249
Cw
w-η
ηηと Cの関係より決定した[η]=03242を用いてポリビニルアルコール(PVA)の
分子量 Mを計算する(46)式より以下のように PVAの分子量 Mを計算することができるM=([η]K)1α
=(03242(666times10-4))(1064)
=15811
43
y = 00874x + 03242
0
02
04
06
08
1
0 01 02 03 04 05 06 07
c[g100cc]
(η-ηw)(ηwc)
cw
w
η
ηηminus
極限粘度[η]
図 43 298Kにおける PVA濃度 CとCw
w-η
ηηの関係
y = 00256x + 03249
0
02
04
06
08
1
0 01 02 03 04 05 06 07
c[g100cc]
(ln(ηη
w))c
c)ln( wηη
極限粘度[η]
図 44 298Kにおける PVA濃度 CとC
)ln( wηη の関係
44
5 植物からの DNAの抽出 51 はじめに 分子レベルでの遺伝子の構造解明や遺伝子の発現に関する研究は近年急速に発展している
これら生命現象のしくみを分子レベルで解明しようという分子生物学の分野ではさまざま
な遺伝子の解析や応用方法が開発され我々の生活に身近なものになりつつある 本実験では初歩的な分子生物学に関する実験として植物(タマネギ)からの DNA の
抽出を行い抽出した遺伝子の電気泳動法による分離実験を試みる 52 試薬および器具 試薬 タマネギ(細胞中から遺伝子の抽出を行う) 台所用洗剤(洗剤中に含まれる界面活性剤には植物の細胞膜およびタンパク質を破壊す
る働きがある) 塩化ナトリウム(DNAは塩化ナトリウム水溶液に溶解し易い性質がある) エタノール(予め冷やしておくDNAはエタノールにほとんど溶解しない) 制限酵素(DNAを一定の部位で切断する働きを働きがある) TE緩衝液(pH緩衝剤が入った溶液) 器具 ビーカーミキサーフィルターメスシリンダー駒込ピペットガラス棒 マイクロピペット電気泳動装置ポラロイドカメラ 53 実験方法 1)タマネギは 1回の実験で半個のうち内側の半分程度を使用するタマネギ水 30ml台所用洗剤数滴をミキサー用ガラス容器に入れ40~60秒程度(固体状のタマネギがなくなる頃が目安)ミキサーにて混合する
2) 1)で作成した混合溶液をビーカーに移し約5g程度の塩化ナトリウムを加えガラス棒で静かに攪拌する粘性の大きな溶液が得られる
3) 2)で作成した溶液をフィルターを用いて濾過し濾液を回収する 4) 濾液の約2倍程度の量の冷エタノールをビーカーの壁伝いに静かに注ぐ 5) ビーカーを揺するとエタノール層に白くふわふわしたものが浮いてくるこれが DNAであるガラス棒で DNAを巻き取りシャーレ上にて DNAを回収する顕微鏡を用いて回収した DNAの状態を観察する
6)マイクロチューブ(容量 15ml)中に用意した 70エタノールを 8 分目程度まで注ぐ5)にて回収された DNAをマイクロピペットを用いて70エタノールの入ったマイクロチューブ中に移す軽く混ぜることによりDNA から不要な物質を洗い流す遠心分離してDNA をマイクロチューブの底に沈めた後溶液を捨てて DNA を乾かす乾いたらTE緩衝溶液を 1ml加えて放置するDNAの溶液が得られる
54 電気泳動装置による DNAの観察
本実験は職員と一緒に行うこと 実験を行う人はビニール手袋をすること 1) 抽出した DNAを電気泳動装置で観察するマイクロピペットを用いて以下のように調製した DNAの混合溶液を調製する(いずれの溶液も調製済)
45
2) マイクロピペットを用いてアガロースゲルの試料を流し込む穴(ウェル)に1)にて調製した溶液 Aおよび Bを注ぎ込む注入量は20μℓとする電気泳動装置のスイッチを入れて100Vの電流を流しアガロースゲル内にて DNAを電気泳動させる
3) 試料に予め加えられておいた青色の色素が 7 分目程度まで進んだら電気泳動を中止する(約 30分程度)
4) (ここでの作業は職員が行う) アガロースゲルを取り出し染色液に浸す染色後ゲルを取り出しポラロイドカメラで
DNAの泳動状態を撮影する
+ -
アガロースゲル
試料を流し込む穴(ウェル)
図 51 電気泳動装置
6 5 4 3 2 1
図 52 DNAの電気泳動写真の一例
55 電気泳動装置の原理 電気泳動装置の原理図を以下に示すアガロースゲル(寒天から不純物を除いたもの)中
に DNAをセットし電流を流すとDNAは電流の向きとは逆にマイナスからプラス方向
調製済 溶液 A(制限酵素なし) 水 11μℓ 10timesH Buffer 2microℓ 植物 DNA 5μℓ
調製済 溶液 B(制限酵素 Eco RI入り) 水 11μℓ 10timesH Buffer 2microℓ 植物 DNA 5μℓ 制限酵素 2μℓ
1 DNA(タマネギ)+制限酵素 2 DNA(タマネギ)+制限酵素 3 DNA(タマネギ) 4 λ-DNA(大腸菌)+制限酵素 5 λ-DNA(大腸菌) 6 サイズマーカー
500bp
46
に動く(このことを電気泳動という)これはDNA のリン酸部分が負に帯電しているためでありまたDNAはその長さにより泳動距離が異なる(短い遺伝子ほど長く泳動する)電気泳動ではこの性質を利用してDNAを大きさごとに分離することができる
塩基対数によってDNAを分離
EtBr (蛍光試薬)DNAの二本鎖内に入り込む
発光
UVλ=302nm
励起
分離後のアガロースゲルをエチジウムブロマイド(EtBr)溶液に浸す
DNAを含んだ溶液
アガロースゲル
リン酸部分が負に帯電
塩基 (ATGC)-
+
カメラで撮影
電圧
DNA構成成分(dNTPs)
バンドが明る
DNA量が
バンド(DNAの存在)
図 53 電気泳動の原理
56 制限酵素とは DNA は4 種類のヌクレオチド(GATC)が不規則につながってできている制限酵素はDNAの特定のヌクレオチドが並んでいる部分を切断する制限酵素には様々な種類がありEco RI(エコアールワン)と呼ばれる酵素は「GAATTC」といった並びの部分だけを切断することができる
GAATTC
CTTAAG
制限酵素
Eco RI
AAGCTT
TTCGAA
制限酵素
Hin dIII
図 54 制限酵素による DNAの切断
レポートについて 1 実験方法および実験結果の整理方法については指針書を参考にすること 2 実験結果については電気泳動の結果について考察すること(制限酵素の影響などにつ
いてまとめてください)
47
6 染色実験
61 はじめに
現在私達の身の周りでは様々な染料が使われている例えばT シャツやジーンズな
どの衣服は橙黄赤青など様々な色に染められている他にも私達が気付かないと
ころで多くの染色された製品を使用しているそこで本実験では高校の化学で学んだ
アゾ染料を合成してみるアゾ染料はアニリンを原料として作られているアニリンはベ
ンゼン環にアミノ基(-NH2)がついたものであるアニリンは無色の液体で水に溶けにく
くアンモニアより弱い塩基性を示すまたさらし粉(CaClO(ClO)H2O)水溶液を加えると
赤紫色を呈するこの呈色反応はアニリン特有のものであるので検出反応に用いられる
このアニリンを出発物質としてアゾ染料を合成してみる
62 試薬および使用器具
【試薬】 ①05moll 水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液
②2-ナフトール ③フェノール ④6moll 塩酸
⑤亜硝酸ナトリウム ⑥アニリン ⑦氷
【器具類】 ①電子天秤 ②50mℓビーカー ③100mℓビーカー
④ガラス棒 ⑤布(ガーゼなど) ⑥ピンセット
⑦ポリ手袋 ⑧ドライヤー ⑨シャーレ
10駒込ピペット(10ml ガラス製)
11駒込ピペット(1ml プラスチック製)
63 実験方法
1) 50mℓビーカーの中に 05molℓ水酸化ナトリウム水溶液 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回
NaOH 水溶液を分取するほぼ 20 mℓ分取できれば可)と 2-ナフトールを約 01g 入れ
よくかき混ぜる調製した溶液の中に布をつけその布はガラス棒でしぼってから(布
をガラス棒ですくいあげればよい)シャーレに広げる温度の異なる条件下(常温およ
び低温)で染料の合成実験を行うため布は最低 2枚調製した溶液と接触させそれ
ぞれ別々のシャーレ(低温用および常温用)に広げる
2) 新しいビーカーに水を約 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回分取)と 6molℓ塩酸約 4mℓ(10m
ℓ駒込ピペットで目分量で可)さらにアニリン約 1mℓ(プラスチック製 1 mℓ駒込ピペッ
ト)を入れてよくかき混ぜる染料の合成を常温および低温下で行うためこの溶液を
2つ調整する
低温下で反応させる溶液は恒温槽で 10~15 分ほどよく冷やした後亜硝酸ナトリウ
ム 05g を加えてよくかき混ぜる
常温下で反応させる溶液には冷却作業を行わずに亜硝酸ナトリウム 05g を加えて
よくかき混ぜる
3) 2)でつくった水溶液をシャーレに広げた布に注ぎ生成される染料を布によく染み
込ませ5分程放置する
4) 色の付いた布を取り出してポリ手袋をした手できれいに水洗いをし乾燥させる
48
5) 色差計を用いて乾燥した布の Lab(L明度aおよび b色度)を測定する
2)で作った溶液は5以下では無色の溶液ですが5以上になると淡い黄色になりま
す
【解説】
アゾ染料はアゾ基(-N=N-)を持っていてこのアゾ基によって鮮やかな橙色を呈色し
ます今回合成したアゾ染料は図の 1-フェニルアゾ-2-ナフトールです意外かもしれ
ませんが指示薬として使われているフェノールフタレインもアゾ化合物ですフェノール
フタレインは pH の変化によって色が出てきす染料の中でも最初は無色のものもありますが
温度を変化させたり酸性やアルカリ性にすると色が出てきます
ベンゼン ニトロベンゼン
N2Cl
ニトロ化 濃硫酸(濃硝酸)
還元反応 濃塩酸
(Sn又は Fe)
アニリン塩酸塩
遊離反応 NaOH
アニリン塩酸塩に強塩基を反応させる
と弱塩基であるアニリンが遊離する
氷冷+亜硝酸ナトリウム アニリン
塩酸
ジアゾ化
塩化ベンゼンジアゾニウム
塩化ベンゼンジアゾニウム
は熱によって窒素とフェノー
ルに分解される
カップリング
C10H7ONa (ナトリウム 2-ナフトキシド)
O
N =
1-フェニルアゾ 2-ナフトール
NH3Cl NH2
49
7 ガスクロマトグラフ質量分析計による茶葉中のカフェインの分析 71 はじめに ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)は極めて低い濃度の化学物質の同定や未知物質の構造決定に極めて強力な分析機器の一つであるGCMSを用いるとサンプルの中に含まれているある成分の分子構造(カフェインの分子構造を図 71に示す)やその量が分かりますもちろん分析機器ですので測定できる物質対象となる系や測定条件にはある
程度の制約があります混合物質を分離するガスクロマトグラフ(Gas ChromatographGC)と分離された成分(物質)を分析(構造決定と濃度測定)する質量分析計(Mass SpectrometerMS)を組み合わせた装置であるこの装置は有機化学生化学環境化学などの多くの分野で非常に多用されている例えば極めて低い濃度でも生体へ強い影響が懸念されるダイ
オキシン類などの土壌や河川の水中での含有率の決定や食品や医薬品中の微量成分の決定
にも利用されている 一方日本人に長い間親しまれてきた緑茶が近年産業界や医学
界で注目されている茶葉にはカフェイン(分子構造図 71)カテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドなどの有用成分が多く含まれておりその効能が注目されている 本実験では茶葉中に含まれるカフェインに対してGCMSを用いて分析する茶葉中には種々の物質が含まれておりGCMS分析を容易にするため前処理として超臨界二酸化炭素抽出(4015MPa程度の高圧力の二酸化炭素を溶剤として利用)により茶葉からカフェインの抽出を行いそのサンプルを GCMSにて分析する
図 71 カフェインの分子構造 図 72 物質の分析 個々の物質や装置についてはインターネットにより下記のWebサイトのフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』などにより調べるとよいカフェイン(caffeine)はアルカロイドの一種プリン環を持つプリンアルカロイドの一種でコーヒー類に含まれることか
らこの名がある化学名は137-トリメチルキサンチン(C8H10N4O2) コーヒーコーラ緑茶紅茶ガラナココアなどに含まれる(量は緑茶が一番多い)結晶は一水和物(C8H10N4O2bullH2O)もしくは無水物(無水カフェインC8H10N4O2)として得られ
る白色の針状または六角柱状結晶で匂いはなく味は苦い融点は 238昇華性がある出典フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』httpwwwwikipediaorg 装置「GCMS」httpwwwanshimadzucojpproductsgcmsqp2010htm (島津) 「超臨界抽出装置」httpwwwkagakucomjasco39-49html (日本分光)
50
レポート課題 1茶葉中に含まれるカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドの中から3つの物質を選びその物質について調べた結果を A4 レポート用紙2枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
2GCMS についてA4 レポート用紙1枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
3与えられたサンプルは茶葉1gから抽出されたのである実験結果よりもとの茶葉
1g中に含まれるカフェインの量を推算し計算式とあわせて示すこと 72 原理および装置 実験で使用する島津製の GCMS装置の全体図を図 73に原理の概略を図 74に示す
1
23
4
5
67 8
9
10
キャリアーガス
試料物質
1ボンベ(He)2圧力計3マイクロシリンジ4サンプラー5試料導入部6分離カラム
7セパレーター8イオン化室9磁石10電子増倍管11記録計
11
図 74 ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)の概略図
サンプルフォルダー
51
GCMS 装置は分離部である図中の 1~6 のガスクロマトグラフ(GC)と7~11 の検出部である質量分析計(MS)から構成される 3のマイクロシリンジを用いて試料を GCMSに導入する導入された試料は5試料導入部でガス化され6分離カラムに導入される分離カラムには吸着剤が充填されおり混合物の試料を導入した場合各物質と吸着剤との
親和性の違いにより各物質の分離カラムから排出されるタイミングは異なる分離カラム
を排出された試料は8イオン化室でイオン化され10電子倍増管にて検出される アセトンに溶解したカフェインの GCMSによる分析結果の一例を以下に示す図 75にク
ロマトグラム図 76にカフェインのピークのマススペクトルを示す
図 75 GCMSにより得られたクロマトグラム
横軸がリテンションタイムで縦軸がピーク強度を表す
図 76 カフェインのマススペクトルとカフェイン(分子量MW=194)の構造
(図 75中のリテンションタイム 126min付近のピークに起因するマススペクトル) 茶葉中にはカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイド以外にも繊維であるセルロースなど多くの物質が含まれているため茶葉そのものを
そのままサンプルとしてGCMSで分析することは困難であるセルロースなどの分子量の大きな物質はカラムに詰まってしまい分析できないそこで今回は超臨界二酸化炭素
による抽出により主にカフェインを他の物質と分離抽出した通常よく利用されるアセ
トン抽出(アセトンに茶葉を浸し特定の成分を抽出する)ではカフェイン以外にも多く
の物質が抽出されるため図 75 のような単独のピークを得ることは難しく複数のピークがクロマトグラムに見られるこのサンプル(この場合茶葉からの抽出物)にはカフェ
イン以外の不純物は少なかったがガスクロマトグラフの分離カラムによりさらにそれ
らの混合物が精度よく分離されるクロマトグラムのピークはそれらサンプル中に含まれ
ていた個々の物質を表しているクロマトグラムのピークを選択することで分子構造解析
したい物質を選んだことになる選択したクロマトグラムのピークの表している物質(ここ
ではカフェイン)に対応するマススペクトルが図 76 に表示されているマススペクトル
52
で横軸がその成分(ここではカフェイン)分子を構成している原子の原子量で縦軸がそ
の量を表しているのでマススペクトルから分子構造を解析するためにコンピュータ内
に蓄えられた物質ごとのマススペクトルデータと今回測定したマススペクトル(分子内に含
まれている各原子の数)を比較することで測定したサンプル中のクロマトピークを選択し
た分子がどのような原子をどれだけ含んだ分子であったかがわかりそれからその物質
がどのような分子構造の物質である可能性が高いかをコンピュータが検索し結果を示す 73 実験サンプルの設置と GCMS装置の操作方法 実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS装置のサンプルフォルダ
ー(図 73)にセットするこのサンプルは茶葉 1gを 50ccの高圧セルにて超臨界二酸化炭素を利用して4015MPa2時間接触の条件で抽出した固体を10gのアセトンに溶かしたものである またコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に装置および装置制
御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 本実験で使用する GCMS の操作は全てコンピュータのモニター上で GCMS の解析プログラムソフトを使用することで行うコンピュータの操作方法を以下に示す なおコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS 装置のサンプルフォルダー(図 73)にセットするまた装置および装置制御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 1)パソコンのデスクトップ上のアイコン「GCMS 分析」をクリックすると以下のようにGCMS制御プログラムを起動するその後「OK」ボタンをクリックする
図 77 GCMD分析用ソフトウェア「GCMS分析」の起動
まず「GC-MS分析」をクリック
「OK」ボタンをクリック
53
2)制御プログラムが起動されパソコンと GCMSの接続が開始される
図 78 「GCMS分析」の接続確認画面 3)GCMSとパソコンの接続が完了すると以下のような画面が表示される
図 79 「GCMS分析」操作画面
4)マススペクトルによる分子構造の解析 サンプル(この場合茶葉からの抽出物)には多くの物質が混じり合っていたがガス
クロマトグラフの分離カラムによりそれらの混合物が精度よく分離されるクロマトグラ
ムのピークはそれらサンプル中に含まれていた個々の物質を表しているクロマトグラム
のピークを選択することで分子構造解析したい物質を選んだことになる選択したクロマ
トグラムのピークの表している物質(ここではカフェイン)に対応するマススペクトルを選
択するマススペクトルは横軸が原子量で縦軸がその量を表しているのでマススペク
トルから分子構造を解析するために「定性処理」を行う シミラリティ検索結果が表示され分析により得られたスペクトルと類似のスペクトルを有
する物質の一覧が表示される上部に表示される物質ほどスペクトルが一致していること
を示す
接続状況が表示される
「トップへ」
をクリック
54
図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果
図 711 表示スペクトルのシミラリティ検索結果 10)図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果の印刷 「レポート(R)」をクリックし「検索結果(R)」をクリックすると検索結果が印刷される
GC-MS 分析で得られたマスス
ペクトル
データベース中
のマススペクト
ル
55
参考資料 生理活性物質の精製 カフェインの利尿作用のように生物活動に影響を与える物質を生理活性物質といいます
天然物には生理活性物質を多く含むものがあります一般に天然物は多くの成分を含ん
でおり特定の生理活性物質を分離抽出するには種々の分離技術が必要ですまた生
理活性物質には60以上の温度でその生理活性を失う(失活)ものや溶剤として広く用いられているクロロホルムなどの有機溶剤中で失活するものが多いそこでこれら生理活性
物質の分離精製技術の開発が望まれており30~60程度のマイルドな温度条件で操作できる二酸化炭素を機能性溶媒として利用する超臨界抽出も有効な分離技術として注目されて
いる超臨界二酸化炭素は気体と液体の中間の性質を持ち物質の分離に役立っています 臨界点付近の高密度気体は超臨界ガスまたは超臨界流体と呼ばれ臨界圧力前後でそ
の溶解能力が著しく変化することから工業的にも種々の分野で利用されています一例と
して超臨界二酸化炭素(SC-CO2)によるコーヒー豆からのカフェインの抽出プロセス(a)
ならびに超臨界二酸化炭素に対するカフェインの溶解度(b)を図に示します図(c)に示す
ように固体のカフェインがガスである超臨界二酸化炭素に溶解します
このように超臨界二酸化炭素を用いた技術はコーヒー豆からのカフェインの抽出プロ
ポリスからの生理活性物質の抽出に利用されています
図 超臨界二酸化炭素抽出を用いたコーヒー豆からのカフェインの抽出
56
付表 最小二乗法について 直線で近似する場合 f (x) = a0 + a1x (A1-1) 式(A1-1)のように近似させるとする測定値 yiとの残差を eiとすると式(A1-2)のようになる ei = yi - f (xi) = yi - ( a0 + a1xi ) (A1-2) ここで式(A1-2)の両辺を二乗してその i に関する総和をとりその値を S とすると次式となる
sumsum==
+minus==n
iii
n
ii xaayeS
1
210
1
2 )( (A1-3)
S を最小化するような a0a1を求める式(A1-3)を a0a1について偏微分すると次式とな
る
sum=
+minuspartpart
=partpart n
iii xaay
aaS
1
210
00)( sum
=
+minusminus=n
iii xaay
110 )(2 (A1-4)
同様にa1について編微分すると次式のようになる
sum=
+minusminus=partpart n
iiii xxaay
aS
110
1])([2 (A1-5)
Sが最小となる時は次式が同時に満たされる時である
00=
partpartaS
01=
partpartaS
(A1-6)
よって誤差が最小となる a0a1を求めるためには式(A1-6)を連立して解けばよい
sumsumsum===
+=n
ii
n
i
n
ii xaay
111
10 1 (A1-7)
sumsumsum===
+=n
ii
n
ii
n
iii xaxaxy
1
2
11
10 (A1-8)
式(A1-7)と式(A1-8)を a0a1を変数とみなし連立して解くと次式を得る
n組のデータ(xiyi)(i=12hellipn)に対して回帰直線 y= a0 + a1x を最小二乗法で求めて出力しデータ番号 iデータ yi直線で推定した値 )( ii bxay += および残差
iii yy minus=ε を出力するようなプログラムをつくりたい基礎式を導出せよ (ヒント残差の二乗の和が最小になるように係数 a0a1)を定めるのが最小二乗法
である)
57
sumsum
sumsumsumsum
==
====
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
n
ii
n
ii
xxn
xxyyxa
1
2
1
2
1111
2
0
)(
))(())(( (A1-9)
sumsum
sumsumsum
==
===
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
xxn
yxxyna
1
2
1
2
1111
)(
))(()( (A1-10)
よって式(A1-9)(A1-10)を用いれば最も誤差を小さくするような直線 y = a0 + a1x が求められる
y=a1x+a0 にて近似
誤差 ei
x
y
誤差が最小になる関数(直線 y=a1x+a0の場合)
図1 最小二乗による近似
誤差の和Sが最小
S
a0
a1
直線 y=a1x+a0 の近似
誤差の全体の和はS=Σei=Σyi-(a1xi+a0)
Sは変曲点にて最小値を示すすなわち(partSparta0)=0 (partSparta1)=0
図2 a0a1とSの関係
9
図3 吸着等温度線と操作線
この操作からわかるように吸着データ(この実験で求める)が存在すれば
吸着等温線と操作線の交点から吸着処理しようとする溶液の体積 V と初濃度 C0
に対して使用する活性炭の質量 W により活性炭に吸着する溶質の量 n および吸着後の溶液の溶質濃度 C が計算で予測できますこの吸着データから吸着装置を設計することができます実際に吸着装置(吸着塔)の設計の様子を次ペー
ジの例題1に示しておきます興味のある人は5 段に積み重ねた吸着層を 04 mol ℓの濃度の廃液が通過すると濃度が 002 mol ℓ 以下になることを確認し吸着塔の設計方法を考えてみて下さい なお先ほど求めた式 (4)は皆さんが行う吸着実験データ(吸着等温線を作るもととなる吸着後の溶質濃度 C と各濃度に対する吸着量 n の関係)を求める場合にも使用します 問題1 質量 W=1gの活性炭を用いて体積 V=100cm3の酢酸溶液の吸着実験を行った
ところ活性炭と接触する前の酢酸溶液の初濃度はC0=0512moldm3であった
(dm3デッシメータ 3 乗= ℓリットル)吸着後の溶液を活性炭と分離してその酢酸溶液の濃度を 01N(01 規定の)水酸化ナトリウム水溶液で滴定して求めたところC=0478moldm3 であった1gの活性炭に吸着された酢酸の物質量n [mol]を式 (4)より求めよ
活性炭 1kg当たりに吸着された
フェノールの量 n[molg]
吸着操作後
の溶液のフ
ェノール濃
度 C
吸着等温線の一例 Langmuir式
KCKCnn
+=
infin
1
操作線
)( 0CCWVn minusminus=
傾き-23
初濃度 C0
[molm3]
吸着後の濃度 Cと吸着量 n
初濃度C0と傾き-VWを用いて操作線を引き
吸着等温線との交点を
求める
ここで(3)式の傾きWV
minus で図 1 における横軸
を通過する直線式(操作線)であるすなわち
)(=- 4032
)40(6040)()( 0
minus
minusminus=minusminus=
C
CCCWVgmoln
10
解答(計算式) )( 0CCWVn minusminus=
minus= ( ) (答) [mol]
例題 1 吸着塔の設計 濃度 C0[molm3]の不純物を含む工業排水(流量 V[m3hr])から不純物を除去するために下図
に示すような各 i段に活性炭を wi[g]含む5段の吸着塔を設計しましょう 各 i 段の出口と入口でのそれぞれの物質濃度 CiCi-1[molm3]とその段での活性炭単位質
量当たりの吸着量 ni[molg]との間に物質収支がなりたち他の部分への吸着は無視できるとするまた溶液中の平衡濃度Ci[molm3]と吸着量ni[molg]の関係はラングミアー(Langmuir)の等温吸着式で与えられるものとするラングミアーの等温吸着式における吸着平衡定数 K
と飽和吸着量 infinn としてはK=8611 infinn =0003262の値を用いる誤差を判定する定数 EPS
としてはEPS=000001を用いよ 図4 吸着塔の段数計算 図5 吸着塔 33 実験目的 一定の温度において活性炭による希酢酸の等温平衡吸着量 nを一定の温度において測定
しそれら測定値の Freundlich 式および Langmuir 式への適合性を比較検討するまたLangmuir式により活性炭の比表面積を求める 34 実験方法 レポートでの実験方法の記述では次のように説明文を必ず付けて下さい また行った方法については過去形「~した」のように記述して下さい 例) 活性炭による酢酸水溶液からの酢酸の吸着実験に次の器具および試薬を使用した [器具] 1000mlメスフラスコ(1)500mlメスシリンダ(1)500ml試薬瓶(5)共栓三
実験レポートを書く場合この「実験目的」を利
用して「緒言」を作成して下さい
実験方法は過去形にて記述
11
角フラスコ(5)2mlホ-ルピペット(2)5mlホ-ルピペット(2)10mlホ-ルピペット(1)100ml ホ-ルピペット(1)50ml ビュレット(1)電子天秤直示天秤(注( )内の数値は個数を表す) [試薬] N10N100-水酸化ナトリウム(NaOH)N10-塩酸(HCl)フェノ-ルフタレイン酢酸活性炭 1)2)および 7)については予め調整済み8)は2日目に実験する 1)酢酸 28mℓ をメスシリンダにて採集しこれを 1000mℓ メスフラスコに入れて蒸留水を加えて 1000mℓとしN2-酢酸を調整した(調整済み)
2)N2-酢酸より順次溶液 500mℓをメスシリンダに取り1000mℓメスフラスコを用いて
N4N8N16N32酢酸溶液を調整し500mℓ試薬瓶保持した 3)共栓三角フラスコ(100mℓ)の空重量を直示天秤にて正確に測定したこれに電子天秤にて測定した活性炭試料約 1gを入れて再び直示天秤にてその重量を正確に測り前後の差から投入した活性炭量を知る
4)活性炭を入れた各々の三角フラスコに各濃度の酢酸溶液 100mℓを正確にホ-ルピペットを用いて入れた(このとき気泡が混入しないように注意した)
5)上記に準備した三角フラスコに栓をしてこれらを所定の温度に設定した恒温槽に浸し
た浸した三角フラスコは約 20分間隔で気泡が混入しないように注意して振り混ぜるこの操作を約 2時間行った
6)次に滴定に用いて約 N10-N100-水酸化ナトリウム溶液 1000mℓを調整し濃度既知の塩酸溶液を用いてその正確な濃度を決定しておく(調整済み)
7)調整された酢酸溶液の各々を6)において標定した N10-水酸化ナトリウム水溶液にフェノ-ルフタレインを指示薬として滴定し各酢酸溶液の濃度を求めた(標定に要する
酢酸量は N2-と N4-の場合は 2mℓN8-と N16-の場合は 5mℓN32では 5mℓをホ-ルピペットで採集するただしN32についての滴定はN100水酸化ナトリウムで滴定した(各濃度について 3回ずつ滴定する)
注)ビュレットは各班に 2 本ある濃度の高い N2 酢酸から測定するので両方のビュレットにはN10-水酸化ナトリウム水溶液を入れて開始する
最重要注意事項
滴定を行う場合安全確保のため必ず安全メガネを着用すること 8)次に各試料溶液を一つずつ手早くろ過しろ過液を N10-水酸化ナトリウムで滴定して平衡濃度を決定した(標定に要する酢酸量は N2-と N4-の場合は 2mℓN8-とN16-の場合は 5mℓN32-では 5mℓをホ-ルピペットで採集したただしN32 ーの場合は N100 ー水酸化ナトリウムで滴定した)
12
1) 酢酸溶液の濃度の測定(1日目レポートにこの図は不要) 酢酸 28mℓをメスシリンダにて採集しこれを 1000mℓメスフラスコに入れて蒸留水を加えて 1000mℓとしN2-酢酸を調整する
N2-酢酸より順次溶液500mℓをメスシリンダに取り1000mℓメスフラスコを用いて N4-N8-N16-N32-酢酸溶液を調整し500mℓ試薬瓶に保持する
滴定用のビュレットを N10-N100-水酸化 ナトリウム溶液で共洗いする(3回)
ビーカーに酢酸溶液を少量入れて共洗いを行う (3回)試薬瓶からビーカーに酢酸溶液を滴定に 必要な量だけ取り出す
ホールピペットをビーカーの酢酸溶液を 使用して共洗いを行う(3回)
滴定用の三角フラスコに酢酸溶液を分取する
滴定(滴定は同じ濃度の酢酸溶液を 3回 以上滴定して平均する)
酢酸溶液の濃度計算
滴定による酢酸濃度の決定
1000
1000vfNvx timestimes=times (33)
x酢酸の仕込み液濃度 [molℓ] v酢酸の仕込み液の分取量 [mℓ] NNaOHの規定度 [N] fNaOHのファクター [-] vrsquoNaOHの滴定量 [mℓ] 注)酢酸は 1価の酸なので 1molℓ=1N(1規定)
13
式(33)の使用例 酢酸の仕込み液の分取量 v =2 mℓ NaOHの規定度 N = 01 N NaOHのファクター f = 0998 NaOHの滴定量 vrsquo = 985 mℓ である場合 式(33)を利用して酢酸の仕込み液濃度 x[molℓ]を求める
1000
1000vfNvx timestimes=times
vvfNx
timestimes=
49202859998010 =timestimes= molℓ (この xが濃度 C または C0 です)
2)酢酸溶液と活性炭の接触のフローチャート(1日目) 共栓三角フラスコ(100mℓ)の空重量を 直示天秤にて正確に測定する
電子天秤にて活性炭試料約 1g測る
共栓三角フラスコ(100mℓ)に 活性炭試料約 1gを入れる
活性炭試料約 1gを入れた 共栓三角フラスコ(100mℓ) を直示天秤にてその重量を測る
共栓三角フラスコ(100mℓ)の前後の 差から投入した活性炭量を計算する
活性炭を入れた各々の三角フラスコに 各濃度の酢酸溶液 100mℓを正確にホ-ルピペットを用いて入れる(このとき 気泡が混入しないように注意する)
三角フラスコに栓をしてこれらを所定の温度に 設定した恒温槽に浸す浸した三角フラスコは 約 20分間隔で気泡が混入しないように注意して 振り混ぜるこの操作を約 2時間行う
14
3)吸着量の測定(2日目) 恒温槽の温度を測る
恒温槽から三角フラスコを一つずつ取り出す
各試料溶液を一つずつ手早くろ過する
活性炭
ろ液を滴定して平衡濃度を決定する
回収
吸着量の計算
Langmuirの吸着等温式Freundlich式のパラメータの決定
グラフの作成
吸着量の計算10001000 times
minus=
wCC
n (34)
n吸着量 [molg] C0 酢酸水溶液中の酢酸の濃度 [molℓ] C ろ液中の酢酸の濃度 [molℓ] w 活性炭の量 [g]
35 実験結果のまとめ方 実験結果は実験レポートを書く場合に考察と並んで重要な部分ですので主な注意事
項をここで説明しておきます グラフの作成n vs C nC vs C ln n vs ln C の 3つのグラフの作成 配布された Excel ファイルを利用し下図のような図を作成してみましょう
15
レポートの間違いやすい場所 ①表や図を示す場合次の例のように文章でもその旨を示す [実験結果] 共栓付三角フラスコに活性炭約 1g入れた試料の重量 w[g]を Table1に示す
Table1 調整酢酸濃度を入れる活性炭試料の重量 w [g]
酢酸規定度[N]
活性炭試料の質量w [g]
12 10300
14 10001
18 10126
116 10011
132 10109 酢酸(1)-水(2)-活性炭(3)の 12における吸着平衡の結果を Table 6および Fig1に示すただし活性炭 1gに吸着された酢酸のモル数 n[molg]は次式より求めた
( )10001001
0 timestimesminus=w
CCn b
C0仕込み液中の酢酸濃度 [molℓ] Cbバルク相中の酢酸濃度 [molℓ] w活性炭試料の質量 [g] n吸着量 [molg]
例えばCb=04621C0=04894w=10300の時は次のように計算できる
( ) 026501000100
0300114621048940 =timestimesminus=n
Table6 酢酸(1)-水(2)-活性炭(3)の 12における吸着平衡
吸着された溶質のモル数n[molg]
バルク相中の濃度Cb[moll]
00205 04621
00175 0241
00139 01139
00105 00519
00081 00243 ②得られた図や表の解釈(読者にそれらから読み取ってもらいたい事柄)の説明文を次の
例のように文章で記述する数字や図だけ示して読者に「理解しろ」というようなレポー
トではよくありません Table 6および Fig1よりバルク相中の酢酸濃度 Cbの増加にともない吸着量 nも増加することがわかったまた吸着量 n の値は酢酸濃度 Cbの増加にともない n=に漸近することがわかる
グラフ(Fig)は次ペ
ージに掲載すること
グラフや表の後にはそれらの結果より得られた知見を文章でも
記入すること
16
36 エクセルによる吸着データの整理法 注コンピュータの画面はWindowsXP上での操作になっています他の OS(Windows98 2000
NT)搭載のパソコンでも同様の作業が可能です) 先ほど問1で説明したように溶液濃度の濃度変化から吸着量 nを求めました実験では吸着後の水溶液中の酢酸の濃度 Cと吸着量 nの関係を各濃度の溶液(5種類)について測定しその値を計算します このようなデータの整理には表計算ソフトであるマイクロソフト社の Excelが便利です
Excel の起動方法はそのソフトがインストール(設定)されているコンピュータにより若干方法が異なることがありますがほとんど同じですここでは福岡大学の総合情報処理
センターのコンピュータの設定に従って説明します 表計算をしてみましょう セルとは セルというのは最小単位の四角のことです例えば「(Aの1)またはA1というセルセル
B1」のようにセルという言葉を使いますセル A1に1という数字を入れてみましょうセルA1をクリックしてキーボードから「1」と入力しキーボードの「Enter」キーを押します
図 5 Excelの入力例1 図 6 Excelの入力例2
次にセル B1に「5」という数字を入れましょう次にセル C1にセル A1と B1に記入された数値の和を表示させてみましょう 下の図のようにセル C1をクリックします上の「 fx 」と書かれた右のボックス(何かを書くところに)「 =A1+B1 」と書きましょうそして Enterを押すとセル C1に 6と表示されます
図 Excelを用いた関数計算 実験では吸着後の水溶液中の酢酸の濃度 Cと吸着量 nの関係を各濃度の溶液(5種類)について測定しましたこのデータに対してExcelを用いて表計算してみましょうまず先ほど記述したセル A1~A3は「Delete」(デリート)キーで値を削除しましょう
17
次にセル A5~A9に活性炭と接触する前の酢酸水溶液の初濃度 C0[moldm3]セル
B5~B9に活性炭と接触後分離した酢酸水溶液の濃度 C[moldm3]セル E5~E9に活性炭の質量 W[g]をキーボードから入力します作成した一例を次に示します
図 8 Excelによる吸着量nの計算 ここで1gの活性炭に吸着された酢酸の物質量n [mol]を式 (4)より計算できるのでセル C 5~C9に次の関数式を記述します式の内容としては
)( 0CCWVn minusminus=
となるように記述するので実際の Excelの関数としては次のように行います セル C 5をクリックし関数ボックス(fxの右)に「=(A5 ndash B5)01E5」と記述(半角または直接入力形式で)し「Enter」キーを押し確定しますこの関数はフィルハンドルを利用してセル C 6~C9にコピーしますただし実験で溶液は 100cm3使用しましたが
溶液の濃度 C が[moldm3]の単位ですので100cm3=01dm3 となり関数式の中では
V=01 dm3としています なおグラフの記述方法やフィルハンドルの使用方法については化学工学プログラミ
ングなどの補助資料を参考にして下さいまた実験の際に配布した Excel ファイル(ファイル名ad_graxls)を使用すると実験データの理論的な解析も容易にできますので試してみましょうExcelファイル(ファイル名)「ad_graxls」の使用方法は次節で説明します 36 実験結果の考察方法 (吸着実験について) 実験結果の考察方法は種々の方法がありますがここでは一例として理論と比較する
方法を示します実験結果として下図(左)のようなグラフができましたこのような実
験結果に対して理論的な考察を行ってみましょうここでは次節で説明するラングミュ
ア(Langmuir)の単分子吸着モデルで計算した理論線と実験と比較したものを下図右に示しますこの図を作る方法は次節で説明しますレポートの考察の部分はラングミュア
(Langmuir)の単分子吸着モデルの式の導出から書いて下さい 理論を作る場合幾つかの仮定をしますがその理論が多くの実験結果をうまく説明でき
ている場合その仮定がある程度妥当なものであったことがわかります指針書に書いてあ
った以外の理論についても興味があれいばためしてみましょう
セル C5をクリックし関数ボックス( fx の右)に「=(A5 ndash B5)01E5」と記述(半角または直接入力
形式で)します
18
ラングミュア(Langmuir)の単分子吸着モデルを用いて理論値を計算するには配布され
た Excelファイル(ファイル名)「ad_graxls」を使用すると便利ですその使用方法を以下に示します配布プログラムは化学工学プログラミングの講義の場合と同様に総合情報処
理センターの共通領域にあります各自コピーして使用して下さいコピーするには化
学工学プログラミングの講義の場合と同様にコピーしようとするファイルを共通領域から
自分の使用しているコンピュータのデスクトップにドラッグドロップします共通領域で
ファイルを開くとファイルの消去などで他の人が使えなくなりますので共通領域でファイ
ルをダブルクリックしないようにして下さい誤って共通領域でファイルをダブルクリック
した場合はそのファイルを閉じるボタンをクリックし閉じて下さい 各自のコンピュータに保存した Excelのファイル(ファイル名ad_graxls)をダブルクリ
ックして開きます自宅へ持ち帰る場合各自のフラッシュメモリーやフロッピーディスク
を使用しまたはメールを使用して添付ファイルで送信できます各自のフラッシュメモ
リーやフロッピーディスクに保存してあるファイルを再編集する場合はフラッシュメモリ
ーやフロッピーディスクをコンピュータの USB 端子またはフロッピーディスクドライブに挿入します次にデスクトップ上にあるマイコンピュータのアイコンをダブルクリックし
ます もしデスクトップ上に上のアイコンが無ければ画
面左下の「スタート」ボタンからマイコンピュータをク
リックしてくださいすると次のような画面が立ち上が
ります
ラングミュア(Langmuir)の単分子吸着モデルで計算した
理論線
19
その中からフラッシュメモリーの場合は「リムーバブルディスク」をフロッピーディ
スクの場合は「35インチ FD」のアイコンをダブルクリックしてくださいファイルが保存されていれば次の画面が出てきます
この画面の中の「ad_graxls」ファイルをデスクト
ップにコピーしますまず「ad_graxls」ファイルを左クリックしますこの時クリックした指はは
ずさないようにしますその状態のままデスクトッ
プまでファイルを移動させますそしてデスクト
ップ上の任意の場所でクリックした指をはずします
これでデスクトップ上に「ad_graxls」のファイルがコピーされましたのでデスクトップにコピーさ
れたファイルをダブルクリックして開きますコピ
ー操作が上手くいかなかった場合もう一度移動の操作を行ってください
必ずデスクトップにコピーしてから開く操作を行って下さいフロッピーディスクから直接
開いて操作を行った場合正しく保存されない可能性があります 「ad_graxls」のファイルを開くと次のような画面が立ち上がりますもし画面が違う場合は画面の下部にある「吸着データ」のタグ をクリックしてくださいこの画面
でデータの処理や計算を行いますでは実際の操作に入る前に予めこのファイルに名前
を付けて保存しておきますまずExcelの画面のツールバー「ファイル」から「名前を付けて保存」をクリックします下のような画面が起動します
20
ファイルの保存先を変えたい場合画面上部のボタンをクリックし保存先にデスクトッ
プを選択します次にファイル名の部分に各自ファイル名を入力しますファイル名は何
でも良いですが分かり易い名前にしておくとファイルの管理がやり易くなります日付や
数字を入れると同名のファイルをいくつも管理する場合に便利ですここでは「吸着実験デ
ータ整理 4月 01」とし「保存」ボタンをクリックします
ファイル名変更後Excelの画面上部のタイトルバーのタイトルが先ほどの名前(上の図とは異なります)になっていることを確認してください
この操作を行うことによって元のデータである「ad_graxls」を変更してしまう心配がなくなります元のデータである「ad_graxls」はファイルが破損しまたは間違った操作の結果を誤って保存してしまった場合などの補助ファイルとなりますので大切に保管しておいて
下さい今後配布するデータは先ほど説明した手順で名前を変えて保存し元のデータに
直接変更を加えないようにして下さい ここから実際の作業に入ります初期状態では模擬のデータが入力されています入力
データは予め計算しておいた酢酸濃度Cb[moll](濃度を Cと表示している場合もあります)と活性炭吸着量 n[molg]になります下の画面の丸で囲んだ部分がそれぞれの値でBCカラム(列)の 4~9行には数値が入力されています関数ではありませんこのデータを利用して実際のデータ解析を行ってみましょう下記のように行うと幾つかのグラフが
現れ実験データに対してラングミアーの単分子吸着を仮定したモデルを用いて精度よ
く計算線が描けることがわかります 今回はCbnの値を入力する必要はありませんExcelが自動的に計算を行って結果を表示するようになっていますつ
まりセル D5に「=B5C5」と関数を入力しこの関数に対してフィルハンド
ルを利用してセル D6~D9へコピーし
ファイルの保存先を変えたい場合画面
上部のボタンをクリックし保存先に
デスクトップを選択します
変更するファイル名はここをクリッ
クして書き換えます
名前を変更したらここをク
リックして保存します
21
まています 次に酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着量 n[molg]の関係および酢酸濃度 Cb[molL]と Cbn[gL]の関係をグラフ化します今回は自動的にグラフが作成されるようになっていますので複
雑な操作は必要ありません ここではデータに対してそれを精度よく表現する近似式をグラフ上に描きその関数
を数値として求める方法を Excelで練習してみましょう
グラフを表示させるには画面の下にある「Graph1」もしくは「Graph2」のタグ
をクリックします「Graph1」には酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着量n[molg]の関係のグラフが「Graph2」には酢酸濃度 Cb[molL]と Cbn[gL]の関係のグラフが表示されます「Graph2」はLangmuir の等温吸着式による相関を表したもので横軸に酢酸濃度 Cb[molL]をとり縦軸に酢酸濃度 Cb[molL]を活性炭吸着量 n[molg]で除した値 Cbn[gL]を示していますLangmuir の等温吸着式についてはこの後の章で説明してありますので各自読んで理解して下さいLangmuirの等温吸着式では式中の定数 ninfin(飽和吸着量)と K(吸着平衡定数)を実験データから最小二乗近似で決定する場合が多くありますここでは
その例を取り上げてデータに対してそれを精度よく表現する近似式をグラフ上に描き
その関数を数値として求める方法(最小二乗法最小二乗については付録に示しており
また化学工学プログラミングの講義においても説明します)を Excelで練習します 配布された Excel ファイル「ad_graxls」では実験点が表示されているだけでそれを精度よく表現する近似式の直線のグラフは「Graph2」に表示されていません今から次の手順で「Graph2」の図(グラフ)に近似式の直線のグラフを表示しますExcel の場合近似曲線(ここでは直線)を求める場合コンピュータが自動的に最小二乗法を使って近似曲線
を計算しています
「Graph1」の画面 「Graph2」の画面
Excelの sheetが表示されたらまずファイル名を変えデスク
トップに保存して下さい次
にGraph2のタックを左クリックして最小二乗法のグラフを
確認して下さい
22
38 Langmuirの等温吸着式による相関 はじめにLangmuir式の定数 ninfinと Kを決定するために「Graph2」酢酸濃度 Cb[molL]と
Cbn[gL]の関係のグラフから最小二乗法により直線の式を求めますExcelを用いてデータに対して近似直線のグラフを描き最小二乗法の直線の式を求めます
次のような「近似曲線の追加」のウィンドウが現れたら今回は線形近似(直線で近似
y=ax+b の式)を選びますので線形近似が黒色に反転していることを確認して「近似曲線の追加」のウィンドウの右下の「OK」ボタンをクリックして下さい
実験点の何れかにポインタをあわせて
右クリックする
近似曲線の追加(R)を選択して左クリックする
「線形近似」であること
を確認して「OK」ボタンをクリックします
23
「近似曲線の書式設定」
のウィンドウでオプシ
ョンから「グラブの書式
を表示する」の前を選ん
でチェック(前のチェッ
クボックスをクリック)
した後「OK」を押す
現れた直線にポインタをあわせて
左クリックすると「近似曲線の書式
設定」のウインドウが表示されます
ここをクリックします
この「オプション」のタ
グをクリックします
「y=」の関数
が現れるのでここ
をクリックする
式の文字フォントが初期値
「8」と小さいのでここ
のボタンをクリックし
フォントサイズを選ぶリス
トボックスを表示し「22」程度の大きなサイズを選択
しクリックする
24
「Graph2」酢酸濃度 Cb[molL]と Cbn[gL]の関係のグラフから最小二乗法により直線の式がこのように求められましたExcel を用いてデータに対して近似直線のグラフを描き最小二乗法の直線の式を求めるこの方法は他の実験データの解析などにも利用できますので
各自活用して下さい 表示された関数式「y=43865+2654」はノートにメモして下さいこの傾き 43865と
切片 2654からLangmuir式の定数 ninfinと Kを決定します決定方法の詳細はこの後の 36 の Langmuir式のパラメータ決定法に示しています ラングミュアの等温吸着式を変形すると次式となる
CCnKnCKn
CCKn
Cβ+α+
==
+= infininfininfin
11)1(
ただしα=1ninfinβ=1(ninfinK)とするこの式より Cnを縦軸Cを横軸とした関係のグラフは傾きα=1ninfin切片β=1(ninfinK)の直線関係を与えることを示しています そこでExcelのシートを利用してこの値からLangmuir式の定数 ninfinと Kを次のように決定しますセル C18D18に Graph2で求めた数値 2654と 43865を代入しますその後D19と C19に関数を ldquo=1D18rdquoとrdquo=D18C18ldquoを代入しますセル内の式は半角で入力してください
現れた関数の文字フォン
トを大きく(例えば 22)してその数字をメモし
吸着データシートの C18と D18に記入する
C18D18 に Graph2 で求めた値 2654 と 43865 を代入した後D19 と C19 に関数を ldquo=1D18rdquoとrdquo=D18C18ldquoを代入する
25
この Excel表示では最小二乗法を用いて決定した傾きαと切片βを用いて α=1ninfin=43865 β=1(ninfinK)=2654 得られた傾きおよび切片よりninfinおよび Kは次のように求まる
ninfin=1α=1D18=000228 molg-1 K =(1ninfin)β=αβ=D18C18=165
つまりセル D19にはninfinの値がセル C19にはKの値が表示されますこれらの値はラングミュア(Langmuir)の単分子吸着モデルで計算した理論線と実験と比較する場合に利用します実験結果に対して理論的な考察を行う例としてラングミュア(Langmuir)の単分子吸着モデルで理論線を計算し実験と比較するにはこの Excelファイルを利用して次のように計算しグラフに表示します セル F5~F30 には溶液中に残る酢酸濃度 Cb[molL]に対する活性炭に吸着された吸着量n[molg]の関係のグラフ「Graph1」の横軸の酢酸濃度 Cb[molL]の適当な値が既に入力してありますこれらのそれぞの酢酸濃度 Cb[molL]に対する吸着された酢酸の吸着量 n[molg]の理論値をラングミュア(Langmuir)式で計算しますラングミュア式は次式で与えられます
KCKCnn
+=
infin
1 (310)
ここでこの実験データを最も精度よく計算できるように決定した ninfinおよび K は上述のようにninfin=1α=1D18=000228 molg-1 K =(1ninfin)β=αβ=D18C18=165 でありこれらの値はセル D19にninfinの値がセル C19にKの値が表示されていますこの値を利用して「Graph1」に計算線を描くにはまずセル G5~G30 にセル F5~F30 のそれぞれの酢酸濃度 Cb[molL]に対する吸着された酢酸の吸着量 n[molg]の理論値をラングミュア式で計算しますそのためにはセル G5 にラングミュア式を次のように記述しますただしセル D19の ninfinの値セル C19の Kの値は常に同じセルから参照するので絶対参照($マークを付けて$D$19 $C$19と記述します)で記述します
Langmuir式をセル G5に記述するただし濃度はF5の値を相対参照しD19と C19は絶対参照($マークが必要)することを忘れないように
セルG5に記述すべき数式
=$D$19$C$19F5(1+$C$19F5)
26
G5記述後フィルハンドルを使用してG5の関数を G6~G30までコピーします Sheet1から Graph1 のタグをクリックしGraph1 に計算線が表示されたことを確認しましょうこれでラングミュア式によるデータの解析は終了です実験値と理論値を比較して現象
について考察してみて下さいラングミュア式を理論的に導く場合にある仮定をしている
のですがその仮定をしているラングミュア式が実験データを精度よく計算できていれば
その仮定が妥当なもとであったと考察できます 与えられたモデルデータでラングミュア式によるデータ解析ができれば他の理論(例え
ばフロインドリッヒFreundlich式や BET式レポートはどちらか一方でも可です) についてもExcel で計算してみましょうレポートには自分のデータについてここで行った内容と同様に計算しその結果を考察に記述して下さい 自分のデータについて同様の計算をするにはまずいままで計算を行った Excel ファ
イルを保存しますデータを自分の実験データに置き換える前に Excel ファイルをさらに別の名前で保存します与えられた Excel ファイルは初期状態では模擬のデータが入力されているので今回自分達の実験したデータを入力していきます入力するデータは予め計算
しておいた酢酸濃度 Cb[moll]と活性炭吸着量 n[molg]になります下の画面の丸で囲んだ部分にそれぞれ自分の実験データを入力していきます
今回はCbnの値を入力する必要はありませんExcelが自動的に計算を行って結果を表示するようになっています 次に酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着
量 n[molg]の関係および酢酸濃度Cb[molL]と Cbn[gL]の関係をグラフ化します今回は自動的にグラフが作成
されるようになっていますので操作は必
要ありません 39 Freundlichの等温吸着式による相関 今回の実験で得られた酢酸濃度 Cbと活性炭吸着量 nのデータを利用してFreundlichの等温吸着式の定数 abの値を求めFreundlichの等温吸着式の理論線をグラフに追加します ここでFreundlich式は次式で表されます
bbaCn1
=
このままでは定数 abの値を決定することが難しいので上式の両辺の対数をとり線形化しますすると次式となります
bCb
an ln1lnln +=
ここでln Cbと ln nの関係をグラフにプロットすれば傾き 1b切片 ln aの直線関係が得られますしたがって実験データである酢酸濃度 Cbと活性炭吸着量 nの値の対数をそれぞれ計算します配布した「ad_graxls」ファイルを開き「吸着データ」シートの任意の部分に以下のような表を作成します
27
次にln Cb[-]の列の最初のセルに以下の数式を入力します
=ln(B5) 上式中の「B5」は Cb の値の最初のセルの位置を指します各個人の位置によって変更してください
次にln n[-]の列の最初のセルに以下の数式を入力します
=ln(C5) 上式中の「C5」は nの値の最初のセルの位置を指します各個人の位置によって変更してください
ここでln Cb[-]ln n[-]の値に対しそれぞれオートフィルを行い計算させますすると以下のようなデータが完成します
計算した ln Cb[-]ln n[-]の値をグラフにプロットし最小二乗法による直線式を求めます
28
ここで以下のような直線の式が得られたとします
9135ln31690ln913531690 minus=there4minus= bCnxy
上式より切片は-5913傾きは 03169となるので以下の要領で定数 a1bを計算します ==there4minus= minus 91359135ln eaa 000270
316901=
b
a の値を Excel で計算させる場合は任意のセルに以下のような数式を入力することで求めることができます
=exp(-5913) これでFerundlich等温吸着式の定数 a1bの値が決定しましたこの値は後で使うのでノートなどにメモしておいてください 次に決定した Ferundlich 等温吸着式の定数 a1b の値を用いてFerundlich 等温吸着式のグラフを作成します先ほども示したように Ferundlich等温吸着式は次式で表されます
bbaCn1
=
従って定数 aと 1bの値はすでに決定しているので任意の Cbの値に対する nの値を数点求めればFerundlich等温吸着式で求めた理論線が得られます以下の操作で理論線を引くことができます Langmuir 等温吸着式による相関のときと同様にExcel の「吸着データ」のシート上の任意の場所に以下のような表を作成します
次に Ferundlich等温吸着式に従いnの値を計算します
bbaCn1
=
式中の定数 a1bは先ほど計算した値を用いますしたがって式は次のようになります
31690002700 bCn times=
この式を Excelのセル内に記入すれば計算ができます次の
29
ように記入します
=00027G5^03169 ここで式中の「G5」は Cbの値が 0のセルを指しています各個人の位置によって変えてください 次に式を記入したセルを Cbの値が 05のところまでオートフィルを行いますそうするとすべての Cbに対して nの値が計算されます
これで Freundlich等温吸着式のデータが完成しましたので次に「Graph1」酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着量 n[molg]の関係のグラフにこのデータを追加し理論線を引きます理論線の引き方は Langmuirによる相関のときと同様の操作を行ってください グラフの書式等を変更し整理すると以下のようなグラフが出来上がります
310 吸着等温線とは 固体の吸着剤を溶液と接触させる時一定量の吸着剤によって吸着される溶質の量は温度一定ならば溶質の濃度の関数になる一定温度での吸着量を温度に対してプロットした時に
得られる曲線を吸着等温線というこの吸着等温線を比較的よく表す経験式として次の
Freundlich式がある
n=aC1b (1) ここで n は吸着剤の質量あたりの吸着量C は吸着平衡濃度a と b は実験から決定されるパラメータであるがその物理的意味は多少希薄である これに対し理論的な意味を持つものに次のラングニュア(Langmuir)の吸着等温式がある
30
KCKCnn
+=
infin
1 (2)
ただしninfinは飽和吸着量Kは吸着平衡定数であるこの式は
1)吸着分子が固体表面で単分子以上の厚い層を作ることはない 2)吸着分子同士の間の相互作用はない
という二つの仮定にもとに導かれたものである 結果の整理および報告 Freundlich吸着等温式Langmuir吸着等温式の各々のパラメータの最適値を求めよまた活性炭の吸着特性および表面積について考察し化学工学における吸着操作の重要性につい
ても検討せよ 311 吸着等温式 (a) ヘンリー(Henry)型吸着等温式 液相の濃度あるいは気相の圧力が小さい場合吸着分子間の距離が十分に長いため吸着
分子同士の相互作用が無視でき固体表面と吸着分子のみの相互作用で吸着量を決定できる
とき次式のように表される
n=KC (3)
ここでKは比例定数である図 3-1の(a)に示すように濃度 Cと吸着量 nは比例関係があり一般に吸着量が小さい範囲で成立する気体の場合は溶液濃度 Cの代わりに気相圧力 pを用いればよい
濃度(分圧)
濃度(分圧)
濃度(分圧)
濃度(分圧)
吸着量
吸着量
吸着量
吸着量
(a)ヘンリー型 (b)ラングミュア型
(d)BET型(c)フロインドリッヒ型
0
0
0
0
図 3-1 吸着等温式
31
(b)ラングミュア(Langmuir)型吸着等温式 ラングミュアは図 3-2 に示すように固体表面に同等な吸着力を示す吸着サイトがあり
表面に 1分子層だけ吸着する(単分子層吸着)と仮定して平衡状態における吸着量と溶質濃度(気相分圧)のと関係を導いた全吸着点のうち吸着分子に覆われている吸着点の割合
をθ[-]とすると分子の脱着速度 rrsquo[mols-1]はθに比例する比例定数を a[mols-1]とすると次式のように表される
吸着剤
吸着分子
吸着サイト
図 3-2 固体表面上の吸着サイト(Langmuir式の導出) r=aθ (6) また気相からの吸着速度 r[mols-1]は空いている吸着点の割合(1-θ)[-]と溶液濃度 C[molm-3]に比例する rrsquo= b(1-θ)C (7) このときの比例定数を b[m3s-1]とするまた平衡状態では両速度は見かけ上等しいため以下の式が成り立つ aθ=b(1-θ)C (8) これを変形する
CbaCbsdot+
sdot=θ (9)
ここで飽和吸着量を ninfin[molkg-1] ba を K[m3mol-1](Kは吸着平衡定数)とおくと infin=nnθ
となるので次式が得られる
32
KCKCnn
+=
infin
1 (10)
これをラングミュア式と呼ぶ
(c)フロインドリッヒ(Freundlich)型吸着等温式 フロインドリッヒの吸着等温線は図 3-1(c)のように示される
n=aC1b (11) nは吸着量[molkg-1]で aと bはともに吸着定数[-]である (d)BET(Brunauer-Emmett-Teller) 型吸着等温式
BET型の吸着等温線は図 3-1(d)に示されるラングミュア式は表面に 1分子層だけ吸着すると仮定したものであるがBET式は無限分子層まで吸着できる式である図 3-3に示すように吸着した分子がそれぞれ次の層の吸着サイトとなり分子は積み重なって多分子
層に無限層まで吸着できるものとし各層への吸着にラングミュア式を適用すれば次式の
ように表せる
( ) ( )CKCCCKqq
minus+sdotminussdotsdot
=infin
11 (12)
この式は多孔質固体の細孔表面積を窒素ガスの吸着によって測定する際に利用される重要な式
である
表面の吸着サイト
分子上の吸着サイト
図 3-3 多分層吸着モデル
Langmuir式のパラメータ決定法 水溶液からの酢酸の活性炭に対する吸着平衡データ(吸着平衡温度 12)は表 3-1のよ
うに与えられる実験データよりラングミュア式のパラメータ(K吸着平衡定数ninfin飽和吸着量)を最小二乗法で決定せよさらにラングミュア式より決定した ninfinKの値を用いて吸着等温線を計算し計算線として図に示し実験点と比較せよ
33
表 3-1 n C Cnの関係
ラングミュア式は式(310)で与えられるこの式を変形すると次式となる
CKnCK
n infinsdot+
=11
(313)
両辺に Cをかけると以下の式が導出される
CCnKnCKn
CCKn
Cβ+α+
==
+= infininfininfin
11)1( (314)
ただしα=1ninfinβ=1(ninfinK)とする式(314)より Cn と C の関係のグラフプロットは傾きα=1ninfin切片β=1(ninfinK)の直線関係を与えることを示している表 3-1の値を用いて計算した Cnと Cの関係を表 3-1および図 3-4に示す 最小二乗法を用いて傾きαと切片βを決定した α=1ninfin=43865 β=1(ninfinK)=2654 得られた傾きおよび切片よりninfinおよび Kは次のように求まる
ninfin=1α=1D18=000228 molg-1 K =(1ninfin)β=αβ=D18C18=165
0
50
100
150
200
0 200 400 600
C [ molm-3 ]
Cn [ kgm-3 ]
傾き = 1 ninfin
1 ninfinK
切片0
05
1
15
2
25
3
0 100 200 300 400 500
液相の溶質濃度 C [ molm-3 ]
吸着量 n [ molkg-1]
液相と溶質濃度 C [ molm-3 ]
吸着量
n[ m
olk
g-1]
実験点
Langmuir式パラメータninfin 00033 [ molg-1 ]K 00086 [ m3 mol -1 ]
図 3-4 ラングミュア定数の決定 図 3-5 12における酢酸濃度 Cと
吸着量 nの関係
C [molm-3] n [molkg-1] Cn [kgm-3] 460 225 109 529 214
268 199 149 105 060
172 128 732 504 357
34
Freundlich式のパラメータ決定法 酢酸水溶液中における酢酸の活性炭に対する吸着実験を行ったところ以下のような実験デー
タを得たただしCbはバルク相における酢酸濃度n は活性炭に対する酢酸の吸着量を示す
Cb[molL] n[molg] log10Cb log10n 04621 000205 02410 000175 01139 000139 00519 000105 00243 000081
実験データを利用して次式で与えられる Freundlichの等温吸着式の定数 abの値を求めたい
bbaCn1
= (1)
このままでは定数 abの値を決定することが難しいので上式の両辺の対数をとる
bbb
bb
Cb
aCa
aCn
ln1lnlnln
)ln(ln1
1
+=+=
=
(2)
ここで横軸に ln Cb縦軸に ln nの関係をグラフにプロットするすなわち x=ln Cby=ln nと考える
bCb
an ln1lnln += (3)
ここで直線式 y=a0+a1xと比較するすなわち
)(1)(ln
1
00
傾き
切片
ba
eaaa a
=
=rarr= (4)
a0および a1は最小二乗法により数値で求められる与えられたデータでは a1= a0= なので a= b= となる この値を n=acb
1bに代入してcb=0~05の範囲で nの値を計算する
35
BET式のパラメータ決定法 BET式は次式で与えられる
)1)(1( KCCCKCnn
+minusminus=
infin
(17)
以下のように BET式の変形を行う
)1()1(
KCCKCnCn+minus
=minusinfin
(18)
(18)式の逆数をとると
KCnCK
KCnKCC
Cn infininfin
minus+=
+minus=
minus)1(1)1(
)1(1
(19)
(19)式の両辺に Cをかえると
KCnCKC
CnC
infin
minus+=
minus))1(1(
)1( (20)
(20)式を変形すると次式が得られる
CKn
KKnCn
Cinfininfin
minus+=
minus11
)1( (21)
C と)-(1 Cn
Cのプロットは傾き
KnKinfin
minus1切片
Kninfin
1の直線関係を与えることを示している
これをグラフにプロットし最小二乗法に傾きおよび切片を求める
36
312 活性炭の比表面積の決定 酢酸分子の構造を以下に示す
Hc-Cb-Ca
Hd
Hb Oa
Ob-Ha
1219deg
Ca Oa
Ob
図 36 酢酸の構造
酢酸の 1分子の吸着面積srsquo [m2]を図 3-6に示すこのとき文献より
Caと Oaの結合距離 1321Å Caと Obの結合距離 1206Å OaCaObの角度 1219deg Cの原子半径 077Å Oの原子半径 062Å
したがって吸着面積 Slsquoは次のようになる
( ) ( ) 2088 10376109931036321 minusminusminus times=timestimestimestimes=s m2
ここで活性炭の比表面積 S[m2g]は次式で示される 10026 23 snS timestimestimes= infin
S活性炭の比表面積 [m2g] ninfin飽和吸着量 [molg] srsquo酢酸 1分子の吸着面積 [m2] 602times1023アボガドロ数 [個mol] したがって活性炭の比表面積 S[m2g]は
003350=infinn molg 2010376 minustimes=s m2 より
51281037610026003350 2023 =timestimestimestimes= minusS m2g
37
4 粘度密度測定 41 はじめに 大量生産を目的とした工業的化学プロセスはほとんど流れ系(流通系)であるそれらの系において操作対象となる各物質の粘度は装置を設計操作する場合きわめて重要
な物性値である 本実験では低分子溶液および高分子溶液の粘度測定を通じて液体の粘度について考察するさらに演習問題を通じて気体液体高分子溶液などの化学プロセスで対象となる物
質の輸送物性(粘度拡散係数)の重要性を認識されたい 42 低分子溶液の粘度 [目的] 種々の濃度のエタノール水溶液の粘度を測定しその溶液の粘度について考察する [概要] 25におけるエチルアルコール濃度 02040506080100 wt の水溶液について流下時間を測定しこの結果より相対粘度絶対粘度運動粘度を求めグラフにするま
た水の密度水-エチルアルコール溶液の密度についてはピクノメーターを用いて決
定する報告書には相対粘度絶対粘度運動粘度 vsエチルアルコール濃度の関係をそれぞれグラフにして提出する
[計算方法] 相対粘度絶対粘度運動粘度の定義は次のようになる
相対粘度 ww
w tdtd
ηη = (41)
η 混合溶液の粘度 [gcms] ηw水の粘度(8007times10-3 gcms) [gcms](25における粘度) d エチルアルコール水溶液の密度 [gcm3] dw水の密度(099704gcm3) [gcm3](25における密度) t エチルアルコール水溶液の流下時間 [s] tw水の流下時間 [s] 下付添字 W 水
絶対粘度 www td
tdη
η= (42)
運動粘度 ν=ηd [cm2s] (43)
38
[実験方法] 1) 粘度計を洗浄し粘度計内 に二連球で空気を送り込み
乾燥させる乾燥しにくい 場合はアセトンを滴下し た後再度二連球で空気 を送り込み乾燥させる 2)ピペットで一定体積(10mℓ) の純水を取り広い口 f から 粘度計に水を入れる 3)粘度計を恒温槽(25)に つけ約 10 分静置する 4)安全ピペッターを口 a に 取り付け液面が b 上部に 到達するまで吸い上げる 5)安全ピペッターを外すと 液面が降下しだす液面が bd 間を通過する時間をスト ップウォッチで測定する
6)純水での測定を 3 回繰り返す 7)純水を粘度計から取り除くその後粘度計内に二連球を用いて空気を送り込み乾燥させる 8)粘度計乾燥後複数の濃度に調整済みのエチルアルコール水溶液(10mℓ)を粘度計にいれ4)~6)の作業を繰り返し行う(3 回)なお濃度の異なるエチルアルコール水溶液を粘度計内に導入する場合には7)と同様に二連球を用いて粘度計内に空気を送り込み乾燥させる
表 4-1 エチルアルコール水溶液の濃度密度相対粘度の関係 エチルアルコール濃度
[wt] 密度 d[gcm3] 相対粘度
η ηw[-] 0
20 40 50 60 80
100
安全ピペッター接続
図 4-1 粘度計
液面の bd間の通過時
間を測定
f
39
43 密度測定 [目的] 本実験では水とエタノールの種々の組成の混合液体について密度を測定し分子間相互
作用について考察する [実験方法] 1)ピクノメーターの容積測定
図 4-2のピクノメーターの空の重量 wg を秤量する
ピクノメーターの蓋を取り外し
ピクノメーターを水で満たす
設定温度を 25として恒温槽 の電源を入れ恒温槽内の温 度が一定になるまで待つな お水温は恒温槽中の水銀温 度計から読む
恒温槽中に水を満たしたピク
ノメーターを入れる
約 10分間静置する
ピクノメーターに蓋をするこのときピクノメーターの容量
よりも余分の水は蓋の上部より排出される
ピクノメーターの外側を乾いた布で拭い秤量する(その重量を
wwg とする)
恒温槽の温度(25)における水の密度 dwgcm3(=099704gcm3)
より次式を用いてピクノメーターの容積を求める
w
w
dww
Vminus
= (44)
図 4-2 ピクノメーター
蓋
40
表 4-2 エチルアルコール水溶液の濃度と密度の測定結果(25) エチルアルコ
ール濃度[wt]
wrsquo[g] ww[g] V[cm3] w[g]
d[gcm3]
0 20 40 50 60 80
100
099704
エチルアルコール濃度[wt] 空のピクノメーターの重量 wrsquo[g] 水を入れたときのピクノメーターの重量 ww[g] ピクノメーターの体積 V[cm3] エタノール水溶液の入れたときのピクノメータの重さ w[g] エタノール水溶液の密度 d[gcm3]
容積 Vを求めたピクノメーターに混合溶液(調整済み)を入れてその重量 wgを秤量し次式で混合溶液の密度を求める
Vwwd minus
= (45)
エタノール濃度と密度 d の関係をグラフにプロットする
41
44 高分子溶液の粘度 [目的] 高分子溶液の粘度測定から分子量の粘度に与える影響について考察する [概要 ] オストワルド粘度計を用い種々の濃度のポリビニルアルコール(PVA ((-CH2CHOH-)n))水溶液の粘度を測定し粘度データよりポリビニルアルコールの分
子量を求める まず 05g100cc の濃度のポリビニルアルコール水溶液を調製する次にこれを原液
とし23 12 13 15の濃度の溶液を調製するこれらの溶液についてオストワルド粘度計を用いてそれぞれ流下時間を測定し相対粘度絶対粘度運動粘度を求め実験デ
ータより極限粘度[η]を求めるまた報告書には相対粘度絶対粘度運動粘度C
)ln( wηη
Cw
w-η
ηη vsポリビニルアルコール濃度の関係をそれぞれグラフにして提出する
[計算方法] エチルアルコール水溶液の粘度測定と同様の手法を用いて粘度の計算を行うなおポリビニルアルコール水溶液の密度はピクノメーターを用いて測定すること 表 4-3 ポリビニルアルコール水溶液の濃度密度相対粘度の関係 ポリビニルアルコール
濃度 [g100cc] 密度 d[gcm3] 相対粘度
η ηw[-] 05times(15) 05times(13) 05times(12) 05times(23)
05
42
[分子量の計算方法] 実験を行った結果以下のような粘度データを得られるとする実験データより極限粘度
を求めポリビニルアルコール(PVA)の分子量Mを決定せよ
PVA 水溶液濃度
C[g100cc]
相対粘度
ηηw[-]
絶対粘度
η[gcms]Cw
w-η
ηη
C)ln( wηη
05times(15) 1031 0008255 031 0305
05times(13) 039 0378
05times(12) 03 0289
05times(23) 0375 0353
05 0364 0334
ηw=8007times10-3 gcms 線状高分子の極限粘度[η]と分子量Mの関係は次式で与えられる [η]=KMα (46) ただしポリビニルアルコールの場合K=666times10-4α=064であるなお極限粘度[η]は次式で定義される
CC w
w
0
-][ limη
ηηη
rarr
= (47)
または
CC
)ln(][ w
0lim
ηηη
rarr
= (48)
よって濃度 CとCw
w-η
ηηまたは濃度 Cと
C)ln( wηη の関係をグラフ化し最小二乗法によ
り切片の値を求めると極限粘度[η]が決定される
Cw
w-η
ηηと C の関係より最小二乗法を用いて切片の値を決定すると(図 43 参照)切片=
03242傾き=00874となるよって極限粘度は以下のようになる[η]=03242同様
にC
)ln( wηη とcの関係より最小二乗法を用いて切片の値を決定する
(図 44参照)と切片=03249傾き=00256となり極限粘度は以下のようになる[η]=03249
Cw
w-η
ηηと Cの関係より決定した[η]=03242を用いてポリビニルアルコール(PVA)の
分子量 Mを計算する(46)式より以下のように PVAの分子量 Mを計算することができるM=([η]K)1α
=(03242(666times10-4))(1064)
=15811
43
y = 00874x + 03242
0
02
04
06
08
1
0 01 02 03 04 05 06 07
c[g100cc]
(η-ηw)(ηwc)
cw
w
η
ηηminus
極限粘度[η]
図 43 298Kにおける PVA濃度 CとCw
w-η
ηηの関係
y = 00256x + 03249
0
02
04
06
08
1
0 01 02 03 04 05 06 07
c[g100cc]
(ln(ηη
w))c
c)ln( wηη
極限粘度[η]
図 44 298Kにおける PVA濃度 CとC
)ln( wηη の関係
44
5 植物からの DNAの抽出 51 はじめに 分子レベルでの遺伝子の構造解明や遺伝子の発現に関する研究は近年急速に発展している
これら生命現象のしくみを分子レベルで解明しようという分子生物学の分野ではさまざま
な遺伝子の解析や応用方法が開発され我々の生活に身近なものになりつつある 本実験では初歩的な分子生物学に関する実験として植物(タマネギ)からの DNA の
抽出を行い抽出した遺伝子の電気泳動法による分離実験を試みる 52 試薬および器具 試薬 タマネギ(細胞中から遺伝子の抽出を行う) 台所用洗剤(洗剤中に含まれる界面活性剤には植物の細胞膜およびタンパク質を破壊す
る働きがある) 塩化ナトリウム(DNAは塩化ナトリウム水溶液に溶解し易い性質がある) エタノール(予め冷やしておくDNAはエタノールにほとんど溶解しない) 制限酵素(DNAを一定の部位で切断する働きを働きがある) TE緩衝液(pH緩衝剤が入った溶液) 器具 ビーカーミキサーフィルターメスシリンダー駒込ピペットガラス棒 マイクロピペット電気泳動装置ポラロイドカメラ 53 実験方法 1)タマネギは 1回の実験で半個のうち内側の半分程度を使用するタマネギ水 30ml台所用洗剤数滴をミキサー用ガラス容器に入れ40~60秒程度(固体状のタマネギがなくなる頃が目安)ミキサーにて混合する
2) 1)で作成した混合溶液をビーカーに移し約5g程度の塩化ナトリウムを加えガラス棒で静かに攪拌する粘性の大きな溶液が得られる
3) 2)で作成した溶液をフィルターを用いて濾過し濾液を回収する 4) 濾液の約2倍程度の量の冷エタノールをビーカーの壁伝いに静かに注ぐ 5) ビーカーを揺するとエタノール層に白くふわふわしたものが浮いてくるこれが DNAであるガラス棒で DNAを巻き取りシャーレ上にて DNAを回収する顕微鏡を用いて回収した DNAの状態を観察する
6)マイクロチューブ(容量 15ml)中に用意した 70エタノールを 8 分目程度まで注ぐ5)にて回収された DNAをマイクロピペットを用いて70エタノールの入ったマイクロチューブ中に移す軽く混ぜることによりDNA から不要な物質を洗い流す遠心分離してDNA をマイクロチューブの底に沈めた後溶液を捨てて DNA を乾かす乾いたらTE緩衝溶液を 1ml加えて放置するDNAの溶液が得られる
54 電気泳動装置による DNAの観察
本実験は職員と一緒に行うこと 実験を行う人はビニール手袋をすること 1) 抽出した DNAを電気泳動装置で観察するマイクロピペットを用いて以下のように調製した DNAの混合溶液を調製する(いずれの溶液も調製済)
45
2) マイクロピペットを用いてアガロースゲルの試料を流し込む穴(ウェル)に1)にて調製した溶液 Aおよび Bを注ぎ込む注入量は20μℓとする電気泳動装置のスイッチを入れて100Vの電流を流しアガロースゲル内にて DNAを電気泳動させる
3) 試料に予め加えられておいた青色の色素が 7 分目程度まで進んだら電気泳動を中止する(約 30分程度)
4) (ここでの作業は職員が行う) アガロースゲルを取り出し染色液に浸す染色後ゲルを取り出しポラロイドカメラで
DNAの泳動状態を撮影する
+ -
アガロースゲル
試料を流し込む穴(ウェル)
図 51 電気泳動装置
6 5 4 3 2 1
図 52 DNAの電気泳動写真の一例
55 電気泳動装置の原理 電気泳動装置の原理図を以下に示すアガロースゲル(寒天から不純物を除いたもの)中
に DNAをセットし電流を流すとDNAは電流の向きとは逆にマイナスからプラス方向
調製済 溶液 A(制限酵素なし) 水 11μℓ 10timesH Buffer 2microℓ 植物 DNA 5μℓ
調製済 溶液 B(制限酵素 Eco RI入り) 水 11μℓ 10timesH Buffer 2microℓ 植物 DNA 5μℓ 制限酵素 2μℓ
1 DNA(タマネギ)+制限酵素 2 DNA(タマネギ)+制限酵素 3 DNA(タマネギ) 4 λ-DNA(大腸菌)+制限酵素 5 λ-DNA(大腸菌) 6 サイズマーカー
500bp
46
に動く(このことを電気泳動という)これはDNA のリン酸部分が負に帯電しているためでありまたDNAはその長さにより泳動距離が異なる(短い遺伝子ほど長く泳動する)電気泳動ではこの性質を利用してDNAを大きさごとに分離することができる
塩基対数によってDNAを分離
EtBr (蛍光試薬)DNAの二本鎖内に入り込む
発光
UVλ=302nm
励起
分離後のアガロースゲルをエチジウムブロマイド(EtBr)溶液に浸す
DNAを含んだ溶液
アガロースゲル
リン酸部分が負に帯電
塩基 (ATGC)-
+
カメラで撮影
電圧
DNA構成成分(dNTPs)
バンドが明る
DNA量が
バンド(DNAの存在)
図 53 電気泳動の原理
56 制限酵素とは DNA は4 種類のヌクレオチド(GATC)が不規則につながってできている制限酵素はDNAの特定のヌクレオチドが並んでいる部分を切断する制限酵素には様々な種類がありEco RI(エコアールワン)と呼ばれる酵素は「GAATTC」といった並びの部分だけを切断することができる
GAATTC
CTTAAG
制限酵素
Eco RI
AAGCTT
TTCGAA
制限酵素
Hin dIII
図 54 制限酵素による DNAの切断
レポートについて 1 実験方法および実験結果の整理方法については指針書を参考にすること 2 実験結果については電気泳動の結果について考察すること(制限酵素の影響などにつ
いてまとめてください)
47
6 染色実験
61 はじめに
現在私達の身の周りでは様々な染料が使われている例えばT シャツやジーンズな
どの衣服は橙黄赤青など様々な色に染められている他にも私達が気付かないと
ころで多くの染色された製品を使用しているそこで本実験では高校の化学で学んだ
アゾ染料を合成してみるアゾ染料はアニリンを原料として作られているアニリンはベ
ンゼン環にアミノ基(-NH2)がついたものであるアニリンは無色の液体で水に溶けにく
くアンモニアより弱い塩基性を示すまたさらし粉(CaClO(ClO)H2O)水溶液を加えると
赤紫色を呈するこの呈色反応はアニリン特有のものであるので検出反応に用いられる
このアニリンを出発物質としてアゾ染料を合成してみる
62 試薬および使用器具
【試薬】 ①05moll 水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液
②2-ナフトール ③フェノール ④6moll 塩酸
⑤亜硝酸ナトリウム ⑥アニリン ⑦氷
【器具類】 ①電子天秤 ②50mℓビーカー ③100mℓビーカー
④ガラス棒 ⑤布(ガーゼなど) ⑥ピンセット
⑦ポリ手袋 ⑧ドライヤー ⑨シャーレ
10駒込ピペット(10ml ガラス製)
11駒込ピペット(1ml プラスチック製)
63 実験方法
1) 50mℓビーカーの中に 05molℓ水酸化ナトリウム水溶液 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回
NaOH 水溶液を分取するほぼ 20 mℓ分取できれば可)と 2-ナフトールを約 01g 入れ
よくかき混ぜる調製した溶液の中に布をつけその布はガラス棒でしぼってから(布
をガラス棒ですくいあげればよい)シャーレに広げる温度の異なる条件下(常温およ
び低温)で染料の合成実験を行うため布は最低 2枚調製した溶液と接触させそれ
ぞれ別々のシャーレ(低温用および常温用)に広げる
2) 新しいビーカーに水を約 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回分取)と 6molℓ塩酸約 4mℓ(10m
ℓ駒込ピペットで目分量で可)さらにアニリン約 1mℓ(プラスチック製 1 mℓ駒込ピペッ
ト)を入れてよくかき混ぜる染料の合成を常温および低温下で行うためこの溶液を
2つ調整する
低温下で反応させる溶液は恒温槽で 10~15 分ほどよく冷やした後亜硝酸ナトリウ
ム 05g を加えてよくかき混ぜる
常温下で反応させる溶液には冷却作業を行わずに亜硝酸ナトリウム 05g を加えて
よくかき混ぜる
3) 2)でつくった水溶液をシャーレに広げた布に注ぎ生成される染料を布によく染み
込ませ5分程放置する
4) 色の付いた布を取り出してポリ手袋をした手できれいに水洗いをし乾燥させる
48
5) 色差計を用いて乾燥した布の Lab(L明度aおよび b色度)を測定する
2)で作った溶液は5以下では無色の溶液ですが5以上になると淡い黄色になりま
す
【解説】
アゾ染料はアゾ基(-N=N-)を持っていてこのアゾ基によって鮮やかな橙色を呈色し
ます今回合成したアゾ染料は図の 1-フェニルアゾ-2-ナフトールです意外かもしれ
ませんが指示薬として使われているフェノールフタレインもアゾ化合物ですフェノール
フタレインは pH の変化によって色が出てきす染料の中でも最初は無色のものもありますが
温度を変化させたり酸性やアルカリ性にすると色が出てきます
ベンゼン ニトロベンゼン
N2Cl
ニトロ化 濃硫酸(濃硝酸)
還元反応 濃塩酸
(Sn又は Fe)
アニリン塩酸塩
遊離反応 NaOH
アニリン塩酸塩に強塩基を反応させる
と弱塩基であるアニリンが遊離する
氷冷+亜硝酸ナトリウム アニリン
塩酸
ジアゾ化
塩化ベンゼンジアゾニウム
塩化ベンゼンジアゾニウム
は熱によって窒素とフェノー
ルに分解される
カップリング
C10H7ONa (ナトリウム 2-ナフトキシド)
O
N =
1-フェニルアゾ 2-ナフトール
NH3Cl NH2
49
7 ガスクロマトグラフ質量分析計による茶葉中のカフェインの分析 71 はじめに ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)は極めて低い濃度の化学物質の同定や未知物質の構造決定に極めて強力な分析機器の一つであるGCMSを用いるとサンプルの中に含まれているある成分の分子構造(カフェインの分子構造を図 71に示す)やその量が分かりますもちろん分析機器ですので測定できる物質対象となる系や測定条件にはある
程度の制約があります混合物質を分離するガスクロマトグラフ(Gas ChromatographGC)と分離された成分(物質)を分析(構造決定と濃度測定)する質量分析計(Mass SpectrometerMS)を組み合わせた装置であるこの装置は有機化学生化学環境化学などの多くの分野で非常に多用されている例えば極めて低い濃度でも生体へ強い影響が懸念されるダイ
オキシン類などの土壌や河川の水中での含有率の決定や食品や医薬品中の微量成分の決定
にも利用されている 一方日本人に長い間親しまれてきた緑茶が近年産業界や医学
界で注目されている茶葉にはカフェイン(分子構造図 71)カテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドなどの有用成分が多く含まれておりその効能が注目されている 本実験では茶葉中に含まれるカフェインに対してGCMSを用いて分析する茶葉中には種々の物質が含まれておりGCMS分析を容易にするため前処理として超臨界二酸化炭素抽出(4015MPa程度の高圧力の二酸化炭素を溶剤として利用)により茶葉からカフェインの抽出を行いそのサンプルを GCMSにて分析する
図 71 カフェインの分子構造 図 72 物質の分析 個々の物質や装置についてはインターネットにより下記のWebサイトのフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』などにより調べるとよいカフェイン(caffeine)はアルカロイドの一種プリン環を持つプリンアルカロイドの一種でコーヒー類に含まれることか
らこの名がある化学名は137-トリメチルキサンチン(C8H10N4O2) コーヒーコーラ緑茶紅茶ガラナココアなどに含まれる(量は緑茶が一番多い)結晶は一水和物(C8H10N4O2bullH2O)もしくは無水物(無水カフェインC8H10N4O2)として得られ
る白色の針状または六角柱状結晶で匂いはなく味は苦い融点は 238昇華性がある出典フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』httpwwwwikipediaorg 装置「GCMS」httpwwwanshimadzucojpproductsgcmsqp2010htm (島津) 「超臨界抽出装置」httpwwwkagakucomjasco39-49html (日本分光)
50
レポート課題 1茶葉中に含まれるカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドの中から3つの物質を選びその物質について調べた結果を A4 レポート用紙2枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
2GCMS についてA4 レポート用紙1枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
3与えられたサンプルは茶葉1gから抽出されたのである実験結果よりもとの茶葉
1g中に含まれるカフェインの量を推算し計算式とあわせて示すこと 72 原理および装置 実験で使用する島津製の GCMS装置の全体図を図 73に原理の概略を図 74に示す
1
23
4
5
67 8
9
10
キャリアーガス
試料物質
1ボンベ(He)2圧力計3マイクロシリンジ4サンプラー5試料導入部6分離カラム
7セパレーター8イオン化室9磁石10電子増倍管11記録計
11
図 74 ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)の概略図
サンプルフォルダー
51
GCMS 装置は分離部である図中の 1~6 のガスクロマトグラフ(GC)と7~11 の検出部である質量分析計(MS)から構成される 3のマイクロシリンジを用いて試料を GCMSに導入する導入された試料は5試料導入部でガス化され6分離カラムに導入される分離カラムには吸着剤が充填されおり混合物の試料を導入した場合各物質と吸着剤との
親和性の違いにより各物質の分離カラムから排出されるタイミングは異なる分離カラム
を排出された試料は8イオン化室でイオン化され10電子倍増管にて検出される アセトンに溶解したカフェインの GCMSによる分析結果の一例を以下に示す図 75にク
ロマトグラム図 76にカフェインのピークのマススペクトルを示す
図 75 GCMSにより得られたクロマトグラム
横軸がリテンションタイムで縦軸がピーク強度を表す
図 76 カフェインのマススペクトルとカフェイン(分子量MW=194)の構造
(図 75中のリテンションタイム 126min付近のピークに起因するマススペクトル) 茶葉中にはカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイド以外にも繊維であるセルロースなど多くの物質が含まれているため茶葉そのものを
そのままサンプルとしてGCMSで分析することは困難であるセルロースなどの分子量の大きな物質はカラムに詰まってしまい分析できないそこで今回は超臨界二酸化炭素
による抽出により主にカフェインを他の物質と分離抽出した通常よく利用されるアセ
トン抽出(アセトンに茶葉を浸し特定の成分を抽出する)ではカフェイン以外にも多く
の物質が抽出されるため図 75 のような単独のピークを得ることは難しく複数のピークがクロマトグラムに見られるこのサンプル(この場合茶葉からの抽出物)にはカフェ
イン以外の不純物は少なかったがガスクロマトグラフの分離カラムによりさらにそれ
らの混合物が精度よく分離されるクロマトグラムのピークはそれらサンプル中に含まれ
ていた個々の物質を表しているクロマトグラムのピークを選択することで分子構造解析
したい物質を選んだことになる選択したクロマトグラムのピークの表している物質(ここ
ではカフェイン)に対応するマススペクトルが図 76 に表示されているマススペクトル
52
で横軸がその成分(ここではカフェイン)分子を構成している原子の原子量で縦軸がそ
の量を表しているのでマススペクトルから分子構造を解析するためにコンピュータ内
に蓄えられた物質ごとのマススペクトルデータと今回測定したマススペクトル(分子内に含
まれている各原子の数)を比較することで測定したサンプル中のクロマトピークを選択し
た分子がどのような原子をどれだけ含んだ分子であったかがわかりそれからその物質
がどのような分子構造の物質である可能性が高いかをコンピュータが検索し結果を示す 73 実験サンプルの設置と GCMS装置の操作方法 実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS装置のサンプルフォルダ
ー(図 73)にセットするこのサンプルは茶葉 1gを 50ccの高圧セルにて超臨界二酸化炭素を利用して4015MPa2時間接触の条件で抽出した固体を10gのアセトンに溶かしたものである またコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に装置および装置制
御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 本実験で使用する GCMS の操作は全てコンピュータのモニター上で GCMS の解析プログラムソフトを使用することで行うコンピュータの操作方法を以下に示す なおコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS 装置のサンプルフォルダー(図 73)にセットするまた装置および装置制御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 1)パソコンのデスクトップ上のアイコン「GCMS 分析」をクリックすると以下のようにGCMS制御プログラムを起動するその後「OK」ボタンをクリックする
図 77 GCMD分析用ソフトウェア「GCMS分析」の起動
まず「GC-MS分析」をクリック
「OK」ボタンをクリック
53
2)制御プログラムが起動されパソコンと GCMSの接続が開始される
図 78 「GCMS分析」の接続確認画面 3)GCMSとパソコンの接続が完了すると以下のような画面が表示される
図 79 「GCMS分析」操作画面
4)マススペクトルによる分子構造の解析 サンプル(この場合茶葉からの抽出物)には多くの物質が混じり合っていたがガス
クロマトグラフの分離カラムによりそれらの混合物が精度よく分離されるクロマトグラ
ムのピークはそれらサンプル中に含まれていた個々の物質を表しているクロマトグラム
のピークを選択することで分子構造解析したい物質を選んだことになる選択したクロマ
トグラムのピークの表している物質(ここではカフェイン)に対応するマススペクトルを選
択するマススペクトルは横軸が原子量で縦軸がその量を表しているのでマススペク
トルから分子構造を解析するために「定性処理」を行う シミラリティ検索結果が表示され分析により得られたスペクトルと類似のスペクトルを有
する物質の一覧が表示される上部に表示される物質ほどスペクトルが一致していること
を示す
接続状況が表示される
「トップへ」
をクリック
54
図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果
図 711 表示スペクトルのシミラリティ検索結果 10)図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果の印刷 「レポート(R)」をクリックし「検索結果(R)」をクリックすると検索結果が印刷される
GC-MS 分析で得られたマスス
ペクトル
データベース中
のマススペクト
ル
55
参考資料 生理活性物質の精製 カフェインの利尿作用のように生物活動に影響を与える物質を生理活性物質といいます
天然物には生理活性物質を多く含むものがあります一般に天然物は多くの成分を含ん
でおり特定の生理活性物質を分離抽出するには種々の分離技術が必要ですまた生
理活性物質には60以上の温度でその生理活性を失う(失活)ものや溶剤として広く用いられているクロロホルムなどの有機溶剤中で失活するものが多いそこでこれら生理活性
物質の分離精製技術の開発が望まれており30~60程度のマイルドな温度条件で操作できる二酸化炭素を機能性溶媒として利用する超臨界抽出も有効な分離技術として注目されて
いる超臨界二酸化炭素は気体と液体の中間の性質を持ち物質の分離に役立っています 臨界点付近の高密度気体は超臨界ガスまたは超臨界流体と呼ばれ臨界圧力前後でそ
の溶解能力が著しく変化することから工業的にも種々の分野で利用されています一例と
して超臨界二酸化炭素(SC-CO2)によるコーヒー豆からのカフェインの抽出プロセス(a)
ならびに超臨界二酸化炭素に対するカフェインの溶解度(b)を図に示します図(c)に示す
ように固体のカフェインがガスである超臨界二酸化炭素に溶解します
このように超臨界二酸化炭素を用いた技術はコーヒー豆からのカフェインの抽出プロ
ポリスからの生理活性物質の抽出に利用されています
図 超臨界二酸化炭素抽出を用いたコーヒー豆からのカフェインの抽出
56
付表 最小二乗法について 直線で近似する場合 f (x) = a0 + a1x (A1-1) 式(A1-1)のように近似させるとする測定値 yiとの残差を eiとすると式(A1-2)のようになる ei = yi - f (xi) = yi - ( a0 + a1xi ) (A1-2) ここで式(A1-2)の両辺を二乗してその i に関する総和をとりその値を S とすると次式となる
sumsum==
+minus==n
iii
n
ii xaayeS
1
210
1
2 )( (A1-3)
S を最小化するような a0a1を求める式(A1-3)を a0a1について偏微分すると次式とな
る
sum=
+minuspartpart
=partpart n
iii xaay
aaS
1
210
00)( sum
=
+minusminus=n
iii xaay
110 )(2 (A1-4)
同様にa1について編微分すると次式のようになる
sum=
+minusminus=partpart n
iiii xxaay
aS
110
1])([2 (A1-5)
Sが最小となる時は次式が同時に満たされる時である
00=
partpartaS
01=
partpartaS
(A1-6)
よって誤差が最小となる a0a1を求めるためには式(A1-6)を連立して解けばよい
sumsumsum===
+=n
ii
n
i
n
ii xaay
111
10 1 (A1-7)
sumsumsum===
+=n
ii
n
ii
n
iii xaxaxy
1
2
11
10 (A1-8)
式(A1-7)と式(A1-8)を a0a1を変数とみなし連立して解くと次式を得る
n組のデータ(xiyi)(i=12hellipn)に対して回帰直線 y= a0 + a1x を最小二乗法で求めて出力しデータ番号 iデータ yi直線で推定した値 )( ii bxay += および残差
iii yy minus=ε を出力するようなプログラムをつくりたい基礎式を導出せよ (ヒント残差の二乗の和が最小になるように係数 a0a1)を定めるのが最小二乗法
である)
57
sumsum
sumsumsumsum
==
====
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
n
ii
n
ii
xxn
xxyyxa
1
2
1
2
1111
2
0
)(
))(())(( (A1-9)
sumsum
sumsumsum
==
===
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
xxn
yxxyna
1
2
1
2
1111
)(
))(()( (A1-10)
よって式(A1-9)(A1-10)を用いれば最も誤差を小さくするような直線 y = a0 + a1x が求められる
y=a1x+a0 にて近似
誤差 ei
x
y
誤差が最小になる関数(直線 y=a1x+a0の場合)
図1 最小二乗による近似
誤差の和Sが最小
S
a0
a1
直線 y=a1x+a0 の近似
誤差の全体の和はS=Σei=Σyi-(a1xi+a0)
Sは変曲点にて最小値を示すすなわち(partSparta0)=0 (partSparta1)=0
図2 a0a1とSの関係
10
解答(計算式) )( 0CCWVn minusminus=
minus= ( ) (答) [mol]
例題 1 吸着塔の設計 濃度 C0[molm3]の不純物を含む工業排水(流量 V[m3hr])から不純物を除去するために下図
に示すような各 i段に活性炭を wi[g]含む5段の吸着塔を設計しましょう 各 i 段の出口と入口でのそれぞれの物質濃度 CiCi-1[molm3]とその段での活性炭単位質
量当たりの吸着量 ni[molg]との間に物質収支がなりたち他の部分への吸着は無視できるとするまた溶液中の平衡濃度Ci[molm3]と吸着量ni[molg]の関係はラングミアー(Langmuir)の等温吸着式で与えられるものとするラングミアーの等温吸着式における吸着平衡定数 K
と飽和吸着量 infinn としてはK=8611 infinn =0003262の値を用いる誤差を判定する定数 EPS
としてはEPS=000001を用いよ 図4 吸着塔の段数計算 図5 吸着塔 33 実験目的 一定の温度において活性炭による希酢酸の等温平衡吸着量 nを一定の温度において測定
しそれら測定値の Freundlich 式および Langmuir 式への適合性を比較検討するまたLangmuir式により活性炭の比表面積を求める 34 実験方法 レポートでの実験方法の記述では次のように説明文を必ず付けて下さい また行った方法については過去形「~した」のように記述して下さい 例) 活性炭による酢酸水溶液からの酢酸の吸着実験に次の器具および試薬を使用した [器具] 1000mlメスフラスコ(1)500mlメスシリンダ(1)500ml試薬瓶(5)共栓三
実験レポートを書く場合この「実験目的」を利
用して「緒言」を作成して下さい
実験方法は過去形にて記述
11
角フラスコ(5)2mlホ-ルピペット(2)5mlホ-ルピペット(2)10mlホ-ルピペット(1)100ml ホ-ルピペット(1)50ml ビュレット(1)電子天秤直示天秤(注( )内の数値は個数を表す) [試薬] N10N100-水酸化ナトリウム(NaOH)N10-塩酸(HCl)フェノ-ルフタレイン酢酸活性炭 1)2)および 7)については予め調整済み8)は2日目に実験する 1)酢酸 28mℓ をメスシリンダにて採集しこれを 1000mℓ メスフラスコに入れて蒸留水を加えて 1000mℓとしN2-酢酸を調整した(調整済み)
2)N2-酢酸より順次溶液 500mℓをメスシリンダに取り1000mℓメスフラスコを用いて
N4N8N16N32酢酸溶液を調整し500mℓ試薬瓶保持した 3)共栓三角フラスコ(100mℓ)の空重量を直示天秤にて正確に測定したこれに電子天秤にて測定した活性炭試料約 1gを入れて再び直示天秤にてその重量を正確に測り前後の差から投入した活性炭量を知る
4)活性炭を入れた各々の三角フラスコに各濃度の酢酸溶液 100mℓを正確にホ-ルピペットを用いて入れた(このとき気泡が混入しないように注意した)
5)上記に準備した三角フラスコに栓をしてこれらを所定の温度に設定した恒温槽に浸し
た浸した三角フラスコは約 20分間隔で気泡が混入しないように注意して振り混ぜるこの操作を約 2時間行った
6)次に滴定に用いて約 N10-N100-水酸化ナトリウム溶液 1000mℓを調整し濃度既知の塩酸溶液を用いてその正確な濃度を決定しておく(調整済み)
7)調整された酢酸溶液の各々を6)において標定した N10-水酸化ナトリウム水溶液にフェノ-ルフタレインを指示薬として滴定し各酢酸溶液の濃度を求めた(標定に要する
酢酸量は N2-と N4-の場合は 2mℓN8-と N16-の場合は 5mℓN32では 5mℓをホ-ルピペットで採集するただしN32についての滴定はN100水酸化ナトリウムで滴定した(各濃度について 3回ずつ滴定する)
注)ビュレットは各班に 2 本ある濃度の高い N2 酢酸から測定するので両方のビュレットにはN10-水酸化ナトリウム水溶液を入れて開始する
最重要注意事項
滴定を行う場合安全確保のため必ず安全メガネを着用すること 8)次に各試料溶液を一つずつ手早くろ過しろ過液を N10-水酸化ナトリウムで滴定して平衡濃度を決定した(標定に要する酢酸量は N2-と N4-の場合は 2mℓN8-とN16-の場合は 5mℓN32-では 5mℓをホ-ルピペットで採集したただしN32 ーの場合は N100 ー水酸化ナトリウムで滴定した)
12
1) 酢酸溶液の濃度の測定(1日目レポートにこの図は不要) 酢酸 28mℓをメスシリンダにて採集しこれを 1000mℓメスフラスコに入れて蒸留水を加えて 1000mℓとしN2-酢酸を調整する
N2-酢酸より順次溶液500mℓをメスシリンダに取り1000mℓメスフラスコを用いて N4-N8-N16-N32-酢酸溶液を調整し500mℓ試薬瓶に保持する
滴定用のビュレットを N10-N100-水酸化 ナトリウム溶液で共洗いする(3回)
ビーカーに酢酸溶液を少量入れて共洗いを行う (3回)試薬瓶からビーカーに酢酸溶液を滴定に 必要な量だけ取り出す
ホールピペットをビーカーの酢酸溶液を 使用して共洗いを行う(3回)
滴定用の三角フラスコに酢酸溶液を分取する
滴定(滴定は同じ濃度の酢酸溶液を 3回 以上滴定して平均する)
酢酸溶液の濃度計算
滴定による酢酸濃度の決定
1000
1000vfNvx timestimes=times (33)
x酢酸の仕込み液濃度 [molℓ] v酢酸の仕込み液の分取量 [mℓ] NNaOHの規定度 [N] fNaOHのファクター [-] vrsquoNaOHの滴定量 [mℓ] 注)酢酸は 1価の酸なので 1molℓ=1N(1規定)
13
式(33)の使用例 酢酸の仕込み液の分取量 v =2 mℓ NaOHの規定度 N = 01 N NaOHのファクター f = 0998 NaOHの滴定量 vrsquo = 985 mℓ である場合 式(33)を利用して酢酸の仕込み液濃度 x[molℓ]を求める
1000
1000vfNvx timestimes=times
vvfNx
timestimes=
49202859998010 =timestimes= molℓ (この xが濃度 C または C0 です)
2)酢酸溶液と活性炭の接触のフローチャート(1日目) 共栓三角フラスコ(100mℓ)の空重量を 直示天秤にて正確に測定する
電子天秤にて活性炭試料約 1g測る
共栓三角フラスコ(100mℓ)に 活性炭試料約 1gを入れる
活性炭試料約 1gを入れた 共栓三角フラスコ(100mℓ) を直示天秤にてその重量を測る
共栓三角フラスコ(100mℓ)の前後の 差から投入した活性炭量を計算する
活性炭を入れた各々の三角フラスコに 各濃度の酢酸溶液 100mℓを正確にホ-ルピペットを用いて入れる(このとき 気泡が混入しないように注意する)
三角フラスコに栓をしてこれらを所定の温度に 設定した恒温槽に浸す浸した三角フラスコは 約 20分間隔で気泡が混入しないように注意して 振り混ぜるこの操作を約 2時間行う
14
3)吸着量の測定(2日目) 恒温槽の温度を測る
恒温槽から三角フラスコを一つずつ取り出す
各試料溶液を一つずつ手早くろ過する
活性炭
ろ液を滴定して平衡濃度を決定する
回収
吸着量の計算
Langmuirの吸着等温式Freundlich式のパラメータの決定
グラフの作成
吸着量の計算10001000 times
minus=
wCC
n (34)
n吸着量 [molg] C0 酢酸水溶液中の酢酸の濃度 [molℓ] C ろ液中の酢酸の濃度 [molℓ] w 活性炭の量 [g]
35 実験結果のまとめ方 実験結果は実験レポートを書く場合に考察と並んで重要な部分ですので主な注意事
項をここで説明しておきます グラフの作成n vs C nC vs C ln n vs ln C の 3つのグラフの作成 配布された Excel ファイルを利用し下図のような図を作成してみましょう
15
レポートの間違いやすい場所 ①表や図を示す場合次の例のように文章でもその旨を示す [実験結果] 共栓付三角フラスコに活性炭約 1g入れた試料の重量 w[g]を Table1に示す
Table1 調整酢酸濃度を入れる活性炭試料の重量 w [g]
酢酸規定度[N]
活性炭試料の質量w [g]
12 10300
14 10001
18 10126
116 10011
132 10109 酢酸(1)-水(2)-活性炭(3)の 12における吸着平衡の結果を Table 6および Fig1に示すただし活性炭 1gに吸着された酢酸のモル数 n[molg]は次式より求めた
( )10001001
0 timestimesminus=w
CCn b
C0仕込み液中の酢酸濃度 [molℓ] Cbバルク相中の酢酸濃度 [molℓ] w活性炭試料の質量 [g] n吸着量 [molg]
例えばCb=04621C0=04894w=10300の時は次のように計算できる
( ) 026501000100
0300114621048940 =timestimesminus=n
Table6 酢酸(1)-水(2)-活性炭(3)の 12における吸着平衡
吸着された溶質のモル数n[molg]
バルク相中の濃度Cb[moll]
00205 04621
00175 0241
00139 01139
00105 00519
00081 00243 ②得られた図や表の解釈(読者にそれらから読み取ってもらいたい事柄)の説明文を次の
例のように文章で記述する数字や図だけ示して読者に「理解しろ」というようなレポー
トではよくありません Table 6および Fig1よりバルク相中の酢酸濃度 Cbの増加にともない吸着量 nも増加することがわかったまた吸着量 n の値は酢酸濃度 Cbの増加にともない n=に漸近することがわかる
グラフ(Fig)は次ペ
ージに掲載すること
グラフや表の後にはそれらの結果より得られた知見を文章でも
記入すること
16
36 エクセルによる吸着データの整理法 注コンピュータの画面はWindowsXP上での操作になっています他の OS(Windows98 2000
NT)搭載のパソコンでも同様の作業が可能です) 先ほど問1で説明したように溶液濃度の濃度変化から吸着量 nを求めました実験では吸着後の水溶液中の酢酸の濃度 Cと吸着量 nの関係を各濃度の溶液(5種類)について測定しその値を計算します このようなデータの整理には表計算ソフトであるマイクロソフト社の Excelが便利です
Excel の起動方法はそのソフトがインストール(設定)されているコンピュータにより若干方法が異なることがありますがほとんど同じですここでは福岡大学の総合情報処理
センターのコンピュータの設定に従って説明します 表計算をしてみましょう セルとは セルというのは最小単位の四角のことです例えば「(Aの1)またはA1というセルセル
B1」のようにセルという言葉を使いますセル A1に1という数字を入れてみましょうセルA1をクリックしてキーボードから「1」と入力しキーボードの「Enter」キーを押します
図 5 Excelの入力例1 図 6 Excelの入力例2
次にセル B1に「5」という数字を入れましょう次にセル C1にセル A1と B1に記入された数値の和を表示させてみましょう 下の図のようにセル C1をクリックします上の「 fx 」と書かれた右のボックス(何かを書くところに)「 =A1+B1 」と書きましょうそして Enterを押すとセル C1に 6と表示されます
図 Excelを用いた関数計算 実験では吸着後の水溶液中の酢酸の濃度 Cと吸着量 nの関係を各濃度の溶液(5種類)について測定しましたこのデータに対してExcelを用いて表計算してみましょうまず先ほど記述したセル A1~A3は「Delete」(デリート)キーで値を削除しましょう
17
次にセル A5~A9に活性炭と接触する前の酢酸水溶液の初濃度 C0[moldm3]セル
B5~B9に活性炭と接触後分離した酢酸水溶液の濃度 C[moldm3]セル E5~E9に活性炭の質量 W[g]をキーボードから入力します作成した一例を次に示します
図 8 Excelによる吸着量nの計算 ここで1gの活性炭に吸着された酢酸の物質量n [mol]を式 (4)より計算できるのでセル C 5~C9に次の関数式を記述します式の内容としては
)( 0CCWVn minusminus=
となるように記述するので実際の Excelの関数としては次のように行います セル C 5をクリックし関数ボックス(fxの右)に「=(A5 ndash B5)01E5」と記述(半角または直接入力形式で)し「Enter」キーを押し確定しますこの関数はフィルハンドルを利用してセル C 6~C9にコピーしますただし実験で溶液は 100cm3使用しましたが
溶液の濃度 C が[moldm3]の単位ですので100cm3=01dm3 となり関数式の中では
V=01 dm3としています なおグラフの記述方法やフィルハンドルの使用方法については化学工学プログラミ
ングなどの補助資料を参考にして下さいまた実験の際に配布した Excel ファイル(ファイル名ad_graxls)を使用すると実験データの理論的な解析も容易にできますので試してみましょうExcelファイル(ファイル名)「ad_graxls」の使用方法は次節で説明します 36 実験結果の考察方法 (吸着実験について) 実験結果の考察方法は種々の方法がありますがここでは一例として理論と比較する
方法を示します実験結果として下図(左)のようなグラフができましたこのような実
験結果に対して理論的な考察を行ってみましょうここでは次節で説明するラングミュ
ア(Langmuir)の単分子吸着モデルで計算した理論線と実験と比較したものを下図右に示しますこの図を作る方法は次節で説明しますレポートの考察の部分はラングミュア
(Langmuir)の単分子吸着モデルの式の導出から書いて下さい 理論を作る場合幾つかの仮定をしますがその理論が多くの実験結果をうまく説明でき
ている場合その仮定がある程度妥当なものであったことがわかります指針書に書いてあ
った以外の理論についても興味があれいばためしてみましょう
セル C5をクリックし関数ボックス( fx の右)に「=(A5 ndash B5)01E5」と記述(半角または直接入力
形式で)します
18
ラングミュア(Langmuir)の単分子吸着モデルを用いて理論値を計算するには配布され
た Excelファイル(ファイル名)「ad_graxls」を使用すると便利ですその使用方法を以下に示します配布プログラムは化学工学プログラミングの講義の場合と同様に総合情報処
理センターの共通領域にあります各自コピーして使用して下さいコピーするには化
学工学プログラミングの講義の場合と同様にコピーしようとするファイルを共通領域から
自分の使用しているコンピュータのデスクトップにドラッグドロップします共通領域で
ファイルを開くとファイルの消去などで他の人が使えなくなりますので共通領域でファイ
ルをダブルクリックしないようにして下さい誤って共通領域でファイルをダブルクリック
した場合はそのファイルを閉じるボタンをクリックし閉じて下さい 各自のコンピュータに保存した Excelのファイル(ファイル名ad_graxls)をダブルクリ
ックして開きます自宅へ持ち帰る場合各自のフラッシュメモリーやフロッピーディスク
を使用しまたはメールを使用して添付ファイルで送信できます各自のフラッシュメモ
リーやフロッピーディスクに保存してあるファイルを再編集する場合はフラッシュメモリ
ーやフロッピーディスクをコンピュータの USB 端子またはフロッピーディスクドライブに挿入します次にデスクトップ上にあるマイコンピュータのアイコンをダブルクリックし
ます もしデスクトップ上に上のアイコンが無ければ画
面左下の「スタート」ボタンからマイコンピュータをク
リックしてくださいすると次のような画面が立ち上が
ります
ラングミュア(Langmuir)の単分子吸着モデルで計算した
理論線
19
その中からフラッシュメモリーの場合は「リムーバブルディスク」をフロッピーディ
スクの場合は「35インチ FD」のアイコンをダブルクリックしてくださいファイルが保存されていれば次の画面が出てきます
この画面の中の「ad_graxls」ファイルをデスクト
ップにコピーしますまず「ad_graxls」ファイルを左クリックしますこの時クリックした指はは
ずさないようにしますその状態のままデスクトッ
プまでファイルを移動させますそしてデスクト
ップ上の任意の場所でクリックした指をはずします
これでデスクトップ上に「ad_graxls」のファイルがコピーされましたのでデスクトップにコピーさ
れたファイルをダブルクリックして開きますコピ
ー操作が上手くいかなかった場合もう一度移動の操作を行ってください
必ずデスクトップにコピーしてから開く操作を行って下さいフロッピーディスクから直接
開いて操作を行った場合正しく保存されない可能性があります 「ad_graxls」のファイルを開くと次のような画面が立ち上がりますもし画面が違う場合は画面の下部にある「吸着データ」のタグ をクリックしてくださいこの画面
でデータの処理や計算を行いますでは実際の操作に入る前に予めこのファイルに名前
を付けて保存しておきますまずExcelの画面のツールバー「ファイル」から「名前を付けて保存」をクリックします下のような画面が起動します
20
ファイルの保存先を変えたい場合画面上部のボタンをクリックし保存先にデスクトッ
プを選択します次にファイル名の部分に各自ファイル名を入力しますファイル名は何
でも良いですが分かり易い名前にしておくとファイルの管理がやり易くなります日付や
数字を入れると同名のファイルをいくつも管理する場合に便利ですここでは「吸着実験デ
ータ整理 4月 01」とし「保存」ボタンをクリックします
ファイル名変更後Excelの画面上部のタイトルバーのタイトルが先ほどの名前(上の図とは異なります)になっていることを確認してください
この操作を行うことによって元のデータである「ad_graxls」を変更してしまう心配がなくなります元のデータである「ad_graxls」はファイルが破損しまたは間違った操作の結果を誤って保存してしまった場合などの補助ファイルとなりますので大切に保管しておいて
下さい今後配布するデータは先ほど説明した手順で名前を変えて保存し元のデータに
直接変更を加えないようにして下さい ここから実際の作業に入ります初期状態では模擬のデータが入力されています入力
データは予め計算しておいた酢酸濃度Cb[moll](濃度を Cと表示している場合もあります)と活性炭吸着量 n[molg]になります下の画面の丸で囲んだ部分がそれぞれの値でBCカラム(列)の 4~9行には数値が入力されています関数ではありませんこのデータを利用して実際のデータ解析を行ってみましょう下記のように行うと幾つかのグラフが
現れ実験データに対してラングミアーの単分子吸着を仮定したモデルを用いて精度よ
く計算線が描けることがわかります 今回はCbnの値を入力する必要はありませんExcelが自動的に計算を行って結果を表示するようになっていますつ
まりセル D5に「=B5C5」と関数を入力しこの関数に対してフィルハンド
ルを利用してセル D6~D9へコピーし
ファイルの保存先を変えたい場合画面
上部のボタンをクリックし保存先に
デスクトップを選択します
変更するファイル名はここをクリッ
クして書き換えます
名前を変更したらここをク
リックして保存します
21
まています 次に酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着量 n[molg]の関係および酢酸濃度 Cb[molL]と Cbn[gL]の関係をグラフ化します今回は自動的にグラフが作成されるようになっていますので複
雑な操作は必要ありません ここではデータに対してそれを精度よく表現する近似式をグラフ上に描きその関数
を数値として求める方法を Excelで練習してみましょう
グラフを表示させるには画面の下にある「Graph1」もしくは「Graph2」のタグ
をクリックします「Graph1」には酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着量n[molg]の関係のグラフが「Graph2」には酢酸濃度 Cb[molL]と Cbn[gL]の関係のグラフが表示されます「Graph2」はLangmuir の等温吸着式による相関を表したもので横軸に酢酸濃度 Cb[molL]をとり縦軸に酢酸濃度 Cb[molL]を活性炭吸着量 n[molg]で除した値 Cbn[gL]を示していますLangmuir の等温吸着式についてはこの後の章で説明してありますので各自読んで理解して下さいLangmuirの等温吸着式では式中の定数 ninfin(飽和吸着量)と K(吸着平衡定数)を実験データから最小二乗近似で決定する場合が多くありますここでは
その例を取り上げてデータに対してそれを精度よく表現する近似式をグラフ上に描き
その関数を数値として求める方法(最小二乗法最小二乗については付録に示しており
また化学工学プログラミングの講義においても説明します)を Excelで練習します 配布された Excel ファイル「ad_graxls」では実験点が表示されているだけでそれを精度よく表現する近似式の直線のグラフは「Graph2」に表示されていません今から次の手順で「Graph2」の図(グラフ)に近似式の直線のグラフを表示しますExcel の場合近似曲線(ここでは直線)を求める場合コンピュータが自動的に最小二乗法を使って近似曲線
を計算しています
「Graph1」の画面 「Graph2」の画面
Excelの sheetが表示されたらまずファイル名を変えデスク
トップに保存して下さい次
にGraph2のタックを左クリックして最小二乗法のグラフを
確認して下さい
22
38 Langmuirの等温吸着式による相関 はじめにLangmuir式の定数 ninfinと Kを決定するために「Graph2」酢酸濃度 Cb[molL]と
Cbn[gL]の関係のグラフから最小二乗法により直線の式を求めますExcelを用いてデータに対して近似直線のグラフを描き最小二乗法の直線の式を求めます
次のような「近似曲線の追加」のウィンドウが現れたら今回は線形近似(直線で近似
y=ax+b の式)を選びますので線形近似が黒色に反転していることを確認して「近似曲線の追加」のウィンドウの右下の「OK」ボタンをクリックして下さい
実験点の何れかにポインタをあわせて
右クリックする
近似曲線の追加(R)を選択して左クリックする
「線形近似」であること
を確認して「OK」ボタンをクリックします
23
「近似曲線の書式設定」
のウィンドウでオプシ
ョンから「グラブの書式
を表示する」の前を選ん
でチェック(前のチェッ
クボックスをクリック)
した後「OK」を押す
現れた直線にポインタをあわせて
左クリックすると「近似曲線の書式
設定」のウインドウが表示されます
ここをクリックします
この「オプション」のタ
グをクリックします
「y=」の関数
が現れるのでここ
をクリックする
式の文字フォントが初期値
「8」と小さいのでここ
のボタンをクリックし
フォントサイズを選ぶリス
トボックスを表示し「22」程度の大きなサイズを選択
しクリックする
24
「Graph2」酢酸濃度 Cb[molL]と Cbn[gL]の関係のグラフから最小二乗法により直線の式がこのように求められましたExcel を用いてデータに対して近似直線のグラフを描き最小二乗法の直線の式を求めるこの方法は他の実験データの解析などにも利用できますので
各自活用して下さい 表示された関数式「y=43865+2654」はノートにメモして下さいこの傾き 43865と
切片 2654からLangmuir式の定数 ninfinと Kを決定します決定方法の詳細はこの後の 36 の Langmuir式のパラメータ決定法に示しています ラングミュアの等温吸着式を変形すると次式となる
CCnKnCKn
CCKn
Cβ+α+
==
+= infininfininfin
11)1(
ただしα=1ninfinβ=1(ninfinK)とするこの式より Cnを縦軸Cを横軸とした関係のグラフは傾きα=1ninfin切片β=1(ninfinK)の直線関係を与えることを示しています そこでExcelのシートを利用してこの値からLangmuir式の定数 ninfinと Kを次のように決定しますセル C18D18に Graph2で求めた数値 2654と 43865を代入しますその後D19と C19に関数を ldquo=1D18rdquoとrdquo=D18C18ldquoを代入しますセル内の式は半角で入力してください
現れた関数の文字フォン
トを大きく(例えば 22)してその数字をメモし
吸着データシートの C18と D18に記入する
C18D18 に Graph2 で求めた値 2654 と 43865 を代入した後D19 と C19 に関数を ldquo=1D18rdquoとrdquo=D18C18ldquoを代入する
25
この Excel表示では最小二乗法を用いて決定した傾きαと切片βを用いて α=1ninfin=43865 β=1(ninfinK)=2654 得られた傾きおよび切片よりninfinおよび Kは次のように求まる
ninfin=1α=1D18=000228 molg-1 K =(1ninfin)β=αβ=D18C18=165
つまりセル D19にはninfinの値がセル C19にはKの値が表示されますこれらの値はラングミュア(Langmuir)の単分子吸着モデルで計算した理論線と実験と比較する場合に利用します実験結果に対して理論的な考察を行う例としてラングミュア(Langmuir)の単分子吸着モデルで理論線を計算し実験と比較するにはこの Excelファイルを利用して次のように計算しグラフに表示します セル F5~F30 には溶液中に残る酢酸濃度 Cb[molL]に対する活性炭に吸着された吸着量n[molg]の関係のグラフ「Graph1」の横軸の酢酸濃度 Cb[molL]の適当な値が既に入力してありますこれらのそれぞの酢酸濃度 Cb[molL]に対する吸着された酢酸の吸着量 n[molg]の理論値をラングミュア(Langmuir)式で計算しますラングミュア式は次式で与えられます
KCKCnn
+=
infin
1 (310)
ここでこの実験データを最も精度よく計算できるように決定した ninfinおよび K は上述のようにninfin=1α=1D18=000228 molg-1 K =(1ninfin)β=αβ=D18C18=165 でありこれらの値はセル D19にninfinの値がセル C19にKの値が表示されていますこの値を利用して「Graph1」に計算線を描くにはまずセル G5~G30 にセル F5~F30 のそれぞれの酢酸濃度 Cb[molL]に対する吸着された酢酸の吸着量 n[molg]の理論値をラングミュア式で計算しますそのためにはセル G5 にラングミュア式を次のように記述しますただしセル D19の ninfinの値セル C19の Kの値は常に同じセルから参照するので絶対参照($マークを付けて$D$19 $C$19と記述します)で記述します
Langmuir式をセル G5に記述するただし濃度はF5の値を相対参照しD19と C19は絶対参照($マークが必要)することを忘れないように
セルG5に記述すべき数式
=$D$19$C$19F5(1+$C$19F5)
26
G5記述後フィルハンドルを使用してG5の関数を G6~G30までコピーします Sheet1から Graph1 のタグをクリックしGraph1 に計算線が表示されたことを確認しましょうこれでラングミュア式によるデータの解析は終了です実験値と理論値を比較して現象
について考察してみて下さいラングミュア式を理論的に導く場合にある仮定をしている
のですがその仮定をしているラングミュア式が実験データを精度よく計算できていれば
その仮定が妥当なもとであったと考察できます 与えられたモデルデータでラングミュア式によるデータ解析ができれば他の理論(例え
ばフロインドリッヒFreundlich式や BET式レポートはどちらか一方でも可です) についてもExcel で計算してみましょうレポートには自分のデータについてここで行った内容と同様に計算しその結果を考察に記述して下さい 自分のデータについて同様の計算をするにはまずいままで計算を行った Excel ファ
イルを保存しますデータを自分の実験データに置き換える前に Excel ファイルをさらに別の名前で保存します与えられた Excel ファイルは初期状態では模擬のデータが入力されているので今回自分達の実験したデータを入力していきます入力するデータは予め計算
しておいた酢酸濃度 Cb[moll]と活性炭吸着量 n[molg]になります下の画面の丸で囲んだ部分にそれぞれ自分の実験データを入力していきます
今回はCbnの値を入力する必要はありませんExcelが自動的に計算を行って結果を表示するようになっています 次に酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着
量 n[molg]の関係および酢酸濃度Cb[molL]と Cbn[gL]の関係をグラフ化します今回は自動的にグラフが作成
されるようになっていますので操作は必
要ありません 39 Freundlichの等温吸着式による相関 今回の実験で得られた酢酸濃度 Cbと活性炭吸着量 nのデータを利用してFreundlichの等温吸着式の定数 abの値を求めFreundlichの等温吸着式の理論線をグラフに追加します ここでFreundlich式は次式で表されます
bbaCn1
=
このままでは定数 abの値を決定することが難しいので上式の両辺の対数をとり線形化しますすると次式となります
bCb
an ln1lnln +=
ここでln Cbと ln nの関係をグラフにプロットすれば傾き 1b切片 ln aの直線関係が得られますしたがって実験データである酢酸濃度 Cbと活性炭吸着量 nの値の対数をそれぞれ計算します配布した「ad_graxls」ファイルを開き「吸着データ」シートの任意の部分に以下のような表を作成します
27
次にln Cb[-]の列の最初のセルに以下の数式を入力します
=ln(B5) 上式中の「B5」は Cb の値の最初のセルの位置を指します各個人の位置によって変更してください
次にln n[-]の列の最初のセルに以下の数式を入力します
=ln(C5) 上式中の「C5」は nの値の最初のセルの位置を指します各個人の位置によって変更してください
ここでln Cb[-]ln n[-]の値に対しそれぞれオートフィルを行い計算させますすると以下のようなデータが完成します
計算した ln Cb[-]ln n[-]の値をグラフにプロットし最小二乗法による直線式を求めます
28
ここで以下のような直線の式が得られたとします
9135ln31690ln913531690 minus=there4minus= bCnxy
上式より切片は-5913傾きは 03169となるので以下の要領で定数 a1bを計算します ==there4minus= minus 91359135ln eaa 000270
316901=
b
a の値を Excel で計算させる場合は任意のセルに以下のような数式を入力することで求めることができます
=exp(-5913) これでFerundlich等温吸着式の定数 a1bの値が決定しましたこの値は後で使うのでノートなどにメモしておいてください 次に決定した Ferundlich 等温吸着式の定数 a1b の値を用いてFerundlich 等温吸着式のグラフを作成します先ほども示したように Ferundlich等温吸着式は次式で表されます
bbaCn1
=
従って定数 aと 1bの値はすでに決定しているので任意の Cbの値に対する nの値を数点求めればFerundlich等温吸着式で求めた理論線が得られます以下の操作で理論線を引くことができます Langmuir 等温吸着式による相関のときと同様にExcel の「吸着データ」のシート上の任意の場所に以下のような表を作成します
次に Ferundlich等温吸着式に従いnの値を計算します
bbaCn1
=
式中の定数 a1bは先ほど計算した値を用いますしたがって式は次のようになります
31690002700 bCn times=
この式を Excelのセル内に記入すれば計算ができます次の
29
ように記入します
=00027G5^03169 ここで式中の「G5」は Cbの値が 0のセルを指しています各個人の位置によって変えてください 次に式を記入したセルを Cbの値が 05のところまでオートフィルを行いますそうするとすべての Cbに対して nの値が計算されます
これで Freundlich等温吸着式のデータが完成しましたので次に「Graph1」酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着量 n[molg]の関係のグラフにこのデータを追加し理論線を引きます理論線の引き方は Langmuirによる相関のときと同様の操作を行ってください グラフの書式等を変更し整理すると以下のようなグラフが出来上がります
310 吸着等温線とは 固体の吸着剤を溶液と接触させる時一定量の吸着剤によって吸着される溶質の量は温度一定ならば溶質の濃度の関数になる一定温度での吸着量を温度に対してプロットした時に
得られる曲線を吸着等温線というこの吸着等温線を比較的よく表す経験式として次の
Freundlich式がある
n=aC1b (1) ここで n は吸着剤の質量あたりの吸着量C は吸着平衡濃度a と b は実験から決定されるパラメータであるがその物理的意味は多少希薄である これに対し理論的な意味を持つものに次のラングニュア(Langmuir)の吸着等温式がある
30
KCKCnn
+=
infin
1 (2)
ただしninfinは飽和吸着量Kは吸着平衡定数であるこの式は
1)吸着分子が固体表面で単分子以上の厚い層を作ることはない 2)吸着分子同士の間の相互作用はない
という二つの仮定にもとに導かれたものである 結果の整理および報告 Freundlich吸着等温式Langmuir吸着等温式の各々のパラメータの最適値を求めよまた活性炭の吸着特性および表面積について考察し化学工学における吸着操作の重要性につい
ても検討せよ 311 吸着等温式 (a) ヘンリー(Henry)型吸着等温式 液相の濃度あるいは気相の圧力が小さい場合吸着分子間の距離が十分に長いため吸着
分子同士の相互作用が無視でき固体表面と吸着分子のみの相互作用で吸着量を決定できる
とき次式のように表される
n=KC (3)
ここでKは比例定数である図 3-1の(a)に示すように濃度 Cと吸着量 nは比例関係があり一般に吸着量が小さい範囲で成立する気体の場合は溶液濃度 Cの代わりに気相圧力 pを用いればよい
濃度(分圧)
濃度(分圧)
濃度(分圧)
濃度(分圧)
吸着量
吸着量
吸着量
吸着量
(a)ヘンリー型 (b)ラングミュア型
(d)BET型(c)フロインドリッヒ型
0
0
0
0
図 3-1 吸着等温式
31
(b)ラングミュア(Langmuir)型吸着等温式 ラングミュアは図 3-2 に示すように固体表面に同等な吸着力を示す吸着サイトがあり
表面に 1分子層だけ吸着する(単分子層吸着)と仮定して平衡状態における吸着量と溶質濃度(気相分圧)のと関係を導いた全吸着点のうち吸着分子に覆われている吸着点の割合
をθ[-]とすると分子の脱着速度 rrsquo[mols-1]はθに比例する比例定数を a[mols-1]とすると次式のように表される
吸着剤
吸着分子
吸着サイト
図 3-2 固体表面上の吸着サイト(Langmuir式の導出) r=aθ (6) また気相からの吸着速度 r[mols-1]は空いている吸着点の割合(1-θ)[-]と溶液濃度 C[molm-3]に比例する rrsquo= b(1-θ)C (7) このときの比例定数を b[m3s-1]とするまた平衡状態では両速度は見かけ上等しいため以下の式が成り立つ aθ=b(1-θ)C (8) これを変形する
CbaCbsdot+
sdot=θ (9)
ここで飽和吸着量を ninfin[molkg-1] ba を K[m3mol-1](Kは吸着平衡定数)とおくと infin=nnθ
となるので次式が得られる
32
KCKCnn
+=
infin
1 (10)
これをラングミュア式と呼ぶ
(c)フロインドリッヒ(Freundlich)型吸着等温式 フロインドリッヒの吸着等温線は図 3-1(c)のように示される
n=aC1b (11) nは吸着量[molkg-1]で aと bはともに吸着定数[-]である (d)BET(Brunauer-Emmett-Teller) 型吸着等温式
BET型の吸着等温線は図 3-1(d)に示されるラングミュア式は表面に 1分子層だけ吸着すると仮定したものであるがBET式は無限分子層まで吸着できる式である図 3-3に示すように吸着した分子がそれぞれ次の層の吸着サイトとなり分子は積み重なって多分子
層に無限層まで吸着できるものとし各層への吸着にラングミュア式を適用すれば次式の
ように表せる
( ) ( )CKCCCKqq
minus+sdotminussdotsdot
=infin
11 (12)
この式は多孔質固体の細孔表面積を窒素ガスの吸着によって測定する際に利用される重要な式
である
表面の吸着サイト
分子上の吸着サイト
図 3-3 多分層吸着モデル
Langmuir式のパラメータ決定法 水溶液からの酢酸の活性炭に対する吸着平衡データ(吸着平衡温度 12)は表 3-1のよ
うに与えられる実験データよりラングミュア式のパラメータ(K吸着平衡定数ninfin飽和吸着量)を最小二乗法で決定せよさらにラングミュア式より決定した ninfinKの値を用いて吸着等温線を計算し計算線として図に示し実験点と比較せよ
33
表 3-1 n C Cnの関係
ラングミュア式は式(310)で与えられるこの式を変形すると次式となる
CKnCK
n infinsdot+
=11
(313)
両辺に Cをかけると以下の式が導出される
CCnKnCKn
CCKn
Cβ+α+
==
+= infininfininfin
11)1( (314)
ただしα=1ninfinβ=1(ninfinK)とする式(314)より Cn と C の関係のグラフプロットは傾きα=1ninfin切片β=1(ninfinK)の直線関係を与えることを示している表 3-1の値を用いて計算した Cnと Cの関係を表 3-1および図 3-4に示す 最小二乗法を用いて傾きαと切片βを決定した α=1ninfin=43865 β=1(ninfinK)=2654 得られた傾きおよび切片よりninfinおよび Kは次のように求まる
ninfin=1α=1D18=000228 molg-1 K =(1ninfin)β=αβ=D18C18=165
0
50
100
150
200
0 200 400 600
C [ molm-3 ]
Cn [ kgm-3 ]
傾き = 1 ninfin
1 ninfinK
切片0
05
1
15
2
25
3
0 100 200 300 400 500
液相の溶質濃度 C [ molm-3 ]
吸着量 n [ molkg-1]
液相と溶質濃度 C [ molm-3 ]
吸着量
n[ m
olk
g-1]
実験点
Langmuir式パラメータninfin 00033 [ molg-1 ]K 00086 [ m3 mol -1 ]
図 3-4 ラングミュア定数の決定 図 3-5 12における酢酸濃度 Cと
吸着量 nの関係
C [molm-3] n [molkg-1] Cn [kgm-3] 460 225 109 529 214
268 199 149 105 060
172 128 732 504 357
34
Freundlich式のパラメータ決定法 酢酸水溶液中における酢酸の活性炭に対する吸着実験を行ったところ以下のような実験デー
タを得たただしCbはバルク相における酢酸濃度n は活性炭に対する酢酸の吸着量を示す
Cb[molL] n[molg] log10Cb log10n 04621 000205 02410 000175 01139 000139 00519 000105 00243 000081
実験データを利用して次式で与えられる Freundlichの等温吸着式の定数 abの値を求めたい
bbaCn1
= (1)
このままでは定数 abの値を決定することが難しいので上式の両辺の対数をとる
bbb
bb
Cb
aCa
aCn
ln1lnlnln
)ln(ln1
1
+=+=
=
(2)
ここで横軸に ln Cb縦軸に ln nの関係をグラフにプロットするすなわち x=ln Cby=ln nと考える
bCb
an ln1lnln += (3)
ここで直線式 y=a0+a1xと比較するすなわち
)(1)(ln
1
00
傾き
切片
ba
eaaa a
=
=rarr= (4)
a0および a1は最小二乗法により数値で求められる与えられたデータでは a1= a0= なので a= b= となる この値を n=acb
1bに代入してcb=0~05の範囲で nの値を計算する
35
BET式のパラメータ決定法 BET式は次式で与えられる
)1)(1( KCCCKCnn
+minusminus=
infin
(17)
以下のように BET式の変形を行う
)1()1(
KCCKCnCn+minus
=minusinfin
(18)
(18)式の逆数をとると
KCnCK
KCnKCC
Cn infininfin
minus+=
+minus=
minus)1(1)1(
)1(1
(19)
(19)式の両辺に Cをかえると
KCnCKC
CnC
infin
minus+=
minus))1(1(
)1( (20)
(20)式を変形すると次式が得られる
CKn
KKnCn
Cinfininfin
minus+=
minus11
)1( (21)
C と)-(1 Cn
Cのプロットは傾き
KnKinfin
minus1切片
Kninfin
1の直線関係を与えることを示している
これをグラフにプロットし最小二乗法に傾きおよび切片を求める
36
312 活性炭の比表面積の決定 酢酸分子の構造を以下に示す
Hc-Cb-Ca
Hd
Hb Oa
Ob-Ha
1219deg
Ca Oa
Ob
図 36 酢酸の構造
酢酸の 1分子の吸着面積srsquo [m2]を図 3-6に示すこのとき文献より
Caと Oaの結合距離 1321Å Caと Obの結合距離 1206Å OaCaObの角度 1219deg Cの原子半径 077Å Oの原子半径 062Å
したがって吸着面積 Slsquoは次のようになる
( ) ( ) 2088 10376109931036321 minusminusminus times=timestimestimestimes=s m2
ここで活性炭の比表面積 S[m2g]は次式で示される 10026 23 snS timestimestimes= infin
S活性炭の比表面積 [m2g] ninfin飽和吸着量 [molg] srsquo酢酸 1分子の吸着面積 [m2] 602times1023アボガドロ数 [個mol] したがって活性炭の比表面積 S[m2g]は
003350=infinn molg 2010376 minustimes=s m2 より
51281037610026003350 2023 =timestimestimestimes= minusS m2g
37
4 粘度密度測定 41 はじめに 大量生産を目的とした工業的化学プロセスはほとんど流れ系(流通系)であるそれらの系において操作対象となる各物質の粘度は装置を設計操作する場合きわめて重要
な物性値である 本実験では低分子溶液および高分子溶液の粘度測定を通じて液体の粘度について考察するさらに演習問題を通じて気体液体高分子溶液などの化学プロセスで対象となる物
質の輸送物性(粘度拡散係数)の重要性を認識されたい 42 低分子溶液の粘度 [目的] 種々の濃度のエタノール水溶液の粘度を測定しその溶液の粘度について考察する [概要] 25におけるエチルアルコール濃度 02040506080100 wt の水溶液について流下時間を測定しこの結果より相対粘度絶対粘度運動粘度を求めグラフにするま
た水の密度水-エチルアルコール溶液の密度についてはピクノメーターを用いて決
定する報告書には相対粘度絶対粘度運動粘度 vsエチルアルコール濃度の関係をそれぞれグラフにして提出する
[計算方法] 相対粘度絶対粘度運動粘度の定義は次のようになる
相対粘度 ww
w tdtd
ηη = (41)
η 混合溶液の粘度 [gcms] ηw水の粘度(8007times10-3 gcms) [gcms](25における粘度) d エチルアルコール水溶液の密度 [gcm3] dw水の密度(099704gcm3) [gcm3](25における密度) t エチルアルコール水溶液の流下時間 [s] tw水の流下時間 [s] 下付添字 W 水
絶対粘度 www td
tdη
η= (42)
運動粘度 ν=ηd [cm2s] (43)
38
[実験方法] 1) 粘度計を洗浄し粘度計内 に二連球で空気を送り込み
乾燥させる乾燥しにくい 場合はアセトンを滴下し た後再度二連球で空気 を送り込み乾燥させる 2)ピペットで一定体積(10mℓ) の純水を取り広い口 f から 粘度計に水を入れる 3)粘度計を恒温槽(25)に つけ約 10 分静置する 4)安全ピペッターを口 a に 取り付け液面が b 上部に 到達するまで吸い上げる 5)安全ピペッターを外すと 液面が降下しだす液面が bd 間を通過する時間をスト ップウォッチで測定する
6)純水での測定を 3 回繰り返す 7)純水を粘度計から取り除くその後粘度計内に二連球を用いて空気を送り込み乾燥させる 8)粘度計乾燥後複数の濃度に調整済みのエチルアルコール水溶液(10mℓ)を粘度計にいれ4)~6)の作業を繰り返し行う(3 回)なお濃度の異なるエチルアルコール水溶液を粘度計内に導入する場合には7)と同様に二連球を用いて粘度計内に空気を送り込み乾燥させる
表 4-1 エチルアルコール水溶液の濃度密度相対粘度の関係 エチルアルコール濃度
[wt] 密度 d[gcm3] 相対粘度
η ηw[-] 0
20 40 50 60 80
100
安全ピペッター接続
図 4-1 粘度計
液面の bd間の通過時
間を測定
f
39
43 密度測定 [目的] 本実験では水とエタノールの種々の組成の混合液体について密度を測定し分子間相互
作用について考察する [実験方法] 1)ピクノメーターの容積測定
図 4-2のピクノメーターの空の重量 wg を秤量する
ピクノメーターの蓋を取り外し
ピクノメーターを水で満たす
設定温度を 25として恒温槽 の電源を入れ恒温槽内の温 度が一定になるまで待つな お水温は恒温槽中の水銀温 度計から読む
恒温槽中に水を満たしたピク
ノメーターを入れる
約 10分間静置する
ピクノメーターに蓋をするこのときピクノメーターの容量
よりも余分の水は蓋の上部より排出される
ピクノメーターの外側を乾いた布で拭い秤量する(その重量を
wwg とする)
恒温槽の温度(25)における水の密度 dwgcm3(=099704gcm3)
より次式を用いてピクノメーターの容積を求める
w
w
dww
Vminus
= (44)
図 4-2 ピクノメーター
蓋
40
表 4-2 エチルアルコール水溶液の濃度と密度の測定結果(25) エチルアルコ
ール濃度[wt]
wrsquo[g] ww[g] V[cm3] w[g]
d[gcm3]
0 20 40 50 60 80
100
099704
エチルアルコール濃度[wt] 空のピクノメーターの重量 wrsquo[g] 水を入れたときのピクノメーターの重量 ww[g] ピクノメーターの体積 V[cm3] エタノール水溶液の入れたときのピクノメータの重さ w[g] エタノール水溶液の密度 d[gcm3]
容積 Vを求めたピクノメーターに混合溶液(調整済み)を入れてその重量 wgを秤量し次式で混合溶液の密度を求める
Vwwd minus
= (45)
エタノール濃度と密度 d の関係をグラフにプロットする
41
44 高分子溶液の粘度 [目的] 高分子溶液の粘度測定から分子量の粘度に与える影響について考察する [概要 ] オストワルド粘度計を用い種々の濃度のポリビニルアルコール(PVA ((-CH2CHOH-)n))水溶液の粘度を測定し粘度データよりポリビニルアルコールの分
子量を求める まず 05g100cc の濃度のポリビニルアルコール水溶液を調製する次にこれを原液
とし23 12 13 15の濃度の溶液を調製するこれらの溶液についてオストワルド粘度計を用いてそれぞれ流下時間を測定し相対粘度絶対粘度運動粘度を求め実験デ
ータより極限粘度[η]を求めるまた報告書には相対粘度絶対粘度運動粘度C
)ln( wηη
Cw
w-η
ηη vsポリビニルアルコール濃度の関係をそれぞれグラフにして提出する
[計算方法] エチルアルコール水溶液の粘度測定と同様の手法を用いて粘度の計算を行うなおポリビニルアルコール水溶液の密度はピクノメーターを用いて測定すること 表 4-3 ポリビニルアルコール水溶液の濃度密度相対粘度の関係 ポリビニルアルコール
濃度 [g100cc] 密度 d[gcm3] 相対粘度
η ηw[-] 05times(15) 05times(13) 05times(12) 05times(23)
05
42
[分子量の計算方法] 実験を行った結果以下のような粘度データを得られるとする実験データより極限粘度
を求めポリビニルアルコール(PVA)の分子量Mを決定せよ
PVA 水溶液濃度
C[g100cc]
相対粘度
ηηw[-]
絶対粘度
η[gcms]Cw
w-η
ηη
C)ln( wηη
05times(15) 1031 0008255 031 0305
05times(13) 039 0378
05times(12) 03 0289
05times(23) 0375 0353
05 0364 0334
ηw=8007times10-3 gcms 線状高分子の極限粘度[η]と分子量Mの関係は次式で与えられる [η]=KMα (46) ただしポリビニルアルコールの場合K=666times10-4α=064であるなお極限粘度[η]は次式で定義される
CC w
w
0
-][ limη
ηηη
rarr
= (47)
または
CC
)ln(][ w
0lim
ηηη
rarr
= (48)
よって濃度 CとCw
w-η
ηηまたは濃度 Cと
C)ln( wηη の関係をグラフ化し最小二乗法によ
り切片の値を求めると極限粘度[η]が決定される
Cw
w-η
ηηと C の関係より最小二乗法を用いて切片の値を決定すると(図 43 参照)切片=
03242傾き=00874となるよって極限粘度は以下のようになる[η]=03242同様
にC
)ln( wηη とcの関係より最小二乗法を用いて切片の値を決定する
(図 44参照)と切片=03249傾き=00256となり極限粘度は以下のようになる[η]=03249
Cw
w-η
ηηと Cの関係より決定した[η]=03242を用いてポリビニルアルコール(PVA)の
分子量 Mを計算する(46)式より以下のように PVAの分子量 Mを計算することができるM=([η]K)1α
=(03242(666times10-4))(1064)
=15811
43
y = 00874x + 03242
0
02
04
06
08
1
0 01 02 03 04 05 06 07
c[g100cc]
(η-ηw)(ηwc)
cw
w
η
ηηminus
極限粘度[η]
図 43 298Kにおける PVA濃度 CとCw
w-η
ηηの関係
y = 00256x + 03249
0
02
04
06
08
1
0 01 02 03 04 05 06 07
c[g100cc]
(ln(ηη
w))c
c)ln( wηη
極限粘度[η]
図 44 298Kにおける PVA濃度 CとC
)ln( wηη の関係
44
5 植物からの DNAの抽出 51 はじめに 分子レベルでの遺伝子の構造解明や遺伝子の発現に関する研究は近年急速に発展している
これら生命現象のしくみを分子レベルで解明しようという分子生物学の分野ではさまざま
な遺伝子の解析や応用方法が開発され我々の生活に身近なものになりつつある 本実験では初歩的な分子生物学に関する実験として植物(タマネギ)からの DNA の
抽出を行い抽出した遺伝子の電気泳動法による分離実験を試みる 52 試薬および器具 試薬 タマネギ(細胞中から遺伝子の抽出を行う) 台所用洗剤(洗剤中に含まれる界面活性剤には植物の細胞膜およびタンパク質を破壊す
る働きがある) 塩化ナトリウム(DNAは塩化ナトリウム水溶液に溶解し易い性質がある) エタノール(予め冷やしておくDNAはエタノールにほとんど溶解しない) 制限酵素(DNAを一定の部位で切断する働きを働きがある) TE緩衝液(pH緩衝剤が入った溶液) 器具 ビーカーミキサーフィルターメスシリンダー駒込ピペットガラス棒 マイクロピペット電気泳動装置ポラロイドカメラ 53 実験方法 1)タマネギは 1回の実験で半個のうち内側の半分程度を使用するタマネギ水 30ml台所用洗剤数滴をミキサー用ガラス容器に入れ40~60秒程度(固体状のタマネギがなくなる頃が目安)ミキサーにて混合する
2) 1)で作成した混合溶液をビーカーに移し約5g程度の塩化ナトリウムを加えガラス棒で静かに攪拌する粘性の大きな溶液が得られる
3) 2)で作成した溶液をフィルターを用いて濾過し濾液を回収する 4) 濾液の約2倍程度の量の冷エタノールをビーカーの壁伝いに静かに注ぐ 5) ビーカーを揺するとエタノール層に白くふわふわしたものが浮いてくるこれが DNAであるガラス棒で DNAを巻き取りシャーレ上にて DNAを回収する顕微鏡を用いて回収した DNAの状態を観察する
6)マイクロチューブ(容量 15ml)中に用意した 70エタノールを 8 分目程度まで注ぐ5)にて回収された DNAをマイクロピペットを用いて70エタノールの入ったマイクロチューブ中に移す軽く混ぜることによりDNA から不要な物質を洗い流す遠心分離してDNA をマイクロチューブの底に沈めた後溶液を捨てて DNA を乾かす乾いたらTE緩衝溶液を 1ml加えて放置するDNAの溶液が得られる
54 電気泳動装置による DNAの観察
本実験は職員と一緒に行うこと 実験を行う人はビニール手袋をすること 1) 抽出した DNAを電気泳動装置で観察するマイクロピペットを用いて以下のように調製した DNAの混合溶液を調製する(いずれの溶液も調製済)
45
2) マイクロピペットを用いてアガロースゲルの試料を流し込む穴(ウェル)に1)にて調製した溶液 Aおよび Bを注ぎ込む注入量は20μℓとする電気泳動装置のスイッチを入れて100Vの電流を流しアガロースゲル内にて DNAを電気泳動させる
3) 試料に予め加えられておいた青色の色素が 7 分目程度まで進んだら電気泳動を中止する(約 30分程度)
4) (ここでの作業は職員が行う) アガロースゲルを取り出し染色液に浸す染色後ゲルを取り出しポラロイドカメラで
DNAの泳動状態を撮影する
+ -
アガロースゲル
試料を流し込む穴(ウェル)
図 51 電気泳動装置
6 5 4 3 2 1
図 52 DNAの電気泳動写真の一例
55 電気泳動装置の原理 電気泳動装置の原理図を以下に示すアガロースゲル(寒天から不純物を除いたもの)中
に DNAをセットし電流を流すとDNAは電流の向きとは逆にマイナスからプラス方向
調製済 溶液 A(制限酵素なし) 水 11μℓ 10timesH Buffer 2microℓ 植物 DNA 5μℓ
調製済 溶液 B(制限酵素 Eco RI入り) 水 11μℓ 10timesH Buffer 2microℓ 植物 DNA 5μℓ 制限酵素 2μℓ
1 DNA(タマネギ)+制限酵素 2 DNA(タマネギ)+制限酵素 3 DNA(タマネギ) 4 λ-DNA(大腸菌)+制限酵素 5 λ-DNA(大腸菌) 6 サイズマーカー
500bp
46
に動く(このことを電気泳動という)これはDNA のリン酸部分が負に帯電しているためでありまたDNAはその長さにより泳動距離が異なる(短い遺伝子ほど長く泳動する)電気泳動ではこの性質を利用してDNAを大きさごとに分離することができる
塩基対数によってDNAを分離
EtBr (蛍光試薬)DNAの二本鎖内に入り込む
発光
UVλ=302nm
励起
分離後のアガロースゲルをエチジウムブロマイド(EtBr)溶液に浸す
DNAを含んだ溶液
アガロースゲル
リン酸部分が負に帯電
塩基 (ATGC)-
+
カメラで撮影
電圧
DNA構成成分(dNTPs)
バンドが明る
DNA量が
バンド(DNAの存在)
図 53 電気泳動の原理
56 制限酵素とは DNA は4 種類のヌクレオチド(GATC)が不規則につながってできている制限酵素はDNAの特定のヌクレオチドが並んでいる部分を切断する制限酵素には様々な種類がありEco RI(エコアールワン)と呼ばれる酵素は「GAATTC」といった並びの部分だけを切断することができる
GAATTC
CTTAAG
制限酵素
Eco RI
AAGCTT
TTCGAA
制限酵素
Hin dIII
図 54 制限酵素による DNAの切断
レポートについて 1 実験方法および実験結果の整理方法については指針書を参考にすること 2 実験結果については電気泳動の結果について考察すること(制限酵素の影響などにつ
いてまとめてください)
47
6 染色実験
61 はじめに
現在私達の身の周りでは様々な染料が使われている例えばT シャツやジーンズな
どの衣服は橙黄赤青など様々な色に染められている他にも私達が気付かないと
ころで多くの染色された製品を使用しているそこで本実験では高校の化学で学んだ
アゾ染料を合成してみるアゾ染料はアニリンを原料として作られているアニリンはベ
ンゼン環にアミノ基(-NH2)がついたものであるアニリンは無色の液体で水に溶けにく
くアンモニアより弱い塩基性を示すまたさらし粉(CaClO(ClO)H2O)水溶液を加えると
赤紫色を呈するこの呈色反応はアニリン特有のものであるので検出反応に用いられる
このアニリンを出発物質としてアゾ染料を合成してみる
62 試薬および使用器具
【試薬】 ①05moll 水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液
②2-ナフトール ③フェノール ④6moll 塩酸
⑤亜硝酸ナトリウム ⑥アニリン ⑦氷
【器具類】 ①電子天秤 ②50mℓビーカー ③100mℓビーカー
④ガラス棒 ⑤布(ガーゼなど) ⑥ピンセット
⑦ポリ手袋 ⑧ドライヤー ⑨シャーレ
10駒込ピペット(10ml ガラス製)
11駒込ピペット(1ml プラスチック製)
63 実験方法
1) 50mℓビーカーの中に 05molℓ水酸化ナトリウム水溶液 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回
NaOH 水溶液を分取するほぼ 20 mℓ分取できれば可)と 2-ナフトールを約 01g 入れ
よくかき混ぜる調製した溶液の中に布をつけその布はガラス棒でしぼってから(布
をガラス棒ですくいあげればよい)シャーレに広げる温度の異なる条件下(常温およ
び低温)で染料の合成実験を行うため布は最低 2枚調製した溶液と接触させそれ
ぞれ別々のシャーレ(低温用および常温用)に広げる
2) 新しいビーカーに水を約 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回分取)と 6molℓ塩酸約 4mℓ(10m
ℓ駒込ピペットで目分量で可)さらにアニリン約 1mℓ(プラスチック製 1 mℓ駒込ピペッ
ト)を入れてよくかき混ぜる染料の合成を常温および低温下で行うためこの溶液を
2つ調整する
低温下で反応させる溶液は恒温槽で 10~15 分ほどよく冷やした後亜硝酸ナトリウ
ム 05g を加えてよくかき混ぜる
常温下で反応させる溶液には冷却作業を行わずに亜硝酸ナトリウム 05g を加えて
よくかき混ぜる
3) 2)でつくった水溶液をシャーレに広げた布に注ぎ生成される染料を布によく染み
込ませ5分程放置する
4) 色の付いた布を取り出してポリ手袋をした手できれいに水洗いをし乾燥させる
48
5) 色差計を用いて乾燥した布の Lab(L明度aおよび b色度)を測定する
2)で作った溶液は5以下では無色の溶液ですが5以上になると淡い黄色になりま
す
【解説】
アゾ染料はアゾ基(-N=N-)を持っていてこのアゾ基によって鮮やかな橙色を呈色し
ます今回合成したアゾ染料は図の 1-フェニルアゾ-2-ナフトールです意外かもしれ
ませんが指示薬として使われているフェノールフタレインもアゾ化合物ですフェノール
フタレインは pH の変化によって色が出てきす染料の中でも最初は無色のものもありますが
温度を変化させたり酸性やアルカリ性にすると色が出てきます
ベンゼン ニトロベンゼン
N2Cl
ニトロ化 濃硫酸(濃硝酸)
還元反応 濃塩酸
(Sn又は Fe)
アニリン塩酸塩
遊離反応 NaOH
アニリン塩酸塩に強塩基を反応させる
と弱塩基であるアニリンが遊離する
氷冷+亜硝酸ナトリウム アニリン
塩酸
ジアゾ化
塩化ベンゼンジアゾニウム
塩化ベンゼンジアゾニウム
は熱によって窒素とフェノー
ルに分解される
カップリング
C10H7ONa (ナトリウム 2-ナフトキシド)
O
N =
1-フェニルアゾ 2-ナフトール
NH3Cl NH2
49
7 ガスクロマトグラフ質量分析計による茶葉中のカフェインの分析 71 はじめに ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)は極めて低い濃度の化学物質の同定や未知物質の構造決定に極めて強力な分析機器の一つであるGCMSを用いるとサンプルの中に含まれているある成分の分子構造(カフェインの分子構造を図 71に示す)やその量が分かりますもちろん分析機器ですので測定できる物質対象となる系や測定条件にはある
程度の制約があります混合物質を分離するガスクロマトグラフ(Gas ChromatographGC)と分離された成分(物質)を分析(構造決定と濃度測定)する質量分析計(Mass SpectrometerMS)を組み合わせた装置であるこの装置は有機化学生化学環境化学などの多くの分野で非常に多用されている例えば極めて低い濃度でも生体へ強い影響が懸念されるダイ
オキシン類などの土壌や河川の水中での含有率の決定や食品や医薬品中の微量成分の決定
にも利用されている 一方日本人に長い間親しまれてきた緑茶が近年産業界や医学
界で注目されている茶葉にはカフェイン(分子構造図 71)カテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドなどの有用成分が多く含まれておりその効能が注目されている 本実験では茶葉中に含まれるカフェインに対してGCMSを用いて分析する茶葉中には種々の物質が含まれておりGCMS分析を容易にするため前処理として超臨界二酸化炭素抽出(4015MPa程度の高圧力の二酸化炭素を溶剤として利用)により茶葉からカフェインの抽出を行いそのサンプルを GCMSにて分析する
図 71 カフェインの分子構造 図 72 物質の分析 個々の物質や装置についてはインターネットにより下記のWebサイトのフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』などにより調べるとよいカフェイン(caffeine)はアルカロイドの一種プリン環を持つプリンアルカロイドの一種でコーヒー類に含まれることか
らこの名がある化学名は137-トリメチルキサンチン(C8H10N4O2) コーヒーコーラ緑茶紅茶ガラナココアなどに含まれる(量は緑茶が一番多い)結晶は一水和物(C8H10N4O2bullH2O)もしくは無水物(無水カフェインC8H10N4O2)として得られ
る白色の針状または六角柱状結晶で匂いはなく味は苦い融点は 238昇華性がある出典フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』httpwwwwikipediaorg 装置「GCMS」httpwwwanshimadzucojpproductsgcmsqp2010htm (島津) 「超臨界抽出装置」httpwwwkagakucomjasco39-49html (日本分光)
50
レポート課題 1茶葉中に含まれるカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドの中から3つの物質を選びその物質について調べた結果を A4 レポート用紙2枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
2GCMS についてA4 レポート用紙1枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
3与えられたサンプルは茶葉1gから抽出されたのである実験結果よりもとの茶葉
1g中に含まれるカフェインの量を推算し計算式とあわせて示すこと 72 原理および装置 実験で使用する島津製の GCMS装置の全体図を図 73に原理の概略を図 74に示す
1
23
4
5
67 8
9
10
キャリアーガス
試料物質
1ボンベ(He)2圧力計3マイクロシリンジ4サンプラー5試料導入部6分離カラム
7セパレーター8イオン化室9磁石10電子増倍管11記録計
11
図 74 ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)の概略図
サンプルフォルダー
51
GCMS 装置は分離部である図中の 1~6 のガスクロマトグラフ(GC)と7~11 の検出部である質量分析計(MS)から構成される 3のマイクロシリンジを用いて試料を GCMSに導入する導入された試料は5試料導入部でガス化され6分離カラムに導入される分離カラムには吸着剤が充填されおり混合物の試料を導入した場合各物質と吸着剤との
親和性の違いにより各物質の分離カラムから排出されるタイミングは異なる分離カラム
を排出された試料は8イオン化室でイオン化され10電子倍増管にて検出される アセトンに溶解したカフェインの GCMSによる分析結果の一例を以下に示す図 75にク
ロマトグラム図 76にカフェインのピークのマススペクトルを示す
図 75 GCMSにより得られたクロマトグラム
横軸がリテンションタイムで縦軸がピーク強度を表す
図 76 カフェインのマススペクトルとカフェイン(分子量MW=194)の構造
(図 75中のリテンションタイム 126min付近のピークに起因するマススペクトル) 茶葉中にはカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイド以外にも繊維であるセルロースなど多くの物質が含まれているため茶葉そのものを
そのままサンプルとしてGCMSで分析することは困難であるセルロースなどの分子量の大きな物質はカラムに詰まってしまい分析できないそこで今回は超臨界二酸化炭素
による抽出により主にカフェインを他の物質と分離抽出した通常よく利用されるアセ
トン抽出(アセトンに茶葉を浸し特定の成分を抽出する)ではカフェイン以外にも多く
の物質が抽出されるため図 75 のような単独のピークを得ることは難しく複数のピークがクロマトグラムに見られるこのサンプル(この場合茶葉からの抽出物)にはカフェ
イン以外の不純物は少なかったがガスクロマトグラフの分離カラムによりさらにそれ
らの混合物が精度よく分離されるクロマトグラムのピークはそれらサンプル中に含まれ
ていた個々の物質を表しているクロマトグラムのピークを選択することで分子構造解析
したい物質を選んだことになる選択したクロマトグラムのピークの表している物質(ここ
ではカフェイン)に対応するマススペクトルが図 76 に表示されているマススペクトル
52
で横軸がその成分(ここではカフェイン)分子を構成している原子の原子量で縦軸がそ
の量を表しているのでマススペクトルから分子構造を解析するためにコンピュータ内
に蓄えられた物質ごとのマススペクトルデータと今回測定したマススペクトル(分子内に含
まれている各原子の数)を比較することで測定したサンプル中のクロマトピークを選択し
た分子がどのような原子をどれだけ含んだ分子であったかがわかりそれからその物質
がどのような分子構造の物質である可能性が高いかをコンピュータが検索し結果を示す 73 実験サンプルの設置と GCMS装置の操作方法 実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS装置のサンプルフォルダ
ー(図 73)にセットするこのサンプルは茶葉 1gを 50ccの高圧セルにて超臨界二酸化炭素を利用して4015MPa2時間接触の条件で抽出した固体を10gのアセトンに溶かしたものである またコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に装置および装置制
御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 本実験で使用する GCMS の操作は全てコンピュータのモニター上で GCMS の解析プログラムソフトを使用することで行うコンピュータの操作方法を以下に示す なおコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS 装置のサンプルフォルダー(図 73)にセットするまた装置および装置制御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 1)パソコンのデスクトップ上のアイコン「GCMS 分析」をクリックすると以下のようにGCMS制御プログラムを起動するその後「OK」ボタンをクリックする
図 77 GCMD分析用ソフトウェア「GCMS分析」の起動
まず「GC-MS分析」をクリック
「OK」ボタンをクリック
53
2)制御プログラムが起動されパソコンと GCMSの接続が開始される
図 78 「GCMS分析」の接続確認画面 3)GCMSとパソコンの接続が完了すると以下のような画面が表示される
図 79 「GCMS分析」操作画面
4)マススペクトルによる分子構造の解析 サンプル(この場合茶葉からの抽出物)には多くの物質が混じり合っていたがガス
クロマトグラフの分離カラムによりそれらの混合物が精度よく分離されるクロマトグラ
ムのピークはそれらサンプル中に含まれていた個々の物質を表しているクロマトグラム
のピークを選択することで分子構造解析したい物質を選んだことになる選択したクロマ
トグラムのピークの表している物質(ここではカフェイン)に対応するマススペクトルを選
択するマススペクトルは横軸が原子量で縦軸がその量を表しているのでマススペク
トルから分子構造を解析するために「定性処理」を行う シミラリティ検索結果が表示され分析により得られたスペクトルと類似のスペクトルを有
する物質の一覧が表示される上部に表示される物質ほどスペクトルが一致していること
を示す
接続状況が表示される
「トップへ」
をクリック
54
図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果
図 711 表示スペクトルのシミラリティ検索結果 10)図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果の印刷 「レポート(R)」をクリックし「検索結果(R)」をクリックすると検索結果が印刷される
GC-MS 分析で得られたマスス
ペクトル
データベース中
のマススペクト
ル
55
参考資料 生理活性物質の精製 カフェインの利尿作用のように生物活動に影響を与える物質を生理活性物質といいます
天然物には生理活性物質を多く含むものがあります一般に天然物は多くの成分を含ん
でおり特定の生理活性物質を分離抽出するには種々の分離技術が必要ですまた生
理活性物質には60以上の温度でその生理活性を失う(失活)ものや溶剤として広く用いられているクロロホルムなどの有機溶剤中で失活するものが多いそこでこれら生理活性
物質の分離精製技術の開発が望まれており30~60程度のマイルドな温度条件で操作できる二酸化炭素を機能性溶媒として利用する超臨界抽出も有効な分離技術として注目されて
いる超臨界二酸化炭素は気体と液体の中間の性質を持ち物質の分離に役立っています 臨界点付近の高密度気体は超臨界ガスまたは超臨界流体と呼ばれ臨界圧力前後でそ
の溶解能力が著しく変化することから工業的にも種々の分野で利用されています一例と
して超臨界二酸化炭素(SC-CO2)によるコーヒー豆からのカフェインの抽出プロセス(a)
ならびに超臨界二酸化炭素に対するカフェインの溶解度(b)を図に示します図(c)に示す
ように固体のカフェインがガスである超臨界二酸化炭素に溶解します
このように超臨界二酸化炭素を用いた技術はコーヒー豆からのカフェインの抽出プロ
ポリスからの生理活性物質の抽出に利用されています
図 超臨界二酸化炭素抽出を用いたコーヒー豆からのカフェインの抽出
56
付表 最小二乗法について 直線で近似する場合 f (x) = a0 + a1x (A1-1) 式(A1-1)のように近似させるとする測定値 yiとの残差を eiとすると式(A1-2)のようになる ei = yi - f (xi) = yi - ( a0 + a1xi ) (A1-2) ここで式(A1-2)の両辺を二乗してその i に関する総和をとりその値を S とすると次式となる
sumsum==
+minus==n
iii
n
ii xaayeS
1
210
1
2 )( (A1-3)
S を最小化するような a0a1を求める式(A1-3)を a0a1について偏微分すると次式とな
る
sum=
+minuspartpart
=partpart n
iii xaay
aaS
1
210
00)( sum
=
+minusminus=n
iii xaay
110 )(2 (A1-4)
同様にa1について編微分すると次式のようになる
sum=
+minusminus=partpart n
iiii xxaay
aS
110
1])([2 (A1-5)
Sが最小となる時は次式が同時に満たされる時である
00=
partpartaS
01=
partpartaS
(A1-6)
よって誤差が最小となる a0a1を求めるためには式(A1-6)を連立して解けばよい
sumsumsum===
+=n
ii
n
i
n
ii xaay
111
10 1 (A1-7)
sumsumsum===
+=n
ii
n
ii
n
iii xaxaxy
1
2
11
10 (A1-8)
式(A1-7)と式(A1-8)を a0a1を変数とみなし連立して解くと次式を得る
n組のデータ(xiyi)(i=12hellipn)に対して回帰直線 y= a0 + a1x を最小二乗法で求めて出力しデータ番号 iデータ yi直線で推定した値 )( ii bxay += および残差
iii yy minus=ε を出力するようなプログラムをつくりたい基礎式を導出せよ (ヒント残差の二乗の和が最小になるように係数 a0a1)を定めるのが最小二乗法
である)
57
sumsum
sumsumsumsum
==
====
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
n
ii
n
ii
xxn
xxyyxa
1
2
1
2
1111
2
0
)(
))(())(( (A1-9)
sumsum
sumsumsum
==
===
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
xxn
yxxyna
1
2
1
2
1111
)(
))(()( (A1-10)
よって式(A1-9)(A1-10)を用いれば最も誤差を小さくするような直線 y = a0 + a1x が求められる
y=a1x+a0 にて近似
誤差 ei
x
y
誤差が最小になる関数(直線 y=a1x+a0の場合)
図1 最小二乗による近似
誤差の和Sが最小
S
a0
a1
直線 y=a1x+a0 の近似
誤差の全体の和はS=Σei=Σyi-(a1xi+a0)
Sは変曲点にて最小値を示すすなわち(partSparta0)=0 (partSparta1)=0
図2 a0a1とSの関係
11
角フラスコ(5)2mlホ-ルピペット(2)5mlホ-ルピペット(2)10mlホ-ルピペット(1)100ml ホ-ルピペット(1)50ml ビュレット(1)電子天秤直示天秤(注( )内の数値は個数を表す) [試薬] N10N100-水酸化ナトリウム(NaOH)N10-塩酸(HCl)フェノ-ルフタレイン酢酸活性炭 1)2)および 7)については予め調整済み8)は2日目に実験する 1)酢酸 28mℓ をメスシリンダにて採集しこれを 1000mℓ メスフラスコに入れて蒸留水を加えて 1000mℓとしN2-酢酸を調整した(調整済み)
2)N2-酢酸より順次溶液 500mℓをメスシリンダに取り1000mℓメスフラスコを用いて
N4N8N16N32酢酸溶液を調整し500mℓ試薬瓶保持した 3)共栓三角フラスコ(100mℓ)の空重量を直示天秤にて正確に測定したこれに電子天秤にて測定した活性炭試料約 1gを入れて再び直示天秤にてその重量を正確に測り前後の差から投入した活性炭量を知る
4)活性炭を入れた各々の三角フラスコに各濃度の酢酸溶液 100mℓを正確にホ-ルピペットを用いて入れた(このとき気泡が混入しないように注意した)
5)上記に準備した三角フラスコに栓をしてこれらを所定の温度に設定した恒温槽に浸し
た浸した三角フラスコは約 20分間隔で気泡が混入しないように注意して振り混ぜるこの操作を約 2時間行った
6)次に滴定に用いて約 N10-N100-水酸化ナトリウム溶液 1000mℓを調整し濃度既知の塩酸溶液を用いてその正確な濃度を決定しておく(調整済み)
7)調整された酢酸溶液の各々を6)において標定した N10-水酸化ナトリウム水溶液にフェノ-ルフタレインを指示薬として滴定し各酢酸溶液の濃度を求めた(標定に要する
酢酸量は N2-と N4-の場合は 2mℓN8-と N16-の場合は 5mℓN32では 5mℓをホ-ルピペットで採集するただしN32についての滴定はN100水酸化ナトリウムで滴定した(各濃度について 3回ずつ滴定する)
注)ビュレットは各班に 2 本ある濃度の高い N2 酢酸から測定するので両方のビュレットにはN10-水酸化ナトリウム水溶液を入れて開始する
最重要注意事項
滴定を行う場合安全確保のため必ず安全メガネを着用すること 8)次に各試料溶液を一つずつ手早くろ過しろ過液を N10-水酸化ナトリウムで滴定して平衡濃度を決定した(標定に要する酢酸量は N2-と N4-の場合は 2mℓN8-とN16-の場合は 5mℓN32-では 5mℓをホ-ルピペットで採集したただしN32 ーの場合は N100 ー水酸化ナトリウムで滴定した)
12
1) 酢酸溶液の濃度の測定(1日目レポートにこの図は不要) 酢酸 28mℓをメスシリンダにて採集しこれを 1000mℓメスフラスコに入れて蒸留水を加えて 1000mℓとしN2-酢酸を調整する
N2-酢酸より順次溶液500mℓをメスシリンダに取り1000mℓメスフラスコを用いて N4-N8-N16-N32-酢酸溶液を調整し500mℓ試薬瓶に保持する
滴定用のビュレットを N10-N100-水酸化 ナトリウム溶液で共洗いする(3回)
ビーカーに酢酸溶液を少量入れて共洗いを行う (3回)試薬瓶からビーカーに酢酸溶液を滴定に 必要な量だけ取り出す
ホールピペットをビーカーの酢酸溶液を 使用して共洗いを行う(3回)
滴定用の三角フラスコに酢酸溶液を分取する
滴定(滴定は同じ濃度の酢酸溶液を 3回 以上滴定して平均する)
酢酸溶液の濃度計算
滴定による酢酸濃度の決定
1000
1000vfNvx timestimes=times (33)
x酢酸の仕込み液濃度 [molℓ] v酢酸の仕込み液の分取量 [mℓ] NNaOHの規定度 [N] fNaOHのファクター [-] vrsquoNaOHの滴定量 [mℓ] 注)酢酸は 1価の酸なので 1molℓ=1N(1規定)
13
式(33)の使用例 酢酸の仕込み液の分取量 v =2 mℓ NaOHの規定度 N = 01 N NaOHのファクター f = 0998 NaOHの滴定量 vrsquo = 985 mℓ である場合 式(33)を利用して酢酸の仕込み液濃度 x[molℓ]を求める
1000
1000vfNvx timestimes=times
vvfNx
timestimes=
49202859998010 =timestimes= molℓ (この xが濃度 C または C0 です)
2)酢酸溶液と活性炭の接触のフローチャート(1日目) 共栓三角フラスコ(100mℓ)の空重量を 直示天秤にて正確に測定する
電子天秤にて活性炭試料約 1g測る
共栓三角フラスコ(100mℓ)に 活性炭試料約 1gを入れる
活性炭試料約 1gを入れた 共栓三角フラスコ(100mℓ) を直示天秤にてその重量を測る
共栓三角フラスコ(100mℓ)の前後の 差から投入した活性炭量を計算する
活性炭を入れた各々の三角フラスコに 各濃度の酢酸溶液 100mℓを正確にホ-ルピペットを用いて入れる(このとき 気泡が混入しないように注意する)
三角フラスコに栓をしてこれらを所定の温度に 設定した恒温槽に浸す浸した三角フラスコは 約 20分間隔で気泡が混入しないように注意して 振り混ぜるこの操作を約 2時間行う
14
3)吸着量の測定(2日目) 恒温槽の温度を測る
恒温槽から三角フラスコを一つずつ取り出す
各試料溶液を一つずつ手早くろ過する
活性炭
ろ液を滴定して平衡濃度を決定する
回収
吸着量の計算
Langmuirの吸着等温式Freundlich式のパラメータの決定
グラフの作成
吸着量の計算10001000 times
minus=
wCC
n (34)
n吸着量 [molg] C0 酢酸水溶液中の酢酸の濃度 [molℓ] C ろ液中の酢酸の濃度 [molℓ] w 活性炭の量 [g]
35 実験結果のまとめ方 実験結果は実験レポートを書く場合に考察と並んで重要な部分ですので主な注意事
項をここで説明しておきます グラフの作成n vs C nC vs C ln n vs ln C の 3つのグラフの作成 配布された Excel ファイルを利用し下図のような図を作成してみましょう
15
レポートの間違いやすい場所 ①表や図を示す場合次の例のように文章でもその旨を示す [実験結果] 共栓付三角フラスコに活性炭約 1g入れた試料の重量 w[g]を Table1に示す
Table1 調整酢酸濃度を入れる活性炭試料の重量 w [g]
酢酸規定度[N]
活性炭試料の質量w [g]
12 10300
14 10001
18 10126
116 10011
132 10109 酢酸(1)-水(2)-活性炭(3)の 12における吸着平衡の結果を Table 6および Fig1に示すただし活性炭 1gに吸着された酢酸のモル数 n[molg]は次式より求めた
( )10001001
0 timestimesminus=w
CCn b
C0仕込み液中の酢酸濃度 [molℓ] Cbバルク相中の酢酸濃度 [molℓ] w活性炭試料の質量 [g] n吸着量 [molg]
例えばCb=04621C0=04894w=10300の時は次のように計算できる
( ) 026501000100
0300114621048940 =timestimesminus=n
Table6 酢酸(1)-水(2)-活性炭(3)の 12における吸着平衡
吸着された溶質のモル数n[molg]
バルク相中の濃度Cb[moll]
00205 04621
00175 0241
00139 01139
00105 00519
00081 00243 ②得られた図や表の解釈(読者にそれらから読み取ってもらいたい事柄)の説明文を次の
例のように文章で記述する数字や図だけ示して読者に「理解しろ」というようなレポー
トではよくありません Table 6および Fig1よりバルク相中の酢酸濃度 Cbの増加にともない吸着量 nも増加することがわかったまた吸着量 n の値は酢酸濃度 Cbの増加にともない n=に漸近することがわかる
グラフ(Fig)は次ペ
ージに掲載すること
グラフや表の後にはそれらの結果より得られた知見を文章でも
記入すること
16
36 エクセルによる吸着データの整理法 注コンピュータの画面はWindowsXP上での操作になっています他の OS(Windows98 2000
NT)搭載のパソコンでも同様の作業が可能です) 先ほど問1で説明したように溶液濃度の濃度変化から吸着量 nを求めました実験では吸着後の水溶液中の酢酸の濃度 Cと吸着量 nの関係を各濃度の溶液(5種類)について測定しその値を計算します このようなデータの整理には表計算ソフトであるマイクロソフト社の Excelが便利です
Excel の起動方法はそのソフトがインストール(設定)されているコンピュータにより若干方法が異なることがありますがほとんど同じですここでは福岡大学の総合情報処理
センターのコンピュータの設定に従って説明します 表計算をしてみましょう セルとは セルというのは最小単位の四角のことです例えば「(Aの1)またはA1というセルセル
B1」のようにセルという言葉を使いますセル A1に1という数字を入れてみましょうセルA1をクリックしてキーボードから「1」と入力しキーボードの「Enter」キーを押します
図 5 Excelの入力例1 図 6 Excelの入力例2
次にセル B1に「5」という数字を入れましょう次にセル C1にセル A1と B1に記入された数値の和を表示させてみましょう 下の図のようにセル C1をクリックします上の「 fx 」と書かれた右のボックス(何かを書くところに)「 =A1+B1 」と書きましょうそして Enterを押すとセル C1に 6と表示されます
図 Excelを用いた関数計算 実験では吸着後の水溶液中の酢酸の濃度 Cと吸着量 nの関係を各濃度の溶液(5種類)について測定しましたこのデータに対してExcelを用いて表計算してみましょうまず先ほど記述したセル A1~A3は「Delete」(デリート)キーで値を削除しましょう
17
次にセル A5~A9に活性炭と接触する前の酢酸水溶液の初濃度 C0[moldm3]セル
B5~B9に活性炭と接触後分離した酢酸水溶液の濃度 C[moldm3]セル E5~E9に活性炭の質量 W[g]をキーボードから入力します作成した一例を次に示します
図 8 Excelによる吸着量nの計算 ここで1gの活性炭に吸着された酢酸の物質量n [mol]を式 (4)より計算できるのでセル C 5~C9に次の関数式を記述します式の内容としては
)( 0CCWVn minusminus=
となるように記述するので実際の Excelの関数としては次のように行います セル C 5をクリックし関数ボックス(fxの右)に「=(A5 ndash B5)01E5」と記述(半角または直接入力形式で)し「Enter」キーを押し確定しますこの関数はフィルハンドルを利用してセル C 6~C9にコピーしますただし実験で溶液は 100cm3使用しましたが
溶液の濃度 C が[moldm3]の単位ですので100cm3=01dm3 となり関数式の中では
V=01 dm3としています なおグラフの記述方法やフィルハンドルの使用方法については化学工学プログラミ
ングなどの補助資料を参考にして下さいまた実験の際に配布した Excel ファイル(ファイル名ad_graxls)を使用すると実験データの理論的な解析も容易にできますので試してみましょうExcelファイル(ファイル名)「ad_graxls」の使用方法は次節で説明します 36 実験結果の考察方法 (吸着実験について) 実験結果の考察方法は種々の方法がありますがここでは一例として理論と比較する
方法を示します実験結果として下図(左)のようなグラフができましたこのような実
験結果に対して理論的な考察を行ってみましょうここでは次節で説明するラングミュ
ア(Langmuir)の単分子吸着モデルで計算した理論線と実験と比較したものを下図右に示しますこの図を作る方法は次節で説明しますレポートの考察の部分はラングミュア
(Langmuir)の単分子吸着モデルの式の導出から書いて下さい 理論を作る場合幾つかの仮定をしますがその理論が多くの実験結果をうまく説明でき
ている場合その仮定がある程度妥当なものであったことがわかります指針書に書いてあ
った以外の理論についても興味があれいばためしてみましょう
セル C5をクリックし関数ボックス( fx の右)に「=(A5 ndash B5)01E5」と記述(半角または直接入力
形式で)します
18
ラングミュア(Langmuir)の単分子吸着モデルを用いて理論値を計算するには配布され
た Excelファイル(ファイル名)「ad_graxls」を使用すると便利ですその使用方法を以下に示します配布プログラムは化学工学プログラミングの講義の場合と同様に総合情報処
理センターの共通領域にあります各自コピーして使用して下さいコピーするには化
学工学プログラミングの講義の場合と同様にコピーしようとするファイルを共通領域から
自分の使用しているコンピュータのデスクトップにドラッグドロップします共通領域で
ファイルを開くとファイルの消去などで他の人が使えなくなりますので共通領域でファイ
ルをダブルクリックしないようにして下さい誤って共通領域でファイルをダブルクリック
した場合はそのファイルを閉じるボタンをクリックし閉じて下さい 各自のコンピュータに保存した Excelのファイル(ファイル名ad_graxls)をダブルクリ
ックして開きます自宅へ持ち帰る場合各自のフラッシュメモリーやフロッピーディスク
を使用しまたはメールを使用して添付ファイルで送信できます各自のフラッシュメモ
リーやフロッピーディスクに保存してあるファイルを再編集する場合はフラッシュメモリ
ーやフロッピーディスクをコンピュータの USB 端子またはフロッピーディスクドライブに挿入します次にデスクトップ上にあるマイコンピュータのアイコンをダブルクリックし
ます もしデスクトップ上に上のアイコンが無ければ画
面左下の「スタート」ボタンからマイコンピュータをク
リックしてくださいすると次のような画面が立ち上が
ります
ラングミュア(Langmuir)の単分子吸着モデルで計算した
理論線
19
その中からフラッシュメモリーの場合は「リムーバブルディスク」をフロッピーディ
スクの場合は「35インチ FD」のアイコンをダブルクリックしてくださいファイルが保存されていれば次の画面が出てきます
この画面の中の「ad_graxls」ファイルをデスクト
ップにコピーしますまず「ad_graxls」ファイルを左クリックしますこの時クリックした指はは
ずさないようにしますその状態のままデスクトッ
プまでファイルを移動させますそしてデスクト
ップ上の任意の場所でクリックした指をはずします
これでデスクトップ上に「ad_graxls」のファイルがコピーされましたのでデスクトップにコピーさ
れたファイルをダブルクリックして開きますコピ
ー操作が上手くいかなかった場合もう一度移動の操作を行ってください
必ずデスクトップにコピーしてから開く操作を行って下さいフロッピーディスクから直接
開いて操作を行った場合正しく保存されない可能性があります 「ad_graxls」のファイルを開くと次のような画面が立ち上がりますもし画面が違う場合は画面の下部にある「吸着データ」のタグ をクリックしてくださいこの画面
でデータの処理や計算を行いますでは実際の操作に入る前に予めこのファイルに名前
を付けて保存しておきますまずExcelの画面のツールバー「ファイル」から「名前を付けて保存」をクリックします下のような画面が起動します
20
ファイルの保存先を変えたい場合画面上部のボタンをクリックし保存先にデスクトッ
プを選択します次にファイル名の部分に各自ファイル名を入力しますファイル名は何
でも良いですが分かり易い名前にしておくとファイルの管理がやり易くなります日付や
数字を入れると同名のファイルをいくつも管理する場合に便利ですここでは「吸着実験デ
ータ整理 4月 01」とし「保存」ボタンをクリックします
ファイル名変更後Excelの画面上部のタイトルバーのタイトルが先ほどの名前(上の図とは異なります)になっていることを確認してください
この操作を行うことによって元のデータである「ad_graxls」を変更してしまう心配がなくなります元のデータである「ad_graxls」はファイルが破損しまたは間違った操作の結果を誤って保存してしまった場合などの補助ファイルとなりますので大切に保管しておいて
下さい今後配布するデータは先ほど説明した手順で名前を変えて保存し元のデータに
直接変更を加えないようにして下さい ここから実際の作業に入ります初期状態では模擬のデータが入力されています入力
データは予め計算しておいた酢酸濃度Cb[moll](濃度を Cと表示している場合もあります)と活性炭吸着量 n[molg]になります下の画面の丸で囲んだ部分がそれぞれの値でBCカラム(列)の 4~9行には数値が入力されています関数ではありませんこのデータを利用して実際のデータ解析を行ってみましょう下記のように行うと幾つかのグラフが
現れ実験データに対してラングミアーの単分子吸着を仮定したモデルを用いて精度よ
く計算線が描けることがわかります 今回はCbnの値を入力する必要はありませんExcelが自動的に計算を行って結果を表示するようになっていますつ
まりセル D5に「=B5C5」と関数を入力しこの関数に対してフィルハンド
ルを利用してセル D6~D9へコピーし
ファイルの保存先を変えたい場合画面
上部のボタンをクリックし保存先に
デスクトップを選択します
変更するファイル名はここをクリッ
クして書き換えます
名前を変更したらここをク
リックして保存します
21
まています 次に酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着量 n[molg]の関係および酢酸濃度 Cb[molL]と Cbn[gL]の関係をグラフ化します今回は自動的にグラフが作成されるようになっていますので複
雑な操作は必要ありません ここではデータに対してそれを精度よく表現する近似式をグラフ上に描きその関数
を数値として求める方法を Excelで練習してみましょう
グラフを表示させるには画面の下にある「Graph1」もしくは「Graph2」のタグ
をクリックします「Graph1」には酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着量n[molg]の関係のグラフが「Graph2」には酢酸濃度 Cb[molL]と Cbn[gL]の関係のグラフが表示されます「Graph2」はLangmuir の等温吸着式による相関を表したもので横軸に酢酸濃度 Cb[molL]をとり縦軸に酢酸濃度 Cb[molL]を活性炭吸着量 n[molg]で除した値 Cbn[gL]を示していますLangmuir の等温吸着式についてはこの後の章で説明してありますので各自読んで理解して下さいLangmuirの等温吸着式では式中の定数 ninfin(飽和吸着量)と K(吸着平衡定数)を実験データから最小二乗近似で決定する場合が多くありますここでは
その例を取り上げてデータに対してそれを精度よく表現する近似式をグラフ上に描き
その関数を数値として求める方法(最小二乗法最小二乗については付録に示しており
また化学工学プログラミングの講義においても説明します)を Excelで練習します 配布された Excel ファイル「ad_graxls」では実験点が表示されているだけでそれを精度よく表現する近似式の直線のグラフは「Graph2」に表示されていません今から次の手順で「Graph2」の図(グラフ)に近似式の直線のグラフを表示しますExcel の場合近似曲線(ここでは直線)を求める場合コンピュータが自動的に最小二乗法を使って近似曲線
を計算しています
「Graph1」の画面 「Graph2」の画面
Excelの sheetが表示されたらまずファイル名を変えデスク
トップに保存して下さい次
にGraph2のタックを左クリックして最小二乗法のグラフを
確認して下さい
22
38 Langmuirの等温吸着式による相関 はじめにLangmuir式の定数 ninfinと Kを決定するために「Graph2」酢酸濃度 Cb[molL]と
Cbn[gL]の関係のグラフから最小二乗法により直線の式を求めますExcelを用いてデータに対して近似直線のグラフを描き最小二乗法の直線の式を求めます
次のような「近似曲線の追加」のウィンドウが現れたら今回は線形近似(直線で近似
y=ax+b の式)を選びますので線形近似が黒色に反転していることを確認して「近似曲線の追加」のウィンドウの右下の「OK」ボタンをクリックして下さい
実験点の何れかにポインタをあわせて
右クリックする
近似曲線の追加(R)を選択して左クリックする
「線形近似」であること
を確認して「OK」ボタンをクリックします
23
「近似曲線の書式設定」
のウィンドウでオプシ
ョンから「グラブの書式
を表示する」の前を選ん
でチェック(前のチェッ
クボックスをクリック)
した後「OK」を押す
現れた直線にポインタをあわせて
左クリックすると「近似曲線の書式
設定」のウインドウが表示されます
ここをクリックします
この「オプション」のタ
グをクリックします
「y=」の関数
が現れるのでここ
をクリックする
式の文字フォントが初期値
「8」と小さいのでここ
のボタンをクリックし
フォントサイズを選ぶリス
トボックスを表示し「22」程度の大きなサイズを選択
しクリックする
24
「Graph2」酢酸濃度 Cb[molL]と Cbn[gL]の関係のグラフから最小二乗法により直線の式がこのように求められましたExcel を用いてデータに対して近似直線のグラフを描き最小二乗法の直線の式を求めるこの方法は他の実験データの解析などにも利用できますので
各自活用して下さい 表示された関数式「y=43865+2654」はノートにメモして下さいこの傾き 43865と
切片 2654からLangmuir式の定数 ninfinと Kを決定します決定方法の詳細はこの後の 36 の Langmuir式のパラメータ決定法に示しています ラングミュアの等温吸着式を変形すると次式となる
CCnKnCKn
CCKn
Cβ+α+
==
+= infininfininfin
11)1(
ただしα=1ninfinβ=1(ninfinK)とするこの式より Cnを縦軸Cを横軸とした関係のグラフは傾きα=1ninfin切片β=1(ninfinK)の直線関係を与えることを示しています そこでExcelのシートを利用してこの値からLangmuir式の定数 ninfinと Kを次のように決定しますセル C18D18に Graph2で求めた数値 2654と 43865を代入しますその後D19と C19に関数を ldquo=1D18rdquoとrdquo=D18C18ldquoを代入しますセル内の式は半角で入力してください
現れた関数の文字フォン
トを大きく(例えば 22)してその数字をメモし
吸着データシートの C18と D18に記入する
C18D18 に Graph2 で求めた値 2654 と 43865 を代入した後D19 と C19 に関数を ldquo=1D18rdquoとrdquo=D18C18ldquoを代入する
25
この Excel表示では最小二乗法を用いて決定した傾きαと切片βを用いて α=1ninfin=43865 β=1(ninfinK)=2654 得られた傾きおよび切片よりninfinおよび Kは次のように求まる
ninfin=1α=1D18=000228 molg-1 K =(1ninfin)β=αβ=D18C18=165
つまりセル D19にはninfinの値がセル C19にはKの値が表示されますこれらの値はラングミュア(Langmuir)の単分子吸着モデルで計算した理論線と実験と比較する場合に利用します実験結果に対して理論的な考察を行う例としてラングミュア(Langmuir)の単分子吸着モデルで理論線を計算し実験と比較するにはこの Excelファイルを利用して次のように計算しグラフに表示します セル F5~F30 には溶液中に残る酢酸濃度 Cb[molL]に対する活性炭に吸着された吸着量n[molg]の関係のグラフ「Graph1」の横軸の酢酸濃度 Cb[molL]の適当な値が既に入力してありますこれらのそれぞの酢酸濃度 Cb[molL]に対する吸着された酢酸の吸着量 n[molg]の理論値をラングミュア(Langmuir)式で計算しますラングミュア式は次式で与えられます
KCKCnn
+=
infin
1 (310)
ここでこの実験データを最も精度よく計算できるように決定した ninfinおよび K は上述のようにninfin=1α=1D18=000228 molg-1 K =(1ninfin)β=αβ=D18C18=165 でありこれらの値はセル D19にninfinの値がセル C19にKの値が表示されていますこの値を利用して「Graph1」に計算線を描くにはまずセル G5~G30 にセル F5~F30 のそれぞれの酢酸濃度 Cb[molL]に対する吸着された酢酸の吸着量 n[molg]の理論値をラングミュア式で計算しますそのためにはセル G5 にラングミュア式を次のように記述しますただしセル D19の ninfinの値セル C19の Kの値は常に同じセルから参照するので絶対参照($マークを付けて$D$19 $C$19と記述します)で記述します
Langmuir式をセル G5に記述するただし濃度はF5の値を相対参照しD19と C19は絶対参照($マークが必要)することを忘れないように
セルG5に記述すべき数式
=$D$19$C$19F5(1+$C$19F5)
26
G5記述後フィルハンドルを使用してG5の関数を G6~G30までコピーします Sheet1から Graph1 のタグをクリックしGraph1 に計算線が表示されたことを確認しましょうこれでラングミュア式によるデータの解析は終了です実験値と理論値を比較して現象
について考察してみて下さいラングミュア式を理論的に導く場合にある仮定をしている
のですがその仮定をしているラングミュア式が実験データを精度よく計算できていれば
その仮定が妥当なもとであったと考察できます 与えられたモデルデータでラングミュア式によるデータ解析ができれば他の理論(例え
ばフロインドリッヒFreundlich式や BET式レポートはどちらか一方でも可です) についてもExcel で計算してみましょうレポートには自分のデータについてここで行った内容と同様に計算しその結果を考察に記述して下さい 自分のデータについて同様の計算をするにはまずいままで計算を行った Excel ファ
イルを保存しますデータを自分の実験データに置き換える前に Excel ファイルをさらに別の名前で保存します与えられた Excel ファイルは初期状態では模擬のデータが入力されているので今回自分達の実験したデータを入力していきます入力するデータは予め計算
しておいた酢酸濃度 Cb[moll]と活性炭吸着量 n[molg]になります下の画面の丸で囲んだ部分にそれぞれ自分の実験データを入力していきます
今回はCbnの値を入力する必要はありませんExcelが自動的に計算を行って結果を表示するようになっています 次に酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着
量 n[molg]の関係および酢酸濃度Cb[molL]と Cbn[gL]の関係をグラフ化します今回は自動的にグラフが作成
されるようになっていますので操作は必
要ありません 39 Freundlichの等温吸着式による相関 今回の実験で得られた酢酸濃度 Cbと活性炭吸着量 nのデータを利用してFreundlichの等温吸着式の定数 abの値を求めFreundlichの等温吸着式の理論線をグラフに追加します ここでFreundlich式は次式で表されます
bbaCn1
=
このままでは定数 abの値を決定することが難しいので上式の両辺の対数をとり線形化しますすると次式となります
bCb
an ln1lnln +=
ここでln Cbと ln nの関係をグラフにプロットすれば傾き 1b切片 ln aの直線関係が得られますしたがって実験データである酢酸濃度 Cbと活性炭吸着量 nの値の対数をそれぞれ計算します配布した「ad_graxls」ファイルを開き「吸着データ」シートの任意の部分に以下のような表を作成します
27
次にln Cb[-]の列の最初のセルに以下の数式を入力します
=ln(B5) 上式中の「B5」は Cb の値の最初のセルの位置を指します各個人の位置によって変更してください
次にln n[-]の列の最初のセルに以下の数式を入力します
=ln(C5) 上式中の「C5」は nの値の最初のセルの位置を指します各個人の位置によって変更してください
ここでln Cb[-]ln n[-]の値に対しそれぞれオートフィルを行い計算させますすると以下のようなデータが完成します
計算した ln Cb[-]ln n[-]の値をグラフにプロットし最小二乗法による直線式を求めます
28
ここで以下のような直線の式が得られたとします
9135ln31690ln913531690 minus=there4minus= bCnxy
上式より切片は-5913傾きは 03169となるので以下の要領で定数 a1bを計算します ==there4minus= minus 91359135ln eaa 000270
316901=
b
a の値を Excel で計算させる場合は任意のセルに以下のような数式を入力することで求めることができます
=exp(-5913) これでFerundlich等温吸着式の定数 a1bの値が決定しましたこの値は後で使うのでノートなどにメモしておいてください 次に決定した Ferundlich 等温吸着式の定数 a1b の値を用いてFerundlich 等温吸着式のグラフを作成します先ほども示したように Ferundlich等温吸着式は次式で表されます
bbaCn1
=
従って定数 aと 1bの値はすでに決定しているので任意の Cbの値に対する nの値を数点求めればFerundlich等温吸着式で求めた理論線が得られます以下の操作で理論線を引くことができます Langmuir 等温吸着式による相関のときと同様にExcel の「吸着データ」のシート上の任意の場所に以下のような表を作成します
次に Ferundlich等温吸着式に従いnの値を計算します
bbaCn1
=
式中の定数 a1bは先ほど計算した値を用いますしたがって式は次のようになります
31690002700 bCn times=
この式を Excelのセル内に記入すれば計算ができます次の
29
ように記入します
=00027G5^03169 ここで式中の「G5」は Cbの値が 0のセルを指しています各個人の位置によって変えてください 次に式を記入したセルを Cbの値が 05のところまでオートフィルを行いますそうするとすべての Cbに対して nの値が計算されます
これで Freundlich等温吸着式のデータが完成しましたので次に「Graph1」酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着量 n[molg]の関係のグラフにこのデータを追加し理論線を引きます理論線の引き方は Langmuirによる相関のときと同様の操作を行ってください グラフの書式等を変更し整理すると以下のようなグラフが出来上がります
310 吸着等温線とは 固体の吸着剤を溶液と接触させる時一定量の吸着剤によって吸着される溶質の量は温度一定ならば溶質の濃度の関数になる一定温度での吸着量を温度に対してプロットした時に
得られる曲線を吸着等温線というこの吸着等温線を比較的よく表す経験式として次の
Freundlich式がある
n=aC1b (1) ここで n は吸着剤の質量あたりの吸着量C は吸着平衡濃度a と b は実験から決定されるパラメータであるがその物理的意味は多少希薄である これに対し理論的な意味を持つものに次のラングニュア(Langmuir)の吸着等温式がある
30
KCKCnn
+=
infin
1 (2)
ただしninfinは飽和吸着量Kは吸着平衡定数であるこの式は
1)吸着分子が固体表面で単分子以上の厚い層を作ることはない 2)吸着分子同士の間の相互作用はない
という二つの仮定にもとに導かれたものである 結果の整理および報告 Freundlich吸着等温式Langmuir吸着等温式の各々のパラメータの最適値を求めよまた活性炭の吸着特性および表面積について考察し化学工学における吸着操作の重要性につい
ても検討せよ 311 吸着等温式 (a) ヘンリー(Henry)型吸着等温式 液相の濃度あるいは気相の圧力が小さい場合吸着分子間の距離が十分に長いため吸着
分子同士の相互作用が無視でき固体表面と吸着分子のみの相互作用で吸着量を決定できる
とき次式のように表される
n=KC (3)
ここでKは比例定数である図 3-1の(a)に示すように濃度 Cと吸着量 nは比例関係があり一般に吸着量が小さい範囲で成立する気体の場合は溶液濃度 Cの代わりに気相圧力 pを用いればよい
濃度(分圧)
濃度(分圧)
濃度(分圧)
濃度(分圧)
吸着量
吸着量
吸着量
吸着量
(a)ヘンリー型 (b)ラングミュア型
(d)BET型(c)フロインドリッヒ型
0
0
0
0
図 3-1 吸着等温式
31
(b)ラングミュア(Langmuir)型吸着等温式 ラングミュアは図 3-2 に示すように固体表面に同等な吸着力を示す吸着サイトがあり
表面に 1分子層だけ吸着する(単分子層吸着)と仮定して平衡状態における吸着量と溶質濃度(気相分圧)のと関係を導いた全吸着点のうち吸着分子に覆われている吸着点の割合
をθ[-]とすると分子の脱着速度 rrsquo[mols-1]はθに比例する比例定数を a[mols-1]とすると次式のように表される
吸着剤
吸着分子
吸着サイト
図 3-2 固体表面上の吸着サイト(Langmuir式の導出) r=aθ (6) また気相からの吸着速度 r[mols-1]は空いている吸着点の割合(1-θ)[-]と溶液濃度 C[molm-3]に比例する rrsquo= b(1-θ)C (7) このときの比例定数を b[m3s-1]とするまた平衡状態では両速度は見かけ上等しいため以下の式が成り立つ aθ=b(1-θ)C (8) これを変形する
CbaCbsdot+
sdot=θ (9)
ここで飽和吸着量を ninfin[molkg-1] ba を K[m3mol-1](Kは吸着平衡定数)とおくと infin=nnθ
となるので次式が得られる
32
KCKCnn
+=
infin
1 (10)
これをラングミュア式と呼ぶ
(c)フロインドリッヒ(Freundlich)型吸着等温式 フロインドリッヒの吸着等温線は図 3-1(c)のように示される
n=aC1b (11) nは吸着量[molkg-1]で aと bはともに吸着定数[-]である (d)BET(Brunauer-Emmett-Teller) 型吸着等温式
BET型の吸着等温線は図 3-1(d)に示されるラングミュア式は表面に 1分子層だけ吸着すると仮定したものであるがBET式は無限分子層まで吸着できる式である図 3-3に示すように吸着した分子がそれぞれ次の層の吸着サイトとなり分子は積み重なって多分子
層に無限層まで吸着できるものとし各層への吸着にラングミュア式を適用すれば次式の
ように表せる
( ) ( )CKCCCKqq
minus+sdotminussdotsdot
=infin
11 (12)
この式は多孔質固体の細孔表面積を窒素ガスの吸着によって測定する際に利用される重要な式
である
表面の吸着サイト
分子上の吸着サイト
図 3-3 多分層吸着モデル
Langmuir式のパラメータ決定法 水溶液からの酢酸の活性炭に対する吸着平衡データ(吸着平衡温度 12)は表 3-1のよ
うに与えられる実験データよりラングミュア式のパラメータ(K吸着平衡定数ninfin飽和吸着量)を最小二乗法で決定せよさらにラングミュア式より決定した ninfinKの値を用いて吸着等温線を計算し計算線として図に示し実験点と比較せよ
33
表 3-1 n C Cnの関係
ラングミュア式は式(310)で与えられるこの式を変形すると次式となる
CKnCK
n infinsdot+
=11
(313)
両辺に Cをかけると以下の式が導出される
CCnKnCKn
CCKn
Cβ+α+
==
+= infininfininfin
11)1( (314)
ただしα=1ninfinβ=1(ninfinK)とする式(314)より Cn と C の関係のグラフプロットは傾きα=1ninfin切片β=1(ninfinK)の直線関係を与えることを示している表 3-1の値を用いて計算した Cnと Cの関係を表 3-1および図 3-4に示す 最小二乗法を用いて傾きαと切片βを決定した α=1ninfin=43865 β=1(ninfinK)=2654 得られた傾きおよび切片よりninfinおよび Kは次のように求まる
ninfin=1α=1D18=000228 molg-1 K =(1ninfin)β=αβ=D18C18=165
0
50
100
150
200
0 200 400 600
C [ molm-3 ]
Cn [ kgm-3 ]
傾き = 1 ninfin
1 ninfinK
切片0
05
1
15
2
25
3
0 100 200 300 400 500
液相の溶質濃度 C [ molm-3 ]
吸着量 n [ molkg-1]
液相と溶質濃度 C [ molm-3 ]
吸着量
n[ m
olk
g-1]
実験点
Langmuir式パラメータninfin 00033 [ molg-1 ]K 00086 [ m3 mol -1 ]
図 3-4 ラングミュア定数の決定 図 3-5 12における酢酸濃度 Cと
吸着量 nの関係
C [molm-3] n [molkg-1] Cn [kgm-3] 460 225 109 529 214
268 199 149 105 060
172 128 732 504 357
34
Freundlich式のパラメータ決定法 酢酸水溶液中における酢酸の活性炭に対する吸着実験を行ったところ以下のような実験デー
タを得たただしCbはバルク相における酢酸濃度n は活性炭に対する酢酸の吸着量を示す
Cb[molL] n[molg] log10Cb log10n 04621 000205 02410 000175 01139 000139 00519 000105 00243 000081
実験データを利用して次式で与えられる Freundlichの等温吸着式の定数 abの値を求めたい
bbaCn1
= (1)
このままでは定数 abの値を決定することが難しいので上式の両辺の対数をとる
bbb
bb
Cb
aCa
aCn
ln1lnlnln
)ln(ln1
1
+=+=
=
(2)
ここで横軸に ln Cb縦軸に ln nの関係をグラフにプロットするすなわち x=ln Cby=ln nと考える
bCb
an ln1lnln += (3)
ここで直線式 y=a0+a1xと比較するすなわち
)(1)(ln
1
00
傾き
切片
ba
eaaa a
=
=rarr= (4)
a0および a1は最小二乗法により数値で求められる与えられたデータでは a1= a0= なので a= b= となる この値を n=acb
1bに代入してcb=0~05の範囲で nの値を計算する
35
BET式のパラメータ決定法 BET式は次式で与えられる
)1)(1( KCCCKCnn
+minusminus=
infin
(17)
以下のように BET式の変形を行う
)1()1(
KCCKCnCn+minus
=minusinfin
(18)
(18)式の逆数をとると
KCnCK
KCnKCC
Cn infininfin
minus+=
+minus=
minus)1(1)1(
)1(1
(19)
(19)式の両辺に Cをかえると
KCnCKC
CnC
infin
minus+=
minus))1(1(
)1( (20)
(20)式を変形すると次式が得られる
CKn
KKnCn
Cinfininfin
minus+=
minus11
)1( (21)
C と)-(1 Cn
Cのプロットは傾き
KnKinfin
minus1切片
Kninfin
1の直線関係を与えることを示している
これをグラフにプロットし最小二乗法に傾きおよび切片を求める
36
312 活性炭の比表面積の決定 酢酸分子の構造を以下に示す
Hc-Cb-Ca
Hd
Hb Oa
Ob-Ha
1219deg
Ca Oa
Ob
図 36 酢酸の構造
酢酸の 1分子の吸着面積srsquo [m2]を図 3-6に示すこのとき文献より
Caと Oaの結合距離 1321Å Caと Obの結合距離 1206Å OaCaObの角度 1219deg Cの原子半径 077Å Oの原子半径 062Å
したがって吸着面積 Slsquoは次のようになる
( ) ( ) 2088 10376109931036321 minusminusminus times=timestimestimestimes=s m2
ここで活性炭の比表面積 S[m2g]は次式で示される 10026 23 snS timestimestimes= infin
S活性炭の比表面積 [m2g] ninfin飽和吸着量 [molg] srsquo酢酸 1分子の吸着面積 [m2] 602times1023アボガドロ数 [個mol] したがって活性炭の比表面積 S[m2g]は
003350=infinn molg 2010376 minustimes=s m2 より
51281037610026003350 2023 =timestimestimestimes= minusS m2g
37
4 粘度密度測定 41 はじめに 大量生産を目的とした工業的化学プロセスはほとんど流れ系(流通系)であるそれらの系において操作対象となる各物質の粘度は装置を設計操作する場合きわめて重要
な物性値である 本実験では低分子溶液および高分子溶液の粘度測定を通じて液体の粘度について考察するさらに演習問題を通じて気体液体高分子溶液などの化学プロセスで対象となる物
質の輸送物性(粘度拡散係数)の重要性を認識されたい 42 低分子溶液の粘度 [目的] 種々の濃度のエタノール水溶液の粘度を測定しその溶液の粘度について考察する [概要] 25におけるエチルアルコール濃度 02040506080100 wt の水溶液について流下時間を測定しこの結果より相対粘度絶対粘度運動粘度を求めグラフにするま
た水の密度水-エチルアルコール溶液の密度についてはピクノメーターを用いて決
定する報告書には相対粘度絶対粘度運動粘度 vsエチルアルコール濃度の関係をそれぞれグラフにして提出する
[計算方法] 相対粘度絶対粘度運動粘度の定義は次のようになる
相対粘度 ww
w tdtd
ηη = (41)
η 混合溶液の粘度 [gcms] ηw水の粘度(8007times10-3 gcms) [gcms](25における粘度) d エチルアルコール水溶液の密度 [gcm3] dw水の密度(099704gcm3) [gcm3](25における密度) t エチルアルコール水溶液の流下時間 [s] tw水の流下時間 [s] 下付添字 W 水
絶対粘度 www td
tdη
η= (42)
運動粘度 ν=ηd [cm2s] (43)
38
[実験方法] 1) 粘度計を洗浄し粘度計内 に二連球で空気を送り込み
乾燥させる乾燥しにくい 場合はアセトンを滴下し た後再度二連球で空気 を送り込み乾燥させる 2)ピペットで一定体積(10mℓ) の純水を取り広い口 f から 粘度計に水を入れる 3)粘度計を恒温槽(25)に つけ約 10 分静置する 4)安全ピペッターを口 a に 取り付け液面が b 上部に 到達するまで吸い上げる 5)安全ピペッターを外すと 液面が降下しだす液面が bd 間を通過する時間をスト ップウォッチで測定する
6)純水での測定を 3 回繰り返す 7)純水を粘度計から取り除くその後粘度計内に二連球を用いて空気を送り込み乾燥させる 8)粘度計乾燥後複数の濃度に調整済みのエチルアルコール水溶液(10mℓ)を粘度計にいれ4)~6)の作業を繰り返し行う(3 回)なお濃度の異なるエチルアルコール水溶液を粘度計内に導入する場合には7)と同様に二連球を用いて粘度計内に空気を送り込み乾燥させる
表 4-1 エチルアルコール水溶液の濃度密度相対粘度の関係 エチルアルコール濃度
[wt] 密度 d[gcm3] 相対粘度
η ηw[-] 0
20 40 50 60 80
100
安全ピペッター接続
図 4-1 粘度計
液面の bd間の通過時
間を測定
f
39
43 密度測定 [目的] 本実験では水とエタノールの種々の組成の混合液体について密度を測定し分子間相互
作用について考察する [実験方法] 1)ピクノメーターの容積測定
図 4-2のピクノメーターの空の重量 wg を秤量する
ピクノメーターの蓋を取り外し
ピクノメーターを水で満たす
設定温度を 25として恒温槽 の電源を入れ恒温槽内の温 度が一定になるまで待つな お水温は恒温槽中の水銀温 度計から読む
恒温槽中に水を満たしたピク
ノメーターを入れる
約 10分間静置する
ピクノメーターに蓋をするこのときピクノメーターの容量
よりも余分の水は蓋の上部より排出される
ピクノメーターの外側を乾いた布で拭い秤量する(その重量を
wwg とする)
恒温槽の温度(25)における水の密度 dwgcm3(=099704gcm3)
より次式を用いてピクノメーターの容積を求める
w
w
dww
Vminus
= (44)
図 4-2 ピクノメーター
蓋
40
表 4-2 エチルアルコール水溶液の濃度と密度の測定結果(25) エチルアルコ
ール濃度[wt]
wrsquo[g] ww[g] V[cm3] w[g]
d[gcm3]
0 20 40 50 60 80
100
099704
エチルアルコール濃度[wt] 空のピクノメーターの重量 wrsquo[g] 水を入れたときのピクノメーターの重量 ww[g] ピクノメーターの体積 V[cm3] エタノール水溶液の入れたときのピクノメータの重さ w[g] エタノール水溶液の密度 d[gcm3]
容積 Vを求めたピクノメーターに混合溶液(調整済み)を入れてその重量 wgを秤量し次式で混合溶液の密度を求める
Vwwd minus
= (45)
エタノール濃度と密度 d の関係をグラフにプロットする
41
44 高分子溶液の粘度 [目的] 高分子溶液の粘度測定から分子量の粘度に与える影響について考察する [概要 ] オストワルド粘度計を用い種々の濃度のポリビニルアルコール(PVA ((-CH2CHOH-)n))水溶液の粘度を測定し粘度データよりポリビニルアルコールの分
子量を求める まず 05g100cc の濃度のポリビニルアルコール水溶液を調製する次にこれを原液
とし23 12 13 15の濃度の溶液を調製するこれらの溶液についてオストワルド粘度計を用いてそれぞれ流下時間を測定し相対粘度絶対粘度運動粘度を求め実験デ
ータより極限粘度[η]を求めるまた報告書には相対粘度絶対粘度運動粘度C
)ln( wηη
Cw
w-η
ηη vsポリビニルアルコール濃度の関係をそれぞれグラフにして提出する
[計算方法] エチルアルコール水溶液の粘度測定と同様の手法を用いて粘度の計算を行うなおポリビニルアルコール水溶液の密度はピクノメーターを用いて測定すること 表 4-3 ポリビニルアルコール水溶液の濃度密度相対粘度の関係 ポリビニルアルコール
濃度 [g100cc] 密度 d[gcm3] 相対粘度
η ηw[-] 05times(15) 05times(13) 05times(12) 05times(23)
05
42
[分子量の計算方法] 実験を行った結果以下のような粘度データを得られるとする実験データより極限粘度
を求めポリビニルアルコール(PVA)の分子量Mを決定せよ
PVA 水溶液濃度
C[g100cc]
相対粘度
ηηw[-]
絶対粘度
η[gcms]Cw
w-η
ηη
C)ln( wηη
05times(15) 1031 0008255 031 0305
05times(13) 039 0378
05times(12) 03 0289
05times(23) 0375 0353
05 0364 0334
ηw=8007times10-3 gcms 線状高分子の極限粘度[η]と分子量Mの関係は次式で与えられる [η]=KMα (46) ただしポリビニルアルコールの場合K=666times10-4α=064であるなお極限粘度[η]は次式で定義される
CC w
w
0
-][ limη
ηηη
rarr
= (47)
または
CC
)ln(][ w
0lim
ηηη
rarr
= (48)
よって濃度 CとCw
w-η
ηηまたは濃度 Cと
C)ln( wηη の関係をグラフ化し最小二乗法によ
り切片の値を求めると極限粘度[η]が決定される
Cw
w-η
ηηと C の関係より最小二乗法を用いて切片の値を決定すると(図 43 参照)切片=
03242傾き=00874となるよって極限粘度は以下のようになる[η]=03242同様
にC
)ln( wηη とcの関係より最小二乗法を用いて切片の値を決定する
(図 44参照)と切片=03249傾き=00256となり極限粘度は以下のようになる[η]=03249
Cw
w-η
ηηと Cの関係より決定した[η]=03242を用いてポリビニルアルコール(PVA)の
分子量 Mを計算する(46)式より以下のように PVAの分子量 Mを計算することができるM=([η]K)1α
=(03242(666times10-4))(1064)
=15811
43
y = 00874x + 03242
0
02
04
06
08
1
0 01 02 03 04 05 06 07
c[g100cc]
(η-ηw)(ηwc)
cw
w
η
ηηminus
極限粘度[η]
図 43 298Kにおける PVA濃度 CとCw
w-η
ηηの関係
y = 00256x + 03249
0
02
04
06
08
1
0 01 02 03 04 05 06 07
c[g100cc]
(ln(ηη
w))c
c)ln( wηη
極限粘度[η]
図 44 298Kにおける PVA濃度 CとC
)ln( wηη の関係
44
5 植物からの DNAの抽出 51 はじめに 分子レベルでの遺伝子の構造解明や遺伝子の発現に関する研究は近年急速に発展している
これら生命現象のしくみを分子レベルで解明しようという分子生物学の分野ではさまざま
な遺伝子の解析や応用方法が開発され我々の生活に身近なものになりつつある 本実験では初歩的な分子生物学に関する実験として植物(タマネギ)からの DNA の
抽出を行い抽出した遺伝子の電気泳動法による分離実験を試みる 52 試薬および器具 試薬 タマネギ(細胞中から遺伝子の抽出を行う) 台所用洗剤(洗剤中に含まれる界面活性剤には植物の細胞膜およびタンパク質を破壊す
る働きがある) 塩化ナトリウム(DNAは塩化ナトリウム水溶液に溶解し易い性質がある) エタノール(予め冷やしておくDNAはエタノールにほとんど溶解しない) 制限酵素(DNAを一定の部位で切断する働きを働きがある) TE緩衝液(pH緩衝剤が入った溶液) 器具 ビーカーミキサーフィルターメスシリンダー駒込ピペットガラス棒 マイクロピペット電気泳動装置ポラロイドカメラ 53 実験方法 1)タマネギは 1回の実験で半個のうち内側の半分程度を使用するタマネギ水 30ml台所用洗剤数滴をミキサー用ガラス容器に入れ40~60秒程度(固体状のタマネギがなくなる頃が目安)ミキサーにて混合する
2) 1)で作成した混合溶液をビーカーに移し約5g程度の塩化ナトリウムを加えガラス棒で静かに攪拌する粘性の大きな溶液が得られる
3) 2)で作成した溶液をフィルターを用いて濾過し濾液を回収する 4) 濾液の約2倍程度の量の冷エタノールをビーカーの壁伝いに静かに注ぐ 5) ビーカーを揺するとエタノール層に白くふわふわしたものが浮いてくるこれが DNAであるガラス棒で DNAを巻き取りシャーレ上にて DNAを回収する顕微鏡を用いて回収した DNAの状態を観察する
6)マイクロチューブ(容量 15ml)中に用意した 70エタノールを 8 分目程度まで注ぐ5)にて回収された DNAをマイクロピペットを用いて70エタノールの入ったマイクロチューブ中に移す軽く混ぜることによりDNA から不要な物質を洗い流す遠心分離してDNA をマイクロチューブの底に沈めた後溶液を捨てて DNA を乾かす乾いたらTE緩衝溶液を 1ml加えて放置するDNAの溶液が得られる
54 電気泳動装置による DNAの観察
本実験は職員と一緒に行うこと 実験を行う人はビニール手袋をすること 1) 抽出した DNAを電気泳動装置で観察するマイクロピペットを用いて以下のように調製した DNAの混合溶液を調製する(いずれの溶液も調製済)
45
2) マイクロピペットを用いてアガロースゲルの試料を流し込む穴(ウェル)に1)にて調製した溶液 Aおよび Bを注ぎ込む注入量は20μℓとする電気泳動装置のスイッチを入れて100Vの電流を流しアガロースゲル内にて DNAを電気泳動させる
3) 試料に予め加えられておいた青色の色素が 7 分目程度まで進んだら電気泳動を中止する(約 30分程度)
4) (ここでの作業は職員が行う) アガロースゲルを取り出し染色液に浸す染色後ゲルを取り出しポラロイドカメラで
DNAの泳動状態を撮影する
+ -
アガロースゲル
試料を流し込む穴(ウェル)
図 51 電気泳動装置
6 5 4 3 2 1
図 52 DNAの電気泳動写真の一例
55 電気泳動装置の原理 電気泳動装置の原理図を以下に示すアガロースゲル(寒天から不純物を除いたもの)中
に DNAをセットし電流を流すとDNAは電流の向きとは逆にマイナスからプラス方向
調製済 溶液 A(制限酵素なし) 水 11μℓ 10timesH Buffer 2microℓ 植物 DNA 5μℓ
調製済 溶液 B(制限酵素 Eco RI入り) 水 11μℓ 10timesH Buffer 2microℓ 植物 DNA 5μℓ 制限酵素 2μℓ
1 DNA(タマネギ)+制限酵素 2 DNA(タマネギ)+制限酵素 3 DNA(タマネギ) 4 λ-DNA(大腸菌)+制限酵素 5 λ-DNA(大腸菌) 6 サイズマーカー
500bp
46
に動く(このことを電気泳動という)これはDNA のリン酸部分が負に帯電しているためでありまたDNAはその長さにより泳動距離が異なる(短い遺伝子ほど長く泳動する)電気泳動ではこの性質を利用してDNAを大きさごとに分離することができる
塩基対数によってDNAを分離
EtBr (蛍光試薬)DNAの二本鎖内に入り込む
発光
UVλ=302nm
励起
分離後のアガロースゲルをエチジウムブロマイド(EtBr)溶液に浸す
DNAを含んだ溶液
アガロースゲル
リン酸部分が負に帯電
塩基 (ATGC)-
+
カメラで撮影
電圧
DNA構成成分(dNTPs)
バンドが明る
DNA量が
バンド(DNAの存在)
図 53 電気泳動の原理
56 制限酵素とは DNA は4 種類のヌクレオチド(GATC)が不規則につながってできている制限酵素はDNAの特定のヌクレオチドが並んでいる部分を切断する制限酵素には様々な種類がありEco RI(エコアールワン)と呼ばれる酵素は「GAATTC」といった並びの部分だけを切断することができる
GAATTC
CTTAAG
制限酵素
Eco RI
AAGCTT
TTCGAA
制限酵素
Hin dIII
図 54 制限酵素による DNAの切断
レポートについて 1 実験方法および実験結果の整理方法については指針書を参考にすること 2 実験結果については電気泳動の結果について考察すること(制限酵素の影響などにつ
いてまとめてください)
47
6 染色実験
61 はじめに
現在私達の身の周りでは様々な染料が使われている例えばT シャツやジーンズな
どの衣服は橙黄赤青など様々な色に染められている他にも私達が気付かないと
ころで多くの染色された製品を使用しているそこで本実験では高校の化学で学んだ
アゾ染料を合成してみるアゾ染料はアニリンを原料として作られているアニリンはベ
ンゼン環にアミノ基(-NH2)がついたものであるアニリンは無色の液体で水に溶けにく
くアンモニアより弱い塩基性を示すまたさらし粉(CaClO(ClO)H2O)水溶液を加えると
赤紫色を呈するこの呈色反応はアニリン特有のものであるので検出反応に用いられる
このアニリンを出発物質としてアゾ染料を合成してみる
62 試薬および使用器具
【試薬】 ①05moll 水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液
②2-ナフトール ③フェノール ④6moll 塩酸
⑤亜硝酸ナトリウム ⑥アニリン ⑦氷
【器具類】 ①電子天秤 ②50mℓビーカー ③100mℓビーカー
④ガラス棒 ⑤布(ガーゼなど) ⑥ピンセット
⑦ポリ手袋 ⑧ドライヤー ⑨シャーレ
10駒込ピペット(10ml ガラス製)
11駒込ピペット(1ml プラスチック製)
63 実験方法
1) 50mℓビーカーの中に 05molℓ水酸化ナトリウム水溶液 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回
NaOH 水溶液を分取するほぼ 20 mℓ分取できれば可)と 2-ナフトールを約 01g 入れ
よくかき混ぜる調製した溶液の中に布をつけその布はガラス棒でしぼってから(布
をガラス棒ですくいあげればよい)シャーレに広げる温度の異なる条件下(常温およ
び低温)で染料の合成実験を行うため布は最低 2枚調製した溶液と接触させそれ
ぞれ別々のシャーレ(低温用および常温用)に広げる
2) 新しいビーカーに水を約 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回分取)と 6molℓ塩酸約 4mℓ(10m
ℓ駒込ピペットで目分量で可)さらにアニリン約 1mℓ(プラスチック製 1 mℓ駒込ピペッ
ト)を入れてよくかき混ぜる染料の合成を常温および低温下で行うためこの溶液を
2つ調整する
低温下で反応させる溶液は恒温槽で 10~15 分ほどよく冷やした後亜硝酸ナトリウ
ム 05g を加えてよくかき混ぜる
常温下で反応させる溶液には冷却作業を行わずに亜硝酸ナトリウム 05g を加えて
よくかき混ぜる
3) 2)でつくった水溶液をシャーレに広げた布に注ぎ生成される染料を布によく染み
込ませ5分程放置する
4) 色の付いた布を取り出してポリ手袋をした手できれいに水洗いをし乾燥させる
48
5) 色差計を用いて乾燥した布の Lab(L明度aおよび b色度)を測定する
2)で作った溶液は5以下では無色の溶液ですが5以上になると淡い黄色になりま
す
【解説】
アゾ染料はアゾ基(-N=N-)を持っていてこのアゾ基によって鮮やかな橙色を呈色し
ます今回合成したアゾ染料は図の 1-フェニルアゾ-2-ナフトールです意外かもしれ
ませんが指示薬として使われているフェノールフタレインもアゾ化合物ですフェノール
フタレインは pH の変化によって色が出てきす染料の中でも最初は無色のものもありますが
温度を変化させたり酸性やアルカリ性にすると色が出てきます
ベンゼン ニトロベンゼン
N2Cl
ニトロ化 濃硫酸(濃硝酸)
還元反応 濃塩酸
(Sn又は Fe)
アニリン塩酸塩
遊離反応 NaOH
アニリン塩酸塩に強塩基を反応させる
と弱塩基であるアニリンが遊離する
氷冷+亜硝酸ナトリウム アニリン
塩酸
ジアゾ化
塩化ベンゼンジアゾニウム
塩化ベンゼンジアゾニウム
は熱によって窒素とフェノー
ルに分解される
カップリング
C10H7ONa (ナトリウム 2-ナフトキシド)
O
N =
1-フェニルアゾ 2-ナフトール
NH3Cl NH2
49
7 ガスクロマトグラフ質量分析計による茶葉中のカフェインの分析 71 はじめに ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)は極めて低い濃度の化学物質の同定や未知物質の構造決定に極めて強力な分析機器の一つであるGCMSを用いるとサンプルの中に含まれているある成分の分子構造(カフェインの分子構造を図 71に示す)やその量が分かりますもちろん分析機器ですので測定できる物質対象となる系や測定条件にはある
程度の制約があります混合物質を分離するガスクロマトグラフ(Gas ChromatographGC)と分離された成分(物質)を分析(構造決定と濃度測定)する質量分析計(Mass SpectrometerMS)を組み合わせた装置であるこの装置は有機化学生化学環境化学などの多くの分野で非常に多用されている例えば極めて低い濃度でも生体へ強い影響が懸念されるダイ
オキシン類などの土壌や河川の水中での含有率の決定や食品や医薬品中の微量成分の決定
にも利用されている 一方日本人に長い間親しまれてきた緑茶が近年産業界や医学
界で注目されている茶葉にはカフェイン(分子構造図 71)カテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドなどの有用成分が多く含まれておりその効能が注目されている 本実験では茶葉中に含まれるカフェインに対してGCMSを用いて分析する茶葉中には種々の物質が含まれておりGCMS分析を容易にするため前処理として超臨界二酸化炭素抽出(4015MPa程度の高圧力の二酸化炭素を溶剤として利用)により茶葉からカフェインの抽出を行いそのサンプルを GCMSにて分析する
図 71 カフェインの分子構造 図 72 物質の分析 個々の物質や装置についてはインターネットにより下記のWebサイトのフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』などにより調べるとよいカフェイン(caffeine)はアルカロイドの一種プリン環を持つプリンアルカロイドの一種でコーヒー類に含まれることか
らこの名がある化学名は137-トリメチルキサンチン(C8H10N4O2) コーヒーコーラ緑茶紅茶ガラナココアなどに含まれる(量は緑茶が一番多い)結晶は一水和物(C8H10N4O2bullH2O)もしくは無水物(無水カフェインC8H10N4O2)として得られ
る白色の針状または六角柱状結晶で匂いはなく味は苦い融点は 238昇華性がある出典フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』httpwwwwikipediaorg 装置「GCMS」httpwwwanshimadzucojpproductsgcmsqp2010htm (島津) 「超臨界抽出装置」httpwwwkagakucomjasco39-49html (日本分光)
50
レポート課題 1茶葉中に含まれるカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドの中から3つの物質を選びその物質について調べた結果を A4 レポート用紙2枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
2GCMS についてA4 レポート用紙1枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
