木質構造教育に関する リコメンデーションプログラム ·...

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木質構造教育に関する リコメンデーションプログラム 本リコメンデーションプログラムの見方 木質構造についての入門から専門性向上、研究分野での発展を目指す全ての 方へのリコメンデーションとして、概要を網羅することを目的として作成した。 また、教育機関別推奨シラバスは本プログラムの内容を中心に構成されており、 必要に応じて適宜参照して用いることができるように構成されている。 本プログラムの中の【難易度A】は木質構造に関する入門レベル、【難易度B】 は一般レベル、【難易度C】は専門レベルという目安で分類分けしている。また、 【☆☆☆】については必須、【☆☆】は選択、【☆】発展と位置づけている。目 指す専門性のレベルや木質構造の教育にかけられる時間数に応じて適宜組み合 わせてご利用願いたい。 また、本プログラムの原本には様々な写真、図表が掲載されていたが、イン ターネット上での公開にあたり、(社)日本建築学会出版物以外からの引用につ いては著作権の問題等から削除することとなった。その代わり、参考となる文 献を少数に絞り込んで随所に参照ページを併記したので、必要に応じて参照し て頂きたい。 本プログラムが、木質構造教育の一助となれば幸いである。 20093木質構造教育プログラム小委員会

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Page 1: 木質構造教育に関する リコメンデーションプログラム · 木質構造教育に関する リコメンデーションプログラム 本リコメンデーションプログラムの見方

木質構造教育に関する

リコメンデーションプログラム

本リコメンデーションプログラムの見方

木質構造についての入門から専門性向上、研究分野での発展を目指す全ての

方へのリコメンデーションとして、概要を網羅することを目的として作成した。

また、教育機関別推奨シラバスは本プログラムの内容を中心に構成されており、

必要に応じて適宜参照して用いることができるように構成されている。

本プログラムの中の【難易度A】は木質構造に関する入門レベル、【難易度B】

は一般レベル、【難易度C】は専門レベルという目安で分類分けしている。また、

【☆☆☆】については必須、【☆☆】は選択、【☆】発展と位置づけている。目

指す専門性のレベルや木質構造の教育にかけられる時間数に応じて適宜組み合

わせてご利用願いたい。

また、本プログラムの原本には様々な写真、図表が掲載されていたが、イン

ターネット上での公開にあたり、(社)日本建築学会出版物以外からの引用につ

いては著作権の問題等から削除することとなった。その代わり、参考となる文

献を少数に絞り込んで随所に参照ページを併記したので、必要に応じて参照し

て頂きたい。

本プログラムが、木質構造教育の一助となれば幸いである。

2009年3月 木質構造教育プログラム小委員会

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<<< 目 次 >>>

ページ

1. 木材利用の意義と是非 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5 1.1 地球環境と資源循環型社会 1.2 光合成の原理・木材の炭素貯蔵原理 1.3 国内森林の活用 1.4 LCA

2. 樹木と木材の組織 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6 2.1 樹木の成長と年輪の形成 2.2 針葉樹と広葉樹 2.3 辺材と心材 2.4 未成熟材とアテ材 2.5 成長応力

3. 木材の物性 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7 3.1 細胞構造と異方性 3.2 水分と物性 3.3 膨潤収縮 3.4 粘弾性とクリープ

4. 木材の強度特性 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9 4.1 変形と強度の種類 4.2 強度の異方性 4.3 強度試験方法 4.4 強度に影響を及ぼす因子

5. 木材の実大強度 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10 5.1 小試験片と実大試験片の相違 5.2 実大試験方法 5.3 実大強度の下限値 5.4 実大材の許容応力度

6. 木材の加工 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12 6.1 製材加工(ひき材) 6.2 機械加工 6.3 乾燥 6.4 接着 6.5 たて継ぎと積層

7. 木質建材 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15 7.1 定義

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7.2 構造用と造作用の違い 7.3 建築材料としての長短所 7.4 保存・耐久性

