「東京電力(株)福島第一原子力発電所の事故...
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「東京電力(株)福島第一原子力発電所の事故に伴い放出された放射性物質の分布状況等に関する調査研究」
(全体概要)
文部科学省原子力災害対策支援本部
モニタリング班長 板倉 周一郎
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調査の全体像
○文部科学省は、住民の健康への影響及び環境への影響を将来にわたり、継続的に確認するため、それまでの陸上モニタリングや航空機モニタリング等のモニタリング結果を参考に、福島県及びその近隣の各県について、空間線量率の測定や、地表面への放射性物質の蓄積状況の確認に向けた詳細な調査を実施。
○測定箇所は、東京電力㈱福島第一原子力発電所から・80㎞までの範囲を2㎞メッシュ、・80~100㎞の範囲を10㎞メッシュとして調査を実施。(県や地方自治体からの要望で調査箇所は、一部変更あり)
●土壌採取地点:約2,200箇所 ●実施機関・委託先:(独)日本原子力研究開発機構・調査協力者① 空間線量率の測定、及び土壌採取
(107機関、合計440名)② 土壌試料の核種分析
(21機関、合計291名)
●実施期間・空間線量率測定、土壌採取①6月6日~6月14日、②6月27日~7月8日
・走行サーベイによる空間線量率測定6月6日~6月13日※6月4日、5日に現地訓練を実施。
80km
100km
2kmメッシュ10kmメッシュ
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調査結果の取りまとめの経緯
○文部科学省は、「環境モニタリング強化計画」(平成23年4月22日 原子力災害対策本部)及び「原子力被災者への対応に関する当面の取組方針」(平成23年5月17日 原子力災害対策本部)等の方針に基づき、事故状況の全体像の把握や区域等の解除に資するため、放射線量等分布マップの作成等を行うための「放射線量等分布マップの作成等に係る検討会」を平成23年5月26日に文部科学省内に設置。
○文部科学省は、放射線量等分布マップの作成等を行うため、調査の進捗状況、調査結果について、検討会に適宜報告、妥当性の確認を行い、平成24年1月24日の第15回検討会において、調査結果を報告書としてとりまとめるための最終的な方向性を決定。
○その後、文部科学省は、調査研究者、検討会の委員に詳細な内容の確認を得た上で、平成24年3月13日に「東京電力㈱福島第一原子力発電所の事故に伴い放出された放射性物質の分布状況等に関する調査研究結果」として報告書を取りまとめ。
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1.1 土壌調査の概要
○東京電力㈱福島第一原子力発電所事故で放出された放射性物質の土壌への詳細な蓄積量を把握するため、福島第一原子力発電所から80㎞までの範囲を2㎞メッシュ、80~100㎞の範囲及び100km圏外の福島県を10㎞メッシュに区切り、それらの可住地から調査箇所を1箇所選定し、各箇所で最大5地点の土壌試料を採取。
○採取された土壌試料数は、合計約11,000試料。(=2,200箇所×各箇所5地点程度)
○土壌試料は、 (財) 日本分析センター、東京大学等全国21機関の研究機関、分析機関に送付され、ガンマ線放出核種については、ゲルマニウム半導体検出器で核種分析を実施。
※アルファ線放出核種、ベータ線放出核種については、(財)日本分析センターのみで実施。
1.放射線量等マップ作成
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1.2 核種分析の概要(γ核種)
○本調査では、約2,200箇所で採取した約11,000の土壌試料について、ゲルマニウム半導体検出器を用いて、ガンマ線放出核種として、セシウム134、137、ヨウ素131、テルル129m、銀110mについては放射能濃度を測定。
○また、全試料の3%程度について、全分析機関でクロスチェックを実施。
○各核種ごとの単位面積あたりの放射能量(沈着量)と調査箇所の緯度・経度情報から、土壌濃度マップを作成。(平成23年8月30日から順次公表)
Cs-134の事例
1.放射線量等マップ作成
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○本調査では、約2,200箇所のうち100箇所で採取した土壌試料について、ガンマ線放出核種の核種分析を実施した後、・アルファ線放出核種として、プルトニウム238、239・ベータ線放出核種として、ストロンチウム89、90について 放射化学分析を実施。