3与えられたサンプルは茶葉1gから抽出されたのである実験結果よりもとの茶葉
1g中に含まれるカフェインの量を推算し計算式とあわせて示すこと 72 原理および装置 実験で使用する島津製の GCMS装置の全体図を図 73に原理の概略を図 74に示す
1
23
4
5
67 8
9
10
キャリアーガス
試料物質
1ボンベ(He)2圧力計3マイクロシリンジ4サンプラー5試料導入部6分離カラム
7セパレーター8イオン化室9磁石10電子増倍管11記録計
11
図 74 ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)の概略図
サンプルフォルダー
51
GCMS 装置は分離部である図中の 1~6 のガスクロマトグラフ(GC)と7~11 の検出部である質量分析計(MS)から構成される 3のマイクロシリンジを用いて試料を GCMSに導入する導入された試料は5試料導入部でガス化され6分離カラムに導入される分離カラムには吸着剤が充填されおり混合物の試料を導入した場合各物質と吸着剤との
親和性の違いにより各物質の分離カラムから排出されるタイミングは異なる分離カラム
を排出された試料は8イオン化室でイオン化され10電子倍増管にて検出される アセトンに溶解したカフェインの GCMSによる分析結果の一例を以下に示す図 75にク
ロマトグラム図 76にカフェインのピークのマススペクトルを示す
図 75 GCMSにより得られたクロマトグラム
横軸がリテンションタイムで縦軸がピーク強度を表す
図 76 カフェインのマススペクトルとカフェイン(分子量MW=194)の構造
(図 75中のリテンションタイム 126min付近のピークに起因するマススペクトル) 茶葉中にはカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイド以外にも繊維であるセルロースなど多くの物質が含まれているため茶葉そのものを
そのままサンプルとしてGCMSで分析することは困難であるセルロースなどの分子量の大きな物質はカラムに詰まってしまい分析できないそこで今回は超臨界二酸化炭素
による抽出により主にカフェインを他の物質と分離抽出した通常よく利用されるアセ
トン抽出(アセトンに茶葉を浸し特定の成分を抽出する)ではカフェイン以外にも多く
の物質が抽出されるため図 75 のような単独のピークを得ることは難しく複数のピークがクロマトグラムに見られるこのサンプル(この場合茶葉からの抽出物)にはカフェ
イン以外の不純物は少なかったがガスクロマトグラフの分離カラムによりさらにそれ
らの混合物が精度よく分離されるクロマトグラムのピークはそれらサンプル中に含まれ
ていた個々の物質を表しているクロマトグラムのピークを選択することで分子構造解析
したい物質を選んだことになる選択したクロマトグラムのピークの表している物質(ここ
ではカフェイン)に対応するマススペクトルが図 76 に表示されているマススペクトル
52
で横軸がその成分(ここではカフェイン)分子を構成している原子の原子量で縦軸がそ
の量を表しているのでマススペクトルから分子構造を解析するためにコンピュータ内
に蓄えられた物質ごとのマススペクトルデータと今回測定したマススペクトル(分子内に含
まれている各原子の数)を比較することで測定したサンプル中のクロマトピークを選択し
た分子がどのような原子をどれだけ含んだ分子であったかがわかりそれからその物質
がどのような分子構造の物質である可能性が高いかをコンピュータが検索し結果を示す 73 実験サンプルの設置と GCMS装置の操作方法 実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS装置のサンプルフォルダ
ー(図 73)にセットするこのサンプルは茶葉 1gを 50ccの高圧セルにて超臨界二酸化炭素を利用して4015MPa2時間接触の条件で抽出した固体を10gのアセトンに溶かしたものである またコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に装置および装置制
御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 本実験で使用する GCMS の操作は全てコンピュータのモニター上で GCMS の解析プログラムソフトを使用することで行うコンピュータの操作方法を以下に示す なおコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS 装置のサンプルフォルダー(図 73)にセットするまた装置および装置制御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 1)パソコンのデスクトップ上のアイコン「GCMS 分析」をクリックすると以下のようにGCMS制御プログラムを起動するその後「OK」ボタンをクリックする
図 77 GCMD分析用ソフトウェア「GCMS分析」の起動
まず「GC-MS分析」をクリック
「OK」ボタンをクリック
53
2)制御プログラムが起動されパソコンと GCMSの接続が開始される
図 78 「GCMS分析」の接続確認画面 3)GCMSとパソコンの接続が完了すると以下のような画面が表示される
図 79 「GCMS分析」操作画面
4)マススペクトルによる分子構造の解析 サンプル(この場合茶葉からの抽出物)には多くの物質が混じり合っていたがガス
クロマトグラフの分離カラムによりそれらの混合物が精度よく分離されるクロマトグラ
ムのピークはそれらサンプル中に含まれていた個々の物質を表しているクロマトグラム
のピークを選択することで分子構造解析したい物質を選んだことになる選択したクロマ
トグラムのピークの表している物質(ここではカフェイン)に対応するマススペクトルを選
択するマススペクトルは横軸が原子量で縦軸がその量を表しているのでマススペク
トルから分子構造を解析するために「定性処理」を行う シミラリティ検索結果が表示され分析により得られたスペクトルと類似のスペクトルを有
する物質の一覧が表示される上部に表示される物質ほどスペクトルが一致していること
を示す
接続状況が表示される
「トップへ」
をクリック
54
図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果
図 711 表示スペクトルのシミラリティ検索結果 10)図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果の印刷 「レポート(R)」をクリックし「検索結果(R)」をクリックすると検索結果が印刷される
GC-MS 分析で得られたマスス
ペクトル
データベース中
のマススペクト
ル
55
参考資料 生理活性物質の精製 カフェインの利尿作用のように生物活動に影響を与える物質を生理活性物質といいます
天然物には生理活性物質を多く含むものがあります一般に天然物は多くの成分を含ん
でおり特定の生理活性物質を分離抽出するには種々の分離技術が必要ですまた生
理活性物質には60以上の温度でその生理活性を失う(失活)ものや溶剤として広く用いられているクロロホルムなどの有機溶剤中で失活するものが多いそこでこれら生理活性
物質の分離精製技術の開発が望まれており30~60程度のマイルドな温度条件で操作できる二酸化炭素を機能性溶媒として利用する超臨界抽出も有効な分離技術として注目されて
いる超臨界二酸化炭素は気体と液体の中間の性質を持ち物質の分離に役立っています 臨界点付近の高密度気体は超臨界ガスまたは超臨界流体と呼ばれ臨界圧力前後でそ
の溶解能力が著しく変化することから工業的にも種々の分野で利用されています一例と
して超臨界二酸化炭素(SC-CO2)によるコーヒー豆からのカフェインの抽出プロセス(a)
ならびに超臨界二酸化炭素に対するカフェインの溶解度(b)を図に示します図(c)に示す
ように固体のカフェインがガスである超臨界二酸化炭素に溶解します
このように超臨界二酸化炭素を用いた技術はコーヒー豆からのカフェインの抽出プロ
ポリスからの生理活性物質の抽出に利用されています
図 超臨界二酸化炭素抽出を用いたコーヒー豆からのカフェインの抽出
56
付表 最小二乗法について 直線で近似する場合 f (x) = a0 + a1x (A1-1) 式(A1-1)のように近似させるとする測定値 yiとの残差を eiとすると式(A1-2)のようになる ei = yi - f (xi) = yi - ( a0 + a1xi ) (A1-2) ここで式(A1-2)の両辺を二乗してその i に関する総和をとりその値を S とすると次式となる
sumsum==
+minus==n
iii
n
ii xaayeS
1
210
1
2 )( (A1-3)
S を最小化するような a0a1を求める式(A1-3)を a0a1について偏微分すると次式とな
る
sum=
+minuspartpart
=partpart n
iii xaay
aaS
1
210
00)( sum
=
+minusminus=n
iii xaay
110 )(2 (A1-4)
同様にa1について編微分すると次式のようになる
sum=
+minusminus=partpart n
iiii xxaay
aS
110
1])([2 (A1-5)
Sが最小となる時は次式が同時に満たされる時である
00=
partpartaS
01=
partpartaS
(A1-6)
よって誤差が最小となる a0a1を求めるためには式(A1-6)を連立して解けばよい
sumsumsum===
+=n
ii
n
i
n
ii xaay
111
10 1 (A1-7)
sumsumsum===
+=n
ii
n
ii
n
iii xaxaxy
1
2
11
10 (A1-8)
式(A1-7)と式(A1-8)を a0a1を変数とみなし連立して解くと次式を得る
n組のデータ(xiyi)(i=12hellipn)に対して回帰直線 y= a0 + a1x を最小二乗法で求めて出力しデータ番号 iデータ yi直線で推定した値 )( ii bxay += および残差
iii yy minus=ε を出力するようなプログラムをつくりたい基礎式を導出せよ (ヒント残差の二乗の和が最小になるように係数 a0a1)を定めるのが最小二乗法
である)
57
sumsum
sumsumsumsum
==
====
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
n
ii
n
ii
xxn
xxyyxa
1
2
1
2
1111
2
0
)(
))(())(( (A1-9)
sumsum
sumsumsum
==
===
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
xxn
yxxyna
1
2
1
2
1111
)(
))(()( (A1-10)
よって式(A1-9)(A1-10)を用いれば最も誤差を小さくするような直線 y = a0 + a1x が求められる
y=a1x+a0 にて近似
誤差 ei
x
y
誤差が最小になる関数(直線 y=a1x+a0の場合)
図1 最小二乗による近似
誤差の和Sが最小
S
a0
a1
直線 y=a1x+a0 の近似
誤差の全体の和はS=Σei=Σyi-(a1xi+a0)
Sは変曲点にて最小値を示すすなわち(partSparta0)=0 (partSparta1)=0
図2 a0a1とSの関係
12
1) 酢酸溶液の濃度の測定(1日目レポートにこの図は不要) 酢酸 28mℓをメスシリンダにて採集しこれを 1000mℓメスフラスコに入れて蒸留水を加えて 1000mℓとしN2-酢酸を調整する
N2-酢酸より順次溶液500mℓをメスシリンダに取り1000mℓメスフラスコを用いて N4-N8-N16-N32-酢酸溶液を調整し500mℓ試薬瓶に保持する
滴定用のビュレットを N10-N100-水酸化 ナトリウム溶液で共洗いする(3回)
ビーカーに酢酸溶液を少量入れて共洗いを行う (3回)試薬瓶からビーカーに酢酸溶液を滴定に 必要な量だけ取り出す
ホールピペットをビーカーの酢酸溶液を 使用して共洗いを行う(3回)
滴定用の三角フラスコに酢酸溶液を分取する
滴定(滴定は同じ濃度の酢酸溶液を 3回 以上滴定して平均する)
酢酸溶液の濃度計算
滴定による酢酸濃度の決定
1000
1000vfNvx timestimes=times (33)
x酢酸の仕込み液濃度 [molℓ] v酢酸の仕込み液の分取量 [mℓ] NNaOHの規定度 [N] fNaOHのファクター [-] vrsquoNaOHの滴定量 [mℓ] 注)酢酸は 1価の酸なので 1molℓ=1N(1規定)
13
式(33)の使用例 酢酸の仕込み液の分取量 v =2 mℓ NaOHの規定度 N = 01 N NaOHのファクター f = 0998 NaOHの滴定量 vrsquo = 985 mℓ である場合 式(33)を利用して酢酸の仕込み液濃度 x[molℓ]を求める
1000
1000vfNvx timestimes=times
vvfNx
timestimes=
49202859998010 =timestimes= molℓ (この xが濃度 C または C0 です)
2)酢酸溶液と活性炭の接触のフローチャート(1日目) 共栓三角フラスコ(100mℓ)の空重量を 直示天秤にて正確に測定する
電子天秤にて活性炭試料約 1g測る
共栓三角フラスコ(100mℓ)に 活性炭試料約 1gを入れる
活性炭試料約 1gを入れた 共栓三角フラスコ(100mℓ) を直示天秤にてその重量を測る
共栓三角フラスコ(100mℓ)の前後の 差から投入した活性炭量を計算する
活性炭を入れた各々の三角フラスコに 各濃度の酢酸溶液 100mℓを正確にホ-ルピペットを用いて入れる(このとき 気泡が混入しないように注意する)
三角フラスコに栓をしてこれらを所定の温度に 設定した恒温槽に浸す浸した三角フラスコは 約 20分間隔で気泡が混入しないように注意して 振り混ぜるこの操作を約 2時間行う
14
3)吸着量の測定(2日目) 恒温槽の温度を測る
恒温槽から三角フラスコを一つずつ取り出す
各試料溶液を一つずつ手早くろ過する
活性炭
ろ液を滴定して平衡濃度を決定する
回収
吸着量の計算
Langmuirの吸着等温式Freundlich式のパラメータの決定
グラフの作成
吸着量の計算10001000 times
minus=
wCC
n (34)
n吸着量 [molg] C0 酢酸水溶液中の酢酸の濃度 [molℓ] C ろ液中の酢酸の濃度 [molℓ] w 活性炭の量 [g]
35 実験結果のまとめ方 実験結果は実験レポートを書く場合に考察と並んで重要な部分ですので主な注意事
項をここで説明しておきます グラフの作成n vs C nC vs C ln n vs ln C の 3つのグラフの作成 配布された Excel ファイルを利用し下図のような図を作成してみましょう
15
レポートの間違いやすい場所 ①表や図を示す場合次の例のように文章でもその旨を示す [実験結果] 共栓付三角フラスコに活性炭約 1g入れた試料の重量 w[g]を Table1に示す
Table1 調整酢酸濃度を入れる活性炭試料の重量 w [g]
酢酸規定度[N]
活性炭試料の質量w [g]
12 10300
14 10001
18 10126
116 10011
132 10109 酢酸(1)-水(2)-活性炭(3)の 12における吸着平衡の結果を Table 6および Fig1に示すただし活性炭 1gに吸着された酢酸のモル数 n[molg]は次式より求めた
( )10001001
0 timestimesminus=w
CCn b
C0仕込み液中の酢酸濃度 [molℓ] Cbバルク相中の酢酸濃度 [molℓ] w活性炭試料の質量 [g] n吸着量 [molg]
例えばCb=04621C0=04894w=10300の時は次のように計算できる
( ) 026501000100
0300114621048940 =timestimesminus=n
Table6 酢酸(1)-水(2)-活性炭(3)の 12における吸着平衡
吸着された溶質のモル数n[molg]
バルク相中の濃度Cb[moll]
00205 04621
00175 0241
00139 01139
00105 00519
00081 00243 ②得られた図や表の解釈(読者にそれらから読み取ってもらいたい事柄)の説明文を次の
例のように文章で記述する数字や図だけ示して読者に「理解しろ」というようなレポー
トではよくありません Table 6および Fig1よりバルク相中の酢酸濃度 Cbの増加にともない吸着量 nも増加することがわかったまた吸着量 n の値は酢酸濃度 Cbの増加にともない n=に漸近することがわかる
グラフ(Fig)は次ペ
ージに掲載すること
グラフや表の後にはそれらの結果より得られた知見を文章でも
記入すること
16
36 エクセルによる吸着データの整理法 注コンピュータの画面はWindowsXP上での操作になっています他の OS(Windows98 2000
NT)搭載のパソコンでも同様の作業が可能です) 先ほど問1で説明したように溶液濃度の濃度変化から吸着量 nを求めました実験では吸着後の水溶液中の酢酸の濃度 Cと吸着量 nの関係を各濃度の溶液(5種類)について測定しその値を計算します このようなデータの整理には表計算ソフトであるマイクロソフト社の Excelが便利です
Excel の起動方法はそのソフトがインストール(設定)されているコンピュータにより若干方法が異なることがありますがほとんど同じですここでは福岡大学の総合情報処理
センターのコンピュータの設定に従って説明します 表計算をしてみましょう セルとは セルというのは最小単位の四角のことです例えば「(Aの1)またはA1というセルセル
B1」のようにセルという言葉を使いますセル A1に1という数字を入れてみましょうセルA1をクリックしてキーボードから「1」と入力しキーボードの「Enter」キーを押します
図 5 Excelの入力例1 図 6 Excelの入力例2
次にセル B1に「5」という数字を入れましょう次にセル C1にセル A1と B1に記入された数値の和を表示させてみましょう 下の図のようにセル C1をクリックします上の「 fx 」と書かれた右のボックス(何かを書くところに)「 =A1+B1 」と書きましょうそして Enterを押すとセル C1に 6と表示されます
図 Excelを用いた関数計算 実験では吸着後の水溶液中の酢酸の濃度 Cと吸着量 nの関係を各濃度の溶液(5種類)について測定しましたこのデータに対してExcelを用いて表計算してみましょうまず先ほど記述したセル A1~A3は「Delete」(デリート)キーで値を削除しましょう
17
次にセル A5~A9に活性炭と接触する前の酢酸水溶液の初濃度 C0[moldm3]セル
B5~B9に活性炭と接触後分離した酢酸水溶液の濃度 C[moldm3]セル E5~E9に活性炭の質量 W[g]をキーボードから入力します作成した一例を次に示します
図 8 Excelによる吸着量nの計算 ここで1gの活性炭に吸着された酢酸の物質量n [mol]を式 (4)より計算できるのでセル C 5~C9に次の関数式を記述します式の内容としては
)( 0CCWVn minusminus=
となるように記述するので実際の Excelの関数としては次のように行います セル C 5をクリックし関数ボックス(fxの右)に「=(A5 ndash B5)01E5」と記述(半角または直接入力形式で)し「Enter」キーを押し確定しますこの関数はフィルハンドルを利用してセル C 6~C9にコピーしますただし実験で溶液は 100cm3使用しましたが
溶液の濃度 C が[moldm3]の単位ですので100cm3=01dm3 となり関数式の中では
V=01 dm3としています なおグラフの記述方法やフィルハンドルの使用方法については化学工学プログラミ
ングなどの補助資料を参考にして下さいまた実験の際に配布した Excel ファイル(ファイル名ad_graxls)を使用すると実験データの理論的な解析も容易にできますので試してみましょうExcelファイル(ファイル名)「ad_graxls」の使用方法は次節で説明します 36 実験結果の考察方法 (吸着実験について) 実験結果の考察方法は種々の方法がありますがここでは一例として理論と比較する
方法を示します実験結果として下図(左)のようなグラフができましたこのような実
験結果に対して理論的な考察を行ってみましょうここでは次節で説明するラングミュ
ア(Langmuir)の単分子吸着モデルで計算した理論線と実験と比較したものを下図右に示しますこの図を作る方法は次節で説明しますレポートの考察の部分はラングミュア
(Langmuir)の単分子吸着モデルの式の導出から書いて下さい 理論を作る場合幾つかの仮定をしますがその理論が多くの実験結果をうまく説明でき
ている場合その仮定がある程度妥当なものであったことがわかります指針書に書いてあ
った以外の理論についても興味があれいばためしてみましょう
セル C5をクリックし関数ボックス( fx の右)に「=(A5 ndash B5)01E5」と記述(半角または直接入力
形式で)します
18
ラングミュア(Langmuir)の単分子吸着モデルを用いて理論値を計算するには配布され
た Excelファイル(ファイル名)「ad_graxls」を使用すると便利ですその使用方法を以下に示します配布プログラムは化学工学プログラミングの講義の場合と同様に総合情報処
理センターの共通領域にあります各自コピーして使用して下さいコピーするには化
学工学プログラミングの講義の場合と同様にコピーしようとするファイルを共通領域から
自分の使用しているコンピュータのデスクトップにドラッグドロップします共通領域で
ファイルを開くとファイルの消去などで他の人が使えなくなりますので共通領域でファイ
ルをダブルクリックしないようにして下さい誤って共通領域でファイルをダブルクリック
した場合はそのファイルを閉じるボタンをクリックし閉じて下さい 各自のコンピュータに保存した Excelのファイル(ファイル名ad_graxls)をダブルクリ
ックして開きます自宅へ持ち帰る場合各自のフラッシュメモリーやフロッピーディスク
を使用しまたはメールを使用して添付ファイルで送信できます各自のフラッシュメモ
リーやフロッピーディスクに保存してあるファイルを再編集する場合はフラッシュメモリ
ーやフロッピーディスクをコンピュータの USB 端子またはフロッピーディスクドライブに挿入します次にデスクトップ上にあるマイコンピュータのアイコンをダブルクリックし
ます もしデスクトップ上に上のアイコンが無ければ画
面左下の「スタート」ボタンからマイコンピュータをク
リックしてくださいすると次のような画面が立ち上が
ります
ラングミュア(Langmuir)の単分子吸着モデルで計算した
理論線
19
その中からフラッシュメモリーの場合は「リムーバブルディスク」をフロッピーディ
スクの場合は「35インチ FD」のアイコンをダブルクリックしてくださいファイルが保存されていれば次の画面が出てきます
この画面の中の「ad_graxls」ファイルをデスクト
ップにコピーしますまず「ad_graxls」ファイルを左クリックしますこの時クリックした指はは
ずさないようにしますその状態のままデスクトッ
プまでファイルを移動させますそしてデスクト
ップ上の任意の場所でクリックした指をはずします
これでデスクトップ上に「ad_graxls」のファイルがコピーされましたのでデスクトップにコピーさ
れたファイルをダブルクリックして開きますコピ
ー操作が上手くいかなかった場合もう一度移動の操作を行ってください
必ずデスクトップにコピーしてから開く操作を行って下さいフロッピーディスクから直接
開いて操作を行った場合正しく保存されない可能性があります 「ad_graxls」のファイルを開くと次のような画面が立ち上がりますもし画面が違う場合は画面の下部にある「吸着データ」のタグ をクリックしてくださいこの画面
でデータの処理や計算を行いますでは実際の操作に入る前に予めこのファイルに名前
を付けて保存しておきますまずExcelの画面のツールバー「ファイル」から「名前を付けて保存」をクリックします下のような画面が起動します
20
ファイルの保存先を変えたい場合画面上部のボタンをクリックし保存先にデスクトッ
プを選択します次にファイル名の部分に各自ファイル名を入力しますファイル名は何
でも良いですが分かり易い名前にしておくとファイルの管理がやり易くなります日付や
数字を入れると同名のファイルをいくつも管理する場合に便利ですここでは「吸着実験デ
ータ整理 4月 01」とし「保存」ボタンをクリックします
ファイル名変更後Excelの画面上部のタイトルバーのタイトルが先ほどの名前(上の図とは異なります)になっていることを確認してください
この操作を行うことによって元のデータである「ad_graxls」を変更してしまう心配がなくなります元のデータである「ad_graxls」はファイルが破損しまたは間違った操作の結果を誤って保存してしまった場合などの補助ファイルとなりますので大切に保管しておいて
下さい今後配布するデータは先ほど説明した手順で名前を変えて保存し元のデータに
直接変更を加えないようにして下さい ここから実際の作業に入ります初期状態では模擬のデータが入力されています入力
データは予め計算しておいた酢酸濃度Cb[moll](濃度を Cと表示している場合もあります)と活性炭吸着量 n[molg]になります下の画面の丸で囲んだ部分がそれぞれの値でBCカラム(列)の 4~9行には数値が入力されています関数ではありませんこのデータを利用して実際のデータ解析を行ってみましょう下記のように行うと幾つかのグラフが
現れ実験データに対してラングミアーの単分子吸着を仮定したモデルを用いて精度よ
く計算線が描けることがわかります 今回はCbnの値を入力する必要はありませんExcelが自動的に計算を行って結果を表示するようになっていますつ
まりセル D5に「=B5C5」と関数を入力しこの関数に対してフィルハンド
ルを利用してセル D6~D9へコピーし
ファイルの保存先を変えたい場合画面
上部のボタンをクリックし保存先に
デスクトップを選択します
変更するファイル名はここをクリッ
クして書き換えます
名前を変更したらここをク
リックして保存します
21
まています 次に酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着量 n[molg]の関係および酢酸濃度 Cb[molL]と Cbn[gL]の関係をグラフ化します今回は自動的にグラフが作成されるようになっていますので複
雑な操作は必要ありません ここではデータに対してそれを精度よく表現する近似式をグラフ上に描きその関数
を数値として求める方法を Excelで練習してみましょう
グラフを表示させるには画面の下にある「Graph1」もしくは「Graph2」のタグ
をクリックします「Graph1」には酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着量n[molg]の関係のグラフが「Graph2」には酢酸濃度 Cb[molL]と Cbn[gL]の関係のグラフが表示されます「Graph2」はLangmuir の等温吸着式による相関を表したもので横軸に酢酸濃度 Cb[molL]をとり縦軸に酢酸濃度 Cb[molL]を活性炭吸着量 n[molg]で除した値 Cbn[gL]を示していますLangmuir の等温吸着式についてはこの後の章で説明してありますので各自読んで理解して下さいLangmuirの等温吸着式では式中の定数 ninfin(飽和吸着量)と K(吸着平衡定数)を実験データから最小二乗近似で決定する場合が多くありますここでは
その例を取り上げてデータに対してそれを精度よく表現する近似式をグラフ上に描き
その関数を数値として求める方法(最小二乗法最小二乗については付録に示しており
また化学工学プログラミングの講義においても説明します)を Excelで練習します 配布された Excel ファイル「ad_graxls」では実験点が表示されているだけでそれを精度よく表現する近似式の直線のグラフは「Graph2」に表示されていません今から次の手順で「Graph2」の図(グラフ)に近似式の直線のグラフを表示しますExcel の場合近似曲線(ここでは直線)を求める場合コンピュータが自動的に最小二乗法を使って近似曲線
を計算しています
「Graph1」の画面 「Graph2」の画面
Excelの sheetが表示されたらまずファイル名を変えデスク
トップに保存して下さい次
にGraph2のタックを左クリックして最小二乗法のグラフを
確認して下さい
22
38 Langmuirの等温吸着式による相関 はじめにLangmuir式の定数 ninfinと Kを決定するために「Graph2」酢酸濃度 Cb[molL]と
Cbn[gL]の関係のグラフから最小二乗法により直線の式を求めますExcelを用いてデータに対して近似直線のグラフを描き最小二乗法の直線の式を求めます
次のような「近似曲線の追加」のウィンドウが現れたら今回は線形近似(直線で近似
y=ax+b の式)を選びますので線形近似が黒色に反転していることを確認して「近似曲線の追加」のウィンドウの右下の「OK」ボタンをクリックして下さい
実験点の何れかにポインタをあわせて
右クリックする
近似曲線の追加(R)を選択して左クリックする
「線形近似」であること
を確認して「OK」ボタンをクリックします
23
「近似曲線の書式設定」
のウィンドウでオプシ
ョンから「グラブの書式
を表示する」の前を選ん
でチェック(前のチェッ
クボックスをクリック)
した後「OK」を押す
現れた直線にポインタをあわせて
左クリックすると「近似曲線の書式
設定」のウインドウが表示されます
ここをクリックします
この「オプション」のタ
グをクリックします
「y=」の関数
が現れるのでここ
をクリックする
式の文字フォントが初期値
「8」と小さいのでここ
のボタンをクリックし
フォントサイズを選ぶリス
トボックスを表示し「22」程度の大きなサイズを選択
しクリックする
24
「Graph2」酢酸濃度 Cb[molL]と Cbn[gL]の関係のグラフから最小二乗法により直線の式がこのように求められましたExcel を用いてデータに対して近似直線のグラフを描き最小二乗法の直線の式を求めるこの方法は他の実験データの解析などにも利用できますので
各自活用して下さい 表示された関数式「y=43865+2654」はノートにメモして下さいこの傾き 43865と
切片 2654からLangmuir式の定数 ninfinと Kを決定します決定方法の詳細はこの後の 36 の Langmuir式のパラメータ決定法に示しています ラングミュアの等温吸着式を変形すると次式となる
CCnKnCKn
CCKn
Cβ+α+
==
+= infininfininfin
11)1(
ただしα=1ninfinβ=1(ninfinK)とするこの式より Cnを縦軸Cを横軸とした関係のグラフは傾きα=1ninfin切片β=1(ninfinK)の直線関係を与えることを示しています そこでExcelのシートを利用してこの値からLangmuir式の定数 ninfinと Kを次のように決定しますセル C18D18に Graph2で求めた数値 2654と 43865を代入しますその後D19と C19に関数を ldquo=1D18rdquoとrdquo=D18C18ldquoを代入しますセル内の式は半角で入力してください
現れた関数の文字フォン
トを大きく(例えば 22)してその数字をメモし
吸着データシートの C18と D18に記入する
C18D18 に Graph2 で求めた値 2654 と 43865 を代入した後D19 と C19 に関数を ldquo=1D18rdquoとrdquo=D18C18ldquoを代入する
25
この Excel表示では最小二乗法を用いて決定した傾きαと切片βを用いて α=1ninfin=43865 β=1(ninfinK)=2654 得られた傾きおよび切片よりninfinおよび Kは次のように求まる
ninfin=1α=1D18=000228 molg-1 K =(1ninfin)β=αβ=D18C18=165
つまりセル D19にはninfinの値がセル C19にはKの値が表示されますこれらの値はラングミュア(Langmuir)の単分子吸着モデルで計算した理論線と実験と比較する場合に利用します実験結果に対して理論的な考察を行う例としてラングミュア(Langmuir)の単分子吸着モデルで理論線を計算し実験と比較するにはこの Excelファイルを利用して次のように計算しグラフに表示します セル F5~F30 には溶液中に残る酢酸濃度 Cb[molL]に対する活性炭に吸着された吸着量n[molg]の関係のグラフ「Graph1」の横軸の酢酸濃度 Cb[molL]の適当な値が既に入力してありますこれらのそれぞの酢酸濃度 Cb[molL]に対する吸着された酢酸の吸着量 n[molg]の理論値をラングミュア(Langmuir)式で計算しますラングミュア式は次式で与えられます
KCKCnn
+=
infin
1 (310)
ここでこの実験データを最も精度よく計算できるように決定した ninfinおよび K は上述のようにninfin=1α=1D18=000228 molg-1 K =(1ninfin)β=αβ=D18C18=165 でありこれらの値はセル D19にninfinの値がセル C19にKの値が表示されていますこの値を利用して「Graph1」に計算線を描くにはまずセル G5~G30 にセル F5~F30 のそれぞれの酢酸濃度 Cb[molL]に対する吸着された酢酸の吸着量 n[molg]の理論値をラングミュア式で計算しますそのためにはセル G5 にラングミュア式を次のように記述しますただしセル D19の ninfinの値セル C19の Kの値は常に同じセルから参照するので絶対参照($マークを付けて$D$19 $C$19と記述します)で記述します
Langmuir式をセル G5に記述するただし濃度はF5の値を相対参照しD19と C19は絶対参照($マークが必要)することを忘れないように
セルG5に記述すべき数式
=$D$19$C$19F5(1+$C$19F5)
26
G5記述後フィルハンドルを使用してG5の関数を G6~G30までコピーします Sheet1から Graph1 のタグをクリックしGraph1 に計算線が表示されたことを確認しましょうこれでラングミュア式によるデータの解析は終了です実験値と理論値を比較して現象
について考察してみて下さいラングミュア式を理論的に導く場合にある仮定をしている
のですがその仮定をしているラングミュア式が実験データを精度よく計算できていれば
その仮定が妥当なもとであったと考察できます 与えられたモデルデータでラングミュア式によるデータ解析ができれば他の理論(例え
ばフロインドリッヒFreundlich式や BET式レポートはどちらか一方でも可です) についてもExcel で計算してみましょうレポートには自分のデータについてここで行った内容と同様に計算しその結果を考察に記述して下さい 自分のデータについて同様の計算をするにはまずいままで計算を行った Excel ファ
イルを保存しますデータを自分の実験データに置き換える前に Excel ファイルをさらに別の名前で保存します与えられた Excel ファイルは初期状態では模擬のデータが入力されているので今回自分達の実験したデータを入力していきます入力するデータは予め計算
しておいた酢酸濃度 Cb[moll]と活性炭吸着量 n[molg]になります下の画面の丸で囲んだ部分にそれぞれ自分の実験データを入力していきます
今回はCbnの値を入力する必要はありませんExcelが自動的に計算を行って結果を表示するようになっています 次に酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着
量 n[molg]の関係および酢酸濃度Cb[molL]と Cbn[gL]の関係をグラフ化します今回は自動的にグラフが作成
されるようになっていますので操作は必
要ありません 39 Freundlichの等温吸着式による相関 今回の実験で得られた酢酸濃度 Cbと活性炭吸着量 nのデータを利用してFreundlichの等温吸着式の定数 abの値を求めFreundlichの等温吸着式の理論線をグラフに追加します ここでFreundlich式は次式で表されます
bbaCn1
=
このままでは定数 abの値を決定することが難しいので上式の両辺の対数をとり線形化しますすると次式となります
bCb
an ln1lnln +=
ここでln Cbと ln nの関係をグラフにプロットすれば傾き 1b切片 ln aの直線関係が得られますしたがって実験データである酢酸濃度 Cbと活性炭吸着量 nの値の対数をそれぞれ計算します配布した「ad_graxls」ファイルを開き「吸着データ」シートの任意の部分に以下のような表を作成します
27
次にln Cb[-]の列の最初のセルに以下の数式を入力します
=ln(B5) 上式中の「B5」は Cb の値の最初のセルの位置を指します各個人の位置によって変更してください
次にln n[-]の列の最初のセルに以下の数式を入力します
=ln(C5) 上式中の「C5」は nの値の最初のセルの位置を指します各個人の位置によって変更してください
ここでln Cb[-]ln n[-]の値に対しそれぞれオートフィルを行い計算させますすると以下のようなデータが完成します
計算した ln Cb[-]ln n[-]の値をグラフにプロットし最小二乗法による直線式を求めます
28
ここで以下のような直線の式が得られたとします
9135ln31690ln913531690 minus=there4minus= bCnxy
上式より切片は-5913傾きは 03169となるので以下の要領で定数 a1bを計算します ==there4minus= minus 91359135ln eaa 000270
316901=
b
a の値を Excel で計算させる場合は任意のセルに以下のような数式を入力することで求めることができます
=exp(-5913) これでFerundlich等温吸着式の定数 a1bの値が決定しましたこの値は後で使うのでノートなどにメモしておいてください 次に決定した Ferundlich 等温吸着式の定数 a1b の値を用いてFerundlich 等温吸着式のグラフを作成します先ほども示したように Ferundlich等温吸着式は次式で表されます
bbaCn1
=
従って定数 aと 1bの値はすでに決定しているので任意の Cbの値に対する nの値を数点求めればFerundlich等温吸着式で求めた理論線が得られます以下の操作で理論線を引くことができます Langmuir 等温吸着式による相関のときと同様にExcel の「吸着データ」のシート上の任意の場所に以下のような表を作成します
次に Ferundlich等温吸着式に従いnの値を計算します
bbaCn1
=
式中の定数 a1bは先ほど計算した値を用いますしたがって式は次のようになります
31690002700 bCn times=
この式を Excelのセル内に記入すれば計算ができます次の
29
ように記入します
=00027G5^03169 ここで式中の「G5」は Cbの値が 0のセルを指しています各個人の位置によって変えてください 次に式を記入したセルを Cbの値が 05のところまでオートフィルを行いますそうするとすべての Cbに対して nの値が計算されます
これで Freundlich等温吸着式のデータが完成しましたので次に「Graph1」酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着量 n[molg]の関係のグラフにこのデータを追加し理論線を引きます理論線の引き方は Langmuirによる相関のときと同様の操作を行ってください グラフの書式等を変更し整理すると以下のようなグラフが出来上がります
310 吸着等温線とは 固体の吸着剤を溶液と接触させる時一定量の吸着剤によって吸着される溶質の量は温度一定ならば溶質の濃度の関数になる一定温度での吸着量を温度に対してプロットした時に
得られる曲線を吸着等温線というこの吸着等温線を比較的よく表す経験式として次の
Freundlich式がある
n=aC1b (1) ここで n は吸着剤の質量あたりの吸着量C は吸着平衡濃度a と b は実験から決定されるパラメータであるがその物理的意味は多少希薄である これに対し理論的な意味を持つものに次のラングニュア(Langmuir)の吸着等温式がある
30
KCKCnn
+=
infin
1 (2)
ただしninfinは飽和吸着量Kは吸着平衡定数であるこの式は
1)吸着分子が固体表面で単分子以上の厚い層を作ることはない 2)吸着分子同士の間の相互作用はない
という二つの仮定にもとに導かれたものである 結果の整理および報告 Freundlich吸着等温式Langmuir吸着等温式の各々のパラメータの最適値を求めよまた活性炭の吸着特性および表面積について考察し化学工学における吸着操作の重要性につい
ても検討せよ 311 吸着等温式 (a) ヘンリー(Henry)型吸着等温式 液相の濃度あるいは気相の圧力が小さい場合吸着分子間の距離が十分に長いため吸着
分子同士の相互作用が無視でき固体表面と吸着分子のみの相互作用で吸着量を決定できる
とき次式のように表される
n=KC (3)
ここでKは比例定数である図 3-1の(a)に示すように濃度 Cと吸着量 nは比例関係があり一般に吸着量が小さい範囲で成立する気体の場合は溶液濃度 Cの代わりに気相圧力 pを用いればよい
濃度(分圧)
濃度(分圧)
濃度(分圧)
濃度(分圧)
吸着量
吸着量
吸着量
吸着量
(a)ヘンリー型 (b)ラングミュア型
(d)BET型(c)フロインドリッヒ型
0
0
0
0
図 3-1 吸着等温式
31
(b)ラングミュア(Langmuir)型吸着等温式 ラングミュアは図 3-2 に示すように固体表面に同等な吸着力を示す吸着サイトがあり
表面に 1分子層だけ吸着する(単分子層吸着)と仮定して平衡状態における吸着量と溶質濃度(気相分圧)のと関係を導いた全吸着点のうち吸着分子に覆われている吸着点の割合
をθ[-]とすると分子の脱着速度 rrsquo[mols-1]はθに比例する比例定数を a[mols-1]とすると次式のように表される
吸着剤
吸着分子
吸着サイト
図 3-2 固体表面上の吸着サイト(Langmuir式の導出) r=aθ (6) また気相からの吸着速度 r[mols-1]は空いている吸着点の割合(1-θ)[-]と溶液濃度 C[molm-3]に比例する rrsquo= b(1-θ)C (7) このときの比例定数を b[m3s-1]とするまた平衡状態では両速度は見かけ上等しいため以下の式が成り立つ aθ=b(1-θ)C (8) これを変形する
CbaCbsdot+
sdot=θ (9)
ここで飽和吸着量を ninfin[molkg-1] ba を K[m3mol-1](Kは吸着平衡定数)とおくと infin=nnθ
となるので次式が得られる
32
KCKCnn
+=
infin
1 (10)
これをラングミュア式と呼ぶ
(c)フロインドリッヒ(Freundlich)型吸着等温式 フロインドリッヒの吸着等温線は図 3-1(c)のように示される
n=aC1b (11) nは吸着量[molkg-1]で aと bはともに吸着定数[-]である (d)BET(Brunauer-Emmett-Teller) 型吸着等温式
BET型の吸着等温線は図 3-1(d)に示されるラングミュア式は表面に 1分子層だけ吸着すると仮定したものであるがBET式は無限分子層まで吸着できる式である図 3-3に示すように吸着した分子がそれぞれ次の層の吸着サイトとなり分子は積み重なって多分子
層に無限層まで吸着できるものとし各層への吸着にラングミュア式を適用すれば次式の
ように表せる
( ) ( )CKCCCKqq
minus+sdotminussdotsdot
=infin
11 (12)
この式は多孔質固体の細孔表面積を窒素ガスの吸着によって測定する際に利用される重要な式
である
表面の吸着サイト
分子上の吸着サイト
図 3-3 多分層吸着モデル
Langmuir式のパラメータ決定法 水溶液からの酢酸の活性炭に対する吸着平衡データ(吸着平衡温度 12)は表 3-1のよ
うに与えられる実験データよりラングミュア式のパラメータ(K吸着平衡定数ninfin飽和吸着量)を最小二乗法で決定せよさらにラングミュア式より決定した ninfinKの値を用いて吸着等温線を計算し計算線として図に示し実験点と比較せよ
33
表 3-1 n C Cnの関係
ラングミュア式は式(310)で与えられるこの式を変形すると次式となる
CKnCK
n infinsdot+
=11
(313)
両辺に Cをかけると以下の式が導出される
CCnKnCKn
CCKn
Cβ+α+
==
+= infininfininfin
11)1( (314)
ただしα=1ninfinβ=1(ninfinK)とする式(314)より Cn と C の関係のグラフプロットは傾きα=1ninfin切片β=1(ninfinK)の直線関係を与えることを示している表 3-1の値を用いて計算した Cnと Cの関係を表 3-1および図 3-4に示す 最小二乗法を用いて傾きαと切片βを決定した α=1ninfin=43865 β=1(ninfinK)=2654 得られた傾きおよび切片よりninfinおよび Kは次のように求まる
ninfin=1α=1D18=000228 molg-1 K =(1ninfin)β=αβ=D18C18=165
0
50
100
150
200
0 200 400 600
C [ molm-3 ]
Cn [ kgm-3 ]
傾き = 1 ninfin
1 ninfinK
切片0
05
1
15
2
25
3
0 100 200 300 400 500
液相の溶質濃度 C [ molm-3 ]
吸着量 n [ molkg-1]
液相と溶質濃度 C [ molm-3 ]
吸着量
n[ m
olk
g-1]
実験点
Langmuir式パラメータninfin 00033 [ molg-1 ]K 00086 [ m3 mol -1 ]
図 3-4 ラングミュア定数の決定 図 3-5 12における酢酸濃度 Cと
吸着量 nの関係
C [molm-3] n [molkg-1] Cn [kgm-3] 460 225 109 529 214
268 199 149 105 060
172 128 732 504 357
34
Freundlich式のパラメータ決定法 酢酸水溶液中における酢酸の活性炭に対する吸着実験を行ったところ以下のような実験デー
タを得たただしCbはバルク相における酢酸濃度n は活性炭に対する酢酸の吸着量を示す
Cb[molL] n[molg] log10Cb log10n 04621 000205 02410 000175 01139 000139 00519 000105 00243 000081
実験データを利用して次式で与えられる Freundlichの等温吸着式の定数 abの値を求めたい
bbaCn1
= (1)
このままでは定数 abの値を決定することが難しいので上式の両辺の対数をとる
bbb
bb
Cb
aCa
aCn
ln1lnlnln
)ln(ln1
1
+=+=
=
(2)
ここで横軸に ln Cb縦軸に ln nの関係をグラフにプロットするすなわち x=ln Cby=ln nと考える
bCb
an ln1lnln += (3)
ここで直線式 y=a0+a1xと比較するすなわち
)(1)(ln
1
00
傾き
切片
ba
eaaa a
=
=rarr= (4)
a0および a1は最小二乗法により数値で求められる与えられたデータでは a1= a0= なので a= b= となる この値を n=acb
1bに代入してcb=0~05の範囲で nの値を計算する
35
BET式のパラメータ決定法 BET式は次式で与えられる
)1)(1( KCCCKCnn
+minusminus=
infin
(17)
以下のように BET式の変形を行う
)1()1(
KCCKCnCn+minus
=minusinfin
(18)
(18)式の逆数をとると
KCnCK
KCnKCC
Cn infininfin
minus+=
+minus=
minus)1(1)1(
)1(1
(19)
(19)式の両辺に Cをかえると
KCnCKC
CnC
infin
minus+=
minus))1(1(
)1( (20)
(20)式を変形すると次式が得られる
CKn
KKnCn
Cinfininfin
minus+=
minus11
)1( (21)
C と)-(1 Cn
Cのプロットは傾き
KnKinfin
minus1切片
Kninfin
1の直線関係を与えることを示している
これをグラフにプロットし最小二乗法に傾きおよび切片を求める
36
312 活性炭の比表面積の決定 酢酸分子の構造を以下に示す
Hc-Cb-Ca
Hd
Hb Oa
Ob-Ha
1219deg
Ca Oa
Ob
図 36 酢酸の構造
酢酸の 1分子の吸着面積srsquo [m2]を図 3-6に示すこのとき文献より
Caと Oaの結合距離 1321Å Caと Obの結合距離 1206Å OaCaObの角度 1219deg Cの原子半径 077Å Oの原子半径 062Å
したがって吸着面積 Slsquoは次のようになる
( ) ( ) 2088 10376109931036321 minusminusminus times=timestimestimestimes=s m2
ここで活性炭の比表面積 S[m2g]は次式で示される 10026 23 snS timestimestimes= infin
S活性炭の比表面積 [m2g] ninfin飽和吸着量 [molg] srsquo酢酸 1分子の吸着面積 [m2] 602times1023アボガドロ数 [個mol] したがって活性炭の比表面積 S[m2g]は
003350=infinn molg 2010376 minustimes=s m2 より
51281037610026003350 2023 =timestimestimestimes= minusS m2g
37
4 粘度密度測定 41 はじめに 大量生産を目的とした工業的化学プロセスはほとんど流れ系(流通系)であるそれらの系において操作対象となる各物質の粘度は装置を設計操作する場合きわめて重要
な物性値である 本実験では低分子溶液および高分子溶液の粘度測定を通じて液体の粘度について考察するさらに演習問題を通じて気体液体高分子溶液などの化学プロセスで対象となる物
質の輸送物性(粘度拡散係数)の重要性を認識されたい 42 低分子溶液の粘度 [目的] 種々の濃度のエタノール水溶液の粘度を測定しその溶液の粘度について考察する [概要] 25におけるエチルアルコール濃度 02040506080100 wt の水溶液について流下時間を測定しこの結果より相対粘度絶対粘度運動粘度を求めグラフにするま
た水の密度水-エチルアルコール溶液の密度についてはピクノメーターを用いて決
定する報告書には相対粘度絶対粘度運動粘度 vsエチルアルコール濃度の関係をそれぞれグラフにして提出する
[計算方法] 相対粘度絶対粘度運動粘度の定義は次のようになる
相対粘度 ww
w tdtd
ηη = (41)
η 混合溶液の粘度 [gcms] ηw水の粘度(8007times10-3 gcms) [gcms](25における粘度) d エチルアルコール水溶液の密度 [gcm3] dw水の密度(099704gcm3) [gcm3](25における密度) t エチルアルコール水溶液の流下時間 [s] tw水の流下時間 [s] 下付添字 W 水
絶対粘度 www td
tdη
η= (42)
運動粘度 ν=ηd [cm2s] (43)
38
[実験方法] 1) 粘度計を洗浄し粘度計内 に二連球で空気を送り込み
乾燥させる乾燥しにくい 場合はアセトンを滴下し た後再度二連球で空気 を送り込み乾燥させる 2)ピペットで一定体積(10mℓ) の純水を取り広い口 f から 粘度計に水を入れる 3)粘度計を恒温槽(25)に つけ約 10 分静置する 4)安全ピペッターを口 a に 取り付け液面が b 上部に 到達するまで吸い上げる 5)安全ピペッターを外すと 液面が降下しだす液面が bd 間を通過する時間をスト ップウォッチで測定する
6)純水での測定を 3 回繰り返す 7)純水を粘度計から取り除くその後粘度計内に二連球を用いて空気を送り込み乾燥させる 8)粘度計乾燥後複数の濃度に調整済みのエチルアルコール水溶液(10mℓ)を粘度計にいれ4)~6)の作業を繰り返し行う(3 回)なお濃度の異なるエチルアルコール水溶液を粘度計内に導入する場合には7)と同様に二連球を用いて粘度計内に空気を送り込み乾燥させる
表 4-1 エチルアルコール水溶液の濃度密度相対粘度の関係 エチルアルコール濃度
[wt] 密度 d[gcm3] 相対粘度
η ηw[-] 0
20 40 50 60 80
100
安全ピペッター接続
図 4-1 粘度計
液面の bd間の通過時
間を測定
f
39
43 密度測定 [目的] 本実験では水とエタノールの種々の組成の混合液体について密度を測定し分子間相互
作用について考察する [実験方法] 1)ピクノメーターの容積測定
図 4-2のピクノメーターの空の重量 wg を秤量する
ピクノメーターの蓋を取り外し
ピクノメーターを水で満たす
設定温度を 25として恒温槽 の電源を入れ恒温槽内の温 度が一定になるまで待つな お水温は恒温槽中の水銀温 度計から読む
恒温槽中に水を満たしたピク
ノメーターを入れる
約 10分間静置する
ピクノメーターに蓋をするこのときピクノメーターの容量
よりも余分の水は蓋の上部より排出される
ピクノメーターの外側を乾いた布で拭い秤量する(その重量を
wwg とする)
恒温槽の温度(25)における水の密度 dwgcm3(=099704gcm3)
より次式を用いてピクノメーターの容積を求める
w
w
dww
Vminus
= (44)
図 4-2 ピクノメーター
蓋
40
表 4-2 エチルアルコール水溶液の濃度と密度の測定結果(25) エチルアルコ
ール濃度[wt]
wrsquo[g] ww[g] V[cm3] w[g]
d[gcm3]
0 20 40 50 60 80
100
099704
エチルアルコール濃度[wt] 空のピクノメーターの重量 wrsquo[g] 水を入れたときのピクノメーターの重量 ww[g] ピクノメーターの体積 V[cm3] エタノール水溶液の入れたときのピクノメータの重さ w[g] エタノール水溶液の密度 d[gcm3]
容積 Vを求めたピクノメーターに混合溶液(調整済み)を入れてその重量 wgを秤量し次式で混合溶液の密度を求める
Vwwd minus
= (45)
エタノール濃度と密度 d の関係をグラフにプロットする
41
44 高分子溶液の粘度 [目的] 高分子溶液の粘度測定から分子量の粘度に与える影響について考察する [概要 ] オストワルド粘度計を用い種々の濃度のポリビニルアルコール(PVA ((-CH2CHOH-)n))水溶液の粘度を測定し粘度データよりポリビニルアルコールの分
子量を求める まず 05g100cc の濃度のポリビニルアルコール水溶液を調製する次にこれを原液
とし23 12 13 15の濃度の溶液を調製するこれらの溶液についてオストワルド粘度計を用いてそれぞれ流下時間を測定し相対粘度絶対粘度運動粘度を求め実験デ
ータより極限粘度[η]を求めるまた報告書には相対粘度絶対粘度運動粘度C
)ln( wηη
Cw
w-η
ηη vsポリビニルアルコール濃度の関係をそれぞれグラフにして提出する
[計算方法] エチルアルコール水溶液の粘度測定と同様の手法を用いて粘度の計算を行うなおポリビニルアルコール水溶液の密度はピクノメーターを用いて測定すること 表 4-3 ポリビニルアルコール水溶液の濃度密度相対粘度の関係 ポリビニルアルコール
濃度 [g100cc] 密度 d[gcm3] 相対粘度
η ηw[-] 05times(15) 05times(13) 05times(12) 05times(23)
05
42
[分子量の計算方法] 実験を行った結果以下のような粘度データを得られるとする実験データより極限粘度
を求めポリビニルアルコール(PVA)の分子量Mを決定せよ
PVA 水溶液濃度
C[g100cc]
相対粘度
ηηw[-]
絶対粘度
η[gcms]Cw
w-η
ηη
C)ln( wηη
05times(15) 1031 0008255 031 0305
05times(13) 039 0378
05times(12) 03 0289
05times(23) 0375 0353
05 0364 0334
ηw=8007times10-3 gcms 線状高分子の極限粘度[η]と分子量Mの関係は次式で与えられる [η]=KMα (46) ただしポリビニルアルコールの場合K=666times10-4α=064であるなお極限粘度[η]は次式で定義される
CC w
w
0
-][ limη
ηηη
rarr
= (47)
または
CC
)ln(][ w
0lim
ηηη
rarr
= (48)
よって濃度 CとCw
w-η
ηηまたは濃度 Cと
C)ln( wηη の関係をグラフ化し最小二乗法によ
り切片の値を求めると極限粘度[η]が決定される
Cw
w-η
ηηと C の関係より最小二乗法を用いて切片の値を決定すると(図 43 参照)切片=
03242傾き=00874となるよって極限粘度は以下のようになる[η]=03242同様
にC
)ln( wηη とcの関係より最小二乗法を用いて切片の値を決定する
(図 44参照)と切片=03249傾き=00256となり極限粘度は以下のようになる[η]=03249
Cw
w-η
ηηと Cの関係より決定した[η]=03242を用いてポリビニルアルコール(PVA)の
分子量 Mを計算する(46)式より以下のように PVAの分子量 Mを計算することができるM=([η]K)1α
=(03242(666times10-4))(1064)
=15811
43
y = 00874x + 03242
0
02
04
06
08
1
0 01 02 03 04 05 06 07
c[g100cc]
(η-ηw)(ηwc)
cw
w
η
ηηminus
極限粘度[η]
図 43 298Kにおける PVA濃度 CとCw
w-η
ηηの関係
y = 00256x + 03249
0
02
04
06
08
1
0 01 02 03 04 05 06 07
c[g100cc]
(ln(ηη
w))c
c)ln( wηη
極限粘度[η]
図 44 298Kにおける PVA濃度 CとC
)ln( wηη の関係
44
5 植物からの DNAの抽出 51 はじめに 分子レベルでの遺伝子の構造解明や遺伝子の発現に関する研究は近年急速に発展している
これら生命現象のしくみを分子レベルで解明しようという分子生物学の分野ではさまざま
な遺伝子の解析や応用方法が開発され我々の生活に身近なものになりつつある 本実験では初歩的な分子生物学に関する実験として植物(タマネギ)からの DNA の
抽出を行い抽出した遺伝子の電気泳動法による分離実験を試みる 52 試薬および器具 試薬 タマネギ(細胞中から遺伝子の抽出を行う) 台所用洗剤(洗剤中に含まれる界面活性剤には植物の細胞膜およびタンパク質を破壊す
る働きがある) 塩化ナトリウム(DNAは塩化ナトリウム水溶液に溶解し易い性質がある) エタノール(予め冷やしておくDNAはエタノールにほとんど溶解しない) 制限酵素(DNAを一定の部位で切断する働きを働きがある) TE緩衝液(pH緩衝剤が入った溶液) 器具 ビーカーミキサーフィルターメスシリンダー駒込ピペットガラス棒 マイクロピペット電気泳動装置ポラロイドカメラ 53 実験方法 1)タマネギは 1回の実験で半個のうち内側の半分程度を使用するタマネギ水 30ml台所用洗剤数滴をミキサー用ガラス容器に入れ40~60秒程度(固体状のタマネギがなくなる頃が目安)ミキサーにて混合する
2) 1)で作成した混合溶液をビーカーに移し約5g程度の塩化ナトリウムを加えガラス棒で静かに攪拌する粘性の大きな溶液が得られる
3) 2)で作成した溶液をフィルターを用いて濾過し濾液を回収する 4) 濾液の約2倍程度の量の冷エタノールをビーカーの壁伝いに静かに注ぐ 5) ビーカーを揺するとエタノール層に白くふわふわしたものが浮いてくるこれが DNAであるガラス棒で DNAを巻き取りシャーレ上にて DNAを回収する顕微鏡を用いて回収した DNAの状態を観察する
6)マイクロチューブ(容量 15ml)中に用意した 70エタノールを 8 分目程度まで注ぐ5)にて回収された DNAをマイクロピペットを用いて70エタノールの入ったマイクロチューブ中に移す軽く混ぜることによりDNA から不要な物質を洗い流す遠心分離してDNA をマイクロチューブの底に沈めた後溶液を捨てて DNA を乾かす乾いたらTE緩衝溶液を 1ml加えて放置するDNAの溶液が得られる
54 電気泳動装置による DNAの観察
本実験は職員と一緒に行うこと 実験を行う人はビニール手袋をすること 1) 抽出した DNAを電気泳動装置で観察するマイクロピペットを用いて以下のように調製した DNAの混合溶液を調製する(いずれの溶液も調製済)
45
2) マイクロピペットを用いてアガロースゲルの試料を流し込む穴(ウェル)に1)にて調製した溶液 Aおよび Bを注ぎ込む注入量は20μℓとする電気泳動装置のスイッチを入れて100Vの電流を流しアガロースゲル内にて DNAを電気泳動させる
3) 試料に予め加えられておいた青色の色素が 7 分目程度まで進んだら電気泳動を中止する(約 30分程度)
4) (ここでの作業は職員が行う) アガロースゲルを取り出し染色液に浸す染色後ゲルを取り出しポラロイドカメラで
DNAの泳動状態を撮影する
+ -
アガロースゲル
試料を流し込む穴(ウェル)
図 51 電気泳動装置
6 5 4 3 2 1
図 52 DNAの電気泳動写真の一例
55 電気泳動装置の原理 電気泳動装置の原理図を以下に示すアガロースゲル(寒天から不純物を除いたもの)中
に DNAをセットし電流を流すとDNAは電流の向きとは逆にマイナスからプラス方向
調製済 溶液 A(制限酵素なし) 水 11μℓ 10timesH Buffer 2microℓ 植物 DNA 5μℓ
調製済 溶液 B(制限酵素 Eco RI入り) 水 11μℓ 10timesH Buffer 2microℓ 植物 DNA 5μℓ 制限酵素 2μℓ
1 DNA(タマネギ)+制限酵素 2 DNA(タマネギ)+制限酵素 3 DNA(タマネギ) 4 λ-DNA(大腸菌)+制限酵素 5 λ-DNA(大腸菌) 6 サイズマーカー
500bp
46
に動く(このことを電気泳動という)これはDNA のリン酸部分が負に帯電しているためでありまたDNAはその長さにより泳動距離が異なる(短い遺伝子ほど長く泳動する)電気泳動ではこの性質を利用してDNAを大きさごとに分離することができる
塩基対数によってDNAを分離
EtBr (蛍光試薬)DNAの二本鎖内に入り込む
発光
UVλ=302nm
励起
分離後のアガロースゲルをエチジウムブロマイド(EtBr)溶液に浸す
DNAを含んだ溶液
アガロースゲル
リン酸部分が負に帯電
塩基 (ATGC)-
+
カメラで撮影
電圧
DNA構成成分(dNTPs)
バンドが明る
DNA量が
バンド(DNAの存在)
図 53 電気泳動の原理
56 制限酵素とは DNA は4 種類のヌクレオチド(GATC)が不規則につながってできている制限酵素はDNAの特定のヌクレオチドが並んでいる部分を切断する制限酵素には様々な種類がありEco RI(エコアールワン)と呼ばれる酵素は「GAATTC」といった並びの部分だけを切断することができる
GAATTC
CTTAAG
制限酵素
Eco RI
AAGCTT
TTCGAA
制限酵素
Hin dIII
図 54 制限酵素による DNAの切断
レポートについて 1 実験方法および実験結果の整理方法については指針書を参考にすること 2 実験結果については電気泳動の結果について考察すること(制限酵素の影響などにつ
いてまとめてください)
47
6 染色実験
61 はじめに
現在私達の身の周りでは様々な染料が使われている例えばT シャツやジーンズな
どの衣服は橙黄赤青など様々な色に染められている他にも私達が気付かないと
ころで多くの染色された製品を使用しているそこで本実験では高校の化学で学んだ
アゾ染料を合成してみるアゾ染料はアニリンを原料として作られているアニリンはベ
ンゼン環にアミノ基(-NH2)がついたものであるアニリンは無色の液体で水に溶けにく
くアンモニアより弱い塩基性を示すまたさらし粉(CaClO(ClO)H2O)水溶液を加えると
赤紫色を呈するこの呈色反応はアニリン特有のものであるので検出反応に用いられる
このアニリンを出発物質としてアゾ染料を合成してみる
62 試薬および使用器具
【試薬】 ①05moll 水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液
②2-ナフトール ③フェノール ④6moll 塩酸
⑤亜硝酸ナトリウム ⑥アニリン ⑦氷
【器具類】 ①電子天秤 ②50mℓビーカー ③100mℓビーカー
④ガラス棒 ⑤布(ガーゼなど) ⑥ピンセット
⑦ポリ手袋 ⑧ドライヤー ⑨シャーレ
10駒込ピペット(10ml ガラス製)
11駒込ピペット(1ml プラスチック製)
63 実験方法
1) 50mℓビーカーの中に 05molℓ水酸化ナトリウム水溶液 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回
NaOH 水溶液を分取するほぼ 20 mℓ分取できれば可)と 2-ナフトールを約 01g 入れ
よくかき混ぜる調製した溶液の中に布をつけその布はガラス棒でしぼってから(布
をガラス棒ですくいあげればよい)シャーレに広げる温度の異なる条件下(常温およ
び低温)で染料の合成実験を行うため布は最低 2枚調製した溶液と接触させそれ
ぞれ別々のシャーレ(低温用および常温用)に広げる
2) 新しいビーカーに水を約 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回分取)と 6molℓ塩酸約 4mℓ(10m
ℓ駒込ピペットで目分量で可)さらにアニリン約 1mℓ(プラスチック製 1 mℓ駒込ピペッ
ト)を入れてよくかき混ぜる染料の合成を常温および低温下で行うためこの溶液を
2つ調整する
低温下で反応させる溶液は恒温槽で 10~15 分ほどよく冷やした後亜硝酸ナトリウ
ム 05g を加えてよくかき混ぜる
常温下で反応させる溶液には冷却作業を行わずに亜硝酸ナトリウム 05g を加えて
よくかき混ぜる
3) 2)でつくった水溶液をシャーレに広げた布に注ぎ生成される染料を布によく染み
込ませ5分程放置する
4) 色の付いた布を取り出してポリ手袋をした手できれいに水洗いをし乾燥させる
48
5) 色差計を用いて乾燥した布の Lab(L明度aおよび b色度)を測定する
2)で作った溶液は5以下では無色の溶液ですが5以上になると淡い黄色になりま
す
【解説】
アゾ染料はアゾ基(-N=N-)を持っていてこのアゾ基によって鮮やかな橙色を呈色し
ます今回合成したアゾ染料は図の 1-フェニルアゾ-2-ナフトールです意外かもしれ
ませんが指示薬として使われているフェノールフタレインもアゾ化合物ですフェノール
フタレインは pH の変化によって色が出てきす染料の中でも最初は無色のものもありますが
温度を変化させたり酸性やアルカリ性にすると色が出てきます
ベンゼン ニトロベンゼン
N2Cl
ニトロ化 濃硫酸(濃硝酸)
還元反応 濃塩酸
(Sn又は Fe)
アニリン塩酸塩
遊離反応 NaOH
アニリン塩酸塩に強塩基を反応させる
と弱塩基であるアニリンが遊離する
氷冷+亜硝酸ナトリウム アニリン
塩酸
ジアゾ化
塩化ベンゼンジアゾニウム
塩化ベンゼンジアゾニウム
は熱によって窒素とフェノー
ルに分解される
カップリング
C10H7ONa (ナトリウム 2-ナフトキシド)
O
N =
1-フェニルアゾ 2-ナフトール
NH3Cl NH2
49
7 ガスクロマトグラフ質量分析計による茶葉中のカフェインの分析 71 はじめに ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)は極めて低い濃度の化学物質の同定や未知物質の構造決定に極めて強力な分析機器の一つであるGCMSを用いるとサンプルの中に含まれているある成分の分子構造(カフェインの分子構造を図 71に示す)やその量が分かりますもちろん分析機器ですので測定できる物質対象となる系や測定条件にはある
程度の制約があります混合物質を分離するガスクロマトグラフ(Gas ChromatographGC)と分離された成分(物質)を分析(構造決定と濃度測定)する質量分析計(Mass SpectrometerMS)を組み合わせた装置であるこの装置は有機化学生化学環境化学などの多くの分野で非常に多用されている例えば極めて低い濃度でも生体へ強い影響が懸念されるダイ
オキシン類などの土壌や河川の水中での含有率の決定や食品や医薬品中の微量成分の決定
にも利用されている 一方日本人に長い間親しまれてきた緑茶が近年産業界や医学
界で注目されている茶葉にはカフェイン(分子構造図 71)カテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドなどの有用成分が多く含まれておりその効能が注目されている 本実験では茶葉中に含まれるカフェインに対してGCMSを用いて分析する茶葉中には種々の物質が含まれておりGCMS分析を容易にするため前処理として超臨界二酸化炭素抽出(4015MPa程度の高圧力の二酸化炭素を溶剤として利用)により茶葉からカフェインの抽出を行いそのサンプルを GCMSにて分析する
図 71 カフェインの分子構造 図 72 物質の分析 個々の物質や装置についてはインターネットにより下記のWebサイトのフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』などにより調べるとよいカフェイン(caffeine)はアルカロイドの一種プリン環を持つプリンアルカロイドの一種でコーヒー類に含まれることか
らこの名がある化学名は137-トリメチルキサンチン(C8H10N4O2) コーヒーコーラ緑茶紅茶ガラナココアなどに含まれる(量は緑茶が一番多い)結晶は一水和物(C8H10N4O2bullH2O)もしくは無水物(無水カフェインC8H10N4O2)として得られ
る白色の針状または六角柱状結晶で匂いはなく味は苦い融点は 238昇華性がある出典フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』httpwwwwikipediaorg 装置「GCMS」httpwwwanshimadzucojpproductsgcmsqp2010htm (島津) 「超臨界抽出装置」httpwwwkagakucomjasco39-49html (日本分光)
50
レポート課題 1茶葉中に含まれるカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドの中から3つの物質を選びその物質について調べた結果を A4 レポート用紙2枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
2GCMS についてA4 レポート用紙1枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
3与えられたサンプルは茶葉1gから抽出されたのである実験結果よりもとの茶葉
1g中に含まれるカフェインの量を推算し計算式とあわせて示すこと 72 原理および装置 実験で使用する島津製の GCMS装置の全体図を図 73に原理の概略を図 74に示す
1
23
4
5
67 8
9
10
キャリアーガス
試料物質
1ボンベ(He)2圧力計3マイクロシリンジ4サンプラー5試料導入部6分離カラム
7セパレーター8イオン化室9磁石10電子増倍管11記録計
11
図 74 ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)の概略図
サンプルフォルダー
51
GCMS 装置は分離部である図中の 1~6 のガスクロマトグラフ(GC)と7~11 の検出部である質量分析計(MS)から構成される 3のマイクロシリンジを用いて試料を GCMSに導入する導入された試料は5試料導入部でガス化され6分離カラムに導入される分離カラムには吸着剤が充填されおり混合物の試料を導入した場合各物質と吸着剤との
親和性の違いにより各物質の分離カラムから排出されるタイミングは異なる分離カラム
を排出された試料は8イオン化室でイオン化され10電子倍増管にて検出される アセトンに溶解したカフェインの GCMSによる分析結果の一例を以下に示す図 75にク
ロマトグラム図 76にカフェインのピークのマススペクトルを示す
図 75 GCMSにより得られたクロマトグラム
横軸がリテンションタイムで縦軸がピーク強度を表す
図 76 カフェインのマススペクトルとカフェイン(分子量MW=194)の構造
(図 75中のリテンションタイム 126min付近のピークに起因するマススペクトル) 茶葉中にはカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイド以外にも繊維であるセルロースなど多くの物質が含まれているため茶葉そのものを
そのままサンプルとしてGCMSで分析することは困難であるセルロースなどの分子量の大きな物質はカラムに詰まってしまい分析できないそこで今回は超臨界二酸化炭素
による抽出により主にカフェインを他の物質と分離抽出した通常よく利用されるアセ
トン抽出(アセトンに茶葉を浸し特定の成分を抽出する)ではカフェイン以外にも多く
の物質が抽出されるため図 75 のような単独のピークを得ることは難しく複数のピークがクロマトグラムに見られるこのサンプル(この場合茶葉からの抽出物)にはカフェ
イン以外の不純物は少なかったがガスクロマトグラフの分離カラムによりさらにそれ
らの混合物が精度よく分離されるクロマトグラムのピークはそれらサンプル中に含まれ
ていた個々の物質を表しているクロマトグラムのピークを選択することで分子構造解析
したい物質を選んだことになる選択したクロマトグラムのピークの表している物質(ここ
ではカフェイン)に対応するマススペクトルが図 76 に表示されているマススペクトル
52
で横軸がその成分(ここではカフェイン)分子を構成している原子の原子量で縦軸がそ
の量を表しているのでマススペクトルから分子構造を解析するためにコンピュータ内
に蓄えられた物質ごとのマススペクトルデータと今回測定したマススペクトル(分子内に含
まれている各原子の数)を比較することで測定したサンプル中のクロマトピークを選択し
た分子がどのような原子をどれだけ含んだ分子であったかがわかりそれからその物質
がどのような分子構造の物質である可能性が高いかをコンピュータが検索し結果を示す 73 実験サンプルの設置と GCMS装置の操作方法 実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS装置のサンプルフォルダ
ー(図 73)にセットするこのサンプルは茶葉 1gを 50ccの高圧セルにて超臨界二酸化炭素を利用して4015MPa2時間接触の条件で抽出した固体を10gのアセトンに溶かしたものである またコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に装置および装置制
御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 本実験で使用する GCMS の操作は全てコンピュータのモニター上で GCMS の解析プログラムソフトを使用することで行うコンピュータの操作方法を以下に示す なおコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS 装置のサンプルフォルダー(図 73)にセットするまた装置および装置制御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 1)パソコンのデスクトップ上のアイコン「GCMS 分析」をクリックすると以下のようにGCMS制御プログラムを起動するその後「OK」ボタンをクリックする
図 77 GCMD分析用ソフトウェア「GCMS分析」の起動
まず「GC-MS分析」をクリック
「OK」ボタンをクリック
53
2)制御プログラムが起動されパソコンと GCMSの接続が開始される
図 78 「GCMS分析」の接続確認画面 3)GCMSとパソコンの接続が完了すると以下のような画面が表示される
図 79 「GCMS分析」操作画面
4)マススペクトルによる分子構造の解析 サンプル(この場合茶葉からの抽出物)には多くの物質が混じり合っていたがガス
クロマトグラフの分離カラムによりそれらの混合物が精度よく分離されるクロマトグラ
ムのピークはそれらサンプル中に含まれていた個々の物質を表しているクロマトグラム
のピークを選択することで分子構造解析したい物質を選んだことになる選択したクロマ
トグラムのピークの表している物質(ここではカフェイン)に対応するマススペクトルを選
択するマススペクトルは横軸が原子量で縦軸がその量を表しているのでマススペク
トルから分子構造を解析するために「定性処理」を行う シミラリティ検索結果が表示され分析により得られたスペクトルと類似のスペクトルを有
する物質の一覧が表示される上部に表示される物質ほどスペクトルが一致していること
を示す
接続状況が表示される
「トップへ」
をクリック
54
図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果
図 711 表示スペクトルのシミラリティ検索結果 10)図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果の印刷 「レポート(R)」をクリックし「検索結果(R)」をクリックすると検索結果が印刷される
GC-MS 分析で得られたマスス
ペクトル
データベース中
のマススペクト
ル
55
参考資料 生理活性物質の精製 カフェインの利尿作用のように生物活動に影響を与える物質を生理活性物質といいます
天然物には生理活性物質を多く含むものがあります一般に天然物は多くの成分を含ん
でおり特定の生理活性物質を分離抽出するには種々の分離技術が必要ですまた生
理活性物質には60以上の温度でその生理活性を失う(失活)ものや溶剤として広く用いられているクロロホルムなどの有機溶剤中で失活するものが多いそこでこれら生理活性
物質の分離精製技術の開発が望まれており30~60程度のマイルドな温度条件で操作できる二酸化炭素を機能性溶媒として利用する超臨界抽出も有効な分離技術として注目されて
いる超臨界二酸化炭素は気体と液体の中間の性質を持ち物質の分離に役立っています 臨界点付近の高密度気体は超臨界ガスまたは超臨界流体と呼ばれ臨界圧力前後でそ
の溶解能力が著しく変化することから工業的にも種々の分野で利用されています一例と
して超臨界二酸化炭素(SC-CO2)によるコーヒー豆からのカフェインの抽出プロセス(a)
ならびに超臨界二酸化炭素に対するカフェインの溶解度(b)を図に示します図(c)に示す
ように固体のカフェインがガスである超臨界二酸化炭素に溶解します
このように超臨界二酸化炭素を用いた技術はコーヒー豆からのカフェインの抽出プロ
ポリスからの生理活性物質の抽出に利用されています
図 超臨界二酸化炭素抽出を用いたコーヒー豆からのカフェインの抽出
56
付表 最小二乗法について 直線で近似する場合 f (x) = a0 + a1x (A1-1) 式(A1-1)のように近似させるとする測定値 yiとの残差を eiとすると式(A1-2)のようになる ei = yi - f (xi) = yi - ( a0 + a1xi ) (A1-2) ここで式(A1-2)の両辺を二乗してその i に関する総和をとりその値を S とすると次式となる
sumsum==
+minus==n
iii
n
ii xaayeS
1
210
1
2 )( (A1-3)
S を最小化するような a0a1を求める式(A1-3)を a0a1について偏微分すると次式とな
る
sum=
+minuspartpart
=partpart n
iii xaay
aaS
1
210
00)( sum
=
+minusminus=n
iii xaay
110 )(2 (A1-4)
同様にa1について編微分すると次式のようになる
sum=
+minusminus=partpart n
iiii xxaay
aS
110
1])([2 (A1-5)
Sが最小となる時は次式が同時に満たされる時である
00=
partpartaS
01=
partpartaS
(A1-6)
よって誤差が最小となる a0a1を求めるためには式(A1-6)を連立して解けばよい
sumsumsum===
+=n
ii
n
i
n
ii xaay
111
10 1 (A1-7)
sumsumsum===
+=n
ii
n
ii
n
iii xaxaxy
1
2
11
10 (A1-8)
式(A1-7)と式(A1-8)を a0a1を変数とみなし連立して解くと次式を得る
n組のデータ(xiyi)(i=12hellipn)に対して回帰直線 y= a0 + a1x を最小二乗法で求めて出力しデータ番号 iデータ yi直線で推定した値 )( ii bxay += および残差
iii yy minus=ε を出力するようなプログラムをつくりたい基礎式を導出せよ (ヒント残差の二乗の和が最小になるように係数 a0a1)を定めるのが最小二乗法
である)
57
sumsum
sumsumsumsum
==
====
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
n
ii
n
ii
xxn
xxyyxa
1
2
1
2
1111
2
0
)(
))(())(( (A1-9)
sumsum
sumsumsum
==
===
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
xxn
yxxyna
1
2
1
2
1111
)(
))(()( (A1-10)
よって式(A1-9)(A1-10)を用いれば最も誤差を小さくするような直線 y = a0 + a1x が求められる
y=a1x+a0 にて近似
誤差 ei
x
y
誤差が最小になる関数(直線 y=a1x+a0の場合)
図1 最小二乗による近似
誤差の和Sが最小
S
a0
a1
直線 y=a1x+a0 の近似
誤差の全体の和はS=Σei=Σyi-(a1xi+a0)
Sは変曲点にて最小値を示すすなわち(partSparta0)=0 (partSparta1)=0
図2 a0a1とSの関係
13
式(33)の使用例 酢酸の仕込み液の分取量 v =2 mℓ NaOHの規定度 N = 01 N NaOHのファクター f = 0998 NaOHの滴定量 vrsquo = 985 mℓ である場合 式(33)を利用して酢酸の仕込み液濃度 x[molℓ]を求める
1000
1000vfNvx timestimes=times
vvfNx
timestimes=
49202859998010 =timestimes= molℓ (この xが濃度 C または C0 です)
2)酢酸溶液と活性炭の接触のフローチャート(1日目) 共栓三角フラスコ(100mℓ)の空重量を 直示天秤にて正確に測定する
電子天秤にて活性炭試料約 1g測る
共栓三角フラスコ(100mℓ)に 活性炭試料約 1gを入れる
活性炭試料約 1gを入れた 共栓三角フラスコ(100mℓ) を直示天秤にてその重量を測る
共栓三角フラスコ(100mℓ)の前後の 差から投入した活性炭量を計算する
活性炭を入れた各々の三角フラスコに 各濃度の酢酸溶液 100mℓを正確にホ-ルピペットを用いて入れる(このとき 気泡が混入しないように注意する)
三角フラスコに栓をしてこれらを所定の温度に 設定した恒温槽に浸す浸した三角フラスコは 約 20分間隔で気泡が混入しないように注意して 振り混ぜるこの操作を約 2時間行う
14
3)吸着量の測定(2日目) 恒温槽の温度を測る
恒温槽から三角フラスコを一つずつ取り出す
各試料溶液を一つずつ手早くろ過する
活性炭
ろ液を滴定して平衡濃度を決定する
回収
吸着量の計算
Langmuirの吸着等温式Freundlich式のパラメータの決定
グラフの作成
吸着量の計算10001000 times
minus=
wCC
n (34)
n吸着量 [molg] C0 酢酸水溶液中の酢酸の濃度 [molℓ] C ろ液中の酢酸の濃度 [molℓ] w 活性炭の量 [g]
35 実験結果のまとめ方 実験結果は実験レポートを書く場合に考察と並んで重要な部分ですので主な注意事
項をここで説明しておきます グラフの作成n vs C nC vs C ln n vs ln C の 3つのグラフの作成 配布された Excel ファイルを利用し下図のような図を作成してみましょう
15
レポートの間違いやすい場所 ①表や図を示す場合次の例のように文章でもその旨を示す [実験結果] 共栓付三角フラスコに活性炭約 1g入れた試料の重量 w[g]を Table1に示す
Table1 調整酢酸濃度を入れる活性炭試料の重量 w [g]
酢酸規定度[N]
活性炭試料の質量w [g]
12 10300
14 10001
18 10126
116 10011
132 10109 酢酸(1)-水(2)-活性炭(3)の 12における吸着平衡の結果を Table 6および Fig1に示すただし活性炭 1gに吸着された酢酸のモル数 n[molg]は次式より求めた
( )10001001
0 timestimesminus=w
CCn b
C0仕込み液中の酢酸濃度 [molℓ] Cbバルク相中の酢酸濃度 [molℓ] w活性炭試料の質量 [g] n吸着量 [molg]
例えばCb=04621C0=04894w=10300の時は次のように計算できる
( ) 026501000100
0300114621048940 =timestimesminus=n
Table6 酢酸(1)-水(2)-活性炭(3)の 12における吸着平衡
吸着された溶質のモル数n[molg]
バルク相中の濃度Cb[moll]
00205 04621
00175 0241
00139 01139
00105 00519
00081 00243 ②得られた図や表の解釈(読者にそれらから読み取ってもらいたい事柄)の説明文を次の
例のように文章で記述する数字や図だけ示して読者に「理解しろ」というようなレポー
トではよくありません Table 6および Fig1よりバルク相中の酢酸濃度 Cbの増加にともない吸着量 nも増加することがわかったまた吸着量 n の値は酢酸濃度 Cbの増加にともない n=に漸近することがわかる
グラフ(Fig)は次ペ
ージに掲載すること
グラフや表の後にはそれらの結果より得られた知見を文章でも
記入すること
16
36 エクセルによる吸着データの整理法 注コンピュータの画面はWindowsXP上での操作になっています他の OS(Windows98 2000
NT)搭載のパソコンでも同様の作業が可能です) 先ほど問1で説明したように溶液濃度の濃度変化から吸着量 nを求めました実験では吸着後の水溶液中の酢酸の濃度 Cと吸着量 nの関係を各濃度の溶液(5種類)について測定しその値を計算します このようなデータの整理には表計算ソフトであるマイクロソフト社の Excelが便利です
Excel の起動方法はそのソフトがインストール(設定)されているコンピュータにより若干方法が異なることがありますがほとんど同じですここでは福岡大学の総合情報処理
センターのコンピュータの設定に従って説明します 表計算をしてみましょう セルとは セルというのは最小単位の四角のことです例えば「(Aの1)またはA1というセルセル
B1」のようにセルという言葉を使いますセル A1に1という数字を入れてみましょうセルA1をクリックしてキーボードから「1」と入力しキーボードの「Enter」キーを押します
図 5 Excelの入力例1 図 6 Excelの入力例2
次にセル B1に「5」という数字を入れましょう次にセル C1にセル A1と B1に記入された数値の和を表示させてみましょう 下の図のようにセル C1をクリックします上の「 fx 」と書かれた右のボックス(何かを書くところに)「 =A1+B1 」と書きましょうそして Enterを押すとセル C1に 6と表示されます
図 Excelを用いた関数計算 実験では吸着後の水溶液中の酢酸の濃度 Cと吸着量 nの関係を各濃度の溶液(5種類)について測定しましたこのデータに対してExcelを用いて表計算してみましょうまず先ほど記述したセル A1~A3は「Delete」(デリート)キーで値を削除しましょう
17
次にセル A5~A9に活性炭と接触する前の酢酸水溶液の初濃度 C0[moldm3]セル
B5~B9に活性炭と接触後分離した酢酸水溶液の濃度 C[moldm3]セル E5~E9に活性炭の質量 W[g]をキーボードから入力します作成した一例を次に示します
図 8 Excelによる吸着量nの計算 ここで1gの活性炭に吸着された酢酸の物質量n [mol]を式 (4)より計算できるのでセル C 5~C9に次の関数式を記述します式の内容としては
)( 0CCWVn minusminus=
となるように記述するので実際の Excelの関数としては次のように行います セル C 5をクリックし関数ボックス(fxの右)に「=(A5 ndash B5)01E5」と記述(半角または直接入力形式で)し「Enter」キーを押し確定しますこの関数はフィルハンドルを利用してセル C 6~C9にコピーしますただし実験で溶液は 100cm3使用しましたが
溶液の濃度 C が[moldm3]の単位ですので100cm3=01dm3 となり関数式の中では
V=01 dm3としています なおグラフの記述方法やフィルハンドルの使用方法については化学工学プログラミ
ングなどの補助資料を参考にして下さいまた実験の際に配布した Excel ファイル(ファイル名ad_graxls)を使用すると実験データの理論的な解析も容易にできますので試してみましょうExcelファイル(ファイル名)「ad_graxls」の使用方法は次節で説明します 36 実験結果の考察方法 (吸着実験について) 実験結果の考察方法は種々の方法がありますがここでは一例として理論と比較する
方法を示します実験結果として下図(左)のようなグラフができましたこのような実
験結果に対して理論的な考察を行ってみましょうここでは次節で説明するラングミュ
ア(Langmuir)の単分子吸着モデルで計算した理論線と実験と比較したものを下図右に示しますこの図を作る方法は次節で説明しますレポートの考察の部分はラングミュア
(Langmuir)の単分子吸着モデルの式の導出から書いて下さい 理論を作る場合幾つかの仮定をしますがその理論が多くの実験結果をうまく説明でき
ている場合その仮定がある程度妥当なものであったことがわかります指針書に書いてあ
った以外の理論についても興味があれいばためしてみましょう
セル C5をクリックし関数ボックス( fx の右)に「=(A5 ndash B5)01E5」と記述(半角または直接入力
形式で)します
18
ラングミュア(Langmuir)の単分子吸着モデルを用いて理論値を計算するには配布され
た Excelファイル(ファイル名)「ad_graxls」を使用すると便利ですその使用方法を以下に示します配布プログラムは化学工学プログラミングの講義の場合と同様に総合情報処
理センターの共通領域にあります各自コピーして使用して下さいコピーするには化
学工学プログラミングの講義の場合と同様にコピーしようとするファイルを共通領域から
自分の使用しているコンピュータのデスクトップにドラッグドロップします共通領域で
ファイルを開くとファイルの消去などで他の人が使えなくなりますので共通領域でファイ
ルをダブルクリックしないようにして下さい誤って共通領域でファイルをダブルクリック
した場合はそのファイルを閉じるボタンをクリックし閉じて下さい 各自のコンピュータに保存した Excelのファイル(ファイル名ad_graxls)をダブルクリ
ックして開きます自宅へ持ち帰る場合各自のフラッシュメモリーやフロッピーディスク
を使用しまたはメールを使用して添付ファイルで送信できます各自のフラッシュメモ
リーやフロッピーディスクに保存してあるファイルを再編集する場合はフラッシュメモリ
ーやフロッピーディスクをコンピュータの USB 端子またはフロッピーディスクドライブに挿入します次にデスクトップ上にあるマイコンピュータのアイコンをダブルクリックし
ます もしデスクトップ上に上のアイコンが無ければ画
面左下の「スタート」ボタンからマイコンピュータをク
リックしてくださいすると次のような画面が立ち上が
ります
ラングミュア(Langmuir)の単分子吸着モデルで計算した
理論線
19
その中からフラッシュメモリーの場合は「リムーバブルディスク」をフロッピーディ
スクの場合は「35インチ FD」のアイコンをダブルクリックしてくださいファイルが保存されていれば次の画面が出てきます
この画面の中の「ad_graxls」ファイルをデスクト
ップにコピーしますまず「ad_graxls」ファイルを左クリックしますこの時クリックした指はは
ずさないようにしますその状態のままデスクトッ
プまでファイルを移動させますそしてデスクト
ップ上の任意の場所でクリックした指をはずします
これでデスクトップ上に「ad_graxls」のファイルがコピーされましたのでデスクトップにコピーさ
れたファイルをダブルクリックして開きますコピ
ー操作が上手くいかなかった場合もう一度移動の操作を行ってください
必ずデスクトップにコピーしてから開く操作を行って下さいフロッピーディスクから直接
開いて操作を行った場合正しく保存されない可能性があります 「ad_graxls」のファイルを開くと次のような画面が立ち上がりますもし画面が違う場合は画面の下部にある「吸着データ」のタグ をクリックしてくださいこの画面
でデータの処理や計算を行いますでは実際の操作に入る前に予めこのファイルに名前
を付けて保存しておきますまずExcelの画面のツールバー「ファイル」から「名前を付けて保存」をクリックします下のような画面が起動します
20
ファイルの保存先を変えたい場合画面上部のボタンをクリックし保存先にデスクトッ
プを選択します次にファイル名の部分に各自ファイル名を入力しますファイル名は何
でも良いですが分かり易い名前にしておくとファイルの管理がやり易くなります日付や
数字を入れると同名のファイルをいくつも管理する場合に便利ですここでは「吸着実験デ
ータ整理 4月 01」とし「保存」ボタンをクリックします
ファイル名変更後Excelの画面上部のタイトルバーのタイトルが先ほどの名前(上の図とは異なります)になっていることを確認してください
この操作を行うことによって元のデータである「ad_graxls」を変更してしまう心配がなくなります元のデータである「ad_graxls」はファイルが破損しまたは間違った操作の結果を誤って保存してしまった場合などの補助ファイルとなりますので大切に保管しておいて
下さい今後配布するデータは先ほど説明した手順で名前を変えて保存し元のデータに
直接変更を加えないようにして下さい ここから実際の作業に入ります初期状態では模擬のデータが入力されています入力
データは予め計算しておいた酢酸濃度Cb[moll](濃度を Cと表示している場合もあります)と活性炭吸着量 n[molg]になります下の画面の丸で囲んだ部分がそれぞれの値でBCカラム(列)の 4~9行には数値が入力されています関数ではありませんこのデータを利用して実際のデータ解析を行ってみましょう下記のように行うと幾つかのグラフが
現れ実験データに対してラングミアーの単分子吸着を仮定したモデルを用いて精度よ
く計算線が描けることがわかります 今回はCbnの値を入力する必要はありませんExcelが自動的に計算を行って結果を表示するようになっていますつ
まりセル D5に「=B5C5」と関数を入力しこの関数に対してフィルハンド
ルを利用してセル D6~D9へコピーし
ファイルの保存先を変えたい場合画面
上部のボタンをクリックし保存先に
デスクトップを選択します
変更するファイル名はここをクリッ
クして書き換えます
名前を変更したらここをク
リックして保存します
21
まています 次に酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着量 n[molg]の関係および酢酸濃度 Cb[molL]と Cbn[gL]の関係をグラフ化します今回は自動的にグラフが作成されるようになっていますので複
雑な操作は必要ありません ここではデータに対してそれを精度よく表現する近似式をグラフ上に描きその関数
を数値として求める方法を Excelで練習してみましょう
グラフを表示させるには画面の下にある「Graph1」もしくは「Graph2」のタグ
をクリックします「Graph1」には酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着量n[molg]の関係のグラフが「Graph2」には酢酸濃度 Cb[molL]と Cbn[gL]の関係のグラフが表示されます「Graph2」はLangmuir の等温吸着式による相関を表したもので横軸に酢酸濃度 Cb[molL]をとり縦軸に酢酸濃度 Cb[molL]を活性炭吸着量 n[molg]で除した値 Cbn[gL]を示していますLangmuir の等温吸着式についてはこの後の章で説明してありますので各自読んで理解して下さいLangmuirの等温吸着式では式中の定数 ninfin(飽和吸着量)と K(吸着平衡定数)を実験データから最小二乗近似で決定する場合が多くありますここでは
その例を取り上げてデータに対してそれを精度よく表現する近似式をグラフ上に描き
その関数を数値として求める方法(最小二乗法最小二乗については付録に示しており
また化学工学プログラミングの講義においても説明します)を Excelで練習します 配布された Excel ファイル「ad_graxls」では実験点が表示されているだけでそれを精度よく表現する近似式の直線のグラフは「Graph2」に表示されていません今から次の手順で「Graph2」の図(グラフ)に近似式の直線のグラフを表示しますExcel の場合近似曲線(ここでは直線)を求める場合コンピュータが自動的に最小二乗法を使って近似曲線
を計算しています
「Graph1」の画面 「Graph2」の画面
Excelの sheetが表示されたらまずファイル名を変えデスク
トップに保存して下さい次
にGraph2のタックを左クリックして最小二乗法のグラフを
確認して下さい
22
38 Langmuirの等温吸着式による相関 はじめにLangmuir式の定数 ninfinと Kを決定するために「Graph2」酢酸濃度 Cb[molL]と
Cbn[gL]の関係のグラフから最小二乗法により直線の式を求めますExcelを用いてデータに対して近似直線のグラフを描き最小二乗法の直線の式を求めます
次のような「近似曲線の追加」のウィンドウが現れたら今回は線形近似(直線で近似
y=ax+b の式)を選びますので線形近似が黒色に反転していることを確認して「近似曲線の追加」のウィンドウの右下の「OK」ボタンをクリックして下さい
実験点の何れかにポインタをあわせて
右クリックする
近似曲線の追加(R)を選択して左クリックする
「線形近似」であること
を確認して「OK」ボタンをクリックします
23
「近似曲線の書式設定」
のウィンドウでオプシ
ョンから「グラブの書式
を表示する」の前を選ん
でチェック(前のチェッ
クボックスをクリック)
した後「OK」を押す
現れた直線にポインタをあわせて
左クリックすると「近似曲線の書式
設定」のウインドウが表示されます
ここをクリックします
この「オプション」のタ
グをクリックします
「y=」の関数
が現れるのでここ
をクリックする
式の文字フォントが初期値
「8」と小さいのでここ
のボタンをクリックし
フォントサイズを選ぶリス
トボックスを表示し「22」程度の大きなサイズを選択
しクリックする
24
「Graph2」酢酸濃度 Cb[molL]と Cbn[gL]の関係のグラフから最小二乗法により直線の式がこのように求められましたExcel を用いてデータに対して近似直線のグラフを描き最小二乗法の直線の式を求めるこの方法は他の実験データの解析などにも利用できますので
各自活用して下さい 表示された関数式「y=43865+2654」はノートにメモして下さいこの傾き 43865と
切片 2654からLangmuir式の定数 ninfinと Kを決定します決定方法の詳細はこの後の 36 の Langmuir式のパラメータ決定法に示しています ラングミュアの等温吸着式を変形すると次式となる
CCnKnCKn
CCKn
Cβ+α+
==
+= infininfininfin
11)1(
ただしα=1ninfinβ=1(ninfinK)とするこの式より Cnを縦軸Cを横軸とした関係のグラフは傾きα=1ninfin切片β=1(ninfinK)の直線関係を与えることを示しています そこでExcelのシートを利用してこの値からLangmuir式の定数 ninfinと Kを次のように決定しますセル C18D18に Graph2で求めた数値 2654と 43865を代入しますその後D19と C19に関数を ldquo=1D18rdquoとrdquo=D18C18ldquoを代入しますセル内の式は半角で入力してください
現れた関数の文字フォン
トを大きく(例えば 22)してその数字をメモし
吸着データシートの C18と D18に記入する
C18D18 に Graph2 で求めた値 2654 と 43865 を代入した後D19 と C19 に関数を ldquo=1D18rdquoとrdquo=D18C18ldquoを代入する
25
この Excel表示では最小二乗法を用いて決定した傾きαと切片βを用いて α=1ninfin=43865 β=1(ninfinK)=2654 得られた傾きおよび切片よりninfinおよび Kは次のように求まる
ninfin=1α=1D18=000228 molg-1 K =(1ninfin)β=αβ=D18C18=165
つまりセル D19にはninfinの値がセル C19にはKの値が表示されますこれらの値はラングミュア(Langmuir)の単分子吸着モデルで計算した理論線と実験と比較する場合に利用します実験結果に対して理論的な考察を行う例としてラングミュア(Langmuir)の単分子吸着モデルで理論線を計算し実験と比較するにはこの Excelファイルを利用して次のように計算しグラフに表示します セル F5~F30 には溶液中に残る酢酸濃度 Cb[molL]に対する活性炭に吸着された吸着量n[molg]の関係のグラフ「Graph1」の横軸の酢酸濃度 Cb[molL]の適当な値が既に入力してありますこれらのそれぞの酢酸濃度 Cb[molL]に対する吸着された酢酸の吸着量 n[molg]の理論値をラングミュア(Langmuir)式で計算しますラングミュア式は次式で与えられます
KCKCnn
+=
infin
1 (310)
ここでこの実験データを最も精度よく計算できるように決定した ninfinおよび K は上述のようにninfin=1α=1D18=000228 molg-1 K =(1ninfin)β=αβ=D18C18=165 でありこれらの値はセル D19にninfinの値がセル C19にKの値が表示されていますこの値を利用して「Graph1」に計算線を描くにはまずセル G5~G30 にセル F5~F30 のそれぞれの酢酸濃度 Cb[molL]に対する吸着された酢酸の吸着量 n[molg]の理論値をラングミュア式で計算しますそのためにはセル G5 にラングミュア式を次のように記述しますただしセル D19の ninfinの値セル C19の Kの値は常に同じセルから参照するので絶対参照($マークを付けて$D$19 $C$19と記述します)で記述します
Langmuir式をセル G5に記述するただし濃度はF5の値を相対参照しD19と C19は絶対参照($マークが必要)することを忘れないように
セルG5に記述すべき数式
=$D$19$C$19F5(1+$C$19F5)
26
G5記述後フィルハンドルを使用してG5の関数を G6~G30までコピーします Sheet1から Graph1 のタグをクリックしGraph1 に計算線が表示されたことを確認しましょうこれでラングミュア式によるデータの解析は終了です実験値と理論値を比較して現象
について考察してみて下さいラングミュア式を理論的に導く場合にある仮定をしている
のですがその仮定をしているラングミュア式が実験データを精度よく計算できていれば
その仮定が妥当なもとであったと考察できます 与えられたモデルデータでラングミュア式によるデータ解析ができれば他の理論(例え
ばフロインドリッヒFreundlich式や BET式レポートはどちらか一方でも可です) についてもExcel で計算してみましょうレポートには自分のデータについてここで行った内容と同様に計算しその結果を考察に記述して下さい 自分のデータについて同様の計算をするにはまずいままで計算を行った Excel ファ
イルを保存しますデータを自分の実験データに置き換える前に Excel ファイルをさらに別の名前で保存します与えられた Excel ファイルは初期状態では模擬のデータが入力されているので今回自分達の実験したデータを入力していきます入力するデータは予め計算
しておいた酢酸濃度 Cb[moll]と活性炭吸着量 n[molg]になります下の画面の丸で囲んだ部分にそれぞれ自分の実験データを入力していきます
今回はCbnの値を入力する必要はありませんExcelが自動的に計算を行って結果を表示するようになっています 次に酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着
量 n[molg]の関係および酢酸濃度Cb[molL]と Cbn[gL]の関係をグラフ化します今回は自動的にグラフが作成
されるようになっていますので操作は必
要ありません 39 Freundlichの等温吸着式による相関 今回の実験で得られた酢酸濃度 Cbと活性炭吸着量 nのデータを利用してFreundlichの等温吸着式の定数 abの値を求めFreundlichの等温吸着式の理論線をグラフに追加します ここでFreundlich式は次式で表されます
bbaCn1
=
このままでは定数 abの値を決定することが難しいので上式の両辺の対数をとり線形化しますすると次式となります
bCb
an ln1lnln +=
ここでln Cbと ln nの関係をグラフにプロットすれば傾き 1b切片 ln aの直線関係が得られますしたがって実験データである酢酸濃度 Cbと活性炭吸着量 nの値の対数をそれぞれ計算します配布した「ad_graxls」ファイルを開き「吸着データ」シートの任意の部分に以下のような表を作成します
27
次にln Cb[-]の列の最初のセルに以下の数式を入力します
=ln(B5) 上式中の「B5」は Cb の値の最初のセルの位置を指します各個人の位置によって変更してください
次にln n[-]の列の最初のセルに以下の数式を入力します
=ln(C5) 上式中の「C5」は nの値の最初のセルの位置を指します各個人の位置によって変更してください
ここでln Cb[-]ln n[-]の値に対しそれぞれオートフィルを行い計算させますすると以下のようなデータが完成します
計算した ln Cb[-]ln n[-]の値をグラフにプロットし最小二乗法による直線式を求めます
28
ここで以下のような直線の式が得られたとします
9135ln31690ln913531690 minus=there4minus= bCnxy
上式より切片は-5913傾きは 03169となるので以下の要領で定数 a1bを計算します ==there4minus= minus 91359135ln eaa 000270
316901=
b
a の値を Excel で計算させる場合は任意のセルに以下のような数式を入力することで求めることができます
=exp(-5913) これでFerundlich等温吸着式の定数 a1bの値が決定しましたこの値は後で使うのでノートなどにメモしておいてください 次に決定した Ferundlich 等温吸着式の定数 a1b の値を用いてFerundlich 等温吸着式のグラフを作成します先ほども示したように Ferundlich等温吸着式は次式で表されます
bbaCn1
=
従って定数 aと 1bの値はすでに決定しているので任意の Cbの値に対する nの値を数点求めればFerundlich等温吸着式で求めた理論線が得られます以下の操作で理論線を引くことができます Langmuir 等温吸着式による相関のときと同様にExcel の「吸着データ」のシート上の任意の場所に以下のような表を作成します
次に Ferundlich等温吸着式に従いnの値を計算します
bbaCn1
=
式中の定数 a1bは先ほど計算した値を用いますしたがって式は次のようになります
31690002700 bCn times=
この式を Excelのセル内に記入すれば計算ができます次の
29
ように記入します
=00027G5^03169 ここで式中の「G5」は Cbの値が 0のセルを指しています各個人の位置によって変えてください 次に式を記入したセルを Cbの値が 05のところまでオートフィルを行いますそうするとすべての Cbに対して nの値が計算されます
これで Freundlich等温吸着式のデータが完成しましたので次に「Graph1」酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着量 n[molg]の関係のグラフにこのデータを追加し理論線を引きます理論線の引き方は Langmuirによる相関のときと同様の操作を行ってください グラフの書式等を変更し整理すると以下のようなグラフが出来上がります
310 吸着等温線とは 固体の吸着剤を溶液と接触させる時一定量の吸着剤によって吸着される溶質の量は温度一定ならば溶質の濃度の関数になる一定温度での吸着量を温度に対してプロットした時に
得られる曲線を吸着等温線というこの吸着等温線を比較的よく表す経験式として次の
Freundlich式がある
n=aC1b (1) ここで n は吸着剤の質量あたりの吸着量C は吸着平衡濃度a と b は実験から決定されるパラメータであるがその物理的意味は多少希薄である これに対し理論的な意味を持つものに次のラングニュア(Langmuir)の吸着等温式がある
30
KCKCnn
+=
infin
1 (2)
ただしninfinは飽和吸着量Kは吸着平衡定数であるこの式は
1)吸着分子が固体表面で単分子以上の厚い層を作ることはない 2)吸着分子同士の間の相互作用はない
という二つの仮定にもとに導かれたものである 結果の整理および報告 Freundlich吸着等温式Langmuir吸着等温式の各々のパラメータの最適値を求めよまた活性炭の吸着特性および表面積について考察し化学工学における吸着操作の重要性につい
ても検討せよ 311 吸着等温式 (a) ヘンリー(Henry)型吸着等温式 液相の濃度あるいは気相の圧力が小さい場合吸着分子間の距離が十分に長いため吸着
分子同士の相互作用が無視でき固体表面と吸着分子のみの相互作用で吸着量を決定できる
とき次式のように表される
n=KC (3)
ここでKは比例定数である図 3-1の(a)に示すように濃度 Cと吸着量 nは比例関係があり一般に吸着量が小さい範囲で成立する気体の場合は溶液濃度 Cの代わりに気相圧力 pを用いればよい
濃度(分圧)
濃度(分圧)
濃度(分圧)
濃度(分圧)
吸着量
吸着量
吸着量
吸着量
(a)ヘンリー型 (b)ラングミュア型
(d)BET型(c)フロインドリッヒ型
0
0
0
0
図 3-1 吸着等温式
31
(b)ラングミュア(Langmuir)型吸着等温式 ラングミュアは図 3-2 に示すように固体表面に同等な吸着力を示す吸着サイトがあり
表面に 1分子層だけ吸着する(単分子層吸着)と仮定して平衡状態における吸着量と溶質濃度(気相分圧)のと関係を導いた全吸着点のうち吸着分子に覆われている吸着点の割合
をθ[-]とすると分子の脱着速度 rrsquo[mols-1]はθに比例する比例定数を a[mols-1]とすると次式のように表される
吸着剤
吸着分子
吸着サイト
図 3-2 固体表面上の吸着サイト(Langmuir式の導出) r=aθ (6) また気相からの吸着速度 r[mols-1]は空いている吸着点の割合(1-θ)[-]と溶液濃度 C[molm-3]に比例する rrsquo= b(1-θ)C (7) このときの比例定数を b[m3s-1]とするまた平衡状態では両速度は見かけ上等しいため以下の式が成り立つ aθ=b(1-θ)C (8) これを変形する
CbaCbsdot+
sdot=θ (9)
ここで飽和吸着量を ninfin[molkg-1] ba を K[m3mol-1](Kは吸着平衡定数)とおくと infin=nnθ
となるので次式が得られる
32
KCKCnn
+=
infin
1 (10)
これをラングミュア式と呼ぶ
(c)フロインドリッヒ(Freundlich)型吸着等温式 フロインドリッヒの吸着等温線は図 3-1(c)のように示される
n=aC1b (11) nは吸着量[molkg-1]で aと bはともに吸着定数[-]である (d)BET(Brunauer-Emmett-Teller) 型吸着等温式
BET型の吸着等温線は図 3-1(d)に示されるラングミュア式は表面に 1分子層だけ吸着すると仮定したものであるがBET式は無限分子層まで吸着できる式である図 3-3に示すように吸着した分子がそれぞれ次の層の吸着サイトとなり分子は積み重なって多分子
層に無限層まで吸着できるものとし各層への吸着にラングミュア式を適用すれば次式の
ように表せる
( ) ( )CKCCCKqq
minus+sdotminussdotsdot
=infin
11 (12)
この式は多孔質固体の細孔表面積を窒素ガスの吸着によって測定する際に利用される重要な式
である
表面の吸着サイト
分子上の吸着サイト
図 3-3 多分層吸着モデル
Langmuir式のパラメータ決定法 水溶液からの酢酸の活性炭に対する吸着平衡データ(吸着平衡温度 12)は表 3-1のよ
うに与えられる実験データよりラングミュア式のパラメータ(K吸着平衡定数ninfin飽和吸着量)を最小二乗法で決定せよさらにラングミュア式より決定した ninfinKの値を用いて吸着等温線を計算し計算線として図に示し実験点と比較せよ
33
表 3-1 n C Cnの関係
ラングミュア式は式(310)で与えられるこの式を変形すると次式となる
CKnCK
n infinsdot+
=11
(313)
両辺に Cをかけると以下の式が導出される
CCnKnCKn
CCKn
Cβ+α+
==
+= infininfininfin
11)1( (314)
ただしα=1ninfinβ=1(ninfinK)とする式(314)より Cn と C の関係のグラフプロットは傾きα=1ninfin切片β=1(ninfinK)の直線関係を与えることを示している表 3-1の値を用いて計算した Cnと Cの関係を表 3-1および図 3-4に示す 最小二乗法を用いて傾きαと切片βを決定した α=1ninfin=43865 β=1(ninfinK)=2654 得られた傾きおよび切片よりninfinおよび Kは次のように求まる
ninfin=1α=1D18=000228 molg-1 K =(1ninfin)β=αβ=D18C18=165
0
50
100
150
200
0 200 400 600
C [ molm-3 ]
Cn [ kgm-3 ]
傾き = 1 ninfin
1 ninfinK
切片0
05
1
15
2
25
3
0 100 200 300 400 500
液相の溶質濃度 C [ molm-3 ]
吸着量 n [ molkg-1]
液相と溶質濃度 C [ molm-3 ]
吸着量
n[ m
olk
g-1]
実験点
Langmuir式パラメータninfin 00033 [ molg-1 ]K 00086 [ m3 mol -1 ]
図 3-4 ラングミュア定数の決定 図 3-5 12における酢酸濃度 Cと
吸着量 nの関係
C [molm-3] n [molkg-1] Cn [kgm-3] 460 225 109 529 214
268 199 149 105 060
172 128 732 504 357
34
Freundlich式のパラメータ決定法 酢酸水溶液中における酢酸の活性炭に対する吸着実験を行ったところ以下のような実験デー
タを得たただしCbはバルク相における酢酸濃度n は活性炭に対する酢酸の吸着量を示す
Cb[molL] n[molg] log10Cb log10n 04621 000205 02410 000175 01139 000139 00519 000105 00243 000081
実験データを利用して次式で与えられる Freundlichの等温吸着式の定数 abの値を求めたい
bbaCn1
= (1)
このままでは定数 abの値を決定することが難しいので上式の両辺の対数をとる
bbb
bb
Cb
aCa
aCn
ln1lnlnln
)ln(ln1
1
+=+=
=
(2)
ここで横軸に ln Cb縦軸に ln nの関係をグラフにプロットするすなわち x=ln Cby=ln nと考える
bCb
an ln1lnln += (3)
ここで直線式 y=a0+a1xと比較するすなわち
)(1)(ln
1
00
傾き
切片
ba
eaaa a
=
=rarr= (4)
a0および a1は最小二乗法により数値で求められる与えられたデータでは a1= a0= なので a= b= となる この値を n=acb
1bに代入してcb=0~05の範囲で nの値を計算する
35
BET式のパラメータ決定法 BET式は次式で与えられる
)1)(1( KCCCKCnn
+minusminus=
infin
(17)
以下のように BET式の変形を行う
)1()1(
KCCKCnCn+minus
=minusinfin
(18)
(18)式の逆数をとると
KCnCK
KCnKCC
Cn infininfin
minus+=
+minus=
minus)1(1)1(
)1(1
(19)
(19)式の両辺に Cをかえると
KCnCKC
CnC
infin
minus+=
minus))1(1(
)1( (20)
(20)式を変形すると次式が得られる
CKn
KKnCn
Cinfininfin
minus+=
minus11
)1( (21)
C と)-(1 Cn
Cのプロットは傾き
KnKinfin
minus1切片
Kninfin
1の直線関係を与えることを示している
これをグラフにプロットし最小二乗法に傾きおよび切片を求める
36
312 活性炭の比表面積の決定 酢酸分子の構造を以下に示す
Hc-Cb-Ca
Hd
Hb Oa
Ob-Ha
1219deg
Ca Oa
Ob
図 36 酢酸の構造
酢酸の 1分子の吸着面積srsquo [m2]を図 3-6に示すこのとき文献より
Caと Oaの結合距離 1321Å Caと Obの結合距離 1206Å OaCaObの角度 1219deg Cの原子半径 077Å Oの原子半径 062Å
したがって吸着面積 Slsquoは次のようになる
( ) ( ) 2088 10376109931036321 minusminusminus times=timestimestimestimes=s m2
ここで活性炭の比表面積 S[m2g]は次式で示される 10026 23 snS timestimestimes= infin
S活性炭の比表面積 [m2g] ninfin飽和吸着量 [molg] srsquo酢酸 1分子の吸着面積 [m2] 602times1023アボガドロ数 [個mol] したがって活性炭の比表面積 S[m2g]は
003350=infinn molg 2010376 minustimes=s m2 より
51281037610026003350 2023 =timestimestimestimes= minusS m2g
37
4 粘度密度測定 41 はじめに 大量生産を目的とした工業的化学プロセスはほとんど流れ系(流通系)であるそれらの系において操作対象となる各物質の粘度は装置を設計操作する場合きわめて重要
な物性値である 本実験では低分子溶液および高分子溶液の粘度測定を通じて液体の粘度について考察するさらに演習問題を通じて気体液体高分子溶液などの化学プロセスで対象となる物
質の輸送物性(粘度拡散係数)の重要性を認識されたい 42 低分子溶液の粘度 [目的] 種々の濃度のエタノール水溶液の粘度を測定しその溶液の粘度について考察する [概要] 25におけるエチルアルコール濃度 02040506080100 wt の水溶液について流下時間を測定しこの結果より相対粘度絶対粘度運動粘度を求めグラフにするま
た水の密度水-エチルアルコール溶液の密度についてはピクノメーターを用いて決
定する報告書には相対粘度絶対粘度運動粘度 vsエチルアルコール濃度の関係をそれぞれグラフにして提出する
[計算方法] 相対粘度絶対粘度運動粘度の定義は次のようになる
相対粘度 ww
w tdtd
ηη = (41)
η 混合溶液の粘度 [gcms] ηw水の粘度(8007times10-3 gcms) [gcms](25における粘度) d エチルアルコール水溶液の密度 [gcm3] dw水の密度(099704gcm3) [gcm3](25における密度) t エチルアルコール水溶液の流下時間 [s] tw水の流下時間 [s] 下付添字 W 水
絶対粘度 www td
tdη
η= (42)
運動粘度 ν=ηd [cm2s] (43)
38
[実験方法] 1) 粘度計を洗浄し粘度計内 に二連球で空気を送り込み
乾燥させる乾燥しにくい 場合はアセトンを滴下し た後再度二連球で空気 を送り込み乾燥させる 2)ピペットで一定体積(10mℓ) の純水を取り広い口 f から 粘度計に水を入れる 3)粘度計を恒温槽(25)に つけ約 10 分静置する 4)安全ピペッターを口 a に 取り付け液面が b 上部に 到達するまで吸い上げる 5)安全ピペッターを外すと 液面が降下しだす液面が bd 間を通過する時間をスト ップウォッチで測定する
6)純水での測定を 3 回繰り返す 7)純水を粘度計から取り除くその後粘度計内に二連球を用いて空気を送り込み乾燥させる 8)粘度計乾燥後複数の濃度に調整済みのエチルアルコール水溶液(10mℓ)を粘度計にいれ4)~6)の作業を繰り返し行う(3 回)なお濃度の異なるエチルアルコール水溶液を粘度計内に導入する場合には7)と同様に二連球を用いて粘度計内に空気を送り込み乾燥させる
表 4-1 エチルアルコール水溶液の濃度密度相対粘度の関係 エチルアルコール濃度
[wt] 密度 d[gcm3] 相対粘度
η ηw[-] 0
20 40 50 60 80
100
安全ピペッター接続
図 4-1 粘度計
液面の bd間の通過時
間を測定
f
39
43 密度測定 [目的] 本実験では水とエタノールの種々の組成の混合液体について密度を測定し分子間相互
作用について考察する [実験方法] 1)ピクノメーターの容積測定
図 4-2のピクノメーターの空の重量 wg を秤量する
ピクノメーターの蓋を取り外し
ピクノメーターを水で満たす
設定温度を 25として恒温槽 の電源を入れ恒温槽内の温 度が一定になるまで待つな お水温は恒温槽中の水銀温 度計から読む
恒温槽中に水を満たしたピク
ノメーターを入れる
約 10分間静置する
ピクノメーターに蓋をするこのときピクノメーターの容量
よりも余分の水は蓋の上部より排出される
ピクノメーターの外側を乾いた布で拭い秤量する(その重量を
wwg とする)
恒温槽の温度(25)における水の密度 dwgcm3(=099704gcm3)
より次式を用いてピクノメーターの容積を求める
w
w
dww
Vminus
= (44)
図 4-2 ピクノメーター
蓋
40
表 4-2 エチルアルコール水溶液の濃度と密度の測定結果(25) エチルアルコ
ール濃度[wt]
wrsquo[g] ww[g] V[cm3] w[g]
d[gcm3]
0 20 40 50 60 80
100
099704
エチルアルコール濃度[wt] 空のピクノメーターの重量 wrsquo[g] 水を入れたときのピクノメーターの重量 ww[g] ピクノメーターの体積 V[cm3] エタノール水溶液の入れたときのピクノメータの重さ w[g] エタノール水溶液の密度 d[gcm3]
容積 Vを求めたピクノメーターに混合溶液(調整済み)を入れてその重量 wgを秤量し次式で混合溶液の密度を求める
Vwwd minus
= (45)
エタノール濃度と密度 d の関係をグラフにプロットする
41
44 高分子溶液の粘度 [目的] 高分子溶液の粘度測定から分子量の粘度に与える影響について考察する [概要 ] オストワルド粘度計を用い種々の濃度のポリビニルアルコール(PVA ((-CH2CHOH-)n))水溶液の粘度を測定し粘度データよりポリビニルアルコールの分
子量を求める まず 05g100cc の濃度のポリビニルアルコール水溶液を調製する次にこれを原液
とし23 12 13 15の濃度の溶液を調製するこれらの溶液についてオストワルド粘度計を用いてそれぞれ流下時間を測定し相対粘度絶対粘度運動粘度を求め実験デ
ータより極限粘度[η]を求めるまた報告書には相対粘度絶対粘度運動粘度C
)ln( wηη
Cw
w-η
ηη vsポリビニルアルコール濃度の関係をそれぞれグラフにして提出する
[計算方法] エチルアルコール水溶液の粘度測定と同様の手法を用いて粘度の計算を行うなおポリビニルアルコール水溶液の密度はピクノメーターを用いて測定すること 表 4-3 ポリビニルアルコール水溶液の濃度密度相対粘度の関係 ポリビニルアルコール
濃度 [g100cc] 密度 d[gcm3] 相対粘度
η ηw[-] 05times(15) 05times(13) 05times(12) 05times(23)
05
42
[分子量の計算方法] 実験を行った結果以下のような粘度データを得られるとする実験データより極限粘度
を求めポリビニルアルコール(PVA)の分子量Mを決定せよ
PVA 水溶液濃度
C[g100cc]
相対粘度
ηηw[-]
絶対粘度
η[gcms]Cw
w-η
ηη
C)ln( wηη
05times(15) 1031 0008255 031 0305
05times(13) 039 0378
05times(12) 03 0289
05times(23) 0375 0353
05 0364 0334
ηw=8007times10-3 gcms 線状高分子の極限粘度[η]と分子量Mの関係は次式で与えられる [η]=KMα (46) ただしポリビニルアルコールの場合K=666times10-4α=064であるなお極限粘度[η]は次式で定義される
CC w
w
0
-][ limη
ηηη
rarr
= (47)
または
CC
)ln(][ w
0lim
ηηη
rarr
= (48)
よって濃度 CとCw
w-η
ηηまたは濃度 Cと
C)ln( wηη の関係をグラフ化し最小二乗法によ
り切片の値を求めると極限粘度[η]が決定される
Cw
w-η
ηηと C の関係より最小二乗法を用いて切片の値を決定すると(図 43 参照)切片=
03242傾き=00874となるよって極限粘度は以下のようになる[η]=03242同様
にC
)ln( wηη とcの関係より最小二乗法を用いて切片の値を決定する
(図 44参照)と切片=03249傾き=00256となり極限粘度は以下のようになる[η]=03249
Cw
w-η
ηηと Cの関係より決定した[η]=03242を用いてポリビニルアルコール(PVA)の
分子量 Mを計算する(46)式より以下のように PVAの分子量 Mを計算することができるM=([η]K)1α
=(03242(666times10-4))(1064)
=15811
43
y = 00874x + 03242
0
02
04
06
08
1
0 01 02 03 04 05 06 07
c[g100cc]
(η-ηw)(ηwc)
cw
w
η
ηηminus
極限粘度[η]
図 43 298Kにおける PVA濃度 CとCw
w-η
ηηの関係
y = 00256x + 03249
0
02
04
06
08
1
0 01 02 03 04 05 06 07
c[g100cc]
(ln(ηη
w))c
c)ln( wηη
極限粘度[η]
図 44 298Kにおける PVA濃度 CとC
)ln( wηη の関係
44
5 植物からの DNAの抽出 51 はじめに 分子レベルでの遺伝子の構造解明や遺伝子の発現に関する研究は近年急速に発展している
これら生命現象のしくみを分子レベルで解明しようという分子生物学の分野ではさまざま
な遺伝子の解析や応用方法が開発され我々の生活に身近なものになりつつある 本実験では初歩的な分子生物学に関する実験として植物(タマネギ)からの DNA の
抽出を行い抽出した遺伝子の電気泳動法による分離実験を試みる 52 試薬および器具 試薬 タマネギ(細胞中から遺伝子の抽出を行う) 台所用洗剤(洗剤中に含まれる界面活性剤には植物の細胞膜およびタンパク質を破壊す
る働きがある) 塩化ナトリウム(DNAは塩化ナトリウム水溶液に溶解し易い性質がある) エタノール(予め冷やしておくDNAはエタノールにほとんど溶解しない) 制限酵素(DNAを一定の部位で切断する働きを働きがある) TE緩衝液(pH緩衝剤が入った溶液) 器具 ビーカーミキサーフィルターメスシリンダー駒込ピペットガラス棒 マイクロピペット電気泳動装置ポラロイドカメラ 53 実験方法 1)タマネギは 1回の実験で半個のうち内側の半分程度を使用するタマネギ水 30ml台所用洗剤数滴をミキサー用ガラス容器に入れ40~60秒程度(固体状のタマネギがなくなる頃が目安)ミキサーにて混合する
2) 1)で作成した混合溶液をビーカーに移し約5g程度の塩化ナトリウムを加えガラス棒で静かに攪拌する粘性の大きな溶液が得られる
3) 2)で作成した溶液をフィルターを用いて濾過し濾液を回収する 4) 濾液の約2倍程度の量の冷エタノールをビーカーの壁伝いに静かに注ぐ 5) ビーカーを揺するとエタノール層に白くふわふわしたものが浮いてくるこれが DNAであるガラス棒で DNAを巻き取りシャーレ上にて DNAを回収する顕微鏡を用いて回収した DNAの状態を観察する
6)マイクロチューブ(容量 15ml)中に用意した 70エタノールを 8 分目程度まで注ぐ5)にて回収された DNAをマイクロピペットを用いて70エタノールの入ったマイクロチューブ中に移す軽く混ぜることによりDNA から不要な物質を洗い流す遠心分離してDNA をマイクロチューブの底に沈めた後溶液を捨てて DNA を乾かす乾いたらTE緩衝溶液を 1ml加えて放置するDNAの溶液が得られる
54 電気泳動装置による DNAの観察
本実験は職員と一緒に行うこと 実験を行う人はビニール手袋をすること 1) 抽出した DNAを電気泳動装置で観察するマイクロピペットを用いて以下のように調製した DNAの混合溶液を調製する(いずれの溶液も調製済)
45
2) マイクロピペットを用いてアガロースゲルの試料を流し込む穴(ウェル)に1)にて調製した溶液 Aおよび Bを注ぎ込む注入量は20μℓとする電気泳動装置のスイッチを入れて100Vの電流を流しアガロースゲル内にて DNAを電気泳動させる
3) 試料に予め加えられておいた青色の色素が 7 分目程度まで進んだら電気泳動を中止する(約 30分程度)
4) (ここでの作業は職員が行う) アガロースゲルを取り出し染色液に浸す染色後ゲルを取り出しポラロイドカメラで
DNAの泳動状態を撮影する
+ -
アガロースゲル
試料を流し込む穴(ウェル)
図 51 電気泳動装置
6 5 4 3 2 1
図 52 DNAの電気泳動写真の一例
55 電気泳動装置の原理 電気泳動装置の原理図を以下に示すアガロースゲル(寒天から不純物を除いたもの)中
に DNAをセットし電流を流すとDNAは電流の向きとは逆にマイナスからプラス方向
調製済 溶液 A(制限酵素なし) 水 11μℓ 10timesH Buffer 2microℓ 植物 DNA 5μℓ
調製済 溶液 B(制限酵素 Eco RI入り) 水 11μℓ 10timesH Buffer 2microℓ 植物 DNA 5μℓ 制限酵素 2μℓ
1 DNA(タマネギ)+制限酵素 2 DNA(タマネギ)+制限酵素 3 DNA(タマネギ) 4 λ-DNA(大腸菌)+制限酵素 5 λ-DNA(大腸菌) 6 サイズマーカー
500bp
46
に動く(このことを電気泳動という)これはDNA のリン酸部分が負に帯電しているためでありまたDNAはその長さにより泳動距離が異なる(短い遺伝子ほど長く泳動する)電気泳動ではこの性質を利用してDNAを大きさごとに分離することができる
塩基対数によってDNAを分離
EtBr (蛍光試薬)DNAの二本鎖内に入り込む
発光
UVλ=302nm
励起
分離後のアガロースゲルをエチジウムブロマイド(EtBr)溶液に浸す
DNAを含んだ溶液
アガロースゲル
リン酸部分が負に帯電
塩基 (ATGC)-
+
カメラで撮影
電圧
DNA構成成分(dNTPs)
バンドが明る
DNA量が
バンド(DNAの存在)
図 53 電気泳動の原理
56 制限酵素とは DNA は4 種類のヌクレオチド(GATC)が不規則につながってできている制限酵素はDNAの特定のヌクレオチドが並んでいる部分を切断する制限酵素には様々な種類がありEco RI(エコアールワン)と呼ばれる酵素は「GAATTC」といった並びの部分だけを切断することができる
GAATTC
CTTAAG
制限酵素
Eco RI
AAGCTT
TTCGAA
制限酵素
Hin dIII
図 54 制限酵素による DNAの切断
レポートについて 1 実験方法および実験結果の整理方法については指針書を参考にすること 2 実験結果については電気泳動の結果について考察すること(制限酵素の影響などにつ
いてまとめてください)
47
6 染色実験
61 はじめに
現在私達の身の周りでは様々な染料が使われている例えばT シャツやジーンズな
どの衣服は橙黄赤青など様々な色に染められている他にも私達が気付かないと
ころで多くの染色された製品を使用しているそこで本実験では高校の化学で学んだ
アゾ染料を合成してみるアゾ染料はアニリンを原料として作られているアニリンはベ
ンゼン環にアミノ基(-NH2)がついたものであるアニリンは無色の液体で水に溶けにく
くアンモニアより弱い塩基性を示すまたさらし粉(CaClO(ClO)H2O)水溶液を加えると
赤紫色を呈するこの呈色反応はアニリン特有のものであるので検出反応に用いられる
このアニリンを出発物質としてアゾ染料を合成してみる
62 試薬および使用器具
【試薬】 ①05moll 水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液
②2-ナフトール ③フェノール ④6moll 塩酸
⑤亜硝酸ナトリウム ⑥アニリン ⑦氷
【器具類】 ①電子天秤 ②50mℓビーカー ③100mℓビーカー
④ガラス棒 ⑤布(ガーゼなど) ⑥ピンセット
⑦ポリ手袋 ⑧ドライヤー ⑨シャーレ
10駒込ピペット(10ml ガラス製)
11駒込ピペット(1ml プラスチック製)
63 実験方法
1) 50mℓビーカーの中に 05molℓ水酸化ナトリウム水溶液 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回
NaOH 水溶液を分取するほぼ 20 mℓ分取できれば可)と 2-ナフトールを約 01g 入れ
よくかき混ぜる調製した溶液の中に布をつけその布はガラス棒でしぼってから(布
をガラス棒ですくいあげればよい)シャーレに広げる温度の異なる条件下(常温およ
び低温)で染料の合成実験を行うため布は最低 2枚調製した溶液と接触させそれ
ぞれ別々のシャーレ(低温用および常温用)に広げる
2) 新しいビーカーに水を約 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回分取)と 6molℓ塩酸約 4mℓ(10m
ℓ駒込ピペットで目分量で可)さらにアニリン約 1mℓ(プラスチック製 1 mℓ駒込ピペッ
ト)を入れてよくかき混ぜる染料の合成を常温および低温下で行うためこの溶液を
2つ調整する
低温下で反応させる溶液は恒温槽で 10~15 分ほどよく冷やした後亜硝酸ナトリウ
ム 05g を加えてよくかき混ぜる
常温下で反応させる溶液には冷却作業を行わずに亜硝酸ナトリウム 05g を加えて
よくかき混ぜる
3) 2)でつくった水溶液をシャーレに広げた布に注ぎ生成される染料を布によく染み
込ませ5分程放置する
4) 色の付いた布を取り出してポリ手袋をした手できれいに水洗いをし乾燥させる
48
5) 色差計を用いて乾燥した布の Lab(L明度aおよび b色度)を測定する
2)で作った溶液は5以下では無色の溶液ですが5以上になると淡い黄色になりま
す
【解説】
アゾ染料はアゾ基(-N=N-)を持っていてこのアゾ基によって鮮やかな橙色を呈色し
ます今回合成したアゾ染料は図の 1-フェニルアゾ-2-ナフトールです意外かもしれ
ませんが指示薬として使われているフェノールフタレインもアゾ化合物ですフェノール
フタレインは pH の変化によって色が出てきす染料の中でも最初は無色のものもありますが
温度を変化させたり酸性やアルカリ性にすると色が出てきます
ベンゼン ニトロベンゼン
N2Cl
ニトロ化 濃硫酸(濃硝酸)
還元反応 濃塩酸
(Sn又は Fe)
アニリン塩酸塩
遊離反応 NaOH
アニリン塩酸塩に強塩基を反応させる
と弱塩基であるアニリンが遊離する
氷冷+亜硝酸ナトリウム アニリン
塩酸
ジアゾ化
塩化ベンゼンジアゾニウム
塩化ベンゼンジアゾニウム
は熱によって窒素とフェノー
ルに分解される
カップリング
C10H7ONa (ナトリウム 2-ナフトキシド)
O
N =
1-フェニルアゾ 2-ナフトール
NH3Cl NH2
49
7 ガスクロマトグラフ質量分析計による茶葉中のカフェインの分析 71 はじめに ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)は極めて低い濃度の化学物質の同定や未知物質の構造決定に極めて強力な分析機器の一つであるGCMSを用いるとサンプルの中に含まれているある成分の分子構造(カフェインの分子構造を図 71に示す)やその量が分かりますもちろん分析機器ですので測定できる物質対象となる系や測定条件にはある
程度の制約があります混合物質を分離するガスクロマトグラフ(Gas ChromatographGC)と分離された成分(物質)を分析(構造決定と濃度測定)する質量分析計(Mass SpectrometerMS)を組み合わせた装置であるこの装置は有機化学生化学環境化学などの多くの分野で非常に多用されている例えば極めて低い濃度でも生体へ強い影響が懸念されるダイ
オキシン類などの土壌や河川の水中での含有率の決定や食品や医薬品中の微量成分の決定
にも利用されている 一方日本人に長い間親しまれてきた緑茶が近年産業界や医学
界で注目されている茶葉にはカフェイン(分子構造図 71)カテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドなどの有用成分が多く含まれておりその効能が注目されている 本実験では茶葉中に含まれるカフェインに対してGCMSを用いて分析する茶葉中には種々の物質が含まれておりGCMS分析を容易にするため前処理として超臨界二酸化炭素抽出(4015MPa程度の高圧力の二酸化炭素を溶剤として利用)により茶葉からカフェインの抽出を行いそのサンプルを GCMSにて分析する
図 71 カフェインの分子構造 図 72 物質の分析 個々の物質や装置についてはインターネットにより下記のWebサイトのフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』などにより調べるとよいカフェイン(caffeine)はアルカロイドの一種プリン環を持つプリンアルカロイドの一種でコーヒー類に含まれることか
らこの名がある化学名は137-トリメチルキサンチン(C8H10N4O2) コーヒーコーラ緑茶紅茶ガラナココアなどに含まれる(量は緑茶が一番多い)結晶は一水和物(C8H10N4O2bullH2O)もしくは無水物(無水カフェインC8H10N4O2)として得られ
る白色の針状または六角柱状結晶で匂いはなく味は苦い融点は 238昇華性がある出典フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』httpwwwwikipediaorg 装置「GCMS」httpwwwanshimadzucojpproductsgcmsqp2010htm (島津) 「超臨界抽出装置」httpwwwkagakucomjasco39-49html (日本分光)
50
レポート課題 1茶葉中に含まれるカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドの中から3つの物質を選びその物質について調べた結果を A4 レポート用紙2枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
2GCMS についてA4 レポート用紙1枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
3与えられたサンプルは茶葉1gから抽出されたのである実験結果よりもとの茶葉
1g中に含まれるカフェインの量を推算し計算式とあわせて示すこと 72 原理および装置 実験で使用する島津製の GCMS装置の全体図を図 73に原理の概略を図 74に示す
1
23
4
5
67 8
9
10
キャリアーガス
試料物質
1ボンベ(He)2圧力計3マイクロシリンジ4サンプラー5試料導入部6分離カラム
7セパレーター8イオン化室9磁石10電子増倍管11記録計
11
図 74 ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)の概略図
サンプルフォルダー
51
GCMS 装置は分離部である図中の 1~6 のガスクロマトグラフ(GC)と7~11 の検出部である質量分析計(MS)から構成される 3のマイクロシリンジを用いて試料を GCMSに導入する導入された試料は5試料導入部でガス化され6分離カラムに導入される分離カラムには吸着剤が充填されおり混合物の試料を導入した場合各物質と吸着剤との
親和性の違いにより各物質の分離カラムから排出されるタイミングは異なる分離カラム
を排出された試料は8イオン化室でイオン化され10電子倍増管にて検出される アセトンに溶解したカフェインの GCMSによる分析結果の一例を以下に示す図 75にク
ロマトグラム図 76にカフェインのピークのマススペクトルを示す
図 75 GCMSにより得られたクロマトグラム
横軸がリテンションタイムで縦軸がピーク強度を表す
図 76 カフェインのマススペクトルとカフェイン(分子量MW=194)の構造
(図 75中のリテンションタイム 126min付近のピークに起因するマススペクトル) 茶葉中にはカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイド以外にも繊維であるセルロースなど多くの物質が含まれているため茶葉そのものを
そのままサンプルとしてGCMSで分析することは困難であるセルロースなどの分子量の大きな物質はカラムに詰まってしまい分析できないそこで今回は超臨界二酸化炭素
による抽出により主にカフェインを他の物質と分離抽出した通常よく利用されるアセ
トン抽出(アセトンに茶葉を浸し特定の成分を抽出する)ではカフェイン以外にも多く
の物質が抽出されるため図 75 のような単独のピークを得ることは難しく複数のピークがクロマトグラムに見られるこのサンプル(この場合茶葉からの抽出物)にはカフェ
イン以外の不純物は少なかったがガスクロマトグラフの分離カラムによりさらにそれ
らの混合物が精度よく分離されるクロマトグラムのピークはそれらサンプル中に含まれ
ていた個々の物質を表しているクロマトグラムのピークを選択することで分子構造解析
したい物質を選んだことになる選択したクロマトグラムのピークの表している物質(ここ
ではカフェイン)に対応するマススペクトルが図 76 に表示されているマススペクトル
52
で横軸がその成分(ここではカフェイン)分子を構成している原子の原子量で縦軸がそ
の量を表しているのでマススペクトルから分子構造を解析するためにコンピュータ内
に蓄えられた物質ごとのマススペクトルデータと今回測定したマススペクトル(分子内に含
まれている各原子の数)を比較することで測定したサンプル中のクロマトピークを選択し
た分子がどのような原子をどれだけ含んだ分子であったかがわかりそれからその物質
がどのような分子構造の物質である可能性が高いかをコンピュータが検索し結果を示す 73 実験サンプルの設置と GCMS装置の操作方法 実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS装置のサンプルフォルダ
ー(図 73)にセットするこのサンプルは茶葉 1gを 50ccの高圧セルにて超臨界二酸化炭素を利用して4015MPa2時間接触の条件で抽出した固体を10gのアセトンに溶かしたものである またコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に装置および装置制
御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 本実験で使用する GCMS の操作は全てコンピュータのモニター上で GCMS の解析プログラムソフトを使用することで行うコンピュータの操作方法を以下に示す なおコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS 装置のサンプルフォルダー(図 73)にセットするまた装置および装置制御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 1)パソコンのデスクトップ上のアイコン「GCMS 分析」をクリックすると以下のようにGCMS制御プログラムを起動するその後「OK」ボタンをクリックする
図 77 GCMD分析用ソフトウェア「GCMS分析」の起動
まず「GC-MS分析」をクリック
「OK」ボタンをクリック
53
2)制御プログラムが起動されパソコンと GCMSの接続が開始される
図 78 「GCMS分析」の接続確認画面 3)GCMSとパソコンの接続が完了すると以下のような画面が表示される
図 79 「GCMS分析」操作画面
4)マススペクトルによる分子構造の解析 サンプル(この場合茶葉からの抽出物)には多くの物質が混じり合っていたがガス
クロマトグラフの分離カラムによりそれらの混合物が精度よく分離されるクロマトグラ
ムのピークはそれらサンプル中に含まれていた個々の物質を表しているクロマトグラム
のピークを選択することで分子構造解析したい物質を選んだことになる選択したクロマ
トグラムのピークの表している物質(ここではカフェイン)に対応するマススペクトルを選
択するマススペクトルは横軸が原子量で縦軸がその量を表しているのでマススペク
トルから分子構造を解析するために「定性処理」を行う シミラリティ検索結果が表示され分析により得られたスペクトルと類似のスペクトルを有
する物質の一覧が表示される上部に表示される物質ほどスペクトルが一致していること
を示す
接続状況が表示される
「トップへ」
をクリック
54
図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果
図 711 表示スペクトルのシミラリティ検索結果 10)図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果の印刷 「レポート(R)」をクリックし「検索結果(R)」をクリックすると検索結果が印刷される
GC-MS 分析で得られたマスス
ペクトル
データベース中
のマススペクト
ル
55
参考資料 生理活性物質の精製 カフェインの利尿作用のように生物活動に影響を与える物質を生理活性物質といいます
天然物には生理活性物質を多く含むものがあります一般に天然物は多くの成分を含ん
でおり特定の生理活性物質を分離抽出するには種々の分離技術が必要ですまた生
理活性物質には60以上の温度でその生理活性を失う(失活)ものや溶剤として広く用いられているクロロホルムなどの有機溶剤中で失活するものが多いそこでこれら生理活性
物質の分離精製技術の開発が望まれており30~60程度のマイルドな温度条件で操作できる二酸化炭素を機能性溶媒として利用する超臨界抽出も有効な分離技術として注目されて
いる超臨界二酸化炭素は気体と液体の中間の性質を持ち物質の分離に役立っています 臨界点付近の高密度気体は超臨界ガスまたは超臨界流体と呼ばれ臨界圧力前後でそ
の溶解能力が著しく変化することから工業的にも種々の分野で利用されています一例と
して超臨界二酸化炭素(SC-CO2)によるコーヒー豆からのカフェインの抽出プロセス(a)
ならびに超臨界二酸化炭素に対するカフェインの溶解度(b)を図に示します図(c)に示す
ように固体のカフェインがガスである超臨界二酸化炭素に溶解します
このように超臨界二酸化炭素を用いた技術はコーヒー豆からのカフェインの抽出プロ
ポリスからの生理活性物質の抽出に利用されています
図 超臨界二酸化炭素抽出を用いたコーヒー豆からのカフェインの抽出
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付表 最小二乗法について 直線で近似する場合 f (x) = a0 + a1x (A1-1) 式(A1-1)のように近似させるとする測定値 yiとの残差を eiとすると式(A1-2)のようになる ei = yi - f (xi) = yi - ( a0 + a1xi ) (A1-2) ここで式(A1-2)の両辺を二乗してその i に関する総和をとりその値を S とすると次式となる
sumsum==
+minus==n
iii
n
ii xaayeS
1
210
1
2 )( (A1-3)
S を最小化するような a0a1を求める式(A1-3)を a0a1について偏微分すると次式とな
る
sum=
+minuspartpart
=partpart n
iii xaay
aaS
1
210
00)( sum
=
+minusminus=n
iii xaay
110 )(2 (A1-4)
同様にa1について編微分すると次式のようになる
sum=
+minusminus=partpart n
iiii xxaay
aS
110
1])([2 (A1-5)
Sが最小となる時は次式が同時に満たされる時である
00=
partpartaS
01=
partpartaS
(A1-6)
よって誤差が最小となる a0a1を求めるためには式(A1-6)を連立して解けばよい
sumsumsum===
+=n
ii
n
i
n
ii xaay
111
10 1 (A1-7)
sumsumsum===
+=n
ii
n
ii
n
iii xaxaxy
1
2
11
10 (A1-8)
式(A1-7)と式(A1-8)を a0a1を変数とみなし連立して解くと次式を得る
n組のデータ(xiyi)(i=12hellipn)に対して回帰直線 y= a0 + a1x を最小二乗法で求めて出力しデータ番号 iデータ yi直線で推定した値 )( ii bxay += および残差
iii yy minus=ε を出力するようなプログラムをつくりたい基礎式を導出せよ (ヒント残差の二乗の和が最小になるように係数 a0a1)を定めるのが最小二乗法
である)
57
sumsum
sumsumsumsum
==
====
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
n
ii
n
ii
xxn
xxyyxa
1
2
1
2
1111
2
0
)(
))(())(( (A1-9)
sumsum
sumsumsum
==
===
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
xxn
yxxyna
1
2
1
2
1111
)(
))(()( (A1-10)
よって式(A1-9)(A1-10)を用いれば最も誤差を小さくするような直線 y = a0 + a1x が求められる
y=a1x+a0 にて近似
誤差 ei
x
y
誤差が最小になる関数(直線 y=a1x+a0の場合)
図1 最小二乗による近似
誤差の和Sが最小
S
a0
a1
直線 y=a1x+a0 の近似
誤差の全体の和はS=Σei=Σyi-(a1xi+a0)
Sは変曲点にて最小値を示すすなわち(partSparta0)=0 (partSparta1)=0
図2 a0a1とSの関係
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3)吸着量の測定(2日目) 恒温槽の温度を測る
恒温槽から三角フラスコを一つずつ取り出す
各試料溶液を一つずつ手早くろ過する
活性炭
ろ液を滴定して平衡濃度を決定する
回収
吸着量の計算
Langmuirの吸着等温式Freundlich式のパラメータの決定
グラフの作成
吸着量の計算10001000 times
minus=
wCC
n (34)
n吸着量 [molg] C0 酢酸水溶液中の酢酸の濃度 [molℓ] C ろ液中の酢酸の濃度 [molℓ] w 活性炭の量 [g]
35 実験結果のまとめ方 実験結果は実験レポートを書く場合に考察と並んで重要な部分ですので主な注意事
項をここで説明しておきます グラフの作成n vs C nC vs C ln n vs ln C の 3つのグラフの作成 配布された Excel ファイルを利用し下図のような図を作成してみましょう
15
レポートの間違いやすい場所 ①表や図を示す場合次の例のように文章でもその旨を示す [実験結果] 共栓付三角フラスコに活性炭約 1g入れた試料の重量 w[g]を Table1に示す
Table1 調整酢酸濃度を入れる活性炭試料の重量 w [g]
酢酸規定度[N]
活性炭試料の質量w [g]
12 10300
14 10001
18 10126
116 10011
132 10109 酢酸(1)-水(2)-活性炭(3)の 12における吸着平衡の結果を Table 6および Fig1に示すただし活性炭 1gに吸着された酢酸のモル数 n[molg]は次式より求めた
( )10001001
0 timestimesminus=w
CCn b
C0仕込み液中の酢酸濃度 [molℓ] Cbバルク相中の酢酸濃度 [molℓ] w活性炭試料の質量 [g] n吸着量 [molg]
例えばCb=04621C0=04894w=10300の時は次のように計算できる
( ) 026501000100
0300114621048940 =timestimesminus=n
Table6 酢酸(1)-水(2)-活性炭(3)の 12における吸着平衡
吸着された溶質のモル数n[molg]
バルク相中の濃度Cb[moll]
00205 04621
00175 0241
00139 01139
00105 00519
00081 00243 ②得られた図や表の解釈(読者にそれらから読み取ってもらいたい事柄)の説明文を次の
例のように文章で記述する数字や図だけ示して読者に「理解しろ」というようなレポー
トではよくありません Table 6および Fig1よりバルク相中の酢酸濃度 Cbの増加にともない吸着量 nも増加することがわかったまた吸着量 n の値は酢酸濃度 Cbの増加にともない n=に漸近することがわかる
グラフ(Fig)は次ペ
ージに掲載すること
グラフや表の後にはそれらの結果より得られた知見を文章でも
記入すること
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36 エクセルによる吸着データの整理法 注コンピュータの画面はWindowsXP上での操作になっています他の OS(Windows98 2000
NT)搭載のパソコンでも同様の作業が可能です) 先ほど問1で説明したように溶液濃度の濃度変化から吸着量 nを求めました実験では吸着後の水溶液中の酢酸の濃度 Cと吸着量 nの関係を各濃度の溶液(5種類)について測定しその値を計算します このようなデータの整理には表計算ソフトであるマイクロソフト社の Excelが便利です
Excel の起動方法はそのソフトがインストール(設定)されているコンピュータにより若干方法が異なることがありますがほとんど同じですここでは福岡大学の総合情報処理
センターのコンピュータの設定に従って説明します 表計算をしてみましょう セルとは セルというのは最小単位の四角のことです例えば「(Aの1)またはA1というセルセル
B1」のようにセルという言葉を使いますセル A1に1という数字を入れてみましょうセルA1をクリックしてキーボードから「1」と入力しキーボードの「Enter」キーを押します
図 5 Excelの入力例1 図 6 Excelの入力例2
次にセル B1に「5」という数字を入れましょう次にセル C1にセル A1と B1に記入された数値の和を表示させてみましょう 下の図のようにセル C1をクリックします上の「 fx 」と書かれた右のボックス(何かを書くところに)「 =A1+B1 」と書きましょうそして Enterを押すとセル C1に 6と表示されます
図 Excelを用いた関数計算 実験では吸着後の水溶液中の酢酸の濃度 Cと吸着量 nの関係を各濃度の溶液(5種類)について測定しましたこのデータに対してExcelを用いて表計算してみましょうまず先ほど記述したセル A1~A3は「Delete」(デリート)キーで値を削除しましょう
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次にセル A5~A9に活性炭と接触する前の酢酸水溶液の初濃度 C0[moldm3]セル
B5~B9に活性炭と接触後分離した酢酸水溶液の濃度 C[moldm3]セル E5~E9に活性炭の質量 W[g]をキーボードから入力します作成した一例を次に示します
図 8 Excelによる吸着量nの計算 ここで1gの活性炭に吸着された酢酸の物質量n [mol]を式 (4)より計算できるのでセル C 5~C9に次の関数式を記述します式の内容としては
)( 0CCWVn minusminus=
となるように記述するので実際の Excelの関数としては次のように行います セル C 5をクリックし関数ボックス(fxの右)に「=(A5 ndash B5)01E5」と記述(半角または直接入力形式で)し「Enter」キーを押し確定しますこの関数はフィルハンドルを利用してセル C 6~C9にコピーしますただし実験で溶液は 100cm3使用しましたが
溶液の濃度 C が[moldm3]の単位ですので100cm3=01dm3 となり関数式の中では
V=01 dm3としています なおグラフの記述方法やフィルハンドルの使用方法については化学工学プログラミ
ングなどの補助資料を参考にして下さいまた実験の際に配布した Excel ファイル(ファイル名ad_graxls)を使用すると実験データの理論的な解析も容易にできますので試してみましょうExcelファイル(ファイル名)「ad_graxls」の使用方法は次節で説明します 36 実験結果の考察方法 (吸着実験について) 実験結果の考察方法は種々の方法がありますがここでは一例として理論と比較する
方法を示します実験結果として下図(左)のようなグラフができましたこのような実
験結果に対して理論的な考察を行ってみましょうここでは次節で説明するラングミュ
ア(Langmuir)の単分子吸着モデルで計算した理論線と実験と比較したものを下図右に示しますこの図を作る方法は次節で説明しますレポートの考察の部分はラングミュア
(Langmuir)の単分子吸着モデルの式の導出から書いて下さい 理論を作る場合幾つかの仮定をしますがその理論が多くの実験結果をうまく説明でき
ている場合その仮定がある程度妥当なものであったことがわかります指針書に書いてあ
った以外の理論についても興味があれいばためしてみましょう
セル C5をクリックし関数ボックス( fx の右)に「=(A5 ndash B5)01E5」と記述(半角または直接入力
形式で)します
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ラングミュア(Langmuir)の単分子吸着モデルを用いて理論値を計算するには配布され
た Excelファイル(ファイル名)「ad_graxls」を使用すると便利ですその使用方法を以下に示します配布プログラムは化学工学プログラミングの講義の場合と同様に総合情報処
理センターの共通領域にあります各自コピーして使用して下さいコピーするには化
学工学プログラミングの講義の場合と同様にコピーしようとするファイルを共通領域から
自分の使用しているコンピュータのデスクトップにドラッグドロップします共通領域で
ファイルを開くとファイルの消去などで他の人が使えなくなりますので共通領域でファイ
ルをダブルクリックしないようにして下さい誤って共通領域でファイルをダブルクリック
した場合はそのファイルを閉じるボタンをクリックし閉じて下さい 各自のコンピュータに保存した Excelのファイル(ファイル名ad_graxls)をダブルクリ
ックして開きます自宅へ持ち帰る場合各自のフラッシュメモリーやフロッピーディスク
を使用しまたはメールを使用して添付ファイルで送信できます各自のフラッシュメモ
リーやフロッピーディスクに保存してあるファイルを再編集する場合はフラッシュメモリ
ーやフロッピーディスクをコンピュータの USB 端子またはフロッピーディスクドライブに挿入します次にデスクトップ上にあるマイコンピュータのアイコンをダブルクリックし
ます もしデスクトップ上に上のアイコンが無ければ画
面左下の「スタート」ボタンからマイコンピュータをク
リックしてくださいすると次のような画面が立ち上が
ります
ラングミュア(Langmuir)の単分子吸着モデルで計算した
理論線
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その中からフラッシュメモリーの場合は「リムーバブルディスク」をフロッピーディ
スクの場合は「35インチ FD」のアイコンをダブルクリックしてくださいファイルが保存されていれば次の画面が出てきます
この画面の中の「ad_graxls」ファイルをデスクト
ップにコピーしますまず「ad_graxls」ファイルを左クリックしますこの時クリックした指はは
ずさないようにしますその状態のままデスクトッ
プまでファイルを移動させますそしてデスクト
ップ上の任意の場所でクリックした指をはずします
これでデスクトップ上に「ad_graxls」のファイルがコピーされましたのでデスクトップにコピーさ
れたファイルをダブルクリックして開きますコピ
ー操作が上手くいかなかった場合もう一度移動の操作を行ってください
必ずデスクトップにコピーしてから開く操作を行って下さいフロッピーディスクから直接
開いて操作を行った場合正しく保存されない可能性があります 「ad_graxls」のファイルを開くと次のような画面が立ち上がりますもし画面が違う場合は画面の下部にある「吸着データ」のタグ をクリックしてくださいこの画面
でデータの処理や計算を行いますでは実際の操作に入る前に予めこのファイルに名前
を付けて保存しておきますまずExcelの画面のツールバー「ファイル」から「名前を付けて保存」をクリックします下のような画面が起動します
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ファイルの保存先を変えたい場合画面上部のボタンをクリックし保存先にデスクトッ
プを選択します次にファイル名の部分に各自ファイル名を入力しますファイル名は何
でも良いですが分かり易い名前にしておくとファイルの管理がやり易くなります日付や
数字を入れると同名のファイルをいくつも管理する場合に便利ですここでは「吸着実験デ
ータ整理 4月 01」とし「保存」ボタンをクリックします
ファイル名変更後Excelの画面上部のタイトルバーのタイトルが先ほどの名前(上の図とは異なります)になっていることを確認してください
この操作を行うことによって元のデータである「ad_graxls」を変更してしまう心配がなくなります元のデータである「ad_graxls」はファイルが破損しまたは間違った操作の結果を誤って保存してしまった場合などの補助ファイルとなりますので大切に保管しておいて
下さい今後配布するデータは先ほど説明した手順で名前を変えて保存し元のデータに
直接変更を加えないようにして下さい ここから実際の作業に入ります初期状態では模擬のデータが入力されています入力
データは予め計算しておいた酢酸濃度Cb[moll](濃度を Cと表示している場合もあります)と活性炭吸着量 n[molg]になります下の画面の丸で囲んだ部分がそれぞれの値でBCカラム(列)の 4~9行には数値が入力されています関数ではありませんこのデータを利用して実際のデータ解析を行ってみましょう下記のように行うと幾つかのグラフが
現れ実験データに対してラングミアーの単分子吸着を仮定したモデルを用いて精度よ
く計算線が描けることがわかります 今回はCbnの値を入力する必要はありませんExcelが自動的に計算を行って結果を表示するようになっていますつ
まりセル D5に「=B5C5」と関数を入力しこの関数に対してフィルハンド
ルを利用してセル D6~D9へコピーし
ファイルの保存先を変えたい場合画面
上部のボタンをクリックし保存先に
デスクトップを選択します
変更するファイル名はここをクリッ
クして書き換えます
名前を変更したらここをク
リックして保存します
21
まています 次に酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着量 n[molg]の関係および酢酸濃度 Cb[molL]と Cbn[gL]の関係をグラフ化します今回は自動的にグラフが作成されるようになっていますので複
雑な操作は必要ありません ここではデータに対してそれを精度よく表現する近似式をグラフ上に描きその関数
を数値として求める方法を Excelで練習してみましょう
グラフを表示させるには画面の下にある「Graph1」もしくは「Graph2」のタグ
をクリックします「Graph1」には酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着量n[molg]の関係のグラフが「Graph2」には酢酸濃度 Cb[molL]と Cbn[gL]の関係のグラフが表示されます「Graph2」はLangmuir の等温吸着式による相関を表したもので横軸に酢酸濃度 Cb[molL]をとり縦軸に酢酸濃度 Cb[molL]を活性炭吸着量 n[molg]で除した値 Cbn[gL]を示していますLangmuir の等温吸着式についてはこの後の章で説明してありますので各自読んで理解して下さいLangmuirの等温吸着式では式中の定数 ninfin(飽和吸着量)と K(吸着平衡定数)を実験データから最小二乗近似で決定する場合が多くありますここでは
その例を取り上げてデータに対してそれを精度よく表現する近似式をグラフ上に描き
その関数を数値として求める方法(最小二乗法最小二乗については付録に示しており
また化学工学プログラミングの講義においても説明します)を Excelで練習します 配布された Excel ファイル「ad_graxls」では実験点が表示されているだけでそれを精度よく表現する近似式の直線のグラフは「Graph2」に表示されていません今から次の手順で「Graph2」の図(グラフ)に近似式の直線のグラフを表示しますExcel の場合近似曲線(ここでは直線)を求める場合コンピュータが自動的に最小二乗法を使って近似曲線
を計算しています
「Graph1」の画面 「Graph2」の画面
Excelの sheetが表示されたらまずファイル名を変えデスク
トップに保存して下さい次
にGraph2のタックを左クリックして最小二乗法のグラフを
確認して下さい
22
38 Langmuirの等温吸着式による相関 はじめにLangmuir式の定数 ninfinと Kを決定するために「Graph2」酢酸濃度 Cb[molL]と
Cbn[gL]の関係のグラフから最小二乗法により直線の式を求めますExcelを用いてデータに対して近似直線のグラフを描き最小二乗法の直線の式を求めます
次のような「近似曲線の追加」のウィンドウが現れたら今回は線形近似(直線で近似
y=ax+b の式)を選びますので線形近似が黒色に反転していることを確認して「近似曲線の追加」のウィンドウの右下の「OK」ボタンをクリックして下さい
実験点の何れかにポインタをあわせて
右クリックする
近似曲線の追加(R)を選択して左クリックする
「線形近似」であること
を確認して「OK」ボタンをクリックします
23
「近似曲線の書式設定」
のウィンドウでオプシ
ョンから「グラブの書式
を表示する」の前を選ん
でチェック(前のチェッ
クボックスをクリック)
した後「OK」を押す
現れた直線にポインタをあわせて
左クリックすると「近似曲線の書式
設定」のウインドウが表示されます
ここをクリックします
この「オプション」のタ
グをクリックします
「y=」の関数
が現れるのでここ
をクリックする
式の文字フォントが初期値
「8」と小さいのでここ
のボタンをクリックし
フォントサイズを選ぶリス
トボックスを表示し「22」程度の大きなサイズを選択
しクリックする
24
「Graph2」酢酸濃度 Cb[molL]と Cbn[gL]の関係のグラフから最小二乗法により直線の式がこのように求められましたExcel を用いてデータに対して近似直線のグラフを描き最小二乗法の直線の式を求めるこの方法は他の実験データの解析などにも利用できますので
各自活用して下さい 表示された関数式「y=43865+2654」はノートにメモして下さいこの傾き 43865と
切片 2654からLangmuir式の定数 ninfinと Kを決定します決定方法の詳細はこの後の 36 の Langmuir式のパラメータ決定法に示しています ラングミュアの等温吸着式を変形すると次式となる
CCnKnCKn
CCKn
Cβ+α+
==
+= infininfininfin
11)1(
ただしα=1ninfinβ=1(ninfinK)とするこの式より Cnを縦軸Cを横軸とした関係のグラフは傾きα=1ninfin切片β=1(ninfinK)の直線関係を与えることを示しています そこでExcelのシートを利用してこの値からLangmuir式の定数 ninfinと Kを次のように決定しますセル C18D18に Graph2で求めた数値 2654と 43865を代入しますその後D19と C19に関数を ldquo=1D18rdquoとrdquo=D18C18ldquoを代入しますセル内の式は半角で入力してください
現れた関数の文字フォン
トを大きく(例えば 22)してその数字をメモし
吸着データシートの C18と D18に記入する
C18D18 に Graph2 で求めた値 2654 と 43865 を代入した後D19 と C19 に関数を ldquo=1D18rdquoとrdquo=D18C18ldquoを代入する
25
この Excel表示では最小二乗法を用いて決定した傾きαと切片βを用いて α=1ninfin=43865 β=1(ninfinK)=2654 得られた傾きおよび切片よりninfinおよび Kは次のように求まる
ninfin=1α=1D18=000228 molg-1 K =(1ninfin)β=αβ=D18C18=165
つまりセル D19にはninfinの値がセル C19にはKの値が表示されますこれらの値はラングミュア(Langmuir)の単分子吸着モデルで計算した理論線と実験と比較する場合に利用します実験結果に対して理論的な考察を行う例としてラングミュア(Langmuir)の単分子吸着モデルで理論線を計算し実験と比較するにはこの Excelファイルを利用して次のように計算しグラフに表示します セル F5~F30 には溶液中に残る酢酸濃度 Cb[molL]に対する活性炭に吸着された吸着量n[molg]の関係のグラフ「Graph1」の横軸の酢酸濃度 Cb[molL]の適当な値が既に入力してありますこれらのそれぞの酢酸濃度 Cb[molL]に対する吸着された酢酸の吸着量 n[molg]の理論値をラングミュア(Langmuir)式で計算しますラングミュア式は次式で与えられます
KCKCnn
+=
infin
1 (310)
ここでこの実験データを最も精度よく計算できるように決定した ninfinおよび K は上述のようにninfin=1α=1D18=000228 molg-1 K =(1ninfin)β=αβ=D18C18=165 でありこれらの値はセル D19にninfinの値がセル C19にKの値が表示されていますこの値を利用して「Graph1」に計算線を描くにはまずセル G5~G30 にセル F5~F30 のそれぞれの酢酸濃度 Cb[molL]に対する吸着された酢酸の吸着量 n[molg]の理論値をラングミュア式で計算しますそのためにはセル G5 にラングミュア式を次のように記述しますただしセル D19の ninfinの値セル C19の Kの値は常に同じセルから参照するので絶対参照($マークを付けて$D$19 $C$19と記述します)で記述します
Langmuir式をセル G5に記述するただし濃度はF5の値を相対参照しD19と C19は絶対参照($マークが必要)することを忘れないように
セルG5に記述すべき数式
=$D$19$C$19F5(1+$C$19F5)
26
G5記述後フィルハンドルを使用してG5の関数を G6~G30までコピーします Sheet1から Graph1 のタグをクリックしGraph1 に計算線が表示されたことを確認しましょうこれでラングミュア式によるデータの解析は終了です実験値と理論値を比較して現象
について考察してみて下さいラングミュア式を理論的に導く場合にある仮定をしている
のですがその仮定をしているラングミュア式が実験データを精度よく計算できていれば
その仮定が妥当なもとであったと考察できます 与えられたモデルデータでラングミュア式によるデータ解析ができれば他の理論(例え
ばフロインドリッヒFreundlich式や BET式レポートはどちらか一方でも可です) についてもExcel で計算してみましょうレポートには自分のデータについてここで行った内容と同様に計算しその結果を考察に記述して下さい 自分のデータについて同様の計算をするにはまずいままで計算を行った Excel ファ
イルを保存しますデータを自分の実験データに置き換える前に Excel ファイルをさらに別の名前で保存します与えられた Excel ファイルは初期状態では模擬のデータが入力されているので今回自分達の実験したデータを入力していきます入力するデータは予め計算
しておいた酢酸濃度 Cb[moll]と活性炭吸着量 n[molg]になります下の画面の丸で囲んだ部分にそれぞれ自分の実験データを入力していきます
今回はCbnの値を入力する必要はありませんExcelが自動的に計算を行って結果を表示するようになっています 次に酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着
量 n[molg]の関係および酢酸濃度Cb[molL]と Cbn[gL]の関係をグラフ化します今回は自動的にグラフが作成
されるようになっていますので操作は必
要ありません 39 Freundlichの等温吸着式による相関 今回の実験で得られた酢酸濃度 Cbと活性炭吸着量 nのデータを利用してFreundlichの等温吸着式の定数 abの値を求めFreundlichの等温吸着式の理論線をグラフに追加します ここでFreundlich式は次式で表されます
bbaCn1
=
このままでは定数 abの値を決定することが難しいので上式の両辺の対数をとり線形化しますすると次式となります
bCb
an ln1lnln +=
ここでln Cbと ln nの関係をグラフにプロットすれば傾き 1b切片 ln aの直線関係が得られますしたがって実験データである酢酸濃度 Cbと活性炭吸着量 nの値の対数をそれぞれ計算します配布した「ad_graxls」ファイルを開き「吸着データ」シートの任意の部分に以下のような表を作成します
27
次にln Cb[-]の列の最初のセルに以下の数式を入力します
=ln(B5) 上式中の「B5」は Cb の値の最初のセルの位置を指します各個人の位置によって変更してください
次にln n[-]の列の最初のセルに以下の数式を入力します
=ln(C5) 上式中の「C5」は nの値の最初のセルの位置を指します各個人の位置によって変更してください
ここでln Cb[-]ln n[-]の値に対しそれぞれオートフィルを行い計算させますすると以下のようなデータが完成します
計算した ln Cb[-]ln n[-]の値をグラフにプロットし最小二乗法による直線式を求めます
28
ここで以下のような直線の式が得られたとします
9135ln31690ln913531690 minus=there4minus= bCnxy
上式より切片は-5913傾きは 03169となるので以下の要領で定数 a1bを計算します ==there4minus= minus 91359135ln eaa 000270
316901=
b
a の値を Excel で計算させる場合は任意のセルに以下のような数式を入力することで求めることができます
=exp(-5913) これでFerundlich等温吸着式の定数 a1bの値が決定しましたこの値は後で使うのでノートなどにメモしておいてください 次に決定した Ferundlich 等温吸着式の定数 a1b の値を用いてFerundlich 等温吸着式のグラフを作成します先ほども示したように Ferundlich等温吸着式は次式で表されます
bbaCn1
=
従って定数 aと 1bの値はすでに決定しているので任意の Cbの値に対する nの値を数点求めればFerundlich等温吸着式で求めた理論線が得られます以下の操作で理論線を引くことができます Langmuir 等温吸着式による相関のときと同様にExcel の「吸着データ」のシート上の任意の場所に以下のような表を作成します
次に Ferundlich等温吸着式に従いnの値を計算します
bbaCn1
=
式中の定数 a1bは先ほど計算した値を用いますしたがって式は次のようになります
31690002700 bCn times=
この式を Excelのセル内に記入すれば計算ができます次の
29
ように記入します
=00027G5^03169 ここで式中の「G5」は Cbの値が 0のセルを指しています各個人の位置によって変えてください 次に式を記入したセルを Cbの値が 05のところまでオートフィルを行いますそうするとすべての Cbに対して nの値が計算されます
これで Freundlich等温吸着式のデータが完成しましたので次に「Graph1」酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着量 n[molg]の関係のグラフにこのデータを追加し理論線を引きます理論線の引き方は Langmuirによる相関のときと同様の操作を行ってください グラフの書式等を変更し整理すると以下のようなグラフが出来上がります
310 吸着等温線とは 固体の吸着剤を溶液と接触させる時一定量の吸着剤によって吸着される溶質の量は温度一定ならば溶質の濃度の関数になる一定温度での吸着量を温度に対してプロットした時に
得られる曲線を吸着等温線というこの吸着等温線を比較的よく表す経験式として次の
Freundlich式がある
n=aC1b (1) ここで n は吸着剤の質量あたりの吸着量C は吸着平衡濃度a と b は実験から決定されるパラメータであるがその物理的意味は多少希薄である これに対し理論的な意味を持つものに次のラングニュア(Langmuir)の吸着等温式がある
30
KCKCnn
+=
infin
1 (2)
ただしninfinは飽和吸着量Kは吸着平衡定数であるこの式は
1)吸着分子が固体表面で単分子以上の厚い層を作ることはない 2)吸着分子同士の間の相互作用はない
という二つの仮定にもとに導かれたものである 結果の整理および報告 Freundlich吸着等温式Langmuir吸着等温式の各々のパラメータの最適値を求めよまた活性炭の吸着特性および表面積について考察し化学工学における吸着操作の重要性につい
ても検討せよ 311 吸着等温式 (a) ヘンリー(Henry)型吸着等温式 液相の濃度あるいは気相の圧力が小さい場合吸着分子間の距離が十分に長いため吸着
分子同士の相互作用が無視でき固体表面と吸着分子のみの相互作用で吸着量を決定できる
とき次式のように表される
n=KC (3)
ここでKは比例定数である図 3-1の(a)に示すように濃度 Cと吸着量 nは比例関係があり一般に吸着量が小さい範囲で成立する気体の場合は溶液濃度 Cの代わりに気相圧力 pを用いればよい
濃度(分圧)
濃度(分圧)
濃度(分圧)
濃度(分圧)
吸着量
吸着量
吸着量
吸着量
(a)ヘンリー型 (b)ラングミュア型
(d)BET型(c)フロインドリッヒ型
0
0
0
0
図 3-1 吸着等温式
31
(b)ラングミュア(Langmuir)型吸着等温式 ラングミュアは図 3-2 に示すように固体表面に同等な吸着力を示す吸着サイトがあり
表面に 1分子層だけ吸着する(単分子層吸着)と仮定して平衡状態における吸着量と溶質濃度(気相分圧)のと関係を導いた全吸着点のうち吸着分子に覆われている吸着点の割合
をθ[-]とすると分子の脱着速度 rrsquo[mols-1]はθに比例する比例定数を a[mols-1]とすると次式のように表される
吸着剤
吸着分子
吸着サイト
図 3-2 固体表面上の吸着サイト(Langmuir式の導出) r=aθ (6) また気相からの吸着速度 r[mols-1]は空いている吸着点の割合(1-θ)[-]と溶液濃度 C[molm-3]に比例する rrsquo= b(1-θ)C (7) このときの比例定数を b[m3s-1]とするまた平衡状態では両速度は見かけ上等しいため以下の式が成り立つ aθ=b(1-θ)C (8) これを変形する
CbaCbsdot+
sdot=θ (9)
ここで飽和吸着量を ninfin[molkg-1] ba を K[m3mol-1](Kは吸着平衡定数)とおくと infin=nnθ
となるので次式が得られる
32
KCKCnn
+=
infin
1 (10)
これをラングミュア式と呼ぶ
(c)フロインドリッヒ(Freundlich)型吸着等温式 フロインドリッヒの吸着等温線は図 3-1(c)のように示される
n=aC1b (11) nは吸着量[molkg-1]で aと bはともに吸着定数[-]である (d)BET(Brunauer-Emmett-Teller) 型吸着等温式
BET型の吸着等温線は図 3-1(d)に示されるラングミュア式は表面に 1分子層だけ吸着すると仮定したものであるがBET式は無限分子層まで吸着できる式である図 3-3に示すように吸着した分子がそれぞれ次の層の吸着サイトとなり分子は積み重なって多分子
層に無限層まで吸着できるものとし各層への吸着にラングミュア式を適用すれば次式の
ように表せる
( ) ( )CKCCCKqq
minus+sdotminussdotsdot
=infin
11 (12)
この式は多孔質固体の細孔表面積を窒素ガスの吸着によって測定する際に利用される重要な式
である
表面の吸着サイト
分子上の吸着サイト
図 3-3 多分層吸着モデル
Langmuir式のパラメータ決定法 水溶液からの酢酸の活性炭に対する吸着平衡データ(吸着平衡温度 12)は表 3-1のよ
うに与えられる実験データよりラングミュア式のパラメータ(K吸着平衡定数ninfin飽和吸着量)を最小二乗法で決定せよさらにラングミュア式より決定した ninfinKの値を用いて吸着等温線を計算し計算線として図に示し実験点と比較せよ
33
表 3-1 n C Cnの関係
ラングミュア式は式(310)で与えられるこの式を変形すると次式となる
CKnCK
n infinsdot+
=11
(313)
両辺に Cをかけると以下の式が導出される
CCnKnCKn
CCKn
Cβ+α+
==
+= infininfininfin
11)1( (314)
ただしα=1ninfinβ=1(ninfinK)とする式(314)より Cn と C の関係のグラフプロットは傾きα=1ninfin切片β=1(ninfinK)の直線関係を与えることを示している表 3-1の値を用いて計算した Cnと Cの関係を表 3-1および図 3-4に示す 最小二乗法を用いて傾きαと切片βを決定した α=1ninfin=43865 β=1(ninfinK)=2654 得られた傾きおよび切片よりninfinおよび Kは次のように求まる
ninfin=1α=1D18=000228 molg-1 K =(1ninfin)β=αβ=D18C18=165
0
50
100
150
200
0 200 400 600
C [ molm-3 ]
Cn [ kgm-3 ]
傾き = 1 ninfin
1 ninfinK
切片0
05
1
15
2
25
3
0 100 200 300 400 500
液相の溶質濃度 C [ molm-3 ]
吸着量 n [ molkg-1]
液相と溶質濃度 C [ molm-3 ]
吸着量
n[ m
olk
g-1]
実験点
Langmuir式パラメータninfin 00033 [ molg-1 ]K 00086 [ m3 mol -1 ]
図 3-4 ラングミュア定数の決定 図 3-5 12における酢酸濃度 Cと
吸着量 nの関係
C [molm-3] n [molkg-1] Cn [kgm-3] 460 225 109 529 214
268 199 149 105 060
172 128 732 504 357
34
Freundlich式のパラメータ決定法 酢酸水溶液中における酢酸の活性炭に対する吸着実験を行ったところ以下のような実験デー
タを得たただしCbはバルク相における酢酸濃度n は活性炭に対する酢酸の吸着量を示す
Cb[molL] n[molg] log10Cb log10n 04621 000205 02410 000175 01139 000139 00519 000105 00243 000081
実験データを利用して次式で与えられる Freundlichの等温吸着式の定数 abの値を求めたい
bbaCn1
= (1)
このままでは定数 abの値を決定することが難しいので上式の両辺の対数をとる
bbb
bb
Cb
aCa
aCn
ln1lnlnln
)ln(ln1
1
+=+=
=
(2)
ここで横軸に ln Cb縦軸に ln nの関係をグラフにプロットするすなわち x=ln Cby=ln nと考える
bCb
an ln1lnln += (3)
ここで直線式 y=a0+a1xと比較するすなわち
)(1)(ln
1
00
傾き
切片
ba
eaaa a
=
=rarr= (4)
a0および a1は最小二乗法により数値で求められる与えられたデータでは a1= a0= なので a= b= となる この値を n=acb
1bに代入してcb=0~05の範囲で nの値を計算する
35
BET式のパラメータ決定法 BET式は次式で与えられる
)1)(1( KCCCKCnn
+minusminus=
infin
(17)
以下のように BET式の変形を行う
)1()1(
KCCKCnCn+minus
=minusinfin
(18)
(18)式の逆数をとると
KCnCK
KCnKCC
Cn infininfin
minus+=
+minus=
minus)1(1)1(
)1(1
(19)
(19)式の両辺に Cをかえると
KCnCKC
CnC
infin
minus+=
minus))1(1(
)1( (20)
(20)式を変形すると次式が得られる
CKn
KKnCn
Cinfininfin
minus+=
minus11
)1( (21)
C と)-(1 Cn
Cのプロットは傾き
KnKinfin
minus1切片
Kninfin
1の直線関係を与えることを示している
これをグラフにプロットし最小二乗法に傾きおよび切片を求める
36
312 活性炭の比表面積の決定 酢酸分子の構造を以下に示す
Hc-Cb-Ca
Hd
Hb Oa
Ob-Ha
1219deg
Ca Oa
Ob
図 36 酢酸の構造
酢酸の 1分子の吸着面積srsquo [m2]を図 3-6に示すこのとき文献より
Caと Oaの結合距離 1321Å Caと Obの結合距離 1206Å OaCaObの角度 1219deg Cの原子半径 077Å Oの原子半径 062Å
したがって吸着面積 Slsquoは次のようになる
( ) ( ) 2088 10376109931036321 minusminusminus times=timestimestimestimes=s m2
ここで活性炭の比表面積 S[m2g]は次式で示される 10026 23 snS timestimestimes= infin
S活性炭の比表面積 [m2g] ninfin飽和吸着量 [molg] srsquo酢酸 1分子の吸着面積 [m2] 602times1023アボガドロ数 [個mol] したがって活性炭の比表面積 S[m2g]は
003350=infinn molg 2010376 minustimes=s m2 より
51281037610026003350 2023 =timestimestimestimes= minusS m2g
37
4 粘度密度測定 41 はじめに 大量生産を目的とした工業的化学プロセスはほとんど流れ系(流通系)であるそれらの系において操作対象となる各物質の粘度は装置を設計操作する場合きわめて重要
な物性値である 本実験では低分子溶液および高分子溶液の粘度測定を通じて液体の粘度について考察するさらに演習問題を通じて気体液体高分子溶液などの化学プロセスで対象となる物
質の輸送物性(粘度拡散係数)の重要性を認識されたい 42 低分子溶液の粘度 [目的] 種々の濃度のエタノール水溶液の粘度を測定しその溶液の粘度について考察する [概要] 25におけるエチルアルコール濃度 02040506080100 wt の水溶液について流下時間を測定しこの結果より相対粘度絶対粘度運動粘度を求めグラフにするま
た水の密度水-エチルアルコール溶液の密度についてはピクノメーターを用いて決
定する報告書には相対粘度絶対粘度運動粘度 vsエチルアルコール濃度の関係をそれぞれグラフにして提出する
[計算方法] 相対粘度絶対粘度運動粘度の定義は次のようになる
相対粘度 ww
w tdtd
ηη = (41)
η 混合溶液の粘度 [gcms] ηw水の粘度(8007times10-3 gcms) [gcms](25における粘度) d エチルアルコール水溶液の密度 [gcm3] dw水の密度(099704gcm3) [gcm3](25における密度) t エチルアルコール水溶液の流下時間 [s] tw水の流下時間 [s] 下付添字 W 水
絶対粘度 www td
tdη
η= (42)
運動粘度 ν=ηd [cm2s] (43)
38
[実験方法] 1) 粘度計を洗浄し粘度計内 に二連球で空気を送り込み
乾燥させる乾燥しにくい 場合はアセトンを滴下し た後再度二連球で空気 を送り込み乾燥させる 2)ピペットで一定体積(10mℓ) の純水を取り広い口 f から 粘度計に水を入れる 3)粘度計を恒温槽(25)に つけ約 10 分静置する 4)安全ピペッターを口 a に 取り付け液面が b 上部に 到達するまで吸い上げる 5)安全ピペッターを外すと 液面が降下しだす液面が bd 間を通過する時間をスト ップウォッチで測定する
6)純水での測定を 3 回繰り返す 7)純水を粘度計から取り除くその後粘度計内に二連球を用いて空気を送り込み乾燥させる 8)粘度計乾燥後複数の濃度に調整済みのエチルアルコール水溶液(10mℓ)を粘度計にいれ4)~6)の作業を繰り返し行う(3 回)なお濃度の異なるエチルアルコール水溶液を粘度計内に導入する場合には7)と同様に二連球を用いて粘度計内に空気を送り込み乾燥させる
表 4-1 エチルアルコール水溶液の濃度密度相対粘度の関係 エチルアルコール濃度
[wt] 密度 d[gcm3] 相対粘度
η ηw[-] 0
20 40 50 60 80
100
安全ピペッター接続
図 4-1 粘度計
液面の bd間の通過時
間を測定
f
39
43 密度測定 [目的] 本実験では水とエタノールの種々の組成の混合液体について密度を測定し分子間相互
作用について考察する [実験方法] 1)ピクノメーターの容積測定
図 4-2のピクノメーターの空の重量 wg を秤量する
ピクノメーターの蓋を取り外し
ピクノメーターを水で満たす
設定温度を 25として恒温槽 の電源を入れ恒温槽内の温 度が一定になるまで待つな お水温は恒温槽中の水銀温 度計から読む
恒温槽中に水を満たしたピク
ノメーターを入れる
約 10分間静置する
ピクノメーターに蓋をするこのときピクノメーターの容量
よりも余分の水は蓋の上部より排出される
ピクノメーターの外側を乾いた布で拭い秤量する(その重量を
wwg とする)
恒温槽の温度(25)における水の密度 dwgcm3(=099704gcm3)
より次式を用いてピクノメーターの容積を求める
w
w
dww
Vminus
= (44)
図 4-2 ピクノメーター
蓋
40
表 4-2 エチルアルコール水溶液の濃度と密度の測定結果(25) エチルアルコ
ール濃度[wt]
wrsquo[g] ww[g] V[cm3] w[g]
d[gcm3]
0 20 40 50 60 80
100
099704
エチルアルコール濃度[wt] 空のピクノメーターの重量 wrsquo[g] 水を入れたときのピクノメーターの重量 ww[g] ピクノメーターの体積 V[cm3] エタノール水溶液の入れたときのピクノメータの重さ w[g] エタノール水溶液の密度 d[gcm3]
容積 Vを求めたピクノメーターに混合溶液(調整済み)を入れてその重量 wgを秤量し次式で混合溶液の密度を求める
Vwwd minus
= (45)
エタノール濃度と密度 d の関係をグラフにプロットする
41
44 高分子溶液の粘度 [目的] 高分子溶液の粘度測定から分子量の粘度に与える影響について考察する [概要 ] オストワルド粘度計を用い種々の濃度のポリビニルアルコール(PVA ((-CH2CHOH-)n))水溶液の粘度を測定し粘度データよりポリビニルアルコールの分
子量を求める まず 05g100cc の濃度のポリビニルアルコール水溶液を調製する次にこれを原液
とし23 12 13 15の濃度の溶液を調製するこれらの溶液についてオストワルド粘度計を用いてそれぞれ流下時間を測定し相対粘度絶対粘度運動粘度を求め実験デ
ータより極限粘度[η]を求めるまた報告書には相対粘度絶対粘度運動粘度C
)ln( wηη
Cw
w-η
ηη vsポリビニルアルコール濃度の関係をそれぞれグラフにして提出する
[計算方法] エチルアルコール水溶液の粘度測定と同様の手法を用いて粘度の計算を行うなおポリビニルアルコール水溶液の密度はピクノメーターを用いて測定すること 表 4-3 ポリビニルアルコール水溶液の濃度密度相対粘度の関係 ポリビニルアルコール
濃度 [g100cc] 密度 d[gcm3] 相対粘度
η ηw[-] 05times(15) 05times(13) 05times(12) 05times(23)
05
42
[分子量の計算方法] 実験を行った結果以下のような粘度データを得られるとする実験データより極限粘度
を求めポリビニルアルコール(PVA)の分子量Mを決定せよ
PVA 水溶液濃度
C[g100cc]
相対粘度
ηηw[-]
絶対粘度
η[gcms]Cw
w-η
ηη
C)ln( wηη
05times(15) 1031 0008255 031 0305
05times(13) 039 0378
05times(12) 03 0289
05times(23) 0375 0353
05 0364 0334
ηw=8007times10-3 gcms 線状高分子の極限粘度[η]と分子量Mの関係は次式で与えられる [η]=KMα (46) ただしポリビニルアルコールの場合K=666times10-4α=064であるなお極限粘度[η]は次式で定義される
CC w
w
0
-][ limη
ηηη
rarr
= (47)
または
CC
)ln(][ w
0lim
ηηη
rarr
= (48)
よって濃度 CとCw
w-η
ηηまたは濃度 Cと
C)ln( wηη の関係をグラフ化し最小二乗法によ
り切片の値を求めると極限粘度[η]が決定される
Cw
w-η
ηηと C の関係より最小二乗法を用いて切片の値を決定すると(図 43 参照)切片=
03242傾き=00874となるよって極限粘度は以下のようになる[η]=03242同様
にC
)ln( wηη とcの関係より最小二乗法を用いて切片の値を決定する
(図 44参照)と切片=03249傾き=00256となり極限粘度は以下のようになる[η]=03249
Cw
w-η
ηηと Cの関係より決定した[η]=03242を用いてポリビニルアルコール(PVA)の
分子量 Mを計算する(46)式より以下のように PVAの分子量 Mを計算することができるM=([η]K)1α
=(03242(666times10-4))(1064)
=15811
43
y = 00874x + 03242
0
02
04
06
08
1
0 01 02 03 04 05 06 07
c[g100cc]
(η-ηw)(ηwc)
cw
w
η
ηηminus
極限粘度[η]
図 43 298Kにおける PVA濃度 CとCw
w-η
ηηの関係
y = 00256x + 03249
0
02
04
06
08
1
0 01 02 03 04 05 06 07
c[g100cc]
(ln(ηη
w))c
c)ln( wηη
極限粘度[η]
図 44 298Kにおける PVA濃度 CとC
)ln( wηη の関係
44
5 植物からの DNAの抽出 51 はじめに 分子レベルでの遺伝子の構造解明や遺伝子の発現に関する研究は近年急速に発展している
これら生命現象のしくみを分子レベルで解明しようという分子生物学の分野ではさまざま
な遺伝子の解析や応用方法が開発され我々の生活に身近なものになりつつある 本実験では初歩的な分子生物学に関する実験として植物(タマネギ)からの DNA の
抽出を行い抽出した遺伝子の電気泳動法による分離実験を試みる 52 試薬および器具 試薬 タマネギ(細胞中から遺伝子の抽出を行う) 台所用洗剤(洗剤中に含まれる界面活性剤には植物の細胞膜およびタンパク質を破壊す
る働きがある) 塩化ナトリウム(DNAは塩化ナトリウム水溶液に溶解し易い性質がある) エタノール(予め冷やしておくDNAはエタノールにほとんど溶解しない) 制限酵素(DNAを一定の部位で切断する働きを働きがある) TE緩衝液(pH緩衝剤が入った溶液) 器具 ビーカーミキサーフィルターメスシリンダー駒込ピペットガラス棒 マイクロピペット電気泳動装置ポラロイドカメラ 53 実験方法 1)タマネギは 1回の実験で半個のうち内側の半分程度を使用するタマネギ水 30ml台所用洗剤数滴をミキサー用ガラス容器に入れ40~60秒程度(固体状のタマネギがなくなる頃が目安)ミキサーにて混合する
2) 1)で作成した混合溶液をビーカーに移し約5g程度の塩化ナトリウムを加えガラス棒で静かに攪拌する粘性の大きな溶液が得られる
3) 2)で作成した溶液をフィルターを用いて濾過し濾液を回収する 4) 濾液の約2倍程度の量の冷エタノールをビーカーの壁伝いに静かに注ぐ 5) ビーカーを揺するとエタノール層に白くふわふわしたものが浮いてくるこれが DNAであるガラス棒で DNAを巻き取りシャーレ上にて DNAを回収する顕微鏡を用いて回収した DNAの状態を観察する
6)マイクロチューブ(容量 15ml)中に用意した 70エタノールを 8 分目程度まで注ぐ5)にて回収された DNAをマイクロピペットを用いて70エタノールの入ったマイクロチューブ中に移す軽く混ぜることによりDNA から不要な物質を洗い流す遠心分離してDNA をマイクロチューブの底に沈めた後溶液を捨てて DNA を乾かす乾いたらTE緩衝溶液を 1ml加えて放置するDNAの溶液が得られる
54 電気泳動装置による DNAの観察
本実験は職員と一緒に行うこと 実験を行う人はビニール手袋をすること 1) 抽出した DNAを電気泳動装置で観察するマイクロピペットを用いて以下のように調製した DNAの混合溶液を調製する(いずれの溶液も調製済)
45
2) マイクロピペットを用いてアガロースゲルの試料を流し込む穴(ウェル)に1)にて調製した溶液 Aおよび Bを注ぎ込む注入量は20μℓとする電気泳動装置のスイッチを入れて100Vの電流を流しアガロースゲル内にて DNAを電気泳動させる
3) 試料に予め加えられておいた青色の色素が 7 分目程度まで進んだら電気泳動を中止する(約 30分程度)
4) (ここでの作業は職員が行う) アガロースゲルを取り出し染色液に浸す染色後ゲルを取り出しポラロイドカメラで
DNAの泳動状態を撮影する
+ -
アガロースゲル
試料を流し込む穴(ウェル)
図 51 電気泳動装置
6 5 4 3 2 1
図 52 DNAの電気泳動写真の一例
55 電気泳動装置の原理 電気泳動装置の原理図を以下に示すアガロースゲル(寒天から不純物を除いたもの)中
に DNAをセットし電流を流すとDNAは電流の向きとは逆にマイナスからプラス方向
調製済 溶液 A(制限酵素なし) 水 11μℓ 10timesH Buffer 2microℓ 植物 DNA 5μℓ
調製済 溶液 B(制限酵素 Eco RI入り) 水 11μℓ 10timesH Buffer 2microℓ 植物 DNA 5μℓ 制限酵素 2μℓ
1 DNA(タマネギ)+制限酵素 2 DNA(タマネギ)+制限酵素 3 DNA(タマネギ) 4 λ-DNA(大腸菌)+制限酵素 5 λ-DNA(大腸菌) 6 サイズマーカー
500bp
46
に動く(このことを電気泳動という)これはDNA のリン酸部分が負に帯電しているためでありまたDNAはその長さにより泳動距離が異なる(短い遺伝子ほど長く泳動する)電気泳動ではこの性質を利用してDNAを大きさごとに分離することができる
塩基対数によってDNAを分離
EtBr (蛍光試薬)DNAの二本鎖内に入り込む
発光
UVλ=302nm
励起
分離後のアガロースゲルをエチジウムブロマイド(EtBr)溶液に浸す
DNAを含んだ溶液
アガロースゲル
リン酸部分が負に帯電
塩基 (ATGC)-
+
カメラで撮影
電圧
DNA構成成分(dNTPs)
バンドが明る
DNA量が
バンド(DNAの存在)
図 53 電気泳動の原理
56 制限酵素とは DNA は4 種類のヌクレオチド(GATC)が不規則につながってできている制限酵素はDNAの特定のヌクレオチドが並んでいる部分を切断する制限酵素には様々な種類がありEco RI(エコアールワン)と呼ばれる酵素は「GAATTC」といった並びの部分だけを切断することができる
GAATTC
CTTAAG
制限酵素
Eco RI
AAGCTT
TTCGAA
制限酵素
Hin dIII
図 54 制限酵素による DNAの切断
レポートについて 1 実験方法および実験結果の整理方法については指針書を参考にすること 2 実験結果については電気泳動の結果について考察すること(制限酵素の影響などにつ
いてまとめてください)
47
6 染色実験
61 はじめに
現在私達の身の周りでは様々な染料が使われている例えばT シャツやジーンズな
どの衣服は橙黄赤青など様々な色に染められている他にも私達が気付かないと
ころで多くの染色された製品を使用しているそこで本実験では高校の化学で学んだ
アゾ染料を合成してみるアゾ染料はアニリンを原料として作られているアニリンはベ
ンゼン環にアミノ基(-NH2)がついたものであるアニリンは無色の液体で水に溶けにく
くアンモニアより弱い塩基性を示すまたさらし粉(CaClO(ClO)H2O)水溶液を加えると
赤紫色を呈するこの呈色反応はアニリン特有のものであるので検出反応に用いられる
このアニリンを出発物質としてアゾ染料を合成してみる
62 試薬および使用器具
【試薬】 ①05moll 水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液
②2-ナフトール ③フェノール ④6moll 塩酸
⑤亜硝酸ナトリウム ⑥アニリン ⑦氷
【器具類】 ①電子天秤 ②50mℓビーカー ③100mℓビーカー
④ガラス棒 ⑤布(ガーゼなど) ⑥ピンセット
⑦ポリ手袋 ⑧ドライヤー ⑨シャーレ
10駒込ピペット(10ml ガラス製)
11駒込ピペット(1ml プラスチック製)
63 実験方法
1) 50mℓビーカーの中に 05molℓ水酸化ナトリウム水溶液 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回
NaOH 水溶液を分取するほぼ 20 mℓ分取できれば可)と 2-ナフトールを約 01g 入れ
よくかき混ぜる調製した溶液の中に布をつけその布はガラス棒でしぼってから(布
をガラス棒ですくいあげればよい)シャーレに広げる温度の異なる条件下(常温およ
び低温)で染料の合成実験を行うため布は最低 2枚調製した溶液と接触させそれ
ぞれ別々のシャーレ(低温用および常温用)に広げる
2) 新しいビーカーに水を約 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回分取)と 6molℓ塩酸約 4mℓ(10m
ℓ駒込ピペットで目分量で可)さらにアニリン約 1mℓ(プラスチック製 1 mℓ駒込ピペッ
ト)を入れてよくかき混ぜる染料の合成を常温および低温下で行うためこの溶液を
2つ調整する
低温下で反応させる溶液は恒温槽で 10~15 分ほどよく冷やした後亜硝酸ナトリウ
ム 05g を加えてよくかき混ぜる
常温下で反応させる溶液には冷却作業を行わずに亜硝酸ナトリウム 05g を加えて
よくかき混ぜる
3) 2)でつくった水溶液をシャーレに広げた布に注ぎ生成される染料を布によく染み
込ませ5分程放置する
4) 色の付いた布を取り出してポリ手袋をした手できれいに水洗いをし乾燥させる
48
5) 色差計を用いて乾燥した布の Lab(L明度aおよび b色度)を測定する
2)で作った溶液は5以下では無色の溶液ですが5以上になると淡い黄色になりま
す
【解説】
アゾ染料はアゾ基(-N=N-)を持っていてこのアゾ基によって鮮やかな橙色を呈色し
ます今回合成したアゾ染料は図の 1-フェニルアゾ-2-ナフトールです意外かもしれ
ませんが指示薬として使われているフェノールフタレインもアゾ化合物ですフェノール
フタレインは pH の変化によって色が出てきす染料の中でも最初は無色のものもありますが
温度を変化させたり酸性やアルカリ性にすると色が出てきます
ベンゼン ニトロベンゼン
N2Cl
ニトロ化 濃硫酸(濃硝酸)
還元反応 濃塩酸
(Sn又は Fe)
アニリン塩酸塩
遊離反応 NaOH
アニリン塩酸塩に強塩基を反応させる
と弱塩基であるアニリンが遊離する
氷冷+亜硝酸ナトリウム アニリン
塩酸
ジアゾ化
塩化ベンゼンジアゾニウム
塩化ベンゼンジアゾニウム
は熱によって窒素とフェノー
ルに分解される
カップリング
C10H7ONa (ナトリウム 2-ナフトキシド)
O
N =
1-フェニルアゾ 2-ナフトール
NH3Cl NH2
49
7 ガスクロマトグラフ質量分析計による茶葉中のカフェインの分析 71 はじめに ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)は極めて低い濃度の化学物質の同定や未知物質の構造決定に極めて強力な分析機器の一つであるGCMSを用いるとサンプルの中に含まれているある成分の分子構造(カフェインの分子構造を図 71に示す)やその量が分かりますもちろん分析機器ですので測定できる物質対象となる系や測定条件にはある
程度の制約があります混合物質を分離するガスクロマトグラフ(Gas ChromatographGC)と分離された成分(物質)を分析(構造決定と濃度測定)する質量分析計(Mass SpectrometerMS)を組み合わせた装置であるこの装置は有機化学生化学環境化学などの多くの分野で非常に多用されている例えば極めて低い濃度でも生体へ強い影響が懸念されるダイ
オキシン類などの土壌や河川の水中での含有率の決定や食品や医薬品中の微量成分の決定
にも利用されている 一方日本人に長い間親しまれてきた緑茶が近年産業界や医学
界で注目されている茶葉にはカフェイン(分子構造図 71)カテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドなどの有用成分が多く含まれておりその効能が注目されている 本実験では茶葉中に含まれるカフェインに対してGCMSを用いて分析する茶葉中には種々の物質が含まれておりGCMS分析を容易にするため前処理として超臨界二酸化炭素抽出(4015MPa程度の高圧力の二酸化炭素を溶剤として利用)により茶葉からカフェインの抽出を行いそのサンプルを GCMSにて分析する
図 71 カフェインの分子構造 図 72 物質の分析 個々の物質や装置についてはインターネットにより下記のWebサイトのフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』などにより調べるとよいカフェイン(caffeine)はアルカロイドの一種プリン環を持つプリンアルカロイドの一種でコーヒー類に含まれることか
らこの名がある化学名は137-トリメチルキサンチン(C8H10N4O2) コーヒーコーラ緑茶紅茶ガラナココアなどに含まれる(量は緑茶が一番多い)結晶は一水和物(C8H10N4O2bullH2O)もしくは無水物(無水カフェインC8H10N4O2)として得られ
る白色の針状または六角柱状結晶で匂いはなく味は苦い融点は 238昇華性がある出典フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』httpwwwwikipediaorg 装置「GCMS」httpwwwanshimadzucojpproductsgcmsqp2010htm (島津) 「超臨界抽出装置」httpwwwkagakucomjasco39-49html (日本分光)
50
レポート課題 1茶葉中に含まれるカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドの中から3つの物質を選びその物質について調べた結果を A4 レポート用紙2枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
2GCMS についてA4 レポート用紙1枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
3与えられたサンプルは茶葉1gから抽出されたのである実験結果よりもとの茶葉
1g中に含まれるカフェインの量を推算し計算式とあわせて示すこと 72 原理および装置 実験で使用する島津製の GCMS装置の全体図を図 73に原理の概略を図 74に示す
1
23
4
5
67 8
9
10
キャリアーガス
試料物質
1ボンベ(He)2圧力計3マイクロシリンジ4サンプラー5試料導入部6分離カラム
7セパレーター8イオン化室9磁石10電子増倍管11記録計
11
図 74 ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)の概略図
サンプルフォルダー
51
GCMS 装置は分離部である図中の 1~6 のガスクロマトグラフ(GC)と7~11 の検出部である質量分析計(MS)から構成される 3のマイクロシリンジを用いて試料を GCMSに導入する導入された試料は5試料導入部でガス化され6分離カラムに導入される分離カラムには吸着剤が充填されおり混合物の試料を導入した場合各物質と吸着剤との
親和性の違いにより各物質の分離カラムから排出されるタイミングは異なる分離カラム
を排出された試料は8イオン化室でイオン化され10電子倍増管にて検出される アセトンに溶解したカフェインの GCMSによる分析結果の一例を以下に示す図 75にク
ロマトグラム図 76にカフェインのピークのマススペクトルを示す
図 75 GCMSにより得られたクロマトグラム
横軸がリテンションタイムで縦軸がピーク強度を表す
図 76 カフェインのマススペクトルとカフェイン(分子量MW=194)の構造
(図 75中のリテンションタイム 126min付近のピークに起因するマススペクトル) 茶葉中にはカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイド以外にも繊維であるセルロースなど多くの物質が含まれているため茶葉そのものを
そのままサンプルとしてGCMSで分析することは困難であるセルロースなどの分子量の大きな物質はカラムに詰まってしまい分析できないそこで今回は超臨界二酸化炭素
による抽出により主にカフェインを他の物質と分離抽出した通常よく利用されるアセ
トン抽出(アセトンに茶葉を浸し特定の成分を抽出する)ではカフェイン以外にも多く
の物質が抽出されるため図 75 のような単独のピークを得ることは難しく複数のピークがクロマトグラムに見られるこのサンプル(この場合茶葉からの抽出物)にはカフェ
イン以外の不純物は少なかったがガスクロマトグラフの分離カラムによりさらにそれ
らの混合物が精度よく分離されるクロマトグラムのピークはそれらサンプル中に含まれ
ていた個々の物質を表しているクロマトグラムのピークを選択することで分子構造解析
したい物質を選んだことになる選択したクロマトグラムのピークの表している物質(ここ
ではカフェイン)に対応するマススペクトルが図 76 に表示されているマススペクトル
52
で横軸がその成分(ここではカフェイン)分子を構成している原子の原子量で縦軸がそ
の量を表しているのでマススペクトルから分子構造を解析するためにコンピュータ内
に蓄えられた物質ごとのマススペクトルデータと今回測定したマススペクトル(分子内に含
まれている各原子の数)を比較することで測定したサンプル中のクロマトピークを選択し
た分子がどのような原子をどれだけ含んだ分子であったかがわかりそれからその物質
がどのような分子構造の物質である可能性が高いかをコンピュータが検索し結果を示す 73 実験サンプルの設置と GCMS装置の操作方法 実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS装置のサンプルフォルダ
ー(図 73)にセットするこのサンプルは茶葉 1gを 50ccの高圧セルにて超臨界二酸化炭素を利用して4015MPa2時間接触の条件で抽出した固体を10gのアセトンに溶かしたものである またコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に装置および装置制
御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 本実験で使用する GCMS の操作は全てコンピュータのモニター上で GCMS の解析プログラムソフトを使用することで行うコンピュータの操作方法を以下に示す なおコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS 装置のサンプルフォルダー(図 73)にセットするまた装置および装置制御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 1)パソコンのデスクトップ上のアイコン「GCMS 分析」をクリックすると以下のようにGCMS制御プログラムを起動するその後「OK」ボタンをクリックする
図 77 GCMD分析用ソフトウェア「GCMS分析」の起動
まず「GC-MS分析」をクリック
「OK」ボタンをクリック
53
2)制御プログラムが起動されパソコンと GCMSの接続が開始される
図 78 「GCMS分析」の接続確認画面 3)GCMSとパソコンの接続が完了すると以下のような画面が表示される
図 79 「GCMS分析」操作画面
4)マススペクトルによる分子構造の解析 サンプル(この場合茶葉からの抽出物)には多くの物質が混じり合っていたがガス
クロマトグラフの分離カラムによりそれらの混合物が精度よく分離されるクロマトグラ
ムのピークはそれらサンプル中に含まれていた個々の物質を表しているクロマトグラム
のピークを選択することで分子構造解析したい物質を選んだことになる選択したクロマ
トグラムのピークの表している物質(ここではカフェイン)に対応するマススペクトルを選
択するマススペクトルは横軸が原子量で縦軸がその量を表しているのでマススペク
トルから分子構造を解析するために「定性処理」を行う シミラリティ検索結果が表示され分析により得られたスペクトルと類似のスペクトルを有
する物質の一覧が表示される上部に表示される物質ほどスペクトルが一致していること
を示す
接続状況が表示される
「トップへ」
をクリック
54
図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果
図 711 表示スペクトルのシミラリティ検索結果 10)図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果の印刷 「レポート(R)」をクリックし「検索結果(R)」をクリックすると検索結果が印刷される
GC-MS 分析で得られたマスス
ペクトル
データベース中
のマススペクト
ル
55
参考資料 生理活性物質の精製 カフェインの利尿作用のように生物活動に影響を与える物質を生理活性物質といいます
天然物には生理活性物質を多く含むものがあります一般に天然物は多くの成分を含ん
でおり特定の生理活性物質を分離抽出するには種々の分離技術が必要ですまた生
理活性物質には60以上の温度でその生理活性を失う(失活)ものや溶剤として広く用いられているクロロホルムなどの有機溶剤中で失活するものが多いそこでこれら生理活性
物質の分離精製技術の開発が望まれており30~60程度のマイルドな温度条件で操作できる二酸化炭素を機能性溶媒として利用する超臨界抽出も有効な分離技術として注目されて
いる超臨界二酸化炭素は気体と液体の中間の性質を持ち物質の分離に役立っています 臨界点付近の高密度気体は超臨界ガスまたは超臨界流体と呼ばれ臨界圧力前後でそ
の溶解能力が著しく変化することから工業的にも種々の分野で利用されています一例と
して超臨界二酸化炭素(SC-CO2)によるコーヒー豆からのカフェインの抽出プロセス(a)
ならびに超臨界二酸化炭素に対するカフェインの溶解度(b)を図に示します図(c)に示す
ように固体のカフェインがガスである超臨界二酸化炭素に溶解します
このように超臨界二酸化炭素を用いた技術はコーヒー豆からのカフェインの抽出プロ
ポリスからの生理活性物質の抽出に利用されています
図 超臨界二酸化炭素抽出を用いたコーヒー豆からのカフェインの抽出
56
付表 最小二乗法について 直線で近似する場合 f (x) = a0 + a1x (A1-1) 式(A1-1)のように近似させるとする測定値 yiとの残差を eiとすると式(A1-2)のようになる ei = yi - f (xi) = yi - ( a0 + a1xi ) (A1-2) ここで式(A1-2)の両辺を二乗してその i に関する総和をとりその値を S とすると次式となる
sumsum==
+minus==n
iii
n
ii xaayeS
1
210
1
2 )( (A1-3)
S を最小化するような a0a1を求める式(A1-3)を a0a1について偏微分すると次式とな
る
sum=
+minuspartpart
=partpart n
iii xaay
aaS
1
210
00)( sum
=
+minusminus=n
iii xaay
110 )(2 (A1-4)
同様にa1について編微分すると次式のようになる
sum=
+minusminus=partpart n
iiii xxaay
aS
110
1])([2 (A1-5)
Sが最小となる時は次式が同時に満たされる時である
00=
partpartaS
01=
partpartaS
(A1-6)
よって誤差が最小となる a0a1を求めるためには式(A1-6)を連立して解けばよい
sumsumsum===
+=n
ii
n
i
n
ii xaay
111
10 1 (A1-7)
sumsumsum===
+=n
ii
n
ii
n
iii xaxaxy
1
2
11
10 (A1-8)
式(A1-7)と式(A1-8)を a0a1を変数とみなし連立して解くと次式を得る
n組のデータ(xiyi)(i=12hellipn)に対して回帰直線 y= a0 + a1x を最小二乗法で求めて出力しデータ番号 iデータ yi直線で推定した値 )( ii bxay += および残差
iii yy minus=ε を出力するようなプログラムをつくりたい基礎式を導出せよ (ヒント残差の二乗の和が最小になるように係数 a0a1)を定めるのが最小二乗法
である)
57
sumsum
sumsumsumsum
==
====
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
n
ii
n
ii
xxn
xxyyxa
1
2
1
2
1111
2
0
)(
))(())(( (A1-9)
sumsum
sumsumsum
==
===
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
xxn
yxxyna
1
2
1
2
1111
)(
))(()( (A1-10)
よって式(A1-9)(A1-10)を用いれば最も誤差を小さくするような直線 y = a0 + a1x が求められる
y=a1x+a0 にて近似
誤差 ei
x
y
誤差が最小になる関数(直線 y=a1x+a0の場合)
図1 最小二乗による近似
誤差の和Sが最小
S
a0
a1
直線 y=a1x+a0 の近似
誤差の全体の和はS=Σei=Σyi-(a1xi+a0)
Sは変曲点にて最小値を示すすなわち(partSparta0)=0 (partSparta1)=0
図2 a0a1とSの関係
15
レポートの間違いやすい場所 ①表や図を示す場合次の例のように文章でもその旨を示す [実験結果] 共栓付三角フラスコに活性炭約 1g入れた試料の重量 w[g]を Table1に示す
Table1 調整酢酸濃度を入れる活性炭試料の重量 w [g]
酢酸規定度[N]
活性炭試料の質量w [g]
12 10300
14 10001
18 10126
116 10011
132 10109 酢酸(1)-水(2)-活性炭(3)の 12における吸着平衡の結果を Table 6および Fig1に示すただし活性炭 1gに吸着された酢酸のモル数 n[molg]は次式より求めた
( )10001001
0 timestimesminus=w
CCn b
C0仕込み液中の酢酸濃度 [molℓ] Cbバルク相中の酢酸濃度 [molℓ] w活性炭試料の質量 [g] n吸着量 [molg]
例えばCb=04621C0=04894w=10300の時は次のように計算できる
( ) 026501000100
0300114621048940 =timestimesminus=n
Table6 酢酸(1)-水(2)-活性炭(3)の 12における吸着平衡
吸着された溶質のモル数n[molg]
バルク相中の濃度Cb[moll]
00205 04621
00175 0241
00139 01139
00105 00519
00081 00243 ②得られた図や表の解釈(読者にそれらから読み取ってもらいたい事柄)の説明文を次の
例のように文章で記述する数字や図だけ示して読者に「理解しろ」というようなレポー
トではよくありません Table 6および Fig1よりバルク相中の酢酸濃度 Cbの増加にともない吸着量 nも増加することがわかったまた吸着量 n の値は酢酸濃度 Cbの増加にともない n=に漸近することがわかる
グラフ(Fig)は次ペ
ージに掲載すること
グラフや表の後にはそれらの結果より得られた知見を文章でも
記入すること
16
36 エクセルによる吸着データの整理法 注コンピュータの画面はWindowsXP上での操作になっています他の OS(Windows98 2000
NT)搭載のパソコンでも同様の作業が可能です) 先ほど問1で説明したように溶液濃度の濃度変化から吸着量 nを求めました実験では吸着後の水溶液中の酢酸の濃度 Cと吸着量 nの関係を各濃度の溶液(5種類)について測定しその値を計算します このようなデータの整理には表計算ソフトであるマイクロソフト社の Excelが便利です
Excel の起動方法はそのソフトがインストール(設定)されているコンピュータにより若干方法が異なることがありますがほとんど同じですここでは福岡大学の総合情報処理
センターのコンピュータの設定に従って説明します 表計算をしてみましょう セルとは セルというのは最小単位の四角のことです例えば「(Aの1)またはA1というセルセル
B1」のようにセルという言葉を使いますセル A1に1という数字を入れてみましょうセルA1をクリックしてキーボードから「1」と入力しキーボードの「Enter」キーを押します
図 5 Excelの入力例1 図 6 Excelの入力例2
次にセル B1に「5」という数字を入れましょう次にセル C1にセル A1と B1に記入された数値の和を表示させてみましょう 下の図のようにセル C1をクリックします上の「 fx 」と書かれた右のボックス(何かを書くところに)「 =A1+B1 」と書きましょうそして Enterを押すとセル C1に 6と表示されます
図 Excelを用いた関数計算 実験では吸着後の水溶液中の酢酸の濃度 Cと吸着量 nの関係を各濃度の溶液(5種類)について測定しましたこのデータに対してExcelを用いて表計算してみましょうまず先ほど記述したセル A1~A3は「Delete」(デリート)キーで値を削除しましょう
17
次にセル A5~A9に活性炭と接触する前の酢酸水溶液の初濃度 C0[moldm3]セル
B5~B9に活性炭と接触後分離した酢酸水溶液の濃度 C[moldm3]セル E5~E9に活性炭の質量 W[g]をキーボードから入力します作成した一例を次に示します
図 8 Excelによる吸着量nの計算 ここで1gの活性炭に吸着された酢酸の物質量n [mol]を式 (4)より計算できるのでセル C 5~C9に次の関数式を記述します式の内容としては
)( 0CCWVn minusminus=
となるように記述するので実際の Excelの関数としては次のように行います セル C 5をクリックし関数ボックス(fxの右)に「=(A5 ndash B5)01E5」と記述(半角または直接入力形式で)し「Enter」キーを押し確定しますこの関数はフィルハンドルを利用してセル C 6~C9にコピーしますただし実験で溶液は 100cm3使用しましたが
溶液の濃度 C が[moldm3]の単位ですので100cm3=01dm3 となり関数式の中では
V=01 dm3としています なおグラフの記述方法やフィルハンドルの使用方法については化学工学プログラミ
ングなどの補助資料を参考にして下さいまた実験の際に配布した Excel ファイル(ファイル名ad_graxls)を使用すると実験データの理論的な解析も容易にできますので試してみましょうExcelファイル(ファイル名)「ad_graxls」の使用方法は次節で説明します 36 実験結果の考察方法 (吸着実験について) 実験結果の考察方法は種々の方法がありますがここでは一例として理論と比較する
方法を示します実験結果として下図(左)のようなグラフができましたこのような実
験結果に対して理論的な考察を行ってみましょうここでは次節で説明するラングミュ
ア(Langmuir)の単分子吸着モデルで計算した理論線と実験と比較したものを下図右に示しますこの図を作る方法は次節で説明しますレポートの考察の部分はラングミュア
(Langmuir)の単分子吸着モデルの式の導出から書いて下さい 理論を作る場合幾つかの仮定をしますがその理論が多くの実験結果をうまく説明でき
ている場合その仮定がある程度妥当なものであったことがわかります指針書に書いてあ
った以外の理論についても興味があれいばためしてみましょう
セル C5をクリックし関数ボックス( fx の右)に「=(A5 ndash B5)01E5」と記述(半角または直接入力
形式で)します
18
ラングミュア(Langmuir)の単分子吸着モデルを用いて理論値を計算するには配布され
た Excelファイル(ファイル名)「ad_graxls」を使用すると便利ですその使用方法を以下に示します配布プログラムは化学工学プログラミングの講義の場合と同様に総合情報処
理センターの共通領域にあります各自コピーして使用して下さいコピーするには化
学工学プログラミングの講義の場合と同様にコピーしようとするファイルを共通領域から
自分の使用しているコンピュータのデスクトップにドラッグドロップします共通領域で
ファイルを開くとファイルの消去などで他の人が使えなくなりますので共通領域でファイ
ルをダブルクリックしないようにして下さい誤って共通領域でファイルをダブルクリック
した場合はそのファイルを閉じるボタンをクリックし閉じて下さい 各自のコンピュータに保存した Excelのファイル(ファイル名ad_graxls)をダブルクリ
ックして開きます自宅へ持ち帰る場合各自のフラッシュメモリーやフロッピーディスク
を使用しまたはメールを使用して添付ファイルで送信できます各自のフラッシュメモ
リーやフロッピーディスクに保存してあるファイルを再編集する場合はフラッシュメモリ
ーやフロッピーディスクをコンピュータの USB 端子またはフロッピーディスクドライブに挿入します次にデスクトップ上にあるマイコンピュータのアイコンをダブルクリックし
ます もしデスクトップ上に上のアイコンが無ければ画
面左下の「スタート」ボタンからマイコンピュータをク
リックしてくださいすると次のような画面が立ち上が
ります
ラングミュア(Langmuir)の単分子吸着モデルで計算した
理論線
19
その中からフラッシュメモリーの場合は「リムーバブルディスク」をフロッピーディ
スクの場合は「35インチ FD」のアイコンをダブルクリックしてくださいファイルが保存されていれば次の画面が出てきます
この画面の中の「ad_graxls」ファイルをデスクト
ップにコピーしますまず「ad_graxls」ファイルを左クリックしますこの時クリックした指はは
ずさないようにしますその状態のままデスクトッ
プまでファイルを移動させますそしてデスクト
ップ上の任意の場所でクリックした指をはずします
これでデスクトップ上に「ad_graxls」のファイルがコピーされましたのでデスクトップにコピーさ
れたファイルをダブルクリックして開きますコピ
ー操作が上手くいかなかった場合もう一度移動の操作を行ってください
必ずデスクトップにコピーしてから開く操作を行って下さいフロッピーディスクから直接
開いて操作を行った場合正しく保存されない可能性があります 「ad_graxls」のファイルを開くと次のような画面が立ち上がりますもし画面が違う場合は画面の下部にある「吸着データ」のタグ をクリックしてくださいこの画面
でデータの処理や計算を行いますでは実際の操作に入る前に予めこのファイルに名前
を付けて保存しておきますまずExcelの画面のツールバー「ファイル」から「名前を付けて保存」をクリックします下のような画面が起動します
20
ファイルの保存先を変えたい場合画面上部のボタンをクリックし保存先にデスクトッ
プを選択します次にファイル名の部分に各自ファイル名を入力しますファイル名は何
でも良いですが分かり易い名前にしておくとファイルの管理がやり易くなります日付や
数字を入れると同名のファイルをいくつも管理する場合に便利ですここでは「吸着実験デ
ータ整理 4月 01」とし「保存」ボタンをクリックします
ファイル名変更後Excelの画面上部のタイトルバーのタイトルが先ほどの名前(上の図とは異なります)になっていることを確認してください
この操作を行うことによって元のデータである「ad_graxls」を変更してしまう心配がなくなります元のデータである「ad_graxls」はファイルが破損しまたは間違った操作の結果を誤って保存してしまった場合などの補助ファイルとなりますので大切に保管しておいて
下さい今後配布するデータは先ほど説明した手順で名前を変えて保存し元のデータに
直接変更を加えないようにして下さい ここから実際の作業に入ります初期状態では模擬のデータが入力されています入力
データは予め計算しておいた酢酸濃度Cb[moll](濃度を Cと表示している場合もあります)と活性炭吸着量 n[molg]になります下の画面の丸で囲んだ部分がそれぞれの値でBCカラム(列)の 4~9行には数値が入力されています関数ではありませんこのデータを利用して実際のデータ解析を行ってみましょう下記のように行うと幾つかのグラフが
現れ実験データに対してラングミアーの単分子吸着を仮定したモデルを用いて精度よ
く計算線が描けることがわかります 今回はCbnの値を入力する必要はありませんExcelが自動的に計算を行って結果を表示するようになっていますつ
まりセル D5に「=B5C5」と関数を入力しこの関数に対してフィルハンド
ルを利用してセル D6~D9へコピーし
ファイルの保存先を変えたい場合画面
上部のボタンをクリックし保存先に
デスクトップを選択します
変更するファイル名はここをクリッ
クして書き換えます
名前を変更したらここをク
リックして保存します
21
まています 次に酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着量 n[molg]の関係および酢酸濃度 Cb[molL]と Cbn[gL]の関係をグラフ化します今回は自動的にグラフが作成されるようになっていますので複
雑な操作は必要ありません ここではデータに対してそれを精度よく表現する近似式をグラフ上に描きその関数
を数値として求める方法を Excelで練習してみましょう
グラフを表示させるには画面の下にある「Graph1」もしくは「Graph2」のタグ
をクリックします「Graph1」には酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着量n[molg]の関係のグラフが「Graph2」には酢酸濃度 Cb[molL]と Cbn[gL]の関係のグラフが表示されます「Graph2」はLangmuir の等温吸着式による相関を表したもので横軸に酢酸濃度 Cb[molL]をとり縦軸に酢酸濃度 Cb[molL]を活性炭吸着量 n[molg]で除した値 Cbn[gL]を示していますLangmuir の等温吸着式についてはこの後の章で説明してありますので各自読んで理解して下さいLangmuirの等温吸着式では式中の定数 ninfin(飽和吸着量)と K(吸着平衡定数)を実験データから最小二乗近似で決定する場合が多くありますここでは
その例を取り上げてデータに対してそれを精度よく表現する近似式をグラフ上に描き
その関数を数値として求める方法(最小二乗法最小二乗については付録に示しており
また化学工学プログラミングの講義においても説明します)を Excelで練習します 配布された Excel ファイル「ad_graxls」では実験点が表示されているだけでそれを精度よく表現する近似式の直線のグラフは「Graph2」に表示されていません今から次の手順で「Graph2」の図(グラフ)に近似式の直線のグラフを表示しますExcel の場合近似曲線(ここでは直線)を求める場合コンピュータが自動的に最小二乗法を使って近似曲線
を計算しています
「Graph1」の画面 「Graph2」の画面
Excelの sheetが表示されたらまずファイル名を変えデスク
トップに保存して下さい次
にGraph2のタックを左クリックして最小二乗法のグラフを
確認して下さい
22
38 Langmuirの等温吸着式による相関 はじめにLangmuir式の定数 ninfinと Kを決定するために「Graph2」酢酸濃度 Cb[molL]と
Cbn[gL]の関係のグラフから最小二乗法により直線の式を求めますExcelを用いてデータに対して近似直線のグラフを描き最小二乗法の直線の式を求めます
次のような「近似曲線の追加」のウィンドウが現れたら今回は線形近似(直線で近似
y=ax+b の式)を選びますので線形近似が黒色に反転していることを確認して「近似曲線の追加」のウィンドウの右下の「OK」ボタンをクリックして下さい
実験点の何れかにポインタをあわせて
右クリックする
近似曲線の追加(R)を選択して左クリックする
「線形近似」であること
を確認して「OK」ボタンをクリックします
23
「近似曲線の書式設定」
のウィンドウでオプシ
ョンから「グラブの書式
を表示する」の前を選ん
でチェック(前のチェッ
クボックスをクリック)
した後「OK」を押す
現れた直線にポインタをあわせて
左クリックすると「近似曲線の書式
設定」のウインドウが表示されます
ここをクリックします
この「オプション」のタ
グをクリックします
「y=」の関数
が現れるのでここ
をクリックする
式の文字フォントが初期値
「8」と小さいのでここ
のボタンをクリックし
フォントサイズを選ぶリス
トボックスを表示し「22」程度の大きなサイズを選択
しクリックする
24
「Graph2」酢酸濃度 Cb[molL]と Cbn[gL]の関係のグラフから最小二乗法により直線の式がこのように求められましたExcel を用いてデータに対して近似直線のグラフを描き最小二乗法の直線の式を求めるこの方法は他の実験データの解析などにも利用できますので
各自活用して下さい 表示された関数式「y=43865+2654」はノートにメモして下さいこの傾き 43865と
切片 2654からLangmuir式の定数 ninfinと Kを決定します決定方法の詳細はこの後の 36 の Langmuir式のパラメータ決定法に示しています ラングミュアの等温吸着式を変形すると次式となる
CCnKnCKn
CCKn
Cβ+α+
==
+= infininfininfin
11)1(
ただしα=1ninfinβ=1(ninfinK)とするこの式より Cnを縦軸Cを横軸とした関係のグラフは傾きα=1ninfin切片β=1(ninfinK)の直線関係を与えることを示しています そこでExcelのシートを利用してこの値からLangmuir式の定数 ninfinと Kを次のように決定しますセル C18D18に Graph2で求めた数値 2654と 43865を代入しますその後D19と C19に関数を ldquo=1D18rdquoとrdquo=D18C18ldquoを代入しますセル内の式は半角で入力してください
現れた関数の文字フォン
トを大きく(例えば 22)してその数字をメモし
吸着データシートの C18と D18に記入する
C18D18 に Graph2 で求めた値 2654 と 43865 を代入した後D19 と C19 に関数を ldquo=1D18rdquoとrdquo=D18C18ldquoを代入する
25
この Excel表示では最小二乗法を用いて決定した傾きαと切片βを用いて α=1ninfin=43865 β=1(ninfinK)=2654 得られた傾きおよび切片よりninfinおよび Kは次のように求まる
ninfin=1α=1D18=000228 molg-1 K =(1ninfin)β=αβ=D18C18=165
つまりセル D19にはninfinの値がセル C19にはKの値が表示されますこれらの値はラングミュア(Langmuir)の単分子吸着モデルで計算した理論線と実験と比較する場合に利用します実験結果に対して理論的な考察を行う例としてラングミュア(Langmuir)の単分子吸着モデルで理論線を計算し実験と比較するにはこの Excelファイルを利用して次のように計算しグラフに表示します セル F5~F30 には溶液中に残る酢酸濃度 Cb[molL]に対する活性炭に吸着された吸着量n[molg]の関係のグラフ「Graph1」の横軸の酢酸濃度 Cb[molL]の適当な値が既に入力してありますこれらのそれぞの酢酸濃度 Cb[molL]に対する吸着された酢酸の吸着量 n[molg]の理論値をラングミュア(Langmuir)式で計算しますラングミュア式は次式で与えられます
KCKCnn
+=
infin
1 (310)
ここでこの実験データを最も精度よく計算できるように決定した ninfinおよび K は上述のようにninfin=1α=1D18=000228 molg-1 K =(1ninfin)β=αβ=D18C18=165 でありこれらの値はセル D19にninfinの値がセル C19にKの値が表示されていますこの値を利用して「Graph1」に計算線を描くにはまずセル G5~G30 にセル F5~F30 のそれぞれの酢酸濃度 Cb[molL]に対する吸着された酢酸の吸着量 n[molg]の理論値をラングミュア式で計算しますそのためにはセル G5 にラングミュア式を次のように記述しますただしセル D19の ninfinの値セル C19の Kの値は常に同じセルから参照するので絶対参照($マークを付けて$D$19 $C$19と記述します)で記述します