8. 木質建材各論 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・17

8.1 軸材料 8.2 面材料

9. 木質構造の種類と特徴 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・19

9.1 在来軸組構法 9.2 枠組壁工法 9.3 木質プレハブ構法 9.4 丸太組構法 9.5 大規模木造

10.接合の形式 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・25

10.1 継手・仕口 10.2 接合金物 10.3 構造金物 10.4 接着接合

11.構造計画 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・28

11.1 構造計画の概要 11.2 荷重・外力 11.3 鉛直荷重に対する構造計画 11.4 水平荷重に対する構造計画

12. 木質構造の耐久性 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・33

12.1 耐久性計画 12.2 防腐・防蟻・防虫 12.3 金物の防錆

13.部材の設計 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・36

13.1 引張材 13.2 圧縮材(単一材) 13.3 複合圧縮材の設計 13.4 曲げ材(単一材) 13.5 組み立て曲げ材(重ね梁および重ね透し梁) 13.6 組み立て曲げ材(釘打ち充腹梁、接着充腹梁) 13.7 トラス梁 13.8 (曲げ+引張)材の断面設計 13.9 (曲げ+圧縮)材の断面設計 13.10 異樹種・異等級ラミナ構成曲げ材(集成材)

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14. 壁の設計 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・41 14.1 鉛直荷重 14.2 水平荷重 14.3 壁量計算

15. 基礎の設計 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・43

15.1 基礎の種類 15.2 地盤と地耐力 15.3 布基礎の設計 15.4 ベタ基礎の設計

16. 床の設計(鉛直力) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・45

16.1 床版の設計 16.2 根太の設計 16.3 梁の設計 16.4 ストレススキン効果

17. 床の設計(水平力) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・47

17.1 水平構面の意味と役割 17.2 水平構面の種類と主な用途 17.3 水平力に対する挙動 17.4 水平構面の水平力 17.5 水平構面の設計(ダイアフラム)

18. 小屋組の設計 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・49

18.1 屋根の形状 18.2 屋根の構法 18.3 小屋梁の設計

19.接合部の設計 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・52

19.1 木質構造の接合部特性 19.2 設計方法 19.3 接合形式毎の設計

20.接合具・接合金物 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・55

20.1 接合の原則 20.2 釘 20.3 ボルト 20.4 各種コネクター

引用文献・参考文献 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・59

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1. 木材利用の意義と是非 1.1 地球環境と資源循環型社会【難易度A】

1.1.1 地球温暖化と二酸化炭素の増加【☆☆☆】(文献1,p.15)

地球温暖化の原因とされている二酸化炭素の濃度上昇は、地中に埋蔵された石油石炭等

をエネルギー源などに利用したために生じたものである。空気中に放出された二酸化炭素

を再び地球上に固定するのが抜本的な対策である。

1.2 光合成の原理・木材の炭素貯蔵原理【難易度A】 1.2.1 光合成の原理・木材の炭素貯蔵原理【☆☆☆】(文献1,p.16)

太陽の光と水とわずかな栄養分さえあれば、樹木は無公害的に、空気中の二酸化炭素を

吸収して固定する。ただし、森林の二酸化炭素蓄積量はある程度の年月を経ると頭打ちと

なる。適度に伐採し、再び植林すれば、吸収能力は復活する。伐採された木材は、我々の

生活に役立てることが出来る。木材は木質系材料として利用されている限り、二酸化炭素

を固定したままである。 二酸化炭素を地球上に固定させて、地球温暖化問題の解決の一助とするためには、森林

面積の増大と木材の適正な有効利用が不可欠である。

1.3 国内森林の活用【難易度A】 1.3.1 世界の森林危機と日本の森林危機の差【☆☆☆】(文献1,p.17)

森林は木材生産だけではなくて、治山治水等の様々な公益的機能を有している。途上国

で見られる森林の危機は森林そのものの減少によるもの、日本の森林の危機は、国産の木

材が利用されなくて、森林整備に手が入らなくなってしまったことによるものである。た

だし、日本の森林の蓄積量は戦後の造林政策によって激増しているおり、40億立方メート

ルを超えている。

一方、日本の木材の需要は8千7百万立方メートル程度であるから、何と日本の森林には

およそ45年分の木材の蓄積があることになる。

1.3.2 外材優位の原因【☆☆☆】

国土保全、山村振興などのためには、日本の森林林業の活性化が不可欠であるが、日本

の木材の自給率はわずか18%程度である。かつては、外材の方が低価格であるという理由で

使われることが多かった。国産材の価格が下落した現在も、価格の変動が少ない、量がま

とまりやすい、商流と物流が分離しているといった理由で外材が多用されている。

1.4 LCA【難易度B】 木造建築は他の構造に比べて、製造時に発生する二酸化炭素が圧倒的に少ない。問題は

耐用年数の低さである。

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2. 樹木と木材の組織 2.1 樹木の成長と年輪の形成【難易度A】