○分析にあたっては、文部科学省放射能測定法シリーズに従い、放射能濃度の測定を実施。
○これらの核種についても、沈着量と調査箇所の緯度・経度情報から、土壌濃度マップを作成。(平成23年9月30日公表)
※ :福島第一原発事故に伴い、新たにプルトニウム238、239+240が沈着したものと考えられる箇所
※ :福島第一原発事故に伴い、新たにストロンチウム89、90が沈着したものと考えられる箇所
Pu-238、Pu-239+240 Sr-89、Sr-90
1.放射線量等マップ作成
1.2 核種分析の概要(α、β核種)
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○福島第一原子力発電所から100km圏内及びその圏外の福島県において土壌試料を採取した約2,200箇所の土壌調査箇所において、NaIシンチレーション型サーベイメータを用いて、地表面から1m高さの空間線量率の測定を実施。
○また、道路周辺における放射性物質の分布状況を詳細に把握するため、KURAMAシステムを用いて同区域の国道や県道を中心に走行サーベイを実施し、連続的に測定された道路上の1m高さの空間線量率の測定を実施。
○これらの空間線量率の測定結果については、調査箇所ごとに得られた測定結果をプロットした空間線量率マップを作成。
1.3 空間線量率測定
KURAMAシステムを用いた走行サーベイ
土壌採取箇所における空間線量率マップ
1.放射線量等マップ作成
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○福島第一原子力発電所から放出された放射性物質の影響を詳細に確認することを目的として、放射線量等分布マップ、及び文部科学省がこれまでに実施してきた様々なモニタリングの結果(空間線量率や放射能濃度の分布状況)を示した地図を自在に拡大表示できる「文部科学省放射線量等分布マップ拡大サイト」を作成し、公開。(平成23年10月)
○公開後10日間で30万人を超えるアクセス。
○また、行政関係者、関係市町村の住民、一般の方々が容易に確認でき、また、国内外の研究者が事故の検証等に活用できるようにするため、測定結果のほか、測定手法等の付帯情報を付加したデータベース「文部科学省放射線量等データベース」を開発。
○本データベースは、平成24年3月中旬から公開予定。
1.4 調査結果の公表方法
(http://ramap.jaea.go.jp/map/)
1.放射線量等マップ作成
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○地表面に沈着した放射性物質の蓄積状況は、風雨等の影響により、大きく変化することが予想されるため、放射性物質の蓄積状況、及び移行状況について確認が必要。
○福島第一原子力発電所を中心とした空間線量率マップ及び土壌濃度マップを作成するとともに、福島第一原子力発電所の事故による放射性物質の移行状況を調査するため放射線量等分布マップ関連研究を実施。
①土壌狭域内における放射性物質の分布状況の確認
放射線量等分布マップ関連研究 ②土壌中の放射性物質の深度分布の確認
③河川中(河川水、河底土、及び浮遊砂)及び井戸水における、
放射性物質の濃度の変化の確認調査④モデル地域における放射性物質の包括的な移行状況調査
【JAEA、北海道大学、金沢大学】
【日本分析センター】 【筑波大学、東京工業大学、京都大学、広島大学】
【大阪大学、JAEA】
(ジオスライサーを用いた深度分布調査)
(鉄パイプを用いた深度分布調査)
2. 放射性物質の移行状況調査
2.1 調査研究の概要
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○土壌濃度マップの作成で調査対象とした2kmメッシュ内の測定結果の持つ意味を確認するため、2kmメッシュ内で生態系の異なる場所の土壌を採取・分析し、地表面における放射性物質の沈着状況のばらつきを確認するとともに、そのばらつきに影響を及ぼしうる土壌の物理的・化学的特性を把握し、土壌への蓄積状況との関連性を調査。
2.2 (1) 土壌狭域内における放射性物質の分布状況の確認調査
福島市南西部の農耕地6地点(畑3地点、水田1地点、果樹園2地点)、草地4地点(牧草地3地点、芝生1地点)、森林5地点(広葉樹3地点、針葉樹2地点)で調査を実施。
2. 放射性物質の移行状況調査
5cm
20cm
落葉・落葉分解物
土壌各層(5層)
生態系毎に土壌コアを採取
(15地点/2km四方)
0
10
5
20
0
10
5
20
放射性核種分析
土壌分析
間隙率・含水率・粒径分布⇒溶存有機物に保持されたCsの下方浸透
有機物⇒マイナス電荷をもつ官能基によるCsの保持
粘土鉱物⇒層状ケイ酸塩鉱物によるCsの強力な固定