Langmuir式をセル G5に記述するただし濃度はF5の値を相対参照しD19と C19は絶対参照($マークが必要)することを忘れないように
セルG5に記述すべき数式
=$D$19$C$19F5(1+$C$19F5)
26
G5記述後フィルハンドルを使用してG5の関数を G6~G30までコピーします Sheet1から Graph1 のタグをクリックしGraph1 に計算線が表示されたことを確認しましょうこれでラングミュア式によるデータの解析は終了です実験値と理論値を比較して現象
について考察してみて下さいラングミュア式を理論的に導く場合にある仮定をしている
のですがその仮定をしているラングミュア式が実験データを精度よく計算できていれば
その仮定が妥当なもとであったと考察できます 与えられたモデルデータでラングミュア式によるデータ解析ができれば他の理論(例え
ばフロインドリッヒFreundlich式や BET式レポートはどちらか一方でも可です) についてもExcel で計算してみましょうレポートには自分のデータについてここで行った内容と同様に計算しその結果を考察に記述して下さい 自分のデータについて同様の計算をするにはまずいままで計算を行った Excel ファ
イルを保存しますデータを自分の実験データに置き換える前に Excel ファイルをさらに別の名前で保存します与えられた Excel ファイルは初期状態では模擬のデータが入力されているので今回自分達の実験したデータを入力していきます入力するデータは予め計算
しておいた酢酸濃度 Cb[moll]と活性炭吸着量 n[molg]になります下の画面の丸で囲んだ部分にそれぞれ自分の実験データを入力していきます
今回はCbnの値を入力する必要はありませんExcelが自動的に計算を行って結果を表示するようになっています 次に酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着
量 n[molg]の関係および酢酸濃度Cb[molL]と Cbn[gL]の関係をグラフ化します今回は自動的にグラフが作成
されるようになっていますので操作は必
要ありません 39 Freundlichの等温吸着式による相関 今回の実験で得られた酢酸濃度 Cbと活性炭吸着量 nのデータを利用してFreundlichの等温吸着式の定数 abの値を求めFreundlichの等温吸着式の理論線をグラフに追加します ここでFreundlich式は次式で表されます
bbaCn1
=
このままでは定数 abの値を決定することが難しいので上式の両辺の対数をとり線形化しますすると次式となります
bCb
an ln1lnln +=
ここでln Cbと ln nの関係をグラフにプロットすれば傾き 1b切片 ln aの直線関係が得られますしたがって実験データである酢酸濃度 Cbと活性炭吸着量 nの値の対数をそれぞれ計算します配布した「ad_graxls」ファイルを開き「吸着データ」シートの任意の部分に以下のような表を作成します
27
次にln Cb[-]の列の最初のセルに以下の数式を入力します
=ln(B5) 上式中の「B5」は Cb の値の最初のセルの位置を指します各個人の位置によって変更してください
次にln n[-]の列の最初のセルに以下の数式を入力します
=ln(C5) 上式中の「C5」は nの値の最初のセルの位置を指します各個人の位置によって変更してください
ここでln Cb[-]ln n[-]の値に対しそれぞれオートフィルを行い計算させますすると以下のようなデータが完成します
計算した ln Cb[-]ln n[-]の値をグラフにプロットし最小二乗法による直線式を求めます
28
ここで以下のような直線の式が得られたとします
9135ln31690ln913531690 minus=there4minus= bCnxy
上式より切片は-5913傾きは 03169となるので以下の要領で定数 a1bを計算します ==there4minus= minus 91359135ln eaa 000270
316901=
b
a の値を Excel で計算させる場合は任意のセルに以下のような数式を入力することで求めることができます
=exp(-5913) これでFerundlich等温吸着式の定数 a1bの値が決定しましたこの値は後で使うのでノートなどにメモしておいてください 次に決定した Ferundlich 等温吸着式の定数 a1b の値を用いてFerundlich 等温吸着式のグラフを作成します先ほども示したように Ferundlich等温吸着式は次式で表されます
bbaCn1
=
従って定数 aと 1bの値はすでに決定しているので任意の Cbの値に対する nの値を数点求めればFerundlich等温吸着式で求めた理論線が得られます以下の操作で理論線を引くことができます Langmuir 等温吸着式による相関のときと同様にExcel の「吸着データ」のシート上の任意の場所に以下のような表を作成します
次に Ferundlich等温吸着式に従いnの値を計算します
bbaCn1
=
式中の定数 a1bは先ほど計算した値を用いますしたがって式は次のようになります
31690002700 bCn times=
この式を Excelのセル内に記入すれば計算ができます次の
29
ように記入します
=00027G5^03169 ここで式中の「G5」は Cbの値が 0のセルを指しています各個人の位置によって変えてください 次に式を記入したセルを Cbの値が 05のところまでオートフィルを行いますそうするとすべての Cbに対して nの値が計算されます
これで Freundlich等温吸着式のデータが完成しましたので次に「Graph1」酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着量 n[molg]の関係のグラフにこのデータを追加し理論線を引きます理論線の引き方は Langmuirによる相関のときと同様の操作を行ってください グラフの書式等を変更し整理すると以下のようなグラフが出来上がります
310 吸着等温線とは 固体の吸着剤を溶液と接触させる時一定量の吸着剤によって吸着される溶質の量は温度一定ならば溶質の濃度の関数になる一定温度での吸着量を温度に対してプロットした時に
得られる曲線を吸着等温線というこの吸着等温線を比較的よく表す経験式として次の
Freundlich式がある
n=aC1b (1) ここで n は吸着剤の質量あたりの吸着量C は吸着平衡濃度a と b は実験から決定されるパラメータであるがその物理的意味は多少希薄である これに対し理論的な意味を持つものに次のラングニュア(Langmuir)の吸着等温式がある
30
KCKCnn
+=
infin
1 (2)
ただしninfinは飽和吸着量Kは吸着平衡定数であるこの式は
1)吸着分子が固体表面で単分子以上の厚い層を作ることはない 2)吸着分子同士の間の相互作用はない
という二つの仮定にもとに導かれたものである 結果の整理および報告 Freundlich吸着等温式Langmuir吸着等温式の各々のパラメータの最適値を求めよまた活性炭の吸着特性および表面積について考察し化学工学における吸着操作の重要性につい
ても検討せよ 311 吸着等温式 (a) ヘンリー(Henry)型吸着等温式 液相の濃度あるいは気相の圧力が小さい場合吸着分子間の距離が十分に長いため吸着
分子同士の相互作用が無視でき固体表面と吸着分子のみの相互作用で吸着量を決定できる
とき次式のように表される
n=KC (3)
ここでKは比例定数である図 3-1の(a)に示すように濃度 Cと吸着量 nは比例関係があり一般に吸着量が小さい範囲で成立する気体の場合は溶液濃度 Cの代わりに気相圧力 pを用いればよい
濃度(分圧)
濃度(分圧)
濃度(分圧)
濃度(分圧)
吸着量
吸着量
吸着量
吸着量
(a)ヘンリー型 (b)ラングミュア型
(d)BET型(c)フロインドリッヒ型
0
0
0
0
図 3-1 吸着等温式
31
(b)ラングミュア(Langmuir)型吸着等温式 ラングミュアは図 3-2 に示すように固体表面に同等な吸着力を示す吸着サイトがあり
表面に 1分子層だけ吸着する(単分子層吸着)と仮定して平衡状態における吸着量と溶質濃度(気相分圧)のと関係を導いた全吸着点のうち吸着分子に覆われている吸着点の割合
をθ[-]とすると分子の脱着速度 rrsquo[mols-1]はθに比例する比例定数を a[mols-1]とすると次式のように表される
吸着剤
吸着分子
吸着サイト
図 3-2 固体表面上の吸着サイト(Langmuir式の導出) r=aθ (6) また気相からの吸着速度 r[mols-1]は空いている吸着点の割合(1-θ)[-]と溶液濃度 C[molm-3]に比例する rrsquo= b(1-θ)C (7) このときの比例定数を b[m3s-1]とするまた平衡状態では両速度は見かけ上等しいため以下の式が成り立つ aθ=b(1-θ)C (8) これを変形する
CbaCbsdot+
sdot=θ (9)
ここで飽和吸着量を ninfin[molkg-1] ba を K[m3mol-1](Kは吸着平衡定数)とおくと infin=nnθ
となるので次式が得られる
32
KCKCnn
+=
infin
1 (10)
これをラングミュア式と呼ぶ
(c)フロインドリッヒ(Freundlich)型吸着等温式 フロインドリッヒの吸着等温線は図 3-1(c)のように示される
n=aC1b (11) nは吸着量[molkg-1]で aと bはともに吸着定数[-]である (d)BET(Brunauer-Emmett-Teller) 型吸着等温式
BET型の吸着等温線は図 3-1(d)に示されるラングミュア式は表面に 1分子層だけ吸着すると仮定したものであるがBET式は無限分子層まで吸着できる式である図 3-3に示すように吸着した分子がそれぞれ次の層の吸着サイトとなり分子は積み重なって多分子
層に無限層まで吸着できるものとし各層への吸着にラングミュア式を適用すれば次式の
ように表せる
( ) ( )CKCCCKqq
minus+sdotminussdotsdot
=infin
11 (12)
この式は多孔質固体の細孔表面積を窒素ガスの吸着によって測定する際に利用される重要な式
である
表面の吸着サイト
分子上の吸着サイト
図 3-3 多分層吸着モデル
Langmuir式のパラメータ決定法 水溶液からの酢酸の活性炭に対する吸着平衡データ(吸着平衡温度 12)は表 3-1のよ
うに与えられる実験データよりラングミュア式のパラメータ(K吸着平衡定数ninfin飽和吸着量)を最小二乗法で決定せよさらにラングミュア式より決定した ninfinKの値を用いて吸着等温線を計算し計算線として図に示し実験点と比較せよ
33
表 3-1 n C Cnの関係
ラングミュア式は式(310)で与えられるこの式を変形すると次式となる
CKnCK
n infinsdot+
=11
(313)
両辺に Cをかけると以下の式が導出される
CCnKnCKn
CCKn
Cβ+α+
==
+= infininfininfin
11)1( (314)
ただしα=1ninfinβ=1(ninfinK)とする式(314)より Cn と C の関係のグラフプロットは傾きα=1ninfin切片β=1(ninfinK)の直線関係を与えることを示している表 3-1の値を用いて計算した Cnと Cの関係を表 3-1および図 3-4に示す 最小二乗法を用いて傾きαと切片βを決定した α=1ninfin=43865 β=1(ninfinK)=2654 得られた傾きおよび切片よりninfinおよび Kは次のように求まる
ninfin=1α=1D18=000228 molg-1 K =(1ninfin)β=αβ=D18C18=165
0
50
100
150
200
0 200 400 600
C [ molm-3 ]
Cn [ kgm-3 ]
傾き = 1 ninfin
1 ninfinK
切片0
05
1
15
2
25
3
0 100 200 300 400 500
液相の溶質濃度 C [ molm-3 ]
吸着量 n [ molkg-1]
液相と溶質濃度 C [ molm-3 ]
吸着量
n[ m
olk
g-1]
実験点
Langmuir式パラメータninfin 00033 [ molg-1 ]K 00086 [ m3 mol -1 ]
図 3-4 ラングミュア定数の決定 図 3-5 12における酢酸濃度 Cと
吸着量 nの関係
C [molm-3] n [molkg-1] Cn [kgm-3] 460 225 109 529 214
268 199 149 105 060
172 128 732 504 357
34
Freundlich式のパラメータ決定法 酢酸水溶液中における酢酸の活性炭に対する吸着実験を行ったところ以下のような実験デー
タを得たただしCbはバルク相における酢酸濃度n は活性炭に対する酢酸の吸着量を示す
Cb[molL] n[molg] log10Cb log10n 04621 000205 02410 000175 01139 000139 00519 000105 00243 000081
実験データを利用して次式で与えられる Freundlichの等温吸着式の定数 abの値を求めたい
bbaCn1
= (1)
このままでは定数 abの値を決定することが難しいので上式の両辺の対数をとる
bbb
bb
Cb
aCa
aCn
ln1lnlnln
)ln(ln1
1
+=+=
=
(2)
ここで横軸に ln Cb縦軸に ln nの関係をグラフにプロットするすなわち x=ln Cby=ln nと考える
bCb
an ln1lnln += (3)
ここで直線式 y=a0+a1xと比較するすなわち
)(1)(ln
1
00
傾き
切片
ba
eaaa a
=
=rarr= (4)
a0および a1は最小二乗法により数値で求められる与えられたデータでは a1= a0= なので a= b= となる この値を n=acb
1bに代入してcb=0~05の範囲で nの値を計算する
35
BET式のパラメータ決定法 BET式は次式で与えられる
)1)(1( KCCCKCnn
+minusminus=
infin
(17)
以下のように BET式の変形を行う
)1()1(
KCCKCnCn+minus
=minusinfin
(18)
(18)式の逆数をとると
KCnCK
KCnKCC
Cn infininfin
minus+=
+minus=
minus)1(1)1(
)1(1
(19)
(19)式の両辺に Cをかえると
KCnCKC
CnC
infin
minus+=
minus))1(1(
)1( (20)
(20)式を変形すると次式が得られる
CKn
KKnCn
Cinfininfin
minus+=
minus11
)1( (21)
C と)-(1 Cn
Cのプロットは傾き
KnKinfin
minus1切片
Kninfin
1の直線関係を与えることを示している
これをグラフにプロットし最小二乗法に傾きおよび切片を求める
36
312 活性炭の比表面積の決定 酢酸分子の構造を以下に示す
Hc-Cb-Ca
Hd
Hb Oa
Ob-Ha
1219deg
Ca Oa
Ob
図 36 酢酸の構造
酢酸の 1分子の吸着面積srsquo [m2]を図 3-6に示すこのとき文献より
Caと Oaの結合距離 1321Å Caと Obの結合距離 1206Å OaCaObの角度 1219deg Cの原子半径 077Å Oの原子半径 062Å
したがって吸着面積 Slsquoは次のようになる
( ) ( ) 2088 10376109931036321 minusminusminus times=timestimestimestimes=s m2
ここで活性炭の比表面積 S[m2g]は次式で示される 10026 23 snS timestimestimes= infin
S活性炭の比表面積 [m2g] ninfin飽和吸着量 [molg] srsquo酢酸 1分子の吸着面積 [m2] 602times1023アボガドロ数 [個mol] したがって活性炭の比表面積 S[m2g]は
003350=infinn molg 2010376 minustimes=s m2 より
51281037610026003350 2023 =timestimestimestimes= minusS m2g
37
4 粘度密度測定 41 はじめに 大量生産を目的とした工業的化学プロセスはほとんど流れ系(流通系)であるそれらの系において操作対象となる各物質の粘度は装置を設計操作する場合きわめて重要
な物性値である 本実験では低分子溶液および高分子溶液の粘度測定を通じて液体の粘度について考察するさらに演習問題を通じて気体液体高分子溶液などの化学プロセスで対象となる物
質の輸送物性(粘度拡散係数)の重要性を認識されたい 42 低分子溶液の粘度 [目的] 種々の濃度のエタノール水溶液の粘度を測定しその溶液の粘度について考察する [概要] 25におけるエチルアルコール濃度 02040506080100 wt の水溶液について流下時間を測定しこの結果より相対粘度絶対粘度運動粘度を求めグラフにするま
た水の密度水-エチルアルコール溶液の密度についてはピクノメーターを用いて決
定する報告書には相対粘度絶対粘度運動粘度 vsエチルアルコール濃度の関係をそれぞれグラフにして提出する
[計算方法] 相対粘度絶対粘度運動粘度の定義は次のようになる
相対粘度 ww
w tdtd
ηη = (41)
η 混合溶液の粘度 [gcms] ηw水の粘度(8007times10-3 gcms) [gcms](25における粘度) d エチルアルコール水溶液の密度 [gcm3] dw水の密度(099704gcm3) [gcm3](25における密度) t エチルアルコール水溶液の流下時間 [s] tw水の流下時間 [s] 下付添字 W 水
絶対粘度 www td
tdη
η= (42)
運動粘度 ν=ηd [cm2s] (43)
38
[実験方法] 1) 粘度計を洗浄し粘度計内 に二連球で空気を送り込み
乾燥させる乾燥しにくい 場合はアセトンを滴下し た後再度二連球で空気 を送り込み乾燥させる 2)ピペットで一定体積(10mℓ) の純水を取り広い口 f から 粘度計に水を入れる 3)粘度計を恒温槽(25)に つけ約 10 分静置する 4)安全ピペッターを口 a に 取り付け液面が b 上部に 到達するまで吸い上げる 5)安全ピペッターを外すと 液面が降下しだす液面が bd 間を通過する時間をスト ップウォッチで測定する
6)純水での測定を 3 回繰り返す 7)純水を粘度計から取り除くその後粘度計内に二連球を用いて空気を送り込み乾燥させる 8)粘度計乾燥後複数の濃度に調整済みのエチルアルコール水溶液(10mℓ)を粘度計にいれ4)~6)の作業を繰り返し行う(3 回)なお濃度の異なるエチルアルコール水溶液を粘度計内に導入する場合には7)と同様に二連球を用いて粘度計内に空気を送り込み乾燥させる
表 4-1 エチルアルコール水溶液の濃度密度相対粘度の関係 エチルアルコール濃度
[wt] 密度 d[gcm3] 相対粘度
η ηw[-] 0
20 40 50 60 80
100
安全ピペッター接続
図 4-1 粘度計
液面の bd間の通過時
間を測定
f
39
43 密度測定 [目的] 本実験では水とエタノールの種々の組成の混合液体について密度を測定し分子間相互
作用について考察する [実験方法] 1)ピクノメーターの容積測定
図 4-2のピクノメーターの空の重量 wg を秤量する
ピクノメーターの蓋を取り外し
ピクノメーターを水で満たす
設定温度を 25として恒温槽 の電源を入れ恒温槽内の温 度が一定になるまで待つな お水温は恒温槽中の水銀温 度計から読む
恒温槽中に水を満たしたピク
ノメーターを入れる
約 10分間静置する
ピクノメーターに蓋をするこのときピクノメーターの容量
よりも余分の水は蓋の上部より排出される
ピクノメーターの外側を乾いた布で拭い秤量する(その重量を
wwg とする)
恒温槽の温度(25)における水の密度 dwgcm3(=099704gcm3)
より次式を用いてピクノメーターの容積を求める
w
w
dww
Vminus
= (44)
図 4-2 ピクノメーター
蓋
40
表 4-2 エチルアルコール水溶液の濃度と密度の測定結果(25) エチルアルコ
ール濃度[wt]
wrsquo[g] ww[g] V[cm3] w[g]
d[gcm3]
0 20 40 50 60 80
100
099704
エチルアルコール濃度[wt] 空のピクノメーターの重量 wrsquo[g] 水を入れたときのピクノメーターの重量 ww[g] ピクノメーターの体積 V[cm3] エタノール水溶液の入れたときのピクノメータの重さ w[g] エタノール水溶液の密度 d[gcm3]
容積 Vを求めたピクノメーターに混合溶液(調整済み)を入れてその重量 wgを秤量し次式で混合溶液の密度を求める
Vwwd minus
= (45)
エタノール濃度と密度 d の関係をグラフにプロットする
41
44 高分子溶液の粘度 [目的] 高分子溶液の粘度測定から分子量の粘度に与える影響について考察する [概要 ] オストワルド粘度計を用い種々の濃度のポリビニルアルコール(PVA ((-CH2CHOH-)n))水溶液の粘度を測定し粘度データよりポリビニルアルコールの分
子量を求める まず 05g100cc の濃度のポリビニルアルコール水溶液を調製する次にこれを原液
とし23 12 13 15の濃度の溶液を調製するこれらの溶液についてオストワルド粘度計を用いてそれぞれ流下時間を測定し相対粘度絶対粘度運動粘度を求め実験デ
ータより極限粘度[η]を求めるまた報告書には相対粘度絶対粘度運動粘度C
)ln( wηη
Cw
w-η
ηη vsポリビニルアルコール濃度の関係をそれぞれグラフにして提出する
[計算方法] エチルアルコール水溶液の粘度測定と同様の手法を用いて粘度の計算を行うなおポリビニルアルコール水溶液の密度はピクノメーターを用いて測定すること 表 4-3 ポリビニルアルコール水溶液の濃度密度相対粘度の関係 ポリビニルアルコール
濃度 [g100cc] 密度 d[gcm3] 相対粘度
η ηw[-] 05times(15) 05times(13) 05times(12) 05times(23)
05
42
[分子量の計算方法] 実験を行った結果以下のような粘度データを得られるとする実験データより極限粘度
を求めポリビニルアルコール(PVA)の分子量Mを決定せよ
PVA 水溶液濃度
C[g100cc]
相対粘度
ηηw[-]
絶対粘度
η[gcms]Cw
w-η
ηη
C)ln( wηη
05times(15) 1031 0008255 031 0305
05times(13) 039 0378
05times(12) 03 0289
05times(23) 0375 0353
05 0364 0334
ηw=8007times10-3 gcms 線状高分子の極限粘度[η]と分子量Mの関係は次式で与えられる [η]=KMα (46) ただしポリビニルアルコールの場合K=666times10-4α=064であるなお極限粘度[η]は次式で定義される
CC w
w
0
-][ limη
ηηη
rarr
= (47)
または
CC
)ln(][ w
0lim
ηηη
rarr
= (48)
よって濃度 CとCw
w-η
ηηまたは濃度 Cと
C)ln( wηη の関係をグラフ化し最小二乗法によ
り切片の値を求めると極限粘度[η]が決定される
Cw
w-η
ηηと C の関係より最小二乗法を用いて切片の値を決定すると(図 43 参照)切片=
03242傾き=00874となるよって極限粘度は以下のようになる[η]=03242同様
にC
)ln( wηη とcの関係より最小二乗法を用いて切片の値を決定する
(図 44参照)と切片=03249傾き=00256となり極限粘度は以下のようになる[η]=03249
Cw
w-η
ηηと Cの関係より決定した[η]=03242を用いてポリビニルアルコール(PVA)の
分子量 Mを計算する(46)式より以下のように PVAの分子量 Mを計算することができるM=([η]K)1α
=(03242(666times10-4))(1064)
=15811
43
y = 00874x + 03242
0
02
04
06
08
1
0 01 02 03 04 05 06 07
c[g100cc]
(η-ηw)(ηwc)
cw
w
η
ηηminus
極限粘度[η]
図 43 298Kにおける PVA濃度 CとCw
w-η
ηηの関係
y = 00256x + 03249
0
02
04
06
08
1
0 01 02 03 04 05 06 07
c[g100cc]
(ln(ηη
w))c
c)ln( wηη
極限粘度[η]
図 44 298Kにおける PVA濃度 CとC
)ln( wηη の関係
44
5 植物からの DNAの抽出 51 はじめに 分子レベルでの遺伝子の構造解明や遺伝子の発現に関する研究は近年急速に発展している
これら生命現象のしくみを分子レベルで解明しようという分子生物学の分野ではさまざま
な遺伝子の解析や応用方法が開発され我々の生活に身近なものになりつつある 本実験では初歩的な分子生物学に関する実験として植物(タマネギ)からの DNA の
抽出を行い抽出した遺伝子の電気泳動法による分離実験を試みる 52 試薬および器具 試薬 タマネギ(細胞中から遺伝子の抽出を行う) 台所用洗剤(洗剤中に含まれる界面活性剤には植物の細胞膜およびタンパク質を破壊す
る働きがある) 塩化ナトリウム(DNAは塩化ナトリウム水溶液に溶解し易い性質がある) エタノール(予め冷やしておくDNAはエタノールにほとんど溶解しない) 制限酵素(DNAを一定の部位で切断する働きを働きがある) TE緩衝液(pH緩衝剤が入った溶液) 器具 ビーカーミキサーフィルターメスシリンダー駒込ピペットガラス棒 マイクロピペット電気泳動装置ポラロイドカメラ 53 実験方法 1)タマネギは 1回の実験で半個のうち内側の半分程度を使用するタマネギ水 30ml台所用洗剤数滴をミキサー用ガラス容器に入れ40~60秒程度(固体状のタマネギがなくなる頃が目安)ミキサーにて混合する
2) 1)で作成した混合溶液をビーカーに移し約5g程度の塩化ナトリウムを加えガラス棒で静かに攪拌する粘性の大きな溶液が得られる
3) 2)で作成した溶液をフィルターを用いて濾過し濾液を回収する 4) 濾液の約2倍程度の量の冷エタノールをビーカーの壁伝いに静かに注ぐ 5) ビーカーを揺するとエタノール層に白くふわふわしたものが浮いてくるこれが DNAであるガラス棒で DNAを巻き取りシャーレ上にて DNAを回収する顕微鏡を用いて回収した DNAの状態を観察する
6)マイクロチューブ(容量 15ml)中に用意した 70エタノールを 8 分目程度まで注ぐ5)にて回収された DNAをマイクロピペットを用いて70エタノールの入ったマイクロチューブ中に移す軽く混ぜることによりDNA から不要な物質を洗い流す遠心分離してDNA をマイクロチューブの底に沈めた後溶液を捨てて DNA を乾かす乾いたらTE緩衝溶液を 1ml加えて放置するDNAの溶液が得られる
54 電気泳動装置による DNAの観察
本実験は職員と一緒に行うこと 実験を行う人はビニール手袋をすること 1) 抽出した DNAを電気泳動装置で観察するマイクロピペットを用いて以下のように調製した DNAの混合溶液を調製する(いずれの溶液も調製済)
45
2) マイクロピペットを用いてアガロースゲルの試料を流し込む穴(ウェル)に1)にて調製した溶液 Aおよび Bを注ぎ込む注入量は20μℓとする電気泳動装置のスイッチを入れて100Vの電流を流しアガロースゲル内にて DNAを電気泳動させる
3) 試料に予め加えられておいた青色の色素が 7 分目程度まで進んだら電気泳動を中止する(約 30分程度)
4) (ここでの作業は職員が行う) アガロースゲルを取り出し染色液に浸す染色後ゲルを取り出しポラロイドカメラで
DNAの泳動状態を撮影する
+ -
アガロースゲル
試料を流し込む穴(ウェル)
図 51 電気泳動装置
6 5 4 3 2 1
図 52 DNAの電気泳動写真の一例
55 電気泳動装置の原理 電気泳動装置の原理図を以下に示すアガロースゲル(寒天から不純物を除いたもの)中
に DNAをセットし電流を流すとDNAは電流の向きとは逆にマイナスからプラス方向
調製済 溶液 A(制限酵素なし) 水 11μℓ 10timesH Buffer 2microℓ 植物 DNA 5μℓ
調製済 溶液 B(制限酵素 Eco RI入り) 水 11μℓ 10timesH Buffer 2microℓ 植物 DNA 5μℓ 制限酵素 2μℓ
1 DNA(タマネギ)+制限酵素 2 DNA(タマネギ)+制限酵素 3 DNA(タマネギ) 4 λ-DNA(大腸菌)+制限酵素 5 λ-DNA(大腸菌) 6 サイズマーカー
500bp
46
に動く(このことを電気泳動という)これはDNA のリン酸部分が負に帯電しているためでありまたDNAはその長さにより泳動距離が異なる(短い遺伝子ほど長く泳動する)電気泳動ではこの性質を利用してDNAを大きさごとに分離することができる
塩基対数によってDNAを分離
EtBr (蛍光試薬)DNAの二本鎖内に入り込む
発光
UVλ=302nm
励起
分離後のアガロースゲルをエチジウムブロマイド(EtBr)溶液に浸す
DNAを含んだ溶液
アガロースゲル
リン酸部分が負に帯電
塩基 (ATGC)-
+
カメラで撮影
電圧
DNA構成成分(dNTPs)
バンドが明る
DNA量が
バンド(DNAの存在)
図 53 電気泳動の原理
56 制限酵素とは DNA は4 種類のヌクレオチド(GATC)が不規則につながってできている制限酵素はDNAの特定のヌクレオチドが並んでいる部分を切断する制限酵素には様々な種類がありEco RI(エコアールワン)と呼ばれる酵素は「GAATTC」といった並びの部分だけを切断することができる
GAATTC
CTTAAG
制限酵素
Eco RI
AAGCTT
TTCGAA
制限酵素
Hin dIII
図 54 制限酵素による DNAの切断
レポートについて 1 実験方法および実験結果の整理方法については指針書を参考にすること 2 実験結果については電気泳動の結果について考察すること(制限酵素の影響などにつ
いてまとめてください)
47
6 染色実験
61 はじめに
現在私達の身の周りでは様々な染料が使われている例えばT シャツやジーンズな
どの衣服は橙黄赤青など様々な色に染められている他にも私達が気付かないと
ころで多くの染色された製品を使用しているそこで本実験では高校の化学で学んだ
アゾ染料を合成してみるアゾ染料はアニリンを原料として作られているアニリンはベ
ンゼン環にアミノ基(-NH2)がついたものであるアニリンは無色の液体で水に溶けにく
くアンモニアより弱い塩基性を示すまたさらし粉(CaClO(ClO)H2O)水溶液を加えると
赤紫色を呈するこの呈色反応はアニリン特有のものであるので検出反応に用いられる
このアニリンを出発物質としてアゾ染料を合成してみる
62 試薬および使用器具
【試薬】 ①05moll 水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液
②2-ナフトール ③フェノール ④6moll 塩酸
⑤亜硝酸ナトリウム ⑥アニリン ⑦氷
【器具類】 ①電子天秤 ②50mℓビーカー ③100mℓビーカー
④ガラス棒 ⑤布(ガーゼなど) ⑥ピンセット
⑦ポリ手袋 ⑧ドライヤー ⑨シャーレ
10駒込ピペット(10ml ガラス製)
11駒込ピペット(1ml プラスチック製)
63 実験方法
1) 50mℓビーカーの中に 05molℓ水酸化ナトリウム水溶液 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回
NaOH 水溶液を分取するほぼ 20 mℓ分取できれば可)と 2-ナフトールを約 01g 入れ
よくかき混ぜる調製した溶液の中に布をつけその布はガラス棒でしぼってから(布
をガラス棒ですくいあげればよい)シャーレに広げる温度の異なる条件下(常温およ
び低温)で染料の合成実験を行うため布は最低 2枚調製した溶液と接触させそれ
ぞれ別々のシャーレ(低温用および常温用)に広げる
2) 新しいビーカーに水を約 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回分取)と 6molℓ塩酸約 4mℓ(10m
ℓ駒込ピペットで目分量で可)さらにアニリン約 1mℓ(プラスチック製 1 mℓ駒込ピペッ
ト)を入れてよくかき混ぜる染料の合成を常温および低温下で行うためこの溶液を
2つ調整する
低温下で反応させる溶液は恒温槽で 10~15 分ほどよく冷やした後亜硝酸ナトリウ
ム 05g を加えてよくかき混ぜる
常温下で反応させる溶液には冷却作業を行わずに亜硝酸ナトリウム 05g を加えて
よくかき混ぜる
3) 2)でつくった水溶液をシャーレに広げた布に注ぎ生成される染料を布によく染み
込ませ5分程放置する
4) 色の付いた布を取り出してポリ手袋をした手できれいに水洗いをし乾燥させる
48
5) 色差計を用いて乾燥した布の Lab(L明度aおよび b色度)を測定する
2)で作った溶液は5以下では無色の溶液ですが5以上になると淡い黄色になりま
す
【解説】
アゾ染料はアゾ基(-N=N-)を持っていてこのアゾ基によって鮮やかな橙色を呈色し
ます今回合成したアゾ染料は図の 1-フェニルアゾ-2-ナフトールです意外かもしれ
ませんが指示薬として使われているフェノールフタレインもアゾ化合物ですフェノール
フタレインは pH の変化によって色が出てきす染料の中でも最初は無色のものもありますが
温度を変化させたり酸性やアルカリ性にすると色が出てきます
ベンゼン ニトロベンゼン
N2Cl
ニトロ化 濃硫酸(濃硝酸)
還元反応 濃塩酸
(Sn又は Fe)
アニリン塩酸塩
遊離反応 NaOH
アニリン塩酸塩に強塩基を反応させる
と弱塩基であるアニリンが遊離する
氷冷+亜硝酸ナトリウム アニリン
塩酸
ジアゾ化
塩化ベンゼンジアゾニウム
塩化ベンゼンジアゾニウム
は熱によって窒素とフェノー
ルに分解される
カップリング
C10H7ONa (ナトリウム 2-ナフトキシド)
O
N =
1-フェニルアゾ 2-ナフトール
NH3Cl NH2
49
7 ガスクロマトグラフ質量分析計による茶葉中のカフェインの分析 71 はじめに ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)は極めて低い濃度の化学物質の同定や未知物質の構造決定に極めて強力な分析機器の一つであるGCMSを用いるとサンプルの中に含まれているある成分の分子構造(カフェインの分子構造を図 71に示す)やその量が分かりますもちろん分析機器ですので測定できる物質対象となる系や測定条件にはある
程度の制約があります混合物質を分離するガスクロマトグラフ(Gas ChromatographGC)と分離された成分(物質)を分析(構造決定と濃度測定)する質量分析計(Mass SpectrometerMS)を組み合わせた装置であるこの装置は有機化学生化学環境化学などの多くの分野で非常に多用されている例えば極めて低い濃度でも生体へ強い影響が懸念されるダイ
オキシン類などの土壌や河川の水中での含有率の決定や食品や医薬品中の微量成分の決定
にも利用されている 一方日本人に長い間親しまれてきた緑茶が近年産業界や医学
界で注目されている茶葉にはカフェイン(分子構造図 71)カテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドなどの有用成分が多く含まれておりその効能が注目されている 本実験では茶葉中に含まれるカフェインに対してGCMSを用いて分析する茶葉中には種々の物質が含まれておりGCMS分析を容易にするため前処理として超臨界二酸化炭素抽出(4015MPa程度の高圧力の二酸化炭素を溶剤として利用)により茶葉からカフェインの抽出を行いそのサンプルを GCMSにて分析する
図 71 カフェインの分子構造 図 72 物質の分析 個々の物質や装置についてはインターネットにより下記のWebサイトのフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』などにより調べるとよいカフェイン(caffeine)はアルカロイドの一種プリン環を持つプリンアルカロイドの一種でコーヒー類に含まれることか
らこの名がある化学名は137-トリメチルキサンチン(C8H10N4O2) コーヒーコーラ緑茶紅茶ガラナココアなどに含まれる(量は緑茶が一番多い)結晶は一水和物(C8H10N4O2bullH2O)もしくは無水物(無水カフェインC8H10N4O2)として得られ
る白色の針状または六角柱状結晶で匂いはなく味は苦い融点は 238昇華性がある出典フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』httpwwwwikipediaorg 装置「GCMS」httpwwwanshimadzucojpproductsgcmsqp2010htm (島津) 「超臨界抽出装置」httpwwwkagakucomjasco39-49html (日本分光)
50
レポート課題 1茶葉中に含まれるカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドの中から3つの物質を選びその物質について調べた結果を A4 レポート用紙2枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
2GCMS についてA4 レポート用紙1枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
3与えられたサンプルは茶葉1gから抽出されたのである実験結果よりもとの茶葉
1g中に含まれるカフェインの量を推算し計算式とあわせて示すこと 72 原理および装置 実験で使用する島津製の GCMS装置の全体図を図 73に原理の概略を図 74に示す
1
23
4
5
67 8
9
10
キャリアーガス
試料物質
1ボンベ(He)2圧力計3マイクロシリンジ4サンプラー5試料導入部6分離カラム
7セパレーター8イオン化室9磁石10電子増倍管11記録計
11
図 74 ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)の概略図
サンプルフォルダー
51
GCMS 装置は分離部である図中の 1~6 のガスクロマトグラフ(GC)と7~11 の検出部である質量分析計(MS)から構成される 3のマイクロシリンジを用いて試料を GCMSに導入する導入された試料は5試料導入部でガス化され6分離カラムに導入される分離カラムには吸着剤が充填されおり混合物の試料を導入した場合各物質と吸着剤との
親和性の違いにより各物質の分離カラムから排出されるタイミングは異なる分離カラム
を排出された試料は8イオン化室でイオン化され10電子倍増管にて検出される アセトンに溶解したカフェインの GCMSによる分析結果の一例を以下に示す図 75にク
ロマトグラム図 76にカフェインのピークのマススペクトルを示す
図 75 GCMSにより得られたクロマトグラム
横軸がリテンションタイムで縦軸がピーク強度を表す
図 76 カフェインのマススペクトルとカフェイン(分子量MW=194)の構造
(図 75中のリテンションタイム 126min付近のピークに起因するマススペクトル) 茶葉中にはカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイド以外にも繊維であるセルロースなど多くの物質が含まれているため茶葉そのものを
そのままサンプルとしてGCMSで分析することは困難であるセルロースなどの分子量の大きな物質はカラムに詰まってしまい分析できないそこで今回は超臨界二酸化炭素
による抽出により主にカフェインを他の物質と分離抽出した通常よく利用されるアセ
トン抽出(アセトンに茶葉を浸し特定の成分を抽出する)ではカフェイン以外にも多く
の物質が抽出されるため図 75 のような単独のピークを得ることは難しく複数のピークがクロマトグラムに見られるこのサンプル(この場合茶葉からの抽出物)にはカフェ
イン以外の不純物は少なかったがガスクロマトグラフの分離カラムによりさらにそれ
らの混合物が精度よく分離されるクロマトグラムのピークはそれらサンプル中に含まれ
ていた個々の物質を表しているクロマトグラムのピークを選択することで分子構造解析
したい物質を選んだことになる選択したクロマトグラムのピークの表している物質(ここ
ではカフェイン)に対応するマススペクトルが図 76 に表示されているマススペクトル
52
で横軸がその成分(ここではカフェイン)分子を構成している原子の原子量で縦軸がそ
の量を表しているのでマススペクトルから分子構造を解析するためにコンピュータ内
に蓄えられた物質ごとのマススペクトルデータと今回測定したマススペクトル(分子内に含
まれている各原子の数)を比較することで測定したサンプル中のクロマトピークを選択し
た分子がどのような原子をどれだけ含んだ分子であったかがわかりそれからその物質
がどのような分子構造の物質である可能性が高いかをコンピュータが検索し結果を示す 73 実験サンプルの設置と GCMS装置の操作方法 実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS装置のサンプルフォルダ
ー(図 73)にセットするこのサンプルは茶葉 1gを 50ccの高圧セルにて超臨界二酸化炭素を利用して4015MPa2時間接触の条件で抽出した固体を10gのアセトンに溶かしたものである またコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に装置および装置制
御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 本実験で使用する GCMS の操作は全てコンピュータのモニター上で GCMS の解析プログラムソフトを使用することで行うコンピュータの操作方法を以下に示す なおコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS 装置のサンプルフォルダー(図 73)にセットするまた装置および装置制御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 1)パソコンのデスクトップ上のアイコン「GCMS 分析」をクリックすると以下のようにGCMS制御プログラムを起動するその後「OK」ボタンをクリックする
図 77 GCMD分析用ソフトウェア「GCMS分析」の起動
まず「GC-MS分析」をクリック
「OK」ボタンをクリック
53
2)制御プログラムが起動されパソコンと GCMSの接続が開始される
図 78 「GCMS分析」の接続確認画面 3)GCMSとパソコンの接続が完了すると以下のような画面が表示される
図 79 「GCMS分析」操作画面
4)マススペクトルによる分子構造の解析 サンプル(この場合茶葉からの抽出物)には多くの物質が混じり合っていたがガス
クロマトグラフの分離カラムによりそれらの混合物が精度よく分離されるクロマトグラ
ムのピークはそれらサンプル中に含まれていた個々の物質を表しているクロマトグラム
のピークを選択することで分子構造解析したい物質を選んだことになる選択したクロマ
トグラムのピークの表している物質(ここではカフェイン)に対応するマススペクトルを選
択するマススペクトルは横軸が原子量で縦軸がその量を表しているのでマススペク
トルから分子構造を解析するために「定性処理」を行う シミラリティ検索結果が表示され分析により得られたスペクトルと類似のスペクトルを有
する物質の一覧が表示される上部に表示される物質ほどスペクトルが一致していること
を示す
接続状況が表示される
「トップへ」
をクリック
54
図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果
図 711 表示スペクトルのシミラリティ検索結果 10)図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果の印刷 「レポート(R)」をクリックし「検索結果(R)」をクリックすると検索結果が印刷される
GC-MS 分析で得られたマスス
ペクトル
データベース中
のマススペクト
ル
55
参考資料 生理活性物質の精製 カフェインの利尿作用のように生物活動に影響を与える物質を生理活性物質といいます
天然物には生理活性物質を多く含むものがあります一般に天然物は多くの成分を含ん
でおり特定の生理活性物質を分離抽出するには種々の分離技術が必要ですまた生
理活性物質には60以上の温度でその生理活性を失う(失活)ものや溶剤として広く用いられているクロロホルムなどの有機溶剤中で失活するものが多いそこでこれら生理活性
物質の分離精製技術の開発が望まれており30~60程度のマイルドな温度条件で操作できる二酸化炭素を機能性溶媒として利用する超臨界抽出も有効な分離技術として注目されて
いる超臨界二酸化炭素は気体と液体の中間の性質を持ち物質の分離に役立っています 臨界点付近の高密度気体は超臨界ガスまたは超臨界流体と呼ばれ臨界圧力前後でそ
の溶解能力が著しく変化することから工業的にも種々の分野で利用されています一例と
して超臨界二酸化炭素(SC-CO2)によるコーヒー豆からのカフェインの抽出プロセス(a)
ならびに超臨界二酸化炭素に対するカフェインの溶解度(b)を図に示します図(c)に示す
ように固体のカフェインがガスである超臨界二酸化炭素に溶解します
このように超臨界二酸化炭素を用いた技術はコーヒー豆からのカフェインの抽出プロ
ポリスからの生理活性物質の抽出に利用されています
図 超臨界二酸化炭素抽出を用いたコーヒー豆からのカフェインの抽出
56
付表 最小二乗法について 直線で近似する場合 f (x) = a0 + a1x (A1-1) 式(A1-1)のように近似させるとする測定値 yiとの残差を eiとすると式(A1-2)のようになる ei = yi - f (xi) = yi - ( a0 + a1xi ) (A1-2) ここで式(A1-2)の両辺を二乗してその i に関する総和をとりその値を S とすると次式となる
sumsum==
+minus==n
iii
n
ii xaayeS
1
210
1
2 )( (A1-3)
S を最小化するような a0a1を求める式(A1-3)を a0a1について偏微分すると次式とな
る
sum=
+minuspartpart
=partpart n
iii xaay
aaS
1
210
00)( sum
=
+minusminus=n
iii xaay
110 )(2 (A1-4)
同様にa1について編微分すると次式のようになる
sum=
+minusminus=partpart n
iiii xxaay
aS
110
1])([2 (A1-5)
Sが最小となる時は次式が同時に満たされる時である
00=
partpartaS
01=
partpartaS
(A1-6)
よって誤差が最小となる a0a1を求めるためには式(A1-6)を連立して解けばよい
sumsumsum===
+=n
ii
n
i
n
ii xaay
111
10 1 (A1-7)
sumsumsum===
+=n
ii
n
ii
n
iii xaxaxy
1
2
11
10 (A1-8)
式(A1-7)と式(A1-8)を a0a1を変数とみなし連立して解くと次式を得る
n組のデータ(xiyi)(i=12hellipn)に対して回帰直線 y= a0 + a1x を最小二乗法で求めて出力しデータ番号 iデータ yi直線で推定した値 )( ii bxay += および残差
iii yy minus=ε を出力するようなプログラムをつくりたい基礎式を導出せよ (ヒント残差の二乗の和が最小になるように係数 a0a1)を定めるのが最小二乗法
である)
57
sumsum
sumsumsumsum
==
====
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
n
ii
n
ii
xxn
xxyyxa
1
2
1
2
1111
2
0
)(
))(())(( (A1-9)
sumsum
sumsumsum
==
===
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
xxn
yxxyna
1
2
1
2
1111
)(
))(()( (A1-10)
よって式(A1-9)(A1-10)を用いれば最も誤差を小さくするような直線 y = a0 + a1x が求められる
y=a1x+a0 にて近似
誤差 ei
x
y
誤差が最小になる関数(直線 y=a1x+a0の場合)
図1 最小二乗による近似
誤差の和Sが最小
S
a0
a1
直線 y=a1x+a0 の近似
誤差の全体の和はS=Σei=Σyi-(a1xi+a0)
Sは変曲点にて最小値を示すすなわち(partSparta0)=0 (partSparta1)=0
図2 a0a1とSの関係
16
36 エクセルによる吸着データの整理法 注コンピュータの画面はWindowsXP上での操作になっています他の OS(Windows98 2000
NT)搭載のパソコンでも同様の作業が可能です) 先ほど問1で説明したように溶液濃度の濃度変化から吸着量 nを求めました実験では吸着後の水溶液中の酢酸の濃度 Cと吸着量 nの関係を各濃度の溶液(5種類)について測定しその値を計算します このようなデータの整理には表計算ソフトであるマイクロソフト社の Excelが便利です
Excel の起動方法はそのソフトがインストール(設定)されているコンピュータにより若干方法が異なることがありますがほとんど同じですここでは福岡大学の総合情報処理
センターのコンピュータの設定に従って説明します 表計算をしてみましょう セルとは セルというのは最小単位の四角のことです例えば「(Aの1)またはA1というセルセル
B1」のようにセルという言葉を使いますセル A1に1という数字を入れてみましょうセルA1をクリックしてキーボードから「1」と入力しキーボードの「Enter」キーを押します
図 5 Excelの入力例1 図 6 Excelの入力例2
次にセル B1に「5」という数字を入れましょう次にセル C1にセル A1と B1に記入された数値の和を表示させてみましょう 下の図のようにセル C1をクリックします上の「 fx 」と書かれた右のボックス(何かを書くところに)「 =A1+B1 」と書きましょうそして Enterを押すとセル C1に 6と表示されます
図 Excelを用いた関数計算 実験では吸着後の水溶液中の酢酸の濃度 Cと吸着量 nの関係を各濃度の溶液(5種類)について測定しましたこのデータに対してExcelを用いて表計算してみましょうまず先ほど記述したセル A1~A3は「Delete」(デリート)キーで値を削除しましょう
17
次にセル A5~A9に活性炭と接触する前の酢酸水溶液の初濃度 C0[moldm3]セル
B5~B9に活性炭と接触後分離した酢酸水溶液の濃度 C[moldm3]セル E5~E9に活性炭の質量 W[g]をキーボードから入力します作成した一例を次に示します
図 8 Excelによる吸着量nの計算 ここで1gの活性炭に吸着された酢酸の物質量n [mol]を式 (4)より計算できるのでセル C 5~C9に次の関数式を記述します式の内容としては
)( 0CCWVn minusminus=
となるように記述するので実際の Excelの関数としては次のように行います セル C 5をクリックし関数ボックス(fxの右)に「=(A5 ndash B5)01E5」と記述(半角または直接入力形式で)し「Enter」キーを押し確定しますこの関数はフィルハンドルを利用してセル C 6~C9にコピーしますただし実験で溶液は 100cm3使用しましたが
溶液の濃度 C が[moldm3]の単位ですので100cm3=01dm3 となり関数式の中では
V=01 dm3としています なおグラフの記述方法やフィルハンドルの使用方法については化学工学プログラミ
ングなどの補助資料を参考にして下さいまた実験の際に配布した Excel ファイル(ファイル名ad_graxls)を使用すると実験データの理論的な解析も容易にできますので試してみましょうExcelファイル(ファイル名)「ad_graxls」の使用方法は次節で説明します 36 実験結果の考察方法 (吸着実験について) 実験結果の考察方法は種々の方法がありますがここでは一例として理論と比較する
方法を示します実験結果として下図(左)のようなグラフができましたこのような実
験結果に対して理論的な考察を行ってみましょうここでは次節で説明するラングミュ
ア(Langmuir)の単分子吸着モデルで計算した理論線と実験と比較したものを下図右に示しますこの図を作る方法は次節で説明しますレポートの考察の部分はラングミュア
(Langmuir)の単分子吸着モデルの式の導出から書いて下さい 理論を作る場合幾つかの仮定をしますがその理論が多くの実験結果をうまく説明でき
ている場合その仮定がある程度妥当なものであったことがわかります指針書に書いてあ
った以外の理論についても興味があれいばためしてみましょう
セル C5をクリックし関数ボックス( fx の右)に「=(A5 ndash B5)01E5」と記述(半角または直接入力
形式で)します
18
ラングミュア(Langmuir)の単分子吸着モデルを用いて理論値を計算するには配布され
た Excelファイル(ファイル名)「ad_graxls」を使用すると便利ですその使用方法を以下に示します配布プログラムは化学工学プログラミングの講義の場合と同様に総合情報処
理センターの共通領域にあります各自コピーして使用して下さいコピーするには化
学工学プログラミングの講義の場合と同様にコピーしようとするファイルを共通領域から
自分の使用しているコンピュータのデスクトップにドラッグドロップします共通領域で
ファイルを開くとファイルの消去などで他の人が使えなくなりますので共通領域でファイ
ルをダブルクリックしないようにして下さい誤って共通領域でファイルをダブルクリック
した場合はそのファイルを閉じるボタンをクリックし閉じて下さい 各自のコンピュータに保存した Excelのファイル(ファイル名ad_graxls)をダブルクリ
ックして開きます自宅へ持ち帰る場合各自のフラッシュメモリーやフロッピーディスク
を使用しまたはメールを使用して添付ファイルで送信できます各自のフラッシュメモ
リーやフロッピーディスクに保存してあるファイルを再編集する場合はフラッシュメモリ
ーやフロッピーディスクをコンピュータの USB 端子またはフロッピーディスクドライブに挿入します次にデスクトップ上にあるマイコンピュータのアイコンをダブルクリックし
ます もしデスクトップ上に上のアイコンが無ければ画
面左下の「スタート」ボタンからマイコンピュータをク
リックしてくださいすると次のような画面が立ち上が
ります
ラングミュア(Langmuir)の単分子吸着モデルで計算した
理論線
19
その中からフラッシュメモリーの場合は「リムーバブルディスク」をフロッピーディ
スクの場合は「35インチ FD」のアイコンをダブルクリックしてくださいファイルが保存されていれば次の画面が出てきます
この画面の中の「ad_graxls」ファイルをデスクト
ップにコピーしますまず「ad_graxls」ファイルを左クリックしますこの時クリックした指はは
ずさないようにしますその状態のままデスクトッ
プまでファイルを移動させますそしてデスクト
ップ上の任意の場所でクリックした指をはずします
これでデスクトップ上に「ad_graxls」のファイルがコピーされましたのでデスクトップにコピーさ
れたファイルをダブルクリックして開きますコピ
ー操作が上手くいかなかった場合もう一度移動の操作を行ってください
必ずデスクトップにコピーしてから開く操作を行って下さいフロッピーディスクから直接
開いて操作を行った場合正しく保存されない可能性があります 「ad_graxls」のファイルを開くと次のような画面が立ち上がりますもし画面が違う場合は画面の下部にある「吸着データ」のタグ をクリックしてくださいこの画面
でデータの処理や計算を行いますでは実際の操作に入る前に予めこのファイルに名前
を付けて保存しておきますまずExcelの画面のツールバー「ファイル」から「名前を付けて保存」をクリックします下のような画面が起動します
20
ファイルの保存先を変えたい場合画面上部のボタンをクリックし保存先にデスクトッ
プを選択します次にファイル名の部分に各自ファイル名を入力しますファイル名は何
でも良いですが分かり易い名前にしておくとファイルの管理がやり易くなります日付や
数字を入れると同名のファイルをいくつも管理する場合に便利ですここでは「吸着実験デ
ータ整理 4月 01」とし「保存」ボタンをクリックします
ファイル名変更後Excelの画面上部のタイトルバーのタイトルが先ほどの名前(上の図とは異なります)になっていることを確認してください
この操作を行うことによって元のデータである「ad_graxls」を変更してしまう心配がなくなります元のデータである「ad_graxls」はファイルが破損しまたは間違った操作の結果を誤って保存してしまった場合などの補助ファイルとなりますので大切に保管しておいて
下さい今後配布するデータは先ほど説明した手順で名前を変えて保存し元のデータに
直接変更を加えないようにして下さい ここから実際の作業に入ります初期状態では模擬のデータが入力されています入力
データは予め計算しておいた酢酸濃度Cb[moll](濃度を Cと表示している場合もあります)と活性炭吸着量 n[molg]になります下の画面の丸で囲んだ部分がそれぞれの値でBCカラム(列)の 4~9行には数値が入力されています関数ではありませんこのデータを利用して実際のデータ解析を行ってみましょう下記のように行うと幾つかのグラフが
現れ実験データに対してラングミアーの単分子吸着を仮定したモデルを用いて精度よ
く計算線が描けることがわかります 今回はCbnの値を入力する必要はありませんExcelが自動的に計算を行って結果を表示するようになっていますつ
まりセル D5に「=B5C5」と関数を入力しこの関数に対してフィルハンド
ルを利用してセル D6~D9へコピーし
ファイルの保存先を変えたい場合画面
上部のボタンをクリックし保存先に
デスクトップを選択します
変更するファイル名はここをクリッ
クして書き換えます
名前を変更したらここをク
リックして保存します
21
まています 次に酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着量 n[molg]の関係および酢酸濃度 Cb[molL]と Cbn[gL]の関係をグラフ化します今回は自動的にグラフが作成されるようになっていますので複
雑な操作は必要ありません ここではデータに対してそれを精度よく表現する近似式をグラフ上に描きその関数
を数値として求める方法を Excelで練習してみましょう
グラフを表示させるには画面の下にある「Graph1」もしくは「Graph2」のタグ
をクリックします「Graph1」には酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着量n[molg]の関係のグラフが「Graph2」には酢酸濃度 Cb[molL]と Cbn[gL]の関係のグラフが表示されます「Graph2」はLangmuir の等温吸着式による相関を表したもので横軸に酢酸濃度 Cb[molL]をとり縦軸に酢酸濃度 Cb[molL]を活性炭吸着量 n[molg]で除した値 Cbn[gL]を示していますLangmuir の等温吸着式についてはこの後の章で説明してありますので各自読んで理解して下さいLangmuirの等温吸着式では式中の定数 ninfin(飽和吸着量)と K(吸着平衡定数)を実験データから最小二乗近似で決定する場合が多くありますここでは
その例を取り上げてデータに対してそれを精度よく表現する近似式をグラフ上に描き
その関数を数値として求める方法(最小二乗法最小二乗については付録に示しており
また化学工学プログラミングの講義においても説明します)を Excelで練習します 配布された Excel ファイル「ad_graxls」では実験点が表示されているだけでそれを精度よく表現する近似式の直線のグラフは「Graph2」に表示されていません今から次の手順で「Graph2」の図(グラフ)に近似式の直線のグラフを表示しますExcel の場合近似曲線(ここでは直線)を求める場合コンピュータが自動的に最小二乗法を使って近似曲線
を計算しています
「Graph1」の画面 「Graph2」の画面
Excelの sheetが表示されたらまずファイル名を変えデスク
トップに保存して下さい次
にGraph2のタックを左クリックして最小二乗法のグラフを
確認して下さい
22
38 Langmuirの等温吸着式による相関 はじめにLangmuir式の定数 ninfinと Kを決定するために「Graph2」酢酸濃度 Cb[molL]と
Cbn[gL]の関係のグラフから最小二乗法により直線の式を求めますExcelを用いてデータに対して近似直線のグラフを描き最小二乗法の直線の式を求めます
次のような「近似曲線の追加」のウィンドウが現れたら今回は線形近似(直線で近似
y=ax+b の式)を選びますので線形近似が黒色に反転していることを確認して「近似曲線の追加」のウィンドウの右下の「OK」ボタンをクリックして下さい
実験点の何れかにポインタをあわせて
右クリックする
近似曲線の追加(R)を選択して左クリックする
「線形近似」であること
を確認して「OK」ボタンをクリックします
23
「近似曲線の書式設定」
のウィンドウでオプシ
ョンから「グラブの書式
を表示する」の前を選ん
でチェック(前のチェッ
クボックスをクリック)
した後「OK」を押す
現れた直線にポインタをあわせて
左クリックすると「近似曲線の書式
設定」のウインドウが表示されます
ここをクリックします
この「オプション」のタ
グをクリックします
「y=」の関数
が現れるのでここ
をクリックする
式の文字フォントが初期値
「8」と小さいのでここ
のボタンをクリックし
フォントサイズを選ぶリス
トボックスを表示し「22」程度の大きなサイズを選択
しクリックする
24
「Graph2」酢酸濃度 Cb[molL]と Cbn[gL]の関係のグラフから最小二乗法により直線の式がこのように求められましたExcel を用いてデータに対して近似直線のグラフを描き最小二乗法の直線の式を求めるこの方法は他の実験データの解析などにも利用できますので
各自活用して下さい 表示された関数式「y=43865+2654」はノートにメモして下さいこの傾き 43865と
切片 2654からLangmuir式の定数 ninfinと Kを決定します決定方法の詳細はこの後の 36 の Langmuir式のパラメータ決定法に示しています ラングミュアの等温吸着式を変形すると次式となる
CCnKnCKn
CCKn
Cβ+α+
==
+= infininfininfin
11)1(
ただしα=1ninfinβ=1(ninfinK)とするこの式より Cnを縦軸Cを横軸とした関係のグラフは傾きα=1ninfin切片β=1(ninfinK)の直線関係を与えることを示しています そこでExcelのシートを利用してこの値からLangmuir式の定数 ninfinと Kを次のように決定しますセル C18D18に Graph2で求めた数値 2654と 43865を代入しますその後D19と C19に関数を ldquo=1D18rdquoとrdquo=D18C18ldquoを代入しますセル内の式は半角で入力してください
現れた関数の文字フォン
トを大きく(例えば 22)してその数字をメモし
吸着データシートの C18と D18に記入する
C18D18 に Graph2 で求めた値 2654 と 43865 を代入した後D19 と C19 に関数を ldquo=1D18rdquoとrdquo=D18C18ldquoを代入する
25
この Excel表示では最小二乗法を用いて決定した傾きαと切片βを用いて α=1ninfin=43865 β=1(ninfinK)=2654 得られた傾きおよび切片よりninfinおよび Kは次のように求まる
ninfin=1α=1D18=000228 molg-1 K =(1ninfin)β=αβ=D18C18=165
つまりセル D19にはninfinの値がセル C19にはKの値が表示されますこれらの値はラングミュア(Langmuir)の単分子吸着モデルで計算した理論線と実験と比較する場合に利用します実験結果に対して理論的な考察を行う例としてラングミュア(Langmuir)の単分子吸着モデルで理論線を計算し実験と比較するにはこの Excelファイルを利用して次のように計算しグラフに表示します セル F5~F30 には溶液中に残る酢酸濃度 Cb[molL]に対する活性炭に吸着された吸着量n[molg]の関係のグラフ「Graph1」の横軸の酢酸濃度 Cb[molL]の適当な値が既に入力してありますこれらのそれぞの酢酸濃度 Cb[molL]に対する吸着された酢酸の吸着量 n[molg]の理論値をラングミュア(Langmuir)式で計算しますラングミュア式は次式で与えられます
KCKCnn
+=
infin
1 (310)
ここでこの実験データを最も精度よく計算できるように決定した ninfinおよび K は上述のようにninfin=1α=1D18=000228 molg-1 K =(1ninfin)β=αβ=D18C18=165 でありこれらの値はセル D19にninfinの値がセル C19にKの値が表示されていますこの値を利用して「Graph1」に計算線を描くにはまずセル G5~G30 にセル F5~F30 のそれぞれの酢酸濃度 Cb[molL]に対する吸着された酢酸の吸着量 n[molg]の理論値をラングミュア式で計算しますそのためにはセル G5 にラングミュア式を次のように記述しますただしセル D19の ninfinの値セル C19の Kの値は常に同じセルから参照するので絶対参照($マークを付けて$D$19 $C$19と記述します)で記述します
Langmuir式をセル G5に記述するただし濃度はF5の値を相対参照しD19と C19は絶対参照($マークが必要)することを忘れないように
セルG5に記述すべき数式
=$D$19$C$19F5(1+$C$19F5)
26
G5記述後フィルハンドルを使用してG5の関数を G6~G30までコピーします Sheet1から Graph1 のタグをクリックしGraph1 に計算線が表示されたことを確認しましょうこれでラングミュア式によるデータの解析は終了です実験値と理論値を比較して現象
について考察してみて下さいラングミュア式を理論的に導く場合にある仮定をしている
のですがその仮定をしているラングミュア式が実験データを精度よく計算できていれば
その仮定が妥当なもとであったと考察できます 与えられたモデルデータでラングミュア式によるデータ解析ができれば他の理論(例え
ばフロインドリッヒFreundlich式や BET式レポートはどちらか一方でも可です) についてもExcel で計算してみましょうレポートには自分のデータについてここで行った内容と同様に計算しその結果を考察に記述して下さい 自分のデータについて同様の計算をするにはまずいままで計算を行った Excel ファ
イルを保存しますデータを自分の実験データに置き換える前に Excel ファイルをさらに別の名前で保存します与えられた Excel ファイルは初期状態では模擬のデータが入力されているので今回自分達の実験したデータを入力していきます入力するデータは予め計算
しておいた酢酸濃度 Cb[moll]と活性炭吸着量 n[molg]になります下の画面の丸で囲んだ部分にそれぞれ自分の実験データを入力していきます
今回はCbnの値を入力する必要はありませんExcelが自動的に計算を行って結果を表示するようになっています 次に酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着
量 n[molg]の関係および酢酸濃度Cb[molL]と Cbn[gL]の関係をグラフ化します今回は自動的にグラフが作成
されるようになっていますので操作は必
要ありません 39 Freundlichの等温吸着式による相関 今回の実験で得られた酢酸濃度 Cbと活性炭吸着量 nのデータを利用してFreundlichの等温吸着式の定数 abの値を求めFreundlichの等温吸着式の理論線をグラフに追加します ここでFreundlich式は次式で表されます
bbaCn1
=
このままでは定数 abの値を決定することが難しいので上式の両辺の対数をとり線形化しますすると次式となります
bCb
an ln1lnln +=
ここでln Cbと ln nの関係をグラフにプロットすれば傾き 1b切片 ln aの直線関係が得られますしたがって実験データである酢酸濃度 Cbと活性炭吸着量 nの値の対数をそれぞれ計算します配布した「ad_graxls」ファイルを開き「吸着データ」シートの任意の部分に以下のような表を作成します
27
次にln Cb[-]の列の最初のセルに以下の数式を入力します
=ln(B5) 上式中の「B5」は Cb の値の最初のセルの位置を指します各個人の位置によって変更してください
次にln n[-]の列の最初のセルに以下の数式を入力します
=ln(C5) 上式中の「C5」は nの値の最初のセルの位置を指します各個人の位置によって変更してください
ここでln Cb[-]ln n[-]の値に対しそれぞれオートフィルを行い計算させますすると以下のようなデータが完成します
計算した ln Cb[-]ln n[-]の値をグラフにプロットし最小二乗法による直線式を求めます
28
ここで以下のような直線の式が得られたとします
9135ln31690ln913531690 minus=there4minus= bCnxy
上式より切片は-5913傾きは 03169となるので以下の要領で定数 a1bを計算します ==there4minus= minus 91359135ln eaa 000270
316901=
b
a の値を Excel で計算させる場合は任意のセルに以下のような数式を入力することで求めることができます
=exp(-5913) これでFerundlich等温吸着式の定数 a1bの値が決定しましたこの値は後で使うのでノートなどにメモしておいてください 次に決定した Ferundlich 等温吸着式の定数 a1b の値を用いてFerundlich 等温吸着式のグラフを作成します先ほども示したように Ferundlich等温吸着式は次式で表されます
bbaCn1
=
従って定数 aと 1bの値はすでに決定しているので任意の Cbの値に対する nの値を数点求めればFerundlich等温吸着式で求めた理論線が得られます以下の操作で理論線を引くことができます Langmuir 等温吸着式による相関のときと同様にExcel の「吸着データ」のシート上の任意の場所に以下のような表を作成します
次に Ferundlich等温吸着式に従いnの値を計算します
bbaCn1
=
式中の定数 a1bは先ほど計算した値を用いますしたがって式は次のようになります
31690002700 bCn times=
この式を Excelのセル内に記入すれば計算ができます次の
29
ように記入します
=00027G5^03169 ここで式中の「G5」は Cbの値が 0のセルを指しています各個人の位置によって変えてください 次に式を記入したセルを Cbの値が 05のところまでオートフィルを行いますそうするとすべての Cbに対して nの値が計算されます
これで Freundlich等温吸着式のデータが完成しましたので次に「Graph1」酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着量 n[molg]の関係のグラフにこのデータを追加し理論線を引きます理論線の引き方は Langmuirによる相関のときと同様の操作を行ってください グラフの書式等を変更し整理すると以下のようなグラフが出来上がります
310 吸着等温線とは 固体の吸着剤を溶液と接触させる時一定量の吸着剤によって吸着される溶質の量は温度一定ならば溶質の濃度の関数になる一定温度での吸着量を温度に対してプロットした時に
得られる曲線を吸着等温線というこの吸着等温線を比較的よく表す経験式として次の
Freundlich式がある
n=aC1b (1) ここで n は吸着剤の質量あたりの吸着量C は吸着平衡濃度a と b は実験から決定されるパラメータであるがその物理的意味は多少希薄である これに対し理論的な意味を持つものに次のラングニュア(Langmuir)の吸着等温式がある
30
KCKCnn
+=
infin
1 (2)
ただしninfinは飽和吸着量Kは吸着平衡定数であるこの式は
1)吸着分子が固体表面で単分子以上の厚い層を作ることはない 2)吸着分子同士の間の相互作用はない
という二つの仮定にもとに導かれたものである 結果の整理および報告 Freundlich吸着等温式Langmuir吸着等温式の各々のパラメータの最適値を求めよまた活性炭の吸着特性および表面積について考察し化学工学における吸着操作の重要性につい
ても検討せよ 311 吸着等温式 (a) ヘンリー(Henry)型吸着等温式 液相の濃度あるいは気相の圧力が小さい場合吸着分子間の距離が十分に長いため吸着
分子同士の相互作用が無視でき固体表面と吸着分子のみの相互作用で吸着量を決定できる
とき次式のように表される
n=KC (3)
ここでKは比例定数である図 3-1の(a)に示すように濃度 Cと吸着量 nは比例関係があり一般に吸着量が小さい範囲で成立する気体の場合は溶液濃度 Cの代わりに気相圧力 pを用いればよい
濃度(分圧)
濃度(分圧)
濃度(分圧)
濃度(分圧)
吸着量
吸着量
吸着量
吸着量
(a)ヘンリー型 (b)ラングミュア型
(d)BET型(c)フロインドリッヒ型
0
0
0
0
図 3-1 吸着等温式
31
(b)ラングミュア(Langmuir)型吸着等温式 ラングミュアは図 3-2 に示すように固体表面に同等な吸着力を示す吸着サイトがあり
表面に 1分子層だけ吸着する(単分子層吸着)と仮定して平衡状態における吸着量と溶質濃度(気相分圧)のと関係を導いた全吸着点のうち吸着分子に覆われている吸着点の割合
をθ[-]とすると分子の脱着速度 rrsquo[mols-1]はθに比例する比例定数を a[mols-1]とすると次式のように表される
吸着剤
吸着分子
吸着サイト
図 3-2 固体表面上の吸着サイト(Langmuir式の導出) r=aθ (6) また気相からの吸着速度 r[mols-1]は空いている吸着点の割合(1-θ)[-]と溶液濃度 C[molm-3]に比例する rrsquo= b(1-θ)C (7) このときの比例定数を b[m3s-1]とするまた平衡状態では両速度は見かけ上等しいため以下の式が成り立つ aθ=b(1-θ)C (8) これを変形する
CbaCbsdot+
sdot=θ (9)
ここで飽和吸着量を ninfin[molkg-1] ba を K[m3mol-1](Kは吸着平衡定数)とおくと infin=nnθ
となるので次式が得られる
32
KCKCnn
+=
infin
1 (10)
これをラングミュア式と呼ぶ
(c)フロインドリッヒ(Freundlich)型吸着等温式 フロインドリッヒの吸着等温線は図 3-1(c)のように示される
n=aC1b (11) nは吸着量[molkg-1]で aと bはともに吸着定数[-]である (d)BET(Brunauer-Emmett-Teller) 型吸着等温式
BET型の吸着等温線は図 3-1(d)に示されるラングミュア式は表面に 1分子層だけ吸着すると仮定したものであるがBET式は無限分子層まで吸着できる式である図 3-3に示すように吸着した分子がそれぞれ次の層の吸着サイトとなり分子は積み重なって多分子
層に無限層まで吸着できるものとし各層への吸着にラングミュア式を適用すれば次式の
ように表せる
( ) ( )CKCCCKqq
minus+sdotminussdotsdot
=infin
11 (12)
この式は多孔質固体の細孔表面積を窒素ガスの吸着によって測定する際に利用される重要な式
である
表面の吸着サイト
分子上の吸着サイト
図 3-3 多分層吸着モデル
Langmuir式のパラメータ決定法 水溶液からの酢酸の活性炭に対する吸着平衡データ(吸着平衡温度 12)は表 3-1のよ
うに与えられる実験データよりラングミュア式のパラメータ(K吸着平衡定数ninfin飽和吸着量)を最小二乗法で決定せよさらにラングミュア式より決定した ninfinKの値を用いて吸着等温線を計算し計算線として図に示し実験点と比較せよ
33
表 3-1 n C Cnの関係
ラングミュア式は式(310)で与えられるこの式を変形すると次式となる
CKnCK
n infinsdot+
=11
(313)
両辺に Cをかけると以下の式が導出される
CCnKnCKn
CCKn
Cβ+α+
==
+= infininfininfin
11)1( (314)
ただしα=1ninfinβ=1(ninfinK)とする式(314)より Cn と C の関係のグラフプロットは傾きα=1ninfin切片β=1(ninfinK)の直線関係を与えることを示している表 3-1の値を用いて計算した Cnと Cの関係を表 3-1および図 3-4に示す 最小二乗法を用いて傾きαと切片βを決定した α=1ninfin=43865 β=1(ninfinK)=2654 得られた傾きおよび切片よりninfinおよび Kは次のように求まる
ninfin=1α=1D18=000228 molg-1 K =(1ninfin)β=αβ=D18C18=165
0
50
100
150
200
0 200 400 600
C [ molm-3 ]
Cn [ kgm-3 ]
傾き = 1 ninfin
1 ninfinK
切片0
05
1
15
2
25
3
0 100 200 300 400 500
液相の溶質濃度 C [ molm-3 ]
吸着量 n [ molkg-1]
液相と溶質濃度 C [ molm-3 ]
吸着量
n[ m
olk
g-1]
実験点
Langmuir式パラメータninfin 00033 [ molg-1 ]K 00086 [ m3 mol -1 ]
図 3-4 ラングミュア定数の決定 図 3-5 12における酢酸濃度 Cと
吸着量 nの関係
C [molm-3] n [molkg-1] Cn [kgm-3] 460 225 109 529 214
268 199 149 105 060
172 128 732 504 357
34
Freundlich式のパラメータ決定法 酢酸水溶液中における酢酸の活性炭に対する吸着実験を行ったところ以下のような実験デー
タを得たただしCbはバルク相における酢酸濃度n は活性炭に対する酢酸の吸着量を示す
Cb[molL] n[molg] log10Cb log10n 04621 000205 02410 000175 01139 000139 00519 000105 00243 000081
実験データを利用して次式で与えられる Freundlichの等温吸着式の定数 abの値を求めたい
bbaCn1
= (1)
このままでは定数 abの値を決定することが難しいので上式の両辺の対数をとる
bbb
bb
Cb
aCa
aCn
ln1lnlnln
)ln(ln1
1
+=+=
=
(2)
ここで横軸に ln Cb縦軸に ln nの関係をグラフにプロットするすなわち x=ln Cby=ln nと考える
bCb
an ln1lnln += (3)
ここで直線式 y=a0+a1xと比較するすなわち
)(1)(ln
1
00
傾き
切片
ba
eaaa a
=
=rarr= (4)
a0および a1は最小二乗法により数値で求められる与えられたデータでは a1= a0= なので a= b= となる この値を n=acb
1bに代入してcb=0~05の範囲で nの値を計算する
35
BET式のパラメータ決定法 BET式は次式で与えられる
)1)(1( KCCCKCnn
+minusminus=
infin
(17)
以下のように BET式の変形を行う
)1()1(
KCCKCnCn+minus
=minusinfin
(18)
(18)式の逆数をとると
KCnCK
KCnKCC
Cn infininfin
minus+=
+minus=
minus)1(1)1(
)1(1
(19)
(19)式の両辺に Cをかえると
KCnCKC
CnC
infin
minus+=
minus))1(1(
)1( (20)
(20)式を変形すると次式が得られる
CKn
KKnCn
Cinfininfin
minus+=
minus11
)1( (21)
C と)-(1 Cn
Cのプロットは傾き
KnKinfin
minus1切片
Kninfin
1の直線関係を与えることを示している
これをグラフにプロットし最小二乗法に傾きおよび切片を求める
36
312 活性炭の比表面積の決定 酢酸分子の構造を以下に示す
Hc-Cb-Ca
Hd
Hb Oa
Ob-Ha
1219deg
Ca Oa
Ob
図 36 酢酸の構造
酢酸の 1分子の吸着面積srsquo [m2]を図 3-6に示すこのとき文献より
Caと Oaの結合距離 1321Å Caと Obの結合距離 1206Å OaCaObの角度 1219deg Cの原子半径 077Å Oの原子半径 062Å
したがって吸着面積 Slsquoは次のようになる
( ) ( ) 2088 10376109931036321 minusminusminus times=timestimestimestimes=s m2
ここで活性炭の比表面積 S[m2g]は次式で示される 10026 23 snS timestimestimes= infin
S活性炭の比表面積 [m2g] ninfin飽和吸着量 [molg] srsquo酢酸 1分子の吸着面積 [m2] 602times1023アボガドロ数 [個mol] したがって活性炭の比表面積 S[m2g]は
003350=infinn molg 2010376 minustimes=s m2 より
51281037610026003350 2023 =timestimestimestimes= minusS m2g
37
4 粘度密度測定 41 はじめに 大量生産を目的とした工業的化学プロセスはほとんど流れ系(流通系)であるそれらの系において操作対象となる各物質の粘度は装置を設計操作する場合きわめて重要
な物性値である 本実験では低分子溶液および高分子溶液の粘度測定を通じて液体の粘度について考察するさらに演習問題を通じて気体液体高分子溶液などの化学プロセスで対象となる物
質の輸送物性(粘度拡散係数)の重要性を認識されたい 42 低分子溶液の粘度 [目的] 種々の濃度のエタノール水溶液の粘度を測定しその溶液の粘度について考察する [概要] 25におけるエチルアルコール濃度 02040506080100 wt の水溶液について流下時間を測定しこの結果より相対粘度絶対粘度運動粘度を求めグラフにするま
た水の密度水-エチルアルコール溶液の密度についてはピクノメーターを用いて決
定する報告書には相対粘度絶対粘度運動粘度 vsエチルアルコール濃度の関係をそれぞれグラフにして提出する
[計算方法] 相対粘度絶対粘度運動粘度の定義は次のようになる
相対粘度 ww
w tdtd
ηη = (41)
η 混合溶液の粘度 [gcms] ηw水の粘度(8007times10-3 gcms) [gcms](25における粘度) d エチルアルコール水溶液の密度 [gcm3] dw水の密度(099704gcm3) [gcm3](25における密度) t エチルアルコール水溶液の流下時間 [s] tw水の流下時間 [s] 下付添字 W 水
絶対粘度 www td
tdη
η= (42)
運動粘度 ν=ηd [cm2s] (43)
38
[実験方法] 1) 粘度計を洗浄し粘度計内 に二連球で空気を送り込み
乾燥させる乾燥しにくい 場合はアセトンを滴下し た後再度二連球で空気 を送り込み乾燥させる 2)ピペットで一定体積(10mℓ) の純水を取り広い口 f から 粘度計に水を入れる 3)粘度計を恒温槽(25)に つけ約 10 分静置する 4)安全ピペッターを口 a に 取り付け液面が b 上部に 到達するまで吸い上げる 5)安全ピペッターを外すと 液面が降下しだす液面が bd 間を通過する時間をスト ップウォッチで測定する
6)純水での測定を 3 回繰り返す 7)純水を粘度計から取り除くその後粘度計内に二連球を用いて空気を送り込み乾燥させる 8)粘度計乾燥後複数の濃度に調整済みのエチルアルコール水溶液(10mℓ)を粘度計にいれ4)~6)の作業を繰り返し行う(3 回)なお濃度の異なるエチルアルコール水溶液を粘度計内に導入する場合には7)と同様に二連球を用いて粘度計内に空気を送り込み乾燥させる
表 4-1 エチルアルコール水溶液の濃度密度相対粘度の関係 エチルアルコール濃度
[wt] 密度 d[gcm3] 相対粘度
η ηw[-] 0
20 40 50 60 80
100
安全ピペッター接続
図 4-1 粘度計
液面の bd間の通過時
間を測定
f
39
43 密度測定 [目的] 本実験では水とエタノールの種々の組成の混合液体について密度を測定し分子間相互
作用について考察する [実験方法] 1)ピクノメーターの容積測定
図 4-2のピクノメーターの空の重量 wg を秤量する
ピクノメーターの蓋を取り外し
ピクノメーターを水で満たす
設定温度を 25として恒温槽 の電源を入れ恒温槽内の温 度が一定になるまで待つな お水温は恒温槽中の水銀温 度計から読む
恒温槽中に水を満たしたピク
ノメーターを入れる
約 10分間静置する
ピクノメーターに蓋をするこのときピクノメーターの容量
よりも余分の水は蓋の上部より排出される
ピクノメーターの外側を乾いた布で拭い秤量する(その重量を
wwg とする)
恒温槽の温度(25)における水の密度 dwgcm3(=099704gcm3)
より次式を用いてピクノメーターの容積を求める
w
w
dww
Vminus
= (44)
図 4-2 ピクノメーター
蓋
40
表 4-2 エチルアルコール水溶液の濃度と密度の測定結果(25) エチルアルコ
ール濃度[wt]
wrsquo[g] ww[g] V[cm3] w[g]
d[gcm3]
0 20 40 50 60 80
100
099704
エチルアルコール濃度[wt] 空のピクノメーターの重量 wrsquo[g] 水を入れたときのピクノメーターの重量 ww[g] ピクノメーターの体積 V[cm3] エタノール水溶液の入れたときのピクノメータの重さ w[g] エタノール水溶液の密度 d[gcm3]
容積 Vを求めたピクノメーターに混合溶液(調整済み)を入れてその重量 wgを秤量し次式で混合溶液の密度を求める
Vwwd minus
= (45)
エタノール濃度と密度 d の関係をグラフにプロットする
41
44 高分子溶液の粘度 [目的] 高分子溶液の粘度測定から分子量の粘度に与える影響について考察する [概要 ] オストワルド粘度計を用い種々の濃度のポリビニルアルコール(PVA ((-CH2CHOH-)n))水溶液の粘度を測定し粘度データよりポリビニルアルコールの分
子量を求める まず 05g100cc の濃度のポリビニルアルコール水溶液を調製する次にこれを原液
とし23 12 13 15の濃度の溶液を調製するこれらの溶液についてオストワルド粘度計を用いてそれぞれ流下時間を測定し相対粘度絶対粘度運動粘度を求め実験デ
ータより極限粘度[η]を求めるまた報告書には相対粘度絶対粘度運動粘度C
)ln( wηη
Cw
w-η
ηη vsポリビニルアルコール濃度の関係をそれぞれグラフにして提出する
[計算方法] エチルアルコール水溶液の粘度測定と同様の手法を用いて粘度の計算を行うなおポリビニルアルコール水溶液の密度はピクノメーターを用いて測定すること 表 4-3 ポリビニルアルコール水溶液の濃度密度相対粘度の関係 ポリビニルアルコール
濃度 [g100cc] 密度 d[gcm3] 相対粘度
η ηw[-] 05times(15) 05times(13) 05times(12) 05times(23)
05
42
[分子量の計算方法] 実験を行った結果以下のような粘度データを得られるとする実験データより極限粘度
を求めポリビニルアルコール(PVA)の分子量Mを決定せよ
PVA 水溶液濃度
C[g100cc]
相対粘度
ηηw[-]
絶対粘度
η[gcms]Cw
w-η
ηη
C)ln( wηη
05times(15) 1031 0008255 031 0305
05times(13) 039 0378
05times(12) 03 0289
05times(23) 0375 0353
05 0364 0334
ηw=8007times10-3 gcms 線状高分子の極限粘度[η]と分子量Mの関係は次式で与えられる [η]=KMα (46) ただしポリビニルアルコールの場合K=666times10-4α=064であるなお極限粘度[η]は次式で定義される
CC w
w
0
-][ limη
ηηη
rarr
= (47)
または
CC
)ln(][ w
0lim
ηηη
rarr
= (48)
よって濃度 CとCw
w-η
ηηまたは濃度 Cと
C)ln( wηη の関係をグラフ化し最小二乗法によ
り切片の値を求めると極限粘度[η]が決定される
Cw
w-η
ηηと C の関係より最小二乗法を用いて切片の値を決定すると(図 43 参照)切片=
03242傾き=00874となるよって極限粘度は以下のようになる[η]=03242同様
にC
)ln( wηη とcの関係より最小二乗法を用いて切片の値を決定する
(図 44参照)と切片=03249傾き=00256となり極限粘度は以下のようになる[η]=03249
Cw
w-η
ηηと Cの関係より決定した[η]=03242を用いてポリビニルアルコール(PVA)の
分子量 Mを計算する(46)式より以下のように PVAの分子量 Mを計算することができるM=([η]K)1α
=(03242(666times10-4))(1064)
=15811
43
y = 00874x + 03242
0
02
04
06
08
1
0 01 02 03 04 05 06 07
c[g100cc]
(η-ηw)(ηwc)
cw
w
η
ηηminus
極限粘度[η]
図 43 298Kにおける PVA濃度 CとCw
w-η
ηηの関係
y = 00256x + 03249
0
02
04
06
08
1
0 01 02 03 04 05 06 07
c[g100cc]
(ln(ηη
w))c
c)ln( wηη
極限粘度[η]
図 44 298Kにおける PVA濃度 CとC
)ln( wηη の関係
44
5 植物からの DNAの抽出 51 はじめに 分子レベルでの遺伝子の構造解明や遺伝子の発現に関する研究は近年急速に発展している
これら生命現象のしくみを分子レベルで解明しようという分子生物学の分野ではさまざま
な遺伝子の解析や応用方法が開発され我々の生活に身近なものになりつつある 本実験では初歩的な分子生物学に関する実験として植物(タマネギ)からの DNA の
抽出を行い抽出した遺伝子の電気泳動法による分離実験を試みる 52 試薬および器具 試薬 タマネギ(細胞中から遺伝子の抽出を行う) 台所用洗剤(洗剤中に含まれる界面活性剤には植物の細胞膜およびタンパク質を破壊す
る働きがある) 塩化ナトリウム(DNAは塩化ナトリウム水溶液に溶解し易い性質がある) エタノール(予め冷やしておくDNAはエタノールにほとんど溶解しない) 制限酵素(DNAを一定の部位で切断する働きを働きがある) TE緩衝液(pH緩衝剤が入った溶液) 器具 ビーカーミキサーフィルターメスシリンダー駒込ピペットガラス棒 マイクロピペット電気泳動装置ポラロイドカメラ 53 実験方法 1)タマネギは 1回の実験で半個のうち内側の半分程度を使用するタマネギ水 30ml台所用洗剤数滴をミキサー用ガラス容器に入れ40~60秒程度(固体状のタマネギがなくなる頃が目安)ミキサーにて混合する
2) 1)で作成した混合溶液をビーカーに移し約5g程度の塩化ナトリウムを加えガラス棒で静かに攪拌する粘性の大きな溶液が得られる
3) 2)で作成した溶液をフィルターを用いて濾過し濾液を回収する 4) 濾液の約2倍程度の量の冷エタノールをビーカーの壁伝いに静かに注ぐ 5) ビーカーを揺するとエタノール層に白くふわふわしたものが浮いてくるこれが DNAであるガラス棒で DNAを巻き取りシャーレ上にて DNAを回収する顕微鏡を用いて回収した DNAの状態を観察する
6)マイクロチューブ(容量 15ml)中に用意した 70エタノールを 8 分目程度まで注ぐ5)にて回収された DNAをマイクロピペットを用いて70エタノールの入ったマイクロチューブ中に移す軽く混ぜることによりDNA から不要な物質を洗い流す遠心分離してDNA をマイクロチューブの底に沈めた後溶液を捨てて DNA を乾かす乾いたらTE緩衝溶液を 1ml加えて放置するDNAの溶液が得られる
54 電気泳動装置による DNAの観察
本実験は職員と一緒に行うこと 実験を行う人はビニール手袋をすること 1) 抽出した DNAを電気泳動装置で観察するマイクロピペットを用いて以下のように調製した DNAの混合溶液を調製する(いずれの溶液も調製済)
45
2) マイクロピペットを用いてアガロースゲルの試料を流し込む穴(ウェル)に1)にて調製した溶液 Aおよび Bを注ぎ込む注入量は20μℓとする電気泳動装置のスイッチを入れて100Vの電流を流しアガロースゲル内にて DNAを電気泳動させる
3) 試料に予め加えられておいた青色の色素が 7 分目程度まで進んだら電気泳動を中止する(約 30分程度)
4) (ここでの作業は職員が行う) アガロースゲルを取り出し染色液に浸す染色後ゲルを取り出しポラロイドカメラで
DNAの泳動状態を撮影する
+ -
アガロースゲル
試料を流し込む穴(ウェル)
図 51 電気泳動装置
6 5 4 3 2 1
図 52 DNAの電気泳動写真の一例
55 電気泳動装置の原理 電気泳動装置の原理図を以下に示すアガロースゲル(寒天から不純物を除いたもの)中
に DNAをセットし電流を流すとDNAは電流の向きとは逆にマイナスからプラス方向
調製済 溶液 A(制限酵素なし) 水 11μℓ 10timesH Buffer 2microℓ 植物 DNA 5μℓ
調製済 溶液 B(制限酵素 Eco RI入り) 水 11μℓ 10timesH Buffer 2microℓ 植物 DNA 5μℓ 制限酵素 2μℓ
1 DNA(タマネギ)+制限酵素 2 DNA(タマネギ)+制限酵素 3 DNA(タマネギ) 4 λ-DNA(大腸菌)+制限酵素 5 λ-DNA(大腸菌) 6 サイズマーカー
500bp
46
に動く(このことを電気泳動という)これはDNA のリン酸部分が負に帯電しているためでありまたDNAはその長さにより泳動距離が異なる(短い遺伝子ほど長く泳動する)電気泳動ではこの性質を利用してDNAを大きさごとに分離することができる
塩基対数によってDNAを分離
EtBr (蛍光試薬)DNAの二本鎖内に入り込む
発光
UVλ=302nm
励起
分離後のアガロースゲルをエチジウムブロマイド(EtBr)溶液に浸す
DNAを含んだ溶液
アガロースゲル
リン酸部分が負に帯電
塩基 (ATGC)-
+
カメラで撮影
電圧
DNA構成成分(dNTPs)
バンドが明る
DNA量が
バンド(DNAの存在)
図 53 電気泳動の原理
56 制限酵素とは DNA は4 種類のヌクレオチド(GATC)が不規則につながってできている制限酵素はDNAの特定のヌクレオチドが並んでいる部分を切断する制限酵素には様々な種類がありEco RI(エコアールワン)と呼ばれる酵素は「GAATTC」といった並びの部分だけを切断することができる
GAATTC
CTTAAG
制限酵素
Eco RI
AAGCTT
TTCGAA
制限酵素
Hin dIII
図 54 制限酵素による DNAの切断
レポートについて 1 実験方法および実験結果の整理方法については指針書を参考にすること 2 実験結果については電気泳動の結果について考察すること(制限酵素の影響などにつ
いてまとめてください)
47
6 染色実験
61 はじめに
現在私達の身の周りでは様々な染料が使われている例えばT シャツやジーンズな
どの衣服は橙黄赤青など様々な色に染められている他にも私達が気付かないと
ころで多くの染色された製品を使用しているそこで本実験では高校の化学で学んだ
アゾ染料を合成してみるアゾ染料はアニリンを原料として作られているアニリンはベ
ンゼン環にアミノ基(-NH2)がついたものであるアニリンは無色の液体で水に溶けにく
くアンモニアより弱い塩基性を示すまたさらし粉(CaClO(ClO)H2O)水溶液を加えると
赤紫色を呈するこの呈色反応はアニリン特有のものであるので検出反応に用いられる
このアニリンを出発物質としてアゾ染料を合成してみる
62 試薬および使用器具
【試薬】 ①05moll 水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液
②2-ナフトール ③フェノール ④6moll 塩酸
⑤亜硝酸ナトリウム ⑥アニリン ⑦氷
【器具類】 ①電子天秤 ②50mℓビーカー ③100mℓビーカー
④ガラス棒 ⑤布(ガーゼなど) ⑥ピンセット
⑦ポリ手袋 ⑧ドライヤー ⑨シャーレ
10駒込ピペット(10ml ガラス製)
11駒込ピペット(1ml プラスチック製)
63 実験方法
1) 50mℓビーカーの中に 05molℓ水酸化ナトリウム水溶液 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回
NaOH 水溶液を分取するほぼ 20 mℓ分取できれば可)と 2-ナフトールを約 01g 入れ
よくかき混ぜる調製した溶液の中に布をつけその布はガラス棒でしぼってから(布
をガラス棒ですくいあげればよい)シャーレに広げる温度の異なる条件下(常温およ
び低温)で染料の合成実験を行うため布は最低 2枚調製した溶液と接触させそれ
ぞれ別々のシャーレ(低温用および常温用)に広げる
2) 新しいビーカーに水を約 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回分取)と 6molℓ塩酸約 4mℓ(10m
ℓ駒込ピペットで目分量で可)さらにアニリン約 1mℓ(プラスチック製 1 mℓ駒込ピペッ
ト)を入れてよくかき混ぜる染料の合成を常温および低温下で行うためこの溶液を
2つ調整する
低温下で反応させる溶液は恒温槽で 10~15 分ほどよく冷やした後亜硝酸ナトリウ
ム 05g を加えてよくかき混ぜる
常温下で反応させる溶液には冷却作業を行わずに亜硝酸ナトリウム 05g を加えて
よくかき混ぜる
3) 2)でつくった水溶液をシャーレに広げた布に注ぎ生成される染料を布によく染み
込ませ5分程放置する
4) 色の付いた布を取り出してポリ手袋をした手できれいに水洗いをし乾燥させる
48
5) 色差計を用いて乾燥した布の Lab(L明度aおよび b色度)を測定する
2)で作った溶液は5以下では無色の溶液ですが5以上になると淡い黄色になりま
す
【解説】
アゾ染料はアゾ基(-N=N-)を持っていてこのアゾ基によって鮮やかな橙色を呈色し
ます今回合成したアゾ染料は図の 1-フェニルアゾ-2-ナフトールです意外かもしれ
ませんが指示薬として使われているフェノールフタレインもアゾ化合物ですフェノール
フタレインは pH の変化によって色が出てきす染料の中でも最初は無色のものもありますが
温度を変化させたり酸性やアルカリ性にすると色が出てきます
ベンゼン ニトロベンゼン
N2Cl
ニトロ化 濃硫酸(濃硝酸)
還元反応 濃塩酸
(Sn又は Fe)
アニリン塩酸塩
遊離反応 NaOH
アニリン塩酸塩に強塩基を反応させる
と弱塩基であるアニリンが遊離する
氷冷+亜硝酸ナトリウム アニリン
塩酸
ジアゾ化
塩化ベンゼンジアゾニウム
塩化ベンゼンジアゾニウム
は熱によって窒素とフェノー
ルに分解される
カップリング
C10H7ONa (ナトリウム 2-ナフトキシド)
O
N =
1-フェニルアゾ 2-ナフトール
NH3Cl NH2
49
7 ガスクロマトグラフ質量分析計による茶葉中のカフェインの分析 71 はじめに ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)は極めて低い濃度の化学物質の同定や未知物質の構造決定に極めて強力な分析機器の一つであるGCMSを用いるとサンプルの中に含まれているある成分の分子構造(カフェインの分子構造を図 71に示す)やその量が分かりますもちろん分析機器ですので測定できる物質対象となる系や測定条件にはある
程度の制約があります混合物質を分離するガスクロマトグラフ(Gas ChromatographGC)と分離された成分(物質)を分析(構造決定と濃度測定)する質量分析計(Mass SpectrometerMS)を組み合わせた装置であるこの装置は有機化学生化学環境化学などの多くの分野で非常に多用されている例えば極めて低い濃度でも生体へ強い影響が懸念されるダイ
オキシン類などの土壌や河川の水中での含有率の決定や食品や医薬品中の微量成分の決定
にも利用されている 一方日本人に長い間親しまれてきた緑茶が近年産業界や医学
界で注目されている茶葉にはカフェイン(分子構造図 71)カテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドなどの有用成分が多く含まれておりその効能が注目されている 本実験では茶葉中に含まれるカフェインに対してGCMSを用いて分析する茶葉中には種々の物質が含まれておりGCMS分析を容易にするため前処理として超臨界二酸化炭素抽出(4015MPa程度の高圧力の二酸化炭素を溶剤として利用)により茶葉からカフェインの抽出を行いそのサンプルを GCMSにて分析する
図 71 カフェインの分子構造 図 72 物質の分析 個々の物質や装置についてはインターネットにより下記のWebサイトのフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』などにより調べるとよいカフェイン(caffeine)はアルカロイドの一種プリン環を持つプリンアルカロイドの一種でコーヒー類に含まれることか
らこの名がある化学名は137-トリメチルキサンチン(C8H10N4O2) コーヒーコーラ緑茶紅茶ガラナココアなどに含まれる(量は緑茶が一番多い)結晶は一水和物(C8H10N4O2bullH2O)もしくは無水物(無水カフェインC8H10N4O2)として得られ
る白色の針状または六角柱状結晶で匂いはなく味は苦い融点は 238昇華性がある出典フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』httpwwwwikipediaorg 装置「GCMS」httpwwwanshimadzucojpproductsgcmsqp2010htm (島津) 「超臨界抽出装置」httpwwwkagakucomjasco39-49html (日本分光)
50
レポート課題 1茶葉中に含まれるカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドの中から3つの物質を選びその物質について調べた結果を A4 レポート用紙2枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
2GCMS についてA4 レポート用紙1枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
3与えられたサンプルは茶葉1gから抽出されたのである実験結果よりもとの茶葉
1g中に含まれるカフェインの量を推算し計算式とあわせて示すこと 72 原理および装置 実験で使用する島津製の GCMS装置の全体図を図 73に原理の概略を図 74に示す
1
23
4
5
67 8
9
10
キャリアーガス
試料物質
1ボンベ(He)2圧力計3マイクロシリンジ4サンプラー5試料導入部6分離カラム
7セパレーター8イオン化室9磁石10電子増倍管11記録計
11
図 74 ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)の概略図
サンプルフォルダー
51
GCMS 装置は分離部である図中の 1~6 のガスクロマトグラフ(GC)と7~11 の検出部である質量分析計(MS)から構成される 3のマイクロシリンジを用いて試料を GCMSに導入する導入された試料は5試料導入部でガス化され6分離カラムに導入される分離カラムには吸着剤が充填されおり混合物の試料を導入した場合各物質と吸着剤との
親和性の違いにより各物質の分離カラムから排出されるタイミングは異なる分離カラム
を排出された試料は8イオン化室でイオン化され10電子倍増管にて検出される アセトンに溶解したカフェインの GCMSによる分析結果の一例を以下に示す図 75にク
ロマトグラム図 76にカフェインのピークのマススペクトルを示す
図 75 GCMSにより得られたクロマトグラム
横軸がリテンションタイムで縦軸がピーク強度を表す
図 76 カフェインのマススペクトルとカフェイン(分子量MW=194)の構造
(図 75中のリテンションタイム 126min付近のピークに起因するマススペクトル) 茶葉中にはカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイド以外にも繊維であるセルロースなど多くの物質が含まれているため茶葉そのものを
そのままサンプルとしてGCMSで分析することは困難であるセルロースなどの分子量の大きな物質はカラムに詰まってしまい分析できないそこで今回は超臨界二酸化炭素
による抽出により主にカフェインを他の物質と分離抽出した通常よく利用されるアセ
トン抽出(アセトンに茶葉を浸し特定の成分を抽出する)ではカフェイン以外にも多く
の物質が抽出されるため図 75 のような単独のピークを得ることは難しく複数のピークがクロマトグラムに見られるこのサンプル(この場合茶葉からの抽出物)にはカフェ
イン以外の不純物は少なかったがガスクロマトグラフの分離カラムによりさらにそれ
らの混合物が精度よく分離されるクロマトグラムのピークはそれらサンプル中に含まれ
ていた個々の物質を表しているクロマトグラムのピークを選択することで分子構造解析
したい物質を選んだことになる選択したクロマトグラムのピークの表している物質(ここ
ではカフェイン)に対応するマススペクトルが図 76 に表示されているマススペクトル
52
で横軸がその成分(ここではカフェイン)分子を構成している原子の原子量で縦軸がそ
の量を表しているのでマススペクトルから分子構造を解析するためにコンピュータ内
に蓄えられた物質ごとのマススペクトルデータと今回測定したマススペクトル(分子内に含
まれている各原子の数)を比較することで測定したサンプル中のクロマトピークを選択し
た分子がどのような原子をどれだけ含んだ分子であったかがわかりそれからその物質
がどのような分子構造の物質である可能性が高いかをコンピュータが検索し結果を示す 73 実験サンプルの設置と GCMS装置の操作方法 実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS装置のサンプルフォルダ
ー(図 73)にセットするこのサンプルは茶葉 1gを 50ccの高圧セルにて超臨界二酸化炭素を利用して4015MPa2時間接触の条件で抽出した固体を10gのアセトンに溶かしたものである またコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に装置および装置制
御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 本実験で使用する GCMS の操作は全てコンピュータのモニター上で GCMS の解析プログラムソフトを使用することで行うコンピュータの操作方法を以下に示す なおコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS 装置のサンプルフォルダー(図 73)にセットするまた装置および装置制御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 1)パソコンのデスクトップ上のアイコン「GCMS 分析」をクリックすると以下のようにGCMS制御プログラムを起動するその後「OK」ボタンをクリックする
図 77 GCMD分析用ソフトウェア「GCMS分析」の起動
まず「GC-MS分析」をクリック
「OK」ボタンをクリック
53
2)制御プログラムが起動されパソコンと GCMSの接続が開始される
図 78 「GCMS分析」の接続確認画面 3)GCMSとパソコンの接続が完了すると以下のような画面が表示される
図 79 「GCMS分析」操作画面
4)マススペクトルによる分子構造の解析 サンプル(この場合茶葉からの抽出物)には多くの物質が混じり合っていたがガス
クロマトグラフの分離カラムによりそれらの混合物が精度よく分離されるクロマトグラ
ムのピークはそれらサンプル中に含まれていた個々の物質を表しているクロマトグラム
のピークを選択することで分子構造解析したい物質を選んだことになる選択したクロマ
トグラムのピークの表している物質(ここではカフェイン)に対応するマススペクトルを選
択するマススペクトルは横軸が原子量で縦軸がその量を表しているのでマススペク
トルから分子構造を解析するために「定性処理」を行う シミラリティ検索結果が表示され分析により得られたスペクトルと類似のスペクトルを有
する物質の一覧が表示される上部に表示される物質ほどスペクトルが一致していること
を示す
接続状況が表示される
「トップへ」
をクリック
54
図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果
図 711 表示スペクトルのシミラリティ検索結果 10)図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果の印刷 「レポート(R)」をクリックし「検索結果(R)」をクリックすると検索結果が印刷される
GC-MS 分析で得られたマスス
ペクトル
データベース中
のマススペクト
ル
55
参考資料 生理活性物質の精製 カフェインの利尿作用のように生物活動に影響を与える物質を生理活性物質といいます
天然物には生理活性物質を多く含むものがあります一般に天然物は多くの成分を含ん
でおり特定の生理活性物質を分離抽出するには種々の分離技術が必要ですまた生
理活性物質には60以上の温度でその生理活性を失う(失活)ものや溶剤として広く用いられているクロロホルムなどの有機溶剤中で失活するものが多いそこでこれら生理活性
物質の分離精製技術の開発が望まれており30~60程度のマイルドな温度条件で操作できる二酸化炭素を機能性溶媒として利用する超臨界抽出も有効な分離技術として注目されて
いる超臨界二酸化炭素は気体と液体の中間の性質を持ち物質の分離に役立っています 臨界点付近の高密度気体は超臨界ガスまたは超臨界流体と呼ばれ臨界圧力前後でそ
の溶解能力が著しく変化することから工業的にも種々の分野で利用されています一例と
して超臨界二酸化炭素(SC-CO2)によるコーヒー豆からのカフェインの抽出プロセス(a)
ならびに超臨界二酸化炭素に対するカフェインの溶解度(b)を図に示します図(c)に示す
ように固体のカフェインがガスである超臨界二酸化炭素に溶解します
このように超臨界二酸化炭素を用いた技術はコーヒー豆からのカフェインの抽出プロ
ポリスからの生理活性物質の抽出に利用されています
図 超臨界二酸化炭素抽出を用いたコーヒー豆からのカフェインの抽出
56
付表 最小二乗法について 直線で近似する場合 f (x) = a0 + a1x (A1-1) 式(A1-1)のように近似させるとする測定値 yiとの残差を eiとすると式(A1-2)のようになる ei = yi - f (xi) = yi - ( a0 + a1xi ) (A1-2) ここで式(A1-2)の両辺を二乗してその i に関する総和をとりその値を S とすると次式となる
sumsum==
+minus==n
iii
n
ii xaayeS
1
210
1
2 )( (A1-3)
S を最小化するような a0a1を求める式(A1-3)を a0a1について偏微分すると次式とな
る
sum=
+minuspartpart
=partpart n
iii xaay
aaS
1
210
00)( sum
=
+minusminus=n
iii xaay
110 )(2 (A1-4)
同様にa1について編微分すると次式のようになる
sum=
+minusminus=partpart n
iiii xxaay
aS
110
1])([2 (A1-5)
Sが最小となる時は次式が同時に満たされる時である
00=
partpartaS
01=
partpartaS
(A1-6)
よって誤差が最小となる a0a1を求めるためには式(A1-6)を連立して解けばよい
sumsumsum===
+=n
ii
n
i
n
ii xaay
111
10 1 (A1-7)
sumsumsum===
+=n
ii
n
ii
n
iii xaxaxy
1
2
11
10 (A1-8)
式(A1-7)と式(A1-8)を a0a1を変数とみなし連立して解くと次式を得る
n組のデータ(xiyi)(i=12hellipn)に対して回帰直線 y= a0 + a1x を最小二乗法で求めて出力しデータ番号 iデータ yi直線で推定した値 )( ii bxay += および残差
iii yy minus=ε を出力するようなプログラムをつくりたい基礎式を導出せよ (ヒント残差の二乗の和が最小になるように係数 a0a1)を定めるのが最小二乗法
である)
57
sumsum
sumsumsumsum
==
====
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
n
ii
n
ii
xxn
xxyyxa
1
2
1
2
1111
2
0
)(
))(())(( (A1-9)
sumsum
sumsumsum
==
===
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
xxn
yxxyna
1
2
1
2
1111
)(
))(()( (A1-10)
よって式(A1-9)(A1-10)を用いれば最も誤差を小さくするような直線 y = a0 + a1x が求められる
y=a1x+a0 にて近似
誤差 ei
x
y
誤差が最小になる関数(直線 y=a1x+a0の場合)
図1 最小二乗による近似
誤差の和Sが最小
S
a0
a1
直線 y=a1x+a0 の近似
誤差の全体の和はS=Σei=Σyi-(a1xi+a0)
Sは変曲点にて最小値を示すすなわち(partSparta0)=0 (partSparta1)=0
図2 a0a1とSの関係
17
次にセル A5~A9に活性炭と接触する前の酢酸水溶液の初濃度 C0[moldm3]セル
B5~B9に活性炭と接触後分離した酢酸水溶液の濃度 C[moldm3]セル E5~E9に活性炭の質量 W[g]をキーボードから入力します作成した一例を次に示します
図 8 Excelによる吸着量nの計算 ここで1gの活性炭に吸着された酢酸の物質量n [mol]を式 (4)より計算できるのでセル C 5~C9に次の関数式を記述します式の内容としては
)( 0CCWVn minusminus=
となるように記述するので実際の Excelの関数としては次のように行います セル C 5をクリックし関数ボックス(fxの右)に「=(A5 ndash B5)01E5」と記述(半角または直接入力形式で)し「Enter」キーを押し確定しますこの関数はフィルハンドルを利用してセル C 6~C9にコピーしますただし実験で溶液は 100cm3使用しましたが
溶液の濃度 C が[moldm3]の単位ですので100cm3=01dm3 となり関数式の中では
V=01 dm3としています なおグラフの記述方法やフィルハンドルの使用方法については化学工学プログラミ
ングなどの補助資料を参考にして下さいまた実験の際に配布した Excel ファイル(ファイル名ad_graxls)を使用すると実験データの理論的な解析も容易にできますので試してみましょうExcelファイル(ファイル名)「ad_graxls」の使用方法は次節で説明します 36 実験結果の考察方法 (吸着実験について) 実験結果の考察方法は種々の方法がありますがここでは一例として理論と比較する
方法を示します実験結果として下図(左)のようなグラフができましたこのような実
験結果に対して理論的な考察を行ってみましょうここでは次節で説明するラングミュ
ア(Langmuir)の単分子吸着モデルで計算した理論線と実験と比較したものを下図右に示しますこの図を作る方法は次節で説明しますレポートの考察の部分はラングミュア
(Langmuir)の単分子吸着モデルの式の導出から書いて下さい 理論を作る場合幾つかの仮定をしますがその理論が多くの実験結果をうまく説明でき
ている場合その仮定がある程度妥当なものであったことがわかります指針書に書いてあ
った以外の理論についても興味があれいばためしてみましょう
セル C5をクリックし関数ボックス( fx の右)に「=(A5 ndash B5)01E5」と記述(半角または直接入力
形式で)します
18
ラングミュア(Langmuir)の単分子吸着モデルを用いて理論値を計算するには配布され
た Excelファイル(ファイル名)「ad_graxls」を使用すると便利ですその使用方法を以下に示します配布プログラムは化学工学プログラミングの講義の場合と同様に総合情報処
理センターの共通領域にあります各自コピーして使用して下さいコピーするには化
学工学プログラミングの講義の場合と同様にコピーしようとするファイルを共通領域から
自分の使用しているコンピュータのデスクトップにドラッグドロップします共通領域で
ファイルを開くとファイルの消去などで他の人が使えなくなりますので共通領域でファイ
ルをダブルクリックしないようにして下さい誤って共通領域でファイルをダブルクリック
した場合はそのファイルを閉じるボタンをクリックし閉じて下さい 各自のコンピュータに保存した Excelのファイル(ファイル名ad_graxls)をダブルクリ
ックして開きます自宅へ持ち帰る場合各自のフラッシュメモリーやフロッピーディスク
を使用しまたはメールを使用して添付ファイルで送信できます各自のフラッシュメモ
リーやフロッピーディスクに保存してあるファイルを再編集する場合はフラッシュメモリ
ーやフロッピーディスクをコンピュータの USB 端子またはフロッピーディスクドライブに挿入します次にデスクトップ上にあるマイコンピュータのアイコンをダブルクリックし
ます もしデスクトップ上に上のアイコンが無ければ画
面左下の「スタート」ボタンからマイコンピュータをク
リックしてくださいすると次のような画面が立ち上が
ります
ラングミュア(Langmuir)の単分子吸着モデルで計算した
理論線
19
その中からフラッシュメモリーの場合は「リムーバブルディスク」をフロッピーディ
スクの場合は「35インチ FD」のアイコンをダブルクリックしてくださいファイルが保存されていれば次の画面が出てきます
この画面の中の「ad_graxls」ファイルをデスクト
ップにコピーしますまず「ad_graxls」ファイルを左クリックしますこの時クリックした指はは
ずさないようにしますその状態のままデスクトッ
プまでファイルを移動させますそしてデスクト
ップ上の任意の場所でクリックした指をはずします
これでデスクトップ上に「ad_graxls」のファイルがコピーされましたのでデスクトップにコピーさ
れたファイルをダブルクリックして開きますコピ
ー操作が上手くいかなかった場合もう一度移動の操作を行ってください
必ずデスクトップにコピーしてから開く操作を行って下さいフロッピーディスクから直接
開いて操作を行った場合正しく保存されない可能性があります 「ad_graxls」のファイルを開くと次のような画面が立ち上がりますもし画面が違う場合は画面の下部にある「吸着データ」のタグ をクリックしてくださいこの画面
でデータの処理や計算を行いますでは実際の操作に入る前に予めこのファイルに名前
を付けて保存しておきますまずExcelの画面のツールバー「ファイル」から「名前を付けて保存」をクリックします下のような画面が起動します
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ファイルの保存先を変えたい場合画面上部のボタンをクリックし保存先にデスクトッ
プを選択します次にファイル名の部分に各自ファイル名を入力しますファイル名は何
でも良いですが分かり易い名前にしておくとファイルの管理がやり易くなります日付や
数字を入れると同名のファイルをいくつも管理する場合に便利ですここでは「吸着実験デ
ータ整理 4月 01」とし「保存」ボタンをクリックします
ファイル名変更後Excelの画面上部のタイトルバーのタイトルが先ほどの名前(上の図とは異なります)になっていることを確認してください
この操作を行うことによって元のデータである「ad_graxls」を変更してしまう心配がなくなります元のデータである「ad_graxls」はファイルが破損しまたは間違った操作の結果を誤って保存してしまった場合などの補助ファイルとなりますので大切に保管しておいて
下さい今後配布するデータは先ほど説明した手順で名前を変えて保存し元のデータに
直接変更を加えないようにして下さい ここから実際の作業に入ります初期状態では模擬のデータが入力されています入力
データは予め計算しておいた酢酸濃度Cb[moll](濃度を Cと表示している場合もあります)と活性炭吸着量 n[molg]になります下の画面の丸で囲んだ部分がそれぞれの値でBCカラム(列)の 4~9行には数値が入力されています関数ではありませんこのデータを利用して実際のデータ解析を行ってみましょう下記のように行うと幾つかのグラフが
現れ実験データに対してラングミアーの単分子吸着を仮定したモデルを用いて精度よ
く計算線が描けることがわかります 今回はCbnの値を入力する必要はありませんExcelが自動的に計算を行って結果を表示するようになっていますつ
まりセル D5に「=B5C5」と関数を入力しこの関数に対してフィルハンド
ルを利用してセル D6~D9へコピーし
ファイルの保存先を変えたい場合画面
上部のボタンをクリックし保存先に
デスクトップを選択します
変更するファイル名はここをクリッ
クして書き換えます
名前を変更したらここをク
リックして保存します
21
まています 次に酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着量 n[molg]の関係および酢酸濃度 Cb[molL]と Cbn[gL]の関係をグラフ化します今回は自動的にグラフが作成されるようになっていますので複
雑な操作は必要ありません ここではデータに対してそれを精度よく表現する近似式をグラフ上に描きその関数
を数値として求める方法を Excelで練習してみましょう
グラフを表示させるには画面の下にある「Graph1」もしくは「Graph2」のタグ
をクリックします「Graph1」には酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着量n[molg]の関係のグラフが「Graph2」には酢酸濃度 Cb[molL]と Cbn[gL]の関係のグラフが表示されます「Graph2」はLangmuir の等温吸着式による相関を表したもので横軸に酢酸濃度 Cb[molL]をとり縦軸に酢酸濃度 Cb[molL]を活性炭吸着量 n[molg]で除した値 Cbn[gL]を示していますLangmuir の等温吸着式についてはこの後の章で説明してありますので各自読んで理解して下さいLangmuirの等温吸着式では式中の定数 ninfin(飽和吸着量)と K(吸着平衡定数)を実験データから最小二乗近似で決定する場合が多くありますここでは
その例を取り上げてデータに対してそれを精度よく表現する近似式をグラフ上に描き
その関数を数値として求める方法(最小二乗法最小二乗については付録に示しており
また化学工学プログラミングの講義においても説明します)を Excelで練習します 配布された Excel ファイル「ad_graxls」では実験点が表示されているだけでそれを精度よく表現する近似式の直線のグラフは「Graph2」に表示されていません今から次の手順で「Graph2」の図(グラフ)に近似式の直線のグラフを表示しますExcel の場合近似曲線(ここでは直線)を求める場合コンピュータが自動的に最小二乗法を使って近似曲線
を計算しています
「Graph1」の画面 「Graph2」の画面
Excelの sheetが表示されたらまずファイル名を変えデスク
トップに保存して下さい次
にGraph2のタックを左クリックして最小二乗法のグラフを
確認して下さい
22
38 Langmuirの等温吸着式による相関 はじめにLangmuir式の定数 ninfinと Kを決定するために「Graph2」酢酸濃度 Cb[molL]と
Cbn[gL]の関係のグラフから最小二乗法により直線の式を求めますExcelを用いてデータに対して近似直線のグラフを描き最小二乗法の直線の式を求めます
次のような「近似曲線の追加」のウィンドウが現れたら今回は線形近似(直線で近似
y=ax+b の式)を選びますので線形近似が黒色に反転していることを確認して「近似曲線の追加」のウィンドウの右下の「OK」ボタンをクリックして下さい
実験点の何れかにポインタをあわせて
右クリックする
近似曲線の追加(R)を選択して左クリックする
「線形近似」であること
を確認して「OK」ボタンをクリックします
23
「近似曲線の書式設定」
のウィンドウでオプシ
ョンから「グラブの書式
を表示する」の前を選ん
でチェック(前のチェッ
クボックスをクリック)
した後「OK」を押す
現れた直線にポインタをあわせて
左クリックすると「近似曲線の書式
設定」のウインドウが表示されます
ここをクリックします
この「オプション」のタ
グをクリックします
「y=」の関数
が現れるのでここ
をクリックする
式の文字フォントが初期値
「8」と小さいのでここ
のボタンをクリックし
フォントサイズを選ぶリス
トボックスを表示し「22」程度の大きなサイズを選択
しクリックする
24
「Graph2」酢酸濃度 Cb[molL]と Cbn[gL]の関係のグラフから最小二乗法により直線の式がこのように求められましたExcel を用いてデータに対して近似直線のグラフを描き最小二乗法の直線の式を求めるこの方法は他の実験データの解析などにも利用できますので
各自活用して下さい 表示された関数式「y=43865+2654」はノートにメモして下さいこの傾き 43865と
切片 2654からLangmuir式の定数 ninfinと Kを決定します決定方法の詳細はこの後の 36 の Langmuir式のパラメータ決定法に示しています ラングミュアの等温吸着式を変形すると次式となる
CCnKnCKn
CCKn
Cβ+α+
==
+= infininfininfin
11)1(
ただしα=1ninfinβ=1(ninfinK)とするこの式より Cnを縦軸Cを横軸とした関係のグラフは傾きα=1ninfin切片β=1(ninfinK)の直線関係を与えることを示しています そこでExcelのシートを利用してこの値からLangmuir式の定数 ninfinと Kを次のように決定しますセル C18D18に Graph2で求めた数値 2654と 43865を代入しますその後D19と C19に関数を ldquo=1D18rdquoとrdquo=D18C18ldquoを代入しますセル内の式は半角で入力してください
現れた関数の文字フォン
トを大きく(例えば 22)してその数字をメモし
吸着データシートの C18と D18に記入する
C18D18 に Graph2 で求めた値 2654 と 43865 を代入した後D19 と C19 に関数を ldquo=1D18rdquoとrdquo=D18C18ldquoを代入する
25
この Excel表示では最小二乗法を用いて決定した傾きαと切片βを用いて α=1ninfin=43865 β=1(ninfinK)=2654 得られた傾きおよび切片よりninfinおよび Kは次のように求まる
ninfin=1α=1D18=000228 molg-1 K =(1ninfin)β=αβ=D18C18=165
つまりセル D19にはninfinの値がセル C19にはKの値が表示されますこれらの値はラングミュア(Langmuir)の単分子吸着モデルで計算した理論線と実験と比較する場合に利用します実験結果に対して理論的な考察を行う例としてラングミュア(Langmuir)の単分子吸着モデルで理論線を計算し実験と比較するにはこの Excelファイルを利用して次のように計算しグラフに表示します セル F5~F30 には溶液中に残る酢酸濃度 Cb[molL]に対する活性炭に吸着された吸着量n[molg]の関係のグラフ「Graph1」の横軸の酢酸濃度 Cb[molL]の適当な値が既に入力してありますこれらのそれぞの酢酸濃度 Cb[molL]に対する吸着された酢酸の吸着量 n[molg]の理論値をラングミュア(Langmuir)式で計算しますラングミュア式は次式で与えられます
KCKCnn
+=
infin
1 (310)
ここでこの実験データを最も精度よく計算できるように決定した ninfinおよび K は上述のようにninfin=1α=1D18=000228 molg-1 K =(1ninfin)β=αβ=D18C18=165 でありこれらの値はセル D19にninfinの値がセル C19にKの値が表示されていますこの値を利用して「Graph1」に計算線を描くにはまずセル G5~G30 にセル F5~F30 のそれぞれの酢酸濃度 Cb[molL]に対する吸着された酢酸の吸着量 n[molg]の理論値をラングミュア式で計算しますそのためにはセル G5 にラングミュア式を次のように記述しますただしセル D19の ninfinの値セル C19の Kの値は常に同じセルから参照するので絶対参照($マークを付けて$D$19 $C$19と記述します)で記述します
Langmuir式をセル G5に記述するただし濃度はF5の値を相対参照しD19と C19は絶対参照($マークが必要)することを忘れないように
セルG5に記述すべき数式
=$D$19$C$19F5(1+$C$19F5)
26
G5記述後フィルハンドルを使用してG5の関数を G6~G30までコピーします Sheet1から Graph1 のタグをクリックしGraph1 に計算線が表示されたことを確認しましょうこれでラングミュア式によるデータの解析は終了です実験値と理論値を比較して現象
について考察してみて下さいラングミュア式を理論的に導く場合にある仮定をしている
のですがその仮定をしているラングミュア式が実験データを精度よく計算できていれば
その仮定が妥当なもとであったと考察できます 与えられたモデルデータでラングミュア式によるデータ解析ができれば他の理論(例え
ばフロインドリッヒFreundlich式や BET式レポートはどちらか一方でも可です) についてもExcel で計算してみましょうレポートには自分のデータについてここで行った内容と同様に計算しその結果を考察に記述して下さい 自分のデータについて同様の計算をするにはまずいままで計算を行った Excel ファ
イルを保存しますデータを自分の実験データに置き換える前に Excel ファイルをさらに別の名前で保存します与えられた Excel ファイルは初期状態では模擬のデータが入力されているので今回自分達の実験したデータを入力していきます入力するデータは予め計算
しておいた酢酸濃度 Cb[moll]と活性炭吸着量 n[molg]になります下の画面の丸で囲んだ部分にそれぞれ自分の実験データを入力していきます
今回はCbnの値を入力する必要はありませんExcelが自動的に計算を行って結果を表示するようになっています 次に酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着
量 n[molg]の関係および酢酸濃度Cb[molL]と Cbn[gL]の関係をグラフ化します今回は自動的にグラフが作成
されるようになっていますので操作は必
要ありません 39 Freundlichの等温吸着式による相関 今回の実験で得られた酢酸濃度 Cbと活性炭吸着量 nのデータを利用してFreundlichの等温吸着式の定数 abの値を求めFreundlichの等温吸着式の理論線をグラフに追加します ここでFreundlich式は次式で表されます
bbaCn1
=
このままでは定数 abの値を決定することが難しいので上式の両辺の対数をとり線形化しますすると次式となります
bCb
an ln1lnln +=
ここでln Cbと ln nの関係をグラフにプロットすれば傾き 1b切片 ln aの直線関係が得られますしたがって実験データである酢酸濃度 Cbと活性炭吸着量 nの値の対数をそれぞれ計算します配布した「ad_graxls」ファイルを開き「吸着データ」シートの任意の部分に以下のような表を作成します
27
次にln Cb[-]の列の最初のセルに以下の数式を入力します
=ln(B5) 上式中の「B5」は Cb の値の最初のセルの位置を指します各個人の位置によって変更してください
次にln n[-]の列の最初のセルに以下の数式を入力します
=ln(C5) 上式中の「C5」は nの値の最初のセルの位置を指します各個人の位置によって変更してください
ここでln Cb[-]ln n[-]の値に対しそれぞれオートフィルを行い計算させますすると以下のようなデータが完成します
計算した ln Cb[-]ln n[-]の値をグラフにプロットし最小二乗法による直線式を求めます
28
ここで以下のような直線の式が得られたとします
9135ln31690ln913531690 minus=there4minus= bCnxy
上式より切片は-5913傾きは 03169となるので以下の要領で定数 a1bを計算します ==there4minus= minus 91359135ln eaa 000270
316901=
b
a の値を Excel で計算させる場合は任意のセルに以下のような数式を入力することで求めることができます
=exp(-5913) これでFerundlich等温吸着式の定数 a1bの値が決定しましたこの値は後で使うのでノートなどにメモしておいてください 次に決定した Ferundlich 等温吸着式の定数 a1b の値を用いてFerundlich 等温吸着式のグラフを作成します先ほども示したように Ferundlich等温吸着式は次式で表されます
bbaCn1
=
従って定数 aと 1bの値はすでに決定しているので任意の Cbの値に対する nの値を数点求めればFerundlich等温吸着式で求めた理論線が得られます以下の操作で理論線を引くことができます Langmuir 等温吸着式による相関のときと同様にExcel の「吸着データ」のシート上の任意の場所に以下のような表を作成します
次に Ferundlich等温吸着式に従いnの値を計算します
bbaCn1
=
式中の定数 a1bは先ほど計算した値を用いますしたがって式は次のようになります
31690002700 bCn times=
この式を Excelのセル内に記入すれば計算ができます次の
29
ように記入します
=00027G5^03169 ここで式中の「G5」は Cbの値が 0のセルを指しています各個人の位置によって変えてください 次に式を記入したセルを Cbの値が 05のところまでオートフィルを行いますそうするとすべての Cbに対して nの値が計算されます
これで Freundlich等温吸着式のデータが完成しましたので次に「Graph1」酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着量 n[molg]の関係のグラフにこのデータを追加し理論線を引きます理論線の引き方は Langmuirによる相関のときと同様の操作を行ってください グラフの書式等を変更し整理すると以下のようなグラフが出来上がります
310 吸着等温線とは 固体の吸着剤を溶液と接触させる時一定量の吸着剤によって吸着される溶質の量は温度一定ならば溶質の濃度の関数になる一定温度での吸着量を温度に対してプロットした時に
得られる曲線を吸着等温線というこの吸着等温線を比較的よく表す経験式として次の
Freundlich式がある
n=aC1b (1) ここで n は吸着剤の質量あたりの吸着量C は吸着平衡濃度a と b は実験から決定されるパラメータであるがその物理的意味は多少希薄である これに対し理論的な意味を持つものに次のラングニュア(Langmuir)の吸着等温式がある
30
KCKCnn
+=
infin
1 (2)
ただしninfinは飽和吸着量Kは吸着平衡定数であるこの式は
1)吸着分子が固体表面で単分子以上の厚い層を作ることはない 2)吸着分子同士の間の相互作用はない
という二つの仮定にもとに導かれたものである 結果の整理および報告 Freundlich吸着等温式Langmuir吸着等温式の各々のパラメータの最適値を求めよまた活性炭の吸着特性および表面積について考察し化学工学における吸着操作の重要性につい
ても検討せよ 311 吸着等温式 (a) ヘンリー(Henry)型吸着等温式 液相の濃度あるいは気相の圧力が小さい場合吸着分子間の距離が十分に長いため吸着
分子同士の相互作用が無視でき固体表面と吸着分子のみの相互作用で吸着量を決定できる
とき次式のように表される
n=KC (3)
ここでKは比例定数である図 3-1の(a)に示すように濃度 Cと吸着量 nは比例関係があり一般に吸着量が小さい範囲で成立する気体の場合は溶液濃度 Cの代わりに気相圧力 pを用いればよい
濃度(分圧)
濃度(分圧)
濃度(分圧)
濃度(分圧)
吸着量
吸着量
吸着量
吸着量
(a)ヘンリー型 (b)ラングミュア型
(d)BET型(c)フロインドリッヒ型
0
0
0
0
図 3-1 吸着等温式
31
(b)ラングミュア(Langmuir)型吸着等温式 ラングミュアは図 3-2 に示すように固体表面に同等な吸着力を示す吸着サイトがあり
表面に 1分子層だけ吸着する(単分子層吸着)と仮定して平衡状態における吸着量と溶質濃度(気相分圧)のと関係を導いた全吸着点のうち吸着分子に覆われている吸着点の割合
をθ[-]とすると分子の脱着速度 rrsquo[mols-1]はθに比例する比例定数を a[mols-1]とすると次式のように表される
吸着剤
吸着分子
吸着サイト
図 3-2 固体表面上の吸着サイト(Langmuir式の導出) r=aθ (6) また気相からの吸着速度 r[mols-1]は空いている吸着点の割合(1-θ)[-]と溶液濃度 C[molm-3]に比例する rrsquo= b(1-θ)C (7) このときの比例定数を b[m3s-1]とするまた平衡状態では両速度は見かけ上等しいため以下の式が成り立つ aθ=b(1-θ)C (8) これを変形する
CbaCbsdot+
sdot=θ (9)
ここで飽和吸着量を ninfin[molkg-1] ba を K[m3mol-1](Kは吸着平衡定数)とおくと infin=nnθ
となるので次式が得られる
32
KCKCnn
+=
infin
1 (10)
これをラングミュア式と呼ぶ
(c)フロインドリッヒ(Freundlich)型吸着等温式 フロインドリッヒの吸着等温線は図 3-1(c)のように示される
n=aC1b (11) nは吸着量[molkg-1]で aと bはともに吸着定数[-]である (d)BET(Brunauer-Emmett-Teller) 型吸着等温式
BET型の吸着等温線は図 3-1(d)に示されるラングミュア式は表面に 1分子層だけ吸着すると仮定したものであるがBET式は無限分子層まで吸着できる式である図 3-3に示すように吸着した分子がそれぞれ次の層の吸着サイトとなり分子は積み重なって多分子
層に無限層まで吸着できるものとし各層への吸着にラングミュア式を適用すれば次式の
ように表せる
( ) ( )CKCCCKqq
minus+sdotminussdotsdot
=infin
11 (12)
この式は多孔質固体の細孔表面積を窒素ガスの吸着によって測定する際に利用される重要な式
である
表面の吸着サイト
分子上の吸着サイト
図 3-3 多分層吸着モデル
Langmuir式のパラメータ決定法 水溶液からの酢酸の活性炭に対する吸着平衡データ(吸着平衡温度 12)は表 3-1のよ
うに与えられる実験データよりラングミュア式のパラメータ(K吸着平衡定数ninfin飽和吸着量)を最小二乗法で決定せよさらにラングミュア式より決定した ninfinKの値を用いて吸着等温線を計算し計算線として図に示し実験点と比較せよ
33
表 3-1 n C Cnの関係
ラングミュア式は式(310)で与えられるこの式を変形すると次式となる
CKnCK
n infinsdot+
=11
(313)
両辺に Cをかけると以下の式が導出される
CCnKnCKn
CCKn
Cβ+α+
==
+= infininfininfin
11)1( (314)
ただしα=1ninfinβ=1(ninfinK)とする式(314)より Cn と C の関係のグラフプロットは傾きα=1ninfin切片β=1(ninfinK)の直線関係を与えることを示している表 3-1の値を用いて計算した Cnと Cの関係を表 3-1および図 3-4に示す 最小二乗法を用いて傾きαと切片βを決定した α=1ninfin=43865 β=1(ninfinK)=2654 得られた傾きおよび切片よりninfinおよび Kは次のように求まる
ninfin=1α=1D18=000228 molg-1 K =(1ninfin)β=αβ=D18C18=165
0
50
100
150
200
0 200 400 600
C [ molm-3 ]
Cn [ kgm-3 ]
傾き = 1 ninfin
1 ninfinK
切片0
05
1
15
2
25
3
0 100 200 300 400 500
液相の溶質濃度 C [ molm-3 ]
吸着量 n [ molkg-1]
液相と溶質濃度 C [ molm-3 ]
吸着量
n[ m
olk
g-1]
実験点
Langmuir式パラメータninfin 00033 [ molg-1 ]K 00086 [ m3 mol -1 ]
図 3-4 ラングミュア定数の決定 図 3-5 12における酢酸濃度 Cと
吸着量 nの関係
C [molm-3] n [molkg-1] Cn [kgm-3] 460 225 109 529 214
268 199 149 105 060
172 128 732 504 357
34
Freundlich式のパラメータ決定法 酢酸水溶液中における酢酸の活性炭に対する吸着実験を行ったところ以下のような実験デー
タを得たただしCbはバルク相における酢酸濃度n は活性炭に対する酢酸の吸着量を示す
Cb[molL] n[molg] log10Cb log10n 04621 000205 02410 000175 01139 000139 00519 000105 00243 000081
実験データを利用して次式で与えられる Freundlichの等温吸着式の定数 abの値を求めたい
bbaCn1
= (1)
このままでは定数 abの値を決定することが難しいので上式の両辺の対数をとる
bbb
bb
Cb
aCa
aCn
ln1lnlnln
)ln(ln1
1
+=+=
=
(2)
ここで横軸に ln Cb縦軸に ln nの関係をグラフにプロットするすなわち x=ln Cby=ln nと考える
bCb
an ln1lnln += (3)
ここで直線式 y=a0+a1xと比較するすなわち
)(1)(ln
1
00
傾き
切片
ba
eaaa a
=
=rarr= (4)
a0および a1は最小二乗法により数値で求められる与えられたデータでは a1= a0= なので a= b= となる この値を n=acb
1bに代入してcb=0~05の範囲で nの値を計算する
35
BET式のパラメータ決定法 BET式は次式で与えられる
)1)(1( KCCCKCnn
+minusminus=
infin
(17)
以下のように BET式の変形を行う
)1()1(
KCCKCnCn+minus
=minusinfin
(18)
(18)式の逆数をとると
KCnCK
KCnKCC
Cn infininfin
minus+=
+minus=
minus)1(1)1(
)1(1
(19)
(19)式の両辺に Cをかえると
KCnCKC
CnC
infin
minus+=
minus))1(1(
)1( (20)
(20)式を変形すると次式が得られる
CKn
KKnCn
Cinfininfin
minus+=
minus11
)1( (21)
C と)-(1 Cn
Cのプロットは傾き
KnKinfin
minus1切片
Kninfin
1の直線関係を与えることを示している
これをグラフにプロットし最小二乗法に傾きおよび切片を求める
36
312 活性炭の比表面積の決定 酢酸分子の構造を以下に示す
Hc-Cb-Ca
Hd
Hb Oa
Ob-Ha
1219deg
Ca Oa
Ob
図 36 酢酸の構造
酢酸の 1分子の吸着面積srsquo [m2]を図 3-6に示すこのとき文献より
Caと Oaの結合距離 1321Å Caと Obの結合距離 1206Å OaCaObの角度 1219deg Cの原子半径 077Å Oの原子半径 062Å
したがって吸着面積 Slsquoは次のようになる
( ) ( ) 2088 10376109931036321 minusminusminus times=timestimestimestimes=s m2
ここで活性炭の比表面積 S[m2g]は次式で示される 10026 23 snS timestimestimes= infin
S活性炭の比表面積 [m2g] ninfin飽和吸着量 [molg] srsquo酢酸 1分子の吸着面積 [m2] 602times1023アボガドロ数 [個mol] したがって活性炭の比表面積 S[m2g]は
003350=infinn molg 2010376 minustimes=s m2 より
51281037610026003350 2023 =timestimestimestimes= minusS m2g
37
4 粘度密度測定 41 はじめに 大量生産を目的とした工業的化学プロセスはほとんど流れ系(流通系)であるそれらの系において操作対象となる各物質の粘度は装置を設計操作する場合きわめて重要
な物性値である 本実験では低分子溶液および高分子溶液の粘度測定を通じて液体の粘度について考察するさらに演習問題を通じて気体液体高分子溶液などの化学プロセスで対象となる物
質の輸送物性(粘度拡散係数)の重要性を認識されたい 42 低分子溶液の粘度 [目的] 種々の濃度のエタノール水溶液の粘度を測定しその溶液の粘度について考察する [概要] 25におけるエチルアルコール濃度 02040506080100 wt の水溶液について流下時間を測定しこの結果より相対粘度絶対粘度運動粘度を求めグラフにするま
た水の密度水-エチルアルコール溶液の密度についてはピクノメーターを用いて決
定する報告書には相対粘度絶対粘度運動粘度 vsエチルアルコール濃度の関係をそれぞれグラフにして提出する
[計算方法] 相対粘度絶対粘度運動粘度の定義は次のようになる
相対粘度 ww
w tdtd
ηη = (41)
η 混合溶液の粘度 [gcms] ηw水の粘度(8007times10-3 gcms) [gcms](25における粘度) d エチルアルコール水溶液の密度 [gcm3] dw水の密度(099704gcm3) [gcm3](25における密度) t エチルアルコール水溶液の流下時間 [s] tw水の流下時間 [s] 下付添字 W 水
絶対粘度 www td
tdη
η= (42)
運動粘度 ν=ηd [cm2s] (43)
38
[実験方法] 1) 粘度計を洗浄し粘度計内 に二連球で空気を送り込み
乾燥させる乾燥しにくい 場合はアセトンを滴下し た後再度二連球で空気 を送り込み乾燥させる 2)ピペットで一定体積(10mℓ) の純水を取り広い口 f から 粘度計に水を入れる 3)粘度計を恒温槽(25)に つけ約 10 分静置する 4)安全ピペッターを口 a に 取り付け液面が b 上部に 到達するまで吸い上げる 5)安全ピペッターを外すと 液面が降下しだす液面が bd 間を通過する時間をスト ップウォッチで測定する
6)純水での測定を 3 回繰り返す 7)純水を粘度計から取り除くその後粘度計内に二連球を用いて空気を送り込み乾燥させる 8)粘度計乾燥後複数の濃度に調整済みのエチルアルコール水溶液(10mℓ)を粘度計にいれ4)~6)の作業を繰り返し行う(3 回)なお濃度の異なるエチルアルコール水溶液を粘度計内に導入する場合には7)と同様に二連球を用いて粘度計内に空気を送り込み乾燥させる
表 4-1 エチルアルコール水溶液の濃度密度相対粘度の関係 エチルアルコール濃度
[wt] 密度 d[gcm3] 相対粘度
η ηw[-] 0
20 40 50 60 80
100
安全ピペッター接続
図 4-1 粘度計
液面の bd間の通過時
間を測定
f
39
43 密度測定 [目的] 本実験では水とエタノールの種々の組成の混合液体について密度を測定し分子間相互
作用について考察する [実験方法] 1)ピクノメーターの容積測定
図 4-2のピクノメーターの空の重量 wg を秤量する
ピクノメーターの蓋を取り外し
ピクノメーターを水で満たす
設定温度を 25として恒温槽 の電源を入れ恒温槽内の温 度が一定になるまで待つな お水温は恒温槽中の水銀温 度計から読む
恒温槽中に水を満たしたピク
ノメーターを入れる
約 10分間静置する
ピクノメーターに蓋をするこのときピクノメーターの容量
よりも余分の水は蓋の上部より排出される
ピクノメーターの外側を乾いた布で拭い秤量する(その重量を
wwg とする)
恒温槽の温度(25)における水の密度 dwgcm3(=099704gcm3)
より次式を用いてピクノメーターの容積を求める
w
w
dww
Vminus
= (44)
図 4-2 ピクノメーター
蓋
40
表 4-2 エチルアルコール水溶液の濃度と密度の測定結果(25) エチルアルコ
ール濃度[wt]
wrsquo[g] ww[g] V[cm3] w[g]
d[gcm3]
0 20 40 50 60 80
100
099704
エチルアルコール濃度[wt] 空のピクノメーターの重量 wrsquo[g] 水を入れたときのピクノメーターの重量 ww[g] ピクノメーターの体積 V[cm3] エタノール水溶液の入れたときのピクノメータの重さ w[g] エタノール水溶液の密度 d[gcm3]
容積 Vを求めたピクノメーターに混合溶液(調整済み)を入れてその重量 wgを秤量し次式で混合溶液の密度を求める
Vwwd minus
= (45)
エタノール濃度と密度 d の関係をグラフにプロットする
41
44 高分子溶液の粘度 [目的] 高分子溶液の粘度測定から分子量の粘度に与える影響について考察する [概要 ] オストワルド粘度計を用い種々の濃度のポリビニルアルコール(PVA ((-CH2CHOH-)n))水溶液の粘度を測定し粘度データよりポリビニルアルコールの分
子量を求める まず 05g100cc の濃度のポリビニルアルコール水溶液を調製する次にこれを原液
とし23 12 13 15の濃度の溶液を調製するこれらの溶液についてオストワルド粘度計を用いてそれぞれ流下時間を測定し相対粘度絶対粘度運動粘度を求め実験デ
ータより極限粘度[η]を求めるまた報告書には相対粘度絶対粘度運動粘度C
)ln( wηη
Cw
w-η
ηη vsポリビニルアルコール濃度の関係をそれぞれグラフにして提出する
[計算方法] エチルアルコール水溶液の粘度測定と同様の手法を用いて粘度の計算を行うなおポリビニルアルコール水溶液の密度はピクノメーターを用いて測定すること 表 4-3 ポリビニルアルコール水溶液の濃度密度相対粘度の関係 ポリビニルアルコール
濃度 [g100cc] 密度 d[gcm3] 相対粘度
η ηw[-] 05times(15) 05times(13) 05times(12) 05times(23)
05
42
[分子量の計算方法] 実験を行った結果以下のような粘度データを得られるとする実験データより極限粘度
を求めポリビニルアルコール(PVA)の分子量Mを決定せよ
PVA 水溶液濃度
C[g100cc]
相対粘度
ηηw[-]
絶対粘度
η[gcms]Cw
w-η
ηη
C)ln( wηη
05times(15) 1031 0008255 031 0305
05times(13) 039 0378
05times(12) 03 0289
05times(23) 0375 0353
05 0364 0334
ηw=8007times10-3 gcms 線状高分子の極限粘度[η]と分子量Mの関係は次式で与えられる [η]=KMα (46) ただしポリビニルアルコールの場合K=666times10-4α=064であるなお極限粘度[η]は次式で定義される
CC w
w
0
-][ limη
ηηη
rarr
= (47)
または
CC
)ln(][ w
0lim
ηηη
rarr
= (48)
よって濃度 CとCw
w-η
ηηまたは濃度 Cと
C)ln( wηη の関係をグラフ化し最小二乗法によ
り切片の値を求めると極限粘度[η]が決定される
Cw
w-η
ηηと C の関係より最小二乗法を用いて切片の値を決定すると(図 43 参照)切片=
03242傾き=00874となるよって極限粘度は以下のようになる[η]=03242同様
にC
)ln( wηη とcの関係より最小二乗法を用いて切片の値を決定する
(図 44参照)と切片=03249傾き=00256となり極限粘度は以下のようになる[η]=03249
Cw
w-η
ηηと Cの関係より決定した[η]=03242を用いてポリビニルアルコール(PVA)の
分子量 Mを計算する(46)式より以下のように PVAの分子量 Mを計算することができるM=([η]K)1α
=(03242(666times10-4))(1064)
=15811
43
y = 00874x + 03242
0
02
04
06
08
1
0 01 02 03 04 05 06 07
c[g100cc]
(η-ηw)(ηwc)
cw
w
η
ηηminus
極限粘度[η]
図 43 298Kにおける PVA濃度 CとCw
w-η
ηηの関係
y = 00256x + 03249
0
02
04
06
08
1
0 01 02 03 04 05 06 07
c[g100cc]
(ln(ηη
w))c
c)ln( wηη
極限粘度[η]
図 44 298Kにおける PVA濃度 CとC
)ln( wηη の関係
44
5 植物からの DNAの抽出 51 はじめに 分子レベルでの遺伝子の構造解明や遺伝子の発現に関する研究は近年急速に発展している
これら生命現象のしくみを分子レベルで解明しようという分子生物学の分野ではさまざま
な遺伝子の解析や応用方法が開発され我々の生活に身近なものになりつつある 本実験では初歩的な分子生物学に関する実験として植物(タマネギ)からの DNA の
抽出を行い抽出した遺伝子の電気泳動法による分離実験を試みる 52 試薬および器具 試薬 タマネギ(細胞中から遺伝子の抽出を行う) 台所用洗剤(洗剤中に含まれる界面活性剤には植物の細胞膜およびタンパク質を破壊す
る働きがある) 塩化ナトリウム(DNAは塩化ナトリウム水溶液に溶解し易い性質がある) エタノール(予め冷やしておくDNAはエタノールにほとんど溶解しない) 制限酵素(DNAを一定の部位で切断する働きを働きがある) TE緩衝液(pH緩衝剤が入った溶液) 器具 ビーカーミキサーフィルターメスシリンダー駒込ピペットガラス棒 マイクロピペット電気泳動装置ポラロイドカメラ 53 実験方法 1)タマネギは 1回の実験で半個のうち内側の半分程度を使用するタマネギ水 30ml台所用洗剤数滴をミキサー用ガラス容器に入れ40~60秒程度(固体状のタマネギがなくなる頃が目安)ミキサーにて混合する
2) 1)で作成した混合溶液をビーカーに移し約5g程度の塩化ナトリウムを加えガラス棒で静かに攪拌する粘性の大きな溶液が得られる
3) 2)で作成した溶液をフィルターを用いて濾過し濾液を回収する 4) 濾液の約2倍程度の量の冷エタノールをビーカーの壁伝いに静かに注ぐ 5) ビーカーを揺するとエタノール層に白くふわふわしたものが浮いてくるこれが DNAであるガラス棒で DNAを巻き取りシャーレ上にて DNAを回収する顕微鏡を用いて回収した DNAの状態を観察する
6)マイクロチューブ(容量 15ml)中に用意した 70エタノールを 8 分目程度まで注ぐ5)にて回収された DNAをマイクロピペットを用いて70エタノールの入ったマイクロチューブ中に移す軽く混ぜることによりDNA から不要な物質を洗い流す遠心分離してDNA をマイクロチューブの底に沈めた後溶液を捨てて DNA を乾かす乾いたらTE緩衝溶液を 1ml加えて放置するDNAの溶液が得られる
54 電気泳動装置による DNAの観察
本実験は職員と一緒に行うこと 実験を行う人はビニール手袋をすること 1) 抽出した DNAを電気泳動装置で観察するマイクロピペットを用いて以下のように調製した DNAの混合溶液を調製する(いずれの溶液も調製済)
45
2) マイクロピペットを用いてアガロースゲルの試料を流し込む穴(ウェル)に1)にて調製した溶液 Aおよび Bを注ぎ込む注入量は20μℓとする電気泳動装置のスイッチを入れて100Vの電流を流しアガロースゲル内にて DNAを電気泳動させる
3) 試料に予め加えられておいた青色の色素が 7 分目程度まで進んだら電気泳動を中止する(約 30分程度)
4) (ここでの作業は職員が行う) アガロースゲルを取り出し染色液に浸す染色後ゲルを取り出しポラロイドカメラで
DNAの泳動状態を撮影する
+ -
アガロースゲル
試料を流し込む穴(ウェル)
図 51 電気泳動装置
6 5 4 3 2 1
図 52 DNAの電気泳動写真の一例
55 電気泳動装置の原理 電気泳動装置の原理図を以下に示すアガロースゲル(寒天から不純物を除いたもの)中
に DNAをセットし電流を流すとDNAは電流の向きとは逆にマイナスからプラス方向
調製済 溶液 A(制限酵素なし) 水 11μℓ 10timesH Buffer 2microℓ 植物 DNA 5μℓ
調製済 溶液 B(制限酵素 Eco RI入り) 水 11μℓ 10timesH Buffer 2microℓ 植物 DNA 5μℓ 制限酵素 2μℓ
1 DNA(タマネギ)+制限酵素 2 DNA(タマネギ)+制限酵素 3 DNA(タマネギ) 4 λ-DNA(大腸菌)+制限酵素 5 λ-DNA(大腸菌) 6 サイズマーカー
500bp
46
に動く(このことを電気泳動という)これはDNA のリン酸部分が負に帯電しているためでありまたDNAはその長さにより泳動距離が異なる(短い遺伝子ほど長く泳動する)電気泳動ではこの性質を利用してDNAを大きさごとに分離することができる
塩基対数によってDNAを分離
EtBr (蛍光試薬)DNAの二本鎖内に入り込む
発光
UVλ=302nm
励起
分離後のアガロースゲルをエチジウムブロマイド(EtBr)溶液に浸す
DNAを含んだ溶液
アガロースゲル
リン酸部分が負に帯電
塩基 (ATGC)-
+
カメラで撮影
電圧
DNA構成成分(dNTPs)
バンドが明る
DNA量が
バンド(DNAの存在)
図 53 電気泳動の原理
56 制限酵素とは DNA は4 種類のヌクレオチド(GATC)が不規則につながってできている制限酵素はDNAの特定のヌクレオチドが並んでいる部分を切断する制限酵素には様々な種類がありEco RI(エコアールワン)と呼ばれる酵素は「GAATTC」といった並びの部分だけを切断することができる
GAATTC
CTTAAG
制限酵素
Eco RI
AAGCTT
TTCGAA
制限酵素
Hin dIII
図 54 制限酵素による DNAの切断
レポートについて 1 実験方法および実験結果の整理方法については指針書を参考にすること 2 実験結果については電気泳動の結果について考察すること(制限酵素の影響などにつ
いてまとめてください)
47
6 染色実験
61 はじめに
現在私達の身の周りでは様々な染料が使われている例えばT シャツやジーンズな
どの衣服は橙黄赤青など様々な色に染められている他にも私達が気付かないと
ころで多くの染色された製品を使用しているそこで本実験では高校の化学で学んだ
アゾ染料を合成してみるアゾ染料はアニリンを原料として作られているアニリンはベ
ンゼン環にアミノ基(-NH2)がついたものであるアニリンは無色の液体で水に溶けにく
くアンモニアより弱い塩基性を示すまたさらし粉(CaClO(ClO)H2O)水溶液を加えると
赤紫色を呈するこの呈色反応はアニリン特有のものであるので検出反応に用いられる
このアニリンを出発物質としてアゾ染料を合成してみる
62 試薬および使用器具
【試薬】 ①05moll 水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液
②2-ナフトール ③フェノール ④6moll 塩酸
⑤亜硝酸ナトリウム ⑥アニリン ⑦氷
【器具類】 ①電子天秤 ②50mℓビーカー ③100mℓビーカー
④ガラス棒 ⑤布(ガーゼなど) ⑥ピンセット
⑦ポリ手袋 ⑧ドライヤー ⑨シャーレ
10駒込ピペット(10ml ガラス製)
11駒込ピペット(1ml プラスチック製)
63 実験方法
1) 50mℓビーカーの中に 05molℓ水酸化ナトリウム水溶液 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回
NaOH 水溶液を分取するほぼ 20 mℓ分取できれば可)と 2-ナフトールを約 01g 入れ
よくかき混ぜる調製した溶液の中に布をつけその布はガラス棒でしぼってから(布
をガラス棒ですくいあげればよい)シャーレに広げる温度の異なる条件下(常温およ
び低温)で染料の合成実験を行うため布は最低 2枚調製した溶液と接触させそれ
ぞれ別々のシャーレ(低温用および常温用)に広げる
2) 新しいビーカーに水を約 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回分取)と 6molℓ塩酸約 4mℓ(10m
ℓ駒込ピペットで目分量で可)さらにアニリン約 1mℓ(プラスチック製 1 mℓ駒込ピペッ
ト)を入れてよくかき混ぜる染料の合成を常温および低温下で行うためこの溶液を
2つ調整する
低温下で反応させる溶液は恒温槽で 10~15 分ほどよく冷やした後亜硝酸ナトリウ
ム 05g を加えてよくかき混ぜる
常温下で反応させる溶液には冷却作業を行わずに亜硝酸ナトリウム 05g を加えて
よくかき混ぜる
3) 2)でつくった水溶液をシャーレに広げた布に注ぎ生成される染料を布によく染み
込ませ5分程放置する
4) 色の付いた布を取り出してポリ手袋をした手できれいに水洗いをし乾燥させる
48
5) 色差計を用いて乾燥した布の Lab(L明度aおよび b色度)を測定する
2)で作った溶液は5以下では無色の溶液ですが5以上になると淡い黄色になりま
す
【解説】
アゾ染料はアゾ基(-N=N-)を持っていてこのアゾ基によって鮮やかな橙色を呈色し
ます今回合成したアゾ染料は図の 1-フェニルアゾ-2-ナフトールです意外かもしれ
ませんが指示薬として使われているフェノールフタレインもアゾ化合物ですフェノール
フタレインは pH の変化によって色が出てきす染料の中でも最初は無色のものもありますが
温度を変化させたり酸性やアルカリ性にすると色が出てきます
ベンゼン ニトロベンゼン
N2Cl
ニトロ化 濃硫酸(濃硝酸)
還元反応 濃塩酸
(Sn又は Fe)
アニリン塩酸塩
遊離反応 NaOH
アニリン塩酸塩に強塩基を反応させる
と弱塩基であるアニリンが遊離する
氷冷+亜硝酸ナトリウム アニリン
塩酸
ジアゾ化
塩化ベンゼンジアゾニウム
塩化ベンゼンジアゾニウム
は熱によって窒素とフェノー
ルに分解される
カップリング
C10H7ONa (ナトリウム 2-ナフトキシド)
O
N =
1-フェニルアゾ 2-ナフトール
NH3Cl NH2
49
7 ガスクロマトグラフ質量分析計による茶葉中のカフェインの分析 71 はじめに ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)は極めて低い濃度の化学物質の同定や未知物質の構造決定に極めて強力な分析機器の一つであるGCMSを用いるとサンプルの中に含まれているある成分の分子構造(カフェインの分子構造を図 71に示す)やその量が分かりますもちろん分析機器ですので測定できる物質対象となる系や測定条件にはある
程度の制約があります混合物質を分離するガスクロマトグラフ(Gas ChromatographGC)と分離された成分(物質)を分析(構造決定と濃度測定)する質量分析計(Mass SpectrometerMS)を組み合わせた装置であるこの装置は有機化学生化学環境化学などの多くの分野で非常に多用されている例えば極めて低い濃度でも生体へ強い影響が懸念されるダイ
オキシン類などの土壌や河川の水中での含有率の決定や食品や医薬品中の微量成分の決定
にも利用されている 一方日本人に長い間親しまれてきた緑茶が近年産業界や医学
界で注目されている茶葉にはカフェイン(分子構造図 71)カテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドなどの有用成分が多く含まれておりその効能が注目されている 本実験では茶葉中に含まれるカフェインに対してGCMSを用いて分析する茶葉中には種々の物質が含まれておりGCMS分析を容易にするため前処理として超臨界二酸化炭素抽出(4015MPa程度の高圧力の二酸化炭素を溶剤として利用)により茶葉からカフェインの抽出を行いそのサンプルを GCMSにて分析する
図 71 カフェインの分子構造 図 72 物質の分析 個々の物質や装置についてはインターネットにより下記のWebサイトのフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』などにより調べるとよいカフェイン(caffeine)はアルカロイドの一種プリン環を持つプリンアルカロイドの一種でコーヒー類に含まれることか
らこの名がある化学名は137-トリメチルキサンチン(C8H10N4O2) コーヒーコーラ緑茶紅茶ガラナココアなどに含まれる(量は緑茶が一番多い)結晶は一水和物(C8H10N4O2bullH2O)もしくは無水物(無水カフェインC8H10N4O2)として得られ
る白色の針状または六角柱状結晶で匂いはなく味は苦い融点は 238昇華性がある出典フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』httpwwwwikipediaorg 装置「GCMS」httpwwwanshimadzucojpproductsgcmsqp2010htm (島津) 「超臨界抽出装置」httpwwwkagakucomjasco39-49html (日本分光)
50
レポート課題 1茶葉中に含まれるカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドの中から3つの物質を選びその物質について調べた結果を A4 レポート用紙2枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
2GCMS についてA4 レポート用紙1枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
3与えられたサンプルは茶葉1gから抽出されたのである実験結果よりもとの茶葉
1g中に含まれるカフェインの量を推算し計算式とあわせて示すこと 72 原理および装置 実験で使用する島津製の GCMS装置の全体図を図 73に原理の概略を図 74に示す
1
23
4
5
67 8
9
10
キャリアーガス
試料物質
1ボンベ(He)2圧力計3マイクロシリンジ4サンプラー5試料導入部6分離カラム
7セパレーター8イオン化室9磁石10電子増倍管11記録計
11
図 74 ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)の概略図
サンプルフォルダー
51
GCMS 装置は分離部である図中の 1~6 のガスクロマトグラフ(GC)と7~11 の検出部である質量分析計(MS)から構成される 3のマイクロシリンジを用いて試料を GCMSに導入する導入された試料は5試料導入部でガス化され6分離カラムに導入される分離カラムには吸着剤が充填されおり混合物の試料を導入した場合各物質と吸着剤との
親和性の違いにより各物質の分離カラムから排出されるタイミングは異なる分離カラム
を排出された試料は8イオン化室でイオン化され10電子倍増管にて検出される アセトンに溶解したカフェインの GCMSによる分析結果の一例を以下に示す図 75にク
ロマトグラム図 76にカフェインのピークのマススペクトルを示す
図 75 GCMSにより得られたクロマトグラム
横軸がリテンションタイムで縦軸がピーク強度を表す
図 76 カフェインのマススペクトルとカフェイン(分子量MW=194)の構造
(図 75中のリテンションタイム 126min付近のピークに起因するマススペクトル) 茶葉中にはカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイド以外にも繊維であるセルロースなど多くの物質が含まれているため茶葉そのものを
そのままサンプルとしてGCMSで分析することは困難であるセルロースなどの分子量の大きな物質はカラムに詰まってしまい分析できないそこで今回は超臨界二酸化炭素
による抽出により主にカフェインを他の物質と分離抽出した通常よく利用されるアセ
トン抽出(アセトンに茶葉を浸し特定の成分を抽出する)ではカフェイン以外にも多く
の物質が抽出されるため図 75 のような単独のピークを得ることは難しく複数のピークがクロマトグラムに見られるこのサンプル(この場合茶葉からの抽出物)にはカフェ
イン以外の不純物は少なかったがガスクロマトグラフの分離カラムによりさらにそれ
らの混合物が精度よく分離されるクロマトグラムのピークはそれらサンプル中に含まれ
ていた個々の物質を表しているクロマトグラムのピークを選択することで分子構造解析
したい物質を選んだことになる選択したクロマトグラムのピークの表している物質(ここ
ではカフェイン)に対応するマススペクトルが図 76 に表示されているマススペクトル
52
で横軸がその成分(ここではカフェイン)分子を構成している原子の原子量で縦軸がそ
の量を表しているのでマススペクトルから分子構造を解析するためにコンピュータ内
に蓄えられた物質ごとのマススペクトルデータと今回測定したマススペクトル(分子内に含
まれている各原子の数)を比較することで測定したサンプル中のクロマトピークを選択し
た分子がどのような原子をどれだけ含んだ分子であったかがわかりそれからその物質
がどのような分子構造の物質である可能性が高いかをコンピュータが検索し結果を示す 73 実験サンプルの設置と GCMS装置の操作方法 実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS装置のサンプルフォルダ
ー(図 73)にセットするこのサンプルは茶葉 1gを 50ccの高圧セルにて超臨界二酸化炭素を利用して4015MPa2時間接触の条件で抽出した固体を10gのアセトンに溶かしたものである またコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に装置および装置制
御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 本実験で使用する GCMS の操作は全てコンピュータのモニター上で GCMS の解析プログラムソフトを使用することで行うコンピュータの操作方法を以下に示す なおコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS 装置のサンプルフォルダー(図 73)にセットするまた装置および装置制御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 1)パソコンのデスクトップ上のアイコン「GCMS 分析」をクリックすると以下のようにGCMS制御プログラムを起動するその後「OK」ボタンをクリックする
図 77 GCMD分析用ソフトウェア「GCMS分析」の起動
まず「GC-MS分析」をクリック
「OK」ボタンをクリック
53
2)制御プログラムが起動されパソコンと GCMSの接続が開始される
図 78 「GCMS分析」の接続確認画面 3)GCMSとパソコンの接続が完了すると以下のような画面が表示される
図 79 「GCMS分析」操作画面
4)マススペクトルによる分子構造の解析 サンプル(この場合茶葉からの抽出物)には多くの物質が混じり合っていたがガス
クロマトグラフの分離カラムによりそれらの混合物が精度よく分離されるクロマトグラ
ムのピークはそれらサンプル中に含まれていた個々の物質を表しているクロマトグラム
のピークを選択することで分子構造解析したい物質を選んだことになる選択したクロマ
トグラムのピークの表している物質(ここではカフェイン)に対応するマススペクトルを選
択するマススペクトルは横軸が原子量で縦軸がその量を表しているのでマススペク
トルから分子構造を解析するために「定性処理」を行う シミラリティ検索結果が表示され分析により得られたスペクトルと類似のスペクトルを有
する物質の一覧が表示される上部に表示される物質ほどスペクトルが一致していること
を示す
接続状況が表示される
「トップへ」
をクリック
54
図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果
図 711 表示スペクトルのシミラリティ検索結果 10)図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果の印刷 「レポート(R)」をクリックし「検索結果(R)」をクリックすると検索結果が印刷される
GC-MS 分析で得られたマスス
ペクトル
データベース中
のマススペクト
ル
55
参考資料 生理活性物質の精製 カフェインの利尿作用のように生物活動に影響を与える物質を生理活性物質といいます
天然物には生理活性物質を多く含むものがあります一般に天然物は多くの成分を含ん
でおり特定の生理活性物質を分離抽出するには種々の分離技術が必要ですまた生
理活性物質には60以上の温度でその生理活性を失う(失活)ものや溶剤として広く用いられているクロロホルムなどの有機溶剤中で失活するものが多いそこでこれら生理活性
物質の分離精製技術の開発が望まれており30~60程度のマイルドな温度条件で操作できる二酸化炭素を機能性溶媒として利用する超臨界抽出も有効な分離技術として注目されて
いる超臨界二酸化炭素は気体と液体の中間の性質を持ち物質の分離に役立っています 臨界点付近の高密度気体は超臨界ガスまたは超臨界流体と呼ばれ臨界圧力前後でそ
の溶解能力が著しく変化することから工業的にも種々の分野で利用されています一例と
して超臨界二酸化炭素(SC-CO2)によるコーヒー豆からのカフェインの抽出プロセス(a)
ならびに超臨界二酸化炭素に対するカフェインの溶解度(b)を図に示します図(c)に示す
ように固体のカフェインがガスである超臨界二酸化炭素に溶解します
このように超臨界二酸化炭素を用いた技術はコーヒー豆からのカフェインの抽出プロ
ポリスからの生理活性物質の抽出に利用されています
図 超臨界二酸化炭素抽出を用いたコーヒー豆からのカフェインの抽出
56
付表 最小二乗法について 直線で近似する場合 f (x) = a0 + a1x (A1-1) 式(A1-1)のように近似させるとする測定値 yiとの残差を eiとすると式(A1-2)のようになる ei = yi - f (xi) = yi - ( a0 + a1xi ) (A1-2) ここで式(A1-2)の両辺を二乗してその i に関する総和をとりその値を S とすると次式となる
sumsum==
+minus==n
iii
n
ii xaayeS
1
210
1
2 )( (A1-3)
S を最小化するような a0a1を求める式(A1-3)を a0a1について偏微分すると次式とな
る
sum=
+minuspartpart
=partpart n
iii xaay
aaS
1
210
00)( sum
=
+minusminus=n
iii xaay
110 )(2 (A1-4)
同様にa1について編微分すると次式のようになる
sum=
+minusminus=partpart n
iiii xxaay
aS
110
1])([2 (A1-5)
Sが最小となる時は次式が同時に満たされる時である
00=
partpartaS
01=
partpartaS
(A1-6)
よって誤差が最小となる a0a1を求めるためには式(A1-6)を連立して解けばよい
sumsumsum===
+=n
ii
n
i
n
ii xaay
111
10 1 (A1-7)
sumsumsum===
+=n
ii
n
ii
n
iii xaxaxy
1
2
11
10 (A1-8)
式(A1-7)と式(A1-8)を a0a1を変数とみなし連立して解くと次式を得る
n組のデータ(xiyi)(i=12hellipn)に対して回帰直線 y= a0 + a1x を最小二乗法で求めて出力しデータ番号 iデータ yi直線で推定した値 )( ii bxay += および残差
iii yy minus=ε を出力するようなプログラムをつくりたい基礎式を導出せよ (ヒント残差の二乗の和が最小になるように係数 a0a1)を定めるのが最小二乗法
である)
57
sumsum
sumsumsumsum
==
====
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
n
ii
n
ii
xxn
xxyyxa
1
2
1
2
1111
2
0
)(
))(())(( (A1-9)
sumsum
sumsumsum
==
===
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
xxn
yxxyna
1
2
1
2
1111
)(
))(()( (A1-10)
よって式(A1-9)(A1-10)を用いれば最も誤差を小さくするような直線 y = a0 + a1x が求められる
y=a1x+a0 にて近似
誤差 ei
x
y
誤差が最小になる関数(直線 y=a1x+a0の場合)
図1 最小二乗による近似
誤差の和Sが最小
S
a0
a1
直線 y=a1x+a0 の近似
誤差の全体の和はS=Σei=Σyi-(a1xi+a0)
Sは変曲点にて最小値を示すすなわち(partSparta0)=0 (partSparta1)=0
図2 a0a1とSの関係
18
ラングミュア(Langmuir)の単分子吸着モデルを用いて理論値を計算するには配布され
た Excelファイル(ファイル名)「ad_graxls」を使用すると便利ですその使用方法を以下に示します配布プログラムは化学工学プログラミングの講義の場合と同様に総合情報処
理センターの共通領域にあります各自コピーして使用して下さいコピーするには化
学工学プログラミングの講義の場合と同様にコピーしようとするファイルを共通領域から
自分の使用しているコンピュータのデスクトップにドラッグドロップします共通領域で
ファイルを開くとファイルの消去などで他の人が使えなくなりますので共通領域でファイ
ルをダブルクリックしないようにして下さい誤って共通領域でファイルをダブルクリック
した場合はそのファイルを閉じるボタンをクリックし閉じて下さい 各自のコンピュータに保存した Excelのファイル(ファイル名ad_graxls)をダブルクリ
ックして開きます自宅へ持ち帰る場合各自のフラッシュメモリーやフロッピーディスク
を使用しまたはメールを使用して添付ファイルで送信できます各自のフラッシュメモ
リーやフロッピーディスクに保存してあるファイルを再編集する場合はフラッシュメモリ
ーやフロッピーディスクをコンピュータの USB 端子またはフロッピーディスクドライブに挿入します次にデスクトップ上にあるマイコンピュータのアイコンをダブルクリックし
ます もしデスクトップ上に上のアイコンが無ければ画
面左下の「スタート」ボタンからマイコンピュータをク
リックしてくださいすると次のような画面が立ち上が
ります
ラングミュア(Langmuir)の単分子吸着モデルで計算した
理論線
19
その中からフラッシュメモリーの場合は「リムーバブルディスク」をフロッピーディ
スクの場合は「35インチ FD」のアイコンをダブルクリックしてくださいファイルが保存されていれば次の画面が出てきます
この画面の中の「ad_graxls」ファイルをデスクト
ップにコピーしますまず「ad_graxls」ファイルを左クリックしますこの時クリックした指はは
ずさないようにしますその状態のままデスクトッ
プまでファイルを移動させますそしてデスクト
ップ上の任意の場所でクリックした指をはずします
これでデスクトップ上に「ad_graxls」のファイルがコピーされましたのでデスクトップにコピーさ
れたファイルをダブルクリックして開きますコピ
ー操作が上手くいかなかった場合もう一度移動の操作を行ってください
必ずデスクトップにコピーしてから開く操作を行って下さいフロッピーディスクから直接
開いて操作を行った場合正しく保存されない可能性があります 「ad_graxls」のファイルを開くと次のような画面が立ち上がりますもし画面が違う場合は画面の下部にある「吸着データ」のタグ をクリックしてくださいこの画面
でデータの処理や計算を行いますでは実際の操作に入る前に予めこのファイルに名前
を付けて保存しておきますまずExcelの画面のツールバー「ファイル」から「名前を付けて保存」をクリックします下のような画面が起動します
20
ファイルの保存先を変えたい場合画面上部のボタンをクリックし保存先にデスクトッ
プを選択します次にファイル名の部分に各自ファイル名を入力しますファイル名は何
でも良いですが分かり易い名前にしておくとファイルの管理がやり易くなります日付や
数字を入れると同名のファイルをいくつも管理する場合に便利ですここでは「吸着実験デ
ータ整理 4月 01」とし「保存」ボタンをクリックします
ファイル名変更後Excelの画面上部のタイトルバーのタイトルが先ほどの名前(上の図とは異なります)になっていることを確認してください
この操作を行うことによって元のデータである「ad_graxls」を変更してしまう心配がなくなります元のデータである「ad_graxls」はファイルが破損しまたは間違った操作の結果を誤って保存してしまった場合などの補助ファイルとなりますので大切に保管しておいて
下さい今後配布するデータは先ほど説明した手順で名前を変えて保存し元のデータに
直接変更を加えないようにして下さい ここから実際の作業に入ります初期状態では模擬のデータが入力されています入力
データは予め計算しておいた酢酸濃度Cb[moll](濃度を Cと表示している場合もあります)と活性炭吸着量 n[molg]になります下の画面の丸で囲んだ部分がそれぞれの値でBCカラム(列)の 4~9行には数値が入力されています関数ではありませんこのデータを利用して実際のデータ解析を行ってみましょう下記のように行うと幾つかのグラフが
現れ実験データに対してラングミアーの単分子吸着を仮定したモデルを用いて精度よ
く計算線が描けることがわかります 今回はCbnの値を入力する必要はありませんExcelが自動的に計算を行って結果を表示するようになっていますつ
まりセル D5に「=B5C5」と関数を入力しこの関数に対してフィルハンド
ルを利用してセル D6~D9へコピーし
ファイルの保存先を変えたい場合画面
上部のボタンをクリックし保存先に
デスクトップを選択します
変更するファイル名はここをクリッ
クして書き換えます
名前を変更したらここをク
リックして保存します
21
まています 次に酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着量 n[molg]の関係および酢酸濃度 Cb[molL]と Cbn[gL]の関係をグラフ化します今回は自動的にグラフが作成されるようになっていますので複
雑な操作は必要ありません ここではデータに対してそれを精度よく表現する近似式をグラフ上に描きその関数
を数値として求める方法を Excelで練習してみましょう
グラフを表示させるには画面の下にある「Graph1」もしくは「Graph2」のタグ
をクリックします「Graph1」には酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着量n[molg]の関係のグラフが「Graph2」には酢酸濃度 Cb[molL]と Cbn[gL]の関係のグラフが表示されます「Graph2」はLangmuir の等温吸着式による相関を表したもので横軸に酢酸濃度 Cb[molL]をとり縦軸に酢酸濃度 Cb[molL]を活性炭吸着量 n[molg]で除した値 Cbn[gL]を示していますLangmuir の等温吸着式についてはこの後の章で説明してありますので各自読んで理解して下さいLangmuirの等温吸着式では式中の定数 ninfin(飽和吸着量)と K(吸着平衡定数)を実験データから最小二乗近似で決定する場合が多くありますここでは
その例を取り上げてデータに対してそれを精度よく表現する近似式をグラフ上に描き
その関数を数値として求める方法(最小二乗法最小二乗については付録に示しており
また化学工学プログラミングの講義においても説明します)を Excelで練習します 配布された Excel ファイル「ad_graxls」では実験点が表示されているだけでそれを精度よく表現する近似式の直線のグラフは「Graph2」に表示されていません今から次の手順で「Graph2」の図(グラフ)に近似式の直線のグラフを表示しますExcel の場合近似曲線(ここでは直線)を求める場合コンピュータが自動的に最小二乗法を使って近似曲線
を計算しています
「Graph1」の画面 「Graph2」の画面
Excelの sheetが表示されたらまずファイル名を変えデスク
トップに保存して下さい次
にGraph2のタックを左クリックして最小二乗法のグラフを
確認して下さい
22
38 Langmuirの等温吸着式による相関 はじめにLangmuir式の定数 ninfinと Kを決定するために「Graph2」酢酸濃度 Cb[molL]と
Cbn[gL]の関係のグラフから最小二乗法により直線の式を求めますExcelを用いてデータに対して近似直線のグラフを描き最小二乗法の直線の式を求めます
次のような「近似曲線の追加」のウィンドウが現れたら今回は線形近似(直線で近似
y=ax+b の式)を選びますので線形近似が黒色に反転していることを確認して「近似曲線の追加」のウィンドウの右下の「OK」ボタンをクリックして下さい
実験点の何れかにポインタをあわせて
右クリックする
近似曲線の追加(R)を選択して左クリックする
「線形近似」であること
を確認して「OK」ボタンをクリックします
23
「近似曲線の書式設定」
のウィンドウでオプシ
ョンから「グラブの書式
を表示する」の前を選ん
でチェック(前のチェッ
クボックスをクリック)
した後「OK」を押す
現れた直線にポインタをあわせて
左クリックすると「近似曲線の書式
設定」のウインドウが表示されます
ここをクリックします
この「オプション」のタ
グをクリックします
「y=」の関数
が現れるのでここ
をクリックする
式の文字フォントが初期値
「8」と小さいのでここ
のボタンをクリックし
フォントサイズを選ぶリス
トボックスを表示し「22」程度の大きなサイズを選択
しクリックする
24
「Graph2」酢酸濃度 Cb[molL]と Cbn[gL]の関係のグラフから最小二乗法により直線の式がこのように求められましたExcel を用いてデータに対して近似直線のグラフを描き最小二乗法の直線の式を求めるこの方法は他の実験データの解析などにも利用できますので
各自活用して下さい 表示された関数式「y=43865+2654」はノートにメモして下さいこの傾き 43865と
切片 2654からLangmuir式の定数 ninfinと Kを決定します決定方法の詳細はこの後の 36 の Langmuir式のパラメータ決定法に示しています ラングミュアの等温吸着式を変形すると次式となる
CCnKnCKn
CCKn
Cβ+α+
==
+= infininfininfin
11)1(
ただしα=1ninfinβ=1(ninfinK)とするこの式より Cnを縦軸Cを横軸とした関係のグラフは傾きα=1ninfin切片β=1(ninfinK)の直線関係を与えることを示しています そこでExcelのシートを利用してこの値からLangmuir式の定数 ninfinと Kを次のように決定しますセル C18D18に Graph2で求めた数値 2654と 43865を代入しますその後D19と C19に関数を ldquo=1D18rdquoとrdquo=D18C18ldquoを代入しますセル内の式は半角で入力してください
現れた関数の文字フォン
トを大きく(例えば 22)してその数字をメモし
吸着データシートの C18と D18に記入する
C18D18 に Graph2 で求めた値 2654 と 43865 を代入した後D19 と C19 に関数を ldquo=1D18rdquoとrdquo=D18C18ldquoを代入する
25
この Excel表示では最小二乗法を用いて決定した傾きαと切片βを用いて α=1ninfin=43865 β=1(ninfinK)=2654 得られた傾きおよび切片よりninfinおよび Kは次のように求まる
ninfin=1α=1D18=000228 molg-1 K =(1ninfin)β=αβ=D18C18=165
つまりセル D19にはninfinの値がセル C19にはKの値が表示されますこれらの値はラングミュア(Langmuir)の単分子吸着モデルで計算した理論線と実験と比較する場合に利用します実験結果に対して理論的な考察を行う例としてラングミュア(Langmuir)の単分子吸着モデルで理論線を計算し実験と比較するにはこの Excelファイルを利用して次のように計算しグラフに表示します セル F5~F30 には溶液中に残る酢酸濃度 Cb[molL]に対する活性炭に吸着された吸着量n[molg]の関係のグラフ「Graph1」の横軸の酢酸濃度 Cb[molL]の適当な値が既に入力してありますこれらのそれぞの酢酸濃度 Cb[molL]に対する吸着された酢酸の吸着量 n[molg]の理論値をラングミュア(Langmuir)式で計算しますラングミュア式は次式で与えられます
KCKCnn
+=
infin
1 (310)
ここでこの実験データを最も精度よく計算できるように決定した ninfinおよび K は上述のようにninfin=1α=1D18=000228 molg-1 K =(1ninfin)β=αβ=D18C18=165 でありこれらの値はセル D19にninfinの値がセル C19にKの値が表示されていますこの値を利用して「Graph1」に計算線を描くにはまずセル G5~G30 にセル F5~F30 のそれぞれの酢酸濃度 Cb[molL]に対する吸着された酢酸の吸着量 n[molg]の理論値をラングミュア式で計算しますそのためにはセル G5 にラングミュア式を次のように記述しますただしセル D19の ninfinの値セル C19の Kの値は常に同じセルから参照するので絶対参照($マークを付けて$D$19 $C$19と記述します)で記述します
Langmuir式をセル G5に記述するただし濃度はF5の値を相対参照しD19と C19は絶対参照($マークが必要)することを忘れないように
セルG5に記述すべき数式
=$D$19$C$19F5(1+$C$19F5)
26
G5記述後フィルハンドルを使用してG5の関数を G6~G30までコピーします Sheet1から Graph1 のタグをクリックしGraph1 に計算線が表示されたことを確認しましょうこれでラングミュア式によるデータの解析は終了です実験値と理論値を比較して現象
について考察してみて下さいラングミュア式を理論的に導く場合にある仮定をしている
のですがその仮定をしているラングミュア式が実験データを精度よく計算できていれば
その仮定が妥当なもとであったと考察できます 与えられたモデルデータでラングミュア式によるデータ解析ができれば他の理論(例え
ばフロインドリッヒFreundlich式や BET式レポートはどちらか一方でも可です) についてもExcel で計算してみましょうレポートには自分のデータについてここで行った内容と同様に計算しその結果を考察に記述して下さい 自分のデータについて同様の計算をするにはまずいままで計算を行った Excel ファ
イルを保存しますデータを自分の実験データに置き換える前に Excel ファイルをさらに別の名前で保存します与えられた Excel ファイルは初期状態では模擬のデータが入力されているので今回自分達の実験したデータを入力していきます入力するデータは予め計算
しておいた酢酸濃度 Cb[moll]と活性炭吸着量 n[molg]になります下の画面の丸で囲んだ部分にそれぞれ自分の実験データを入力していきます
今回はCbnの値を入力する必要はありませんExcelが自動的に計算を行って結果を表示するようになっています 次に酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着
量 n[molg]の関係および酢酸濃度Cb[molL]と Cbn[gL]の関係をグラフ化します今回は自動的にグラフが作成
されるようになっていますので操作は必
要ありません 39 Freundlichの等温吸着式による相関 今回の実験で得られた酢酸濃度 Cbと活性炭吸着量 nのデータを利用してFreundlichの等温吸着式の定数 abの値を求めFreundlichの等温吸着式の理論線をグラフに追加します ここでFreundlich式は次式で表されます
bbaCn1
=
このままでは定数 abの値を決定することが難しいので上式の両辺の対数をとり線形化しますすると次式となります
bCb
an ln1lnln +=
ここでln Cbと ln nの関係をグラフにプロットすれば傾き 1b切片 ln aの直線関係が得られますしたがって実験データである酢酸濃度 Cbと活性炭吸着量 nの値の対数をそれぞれ計算します配布した「ad_graxls」ファイルを開き「吸着データ」シートの任意の部分に以下のような表を作成します
27
次にln Cb[-]の列の最初のセルに以下の数式を入力します
=ln(B5) 上式中の「B5」は Cb の値の最初のセルの位置を指します各個人の位置によって変更してください
次にln n[-]の列の最初のセルに以下の数式を入力します
=ln(C5) 上式中の「C5」は nの値の最初のセルの位置を指します各個人の位置によって変更してください
ここでln Cb[-]ln n[-]の値に対しそれぞれオートフィルを行い計算させますすると以下のようなデータが完成します
計算した ln Cb[-]ln n[-]の値をグラフにプロットし最小二乗法による直線式を求めます
28
ここで以下のような直線の式が得られたとします
9135ln31690ln913531690 minus=there4minus= bCnxy
上式より切片は-5913傾きは 03169となるので以下の要領で定数 a1bを計算します ==there4minus= minus 91359135ln eaa 000270
316901=
b
a の値を Excel で計算させる場合は任意のセルに以下のような数式を入力することで求めることができます
=exp(-5913) これでFerundlich等温吸着式の定数 a1bの値が決定しましたこの値は後で使うのでノートなどにメモしておいてください 次に決定した Ferundlich 等温吸着式の定数 a1b の値を用いてFerundlich 等温吸着式のグラフを作成します先ほども示したように Ferundlich等温吸着式は次式で表されます
bbaCn1
=
従って定数 aと 1bの値はすでに決定しているので任意の Cbの値に対する nの値を数点求めればFerundlich等温吸着式で求めた理論線が得られます以下の操作で理論線を引くことができます Langmuir 等温吸着式による相関のときと同様にExcel の「吸着データ」のシート上の任意の場所に以下のような表を作成します
次に Ferundlich等温吸着式に従いnの値を計算します
bbaCn1
=
式中の定数 a1bは先ほど計算した値を用いますしたがって式は次のようになります
31690002700 bCn times=
この式を Excelのセル内に記入すれば計算ができます次の
29
ように記入します
=00027G5^03169 ここで式中の「G5」は Cbの値が 0のセルを指しています各個人の位置によって変えてください 次に式を記入したセルを Cbの値が 05のところまでオートフィルを行いますそうするとすべての Cbに対して nの値が計算されます
これで Freundlich等温吸着式のデータが完成しましたので次に「Graph1」酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着量 n[molg]の関係のグラフにこのデータを追加し理論線を引きます理論線の引き方は Langmuirによる相関のときと同様の操作を行ってください グラフの書式等を変更し整理すると以下のようなグラフが出来上がります
310 吸着等温線とは 固体の吸着剤を溶液と接触させる時一定量の吸着剤によって吸着される溶質の量は温度一定ならば溶質の濃度の関数になる一定温度での吸着量を温度に対してプロットした時に
得られる曲線を吸着等温線というこの吸着等温線を比較的よく表す経験式として次の
Freundlich式がある
n=aC1b (1) ここで n は吸着剤の質量あたりの吸着量C は吸着平衡濃度a と b は実験から決定されるパラメータであるがその物理的意味は多少希薄である これに対し理論的な意味を持つものに次のラングニュア(Langmuir)の吸着等温式がある
30
KCKCnn
+=
infin
1 (2)
ただしninfinは飽和吸着量Kは吸着平衡定数であるこの式は
1)吸着分子が固体表面で単分子以上の厚い層を作ることはない 2)吸着分子同士の間の相互作用はない
という二つの仮定にもとに導かれたものである 結果の整理および報告 Freundlich吸着等温式Langmuir吸着等温式の各々のパラメータの最適値を求めよまた活性炭の吸着特性および表面積について考察し化学工学における吸着操作の重要性につい
ても検討せよ 311 吸着等温式 (a) ヘンリー(Henry)型吸着等温式 液相の濃度あるいは気相の圧力が小さい場合吸着分子間の距離が十分に長いため吸着
分子同士の相互作用が無視でき固体表面と吸着分子のみの相互作用で吸着量を決定できる
とき次式のように表される
n=KC (3)
ここでKは比例定数である図 3-1の(a)に示すように濃度 Cと吸着量 nは比例関係があり一般に吸着量が小さい範囲で成立する気体の場合は溶液濃度 Cの代わりに気相圧力 pを用いればよい
濃度(分圧)
濃度(分圧)
濃度(分圧)
濃度(分圧)
吸着量
吸着量
吸着量
吸着量
(a)ヘンリー型 (b)ラングミュア型
(d)BET型(c)フロインドリッヒ型
0
0
0
0
図 3-1 吸着等温式
31
(b)ラングミュア(Langmuir)型吸着等温式 ラングミュアは図 3-2 に示すように固体表面に同等な吸着力を示す吸着サイトがあり
表面に 1分子層だけ吸着する(単分子層吸着)と仮定して平衡状態における吸着量と溶質濃度(気相分圧)のと関係を導いた全吸着点のうち吸着分子に覆われている吸着点の割合
をθ[-]とすると分子の脱着速度 rrsquo[mols-1]はθに比例する比例定数を a[mols-1]とすると次式のように表される
吸着剤
吸着分子
吸着サイト
図 3-2 固体表面上の吸着サイト(Langmuir式の導出) r=aθ (6) また気相からの吸着速度 r[mols-1]は空いている吸着点の割合(1-θ)[-]と溶液濃度 C[molm-3]に比例する rrsquo= b(1-θ)C (7) このときの比例定数を b[m3s-1]とするまた平衡状態では両速度は見かけ上等しいため以下の式が成り立つ aθ=b(1-θ)C (8) これを変形する
CbaCbsdot+
sdot=θ (9)
ここで飽和吸着量を ninfin[molkg-1] ba を K[m3mol-1](Kは吸着平衡定数)とおくと infin=nnθ
となるので次式が得られる
32
KCKCnn
+=
infin
1 (10)
これをラングミュア式と呼ぶ
(c)フロインドリッヒ(Freundlich)型吸着等温式 フロインドリッヒの吸着等温線は図 3-1(c)のように示される
n=aC1b (11) nは吸着量[molkg-1]で aと bはともに吸着定数[-]である (d)BET(Brunauer-Emmett-Teller) 型吸着等温式
BET型の吸着等温線は図 3-1(d)に示されるラングミュア式は表面に 1分子層だけ吸着すると仮定したものであるがBET式は無限分子層まで吸着できる式である図 3-3に示すように吸着した分子がそれぞれ次の層の吸着サイトとなり分子は積み重なって多分子
層に無限層まで吸着できるものとし各層への吸着にラングミュア式を適用すれば次式の
ように表せる
( ) ( )CKCCCKqq
minus+sdotminussdotsdot
=infin
11 (12)
この式は多孔質固体の細孔表面積を窒素ガスの吸着によって測定する際に利用される重要な式
である
表面の吸着サイト
分子上の吸着サイト
図 3-3 多分層吸着モデル
Langmuir式のパラメータ決定法 水溶液からの酢酸の活性炭に対する吸着平衡データ(吸着平衡温度 12)は表 3-1のよ
うに与えられる実験データよりラングミュア式のパラメータ(K吸着平衡定数ninfin飽和吸着量)を最小二乗法で決定せよさらにラングミュア式より決定した ninfinKの値を用いて吸着等温線を計算し計算線として図に示し実験点と比較せよ
33
表 3-1 n C Cnの関係
ラングミュア式は式(310)で与えられるこの式を変形すると次式となる
CKnCK
n infinsdot+
=11
(313)
両辺に Cをかけると以下の式が導出される
CCnKnCKn
CCKn
Cβ+α+
==
+= infininfininfin
11)1( (314)
ただしα=1ninfinβ=1(ninfinK)とする式(314)より Cn と C の関係のグラフプロットは傾きα=1ninfin切片β=1(ninfinK)の直線関係を与えることを示している表 3-1の値を用いて計算した Cnと Cの関係を表 3-1および図 3-4に示す 最小二乗法を用いて傾きαと切片βを決定した α=1ninfin=43865 β=1(ninfinK)=2654 得られた傾きおよび切片よりninfinおよび Kは次のように求まる
ninfin=1α=1D18=000228 molg-1 K =(1ninfin)β=αβ=D18C18=165
0
50
100
150
200
0 200 400 600
C [ molm-3 ]
Cn [ kgm-3 ]
傾き = 1 ninfin
1 ninfinK
切片0
05
1
15
2
25
3
0 100 200 300 400 500
液相の溶質濃度 C [ molm-3 ]
吸着量 n [ molkg-1]
液相と溶質濃度 C [ molm-3 ]
吸着量
n[ m
olk
g-1]
実験点
Langmuir式パラメータninfin 00033 [ molg-1 ]K 00086 [ m3 mol -1 ]
図 3-4 ラングミュア定数の決定 図 3-5 12における酢酸濃度 Cと
吸着量 nの関係
C [molm-3] n [molkg-1] Cn [kgm-3] 460 225 109 529 214
268 199 149 105 060
172 128 732 504 357
34
Freundlich式のパラメータ決定法 酢酸水溶液中における酢酸の活性炭に対する吸着実験を行ったところ以下のような実験デー
タを得たただしCbはバルク相における酢酸濃度n は活性炭に対する酢酸の吸着量を示す
Cb[molL] n[molg] log10Cb log10n 04621 000205 02410 000175 01139 000139 00519 000105 00243 000081
実験データを利用して次式で与えられる Freundlichの等温吸着式の定数 abの値を求めたい
bbaCn1
= (1)
このままでは定数 abの値を決定することが難しいので上式の両辺の対数をとる
bbb
bb
Cb
aCa
aCn
ln1lnlnln
)ln(ln1
1
+=+=
=
(2)
ここで横軸に ln Cb縦軸に ln nの関係をグラフにプロットするすなわち x=ln Cby=ln nと考える
bCb
an ln1lnln += (3)
ここで直線式 y=a0+a1xと比較するすなわち
)(1)(ln
1
00
傾き
切片
ba
eaaa a
=
=rarr= (4)
a0および a1は最小二乗法により数値で求められる与えられたデータでは a1= a0= なので a= b= となる この値を n=acb
1bに代入してcb=0~05の範囲で nの値を計算する
35
BET式のパラメータ決定法 BET式は次式で与えられる
)1)(1( KCCCKCnn
+minusminus=
infin
(17)
以下のように BET式の変形を行う
)1()1(
KCCKCnCn+minus
=minusinfin
(18)
(18)式の逆数をとると
KCnCK
KCnKCC
Cn infininfin
minus+=
+minus=
minus)1(1)1(
)1(1
(19)
(19)式の両辺に Cをかえると
KCnCKC
CnC
infin
minus+=
minus))1(1(
)1( (20)
(20)式を変形すると次式が得られる
CKn
KKnCn
Cinfininfin
minus+=
minus11
)1( (21)
C と)-(1 Cn
Cのプロットは傾き
KnKinfin
minus1切片
Kninfin
1の直線関係を与えることを示している
これをグラフにプロットし最小二乗法に傾きおよび切片を求める
36
312 活性炭の比表面積の決定 酢酸分子の構造を以下に示す
Hc-Cb-Ca
Hd
Hb Oa
Ob-Ha
1219deg
Ca Oa
Ob
図 36 酢酸の構造
酢酸の 1分子の吸着面積srsquo [m2]を図 3-6に示すこのとき文献より
Caと Oaの結合距離 1321Å Caと Obの結合距離 1206Å OaCaObの角度 1219deg Cの原子半径 077Å Oの原子半径 062Å
したがって吸着面積 Slsquoは次のようになる
( ) ( ) 2088 10376109931036321 minusminusminus times=timestimestimestimes=s m2
ここで活性炭の比表面積 S[m2g]は次式で示される 10026 23 snS timestimestimes= infin
S活性炭の比表面積 [m2g] ninfin飽和吸着量 [molg] srsquo酢酸 1分子の吸着面積 [m2] 602times1023アボガドロ数 [個mol] したがって活性炭の比表面積 S[m2g]は
003350=infinn molg 2010376 minustimes=s m2 より
51281037610026003350 2023 =timestimestimestimes= minusS m2g
37
4 粘度密度測定 41 はじめに 大量生産を目的とした工業的化学プロセスはほとんど流れ系(流通系)であるそれらの系において操作対象となる各物質の粘度は装置を設計操作する場合きわめて重要
な物性値である 本実験では低分子溶液および高分子溶液の粘度測定を通じて液体の粘度について考察するさらに演習問題を通じて気体液体高分子溶液などの化学プロセスで対象となる物
質の輸送物性(粘度拡散係数)の重要性を認識されたい 42 低分子溶液の粘度 [目的] 種々の濃度のエタノール水溶液の粘度を測定しその溶液の粘度について考察する [概要] 25におけるエチルアルコール濃度 02040506080100 wt の水溶液について流下時間を測定しこの結果より相対粘度絶対粘度運動粘度を求めグラフにするま
た水の密度水-エチルアルコール溶液の密度についてはピクノメーターを用いて決
定する報告書には相対粘度絶対粘度運動粘度 vsエチルアルコール濃度の関係をそれぞれグラフにして提出する
[計算方法] 相対粘度絶対粘度運動粘度の定義は次のようになる
相対粘度 ww
w tdtd
ηη = (41)
η 混合溶液の粘度 [gcms] ηw水の粘度(8007times10-3 gcms) [gcms](25における粘度) d エチルアルコール水溶液の密度 [gcm3] dw水の密度(099704gcm3) [gcm3](25における密度) t エチルアルコール水溶液の流下時間 [s] tw水の流下時間 [s] 下付添字 W 水
絶対粘度 www td
tdη
η= (42)
運動粘度 ν=ηd [cm2s] (43)
38
[実験方法] 1) 粘度計を洗浄し粘度計内 に二連球で空気を送り込み
乾燥させる乾燥しにくい 場合はアセトンを滴下し た後再度二連球で空気 を送り込み乾燥させる 2)ピペットで一定体積(10mℓ) の純水を取り広い口 f から 粘度計に水を入れる 3)粘度計を恒温槽(25)に つけ約 10 分静置する 4)安全ピペッターを口 a に 取り付け液面が b 上部に 到達するまで吸い上げる 5)安全ピペッターを外すと 液面が降下しだす液面が bd 間を通過する時間をスト ップウォッチで測定する
6)純水での測定を 3 回繰り返す 7)純水を粘度計から取り除くその後粘度計内に二連球を用いて空気を送り込み乾燥させる 8)粘度計乾燥後複数の濃度に調整済みのエチルアルコール水溶液(10mℓ)を粘度計にいれ4)~6)の作業を繰り返し行う(3 回)なお濃度の異なるエチルアルコール水溶液を粘度計内に導入する場合には7)と同様に二連球を用いて粘度計内に空気を送り込み乾燥させる
表 4-1 エチルアルコール水溶液の濃度密度相対粘度の関係 エチルアルコール濃度
[wt] 密度 d[gcm3] 相対粘度
η ηw[-] 0
20 40 50 60 80
100
安全ピペッター接続
図 4-1 粘度計
液面の bd間の通過時
間を測定
f
39
43 密度測定 [目的] 本実験では水とエタノールの種々の組成の混合液体について密度を測定し分子間相互
作用について考察する [実験方法] 1)ピクノメーターの容積測定
図 4-2のピクノメーターの空の重量 wg を秤量する
ピクノメーターの蓋を取り外し
ピクノメーターを水で満たす
設定温度を 25として恒温槽 の電源を入れ恒温槽内の温 度が一定になるまで待つな お水温は恒温槽中の水銀温 度計から読む
恒温槽中に水を満たしたピク
ノメーターを入れる
約 10分間静置する
ピクノメーターに蓋をするこのときピクノメーターの容量
よりも余分の水は蓋の上部より排出される
ピクノメーターの外側を乾いた布で拭い秤量する(その重量を
wwg とする)
恒温槽の温度(25)における水の密度 dwgcm3(=099704gcm3)
より次式を用いてピクノメーターの容積を求める
w
w
dww
Vminus
= (44)
図 4-2 ピクノメーター
蓋
40
表 4-2 エチルアルコール水溶液の濃度と密度の測定結果(25) エチルアルコ
ール濃度[wt]
wrsquo[g] ww[g] V[cm3] w[g]
d[gcm3]
0 20 40 50 60 80
100
099704
エチルアルコール濃度[wt] 空のピクノメーターの重量 wrsquo[g] 水を入れたときのピクノメーターの重量 ww[g] ピクノメーターの体積 V[cm3] エタノール水溶液の入れたときのピクノメータの重さ w[g] エタノール水溶液の密度 d[gcm3]
容積 Vを求めたピクノメーターに混合溶液(調整済み)を入れてその重量 wgを秤量し次式で混合溶液の密度を求める
Vwwd minus
= (45)
エタノール濃度と密度 d の関係をグラフにプロットする
41
44 高分子溶液の粘度 [目的] 高分子溶液の粘度測定から分子量の粘度に与える影響について考察する [概要 ] オストワルド粘度計を用い種々の濃度のポリビニルアルコール(PVA ((-CH2CHOH-)n))水溶液の粘度を測定し粘度データよりポリビニルアルコールの分
子量を求める まず 05g100cc の濃度のポリビニルアルコール水溶液を調製する次にこれを原液
とし23 12 13 15の濃度の溶液を調製するこれらの溶液についてオストワルド粘度計を用いてそれぞれ流下時間を測定し相対粘度絶対粘度運動粘度を求め実験デ
ータより極限粘度[η]を求めるまた報告書には相対粘度絶対粘度運動粘度C
)ln( wηη
Cw
w-η
ηη vsポリビニルアルコール濃度の関係をそれぞれグラフにして提出する
[計算方法] エチルアルコール水溶液の粘度測定と同様の手法を用いて粘度の計算を行うなおポリビニルアルコール水溶液の密度はピクノメーターを用いて測定すること 表 4-3 ポリビニルアルコール水溶液の濃度密度相対粘度の関係 ポリビニルアルコール
濃度 [g100cc] 密度 d[gcm3] 相対粘度
η ηw[-] 05times(15) 05times(13) 05times(12) 05times(23)
05
42
[分子量の計算方法] 実験を行った結果以下のような粘度データを得られるとする実験データより極限粘度
を求めポリビニルアルコール(PVA)の分子量Mを決定せよ
PVA 水溶液濃度
C[g100cc]
相対粘度
ηηw[-]
絶対粘度
η[gcms]Cw
w-η
ηη
C)ln( wηη
05times(15) 1031 0008255 031 0305
05times(13) 039 0378
05times(12) 03 0289
05times(23) 0375 0353
05 0364 0334
ηw=8007times10-3 gcms 線状高分子の極限粘度[η]と分子量Mの関係は次式で与えられる [η]=KMα (46) ただしポリビニルアルコールの場合K=666times10-4α=064であるなお極限粘度[η]は次式で定義される
CC w
w
0
-][ limη
ηηη
rarr
= (47)
または
CC
)ln(][ w
0lim
ηηη
rarr
= (48)
よって濃度 CとCw
w-η
ηηまたは濃度 Cと
C)ln( wηη の関係をグラフ化し最小二乗法によ
り切片の値を求めると極限粘度[η]が決定される
Cw
w-η
ηηと C の関係より最小二乗法を用いて切片の値を決定すると(図 43 参照)切片=
03242傾き=00874となるよって極限粘度は以下のようになる[η]=03242同様
にC
)ln( wηη とcの関係より最小二乗法を用いて切片の値を決定する
(図 44参照)と切片=03249傾き=00256となり極限粘度は以下のようになる[η]=03249
Cw
w-η
ηηと Cの関係より決定した[η]=03242を用いてポリビニルアルコール(PVA)の
分子量 Mを計算する(46)式より以下のように PVAの分子量 Mを計算することができるM=([η]K)1α
=(03242(666times10-4))(1064)
=15811
43
y = 00874x + 03242
0
02
04
06
08
1
0 01 02 03 04 05 06 07
c[g100cc]
(η-ηw)(ηwc)
cw
w
η
ηηminus
極限粘度[η]
図 43 298Kにおける PVA濃度 CとCw
w-η
ηηの関係
y = 00256x + 03249
0
02
04
06
08
1
0 01 02 03 04 05 06 07
c[g100cc]
(ln(ηη
w))c
c)ln( wηη
極限粘度[η]
図 44 298Kにおける PVA濃度 CとC
)ln( wηη の関係
44
5 植物からの DNAの抽出 51 はじめに 分子レベルでの遺伝子の構造解明や遺伝子の発現に関する研究は近年急速に発展している
これら生命現象のしくみを分子レベルで解明しようという分子生物学の分野ではさまざま
な遺伝子の解析や応用方法が開発され我々の生活に身近なものになりつつある 本実験では初歩的な分子生物学に関する実験として植物(タマネギ)からの DNA の
抽出を行い抽出した遺伝子の電気泳動法による分離実験を試みる 52 試薬および器具 試薬 タマネギ(細胞中から遺伝子の抽出を行う) 台所用洗剤(洗剤中に含まれる界面活性剤には植物の細胞膜およびタンパク質を破壊す
る働きがある) 塩化ナトリウム(DNAは塩化ナトリウム水溶液に溶解し易い性質がある) エタノール(予め冷やしておくDNAはエタノールにほとんど溶解しない) 制限酵素(DNAを一定の部位で切断する働きを働きがある) TE緩衝液(pH緩衝剤が入った溶液) 器具 ビーカーミキサーフィルターメスシリンダー駒込ピペットガラス棒 マイクロピペット電気泳動装置ポラロイドカメラ 53 実験方法 1)タマネギは 1回の実験で半個のうち内側の半分程度を使用するタマネギ水 30ml台所用洗剤数滴をミキサー用ガラス容器に入れ40~60秒程度(固体状のタマネギがなくなる頃が目安)ミキサーにて混合する
2) 1)で作成した混合溶液をビーカーに移し約5g程度の塩化ナトリウムを加えガラス棒で静かに攪拌する粘性の大きな溶液が得られる
3) 2)で作成した溶液をフィルターを用いて濾過し濾液を回収する 4) 濾液の約2倍程度の量の冷エタノールをビーカーの壁伝いに静かに注ぐ 5) ビーカーを揺するとエタノール層に白くふわふわしたものが浮いてくるこれが DNAであるガラス棒で DNAを巻き取りシャーレ上にて DNAを回収する顕微鏡を用いて回収した DNAの状態を観察する
6)マイクロチューブ(容量 15ml)中に用意した 70エタノールを 8 分目程度まで注ぐ5)にて回収された DNAをマイクロピペットを用いて70エタノールの入ったマイクロチューブ中に移す軽く混ぜることによりDNA から不要な物質を洗い流す遠心分離してDNA をマイクロチューブの底に沈めた後溶液を捨てて DNA を乾かす乾いたらTE緩衝溶液を 1ml加えて放置するDNAの溶液が得られる
54 電気泳動装置による DNAの観察
本実験は職員と一緒に行うこと 実験を行う人はビニール手袋をすること 1) 抽出した DNAを電気泳動装置で観察するマイクロピペットを用いて以下のように調製した DNAの混合溶液を調製する(いずれの溶液も調製済)
45
2) マイクロピペットを用いてアガロースゲルの試料を流し込む穴(ウェル)に1)にて調製した溶液 Aおよび Bを注ぎ込む注入量は20μℓとする電気泳動装置のスイッチを入れて100Vの電流を流しアガロースゲル内にて DNAを電気泳動させる
3) 試料に予め加えられておいた青色の色素が 7 分目程度まで進んだら電気泳動を中止する(約 30分程度)
4) (ここでの作業は職員が行う) アガロースゲルを取り出し染色液に浸す染色後ゲルを取り出しポラロイドカメラで
DNAの泳動状態を撮影する
+ -
アガロースゲル
試料を流し込む穴(ウェル)
図 51 電気泳動装置
6 5 4 3 2 1
図 52 DNAの電気泳動写真の一例
55 電気泳動装置の原理 電気泳動装置の原理図を以下に示すアガロースゲル(寒天から不純物を除いたもの)中
に DNAをセットし電流を流すとDNAは電流の向きとは逆にマイナスからプラス方向
調製済 溶液 A(制限酵素なし) 水 11μℓ 10timesH Buffer 2microℓ 植物 DNA 5μℓ
調製済 溶液 B(制限酵素 Eco RI入り) 水 11μℓ 10timesH Buffer 2microℓ 植物 DNA 5μℓ 制限酵素 2μℓ
1 DNA(タマネギ)+制限酵素 2 DNA(タマネギ)+制限酵素 3 DNA(タマネギ) 4 λ-DNA(大腸菌)+制限酵素 5 λ-DNA(大腸菌) 6 サイズマーカー
500bp
46
に動く(このことを電気泳動という)これはDNA のリン酸部分が負に帯電しているためでありまたDNAはその長さにより泳動距離が異なる(短い遺伝子ほど長く泳動する)電気泳動ではこの性質を利用してDNAを大きさごとに分離することができる
塩基対数によってDNAを分離
EtBr (蛍光試薬)DNAの二本鎖内に入り込む
発光
UVλ=302nm
励起
分離後のアガロースゲルをエチジウムブロマイド(EtBr)溶液に浸す
DNAを含んだ溶液
アガロースゲル
リン酸部分が負に帯電
塩基 (ATGC)-
+
カメラで撮影
電圧
DNA構成成分(dNTPs)
バンドが明る
DNA量が
バンド(DNAの存在)
図 53 電気泳動の原理
56 制限酵素とは DNA は4 種類のヌクレオチド(GATC)が不規則につながってできている制限酵素はDNAの特定のヌクレオチドが並んでいる部分を切断する制限酵素には様々な種類がありEco RI(エコアールワン)と呼ばれる酵素は「GAATTC」といった並びの部分だけを切断することができる
GAATTC
CTTAAG
制限酵素
Eco RI
AAGCTT
TTCGAA
制限酵素
Hin dIII
図 54 制限酵素による DNAの切断
レポートについて 1 実験方法および実験結果の整理方法については指針書を参考にすること 2 実験結果については電気泳動の結果について考察すること(制限酵素の影響などにつ
いてまとめてください)
47
6 染色実験
61 はじめに
現在私達の身の周りでは様々な染料が使われている例えばT シャツやジーンズな
どの衣服は橙黄赤青など様々な色に染められている他にも私達が気付かないと
ころで多くの染色された製品を使用しているそこで本実験では高校の化学で学んだ
アゾ染料を合成してみるアゾ染料はアニリンを原料として作られているアニリンはベ
ンゼン環にアミノ基(-NH2)がついたものであるアニリンは無色の液体で水に溶けにく
くアンモニアより弱い塩基性を示すまたさらし粉(CaClO(ClO)H2O)水溶液を加えると
赤紫色を呈するこの呈色反応はアニリン特有のものであるので検出反応に用いられる
このアニリンを出発物質としてアゾ染料を合成してみる
62 試薬および使用器具
【試薬】 ①05moll 水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液
②2-ナフトール ③フェノール ④6moll 塩酸
⑤亜硝酸ナトリウム ⑥アニリン ⑦氷
【器具類】 ①電子天秤 ②50mℓビーカー ③100mℓビーカー
④ガラス棒 ⑤布(ガーゼなど) ⑥ピンセット
⑦ポリ手袋 ⑧ドライヤー ⑨シャーレ
10駒込ピペット(10ml ガラス製)
11駒込ピペット(1ml プラスチック製)
63 実験方法
1) 50mℓビーカーの中に 05molℓ水酸化ナトリウム水溶液 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回
NaOH 水溶液を分取するほぼ 20 mℓ分取できれば可)と 2-ナフトールを約 01g 入れ
よくかき混ぜる調製した溶液の中に布をつけその布はガラス棒でしぼってから(布
をガラス棒ですくいあげればよい)シャーレに広げる温度の異なる条件下(常温およ
び低温)で染料の合成実験を行うため布は最低 2枚調製した溶液と接触させそれ
ぞれ別々のシャーレ(低温用および常温用)に広げる
2) 新しいビーカーに水を約 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回分取)と 6molℓ塩酸約 4mℓ(10m
ℓ駒込ピペットで目分量で可)さらにアニリン約 1mℓ(プラスチック製 1 mℓ駒込ピペッ
ト)を入れてよくかき混ぜる染料の合成を常温および低温下で行うためこの溶液を
2つ調整する
低温下で反応させる溶液は恒温槽で 10~15 分ほどよく冷やした後亜硝酸ナトリウ
ム 05g を加えてよくかき混ぜる
常温下で反応させる溶液には冷却作業を行わずに亜硝酸ナトリウム 05g を加えて
よくかき混ぜる
3) 2)でつくった水溶液をシャーレに広げた布に注ぎ生成される染料を布によく染み
込ませ5分程放置する
4) 色の付いた布を取り出してポリ手袋をした手できれいに水洗いをし乾燥させる
48
5) 色差計を用いて乾燥した布の Lab(L明度aおよび b色度)を測定する
2)で作った溶液は5以下では無色の溶液ですが5以上になると淡い黄色になりま
す
【解説】
アゾ染料はアゾ基(-N=N-)を持っていてこのアゾ基によって鮮やかな橙色を呈色し
ます今回合成したアゾ染料は図の 1-フェニルアゾ-2-ナフトールです意外かもしれ
ませんが指示薬として使われているフェノールフタレインもアゾ化合物ですフェノール
フタレインは pH の変化によって色が出てきす染料の中でも最初は無色のものもありますが
温度を変化させたり酸性やアルカリ性にすると色が出てきます
ベンゼン ニトロベンゼン
N2Cl
ニトロ化 濃硫酸(濃硝酸)
還元反応 濃塩酸
(Sn又は Fe)
アニリン塩酸塩
遊離反応 NaOH
アニリン塩酸塩に強塩基を反応させる
と弱塩基であるアニリンが遊離する
氷冷+亜硝酸ナトリウム アニリン
塩酸
ジアゾ化
塩化ベンゼンジアゾニウム
塩化ベンゼンジアゾニウム
は熱によって窒素とフェノー
ルに分解される
カップリング
C10H7ONa (ナトリウム 2-ナフトキシド)
O
N =
1-フェニルアゾ 2-ナフトール
NH3Cl NH2
49
7 ガスクロマトグラフ質量分析計による茶葉中のカフェインの分析 71 はじめに ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)は極めて低い濃度の化学物質の同定や未知物質の構造決定に極めて強力な分析機器の一つであるGCMSを用いるとサンプルの中に含まれているある成分の分子構造(カフェインの分子構造を図 71に示す)やその量が分かりますもちろん分析機器ですので測定できる物質対象となる系や測定条件にはある
程度の制約があります混合物質を分離するガスクロマトグラフ(Gas ChromatographGC)と分離された成分(物質)を分析(構造決定と濃度測定)する質量分析計(Mass SpectrometerMS)を組み合わせた装置であるこの装置は有機化学生化学環境化学などの多くの分野で非常に多用されている例えば極めて低い濃度でも生体へ強い影響が懸念されるダイ
オキシン類などの土壌や河川の水中での含有率の決定や食品や医薬品中の微量成分の決定
にも利用されている 一方日本人に長い間親しまれてきた緑茶が近年産業界や医学
界で注目されている茶葉にはカフェイン(分子構造図 71)カテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドなどの有用成分が多く含まれておりその効能が注目されている 本実験では茶葉中に含まれるカフェインに対してGCMSを用いて分析する茶葉中には種々の物質が含まれておりGCMS分析を容易にするため前処理として超臨界二酸化炭素抽出(4015MPa程度の高圧力の二酸化炭素を溶剤として利用)により茶葉からカフェインの抽出を行いそのサンプルを GCMSにて分析する
図 71 カフェインの分子構造 図 72 物質の分析 個々の物質や装置についてはインターネットにより下記のWebサイトのフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』などにより調べるとよいカフェイン(caffeine)はアルカロイドの一種プリン環を持つプリンアルカロイドの一種でコーヒー類に含まれることか
らこの名がある化学名は137-トリメチルキサンチン(C8H10N4O2) コーヒーコーラ緑茶紅茶ガラナココアなどに含まれる(量は緑茶が一番多い)結晶は一水和物(C8H10N4O2bullH2O)もしくは無水物(無水カフェインC8H10N4O2)として得られ
る白色の針状または六角柱状結晶で匂いはなく味は苦い融点は 238昇華性がある出典フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』httpwwwwikipediaorg 装置「GCMS」httpwwwanshimadzucojpproductsgcmsqp2010htm (島津) 「超臨界抽出装置」httpwwwkagakucomjasco39-49html (日本分光)
50
レポート課題 1茶葉中に含まれるカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドの中から3つの物質を選びその物質について調べた結果を A4 レポート用紙2枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
2GCMS についてA4 レポート用紙1枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
3与えられたサンプルは茶葉1gから抽出されたのである実験結果よりもとの茶葉
1g中に含まれるカフェインの量を推算し計算式とあわせて示すこと 72 原理および装置 実験で使用する島津製の GCMS装置の全体図を図 73に原理の概略を図 74に示す
1
23
4
5
67 8
9
10
キャリアーガス
試料物質
1ボンベ(He)2圧力計3マイクロシリンジ4サンプラー5試料導入部6分離カラム
7セパレーター8イオン化室9磁石10電子増倍管11記録計
11
図 74 ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)の概略図
サンプルフォルダー
51
GCMS 装置は分離部である図中の 1~6 のガスクロマトグラフ(GC)と7~11 の検出部である質量分析計(MS)から構成される 3のマイクロシリンジを用いて試料を GCMSに導入する導入された試料は5試料導入部でガス化され6分離カラムに導入される分離カラムには吸着剤が充填されおり混合物の試料を導入した場合各物質と吸着剤との
親和性の違いにより各物質の分離カラムから排出されるタイミングは異なる分離カラム
を排出された試料は8イオン化室でイオン化され10電子倍増管にて検出される アセトンに溶解したカフェインの GCMSによる分析結果の一例を以下に示す図 75にク
ロマトグラム図 76にカフェインのピークのマススペクトルを示す
図 75 GCMSにより得られたクロマトグラム
横軸がリテンションタイムで縦軸がピーク強度を表す
図 76 カフェインのマススペクトルとカフェイン(分子量MW=194)の構造
(図 75中のリテンションタイム 126min付近のピークに起因するマススペクトル) 茶葉中にはカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイド以外にも繊維であるセルロースなど多くの物質が含まれているため茶葉そのものを
そのままサンプルとしてGCMSで分析することは困難であるセルロースなどの分子量の大きな物質はカラムに詰まってしまい分析できないそこで今回は超臨界二酸化炭素
による抽出により主にカフェインを他の物質と分離抽出した通常よく利用されるアセ
トン抽出(アセトンに茶葉を浸し特定の成分を抽出する)ではカフェイン以外にも多く
の物質が抽出されるため図 75 のような単独のピークを得ることは難しく複数のピークがクロマトグラムに見られるこのサンプル(この場合茶葉からの抽出物)にはカフェ
イン以外の不純物は少なかったがガスクロマトグラフの分離カラムによりさらにそれ
らの混合物が精度よく分離されるクロマトグラムのピークはそれらサンプル中に含まれ
ていた個々の物質を表しているクロマトグラムのピークを選択することで分子構造解析
したい物質を選んだことになる選択したクロマトグラムのピークの表している物質(ここ
ではカフェイン)に対応するマススペクトルが図 76 に表示されているマススペクトル
52
で横軸がその成分(ここではカフェイン)分子を構成している原子の原子量で縦軸がそ
の量を表しているのでマススペクトルから分子構造を解析するためにコンピュータ内
に蓄えられた物質ごとのマススペクトルデータと今回測定したマススペクトル(分子内に含
まれている各原子の数)を比較することで測定したサンプル中のクロマトピークを選択し
た分子がどのような原子をどれだけ含んだ分子であったかがわかりそれからその物質
がどのような分子構造の物質である可能性が高いかをコンピュータが検索し結果を示す 73 実験サンプルの設置と GCMS装置の操作方法 実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS装置のサンプルフォルダ
ー(図 73)にセットするこのサンプルは茶葉 1gを 50ccの高圧セルにて超臨界二酸化炭素を利用して4015MPa2時間接触の条件で抽出した固体を10gのアセトンに溶かしたものである またコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に装置および装置制
御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 本実験で使用する GCMS の操作は全てコンピュータのモニター上で GCMS の解析プログラムソフトを使用することで行うコンピュータの操作方法を以下に示す なおコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS 装置のサンプルフォルダー(図 73)にセットするまた装置および装置制御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 1)パソコンのデスクトップ上のアイコン「GCMS 分析」をクリックすると以下のようにGCMS制御プログラムを起動するその後「OK」ボタンをクリックする
図 77 GCMD分析用ソフトウェア「GCMS分析」の起動
まず「GC-MS分析」をクリック
「OK」ボタンをクリック
53
2)制御プログラムが起動されパソコンと GCMSの接続が開始される
図 78 「GCMS分析」の接続確認画面 3)GCMSとパソコンの接続が完了すると以下のような画面が表示される
図 79 「GCMS分析」操作画面
4)マススペクトルによる分子構造の解析 サンプル(この場合茶葉からの抽出物)には多くの物質が混じり合っていたがガス
クロマトグラフの分離カラムによりそれらの混合物が精度よく分離されるクロマトグラ
ムのピークはそれらサンプル中に含まれていた個々の物質を表しているクロマトグラム
のピークを選択することで分子構造解析したい物質を選んだことになる選択したクロマ
トグラムのピークの表している物質(ここではカフェイン)に対応するマススペクトルを選
択するマススペクトルは横軸が原子量で縦軸がその量を表しているのでマススペク
トルから分子構造を解析するために「定性処理」を行う シミラリティ検索結果が表示され分析により得られたスペクトルと類似のスペクトルを有
する物質の一覧が表示される上部に表示される物質ほどスペクトルが一致していること
を示す
接続状況が表示される
「トップへ」
をクリック
54
図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果
図 711 表示スペクトルのシミラリティ検索結果 10)図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果の印刷 「レポート(R)」をクリックし「検索結果(R)」をクリックすると検索結果が印刷される
GC-MS 分析で得られたマスス
ペクトル
データベース中
のマススペクト
ル
55
参考資料 生理活性物質の精製 カフェインの利尿作用のように生物活動に影響を与える物質を生理活性物質といいます
天然物には生理活性物質を多く含むものがあります一般に天然物は多くの成分を含ん
でおり特定の生理活性物質を分離抽出するには種々の分離技術が必要ですまた生
理活性物質には60以上の温度でその生理活性を失う(失活)ものや溶剤として広く用いられているクロロホルムなどの有機溶剤中で失活するものが多いそこでこれら生理活性
物質の分離精製技術の開発が望まれており30~60程度のマイルドな温度条件で操作できる二酸化炭素を機能性溶媒として利用する超臨界抽出も有効な分離技術として注目されて
いる超臨界二酸化炭素は気体と液体の中間の性質を持ち物質の分離に役立っています 臨界点付近の高密度気体は超臨界ガスまたは超臨界流体と呼ばれ臨界圧力前後でそ
の溶解能力が著しく変化することから工業的にも種々の分野で利用されています一例と
して超臨界二酸化炭素(SC-CO2)によるコーヒー豆からのカフェインの抽出プロセス(a)
ならびに超臨界二酸化炭素に対するカフェインの溶解度(b)を図に示します図(c)に示す
ように固体のカフェインがガスである超臨界二酸化炭素に溶解します
このように超臨界二酸化炭素を用いた技術はコーヒー豆からのカフェインの抽出プロ
ポリスからの生理活性物質の抽出に利用されています
図 超臨界二酸化炭素抽出を用いたコーヒー豆からのカフェインの抽出
56
付表 最小二乗法について 直線で近似する場合 f (x) = a0 + a1x (A1-1) 式(A1-1)のように近似させるとする測定値 yiとの残差を eiとすると式(A1-2)のようになる ei = yi - f (xi) = yi - ( a0 + a1xi ) (A1-2) ここで式(A1-2)の両辺を二乗してその i に関する総和をとりその値を S とすると次式となる
sumsum==
+minus==n
iii
n
ii xaayeS
1
210
1
2 )( (A1-3)
S を最小化するような a0a1を求める式(A1-3)を a0a1について偏微分すると次式とな
る
sum=
+minuspartpart
=partpart n
iii xaay
aaS
1
210
00)( sum
=
+minusminus=n
iii xaay
110 )(2 (A1-4)
同様にa1について編微分すると次式のようになる
sum=
+minusminus=partpart n
iiii xxaay
aS
110
1])([2 (A1-5)
Sが最小となる時は次式が同時に満たされる時である
00=
partpartaS
01=
partpartaS
(A1-6)
よって誤差が最小となる a0a1を求めるためには式(A1-6)を連立して解けばよい
sumsumsum===
+=n
ii
n
i
n
ii xaay
111
10 1 (A1-7)
sumsumsum===
+=n
ii
n
ii
n
iii xaxaxy
1
2
11
10 (A1-8)
式(A1-7)と式(A1-8)を a0a1を変数とみなし連立して解くと次式を得る
n組のデータ(xiyi)(i=12hellipn)に対して回帰直線 y= a0 + a1x を最小二乗法で求めて出力しデータ番号 iデータ yi直線で推定した値 )( ii bxay += および残差
iii yy minus=ε を出力するようなプログラムをつくりたい基礎式を導出せよ (ヒント残差の二乗の和が最小になるように係数 a0a1)を定めるのが最小二乗法
である)
57
sumsum
sumsumsumsum
==
====
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
n
ii
n
ii
xxn
xxyyxa
1
2
1
2
1111
2
0
)(
))(())(( (A1-9)
sumsum
sumsumsum
==
===
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
xxn
yxxyna
1
2
1
2
1111
)(
))(()( (A1-10)
よって式(A1-9)(A1-10)を用いれば最も誤差を小さくするような直線 y = a0 + a1x が求められる
y=a1x+a0 にて近似
誤差 ei
x
y
誤差が最小になる関数(直線 y=a1x+a0の場合)
図1 最小二乗による近似
誤差の和Sが最小
S
a0
a1
直線 y=a1x+a0 の近似
誤差の全体の和はS=Σei=Σyi-(a1xi+a0)
Sは変曲点にて最小値を示すすなわち(partSparta0)=0 (partSparta1)=0
図2 a0a1とSの関係
19