2.1.1 肥大成長の原理・早材と晩材・板目と柾目・木裏木表【☆☆☆】(文献1,p.20)

木部と樹皮の間に形成層があり、その細胞分裂によって木材は年々肥大成長する。春か

ら夏にかけて成長した細胞群が早材(春材)で、夏から秋にかけて成長した細胞が晩材(夏

材)である。この濃淡が年輪となる。

木材を年輪の接線方向に切断したときに現れる面が板目、中心部から放射方向に切断し

たときに現れる面が柾目、丸太を輪切りにしたときに現れる面が木口である。板目の板で

は、樹皮側が木表、髄側が木裏となる。

2.2 針葉樹と広葉樹【難易度B】 2.2.1 細胞の種類【☆☆☆】(文献1,p.27)

針葉樹の場合、縦方向に並んだ細胞が仮道管。半径方向に走っている細い筋が放射組織。

広葉樹の場合、孔のように見えるのが道管。縦方向にならんだ細胞が木部繊維。半径方

向に走っている細い筋が放射組織。

2.2.2 樹種の色々と特性【☆☆☆】

樹種によって、強度や耐朽性などの特性が著しく異なる。

建築によく使われる木材

国産針葉樹:スギ、ヒノキ、アカマツ、カラマツ、エゾマツ、

外国産針葉樹:ベイマツ、ベイツガ、SPF、サザンパイン、

欧州アカマツ(レッドウッド)、欧州トウヒ(ホワイトウッド)、

ラジアタパイン、北洋カラマツ

国産広葉樹:クリ、ケヤキ、ブナ、ミズナラ、ヤチダモ、マカンバ、シラカシ、

キリ、カエデ、シナ

外国産広葉樹:メランチ、アピトン、チーク、マホガニー、シタン、カリン、イペ、

ジャラ、

2.2.3 産地による差【☆】

産地によって、スギのように特性が大きく異なるものがある。

2.3 辺材と心材【難易度A】 2.3.1 心材化の原理【☆☆☆】

形成層で分裂した仮道管や木部繊維の細胞は半年も経たないうちに細胞壁にリグニンが

沈着して生理機能が無くなる。つまり死ぬ。辺材で唯一生理活動をしているのは柔細胞だ

けである。

辺材は根から吸い上げた水分の通り道となっている。辺材の柔細胞が死ぬときに、貯蔵

してあったデンプンなどを防虫や防腐などに役立つ物質に変える。心材が赤みを帯びてい

るのはこの物質の色である。また心材では水分を通す必要がないので、道管や仮道管では

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水が移動しにくくなるように組織が変化する。なお、心材部は年々拡大する。

2.4 未成熟材とアテ材【難易度B】 2.4.1 未成熟材と成熟材の差【☆☆☆】(文献1,p.23)

幹が細いうちは、幹全体を柔らかくして変形に対する吸収エネルギーを高めておかない

と、風などの力によって簡単に折れてしまう。このため幹の中心部は弾性係数が低い。こ

の部分のことを未成熟材という。逆に、ある程度幹が太くなると、樹幹を支えなければな

らないので、中心部の外側は弾性係数が高くなる。この部分を成熟材という。未成熟材は

一度形成されると、心材のように年々拡大することはない。辺材と心材、成熟材と未成熟

材が同じ幹の中に存在している。

2.4.2 引張アテ材と圧縮アテ材の差【☆☆】(文献1,p.24)