存在状態
存在量 空間・深さ分布の詳細調査
陽イオン交換容量・pH⇒Csイオンの土壌粒子への吸着
分布・移動性を規定する要因の調査
金沢大
北大
土壌マップ:1地点/2km四方
0
10
5
20
0
10
5
20里山
草地(牧草地・公園)2km
2km
耕作地・水田
果樹園
里山
草地(牧草地・公園)2km
2km
耕作地・水田
果樹園
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2.2 (2) ジオスライサーを用いた土壌中の放射性物質の深度分布の確認調査
○平成23年6月期における土壌中の放射性物質の深度分布を調査するため、土壌採土器としてジオスライサーを用いて、土壌中の放射性セシウム等の深度分布を調査するとともに放射性物質の半減期や土壌の土質分布データ等から、土壌中の放射性物質の特性(拡散係数、分散係数)を調査
(実施内容)①ジオスライサーを用いて土壌サンプルを取得②取得した土壌サンプルに対して以下を実施。
・イメージングプレートを用いた平面状の放射性物質分布の測定
・サーベイメータによる放射線測定・ゲルマニウム半導体検出器を用いた核種分析(0~10㎝は2㎝間隔、10~30㎝は4㎝間隔、
30~100㎝は10㎝間隔)
コンタミネーション無し(地表面土壌)
コンタミネーション有り(元農地と推定される土壌)
2. 放射性物質の移行状況調査
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2.2.(2) 鉄パイプ(円筒管)を用いた土壌中の放射性物質の深度分布の確認調査
○平成23年6月期における土壌中の放射性物質の深度分布を調査するため、土壌採取器として鉄パイプ(円筒管)を用いて、土壌コア試料を採取し、その後、ゲルマニウム半導体検出器で各試料に含まれる放射性セシウムの計数率の測定結果から、土壌中の放射性セシウムの深度分布を調査
(実施内容)○鉄パイプに土壌が入っている状態で5㎜
ステップで動かしながら、ゲルマニウム半導体検出器でガンマ線の強度を測定。(福島県内77箇所で調査結果が得られた)
鉄パイプ 測定の方向
コリメータ
0.01
0.1
1
0 20 40 60 80 100 120
円筒管先端から測定位置までの長さ (mm)
Cs‐134
計数
率 (1/ s)
30 mm
土 壌表 面に
あたる箇所
図 4-14 本測定の原理図
円筒管先端
計数率が 1/10 に
なる深さ
2. 放射性物質の移行状況調査
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2.2 (3) 河川中(河川水、河底土、及び浮遊砂)及び井戸水における、放射性物質の濃度の変化の確認調査)
○福島第一原子力発電所から放出された放射性物質の河川や井戸中への移行状況を確認するため、福島県内の河川(河川水、及び河底土、並びに浮遊砂)、及び井戸(井戸水)中における梅雨前後での放射性物質の放射能濃度の変化を調査。
① 河川水(1)ヨウ素131及びセシウム134、セシウム137・採取場所:流量観測所10箇所を含む50箇所・試料数及び採取量:50試料、40リットル・分析方法:2リットルマリネリビーカー→Ge半導体検出器で8時間測定・検出限界値:0.1ベクレル/リットル
(2)ストロンチウム89、90、プルトニウム238、239+240分析・採取場所と試料数:流量観測所を含む10箇所(Sr-89、90)・試料数及び採取量:10試料、40リットル・分析方法: 採取容器に酸→濃縮→化学分離→β線測定・検出限界値:ストロンチウム90で0.5ミリベクレル/リットル(Pu238、239+240)・試料数及び採取量:10試料、100リットル・分析方法:鉄共沈→化学分離→アルファ線測定・検出限界値:0.02ミリベクレル/リットル
2. 放射性物質の移行状況調査
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② 井戸水(1)ヨウ素131及びセシウム134、137・採取場所:既存の井戸51箇所・試料数及び採取量:51試料、40リットル・分析方法:2リットルマリネリビーカー→Ge半導体検出器で8時間測定
(2)ストロンチウム89、90分析・採取場所:既存の井戸5箇所・試料数及び採取量:5試料、40リットル・分析方法:採取容器に酸→濃縮→化学分離→β線測定
③ 河底土(1)ヨウ素131及びセシウム134、137・採取場所:河川水のストロンチウム89、90の採取場所10箇所・試料数及び採取量:10試料、200グラム(移植ごてにより表面、1センチメートルを採取)
・分析方法:その場で実験用の用紙に水分を吸収→U8→Ge半導体検出器で1時間測定(粒度分布も測定)