その中からフラッシュメモリーの場合は「リムーバブルディスク」をフロッピーディ
スクの場合は「35インチ FD」のアイコンをダブルクリックしてくださいファイルが保存されていれば次の画面が出てきます
この画面の中の「ad_graxls」ファイルをデスクト
ップにコピーしますまず「ad_graxls」ファイルを左クリックしますこの時クリックした指はは
ずさないようにしますその状態のままデスクトッ
プまでファイルを移動させますそしてデスクト
ップ上の任意の場所でクリックした指をはずします
これでデスクトップ上に「ad_graxls」のファイルがコピーされましたのでデスクトップにコピーさ
れたファイルをダブルクリックして開きますコピ
ー操作が上手くいかなかった場合もう一度移動の操作を行ってください
必ずデスクトップにコピーしてから開く操作を行って下さいフロッピーディスクから直接
開いて操作を行った場合正しく保存されない可能性があります 「ad_graxls」のファイルを開くと次のような画面が立ち上がりますもし画面が違う場合は画面の下部にある「吸着データ」のタグ をクリックしてくださいこの画面
でデータの処理や計算を行いますでは実際の操作に入る前に予めこのファイルに名前
を付けて保存しておきますまずExcelの画面のツールバー「ファイル」から「名前を付けて保存」をクリックします下のような画面が起動します
20
ファイルの保存先を変えたい場合画面上部のボタンをクリックし保存先にデスクトッ
プを選択します次にファイル名の部分に各自ファイル名を入力しますファイル名は何
でも良いですが分かり易い名前にしておくとファイルの管理がやり易くなります日付や
数字を入れると同名のファイルをいくつも管理する場合に便利ですここでは「吸着実験デ
ータ整理 4月 01」とし「保存」ボタンをクリックします
ファイル名変更後Excelの画面上部のタイトルバーのタイトルが先ほどの名前(上の図とは異なります)になっていることを確認してください
この操作を行うことによって元のデータである「ad_graxls」を変更してしまう心配がなくなります元のデータである「ad_graxls」はファイルが破損しまたは間違った操作の結果を誤って保存してしまった場合などの補助ファイルとなりますので大切に保管しておいて
下さい今後配布するデータは先ほど説明した手順で名前を変えて保存し元のデータに
直接変更を加えないようにして下さい ここから実際の作業に入ります初期状態では模擬のデータが入力されています入力
データは予め計算しておいた酢酸濃度Cb[moll](濃度を Cと表示している場合もあります)と活性炭吸着量 n[molg]になります下の画面の丸で囲んだ部分がそれぞれの値でBCカラム(列)の 4~9行には数値が入力されています関数ではありませんこのデータを利用して実際のデータ解析を行ってみましょう下記のように行うと幾つかのグラフが
現れ実験データに対してラングミアーの単分子吸着を仮定したモデルを用いて精度よ
く計算線が描けることがわかります 今回はCbnの値を入力する必要はありませんExcelが自動的に計算を行って結果を表示するようになっていますつ
まりセル D5に「=B5C5」と関数を入力しこの関数に対してフィルハンド
ルを利用してセル D6~D9へコピーし
ファイルの保存先を変えたい場合画面
上部のボタンをクリックし保存先に
デスクトップを選択します
変更するファイル名はここをクリッ
クして書き換えます
名前を変更したらここをク
リックして保存します
21
まています 次に酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着量 n[molg]の関係および酢酸濃度 Cb[molL]と Cbn[gL]の関係をグラフ化します今回は自動的にグラフが作成されるようになっていますので複
雑な操作は必要ありません ここではデータに対してそれを精度よく表現する近似式をグラフ上に描きその関数
を数値として求める方法を Excelで練習してみましょう
グラフを表示させるには画面の下にある「Graph1」もしくは「Graph2」のタグ
をクリックします「Graph1」には酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着量n[molg]の関係のグラフが「Graph2」には酢酸濃度 Cb[molL]と Cbn[gL]の関係のグラフが表示されます「Graph2」はLangmuir の等温吸着式による相関を表したもので横軸に酢酸濃度 Cb[molL]をとり縦軸に酢酸濃度 Cb[molL]を活性炭吸着量 n[molg]で除した値 Cbn[gL]を示していますLangmuir の等温吸着式についてはこの後の章で説明してありますので各自読んで理解して下さいLangmuirの等温吸着式では式中の定数 ninfin(飽和吸着量)と K(吸着平衡定数)を実験データから最小二乗近似で決定する場合が多くありますここでは
その例を取り上げてデータに対してそれを精度よく表現する近似式をグラフ上に描き
その関数を数値として求める方法(最小二乗法最小二乗については付録に示しており
また化学工学プログラミングの講義においても説明します)を Excelで練習します 配布された Excel ファイル「ad_graxls」では実験点が表示されているだけでそれを精度よく表現する近似式の直線のグラフは「Graph2」に表示されていません今から次の手順で「Graph2」の図(グラフ)に近似式の直線のグラフを表示しますExcel の場合近似曲線(ここでは直線)を求める場合コンピュータが自動的に最小二乗法を使って近似曲線
を計算しています
「Graph1」の画面 「Graph2」の画面
Excelの sheetが表示されたらまずファイル名を変えデスク
トップに保存して下さい次
にGraph2のタックを左クリックして最小二乗法のグラフを
確認して下さい
22
38 Langmuirの等温吸着式による相関 はじめにLangmuir式の定数 ninfinと Kを決定するために「Graph2」酢酸濃度 Cb[molL]と
Cbn[gL]の関係のグラフから最小二乗法により直線の式を求めますExcelを用いてデータに対して近似直線のグラフを描き最小二乗法の直線の式を求めます
次のような「近似曲線の追加」のウィンドウが現れたら今回は線形近似(直線で近似
y=ax+b の式)を選びますので線形近似が黒色に反転していることを確認して「近似曲線の追加」のウィンドウの右下の「OK」ボタンをクリックして下さい
実験点の何れかにポインタをあわせて
右クリックする
近似曲線の追加(R)を選択して左クリックする
「線形近似」であること
を確認して「OK」ボタンをクリックします
23
「近似曲線の書式設定」
のウィンドウでオプシ
ョンから「グラブの書式
を表示する」の前を選ん
でチェック(前のチェッ
クボックスをクリック)
した後「OK」を押す
現れた直線にポインタをあわせて
左クリックすると「近似曲線の書式
設定」のウインドウが表示されます
ここをクリックします
この「オプション」のタ
グをクリックします
「y=」の関数
が現れるのでここ
をクリックする
式の文字フォントが初期値
「8」と小さいのでここ
のボタンをクリックし
フォントサイズを選ぶリス
トボックスを表示し「22」程度の大きなサイズを選択
しクリックする
24
「Graph2」酢酸濃度 Cb[molL]と Cbn[gL]の関係のグラフから最小二乗法により直線の式がこのように求められましたExcel を用いてデータに対して近似直線のグラフを描き最小二乗法の直線の式を求めるこの方法は他の実験データの解析などにも利用できますので
各自活用して下さい 表示された関数式「y=43865+2654」はノートにメモして下さいこの傾き 43865と
切片 2654からLangmuir式の定数 ninfinと Kを決定します決定方法の詳細はこの後の 36 の Langmuir式のパラメータ決定法に示しています ラングミュアの等温吸着式を変形すると次式となる
CCnKnCKn
CCKn
Cβ+α+
==
+= infininfininfin
11)1(
ただしα=1ninfinβ=1(ninfinK)とするこの式より Cnを縦軸Cを横軸とした関係のグラフは傾きα=1ninfin切片β=1(ninfinK)の直線関係を与えることを示しています そこでExcelのシートを利用してこの値からLangmuir式の定数 ninfinと Kを次のように決定しますセル C18D18に Graph2で求めた数値 2654と 43865を代入しますその後D19と C19に関数を ldquo=1D18rdquoとrdquo=D18C18ldquoを代入しますセル内の式は半角で入力してください
現れた関数の文字フォン
トを大きく(例えば 22)してその数字をメモし
吸着データシートの C18と D18に記入する
C18D18 に Graph2 で求めた値 2654 と 43865 を代入した後D19 と C19 に関数を ldquo=1D18rdquoとrdquo=D18C18ldquoを代入する
25
この Excel表示では最小二乗法を用いて決定した傾きαと切片βを用いて α=1ninfin=43865 β=1(ninfinK)=2654 得られた傾きおよび切片よりninfinおよび Kは次のように求まる
ninfin=1α=1D18=000228 molg-1 K =(1ninfin)β=αβ=D18C18=165
つまりセル D19にはninfinの値がセル C19にはKの値が表示されますこれらの値はラングミュア(Langmuir)の単分子吸着モデルで計算した理論線と実験と比較する場合に利用します実験結果に対して理論的な考察を行う例としてラングミュア(Langmuir)の単分子吸着モデルで理論線を計算し実験と比較するにはこの Excelファイルを利用して次のように計算しグラフに表示します セル F5~F30 には溶液中に残る酢酸濃度 Cb[molL]に対する活性炭に吸着された吸着量n[molg]の関係のグラフ「Graph1」の横軸の酢酸濃度 Cb[molL]の適当な値が既に入力してありますこれらのそれぞの酢酸濃度 Cb[molL]に対する吸着された酢酸の吸着量 n[molg]の理論値をラングミュア(Langmuir)式で計算しますラングミュア式は次式で与えられます
KCKCnn
+=
infin
1 (310)
ここでこの実験データを最も精度よく計算できるように決定した ninfinおよび K は上述のようにninfin=1α=1D18=000228 molg-1 K =(1ninfin)β=αβ=D18C18=165 でありこれらの値はセル D19にninfinの値がセル C19にKの値が表示されていますこの値を利用して「Graph1」に計算線を描くにはまずセル G5~G30 にセル F5~F30 のそれぞれの酢酸濃度 Cb[molL]に対する吸着された酢酸の吸着量 n[molg]の理論値をラングミュア式で計算しますそのためにはセル G5 にラングミュア式を次のように記述しますただしセル D19の ninfinの値セル C19の Kの値は常に同じセルから参照するので絶対参照($マークを付けて$D$19 $C$19と記述します)で記述します
Langmuir式をセル G5に記述するただし濃度はF5の値を相対参照しD19と C19は絶対参照($マークが必要)することを忘れないように
セルG5に記述すべき数式
=$D$19$C$19F5(1+$C$19F5)
26
G5記述後フィルハンドルを使用してG5の関数を G6~G30までコピーします Sheet1から Graph1 のタグをクリックしGraph1 に計算線が表示されたことを確認しましょうこれでラングミュア式によるデータの解析は終了です実験値と理論値を比較して現象
について考察してみて下さいラングミュア式を理論的に導く場合にある仮定をしている
のですがその仮定をしているラングミュア式が実験データを精度よく計算できていれば
その仮定が妥当なもとであったと考察できます 与えられたモデルデータでラングミュア式によるデータ解析ができれば他の理論(例え
ばフロインドリッヒFreundlich式や BET式レポートはどちらか一方でも可です) についてもExcel で計算してみましょうレポートには自分のデータについてここで行った内容と同様に計算しその結果を考察に記述して下さい 自分のデータについて同様の計算をするにはまずいままで計算を行った Excel ファ
イルを保存しますデータを自分の実験データに置き換える前に Excel ファイルをさらに別の名前で保存します与えられた Excel ファイルは初期状態では模擬のデータが入力されているので今回自分達の実験したデータを入力していきます入力するデータは予め計算
しておいた酢酸濃度 Cb[moll]と活性炭吸着量 n[molg]になります下の画面の丸で囲んだ部分にそれぞれ自分の実験データを入力していきます
今回はCbnの値を入力する必要はありませんExcelが自動的に計算を行って結果を表示するようになっています 次に酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着
量 n[molg]の関係および酢酸濃度Cb[molL]と Cbn[gL]の関係をグラフ化します今回は自動的にグラフが作成
されるようになっていますので操作は必
要ありません 39 Freundlichの等温吸着式による相関 今回の実験で得られた酢酸濃度 Cbと活性炭吸着量 nのデータを利用してFreundlichの等温吸着式の定数 abの値を求めFreundlichの等温吸着式の理論線をグラフに追加します ここでFreundlich式は次式で表されます
bbaCn1
=
このままでは定数 abの値を決定することが難しいので上式の両辺の対数をとり線形化しますすると次式となります
bCb
an ln1lnln +=
ここでln Cbと ln nの関係をグラフにプロットすれば傾き 1b切片 ln aの直線関係が得られますしたがって実験データである酢酸濃度 Cbと活性炭吸着量 nの値の対数をそれぞれ計算します配布した「ad_graxls」ファイルを開き「吸着データ」シートの任意の部分に以下のような表を作成します
27
次にln Cb[-]の列の最初のセルに以下の数式を入力します
=ln(B5) 上式中の「B5」は Cb の値の最初のセルの位置を指します各個人の位置によって変更してください
次にln n[-]の列の最初のセルに以下の数式を入力します
=ln(C5) 上式中の「C5」は nの値の最初のセルの位置を指します各個人の位置によって変更してください
ここでln Cb[-]ln n[-]の値に対しそれぞれオートフィルを行い計算させますすると以下のようなデータが完成します
計算した ln Cb[-]ln n[-]の値をグラフにプロットし最小二乗法による直線式を求めます
28
ここで以下のような直線の式が得られたとします
9135ln31690ln913531690 minus=there4minus= bCnxy
上式より切片は-5913傾きは 03169となるので以下の要領で定数 a1bを計算します ==there4minus= minus 91359135ln eaa 000270
316901=
b
a の値を Excel で計算させる場合は任意のセルに以下のような数式を入力することで求めることができます
=exp(-5913) これでFerundlich等温吸着式の定数 a1bの値が決定しましたこの値は後で使うのでノートなどにメモしておいてください 次に決定した Ferundlich 等温吸着式の定数 a1b の値を用いてFerundlich 等温吸着式のグラフを作成します先ほども示したように Ferundlich等温吸着式は次式で表されます
bbaCn1
=
従って定数 aと 1bの値はすでに決定しているので任意の Cbの値に対する nの値を数点求めればFerundlich等温吸着式で求めた理論線が得られます以下の操作で理論線を引くことができます Langmuir 等温吸着式による相関のときと同様にExcel の「吸着データ」のシート上の任意の場所に以下のような表を作成します
次に Ferundlich等温吸着式に従いnの値を計算します
bbaCn1
=
式中の定数 a1bは先ほど計算した値を用いますしたがって式は次のようになります
31690002700 bCn times=
この式を Excelのセル内に記入すれば計算ができます次の
29
ように記入します
=00027G5^03169 ここで式中の「G5」は Cbの値が 0のセルを指しています各個人の位置によって変えてください 次に式を記入したセルを Cbの値が 05のところまでオートフィルを行いますそうするとすべての Cbに対して nの値が計算されます
これで Freundlich等温吸着式のデータが完成しましたので次に「Graph1」酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着量 n[molg]の関係のグラフにこのデータを追加し理論線を引きます理論線の引き方は Langmuirによる相関のときと同様の操作を行ってください グラフの書式等を変更し整理すると以下のようなグラフが出来上がります
310 吸着等温線とは 固体の吸着剤を溶液と接触させる時一定量の吸着剤によって吸着される溶質の量は温度一定ならば溶質の濃度の関数になる一定温度での吸着量を温度に対してプロットした時に
得られる曲線を吸着等温線というこの吸着等温線を比較的よく表す経験式として次の
Freundlich式がある
n=aC1b (1) ここで n は吸着剤の質量あたりの吸着量C は吸着平衡濃度a と b は実験から決定されるパラメータであるがその物理的意味は多少希薄である これに対し理論的な意味を持つものに次のラングニュア(Langmuir)の吸着等温式がある
30
KCKCnn
+=
infin
1 (2)
ただしninfinは飽和吸着量Kは吸着平衡定数であるこの式は
1)吸着分子が固体表面で単分子以上の厚い層を作ることはない 2)吸着分子同士の間の相互作用はない
という二つの仮定にもとに導かれたものである 結果の整理および報告 Freundlich吸着等温式Langmuir吸着等温式の各々のパラメータの最適値を求めよまた活性炭の吸着特性および表面積について考察し化学工学における吸着操作の重要性につい
ても検討せよ 311 吸着等温式 (a) ヘンリー(Henry)型吸着等温式 液相の濃度あるいは気相の圧力が小さい場合吸着分子間の距離が十分に長いため吸着
分子同士の相互作用が無視でき固体表面と吸着分子のみの相互作用で吸着量を決定できる
とき次式のように表される
n=KC (3)
ここでKは比例定数である図 3-1の(a)に示すように濃度 Cと吸着量 nは比例関係があり一般に吸着量が小さい範囲で成立する気体の場合は溶液濃度 Cの代わりに気相圧力 pを用いればよい
濃度(分圧)
濃度(分圧)
濃度(分圧)
濃度(分圧)
吸着量
吸着量
吸着量
吸着量
(a)ヘンリー型 (b)ラングミュア型
(d)BET型(c)フロインドリッヒ型
0
0
0
0
図 3-1 吸着等温式
31
(b)ラングミュア(Langmuir)型吸着等温式 ラングミュアは図 3-2 に示すように固体表面に同等な吸着力を示す吸着サイトがあり
表面に 1分子層だけ吸着する(単分子層吸着)と仮定して平衡状態における吸着量と溶質濃度(気相分圧)のと関係を導いた全吸着点のうち吸着分子に覆われている吸着点の割合
をθ[-]とすると分子の脱着速度 rrsquo[mols-1]はθに比例する比例定数を a[mols-1]とすると次式のように表される
吸着剤
吸着分子
吸着サイト
図 3-2 固体表面上の吸着サイト(Langmuir式の導出) r=aθ (6) また気相からの吸着速度 r[mols-1]は空いている吸着点の割合(1-θ)[-]と溶液濃度 C[molm-3]に比例する rrsquo= b(1-θ)C (7) このときの比例定数を b[m3s-1]とするまた平衡状態では両速度は見かけ上等しいため以下の式が成り立つ aθ=b(1-θ)C (8) これを変形する
CbaCbsdot+
sdot=θ (9)
ここで飽和吸着量を ninfin[molkg-1] ba を K[m3mol-1](Kは吸着平衡定数)とおくと infin=nnθ
となるので次式が得られる
32
KCKCnn
+=
infin
1 (10)
これをラングミュア式と呼ぶ
(c)フロインドリッヒ(Freundlich)型吸着等温式 フロインドリッヒの吸着等温線は図 3-1(c)のように示される
n=aC1b (11) nは吸着量[molkg-1]で aと bはともに吸着定数[-]である (d)BET(Brunauer-Emmett-Teller) 型吸着等温式
BET型の吸着等温線は図 3-1(d)に示されるラングミュア式は表面に 1分子層だけ吸着すると仮定したものであるがBET式は無限分子層まで吸着できる式である図 3-3に示すように吸着した分子がそれぞれ次の層の吸着サイトとなり分子は積み重なって多分子
層に無限層まで吸着できるものとし各層への吸着にラングミュア式を適用すれば次式の
ように表せる
( ) ( )CKCCCKqq
minus+sdotminussdotsdot
=infin
11 (12)
この式は多孔質固体の細孔表面積を窒素ガスの吸着によって測定する際に利用される重要な式
である
表面の吸着サイト
分子上の吸着サイト
図 3-3 多分層吸着モデル
Langmuir式のパラメータ決定法 水溶液からの酢酸の活性炭に対する吸着平衡データ(吸着平衡温度 12)は表 3-1のよ
うに与えられる実験データよりラングミュア式のパラメータ(K吸着平衡定数ninfin飽和吸着量)を最小二乗法で決定せよさらにラングミュア式より決定した ninfinKの値を用いて吸着等温線を計算し計算線として図に示し実験点と比較せよ
33
表 3-1 n C Cnの関係
ラングミュア式は式(310)で与えられるこの式を変形すると次式となる
CKnCK
n infinsdot+
=11
(313)
両辺に Cをかけると以下の式が導出される
CCnKnCKn
CCKn
Cβ+α+
==
+= infininfininfin
11)1( (314)
ただしα=1ninfinβ=1(ninfinK)とする式(314)より Cn と C の関係のグラフプロットは傾きα=1ninfin切片β=1(ninfinK)の直線関係を与えることを示している表 3-1の値を用いて計算した Cnと Cの関係を表 3-1および図 3-4に示す 最小二乗法を用いて傾きαと切片βを決定した α=1ninfin=43865 β=1(ninfinK)=2654 得られた傾きおよび切片よりninfinおよび Kは次のように求まる
ninfin=1α=1D18=000228 molg-1 K =(1ninfin)β=αβ=D18C18=165
0
50
100
150
200
0 200 400 600
C [ molm-3 ]
Cn [ kgm-3 ]
傾き = 1 ninfin
1 ninfinK
切片0
05
1
15
2
25
3
0 100 200 300 400 500
液相の溶質濃度 C [ molm-3 ]
吸着量 n [ molkg-1]
液相と溶質濃度 C [ molm-3 ]
吸着量
n[ m
olk
g-1]
実験点
Langmuir式パラメータninfin 00033 [ molg-1 ]K 00086 [ m3 mol -1 ]
図 3-4 ラングミュア定数の決定 図 3-5 12における酢酸濃度 Cと
吸着量 nの関係
C [molm-3] n [molkg-1] Cn [kgm-3] 460 225 109 529 214
268 199 149 105 060
172 128 732 504 357
34
Freundlich式のパラメータ決定法 酢酸水溶液中における酢酸の活性炭に対する吸着実験を行ったところ以下のような実験デー
タを得たただしCbはバルク相における酢酸濃度n は活性炭に対する酢酸の吸着量を示す
Cb[molL] n[molg] log10Cb log10n 04621 000205 02410 000175 01139 000139 00519 000105 00243 000081
実験データを利用して次式で与えられる Freundlichの等温吸着式の定数 abの値を求めたい
bbaCn1
= (1)
このままでは定数 abの値を決定することが難しいので上式の両辺の対数をとる
bbb
bb
Cb
aCa
aCn
ln1lnlnln
)ln(ln1
1
+=+=
=
(2)
ここで横軸に ln Cb縦軸に ln nの関係をグラフにプロットするすなわち x=ln Cby=ln nと考える
bCb
an ln1lnln += (3)
ここで直線式 y=a0+a1xと比較するすなわち
)(1)(ln
1
00
傾き
切片
ba
eaaa a
=
=rarr= (4)
a0および a1は最小二乗法により数値で求められる与えられたデータでは a1= a0= なので a= b= となる この値を n=acb
1bに代入してcb=0~05の範囲で nの値を計算する
35
BET式のパラメータ決定法 BET式は次式で与えられる
)1)(1( KCCCKCnn
+minusminus=
infin
(17)
以下のように BET式の変形を行う
)1()1(
KCCKCnCn+minus
=minusinfin
(18)
(18)式の逆数をとると
KCnCK
KCnKCC
Cn infininfin
minus+=
+minus=
minus)1(1)1(
)1(1
(19)
(19)式の両辺に Cをかえると
KCnCKC
CnC
infin
minus+=
minus))1(1(
)1( (20)
(20)式を変形すると次式が得られる
CKn
KKnCn
Cinfininfin
minus+=
minus11
)1( (21)
C と)-(1 Cn
Cのプロットは傾き
KnKinfin
minus1切片
Kninfin
1の直線関係を与えることを示している
これをグラフにプロットし最小二乗法に傾きおよび切片を求める
36
312 活性炭の比表面積の決定 酢酸分子の構造を以下に示す
Hc-Cb-Ca
Hd
Hb Oa
Ob-Ha
1219deg
Ca Oa
Ob
図 36 酢酸の構造
酢酸の 1分子の吸着面積srsquo [m2]を図 3-6に示すこのとき文献より
Caと Oaの結合距離 1321Å Caと Obの結合距離 1206Å OaCaObの角度 1219deg Cの原子半径 077Å Oの原子半径 062Å
したがって吸着面積 Slsquoは次のようになる
( ) ( ) 2088 10376109931036321 minusminusminus times=timestimestimestimes=s m2
ここで活性炭の比表面積 S[m2g]は次式で示される 10026 23 snS timestimestimes= infin
S活性炭の比表面積 [m2g] ninfin飽和吸着量 [molg] srsquo酢酸 1分子の吸着面積 [m2] 602times1023アボガドロ数 [個mol] したがって活性炭の比表面積 S[m2g]は
003350=infinn molg 2010376 minustimes=s m2 より
51281037610026003350 2023 =timestimestimestimes= minusS m2g
37
4 粘度密度測定 41 はじめに 大量生産を目的とした工業的化学プロセスはほとんど流れ系(流通系)であるそれらの系において操作対象となる各物質の粘度は装置を設計操作する場合きわめて重要
な物性値である 本実験では低分子溶液および高分子溶液の粘度測定を通じて液体の粘度について考察するさらに演習問題を通じて気体液体高分子溶液などの化学プロセスで対象となる物
質の輸送物性(粘度拡散係数)の重要性を認識されたい 42 低分子溶液の粘度 [目的] 種々の濃度のエタノール水溶液の粘度を測定しその溶液の粘度について考察する [概要] 25におけるエチルアルコール濃度 02040506080100 wt の水溶液について流下時間を測定しこの結果より相対粘度絶対粘度運動粘度を求めグラフにするま
た水の密度水-エチルアルコール溶液の密度についてはピクノメーターを用いて決
定する報告書には相対粘度絶対粘度運動粘度 vsエチルアルコール濃度の関係をそれぞれグラフにして提出する
[計算方法] 相対粘度絶対粘度運動粘度の定義は次のようになる
相対粘度 ww
w tdtd
ηη = (41)
η 混合溶液の粘度 [gcms] ηw水の粘度(8007times10-3 gcms) [gcms](25における粘度) d エチルアルコール水溶液の密度 [gcm3] dw水の密度(099704gcm3) [gcm3](25における密度) t エチルアルコール水溶液の流下時間 [s] tw水の流下時間 [s] 下付添字 W 水
絶対粘度 www td
tdη
η= (42)
運動粘度 ν=ηd [cm2s] (43)
38
[実験方法] 1) 粘度計を洗浄し粘度計内 に二連球で空気を送り込み
乾燥させる乾燥しにくい 場合はアセトンを滴下し た後再度二連球で空気 を送り込み乾燥させる 2)ピペットで一定体積(10mℓ) の純水を取り広い口 f から 粘度計に水を入れる 3)粘度計を恒温槽(25)に つけ約 10 分静置する 4)安全ピペッターを口 a に 取り付け液面が b 上部に 到達するまで吸い上げる 5)安全ピペッターを外すと 液面が降下しだす液面が bd 間を通過する時間をスト ップウォッチで測定する
6)純水での測定を 3 回繰り返す 7)純水を粘度計から取り除くその後粘度計内に二連球を用いて空気を送り込み乾燥させる 8)粘度計乾燥後複数の濃度に調整済みのエチルアルコール水溶液(10mℓ)を粘度計にいれ4)~6)の作業を繰り返し行う(3 回)なお濃度の異なるエチルアルコール水溶液を粘度計内に導入する場合には7)と同様に二連球を用いて粘度計内に空気を送り込み乾燥させる
表 4-1 エチルアルコール水溶液の濃度密度相対粘度の関係 エチルアルコール濃度
[wt] 密度 d[gcm3] 相対粘度
η ηw[-] 0
20 40 50 60 80
100
安全ピペッター接続
図 4-1 粘度計
液面の bd間の通過時
間を測定
f
39
43 密度測定 [目的] 本実験では水とエタノールの種々の組成の混合液体について密度を測定し分子間相互
作用について考察する [実験方法] 1)ピクノメーターの容積測定
図 4-2のピクノメーターの空の重量 wg を秤量する
ピクノメーターの蓋を取り外し
ピクノメーターを水で満たす
設定温度を 25として恒温槽 の電源を入れ恒温槽内の温 度が一定になるまで待つな お水温は恒温槽中の水銀温 度計から読む
恒温槽中に水を満たしたピク
ノメーターを入れる
約 10分間静置する
ピクノメーターに蓋をするこのときピクノメーターの容量
よりも余分の水は蓋の上部より排出される
ピクノメーターの外側を乾いた布で拭い秤量する(その重量を
wwg とする)
恒温槽の温度(25)における水の密度 dwgcm3(=099704gcm3)
より次式を用いてピクノメーターの容積を求める
w
w
dww
Vminus
= (44)
図 4-2 ピクノメーター
蓋
40
表 4-2 エチルアルコール水溶液の濃度と密度の測定結果(25) エチルアルコ
ール濃度[wt]
wrsquo[g] ww[g] V[cm3] w[g]
d[gcm3]
0 20 40 50 60 80
100
099704
エチルアルコール濃度[wt] 空のピクノメーターの重量 wrsquo[g] 水を入れたときのピクノメーターの重量 ww[g] ピクノメーターの体積 V[cm3] エタノール水溶液の入れたときのピクノメータの重さ w[g] エタノール水溶液の密度 d[gcm3]
容積 Vを求めたピクノメーターに混合溶液(調整済み)を入れてその重量 wgを秤量し次式で混合溶液の密度を求める
Vwwd minus
= (45)
エタノール濃度と密度 d の関係をグラフにプロットする
41
44 高分子溶液の粘度 [目的] 高分子溶液の粘度測定から分子量の粘度に与える影響について考察する [概要 ] オストワルド粘度計を用い種々の濃度のポリビニルアルコール(PVA ((-CH2CHOH-)n))水溶液の粘度を測定し粘度データよりポリビニルアルコールの分
子量を求める まず 05g100cc の濃度のポリビニルアルコール水溶液を調製する次にこれを原液
とし23 12 13 15の濃度の溶液を調製するこれらの溶液についてオストワルド粘度計を用いてそれぞれ流下時間を測定し相対粘度絶対粘度運動粘度を求め実験デ
ータより極限粘度[η]を求めるまた報告書には相対粘度絶対粘度運動粘度C
)ln( wηη
Cw
w-η
ηη vsポリビニルアルコール濃度の関係をそれぞれグラフにして提出する
[計算方法] エチルアルコール水溶液の粘度測定と同様の手法を用いて粘度の計算を行うなおポリビニルアルコール水溶液の密度はピクノメーターを用いて測定すること 表 4-3 ポリビニルアルコール水溶液の濃度密度相対粘度の関係 ポリビニルアルコール
濃度 [g100cc] 密度 d[gcm3] 相対粘度
η ηw[-] 05times(15) 05times(13) 05times(12) 05times(23)
05
42
[分子量の計算方法] 実験を行った結果以下のような粘度データを得られるとする実験データより極限粘度
を求めポリビニルアルコール(PVA)の分子量Mを決定せよ
PVA 水溶液濃度
C[g100cc]
相対粘度
ηηw[-]
絶対粘度
η[gcms]Cw
w-η
ηη
C)ln( wηη
05times(15) 1031 0008255 031 0305
05times(13) 039 0378
05times(12) 03 0289
05times(23) 0375 0353
05 0364 0334
ηw=8007times10-3 gcms 線状高分子の極限粘度[η]と分子量Mの関係は次式で与えられる [η]=KMα (46) ただしポリビニルアルコールの場合K=666times10-4α=064であるなお極限粘度[η]は次式で定義される
CC w
w
0
-][ limη
ηηη
rarr
= (47)
または
CC
)ln(][ w
0lim
ηηη
rarr
= (48)
よって濃度 CとCw
w-η
ηηまたは濃度 Cと
C)ln( wηη の関係をグラフ化し最小二乗法によ
り切片の値を求めると極限粘度[η]が決定される
Cw
w-η
ηηと C の関係より最小二乗法を用いて切片の値を決定すると(図 43 参照)切片=
03242傾き=00874となるよって極限粘度は以下のようになる[η]=03242同様
にC
)ln( wηη とcの関係より最小二乗法を用いて切片の値を決定する
(図 44参照)と切片=03249傾き=00256となり極限粘度は以下のようになる[η]=03249
Cw
w-η
ηηと Cの関係より決定した[η]=03242を用いてポリビニルアルコール(PVA)の
分子量 Mを計算する(46)式より以下のように PVAの分子量 Mを計算することができるM=([η]K)1α
=(03242(666times10-4))(1064)
=15811
43
y = 00874x + 03242
0
02
04
06
08
1
0 01 02 03 04 05 06 07
c[g100cc]
(η-ηw)(ηwc)
cw
w
η
ηηminus
極限粘度[η]
図 43 298Kにおける PVA濃度 CとCw
w-η
ηηの関係
y = 00256x + 03249
0
02
04
06
08
1
0 01 02 03 04 05 06 07
c[g100cc]
(ln(ηη
w))c
c)ln( wηη
極限粘度[η]
図 44 298Kにおける PVA濃度 CとC
)ln( wηη の関係
44
5 植物からの DNAの抽出 51 はじめに 分子レベルでの遺伝子の構造解明や遺伝子の発現に関する研究は近年急速に発展している
これら生命現象のしくみを分子レベルで解明しようという分子生物学の分野ではさまざま
な遺伝子の解析や応用方法が開発され我々の生活に身近なものになりつつある 本実験では初歩的な分子生物学に関する実験として植物(タマネギ)からの DNA の
抽出を行い抽出した遺伝子の電気泳動法による分離実験を試みる 52 試薬および器具 試薬 タマネギ(細胞中から遺伝子の抽出を行う) 台所用洗剤(洗剤中に含まれる界面活性剤には植物の細胞膜およびタンパク質を破壊す
る働きがある) 塩化ナトリウム(DNAは塩化ナトリウム水溶液に溶解し易い性質がある) エタノール(予め冷やしておくDNAはエタノールにほとんど溶解しない) 制限酵素(DNAを一定の部位で切断する働きを働きがある) TE緩衝液(pH緩衝剤が入った溶液) 器具 ビーカーミキサーフィルターメスシリンダー駒込ピペットガラス棒 マイクロピペット電気泳動装置ポラロイドカメラ 53 実験方法 1)タマネギは 1回の実験で半個のうち内側の半分程度を使用するタマネギ水 30ml台所用洗剤数滴をミキサー用ガラス容器に入れ40~60秒程度(固体状のタマネギがなくなる頃が目安)ミキサーにて混合する
2) 1)で作成した混合溶液をビーカーに移し約5g程度の塩化ナトリウムを加えガラス棒で静かに攪拌する粘性の大きな溶液が得られる
3) 2)で作成した溶液をフィルターを用いて濾過し濾液を回収する 4) 濾液の約2倍程度の量の冷エタノールをビーカーの壁伝いに静かに注ぐ 5) ビーカーを揺するとエタノール層に白くふわふわしたものが浮いてくるこれが DNAであるガラス棒で DNAを巻き取りシャーレ上にて DNAを回収する顕微鏡を用いて回収した DNAの状態を観察する
6)マイクロチューブ(容量 15ml)中に用意した 70エタノールを 8 分目程度まで注ぐ5)にて回収された DNAをマイクロピペットを用いて70エタノールの入ったマイクロチューブ中に移す軽く混ぜることによりDNA から不要な物質を洗い流す遠心分離してDNA をマイクロチューブの底に沈めた後溶液を捨てて DNA を乾かす乾いたらTE緩衝溶液を 1ml加えて放置するDNAの溶液が得られる
54 電気泳動装置による DNAの観察
本実験は職員と一緒に行うこと 実験を行う人はビニール手袋をすること 1) 抽出した DNAを電気泳動装置で観察するマイクロピペットを用いて以下のように調製した DNAの混合溶液を調製する(いずれの溶液も調製済)
45
2) マイクロピペットを用いてアガロースゲルの試料を流し込む穴(ウェル)に1)にて調製した溶液 Aおよび Bを注ぎ込む注入量は20μℓとする電気泳動装置のスイッチを入れて100Vの電流を流しアガロースゲル内にて DNAを電気泳動させる
3) 試料に予め加えられておいた青色の色素が 7 分目程度まで進んだら電気泳動を中止する(約 30分程度)
4) (ここでの作業は職員が行う) アガロースゲルを取り出し染色液に浸す染色後ゲルを取り出しポラロイドカメラで
DNAの泳動状態を撮影する
+ -
アガロースゲル
試料を流し込む穴(ウェル)
図 51 電気泳動装置
6 5 4 3 2 1
図 52 DNAの電気泳動写真の一例
55 電気泳動装置の原理 電気泳動装置の原理図を以下に示すアガロースゲル(寒天から不純物を除いたもの)中
に DNAをセットし電流を流すとDNAは電流の向きとは逆にマイナスからプラス方向
調製済 溶液 A(制限酵素なし) 水 11μℓ 10timesH Buffer 2microℓ 植物 DNA 5μℓ
調製済 溶液 B(制限酵素 Eco RI入り) 水 11μℓ 10timesH Buffer 2microℓ 植物 DNA 5μℓ 制限酵素 2μℓ
1 DNA(タマネギ)+制限酵素 2 DNA(タマネギ)+制限酵素 3 DNA(タマネギ) 4 λ-DNA(大腸菌)+制限酵素 5 λ-DNA(大腸菌) 6 サイズマーカー
500bp
46
に動く(このことを電気泳動という)これはDNA のリン酸部分が負に帯電しているためでありまたDNAはその長さにより泳動距離が異なる(短い遺伝子ほど長く泳動する)電気泳動ではこの性質を利用してDNAを大きさごとに分離することができる
塩基対数によってDNAを分離
EtBr (蛍光試薬)DNAの二本鎖内に入り込む
発光
UVλ=302nm
励起
分離後のアガロースゲルをエチジウムブロマイド(EtBr)溶液に浸す
DNAを含んだ溶液
アガロースゲル
リン酸部分が負に帯電
塩基 (ATGC)-
+
カメラで撮影
電圧
DNA構成成分(dNTPs)
バンドが明る
DNA量が
バンド(DNAの存在)
図 53 電気泳動の原理
56 制限酵素とは DNA は4 種類のヌクレオチド(GATC)が不規則につながってできている制限酵素はDNAの特定のヌクレオチドが並んでいる部分を切断する制限酵素には様々な種類がありEco RI(エコアールワン)と呼ばれる酵素は「GAATTC」といった並びの部分だけを切断することができる
GAATTC
CTTAAG
制限酵素
Eco RI
AAGCTT
TTCGAA
制限酵素
Hin dIII
図 54 制限酵素による DNAの切断
レポートについて 1 実験方法および実験結果の整理方法については指針書を参考にすること 2 実験結果については電気泳動の結果について考察すること(制限酵素の影響などにつ
いてまとめてください)
47
6 染色実験
61 はじめに
現在私達の身の周りでは様々な染料が使われている例えばT シャツやジーンズな
どの衣服は橙黄赤青など様々な色に染められている他にも私達が気付かないと
ころで多くの染色された製品を使用しているそこで本実験では高校の化学で学んだ
アゾ染料を合成してみるアゾ染料はアニリンを原料として作られているアニリンはベ
ンゼン環にアミノ基(-NH2)がついたものであるアニリンは無色の液体で水に溶けにく
くアンモニアより弱い塩基性を示すまたさらし粉(CaClO(ClO)H2O)水溶液を加えると
赤紫色を呈するこの呈色反応はアニリン特有のものであるので検出反応に用いられる
このアニリンを出発物質としてアゾ染料を合成してみる
62 試薬および使用器具
【試薬】 ①05moll 水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液
②2-ナフトール ③フェノール ④6moll 塩酸
⑤亜硝酸ナトリウム ⑥アニリン ⑦氷
【器具類】 ①電子天秤 ②50mℓビーカー ③100mℓビーカー
④ガラス棒 ⑤布(ガーゼなど) ⑥ピンセット
⑦ポリ手袋 ⑧ドライヤー ⑨シャーレ
10駒込ピペット(10ml ガラス製)
11駒込ピペット(1ml プラスチック製)
63 実験方法
1) 50mℓビーカーの中に 05molℓ水酸化ナトリウム水溶液 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回
NaOH 水溶液を分取するほぼ 20 mℓ分取できれば可)と 2-ナフトールを約 01g 入れ
よくかき混ぜる調製した溶液の中に布をつけその布はガラス棒でしぼってから(布
をガラス棒ですくいあげればよい)シャーレに広げる温度の異なる条件下(常温およ
び低温)で染料の合成実験を行うため布は最低 2枚調製した溶液と接触させそれ
ぞれ別々のシャーレ(低温用および常温用)に広げる
2) 新しいビーカーに水を約 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回分取)と 6molℓ塩酸約 4mℓ(10m
ℓ駒込ピペットで目分量で可)さらにアニリン約 1mℓ(プラスチック製 1 mℓ駒込ピペッ
ト)を入れてよくかき混ぜる染料の合成を常温および低温下で行うためこの溶液を
2つ調整する
低温下で反応させる溶液は恒温槽で 10~15 分ほどよく冷やした後亜硝酸ナトリウ
ム 05g を加えてよくかき混ぜる
常温下で反応させる溶液には冷却作業を行わずに亜硝酸ナトリウム 05g を加えて
よくかき混ぜる
3) 2)でつくった水溶液をシャーレに広げた布に注ぎ生成される染料を布によく染み
込ませ5分程放置する
4) 色の付いた布を取り出してポリ手袋をした手できれいに水洗いをし乾燥させる
48
5) 色差計を用いて乾燥した布の Lab(L明度aおよび b色度)を測定する
2)で作った溶液は5以下では無色の溶液ですが5以上になると淡い黄色になりま
す
【解説】
アゾ染料はアゾ基(-N=N-)を持っていてこのアゾ基によって鮮やかな橙色を呈色し
ます今回合成したアゾ染料は図の 1-フェニルアゾ-2-ナフトールです意外かもしれ
ませんが指示薬として使われているフェノールフタレインもアゾ化合物ですフェノール
フタレインは pH の変化によって色が出てきす染料の中でも最初は無色のものもありますが
温度を変化させたり酸性やアルカリ性にすると色が出てきます
ベンゼン ニトロベンゼン
N2Cl
ニトロ化 濃硫酸(濃硝酸)
還元反応 濃塩酸
(Sn又は Fe)
アニリン塩酸塩
遊離反応 NaOH
アニリン塩酸塩に強塩基を反応させる
と弱塩基であるアニリンが遊離する
氷冷+亜硝酸ナトリウム アニリン
塩酸
ジアゾ化
塩化ベンゼンジアゾニウム
塩化ベンゼンジアゾニウム
は熱によって窒素とフェノー
ルに分解される
カップリング
C10H7ONa (ナトリウム 2-ナフトキシド)
O
N =
1-フェニルアゾ 2-ナフトール
NH3Cl NH2
49
7 ガスクロマトグラフ質量分析計による茶葉中のカフェインの分析 71 はじめに ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)は極めて低い濃度の化学物質の同定や未知物質の構造決定に極めて強力な分析機器の一つであるGCMSを用いるとサンプルの中に含まれているある成分の分子構造(カフェインの分子構造を図 71に示す)やその量が分かりますもちろん分析機器ですので測定できる物質対象となる系や測定条件にはある
程度の制約があります混合物質を分離するガスクロマトグラフ(Gas ChromatographGC)と分離された成分(物質)を分析(構造決定と濃度測定)する質量分析計(Mass SpectrometerMS)を組み合わせた装置であるこの装置は有機化学生化学環境化学などの多くの分野で非常に多用されている例えば極めて低い濃度でも生体へ強い影響が懸念されるダイ
オキシン類などの土壌や河川の水中での含有率の決定や食品や医薬品中の微量成分の決定
にも利用されている 一方日本人に長い間親しまれてきた緑茶が近年産業界や医学
界で注目されている茶葉にはカフェイン(分子構造図 71)カテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドなどの有用成分が多く含まれておりその効能が注目されている 本実験では茶葉中に含まれるカフェインに対してGCMSを用いて分析する茶葉中には種々の物質が含まれておりGCMS分析を容易にするため前処理として超臨界二酸化炭素抽出(4015MPa程度の高圧力の二酸化炭素を溶剤として利用)により茶葉からカフェインの抽出を行いそのサンプルを GCMSにて分析する
図 71 カフェインの分子構造 図 72 物質の分析 個々の物質や装置についてはインターネットにより下記のWebサイトのフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』などにより調べるとよいカフェイン(caffeine)はアルカロイドの一種プリン環を持つプリンアルカロイドの一種でコーヒー類に含まれることか
らこの名がある化学名は137-トリメチルキサンチン(C8H10N4O2) コーヒーコーラ緑茶紅茶ガラナココアなどに含まれる(量は緑茶が一番多い)結晶は一水和物(C8H10N4O2bullH2O)もしくは無水物(無水カフェインC8H10N4O2)として得られ
る白色の針状または六角柱状結晶で匂いはなく味は苦い融点は 238昇華性がある出典フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』httpwwwwikipediaorg 装置「GCMS」httpwwwanshimadzucojpproductsgcmsqp2010htm (島津) 「超臨界抽出装置」httpwwwkagakucomjasco39-49html (日本分光)
50
レポート課題 1茶葉中に含まれるカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドの中から3つの物質を選びその物質について調べた結果を A4 レポート用紙2枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
2GCMS についてA4 レポート用紙1枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
3与えられたサンプルは茶葉1gから抽出されたのである実験結果よりもとの茶葉
1g中に含まれるカフェインの量を推算し計算式とあわせて示すこと 72 原理および装置 実験で使用する島津製の GCMS装置の全体図を図 73に原理の概略を図 74に示す
1
23
4
5
67 8
9
10
キャリアーガス
試料物質
1ボンベ(He)2圧力計3マイクロシリンジ4サンプラー5試料導入部6分離カラム
7セパレーター8イオン化室9磁石10電子増倍管11記録計
11
図 74 ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)の概略図
サンプルフォルダー
51
GCMS 装置は分離部である図中の 1~6 のガスクロマトグラフ(GC)と7~11 の検出部である質量分析計(MS)から構成される 3のマイクロシリンジを用いて試料を GCMSに導入する導入された試料は5試料導入部でガス化され6分離カラムに導入される分離カラムには吸着剤が充填されおり混合物の試料を導入した場合各物質と吸着剤との
親和性の違いにより各物質の分離カラムから排出されるタイミングは異なる分離カラム
を排出された試料は8イオン化室でイオン化され10電子倍増管にて検出される アセトンに溶解したカフェインの GCMSによる分析結果の一例を以下に示す図 75にク
ロマトグラム図 76にカフェインのピークのマススペクトルを示す
図 75 GCMSにより得られたクロマトグラム
横軸がリテンションタイムで縦軸がピーク強度を表す
図 76 カフェインのマススペクトルとカフェイン(分子量MW=194)の構造
(図 75中のリテンションタイム 126min付近のピークに起因するマススペクトル) 茶葉中にはカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイド以外にも繊維であるセルロースなど多くの物質が含まれているため茶葉そのものを
そのままサンプルとしてGCMSで分析することは困難であるセルロースなどの分子量の大きな物質はカラムに詰まってしまい分析できないそこで今回は超臨界二酸化炭素
による抽出により主にカフェインを他の物質と分離抽出した通常よく利用されるアセ
トン抽出(アセトンに茶葉を浸し特定の成分を抽出する)ではカフェイン以外にも多く
の物質が抽出されるため図 75 のような単独のピークを得ることは難しく複数のピークがクロマトグラムに見られるこのサンプル(この場合茶葉からの抽出物)にはカフェ
イン以外の不純物は少なかったがガスクロマトグラフの分離カラムによりさらにそれ
らの混合物が精度よく分離されるクロマトグラムのピークはそれらサンプル中に含まれ
ていた個々の物質を表しているクロマトグラムのピークを選択することで分子構造解析
したい物質を選んだことになる選択したクロマトグラムのピークの表している物質(ここ
ではカフェイン)に対応するマススペクトルが図 76 に表示されているマススペクトル
52
で横軸がその成分(ここではカフェイン)分子を構成している原子の原子量で縦軸がそ
の量を表しているのでマススペクトルから分子構造を解析するためにコンピュータ内
に蓄えられた物質ごとのマススペクトルデータと今回測定したマススペクトル(分子内に含
まれている各原子の数)を比較することで測定したサンプル中のクロマトピークを選択し
た分子がどのような原子をどれだけ含んだ分子であったかがわかりそれからその物質
がどのような分子構造の物質である可能性が高いかをコンピュータが検索し結果を示す 73 実験サンプルの設置と GCMS装置の操作方法 実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS装置のサンプルフォルダ
ー(図 73)にセットするこのサンプルは茶葉 1gを 50ccの高圧セルにて超臨界二酸化炭素を利用して4015MPa2時間接触の条件で抽出した固体を10gのアセトンに溶かしたものである またコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に装置および装置制
御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 本実験で使用する GCMS の操作は全てコンピュータのモニター上で GCMS の解析プログラムソフトを使用することで行うコンピュータの操作方法を以下に示す なおコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS 装置のサンプルフォルダー(図 73)にセットするまた装置および装置制御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 1)パソコンのデスクトップ上のアイコン「GCMS 分析」をクリックすると以下のようにGCMS制御プログラムを起動するその後「OK」ボタンをクリックする
図 77 GCMD分析用ソフトウェア「GCMS分析」の起動
まず「GC-MS分析」をクリック
「OK」ボタンをクリック
53
2)制御プログラムが起動されパソコンと GCMSの接続が開始される
図 78 「GCMS分析」の接続確認画面 3)GCMSとパソコンの接続が完了すると以下のような画面が表示される
図 79 「GCMS分析」操作画面
4)マススペクトルによる分子構造の解析 サンプル(この場合茶葉からの抽出物)には多くの物質が混じり合っていたがガス
クロマトグラフの分離カラムによりそれらの混合物が精度よく分離されるクロマトグラ
ムのピークはそれらサンプル中に含まれていた個々の物質を表しているクロマトグラム
のピークを選択することで分子構造解析したい物質を選んだことになる選択したクロマ
トグラムのピークの表している物質(ここではカフェイン)に対応するマススペクトルを選
択するマススペクトルは横軸が原子量で縦軸がその量を表しているのでマススペク
トルから分子構造を解析するために「定性処理」を行う シミラリティ検索結果が表示され分析により得られたスペクトルと類似のスペクトルを有
する物質の一覧が表示される上部に表示される物質ほどスペクトルが一致していること
を示す
接続状況が表示される
「トップへ」
をクリック
54
図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果
図 711 表示スペクトルのシミラリティ検索結果 10)図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果の印刷 「レポート(R)」をクリックし「検索結果(R)」をクリックすると検索結果が印刷される
GC-MS 分析で得られたマスス
ペクトル
データベース中
のマススペクト
ル
55
参考資料 生理活性物質の精製 カフェインの利尿作用のように生物活動に影響を与える物質を生理活性物質といいます
天然物には生理活性物質を多く含むものがあります一般に天然物は多くの成分を含ん
でおり特定の生理活性物質を分離抽出するには種々の分離技術が必要ですまた生
理活性物質には60以上の温度でその生理活性を失う(失活)ものや溶剤として広く用いられているクロロホルムなどの有機溶剤中で失活するものが多いそこでこれら生理活性
物質の分離精製技術の開発が望まれており30~60程度のマイルドな温度条件で操作できる二酸化炭素を機能性溶媒として利用する超臨界抽出も有効な分離技術として注目されて
いる超臨界二酸化炭素は気体と液体の中間の性質を持ち物質の分離に役立っています 臨界点付近の高密度気体は超臨界ガスまたは超臨界流体と呼ばれ臨界圧力前後でそ
の溶解能力が著しく変化することから工業的にも種々の分野で利用されています一例と
して超臨界二酸化炭素(SC-CO2)によるコーヒー豆からのカフェインの抽出プロセス(a)
ならびに超臨界二酸化炭素に対するカフェインの溶解度(b)を図に示します図(c)に示す
ように固体のカフェインがガスである超臨界二酸化炭素に溶解します
このように超臨界二酸化炭素を用いた技術はコーヒー豆からのカフェインの抽出プロ
ポリスからの生理活性物質の抽出に利用されています
図 超臨界二酸化炭素抽出を用いたコーヒー豆からのカフェインの抽出
56
付表 最小二乗法について 直線で近似する場合 f (x) = a0 + a1x (A1-1) 式(A1-1)のように近似させるとする測定値 yiとの残差を eiとすると式(A1-2)のようになる ei = yi - f (xi) = yi - ( a0 + a1xi ) (A1-2) ここで式(A1-2)の両辺を二乗してその i に関する総和をとりその値を S とすると次式となる
sumsum==
+minus==n
iii
n
ii xaayeS
1
210
1
2 )( (A1-3)
S を最小化するような a0a1を求める式(A1-3)を a0a1について偏微分すると次式とな
る
sum=
+minuspartpart
=partpart n
iii xaay
aaS
1
210
00)( sum
=
+minusminus=n
iii xaay
110 )(2 (A1-4)
同様にa1について編微分すると次式のようになる
sum=
+minusminus=partpart n
iiii xxaay
aS
110
1])([2 (A1-5)
Sが最小となる時は次式が同時に満たされる時である
00=
partpartaS
01=
partpartaS
(A1-6)
よって誤差が最小となる a0a1を求めるためには式(A1-6)を連立して解けばよい
sumsumsum===
+=n
ii
n
i
n
ii xaay
111
10 1 (A1-7)
sumsumsum===
+=n
ii
n
ii
n
iii xaxaxy
1
2
11
10 (A1-8)
式(A1-7)と式(A1-8)を a0a1を変数とみなし連立して解くと次式を得る
n組のデータ(xiyi)(i=12hellipn)に対して回帰直線 y= a0 + a1x を最小二乗法で求めて出力しデータ番号 iデータ yi直線で推定した値 )( ii bxay += および残差
iii yy minus=ε を出力するようなプログラムをつくりたい基礎式を導出せよ (ヒント残差の二乗の和が最小になるように係数 a0a1)を定めるのが最小二乗法
である)
57
sumsum
sumsumsumsum
==
====
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
n
ii
n
ii
xxn
xxyyxa
1
2
1
2
1111
2
0
)(
))(())(( (A1-9)
sumsum
sumsumsum
==
===
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
xxn
yxxyna
1
2
1
2
1111
)(
))(()( (A1-10)
よって式(A1-9)(A1-10)を用いれば最も誤差を小さくするような直線 y = a0 + a1x が求められる
y=a1x+a0 にて近似
誤差 ei
x
y
誤差が最小になる関数(直線 y=a1x+a0の場合)
図1 最小二乗による近似
誤差の和Sが最小
S
a0
a1
直線 y=a1x+a0 の近似
誤差の全体の和はS=Σei=Σyi-(a1xi+a0)
Sは変曲点にて最小値を示すすなわち(partSparta0)=0 (partSparta1)=0
図2 a0a1とSの関係
20
ファイルの保存先を変えたい場合画面上部のボタンをクリックし保存先にデスクトッ
プを選択します次にファイル名の部分に各自ファイル名を入力しますファイル名は何
でも良いですが分かり易い名前にしておくとファイルの管理がやり易くなります日付や
数字を入れると同名のファイルをいくつも管理する場合に便利ですここでは「吸着実験デ
ータ整理 4月 01」とし「保存」ボタンをクリックします
ファイル名変更後Excelの画面上部のタイトルバーのタイトルが先ほどの名前(上の図とは異なります)になっていることを確認してください
この操作を行うことによって元のデータである「ad_graxls」を変更してしまう心配がなくなります元のデータである「ad_graxls」はファイルが破損しまたは間違った操作の結果を誤って保存してしまった場合などの補助ファイルとなりますので大切に保管しておいて
下さい今後配布するデータは先ほど説明した手順で名前を変えて保存し元のデータに
直接変更を加えないようにして下さい ここから実際の作業に入ります初期状態では模擬のデータが入力されています入力
データは予め計算しておいた酢酸濃度Cb[moll](濃度を Cと表示している場合もあります)と活性炭吸着量 n[molg]になります下の画面の丸で囲んだ部分がそれぞれの値でBCカラム(列)の 4~9行には数値が入力されています関数ではありませんこのデータを利用して実際のデータ解析を行ってみましょう下記のように行うと幾つかのグラフが
現れ実験データに対してラングミアーの単分子吸着を仮定したモデルを用いて精度よ
く計算線が描けることがわかります 今回はCbnの値を入力する必要はありませんExcelが自動的に計算を行って結果を表示するようになっていますつ
まりセル D5に「=B5C5」と関数を入力しこの関数に対してフィルハンド
ルを利用してセル D6~D9へコピーし
ファイルの保存先を変えたい場合画面
上部のボタンをクリックし保存先に
デスクトップを選択します
変更するファイル名はここをクリッ
クして書き換えます
名前を変更したらここをク
リックして保存します
21
まています 次に酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着量 n[molg]の関係および酢酸濃度 Cb[molL]と Cbn[gL]の関係をグラフ化します今回は自動的にグラフが作成されるようになっていますので複
雑な操作は必要ありません ここではデータに対してそれを精度よく表現する近似式をグラフ上に描きその関数
を数値として求める方法を Excelで練習してみましょう
グラフを表示させるには画面の下にある「Graph1」もしくは「Graph2」のタグ
をクリックします「Graph1」には酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着量n[molg]の関係のグラフが「Graph2」には酢酸濃度 Cb[molL]と Cbn[gL]の関係のグラフが表示されます「Graph2」はLangmuir の等温吸着式による相関を表したもので横軸に酢酸濃度 Cb[molL]をとり縦軸に酢酸濃度 Cb[molL]を活性炭吸着量 n[molg]で除した値 Cbn[gL]を示していますLangmuir の等温吸着式についてはこの後の章で説明してありますので各自読んで理解して下さいLangmuirの等温吸着式では式中の定数 ninfin(飽和吸着量)と K(吸着平衡定数)を実験データから最小二乗近似で決定する場合が多くありますここでは
その例を取り上げてデータに対してそれを精度よく表現する近似式をグラフ上に描き
その関数を数値として求める方法(最小二乗法最小二乗については付録に示しており
また化学工学プログラミングの講義においても説明します)を Excelで練習します 配布された Excel ファイル「ad_graxls」では実験点が表示されているだけでそれを精度よく表現する近似式の直線のグラフは「Graph2」に表示されていません今から次の手順で「Graph2」の図(グラフ)に近似式の直線のグラフを表示しますExcel の場合近似曲線(ここでは直線)を求める場合コンピュータが自動的に最小二乗法を使って近似曲線
を計算しています
「Graph1」の画面 「Graph2」の画面
Excelの sheetが表示されたらまずファイル名を変えデスク
トップに保存して下さい次
にGraph2のタックを左クリックして最小二乗法のグラフを
確認して下さい
22
38 Langmuirの等温吸着式による相関 はじめにLangmuir式の定数 ninfinと Kを決定するために「Graph2」酢酸濃度 Cb[molL]と
Cbn[gL]の関係のグラフから最小二乗法により直線の式を求めますExcelを用いてデータに対して近似直線のグラフを描き最小二乗法の直線の式を求めます
次のような「近似曲線の追加」のウィンドウが現れたら今回は線形近似(直線で近似
y=ax+b の式)を選びますので線形近似が黒色に反転していることを確認して「近似曲線の追加」のウィンドウの右下の「OK」ボタンをクリックして下さい
実験点の何れかにポインタをあわせて
右クリックする
近似曲線の追加(R)を選択して左クリックする
「線形近似」であること
を確認して「OK」ボタンをクリックします
23
「近似曲線の書式設定」
のウィンドウでオプシ
ョンから「グラブの書式
を表示する」の前を選ん
でチェック(前のチェッ
クボックスをクリック)
した後「OK」を押す
現れた直線にポインタをあわせて
左クリックすると「近似曲線の書式
設定」のウインドウが表示されます
ここをクリックします
この「オプション」のタ
グをクリックします
「y=」の関数
が現れるのでここ
をクリックする
式の文字フォントが初期値
「8」と小さいのでここ
のボタンをクリックし
フォントサイズを選ぶリス
トボックスを表示し「22」程度の大きなサイズを選択
しクリックする
24
「Graph2」酢酸濃度 Cb[molL]と Cbn[gL]の関係のグラフから最小二乗法により直線の式がこのように求められましたExcel を用いてデータに対して近似直線のグラフを描き最小二乗法の直線の式を求めるこの方法は他の実験データの解析などにも利用できますので
各自活用して下さい 表示された関数式「y=43865+2654」はノートにメモして下さいこの傾き 43865と
切片 2654からLangmuir式の定数 ninfinと Kを決定します決定方法の詳細はこの後の 36 の Langmuir式のパラメータ決定法に示しています ラングミュアの等温吸着式を変形すると次式となる
CCnKnCKn
CCKn
Cβ+α+
==
+= infininfininfin
11)1(
ただしα=1ninfinβ=1(ninfinK)とするこの式より Cnを縦軸Cを横軸とした関係のグラフは傾きα=1ninfin切片β=1(ninfinK)の直線関係を与えることを示しています そこでExcelのシートを利用してこの値からLangmuir式の定数 ninfinと Kを次のように決定しますセル C18D18に Graph2で求めた数値 2654と 43865を代入しますその後D19と C19に関数を ldquo=1D18rdquoとrdquo=D18C18ldquoを代入しますセル内の式は半角で入力してください
現れた関数の文字フォン
トを大きく(例えば 22)してその数字をメモし
吸着データシートの C18と D18に記入する
C18D18 に Graph2 で求めた値 2654 と 43865 を代入した後D19 と C19 に関数を ldquo=1D18rdquoとrdquo=D18C18ldquoを代入する
25
この Excel表示では最小二乗法を用いて決定した傾きαと切片βを用いて α=1ninfin=43865 β=1(ninfinK)=2654 得られた傾きおよび切片よりninfinおよび Kは次のように求まる
ninfin=1α=1D18=000228 molg-1 K =(1ninfin)β=αβ=D18C18=165
つまりセル D19にはninfinの値がセル C19にはKの値が表示されますこれらの値はラングミュア(Langmuir)の単分子吸着モデルで計算した理論線と実験と比較する場合に利用します実験結果に対して理論的な考察を行う例としてラングミュア(Langmuir)の単分子吸着モデルで理論線を計算し実験と比較するにはこの Excelファイルを利用して次のように計算しグラフに表示します セル F5~F30 には溶液中に残る酢酸濃度 Cb[molL]に対する活性炭に吸着された吸着量n[molg]の関係のグラフ「Graph1」の横軸の酢酸濃度 Cb[molL]の適当な値が既に入力してありますこれらのそれぞの酢酸濃度 Cb[molL]に対する吸着された酢酸の吸着量 n[molg]の理論値をラングミュア(Langmuir)式で計算しますラングミュア式は次式で与えられます
KCKCnn
+=
infin
1 (310)
ここでこの実験データを最も精度よく計算できるように決定した ninfinおよび K は上述のようにninfin=1α=1D18=000228 molg-1 K =(1ninfin)β=αβ=D18C18=165 でありこれらの値はセル D19にninfinの値がセル C19にKの値が表示されていますこの値を利用して「Graph1」に計算線を描くにはまずセル G5~G30 にセル F5~F30 のそれぞれの酢酸濃度 Cb[molL]に対する吸着された酢酸の吸着量 n[molg]の理論値をラングミュア式で計算しますそのためにはセル G5 にラングミュア式を次のように記述しますただしセル D19の ninfinの値セル C19の Kの値は常に同じセルから参照するので絶対参照($マークを付けて$D$19 $C$19と記述します)で記述します
Langmuir式をセル G5に記述するただし濃度はF5の値を相対参照しD19と C19は絶対参照($マークが必要)することを忘れないように
セルG5に記述すべき数式
=$D$19$C$19F5(1+$C$19F5)
26
G5記述後フィルハンドルを使用してG5の関数を G6~G30までコピーします Sheet1から Graph1 のタグをクリックしGraph1 に計算線が表示されたことを確認しましょうこれでラングミュア式によるデータの解析は終了です実験値と理論値を比較して現象
について考察してみて下さいラングミュア式を理論的に導く場合にある仮定をしている
のですがその仮定をしているラングミュア式が実験データを精度よく計算できていれば
その仮定が妥当なもとであったと考察できます 与えられたモデルデータでラングミュア式によるデータ解析ができれば他の理論(例え
ばフロインドリッヒFreundlich式や BET式レポートはどちらか一方でも可です) についてもExcel で計算してみましょうレポートには自分のデータについてここで行った内容と同様に計算しその結果を考察に記述して下さい 自分のデータについて同様の計算をするにはまずいままで計算を行った Excel ファ
イルを保存しますデータを自分の実験データに置き換える前に Excel ファイルをさらに別の名前で保存します与えられた Excel ファイルは初期状態では模擬のデータが入力されているので今回自分達の実験したデータを入力していきます入力するデータは予め計算
しておいた酢酸濃度 Cb[moll]と活性炭吸着量 n[molg]になります下の画面の丸で囲んだ部分にそれぞれ自分の実験データを入力していきます
今回はCbnの値を入力する必要はありませんExcelが自動的に計算を行って結果を表示するようになっています 次に酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着
量 n[molg]の関係および酢酸濃度Cb[molL]と Cbn[gL]の関係をグラフ化します今回は自動的にグラフが作成
されるようになっていますので操作は必
要ありません 39 Freundlichの等温吸着式による相関 今回の実験で得られた酢酸濃度 Cbと活性炭吸着量 nのデータを利用してFreundlichの等温吸着式の定数 abの値を求めFreundlichの等温吸着式の理論線をグラフに追加します ここでFreundlich式は次式で表されます
bbaCn1
=
このままでは定数 abの値を決定することが難しいので上式の両辺の対数をとり線形化しますすると次式となります
bCb
an ln1lnln +=
ここでln Cbと ln nの関係をグラフにプロットすれば傾き 1b切片 ln aの直線関係が得られますしたがって実験データである酢酸濃度 Cbと活性炭吸着量 nの値の対数をそれぞれ計算します配布した「ad_graxls」ファイルを開き「吸着データ」シートの任意の部分に以下のような表を作成します
27
次にln Cb[-]の列の最初のセルに以下の数式を入力します
=ln(B5) 上式中の「B5」は Cb の値の最初のセルの位置を指します各個人の位置によって変更してください
次にln n[-]の列の最初のセルに以下の数式を入力します
=ln(C5) 上式中の「C5」は nの値の最初のセルの位置を指します各個人の位置によって変更してください
ここでln Cb[-]ln n[-]の値に対しそれぞれオートフィルを行い計算させますすると以下のようなデータが完成します
計算した ln Cb[-]ln n[-]の値をグラフにプロットし最小二乗法による直線式を求めます
28
ここで以下のような直線の式が得られたとします
9135ln31690ln913531690 minus=there4minus= bCnxy
上式より切片は-5913傾きは 03169となるので以下の要領で定数 a1bを計算します ==there4minus= minus 91359135ln eaa 000270
316901=
b
a の値を Excel で計算させる場合は任意のセルに以下のような数式を入力することで求めることができます
=exp(-5913) これでFerundlich等温吸着式の定数 a1bの値が決定しましたこの値は後で使うのでノートなどにメモしておいてください 次に決定した Ferundlich 等温吸着式の定数 a1b の値を用いてFerundlich 等温吸着式のグラフを作成します先ほども示したように Ferundlich等温吸着式は次式で表されます
bbaCn1
=
従って定数 aと 1bの値はすでに決定しているので任意の Cbの値に対する nの値を数点求めればFerundlich等温吸着式で求めた理論線が得られます以下の操作で理論線を引くことができます Langmuir 等温吸着式による相関のときと同様にExcel の「吸着データ」のシート上の任意の場所に以下のような表を作成します
次に Ferundlich等温吸着式に従いnの値を計算します
bbaCn1
=
式中の定数 a1bは先ほど計算した値を用いますしたがって式は次のようになります
31690002700 bCn times=
この式を Excelのセル内に記入すれば計算ができます次の
29
ように記入します
=00027G5^03169 ここで式中の「G5」は Cbの値が 0のセルを指しています各個人の位置によって変えてください 次に式を記入したセルを Cbの値が 05のところまでオートフィルを行いますそうするとすべての Cbに対して nの値が計算されます
これで Freundlich等温吸着式のデータが完成しましたので次に「Graph1」酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着量 n[molg]の関係のグラフにこのデータを追加し理論線を引きます理論線の引き方は Langmuirによる相関のときと同様の操作を行ってください グラフの書式等を変更し整理すると以下のようなグラフが出来上がります
310 吸着等温線とは 固体の吸着剤を溶液と接触させる時一定量の吸着剤によって吸着される溶質の量は温度一定ならば溶質の濃度の関数になる一定温度での吸着量を温度に対してプロットした時に
得られる曲線を吸着等温線というこの吸着等温線を比較的よく表す経験式として次の
Freundlich式がある
n=aC1b (1) ここで n は吸着剤の質量あたりの吸着量C は吸着平衡濃度a と b は実験から決定されるパラメータであるがその物理的意味は多少希薄である これに対し理論的な意味を持つものに次のラングニュア(Langmuir)の吸着等温式がある
30
KCKCnn
+=
infin
1 (2)
ただしninfinは飽和吸着量Kは吸着平衡定数であるこの式は
1)吸着分子が固体表面で単分子以上の厚い層を作ることはない 2)吸着分子同士の間の相互作用はない
という二つの仮定にもとに導かれたものである 結果の整理および報告 Freundlich吸着等温式Langmuir吸着等温式の各々のパラメータの最適値を求めよまた活性炭の吸着特性および表面積について考察し化学工学における吸着操作の重要性につい
ても検討せよ 311 吸着等温式 (a) ヘンリー(Henry)型吸着等温式 液相の濃度あるいは気相の圧力が小さい場合吸着分子間の距離が十分に長いため吸着
分子同士の相互作用が無視でき固体表面と吸着分子のみの相互作用で吸着量を決定できる
とき次式のように表される
n=KC (3)
ここでKは比例定数である図 3-1の(a)に示すように濃度 Cと吸着量 nは比例関係があり一般に吸着量が小さい範囲で成立する気体の場合は溶液濃度 Cの代わりに気相圧力 pを用いればよい
濃度(分圧)
濃度(分圧)
濃度(分圧)
濃度(分圧)
吸着量
吸着量
吸着量
吸着量
(a)ヘンリー型 (b)ラングミュア型
(d)BET型(c)フロインドリッヒ型
0
0
0
0
図 3-1 吸着等温式
31
(b)ラングミュア(Langmuir)型吸着等温式 ラングミュアは図 3-2 に示すように固体表面に同等な吸着力を示す吸着サイトがあり
表面に 1分子層だけ吸着する(単分子層吸着)と仮定して平衡状態における吸着量と溶質濃度(気相分圧)のと関係を導いた全吸着点のうち吸着分子に覆われている吸着点の割合
をθ[-]とすると分子の脱着速度 rrsquo[mols-1]はθに比例する比例定数を a[mols-1]とすると次式のように表される
吸着剤
吸着分子
吸着サイト
図 3-2 固体表面上の吸着サイト(Langmuir式の導出) r=aθ (6) また気相からの吸着速度 r[mols-1]は空いている吸着点の割合(1-θ)[-]と溶液濃度 C[molm-3]に比例する rrsquo= b(1-θ)C (7) このときの比例定数を b[m3s-1]とするまた平衡状態では両速度は見かけ上等しいため以下の式が成り立つ aθ=b(1-θ)C (8) これを変形する
CbaCbsdot+
sdot=θ (9)
ここで飽和吸着量を ninfin[molkg-1] ba を K[m3mol-1](Kは吸着平衡定数)とおくと infin=nnθ
となるので次式が得られる
32
KCKCnn
+=
infin
1 (10)
これをラングミュア式と呼ぶ
(c)フロインドリッヒ(Freundlich)型吸着等温式 フロインドリッヒの吸着等温線は図 3-1(c)のように示される
n=aC1b (11) nは吸着量[molkg-1]で aと bはともに吸着定数[-]である (d)BET(Brunauer-Emmett-Teller) 型吸着等温式
BET型の吸着等温線は図 3-1(d)に示されるラングミュア式は表面に 1分子層だけ吸着すると仮定したものであるがBET式は無限分子層まで吸着できる式である図 3-3に示すように吸着した分子がそれぞれ次の層の吸着サイトとなり分子は積み重なって多分子
層に無限層まで吸着できるものとし各層への吸着にラングミュア式を適用すれば次式の
ように表せる
( ) ( )CKCCCKqq
minus+sdotminussdotsdot
=infin
11 (12)
この式は多孔質固体の細孔表面積を窒素ガスの吸着によって測定する際に利用される重要な式
である
表面の吸着サイト
分子上の吸着サイト
図 3-3 多分層吸着モデル
Langmuir式のパラメータ決定法 水溶液からの酢酸の活性炭に対する吸着平衡データ(吸着平衡温度 12)は表 3-1のよ
うに与えられる実験データよりラングミュア式のパラメータ(K吸着平衡定数ninfin飽和吸着量)を最小二乗法で決定せよさらにラングミュア式より決定した ninfinKの値を用いて吸着等温線を計算し計算線として図に示し実験点と比較せよ
33
表 3-1 n C Cnの関係
ラングミュア式は式(310)で与えられるこの式を変形すると次式となる
CKnCK
n infinsdot+
=11
(313)
両辺に Cをかけると以下の式が導出される
CCnKnCKn
CCKn
Cβ+α+
==
+= infininfininfin
11)1( (314)
ただしα=1ninfinβ=1(ninfinK)とする式(314)より Cn と C の関係のグラフプロットは傾きα=1ninfin切片β=1(ninfinK)の直線関係を与えることを示している表 3-1の値を用いて計算した Cnと Cの関係を表 3-1および図 3-4に示す 最小二乗法を用いて傾きαと切片βを決定した α=1ninfin=43865 β=1(ninfinK)=2654 得られた傾きおよび切片よりninfinおよび Kは次のように求まる
ninfin=1α=1D18=000228 molg-1 K =(1ninfin)β=αβ=D18C18=165
0
50
100
150
200
0 200 400 600
C [ molm-3 ]
Cn [ kgm-3 ]
傾き = 1 ninfin
1 ninfinK
切片0
05
1
15
2
25
3
0 100 200 300 400 500
液相の溶質濃度 C [ molm-3 ]
吸着量 n [ molkg-1]
液相と溶質濃度 C [ molm-3 ]
吸着量
n[ m
olk
g-1]
実験点
Langmuir式パラメータninfin 00033 [ molg-1 ]K 00086 [ m3 mol -1 ]
図 3-4 ラングミュア定数の決定 図 3-5 12における酢酸濃度 Cと
吸着量 nの関係
C [molm-3] n [molkg-1] Cn [kgm-3] 460 225 109 529 214
268 199 149 105 060
172 128 732 504 357
34
Freundlich式のパラメータ決定法 酢酸水溶液中における酢酸の活性炭に対する吸着実験を行ったところ以下のような実験デー
タを得たただしCbはバルク相における酢酸濃度n は活性炭に対する酢酸の吸着量を示す
Cb[molL] n[molg] log10Cb log10n 04621 000205 02410 000175 01139 000139 00519 000105 00243 000081
実験データを利用して次式で与えられる Freundlichの等温吸着式の定数 abの値を求めたい
bbaCn1
= (1)
このままでは定数 abの値を決定することが難しいので上式の両辺の対数をとる
bbb
bb
Cb
aCa
aCn
ln1lnlnln
)ln(ln1
1
+=+=
=
(2)
ここで横軸に ln Cb縦軸に ln nの関係をグラフにプロットするすなわち x=ln Cby=ln nと考える
bCb
an ln1lnln += (3)
ここで直線式 y=a0+a1xと比較するすなわち
)(1)(ln
1
00
傾き
切片
ba
eaaa a
=
=rarr= (4)
a0および a1は最小二乗法により数値で求められる与えられたデータでは a1= a0= なので a= b= となる この値を n=acb
1bに代入してcb=0~05の範囲で nの値を計算する
35
BET式のパラメータ決定法 BET式は次式で与えられる
)1)(1( KCCCKCnn
+minusminus=
infin
(17)
以下のように BET式の変形を行う
)1()1(
KCCKCnCn+minus
=minusinfin
(18)
(18)式の逆数をとると
KCnCK
KCnKCC
Cn infininfin
minus+=
+minus=
minus)1(1)1(
)1(1
(19)
(19)式の両辺に Cをかえると
KCnCKC
CnC
infin
minus+=
minus))1(1(
)1( (20)
(20)式を変形すると次式が得られる
CKn
KKnCn
Cinfininfin
minus+=
minus11
)1( (21)
C と)-(1 Cn
Cのプロットは傾き
KnKinfin
minus1切片
Kninfin
1の直線関係を与えることを示している
これをグラフにプロットし最小二乗法に傾きおよび切片を求める
36
312 活性炭の比表面積の決定 酢酸分子の構造を以下に示す
Hc-Cb-Ca
Hd
Hb Oa
Ob-Ha
1219deg
Ca Oa
Ob
図 36 酢酸の構造
酢酸の 1分子の吸着面積srsquo [m2]を図 3-6に示すこのとき文献より
Caと Oaの結合距離 1321Å Caと Obの結合距離 1206Å OaCaObの角度 1219deg Cの原子半径 077Å Oの原子半径 062Å
したがって吸着面積 Slsquoは次のようになる
( ) ( ) 2088 10376109931036321 minusminusminus times=timestimestimestimes=s m2
ここで活性炭の比表面積 S[m2g]は次式で示される 10026 23 snS timestimestimes= infin
S活性炭の比表面積 [m2g] ninfin飽和吸着量 [molg] srsquo酢酸 1分子の吸着面積 [m2] 602times1023アボガドロ数 [個mol] したがって活性炭の比表面積 S[m2g]は
003350=infinn molg 2010376 minustimes=s m2 より
51281037610026003350 2023 =timestimestimestimes= minusS m2g
37
4 粘度密度測定 41 はじめに 大量生産を目的とした工業的化学プロセスはほとんど流れ系(流通系)であるそれらの系において操作対象となる各物質の粘度は装置を設計操作する場合きわめて重要
な物性値である 本実験では低分子溶液および高分子溶液の粘度測定を通じて液体の粘度について考察するさらに演習問題を通じて気体液体高分子溶液などの化学プロセスで対象となる物
質の輸送物性(粘度拡散係数)の重要性を認識されたい 42 低分子溶液の粘度 [目的] 種々の濃度のエタノール水溶液の粘度を測定しその溶液の粘度について考察する [概要] 25におけるエチルアルコール濃度 02040506080100 wt の水溶液について流下時間を測定しこの結果より相対粘度絶対粘度運動粘度を求めグラフにするま
た水の密度水-エチルアルコール溶液の密度についてはピクノメーターを用いて決
定する報告書には相対粘度絶対粘度運動粘度 vsエチルアルコール濃度の関係をそれぞれグラフにして提出する
[計算方法] 相対粘度絶対粘度運動粘度の定義は次のようになる
相対粘度 ww
w tdtd
ηη = (41)
η 混合溶液の粘度 [gcms] ηw水の粘度(8007times10-3 gcms) [gcms](25における粘度) d エチルアルコール水溶液の密度 [gcm3] dw水の密度(099704gcm3) [gcm3](25における密度) t エチルアルコール水溶液の流下時間 [s] tw水の流下時間 [s] 下付添字 W 水
絶対粘度 www td
tdη
η= (42)
運動粘度 ν=ηd [cm2s] (43)
38
[実験方法] 1) 粘度計を洗浄し粘度計内 に二連球で空気を送り込み
乾燥させる乾燥しにくい 場合はアセトンを滴下し た後再度二連球で空気 を送り込み乾燥させる 2)ピペットで一定体積(10mℓ) の純水を取り広い口 f から 粘度計に水を入れる 3)粘度計を恒温槽(25)に つけ約 10 分静置する 4)安全ピペッターを口 a に 取り付け液面が b 上部に 到達するまで吸い上げる 5)安全ピペッターを外すと 液面が降下しだす液面が bd 間を通過する時間をスト ップウォッチで測定する
6)純水での測定を 3 回繰り返す 7)純水を粘度計から取り除くその後粘度計内に二連球を用いて空気を送り込み乾燥させる 8)粘度計乾燥後複数の濃度に調整済みのエチルアルコール水溶液(10mℓ)を粘度計にいれ4)~6)の作業を繰り返し行う(3 回)なお濃度の異なるエチルアルコール水溶液を粘度計内に導入する場合には7)と同様に二連球を用いて粘度計内に空気を送り込み乾燥させる
表 4-1 エチルアルコール水溶液の濃度密度相対粘度の関係 エチルアルコール濃度
[wt] 密度 d[gcm3] 相対粘度
η ηw[-] 0
20 40 50 60 80
100
安全ピペッター接続
図 4-1 粘度計
液面の bd間の通過時
間を測定
f
39
43 密度測定 [目的] 本実験では水とエタノールの種々の組成の混合液体について密度を測定し分子間相互
作用について考察する [実験方法] 1)ピクノメーターの容積測定
図 4-2のピクノメーターの空の重量 wg を秤量する
ピクノメーターの蓋を取り外し
ピクノメーターを水で満たす
設定温度を 25として恒温槽 の電源を入れ恒温槽内の温 度が一定になるまで待つな お水温は恒温槽中の水銀温 度計から読む
恒温槽中に水を満たしたピク
ノメーターを入れる
約 10分間静置する
ピクノメーターに蓋をするこのときピクノメーターの容量
よりも余分の水は蓋の上部より排出される
ピクノメーターの外側を乾いた布で拭い秤量する(その重量を
wwg とする)
恒温槽の温度(25)における水の密度 dwgcm3(=099704gcm3)
より次式を用いてピクノメーターの容積を求める
w
w
dww
Vminus
= (44)
図 4-2 ピクノメーター
蓋
40
表 4-2 エチルアルコール水溶液の濃度と密度の測定結果(25) エチルアルコ
ール濃度[wt]
wrsquo[g] ww[g] V[cm3] w[g]
d[gcm3]
0 20 40 50 60 80
100
099704
エチルアルコール濃度[wt] 空のピクノメーターの重量 wrsquo[g] 水を入れたときのピクノメーターの重量 ww[g] ピクノメーターの体積 V[cm3] エタノール水溶液の入れたときのピクノメータの重さ w[g] エタノール水溶液の密度 d[gcm3]
容積 Vを求めたピクノメーターに混合溶液(調整済み)を入れてその重量 wgを秤量し次式で混合溶液の密度を求める
Vwwd minus
= (45)
エタノール濃度と密度 d の関係をグラフにプロットする
41
44 高分子溶液の粘度 [目的] 高分子溶液の粘度測定から分子量の粘度に与える影響について考察する [概要 ] オストワルド粘度計を用い種々の濃度のポリビニルアルコール(PVA ((-CH2CHOH-)n))水溶液の粘度を測定し粘度データよりポリビニルアルコールの分
子量を求める まず 05g100cc の濃度のポリビニルアルコール水溶液を調製する次にこれを原液
とし23 12 13 15の濃度の溶液を調製するこれらの溶液についてオストワルド粘度計を用いてそれぞれ流下時間を測定し相対粘度絶対粘度運動粘度を求め実験デ
ータより極限粘度[η]を求めるまた報告書には相対粘度絶対粘度運動粘度C
)ln( wηη
Cw
w-η
ηη vsポリビニルアルコール濃度の関係をそれぞれグラフにして提出する
[計算方法] エチルアルコール水溶液の粘度測定と同様の手法を用いて粘度の計算を行うなおポリビニルアルコール水溶液の密度はピクノメーターを用いて測定すること 表 4-3 ポリビニルアルコール水溶液の濃度密度相対粘度の関係 ポリビニルアルコール
濃度 [g100cc] 密度 d[gcm3] 相対粘度
η ηw[-] 05times(15) 05times(13) 05times(12) 05times(23)
05
42
[分子量の計算方法] 実験を行った結果以下のような粘度データを得られるとする実験データより極限粘度
を求めポリビニルアルコール(PVA)の分子量Mを決定せよ
PVA 水溶液濃度
C[g100cc]
相対粘度
ηηw[-]
絶対粘度
η[gcms]Cw
w-η
ηη
C)ln( wηη
05times(15) 1031 0008255 031 0305
05times(13) 039 0378
05times(12) 03 0289
05times(23) 0375 0353
05 0364 0334
ηw=8007times10-3 gcms 線状高分子の極限粘度[η]と分子量Mの関係は次式で与えられる [η]=KMα (46) ただしポリビニルアルコールの場合K=666times10-4α=064であるなお極限粘度[η]は次式で定義される
CC w
w
0
-][ limη
ηηη
rarr
= (47)
または
CC
)ln(][ w
0lim
ηηη
rarr
= (48)
よって濃度 CとCw
w-η
ηηまたは濃度 Cと
C)ln( wηη の関係をグラフ化し最小二乗法によ
り切片の値を求めると極限粘度[η]が決定される
Cw
w-η
ηηと C の関係より最小二乗法を用いて切片の値を決定すると(図 43 参照)切片=
03242傾き=00874となるよって極限粘度は以下のようになる[η]=03242同様
にC
)ln( wηη とcの関係より最小二乗法を用いて切片の値を決定する
(図 44参照)と切片=03249傾き=00256となり極限粘度は以下のようになる[η]=03249
Cw
w-η
ηηと Cの関係より決定した[η]=03242を用いてポリビニルアルコール(PVA)の
分子量 Mを計算する(46)式より以下のように PVAの分子量 Mを計算することができるM=([η]K)1α
=(03242(666times10-4))(1064)
=15811
43
y = 00874x + 03242
0
02
04
06
08
1
0 01 02 03 04 05 06 07
c[g100cc]
(η-ηw)(ηwc)
cw
w
η
ηηminus
極限粘度[η]
図 43 298Kにおける PVA濃度 CとCw
w-η
ηηの関係
y = 00256x + 03249
0
02
04
06
08
1
0 01 02 03 04 05 06 07
c[g100cc]
(ln(ηη
w))c
c)ln( wηη
極限粘度[η]
図 44 298Kにおける PVA濃度 CとC
)ln( wηη の関係
44
5 植物からの DNAの抽出 51 はじめに 分子レベルでの遺伝子の構造解明や遺伝子の発現に関する研究は近年急速に発展している
これら生命現象のしくみを分子レベルで解明しようという分子生物学の分野ではさまざま
な遺伝子の解析や応用方法が開発され我々の生活に身近なものになりつつある 本実験では初歩的な分子生物学に関する実験として植物(タマネギ)からの DNA の
抽出を行い抽出した遺伝子の電気泳動法による分離実験を試みる 52 試薬および器具 試薬 タマネギ(細胞中から遺伝子の抽出を行う) 台所用洗剤(洗剤中に含まれる界面活性剤には植物の細胞膜およびタンパク質を破壊す
る働きがある) 塩化ナトリウム(DNAは塩化ナトリウム水溶液に溶解し易い性質がある) エタノール(予め冷やしておくDNAはエタノールにほとんど溶解しない) 制限酵素(DNAを一定の部位で切断する働きを働きがある) TE緩衝液(pH緩衝剤が入った溶液) 器具 ビーカーミキサーフィルターメスシリンダー駒込ピペットガラス棒 マイクロピペット電気泳動装置ポラロイドカメラ 53 実験方法 1)タマネギは 1回の実験で半個のうち内側の半分程度を使用するタマネギ水 30ml台所用洗剤数滴をミキサー用ガラス容器に入れ40~60秒程度(固体状のタマネギがなくなる頃が目安)ミキサーにて混合する
2) 1)で作成した混合溶液をビーカーに移し約5g程度の塩化ナトリウムを加えガラス棒で静かに攪拌する粘性の大きな溶液が得られる
3) 2)で作成した溶液をフィルターを用いて濾過し濾液を回収する 4) 濾液の約2倍程度の量の冷エタノールをビーカーの壁伝いに静かに注ぐ 5) ビーカーを揺するとエタノール層に白くふわふわしたものが浮いてくるこれが DNAであるガラス棒で DNAを巻き取りシャーレ上にて DNAを回収する顕微鏡を用いて回収した DNAの状態を観察する
6)マイクロチューブ(容量 15ml)中に用意した 70エタノールを 8 分目程度まで注ぐ5)にて回収された DNAをマイクロピペットを用いて70エタノールの入ったマイクロチューブ中に移す軽く混ぜることによりDNA から不要な物質を洗い流す遠心分離してDNA をマイクロチューブの底に沈めた後溶液を捨てて DNA を乾かす乾いたらTE緩衝溶液を 1ml加えて放置するDNAの溶液が得られる
54 電気泳動装置による DNAの観察
本実験は職員と一緒に行うこと 実験を行う人はビニール手袋をすること 1) 抽出した DNAを電気泳動装置で観察するマイクロピペットを用いて以下のように調製した DNAの混合溶液を調製する(いずれの溶液も調製済)
45
2) マイクロピペットを用いてアガロースゲルの試料を流し込む穴(ウェル)に1)にて調製した溶液 Aおよび Bを注ぎ込む注入量は20μℓとする電気泳動装置のスイッチを入れて100Vの電流を流しアガロースゲル内にて DNAを電気泳動させる
3) 試料に予め加えられておいた青色の色素が 7 分目程度まで進んだら電気泳動を中止する(約 30分程度)
4) (ここでの作業は職員が行う) アガロースゲルを取り出し染色液に浸す染色後ゲルを取り出しポラロイドカメラで
DNAの泳動状態を撮影する
+ -
アガロースゲル
試料を流し込む穴(ウェル)
図 51 電気泳動装置
6 5 4 3 2 1
図 52 DNAの電気泳動写真の一例
55 電気泳動装置の原理 電気泳動装置の原理図を以下に示すアガロースゲル(寒天から不純物を除いたもの)中
に DNAをセットし電流を流すとDNAは電流の向きとは逆にマイナスからプラス方向
調製済 溶液 A(制限酵素なし) 水 11μℓ 10timesH Buffer 2microℓ 植物 DNA 5μℓ
調製済 溶液 B(制限酵素 Eco RI入り) 水 11μℓ 10timesH Buffer 2microℓ 植物 DNA 5μℓ 制限酵素 2μℓ
1 DNA(タマネギ)+制限酵素 2 DNA(タマネギ)+制限酵素 3 DNA(タマネギ) 4 λ-DNA(大腸菌)+制限酵素 5 λ-DNA(大腸菌) 6 サイズマーカー
500bp
46
に動く(このことを電気泳動という)これはDNA のリン酸部分が負に帯電しているためでありまたDNAはその長さにより泳動距離が異なる(短い遺伝子ほど長く泳動する)電気泳動ではこの性質を利用してDNAを大きさごとに分離することができる
塩基対数によってDNAを分離
EtBr (蛍光試薬)DNAの二本鎖内に入り込む
発光
UVλ=302nm
励起
分離後のアガロースゲルをエチジウムブロマイド(EtBr)溶液に浸す
DNAを含んだ溶液
アガロースゲル
リン酸部分が負に帯電
塩基 (ATGC)-
+
カメラで撮影
電圧
DNA構成成分(dNTPs)
バンドが明る
DNA量が
バンド(DNAの存在)
図 53 電気泳動の原理
56 制限酵素とは DNA は4 種類のヌクレオチド(GATC)が不規則につながってできている制限酵素はDNAの特定のヌクレオチドが並んでいる部分を切断する制限酵素には様々な種類がありEco RI(エコアールワン)と呼ばれる酵素は「GAATTC」といった並びの部分だけを切断することができる
GAATTC
CTTAAG
制限酵素
Eco RI
AAGCTT
TTCGAA
制限酵素
Hin dIII
図 54 制限酵素による DNAの切断
レポートについて 1 実験方法および実験結果の整理方法については指針書を参考にすること 2 実験結果については電気泳動の結果について考察すること(制限酵素の影響などにつ
いてまとめてください)
47
6 染色実験
61 はじめに
現在私達の身の周りでは様々な染料が使われている例えばT シャツやジーンズな
どの衣服は橙黄赤青など様々な色に染められている他にも私達が気付かないと
ころで多くの染色された製品を使用しているそこで本実験では高校の化学で学んだ
アゾ染料を合成してみるアゾ染料はアニリンを原料として作られているアニリンはベ
ンゼン環にアミノ基(-NH2)がついたものであるアニリンは無色の液体で水に溶けにく
くアンモニアより弱い塩基性を示すまたさらし粉(CaClO(ClO)H2O)水溶液を加えると
赤紫色を呈するこの呈色反応はアニリン特有のものであるので検出反応に用いられる
このアニリンを出発物質としてアゾ染料を合成してみる
62 試薬および使用器具
【試薬】 ①05moll 水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液
②2-ナフトール ③フェノール ④6moll 塩酸
⑤亜硝酸ナトリウム ⑥アニリン ⑦氷
【器具類】 ①電子天秤 ②50mℓビーカー ③100mℓビーカー
④ガラス棒 ⑤布(ガーゼなど) ⑥ピンセット
⑦ポリ手袋 ⑧ドライヤー ⑨シャーレ
10駒込ピペット(10ml ガラス製)
11駒込ピペット(1ml プラスチック製)
63 実験方法
1) 50mℓビーカーの中に 05molℓ水酸化ナトリウム水溶液 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回
NaOH 水溶液を分取するほぼ 20 mℓ分取できれば可)と 2-ナフトールを約 01g 入れ
よくかき混ぜる調製した溶液の中に布をつけその布はガラス棒でしぼってから(布
をガラス棒ですくいあげればよい)シャーレに広げる温度の異なる条件下(常温およ
び低温)で染料の合成実験を行うため布は最低 2枚調製した溶液と接触させそれ
ぞれ別々のシャーレ(低温用および常温用)に広げる
2) 新しいビーカーに水を約 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回分取)と 6molℓ塩酸約 4mℓ(10m
ℓ駒込ピペットで目分量で可)さらにアニリン約 1mℓ(プラスチック製 1 mℓ駒込ピペッ
ト)を入れてよくかき混ぜる染料の合成を常温および低温下で行うためこの溶液を
2つ調整する
低温下で反応させる溶液は恒温槽で 10~15 分ほどよく冷やした後亜硝酸ナトリウ
ム 05g を加えてよくかき混ぜる
常温下で反応させる溶液には冷却作業を行わずに亜硝酸ナトリウム 05g を加えて
よくかき混ぜる
3) 2)でつくった水溶液をシャーレに広げた布に注ぎ生成される染料を布によく染み
込ませ5分程放置する
4) 色の付いた布を取り出してポリ手袋をした手できれいに水洗いをし乾燥させる
48
5) 色差計を用いて乾燥した布の Lab(L明度aおよび b色度)を測定する
2)で作った溶液は5以下では無色の溶液ですが5以上になると淡い黄色になりま
す
【解説】
アゾ染料はアゾ基(-N=N-)を持っていてこのアゾ基によって鮮やかな橙色を呈色し
ます今回合成したアゾ染料は図の 1-フェニルアゾ-2-ナフトールです意外かもしれ
ませんが指示薬として使われているフェノールフタレインもアゾ化合物ですフェノール
フタレインは pH の変化によって色が出てきす染料の中でも最初は無色のものもありますが
温度を変化させたり酸性やアルカリ性にすると色が出てきます
ベンゼン ニトロベンゼン
N2Cl
ニトロ化 濃硫酸(濃硝酸)
還元反応 濃塩酸
(Sn又は Fe)
アニリン塩酸塩
遊離反応 NaOH
アニリン塩酸塩に強塩基を反応させる
と弱塩基であるアニリンが遊離する
氷冷+亜硝酸ナトリウム アニリン
塩酸
ジアゾ化
塩化ベンゼンジアゾニウム
塩化ベンゼンジアゾニウム
は熱によって窒素とフェノー
ルに分解される
カップリング
C10H7ONa (ナトリウム 2-ナフトキシド)
O
N =
1-フェニルアゾ 2-ナフトール
NH3Cl NH2
49
7 ガスクロマトグラフ質量分析計による茶葉中のカフェインの分析 71 はじめに ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)は極めて低い濃度の化学物質の同定や未知物質の構造決定に極めて強力な分析機器の一つであるGCMSを用いるとサンプルの中に含まれているある成分の分子構造(カフェインの分子構造を図 71に示す)やその量が分かりますもちろん分析機器ですので測定できる物質対象となる系や測定条件にはある
程度の制約があります混合物質を分離するガスクロマトグラフ(Gas ChromatographGC)と分離された成分(物質)を分析(構造決定と濃度測定)する質量分析計(Mass SpectrometerMS)を組み合わせた装置であるこの装置は有機化学生化学環境化学などの多くの分野で非常に多用されている例えば極めて低い濃度でも生体へ強い影響が懸念されるダイ
オキシン類などの土壌や河川の水中での含有率の決定や食品や医薬品中の微量成分の決定
にも利用されている 一方日本人に長い間親しまれてきた緑茶が近年産業界や医学
界で注目されている茶葉にはカフェイン(分子構造図 71)カテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドなどの有用成分が多く含まれておりその効能が注目されている 本実験では茶葉中に含まれるカフェインに対してGCMSを用いて分析する茶葉中には種々の物質が含まれておりGCMS分析を容易にするため前処理として超臨界二酸化炭素抽出(4015MPa程度の高圧力の二酸化炭素を溶剤として利用)により茶葉からカフェインの抽出を行いそのサンプルを GCMSにて分析する
図 71 カフェインの分子構造 図 72 物質の分析 個々の物質や装置についてはインターネットにより下記のWebサイトのフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』などにより調べるとよいカフェイン(caffeine)はアルカロイドの一種プリン環を持つプリンアルカロイドの一種でコーヒー類に含まれることか
らこの名がある化学名は137-トリメチルキサンチン(C8H10N4O2) コーヒーコーラ緑茶紅茶ガラナココアなどに含まれる(量は緑茶が一番多い)結晶は一水和物(C8H10N4O2bullH2O)もしくは無水物(無水カフェインC8H10N4O2)として得られ
る白色の針状または六角柱状結晶で匂いはなく味は苦い融点は 238昇華性がある出典フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』httpwwwwikipediaorg 装置「GCMS」httpwwwanshimadzucojpproductsgcmsqp2010htm (島津) 「超臨界抽出装置」httpwwwkagakucomjasco39-49html (日本分光)
50
レポート課題 1茶葉中に含まれるカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドの中から3つの物質を選びその物質について調べた結果を A4 レポート用紙2枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
2GCMS についてA4 レポート用紙1枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
3与えられたサンプルは茶葉1gから抽出されたのである実験結果よりもとの茶葉
1g中に含まれるカフェインの量を推算し計算式とあわせて示すこと 72 原理および装置 実験で使用する島津製の GCMS装置の全体図を図 73に原理の概略を図 74に示す
1
23
4
5
67 8
9
10
キャリアーガス
試料物質
1ボンベ(He)2圧力計3マイクロシリンジ4サンプラー5試料導入部6分離カラム
7セパレーター8イオン化室9磁石10電子増倍管11記録計
11
図 74 ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)の概略図
サンプルフォルダー
51
GCMS 装置は分離部である図中の 1~6 のガスクロマトグラフ(GC)と7~11 の検出部である質量分析計(MS)から構成される 3のマイクロシリンジを用いて試料を GCMSに導入する導入された試料は5試料導入部でガス化され6分離カラムに導入される分離カラムには吸着剤が充填されおり混合物の試料を導入した場合各物質と吸着剤との
親和性の違いにより各物質の分離カラムから排出されるタイミングは異なる分離カラム
を排出された試料は8イオン化室でイオン化され10電子倍増管にて検出される アセトンに溶解したカフェインの GCMSによる分析結果の一例を以下に示す図 75にク
ロマトグラム図 76にカフェインのピークのマススペクトルを示す
図 75 GCMSにより得られたクロマトグラム
横軸がリテンションタイムで縦軸がピーク強度を表す
図 76 カフェインのマススペクトルとカフェイン(分子量MW=194)の構造
(図 75中のリテンションタイム 126min付近のピークに起因するマススペクトル) 茶葉中にはカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイド以外にも繊維であるセルロースなど多くの物質が含まれているため茶葉そのものを
そのままサンプルとしてGCMSで分析することは困難であるセルロースなどの分子量の大きな物質はカラムに詰まってしまい分析できないそこで今回は超臨界二酸化炭素
による抽出により主にカフェインを他の物質と分離抽出した通常よく利用されるアセ
トン抽出(アセトンに茶葉を浸し特定の成分を抽出する)ではカフェイン以外にも多く
の物質が抽出されるため図 75 のような単独のピークを得ることは難しく複数のピークがクロマトグラムに見られるこのサンプル(この場合茶葉からの抽出物)にはカフェ
イン以外の不純物は少なかったがガスクロマトグラフの分離カラムによりさらにそれ
らの混合物が精度よく分離されるクロマトグラムのピークはそれらサンプル中に含まれ
ていた個々の物質を表しているクロマトグラムのピークを選択することで分子構造解析
したい物質を選んだことになる選択したクロマトグラムのピークの表している物質(ここ
ではカフェイン)に対応するマススペクトルが図 76 に表示されているマススペクトル
52
で横軸がその成分(ここではカフェイン)分子を構成している原子の原子量で縦軸がそ
の量を表しているのでマススペクトルから分子構造を解析するためにコンピュータ内
に蓄えられた物質ごとのマススペクトルデータと今回測定したマススペクトル(分子内に含
まれている各原子の数)を比較することで測定したサンプル中のクロマトピークを選択し
た分子がどのような原子をどれだけ含んだ分子であったかがわかりそれからその物質
がどのような分子構造の物質である可能性が高いかをコンピュータが検索し結果を示す 73 実験サンプルの設置と GCMS装置の操作方法 実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS装置のサンプルフォルダ
ー(図 73)にセットするこのサンプルは茶葉 1gを 50ccの高圧セルにて超臨界二酸化炭素を利用して4015MPa2時間接触の条件で抽出した固体を10gのアセトンに溶かしたものである またコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に装置および装置制
御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 本実験で使用する GCMS の操作は全てコンピュータのモニター上で GCMS の解析プログラムソフトを使用することで行うコンピュータの操作方法を以下に示す なおコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS 装置のサンプルフォルダー(図 73)にセットするまた装置および装置制御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 1)パソコンのデスクトップ上のアイコン「GCMS 分析」をクリックすると以下のようにGCMS制御プログラムを起動するその後「OK」ボタンをクリックする
図 77 GCMD分析用ソフトウェア「GCMS分析」の起動
まず「GC-MS分析」をクリック
「OK」ボタンをクリック
53
2)制御プログラムが起動されパソコンと GCMSの接続が開始される
図 78 「GCMS分析」の接続確認画面 3)GCMSとパソコンの接続が完了すると以下のような画面が表示される
図 79 「GCMS分析」操作画面
4)マススペクトルによる分子構造の解析 サンプル(この場合茶葉からの抽出物)には多くの物質が混じり合っていたがガス
クロマトグラフの分離カラムによりそれらの混合物が精度よく分離されるクロマトグラ
ムのピークはそれらサンプル中に含まれていた個々の物質を表しているクロマトグラム
のピークを選択することで分子構造解析したい物質を選んだことになる選択したクロマ
トグラムのピークの表している物質(ここではカフェイン)に対応するマススペクトルを選
択するマススペクトルは横軸が原子量で縦軸がその量を表しているのでマススペク
トルから分子構造を解析するために「定性処理」を行う シミラリティ検索結果が表示され分析により得られたスペクトルと類似のスペクトルを有
する物質の一覧が表示される上部に表示される物質ほどスペクトルが一致していること
を示す
接続状況が表示される
「トップへ」
をクリック
54
図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果
図 711 表示スペクトルのシミラリティ検索結果 10)図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果の印刷 「レポート(R)」をクリックし「検索結果(R)」をクリックすると検索結果が印刷される
GC-MS 分析で得られたマスス
ペクトル
データベース中
のマススペクト
ル
55
参考資料 生理活性物質の精製 カフェインの利尿作用のように生物活動に影響を与える物質を生理活性物質といいます
天然物には生理活性物質を多く含むものがあります一般に天然物は多くの成分を含ん
でおり特定の生理活性物質を分離抽出するには種々の分離技術が必要ですまた生
理活性物質には60以上の温度でその生理活性を失う(失活)ものや溶剤として広く用いられているクロロホルムなどの有機溶剤中で失活するものが多いそこでこれら生理活性
物質の分離精製技術の開発が望まれており30~60程度のマイルドな温度条件で操作できる二酸化炭素を機能性溶媒として利用する超臨界抽出も有効な分離技術として注目されて
いる超臨界二酸化炭素は気体と液体の中間の性質を持ち物質の分離に役立っています 臨界点付近の高密度気体は超臨界ガスまたは超臨界流体と呼ばれ臨界圧力前後でそ
の溶解能力が著しく変化することから工業的にも種々の分野で利用されています一例と
して超臨界二酸化炭素(SC-CO2)によるコーヒー豆からのカフェインの抽出プロセス(a)
ならびに超臨界二酸化炭素に対するカフェインの溶解度(b)を図に示します図(c)に示す
ように固体のカフェインがガスである超臨界二酸化炭素に溶解します
このように超臨界二酸化炭素を用いた技術はコーヒー豆からのカフェインの抽出プロ
ポリスからの生理活性物質の抽出に利用されています
図 超臨界二酸化炭素抽出を用いたコーヒー豆からのカフェインの抽出
56
付表 最小二乗法について 直線で近似する場合 f (x) = a0 + a1x (A1-1) 式(A1-1)のように近似させるとする測定値 yiとの残差を eiとすると式(A1-2)のようになる ei = yi - f (xi) = yi - ( a0 + a1xi ) (A1-2) ここで式(A1-2)の両辺を二乗してその i に関する総和をとりその値を S とすると次式となる
sumsum==
+minus==n
iii
n
ii xaayeS
1
210
1
2 )( (A1-3)
S を最小化するような a0a1を求める式(A1-3)を a0a1について偏微分すると次式とな
る
sum=
+minuspartpart
=partpart n
iii xaay
aaS
1
210
00)( sum
=
+minusminus=n
iii xaay
110 )(2 (A1-4)
同様にa1について編微分すると次式のようになる
sum=
+minusminus=partpart n
iiii xxaay
aS
110
1])([2 (A1-5)
Sが最小となる時は次式が同時に満たされる時である
00=
partpartaS
01=
partpartaS
(A1-6)
よって誤差が最小となる a0a1を求めるためには式(A1-6)を連立して解けばよい
sumsumsum===
+=n
ii
n
i
n
ii xaay
111
10 1 (A1-7)
sumsumsum===
+=n
ii
n
ii
n
iii xaxaxy
1
2
11
10 (A1-8)
式(A1-7)と式(A1-8)を a0a1を変数とみなし連立して解くと次式を得る
n組のデータ(xiyi)(i=12hellipn)に対して回帰直線 y= a0 + a1x を最小二乗法で求めて出力しデータ番号 iデータ yi直線で推定した値 )( ii bxay += および残差
iii yy minus=ε を出力するようなプログラムをつくりたい基礎式を導出せよ (ヒント残差の二乗の和が最小になるように係数 a0a1)を定めるのが最小二乗法
である)
57
sumsum
sumsumsumsum
==
====
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
n
ii
n
ii
xxn
xxyyxa
1
2
1
2
1111
2
0
)(
))(())(( (A1-9)
sumsum
sumsumsum
==
===
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
xxn
yxxyna
1
2
1
2
1111
)(
))(()( (A1-10)
よって式(A1-9)(A1-10)を用いれば最も誤差を小さくするような直線 y = a0 + a1x が求められる
y=a1x+a0 にて近似
誤差 ei
x
y
誤差が最小になる関数(直線 y=a1x+a0の場合)
図1 最小二乗による近似
誤差の和Sが最小
S
a0
a1
直線 y=a1x+a0 の近似
誤差の全体の和はS=Σei=Σyi-(a1xi+a0)
Sは変曲点にて最小値を示すすなわち(partSparta0)=0 (partSparta1)=0
図2 a0a1とSの関係
21
まています 次に酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着量 n[molg]の関係および酢酸濃度 Cb[molL]と Cbn[gL]の関係をグラフ化します今回は自動的にグラフが作成されるようになっていますので複
雑な操作は必要ありません ここではデータに対してそれを精度よく表現する近似式をグラフ上に描きその関数
を数値として求める方法を Excelで練習してみましょう
グラフを表示させるには画面の下にある「Graph1」もしくは「Graph2」のタグ
をクリックします「Graph1」には酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着量n[molg]の関係のグラフが「Graph2」には酢酸濃度 Cb[molL]と Cbn[gL]の関係のグラフが表示されます「Graph2」はLangmuir の等温吸着式による相関を表したもので横軸に酢酸濃度 Cb[molL]をとり縦軸に酢酸濃度 Cb[molL]を活性炭吸着量 n[molg]で除した値 Cbn[gL]を示していますLangmuir の等温吸着式についてはこの後の章で説明してありますので各自読んで理解して下さいLangmuirの等温吸着式では式中の定数 ninfin(飽和吸着量)と K(吸着平衡定数)を実験データから最小二乗近似で決定する場合が多くありますここでは
その例を取り上げてデータに対してそれを精度よく表現する近似式をグラフ上に描き
その関数を数値として求める方法(最小二乗法最小二乗については付録に示しており
また化学工学プログラミングの講義においても説明します)を Excelで練習します 配布された Excel ファイル「ad_graxls」では実験点が表示されているだけでそれを精度よく表現する近似式の直線のグラフは「Graph2」に表示されていません今から次の手順で「Graph2」の図(グラフ)に近似式の直線のグラフを表示しますExcel の場合近似曲線(ここでは直線)を求める場合コンピュータが自動的に最小二乗法を使って近似曲線
を計算しています
「Graph1」の画面 「Graph2」の画面
Excelの sheetが表示されたらまずファイル名を変えデスク
トップに保存して下さい次
にGraph2のタックを左クリックして最小二乗法のグラフを
確認して下さい
22
38 Langmuirの等温吸着式による相関 はじめにLangmuir式の定数 ninfinと Kを決定するために「Graph2」酢酸濃度 Cb[molL]と
Cbn[gL]の関係のグラフから最小二乗法により直線の式を求めますExcelを用いてデータに対して近似直線のグラフを描き最小二乗法の直線の式を求めます
次のような「近似曲線の追加」のウィンドウが現れたら今回は線形近似(直線で近似
y=ax+b の式)を選びますので線形近似が黒色に反転していることを確認して「近似曲線の追加」のウィンドウの右下の「OK」ボタンをクリックして下さい
実験点の何れかにポインタをあわせて
右クリックする
近似曲線の追加(R)を選択して左クリックする
「線形近似」であること
を確認して「OK」ボタンをクリックします
23
「近似曲線の書式設定」
のウィンドウでオプシ
ョンから「グラブの書式
を表示する」の前を選ん
でチェック(前のチェッ
クボックスをクリック)
した後「OK」を押す
現れた直線にポインタをあわせて
左クリックすると「近似曲線の書式
設定」のウインドウが表示されます
ここをクリックします
この「オプション」のタ
グをクリックします
「y=」の関数
が現れるのでここ
をクリックする
式の文字フォントが初期値
「8」と小さいのでここ
のボタンをクリックし
フォントサイズを選ぶリス
トボックスを表示し「22」程度の大きなサイズを選択
しクリックする
24
「Graph2」酢酸濃度 Cb[molL]と Cbn[gL]の関係のグラフから最小二乗法により直線の式がこのように求められましたExcel を用いてデータに対して近似直線のグラフを描き最小二乗法の直線の式を求めるこの方法は他の実験データの解析などにも利用できますので
各自活用して下さい 表示された関数式「y=43865+2654」はノートにメモして下さいこの傾き 43865と
切片 2654からLangmuir式の定数 ninfinと Kを決定します決定方法の詳細はこの後の 36 の Langmuir式のパラメータ決定法に示しています ラングミュアの等温吸着式を変形すると次式となる
CCnKnCKn
CCKn
Cβ+α+
==
+= infininfininfin
11)1(
ただしα=1ninfinβ=1(ninfinK)とするこの式より Cnを縦軸Cを横軸とした関係のグラフは傾きα=1ninfin切片β=1(ninfinK)の直線関係を与えることを示しています そこでExcelのシートを利用してこの値からLangmuir式の定数 ninfinと Kを次のように決定しますセル C18D18に Graph2で求めた数値 2654と 43865を代入しますその後D19と C19に関数を ldquo=1D18rdquoとrdquo=D18C18ldquoを代入しますセル内の式は半角で入力してください
現れた関数の文字フォン
トを大きく(例えば 22)してその数字をメモし
吸着データシートの C18と D18に記入する
C18D18 に Graph2 で求めた値 2654 と 43865 を代入した後D19 と C19 に関数を ldquo=1D18rdquoとrdquo=D18C18ldquoを代入する
25
この Excel表示では最小二乗法を用いて決定した傾きαと切片βを用いて α=1ninfin=43865 β=1(ninfinK)=2654 得られた傾きおよび切片よりninfinおよび Kは次のように求まる
ninfin=1α=1D18=000228 molg-1 K =(1ninfin)β=αβ=D18C18=165
つまりセル D19にはninfinの値がセル C19にはKの値が表示されますこれらの値はラングミュア(Langmuir)の単分子吸着モデルで計算した理論線と実験と比較する場合に利用します実験結果に対して理論的な考察を行う例としてラングミュア(Langmuir)の単分子吸着モデルで理論線を計算し実験と比較するにはこの Excelファイルを利用して次のように計算しグラフに表示します セル F5~F30 には溶液中に残る酢酸濃度 Cb[molL]に対する活性炭に吸着された吸着量n[molg]の関係のグラフ「Graph1」の横軸の酢酸濃度 Cb[molL]の適当な値が既に入力してありますこれらのそれぞの酢酸濃度 Cb[molL]に対する吸着された酢酸の吸着量 n[molg]の理論値をラングミュア(Langmuir)式で計算しますラングミュア式は次式で与えられます
KCKCnn
+=
infin
1 (310)
ここでこの実験データを最も精度よく計算できるように決定した ninfinおよび K は上述のようにninfin=1α=1D18=000228 molg-1 K =(1ninfin)β=αβ=D18C18=165 でありこれらの値はセル D19にninfinの値がセル C19にKの値が表示されていますこの値を利用して「Graph1」に計算線を描くにはまずセル G5~G30 にセル F5~F30 のそれぞれの酢酸濃度 Cb[molL]に対する吸着された酢酸の吸着量 n[molg]の理論値をラングミュア式で計算しますそのためにはセル G5 にラングミュア式を次のように記述しますただしセル D19の ninfinの値セル C19の Kの値は常に同じセルから参照するので絶対参照($マークを付けて$D$19 $C$19と記述します)で記述します
Langmuir式をセル G5に記述するただし濃度はF5の値を相対参照しD19と C19は絶対参照($マークが必要)することを忘れないように
セルG5に記述すべき数式
=$D$19$C$19F5(1+$C$19F5)
26
G5記述後フィルハンドルを使用してG5の関数を G6~G30までコピーします Sheet1から Graph1 のタグをクリックしGraph1 に計算線が表示されたことを確認しましょうこれでラングミュア式によるデータの解析は終了です実験値と理論値を比較して現象
について考察してみて下さいラングミュア式を理論的に導く場合にある仮定をしている
のですがその仮定をしているラングミュア式が実験データを精度よく計算できていれば
その仮定が妥当なもとであったと考察できます 与えられたモデルデータでラングミュア式によるデータ解析ができれば他の理論(例え
ばフロインドリッヒFreundlich式や BET式レポートはどちらか一方でも可です) についてもExcel で計算してみましょうレポートには自分のデータについてここで行った内容と同様に計算しその結果を考察に記述して下さい 自分のデータについて同様の計算をするにはまずいままで計算を行った Excel ファ
イルを保存しますデータを自分の実験データに置き換える前に Excel ファイルをさらに別の名前で保存します与えられた Excel ファイルは初期状態では模擬のデータが入力されているので今回自分達の実験したデータを入力していきます入力するデータは予め計算
しておいた酢酸濃度 Cb[moll]と活性炭吸着量 n[molg]になります下の画面の丸で囲んだ部分にそれぞれ自分の実験データを入力していきます
今回はCbnの値を入力する必要はありませんExcelが自動的に計算を行って結果を表示するようになっています 次に酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着
量 n[molg]の関係および酢酸濃度Cb[molL]と Cbn[gL]の関係をグラフ化します今回は自動的にグラフが作成
されるようになっていますので操作は必
要ありません 39 Freundlichの等温吸着式による相関 今回の実験で得られた酢酸濃度 Cbと活性炭吸着量 nのデータを利用してFreundlichの等温吸着式の定数 abの値を求めFreundlichの等温吸着式の理論線をグラフに追加します ここでFreundlich式は次式で表されます
bbaCn1
=
このままでは定数 abの値を決定することが難しいので上式の両辺の対数をとり線形化しますすると次式となります
bCb
an ln1lnln +=
ここでln Cbと ln nの関係をグラフにプロットすれば傾き 1b切片 ln aの直線関係が得られますしたがって実験データである酢酸濃度 Cbと活性炭吸着量 nの値の対数をそれぞれ計算します配布した「ad_graxls」ファイルを開き「吸着データ」シートの任意の部分に以下のような表を作成します
27
次にln Cb[-]の列の最初のセルに以下の数式を入力します
=ln(B5) 上式中の「B5」は Cb の値の最初のセルの位置を指します各個人の位置によって変更してください
次にln n[-]の列の最初のセルに以下の数式を入力します
=ln(C5) 上式中の「C5」は nの値の最初のセルの位置を指します各個人の位置によって変更してください
ここでln Cb[-]ln n[-]の値に対しそれぞれオートフィルを行い計算させますすると以下のようなデータが完成します
計算した ln Cb[-]ln n[-]の値をグラフにプロットし最小二乗法による直線式を求めます
28
ここで以下のような直線の式が得られたとします
9135ln31690ln913531690 minus=there4minus= bCnxy
上式より切片は-5913傾きは 03169となるので以下の要領で定数 a1bを計算します ==there4minus= minus 91359135ln eaa 000270
316901=
b
a の値を Excel で計算させる場合は任意のセルに以下のような数式を入力することで求めることができます
=exp(-5913) これでFerundlich等温吸着式の定数 a1bの値が決定しましたこの値は後で使うのでノートなどにメモしておいてください 次に決定した Ferundlich 等温吸着式の定数 a1b の値を用いてFerundlich 等温吸着式のグラフを作成します先ほども示したように Ferundlich等温吸着式は次式で表されます
bbaCn1
=
従って定数 aと 1bの値はすでに決定しているので任意の Cbの値に対する nの値を数点求めればFerundlich等温吸着式で求めた理論線が得られます以下の操作で理論線を引くことができます Langmuir 等温吸着式による相関のときと同様にExcel の「吸着データ」のシート上の任意の場所に以下のような表を作成します
次に Ferundlich等温吸着式に従いnの値を計算します
bbaCn1
=
式中の定数 a1bは先ほど計算した値を用いますしたがって式は次のようになります
31690002700 bCn times=
この式を Excelのセル内に記入すれば計算ができます次の
29
ように記入します
=00027G5^03169 ここで式中の「G5」は Cbの値が 0のセルを指しています各個人の位置によって変えてください 次に式を記入したセルを Cbの値が 05のところまでオートフィルを行いますそうするとすべての Cbに対して nの値が計算されます
これで Freundlich等温吸着式のデータが完成しましたので次に「Graph1」酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着量 n[molg]の関係のグラフにこのデータを追加し理論線を引きます理論線の引き方は Langmuirによる相関のときと同様の操作を行ってください グラフの書式等を変更し整理すると以下のようなグラフが出来上がります
310 吸着等温線とは 固体の吸着剤を溶液と接触させる時一定量の吸着剤によって吸着される溶質の量は温度一定ならば溶質の濃度の関数になる一定温度での吸着量を温度に対してプロットした時に
得られる曲線を吸着等温線というこの吸着等温線を比較的よく表す経験式として次の
Freundlich式がある
n=aC1b (1) ここで n は吸着剤の質量あたりの吸着量C は吸着平衡濃度a と b は実験から決定されるパラメータであるがその物理的意味は多少希薄である これに対し理論的な意味を持つものに次のラングニュア(Langmuir)の吸着等温式がある
30
KCKCnn
+=
infin
1 (2)
ただしninfinは飽和吸着量Kは吸着平衡定数であるこの式は
1)吸着分子が固体表面で単分子以上の厚い層を作ることはない 2)吸着分子同士の間の相互作用はない
という二つの仮定にもとに導かれたものである 結果の整理および報告 Freundlich吸着等温式Langmuir吸着等温式の各々のパラメータの最適値を求めよまた活性炭の吸着特性および表面積について考察し化学工学における吸着操作の重要性につい
ても検討せよ 311 吸着等温式 (a) ヘンリー(Henry)型吸着等温式 液相の濃度あるいは気相の圧力が小さい場合吸着分子間の距離が十分に長いため吸着
分子同士の相互作用が無視でき固体表面と吸着分子のみの相互作用で吸着量を決定できる
とき次式のように表される
n=KC (3)
ここでKは比例定数である図 3-1の(a)に示すように濃度 Cと吸着量 nは比例関係があり一般に吸着量が小さい範囲で成立する気体の場合は溶液濃度 Cの代わりに気相圧力 pを用いればよい
濃度(分圧)
濃度(分圧)
濃度(分圧)
濃度(分圧)
吸着量
吸着量
吸着量
吸着量
(a)ヘンリー型 (b)ラングミュア型
(d)BET型(c)フロインドリッヒ型
0
0
0
0
図 3-1 吸着等温式
31
(b)ラングミュア(Langmuir)型吸着等温式 ラングミュアは図 3-2 に示すように固体表面に同等な吸着力を示す吸着サイトがあり
表面に 1分子層だけ吸着する(単分子層吸着)と仮定して平衡状態における吸着量と溶質濃度(気相分圧)のと関係を導いた全吸着点のうち吸着分子に覆われている吸着点の割合
をθ[-]とすると分子の脱着速度 rrsquo[mols-1]はθに比例する比例定数を a[mols-1]とすると次式のように表される
吸着剤
吸着分子
吸着サイト
図 3-2 固体表面上の吸着サイト(Langmuir式の導出) r=aθ (6) また気相からの吸着速度 r[mols-1]は空いている吸着点の割合(1-θ)[-]と溶液濃度 C[molm-3]に比例する rrsquo= b(1-θ)C (7) このときの比例定数を b[m3s-1]とするまた平衡状態では両速度は見かけ上等しいため以下の式が成り立つ aθ=b(1-θ)C (8) これを変形する
CbaCbsdot+
sdot=θ (9)
ここで飽和吸着量を ninfin[molkg-1] ba を K[m3mol-1](Kは吸着平衡定数)とおくと infin=nnθ
となるので次式が得られる
32
KCKCnn
+=
infin
1 (10)
これをラングミュア式と呼ぶ
(c)フロインドリッヒ(Freundlich)型吸着等温式 フロインドリッヒの吸着等温線は図 3-1(c)のように示される
n=aC1b (11) nは吸着量[molkg-1]で aと bはともに吸着定数[-]である (d)BET(Brunauer-Emmett-Teller) 型吸着等温式
BET型の吸着等温線は図 3-1(d)に示されるラングミュア式は表面に 1分子層だけ吸着すると仮定したものであるがBET式は無限分子層まで吸着できる式である図 3-3に示すように吸着した分子がそれぞれ次の層の吸着サイトとなり分子は積み重なって多分子
層に無限層まで吸着できるものとし各層への吸着にラングミュア式を適用すれば次式の
ように表せる
( ) ( )CKCCCKqq
minus+sdotminussdotsdot
=infin
11 (12)
この式は多孔質固体の細孔表面積を窒素ガスの吸着によって測定する際に利用される重要な式
である
表面の吸着サイト
分子上の吸着サイト
図 3-3 多分層吸着モデル
Langmuir式のパラメータ決定法 水溶液からの酢酸の活性炭に対する吸着平衡データ(吸着平衡温度 12)は表 3-1のよ
うに与えられる実験データよりラングミュア式のパラメータ(K吸着平衡定数ninfin飽和吸着量)を最小二乗法で決定せよさらにラングミュア式より決定した ninfinKの値を用いて吸着等温線を計算し計算線として図に示し実験点と比較せよ
33
表 3-1 n C Cnの関係
ラングミュア式は式(310)で与えられるこの式を変形すると次式となる
CKnCK
n infinsdot+
=11
(313)
両辺に Cをかけると以下の式が導出される
CCnKnCKn
CCKn
Cβ+α+
==
+= infininfininfin
11)1( (314)
ただしα=1ninfinβ=1(ninfinK)とする式(314)より Cn と C の関係のグラフプロットは傾きα=1ninfin切片β=1(ninfinK)の直線関係を与えることを示している表 3-1の値を用いて計算した Cnと Cの関係を表 3-1および図 3-4に示す 最小二乗法を用いて傾きαと切片βを決定した α=1ninfin=43865 β=1(ninfinK)=2654 得られた傾きおよび切片よりninfinおよび Kは次のように求まる
ninfin=1α=1D18=000228 molg-1 K =(1ninfin)β=αβ=D18C18=165
0
50
100
150
200
0 200 400 600
C [ molm-3 ]
Cn [ kgm-3 ]
傾き = 1 ninfin
1 ninfinK
切片0
05
1
15
2
25
3
0 100 200 300 400 500
液相の溶質濃度 C [ molm-3 ]
吸着量 n [ molkg-1]
液相と溶質濃度 C [ molm-3 ]
吸着量
n[ m
olk
g-1]
実験点
Langmuir式パラメータninfin 00033 [ molg-1 ]K 00086 [ m3 mol -1 ]
図 3-4 ラングミュア定数の決定 図 3-5 12における酢酸濃度 Cと
吸着量 nの関係
C [molm-3] n [molkg-1] Cn [kgm-3] 460 225 109 529 214
268 199 149 105 060
172 128 732 504 357
34
Freundlich式のパラメータ決定法 酢酸水溶液中における酢酸の活性炭に対する吸着実験を行ったところ以下のような実験デー
タを得たただしCbはバルク相における酢酸濃度n は活性炭に対する酢酸の吸着量を示す
Cb[molL] n[molg] log10Cb log10n 04621 000205 02410 000175 01139 000139 00519 000105 00243 000081
実験データを利用して次式で与えられる Freundlichの等温吸着式の定数 abの値を求めたい
bbaCn1
= (1)
このままでは定数 abの値を決定することが難しいので上式の両辺の対数をとる
bbb
bb
Cb
aCa
aCn
ln1lnlnln
)ln(ln1
1
+=+=
=
(2)
ここで横軸に ln Cb縦軸に ln nの関係をグラフにプロットするすなわち x=ln Cby=ln nと考える
bCb
an ln1lnln += (3)
ここで直線式 y=a0+a1xと比較するすなわち
)(1)(ln
1
00
傾き
切片
ba
eaaa a
=
=rarr= (4)
a0および a1は最小二乗法により数値で求められる与えられたデータでは a1= a0= なので a= b= となる この値を n=acb
1bに代入してcb=0~05の範囲で nの値を計算する
35
BET式のパラメータ決定法 BET式は次式で与えられる
)1)(1( KCCCKCnn
+minusminus=
infin
(17)
以下のように BET式の変形を行う
)1()1(
KCCKCnCn+minus
=minusinfin
(18)
(18)式の逆数をとると
KCnCK
KCnKCC
Cn infininfin
minus+=
+minus=
minus)1(1)1(
)1(1
(19)
(19)式の両辺に Cをかえると
KCnCKC
CnC
infin
minus+=
minus))1(1(
)1( (20)
(20)式を変形すると次式が得られる
CKn
KKnCn
Cinfininfin
minus+=
minus11
)1( (21)
C と)-(1 Cn
Cのプロットは傾き
KnKinfin
minus1切片
Kninfin
1の直線関係を与えることを示している
これをグラフにプロットし最小二乗法に傾きおよび切片を求める
36
312 活性炭の比表面積の決定 酢酸分子の構造を以下に示す
Hc-Cb-Ca
Hd
Hb Oa
Ob-Ha
1219deg
Ca Oa
Ob
図 36 酢酸の構造
酢酸の 1分子の吸着面積srsquo [m2]を図 3-6に示すこのとき文献より
Caと Oaの結合距離 1321Å Caと Obの結合距離 1206Å OaCaObの角度 1219deg Cの原子半径 077Å Oの原子半径 062Å
したがって吸着面積 Slsquoは次のようになる
( ) ( ) 2088 10376109931036321 minusminusminus times=timestimestimestimes=s m2
ここで活性炭の比表面積 S[m2g]は次式で示される 10026 23 snS timestimestimes= infin
S活性炭の比表面積 [m2g] ninfin飽和吸着量 [molg] srsquo酢酸 1分子の吸着面積 [m2] 602times1023アボガドロ数 [個mol] したがって活性炭の比表面積 S[m2g]は
003350=infinn molg 2010376 minustimes=s m2 より
51281037610026003350 2023 =timestimestimestimes= minusS m2g
37
4 粘度密度測定 41 はじめに 大量生産を目的とした工業的化学プロセスはほとんど流れ系(流通系)であるそれらの系において操作対象となる各物質の粘度は装置を設計操作する場合きわめて重要
な物性値である 本実験では低分子溶液および高分子溶液の粘度測定を通じて液体の粘度について考察するさらに演習問題を通じて気体液体高分子溶液などの化学プロセスで対象となる物
質の輸送物性(粘度拡散係数)の重要性を認識されたい 42 低分子溶液の粘度 [目的] 種々の濃度のエタノール水溶液の粘度を測定しその溶液の粘度について考察する [概要] 25におけるエチルアルコール濃度 02040506080100 wt の水溶液について流下時間を測定しこの結果より相対粘度絶対粘度運動粘度を求めグラフにするま
た水の密度水-エチルアルコール溶液の密度についてはピクノメーターを用いて決
定する報告書には相対粘度絶対粘度運動粘度 vsエチルアルコール濃度の関係をそれぞれグラフにして提出する
[計算方法] 相対粘度絶対粘度運動粘度の定義は次のようになる
相対粘度 ww
w tdtd
ηη = (41)
η 混合溶液の粘度 [gcms] ηw水の粘度(8007times10-3 gcms) [gcms](25における粘度) d エチルアルコール水溶液の密度 [gcm3] dw水の密度(099704gcm3) [gcm3](25における密度) t エチルアルコール水溶液の流下時間 [s] tw水の流下時間 [s] 下付添字 W 水
絶対粘度 www td
tdη
η= (42)
運動粘度 ν=ηd [cm2s] (43)
38
[実験方法] 1) 粘度計を洗浄し粘度計内 に二連球で空気を送り込み
乾燥させる乾燥しにくい 場合はアセトンを滴下し た後再度二連球で空気 を送り込み乾燥させる 2)ピペットで一定体積(10mℓ) の純水を取り広い口 f から 粘度計に水を入れる 3)粘度計を恒温槽(25)に つけ約 10 分静置する 4)安全ピペッターを口 a に 取り付け液面が b 上部に 到達するまで吸い上げる 5)安全ピペッターを外すと 液面が降下しだす液面が bd 間を通過する時間をスト ップウォッチで測定する
6)純水での測定を 3 回繰り返す 7)純水を粘度計から取り除くその後粘度計内に二連球を用いて空気を送り込み乾燥させる 8)粘度計乾燥後複数の濃度に調整済みのエチルアルコール水溶液(10mℓ)を粘度計にいれ4)~6)の作業を繰り返し行う(3 回)なお濃度の異なるエチルアルコール水溶液を粘度計内に導入する場合には7)と同様に二連球を用いて粘度計内に空気を送り込み乾燥させる
表 4-1 エチルアルコール水溶液の濃度密度相対粘度の関係 エチルアルコール濃度
[wt] 密度 d[gcm3] 相対粘度
η ηw[-] 0
20 40 50 60 80
100
安全ピペッター接続
図 4-1 粘度計
液面の bd間の通過時
間を測定
f
39
43 密度測定 [目的] 本実験では水とエタノールの種々の組成の混合液体について密度を測定し分子間相互
作用について考察する [実験方法] 1)ピクノメーターの容積測定
図 4-2のピクノメーターの空の重量 wg を秤量する
ピクノメーターの蓋を取り外し
ピクノメーターを水で満たす
設定温度を 25として恒温槽 の電源を入れ恒温槽内の温 度が一定になるまで待つな お水温は恒温槽中の水銀温 度計から読む
恒温槽中に水を満たしたピク
ノメーターを入れる
約 10分間静置する
ピクノメーターに蓋をするこのときピクノメーターの容量
よりも余分の水は蓋の上部より排出される
ピクノメーターの外側を乾いた布で拭い秤量する(その重量を
wwg とする)
恒温槽の温度(25)における水の密度 dwgcm3(=099704gcm3)
より次式を用いてピクノメーターの容積を求める
w
w
dww
Vminus
= (44)
図 4-2 ピクノメーター
蓋
40
表 4-2 エチルアルコール水溶液の濃度と密度の測定結果(25) エチルアルコ
ール濃度[wt]
wrsquo[g] ww[g] V[cm3] w[g]
d[gcm3]
0 20 40 50 60 80
100
099704
エチルアルコール濃度[wt] 空のピクノメーターの重量 wrsquo[g] 水を入れたときのピクノメーターの重量 ww[g] ピクノメーターの体積 V[cm3] エタノール水溶液の入れたときのピクノメータの重さ w[g] エタノール水溶液の密度 d[gcm3]
容積 Vを求めたピクノメーターに混合溶液(調整済み)を入れてその重量 wgを秤量し次式で混合溶液の密度を求める
Vwwd minus
= (45)
エタノール濃度と密度 d の関係をグラフにプロットする
41
44 高分子溶液の粘度 [目的] 高分子溶液の粘度測定から分子量の粘度に与える影響について考察する [概要 ] オストワルド粘度計を用い種々の濃度のポリビニルアルコール(PVA ((-CH2CHOH-)n))水溶液の粘度を測定し粘度データよりポリビニルアルコールの分
子量を求める まず 05g100cc の濃度のポリビニルアルコール水溶液を調製する次にこれを原液
とし23 12 13 15の濃度の溶液を調製するこれらの溶液についてオストワルド粘度計を用いてそれぞれ流下時間を測定し相対粘度絶対粘度運動粘度を求め実験デ
ータより極限粘度[η]を求めるまた報告書には相対粘度絶対粘度運動粘度C
)ln( wηη
Cw
w-η
ηη vsポリビニルアルコール濃度の関係をそれぞれグラフにして提出する
[計算方法] エチルアルコール水溶液の粘度測定と同様の手法を用いて粘度の計算を行うなおポリビニルアルコール水溶液の密度はピクノメーターを用いて測定すること 表 4-3 ポリビニルアルコール水溶液の濃度密度相対粘度の関係 ポリビニルアルコール
濃度 [g100cc] 密度 d[gcm3] 相対粘度
η ηw[-] 05times(15) 05times(13) 05times(12) 05times(23)
05
42
[分子量の計算方法] 実験を行った結果以下のような粘度データを得られるとする実験データより極限粘度
を求めポリビニルアルコール(PVA)の分子量Mを決定せよ
PVA 水溶液濃度
C[g100cc]
相対粘度
ηηw[-]
絶対粘度
η[gcms]Cw
w-η
ηη
C)ln( wηη
05times(15) 1031 0008255 031 0305
05times(13) 039 0378
05times(12) 03 0289
05times(23) 0375 0353
05 0364 0334
ηw=8007times10-3 gcms 線状高分子の極限粘度[η]と分子量Mの関係は次式で与えられる [η]=KMα (46) ただしポリビニルアルコールの場合K=666times10-4α=064であるなお極限粘度[η]は次式で定義される
CC w
w
0
-][ limη
ηηη
rarr
= (47)
または
CC
)ln(][ w
0lim
ηηη
rarr
= (48)
よって濃度 CとCw
w-η
ηηまたは濃度 Cと
C)ln( wηη の関係をグラフ化し最小二乗法によ
り切片の値を求めると極限粘度[η]が決定される
Cw
w-η
ηηと C の関係より最小二乗法を用いて切片の値を決定すると(図 43 参照)切片=
03242傾き=00874となるよって極限粘度は以下のようになる[η]=03242同様
にC
)ln( wηη とcの関係より最小二乗法を用いて切片の値を決定する
(図 44参照)と切片=03249傾き=00256となり極限粘度は以下のようになる[η]=03249
Cw
w-η
ηηと Cの関係より決定した[η]=03242を用いてポリビニルアルコール(PVA)の
分子量 Mを計算する(46)式より以下のように PVAの分子量 Mを計算することができるM=([η]K)1α
=(03242(666times10-4))(1064)
=15811
43
y = 00874x + 03242
0
02
04
06
08
1
0 01 02 03 04 05 06 07
c[g100cc]
(η-ηw)(ηwc)
cw
w
η
ηηminus
極限粘度[η]
図 43 298Kにおける PVA濃度 CとCw
w-η
ηηの関係
y = 00256x + 03249
0
02
04
06
08
1
0 01 02 03 04 05 06 07
c[g100cc]
(ln(ηη
w))c
c)ln( wηη
極限粘度[η]
図 44 298Kにおける PVA濃度 CとC
)ln( wηη の関係
44
5 植物からの DNAの抽出 51 はじめに 分子レベルでの遺伝子の構造解明や遺伝子の発現に関する研究は近年急速に発展している
これら生命現象のしくみを分子レベルで解明しようという分子生物学の分野ではさまざま
な遺伝子の解析や応用方法が開発され我々の生活に身近なものになりつつある 本実験では初歩的な分子生物学に関する実験として植物(タマネギ)からの DNA の
抽出を行い抽出した遺伝子の電気泳動法による分離実験を試みる 52 試薬および器具 試薬 タマネギ(細胞中から遺伝子の抽出を行う) 台所用洗剤(洗剤中に含まれる界面活性剤には植物の細胞膜およびタンパク質を破壊す
る働きがある) 塩化ナトリウム(DNAは塩化ナトリウム水溶液に溶解し易い性質がある) エタノール(予め冷やしておくDNAはエタノールにほとんど溶解しない) 制限酵素(DNAを一定の部位で切断する働きを働きがある) TE緩衝液(pH緩衝剤が入った溶液) 器具 ビーカーミキサーフィルターメスシリンダー駒込ピペットガラス棒 マイクロピペット電気泳動装置ポラロイドカメラ 53 実験方法 1)タマネギは 1回の実験で半個のうち内側の半分程度を使用するタマネギ水 30ml台所用洗剤数滴をミキサー用ガラス容器に入れ40~60秒程度(固体状のタマネギがなくなる頃が目安)ミキサーにて混合する
2) 1)で作成した混合溶液をビーカーに移し約5g程度の塩化ナトリウムを加えガラス棒で静かに攪拌する粘性の大きな溶液が得られる
3) 2)で作成した溶液をフィルターを用いて濾過し濾液を回収する 4) 濾液の約2倍程度の量の冷エタノールをビーカーの壁伝いに静かに注ぐ 5) ビーカーを揺するとエタノール層に白くふわふわしたものが浮いてくるこれが DNAであるガラス棒で DNAを巻き取りシャーレ上にて DNAを回収する顕微鏡を用いて回収した DNAの状態を観察する
6)マイクロチューブ(容量 15ml)中に用意した 70エタノールを 8 分目程度まで注ぐ5)にて回収された DNAをマイクロピペットを用いて70エタノールの入ったマイクロチューブ中に移す軽く混ぜることによりDNA から不要な物質を洗い流す遠心分離してDNA をマイクロチューブの底に沈めた後溶液を捨てて DNA を乾かす乾いたらTE緩衝溶液を 1ml加えて放置するDNAの溶液が得られる
54 電気泳動装置による DNAの観察
本実験は職員と一緒に行うこと 実験を行う人はビニール手袋をすること 1) 抽出した DNAを電気泳動装置で観察するマイクロピペットを用いて以下のように調製した DNAの混合溶液を調製する(いずれの溶液も調製済)
45
2) マイクロピペットを用いてアガロースゲルの試料を流し込む穴(ウェル)に1)にて調製した溶液 Aおよび Bを注ぎ込む注入量は20μℓとする電気泳動装置のスイッチを入れて100Vの電流を流しアガロースゲル内にて DNAを電気泳動させる
3) 試料に予め加えられておいた青色の色素が 7 分目程度まで進んだら電気泳動を中止する(約 30分程度)
4) (ここでの作業は職員が行う) アガロースゲルを取り出し染色液に浸す染色後ゲルを取り出しポラロイドカメラで
DNAの泳動状態を撮影する
+ -
アガロースゲル
試料を流し込む穴(ウェル)
図 51 電気泳動装置
6 5 4 3 2 1
図 52 DNAの電気泳動写真の一例
55 電気泳動装置の原理 電気泳動装置の原理図を以下に示すアガロースゲル(寒天から不純物を除いたもの)中
に DNAをセットし電流を流すとDNAは電流の向きとは逆にマイナスからプラス方向
調製済 溶液 A(制限酵素なし) 水 11μℓ 10timesH Buffer 2microℓ 植物 DNA 5μℓ
調製済 溶液 B(制限酵素 Eco RI入り) 水 11μℓ 10timesH Buffer 2microℓ 植物 DNA 5μℓ 制限酵素 2μℓ
1 DNA(タマネギ)+制限酵素 2 DNA(タマネギ)+制限酵素 3 DNA(タマネギ) 4 λ-DNA(大腸菌)+制限酵素 5 λ-DNA(大腸菌) 6 サイズマーカー
500bp
46
に動く(このことを電気泳動という)これはDNA のリン酸部分が負に帯電しているためでありまたDNAはその長さにより泳動距離が異なる(短い遺伝子ほど長く泳動する)電気泳動ではこの性質を利用してDNAを大きさごとに分離することができる
塩基対数によってDNAを分離
EtBr (蛍光試薬)DNAの二本鎖内に入り込む
発光
UVλ=302nm
励起
分離後のアガロースゲルをエチジウムブロマイド(EtBr)溶液に浸す
DNAを含んだ溶液
アガロースゲル
リン酸部分が負に帯電
塩基 (ATGC)-
+
カメラで撮影
電圧
DNA構成成分(dNTPs)
バンドが明る
DNA量が
バンド(DNAの存在)
図 53 電気泳動の原理
56 制限酵素とは DNA は4 種類のヌクレオチド(GATC)が不規則につながってできている制限酵素はDNAの特定のヌクレオチドが並んでいる部分を切断する制限酵素には様々な種類がありEco RI(エコアールワン)と呼ばれる酵素は「GAATTC」といった並びの部分だけを切断することができる
GAATTC
CTTAAG
制限酵素
Eco RI
AAGCTT
TTCGAA
制限酵素
Hin dIII
図 54 制限酵素による DNAの切断
レポートについて 1 実験方法および実験結果の整理方法については指針書を参考にすること 2 実験結果については電気泳動の結果について考察すること(制限酵素の影響などにつ
いてまとめてください)
47
6 染色実験
61 はじめに
現在私達の身の周りでは様々な染料が使われている例えばT シャツやジーンズな
どの衣服は橙黄赤青など様々な色に染められている他にも私達が気付かないと
ころで多くの染色された製品を使用しているそこで本実験では高校の化学で学んだ
アゾ染料を合成してみるアゾ染料はアニリンを原料として作られているアニリンはベ
ンゼン環にアミノ基(-NH2)がついたものであるアニリンは無色の液体で水に溶けにく
くアンモニアより弱い塩基性を示すまたさらし粉(CaClO(ClO)H2O)水溶液を加えると
赤紫色を呈するこの呈色反応はアニリン特有のものであるので検出反応に用いられる
このアニリンを出発物質としてアゾ染料を合成してみる
62 試薬および使用器具
【試薬】 ①05moll 水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液
②2-ナフトール ③フェノール ④6moll 塩酸
⑤亜硝酸ナトリウム ⑥アニリン ⑦氷
【器具類】 ①電子天秤 ②50mℓビーカー ③100mℓビーカー
④ガラス棒 ⑤布(ガーゼなど) ⑥ピンセット
⑦ポリ手袋 ⑧ドライヤー ⑨シャーレ
10駒込ピペット(10ml ガラス製)
11駒込ピペット(1ml プラスチック製)
63 実験方法
1) 50mℓビーカーの中に 05molℓ水酸化ナトリウム水溶液 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回
NaOH 水溶液を分取するほぼ 20 mℓ分取できれば可)と 2-ナフトールを約 01g 入れ
よくかき混ぜる調製した溶液の中に布をつけその布はガラス棒でしぼってから(布
をガラス棒ですくいあげればよい)シャーレに広げる温度の異なる条件下(常温およ
び低温)で染料の合成実験を行うため布は最低 2枚調製した溶液と接触させそれ
ぞれ別々のシャーレ(低温用および常温用)に広げる
2) 新しいビーカーに水を約 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回分取)と 6molℓ塩酸約 4mℓ(10m
ℓ駒込ピペットで目分量で可)さらにアニリン約 1mℓ(プラスチック製 1 mℓ駒込ピペッ
ト)を入れてよくかき混ぜる染料の合成を常温および低温下で行うためこの溶液を
2つ調整する
低温下で反応させる溶液は恒温槽で 10~15 分ほどよく冷やした後亜硝酸ナトリウ
ム 05g を加えてよくかき混ぜる
常温下で反応させる溶液には冷却作業を行わずに亜硝酸ナトリウム 05g を加えて
よくかき混ぜる
3) 2)でつくった水溶液をシャーレに広げた布に注ぎ生成される染料を布によく染み
込ませ5分程放置する
4) 色の付いた布を取り出してポリ手袋をした手できれいに水洗いをし乾燥させる
48
5) 色差計を用いて乾燥した布の Lab(L明度aおよび b色度)を測定する
2)で作った溶液は5以下では無色の溶液ですが5以上になると淡い黄色になりま
す
【解説】
アゾ染料はアゾ基(-N=N-)を持っていてこのアゾ基によって鮮やかな橙色を呈色し
ます今回合成したアゾ染料は図の 1-フェニルアゾ-2-ナフトールです意外かもしれ
ませんが指示薬として使われているフェノールフタレインもアゾ化合物ですフェノール
フタレインは pH の変化によって色が出てきす染料の中でも最初は無色のものもありますが
温度を変化させたり酸性やアルカリ性にすると色が出てきます
ベンゼン ニトロベンゼン
N2Cl
ニトロ化 濃硫酸(濃硝酸)
還元反応 濃塩酸
(Sn又は Fe)
アニリン塩酸塩
遊離反応 NaOH
アニリン塩酸塩に強塩基を反応させる
と弱塩基であるアニリンが遊離する
氷冷+亜硝酸ナトリウム アニリン
塩酸
ジアゾ化
塩化ベンゼンジアゾニウム
塩化ベンゼンジアゾニウム
は熱によって窒素とフェノー
ルに分解される
カップリング
C10H7ONa (ナトリウム 2-ナフトキシド)
O
N =
1-フェニルアゾ 2-ナフトール
NH3Cl NH2
49
7 ガスクロマトグラフ質量分析計による茶葉中のカフェインの分析 71 はじめに ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)は極めて低い濃度の化学物質の同定や未知物質の構造決定に極めて強力な分析機器の一つであるGCMSを用いるとサンプルの中に含まれているある成分の分子構造(カフェインの分子構造を図 71に示す)やその量が分かりますもちろん分析機器ですので測定できる物質対象となる系や測定条件にはある
程度の制約があります混合物質を分離するガスクロマトグラフ(Gas ChromatographGC)と分離された成分(物質)を分析(構造決定と濃度測定)する質量分析計(Mass SpectrometerMS)を組み合わせた装置であるこの装置は有機化学生化学環境化学などの多くの分野で非常に多用されている例えば極めて低い濃度でも生体へ強い影響が懸念されるダイ
オキシン類などの土壌や河川の水中での含有率の決定や食品や医薬品中の微量成分の決定
にも利用されている 一方日本人に長い間親しまれてきた緑茶が近年産業界や医学
界で注目されている茶葉にはカフェイン(分子構造図 71)カテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドなどの有用成分が多く含まれておりその効能が注目されている 本実験では茶葉中に含まれるカフェインに対してGCMSを用いて分析する茶葉中には種々の物質が含まれておりGCMS分析を容易にするため前処理として超臨界二酸化炭素抽出(4015MPa程度の高圧力の二酸化炭素を溶剤として利用)により茶葉からカフェインの抽出を行いそのサンプルを GCMSにて分析する
図 71 カフェインの分子構造 図 72 物質の分析 個々の物質や装置についてはインターネットにより下記のWebサイトのフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』などにより調べるとよいカフェイン(caffeine)はアルカロイドの一種プリン環を持つプリンアルカロイドの一種でコーヒー類に含まれることか
らこの名がある化学名は137-トリメチルキサンチン(C8H10N4O2) コーヒーコーラ緑茶紅茶ガラナココアなどに含まれる(量は緑茶が一番多い)結晶は一水和物(C8H10N4O2bullH2O)もしくは無水物(無水カフェインC8H10N4O2)として得られ
る白色の針状または六角柱状結晶で匂いはなく味は苦い融点は 238昇華性がある出典フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』httpwwwwikipediaorg 装置「GCMS」httpwwwanshimadzucojpproductsgcmsqp2010htm (島津) 「超臨界抽出装置」httpwwwkagakucomjasco39-49html (日本分光)
50
レポート課題 1茶葉中に含まれるカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドの中から3つの物質を選びその物質について調べた結果を A4 レポート用紙2枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
2GCMS についてA4 レポート用紙1枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
3与えられたサンプルは茶葉1gから抽出されたのである実験結果よりもとの茶葉
1g中に含まれるカフェインの量を推算し計算式とあわせて示すこと 72 原理および装置 実験で使用する島津製の GCMS装置の全体図を図 73に原理の概略を図 74に示す
1
23
4
5
67 8
9
10
キャリアーガス
試料物質
1ボンベ(He)2圧力計3マイクロシリンジ4サンプラー5試料導入部6分離カラム
7セパレーター8イオン化室9磁石10電子増倍管11記録計
11
図 74 ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)の概略図
サンプルフォルダー
51
GCMS 装置は分離部である図中の 1~6 のガスクロマトグラフ(GC)と7~11 の検出部である質量分析計(MS)から構成される 3のマイクロシリンジを用いて試料を GCMSに導入する導入された試料は5試料導入部でガス化され6分離カラムに導入される分離カラムには吸着剤が充填されおり混合物の試料を導入した場合各物質と吸着剤との
親和性の違いにより各物質の分離カラムから排出されるタイミングは異なる分離カラム
を排出された試料は8イオン化室でイオン化され10電子倍増管にて検出される アセトンに溶解したカフェインの GCMSによる分析結果の一例を以下に示す図 75にク
ロマトグラム図 76にカフェインのピークのマススペクトルを示す
図 75 GCMSにより得られたクロマトグラム
横軸がリテンションタイムで縦軸がピーク強度を表す
図 76 カフェインのマススペクトルとカフェイン(分子量MW=194)の構造
(図 75中のリテンションタイム 126min付近のピークに起因するマススペクトル) 茶葉中にはカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイド以外にも繊維であるセルロースなど多くの物質が含まれているため茶葉そのものを
そのままサンプルとしてGCMSで分析することは困難であるセルロースなどの分子量の大きな物質はカラムに詰まってしまい分析できないそこで今回は超臨界二酸化炭素
による抽出により主にカフェインを他の物質と分離抽出した通常よく利用されるアセ
トン抽出(アセトンに茶葉を浸し特定の成分を抽出する)ではカフェイン以外にも多く
の物質が抽出されるため図 75 のような単独のピークを得ることは難しく複数のピークがクロマトグラムに見られるこのサンプル(この場合茶葉からの抽出物)にはカフェ
イン以外の不純物は少なかったがガスクロマトグラフの分離カラムによりさらにそれ
らの混合物が精度よく分離されるクロマトグラムのピークはそれらサンプル中に含まれ
ていた個々の物質を表しているクロマトグラムのピークを選択することで分子構造解析
したい物質を選んだことになる選択したクロマトグラムのピークの表している物質(ここ
ではカフェイン)に対応するマススペクトルが図 76 に表示されているマススペクトル
52
で横軸がその成分(ここではカフェイン)分子を構成している原子の原子量で縦軸がそ
の量を表しているのでマススペクトルから分子構造を解析するためにコンピュータ内
に蓄えられた物質ごとのマススペクトルデータと今回測定したマススペクトル(分子内に含
まれている各原子の数)を比較することで測定したサンプル中のクロマトピークを選択し
た分子がどのような原子をどれだけ含んだ分子であったかがわかりそれからその物質
がどのような分子構造の物質である可能性が高いかをコンピュータが検索し結果を示す 73 実験サンプルの設置と GCMS装置の操作方法 実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS装置のサンプルフォルダ
ー(図 73)にセットするこのサンプルは茶葉 1gを 50ccの高圧セルにて超臨界二酸化炭素を利用して4015MPa2時間接触の条件で抽出した固体を10gのアセトンに溶かしたものである またコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に装置および装置制
御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 本実験で使用する GCMS の操作は全てコンピュータのモニター上で GCMS の解析プログラムソフトを使用することで行うコンピュータの操作方法を以下に示す なおコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS 装置のサンプルフォルダー(図 73)にセットするまた装置および装置制御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 1)パソコンのデスクトップ上のアイコン「GCMS 分析」をクリックすると以下のようにGCMS制御プログラムを起動するその後「OK」ボタンをクリックする
図 77 GCMD分析用ソフトウェア「GCMS分析」の起動
まず「GC-MS分析」をクリック
「OK」ボタンをクリック
53
2)制御プログラムが起動されパソコンと GCMSの接続が開始される
図 78 「GCMS分析」の接続確認画面 3)GCMSとパソコンの接続が完了すると以下のような画面が表示される
図 79 「GCMS分析」操作画面
4)マススペクトルによる分子構造の解析 サンプル(この場合茶葉からの抽出物)には多くの物質が混じり合っていたがガス
クロマトグラフの分離カラムによりそれらの混合物が精度よく分離されるクロマトグラ
ムのピークはそれらサンプル中に含まれていた個々の物質を表しているクロマトグラム
のピークを選択することで分子構造解析したい物質を選んだことになる選択したクロマ
トグラムのピークの表している物質(ここではカフェイン)に対応するマススペクトルを選
択するマススペクトルは横軸が原子量で縦軸がその量を表しているのでマススペク
トルから分子構造を解析するために「定性処理」を行う シミラリティ検索結果が表示され分析により得られたスペクトルと類似のスペクトルを有
する物質の一覧が表示される上部に表示される物質ほどスペクトルが一致していること
を示す
接続状況が表示される
「トップへ」
をクリック
54
図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果
図 711 表示スペクトルのシミラリティ検索結果 10)図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果の印刷 「レポート(R)」をクリックし「検索結果(R)」をクリックすると検索結果が印刷される
GC-MS 分析で得られたマスス
ペクトル
データベース中
のマススペクト
ル
55
参考資料 生理活性物質の精製 カフェインの利尿作用のように生物活動に影響を与える物質を生理活性物質といいます
天然物には生理活性物質を多く含むものがあります一般に天然物は多くの成分を含ん
でおり特定の生理活性物質を分離抽出するには種々の分離技術が必要ですまた生
理活性物質には60以上の温度でその生理活性を失う(失活)ものや溶剤として広く用いられているクロロホルムなどの有機溶剤中で失活するものが多いそこでこれら生理活性
物質の分離精製技術の開発が望まれており30~60程度のマイルドな温度条件で操作できる二酸化炭素を機能性溶媒として利用する超臨界抽出も有効な分離技術として注目されて
いる超臨界二酸化炭素は気体と液体の中間の性質を持ち物質の分離に役立っています 臨界点付近の高密度気体は超臨界ガスまたは超臨界流体と呼ばれ臨界圧力前後でそ
の溶解能力が著しく変化することから工業的にも種々の分野で利用されています一例と
して超臨界二酸化炭素(SC-CO2)によるコーヒー豆からのカフェインの抽出プロセス(a)
ならびに超臨界二酸化炭素に対するカフェインの溶解度(b)を図に示します図(c)に示す
ように固体のカフェインがガスである超臨界二酸化炭素に溶解します
このように超臨界二酸化炭素を用いた技術はコーヒー豆からのカフェインの抽出プロ
ポリスからの生理活性物質の抽出に利用されています
図 超臨界二酸化炭素抽出を用いたコーヒー豆からのカフェインの抽出
56
付表 最小二乗法について 直線で近似する場合 f (x) = a0 + a1x (A1-1) 式(A1-1)のように近似させるとする測定値 yiとの残差を eiとすると式(A1-2)のようになる ei = yi - f (xi) = yi - ( a0 + a1xi ) (A1-2) ここで式(A1-2)の両辺を二乗してその i に関する総和をとりその値を S とすると次式となる
sumsum==
+minus==n
iii
n
ii xaayeS
1
210
1
2 )( (A1-3)
S を最小化するような a0a1を求める式(A1-3)を a0a1について偏微分すると次式とな
る
sum=
+minuspartpart
=partpart n
iii xaay
aaS
1
210
00)( sum
=
+minusminus=n
iii xaay
110 )(2 (A1-4)
同様にa1について編微分すると次式のようになる
sum=
+minusminus=partpart n
iiii xxaay
aS
110
1])([2 (A1-5)
Sが最小となる時は次式が同時に満たされる時である
00=
partpartaS
01=
partpartaS
(A1-6)
よって誤差が最小となる a0a1を求めるためには式(A1-6)を連立して解けばよい
sumsumsum===
+=n
ii
n
i
n
ii xaay
111
10 1 (A1-7)
sumsumsum===
+=n
ii
n
ii
n
iii xaxaxy
1
2
11
10 (A1-8)
式(A1-7)と式(A1-8)を a0a1を変数とみなし連立して解くと次式を得る
n組のデータ(xiyi)(i=12hellipn)に対して回帰直線 y= a0 + a1x を最小二乗法で求めて出力しデータ番号 iデータ yi直線で推定した値 )( ii bxay += および残差
iii yy minus=ε を出力するようなプログラムをつくりたい基礎式を導出せよ (ヒント残差の二乗の和が最小になるように係数 a0a1)を定めるのが最小二乗法
である)
57
sumsum
sumsumsumsum
==
====
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
n
ii
n
ii
xxn
xxyyxa
1
2
1
2
1111
2
0
)(
))(())(( (A1-9)
sumsum
sumsumsum
==
===
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
xxn
yxxyna
1
2
1
2
1111
)(
))(()( (A1-10)
よって式(A1-9)(A1-10)を用いれば最も誤差を小さくするような直線 y = a0 + a1x が求められる
y=a1x+a0 にて近似
誤差 ei
x
y
誤差が最小になる関数(直線 y=a1x+a0の場合)
図1 最小二乗による近似
誤差の和Sが最小
S
a0
a1
直線 y=a1x+a0 の近似
誤差の全体の和はS=Σei=Σyi-(a1xi+a0)
Sは変曲点にて最小値を示すすなわち(partSparta0)=0 (partSparta1)=0
図2 a0a1とSの関係
22
38 Langmuirの等温吸着式による相関 はじめにLangmuir式の定数 ninfinと Kを決定するために「Graph2」酢酸濃度 Cb[molL]と
Cbn[gL]の関係のグラフから最小二乗法により直線の式を求めますExcelを用いてデータに対して近似直線のグラフを描き最小二乗法の直線の式を求めます
次のような「近似曲線の追加」のウィンドウが現れたら今回は線形近似(直線で近似
y=ax+b の式)を選びますので線形近似が黒色に反転していることを確認して「近似曲線の追加」のウィンドウの右下の「OK」ボタンをクリックして下さい
実験点の何れかにポインタをあわせて
右クリックする
近似曲線の追加(R)を選択して左クリックする
「線形近似」であること
を確認して「OK」ボタンをクリックします
23
「近似曲線の書式設定」
のウィンドウでオプシ
ョンから「グラブの書式
を表示する」の前を選ん
でチェック(前のチェッ
クボックスをクリック)
した後「OK」を押す
現れた直線にポインタをあわせて
左クリックすると「近似曲線の書式
設定」のウインドウが表示されます
ここをクリックします
この「オプション」のタ
グをクリックします
「y=」の関数
が現れるのでここ
をクリックする
式の文字フォントが初期値
「8」と小さいのでここ
のボタンをクリックし
フォントサイズを選ぶリス
トボックスを表示し「22」程度の大きなサイズを選択
しクリックする
24
「Graph2」酢酸濃度 Cb[molL]と Cbn[gL]の関係のグラフから最小二乗法により直線の式がこのように求められましたExcel を用いてデータに対して近似直線のグラフを描き最小二乗法の直線の式を求めるこの方法は他の実験データの解析などにも利用できますので
各自活用して下さい 表示された関数式「y=43865+2654」はノートにメモして下さいこの傾き 43865と
切片 2654からLangmuir式の定数 ninfinと Kを決定します決定方法の詳細はこの後の 36 の Langmuir式のパラメータ決定法に示しています ラングミュアの等温吸着式を変形すると次式となる
CCnKnCKn
CCKn
Cβ+α+
==
+= infininfininfin
11)1(
ただしα=1ninfinβ=1(ninfinK)とするこの式より Cnを縦軸Cを横軸とした関係のグラフは傾きα=1ninfin切片β=1(ninfinK)の直線関係を与えることを示しています そこでExcelのシートを利用してこの値からLangmuir式の定数 ninfinと Kを次のように決定しますセル C18D18に Graph2で求めた数値 2654と 43865を代入しますその後D19と C19に関数を ldquo=1D18rdquoとrdquo=D18C18ldquoを代入しますセル内の式は半角で入力してください
現れた関数の文字フォン
トを大きく(例えば 22)してその数字をメモし
吸着データシートの C18と D18に記入する
C18D18 に Graph2 で求めた値 2654 と 43865 を代入した後D19 と C19 に関数を ldquo=1D18rdquoとrdquo=D18C18ldquoを代入する
25
この Excel表示では最小二乗法を用いて決定した傾きαと切片βを用いて α=1ninfin=43865 β=1(ninfinK)=2654 得られた傾きおよび切片よりninfinおよび Kは次のように求まる
ninfin=1α=1D18=000228 molg-1 K =(1ninfin)β=αβ=D18C18=165
つまりセル D19にはninfinの値がセル C19にはKの値が表示されますこれらの値はラングミュア(Langmuir)の単分子吸着モデルで計算した理論線と実験と比較する場合に利用します実験結果に対して理論的な考察を行う例としてラングミュア(Langmuir)の単分子吸着モデルで理論線を計算し実験と比較するにはこの Excelファイルを利用して次のように計算しグラフに表示します セル F5~F30 には溶液中に残る酢酸濃度 Cb[molL]に対する活性炭に吸着された吸着量n[molg]の関係のグラフ「Graph1」の横軸の酢酸濃度 Cb[molL]の適当な値が既に入力してありますこれらのそれぞの酢酸濃度 Cb[molL]に対する吸着された酢酸の吸着量 n[molg]の理論値をラングミュア(Langmuir)式で計算しますラングミュア式は次式で与えられます
KCKCnn
+=
infin
1 (310)
ここでこの実験データを最も精度よく計算できるように決定した ninfinおよび K は上述のようにninfin=1α=1D18=000228 molg-1 K =(1ninfin)β=αβ=D18C18=165 でありこれらの値はセル D19にninfinの値がセル C19にKの値が表示されていますこの値を利用して「Graph1」に計算線を描くにはまずセル G5~G30 にセル F5~F30 のそれぞれの酢酸濃度 Cb[molL]に対する吸着された酢酸の吸着量 n[molg]の理論値をラングミュア式で計算しますそのためにはセル G5 にラングミュア式を次のように記述しますただしセル D19の ninfinの値セル C19の Kの値は常に同じセルから参照するので絶対参照($マークを付けて$D$19 $C$19と記述します)で記述します
Langmuir式をセル G5に記述するただし濃度はF5の値を相対参照しD19と C19は絶対参照($マークが必要)することを忘れないように
セルG5に記述すべき数式
=$D$19$C$19F5(1+$C$19F5)
26
G5記述後フィルハンドルを使用してG5の関数を G6~G30までコピーします Sheet1から Graph1 のタグをクリックしGraph1 に計算線が表示されたことを確認しましょうこれでラングミュア式によるデータの解析は終了です実験値と理論値を比較して現象
について考察してみて下さいラングミュア式を理論的に導く場合にある仮定をしている
のですがその仮定をしているラングミュア式が実験データを精度よく計算できていれば
その仮定が妥当なもとであったと考察できます 与えられたモデルデータでラングミュア式によるデータ解析ができれば他の理論(例え
ばフロインドリッヒFreundlich式や BET式レポートはどちらか一方でも可です) についてもExcel で計算してみましょうレポートには自分のデータについてここで行った内容と同様に計算しその結果を考察に記述して下さい 自分のデータについて同様の計算をするにはまずいままで計算を行った Excel ファ
イルを保存しますデータを自分の実験データに置き換える前に Excel ファイルをさらに別の名前で保存します与えられた Excel ファイルは初期状態では模擬のデータが入力されているので今回自分達の実験したデータを入力していきます入力するデータは予め計算
しておいた酢酸濃度 Cb[moll]と活性炭吸着量 n[molg]になります下の画面の丸で囲んだ部分にそれぞれ自分の実験データを入力していきます
今回はCbnの値を入力する必要はありませんExcelが自動的に計算を行って結果を表示するようになっています 次に酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着
量 n[molg]の関係および酢酸濃度Cb[molL]と Cbn[gL]の関係をグラフ化します今回は自動的にグラフが作成
されるようになっていますので操作は必
要ありません 39 Freundlichの等温吸着式による相関 今回の実験で得られた酢酸濃度 Cbと活性炭吸着量 nのデータを利用してFreundlichの等温吸着式の定数 abの値を求めFreundlichの等温吸着式の理論線をグラフに追加します ここでFreundlich式は次式で表されます
bbaCn1
=
このままでは定数 abの値を決定することが難しいので上式の両辺の対数をとり線形化しますすると次式となります
bCb
an ln1lnln +=
ここでln Cbと ln nの関係をグラフにプロットすれば傾き 1b切片 ln aの直線関係が得られますしたがって実験データである酢酸濃度 Cbと活性炭吸着量 nの値の対数をそれぞれ計算します配布した「ad_graxls」ファイルを開き「吸着データ」シートの任意の部分に以下のような表を作成します
27
次にln Cb[-]の列の最初のセルに以下の数式を入力します
=ln(B5) 上式中の「B5」は Cb の値の最初のセルの位置を指します各個人の位置によって変更してください
次にln n[-]の列の最初のセルに以下の数式を入力します
=ln(C5) 上式中の「C5」は nの値の最初のセルの位置を指します各個人の位置によって変更してください
ここでln Cb[-]ln n[-]の値に対しそれぞれオートフィルを行い計算させますすると以下のようなデータが完成します
計算した ln Cb[-]ln n[-]の値をグラフにプロットし最小二乗法による直線式を求めます
28
ここで以下のような直線の式が得られたとします
9135ln31690ln913531690 minus=there4minus= bCnxy
上式より切片は-5913傾きは 03169となるので以下の要領で定数 a1bを計算します ==there4minus= minus 91359135ln eaa 000270
316901=
b
a の値を Excel で計算させる場合は任意のセルに以下のような数式を入力することで求めることができます
=exp(-5913) これでFerundlich等温吸着式の定数 a1bの値が決定しましたこの値は後で使うのでノートなどにメモしておいてください 次に決定した Ferundlich 等温吸着式の定数 a1b の値を用いてFerundlich 等温吸着式のグラフを作成します先ほども示したように Ferundlich等温吸着式は次式で表されます
bbaCn1
=
従って定数 aと 1bの値はすでに決定しているので任意の Cbの値に対する nの値を数点求めればFerundlich等温吸着式で求めた理論線が得られます以下の操作で理論線を引くことができます Langmuir 等温吸着式による相関のときと同様にExcel の「吸着データ」のシート上の任意の場所に以下のような表を作成します
次に Ferundlich等温吸着式に従いnの値を計算します
bbaCn1
=
式中の定数 a1bは先ほど計算した値を用いますしたがって式は次のようになります
31690002700 bCn times=
この式を Excelのセル内に記入すれば計算ができます次の
29
ように記入します
=00027G5^03169 ここで式中の「G5」は Cbの値が 0のセルを指しています各個人の位置によって変えてください 次に式を記入したセルを Cbの値が 05のところまでオートフィルを行いますそうするとすべての Cbに対して nの値が計算されます
これで Freundlich等温吸着式のデータが完成しましたので次に「Graph1」酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着量 n[molg]の関係のグラフにこのデータを追加し理論線を引きます理論線の引き方は Langmuirによる相関のときと同様の操作を行ってください グラフの書式等を変更し整理すると以下のようなグラフが出来上がります
310 吸着等温線とは 固体の吸着剤を溶液と接触させる時一定量の吸着剤によって吸着される溶質の量は温度一定ならば溶質の濃度の関数になる一定温度での吸着量を温度に対してプロットした時に
得られる曲線を吸着等温線というこの吸着等温線を比較的よく表す経験式として次の
Freundlich式がある
n=aC1b (1) ここで n は吸着剤の質量あたりの吸着量C は吸着平衡濃度a と b は実験から決定されるパラメータであるがその物理的意味は多少希薄である これに対し理論的な意味を持つものに次のラングニュア(Langmuir)の吸着等温式がある
30
KCKCnn
+=
infin
1 (2)
ただしninfinは飽和吸着量Kは吸着平衡定数であるこの式は
1)吸着分子が固体表面で単分子以上の厚い層を作ることはない 2)吸着分子同士の間の相互作用はない
という二つの仮定にもとに導かれたものである 結果の整理および報告 Freundlich吸着等温式Langmuir吸着等温式の各々のパラメータの最適値を求めよまた活性炭の吸着特性および表面積について考察し化学工学における吸着操作の重要性につい
ても検討せよ 311 吸着等温式 (a) ヘンリー(Henry)型吸着等温式 液相の濃度あるいは気相の圧力が小さい場合吸着分子間の距離が十分に長いため吸着
分子同士の相互作用が無視でき固体表面と吸着分子のみの相互作用で吸着量を決定できる
とき次式のように表される
n=KC (3)
ここでKは比例定数である図 3-1の(a)に示すように濃度 Cと吸着量 nは比例関係があり一般に吸着量が小さい範囲で成立する気体の場合は溶液濃度 Cの代わりに気相圧力 pを用いればよい
濃度(分圧)
濃度(分圧)
濃度(分圧)
濃度(分圧)
吸着量
吸着量
吸着量
吸着量
(a)ヘンリー型 (b)ラングミュア型
(d)BET型(c)フロインドリッヒ型
0
0
0
0
図 3-1 吸着等温式
31
(b)ラングミュア(Langmuir)型吸着等温式 ラングミュアは図 3-2 に示すように固体表面に同等な吸着力を示す吸着サイトがあり
表面に 1分子層だけ吸着する(単分子層吸着)と仮定して平衡状態における吸着量と溶質濃度(気相分圧)のと関係を導いた全吸着点のうち吸着分子に覆われている吸着点の割合
をθ[-]とすると分子の脱着速度 rrsquo[mols-1]はθに比例する比例定数を a[mols-1]とすると次式のように表される
吸着剤
吸着分子
吸着サイト
図 3-2 固体表面上の吸着サイト(Langmuir式の導出) r=aθ (6) また気相からの吸着速度 r[mols-1]は空いている吸着点の割合(1-θ)[-]と溶液濃度 C[molm-3]に比例する rrsquo= b(1-θ)C (7) このときの比例定数を b[m3s-1]とするまた平衡状態では両速度は見かけ上等しいため以下の式が成り立つ aθ=b(1-θ)C (8) これを変形する
CbaCbsdot+
sdot=θ (9)
ここで飽和吸着量を ninfin[molkg-1] ba を K[m3mol-1](Kは吸着平衡定数)とおくと infin=nnθ
となるので次式が得られる
32
KCKCnn
+=
infin
1 (10)
これをラングミュア式と呼ぶ
(c)フロインドリッヒ(Freundlich)型吸着等温式 フロインドリッヒの吸着等温線は図 3-1(c)のように示される
n=aC1b (11) nは吸着量[molkg-1]で aと bはともに吸着定数[-]である (d)BET(Brunauer-Emmett-Teller) 型吸着等温式
BET型の吸着等温線は図 3-1(d)に示されるラングミュア式は表面に 1分子層だけ吸着すると仮定したものであるがBET式は無限分子層まで吸着できる式である図 3-3に示すように吸着した分子がそれぞれ次の層の吸着サイトとなり分子は積み重なって多分子
層に無限層まで吸着できるものとし各層への吸着にラングミュア式を適用すれば次式の
ように表せる
( ) ( )CKCCCKqq
minus+sdotminussdotsdot
=infin
11 (12)
この式は多孔質固体の細孔表面積を窒素ガスの吸着によって測定する際に利用される重要な式
である
表面の吸着サイト
分子上の吸着サイト
図 3-3 多分層吸着モデル
Langmuir式のパラメータ決定法 水溶液からの酢酸の活性炭に対する吸着平衡データ(吸着平衡温度 12)は表 3-1のよ
うに与えられる実験データよりラングミュア式のパラメータ(K吸着平衡定数ninfin飽和吸着量)を最小二乗法で決定せよさらにラングミュア式より決定した ninfinKの値を用いて吸着等温線を計算し計算線として図に示し実験点と比較せよ
33
表 3-1 n C Cnの関係
ラングミュア式は式(310)で与えられるこの式を変形すると次式となる
CKnCK
n infinsdot+
=11
(313)
両辺に Cをかけると以下の式が導出される
CCnKnCKn
CCKn
Cβ+α+
==
+= infininfininfin
11)1( (314)
ただしα=1ninfinβ=1(ninfinK)とする式(314)より Cn と C の関係のグラフプロットは傾きα=1ninfin切片β=1(ninfinK)の直線関係を与えることを示している表 3-1の値を用いて計算した Cnと Cの関係を表 3-1および図 3-4に示す 最小二乗法を用いて傾きαと切片βを決定した α=1ninfin=43865 β=1(ninfinK)=2654 得られた傾きおよび切片よりninfinおよび Kは次のように求まる
ninfin=1α=1D18=000228 molg-1 K =(1ninfin)β=αβ=D18C18=165
0
50
100
150
200
0 200 400 600
C [ molm-3 ]
Cn [ kgm-3 ]
傾き = 1 ninfin
1 ninfinK
切片0
05
1
15
2
25
3
0 100 200 300 400 500
液相の溶質濃度 C [ molm-3 ]
吸着量 n [ molkg-1]
液相と溶質濃度 C [ molm-3 ]
吸着量
n[ m
olk
g-1]
実験点
Langmuir式パラメータninfin 00033 [ molg-1 ]K 00086 [ m3 mol -1 ]
図 3-4 ラングミュア定数の決定 図 3-5 12における酢酸濃度 Cと
吸着量 nの関係
C [molm-3] n [molkg-1] Cn [kgm-3] 460 225 109 529 214
268 199 149 105 060
172 128 732 504 357
34
Freundlich式のパラメータ決定法 酢酸水溶液中における酢酸の活性炭に対する吸着実験を行ったところ以下のような実験デー
タを得たただしCbはバルク相における酢酸濃度n は活性炭に対する酢酸の吸着量を示す
Cb[molL] n[molg] log10Cb log10n 04621 000205 02410 000175 01139 000139 00519 000105 00243 000081
実験データを利用して次式で与えられる Freundlichの等温吸着式の定数 abの値を求めたい
bbaCn1
= (1)
このままでは定数 abの値を決定することが難しいので上式の両辺の対数をとる
bbb
bb
Cb
aCa
aCn
ln1lnlnln
)ln(ln1
1
+=+=
=
(2)
ここで横軸に ln Cb縦軸に ln nの関係をグラフにプロットするすなわち x=ln Cby=ln nと考える
bCb
an ln1lnln += (3)
ここで直線式 y=a0+a1xと比較するすなわち
)(1)(ln
1
00
傾き
切片
ba
eaaa a
=
=rarr= (4)
a0および a1は最小二乗法により数値で求められる与えられたデータでは a1= a0= なので a= b= となる この値を n=acb
1bに代入してcb=0~05の範囲で nの値を計算する
35
BET式のパラメータ決定法 BET式は次式で与えられる
)1)(1( KCCCKCnn
+minusminus=
infin
(17)
以下のように BET式の変形を行う
)1()1(
KCCKCnCn+minus
=minusinfin
(18)
(18)式の逆数をとると
KCnCK
KCnKCC
Cn infininfin
minus+=
+minus=
minus)1(1)1(
)1(1
(19)
(19)式の両辺に Cをかえると
KCnCKC
CnC
infin
minus+=
minus))1(1(
)1( (20)
(20)式を変形すると次式が得られる
CKn
KKnCn
Cinfininfin
minus+=
minus11
)1( (21)
C と)-(1 Cn
Cのプロットは傾き
KnKinfin
minus1切片
Kninfin
1の直線関係を与えることを示している
これをグラフにプロットし最小二乗法に傾きおよび切片を求める
36
312 活性炭の比表面積の決定 酢酸分子の構造を以下に示す
Hc-Cb-Ca
Hd
Hb Oa
Ob-Ha
1219deg
Ca Oa
Ob
図 36 酢酸の構造
酢酸の 1分子の吸着面積srsquo [m2]を図 3-6に示すこのとき文献より
Caと Oaの結合距離 1321Å Caと Obの結合距離 1206Å OaCaObの角度 1219deg Cの原子半径 077Å Oの原子半径 062Å
したがって吸着面積 Slsquoは次のようになる
( ) ( ) 2088 10376109931036321 minusminusminus times=timestimestimestimes=s m2
ここで活性炭の比表面積 S[m2g]は次式で示される 10026 23 snS timestimestimes= infin
S活性炭の比表面積 [m2g] ninfin飽和吸着量 [molg] srsquo酢酸 1分子の吸着面積 [m2] 602times1023アボガドロ数 [個mol] したがって活性炭の比表面積 S[m2g]は
003350=infinn molg 2010376 minustimes=s m2 より
51281037610026003350 2023 =timestimestimestimes= minusS m2g
37
4 粘度密度測定 41 はじめに 大量生産を目的とした工業的化学プロセスはほとんど流れ系(流通系)であるそれらの系において操作対象となる各物質の粘度は装置を設計操作する場合きわめて重要
な物性値である 本実験では低分子溶液および高分子溶液の粘度測定を通じて液体の粘度について考察するさらに演習問題を通じて気体液体高分子溶液などの化学プロセスで対象となる物
質の輸送物性(粘度拡散係数)の重要性を認識されたい 42 低分子溶液の粘度 [目的] 種々の濃度のエタノール水溶液の粘度を測定しその溶液の粘度について考察する [概要] 25におけるエチルアルコール濃度 02040506080100 wt の水溶液について流下時間を測定しこの結果より相対粘度絶対粘度運動粘度を求めグラフにするま
た水の密度水-エチルアルコール溶液の密度についてはピクノメーターを用いて決
定する報告書には相対粘度絶対粘度運動粘度 vsエチルアルコール濃度の関係をそれぞれグラフにして提出する
[計算方法] 相対粘度絶対粘度運動粘度の定義は次のようになる
相対粘度 ww
w tdtd
ηη = (41)
η 混合溶液の粘度 [gcms] ηw水の粘度(8007times10-3 gcms) [gcms](25における粘度) d エチルアルコール水溶液の密度 [gcm3] dw水の密度(099704gcm3) [gcm3](25における密度) t エチルアルコール水溶液の流下時間 [s] tw水の流下時間 [s] 下付添字 W 水
絶対粘度 www td
tdη
η= (42)
運動粘度 ν=ηd [cm2s] (43)
38
[実験方法] 1) 粘度計を洗浄し粘度計内 に二連球で空気を送り込み
乾燥させる乾燥しにくい 場合はアセトンを滴下し た後再度二連球で空気 を送り込み乾燥させる 2)ピペットで一定体積(10mℓ) の純水を取り広い口 f から 粘度計に水を入れる 3)粘度計を恒温槽(25)に つけ約 10 分静置する 4)安全ピペッターを口 a に 取り付け液面が b 上部に 到達するまで吸い上げる 5)安全ピペッターを外すと 液面が降下しだす液面が bd 間を通過する時間をスト ップウォッチで測定する
6)純水での測定を 3 回繰り返す 7)純水を粘度計から取り除くその後粘度計内に二連球を用いて空気を送り込み乾燥させる 8)粘度計乾燥後複数の濃度に調整済みのエチルアルコール水溶液(10mℓ)を粘度計にいれ4)~6)の作業を繰り返し行う(3 回)なお濃度の異なるエチルアルコール水溶液を粘度計内に導入する場合には7)と同様に二連球を用いて粘度計内に空気を送り込み乾燥させる
表 4-1 エチルアルコール水溶液の濃度密度相対粘度の関係 エチルアルコール濃度
[wt] 密度 d[gcm3] 相対粘度
η ηw[-] 0
20 40 50 60 80
100
安全ピペッター接続
図 4-1 粘度計
液面の bd間の通過時
間を測定
f
39
43 密度測定 [目的] 本実験では水とエタノールの種々の組成の混合液体について密度を測定し分子間相互
作用について考察する [実験方法] 1)ピクノメーターの容積測定
図 4-2のピクノメーターの空の重量 wg を秤量する
ピクノメーターの蓋を取り外し
ピクノメーターを水で満たす
設定温度を 25として恒温槽 の電源を入れ恒温槽内の温 度が一定になるまで待つな お水温は恒温槽中の水銀温 度計から読む
恒温槽中に水を満たしたピク
ノメーターを入れる
約 10分間静置する
ピクノメーターに蓋をするこのときピクノメーターの容量
よりも余分の水は蓋の上部より排出される
ピクノメーターの外側を乾いた布で拭い秤量する(その重量を
wwg とする)
恒温槽の温度(25)における水の密度 dwgcm3(=099704gcm3)
より次式を用いてピクノメーターの容積を求める
w
w
dww
Vminus
= (44)
図 4-2 ピクノメーター
蓋
40
表 4-2 エチルアルコール水溶液の濃度と密度の測定結果(25) エチルアルコ
ール濃度[wt]
wrsquo[g] ww[g] V[cm3] w[g]
d[gcm3]
0 20 40 50 60 80
100
099704
エチルアルコール濃度[wt] 空のピクノメーターの重量 wrsquo[g] 水を入れたときのピクノメーターの重量 ww[g] ピクノメーターの体積 V[cm3] エタノール水溶液の入れたときのピクノメータの重さ w[g] エタノール水溶液の密度 d[gcm3]
容積 Vを求めたピクノメーターに混合溶液(調整済み)を入れてその重量 wgを秤量し次式で混合溶液の密度を求める
Vwwd minus
= (45)
エタノール濃度と密度 d の関係をグラフにプロットする
41
44 高分子溶液の粘度 [目的] 高分子溶液の粘度測定から分子量の粘度に与える影響について考察する [概要 ] オストワルド粘度計を用い種々の濃度のポリビニルアルコール(PVA ((-CH2CHOH-)n))水溶液の粘度を測定し粘度データよりポリビニルアルコールの分
子量を求める まず 05g100cc の濃度のポリビニルアルコール水溶液を調製する次にこれを原液
とし23 12 13 15の濃度の溶液を調製するこれらの溶液についてオストワルド粘度計を用いてそれぞれ流下時間を測定し相対粘度絶対粘度運動粘度を求め実験デ
ータより極限粘度[η]を求めるまた報告書には相対粘度絶対粘度運動粘度C
)ln( wηη
Cw
w-η
ηη vsポリビニルアルコール濃度の関係をそれぞれグラフにして提出する
[計算方法] エチルアルコール水溶液の粘度測定と同様の手法を用いて粘度の計算を行うなおポリビニルアルコール水溶液の密度はピクノメーターを用いて測定すること 表 4-3 ポリビニルアルコール水溶液の濃度密度相対粘度の関係 ポリビニルアルコール
濃度 [g100cc] 密度 d[gcm3] 相対粘度
η ηw[-] 05times(15) 05times(13) 05times(12) 05times(23)
05
42
[分子量の計算方法] 実験を行った結果以下のような粘度データを得られるとする実験データより極限粘度
を求めポリビニルアルコール(PVA)の分子量Mを決定せよ
PVA 水溶液濃度
C[g100cc]
相対粘度
ηηw[-]
絶対粘度
η[gcms]Cw
w-η
ηη
C)ln( wηη
05times(15) 1031 0008255 031 0305
05times(13) 039 0378
05times(12) 03 0289
05times(23) 0375 0353
05 0364 0334
ηw=8007times10-3 gcms 線状高分子の極限粘度[η]と分子量Mの関係は次式で与えられる [η]=KMα (46) ただしポリビニルアルコールの場合K=666times10-4α=064であるなお極限粘度[η]は次式で定義される
CC w
w
0
-][ limη
ηηη
rarr
= (47)
または
CC
)ln(][ w
0lim
ηηη
rarr
= (48)
よって濃度 CとCw
w-η
ηηまたは濃度 Cと
C)ln( wηη の関係をグラフ化し最小二乗法によ
り切片の値を求めると極限粘度[η]が決定される
Cw
w-η
ηηと C の関係より最小二乗法を用いて切片の値を決定すると(図 43 参照)切片=
03242傾き=00874となるよって極限粘度は以下のようになる[η]=03242同様
にC
)ln( wηη とcの関係より最小二乗法を用いて切片の値を決定する
(図 44参照)と切片=03249傾き=00256となり極限粘度は以下のようになる[η]=03249
Cw
w-η
ηηと Cの関係より決定した[η]=03242を用いてポリビニルアルコール(PVA)の
分子量 Mを計算する(46)式より以下のように PVAの分子量 Mを計算することができるM=([η]K)1α
=(03242(666times10-4))(1064)
=15811
43
y = 00874x + 03242
0
02
04
06
08
1
0 01 02 03 04 05 06 07
c[g100cc]
(η-ηw)(ηwc)
cw
w
η
ηηminus
極限粘度[η]
図 43 298Kにおける PVA濃度 CとCw
w-η
ηηの関係
y = 00256x + 03249
0
02
04
06
08
1
0 01 02 03 04 05 06 07
c[g100cc]
(ln(ηη
w))c
c)ln( wηη
極限粘度[η]
図 44 298Kにおける PVA濃度 CとC
)ln( wηη の関係
44
5 植物からの DNAの抽出 51 はじめに 分子レベルでの遺伝子の構造解明や遺伝子の発現に関する研究は近年急速に発展している
これら生命現象のしくみを分子レベルで解明しようという分子生物学の分野ではさまざま
な遺伝子の解析や応用方法が開発され我々の生活に身近なものになりつつある 本実験では初歩的な分子生物学に関する実験として植物(タマネギ)からの DNA の
抽出を行い抽出した遺伝子の電気泳動法による分離実験を試みる 52 試薬および器具 試薬 タマネギ(細胞中から遺伝子の抽出を行う) 台所用洗剤(洗剤中に含まれる界面活性剤には植物の細胞膜およびタンパク質を破壊す
る働きがある) 塩化ナトリウム(DNAは塩化ナトリウム水溶液に溶解し易い性質がある) エタノール(予め冷やしておくDNAはエタノールにほとんど溶解しない) 制限酵素(DNAを一定の部位で切断する働きを働きがある) TE緩衝液(pH緩衝剤が入った溶液) 器具 ビーカーミキサーフィルターメスシリンダー駒込ピペットガラス棒 マイクロピペット電気泳動装置ポラロイドカメラ 53 実験方法 1)タマネギは 1回の実験で半個のうち内側の半分程度を使用するタマネギ水 30ml台所用洗剤数滴をミキサー用ガラス容器に入れ40~60秒程度(固体状のタマネギがなくなる頃が目安)ミキサーにて混合する
2) 1)で作成した混合溶液をビーカーに移し約5g程度の塩化ナトリウムを加えガラス棒で静かに攪拌する粘性の大きな溶液が得られる
3) 2)で作成した溶液をフィルターを用いて濾過し濾液を回収する 4) 濾液の約2倍程度の量の冷エタノールをビーカーの壁伝いに静かに注ぐ 5) ビーカーを揺するとエタノール層に白くふわふわしたものが浮いてくるこれが DNAであるガラス棒で DNAを巻き取りシャーレ上にて DNAを回収する顕微鏡を用いて回収した DNAの状態を観察する
6)マイクロチューブ(容量 15ml)中に用意した 70エタノールを 8 分目程度まで注ぐ5)にて回収された DNAをマイクロピペットを用いて70エタノールの入ったマイクロチューブ中に移す軽く混ぜることによりDNA から不要な物質を洗い流す遠心分離してDNA をマイクロチューブの底に沈めた後溶液を捨てて DNA を乾かす乾いたらTE緩衝溶液を 1ml加えて放置するDNAの溶液が得られる
54 電気泳動装置による DNAの観察
本実験は職員と一緒に行うこと 実験を行う人はビニール手袋をすること 1) 抽出した DNAを電気泳動装置で観察するマイクロピペットを用いて以下のように調製した DNAの混合溶液を調製する(いずれの溶液も調製済)
45
2) マイクロピペットを用いてアガロースゲルの試料を流し込む穴(ウェル)に1)にて調製した溶液 Aおよび Bを注ぎ込む注入量は20μℓとする電気泳動装置のスイッチを入れて100Vの電流を流しアガロースゲル内にて DNAを電気泳動させる
3) 試料に予め加えられておいた青色の色素が 7 分目程度まで進んだら電気泳動を中止する(約 30分程度)
4) (ここでの作業は職員が行う) アガロースゲルを取り出し染色液に浸す染色後ゲルを取り出しポラロイドカメラで
DNAの泳動状態を撮影する
+ -
アガロースゲル
試料を流し込む穴(ウェル)
図 51 電気泳動装置
6 5 4 3 2 1
図 52 DNAの電気泳動写真の一例
55 電気泳動装置の原理 電気泳動装置の原理図を以下に示すアガロースゲル(寒天から不純物を除いたもの)中
に DNAをセットし電流を流すとDNAは電流の向きとは逆にマイナスからプラス方向
調製済 溶液 A(制限酵素なし) 水 11μℓ 10timesH Buffer 2microℓ 植物 DNA 5μℓ
調製済 溶液 B(制限酵素 Eco RI入り) 水 11μℓ 10timesH Buffer 2microℓ 植物 DNA 5μℓ 制限酵素 2μℓ
1 DNA(タマネギ)+制限酵素 2 DNA(タマネギ)+制限酵素 3 DNA(タマネギ) 4 λ-DNA(大腸菌)+制限酵素 5 λ-DNA(大腸菌) 6 サイズマーカー
500bp
46
に動く(このことを電気泳動という)これはDNA のリン酸部分が負に帯電しているためでありまたDNAはその長さにより泳動距離が異なる(短い遺伝子ほど長く泳動する)電気泳動ではこの性質を利用してDNAを大きさごとに分離することができる
塩基対数によってDNAを分離
EtBr (蛍光試薬)DNAの二本鎖内に入り込む
発光
UVλ=302nm
励起
分離後のアガロースゲルをエチジウムブロマイド(EtBr)溶液に浸す
DNAを含んだ溶液
アガロースゲル
リン酸部分が負に帯電
塩基 (ATGC)-
+
カメラで撮影
電圧
DNA構成成分(dNTPs)
バンドが明る
DNA量が
バンド(DNAの存在)
図 53 電気泳動の原理
56 制限酵素とは DNA は4 種類のヌクレオチド(GATC)が不規則につながってできている制限酵素はDNAの特定のヌクレオチドが並んでいる部分を切断する制限酵素には様々な種類がありEco RI(エコアールワン)と呼ばれる酵素は「GAATTC」といった並びの部分だけを切断することができる
GAATTC
CTTAAG
制限酵素
Eco RI
AAGCTT
TTCGAA
制限酵素
Hin dIII
図 54 制限酵素による DNAの切断
レポートについて 1 実験方法および実験結果の整理方法については指針書を参考にすること 2 実験結果については電気泳動の結果について考察すること(制限酵素の影響などにつ
いてまとめてください)
47
6 染色実験
61 はじめに
現在私達の身の周りでは様々な染料が使われている例えばT シャツやジーンズな
どの衣服は橙黄赤青など様々な色に染められている他にも私達が気付かないと
ころで多くの染色された製品を使用しているそこで本実験では高校の化学で学んだ
アゾ染料を合成してみるアゾ染料はアニリンを原料として作られているアニリンはベ
ンゼン環にアミノ基(-NH2)がついたものであるアニリンは無色の液体で水に溶けにく
くアンモニアより弱い塩基性を示すまたさらし粉(CaClO(ClO)H2O)水溶液を加えると
赤紫色を呈するこの呈色反応はアニリン特有のものであるので検出反応に用いられる
このアニリンを出発物質としてアゾ染料を合成してみる
62 試薬および使用器具
【試薬】 ①05moll 水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液
②2-ナフトール ③フェノール ④6moll 塩酸
⑤亜硝酸ナトリウム ⑥アニリン ⑦氷
【器具類】 ①電子天秤 ②50mℓビーカー ③100mℓビーカー
④ガラス棒 ⑤布(ガーゼなど) ⑥ピンセット
⑦ポリ手袋 ⑧ドライヤー ⑨シャーレ
10駒込ピペット(10ml ガラス製)
11駒込ピペット(1ml プラスチック製)
63 実験方法
1) 50mℓビーカーの中に 05molℓ水酸化ナトリウム水溶液 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回
NaOH 水溶液を分取するほぼ 20 mℓ分取できれば可)と 2-ナフトールを約 01g 入れ
よくかき混ぜる調製した溶液の中に布をつけその布はガラス棒でしぼってから(布
をガラス棒ですくいあげればよい)シャーレに広げる温度の異なる条件下(常温およ
び低温)で染料の合成実験を行うため布は最低 2枚調製した溶液と接触させそれ
ぞれ別々のシャーレ(低温用および常温用)に広げる
2) 新しいビーカーに水を約 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回分取)と 6molℓ塩酸約 4mℓ(10m
ℓ駒込ピペットで目分量で可)さらにアニリン約 1mℓ(プラスチック製 1 mℓ駒込ピペッ
ト)を入れてよくかき混ぜる染料の合成を常温および低温下で行うためこの溶液を
2つ調整する
低温下で反応させる溶液は恒温槽で 10~15 分ほどよく冷やした後亜硝酸ナトリウ
ム 05g を加えてよくかき混ぜる
常温下で反応させる溶液には冷却作業を行わずに亜硝酸ナトリウム 05g を加えて
よくかき混ぜる
3) 2)でつくった水溶液をシャーレに広げた布に注ぎ生成される染料を布によく染み
込ませ5分程放置する
4) 色の付いた布を取り出してポリ手袋をした手できれいに水洗いをし乾燥させる
48
5) 色差計を用いて乾燥した布の Lab(L明度aおよび b色度)を測定する
2)で作った溶液は5以下では無色の溶液ですが5以上になると淡い黄色になりま
す
【解説】
アゾ染料はアゾ基(-N=N-)を持っていてこのアゾ基によって鮮やかな橙色を呈色し
ます今回合成したアゾ染料は図の 1-フェニルアゾ-2-ナフトールです意外かもしれ
ませんが指示薬として使われているフェノールフタレインもアゾ化合物ですフェノール
フタレインは pH の変化によって色が出てきす染料の中でも最初は無色のものもありますが
温度を変化させたり酸性やアルカリ性にすると色が出てきます
ベンゼン ニトロベンゼン
N2Cl
ニトロ化 濃硫酸(濃硝酸)
還元反応 濃塩酸
(Sn又は Fe)
アニリン塩酸塩
遊離反応 NaOH
アニリン塩酸塩に強塩基を反応させる
と弱塩基であるアニリンが遊離する
氷冷+亜硝酸ナトリウム アニリン
塩酸
ジアゾ化
塩化ベンゼンジアゾニウム
塩化ベンゼンジアゾニウム
は熱によって窒素とフェノー
ルに分解される
カップリング
C10H7ONa (ナトリウム 2-ナフトキシド)
O
N =
1-フェニルアゾ 2-ナフトール
NH3Cl NH2
49
7 ガスクロマトグラフ質量分析計による茶葉中のカフェインの分析 71 はじめに ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)は極めて低い濃度の化学物質の同定や未知物質の構造決定に極めて強力な分析機器の一つであるGCMSを用いるとサンプルの中に含まれているある成分の分子構造(カフェインの分子構造を図 71に示す)やその量が分かりますもちろん分析機器ですので測定できる物質対象となる系や測定条件にはある
程度の制約があります混合物質を分離するガスクロマトグラフ(Gas ChromatographGC)と分離された成分(物質)を分析(構造決定と濃度測定)する質量分析計(Mass SpectrometerMS)を組み合わせた装置であるこの装置は有機化学生化学環境化学などの多くの分野で非常に多用されている例えば極めて低い濃度でも生体へ強い影響が懸念されるダイ
オキシン類などの土壌や河川の水中での含有率の決定や食品や医薬品中の微量成分の決定
にも利用されている 一方日本人に長い間親しまれてきた緑茶が近年産業界や医学
界で注目されている茶葉にはカフェイン(分子構造図 71)カテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドなどの有用成分が多く含まれておりその効能が注目されている 本実験では茶葉中に含まれるカフェインに対してGCMSを用いて分析する茶葉中には種々の物質が含まれておりGCMS分析を容易にするため前処理として超臨界二酸化炭素抽出(4015MPa程度の高圧力の二酸化炭素を溶剤として利用)により茶葉からカフェインの抽出を行いそのサンプルを GCMSにて分析する
図 71 カフェインの分子構造 図 72 物質の分析 個々の物質や装置についてはインターネットにより下記のWebサイトのフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』などにより調べるとよいカフェイン(caffeine)はアルカロイドの一種プリン環を持つプリンアルカロイドの一種でコーヒー類に含まれることか
らこの名がある化学名は137-トリメチルキサンチン(C8H10N4O2) コーヒーコーラ緑茶紅茶ガラナココアなどに含まれる(量は緑茶が一番多い)結晶は一水和物(C8H10N4O2bullH2O)もしくは無水物(無水カフェインC8H10N4O2)として得られ
る白色の針状または六角柱状結晶で匂いはなく味は苦い融点は 238昇華性がある出典フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』httpwwwwikipediaorg 装置「GCMS」httpwwwanshimadzucojpproductsgcmsqp2010htm (島津) 「超臨界抽出装置」httpwwwkagakucomjasco39-49html (日本分光)
50
レポート課題 1茶葉中に含まれるカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドの中から3つの物質を選びその物質について調べた結果を A4 レポート用紙2枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
2GCMS についてA4 レポート用紙1枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
3与えられたサンプルは茶葉1gから抽出されたのである実験結果よりもとの茶葉
1g中に含まれるカフェインの量を推算し計算式とあわせて示すこと 72 原理および装置 実験で使用する島津製の GCMS装置の全体図を図 73に原理の概略を図 74に示す
1
23
4
5
67 8
9
10
キャリアーガス
試料物質
1ボンベ(He)2圧力計3マイクロシリンジ4サンプラー5試料導入部6分離カラム
7セパレーター8イオン化室9磁石10電子増倍管11記録計
11
図 74 ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)の概略図
サンプルフォルダー
51
GCMS 装置は分離部である図中の 1~6 のガスクロマトグラフ(GC)と7~11 の検出部である質量分析計(MS)から構成される 3のマイクロシリンジを用いて試料を GCMSに導入する導入された試料は5試料導入部でガス化され6分離カラムに導入される分離カラムには吸着剤が充填されおり混合物の試料を導入した場合各物質と吸着剤との
親和性の違いにより各物質の分離カラムから排出されるタイミングは異なる分離カラム
を排出された試料は8イオン化室でイオン化され10電子倍増管にて検出される アセトンに溶解したカフェインの GCMSによる分析結果の一例を以下に示す図 75にク
ロマトグラム図 76にカフェインのピークのマススペクトルを示す
図 75 GCMSにより得られたクロマトグラム
横軸がリテンションタイムで縦軸がピーク強度を表す
図 76 カフェインのマススペクトルとカフェイン(分子量MW=194)の構造
(図 75中のリテンションタイム 126min付近のピークに起因するマススペクトル) 茶葉中にはカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイド以外にも繊維であるセルロースなど多くの物質が含まれているため茶葉そのものを
そのままサンプルとしてGCMSで分析することは困難であるセルロースなどの分子量の大きな物質はカラムに詰まってしまい分析できないそこで今回は超臨界二酸化炭素
による抽出により主にカフェインを他の物質と分離抽出した通常よく利用されるアセ
トン抽出(アセトンに茶葉を浸し特定の成分を抽出する)ではカフェイン以外にも多く
の物質が抽出されるため図 75 のような単独のピークを得ることは難しく複数のピークがクロマトグラムに見られるこのサンプル(この場合茶葉からの抽出物)にはカフェ
イン以外の不純物は少なかったがガスクロマトグラフの分離カラムによりさらにそれ
らの混合物が精度よく分離されるクロマトグラムのピークはそれらサンプル中に含まれ
ていた個々の物質を表しているクロマトグラムのピークを選択することで分子構造解析
したい物質を選んだことになる選択したクロマトグラムのピークの表している物質(ここ
ではカフェイン)に対応するマススペクトルが図 76 に表示されているマススペクトル
52
で横軸がその成分(ここではカフェイン)分子を構成している原子の原子量で縦軸がそ
の量を表しているのでマススペクトルから分子構造を解析するためにコンピュータ内
に蓄えられた物質ごとのマススペクトルデータと今回測定したマススペクトル(分子内に含
まれている各原子の数)を比較することで測定したサンプル中のクロマトピークを選択し
た分子がどのような原子をどれだけ含んだ分子であったかがわかりそれからその物質
がどのような分子構造の物質である可能性が高いかをコンピュータが検索し結果を示す 73 実験サンプルの設置と GCMS装置の操作方法 実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS装置のサンプルフォルダ
ー(図 73)にセットするこのサンプルは茶葉 1gを 50ccの高圧セルにて超臨界二酸化炭素を利用して4015MPa2時間接触の条件で抽出した固体を10gのアセトンに溶かしたものである またコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に装置および装置制
御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 本実験で使用する GCMS の操作は全てコンピュータのモニター上で GCMS の解析プログラムソフトを使用することで行うコンピュータの操作方法を以下に示す なおコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS 装置のサンプルフォルダー(図 73)にセットするまた装置および装置制御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 1)パソコンのデスクトップ上のアイコン「GCMS 分析」をクリックすると以下のようにGCMS制御プログラムを起動するその後「OK」ボタンをクリックする
図 77 GCMD分析用ソフトウェア「GCMS分析」の起動
まず「GC-MS分析」をクリック
「OK」ボタンをクリック
53
2)制御プログラムが起動されパソコンと GCMSの接続が開始される
図 78 「GCMS分析」の接続確認画面 3)GCMSとパソコンの接続が完了すると以下のような画面が表示される
図 79 「GCMS分析」操作画面
4)マススペクトルによる分子構造の解析 サンプル(この場合茶葉からの抽出物)には多くの物質が混じり合っていたがガス
クロマトグラフの分離カラムによりそれらの混合物が精度よく分離されるクロマトグラ
ムのピークはそれらサンプル中に含まれていた個々の物質を表しているクロマトグラム
のピークを選択することで分子構造解析したい物質を選んだことになる選択したクロマ
トグラムのピークの表している物質(ここではカフェイン)に対応するマススペクトルを選
択するマススペクトルは横軸が原子量で縦軸がその量を表しているのでマススペク
トルから分子構造を解析するために「定性処理」を行う シミラリティ検索結果が表示され分析により得られたスペクトルと類似のスペクトルを有
する物質の一覧が表示される上部に表示される物質ほどスペクトルが一致していること
を示す
接続状況が表示される
「トップへ」
をクリック
54
図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果
図 711 表示スペクトルのシミラリティ検索結果 10)図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果の印刷 「レポート(R)」をクリックし「検索結果(R)」をクリックすると検索結果が印刷される
GC-MS 分析で得られたマスス
ペクトル
データベース中
のマススペクト
ル
55
参考資料 生理活性物質の精製 カフェインの利尿作用のように生物活動に影響を与える物質を生理活性物質といいます
天然物には生理活性物質を多く含むものがあります一般に天然物は多くの成分を含ん
でおり特定の生理活性物質を分離抽出するには種々の分離技術が必要ですまた生
理活性物質には60以上の温度でその生理活性を失う(失活)ものや溶剤として広く用いられているクロロホルムなどの有機溶剤中で失活するものが多いそこでこれら生理活性
物質の分離精製技術の開発が望まれており30~60程度のマイルドな温度条件で操作できる二酸化炭素を機能性溶媒として利用する超臨界抽出も有効な分離技術として注目されて
いる超臨界二酸化炭素は気体と液体の中間の性質を持ち物質の分離に役立っています 臨界点付近の高密度気体は超臨界ガスまたは超臨界流体と呼ばれ臨界圧力前後でそ
の溶解能力が著しく変化することから工業的にも種々の分野で利用されています一例と
して超臨界二酸化炭素(SC-CO2)によるコーヒー豆からのカフェインの抽出プロセス(a)
ならびに超臨界二酸化炭素に対するカフェインの溶解度(b)を図に示します図(c)に示す
ように固体のカフェインがガスである超臨界二酸化炭素に溶解します
このように超臨界二酸化炭素を用いた技術はコーヒー豆からのカフェインの抽出プロ
ポリスからの生理活性物質の抽出に利用されています
図 超臨界二酸化炭素抽出を用いたコーヒー豆からのカフェインの抽出
56
付表 最小二乗法について 直線で近似する場合 f (x) = a0 + a1x (A1-1) 式(A1-1)のように近似させるとする測定値 yiとの残差を eiとすると式(A1-2)のようになる ei = yi - f (xi) = yi - ( a0 + a1xi ) (A1-2) ここで式(A1-2)の両辺を二乗してその i に関する総和をとりその値を S とすると次式となる
sumsum==
+minus==n
iii
n
ii xaayeS
1
210
1
2 )( (A1-3)
S を最小化するような a0a1を求める式(A1-3)を a0a1について偏微分すると次式とな
る
sum=
+minuspartpart
=partpart n
iii xaay
aaS
1
210
00)( sum
=
+minusminus=n
iii xaay
110 )(2 (A1-4)
同様にa1について編微分すると次式のようになる
sum=
+minusminus=partpart n
iiii xxaay
aS
110
1])([2 (A1-5)
Sが最小となる時は次式が同時に満たされる時である
00=
partpartaS
01=
partpartaS
(A1-6)
よって誤差が最小となる a0a1を求めるためには式(A1-6)を連立して解けばよい
sumsumsum===
+=n
ii
n
i
n
ii xaay
111
10 1 (A1-7)
sumsumsum===
+=n
ii
n
ii
n
iii xaxaxy
1
2
11
10 (A1-8)
式(A1-7)と式(A1-8)を a0a1を変数とみなし連立して解くと次式を得る
n組のデータ(xiyi)(i=12hellipn)に対して回帰直線 y= a0 + a1x を最小二乗法で求めて出力しデータ番号 iデータ yi直線で推定した値 )( ii bxay += および残差
iii yy minus=ε を出力するようなプログラムをつくりたい基礎式を導出せよ (ヒント残差の二乗の和が最小になるように係数 a0a1)を定めるのが最小二乗法
である)
57
sumsum
sumsumsumsum
==
====
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
n
ii
n
ii
xxn
xxyyxa
1
2
1
2
1111
2
0
)(
))(())(( (A1-9)
sumsum
sumsumsum
==
===
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
xxn
yxxyna
1
2
1
2
1111
)(
))(()( (A1-10)
よって式(A1-9)(A1-10)を用いれば最も誤差を小さくするような直線 y = a0 + a1x が求められる
y=a1x+a0 にて近似
誤差 ei
x
y
誤差が最小になる関数(直線 y=a1x+a0の場合)
図1 最小二乗による近似
誤差の和Sが最小
S
a0
a1
直線 y=a1x+a0 の近似
誤差の全体の和はS=Σei=Σyi-(a1xi+a0)
Sは変曲点にて最小値を示すすなわち(partSparta0)=0 (partSparta1)=0
図2 a0a1とSの関係
23
「近似曲線の書式設定」
のウィンドウでオプシ
ョンから「グラブの書式
を表示する」の前を選ん
でチェック(前のチェッ
クボックスをクリック)
した後「OK」を押す
現れた直線にポインタをあわせて
左クリックすると「近似曲線の書式
設定」のウインドウが表示されます
ここをクリックします
この「オプション」のタ
グをクリックします
「y=」の関数
が現れるのでここ
をクリックする
式の文字フォントが初期値
「8」と小さいのでここ
のボタンをクリックし
フォントサイズを選ぶリス
トボックスを表示し「22」程度の大きなサイズを選択
しクリックする
24
「Graph2」酢酸濃度 Cb[molL]と Cbn[gL]の関係のグラフから最小二乗法により直線の式がこのように求められましたExcel を用いてデータに対して近似直線のグラフを描き最小二乗法の直線の式を求めるこの方法は他の実験データの解析などにも利用できますので
各自活用して下さい 表示された関数式「y=43865+2654」はノートにメモして下さいこの傾き 43865と
切片 2654からLangmuir式の定数 ninfinと Kを決定します決定方法の詳細はこの後の 36 の Langmuir式のパラメータ決定法に示しています ラングミュアの等温吸着式を変形すると次式となる
CCnKnCKn
CCKn
Cβ+α+
==
+= infininfininfin
11)1(
ただしα=1ninfinβ=1(ninfinK)とするこの式より Cnを縦軸Cを横軸とした関係のグラフは傾きα=1ninfin切片β=1(ninfinK)の直線関係を与えることを示しています そこでExcelのシートを利用してこの値からLangmuir式の定数 ninfinと Kを次のように決定しますセル C18D18に Graph2で求めた数値 2654と 43865を代入しますその後D19と C19に関数を ldquo=1D18rdquoとrdquo=D18C18ldquoを代入しますセル内の式は半角で入力してください
現れた関数の文字フォン
トを大きく(例えば 22)してその数字をメモし
吸着データシートの C18と D18に記入する
C18D18 に Graph2 で求めた値 2654 と 43865 を代入した後D19 と C19 に関数を ldquo=1D18rdquoとrdquo=D18C18ldquoを代入する
25
この Excel表示では最小二乗法を用いて決定した傾きαと切片βを用いて α=1ninfin=43865 β=1(ninfinK)=2654 得られた傾きおよび切片よりninfinおよび Kは次のように求まる
ninfin=1α=1D18=000228 molg-1 K =(1ninfin)β=αβ=D18C18=165
つまりセル D19にはninfinの値がセル C19にはKの値が表示されますこれらの値はラングミュア(Langmuir)の単分子吸着モデルで計算した理論線と実験と比較する場合に利用します実験結果に対して理論的な考察を行う例としてラングミュア(Langmuir)の単分子吸着モデルで理論線を計算し実験と比較するにはこの Excelファイルを利用して次のように計算しグラフに表示します セル F5~F30 には溶液中に残る酢酸濃度 Cb[molL]に対する活性炭に吸着された吸着量n[molg]の関係のグラフ「Graph1」の横軸の酢酸濃度 Cb[molL]の適当な値が既に入力してありますこれらのそれぞの酢酸濃度 Cb[molL]に対する吸着された酢酸の吸着量 n[molg]の理論値をラングミュア(Langmuir)式で計算しますラングミュア式は次式で与えられます
KCKCnn
+=
infin
1 (310)
ここでこの実験データを最も精度よく計算できるように決定した ninfinおよび K は上述のようにninfin=1α=1D18=000228 molg-1 K =(1ninfin)β=αβ=D18C18=165 でありこれらの値はセル D19にninfinの値がセル C19にKの値が表示されていますこの値を利用して「Graph1」に計算線を描くにはまずセル G5~G30 にセル F5~F30 のそれぞれの酢酸濃度 Cb[molL]に対する吸着された酢酸の吸着量 n[molg]の理論値をラングミュア式で計算しますそのためにはセル G5 にラングミュア式を次のように記述しますただしセル D19の ninfinの値セル C19の Kの値は常に同じセルから参照するので絶対参照($マークを付けて$D$19 $C$19と記述します)で記述します
Langmuir式をセル G5に記述するただし濃度はF5の値を相対参照しD19と C19は絶対参照($マークが必要)することを忘れないように
セルG5に記述すべき数式
=$D$19$C$19F5(1+$C$19F5)
26
G5記述後フィルハンドルを使用してG5の関数を G6~G30までコピーします Sheet1から Graph1 のタグをクリックしGraph1 に計算線が表示されたことを確認しましょうこれでラングミュア式によるデータの解析は終了です実験値と理論値を比較して現象
について考察してみて下さいラングミュア式を理論的に導く場合にある仮定をしている
のですがその仮定をしているラングミュア式が実験データを精度よく計算できていれば
その仮定が妥当なもとであったと考察できます 与えられたモデルデータでラングミュア式によるデータ解析ができれば他の理論(例え
ばフロインドリッヒFreundlich式や BET式レポートはどちらか一方でも可です) についてもExcel で計算してみましょうレポートには自分のデータについてここで行った内容と同様に計算しその結果を考察に記述して下さい 自分のデータについて同様の計算をするにはまずいままで計算を行った Excel ファ
イルを保存しますデータを自分の実験データに置き換える前に Excel ファイルをさらに別の名前で保存します与えられた Excel ファイルは初期状態では模擬のデータが入力されているので今回自分達の実験したデータを入力していきます入力するデータは予め計算
しておいた酢酸濃度 Cb[moll]と活性炭吸着量 n[molg]になります下の画面の丸で囲んだ部分にそれぞれ自分の実験データを入力していきます
今回はCbnの値を入力する必要はありませんExcelが自動的に計算を行って結果を表示するようになっています 次に酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着
量 n[molg]の関係および酢酸濃度Cb[molL]と Cbn[gL]の関係をグラフ化します今回は自動的にグラフが作成
されるようになっていますので操作は必
要ありません 39 Freundlichの等温吸着式による相関 今回の実験で得られた酢酸濃度 Cbと活性炭吸着量 nのデータを利用してFreundlichの等温吸着式の定数 abの値を求めFreundlichの等温吸着式の理論線をグラフに追加します ここでFreundlich式は次式で表されます
bbaCn1
=
このままでは定数 abの値を決定することが難しいので上式の両辺の対数をとり線形化しますすると次式となります
bCb
an ln1lnln +=
ここでln Cbと ln nの関係をグラフにプロットすれば傾き 1b切片 ln aの直線関係が得られますしたがって実験データである酢酸濃度 Cbと活性炭吸着量 nの値の対数をそれぞれ計算します配布した「ad_graxls」ファイルを開き「吸着データ」シートの任意の部分に以下のような表を作成します
27
次にln Cb[-]の列の最初のセルに以下の数式を入力します
=ln(B5) 上式中の「B5」は Cb の値の最初のセルの位置を指します各個人の位置によって変更してください
次にln n[-]の列の最初のセルに以下の数式を入力します
=ln(C5) 上式中の「C5」は nの値の最初のセルの位置を指します各個人の位置によって変更してください
ここでln Cb[-]ln n[-]の値に対しそれぞれオートフィルを行い計算させますすると以下のようなデータが完成します
計算した ln Cb[-]ln n[-]の値をグラフにプロットし最小二乗法による直線式を求めます
28
ここで以下のような直線の式が得られたとします
9135ln31690ln913531690 minus=there4minus= bCnxy
上式より切片は-5913傾きは 03169となるので以下の要領で定数 a1bを計算します ==there4minus= minus 91359135ln eaa 000270
316901=
b
a の値を Excel で計算させる場合は任意のセルに以下のような数式を入力することで求めることができます
=exp(-5913) これでFerundlich等温吸着式の定数 a1bの値が決定しましたこの値は後で使うのでノートなどにメモしておいてください 次に決定した Ferundlich 等温吸着式の定数 a1b の値を用いてFerundlich 等温吸着式のグラフを作成します先ほども示したように Ferundlich等温吸着式は次式で表されます
bbaCn1
=
従って定数 aと 1bの値はすでに決定しているので任意の Cbの値に対する nの値を数点求めればFerundlich等温吸着式で求めた理論線が得られます以下の操作で理論線を引くことができます Langmuir 等温吸着式による相関のときと同様にExcel の「吸着データ」のシート上の任意の場所に以下のような表を作成します
次に Ferundlich等温吸着式に従いnの値を計算します
bbaCn1
=
式中の定数 a1bは先ほど計算した値を用いますしたがって式は次のようになります
31690002700 bCn times=
この式を Excelのセル内に記入すれば計算ができます次の
29
ように記入します
=00027G5^03169 ここで式中の「G5」は Cbの値が 0のセルを指しています各個人の位置によって変えてください 次に式を記入したセルを Cbの値が 05のところまでオートフィルを行いますそうするとすべての Cbに対して nの値が計算されます
これで Freundlich等温吸着式のデータが完成しましたので次に「Graph1」酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着量 n[molg]の関係のグラフにこのデータを追加し理論線を引きます理論線の引き方は Langmuirによる相関のときと同様の操作を行ってください グラフの書式等を変更し整理すると以下のようなグラフが出来上がります
310 吸着等温線とは 固体の吸着剤を溶液と接触させる時一定量の吸着剤によって吸着される溶質の量は温度一定ならば溶質の濃度の関数になる一定温度での吸着量を温度に対してプロットした時に
得られる曲線を吸着等温線というこの吸着等温線を比較的よく表す経験式として次の
Freundlich式がある
n=aC1b (1) ここで n は吸着剤の質量あたりの吸着量C は吸着平衡濃度a と b は実験から決定されるパラメータであるがその物理的意味は多少希薄である これに対し理論的な意味を持つものに次のラングニュア(Langmuir)の吸着等温式がある
30
KCKCnn
+=
infin
1 (2)
ただしninfinは飽和吸着量Kは吸着平衡定数であるこの式は
1)吸着分子が固体表面で単分子以上の厚い層を作ることはない 2)吸着分子同士の間の相互作用はない
という二つの仮定にもとに導かれたものである 結果の整理および報告 Freundlich吸着等温式Langmuir吸着等温式の各々のパラメータの最適値を求めよまた活性炭の吸着特性および表面積について考察し化学工学における吸着操作の重要性につい
ても検討せよ 311 吸着等温式 (a) ヘンリー(Henry)型吸着等温式 液相の濃度あるいは気相の圧力が小さい場合吸着分子間の距離が十分に長いため吸着
分子同士の相互作用が無視でき固体表面と吸着分子のみの相互作用で吸着量を決定できる