樹木は環境に合わせて自分の体の一部を徐々に作りかえていく。傾斜地に根を下ろして

しまった場合、針葉樹では幹の下側すなわち圧縮力が作用する側に特殊な「圧縮アテ材」

が形成される。広葉樹では逆に幹の上側に「引張アテ材」が形成される。

圧縮アテ材ではリグニンが多くて圧縮強度が高く、引張アテ材ではセルロースが多くて

引張力に耐えやすいような組織が形成されている。アテ材は特異な構造と特性を持ってい

るために、ねじれ、くるい、まがり、割れといった欠点が生じやすい。

2.5 成長応力【難易度B】 2.5.1 ひき曲がり・くるいの原因【☆】(文献1,p.25)

成長に伴って樹幹の中に生じて力を成長応力という。樹木が立っているときには樹幹の

外側に引張の内部応力が生じている。製材する時に生じる挽き曲がりは、内部に生じてい

る色々な成長応力が原因になっていることが多い。

3. 木材の物性 3.1 細胞構造と異方性【難易度B】

3.1.1 セルロースとミクロフィブリル【☆☆☆】(文献1,p.28)

木材の基本骨格となる原料は、セルロースであり、それが何十本もまとまって束のよう

な状態で存在している。これがミクロフィブリルである。ミクロフィブリル内のセルロー

スは結晶した領域と結合が緩やかな非結晶の領域からなっており、繊維状をしているので

長さ方向の強度特性が高い。

3.1.2 木材の3大成分【☆☆】

木材の細胞壁は、化学的な視点からすれば、「セルロース」、「ヘミセルロース」、「リグニ

ン」という3種類の主成分から成り立っている。その比率は樹種によって異なるが、一般

に2:1:1程度である。これら3つの主要成分の強度的な働きを鉄筋コンクリートにたとえ

れば、セルロースが鉄筋、リグニンがコンクリート、ヘミセルロースが両者のなじみをよ

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くする番線か接着剤のようなものである。

3.1.3 細胞壁の構造・3次元構造【☆☆☆】(文献1,p.29)

細胞壁は1次壁と2次壁(外層、中層、内層)からなるが、いずれの層でもミクロフィ

ブリルの配向が異なっており、色々な角度勾配で中空に巻き付いたような形態をしている。

特に も厚い層(2次壁中層)ではミクロフィブリルが繊維軸に対して10~30°の勾配で

螺旋状に配列している。

このように も厚い2次壁中層において、ミクロフィブリルが長さ方向に並び、そして

それがちょっと傾いてらせん状になっていることが木材の強度発現機構を特徴づけている。

当然のことながら、細胞の長さ方向の強度性能が も高いことになる。なお、ミクロフィ

ブリル間や各層の間にはヘミセルロースとリグニンが充填されている。

細胞壁の比重は樹種の如何に関わらず1.5である。木材の比重は含まれる細胞壁の量(空

隙の量)によって決まる。

3.1.4 抽出成分(匂い・色)【☆】

木材は3大成分以外にも様々な微量の化学成分を含んでおり、これが樹種特有の匂いや

色となってあらわれる。

3.2 水分と物性【難易度A】 3.2.1 含水率【☆☆】(文献1,p.31)

木材中の水分の重量/木材実質の重量を木材の「含水率」という。したがって100%を超

える場合もある。ある同一の温湿度条件下にあれば、どんな樹種の平衡含水率も若干の差

はあるが、基本的にはほぼ同じになる。

平衡含水率:水分が平衡状態に達したときの含水率。

気乾含水率:大気中での平衡含水率で、わが国では一般的には12~15%程度。

3.3 膨潤収縮【難易度A】 3.3.1 含水率と変形の関係【☆☆☆】(文献1,p.33-34)

木材中の水分には細胞壁に吸着している「結合水」と、細胞の内孔などに自由な状態で

存在している「自由水」とがある。比較的動きやすい自由水が全部出て行った状態を「繊

維飽和点」という。繊維飽和点は木材の樹種に関係なく含水率が25~30%のところにある。

木材は、繊維飽和点を境にして、強度特性が大きく変化する。自由水が存在する間は細胞

壁内の状態は変化がないが、結合水が減少し始めると強度が高くなる。含水率が低ければ

低いほど強度が高くなる。

繊維飽和点を境にして細胞壁の変形、つまりくるいが生じ始める。また、変形の量が方

向によって異なるので、くるいが均等にはならない。木材が水分を脱着して収縮するとき

には細胞が横に縮むので、T方向が一番大きく変形し、変形を拘束する放射組織が存在する

R方向では、それより小さい。L方向では両者より変形がはるかに小さい。これら三者の比

は、おおよそ L : R : T = 0.5~1 : 5 : 10である。乾く場合だけではなく、湿る場合、つまり乾

いた木材が水分を吸着して膨潤する場合にも同じような方向による差が生じる。

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また、比重が高いほど、つまり単位体積あたりに存在する細胞壁の量が多いほど膨潤収