④ 浮遊砂(1)ヨウ素131及びセシウム134、137・採取場所:流量観測所を含む10箇所・試料数及び採取量:10試料、1か月分・分析方法:容器内で浮遊砂を沈降→U8→Ge半導体検出器で1時間測定
2.2 (3) 河川中(河川水、河底土、及び浮遊砂)及び井戸水における、放射性物質の濃度の変化の確認調査
2. 放射性物質の移行状況調査
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2.2 (4) モデル地域における放射性物質の包括的移行状況調査
○これまでの経験から、地表面に降り積もった放射性物質は、その後、土壌や河川等の自然環境を通じて移行することが確認されている。
○今後の放射性物質の蓄積量の変化を予測するため、モデル地域を設けて、森林、土壌、地下水、河川水における放射性物質の移行状況、及び樹木や土壌からの巻き上げ状況等による放射性物質の移行状況について包括的な調査を実施。
○調査地点川俣町 山木屋地区を中心(計画的避難区域)
2. 放射性物質の移行状況調査
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1) 森林、土壌等の自然環境中における放射性物質の移行状況調査1) 森林、畑地及び草地等における、土壌中深さ方向の放射性セシウムの分布状況調査2) 森林における放射性物質の分布状況の確認及び移行状況調査3) 様々な土地利用区画からの土壌侵食による放射性物質の移行状況調査4) 森林、土壌等の自然環境からの放射性物質の飛散量の測定
2) 土壌水、河川水、湖沼、地下水等の水循環に伴う放射性物質の移行状況調査1) 様々な土地利用区画からの土壌水、地下水、渓流水、湧水を通じた放射性物質の移行状況調査2) 水田から河川への浮遊土砂を通じた放射性物質の移行状況調査3) 河川から海洋への浮遊土砂を通じた放射性物質の移行状況調査4) 湖沼及び貯水池での放射性物質の堆積状況の確認
3) 大気-土壌-河川等の自然環境における放射性物質の動態解析1) 土壌への放射性物質の沈着状況
と降水量との関係の確認2) 土壌や森林表面から大気に
移行する放射性物質とエアロゾルの関係の確認
3) 森林内を降下する雨に含まれる放射性物質の有機物質への付着状況の確認
4) 土壌及び河川の浮遊砂中に含まれる放射性セシウムの化学特性の確認
2.2 (4) モデル地域における放射性物質の包括的移行状況調査
2. 放射性物質の移行状況調査
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○本調査(第1次土壌調査)では、事故の全体像を把握するといった観点では、ヨウ素131について一部の調査結果しか得られていないほか、プルトニウムやストロンチウムは分析に時間を要するため、調査箇所は100箇所に限定されており、放射性物質の拡散状況の詳細な確認のためには更なる調査が必要。
○航空機モニタリングの結果等から、比較的、空間線量率が高い地域が栃木県、群馬県、千葉県や岩手県等まで拡大していることが確認されており、調査範囲の拡大も必要。
○地表面に沈着した放射性物質の蓄積状況は、風雨等の影響により、大きく変化することが予想されるため、放射性物質の蓄積状況、及び移行状況について継続的な確認が必要。
3. 今後の予定
文部科学省は、事故の全体像の把握や被ばく線量評価のための基礎情報を収集するため、先の第1次調査における結果や航空機モニタリング等によるその他のモニタリング結果を踏まえ、放射性物質の第2次分布状況等調査を実施。
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① KURAMA1を用いた連続的な空間線量率の測定(走行サーベイ)
② KURAMA2を用いた連続的な空間線量率の測定(走行サーベイ)
③ ゲルマニウム半導体検出器を用いたin-situ測定の実施
④ スクレーパープレートを用いた土壌深さ方向の放射性セシウムの分布状況
調査
⑤ 大孔径ボーリングによる土壌深さ方向の放射性セシウムの分布状況調査
⑥ ヨウ素129の放射能濃度測定を通じたヨウ素131の土壌濃度マップの精緻化
⑦ プルトニウム238、239+240の土壌濃度マップの継続的作成
⑧ ストロンチウム89、90の土壌濃度マップの継続的作成
⑨ プルトニウム241の土壌濃度マップの作成
⑩ 河川中(河川水、河底土、及び浮遊砂)における放射性物質の放射能濃度
の変化傾向の確認
⑪ 放射性物質の包括的な移行状況調査(第2次)
⑫ 居住区域の放射性物質の影響調査
3. 今後の予定(具体的測定項目)
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ご清聴ありがとうございました。