とき次式のように表される
n=KC (3)
ここでKは比例定数である図 3-1の(a)に示すように濃度 Cと吸着量 nは比例関係があり一般に吸着量が小さい範囲で成立する気体の場合は溶液濃度 Cの代わりに気相圧力 pを用いればよい
濃度(分圧)
濃度(分圧)
濃度(分圧)
濃度(分圧)
吸着量
吸着量
吸着量
吸着量
(a)ヘンリー型 (b)ラングミュア型
(d)BET型(c)フロインドリッヒ型
0
0
0
0
図 3-1 吸着等温式
31
(b)ラングミュア(Langmuir)型吸着等温式 ラングミュアは図 3-2 に示すように固体表面に同等な吸着力を示す吸着サイトがあり
表面に 1分子層だけ吸着する(単分子層吸着)と仮定して平衡状態における吸着量と溶質濃度(気相分圧)のと関係を導いた全吸着点のうち吸着分子に覆われている吸着点の割合
をθ[-]とすると分子の脱着速度 rrsquo[mols-1]はθに比例する比例定数を a[mols-1]とすると次式のように表される
吸着剤
吸着分子
吸着サイト
図 3-2 固体表面上の吸着サイト(Langmuir式の導出) r=aθ (6) また気相からの吸着速度 r[mols-1]は空いている吸着点の割合(1-θ)[-]と溶液濃度 C[molm-3]に比例する rrsquo= b(1-θ)C (7) このときの比例定数を b[m3s-1]とするまた平衡状態では両速度は見かけ上等しいため以下の式が成り立つ aθ=b(1-θ)C (8) これを変形する
CbaCbsdot+
sdot=θ (9)
ここで飽和吸着量を ninfin[molkg-1] ba を K[m3mol-1](Kは吸着平衡定数)とおくと infin=nnθ
となるので次式が得られる
32
KCKCnn
+=
infin
1 (10)
これをラングミュア式と呼ぶ
(c)フロインドリッヒ(Freundlich)型吸着等温式 フロインドリッヒの吸着等温線は図 3-1(c)のように示される
n=aC1b (11) nは吸着量[molkg-1]で aと bはともに吸着定数[-]である (d)BET(Brunauer-Emmett-Teller) 型吸着等温式
BET型の吸着等温線は図 3-1(d)に示されるラングミュア式は表面に 1分子層だけ吸着すると仮定したものであるがBET式は無限分子層まで吸着できる式である図 3-3に示すように吸着した分子がそれぞれ次の層の吸着サイトとなり分子は積み重なって多分子
層に無限層まで吸着できるものとし各層への吸着にラングミュア式を適用すれば次式の
ように表せる
( ) ( )CKCCCKqq
minus+sdotminussdotsdot
=infin
11 (12)
この式は多孔質固体の細孔表面積を窒素ガスの吸着によって測定する際に利用される重要な式
である
表面の吸着サイト
分子上の吸着サイト
図 3-3 多分層吸着モデル
Langmuir式のパラメータ決定法 水溶液からの酢酸の活性炭に対する吸着平衡データ(吸着平衡温度 12)は表 3-1のよ
うに与えられる実験データよりラングミュア式のパラメータ(K吸着平衡定数ninfin飽和吸着量)を最小二乗法で決定せよさらにラングミュア式より決定した ninfinKの値を用いて吸着等温線を計算し計算線として図に示し実験点と比較せよ
33
表 3-1 n C Cnの関係
ラングミュア式は式(310)で与えられるこの式を変形すると次式となる
CKnCK
n infinsdot+
=11
(313)
両辺に Cをかけると以下の式が導出される
CCnKnCKn
CCKn
Cβ+α+
==
+= infininfininfin
11)1( (314)
ただしα=1ninfinβ=1(ninfinK)とする式(314)より Cn と C の関係のグラフプロットは傾きα=1ninfin切片β=1(ninfinK)の直線関係を与えることを示している表 3-1の値を用いて計算した Cnと Cの関係を表 3-1および図 3-4に示す 最小二乗法を用いて傾きαと切片βを決定した α=1ninfin=43865 β=1(ninfinK)=2654 得られた傾きおよび切片よりninfinおよび Kは次のように求まる
ninfin=1α=1D18=000228 molg-1 K =(1ninfin)β=αβ=D18C18=165
0
50
100
150
200
0 200 400 600
C [ molm-3 ]
Cn [ kgm-3 ]
傾き = 1 ninfin
1 ninfinK
切片0
05
1
15
2
25
3
0 100 200 300 400 500
液相の溶質濃度 C [ molm-3 ]
吸着量 n [ molkg-1]
液相と溶質濃度 C [ molm-3 ]
吸着量
n[ m
olk
g-1]
実験点
Langmuir式パラメータninfin 00033 [ molg-1 ]K 00086 [ m3 mol -1 ]
図 3-4 ラングミュア定数の決定 図 3-5 12における酢酸濃度 Cと
吸着量 nの関係
C [molm-3] n [molkg-1] Cn [kgm-3] 460 225 109 529 214
268 199 149 105 060
172 128 732 504 357
34
Freundlich式のパラメータ決定法 酢酸水溶液中における酢酸の活性炭に対する吸着実験を行ったところ以下のような実験デー
タを得たただしCbはバルク相における酢酸濃度n は活性炭に対する酢酸の吸着量を示す
Cb[molL] n[molg] log10Cb log10n 04621 000205 02410 000175 01139 000139 00519 000105 00243 000081
実験データを利用して次式で与えられる Freundlichの等温吸着式の定数 abの値を求めたい
bbaCn1
= (1)
このままでは定数 abの値を決定することが難しいので上式の両辺の対数をとる
bbb
bb
Cb
aCa
aCn
ln1lnlnln
)ln(ln1
1
+=+=
=
(2)
ここで横軸に ln Cb縦軸に ln nの関係をグラフにプロットするすなわち x=ln Cby=ln nと考える
bCb
an ln1lnln += (3)
ここで直線式 y=a0+a1xと比較するすなわち
)(1)(ln
1
00
傾き
切片
ba
eaaa a
=
=rarr= (4)
a0および a1は最小二乗法により数値で求められる与えられたデータでは a1= a0= なので a= b= となる この値を n=acb
1bに代入してcb=0~05の範囲で nの値を計算する
35
BET式のパラメータ決定法 BET式は次式で与えられる
)1)(1( KCCCKCnn
+minusminus=
infin
(17)
以下のように BET式の変形を行う
)1()1(
KCCKCnCn+minus
=minusinfin
(18)
(18)式の逆数をとると
KCnCK
KCnKCC
Cn infininfin
minus+=
+minus=
minus)1(1)1(
)1(1
(19)
(19)式の両辺に Cをかえると
KCnCKC
CnC
infin
minus+=
minus))1(1(
)1( (20)
(20)式を変形すると次式が得られる
CKn
KKnCn
Cinfininfin
minus+=
minus11
)1( (21)
C と)-(1 Cn
Cのプロットは傾き
KnKinfin
minus1切片
Kninfin
1の直線関係を与えることを示している
これをグラフにプロットし最小二乗法に傾きおよび切片を求める
36
312 活性炭の比表面積の決定 酢酸分子の構造を以下に示す
Hc-Cb-Ca
Hd
Hb Oa
Ob-Ha
1219deg
Ca Oa
Ob
図 36 酢酸の構造
酢酸の 1分子の吸着面積srsquo [m2]を図 3-6に示すこのとき文献より
Caと Oaの結合距離 1321Å Caと Obの結合距離 1206Å OaCaObの角度 1219deg Cの原子半径 077Å Oの原子半径 062Å
したがって吸着面積 Slsquoは次のようになる
( ) ( ) 2088 10376109931036321 minusminusminus times=timestimestimestimes=s m2
ここで活性炭の比表面積 S[m2g]は次式で示される 10026 23 snS timestimestimes= infin
S活性炭の比表面積 [m2g] ninfin飽和吸着量 [molg] srsquo酢酸 1分子の吸着面積 [m2] 602times1023アボガドロ数 [個mol] したがって活性炭の比表面積 S[m2g]は
003350=infinn molg 2010376 minustimes=s m2 より
51281037610026003350 2023 =timestimestimestimes= minusS m2g
37
4 粘度密度測定 41 はじめに 大量生産を目的とした工業的化学プロセスはほとんど流れ系(流通系)であるそれらの系において操作対象となる各物質の粘度は装置を設計操作する場合きわめて重要
な物性値である 本実験では低分子溶液および高分子溶液の粘度測定を通じて液体の粘度について考察するさらに演習問題を通じて気体液体高分子溶液などの化学プロセスで対象となる物
質の輸送物性(粘度拡散係数)の重要性を認識されたい 42 低分子溶液の粘度 [目的] 種々の濃度のエタノール水溶液の粘度を測定しその溶液の粘度について考察する [概要] 25におけるエチルアルコール濃度 02040506080100 wt の水溶液について流下時間を測定しこの結果より相対粘度絶対粘度運動粘度を求めグラフにするま
た水の密度水-エチルアルコール溶液の密度についてはピクノメーターを用いて決
定する報告書には相対粘度絶対粘度運動粘度 vsエチルアルコール濃度の関係をそれぞれグラフにして提出する
[計算方法] 相対粘度絶対粘度運動粘度の定義は次のようになる
相対粘度 ww
w tdtd
ηη = (41)
η 混合溶液の粘度 [gcms] ηw水の粘度(8007times10-3 gcms) [gcms](25における粘度) d エチルアルコール水溶液の密度 [gcm3] dw水の密度(099704gcm3) [gcm3](25における密度) t エチルアルコール水溶液の流下時間 [s] tw水の流下時間 [s] 下付添字 W 水
絶対粘度 www td
tdη
η= (42)
運動粘度 ν=ηd [cm2s] (43)
38
[実験方法] 1) 粘度計を洗浄し粘度計内 に二連球で空気を送り込み
乾燥させる乾燥しにくい 場合はアセトンを滴下し た後再度二連球で空気 を送り込み乾燥させる 2)ピペットで一定体積(10mℓ) の純水を取り広い口 f から 粘度計に水を入れる 3)粘度計を恒温槽(25)に つけ約 10 分静置する 4)安全ピペッターを口 a に 取り付け液面が b 上部に 到達するまで吸い上げる 5)安全ピペッターを外すと 液面が降下しだす液面が bd 間を通過する時間をスト ップウォッチで測定する
6)純水での測定を 3 回繰り返す 7)純水を粘度計から取り除くその後粘度計内に二連球を用いて空気を送り込み乾燥させる 8)粘度計乾燥後複数の濃度に調整済みのエチルアルコール水溶液(10mℓ)を粘度計にいれ4)~6)の作業を繰り返し行う(3 回)なお濃度の異なるエチルアルコール水溶液を粘度計内に導入する場合には7)と同様に二連球を用いて粘度計内に空気を送り込み乾燥させる
表 4-1 エチルアルコール水溶液の濃度密度相対粘度の関係 エチルアルコール濃度
[wt] 密度 d[gcm3] 相対粘度
η ηw[-] 0
20 40 50 60 80
100
安全ピペッター接続
図 4-1 粘度計
液面の bd間の通過時
間を測定
f
39
43 密度測定 [目的] 本実験では水とエタノールの種々の組成の混合液体について密度を測定し分子間相互
作用について考察する [実験方法] 1)ピクノメーターの容積測定
図 4-2のピクノメーターの空の重量 wg を秤量する
ピクノメーターの蓋を取り外し
ピクノメーターを水で満たす
設定温度を 25として恒温槽 の電源を入れ恒温槽内の温 度が一定になるまで待つな お水温は恒温槽中の水銀温 度計から読む
恒温槽中に水を満たしたピク
ノメーターを入れる
約 10分間静置する
ピクノメーターに蓋をするこのときピクノメーターの容量
よりも余分の水は蓋の上部より排出される
ピクノメーターの外側を乾いた布で拭い秤量する(その重量を
wwg とする)
恒温槽の温度(25)における水の密度 dwgcm3(=099704gcm3)
より次式を用いてピクノメーターの容積を求める
w
w
dww
Vminus
= (44)
図 4-2 ピクノメーター
蓋
40
表 4-2 エチルアルコール水溶液の濃度と密度の測定結果(25) エチルアルコ
ール濃度[wt]
wrsquo[g] ww[g] V[cm3] w[g]
d[gcm3]
0 20 40 50 60 80
100
099704
エチルアルコール濃度[wt] 空のピクノメーターの重量 wrsquo[g] 水を入れたときのピクノメーターの重量 ww[g] ピクノメーターの体積 V[cm3] エタノール水溶液の入れたときのピクノメータの重さ w[g] エタノール水溶液の密度 d[gcm3]
容積 Vを求めたピクノメーターに混合溶液(調整済み)を入れてその重量 wgを秤量し次式で混合溶液の密度を求める
Vwwd minus
= (45)
エタノール濃度と密度 d の関係をグラフにプロットする
41
44 高分子溶液の粘度 [目的] 高分子溶液の粘度測定から分子量の粘度に与える影響について考察する [概要 ] オストワルド粘度計を用い種々の濃度のポリビニルアルコール(PVA ((-CH2CHOH-)n))水溶液の粘度を測定し粘度データよりポリビニルアルコールの分
子量を求める まず 05g100cc の濃度のポリビニルアルコール水溶液を調製する次にこれを原液
とし23 12 13 15の濃度の溶液を調製するこれらの溶液についてオストワルド粘度計を用いてそれぞれ流下時間を測定し相対粘度絶対粘度運動粘度を求め実験デ
ータより極限粘度[η]を求めるまた報告書には相対粘度絶対粘度運動粘度C
)ln( wηη
Cw
w-η
ηη vsポリビニルアルコール濃度の関係をそれぞれグラフにして提出する
[計算方法] エチルアルコール水溶液の粘度測定と同様の手法を用いて粘度の計算を行うなおポリビニルアルコール水溶液の密度はピクノメーターを用いて測定すること 表 4-3 ポリビニルアルコール水溶液の濃度密度相対粘度の関係 ポリビニルアルコール
濃度 [g100cc] 密度 d[gcm3] 相対粘度
η ηw[-] 05times(15) 05times(13) 05times(12) 05times(23)
05
42
[分子量の計算方法] 実験を行った結果以下のような粘度データを得られるとする実験データより極限粘度
を求めポリビニルアルコール(PVA)の分子量Mを決定せよ
PVA 水溶液濃度
C[g100cc]
相対粘度
ηηw[-]
絶対粘度
η[gcms]Cw
w-η
ηη
C)ln( wηη
05times(15) 1031 0008255 031 0305
05times(13) 039 0378
05times(12) 03 0289
05times(23) 0375 0353
05 0364 0334
ηw=8007times10-3 gcms 線状高分子の極限粘度[η]と分子量Mの関係は次式で与えられる [η]=KMα (46) ただしポリビニルアルコールの場合K=666times10-4α=064であるなお極限粘度[η]は次式で定義される
CC w
w
0
-][ limη
ηηη
rarr
= (47)
または
CC
)ln(][ w
0lim
ηηη
rarr
= (48)
よって濃度 CとCw
w-η
ηηまたは濃度 Cと
C)ln( wηη の関係をグラフ化し最小二乗法によ
り切片の値を求めると極限粘度[η]が決定される
Cw
w-η
ηηと C の関係より最小二乗法を用いて切片の値を決定すると(図 43 参照)切片=
03242傾き=00874となるよって極限粘度は以下のようになる[η]=03242同様
にC
)ln( wηη とcの関係より最小二乗法を用いて切片の値を決定する
(図 44参照)と切片=03249傾き=00256となり極限粘度は以下のようになる[η]=03249
Cw
w-η
ηηと Cの関係より決定した[η]=03242を用いてポリビニルアルコール(PVA)の
分子量 Mを計算する(46)式より以下のように PVAの分子量 Mを計算することができるM=([η]K)1α
=(03242(666times10-4))(1064)
=15811
43
y = 00874x + 03242
0
02
04
06
08
1
0 01 02 03 04 05 06 07
c[g100cc]
(η-ηw)(ηwc)
cw
w
η
ηηminus
極限粘度[η]
図 43 298Kにおける PVA濃度 CとCw
w-η
ηηの関係
y = 00256x + 03249
0
02
04
06
08
1
0 01 02 03 04 05 06 07
c[g100cc]
(ln(ηη
w))c
c)ln( wηη
極限粘度[η]
図 44 298Kにおける PVA濃度 CとC
)ln( wηη の関係
44
5 植物からの DNAの抽出 51 はじめに 分子レベルでの遺伝子の構造解明や遺伝子の発現に関する研究は近年急速に発展している
これら生命現象のしくみを分子レベルで解明しようという分子生物学の分野ではさまざま
な遺伝子の解析や応用方法が開発され我々の生活に身近なものになりつつある 本実験では初歩的な分子生物学に関する実験として植物(タマネギ)からの DNA の
抽出を行い抽出した遺伝子の電気泳動法による分離実験を試みる 52 試薬および器具 試薬 タマネギ(細胞中から遺伝子の抽出を行う) 台所用洗剤(洗剤中に含まれる界面活性剤には植物の細胞膜およびタンパク質を破壊す
る働きがある) 塩化ナトリウム(DNAは塩化ナトリウム水溶液に溶解し易い性質がある) エタノール(予め冷やしておくDNAはエタノールにほとんど溶解しない) 制限酵素(DNAを一定の部位で切断する働きを働きがある) TE緩衝液(pH緩衝剤が入った溶液) 器具 ビーカーミキサーフィルターメスシリンダー駒込ピペットガラス棒 マイクロピペット電気泳動装置ポラロイドカメラ 53 実験方法 1)タマネギは 1回の実験で半個のうち内側の半分程度を使用するタマネギ水 30ml台所用洗剤数滴をミキサー用ガラス容器に入れ40~60秒程度(固体状のタマネギがなくなる頃が目安)ミキサーにて混合する
2) 1)で作成した混合溶液をビーカーに移し約5g程度の塩化ナトリウムを加えガラス棒で静かに攪拌する粘性の大きな溶液が得られる
3) 2)で作成した溶液をフィルターを用いて濾過し濾液を回収する 4) 濾液の約2倍程度の量の冷エタノールをビーカーの壁伝いに静かに注ぐ 5) ビーカーを揺するとエタノール層に白くふわふわしたものが浮いてくるこれが DNAであるガラス棒で DNAを巻き取りシャーレ上にて DNAを回収する顕微鏡を用いて回収した DNAの状態を観察する
6)マイクロチューブ(容量 15ml)中に用意した 70エタノールを 8 分目程度まで注ぐ5)にて回収された DNAをマイクロピペットを用いて70エタノールの入ったマイクロチューブ中に移す軽く混ぜることによりDNA から不要な物質を洗い流す遠心分離してDNA をマイクロチューブの底に沈めた後溶液を捨てて DNA を乾かす乾いたらTE緩衝溶液を 1ml加えて放置するDNAの溶液が得られる
54 電気泳動装置による DNAの観察
本実験は職員と一緒に行うこと 実験を行う人はビニール手袋をすること 1) 抽出した DNAを電気泳動装置で観察するマイクロピペットを用いて以下のように調製した DNAの混合溶液を調製する(いずれの溶液も調製済)
45
2) マイクロピペットを用いてアガロースゲルの試料を流し込む穴(ウェル)に1)にて調製した溶液 Aおよび Bを注ぎ込む注入量は20μℓとする電気泳動装置のスイッチを入れて100Vの電流を流しアガロースゲル内にて DNAを電気泳動させる
3) 試料に予め加えられておいた青色の色素が 7 分目程度まで進んだら電気泳動を中止する(約 30分程度)
4) (ここでの作業は職員が行う) アガロースゲルを取り出し染色液に浸す染色後ゲルを取り出しポラロイドカメラで
DNAの泳動状態を撮影する
+ -
アガロースゲル
試料を流し込む穴(ウェル)
図 51 電気泳動装置
6 5 4 3 2 1
図 52 DNAの電気泳動写真の一例
55 電気泳動装置の原理 電気泳動装置の原理図を以下に示すアガロースゲル(寒天から不純物を除いたもの)中
に DNAをセットし電流を流すとDNAは電流の向きとは逆にマイナスからプラス方向
調製済 溶液 A(制限酵素なし) 水 11μℓ 10timesH Buffer 2microℓ 植物 DNA 5μℓ
調製済 溶液 B(制限酵素 Eco RI入り) 水 11μℓ 10timesH Buffer 2microℓ 植物 DNA 5μℓ 制限酵素 2μℓ
1 DNA(タマネギ)+制限酵素 2 DNA(タマネギ)+制限酵素 3 DNA(タマネギ) 4 λ-DNA(大腸菌)+制限酵素 5 λ-DNA(大腸菌) 6 サイズマーカー
500bp
46
に動く(このことを電気泳動という)これはDNA のリン酸部分が負に帯電しているためでありまたDNAはその長さにより泳動距離が異なる(短い遺伝子ほど長く泳動する)電気泳動ではこの性質を利用してDNAを大きさごとに分離することができる
塩基対数によってDNAを分離
EtBr (蛍光試薬)DNAの二本鎖内に入り込む
発光
UVλ=302nm
励起
分離後のアガロースゲルをエチジウムブロマイド(EtBr)溶液に浸す
DNAを含んだ溶液
アガロースゲル
リン酸部分が負に帯電
塩基 (ATGC)-
+
カメラで撮影
電圧
DNA構成成分(dNTPs)
バンドが明る
DNA量が
バンド(DNAの存在)
図 53 電気泳動の原理
56 制限酵素とは DNA は4 種類のヌクレオチド(GATC)が不規則につながってできている制限酵素はDNAの特定のヌクレオチドが並んでいる部分を切断する制限酵素には様々な種類がありEco RI(エコアールワン)と呼ばれる酵素は「GAATTC」といった並びの部分だけを切断することができる
GAATTC
CTTAAG
制限酵素
Eco RI
AAGCTT
TTCGAA
制限酵素
Hin dIII
図 54 制限酵素による DNAの切断
レポートについて 1 実験方法および実験結果の整理方法については指針書を参考にすること 2 実験結果については電気泳動の結果について考察すること(制限酵素の影響などにつ
いてまとめてください)
47
6 染色実験
61 はじめに
現在私達の身の周りでは様々な染料が使われている例えばT シャツやジーンズな
どの衣服は橙黄赤青など様々な色に染められている他にも私達が気付かないと
ころで多くの染色された製品を使用しているそこで本実験では高校の化学で学んだ
アゾ染料を合成してみるアゾ染料はアニリンを原料として作られているアニリンはベ
ンゼン環にアミノ基(-NH2)がついたものであるアニリンは無色の液体で水に溶けにく
くアンモニアより弱い塩基性を示すまたさらし粉(CaClO(ClO)H2O)水溶液を加えると
赤紫色を呈するこの呈色反応はアニリン特有のものであるので検出反応に用いられる
このアニリンを出発物質としてアゾ染料を合成してみる
62 試薬および使用器具
【試薬】 ①05moll 水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液
②2-ナフトール ③フェノール ④6moll 塩酸
⑤亜硝酸ナトリウム ⑥アニリン ⑦氷
【器具類】 ①電子天秤 ②50mℓビーカー ③100mℓビーカー
④ガラス棒 ⑤布(ガーゼなど) ⑥ピンセット
⑦ポリ手袋 ⑧ドライヤー ⑨シャーレ
10駒込ピペット(10ml ガラス製)
11駒込ピペット(1ml プラスチック製)
63 実験方法
1) 50mℓビーカーの中に 05molℓ水酸化ナトリウム水溶液 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回
NaOH 水溶液を分取するほぼ 20 mℓ分取できれば可)と 2-ナフトールを約 01g 入れ
よくかき混ぜる調製した溶液の中に布をつけその布はガラス棒でしぼってから(布
をガラス棒ですくいあげればよい)シャーレに広げる温度の異なる条件下(常温およ
び低温)で染料の合成実験を行うため布は最低 2枚調製した溶液と接触させそれ
ぞれ別々のシャーレ(低温用および常温用)に広げる
2) 新しいビーカーに水を約 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回分取)と 6molℓ塩酸約 4mℓ(10m
ℓ駒込ピペットで目分量で可)さらにアニリン約 1mℓ(プラスチック製 1 mℓ駒込ピペッ
ト)を入れてよくかき混ぜる染料の合成を常温および低温下で行うためこの溶液を
2つ調整する
低温下で反応させる溶液は恒温槽で 10~15 分ほどよく冷やした後亜硝酸ナトリウ
ム 05g を加えてよくかき混ぜる
常温下で反応させる溶液には冷却作業を行わずに亜硝酸ナトリウム 05g を加えて
よくかき混ぜる
3) 2)でつくった水溶液をシャーレに広げた布に注ぎ生成される染料を布によく染み
込ませ5分程放置する
4) 色の付いた布を取り出してポリ手袋をした手できれいに水洗いをし乾燥させる
48
5) 色差計を用いて乾燥した布の Lab(L明度aおよび b色度)を測定する
2)で作った溶液は5以下では無色の溶液ですが5以上になると淡い黄色になりま
す
【解説】
アゾ染料はアゾ基(-N=N-)を持っていてこのアゾ基によって鮮やかな橙色を呈色し
ます今回合成したアゾ染料は図の 1-フェニルアゾ-2-ナフトールです意外かもしれ
ませんが指示薬として使われているフェノールフタレインもアゾ化合物ですフェノール
フタレインは pH の変化によって色が出てきす染料の中でも最初は無色のものもありますが
温度を変化させたり酸性やアルカリ性にすると色が出てきます
ベンゼン ニトロベンゼン
N2Cl
ニトロ化 濃硫酸(濃硝酸)
還元反応 濃塩酸
(Sn又は Fe)
アニリン塩酸塩
遊離反応 NaOH
アニリン塩酸塩に強塩基を反応させる
と弱塩基であるアニリンが遊離する
氷冷+亜硝酸ナトリウム アニリン
塩酸
ジアゾ化
塩化ベンゼンジアゾニウム
塩化ベンゼンジアゾニウム
は熱によって窒素とフェノー
ルに分解される
カップリング
C10H7ONa (ナトリウム 2-ナフトキシド)
O
N =
1-フェニルアゾ 2-ナフトール
NH3Cl NH2
49
7 ガスクロマトグラフ質量分析計による茶葉中のカフェインの分析 71 はじめに ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)は極めて低い濃度の化学物質の同定や未知物質の構造決定に極めて強力な分析機器の一つであるGCMSを用いるとサンプルの中に含まれているある成分の分子構造(カフェインの分子構造を図 71に示す)やその量が分かりますもちろん分析機器ですので測定できる物質対象となる系や測定条件にはある
程度の制約があります混合物質を分離するガスクロマトグラフ(Gas ChromatographGC)と分離された成分(物質)を分析(構造決定と濃度測定)する質量分析計(Mass SpectrometerMS)を組み合わせた装置であるこの装置は有機化学生化学環境化学などの多くの分野で非常に多用されている例えば極めて低い濃度でも生体へ強い影響が懸念されるダイ
オキシン類などの土壌や河川の水中での含有率の決定や食品や医薬品中の微量成分の決定
にも利用されている 一方日本人に長い間親しまれてきた緑茶が近年産業界や医学
界で注目されている茶葉にはカフェイン(分子構造図 71)カテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドなどの有用成分が多く含まれておりその効能が注目されている 本実験では茶葉中に含まれるカフェインに対してGCMSを用いて分析する茶葉中には種々の物質が含まれておりGCMS分析を容易にするため前処理として超臨界二酸化炭素抽出(4015MPa程度の高圧力の二酸化炭素を溶剤として利用)により茶葉からカフェインの抽出を行いそのサンプルを GCMSにて分析する
図 71 カフェインの分子構造 図 72 物質の分析 個々の物質や装置についてはインターネットにより下記のWebサイトのフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』などにより調べるとよいカフェイン(caffeine)はアルカロイドの一種プリン環を持つプリンアルカロイドの一種でコーヒー類に含まれることか
らこの名がある化学名は137-トリメチルキサンチン(C8H10N4O2) コーヒーコーラ緑茶紅茶ガラナココアなどに含まれる(量は緑茶が一番多い)結晶は一水和物(C8H10N4O2bullH2O)もしくは無水物(無水カフェインC8H10N4O2)として得られ
る白色の針状または六角柱状結晶で匂いはなく味は苦い融点は 238昇華性がある出典フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』httpwwwwikipediaorg 装置「GCMS」httpwwwanshimadzucojpproductsgcmsqp2010htm (島津) 「超臨界抽出装置」httpwwwkagakucomjasco39-49html (日本分光)
50
レポート課題 1茶葉中に含まれるカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドの中から3つの物質を選びその物質について調べた結果を A4 レポート用紙2枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
2GCMS についてA4 レポート用紙1枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
3与えられたサンプルは茶葉1gから抽出されたのである実験結果よりもとの茶葉
1g中に含まれるカフェインの量を推算し計算式とあわせて示すこと 72 原理および装置 実験で使用する島津製の GCMS装置の全体図を図 73に原理の概略を図 74に示す
1
23
4
5
67 8
9
10
キャリアーガス
試料物質
1ボンベ(He)2圧力計3マイクロシリンジ4サンプラー5試料導入部6分離カラム
7セパレーター8イオン化室9磁石10電子増倍管11記録計
11
図 74 ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)の概略図
サンプルフォルダー
51
GCMS 装置は分離部である図中の 1~6 のガスクロマトグラフ(GC)と7~11 の検出部である質量分析計(MS)から構成される 3のマイクロシリンジを用いて試料を GCMSに導入する導入された試料は5試料導入部でガス化され6分離カラムに導入される分離カラムには吸着剤が充填されおり混合物の試料を導入した場合各物質と吸着剤との
親和性の違いにより各物質の分離カラムから排出されるタイミングは異なる分離カラム
を排出された試料は8イオン化室でイオン化され10電子倍増管にて検出される アセトンに溶解したカフェインの GCMSによる分析結果の一例を以下に示す図 75にク
ロマトグラム図 76にカフェインのピークのマススペクトルを示す
図 75 GCMSにより得られたクロマトグラム
横軸がリテンションタイムで縦軸がピーク強度を表す
図 76 カフェインのマススペクトルとカフェイン(分子量MW=194)の構造
(図 75中のリテンションタイム 126min付近のピークに起因するマススペクトル) 茶葉中にはカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイド以外にも繊維であるセルロースなど多くの物質が含まれているため茶葉そのものを
そのままサンプルとしてGCMSで分析することは困難であるセルロースなどの分子量の大きな物質はカラムに詰まってしまい分析できないそこで今回は超臨界二酸化炭素
による抽出により主にカフェインを他の物質と分離抽出した通常よく利用されるアセ
トン抽出(アセトンに茶葉を浸し特定の成分を抽出する)ではカフェイン以外にも多く
の物質が抽出されるため図 75 のような単独のピークを得ることは難しく複数のピークがクロマトグラムに見られるこのサンプル(この場合茶葉からの抽出物)にはカフェ
イン以外の不純物は少なかったがガスクロマトグラフの分離カラムによりさらにそれ
らの混合物が精度よく分離されるクロマトグラムのピークはそれらサンプル中に含まれ
ていた個々の物質を表しているクロマトグラムのピークを選択することで分子構造解析
したい物質を選んだことになる選択したクロマトグラムのピークの表している物質(ここ
ではカフェイン)に対応するマススペクトルが図 76 に表示されているマススペクトル
52
で横軸がその成分(ここではカフェイン)分子を構成している原子の原子量で縦軸がそ
の量を表しているのでマススペクトルから分子構造を解析するためにコンピュータ内
に蓄えられた物質ごとのマススペクトルデータと今回測定したマススペクトル(分子内に含
まれている各原子の数)を比較することで測定したサンプル中のクロマトピークを選択し
た分子がどのような原子をどれだけ含んだ分子であったかがわかりそれからその物質
がどのような分子構造の物質である可能性が高いかをコンピュータが検索し結果を示す 73 実験サンプルの設置と GCMS装置の操作方法 実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS装置のサンプルフォルダ
ー(図 73)にセットするこのサンプルは茶葉 1gを 50ccの高圧セルにて超臨界二酸化炭素を利用して4015MPa2時間接触の条件で抽出した固体を10gのアセトンに溶かしたものである またコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に装置および装置制
御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 本実験で使用する GCMS の操作は全てコンピュータのモニター上で GCMS の解析プログラムソフトを使用することで行うコンピュータの操作方法を以下に示す なおコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS 装置のサンプルフォルダー(図 73)にセットするまた装置および装置制御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 1)パソコンのデスクトップ上のアイコン「GCMS 分析」をクリックすると以下のようにGCMS制御プログラムを起動するその後「OK」ボタンをクリックする
図 77 GCMD分析用ソフトウェア「GCMS分析」の起動
まず「GC-MS分析」をクリック
「OK」ボタンをクリック
53
2)制御プログラムが起動されパソコンと GCMSの接続が開始される
図 78 「GCMS分析」の接続確認画面 3)GCMSとパソコンの接続が完了すると以下のような画面が表示される
図 79 「GCMS分析」操作画面
4)マススペクトルによる分子構造の解析 サンプル(この場合茶葉からの抽出物)には多くの物質が混じり合っていたがガス
クロマトグラフの分離カラムによりそれらの混合物が精度よく分離されるクロマトグラ
ムのピークはそれらサンプル中に含まれていた個々の物質を表しているクロマトグラム
のピークを選択することで分子構造解析したい物質を選んだことになる選択したクロマ
トグラムのピークの表している物質(ここではカフェイン)に対応するマススペクトルを選
択するマススペクトルは横軸が原子量で縦軸がその量を表しているのでマススペク
トルから分子構造を解析するために「定性処理」を行う シミラリティ検索結果が表示され分析により得られたスペクトルと類似のスペクトルを有
する物質の一覧が表示される上部に表示される物質ほどスペクトルが一致していること
を示す
接続状況が表示される
「トップへ」
をクリック
54
図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果
図 711 表示スペクトルのシミラリティ検索結果 10)図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果の印刷 「レポート(R)」をクリックし「検索結果(R)」をクリックすると検索結果が印刷される
GC-MS 分析で得られたマスス
ペクトル
データベース中
のマススペクト
ル
55
参考資料 生理活性物質の精製 カフェインの利尿作用のように生物活動に影響を与える物質を生理活性物質といいます
天然物には生理活性物質を多く含むものがあります一般に天然物は多くの成分を含ん
でおり特定の生理活性物質を分離抽出するには種々の分離技術が必要ですまた生
理活性物質には60以上の温度でその生理活性を失う(失活)ものや溶剤として広く用いられているクロロホルムなどの有機溶剤中で失活するものが多いそこでこれら生理活性
物質の分離精製技術の開発が望まれており30~60程度のマイルドな温度条件で操作できる二酸化炭素を機能性溶媒として利用する超臨界抽出も有効な分離技術として注目されて
いる超臨界二酸化炭素は気体と液体の中間の性質を持ち物質の分離に役立っています 臨界点付近の高密度気体は超臨界ガスまたは超臨界流体と呼ばれ臨界圧力前後でそ
の溶解能力が著しく変化することから工業的にも種々の分野で利用されています一例と
して超臨界二酸化炭素(SC-CO2)によるコーヒー豆からのカフェインの抽出プロセス(a)
ならびに超臨界二酸化炭素に対するカフェインの溶解度(b)を図に示します図(c)に示す
ように固体のカフェインがガスである超臨界二酸化炭素に溶解します
このように超臨界二酸化炭素を用いた技術はコーヒー豆からのカフェインの抽出プロ
ポリスからの生理活性物質の抽出に利用されています
図 超臨界二酸化炭素抽出を用いたコーヒー豆からのカフェインの抽出
56
付表 最小二乗法について 直線で近似する場合 f (x) = a0 + a1x (A1-1) 式(A1-1)のように近似させるとする測定値 yiとの残差を eiとすると式(A1-2)のようになる ei = yi - f (xi) = yi - ( a0 + a1xi ) (A1-2) ここで式(A1-2)の両辺を二乗してその i に関する総和をとりその値を S とすると次式となる
sumsum==
+minus==n
iii
n
ii xaayeS
1
210
1
2 )( (A1-3)
S を最小化するような a0a1を求める式(A1-3)を a0a1について偏微分すると次式とな
る
sum=
+minuspartpart
=partpart n
iii xaay
aaS
1
210
00)( sum
=
+minusminus=n
iii xaay
110 )(2 (A1-4)
同様にa1について編微分すると次式のようになる
sum=
+minusminus=partpart n
iiii xxaay
aS
110
1])([2 (A1-5)
Sが最小となる時は次式が同時に満たされる時である
00=
partpartaS
01=
partpartaS
(A1-6)
よって誤差が最小となる a0a1を求めるためには式(A1-6)を連立して解けばよい
sumsumsum===
+=n
ii
n
i
n
ii xaay
111
10 1 (A1-7)
sumsumsum===
+=n
ii
n
ii
n
iii xaxaxy
1
2
11
10 (A1-8)
式(A1-7)と式(A1-8)を a0a1を変数とみなし連立して解くと次式を得る
n組のデータ(xiyi)(i=12hellipn)に対して回帰直線 y= a0 + a1x を最小二乗法で求めて出力しデータ番号 iデータ yi直線で推定した値 )( ii bxay += および残差
iii yy minus=ε を出力するようなプログラムをつくりたい基礎式を導出せよ (ヒント残差の二乗の和が最小になるように係数 a0a1)を定めるのが最小二乗法
である)
57
sumsum
sumsumsumsum
==
====
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
n
ii
n
ii
xxn
xxyyxa
1
2
1
2
1111
2
0
)(
))(())(( (A1-9)
sumsum
sumsumsum
==
===
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
xxn
yxxyna
1
2
1
2
1111
)(
))(()( (A1-10)
よって式(A1-9)(A1-10)を用いれば最も誤差を小さくするような直線 y = a0 + a1x が求められる
y=a1x+a0 にて近似
誤差 ei
x
y
誤差が最小になる関数(直線 y=a1x+a0の場合)
図1 最小二乗による近似
誤差の和Sが最小
S
a0
a1
直線 y=a1x+a0 の近似
誤差の全体の和はS=Σei=Σyi-(a1xi+a0)
Sは変曲点にて最小値を示すすなわち(partSparta0)=0 (partSparta1)=0
図2 a0a1とSの関係
24
「Graph2」酢酸濃度 Cb[molL]と Cbn[gL]の関係のグラフから最小二乗法により直線の式がこのように求められましたExcel を用いてデータに対して近似直線のグラフを描き最小二乗法の直線の式を求めるこの方法は他の実験データの解析などにも利用できますので
各自活用して下さい 表示された関数式「y=43865+2654」はノートにメモして下さいこの傾き 43865と
切片 2654からLangmuir式の定数 ninfinと Kを決定します決定方法の詳細はこの後の 36 の Langmuir式のパラメータ決定法に示しています ラングミュアの等温吸着式を変形すると次式となる
CCnKnCKn
CCKn
Cβ+α+
==
+= infininfininfin
11)1(
ただしα=1ninfinβ=1(ninfinK)とするこの式より Cnを縦軸Cを横軸とした関係のグラフは傾きα=1ninfin切片β=1(ninfinK)の直線関係を与えることを示しています そこでExcelのシートを利用してこの値からLangmuir式の定数 ninfinと Kを次のように決定しますセル C18D18に Graph2で求めた数値 2654と 43865を代入しますその後D19と C19に関数を ldquo=1D18rdquoとrdquo=D18C18ldquoを代入しますセル内の式は半角で入力してください
現れた関数の文字フォン
トを大きく(例えば 22)してその数字をメモし
吸着データシートの C18と D18に記入する
C18D18 に Graph2 で求めた値 2654 と 43865 を代入した後D19 と C19 に関数を ldquo=1D18rdquoとrdquo=D18C18ldquoを代入する
25
この Excel表示では最小二乗法を用いて決定した傾きαと切片βを用いて α=1ninfin=43865 β=1(ninfinK)=2654 得られた傾きおよび切片よりninfinおよび Kは次のように求まる
ninfin=1α=1D18=000228 molg-1 K =(1ninfin)β=αβ=D18C18=165
つまりセル D19にはninfinの値がセル C19にはKの値が表示されますこれらの値はラングミュア(Langmuir)の単分子吸着モデルで計算した理論線と実験と比較する場合に利用します実験結果に対して理論的な考察を行う例としてラングミュア(Langmuir)の単分子吸着モデルで理論線を計算し実験と比較するにはこの Excelファイルを利用して次のように計算しグラフに表示します セル F5~F30 には溶液中に残る酢酸濃度 Cb[molL]に対する活性炭に吸着された吸着量n[molg]の関係のグラフ「Graph1」の横軸の酢酸濃度 Cb[molL]の適当な値が既に入力してありますこれらのそれぞの酢酸濃度 Cb[molL]に対する吸着された酢酸の吸着量 n[molg]の理論値をラングミュア(Langmuir)式で計算しますラングミュア式は次式で与えられます
KCKCnn
+=
infin
1 (310)
ここでこの実験データを最も精度よく計算できるように決定した ninfinおよび K は上述のようにninfin=1α=1D18=000228 molg-1 K =(1ninfin)β=αβ=D18C18=165 でありこれらの値はセル D19にninfinの値がセル C19にKの値が表示されていますこの値を利用して「Graph1」に計算線を描くにはまずセル G5~G30 にセル F5~F30 のそれぞれの酢酸濃度 Cb[molL]に対する吸着された酢酸の吸着量 n[molg]の理論値をラングミュア式で計算しますそのためにはセル G5 にラングミュア式を次のように記述しますただしセル D19の ninfinの値セル C19の Kの値は常に同じセルから参照するので絶対参照($マークを付けて$D$19 $C$19と記述します)で記述します
Langmuir式をセル G5に記述するただし濃度はF5の値を相対参照しD19と C19は絶対参照($マークが必要)することを忘れないように
セルG5に記述すべき数式
=$D$19$C$19F5(1+$C$19F5)
26
G5記述後フィルハンドルを使用してG5の関数を G6~G30までコピーします Sheet1から Graph1 のタグをクリックしGraph1 に計算線が表示されたことを確認しましょうこれでラングミュア式によるデータの解析は終了です実験値と理論値を比較して現象
について考察してみて下さいラングミュア式を理論的に導く場合にある仮定をしている
のですがその仮定をしているラングミュア式が実験データを精度よく計算できていれば
その仮定が妥当なもとであったと考察できます 与えられたモデルデータでラングミュア式によるデータ解析ができれば他の理論(例え
ばフロインドリッヒFreundlich式や BET式レポートはどちらか一方でも可です) についてもExcel で計算してみましょうレポートには自分のデータについてここで行った内容と同様に計算しその結果を考察に記述して下さい 自分のデータについて同様の計算をするにはまずいままで計算を行った Excel ファ
イルを保存しますデータを自分の実験データに置き換える前に Excel ファイルをさらに別の名前で保存します与えられた Excel ファイルは初期状態では模擬のデータが入力されているので今回自分達の実験したデータを入力していきます入力するデータは予め計算
しておいた酢酸濃度 Cb[moll]と活性炭吸着量 n[molg]になります下の画面の丸で囲んだ部分にそれぞれ自分の実験データを入力していきます
今回はCbnの値を入力する必要はありませんExcelが自動的に計算を行って結果を表示するようになっています 次に酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着
量 n[molg]の関係および酢酸濃度Cb[molL]と Cbn[gL]の関係をグラフ化します今回は自動的にグラフが作成
されるようになっていますので操作は必
要ありません 39 Freundlichの等温吸着式による相関 今回の実験で得られた酢酸濃度 Cbと活性炭吸着量 nのデータを利用してFreundlichの等温吸着式の定数 abの値を求めFreundlichの等温吸着式の理論線をグラフに追加します ここでFreundlich式は次式で表されます
bbaCn1
=
このままでは定数 abの値を決定することが難しいので上式の両辺の対数をとり線形化しますすると次式となります
bCb
an ln1lnln +=
ここでln Cbと ln nの関係をグラフにプロットすれば傾き 1b切片 ln aの直線関係が得られますしたがって実験データである酢酸濃度 Cbと活性炭吸着量 nの値の対数をそれぞれ計算します配布した「ad_graxls」ファイルを開き「吸着データ」シートの任意の部分に以下のような表を作成します
27
次にln Cb[-]の列の最初のセルに以下の数式を入力します
=ln(B5) 上式中の「B5」は Cb の値の最初のセルの位置を指します各個人の位置によって変更してください
次にln n[-]の列の最初のセルに以下の数式を入力します
=ln(C5) 上式中の「C5」は nの値の最初のセルの位置を指します各個人の位置によって変更してください
ここでln Cb[-]ln n[-]の値に対しそれぞれオートフィルを行い計算させますすると以下のようなデータが完成します
計算した ln Cb[-]ln n[-]の値をグラフにプロットし最小二乗法による直線式を求めます
28
ここで以下のような直線の式が得られたとします
9135ln31690ln913531690 minus=there4minus= bCnxy
上式より切片は-5913傾きは 03169となるので以下の要領で定数 a1bを計算します ==there4minus= minus 91359135ln eaa 000270
316901=
b
a の値を Excel で計算させる場合は任意のセルに以下のような数式を入力することで求めることができます
=exp(-5913) これでFerundlich等温吸着式の定数 a1bの値が決定しましたこの値は後で使うのでノートなどにメモしておいてください 次に決定した Ferundlich 等温吸着式の定数 a1b の値を用いてFerundlich 等温吸着式のグラフを作成します先ほども示したように Ferundlich等温吸着式は次式で表されます
bbaCn1
=
従って定数 aと 1bの値はすでに決定しているので任意の Cbの値に対する nの値を数点求めればFerundlich等温吸着式で求めた理論線が得られます以下の操作で理論線を引くことができます Langmuir 等温吸着式による相関のときと同様にExcel の「吸着データ」のシート上の任意の場所に以下のような表を作成します
次に Ferundlich等温吸着式に従いnの値を計算します
bbaCn1
=
式中の定数 a1bは先ほど計算した値を用いますしたがって式は次のようになります
31690002700 bCn times=
この式を Excelのセル内に記入すれば計算ができます次の
29
ように記入します
=00027G5^03169 ここで式中の「G5」は Cbの値が 0のセルを指しています各個人の位置によって変えてください 次に式を記入したセルを Cbの値が 05のところまでオートフィルを行いますそうするとすべての Cbに対して nの値が計算されます
これで Freundlich等温吸着式のデータが完成しましたので次に「Graph1」酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着量 n[molg]の関係のグラフにこのデータを追加し理論線を引きます理論線の引き方は Langmuirによる相関のときと同様の操作を行ってください グラフの書式等を変更し整理すると以下のようなグラフが出来上がります
310 吸着等温線とは 固体の吸着剤を溶液と接触させる時一定量の吸着剤によって吸着される溶質の量は温度一定ならば溶質の濃度の関数になる一定温度での吸着量を温度に対してプロットした時に
得られる曲線を吸着等温線というこの吸着等温線を比較的よく表す経験式として次の
Freundlich式がある
n=aC1b (1) ここで n は吸着剤の質量あたりの吸着量C は吸着平衡濃度a と b は実験から決定されるパラメータであるがその物理的意味は多少希薄である これに対し理論的な意味を持つものに次のラングニュア(Langmuir)の吸着等温式がある
30
KCKCnn
+=
infin
1 (2)
ただしninfinは飽和吸着量Kは吸着平衡定数であるこの式は
1)吸着分子が固体表面で単分子以上の厚い層を作ることはない 2)吸着分子同士の間の相互作用はない
という二つの仮定にもとに導かれたものである 結果の整理および報告 Freundlich吸着等温式Langmuir吸着等温式の各々のパラメータの最適値を求めよまた活性炭の吸着特性および表面積について考察し化学工学における吸着操作の重要性につい
ても検討せよ 311 吸着等温式 (a) ヘンリー(Henry)型吸着等温式 液相の濃度あるいは気相の圧力が小さい場合吸着分子間の距離が十分に長いため吸着
分子同士の相互作用が無視でき固体表面と吸着分子のみの相互作用で吸着量を決定できる
とき次式のように表される
n=KC (3)
ここでKは比例定数である図 3-1の(a)に示すように濃度 Cと吸着量 nは比例関係があり一般に吸着量が小さい範囲で成立する気体の場合は溶液濃度 Cの代わりに気相圧力 pを用いればよい
濃度(分圧)
濃度(分圧)
濃度(分圧)
濃度(分圧)
吸着量
吸着量
吸着量
吸着量
(a)ヘンリー型 (b)ラングミュア型
(d)BET型(c)フロインドリッヒ型
0
0
0
0
図 3-1 吸着等温式
31
(b)ラングミュア(Langmuir)型吸着等温式 ラングミュアは図 3-2 に示すように固体表面に同等な吸着力を示す吸着サイトがあり
表面に 1分子層だけ吸着する(単分子層吸着)と仮定して平衡状態における吸着量と溶質濃度(気相分圧)のと関係を導いた全吸着点のうち吸着分子に覆われている吸着点の割合
をθ[-]とすると分子の脱着速度 rrsquo[mols-1]はθに比例する比例定数を a[mols-1]とすると次式のように表される
吸着剤
吸着分子
吸着サイト
図 3-2 固体表面上の吸着サイト(Langmuir式の導出) r=aθ (6) また気相からの吸着速度 r[mols-1]は空いている吸着点の割合(1-θ)[-]と溶液濃度 C[molm-3]に比例する rrsquo= b(1-θ)C (7) このときの比例定数を b[m3s-1]とするまた平衡状態では両速度は見かけ上等しいため以下の式が成り立つ aθ=b(1-θ)C (8) これを変形する
CbaCbsdot+
sdot=θ (9)
ここで飽和吸着量を ninfin[molkg-1] ba を K[m3mol-1](Kは吸着平衡定数)とおくと infin=nnθ
となるので次式が得られる
32
KCKCnn
+=
infin
1 (10)
これをラングミュア式と呼ぶ
(c)フロインドリッヒ(Freundlich)型吸着等温式 フロインドリッヒの吸着等温線は図 3-1(c)のように示される
n=aC1b (11) nは吸着量[molkg-1]で aと bはともに吸着定数[-]である (d)BET(Brunauer-Emmett-Teller) 型吸着等温式
BET型の吸着等温線は図 3-1(d)に示されるラングミュア式は表面に 1分子層だけ吸着すると仮定したものであるがBET式は無限分子層まで吸着できる式である図 3-3に示すように吸着した分子がそれぞれ次の層の吸着サイトとなり分子は積み重なって多分子
層に無限層まで吸着できるものとし各層への吸着にラングミュア式を適用すれば次式の
ように表せる
( ) ( )CKCCCKqq
minus+sdotminussdotsdot
=infin
11 (12)
この式は多孔質固体の細孔表面積を窒素ガスの吸着によって測定する際に利用される重要な式
である
表面の吸着サイト
分子上の吸着サイト
図 3-3 多分層吸着モデル
Langmuir式のパラメータ決定法 水溶液からの酢酸の活性炭に対する吸着平衡データ(吸着平衡温度 12)は表 3-1のよ
うに与えられる実験データよりラングミュア式のパラメータ(K吸着平衡定数ninfin飽和吸着量)を最小二乗法で決定せよさらにラングミュア式より決定した ninfinKの値を用いて吸着等温線を計算し計算線として図に示し実験点と比較せよ
33
表 3-1 n C Cnの関係
ラングミュア式は式(310)で与えられるこの式を変形すると次式となる
CKnCK
n infinsdot+
=11
(313)
両辺に Cをかけると以下の式が導出される
CCnKnCKn
CCKn
Cβ+α+
==
+= infininfininfin
11)1( (314)
ただしα=1ninfinβ=1(ninfinK)とする式(314)より Cn と C の関係のグラフプロットは傾きα=1ninfin切片β=1(ninfinK)の直線関係を与えることを示している表 3-1の値を用いて計算した Cnと Cの関係を表 3-1および図 3-4に示す 最小二乗法を用いて傾きαと切片βを決定した α=1ninfin=43865 β=1(ninfinK)=2654 得られた傾きおよび切片よりninfinおよび Kは次のように求まる
ninfin=1α=1D18=000228 molg-1 K =(1ninfin)β=αβ=D18C18=165
0
50
100
150
200
0 200 400 600
C [ molm-3 ]
Cn [ kgm-3 ]
傾き = 1 ninfin
1 ninfinK
切片0
05
1
15
2
25
3
0 100 200 300 400 500
液相の溶質濃度 C [ molm-3 ]
吸着量 n [ molkg-1]
液相と溶質濃度 C [ molm-3 ]
吸着量
n[ m
olk
g-1]
実験点
Langmuir式パラメータninfin 00033 [ molg-1 ]K 00086 [ m3 mol -1 ]
図 3-4 ラングミュア定数の決定 図 3-5 12における酢酸濃度 Cと
吸着量 nの関係
C [molm-3] n [molkg-1] Cn [kgm-3] 460 225 109 529 214
268 199 149 105 060
172 128 732 504 357
34
Freundlich式のパラメータ決定法 酢酸水溶液中における酢酸の活性炭に対する吸着実験を行ったところ以下のような実験デー
タを得たただしCbはバルク相における酢酸濃度n は活性炭に対する酢酸の吸着量を示す
Cb[molL] n[molg] log10Cb log10n 04621 000205 02410 000175 01139 000139 00519 000105 00243 000081
実験データを利用して次式で与えられる Freundlichの等温吸着式の定数 abの値を求めたい
bbaCn1
= (1)
このままでは定数 abの値を決定することが難しいので上式の両辺の対数をとる
bbb
bb
Cb
aCa
aCn
ln1lnlnln
)ln(ln1
1
+=+=
=
(2)
ここで横軸に ln Cb縦軸に ln nの関係をグラフにプロットするすなわち x=ln Cby=ln nと考える
bCb
an ln1lnln += (3)
ここで直線式 y=a0+a1xと比較するすなわち
)(1)(ln
1
00
傾き
切片
ba
eaaa a
=
=rarr= (4)
a0および a1は最小二乗法により数値で求められる与えられたデータでは a1= a0= なので a= b= となる この値を n=acb
1bに代入してcb=0~05の範囲で nの値を計算する
35
BET式のパラメータ決定法 BET式は次式で与えられる
)1)(1( KCCCKCnn
+minusminus=
infin
(17)
以下のように BET式の変形を行う
)1()1(
KCCKCnCn+minus
=minusinfin
(18)
(18)式の逆数をとると
KCnCK
KCnKCC
Cn infininfin
minus+=
+minus=
minus)1(1)1(
)1(1
(19)
(19)式の両辺に Cをかえると
KCnCKC
CnC
infin
minus+=
minus))1(1(
)1( (20)
(20)式を変形すると次式が得られる
CKn
KKnCn
Cinfininfin
minus+=
minus11
)1( (21)
C と)-(1 Cn
Cのプロットは傾き
KnKinfin
minus1切片
Kninfin
1の直線関係を与えることを示している
これをグラフにプロットし最小二乗法に傾きおよび切片を求める
36
312 活性炭の比表面積の決定 酢酸分子の構造を以下に示す
Hc-Cb-Ca
Hd
Hb Oa
Ob-Ha
1219deg
Ca Oa
Ob
図 36 酢酸の構造
酢酸の 1分子の吸着面積srsquo [m2]を図 3-6に示すこのとき文献より
Caと Oaの結合距離 1321Å Caと Obの結合距離 1206Å OaCaObの角度 1219deg Cの原子半径 077Å Oの原子半径 062Å
したがって吸着面積 Slsquoは次のようになる
( ) ( ) 2088 10376109931036321 minusminusminus times=timestimestimestimes=s m2
ここで活性炭の比表面積 S[m2g]は次式で示される 10026 23 snS timestimestimes= infin
S活性炭の比表面積 [m2g] ninfin飽和吸着量 [molg] srsquo酢酸 1分子の吸着面積 [m2] 602times1023アボガドロ数 [個mol] したがって活性炭の比表面積 S[m2g]は
003350=infinn molg 2010376 minustimes=s m2 より
51281037610026003350 2023 =timestimestimestimes= minusS m2g
37
4 粘度密度測定 41 はじめに 大量生産を目的とした工業的化学プロセスはほとんど流れ系(流通系)であるそれらの系において操作対象となる各物質の粘度は装置を設計操作する場合きわめて重要
な物性値である 本実験では低分子溶液および高分子溶液の粘度測定を通じて液体の粘度について考察するさらに演習問題を通じて気体液体高分子溶液などの化学プロセスで対象となる物
質の輸送物性(粘度拡散係数)の重要性を認識されたい 42 低分子溶液の粘度 [目的] 種々の濃度のエタノール水溶液の粘度を測定しその溶液の粘度について考察する [概要] 25におけるエチルアルコール濃度 02040506080100 wt の水溶液について流下時間を測定しこの結果より相対粘度絶対粘度運動粘度を求めグラフにするま
た水の密度水-エチルアルコール溶液の密度についてはピクノメーターを用いて決
定する報告書には相対粘度絶対粘度運動粘度 vsエチルアルコール濃度の関係をそれぞれグラフにして提出する
[計算方法] 相対粘度絶対粘度運動粘度の定義は次のようになる
相対粘度 ww
w tdtd
ηη = (41)
η 混合溶液の粘度 [gcms] ηw水の粘度(8007times10-3 gcms) [gcms](25における粘度) d エチルアルコール水溶液の密度 [gcm3] dw水の密度(099704gcm3) [gcm3](25における密度) t エチルアルコール水溶液の流下時間 [s] tw水の流下時間 [s] 下付添字 W 水
絶対粘度 www td
tdη
η= (42)
運動粘度 ν=ηd [cm2s] (43)
38
[実験方法] 1) 粘度計を洗浄し粘度計内 に二連球で空気を送り込み
乾燥させる乾燥しにくい 場合はアセトンを滴下し た後再度二連球で空気 を送り込み乾燥させる 2)ピペットで一定体積(10mℓ) の純水を取り広い口 f から 粘度計に水を入れる 3)粘度計を恒温槽(25)に つけ約 10 分静置する 4)安全ピペッターを口 a に 取り付け液面が b 上部に 到達するまで吸い上げる 5)安全ピペッターを外すと 液面が降下しだす液面が bd 間を通過する時間をスト ップウォッチで測定する
6)純水での測定を 3 回繰り返す 7)純水を粘度計から取り除くその後粘度計内に二連球を用いて空気を送り込み乾燥させる 8)粘度計乾燥後複数の濃度に調整済みのエチルアルコール水溶液(10mℓ)を粘度計にいれ4)~6)の作業を繰り返し行う(3 回)なお濃度の異なるエチルアルコール水溶液を粘度計内に導入する場合には7)と同様に二連球を用いて粘度計内に空気を送り込み乾燥させる
表 4-1 エチルアルコール水溶液の濃度密度相対粘度の関係 エチルアルコール濃度
[wt] 密度 d[gcm3] 相対粘度
η ηw[-] 0
20 40 50 60 80
100
安全ピペッター接続
図 4-1 粘度計
液面の bd間の通過時
間を測定
f
39
43 密度測定 [目的] 本実験では水とエタノールの種々の組成の混合液体について密度を測定し分子間相互
作用について考察する [実験方法] 1)ピクノメーターの容積測定
図 4-2のピクノメーターの空の重量 wg を秤量する
ピクノメーターの蓋を取り外し
ピクノメーターを水で満たす
設定温度を 25として恒温槽 の電源を入れ恒温槽内の温 度が一定になるまで待つな お水温は恒温槽中の水銀温 度計から読む
恒温槽中に水を満たしたピク
ノメーターを入れる
約 10分間静置する
ピクノメーターに蓋をするこのときピクノメーターの容量
よりも余分の水は蓋の上部より排出される
ピクノメーターの外側を乾いた布で拭い秤量する(その重量を
wwg とする)
恒温槽の温度(25)における水の密度 dwgcm3(=099704gcm3)
より次式を用いてピクノメーターの容積を求める
w
w
dww
Vminus
= (44)
図 4-2 ピクノメーター
蓋
40
表 4-2 エチルアルコール水溶液の濃度と密度の測定結果(25) エチルアルコ
ール濃度[wt]
wrsquo[g] ww[g] V[cm3] w[g]
d[gcm3]
0 20 40 50 60 80
100
099704
エチルアルコール濃度[wt] 空のピクノメーターの重量 wrsquo[g] 水を入れたときのピクノメーターの重量 ww[g] ピクノメーターの体積 V[cm3] エタノール水溶液の入れたときのピクノメータの重さ w[g] エタノール水溶液の密度 d[gcm3]
容積 Vを求めたピクノメーターに混合溶液(調整済み)を入れてその重量 wgを秤量し次式で混合溶液の密度を求める
Vwwd minus
= (45)
エタノール濃度と密度 d の関係をグラフにプロットする
41
44 高分子溶液の粘度 [目的] 高分子溶液の粘度測定から分子量の粘度に与える影響について考察する [概要 ] オストワルド粘度計を用い種々の濃度のポリビニルアルコール(PVA ((-CH2CHOH-)n))水溶液の粘度を測定し粘度データよりポリビニルアルコールの分
子量を求める まず 05g100cc の濃度のポリビニルアルコール水溶液を調製する次にこれを原液
とし23 12 13 15の濃度の溶液を調製するこれらの溶液についてオストワルド粘度計を用いてそれぞれ流下時間を測定し相対粘度絶対粘度運動粘度を求め実験デ
ータより極限粘度[η]を求めるまた報告書には相対粘度絶対粘度運動粘度C
)ln( wηη
Cw
w-η
ηη vsポリビニルアルコール濃度の関係をそれぞれグラフにして提出する
[計算方法] エチルアルコール水溶液の粘度測定と同様の手法を用いて粘度の計算を行うなおポリビニルアルコール水溶液の密度はピクノメーターを用いて測定すること 表 4-3 ポリビニルアルコール水溶液の濃度密度相対粘度の関係 ポリビニルアルコール
濃度 [g100cc] 密度 d[gcm3] 相対粘度
η ηw[-] 05times(15) 05times(13) 05times(12) 05times(23)
05
42
[分子量の計算方法] 実験を行った結果以下のような粘度データを得られるとする実験データより極限粘度
を求めポリビニルアルコール(PVA)の分子量Mを決定せよ
PVA 水溶液濃度
C[g100cc]
相対粘度
ηηw[-]
絶対粘度
η[gcms]Cw
w-η
ηη
C)ln( wηη
05times(15) 1031 0008255 031 0305
05times(13) 039 0378
05times(12) 03 0289
05times(23) 0375 0353
05 0364 0334
ηw=8007times10-3 gcms 線状高分子の極限粘度[η]と分子量Mの関係は次式で与えられる [η]=KMα (46) ただしポリビニルアルコールの場合K=666times10-4α=064であるなお極限粘度[η]は次式で定義される
CC w
w
0
-][ limη
ηηη
rarr
= (47)
または
CC
)ln(][ w
0lim
ηηη
rarr
= (48)
よって濃度 CとCw
w-η
ηηまたは濃度 Cと
C)ln( wηη の関係をグラフ化し最小二乗法によ
り切片の値を求めると極限粘度[η]が決定される
Cw
w-η
ηηと C の関係より最小二乗法を用いて切片の値を決定すると(図 43 参照)切片=
03242傾き=00874となるよって極限粘度は以下のようになる[η]=03242同様
にC
)ln( wηη とcの関係より最小二乗法を用いて切片の値を決定する
(図 44参照)と切片=03249傾き=00256となり極限粘度は以下のようになる[η]=03249
Cw
w-η
ηηと Cの関係より決定した[η]=03242を用いてポリビニルアルコール(PVA)の
分子量 Mを計算する(46)式より以下のように PVAの分子量 Mを計算することができるM=([η]K)1α
=(03242(666times10-4))(1064)
=15811
43
y = 00874x + 03242
0
02
04
06
08
1
0 01 02 03 04 05 06 07
c[g100cc]
(η-ηw)(ηwc)
cw
w
η
ηηminus
極限粘度[η]
図 43 298Kにおける PVA濃度 CとCw
w-η
ηηの関係
y = 00256x + 03249
0
02
04
06
08
1
0 01 02 03 04 05 06 07
c[g100cc]
(ln(ηη
w))c
c)ln( wηη
極限粘度[η]
図 44 298Kにおける PVA濃度 CとC
)ln( wηη の関係
44
5 植物からの DNAの抽出 51 はじめに 分子レベルでの遺伝子の構造解明や遺伝子の発現に関する研究は近年急速に発展している
これら生命現象のしくみを分子レベルで解明しようという分子生物学の分野ではさまざま
な遺伝子の解析や応用方法が開発され我々の生活に身近なものになりつつある 本実験では初歩的な分子生物学に関する実験として植物(タマネギ)からの DNA の
抽出を行い抽出した遺伝子の電気泳動法による分離実験を試みる 52 試薬および器具 試薬 タマネギ(細胞中から遺伝子の抽出を行う) 台所用洗剤(洗剤中に含まれる界面活性剤には植物の細胞膜およびタンパク質を破壊す
る働きがある) 塩化ナトリウム(DNAは塩化ナトリウム水溶液に溶解し易い性質がある) エタノール(予め冷やしておくDNAはエタノールにほとんど溶解しない) 制限酵素(DNAを一定の部位で切断する働きを働きがある) TE緩衝液(pH緩衝剤が入った溶液) 器具 ビーカーミキサーフィルターメスシリンダー駒込ピペットガラス棒 マイクロピペット電気泳動装置ポラロイドカメラ 53 実験方法 1)タマネギは 1回の実験で半個のうち内側の半分程度を使用するタマネギ水 30ml台所用洗剤数滴をミキサー用ガラス容器に入れ40~60秒程度(固体状のタマネギがなくなる頃が目安)ミキサーにて混合する
2) 1)で作成した混合溶液をビーカーに移し約5g程度の塩化ナトリウムを加えガラス棒で静かに攪拌する粘性の大きな溶液が得られる
3) 2)で作成した溶液をフィルターを用いて濾過し濾液を回収する 4) 濾液の約2倍程度の量の冷エタノールをビーカーの壁伝いに静かに注ぐ 5) ビーカーを揺するとエタノール層に白くふわふわしたものが浮いてくるこれが DNAであるガラス棒で DNAを巻き取りシャーレ上にて DNAを回収する顕微鏡を用いて回収した DNAの状態を観察する
6)マイクロチューブ(容量 15ml)中に用意した 70エタノールを 8 分目程度まで注ぐ5)にて回収された DNAをマイクロピペットを用いて70エタノールの入ったマイクロチューブ中に移す軽く混ぜることによりDNA から不要な物質を洗い流す遠心分離してDNA をマイクロチューブの底に沈めた後溶液を捨てて DNA を乾かす乾いたらTE緩衝溶液を 1ml加えて放置するDNAの溶液が得られる
54 電気泳動装置による DNAの観察
本実験は職員と一緒に行うこと 実験を行う人はビニール手袋をすること 1) 抽出した DNAを電気泳動装置で観察するマイクロピペットを用いて以下のように調製した DNAの混合溶液を調製する(いずれの溶液も調製済)
45
2) マイクロピペットを用いてアガロースゲルの試料を流し込む穴(ウェル)に1)にて調製した溶液 Aおよび Bを注ぎ込む注入量は20μℓとする電気泳動装置のスイッチを入れて100Vの電流を流しアガロースゲル内にて DNAを電気泳動させる
3) 試料に予め加えられておいた青色の色素が 7 分目程度まで進んだら電気泳動を中止する(約 30分程度)
4) (ここでの作業は職員が行う) アガロースゲルを取り出し染色液に浸す染色後ゲルを取り出しポラロイドカメラで
DNAの泳動状態を撮影する
+ -
アガロースゲル
試料を流し込む穴(ウェル)
図 51 電気泳動装置
6 5 4 3 2 1
図 52 DNAの電気泳動写真の一例
55 電気泳動装置の原理 電気泳動装置の原理図を以下に示すアガロースゲル(寒天から不純物を除いたもの)中
に DNAをセットし電流を流すとDNAは電流の向きとは逆にマイナスからプラス方向
調製済 溶液 A(制限酵素なし) 水 11μℓ 10timesH Buffer 2microℓ 植物 DNA 5μℓ
調製済 溶液 B(制限酵素 Eco RI入り) 水 11μℓ 10timesH Buffer 2microℓ 植物 DNA 5μℓ 制限酵素 2μℓ
1 DNA(タマネギ)+制限酵素 2 DNA(タマネギ)+制限酵素 3 DNA(タマネギ) 4 λ-DNA(大腸菌)+制限酵素 5 λ-DNA(大腸菌) 6 サイズマーカー
500bp
46
に動く(このことを電気泳動という)これはDNA のリン酸部分が負に帯電しているためでありまたDNAはその長さにより泳動距離が異なる(短い遺伝子ほど長く泳動する)電気泳動ではこの性質を利用してDNAを大きさごとに分離することができる
塩基対数によってDNAを分離
EtBr (蛍光試薬)DNAの二本鎖内に入り込む
発光
UVλ=302nm
励起
分離後のアガロースゲルをエチジウムブロマイド(EtBr)溶液に浸す
DNAを含んだ溶液
アガロースゲル
リン酸部分が負に帯電
塩基 (ATGC)-
+
カメラで撮影
電圧
DNA構成成分(dNTPs)
バンドが明る
DNA量が
バンド(DNAの存在)
図 53 電気泳動の原理
56 制限酵素とは DNA は4 種類のヌクレオチド(GATC)が不規則につながってできている制限酵素はDNAの特定のヌクレオチドが並んでいる部分を切断する制限酵素には様々な種類がありEco RI(エコアールワン)と呼ばれる酵素は「GAATTC」といった並びの部分だけを切断することができる
GAATTC
CTTAAG
制限酵素
Eco RI
AAGCTT
TTCGAA
制限酵素
Hin dIII
図 54 制限酵素による DNAの切断
レポートについて 1 実験方法および実験結果の整理方法については指針書を参考にすること 2 実験結果については電気泳動の結果について考察すること(制限酵素の影響などにつ
いてまとめてください)
47
6 染色実験
61 はじめに
現在私達の身の周りでは様々な染料が使われている例えばT シャツやジーンズな
どの衣服は橙黄赤青など様々な色に染められている他にも私達が気付かないと
ころで多くの染色された製品を使用しているそこで本実験では高校の化学で学んだ
アゾ染料を合成してみるアゾ染料はアニリンを原料として作られているアニリンはベ
ンゼン環にアミノ基(-NH2)がついたものであるアニリンは無色の液体で水に溶けにく
くアンモニアより弱い塩基性を示すまたさらし粉(CaClO(ClO)H2O)水溶液を加えると
赤紫色を呈するこの呈色反応はアニリン特有のものであるので検出反応に用いられる
このアニリンを出発物質としてアゾ染料を合成してみる
62 試薬および使用器具
【試薬】 ①05moll 水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液
②2-ナフトール ③フェノール ④6moll 塩酸
⑤亜硝酸ナトリウム ⑥アニリン ⑦氷
【器具類】 ①電子天秤 ②50mℓビーカー ③100mℓビーカー
④ガラス棒 ⑤布(ガーゼなど) ⑥ピンセット
⑦ポリ手袋 ⑧ドライヤー ⑨シャーレ
10駒込ピペット(10ml ガラス製)
11駒込ピペット(1ml プラスチック製)
63 実験方法
1) 50mℓビーカーの中に 05molℓ水酸化ナトリウム水溶液 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回
NaOH 水溶液を分取するほぼ 20 mℓ分取できれば可)と 2-ナフトールを約 01g 入れ
よくかき混ぜる調製した溶液の中に布をつけその布はガラス棒でしぼってから(布
をガラス棒ですくいあげればよい)シャーレに広げる温度の異なる条件下(常温およ
び低温)で染料の合成実験を行うため布は最低 2枚調製した溶液と接触させそれ
ぞれ別々のシャーレ(低温用および常温用)に広げる
2) 新しいビーカーに水を約 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回分取)と 6molℓ塩酸約 4mℓ(10m
ℓ駒込ピペットで目分量で可)さらにアニリン約 1mℓ(プラスチック製 1 mℓ駒込ピペッ
ト)を入れてよくかき混ぜる染料の合成を常温および低温下で行うためこの溶液を
2つ調整する
低温下で反応させる溶液は恒温槽で 10~15 分ほどよく冷やした後亜硝酸ナトリウ
ム 05g を加えてよくかき混ぜる
常温下で反応させる溶液には冷却作業を行わずに亜硝酸ナトリウム 05g を加えて
よくかき混ぜる
3) 2)でつくった水溶液をシャーレに広げた布に注ぎ生成される染料を布によく染み
込ませ5分程放置する
4) 色の付いた布を取り出してポリ手袋をした手できれいに水洗いをし乾燥させる
48
5) 色差計を用いて乾燥した布の Lab(L明度aおよび b色度)を測定する
2)で作った溶液は5以下では無色の溶液ですが5以上になると淡い黄色になりま
す
【解説】
アゾ染料はアゾ基(-N=N-)を持っていてこのアゾ基によって鮮やかな橙色を呈色し
ます今回合成したアゾ染料は図の 1-フェニルアゾ-2-ナフトールです意外かもしれ
ませんが指示薬として使われているフェノールフタレインもアゾ化合物ですフェノール
フタレインは pH の変化によって色が出てきす染料の中でも最初は無色のものもありますが
温度を変化させたり酸性やアルカリ性にすると色が出てきます
ベンゼン ニトロベンゼン
N2Cl
ニトロ化 濃硫酸(濃硝酸)
還元反応 濃塩酸
(Sn又は Fe)
アニリン塩酸塩
遊離反応 NaOH
アニリン塩酸塩に強塩基を反応させる
と弱塩基であるアニリンが遊離する
氷冷+亜硝酸ナトリウム アニリン
塩酸
ジアゾ化
塩化ベンゼンジアゾニウム
塩化ベンゼンジアゾニウム
は熱によって窒素とフェノー
ルに分解される
カップリング
C10H7ONa (ナトリウム 2-ナフトキシド)
O
N =
1-フェニルアゾ 2-ナフトール
NH3Cl NH2
49
7 ガスクロマトグラフ質量分析計による茶葉中のカフェインの分析 71 はじめに ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)は極めて低い濃度の化学物質の同定や未知物質の構造決定に極めて強力な分析機器の一つであるGCMSを用いるとサンプルの中に含まれているある成分の分子構造(カフェインの分子構造を図 71に示す)やその量が分かりますもちろん分析機器ですので測定できる物質対象となる系や測定条件にはある
程度の制約があります混合物質を分離するガスクロマトグラフ(Gas ChromatographGC)と分離された成分(物質)を分析(構造決定と濃度測定)する質量分析計(Mass SpectrometerMS)を組み合わせた装置であるこの装置は有機化学生化学環境化学などの多くの分野で非常に多用されている例えば極めて低い濃度でも生体へ強い影響が懸念されるダイ
オキシン類などの土壌や河川の水中での含有率の決定や食品や医薬品中の微量成分の決定
にも利用されている 一方日本人に長い間親しまれてきた緑茶が近年産業界や医学
界で注目されている茶葉にはカフェイン(分子構造図 71)カテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドなどの有用成分が多く含まれておりその効能が注目されている 本実験では茶葉中に含まれるカフェインに対してGCMSを用いて分析する茶葉中には種々の物質が含まれておりGCMS分析を容易にするため前処理として超臨界二酸化炭素抽出(4015MPa程度の高圧力の二酸化炭素を溶剤として利用)により茶葉からカフェインの抽出を行いそのサンプルを GCMSにて分析する
図 71 カフェインの分子構造 図 72 物質の分析 個々の物質や装置についてはインターネットにより下記のWebサイトのフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』などにより調べるとよいカフェイン(caffeine)はアルカロイドの一種プリン環を持つプリンアルカロイドの一種でコーヒー類に含まれることか
らこの名がある化学名は137-トリメチルキサンチン(C8H10N4O2) コーヒーコーラ緑茶紅茶ガラナココアなどに含まれる(量は緑茶が一番多い)結晶は一水和物(C8H10N4O2bullH2O)もしくは無水物(無水カフェインC8H10N4O2)として得られ
る白色の針状または六角柱状結晶で匂いはなく味は苦い融点は 238昇華性がある出典フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』httpwwwwikipediaorg 装置「GCMS」httpwwwanshimadzucojpproductsgcmsqp2010htm (島津) 「超臨界抽出装置」httpwwwkagakucomjasco39-49html (日本分光)
50
レポート課題 1茶葉中に含まれるカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドの中から3つの物質を選びその物質について調べた結果を A4 レポート用紙2枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
2GCMS についてA4 レポート用紙1枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
3与えられたサンプルは茶葉1gから抽出されたのである実験結果よりもとの茶葉
1g中に含まれるカフェインの量を推算し計算式とあわせて示すこと 72 原理および装置 実験で使用する島津製の GCMS装置の全体図を図 73に原理の概略を図 74に示す
1
23
4
5
67 8
9
10
キャリアーガス
試料物質
1ボンベ(He)2圧力計3マイクロシリンジ4サンプラー5試料導入部6分離カラム
7セパレーター8イオン化室9磁石10電子増倍管11記録計
11
図 74 ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)の概略図
サンプルフォルダー
51
GCMS 装置は分離部である図中の 1~6 のガスクロマトグラフ(GC)と7~11 の検出部である質量分析計(MS)から構成される 3のマイクロシリンジを用いて試料を GCMSに導入する導入された試料は5試料導入部でガス化され6分離カラムに導入される分離カラムには吸着剤が充填されおり混合物の試料を導入した場合各物質と吸着剤との
親和性の違いにより各物質の分離カラムから排出されるタイミングは異なる分離カラム
を排出された試料は8イオン化室でイオン化され10電子倍増管にて検出される アセトンに溶解したカフェインの GCMSによる分析結果の一例を以下に示す図 75にク
ロマトグラム図 76にカフェインのピークのマススペクトルを示す
図 75 GCMSにより得られたクロマトグラム
横軸がリテンションタイムで縦軸がピーク強度を表す
図 76 カフェインのマススペクトルとカフェイン(分子量MW=194)の構造
(図 75中のリテンションタイム 126min付近のピークに起因するマススペクトル) 茶葉中にはカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイド以外にも繊維であるセルロースなど多くの物質が含まれているため茶葉そのものを
そのままサンプルとしてGCMSで分析することは困難であるセルロースなどの分子量の大きな物質はカラムに詰まってしまい分析できないそこで今回は超臨界二酸化炭素
による抽出により主にカフェインを他の物質と分離抽出した通常よく利用されるアセ
トン抽出(アセトンに茶葉を浸し特定の成分を抽出する)ではカフェイン以外にも多く
の物質が抽出されるため図 75 のような単独のピークを得ることは難しく複数のピークがクロマトグラムに見られるこのサンプル(この場合茶葉からの抽出物)にはカフェ
イン以外の不純物は少なかったがガスクロマトグラフの分離カラムによりさらにそれ
らの混合物が精度よく分離されるクロマトグラムのピークはそれらサンプル中に含まれ
ていた個々の物質を表しているクロマトグラムのピークを選択することで分子構造解析
したい物質を選んだことになる選択したクロマトグラムのピークの表している物質(ここ
ではカフェイン)に対応するマススペクトルが図 76 に表示されているマススペクトル
52
で横軸がその成分(ここではカフェイン)分子を構成している原子の原子量で縦軸がそ
の量を表しているのでマススペクトルから分子構造を解析するためにコンピュータ内
に蓄えられた物質ごとのマススペクトルデータと今回測定したマススペクトル(分子内に含
まれている各原子の数)を比較することで測定したサンプル中のクロマトピークを選択し
た分子がどのような原子をどれだけ含んだ分子であったかがわかりそれからその物質
がどのような分子構造の物質である可能性が高いかをコンピュータが検索し結果を示す 73 実験サンプルの設置と GCMS装置の操作方法 実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS装置のサンプルフォルダ
ー(図 73)にセットするこのサンプルは茶葉 1gを 50ccの高圧セルにて超臨界二酸化炭素を利用して4015MPa2時間接触の条件で抽出した固体を10gのアセトンに溶かしたものである またコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に装置および装置制
御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 本実験で使用する GCMS の操作は全てコンピュータのモニター上で GCMS の解析プログラムソフトを使用することで行うコンピュータの操作方法を以下に示す なおコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS 装置のサンプルフォルダー(図 73)にセットするまた装置および装置制御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 1)パソコンのデスクトップ上のアイコン「GCMS 分析」をクリックすると以下のようにGCMS制御プログラムを起動するその後「OK」ボタンをクリックする
図 77 GCMD分析用ソフトウェア「GCMS分析」の起動
まず「GC-MS分析」をクリック
「OK」ボタンをクリック
53
2)制御プログラムが起動されパソコンと GCMSの接続が開始される
図 78 「GCMS分析」の接続確認画面 3)GCMSとパソコンの接続が完了すると以下のような画面が表示される
図 79 「GCMS分析」操作画面
4)マススペクトルによる分子構造の解析 サンプル(この場合茶葉からの抽出物)には多くの物質が混じり合っていたがガス
クロマトグラフの分離カラムによりそれらの混合物が精度よく分離されるクロマトグラ
ムのピークはそれらサンプル中に含まれていた個々の物質を表しているクロマトグラム
のピークを選択することで分子構造解析したい物質を選んだことになる選択したクロマ
トグラムのピークの表している物質(ここではカフェイン)に対応するマススペクトルを選
択するマススペクトルは横軸が原子量で縦軸がその量を表しているのでマススペク
トルから分子構造を解析するために「定性処理」を行う シミラリティ検索結果が表示され分析により得られたスペクトルと類似のスペクトルを有
する物質の一覧が表示される上部に表示される物質ほどスペクトルが一致していること
を示す
接続状況が表示される
「トップへ」
をクリック
54
図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果
図 711 表示スペクトルのシミラリティ検索結果 10)図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果の印刷 「レポート(R)」をクリックし「検索結果(R)」をクリックすると検索結果が印刷される
GC-MS 分析で得られたマスス
ペクトル
データベース中
のマススペクト
ル
55
参考資料 生理活性物質の精製 カフェインの利尿作用のように生物活動に影響を与える物質を生理活性物質といいます
天然物には生理活性物質を多く含むものがあります一般に天然物は多くの成分を含ん
でおり特定の生理活性物質を分離抽出するには種々の分離技術が必要ですまた生
理活性物質には60以上の温度でその生理活性を失う(失活)ものや溶剤として広く用いられているクロロホルムなどの有機溶剤中で失活するものが多いそこでこれら生理活性
物質の分離精製技術の開発が望まれており30~60程度のマイルドな温度条件で操作できる二酸化炭素を機能性溶媒として利用する超臨界抽出も有効な分離技術として注目されて
いる超臨界二酸化炭素は気体と液体の中間の性質を持ち物質の分離に役立っています 臨界点付近の高密度気体は超臨界ガスまたは超臨界流体と呼ばれ臨界圧力前後でそ
の溶解能力が著しく変化することから工業的にも種々の分野で利用されています一例と
して超臨界二酸化炭素(SC-CO2)によるコーヒー豆からのカフェインの抽出プロセス(a)
ならびに超臨界二酸化炭素に対するカフェインの溶解度(b)を図に示します図(c)に示す
ように固体のカフェインがガスである超臨界二酸化炭素に溶解します
このように超臨界二酸化炭素を用いた技術はコーヒー豆からのカフェインの抽出プロ
ポリスからの生理活性物質の抽出に利用されています
図 超臨界二酸化炭素抽出を用いたコーヒー豆からのカフェインの抽出
56
付表 最小二乗法について 直線で近似する場合 f (x) = a0 + a1x (A1-1) 式(A1-1)のように近似させるとする測定値 yiとの残差を eiとすると式(A1-2)のようになる ei = yi - f (xi) = yi - ( a0 + a1xi ) (A1-2) ここで式(A1-2)の両辺を二乗してその i に関する総和をとりその値を S とすると次式となる
sumsum==
+minus==n
iii
n
ii xaayeS
1
210
1
2 )( (A1-3)
S を最小化するような a0a1を求める式(A1-3)を a0a1について偏微分すると次式とな
る
sum=
+minuspartpart
=partpart n
iii xaay
aaS
1
210
00)( sum
=
+minusminus=n
iii xaay
110 )(2 (A1-4)
同様にa1について編微分すると次式のようになる
sum=
+minusminus=partpart n
iiii xxaay
aS
110
1])([2 (A1-5)
Sが最小となる時は次式が同時に満たされる時である
00=
partpartaS
01=
partpartaS
(A1-6)
よって誤差が最小となる a0a1を求めるためには式(A1-6)を連立して解けばよい
sumsumsum===
+=n
ii
n
i
n
ii xaay
111
10 1 (A1-7)
sumsumsum===
+=n
ii
n
ii
n
iii xaxaxy
1
2
11
10 (A1-8)
式(A1-7)と式(A1-8)を a0a1を変数とみなし連立して解くと次式を得る
n組のデータ(xiyi)(i=12hellipn)に対して回帰直線 y= a0 + a1x を最小二乗法で求めて出力しデータ番号 iデータ yi直線で推定した値 )( ii bxay += および残差
iii yy minus=ε を出力するようなプログラムをつくりたい基礎式を導出せよ (ヒント残差の二乗の和が最小になるように係数 a0a1)を定めるのが最小二乗法
である)
57
sumsum
sumsumsumsum
==
====
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
n
ii
n
ii
xxn
xxyyxa
1
2
1
2
1111
2
0
)(
))(())(( (A1-9)
sumsum
sumsumsum
==
===
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
xxn
yxxyna
1
2
1
2
1111
)(
))(()( (A1-10)
よって式(A1-9)(A1-10)を用いれば最も誤差を小さくするような直線 y = a0 + a1x が求められる
y=a1x+a0 にて近似
誤差 ei
x
y
誤差が最小になる関数(直線 y=a1x+a0の場合)
図1 最小二乗による近似
誤差の和Sが最小
S
a0
a1
直線 y=a1x+a0 の近似
誤差の全体の和はS=Σei=Σyi-(a1xi+a0)
Sは変曲点にて最小値を示すすなわち(partSparta0)=0 (partSparta1)=0
図2 a0a1とSの関係
25
この Excel表示では最小二乗法を用いて決定した傾きαと切片βを用いて α=1ninfin=43865 β=1(ninfinK)=2654 得られた傾きおよび切片よりninfinおよび Kは次のように求まる
ninfin=1α=1D18=000228 molg-1 K =(1ninfin)β=αβ=D18C18=165
つまりセル D19にはninfinの値がセル C19にはKの値が表示されますこれらの値はラングミュア(Langmuir)の単分子吸着モデルで計算した理論線と実験と比較する場合に利用します実験結果に対して理論的な考察を行う例としてラングミュア(Langmuir)の単分子吸着モデルで理論線を計算し実験と比較するにはこの Excelファイルを利用して次のように計算しグラフに表示します セル F5~F30 には溶液中に残る酢酸濃度 Cb[molL]に対する活性炭に吸着された吸着量n[molg]の関係のグラフ「Graph1」の横軸の酢酸濃度 Cb[molL]の適当な値が既に入力してありますこれらのそれぞの酢酸濃度 Cb[molL]に対する吸着された酢酸の吸着量 n[molg]の理論値をラングミュア(Langmuir)式で計算しますラングミュア式は次式で与えられます
KCKCnn
+=
infin
1 (310)
ここでこの実験データを最も精度よく計算できるように決定した ninfinおよび K は上述のようにninfin=1α=1D18=000228 molg-1 K =(1ninfin)β=αβ=D18C18=165 でありこれらの値はセル D19にninfinの値がセル C19にKの値が表示されていますこの値を利用して「Graph1」に計算線を描くにはまずセル G5~G30 にセル F5~F30 のそれぞれの酢酸濃度 Cb[molL]に対する吸着された酢酸の吸着量 n[molg]の理論値をラングミュア式で計算しますそのためにはセル G5 にラングミュア式を次のように記述しますただしセル D19の ninfinの値セル C19の Kの値は常に同じセルから参照するので絶対参照($マークを付けて$D$19 $C$19と記述します)で記述します
Langmuir式をセル G5に記述するただし濃度はF5の値を相対参照しD19と C19は絶対参照($マークが必要)することを忘れないように
セルG5に記述すべき数式
=$D$19$C$19F5(1+$C$19F5)
26
G5記述後フィルハンドルを使用してG5の関数を G6~G30までコピーします Sheet1から Graph1 のタグをクリックしGraph1 に計算線が表示されたことを確認しましょうこれでラングミュア式によるデータの解析は終了です実験値と理論値を比較して現象
について考察してみて下さいラングミュア式を理論的に導く場合にある仮定をしている
のですがその仮定をしているラングミュア式が実験データを精度よく計算できていれば
その仮定が妥当なもとであったと考察できます 与えられたモデルデータでラングミュア式によるデータ解析ができれば他の理論(例え
ばフロインドリッヒFreundlich式や BET式レポートはどちらか一方でも可です) についてもExcel で計算してみましょうレポートには自分のデータについてここで行った内容と同様に計算しその結果を考察に記述して下さい 自分のデータについて同様の計算をするにはまずいままで計算を行った Excel ファ
イルを保存しますデータを自分の実験データに置き換える前に Excel ファイルをさらに別の名前で保存します与えられた Excel ファイルは初期状態では模擬のデータが入力されているので今回自分達の実験したデータを入力していきます入力するデータは予め計算
しておいた酢酸濃度 Cb[moll]と活性炭吸着量 n[molg]になります下の画面の丸で囲んだ部分にそれぞれ自分の実験データを入力していきます
今回はCbnの値を入力する必要はありませんExcelが自動的に計算を行って結果を表示するようになっています 次に酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着
量 n[molg]の関係および酢酸濃度Cb[molL]と Cbn[gL]の関係をグラフ化します今回は自動的にグラフが作成
されるようになっていますので操作は必
要ありません 39 Freundlichの等温吸着式による相関 今回の実験で得られた酢酸濃度 Cbと活性炭吸着量 nのデータを利用してFreundlichの等温吸着式の定数 abの値を求めFreundlichの等温吸着式の理論線をグラフに追加します ここでFreundlich式は次式で表されます
bbaCn1
=
このままでは定数 abの値を決定することが難しいので上式の両辺の対数をとり線形化しますすると次式となります
bCb
an ln1lnln +=
ここでln Cbと ln nの関係をグラフにプロットすれば傾き 1b切片 ln aの直線関係が得られますしたがって実験データである酢酸濃度 Cbと活性炭吸着量 nの値の対数をそれぞれ計算します配布した「ad_graxls」ファイルを開き「吸着データ」シートの任意の部分に以下のような表を作成します
27
次にln Cb[-]の列の最初のセルに以下の数式を入力します
=ln(B5) 上式中の「B5」は Cb の値の最初のセルの位置を指します各個人の位置によって変更してください
次にln n[-]の列の最初のセルに以下の数式を入力します
=ln(C5) 上式中の「C5」は nの値の最初のセルの位置を指します各個人の位置によって変更してください
ここでln Cb[-]ln n[-]の値に対しそれぞれオートフィルを行い計算させますすると以下のようなデータが完成します
計算した ln Cb[-]ln n[-]の値をグラフにプロットし最小二乗法による直線式を求めます
28
ここで以下のような直線の式が得られたとします
9135ln31690ln913531690 minus=there4minus= bCnxy
上式より切片は-5913傾きは 03169となるので以下の要領で定数 a1bを計算します ==there4minus= minus 91359135ln eaa 000270
316901=
b
a の値を Excel で計算させる場合は任意のセルに以下のような数式を入力することで求めることができます
=exp(-5913) これでFerundlich等温吸着式の定数 a1bの値が決定しましたこの値は後で使うのでノートなどにメモしておいてください 次に決定した Ferundlich 等温吸着式の定数 a1b の値を用いてFerundlich 等温吸着式のグラフを作成します先ほども示したように Ferundlich等温吸着式は次式で表されます
bbaCn1
=
従って定数 aと 1bの値はすでに決定しているので任意の Cbの値に対する nの値を数点求めればFerundlich等温吸着式で求めた理論線が得られます以下の操作で理論線を引くことができます Langmuir 等温吸着式による相関のときと同様にExcel の「吸着データ」のシート上の任意の場所に以下のような表を作成します
次に Ferundlich等温吸着式に従いnの値を計算します
bbaCn1
=
式中の定数 a1bは先ほど計算した値を用いますしたがって式は次のようになります
31690002700 bCn times=
この式を Excelのセル内に記入すれば計算ができます次の
29
ように記入します
=00027G5^03169 ここで式中の「G5」は Cbの値が 0のセルを指しています各個人の位置によって変えてください 次に式を記入したセルを Cbの値が 05のところまでオートフィルを行いますそうするとすべての Cbに対して nの値が計算されます
これで Freundlich等温吸着式のデータが完成しましたので次に「Graph1」酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着量 n[molg]の関係のグラフにこのデータを追加し理論線を引きます理論線の引き方は Langmuirによる相関のときと同様の操作を行ってください グラフの書式等を変更し整理すると以下のようなグラフが出来上がります
310 吸着等温線とは 固体の吸着剤を溶液と接触させる時一定量の吸着剤によって吸着される溶質の量は温度一定ならば溶質の濃度の関数になる一定温度での吸着量を温度に対してプロットした時に
得られる曲線を吸着等温線というこの吸着等温線を比較的よく表す経験式として次の
Freundlich式がある
n=aC1b (1) ここで n は吸着剤の質量あたりの吸着量C は吸着平衡濃度a と b は実験から決定されるパラメータであるがその物理的意味は多少希薄である これに対し理論的な意味を持つものに次のラングニュア(Langmuir)の吸着等温式がある
30
KCKCnn
+=
infin
1 (2)
ただしninfinは飽和吸着量Kは吸着平衡定数であるこの式は
1)吸着分子が固体表面で単分子以上の厚い層を作ることはない 2)吸着分子同士の間の相互作用はない
という二つの仮定にもとに導かれたものである 結果の整理および報告 Freundlich吸着等温式Langmuir吸着等温式の各々のパラメータの最適値を求めよまた活性炭の吸着特性および表面積について考察し化学工学における吸着操作の重要性につい
ても検討せよ 311 吸着等温式 (a) ヘンリー(Henry)型吸着等温式 液相の濃度あるいは気相の圧力が小さい場合吸着分子間の距離が十分に長いため吸着
分子同士の相互作用が無視でき固体表面と吸着分子のみの相互作用で吸着量を決定できる
とき次式のように表される
n=KC (3)
ここでKは比例定数である図 3-1の(a)に示すように濃度 Cと吸着量 nは比例関係があり一般に吸着量が小さい範囲で成立する気体の場合は溶液濃度 Cの代わりに気相圧力 pを用いればよい
濃度(分圧)
濃度(分圧)
濃度(分圧)
濃度(分圧)
吸着量
吸着量
吸着量
吸着量
(a)ヘンリー型 (b)ラングミュア型
(d)BET型(c)フロインドリッヒ型
0
0
0
0
図 3-1 吸着等温式
31
(b)ラングミュア(Langmuir)型吸着等温式 ラングミュアは図 3-2 に示すように固体表面に同等な吸着力を示す吸着サイトがあり
表面に 1分子層だけ吸着する(単分子層吸着)と仮定して平衡状態における吸着量と溶質濃度(気相分圧)のと関係を導いた全吸着点のうち吸着分子に覆われている吸着点の割合
をθ[-]とすると分子の脱着速度 rrsquo[mols-1]はθに比例する比例定数を a[mols-1]とすると次式のように表される
吸着剤
吸着分子
吸着サイト
図 3-2 固体表面上の吸着サイト(Langmuir式の導出) r=aθ (6) また気相からの吸着速度 r[mols-1]は空いている吸着点の割合(1-θ)[-]と溶液濃度 C[molm-3]に比例する rrsquo= b(1-θ)C (7) このときの比例定数を b[m3s-1]とするまた平衡状態では両速度は見かけ上等しいため以下の式が成り立つ aθ=b(1-θ)C (8) これを変形する
CbaCbsdot+
sdot=θ (9)
ここで飽和吸着量を ninfin[molkg-1] ba を K[m3mol-1](Kは吸着平衡定数)とおくと infin=nnθ
となるので次式が得られる
32
KCKCnn
+=
infin
1 (10)
これをラングミュア式と呼ぶ
(c)フロインドリッヒ(Freundlich)型吸着等温式 フロインドリッヒの吸着等温線は図 3-1(c)のように示される
n=aC1b (11) nは吸着量[molkg-1]で aと bはともに吸着定数[-]である (d)BET(Brunauer-Emmett-Teller) 型吸着等温式
BET型の吸着等温線は図 3-1(d)に示されるラングミュア式は表面に 1分子層だけ吸着すると仮定したものであるがBET式は無限分子層まで吸着できる式である図 3-3に示すように吸着した分子がそれぞれ次の層の吸着サイトとなり分子は積み重なって多分子
層に無限層まで吸着できるものとし各層への吸着にラングミュア式を適用すれば次式の
ように表せる
( ) ( )CKCCCKqq
minus+sdotminussdotsdot
=infin
11 (12)
この式は多孔質固体の細孔表面積を窒素ガスの吸着によって測定する際に利用される重要な式
である
表面の吸着サイト
分子上の吸着サイト
図 3-3 多分層吸着モデル
Langmuir式のパラメータ決定法 水溶液からの酢酸の活性炭に対する吸着平衡データ(吸着平衡温度 12)は表 3-1のよ
うに与えられる実験データよりラングミュア式のパラメータ(K吸着平衡定数ninfin飽和吸着量)を最小二乗法で決定せよさらにラングミュア式より決定した ninfinKの値を用いて吸着等温線を計算し計算線として図に示し実験点と比較せよ
33
表 3-1 n C Cnの関係
ラングミュア式は式(310)で与えられるこの式を変形すると次式となる
CKnCK
n infinsdot+
=11
(313)
両辺に Cをかけると以下の式が導出される
CCnKnCKn
CCKn
Cβ+α+
==
+= infininfininfin
11)1( (314)
ただしα=1ninfinβ=1(ninfinK)とする式(314)より Cn と C の関係のグラフプロットは傾きα=1ninfin切片β=1(ninfinK)の直線関係を与えることを示している表 3-1の値を用いて計算した Cnと Cの関係を表 3-1および図 3-4に示す 最小二乗法を用いて傾きαと切片βを決定した α=1ninfin=43865 β=1(ninfinK)=2654 得られた傾きおよび切片よりninfinおよび Kは次のように求まる
ninfin=1α=1D18=000228 molg-1 K =(1ninfin)β=αβ=D18C18=165
0
50
100
150
200
0 200 400 600
C [ molm-3 ]
Cn [ kgm-3 ]
傾き = 1 ninfin
1 ninfinK
切片0
05
1
15
2
25
3
0 100 200 300 400 500
液相の溶質濃度 C [ molm-3 ]
吸着量 n [ molkg-1]
液相と溶質濃度 C [ molm-3 ]
吸着量
n[ m
olk
g-1]
実験点
Langmuir式パラメータninfin 00033 [ molg-1 ]K 00086 [ m3 mol -1 ]
図 3-4 ラングミュア定数の決定 図 3-5 12における酢酸濃度 Cと
吸着量 nの関係
C [molm-3] n [molkg-1] Cn [kgm-3] 460 225 109 529 214
268 199 149 105 060
172 128 732 504 357
34
Freundlich式のパラメータ決定法 酢酸水溶液中における酢酸の活性炭に対する吸着実験を行ったところ以下のような実験デー
タを得たただしCbはバルク相における酢酸濃度n は活性炭に対する酢酸の吸着量を示す
Cb[molL] n[molg] log10Cb log10n 04621 000205 02410 000175 01139 000139 00519 000105 00243 000081
実験データを利用して次式で与えられる Freundlichの等温吸着式の定数 abの値を求めたい
bbaCn1
= (1)
このままでは定数 abの値を決定することが難しいので上式の両辺の対数をとる
bbb
bb
Cb
aCa
aCn
ln1lnlnln
)ln(ln1
1
+=+=
=
(2)
ここで横軸に ln Cb縦軸に ln nの関係をグラフにプロットするすなわち x=ln Cby=ln nと考える
bCb
an ln1lnln += (3)
ここで直線式 y=a0+a1xと比較するすなわち
)(1)(ln
1
00
傾き
切片
ba
eaaa a
=
=rarr= (4)
a0および a1は最小二乗法により数値で求められる与えられたデータでは a1= a0= なので a= b= となる この値を n=acb
1bに代入してcb=0~05の範囲で nの値を計算する
35
BET式のパラメータ決定法 BET式は次式で与えられる
)1)(1( KCCCKCnn
+minusminus=
infin
(17)
以下のように BET式の変形を行う
)1()1(
KCCKCnCn+minus
=minusinfin
(18)
(18)式の逆数をとると
KCnCK
KCnKCC
Cn infininfin
minus+=
+minus=
minus)1(1)1(
)1(1
(19)
(19)式の両辺に Cをかえると
KCnCKC
CnC
infin
minus+=
minus))1(1(
)1( (20)
(20)式を変形すると次式が得られる
CKn
KKnCn
Cinfininfin
minus+=
minus11
)1( (21)
C と)-(1 Cn
Cのプロットは傾き
KnKinfin
minus1切片
Kninfin
1の直線関係を与えることを示している
これをグラフにプロットし最小二乗法に傾きおよび切片を求める
36
312 活性炭の比表面積の決定 酢酸分子の構造を以下に示す
Hc-Cb-Ca
Hd
Hb Oa
Ob-Ha
1219deg
Ca Oa
Ob
図 36 酢酸の構造
酢酸の 1分子の吸着面積srsquo [m2]を図 3-6に示すこのとき文献より
Caと Oaの結合距離 1321Å Caと Obの結合距離 1206Å OaCaObの角度 1219deg Cの原子半径 077Å Oの原子半径 062Å
したがって吸着面積 Slsquoは次のようになる
( ) ( ) 2088 10376109931036321 minusminusminus times=timestimestimestimes=s m2
ここで活性炭の比表面積 S[m2g]は次式で示される 10026 23 snS timestimestimes= infin
S活性炭の比表面積 [m2g] ninfin飽和吸着量 [molg] srsquo酢酸 1分子の吸着面積 [m2] 602times1023アボガドロ数 [個mol] したがって活性炭の比表面積 S[m2g]は
003350=infinn molg 2010376 minustimes=s m2 より
51281037610026003350 2023 =timestimestimestimes= minusS m2g
37
4 粘度密度測定 41 はじめに 大量生産を目的とした工業的化学プロセスはほとんど流れ系(流通系)であるそれらの系において操作対象となる各物質の粘度は装置を設計操作する場合きわめて重要
な物性値である 本実験では低分子溶液および高分子溶液の粘度測定を通じて液体の粘度について考察するさらに演習問題を通じて気体液体高分子溶液などの化学プロセスで対象となる物
質の輸送物性(粘度拡散係数)の重要性を認識されたい 42 低分子溶液の粘度 [目的] 種々の濃度のエタノール水溶液の粘度を測定しその溶液の粘度について考察する [概要] 25におけるエチルアルコール濃度 02040506080100 wt の水溶液について流下時間を測定しこの結果より相対粘度絶対粘度運動粘度を求めグラフにするま
た水の密度水-エチルアルコール溶液の密度についてはピクノメーターを用いて決
定する報告書には相対粘度絶対粘度運動粘度 vsエチルアルコール濃度の関係をそれぞれグラフにして提出する
[計算方法] 相対粘度絶対粘度運動粘度の定義は次のようになる
相対粘度 ww
w tdtd
ηη = (41)
η 混合溶液の粘度 [gcms] ηw水の粘度(8007times10-3 gcms) [gcms](25における粘度) d エチルアルコール水溶液の密度 [gcm3] dw水の密度(099704gcm3) [gcm3](25における密度) t エチルアルコール水溶液の流下時間 [s] tw水の流下時間 [s] 下付添字 W 水
絶対粘度 www td
tdη
η= (42)
運動粘度 ν=ηd [cm2s] (43)
38
[実験方法] 1) 粘度計を洗浄し粘度計内 に二連球で空気を送り込み
乾燥させる乾燥しにくい 場合はアセトンを滴下し た後再度二連球で空気 を送り込み乾燥させる 2)ピペットで一定体積(10mℓ) の純水を取り広い口 f から 粘度計に水を入れる 3)粘度計を恒温槽(25)に つけ約 10 分静置する 4)安全ピペッターを口 a に 取り付け液面が b 上部に 到達するまで吸い上げる 5)安全ピペッターを外すと 液面が降下しだす液面が bd 間を通過する時間をスト ップウォッチで測定する
6)純水での測定を 3 回繰り返す 7)純水を粘度計から取り除くその後粘度計内に二連球を用いて空気を送り込み乾燥させる 8)粘度計乾燥後複数の濃度に調整済みのエチルアルコール水溶液(10mℓ)を粘度計にいれ4)~6)の作業を繰り返し行う(3 回)なお濃度の異なるエチルアルコール水溶液を粘度計内に導入する場合には7)と同様に二連球を用いて粘度計内に空気を送り込み乾燥させる
表 4-1 エチルアルコール水溶液の濃度密度相対粘度の関係 エチルアルコール濃度
[wt] 密度 d[gcm3] 相対粘度
η ηw[-] 0
20 40 50 60 80
100
安全ピペッター接続
図 4-1 粘度計
液面の bd間の通過時
間を測定
f
39
43 密度測定 [目的] 本実験では水とエタノールの種々の組成の混合液体について密度を測定し分子間相互
作用について考察する [実験方法] 1)ピクノメーターの容積測定
図 4-2のピクノメーターの空の重量 wg を秤量する
ピクノメーターの蓋を取り外し
ピクノメーターを水で満たす
設定温度を 25として恒温槽 の電源を入れ恒温槽内の温 度が一定になるまで待つな お水温は恒温槽中の水銀温 度計から読む
恒温槽中に水を満たしたピク
ノメーターを入れる
約 10分間静置する
ピクノメーターに蓋をするこのときピクノメーターの容量
よりも余分の水は蓋の上部より排出される
ピクノメーターの外側を乾いた布で拭い秤量する(その重量を
wwg とする)
恒温槽の温度(25)における水の密度 dwgcm3(=099704gcm3)
より次式を用いてピクノメーターの容積を求める
w
w
dww
Vminus
= (44)
図 4-2 ピクノメーター
蓋
40
表 4-2 エチルアルコール水溶液の濃度と密度の測定結果(25) エチルアルコ
ール濃度[wt]
wrsquo[g] ww[g] V[cm3] w[g]
d[gcm3]
0 20 40 50 60 80
100
099704
エチルアルコール濃度[wt] 空のピクノメーターの重量 wrsquo[g] 水を入れたときのピクノメーターの重量 ww[g] ピクノメーターの体積 V[cm3] エタノール水溶液の入れたときのピクノメータの重さ w[g] エタノール水溶液の密度 d[gcm3]
容積 Vを求めたピクノメーターに混合溶液(調整済み)を入れてその重量 wgを秤量し次式で混合溶液の密度を求める
Vwwd minus
= (45)
エタノール濃度と密度 d の関係をグラフにプロットする
41
44 高分子溶液の粘度 [目的] 高分子溶液の粘度測定から分子量の粘度に与える影響について考察する [概要 ] オストワルド粘度計を用い種々の濃度のポリビニルアルコール(PVA ((-CH2CHOH-)n))水溶液の粘度を測定し粘度データよりポリビニルアルコールの分
子量を求める まず 05g100cc の濃度のポリビニルアルコール水溶液を調製する次にこれを原液
とし23 12 13 15の濃度の溶液を調製するこれらの溶液についてオストワルド粘度計を用いてそれぞれ流下時間を測定し相対粘度絶対粘度運動粘度を求め実験デ
ータより極限粘度[η]を求めるまた報告書には相対粘度絶対粘度運動粘度C
)ln( wηη
Cw
w-η
ηη vsポリビニルアルコール濃度の関係をそれぞれグラフにして提出する
[計算方法] エチルアルコール水溶液の粘度測定と同様の手法を用いて粘度の計算を行うなおポリビニルアルコール水溶液の密度はピクノメーターを用いて測定すること 表 4-3 ポリビニルアルコール水溶液の濃度密度相対粘度の関係 ポリビニルアルコール
濃度 [g100cc] 密度 d[gcm3] 相対粘度
η ηw[-] 05times(15) 05times(13) 05times(12) 05times(23)
05
42
[分子量の計算方法] 実験を行った結果以下のような粘度データを得られるとする実験データより極限粘度
を求めポリビニルアルコール(PVA)の分子量Mを決定せよ
PVA 水溶液濃度
C[g100cc]
相対粘度
ηηw[-]
絶対粘度
η[gcms]Cw
w-η
ηη
C)ln( wηη
05times(15) 1031 0008255 031 0305
05times(13) 039 0378
05times(12) 03 0289
05times(23) 0375 0353
05 0364 0334
ηw=8007times10-3 gcms 線状高分子の極限粘度[η]と分子量Mの関係は次式で与えられる [η]=KMα (46) ただしポリビニルアルコールの場合K=666times10-4α=064であるなお極限粘度[η]は次式で定義される
CC w
w
0
-][ limη
ηηη
rarr
= (47)
または
CC
)ln(][ w
0lim
ηηη
rarr
= (48)
よって濃度 CとCw
w-η
ηηまたは濃度 Cと
C)ln( wηη の関係をグラフ化し最小二乗法によ
り切片の値を求めると極限粘度[η]が決定される
Cw
w-η
ηηと C の関係より最小二乗法を用いて切片の値を決定すると(図 43 参照)切片=
03242傾き=00874となるよって極限粘度は以下のようになる[η]=03242同様
にC
)ln( wηη とcの関係より最小二乗法を用いて切片の値を決定する
(図 44参照)と切片=03249傾き=00256となり極限粘度は以下のようになる[η]=03249
Cw
w-η
ηηと Cの関係より決定した[η]=03242を用いてポリビニルアルコール(PVA)の
分子量 Mを計算する(46)式より以下のように PVAの分子量 Mを計算することができるM=([η]K)1α
=(03242(666times10-4))(1064)
=15811
43
y = 00874x + 03242
0
02
04
06
08
1
0 01 02 03 04 05 06 07
c[g100cc]
(η-ηw)(ηwc)
cw
w
η
ηηminus
極限粘度[η]
図 43 298Kにおける PVA濃度 CとCw
w-η
ηηの関係
y = 00256x + 03249
0
02
04
06
08
1
0 01 02 03 04 05 06 07
c[g100cc]
(ln(ηη
w))c
c)ln( wηη
極限粘度[η]
図 44 298Kにおける PVA濃度 CとC
)ln( wηη の関係
44
5 植物からの DNAの抽出 51 はじめに 分子レベルでの遺伝子の構造解明や遺伝子の発現に関する研究は近年急速に発展している
これら生命現象のしくみを分子レベルで解明しようという分子生物学の分野ではさまざま
な遺伝子の解析や応用方法が開発され我々の生活に身近なものになりつつある 本実験では初歩的な分子生物学に関する実験として植物(タマネギ)からの DNA の
抽出を行い抽出した遺伝子の電気泳動法による分離実験を試みる 52 試薬および器具 試薬 タマネギ(細胞中から遺伝子の抽出を行う) 台所用洗剤(洗剤中に含まれる界面活性剤には植物の細胞膜およびタンパク質を破壊す
る働きがある) 塩化ナトリウム(DNAは塩化ナトリウム水溶液に溶解し易い性質がある) エタノール(予め冷やしておくDNAはエタノールにほとんど溶解しない) 制限酵素(DNAを一定の部位で切断する働きを働きがある) TE緩衝液(pH緩衝剤が入った溶液) 器具 ビーカーミキサーフィルターメスシリンダー駒込ピペットガラス棒 マイクロピペット電気泳動装置ポラロイドカメラ 53 実験方法 1)タマネギは 1回の実験で半個のうち内側の半分程度を使用するタマネギ水 30ml台所用洗剤数滴をミキサー用ガラス容器に入れ40~60秒程度(固体状のタマネギがなくなる頃が目安)ミキサーにて混合する
2) 1)で作成した混合溶液をビーカーに移し約5g程度の塩化ナトリウムを加えガラス棒で静かに攪拌する粘性の大きな溶液が得られる
3) 2)で作成した溶液をフィルターを用いて濾過し濾液を回収する 4) 濾液の約2倍程度の量の冷エタノールをビーカーの壁伝いに静かに注ぐ 5) ビーカーを揺するとエタノール層に白くふわふわしたものが浮いてくるこれが DNAであるガラス棒で DNAを巻き取りシャーレ上にて DNAを回収する顕微鏡を用いて回収した DNAの状態を観察する
6)マイクロチューブ(容量 15ml)中に用意した 70エタノールを 8 分目程度まで注ぐ5)にて回収された DNAをマイクロピペットを用いて70エタノールの入ったマイクロチューブ中に移す軽く混ぜることによりDNA から不要な物質を洗い流す遠心分離してDNA をマイクロチューブの底に沈めた後溶液を捨てて DNA を乾かす乾いたらTE緩衝溶液を 1ml加えて放置するDNAの溶液が得られる
54 電気泳動装置による DNAの観察
本実験は職員と一緒に行うこと 実験を行う人はビニール手袋をすること 1) 抽出した DNAを電気泳動装置で観察するマイクロピペットを用いて以下のように調製した DNAの混合溶液を調製する(いずれの溶液も調製済)
45
2) マイクロピペットを用いてアガロースゲルの試料を流し込む穴(ウェル)に1)にて調製した溶液 Aおよび Bを注ぎ込む注入量は20μℓとする電気泳動装置のスイッチを入れて100Vの電流を流しアガロースゲル内にて DNAを電気泳動させる
3) 試料に予め加えられておいた青色の色素が 7 分目程度まで進んだら電気泳動を中止する(約 30分程度)
4) (ここでの作業は職員が行う) アガロースゲルを取り出し染色液に浸す染色後ゲルを取り出しポラロイドカメラで
DNAの泳動状態を撮影する
+ -
アガロースゲル
試料を流し込む穴(ウェル)
図 51 電気泳動装置
6 5 4 3 2 1
図 52 DNAの電気泳動写真の一例
55 電気泳動装置の原理 電気泳動装置の原理図を以下に示すアガロースゲル(寒天から不純物を除いたもの)中
に DNAをセットし電流を流すとDNAは電流の向きとは逆にマイナスからプラス方向
調製済 溶液 A(制限酵素なし) 水 11μℓ 10timesH Buffer 2microℓ 植物 DNA 5μℓ
調製済 溶液 B(制限酵素 Eco RI入り) 水 11μℓ 10timesH Buffer 2microℓ 植物 DNA 5μℓ 制限酵素 2μℓ
1 DNA(タマネギ)+制限酵素 2 DNA(タマネギ)+制限酵素 3 DNA(タマネギ) 4 λ-DNA(大腸菌)+制限酵素 5 λ-DNA(大腸菌) 6 サイズマーカー
500bp
46
に動く(このことを電気泳動という)これはDNA のリン酸部分が負に帯電しているためでありまたDNAはその長さにより泳動距離が異なる(短い遺伝子ほど長く泳動する)電気泳動ではこの性質を利用してDNAを大きさごとに分離することができる
塩基対数によってDNAを分離
EtBr (蛍光試薬)DNAの二本鎖内に入り込む
発光
UVλ=302nm
励起
分離後のアガロースゲルをエチジウムブロマイド(EtBr)溶液に浸す
DNAを含んだ溶液
アガロースゲル
リン酸部分が負に帯電
塩基 (ATGC)-
+
カメラで撮影
電圧
DNA構成成分(dNTPs)
バンドが明る
DNA量が
バンド(DNAの存在)
図 53 電気泳動の原理
56 制限酵素とは DNA は4 種類のヌクレオチド(GATC)が不規則につながってできている制限酵素はDNAの特定のヌクレオチドが並んでいる部分を切断する制限酵素には様々な種類がありEco RI(エコアールワン)と呼ばれる酵素は「GAATTC」といった並びの部分だけを切断することができる
GAATTC
CTTAAG
制限酵素
Eco RI
AAGCTT
TTCGAA
制限酵素
Hin dIII
図 54 制限酵素による DNAの切断
レポートについて 1 実験方法および実験結果の整理方法については指針書を参考にすること 2 実験結果については電気泳動の結果について考察すること(制限酵素の影響などにつ
いてまとめてください)
47
6 染色実験
61 はじめに
現在私達の身の周りでは様々な染料が使われている例えばT シャツやジーンズな
どの衣服は橙黄赤青など様々な色に染められている他にも私達が気付かないと
ころで多くの染色された製品を使用しているそこで本実験では高校の化学で学んだ
アゾ染料を合成してみるアゾ染料はアニリンを原料として作られているアニリンはベ
ンゼン環にアミノ基(-NH2)がついたものであるアニリンは無色の液体で水に溶けにく
くアンモニアより弱い塩基性を示すまたさらし粉(CaClO(ClO)H2O)水溶液を加えると
赤紫色を呈するこの呈色反応はアニリン特有のものであるので検出反応に用いられる
このアニリンを出発物質としてアゾ染料を合成してみる
62 試薬および使用器具
【試薬】 ①05moll 水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液
②2-ナフトール ③フェノール ④6moll 塩酸
⑤亜硝酸ナトリウム ⑥アニリン ⑦氷
【器具類】 ①電子天秤 ②50mℓビーカー ③100mℓビーカー
④ガラス棒 ⑤布(ガーゼなど) ⑥ピンセット
⑦ポリ手袋 ⑧ドライヤー ⑨シャーレ
10駒込ピペット(10ml ガラス製)
11駒込ピペット(1ml プラスチック製)
63 実験方法
1) 50mℓビーカーの中に 05molℓ水酸化ナトリウム水溶液 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回
NaOH 水溶液を分取するほぼ 20 mℓ分取できれば可)と 2-ナフトールを約 01g 入れ
よくかき混ぜる調製した溶液の中に布をつけその布はガラス棒でしぼってから(布
をガラス棒ですくいあげればよい)シャーレに広げる温度の異なる条件下(常温およ
び低温)で染料の合成実験を行うため布は最低 2枚調製した溶液と接触させそれ
ぞれ別々のシャーレ(低温用および常温用)に広げる
2) 新しいビーカーに水を約 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回分取)と 6molℓ塩酸約 4mℓ(10m
ℓ駒込ピペットで目分量で可)さらにアニリン約 1mℓ(プラスチック製 1 mℓ駒込ピペッ
ト)を入れてよくかき混ぜる染料の合成を常温および低温下で行うためこの溶液を
2つ調整する
低温下で反応させる溶液は恒温槽で 10~15 分ほどよく冷やした後亜硝酸ナトリウ
ム 05g を加えてよくかき混ぜる
常温下で反応させる溶液には冷却作業を行わずに亜硝酸ナトリウム 05g を加えて
よくかき混ぜる
3) 2)でつくった水溶液をシャーレに広げた布に注ぎ生成される染料を布によく染み
込ませ5分程放置する
4) 色の付いた布を取り出してポリ手袋をした手できれいに水洗いをし乾燥させる
48
5) 色差計を用いて乾燥した布の Lab(L明度aおよび b色度)を測定する
2)で作った溶液は5以下では無色の溶液ですが5以上になると淡い黄色になりま
す
【解説】
アゾ染料はアゾ基(-N=N-)を持っていてこのアゾ基によって鮮やかな橙色を呈色し
ます今回合成したアゾ染料は図の 1-フェニルアゾ-2-ナフトールです意外かもしれ
ませんが指示薬として使われているフェノールフタレインもアゾ化合物ですフェノール
フタレインは pH の変化によって色が出てきす染料の中でも最初は無色のものもありますが
温度を変化させたり酸性やアルカリ性にすると色が出てきます
ベンゼン ニトロベンゼン
N2Cl
ニトロ化 濃硫酸(濃硝酸)
還元反応 濃塩酸
(Sn又は Fe)
アニリン塩酸塩
遊離反応 NaOH
アニリン塩酸塩に強塩基を反応させる
と弱塩基であるアニリンが遊離する
氷冷+亜硝酸ナトリウム アニリン
塩酸
ジアゾ化
塩化ベンゼンジアゾニウム
塩化ベンゼンジアゾニウム
は熱によって窒素とフェノー
ルに分解される
カップリング
C10H7ONa (ナトリウム 2-ナフトキシド)
O
N =
1-フェニルアゾ 2-ナフトール
NH3Cl NH2
49
7 ガスクロマトグラフ質量分析計による茶葉中のカフェインの分析 71 はじめに ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)は極めて低い濃度の化学物質の同定や未知物質の構造決定に極めて強力な分析機器の一つであるGCMSを用いるとサンプルの中に含まれているある成分の分子構造(カフェインの分子構造を図 71に示す)やその量が分かりますもちろん分析機器ですので測定できる物質対象となる系や測定条件にはある
程度の制約があります混合物質を分離するガスクロマトグラフ(Gas ChromatographGC)と分離された成分(物質)を分析(構造決定と濃度測定)する質量分析計(Mass SpectrometerMS)を組み合わせた装置であるこの装置は有機化学生化学環境化学などの多くの分野で非常に多用されている例えば極めて低い濃度でも生体へ強い影響が懸念されるダイ
オキシン類などの土壌や河川の水中での含有率の決定や食品や医薬品中の微量成分の決定
にも利用されている 一方日本人に長い間親しまれてきた緑茶が近年産業界や医学
界で注目されている茶葉にはカフェイン(分子構造図 71)カテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドなどの有用成分が多く含まれておりその効能が注目されている 本実験では茶葉中に含まれるカフェインに対してGCMSを用いて分析する茶葉中には種々の物質が含まれておりGCMS分析を容易にするため前処理として超臨界二酸化炭素抽出(4015MPa程度の高圧力の二酸化炭素を溶剤として利用)により茶葉からカフェインの抽出を行いそのサンプルを GCMSにて分析する
図 71 カフェインの分子構造 図 72 物質の分析 個々の物質や装置についてはインターネットにより下記のWebサイトのフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』などにより調べるとよいカフェイン(caffeine)はアルカロイドの一種プリン環を持つプリンアルカロイドの一種でコーヒー類に含まれることか
らこの名がある化学名は137-トリメチルキサンチン(C8H10N4O2) コーヒーコーラ緑茶紅茶ガラナココアなどに含まれる(量は緑茶が一番多い)結晶は一水和物(C8H10N4O2bullH2O)もしくは無水物(無水カフェインC8H10N4O2)として得られ
る白色の針状または六角柱状結晶で匂いはなく味は苦い融点は 238昇華性がある出典フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』httpwwwwikipediaorg 装置「GCMS」httpwwwanshimadzucojpproductsgcmsqp2010htm (島津) 「超臨界抽出装置」httpwwwkagakucomjasco39-49html (日本分光)
50
レポート課題 1茶葉中に含まれるカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドの中から3つの物質を選びその物質について調べた結果を A4 レポート用紙2枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
2GCMS についてA4 レポート用紙1枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
3与えられたサンプルは茶葉1gから抽出されたのである実験結果よりもとの茶葉
1g中に含まれるカフェインの量を推算し計算式とあわせて示すこと 72 原理および装置 実験で使用する島津製の GCMS装置の全体図を図 73に原理の概略を図 74に示す
1
23
4
5
67 8
9
10
キャリアーガス
試料物質
1ボンベ(He)2圧力計3マイクロシリンジ4サンプラー5試料導入部6分離カラム
7セパレーター8イオン化室9磁石10電子増倍管11記録計
11
図 74 ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)の概略図
サンプルフォルダー
51
GCMS 装置は分離部である図中の 1~6 のガスクロマトグラフ(GC)と7~11 の検出部である質量分析計(MS)から構成される 3のマイクロシリンジを用いて試料を GCMSに導入する導入された試料は5試料導入部でガス化され6分離カラムに導入される分離カラムには吸着剤が充填されおり混合物の試料を導入した場合各物質と吸着剤との
親和性の違いにより各物質の分離カラムから排出されるタイミングは異なる分離カラム
を排出された試料は8イオン化室でイオン化され10電子倍増管にて検出される アセトンに溶解したカフェインの GCMSによる分析結果の一例を以下に示す図 75にク
ロマトグラム図 76にカフェインのピークのマススペクトルを示す
図 75 GCMSにより得られたクロマトグラム
横軸がリテンションタイムで縦軸がピーク強度を表す
図 76 カフェインのマススペクトルとカフェイン(分子量MW=194)の構造
(図 75中のリテンションタイム 126min付近のピークに起因するマススペクトル) 茶葉中にはカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイド以外にも繊維であるセルロースなど多くの物質が含まれているため茶葉そのものを
そのままサンプルとしてGCMSで分析することは困難であるセルロースなどの分子量の大きな物質はカラムに詰まってしまい分析できないそこで今回は超臨界二酸化炭素
による抽出により主にカフェインを他の物質と分離抽出した通常よく利用されるアセ
トン抽出(アセトンに茶葉を浸し特定の成分を抽出する)ではカフェイン以外にも多く
の物質が抽出されるため図 75 のような単独のピークを得ることは難しく複数のピークがクロマトグラムに見られるこのサンプル(この場合茶葉からの抽出物)にはカフェ
イン以外の不純物は少なかったがガスクロマトグラフの分離カラムによりさらにそれ
らの混合物が精度よく分離されるクロマトグラムのピークはそれらサンプル中に含まれ
ていた個々の物質を表しているクロマトグラムのピークを選択することで分子構造解析
したい物質を選んだことになる選択したクロマトグラムのピークの表している物質(ここ
ではカフェイン)に対応するマススペクトルが図 76 に表示されているマススペクトル
52
で横軸がその成分(ここではカフェイン)分子を構成している原子の原子量で縦軸がそ
の量を表しているのでマススペクトルから分子構造を解析するためにコンピュータ内
に蓄えられた物質ごとのマススペクトルデータと今回測定したマススペクトル(分子内に含
まれている各原子の数)を比較することで測定したサンプル中のクロマトピークを選択し
た分子がどのような原子をどれだけ含んだ分子であったかがわかりそれからその物質
がどのような分子構造の物質である可能性が高いかをコンピュータが検索し結果を示す 73 実験サンプルの設置と GCMS装置の操作方法 実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS装置のサンプルフォルダ
ー(図 73)にセットするこのサンプルは茶葉 1gを 50ccの高圧セルにて超臨界二酸化炭素を利用して4015MPa2時間接触の条件で抽出した固体を10gのアセトンに溶かしたものである またコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に装置および装置制
御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 本実験で使用する GCMS の操作は全てコンピュータのモニター上で GCMS の解析プログラムソフトを使用することで行うコンピュータの操作方法を以下に示す なおコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS 装置のサンプルフォルダー(図 73)にセットするまた装置および装置制御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 1)パソコンのデスクトップ上のアイコン「GCMS 分析」をクリックすると以下のようにGCMS制御プログラムを起動するその後「OK」ボタンをクリックする
図 77 GCMD分析用ソフトウェア「GCMS分析」の起動
まず「GC-MS分析」をクリック
「OK」ボタンをクリック
53
2)制御プログラムが起動されパソコンと GCMSの接続が開始される
図 78 「GCMS分析」の接続確認画面 3)GCMSとパソコンの接続が完了すると以下のような画面が表示される
図 79 「GCMS分析」操作画面
4)マススペクトルによる分子構造の解析 サンプル(この場合茶葉からの抽出物)には多くの物質が混じり合っていたがガス
クロマトグラフの分離カラムによりそれらの混合物が精度よく分離されるクロマトグラ
ムのピークはそれらサンプル中に含まれていた個々の物質を表しているクロマトグラム
のピークを選択することで分子構造解析したい物質を選んだことになる選択したクロマ
トグラムのピークの表している物質(ここではカフェイン)に対応するマススペクトルを選
択するマススペクトルは横軸が原子量で縦軸がその量を表しているのでマススペク
トルから分子構造を解析するために「定性処理」を行う シミラリティ検索結果が表示され分析により得られたスペクトルと類似のスペクトルを有
する物質の一覧が表示される上部に表示される物質ほどスペクトルが一致していること
を示す
接続状況が表示される
「トップへ」
をクリック
54
図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果
図 711 表示スペクトルのシミラリティ検索結果 10)図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果の印刷 「レポート(R)」をクリックし「検索結果(R)」をクリックすると検索結果が印刷される
GC-MS 分析で得られたマスス
ペクトル
データベース中
のマススペクト
ル
55
参考資料 生理活性物質の精製 カフェインの利尿作用のように生物活動に影響を与える物質を生理活性物質といいます
天然物には生理活性物質を多く含むものがあります一般に天然物は多くの成分を含ん
でおり特定の生理活性物質を分離抽出するには種々の分離技術が必要ですまた生
理活性物質には60以上の温度でその生理活性を失う(失活)ものや溶剤として広く用いられているクロロホルムなどの有機溶剤中で失活するものが多いそこでこれら生理活性
物質の分離精製技術の開発が望まれており30~60程度のマイルドな温度条件で操作できる二酸化炭素を機能性溶媒として利用する超臨界抽出も有効な分離技術として注目されて
いる超臨界二酸化炭素は気体と液体の中間の性質を持ち物質の分離に役立っています 臨界点付近の高密度気体は超臨界ガスまたは超臨界流体と呼ばれ臨界圧力前後でそ
の溶解能力が著しく変化することから工業的にも種々の分野で利用されています一例と
して超臨界二酸化炭素(SC-CO2)によるコーヒー豆からのカフェインの抽出プロセス(a)
ならびに超臨界二酸化炭素に対するカフェインの溶解度(b)を図に示します図(c)に示す
ように固体のカフェインがガスである超臨界二酸化炭素に溶解します
このように超臨界二酸化炭素を用いた技術はコーヒー豆からのカフェインの抽出プロ
ポリスからの生理活性物質の抽出に利用されています
図 超臨界二酸化炭素抽出を用いたコーヒー豆からのカフェインの抽出
56
付表 最小二乗法について 直線で近似する場合 f (x) = a0 + a1x (A1-1) 式(A1-1)のように近似させるとする測定値 yiとの残差を eiとすると式(A1-2)のようになる ei = yi - f (xi) = yi - ( a0 + a1xi ) (A1-2) ここで式(A1-2)の両辺を二乗してその i に関する総和をとりその値を S とすると次式となる
sumsum==
+minus==n
iii
n
ii xaayeS
1
210
1
2 )( (A1-3)
S を最小化するような a0a1を求める式(A1-3)を a0a1について偏微分すると次式とな
る
sum=
+minuspartpart
=partpart n
iii xaay
aaS
1
210
00)( sum
=
+minusminus=n
iii xaay
110 )(2 (A1-4)
同様にa1について編微分すると次式のようになる
sum=
+minusminus=partpart n
iiii xxaay
aS
110
1])([2 (A1-5)
Sが最小となる時は次式が同時に満たされる時である
00=
partpartaS
01=
partpartaS
(A1-6)
よって誤差が最小となる a0a1を求めるためには式(A1-6)を連立して解けばよい
sumsumsum===
+=n
ii
n
i
n
ii xaay
111
10 1 (A1-7)
sumsumsum===
+=n
ii
n
ii
n
iii xaxaxy
1
2
11
10 (A1-8)
式(A1-7)と式(A1-8)を a0a1を変数とみなし連立して解くと次式を得る
n組のデータ(xiyi)(i=12hellipn)に対して回帰直線 y= a0 + a1x を最小二乗法で求めて出力しデータ番号 iデータ yi直線で推定した値 )( ii bxay += および残差
iii yy minus=ε を出力するようなプログラムをつくりたい基礎式を導出せよ (ヒント残差の二乗の和が最小になるように係数 a0a1)を定めるのが最小二乗法
である)
57
sumsum
sumsumsumsum
==
====
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
n
ii
n
ii
xxn
xxyyxa
1
2
1
2
1111
2
0
)(
))(())(( (A1-9)
sumsum
sumsumsum
==
===
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
xxn
yxxyna
1
2
1
2
1111
)(
))(()( (A1-10)
よって式(A1-9)(A1-10)を用いれば最も誤差を小さくするような直線 y = a0 + a1x が求められる
y=a1x+a0 にて近似
誤差 ei
x
y
誤差が最小になる関数(直線 y=a1x+a0の場合)
図1 最小二乗による近似
誤差の和Sが最小
S
a0
a1
直線 y=a1x+a0 の近似
誤差の全体の和はS=Σei=Σyi-(a1xi+a0)
Sは変曲点にて最小値を示すすなわち(partSparta0)=0 (partSparta1)=0
図2 a0a1とSの関係
26
G5記述後フィルハンドルを使用してG5の関数を G6~G30までコピーします Sheet1から Graph1 のタグをクリックしGraph1 に計算線が表示されたことを確認しましょうこれでラングミュア式によるデータの解析は終了です実験値と理論値を比較して現象
について考察してみて下さいラングミュア式を理論的に導く場合にある仮定をしている
のですがその仮定をしているラングミュア式が実験データを精度よく計算できていれば
その仮定が妥当なもとであったと考察できます 与えられたモデルデータでラングミュア式によるデータ解析ができれば他の理論(例え
ばフロインドリッヒFreundlich式や BET式レポートはどちらか一方でも可です) についてもExcel で計算してみましょうレポートには自分のデータについてここで行った内容と同様に計算しその結果を考察に記述して下さい 自分のデータについて同様の計算をするにはまずいままで計算を行った Excel ファ
イルを保存しますデータを自分の実験データに置き換える前に Excel ファイルをさらに別の名前で保存します与えられた Excel ファイルは初期状態では模擬のデータが入力されているので今回自分達の実験したデータを入力していきます入力するデータは予め計算
しておいた酢酸濃度 Cb[moll]と活性炭吸着量 n[molg]になります下の画面の丸で囲んだ部分にそれぞれ自分の実験データを入力していきます
今回はCbnの値を入力する必要はありませんExcelが自動的に計算を行って結果を表示するようになっています 次に酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着
量 n[molg]の関係および酢酸濃度Cb[molL]と Cbn[gL]の関係をグラフ化します今回は自動的にグラフが作成
されるようになっていますので操作は必
要ありません 39 Freundlichの等温吸着式による相関 今回の実験で得られた酢酸濃度 Cbと活性炭吸着量 nのデータを利用してFreundlichの等温吸着式の定数 abの値を求めFreundlichの等温吸着式の理論線をグラフに追加します ここでFreundlich式は次式で表されます
bbaCn1
=
このままでは定数 abの値を決定することが難しいので上式の両辺の対数をとり線形化しますすると次式となります
bCb
an ln1lnln +=
ここでln Cbと ln nの関係をグラフにプロットすれば傾き 1b切片 ln aの直線関係が得られますしたがって実験データである酢酸濃度 Cbと活性炭吸着量 nの値の対数をそれぞれ計算します配布した「ad_graxls」ファイルを開き「吸着データ」シートの任意の部分に以下のような表を作成します
27
次にln Cb[-]の列の最初のセルに以下の数式を入力します
=ln(B5) 上式中の「B5」は Cb の値の最初のセルの位置を指します各個人の位置によって変更してください
次にln n[-]の列の最初のセルに以下の数式を入力します
=ln(C5) 上式中の「C5」は nの値の最初のセルの位置を指します各個人の位置によって変更してください
ここでln Cb[-]ln n[-]の値に対しそれぞれオートフィルを行い計算させますすると以下のようなデータが完成します
計算した ln Cb[-]ln n[-]の値をグラフにプロットし最小二乗法による直線式を求めます
28
ここで以下のような直線の式が得られたとします
9135ln31690ln913531690 minus=there4minus= bCnxy
上式より切片は-5913傾きは 03169となるので以下の要領で定数 a1bを計算します ==there4minus= minus 91359135ln eaa 000270
316901=
b
a の値を Excel で計算させる場合は任意のセルに以下のような数式を入力することで求めることができます
=exp(-5913) これでFerundlich等温吸着式の定数 a1bの値が決定しましたこの値は後で使うのでノートなどにメモしておいてください 次に決定した Ferundlich 等温吸着式の定数 a1b の値を用いてFerundlich 等温吸着式のグラフを作成します先ほども示したように Ferundlich等温吸着式は次式で表されます
bbaCn1
=
従って定数 aと 1bの値はすでに決定しているので任意の Cbの値に対する nの値を数点求めればFerundlich等温吸着式で求めた理論線が得られます以下の操作で理論線を引くことができます Langmuir 等温吸着式による相関のときと同様にExcel の「吸着データ」のシート上の任意の場所に以下のような表を作成します
次に Ferundlich等温吸着式に従いnの値を計算します
bbaCn1
=
式中の定数 a1bは先ほど計算した値を用いますしたがって式は次のようになります
31690002700 bCn times=
この式を Excelのセル内に記入すれば計算ができます次の
29
ように記入します
=00027G5^03169 ここで式中の「G5」は Cbの値が 0のセルを指しています各個人の位置によって変えてください 次に式を記入したセルを Cbの値が 05のところまでオートフィルを行いますそうするとすべての Cbに対して nの値が計算されます
これで Freundlich等温吸着式のデータが完成しましたので次に「Graph1」酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着量 n[molg]の関係のグラフにこのデータを追加し理論線を引きます理論線の引き方は Langmuirによる相関のときと同様の操作を行ってください グラフの書式等を変更し整理すると以下のようなグラフが出来上がります
310 吸着等温線とは 固体の吸着剤を溶液と接触させる時一定量の吸着剤によって吸着される溶質の量は温度一定ならば溶質の濃度の関数になる一定温度での吸着量を温度に対してプロットした時に
得られる曲線を吸着等温線というこの吸着等温線を比較的よく表す経験式として次の
Freundlich式がある
n=aC1b (1) ここで n は吸着剤の質量あたりの吸着量C は吸着平衡濃度a と b は実験から決定されるパラメータであるがその物理的意味は多少希薄である これに対し理論的な意味を持つものに次のラングニュア(Langmuir)の吸着等温式がある
30
KCKCnn
+=
infin
1 (2)
ただしninfinは飽和吸着量Kは吸着平衡定数であるこの式は
1)吸着分子が固体表面で単分子以上の厚い層を作ることはない 2)吸着分子同士の間の相互作用はない
という二つの仮定にもとに導かれたものである 結果の整理および報告 Freundlich吸着等温式Langmuir吸着等温式の各々のパラメータの最適値を求めよまた活性炭の吸着特性および表面積について考察し化学工学における吸着操作の重要性につい
ても検討せよ 311 吸着等温式 (a) ヘンリー(Henry)型吸着等温式 液相の濃度あるいは気相の圧力が小さい場合吸着分子間の距離が十分に長いため吸着
分子同士の相互作用が無視でき固体表面と吸着分子のみの相互作用で吸着量を決定できる
とき次式のように表される
n=KC (3)
ここでKは比例定数である図 3-1の(a)に示すように濃度 Cと吸着量 nは比例関係があり一般に吸着量が小さい範囲で成立する気体の場合は溶液濃度 Cの代わりに気相圧力 pを用いればよい
濃度(分圧)
濃度(分圧)
濃度(分圧)
濃度(分圧)
吸着量
吸着量
吸着量
吸着量
(a)ヘンリー型 (b)ラングミュア型
(d)BET型(c)フロインドリッヒ型
0
0
0
0
図 3-1 吸着等温式
31
(b)ラングミュア(Langmuir)型吸着等温式 ラングミュアは図 3-2 に示すように固体表面に同等な吸着力を示す吸着サイトがあり
表面に 1分子層だけ吸着する(単分子層吸着)と仮定して平衡状態における吸着量と溶質濃度(気相分圧)のと関係を導いた全吸着点のうち吸着分子に覆われている吸着点の割合
をθ[-]とすると分子の脱着速度 rrsquo[mols-1]はθに比例する比例定数を a[mols-1]とすると次式のように表される
吸着剤
吸着分子
吸着サイト
図 3-2 固体表面上の吸着サイト(Langmuir式の導出) r=aθ (6) また気相からの吸着速度 r[mols-1]は空いている吸着点の割合(1-θ)[-]と溶液濃度 C[molm-3]に比例する rrsquo= b(1-θ)C (7) このときの比例定数を b[m3s-1]とするまた平衡状態では両速度は見かけ上等しいため以下の式が成り立つ aθ=b(1-θ)C (8) これを変形する
CbaCbsdot+
sdot=θ (9)
ここで飽和吸着量を ninfin[molkg-1] ba を K[m3mol-1](Kは吸着平衡定数)とおくと infin=nnθ
となるので次式が得られる
32
KCKCnn
+=
infin
1 (10)
これをラングミュア式と呼ぶ
(c)フロインドリッヒ(Freundlich)型吸着等温式 フロインドリッヒの吸着等温線は図 3-1(c)のように示される
n=aC1b (11) nは吸着量[molkg-1]で aと bはともに吸着定数[-]である (d)BET(Brunauer-Emmett-Teller) 型吸着等温式
BET型の吸着等温線は図 3-1(d)に示されるラングミュア式は表面に 1分子層だけ吸着すると仮定したものであるがBET式は無限分子層まで吸着できる式である図 3-3に示すように吸着した分子がそれぞれ次の層の吸着サイトとなり分子は積み重なって多分子
層に無限層まで吸着できるものとし各層への吸着にラングミュア式を適用すれば次式の
ように表せる
( ) ( )CKCCCKqq
minus+sdotminussdotsdot
=infin
11 (12)
この式は多孔質固体の細孔表面積を窒素ガスの吸着によって測定する際に利用される重要な式
である
表面の吸着サイト
分子上の吸着サイト
図 3-3 多分層吸着モデル
Langmuir式のパラメータ決定法 水溶液からの酢酸の活性炭に対する吸着平衡データ(吸着平衡温度 12)は表 3-1のよ
うに与えられる実験データよりラングミュア式のパラメータ(K吸着平衡定数ninfin飽和吸着量)を最小二乗法で決定せよさらにラングミュア式より決定した ninfinKの値を用いて吸着等温線を計算し計算線として図に示し実験点と比較せよ
33
表 3-1 n C Cnの関係
ラングミュア式は式(310)で与えられるこの式を変形すると次式となる
CKnCK
n infinsdot+
=11
(313)
両辺に Cをかけると以下の式が導出される
CCnKnCKn
CCKn
Cβ+α+
==
+= infininfininfin
11)1( (314)
ただしα=1ninfinβ=1(ninfinK)とする式(314)より Cn と C の関係のグラフプロットは傾きα=1ninfin切片β=1(ninfinK)の直線関係を与えることを示している表 3-1の値を用いて計算した Cnと Cの関係を表 3-1および図 3-4に示す 最小二乗法を用いて傾きαと切片βを決定した α=1ninfin=43865 β=1(ninfinK)=2654 得られた傾きおよび切片よりninfinおよび Kは次のように求まる
ninfin=1α=1D18=000228 molg-1 K =(1ninfin)β=αβ=D18C18=165
0
50
100
150
200
0 200 400 600
C [ molm-3 ]
Cn [ kgm-3 ]
傾き = 1 ninfin
1 ninfinK
切片0
05
1
15
2
25
3
0 100 200 300 400 500
液相の溶質濃度 C [ molm-3 ]
吸着量 n [ molkg-1]
液相と溶質濃度 C [ molm-3 ]
吸着量
n[ m
olk
g-1]
実験点
Langmuir式パラメータninfin 00033 [ molg-1 ]K 00086 [ m3 mol -1 ]
図 3-4 ラングミュア定数の決定 図 3-5 12における酢酸濃度 Cと
吸着量 nの関係
C [molm-3] n [molkg-1] Cn [kgm-3] 460 225 109 529 214
268 199 149 105 060
172 128 732 504 357
34
Freundlich式のパラメータ決定法 酢酸水溶液中における酢酸の活性炭に対する吸着実験を行ったところ以下のような実験デー
タを得たただしCbはバルク相における酢酸濃度n は活性炭に対する酢酸の吸着量を示す
Cb[molL] n[molg] log10Cb log10n 04621 000205 02410 000175 01139 000139 00519 000105 00243 000081
実験データを利用して次式で与えられる Freundlichの等温吸着式の定数 abの値を求めたい
bbaCn1
= (1)
このままでは定数 abの値を決定することが難しいので上式の両辺の対数をとる
bbb
bb
Cb
aCa
aCn
ln1lnlnln
)ln(ln1
1
+=+=
=
(2)
ここで横軸に ln Cb縦軸に ln nの関係をグラフにプロットするすなわち x=ln Cby=ln nと考える
bCb
an ln1lnln += (3)
ここで直線式 y=a0+a1xと比較するすなわち
)(1)(ln
1
00
傾き
切片
ba
eaaa a
=
=rarr= (4)
a0および a1は最小二乗法により数値で求められる与えられたデータでは a1= a0= なので a= b= となる この値を n=acb
1bに代入してcb=0~05の範囲で nの値を計算する
35
BET式のパラメータ決定法 BET式は次式で与えられる
)1)(1( KCCCKCnn
+minusminus=
infin
(17)
以下のように BET式の変形を行う
)1()1(
KCCKCnCn+minus
=minusinfin
(18)
(18)式の逆数をとると
KCnCK
KCnKCC
Cn infininfin
minus+=
+minus=
minus)1(1)1(
)1(1
(19)
(19)式の両辺に Cをかえると
KCnCKC
CnC
infin
minus+=
minus))1(1(
)1( (20)
(20)式を変形すると次式が得られる
CKn
KKnCn
Cinfininfin
minus+=
minus11
)1( (21)
C と)-(1 Cn
Cのプロットは傾き
KnKinfin
minus1切片
Kninfin
1の直線関係を与えることを示している
これをグラフにプロットし最小二乗法に傾きおよび切片を求める
36
312 活性炭の比表面積の決定 酢酸分子の構造を以下に示す
Hc-Cb-Ca
Hd
Hb Oa
Ob-Ha
1219deg
Ca Oa
Ob
図 36 酢酸の構造
酢酸の 1分子の吸着面積srsquo [m2]を図 3-6に示すこのとき文献より
Caと Oaの結合距離 1321Å Caと Obの結合距離 1206Å OaCaObの角度 1219deg Cの原子半径 077Å Oの原子半径 062Å
したがって吸着面積 Slsquoは次のようになる
( ) ( ) 2088 10376109931036321 minusminusminus times=timestimestimestimes=s m2
ここで活性炭の比表面積 S[m2g]は次式で示される 10026 23 snS timestimestimes= infin
S活性炭の比表面積 [m2g] ninfin飽和吸着量 [molg] srsquo酢酸 1分子の吸着面積 [m2] 602times1023アボガドロ数 [個mol] したがって活性炭の比表面積 S[m2g]は
003350=infinn molg 2010376 minustimes=s m2 より
51281037610026003350 2023 =timestimestimestimes= minusS m2g
37
4 粘度密度測定 41 はじめに 大量生産を目的とした工業的化学プロセスはほとんど流れ系(流通系)であるそれらの系において操作対象となる各物質の粘度は装置を設計操作する場合きわめて重要
な物性値である 本実験では低分子溶液および高分子溶液の粘度測定を通じて液体の粘度について考察するさらに演習問題を通じて気体液体高分子溶液などの化学プロセスで対象となる物
質の輸送物性(粘度拡散係数)の重要性を認識されたい 42 低分子溶液の粘度 [目的] 種々の濃度のエタノール水溶液の粘度を測定しその溶液の粘度について考察する [概要] 25におけるエチルアルコール濃度 02040506080100 wt の水溶液について流下時間を測定しこの結果より相対粘度絶対粘度運動粘度を求めグラフにするま
た水の密度水-エチルアルコール溶液の密度についてはピクノメーターを用いて決
定する報告書には相対粘度絶対粘度運動粘度 vsエチルアルコール濃度の関係をそれぞれグラフにして提出する
[計算方法] 相対粘度絶対粘度運動粘度の定義は次のようになる
相対粘度 ww
w tdtd
ηη = (41)
η 混合溶液の粘度 [gcms] ηw水の粘度(8007times10-3 gcms) [gcms](25における粘度) d エチルアルコール水溶液の密度 [gcm3] dw水の密度(099704gcm3) [gcm3](25における密度) t エチルアルコール水溶液の流下時間 [s] tw水の流下時間 [s] 下付添字 W 水
絶対粘度 www td
tdη
η= (42)
運動粘度 ν=ηd [cm2s] (43)
38
[実験方法] 1) 粘度計を洗浄し粘度計内 に二連球で空気を送り込み
乾燥させる乾燥しにくい 場合はアセトンを滴下し た後再度二連球で空気 を送り込み乾燥させる 2)ピペットで一定体積(10mℓ) の純水を取り広い口 f から 粘度計に水を入れる 3)粘度計を恒温槽(25)に つけ約 10 分静置する 4)安全ピペッターを口 a に 取り付け液面が b 上部に 到達するまで吸い上げる 5)安全ピペッターを外すと 液面が降下しだす液面が bd 間を通過する時間をスト ップウォッチで測定する
6)純水での測定を 3 回繰り返す 7)純水を粘度計から取り除くその後粘度計内に二連球を用いて空気を送り込み乾燥させる 8)粘度計乾燥後複数の濃度に調整済みのエチルアルコール水溶液(10mℓ)を粘度計にいれ4)~6)の作業を繰り返し行う(3 回)なお濃度の異なるエチルアルコール水溶液を粘度計内に導入する場合には7)と同様に二連球を用いて粘度計内に空気を送り込み乾燥させる
表 4-1 エチルアルコール水溶液の濃度密度相対粘度の関係 エチルアルコール濃度
[wt] 密度 d[gcm3] 相対粘度
η ηw[-] 0
20 40 50 60 80
100
安全ピペッター接続
図 4-1 粘度計
液面の bd間の通過時
間を測定
f
39
43 密度測定 [目的] 本実験では水とエタノールの種々の組成の混合液体について密度を測定し分子間相互
作用について考察する [実験方法] 1)ピクノメーターの容積測定
図 4-2のピクノメーターの空の重量 wg を秤量する
ピクノメーターの蓋を取り外し
ピクノメーターを水で満たす
設定温度を 25として恒温槽 の電源を入れ恒温槽内の温 度が一定になるまで待つな お水温は恒温槽中の水銀温 度計から読む
恒温槽中に水を満たしたピク
ノメーターを入れる
約 10分間静置する
ピクノメーターに蓋をするこのときピクノメーターの容量
よりも余分の水は蓋の上部より排出される
ピクノメーターの外側を乾いた布で拭い秤量する(その重量を
wwg とする)
恒温槽の温度(25)における水の密度 dwgcm3(=099704gcm3)
より次式を用いてピクノメーターの容積を求める
w
w
dww
Vminus
= (44)
図 4-2 ピクノメーター
蓋
40
表 4-2 エチルアルコール水溶液の濃度と密度の測定結果(25) エチルアルコ
ール濃度[wt]
wrsquo[g] ww[g] V[cm3] w[g]
d[gcm3]
0 20 40 50 60 80
100
099704
エチルアルコール濃度[wt] 空のピクノメーターの重量 wrsquo[g] 水を入れたときのピクノメーターの重量 ww[g] ピクノメーターの体積 V[cm3] エタノール水溶液の入れたときのピクノメータの重さ w[g] エタノール水溶液の密度 d[gcm3]
容積 Vを求めたピクノメーターに混合溶液(調整済み)を入れてその重量 wgを秤量し次式で混合溶液の密度を求める
Vwwd minus
= (45)
エタノール濃度と密度 d の関係をグラフにプロットする
41
44 高分子溶液の粘度 [目的] 高分子溶液の粘度測定から分子量の粘度に与える影響について考察する [概要 ] オストワルド粘度計を用い種々の濃度のポリビニルアルコール(PVA ((-CH2CHOH-)n))水溶液の粘度を測定し粘度データよりポリビニルアルコールの分
子量を求める まず 05g100cc の濃度のポリビニルアルコール水溶液を調製する次にこれを原液
とし23 12 13 15の濃度の溶液を調製するこれらの溶液についてオストワルド粘度計を用いてそれぞれ流下時間を測定し相対粘度絶対粘度運動粘度を求め実験デ
ータより極限粘度[η]を求めるまた報告書には相対粘度絶対粘度運動粘度C
)ln( wηη
Cw
w-η
ηη vsポリビニルアルコール濃度の関係をそれぞれグラフにして提出する
[計算方法] エチルアルコール水溶液の粘度測定と同様の手法を用いて粘度の計算を行うなおポリビニルアルコール水溶液の密度はピクノメーターを用いて測定すること 表 4-3 ポリビニルアルコール水溶液の濃度密度相対粘度の関係 ポリビニルアルコール
濃度 [g100cc] 密度 d[gcm3] 相対粘度
η ηw[-] 05times(15) 05times(13) 05times(12) 05times(23)
05
42
[分子量の計算方法] 実験を行った結果以下のような粘度データを得られるとする実験データより極限粘度
を求めポリビニルアルコール(PVA)の分子量Mを決定せよ
PVA 水溶液濃度
C[g100cc]
相対粘度
ηηw[-]
絶対粘度
η[gcms]Cw
w-η
ηη
C)ln( wηη
05times(15) 1031 0008255 031 0305
05times(13) 039 0378
05times(12) 03 0289
05times(23) 0375 0353
05 0364 0334
ηw=8007times10-3 gcms 線状高分子の極限粘度[η]と分子量Mの関係は次式で与えられる [η]=KMα (46) ただしポリビニルアルコールの場合K=666times10-4α=064であるなお極限粘度[η]は次式で定義される
CC w
w
0
-][ limη
ηηη
rarr
= (47)
または
CC
)ln(][ w
0lim
ηηη
rarr
= (48)
よって濃度 CとCw
w-η
ηηまたは濃度 Cと
C)ln( wηη の関係をグラフ化し最小二乗法によ
り切片の値を求めると極限粘度[η]が決定される
Cw
w-η
ηηと C の関係より最小二乗法を用いて切片の値を決定すると(図 43 参照)切片=
03242傾き=00874となるよって極限粘度は以下のようになる[η]=03242同様
にC
)ln( wηη とcの関係より最小二乗法を用いて切片の値を決定する
(図 44参照)と切片=03249傾き=00256となり極限粘度は以下のようになる[η]=03249
Cw
w-η
ηηと Cの関係より決定した[η]=03242を用いてポリビニルアルコール(PVA)の
分子量 Mを計算する(46)式より以下のように PVAの分子量 Mを計算することができるM=([η]K)1α
=(03242(666times10-4))(1064)
=15811
43
y = 00874x + 03242
0
02
04
06
08
1
0 01 02 03 04 05 06 07
c[g100cc]
(η-ηw)(ηwc)
cw
w
η
ηηminus
極限粘度[η]
図 43 298Kにおける PVA濃度 CとCw
w-η
ηηの関係
y = 00256x + 03249
0
02
04
06
08
1
0 01 02 03 04 05 06 07
c[g100cc]
(ln(ηη
w))c
c)ln( wηη
極限粘度[η]
図 44 298Kにおける PVA濃度 CとC
)ln( wηη の関係
44
5 植物からの DNAの抽出 51 はじめに 分子レベルでの遺伝子の構造解明や遺伝子の発現に関する研究は近年急速に発展している
これら生命現象のしくみを分子レベルで解明しようという分子生物学の分野ではさまざま
な遺伝子の解析や応用方法が開発され我々の生活に身近なものになりつつある 本実験では初歩的な分子生物学に関する実験として植物(タマネギ)からの DNA の
抽出を行い抽出した遺伝子の電気泳動法による分離実験を試みる 52 試薬および器具 試薬 タマネギ(細胞中から遺伝子の抽出を行う) 台所用洗剤(洗剤中に含まれる界面活性剤には植物の細胞膜およびタンパク質を破壊す
る働きがある) 塩化ナトリウム(DNAは塩化ナトリウム水溶液に溶解し易い性質がある) エタノール(予め冷やしておくDNAはエタノールにほとんど溶解しない) 制限酵素(DNAを一定の部位で切断する働きを働きがある) TE緩衝液(pH緩衝剤が入った溶液) 器具 ビーカーミキサーフィルターメスシリンダー駒込ピペットガラス棒 マイクロピペット電気泳動装置ポラロイドカメラ 53 実験方法 1)タマネギは 1回の実験で半個のうち内側の半分程度を使用するタマネギ水 30ml台所用洗剤数滴をミキサー用ガラス容器に入れ40~60秒程度(固体状のタマネギがなくなる頃が目安)ミキサーにて混合する
2) 1)で作成した混合溶液をビーカーに移し約5g程度の塩化ナトリウムを加えガラス棒で静かに攪拌する粘性の大きな溶液が得られる
3) 2)で作成した溶液をフィルターを用いて濾過し濾液を回収する 4) 濾液の約2倍程度の量の冷エタノールをビーカーの壁伝いに静かに注ぐ 5) ビーカーを揺するとエタノール層に白くふわふわしたものが浮いてくるこれが DNAであるガラス棒で DNAを巻き取りシャーレ上にて DNAを回収する顕微鏡を用いて回収した DNAの状態を観察する
6)マイクロチューブ(容量 15ml)中に用意した 70エタノールを 8 分目程度まで注ぐ5)にて回収された DNAをマイクロピペットを用いて70エタノールの入ったマイクロチューブ中に移す軽く混ぜることによりDNA から不要な物質を洗い流す遠心分離してDNA をマイクロチューブの底に沈めた後溶液を捨てて DNA を乾かす乾いたらTE緩衝溶液を 1ml加えて放置するDNAの溶液が得られる
54 電気泳動装置による DNAの観察
本実験は職員と一緒に行うこと 実験を行う人はビニール手袋をすること 1) 抽出した DNAを電気泳動装置で観察するマイクロピペットを用いて以下のように調製した DNAの混合溶液を調製する(いずれの溶液も調製済)
45
2) マイクロピペットを用いてアガロースゲルの試料を流し込む穴(ウェル)に1)にて調製した溶液 Aおよび Bを注ぎ込む注入量は20μℓとする電気泳動装置のスイッチを入れて100Vの電流を流しアガロースゲル内にて DNAを電気泳動させる
3) 試料に予め加えられておいた青色の色素が 7 分目程度まで進んだら電気泳動を中止する(約 30分程度)
4) (ここでの作業は職員が行う) アガロースゲルを取り出し染色液に浸す染色後ゲルを取り出しポラロイドカメラで
DNAの泳動状態を撮影する
+ -
アガロースゲル
試料を流し込む穴(ウェル)
図 51 電気泳動装置
6 5 4 3 2 1
図 52 DNAの電気泳動写真の一例
55 電気泳動装置の原理 電気泳動装置の原理図を以下に示すアガロースゲル(寒天から不純物を除いたもの)中
に DNAをセットし電流を流すとDNAは電流の向きとは逆にマイナスからプラス方向
調製済 溶液 A(制限酵素なし) 水 11μℓ 10timesH Buffer 2microℓ 植物 DNA 5μℓ
調製済 溶液 B(制限酵素 Eco RI入り) 水 11μℓ 10timesH Buffer 2microℓ 植物 DNA 5μℓ 制限酵素 2μℓ
1 DNA(タマネギ)+制限酵素 2 DNA(タマネギ)+制限酵素 3 DNA(タマネギ) 4 λ-DNA(大腸菌)+制限酵素 5 λ-DNA(大腸菌) 6 サイズマーカー
500bp
46
に動く(このことを電気泳動という)これはDNA のリン酸部分が負に帯電しているためでありまたDNAはその長さにより泳動距離が異なる(短い遺伝子ほど長く泳動する)電気泳動ではこの性質を利用してDNAを大きさごとに分離することができる
塩基対数によってDNAを分離
EtBr (蛍光試薬)DNAの二本鎖内に入り込む
発光
UVλ=302nm
励起
分離後のアガロースゲルをエチジウムブロマイド(EtBr)溶液に浸す
DNAを含んだ溶液
アガロースゲル
リン酸部分が負に帯電
塩基 (ATGC)-
+
カメラで撮影
電圧
DNA構成成分(dNTPs)
バンドが明る
DNA量が
バンド(DNAの存在)
図 53 電気泳動の原理
56 制限酵素とは DNA は4 種類のヌクレオチド(GATC)が不規則につながってできている制限酵素はDNAの特定のヌクレオチドが並んでいる部分を切断する制限酵素には様々な種類がありEco RI(エコアールワン)と呼ばれる酵素は「GAATTC」といった並びの部分だけを切断することができる
GAATTC
CTTAAG
制限酵素
Eco RI
AAGCTT
TTCGAA
制限酵素
Hin dIII
図 54 制限酵素による DNAの切断
レポートについて 1 実験方法および実験結果の整理方法については指針書を参考にすること 2 実験結果については電気泳動の結果について考察すること(制限酵素の影響などにつ
いてまとめてください)
47
6 染色実験
61 はじめに
現在私達の身の周りでは様々な染料が使われている例えばT シャツやジーンズな
どの衣服は橙黄赤青など様々な色に染められている他にも私達が気付かないと
ころで多くの染色された製品を使用しているそこで本実験では高校の化学で学んだ
アゾ染料を合成してみるアゾ染料はアニリンを原料として作られているアニリンはベ
ンゼン環にアミノ基(-NH2)がついたものであるアニリンは無色の液体で水に溶けにく
くアンモニアより弱い塩基性を示すまたさらし粉(CaClO(ClO)H2O)水溶液を加えると
赤紫色を呈するこの呈色反応はアニリン特有のものであるので検出反応に用いられる
このアニリンを出発物質としてアゾ染料を合成してみる
62 試薬および使用器具
【試薬】 ①05moll 水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液
②2-ナフトール ③フェノール ④6moll 塩酸
⑤亜硝酸ナトリウム ⑥アニリン ⑦氷
【器具類】 ①電子天秤 ②50mℓビーカー ③100mℓビーカー
④ガラス棒 ⑤布(ガーゼなど) ⑥ピンセット
⑦ポリ手袋 ⑧ドライヤー ⑨シャーレ
10駒込ピペット(10ml ガラス製)
11駒込ピペット(1ml プラスチック製)
63 実験方法
1) 50mℓビーカーの中に 05molℓ水酸化ナトリウム水溶液 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回
NaOH 水溶液を分取するほぼ 20 mℓ分取できれば可)と 2-ナフトールを約 01g 入れ
よくかき混ぜる調製した溶液の中に布をつけその布はガラス棒でしぼってから(布
をガラス棒ですくいあげればよい)シャーレに広げる温度の異なる条件下(常温およ
び低温)で染料の合成実験を行うため布は最低 2枚調製した溶液と接触させそれ
ぞれ別々のシャーレ(低温用および常温用)に広げる
2) 新しいビーカーに水を約 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回分取)と 6molℓ塩酸約 4mℓ(10m
ℓ駒込ピペットで目分量で可)さらにアニリン約 1mℓ(プラスチック製 1 mℓ駒込ピペッ
ト)を入れてよくかき混ぜる染料の合成を常温および低温下で行うためこの溶液を
2つ調整する
低温下で反応させる溶液は恒温槽で 10~15 分ほどよく冷やした後亜硝酸ナトリウ
ム 05g を加えてよくかき混ぜる
常温下で反応させる溶液には冷却作業を行わずに亜硝酸ナトリウム 05g を加えて
よくかき混ぜる
3) 2)でつくった水溶液をシャーレに広げた布に注ぎ生成される染料を布によく染み
込ませ5分程放置する
4) 色の付いた布を取り出してポリ手袋をした手できれいに水洗いをし乾燥させる
48
5) 色差計を用いて乾燥した布の Lab(L明度aおよび b色度)を測定する
2)で作った溶液は5以下では無色の溶液ですが5以上になると淡い黄色になりま
す
【解説】
アゾ染料はアゾ基(-N=N-)を持っていてこのアゾ基によって鮮やかな橙色を呈色し
ます今回合成したアゾ染料は図の 1-フェニルアゾ-2-ナフトールです意外かもしれ
ませんが指示薬として使われているフェノールフタレインもアゾ化合物ですフェノール
フタレインは pH の変化によって色が出てきす染料の中でも最初は無色のものもありますが
温度を変化させたり酸性やアルカリ性にすると色が出てきます
ベンゼン ニトロベンゼン
N2Cl
ニトロ化 濃硫酸(濃硝酸)
還元反応 濃塩酸
(Sn又は Fe)
アニリン塩酸塩
遊離反応 NaOH
アニリン塩酸塩に強塩基を反応させる
と弱塩基であるアニリンが遊離する
氷冷+亜硝酸ナトリウム アニリン
塩酸
ジアゾ化
塩化ベンゼンジアゾニウム
塩化ベンゼンジアゾニウム
は熱によって窒素とフェノー
ルに分解される
カップリング
C10H7ONa (ナトリウム 2-ナフトキシド)
O
N =
1-フェニルアゾ 2-ナフトール
NH3Cl NH2
49
7 ガスクロマトグラフ質量分析計による茶葉中のカフェインの分析 71 はじめに ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)は極めて低い濃度の化学物質の同定や未知物質の構造決定に極めて強力な分析機器の一つであるGCMSを用いるとサンプルの中に含まれているある成分の分子構造(カフェインの分子構造を図 71に示す)やその量が分かりますもちろん分析機器ですので測定できる物質対象となる系や測定条件にはある
程度の制約があります混合物質を分離するガスクロマトグラフ(Gas ChromatographGC)と分離された成分(物質)を分析(構造決定と濃度測定)する質量分析計(Mass SpectrometerMS)を組み合わせた装置であるこの装置は有機化学生化学環境化学などの多くの分野で非常に多用されている例えば極めて低い濃度でも生体へ強い影響が懸念されるダイ
オキシン類などの土壌や河川の水中での含有率の決定や食品や医薬品中の微量成分の決定
にも利用されている 一方日本人に長い間親しまれてきた緑茶が近年産業界や医学
界で注目されている茶葉にはカフェイン(分子構造図 71)カテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドなどの有用成分が多く含まれておりその効能が注目されている 本実験では茶葉中に含まれるカフェインに対してGCMSを用いて分析する茶葉中には種々の物質が含まれておりGCMS分析を容易にするため前処理として超臨界二酸化炭素抽出(4015MPa程度の高圧力の二酸化炭素を溶剤として利用)により茶葉からカフェインの抽出を行いそのサンプルを GCMSにて分析する
図 71 カフェインの分子構造 図 72 物質の分析 個々の物質や装置についてはインターネットにより下記のWebサイトのフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』などにより調べるとよいカフェイン(caffeine)はアルカロイドの一種プリン環を持つプリンアルカロイドの一種でコーヒー類に含まれることか
らこの名がある化学名は137-トリメチルキサンチン(C8H10N4O2) コーヒーコーラ緑茶紅茶ガラナココアなどに含まれる(量は緑茶が一番多い)結晶は一水和物(C8H10N4O2bullH2O)もしくは無水物(無水カフェインC8H10N4O2)として得られ
る白色の針状または六角柱状結晶で匂いはなく味は苦い融点は 238昇華性がある出典フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』httpwwwwikipediaorg 装置「GCMS」httpwwwanshimadzucojpproductsgcmsqp2010htm (島津) 「超臨界抽出装置」httpwwwkagakucomjasco39-49html (日本分光)
50
レポート課題 1茶葉中に含まれるカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドの中から3つの物質を選びその物質について調べた結果を A4 レポート用紙2枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
2GCMS についてA4 レポート用紙1枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
3与えられたサンプルは茶葉1gから抽出されたのである実験結果よりもとの茶葉
1g中に含まれるカフェインの量を推算し計算式とあわせて示すこと 72 原理および装置 実験で使用する島津製の GCMS装置の全体図を図 73に原理の概略を図 74に示す
1
23
4
5
67 8
9
10
キャリアーガス
試料物質
1ボンベ(He)2圧力計3マイクロシリンジ4サンプラー5試料導入部6分離カラム
7セパレーター8イオン化室9磁石10電子増倍管11記録計
11
図 74 ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)の概略図
サンプルフォルダー
51
GCMS 装置は分離部である図中の 1~6 のガスクロマトグラフ(GC)と7~11 の検出部である質量分析計(MS)から構成される 3のマイクロシリンジを用いて試料を GCMSに導入する導入された試料は5試料導入部でガス化され6分離カラムに導入される分離カラムには吸着剤が充填されおり混合物の試料を導入した場合各物質と吸着剤との
親和性の違いにより各物質の分離カラムから排出されるタイミングは異なる分離カラム
を排出された試料は8イオン化室でイオン化され10電子倍増管にて検出される アセトンに溶解したカフェインの GCMSによる分析結果の一例を以下に示す図 75にク
ロマトグラム図 76にカフェインのピークのマススペクトルを示す
図 75 GCMSにより得られたクロマトグラム
横軸がリテンションタイムで縦軸がピーク強度を表す
図 76 カフェインのマススペクトルとカフェイン(分子量MW=194)の構造
(図 75中のリテンションタイム 126min付近のピークに起因するマススペクトル) 茶葉中にはカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイド以外にも繊維であるセルロースなど多くの物質が含まれているため茶葉そのものを
そのままサンプルとしてGCMSで分析することは困難であるセルロースなどの分子量の大きな物質はカラムに詰まってしまい分析できないそこで今回は超臨界二酸化炭素
による抽出により主にカフェインを他の物質と分離抽出した通常よく利用されるアセ
トン抽出(アセトンに茶葉を浸し特定の成分を抽出する)ではカフェイン以外にも多く
の物質が抽出されるため図 75 のような単独のピークを得ることは難しく複数のピークがクロマトグラムに見られるこのサンプル(この場合茶葉からの抽出物)にはカフェ
イン以外の不純物は少なかったがガスクロマトグラフの分離カラムによりさらにそれ
らの混合物が精度よく分離されるクロマトグラムのピークはそれらサンプル中に含まれ
ていた個々の物質を表しているクロマトグラムのピークを選択することで分子構造解析
したい物質を選んだことになる選択したクロマトグラムのピークの表している物質(ここ
ではカフェイン)に対応するマススペクトルが図 76 に表示されているマススペクトル
52
で横軸がその成分(ここではカフェイン)分子を構成している原子の原子量で縦軸がそ
の量を表しているのでマススペクトルから分子構造を解析するためにコンピュータ内
に蓄えられた物質ごとのマススペクトルデータと今回測定したマススペクトル(分子内に含
まれている各原子の数)を比較することで測定したサンプル中のクロマトピークを選択し
た分子がどのような原子をどれだけ含んだ分子であったかがわかりそれからその物質
がどのような分子構造の物質である可能性が高いかをコンピュータが検索し結果を示す 73 実験サンプルの設置と GCMS装置の操作方法 実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS装置のサンプルフォルダ
ー(図 73)にセットするこのサンプルは茶葉 1gを 50ccの高圧セルにて超臨界二酸化炭素を利用して4015MPa2時間接触の条件で抽出した固体を10gのアセトンに溶かしたものである またコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に装置および装置制
御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 本実験で使用する GCMS の操作は全てコンピュータのモニター上で GCMS の解析プログラムソフトを使用することで行うコンピュータの操作方法を以下に示す なおコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS 装置のサンプルフォルダー(図 73)にセットするまた装置および装置制御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 1)パソコンのデスクトップ上のアイコン「GCMS 分析」をクリックすると以下のようにGCMS制御プログラムを起動するその後「OK」ボタンをクリックする
図 77 GCMD分析用ソフトウェア「GCMS分析」の起動
まず「GC-MS分析」をクリック
「OK」ボタンをクリック
53
2)制御プログラムが起動されパソコンと GCMSの接続が開始される
図 78 「GCMS分析」の接続確認画面 3)GCMSとパソコンの接続が完了すると以下のような画面が表示される
図 79 「GCMS分析」操作画面
4)マススペクトルによる分子構造の解析 サンプル(この場合茶葉からの抽出物)には多くの物質が混じり合っていたがガス
クロマトグラフの分離カラムによりそれらの混合物が精度よく分離されるクロマトグラ
ムのピークはそれらサンプル中に含まれていた個々の物質を表しているクロマトグラム
のピークを選択することで分子構造解析したい物質を選んだことになる選択したクロマ
トグラムのピークの表している物質(ここではカフェイン)に対応するマススペクトルを選
択するマススペクトルは横軸が原子量で縦軸がその量を表しているのでマススペク
トルから分子構造を解析するために「定性処理」を行う シミラリティ検索結果が表示され分析により得られたスペクトルと類似のスペクトルを有
する物質の一覧が表示される上部に表示される物質ほどスペクトルが一致していること
を示す
接続状況が表示される
「トップへ」
をクリック
54
図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果
図 711 表示スペクトルのシミラリティ検索結果 10)図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果の印刷 「レポート(R)」をクリックし「検索結果(R)」をクリックすると検索結果が印刷される
GC-MS 分析で得られたマスス
ペクトル
データベース中
のマススペクト
ル
55
参考資料 生理活性物質の精製 カフェインの利尿作用のように生物活動に影響を与える物質を生理活性物質といいます
天然物には生理活性物質を多く含むものがあります一般に天然物は多くの成分を含ん
でおり特定の生理活性物質を分離抽出するには種々の分離技術が必要ですまた生
理活性物質には60以上の温度でその生理活性を失う(失活)ものや溶剤として広く用いられているクロロホルムなどの有機溶剤中で失活するものが多いそこでこれら生理活性
物質の分離精製技術の開発が望まれており30~60程度のマイルドな温度条件で操作できる二酸化炭素を機能性溶媒として利用する超臨界抽出も有効な分離技術として注目されて
いる超臨界二酸化炭素は気体と液体の中間の性質を持ち物質の分離に役立っています 臨界点付近の高密度気体は超臨界ガスまたは超臨界流体と呼ばれ臨界圧力前後でそ
の溶解能力が著しく変化することから工業的にも種々の分野で利用されています一例と
して超臨界二酸化炭素(SC-CO2)によるコーヒー豆からのカフェインの抽出プロセス(a)
ならびに超臨界二酸化炭素に対するカフェインの溶解度(b)を図に示します図(c)に示す
ように固体のカフェインがガスである超臨界二酸化炭素に溶解します
このように超臨界二酸化炭素を用いた技術はコーヒー豆からのカフェインの抽出プロ
ポリスからの生理活性物質の抽出に利用されています
図 超臨界二酸化炭素抽出を用いたコーヒー豆からのカフェインの抽出
56
付表 最小二乗法について 直線で近似する場合 f (x) = a0 + a1x (A1-1) 式(A1-1)のように近似させるとする測定値 yiとの残差を eiとすると式(A1-2)のようになる ei = yi - f (xi) = yi - ( a0 + a1xi ) (A1-2) ここで式(A1-2)の両辺を二乗してその i に関する総和をとりその値を S とすると次式となる
sumsum==
+minus==n
iii
n
ii xaayeS
1
210
1
2 )( (A1-3)
S を最小化するような a0a1を求める式(A1-3)を a0a1について偏微分すると次式とな
る
sum=
+minuspartpart
=partpart n
iii xaay
aaS
1
210
00)( sum
=
+minusminus=n
iii xaay
110 )(2 (A1-4)
同様にa1について編微分すると次式のようになる
sum=
+minusminus=partpart n
iiii xxaay
aS
110
1])([2 (A1-5)
Sが最小となる時は次式が同時に満たされる時である
00=
partpartaS
01=
partpartaS
(A1-6)
よって誤差が最小となる a0a1を求めるためには式(A1-6)を連立して解けばよい
sumsumsum===
+=n
ii
n
i
n
ii xaay
111
10 1 (A1-7)
sumsumsum===
+=n
ii
n
ii
n
iii xaxaxy
1
2
11
10 (A1-8)
式(A1-7)と式(A1-8)を a0a1を変数とみなし連立して解くと次式を得る
n組のデータ(xiyi)(i=12hellipn)に対して回帰直線 y= a0 + a1x を最小二乗法で求めて出力しデータ番号 iデータ yi直線で推定した値 )( ii bxay += および残差
iii yy minus=ε を出力するようなプログラムをつくりたい基礎式を導出せよ (ヒント残差の二乗の和が最小になるように係数 a0a1)を定めるのが最小二乗法
である)
57
sumsum
sumsumsumsum
==
====
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
n
ii
n
ii
xxn
xxyyxa
1
2
1
2
1111
2
0
)(
))(())(( (A1-9)
sumsum
sumsumsum
==
===
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
xxn
yxxyna
1
2
1
2
1111
)(
))(()( (A1-10)
よって式(A1-9)(A1-10)を用いれば最も誤差を小さくするような直線 y = a0 + a1x が求められる
y=a1x+a0 にて近似
誤差 ei
x
y
誤差が最小になる関数(直線 y=a1x+a0の場合)
図1 最小二乗による近似
誤差の和Sが最小
S
a0
a1
直線 y=a1x+a0 の近似
誤差の全体の和はS=Σei=Σyi-(a1xi+a0)
Sは変曲点にて最小値を示すすなわち(partSparta0)=0 (partSparta1)=0
図2 a0a1とSの関係
27
次にln Cb[-]の列の最初のセルに以下の数式を入力します
=ln(B5) 上式中の「B5」は Cb の値の最初のセルの位置を指します各個人の位置によって変更してください
次にln n[-]の列の最初のセルに以下の数式を入力します
=ln(C5) 上式中の「C5」は nの値の最初のセルの位置を指します各個人の位置によって変更してください
ここでln Cb[-]ln n[-]の値に対しそれぞれオートフィルを行い計算させますすると以下のようなデータが完成します
計算した ln Cb[-]ln n[-]の値をグラフにプロットし最小二乗法による直線式を求めます
28
ここで以下のような直線の式が得られたとします
9135ln31690ln913531690 minus=there4minus= bCnxy
上式より切片は-5913傾きは 03169となるので以下の要領で定数 a1bを計算します ==there4minus= minus 91359135ln eaa 000270
316901=
b
a の値を Excel で計算させる場合は任意のセルに以下のような数式を入力することで求めることができます
=exp(-5913) これでFerundlich等温吸着式の定数 a1bの値が決定しましたこの値は後で使うのでノートなどにメモしておいてください 次に決定した Ferundlich 等温吸着式の定数 a1b の値を用いてFerundlich 等温吸着式のグラフを作成します先ほども示したように Ferundlich等温吸着式は次式で表されます
bbaCn1
=
従って定数 aと 1bの値はすでに決定しているので任意の Cbの値に対する nの値を数点求めればFerundlich等温吸着式で求めた理論線が得られます以下の操作で理論線を引くことができます Langmuir 等温吸着式による相関のときと同様にExcel の「吸着データ」のシート上の任意の場所に以下のような表を作成します
次に Ferundlich等温吸着式に従いnの値を計算します
bbaCn1
=
式中の定数 a1bは先ほど計算した値を用いますしたがって式は次のようになります
31690002700 bCn times=
この式を Excelのセル内に記入すれば計算ができます次の
29
ように記入します
=00027G5^03169 ここで式中の「G5」は Cbの値が 0のセルを指しています各個人の位置によって変えてください 次に式を記入したセルを Cbの値が 05のところまでオートフィルを行いますそうするとすべての Cbに対して nの値が計算されます
これで Freundlich等温吸着式のデータが完成しましたので次に「Graph1」酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着量 n[molg]の関係のグラフにこのデータを追加し理論線を引きます理論線の引き方は Langmuirによる相関のときと同様の操作を行ってください グラフの書式等を変更し整理すると以下のようなグラフが出来上がります
310 吸着等温線とは 固体の吸着剤を溶液と接触させる時一定量の吸着剤によって吸着される溶質の量は温度一定ならば溶質の濃度の関数になる一定温度での吸着量を温度に対してプロットした時に
得られる曲線を吸着等温線というこの吸着等温線を比較的よく表す経験式として次の
Freundlich式がある
n=aC1b (1) ここで n は吸着剤の質量あたりの吸着量C は吸着平衡濃度a と b は実験から決定されるパラメータであるがその物理的意味は多少希薄である これに対し理論的な意味を持つものに次のラングニュア(Langmuir)の吸着等温式がある
30
KCKCnn
+=
infin
1 (2)
ただしninfinは飽和吸着量Kは吸着平衡定数であるこの式は
1)吸着分子が固体表面で単分子以上の厚い層を作ることはない 2)吸着分子同士の間の相互作用はない
という二つの仮定にもとに導かれたものである 結果の整理および報告 Freundlich吸着等温式Langmuir吸着等温式の各々のパラメータの最適値を求めよまた活性炭の吸着特性および表面積について考察し化学工学における吸着操作の重要性につい
ても検討せよ 311 吸着等温式 (a) ヘンリー(Henry)型吸着等温式 液相の濃度あるいは気相の圧力が小さい場合吸着分子間の距離が十分に長いため吸着
分子同士の相互作用が無視でき固体表面と吸着分子のみの相互作用で吸着量を決定できる
とき次式のように表される
n=KC (3)
ここでKは比例定数である図 3-1の(a)に示すように濃度 Cと吸着量 nは比例関係があり一般に吸着量が小さい範囲で成立する気体の場合は溶液濃度 Cの代わりに気相圧力 pを用いればよい
濃度(分圧)
濃度(分圧)
濃度(分圧)
濃度(分圧)
吸着量
吸着量
吸着量
吸着量
(a)ヘンリー型 (b)ラングミュア型
(d)BET型(c)フロインドリッヒ型
0
0
0
0
図 3-1 吸着等温式
31
(b)ラングミュア(Langmuir)型吸着等温式 ラングミュアは図 3-2 に示すように固体表面に同等な吸着力を示す吸着サイトがあり
表面に 1分子層だけ吸着する(単分子層吸着)と仮定して平衡状態における吸着量と溶質濃度(気相分圧)のと関係を導いた全吸着点のうち吸着分子に覆われている吸着点の割合
をθ[-]とすると分子の脱着速度 rrsquo[mols-1]はθに比例する比例定数を a[mols-1]とすると次式のように表される
吸着剤
吸着分子
吸着サイト
図 3-2 固体表面上の吸着サイト(Langmuir式の導出) r=aθ (6) また気相からの吸着速度 r[mols-1]は空いている吸着点の割合(1-θ)[-]と溶液濃度 C[molm-3]に比例する rrsquo= b(1-θ)C (7) このときの比例定数を b[m3s-1]とするまた平衡状態では両速度は見かけ上等しいため以下の式が成り立つ aθ=b(1-θ)C (8) これを変形する
CbaCbsdot+
sdot=θ (9)
ここで飽和吸着量を ninfin[molkg-1] ba を K[m3mol-1](Kは吸着平衡定数)とおくと infin=nnθ
となるので次式が得られる
32
KCKCnn
+=
infin
1 (10)
これをラングミュア式と呼ぶ
(c)フロインドリッヒ(Freundlich)型吸着等温式 フロインドリッヒの吸着等温線は図 3-1(c)のように示される
n=aC1b (11) nは吸着量[molkg-1]で aと bはともに吸着定数[-]である (d)BET(Brunauer-Emmett-Teller) 型吸着等温式
BET型の吸着等温線は図 3-1(d)に示されるラングミュア式は表面に 1分子層だけ吸着すると仮定したものであるがBET式は無限分子層まで吸着できる式である図 3-3に示すように吸着した分子がそれぞれ次の層の吸着サイトとなり分子は積み重なって多分子
層に無限層まで吸着できるものとし各層への吸着にラングミュア式を適用すれば次式の
ように表せる
( ) ( )CKCCCKqq
minus+sdotminussdotsdot
=infin
11 (12)
この式は多孔質固体の細孔表面積を窒素ガスの吸着によって測定する際に利用される重要な式
である
表面の吸着サイト
分子上の吸着サイト
図 3-3 多分層吸着モデル
Langmuir式のパラメータ決定法 水溶液からの酢酸の活性炭に対する吸着平衡データ(吸着平衡温度 12)は表 3-1のよ
うに与えられる実験データよりラングミュア式のパラメータ(K吸着平衡定数ninfin飽和吸着量)を最小二乗法で決定せよさらにラングミュア式より決定した ninfinKの値を用いて吸着等温線を計算し計算線として図に示し実験点と比較せよ
33
表 3-1 n C Cnの関係
ラングミュア式は式(310)で与えられるこの式を変形すると次式となる
CKnCK
n infinsdot+
=11
(313)
両辺に Cをかけると以下の式が導出される
CCnKnCKn
CCKn
Cβ+α+
==
+= infininfininfin
11)1( (314)
ただしα=1ninfinβ=1(ninfinK)とする式(314)より Cn と C の関係のグラフプロットは傾きα=1ninfin切片β=1(ninfinK)の直線関係を与えることを示している表 3-1の値を用いて計算した Cnと Cの関係を表 3-1および図 3-4に示す 最小二乗法を用いて傾きαと切片βを決定した α=1ninfin=43865 β=1(ninfinK)=2654 得られた傾きおよび切片よりninfinおよび Kは次のように求まる
ninfin=1α=1D18=000228 molg-1 K =(1ninfin)β=αβ=D18C18=165
0
50
100
150
200
0 200 400 600
C [ molm-3 ]
Cn [ kgm-3 ]
傾き = 1 ninfin
1 ninfinK
切片0
05
1
15
2
25
3
0 100 200 300 400 500
液相の溶質濃度 C [ molm-3 ]
吸着量 n [ molkg-1]
液相と溶質濃度 C [ molm-3 ]
吸着量
n[ m
olk
g-1]
実験点
Langmuir式パラメータninfin 00033 [ molg-1 ]K 00086 [ m3 mol -1 ]
図 3-4 ラングミュア定数の決定 図 3-5 12における酢酸濃度 Cと
吸着量 nの関係
C [molm-3] n [molkg-1] Cn [kgm-3] 460 225 109 529 214
268 199 149 105 060
172 128 732 504 357
34
Freundlich式のパラメータ決定法 酢酸水溶液中における酢酸の活性炭に対する吸着実験を行ったところ以下のような実験デー
タを得たただしCbはバルク相における酢酸濃度n は活性炭に対する酢酸の吸着量を示す
Cb[molL] n[molg] log10Cb log10n 04621 000205 02410 000175 01139 000139 00519 000105 00243 000081
実験データを利用して次式で与えられる Freundlichの等温吸着式の定数 abの値を求めたい
bbaCn1
= (1)
このままでは定数 abの値を決定することが難しいので上式の両辺の対数をとる
bbb
bb
Cb
aCa
aCn
ln1lnlnln
)ln(ln1
1
+=+=
=
(2)
ここで横軸に ln Cb縦軸に ln nの関係をグラフにプロットするすなわち x=ln Cby=ln nと考える
bCb
an ln1lnln += (3)
ここで直線式 y=a0+a1xと比較するすなわち
)(1)(ln
1
00
傾き
切片
ba
eaaa a
=
=rarr= (4)
a0および a1は最小二乗法により数値で求められる与えられたデータでは a1= a0= なので a= b= となる この値を n=acb
1bに代入してcb=0~05の範囲で nの値を計算する
35
BET式のパラメータ決定法 BET式は次式で与えられる
)1)(1( KCCCKCnn
+minusminus=
infin
(17)
以下のように BET式の変形を行う
)1()1(
KCCKCnCn+minus
=minusinfin
(18)
(18)式の逆数をとると
KCnCK
KCnKCC
Cn infininfin
minus+=
+minus=
minus)1(1)1(
)1(1
(19)
(19)式の両辺に Cをかえると
KCnCKC
CnC
infin
minus+=
minus))1(1(
)1( (20)
(20)式を変形すると次式が得られる
CKn
KKnCn
Cinfininfin
minus+=
minus11
)1( (21)
C と)-(1 Cn
Cのプロットは傾き
KnKinfin
minus1切片
Kninfin
1の直線関係を与えることを示している
これをグラフにプロットし最小二乗法に傾きおよび切片を求める
36
312 活性炭の比表面積の決定 酢酸分子の構造を以下に示す
Hc-Cb-Ca
Hd
Hb Oa
Ob-Ha
1219deg
Ca Oa
Ob
図 36 酢酸の構造
酢酸の 1分子の吸着面積srsquo [m2]を図 3-6に示すこのとき文献より
Caと Oaの結合距離 1321Å Caと Obの結合距離 1206Å OaCaObの角度 1219deg Cの原子半径 077Å Oの原子半径 062Å
したがって吸着面積 Slsquoは次のようになる
( ) ( ) 2088 10376109931036321 minusminusminus times=timestimestimestimes=s m2
ここで活性炭の比表面積 S[m2g]は次式で示される 10026 23 snS timestimestimes= infin
S活性炭の比表面積 [m2g] ninfin飽和吸着量 [molg] srsquo酢酸 1分子の吸着面積 [m2] 602times1023アボガドロ数 [個mol] したがって活性炭の比表面積 S[m2g]は
003350=infinn molg 2010376 minustimes=s m2 より
51281037610026003350 2023 =timestimestimestimes= minusS m2g
37
4 粘度密度測定 41 はじめに 大量生産を目的とした工業的化学プロセスはほとんど流れ系(流通系)であるそれらの系において操作対象となる各物質の粘度は装置を設計操作する場合きわめて重要
な物性値である 本実験では低分子溶液および高分子溶液の粘度測定を通じて液体の粘度について考察するさらに演習問題を通じて気体液体高分子溶液などの化学プロセスで対象となる物
質の輸送物性(粘度拡散係数)の重要性を認識されたい 42 低分子溶液の粘度 [目的] 種々の濃度のエタノール水溶液の粘度を測定しその溶液の粘度について考察する [概要] 25におけるエチルアルコール濃度 02040506080100 wt の水溶液について流下時間を測定しこの結果より相対粘度絶対粘度運動粘度を求めグラフにするま
た水の密度水-エチルアルコール溶液の密度についてはピクノメーターを用いて決
定する報告書には相対粘度絶対粘度運動粘度 vsエチルアルコール濃度の関係をそれぞれグラフにして提出する
[計算方法] 相対粘度絶対粘度運動粘度の定義は次のようになる
相対粘度 ww
w tdtd
ηη = (41)
η 混合溶液の粘度 [gcms] ηw水の粘度(8007times10-3 gcms) [gcms](25における粘度) d エチルアルコール水溶液の密度 [gcm3] dw水の密度(099704gcm3) [gcm3](25における密度) t エチルアルコール水溶液の流下時間 [s] tw水の流下時間 [s] 下付添字 W 水
絶対粘度 www td
tdη
η= (42)
運動粘度 ν=ηd [cm2s] (43)
38
[実験方法] 1) 粘度計を洗浄し粘度計内 に二連球で空気を送り込み
乾燥させる乾燥しにくい 場合はアセトンを滴下し た後再度二連球で空気 を送り込み乾燥させる 2)ピペットで一定体積(10mℓ) の純水を取り広い口 f から 粘度計に水を入れる 3)粘度計を恒温槽(25)に つけ約 10 分静置する 4)安全ピペッターを口 a に 取り付け液面が b 上部に 到達するまで吸い上げる 5)安全ピペッターを外すと 液面が降下しだす液面が bd 間を通過する時間をスト ップウォッチで測定する
6)純水での測定を 3 回繰り返す 7)純水を粘度計から取り除くその後粘度計内に二連球を用いて空気を送り込み乾燥させる 8)粘度計乾燥後複数の濃度に調整済みのエチルアルコール水溶液(10mℓ)を粘度計にいれ4)~6)の作業を繰り返し行う(3 回)なお濃度の異なるエチルアルコール水溶液を粘度計内に導入する場合には7)と同様に二連球を用いて粘度計内に空気を送り込み乾燥させる
表 4-1 エチルアルコール水溶液の濃度密度相対粘度の関係 エチルアルコール濃度
[wt] 密度 d[gcm3] 相対粘度
η ηw[-] 0
20 40 50 60 80
100
安全ピペッター接続
図 4-1 粘度計
液面の bd間の通過時
間を測定
f
39
43 密度測定 [目的] 本実験では水とエタノールの種々の組成の混合液体について密度を測定し分子間相互
作用について考察する [実験方法] 1)ピクノメーターの容積測定
図 4-2のピクノメーターの空の重量 wg を秤量する
ピクノメーターの蓋を取り外し
ピクノメーターを水で満たす
設定温度を 25として恒温槽 の電源を入れ恒温槽内の温 度が一定になるまで待つな お水温は恒温槽中の水銀温 度計から読む
恒温槽中に水を満たしたピク
ノメーターを入れる
約 10分間静置する
ピクノメーターに蓋をするこのときピクノメーターの容量
よりも余分の水は蓋の上部より排出される
ピクノメーターの外側を乾いた布で拭い秤量する(その重量を
wwg とする)
恒温槽の温度(25)における水の密度 dwgcm3(=099704gcm3)
より次式を用いてピクノメーターの容積を求める
w
w
dww
Vminus
= (44)
図 4-2 ピクノメーター
蓋
40
表 4-2 エチルアルコール水溶液の濃度と密度の測定結果(25) エチルアルコ
ール濃度[wt]
wrsquo[g] ww[g] V[cm3] w[g]
d[gcm3]
0 20 40 50 60 80
100
099704
エチルアルコール濃度[wt] 空のピクノメーターの重量 wrsquo[g] 水を入れたときのピクノメーターの重量 ww[g] ピクノメーターの体積 V[cm3] エタノール水溶液の入れたときのピクノメータの重さ w[g] エタノール水溶液の密度 d[gcm3]
容積 Vを求めたピクノメーターに混合溶液(調整済み)を入れてその重量 wgを秤量し次式で混合溶液の密度を求める
Vwwd minus
= (45)
エタノール濃度と密度 d の関係をグラフにプロットする
41
44 高分子溶液の粘度 [目的] 高分子溶液の粘度測定から分子量の粘度に与える影響について考察する [概要 ] オストワルド粘度計を用い種々の濃度のポリビニルアルコール(PVA ((-CH2CHOH-)n))水溶液の粘度を測定し粘度データよりポリビニルアルコールの分
子量を求める まず 05g100cc の濃度のポリビニルアルコール水溶液を調製する次にこれを原液
とし23 12 13 15の濃度の溶液を調製するこれらの溶液についてオストワルド粘度計を用いてそれぞれ流下時間を測定し相対粘度絶対粘度運動粘度を求め実験デ
ータより極限粘度[η]を求めるまた報告書には相対粘度絶対粘度運動粘度C
)ln( wηη
Cw
w-η
ηη vsポリビニルアルコール濃度の関係をそれぞれグラフにして提出する
[計算方法] エチルアルコール水溶液の粘度測定と同様の手法を用いて粘度の計算を行うなおポリビニルアルコール水溶液の密度はピクノメーターを用いて測定すること 表 4-3 ポリビニルアルコール水溶液の濃度密度相対粘度の関係 ポリビニルアルコール
濃度 [g100cc] 密度 d[gcm3] 相対粘度
η ηw[-] 05times(15) 05times(13) 05times(12) 05times(23)
05
42
[分子量の計算方法] 実験を行った結果以下のような粘度データを得られるとする実験データより極限粘度
を求めポリビニルアルコール(PVA)の分子量Mを決定せよ
PVA 水溶液濃度
C[g100cc]
相対粘度
ηηw[-]
絶対粘度
η[gcms]Cw
w-η
ηη
C)ln( wηη
05times(15) 1031 0008255 031 0305
05times(13) 039 0378
05times(12) 03 0289
05times(23) 0375 0353
05 0364 0334
ηw=8007times10-3 gcms 線状高分子の極限粘度[η]と分子量Mの関係は次式で与えられる [η]=KMα (46) ただしポリビニルアルコールの場合K=666times10-4α=064であるなお極限粘度[η]は次式で定義される
CC w
w
0
-][ limη
ηηη
rarr
= (47)
または
CC
)ln(][ w
0lim
ηηη
rarr
= (48)
よって濃度 CとCw
w-η
ηηまたは濃度 Cと
C)ln( wηη の関係をグラフ化し最小二乗法によ
り切片の値を求めると極限粘度[η]が決定される
Cw
w-η
ηηと C の関係より最小二乗法を用いて切片の値を決定すると(図 43 参照)切片=
03242傾き=00874となるよって極限粘度は以下のようになる[η]=03242同様
にC
)ln( wηη とcの関係より最小二乗法を用いて切片の値を決定する
(図 44参照)と切片=03249傾き=00256となり極限粘度は以下のようになる[η]=03249
Cw
w-η
ηηと Cの関係より決定した[η]=03242を用いてポリビニルアルコール(PVA)の
分子量 Mを計算する(46)式より以下のように PVAの分子量 Mを計算することができるM=([η]K)1α
=(03242(666times10-4))(1064)
=15811
43
y = 00874x + 03242
0
02
04
06
08
1
0 01 02 03 04 05 06 07
c[g100cc]
(η-ηw)(ηwc)
cw
w
η
ηηminus
極限粘度[η]
図 43 298Kにおける PVA濃度 CとCw
w-η
ηηの関係
y = 00256x + 03249
0
02
04
06
08
1
0 01 02 03 04 05 06 07
c[g100cc]
(ln(ηη
w))c
c)ln( wηη
極限粘度[η]
図 44 298Kにおける PVA濃度 CとC
)ln( wηη の関係
44
5 植物からの DNAの抽出 51 はじめに 分子レベルでの遺伝子の構造解明や遺伝子の発現に関する研究は近年急速に発展している
これら生命現象のしくみを分子レベルで解明しようという分子生物学の分野ではさまざま
な遺伝子の解析や応用方法が開発され我々の生活に身近なものになりつつある 本実験では初歩的な分子生物学に関する実験として植物(タマネギ)からの DNA の
抽出を行い抽出した遺伝子の電気泳動法による分離実験を試みる 52 試薬および器具 試薬 タマネギ(細胞中から遺伝子の抽出を行う) 台所用洗剤(洗剤中に含まれる界面活性剤には植物の細胞膜およびタンパク質を破壊す
る働きがある) 塩化ナトリウム(DNAは塩化ナトリウム水溶液に溶解し易い性質がある) エタノール(予め冷やしておくDNAはエタノールにほとんど溶解しない) 制限酵素(DNAを一定の部位で切断する働きを働きがある) TE緩衝液(pH緩衝剤が入った溶液) 器具 ビーカーミキサーフィルターメスシリンダー駒込ピペットガラス棒 マイクロピペット電気泳動装置ポラロイドカメラ 53 実験方法 1)タマネギは 1回の実験で半個のうち内側の半分程度を使用するタマネギ水 30ml台所用洗剤数滴をミキサー用ガラス容器に入れ40~60秒程度(固体状のタマネギがなくなる頃が目安)ミキサーにて混合する
2) 1)で作成した混合溶液をビーカーに移し約5g程度の塩化ナトリウムを加えガラス棒で静かに攪拌する粘性の大きな溶液が得られる
3) 2)で作成した溶液をフィルターを用いて濾過し濾液を回収する 4) 濾液の約2倍程度の量の冷エタノールをビーカーの壁伝いに静かに注ぐ 5) ビーカーを揺するとエタノール層に白くふわふわしたものが浮いてくるこれが DNAであるガラス棒で DNAを巻き取りシャーレ上にて DNAを回収する顕微鏡を用いて回収した DNAの状態を観察する
6)マイクロチューブ(容量 15ml)中に用意した 70エタノールを 8 分目程度まで注ぐ5)にて回収された DNAをマイクロピペットを用いて70エタノールの入ったマイクロチューブ中に移す軽く混ぜることによりDNA から不要な物質を洗い流す遠心分離してDNA をマイクロチューブの底に沈めた後溶液を捨てて DNA を乾かす乾いたらTE緩衝溶液を 1ml加えて放置するDNAの溶液が得られる
54 電気泳動装置による DNAの観察
本実験は職員と一緒に行うこと 実験を行う人はビニール手袋をすること 1) 抽出した DNAを電気泳動装置で観察するマイクロピペットを用いて以下のように調製した DNAの混合溶液を調製する(いずれの溶液も調製済)
45
2) マイクロピペットを用いてアガロースゲルの試料を流し込む穴(ウェル)に1)にて調製した溶液 Aおよび Bを注ぎ込む注入量は20μℓとする電気泳動装置のスイッチを入れて100Vの電流を流しアガロースゲル内にて DNAを電気泳動させる
3) 試料に予め加えられておいた青色の色素が 7 分目程度まで進んだら電気泳動を中止する(約 30分程度)
4) (ここでの作業は職員が行う) アガロースゲルを取り出し染色液に浸す染色後ゲルを取り出しポラロイドカメラで
DNAの泳動状態を撮影する
+ -
アガロースゲル
試料を流し込む穴(ウェル)
図 51 電気泳動装置
6 5 4 3 2 1
図 52 DNAの電気泳動写真の一例
55 電気泳動装置の原理 電気泳動装置の原理図を以下に示すアガロースゲル(寒天から不純物を除いたもの)中
に DNAをセットし電流を流すとDNAは電流の向きとは逆にマイナスからプラス方向
調製済 溶液 A(制限酵素なし) 水 11μℓ 10timesH Buffer 2microℓ 植物 DNA 5μℓ
調製済 溶液 B(制限酵素 Eco RI入り) 水 11μℓ 10timesH Buffer 2microℓ 植物 DNA 5μℓ 制限酵素 2μℓ
1 DNA(タマネギ)+制限酵素 2 DNA(タマネギ)+制限酵素 3 DNA(タマネギ) 4 λ-DNA(大腸菌)+制限酵素 5 λ-DNA(大腸菌) 6 サイズマーカー
500bp
46
に動く(このことを電気泳動という)これはDNA のリン酸部分が負に帯電しているためでありまたDNAはその長さにより泳動距離が異なる(短い遺伝子ほど長く泳動する)電気泳動ではこの性質を利用してDNAを大きさごとに分離することができる
塩基対数によってDNAを分離
EtBr (蛍光試薬)DNAの二本鎖内に入り込む
発光
UVλ=302nm
励起
分離後のアガロースゲルをエチジウムブロマイド(EtBr)溶液に浸す
DNAを含んだ溶液
アガロースゲル
リン酸部分が負に帯電
塩基 (ATGC)-
+
カメラで撮影
電圧
DNA構成成分(dNTPs)
バンドが明る
DNA量が
バンド(DNAの存在)
図 53 電気泳動の原理
56 制限酵素とは DNA は4 種類のヌクレオチド(GATC)が不規則につながってできている制限酵素はDNAの特定のヌクレオチドが並んでいる部分を切断する制限酵素には様々な種類がありEco RI(エコアールワン)と呼ばれる酵素は「GAATTC」といった並びの部分だけを切断することができる
GAATTC
CTTAAG
制限酵素
Eco RI
AAGCTT
TTCGAA
制限酵素
Hin dIII
図 54 制限酵素による DNAの切断
レポートについて 1 実験方法および実験結果の整理方法については指針書を参考にすること 2 実験結果については電気泳動の結果について考察すること(制限酵素の影響などにつ
いてまとめてください)
47
6 染色実験
61 はじめに
現在私達の身の周りでは様々な染料が使われている例えばT シャツやジーンズな
どの衣服は橙黄赤青など様々な色に染められている他にも私達が気付かないと
ころで多くの染色された製品を使用しているそこで本実験では高校の化学で学んだ
アゾ染料を合成してみるアゾ染料はアニリンを原料として作られているアニリンはベ
ンゼン環にアミノ基(-NH2)がついたものであるアニリンは無色の液体で水に溶けにく
くアンモニアより弱い塩基性を示すまたさらし粉(CaClO(ClO)H2O)水溶液を加えると
赤紫色を呈するこの呈色反応はアニリン特有のものであるので検出反応に用いられる
このアニリンを出発物質としてアゾ染料を合成してみる
62 試薬および使用器具
【試薬】 ①05moll 水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液
②2-ナフトール ③フェノール ④6moll 塩酸
⑤亜硝酸ナトリウム ⑥アニリン ⑦氷
【器具類】 ①電子天秤 ②50mℓビーカー ③100mℓビーカー
④ガラス棒 ⑤布(ガーゼなど) ⑥ピンセット
⑦ポリ手袋 ⑧ドライヤー ⑨シャーレ
10駒込ピペット(10ml ガラス製)
11駒込ピペット(1ml プラスチック製)
63 実験方法
1) 50mℓビーカーの中に 05molℓ水酸化ナトリウム水溶液 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回
NaOH 水溶液を分取するほぼ 20 mℓ分取できれば可)と 2-ナフトールを約 01g 入れ
よくかき混ぜる調製した溶液の中に布をつけその布はガラス棒でしぼってから(布
をガラス棒ですくいあげればよい)シャーレに広げる温度の異なる条件下(常温およ
び低温)で染料の合成実験を行うため布は最低 2枚調製した溶液と接触させそれ
ぞれ別々のシャーレ(低温用および常温用)に広げる
2) 新しいビーカーに水を約 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回分取)と 6molℓ塩酸約 4mℓ(10m
ℓ駒込ピペットで目分量で可)さらにアニリン約 1mℓ(プラスチック製 1 mℓ駒込ピペッ
ト)を入れてよくかき混ぜる染料の合成を常温および低温下で行うためこの溶液を
2つ調整する
低温下で反応させる溶液は恒温槽で 10~15 分ほどよく冷やした後亜硝酸ナトリウ
ム 05g を加えてよくかき混ぜる
常温下で反応させる溶液には冷却作業を行わずに亜硝酸ナトリウム 05g を加えて
よくかき混ぜる
3) 2)でつくった水溶液をシャーレに広げた布に注ぎ生成される染料を布によく染み
込ませ5分程放置する
4) 色の付いた布を取り出してポリ手袋をした手できれいに水洗いをし乾燥させる
48
5) 色差計を用いて乾燥した布の Lab(L明度aおよび b色度)を測定する
2)で作った溶液は5以下では無色の溶液ですが5以上になると淡い黄色になりま
す
【解説】
アゾ染料はアゾ基(-N=N-)を持っていてこのアゾ基によって鮮やかな橙色を呈色し
ます今回合成したアゾ染料は図の 1-フェニルアゾ-2-ナフトールです意外かもしれ
ませんが指示薬として使われているフェノールフタレインもアゾ化合物ですフェノール
フタレインは pH の変化によって色が出てきす染料の中でも最初は無色のものもありますが
温度を変化させたり酸性やアルカリ性にすると色が出てきます
ベンゼン ニトロベンゼン
N2Cl
ニトロ化 濃硫酸(濃硝酸)
還元反応 濃塩酸
(Sn又は Fe)
アニリン塩酸塩
遊離反応 NaOH
アニリン塩酸塩に強塩基を反応させる
と弱塩基であるアニリンが遊離する
氷冷+亜硝酸ナトリウム アニリン
塩酸
ジアゾ化
塩化ベンゼンジアゾニウム
塩化ベンゼンジアゾニウム
は熱によって窒素とフェノー
ルに分解される
カップリング
C10H7ONa (ナトリウム 2-ナフトキシド)
O
N =
1-フェニルアゾ 2-ナフトール
NH3Cl NH2
49
7 ガスクロマトグラフ質量分析計による茶葉中のカフェインの分析 71 はじめに ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)は極めて低い濃度の化学物質の同定や未知物質の構造決定に極めて強力な分析機器の一つであるGCMSを用いるとサンプルの中に含まれているある成分の分子構造(カフェインの分子構造を図 71に示す)やその量が分かりますもちろん分析機器ですので測定できる物質対象となる系や測定条件にはある
程度の制約があります混合物質を分離するガスクロマトグラフ(Gas ChromatographGC)と分離された成分(物質)を分析(構造決定と濃度測定)する質量分析計(Mass SpectrometerMS)を組み合わせた装置であるこの装置は有機化学生化学環境化学などの多くの分野で非常に多用されている例えば極めて低い濃度でも生体へ強い影響が懸念されるダイ
オキシン類などの土壌や河川の水中での含有率の決定や食品や医薬品中の微量成分の決定
にも利用されている 一方日本人に長い間親しまれてきた緑茶が近年産業界や医学
界で注目されている茶葉にはカフェイン(分子構造図 71)カテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドなどの有用成分が多く含まれておりその効能が注目されている 本実験では茶葉中に含まれるカフェインに対してGCMSを用いて分析する茶葉中には種々の物質が含まれておりGCMS分析を容易にするため前処理として超臨界二酸化炭素抽出(4015MPa程度の高圧力の二酸化炭素を溶剤として利用)により茶葉からカフェインの抽出を行いそのサンプルを GCMSにて分析する
図 71 カフェインの分子構造 図 72 物質の分析 個々の物質や装置についてはインターネットにより下記のWebサイトのフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』などにより調べるとよいカフェイン(caffeine)はアルカロイドの一種プリン環を持つプリンアルカロイドの一種でコーヒー類に含まれることか
らこの名がある化学名は137-トリメチルキサンチン(C8H10N4O2) コーヒーコーラ緑茶紅茶ガラナココアなどに含まれる(量は緑茶が一番多い)結晶は一水和物(C8H10N4O2bullH2O)もしくは無水物(無水カフェインC8H10N4O2)として得られ
る白色の針状または六角柱状結晶で匂いはなく味は苦い融点は 238昇華性がある出典フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』httpwwwwikipediaorg 装置「GCMS」httpwwwanshimadzucojpproductsgcmsqp2010htm (島津) 「超臨界抽出装置」httpwwwkagakucomjasco39-49html (日本分光)
50
レポート課題 1茶葉中に含まれるカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドの中から3つの物質を選びその物質について調べた結果を A4 レポート用紙2枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
2GCMS についてA4 レポート用紙1枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
3与えられたサンプルは茶葉1gから抽出されたのである実験結果よりもとの茶葉
1g中に含まれるカフェインの量を推算し計算式とあわせて示すこと 72 原理および装置 実験で使用する島津製の GCMS装置の全体図を図 73に原理の概略を図 74に示す
1
23
4
5
67 8
9
10
キャリアーガス
試料物質
1ボンベ(He)2圧力計3マイクロシリンジ4サンプラー5試料導入部6分離カラム
7セパレーター8イオン化室9磁石10電子増倍管11記録計
11
図 74 ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)の概略図
サンプルフォルダー
51
GCMS 装置は分離部である図中の 1~6 のガスクロマトグラフ(GC)と7~11 の検出部である質量分析計(MS)から構成される 3のマイクロシリンジを用いて試料を GCMSに導入する導入された試料は5試料導入部でガス化され6分離カラムに導入される分離カラムには吸着剤が充填されおり混合物の試料を導入した場合各物質と吸着剤との
親和性の違いにより各物質の分離カラムから排出されるタイミングは異なる分離カラム
を排出された試料は8イオン化室でイオン化され10電子倍増管にて検出される アセトンに溶解したカフェインの GCMSによる分析結果の一例を以下に示す図 75にク
ロマトグラム図 76にカフェインのピークのマススペクトルを示す
図 75 GCMSにより得られたクロマトグラム
横軸がリテンションタイムで縦軸がピーク強度を表す
図 76 カフェインのマススペクトルとカフェイン(分子量MW=194)の構造
(図 75中のリテンションタイム 126min付近のピークに起因するマススペクトル) 茶葉中にはカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイド以外にも繊維であるセルロースなど多くの物質が含まれているため茶葉そのものを
そのままサンプルとしてGCMSで分析することは困難であるセルロースなどの分子量の大きな物質はカラムに詰まってしまい分析できないそこで今回は超臨界二酸化炭素
による抽出により主にカフェインを他の物質と分離抽出した通常よく利用されるアセ
トン抽出(アセトンに茶葉を浸し特定の成分を抽出する)ではカフェイン以外にも多く
の物質が抽出されるため図 75 のような単独のピークを得ることは難しく複数のピークがクロマトグラムに見られるこのサンプル(この場合茶葉からの抽出物)にはカフェ
イン以外の不純物は少なかったがガスクロマトグラフの分離カラムによりさらにそれ
らの混合物が精度よく分離されるクロマトグラムのピークはそれらサンプル中に含まれ
ていた個々の物質を表しているクロマトグラムのピークを選択することで分子構造解析
したい物質を選んだことになる選択したクロマトグラムのピークの表している物質(ここ
ではカフェイン)に対応するマススペクトルが図 76 に表示されているマススペクトル
52
で横軸がその成分(ここではカフェイン)分子を構成している原子の原子量で縦軸がそ
の量を表しているのでマススペクトルから分子構造を解析するためにコンピュータ内
に蓄えられた物質ごとのマススペクトルデータと今回測定したマススペクトル(分子内に含
まれている各原子の数)を比較することで測定したサンプル中のクロマトピークを選択し
た分子がどのような原子をどれだけ含んだ分子であったかがわかりそれからその物質
がどのような分子構造の物質である可能性が高いかをコンピュータが検索し結果を示す 73 実験サンプルの設置と GCMS装置の操作方法 実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS装置のサンプルフォルダ
ー(図 73)にセットするこのサンプルは茶葉 1gを 50ccの高圧セルにて超臨界二酸化炭素を利用して4015MPa2時間接触の条件で抽出した固体を10gのアセトンに溶かしたものである またコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に装置および装置制
御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 本実験で使用する GCMS の操作は全てコンピュータのモニター上で GCMS の解析プログラムソフトを使用することで行うコンピュータの操作方法を以下に示す なおコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS 装置のサンプルフォルダー(図 73)にセットするまた装置および装置制御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 1)パソコンのデスクトップ上のアイコン「GCMS 分析」をクリックすると以下のようにGCMS制御プログラムを起動するその後「OK」ボタンをクリックする
図 77 GCMD分析用ソフトウェア「GCMS分析」の起動
まず「GC-MS分析」をクリック
「OK」ボタンをクリック
53
2)制御プログラムが起動されパソコンと GCMSの接続が開始される
図 78 「GCMS分析」の接続確認画面 3)GCMSとパソコンの接続が完了すると以下のような画面が表示される
図 79 「GCMS分析」操作画面
4)マススペクトルによる分子構造の解析 サンプル(この場合茶葉からの抽出物)には多くの物質が混じり合っていたがガス
クロマトグラフの分離カラムによりそれらの混合物が精度よく分離されるクロマトグラ
ムのピークはそれらサンプル中に含まれていた個々の物質を表しているクロマトグラム
のピークを選択することで分子構造解析したい物質を選んだことになる選択したクロマ
トグラムのピークの表している物質(ここではカフェイン)に対応するマススペクトルを選
択するマススペクトルは横軸が原子量で縦軸がその量を表しているのでマススペク
トルから分子構造を解析するために「定性処理」を行う シミラリティ検索結果が表示され分析により得られたスペクトルと類似のスペクトルを有
する物質の一覧が表示される上部に表示される物質ほどスペクトルが一致していること
を示す
接続状況が表示される
「トップへ」
をクリック
54
図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果
図 711 表示スペクトルのシミラリティ検索結果 10)図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果の印刷 「レポート(R)」をクリックし「検索結果(R)」をクリックすると検索結果が印刷される
GC-MS 分析で得られたマスス
ペクトル
データベース中
のマススペクト
ル
55
参考資料 生理活性物質の精製 カフェインの利尿作用のように生物活動に影響を与える物質を生理活性物質といいます
天然物には生理活性物質を多く含むものがあります一般に天然物は多くの成分を含ん
でおり特定の生理活性物質を分離抽出するには種々の分離技術が必要ですまた生
理活性物質には60以上の温度でその生理活性を失う(失活)ものや溶剤として広く用いられているクロロホルムなどの有機溶剤中で失活するものが多いそこでこれら生理活性
物質の分離精製技術の開発が望まれており30~60程度のマイルドな温度条件で操作できる二酸化炭素を機能性溶媒として利用する超臨界抽出も有効な分離技術として注目されて
いる超臨界二酸化炭素は気体と液体の中間の性質を持ち物質の分離に役立っています 臨界点付近の高密度気体は超臨界ガスまたは超臨界流体と呼ばれ臨界圧力前後でそ
の溶解能力が著しく変化することから工業的にも種々の分野で利用されています一例と
して超臨界二酸化炭素(SC-CO2)によるコーヒー豆からのカフェインの抽出プロセス(a)
ならびに超臨界二酸化炭素に対するカフェインの溶解度(b)を図に示します図(c)に示す
ように固体のカフェインがガスである超臨界二酸化炭素に溶解します
このように超臨界二酸化炭素を用いた技術はコーヒー豆からのカフェインの抽出プロ
ポリスからの生理活性物質の抽出に利用されています
図 超臨界二酸化炭素抽出を用いたコーヒー豆からのカフェインの抽出
56
付表 最小二乗法について 直線で近似する場合 f (x) = a0 + a1x (A1-1) 式(A1-1)のように近似させるとする測定値 yiとの残差を eiとすると式(A1-2)のようになる ei = yi - f (xi) = yi - ( a0 + a1xi ) (A1-2) ここで式(A1-2)の両辺を二乗してその i に関する総和をとりその値を S とすると次式となる
sumsum==
+minus==n
iii
n
ii xaayeS
1
210
1
2 )( (A1-3)
S を最小化するような a0a1を求める式(A1-3)を a0a1について偏微分すると次式とな
る
sum=
+minuspartpart
=partpart n
iii xaay
aaS
1
210
00)( sum
=
+minusminus=n
iii xaay
110 )(2 (A1-4)
同様にa1について編微分すると次式のようになる
sum=
+minusminus=partpart n
iiii xxaay
aS
110
1])([2 (A1-5)
Sが最小となる時は次式が同時に満たされる時である
00=
partpartaS
01=
partpartaS
(A1-6)
よって誤差が最小となる a0a1を求めるためには式(A1-6)を連立して解けばよい
sumsumsum===
+=n
ii
n
i
n
ii xaay
111
10 1 (A1-7)
sumsumsum===
+=n
ii
n
ii
n
iii xaxaxy
1
2
11
10 (A1-8)
式(A1-7)と式(A1-8)を a0a1を変数とみなし連立して解くと次式を得る
n組のデータ(xiyi)(i=12hellipn)に対して回帰直線 y= a0 + a1x を最小二乗法で求めて出力しデータ番号 iデータ yi直線で推定した値 )( ii bxay += および残差
iii yy minus=ε を出力するようなプログラムをつくりたい基礎式を導出せよ (ヒント残差の二乗の和が最小になるように係数 a0a1)を定めるのが最小二乗法
である)
57
sumsum
sumsumsumsum
==
====
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
n
ii
n
ii
xxn
xxyyxa
1
2
1
2
1111
2
0
)(
))(())(( (A1-9)
sumsum
sumsumsum
==
===
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
xxn
yxxyna
1
2
1
2
1111
)(
))(()( (A1-10)
よって式(A1-9)(A1-10)を用いれば最も誤差を小さくするような直線 y = a0 + a1x が求められる
y=a1x+a0 にて近似
誤差 ei
x
y
誤差が最小になる関数(直線 y=a1x+a0の場合)
図1 最小二乗による近似
誤差の和Sが最小
S
a0
a1
直線 y=a1x+a0 の近似
誤差の全体の和はS=Σei=Σyi-(a1xi+a0)
Sは変曲点にて最小値を示すすなわち(partSparta0)=0 (partSparta1)=0
図2 a0a1とSの関係
28
ここで以下のような直線の式が得られたとします
9135ln31690ln913531690 minus=there4minus= bCnxy
上式より切片は-5913傾きは 03169となるので以下の要領で定数 a1bを計算します ==there4minus= minus 91359135ln eaa 000270
316901=
b
a の値を Excel で計算させる場合は任意のセルに以下のような数式を入力することで求めることができます
=exp(-5913) これでFerundlich等温吸着式の定数 a1bの値が決定しましたこの値は後で使うのでノートなどにメモしておいてください 次に決定した Ferundlich 等温吸着式の定数 a1b の値を用いてFerundlich 等温吸着式のグラフを作成します先ほども示したように Ferundlich等温吸着式は次式で表されます
bbaCn1
=
従って定数 aと 1bの値はすでに決定しているので任意の Cbの値に対する nの値を数点求めればFerundlich等温吸着式で求めた理論線が得られます以下の操作で理論線を引くことができます Langmuir 等温吸着式による相関のときと同様にExcel の「吸着データ」のシート上の任意の場所に以下のような表を作成します
次に Ferundlich等温吸着式に従いnの値を計算します
bbaCn1
=