縮の量は大きくなる。したがって早材と晩材を比較すると、晩材の方が水分変化による膨

潤収縮量が大きい。

3.3.2 反りの原因【☆☆☆】(文献1,p.35)

乾燥に伴って板目板が反るのは、木材の異方性と年輪構造により木表側の収縮量が大き

くなるため。木表側の水分が多いからという説明は誤り。

3.4 粘弾性とクリープ【難易度B】 3.4.1 クリープの原理【☆☆☆】

木材は高分子化合物で形成されているので、高分子材料によく観察される粘弾性の性質

を持っている。木材に継続的に荷重を作用させておくと、時間の経過とともに徐々に変形

が進んでいく。この現象がクリープである。ある限度以上の高い荷重ではクリープによる

変形が限界を超え、ついには破壊に至ることがある。これをクリープ破壊という。

3.4.2 メカノソープティブ【☆☆】(文献1,p.36)

木材に一定の外力が作用したまま乾燥していくと、負荷のない状態で単純に乾燥した場

合よりもはるかに大きな収縮が生じる。このような水分非定常乾燥状態における異常変形

現象を一般に「メカノソープティブ変形」と呼ぶ。

3.4.3 スプリングバック【☆】(文献1,p.37)

一般的なムクの木材であれば、たとえ水を吸い込んで膨潤しても、再度乾燥すると元の

厚さに戻るだけである。しかし、熱圧成形されたパーティクルボードのような木質材料で

は、可塑化されていた変形が膨潤によって一旦解除されてしまうと元の厚さには戻らない。

この現象を「スプリングバック(はね戻り)」という。

4. 木材の強度特性 4.1 変形と強度の種類【難易度A】

4.1.1 外力と変形の特徴・ヤング率【☆☆☆】(文献1,p.57)

木材に作用させる荷重を大きくしていくと、それに応じてひずみも大きくなる。ある値

(比例限度)以下では、応力とひずみが比例関係にある(フックの法則)。この直線の傾き

(比例定数)がヤング率(ヤング係数、弾性係数、MOE)である。

4.2 強度の異方性【難易度B】 4.2.1 強度と3次元構造【☆☆☆】(文献1,p.65-66)

繊維状のミクロフィブリルが長さ方向の力に対して強い抵抗力を示すのと同様に、細胞

も繊維の長さ方向(縦方向)の圧縮力に対しては強い抵抗を示す。しかし、横からの力に

対してはグズグズとつぶれやすく弱い抵抗しか示さない。木材の強度はL方向が も高く、

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R方向やT方向ではその1/10~1/20程度となる。ただし、R方向とT方向では放射組織の存在

するR方向の方がT方向よりも強度は高い。

4.2.2 めり込み【☆☆】(文献1,p.61)

木材がT方向やR方向から部分圧縮力を受けるとめり込みを生じやすい。

4.3 強度試験方法【難易度A】 4.3.1 JISの試験方法【☆☆】(文献1,p.62)

木材の強度試験はJISに定められているが、試験片は節などの欠点を含まない小さな試験

片である。したがって、実大の試験体より大きな値を示す。

4.4 強度に影響を及ぼす因子【難易度B】 4.4.1 繊維の方向・含水率・荷重継続時間【☆☆☆】(文献1,p.71)