式中の定数 a1bは先ほど計算した値を用いますしたがって式は次のようになります
31690002700 bCn times=
この式を Excelのセル内に記入すれば計算ができます次の
29
ように記入します
=00027G5^03169 ここで式中の「G5」は Cbの値が 0のセルを指しています各個人の位置によって変えてください 次に式を記入したセルを Cbの値が 05のところまでオートフィルを行いますそうするとすべての Cbに対して nの値が計算されます
これで Freundlich等温吸着式のデータが完成しましたので次に「Graph1」酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着量 n[molg]の関係のグラフにこのデータを追加し理論線を引きます理論線の引き方は Langmuirによる相関のときと同様の操作を行ってください グラフの書式等を変更し整理すると以下のようなグラフが出来上がります
310 吸着等温線とは 固体の吸着剤を溶液と接触させる時一定量の吸着剤によって吸着される溶質の量は温度一定ならば溶質の濃度の関数になる一定温度での吸着量を温度に対してプロットした時に
得られる曲線を吸着等温線というこの吸着等温線を比較的よく表す経験式として次の
Freundlich式がある
n=aC1b (1) ここで n は吸着剤の質量あたりの吸着量C は吸着平衡濃度a と b は実験から決定されるパラメータであるがその物理的意味は多少希薄である これに対し理論的な意味を持つものに次のラングニュア(Langmuir)の吸着等温式がある
30
KCKCnn
+=
infin
1 (2)
ただしninfinは飽和吸着量Kは吸着平衡定数であるこの式は
1)吸着分子が固体表面で単分子以上の厚い層を作ることはない 2)吸着分子同士の間の相互作用はない
という二つの仮定にもとに導かれたものである 結果の整理および報告 Freundlich吸着等温式Langmuir吸着等温式の各々のパラメータの最適値を求めよまた活性炭の吸着特性および表面積について考察し化学工学における吸着操作の重要性につい
ても検討せよ 311 吸着等温式 (a) ヘンリー(Henry)型吸着等温式 液相の濃度あるいは気相の圧力が小さい場合吸着分子間の距離が十分に長いため吸着
分子同士の相互作用が無視でき固体表面と吸着分子のみの相互作用で吸着量を決定できる
とき次式のように表される
n=KC (3)
ここでKは比例定数である図 3-1の(a)に示すように濃度 Cと吸着量 nは比例関係があり一般に吸着量が小さい範囲で成立する気体の場合は溶液濃度 Cの代わりに気相圧力 pを用いればよい
濃度(分圧)
濃度(分圧)
濃度(分圧)
濃度(分圧)
吸着量
吸着量
吸着量
吸着量
(a)ヘンリー型 (b)ラングミュア型
(d)BET型(c)フロインドリッヒ型
0
0
0
0
図 3-1 吸着等温式
31
(b)ラングミュア(Langmuir)型吸着等温式 ラングミュアは図 3-2 に示すように固体表面に同等な吸着力を示す吸着サイトがあり
表面に 1分子層だけ吸着する(単分子層吸着)と仮定して平衡状態における吸着量と溶質濃度(気相分圧)のと関係を導いた全吸着点のうち吸着分子に覆われている吸着点の割合
をθ[-]とすると分子の脱着速度 rrsquo[mols-1]はθに比例する比例定数を a[mols-1]とすると次式のように表される
吸着剤
吸着分子
吸着サイト
図 3-2 固体表面上の吸着サイト(Langmuir式の導出) r=aθ (6) また気相からの吸着速度 r[mols-1]は空いている吸着点の割合(1-θ)[-]と溶液濃度 C[molm-3]に比例する rrsquo= b(1-θ)C (7) このときの比例定数を b[m3s-1]とするまた平衡状態では両速度は見かけ上等しいため以下の式が成り立つ aθ=b(1-θ)C (8) これを変形する
CbaCbsdot+
sdot=θ (9)
ここで飽和吸着量を ninfin[molkg-1] ba を K[m3mol-1](Kは吸着平衡定数)とおくと infin=nnθ
となるので次式が得られる
32
KCKCnn
+=
infin
1 (10)
これをラングミュア式と呼ぶ
(c)フロインドリッヒ(Freundlich)型吸着等温式 フロインドリッヒの吸着等温線は図 3-1(c)のように示される
n=aC1b (11) nは吸着量[molkg-1]で aと bはともに吸着定数[-]である (d)BET(Brunauer-Emmett-Teller) 型吸着等温式
BET型の吸着等温線は図 3-1(d)に示されるラングミュア式は表面に 1分子層だけ吸着すると仮定したものであるがBET式は無限分子層まで吸着できる式である図 3-3に示すように吸着した分子がそれぞれ次の層の吸着サイトとなり分子は積み重なって多分子
層に無限層まで吸着できるものとし各層への吸着にラングミュア式を適用すれば次式の
ように表せる
( ) ( )CKCCCKqq
minus+sdotminussdotsdot
=infin
11 (12)
この式は多孔質固体の細孔表面積を窒素ガスの吸着によって測定する際に利用される重要な式
である
表面の吸着サイト
分子上の吸着サイト
図 3-3 多分層吸着モデル
Langmuir式のパラメータ決定法 水溶液からの酢酸の活性炭に対する吸着平衡データ(吸着平衡温度 12)は表 3-1のよ
うに与えられる実験データよりラングミュア式のパラメータ(K吸着平衡定数ninfin飽和吸着量)を最小二乗法で決定せよさらにラングミュア式より決定した ninfinKの値を用いて吸着等温線を計算し計算線として図に示し実験点と比較せよ
33
表 3-1 n C Cnの関係
ラングミュア式は式(310)で与えられるこの式を変形すると次式となる
CKnCK
n infinsdot+
=11
(313)
両辺に Cをかけると以下の式が導出される
CCnKnCKn
CCKn
Cβ+α+
==
+= infininfininfin
11)1( (314)
ただしα=1ninfinβ=1(ninfinK)とする式(314)より Cn と C の関係のグラフプロットは傾きα=1ninfin切片β=1(ninfinK)の直線関係を与えることを示している表 3-1の値を用いて計算した Cnと Cの関係を表 3-1および図 3-4に示す 最小二乗法を用いて傾きαと切片βを決定した α=1ninfin=43865 β=1(ninfinK)=2654 得られた傾きおよび切片よりninfinおよび Kは次のように求まる
ninfin=1α=1D18=000228 molg-1 K =(1ninfin)β=αβ=D18C18=165
0
50
100
150
200
0 200 400 600
C [ molm-3 ]
Cn [ kgm-3 ]
傾き = 1 ninfin
1 ninfinK
切片0
05
1
15
2
25
3
0 100 200 300 400 500
液相の溶質濃度 C [ molm-3 ]
吸着量 n [ molkg-1]
液相と溶質濃度 C [ molm-3 ]
吸着量
n[ m
olk
g-1]
実験点
Langmuir式パラメータninfin 00033 [ molg-1 ]K 00086 [ m3 mol -1 ]
図 3-4 ラングミュア定数の決定 図 3-5 12における酢酸濃度 Cと
吸着量 nの関係
C [molm-3] n [molkg-1] Cn [kgm-3] 460 225 109 529 214
268 199 149 105 060
172 128 732 504 357
34
Freundlich式のパラメータ決定法 酢酸水溶液中における酢酸の活性炭に対する吸着実験を行ったところ以下のような実験デー
タを得たただしCbはバルク相における酢酸濃度n は活性炭に対する酢酸の吸着量を示す
Cb[molL] n[molg] log10Cb log10n 04621 000205 02410 000175 01139 000139 00519 000105 00243 000081
実験データを利用して次式で与えられる Freundlichの等温吸着式の定数 abの値を求めたい
bbaCn1
= (1)
このままでは定数 abの値を決定することが難しいので上式の両辺の対数をとる
bbb
bb
Cb
aCa
aCn
ln1lnlnln
)ln(ln1
1
+=+=
=
(2)
ここで横軸に ln Cb縦軸に ln nの関係をグラフにプロットするすなわち x=ln Cby=ln nと考える
bCb
an ln1lnln += (3)
ここで直線式 y=a0+a1xと比較するすなわち
)(1)(ln
1
00
傾き
切片
ba
eaaa a
=
=rarr= (4)
a0および a1は最小二乗法により数値で求められる与えられたデータでは a1= a0= なので a= b= となる この値を n=acb
1bに代入してcb=0~05の範囲で nの値を計算する
35
BET式のパラメータ決定法 BET式は次式で与えられる
)1)(1( KCCCKCnn
+minusminus=
infin
(17)
以下のように BET式の変形を行う
)1()1(
KCCKCnCn+minus
=minusinfin
(18)
(18)式の逆数をとると
KCnCK
KCnKCC
Cn infininfin
minus+=
+minus=
minus)1(1)1(
)1(1
(19)
(19)式の両辺に Cをかえると
KCnCKC
CnC
infin
minus+=
minus))1(1(
)1( (20)
(20)式を変形すると次式が得られる
CKn
KKnCn
Cinfininfin
minus+=
minus11
)1( (21)
C と)-(1 Cn
Cのプロットは傾き
KnKinfin
minus1切片
Kninfin
1の直線関係を与えることを示している
これをグラフにプロットし最小二乗法に傾きおよび切片を求める
36
312 活性炭の比表面積の決定 酢酸分子の構造を以下に示す
Hc-Cb-Ca
Hd
Hb Oa
Ob-Ha
1219deg
Ca Oa
Ob
図 36 酢酸の構造
酢酸の 1分子の吸着面積srsquo [m2]を図 3-6に示すこのとき文献より
Caと Oaの結合距離 1321Å Caと Obの結合距離 1206Å OaCaObの角度 1219deg Cの原子半径 077Å Oの原子半径 062Å
したがって吸着面積 Slsquoは次のようになる
( ) ( ) 2088 10376109931036321 minusminusminus times=timestimestimestimes=s m2
ここで活性炭の比表面積 S[m2g]は次式で示される 10026 23 snS timestimestimes= infin
S活性炭の比表面積 [m2g] ninfin飽和吸着量 [molg] srsquo酢酸 1分子の吸着面積 [m2] 602times1023アボガドロ数 [個mol] したがって活性炭の比表面積 S[m2g]は
003350=infinn molg 2010376 minustimes=s m2 より
51281037610026003350 2023 =timestimestimestimes= minusS m2g
37
4 粘度密度測定 41 はじめに 大量生産を目的とした工業的化学プロセスはほとんど流れ系(流通系)であるそれらの系において操作対象となる各物質の粘度は装置を設計操作する場合きわめて重要
な物性値である 本実験では低分子溶液および高分子溶液の粘度測定を通じて液体の粘度について考察するさらに演習問題を通じて気体液体高分子溶液などの化学プロセスで対象となる物
質の輸送物性(粘度拡散係数)の重要性を認識されたい 42 低分子溶液の粘度 [目的] 種々の濃度のエタノール水溶液の粘度を測定しその溶液の粘度について考察する [概要] 25におけるエチルアルコール濃度 02040506080100 wt の水溶液について流下時間を測定しこの結果より相対粘度絶対粘度運動粘度を求めグラフにするま
た水の密度水-エチルアルコール溶液の密度についてはピクノメーターを用いて決
定する報告書には相対粘度絶対粘度運動粘度 vsエチルアルコール濃度の関係をそれぞれグラフにして提出する
[計算方法] 相対粘度絶対粘度運動粘度の定義は次のようになる
相対粘度 ww
w tdtd
ηη = (41)
η 混合溶液の粘度 [gcms] ηw水の粘度(8007times10-3 gcms) [gcms](25における粘度) d エチルアルコール水溶液の密度 [gcm3] dw水の密度(099704gcm3) [gcm3](25における密度) t エチルアルコール水溶液の流下時間 [s] tw水の流下時間 [s] 下付添字 W 水
絶対粘度 www td
tdη
η= (42)
運動粘度 ν=ηd [cm2s] (43)
38
[実験方法] 1) 粘度計を洗浄し粘度計内 に二連球で空気を送り込み
乾燥させる乾燥しにくい 場合はアセトンを滴下し た後再度二連球で空気 を送り込み乾燥させる 2)ピペットで一定体積(10mℓ) の純水を取り広い口 f から 粘度計に水を入れる 3)粘度計を恒温槽(25)に つけ約 10 分静置する 4)安全ピペッターを口 a に 取り付け液面が b 上部に 到達するまで吸い上げる 5)安全ピペッターを外すと 液面が降下しだす液面が bd 間を通過する時間をスト ップウォッチで測定する
6)純水での測定を 3 回繰り返す 7)純水を粘度計から取り除くその後粘度計内に二連球を用いて空気を送り込み乾燥させる 8)粘度計乾燥後複数の濃度に調整済みのエチルアルコール水溶液(10mℓ)を粘度計にいれ4)~6)の作業を繰り返し行う(3 回)なお濃度の異なるエチルアルコール水溶液を粘度計内に導入する場合には7)と同様に二連球を用いて粘度計内に空気を送り込み乾燥させる
表 4-1 エチルアルコール水溶液の濃度密度相対粘度の関係 エチルアルコール濃度
[wt] 密度 d[gcm3] 相対粘度
η ηw[-] 0
20 40 50 60 80
100
安全ピペッター接続
図 4-1 粘度計
液面の bd間の通過時
間を測定
f
39
43 密度測定 [目的] 本実験では水とエタノールの種々の組成の混合液体について密度を測定し分子間相互
作用について考察する [実験方法] 1)ピクノメーターの容積測定
図 4-2のピクノメーターの空の重量 wg を秤量する
ピクノメーターの蓋を取り外し
ピクノメーターを水で満たす
設定温度を 25として恒温槽 の電源を入れ恒温槽内の温 度が一定になるまで待つな お水温は恒温槽中の水銀温 度計から読む
恒温槽中に水を満たしたピク
ノメーターを入れる
約 10分間静置する
ピクノメーターに蓋をするこのときピクノメーターの容量
よりも余分の水は蓋の上部より排出される
ピクノメーターの外側を乾いた布で拭い秤量する(その重量を
wwg とする)
恒温槽の温度(25)における水の密度 dwgcm3(=099704gcm3)
より次式を用いてピクノメーターの容積を求める
w
w
dww
Vminus
= (44)
図 4-2 ピクノメーター
蓋
40
表 4-2 エチルアルコール水溶液の濃度と密度の測定結果(25) エチルアルコ
ール濃度[wt]
wrsquo[g] ww[g] V[cm3] w[g]
d[gcm3]
0 20 40 50 60 80
100
099704
エチルアルコール濃度[wt] 空のピクノメーターの重量 wrsquo[g] 水を入れたときのピクノメーターの重量 ww[g] ピクノメーターの体積 V[cm3] エタノール水溶液の入れたときのピクノメータの重さ w[g] エタノール水溶液の密度 d[gcm3]
容積 Vを求めたピクノメーターに混合溶液(調整済み)を入れてその重量 wgを秤量し次式で混合溶液の密度を求める
Vwwd minus
= (45)
エタノール濃度と密度 d の関係をグラフにプロットする
41
44 高分子溶液の粘度 [目的] 高分子溶液の粘度測定から分子量の粘度に与える影響について考察する [概要 ] オストワルド粘度計を用い種々の濃度のポリビニルアルコール(PVA ((-CH2CHOH-)n))水溶液の粘度を測定し粘度データよりポリビニルアルコールの分
子量を求める まず 05g100cc の濃度のポリビニルアルコール水溶液を調製する次にこれを原液
とし23 12 13 15の濃度の溶液を調製するこれらの溶液についてオストワルド粘度計を用いてそれぞれ流下時間を測定し相対粘度絶対粘度運動粘度を求め実験デ
ータより極限粘度[η]を求めるまた報告書には相対粘度絶対粘度運動粘度C
)ln( wηη
Cw
w-η
ηη vsポリビニルアルコール濃度の関係をそれぞれグラフにして提出する
[計算方法] エチルアルコール水溶液の粘度測定と同様の手法を用いて粘度の計算を行うなおポリビニルアルコール水溶液の密度はピクノメーターを用いて測定すること 表 4-3 ポリビニルアルコール水溶液の濃度密度相対粘度の関係 ポリビニルアルコール
濃度 [g100cc] 密度 d[gcm3] 相対粘度
η ηw[-] 05times(15) 05times(13) 05times(12) 05times(23)
05
42
[分子量の計算方法] 実験を行った結果以下のような粘度データを得られるとする実験データより極限粘度
を求めポリビニルアルコール(PVA)の分子量Mを決定せよ
PVA 水溶液濃度
C[g100cc]
相対粘度
ηηw[-]
絶対粘度
η[gcms]Cw
w-η
ηη
C)ln( wηη
05times(15) 1031 0008255 031 0305
05times(13) 039 0378
05times(12) 03 0289
05times(23) 0375 0353
05 0364 0334
ηw=8007times10-3 gcms 線状高分子の極限粘度[η]と分子量Mの関係は次式で与えられる [η]=KMα (46) ただしポリビニルアルコールの場合K=666times10-4α=064であるなお極限粘度[η]は次式で定義される
CC w
w
0
-][ limη
ηηη
rarr
= (47)
または
CC
)ln(][ w
0lim
ηηη
rarr
= (48)
よって濃度 CとCw
w-η
ηηまたは濃度 Cと
C)ln( wηη の関係をグラフ化し最小二乗法によ
り切片の値を求めると極限粘度[η]が決定される
Cw
w-η
ηηと C の関係より最小二乗法を用いて切片の値を決定すると(図 43 参照)切片=
03242傾き=00874となるよって極限粘度は以下のようになる[η]=03242同様
にC
)ln( wηη とcの関係より最小二乗法を用いて切片の値を決定する
(図 44参照)と切片=03249傾き=00256となり極限粘度は以下のようになる[η]=03249
Cw
w-η
ηηと Cの関係より決定した[η]=03242を用いてポリビニルアルコール(PVA)の
分子量 Mを計算する(46)式より以下のように PVAの分子量 Mを計算することができるM=([η]K)1α
=(03242(666times10-4))(1064)
=15811
43
y = 00874x + 03242
0
02
04
06
08
1
0 01 02 03 04 05 06 07
c[g100cc]
(η-ηw)(ηwc)
cw
w
η
ηηminus
極限粘度[η]
図 43 298Kにおける PVA濃度 CとCw
w-η
ηηの関係
y = 00256x + 03249
0
02
04
06
08
1
0 01 02 03 04 05 06 07
c[g100cc]
(ln(ηη
w))c
c)ln( wηη
極限粘度[η]
図 44 298Kにおける PVA濃度 CとC
)ln( wηη の関係
44
5 植物からの DNAの抽出 51 はじめに 分子レベルでの遺伝子の構造解明や遺伝子の発現に関する研究は近年急速に発展している
これら生命現象のしくみを分子レベルで解明しようという分子生物学の分野ではさまざま
な遺伝子の解析や応用方法が開発され我々の生活に身近なものになりつつある 本実験では初歩的な分子生物学に関する実験として植物(タマネギ)からの DNA の
抽出を行い抽出した遺伝子の電気泳動法による分離実験を試みる 52 試薬および器具 試薬 タマネギ(細胞中から遺伝子の抽出を行う) 台所用洗剤(洗剤中に含まれる界面活性剤には植物の細胞膜およびタンパク質を破壊す
る働きがある) 塩化ナトリウム(DNAは塩化ナトリウム水溶液に溶解し易い性質がある) エタノール(予め冷やしておくDNAはエタノールにほとんど溶解しない) 制限酵素(DNAを一定の部位で切断する働きを働きがある) TE緩衝液(pH緩衝剤が入った溶液) 器具 ビーカーミキサーフィルターメスシリンダー駒込ピペットガラス棒 マイクロピペット電気泳動装置ポラロイドカメラ 53 実験方法 1)タマネギは 1回の実験で半個のうち内側の半分程度を使用するタマネギ水 30ml台所用洗剤数滴をミキサー用ガラス容器に入れ40~60秒程度(固体状のタマネギがなくなる頃が目安)ミキサーにて混合する
2) 1)で作成した混合溶液をビーカーに移し約5g程度の塩化ナトリウムを加えガラス棒で静かに攪拌する粘性の大きな溶液が得られる
3) 2)で作成した溶液をフィルターを用いて濾過し濾液を回収する 4) 濾液の約2倍程度の量の冷エタノールをビーカーの壁伝いに静かに注ぐ 5) ビーカーを揺するとエタノール層に白くふわふわしたものが浮いてくるこれが DNAであるガラス棒で DNAを巻き取りシャーレ上にて DNAを回収する顕微鏡を用いて回収した DNAの状態を観察する
6)マイクロチューブ(容量 15ml)中に用意した 70エタノールを 8 分目程度まで注ぐ5)にて回収された DNAをマイクロピペットを用いて70エタノールの入ったマイクロチューブ中に移す軽く混ぜることによりDNA から不要な物質を洗い流す遠心分離してDNA をマイクロチューブの底に沈めた後溶液を捨てて DNA を乾かす乾いたらTE緩衝溶液を 1ml加えて放置するDNAの溶液が得られる
54 電気泳動装置による DNAの観察
本実験は職員と一緒に行うこと 実験を行う人はビニール手袋をすること 1) 抽出した DNAを電気泳動装置で観察するマイクロピペットを用いて以下のように調製した DNAの混合溶液を調製する(いずれの溶液も調製済)
45
2) マイクロピペットを用いてアガロースゲルの試料を流し込む穴(ウェル)に1)にて調製した溶液 Aおよび Bを注ぎ込む注入量は20μℓとする電気泳動装置のスイッチを入れて100Vの電流を流しアガロースゲル内にて DNAを電気泳動させる
3) 試料に予め加えられておいた青色の色素が 7 分目程度まで進んだら電気泳動を中止する(約 30分程度)
4) (ここでの作業は職員が行う) アガロースゲルを取り出し染色液に浸す染色後ゲルを取り出しポラロイドカメラで
DNAの泳動状態を撮影する
+ -
アガロースゲル
試料を流し込む穴(ウェル)
図 51 電気泳動装置
6 5 4 3 2 1
図 52 DNAの電気泳動写真の一例
55 電気泳動装置の原理 電気泳動装置の原理図を以下に示すアガロースゲル(寒天から不純物を除いたもの)中
に DNAをセットし電流を流すとDNAは電流の向きとは逆にマイナスからプラス方向
調製済 溶液 A(制限酵素なし) 水 11μℓ 10timesH Buffer 2microℓ 植物 DNA 5μℓ
調製済 溶液 B(制限酵素 Eco RI入り) 水 11μℓ 10timesH Buffer 2microℓ 植物 DNA 5μℓ 制限酵素 2μℓ
1 DNA(タマネギ)+制限酵素 2 DNA(タマネギ)+制限酵素 3 DNA(タマネギ) 4 λ-DNA(大腸菌)+制限酵素 5 λ-DNA(大腸菌) 6 サイズマーカー
500bp
46
に動く(このことを電気泳動という)これはDNA のリン酸部分が負に帯電しているためでありまたDNAはその長さにより泳動距離が異なる(短い遺伝子ほど長く泳動する)電気泳動ではこの性質を利用してDNAを大きさごとに分離することができる
塩基対数によってDNAを分離
EtBr (蛍光試薬)DNAの二本鎖内に入り込む
発光
UVλ=302nm
励起
分離後のアガロースゲルをエチジウムブロマイド(EtBr)溶液に浸す
DNAを含んだ溶液
アガロースゲル
リン酸部分が負に帯電
塩基 (ATGC)-
+
カメラで撮影
電圧
DNA構成成分(dNTPs)
バンドが明る
DNA量が
バンド(DNAの存在)
図 53 電気泳動の原理
56 制限酵素とは DNA は4 種類のヌクレオチド(GATC)が不規則につながってできている制限酵素はDNAの特定のヌクレオチドが並んでいる部分を切断する制限酵素には様々な種類がありEco RI(エコアールワン)と呼ばれる酵素は「GAATTC」といった並びの部分だけを切断することができる
GAATTC
CTTAAG
制限酵素
Eco RI
AAGCTT
TTCGAA
制限酵素
Hin dIII
図 54 制限酵素による DNAの切断
レポートについて 1 実験方法および実験結果の整理方法については指針書を参考にすること 2 実験結果については電気泳動の結果について考察すること(制限酵素の影響などにつ
いてまとめてください)
47
6 染色実験
61 はじめに
現在私達の身の周りでは様々な染料が使われている例えばT シャツやジーンズな
どの衣服は橙黄赤青など様々な色に染められている他にも私達が気付かないと
ころで多くの染色された製品を使用しているそこで本実験では高校の化学で学んだ
アゾ染料を合成してみるアゾ染料はアニリンを原料として作られているアニリンはベ
ンゼン環にアミノ基(-NH2)がついたものであるアニリンは無色の液体で水に溶けにく
くアンモニアより弱い塩基性を示すまたさらし粉(CaClO(ClO)H2O)水溶液を加えると
赤紫色を呈するこの呈色反応はアニリン特有のものであるので検出反応に用いられる
このアニリンを出発物質としてアゾ染料を合成してみる
62 試薬および使用器具
【試薬】 ①05moll 水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液
②2-ナフトール ③フェノール ④6moll 塩酸
⑤亜硝酸ナトリウム ⑥アニリン ⑦氷
【器具類】 ①電子天秤 ②50mℓビーカー ③100mℓビーカー
④ガラス棒 ⑤布(ガーゼなど) ⑥ピンセット
⑦ポリ手袋 ⑧ドライヤー ⑨シャーレ
10駒込ピペット(10ml ガラス製)
11駒込ピペット(1ml プラスチック製)
63 実験方法
1) 50mℓビーカーの中に 05molℓ水酸化ナトリウム水溶液 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回
NaOH 水溶液を分取するほぼ 20 mℓ分取できれば可)と 2-ナフトールを約 01g 入れ
よくかき混ぜる調製した溶液の中に布をつけその布はガラス棒でしぼってから(布
をガラス棒ですくいあげればよい)シャーレに広げる温度の異なる条件下(常温およ
び低温)で染料の合成実験を行うため布は最低 2枚調製した溶液と接触させそれ
ぞれ別々のシャーレ(低温用および常温用)に広げる
2) 新しいビーカーに水を約 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回分取)と 6molℓ塩酸約 4mℓ(10m
ℓ駒込ピペットで目分量で可)さらにアニリン約 1mℓ(プラスチック製 1 mℓ駒込ピペッ
ト)を入れてよくかき混ぜる染料の合成を常温および低温下で行うためこの溶液を
2つ調整する
低温下で反応させる溶液は恒温槽で 10~15 分ほどよく冷やした後亜硝酸ナトリウ
ム 05g を加えてよくかき混ぜる
常温下で反応させる溶液には冷却作業を行わずに亜硝酸ナトリウム 05g を加えて
よくかき混ぜる
3) 2)でつくった水溶液をシャーレに広げた布に注ぎ生成される染料を布によく染み
込ませ5分程放置する
4) 色の付いた布を取り出してポリ手袋をした手できれいに水洗いをし乾燥させる
48
5) 色差計を用いて乾燥した布の Lab(L明度aおよび b色度)を測定する
2)で作った溶液は5以下では無色の溶液ですが5以上になると淡い黄色になりま
す
【解説】
アゾ染料はアゾ基(-N=N-)を持っていてこのアゾ基によって鮮やかな橙色を呈色し
ます今回合成したアゾ染料は図の 1-フェニルアゾ-2-ナフトールです意外かもしれ
ませんが指示薬として使われているフェノールフタレインもアゾ化合物ですフェノール
フタレインは pH の変化によって色が出てきす染料の中でも最初は無色のものもありますが
温度を変化させたり酸性やアルカリ性にすると色が出てきます
ベンゼン ニトロベンゼン
N2Cl
ニトロ化 濃硫酸(濃硝酸)
還元反応 濃塩酸
(Sn又は Fe)
アニリン塩酸塩
遊離反応 NaOH
アニリン塩酸塩に強塩基を反応させる
と弱塩基であるアニリンが遊離する
氷冷+亜硝酸ナトリウム アニリン
塩酸
ジアゾ化
塩化ベンゼンジアゾニウム
塩化ベンゼンジアゾニウム
は熱によって窒素とフェノー
ルに分解される
カップリング
C10H7ONa (ナトリウム 2-ナフトキシド)
O
N =
1-フェニルアゾ 2-ナフトール
NH3Cl NH2
49
7 ガスクロマトグラフ質量分析計による茶葉中のカフェインの分析 71 はじめに ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)は極めて低い濃度の化学物質の同定や未知物質の構造決定に極めて強力な分析機器の一つであるGCMSを用いるとサンプルの中に含まれているある成分の分子構造(カフェインの分子構造を図 71に示す)やその量が分かりますもちろん分析機器ですので測定できる物質対象となる系や測定条件にはある
程度の制約があります混合物質を分離するガスクロマトグラフ(Gas ChromatographGC)と分離された成分(物質)を分析(構造決定と濃度測定)する質量分析計(Mass SpectrometerMS)を組み合わせた装置であるこの装置は有機化学生化学環境化学などの多くの分野で非常に多用されている例えば極めて低い濃度でも生体へ強い影響が懸念されるダイ
オキシン類などの土壌や河川の水中での含有率の決定や食品や医薬品中の微量成分の決定
にも利用されている 一方日本人に長い間親しまれてきた緑茶が近年産業界や医学
界で注目されている茶葉にはカフェイン(分子構造図 71)カテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドなどの有用成分が多く含まれておりその効能が注目されている 本実験では茶葉中に含まれるカフェインに対してGCMSを用いて分析する茶葉中には種々の物質が含まれておりGCMS分析を容易にするため前処理として超臨界二酸化炭素抽出(4015MPa程度の高圧力の二酸化炭素を溶剤として利用)により茶葉からカフェインの抽出を行いそのサンプルを GCMSにて分析する
図 71 カフェインの分子構造 図 72 物質の分析 個々の物質や装置についてはインターネットにより下記のWebサイトのフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』などにより調べるとよいカフェイン(caffeine)はアルカロイドの一種プリン環を持つプリンアルカロイドの一種でコーヒー類に含まれることか
らこの名がある化学名は137-トリメチルキサンチン(C8H10N4O2) コーヒーコーラ緑茶紅茶ガラナココアなどに含まれる(量は緑茶が一番多い)結晶は一水和物(C8H10N4O2bullH2O)もしくは無水物(無水カフェインC8H10N4O2)として得られ
る白色の針状または六角柱状結晶で匂いはなく味は苦い融点は 238昇華性がある出典フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』httpwwwwikipediaorg 装置「GCMS」httpwwwanshimadzucojpproductsgcmsqp2010htm (島津) 「超臨界抽出装置」httpwwwkagakucomjasco39-49html (日本分光)
50
レポート課題 1茶葉中に含まれるカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドの中から3つの物質を選びその物質について調べた結果を A4 レポート用紙2枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
2GCMS についてA4 レポート用紙1枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
3与えられたサンプルは茶葉1gから抽出されたのである実験結果よりもとの茶葉
1g中に含まれるカフェインの量を推算し計算式とあわせて示すこと 72 原理および装置 実験で使用する島津製の GCMS装置の全体図を図 73に原理の概略を図 74に示す
1
23
4
5
67 8
9
10
キャリアーガス
試料物質
1ボンベ(He)2圧力計3マイクロシリンジ4サンプラー5試料導入部6分離カラム
7セパレーター8イオン化室9磁石10電子増倍管11記録計
11
図 74 ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)の概略図
サンプルフォルダー
51
GCMS 装置は分離部である図中の 1~6 のガスクロマトグラフ(GC)と7~11 の検出部である質量分析計(MS)から構成される 3のマイクロシリンジを用いて試料を GCMSに導入する導入された試料は5試料導入部でガス化され6分離カラムに導入される分離カラムには吸着剤が充填されおり混合物の試料を導入した場合各物質と吸着剤との
親和性の違いにより各物質の分離カラムから排出されるタイミングは異なる分離カラム
を排出された試料は8イオン化室でイオン化され10電子倍増管にて検出される アセトンに溶解したカフェインの GCMSによる分析結果の一例を以下に示す図 75にク
ロマトグラム図 76にカフェインのピークのマススペクトルを示す
図 75 GCMSにより得られたクロマトグラム
横軸がリテンションタイムで縦軸がピーク強度を表す
図 76 カフェインのマススペクトルとカフェイン(分子量MW=194)の構造
(図 75中のリテンションタイム 126min付近のピークに起因するマススペクトル) 茶葉中にはカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイド以外にも繊維であるセルロースなど多くの物質が含まれているため茶葉そのものを
そのままサンプルとしてGCMSで分析することは困難であるセルロースなどの分子量の大きな物質はカラムに詰まってしまい分析できないそこで今回は超臨界二酸化炭素
による抽出により主にカフェインを他の物質と分離抽出した通常よく利用されるアセ
トン抽出(アセトンに茶葉を浸し特定の成分を抽出する)ではカフェイン以外にも多く
の物質が抽出されるため図 75 のような単独のピークを得ることは難しく複数のピークがクロマトグラムに見られるこのサンプル(この場合茶葉からの抽出物)にはカフェ
イン以外の不純物は少なかったがガスクロマトグラフの分離カラムによりさらにそれ
らの混合物が精度よく分離されるクロマトグラムのピークはそれらサンプル中に含まれ
ていた個々の物質を表しているクロマトグラムのピークを選択することで分子構造解析
したい物質を選んだことになる選択したクロマトグラムのピークの表している物質(ここ
ではカフェイン)に対応するマススペクトルが図 76 に表示されているマススペクトル
52
で横軸がその成分(ここではカフェイン)分子を構成している原子の原子量で縦軸がそ
の量を表しているのでマススペクトルから分子構造を解析するためにコンピュータ内
に蓄えられた物質ごとのマススペクトルデータと今回測定したマススペクトル(分子内に含
まれている各原子の数)を比較することで測定したサンプル中のクロマトピークを選択し
た分子がどのような原子をどれだけ含んだ分子であったかがわかりそれからその物質
がどのような分子構造の物質である可能性が高いかをコンピュータが検索し結果を示す 73 実験サンプルの設置と GCMS装置の操作方法 実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS装置のサンプルフォルダ
ー(図 73)にセットするこのサンプルは茶葉 1gを 50ccの高圧セルにて超臨界二酸化炭素を利用して4015MPa2時間接触の条件で抽出した固体を10gのアセトンに溶かしたものである またコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に装置および装置制
御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 本実験で使用する GCMS の操作は全てコンピュータのモニター上で GCMS の解析プログラムソフトを使用することで行うコンピュータの操作方法を以下に示す なおコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS 装置のサンプルフォルダー(図 73)にセットするまた装置および装置制御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 1)パソコンのデスクトップ上のアイコン「GCMS 分析」をクリックすると以下のようにGCMS制御プログラムを起動するその後「OK」ボタンをクリックする
図 77 GCMD分析用ソフトウェア「GCMS分析」の起動
まず「GC-MS分析」をクリック
「OK」ボタンをクリック
53
2)制御プログラムが起動されパソコンと GCMSの接続が開始される
図 78 「GCMS分析」の接続確認画面 3)GCMSとパソコンの接続が完了すると以下のような画面が表示される
図 79 「GCMS分析」操作画面
4)マススペクトルによる分子構造の解析 サンプル(この場合茶葉からの抽出物)には多くの物質が混じり合っていたがガス
クロマトグラフの分離カラムによりそれらの混合物が精度よく分離されるクロマトグラ
ムのピークはそれらサンプル中に含まれていた個々の物質を表しているクロマトグラム
のピークを選択することで分子構造解析したい物質を選んだことになる選択したクロマ
トグラムのピークの表している物質(ここではカフェイン)に対応するマススペクトルを選
択するマススペクトルは横軸が原子量で縦軸がその量を表しているのでマススペク
トルから分子構造を解析するために「定性処理」を行う シミラリティ検索結果が表示され分析により得られたスペクトルと類似のスペクトルを有
する物質の一覧が表示される上部に表示される物質ほどスペクトルが一致していること
を示す
接続状況が表示される
「トップへ」
をクリック
54
図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果
図 711 表示スペクトルのシミラリティ検索結果 10)図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果の印刷 「レポート(R)」をクリックし「検索結果(R)」をクリックすると検索結果が印刷される
GC-MS 分析で得られたマスス
ペクトル
データベース中
のマススペクト
ル
55
参考資料 生理活性物質の精製 カフェインの利尿作用のように生物活動に影響を与える物質を生理活性物質といいます
天然物には生理活性物質を多く含むものがあります一般に天然物は多くの成分を含ん
でおり特定の生理活性物質を分離抽出するには種々の分離技術が必要ですまた生
理活性物質には60以上の温度でその生理活性を失う(失活)ものや溶剤として広く用いられているクロロホルムなどの有機溶剤中で失活するものが多いそこでこれら生理活性
物質の分離精製技術の開発が望まれており30~60程度のマイルドな温度条件で操作できる二酸化炭素を機能性溶媒として利用する超臨界抽出も有効な分離技術として注目されて
いる超臨界二酸化炭素は気体と液体の中間の性質を持ち物質の分離に役立っています 臨界点付近の高密度気体は超臨界ガスまたは超臨界流体と呼ばれ臨界圧力前後でそ
の溶解能力が著しく変化することから工業的にも種々の分野で利用されています一例と
して超臨界二酸化炭素(SC-CO2)によるコーヒー豆からのカフェインの抽出プロセス(a)
ならびに超臨界二酸化炭素に対するカフェインの溶解度(b)を図に示します図(c)に示す
ように固体のカフェインがガスである超臨界二酸化炭素に溶解します
このように超臨界二酸化炭素を用いた技術はコーヒー豆からのカフェインの抽出プロ
ポリスからの生理活性物質の抽出に利用されています
図 超臨界二酸化炭素抽出を用いたコーヒー豆からのカフェインの抽出
56
付表 最小二乗法について 直線で近似する場合 f (x) = a0 + a1x (A1-1) 式(A1-1)のように近似させるとする測定値 yiとの残差を eiとすると式(A1-2)のようになる ei = yi - f (xi) = yi - ( a0 + a1xi ) (A1-2) ここで式(A1-2)の両辺を二乗してその i に関する総和をとりその値を S とすると次式となる
sumsum==
+minus==n
iii
n
ii xaayeS
1
210
1
2 )( (A1-3)
S を最小化するような a0a1を求める式(A1-3)を a0a1について偏微分すると次式とな
る
sum=
+minuspartpart
=partpart n
iii xaay
aaS
1
210
00)( sum
=
+minusminus=n
iii xaay
110 )(2 (A1-4)
同様にa1について編微分すると次式のようになる
sum=
+minusminus=partpart n
iiii xxaay
aS
110
1])([2 (A1-5)
Sが最小となる時は次式が同時に満たされる時である
00=
partpartaS
01=
partpartaS
(A1-6)
よって誤差が最小となる a0a1を求めるためには式(A1-6)を連立して解けばよい
sumsumsum===
+=n
ii
n
i
n
ii xaay
111
10 1 (A1-7)
sumsumsum===
+=n
ii
n
ii
n
iii xaxaxy
1
2
11
10 (A1-8)
式(A1-7)と式(A1-8)を a0a1を変数とみなし連立して解くと次式を得る
n組のデータ(xiyi)(i=12hellipn)に対して回帰直線 y= a0 + a1x を最小二乗法で求めて出力しデータ番号 iデータ yi直線で推定した値 )( ii bxay += および残差
iii yy minus=ε を出力するようなプログラムをつくりたい基礎式を導出せよ (ヒント残差の二乗の和が最小になるように係数 a0a1)を定めるのが最小二乗法
である)
57
sumsum
sumsumsumsum
==
====
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
n
ii
n
ii
xxn
xxyyxa
1
2
1
2
1111
2
0
)(
))(())(( (A1-9)
sumsum
sumsumsum
==
===
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
xxn
yxxyna
1
2
1
2
1111
)(
))(()( (A1-10)
よって式(A1-9)(A1-10)を用いれば最も誤差を小さくするような直線 y = a0 + a1x が求められる
y=a1x+a0 にて近似
誤差 ei
x
y
誤差が最小になる関数(直線 y=a1x+a0の場合)
図1 最小二乗による近似
誤差の和Sが最小
S
a0
a1
直線 y=a1x+a0 の近似
誤差の全体の和はS=Σei=Σyi-(a1xi+a0)
Sは変曲点にて最小値を示すすなわち(partSparta0)=0 (partSparta1)=0
図2 a0a1とSの関係
29
ように記入します
=00027G5^03169 ここで式中の「G5」は Cbの値が 0のセルを指しています各個人の位置によって変えてください 次に式を記入したセルを Cbの値が 05のところまでオートフィルを行いますそうするとすべての Cbに対して nの値が計算されます
これで Freundlich等温吸着式のデータが完成しましたので次に「Graph1」酢酸濃度 Cb[molL]と活性炭吸着量 n[molg]の関係のグラフにこのデータを追加し理論線を引きます理論線の引き方は Langmuirによる相関のときと同様の操作を行ってください グラフの書式等を変更し整理すると以下のようなグラフが出来上がります
310 吸着等温線とは 固体の吸着剤を溶液と接触させる時一定量の吸着剤によって吸着される溶質の量は温度一定ならば溶質の濃度の関数になる一定温度での吸着量を温度に対してプロットした時に
得られる曲線を吸着等温線というこの吸着等温線を比較的よく表す経験式として次の
Freundlich式がある
n=aC1b (1) ここで n は吸着剤の質量あたりの吸着量C は吸着平衡濃度a と b は実験から決定されるパラメータであるがその物理的意味は多少希薄である これに対し理論的な意味を持つものに次のラングニュア(Langmuir)の吸着等温式がある
30
KCKCnn
+=
infin
1 (2)
ただしninfinは飽和吸着量Kは吸着平衡定数であるこの式は
1)吸着分子が固体表面で単分子以上の厚い層を作ることはない 2)吸着分子同士の間の相互作用はない
という二つの仮定にもとに導かれたものである 結果の整理および報告 Freundlich吸着等温式Langmuir吸着等温式の各々のパラメータの最適値を求めよまた活性炭の吸着特性および表面積について考察し化学工学における吸着操作の重要性につい
ても検討せよ 311 吸着等温式 (a) ヘンリー(Henry)型吸着等温式 液相の濃度あるいは気相の圧力が小さい場合吸着分子間の距離が十分に長いため吸着
分子同士の相互作用が無視でき固体表面と吸着分子のみの相互作用で吸着量を決定できる
とき次式のように表される
n=KC (3)
ここでKは比例定数である図 3-1の(a)に示すように濃度 Cと吸着量 nは比例関係があり一般に吸着量が小さい範囲で成立する気体の場合は溶液濃度 Cの代わりに気相圧力 pを用いればよい
濃度(分圧)
濃度(分圧)
濃度(分圧)
濃度(分圧)
吸着量
吸着量
吸着量
吸着量
(a)ヘンリー型 (b)ラングミュア型
(d)BET型(c)フロインドリッヒ型
0
0
0
0
図 3-1 吸着等温式
31
(b)ラングミュア(Langmuir)型吸着等温式 ラングミュアは図 3-2 に示すように固体表面に同等な吸着力を示す吸着サイトがあり
表面に 1分子層だけ吸着する(単分子層吸着)と仮定して平衡状態における吸着量と溶質濃度(気相分圧)のと関係を導いた全吸着点のうち吸着分子に覆われている吸着点の割合
をθ[-]とすると分子の脱着速度 rrsquo[mols-1]はθに比例する比例定数を a[mols-1]とすると次式のように表される
吸着剤
吸着分子
吸着サイト
図 3-2 固体表面上の吸着サイト(Langmuir式の導出) r=aθ (6) また気相からの吸着速度 r[mols-1]は空いている吸着点の割合(1-θ)[-]と溶液濃度 C[molm-3]に比例する rrsquo= b(1-θ)C (7) このときの比例定数を b[m3s-1]とするまた平衡状態では両速度は見かけ上等しいため以下の式が成り立つ aθ=b(1-θ)C (8) これを変形する
CbaCbsdot+
sdot=θ (9)
ここで飽和吸着量を ninfin[molkg-1] ba を K[m3mol-1](Kは吸着平衡定数)とおくと infin=nnθ
となるので次式が得られる
32
KCKCnn
+=
infin
1 (10)
これをラングミュア式と呼ぶ
(c)フロインドリッヒ(Freundlich)型吸着等温式 フロインドリッヒの吸着等温線は図 3-1(c)のように示される
n=aC1b (11) nは吸着量[molkg-1]で aと bはともに吸着定数[-]である (d)BET(Brunauer-Emmett-Teller) 型吸着等温式
BET型の吸着等温線は図 3-1(d)に示されるラングミュア式は表面に 1分子層だけ吸着すると仮定したものであるがBET式は無限分子層まで吸着できる式である図 3-3に示すように吸着した分子がそれぞれ次の層の吸着サイトとなり分子は積み重なって多分子
層に無限層まで吸着できるものとし各層への吸着にラングミュア式を適用すれば次式の
ように表せる
( ) ( )CKCCCKqq
minus+sdotminussdotsdot
=infin
11 (12)
この式は多孔質固体の細孔表面積を窒素ガスの吸着によって測定する際に利用される重要な式
である
表面の吸着サイト
分子上の吸着サイト
図 3-3 多分層吸着モデル
Langmuir式のパラメータ決定法 水溶液からの酢酸の活性炭に対する吸着平衡データ(吸着平衡温度 12)は表 3-1のよ
うに与えられる実験データよりラングミュア式のパラメータ(K吸着平衡定数ninfin飽和吸着量)を最小二乗法で決定せよさらにラングミュア式より決定した ninfinKの値を用いて吸着等温線を計算し計算線として図に示し実験点と比較せよ
33
表 3-1 n C Cnの関係
ラングミュア式は式(310)で与えられるこの式を変形すると次式となる
CKnCK
n infinsdot+
=11
(313)
両辺に Cをかけると以下の式が導出される
CCnKnCKn
CCKn
Cβ+α+
==
+= infininfininfin
11)1( (314)
ただしα=1ninfinβ=1(ninfinK)とする式(314)より Cn と C の関係のグラフプロットは傾きα=1ninfin切片β=1(ninfinK)の直線関係を与えることを示している表 3-1の値を用いて計算した Cnと Cの関係を表 3-1および図 3-4に示す 最小二乗法を用いて傾きαと切片βを決定した α=1ninfin=43865 β=1(ninfinK)=2654 得られた傾きおよび切片よりninfinおよび Kは次のように求まる
ninfin=1α=1D18=000228 molg-1 K =(1ninfin)β=αβ=D18C18=165
0
50
100
150
200
0 200 400 600
C [ molm-3 ]
Cn [ kgm-3 ]
傾き = 1 ninfin
1 ninfinK
切片0
05
1
15
2
25
3
0 100 200 300 400 500
液相の溶質濃度 C [ molm-3 ]
吸着量 n [ molkg-1]
液相と溶質濃度 C [ molm-3 ]
吸着量
n[ m
olk
g-1]
実験点
Langmuir式パラメータninfin 00033 [ molg-1 ]K 00086 [ m3 mol -1 ]
図 3-4 ラングミュア定数の決定 図 3-5 12における酢酸濃度 Cと
吸着量 nの関係
C [molm-3] n [molkg-1] Cn [kgm-3] 460 225 109 529 214
268 199 149 105 060
172 128 732 504 357
34
Freundlich式のパラメータ決定法 酢酸水溶液中における酢酸の活性炭に対する吸着実験を行ったところ以下のような実験デー
タを得たただしCbはバルク相における酢酸濃度n は活性炭に対する酢酸の吸着量を示す
Cb[molL] n[molg] log10Cb log10n 04621 000205 02410 000175 01139 000139 00519 000105 00243 000081
実験データを利用して次式で与えられる Freundlichの等温吸着式の定数 abの値を求めたい
bbaCn1
= (1)
このままでは定数 abの値を決定することが難しいので上式の両辺の対数をとる
bbb
bb
Cb
aCa
aCn
ln1lnlnln
)ln(ln1
1
+=+=
=
(2)
ここで横軸に ln Cb縦軸に ln nの関係をグラフにプロットするすなわち x=ln Cby=ln nと考える
bCb
an ln1lnln += (3)
ここで直線式 y=a0+a1xと比較するすなわち
)(1)(ln
1
00
傾き
切片
ba
eaaa a
=
=rarr= (4)
a0および a1は最小二乗法により数値で求められる与えられたデータでは a1= a0= なので a= b= となる この値を n=acb
1bに代入してcb=0~05の範囲で nの値を計算する
35
BET式のパラメータ決定法 BET式は次式で与えられる
)1)(1( KCCCKCnn
+minusminus=
infin
(17)
以下のように BET式の変形を行う
)1()1(
KCCKCnCn+minus
=minusinfin
(18)
(18)式の逆数をとると
KCnCK
KCnKCC
Cn infininfin
minus+=
+minus=
minus)1(1)1(
)1(1
(19)
(19)式の両辺に Cをかえると
KCnCKC
CnC
infin
minus+=
minus))1(1(
)1( (20)
(20)式を変形すると次式が得られる
CKn
KKnCn
Cinfininfin
minus+=
minus11
)1( (21)
C と)-(1 Cn
Cのプロットは傾き
KnKinfin
minus1切片
Kninfin
1の直線関係を与えることを示している
これをグラフにプロットし最小二乗法に傾きおよび切片を求める
36
312 活性炭の比表面積の決定 酢酸分子の構造を以下に示す
Hc-Cb-Ca
Hd
Hb Oa
Ob-Ha
1219deg
Ca Oa
Ob
図 36 酢酸の構造
酢酸の 1分子の吸着面積srsquo [m2]を図 3-6に示すこのとき文献より
Caと Oaの結合距離 1321Å Caと Obの結合距離 1206Å OaCaObの角度 1219deg Cの原子半径 077Å Oの原子半径 062Å
したがって吸着面積 Slsquoは次のようになる
( ) ( ) 2088 10376109931036321 minusminusminus times=timestimestimestimes=s m2
ここで活性炭の比表面積 S[m2g]は次式で示される 10026 23 snS timestimestimes= infin
S活性炭の比表面積 [m2g] ninfin飽和吸着量 [molg] srsquo酢酸 1分子の吸着面積 [m2] 602times1023アボガドロ数 [個mol] したがって活性炭の比表面積 S[m2g]は
003350=infinn molg 2010376 minustimes=s m2 より
51281037610026003350 2023 =timestimestimestimes= minusS m2g
37
4 粘度密度測定 41 はじめに 大量生産を目的とした工業的化学プロセスはほとんど流れ系(流通系)であるそれらの系において操作対象となる各物質の粘度は装置を設計操作する場合きわめて重要
な物性値である 本実験では低分子溶液および高分子溶液の粘度測定を通じて液体の粘度について考察するさらに演習問題を通じて気体液体高分子溶液などの化学プロセスで対象となる物
質の輸送物性(粘度拡散係数)の重要性を認識されたい 42 低分子溶液の粘度 [目的] 種々の濃度のエタノール水溶液の粘度を測定しその溶液の粘度について考察する [概要] 25におけるエチルアルコール濃度 02040506080100 wt の水溶液について流下時間を測定しこの結果より相対粘度絶対粘度運動粘度を求めグラフにするま
た水の密度水-エチルアルコール溶液の密度についてはピクノメーターを用いて決
定する報告書には相対粘度絶対粘度運動粘度 vsエチルアルコール濃度の関係をそれぞれグラフにして提出する
[計算方法] 相対粘度絶対粘度運動粘度の定義は次のようになる
相対粘度 ww
w tdtd
ηη = (41)
η 混合溶液の粘度 [gcms] ηw水の粘度(8007times10-3 gcms) [gcms](25における粘度) d エチルアルコール水溶液の密度 [gcm3] dw水の密度(099704gcm3) [gcm3](25における密度) t エチルアルコール水溶液の流下時間 [s] tw水の流下時間 [s] 下付添字 W 水
絶対粘度 www td
tdη
η= (42)
運動粘度 ν=ηd [cm2s] (43)
38
[実験方法] 1) 粘度計を洗浄し粘度計内 に二連球で空気を送り込み
乾燥させる乾燥しにくい 場合はアセトンを滴下し た後再度二連球で空気 を送り込み乾燥させる 2)ピペットで一定体積(10mℓ) の純水を取り広い口 f から 粘度計に水を入れる 3)粘度計を恒温槽(25)に つけ約 10 分静置する 4)安全ピペッターを口 a に 取り付け液面が b 上部に 到達するまで吸い上げる 5)安全ピペッターを外すと 液面が降下しだす液面が bd 間を通過する時間をスト ップウォッチで測定する
6)純水での測定を 3 回繰り返す 7)純水を粘度計から取り除くその後粘度計内に二連球を用いて空気を送り込み乾燥させる 8)粘度計乾燥後複数の濃度に調整済みのエチルアルコール水溶液(10mℓ)を粘度計にいれ4)~6)の作業を繰り返し行う(3 回)なお濃度の異なるエチルアルコール水溶液を粘度計内に導入する場合には7)と同様に二連球を用いて粘度計内に空気を送り込み乾燥させる
表 4-1 エチルアルコール水溶液の濃度密度相対粘度の関係 エチルアルコール濃度
[wt] 密度 d[gcm3] 相対粘度
η ηw[-] 0
20 40 50 60 80
100
安全ピペッター接続
図 4-1 粘度計
液面の bd間の通過時
間を測定
f
39
43 密度測定 [目的] 本実験では水とエタノールの種々の組成の混合液体について密度を測定し分子間相互
作用について考察する [実験方法] 1)ピクノメーターの容積測定
図 4-2のピクノメーターの空の重量 wg を秤量する
ピクノメーターの蓋を取り外し
ピクノメーターを水で満たす
設定温度を 25として恒温槽 の電源を入れ恒温槽内の温 度が一定になるまで待つな お水温は恒温槽中の水銀温 度計から読む
恒温槽中に水を満たしたピク
ノメーターを入れる
約 10分間静置する
ピクノメーターに蓋をするこのときピクノメーターの容量
よりも余分の水は蓋の上部より排出される
ピクノメーターの外側を乾いた布で拭い秤量する(その重量を
wwg とする)
恒温槽の温度(25)における水の密度 dwgcm3(=099704gcm3)
より次式を用いてピクノメーターの容積を求める
w
w
dww
Vminus
= (44)
図 4-2 ピクノメーター
蓋
40
表 4-2 エチルアルコール水溶液の濃度と密度の測定結果(25) エチルアルコ
ール濃度[wt]
wrsquo[g] ww[g] V[cm3] w[g]
d[gcm3]
0 20 40 50 60 80
100
099704
エチルアルコール濃度[wt] 空のピクノメーターの重量 wrsquo[g] 水を入れたときのピクノメーターの重量 ww[g] ピクノメーターの体積 V[cm3] エタノール水溶液の入れたときのピクノメータの重さ w[g] エタノール水溶液の密度 d[gcm3]
容積 Vを求めたピクノメーターに混合溶液(調整済み)を入れてその重量 wgを秤量し次式で混合溶液の密度を求める
Vwwd minus
= (45)
エタノール濃度と密度 d の関係をグラフにプロットする
41
44 高分子溶液の粘度 [目的] 高分子溶液の粘度測定から分子量の粘度に与える影響について考察する [概要 ] オストワルド粘度計を用い種々の濃度のポリビニルアルコール(PVA ((-CH2CHOH-)n))水溶液の粘度を測定し粘度データよりポリビニルアルコールの分
子量を求める まず 05g100cc の濃度のポリビニルアルコール水溶液を調製する次にこれを原液
とし23 12 13 15の濃度の溶液を調製するこれらの溶液についてオストワルド粘度計を用いてそれぞれ流下時間を測定し相対粘度絶対粘度運動粘度を求め実験デ
ータより極限粘度[η]を求めるまた報告書には相対粘度絶対粘度運動粘度C
)ln( wηη
Cw
w-η
ηη vsポリビニルアルコール濃度の関係をそれぞれグラフにして提出する
[計算方法] エチルアルコール水溶液の粘度測定と同様の手法を用いて粘度の計算を行うなおポリビニルアルコール水溶液の密度はピクノメーターを用いて測定すること 表 4-3 ポリビニルアルコール水溶液の濃度密度相対粘度の関係 ポリビニルアルコール
濃度 [g100cc] 密度 d[gcm3] 相対粘度
η ηw[-] 05times(15) 05times(13) 05times(12) 05times(23)
05
42
[分子量の計算方法] 実験を行った結果以下のような粘度データを得られるとする実験データより極限粘度
を求めポリビニルアルコール(PVA)の分子量Mを決定せよ
PVA 水溶液濃度
C[g100cc]
相対粘度
ηηw[-]
絶対粘度
η[gcms]Cw
w-η
ηη
C)ln( wηη
05times(15) 1031 0008255 031 0305
05times(13) 039 0378
05times(12) 03 0289
05times(23) 0375 0353
05 0364 0334
ηw=8007times10-3 gcms 線状高分子の極限粘度[η]と分子量Mの関係は次式で与えられる [η]=KMα (46) ただしポリビニルアルコールの場合K=666times10-4α=064であるなお極限粘度[η]は次式で定義される
CC w
w
0
-][ limη
ηηη
rarr
= (47)
または
CC
)ln(][ w
0lim
ηηη
rarr
= (48)
よって濃度 CとCw
w-η
ηηまたは濃度 Cと
C)ln( wηη の関係をグラフ化し最小二乗法によ
り切片の値を求めると極限粘度[η]が決定される
Cw
w-η
ηηと C の関係より最小二乗法を用いて切片の値を決定すると(図 43 参照)切片=
03242傾き=00874となるよって極限粘度は以下のようになる[η]=03242同様
にC
)ln( wηη とcの関係より最小二乗法を用いて切片の値を決定する
(図 44参照)と切片=03249傾き=00256となり極限粘度は以下のようになる[η]=03249
Cw
w-η
ηηと Cの関係より決定した[η]=03242を用いてポリビニルアルコール(PVA)の
分子量 Mを計算する(46)式より以下のように PVAの分子量 Mを計算することができるM=([η]K)1α
=(03242(666times10-4))(1064)
=15811
43
y = 00874x + 03242
0
02
04
06
08
1
0 01 02 03 04 05 06 07
c[g100cc]
(η-ηw)(ηwc)
cw
w
η
ηηminus
極限粘度[η]
図 43 298Kにおける PVA濃度 CとCw
w-η
ηηの関係
y = 00256x + 03249
0
02
04
06
08
1
0 01 02 03 04 05 06 07
c[g100cc]
(ln(ηη
w))c
c)ln( wηη
極限粘度[η]
図 44 298Kにおける PVA濃度 CとC
)ln( wηη の関係
44
5 植物からの DNAの抽出 51 はじめに 分子レベルでの遺伝子の構造解明や遺伝子の発現に関する研究は近年急速に発展している
これら生命現象のしくみを分子レベルで解明しようという分子生物学の分野ではさまざま
な遺伝子の解析や応用方法が開発され我々の生活に身近なものになりつつある 本実験では初歩的な分子生物学に関する実験として植物(タマネギ)からの DNA の
抽出を行い抽出した遺伝子の電気泳動法による分離実験を試みる 52 試薬および器具 試薬 タマネギ(細胞中から遺伝子の抽出を行う) 台所用洗剤(洗剤中に含まれる界面活性剤には植物の細胞膜およびタンパク質を破壊す
る働きがある) 塩化ナトリウム(DNAは塩化ナトリウム水溶液に溶解し易い性質がある) エタノール(予め冷やしておくDNAはエタノールにほとんど溶解しない) 制限酵素(DNAを一定の部位で切断する働きを働きがある) TE緩衝液(pH緩衝剤が入った溶液) 器具 ビーカーミキサーフィルターメスシリンダー駒込ピペットガラス棒 マイクロピペット電気泳動装置ポラロイドカメラ 53 実験方法 1)タマネギは 1回の実験で半個のうち内側の半分程度を使用するタマネギ水 30ml台所用洗剤数滴をミキサー用ガラス容器に入れ40~60秒程度(固体状のタマネギがなくなる頃が目安)ミキサーにて混合する
2) 1)で作成した混合溶液をビーカーに移し約5g程度の塩化ナトリウムを加えガラス棒で静かに攪拌する粘性の大きな溶液が得られる
3) 2)で作成した溶液をフィルターを用いて濾過し濾液を回収する 4) 濾液の約2倍程度の量の冷エタノールをビーカーの壁伝いに静かに注ぐ 5) ビーカーを揺するとエタノール層に白くふわふわしたものが浮いてくるこれが DNAであるガラス棒で DNAを巻き取りシャーレ上にて DNAを回収する顕微鏡を用いて回収した DNAの状態を観察する
6)マイクロチューブ(容量 15ml)中に用意した 70エタノールを 8 分目程度まで注ぐ5)にて回収された DNAをマイクロピペットを用いて70エタノールの入ったマイクロチューブ中に移す軽く混ぜることによりDNA から不要な物質を洗い流す遠心分離してDNA をマイクロチューブの底に沈めた後溶液を捨てて DNA を乾かす乾いたらTE緩衝溶液を 1ml加えて放置するDNAの溶液が得られる
54 電気泳動装置による DNAの観察
本実験は職員と一緒に行うこと 実験を行う人はビニール手袋をすること 1) 抽出した DNAを電気泳動装置で観察するマイクロピペットを用いて以下のように調製した DNAの混合溶液を調製する(いずれの溶液も調製済)
45
2) マイクロピペットを用いてアガロースゲルの試料を流し込む穴(ウェル)に1)にて調製した溶液 Aおよび Bを注ぎ込む注入量は20μℓとする電気泳動装置のスイッチを入れて100Vの電流を流しアガロースゲル内にて DNAを電気泳動させる
3) 試料に予め加えられておいた青色の色素が 7 分目程度まで進んだら電気泳動を中止する(約 30分程度)
4) (ここでの作業は職員が行う) アガロースゲルを取り出し染色液に浸す染色後ゲルを取り出しポラロイドカメラで
DNAの泳動状態を撮影する
+ -
アガロースゲル
試料を流し込む穴(ウェル)
図 51 電気泳動装置
6 5 4 3 2 1
図 52 DNAの電気泳動写真の一例
55 電気泳動装置の原理 電気泳動装置の原理図を以下に示すアガロースゲル(寒天から不純物を除いたもの)中
に DNAをセットし電流を流すとDNAは電流の向きとは逆にマイナスからプラス方向
調製済 溶液 A(制限酵素なし) 水 11μℓ 10timesH Buffer 2microℓ 植物 DNA 5μℓ
調製済 溶液 B(制限酵素 Eco RI入り) 水 11μℓ 10timesH Buffer 2microℓ 植物 DNA 5μℓ 制限酵素 2μℓ
1 DNA(タマネギ)+制限酵素 2 DNA(タマネギ)+制限酵素 3 DNA(タマネギ) 4 λ-DNA(大腸菌)+制限酵素 5 λ-DNA(大腸菌) 6 サイズマーカー
500bp
46
に動く(このことを電気泳動という)これはDNA のリン酸部分が負に帯電しているためでありまたDNAはその長さにより泳動距離が異なる(短い遺伝子ほど長く泳動する)電気泳動ではこの性質を利用してDNAを大きさごとに分離することができる
塩基対数によってDNAを分離
EtBr (蛍光試薬)DNAの二本鎖内に入り込む
発光
UVλ=302nm
励起
分離後のアガロースゲルをエチジウムブロマイド(EtBr)溶液に浸す
DNAを含んだ溶液
アガロースゲル
リン酸部分が負に帯電
塩基 (ATGC)-
+
カメラで撮影
電圧
DNA構成成分(dNTPs)
バンドが明る
DNA量が
バンド(DNAの存在)
図 53 電気泳動の原理
56 制限酵素とは DNA は4 種類のヌクレオチド(GATC)が不規則につながってできている制限酵素はDNAの特定のヌクレオチドが並んでいる部分を切断する制限酵素には様々な種類がありEco RI(エコアールワン)と呼ばれる酵素は「GAATTC」といった並びの部分だけを切断することができる
GAATTC
CTTAAG
制限酵素
Eco RI
AAGCTT
TTCGAA
制限酵素
Hin dIII
図 54 制限酵素による DNAの切断
レポートについて 1 実験方法および実験結果の整理方法については指針書を参考にすること 2 実験結果については電気泳動の結果について考察すること(制限酵素の影響などにつ
いてまとめてください)
47
6 染色実験
61 はじめに
現在私達の身の周りでは様々な染料が使われている例えばT シャツやジーンズな
どの衣服は橙黄赤青など様々な色に染められている他にも私達が気付かないと
ころで多くの染色された製品を使用しているそこで本実験では高校の化学で学んだ
アゾ染料を合成してみるアゾ染料はアニリンを原料として作られているアニリンはベ
ンゼン環にアミノ基(-NH2)がついたものであるアニリンは無色の液体で水に溶けにく
くアンモニアより弱い塩基性を示すまたさらし粉(CaClO(ClO)H2O)水溶液を加えると
赤紫色を呈するこの呈色反応はアニリン特有のものであるので検出反応に用いられる
このアニリンを出発物質としてアゾ染料を合成してみる
62 試薬および使用器具
【試薬】 ①05moll 水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液
②2-ナフトール ③フェノール ④6moll 塩酸
⑤亜硝酸ナトリウム ⑥アニリン ⑦氷
【器具類】 ①電子天秤 ②50mℓビーカー ③100mℓビーカー
④ガラス棒 ⑤布(ガーゼなど) ⑥ピンセット
⑦ポリ手袋 ⑧ドライヤー ⑨シャーレ
10駒込ピペット(10ml ガラス製)
11駒込ピペット(1ml プラスチック製)
63 実験方法
1) 50mℓビーカーの中に 05molℓ水酸化ナトリウム水溶液 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回
NaOH 水溶液を分取するほぼ 20 mℓ分取できれば可)と 2-ナフトールを約 01g 入れ
よくかき混ぜる調製した溶液の中に布をつけその布はガラス棒でしぼってから(布
をガラス棒ですくいあげればよい)シャーレに広げる温度の異なる条件下(常温およ
び低温)で染料の合成実験を行うため布は最低 2枚調製した溶液と接触させそれ
ぞれ別々のシャーレ(低温用および常温用)に広げる
2) 新しいビーカーに水を約 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回分取)と 6molℓ塩酸約 4mℓ(10m
ℓ駒込ピペットで目分量で可)さらにアニリン約 1mℓ(プラスチック製 1 mℓ駒込ピペッ
ト)を入れてよくかき混ぜる染料の合成を常温および低温下で行うためこの溶液を
2つ調整する
低温下で反応させる溶液は恒温槽で 10~15 分ほどよく冷やした後亜硝酸ナトリウ
ム 05g を加えてよくかき混ぜる
常温下で反応させる溶液には冷却作業を行わずに亜硝酸ナトリウム 05g を加えて
よくかき混ぜる
3) 2)でつくった水溶液をシャーレに広げた布に注ぎ生成される染料を布によく染み
込ませ5分程放置する
4) 色の付いた布を取り出してポリ手袋をした手できれいに水洗いをし乾燥させる
48
5) 色差計を用いて乾燥した布の Lab(L明度aおよび b色度)を測定する
2)で作った溶液は5以下では無色の溶液ですが5以上になると淡い黄色になりま
す
【解説】
アゾ染料はアゾ基(-N=N-)を持っていてこのアゾ基によって鮮やかな橙色を呈色し
ます今回合成したアゾ染料は図の 1-フェニルアゾ-2-ナフトールです意外かもしれ
ませんが指示薬として使われているフェノールフタレインもアゾ化合物ですフェノール
フタレインは pH の変化によって色が出てきす染料の中でも最初は無色のものもありますが
温度を変化させたり酸性やアルカリ性にすると色が出てきます
ベンゼン ニトロベンゼン
N2Cl
ニトロ化 濃硫酸(濃硝酸)
還元反応 濃塩酸
(Sn又は Fe)
アニリン塩酸塩
遊離反応 NaOH
アニリン塩酸塩に強塩基を反応させる
と弱塩基であるアニリンが遊離する
氷冷+亜硝酸ナトリウム アニリン
塩酸
ジアゾ化
塩化ベンゼンジアゾニウム
塩化ベンゼンジアゾニウム
は熱によって窒素とフェノー
ルに分解される
カップリング
C10H7ONa (ナトリウム 2-ナフトキシド)
O
N =
1-フェニルアゾ 2-ナフトール
NH3Cl NH2
49
7 ガスクロマトグラフ質量分析計による茶葉中のカフェインの分析 71 はじめに ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)は極めて低い濃度の化学物質の同定や未知物質の構造決定に極めて強力な分析機器の一つであるGCMSを用いるとサンプルの中に含まれているある成分の分子構造(カフェインの分子構造を図 71に示す)やその量が分かりますもちろん分析機器ですので測定できる物質対象となる系や測定条件にはある
程度の制約があります混合物質を分離するガスクロマトグラフ(Gas ChromatographGC)と分離された成分(物質)を分析(構造決定と濃度測定)する質量分析計(Mass SpectrometerMS)を組み合わせた装置であるこの装置は有機化学生化学環境化学などの多くの分野で非常に多用されている例えば極めて低い濃度でも生体へ強い影響が懸念されるダイ
オキシン類などの土壌や河川の水中での含有率の決定や食品や医薬品中の微量成分の決定
にも利用されている 一方日本人に長い間親しまれてきた緑茶が近年産業界や医学
界で注目されている茶葉にはカフェイン(分子構造図 71)カテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドなどの有用成分が多く含まれておりその効能が注目されている 本実験では茶葉中に含まれるカフェインに対してGCMSを用いて分析する茶葉中には種々の物質が含まれておりGCMS分析を容易にするため前処理として超臨界二酸化炭素抽出(4015MPa程度の高圧力の二酸化炭素を溶剤として利用)により茶葉からカフェインの抽出を行いそのサンプルを GCMSにて分析する
図 71 カフェインの分子構造 図 72 物質の分析 個々の物質や装置についてはインターネットにより下記のWebサイトのフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』などにより調べるとよいカフェイン(caffeine)はアルカロイドの一種プリン環を持つプリンアルカロイドの一種でコーヒー類に含まれることか
らこの名がある化学名は137-トリメチルキサンチン(C8H10N4O2) コーヒーコーラ緑茶紅茶ガラナココアなどに含まれる(量は緑茶が一番多い)結晶は一水和物(C8H10N4O2bullH2O)もしくは無水物(無水カフェインC8H10N4O2)として得られ
る白色の針状または六角柱状結晶で匂いはなく味は苦い融点は 238昇華性がある出典フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』httpwwwwikipediaorg 装置「GCMS」httpwwwanshimadzucojpproductsgcmsqp2010htm (島津) 「超臨界抽出装置」httpwwwkagakucomjasco39-49html (日本分光)
50
レポート課題 1茶葉中に含まれるカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドの中から3つの物質を選びその物質について調べた結果を A4 レポート用紙2枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
2GCMS についてA4 レポート用紙1枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
3与えられたサンプルは茶葉1gから抽出されたのである実験結果よりもとの茶葉
1g中に含まれるカフェインの量を推算し計算式とあわせて示すこと 72 原理および装置 実験で使用する島津製の GCMS装置の全体図を図 73に原理の概略を図 74に示す
1
23
4
5
67 8
9
10
キャリアーガス
試料物質
1ボンベ(He)2圧力計3マイクロシリンジ4サンプラー5試料導入部6分離カラム
7セパレーター8イオン化室9磁石10電子増倍管11記録計
11
図 74 ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)の概略図
サンプルフォルダー
51
GCMS 装置は分離部である図中の 1~6 のガスクロマトグラフ(GC)と7~11 の検出部である質量分析計(MS)から構成される 3のマイクロシリンジを用いて試料を GCMSに導入する導入された試料は5試料導入部でガス化され6分離カラムに導入される分離カラムには吸着剤が充填されおり混合物の試料を導入した場合各物質と吸着剤との
親和性の違いにより各物質の分離カラムから排出されるタイミングは異なる分離カラム
を排出された試料は8イオン化室でイオン化され10電子倍増管にて検出される アセトンに溶解したカフェインの GCMSによる分析結果の一例を以下に示す図 75にク
ロマトグラム図 76にカフェインのピークのマススペクトルを示す
図 75 GCMSにより得られたクロマトグラム
横軸がリテンションタイムで縦軸がピーク強度を表す
図 76 カフェインのマススペクトルとカフェイン(分子量MW=194)の構造
(図 75中のリテンションタイム 126min付近のピークに起因するマススペクトル) 茶葉中にはカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイド以外にも繊維であるセルロースなど多くの物質が含まれているため茶葉そのものを
そのままサンプルとしてGCMSで分析することは困難であるセルロースなどの分子量の大きな物質はカラムに詰まってしまい分析できないそこで今回は超臨界二酸化炭素
による抽出により主にカフェインを他の物質と分離抽出した通常よく利用されるアセ
トン抽出(アセトンに茶葉を浸し特定の成分を抽出する)ではカフェイン以外にも多く
の物質が抽出されるため図 75 のような単独のピークを得ることは難しく複数のピークがクロマトグラムに見られるこのサンプル(この場合茶葉からの抽出物)にはカフェ
イン以外の不純物は少なかったがガスクロマトグラフの分離カラムによりさらにそれ
らの混合物が精度よく分離されるクロマトグラムのピークはそれらサンプル中に含まれ
ていた個々の物質を表しているクロマトグラムのピークを選択することで分子構造解析
したい物質を選んだことになる選択したクロマトグラムのピークの表している物質(ここ
ではカフェイン)に対応するマススペクトルが図 76 に表示されているマススペクトル
52
で横軸がその成分(ここではカフェイン)分子を構成している原子の原子量で縦軸がそ
の量を表しているのでマススペクトルから分子構造を解析するためにコンピュータ内
に蓄えられた物質ごとのマススペクトルデータと今回測定したマススペクトル(分子内に含
まれている各原子の数)を比較することで測定したサンプル中のクロマトピークを選択し
た分子がどのような原子をどれだけ含んだ分子であったかがわかりそれからその物質
がどのような分子構造の物質である可能性が高いかをコンピュータが検索し結果を示す 73 実験サンプルの設置と GCMS装置の操作方法 実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS装置のサンプルフォルダ
ー(図 73)にセットするこのサンプルは茶葉 1gを 50ccの高圧セルにて超臨界二酸化炭素を利用して4015MPa2時間接触の条件で抽出した固体を10gのアセトンに溶かしたものである またコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に装置および装置制
御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 本実験で使用する GCMS の操作は全てコンピュータのモニター上で GCMS の解析プログラムソフトを使用することで行うコンピュータの操作方法を以下に示す なおコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS 装置のサンプルフォルダー(図 73)にセットするまた装置および装置制御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 1)パソコンのデスクトップ上のアイコン「GCMS 分析」をクリックすると以下のようにGCMS制御プログラムを起動するその後「OK」ボタンをクリックする
図 77 GCMD分析用ソフトウェア「GCMS分析」の起動
まず「GC-MS分析」をクリック
「OK」ボタンをクリック
53
2)制御プログラムが起動されパソコンと GCMSの接続が開始される
図 78 「GCMS分析」の接続確認画面 3)GCMSとパソコンの接続が完了すると以下のような画面が表示される
図 79 「GCMS分析」操作画面
4)マススペクトルによる分子構造の解析 サンプル(この場合茶葉からの抽出物)には多くの物質が混じり合っていたがガス
クロマトグラフの分離カラムによりそれらの混合物が精度よく分離されるクロマトグラ
ムのピークはそれらサンプル中に含まれていた個々の物質を表しているクロマトグラム
のピークを選択することで分子構造解析したい物質を選んだことになる選択したクロマ
トグラムのピークの表している物質(ここではカフェイン)に対応するマススペクトルを選
択するマススペクトルは横軸が原子量で縦軸がその量を表しているのでマススペク
トルから分子構造を解析するために「定性処理」を行う シミラリティ検索結果が表示され分析により得られたスペクトルと類似のスペクトルを有
する物質の一覧が表示される上部に表示される物質ほどスペクトルが一致していること
を示す
接続状況が表示される
「トップへ」
をクリック
54
図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果
図 711 表示スペクトルのシミラリティ検索結果 10)図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果の印刷 「レポート(R)」をクリックし「検索結果(R)」をクリックすると検索結果が印刷される
GC-MS 分析で得られたマスス
ペクトル
データベース中
のマススペクト
ル
55
参考資料 生理活性物質の精製 カフェインの利尿作用のように生物活動に影響を与える物質を生理活性物質といいます
天然物には生理活性物質を多く含むものがあります一般に天然物は多くの成分を含ん
でおり特定の生理活性物質を分離抽出するには種々の分離技術が必要ですまた生
理活性物質には60以上の温度でその生理活性を失う(失活)ものや溶剤として広く用いられているクロロホルムなどの有機溶剤中で失活するものが多いそこでこれら生理活性
物質の分離精製技術の開発が望まれており30~60程度のマイルドな温度条件で操作できる二酸化炭素を機能性溶媒として利用する超臨界抽出も有効な分離技術として注目されて
いる超臨界二酸化炭素は気体と液体の中間の性質を持ち物質の分離に役立っています 臨界点付近の高密度気体は超臨界ガスまたは超臨界流体と呼ばれ臨界圧力前後でそ
の溶解能力が著しく変化することから工業的にも種々の分野で利用されています一例と
して超臨界二酸化炭素(SC-CO2)によるコーヒー豆からのカフェインの抽出プロセス(a)
ならびに超臨界二酸化炭素に対するカフェインの溶解度(b)を図に示します図(c)に示す
ように固体のカフェインがガスである超臨界二酸化炭素に溶解します
このように超臨界二酸化炭素を用いた技術はコーヒー豆からのカフェインの抽出プロ
ポリスからの生理活性物質の抽出に利用されています
図 超臨界二酸化炭素抽出を用いたコーヒー豆からのカフェインの抽出
56
付表 最小二乗法について 直線で近似する場合 f (x) = a0 + a1x (A1-1) 式(A1-1)のように近似させるとする測定値 yiとの残差を eiとすると式(A1-2)のようになる ei = yi - f (xi) = yi - ( a0 + a1xi ) (A1-2) ここで式(A1-2)の両辺を二乗してその i に関する総和をとりその値を S とすると次式となる
sumsum==
+minus==n
iii
n
ii xaayeS
1
210
1
2 )( (A1-3)
S を最小化するような a0a1を求める式(A1-3)を a0a1について偏微分すると次式とな
る
sum=
+minuspartpart
=partpart n
iii xaay
aaS
1
210
00)( sum
=
+minusminus=n
iii xaay
110 )(2 (A1-4)
同様にa1について編微分すると次式のようになる
sum=
+minusminus=partpart n
iiii xxaay
aS
110
1])([2 (A1-5)
Sが最小となる時は次式が同時に満たされる時である
00=
partpartaS
01=
partpartaS
(A1-6)
よって誤差が最小となる a0a1を求めるためには式(A1-6)を連立して解けばよい
sumsumsum===
+=n
ii
n
i
n
ii xaay
111
10 1 (A1-7)
sumsumsum===
+=n
ii
n
ii
n
iii xaxaxy
1
2
11
10 (A1-8)
式(A1-7)と式(A1-8)を a0a1を変数とみなし連立して解くと次式を得る
n組のデータ(xiyi)(i=12hellipn)に対して回帰直線 y= a0 + a1x を最小二乗法で求めて出力しデータ番号 iデータ yi直線で推定した値 )( ii bxay += および残差
iii yy minus=ε を出力するようなプログラムをつくりたい基礎式を導出せよ (ヒント残差の二乗の和が最小になるように係数 a0a1)を定めるのが最小二乗法
である)
57
sumsum
sumsumsumsum
==
====
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
n
ii
n
ii
xxn
xxyyxa
1
2
1
2
1111
2
0
)(
))(())(( (A1-9)
sumsum
sumsumsum
==
===
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
xxn
yxxyna
1
2
1
2
1111
)(
))(()( (A1-10)
よって式(A1-9)(A1-10)を用いれば最も誤差を小さくするような直線 y = a0 + a1x が求められる
y=a1x+a0 にて近似
誤差 ei
x
y
誤差が最小になる関数(直線 y=a1x+a0の場合)
図1 最小二乗による近似
誤差の和Sが最小
S
a0
a1
直線 y=a1x+a0 の近似
誤差の全体の和はS=Σei=Σyi-(a1xi+a0)
Sは変曲点にて最小値を示すすなわち(partSparta0)=0 (partSparta1)=0
図2 a0a1とSの関係
30
KCKCnn
+=
infin
1 (2)
ただしninfinは飽和吸着量Kは吸着平衡定数であるこの式は
1)吸着分子が固体表面で単分子以上の厚い層を作ることはない 2)吸着分子同士の間の相互作用はない
という二つの仮定にもとに導かれたものである 結果の整理および報告 Freundlich吸着等温式Langmuir吸着等温式の各々のパラメータの最適値を求めよまた活性炭の吸着特性および表面積について考察し化学工学における吸着操作の重要性につい
ても検討せよ 311 吸着等温式 (a) ヘンリー(Henry)型吸着等温式 液相の濃度あるいは気相の圧力が小さい場合吸着分子間の距離が十分に長いため吸着
分子同士の相互作用が無視でき固体表面と吸着分子のみの相互作用で吸着量を決定できる
とき次式のように表される
n=KC (3)
ここでKは比例定数である図 3-1の(a)に示すように濃度 Cと吸着量 nは比例関係があり一般に吸着量が小さい範囲で成立する気体の場合は溶液濃度 Cの代わりに気相圧力 pを用いればよい
濃度(分圧)
濃度(分圧)
濃度(分圧)
濃度(分圧)
吸着量
吸着量
吸着量
吸着量
(a)ヘンリー型 (b)ラングミュア型
(d)BET型(c)フロインドリッヒ型
0
0
0
0
図 3-1 吸着等温式
31
(b)ラングミュア(Langmuir)型吸着等温式 ラングミュアは図 3-2 に示すように固体表面に同等な吸着力を示す吸着サイトがあり
表面に 1分子層だけ吸着する(単分子層吸着)と仮定して平衡状態における吸着量と溶質濃度(気相分圧)のと関係を導いた全吸着点のうち吸着分子に覆われている吸着点の割合
をθ[-]とすると分子の脱着速度 rrsquo[mols-1]はθに比例する比例定数を a[mols-1]とすると次式のように表される
吸着剤
吸着分子
吸着サイト
図 3-2 固体表面上の吸着サイト(Langmuir式の導出) r=aθ (6) また気相からの吸着速度 r[mols-1]は空いている吸着点の割合(1-θ)[-]と溶液濃度 C[molm-3]に比例する rrsquo= b(1-θ)C (7) このときの比例定数を b[m3s-1]とするまた平衡状態では両速度は見かけ上等しいため以下の式が成り立つ aθ=b(1-θ)C (8) これを変形する
CbaCbsdot+
sdot=θ (9)
ここで飽和吸着量を ninfin[molkg-1] ba を K[m3mol-1](Kは吸着平衡定数)とおくと infin=nnθ
となるので次式が得られる
32
KCKCnn
+=
infin
1 (10)
これをラングミュア式と呼ぶ
(c)フロインドリッヒ(Freundlich)型吸着等温式 フロインドリッヒの吸着等温線は図 3-1(c)のように示される
n=aC1b (11) nは吸着量[molkg-1]で aと bはともに吸着定数[-]である (d)BET(Brunauer-Emmett-Teller) 型吸着等温式
BET型の吸着等温線は図 3-1(d)に示されるラングミュア式は表面に 1分子層だけ吸着すると仮定したものであるがBET式は無限分子層まで吸着できる式である図 3-3に示すように吸着した分子がそれぞれ次の層の吸着サイトとなり分子は積み重なって多分子
層に無限層まで吸着できるものとし各層への吸着にラングミュア式を適用すれば次式の
ように表せる
( ) ( )CKCCCKqq
minus+sdotminussdotsdot
=infin
11 (12)
この式は多孔質固体の細孔表面積を窒素ガスの吸着によって測定する際に利用される重要な式
である
表面の吸着サイト
分子上の吸着サイト
図 3-3 多分層吸着モデル
Langmuir式のパラメータ決定法 水溶液からの酢酸の活性炭に対する吸着平衡データ(吸着平衡温度 12)は表 3-1のよ
うに与えられる実験データよりラングミュア式のパラメータ(K吸着平衡定数ninfin飽和吸着量)を最小二乗法で決定せよさらにラングミュア式より決定した ninfinKの値を用いて吸着等温線を計算し計算線として図に示し実験点と比較せよ
33
表 3-1 n C Cnの関係
ラングミュア式は式(310)で与えられるこの式を変形すると次式となる
CKnCK
n infinsdot+
=11
(313)
両辺に Cをかけると以下の式が導出される
CCnKnCKn
CCKn
Cβ+α+
==
+= infininfininfin
11)1( (314)
ただしα=1ninfinβ=1(ninfinK)とする式(314)より Cn と C の関係のグラフプロットは傾きα=1ninfin切片β=1(ninfinK)の直線関係を与えることを示している表 3-1の値を用いて計算した Cnと Cの関係を表 3-1および図 3-4に示す 最小二乗法を用いて傾きαと切片βを決定した α=1ninfin=43865 β=1(ninfinK)=2654 得られた傾きおよび切片よりninfinおよび Kは次のように求まる
ninfin=1α=1D18=000228 molg-1 K =(1ninfin)β=αβ=D18C18=165
0
50
100
150
200
0 200 400 600
C [ molm-3 ]
Cn [ kgm-3 ]
傾き = 1 ninfin
1 ninfinK
切片0
05
1
15
2
25
3
0 100 200 300 400 500
液相の溶質濃度 C [ molm-3 ]
吸着量 n [ molkg-1]
液相と溶質濃度 C [ molm-3 ]
吸着量
n[ m
olk
g-1]
実験点
Langmuir式パラメータninfin 00033 [ molg-1 ]K 00086 [ m3 mol -1 ]
図 3-4 ラングミュア定数の決定 図 3-5 12における酢酸濃度 Cと
吸着量 nの関係
C [molm-3] n [molkg-1] Cn [kgm-3] 460 225 109 529 214
268 199 149 105 060
172 128 732 504 357
34
Freundlich式のパラメータ決定法 酢酸水溶液中における酢酸の活性炭に対する吸着実験を行ったところ以下のような実験デー
タを得たただしCbはバルク相における酢酸濃度n は活性炭に対する酢酸の吸着量を示す
Cb[molL] n[molg] log10Cb log10n 04621 000205 02410 000175 01139 000139 00519 000105 00243 000081
実験データを利用して次式で与えられる Freundlichの等温吸着式の定数 abの値を求めたい
bbaCn1
= (1)
このままでは定数 abの値を決定することが難しいので上式の両辺の対数をとる
bbb
bb
Cb
aCa
aCn
ln1lnlnln
)ln(ln1
1
+=+=
=
(2)
ここで横軸に ln Cb縦軸に ln nの関係をグラフにプロットするすなわち x=ln Cby=ln nと考える
bCb
an ln1lnln += (3)
ここで直線式 y=a0+a1xと比較するすなわち
)(1)(ln
1
00
傾き
切片
ba
eaaa a
=
=rarr= (4)
a0および a1は最小二乗法により数値で求められる与えられたデータでは a1= a0= なので a= b= となる この値を n=acb
1bに代入してcb=0~05の範囲で nの値を計算する
35
BET式のパラメータ決定法 BET式は次式で与えられる
)1)(1( KCCCKCnn
+minusminus=
infin
(17)
以下のように BET式の変形を行う
)1()1(
KCCKCnCn+minus
=minusinfin
(18)
(18)式の逆数をとると
KCnCK
KCnKCC
Cn infininfin
minus+=
+minus=
minus)1(1)1(
)1(1
(19)
(19)式の両辺に Cをかえると
KCnCKC
CnC
infin
minus+=
minus))1(1(
)1( (20)
(20)式を変形すると次式が得られる
CKn
KKnCn
Cinfininfin
minus+=
minus11
)1( (21)
C と)-(1 Cn
Cのプロットは傾き
KnKinfin
minus1切片
Kninfin
1の直線関係を与えることを示している
これをグラフにプロットし最小二乗法に傾きおよび切片を求める
36
312 活性炭の比表面積の決定 酢酸分子の構造を以下に示す
Hc-Cb-Ca
Hd
Hb Oa
Ob-Ha
1219deg
Ca Oa
Ob
図 36 酢酸の構造
酢酸の 1分子の吸着面積srsquo [m2]を図 3-6に示すこのとき文献より
Caと Oaの結合距離 1321Å Caと Obの結合距離 1206Å OaCaObの角度 1219deg Cの原子半径 077Å Oの原子半径 062Å
したがって吸着面積 Slsquoは次のようになる
( ) ( ) 2088 10376109931036321 minusminusminus times=timestimestimestimes=s m2
ここで活性炭の比表面積 S[m2g]は次式で示される 10026 23 snS timestimestimes= infin
S活性炭の比表面積 [m2g] ninfin飽和吸着量 [molg] srsquo酢酸 1分子の吸着面積 [m2] 602times1023アボガドロ数 [個mol] したがって活性炭の比表面積 S[m2g]は
003350=infinn molg 2010376 minustimes=s m2 より
51281037610026003350 2023 =timestimestimestimes= minusS m2g
37
4 粘度密度測定 41 はじめに 大量生産を目的とした工業的化学プロセスはほとんど流れ系(流通系)であるそれらの系において操作対象となる各物質の粘度は装置を設計操作する場合きわめて重要
な物性値である 本実験では低分子溶液および高分子溶液の粘度測定を通じて液体の粘度について考察するさらに演習問題を通じて気体液体高分子溶液などの化学プロセスで対象となる物
質の輸送物性(粘度拡散係数)の重要性を認識されたい 42 低分子溶液の粘度 [目的] 種々の濃度のエタノール水溶液の粘度を測定しその溶液の粘度について考察する [概要] 25におけるエチルアルコール濃度 02040506080100 wt の水溶液について流下時間を測定しこの結果より相対粘度絶対粘度運動粘度を求めグラフにするま
た水の密度水-エチルアルコール溶液の密度についてはピクノメーターを用いて決
定する報告書には相対粘度絶対粘度運動粘度 vsエチルアルコール濃度の関係をそれぞれグラフにして提出する
[計算方法] 相対粘度絶対粘度運動粘度の定義は次のようになる
相対粘度 ww
w tdtd
ηη = (41)
η 混合溶液の粘度 [gcms] ηw水の粘度(8007times10-3 gcms) [gcms](25における粘度) d エチルアルコール水溶液の密度 [gcm3] dw水の密度(099704gcm3) [gcm3](25における密度) t エチルアルコール水溶液の流下時間 [s] tw水の流下時間 [s] 下付添字 W 水
絶対粘度 www td
tdη
η= (42)
運動粘度 ν=ηd [cm2s] (43)
38
[実験方法] 1) 粘度計を洗浄し粘度計内 に二連球で空気を送り込み
乾燥させる乾燥しにくい 場合はアセトンを滴下し た後再度二連球で空気 を送り込み乾燥させる 2)ピペットで一定体積(10mℓ) の純水を取り広い口 f から 粘度計に水を入れる 3)粘度計を恒温槽(25)に つけ約 10 分静置する 4)安全ピペッターを口 a に 取り付け液面が b 上部に 到達するまで吸い上げる 5)安全ピペッターを外すと 液面が降下しだす液面が bd 間を通過する時間をスト ップウォッチで測定する
6)純水での測定を 3 回繰り返す 7)純水を粘度計から取り除くその後粘度計内に二連球を用いて空気を送り込み乾燥させる 8)粘度計乾燥後複数の濃度に調整済みのエチルアルコール水溶液(10mℓ)を粘度計にいれ4)~6)の作業を繰り返し行う(3 回)なお濃度の異なるエチルアルコール水溶液を粘度計内に導入する場合には7)と同様に二連球を用いて粘度計内に空気を送り込み乾燥させる
表 4-1 エチルアルコール水溶液の濃度密度相対粘度の関係 エチルアルコール濃度
[wt] 密度 d[gcm3] 相対粘度
η ηw[-] 0
20 40 50 60 80
100
安全ピペッター接続
図 4-1 粘度計
液面の bd間の通過時
間を測定
f
39
43 密度測定 [目的] 本実験では水とエタノールの種々の組成の混合液体について密度を測定し分子間相互
作用について考察する [実験方法] 1)ピクノメーターの容積測定
図 4-2のピクノメーターの空の重量 wg を秤量する
ピクノメーターの蓋を取り外し
ピクノメーターを水で満たす
設定温度を 25として恒温槽 の電源を入れ恒温槽内の温 度が一定になるまで待つな お水温は恒温槽中の水銀温 度計から読む
恒温槽中に水を満たしたピク
ノメーターを入れる
約 10分間静置する
ピクノメーターに蓋をするこのときピクノメーターの容量
よりも余分の水は蓋の上部より排出される
ピクノメーターの外側を乾いた布で拭い秤量する(その重量を
wwg とする)
恒温槽の温度(25)における水の密度 dwgcm3(=099704gcm3)
より次式を用いてピクノメーターの容積を求める
w
w
dww
Vminus
= (44)
図 4-2 ピクノメーター
蓋
40
表 4-2 エチルアルコール水溶液の濃度と密度の測定結果(25) エチルアルコ
ール濃度[wt]
wrsquo[g] ww[g] V[cm3] w[g]
d[gcm3]
0 20 40 50 60 80
100
099704
エチルアルコール濃度[wt] 空のピクノメーターの重量 wrsquo[g] 水を入れたときのピクノメーターの重量 ww[g] ピクノメーターの体積 V[cm3] エタノール水溶液の入れたときのピクノメータの重さ w[g] エタノール水溶液の密度 d[gcm3]
容積 Vを求めたピクノメーターに混合溶液(調整済み)を入れてその重量 wgを秤量し次式で混合溶液の密度を求める
Vwwd minus
= (45)
エタノール濃度と密度 d の関係をグラフにプロットする
41
44 高分子溶液の粘度 [目的] 高分子溶液の粘度測定から分子量の粘度に与える影響について考察する [概要 ] オストワルド粘度計を用い種々の濃度のポリビニルアルコール(PVA ((-CH2CHOH-)n))水溶液の粘度を測定し粘度データよりポリビニルアルコールの分
子量を求める まず 05g100cc の濃度のポリビニルアルコール水溶液を調製する次にこれを原液
とし23 12 13 15の濃度の溶液を調製するこれらの溶液についてオストワルド粘度計を用いてそれぞれ流下時間を測定し相対粘度絶対粘度運動粘度を求め実験デ
ータより極限粘度[η]を求めるまた報告書には相対粘度絶対粘度運動粘度C
)ln( wηη
Cw
w-η
ηη vsポリビニルアルコール濃度の関係をそれぞれグラフにして提出する
[計算方法] エチルアルコール水溶液の粘度測定と同様の手法を用いて粘度の計算を行うなおポリビニルアルコール水溶液の密度はピクノメーターを用いて測定すること 表 4-3 ポリビニルアルコール水溶液の濃度密度相対粘度の関係 ポリビニルアルコール
濃度 [g100cc] 密度 d[gcm3] 相対粘度
η ηw[-] 05times(15) 05times(13) 05times(12) 05times(23)
05
42
[分子量の計算方法] 実験を行った結果以下のような粘度データを得られるとする実験データより極限粘度
を求めポリビニルアルコール(PVA)の分子量Mを決定せよ
PVA 水溶液濃度
C[g100cc]
相対粘度
ηηw[-]
絶対粘度
η[gcms]Cw
w-η
ηη
C)ln( wηη
05times(15) 1031 0008255 031 0305
05times(13) 039 0378
05times(12) 03 0289
05times(23) 0375 0353
05 0364 0334
ηw=8007times10-3 gcms 線状高分子の極限粘度[η]と分子量Mの関係は次式で与えられる [η]=KMα (46) ただしポリビニルアルコールの場合K=666times10-4α=064であるなお極限粘度[η]は次式で定義される
CC w
w
0
-][ limη
ηηη
rarr
= (47)
または
CC
)ln(][ w
0lim
ηηη
rarr
= (48)
よって濃度 CとCw
w-η
ηηまたは濃度 Cと
C)ln( wηη の関係をグラフ化し最小二乗法によ
り切片の値を求めると極限粘度[η]が決定される
Cw
w-η
ηηと C の関係より最小二乗法を用いて切片の値を決定すると(図 43 参照)切片=
03242傾き=00874となるよって極限粘度は以下のようになる[η]=03242同様
にC
)ln( wηη とcの関係より最小二乗法を用いて切片の値を決定する
(図 44参照)と切片=03249傾き=00256となり極限粘度は以下のようになる[η]=03249
Cw
w-η
ηηと Cの関係より決定した[η]=03242を用いてポリビニルアルコール(PVA)の
分子量 Mを計算する(46)式より以下のように PVAの分子量 Mを計算することができるM=([η]K)1α
=(03242(666times10-4))(1064)
=15811
43
y = 00874x + 03242
0
02
04
06
08
1
0 01 02 03 04 05 06 07
c[g100cc]
(η-ηw)(ηwc)
cw
w
η
ηηminus
極限粘度[η]
図 43 298Kにおける PVA濃度 CとCw
w-η
ηηの関係
y = 00256x + 03249
0
02
04
06
08
1
0 01 02 03 04 05 06 07
c[g100cc]
(ln(ηη
w))c
c)ln( wηη
極限粘度[η]
図 44 298Kにおける PVA濃度 CとC
)ln( wηη の関係
44
5 植物からの DNAの抽出 51 はじめに 分子レベルでの遺伝子の構造解明や遺伝子の発現に関する研究は近年急速に発展している
これら生命現象のしくみを分子レベルで解明しようという分子生物学の分野ではさまざま
な遺伝子の解析や応用方法が開発され我々の生活に身近なものになりつつある 本実験では初歩的な分子生物学に関する実験として植物(タマネギ)からの DNA の
抽出を行い抽出した遺伝子の電気泳動法による分離実験を試みる 52 試薬および器具 試薬 タマネギ(細胞中から遺伝子の抽出を行う) 台所用洗剤(洗剤中に含まれる界面活性剤には植物の細胞膜およびタンパク質を破壊す
る働きがある) 塩化ナトリウム(DNAは塩化ナトリウム水溶液に溶解し易い性質がある) エタノール(予め冷やしておくDNAはエタノールにほとんど溶解しない) 制限酵素(DNAを一定の部位で切断する働きを働きがある) TE緩衝液(pH緩衝剤が入った溶液) 器具 ビーカーミキサーフィルターメスシリンダー駒込ピペットガラス棒 マイクロピペット電気泳動装置ポラロイドカメラ 53 実験方法 1)タマネギは 1回の実験で半個のうち内側の半分程度を使用するタマネギ水 30ml台所用洗剤数滴をミキサー用ガラス容器に入れ40~60秒程度(固体状のタマネギがなくなる頃が目安)ミキサーにて混合する
2) 1)で作成した混合溶液をビーカーに移し約5g程度の塩化ナトリウムを加えガラス棒で静かに攪拌する粘性の大きな溶液が得られる
3) 2)で作成した溶液をフィルターを用いて濾過し濾液を回収する 4) 濾液の約2倍程度の量の冷エタノールをビーカーの壁伝いに静かに注ぐ 5) ビーカーを揺するとエタノール層に白くふわふわしたものが浮いてくるこれが DNAであるガラス棒で DNAを巻き取りシャーレ上にて DNAを回収する顕微鏡を用いて回収した DNAの状態を観察する
6)マイクロチューブ(容量 15ml)中に用意した 70エタノールを 8 分目程度まで注ぐ5)にて回収された DNAをマイクロピペットを用いて70エタノールの入ったマイクロチューブ中に移す軽く混ぜることによりDNA から不要な物質を洗い流す遠心分離してDNA をマイクロチューブの底に沈めた後溶液を捨てて DNA を乾かす乾いたらTE緩衝溶液を 1ml加えて放置するDNAの溶液が得られる
54 電気泳動装置による DNAの観察
本実験は職員と一緒に行うこと 実験を行う人はビニール手袋をすること 1) 抽出した DNAを電気泳動装置で観察するマイクロピペットを用いて以下のように調製した DNAの混合溶液を調製する(いずれの溶液も調製済)
45
2) マイクロピペットを用いてアガロースゲルの試料を流し込む穴(ウェル)に1)にて調製した溶液 Aおよび Bを注ぎ込む注入量は20μℓとする電気泳動装置のスイッチを入れて100Vの電流を流しアガロースゲル内にて DNAを電気泳動させる
3) 試料に予め加えられておいた青色の色素が 7 分目程度まで進んだら電気泳動を中止する(約 30分程度)
4) (ここでの作業は職員が行う) アガロースゲルを取り出し染色液に浸す染色後ゲルを取り出しポラロイドカメラで
DNAの泳動状態を撮影する
+ -
アガロースゲル
試料を流し込む穴(ウェル)
図 51 電気泳動装置
6 5 4 3 2 1
図 52 DNAの電気泳動写真の一例
55 電気泳動装置の原理 電気泳動装置の原理図を以下に示すアガロースゲル(寒天から不純物を除いたもの)中
に DNAをセットし電流を流すとDNAは電流の向きとは逆にマイナスからプラス方向
調製済 溶液 A(制限酵素なし) 水 11μℓ 10timesH Buffer 2microℓ 植物 DNA 5μℓ
調製済 溶液 B(制限酵素 Eco RI入り) 水 11μℓ 10timesH Buffer 2microℓ 植物 DNA 5μℓ 制限酵素 2μℓ
1 DNA(タマネギ)+制限酵素 2 DNA(タマネギ)+制限酵素 3 DNA(タマネギ) 4 λ-DNA(大腸菌)+制限酵素 5 λ-DNA(大腸菌) 6 サイズマーカー
500bp
46
に動く(このことを電気泳動という)これはDNA のリン酸部分が負に帯電しているためでありまたDNAはその長さにより泳動距離が異なる(短い遺伝子ほど長く泳動する)電気泳動ではこの性質を利用してDNAを大きさごとに分離することができる
塩基対数によってDNAを分離
EtBr (蛍光試薬)DNAの二本鎖内に入り込む
発光
UVλ=302nm
励起
分離後のアガロースゲルをエチジウムブロマイド(EtBr)溶液に浸す
DNAを含んだ溶液
アガロースゲル
リン酸部分が負に帯電
塩基 (ATGC)-
+
カメラで撮影
電圧
DNA構成成分(dNTPs)
バンドが明る
DNA量が
バンド(DNAの存在)
図 53 電気泳動の原理
56 制限酵素とは DNA は4 種類のヌクレオチド(GATC)が不規則につながってできている制限酵素はDNAの特定のヌクレオチドが並んでいる部分を切断する制限酵素には様々な種類がありEco RI(エコアールワン)と呼ばれる酵素は「GAATTC」といった並びの部分だけを切断することができる
GAATTC
CTTAAG
制限酵素
Eco RI
AAGCTT
TTCGAA
制限酵素
Hin dIII
図 54 制限酵素による DNAの切断
レポートについて 1 実験方法および実験結果の整理方法については指針書を参考にすること 2 実験結果については電気泳動の結果について考察すること(制限酵素の影響などにつ
いてまとめてください)
47
6 染色実験
61 はじめに
現在私達の身の周りでは様々な染料が使われている例えばT シャツやジーンズな
どの衣服は橙黄赤青など様々な色に染められている他にも私達が気付かないと
ころで多くの染色された製品を使用しているそこで本実験では高校の化学で学んだ
アゾ染料を合成してみるアゾ染料はアニリンを原料として作られているアニリンはベ
ンゼン環にアミノ基(-NH2)がついたものであるアニリンは無色の液体で水に溶けにく
くアンモニアより弱い塩基性を示すまたさらし粉(CaClO(ClO)H2O)水溶液を加えると
赤紫色を呈するこの呈色反応はアニリン特有のものであるので検出反応に用いられる
このアニリンを出発物質としてアゾ染料を合成してみる
62 試薬および使用器具
【試薬】 ①05moll 水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液
②2-ナフトール ③フェノール ④6moll 塩酸
⑤亜硝酸ナトリウム ⑥アニリン ⑦氷
【器具類】 ①電子天秤 ②50mℓビーカー ③100mℓビーカー
④ガラス棒 ⑤布(ガーゼなど) ⑥ピンセット
⑦ポリ手袋 ⑧ドライヤー ⑨シャーレ
10駒込ピペット(10ml ガラス製)
11駒込ピペット(1ml プラスチック製)
63 実験方法
1) 50mℓビーカーの中に 05molℓ水酸化ナトリウム水溶液 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回
NaOH 水溶液を分取するほぼ 20 mℓ分取できれば可)と 2-ナフトールを約 01g 入れ
よくかき混ぜる調製した溶液の中に布をつけその布はガラス棒でしぼってから(布
をガラス棒ですくいあげればよい)シャーレに広げる温度の異なる条件下(常温およ
び低温)で染料の合成実験を行うため布は最低 2枚調製した溶液と接触させそれ
ぞれ別々のシャーレ(低温用および常温用)に広げる
2) 新しいビーカーに水を約 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回分取)と 6molℓ塩酸約 4mℓ(10m
ℓ駒込ピペットで目分量で可)さらにアニリン約 1mℓ(プラスチック製 1 mℓ駒込ピペッ
ト)を入れてよくかき混ぜる染料の合成を常温および低温下で行うためこの溶液を
2つ調整する
低温下で反応させる溶液は恒温槽で 10~15 分ほどよく冷やした後亜硝酸ナトリウ
ム 05g を加えてよくかき混ぜる
常温下で反応させる溶液には冷却作業を行わずに亜硝酸ナトリウム 05g を加えて
よくかき混ぜる
3) 2)でつくった水溶液をシャーレに広げた布に注ぎ生成される染料を布によく染み
込ませ5分程放置する
4) 色の付いた布を取り出してポリ手袋をした手できれいに水洗いをし乾燥させる
48
5) 色差計を用いて乾燥した布の Lab(L明度aおよび b色度)を測定する
2)で作った溶液は5以下では無色の溶液ですが5以上になると淡い黄色になりま
す
【解説】
アゾ染料はアゾ基(-N=N-)を持っていてこのアゾ基によって鮮やかな橙色を呈色し
ます今回合成したアゾ染料は図の 1-フェニルアゾ-2-ナフトールです意外かもしれ
ませんが指示薬として使われているフェノールフタレインもアゾ化合物ですフェノール
フタレインは pH の変化によって色が出てきす染料の中でも最初は無色のものもありますが
温度を変化させたり酸性やアルカリ性にすると色が出てきます
ベンゼン ニトロベンゼン
N2Cl
ニトロ化 濃硫酸(濃硝酸)
還元反応 濃塩酸
(Sn又は Fe)
アニリン塩酸塩
遊離反応 NaOH
アニリン塩酸塩に強塩基を反応させる
と弱塩基であるアニリンが遊離する
氷冷+亜硝酸ナトリウム アニリン
塩酸
ジアゾ化
塩化ベンゼンジアゾニウム
塩化ベンゼンジアゾニウム
は熱によって窒素とフェノー
ルに分解される
カップリング
C10H7ONa (ナトリウム 2-ナフトキシド)
O
N =
1-フェニルアゾ 2-ナフトール
NH3Cl NH2
49
7 ガスクロマトグラフ質量分析計による茶葉中のカフェインの分析 71 はじめに ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)は極めて低い濃度の化学物質の同定や未知物質の構造決定に極めて強力な分析機器の一つであるGCMSを用いるとサンプルの中に含まれているある成分の分子構造(カフェインの分子構造を図 71に示す)やその量が分かりますもちろん分析機器ですので測定できる物質対象となる系や測定条件にはある
程度の制約があります混合物質を分離するガスクロマトグラフ(Gas ChromatographGC)と分離された成分(物質)を分析(構造決定と濃度測定)する質量分析計(Mass SpectrometerMS)を組み合わせた装置であるこの装置は有機化学生化学環境化学などの多くの分野で非常に多用されている例えば極めて低い濃度でも生体へ強い影響が懸念されるダイ
オキシン類などの土壌や河川の水中での含有率の決定や食品や医薬品中の微量成分の決定
にも利用されている 一方日本人に長い間親しまれてきた緑茶が近年産業界や医学
界で注目されている茶葉にはカフェイン(分子構造図 71)カテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドなどの有用成分が多く含まれておりその効能が注目されている 本実験では茶葉中に含まれるカフェインに対してGCMSを用いて分析する茶葉中には種々の物質が含まれておりGCMS分析を容易にするため前処理として超臨界二酸化炭素抽出(4015MPa程度の高圧力の二酸化炭素を溶剤として利用)により茶葉からカフェインの抽出を行いそのサンプルを GCMSにて分析する
図 71 カフェインの分子構造 図 72 物質の分析 個々の物質や装置についてはインターネットにより下記のWebサイトのフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』などにより調べるとよいカフェイン(caffeine)はアルカロイドの一種プリン環を持つプリンアルカロイドの一種でコーヒー類に含まれることか
らこの名がある化学名は137-トリメチルキサンチン(C8H10N4O2) コーヒーコーラ緑茶紅茶ガラナココアなどに含まれる(量は緑茶が一番多い)結晶は一水和物(C8H10N4O2bullH2O)もしくは無水物(無水カフェインC8H10N4O2)として得られ
る白色の針状または六角柱状結晶で匂いはなく味は苦い融点は 238昇華性がある出典フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』httpwwwwikipediaorg 装置「GCMS」httpwwwanshimadzucojpproductsgcmsqp2010htm (島津) 「超臨界抽出装置」httpwwwkagakucomjasco39-49html (日本分光)
50
レポート課題 1茶葉中に含まれるカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドの中から3つの物質を選びその物質について調べた結果を A4 レポート用紙2枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
2GCMS についてA4 レポート用紙1枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
3与えられたサンプルは茶葉1gから抽出されたのである実験結果よりもとの茶葉
1g中に含まれるカフェインの量を推算し計算式とあわせて示すこと 72 原理および装置 実験で使用する島津製の GCMS装置の全体図を図 73に原理の概略を図 74に示す
1
23
4
5
67 8
9
10
キャリアーガス
試料物質
1ボンベ(He)2圧力計3マイクロシリンジ4サンプラー5試料導入部6分離カラム
7セパレーター8イオン化室9磁石10電子増倍管11記録計
11
図 74 ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)の概略図
サンプルフォルダー
51
GCMS 装置は分離部である図中の 1~6 のガスクロマトグラフ(GC)と7~11 の検出部である質量分析計(MS)から構成される 3のマイクロシリンジを用いて試料を GCMSに導入する導入された試料は5試料導入部でガス化され6分離カラムに導入される分離カラムには吸着剤が充填されおり混合物の試料を導入した場合各物質と吸着剤との
親和性の違いにより各物質の分離カラムから排出されるタイミングは異なる分離カラム
を排出された試料は8イオン化室でイオン化され10電子倍増管にて検出される アセトンに溶解したカフェインの GCMSによる分析結果の一例を以下に示す図 75にク
ロマトグラム図 76にカフェインのピークのマススペクトルを示す
図 75 GCMSにより得られたクロマトグラム
横軸がリテンションタイムで縦軸がピーク強度を表す
図 76 カフェインのマススペクトルとカフェイン(分子量MW=194)の構造
(図 75中のリテンションタイム 126min付近のピークに起因するマススペクトル) 茶葉中にはカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイド以外にも繊維であるセルロースなど多くの物質が含まれているため茶葉そのものを
そのままサンプルとしてGCMSで分析することは困難であるセルロースなどの分子量の大きな物質はカラムに詰まってしまい分析できないそこで今回は超臨界二酸化炭素
による抽出により主にカフェインを他の物質と分離抽出した通常よく利用されるアセ
トン抽出(アセトンに茶葉を浸し特定の成分を抽出する)ではカフェイン以外にも多く
の物質が抽出されるため図 75 のような単独のピークを得ることは難しく複数のピークがクロマトグラムに見られるこのサンプル(この場合茶葉からの抽出物)にはカフェ
イン以外の不純物は少なかったがガスクロマトグラフの分離カラムによりさらにそれ
らの混合物が精度よく分離されるクロマトグラムのピークはそれらサンプル中に含まれ
ていた個々の物質を表しているクロマトグラムのピークを選択することで分子構造解析
したい物質を選んだことになる選択したクロマトグラムのピークの表している物質(ここ
ではカフェイン)に対応するマススペクトルが図 76 に表示されているマススペクトル
52
で横軸がその成分(ここではカフェイン)分子を構成している原子の原子量で縦軸がそ
の量を表しているのでマススペクトルから分子構造を解析するためにコンピュータ内
に蓄えられた物質ごとのマススペクトルデータと今回測定したマススペクトル(分子内に含
まれている各原子の数)を比較することで測定したサンプル中のクロマトピークを選択し
た分子がどのような原子をどれだけ含んだ分子であったかがわかりそれからその物質
がどのような分子構造の物質である可能性が高いかをコンピュータが検索し結果を示す 73 実験サンプルの設置と GCMS装置の操作方法 実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS装置のサンプルフォルダ
ー(図 73)にセットするこのサンプルは茶葉 1gを 50ccの高圧セルにて超臨界二酸化炭素を利用して4015MPa2時間接触の条件で抽出した固体を10gのアセトンに溶かしたものである またコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に装置および装置制
御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 本実験で使用する GCMS の操作は全てコンピュータのモニター上で GCMS の解析プログラムソフトを使用することで行うコンピュータの操作方法を以下に示す なおコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS 装置のサンプルフォルダー(図 73)にセットするまた装置および装置制御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 1)パソコンのデスクトップ上のアイコン「GCMS 分析」をクリックすると以下のようにGCMS制御プログラムを起動するその後「OK」ボタンをクリックする
図 77 GCMD分析用ソフトウェア「GCMS分析」の起動
まず「GC-MS分析」をクリック
「OK」ボタンをクリック
53
2)制御プログラムが起動されパソコンと GCMSの接続が開始される
図 78 「GCMS分析」の接続確認画面 3)GCMSとパソコンの接続が完了すると以下のような画面が表示される
図 79 「GCMS分析」操作画面
4)マススペクトルによる分子構造の解析 サンプル(この場合茶葉からの抽出物)には多くの物質が混じり合っていたがガス
クロマトグラフの分離カラムによりそれらの混合物が精度よく分離されるクロマトグラ
ムのピークはそれらサンプル中に含まれていた個々の物質を表しているクロマトグラム
のピークを選択することで分子構造解析したい物質を選んだことになる選択したクロマ
トグラムのピークの表している物質(ここではカフェイン)に対応するマススペクトルを選
択するマススペクトルは横軸が原子量で縦軸がその量を表しているのでマススペク
トルから分子構造を解析するために「定性処理」を行う シミラリティ検索結果が表示され分析により得られたスペクトルと類似のスペクトルを有
する物質の一覧が表示される上部に表示される物質ほどスペクトルが一致していること
を示す
接続状況が表示される
「トップへ」
をクリック
54
図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果
図 711 表示スペクトルのシミラリティ検索結果 10)図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果の印刷 「レポート(R)」をクリックし「検索結果(R)」をクリックすると検索結果が印刷される
GC-MS 分析で得られたマスス
ペクトル
データベース中
のマススペクト
ル
55
参考資料 生理活性物質の精製 カフェインの利尿作用のように生物活動に影響を与える物質を生理活性物質といいます
天然物には生理活性物質を多く含むものがあります一般に天然物は多くの成分を含ん
でおり特定の生理活性物質を分離抽出するには種々の分離技術が必要ですまた生
理活性物質には60以上の温度でその生理活性を失う(失活)ものや溶剤として広く用いられているクロロホルムなどの有機溶剤中で失活するものが多いそこでこれら生理活性
物質の分離精製技術の開発が望まれており30~60程度のマイルドな温度条件で操作できる二酸化炭素を機能性溶媒として利用する超臨界抽出も有効な分離技術として注目されて
いる超臨界二酸化炭素は気体と液体の中間の性質を持ち物質の分離に役立っています 臨界点付近の高密度気体は超臨界ガスまたは超臨界流体と呼ばれ臨界圧力前後でそ
の溶解能力が著しく変化することから工業的にも種々の分野で利用されています一例と
して超臨界二酸化炭素(SC-CO2)によるコーヒー豆からのカフェインの抽出プロセス(a)
ならびに超臨界二酸化炭素に対するカフェインの溶解度(b)を図に示します図(c)に示す
ように固体のカフェインがガスである超臨界二酸化炭素に溶解します
このように超臨界二酸化炭素を用いた技術はコーヒー豆からのカフェインの抽出プロ
ポリスからの生理活性物質の抽出に利用されています
図 超臨界二酸化炭素抽出を用いたコーヒー豆からのカフェインの抽出
56
付表 最小二乗法について 直線で近似する場合 f (x) = a0 + a1x (A1-1) 式(A1-1)のように近似させるとする測定値 yiとの残差を eiとすると式(A1-2)のようになる ei = yi - f (xi) = yi - ( a0 + a1xi ) (A1-2) ここで式(A1-2)の両辺を二乗してその i に関する総和をとりその値を S とすると次式となる
sumsum==
+minus==n
iii
n
ii xaayeS
1
210
1
2 )( (A1-3)
S を最小化するような a0a1を求める式(A1-3)を a0a1について偏微分すると次式とな
る
sum=
+minuspartpart
=partpart n
iii xaay
aaS
1
210
00)( sum
=
+minusminus=n
iii xaay
110 )(2 (A1-4)
同様にa1について編微分すると次式のようになる
sum=
+minusminus=partpart n
iiii xxaay
aS
110
1])([2 (A1-5)
Sが最小となる時は次式が同時に満たされる時である
00=
partpartaS
01=
partpartaS
(A1-6)
よって誤差が最小となる a0a1を求めるためには式(A1-6)を連立して解けばよい
sumsumsum===
+=n
ii
n
i
n
ii xaay
111
10 1 (A1-7)
sumsumsum===
+=n
ii
n
ii
n
iii xaxaxy
1
2
11
10 (A1-8)
式(A1-7)と式(A1-8)を a0a1を変数とみなし連立して解くと次式を得る
n組のデータ(xiyi)(i=12hellipn)に対して回帰直線 y= a0 + a1x を最小二乗法で求めて出力しデータ番号 iデータ yi直線で推定した値 )( ii bxay += および残差
iii yy minus=ε を出力するようなプログラムをつくりたい基礎式を導出せよ (ヒント残差の二乗の和が最小になるように係数 a0a1)を定めるのが最小二乗法
である)
57
sumsum
sumsumsumsum
==
====
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
n
ii
n
ii
xxn
xxyyxa
1
2
1
2
1111
2
0
)(
))(())(( (A1-9)
sumsum
sumsumsum
==
===
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
xxn
yxxyna
1
2
1
2
1111
)(
))(()( (A1-10)
よって式(A1-9)(A1-10)を用いれば最も誤差を小さくするような直線 y = a0 + a1x が求められる
y=a1x+a0 にて近似
誤差 ei
x
y
誤差が最小になる関数(直線 y=a1x+a0の場合)
図1 最小二乗による近似
誤差の和Sが最小
S
a0
a1
直線 y=a1x+a0 の近似
誤差の全体の和はS=Σei=Σyi-(a1xi+a0)
Sは変曲点にて最小値を示すすなわち(partSparta0)=0 (partSparta1)=0
図2 a0a1とSの関係
31
(b)ラングミュア(Langmuir)型吸着等温式 ラングミュアは図 3-2 に示すように固体表面に同等な吸着力を示す吸着サイトがあり
表面に 1分子層だけ吸着する(単分子層吸着)と仮定して平衡状態における吸着量と溶質濃度(気相分圧)のと関係を導いた全吸着点のうち吸着分子に覆われている吸着点の割合
をθ[-]とすると分子の脱着速度 rrsquo[mols-1]はθに比例する比例定数を a[mols-1]とすると次式のように表される
吸着剤
吸着分子
吸着サイト
図 3-2 固体表面上の吸着サイト(Langmuir式の導出) r=aθ (6) また気相からの吸着速度 r[mols-1]は空いている吸着点の割合(1-θ)[-]と溶液濃度 C[molm-3]に比例する rrsquo= b(1-θ)C (7) このときの比例定数を b[m3s-1]とするまた平衡状態では両速度は見かけ上等しいため以下の式が成り立つ aθ=b(1-θ)C (8) これを変形する
CbaCbsdot+
sdot=θ (9)
ここで飽和吸着量を ninfin[molkg-1] ba を K[m3mol-1](Kは吸着平衡定数)とおくと infin=nnθ
となるので次式が得られる
32
KCKCnn
+=
infin
1 (10)
これをラングミュア式と呼ぶ
(c)フロインドリッヒ(Freundlich)型吸着等温式 フロインドリッヒの吸着等温線は図 3-1(c)のように示される
n=aC1b (11) nは吸着量[molkg-1]で aと bはともに吸着定数[-]である (d)BET(Brunauer-Emmett-Teller) 型吸着等温式
BET型の吸着等温線は図 3-1(d)に示されるラングミュア式は表面に 1分子層だけ吸着すると仮定したものであるがBET式は無限分子層まで吸着できる式である図 3-3に示すように吸着した分子がそれぞれ次の層の吸着サイトとなり分子は積み重なって多分子
層に無限層まで吸着できるものとし各層への吸着にラングミュア式を適用すれば次式の
ように表せる
( ) ( )CKCCCKqq
minus+sdotminussdotsdot
=infin
11 (12)
この式は多孔質固体の細孔表面積を窒素ガスの吸着によって測定する際に利用される重要な式
である
表面の吸着サイト
分子上の吸着サイト
図 3-3 多分層吸着モデル
Langmuir式のパラメータ決定法 水溶液からの酢酸の活性炭に対する吸着平衡データ(吸着平衡温度 12)は表 3-1のよ
うに与えられる実験データよりラングミュア式のパラメータ(K吸着平衡定数ninfin飽和吸着量)を最小二乗法で決定せよさらにラングミュア式より決定した ninfinKの値を用いて吸着等温線を計算し計算線として図に示し実験点と比較せよ
33
表 3-1 n C Cnの関係
ラングミュア式は式(310)で与えられるこの式を変形すると次式となる
CKnCK
n infinsdot+
=11
(313)
両辺に Cをかけると以下の式が導出される
CCnKnCKn
CCKn
Cβ+α+
==
+= infininfininfin
11)1( (314)
ただしα=1ninfinβ=1(ninfinK)とする式(314)より Cn と C の関係のグラフプロットは傾きα=1ninfin切片β=1(ninfinK)の直線関係を与えることを示している表 3-1の値を用いて計算した Cnと Cの関係を表 3-1および図 3-4に示す 最小二乗法を用いて傾きαと切片βを決定した α=1ninfin=43865 β=1(ninfinK)=2654 得られた傾きおよび切片よりninfinおよび Kは次のように求まる
ninfin=1α=1D18=000228 molg-1 K =(1ninfin)β=αβ=D18C18=165
0
50
100
150
200
0 200 400 600
C [ molm-3 ]
Cn [ kgm-3 ]
傾き = 1 ninfin
1 ninfinK
切片0
05
1
15
2
25
3
0 100 200 300 400 500
液相の溶質濃度 C [ molm-3 ]
吸着量 n [ molkg-1]
液相と溶質濃度 C [ molm-3 ]
吸着量
n[ m
olk
g-1]
実験点
Langmuir式パラメータninfin 00033 [ molg-1 ]K 00086 [ m3 mol -1 ]
図 3-4 ラングミュア定数の決定 図 3-5 12における酢酸濃度 Cと
吸着量 nの関係
C [molm-3] n [molkg-1] Cn [kgm-3] 460 225 109 529 214
268 199 149 105 060
172 128 732 504 357
34
Freundlich式のパラメータ決定法 酢酸水溶液中における酢酸の活性炭に対する吸着実験を行ったところ以下のような実験デー
タを得たただしCbはバルク相における酢酸濃度n は活性炭に対する酢酸の吸着量を示す
Cb[molL] n[molg] log10Cb log10n 04621 000205 02410 000175 01139 000139 00519 000105 00243 000081
実験データを利用して次式で与えられる Freundlichの等温吸着式の定数 abの値を求めたい
bbaCn1
= (1)
このままでは定数 abの値を決定することが難しいので上式の両辺の対数をとる
bbb
bb
Cb
aCa
aCn
ln1lnlnln
)ln(ln1
1
+=+=
=
(2)
ここで横軸に ln Cb縦軸に ln nの関係をグラフにプロットするすなわち x=ln Cby=ln nと考える
bCb
an ln1lnln += (3)
ここで直線式 y=a0+a1xと比較するすなわち
)(1)(ln
1
00
傾き
切片
ba
eaaa a
=
=rarr= (4)
a0および a1は最小二乗法により数値で求められる与えられたデータでは a1= a0= なので a= b= となる この値を n=acb
1bに代入してcb=0~05の範囲で nの値を計算する
35
BET式のパラメータ決定法 BET式は次式で与えられる
)1)(1( KCCCKCnn
+minusminus=
infin
(17)
以下のように BET式の変形を行う
)1()1(
KCCKCnCn+minus
=minusinfin
(18)
(18)式の逆数をとると
KCnCK
KCnKCC
Cn infininfin
minus+=
+minus=
minus)1(1)1(
)1(1
(19)
(19)式の両辺に Cをかえると
KCnCKC
CnC
infin
minus+=
minus))1(1(
)1( (20)
(20)式を変形すると次式が得られる
CKn
KKnCn
Cinfininfin
minus+=
minus11
)1( (21)
C と)-(1 Cn
Cのプロットは傾き
KnKinfin
minus1切片
Kninfin
1の直線関係を与えることを示している
これをグラフにプロットし最小二乗法に傾きおよび切片を求める
36
312 活性炭の比表面積の決定 酢酸分子の構造を以下に示す
Hc-Cb-Ca
Hd
Hb Oa
Ob-Ha
1219deg
Ca Oa
Ob
図 36 酢酸の構造
酢酸の 1分子の吸着面積srsquo [m2]を図 3-6に示すこのとき文献より
Caと Oaの結合距離 1321Å Caと Obの結合距離 1206Å OaCaObの角度 1219deg Cの原子半径 077Å Oの原子半径 062Å
したがって吸着面積 Slsquoは次のようになる
( ) ( ) 2088 10376109931036321 minusminusminus times=timestimestimestimes=s m2
ここで活性炭の比表面積 S[m2g]は次式で示される 10026 23 snS timestimestimes= infin
S活性炭の比表面積 [m2g] ninfin飽和吸着量 [molg] srsquo酢酸 1分子の吸着面積 [m2] 602times1023アボガドロ数 [個mol] したがって活性炭の比表面積 S[m2g]は
003350=infinn molg 2010376 minustimes=s m2 より
51281037610026003350 2023 =timestimestimestimes= minusS m2g
37
4 粘度密度測定 41 はじめに 大量生産を目的とした工業的化学プロセスはほとんど流れ系(流通系)であるそれらの系において操作対象となる各物質の粘度は装置を設計操作する場合きわめて重要
な物性値である 本実験では低分子溶液および高分子溶液の粘度測定を通じて液体の粘度について考察するさらに演習問題を通じて気体液体高分子溶液などの化学プロセスで対象となる物
質の輸送物性(粘度拡散係数)の重要性を認識されたい 42 低分子溶液の粘度 [目的] 種々の濃度のエタノール水溶液の粘度を測定しその溶液の粘度について考察する [概要] 25におけるエチルアルコール濃度 02040506080100 wt の水溶液について流下時間を測定しこの結果より相対粘度絶対粘度運動粘度を求めグラフにするま
た水の密度水-エチルアルコール溶液の密度についてはピクノメーターを用いて決
定する報告書には相対粘度絶対粘度運動粘度 vsエチルアルコール濃度の関係をそれぞれグラフにして提出する
[計算方法] 相対粘度絶対粘度運動粘度の定義は次のようになる
相対粘度 ww
w tdtd
ηη = (41)
η 混合溶液の粘度 [gcms] ηw水の粘度(8007times10-3 gcms) [gcms](25における粘度) d エチルアルコール水溶液の密度 [gcm3] dw水の密度(099704gcm3) [gcm3](25における密度) t エチルアルコール水溶液の流下時間 [s] tw水の流下時間 [s] 下付添字 W 水
絶対粘度 www td
tdη
η= (42)
運動粘度 ν=ηd [cm2s] (43)
38
[実験方法] 1) 粘度計を洗浄し粘度計内 に二連球で空気を送り込み
乾燥させる乾燥しにくい 場合はアセトンを滴下し た後再度二連球で空気 を送り込み乾燥させる 2)ピペットで一定体積(10mℓ) の純水を取り広い口 f から 粘度計に水を入れる 3)粘度計を恒温槽(25)に つけ約 10 分静置する 4)安全ピペッターを口 a に 取り付け液面が b 上部に 到達するまで吸い上げる 5)安全ピペッターを外すと 液面が降下しだす液面が bd 間を通過する時間をスト ップウォッチで測定する
6)純水での測定を 3 回繰り返す 7)純水を粘度計から取り除くその後粘度計内に二連球を用いて空気を送り込み乾燥させる 8)粘度計乾燥後複数の濃度に調整済みのエチルアルコール水溶液(10mℓ)を粘度計にいれ4)~6)の作業を繰り返し行う(3 回)なお濃度の異なるエチルアルコール水溶液を粘度計内に導入する場合には7)と同様に二連球を用いて粘度計内に空気を送り込み乾燥させる
表 4-1 エチルアルコール水溶液の濃度密度相対粘度の関係 エチルアルコール濃度
[wt] 密度 d[gcm3] 相対粘度
η ηw[-] 0
20 40 50 60 80
100
安全ピペッター接続
図 4-1 粘度計
液面の bd間の通過時
間を測定
f
39
43 密度測定 [目的] 本実験では水とエタノールの種々の組成の混合液体について密度を測定し分子間相互
作用について考察する [実験方法] 1)ピクノメーターの容積測定
図 4-2のピクノメーターの空の重量 wg を秤量する
ピクノメーターの蓋を取り外し
ピクノメーターを水で満たす
設定温度を 25として恒温槽 の電源を入れ恒温槽内の温 度が一定になるまで待つな お水温は恒温槽中の水銀温 度計から読む
恒温槽中に水を満たしたピク
ノメーターを入れる
約 10分間静置する
ピクノメーターに蓋をするこのときピクノメーターの容量
よりも余分の水は蓋の上部より排出される
ピクノメーターの外側を乾いた布で拭い秤量する(その重量を
wwg とする)
恒温槽の温度(25)における水の密度 dwgcm3(=099704gcm3)
より次式を用いてピクノメーターの容積を求める
w
w
dww
Vminus
= (44)
図 4-2 ピクノメーター
蓋
40
表 4-2 エチルアルコール水溶液の濃度と密度の測定結果(25) エチルアルコ
ール濃度[wt]
wrsquo[g] ww[g] V[cm3] w[g]
d[gcm3]
0 20 40 50 60 80
100
099704
エチルアルコール濃度[wt] 空のピクノメーターの重量 wrsquo[g] 水を入れたときのピクノメーターの重量 ww[g] ピクノメーターの体積 V[cm3] エタノール水溶液の入れたときのピクノメータの重さ w[g] エタノール水溶液の密度 d[gcm3]
容積 Vを求めたピクノメーターに混合溶液(調整済み)を入れてその重量 wgを秤量し次式で混合溶液の密度を求める
Vwwd minus
= (45)
エタノール濃度と密度 d の関係をグラフにプロットする
41
44 高分子溶液の粘度 [目的] 高分子溶液の粘度測定から分子量の粘度に与える影響について考察する [概要 ] オストワルド粘度計を用い種々の濃度のポリビニルアルコール(PVA ((-CH2CHOH-)n))水溶液の粘度を測定し粘度データよりポリビニルアルコールの分
子量を求める まず 05g100cc の濃度のポリビニルアルコール水溶液を調製する次にこれを原液
とし23 12 13 15の濃度の溶液を調製するこれらの溶液についてオストワルド粘度計を用いてそれぞれ流下時間を測定し相対粘度絶対粘度運動粘度を求め実験デ
ータより極限粘度[η]を求めるまた報告書には相対粘度絶対粘度運動粘度C
)ln( wηη
Cw
w-η
ηη vsポリビニルアルコール濃度の関係をそれぞれグラフにして提出する
[計算方法] エチルアルコール水溶液の粘度測定と同様の手法を用いて粘度の計算を行うなおポリビニルアルコール水溶液の密度はピクノメーターを用いて測定すること 表 4-3 ポリビニルアルコール水溶液の濃度密度相対粘度の関係 ポリビニルアルコール
濃度 [g100cc] 密度 d[gcm3] 相対粘度
η ηw[-] 05times(15) 05times(13) 05times(12) 05times(23)
05
42
[分子量の計算方法] 実験を行った結果以下のような粘度データを得られるとする実験データより極限粘度
を求めポリビニルアルコール(PVA)の分子量Mを決定せよ
PVA 水溶液濃度
C[g100cc]
相対粘度
ηηw[-]
絶対粘度
η[gcms]Cw
w-η
ηη
C)ln( wηη
05times(15) 1031 0008255 031 0305
05times(13) 039 0378
05times(12) 03 0289
05times(23) 0375 0353
05 0364 0334
ηw=8007times10-3 gcms 線状高分子の極限粘度[η]と分子量Mの関係は次式で与えられる [η]=KMα (46) ただしポリビニルアルコールの場合K=666times10-4α=064であるなお極限粘度[η]は次式で定義される
CC w
w
0
-][ limη
ηηη
rarr
= (47)
または
CC
)ln(][ w
0lim
ηηη
rarr
= (48)
よって濃度 CとCw
w-η
ηηまたは濃度 Cと
C)ln( wηη の関係をグラフ化し最小二乗法によ
り切片の値を求めると極限粘度[η]が決定される
Cw
w-η
ηηと C の関係より最小二乗法を用いて切片の値を決定すると(図 43 参照)切片=
03242傾き=00874となるよって極限粘度は以下のようになる[η]=03242同様
にC
)ln( wηη とcの関係より最小二乗法を用いて切片の値を決定する
(図 44参照)と切片=03249傾き=00256となり極限粘度は以下のようになる[η]=03249
Cw
w-η
ηηと Cの関係より決定した[η]=03242を用いてポリビニルアルコール(PVA)の
分子量 Mを計算する(46)式より以下のように PVAの分子量 Mを計算することができるM=([η]K)1α
=(03242(666times10-4))(1064)
=15811
43
y = 00874x + 03242
0
02
04
06
08
1
0 01 02 03 04 05 06 07
c[g100cc]
(η-ηw)(ηwc)
cw
w
η
ηηminus
極限粘度[η]
図 43 298Kにおける PVA濃度 CとCw
w-η
ηηの関係
y = 00256x + 03249
0
02
04
06
08
1
0 01 02 03 04 05 06 07
c[g100cc]
(ln(ηη
w))c
c)ln( wηη
極限粘度[η]
図 44 298Kにおける PVA濃度 CとC
)ln( wηη の関係
44
5 植物からの DNAの抽出 51 はじめに 分子レベルでの遺伝子の構造解明や遺伝子の発現に関する研究は近年急速に発展している
これら生命現象のしくみを分子レベルで解明しようという分子生物学の分野ではさまざま
な遺伝子の解析や応用方法が開発され我々の生活に身近なものになりつつある 本実験では初歩的な分子生物学に関する実験として植物(タマネギ)からの DNA の
抽出を行い抽出した遺伝子の電気泳動法による分離実験を試みる 52 試薬および器具 試薬 タマネギ(細胞中から遺伝子の抽出を行う) 台所用洗剤(洗剤中に含まれる界面活性剤には植物の細胞膜およびタンパク質を破壊す
る働きがある) 塩化ナトリウム(DNAは塩化ナトリウム水溶液に溶解し易い性質がある) エタノール(予め冷やしておくDNAはエタノールにほとんど溶解しない) 制限酵素(DNAを一定の部位で切断する働きを働きがある) TE緩衝液(pH緩衝剤が入った溶液) 器具 ビーカーミキサーフィルターメスシリンダー駒込ピペットガラス棒 マイクロピペット電気泳動装置ポラロイドカメラ 53 実験方法 1)タマネギは 1回の実験で半個のうち内側の半分程度を使用するタマネギ水 30ml台所用洗剤数滴をミキサー用ガラス容器に入れ40~60秒程度(固体状のタマネギがなくなる頃が目安)ミキサーにて混合する
2) 1)で作成した混合溶液をビーカーに移し約5g程度の塩化ナトリウムを加えガラス棒で静かに攪拌する粘性の大きな溶液が得られる
3) 2)で作成した溶液をフィルターを用いて濾過し濾液を回収する 4) 濾液の約2倍程度の量の冷エタノールをビーカーの壁伝いに静かに注ぐ 5) ビーカーを揺するとエタノール層に白くふわふわしたものが浮いてくるこれが DNAであるガラス棒で DNAを巻き取りシャーレ上にて DNAを回収する顕微鏡を用いて回収した DNAの状態を観察する
6)マイクロチューブ(容量 15ml)中に用意した 70エタノールを 8 分目程度まで注ぐ5)にて回収された DNAをマイクロピペットを用いて70エタノールの入ったマイクロチューブ中に移す軽く混ぜることによりDNA から不要な物質を洗い流す遠心分離してDNA をマイクロチューブの底に沈めた後溶液を捨てて DNA を乾かす乾いたらTE緩衝溶液を 1ml加えて放置するDNAの溶液が得られる
54 電気泳動装置による DNAの観察
本実験は職員と一緒に行うこと 実験を行う人はビニール手袋をすること 1) 抽出した DNAを電気泳動装置で観察するマイクロピペットを用いて以下のように調製した DNAの混合溶液を調製する(いずれの溶液も調製済)
45
2) マイクロピペットを用いてアガロースゲルの試料を流し込む穴(ウェル)に1)にて調製した溶液 Aおよび Bを注ぎ込む注入量は20μℓとする電気泳動装置のスイッチを入れて100Vの電流を流しアガロースゲル内にて DNAを電気泳動させる
3) 試料に予め加えられておいた青色の色素が 7 分目程度まで進んだら電気泳動を中止する(約 30分程度)
4) (ここでの作業は職員が行う) アガロースゲルを取り出し染色液に浸す染色後ゲルを取り出しポラロイドカメラで
DNAの泳動状態を撮影する
+ -
アガロースゲル
試料を流し込む穴(ウェル)
図 51 電気泳動装置
6 5 4 3 2 1
図 52 DNAの電気泳動写真の一例
55 電気泳動装置の原理 電気泳動装置の原理図を以下に示すアガロースゲル(寒天から不純物を除いたもの)中
に DNAをセットし電流を流すとDNAは電流の向きとは逆にマイナスからプラス方向
調製済 溶液 A(制限酵素なし) 水 11μℓ 10timesH Buffer 2microℓ 植物 DNA 5μℓ
調製済 溶液 B(制限酵素 Eco RI入り) 水 11μℓ 10timesH Buffer 2microℓ 植物 DNA 5μℓ 制限酵素 2μℓ
1 DNA(タマネギ)+制限酵素 2 DNA(タマネギ)+制限酵素 3 DNA(タマネギ) 4 λ-DNA(大腸菌)+制限酵素 5 λ-DNA(大腸菌) 6 サイズマーカー
500bp
46
に動く(このことを電気泳動という)これはDNA のリン酸部分が負に帯電しているためでありまたDNAはその長さにより泳動距離が異なる(短い遺伝子ほど長く泳動する)電気泳動ではこの性質を利用してDNAを大きさごとに分離することができる
塩基対数によってDNAを分離
EtBr (蛍光試薬)DNAの二本鎖内に入り込む
発光
UVλ=302nm
励起
分離後のアガロースゲルをエチジウムブロマイド(EtBr)溶液に浸す
DNAを含んだ溶液
アガロースゲル
リン酸部分が負に帯電
塩基 (ATGC)-
+
カメラで撮影
電圧
DNA構成成分(dNTPs)
バンドが明る
DNA量が
バンド(DNAの存在)
図 53 電気泳動の原理
56 制限酵素とは DNA は4 種類のヌクレオチド(GATC)が不規則につながってできている制限酵素はDNAの特定のヌクレオチドが並んでいる部分を切断する制限酵素には様々な種類がありEco RI(エコアールワン)と呼ばれる酵素は「GAATTC」といった並びの部分だけを切断することができる
GAATTC
CTTAAG
制限酵素
Eco RI
AAGCTT
TTCGAA
制限酵素
Hin dIII
図 54 制限酵素による DNAの切断
レポートについて 1 実験方法および実験結果の整理方法については指針書を参考にすること 2 実験結果については電気泳動の結果について考察すること(制限酵素の影響などにつ
いてまとめてください)
47
6 染色実験
61 はじめに
現在私達の身の周りでは様々な染料が使われている例えばT シャツやジーンズな
どの衣服は橙黄赤青など様々な色に染められている他にも私達が気付かないと
ころで多くの染色された製品を使用しているそこで本実験では高校の化学で学んだ
アゾ染料を合成してみるアゾ染料はアニリンを原料として作られているアニリンはベ
ンゼン環にアミノ基(-NH2)がついたものであるアニリンは無色の液体で水に溶けにく
くアンモニアより弱い塩基性を示すまたさらし粉(CaClO(ClO)H2O)水溶液を加えると
赤紫色を呈するこの呈色反応はアニリン特有のものであるので検出反応に用いられる
このアニリンを出発物質としてアゾ染料を合成してみる
62 試薬および使用器具
【試薬】 ①05moll 水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液
②2-ナフトール ③フェノール ④6moll 塩酸
⑤亜硝酸ナトリウム ⑥アニリン ⑦氷
【器具類】 ①電子天秤 ②50mℓビーカー ③100mℓビーカー
④ガラス棒 ⑤布(ガーゼなど) ⑥ピンセット
⑦ポリ手袋 ⑧ドライヤー ⑨シャーレ
10駒込ピペット(10ml ガラス製)
11駒込ピペット(1ml プラスチック製)
63 実験方法
1) 50mℓビーカーの中に 05molℓ水酸化ナトリウム水溶液 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回
NaOH 水溶液を分取するほぼ 20 mℓ分取できれば可)と 2-ナフトールを約 01g 入れ
よくかき混ぜる調製した溶液の中に布をつけその布はガラス棒でしぼってから(布
をガラス棒ですくいあげればよい)シャーレに広げる温度の異なる条件下(常温およ
び低温)で染料の合成実験を行うため布は最低 2枚調製した溶液と接触させそれ
ぞれ別々のシャーレ(低温用および常温用)に広げる
2) 新しいビーカーに水を約 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回分取)と 6molℓ塩酸約 4mℓ(10m
ℓ駒込ピペットで目分量で可)さらにアニリン約 1mℓ(プラスチック製 1 mℓ駒込ピペッ
ト)を入れてよくかき混ぜる染料の合成を常温および低温下で行うためこの溶液を
2つ調整する
低温下で反応させる溶液は恒温槽で 10~15 分ほどよく冷やした後亜硝酸ナトリウ
ム 05g を加えてよくかき混ぜる
常温下で反応させる溶液には冷却作業を行わずに亜硝酸ナトリウム 05g を加えて
よくかき混ぜる
3) 2)でつくった水溶液をシャーレに広げた布に注ぎ生成される染料を布によく染み
込ませ5分程放置する
4) 色の付いた布を取り出してポリ手袋をした手できれいに水洗いをし乾燥させる
48
5) 色差計を用いて乾燥した布の Lab(L明度aおよび b色度)を測定する
2)で作った溶液は5以下では無色の溶液ですが5以上になると淡い黄色になりま
す
【解説】
アゾ染料はアゾ基(-N=N-)を持っていてこのアゾ基によって鮮やかな橙色を呈色し
ます今回合成したアゾ染料は図の 1-フェニルアゾ-2-ナフトールです意外かもしれ
ませんが指示薬として使われているフェノールフタレインもアゾ化合物ですフェノール
フタレインは pH の変化によって色が出てきす染料の中でも最初は無色のものもありますが
温度を変化させたり酸性やアルカリ性にすると色が出てきます
ベンゼン ニトロベンゼン
N2Cl
ニトロ化 濃硫酸(濃硝酸)
還元反応 濃塩酸
(Sn又は Fe)
アニリン塩酸塩
遊離反応 NaOH
アニリン塩酸塩に強塩基を反応させる
と弱塩基であるアニリンが遊離する
氷冷+亜硝酸ナトリウム アニリン
塩酸
ジアゾ化
塩化ベンゼンジアゾニウム
塩化ベンゼンジアゾニウム
は熱によって窒素とフェノー
ルに分解される
カップリング
C10H7ONa (ナトリウム 2-ナフトキシド)
O
N =
1-フェニルアゾ 2-ナフトール
NH3Cl NH2
49
7 ガスクロマトグラフ質量分析計による茶葉中のカフェインの分析 71 はじめに ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)は極めて低い濃度の化学物質の同定や未知物質の構造決定に極めて強力な分析機器の一つであるGCMSを用いるとサンプルの中に含まれているある成分の分子構造(カフェインの分子構造を図 71に示す)やその量が分かりますもちろん分析機器ですので測定できる物質対象となる系や測定条件にはある
程度の制約があります混合物質を分離するガスクロマトグラフ(Gas ChromatographGC)と分離された成分(物質)を分析(構造決定と濃度測定)する質量分析計(Mass SpectrometerMS)を組み合わせた装置であるこの装置は有機化学生化学環境化学などの多くの分野で非常に多用されている例えば極めて低い濃度でも生体へ強い影響が懸念されるダイ
オキシン類などの土壌や河川の水中での含有率の決定や食品や医薬品中の微量成分の決定
にも利用されている 一方日本人に長い間親しまれてきた緑茶が近年産業界や医学
界で注目されている茶葉にはカフェイン(分子構造図 71)カテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドなどの有用成分が多く含まれておりその効能が注目されている 本実験では茶葉中に含まれるカフェインに対してGCMSを用いて分析する茶葉中には種々の物質が含まれておりGCMS分析を容易にするため前処理として超臨界二酸化炭素抽出(4015MPa程度の高圧力の二酸化炭素を溶剤として利用)により茶葉からカフェインの抽出を行いそのサンプルを GCMSにて分析する
図 71 カフェインの分子構造 図 72 物質の分析 個々の物質や装置についてはインターネットにより下記のWebサイトのフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』などにより調べるとよいカフェイン(caffeine)はアルカロイドの一種プリン環を持つプリンアルカロイドの一種でコーヒー類に含まれることか
らこの名がある化学名は137-トリメチルキサンチン(C8H10N4O2) コーヒーコーラ緑茶紅茶ガラナココアなどに含まれる(量は緑茶が一番多い)結晶は一水和物(C8H10N4O2bullH2O)もしくは無水物(無水カフェインC8H10N4O2)として得られ
る白色の針状または六角柱状結晶で匂いはなく味は苦い融点は 238昇華性がある出典フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』httpwwwwikipediaorg 装置「GCMS」httpwwwanshimadzucojpproductsgcmsqp2010htm (島津) 「超臨界抽出装置」httpwwwkagakucomjasco39-49html (日本分光)
50
レポート課題 1茶葉中に含まれるカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドの中から3つの物質を選びその物質について調べた結果を A4 レポート用紙2枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
2GCMS についてA4 レポート用紙1枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
3与えられたサンプルは茶葉1gから抽出されたのである実験結果よりもとの茶葉
1g中に含まれるカフェインの量を推算し計算式とあわせて示すこと 72 原理および装置 実験で使用する島津製の GCMS装置の全体図を図 73に原理の概略を図 74に示す
1
23
4
5
67 8
9
10
キャリアーガス
試料物質
1ボンベ(He)2圧力計3マイクロシリンジ4サンプラー5試料導入部6分離カラム
7セパレーター8イオン化室9磁石10電子増倍管11記録計
11
図 74 ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)の概略図
サンプルフォルダー
51
GCMS 装置は分離部である図中の 1~6 のガスクロマトグラフ(GC)と7~11 の検出部である質量分析計(MS)から構成される 3のマイクロシリンジを用いて試料を GCMSに導入する導入された試料は5試料導入部でガス化され6分離カラムに導入される分離カラムには吸着剤が充填されおり混合物の試料を導入した場合各物質と吸着剤との
親和性の違いにより各物質の分離カラムから排出されるタイミングは異なる分離カラム
を排出された試料は8イオン化室でイオン化され10電子倍増管にて検出される アセトンに溶解したカフェインの GCMSによる分析結果の一例を以下に示す図 75にク
ロマトグラム図 76にカフェインのピークのマススペクトルを示す
図 75 GCMSにより得られたクロマトグラム
横軸がリテンションタイムで縦軸がピーク強度を表す
図 76 カフェインのマススペクトルとカフェイン(分子量MW=194)の構造
(図 75中のリテンションタイム 126min付近のピークに起因するマススペクトル) 茶葉中にはカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイド以外にも繊維であるセルロースなど多くの物質が含まれているため茶葉そのものを
そのままサンプルとしてGCMSで分析することは困難であるセルロースなどの分子量の大きな物質はカラムに詰まってしまい分析できないそこで今回は超臨界二酸化炭素
による抽出により主にカフェインを他の物質と分離抽出した通常よく利用されるアセ
トン抽出(アセトンに茶葉を浸し特定の成分を抽出する)ではカフェイン以外にも多く
の物質が抽出されるため図 75 のような単独のピークを得ることは難しく複数のピークがクロマトグラムに見られるこのサンプル(この場合茶葉からの抽出物)にはカフェ
イン以外の不純物は少なかったがガスクロマトグラフの分離カラムによりさらにそれ
らの混合物が精度よく分離されるクロマトグラムのピークはそれらサンプル中に含まれ
ていた個々の物質を表しているクロマトグラムのピークを選択することで分子構造解析
したい物質を選んだことになる選択したクロマトグラムのピークの表している物質(ここ
ではカフェイン)に対応するマススペクトルが図 76 に表示されているマススペクトル
52
で横軸がその成分(ここではカフェイン)分子を構成している原子の原子量で縦軸がそ
の量を表しているのでマススペクトルから分子構造を解析するためにコンピュータ内
に蓄えられた物質ごとのマススペクトルデータと今回測定したマススペクトル(分子内に含
まれている各原子の数)を比較することで測定したサンプル中のクロマトピークを選択し
た分子がどのような原子をどれだけ含んだ分子であったかがわかりそれからその物質
がどのような分子構造の物質である可能性が高いかをコンピュータが検索し結果を示す 73 実験サンプルの設置と GCMS装置の操作方法 実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS装置のサンプルフォルダ
ー(図 73)にセットするこのサンプルは茶葉 1gを 50ccの高圧セルにて超臨界二酸化炭素を利用して4015MPa2時間接触の条件で抽出した固体を10gのアセトンに溶かしたものである またコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に装置および装置制
御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 本実験で使用する GCMS の操作は全てコンピュータのモニター上で GCMS の解析プログラムソフトを使用することで行うコンピュータの操作方法を以下に示す なおコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS 装置のサンプルフォルダー(図 73)にセットするまた装置および装置制御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 1)パソコンのデスクトップ上のアイコン「GCMS 分析」をクリックすると以下のようにGCMS制御プログラムを起動するその後「OK」ボタンをクリックする
図 77 GCMD分析用ソフトウェア「GCMS分析」の起動
まず「GC-MS分析」をクリック
「OK」ボタンをクリック
53
2)制御プログラムが起動されパソコンと GCMSの接続が開始される
図 78 「GCMS分析」の接続確認画面 3)GCMSとパソコンの接続が完了すると以下のような画面が表示される
図 79 「GCMS分析」操作画面
4)マススペクトルによる分子構造の解析 サンプル(この場合茶葉からの抽出物)には多くの物質が混じり合っていたがガス
クロマトグラフの分離カラムによりそれらの混合物が精度よく分離されるクロマトグラ
ムのピークはそれらサンプル中に含まれていた個々の物質を表しているクロマトグラム
のピークを選択することで分子構造解析したい物質を選んだことになる選択したクロマ
トグラムのピークの表している物質(ここではカフェイン)に対応するマススペクトルを選
択するマススペクトルは横軸が原子量で縦軸がその量を表しているのでマススペク
トルから分子構造を解析するために「定性処理」を行う シミラリティ検索結果が表示され分析により得られたスペクトルと類似のスペクトルを有
する物質の一覧が表示される上部に表示される物質ほどスペクトルが一致していること
を示す
接続状況が表示される
「トップへ」
をクリック
54
図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果
図 711 表示スペクトルのシミラリティ検索結果 10)図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果の印刷 「レポート(R)」をクリックし「検索結果(R)」をクリックすると検索結果が印刷される
GC-MS 分析で得られたマスス
ペクトル
データベース中
のマススペクト
ル
55
参考資料 生理活性物質の精製 カフェインの利尿作用のように生物活動に影響を与える物質を生理活性物質といいます
天然物には生理活性物質を多く含むものがあります一般に天然物は多くの成分を含ん
でおり特定の生理活性物質を分離抽出するには種々の分離技術が必要ですまた生
理活性物質には60以上の温度でその生理活性を失う(失活)ものや溶剤として広く用いられているクロロホルムなどの有機溶剤中で失活するものが多いそこでこれら生理活性
物質の分離精製技術の開発が望まれており30~60程度のマイルドな温度条件で操作できる二酸化炭素を機能性溶媒として利用する超臨界抽出も有効な分離技術として注目されて
いる超臨界二酸化炭素は気体と液体の中間の性質を持ち物質の分離に役立っています 臨界点付近の高密度気体は超臨界ガスまたは超臨界流体と呼ばれ臨界圧力前後でそ
の溶解能力が著しく変化することから工業的にも種々の分野で利用されています一例と
して超臨界二酸化炭素(SC-CO2)によるコーヒー豆からのカフェインの抽出プロセス(a)
ならびに超臨界二酸化炭素に対するカフェインの溶解度(b)を図に示します図(c)に示す
ように固体のカフェインがガスである超臨界二酸化炭素に溶解します
このように超臨界二酸化炭素を用いた技術はコーヒー豆からのカフェインの抽出プロ
ポリスからの生理活性物質の抽出に利用されています
図 超臨界二酸化炭素抽出を用いたコーヒー豆からのカフェインの抽出
56
付表 最小二乗法について 直線で近似する場合 f (x) = a0 + a1x (A1-1) 式(A1-1)のように近似させるとする測定値 yiとの残差を eiとすると式(A1-2)のようになる ei = yi - f (xi) = yi - ( a0 + a1xi ) (A1-2) ここで式(A1-2)の両辺を二乗してその i に関する総和をとりその値を S とすると次式となる
sumsum==
+minus==n
iii
n
ii xaayeS
1
210
1
2 )( (A1-3)
S を最小化するような a0a1を求める式(A1-3)を a0a1について偏微分すると次式とな
る
sum=
+minuspartpart
=partpart n
iii xaay
aaS
1
210
00)( sum
=
+minusminus=n
iii xaay
110 )(2 (A1-4)
同様にa1について編微分すると次式のようになる
sum=
+minusminus=partpart n
iiii xxaay
aS
110
1])([2 (A1-5)
Sが最小となる時は次式が同時に満たされる時である
00=
partpartaS
01=
partpartaS
(A1-6)
よって誤差が最小となる a0a1を求めるためには式(A1-6)を連立して解けばよい
sumsumsum===
+=n
ii
n
i
n
ii xaay
111
10 1 (A1-7)
sumsumsum===
+=n
ii
n
ii
n
iii xaxaxy
1
2
11
10 (A1-8)
式(A1-7)と式(A1-8)を a0a1を変数とみなし連立して解くと次式を得る
n組のデータ(xiyi)(i=12hellipn)に対して回帰直線 y= a0 + a1x を最小二乗法で求めて出力しデータ番号 iデータ yi直線で推定した値 )( ii bxay += および残差
iii yy minus=ε を出力するようなプログラムをつくりたい基礎式を導出せよ (ヒント残差の二乗の和が最小になるように係数 a0a1)を定めるのが最小二乗法
である)
57
sumsum
sumsumsumsum
==
====
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
n
ii
n
ii
xxn
xxyyxa
1
2
1
2
1111
2
0
)(
))(())(( (A1-9)
sumsum
sumsumsum
==
===
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
xxn
yxxyna
1
2
1
2
1111
)(
))(()( (A1-10)
よって式(A1-9)(A1-10)を用いれば最も誤差を小さくするような直線 y = a0 + a1x が求められる
y=a1x+a0 にて近似
誤差 ei
x
y
誤差が最小になる関数(直線 y=a1x+a0の場合)
図1 最小二乗による近似
誤差の和Sが最小
S
a0
a1
直線 y=a1x+a0 の近似
誤差の全体の和はS=Σei=Σyi-(a1xi+a0)
Sは変曲点にて最小値を示すすなわち(partSparta0)=0 (partSparta1)=0
図2 a0a1とSの関係
32
KCKCnn
+=
infin
1 (10)
これをラングミュア式と呼ぶ
(c)フロインドリッヒ(Freundlich)型吸着等温式 フロインドリッヒの吸着等温線は図 3-1(c)のように示される
n=aC1b (11) nは吸着量[molkg-1]で aと bはともに吸着定数[-]である (d)BET(Brunauer-Emmett-Teller) 型吸着等温式
BET型の吸着等温線は図 3-1(d)に示されるラングミュア式は表面に 1分子層だけ吸着すると仮定したものであるがBET式は無限分子層まで吸着できる式である図 3-3に示すように吸着した分子がそれぞれ次の層の吸着サイトとなり分子は積み重なって多分子
層に無限層まで吸着できるものとし各層への吸着にラングミュア式を適用すれば次式の
ように表せる
( ) ( )CKCCCKqq
minus+sdotminussdotsdot
=infin
11 (12)
この式は多孔質固体の細孔表面積を窒素ガスの吸着によって測定する際に利用される重要な式
である
表面の吸着サイト
分子上の吸着サイト
図 3-3 多分層吸着モデル
Langmuir式のパラメータ決定法 水溶液からの酢酸の活性炭に対する吸着平衡データ(吸着平衡温度 12)は表 3-1のよ
うに与えられる実験データよりラングミュア式のパラメータ(K吸着平衡定数ninfin飽和吸着量)を最小二乗法で決定せよさらにラングミュア式より決定した ninfinKの値を用いて吸着等温線を計算し計算線として図に示し実験点と比較せよ
33
表 3-1 n C Cnの関係
ラングミュア式は式(310)で与えられるこの式を変形すると次式となる
CKnCK
n infinsdot+
=11
(313)
両辺に Cをかけると以下の式が導出される
CCnKnCKn
CCKn
Cβ+α+
==
+= infininfininfin
11)1( (314)
ただしα=1ninfinβ=1(ninfinK)とする式(314)より Cn と C の関係のグラフプロットは傾きα=1ninfin切片β=1(ninfinK)の直線関係を与えることを示している表 3-1の値を用いて計算した Cnと Cの関係を表 3-1および図 3-4に示す 最小二乗法を用いて傾きαと切片βを決定した α=1ninfin=43865 β=1(ninfinK)=2654 得られた傾きおよび切片よりninfinおよび Kは次のように求まる
ninfin=1α=1D18=000228 molg-1 K =(1ninfin)β=αβ=D18C18=165
0
50
100
150
200
0 200 400 600
C [ molm-3 ]
Cn [ kgm-3 ]
傾き = 1 ninfin
1 ninfinK
切片0
05
1
15
2
25
3
0 100 200 300 400 500
液相の溶質濃度 C [ molm-3 ]
吸着量 n [ molkg-1]
液相と溶質濃度 C [ molm-3 ]
吸着量
n[ m
olk
g-1]
実験点
Langmuir式パラメータninfin 00033 [ molg-1 ]K 00086 [ m3 mol -1 ]
図 3-4 ラングミュア定数の決定 図 3-5 12における酢酸濃度 Cと
吸着量 nの関係
C [molm-3] n [molkg-1] Cn [kgm-3] 460 225 109 529 214
268 199 149 105 060
172 128 732 504 357
34
Freundlich式のパラメータ決定法 酢酸水溶液中における酢酸の活性炭に対する吸着実験を行ったところ以下のような実験デー
タを得たただしCbはバルク相における酢酸濃度n は活性炭に対する酢酸の吸着量を示す
Cb[molL] n[molg] log10Cb log10n 04621 000205 02410 000175 01139 000139 00519 000105 00243 000081
実験データを利用して次式で与えられる Freundlichの等温吸着式の定数 abの値を求めたい
bbaCn1
= (1)
このままでは定数 abの値を決定することが難しいので上式の両辺の対数をとる
bbb
bb
Cb
aCa
aCn
ln1lnlnln
)ln(ln1
1
+=+=
=
(2)
ここで横軸に ln Cb縦軸に ln nの関係をグラフにプロットするすなわち x=ln Cby=ln nと考える
bCb
an ln1lnln += (3)
ここで直線式 y=a0+a1xと比較するすなわち
)(1)(ln
1
00
傾き
切片
ba
eaaa a
=
=rarr= (4)
a0および a1は最小二乗法により数値で求められる与えられたデータでは a1= a0= なので a= b= となる この値を n=acb
1bに代入してcb=0~05の範囲で nの値を計算する
35
BET式のパラメータ決定法 BET式は次式で与えられる
)1)(1( KCCCKCnn
+minusminus=
infin
(17)
以下のように BET式の変形を行う
)1()1(
KCCKCnCn+minus
=minusinfin
(18)
(18)式の逆数をとると
KCnCK
KCnKCC
Cn infininfin
minus+=
+minus=
minus)1(1)1(
)1(1
(19)
(19)式の両辺に Cをかえると
KCnCKC
CnC
infin
minus+=
minus))1(1(
)1( (20)
(20)式を変形すると次式が得られる
CKn
KKnCn
Cinfininfin
minus+=
minus11
)1( (21)
C と)-(1 Cn
Cのプロットは傾き
KnKinfin
minus1切片
Kninfin
1の直線関係を与えることを示している
これをグラフにプロットし最小二乗法に傾きおよび切片を求める
36
312 活性炭の比表面積の決定 酢酸分子の構造を以下に示す
Hc-Cb-Ca
Hd
Hb Oa
Ob-Ha
1219deg
Ca Oa
Ob
図 36 酢酸の構造
酢酸の 1分子の吸着面積srsquo [m2]を図 3-6に示すこのとき文献より
Caと Oaの結合距離 1321Å Caと Obの結合距離 1206Å OaCaObの角度 1219deg Cの原子半径 077Å Oの原子半径 062Å
したがって吸着面積 Slsquoは次のようになる
( ) ( ) 2088 10376109931036321 minusminusminus times=timestimestimestimes=s m2
ここで活性炭の比表面積 S[m2g]は次式で示される 10026 23 snS timestimestimes= infin
S活性炭の比表面積 [m2g] ninfin飽和吸着量 [molg] srsquo酢酸 1分子の吸着面積 [m2] 602times1023アボガドロ数 [個mol] したがって活性炭の比表面積 S[m2g]は
003350=infinn molg 2010376 minustimes=s m2 より
51281037610026003350 2023 =timestimestimestimes= minusS m2g
37
4 粘度密度測定 41 はじめに 大量生産を目的とした工業的化学プロセスはほとんど流れ系(流通系)であるそれらの系において操作対象となる各物質の粘度は装置を設計操作する場合きわめて重要
な物性値である 本実験では低分子溶液および高分子溶液の粘度測定を通じて液体の粘度について考察するさらに演習問題を通じて気体液体高分子溶液などの化学プロセスで対象となる物
質の輸送物性(粘度拡散係数)の重要性を認識されたい 42 低分子溶液の粘度 [目的] 種々の濃度のエタノール水溶液の粘度を測定しその溶液の粘度について考察する [概要] 25におけるエチルアルコール濃度 02040506080100 wt の水溶液について流下時間を測定しこの結果より相対粘度絶対粘度運動粘度を求めグラフにするま
た水の密度水-エチルアルコール溶液の密度についてはピクノメーターを用いて決
定する報告書には相対粘度絶対粘度運動粘度 vsエチルアルコール濃度の関係をそれぞれグラフにして提出する
[計算方法] 相対粘度絶対粘度運動粘度の定義は次のようになる
相対粘度 ww
w tdtd
ηη = (41)
η 混合溶液の粘度 [gcms] ηw水の粘度(8007times10-3 gcms) [gcms](25における粘度) d エチルアルコール水溶液の密度 [gcm3] dw水の密度(099704gcm3) [gcm3](25における密度) t エチルアルコール水溶液の流下時間 [s] tw水の流下時間 [s] 下付添字 W 水
絶対粘度 www td
tdη
η= (42)
運動粘度 ν=ηd [cm2s] (43)
38
[実験方法] 1) 粘度計を洗浄し粘度計内 に二連球で空気を送り込み
乾燥させる乾燥しにくい 場合はアセトンを滴下し た後再度二連球で空気 を送り込み乾燥させる 2)ピペットで一定体積(10mℓ) の純水を取り広い口 f から 粘度計に水を入れる 3)粘度計を恒温槽(25)に つけ約 10 分静置する 4)安全ピペッターを口 a に 取り付け液面が b 上部に 到達するまで吸い上げる 5)安全ピペッターを外すと 液面が降下しだす液面が bd 間を通過する時間をスト ップウォッチで測定する
6)純水での測定を 3 回繰り返す 7)純水を粘度計から取り除くその後粘度計内に二連球を用いて空気を送り込み乾燥させる 8)粘度計乾燥後複数の濃度に調整済みのエチルアルコール水溶液(10mℓ)を粘度計にいれ4)~6)の作業を繰り返し行う(3 回)なお濃度の異なるエチルアルコール水溶液を粘度計内に導入する場合には7)と同様に二連球を用いて粘度計内に空気を送り込み乾燥させる
表 4-1 エチルアルコール水溶液の濃度密度相対粘度の関係 エチルアルコール濃度
[wt] 密度 d[gcm3] 相対粘度
η ηw[-] 0
20 40 50 60 80
100
安全ピペッター接続
図 4-1 粘度計
液面の bd間の通過時
間を測定
f
39
43 密度測定 [目的] 本実験では水とエタノールの種々の組成の混合液体について密度を測定し分子間相互
作用について考察する [実験方法] 1)ピクノメーターの容積測定
図 4-2のピクノメーターの空の重量 wg を秤量する
ピクノメーターの蓋を取り外し
ピクノメーターを水で満たす
設定温度を 25として恒温槽 の電源を入れ恒温槽内の温 度が一定になるまで待つな お水温は恒温槽中の水銀温 度計から読む
恒温槽中に水を満たしたピク
ノメーターを入れる
約 10分間静置する
ピクノメーターに蓋をするこのときピクノメーターの容量
よりも余分の水は蓋の上部より排出される
ピクノメーターの外側を乾いた布で拭い秤量する(その重量を
wwg とする)
恒温槽の温度(25)における水の密度 dwgcm3(=099704gcm3)
より次式を用いてピクノメーターの容積を求める
w
w
dww
Vminus
= (44)
図 4-2 ピクノメーター
蓋
40
表 4-2 エチルアルコール水溶液の濃度と密度の測定結果(25) エチルアルコ
ール濃度[wt]
wrsquo[g] ww[g] V[cm3] w[g]
d[gcm3]
0 20 40 50 60 80
100
099704
エチルアルコール濃度[wt] 空のピクノメーターの重量 wrsquo[g] 水を入れたときのピクノメーターの重量 ww[g] ピクノメーターの体積 V[cm3] エタノール水溶液の入れたときのピクノメータの重さ w[g] エタノール水溶液の密度 d[gcm3]
容積 Vを求めたピクノメーターに混合溶液(調整済み)を入れてその重量 wgを秤量し次式で混合溶液の密度を求める
Vwwd minus
= (45)
エタノール濃度と密度 d の関係をグラフにプロットする
41
44 高分子溶液の粘度 [目的] 高分子溶液の粘度測定から分子量の粘度に与える影響について考察する [概要 ] オストワルド粘度計を用い種々の濃度のポリビニルアルコール(PVA ((-CH2CHOH-)n))水溶液の粘度を測定し粘度データよりポリビニルアルコールの分
子量を求める まず 05g100cc の濃度のポリビニルアルコール水溶液を調製する次にこれを原液
とし23 12 13 15の濃度の溶液を調製するこれらの溶液についてオストワルド粘度計を用いてそれぞれ流下時間を測定し相対粘度絶対粘度運動粘度を求め実験デ
ータより極限粘度[η]を求めるまた報告書には相対粘度絶対粘度運動粘度C
)ln( wηη
Cw
w-η
ηη vsポリビニルアルコール濃度の関係をそれぞれグラフにして提出する
[計算方法] エチルアルコール水溶液の粘度測定と同様の手法を用いて粘度の計算を行うなおポリビニルアルコール水溶液の密度はピクノメーターを用いて測定すること 表 4-3 ポリビニルアルコール水溶液の濃度密度相対粘度の関係 ポリビニルアルコール
濃度 [g100cc] 密度 d[gcm3] 相対粘度
η ηw[-] 05times(15) 05times(13) 05times(12) 05times(23)
05
42
[分子量の計算方法] 実験を行った結果以下のような粘度データを得られるとする実験データより極限粘度
を求めポリビニルアルコール(PVA)の分子量Mを決定せよ
PVA 水溶液濃度
C[g100cc]
相対粘度
ηηw[-]
絶対粘度
η[gcms]Cw
w-η
ηη
C)ln( wηη
05times(15) 1031 0008255 031 0305
05times(13) 039 0378
05times(12) 03 0289
05times(23) 0375 0353
05 0364 0334
ηw=8007times10-3 gcms 線状高分子の極限粘度[η]と分子量Mの関係は次式で与えられる [η]=KMα (46) ただしポリビニルアルコールの場合K=666times10-4α=064であるなお極限粘度[η]は次式で定義される
CC w
w
0
-][ limη
ηηη
rarr
= (47)
または
CC
)ln(][ w
0lim
ηηη
rarr
= (48)
よって濃度 CとCw
w-η
ηηまたは濃度 Cと
C)ln( wηη の関係をグラフ化し最小二乗法によ
り切片の値を求めると極限粘度[η]が決定される
Cw
w-η
ηηと C の関係より最小二乗法を用いて切片の値を決定すると(図 43 参照)切片=
03242傾き=00874となるよって極限粘度は以下のようになる[η]=03242同様
にC
)ln( wηη とcの関係より最小二乗法を用いて切片の値を決定する
(図 44参照)と切片=03249傾き=00256となり極限粘度は以下のようになる[η]=03249
Cw
w-η
ηηと Cの関係より決定した[η]=03242を用いてポリビニルアルコール(PVA)の
分子量 Mを計算する(46)式より以下のように PVAの分子量 Mを計算することができるM=([η]K)1α
=(03242(666times10-4))(1064)
=15811
43
y = 00874x + 03242
0
02
04
06
08
1
0 01 02 03 04 05 06 07
c[g100cc]
(η-ηw)(ηwc)
cw
w
η
ηηminus
極限粘度[η]
図 43 298Kにおける PVA濃度 CとCw
w-η
ηηの関係
y = 00256x + 03249
0
02
04
06
08
1
0 01 02 03 04 05 06 07
c[g100cc]
(ln(ηη
w))c
c)ln( wηη
極限粘度[η]
図 44 298Kにおける PVA濃度 CとC
)ln( wηη の関係
44
5 植物からの DNAの抽出 51 はじめに 分子レベルでの遺伝子の構造解明や遺伝子の発現に関する研究は近年急速に発展している
これら生命現象のしくみを分子レベルで解明しようという分子生物学の分野ではさまざま
な遺伝子の解析や応用方法が開発され我々の生活に身近なものになりつつある 本実験では初歩的な分子生物学に関する実験として植物(タマネギ)からの DNA の
抽出を行い抽出した遺伝子の電気泳動法による分離実験を試みる 52 試薬および器具 試薬 タマネギ(細胞中から遺伝子の抽出を行う) 台所用洗剤(洗剤中に含まれる界面活性剤には植物の細胞膜およびタンパク質を破壊す
る働きがある) 塩化ナトリウム(DNAは塩化ナトリウム水溶液に溶解し易い性質がある) エタノール(予め冷やしておくDNAはエタノールにほとんど溶解しない) 制限酵素(DNAを一定の部位で切断する働きを働きがある) TE緩衝液(pH緩衝剤が入った溶液) 器具 ビーカーミキサーフィルターメスシリンダー駒込ピペットガラス棒 マイクロピペット電気泳動装置ポラロイドカメラ 53 実験方法 1)タマネギは 1回の実験で半個のうち内側の半分程度を使用するタマネギ水 30ml台所用洗剤数滴をミキサー用ガラス容器に入れ40~60秒程度(固体状のタマネギがなくなる頃が目安)ミキサーにて混合する
2) 1)で作成した混合溶液をビーカーに移し約5g程度の塩化ナトリウムを加えガラス棒で静かに攪拌する粘性の大きな溶液が得られる
3) 2)で作成した溶液をフィルターを用いて濾過し濾液を回収する 4) 濾液の約2倍程度の量の冷エタノールをビーカーの壁伝いに静かに注ぐ 5) ビーカーを揺するとエタノール層に白くふわふわしたものが浮いてくるこれが DNAであるガラス棒で DNAを巻き取りシャーレ上にて DNAを回収する顕微鏡を用いて回収した DNAの状態を観察する
6)マイクロチューブ(容量 15ml)中に用意した 70エタノールを 8 分目程度まで注ぐ5)にて回収された DNAをマイクロピペットを用いて70エタノールの入ったマイクロチューブ中に移す軽く混ぜることによりDNA から不要な物質を洗い流す遠心分離してDNA をマイクロチューブの底に沈めた後溶液を捨てて DNA を乾かす乾いたらTE緩衝溶液を 1ml加えて放置するDNAの溶液が得られる
54 電気泳動装置による DNAの観察
本実験は職員と一緒に行うこと 実験を行う人はビニール手袋をすること 1) 抽出した DNAを電気泳動装置で観察するマイクロピペットを用いて以下のように調製した DNAの混合溶液を調製する(いずれの溶液も調製済)
45
2) マイクロピペットを用いてアガロースゲルの試料を流し込む穴(ウェル)に1)にて調製した溶液 Aおよび Bを注ぎ込む注入量は20μℓとする電気泳動装置のスイッチを入れて100Vの電流を流しアガロースゲル内にて DNAを電気泳動させる
3) 試料に予め加えられておいた青色の色素が 7 分目程度まで進んだら電気泳動を中止する(約 30分程度)
4) (ここでの作業は職員が行う) アガロースゲルを取り出し染色液に浸す染色後ゲルを取り出しポラロイドカメラで
DNAの泳動状態を撮影する
+ -
アガロースゲル
試料を流し込む穴(ウェル)
図 51 電気泳動装置
6 5 4 3 2 1
図 52 DNAの電気泳動写真の一例
55 電気泳動装置の原理 電気泳動装置の原理図を以下に示すアガロースゲル(寒天から不純物を除いたもの)中
に DNAをセットし電流を流すとDNAは電流の向きとは逆にマイナスからプラス方向
調製済 溶液 A(制限酵素なし) 水 11μℓ 10timesH Buffer 2microℓ 植物 DNA 5μℓ
調製済 溶液 B(制限酵素 Eco RI入り) 水 11μℓ 10timesH Buffer 2microℓ 植物 DNA 5μℓ 制限酵素 2μℓ
1 DNA(タマネギ)+制限酵素 2 DNA(タマネギ)+制限酵素 3 DNA(タマネギ) 4 λ-DNA(大腸菌)+制限酵素 5 λ-DNA(大腸菌) 6 サイズマーカー
500bp
46
に動く(このことを電気泳動という)これはDNA のリン酸部分が負に帯電しているためでありまたDNAはその長さにより泳動距離が異なる(短い遺伝子ほど長く泳動する)電気泳動ではこの性質を利用してDNAを大きさごとに分離することができる
塩基対数によってDNAを分離
EtBr (蛍光試薬)DNAの二本鎖内に入り込む
発光
UVλ=302nm
励起
分離後のアガロースゲルをエチジウムブロマイド(EtBr)溶液に浸す
DNAを含んだ溶液
アガロースゲル
リン酸部分が負に帯電
塩基 (ATGC)-
+
カメラで撮影
電圧
DNA構成成分(dNTPs)
バンドが明る
DNA量が
バンド(DNAの存在)
図 53 電気泳動の原理
56 制限酵素とは DNA は4 種類のヌクレオチド(GATC)が不規則につながってできている制限酵素はDNAの特定のヌクレオチドが並んでいる部分を切断する制限酵素には様々な種類がありEco RI(エコアールワン)と呼ばれる酵素は「GAATTC」といった並びの部分だけを切断することができる
GAATTC
CTTAAG
制限酵素
Eco RI
AAGCTT
TTCGAA
制限酵素
Hin dIII
図 54 制限酵素による DNAの切断
レポートについて 1 実験方法および実験結果の整理方法については指針書を参考にすること 2 実験結果については電気泳動の結果について考察すること(制限酵素の影響などにつ
いてまとめてください)
47
6 染色実験
61 はじめに
現在私達の身の周りでは様々な染料が使われている例えばT シャツやジーンズな
どの衣服は橙黄赤青など様々な色に染められている他にも私達が気付かないと
ころで多くの染色された製品を使用しているそこで本実験では高校の化学で学んだ
アゾ染料を合成してみるアゾ染料はアニリンを原料として作られているアニリンはベ
ンゼン環にアミノ基(-NH2)がついたものであるアニリンは無色の液体で水に溶けにく
くアンモニアより弱い塩基性を示すまたさらし粉(CaClO(ClO)H2O)水溶液を加えると
赤紫色を呈するこの呈色反応はアニリン特有のものであるので検出反応に用いられる
このアニリンを出発物質としてアゾ染料を合成してみる
62 試薬および使用器具
【試薬】 ①05moll 水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液
②2-ナフトール ③フェノール ④6moll 塩酸
⑤亜硝酸ナトリウム ⑥アニリン ⑦氷
【器具類】 ①電子天秤 ②50mℓビーカー ③100mℓビーカー
④ガラス棒 ⑤布(ガーゼなど) ⑥ピンセット
⑦ポリ手袋 ⑧ドライヤー ⑨シャーレ
10駒込ピペット(10ml ガラス製)
11駒込ピペット(1ml プラスチック製)
63 実験方法
1) 50mℓビーカーの中に 05molℓ水酸化ナトリウム水溶液 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回
NaOH 水溶液を分取するほぼ 20 mℓ分取できれば可)と 2-ナフトールを約 01g 入れ
よくかき混ぜる調製した溶液の中に布をつけその布はガラス棒でしぼってから(布
をガラス棒ですくいあげればよい)シャーレに広げる温度の異なる条件下(常温およ
び低温)で染料の合成実験を行うため布は最低 2枚調製した溶液と接触させそれ
ぞれ別々のシャーレ(低温用および常温用)に広げる
2) 新しいビーカーに水を約 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回分取)と 6molℓ塩酸約 4mℓ(10m
ℓ駒込ピペットで目分量で可)さらにアニリン約 1mℓ(プラスチック製 1 mℓ駒込ピペッ
ト)を入れてよくかき混ぜる染料の合成を常温および低温下で行うためこの溶液を
2つ調整する
低温下で反応させる溶液は恒温槽で 10~15 分ほどよく冷やした後亜硝酸ナトリウ
ム 05g を加えてよくかき混ぜる
常温下で反応させる溶液には冷却作業を行わずに亜硝酸ナトリウム 05g を加えて
よくかき混ぜる
3) 2)でつくった水溶液をシャーレに広げた布に注ぎ生成される染料を布によく染み
込ませ5分程放置する
4) 色の付いた布を取り出してポリ手袋をした手できれいに水洗いをし乾燥させる
48
5) 色差計を用いて乾燥した布の Lab(L明度aおよび b色度)を測定する
2)で作った溶液は5以下では無色の溶液ですが5以上になると淡い黄色になりま
す
【解説】
アゾ染料はアゾ基(-N=N-)を持っていてこのアゾ基によって鮮やかな橙色を呈色し
ます今回合成したアゾ染料は図の 1-フェニルアゾ-2-ナフトールです意外かもしれ
ませんが指示薬として使われているフェノールフタレインもアゾ化合物ですフェノール
フタレインは pH の変化によって色が出てきす染料の中でも最初は無色のものもありますが
温度を変化させたり酸性やアルカリ性にすると色が出てきます
ベンゼン ニトロベンゼン
N2Cl
ニトロ化 濃硫酸(濃硝酸)
還元反応 濃塩酸
(Sn又は Fe)
アニリン塩酸塩
遊離反応 NaOH
アニリン塩酸塩に強塩基を反応させる
と弱塩基であるアニリンが遊離する
氷冷+亜硝酸ナトリウム アニリン
塩酸
ジアゾ化
塩化ベンゼンジアゾニウム
塩化ベンゼンジアゾニウム
は熱によって窒素とフェノー
ルに分解される
カップリング
C10H7ONa (ナトリウム 2-ナフトキシド)
O
N =
1-フェニルアゾ 2-ナフトール
NH3Cl NH2
49
7 ガスクロマトグラフ質量分析計による茶葉中のカフェインの分析 71 はじめに ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)は極めて低い濃度の化学物質の同定や未知物質の構造決定に極めて強力な分析機器の一つであるGCMSを用いるとサンプルの中に含まれているある成分の分子構造(カフェインの分子構造を図 71に示す)やその量が分かりますもちろん分析機器ですので測定できる物質対象となる系や測定条件にはある
程度の制約があります混合物質を分離するガスクロマトグラフ(Gas ChromatographGC)と分離された成分(物質)を分析(構造決定と濃度測定)する質量分析計(Mass SpectrometerMS)を組み合わせた装置であるこの装置は有機化学生化学環境化学などの多くの分野で非常に多用されている例えば極めて低い濃度でも生体へ強い影響が懸念されるダイ
オキシン類などの土壌や河川の水中での含有率の決定や食品や医薬品中の微量成分の決定
にも利用されている 一方日本人に長い間親しまれてきた緑茶が近年産業界や医学
界で注目されている茶葉にはカフェイン(分子構造図 71)カテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドなどの有用成分が多く含まれておりその効能が注目されている 本実験では茶葉中に含まれるカフェインに対してGCMSを用いて分析する茶葉中には種々の物質が含まれておりGCMS分析を容易にするため前処理として超臨界二酸化炭素抽出(4015MPa程度の高圧力の二酸化炭素を溶剤として利用)により茶葉からカフェインの抽出を行いそのサンプルを GCMSにて分析する
図 71 カフェインの分子構造 図 72 物質の分析 個々の物質や装置についてはインターネットにより下記のWebサイトのフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』などにより調べるとよいカフェイン(caffeine)はアルカロイドの一種プリン環を持つプリンアルカロイドの一種でコーヒー類に含まれることか
らこの名がある化学名は137-トリメチルキサンチン(C8H10N4O2) コーヒーコーラ緑茶紅茶ガラナココアなどに含まれる(量は緑茶が一番多い)結晶は一水和物(C8H10N4O2bullH2O)もしくは無水物(無水カフェインC8H10N4O2)として得られ
る白色の針状または六角柱状結晶で匂いはなく味は苦い融点は 238昇華性がある出典フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』httpwwwwikipediaorg 装置「GCMS」httpwwwanshimadzucojpproductsgcmsqp2010htm (島津) 「超臨界抽出装置」httpwwwkagakucomjasco39-49html (日本分光)
50
レポート課題 1茶葉中に含まれるカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドの中から3つの物質を選びその物質について調べた結果を A4 レポート用紙2枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
2GCMS についてA4 レポート用紙1枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
3与えられたサンプルは茶葉1gから抽出されたのである実験結果よりもとの茶葉
1g中に含まれるカフェインの量を推算し計算式とあわせて示すこと 72 原理および装置 実験で使用する島津製の GCMS装置の全体図を図 73に原理の概略を図 74に示す
1
23
4
5
67 8
9
10
キャリアーガス
試料物質
1ボンベ(He)2圧力計3マイクロシリンジ4サンプラー5試料導入部6分離カラム
7セパレーター8イオン化室9磁石10電子増倍管11記録計
11
図 74 ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)の概略図
サンプルフォルダー
51
GCMS 装置は分離部である図中の 1~6 のガスクロマトグラフ(GC)と7~11 の検出部である質量分析計(MS)から構成される 3のマイクロシリンジを用いて試料を GCMSに導入する導入された試料は5試料導入部でガス化され6分離カラムに導入される分離カラムには吸着剤が充填されおり混合物の試料を導入した場合各物質と吸着剤との
親和性の違いにより各物質の分離カラムから排出されるタイミングは異なる分離カラム
を排出された試料は8イオン化室でイオン化され10電子倍増管にて検出される アセトンに溶解したカフェインの GCMSによる分析結果の一例を以下に示す図 75にク
ロマトグラム図 76にカフェインのピークのマススペクトルを示す
図 75 GCMSにより得られたクロマトグラム
横軸がリテンションタイムで縦軸がピーク強度を表す
図 76 カフェインのマススペクトルとカフェイン(分子量MW=194)の構造
(図 75中のリテンションタイム 126min付近のピークに起因するマススペクトル) 茶葉中にはカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイド以外にも繊維であるセルロースなど多くの物質が含まれているため茶葉そのものを
そのままサンプルとしてGCMSで分析することは困難であるセルロースなどの分子量の大きな物質はカラムに詰まってしまい分析できないそこで今回は超臨界二酸化炭素
による抽出により主にカフェインを他の物質と分離抽出した通常よく利用されるアセ
トン抽出(アセトンに茶葉を浸し特定の成分を抽出する)ではカフェイン以外にも多く
の物質が抽出されるため図 75 のような単独のピークを得ることは難しく複数のピークがクロマトグラムに見られるこのサンプル(この場合茶葉からの抽出物)にはカフェ
イン以外の不純物は少なかったがガスクロマトグラフの分離カラムによりさらにそれ
らの混合物が精度よく分離されるクロマトグラムのピークはそれらサンプル中に含まれ
ていた個々の物質を表しているクロマトグラムのピークを選択することで分子構造解析
したい物質を選んだことになる選択したクロマトグラムのピークの表している物質(ここ
ではカフェイン)に対応するマススペクトルが図 76 に表示されているマススペクトル
52
で横軸がその成分(ここではカフェイン)分子を構成している原子の原子量で縦軸がそ
の量を表しているのでマススペクトルから分子構造を解析するためにコンピュータ内
に蓄えられた物質ごとのマススペクトルデータと今回測定したマススペクトル(分子内に含
まれている各原子の数)を比較することで測定したサンプル中のクロマトピークを選択し
た分子がどのような原子をどれだけ含んだ分子であったかがわかりそれからその物質
がどのような分子構造の物質である可能性が高いかをコンピュータが検索し結果を示す 73 実験サンプルの設置と GCMS装置の操作方法 実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS装置のサンプルフォルダ
ー(図 73)にセットするこのサンプルは茶葉 1gを 50ccの高圧セルにて超臨界二酸化炭素を利用して4015MPa2時間接触の条件で抽出した固体を10gのアセトンに溶かしたものである またコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に装置および装置制
御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 本実験で使用する GCMS の操作は全てコンピュータのモニター上で GCMS の解析プログラムソフトを使用することで行うコンピュータの操作方法を以下に示す なおコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS 装置のサンプルフォルダー(図 73)にセットするまた装置および装置制御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 1)パソコンのデスクトップ上のアイコン「GCMS 分析」をクリックすると以下のようにGCMS制御プログラムを起動するその後「OK」ボタンをクリックする
図 77 GCMD分析用ソフトウェア「GCMS分析」の起動
まず「GC-MS分析」をクリック
「OK」ボタンをクリック
53
2)制御プログラムが起動されパソコンと GCMSの接続が開始される
図 78 「GCMS分析」の接続確認画面 3)GCMSとパソコンの接続が完了すると以下のような画面が表示される
図 79 「GCMS分析」操作画面
4)マススペクトルによる分子構造の解析 サンプル(この場合茶葉からの抽出物)には多くの物質が混じり合っていたがガス
クロマトグラフの分離カラムによりそれらの混合物が精度よく分離されるクロマトグラ
ムのピークはそれらサンプル中に含まれていた個々の物質を表しているクロマトグラム
のピークを選択することで分子構造解析したい物質を選んだことになる選択したクロマ
トグラムのピークの表している物質(ここではカフェイン)に対応するマススペクトルを選
択するマススペクトルは横軸が原子量で縦軸がその量を表しているのでマススペク
トルから分子構造を解析するために「定性処理」を行う シミラリティ検索結果が表示され分析により得られたスペクトルと類似のスペクトルを有
する物質の一覧が表示される上部に表示される物質ほどスペクトルが一致していること
を示す
接続状況が表示される
「トップへ」
をクリック
54
図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果
図 711 表示スペクトルのシミラリティ検索結果 10)図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果の印刷 「レポート(R)」をクリックし「検索結果(R)」をクリックすると検索結果が印刷される
GC-MS 分析で得られたマスス
ペクトル
データベース中
のマススペクト
ル
55
参考資料 生理活性物質の精製 カフェインの利尿作用のように生物活動に影響を与える物質を生理活性物質といいます
天然物には生理活性物質を多く含むものがあります一般に天然物は多くの成分を含ん
でおり特定の生理活性物質を分離抽出するには種々の分離技術が必要ですまた生
理活性物質には60以上の温度でその生理活性を失う(失活)ものや溶剤として広く用いられているクロロホルムなどの有機溶剤中で失活するものが多いそこでこれら生理活性
物質の分離精製技術の開発が望まれており30~60程度のマイルドな温度条件で操作できる二酸化炭素を機能性溶媒として利用する超臨界抽出も有効な分離技術として注目されて
いる超臨界二酸化炭素は気体と液体の中間の性質を持ち物質の分離に役立っています 臨界点付近の高密度気体は超臨界ガスまたは超臨界流体と呼ばれ臨界圧力前後でそ
の溶解能力が著しく変化することから工業的にも種々の分野で利用されています一例と
して超臨界二酸化炭素(SC-CO2)によるコーヒー豆からのカフェインの抽出プロセス(a)
ならびに超臨界二酸化炭素に対するカフェインの溶解度(b)を図に示します図(c)に示す
ように固体のカフェインがガスである超臨界二酸化炭素に溶解します
このように超臨界二酸化炭素を用いた技術はコーヒー豆からのカフェインの抽出プロ
ポリスからの生理活性物質の抽出に利用されています
図 超臨界二酸化炭素抽出を用いたコーヒー豆からのカフェインの抽出
56
付表 最小二乗法について 直線で近似する場合 f (x) = a0 + a1x (A1-1) 式(A1-1)のように近似させるとする測定値 yiとの残差を eiとすると式(A1-2)のようになる ei = yi - f (xi) = yi - ( a0 + a1xi ) (A1-2) ここで式(A1-2)の両辺を二乗してその i に関する総和をとりその値を S とすると次式となる
sumsum==
+minus==n
iii
n
ii xaayeS
1
210
1
2 )( (A1-3)
S を最小化するような a0a1を求める式(A1-3)を a0a1について偏微分すると次式とな
る
sum=
+minuspartpart
=partpart n
iii xaay
aaS
1
210
00)( sum
=
+minusminus=n
iii xaay
110 )(2 (A1-4)
同様にa1について編微分すると次式のようになる
sum=
+minusminus=partpart n
iiii xxaay
aS
110
1])([2 (A1-5)
Sが最小となる時は次式が同時に満たされる時である
00=
partpartaS
01=
partpartaS
(A1-6)
よって誤差が最小となる a0a1を求めるためには式(A1-6)を連立して解けばよい
sumsumsum===
+=n
ii
n
i
n
ii xaay
111
10 1 (A1-7)
sumsumsum===
+=n
ii
n
ii
n
iii xaxaxy
1
2
11
10 (A1-8)
式(A1-7)と式(A1-8)を a0a1を変数とみなし連立して解くと次式を得る
n組のデータ(xiyi)(i=12hellipn)に対して回帰直線 y= a0 + a1x を最小二乗法で求めて出力しデータ番号 iデータ yi直線で推定した値 )( ii bxay += および残差
iii yy minus=ε を出力するようなプログラムをつくりたい基礎式を導出せよ (ヒント残差の二乗の和が最小になるように係数 a0a1)を定めるのが最小二乗法
である)
57
sumsum
sumsumsumsum
==
====
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
n
ii
n
ii
xxn
xxyyxa
1
2
1
2
1111
2
0
)(
))(())(( (A1-9)
sumsum
sumsumsum
==
===
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
xxn
yxxyna
1
2
1
2
1111
)(
))(()( (A1-10)
よって式(A1-9)(A1-10)を用いれば最も誤差を小さくするような直線 y = a0 + a1x が求められる
y=a1x+a0 にて近似
誤差 ei
x
y
誤差が最小になる関数(直線 y=a1x+a0の場合)
図1 最小二乗による近似
誤差の和Sが最小
S
a0
a1
直線 y=a1x+a0 の近似
誤差の全体の和はS=Σei=Σyi-(a1xi+a0)
Sは変曲点にて最小値を示すすなわち(partSparta0)=0 (partSparta1)=0
図2 a0a1とSの関係
33
表 3-1 n C Cnの関係
ラングミュア式は式(310)で与えられるこの式を変形すると次式となる
CKnCK
n infinsdot+
=11
(313)
両辺に Cをかけると以下の式が導出される
CCnKnCKn
CCKn
Cβ+α+
==
+= infininfininfin
11)1( (314)
ただしα=1ninfinβ=1(ninfinK)とする式(314)より Cn と C の関係のグラフプロットは傾きα=1ninfin切片β=1(ninfinK)の直線関係を与えることを示している表 3-1の値を用いて計算した Cnと Cの関係を表 3-1および図 3-4に示す 最小二乗法を用いて傾きαと切片βを決定した α=1ninfin=43865 β=1(ninfinK)=2654 得られた傾きおよび切片よりninfinおよび Kは次のように求まる
ninfin=1α=1D18=000228 molg-1 K =(1ninfin)β=αβ=D18C18=165
0
50
100
150
200
0 200 400 600
C [ molm-3 ]
Cn [ kgm-3 ]
傾き = 1 ninfin
1 ninfinK
切片0
05
1
15
2
25
3
0 100 200 300 400 500
液相の溶質濃度 C [ molm-3 ]
吸着量 n [ molkg-1]
液相と溶質濃度 C [ molm-3 ]
吸着量
n[ m
olk
g-1]
実験点
Langmuir式パラメータninfin 00033 [ molg-1 ]K 00086 [ m3 mol -1 ]
図 3-4 ラングミュア定数の決定 図 3-5 12における酢酸濃度 Cと
吸着量 nの関係
C [molm-3] n [molkg-1] Cn [kgm-3] 460 225 109 529 214
268 199 149 105 060
172 128 732 504 357
34
Freundlich式のパラメータ決定法 酢酸水溶液中における酢酸の活性炭に対する吸着実験を行ったところ以下のような実験デー
タを得たただしCbはバルク相における酢酸濃度n は活性炭に対する酢酸の吸着量を示す
Cb[molL] n[molg] log10Cb log10n 04621 000205 02410 000175 01139 000139 00519 000105 00243 000081
実験データを利用して次式で与えられる Freundlichの等温吸着式の定数 abの値を求めたい
bbaCn1
= (1)
このままでは定数 abの値を決定することが難しいので上式の両辺の対数をとる
bbb
bb
Cb
aCa
aCn
ln1lnlnln
)ln(ln1
1
+=+=
=
(2)
ここで横軸に ln Cb縦軸に ln nの関係をグラフにプロットするすなわち x=ln Cby=ln nと考える
bCb
an ln1lnln += (3)
ここで直線式 y=a0+a1xと比較するすなわち
)(1)(ln
1
00
傾き
切片
ba
eaaa a
=
=rarr= (4)
a0および a1は最小二乗法により数値で求められる与えられたデータでは a1= a0= なので a= b= となる この値を n=acb
1bに代入してcb=0~05の範囲で nの値を計算する
35
BET式のパラメータ決定法 BET式は次式で与えられる
)1)(1( KCCCKCnn
+minusminus=
infin
(17)
以下のように BET式の変形を行う
)1()1(
KCCKCnCn+minus
=minusinfin
(18)
(18)式の逆数をとると
KCnCK
KCnKCC
Cn infininfin
minus+=
+minus=
minus)1(1)1(
)1(1
(19)
(19)式の両辺に Cをかえると
KCnCKC
CnC
infin
minus+=
minus))1(1(
)1( (20)
(20)式を変形すると次式が得られる
CKn
KKnCn
Cinfininfin
minus+=
minus11
)1( (21)
C と)-(1 Cn
Cのプロットは傾き
KnKinfin
minus1切片
Kninfin
1の直線関係を与えることを示している
これをグラフにプロットし最小二乗法に傾きおよび切片を求める
36
312 活性炭の比表面積の決定 酢酸分子の構造を以下に示す
Hc-Cb-Ca
Hd
Hb Oa
Ob-Ha
1219deg
Ca Oa
Ob
図 36 酢酸の構造
酢酸の 1分子の吸着面積srsquo [m2]を図 3-6に示すこのとき文献より
Caと Oaの結合距離 1321Å Caと Obの結合距離 1206Å OaCaObの角度 1219deg Cの原子半径 077Å Oの原子半径 062Å
したがって吸着面積 Slsquoは次のようになる
( ) ( ) 2088 10376109931036321 minusminusminus times=timestimestimestimes=s m2
ここで活性炭の比表面積 S[m2g]は次式で示される 10026 23 snS timestimestimes= infin
S活性炭の比表面積 [m2g] ninfin飽和吸着量 [molg] srsquo酢酸 1分子の吸着面積 [m2] 602times1023アボガドロ数 [個mol] したがって活性炭の比表面積 S[m2g]は
003350=infinn molg 2010376 minustimes=s m2 より
51281037610026003350 2023 =timestimestimestimes= minusS m2g
37
4 粘度密度測定 41 はじめに 大量生産を目的とした工業的化学プロセスはほとんど流れ系(流通系)であるそれらの系において操作対象となる各物質の粘度は装置を設計操作する場合きわめて重要
な物性値である 本実験では低分子溶液および高分子溶液の粘度測定を通じて液体の粘度について考察するさらに演習問題を通じて気体液体高分子溶液などの化学プロセスで対象となる物
質の輸送物性(粘度拡散係数)の重要性を認識されたい 42 低分子溶液の粘度 [目的] 種々の濃度のエタノール水溶液の粘度を測定しその溶液の粘度について考察する [概要] 25におけるエチルアルコール濃度 02040506080100 wt の水溶液について流下時間を測定しこの結果より相対粘度絶対粘度運動粘度を求めグラフにするま
た水の密度水-エチルアルコール溶液の密度についてはピクノメーターを用いて決
定する報告書には相対粘度絶対粘度運動粘度 vsエチルアルコール濃度の関係をそれぞれグラフにして提出する
[計算方法] 相対粘度絶対粘度運動粘度の定義は次のようになる
相対粘度 ww
w tdtd
ηη = (41)
η 混合溶液の粘度 [gcms] ηw水の粘度(8007times10-3 gcms) [gcms](25における粘度) d エチルアルコール水溶液の密度 [gcm3] dw水の密度(099704gcm3) [gcm3](25における密度) t エチルアルコール水溶液の流下時間 [s] tw水の流下時間 [s] 下付添字 W 水
絶対粘度 www td
tdη
η= (42)
運動粘度 ν=ηd [cm2s] (43)
38
[実験方法] 1) 粘度計を洗浄し粘度計内 に二連球で空気を送り込み
乾燥させる乾燥しにくい 場合はアセトンを滴下し た後再度二連球で空気 を送り込み乾燥させる 2)ピペットで一定体積(10mℓ) の純水を取り広い口 f から 粘度計に水を入れる 3)粘度計を恒温槽(25)に つけ約 10 分静置する 4)安全ピペッターを口 a に 取り付け液面が b 上部に 到達するまで吸い上げる 5)安全ピペッターを外すと 液面が降下しだす液面が bd 間を通過する時間をスト ップウォッチで測定する
6)純水での測定を 3 回繰り返す 7)純水を粘度計から取り除くその後粘度計内に二連球を用いて空気を送り込み乾燥させる 8)粘度計乾燥後複数の濃度に調整済みのエチルアルコール水溶液(10mℓ)を粘度計にいれ4)~6)の作業を繰り返し行う(3 回)なお濃度の異なるエチルアルコール水溶液を粘度計内に導入する場合には7)と同様に二連球を用いて粘度計内に空気を送り込み乾燥させる
表 4-1 エチルアルコール水溶液の濃度密度相対粘度の関係 エチルアルコール濃度
[wt] 密度 d[gcm3] 相対粘度
η ηw[-] 0
20 40 50 60 80
100
安全ピペッター接続
図 4-1 粘度計
液面の bd間の通過時
間を測定
f
39
43 密度測定 [目的] 本実験では水とエタノールの種々の組成の混合液体について密度を測定し分子間相互
作用について考察する [実験方法] 1)ピクノメーターの容積測定
図 4-2のピクノメーターの空の重量 wg を秤量する
ピクノメーターの蓋を取り外し
ピクノメーターを水で満たす
設定温度を 25として恒温槽 の電源を入れ恒温槽内の温 度が一定になるまで待つな お水温は恒温槽中の水銀温 度計から読む
恒温槽中に水を満たしたピク
ノメーターを入れる
約 10分間静置する
ピクノメーターに蓋をするこのときピクノメーターの容量
よりも余分の水は蓋の上部より排出される
ピクノメーターの外側を乾いた布で拭い秤量する(その重量を
wwg とする)
恒温槽の温度(25)における水の密度 dwgcm3(=099704gcm3)
より次式を用いてピクノメーターの容積を求める
w
w
dww
Vminus
= (44)
図 4-2 ピクノメーター
蓋
40
表 4-2 エチルアルコール水溶液の濃度と密度の測定結果(25) エチルアルコ
ール濃度[wt]
wrsquo[g] ww[g] V[cm3] w[g]
d[gcm3]
0 20 40 50 60 80
100
099704
エチルアルコール濃度[wt] 空のピクノメーターの重量 wrsquo[g] 水を入れたときのピクノメーターの重量 ww[g] ピクノメーターの体積 V[cm3] エタノール水溶液の入れたときのピクノメータの重さ w[g] エタノール水溶液の密度 d[gcm3]
容積 Vを求めたピクノメーターに混合溶液(調整済み)を入れてその重量 wgを秤量し次式で混合溶液の密度を求める
Vwwd minus
= (45)
エタノール濃度と密度 d の関係をグラフにプロットする
41
44 高分子溶液の粘度 [目的] 高分子溶液の粘度測定から分子量の粘度に与える影響について考察する [概要 ] オストワルド粘度計を用い種々の濃度のポリビニルアルコール(PVA ((-CH2CHOH-)n))水溶液の粘度を測定し粘度データよりポリビニルアルコールの分
子量を求める まず 05g100cc の濃度のポリビニルアルコール水溶液を調製する次にこれを原液
とし23 12 13 15の濃度の溶液を調製するこれらの溶液についてオストワルド粘度計を用いてそれぞれ流下時間を測定し相対粘度絶対粘度運動粘度を求め実験デ
ータより極限粘度[η]を求めるまた報告書には相対粘度絶対粘度運動粘度C
)ln( wηη
Cw
w-η
ηη vsポリビニルアルコール濃度の関係をそれぞれグラフにして提出する
[計算方法] エチルアルコール水溶液の粘度測定と同様の手法を用いて粘度の計算を行うなおポリビニルアルコール水溶液の密度はピクノメーターを用いて測定すること 表 4-3 ポリビニルアルコール水溶液の濃度密度相対粘度の関係 ポリビニルアルコール
濃度 [g100cc] 密度 d[gcm3] 相対粘度
η ηw[-] 05times(15) 05times(13) 05times(12) 05times(23)
05
42
[分子量の計算方法] 実験を行った結果以下のような粘度データを得られるとする実験データより極限粘度
を求めポリビニルアルコール(PVA)の分子量Mを決定せよ
PVA 水溶液濃度
C[g100cc]
相対粘度
ηηw[-]
絶対粘度
η[gcms]Cw
w-η
ηη
C)ln( wηη
05times(15) 1031 0008255 031 0305
05times(13) 039 0378
05times(12) 03 0289
05times(23) 0375 0353
05 0364 0334
ηw=8007times10-3 gcms 線状高分子の極限粘度[η]と分子量Mの関係は次式で与えられる [η]=KMα (46) ただしポリビニルアルコールの場合K=666times10-4α=064であるなお極限粘度[η]は次式で定義される
CC w
w
0
-][ limη
ηηη
rarr
= (47)
または
CC
)ln(][ w
0lim
ηηη
rarr
= (48)
よって濃度 CとCw
w-η
ηηまたは濃度 Cと
C)ln( wηη の関係をグラフ化し最小二乗法によ
り切片の値を求めると極限粘度[η]が決定される
Cw
w-η
ηηと C の関係より最小二乗法を用いて切片の値を決定すると(図 43 参照)切片=
03242傾き=00874となるよって極限粘度は以下のようになる[η]=03242同様
にC
)ln( wηη とcの関係より最小二乗法を用いて切片の値を決定する
(図 44参照)と切片=03249傾き=00256となり極限粘度は以下のようになる[η]=03249
Cw
w-η
ηηと Cの関係より決定した[η]=03242を用いてポリビニルアルコール(PVA)の
分子量 Mを計算する(46)式より以下のように PVAの分子量 Mを計算することができるM=([η]K)1α
=(03242(666times10-4))(1064)
=15811
43
y = 00874x + 03242
0
02
04
06
08
1
0 01 02 03 04 05 06 07
c[g100cc]
(η-ηw)(ηwc)
cw
w
η
ηηminus
極限粘度[η]
図 43 298Kにおける PVA濃度 CとCw
w-η
ηηの関係
y = 00256x + 03249
0
02
04
06
08
1
0 01 02 03 04 05 06 07
c[g100cc]
(ln(ηη
w))c
c)ln( wηη
極限粘度[η]
図 44 298Kにおける PVA濃度 CとC
)ln( wηη の関係
44
5 植物からの DNAの抽出 51 はじめに 分子レベルでの遺伝子の構造解明や遺伝子の発現に関する研究は近年急速に発展している
これら生命現象のしくみを分子レベルで解明しようという分子生物学の分野ではさまざま
な遺伝子の解析や応用方法が開発され我々の生活に身近なものになりつつある 本実験では初歩的な分子生物学に関する実験として植物(タマネギ)からの DNA の
抽出を行い抽出した遺伝子の電気泳動法による分離実験を試みる 52 試薬および器具 試薬 タマネギ(細胞中から遺伝子の抽出を行う) 台所用洗剤(洗剤中に含まれる界面活性剤には植物の細胞膜およびタンパク質を破壊す
る働きがある) 塩化ナトリウム(DNAは塩化ナトリウム水溶液に溶解し易い性質がある) エタノール(予め冷やしておくDNAはエタノールにほとんど溶解しない) 制限酵素(DNAを一定の部位で切断する働きを働きがある) TE緩衝液(pH緩衝剤が入った溶液) 器具 ビーカーミキサーフィルターメスシリンダー駒込ピペットガラス棒 マイクロピペット電気泳動装置ポラロイドカメラ 53 実験方法 1)タマネギは 1回の実験で半個のうち内側の半分程度を使用するタマネギ水 30ml台所用洗剤数滴をミキサー用ガラス容器に入れ40~60秒程度(固体状のタマネギがなくなる頃が目安)ミキサーにて混合する
2) 1)で作成した混合溶液をビーカーに移し約5g程度の塩化ナトリウムを加えガラス棒で静かに攪拌する粘性の大きな溶液が得られる
3) 2)で作成した溶液をフィルターを用いて濾過し濾液を回収する 4) 濾液の約2倍程度の量の冷エタノールをビーカーの壁伝いに静かに注ぐ 5) ビーカーを揺するとエタノール層に白くふわふわしたものが浮いてくるこれが DNAであるガラス棒で DNAを巻き取りシャーレ上にて DNAを回収する顕微鏡を用いて回収した DNAの状態を観察する
6)マイクロチューブ(容量 15ml)中に用意した 70エタノールを 8 分目程度まで注ぐ5)にて回収された DNAをマイクロピペットを用いて70エタノールの入ったマイクロチューブ中に移す軽く混ぜることによりDNA から不要な物質を洗い流す遠心分離してDNA をマイクロチューブの底に沈めた後溶液を捨てて DNA を乾かす乾いたらTE緩衝溶液を 1ml加えて放置するDNAの溶液が得られる
54 電気泳動装置による DNAの観察
本実験は職員と一緒に行うこと 実験を行う人はビニール手袋をすること 1) 抽出した DNAを電気泳動装置で観察するマイクロピペットを用いて以下のように調製した DNAの混合溶液を調製する(いずれの溶液も調製済)
45
2) マイクロピペットを用いてアガロースゲルの試料を流し込む穴(ウェル)に1)にて調製した溶液 Aおよび Bを注ぎ込む注入量は20μℓとする電気泳動装置のスイッチを入れて100Vの電流を流しアガロースゲル内にて DNAを電気泳動させる
3) 試料に予め加えられておいた青色の色素が 7 分目程度まで進んだら電気泳動を中止する(約 30分程度)
4) (ここでの作業は職員が行う) アガロースゲルを取り出し染色液に浸す染色後ゲルを取り出しポラロイドカメラで
DNAの泳動状態を撮影する
+ -
アガロースゲル
試料を流し込む穴(ウェル)
図 51 電気泳動装置
6 5 4 3 2 1
図 52 DNAの電気泳動写真の一例
55 電気泳動装置の原理 電気泳動装置の原理図を以下に示すアガロースゲル(寒天から不純物を除いたもの)中
に DNAをセットし電流を流すとDNAは電流の向きとは逆にマイナスからプラス方向
調製済 溶液 A(制限酵素なし) 水 11μℓ 10timesH Buffer 2microℓ 植物 DNA 5μℓ
調製済 溶液 B(制限酵素 Eco RI入り) 水 11μℓ 10timesH Buffer 2microℓ 植物 DNA 5μℓ 制限酵素 2μℓ
1 DNA(タマネギ)+制限酵素 2 DNA(タマネギ)+制限酵素 3 DNA(タマネギ) 4 λ-DNA(大腸菌)+制限酵素 5 λ-DNA(大腸菌) 6 サイズマーカー
500bp
46
に動く(このことを電気泳動という)これはDNA のリン酸部分が負に帯電しているためでありまたDNAはその長さにより泳動距離が異なる(短い遺伝子ほど長く泳動する)電気泳動ではこの性質を利用してDNAを大きさごとに分離することができる
塩基対数によってDNAを分離
EtBr (蛍光試薬)DNAの二本鎖内に入り込む
発光
UVλ=302nm
励起
分離後のアガロースゲルをエチジウムブロマイド(EtBr)溶液に浸す
DNAを含んだ溶液
アガロースゲル
リン酸部分が負に帯電
塩基 (ATGC)-
+
カメラで撮影
電圧
DNA構成成分(dNTPs)
バンドが明る
DNA量が
バンド(DNAの存在)
図 53 電気泳動の原理
56 制限酵素とは DNA は4 種類のヌクレオチド(GATC)が不規則につながってできている制限酵素はDNAの特定のヌクレオチドが並んでいる部分を切断する制限酵素には様々な種類がありEco RI(エコアールワン)と呼ばれる酵素は「GAATTC」といった並びの部分だけを切断することができる
GAATTC
CTTAAG
制限酵素
Eco RI
AAGCTT
TTCGAA
制限酵素
Hin dIII
図 54 制限酵素による DNAの切断
レポートについて 1 実験方法および実験結果の整理方法については指針書を参考にすること 2 実験結果については電気泳動の結果について考察すること(制限酵素の影響などにつ
いてまとめてください)
47
6 染色実験
61 はじめに
現在私達の身の周りでは様々な染料が使われている例えばT シャツやジーンズな
どの衣服は橙黄赤青など様々な色に染められている他にも私達が気付かないと
ころで多くの染色された製品を使用しているそこで本実験では高校の化学で学んだ
アゾ染料を合成してみるアゾ染料はアニリンを原料として作られているアニリンはベ
ンゼン環にアミノ基(-NH2)がついたものであるアニリンは無色の液体で水に溶けにく
くアンモニアより弱い塩基性を示すまたさらし粉(CaClO(ClO)H2O)水溶液を加えると
赤紫色を呈するこの呈色反応はアニリン特有のものであるので検出反応に用いられる
このアニリンを出発物質としてアゾ染料を合成してみる
62 試薬および使用器具
【試薬】 ①05moll 水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液
②2-ナフトール ③フェノール ④6moll 塩酸
⑤亜硝酸ナトリウム ⑥アニリン ⑦氷
【器具類】 ①電子天秤 ②50mℓビーカー ③100mℓビーカー
④ガラス棒 ⑤布(ガーゼなど) ⑥ピンセット
⑦ポリ手袋 ⑧ドライヤー ⑨シャーレ
10駒込ピペット(10ml ガラス製)
11駒込ピペット(1ml プラスチック製)
63 実験方法
1) 50mℓビーカーの中に 05molℓ水酸化ナトリウム水溶液 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回
NaOH 水溶液を分取するほぼ 20 mℓ分取できれば可)と 2-ナフトールを約 01g 入れ
よくかき混ぜる調製した溶液の中に布をつけその布はガラス棒でしぼってから(布
をガラス棒ですくいあげればよい)シャーレに広げる温度の異なる条件下(常温およ
び低温)で染料の合成実験を行うため布は最低 2枚調製した溶液と接触させそれ
ぞれ別々のシャーレ(低温用および常温用)に広げる
2) 新しいビーカーに水を約 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回分取)と 6molℓ塩酸約 4mℓ(10m
ℓ駒込ピペットで目分量で可)さらにアニリン約 1mℓ(プラスチック製 1 mℓ駒込ピペッ
ト)を入れてよくかき混ぜる染料の合成を常温および低温下で行うためこの溶液を
2つ調整する
低温下で反応させる溶液は恒温槽で 10~15 分ほどよく冷やした後亜硝酸ナトリウ
ム 05g を加えてよくかき混ぜる
常温下で反応させる溶液には冷却作業を行わずに亜硝酸ナトリウム 05g を加えて
よくかき混ぜる
3) 2)でつくった水溶液をシャーレに広げた布に注ぎ生成される染料を布によく染み
込ませ5分程放置する
4) 色の付いた布を取り出してポリ手袋をした手できれいに水洗いをし乾燥させる
48
5) 色差計を用いて乾燥した布の Lab(L明度aおよび b色度)を測定する
2)で作った溶液は5以下では無色の溶液ですが5以上になると淡い黄色になりま
す
【解説】
アゾ染料はアゾ基(-N=N-)を持っていてこのアゾ基によって鮮やかな橙色を呈色し
ます今回合成したアゾ染料は図の 1-フェニルアゾ-2-ナフトールです意外かもしれ
ませんが指示薬として使われているフェノールフタレインもアゾ化合物ですフェノール
フタレインは pH の変化によって色が出てきす染料の中でも最初は無色のものもありますが
温度を変化させたり酸性やアルカリ性にすると色が出てきます
ベンゼン ニトロベンゼン
N2Cl
ニトロ化 濃硫酸(濃硝酸)
還元反応 濃塩酸
(Sn又は Fe)
アニリン塩酸塩
遊離反応 NaOH
アニリン塩酸塩に強塩基を反応させる
と弱塩基であるアニリンが遊離する
氷冷+亜硝酸ナトリウム アニリン
塩酸
ジアゾ化
塩化ベンゼンジアゾニウム
塩化ベンゼンジアゾニウム
は熱によって窒素とフェノー
ルに分解される
カップリング
C10H7ONa (ナトリウム 2-ナフトキシド)
O
N =
1-フェニルアゾ 2-ナフトール
NH3Cl NH2
49
7 ガスクロマトグラフ質量分析計による茶葉中のカフェインの分析 71 はじめに ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)は極めて低い濃度の化学物質の同定や未知物質の構造決定に極めて強力な分析機器の一つであるGCMSを用いるとサンプルの中に含まれているある成分の分子構造(カフェインの分子構造を図 71に示す)やその量が分かりますもちろん分析機器ですので測定できる物質対象となる系や測定条件にはある
程度の制約があります混合物質を分離するガスクロマトグラフ(Gas ChromatographGC)と分離された成分(物質)を分析(構造決定と濃度測定)する質量分析計(Mass SpectrometerMS)を組み合わせた装置であるこの装置は有機化学生化学環境化学などの多くの分野で非常に多用されている例えば極めて低い濃度でも生体へ強い影響が懸念されるダイ
オキシン類などの土壌や河川の水中での含有率の決定や食品や医薬品中の微量成分の決定
にも利用されている 一方日本人に長い間親しまれてきた緑茶が近年産業界や医学
界で注目されている茶葉にはカフェイン(分子構造図 71)カテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドなどの有用成分が多く含まれておりその効能が注目されている 本実験では茶葉中に含まれるカフェインに対してGCMSを用いて分析する茶葉中には種々の物質が含まれておりGCMS分析を容易にするため前処理として超臨界二酸化炭素抽出(4015MPa程度の高圧力の二酸化炭素を溶剤として利用)により茶葉からカフェインの抽出を行いそのサンプルを GCMSにて分析する
図 71 カフェインの分子構造 図 72 物質の分析 個々の物質や装置についてはインターネットにより下記のWebサイトのフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』などにより調べるとよいカフェイン(caffeine)はアルカロイドの一種プリン環を持つプリンアルカロイドの一種でコーヒー類に含まれることか
らこの名がある化学名は137-トリメチルキサンチン(C8H10N4O2) コーヒーコーラ緑茶紅茶ガラナココアなどに含まれる(量は緑茶が一番多い)結晶は一水和物(C8H10N4O2bullH2O)もしくは無水物(無水カフェインC8H10N4O2)として得られ
る白色の針状または六角柱状結晶で匂いはなく味は苦い融点は 238昇華性がある出典フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』httpwwwwikipediaorg 装置「GCMS」httpwwwanshimadzucojpproductsgcmsqp2010htm (島津) 「超臨界抽出装置」httpwwwkagakucomjasco39-49html (日本分光)
50
レポート課題 1茶葉中に含まれるカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドの中から3つの物質を選びその物質について調べた結果を A4 レポート用紙2枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
2GCMS についてA4 レポート用紙1枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
3与えられたサンプルは茶葉1gから抽出されたのである実験結果よりもとの茶葉
1g中に含まれるカフェインの量を推算し計算式とあわせて示すこと 72 原理および装置 実験で使用する島津製の GCMS装置の全体図を図 73に原理の概略を図 74に示す
1
23
4
5
67 8
9
10
キャリアーガス
試料物質
1ボンベ(He)2圧力計3マイクロシリンジ4サンプラー5試料導入部6分離カラム
7セパレーター8イオン化室9磁石10電子増倍管11記録計
11
図 74 ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)の概略図
サンプルフォルダー
51
GCMS 装置は分離部である図中の 1~6 のガスクロマトグラフ(GC)と7~11 の検出部である質量分析計(MS)から構成される 3のマイクロシリンジを用いて試料を GCMSに導入する導入された試料は5試料導入部でガス化され6分離カラムに導入される分離カラムには吸着剤が充填されおり混合物の試料を導入した場合各物質と吸着剤との
親和性の違いにより各物質の分離カラムから排出されるタイミングは異なる分離カラム
を排出された試料は8イオン化室でイオン化され10電子倍増管にて検出される アセトンに溶解したカフェインの GCMSによる分析結果の一例を以下に示す図 75にク
ロマトグラム図 76にカフェインのピークのマススペクトルを示す
図 75 GCMSにより得られたクロマトグラム
横軸がリテンションタイムで縦軸がピーク強度を表す
図 76 カフェインのマススペクトルとカフェイン(分子量MW=194)の構造
(図 75中のリテンションタイム 126min付近のピークに起因するマススペクトル) 茶葉中にはカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイド以外にも繊維であるセルロースなど多くの物質が含まれているため茶葉そのものを
そのままサンプルとしてGCMSで分析することは困難であるセルロースなどの分子量の大きな物質はカラムに詰まってしまい分析できないそこで今回は超臨界二酸化炭素
による抽出により主にカフェインを他の物質と分離抽出した通常よく利用されるアセ
トン抽出(アセトンに茶葉を浸し特定の成分を抽出する)ではカフェイン以外にも多く
の物質が抽出されるため図 75 のような単独のピークを得ることは難しく複数のピークがクロマトグラムに見られるこのサンプル(この場合茶葉からの抽出物)にはカフェ
イン以外の不純物は少なかったがガスクロマトグラフの分離カラムによりさらにそれ
らの混合物が精度よく分離されるクロマトグラムのピークはそれらサンプル中に含まれ
ていた個々の物質を表しているクロマトグラムのピークを選択することで分子構造解析
したい物質を選んだことになる選択したクロマトグラムのピークの表している物質(ここ
ではカフェイン)に対応するマススペクトルが図 76 に表示されているマススペクトル
52
で横軸がその成分(ここではカフェイン)分子を構成している原子の原子量で縦軸がそ
の量を表しているのでマススペクトルから分子構造を解析するためにコンピュータ内
に蓄えられた物質ごとのマススペクトルデータと今回測定したマススペクトル(分子内に含
まれている各原子の数)を比較することで測定したサンプル中のクロマトピークを選択し
た分子がどのような原子をどれだけ含んだ分子であったかがわかりそれからその物質
がどのような分子構造の物質である可能性が高いかをコンピュータが検索し結果を示す 73 実験サンプルの設置と GCMS装置の操作方法 実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS装置のサンプルフォルダ
ー(図 73)にセットするこのサンプルは茶葉 1gを 50ccの高圧セルにて超臨界二酸化炭素を利用して4015MPa2時間接触の条件で抽出した固体を10gのアセトンに溶かしたものである またコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に装置および装置制
御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 本実験で使用する GCMS の操作は全てコンピュータのモニター上で GCMS の解析プログラムソフトを使用することで行うコンピュータの操作方法を以下に示す なおコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS 装置のサンプルフォルダー(図 73)にセットするまた装置および装置制御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 1)パソコンのデスクトップ上のアイコン「GCMS 分析」をクリックすると以下のようにGCMS制御プログラムを起動するその後「OK」ボタンをクリックする
図 77 GCMD分析用ソフトウェア「GCMS分析」の起動
まず「GC-MS分析」をクリック
「OK」ボタンをクリック
53
2)制御プログラムが起動されパソコンと GCMSの接続が開始される
図 78 「GCMS分析」の接続確認画面 3)GCMSとパソコンの接続が完了すると以下のような画面が表示される
図 79 「GCMS分析」操作画面
4)マススペクトルによる分子構造の解析 サンプル(この場合茶葉からの抽出物)には多くの物質が混じり合っていたがガス
クロマトグラフの分離カラムによりそれらの混合物が精度よく分離されるクロマトグラ
ムのピークはそれらサンプル中に含まれていた個々の物質を表しているクロマトグラム
のピークを選択することで分子構造解析したい物質を選んだことになる選択したクロマ
トグラムのピークの表している物質(ここではカフェイン)に対応するマススペクトルを選
択するマススペクトルは横軸が原子量で縦軸がその量を表しているのでマススペク
トルから分子構造を解析するために「定性処理」を行う シミラリティ検索結果が表示され分析により得られたスペクトルと類似のスペクトルを有
する物質の一覧が表示される上部に表示される物質ほどスペクトルが一致していること
を示す
接続状況が表示される
「トップへ」
をクリック
54
図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果
図 711 表示スペクトルのシミラリティ検索結果 10)図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果の印刷 「レポート(R)」をクリックし「検索結果(R)」をクリックすると検索結果が印刷される
GC-MS 分析で得られたマスス
ペクトル
データベース中
のマススペクト
ル
55
参考資料 生理活性物質の精製 カフェインの利尿作用のように生物活動に影響を与える物質を生理活性物質といいます
天然物には生理活性物質を多く含むものがあります一般に天然物は多くの成分を含ん
でおり特定の生理活性物質を分離抽出するには種々の分離技術が必要ですまた生
理活性物質には60以上の温度でその生理活性を失う(失活)ものや溶剤として広く用いられているクロロホルムなどの有機溶剤中で失活するものが多いそこでこれら生理活性
物質の分離精製技術の開発が望まれており30~60程度のマイルドな温度条件で操作できる二酸化炭素を機能性溶媒として利用する超臨界抽出も有効な分離技術として注目されて
いる超臨界二酸化炭素は気体と液体の中間の性質を持ち物質の分離に役立っています 臨界点付近の高密度気体は超臨界ガスまたは超臨界流体と呼ばれ臨界圧力前後でそ
の溶解能力が著しく変化することから工業的にも種々の分野で利用されています一例と
して超臨界二酸化炭素(SC-CO2)によるコーヒー豆からのカフェインの抽出プロセス(a)
ならびに超臨界二酸化炭素に対するカフェインの溶解度(b)を図に示します図(c)に示す
ように固体のカフェインがガスである超臨界二酸化炭素に溶解します
このように超臨界二酸化炭素を用いた技術はコーヒー豆からのカフェインの抽出プロ
ポリスからの生理活性物質の抽出に利用されています
図 超臨界二酸化炭素抽出を用いたコーヒー豆からのカフェインの抽出
56
付表 最小二乗法について 直線で近似する場合 f (x) = a0 + a1x (A1-1) 式(A1-1)のように近似させるとする測定値 yiとの残差を eiとすると式(A1-2)のようになる ei = yi - f (xi) = yi - ( a0 + a1xi ) (A1-2) ここで式(A1-2)の両辺を二乗してその i に関する総和をとりその値を S とすると次式となる
sumsum==
+minus==n
iii
n
ii xaayeS
1
210
1
2 )( (A1-3)
S を最小化するような a0a1を求める式(A1-3)を a0a1について偏微分すると次式とな
る
sum=
+minuspartpart
=partpart n
iii xaay
aaS
1
210
00)( sum
=
+minusminus=n
iii xaay
110 )(2 (A1-4)
同様にa1について編微分すると次式のようになる
sum=
+minusminus=partpart n
iiii xxaay
aS
110
1])([2 (A1-5)
Sが最小となる時は次式が同時に満たされる時である
00=
partpartaS
01=
partpartaS
(A1-6)
よって誤差が最小となる a0a1を求めるためには式(A1-6)を連立して解けばよい
sumsumsum===
+=n
ii
n
i
n
ii xaay
111
10 1 (A1-7)
sumsumsum===
+=n
ii
n
ii
n
iii xaxaxy
1
2
11
10 (A1-8)
式(A1-7)と式(A1-8)を a0a1を変数とみなし連立して解くと次式を得る
n組のデータ(xiyi)(i=12hellipn)に対して回帰直線 y= a0 + a1x を最小二乗法で求めて出力しデータ番号 iデータ yi直線で推定した値 )( ii bxay += および残差
iii yy minus=ε を出力するようなプログラムをつくりたい基礎式を導出せよ (ヒント残差の二乗の和が最小になるように係数 a0a1)を定めるのが最小二乗法
である)
57
sumsum
sumsumsumsum
==
====
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
n
ii
n
ii
xxn
xxyyxa
1
2
1
2
1111
2
0
)(
))(())(( (A1-9)
sumsum
sumsumsum
==
===
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
xxn
yxxyna
1
2
1
2
1111
)(
))(()( (A1-10)
よって式(A1-9)(A1-10)を用いれば最も誤差を小さくするような直線 y = a0 + a1x が求められる
y=a1x+a0 にて近似
誤差 ei
x
y
誤差が最小になる関数(直線 y=a1x+a0の場合)
図1 最小二乗による近似
誤差の和Sが最小
S
a0
a1
直線 y=a1x+a0 の近似
誤差の全体の和はS=Σei=Σyi-(a1xi+a0)
Sは変曲点にて最小値を示すすなわち(partSparta0)=0 (partSparta1)=0
図2 a0a1とSの関係
34
Freundlich式のパラメータ決定法 酢酸水溶液中における酢酸の活性炭に対する吸着実験を行ったところ以下のような実験デー
タを得たただしCbはバルク相における酢酸濃度n は活性炭に対する酢酸の吸着量を示す
Cb[molL] n[molg] log10Cb log10n 04621 000205 02410 000175 01139 000139 00519 000105 00243 000081
実験データを利用して次式で与えられる Freundlichの等温吸着式の定数 abの値を求めたい
bbaCn1
= (1)
このままでは定数 abの値を決定することが難しいので上式の両辺の対数をとる
bbb
bb
Cb
aCa
aCn
ln1lnlnln
)ln(ln1
1
+=+=
=
(2)
ここで横軸に ln Cb縦軸に ln nの関係をグラフにプロットするすなわち x=ln Cby=ln nと考える
bCb
an ln1lnln += (3)
ここで直線式 y=a0+a1xと比較するすなわち
)(1)(ln
1
00
傾き
切片
ba
eaaa a
=
=rarr= (4)
a0および a1は最小二乗法により数値で求められる与えられたデータでは a1= a0= なので a= b= となる この値を n=acb
1bに代入してcb=0~05の範囲で nの値を計算する
35
BET式のパラメータ決定法 BET式は次式で与えられる
)1)(1( KCCCKCnn
+minusminus=
infin
(17)
以下のように BET式の変形を行う
)1()1(
KCCKCnCn+minus
=minusinfin
(18)
(18)式の逆数をとると
KCnCK
KCnKCC
Cn infininfin
minus+=
+minus=
minus)1(1)1(
)1(1
(19)
(19)式の両辺に Cをかえると
KCnCKC
CnC
infin
minus+=
minus))1(1(
)1( (20)
(20)式を変形すると次式が得られる
CKn
KKnCn
Cinfininfin
minus+=
minus11
)1( (21)
C と)-(1 Cn
Cのプロットは傾き
KnKinfin
minus1切片
Kninfin
1の直線関係を与えることを示している
これをグラフにプロットし最小二乗法に傾きおよび切片を求める
36
312 活性炭の比表面積の決定 酢酸分子の構造を以下に示す
Hc-Cb-Ca
Hd
Hb Oa
Ob-Ha
1219deg
Ca Oa
Ob
図 36 酢酸の構造
酢酸の 1分子の吸着面積srsquo [m2]を図 3-6に示すこのとき文献より
Caと Oaの結合距離 1321Å Caと Obの結合距離 1206Å OaCaObの角度 1219deg Cの原子半径 077Å Oの原子半径 062Å
したがって吸着面積 Slsquoは次のようになる
( ) ( ) 2088 10376109931036321 minusminusminus times=timestimestimestimes=s m2
ここで活性炭の比表面積 S[m2g]は次式で示される 10026 23 snS timestimestimes= infin
S活性炭の比表面積 [m2g] ninfin飽和吸着量 [molg] srsquo酢酸 1分子の吸着面積 [m2] 602times1023アボガドロ数 [個mol] したがって活性炭の比表面積 S[m2g]は
003350=infinn molg 2010376 minustimes=s m2 より
51281037610026003350 2023 =timestimestimestimes= minusS m2g
37
4 粘度密度測定 41 はじめに 大量生産を目的とした工業的化学プロセスはほとんど流れ系(流通系)であるそれらの系において操作対象となる各物質の粘度は装置を設計操作する場合きわめて重要
な物性値である 本実験では低分子溶液および高分子溶液の粘度測定を通じて液体の粘度について考察するさらに演習問題を通じて気体液体高分子溶液などの化学プロセスで対象となる物
質の輸送物性(粘度拡散係数)の重要性を認識されたい 42 低分子溶液の粘度 [目的] 種々の濃度のエタノール水溶液の粘度を測定しその溶液の粘度について考察する [概要] 25におけるエチルアルコール濃度 02040506080100 wt の水溶液について流下時間を測定しこの結果より相対粘度絶対粘度運動粘度を求めグラフにするま
た水の密度水-エチルアルコール溶液の密度についてはピクノメーターを用いて決
定する報告書には相対粘度絶対粘度運動粘度 vsエチルアルコール濃度の関係をそれぞれグラフにして提出する
[計算方法] 相対粘度絶対粘度運動粘度の定義は次のようになる
相対粘度 ww
w tdtd
ηη = (41)
η 混合溶液の粘度 [gcms] ηw水の粘度(8007times10-3 gcms) [gcms](25における粘度) d エチルアルコール水溶液の密度 [gcm3] dw水の密度(099704gcm3) [gcm3](25における密度) t エチルアルコール水溶液の流下時間 [s] tw水の流下時間 [s] 下付添字 W 水
絶対粘度 www td
tdη
η= (42)
運動粘度 ν=ηd [cm2s] (43)
38
[実験方法] 1) 粘度計を洗浄し粘度計内 に二連球で空気を送り込み
乾燥させる乾燥しにくい 場合はアセトンを滴下し た後再度二連球で空気 を送り込み乾燥させる 2)ピペットで一定体積(10mℓ) の純水を取り広い口 f から 粘度計に水を入れる 3)粘度計を恒温槽(25)に つけ約 10 分静置する 4)安全ピペッターを口 a に 取り付け液面が b 上部に 到達するまで吸い上げる 5)安全ピペッターを外すと 液面が降下しだす液面が bd 間を通過する時間をスト ップウォッチで測定する
6)純水での測定を 3 回繰り返す 7)純水を粘度計から取り除くその後粘度計内に二連球を用いて空気を送り込み乾燥させる 8)粘度計乾燥後複数の濃度に調整済みのエチルアルコール水溶液(10mℓ)を粘度計にいれ4)~6)の作業を繰り返し行う(3 回)なお濃度の異なるエチルアルコール水溶液を粘度計内に導入する場合には7)と同様に二連球を用いて粘度計内に空気を送り込み乾燥させる
表 4-1 エチルアルコール水溶液の濃度密度相対粘度の関係 エチルアルコール濃度
[wt] 密度 d[gcm3] 相対粘度
η ηw[-] 0
20 40 50 60 80
100
安全ピペッター接続
図 4-1 粘度計
液面の bd間の通過時
間を測定
f
39
43 密度測定 [目的] 本実験では水とエタノールの種々の組成の混合液体について密度を測定し分子間相互
作用について考察する [実験方法] 1)ピクノメーターの容積測定
図 4-2のピクノメーターの空の重量 wg を秤量する
ピクノメーターの蓋を取り外し
ピクノメーターを水で満たす
設定温度を 25として恒温槽 の電源を入れ恒温槽内の温 度が一定になるまで待つな お水温は恒温槽中の水銀温 度計から読む
恒温槽中に水を満たしたピク
ノメーターを入れる
約 10分間静置する
ピクノメーターに蓋をするこのときピクノメーターの容量
よりも余分の水は蓋の上部より排出される
ピクノメーターの外側を乾いた布で拭い秤量する(その重量を
wwg とする)
恒温槽の温度(25)における水の密度 dwgcm3(=099704gcm3)
より次式を用いてピクノメーターの容積を求める
w
w
dww
Vminus
= (44)
図 4-2 ピクノメーター
蓋
40
表 4-2 エチルアルコール水溶液の濃度と密度の測定結果(25) エチルアルコ
ール濃度[wt]
wrsquo[g] ww[g] V[cm3] w[g]
d[gcm3]
0 20 40 50 60 80
100
099704
エチルアルコール濃度[wt] 空のピクノメーターの重量 wrsquo[g] 水を入れたときのピクノメーターの重量 ww[g] ピクノメーターの体積 V[cm3] エタノール水溶液の入れたときのピクノメータの重さ w[g] エタノール水溶液の密度 d[gcm3]
容積 Vを求めたピクノメーターに混合溶液(調整済み)を入れてその重量 wgを秤量し次式で混合溶液の密度を求める
Vwwd minus
= (45)
エタノール濃度と密度 d の関係をグラフにプロットする
41
44 高分子溶液の粘度 [目的] 高分子溶液の粘度測定から分子量の粘度に与える影響について考察する [概要 ] オストワルド粘度計を用い種々の濃度のポリビニルアルコール(PVA ((-CH2CHOH-)n))水溶液の粘度を測定し粘度データよりポリビニルアルコールの分
子量を求める まず 05g100cc の濃度のポリビニルアルコール水溶液を調製する次にこれを原液
とし23 12 13 15の濃度の溶液を調製するこれらの溶液についてオストワルド粘度計を用いてそれぞれ流下時間を測定し相対粘度絶対粘度運動粘度を求め実験デ
ータより極限粘度[η]を求めるまた報告書には相対粘度絶対粘度運動粘度C
)ln( wηη
Cw
w-η
ηη vsポリビニルアルコール濃度の関係をそれぞれグラフにして提出する
[計算方法] エチルアルコール水溶液の粘度測定と同様の手法を用いて粘度の計算を行うなおポリビニルアルコール水溶液の密度はピクノメーターを用いて測定すること 表 4-3 ポリビニルアルコール水溶液の濃度密度相対粘度の関係 ポリビニルアルコール
濃度 [g100cc] 密度 d[gcm3] 相対粘度
η ηw[-] 05times(15) 05times(13) 05times(12) 05times(23)
05
42
[分子量の計算方法] 実験を行った結果以下のような粘度データを得られるとする実験データより極限粘度
を求めポリビニルアルコール(PVA)の分子量Mを決定せよ
PVA 水溶液濃度
C[g100cc]
相対粘度
ηηw[-]
絶対粘度
η[gcms]Cw
w-η
ηη
C)ln( wηη
05times(15) 1031 0008255 031 0305
05times(13) 039 0378
05times(12) 03 0289
05times(23) 0375 0353
05 0364 0334
ηw=8007times10-3 gcms 線状高分子の極限粘度[η]と分子量Mの関係は次式で与えられる [η]=KMα (46) ただしポリビニルアルコールの場合K=666times10-4α=064であるなお極限粘度[η]は次式で定義される
CC w
w
0
-][ limη
ηηη
rarr
= (47)
または
CC
)ln(][ w
0lim
ηηη
rarr
= (48)
よって濃度 CとCw
w-η
ηηまたは濃度 Cと
C)ln( wηη の関係をグラフ化し最小二乗法によ
り切片の値を求めると極限粘度[η]が決定される
Cw
w-η
ηηと C の関係より最小二乗法を用いて切片の値を決定すると(図 43 参照)切片=
03242傾き=00874となるよって極限粘度は以下のようになる[η]=03242同様
にC
)ln( wηη とcの関係より最小二乗法を用いて切片の値を決定する
(図 44参照)と切片=03249傾き=00256となり極限粘度は以下のようになる[η]=03249
Cw
w-η
ηηと Cの関係より決定した[η]=03242を用いてポリビニルアルコール(PVA)の
分子量 Mを計算する(46)式より以下のように PVAの分子量 Mを計算することができるM=([η]K)1α
=(03242(666times10-4))(1064)
=15811
43
y = 00874x + 03242
0
02
04
06
08
1
0 01 02 03 04 05 06 07
c[g100cc]
(η-ηw)(ηwc)
cw
w
η
ηηminus
極限粘度[η]
図 43 298Kにおける PVA濃度 CとCw
w-η
ηηの関係
y = 00256x + 03249
0
02
04
06
08
1
0 01 02 03 04 05 06 07
c[g100cc]
(ln(ηη
w))c
c)ln( wηη
極限粘度[η]
図 44 298Kにおける PVA濃度 CとC
)ln( wηη の関係
44
5 植物からの DNAの抽出 51 はじめに 分子レベルでの遺伝子の構造解明や遺伝子の発現に関する研究は近年急速に発展している
これら生命現象のしくみを分子レベルで解明しようという分子生物学の分野ではさまざま
な遺伝子の解析や応用方法が開発され我々の生活に身近なものになりつつある 本実験では初歩的な分子生物学に関する実験として植物(タマネギ)からの DNA の
抽出を行い抽出した遺伝子の電気泳動法による分離実験を試みる 52 試薬および器具 試薬 タマネギ(細胞中から遺伝子の抽出を行う) 台所用洗剤(洗剤中に含まれる界面活性剤には植物の細胞膜およびタンパク質を破壊す
る働きがある) 塩化ナトリウム(DNAは塩化ナトリウム水溶液に溶解し易い性質がある) エタノール(予め冷やしておくDNAはエタノールにほとんど溶解しない) 制限酵素(DNAを一定の部位で切断する働きを働きがある) TE緩衝液(pH緩衝剤が入った溶液) 器具 ビーカーミキサーフィルターメスシリンダー駒込ピペットガラス棒 マイクロピペット電気泳動装置ポラロイドカメラ 53 実験方法 1)タマネギは 1回の実験で半個のうち内側の半分程度を使用するタマネギ水 30ml台所用洗剤数滴をミキサー用ガラス容器に入れ40~60秒程度(固体状のタマネギがなくなる頃が目安)ミキサーにて混合する
2) 1)で作成した混合溶液をビーカーに移し約5g程度の塩化ナトリウムを加えガラス棒で静かに攪拌する粘性の大きな溶液が得られる
3) 2)で作成した溶液をフィルターを用いて濾過し濾液を回収する 4) 濾液の約2倍程度の量の冷エタノールをビーカーの壁伝いに静かに注ぐ 5) ビーカーを揺するとエタノール層に白くふわふわしたものが浮いてくるこれが DNAであるガラス棒で DNAを巻き取りシャーレ上にて DNAを回収する顕微鏡を用いて回収した DNAの状態を観察する
6)マイクロチューブ(容量 15ml)中に用意した 70エタノールを 8 分目程度まで注ぐ5)にて回収された DNAをマイクロピペットを用いて70エタノールの入ったマイクロチューブ中に移す軽く混ぜることによりDNA から不要な物質を洗い流す遠心分離してDNA をマイクロチューブの底に沈めた後溶液を捨てて DNA を乾かす乾いたらTE緩衝溶液を 1ml加えて放置するDNAの溶液が得られる
54 電気泳動装置による DNAの観察
本実験は職員と一緒に行うこと 実験を行う人はビニール手袋をすること 1) 抽出した DNAを電気泳動装置で観察するマイクロピペットを用いて以下のように調製した DNAの混合溶液を調製する(いずれの溶液も調製済)
45
2) マイクロピペットを用いてアガロースゲルの試料を流し込む穴(ウェル)に1)にて調製した溶液 Aおよび Bを注ぎ込む注入量は20μℓとする電気泳動装置のスイッチを入れて100Vの電流を流しアガロースゲル内にて DNAを電気泳動させる
3) 試料に予め加えられておいた青色の色素が 7 分目程度まで進んだら電気泳動を中止する(約 30分程度)
4) (ここでの作業は職員が行う) アガロースゲルを取り出し染色液に浸す染色後ゲルを取り出しポラロイドカメラで
DNAの泳動状態を撮影する
+ -
アガロースゲル
試料を流し込む穴(ウェル)
図 51 電気泳動装置
6 5 4 3 2 1
図 52 DNAの電気泳動写真の一例
55 電気泳動装置の原理 電気泳動装置の原理図を以下に示すアガロースゲル(寒天から不純物を除いたもの)中
に DNAをセットし電流を流すとDNAは電流の向きとは逆にマイナスからプラス方向
調製済 溶液 A(制限酵素なし) 水 11μℓ 10timesH Buffer 2microℓ 植物 DNA 5μℓ
調製済 溶液 B(制限酵素 Eco RI入り) 水 11μℓ 10timesH Buffer 2microℓ 植物 DNA 5μℓ 制限酵素 2μℓ
1 DNA(タマネギ)+制限酵素 2 DNA(タマネギ)+制限酵素 3 DNA(タマネギ) 4 λ-DNA(大腸菌)+制限酵素 5 λ-DNA(大腸菌) 6 サイズマーカー
500bp
46
に動く(このことを電気泳動という)これはDNA のリン酸部分が負に帯電しているためでありまたDNAはその長さにより泳動距離が異なる(短い遺伝子ほど長く泳動する)電気泳動ではこの性質を利用してDNAを大きさごとに分離することができる
塩基対数によってDNAを分離
EtBr (蛍光試薬)DNAの二本鎖内に入り込む
発光
UVλ=302nm
励起
分離後のアガロースゲルをエチジウムブロマイド(EtBr)溶液に浸す
DNAを含んだ溶液
アガロースゲル
リン酸部分が負に帯電
塩基 (ATGC)-
+
カメラで撮影
電圧
DNA構成成分(dNTPs)
バンドが明る
DNA量が
バンド(DNAの存在)
図 53 電気泳動の原理
56 制限酵素とは DNA は4 種類のヌクレオチド(GATC)が不規則につながってできている制限酵素はDNAの特定のヌクレオチドが並んでいる部分を切断する制限酵素には様々な種類がありEco RI(エコアールワン)と呼ばれる酵素は「GAATTC」といった並びの部分だけを切断することができる
GAATTC
CTTAAG
制限酵素
Eco RI
AAGCTT
TTCGAA
制限酵素
Hin dIII
図 54 制限酵素による DNAの切断
レポートについて 1 実験方法および実験結果の整理方法については指針書を参考にすること 2 実験結果については電気泳動の結果について考察すること(制限酵素の影響などにつ
いてまとめてください)
47
6 染色実験
61 はじめに
現在私達の身の周りでは様々な染料が使われている例えばT シャツやジーンズな
どの衣服は橙黄赤青など様々な色に染められている他にも私達が気付かないと
ころで多くの染色された製品を使用しているそこで本実験では高校の化学で学んだ
アゾ染料を合成してみるアゾ染料はアニリンを原料として作られているアニリンはベ
ンゼン環にアミノ基(-NH2)がついたものであるアニリンは無色の液体で水に溶けにく
くアンモニアより弱い塩基性を示すまたさらし粉(CaClO(ClO)H2O)水溶液を加えると
赤紫色を呈するこの呈色反応はアニリン特有のものであるので検出反応に用いられる
このアニリンを出発物質としてアゾ染料を合成してみる
62 試薬および使用器具
【試薬】 ①05moll 水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液
②2-ナフトール ③フェノール ④6moll 塩酸
⑤亜硝酸ナトリウム ⑥アニリン ⑦氷
【器具類】 ①電子天秤 ②50mℓビーカー ③100mℓビーカー
④ガラス棒 ⑤布(ガーゼなど) ⑥ピンセット
⑦ポリ手袋 ⑧ドライヤー ⑨シャーレ
10駒込ピペット(10ml ガラス製)
11駒込ピペット(1ml プラスチック製)
63 実験方法
1) 50mℓビーカーの中に 05molℓ水酸化ナトリウム水溶液 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回
NaOH 水溶液を分取するほぼ 20 mℓ分取できれば可)と 2-ナフトールを約 01g 入れ
よくかき混ぜる調製した溶液の中に布をつけその布はガラス棒でしぼってから(布
をガラス棒ですくいあげればよい)シャーレに広げる温度の異なる条件下(常温およ
び低温)で染料の合成実験を行うため布は最低 2枚調製した溶液と接触させそれ
ぞれ別々のシャーレ(低温用および常温用)に広げる
2) 新しいビーカーに水を約 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回分取)と 6molℓ塩酸約 4mℓ(10m
ℓ駒込ピペットで目分量で可)さらにアニリン約 1mℓ(プラスチック製 1 mℓ駒込ピペッ
ト)を入れてよくかき混ぜる染料の合成を常温および低温下で行うためこの溶液を
2つ調整する
低温下で反応させる溶液は恒温槽で 10~15 分ほどよく冷やした後亜硝酸ナトリウ
ム 05g を加えてよくかき混ぜる
常温下で反応させる溶液には冷却作業を行わずに亜硝酸ナトリウム 05g を加えて
よくかき混ぜる
3) 2)でつくった水溶液をシャーレに広げた布に注ぎ生成される染料を布によく染み
込ませ5分程放置する
4) 色の付いた布を取り出してポリ手袋をした手できれいに水洗いをし乾燥させる
48
5) 色差計を用いて乾燥した布の Lab(L明度aおよび b色度)を測定する
2)で作った溶液は5以下では無色の溶液ですが5以上になると淡い黄色になりま
す
【解説】
アゾ染料はアゾ基(-N=N-)を持っていてこのアゾ基によって鮮やかな橙色を呈色し
ます今回合成したアゾ染料は図の 1-フェニルアゾ-2-ナフトールです意外かもしれ
ませんが指示薬として使われているフェノールフタレインもアゾ化合物ですフェノール
フタレインは pH の変化によって色が出てきす染料の中でも最初は無色のものもありますが
温度を変化させたり酸性やアルカリ性にすると色が出てきます
ベンゼン ニトロベンゼン
N2Cl
ニトロ化 濃硫酸(濃硝酸)
還元反応 濃塩酸
(Sn又は Fe)
アニリン塩酸塩
遊離反応 NaOH
アニリン塩酸塩に強塩基を反応させる
と弱塩基であるアニリンが遊離する
氷冷+亜硝酸ナトリウム アニリン
塩酸
ジアゾ化
塩化ベンゼンジアゾニウム
塩化ベンゼンジアゾニウム
は熱によって窒素とフェノー
ルに分解される
カップリング
C10H7ONa (ナトリウム 2-ナフトキシド)
O
N =
1-フェニルアゾ 2-ナフトール
NH3Cl NH2
49
7 ガスクロマトグラフ質量分析計による茶葉中のカフェインの分析 71 はじめに ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)は極めて低い濃度の化学物質の同定や未知物質の構造決定に極めて強力な分析機器の一つであるGCMSを用いるとサンプルの中に含まれているある成分の分子構造(カフェインの分子構造を図 71に示す)やその量が分かりますもちろん分析機器ですので測定できる物質対象となる系や測定条件にはある
程度の制約があります混合物質を分離するガスクロマトグラフ(Gas ChromatographGC)と分離された成分(物質)を分析(構造決定と濃度測定)する質量分析計(Mass SpectrometerMS)を組み合わせた装置であるこの装置は有機化学生化学環境化学などの多くの分野で非常に多用されている例えば極めて低い濃度でも生体へ強い影響が懸念されるダイ
オキシン類などの土壌や河川の水中での含有率の決定や食品や医薬品中の微量成分の決定
にも利用されている 一方日本人に長い間親しまれてきた緑茶が近年産業界や医学
界で注目されている茶葉にはカフェイン(分子構造図 71)カテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドなどの有用成分が多く含まれておりその効能が注目されている 本実験では茶葉中に含まれるカフェインに対してGCMSを用いて分析する茶葉中には種々の物質が含まれておりGCMS分析を容易にするため前処理として超臨界二酸化炭素抽出(4015MPa程度の高圧力の二酸化炭素を溶剤として利用)により茶葉からカフェインの抽出を行いそのサンプルを GCMSにて分析する
図 71 カフェインの分子構造 図 72 物質の分析 個々の物質や装置についてはインターネットにより下記のWebサイトのフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』などにより調べるとよいカフェイン(caffeine)はアルカロイドの一種プリン環を持つプリンアルカロイドの一種でコーヒー類に含まれることか
らこの名がある化学名は137-トリメチルキサンチン(C8H10N4O2) コーヒーコーラ緑茶紅茶ガラナココアなどに含まれる(量は緑茶が一番多い)結晶は一水和物(C8H10N4O2bullH2O)もしくは無水物(無水カフェインC8H10N4O2)として得られ
る白色の針状または六角柱状結晶で匂いはなく味は苦い融点は 238昇華性がある出典フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』httpwwwwikipediaorg 装置「GCMS」httpwwwanshimadzucojpproductsgcmsqp2010htm (島津) 「超臨界抽出装置」httpwwwkagakucomjasco39-49html (日本分光)
50
レポート課題 1茶葉中に含まれるカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドの中から3つの物質を選びその物質について調べた結果を A4 レポート用紙2枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
2GCMS についてA4 レポート用紙1枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
3与えられたサンプルは茶葉1gから抽出されたのである実験結果よりもとの茶葉
1g中に含まれるカフェインの量を推算し計算式とあわせて示すこと 72 原理および装置 実験で使用する島津製の GCMS装置の全体図を図 73に原理の概略を図 74に示す
1
23
4
5
67 8
9
10
キャリアーガス
試料物質
1ボンベ(He)2圧力計3マイクロシリンジ4サンプラー5試料導入部6分離カラム
7セパレーター8イオン化室9磁石10電子増倍管11記録計
11
図 74 ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)の概略図
サンプルフォルダー
51
GCMS 装置は分離部である図中の 1~6 のガスクロマトグラフ(GC)と7~11 の検出部である質量分析計(MS)から構成される 3のマイクロシリンジを用いて試料を GCMSに導入する導入された試料は5試料導入部でガス化され6分離カラムに導入される分離カラムには吸着剤が充填されおり混合物の試料を導入した場合各物質と吸着剤との
親和性の違いにより各物質の分離カラムから排出されるタイミングは異なる分離カラム
を排出された試料は8イオン化室でイオン化され10電子倍増管にて検出される アセトンに溶解したカフェインの GCMSによる分析結果の一例を以下に示す図 75にク
ロマトグラム図 76にカフェインのピークのマススペクトルを示す
図 75 GCMSにより得られたクロマトグラム
横軸がリテンションタイムで縦軸がピーク強度を表す
図 76 カフェインのマススペクトルとカフェイン(分子量MW=194)の構造
(図 75中のリテンションタイム 126min付近のピークに起因するマススペクトル) 茶葉中にはカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイド以外にも繊維であるセルロースなど多くの物質が含まれているため茶葉そのものを
そのままサンプルとしてGCMSで分析することは困難であるセルロースなどの分子量の大きな物質はカラムに詰まってしまい分析できないそこで今回は超臨界二酸化炭素
による抽出により主にカフェインを他の物質と分離抽出した通常よく利用されるアセ
トン抽出(アセトンに茶葉を浸し特定の成分を抽出する)ではカフェイン以外にも多く
の物質が抽出されるため図 75 のような単独のピークを得ることは難しく複数のピークがクロマトグラムに見られるこのサンプル(この場合茶葉からの抽出物)にはカフェ
イン以外の不純物は少なかったがガスクロマトグラフの分離カラムによりさらにそれ
らの混合物が精度よく分離されるクロマトグラムのピークはそれらサンプル中に含まれ
ていた個々の物質を表しているクロマトグラムのピークを選択することで分子構造解析
したい物質を選んだことになる選択したクロマトグラムのピークの表している物質(ここ
ではカフェイン)に対応するマススペクトルが図 76 に表示されているマススペクトル
52
で横軸がその成分(ここではカフェイン)分子を構成している原子の原子量で縦軸がそ
の量を表しているのでマススペクトルから分子構造を解析するためにコンピュータ内
に蓄えられた物質ごとのマススペクトルデータと今回測定したマススペクトル(分子内に含
まれている各原子の数)を比較することで測定したサンプル中のクロマトピークを選択し
た分子がどのような原子をどれだけ含んだ分子であったかがわかりそれからその物質
がどのような分子構造の物質である可能性が高いかをコンピュータが検索し結果を示す 73 実験サンプルの設置と GCMS装置の操作方法 実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS装置のサンプルフォルダ
ー(図 73)にセットするこのサンプルは茶葉 1gを 50ccの高圧セルにて超臨界二酸化炭素を利用して4015MPa2時間接触の条件で抽出した固体を10gのアセトンに溶かしたものである またコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に装置および装置制
御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 本実験で使用する GCMS の操作は全てコンピュータのモニター上で GCMS の解析プログラムソフトを使用することで行うコンピュータの操作方法を以下に示す なおコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS 装置のサンプルフォルダー(図 73)にセットするまた装置および装置制御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 1)パソコンのデスクトップ上のアイコン「GCMS 分析」をクリックすると以下のようにGCMS制御プログラムを起動するその後「OK」ボタンをクリックする
図 77 GCMD分析用ソフトウェア「GCMS分析」の起動
まず「GC-MS分析」をクリック
「OK」ボタンをクリック
53
2)制御プログラムが起動されパソコンと GCMSの接続が開始される
図 78 「GCMS分析」の接続確認画面 3)GCMSとパソコンの接続が完了すると以下のような画面が表示される
図 79 「GCMS分析」操作画面
4)マススペクトルによる分子構造の解析 サンプル(この場合茶葉からの抽出物)には多くの物質が混じり合っていたがガス
クロマトグラフの分離カラムによりそれらの混合物が精度よく分離されるクロマトグラ
ムのピークはそれらサンプル中に含まれていた個々の物質を表しているクロマトグラム
のピークを選択することで分子構造解析したい物質を選んだことになる選択したクロマ
トグラムのピークの表している物質(ここではカフェイン)に対応するマススペクトルを選
択するマススペクトルは横軸が原子量で縦軸がその量を表しているのでマススペク
トルから分子構造を解析するために「定性処理」を行う シミラリティ検索結果が表示され分析により得られたスペクトルと類似のスペクトルを有
する物質の一覧が表示される上部に表示される物質ほどスペクトルが一致していること
を示す
接続状況が表示される
「トップへ」
をクリック
54
図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果
図 711 表示スペクトルのシミラリティ検索結果 10)図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果の印刷 「レポート(R)」をクリックし「検索結果(R)」をクリックすると検索結果が印刷される
GC-MS 分析で得られたマスス
ペクトル
データベース中
のマススペクト
ル
55
参考資料 生理活性物質の精製 カフェインの利尿作用のように生物活動に影響を与える物質を生理活性物質といいます
天然物には生理活性物質を多く含むものがあります一般に天然物は多くの成分を含ん
でおり特定の生理活性物質を分離抽出するには種々の分離技術が必要ですまた生
理活性物質には60以上の温度でその生理活性を失う(失活)ものや溶剤として広く用いられているクロロホルムなどの有機溶剤中で失活するものが多いそこでこれら生理活性
物質の分離精製技術の開発が望まれており30~60程度のマイルドな温度条件で操作できる二酸化炭素を機能性溶媒として利用する超臨界抽出も有効な分離技術として注目されて
いる超臨界二酸化炭素は気体と液体の中間の性質を持ち物質の分離に役立っています 臨界点付近の高密度気体は超臨界ガスまたは超臨界流体と呼ばれ臨界圧力前後でそ
の溶解能力が著しく変化することから工業的にも種々の分野で利用されています一例と
して超臨界二酸化炭素(SC-CO2)によるコーヒー豆からのカフェインの抽出プロセス(a)
ならびに超臨界二酸化炭素に対するカフェインの溶解度(b)を図に示します図(c)に示す
ように固体のカフェインがガスである超臨界二酸化炭素に溶解します
このように超臨界二酸化炭素を用いた技術はコーヒー豆からのカフェインの抽出プロ
ポリスからの生理活性物質の抽出に利用されています
図 超臨界二酸化炭素抽出を用いたコーヒー豆からのカフェインの抽出
56
付表 最小二乗法について 直線で近似する場合 f (x) = a0 + a1x (A1-1) 式(A1-1)のように近似させるとする測定値 yiとの残差を eiとすると式(A1-2)のようになる ei = yi - f (xi) = yi - ( a0 + a1xi ) (A1-2) ここで式(A1-2)の両辺を二乗してその i に関する総和をとりその値を S とすると次式となる
sumsum==
+minus==n
iii
n
ii xaayeS
1
210
1
2 )( (A1-3)
S を最小化するような a0a1を求める式(A1-3)を a0a1について偏微分すると次式とな
る
sum=
+minuspartpart
=partpart n
iii xaay
aaS
1
210
00)( sum
=
+minusminus=n
iii xaay
110 )(2 (A1-4)
同様にa1について編微分すると次式のようになる
sum=
+minusminus=partpart n
iiii xxaay
aS
110
1])([2 (A1-5)
Sが最小となる時は次式が同時に満たされる時である
00=
partpartaS
01=
partpartaS
(A1-6)
よって誤差が最小となる a0a1を求めるためには式(A1-6)を連立して解けばよい
sumsumsum===
+=n
ii
n
i
n
ii xaay
111
10 1 (A1-7)
sumsumsum===
+=n
ii
n
ii
n
iii xaxaxy
1
2
11
10 (A1-8)
式(A1-7)と式(A1-8)を a0a1を変数とみなし連立して解くと次式を得る
n組のデータ(xiyi)(i=12hellipn)に対して回帰直線 y= a0 + a1x を最小二乗法で求めて出力しデータ番号 iデータ yi直線で推定した値 )( ii bxay += および残差
iii yy minus=ε を出力するようなプログラムをつくりたい基礎式を導出せよ (ヒント残差の二乗の和が最小になるように係数 a0a1)を定めるのが最小二乗法
である)
57
sumsum
sumsumsumsum
==
====
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
n
ii
n
ii
xxn
xxyyxa
1
2
1
2
1111
2
0
)(
))(())(( (A1-9)
sumsum
sumsumsum
==
===
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
xxn
yxxyna
1
2
1
2
1111
)(
))(()( (A1-10)
よって式(A1-9)(A1-10)を用いれば最も誤差を小さくするような直線 y = a0 + a1x が求められる
y=a1x+a0 にて近似
誤差 ei
x
y
誤差が最小になる関数(直線 y=a1x+a0の場合)
図1 最小二乗による近似
誤差の和Sが最小
S
a0
a1
直線 y=a1x+a0 の近似
誤差の全体の和はS=Σei=Σyi-(a1xi+a0)
Sは変曲点にて最小値を示すすなわち(partSparta0)=0 (partSparta1)=0
図2 a0a1とSの関係
35
BET式のパラメータ決定法 BET式は次式で与えられる
)1)(1( KCCCKCnn
+minusminus=
infin
(17)
以下のように BET式の変形を行う
)1()1(
KCCKCnCn+minus
=minusinfin
(18)
(18)式の逆数をとると
KCnCK
KCnKCC
Cn infininfin
minus+=
+minus=
minus)1(1)1(
)1(1
(19)
(19)式の両辺に Cをかえると
KCnCKC
CnC
infin
minus+=
minus))1(1(
)1( (20)
(20)式を変形すると次式が得られる
CKn
KKnCn
Cinfininfin
minus+=
minus11
)1( (21)
C と)-(1 Cn
Cのプロットは傾き
KnKinfin
minus1切片
Kninfin
1の直線関係を与えることを示している
これをグラフにプロットし最小二乗法に傾きおよび切片を求める
36
312 活性炭の比表面積の決定 酢酸分子の構造を以下に示す
Hc-Cb-Ca
Hd
Hb Oa
Ob-Ha
1219deg
Ca Oa
Ob
図 36 酢酸の構造
酢酸の 1分子の吸着面積srsquo [m2]を図 3-6に示すこのとき文献より
Caと Oaの結合距離 1321Å Caと Obの結合距離 1206Å OaCaObの角度 1219deg Cの原子半径 077Å Oの原子半径 062Å
したがって吸着面積 Slsquoは次のようになる
( ) ( ) 2088 10376109931036321 minusminusminus times=timestimestimestimes=s m2
ここで活性炭の比表面積 S[m2g]は次式で示される 10026 23 snS timestimestimes= infin
S活性炭の比表面積 [m2g] ninfin飽和吸着量 [molg] srsquo酢酸 1分子の吸着面積 [m2] 602times1023アボガドロ数 [個mol] したがって活性炭の比表面積 S[m2g]は
003350=infinn molg 2010376 minustimes=s m2 より
51281037610026003350 2023 =timestimestimestimes= minusS m2g
37
4 粘度密度測定 41 はじめに 大量生産を目的とした工業的化学プロセスはほとんど流れ系(流通系)であるそれらの系において操作対象となる各物質の粘度は装置を設計操作する場合きわめて重要
な物性値である 本実験では低分子溶液および高分子溶液の粘度測定を通じて液体の粘度について考察するさらに演習問題を通じて気体液体高分子溶液などの化学プロセスで対象となる物
質の輸送物性(粘度拡散係数)の重要性を認識されたい 42 低分子溶液の粘度 [目的] 種々の濃度のエタノール水溶液の粘度を測定しその溶液の粘度について考察する [概要] 25におけるエチルアルコール濃度 02040506080100 wt の水溶液について流下時間を測定しこの結果より相対粘度絶対粘度運動粘度を求めグラフにするま
た水の密度水-エチルアルコール溶液の密度についてはピクノメーターを用いて決
定する報告書には相対粘度絶対粘度運動粘度 vsエチルアルコール濃度の関係をそれぞれグラフにして提出する
[計算方法] 相対粘度絶対粘度運動粘度の定義は次のようになる
相対粘度 ww
w tdtd
ηη = (41)
η 混合溶液の粘度 [gcms] ηw水の粘度(8007times10-3 gcms) [gcms](25における粘度) d エチルアルコール水溶液の密度 [gcm3] dw水の密度(099704gcm3) [gcm3](25における密度) t エチルアルコール水溶液の流下時間 [s] tw水の流下時間 [s] 下付添字 W 水
絶対粘度 www td
tdη
η= (42)
運動粘度 ν=ηd [cm2s] (43)
38
[実験方法] 1) 粘度計を洗浄し粘度計内 に二連球で空気を送り込み
乾燥させる乾燥しにくい 場合はアセトンを滴下し た後再度二連球で空気 を送り込み乾燥させる 2)ピペットで一定体積(10mℓ) の純水を取り広い口 f から 粘度計に水を入れる 3)粘度計を恒温槽(25)に つけ約 10 分静置する 4)安全ピペッターを口 a に 取り付け液面が b 上部に 到達するまで吸い上げる 5)安全ピペッターを外すと 液面が降下しだす液面が bd 間を通過する時間をスト ップウォッチで測定する
6)純水での測定を 3 回繰り返す 7)純水を粘度計から取り除くその後粘度計内に二連球を用いて空気を送り込み乾燥させる 8)粘度計乾燥後複数の濃度に調整済みのエチルアルコール水溶液(10mℓ)を粘度計にいれ4)~6)の作業を繰り返し行う(3 回)なお濃度の異なるエチルアルコール水溶液を粘度計内に導入する場合には7)と同様に二連球を用いて粘度計内に空気を送り込み乾燥させる
表 4-1 エチルアルコール水溶液の濃度密度相対粘度の関係 エチルアルコール濃度
[wt] 密度 d[gcm3] 相対粘度
η ηw[-] 0
20 40 50 60 80
100
安全ピペッター接続
図 4-1 粘度計
液面の bd間の通過時
間を測定
f
39
43 密度測定 [目的] 本実験では水とエタノールの種々の組成の混合液体について密度を測定し分子間相互
作用について考察する [実験方法] 1)ピクノメーターの容積測定
図 4-2のピクノメーターの空の重量 wg を秤量する
ピクノメーターの蓋を取り外し
ピクノメーターを水で満たす
設定温度を 25として恒温槽 の電源を入れ恒温槽内の温 度が一定になるまで待つな お水温は恒温槽中の水銀温 度計から読む
恒温槽中に水を満たしたピク
ノメーターを入れる
約 10分間静置する
ピクノメーターに蓋をするこのときピクノメーターの容量
よりも余分の水は蓋の上部より排出される
ピクノメーターの外側を乾いた布で拭い秤量する(その重量を
wwg とする)
恒温槽の温度(25)における水の密度 dwgcm3(=099704gcm3)
より次式を用いてピクノメーターの容積を求める
w
w
dww
Vminus
= (44)
図 4-2 ピクノメーター
蓋
40
表 4-2 エチルアルコール水溶液の濃度と密度の測定結果(25) エチルアルコ
ール濃度[wt]
wrsquo[g] ww[g] V[cm3] w[g]
d[gcm3]
0 20 40 50 60 80
100
099704
エチルアルコール濃度[wt] 空のピクノメーターの重量 wrsquo[g] 水を入れたときのピクノメーターの重量 ww[g] ピクノメーターの体積 V[cm3] エタノール水溶液の入れたときのピクノメータの重さ w[g] エタノール水溶液の密度 d[gcm3]
容積 Vを求めたピクノメーターに混合溶液(調整済み)を入れてその重量 wgを秤量し次式で混合溶液の密度を求める
Vwwd minus
= (45)
エタノール濃度と密度 d の関係をグラフにプロットする
41
44 高分子溶液の粘度 [目的] 高分子溶液の粘度測定から分子量の粘度に与える影響について考察する [概要 ] オストワルド粘度計を用い種々の濃度のポリビニルアルコール(PVA ((-CH2CHOH-)n))水溶液の粘度を測定し粘度データよりポリビニルアルコールの分
子量を求める まず 05g100cc の濃度のポリビニルアルコール水溶液を調製する次にこれを原液
とし23 12 13 15の濃度の溶液を調製するこれらの溶液についてオストワルド粘度計を用いてそれぞれ流下時間を測定し相対粘度絶対粘度運動粘度を求め実験デ
ータより極限粘度[η]を求めるまた報告書には相対粘度絶対粘度運動粘度C
)ln( wηη
Cw
w-η
ηη vsポリビニルアルコール濃度の関係をそれぞれグラフにして提出する
[計算方法] エチルアルコール水溶液の粘度測定と同様の手法を用いて粘度の計算を行うなおポリビニルアルコール水溶液の密度はピクノメーターを用いて測定すること 表 4-3 ポリビニルアルコール水溶液の濃度密度相対粘度の関係 ポリビニルアルコール
濃度 [g100cc] 密度 d[gcm3] 相対粘度
η ηw[-] 05times(15) 05times(13) 05times(12) 05times(23)
05
42
[分子量の計算方法] 実験を行った結果以下のような粘度データを得られるとする実験データより極限粘度
を求めポリビニルアルコール(PVA)の分子量Mを決定せよ
PVA 水溶液濃度
C[g100cc]
相対粘度
ηηw[-]
絶対粘度
η[gcms]Cw
w-η
ηη
C)ln( wηη
05times(15) 1031 0008255 031 0305
05times(13) 039 0378
05times(12) 03 0289
05times(23) 0375 0353
05 0364 0334
ηw=8007times10-3 gcms 線状高分子の極限粘度[η]と分子量Mの関係は次式で与えられる [η]=KMα (46) ただしポリビニルアルコールの場合K=666times10-4α=064であるなお極限粘度[η]は次式で定義される
CC w
w
0
-][ limη
ηηη
rarr
= (47)
または
CC
)ln(][ w
0lim
ηηη
rarr
= (48)
よって濃度 CとCw
w-η
ηηまたは濃度 Cと
C)ln( wηη の関係をグラフ化し最小二乗法によ
り切片の値を求めると極限粘度[η]が決定される
Cw
w-η
ηηと C の関係より最小二乗法を用いて切片の値を決定すると(図 43 参照)切片=
03242傾き=00874となるよって極限粘度は以下のようになる[η]=03242同様
にC
)ln( wηη とcの関係より最小二乗法を用いて切片の値を決定する
(図 44参照)と切片=03249傾き=00256となり極限粘度は以下のようになる[η]=03249
Cw
w-η
ηηと Cの関係より決定した[η]=03242を用いてポリビニルアルコール(PVA)の
分子量 Mを計算する(46)式より以下のように PVAの分子量 Mを計算することができるM=([η]K)1α
=(03242(666times10-4))(1064)
=15811
43
y = 00874x + 03242
0
02
04
06
08
1
0 01 02 03 04 05 06 07
c[g100cc]
(η-ηw)(ηwc)
cw
w
η
ηηminus
極限粘度[η]
図 43 298Kにおける PVA濃度 CとCw
w-η
ηηの関係
y = 00256x + 03249
0
02
04
06
08
1
0 01 02 03 04 05 06 07
c[g100cc]
(ln(ηη
w))c
c)ln( wηη
極限粘度[η]
図 44 298Kにおける PVA濃度 CとC
)ln( wηη の関係
44
5 植物からの DNAの抽出 51 はじめに 分子レベルでの遺伝子の構造解明や遺伝子の発現に関する研究は近年急速に発展している
これら生命現象のしくみを分子レベルで解明しようという分子生物学の分野ではさまざま
な遺伝子の解析や応用方法が開発され我々の生活に身近なものになりつつある 本実験では初歩的な分子生物学に関する実験として植物(タマネギ)からの DNA の
抽出を行い抽出した遺伝子の電気泳動法による分離実験を試みる 52 試薬および器具 試薬 タマネギ(細胞中から遺伝子の抽出を行う) 台所用洗剤(洗剤中に含まれる界面活性剤には植物の細胞膜およびタンパク質を破壊す
る働きがある) 塩化ナトリウム(DNAは塩化ナトリウム水溶液に溶解し易い性質がある) エタノール(予め冷やしておくDNAはエタノールにほとんど溶解しない) 制限酵素(DNAを一定の部位で切断する働きを働きがある) TE緩衝液(pH緩衝剤が入った溶液) 器具 ビーカーミキサーフィルターメスシリンダー駒込ピペットガラス棒 マイクロピペット電気泳動装置ポラロイドカメラ 53 実験方法 1)タマネギは 1回の実験で半個のうち内側の半分程度を使用するタマネギ水 30ml台所用洗剤数滴をミキサー用ガラス容器に入れ40~60秒程度(固体状のタマネギがなくなる頃が目安)ミキサーにて混合する
2) 1)で作成した混合溶液をビーカーに移し約5g程度の塩化ナトリウムを加えガラス棒で静かに攪拌する粘性の大きな溶液が得られる
3) 2)で作成した溶液をフィルターを用いて濾過し濾液を回収する 4) 濾液の約2倍程度の量の冷エタノールをビーカーの壁伝いに静かに注ぐ 5) ビーカーを揺するとエタノール層に白くふわふわしたものが浮いてくるこれが DNAであるガラス棒で DNAを巻き取りシャーレ上にて DNAを回収する顕微鏡を用いて回収した DNAの状態を観察する
6)マイクロチューブ(容量 15ml)中に用意した 70エタノールを 8 分目程度まで注ぐ5)にて回収された DNAをマイクロピペットを用いて70エタノールの入ったマイクロチューブ中に移す軽く混ぜることによりDNA から不要な物質を洗い流す遠心分離してDNA をマイクロチューブの底に沈めた後溶液を捨てて DNA を乾かす乾いたらTE緩衝溶液を 1ml加えて放置するDNAの溶液が得られる
54 電気泳動装置による DNAの観察
本実験は職員と一緒に行うこと 実験を行う人はビニール手袋をすること 1) 抽出した DNAを電気泳動装置で観察するマイクロピペットを用いて以下のように調製した DNAの混合溶液を調製する(いずれの溶液も調製済)
45
2) マイクロピペットを用いてアガロースゲルの試料を流し込む穴(ウェル)に1)にて調製した溶液 Aおよび Bを注ぎ込む注入量は20μℓとする電気泳動装置のスイッチを入れて100Vの電流を流しアガロースゲル内にて DNAを電気泳動させる
3) 試料に予め加えられておいた青色の色素が 7 分目程度まで進んだら電気泳動を中止する(約 30分程度)
4) (ここでの作業は職員が行う) アガロースゲルを取り出し染色液に浸す染色後ゲルを取り出しポラロイドカメラで
DNAの泳動状態を撮影する
+ -
アガロースゲル
試料を流し込む穴(ウェル)
図 51 電気泳動装置
6 5 4 3 2 1
図 52 DNAの電気泳動写真の一例
55 電気泳動装置の原理 電気泳動装置の原理図を以下に示すアガロースゲル(寒天から不純物を除いたもの)中
に DNAをセットし電流を流すとDNAは電流の向きとは逆にマイナスからプラス方向
調製済 溶液 A(制限酵素なし) 水 11μℓ 10timesH Buffer 2microℓ 植物 DNA 5μℓ
調製済 溶液 B(制限酵素 Eco RI入り) 水 11μℓ 10timesH Buffer 2microℓ 植物 DNA 5μℓ 制限酵素 2μℓ
1 DNA(タマネギ)+制限酵素 2 DNA(タマネギ)+制限酵素 3 DNA(タマネギ) 4 λ-DNA(大腸菌)+制限酵素 5 λ-DNA(大腸菌) 6 サイズマーカー
500bp
46
に動く(このことを電気泳動という)これはDNA のリン酸部分が負に帯電しているためでありまたDNAはその長さにより泳動距離が異なる(短い遺伝子ほど長く泳動する)電気泳動ではこの性質を利用してDNAを大きさごとに分離することができる
塩基対数によってDNAを分離
EtBr (蛍光試薬)DNAの二本鎖内に入り込む
発光
UVλ=302nm
励起
分離後のアガロースゲルをエチジウムブロマイド(EtBr)溶液に浸す
DNAを含んだ溶液
アガロースゲル
リン酸部分が負に帯電
塩基 (ATGC)-
+
カメラで撮影
電圧
DNA構成成分(dNTPs)
バンドが明る
DNA量が
バンド(DNAの存在)
図 53 電気泳動の原理
56 制限酵素とは DNA は4 種類のヌクレオチド(GATC)が不規則につながってできている制限酵素はDNAの特定のヌクレオチドが並んでいる部分を切断する制限酵素には様々な種類がありEco RI(エコアールワン)と呼ばれる酵素は「GAATTC」といった並びの部分だけを切断することができる
GAATTC
CTTAAG
制限酵素
Eco RI
AAGCTT
TTCGAA
制限酵素
Hin dIII
図 54 制限酵素による DNAの切断
レポートについて 1 実験方法および実験結果の整理方法については指針書を参考にすること 2 実験結果については電気泳動の結果について考察すること(制限酵素の影響などにつ
いてまとめてください)
47
6 染色実験
61 はじめに
現在私達の身の周りでは様々な染料が使われている例えばT シャツやジーンズな
どの衣服は橙黄赤青など様々な色に染められている他にも私達が気付かないと
ころで多くの染色された製品を使用しているそこで本実験では高校の化学で学んだ
アゾ染料を合成してみるアゾ染料はアニリンを原料として作られているアニリンはベ
ンゼン環にアミノ基(-NH2)がついたものであるアニリンは無色の液体で水に溶けにく
くアンモニアより弱い塩基性を示すまたさらし粉(CaClO(ClO)H2O)水溶液を加えると
赤紫色を呈するこの呈色反応はアニリン特有のものであるので検出反応に用いられる
このアニリンを出発物質としてアゾ染料を合成してみる
62 試薬および使用器具
【試薬】 ①05moll 水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液
②2-ナフトール ③フェノール ④6moll 塩酸
⑤亜硝酸ナトリウム ⑥アニリン ⑦氷
【器具類】 ①電子天秤 ②50mℓビーカー ③100mℓビーカー
④ガラス棒 ⑤布(ガーゼなど) ⑥ピンセット
⑦ポリ手袋 ⑧ドライヤー ⑨シャーレ
10駒込ピペット(10ml ガラス製)
11駒込ピペット(1ml プラスチック製)
63 実験方法
1) 50mℓビーカーの中に 05molℓ水酸化ナトリウム水溶液 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回
NaOH 水溶液を分取するほぼ 20 mℓ分取できれば可)と 2-ナフトールを約 01g 入れ
よくかき混ぜる調製した溶液の中に布をつけその布はガラス棒でしぼってから(布
をガラス棒ですくいあげればよい)シャーレに広げる温度の異なる条件下(常温およ
び低温)で染料の合成実験を行うため布は最低 2枚調製した溶液と接触させそれ
ぞれ別々のシャーレ(低温用および常温用)に広げる
2) 新しいビーカーに水を約 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回分取)と 6molℓ塩酸約 4mℓ(10m
ℓ駒込ピペットで目分量で可)さらにアニリン約 1mℓ(プラスチック製 1 mℓ駒込ピペッ
ト)を入れてよくかき混ぜる染料の合成を常温および低温下で行うためこの溶液を
2つ調整する
低温下で反応させる溶液は恒温槽で 10~15 分ほどよく冷やした後亜硝酸ナトリウ
ム 05g を加えてよくかき混ぜる
常温下で反応させる溶液には冷却作業を行わずに亜硝酸ナトリウム 05g を加えて
よくかき混ぜる
3) 2)でつくった水溶液をシャーレに広げた布に注ぎ生成される染料を布によく染み
込ませ5分程放置する
4) 色の付いた布を取り出してポリ手袋をした手できれいに水洗いをし乾燥させる
48
5) 色差計を用いて乾燥した布の Lab(L明度aおよび b色度)を測定する
2)で作った溶液は5以下では無色の溶液ですが5以上になると淡い黄色になりま
す
【解説】
アゾ染料はアゾ基(-N=N-)を持っていてこのアゾ基によって鮮やかな橙色を呈色し
ます今回合成したアゾ染料は図の 1-フェニルアゾ-2-ナフトールです意外かもしれ
ませんが指示薬として使われているフェノールフタレインもアゾ化合物ですフェノール
フタレインは pH の変化によって色が出てきす染料の中でも最初は無色のものもありますが
温度を変化させたり酸性やアルカリ性にすると色が出てきます
ベンゼン ニトロベンゼン
N2Cl
ニトロ化 濃硫酸(濃硝酸)
還元反応 濃塩酸
(Sn又は Fe)
アニリン塩酸塩
遊離反応 NaOH
アニリン塩酸塩に強塩基を反応させる
と弱塩基であるアニリンが遊離する
氷冷+亜硝酸ナトリウム アニリン
塩酸
ジアゾ化
塩化ベンゼンジアゾニウム
塩化ベンゼンジアゾニウム
は熱によって窒素とフェノー
ルに分解される
カップリング
C10H7ONa (ナトリウム 2-ナフトキシド)
O
N =
1-フェニルアゾ 2-ナフトール
NH3Cl NH2
49
7 ガスクロマトグラフ質量分析計による茶葉中のカフェインの分析 71 はじめに ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)は極めて低い濃度の化学物質の同定や未知物質の構造決定に極めて強力な分析機器の一つであるGCMSを用いるとサンプルの中に含まれているある成分の分子構造(カフェインの分子構造を図 71に示す)やその量が分かりますもちろん分析機器ですので測定できる物質対象となる系や測定条件にはある
程度の制約があります混合物質を分離するガスクロマトグラフ(Gas ChromatographGC)と分離された成分(物質)を分析(構造決定と濃度測定)する質量分析計(Mass SpectrometerMS)を組み合わせた装置であるこの装置は有機化学生化学環境化学などの多くの分野で非常に多用されている例えば極めて低い濃度でも生体へ強い影響が懸念されるダイ
オキシン類などの土壌や河川の水中での含有率の決定や食品や医薬品中の微量成分の決定
にも利用されている 一方日本人に長い間親しまれてきた緑茶が近年産業界や医学
界で注目されている茶葉にはカフェイン(分子構造図 71)カテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドなどの有用成分が多く含まれておりその効能が注目されている 本実験では茶葉中に含まれるカフェインに対してGCMSを用いて分析する茶葉中には種々の物質が含まれておりGCMS分析を容易にするため前処理として超臨界二酸化炭素抽出(4015MPa程度の高圧力の二酸化炭素を溶剤として利用)により茶葉からカフェインの抽出を行いそのサンプルを GCMSにて分析する
図 71 カフェインの分子構造 図 72 物質の分析 個々の物質や装置についてはインターネットにより下記のWebサイトのフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』などにより調べるとよいカフェイン(caffeine)はアルカロイドの一種プリン環を持つプリンアルカロイドの一種でコーヒー類に含まれることか
らこの名がある化学名は137-トリメチルキサンチン(C8H10N4O2) コーヒーコーラ緑茶紅茶ガラナココアなどに含まれる(量は緑茶が一番多い)結晶は一水和物(C8H10N4O2bullH2O)もしくは無水物(無水カフェインC8H10N4O2)として得られ
る白色の針状または六角柱状結晶で匂いはなく味は苦い融点は 238昇華性がある出典フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』httpwwwwikipediaorg 装置「GCMS」httpwwwanshimadzucojpproductsgcmsqp2010htm (島津) 「超臨界抽出装置」httpwwwkagakucomjasco39-49html (日本分光)
50
レポート課題 1茶葉中に含まれるカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドの中から3つの物質を選びその物質について調べた結果を A4 レポート用紙2枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
2GCMS についてA4 レポート用紙1枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
3与えられたサンプルは茶葉1gから抽出されたのである実験結果よりもとの茶葉
1g中に含まれるカフェインの量を推算し計算式とあわせて示すこと 72 原理および装置 実験で使用する島津製の GCMS装置の全体図を図 73に原理の概略を図 74に示す
1
23
4
5
67 8
9
10
キャリアーガス
試料物質
1ボンベ(He)2圧力計3マイクロシリンジ4サンプラー5試料導入部6分離カラム
7セパレーター8イオン化室9磁石10電子増倍管11記録計
11
図 74 ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)の概略図
サンプルフォルダー
51
GCMS 装置は分離部である図中の 1~6 のガスクロマトグラフ(GC)と7~11 の検出部である質量分析計(MS)から構成される 3のマイクロシリンジを用いて試料を GCMSに導入する導入された試料は5試料導入部でガス化され6分離カラムに導入される分離カラムには吸着剤が充填されおり混合物の試料を導入した場合各物質と吸着剤との
親和性の違いにより各物質の分離カラムから排出されるタイミングは異なる分離カラム
を排出された試料は8イオン化室でイオン化され10電子倍増管にて検出される アセトンに溶解したカフェインの GCMSによる分析結果の一例を以下に示す図 75にク
ロマトグラム図 76にカフェインのピークのマススペクトルを示す
図 75 GCMSにより得られたクロマトグラム
横軸がリテンションタイムで縦軸がピーク強度を表す
図 76 カフェインのマススペクトルとカフェイン(分子量MW=194)の構造
(図 75中のリテンションタイム 126min付近のピークに起因するマススペクトル) 茶葉中にはカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイド以外にも繊維であるセルロースなど多くの物質が含まれているため茶葉そのものを
そのままサンプルとしてGCMSで分析することは困難であるセルロースなどの分子量の大きな物質はカラムに詰まってしまい分析できないそこで今回は超臨界二酸化炭素
による抽出により主にカフェインを他の物質と分離抽出した通常よく利用されるアセ
トン抽出(アセトンに茶葉を浸し特定の成分を抽出する)ではカフェイン以外にも多く
の物質が抽出されるため図 75 のような単独のピークを得ることは難しく複数のピークがクロマトグラムに見られるこのサンプル(この場合茶葉からの抽出物)にはカフェ
イン以外の不純物は少なかったがガスクロマトグラフの分離カラムによりさらにそれ
らの混合物が精度よく分離されるクロマトグラムのピークはそれらサンプル中に含まれ
ていた個々の物質を表しているクロマトグラムのピークを選択することで分子構造解析
したい物質を選んだことになる選択したクロマトグラムのピークの表している物質(ここ
ではカフェイン)に対応するマススペクトルが図 76 に表示されているマススペクトル
52
で横軸がその成分(ここではカフェイン)分子を構成している原子の原子量で縦軸がそ
の量を表しているのでマススペクトルから分子構造を解析するためにコンピュータ内
に蓄えられた物質ごとのマススペクトルデータと今回測定したマススペクトル(分子内に含
まれている各原子の数)を比較することで測定したサンプル中のクロマトピークを選択し
た分子がどのような原子をどれだけ含んだ分子であったかがわかりそれからその物質
がどのような分子構造の物質である可能性が高いかをコンピュータが検索し結果を示す 73 実験サンプルの設置と GCMS装置の操作方法 実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS装置のサンプルフォルダ
ー(図 73)にセットするこのサンプルは茶葉 1gを 50ccの高圧セルにて超臨界二酸化炭素を利用して4015MPa2時間接触の条件で抽出した固体を10gのアセトンに溶かしたものである またコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に装置および装置制
御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 本実験で使用する GCMS の操作は全てコンピュータのモニター上で GCMS の解析プログラムソフトを使用することで行うコンピュータの操作方法を以下に示す なおコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS 装置のサンプルフォルダー(図 73)にセットするまた装置および装置制御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 1)パソコンのデスクトップ上のアイコン「GCMS 分析」をクリックすると以下のようにGCMS制御プログラムを起動するその後「OK」ボタンをクリックする
図 77 GCMD分析用ソフトウェア「GCMS分析」の起動
まず「GC-MS分析」をクリック
「OK」ボタンをクリック
53
2)制御プログラムが起動されパソコンと GCMSの接続が開始される
図 78 「GCMS分析」の接続確認画面 3)GCMSとパソコンの接続が完了すると以下のような画面が表示される
図 79 「GCMS分析」操作画面
4)マススペクトルによる分子構造の解析 サンプル(この場合茶葉からの抽出物)には多くの物質が混じり合っていたがガス
クロマトグラフの分離カラムによりそれらの混合物が精度よく分離されるクロマトグラ
ムのピークはそれらサンプル中に含まれていた個々の物質を表しているクロマトグラム
のピークを選択することで分子構造解析したい物質を選んだことになる選択したクロマ
トグラムのピークの表している物質(ここではカフェイン)に対応するマススペクトルを選
択するマススペクトルは横軸が原子量で縦軸がその量を表しているのでマススペク
トルから分子構造を解析するために「定性処理」を行う シミラリティ検索結果が表示され分析により得られたスペクトルと類似のスペクトルを有
する物質の一覧が表示される上部に表示される物質ほどスペクトルが一致していること
を示す
接続状況が表示される
「トップへ」
をクリック
54
図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果
図 711 表示スペクトルのシミラリティ検索結果 10)図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果の印刷 「レポート(R)」をクリックし「検索結果(R)」をクリックすると検索結果が印刷される
GC-MS 分析で得られたマスス
ペクトル
データベース中
のマススペクト
ル
55
参考資料 生理活性物質の精製 カフェインの利尿作用のように生物活動に影響を与える物質を生理活性物質といいます
天然物には生理活性物質を多く含むものがあります一般に天然物は多くの成分を含ん
でおり特定の生理活性物質を分離抽出するには種々の分離技術が必要ですまた生
理活性物質には60以上の温度でその生理活性を失う(失活)ものや溶剤として広く用いられているクロロホルムなどの有機溶剤中で失活するものが多いそこでこれら生理活性
物質の分離精製技術の開発が望まれており30~60程度のマイルドな温度条件で操作できる二酸化炭素を機能性溶媒として利用する超臨界抽出も有効な分離技術として注目されて
いる超臨界二酸化炭素は気体と液体の中間の性質を持ち物質の分離に役立っています 臨界点付近の高密度気体は超臨界ガスまたは超臨界流体と呼ばれ臨界圧力前後でそ
の溶解能力が著しく変化することから工業的にも種々の分野で利用されています一例と
して超臨界二酸化炭素(SC-CO2)によるコーヒー豆からのカフェインの抽出プロセス(a)
ならびに超臨界二酸化炭素に対するカフェインの溶解度(b)を図に示します図(c)に示す
ように固体のカフェインがガスである超臨界二酸化炭素に溶解します
このように超臨界二酸化炭素を用いた技術はコーヒー豆からのカフェインの抽出プロ
ポリスからの生理活性物質の抽出に利用されています
図 超臨界二酸化炭素抽出を用いたコーヒー豆からのカフェインの抽出
56
付表 最小二乗法について 直線で近似する場合 f (x) = a0 + a1x (A1-1) 式(A1-1)のように近似させるとする測定値 yiとの残差を eiとすると式(A1-2)のようになる ei = yi - f (xi) = yi - ( a0 + a1xi ) (A1-2) ここで式(A1-2)の両辺を二乗してその i に関する総和をとりその値を S とすると次式となる
sumsum==
+minus==n
iii
n
ii xaayeS
1
210
1
2 )( (A1-3)
S を最小化するような a0a1を求める式(A1-3)を a0a1について偏微分すると次式とな
る
sum=
+minuspartpart
=partpart n
iii xaay
aaS
1
210
00)( sum
=
+minusminus=n
iii xaay
110 )(2 (A1-4)
同様にa1について編微分すると次式のようになる
sum=
+minusminus=partpart n
iiii xxaay
aS
110
1])([2 (A1-5)
Sが最小となる時は次式が同時に満たされる時である
00=
partpartaS
01=
partpartaS
(A1-6)
よって誤差が最小となる a0a1を求めるためには式(A1-6)を連立して解けばよい
sumsumsum===
+=n
ii
n
i
n
ii xaay
111
10 1 (A1-7)
sumsumsum===
+=n
ii
n
ii
n
iii xaxaxy
1
2
11
10 (A1-8)
式(A1-7)と式(A1-8)を a0a1を変数とみなし連立して解くと次式を得る
n組のデータ(xiyi)(i=12hellipn)に対して回帰直線 y= a0 + a1x を最小二乗法で求めて出力しデータ番号 iデータ yi直線で推定した値 )( ii bxay += および残差
iii yy minus=ε を出力するようなプログラムをつくりたい基礎式を導出せよ (ヒント残差の二乗の和が最小になるように係数 a0a1)を定めるのが最小二乗法
である)
57
sumsum
sumsumsumsum
==
====
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
n
ii
n
ii
xxn
xxyyxa
1
2
1
2
1111
2
0
)(
))(())(( (A1-9)
sumsum
sumsumsum
==
===
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
xxn
yxxyna
1
2
1
2
1111
)(
))(()( (A1-10)
よって式(A1-9)(A1-10)を用いれば最も誤差を小さくするような直線 y = a0 + a1x が求められる
y=a1x+a0 にて近似
誤差 ei
x
y
誤差が最小になる関数(直線 y=a1x+a0の場合)
図1 最小二乗による近似
誤差の和Sが最小
S
a0
a1
直線 y=a1x+a0 の近似
誤差の全体の和はS=Σei=Σyi-(a1xi+a0)
Sは変曲点にて最小値を示すすなわち(partSparta0)=0 (partSparta1)=0
図2 a0a1とSの関係
36
312 活性炭の比表面積の決定 酢酸分子の構造を以下に示す
Hc-Cb-Ca
Hd
Hb Oa
Ob-Ha
1219deg
Ca Oa
Ob
図 36 酢酸の構造
酢酸の 1分子の吸着面積srsquo [m2]を図 3-6に示すこのとき文献より
Caと Oaの結合距離 1321Å Caと Obの結合距離 1206Å OaCaObの角度 1219deg Cの原子半径 077Å Oの原子半径 062Å
したがって吸着面積 Slsquoは次のようになる
( ) ( ) 2088 10376109931036321 minusminusminus times=timestimestimestimes=s m2
ここで活性炭の比表面積 S[m2g]は次式で示される 10026 23 snS timestimestimes= infin
S活性炭の比表面積 [m2g] ninfin飽和吸着量 [molg] srsquo酢酸 1分子の吸着面積 [m2] 602times1023アボガドロ数 [個mol] したがって活性炭の比表面積 S[m2g]は
003350=infinn molg 2010376 minustimes=s m2 より
51281037610026003350 2023 =timestimestimestimes= minusS m2g
37
4 粘度密度測定 41 はじめに 大量生産を目的とした工業的化学プロセスはほとんど流れ系(流通系)であるそれらの系において操作対象となる各物質の粘度は装置を設計操作する場合きわめて重要
な物性値である 本実験では低分子溶液および高分子溶液の粘度測定を通じて液体の粘度について考察するさらに演習問題を通じて気体液体高分子溶液などの化学プロセスで対象となる物
質の輸送物性(粘度拡散係数)の重要性を認識されたい 42 低分子溶液の粘度 [目的] 種々の濃度のエタノール水溶液の粘度を測定しその溶液の粘度について考察する [概要] 25におけるエチルアルコール濃度 02040506080100 wt の水溶液について流下時間を測定しこの結果より相対粘度絶対粘度運動粘度を求めグラフにするま
た水の密度水-エチルアルコール溶液の密度についてはピクノメーターを用いて決
定する報告書には相対粘度絶対粘度運動粘度 vsエチルアルコール濃度の関係をそれぞれグラフにして提出する
[計算方法] 相対粘度絶対粘度運動粘度の定義は次のようになる
相対粘度 ww
w tdtd
ηη = (41)
η 混合溶液の粘度 [gcms] ηw水の粘度(8007times10-3 gcms) [gcms](25における粘度) d エチルアルコール水溶液の密度 [gcm3] dw水の密度(099704gcm3) [gcm3](25における密度) t エチルアルコール水溶液の流下時間 [s] tw水の流下時間 [s] 下付添字 W 水
絶対粘度 www td
tdη
η= (42)
運動粘度 ν=ηd [cm2s] (43)
38
[実験方法] 1) 粘度計を洗浄し粘度計内 に二連球で空気を送り込み
乾燥させる乾燥しにくい 場合はアセトンを滴下し た後再度二連球で空気 を送り込み乾燥させる 2)ピペットで一定体積(10mℓ) の純水を取り広い口 f から 粘度計に水を入れる 3)粘度計を恒温槽(25)に つけ約 10 分静置する 4)安全ピペッターを口 a に 取り付け液面が b 上部に 到達するまで吸い上げる 5)安全ピペッターを外すと 液面が降下しだす液面が bd 間を通過する時間をスト ップウォッチで測定する
6)純水での測定を 3 回繰り返す 7)純水を粘度計から取り除くその後粘度計内に二連球を用いて空気を送り込み乾燥させる 8)粘度計乾燥後複数の濃度に調整済みのエチルアルコール水溶液(10mℓ)を粘度計にいれ4)~6)の作業を繰り返し行う(3 回)なお濃度の異なるエチルアルコール水溶液を粘度計内に導入する場合には7)と同様に二連球を用いて粘度計内に空気を送り込み乾燥させる
表 4-1 エチルアルコール水溶液の濃度密度相対粘度の関係 エチルアルコール濃度
[wt] 密度 d[gcm3] 相対粘度
η ηw[-] 0
20 40 50 60 80
100
安全ピペッター接続
図 4-1 粘度計
液面の bd間の通過時
間を測定
f
39
43 密度測定 [目的] 本実験では水とエタノールの種々の組成の混合液体について密度を測定し分子間相互
作用について考察する [実験方法] 1)ピクノメーターの容積測定
図 4-2のピクノメーターの空の重量 wg を秤量する
ピクノメーターの蓋を取り外し
ピクノメーターを水で満たす
設定温度を 25として恒温槽 の電源を入れ恒温槽内の温 度が一定になるまで待つな お水温は恒温槽中の水銀温 度計から読む
恒温槽中に水を満たしたピク
ノメーターを入れる
約 10分間静置する
ピクノメーターに蓋をするこのときピクノメーターの容量
よりも余分の水は蓋の上部より排出される
ピクノメーターの外側を乾いた布で拭い秤量する(その重量を
wwg とする)
恒温槽の温度(25)における水の密度 dwgcm3(=099704gcm3)
より次式を用いてピクノメーターの容積を求める
w
w
dww
Vminus
= (44)
図 4-2 ピクノメーター
蓋
40
表 4-2 エチルアルコール水溶液の濃度と密度の測定結果(25) エチルアルコ
ール濃度[wt]
wrsquo[g] ww[g] V[cm3] w[g]
d[gcm3]
0 20 40 50 60 80
100
099704
エチルアルコール濃度[wt] 空のピクノメーターの重量 wrsquo[g] 水を入れたときのピクノメーターの重量 ww[g] ピクノメーターの体積 V[cm3] エタノール水溶液の入れたときのピクノメータの重さ w[g] エタノール水溶液の密度 d[gcm3]
容積 Vを求めたピクノメーターに混合溶液(調整済み)を入れてその重量 wgを秤量し次式で混合溶液の密度を求める
Vwwd minus
= (45)
エタノール濃度と密度 d の関係をグラフにプロットする
41
44 高分子溶液の粘度 [目的] 高分子溶液の粘度測定から分子量の粘度に与える影響について考察する [概要 ] オストワルド粘度計を用い種々の濃度のポリビニルアルコール(PVA ((-CH2CHOH-)n))水溶液の粘度を測定し粘度データよりポリビニルアルコールの分
子量を求める まず 05g100cc の濃度のポリビニルアルコール水溶液を調製する次にこれを原液
とし23 12 13 15の濃度の溶液を調製するこれらの溶液についてオストワルド粘度計を用いてそれぞれ流下時間を測定し相対粘度絶対粘度運動粘度を求め実験デ
ータより極限粘度[η]を求めるまた報告書には相対粘度絶対粘度運動粘度C
)ln( wηη
Cw
w-η
ηη vsポリビニルアルコール濃度の関係をそれぞれグラフにして提出する
[計算方法] エチルアルコール水溶液の粘度測定と同様の手法を用いて粘度の計算を行うなおポリビニルアルコール水溶液の密度はピクノメーターを用いて測定すること 表 4-3 ポリビニルアルコール水溶液の濃度密度相対粘度の関係 ポリビニルアルコール
濃度 [g100cc] 密度 d[gcm3] 相対粘度
η ηw[-] 05times(15) 05times(13) 05times(12) 05times(23)
05
42
[分子量の計算方法] 実験を行った結果以下のような粘度データを得られるとする実験データより極限粘度
を求めポリビニルアルコール(PVA)の分子量Mを決定せよ
PVA 水溶液濃度
C[g100cc]
相対粘度
ηηw[-]
絶対粘度
η[gcms]Cw
w-η
ηη
C)ln( wηη
05times(15) 1031 0008255 031 0305
05times(13) 039 0378
05times(12) 03 0289
05times(23) 0375 0353
05 0364 0334
ηw=8007times10-3 gcms 線状高分子の極限粘度[η]と分子量Mの関係は次式で与えられる [η]=KMα (46) ただしポリビニルアルコールの場合K=666times10-4α=064であるなお極限粘度[η]は次式で定義される
CC w
w
0
-][ limη
ηηη
rarr
= (47)
または
CC
)ln(][ w
0lim
ηηη
rarr
= (48)
よって濃度 CとCw
w-η
ηηまたは濃度 Cと
C)ln( wηη の関係をグラフ化し最小二乗法によ
り切片の値を求めると極限粘度[η]が決定される
Cw
w-η
ηηと C の関係より最小二乗法を用いて切片の値を決定すると(図 43 参照)切片=
03242傾き=00874となるよって極限粘度は以下のようになる[η]=03242同様
にC
)ln( wηη とcの関係より最小二乗法を用いて切片の値を決定する
(図 44参照)と切片=03249傾き=00256となり極限粘度は以下のようになる[η]=03249
Cw
w-η
ηηと Cの関係より決定した[η]=03242を用いてポリビニルアルコール(PVA)の
分子量 Mを計算する(46)式より以下のように PVAの分子量 Mを計算することができるM=([η]K)1α
=(03242(666times10-4))(1064)
=15811
43
y = 00874x + 03242
0
02
04
06
08
1
0 01 02 03 04 05 06 07
c[g100cc]
(η-ηw)(ηwc)
cw
w
η
ηηminus
極限粘度[η]
図 43 298Kにおける PVA濃度 CとCw
w-η
ηηの関係
y = 00256x + 03249
0
02
04
06
08
1
0 01 02 03 04 05 06 07
c[g100cc]
(ln(ηη
w))c
c)ln( wηη
極限粘度[η]
図 44 298Kにおける PVA濃度 CとC
)ln( wηη の関係
44
5 植物からの DNAの抽出 51 はじめに 分子レベルでの遺伝子の構造解明や遺伝子の発現に関する研究は近年急速に発展している
これら生命現象のしくみを分子レベルで解明しようという分子生物学の分野ではさまざま
な遺伝子の解析や応用方法が開発され我々の生活に身近なものになりつつある 本実験では初歩的な分子生物学に関する実験として植物(タマネギ)からの DNA の
抽出を行い抽出した遺伝子の電気泳動法による分離実験を試みる 52 試薬および器具 試薬 タマネギ(細胞中から遺伝子の抽出を行う) 台所用洗剤(洗剤中に含まれる界面活性剤には植物の細胞膜およびタンパク質を破壊す
る働きがある) 塩化ナトリウム(DNAは塩化ナトリウム水溶液に溶解し易い性質がある) エタノール(予め冷やしておくDNAはエタノールにほとんど溶解しない) 制限酵素(DNAを一定の部位で切断する働きを働きがある) TE緩衝液(pH緩衝剤が入った溶液) 器具 ビーカーミキサーフィルターメスシリンダー駒込ピペットガラス棒 マイクロピペット電気泳動装置ポラロイドカメラ 53 実験方法 1)タマネギは 1回の実験で半個のうち内側の半分程度を使用するタマネギ水 30ml台所用洗剤数滴をミキサー用ガラス容器に入れ40~60秒程度(固体状のタマネギがなくなる頃が目安)ミキサーにて混合する
2) 1)で作成した混合溶液をビーカーに移し約5g程度の塩化ナトリウムを加えガラス棒で静かに攪拌する粘性の大きな溶液が得られる
3) 2)で作成した溶液をフィルターを用いて濾過し濾液を回収する 4) 濾液の約2倍程度の量の冷エタノールをビーカーの壁伝いに静かに注ぐ 5) ビーカーを揺するとエタノール層に白くふわふわしたものが浮いてくるこれが DNAであるガラス棒で DNAを巻き取りシャーレ上にて DNAを回収する顕微鏡を用いて回収した DNAの状態を観察する
6)マイクロチューブ(容量 15ml)中に用意した 70エタノールを 8 分目程度まで注ぐ5)にて回収された DNAをマイクロピペットを用いて70エタノールの入ったマイクロチューブ中に移す軽く混ぜることによりDNA から不要な物質を洗い流す遠心分離してDNA をマイクロチューブの底に沈めた後溶液を捨てて DNA を乾かす乾いたらTE緩衝溶液を 1ml加えて放置するDNAの溶液が得られる
54 電気泳動装置による DNAの観察
本実験は職員と一緒に行うこと 実験を行う人はビニール手袋をすること 1) 抽出した DNAを電気泳動装置で観察するマイクロピペットを用いて以下のように調製した DNAの混合溶液を調製する(いずれの溶液も調製済)
45
2) マイクロピペットを用いてアガロースゲルの試料を流し込む穴(ウェル)に1)にて調製した溶液 Aおよび Bを注ぎ込む注入量は20μℓとする電気泳動装置のスイッチを入れて100Vの電流を流しアガロースゲル内にて DNAを電気泳動させる
3) 試料に予め加えられておいた青色の色素が 7 分目程度まで進んだら電気泳動を中止する(約 30分程度)
4) (ここでの作業は職員が行う) アガロースゲルを取り出し染色液に浸す染色後ゲルを取り出しポラロイドカメラで
DNAの泳動状態を撮影する
+ -
アガロースゲル
試料を流し込む穴(ウェル)
図 51 電気泳動装置
6 5 4 3 2 1
図 52 DNAの電気泳動写真の一例
55 電気泳動装置の原理 電気泳動装置の原理図を以下に示すアガロースゲル(寒天から不純物を除いたもの)中
に DNAをセットし電流を流すとDNAは電流の向きとは逆にマイナスからプラス方向
調製済 溶液 A(制限酵素なし) 水 11μℓ 10timesH Buffer 2microℓ 植物 DNA 5μℓ
調製済 溶液 B(制限酵素 Eco RI入り) 水 11μℓ 10timesH Buffer 2microℓ 植物 DNA 5μℓ 制限酵素 2μℓ
1 DNA(タマネギ)+制限酵素 2 DNA(タマネギ)+制限酵素 3 DNA(タマネギ) 4 λ-DNA(大腸菌)+制限酵素 5 λ-DNA(大腸菌) 6 サイズマーカー
500bp
46
に動く(このことを電気泳動という)これはDNA のリン酸部分が負に帯電しているためでありまたDNAはその長さにより泳動距離が異なる(短い遺伝子ほど長く泳動する)電気泳動ではこの性質を利用してDNAを大きさごとに分離することができる
塩基対数によってDNAを分離
EtBr (蛍光試薬)DNAの二本鎖内に入り込む
発光
UVλ=302nm
励起
分離後のアガロースゲルをエチジウムブロマイド(EtBr)溶液に浸す
DNAを含んだ溶液
アガロースゲル
リン酸部分が負に帯電
塩基 (ATGC)-
+
カメラで撮影
電圧
DNA構成成分(dNTPs)
バンドが明る
DNA量が
バンド(DNAの存在)
図 53 電気泳動の原理
56 制限酵素とは DNA は4 種類のヌクレオチド(GATC)が不規則につながってできている制限酵素はDNAの特定のヌクレオチドが並んでいる部分を切断する制限酵素には様々な種類がありEco RI(エコアールワン)と呼ばれる酵素は「GAATTC」といった並びの部分だけを切断することができる
GAATTC
CTTAAG
制限酵素
Eco RI
AAGCTT
TTCGAA
制限酵素
Hin dIII
図 54 制限酵素による DNAの切断
レポートについて 1 実験方法および実験結果の整理方法については指針書を参考にすること 2 実験結果については電気泳動の結果について考察すること(制限酵素の影響などにつ
いてまとめてください)
47
6 染色実験
61 はじめに
現在私達の身の周りでは様々な染料が使われている例えばT シャツやジーンズな
どの衣服は橙黄赤青など様々な色に染められている他にも私達が気付かないと
ころで多くの染色された製品を使用しているそこで本実験では高校の化学で学んだ
アゾ染料を合成してみるアゾ染料はアニリンを原料として作られているアニリンはベ
ンゼン環にアミノ基(-NH2)がついたものであるアニリンは無色の液体で水に溶けにく
くアンモニアより弱い塩基性を示すまたさらし粉(CaClO(ClO)H2O)水溶液を加えると
赤紫色を呈するこの呈色反応はアニリン特有のものであるので検出反応に用いられる
このアニリンを出発物質としてアゾ染料を合成してみる
62 試薬および使用器具
【試薬】 ①05moll 水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液
②2-ナフトール ③フェノール ④6moll 塩酸
⑤亜硝酸ナトリウム ⑥アニリン ⑦氷
【器具類】 ①電子天秤 ②50mℓビーカー ③100mℓビーカー
④ガラス棒 ⑤布(ガーゼなど) ⑥ピンセット
⑦ポリ手袋 ⑧ドライヤー ⑨シャーレ
10駒込ピペット(10ml ガラス製)
11駒込ピペット(1ml プラスチック製)
63 実験方法
1) 50mℓビーカーの中に 05molℓ水酸化ナトリウム水溶液 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回
NaOH 水溶液を分取するほぼ 20 mℓ分取できれば可)と 2-ナフトールを約 01g 入れ
よくかき混ぜる調製した溶液の中に布をつけその布はガラス棒でしぼってから(布
をガラス棒ですくいあげればよい)シャーレに広げる温度の異なる条件下(常温およ
び低温)で染料の合成実験を行うため布は最低 2枚調製した溶液と接触させそれ
ぞれ別々のシャーレ(低温用および常温用)に広げる
2) 新しいビーカーに水を約 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回分取)と 6molℓ塩酸約 4mℓ(10m
ℓ駒込ピペットで目分量で可)さらにアニリン約 1mℓ(プラスチック製 1 mℓ駒込ピペッ
ト)を入れてよくかき混ぜる染料の合成を常温および低温下で行うためこの溶液を
2つ調整する
低温下で反応させる溶液は恒温槽で 10~15 分ほどよく冷やした後亜硝酸ナトリウ
ム 05g を加えてよくかき混ぜる
常温下で反応させる溶液には冷却作業を行わずに亜硝酸ナトリウム 05g を加えて
よくかき混ぜる
3) 2)でつくった水溶液をシャーレに広げた布に注ぎ生成される染料を布によく染み
込ませ5分程放置する
4) 色の付いた布を取り出してポリ手袋をした手できれいに水洗いをし乾燥させる
48
5) 色差計を用いて乾燥した布の Lab(L明度aおよび b色度)を測定する
2)で作った溶液は5以下では無色の溶液ですが5以上になると淡い黄色になりま
す
【解説】
アゾ染料はアゾ基(-N=N-)を持っていてこのアゾ基によって鮮やかな橙色を呈色し
ます今回合成したアゾ染料は図の 1-フェニルアゾ-2-ナフトールです意外かもしれ
ませんが指示薬として使われているフェノールフタレインもアゾ化合物ですフェノール
フタレインは pH の変化によって色が出てきす染料の中でも最初は無色のものもありますが
温度を変化させたり酸性やアルカリ性にすると色が出てきます
ベンゼン ニトロベンゼン
N2Cl
ニトロ化 濃硫酸(濃硝酸)
還元反応 濃塩酸
(Sn又は Fe)
アニリン塩酸塩
遊離反応 NaOH
アニリン塩酸塩に強塩基を反応させる
と弱塩基であるアニリンが遊離する
氷冷+亜硝酸ナトリウム アニリン
塩酸
ジアゾ化
塩化ベンゼンジアゾニウム
塩化ベンゼンジアゾニウム
は熱によって窒素とフェノー
ルに分解される
カップリング
C10H7ONa (ナトリウム 2-ナフトキシド)
O
N =
1-フェニルアゾ 2-ナフトール
NH3Cl NH2
49
7 ガスクロマトグラフ質量分析計による茶葉中のカフェインの分析 71 はじめに ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)は極めて低い濃度の化学物質の同定や未知物質の構造決定に極めて強力な分析機器の一つであるGCMSを用いるとサンプルの中に含まれているある成分の分子構造(カフェインの分子構造を図 71に示す)やその量が分かりますもちろん分析機器ですので測定できる物質対象となる系や測定条件にはある
程度の制約があります混合物質を分離するガスクロマトグラフ(Gas ChromatographGC)と分離された成分(物質)を分析(構造決定と濃度測定)する質量分析計(Mass SpectrometerMS)を組み合わせた装置であるこの装置は有機化学生化学環境化学などの多くの分野で非常に多用されている例えば極めて低い濃度でも生体へ強い影響が懸念されるダイ
オキシン類などの土壌や河川の水中での含有率の決定や食品や医薬品中の微量成分の決定
にも利用されている 一方日本人に長い間親しまれてきた緑茶が近年産業界や医学
界で注目されている茶葉にはカフェイン(分子構造図 71)カテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドなどの有用成分が多く含まれておりその効能が注目されている 本実験では茶葉中に含まれるカフェインに対してGCMSを用いて分析する茶葉中には種々の物質が含まれておりGCMS分析を容易にするため前処理として超臨界二酸化炭素抽出(4015MPa程度の高圧力の二酸化炭素を溶剤として利用)により茶葉からカフェインの抽出を行いそのサンプルを GCMSにて分析する
図 71 カフェインの分子構造 図 72 物質の分析 個々の物質や装置についてはインターネットにより下記のWebサイトのフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』などにより調べるとよいカフェイン(caffeine)はアルカロイドの一種プリン環を持つプリンアルカロイドの一種でコーヒー類に含まれることか
らこの名がある化学名は137-トリメチルキサンチン(C8H10N4O2) コーヒーコーラ緑茶紅茶ガラナココアなどに含まれる(量は緑茶が一番多い)結晶は一水和物(C8H10N4O2bullH2O)もしくは無水物(無水カフェインC8H10N4O2)として得られ
る白色の針状または六角柱状結晶で匂いはなく味は苦い融点は 238昇華性がある出典フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』httpwwwwikipediaorg 装置「GCMS」httpwwwanshimadzucojpproductsgcmsqp2010htm (島津) 「超臨界抽出装置」httpwwwkagakucomjasco39-49html (日本分光)
50
レポート課題 1茶葉中に含まれるカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドの中から3つの物質を選びその物質について調べた結果を A4 レポート用紙2枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
2GCMS についてA4 レポート用紙1枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
3与えられたサンプルは茶葉1gから抽出されたのである実験結果よりもとの茶葉
1g中に含まれるカフェインの量を推算し計算式とあわせて示すこと 72 原理および装置 実験で使用する島津製の GCMS装置の全体図を図 73に原理の概略を図 74に示す
1
23
4
5
67 8
9
10
キャリアーガス
試料物質
1ボンベ(He)2圧力計3マイクロシリンジ4サンプラー5試料導入部6分離カラム
7セパレーター8イオン化室9磁石10電子増倍管11記録計
11
図 74 ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)の概略図
サンプルフォルダー
51
GCMS 装置は分離部である図中の 1~6 のガスクロマトグラフ(GC)と7~11 の検出部である質量分析計(MS)から構成される 3のマイクロシリンジを用いて試料を GCMSに導入する導入された試料は5試料導入部でガス化され6分離カラムに導入される分離カラムには吸着剤が充填されおり混合物の試料を導入した場合各物質と吸着剤との
親和性の違いにより各物質の分離カラムから排出されるタイミングは異なる分離カラム
を排出された試料は8イオン化室でイオン化され10電子倍増管にて検出される アセトンに溶解したカフェインの GCMSによる分析結果の一例を以下に示す図 75にク
ロマトグラム図 76にカフェインのピークのマススペクトルを示す
図 75 GCMSにより得られたクロマトグラム
横軸がリテンションタイムで縦軸がピーク強度を表す
図 76 カフェインのマススペクトルとカフェイン(分子量MW=194)の構造
(図 75中のリテンションタイム 126min付近のピークに起因するマススペクトル) 茶葉中にはカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイド以外にも繊維であるセルロースなど多くの物質が含まれているため茶葉そのものを
そのままサンプルとしてGCMSで分析することは困難であるセルロースなどの分子量の大きな物質はカラムに詰まってしまい分析できないそこで今回は超臨界二酸化炭素
による抽出により主にカフェインを他の物質と分離抽出した通常よく利用されるアセ
トン抽出(アセトンに茶葉を浸し特定の成分を抽出する)ではカフェイン以外にも多く
の物質が抽出されるため図 75 のような単独のピークを得ることは難しく複数のピークがクロマトグラムに見られるこのサンプル(この場合茶葉からの抽出物)にはカフェ
イン以外の不純物は少なかったがガスクロマトグラフの分離カラムによりさらにそれ
らの混合物が精度よく分離されるクロマトグラムのピークはそれらサンプル中に含まれ
ていた個々の物質を表しているクロマトグラムのピークを選択することで分子構造解析
したい物質を選んだことになる選択したクロマトグラムのピークの表している物質(ここ
ではカフェイン)に対応するマススペクトルが図 76 に表示されているマススペクトル
52
で横軸がその成分(ここではカフェイン)分子を構成している原子の原子量で縦軸がそ
の量を表しているのでマススペクトルから分子構造を解析するためにコンピュータ内
に蓄えられた物質ごとのマススペクトルデータと今回測定したマススペクトル(分子内に含
まれている各原子の数)を比較することで測定したサンプル中のクロマトピークを選択し
た分子がどのような原子をどれだけ含んだ分子であったかがわかりそれからその物質
がどのような分子構造の物質である可能性が高いかをコンピュータが検索し結果を示す 73 実験サンプルの設置と GCMS装置の操作方法 実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS装置のサンプルフォルダ
ー(図 73)にセットするこのサンプルは茶葉 1gを 50ccの高圧セルにて超臨界二酸化炭素を利用して4015MPa2時間接触の条件で抽出した固体を10gのアセトンに溶かしたものである またコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に装置および装置制
御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 本実験で使用する GCMS の操作は全てコンピュータのモニター上で GCMS の解析プログラムソフトを使用することで行うコンピュータの操作方法を以下に示す なおコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS 装置のサンプルフォルダー(図 73)にセットするまた装置および装置制御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 1)パソコンのデスクトップ上のアイコン「GCMS 分析」をクリックすると以下のようにGCMS制御プログラムを起動するその後「OK」ボタンをクリックする
図 77 GCMD分析用ソフトウェア「GCMS分析」の起動
まず「GC-MS分析」をクリック
「OK」ボタンをクリック
53
2)制御プログラムが起動されパソコンと GCMSの接続が開始される
図 78 「GCMS分析」の接続確認画面 3)GCMSとパソコンの接続が完了すると以下のような画面が表示される
図 79 「GCMS分析」操作画面
4)マススペクトルによる分子構造の解析 サンプル(この場合茶葉からの抽出物)には多くの物質が混じり合っていたがガス
クロマトグラフの分離カラムによりそれらの混合物が精度よく分離されるクロマトグラ
ムのピークはそれらサンプル中に含まれていた個々の物質を表しているクロマトグラム
のピークを選択することで分子構造解析したい物質を選んだことになる選択したクロマ
トグラムのピークの表している物質(ここではカフェイン)に対応するマススペクトルを選
択するマススペクトルは横軸が原子量で縦軸がその量を表しているのでマススペク
トルから分子構造を解析するために「定性処理」を行う シミラリティ検索結果が表示され分析により得られたスペクトルと類似のスペクトルを有
する物質の一覧が表示される上部に表示される物質ほどスペクトルが一致していること
を示す
接続状況が表示される
「トップへ」
をクリック
54
図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果
図 711 表示スペクトルのシミラリティ検索結果 10)図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果の印刷 「レポート(R)」をクリックし「検索結果(R)」をクリックすると検索結果が印刷される
GC-MS 分析で得られたマスス
ペクトル
データベース中
のマススペクト
ル
55
参考資料 生理活性物質の精製 カフェインの利尿作用のように生物活動に影響を与える物質を生理活性物質といいます
天然物には生理活性物質を多く含むものがあります一般に天然物は多くの成分を含ん
でおり特定の生理活性物質を分離抽出するには種々の分離技術が必要ですまた生
理活性物質には60以上の温度でその生理活性を失う(失活)ものや溶剤として広く用いられているクロロホルムなどの有機溶剤中で失活するものが多いそこでこれら生理活性
物質の分離精製技術の開発が望まれており30~60程度のマイルドな温度条件で操作できる二酸化炭素を機能性溶媒として利用する超臨界抽出も有効な分離技術として注目されて
いる超臨界二酸化炭素は気体と液体の中間の性質を持ち物質の分離に役立っています 臨界点付近の高密度気体は超臨界ガスまたは超臨界流体と呼ばれ臨界圧力前後でそ
の溶解能力が著しく変化することから工業的にも種々の分野で利用されています一例と
して超臨界二酸化炭素(SC-CO2)によるコーヒー豆からのカフェインの抽出プロセス(a)
ならびに超臨界二酸化炭素に対するカフェインの溶解度(b)を図に示します図(c)に示す
ように固体のカフェインがガスである超臨界二酸化炭素に溶解します
このように超臨界二酸化炭素を用いた技術はコーヒー豆からのカフェインの抽出プロ
ポリスからの生理活性物質の抽出に利用されています
図 超臨界二酸化炭素抽出を用いたコーヒー豆からのカフェインの抽出
56
付表 最小二乗法について 直線で近似する場合 f (x) = a0 + a1x (A1-1) 式(A1-1)のように近似させるとする測定値 yiとの残差を eiとすると式(A1-2)のようになる ei = yi - f (xi) = yi - ( a0 + a1xi ) (A1-2) ここで式(A1-2)の両辺を二乗してその i に関する総和をとりその値を S とすると次式となる
sumsum==
+minus==n
iii
n
ii xaayeS
1
210
1
2 )( (A1-3)
S を最小化するような a0a1を求める式(A1-3)を a0a1について偏微分すると次式とな
る
sum=
+minuspartpart
=partpart n
iii xaay
aaS
1
210
00)( sum
=
+minusminus=n
iii xaay
110 )(2 (A1-4)
同様にa1について編微分すると次式のようになる
sum=
+minusminus=partpart n
iiii xxaay
aS
110
1])([2 (A1-5)
Sが最小となる時は次式が同時に満たされる時である
00=
partpartaS
01=
partpartaS
(A1-6)
よって誤差が最小となる a0a1を求めるためには式(A1-6)を連立して解けばよい
sumsumsum===
+=n
ii
n
i
n
ii xaay
111
10 1 (A1-7)
sumsumsum===
+=n
ii
n
ii
n
iii xaxaxy
1
2
11
10 (A1-8)
式(A1-7)と式(A1-8)を a0a1を変数とみなし連立して解くと次式を得る
n組のデータ(xiyi)(i=12hellipn)に対して回帰直線 y= a0 + a1x を最小二乗法で求めて出力しデータ番号 iデータ yi直線で推定した値 )( ii bxay += および残差
iii yy minus=ε を出力するようなプログラムをつくりたい基礎式を導出せよ (ヒント残差の二乗の和が最小になるように係数 a0a1)を定めるのが最小二乗法
である)
57
sumsum
sumsumsumsum
==
====
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
n
ii
n
ii
xxn
xxyyxa
1
2
1
2
1111
2
0
)(
))(())(( (A1-9)
sumsum
sumsumsum
==
===
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
xxn
yxxyna
1
2
1
2
1111
)(
))(()( (A1-10)
よって式(A1-9)(A1-10)を用いれば最も誤差を小さくするような直線 y = a0 + a1x が求められる
y=a1x+a0 にて近似
誤差 ei
x
y
誤差が最小になる関数(直線 y=a1x+a0の場合)
図1 最小二乗による近似
誤差の和Sが最小
S
a0
a1
直線 y=a1x+a0 の近似
誤差の全体の和はS=Σei=Σyi-(a1xi+a0)
Sは変曲点にて最小値を示すすなわち(partSparta0)=0 (partSparta1)=0
図2 a0a1とSの関係
37
4 粘度密度測定 41 はじめに 大量生産を目的とした工業的化学プロセスはほとんど流れ系(流通系)であるそれらの系において操作対象となる各物質の粘度は装置を設計操作する場合きわめて重要
な物性値である 本実験では低分子溶液および高分子溶液の粘度測定を通じて液体の粘度について考察するさらに演習問題を通じて気体液体高分子溶液などの化学プロセスで対象となる物
質の輸送物性(粘度拡散係数)の重要性を認識されたい 42 低分子溶液の粘度 [目的] 種々の濃度のエタノール水溶液の粘度を測定しその溶液の粘度について考察する [概要] 25におけるエチルアルコール濃度 02040506080100 wt の水溶液について流下時間を測定しこの結果より相対粘度絶対粘度運動粘度を求めグラフにするま
た水の密度水-エチルアルコール溶液の密度についてはピクノメーターを用いて決
定する報告書には相対粘度絶対粘度運動粘度 vsエチルアルコール濃度の関係をそれぞれグラフにして提出する
[計算方法] 相対粘度絶対粘度運動粘度の定義は次のようになる
相対粘度 ww
w tdtd
ηη = (41)
η 混合溶液の粘度 [gcms] ηw水の粘度(8007times10-3 gcms) [gcms](25における粘度) d エチルアルコール水溶液の密度 [gcm3] dw水の密度(099704gcm3) [gcm3](25における密度) t エチルアルコール水溶液の流下時間 [s] tw水の流下時間 [s] 下付添字 W 水
絶対粘度 www td
tdη
η= (42)
運動粘度 ν=ηd [cm2s] (43)
38
[実験方法] 1) 粘度計を洗浄し粘度計内 に二連球で空気を送り込み
乾燥させる乾燥しにくい 場合はアセトンを滴下し た後再度二連球で空気 を送り込み乾燥させる 2)ピペットで一定体積(10mℓ) の純水を取り広い口 f から 粘度計に水を入れる 3)粘度計を恒温槽(25)に つけ約 10 分静置する 4)安全ピペッターを口 a に 取り付け液面が b 上部に 到達するまで吸い上げる 5)安全ピペッターを外すと 液面が降下しだす液面が bd 間を通過する時間をスト ップウォッチで測定する
6)純水での測定を 3 回繰り返す 7)純水を粘度計から取り除くその後粘度計内に二連球を用いて空気を送り込み乾燥させる 8)粘度計乾燥後複数の濃度に調整済みのエチルアルコール水溶液(10mℓ)を粘度計にいれ4)~6)の作業を繰り返し行う(3 回)なお濃度の異なるエチルアルコール水溶液を粘度計内に導入する場合には7)と同様に二連球を用いて粘度計内に空気を送り込み乾燥させる
表 4-1 エチルアルコール水溶液の濃度密度相対粘度の関係 エチルアルコール濃度
[wt] 密度 d[gcm3] 相対粘度
η ηw[-] 0
20 40 50 60 80
100
安全ピペッター接続
図 4-1 粘度計
液面の bd間の通過時
間を測定
f
39
43 密度測定 [目的] 本実験では水とエタノールの種々の組成の混合液体について密度を測定し分子間相互
作用について考察する [実験方法] 1)ピクノメーターの容積測定
図 4-2のピクノメーターの空の重量 wg を秤量する
ピクノメーターの蓋を取り外し
ピクノメーターを水で満たす
設定温度を 25として恒温槽 の電源を入れ恒温槽内の温 度が一定になるまで待つな お水温は恒温槽中の水銀温 度計から読む
恒温槽中に水を満たしたピク
ノメーターを入れる
約 10分間静置する
ピクノメーターに蓋をするこのときピクノメーターの容量
よりも余分の水は蓋の上部より排出される
ピクノメーターの外側を乾いた布で拭い秤量する(その重量を
wwg とする)
恒温槽の温度(25)における水の密度 dwgcm3(=099704gcm3)
より次式を用いてピクノメーターの容積を求める
w
w
dww
Vminus
= (44)
図 4-2 ピクノメーター
蓋
40
表 4-2 エチルアルコール水溶液の濃度と密度の測定結果(25) エチルアルコ
ール濃度[wt]
wrsquo[g] ww[g] V[cm3] w[g]
d[gcm3]
0 20 40 50 60 80
100
099704
エチルアルコール濃度[wt] 空のピクノメーターの重量 wrsquo[g] 水を入れたときのピクノメーターの重量 ww[g] ピクノメーターの体積 V[cm3] エタノール水溶液の入れたときのピクノメータの重さ w[g] エタノール水溶液の密度 d[gcm3]
容積 Vを求めたピクノメーターに混合溶液(調整済み)を入れてその重量 wgを秤量し次式で混合溶液の密度を求める
Vwwd minus
= (45)
エタノール濃度と密度 d の関係をグラフにプロットする
41
44 高分子溶液の粘度 [目的] 高分子溶液の粘度測定から分子量の粘度に与える影響について考察する [概要 ] オストワルド粘度計を用い種々の濃度のポリビニルアルコール(PVA ((-CH2CHOH-)n))水溶液の粘度を測定し粘度データよりポリビニルアルコールの分
子量を求める まず 05g100cc の濃度のポリビニルアルコール水溶液を調製する次にこれを原液
とし23 12 13 15の濃度の溶液を調製するこれらの溶液についてオストワルド粘度計を用いてそれぞれ流下時間を測定し相対粘度絶対粘度運動粘度を求め実験デ
ータより極限粘度[η]を求めるまた報告書には相対粘度絶対粘度運動粘度C
)ln( wηη
Cw
w-η
ηη vsポリビニルアルコール濃度の関係をそれぞれグラフにして提出する
[計算方法] エチルアルコール水溶液の粘度測定と同様の手法を用いて粘度の計算を行うなおポリビニルアルコール水溶液の密度はピクノメーターを用いて測定すること 表 4-3 ポリビニルアルコール水溶液の濃度密度相対粘度の関係 ポリビニルアルコール
濃度 [g100cc] 密度 d[gcm3] 相対粘度
η ηw[-] 05times(15) 05times(13) 05times(12) 05times(23)
05
42
[分子量の計算方法] 実験を行った結果以下のような粘度データを得られるとする実験データより極限粘度
を求めポリビニルアルコール(PVA)の分子量Mを決定せよ
PVA 水溶液濃度
C[g100cc]
相対粘度
ηηw[-]
絶対粘度
η[gcms]Cw
w-η
ηη
C)ln( wηη
05times(15) 1031 0008255 031 0305
05times(13) 039 0378
05times(12) 03 0289
05times(23) 0375 0353
05 0364 0334
ηw=8007times10-3 gcms 線状高分子の極限粘度[η]と分子量Mの関係は次式で与えられる [η]=KMα (46) ただしポリビニルアルコールの場合K=666times10-4α=064であるなお極限粘度[η]は次式で定義される
CC w
w
0
-][ limη
ηηη
rarr
= (47)
または
CC
)ln(][ w
0lim
ηηη
rarr
= (48)
よって濃度 CとCw
w-η
ηηまたは濃度 Cと
C)ln( wηη の関係をグラフ化し最小二乗法によ
り切片の値を求めると極限粘度[η]が決定される
Cw
w-η
ηηと C の関係より最小二乗法を用いて切片の値を決定すると(図 43 参照)切片=
03242傾き=00874となるよって極限粘度は以下のようになる[η]=03242同様
にC
)ln( wηη とcの関係より最小二乗法を用いて切片の値を決定する
(図 44参照)と切片=03249傾き=00256となり極限粘度は以下のようになる[η]=03249
Cw
w-η
ηηと Cの関係より決定した[η]=03242を用いてポリビニルアルコール(PVA)の
分子量 Mを計算する(46)式より以下のように PVAの分子量 Mを計算することができるM=([η]K)1α
=(03242(666times10-4))(1064)
=15811
43
y = 00874x + 03242
0
02
04
06
08
1
0 01 02 03 04 05 06 07
c[g100cc]
(η-ηw)(ηwc)
cw
w
η
ηηminus
極限粘度[η]
図 43 298Kにおける PVA濃度 CとCw
w-η
ηηの関係
y = 00256x + 03249
0
02
04
06
08
1
0 01 02 03 04 05 06 07
c[g100cc]
(ln(ηη
w))c
c)ln( wηη
極限粘度[η]
図 44 298Kにおける PVA濃度 CとC
)ln( wηη の関係
44
5 植物からの DNAの抽出 51 はじめに 分子レベルでの遺伝子の構造解明や遺伝子の発現に関する研究は近年急速に発展している
これら生命現象のしくみを分子レベルで解明しようという分子生物学の分野ではさまざま
な遺伝子の解析や応用方法が開発され我々の生活に身近なものになりつつある 本実験では初歩的な分子生物学に関する実験として植物(タマネギ)からの DNA の
抽出を行い抽出した遺伝子の電気泳動法による分離実験を試みる 52 試薬および器具 試薬 タマネギ(細胞中から遺伝子の抽出を行う) 台所用洗剤(洗剤中に含まれる界面活性剤には植物の細胞膜およびタンパク質を破壊す
る働きがある) 塩化ナトリウム(DNAは塩化ナトリウム水溶液に溶解し易い性質がある) エタノール(予め冷やしておくDNAはエタノールにほとんど溶解しない) 制限酵素(DNAを一定の部位で切断する働きを働きがある) TE緩衝液(pH緩衝剤が入った溶液) 器具 ビーカーミキサーフィルターメスシリンダー駒込ピペットガラス棒 マイクロピペット電気泳動装置ポラロイドカメラ 53 実験方法 1)タマネギは 1回の実験で半個のうち内側の半分程度を使用するタマネギ水 30ml台所用洗剤数滴をミキサー用ガラス容器に入れ40~60秒程度(固体状のタマネギがなくなる頃が目安)ミキサーにて混合する
2) 1)で作成した混合溶液をビーカーに移し約5g程度の塩化ナトリウムを加えガラス棒で静かに攪拌する粘性の大きな溶液が得られる
3) 2)で作成した溶液をフィルターを用いて濾過し濾液を回収する 4) 濾液の約2倍程度の量の冷エタノールをビーカーの壁伝いに静かに注ぐ 5) ビーカーを揺するとエタノール層に白くふわふわしたものが浮いてくるこれが DNAであるガラス棒で DNAを巻き取りシャーレ上にて DNAを回収する顕微鏡を用いて回収した DNAの状態を観察する
6)マイクロチューブ(容量 15ml)中に用意した 70エタノールを 8 分目程度まで注ぐ5)にて回収された DNAをマイクロピペットを用いて70エタノールの入ったマイクロチューブ中に移す軽く混ぜることによりDNA から不要な物質を洗い流す遠心分離してDNA をマイクロチューブの底に沈めた後溶液を捨てて DNA を乾かす乾いたらTE緩衝溶液を 1ml加えて放置するDNAの溶液が得られる
54 電気泳動装置による DNAの観察
本実験は職員と一緒に行うこと 実験を行う人はビニール手袋をすること 1) 抽出した DNAを電気泳動装置で観察するマイクロピペットを用いて以下のように調製した DNAの混合溶液を調製する(いずれの溶液も調製済)
45
2) マイクロピペットを用いてアガロースゲルの試料を流し込む穴(ウェル)に1)にて調製した溶液 Aおよび Bを注ぎ込む注入量は20μℓとする電気泳動装置のスイッチを入れて100Vの電流を流しアガロースゲル内にて DNAを電気泳動させる
3) 試料に予め加えられておいた青色の色素が 7 分目程度まで進んだら電気泳動を中止する(約 30分程度)
4) (ここでの作業は職員が行う) アガロースゲルを取り出し染色液に浸す染色後ゲルを取り出しポラロイドカメラで
DNAの泳動状態を撮影する
+ -
アガロースゲル
試料を流し込む穴(ウェル)
図 51 電気泳動装置
6 5 4 3 2 1
図 52 DNAの電気泳動写真の一例
55 電気泳動装置の原理 電気泳動装置の原理図を以下に示すアガロースゲル(寒天から不純物を除いたもの)中
に DNAをセットし電流を流すとDNAは電流の向きとは逆にマイナスからプラス方向
調製済 溶液 A(制限酵素なし) 水 11μℓ 10timesH Buffer 2microℓ 植物 DNA 5μℓ
調製済 溶液 B(制限酵素 Eco RI入り) 水 11μℓ 10timesH Buffer 2microℓ 植物 DNA 5μℓ 制限酵素 2μℓ
1 DNA(タマネギ)+制限酵素 2 DNA(タマネギ)+制限酵素 3 DNA(タマネギ) 4 λ-DNA(大腸菌)+制限酵素 5 λ-DNA(大腸菌) 6 サイズマーカー
500bp
46
に動く(このことを電気泳動という)これはDNA のリン酸部分が負に帯電しているためでありまたDNAはその長さにより泳動距離が異なる(短い遺伝子ほど長く泳動する)電気泳動ではこの性質を利用してDNAを大きさごとに分離することができる
塩基対数によってDNAを分離
EtBr (蛍光試薬)DNAの二本鎖内に入り込む
発光
UVλ=302nm
励起
分離後のアガロースゲルをエチジウムブロマイド(EtBr)溶液に浸す
DNAを含んだ溶液
アガロースゲル
リン酸部分が負に帯電
塩基 (ATGC)-
+
カメラで撮影
電圧
DNA構成成分(dNTPs)
バンドが明る
DNA量が
バンド(DNAの存在)
図 53 電気泳動の原理
56 制限酵素とは DNA は4 種類のヌクレオチド(GATC)が不規則につながってできている制限酵素はDNAの特定のヌクレオチドが並んでいる部分を切断する制限酵素には様々な種類がありEco RI(エコアールワン)と呼ばれる酵素は「GAATTC」といった並びの部分だけを切断することができる
GAATTC
CTTAAG
制限酵素
Eco RI
AAGCTT
TTCGAA
制限酵素
Hin dIII
図 54 制限酵素による DNAの切断
レポートについて 1 実験方法および実験結果の整理方法については指針書を参考にすること 2 実験結果については電気泳動の結果について考察すること(制限酵素の影響などにつ
いてまとめてください)
47
6 染色実験
61 はじめに
現在私達の身の周りでは様々な染料が使われている例えばT シャツやジーンズな
どの衣服は橙黄赤青など様々な色に染められている他にも私達が気付かないと
ころで多くの染色された製品を使用しているそこで本実験では高校の化学で学んだ
アゾ染料を合成してみるアゾ染料はアニリンを原料として作られているアニリンはベ
ンゼン環にアミノ基(-NH2)がついたものであるアニリンは無色の液体で水に溶けにく
くアンモニアより弱い塩基性を示すまたさらし粉(CaClO(ClO)H2O)水溶液を加えると
赤紫色を呈するこの呈色反応はアニリン特有のものであるので検出反応に用いられる
このアニリンを出発物質としてアゾ染料を合成してみる
62 試薬および使用器具
【試薬】 ①05moll 水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液
②2-ナフトール ③フェノール ④6moll 塩酸
⑤亜硝酸ナトリウム ⑥アニリン ⑦氷
【器具類】 ①電子天秤 ②50mℓビーカー ③100mℓビーカー
④ガラス棒 ⑤布(ガーゼなど) ⑥ピンセット
⑦ポリ手袋 ⑧ドライヤー ⑨シャーレ
10駒込ピペット(10ml ガラス製)
11駒込ピペット(1ml プラスチック製)
63 実験方法
1) 50mℓビーカーの中に 05molℓ水酸化ナトリウム水溶液 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回
NaOH 水溶液を分取するほぼ 20 mℓ分取できれば可)と 2-ナフトールを約 01g 入れ
よくかき混ぜる調製した溶液の中に布をつけその布はガラス棒でしぼってから(布
をガラス棒ですくいあげればよい)シャーレに広げる温度の異なる条件下(常温およ
び低温)で染料の合成実験を行うため布は最低 2枚調製した溶液と接触させそれ
ぞれ別々のシャーレ(低温用および常温用)に広げる
2) 新しいビーカーに水を約 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回分取)と 6molℓ塩酸約 4mℓ(10m
ℓ駒込ピペットで目分量で可)さらにアニリン約 1mℓ(プラスチック製 1 mℓ駒込ピペッ
ト)を入れてよくかき混ぜる染料の合成を常温および低温下で行うためこの溶液を
2つ調整する
低温下で反応させる溶液は恒温槽で 10~15 分ほどよく冷やした後亜硝酸ナトリウ
ム 05g を加えてよくかき混ぜる
常温下で反応させる溶液には冷却作業を行わずに亜硝酸ナトリウム 05g を加えて
よくかき混ぜる
3) 2)でつくった水溶液をシャーレに広げた布に注ぎ生成される染料を布によく染み
込ませ5分程放置する
4) 色の付いた布を取り出してポリ手袋をした手できれいに水洗いをし乾燥させる
48
5) 色差計を用いて乾燥した布の Lab(L明度aおよび b色度)を測定する
2)で作った溶液は5以下では無色の溶液ですが5以上になると淡い黄色になりま
す
【解説】
アゾ染料はアゾ基(-N=N-)を持っていてこのアゾ基によって鮮やかな橙色を呈色し
ます今回合成したアゾ染料は図の 1-フェニルアゾ-2-ナフトールです意外かもしれ
ませんが指示薬として使われているフェノールフタレインもアゾ化合物ですフェノール
フタレインは pH の変化によって色が出てきす染料の中でも最初は無色のものもありますが
温度を変化させたり酸性やアルカリ性にすると色が出てきます
ベンゼン ニトロベンゼン
N2Cl
ニトロ化 濃硫酸(濃硝酸)
還元反応 濃塩酸
(Sn又は Fe)
アニリン塩酸塩
遊離反応 NaOH
アニリン塩酸塩に強塩基を反応させる
と弱塩基であるアニリンが遊離する
氷冷+亜硝酸ナトリウム アニリン
塩酸
ジアゾ化
塩化ベンゼンジアゾニウム
塩化ベンゼンジアゾニウム
は熱によって窒素とフェノー
ルに分解される
カップリング
C10H7ONa (ナトリウム 2-ナフトキシド)
O
N =
1-フェニルアゾ 2-ナフトール
NH3Cl NH2
49
7 ガスクロマトグラフ質量分析計による茶葉中のカフェインの分析 71 はじめに ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)は極めて低い濃度の化学物質の同定や未知物質の構造決定に極めて強力な分析機器の一つであるGCMSを用いるとサンプルの中に含まれているある成分の分子構造(カフェインの分子構造を図 71に示す)やその量が分かりますもちろん分析機器ですので測定できる物質対象となる系や測定条件にはある
程度の制約があります混合物質を分離するガスクロマトグラフ(Gas ChromatographGC)と分離された成分(物質)を分析(構造決定と濃度測定)する質量分析計(Mass SpectrometerMS)を組み合わせた装置であるこの装置は有機化学生化学環境化学などの多くの分野で非常に多用されている例えば極めて低い濃度でも生体へ強い影響が懸念されるダイ
オキシン類などの土壌や河川の水中での含有率の決定や食品や医薬品中の微量成分の決定
にも利用されている 一方日本人に長い間親しまれてきた緑茶が近年産業界や医学
界で注目されている茶葉にはカフェイン(分子構造図 71)カテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドなどの有用成分が多く含まれておりその効能が注目されている 本実験では茶葉中に含まれるカフェインに対してGCMSを用いて分析する茶葉中には種々の物質が含まれておりGCMS分析を容易にするため前処理として超臨界二酸化炭素抽出(4015MPa程度の高圧力の二酸化炭素を溶剤として利用)により茶葉からカフェインの抽出を行いそのサンプルを GCMSにて分析する
図 71 カフェインの分子構造 図 72 物質の分析 個々の物質や装置についてはインターネットにより下記のWebサイトのフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』などにより調べるとよいカフェイン(caffeine)はアルカロイドの一種プリン環を持つプリンアルカロイドの一種でコーヒー類に含まれることか
らこの名がある化学名は137-トリメチルキサンチン(C8H10N4O2) コーヒーコーラ緑茶紅茶ガラナココアなどに含まれる(量は緑茶が一番多い)結晶は一水和物(C8H10N4O2bullH2O)もしくは無水物(無水カフェインC8H10N4O2)として得られ
る白色の針状または六角柱状結晶で匂いはなく味は苦い融点は 238昇華性がある出典フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』httpwwwwikipediaorg 装置「GCMS」httpwwwanshimadzucojpproductsgcmsqp2010htm (島津) 「超臨界抽出装置」httpwwwkagakucomjasco39-49html (日本分光)
50
レポート課題 1茶葉中に含まれるカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドの中から3つの物質を選びその物質について調べた結果を A4 レポート用紙2枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
2GCMS についてA4 レポート用紙1枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
3与えられたサンプルは茶葉1gから抽出されたのである実験結果よりもとの茶葉
1g中に含まれるカフェインの量を推算し計算式とあわせて示すこと 72 原理および装置 実験で使用する島津製の GCMS装置の全体図を図 73に原理の概略を図 74に示す
1
23
4
5
67 8
9
10
キャリアーガス
試料物質
1ボンベ(He)2圧力計3マイクロシリンジ4サンプラー5試料導入部6分離カラム
7セパレーター8イオン化室9磁石10電子増倍管11記録計
11
図 74 ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)の概略図
サンプルフォルダー
51
GCMS 装置は分離部である図中の 1~6 のガスクロマトグラフ(GC)と7~11 の検出部である質量分析計(MS)から構成される 3のマイクロシリンジを用いて試料を GCMSに導入する導入された試料は5試料導入部でガス化され6分離カラムに導入される分離カラムには吸着剤が充填されおり混合物の試料を導入した場合各物質と吸着剤との
親和性の違いにより各物質の分離カラムから排出されるタイミングは異なる分離カラム
を排出された試料は8イオン化室でイオン化され10電子倍増管にて検出される アセトンに溶解したカフェインの GCMSによる分析結果の一例を以下に示す図 75にク
ロマトグラム図 76にカフェインのピークのマススペクトルを示す
図 75 GCMSにより得られたクロマトグラム
横軸がリテンションタイムで縦軸がピーク強度を表す
図 76 カフェインのマススペクトルとカフェイン(分子量MW=194)の構造
(図 75中のリテンションタイム 126min付近のピークに起因するマススペクトル) 茶葉中にはカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイド以外にも繊維であるセルロースなど多くの物質が含まれているため茶葉そのものを
そのままサンプルとしてGCMSで分析することは困難であるセルロースなどの分子量の大きな物質はカラムに詰まってしまい分析できないそこで今回は超臨界二酸化炭素
による抽出により主にカフェインを他の物質と分離抽出した通常よく利用されるアセ
トン抽出(アセトンに茶葉を浸し特定の成分を抽出する)ではカフェイン以外にも多く
の物質が抽出されるため図 75 のような単独のピークを得ることは難しく複数のピークがクロマトグラムに見られるこのサンプル(この場合茶葉からの抽出物)にはカフェ
イン以外の不純物は少なかったがガスクロマトグラフの分離カラムによりさらにそれ
らの混合物が精度よく分離されるクロマトグラムのピークはそれらサンプル中に含まれ
ていた個々の物質を表しているクロマトグラムのピークを選択することで分子構造解析
したい物質を選んだことになる選択したクロマトグラムのピークの表している物質(ここ
ではカフェイン)に対応するマススペクトルが図 76 に表示されているマススペクトル
52
で横軸がその成分(ここではカフェイン)分子を構成している原子の原子量で縦軸がそ
の量を表しているのでマススペクトルから分子構造を解析するためにコンピュータ内
に蓄えられた物質ごとのマススペクトルデータと今回測定したマススペクトル(分子内に含
まれている各原子の数)を比較することで測定したサンプル中のクロマトピークを選択し
た分子がどのような原子をどれだけ含んだ分子であったかがわかりそれからその物質
がどのような分子構造の物質である可能性が高いかをコンピュータが検索し結果を示す 73 実験サンプルの設置と GCMS装置の操作方法 実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS装置のサンプルフォルダ
ー(図 73)にセットするこのサンプルは茶葉 1gを 50ccの高圧セルにて超臨界二酸化炭素を利用して4015MPa2時間接触の条件で抽出した固体を10gのアセトンに溶かしたものである またコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に装置および装置制
御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 本実験で使用する GCMS の操作は全てコンピュータのモニター上で GCMS の解析プログラムソフトを使用することで行うコンピュータの操作方法を以下に示す なおコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS 装置のサンプルフォルダー(図 73)にセットするまた装置および装置制御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 1)パソコンのデスクトップ上のアイコン「GCMS 分析」をクリックすると以下のようにGCMS制御プログラムを起動するその後「OK」ボタンをクリックする
図 77 GCMD分析用ソフトウェア「GCMS分析」の起動
まず「GC-MS分析」をクリック
「OK」ボタンをクリック
53
2)制御プログラムが起動されパソコンと GCMSの接続が開始される
図 78 「GCMS分析」の接続確認画面 3)GCMSとパソコンの接続が完了すると以下のような画面が表示される
図 79 「GCMS分析」操作画面
4)マススペクトルによる分子構造の解析 サンプル(この場合茶葉からの抽出物)には多くの物質が混じり合っていたがガス
クロマトグラフの分離カラムによりそれらの混合物が精度よく分離されるクロマトグラ
ムのピークはそれらサンプル中に含まれていた個々の物質を表しているクロマトグラム
のピークを選択することで分子構造解析したい物質を選んだことになる選択したクロマ
トグラムのピークの表している物質(ここではカフェイン)に対応するマススペクトルを選
択するマススペクトルは横軸が原子量で縦軸がその量を表しているのでマススペク
トルから分子構造を解析するために「定性処理」を行う シミラリティ検索結果が表示され分析により得られたスペクトルと類似のスペクトルを有
する物質の一覧が表示される上部に表示される物質ほどスペクトルが一致していること
を示す
接続状況が表示される
「トップへ」
をクリック
54
図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果
図 711 表示スペクトルのシミラリティ検索結果 10)図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果の印刷 「レポート(R)」をクリックし「検索結果(R)」をクリックすると検索結果が印刷される
GC-MS 分析で得られたマスス
ペクトル
データベース中
のマススペクト
ル
55
参考資料 生理活性物質の精製 カフェインの利尿作用のように生物活動に影響を与える物質を生理活性物質といいます
天然物には生理活性物質を多く含むものがあります一般に天然物は多くの成分を含ん
でおり特定の生理活性物質を分離抽出するには種々の分離技術が必要ですまた生
理活性物質には60以上の温度でその生理活性を失う(失活)ものや溶剤として広く用いられているクロロホルムなどの有機溶剤中で失活するものが多いそこでこれら生理活性
物質の分離精製技術の開発が望まれており30~60程度のマイルドな温度条件で操作できる二酸化炭素を機能性溶媒として利用する超臨界抽出も有効な分離技術として注目されて
いる超臨界二酸化炭素は気体と液体の中間の性質を持ち物質の分離に役立っています 臨界点付近の高密度気体は超臨界ガスまたは超臨界流体と呼ばれ臨界圧力前後でそ
の溶解能力が著しく変化することから工業的にも種々の分野で利用されています一例と
して超臨界二酸化炭素(SC-CO2)によるコーヒー豆からのカフェインの抽出プロセス(a)
ならびに超臨界二酸化炭素に対するカフェインの溶解度(b)を図に示します図(c)に示す
ように固体のカフェインがガスである超臨界二酸化炭素に溶解します
このように超臨界二酸化炭素を用いた技術はコーヒー豆からのカフェインの抽出プロ
ポリスからの生理活性物質の抽出に利用されています
図 超臨界二酸化炭素抽出を用いたコーヒー豆からのカフェインの抽出
56
付表 最小二乗法について 直線で近似する場合 f (x) = a0 + a1x (A1-1) 式(A1-1)のように近似させるとする測定値 yiとの残差を eiとすると式(A1-2)のようになる ei = yi - f (xi) = yi - ( a0 + a1xi ) (A1-2) ここで式(A1-2)の両辺を二乗してその i に関する総和をとりその値を S とすると次式となる
sumsum==
+minus==n
iii
n
ii xaayeS
1
210
1
2 )( (A1-3)
S を最小化するような a0a1を求める式(A1-3)を a0a1について偏微分すると次式とな
る
sum=
+minuspartpart
=partpart n
iii xaay
aaS
1
210
00)( sum
=
+minusminus=n
iii xaay
110 )(2 (A1-4)
同様にa1について編微分すると次式のようになる
sum=
+minusminus=partpart n
iiii xxaay
aS
110
1])([2 (A1-5)
Sが最小となる時は次式が同時に満たされる時である
00=
partpartaS
01=
partpartaS
(A1-6)
よって誤差が最小となる a0a1を求めるためには式(A1-6)を連立して解けばよい
sumsumsum===
+=n
ii
n
i
n
ii xaay
111
10 1 (A1-7)
sumsumsum===
+=n
ii
n
ii
n
iii xaxaxy
1
2
11
10 (A1-8)
式(A1-7)と式(A1-8)を a0a1を変数とみなし連立して解くと次式を得る
n組のデータ(xiyi)(i=12hellipn)に対して回帰直線 y= a0 + a1x を最小二乗法で求めて出力しデータ番号 iデータ yi直線で推定した値 )( ii bxay += および残差
iii yy minus=ε を出力するようなプログラムをつくりたい基礎式を導出せよ (ヒント残差の二乗の和が最小になるように係数 a0a1)を定めるのが最小二乗法
である)
57
sumsum
sumsumsumsum
==
====
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
n
ii
n
ii
xxn
xxyyxa
1
2
1
2
1111
2
0
)(
))(())(( (A1-9)
sumsum
sumsumsum
==
===
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
xxn
yxxyna
1
2
1
2
1111
)(
))(()( (A1-10)
よって式(A1-9)(A1-10)を用いれば最も誤差を小さくするような直線 y = a0 + a1x が求められる
y=a1x+a0 にて近似
誤差 ei
x
y
誤差が最小になる関数(直線 y=a1x+a0の場合)
図1 最小二乗による近似
誤差の和Sが最小
S
a0
a1
直線 y=a1x+a0 の近似
誤差の全体の和はS=Σei=Σyi-(a1xi+a0)
Sは変曲点にて最小値を示すすなわち(partSparta0)=0 (partSparta1)=0
図2 a0a1とSの関係
38
[実験方法] 1) 粘度計を洗浄し粘度計内 に二連球で空気を送り込み
乾燥させる乾燥しにくい 場合はアセトンを滴下し た後再度二連球で空気 を送り込み乾燥させる 2)ピペットで一定体積(10mℓ) の純水を取り広い口 f から 粘度計に水を入れる 3)粘度計を恒温槽(25)に つけ約 10 分静置する 4)安全ピペッターを口 a に 取り付け液面が b 上部に 到達するまで吸い上げる 5)安全ピペッターを外すと 液面が降下しだす液面が bd 間を通過する時間をスト ップウォッチで測定する
6)純水での測定を 3 回繰り返す 7)純水を粘度計から取り除くその後粘度計内に二連球を用いて空気を送り込み乾燥させる 8)粘度計乾燥後複数の濃度に調整済みのエチルアルコール水溶液(10mℓ)を粘度計にいれ4)~6)の作業を繰り返し行う(3 回)なお濃度の異なるエチルアルコール水溶液を粘度計内に導入する場合には7)と同様に二連球を用いて粘度計内に空気を送り込み乾燥させる
表 4-1 エチルアルコール水溶液の濃度密度相対粘度の関係 エチルアルコール濃度
[wt] 密度 d[gcm3] 相対粘度
η ηw[-] 0
20 40 50 60 80
100
安全ピペッター接続
図 4-1 粘度計
液面の bd間の通過時
間を測定
f
39
43 密度測定 [目的] 本実験では水とエタノールの種々の組成の混合液体について密度を測定し分子間相互
作用について考察する [実験方法] 1)ピクノメーターの容積測定
図 4-2のピクノメーターの空の重量 wg を秤量する
ピクノメーターの蓋を取り外し
ピクノメーターを水で満たす
設定温度を 25として恒温槽 の電源を入れ恒温槽内の温 度が一定になるまで待つな お水温は恒温槽中の水銀温 度計から読む
恒温槽中に水を満たしたピク
ノメーターを入れる
約 10分間静置する
ピクノメーターに蓋をするこのときピクノメーターの容量
よりも余分の水は蓋の上部より排出される
ピクノメーターの外側を乾いた布で拭い秤量する(その重量を
wwg とする)
恒温槽の温度(25)における水の密度 dwgcm3(=099704gcm3)
より次式を用いてピクノメーターの容積を求める
w
w
dww
Vminus
= (44)
図 4-2 ピクノメーター
蓋
40
表 4-2 エチルアルコール水溶液の濃度と密度の測定結果(25) エチルアルコ
ール濃度[wt]
wrsquo[g] ww[g] V[cm3] w[g]
d[gcm3]
0 20 40 50 60 80
100
099704
エチルアルコール濃度[wt] 空のピクノメーターの重量 wrsquo[g] 水を入れたときのピクノメーターの重量 ww[g] ピクノメーターの体積 V[cm3] エタノール水溶液の入れたときのピクノメータの重さ w[g] エタノール水溶液の密度 d[gcm3]
容積 Vを求めたピクノメーターに混合溶液(調整済み)を入れてその重量 wgを秤量し次式で混合溶液の密度を求める
Vwwd minus
= (45)
エタノール濃度と密度 d の関係をグラフにプロットする
41
44 高分子溶液の粘度 [目的] 高分子溶液の粘度測定から分子量の粘度に与える影響について考察する [概要 ] オストワルド粘度計を用い種々の濃度のポリビニルアルコール(PVA ((-CH2CHOH-)n))水溶液の粘度を測定し粘度データよりポリビニルアルコールの分
子量を求める まず 05g100cc の濃度のポリビニルアルコール水溶液を調製する次にこれを原液
とし23 12 13 15の濃度の溶液を調製するこれらの溶液についてオストワルド粘度計を用いてそれぞれ流下時間を測定し相対粘度絶対粘度運動粘度を求め実験デ
ータより極限粘度[η]を求めるまた報告書には相対粘度絶対粘度運動粘度C
)ln( wηη
Cw
w-η
ηη vsポリビニルアルコール濃度の関係をそれぞれグラフにして提出する
[計算方法] エチルアルコール水溶液の粘度測定と同様の手法を用いて粘度の計算を行うなおポリビニルアルコール水溶液の密度はピクノメーターを用いて測定すること 表 4-3 ポリビニルアルコール水溶液の濃度密度相対粘度の関係 ポリビニルアルコール
濃度 [g100cc] 密度 d[gcm3] 相対粘度
η ηw[-] 05times(15) 05times(13) 05times(12) 05times(23)
05
42
[分子量の計算方法] 実験を行った結果以下のような粘度データを得られるとする実験データより極限粘度
を求めポリビニルアルコール(PVA)の分子量Mを決定せよ
PVA 水溶液濃度
C[g100cc]
相対粘度
ηηw[-]
絶対粘度
η[gcms]Cw
w-η
ηη
C)ln( wηη
05times(15) 1031 0008255 031 0305
05times(13) 039 0378
05times(12) 03 0289
05times(23) 0375 0353
05 0364 0334
ηw=8007times10-3 gcms 線状高分子の極限粘度[η]と分子量Mの関係は次式で与えられる [η]=KMα (46) ただしポリビニルアルコールの場合K=666times10-4α=064であるなお極限粘度[η]は次式で定義される
CC w
w
0
-][ limη
ηηη
rarr
= (47)
または
CC
)ln(][ w
0lim
ηηη
rarr
= (48)
よって濃度 CとCw
w-η
ηηまたは濃度 Cと
C)ln( wηη の関係をグラフ化し最小二乗法によ
り切片の値を求めると極限粘度[η]が決定される
Cw
w-η
ηηと C の関係より最小二乗法を用いて切片の値を決定すると(図 43 参照)切片=
03242傾き=00874となるよって極限粘度は以下のようになる[η]=03242同様
にC
)ln( wηη とcの関係より最小二乗法を用いて切片の値を決定する
(図 44参照)と切片=03249傾き=00256となり極限粘度は以下のようになる[η]=03249
Cw
w-η
ηηと Cの関係より決定した[η]=03242を用いてポリビニルアルコール(PVA)の
分子量 Mを計算する(46)式より以下のように PVAの分子量 Mを計算することができるM=([η]K)1α
=(03242(666times10-4))(1064)
=15811
43
y = 00874x + 03242
0
02
04
06
08
1
0 01 02 03 04 05 06 07
c[g100cc]
(η-ηw)(ηwc)
cw
w
η
ηηminus
極限粘度[η]
図 43 298Kにおける PVA濃度 CとCw
w-η
ηηの関係
y = 00256x + 03249
0
02
04
06
08
1
0 01 02 03 04 05 06 07
c[g100cc]
(ln(ηη
w))c
c)ln( wηη
極限粘度[η]
図 44 298Kにおける PVA濃度 CとC
)ln( wηη の関係
44
5 植物からの DNAの抽出 51 はじめに 分子レベルでの遺伝子の構造解明や遺伝子の発現に関する研究は近年急速に発展している
これら生命現象のしくみを分子レベルで解明しようという分子生物学の分野ではさまざま
な遺伝子の解析や応用方法が開発され我々の生活に身近なものになりつつある 本実験では初歩的な分子生物学に関する実験として植物(タマネギ)からの DNA の
抽出を行い抽出した遺伝子の電気泳動法による分離実験を試みる 52 試薬および器具 試薬 タマネギ(細胞中から遺伝子の抽出を行う) 台所用洗剤(洗剤中に含まれる界面活性剤には植物の細胞膜およびタンパク質を破壊す
る働きがある) 塩化ナトリウム(DNAは塩化ナトリウム水溶液に溶解し易い性質がある) エタノール(予め冷やしておくDNAはエタノールにほとんど溶解しない) 制限酵素(DNAを一定の部位で切断する働きを働きがある) TE緩衝液(pH緩衝剤が入った溶液) 器具 ビーカーミキサーフィルターメスシリンダー駒込ピペットガラス棒 マイクロピペット電気泳動装置ポラロイドカメラ 53 実験方法 1)タマネギは 1回の実験で半個のうち内側の半分程度を使用するタマネギ水 30ml台所用洗剤数滴をミキサー用ガラス容器に入れ40~60秒程度(固体状のタマネギがなくなる頃が目安)ミキサーにて混合する
2) 1)で作成した混合溶液をビーカーに移し約5g程度の塩化ナトリウムを加えガラス棒で静かに攪拌する粘性の大きな溶液が得られる
3) 2)で作成した溶液をフィルターを用いて濾過し濾液を回収する 4) 濾液の約2倍程度の量の冷エタノールをビーカーの壁伝いに静かに注ぐ 5) ビーカーを揺するとエタノール層に白くふわふわしたものが浮いてくるこれが DNAであるガラス棒で DNAを巻き取りシャーレ上にて DNAを回収する顕微鏡を用いて回収した DNAの状態を観察する
6)マイクロチューブ(容量 15ml)中に用意した 70エタノールを 8 分目程度まで注ぐ5)にて回収された DNAをマイクロピペットを用いて70エタノールの入ったマイクロチューブ中に移す軽く混ぜることによりDNA から不要な物質を洗い流す遠心分離してDNA をマイクロチューブの底に沈めた後溶液を捨てて DNA を乾かす乾いたらTE緩衝溶液を 1ml加えて放置するDNAの溶液が得られる
54 電気泳動装置による DNAの観察
本実験は職員と一緒に行うこと 実験を行う人はビニール手袋をすること 1) 抽出した DNAを電気泳動装置で観察するマイクロピペットを用いて以下のように調製した DNAの混合溶液を調製する(いずれの溶液も調製済)
45
2) マイクロピペットを用いてアガロースゲルの試料を流し込む穴(ウェル)に1)にて調製した溶液 Aおよび Bを注ぎ込む注入量は20μℓとする電気泳動装置のスイッチを入れて100Vの電流を流しアガロースゲル内にて DNAを電気泳動させる
3) 試料に予め加えられておいた青色の色素が 7 分目程度まで進んだら電気泳動を中止する(約 30分程度)
4) (ここでの作業は職員が行う) アガロースゲルを取り出し染色液に浸す染色後ゲルを取り出しポラロイドカメラで
DNAの泳動状態を撮影する
+ -
アガロースゲル
試料を流し込む穴(ウェル)
図 51 電気泳動装置
6 5 4 3 2 1
図 52 DNAの電気泳動写真の一例
55 電気泳動装置の原理 電気泳動装置の原理図を以下に示すアガロースゲル(寒天から不純物を除いたもの)中
に DNAをセットし電流を流すとDNAは電流の向きとは逆にマイナスからプラス方向
調製済 溶液 A(制限酵素なし) 水 11μℓ 10timesH Buffer 2microℓ 植物 DNA 5μℓ
調製済 溶液 B(制限酵素 Eco RI入り) 水 11μℓ 10timesH Buffer 2microℓ 植物 DNA 5μℓ 制限酵素 2μℓ
1 DNA(タマネギ)+制限酵素 2 DNA(タマネギ)+制限酵素 3 DNA(タマネギ) 4 λ-DNA(大腸菌)+制限酵素 5 λ-DNA(大腸菌) 6 サイズマーカー
500bp
46
に動く(このことを電気泳動という)これはDNA のリン酸部分が負に帯電しているためでありまたDNAはその長さにより泳動距離が異なる(短い遺伝子ほど長く泳動する)電気泳動ではこの性質を利用してDNAを大きさごとに分離することができる
塩基対数によってDNAを分離
EtBr (蛍光試薬)DNAの二本鎖内に入り込む
発光
UVλ=302nm
励起
分離後のアガロースゲルをエチジウムブロマイド(EtBr)溶液に浸す
DNAを含んだ溶液
アガロースゲル
リン酸部分が負に帯電
塩基 (ATGC)-
+
カメラで撮影
電圧
DNA構成成分(dNTPs)
バンドが明る
DNA量が
バンド(DNAの存在)
図 53 電気泳動の原理
56 制限酵素とは DNA は4 種類のヌクレオチド(GATC)が不規則につながってできている制限酵素はDNAの特定のヌクレオチドが並んでいる部分を切断する制限酵素には様々な種類がありEco RI(エコアールワン)と呼ばれる酵素は「GAATTC」といった並びの部分だけを切断することができる
GAATTC
CTTAAG
制限酵素
Eco RI
AAGCTT
TTCGAA
制限酵素
Hin dIII
図 54 制限酵素による DNAの切断
レポートについて 1 実験方法および実験結果の整理方法については指針書を参考にすること 2 実験結果については電気泳動の結果について考察すること(制限酵素の影響などにつ
いてまとめてください)
47
6 染色実験
61 はじめに
現在私達の身の周りでは様々な染料が使われている例えばT シャツやジーンズな
どの衣服は橙黄赤青など様々な色に染められている他にも私達が気付かないと
ころで多くの染色された製品を使用しているそこで本実験では高校の化学で学んだ
アゾ染料を合成してみるアゾ染料はアニリンを原料として作られているアニリンはベ
ンゼン環にアミノ基(-NH2)がついたものであるアニリンは無色の液体で水に溶けにく
くアンモニアより弱い塩基性を示すまたさらし粉(CaClO(ClO)H2O)水溶液を加えると
赤紫色を呈するこの呈色反応はアニリン特有のものであるので検出反応に用いられる
このアニリンを出発物質としてアゾ染料を合成してみる
62 試薬および使用器具
【試薬】 ①05moll 水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液
②2-ナフトール ③フェノール ④6moll 塩酸
⑤亜硝酸ナトリウム ⑥アニリン ⑦氷
【器具類】 ①電子天秤 ②50mℓビーカー ③100mℓビーカー
④ガラス棒 ⑤布(ガーゼなど) ⑥ピンセット
⑦ポリ手袋 ⑧ドライヤー ⑨シャーレ
10駒込ピペット(10ml ガラス製)
11駒込ピペット(1ml プラスチック製)
63 実験方法
1) 50mℓビーカーの中に 05molℓ水酸化ナトリウム水溶液 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回
NaOH 水溶液を分取するほぼ 20 mℓ分取できれば可)と 2-ナフトールを約 01g 入れ
よくかき混ぜる調製した溶液の中に布をつけその布はガラス棒でしぼってから(布
をガラス棒ですくいあげればよい)シャーレに広げる温度の異なる条件下(常温およ
び低温)で染料の合成実験を行うため布は最低 2枚調製した溶液と接触させそれ
ぞれ別々のシャーレ(低温用および常温用)に広げる
2) 新しいビーカーに水を約 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回分取)と 6molℓ塩酸約 4mℓ(10m
ℓ駒込ピペットで目分量で可)さらにアニリン約 1mℓ(プラスチック製 1 mℓ駒込ピペッ
ト)を入れてよくかき混ぜる染料の合成を常温および低温下で行うためこの溶液を
2つ調整する
低温下で反応させる溶液は恒温槽で 10~15 分ほどよく冷やした後亜硝酸ナトリウ
ム 05g を加えてよくかき混ぜる
常温下で反応させる溶液には冷却作業を行わずに亜硝酸ナトリウム 05g を加えて
よくかき混ぜる
3) 2)でつくった水溶液をシャーレに広げた布に注ぎ生成される染料を布によく染み
込ませ5分程放置する
4) 色の付いた布を取り出してポリ手袋をした手できれいに水洗いをし乾燥させる
48
5) 色差計を用いて乾燥した布の Lab(L明度aおよび b色度)を測定する
2)で作った溶液は5以下では無色の溶液ですが5以上になると淡い黄色になりま
す
【解説】
アゾ染料はアゾ基(-N=N-)を持っていてこのアゾ基によって鮮やかな橙色を呈色し
ます今回合成したアゾ染料は図の 1-フェニルアゾ-2-ナフトールです意外かもしれ
ませんが指示薬として使われているフェノールフタレインもアゾ化合物ですフェノール
フタレインは pH の変化によって色が出てきす染料の中でも最初は無色のものもありますが
温度を変化させたり酸性やアルカリ性にすると色が出てきます
ベンゼン ニトロベンゼン
N2Cl
ニトロ化 濃硫酸(濃硝酸)
還元反応 濃塩酸
(Sn又は Fe)
アニリン塩酸塩
遊離反応 NaOH
アニリン塩酸塩に強塩基を反応させる
と弱塩基であるアニリンが遊離する
氷冷+亜硝酸ナトリウム アニリン
塩酸
ジアゾ化
塩化ベンゼンジアゾニウム
塩化ベンゼンジアゾニウム
は熱によって窒素とフェノー
ルに分解される
カップリング
C10H7ONa (ナトリウム 2-ナフトキシド)
O
N =
1-フェニルアゾ 2-ナフトール
NH3Cl NH2
49
7 ガスクロマトグラフ質量分析計による茶葉中のカフェインの分析 71 はじめに ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)は極めて低い濃度の化学物質の同定や未知物質の構造決定に極めて強力な分析機器の一つであるGCMSを用いるとサンプルの中に含まれているある成分の分子構造(カフェインの分子構造を図 71に示す)やその量が分かりますもちろん分析機器ですので測定できる物質対象となる系や測定条件にはある
程度の制約があります混合物質を分離するガスクロマトグラフ(Gas ChromatographGC)と分離された成分(物質)を分析(構造決定と濃度測定)する質量分析計(Mass SpectrometerMS)を組み合わせた装置であるこの装置は有機化学生化学環境化学などの多くの分野で非常に多用されている例えば極めて低い濃度でも生体へ強い影響が懸念されるダイ
オキシン類などの土壌や河川の水中での含有率の決定や食品や医薬品中の微量成分の決定
にも利用されている 一方日本人に長い間親しまれてきた緑茶が近年産業界や医学
界で注目されている茶葉にはカフェイン(分子構造図 71)カテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドなどの有用成分が多く含まれておりその効能が注目されている 本実験では茶葉中に含まれるカフェインに対してGCMSを用いて分析する茶葉中には種々の物質が含まれておりGCMS分析を容易にするため前処理として超臨界二酸化炭素抽出(4015MPa程度の高圧力の二酸化炭素を溶剤として利用)により茶葉からカフェインの抽出を行いそのサンプルを GCMSにて分析する
図 71 カフェインの分子構造 図 72 物質の分析 個々の物質や装置についてはインターネットにより下記のWebサイトのフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』などにより調べるとよいカフェイン(caffeine)はアルカロイドの一種プリン環を持つプリンアルカロイドの一種でコーヒー類に含まれることか
らこの名がある化学名は137-トリメチルキサンチン(C8H10N4O2) コーヒーコーラ緑茶紅茶ガラナココアなどに含まれる(量は緑茶が一番多い)結晶は一水和物(C8H10N4O2bullH2O)もしくは無水物(無水カフェインC8H10N4O2)として得られ
る白色の針状または六角柱状結晶で匂いはなく味は苦い融点は 238昇華性がある出典フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』httpwwwwikipediaorg 装置「GCMS」httpwwwanshimadzucojpproductsgcmsqp2010htm (島津) 「超臨界抽出装置」httpwwwkagakucomjasco39-49html (日本分光)
50
レポート課題 1茶葉中に含まれるカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドの中から3つの物質を選びその物質について調べた結果を A4 レポート用紙2枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
2GCMS についてA4 レポート用紙1枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
3与えられたサンプルは茶葉1gから抽出されたのである実験結果よりもとの茶葉
1g中に含まれるカフェインの量を推算し計算式とあわせて示すこと 72 原理および装置 実験で使用する島津製の GCMS装置の全体図を図 73に原理の概略を図 74に示す
1
23
4
5
67 8
9
10
キャリアーガス
試料物質
1ボンベ(He)2圧力計3マイクロシリンジ4サンプラー5試料導入部6分離カラム
7セパレーター8イオン化室9磁石10電子増倍管11記録計
11
図 74 ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)の概略図
サンプルフォルダー
51
GCMS 装置は分離部である図中の 1~6 のガスクロマトグラフ(GC)と7~11 の検出部である質量分析計(MS)から構成される 3のマイクロシリンジを用いて試料を GCMSに導入する導入された試料は5試料導入部でガス化され6分離カラムに導入される分離カラムには吸着剤が充填されおり混合物の試料を導入した場合各物質と吸着剤との
親和性の違いにより各物質の分離カラムから排出されるタイミングは異なる分離カラム
を排出された試料は8イオン化室でイオン化され10電子倍増管にて検出される アセトンに溶解したカフェインの GCMSによる分析結果の一例を以下に示す図 75にク
ロマトグラム図 76にカフェインのピークのマススペクトルを示す
図 75 GCMSにより得られたクロマトグラム
横軸がリテンションタイムで縦軸がピーク強度を表す
図 76 カフェインのマススペクトルとカフェイン(分子量MW=194)の構造
(図 75中のリテンションタイム 126min付近のピークに起因するマススペクトル) 茶葉中にはカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイド以外にも繊維であるセルロースなど多くの物質が含まれているため茶葉そのものを
そのままサンプルとしてGCMSで分析することは困難であるセルロースなどの分子量の大きな物質はカラムに詰まってしまい分析できないそこで今回は超臨界二酸化炭素
による抽出により主にカフェインを他の物質と分離抽出した通常よく利用されるアセ
トン抽出(アセトンに茶葉を浸し特定の成分を抽出する)ではカフェイン以外にも多く
の物質が抽出されるため図 75 のような単独のピークを得ることは難しく複数のピークがクロマトグラムに見られるこのサンプル(この場合茶葉からの抽出物)にはカフェ
イン以外の不純物は少なかったがガスクロマトグラフの分離カラムによりさらにそれ
らの混合物が精度よく分離されるクロマトグラムのピークはそれらサンプル中に含まれ
ていた個々の物質を表しているクロマトグラムのピークを選択することで分子構造解析
したい物質を選んだことになる選択したクロマトグラムのピークの表している物質(ここ
ではカフェイン)に対応するマススペクトルが図 76 に表示されているマススペクトル
52
で横軸がその成分(ここではカフェイン)分子を構成している原子の原子量で縦軸がそ
の量を表しているのでマススペクトルから分子構造を解析するためにコンピュータ内
に蓄えられた物質ごとのマススペクトルデータと今回測定したマススペクトル(分子内に含
まれている各原子の数)を比較することで測定したサンプル中のクロマトピークを選択し
た分子がどのような原子をどれだけ含んだ分子であったかがわかりそれからその物質
がどのような分子構造の物質である可能性が高いかをコンピュータが検索し結果を示す 73 実験サンプルの設置と GCMS装置の操作方法 実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS装置のサンプルフォルダ
ー(図 73)にセットするこのサンプルは茶葉 1gを 50ccの高圧セルにて超臨界二酸化炭素を利用して4015MPa2時間接触の条件で抽出した固体を10gのアセトンに溶かしたものである またコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に装置および装置制
御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 本実験で使用する GCMS の操作は全てコンピュータのモニター上で GCMS の解析プログラムソフトを使用することで行うコンピュータの操作方法を以下に示す なおコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS 装置のサンプルフォルダー(図 73)にセットするまた装置および装置制御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 1)パソコンのデスクトップ上のアイコン「GCMS 分析」をクリックすると以下のようにGCMS制御プログラムを起動するその後「OK」ボタンをクリックする
図 77 GCMD分析用ソフトウェア「GCMS分析」の起動
まず「GC-MS分析」をクリック
「OK」ボタンをクリック
53
2)制御プログラムが起動されパソコンと GCMSの接続が開始される
図 78 「GCMS分析」の接続確認画面 3)GCMSとパソコンの接続が完了すると以下のような画面が表示される
図 79 「GCMS分析」操作画面
4)マススペクトルによる分子構造の解析 サンプル(この場合茶葉からの抽出物)には多くの物質が混じり合っていたがガス
クロマトグラフの分離カラムによりそれらの混合物が精度よく分離されるクロマトグラ
ムのピークはそれらサンプル中に含まれていた個々の物質を表しているクロマトグラム
のピークを選択することで分子構造解析したい物質を選んだことになる選択したクロマ
トグラムのピークの表している物質(ここではカフェイン)に対応するマススペクトルを選
択するマススペクトルは横軸が原子量で縦軸がその量を表しているのでマススペク
トルから分子構造を解析するために「定性処理」を行う シミラリティ検索結果が表示され分析により得られたスペクトルと類似のスペクトルを有
する物質の一覧が表示される上部に表示される物質ほどスペクトルが一致していること
を示す
接続状況が表示される
「トップへ」
をクリック
54
図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果
図 711 表示スペクトルのシミラリティ検索結果 10)図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果の印刷 「レポート(R)」をクリックし「検索結果(R)」をクリックすると検索結果が印刷される
GC-MS 分析で得られたマスス
ペクトル
データベース中
のマススペクト
ル
55
参考資料 生理活性物質の精製 カフェインの利尿作用のように生物活動に影響を与える物質を生理活性物質といいます
天然物には生理活性物質を多く含むものがあります一般に天然物は多くの成分を含ん
でおり特定の生理活性物質を分離抽出するには種々の分離技術が必要ですまた生
理活性物質には60以上の温度でその生理活性を失う(失活)ものや溶剤として広く用いられているクロロホルムなどの有機溶剤中で失活するものが多いそこでこれら生理活性
物質の分離精製技術の開発が望まれており30~60程度のマイルドな温度条件で操作できる二酸化炭素を機能性溶媒として利用する超臨界抽出も有効な分離技術として注目されて
いる超臨界二酸化炭素は気体と液体の中間の性質を持ち物質の分離に役立っています 臨界点付近の高密度気体は超臨界ガスまたは超臨界流体と呼ばれ臨界圧力前後でそ
の溶解能力が著しく変化することから工業的にも種々の分野で利用されています一例と
して超臨界二酸化炭素(SC-CO2)によるコーヒー豆からのカフェインの抽出プロセス(a)
ならびに超臨界二酸化炭素に対するカフェインの溶解度(b)を図に示します図(c)に示す
ように固体のカフェインがガスである超臨界二酸化炭素に溶解します
このように超臨界二酸化炭素を用いた技術はコーヒー豆からのカフェインの抽出プロ
ポリスからの生理活性物質の抽出に利用されています
図 超臨界二酸化炭素抽出を用いたコーヒー豆からのカフェインの抽出
56
付表 最小二乗法について 直線で近似する場合 f (x) = a0 + a1x (A1-1) 式(A1-1)のように近似させるとする測定値 yiとの残差を eiとすると式(A1-2)のようになる ei = yi - f (xi) = yi - ( a0 + a1xi ) (A1-2) ここで式(A1-2)の両辺を二乗してその i に関する総和をとりその値を S とすると次式となる
sumsum==
+minus==n
iii
n
ii xaayeS
1
210
1
2 )( (A1-3)
S を最小化するような a0a1を求める式(A1-3)を a0a1について偏微分すると次式とな
る
sum=
+minuspartpart
=partpart n
iii xaay
aaS
1
210
00)( sum
=
+minusminus=n
iii xaay
110 )(2 (A1-4)
同様にa1について編微分すると次式のようになる
sum=
+minusminus=partpart n
iiii xxaay
aS
110
1])([2 (A1-5)
Sが最小となる時は次式が同時に満たされる時である
00=
partpartaS
01=
partpartaS
(A1-6)
よって誤差が最小となる a0a1を求めるためには式(A1-6)を連立して解けばよい
sumsumsum===
+=n
ii
n
i
n
ii xaay
111
10 1 (A1-7)
sumsumsum===
+=n
ii
n
ii
n
iii xaxaxy
1
2
11
10 (A1-8)
式(A1-7)と式(A1-8)を a0a1を変数とみなし連立して解くと次式を得る
n組のデータ(xiyi)(i=12hellipn)に対して回帰直線 y= a0 + a1x を最小二乗法で求めて出力しデータ番号 iデータ yi直線で推定した値 )( ii bxay += および残差
iii yy minus=ε を出力するようなプログラムをつくりたい基礎式を導出せよ (ヒント残差の二乗の和が最小になるように係数 a0a1)を定めるのが最小二乗法
である)
57
sumsum
sumsumsumsum
==
====
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
n
ii
n
ii
xxn
xxyyxa
1
2
1
2
1111
2
0
)(
))(())(( (A1-9)
sumsum
sumsumsum
==
===
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
xxn
yxxyna
1
2
1
2
1111
)(
))(()( (A1-10)
よって式(A1-9)(A1-10)を用いれば最も誤差を小さくするような直線 y = a0 + a1x が求められる
y=a1x+a0 にて近似
誤差 ei
x
y
誤差が最小になる関数(直線 y=a1x+a0の場合)
図1 最小二乗による近似
誤差の和Sが最小
S
a0
a1
直線 y=a1x+a0 の近似
誤差の全体の和はS=Σei=Σyi-(a1xi+a0)
Sは変曲点にて最小値を示すすなわち(partSparta0)=0 (partSparta1)=0
図2 a0a1とSの関係
39
43 密度測定 [目的] 本実験では水とエタノールの種々の組成の混合液体について密度を測定し分子間相互
作用について考察する [実験方法] 1)ピクノメーターの容積測定
図 4-2のピクノメーターの空の重量 wg を秤量する
ピクノメーターの蓋を取り外し
ピクノメーターを水で満たす
設定温度を 25として恒温槽 の電源を入れ恒温槽内の温 度が一定になるまで待つな お水温は恒温槽中の水銀温 度計から読む
恒温槽中に水を満たしたピク
ノメーターを入れる
約 10分間静置する
ピクノメーターに蓋をするこのときピクノメーターの容量
よりも余分の水は蓋の上部より排出される
ピクノメーターの外側を乾いた布で拭い秤量する(その重量を
wwg とする)
恒温槽の温度(25)における水の密度 dwgcm3(=099704gcm3)
より次式を用いてピクノメーターの容積を求める
w
w
dww
Vminus
= (44)
図 4-2 ピクノメーター
蓋
40
表 4-2 エチルアルコール水溶液の濃度と密度の測定結果(25) エチルアルコ
ール濃度[wt]
wrsquo[g] ww[g] V[cm3] w[g]
d[gcm3]
0 20 40 50 60 80
100
099704
エチルアルコール濃度[wt] 空のピクノメーターの重量 wrsquo[g] 水を入れたときのピクノメーターの重量 ww[g] ピクノメーターの体積 V[cm3] エタノール水溶液の入れたときのピクノメータの重さ w[g] エタノール水溶液の密度 d[gcm3]
容積 Vを求めたピクノメーターに混合溶液(調整済み)を入れてその重量 wgを秤量し次式で混合溶液の密度を求める
Vwwd minus
= (45)
エタノール濃度と密度 d の関係をグラフにプロットする
41
44 高分子溶液の粘度 [目的] 高分子溶液の粘度測定から分子量の粘度に与える影響について考察する [概要 ] オストワルド粘度計を用い種々の濃度のポリビニルアルコール(PVA ((-CH2CHOH-)n))水溶液の粘度を測定し粘度データよりポリビニルアルコールの分
子量を求める まず 05g100cc の濃度のポリビニルアルコール水溶液を調製する次にこれを原液
とし23 12 13 15の濃度の溶液を調製するこれらの溶液についてオストワルド粘度計を用いてそれぞれ流下時間を測定し相対粘度絶対粘度運動粘度を求め実験デ
ータより極限粘度[η]を求めるまた報告書には相対粘度絶対粘度運動粘度C
)ln( wηη
Cw
w-η
ηη vsポリビニルアルコール濃度の関係をそれぞれグラフにして提出する
[計算方法] エチルアルコール水溶液の粘度測定と同様の手法を用いて粘度の計算を行うなおポリビニルアルコール水溶液の密度はピクノメーターを用いて測定すること 表 4-3 ポリビニルアルコール水溶液の濃度密度相対粘度の関係 ポリビニルアルコール
濃度 [g100cc] 密度 d[gcm3] 相対粘度
η ηw[-] 05times(15) 05times(13) 05times(12) 05times(23)
05
42
[分子量の計算方法] 実験を行った結果以下のような粘度データを得られるとする実験データより極限粘度
を求めポリビニルアルコール(PVA)の分子量Mを決定せよ
PVA 水溶液濃度
C[g100cc]
相対粘度
ηηw[-]
絶対粘度
η[gcms]Cw
w-η
ηη
C)ln( wηη
05times(15) 1031 0008255 031 0305
05times(13) 039 0378
05times(12) 03 0289
05times(23) 0375 0353
05 0364 0334
ηw=8007times10-3 gcms 線状高分子の極限粘度[η]と分子量Mの関係は次式で与えられる [η]=KMα (46) ただしポリビニルアルコールの場合K=666times10-4α=064であるなお極限粘度[η]は次式で定義される
CC w
w
0
-][ limη
ηηη
rarr
= (47)
または
CC
)ln(][ w
0lim
ηηη
rarr
= (48)
よって濃度 CとCw
w-η
ηηまたは濃度 Cと
C)ln( wηη の関係をグラフ化し最小二乗法によ
り切片の値を求めると極限粘度[η]が決定される
Cw
w-η
ηηと C の関係より最小二乗法を用いて切片の値を決定すると(図 43 参照)切片=
03242傾き=00874となるよって極限粘度は以下のようになる[η]=03242同様
にC
)ln( wηη とcの関係より最小二乗法を用いて切片の値を決定する
(図 44参照)と切片=03249傾き=00256となり極限粘度は以下のようになる[η]=03249
Cw
w-η
ηηと Cの関係より決定した[η]=03242を用いてポリビニルアルコール(PVA)の
分子量 Mを計算する(46)式より以下のように PVAの分子量 Mを計算することができるM=([η]K)1α
=(03242(666times10-4))(1064)
=15811
43
y = 00874x + 03242
0
02
04
06
08
1
0 01 02 03 04 05 06 07
c[g100cc]
(η-ηw)(ηwc)
cw
w
η
ηηminus
極限粘度[η]
図 43 298Kにおける PVA濃度 CとCw
w-η
ηηの関係
y = 00256x + 03249
0
02
04
06
08
1
0 01 02 03 04 05 06 07
c[g100cc]
(ln(ηη
w))c
c)ln( wηη
極限粘度[η]
図 44 298Kにおける PVA濃度 CとC
)ln( wηη の関係
44
5 植物からの DNAの抽出 51 はじめに 分子レベルでの遺伝子の構造解明や遺伝子の発現に関する研究は近年急速に発展している
これら生命現象のしくみを分子レベルで解明しようという分子生物学の分野ではさまざま
な遺伝子の解析や応用方法が開発され我々の生活に身近なものになりつつある 本実験では初歩的な分子生物学に関する実験として植物(タマネギ)からの DNA の
抽出を行い抽出した遺伝子の電気泳動法による分離実験を試みる 52 試薬および器具 試薬 タマネギ(細胞中から遺伝子の抽出を行う) 台所用洗剤(洗剤中に含まれる界面活性剤には植物の細胞膜およびタンパク質を破壊す
る働きがある) 塩化ナトリウム(DNAは塩化ナトリウム水溶液に溶解し易い性質がある) エタノール(予め冷やしておくDNAはエタノールにほとんど溶解しない) 制限酵素(DNAを一定の部位で切断する働きを働きがある) TE緩衝液(pH緩衝剤が入った溶液) 器具 ビーカーミキサーフィルターメスシリンダー駒込ピペットガラス棒 マイクロピペット電気泳動装置ポラロイドカメラ 53 実験方法 1)タマネギは 1回の実験で半個のうち内側の半分程度を使用するタマネギ水 30ml台所用洗剤数滴をミキサー用ガラス容器に入れ40~60秒程度(固体状のタマネギがなくなる頃が目安)ミキサーにて混合する
2) 1)で作成した混合溶液をビーカーに移し約5g程度の塩化ナトリウムを加えガラス棒で静かに攪拌する粘性の大きな溶液が得られる
3) 2)で作成した溶液をフィルターを用いて濾過し濾液を回収する 4) 濾液の約2倍程度の量の冷エタノールをビーカーの壁伝いに静かに注ぐ 5) ビーカーを揺するとエタノール層に白くふわふわしたものが浮いてくるこれが DNAであるガラス棒で DNAを巻き取りシャーレ上にて DNAを回収する顕微鏡を用いて回収した DNAの状態を観察する
6)マイクロチューブ(容量 15ml)中に用意した 70エタノールを 8 分目程度まで注ぐ5)にて回収された DNAをマイクロピペットを用いて70エタノールの入ったマイクロチューブ中に移す軽く混ぜることによりDNA から不要な物質を洗い流す遠心分離してDNA をマイクロチューブの底に沈めた後溶液を捨てて DNA を乾かす乾いたらTE緩衝溶液を 1ml加えて放置するDNAの溶液が得られる
54 電気泳動装置による DNAの観察
本実験は職員と一緒に行うこと 実験を行う人はビニール手袋をすること 1) 抽出した DNAを電気泳動装置で観察するマイクロピペットを用いて以下のように調製した DNAの混合溶液を調製する(いずれの溶液も調製済)
45
2) マイクロピペットを用いてアガロースゲルの試料を流し込む穴(ウェル)に1)にて調製した溶液 Aおよび Bを注ぎ込む注入量は20μℓとする電気泳動装置のスイッチを入れて100Vの電流を流しアガロースゲル内にて DNAを電気泳動させる
3) 試料に予め加えられておいた青色の色素が 7 分目程度まで進んだら電気泳動を中止する(約 30分程度)
4) (ここでの作業は職員が行う) アガロースゲルを取り出し染色液に浸す染色後ゲルを取り出しポラロイドカメラで
DNAの泳動状態を撮影する
+ -
アガロースゲル
試料を流し込む穴(ウェル)
図 51 電気泳動装置
6 5 4 3 2 1
図 52 DNAの電気泳動写真の一例
55 電気泳動装置の原理 電気泳動装置の原理図を以下に示すアガロースゲル(寒天から不純物を除いたもの)中
に DNAをセットし電流を流すとDNAは電流の向きとは逆にマイナスからプラス方向
調製済 溶液 A(制限酵素なし) 水 11μℓ 10timesH Buffer 2microℓ 植物 DNA 5μℓ
調製済 溶液 B(制限酵素 Eco RI入り) 水 11μℓ 10timesH Buffer 2microℓ 植物 DNA 5μℓ 制限酵素 2μℓ
1 DNA(タマネギ)+制限酵素 2 DNA(タマネギ)+制限酵素 3 DNA(タマネギ) 4 λ-DNA(大腸菌)+制限酵素 5 λ-DNA(大腸菌) 6 サイズマーカー
500bp
46
に動く(このことを電気泳動という)これはDNA のリン酸部分が負に帯電しているためでありまたDNAはその長さにより泳動距離が異なる(短い遺伝子ほど長く泳動する)電気泳動ではこの性質を利用してDNAを大きさごとに分離することができる
塩基対数によってDNAを分離
EtBr (蛍光試薬)DNAの二本鎖内に入り込む
発光
UVλ=302nm
励起
分離後のアガロースゲルをエチジウムブロマイド(EtBr)溶液に浸す
DNAを含んだ溶液
アガロースゲル
リン酸部分が負に帯電
塩基 (ATGC)-
+
カメラで撮影
電圧
DNA構成成分(dNTPs)
バンドが明る
DNA量が
バンド(DNAの存在)
図 53 電気泳動の原理
56 制限酵素とは DNA は4 種類のヌクレオチド(GATC)が不規則につながってできている制限酵素はDNAの特定のヌクレオチドが並んでいる部分を切断する制限酵素には様々な種類がありEco RI(エコアールワン)と呼ばれる酵素は「GAATTC」といった並びの部分だけを切断することができる
GAATTC
CTTAAG
制限酵素
Eco RI
AAGCTT
TTCGAA
制限酵素
Hin dIII
図 54 制限酵素による DNAの切断
レポートについて 1 実験方法および実験結果の整理方法については指針書を参考にすること 2 実験結果については電気泳動の結果について考察すること(制限酵素の影響などにつ
いてまとめてください)
47
6 染色実験
61 はじめに
現在私達の身の周りでは様々な染料が使われている例えばT シャツやジーンズな
どの衣服は橙黄赤青など様々な色に染められている他にも私達が気付かないと
ころで多くの染色された製品を使用しているそこで本実験では高校の化学で学んだ
アゾ染料を合成してみるアゾ染料はアニリンを原料として作られているアニリンはベ
ンゼン環にアミノ基(-NH2)がついたものであるアニリンは無色の液体で水に溶けにく
くアンモニアより弱い塩基性を示すまたさらし粉(CaClO(ClO)H2O)水溶液を加えると
赤紫色を呈するこの呈色反応はアニリン特有のものであるので検出反応に用いられる
このアニリンを出発物質としてアゾ染料を合成してみる
62 試薬および使用器具
【試薬】 ①05moll 水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液
②2-ナフトール ③フェノール ④6moll 塩酸
⑤亜硝酸ナトリウム ⑥アニリン ⑦氷
【器具類】 ①電子天秤 ②50mℓビーカー ③100mℓビーカー
④ガラス棒 ⑤布(ガーゼなど) ⑥ピンセット
⑦ポリ手袋 ⑧ドライヤー ⑨シャーレ
10駒込ピペット(10ml ガラス製)
11駒込ピペット(1ml プラスチック製)
63 実験方法
1) 50mℓビーカーの中に 05molℓ水酸化ナトリウム水溶液 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回
NaOH 水溶液を分取するほぼ 20 mℓ分取できれば可)と 2-ナフトールを約 01g 入れ
よくかき混ぜる調製した溶液の中に布をつけその布はガラス棒でしぼってから(布
をガラス棒ですくいあげればよい)シャーレに広げる温度の異なる条件下(常温およ
び低温)で染料の合成実験を行うため布は最低 2枚調製した溶液と接触させそれ
ぞれ別々のシャーレ(低温用および常温用)に広げる
2) 新しいビーカーに水を約 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回分取)と 6molℓ塩酸約 4mℓ(10m
ℓ駒込ピペットで目分量で可)さらにアニリン約 1mℓ(プラスチック製 1 mℓ駒込ピペッ
ト)を入れてよくかき混ぜる染料の合成を常温および低温下で行うためこの溶液を
2つ調整する
低温下で反応させる溶液は恒温槽で 10~15 分ほどよく冷やした後亜硝酸ナトリウ
ム 05g を加えてよくかき混ぜる
常温下で反応させる溶液には冷却作業を行わずに亜硝酸ナトリウム 05g を加えて
よくかき混ぜる
3) 2)でつくった水溶液をシャーレに広げた布に注ぎ生成される染料を布によく染み
込ませ5分程放置する
4) 色の付いた布を取り出してポリ手袋をした手できれいに水洗いをし乾燥させる
48
5) 色差計を用いて乾燥した布の Lab(L明度aおよび b色度)を測定する
2)で作った溶液は5以下では無色の溶液ですが5以上になると淡い黄色になりま
す
【解説】
アゾ染料はアゾ基(-N=N-)を持っていてこのアゾ基によって鮮やかな橙色を呈色し
ます今回合成したアゾ染料は図の 1-フェニルアゾ-2-ナフトールです意外かもしれ
ませんが指示薬として使われているフェノールフタレインもアゾ化合物ですフェノール
フタレインは pH の変化によって色が出てきす染料の中でも最初は無色のものもありますが
温度を変化させたり酸性やアルカリ性にすると色が出てきます
ベンゼン ニトロベンゼン
N2Cl
ニトロ化 濃硫酸(濃硝酸)
還元反応 濃塩酸
(Sn又は Fe)
アニリン塩酸塩
遊離反応 NaOH
アニリン塩酸塩に強塩基を反応させる
と弱塩基であるアニリンが遊離する
氷冷+亜硝酸ナトリウム アニリン
塩酸
ジアゾ化
塩化ベンゼンジアゾニウム
塩化ベンゼンジアゾニウム
は熱によって窒素とフェノー
ルに分解される
カップリング
C10H7ONa (ナトリウム 2-ナフトキシド)
O
N =
1-フェニルアゾ 2-ナフトール
NH3Cl NH2
49
7 ガスクロマトグラフ質量分析計による茶葉中のカフェインの分析 71 はじめに ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)は極めて低い濃度の化学物質の同定や未知物質の構造決定に極めて強力な分析機器の一つであるGCMSを用いるとサンプルの中に含まれているある成分の分子構造(カフェインの分子構造を図 71に示す)やその量が分かりますもちろん分析機器ですので測定できる物質対象となる系や測定条件にはある
程度の制約があります混合物質を分離するガスクロマトグラフ(Gas ChromatographGC)と分離された成分(物質)を分析(構造決定と濃度測定)する質量分析計(Mass SpectrometerMS)を組み合わせた装置であるこの装置は有機化学生化学環境化学などの多くの分野で非常に多用されている例えば極めて低い濃度でも生体へ強い影響が懸念されるダイ
オキシン類などの土壌や河川の水中での含有率の決定や食品や医薬品中の微量成分の決定
にも利用されている 一方日本人に長い間親しまれてきた緑茶が近年産業界や医学
界で注目されている茶葉にはカフェイン(分子構造図 71)カテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドなどの有用成分が多く含まれておりその効能が注目されている 本実験では茶葉中に含まれるカフェインに対してGCMSを用いて分析する茶葉中には種々の物質が含まれておりGCMS分析を容易にするため前処理として超臨界二酸化炭素抽出(4015MPa程度の高圧力の二酸化炭素を溶剤として利用)により茶葉からカフェインの抽出を行いそのサンプルを GCMSにて分析する
図 71 カフェインの分子構造 図 72 物質の分析 個々の物質や装置についてはインターネットにより下記のWebサイトのフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』などにより調べるとよいカフェイン(caffeine)はアルカロイドの一種プリン環を持つプリンアルカロイドの一種でコーヒー類に含まれることか
らこの名がある化学名は137-トリメチルキサンチン(C8H10N4O2) コーヒーコーラ緑茶紅茶ガラナココアなどに含まれる(量は緑茶が一番多い)結晶は一水和物(C8H10N4O2bullH2O)もしくは無水物(無水カフェインC8H10N4O2)として得られ
る白色の針状または六角柱状結晶で匂いはなく味は苦い融点は 238昇華性がある出典フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』httpwwwwikipediaorg 装置「GCMS」httpwwwanshimadzucojpproductsgcmsqp2010htm (島津) 「超臨界抽出装置」httpwwwkagakucomjasco39-49html (日本分光)
50
レポート課題 1茶葉中に含まれるカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドの中から3つの物質を選びその物質について調べた結果を A4 レポート用紙2枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
2GCMS についてA4 レポート用紙1枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
3与えられたサンプルは茶葉1gから抽出されたのである実験結果よりもとの茶葉
1g中に含まれるカフェインの量を推算し計算式とあわせて示すこと 72 原理および装置 実験で使用する島津製の GCMS装置の全体図を図 73に原理の概略を図 74に示す
1
23
4
5
67 8
9
10
キャリアーガス
試料物質
1ボンベ(He)2圧力計3マイクロシリンジ4サンプラー5試料導入部6分離カラム
7セパレーター8イオン化室9磁石10電子増倍管11記録計
11
図 74 ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)の概略図
サンプルフォルダー
51
GCMS 装置は分離部である図中の 1~6 のガスクロマトグラフ(GC)と7~11 の検出部である質量分析計(MS)から構成される 3のマイクロシリンジを用いて試料を GCMSに導入する導入された試料は5試料導入部でガス化され6分離カラムに導入される分離カラムには吸着剤が充填されおり混合物の試料を導入した場合各物質と吸着剤との
親和性の違いにより各物質の分離カラムから排出されるタイミングは異なる分離カラム
を排出された試料は8イオン化室でイオン化され10電子倍増管にて検出される アセトンに溶解したカフェインの GCMSによる分析結果の一例を以下に示す図 75にク
ロマトグラム図 76にカフェインのピークのマススペクトルを示す
図 75 GCMSにより得られたクロマトグラム
横軸がリテンションタイムで縦軸がピーク強度を表す
図 76 カフェインのマススペクトルとカフェイン(分子量MW=194)の構造
(図 75中のリテンションタイム 126min付近のピークに起因するマススペクトル) 茶葉中にはカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイド以外にも繊維であるセルロースなど多くの物質が含まれているため茶葉そのものを
そのままサンプルとしてGCMSで分析することは困難であるセルロースなどの分子量の大きな物質はカラムに詰まってしまい分析できないそこで今回は超臨界二酸化炭素
による抽出により主にカフェインを他の物質と分離抽出した通常よく利用されるアセ
トン抽出(アセトンに茶葉を浸し特定の成分を抽出する)ではカフェイン以外にも多く
の物質が抽出されるため図 75 のような単独のピークを得ることは難しく複数のピークがクロマトグラムに見られるこのサンプル(この場合茶葉からの抽出物)にはカフェ
イン以外の不純物は少なかったがガスクロマトグラフの分離カラムによりさらにそれ
らの混合物が精度よく分離されるクロマトグラムのピークはそれらサンプル中に含まれ
ていた個々の物質を表しているクロマトグラムのピークを選択することで分子構造解析
したい物質を選んだことになる選択したクロマトグラムのピークの表している物質(ここ
ではカフェイン)に対応するマススペクトルが図 76 に表示されているマススペクトル
52
で横軸がその成分(ここではカフェイン)分子を構成している原子の原子量で縦軸がそ
の量を表しているのでマススペクトルから分子構造を解析するためにコンピュータ内
に蓄えられた物質ごとのマススペクトルデータと今回測定したマススペクトル(分子内に含
まれている各原子の数)を比較することで測定したサンプル中のクロマトピークを選択し
た分子がどのような原子をどれだけ含んだ分子であったかがわかりそれからその物質
がどのような分子構造の物質である可能性が高いかをコンピュータが検索し結果を示す 73 実験サンプルの設置と GCMS装置の操作方法 実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS装置のサンプルフォルダ
ー(図 73)にセットするこのサンプルは茶葉 1gを 50ccの高圧セルにて超臨界二酸化炭素を利用して4015MPa2時間接触の条件で抽出した固体を10gのアセトンに溶かしたものである またコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に装置および装置制
御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 本実験で使用する GCMS の操作は全てコンピュータのモニター上で GCMS の解析プログラムソフトを使用することで行うコンピュータの操作方法を以下に示す なおコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS 装置のサンプルフォルダー(図 73)にセットするまた装置および装置制御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 1)パソコンのデスクトップ上のアイコン「GCMS 分析」をクリックすると以下のようにGCMS制御プログラムを起動するその後「OK」ボタンをクリックする
図 77 GCMD分析用ソフトウェア「GCMS分析」の起動
まず「GC-MS分析」をクリック
「OK」ボタンをクリック
53
2)制御プログラムが起動されパソコンと GCMSの接続が開始される
図 78 「GCMS分析」の接続確認画面 3)GCMSとパソコンの接続が完了すると以下のような画面が表示される
図 79 「GCMS分析」操作画面
4)マススペクトルによる分子構造の解析 サンプル(この場合茶葉からの抽出物)には多くの物質が混じり合っていたがガス
クロマトグラフの分離カラムによりそれらの混合物が精度よく分離されるクロマトグラ
ムのピークはそれらサンプル中に含まれていた個々の物質を表しているクロマトグラム
のピークを選択することで分子構造解析したい物質を選んだことになる選択したクロマ
トグラムのピークの表している物質(ここではカフェイン)に対応するマススペクトルを選
択するマススペクトルは横軸が原子量で縦軸がその量を表しているのでマススペク
トルから分子構造を解析するために「定性処理」を行う シミラリティ検索結果が表示され分析により得られたスペクトルと類似のスペクトルを有
する物質の一覧が表示される上部に表示される物質ほどスペクトルが一致していること
を示す
接続状況が表示される
「トップへ」
をクリック
54
図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果
図 711 表示スペクトルのシミラリティ検索結果 10)図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果の印刷 「レポート(R)」をクリックし「検索結果(R)」をクリックすると検索結果が印刷される
GC-MS 分析で得られたマスス
ペクトル
データベース中
のマススペクト
ル
55
参考資料 生理活性物質の精製 カフェインの利尿作用のように生物活動に影響を与える物質を生理活性物質といいます
天然物には生理活性物質を多く含むものがあります一般に天然物は多くの成分を含ん
でおり特定の生理活性物質を分離抽出するには種々の分離技術が必要ですまた生
理活性物質には60以上の温度でその生理活性を失う(失活)ものや溶剤として広く用いられているクロロホルムなどの有機溶剤中で失活するものが多いそこでこれら生理活性
物質の分離精製技術の開発が望まれており30~60程度のマイルドな温度条件で操作できる二酸化炭素を機能性溶媒として利用する超臨界抽出も有効な分離技術として注目されて
いる超臨界二酸化炭素は気体と液体の中間の性質を持ち物質の分離に役立っています 臨界点付近の高密度気体は超臨界ガスまたは超臨界流体と呼ばれ臨界圧力前後でそ
の溶解能力が著しく変化することから工業的にも種々の分野で利用されています一例と
して超臨界二酸化炭素(SC-CO2)によるコーヒー豆からのカフェインの抽出プロセス(a)
ならびに超臨界二酸化炭素に対するカフェインの溶解度(b)を図に示します図(c)に示す
ように固体のカフェインがガスである超臨界二酸化炭素に溶解します
このように超臨界二酸化炭素を用いた技術はコーヒー豆からのカフェインの抽出プロ
ポリスからの生理活性物質の抽出に利用されています
図 超臨界二酸化炭素抽出を用いたコーヒー豆からのカフェインの抽出
56
付表 最小二乗法について 直線で近似する場合 f (x) = a0 + a1x (A1-1) 式(A1-1)のように近似させるとする測定値 yiとの残差を eiとすると式(A1-2)のようになる ei = yi - f (xi) = yi - ( a0 + a1xi ) (A1-2) ここで式(A1-2)の両辺を二乗してその i に関する総和をとりその値を S とすると次式となる
sumsum==
+minus==n
iii
n
ii xaayeS
1
210
1
2 )( (A1-3)
S を最小化するような a0a1を求める式(A1-3)を a0a1について偏微分すると次式とな
る
sum=
+minuspartpart
=partpart n
iii xaay
aaS
1
210
00)( sum
=
+minusminus=n
iii xaay
110 )(2 (A1-4)
同様にa1について編微分すると次式のようになる
sum=
+minusminus=partpart n
iiii xxaay
aS
110
1])([2 (A1-5)
Sが最小となる時は次式が同時に満たされる時である
00=
partpartaS
01=
partpartaS
(A1-6)
よって誤差が最小となる a0a1を求めるためには式(A1-6)を連立して解けばよい
sumsumsum===
+=n
ii
n
i
n
ii xaay
111
10 1 (A1-7)
sumsumsum===
+=n
ii
n
ii
n
iii xaxaxy
1
2
11
10 (A1-8)
式(A1-7)と式(A1-8)を a0a1を変数とみなし連立して解くと次式を得る
n組のデータ(xiyi)(i=12hellipn)に対して回帰直線 y= a0 + a1x を最小二乗法で求めて出力しデータ番号 iデータ yi直線で推定した値 )( ii bxay += および残差
iii yy minus=ε を出力するようなプログラムをつくりたい基礎式を導出せよ (ヒント残差の二乗の和が最小になるように係数 a0a1)を定めるのが最小二乗法
である)
57
sumsum
sumsumsumsum
==
====
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
n
ii
n
ii
xxn
xxyyxa
1
2
1
2
1111
2
0
)(
))(())(( (A1-9)
sumsum
sumsumsum
==
===
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
xxn
yxxyna
1
2
1
2
1111
)(
))(()( (A1-10)
よって式(A1-9)(A1-10)を用いれば最も誤差を小さくするような直線 y = a0 + a1x が求められる
y=a1x+a0 にて近似
誤差 ei
x
y
誤差が最小になる関数(直線 y=a1x+a0の場合)
図1 最小二乗による近似
誤差の和Sが最小
S
a0
a1
直線 y=a1x+a0 の近似
誤差の全体の和はS=Σei=Σyi-(a1xi+a0)
Sは変曲点にて最小値を示すすなわち(partSparta0)=0 (partSparta1)=0
図2 a0a1とSの関係
40
表 4-2 エチルアルコール水溶液の濃度と密度の測定結果(25) エチルアルコ
ール濃度[wt]
wrsquo[g] ww[g] V[cm3] w[g]
d[gcm3]
0 20 40 50 60 80
100
099704
エチルアルコール濃度[wt] 空のピクノメーターの重量 wrsquo[g] 水を入れたときのピクノメーターの重量 ww[g] ピクノメーターの体積 V[cm3] エタノール水溶液の入れたときのピクノメータの重さ w[g] エタノール水溶液の密度 d[gcm3]
容積 Vを求めたピクノメーターに混合溶液(調整済み)を入れてその重量 wgを秤量し次式で混合溶液の密度を求める
Vwwd minus
= (45)
エタノール濃度と密度 d の関係をグラフにプロットする
41
44 高分子溶液の粘度 [目的] 高分子溶液の粘度測定から分子量の粘度に与える影響について考察する [概要 ] オストワルド粘度計を用い種々の濃度のポリビニルアルコール(PVA ((-CH2CHOH-)n))水溶液の粘度を測定し粘度データよりポリビニルアルコールの分
子量を求める まず 05g100cc の濃度のポリビニルアルコール水溶液を調製する次にこれを原液
とし23 12 13 15の濃度の溶液を調製するこれらの溶液についてオストワルド粘度計を用いてそれぞれ流下時間を測定し相対粘度絶対粘度運動粘度を求め実験デ
ータより極限粘度[η]を求めるまた報告書には相対粘度絶対粘度運動粘度C
)ln( wηη
Cw
w-η
ηη vsポリビニルアルコール濃度の関係をそれぞれグラフにして提出する
[計算方法] エチルアルコール水溶液の粘度測定と同様の手法を用いて粘度の計算を行うなおポリビニルアルコール水溶液の密度はピクノメーターを用いて測定すること 表 4-3 ポリビニルアルコール水溶液の濃度密度相対粘度の関係 ポリビニルアルコール
濃度 [g100cc] 密度 d[gcm3] 相対粘度
η ηw[-] 05times(15) 05times(13) 05times(12) 05times(23)
05
42
[分子量の計算方法] 実験を行った結果以下のような粘度データを得られるとする実験データより極限粘度
を求めポリビニルアルコール(PVA)の分子量Mを決定せよ
PVA 水溶液濃度
C[g100cc]
相対粘度
ηηw[-]
絶対粘度
η[gcms]Cw
w-η
ηη
C)ln( wηη
05times(15) 1031 0008255 031 0305
05times(13) 039 0378
05times(12) 03 0289
05times(23) 0375 0353
05 0364 0334
ηw=8007times10-3 gcms 線状高分子の極限粘度[η]と分子量Mの関係は次式で与えられる [η]=KMα (46) ただしポリビニルアルコールの場合K=666times10-4α=064であるなお極限粘度[η]は次式で定義される
CC w
w
0
-][ limη
ηηη
rarr
= (47)
または
CC
)ln(][ w
0lim
ηηη
rarr
= (48)
よって濃度 CとCw
w-η
ηηまたは濃度 Cと
C)ln( wηη の関係をグラフ化し最小二乗法によ
り切片の値を求めると極限粘度[η]が決定される
Cw
w-η
ηηと C の関係より最小二乗法を用いて切片の値を決定すると(図 43 参照)切片=
03242傾き=00874となるよって極限粘度は以下のようになる[η]=03242同様
にC
)ln( wηη とcの関係より最小二乗法を用いて切片の値を決定する
(図 44参照)と切片=03249傾き=00256となり極限粘度は以下のようになる[η]=03249
Cw
w-η
ηηと Cの関係より決定した[η]=03242を用いてポリビニルアルコール(PVA)の
分子量 Mを計算する(46)式より以下のように PVAの分子量 Mを計算することができるM=([η]K)1α
=(03242(666times10-4))(1064)
=15811
43
y = 00874x + 03242
0
02
04
06
08
1
0 01 02 03 04 05 06 07
c[g100cc]
(η-ηw)(ηwc)
cw
w
η
ηηminus
極限粘度[η]
図 43 298Kにおける PVA濃度 CとCw
w-η
ηηの関係
y = 00256x + 03249
0
02
04
06
08
1
0 01 02 03 04 05 06 07
c[g100cc]
(ln(ηη
w))c
c)ln( wηη
極限粘度[η]
図 44 298Kにおける PVA濃度 CとC
)ln( wηη の関係
44
5 植物からの DNAの抽出 51 はじめに 分子レベルでの遺伝子の構造解明や遺伝子の発現に関する研究は近年急速に発展している
これら生命現象のしくみを分子レベルで解明しようという分子生物学の分野ではさまざま
な遺伝子の解析や応用方法が開発され我々の生活に身近なものになりつつある 本実験では初歩的な分子生物学に関する実験として植物(タマネギ)からの DNA の
抽出を行い抽出した遺伝子の電気泳動法による分離実験を試みる 52 試薬および器具 試薬 タマネギ(細胞中から遺伝子の抽出を行う) 台所用洗剤(洗剤中に含まれる界面活性剤には植物の細胞膜およびタンパク質を破壊す
る働きがある) 塩化ナトリウム(DNAは塩化ナトリウム水溶液に溶解し易い性質がある) エタノール(予め冷やしておくDNAはエタノールにほとんど溶解しない) 制限酵素(DNAを一定の部位で切断する働きを働きがある) TE緩衝液(pH緩衝剤が入った溶液) 器具 ビーカーミキサーフィルターメスシリンダー駒込ピペットガラス棒 マイクロピペット電気泳動装置ポラロイドカメラ 53 実験方法 1)タマネギは 1回の実験で半個のうち内側の半分程度を使用するタマネギ水 30ml台所用洗剤数滴をミキサー用ガラス容器に入れ40~60秒程度(固体状のタマネギがなくなる頃が目安)ミキサーにて混合する
2) 1)で作成した混合溶液をビーカーに移し約5g程度の塩化ナトリウムを加えガラス棒で静かに攪拌する粘性の大きな溶液が得られる
3) 2)で作成した溶液をフィルターを用いて濾過し濾液を回収する 4) 濾液の約2倍程度の量の冷エタノールをビーカーの壁伝いに静かに注ぐ 5) ビーカーを揺するとエタノール層に白くふわふわしたものが浮いてくるこれが DNAであるガラス棒で DNAを巻き取りシャーレ上にて DNAを回収する顕微鏡を用いて回収した DNAの状態を観察する
6)マイクロチューブ(容量 15ml)中に用意した 70エタノールを 8 分目程度まで注ぐ5)にて回収された DNAをマイクロピペットを用いて70エタノールの入ったマイクロチューブ中に移す軽く混ぜることによりDNA から不要な物質を洗い流す遠心分離してDNA をマイクロチューブの底に沈めた後溶液を捨てて DNA を乾かす乾いたらTE緩衝溶液を 1ml加えて放置するDNAの溶液が得られる
54 電気泳動装置による DNAの観察
本実験は職員と一緒に行うこと 実験を行う人はビニール手袋をすること 1) 抽出した DNAを電気泳動装置で観察するマイクロピペットを用いて以下のように調製した DNAの混合溶液を調製する(いずれの溶液も調製済)
45
2) マイクロピペットを用いてアガロースゲルの試料を流し込む穴(ウェル)に1)にて調製した溶液 Aおよび Bを注ぎ込む注入量は20μℓとする電気泳動装置のスイッチを入れて100Vの電流を流しアガロースゲル内にて DNAを電気泳動させる
3) 試料に予め加えられておいた青色の色素が 7 分目程度まで進んだら電気泳動を中止する(約 30分程度)
4) (ここでの作業は職員が行う) アガロースゲルを取り出し染色液に浸す染色後ゲルを取り出しポラロイドカメラで
DNAの泳動状態を撮影する
+ -
アガロースゲル
試料を流し込む穴(ウェル)
図 51 電気泳動装置
6 5 4 3 2 1
図 52 DNAの電気泳動写真の一例
55 電気泳動装置の原理 電気泳動装置の原理図を以下に示すアガロースゲル(寒天から不純物を除いたもの)中
に DNAをセットし電流を流すとDNAは電流の向きとは逆にマイナスからプラス方向
調製済 溶液 A(制限酵素なし) 水 11μℓ 10timesH Buffer 2microℓ 植物 DNA 5μℓ
調製済 溶液 B(制限酵素 Eco RI入り) 水 11μℓ 10timesH Buffer 2microℓ 植物 DNA 5μℓ 制限酵素 2μℓ
1 DNA(タマネギ)+制限酵素 2 DNA(タマネギ)+制限酵素 3 DNA(タマネギ) 4 λ-DNA(大腸菌)+制限酵素 5 λ-DNA(大腸菌) 6 サイズマーカー
500bp
46
に動く(このことを電気泳動という)これはDNA のリン酸部分が負に帯電しているためでありまたDNAはその長さにより泳動距離が異なる(短い遺伝子ほど長く泳動する)電気泳動ではこの性質を利用してDNAを大きさごとに分離することができる
塩基対数によってDNAを分離
EtBr (蛍光試薬)DNAの二本鎖内に入り込む
発光
UVλ=302nm
励起
分離後のアガロースゲルをエチジウムブロマイド(EtBr)溶液に浸す
DNAを含んだ溶液
アガロースゲル
リン酸部分が負に帯電
塩基 (ATGC)-
+
カメラで撮影
電圧
DNA構成成分(dNTPs)
バンドが明る
DNA量が
バンド(DNAの存在)
図 53 電気泳動の原理
56 制限酵素とは DNA は4 種類のヌクレオチド(GATC)が不規則につながってできている制限酵素はDNAの特定のヌクレオチドが並んでいる部分を切断する制限酵素には様々な種類がありEco RI(エコアールワン)と呼ばれる酵素は「GAATTC」といった並びの部分だけを切断することができる
GAATTC
CTTAAG
制限酵素
Eco RI
AAGCTT
TTCGAA
制限酵素
Hin dIII
図 54 制限酵素による DNAの切断
レポートについて 1 実験方法および実験結果の整理方法については指針書を参考にすること 2 実験結果については電気泳動の結果について考察すること(制限酵素の影響などにつ
いてまとめてください)
47
6 染色実験
61 はじめに
現在私達の身の周りでは様々な染料が使われている例えばT シャツやジーンズな
どの衣服は橙黄赤青など様々な色に染められている他にも私達が気付かないと
ころで多くの染色された製品を使用しているそこで本実験では高校の化学で学んだ
アゾ染料を合成してみるアゾ染料はアニリンを原料として作られているアニリンはベ
ンゼン環にアミノ基(-NH2)がついたものであるアニリンは無色の液体で水に溶けにく
くアンモニアより弱い塩基性を示すまたさらし粉(CaClO(ClO)H2O)水溶液を加えると
赤紫色を呈するこの呈色反応はアニリン特有のものであるので検出反応に用いられる
このアニリンを出発物質としてアゾ染料を合成してみる
62 試薬および使用器具
【試薬】 ①05moll 水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液
②2-ナフトール ③フェノール ④6moll 塩酸
⑤亜硝酸ナトリウム ⑥アニリン ⑦氷
【器具類】 ①電子天秤 ②50mℓビーカー ③100mℓビーカー
④ガラス棒 ⑤布(ガーゼなど) ⑥ピンセット
⑦ポリ手袋 ⑧ドライヤー ⑨シャーレ
10駒込ピペット(10ml ガラス製)
11駒込ピペット(1ml プラスチック製)
63 実験方法
1) 50mℓビーカーの中に 05molℓ水酸化ナトリウム水溶液 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回
NaOH 水溶液を分取するほぼ 20 mℓ分取できれば可)と 2-ナフトールを約 01g 入れ
よくかき混ぜる調製した溶液の中に布をつけその布はガラス棒でしぼってから(布
をガラス棒ですくいあげればよい)シャーレに広げる温度の異なる条件下(常温およ
び低温)で染料の合成実験を行うため布は最低 2枚調製した溶液と接触させそれ
ぞれ別々のシャーレ(低温用および常温用)に広げる
2) 新しいビーカーに水を約 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回分取)と 6molℓ塩酸約 4mℓ(10m
ℓ駒込ピペットで目分量で可)さらにアニリン約 1mℓ(プラスチック製 1 mℓ駒込ピペッ
ト)を入れてよくかき混ぜる染料の合成を常温および低温下で行うためこの溶液を
2つ調整する
低温下で反応させる溶液は恒温槽で 10~15 分ほどよく冷やした後亜硝酸ナトリウ
ム 05g を加えてよくかき混ぜる
常温下で反応させる溶液には冷却作業を行わずに亜硝酸ナトリウム 05g を加えて
よくかき混ぜる
3) 2)でつくった水溶液をシャーレに広げた布に注ぎ生成される染料を布によく染み
込ませ5分程放置する
4) 色の付いた布を取り出してポリ手袋をした手できれいに水洗いをし乾燥させる
48
5) 色差計を用いて乾燥した布の Lab(L明度aおよび b色度)を測定する
2)で作った溶液は5以下では無色の溶液ですが5以上になると淡い黄色になりま
す
【解説】
アゾ染料はアゾ基(-N=N-)を持っていてこのアゾ基によって鮮やかな橙色を呈色し
ます今回合成したアゾ染料は図の 1-フェニルアゾ-2-ナフトールです意外かもしれ
ませんが指示薬として使われているフェノールフタレインもアゾ化合物ですフェノール
フタレインは pH の変化によって色が出てきす染料の中でも最初は無色のものもありますが
温度を変化させたり酸性やアルカリ性にすると色が出てきます
ベンゼン ニトロベンゼン
N2Cl
ニトロ化 濃硫酸(濃硝酸)
還元反応 濃塩酸
(Sn又は Fe)
アニリン塩酸塩
遊離反応 NaOH
アニリン塩酸塩に強塩基を反応させる
と弱塩基であるアニリンが遊離する
氷冷+亜硝酸ナトリウム アニリン
塩酸
ジアゾ化
塩化ベンゼンジアゾニウム
塩化ベンゼンジアゾニウム
は熱によって窒素とフェノー
ルに分解される
カップリング
C10H7ONa (ナトリウム 2-ナフトキシド)
O
N =
1-フェニルアゾ 2-ナフトール
NH3Cl NH2
49
7 ガスクロマトグラフ質量分析計による茶葉中のカフェインの分析 71 はじめに ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)は極めて低い濃度の化学物質の同定や未知物質の構造決定に極めて強力な分析機器の一つであるGCMSを用いるとサンプルの中に含まれているある成分の分子構造(カフェインの分子構造を図 71に示す)やその量が分かりますもちろん分析機器ですので測定できる物質対象となる系や測定条件にはある
程度の制約があります混合物質を分離するガスクロマトグラフ(Gas ChromatographGC)と分離された成分(物質)を分析(構造決定と濃度測定)する質量分析計(Mass SpectrometerMS)を組み合わせた装置であるこの装置は有機化学生化学環境化学などの多くの分野で非常に多用されている例えば極めて低い濃度でも生体へ強い影響が懸念されるダイ
オキシン類などの土壌や河川の水中での含有率の決定や食品や医薬品中の微量成分の決定
にも利用されている 一方日本人に長い間親しまれてきた緑茶が近年産業界や医学
界で注目されている茶葉にはカフェイン(分子構造図 71)カテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドなどの有用成分が多く含まれておりその効能が注目されている 本実験では茶葉中に含まれるカフェインに対してGCMSを用いて分析する茶葉中には種々の物質が含まれておりGCMS分析を容易にするため前処理として超臨界二酸化炭素抽出(4015MPa程度の高圧力の二酸化炭素を溶剤として利用)により茶葉からカフェインの抽出を行いそのサンプルを GCMSにて分析する
図 71 カフェインの分子構造 図 72 物質の分析 個々の物質や装置についてはインターネットにより下記のWebサイトのフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』などにより調べるとよいカフェイン(caffeine)はアルカロイドの一種プリン環を持つプリンアルカロイドの一種でコーヒー類に含まれることか
らこの名がある化学名は137-トリメチルキサンチン(C8H10N4O2) コーヒーコーラ緑茶紅茶ガラナココアなどに含まれる(量は緑茶が一番多い)結晶は一水和物(C8H10N4O2bullH2O)もしくは無水物(無水カフェインC8H10N4O2)として得られ
る白色の針状または六角柱状結晶で匂いはなく味は苦い融点は 238昇華性がある出典フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』httpwwwwikipediaorg 装置「GCMS」httpwwwanshimadzucojpproductsgcmsqp2010htm (島津) 「超臨界抽出装置」httpwwwkagakucomjasco39-49html (日本分光)
50
レポート課題 1茶葉中に含まれるカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドの中から3つの物質を選びその物質について調べた結果を A4 レポート用紙2枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
2GCMS についてA4 レポート用紙1枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
3与えられたサンプルは茶葉1gから抽出されたのである実験結果よりもとの茶葉
1g中に含まれるカフェインの量を推算し計算式とあわせて示すこと 72 原理および装置 実験で使用する島津製の GCMS装置の全体図を図 73に原理の概略を図 74に示す
1
23
4
5
67 8
9
10
キャリアーガス
試料物質
1ボンベ(He)2圧力計3マイクロシリンジ4サンプラー5試料導入部6分離カラム
7セパレーター8イオン化室9磁石10電子増倍管11記録計
11
図 74 ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)の概略図
サンプルフォルダー
51
GCMS 装置は分離部である図中の 1~6 のガスクロマトグラフ(GC)と7~11 の検出部である質量分析計(MS)から構成される 3のマイクロシリンジを用いて試料を GCMSに導入する導入された試料は5試料導入部でガス化され6分離カラムに導入される分離カラムには吸着剤が充填されおり混合物の試料を導入した場合各物質と吸着剤との
親和性の違いにより各物質の分離カラムから排出されるタイミングは異なる分離カラム
を排出された試料は8イオン化室でイオン化され10電子倍増管にて検出される アセトンに溶解したカフェインの GCMSによる分析結果の一例を以下に示す図 75にク
ロマトグラム図 76にカフェインのピークのマススペクトルを示す
図 75 GCMSにより得られたクロマトグラム
横軸がリテンションタイムで縦軸がピーク強度を表す
図 76 カフェインのマススペクトルとカフェイン(分子量MW=194)の構造
(図 75中のリテンションタイム 126min付近のピークに起因するマススペクトル) 茶葉中にはカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイド以外にも繊維であるセルロースなど多くの物質が含まれているため茶葉そのものを
そのままサンプルとしてGCMSで分析することは困難であるセルロースなどの分子量の大きな物質はカラムに詰まってしまい分析できないそこで今回は超臨界二酸化炭素
による抽出により主にカフェインを他の物質と分離抽出した通常よく利用されるアセ
トン抽出(アセトンに茶葉を浸し特定の成分を抽出する)ではカフェイン以外にも多く
の物質が抽出されるため図 75 のような単独のピークを得ることは難しく複数のピークがクロマトグラムに見られるこのサンプル(この場合茶葉からの抽出物)にはカフェ
イン以外の不純物は少なかったがガスクロマトグラフの分離カラムによりさらにそれ
らの混合物が精度よく分離されるクロマトグラムのピークはそれらサンプル中に含まれ
ていた個々の物質を表しているクロマトグラムのピークを選択することで分子構造解析
したい物質を選んだことになる選択したクロマトグラムのピークの表している物質(ここ
ではカフェイン)に対応するマススペクトルが図 76 に表示されているマススペクトル
52
で横軸がその成分(ここではカフェイン)分子を構成している原子の原子量で縦軸がそ
の量を表しているのでマススペクトルから分子構造を解析するためにコンピュータ内
に蓄えられた物質ごとのマススペクトルデータと今回測定したマススペクトル(分子内に含
まれている各原子の数)を比較することで測定したサンプル中のクロマトピークを選択し
た分子がどのような原子をどれだけ含んだ分子であったかがわかりそれからその物質
がどのような分子構造の物質である可能性が高いかをコンピュータが検索し結果を示す 73 実験サンプルの設置と GCMS装置の操作方法 実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS装置のサンプルフォルダ
ー(図 73)にセットするこのサンプルは茶葉 1gを 50ccの高圧セルにて超臨界二酸化炭素を利用して4015MPa2時間接触の条件で抽出した固体を10gのアセトンに溶かしたものである またコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に装置および装置制
御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 本実験で使用する GCMS の操作は全てコンピュータのモニター上で GCMS の解析プログラムソフトを使用することで行うコンピュータの操作方法を以下に示す なおコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS 装置のサンプルフォルダー(図 73)にセットするまた装置および装置制御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 1)パソコンのデスクトップ上のアイコン「GCMS 分析」をクリックすると以下のようにGCMS制御プログラムを起動するその後「OK」ボタンをクリックする
図 77 GCMD分析用ソフトウェア「GCMS分析」の起動
まず「GC-MS分析」をクリック
「OK」ボタンをクリック
53
2)制御プログラムが起動されパソコンと GCMSの接続が開始される
図 78 「GCMS分析」の接続確認画面 3)GCMSとパソコンの接続が完了すると以下のような画面が表示される
図 79 「GCMS分析」操作画面
4)マススペクトルによる分子構造の解析 サンプル(この場合茶葉からの抽出物)には多くの物質が混じり合っていたがガス
クロマトグラフの分離カラムによりそれらの混合物が精度よく分離されるクロマトグラ
ムのピークはそれらサンプル中に含まれていた個々の物質を表しているクロマトグラム
のピークを選択することで分子構造解析したい物質を選んだことになる選択したクロマ
トグラムのピークの表している物質(ここではカフェイン)に対応するマススペクトルを選
択するマススペクトルは横軸が原子量で縦軸がその量を表しているのでマススペク
トルから分子構造を解析するために「定性処理」を行う シミラリティ検索結果が表示され分析により得られたスペクトルと類似のスペクトルを有
する物質の一覧が表示される上部に表示される物質ほどスペクトルが一致していること
を示す
接続状況が表示される
「トップへ」
をクリック
54
図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果
図 711 表示スペクトルのシミラリティ検索結果 10)図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果の印刷 「レポート(R)」をクリックし「検索結果(R)」をクリックすると検索結果が印刷される
GC-MS 分析で得られたマスス
ペクトル
データベース中
のマススペクト
ル
55
参考資料 生理活性物質の精製 カフェインの利尿作用のように生物活動に影響を与える物質を生理活性物質といいます
天然物には生理活性物質を多く含むものがあります一般に天然物は多くの成分を含ん
でおり特定の生理活性物質を分離抽出するには種々の分離技術が必要ですまた生
理活性物質には60以上の温度でその生理活性を失う(失活)ものや溶剤として広く用いられているクロロホルムなどの有機溶剤中で失活するものが多いそこでこれら生理活性
物質の分離精製技術の開発が望まれており30~60程度のマイルドな温度条件で操作できる二酸化炭素を機能性溶媒として利用する超臨界抽出も有効な分離技術として注目されて
いる超臨界二酸化炭素は気体と液体の中間の性質を持ち物質の分離に役立っています 臨界点付近の高密度気体は超臨界ガスまたは超臨界流体と呼ばれ臨界圧力前後でそ
の溶解能力が著しく変化することから工業的にも種々の分野で利用されています一例と
して超臨界二酸化炭素(SC-CO2)によるコーヒー豆からのカフェインの抽出プロセス(a)
ならびに超臨界二酸化炭素に対するカフェインの溶解度(b)を図に示します図(c)に示す
ように固体のカフェインがガスである超臨界二酸化炭素に溶解します
このように超臨界二酸化炭素を用いた技術はコーヒー豆からのカフェインの抽出プロ
ポリスからの生理活性物質の抽出に利用されています
図 超臨界二酸化炭素抽出を用いたコーヒー豆からのカフェインの抽出
56
付表 最小二乗法について 直線で近似する場合 f (x) = a0 + a1x (A1-1) 式(A1-1)のように近似させるとする測定値 yiとの残差を eiとすると式(A1-2)のようになる ei = yi - f (xi) = yi - ( a0 + a1xi ) (A1-2) ここで式(A1-2)の両辺を二乗してその i に関する総和をとりその値を S とすると次式となる
sumsum==
+minus==n
iii
n
ii xaayeS
1
210
1
2 )( (A1-3)
S を最小化するような a0a1を求める式(A1-3)を a0a1について偏微分すると次式とな
る
sum=
+minuspartpart
=partpart n
iii xaay
aaS
1
210
00)( sum
=
+minusminus=n
iii xaay
110 )(2 (A1-4)
同様にa1について編微分すると次式のようになる
sum=
+minusminus=partpart n
iiii xxaay
aS
110
1])([2 (A1-5)
Sが最小となる時は次式が同時に満たされる時である
00=
partpartaS
01=
partpartaS
(A1-6)
よって誤差が最小となる a0a1を求めるためには式(A1-6)を連立して解けばよい
sumsumsum===
+=n
ii
n
i
n
ii xaay
111
10 1 (A1-7)
sumsumsum===
+=n
ii
n
ii
n
iii xaxaxy
1
2
11
10 (A1-8)
式(A1-7)と式(A1-8)を a0a1を変数とみなし連立して解くと次式を得る
n組のデータ(xiyi)(i=12hellipn)に対して回帰直線 y= a0 + a1x を最小二乗法で求めて出力しデータ番号 iデータ yi直線で推定した値 )( ii bxay += および残差
iii yy minus=ε を出力するようなプログラムをつくりたい基礎式を導出せよ (ヒント残差の二乗の和が最小になるように係数 a0a1)を定めるのが最小二乗法
である)
57
sumsum
sumsumsumsum
==
====
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
n
ii
n
ii
xxn
xxyyxa
1
2
1
2
1111
2
0
)(
))(())(( (A1-9)
sumsum
sumsumsum
==
===
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
xxn
yxxyna
1
2
1
2
1111
)(
))(()( (A1-10)
よって式(A1-9)(A1-10)を用いれば最も誤差を小さくするような直線 y = a0 + a1x が求められる
y=a1x+a0 にて近似
誤差 ei
x
y
誤差が最小になる関数(直線 y=a1x+a0の場合)
図1 最小二乗による近似
誤差の和Sが最小
S
a0
a1
直線 y=a1x+a0 の近似
誤差の全体の和はS=Σei=Σyi-(a1xi+a0)
Sは変曲点にて最小値を示すすなわち(partSparta0)=0 (partSparta1)=0
図2 a0a1とSの関係
41
44 高分子溶液の粘度 [目的] 高分子溶液の粘度測定から分子量の粘度に与える影響について考察する [概要 ] オストワルド粘度計を用い種々の濃度のポリビニルアルコール(PVA ((-CH2CHOH-)n))水溶液の粘度を測定し粘度データよりポリビニルアルコールの分
子量を求める まず 05g100cc の濃度のポリビニルアルコール水溶液を調製する次にこれを原液
とし23 12 13 15の濃度の溶液を調製するこれらの溶液についてオストワルド粘度計を用いてそれぞれ流下時間を測定し相対粘度絶対粘度運動粘度を求め実験デ
ータより極限粘度[η]を求めるまた報告書には相対粘度絶対粘度運動粘度C
)ln( wηη
Cw
w-η
ηη vsポリビニルアルコール濃度の関係をそれぞれグラフにして提出する
[計算方法] エチルアルコール水溶液の粘度測定と同様の手法を用いて粘度の計算を行うなおポリビニルアルコール水溶液の密度はピクノメーターを用いて測定すること 表 4-3 ポリビニルアルコール水溶液の濃度密度相対粘度の関係 ポリビニルアルコール
濃度 [g100cc] 密度 d[gcm3] 相対粘度
η ηw[-] 05times(15) 05times(13) 05times(12) 05times(23)
05
42
[分子量の計算方法] 実験を行った結果以下のような粘度データを得られるとする実験データより極限粘度
を求めポリビニルアルコール(PVA)の分子量Mを決定せよ
PVA 水溶液濃度
C[g100cc]
相対粘度
ηηw[-]
絶対粘度
η[gcms]Cw
w-η
ηη
C)ln( wηη
05times(15) 1031 0008255 031 0305
05times(13) 039 0378
05times(12) 03 0289
05times(23) 0375 0353
05 0364 0334
ηw=8007times10-3 gcms 線状高分子の極限粘度[η]と分子量Mの関係は次式で与えられる [η]=KMα (46) ただしポリビニルアルコールの場合K=666times10-4α=064であるなお極限粘度[η]は次式で定義される
CC w
w
0
-][ limη
ηηη
rarr
= (47)
または
CC
)ln(][ w
0lim
ηηη
rarr
= (48)
よって濃度 CとCw
w-η
ηηまたは濃度 Cと
C)ln( wηη の関係をグラフ化し最小二乗法によ
り切片の値を求めると極限粘度[η]が決定される
Cw
w-η
ηηと C の関係より最小二乗法を用いて切片の値を決定すると(図 43 参照)切片=
03242傾き=00874となるよって極限粘度は以下のようになる[η]=03242同様
にC
)ln( wηη とcの関係より最小二乗法を用いて切片の値を決定する
(図 44参照)と切片=03249傾き=00256となり極限粘度は以下のようになる[η]=03249
Cw
w-η
ηηと Cの関係より決定した[η]=03242を用いてポリビニルアルコール(PVA)の
分子量 Mを計算する(46)式より以下のように PVAの分子量 Mを計算することができるM=([η]K)1α
=(03242(666times10-4))(1064)
=15811
43
y = 00874x + 03242
0
02
04
06
08
1
0 01 02 03 04 05 06 07
c[g100cc]
(η-ηw)(ηwc)
cw
w
η
ηηminus
極限粘度[η]
図 43 298Kにおける PVA濃度 CとCw
w-η
ηηの関係
y = 00256x + 03249
0
02
04
06
08
1
0 01 02 03 04 05 06 07
c[g100cc]
(ln(ηη
w))c
c)ln( wηη
極限粘度[η]
図 44 298Kにおける PVA濃度 CとC
)ln( wηη の関係
44
5 植物からの DNAの抽出 51 はじめに 分子レベルでの遺伝子の構造解明や遺伝子の発現に関する研究は近年急速に発展している
これら生命現象のしくみを分子レベルで解明しようという分子生物学の分野ではさまざま
な遺伝子の解析や応用方法が開発され我々の生活に身近なものになりつつある 本実験では初歩的な分子生物学に関する実験として植物(タマネギ)からの DNA の
抽出を行い抽出した遺伝子の電気泳動法による分離実験を試みる 52 試薬および器具 試薬 タマネギ(細胞中から遺伝子の抽出を行う) 台所用洗剤(洗剤中に含まれる界面活性剤には植物の細胞膜およびタンパク質を破壊す
る働きがある) 塩化ナトリウム(DNAは塩化ナトリウム水溶液に溶解し易い性質がある) エタノール(予め冷やしておくDNAはエタノールにほとんど溶解しない) 制限酵素(DNAを一定の部位で切断する働きを働きがある) TE緩衝液(pH緩衝剤が入った溶液) 器具 ビーカーミキサーフィルターメスシリンダー駒込ピペットガラス棒 マイクロピペット電気泳動装置ポラロイドカメラ 53 実験方法 1)タマネギは 1回の実験で半個のうち内側の半分程度を使用するタマネギ水 30ml台所用洗剤数滴をミキサー用ガラス容器に入れ40~60秒程度(固体状のタマネギがなくなる頃が目安)ミキサーにて混合する
2) 1)で作成した混合溶液をビーカーに移し約5g程度の塩化ナトリウムを加えガラス棒で静かに攪拌する粘性の大きな溶液が得られる
3) 2)で作成した溶液をフィルターを用いて濾過し濾液を回収する 4) 濾液の約2倍程度の量の冷エタノールをビーカーの壁伝いに静かに注ぐ 5) ビーカーを揺するとエタノール層に白くふわふわしたものが浮いてくるこれが DNAであるガラス棒で DNAを巻き取りシャーレ上にて DNAを回収する顕微鏡を用いて回収した DNAの状態を観察する
6)マイクロチューブ(容量 15ml)中に用意した 70エタノールを 8 分目程度まで注ぐ5)にて回収された DNAをマイクロピペットを用いて70エタノールの入ったマイクロチューブ中に移す軽く混ぜることによりDNA から不要な物質を洗い流す遠心分離してDNA をマイクロチューブの底に沈めた後溶液を捨てて DNA を乾かす乾いたらTE緩衝溶液を 1ml加えて放置するDNAの溶液が得られる