異方性のところで述べたように、木材の強度やヤング率は繊維の方向と作用する荷重の

方向の組み合わせによって異なる。

木材の強度特性は繊維飽和点を境にして大きく変化する。自由水が存在する間は細胞壁

内の状態は変化がないが、結合水が減少し始めると、強度が高くなる。含水率が低ければ

低いほど強度は高い。

継続荷重の大きさと荷重継続期間との関係を表したものにマジソンカーブがある。基準

強度から許容応力度を導き出すための係数はこの曲線から導き出されている。例えば250年

が1/3で、50年が1.1/3である。

4.4.2 経年変化【☆☆】

屋内の安定した環境では、木材の強度が年を経るにしたがって徐々に上昇していくこと

が知られている。この現象は経年の変化によってミクロフィブリルを形成するセルロース

の結晶化が徐々に進むためと考えられている。

4.4.3 バラツキ【☆】

木材は生物材料であるから、特性のバラツキから逃れることができない。したがって、

強度特性のような数値を取り扱う場合には、常にバラツキがある(分布がある)ものとし

て考える必要がある。

5. 木材の実大強度 5.1 小試験片と実大試験片の相違【難易度A】

5.1.1 木材の欠点【☆☆☆】(文献1,p.74)

実大材は無欠点小試片に比べ、強度を低減させるような欠点である節や繊維の目切れ、

あるいは乾燥による割れなどを含んでいる。このため、その強度は無欠点小試験片より小

さな値となる。また、木材内部の材質は均一ではない。

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5.1.2 寸法効果【☆☆】(文献1,p.74)

材の体積が大きくなるほど強度が低下する現象を寸法効果という。無欠点小試験片と実

大の試験体では強度の平均値が大きく異なる。また、無欠点小試験片では引張強度>曲げ

強度>圧縮強度の順になるのに対し、等級の低い実大試験体では全く逆の傾向を示すこと

もある。

5.2 実大試験方法【難易度A】 5.2.1 各試験方法【☆☆】

実大材の強度特性は無欠点小試験片のそれより小さな値となるのが普通である。このた

め、実際の構造設計などには、様々な要因を加味した許容応力度を用いる。しかし、この

値はあくまでも 大公約数的なものであるため、新しい製品や様々な加工が加えられた製

品の強度特性をこの値から推測することは困難である。そこで行われるのが、実際の寸法

や使用状態に近い条件を設定した実大試験である。ただ、実大実験にはヒト、カネ、時間

が必要なので、大量のデータを得ることは難しい。また、データを活用するためには、何

らかの工学的推測が必要である。

5.3 実大強度の下限値【難易度B】 5.3.1 下限値の概念【☆☆☆】(文献1,p.85)

実大木材の許容応力度は強度の平均値ではなくて、製品に含まれる弱い個体の値を基準

にして決められる。なぜなら、破壊が生じやすいのは製品の中の強い個体ではなくて弱い

個体だからである。この指標となるのが5%下限値である。

平均値は高いがばらつきの大きいAの材料と、平均値は若干劣るがばらつきの少ないBの

材料とを比較した場合、5%下限値はAの方が低い。従って、許容応力度もAの方が低くな

る。

5.4 実大材の許容応力度【難易度A】 5.4.1 許容応力度の意味【☆☆☆】

許容応力度とは「安全に使える単位面積あたりの外力の限度」である。

5.4.2 計算方法【☆☆☆】

かつて建築基準法施行令第89条には、性質の近い木材を樹種群とし、その無欠点小試験

片の平均値を基準にして係数をかけ算したものを許容応力度として設定していた。しかし、

2001年5月に、このいささか大雑把すぎる方法が大きく変わり、施行令の中では基準強度か

ら許容応力を求める係数のみが示され、平成12年建設省告示第1452号の中で基準強度を示

す方式に変更された。ここでいう基準強度とは、強度分布の5%下限値、あるいは旧施行令

で導かれた材料強度である。

なお、この時に荷重継続期間も短期長期の2本立てから、より細やかな4本立てに改正

された。

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表:無等級材の基準強度

樹 種 基準強度 (N/mm2)

圧縮Fc 引張Ft 曲げFb せん断Fs

あかまつ、くろまつ及びべいまつ 22.2 17.7 28.2 2.4 からまつ、ひば、ひのき及びべいひ 20.7 16.2 26.7 2.1 つが及びべいつが 19.2 14.7 25.2 2.1 もみ、えぞまつ、とどまつ、べにまつ、

すぎ、べいすぎ及びスプルース 17.7 13.5 22.2 1.8

かし 27.0 24.0 38.4 4.2 くり、なら、ぶな、けやき 21.0 18.0 29.4 3.0

表:スギの基準強度

樹 種 区 分 等級 基準強度 (N/mm2)