54 電気泳動装置による DNAの観察
本実験は職員と一緒に行うこと 実験を行う人はビニール手袋をすること 1) 抽出した DNAを電気泳動装置で観察するマイクロピペットを用いて以下のように調製した DNAの混合溶液を調製する(いずれの溶液も調製済)
45
2) マイクロピペットを用いてアガロースゲルの試料を流し込む穴(ウェル)に1)にて調製した溶液 Aおよび Bを注ぎ込む注入量は20μℓとする電気泳動装置のスイッチを入れて100Vの電流を流しアガロースゲル内にて DNAを電気泳動させる
3) 試料に予め加えられておいた青色の色素が 7 分目程度まで進んだら電気泳動を中止する(約 30分程度)
4) (ここでの作業は職員が行う) アガロースゲルを取り出し染色液に浸す染色後ゲルを取り出しポラロイドカメラで
DNAの泳動状態を撮影する
+ -
アガロースゲル
試料を流し込む穴(ウェル)
図 51 電気泳動装置
6 5 4 3 2 1
図 52 DNAの電気泳動写真の一例
55 電気泳動装置の原理 電気泳動装置の原理図を以下に示すアガロースゲル(寒天から不純物を除いたもの)中
に DNAをセットし電流を流すとDNAは電流の向きとは逆にマイナスからプラス方向
調製済 溶液 A(制限酵素なし) 水 11μℓ 10timesH Buffer 2microℓ 植物 DNA 5μℓ
調製済 溶液 B(制限酵素 Eco RI入り) 水 11μℓ 10timesH Buffer 2microℓ 植物 DNA 5μℓ 制限酵素 2μℓ
1 DNA(タマネギ)+制限酵素 2 DNA(タマネギ)+制限酵素 3 DNA(タマネギ) 4 λ-DNA(大腸菌)+制限酵素 5 λ-DNA(大腸菌) 6 サイズマーカー
500bp
46
に動く(このことを電気泳動という)これはDNA のリン酸部分が負に帯電しているためでありまたDNAはその長さにより泳動距離が異なる(短い遺伝子ほど長く泳動する)電気泳動ではこの性質を利用してDNAを大きさごとに分離することができる
塩基対数によってDNAを分離
EtBr (蛍光試薬)DNAの二本鎖内に入り込む
発光
UVλ=302nm
励起
分離後のアガロースゲルをエチジウムブロマイド(EtBr)溶液に浸す
DNAを含んだ溶液
アガロースゲル
リン酸部分が負に帯電
塩基 (ATGC)-
+
カメラで撮影
電圧
DNA構成成分(dNTPs)
バンドが明る
DNA量が
バンド(DNAの存在)
図 53 電気泳動の原理
56 制限酵素とは DNA は4 種類のヌクレオチド(GATC)が不規則につながってできている制限酵素はDNAの特定のヌクレオチドが並んでいる部分を切断する制限酵素には様々な種類がありEco RI(エコアールワン)と呼ばれる酵素は「GAATTC」といった並びの部分だけを切断することができる
GAATTC
CTTAAG
制限酵素
Eco RI
AAGCTT
TTCGAA
制限酵素
Hin dIII
図 54 制限酵素による DNAの切断
レポートについて 1 実験方法および実験結果の整理方法については指針書を参考にすること 2 実験結果については電気泳動の結果について考察すること(制限酵素の影響などにつ
いてまとめてください)
47
6 染色実験
61 はじめに
現在私達の身の周りでは様々な染料が使われている例えばT シャツやジーンズな
どの衣服は橙黄赤青など様々な色に染められている他にも私達が気付かないと
ころで多くの染色された製品を使用しているそこで本実験では高校の化学で学んだ
アゾ染料を合成してみるアゾ染料はアニリンを原料として作られているアニリンはベ
ンゼン環にアミノ基(-NH2)がついたものであるアニリンは無色の液体で水に溶けにく
くアンモニアより弱い塩基性を示すまたさらし粉(CaClO(ClO)H2O)水溶液を加えると
赤紫色を呈するこの呈色反応はアニリン特有のものであるので検出反応に用いられる
このアニリンを出発物質としてアゾ染料を合成してみる
62 試薬および使用器具
【試薬】 ①05moll 水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液
②2-ナフトール ③フェノール ④6moll 塩酸
⑤亜硝酸ナトリウム ⑥アニリン ⑦氷
【器具類】 ①電子天秤 ②50mℓビーカー ③100mℓビーカー
④ガラス棒 ⑤布(ガーゼなど) ⑥ピンセット
⑦ポリ手袋 ⑧ドライヤー ⑨シャーレ
10駒込ピペット(10ml ガラス製)
11駒込ピペット(1ml プラスチック製)
63 実験方法
1) 50mℓビーカーの中に 05molℓ水酸化ナトリウム水溶液 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回
NaOH 水溶液を分取するほぼ 20 mℓ分取できれば可)と 2-ナフトールを約 01g 入れ
よくかき混ぜる調製した溶液の中に布をつけその布はガラス棒でしぼってから(布
をガラス棒ですくいあげればよい)シャーレに広げる温度の異なる条件下(常温およ
び低温)で染料の合成実験を行うため布は最低 2枚調製した溶液と接触させそれ
ぞれ別々のシャーレ(低温用および常温用)に広げる
2) 新しいビーカーに水を約 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回分取)と 6molℓ塩酸約 4mℓ(10m
ℓ駒込ピペットで目分量で可)さらにアニリン約 1mℓ(プラスチック製 1 mℓ駒込ピペッ
ト)を入れてよくかき混ぜる染料の合成を常温および低温下で行うためこの溶液を
2つ調整する
低温下で反応させる溶液は恒温槽で 10~15 分ほどよく冷やした後亜硝酸ナトリウ
ム 05g を加えてよくかき混ぜる
常温下で反応させる溶液には冷却作業を行わずに亜硝酸ナトリウム 05g を加えて
よくかき混ぜる
3) 2)でつくった水溶液をシャーレに広げた布に注ぎ生成される染料を布によく染み
込ませ5分程放置する
4) 色の付いた布を取り出してポリ手袋をした手できれいに水洗いをし乾燥させる
48
5) 色差計を用いて乾燥した布の Lab(L明度aおよび b色度)を測定する
2)で作った溶液は5以下では無色の溶液ですが5以上になると淡い黄色になりま
す
【解説】
アゾ染料はアゾ基(-N=N-)を持っていてこのアゾ基によって鮮やかな橙色を呈色し
ます今回合成したアゾ染料は図の 1-フェニルアゾ-2-ナフトールです意外かもしれ
ませんが指示薬として使われているフェノールフタレインもアゾ化合物ですフェノール
フタレインは pH の変化によって色が出てきす染料の中でも最初は無色のものもありますが
温度を変化させたり酸性やアルカリ性にすると色が出てきます
ベンゼン ニトロベンゼン
N2Cl
ニトロ化 濃硫酸(濃硝酸)
還元反応 濃塩酸
(Sn又は Fe)
アニリン塩酸塩
遊離反応 NaOH
アニリン塩酸塩に強塩基を反応させる
と弱塩基であるアニリンが遊離する
氷冷+亜硝酸ナトリウム アニリン
塩酸
ジアゾ化
塩化ベンゼンジアゾニウム
塩化ベンゼンジアゾニウム
は熱によって窒素とフェノー
ルに分解される
カップリング
C10H7ONa (ナトリウム 2-ナフトキシド)
O
N =
1-フェニルアゾ 2-ナフトール
NH3Cl NH2
49
7 ガスクロマトグラフ質量分析計による茶葉中のカフェインの分析 71 はじめに ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)は極めて低い濃度の化学物質の同定や未知物質の構造決定に極めて強力な分析機器の一つであるGCMSを用いるとサンプルの中に含まれているある成分の分子構造(カフェインの分子構造を図 71に示す)やその量が分かりますもちろん分析機器ですので測定できる物質対象となる系や測定条件にはある
程度の制約があります混合物質を分離するガスクロマトグラフ(Gas ChromatographGC)と分離された成分(物質)を分析(構造決定と濃度測定)する質量分析計(Mass SpectrometerMS)を組み合わせた装置であるこの装置は有機化学生化学環境化学などの多くの分野で非常に多用されている例えば極めて低い濃度でも生体へ強い影響が懸念されるダイ
オキシン類などの土壌や河川の水中での含有率の決定や食品や医薬品中の微量成分の決定
にも利用されている 一方日本人に長い間親しまれてきた緑茶が近年産業界や医学
界で注目されている茶葉にはカフェイン(分子構造図 71)カテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドなどの有用成分が多く含まれておりその効能が注目されている 本実験では茶葉中に含まれるカフェインに対してGCMSを用いて分析する茶葉中には種々の物質が含まれておりGCMS分析を容易にするため前処理として超臨界二酸化炭素抽出(4015MPa程度の高圧力の二酸化炭素を溶剤として利用)により茶葉からカフェインの抽出を行いそのサンプルを GCMSにて分析する
図 71 カフェインの分子構造 図 72 物質の分析 個々の物質や装置についてはインターネットにより下記のWebサイトのフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』などにより調べるとよいカフェイン(caffeine)はアルカロイドの一種プリン環を持つプリンアルカロイドの一種でコーヒー類に含まれることか
らこの名がある化学名は137-トリメチルキサンチン(C8H10N4O2) コーヒーコーラ緑茶紅茶ガラナココアなどに含まれる(量は緑茶が一番多い)結晶は一水和物(C8H10N4O2bullH2O)もしくは無水物(無水カフェインC8H10N4O2)として得られ
る白色の針状または六角柱状結晶で匂いはなく味は苦い融点は 238昇華性がある出典フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』httpwwwwikipediaorg 装置「GCMS」httpwwwanshimadzucojpproductsgcmsqp2010htm (島津) 「超臨界抽出装置」httpwwwkagakucomjasco39-49html (日本分光)
50
レポート課題 1茶葉中に含まれるカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドの中から3つの物質を選びその物質について調べた結果を A4 レポート用紙2枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
2GCMS についてA4 レポート用紙1枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
3与えられたサンプルは茶葉1gから抽出されたのである実験結果よりもとの茶葉
1g中に含まれるカフェインの量を推算し計算式とあわせて示すこと 72 原理および装置 実験で使用する島津製の GCMS装置の全体図を図 73に原理の概略を図 74に示す
1
23
4
5
67 8
9
10
キャリアーガス
試料物質
1ボンベ(He)2圧力計3マイクロシリンジ4サンプラー5試料導入部6分離カラム
7セパレーター8イオン化室9磁石10電子増倍管11記録計
11
図 74 ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)の概略図
サンプルフォルダー
51
GCMS 装置は分離部である図中の 1~6 のガスクロマトグラフ(GC)と7~11 の検出部である質量分析計(MS)から構成される 3のマイクロシリンジを用いて試料を GCMSに導入する導入された試料は5試料導入部でガス化され6分離カラムに導入される分離カラムには吸着剤が充填されおり混合物の試料を導入した場合各物質と吸着剤との
親和性の違いにより各物質の分離カラムから排出されるタイミングは異なる分離カラム
を排出された試料は8イオン化室でイオン化され10電子倍増管にて検出される アセトンに溶解したカフェインの GCMSによる分析結果の一例を以下に示す図 75にク
ロマトグラム図 76にカフェインのピークのマススペクトルを示す
図 75 GCMSにより得られたクロマトグラム
横軸がリテンションタイムで縦軸がピーク強度を表す
図 76 カフェインのマススペクトルとカフェイン(分子量MW=194)の構造
(図 75中のリテンションタイム 126min付近のピークに起因するマススペクトル) 茶葉中にはカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイド以外にも繊維であるセルロースなど多くの物質が含まれているため茶葉そのものを
そのままサンプルとしてGCMSで分析することは困難であるセルロースなどの分子量の大きな物質はカラムに詰まってしまい分析できないそこで今回は超臨界二酸化炭素
による抽出により主にカフェインを他の物質と分離抽出した通常よく利用されるアセ
トン抽出(アセトンに茶葉を浸し特定の成分を抽出する)ではカフェイン以外にも多く
の物質が抽出されるため図 75 のような単独のピークを得ることは難しく複数のピークがクロマトグラムに見られるこのサンプル(この場合茶葉からの抽出物)にはカフェ
イン以外の不純物は少なかったがガスクロマトグラフの分離カラムによりさらにそれ
らの混合物が精度よく分離されるクロマトグラムのピークはそれらサンプル中に含まれ
ていた個々の物質を表しているクロマトグラムのピークを選択することで分子構造解析
したい物質を選んだことになる選択したクロマトグラムのピークの表している物質(ここ
ではカフェイン)に対応するマススペクトルが図 76 に表示されているマススペクトル
52
で横軸がその成分(ここではカフェイン)分子を構成している原子の原子量で縦軸がそ
の量を表しているのでマススペクトルから分子構造を解析するためにコンピュータ内
に蓄えられた物質ごとのマススペクトルデータと今回測定したマススペクトル(分子内に含
まれている各原子の数)を比較することで測定したサンプル中のクロマトピークを選択し
た分子がどのような原子をどれだけ含んだ分子であったかがわかりそれからその物質
がどのような分子構造の物質である可能性が高いかをコンピュータが検索し結果を示す 73 実験サンプルの設置と GCMS装置の操作方法 実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS装置のサンプルフォルダ
ー(図 73)にセットするこのサンプルは茶葉 1gを 50ccの高圧セルにて超臨界二酸化炭素を利用して4015MPa2時間接触の条件で抽出した固体を10gのアセトンに溶かしたものである またコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に装置および装置制
御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 本実験で使用する GCMS の操作は全てコンピュータのモニター上で GCMS の解析プログラムソフトを使用することで行うコンピュータの操作方法を以下に示す なおコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS 装置のサンプルフォルダー(図 73)にセットするまた装置および装置制御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 1)パソコンのデスクトップ上のアイコン「GCMS 分析」をクリックすると以下のようにGCMS制御プログラムを起動するその後「OK」ボタンをクリックする
図 77 GCMD分析用ソフトウェア「GCMS分析」の起動
まず「GC-MS分析」をクリック
「OK」ボタンをクリック
53
2)制御プログラムが起動されパソコンと GCMSの接続が開始される
図 78 「GCMS分析」の接続確認画面 3)GCMSとパソコンの接続が完了すると以下のような画面が表示される
図 79 「GCMS分析」操作画面
4)マススペクトルによる分子構造の解析 サンプル(この場合茶葉からの抽出物)には多くの物質が混じり合っていたがガス
クロマトグラフの分離カラムによりそれらの混合物が精度よく分離されるクロマトグラ
ムのピークはそれらサンプル中に含まれていた個々の物質を表しているクロマトグラム
のピークを選択することで分子構造解析したい物質を選んだことになる選択したクロマ
トグラムのピークの表している物質(ここではカフェイン)に対応するマススペクトルを選
択するマススペクトルは横軸が原子量で縦軸がその量を表しているのでマススペク
トルから分子構造を解析するために「定性処理」を行う シミラリティ検索結果が表示され分析により得られたスペクトルと類似のスペクトルを有
する物質の一覧が表示される上部に表示される物質ほどスペクトルが一致していること
を示す
接続状況が表示される
「トップへ」
をクリック
54
図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果
図 711 表示スペクトルのシミラリティ検索結果 10)図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果の印刷 「レポート(R)」をクリックし「検索結果(R)」をクリックすると検索結果が印刷される
GC-MS 分析で得られたマスス
ペクトル
データベース中
のマススペクト
ル
55
参考資料 生理活性物質の精製 カフェインの利尿作用のように生物活動に影響を与える物質を生理活性物質といいます
天然物には生理活性物質を多く含むものがあります一般に天然物は多くの成分を含ん
でおり特定の生理活性物質を分離抽出するには種々の分離技術が必要ですまた生
理活性物質には60以上の温度でその生理活性を失う(失活)ものや溶剤として広く用いられているクロロホルムなどの有機溶剤中で失活するものが多いそこでこれら生理活性
物質の分離精製技術の開発が望まれており30~60程度のマイルドな温度条件で操作できる二酸化炭素を機能性溶媒として利用する超臨界抽出も有効な分離技術として注目されて
いる超臨界二酸化炭素は気体と液体の中間の性質を持ち物質の分離に役立っています 臨界点付近の高密度気体は超臨界ガスまたは超臨界流体と呼ばれ臨界圧力前後でそ
の溶解能力が著しく変化することから工業的にも種々の分野で利用されています一例と
して超臨界二酸化炭素(SC-CO2)によるコーヒー豆からのカフェインの抽出プロセス(a)
ならびに超臨界二酸化炭素に対するカフェインの溶解度(b)を図に示します図(c)に示す
ように固体のカフェインがガスである超臨界二酸化炭素に溶解します
このように超臨界二酸化炭素を用いた技術はコーヒー豆からのカフェインの抽出プロ
ポリスからの生理活性物質の抽出に利用されています
図 超臨界二酸化炭素抽出を用いたコーヒー豆からのカフェインの抽出
56
付表 最小二乗法について 直線で近似する場合 f (x) = a0 + a1x (A1-1) 式(A1-1)のように近似させるとする測定値 yiとの残差を eiとすると式(A1-2)のようになる ei = yi - f (xi) = yi - ( a0 + a1xi ) (A1-2) ここで式(A1-2)の両辺を二乗してその i に関する総和をとりその値を S とすると次式となる
sumsum==
+minus==n
iii
n
ii xaayeS
1
210
1
2 )( (A1-3)
S を最小化するような a0a1を求める式(A1-3)を a0a1について偏微分すると次式とな
る
sum=
+minuspartpart
=partpart n
iii xaay
aaS
1
210
00)( sum
=
+minusminus=n
iii xaay
110 )(2 (A1-4)
同様にa1について編微分すると次式のようになる
sum=
+minusminus=partpart n
iiii xxaay
aS
110
1])([2 (A1-5)
Sが最小となる時は次式が同時に満たされる時である
00=
partpartaS
01=
partpartaS
(A1-6)
よって誤差が最小となる a0a1を求めるためには式(A1-6)を連立して解けばよい
sumsumsum===
+=n
ii
n
i
n
ii xaay
111
10 1 (A1-7)
sumsumsum===
+=n
ii
n
ii
n
iii xaxaxy
1
2
11
10 (A1-8)
式(A1-7)と式(A1-8)を a0a1を変数とみなし連立して解くと次式を得る
n組のデータ(xiyi)(i=12hellipn)に対して回帰直線 y= a0 + a1x を最小二乗法で求めて出力しデータ番号 iデータ yi直線で推定した値 )( ii bxay += および残差
iii yy minus=ε を出力するようなプログラムをつくりたい基礎式を導出せよ (ヒント残差の二乗の和が最小になるように係数 a0a1)を定めるのが最小二乗法
である)
57
sumsum
sumsumsumsum
==
====
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
n
ii
n
ii
xxn
xxyyxa
1
2
1
2
1111
2
0
)(
))(())(( (A1-9)
sumsum
sumsumsum
==
===
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
xxn
yxxyna
1
2
1
2
1111
)(
))(()( (A1-10)
よって式(A1-9)(A1-10)を用いれば最も誤差を小さくするような直線 y = a0 + a1x が求められる
y=a1x+a0 にて近似
誤差 ei
x
y
誤差が最小になる関数(直線 y=a1x+a0の場合)
図1 最小二乗による近似
誤差の和Sが最小
S
a0
a1
直線 y=a1x+a0 の近似
誤差の全体の和はS=Σei=Σyi-(a1xi+a0)
Sは変曲点にて最小値を示すすなわち(partSparta0)=0 (partSparta1)=0
図2 a0a1とSの関係
42
[分子量の計算方法] 実験を行った結果以下のような粘度データを得られるとする実験データより極限粘度
を求めポリビニルアルコール(PVA)の分子量Mを決定せよ
PVA 水溶液濃度
C[g100cc]
相対粘度
ηηw[-]
絶対粘度
η[gcms]Cw
w-η
ηη
C)ln( wηη
05times(15) 1031 0008255 031 0305
05times(13) 039 0378
05times(12) 03 0289
05times(23) 0375 0353
05 0364 0334
ηw=8007times10-3 gcms 線状高分子の極限粘度[η]と分子量Mの関係は次式で与えられる [η]=KMα (46) ただしポリビニルアルコールの場合K=666times10-4α=064であるなお極限粘度[η]は次式で定義される
CC w
w
0
-][ limη
ηηη
rarr
= (47)
または
CC
)ln(][ w
0lim
ηηη
rarr
= (48)
よって濃度 CとCw
w-η
ηηまたは濃度 Cと
C)ln( wηη の関係をグラフ化し最小二乗法によ
り切片の値を求めると極限粘度[η]が決定される
Cw
w-η
ηηと C の関係より最小二乗法を用いて切片の値を決定すると(図 43 参照)切片=
03242傾き=00874となるよって極限粘度は以下のようになる[η]=03242同様
にC
)ln( wηη とcの関係より最小二乗法を用いて切片の値を決定する
(図 44参照)と切片=03249傾き=00256となり極限粘度は以下のようになる[η]=03249
Cw
w-η
ηηと Cの関係より決定した[η]=03242を用いてポリビニルアルコール(PVA)の
分子量 Mを計算する(46)式より以下のように PVAの分子量 Mを計算することができるM=([η]K)1α
=(03242(666times10-4))(1064)
=15811
43
y = 00874x + 03242
0
02
04
06
08
1
0 01 02 03 04 05 06 07
c[g100cc]
(η-ηw)(ηwc)
cw
w
η
ηηminus
極限粘度[η]
図 43 298Kにおける PVA濃度 CとCw
w-η
ηηの関係
y = 00256x + 03249
0
02
04
06
08
1
0 01 02 03 04 05 06 07
c[g100cc]
(ln(ηη
w))c
c)ln( wηη
極限粘度[η]
図 44 298Kにおける PVA濃度 CとC
)ln( wηη の関係
44
5 植物からの DNAの抽出 51 はじめに 分子レベルでの遺伝子の構造解明や遺伝子の発現に関する研究は近年急速に発展している
これら生命現象のしくみを分子レベルで解明しようという分子生物学の分野ではさまざま
な遺伝子の解析や応用方法が開発され我々の生活に身近なものになりつつある 本実験では初歩的な分子生物学に関する実験として植物(タマネギ)からの DNA の
抽出を行い抽出した遺伝子の電気泳動法による分離実験を試みる 52 試薬および器具 試薬 タマネギ(細胞中から遺伝子の抽出を行う) 台所用洗剤(洗剤中に含まれる界面活性剤には植物の細胞膜およびタンパク質を破壊す
る働きがある) 塩化ナトリウム(DNAは塩化ナトリウム水溶液に溶解し易い性質がある) エタノール(予め冷やしておくDNAはエタノールにほとんど溶解しない) 制限酵素(DNAを一定の部位で切断する働きを働きがある) TE緩衝液(pH緩衝剤が入った溶液) 器具 ビーカーミキサーフィルターメスシリンダー駒込ピペットガラス棒 マイクロピペット電気泳動装置ポラロイドカメラ 53 実験方法 1)タマネギは 1回の実験で半個のうち内側の半分程度を使用するタマネギ水 30ml台所用洗剤数滴をミキサー用ガラス容器に入れ40~60秒程度(固体状のタマネギがなくなる頃が目安)ミキサーにて混合する
2) 1)で作成した混合溶液をビーカーに移し約5g程度の塩化ナトリウムを加えガラス棒で静かに攪拌する粘性の大きな溶液が得られる
3) 2)で作成した溶液をフィルターを用いて濾過し濾液を回収する 4) 濾液の約2倍程度の量の冷エタノールをビーカーの壁伝いに静かに注ぐ 5) ビーカーを揺するとエタノール層に白くふわふわしたものが浮いてくるこれが DNAであるガラス棒で DNAを巻き取りシャーレ上にて DNAを回収する顕微鏡を用いて回収した DNAの状態を観察する
6)マイクロチューブ(容量 15ml)中に用意した 70エタノールを 8 分目程度まで注ぐ5)にて回収された DNAをマイクロピペットを用いて70エタノールの入ったマイクロチューブ中に移す軽く混ぜることによりDNA から不要な物質を洗い流す遠心分離してDNA をマイクロチューブの底に沈めた後溶液を捨てて DNA を乾かす乾いたらTE緩衝溶液を 1ml加えて放置するDNAの溶液が得られる
54 電気泳動装置による DNAの観察
本実験は職員と一緒に行うこと 実験を行う人はビニール手袋をすること 1) 抽出した DNAを電気泳動装置で観察するマイクロピペットを用いて以下のように調製した DNAの混合溶液を調製する(いずれの溶液も調製済)
45
2) マイクロピペットを用いてアガロースゲルの試料を流し込む穴(ウェル)に1)にて調製した溶液 Aおよび Bを注ぎ込む注入量は20μℓとする電気泳動装置のスイッチを入れて100Vの電流を流しアガロースゲル内にて DNAを電気泳動させる
3) 試料に予め加えられておいた青色の色素が 7 分目程度まで進んだら電気泳動を中止する(約 30分程度)
4) (ここでの作業は職員が行う) アガロースゲルを取り出し染色液に浸す染色後ゲルを取り出しポラロイドカメラで
DNAの泳動状態を撮影する
+ -
アガロースゲル
試料を流し込む穴(ウェル)
図 51 電気泳動装置
6 5 4 3 2 1
図 52 DNAの電気泳動写真の一例
55 電気泳動装置の原理 電気泳動装置の原理図を以下に示すアガロースゲル(寒天から不純物を除いたもの)中
に DNAをセットし電流を流すとDNAは電流の向きとは逆にマイナスからプラス方向
調製済 溶液 A(制限酵素なし) 水 11μℓ 10timesH Buffer 2microℓ 植物 DNA 5μℓ
調製済 溶液 B(制限酵素 Eco RI入り) 水 11μℓ 10timesH Buffer 2microℓ 植物 DNA 5μℓ 制限酵素 2μℓ
1 DNA(タマネギ)+制限酵素 2 DNA(タマネギ)+制限酵素 3 DNA(タマネギ) 4 λ-DNA(大腸菌)+制限酵素 5 λ-DNA(大腸菌) 6 サイズマーカー
500bp
46
に動く(このことを電気泳動という)これはDNA のリン酸部分が負に帯電しているためでありまたDNAはその長さにより泳動距離が異なる(短い遺伝子ほど長く泳動する)電気泳動ではこの性質を利用してDNAを大きさごとに分離することができる
塩基対数によってDNAを分離
EtBr (蛍光試薬)DNAの二本鎖内に入り込む
発光
UVλ=302nm
励起
分離後のアガロースゲルをエチジウムブロマイド(EtBr)溶液に浸す
DNAを含んだ溶液
アガロースゲル
リン酸部分が負に帯電
塩基 (ATGC)-
+
カメラで撮影
電圧
DNA構成成分(dNTPs)
バンドが明る
DNA量が
バンド(DNAの存在)
図 53 電気泳動の原理
56 制限酵素とは DNA は4 種類のヌクレオチド(GATC)が不規則につながってできている制限酵素はDNAの特定のヌクレオチドが並んでいる部分を切断する制限酵素には様々な種類がありEco RI(エコアールワン)と呼ばれる酵素は「GAATTC」といった並びの部分だけを切断することができる
GAATTC
CTTAAG
制限酵素
Eco RI
AAGCTT
TTCGAA
制限酵素
Hin dIII
図 54 制限酵素による DNAの切断
レポートについて 1 実験方法および実験結果の整理方法については指針書を参考にすること 2 実験結果については電気泳動の結果について考察すること(制限酵素の影響などにつ
いてまとめてください)
47
6 染色実験
61 はじめに
現在私達の身の周りでは様々な染料が使われている例えばT シャツやジーンズな
どの衣服は橙黄赤青など様々な色に染められている他にも私達が気付かないと
ころで多くの染色された製品を使用しているそこで本実験では高校の化学で学んだ
アゾ染料を合成してみるアゾ染料はアニリンを原料として作られているアニリンはベ
ンゼン環にアミノ基(-NH2)がついたものであるアニリンは無色の液体で水に溶けにく
くアンモニアより弱い塩基性を示すまたさらし粉(CaClO(ClO)H2O)水溶液を加えると
赤紫色を呈するこの呈色反応はアニリン特有のものであるので検出反応に用いられる
このアニリンを出発物質としてアゾ染料を合成してみる
62 試薬および使用器具
【試薬】 ①05moll 水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液
②2-ナフトール ③フェノール ④6moll 塩酸
⑤亜硝酸ナトリウム ⑥アニリン ⑦氷
【器具類】 ①電子天秤 ②50mℓビーカー ③100mℓビーカー
④ガラス棒 ⑤布(ガーゼなど) ⑥ピンセット
⑦ポリ手袋 ⑧ドライヤー ⑨シャーレ
10駒込ピペット(10ml ガラス製)
11駒込ピペット(1ml プラスチック製)
63 実験方法
1) 50mℓビーカーの中に 05molℓ水酸化ナトリウム水溶液 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回
NaOH 水溶液を分取するほぼ 20 mℓ分取できれば可)と 2-ナフトールを約 01g 入れ
よくかき混ぜる調製した溶液の中に布をつけその布はガラス棒でしぼってから(布
をガラス棒ですくいあげればよい)シャーレに広げる温度の異なる条件下(常温およ
び低温)で染料の合成実験を行うため布は最低 2枚調製した溶液と接触させそれ
ぞれ別々のシャーレ(低温用および常温用)に広げる
2) 新しいビーカーに水を約 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回分取)と 6molℓ塩酸約 4mℓ(10m
ℓ駒込ピペットで目分量で可)さらにアニリン約 1mℓ(プラスチック製 1 mℓ駒込ピペッ
ト)を入れてよくかき混ぜる染料の合成を常温および低温下で行うためこの溶液を
2つ調整する
低温下で反応させる溶液は恒温槽で 10~15 分ほどよく冷やした後亜硝酸ナトリウ
ム 05g を加えてよくかき混ぜる
常温下で反応させる溶液には冷却作業を行わずに亜硝酸ナトリウム 05g を加えて
よくかき混ぜる
3) 2)でつくった水溶液をシャーレに広げた布に注ぎ生成される染料を布によく染み
込ませ5分程放置する
4) 色の付いた布を取り出してポリ手袋をした手できれいに水洗いをし乾燥させる
48
5) 色差計を用いて乾燥した布の Lab(L明度aおよび b色度)を測定する
2)で作った溶液は5以下では無色の溶液ですが5以上になると淡い黄色になりま
す
【解説】
アゾ染料はアゾ基(-N=N-)を持っていてこのアゾ基によって鮮やかな橙色を呈色し
ます今回合成したアゾ染料は図の 1-フェニルアゾ-2-ナフトールです意外かもしれ
ませんが指示薬として使われているフェノールフタレインもアゾ化合物ですフェノール
フタレインは pH の変化によって色が出てきす染料の中でも最初は無色のものもありますが
温度を変化させたり酸性やアルカリ性にすると色が出てきます
ベンゼン ニトロベンゼン
N2Cl
ニトロ化 濃硫酸(濃硝酸)
還元反応 濃塩酸
(Sn又は Fe)
アニリン塩酸塩
遊離反応 NaOH
アニリン塩酸塩に強塩基を反応させる
と弱塩基であるアニリンが遊離する
氷冷+亜硝酸ナトリウム アニリン
塩酸
ジアゾ化
塩化ベンゼンジアゾニウム
塩化ベンゼンジアゾニウム
は熱によって窒素とフェノー
ルに分解される
カップリング
C10H7ONa (ナトリウム 2-ナフトキシド)
O
N =
1-フェニルアゾ 2-ナフトール
NH3Cl NH2
49
7 ガスクロマトグラフ質量分析計による茶葉中のカフェインの分析 71 はじめに ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)は極めて低い濃度の化学物質の同定や未知物質の構造決定に極めて強力な分析機器の一つであるGCMSを用いるとサンプルの中に含まれているある成分の分子構造(カフェインの分子構造を図 71に示す)やその量が分かりますもちろん分析機器ですので測定できる物質対象となる系や測定条件にはある
程度の制約があります混合物質を分離するガスクロマトグラフ(Gas ChromatographGC)と分離された成分(物質)を分析(構造決定と濃度測定)する質量分析計(Mass SpectrometerMS)を組み合わせた装置であるこの装置は有機化学生化学環境化学などの多くの分野で非常に多用されている例えば極めて低い濃度でも生体へ強い影響が懸念されるダイ
オキシン類などの土壌や河川の水中での含有率の決定や食品や医薬品中の微量成分の決定
にも利用されている 一方日本人に長い間親しまれてきた緑茶が近年産業界や医学
界で注目されている茶葉にはカフェイン(分子構造図 71)カテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドなどの有用成分が多く含まれておりその効能が注目されている 本実験では茶葉中に含まれるカフェインに対してGCMSを用いて分析する茶葉中には種々の物質が含まれておりGCMS分析を容易にするため前処理として超臨界二酸化炭素抽出(4015MPa程度の高圧力の二酸化炭素を溶剤として利用)により茶葉からカフェインの抽出を行いそのサンプルを GCMSにて分析する
図 71 カフェインの分子構造 図 72 物質の分析 個々の物質や装置についてはインターネットにより下記のWebサイトのフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』などにより調べるとよいカフェイン(caffeine)はアルカロイドの一種プリン環を持つプリンアルカロイドの一種でコーヒー類に含まれることか
らこの名がある化学名は137-トリメチルキサンチン(C8H10N4O2) コーヒーコーラ緑茶紅茶ガラナココアなどに含まれる(量は緑茶が一番多い)結晶は一水和物(C8H10N4O2bullH2O)もしくは無水物(無水カフェインC8H10N4O2)として得られ
る白色の針状または六角柱状結晶で匂いはなく味は苦い融点は 238昇華性がある出典フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』httpwwwwikipediaorg 装置「GCMS」httpwwwanshimadzucojpproductsgcmsqp2010htm (島津) 「超臨界抽出装置」httpwwwkagakucomjasco39-49html (日本分光)
50
レポート課題 1茶葉中に含まれるカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドの中から3つの物質を選びその物質について調べた結果を A4 レポート用紙2枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
2GCMS についてA4 レポート用紙1枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
3与えられたサンプルは茶葉1gから抽出されたのである実験結果よりもとの茶葉
1g中に含まれるカフェインの量を推算し計算式とあわせて示すこと 72 原理および装置 実験で使用する島津製の GCMS装置の全体図を図 73に原理の概略を図 74に示す
1
23
4
5
67 8
9
10
キャリアーガス
試料物質
1ボンベ(He)2圧力計3マイクロシリンジ4サンプラー5試料導入部6分離カラム
7セパレーター8イオン化室9磁石10電子増倍管11記録計
11
図 74 ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)の概略図
サンプルフォルダー
51
GCMS 装置は分離部である図中の 1~6 のガスクロマトグラフ(GC)と7~11 の検出部である質量分析計(MS)から構成される 3のマイクロシリンジを用いて試料を GCMSに導入する導入された試料は5試料導入部でガス化され6分離カラムに導入される分離カラムには吸着剤が充填されおり混合物の試料を導入した場合各物質と吸着剤との
親和性の違いにより各物質の分離カラムから排出されるタイミングは異なる分離カラム
を排出された試料は8イオン化室でイオン化され10電子倍増管にて検出される アセトンに溶解したカフェインの GCMSによる分析結果の一例を以下に示す図 75にク
ロマトグラム図 76にカフェインのピークのマススペクトルを示す
図 75 GCMSにより得られたクロマトグラム
横軸がリテンションタイムで縦軸がピーク強度を表す
図 76 カフェインのマススペクトルとカフェイン(分子量MW=194)の構造
(図 75中のリテンションタイム 126min付近のピークに起因するマススペクトル) 茶葉中にはカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイド以外にも繊維であるセルロースなど多くの物質が含まれているため茶葉そのものを
そのままサンプルとしてGCMSで分析することは困難であるセルロースなどの分子量の大きな物質はカラムに詰まってしまい分析できないそこで今回は超臨界二酸化炭素
による抽出により主にカフェインを他の物質と分離抽出した通常よく利用されるアセ
トン抽出(アセトンに茶葉を浸し特定の成分を抽出する)ではカフェイン以外にも多く
の物質が抽出されるため図 75 のような単独のピークを得ることは難しく複数のピークがクロマトグラムに見られるこのサンプル(この場合茶葉からの抽出物)にはカフェ
イン以外の不純物は少なかったがガスクロマトグラフの分離カラムによりさらにそれ
らの混合物が精度よく分離されるクロマトグラムのピークはそれらサンプル中に含まれ
ていた個々の物質を表しているクロマトグラムのピークを選択することで分子構造解析
したい物質を選んだことになる選択したクロマトグラムのピークの表している物質(ここ
ではカフェイン)に対応するマススペクトルが図 76 に表示されているマススペクトル
52
で横軸がその成分(ここではカフェイン)分子を構成している原子の原子量で縦軸がそ
の量を表しているのでマススペクトルから分子構造を解析するためにコンピュータ内
に蓄えられた物質ごとのマススペクトルデータと今回測定したマススペクトル(分子内に含
まれている各原子の数)を比較することで測定したサンプル中のクロマトピークを選択し
た分子がどのような原子をどれだけ含んだ分子であったかがわかりそれからその物質
がどのような分子構造の物質である可能性が高いかをコンピュータが検索し結果を示す 73 実験サンプルの設置と GCMS装置の操作方法 実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS装置のサンプルフォルダ
ー(図 73)にセットするこのサンプルは茶葉 1gを 50ccの高圧セルにて超臨界二酸化炭素を利用して4015MPa2時間接触の条件で抽出した固体を10gのアセトンに溶かしたものである またコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に装置および装置制
御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 本実験で使用する GCMS の操作は全てコンピュータのモニター上で GCMS の解析プログラムソフトを使用することで行うコンピュータの操作方法を以下に示す なおコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS 装置のサンプルフォルダー(図 73)にセットするまた装置および装置制御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 1)パソコンのデスクトップ上のアイコン「GCMS 分析」をクリックすると以下のようにGCMS制御プログラムを起動するその後「OK」ボタンをクリックする
図 77 GCMD分析用ソフトウェア「GCMS分析」の起動
まず「GC-MS分析」をクリック
「OK」ボタンをクリック
53
2)制御プログラムが起動されパソコンと GCMSの接続が開始される
図 78 「GCMS分析」の接続確認画面 3)GCMSとパソコンの接続が完了すると以下のような画面が表示される
図 79 「GCMS分析」操作画面
4)マススペクトルによる分子構造の解析 サンプル(この場合茶葉からの抽出物)には多くの物質が混じり合っていたがガス
クロマトグラフの分離カラムによりそれらの混合物が精度よく分離されるクロマトグラ
ムのピークはそれらサンプル中に含まれていた個々の物質を表しているクロマトグラム
のピークを選択することで分子構造解析したい物質を選んだことになる選択したクロマ
トグラムのピークの表している物質(ここではカフェイン)に対応するマススペクトルを選
択するマススペクトルは横軸が原子量で縦軸がその量を表しているのでマススペク
トルから分子構造を解析するために「定性処理」を行う シミラリティ検索結果が表示され分析により得られたスペクトルと類似のスペクトルを有
する物質の一覧が表示される上部に表示される物質ほどスペクトルが一致していること
を示す
接続状況が表示される
「トップへ」
をクリック
54
図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果
図 711 表示スペクトルのシミラリティ検索結果 10)図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果の印刷 「レポート(R)」をクリックし「検索結果(R)」をクリックすると検索結果が印刷される
GC-MS 分析で得られたマスス
ペクトル
データベース中
のマススペクト
ル
55
参考資料 生理活性物質の精製 カフェインの利尿作用のように生物活動に影響を与える物質を生理活性物質といいます
天然物には生理活性物質を多く含むものがあります一般に天然物は多くの成分を含ん
でおり特定の生理活性物質を分離抽出するには種々の分離技術が必要ですまた生
理活性物質には60以上の温度でその生理活性を失う(失活)ものや溶剤として広く用いられているクロロホルムなどの有機溶剤中で失活するものが多いそこでこれら生理活性
物質の分離精製技術の開発が望まれており30~60程度のマイルドな温度条件で操作できる二酸化炭素を機能性溶媒として利用する超臨界抽出も有効な分離技術として注目されて
いる超臨界二酸化炭素は気体と液体の中間の性質を持ち物質の分離に役立っています 臨界点付近の高密度気体は超臨界ガスまたは超臨界流体と呼ばれ臨界圧力前後でそ
の溶解能力が著しく変化することから工業的にも種々の分野で利用されています一例と
して超臨界二酸化炭素(SC-CO2)によるコーヒー豆からのカフェインの抽出プロセス(a)
ならびに超臨界二酸化炭素に対するカフェインの溶解度(b)を図に示します図(c)に示す
ように固体のカフェインがガスである超臨界二酸化炭素に溶解します
このように超臨界二酸化炭素を用いた技術はコーヒー豆からのカフェインの抽出プロ
ポリスからの生理活性物質の抽出に利用されています
図 超臨界二酸化炭素抽出を用いたコーヒー豆からのカフェインの抽出
56
付表 最小二乗法について 直線で近似する場合 f (x) = a0 + a1x (A1-1) 式(A1-1)のように近似させるとする測定値 yiとの残差を eiとすると式(A1-2)のようになる ei = yi - f (xi) = yi - ( a0 + a1xi ) (A1-2) ここで式(A1-2)の両辺を二乗してその i に関する総和をとりその値を S とすると次式となる
sumsum==
+minus==n
iii
n
ii xaayeS
1
210
1
2 )( (A1-3)
S を最小化するような a0a1を求める式(A1-3)を a0a1について偏微分すると次式とな
る
sum=
+minuspartpart
=partpart n
iii xaay
aaS
1
210
00)( sum
=
+minusminus=n
iii xaay
110 )(2 (A1-4)
同様にa1について編微分すると次式のようになる
sum=
+minusminus=partpart n
iiii xxaay
aS
110
1])([2 (A1-5)
Sが最小となる時は次式が同時に満たされる時である
00=
partpartaS
01=
partpartaS
(A1-6)
よって誤差が最小となる a0a1を求めるためには式(A1-6)を連立して解けばよい
sumsumsum===
+=n
ii
n
i
n
ii xaay
111
10 1 (A1-7)
sumsumsum===
+=n
ii
n
ii
n
iii xaxaxy
1
2
11
10 (A1-8)
式(A1-7)と式(A1-8)を a0a1を変数とみなし連立して解くと次式を得る
n組のデータ(xiyi)(i=12hellipn)に対して回帰直線 y= a0 + a1x を最小二乗法で求めて出力しデータ番号 iデータ yi直線で推定した値 )( ii bxay += および残差
iii yy minus=ε を出力するようなプログラムをつくりたい基礎式を導出せよ (ヒント残差の二乗の和が最小になるように係数 a0a1)を定めるのが最小二乗法
である)
57
sumsum
sumsumsumsum
==
====
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
n
ii
n
ii
xxn
xxyyxa
1
2
1
2
1111
2
0
)(
))(())(( (A1-9)
sumsum
sumsumsum
==
===
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
xxn
yxxyna
1
2
1
2
1111
)(
))(()( (A1-10)
よって式(A1-9)(A1-10)を用いれば最も誤差を小さくするような直線 y = a0 + a1x が求められる
y=a1x+a0 にて近似
誤差 ei
x
y
誤差が最小になる関数(直線 y=a1x+a0の場合)
図1 最小二乗による近似
誤差の和Sが最小
S
a0
a1
直線 y=a1x+a0 の近似
誤差の全体の和はS=Σei=Σyi-(a1xi+a0)
Sは変曲点にて最小値を示すすなわち(partSparta0)=0 (partSparta1)=0
図2 a0a1とSの関係
43
y = 00874x + 03242
0
02
04
06
08
1
0 01 02 03 04 05 06 07
c[g100cc]
(η-ηw)(ηwc)
cw
w
η
ηηminus
極限粘度[η]
図 43 298Kにおける PVA濃度 CとCw
w-η
ηηの関係
y = 00256x + 03249
0
02
04
06
08
1
0 01 02 03 04 05 06 07
c[g100cc]
(ln(ηη
w))c
c)ln( wηη
極限粘度[η]
図 44 298Kにおける PVA濃度 CとC
)ln( wηη の関係
44
5 植物からの DNAの抽出 51 はじめに 分子レベルでの遺伝子の構造解明や遺伝子の発現に関する研究は近年急速に発展している
これら生命現象のしくみを分子レベルで解明しようという分子生物学の分野ではさまざま
な遺伝子の解析や応用方法が開発され我々の生活に身近なものになりつつある 本実験では初歩的な分子生物学に関する実験として植物(タマネギ)からの DNA の
抽出を行い抽出した遺伝子の電気泳動法による分離実験を試みる 52 試薬および器具 試薬 タマネギ(細胞中から遺伝子の抽出を行う) 台所用洗剤(洗剤中に含まれる界面活性剤には植物の細胞膜およびタンパク質を破壊す
る働きがある) 塩化ナトリウム(DNAは塩化ナトリウム水溶液に溶解し易い性質がある) エタノール(予め冷やしておくDNAはエタノールにほとんど溶解しない) 制限酵素(DNAを一定の部位で切断する働きを働きがある) TE緩衝液(pH緩衝剤が入った溶液) 器具 ビーカーミキサーフィルターメスシリンダー駒込ピペットガラス棒 マイクロピペット電気泳動装置ポラロイドカメラ 53 実験方法 1)タマネギは 1回の実験で半個のうち内側の半分程度を使用するタマネギ水 30ml台所用洗剤数滴をミキサー用ガラス容器に入れ40~60秒程度(固体状のタマネギがなくなる頃が目安)ミキサーにて混合する
2) 1)で作成した混合溶液をビーカーに移し約5g程度の塩化ナトリウムを加えガラス棒で静かに攪拌する粘性の大きな溶液が得られる
3) 2)で作成した溶液をフィルターを用いて濾過し濾液を回収する 4) 濾液の約2倍程度の量の冷エタノールをビーカーの壁伝いに静かに注ぐ 5) ビーカーを揺するとエタノール層に白くふわふわしたものが浮いてくるこれが DNAであるガラス棒で DNAを巻き取りシャーレ上にて DNAを回収する顕微鏡を用いて回収した DNAの状態を観察する
6)マイクロチューブ(容量 15ml)中に用意した 70エタノールを 8 分目程度まで注ぐ5)にて回収された DNAをマイクロピペットを用いて70エタノールの入ったマイクロチューブ中に移す軽く混ぜることによりDNA から不要な物質を洗い流す遠心分離してDNA をマイクロチューブの底に沈めた後溶液を捨てて DNA を乾かす乾いたらTE緩衝溶液を 1ml加えて放置するDNAの溶液が得られる
54 電気泳動装置による DNAの観察
本実験は職員と一緒に行うこと 実験を行う人はビニール手袋をすること 1) 抽出した DNAを電気泳動装置で観察するマイクロピペットを用いて以下のように調製した DNAの混合溶液を調製する(いずれの溶液も調製済)
45
2) マイクロピペットを用いてアガロースゲルの試料を流し込む穴(ウェル)に1)にて調製した溶液 Aおよび Bを注ぎ込む注入量は20μℓとする電気泳動装置のスイッチを入れて100Vの電流を流しアガロースゲル内にて DNAを電気泳動させる
3) 試料に予め加えられておいた青色の色素が 7 分目程度まで進んだら電気泳動を中止する(約 30分程度)
4) (ここでの作業は職員が行う) アガロースゲルを取り出し染色液に浸す染色後ゲルを取り出しポラロイドカメラで
DNAの泳動状態を撮影する
+ -
アガロースゲル
試料を流し込む穴(ウェル)
図 51 電気泳動装置
6 5 4 3 2 1
図 52 DNAの電気泳動写真の一例
55 電気泳動装置の原理 電気泳動装置の原理図を以下に示すアガロースゲル(寒天から不純物を除いたもの)中
に DNAをセットし電流を流すとDNAは電流の向きとは逆にマイナスからプラス方向
調製済 溶液 A(制限酵素なし) 水 11μℓ 10timesH Buffer 2microℓ 植物 DNA 5μℓ
調製済 溶液 B(制限酵素 Eco RI入り) 水 11μℓ 10timesH Buffer 2microℓ 植物 DNA 5μℓ 制限酵素 2μℓ
1 DNA(タマネギ)+制限酵素 2 DNA(タマネギ)+制限酵素 3 DNA(タマネギ) 4 λ-DNA(大腸菌)+制限酵素 5 λ-DNA(大腸菌) 6 サイズマーカー
500bp
46
に動く(このことを電気泳動という)これはDNA のリン酸部分が負に帯電しているためでありまたDNAはその長さにより泳動距離が異なる(短い遺伝子ほど長く泳動する)電気泳動ではこの性質を利用してDNAを大きさごとに分離することができる
塩基対数によってDNAを分離
EtBr (蛍光試薬)DNAの二本鎖内に入り込む
発光
UVλ=302nm
励起
分離後のアガロースゲルをエチジウムブロマイド(EtBr)溶液に浸す
DNAを含んだ溶液
アガロースゲル
リン酸部分が負に帯電
塩基 (ATGC)-
+
カメラで撮影
電圧
DNA構成成分(dNTPs)
バンドが明る
DNA量が
バンド(DNAの存在)
図 53 電気泳動の原理
56 制限酵素とは DNA は4 種類のヌクレオチド(GATC)が不規則につながってできている制限酵素はDNAの特定のヌクレオチドが並んでいる部分を切断する制限酵素には様々な種類がありEco RI(エコアールワン)と呼ばれる酵素は「GAATTC」といった並びの部分だけを切断することができる
GAATTC
CTTAAG
制限酵素
Eco RI
AAGCTT
TTCGAA
制限酵素
Hin dIII
図 54 制限酵素による DNAの切断
レポートについて 1 実験方法および実験結果の整理方法については指針書を参考にすること 2 実験結果については電気泳動の結果について考察すること(制限酵素の影響などにつ
いてまとめてください)
47
6 染色実験
61 はじめに
現在私達の身の周りでは様々な染料が使われている例えばT シャツやジーンズな
どの衣服は橙黄赤青など様々な色に染められている他にも私達が気付かないと
ころで多くの染色された製品を使用しているそこで本実験では高校の化学で学んだ
アゾ染料を合成してみるアゾ染料はアニリンを原料として作られているアニリンはベ
ンゼン環にアミノ基(-NH2)がついたものであるアニリンは無色の液体で水に溶けにく
くアンモニアより弱い塩基性を示すまたさらし粉(CaClO(ClO)H2O)水溶液を加えると
赤紫色を呈するこの呈色反応はアニリン特有のものであるので検出反応に用いられる
このアニリンを出発物質としてアゾ染料を合成してみる
62 試薬および使用器具
【試薬】 ①05moll 水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液
②2-ナフトール ③フェノール ④6moll 塩酸
⑤亜硝酸ナトリウム ⑥アニリン ⑦氷
【器具類】 ①電子天秤 ②50mℓビーカー ③100mℓビーカー
④ガラス棒 ⑤布(ガーゼなど) ⑥ピンセット
⑦ポリ手袋 ⑧ドライヤー ⑨シャーレ
10駒込ピペット(10ml ガラス製)
11駒込ピペット(1ml プラスチック製)
63 実験方法
1) 50mℓビーカーの中に 05molℓ水酸化ナトリウム水溶液 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回
NaOH 水溶液を分取するほぼ 20 mℓ分取できれば可)と 2-ナフトールを約 01g 入れ
よくかき混ぜる調製した溶液の中に布をつけその布はガラス棒でしぼってから(布
をガラス棒ですくいあげればよい)シャーレに広げる温度の異なる条件下(常温およ
び低温)で染料の合成実験を行うため布は最低 2枚調製した溶液と接触させそれ
ぞれ別々のシャーレ(低温用および常温用)に広げる
2) 新しいビーカーに水を約 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回分取)と 6molℓ塩酸約 4mℓ(10m
ℓ駒込ピペットで目分量で可)さらにアニリン約 1mℓ(プラスチック製 1 mℓ駒込ピペッ
ト)を入れてよくかき混ぜる染料の合成を常温および低温下で行うためこの溶液を
2つ調整する
低温下で反応させる溶液は恒温槽で 10~15 分ほどよく冷やした後亜硝酸ナトリウ
ム 05g を加えてよくかき混ぜる
常温下で反応させる溶液には冷却作業を行わずに亜硝酸ナトリウム 05g を加えて
よくかき混ぜる
3) 2)でつくった水溶液をシャーレに広げた布に注ぎ生成される染料を布によく染み
込ませ5分程放置する
4) 色の付いた布を取り出してポリ手袋をした手できれいに水洗いをし乾燥させる
48
5) 色差計を用いて乾燥した布の Lab(L明度aおよび b色度)を測定する
2)で作った溶液は5以下では無色の溶液ですが5以上になると淡い黄色になりま
す
【解説】
アゾ染料はアゾ基(-N=N-)を持っていてこのアゾ基によって鮮やかな橙色を呈色し
ます今回合成したアゾ染料は図の 1-フェニルアゾ-2-ナフトールです意外かもしれ
ませんが指示薬として使われているフェノールフタレインもアゾ化合物ですフェノール
フタレインは pH の変化によって色が出てきす染料の中でも最初は無色のものもありますが
温度を変化させたり酸性やアルカリ性にすると色が出てきます
ベンゼン ニトロベンゼン
N2Cl
ニトロ化 濃硫酸(濃硝酸)
還元反応 濃塩酸
(Sn又は Fe)
アニリン塩酸塩
遊離反応 NaOH
アニリン塩酸塩に強塩基を反応させる
と弱塩基であるアニリンが遊離する
氷冷+亜硝酸ナトリウム アニリン
塩酸
ジアゾ化
塩化ベンゼンジアゾニウム
塩化ベンゼンジアゾニウム
は熱によって窒素とフェノー
ルに分解される
カップリング
C10H7ONa (ナトリウム 2-ナフトキシド)
O
N =
1-フェニルアゾ 2-ナフトール
NH3Cl NH2
49
7 ガスクロマトグラフ質量分析計による茶葉中のカフェインの分析 71 はじめに ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)は極めて低い濃度の化学物質の同定や未知物質の構造決定に極めて強力な分析機器の一つであるGCMSを用いるとサンプルの中に含まれているある成分の分子構造(カフェインの分子構造を図 71に示す)やその量が分かりますもちろん分析機器ですので測定できる物質対象となる系や測定条件にはある
程度の制約があります混合物質を分離するガスクロマトグラフ(Gas ChromatographGC)と分離された成分(物質)を分析(構造決定と濃度測定)する質量分析計(Mass SpectrometerMS)を組み合わせた装置であるこの装置は有機化学生化学環境化学などの多くの分野で非常に多用されている例えば極めて低い濃度でも生体へ強い影響が懸念されるダイ
オキシン類などの土壌や河川の水中での含有率の決定や食品や医薬品中の微量成分の決定
にも利用されている 一方日本人に長い間親しまれてきた緑茶が近年産業界や医学
界で注目されている茶葉にはカフェイン(分子構造図 71)カテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドなどの有用成分が多く含まれておりその効能が注目されている 本実験では茶葉中に含まれるカフェインに対してGCMSを用いて分析する茶葉中には種々の物質が含まれておりGCMS分析を容易にするため前処理として超臨界二酸化炭素抽出(4015MPa程度の高圧力の二酸化炭素を溶剤として利用)により茶葉からカフェインの抽出を行いそのサンプルを GCMSにて分析する
図 71 カフェインの分子構造 図 72 物質の分析 個々の物質や装置についてはインターネットにより下記のWebサイトのフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』などにより調べるとよいカフェイン(caffeine)はアルカロイドの一種プリン環を持つプリンアルカロイドの一種でコーヒー類に含まれることか
らこの名がある化学名は137-トリメチルキサンチン(C8H10N4O2) コーヒーコーラ緑茶紅茶ガラナココアなどに含まれる(量は緑茶が一番多い)結晶は一水和物(C8H10N4O2bullH2O)もしくは無水物(無水カフェインC8H10N4O2)として得られ
る白色の針状または六角柱状結晶で匂いはなく味は苦い融点は 238昇華性がある出典フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』httpwwwwikipediaorg 装置「GCMS」httpwwwanshimadzucojpproductsgcmsqp2010htm (島津) 「超臨界抽出装置」httpwwwkagakucomjasco39-49html (日本分光)
50
レポート課題 1茶葉中に含まれるカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドの中から3つの物質を選びその物質について調べた結果を A4 レポート用紙2枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
2GCMS についてA4 レポート用紙1枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
3与えられたサンプルは茶葉1gから抽出されたのである実験結果よりもとの茶葉
1g中に含まれるカフェインの量を推算し計算式とあわせて示すこと 72 原理および装置 実験で使用する島津製の GCMS装置の全体図を図 73に原理の概略を図 74に示す
1
23
4
5
67 8
9
10
キャリアーガス
試料物質
1ボンベ(He)2圧力計3マイクロシリンジ4サンプラー5試料導入部6分離カラム
7セパレーター8イオン化室9磁石10電子増倍管11記録計
11
図 74 ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)の概略図
サンプルフォルダー
51
GCMS 装置は分離部である図中の 1~6 のガスクロマトグラフ(GC)と7~11 の検出部である質量分析計(MS)から構成される 3のマイクロシリンジを用いて試料を GCMSに導入する導入された試料は5試料導入部でガス化され6分離カラムに導入される分離カラムには吸着剤が充填されおり混合物の試料を導入した場合各物質と吸着剤との
親和性の違いにより各物質の分離カラムから排出されるタイミングは異なる分離カラム
を排出された試料は8イオン化室でイオン化され10電子倍増管にて検出される アセトンに溶解したカフェインの GCMSによる分析結果の一例を以下に示す図 75にク
ロマトグラム図 76にカフェインのピークのマススペクトルを示す
図 75 GCMSにより得られたクロマトグラム
横軸がリテンションタイムで縦軸がピーク強度を表す
図 76 カフェインのマススペクトルとカフェイン(分子量MW=194)の構造
(図 75中のリテンションタイム 126min付近のピークに起因するマススペクトル) 茶葉中にはカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイド以外にも繊維であるセルロースなど多くの物質が含まれているため茶葉そのものを
そのままサンプルとしてGCMSで分析することは困難であるセルロースなどの分子量の大きな物質はカラムに詰まってしまい分析できないそこで今回は超臨界二酸化炭素
による抽出により主にカフェインを他の物質と分離抽出した通常よく利用されるアセ
トン抽出(アセトンに茶葉を浸し特定の成分を抽出する)ではカフェイン以外にも多く
の物質が抽出されるため図 75 のような単独のピークを得ることは難しく複数のピークがクロマトグラムに見られるこのサンプル(この場合茶葉からの抽出物)にはカフェ
イン以外の不純物は少なかったがガスクロマトグラフの分離カラムによりさらにそれ
らの混合物が精度よく分離されるクロマトグラムのピークはそれらサンプル中に含まれ
ていた個々の物質を表しているクロマトグラムのピークを選択することで分子構造解析
したい物質を選んだことになる選択したクロマトグラムのピークの表している物質(ここ
ではカフェイン)に対応するマススペクトルが図 76 に表示されているマススペクトル
52
で横軸がその成分(ここではカフェイン)分子を構成している原子の原子量で縦軸がそ
の量を表しているのでマススペクトルから分子構造を解析するためにコンピュータ内
に蓄えられた物質ごとのマススペクトルデータと今回測定したマススペクトル(分子内に含
まれている各原子の数)を比較することで測定したサンプル中のクロマトピークを選択し
た分子がどのような原子をどれだけ含んだ分子であったかがわかりそれからその物質
がどのような分子構造の物質である可能性が高いかをコンピュータが検索し結果を示す 73 実験サンプルの設置と GCMS装置の操作方法 実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS装置のサンプルフォルダ
ー(図 73)にセットするこのサンプルは茶葉 1gを 50ccの高圧セルにて超臨界二酸化炭素を利用して4015MPa2時間接触の条件で抽出した固体を10gのアセトンに溶かしたものである またコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に装置および装置制
御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 本実験で使用する GCMS の操作は全てコンピュータのモニター上で GCMS の解析プログラムソフトを使用することで行うコンピュータの操作方法を以下に示す なおコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS 装置のサンプルフォルダー(図 73)にセットするまた装置および装置制御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 1)パソコンのデスクトップ上のアイコン「GCMS 分析」をクリックすると以下のようにGCMS制御プログラムを起動するその後「OK」ボタンをクリックする
図 77 GCMD分析用ソフトウェア「GCMS分析」の起動
まず「GC-MS分析」をクリック
「OK」ボタンをクリック
53
2)制御プログラムが起動されパソコンと GCMSの接続が開始される
図 78 「GCMS分析」の接続確認画面 3)GCMSとパソコンの接続が完了すると以下のような画面が表示される
図 79 「GCMS分析」操作画面
4)マススペクトルによる分子構造の解析 サンプル(この場合茶葉からの抽出物)には多くの物質が混じり合っていたがガス
クロマトグラフの分離カラムによりそれらの混合物が精度よく分離されるクロマトグラ
ムのピークはそれらサンプル中に含まれていた個々の物質を表しているクロマトグラム
のピークを選択することで分子構造解析したい物質を選んだことになる選択したクロマ
トグラムのピークの表している物質(ここではカフェイン)に対応するマススペクトルを選
択するマススペクトルは横軸が原子量で縦軸がその量を表しているのでマススペク
トルから分子構造を解析するために「定性処理」を行う シミラリティ検索結果が表示され分析により得られたスペクトルと類似のスペクトルを有
する物質の一覧が表示される上部に表示される物質ほどスペクトルが一致していること
を示す
接続状況が表示される
「トップへ」
をクリック
54
図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果
図 711 表示スペクトルのシミラリティ検索結果 10)図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果の印刷 「レポート(R)」をクリックし「検索結果(R)」をクリックすると検索結果が印刷される
GC-MS 分析で得られたマスス
ペクトル
データベース中
のマススペクト
ル
55
参考資料 生理活性物質の精製 カフェインの利尿作用のように生物活動に影響を与える物質を生理活性物質といいます
天然物には生理活性物質を多く含むものがあります一般に天然物は多くの成分を含ん
でおり特定の生理活性物質を分離抽出するには種々の分離技術が必要ですまた生
理活性物質には60以上の温度でその生理活性を失う(失活)ものや溶剤として広く用いられているクロロホルムなどの有機溶剤中で失活するものが多いそこでこれら生理活性
物質の分離精製技術の開発が望まれており30~60程度のマイルドな温度条件で操作できる二酸化炭素を機能性溶媒として利用する超臨界抽出も有効な分離技術として注目されて
いる超臨界二酸化炭素は気体と液体の中間の性質を持ち物質の分離に役立っています 臨界点付近の高密度気体は超臨界ガスまたは超臨界流体と呼ばれ臨界圧力前後でそ
の溶解能力が著しく変化することから工業的にも種々の分野で利用されています一例と
して超臨界二酸化炭素(SC-CO2)によるコーヒー豆からのカフェインの抽出プロセス(a)
ならびに超臨界二酸化炭素に対するカフェインの溶解度(b)を図に示します図(c)に示す
ように固体のカフェインがガスである超臨界二酸化炭素に溶解します
このように超臨界二酸化炭素を用いた技術はコーヒー豆からのカフェインの抽出プロ
ポリスからの生理活性物質の抽出に利用されています
図 超臨界二酸化炭素抽出を用いたコーヒー豆からのカフェインの抽出
56
付表 最小二乗法について 直線で近似する場合 f (x) = a0 + a1x (A1-1) 式(A1-1)のように近似させるとする測定値 yiとの残差を eiとすると式(A1-2)のようになる ei = yi - f (xi) = yi - ( a0 + a1xi ) (A1-2) ここで式(A1-2)の両辺を二乗してその i に関する総和をとりその値を S とすると次式となる
sumsum==
+minus==n
iii
n
ii xaayeS
1
210
1
2 )( (A1-3)
S を最小化するような a0a1を求める式(A1-3)を a0a1について偏微分すると次式とな
る
sum=
+minuspartpart
=partpart n
iii xaay
aaS
1
210
00)( sum
=
+minusminus=n
iii xaay
110 )(2 (A1-4)
同様にa1について編微分すると次式のようになる
sum=
+minusminus=partpart n
iiii xxaay
aS
110
1])([2 (A1-5)
Sが最小となる時は次式が同時に満たされる時である
00=
partpartaS
01=
partpartaS
(A1-6)
よって誤差が最小となる a0a1を求めるためには式(A1-6)を連立して解けばよい
sumsumsum===
+=n
ii
n
i
n
ii xaay
111
10 1 (A1-7)
sumsumsum===
+=n
ii
n
ii
n
iii xaxaxy
1
2
11
10 (A1-8)
式(A1-7)と式(A1-8)を a0a1を変数とみなし連立して解くと次式を得る
n組のデータ(xiyi)(i=12hellipn)に対して回帰直線 y= a0 + a1x を最小二乗法で求めて出力しデータ番号 iデータ yi直線で推定した値 )( ii bxay += および残差
iii yy minus=ε を出力するようなプログラムをつくりたい基礎式を導出せよ (ヒント残差の二乗の和が最小になるように係数 a0a1)を定めるのが最小二乗法
である)
57
sumsum
sumsumsumsum
==
====
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
n
ii
n
ii
xxn
xxyyxa
1
2
1
2
1111
2
0
)(
))(())(( (A1-9)
sumsum
sumsumsum
==
===
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
xxn
yxxyna
1
2
1
2
1111
)(
))(()( (A1-10)
よって式(A1-9)(A1-10)を用いれば最も誤差を小さくするような直線 y = a0 + a1x が求められる
y=a1x+a0 にて近似
誤差 ei
x
y
誤差が最小になる関数(直線 y=a1x+a0の場合)
図1 最小二乗による近似
誤差の和Sが最小
S
a0
a1
直線 y=a1x+a0 の近似
誤差の全体の和はS=Σei=Σyi-(a1xi+a0)
Sは変曲点にて最小値を示すすなわち(partSparta0)=0 (partSparta1)=0
図2 a0a1とSの関係
44
5 植物からの DNAの抽出 51 はじめに 分子レベルでの遺伝子の構造解明や遺伝子の発現に関する研究は近年急速に発展している
これら生命現象のしくみを分子レベルで解明しようという分子生物学の分野ではさまざま
な遺伝子の解析や応用方法が開発され我々の生活に身近なものになりつつある 本実験では初歩的な分子生物学に関する実験として植物(タマネギ)からの DNA の
抽出を行い抽出した遺伝子の電気泳動法による分離実験を試みる 52 試薬および器具 試薬 タマネギ(細胞中から遺伝子の抽出を行う) 台所用洗剤(洗剤中に含まれる界面活性剤には植物の細胞膜およびタンパク質を破壊す
る働きがある) 塩化ナトリウム(DNAは塩化ナトリウム水溶液に溶解し易い性質がある) エタノール(予め冷やしておくDNAはエタノールにほとんど溶解しない) 制限酵素(DNAを一定の部位で切断する働きを働きがある) TE緩衝液(pH緩衝剤が入った溶液) 器具 ビーカーミキサーフィルターメスシリンダー駒込ピペットガラス棒 マイクロピペット電気泳動装置ポラロイドカメラ 53 実験方法 1)タマネギは 1回の実験で半個のうち内側の半分程度を使用するタマネギ水 30ml台所用洗剤数滴をミキサー用ガラス容器に入れ40~60秒程度(固体状のタマネギがなくなる頃が目安)ミキサーにて混合する
2) 1)で作成した混合溶液をビーカーに移し約5g程度の塩化ナトリウムを加えガラス棒で静かに攪拌する粘性の大きな溶液が得られる
3) 2)で作成した溶液をフィルターを用いて濾過し濾液を回収する 4) 濾液の約2倍程度の量の冷エタノールをビーカーの壁伝いに静かに注ぐ 5) ビーカーを揺するとエタノール層に白くふわふわしたものが浮いてくるこれが DNAであるガラス棒で DNAを巻き取りシャーレ上にて DNAを回収する顕微鏡を用いて回収した DNAの状態を観察する
6)マイクロチューブ(容量 15ml)中に用意した 70エタノールを 8 分目程度まで注ぐ5)にて回収された DNAをマイクロピペットを用いて70エタノールの入ったマイクロチューブ中に移す軽く混ぜることによりDNA から不要な物質を洗い流す遠心分離してDNA をマイクロチューブの底に沈めた後溶液を捨てて DNA を乾かす乾いたらTE緩衝溶液を 1ml加えて放置するDNAの溶液が得られる
54 電気泳動装置による DNAの観察
本実験は職員と一緒に行うこと 実験を行う人はビニール手袋をすること 1) 抽出した DNAを電気泳動装置で観察するマイクロピペットを用いて以下のように調製した DNAの混合溶液を調製する(いずれの溶液も調製済)
45
2) マイクロピペットを用いてアガロースゲルの試料を流し込む穴(ウェル)に1)にて調製した溶液 Aおよび Bを注ぎ込む注入量は20μℓとする電気泳動装置のスイッチを入れて100Vの電流を流しアガロースゲル内にて DNAを電気泳動させる
3) 試料に予め加えられておいた青色の色素が 7 分目程度まで進んだら電気泳動を中止する(約 30分程度)
4) (ここでの作業は職員が行う) アガロースゲルを取り出し染色液に浸す染色後ゲルを取り出しポラロイドカメラで
DNAの泳動状態を撮影する
+ -
アガロースゲル
試料を流し込む穴(ウェル)
図 51 電気泳動装置
6 5 4 3 2 1
図 52 DNAの電気泳動写真の一例
55 電気泳動装置の原理 電気泳動装置の原理図を以下に示すアガロースゲル(寒天から不純物を除いたもの)中
に DNAをセットし電流を流すとDNAは電流の向きとは逆にマイナスからプラス方向
調製済 溶液 A(制限酵素なし) 水 11μℓ 10timesH Buffer 2microℓ 植物 DNA 5μℓ
調製済 溶液 B(制限酵素 Eco RI入り) 水 11μℓ 10timesH Buffer 2microℓ 植物 DNA 5μℓ 制限酵素 2μℓ
1 DNA(タマネギ)+制限酵素 2 DNA(タマネギ)+制限酵素 3 DNA(タマネギ) 4 λ-DNA(大腸菌)+制限酵素 5 λ-DNA(大腸菌) 6 サイズマーカー
500bp
46
に動く(このことを電気泳動という)これはDNA のリン酸部分が負に帯電しているためでありまたDNAはその長さにより泳動距離が異なる(短い遺伝子ほど長く泳動する)電気泳動ではこの性質を利用してDNAを大きさごとに分離することができる
塩基対数によってDNAを分離
EtBr (蛍光試薬)DNAの二本鎖内に入り込む
発光
UVλ=302nm
励起
分離後のアガロースゲルをエチジウムブロマイド(EtBr)溶液に浸す
DNAを含んだ溶液
アガロースゲル
リン酸部分が負に帯電
塩基 (ATGC)-
+
カメラで撮影
電圧
DNA構成成分(dNTPs)
バンドが明る
DNA量が
バンド(DNAの存在)
図 53 電気泳動の原理
56 制限酵素とは DNA は4 種類のヌクレオチド(GATC)が不規則につながってできている制限酵素はDNAの特定のヌクレオチドが並んでいる部分を切断する制限酵素には様々な種類がありEco RI(エコアールワン)と呼ばれる酵素は「GAATTC」といった並びの部分だけを切断することができる
GAATTC
CTTAAG
制限酵素
Eco RI
AAGCTT
TTCGAA
制限酵素
Hin dIII
図 54 制限酵素による DNAの切断
レポートについて 1 実験方法および実験結果の整理方法については指針書を参考にすること 2 実験結果については電気泳動の結果について考察すること(制限酵素の影響などにつ
いてまとめてください)
47
6 染色実験
61 はじめに
現在私達の身の周りでは様々な染料が使われている例えばT シャツやジーンズな
どの衣服は橙黄赤青など様々な色に染められている他にも私達が気付かないと
ころで多くの染色された製品を使用しているそこで本実験では高校の化学で学んだ
アゾ染料を合成してみるアゾ染料はアニリンを原料として作られているアニリンはベ
ンゼン環にアミノ基(-NH2)がついたものであるアニリンは無色の液体で水に溶けにく
くアンモニアより弱い塩基性を示すまたさらし粉(CaClO(ClO)H2O)水溶液を加えると
赤紫色を呈するこの呈色反応はアニリン特有のものであるので検出反応に用いられる
このアニリンを出発物質としてアゾ染料を合成してみる
62 試薬および使用器具
【試薬】 ①05moll 水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液
②2-ナフトール ③フェノール ④6moll 塩酸
⑤亜硝酸ナトリウム ⑥アニリン ⑦氷
【器具類】 ①電子天秤 ②50mℓビーカー ③100mℓビーカー
④ガラス棒 ⑤布(ガーゼなど) ⑥ピンセット
⑦ポリ手袋 ⑧ドライヤー ⑨シャーレ
10駒込ピペット(10ml ガラス製)
11駒込ピペット(1ml プラスチック製)
63 実験方法
1) 50mℓビーカーの中に 05molℓ水酸化ナトリウム水溶液 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回
NaOH 水溶液を分取するほぼ 20 mℓ分取できれば可)と 2-ナフトールを約 01g 入れ
よくかき混ぜる調製した溶液の中に布をつけその布はガラス棒でしぼってから(布
をガラス棒ですくいあげればよい)シャーレに広げる温度の異なる条件下(常温およ
び低温)で染料の合成実験を行うため布は最低 2枚調製した溶液と接触させそれ
ぞれ別々のシャーレ(低温用および常温用)に広げる
2) 新しいビーカーに水を約 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回分取)と 6molℓ塩酸約 4mℓ(10m
ℓ駒込ピペットで目分量で可)さらにアニリン約 1mℓ(プラスチック製 1 mℓ駒込ピペッ
ト)を入れてよくかき混ぜる染料の合成を常温および低温下で行うためこの溶液を
2つ調整する
低温下で反応させる溶液は恒温槽で 10~15 分ほどよく冷やした後亜硝酸ナトリウ
ム 05g を加えてよくかき混ぜる
常温下で反応させる溶液には冷却作業を行わずに亜硝酸ナトリウム 05g を加えて
よくかき混ぜる
3) 2)でつくった水溶液をシャーレに広げた布に注ぎ生成される染料を布によく染み
込ませ5分程放置する
4) 色の付いた布を取り出してポリ手袋をした手できれいに水洗いをし乾燥させる
48
5) 色差計を用いて乾燥した布の Lab(L明度aおよび b色度)を測定する
2)で作った溶液は5以下では無色の溶液ですが5以上になると淡い黄色になりま
す
【解説】
アゾ染料はアゾ基(-N=N-)を持っていてこのアゾ基によって鮮やかな橙色を呈色し
ます今回合成したアゾ染料は図の 1-フェニルアゾ-2-ナフトールです意外かもしれ
ませんが指示薬として使われているフェノールフタレインもアゾ化合物ですフェノール
フタレインは pH の変化によって色が出てきす染料の中でも最初は無色のものもありますが
温度を変化させたり酸性やアルカリ性にすると色が出てきます
ベンゼン ニトロベンゼン
N2Cl
ニトロ化 濃硫酸(濃硝酸)
還元反応 濃塩酸
(Sn又は Fe)
アニリン塩酸塩
遊離反応 NaOH
アニリン塩酸塩に強塩基を反応させる
と弱塩基であるアニリンが遊離する
氷冷+亜硝酸ナトリウム アニリン
塩酸
ジアゾ化
塩化ベンゼンジアゾニウム
塩化ベンゼンジアゾニウム
は熱によって窒素とフェノー
ルに分解される
カップリング
C10H7ONa (ナトリウム 2-ナフトキシド)
O
N =
1-フェニルアゾ 2-ナフトール
NH3Cl NH2
49
7 ガスクロマトグラフ質量分析計による茶葉中のカフェインの分析 71 はじめに ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)は極めて低い濃度の化学物質の同定や未知物質の構造決定に極めて強力な分析機器の一つであるGCMSを用いるとサンプルの中に含まれているある成分の分子構造(カフェインの分子構造を図 71に示す)やその量が分かりますもちろん分析機器ですので測定できる物質対象となる系や測定条件にはある
程度の制約があります混合物質を分離するガスクロマトグラフ(Gas ChromatographGC)と分離された成分(物質)を分析(構造決定と濃度測定)する質量分析計(Mass SpectrometerMS)を組み合わせた装置であるこの装置は有機化学生化学環境化学などの多くの分野で非常に多用されている例えば極めて低い濃度でも生体へ強い影響が懸念されるダイ
オキシン類などの土壌や河川の水中での含有率の決定や食品や医薬品中の微量成分の決定
にも利用されている 一方日本人に長い間親しまれてきた緑茶が近年産業界や医学
界で注目されている茶葉にはカフェイン(分子構造図 71)カテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドなどの有用成分が多く含まれておりその効能が注目されている 本実験では茶葉中に含まれるカフェインに対してGCMSを用いて分析する茶葉中には種々の物質が含まれておりGCMS分析を容易にするため前処理として超臨界二酸化炭素抽出(4015MPa程度の高圧力の二酸化炭素を溶剤として利用)により茶葉からカフェインの抽出を行いそのサンプルを GCMSにて分析する
図 71 カフェインの分子構造 図 72 物質の分析 個々の物質や装置についてはインターネットにより下記のWebサイトのフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』などにより調べるとよいカフェイン(caffeine)はアルカロイドの一種プリン環を持つプリンアルカロイドの一種でコーヒー類に含まれることか
らこの名がある化学名は137-トリメチルキサンチン(C8H10N4O2) コーヒーコーラ緑茶紅茶ガラナココアなどに含まれる(量は緑茶が一番多い)結晶は一水和物(C8H10N4O2bullH2O)もしくは無水物(無水カフェインC8H10N4O2)として得られ
る白色の針状または六角柱状結晶で匂いはなく味は苦い融点は 238昇華性がある出典フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』httpwwwwikipediaorg 装置「GCMS」httpwwwanshimadzucojpproductsgcmsqp2010htm (島津) 「超臨界抽出装置」httpwwwkagakucomjasco39-49html (日本分光)
50
レポート課題 1茶葉中に含まれるカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドの中から3つの物質を選びその物質について調べた結果を A4 レポート用紙2枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
2GCMS についてA4 レポート用紙1枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
3与えられたサンプルは茶葉1gから抽出されたのである実験結果よりもとの茶葉
1g中に含まれるカフェインの量を推算し計算式とあわせて示すこと 72 原理および装置 実験で使用する島津製の GCMS装置の全体図を図 73に原理の概略を図 74に示す
1
23
4
5
67 8
9
10
キャリアーガス
試料物質
1ボンベ(He)2圧力計3マイクロシリンジ4サンプラー5試料導入部6分離カラム
7セパレーター8イオン化室9磁石10電子増倍管11記録計
11
図 74 ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)の概略図
サンプルフォルダー
51
GCMS 装置は分離部である図中の 1~6 のガスクロマトグラフ(GC)と7~11 の検出部である質量分析計(MS)から構成される 3のマイクロシリンジを用いて試料を GCMSに導入する導入された試料は5試料導入部でガス化され6分離カラムに導入される分離カラムには吸着剤が充填されおり混合物の試料を導入した場合各物質と吸着剤との
親和性の違いにより各物質の分離カラムから排出されるタイミングは異なる分離カラム
を排出された試料は8イオン化室でイオン化され10電子倍増管にて検出される アセトンに溶解したカフェインの GCMSによる分析結果の一例を以下に示す図 75にク
ロマトグラム図 76にカフェインのピークのマススペクトルを示す
図 75 GCMSにより得られたクロマトグラム
横軸がリテンションタイムで縦軸がピーク強度を表す
図 76 カフェインのマススペクトルとカフェイン(分子量MW=194)の構造
(図 75中のリテンションタイム 126min付近のピークに起因するマススペクトル) 茶葉中にはカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイド以外にも繊維であるセルロースなど多くの物質が含まれているため茶葉そのものを
そのままサンプルとしてGCMSで分析することは困難であるセルロースなどの分子量の大きな物質はカラムに詰まってしまい分析できないそこで今回は超臨界二酸化炭素
による抽出により主にカフェインを他の物質と分離抽出した通常よく利用されるアセ
トン抽出(アセトンに茶葉を浸し特定の成分を抽出する)ではカフェイン以外にも多く
の物質が抽出されるため図 75 のような単独のピークを得ることは難しく複数のピークがクロマトグラムに見られるこのサンプル(この場合茶葉からの抽出物)にはカフェ
イン以外の不純物は少なかったがガスクロマトグラフの分離カラムによりさらにそれ
らの混合物が精度よく分離されるクロマトグラムのピークはそれらサンプル中に含まれ
ていた個々の物質を表しているクロマトグラムのピークを選択することで分子構造解析
したい物質を選んだことになる選択したクロマトグラムのピークの表している物質(ここ
ではカフェイン)に対応するマススペクトルが図 76 に表示されているマススペクトル
52
で横軸がその成分(ここではカフェイン)分子を構成している原子の原子量で縦軸がそ
の量を表しているのでマススペクトルから分子構造を解析するためにコンピュータ内
に蓄えられた物質ごとのマススペクトルデータと今回測定したマススペクトル(分子内に含
まれている各原子の数)を比較することで測定したサンプル中のクロマトピークを選択し
た分子がどのような原子をどれだけ含んだ分子であったかがわかりそれからその物質
がどのような分子構造の物質である可能性が高いかをコンピュータが検索し結果を示す 73 実験サンプルの設置と GCMS装置の操作方法 実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS装置のサンプルフォルダ
ー(図 73)にセットするこのサンプルは茶葉 1gを 50ccの高圧セルにて超臨界二酸化炭素を利用して4015MPa2時間接触の条件で抽出した固体を10gのアセトンに溶かしたものである またコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に装置および装置制
御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 本実験で使用する GCMS の操作は全てコンピュータのモニター上で GCMS の解析プログラムソフトを使用することで行うコンピュータの操作方法を以下に示す なおコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS 装置のサンプルフォルダー(図 73)にセットするまた装置および装置制御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 1)パソコンのデスクトップ上のアイコン「GCMS 分析」をクリックすると以下のようにGCMS制御プログラムを起動するその後「OK」ボタンをクリックする
図 77 GCMD分析用ソフトウェア「GCMS分析」の起動
まず「GC-MS分析」をクリック
「OK」ボタンをクリック
53
2)制御プログラムが起動されパソコンと GCMSの接続が開始される
図 78 「GCMS分析」の接続確認画面 3)GCMSとパソコンの接続が完了すると以下のような画面が表示される
図 79 「GCMS分析」操作画面
4)マススペクトルによる分子構造の解析 サンプル(この場合茶葉からの抽出物)には多くの物質が混じり合っていたがガス
クロマトグラフの分離カラムによりそれらの混合物が精度よく分離されるクロマトグラ
ムのピークはそれらサンプル中に含まれていた個々の物質を表しているクロマトグラム
のピークを選択することで分子構造解析したい物質を選んだことになる選択したクロマ
トグラムのピークの表している物質(ここではカフェイン)に対応するマススペクトルを選
択するマススペクトルは横軸が原子量で縦軸がその量を表しているのでマススペク
トルから分子構造を解析するために「定性処理」を行う シミラリティ検索結果が表示され分析により得られたスペクトルと類似のスペクトルを有
する物質の一覧が表示される上部に表示される物質ほどスペクトルが一致していること
を示す
接続状況が表示される
「トップへ」
をクリック
54
図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果
図 711 表示スペクトルのシミラリティ検索結果 10)図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果の印刷 「レポート(R)」をクリックし「検索結果(R)」をクリックすると検索結果が印刷される
GC-MS 分析で得られたマスス
ペクトル
データベース中
のマススペクト
ル
55
参考資料 生理活性物質の精製 カフェインの利尿作用のように生物活動に影響を与える物質を生理活性物質といいます
天然物には生理活性物質を多く含むものがあります一般に天然物は多くの成分を含ん
でおり特定の生理活性物質を分離抽出するには種々の分離技術が必要ですまた生
理活性物質には60以上の温度でその生理活性を失う(失活)ものや溶剤として広く用いられているクロロホルムなどの有機溶剤中で失活するものが多いそこでこれら生理活性
物質の分離精製技術の開発が望まれており30~60程度のマイルドな温度条件で操作できる二酸化炭素を機能性溶媒として利用する超臨界抽出も有効な分離技術として注目されて
いる超臨界二酸化炭素は気体と液体の中間の性質を持ち物質の分離に役立っています 臨界点付近の高密度気体は超臨界ガスまたは超臨界流体と呼ばれ臨界圧力前後でそ
の溶解能力が著しく変化することから工業的にも種々の分野で利用されています一例と
して超臨界二酸化炭素(SC-CO2)によるコーヒー豆からのカフェインの抽出プロセス(a)
ならびに超臨界二酸化炭素に対するカフェインの溶解度(b)を図に示します図(c)に示す
ように固体のカフェインがガスである超臨界二酸化炭素に溶解します
このように超臨界二酸化炭素を用いた技術はコーヒー豆からのカフェインの抽出プロ
ポリスからの生理活性物質の抽出に利用されています
図 超臨界二酸化炭素抽出を用いたコーヒー豆からのカフェインの抽出
56
付表 最小二乗法について 直線で近似する場合 f (x) = a0 + a1x (A1-1) 式(A1-1)のように近似させるとする測定値 yiとの残差を eiとすると式(A1-2)のようになる ei = yi - f (xi) = yi - ( a0 + a1xi ) (A1-2) ここで式(A1-2)の両辺を二乗してその i に関する総和をとりその値を S とすると次式となる
sumsum==
+minus==n
iii
n
ii xaayeS
1
210
1
2 )( (A1-3)
S を最小化するような a0a1を求める式(A1-3)を a0a1について偏微分すると次式とな
る
sum=
+minuspartpart
=partpart n
iii xaay
aaS
1
210
00)( sum
=
+minusminus=n
iii xaay
110 )(2 (A1-4)
同様にa1について編微分すると次式のようになる
sum=
+minusminus=partpart n
iiii xxaay
aS
110
1])([2 (A1-5)
Sが最小となる時は次式が同時に満たされる時である
00=
partpartaS
01=
partpartaS
(A1-6)
よって誤差が最小となる a0a1を求めるためには式(A1-6)を連立して解けばよい
sumsumsum===
+=n
ii
n
i
n
ii xaay
111
10 1 (A1-7)
sumsumsum===
+=n
ii
n
ii
n
iii xaxaxy
1
2
11
10 (A1-8)
式(A1-7)と式(A1-8)を a0a1を変数とみなし連立して解くと次式を得る
n組のデータ(xiyi)(i=12hellipn)に対して回帰直線 y= a0 + a1x を最小二乗法で求めて出力しデータ番号 iデータ yi直線で推定した値 )( ii bxay += および残差
iii yy minus=ε を出力するようなプログラムをつくりたい基礎式を導出せよ (ヒント残差の二乗の和が最小になるように係数 a0a1)を定めるのが最小二乗法
である)
57
sumsum
sumsumsumsum
==
====
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
n
ii
n
ii
xxn
xxyyxa
1
2
1
2
1111
2
0
)(
))(())(( (A1-9)
sumsum
sumsumsum
==
===
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
xxn
yxxyna
1
2
1
2
1111
)(
))(()( (A1-10)
よって式(A1-9)(A1-10)を用いれば最も誤差を小さくするような直線 y = a0 + a1x が求められる
y=a1x+a0 にて近似
誤差 ei
x
y
誤差が最小になる関数(直線 y=a1x+a0の場合)
図1 最小二乗による近似
誤差の和Sが最小
S
a0
a1
直線 y=a1x+a0 の近似
誤差の全体の和はS=Σei=Σyi-(a1xi+a0)
Sは変曲点にて最小値を示すすなわち(partSparta0)=0 (partSparta1)=0
図2 a0a1とSの関係
45
2) マイクロピペットを用いてアガロースゲルの試料を流し込む穴(ウェル)に1)にて調製した溶液 Aおよび Bを注ぎ込む注入量は20μℓとする電気泳動装置のスイッチを入れて100Vの電流を流しアガロースゲル内にて DNAを電気泳動させる
3) 試料に予め加えられておいた青色の色素が 7 分目程度まで進んだら電気泳動を中止する(約 30分程度)
4) (ここでの作業は職員が行う) アガロースゲルを取り出し染色液に浸す染色後ゲルを取り出しポラロイドカメラで
DNAの泳動状態を撮影する
+ -
アガロースゲル
試料を流し込む穴(ウェル)
図 51 電気泳動装置
6 5 4 3 2 1
図 52 DNAの電気泳動写真の一例
55 電気泳動装置の原理 電気泳動装置の原理図を以下に示すアガロースゲル(寒天から不純物を除いたもの)中
に DNAをセットし電流を流すとDNAは電流の向きとは逆にマイナスからプラス方向
調製済 溶液 A(制限酵素なし) 水 11μℓ 10timesH Buffer 2microℓ 植物 DNA 5μℓ
調製済 溶液 B(制限酵素 Eco RI入り) 水 11μℓ 10timesH Buffer 2microℓ 植物 DNA 5μℓ 制限酵素 2μℓ
1 DNA(タマネギ)+制限酵素 2 DNA(タマネギ)+制限酵素 3 DNA(タマネギ) 4 λ-DNA(大腸菌)+制限酵素 5 λ-DNA(大腸菌) 6 サイズマーカー
500bp
46
に動く(このことを電気泳動という)これはDNA のリン酸部分が負に帯電しているためでありまたDNAはその長さにより泳動距離が異なる(短い遺伝子ほど長く泳動する)電気泳動ではこの性質を利用してDNAを大きさごとに分離することができる
塩基対数によってDNAを分離
EtBr (蛍光試薬)DNAの二本鎖内に入り込む
発光
UVλ=302nm
励起
分離後のアガロースゲルをエチジウムブロマイド(EtBr)溶液に浸す
DNAを含んだ溶液
アガロースゲル
リン酸部分が負に帯電
塩基 (ATGC)-
+
カメラで撮影
電圧
DNA構成成分(dNTPs)
バンドが明る
DNA量が
バンド(DNAの存在)
図 53 電気泳動の原理
56 制限酵素とは DNA は4 種類のヌクレオチド(GATC)が不規則につながってできている制限酵素はDNAの特定のヌクレオチドが並んでいる部分を切断する制限酵素には様々な種類がありEco RI(エコアールワン)と呼ばれる酵素は「GAATTC」といった並びの部分だけを切断することができる
GAATTC
CTTAAG
制限酵素
Eco RI
AAGCTT
TTCGAA
制限酵素
Hin dIII
図 54 制限酵素による DNAの切断
レポートについて 1 実験方法および実験結果の整理方法については指針書を参考にすること 2 実験結果については電気泳動の結果について考察すること(制限酵素の影響などにつ
いてまとめてください)
47
6 染色実験
61 はじめに
現在私達の身の周りでは様々な染料が使われている例えばT シャツやジーンズな
どの衣服は橙黄赤青など様々な色に染められている他にも私達が気付かないと
ころで多くの染色された製品を使用しているそこで本実験では高校の化学で学んだ
アゾ染料を合成してみるアゾ染料はアニリンを原料として作られているアニリンはベ
ンゼン環にアミノ基(-NH2)がついたものであるアニリンは無色の液体で水に溶けにく
くアンモニアより弱い塩基性を示すまたさらし粉(CaClO(ClO)H2O)水溶液を加えると
赤紫色を呈するこの呈色反応はアニリン特有のものであるので検出反応に用いられる
このアニリンを出発物質としてアゾ染料を合成してみる
62 試薬および使用器具
【試薬】 ①05moll 水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液
②2-ナフトール ③フェノール ④6moll 塩酸
⑤亜硝酸ナトリウム ⑥アニリン ⑦氷
【器具類】 ①電子天秤 ②50mℓビーカー ③100mℓビーカー
④ガラス棒 ⑤布(ガーゼなど) ⑥ピンセット
⑦ポリ手袋 ⑧ドライヤー ⑨シャーレ
10駒込ピペット(10ml ガラス製)
11駒込ピペット(1ml プラスチック製)
63 実験方法
1) 50mℓビーカーの中に 05molℓ水酸化ナトリウム水溶液 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回
NaOH 水溶液を分取するほぼ 20 mℓ分取できれば可)と 2-ナフトールを約 01g 入れ
よくかき混ぜる調製した溶液の中に布をつけその布はガラス棒でしぼってから(布
をガラス棒ですくいあげればよい)シャーレに広げる温度の異なる条件下(常温およ
び低温)で染料の合成実験を行うため布は最低 2枚調製した溶液と接触させそれ
ぞれ別々のシャーレ(低温用および常温用)に広げる
2) 新しいビーカーに水を約 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回分取)と 6molℓ塩酸約 4mℓ(10m
ℓ駒込ピペットで目分量で可)さらにアニリン約 1mℓ(プラスチック製 1 mℓ駒込ピペッ
ト)を入れてよくかき混ぜる染料の合成を常温および低温下で行うためこの溶液を
2つ調整する
低温下で反応させる溶液は恒温槽で 10~15 分ほどよく冷やした後亜硝酸ナトリウ
ム 05g を加えてよくかき混ぜる
常温下で反応させる溶液には冷却作業を行わずに亜硝酸ナトリウム 05g を加えて
よくかき混ぜる
3) 2)でつくった水溶液をシャーレに広げた布に注ぎ生成される染料を布によく染み
込ませ5分程放置する
4) 色の付いた布を取り出してポリ手袋をした手できれいに水洗いをし乾燥させる
48
5) 色差計を用いて乾燥した布の Lab(L明度aおよび b色度)を測定する
2)で作った溶液は5以下では無色の溶液ですが5以上になると淡い黄色になりま
す
【解説】
アゾ染料はアゾ基(-N=N-)を持っていてこのアゾ基によって鮮やかな橙色を呈色し
ます今回合成したアゾ染料は図の 1-フェニルアゾ-2-ナフトールです意外かもしれ
ませんが指示薬として使われているフェノールフタレインもアゾ化合物ですフェノール
フタレインは pH の変化によって色が出てきす染料の中でも最初は無色のものもありますが
温度を変化させたり酸性やアルカリ性にすると色が出てきます
ベンゼン ニトロベンゼン
N2Cl
ニトロ化 濃硫酸(濃硝酸)
還元反応 濃塩酸
(Sn又は Fe)
アニリン塩酸塩
遊離反応 NaOH
アニリン塩酸塩に強塩基を反応させる
と弱塩基であるアニリンが遊離する
氷冷+亜硝酸ナトリウム アニリン
塩酸
ジアゾ化
塩化ベンゼンジアゾニウム
塩化ベンゼンジアゾニウム
は熱によって窒素とフェノー
ルに分解される
カップリング
C10H7ONa (ナトリウム 2-ナフトキシド)
O
N =
1-フェニルアゾ 2-ナフトール
NH3Cl NH2
49
7 ガスクロマトグラフ質量分析計による茶葉中のカフェインの分析 71 はじめに ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)は極めて低い濃度の化学物質の同定や未知物質の構造決定に極めて強力な分析機器の一つであるGCMSを用いるとサンプルの中に含まれているある成分の分子構造(カフェインの分子構造を図 71に示す)やその量が分かりますもちろん分析機器ですので測定できる物質対象となる系や測定条件にはある
程度の制約があります混合物質を分離するガスクロマトグラフ(Gas ChromatographGC)と分離された成分(物質)を分析(構造決定と濃度測定)する質量分析計(Mass SpectrometerMS)を組み合わせた装置であるこの装置は有機化学生化学環境化学などの多くの分野で非常に多用されている例えば極めて低い濃度でも生体へ強い影響が懸念されるダイ
オキシン類などの土壌や河川の水中での含有率の決定や食品や医薬品中の微量成分の決定
にも利用されている 一方日本人に長い間親しまれてきた緑茶が近年産業界や医学
界で注目されている茶葉にはカフェイン(分子構造図 71)カテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドなどの有用成分が多く含まれておりその効能が注目されている 本実験では茶葉中に含まれるカフェインに対してGCMSを用いて分析する茶葉中には種々の物質が含まれておりGCMS分析を容易にするため前処理として超臨界二酸化炭素抽出(4015MPa程度の高圧力の二酸化炭素を溶剤として利用)により茶葉からカフェインの抽出を行いそのサンプルを GCMSにて分析する
図 71 カフェインの分子構造 図 72 物質の分析 個々の物質や装置についてはインターネットにより下記のWebサイトのフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』などにより調べるとよいカフェイン(caffeine)はアルカロイドの一種プリン環を持つプリンアルカロイドの一種でコーヒー類に含まれることか
らこの名がある化学名は137-トリメチルキサンチン(C8H10N4O2) コーヒーコーラ緑茶紅茶ガラナココアなどに含まれる(量は緑茶が一番多い)結晶は一水和物(C8H10N4O2bullH2O)もしくは無水物(無水カフェインC8H10N4O2)として得られ
る白色の針状または六角柱状結晶で匂いはなく味は苦い融点は 238昇華性がある出典フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』httpwwwwikipediaorg 装置「GCMS」httpwwwanshimadzucojpproductsgcmsqp2010htm (島津) 「超臨界抽出装置」httpwwwkagakucomjasco39-49html (日本分光)
50
レポート課題 1茶葉中に含まれるカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドの中から3つの物質を選びその物質について調べた結果を A4 レポート用紙2枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
2GCMS についてA4 レポート用紙1枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
3与えられたサンプルは茶葉1gから抽出されたのである実験結果よりもとの茶葉
1g中に含まれるカフェインの量を推算し計算式とあわせて示すこと 72 原理および装置 実験で使用する島津製の GCMS装置の全体図を図 73に原理の概略を図 74に示す
1
23
4
5
67 8
9
10
キャリアーガス
試料物質
1ボンベ(He)2圧力計3マイクロシリンジ4サンプラー5試料導入部6分離カラム
7セパレーター8イオン化室9磁石10電子増倍管11記録計
11
図 74 ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)の概略図
サンプルフォルダー
51
GCMS 装置は分離部である図中の 1~6 のガスクロマトグラフ(GC)と7~11 の検出部である質量分析計(MS)から構成される 3のマイクロシリンジを用いて試料を GCMSに導入する導入された試料は5試料導入部でガス化され6分離カラムに導入される分離カラムには吸着剤が充填されおり混合物の試料を導入した場合各物質と吸着剤との
親和性の違いにより各物質の分離カラムから排出されるタイミングは異なる分離カラム
を排出された試料は8イオン化室でイオン化され10電子倍増管にて検出される アセトンに溶解したカフェインの GCMSによる分析結果の一例を以下に示す図 75にク
ロマトグラム図 76にカフェインのピークのマススペクトルを示す
図 75 GCMSにより得られたクロマトグラム
横軸がリテンションタイムで縦軸がピーク強度を表す
図 76 カフェインのマススペクトルとカフェイン(分子量MW=194)の構造
(図 75中のリテンションタイム 126min付近のピークに起因するマススペクトル) 茶葉中にはカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイド以外にも繊維であるセルロースなど多くの物質が含まれているため茶葉そのものを
そのままサンプルとしてGCMSで分析することは困難であるセルロースなどの分子量の大きな物質はカラムに詰まってしまい分析できないそこで今回は超臨界二酸化炭素
による抽出により主にカフェインを他の物質と分離抽出した通常よく利用されるアセ
トン抽出(アセトンに茶葉を浸し特定の成分を抽出する)ではカフェイン以外にも多く
の物質が抽出されるため図 75 のような単独のピークを得ることは難しく複数のピークがクロマトグラムに見られるこのサンプル(この場合茶葉からの抽出物)にはカフェ
イン以外の不純物は少なかったがガスクロマトグラフの分離カラムによりさらにそれ
らの混合物が精度よく分離されるクロマトグラムのピークはそれらサンプル中に含まれ
ていた個々の物質を表しているクロマトグラムのピークを選択することで分子構造解析
したい物質を選んだことになる選択したクロマトグラムのピークの表している物質(ここ
ではカフェイン)に対応するマススペクトルが図 76 に表示されているマススペクトル
52
で横軸がその成分(ここではカフェイン)分子を構成している原子の原子量で縦軸がそ
の量を表しているのでマススペクトルから分子構造を解析するためにコンピュータ内
に蓄えられた物質ごとのマススペクトルデータと今回測定したマススペクトル(分子内に含
まれている各原子の数)を比較することで測定したサンプル中のクロマトピークを選択し
た分子がどのような原子をどれだけ含んだ分子であったかがわかりそれからその物質
がどのような分子構造の物質である可能性が高いかをコンピュータが検索し結果を示す 73 実験サンプルの設置と GCMS装置の操作方法 実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS装置のサンプルフォルダ
ー(図 73)にセットするこのサンプルは茶葉 1gを 50ccの高圧セルにて超臨界二酸化炭素を利用して4015MPa2時間接触の条件で抽出した固体を10gのアセトンに溶かしたものである またコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に装置および装置制
御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 本実験で使用する GCMS の操作は全てコンピュータのモニター上で GCMS の解析プログラムソフトを使用することで行うコンピュータの操作方法を以下に示す なおコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS 装置のサンプルフォルダー(図 73)にセットするまた装置および装置制御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 1)パソコンのデスクトップ上のアイコン「GCMS 分析」をクリックすると以下のようにGCMS制御プログラムを起動するその後「OK」ボタンをクリックする
図 77 GCMD分析用ソフトウェア「GCMS分析」の起動
まず「GC-MS分析」をクリック
「OK」ボタンをクリック
53
2)制御プログラムが起動されパソコンと GCMSの接続が開始される
図 78 「GCMS分析」の接続確認画面 3)GCMSとパソコンの接続が完了すると以下のような画面が表示される
図 79 「GCMS分析」操作画面
4)マススペクトルによる分子構造の解析 サンプル(この場合茶葉からの抽出物)には多くの物質が混じり合っていたがガス
クロマトグラフの分離カラムによりそれらの混合物が精度よく分離されるクロマトグラ
ムのピークはそれらサンプル中に含まれていた個々の物質を表しているクロマトグラム
のピークを選択することで分子構造解析したい物質を選んだことになる選択したクロマ
トグラムのピークの表している物質(ここではカフェイン)に対応するマススペクトルを選
択するマススペクトルは横軸が原子量で縦軸がその量を表しているのでマススペク
トルから分子構造を解析するために「定性処理」を行う シミラリティ検索結果が表示され分析により得られたスペクトルと類似のスペクトルを有
する物質の一覧が表示される上部に表示される物質ほどスペクトルが一致していること
を示す
接続状況が表示される
「トップへ」
をクリック
54
図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果
図 711 表示スペクトルのシミラリティ検索結果 10)図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果の印刷 「レポート(R)」をクリックし「検索結果(R)」をクリックすると検索結果が印刷される
GC-MS 分析で得られたマスス
ペクトル
データベース中
のマススペクト
ル
55
参考資料 生理活性物質の精製 カフェインの利尿作用のように生物活動に影響を与える物質を生理活性物質といいます
天然物には生理活性物質を多く含むものがあります一般に天然物は多くの成分を含ん
でおり特定の生理活性物質を分離抽出するには種々の分離技術が必要ですまた生
理活性物質には60以上の温度でその生理活性を失う(失活)ものや溶剤として広く用いられているクロロホルムなどの有機溶剤中で失活するものが多いそこでこれら生理活性
物質の分離精製技術の開発が望まれており30~60程度のマイルドな温度条件で操作できる二酸化炭素を機能性溶媒として利用する超臨界抽出も有効な分離技術として注目されて
いる超臨界二酸化炭素は気体と液体の中間の性質を持ち物質の分離に役立っています 臨界点付近の高密度気体は超臨界ガスまたは超臨界流体と呼ばれ臨界圧力前後でそ
の溶解能力が著しく変化することから工業的にも種々の分野で利用されています一例と
して超臨界二酸化炭素(SC-CO2)によるコーヒー豆からのカフェインの抽出プロセス(a)
ならびに超臨界二酸化炭素に対するカフェインの溶解度(b)を図に示します図(c)に示す
ように固体のカフェインがガスである超臨界二酸化炭素に溶解します
このように超臨界二酸化炭素を用いた技術はコーヒー豆からのカフェインの抽出プロ
ポリスからの生理活性物質の抽出に利用されています
図 超臨界二酸化炭素抽出を用いたコーヒー豆からのカフェインの抽出
56
付表 最小二乗法について 直線で近似する場合 f (x) = a0 + a1x (A1-1) 式(A1-1)のように近似させるとする測定値 yiとの残差を eiとすると式(A1-2)のようになる ei = yi - f (xi) = yi - ( a0 + a1xi ) (A1-2) ここで式(A1-2)の両辺を二乗してその i に関する総和をとりその値を S とすると次式となる
sumsum==
+minus==n
iii
n
ii xaayeS
1
210
1
2 )( (A1-3)
S を最小化するような a0a1を求める式(A1-3)を a0a1について偏微分すると次式とな
る
sum=
+minuspartpart
=partpart n
iii xaay
aaS
1
210
00)( sum
=
+minusminus=n
iii xaay
110 )(2 (A1-4)
同様にa1について編微分すると次式のようになる
sum=
+minusminus=partpart n
iiii xxaay
aS
110
1])([2 (A1-5)
Sが最小となる時は次式が同時に満たされる時である
00=
partpartaS
01=
partpartaS
(A1-6)
よって誤差が最小となる a0a1を求めるためには式(A1-6)を連立して解けばよい
sumsumsum===
+=n
ii
n
i
n
ii xaay
111
10 1 (A1-7)
sumsumsum===
+=n
ii
n
ii
n
iii xaxaxy
1
2
11
10 (A1-8)
式(A1-7)と式(A1-8)を a0a1を変数とみなし連立して解くと次式を得る
n組のデータ(xiyi)(i=12hellipn)に対して回帰直線 y= a0 + a1x を最小二乗法で求めて出力しデータ番号 iデータ yi直線で推定した値 )( ii bxay += および残差
iii yy minus=ε を出力するようなプログラムをつくりたい基礎式を導出せよ (ヒント残差の二乗の和が最小になるように係数 a0a1)を定めるのが最小二乗法
である)
57
sumsum
sumsumsumsum
==
====
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
n
ii
n
ii
xxn
xxyyxa
1
2
1
2
1111
2
0
)(
))(())(( (A1-9)
sumsum
sumsumsum
==
===
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
xxn
yxxyna
1
2
1
2
1111
)(
))(()( (A1-10)
よって式(A1-9)(A1-10)を用いれば最も誤差を小さくするような直線 y = a0 + a1x が求められる
y=a1x+a0 にて近似
誤差 ei
x
y
誤差が最小になる関数(直線 y=a1x+a0の場合)
図1 最小二乗による近似
誤差の和Sが最小
S
a0
a1
直線 y=a1x+a0 の近似
誤差の全体の和はS=Σei=Σyi-(a1xi+a0)
Sは変曲点にて最小値を示すすなわち(partSparta0)=0 (partSparta1)=0
図2 a0a1とSの関係
46
に動く(このことを電気泳動という)これはDNA のリン酸部分が負に帯電しているためでありまたDNAはその長さにより泳動距離が異なる(短い遺伝子ほど長く泳動する)電気泳動ではこの性質を利用してDNAを大きさごとに分離することができる
塩基対数によってDNAを分離
EtBr (蛍光試薬)DNAの二本鎖内に入り込む
発光
UVλ=302nm
励起
分離後のアガロースゲルをエチジウムブロマイド(EtBr)溶液に浸す
DNAを含んだ溶液
アガロースゲル
リン酸部分が負に帯電
塩基 (ATGC)-
+
カメラで撮影
電圧
DNA構成成分(dNTPs)
バンドが明る
DNA量が
バンド(DNAの存在)
図 53 電気泳動の原理
56 制限酵素とは DNA は4 種類のヌクレオチド(GATC)が不規則につながってできている制限酵素はDNAの特定のヌクレオチドが並んでいる部分を切断する制限酵素には様々な種類がありEco RI(エコアールワン)と呼ばれる酵素は「GAATTC」といった並びの部分だけを切断することができる
GAATTC
CTTAAG
制限酵素
Eco RI
AAGCTT
TTCGAA
制限酵素
Hin dIII
図 54 制限酵素による DNAの切断
レポートについて 1 実験方法および実験結果の整理方法については指針書を参考にすること 2 実験結果については電気泳動の結果について考察すること(制限酵素の影響などにつ
いてまとめてください)
47
6 染色実験
61 はじめに
現在私達の身の周りでは様々な染料が使われている例えばT シャツやジーンズな
どの衣服は橙黄赤青など様々な色に染められている他にも私達が気付かないと
ころで多くの染色された製品を使用しているそこで本実験では高校の化学で学んだ
アゾ染料を合成してみるアゾ染料はアニリンを原料として作られているアニリンはベ
ンゼン環にアミノ基(-NH2)がついたものであるアニリンは無色の液体で水に溶けにく
くアンモニアより弱い塩基性を示すまたさらし粉(CaClO(ClO)H2O)水溶液を加えると
赤紫色を呈するこの呈色反応はアニリン特有のものであるので検出反応に用いられる
このアニリンを出発物質としてアゾ染料を合成してみる
62 試薬および使用器具
【試薬】 ①05moll 水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液
②2-ナフトール ③フェノール ④6moll 塩酸
⑤亜硝酸ナトリウム ⑥アニリン ⑦氷
【器具類】 ①電子天秤 ②50mℓビーカー ③100mℓビーカー
④ガラス棒 ⑤布(ガーゼなど) ⑥ピンセット
⑦ポリ手袋 ⑧ドライヤー ⑨シャーレ
10駒込ピペット(10ml ガラス製)
11駒込ピペット(1ml プラスチック製)
63 実験方法
1) 50mℓビーカーの中に 05molℓ水酸化ナトリウム水溶液 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回
NaOH 水溶液を分取するほぼ 20 mℓ分取できれば可)と 2-ナフトールを約 01g 入れ
よくかき混ぜる調製した溶液の中に布をつけその布はガラス棒でしぼってから(布
をガラス棒ですくいあげればよい)シャーレに広げる温度の異なる条件下(常温およ
び低温)で染料の合成実験を行うため布は最低 2枚調製した溶液と接触させそれ
ぞれ別々のシャーレ(低温用および常温用)に広げる
2) 新しいビーカーに水を約 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回分取)と 6molℓ塩酸約 4mℓ(10m
ℓ駒込ピペットで目分量で可)さらにアニリン約 1mℓ(プラスチック製 1 mℓ駒込ピペッ
ト)を入れてよくかき混ぜる染料の合成を常温および低温下で行うためこの溶液を
2つ調整する
低温下で反応させる溶液は恒温槽で 10~15 分ほどよく冷やした後亜硝酸ナトリウ
ム 05g を加えてよくかき混ぜる
常温下で反応させる溶液には冷却作業を行わずに亜硝酸ナトリウム 05g を加えて
よくかき混ぜる
3) 2)でつくった水溶液をシャーレに広げた布に注ぎ生成される染料を布によく染み
込ませ5分程放置する
4) 色の付いた布を取り出してポリ手袋をした手できれいに水洗いをし乾燥させる
48
5) 色差計を用いて乾燥した布の Lab(L明度aおよび b色度)を測定する
2)で作った溶液は5以下では無色の溶液ですが5以上になると淡い黄色になりま
す
【解説】
アゾ染料はアゾ基(-N=N-)を持っていてこのアゾ基によって鮮やかな橙色を呈色し
ます今回合成したアゾ染料は図の 1-フェニルアゾ-2-ナフトールです意外かもしれ
ませんが指示薬として使われているフェノールフタレインもアゾ化合物ですフェノール
フタレインは pH の変化によって色が出てきす染料の中でも最初は無色のものもありますが
温度を変化させたり酸性やアルカリ性にすると色が出てきます
ベンゼン ニトロベンゼン
N2Cl
ニトロ化 濃硫酸(濃硝酸)
還元反応 濃塩酸
(Sn又は Fe)
アニリン塩酸塩
遊離反応 NaOH
アニリン塩酸塩に強塩基を反応させる
と弱塩基であるアニリンが遊離する
氷冷+亜硝酸ナトリウム アニリン
塩酸
ジアゾ化
塩化ベンゼンジアゾニウム
塩化ベンゼンジアゾニウム
は熱によって窒素とフェノー
ルに分解される
カップリング
C10H7ONa (ナトリウム 2-ナフトキシド)
O
N =
1-フェニルアゾ 2-ナフトール
NH3Cl NH2
49
7 ガスクロマトグラフ質量分析計による茶葉中のカフェインの分析 71 はじめに ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)は極めて低い濃度の化学物質の同定や未知物質の構造決定に極めて強力な分析機器の一つであるGCMSを用いるとサンプルの中に含まれているある成分の分子構造(カフェインの分子構造を図 71に示す)やその量が分かりますもちろん分析機器ですので測定できる物質対象となる系や測定条件にはある
程度の制約があります混合物質を分離するガスクロマトグラフ(Gas ChromatographGC)と分離された成分(物質)を分析(構造決定と濃度測定)する質量分析計(Mass SpectrometerMS)を組み合わせた装置であるこの装置は有機化学生化学環境化学などの多くの分野で非常に多用されている例えば極めて低い濃度でも生体へ強い影響が懸念されるダイ
オキシン類などの土壌や河川の水中での含有率の決定や食品や医薬品中の微量成分の決定
にも利用されている 一方日本人に長い間親しまれてきた緑茶が近年産業界や医学
界で注目されている茶葉にはカフェイン(分子構造図 71)カテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドなどの有用成分が多く含まれておりその効能が注目されている 本実験では茶葉中に含まれるカフェインに対してGCMSを用いて分析する茶葉中には種々の物質が含まれておりGCMS分析を容易にするため前処理として超臨界二酸化炭素抽出(4015MPa程度の高圧力の二酸化炭素を溶剤として利用)により茶葉からカフェインの抽出を行いそのサンプルを GCMSにて分析する
図 71 カフェインの分子構造 図 72 物質の分析 個々の物質や装置についてはインターネットにより下記のWebサイトのフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』などにより調べるとよいカフェイン(caffeine)はアルカロイドの一種プリン環を持つプリンアルカロイドの一種でコーヒー類に含まれることか
らこの名がある化学名は137-トリメチルキサンチン(C8H10N4O2) コーヒーコーラ緑茶紅茶ガラナココアなどに含まれる(量は緑茶が一番多い)結晶は一水和物(C8H10N4O2bullH2O)もしくは無水物(無水カフェインC8H10N4O2)として得られ
る白色の針状または六角柱状結晶で匂いはなく味は苦い融点は 238昇華性がある出典フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』httpwwwwikipediaorg 装置「GCMS」httpwwwanshimadzucojpproductsgcmsqp2010htm (島津) 「超臨界抽出装置」httpwwwkagakucomjasco39-49html (日本分光)
50
レポート課題 1茶葉中に含まれるカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドの中から3つの物質を選びその物質について調べた結果を A4 レポート用紙2枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
2GCMS についてA4 レポート用紙1枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
3与えられたサンプルは茶葉1gから抽出されたのである実験結果よりもとの茶葉
1g中に含まれるカフェインの量を推算し計算式とあわせて示すこと 72 原理および装置 実験で使用する島津製の GCMS装置の全体図を図 73に原理の概略を図 74に示す
1
23
4
5
67 8
9
10
キャリアーガス
試料物質
1ボンベ(He)2圧力計3マイクロシリンジ4サンプラー5試料導入部6分離カラム
7セパレーター8イオン化室9磁石10電子増倍管11記録計
11
図 74 ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)の概略図
サンプルフォルダー
51
GCMS 装置は分離部である図中の 1~6 のガスクロマトグラフ(GC)と7~11 の検出部である質量分析計(MS)から構成される 3のマイクロシリンジを用いて試料を GCMSに導入する導入された試料は5試料導入部でガス化され6分離カラムに導入される分離カラムには吸着剤が充填されおり混合物の試料を導入した場合各物質と吸着剤との
親和性の違いにより各物質の分離カラムから排出されるタイミングは異なる分離カラム
を排出された試料は8イオン化室でイオン化され10電子倍増管にて検出される アセトンに溶解したカフェインの GCMSによる分析結果の一例を以下に示す図 75にク
ロマトグラム図 76にカフェインのピークのマススペクトルを示す
図 75 GCMSにより得られたクロマトグラム
横軸がリテンションタイムで縦軸がピーク強度を表す
図 76 カフェインのマススペクトルとカフェイン(分子量MW=194)の構造
(図 75中のリテンションタイム 126min付近のピークに起因するマススペクトル) 茶葉中にはカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイド以外にも繊維であるセルロースなど多くの物質が含まれているため茶葉そのものを
そのままサンプルとしてGCMSで分析することは困難であるセルロースなどの分子量の大きな物質はカラムに詰まってしまい分析できないそこで今回は超臨界二酸化炭素
による抽出により主にカフェインを他の物質と分離抽出した通常よく利用されるアセ
トン抽出(アセトンに茶葉を浸し特定の成分を抽出する)ではカフェイン以外にも多く
の物質が抽出されるため図 75 のような単独のピークを得ることは難しく複数のピークがクロマトグラムに見られるこのサンプル(この場合茶葉からの抽出物)にはカフェ
イン以外の不純物は少なかったがガスクロマトグラフの分離カラムによりさらにそれ
らの混合物が精度よく分離されるクロマトグラムのピークはそれらサンプル中に含まれ
ていた個々の物質を表しているクロマトグラムのピークを選択することで分子構造解析
したい物質を選んだことになる選択したクロマトグラムのピークの表している物質(ここ
ではカフェイン)に対応するマススペクトルが図 76 に表示されているマススペクトル
52
で横軸がその成分(ここではカフェイン)分子を構成している原子の原子量で縦軸がそ
の量を表しているのでマススペクトルから分子構造を解析するためにコンピュータ内
に蓄えられた物質ごとのマススペクトルデータと今回測定したマススペクトル(分子内に含
まれている各原子の数)を比較することで測定したサンプル中のクロマトピークを選択し
た分子がどのような原子をどれだけ含んだ分子であったかがわかりそれからその物質
がどのような分子構造の物質である可能性が高いかをコンピュータが検索し結果を示す 73 実験サンプルの設置と GCMS装置の操作方法 実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS装置のサンプルフォルダ
ー(図 73)にセットするこのサンプルは茶葉 1gを 50ccの高圧セルにて超臨界二酸化炭素を利用して4015MPa2時間接触の条件で抽出した固体を10gのアセトンに溶かしたものである またコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に装置および装置制
御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 本実験で使用する GCMS の操作は全てコンピュータのモニター上で GCMS の解析プログラムソフトを使用することで行うコンピュータの操作方法を以下に示す なおコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS 装置のサンプルフォルダー(図 73)にセットするまた装置および装置制御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 1)パソコンのデスクトップ上のアイコン「GCMS 分析」をクリックすると以下のようにGCMS制御プログラムを起動するその後「OK」ボタンをクリックする
図 77 GCMD分析用ソフトウェア「GCMS分析」の起動
まず「GC-MS分析」をクリック
「OK」ボタンをクリック
53
2)制御プログラムが起動されパソコンと GCMSの接続が開始される
図 78 「GCMS分析」の接続確認画面 3)GCMSとパソコンの接続が完了すると以下のような画面が表示される
図 79 「GCMS分析」操作画面
4)マススペクトルによる分子構造の解析 サンプル(この場合茶葉からの抽出物)には多くの物質が混じり合っていたがガス
クロマトグラフの分離カラムによりそれらの混合物が精度よく分離されるクロマトグラ
ムのピークはそれらサンプル中に含まれていた個々の物質を表しているクロマトグラム
のピークを選択することで分子構造解析したい物質を選んだことになる選択したクロマ
トグラムのピークの表している物質(ここではカフェイン)に対応するマススペクトルを選
択するマススペクトルは横軸が原子量で縦軸がその量を表しているのでマススペク
トルから分子構造を解析するために「定性処理」を行う シミラリティ検索結果が表示され分析により得られたスペクトルと類似のスペクトルを有
する物質の一覧が表示される上部に表示される物質ほどスペクトルが一致していること
を示す
接続状況が表示される
「トップへ」
をクリック
54
図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果
図 711 表示スペクトルのシミラリティ検索結果 10)図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果の印刷 「レポート(R)」をクリックし「検索結果(R)」をクリックすると検索結果が印刷される
GC-MS 分析で得られたマスス
ペクトル
データベース中
のマススペクト
ル
55
参考資料 生理活性物質の精製 カフェインの利尿作用のように生物活動に影響を与える物質を生理活性物質といいます
天然物には生理活性物質を多く含むものがあります一般に天然物は多くの成分を含ん
でおり特定の生理活性物質を分離抽出するには種々の分離技術が必要ですまた生
理活性物質には60以上の温度でその生理活性を失う(失活)ものや溶剤として広く用いられているクロロホルムなどの有機溶剤中で失活するものが多いそこでこれら生理活性
物質の分離精製技術の開発が望まれており30~60程度のマイルドな温度条件で操作できる二酸化炭素を機能性溶媒として利用する超臨界抽出も有効な分離技術として注目されて
いる超臨界二酸化炭素は気体と液体の中間の性質を持ち物質の分離に役立っています 臨界点付近の高密度気体は超臨界ガスまたは超臨界流体と呼ばれ臨界圧力前後でそ
の溶解能力が著しく変化することから工業的にも種々の分野で利用されています一例と
して超臨界二酸化炭素(SC-CO2)によるコーヒー豆からのカフェインの抽出プロセス(a)
ならびに超臨界二酸化炭素に対するカフェインの溶解度(b)を図に示します図(c)に示す
ように固体のカフェインがガスである超臨界二酸化炭素に溶解します
このように超臨界二酸化炭素を用いた技術はコーヒー豆からのカフェインの抽出プロ
ポリスからの生理活性物質の抽出に利用されています
図 超臨界二酸化炭素抽出を用いたコーヒー豆からのカフェインの抽出
56
付表 最小二乗法について 直線で近似する場合 f (x) = a0 + a1x (A1-1) 式(A1-1)のように近似させるとする測定値 yiとの残差を eiとすると式(A1-2)のようになる ei = yi - f (xi) = yi - ( a0 + a1xi ) (A1-2) ここで式(A1-2)の両辺を二乗してその i に関する総和をとりその値を S とすると次式となる
sumsum==
+minus==n
iii
n
ii xaayeS
1
210
1
2 )( (A1-3)
S を最小化するような a0a1を求める式(A1-3)を a0a1について偏微分すると次式とな
る
sum=
+minuspartpart
=partpart n
iii xaay
aaS
1
210
00)( sum
=
+minusminus=n
iii xaay
110 )(2 (A1-4)
同様にa1について編微分すると次式のようになる
sum=
+minusminus=partpart n
iiii xxaay
aS
110
1])([2 (A1-5)
Sが最小となる時は次式が同時に満たされる時である
00=
partpartaS
01=
partpartaS
(A1-6)
よって誤差が最小となる a0a1を求めるためには式(A1-6)を連立して解けばよい
sumsumsum===
+=n
ii
n
i
n
ii xaay
111
10 1 (A1-7)
sumsumsum===
+=n
ii
n
ii
n
iii xaxaxy
1
2
11
10 (A1-8)
式(A1-7)と式(A1-8)を a0a1を変数とみなし連立して解くと次式を得る
n組のデータ(xiyi)(i=12hellipn)に対して回帰直線 y= a0 + a1x を最小二乗法で求めて出力しデータ番号 iデータ yi直線で推定した値 )( ii bxay += および残差
iii yy minus=ε を出力するようなプログラムをつくりたい基礎式を導出せよ (ヒント残差の二乗の和が最小になるように係数 a0a1)を定めるのが最小二乗法
である)
57
sumsum
sumsumsumsum
==
====
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
n
ii
n
ii
xxn
xxyyxa
1
2
1
2
1111
2
0
)(
))(())(( (A1-9)
sumsum
sumsumsum
==
===
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
xxn
yxxyna
1
2
1
2
1111
)(
))(()( (A1-10)
よって式(A1-9)(A1-10)を用いれば最も誤差を小さくするような直線 y = a0 + a1x が求められる
y=a1x+a0 にて近似
誤差 ei
x
y
誤差が最小になる関数(直線 y=a1x+a0の場合)
図1 最小二乗による近似
誤差の和Sが最小
S
a0
a1
直線 y=a1x+a0 の近似
誤差の全体の和はS=Σei=Σyi-(a1xi+a0)
Sは変曲点にて最小値を示すすなわち(partSparta0)=0 (partSparta1)=0
図2 a0a1とSの関係
47
6 染色実験
61 はじめに
現在私達の身の周りでは様々な染料が使われている例えばT シャツやジーンズな
どの衣服は橙黄赤青など様々な色に染められている他にも私達が気付かないと
ころで多くの染色された製品を使用しているそこで本実験では高校の化学で学んだ
アゾ染料を合成してみるアゾ染料はアニリンを原料として作られているアニリンはベ
ンゼン環にアミノ基(-NH2)がついたものであるアニリンは無色の液体で水に溶けにく
くアンモニアより弱い塩基性を示すまたさらし粉(CaClO(ClO)H2O)水溶液を加えると
赤紫色を呈するこの呈色反応はアニリン特有のものであるので検出反応に用いられる
このアニリンを出発物質としてアゾ染料を合成してみる
62 試薬および使用器具
【試薬】 ①05moll 水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液
②2-ナフトール ③フェノール ④6moll 塩酸
⑤亜硝酸ナトリウム ⑥アニリン ⑦氷
【器具類】 ①電子天秤 ②50mℓビーカー ③100mℓビーカー
④ガラス棒 ⑤布(ガーゼなど) ⑥ピンセット
⑦ポリ手袋 ⑧ドライヤー ⑨シャーレ
10駒込ピペット(10ml ガラス製)
11駒込ピペット(1ml プラスチック製)
63 実験方法
1) 50mℓビーカーの中に 05molℓ水酸化ナトリウム水溶液 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回
NaOH 水溶液を分取するほぼ 20 mℓ分取できれば可)と 2-ナフトールを約 01g 入れ
よくかき混ぜる調製した溶液の中に布をつけその布はガラス棒でしぼってから(布
をガラス棒ですくいあげればよい)シャーレに広げる温度の異なる条件下(常温およ
び低温)で染料の合成実験を行うため布は最低 2枚調製した溶液と接触させそれ
ぞれ別々のシャーレ(低温用および常温用)に広げる
2) 新しいビーカーに水を約 20mℓ(10mℓ駒込ピペットで 2回分取)と 6molℓ塩酸約 4mℓ(10m
ℓ駒込ピペットで目分量で可)さらにアニリン約 1mℓ(プラスチック製 1 mℓ駒込ピペッ
ト)を入れてよくかき混ぜる染料の合成を常温および低温下で行うためこの溶液を
2つ調整する
低温下で反応させる溶液は恒温槽で 10~15 分ほどよく冷やした後亜硝酸ナトリウ
ム 05g を加えてよくかき混ぜる
常温下で反応させる溶液には冷却作業を行わずに亜硝酸ナトリウム 05g を加えて
よくかき混ぜる
3) 2)でつくった水溶液をシャーレに広げた布に注ぎ生成される染料を布によく染み
込ませ5分程放置する
4) 色の付いた布を取り出してポリ手袋をした手できれいに水洗いをし乾燥させる
48
5) 色差計を用いて乾燥した布の Lab(L明度aおよび b色度)を測定する
2)で作った溶液は5以下では無色の溶液ですが5以上になると淡い黄色になりま
す
【解説】
アゾ染料はアゾ基(-N=N-)を持っていてこのアゾ基によって鮮やかな橙色を呈色し
ます今回合成したアゾ染料は図の 1-フェニルアゾ-2-ナフトールです意外かもしれ
ませんが指示薬として使われているフェノールフタレインもアゾ化合物ですフェノール
フタレインは pH の変化によって色が出てきす染料の中でも最初は無色のものもありますが
温度を変化させたり酸性やアルカリ性にすると色が出てきます
ベンゼン ニトロベンゼン
N2Cl
ニトロ化 濃硫酸(濃硝酸)
還元反応 濃塩酸
(Sn又は Fe)
アニリン塩酸塩
遊離反応 NaOH
アニリン塩酸塩に強塩基を反応させる
と弱塩基であるアニリンが遊離する
氷冷+亜硝酸ナトリウム アニリン
塩酸
ジアゾ化
塩化ベンゼンジアゾニウム
塩化ベンゼンジアゾニウム
は熱によって窒素とフェノー
ルに分解される
カップリング
C10H7ONa (ナトリウム 2-ナフトキシド)
O
N =
1-フェニルアゾ 2-ナフトール
NH3Cl NH2
49
7 ガスクロマトグラフ質量分析計による茶葉中のカフェインの分析 71 はじめに ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)は極めて低い濃度の化学物質の同定や未知物質の構造決定に極めて強力な分析機器の一つであるGCMSを用いるとサンプルの中に含まれているある成分の分子構造(カフェインの分子構造を図 71に示す)やその量が分かりますもちろん分析機器ですので測定できる物質対象となる系や測定条件にはある
程度の制約があります混合物質を分離するガスクロマトグラフ(Gas ChromatographGC)と分離された成分(物質)を分析(構造決定と濃度測定)する質量分析計(Mass SpectrometerMS)を組み合わせた装置であるこの装置は有機化学生化学環境化学などの多くの分野で非常に多用されている例えば極めて低い濃度でも生体へ強い影響が懸念されるダイ
オキシン類などの土壌や河川の水中での含有率の決定や食品や医薬品中の微量成分の決定
にも利用されている 一方日本人に長い間親しまれてきた緑茶が近年産業界や医学
界で注目されている茶葉にはカフェイン(分子構造図 71)カテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドなどの有用成分が多く含まれておりその効能が注目されている 本実験では茶葉中に含まれるカフェインに対してGCMSを用いて分析する茶葉中には種々の物質が含まれておりGCMS分析を容易にするため前処理として超臨界二酸化炭素抽出(4015MPa程度の高圧力の二酸化炭素を溶剤として利用)により茶葉からカフェインの抽出を行いそのサンプルを GCMSにて分析する
図 71 カフェインの分子構造 図 72 物質の分析 個々の物質や装置についてはインターネットにより下記のWebサイトのフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』などにより調べるとよいカフェイン(caffeine)はアルカロイドの一種プリン環を持つプリンアルカロイドの一種でコーヒー類に含まれることか
らこの名がある化学名は137-トリメチルキサンチン(C8H10N4O2) コーヒーコーラ緑茶紅茶ガラナココアなどに含まれる(量は緑茶が一番多い)結晶は一水和物(C8H10N4O2bullH2O)もしくは無水物(無水カフェインC8H10N4O2)として得られ
る白色の針状または六角柱状結晶で匂いはなく味は苦い融点は 238昇華性がある出典フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』httpwwwwikipediaorg 装置「GCMS」httpwwwanshimadzucojpproductsgcmsqp2010htm (島津) 「超臨界抽出装置」httpwwwkagakucomjasco39-49html (日本分光)
50
レポート課題 1茶葉中に含まれるカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドの中から3つの物質を選びその物質について調べた結果を A4 レポート用紙2枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
2GCMS についてA4 レポート用紙1枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
3与えられたサンプルは茶葉1gから抽出されたのである実験結果よりもとの茶葉
1g中に含まれるカフェインの量を推算し計算式とあわせて示すこと 72 原理および装置 実験で使用する島津製の GCMS装置の全体図を図 73に原理の概略を図 74に示す
1
23
4
5
67 8
9
10
キャリアーガス
試料物質
1ボンベ(He)2圧力計3マイクロシリンジ4サンプラー5試料導入部6分離カラム
7セパレーター8イオン化室9磁石10電子増倍管11記録計
11
図 74 ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)の概略図
サンプルフォルダー
51
GCMS 装置は分離部である図中の 1~6 のガスクロマトグラフ(GC)と7~11 の検出部である質量分析計(MS)から構成される 3のマイクロシリンジを用いて試料を GCMSに導入する導入された試料は5試料導入部でガス化され6分離カラムに導入される分離カラムには吸着剤が充填されおり混合物の試料を導入した場合各物質と吸着剤との
親和性の違いにより各物質の分離カラムから排出されるタイミングは異なる分離カラム
を排出された試料は8イオン化室でイオン化され10電子倍増管にて検出される アセトンに溶解したカフェインの GCMSによる分析結果の一例を以下に示す図 75にク
ロマトグラム図 76にカフェインのピークのマススペクトルを示す
図 75 GCMSにより得られたクロマトグラム
横軸がリテンションタイムで縦軸がピーク強度を表す
図 76 カフェインのマススペクトルとカフェイン(分子量MW=194)の構造
(図 75中のリテンションタイム 126min付近のピークに起因するマススペクトル) 茶葉中にはカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイド以外にも繊維であるセルロースなど多くの物質が含まれているため茶葉そのものを
そのままサンプルとしてGCMSで分析することは困難であるセルロースなどの分子量の大きな物質はカラムに詰まってしまい分析できないそこで今回は超臨界二酸化炭素
による抽出により主にカフェインを他の物質と分離抽出した通常よく利用されるアセ
トン抽出(アセトンに茶葉を浸し特定の成分を抽出する)ではカフェイン以外にも多く
の物質が抽出されるため図 75 のような単独のピークを得ることは難しく複数のピークがクロマトグラムに見られるこのサンプル(この場合茶葉からの抽出物)にはカフェ
イン以外の不純物は少なかったがガスクロマトグラフの分離カラムによりさらにそれ
らの混合物が精度よく分離されるクロマトグラムのピークはそれらサンプル中に含まれ
ていた個々の物質を表しているクロマトグラムのピークを選択することで分子構造解析
したい物質を選んだことになる選択したクロマトグラムのピークの表している物質(ここ
ではカフェイン)に対応するマススペクトルが図 76 に表示されているマススペクトル
52
で横軸がその成分(ここではカフェイン)分子を構成している原子の原子量で縦軸がそ
の量を表しているのでマススペクトルから分子構造を解析するためにコンピュータ内
に蓄えられた物質ごとのマススペクトルデータと今回測定したマススペクトル(分子内に含
まれている各原子の数)を比較することで測定したサンプル中のクロマトピークを選択し
た分子がどのような原子をどれだけ含んだ分子であったかがわかりそれからその物質
がどのような分子構造の物質である可能性が高いかをコンピュータが検索し結果を示す 73 実験サンプルの設置と GCMS装置の操作方法 実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS装置のサンプルフォルダ
ー(図 73)にセットするこのサンプルは茶葉 1gを 50ccの高圧セルにて超臨界二酸化炭素を利用して4015MPa2時間接触の条件で抽出した固体を10gのアセトンに溶かしたものである またコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に装置および装置制
御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 本実験で使用する GCMS の操作は全てコンピュータのモニター上で GCMS の解析プログラムソフトを使用することで行うコンピュータの操作方法を以下に示す なおコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS 装置のサンプルフォルダー(図 73)にセットするまた装置および装置制御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 1)パソコンのデスクトップ上のアイコン「GCMS 分析」をクリックすると以下のようにGCMS制御プログラムを起動するその後「OK」ボタンをクリックする
図 77 GCMD分析用ソフトウェア「GCMS分析」の起動
まず「GC-MS分析」をクリック
「OK」ボタンをクリック
53
2)制御プログラムが起動されパソコンと GCMSの接続が開始される
図 78 「GCMS分析」の接続確認画面 3)GCMSとパソコンの接続が完了すると以下のような画面が表示される
図 79 「GCMS分析」操作画面
4)マススペクトルによる分子構造の解析 サンプル(この場合茶葉からの抽出物)には多くの物質が混じり合っていたがガス
クロマトグラフの分離カラムによりそれらの混合物が精度よく分離されるクロマトグラ
ムのピークはそれらサンプル中に含まれていた個々の物質を表しているクロマトグラム
のピークを選択することで分子構造解析したい物質を選んだことになる選択したクロマ
トグラムのピークの表している物質(ここではカフェイン)に対応するマススペクトルを選
択するマススペクトルは横軸が原子量で縦軸がその量を表しているのでマススペク
トルから分子構造を解析するために「定性処理」を行う シミラリティ検索結果が表示され分析により得られたスペクトルと類似のスペクトルを有
する物質の一覧が表示される上部に表示される物質ほどスペクトルが一致していること
を示す
接続状況が表示される
「トップへ」
をクリック
54
図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果
図 711 表示スペクトルのシミラリティ検索結果 10)図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果の印刷 「レポート(R)」をクリックし「検索結果(R)」をクリックすると検索結果が印刷される
GC-MS 分析で得られたマスス
ペクトル
データベース中
のマススペクト
ル
55
参考資料 生理活性物質の精製 カフェインの利尿作用のように生物活動に影響を与える物質を生理活性物質といいます
天然物には生理活性物質を多く含むものがあります一般に天然物は多くの成分を含ん
でおり特定の生理活性物質を分離抽出するには種々の分離技術が必要ですまた生
理活性物質には60以上の温度でその生理活性を失う(失活)ものや溶剤として広く用いられているクロロホルムなどの有機溶剤中で失活するものが多いそこでこれら生理活性
物質の分離精製技術の開発が望まれており30~60程度のマイルドな温度条件で操作できる二酸化炭素を機能性溶媒として利用する超臨界抽出も有効な分離技術として注目されて
いる超臨界二酸化炭素は気体と液体の中間の性質を持ち物質の分離に役立っています 臨界点付近の高密度気体は超臨界ガスまたは超臨界流体と呼ばれ臨界圧力前後でそ
の溶解能力が著しく変化することから工業的にも種々の分野で利用されています一例と
して超臨界二酸化炭素(SC-CO2)によるコーヒー豆からのカフェインの抽出プロセス(a)
ならびに超臨界二酸化炭素に対するカフェインの溶解度(b)を図に示します図(c)に示す
ように固体のカフェインがガスである超臨界二酸化炭素に溶解します
このように超臨界二酸化炭素を用いた技術はコーヒー豆からのカフェインの抽出プロ
ポリスからの生理活性物質の抽出に利用されています
図 超臨界二酸化炭素抽出を用いたコーヒー豆からのカフェインの抽出
56
付表 最小二乗法について 直線で近似する場合 f (x) = a0 + a1x (A1-1) 式(A1-1)のように近似させるとする測定値 yiとの残差を eiとすると式(A1-2)のようになる ei = yi - f (xi) = yi - ( a0 + a1xi ) (A1-2) ここで式(A1-2)の両辺を二乗してその i に関する総和をとりその値を S とすると次式となる
sumsum==
+minus==n
iii
n
ii xaayeS
1
210
1
2 )( (A1-3)
S を最小化するような a0a1を求める式(A1-3)を a0a1について偏微分すると次式とな
る
sum=
+minuspartpart
=partpart n
iii xaay
aaS
1
210
00)( sum
=
+minusminus=n
iii xaay
110 )(2 (A1-4)
同様にa1について編微分すると次式のようになる
sum=
+minusminus=partpart n
iiii xxaay
aS
110
1])([2 (A1-5)
Sが最小となる時は次式が同時に満たされる時である
00=
partpartaS
01=
partpartaS
(A1-6)
よって誤差が最小となる a0a1を求めるためには式(A1-6)を連立して解けばよい
sumsumsum===
+=n
ii
n
i
n
ii xaay
111
10 1 (A1-7)
sumsumsum===
+=n
ii
n
ii
n
iii xaxaxy
1
2
11
10 (A1-8)
式(A1-7)と式(A1-8)を a0a1を変数とみなし連立して解くと次式を得る
n組のデータ(xiyi)(i=12hellipn)に対して回帰直線 y= a0 + a1x を最小二乗法で求めて出力しデータ番号 iデータ yi直線で推定した値 )( ii bxay += および残差
iii yy minus=ε を出力するようなプログラムをつくりたい基礎式を導出せよ (ヒント残差の二乗の和が最小になるように係数 a0a1)を定めるのが最小二乗法
である)
57
sumsum
sumsumsumsum
==
====
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
n
ii
n
ii
xxn
xxyyxa
1
2
1
2
1111
2
0
)(
))(())(( (A1-9)
sumsum
sumsumsum
==
===
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
xxn
yxxyna
1
2
1
2
1111
)(
))(()( (A1-10)
よって式(A1-9)(A1-10)を用いれば最も誤差を小さくするような直線 y = a0 + a1x が求められる
y=a1x+a0 にて近似
誤差 ei
x
y
誤差が最小になる関数(直線 y=a1x+a0の場合)
図1 最小二乗による近似
誤差の和Sが最小
S
a0
a1
直線 y=a1x+a0 の近似
誤差の全体の和はS=Σei=Σyi-(a1xi+a0)
Sは変曲点にて最小値を示すすなわち(partSparta0)=0 (partSparta1)=0
図2 a0a1とSの関係
48
5) 色差計を用いて乾燥した布の Lab(L明度aおよび b色度)を測定する
2)で作った溶液は5以下では無色の溶液ですが5以上になると淡い黄色になりま
す
【解説】
アゾ染料はアゾ基(-N=N-)を持っていてこのアゾ基によって鮮やかな橙色を呈色し
ます今回合成したアゾ染料は図の 1-フェニルアゾ-2-ナフトールです意外かもしれ
ませんが指示薬として使われているフェノールフタレインもアゾ化合物ですフェノール
フタレインは pH の変化によって色が出てきす染料の中でも最初は無色のものもありますが
温度を変化させたり酸性やアルカリ性にすると色が出てきます
ベンゼン ニトロベンゼン
N2Cl
ニトロ化 濃硫酸(濃硝酸)
還元反応 濃塩酸
(Sn又は Fe)
アニリン塩酸塩
遊離反応 NaOH
アニリン塩酸塩に強塩基を反応させる
と弱塩基であるアニリンが遊離する
氷冷+亜硝酸ナトリウム アニリン
塩酸
ジアゾ化
塩化ベンゼンジアゾニウム
塩化ベンゼンジアゾニウム
は熱によって窒素とフェノー
ルに分解される
カップリング
C10H7ONa (ナトリウム 2-ナフトキシド)
O
N =
1-フェニルアゾ 2-ナフトール
NH3Cl NH2
49
7 ガスクロマトグラフ質量分析計による茶葉中のカフェインの分析 71 はじめに ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)は極めて低い濃度の化学物質の同定や未知物質の構造決定に極めて強力な分析機器の一つであるGCMSを用いるとサンプルの中に含まれているある成分の分子構造(カフェインの分子構造を図 71に示す)やその量が分かりますもちろん分析機器ですので測定できる物質対象となる系や測定条件にはある
程度の制約があります混合物質を分離するガスクロマトグラフ(Gas ChromatographGC)と分離された成分(物質)を分析(構造決定と濃度測定)する質量分析計(Mass SpectrometerMS)を組み合わせた装置であるこの装置は有機化学生化学環境化学などの多くの分野で非常に多用されている例えば極めて低い濃度でも生体へ強い影響が懸念されるダイ
オキシン類などの土壌や河川の水中での含有率の決定や食品や医薬品中の微量成分の決定
にも利用されている 一方日本人に長い間親しまれてきた緑茶が近年産業界や医学
界で注目されている茶葉にはカフェイン(分子構造図 71)カテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドなどの有用成分が多く含まれておりその効能が注目されている 本実験では茶葉中に含まれるカフェインに対してGCMSを用いて分析する茶葉中には種々の物質が含まれておりGCMS分析を容易にするため前処理として超臨界二酸化炭素抽出(4015MPa程度の高圧力の二酸化炭素を溶剤として利用)により茶葉からカフェインの抽出を行いそのサンプルを GCMSにて分析する
図 71 カフェインの分子構造 図 72 物質の分析 個々の物質や装置についてはインターネットにより下記のWebサイトのフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』などにより調べるとよいカフェイン(caffeine)はアルカロイドの一種プリン環を持つプリンアルカロイドの一種でコーヒー類に含まれることか
らこの名がある化学名は137-トリメチルキサンチン(C8H10N4O2) コーヒーコーラ緑茶紅茶ガラナココアなどに含まれる(量は緑茶が一番多い)結晶は一水和物(C8H10N4O2bullH2O)もしくは無水物(無水カフェインC8H10N4O2)として得られ
る白色の針状または六角柱状結晶で匂いはなく味は苦い融点は 238昇華性がある出典フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』httpwwwwikipediaorg 装置「GCMS」httpwwwanshimadzucojpproductsgcmsqp2010htm (島津) 「超臨界抽出装置」httpwwwkagakucomjasco39-49html (日本分光)
50
レポート課題 1茶葉中に含まれるカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドの中から3つの物質を選びその物質について調べた結果を A4 レポート用紙2枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
2GCMS についてA4 レポート用紙1枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
3与えられたサンプルは茶葉1gから抽出されたのである実験結果よりもとの茶葉
1g中に含まれるカフェインの量を推算し計算式とあわせて示すこと 72 原理および装置 実験で使用する島津製の GCMS装置の全体図を図 73に原理の概略を図 74に示す
1
23
4
5
67 8
9
10
キャリアーガス
試料物質
1ボンベ(He)2圧力計3マイクロシリンジ4サンプラー5試料導入部6分離カラム
7セパレーター8イオン化室9磁石10電子増倍管11記録計
11
図 74 ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)の概略図
サンプルフォルダー
51
GCMS 装置は分離部である図中の 1~6 のガスクロマトグラフ(GC)と7~11 の検出部である質量分析計(MS)から構成される 3のマイクロシリンジを用いて試料を GCMSに導入する導入された試料は5試料導入部でガス化され6分離カラムに導入される分離カラムには吸着剤が充填されおり混合物の試料を導入した場合各物質と吸着剤との
親和性の違いにより各物質の分離カラムから排出されるタイミングは異なる分離カラム
を排出された試料は8イオン化室でイオン化され10電子倍増管にて検出される アセトンに溶解したカフェインの GCMSによる分析結果の一例を以下に示す図 75にク
ロマトグラム図 76にカフェインのピークのマススペクトルを示す
図 75 GCMSにより得られたクロマトグラム
横軸がリテンションタイムで縦軸がピーク強度を表す
図 76 カフェインのマススペクトルとカフェイン(分子量MW=194)の構造
(図 75中のリテンションタイム 126min付近のピークに起因するマススペクトル) 茶葉中にはカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイド以外にも繊維であるセルロースなど多くの物質が含まれているため茶葉そのものを
そのままサンプルとしてGCMSで分析することは困難であるセルロースなどの分子量の大きな物質はカラムに詰まってしまい分析できないそこで今回は超臨界二酸化炭素
による抽出により主にカフェインを他の物質と分離抽出した通常よく利用されるアセ
トン抽出(アセトンに茶葉を浸し特定の成分を抽出する)ではカフェイン以外にも多く
の物質が抽出されるため図 75 のような単独のピークを得ることは難しく複数のピークがクロマトグラムに見られるこのサンプル(この場合茶葉からの抽出物)にはカフェ
イン以外の不純物は少なかったがガスクロマトグラフの分離カラムによりさらにそれ
らの混合物が精度よく分離されるクロマトグラムのピークはそれらサンプル中に含まれ
ていた個々の物質を表しているクロマトグラムのピークを選択することで分子構造解析
したい物質を選んだことになる選択したクロマトグラムのピークの表している物質(ここ
ではカフェイン)に対応するマススペクトルが図 76 に表示されているマススペクトル
52
で横軸がその成分(ここではカフェイン)分子を構成している原子の原子量で縦軸がそ
の量を表しているのでマススペクトルから分子構造を解析するためにコンピュータ内
に蓄えられた物質ごとのマススペクトルデータと今回測定したマススペクトル(分子内に含
まれている各原子の数)を比較することで測定したサンプル中のクロマトピークを選択し
た分子がどのような原子をどれだけ含んだ分子であったかがわかりそれからその物質
がどのような分子構造の物質である可能性が高いかをコンピュータが検索し結果を示す 73 実験サンプルの設置と GCMS装置の操作方法 実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS装置のサンプルフォルダ
ー(図 73)にセットするこのサンプルは茶葉 1gを 50ccの高圧セルにて超臨界二酸化炭素を利用して4015MPa2時間接触の条件で抽出した固体を10gのアセトンに溶かしたものである またコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に装置および装置制
御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 本実験で使用する GCMS の操作は全てコンピュータのモニター上で GCMS の解析プログラムソフトを使用することで行うコンピュータの操作方法を以下に示す なおコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS 装置のサンプルフォルダー(図 73)にセットするまた装置および装置制御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 1)パソコンのデスクトップ上のアイコン「GCMS 分析」をクリックすると以下のようにGCMS制御プログラムを起動するその後「OK」ボタンをクリックする
図 77 GCMD分析用ソフトウェア「GCMS分析」の起動
まず「GC-MS分析」をクリック
「OK」ボタンをクリック
53
2)制御プログラムが起動されパソコンと GCMSの接続が開始される
図 78 「GCMS分析」の接続確認画面 3)GCMSとパソコンの接続が完了すると以下のような画面が表示される
図 79 「GCMS分析」操作画面
4)マススペクトルによる分子構造の解析 サンプル(この場合茶葉からの抽出物)には多くの物質が混じり合っていたがガス
クロマトグラフの分離カラムによりそれらの混合物が精度よく分離されるクロマトグラ
ムのピークはそれらサンプル中に含まれていた個々の物質を表しているクロマトグラム
のピークを選択することで分子構造解析したい物質を選んだことになる選択したクロマ
トグラムのピークの表している物質(ここではカフェイン)に対応するマススペクトルを選
択するマススペクトルは横軸が原子量で縦軸がその量を表しているのでマススペク
トルから分子構造を解析するために「定性処理」を行う シミラリティ検索結果が表示され分析により得られたスペクトルと類似のスペクトルを有
する物質の一覧が表示される上部に表示される物質ほどスペクトルが一致していること
を示す
接続状況が表示される
「トップへ」
をクリック
54
図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果
図 711 表示スペクトルのシミラリティ検索結果 10)図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果の印刷 「レポート(R)」をクリックし「検索結果(R)」をクリックすると検索結果が印刷される
GC-MS 分析で得られたマスス
ペクトル
データベース中
のマススペクト
ル
55
参考資料 生理活性物質の精製 カフェインの利尿作用のように生物活動に影響を与える物質を生理活性物質といいます
天然物には生理活性物質を多く含むものがあります一般に天然物は多くの成分を含ん
でおり特定の生理活性物質を分離抽出するには種々の分離技術が必要ですまた生
理活性物質には60以上の温度でその生理活性を失う(失活)ものや溶剤として広く用いられているクロロホルムなどの有機溶剤中で失活するものが多いそこでこれら生理活性
物質の分離精製技術の開発が望まれており30~60程度のマイルドな温度条件で操作できる二酸化炭素を機能性溶媒として利用する超臨界抽出も有効な分離技術として注目されて
いる超臨界二酸化炭素は気体と液体の中間の性質を持ち物質の分離に役立っています 臨界点付近の高密度気体は超臨界ガスまたは超臨界流体と呼ばれ臨界圧力前後でそ
の溶解能力が著しく変化することから工業的にも種々の分野で利用されています一例と
して超臨界二酸化炭素(SC-CO2)によるコーヒー豆からのカフェインの抽出プロセス(a)
ならびに超臨界二酸化炭素に対するカフェインの溶解度(b)を図に示します図(c)に示す
ように固体のカフェインがガスである超臨界二酸化炭素に溶解します
このように超臨界二酸化炭素を用いた技術はコーヒー豆からのカフェインの抽出プロ
ポリスからの生理活性物質の抽出に利用されています
図 超臨界二酸化炭素抽出を用いたコーヒー豆からのカフェインの抽出
56
付表 最小二乗法について 直線で近似する場合 f (x) = a0 + a1x (A1-1) 式(A1-1)のように近似させるとする測定値 yiとの残差を eiとすると式(A1-2)のようになる ei = yi - f (xi) = yi - ( a0 + a1xi ) (A1-2) ここで式(A1-2)の両辺を二乗してその i に関する総和をとりその値を S とすると次式となる
sumsum==
+minus==n
iii
n
ii xaayeS
1
210
1
2 )( (A1-3)
S を最小化するような a0a1を求める式(A1-3)を a0a1について偏微分すると次式とな
る
sum=
+minuspartpart
=partpart n
iii xaay
aaS
1
210
00)( sum
=
+minusminus=n
iii xaay
110 )(2 (A1-4)
同様にa1について編微分すると次式のようになる
sum=
+minusminus=partpart n
iiii xxaay
aS
110
1])([2 (A1-5)
Sが最小となる時は次式が同時に満たされる時である
00=
partpartaS
01=
partpartaS
(A1-6)
よって誤差が最小となる a0a1を求めるためには式(A1-6)を連立して解けばよい
sumsumsum===
+=n
ii
n
i
n
ii xaay
111
10 1 (A1-7)
sumsumsum===
+=n
ii
n
ii
n
iii xaxaxy
1
2
11
10 (A1-8)
式(A1-7)と式(A1-8)を a0a1を変数とみなし連立して解くと次式を得る
n組のデータ(xiyi)(i=12hellipn)に対して回帰直線 y= a0 + a1x を最小二乗法で求めて出力しデータ番号 iデータ yi直線で推定した値 )( ii bxay += および残差
iii yy minus=ε を出力するようなプログラムをつくりたい基礎式を導出せよ (ヒント残差の二乗の和が最小になるように係数 a0a1)を定めるのが最小二乗法
である)
57
sumsum
sumsumsumsum
==
====
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
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iii
n
ii
n
ii
xxn
xxyyxa
1
2
1
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1111
2
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))(())(( (A1-9)
sumsum
sumsumsum
==
===
minus
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ii
n
ii
n
ii
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ii
n
iii
xxn
yxxyna
1
2
1
2
1111
)(
))(()( (A1-10)
よって式(A1-9)(A1-10)を用いれば最も誤差を小さくするような直線 y = a0 + a1x が求められる
y=a1x+a0 にて近似
誤差 ei
x
y
誤差が最小になる関数(直線 y=a1x+a0の場合)
図1 最小二乗による近似
誤差の和Sが最小
S
a0
a1
直線 y=a1x+a0 の近似
誤差の全体の和はS=Σei=Σyi-(a1xi+a0)
Sは変曲点にて最小値を示すすなわち(partSparta0)=0 (partSparta1)=0
図2 a0a1とSの関係
49
7 ガスクロマトグラフ質量分析計による茶葉中のカフェインの分析 71 はじめに ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)は極めて低い濃度の化学物質の同定や未知物質の構造決定に極めて強力な分析機器の一つであるGCMSを用いるとサンプルの中に含まれているある成分の分子構造(カフェインの分子構造を図 71に示す)やその量が分かりますもちろん分析機器ですので測定できる物質対象となる系や測定条件にはある
程度の制約があります混合物質を分離するガスクロマトグラフ(Gas ChromatographGC)と分離された成分(物質)を分析(構造決定と濃度測定)する質量分析計(Mass SpectrometerMS)を組み合わせた装置であるこの装置は有機化学生化学環境化学などの多くの分野で非常に多用されている例えば極めて低い濃度でも生体へ強い影響が懸念されるダイ
オキシン類などの土壌や河川の水中での含有率の決定や食品や医薬品中の微量成分の決定
にも利用されている 一方日本人に長い間親しまれてきた緑茶が近年産業界や医学
界で注目されている茶葉にはカフェイン(分子構造図 71)カテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドなどの有用成分が多く含まれておりその効能が注目されている 本実験では茶葉中に含まれるカフェインに対してGCMSを用いて分析する茶葉中には種々の物質が含まれておりGCMS分析を容易にするため前処理として超臨界二酸化炭素抽出(4015MPa程度の高圧力の二酸化炭素を溶剤として利用)により茶葉からカフェインの抽出を行いそのサンプルを GCMSにて分析する
図 71 カフェインの分子構造 図 72 物質の分析 個々の物質や装置についてはインターネットにより下記のWebサイトのフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』などにより調べるとよいカフェイン(caffeine)はアルカロイドの一種プリン環を持つプリンアルカロイドの一種でコーヒー類に含まれることか
らこの名がある化学名は137-トリメチルキサンチン(C8H10N4O2) コーヒーコーラ緑茶紅茶ガラナココアなどに含まれる(量は緑茶が一番多い)結晶は一水和物(C8H10N4O2bullH2O)もしくは無水物(無水カフェインC8H10N4O2)として得られ
る白色の針状または六角柱状結晶で匂いはなく味は苦い融点は 238昇華性がある出典フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』httpwwwwikipediaorg 装置「GCMS」httpwwwanshimadzucojpproductsgcmsqp2010htm (島津) 「超臨界抽出装置」httpwwwkagakucomjasco39-49html (日本分光)
50
レポート課題 1茶葉中に含まれるカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドの中から3つの物質を選びその物質について調べた結果を A4 レポート用紙2枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
2GCMS についてA4 レポート用紙1枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
3与えられたサンプルは茶葉1gから抽出されたのである実験結果よりもとの茶葉
1g中に含まれるカフェインの量を推算し計算式とあわせて示すこと 72 原理および装置 実験で使用する島津製の GCMS装置の全体図を図 73に原理の概略を図 74に示す
1
23
4
5
67 8
9
10
キャリアーガス
試料物質
1ボンベ(He)2圧力計3マイクロシリンジ4サンプラー5試料導入部6分離カラム
7セパレーター8イオン化室9磁石10電子増倍管11記録計
11
図 74 ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)の概略図
サンプルフォルダー
51
GCMS 装置は分離部である図中の 1~6 のガスクロマトグラフ(GC)と7~11 の検出部である質量分析計(MS)から構成される 3のマイクロシリンジを用いて試料を GCMSに導入する導入された試料は5試料導入部でガス化され6分離カラムに導入される分離カラムには吸着剤が充填されおり混合物の試料を導入した場合各物質と吸着剤との
親和性の違いにより各物質の分離カラムから排出されるタイミングは異なる分離カラム
を排出された試料は8イオン化室でイオン化され10電子倍増管にて検出される アセトンに溶解したカフェインの GCMSによる分析結果の一例を以下に示す図 75にク
ロマトグラム図 76にカフェインのピークのマススペクトルを示す
図 75 GCMSにより得られたクロマトグラム
横軸がリテンションタイムで縦軸がピーク強度を表す
図 76 カフェインのマススペクトルとカフェイン(分子量MW=194)の構造
(図 75中のリテンションタイム 126min付近のピークに起因するマススペクトル) 茶葉中にはカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイド以外にも繊維であるセルロースなど多くの物質が含まれているため茶葉そのものを
そのままサンプルとしてGCMSで分析することは困難であるセルロースなどの分子量の大きな物質はカラムに詰まってしまい分析できないそこで今回は超臨界二酸化炭素
による抽出により主にカフェインを他の物質と分離抽出した通常よく利用されるアセ
トン抽出(アセトンに茶葉を浸し特定の成分を抽出する)ではカフェイン以外にも多く
の物質が抽出されるため図 75 のような単独のピークを得ることは難しく複数のピークがクロマトグラムに見られるこのサンプル(この場合茶葉からの抽出物)にはカフェ
イン以外の不純物は少なかったがガスクロマトグラフの分離カラムによりさらにそれ
らの混合物が精度よく分離されるクロマトグラムのピークはそれらサンプル中に含まれ
ていた個々の物質を表しているクロマトグラムのピークを選択することで分子構造解析
したい物質を選んだことになる選択したクロマトグラムのピークの表している物質(ここ
ではカフェイン)に対応するマススペクトルが図 76 に表示されているマススペクトル
52
で横軸がその成分(ここではカフェイン)分子を構成している原子の原子量で縦軸がそ
の量を表しているのでマススペクトルから分子構造を解析するためにコンピュータ内
に蓄えられた物質ごとのマススペクトルデータと今回測定したマススペクトル(分子内に含
まれている各原子の数)を比較することで測定したサンプル中のクロマトピークを選択し
た分子がどのような原子をどれだけ含んだ分子であったかがわかりそれからその物質
がどのような分子構造の物質である可能性が高いかをコンピュータが検索し結果を示す 73 実験サンプルの設置と GCMS装置の操作方法 実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS装置のサンプルフォルダ
ー(図 73)にセットするこのサンプルは茶葉 1gを 50ccの高圧セルにて超臨界二酸化炭素を利用して4015MPa2時間接触の条件で抽出した固体を10gのアセトンに溶かしたものである またコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に装置および装置制
御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 本実験で使用する GCMS の操作は全てコンピュータのモニター上で GCMS の解析プログラムソフトを使用することで行うコンピュータの操作方法を以下に示す なおコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS 装置のサンプルフォルダー(図 73)にセットするまた装置および装置制御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 1)パソコンのデスクトップ上のアイコン「GCMS 分析」をクリックすると以下のようにGCMS制御プログラムを起動するその後「OK」ボタンをクリックする
図 77 GCMD分析用ソフトウェア「GCMS分析」の起動
まず「GC-MS分析」をクリック
「OK」ボタンをクリック
53
2)制御プログラムが起動されパソコンと GCMSの接続が開始される
図 78 「GCMS分析」の接続確認画面 3)GCMSとパソコンの接続が完了すると以下のような画面が表示される
図 79 「GCMS分析」操作画面
4)マススペクトルによる分子構造の解析 サンプル(この場合茶葉からの抽出物)には多くの物質が混じり合っていたがガス
クロマトグラフの分離カラムによりそれらの混合物が精度よく分離されるクロマトグラ
ムのピークはそれらサンプル中に含まれていた個々の物質を表しているクロマトグラム
のピークを選択することで分子構造解析したい物質を選んだことになる選択したクロマ
トグラムのピークの表している物質(ここではカフェイン)に対応するマススペクトルを選
択するマススペクトルは横軸が原子量で縦軸がその量を表しているのでマススペク
トルから分子構造を解析するために「定性処理」を行う シミラリティ検索結果が表示され分析により得られたスペクトルと類似のスペクトルを有
する物質の一覧が表示される上部に表示される物質ほどスペクトルが一致していること
を示す
接続状況が表示される
「トップへ」
をクリック
54
図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果
図 711 表示スペクトルのシミラリティ検索結果 10)図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果の印刷 「レポート(R)」をクリックし「検索結果(R)」をクリックすると検索結果が印刷される
GC-MS 分析で得られたマスス
ペクトル
データベース中
のマススペクト
ル
55
参考資料 生理活性物質の精製 カフェインの利尿作用のように生物活動に影響を与える物質を生理活性物質といいます
天然物には生理活性物質を多く含むものがあります一般に天然物は多くの成分を含ん
でおり特定の生理活性物質を分離抽出するには種々の分離技術が必要ですまた生
理活性物質には60以上の温度でその生理活性を失う(失活)ものや溶剤として広く用いられているクロロホルムなどの有機溶剤中で失活するものが多いそこでこれら生理活性
物質の分離精製技術の開発が望まれており30~60程度のマイルドな温度条件で操作できる二酸化炭素を機能性溶媒として利用する超臨界抽出も有効な分離技術として注目されて
いる超臨界二酸化炭素は気体と液体の中間の性質を持ち物質の分離に役立っています 臨界点付近の高密度気体は超臨界ガスまたは超臨界流体と呼ばれ臨界圧力前後でそ
の溶解能力が著しく変化することから工業的にも種々の分野で利用されています一例と
して超臨界二酸化炭素(SC-CO2)によるコーヒー豆からのカフェインの抽出プロセス(a)
ならびに超臨界二酸化炭素に対するカフェインの溶解度(b)を図に示します図(c)に示す
ように固体のカフェインがガスである超臨界二酸化炭素に溶解します
このように超臨界二酸化炭素を用いた技術はコーヒー豆からのカフェインの抽出プロ
ポリスからの生理活性物質の抽出に利用されています
図 超臨界二酸化炭素抽出を用いたコーヒー豆からのカフェインの抽出
56
付表 最小二乗法について 直線で近似する場合 f (x) = a0 + a1x (A1-1) 式(A1-1)のように近似させるとする測定値 yiとの残差を eiとすると式(A1-2)のようになる ei = yi - f (xi) = yi - ( a0 + a1xi ) (A1-2) ここで式(A1-2)の両辺を二乗してその i に関する総和をとりその値を S とすると次式となる
sumsum==
+minus==n
iii
n
ii xaayeS
1
210
1
2 )( (A1-3)
S を最小化するような a0a1を求める式(A1-3)を a0a1について偏微分すると次式とな
る
sum=
+minuspartpart
=partpart n
iii xaay
aaS
1
210
00)( sum
=
+minusminus=n
iii xaay
110 )(2 (A1-4)
同様にa1について編微分すると次式のようになる
sum=
+minusminus=partpart n
iiii xxaay
aS
110
1])([2 (A1-5)
Sが最小となる時は次式が同時に満たされる時である
00=
partpartaS
01=
partpartaS
(A1-6)
よって誤差が最小となる a0a1を求めるためには式(A1-6)を連立して解けばよい
sumsumsum===
+=n
ii
n
i
n
ii xaay
111
10 1 (A1-7)
sumsumsum===
+=n
ii
n
ii
n
iii xaxaxy
1
2
11
10 (A1-8)
式(A1-7)と式(A1-8)を a0a1を変数とみなし連立して解くと次式を得る
n組のデータ(xiyi)(i=12hellipn)に対して回帰直線 y= a0 + a1x を最小二乗法で求めて出力しデータ番号 iデータ yi直線で推定した値 )( ii bxay += および残差
iii yy minus=ε を出力するようなプログラムをつくりたい基礎式を導出せよ (ヒント残差の二乗の和が最小になるように係数 a0a1)を定めるのが最小二乗法
である)
57
sumsum
sumsumsumsum
==
====
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
n
ii
n
ii
xxn
xxyyxa
1
2
1
2
1111
2
0
)(
))(())(( (A1-9)
sumsum
sumsumsum
==
===
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
xxn
yxxyna
1
2
1
2
1111
)(
))(()( (A1-10)
よって式(A1-9)(A1-10)を用いれば最も誤差を小さくするような直線 y = a0 + a1x が求められる
y=a1x+a0 にて近似
誤差 ei
x
y
誤差が最小になる関数(直線 y=a1x+a0の場合)
図1 最小二乗による近似
誤差の和Sが最小
S
a0
a1
直線 y=a1x+a0 の近似
誤差の全体の和はS=Σei=Σyi-(a1xi+a0)
Sは変曲点にて最小値を示すすなわち(partSparta0)=0 (partSparta1)=0
図2 a0a1とSの関係
50
レポート課題 1茶葉中に含まれるカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイドの中から3つの物質を選びその物質について調べた結果を A4 レポート用紙2枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
2GCMS についてA4 レポート用紙1枚(3つの物資についての記述の合計)以内で述べよ
3与えられたサンプルは茶葉1gから抽出されたのである実験結果よりもとの茶葉
1g中に含まれるカフェインの量を推算し計算式とあわせて示すこと 72 原理および装置 実験で使用する島津製の GCMS装置の全体図を図 73に原理の概略を図 74に示す
1
23
4
5
67 8
9
10
キャリアーガス
試料物質
1ボンベ(He)2圧力計3マイクロシリンジ4サンプラー5試料導入部6分離カラム
7セパレーター8イオン化室9磁石10電子増倍管11記録計
11
図 74 ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)の概略図
サンプルフォルダー
51
GCMS 装置は分離部である図中の 1~6 のガスクロマトグラフ(GC)と7~11 の検出部である質量分析計(MS)から構成される 3のマイクロシリンジを用いて試料を GCMSに導入する導入された試料は5試料導入部でガス化され6分離カラムに導入される分離カラムには吸着剤が充填されおり混合物の試料を導入した場合各物質と吸着剤との
親和性の違いにより各物質の分離カラムから排出されるタイミングは異なる分離カラム
を排出された試料は8イオン化室でイオン化され10電子倍増管にて検出される アセトンに溶解したカフェインの GCMSによる分析結果の一例を以下に示す図 75にク
ロマトグラム図 76にカフェインのピークのマススペクトルを示す
図 75 GCMSにより得られたクロマトグラム
横軸がリテンションタイムで縦軸がピーク強度を表す
図 76 カフェインのマススペクトルとカフェイン(分子量MW=194)の構造
(図 75中のリテンションタイム 126min付近のピークに起因するマススペクトル) 茶葉中にはカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイド以外にも繊維であるセルロースなど多くの物質が含まれているため茶葉そのものを
そのままサンプルとしてGCMSで分析することは困難であるセルロースなどの分子量の大きな物質はカラムに詰まってしまい分析できないそこで今回は超臨界二酸化炭素
による抽出により主にカフェインを他の物質と分離抽出した通常よく利用されるアセ
トン抽出(アセトンに茶葉を浸し特定の成分を抽出する)ではカフェイン以外にも多く
の物質が抽出されるため図 75 のような単独のピークを得ることは難しく複数のピークがクロマトグラムに見られるこのサンプル(この場合茶葉からの抽出物)にはカフェ
イン以外の不純物は少なかったがガスクロマトグラフの分離カラムによりさらにそれ
らの混合物が精度よく分離されるクロマトグラムのピークはそれらサンプル中に含まれ
ていた個々の物質を表しているクロマトグラムのピークを選択することで分子構造解析
したい物質を選んだことになる選択したクロマトグラムのピークの表している物質(ここ
ではカフェイン)に対応するマススペクトルが図 76 に表示されているマススペクトル
52
で横軸がその成分(ここではカフェイン)分子を構成している原子の原子量で縦軸がそ
の量を表しているのでマススペクトルから分子構造を解析するためにコンピュータ内
に蓄えられた物質ごとのマススペクトルデータと今回測定したマススペクトル(分子内に含
まれている各原子の数)を比較することで測定したサンプル中のクロマトピークを選択し
た分子がどのような原子をどれだけ含んだ分子であったかがわかりそれからその物質
がどのような分子構造の物質である可能性が高いかをコンピュータが検索し結果を示す 73 実験サンプルの設置と GCMS装置の操作方法 実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS装置のサンプルフォルダ
ー(図 73)にセットするこのサンプルは茶葉 1gを 50ccの高圧セルにて超臨界二酸化炭素を利用して4015MPa2時間接触の条件で抽出した固体を10gのアセトンに溶かしたものである またコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に装置および装置制
御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 本実験で使用する GCMS の操作は全てコンピュータのモニター上で GCMS の解析プログラムソフトを使用することで行うコンピュータの操作方法を以下に示す なおコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS 装置のサンプルフォルダー(図 73)にセットするまた装置および装置制御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 1)パソコンのデスクトップ上のアイコン「GCMS 分析」をクリックすると以下のようにGCMS制御プログラムを起動するその後「OK」ボタンをクリックする
図 77 GCMD分析用ソフトウェア「GCMS分析」の起動
まず「GC-MS分析」をクリック
「OK」ボタンをクリック
53
2)制御プログラムが起動されパソコンと GCMSの接続が開始される
図 78 「GCMS分析」の接続確認画面 3)GCMSとパソコンの接続が完了すると以下のような画面が表示される
図 79 「GCMS分析」操作画面
4)マススペクトルによる分子構造の解析 サンプル(この場合茶葉からの抽出物)には多くの物質が混じり合っていたがガス
クロマトグラフの分離カラムによりそれらの混合物が精度よく分離されるクロマトグラ
ムのピークはそれらサンプル中に含まれていた個々の物質を表しているクロマトグラム
のピークを選択することで分子構造解析したい物質を選んだことになる選択したクロマ
トグラムのピークの表している物質(ここではカフェイン)に対応するマススペクトルを選
択するマススペクトルは横軸が原子量で縦軸がその量を表しているのでマススペク
トルから分子構造を解析するために「定性処理」を行う シミラリティ検索結果が表示され分析により得られたスペクトルと類似のスペクトルを有
する物質の一覧が表示される上部に表示される物質ほどスペクトルが一致していること
を示す
接続状況が表示される
「トップへ」
をクリック
54
図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果
図 711 表示スペクトルのシミラリティ検索結果 10)図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果の印刷 「レポート(R)」をクリックし「検索結果(R)」をクリックすると検索結果が印刷される
GC-MS 分析で得られたマスス
ペクトル
データベース中
のマススペクト
ル
55
参考資料 生理活性物質の精製 カフェインの利尿作用のように生物活動に影響を与える物質を生理活性物質といいます
天然物には生理活性物質を多く含むものがあります一般に天然物は多くの成分を含ん
でおり特定の生理活性物質を分離抽出するには種々の分離技術が必要ですまた生
理活性物質には60以上の温度でその生理活性を失う(失活)ものや溶剤として広く用いられているクロロホルムなどの有機溶剤中で失活するものが多いそこでこれら生理活性
物質の分離精製技術の開発が望まれており30~60程度のマイルドな温度条件で操作できる二酸化炭素を機能性溶媒として利用する超臨界抽出も有効な分離技術として注目されて
いる超臨界二酸化炭素は気体と液体の中間の性質を持ち物質の分離に役立っています 臨界点付近の高密度気体は超臨界ガスまたは超臨界流体と呼ばれ臨界圧力前後でそ
の溶解能力が著しく変化することから工業的にも種々の分野で利用されています一例と
して超臨界二酸化炭素(SC-CO2)によるコーヒー豆からのカフェインの抽出プロセス(a)
ならびに超臨界二酸化炭素に対するカフェインの溶解度(b)を図に示します図(c)に示す
ように固体のカフェインがガスである超臨界二酸化炭素に溶解します
このように超臨界二酸化炭素を用いた技術はコーヒー豆からのカフェインの抽出プロ
ポリスからの生理活性物質の抽出に利用されています
図 超臨界二酸化炭素抽出を用いたコーヒー豆からのカフェインの抽出
56
付表 最小二乗法について 直線で近似する場合 f (x) = a0 + a1x (A1-1) 式(A1-1)のように近似させるとする測定値 yiとの残差を eiとすると式(A1-2)のようになる ei = yi - f (xi) = yi - ( a0 + a1xi ) (A1-2) ここで式(A1-2)の両辺を二乗してその i に関する総和をとりその値を S とすると次式となる
sumsum==
+minus==n
iii
n
ii xaayeS
1
210
1
2 )( (A1-3)
S を最小化するような a0a1を求める式(A1-3)を a0a1について偏微分すると次式とな
る
sum=
+minuspartpart
=partpart n
iii xaay
aaS
1
210
00)( sum
=
+minusminus=n
iii xaay
110 )(2 (A1-4)
同様にa1について編微分すると次式のようになる
sum=
+minusminus=partpart n
iiii xxaay
aS
110
1])([2 (A1-5)
Sが最小となる時は次式が同時に満たされる時である
00=
partpartaS
01=
partpartaS
(A1-6)
よって誤差が最小となる a0a1を求めるためには式(A1-6)を連立して解けばよい
sumsumsum===
+=n
ii
n
i
n
ii xaay
111
10 1 (A1-7)
sumsumsum===
+=n
ii
n
ii
n
iii xaxaxy
1
2
11
10 (A1-8)
式(A1-7)と式(A1-8)を a0a1を変数とみなし連立して解くと次式を得る
n組のデータ(xiyi)(i=12hellipn)に対して回帰直線 y= a0 + a1x を最小二乗法で求めて出力しデータ番号 iデータ yi直線で推定した値 )( ii bxay += および残差
iii yy minus=ε を出力するようなプログラムをつくりたい基礎式を導出せよ (ヒント残差の二乗の和が最小になるように係数 a0a1)を定めるのが最小二乗法
である)
57
sumsum
sumsumsumsum
==
====
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
n
ii
n
ii
xxn
xxyyxa
1
2
1
2
1111
2
0
)(
))(())(( (A1-9)
sumsum
sumsumsum
==
===
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
xxn
yxxyna
1
2
1
2
1111
)(
))(()( (A1-10)
よって式(A1-9)(A1-10)を用いれば最も誤差を小さくするような直線 y = a0 + a1x が求められる
y=a1x+a0 にて近似
誤差 ei
x
y
誤差が最小になる関数(直線 y=a1x+a0の場合)
図1 最小二乗による近似
誤差の和Sが最小
S
a0
a1
直線 y=a1x+a0 の近似
誤差の全体の和はS=Σei=Σyi-(a1xi+a0)
Sは変曲点にて最小値を示すすなわち(partSparta0)=0 (partSparta1)=0
図2 a0a1とSの関係
51
GCMS 装置は分離部である図中の 1~6 のガスクロマトグラフ(GC)と7~11 の検出部である質量分析計(MS)から構成される 3のマイクロシリンジを用いて試料を GCMSに導入する導入された試料は5試料導入部でガス化され6分離カラムに導入される分離カラムには吸着剤が充填されおり混合物の試料を導入した場合各物質と吸着剤との
親和性の違いにより各物質の分離カラムから排出されるタイミングは異なる分離カラム
を排出された試料は8イオン化室でイオン化され10電子倍増管にて検出される アセトンに溶解したカフェインの GCMSによる分析結果の一例を以下に示す図 75にク
ロマトグラム図 76にカフェインのピークのマススペクトルを示す
図 75 GCMSにより得られたクロマトグラム
横軸がリテンションタイムで縦軸がピーク強度を表す
図 76 カフェインのマススペクトルとカフェイン(分子量MW=194)の構造
(図 75中のリテンションタイム 126min付近のピークに起因するマススペクトル) 茶葉中にはカフェインカテキンビタミンCGABAテアニンサポニンフラボノイド以外にも繊維であるセルロースなど多くの物質が含まれているため茶葉そのものを
そのままサンプルとしてGCMSで分析することは困難であるセルロースなどの分子量の大きな物質はカラムに詰まってしまい分析できないそこで今回は超臨界二酸化炭素
による抽出により主にカフェインを他の物質と分離抽出した通常よく利用されるアセ
トン抽出(アセトンに茶葉を浸し特定の成分を抽出する)ではカフェイン以外にも多く
の物質が抽出されるため図 75 のような単独のピークを得ることは難しく複数のピークがクロマトグラムに見られるこのサンプル(この場合茶葉からの抽出物)にはカフェ
イン以外の不純物は少なかったがガスクロマトグラフの分離カラムによりさらにそれ
らの混合物が精度よく分離されるクロマトグラムのピークはそれらサンプル中に含まれ
ていた個々の物質を表しているクロマトグラムのピークを選択することで分子構造解析
したい物質を選んだことになる選択したクロマトグラムのピークの表している物質(ここ
ではカフェイン)に対応するマススペクトルが図 76 に表示されているマススペクトル
52
で横軸がその成分(ここではカフェイン)分子を構成している原子の原子量で縦軸がそ
の量を表しているのでマススペクトルから分子構造を解析するためにコンピュータ内
に蓄えられた物質ごとのマススペクトルデータと今回測定したマススペクトル(分子内に含
まれている各原子の数)を比較することで測定したサンプル中のクロマトピークを選択し
た分子がどのような原子をどれだけ含んだ分子であったかがわかりそれからその物質
がどのような分子構造の物質である可能性が高いかをコンピュータが検索し結果を示す 73 実験サンプルの設置と GCMS装置の操作方法 実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS装置のサンプルフォルダ
ー(図 73)にセットするこのサンプルは茶葉 1gを 50ccの高圧セルにて超臨界二酸化炭素を利用して4015MPa2時間接触の条件で抽出した固体を10gのアセトンに溶かしたものである またコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に装置および装置制
御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 本実験で使用する GCMS の操作は全てコンピュータのモニター上で GCMS の解析プログラムソフトを使用することで行うコンピュータの操作方法を以下に示す なおコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS 装置のサンプルフォルダー(図 73)にセットするまた装置および装置制御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 1)パソコンのデスクトップ上のアイコン「GCMS 分析」をクリックすると以下のようにGCMS制御プログラムを起動するその後「OK」ボタンをクリックする
図 77 GCMD分析用ソフトウェア「GCMS分析」の起動
まず「GC-MS分析」をクリック
「OK」ボタンをクリック
53
2)制御プログラムが起動されパソコンと GCMSの接続が開始される
図 78 「GCMS分析」の接続確認画面 3)GCMSとパソコンの接続が完了すると以下のような画面が表示される
図 79 「GCMS分析」操作画面
4)マススペクトルによる分子構造の解析 サンプル(この場合茶葉からの抽出物)には多くの物質が混じり合っていたがガス
クロマトグラフの分離カラムによりそれらの混合物が精度よく分離されるクロマトグラ
ムのピークはそれらサンプル中に含まれていた個々の物質を表しているクロマトグラム
のピークを選択することで分子構造解析したい物質を選んだことになる選択したクロマ
トグラムのピークの表している物質(ここではカフェイン)に対応するマススペクトルを選
択するマススペクトルは横軸が原子量で縦軸がその量を表しているのでマススペク
トルから分子構造を解析するために「定性処理」を行う シミラリティ検索結果が表示され分析により得られたスペクトルと類似のスペクトルを有
する物質の一覧が表示される上部に表示される物質ほどスペクトルが一致していること
を示す
接続状況が表示される
「トップへ」
をクリック
54
図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果
図 711 表示スペクトルのシミラリティ検索結果 10)図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果の印刷 「レポート(R)」をクリックし「検索結果(R)」をクリックすると検索結果が印刷される
GC-MS 分析で得られたマスス
ペクトル
データベース中
のマススペクト
ル
55
参考資料 生理活性物質の精製 カフェインの利尿作用のように生物活動に影響を与える物質を生理活性物質といいます
天然物には生理活性物質を多く含むものがあります一般に天然物は多くの成分を含ん
でおり特定の生理活性物質を分離抽出するには種々の分離技術が必要ですまた生
理活性物質には60以上の温度でその生理活性を失う(失活)ものや溶剤として広く用いられているクロロホルムなどの有機溶剤中で失活するものが多いそこでこれら生理活性
物質の分離精製技術の開発が望まれており30~60程度のマイルドな温度条件で操作できる二酸化炭素を機能性溶媒として利用する超臨界抽出も有効な分離技術として注目されて
いる超臨界二酸化炭素は気体と液体の中間の性質を持ち物質の分離に役立っています 臨界点付近の高密度気体は超臨界ガスまたは超臨界流体と呼ばれ臨界圧力前後でそ
の溶解能力が著しく変化することから工業的にも種々の分野で利用されています一例と
して超臨界二酸化炭素(SC-CO2)によるコーヒー豆からのカフェインの抽出プロセス(a)
ならびに超臨界二酸化炭素に対するカフェインの溶解度(b)を図に示します図(c)に示す
ように固体のカフェインがガスである超臨界二酸化炭素に溶解します
このように超臨界二酸化炭素を用いた技術はコーヒー豆からのカフェインの抽出プロ
ポリスからの生理活性物質の抽出に利用されています
図 超臨界二酸化炭素抽出を用いたコーヒー豆からのカフェインの抽出
56
付表 最小二乗法について 直線で近似する場合 f (x) = a0 + a1x (A1-1) 式(A1-1)のように近似させるとする測定値 yiとの残差を eiとすると式(A1-2)のようになる ei = yi - f (xi) = yi - ( a0 + a1xi ) (A1-2) ここで式(A1-2)の両辺を二乗してその i に関する総和をとりその値を S とすると次式となる
sumsum==
+minus==n
iii
n
ii xaayeS
1
210
1
2 )( (A1-3)
S を最小化するような a0a1を求める式(A1-3)を a0a1について偏微分すると次式とな
る
sum=
+minuspartpart
=partpart n
iii xaay
aaS
1
210
00)( sum
=
+minusminus=n
iii xaay
110 )(2 (A1-4)
同様にa1について編微分すると次式のようになる
sum=
+minusminus=partpart n
iiii xxaay
aS
110
1])([2 (A1-5)
Sが最小となる時は次式が同時に満たされる時である
00=
partpartaS
01=
partpartaS
(A1-6)
よって誤差が最小となる a0a1を求めるためには式(A1-6)を連立して解けばよい
sumsumsum===
+=n
ii
n
i
n
ii xaay
111
10 1 (A1-7)
sumsumsum===
+=n
ii
n
ii
n
iii xaxaxy
1
2
11
10 (A1-8)
式(A1-7)と式(A1-8)を a0a1を変数とみなし連立して解くと次式を得る
n組のデータ(xiyi)(i=12hellipn)に対して回帰直線 y= a0 + a1x を最小二乗法で求めて出力しデータ番号 iデータ yi直線で推定した値 )( ii bxay += および残差
iii yy minus=ε を出力するようなプログラムをつくりたい基礎式を導出せよ (ヒント残差の二乗の和が最小になるように係数 a0a1)を定めるのが最小二乗法
である)
57
sumsum
sumsumsumsum
==
====
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
n
ii
n
ii
xxn
xxyyxa
1
2
1
2
1111
2
0
)(
))(())(( (A1-9)
sumsum
sumsumsum
==
===
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
xxn
yxxyna
1
2
1
2
1111
)(
))(()( (A1-10)
よって式(A1-9)(A1-10)を用いれば最も誤差を小さくするような直線 y = a0 + a1x が求められる
y=a1x+a0 にて近似
誤差 ei
x
y
誤差が最小になる関数(直線 y=a1x+a0の場合)
図1 最小二乗による近似
誤差の和Sが最小
S
a0
a1
直線 y=a1x+a0 の近似
誤差の全体の和はS=Σei=Σyi-(a1xi+a0)
Sは変曲点にて最小値を示すすなわち(partSparta0)=0 (partSparta1)=0
図2 a0a1とSの関係
52
で横軸がその成分(ここではカフェイン)分子を構成している原子の原子量で縦軸がそ
の量を表しているのでマススペクトルから分子構造を解析するためにコンピュータ内
に蓄えられた物質ごとのマススペクトルデータと今回測定したマススペクトル(分子内に含
まれている各原子の数)を比較することで測定したサンプル中のクロマトピークを選択し
た分子がどのような原子をどれだけ含んだ分子であったかがわかりそれからその物質
がどのような分子構造の物質である可能性が高いかをコンピュータが検索し結果を示す 73 実験サンプルの設置と GCMS装置の操作方法 実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS装置のサンプルフォルダ
ー(図 73)にセットするこのサンプルは茶葉 1gを 50ccの高圧セルにて超臨界二酸化炭素を利用して4015MPa2時間接触の条件で抽出した固体を10gのアセトンに溶かしたものである またコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に装置および装置制
御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 本実験で使用する GCMS の操作は全てコンピュータのモニター上で GCMS の解析プログラムソフトを使用することで行うコンピュータの操作方法を以下に示す なおコンピュータで GCMSの解析プログラムソフトを使用する前に実験にて配布される試料溶液サンプルをガラス瓶に入れGCMS 装置のサンプルフォルダー(図 73)にセットするまた装置および装置制御用パソコンの電源が ONになっているかを確認する 注意 実験GCMS分析中は電源を切りませんまた学生実験では分析終了後も装置の電源は ONのままにして電源は切りません 1)パソコンのデスクトップ上のアイコン「GCMS 分析」をクリックすると以下のようにGCMS制御プログラムを起動するその後「OK」ボタンをクリックする
図 77 GCMD分析用ソフトウェア「GCMS分析」の起動
まず「GC-MS分析」をクリック
「OK」ボタンをクリック
53
2)制御プログラムが起動されパソコンと GCMSの接続が開始される
図 78 「GCMS分析」の接続確認画面 3)GCMSとパソコンの接続が完了すると以下のような画面が表示される
図 79 「GCMS分析」操作画面
4)マススペクトルによる分子構造の解析 サンプル(この場合茶葉からの抽出物)には多くの物質が混じり合っていたがガス
クロマトグラフの分離カラムによりそれらの混合物が精度よく分離されるクロマトグラ
ムのピークはそれらサンプル中に含まれていた個々の物質を表しているクロマトグラム
のピークを選択することで分子構造解析したい物質を選んだことになる選択したクロマ
トグラムのピークの表している物質(ここではカフェイン)に対応するマススペクトルを選
択するマススペクトルは横軸が原子量で縦軸がその量を表しているのでマススペク
トルから分子構造を解析するために「定性処理」を行う シミラリティ検索結果が表示され分析により得られたスペクトルと類似のスペクトルを有
する物質の一覧が表示される上部に表示される物質ほどスペクトルが一致していること
を示す
接続状況が表示される
「トップへ」
をクリック
54
図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果
図 711 表示スペクトルのシミラリティ検索結果 10)図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果の印刷 「レポート(R)」をクリックし「検索結果(R)」をクリックすると検索結果が印刷される
GC-MS 分析で得られたマスス
ペクトル
データベース中
のマススペクト
ル
55
参考資料 生理活性物質の精製 カフェインの利尿作用のように生物活動に影響を与える物質を生理活性物質といいます
天然物には生理活性物質を多く含むものがあります一般に天然物は多くの成分を含ん
でおり特定の生理活性物質を分離抽出するには種々の分離技術が必要ですまた生
理活性物質には60以上の温度でその生理活性を失う(失活)ものや溶剤として広く用いられているクロロホルムなどの有機溶剤中で失活するものが多いそこでこれら生理活性
物質の分離精製技術の開発が望まれており30~60程度のマイルドな温度条件で操作できる二酸化炭素を機能性溶媒として利用する超臨界抽出も有効な分離技術として注目されて
いる超臨界二酸化炭素は気体と液体の中間の性質を持ち物質の分離に役立っています 臨界点付近の高密度気体は超臨界ガスまたは超臨界流体と呼ばれ臨界圧力前後でそ
の溶解能力が著しく変化することから工業的にも種々の分野で利用されています一例と
して超臨界二酸化炭素(SC-CO2)によるコーヒー豆からのカフェインの抽出プロセス(a)
ならびに超臨界二酸化炭素に対するカフェインの溶解度(b)を図に示します図(c)に示す
ように固体のカフェインがガスである超臨界二酸化炭素に溶解します
このように超臨界二酸化炭素を用いた技術はコーヒー豆からのカフェインの抽出プロ
ポリスからの生理活性物質の抽出に利用されています
図 超臨界二酸化炭素抽出を用いたコーヒー豆からのカフェインの抽出
56
付表 最小二乗法について 直線で近似する場合 f (x) = a0 + a1x (A1-1) 式(A1-1)のように近似させるとする測定値 yiとの残差を eiとすると式(A1-2)のようになる ei = yi - f (xi) = yi - ( a0 + a1xi ) (A1-2) ここで式(A1-2)の両辺を二乗してその i に関する総和をとりその値を S とすると次式となる
sumsum==
+minus==n
iii
n
ii xaayeS
1
210
1
2 )( (A1-3)
S を最小化するような a0a1を求める式(A1-3)を a0a1について偏微分すると次式とな
る
sum=
+minuspartpart
=partpart n
iii xaay
aaS
1
210
00)( sum
=
+minusminus=n
iii xaay
110 )(2 (A1-4)
同様にa1について編微分すると次式のようになる
sum=
+minusminus=partpart n
iiii xxaay
aS
110
1])([2 (A1-5)
Sが最小となる時は次式が同時に満たされる時である
00=
partpartaS
01=
partpartaS
(A1-6)
よって誤差が最小となる a0a1を求めるためには式(A1-6)を連立して解けばよい
sumsumsum===
+=n
ii
n
i
n
ii xaay
111
10 1 (A1-7)
sumsumsum===
+=n
ii
n
ii
n
iii xaxaxy
1
2
11
10 (A1-8)
式(A1-7)と式(A1-8)を a0a1を変数とみなし連立して解くと次式を得る
n組のデータ(xiyi)(i=12hellipn)に対して回帰直線 y= a0 + a1x を最小二乗法で求めて出力しデータ番号 iデータ yi直線で推定した値 )( ii bxay += および残差
iii yy minus=ε を出力するようなプログラムをつくりたい基礎式を導出せよ (ヒント残差の二乗の和が最小になるように係数 a0a1)を定めるのが最小二乗法
である)
57
sumsum
sumsumsumsum
==
====
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
n
ii
n
ii
xxn
xxyyxa
1
2
1
2
1111
2
0
)(
))(())(( (A1-9)
sumsum
sumsumsum
==
===
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
xxn
yxxyna
1
2
1
2
1111
)(
))(()( (A1-10)
よって式(A1-9)(A1-10)を用いれば最も誤差を小さくするような直線 y = a0 + a1x が求められる
y=a1x+a0 にて近似
誤差 ei
x
y
誤差が最小になる関数(直線 y=a1x+a0の場合)
図1 最小二乗による近似
誤差の和Sが最小
S
a0
a1
直線 y=a1x+a0 の近似
誤差の全体の和はS=Σei=Σyi-(a1xi+a0)
Sは変曲点にて最小値を示すすなわち(partSparta0)=0 (partSparta1)=0
図2 a0a1とSの関係
53
2)制御プログラムが起動されパソコンと GCMSの接続が開始される
図 78 「GCMS分析」の接続確認画面 3)GCMSとパソコンの接続が完了すると以下のような画面が表示される
図 79 「GCMS分析」操作画面
4)マススペクトルによる分子構造の解析 サンプル(この場合茶葉からの抽出物)には多くの物質が混じり合っていたがガス
クロマトグラフの分離カラムによりそれらの混合物が精度よく分離されるクロマトグラ
ムのピークはそれらサンプル中に含まれていた個々の物質を表しているクロマトグラム
のピークを選択することで分子構造解析したい物質を選んだことになる選択したクロマ
トグラムのピークの表している物質(ここではカフェイン)に対応するマススペクトルを選
択するマススペクトルは横軸が原子量で縦軸がその量を表しているのでマススペク
トルから分子構造を解析するために「定性処理」を行う シミラリティ検索結果が表示され分析により得られたスペクトルと類似のスペクトルを有
する物質の一覧が表示される上部に表示される物質ほどスペクトルが一致していること
を示す
接続状況が表示される
「トップへ」
をクリック
54
図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果
図 711 表示スペクトルのシミラリティ検索結果 10)図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果の印刷 「レポート(R)」をクリックし「検索結果(R)」をクリックすると検索結果が印刷される
GC-MS 分析で得られたマスス
ペクトル
データベース中
のマススペクト
ル
55
参考資料 生理活性物質の精製 カフェインの利尿作用のように生物活動に影響を与える物質を生理活性物質といいます
天然物には生理活性物質を多く含むものがあります一般に天然物は多くの成分を含ん
でおり特定の生理活性物質を分離抽出するには種々の分離技術が必要ですまた生
理活性物質には60以上の温度でその生理活性を失う(失活)ものや溶剤として広く用いられているクロロホルムなどの有機溶剤中で失活するものが多いそこでこれら生理活性
物質の分離精製技術の開発が望まれており30~60程度のマイルドな温度条件で操作できる二酸化炭素を機能性溶媒として利用する超臨界抽出も有効な分離技術として注目されて
いる超臨界二酸化炭素は気体と液体の中間の性質を持ち物質の分離に役立っています 臨界点付近の高密度気体は超臨界ガスまたは超臨界流体と呼ばれ臨界圧力前後でそ
の溶解能力が著しく変化することから工業的にも種々の分野で利用されています一例と
して超臨界二酸化炭素(SC-CO2)によるコーヒー豆からのカフェインの抽出プロセス(a)
ならびに超臨界二酸化炭素に対するカフェインの溶解度(b)を図に示します図(c)に示す
ように固体のカフェインがガスである超臨界二酸化炭素に溶解します
このように超臨界二酸化炭素を用いた技術はコーヒー豆からのカフェインの抽出プロ
ポリスからの生理活性物質の抽出に利用されています
図 超臨界二酸化炭素抽出を用いたコーヒー豆からのカフェインの抽出
56
付表 最小二乗法について 直線で近似する場合 f (x) = a0 + a1x (A1-1) 式(A1-1)のように近似させるとする測定値 yiとの残差を eiとすると式(A1-2)のようになる ei = yi - f (xi) = yi - ( a0 + a1xi ) (A1-2) ここで式(A1-2)の両辺を二乗してその i に関する総和をとりその値を S とすると次式となる
sumsum==
+minus==n
iii
n
ii xaayeS
1
210
1
2 )( (A1-3)
S を最小化するような a0a1を求める式(A1-3)を a0a1について偏微分すると次式とな
る
sum=
+minuspartpart
=partpart n
iii xaay
aaS
1
210
00)( sum
=
+minusminus=n
iii xaay
110 )(2 (A1-4)
同様にa1について編微分すると次式のようになる
sum=
+minusminus=partpart n
iiii xxaay
aS
110
1])([2 (A1-5)
Sが最小となる時は次式が同時に満たされる時である
00=
partpartaS
01=
partpartaS
(A1-6)
よって誤差が最小となる a0a1を求めるためには式(A1-6)を連立して解けばよい
sumsumsum===
+=n
ii
n
i
n
ii xaay
111
10 1 (A1-7)
sumsumsum===
+=n
ii
n
ii
n
iii xaxaxy
1
2
11
10 (A1-8)
式(A1-7)と式(A1-8)を a0a1を変数とみなし連立して解くと次式を得る
n組のデータ(xiyi)(i=12hellipn)に対して回帰直線 y= a0 + a1x を最小二乗法で求めて出力しデータ番号 iデータ yi直線で推定した値 )( ii bxay += および残差
iii yy minus=ε を出力するようなプログラムをつくりたい基礎式を導出せよ (ヒント残差の二乗の和が最小になるように係数 a0a1)を定めるのが最小二乗法
である)
57
sumsum
sumsumsumsum
==
====
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
n
ii
n
ii
xxn
xxyyxa
1
2
1
2
1111
2
0
)(
))(())(( (A1-9)
sumsum
sumsumsum
==
===
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
xxn
yxxyna
1
2
1
2
1111
)(
))(()( (A1-10)
よって式(A1-9)(A1-10)を用いれば最も誤差を小さくするような直線 y = a0 + a1x が求められる
y=a1x+a0 にて近似
誤差 ei
x
y
誤差が最小になる関数(直線 y=a1x+a0の場合)
図1 最小二乗による近似
誤差の和Sが最小
S
a0
a1
直線 y=a1x+a0 の近似
誤差の全体の和はS=Σei=Σyi-(a1xi+a0)
Sは変曲点にて最小値を示すすなわち(partSparta0)=0 (partSparta1)=0
図2 a0a1とSの関係
54
図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果
図 711 表示スペクトルのシミラリティ検索結果 10)図 710 表示スペクトルのシミラリティ検索結果の印刷 「レポート(R)」をクリックし「検索結果(R)」をクリックすると検索結果が印刷される
GC-MS 分析で得られたマスス
ペクトル
データベース中
のマススペクト
ル
55
参考資料 生理活性物質の精製 カフェインの利尿作用のように生物活動に影響を与える物質を生理活性物質といいます
天然物には生理活性物質を多く含むものがあります一般に天然物は多くの成分を含ん
でおり特定の生理活性物質を分離抽出するには種々の分離技術が必要ですまた生
理活性物質には60以上の温度でその生理活性を失う(失活)ものや溶剤として広く用いられているクロロホルムなどの有機溶剤中で失活するものが多いそこでこれら生理活性
物質の分離精製技術の開発が望まれており30~60程度のマイルドな温度条件で操作できる二酸化炭素を機能性溶媒として利用する超臨界抽出も有効な分離技術として注目されて
いる超臨界二酸化炭素は気体と液体の中間の性質を持ち物質の分離に役立っています 臨界点付近の高密度気体は超臨界ガスまたは超臨界流体と呼ばれ臨界圧力前後でそ
の溶解能力が著しく変化することから工業的にも種々の分野で利用されています一例と
して超臨界二酸化炭素(SC-CO2)によるコーヒー豆からのカフェインの抽出プロセス(a)
ならびに超臨界二酸化炭素に対するカフェインの溶解度(b)を図に示します図(c)に示す
ように固体のカフェインがガスである超臨界二酸化炭素に溶解します
このように超臨界二酸化炭素を用いた技術はコーヒー豆からのカフェインの抽出プロ
ポリスからの生理活性物質の抽出に利用されています
図 超臨界二酸化炭素抽出を用いたコーヒー豆からのカフェインの抽出
56
付表 最小二乗法について 直線で近似する場合 f (x) = a0 + a1x (A1-1) 式(A1-1)のように近似させるとする測定値 yiとの残差を eiとすると式(A1-2)のようになる ei = yi - f (xi) = yi - ( a0 + a1xi ) (A1-2) ここで式(A1-2)の両辺を二乗してその i に関する総和をとりその値を S とすると次式となる
sumsum==
+minus==n
iii
n
ii xaayeS
1
210
1
2 )( (A1-3)
S を最小化するような a0a1を求める式(A1-3)を a0a1について偏微分すると次式とな
る
sum=
+minuspartpart
=partpart n
iii xaay
aaS
1
210
00)( sum
=
+minusminus=n
iii xaay
110 )(2 (A1-4)
同様にa1について編微分すると次式のようになる
sum=
+minusminus=partpart n
iiii xxaay
aS
110
1])([2 (A1-5)
Sが最小となる時は次式が同時に満たされる時である
00=
partpartaS
01=
partpartaS
(A1-6)
よって誤差が最小となる a0a1を求めるためには式(A1-6)を連立して解けばよい
sumsumsum===
+=n
ii
n
i
n
ii xaay
111
10 1 (A1-7)
sumsumsum===
+=n
ii
n
ii
n
iii xaxaxy
1
2
11
10 (A1-8)
式(A1-7)と式(A1-8)を a0a1を変数とみなし連立して解くと次式を得る
n組のデータ(xiyi)(i=12hellipn)に対して回帰直線 y= a0 + a1x を最小二乗法で求めて出力しデータ番号 iデータ yi直線で推定した値 )( ii bxay += および残差
iii yy minus=ε を出力するようなプログラムをつくりたい基礎式を導出せよ (ヒント残差の二乗の和が最小になるように係数 a0a1)を定めるのが最小二乗法
である)
57
sumsum
sumsumsumsum
==
====
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
n
ii
n
ii
xxn
xxyyxa
1
2
1
2
1111
2
0
)(
))(())(( (A1-9)
sumsum
sumsumsum
==
===
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
xxn
yxxyna
1
2
1
2
1111
)(
))(()( (A1-10)
よって式(A1-9)(A1-10)を用いれば最も誤差を小さくするような直線 y = a0 + a1x が求められる
y=a1x+a0 にて近似
誤差 ei
x
y
誤差が最小になる関数(直線 y=a1x+a0の場合)
図1 最小二乗による近似
誤差の和Sが最小
S
a0
a1
直線 y=a1x+a0 の近似
誤差の全体の和はS=Σei=Σyi-(a1xi+a0)
Sは変曲点にて最小値を示すすなわち(partSparta0)=0 (partSparta1)=0
図2 a0a1とSの関係
55
参考資料 生理活性物質の精製 カフェインの利尿作用のように生物活動に影響を与える物質を生理活性物質といいます
天然物には生理活性物質を多く含むものがあります一般に天然物は多くの成分を含ん
でおり特定の生理活性物質を分離抽出するには種々の分離技術が必要ですまた生
理活性物質には60以上の温度でその生理活性を失う(失活)ものや溶剤として広く用いられているクロロホルムなどの有機溶剤中で失活するものが多いそこでこれら生理活性
物質の分離精製技術の開発が望まれており30~60程度のマイルドな温度条件で操作できる二酸化炭素を機能性溶媒として利用する超臨界抽出も有効な分離技術として注目されて
いる超臨界二酸化炭素は気体と液体の中間の性質を持ち物質の分離に役立っています 臨界点付近の高密度気体は超臨界ガスまたは超臨界流体と呼ばれ臨界圧力前後でそ
の溶解能力が著しく変化することから工業的にも種々の分野で利用されています一例と
して超臨界二酸化炭素(SC-CO2)によるコーヒー豆からのカフェインの抽出プロセス(a)
ならびに超臨界二酸化炭素に対するカフェインの溶解度(b)を図に示します図(c)に示す
ように固体のカフェインがガスである超臨界二酸化炭素に溶解します
このように超臨界二酸化炭素を用いた技術はコーヒー豆からのカフェインの抽出プロ
ポリスからの生理活性物質の抽出に利用されています
図 超臨界二酸化炭素抽出を用いたコーヒー豆からのカフェインの抽出
56
付表 最小二乗法について 直線で近似する場合 f (x) = a0 + a1x (A1-1) 式(A1-1)のように近似させるとする測定値 yiとの残差を eiとすると式(A1-2)のようになる ei = yi - f (xi) = yi - ( a0 + a1xi ) (A1-2) ここで式(A1-2)の両辺を二乗してその i に関する総和をとりその値を S とすると次式となる
sumsum==
+minus==n
iii
n
ii xaayeS
1
210
1
2 )( (A1-3)
S を最小化するような a0a1を求める式(A1-3)を a0a1について偏微分すると次式とな
る
sum=
+minuspartpart
=partpart n
iii xaay
aaS
1
210
00)( sum
=
+minusminus=n
iii xaay
110 )(2 (A1-4)
同様にa1について編微分すると次式のようになる
sum=
+minusminus=partpart n
iiii xxaay
aS
110
1])([2 (A1-5)
Sが最小となる時は次式が同時に満たされる時である
00=
partpartaS
01=
partpartaS
(A1-6)
よって誤差が最小となる a0a1を求めるためには式(A1-6)を連立して解けばよい
sumsumsum===
+=n
ii
n
i
n
ii xaay
111
10 1 (A1-7)
sumsumsum===
+=n
ii
n
ii
n
iii xaxaxy
1
2
11
10 (A1-8)
式(A1-7)と式(A1-8)を a0a1を変数とみなし連立して解くと次式を得る
n組のデータ(xiyi)(i=12hellipn)に対して回帰直線 y= a0 + a1x を最小二乗法で求めて出力しデータ番号 iデータ yi直線で推定した値 )( ii bxay += および残差
iii yy minus=ε を出力するようなプログラムをつくりたい基礎式を導出せよ (ヒント残差の二乗の和が最小になるように係数 a0a1)を定めるのが最小二乗法
である)
57
sumsum
sumsumsumsum
==
====
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
n
ii
n
ii
xxn
xxyyxa
1
2
1
2
1111
2
0
)(
))(())(( (A1-9)
sumsum
sumsumsum
==
===
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
xxn
yxxyna
1
2
1
2
1111
)(
))(()( (A1-10)
よって式(A1-9)(A1-10)を用いれば最も誤差を小さくするような直線 y = a0 + a1x が求められる
y=a1x+a0 にて近似
誤差 ei
x
y
誤差が最小になる関数(直線 y=a1x+a0の場合)
図1 最小二乗による近似
誤差の和Sが最小
S
a0
a1
直線 y=a1x+a0 の近似
誤差の全体の和はS=Σei=Σyi-(a1xi+a0)
Sは変曲点にて最小値を示すすなわち(partSparta0)=0 (partSparta1)=0
図2 a0a1とSの関係
56
付表 最小二乗法について 直線で近似する場合 f (x) = a0 + a1x (A1-1) 式(A1-1)のように近似させるとする測定値 yiとの残差を eiとすると式(A1-2)のようになる ei = yi - f (xi) = yi - ( a0 + a1xi ) (A1-2) ここで式(A1-2)の両辺を二乗してその i に関する総和をとりその値を S とすると次式となる
sumsum==
+minus==n
iii
n
ii xaayeS
1
210
1
2 )( (A1-3)
S を最小化するような a0a1を求める式(A1-3)を a0a1について偏微分すると次式とな
る
sum=
+minuspartpart
=partpart n
iii xaay
aaS
1
210
00)( sum
=
+minusminus=n
iii xaay
110 )(2 (A1-4)
同様にa1について編微分すると次式のようになる
sum=
+minusminus=partpart n
iiii xxaay
aS
110
1])([2 (A1-5)
Sが最小となる時は次式が同時に満たされる時である
00=
partpartaS
01=
partpartaS
(A1-6)
よって誤差が最小となる a0a1を求めるためには式(A1-6)を連立して解けばよい
sumsumsum===
+=n
ii
n
i
n
ii xaay
111
10 1 (A1-7)
sumsumsum===
+=n
ii
n
ii
n
iii xaxaxy
1
2
11
10 (A1-8)
式(A1-7)と式(A1-8)を a0a1を変数とみなし連立して解くと次式を得る
n組のデータ(xiyi)(i=12hellipn)に対して回帰直線 y= a0 + a1x を最小二乗法で求めて出力しデータ番号 iデータ yi直線で推定した値 )( ii bxay += および残差
iii yy minus=ε を出力するようなプログラムをつくりたい基礎式を導出せよ (ヒント残差の二乗の和が最小になるように係数 a0a1)を定めるのが最小二乗法
である)
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sumsum
sumsumsumsum
==
====
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
n
ii
n
ii
xxn
xxyyxa
1
2
1
2
1111
2
0
)(
))(())(( (A1-9)
sumsum
sumsumsum
==
===
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
xxn
yxxyna
1
2
1
2
1111
)(
))(()( (A1-10)
よって式(A1-9)(A1-10)を用いれば最も誤差を小さくするような直線 y = a0 + a1x が求められる
y=a1x+a0 にて近似
誤差 ei
x
y
誤差が最小になる関数(直線 y=a1x+a0の場合)
図1 最小二乗による近似
誤差の和Sが最小
S
a0
a1
直線 y=a1x+a0 の近似
誤差の全体の和はS=Σei=Σyi-(a1xi+a0)
Sは変曲点にて最小値を示すすなわち(partSparta0)=0 (partSparta1)=0
図2 a0a1とSの関係
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sumsum
sumsumsumsum
==
====
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
n
ii
n
ii
xxn
xxyyxa
1
2
1
2
1111
2
0
)(
))(())(( (A1-9)
sumsum
sumsumsum
==
===
minus
minus
=n
ii
n
ii
n
ii
n
ii
n
iii
xxn
yxxyna
1
2
1
2
1111
)(
))(()( (A1-10)
よって式(A1-9)(A1-10)を用いれば最も誤差を小さくするような直線 y = a0 + a1x が求められる
y=a1x+a0 にて近似
誤差 ei
x
y
誤差が最小になる関数(直線 y=a1x+a0の場合)
図1 最小二乗による近似
誤差の和Sが最小
S
a0
a1
直線 y=a1x+a0 の近似
誤差の全体の和はS=Σei=Σyi-(a1xi+a0)
Sは変曲点にて最小値を示すすなわち(partSparta0)=0 (partSparta1)=0
図2 a0a1とSの関係