圧縮Fc 引張Ft 曲げFb せん断Fs

目視等級区分

甲種構造材

1級 21.6 16.2 27.0

1.8

2級 20.4 15.6 25.8 3級 18.0 13.8 22.2

乙種構造材

1級 21.6 13.2 21.6 2級 20.4 12.6 20.4 3級 18.0 10.8 18.0

機械等級区分

E50 19.2 14.4 24.0

1.8

E70 21.6 16.2 26.4 E90 28.2 21.0 34.8 E110 32.4 24.6 40.8 E130 37.2 27.6 46.2 E150 41.4 31.2 51.6

無等級材 なし 17.7 13.5 22.2 1.8

表:許容応力度を求める係数

荷重継続期間 許容応力度の算定方法 基準強度に乗じる係数

長期 基準強度に1.1/3を乗じた値とする 1.10/3 積雪時(長期) 長期許容応力度に1.3を乗じた値とする 1.43/3 積雪時(短期) 短期許容応力度に0.8を乗じた値とする 1.60/3 短期 基準強度に2/3を乗じた値とする 2.00/3

6. 木材の加工 6.1 製材加工(ひき材)【難易度A】

6.1.1 丸鋸と帯鋸【☆☆】

丸鋸:帯鋸に比べれば、のこの厚さが厚いため、挽き減りが大きく、製品の歩止りも低く

なる。またその機構から考えても、直径のせいぜい1/3程度の厚さの材しか挽けない。

ただ、円盤の剛性が高いので、帯鋸より精度の高い加工が可能である。また、挽き

肌も美しい。

帯鋸:大径材や大断面の材を挽くことができる。また鋸の厚さが薄いので、挽き減りが少

なく、歩止りが低下しにくい。ただ、鋸歯がベルトに付いているので、刃物として

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の剛性は高くない。

6.1.2 木取り方法【☆☆】

生産する製品によって、木取りのパターンを変えなければならない。木取りの方法によ

って節やその他の欠点の出現頻度が変わることもあるので、強度性能もそれに伴って変わ

る。

6.1.3 目切れ【☆☆】(文献1,p.99)

「旋回木理」の大きな丸太やテーパーの大きな「梢殺(うらごけ)」の丸太を製材すると

きには目切れが出来やすい。このような場合は側面を基準にする。

6.2 機械加工【難易度A】 6.2.1 プレカット加工【☆☆】

在来軸組構法の構造用材の加工方法として、ここ20年くらいの間に大きく発展を遂げて

きたのがプレカット加工である。プレカットというのは予め(プレ)、切削(カット)して

おくというような意味である。プレカット加工は切削技術的な観点からすれば、それほど

複雑なものではない。何種類かのドリルやモルダ-が自動的に切削加工をしていくだけで

ある。ただ、その工程管理は高度である。

6.2.2 ロータリー・スライス【☆☆】(文献1,p.100-101)

原木丸太を回転させてそこに大きなナイフをあて、まるで大根のかつら剥きのように単

板を切削することをロータリー切削という。この機械をロータリーレース、切削された単

板をロータリー単板という。製材品にかんなをあてるようにして1枚1枚単板を薄くスラ

イスする方法もある。この機械をスライサー、製造される単板をスライスド単板という。

スライスド単板は、造作・化粧用として集成材や合板の表面に貼るために用いられること

がほとんどである。

6.2.3 孔空け加工【☆】

ドリルやルーターなどによる加工

6.3 乾燥【難易度B】 6.3.1 乾燥の原理・人工乾燥・天然乾燥【☆☆☆】(文献1,p.104)

木材は乾燥させてから使うのが常識。木材の乾燥に技術を要するのは、1)結合水が木材中

から簡単に出て行かない、2)結合水が出て行く時に木材の変形を伴う、3)さらにその変形が

異方性をもつためである。

木材の乾燥時間は材が薄いほど短い。乾燥の速さは厚さの比の1.5~2.0乗に反比例する。

薄ければ薄いほど、含水率の差によって生じるエレメント内部の乾燥応力も低くなり、割

れのような損傷が生じることも少ない。

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6.3.2 乾燥と割れの関係【☆☆】

製材品であっても、2×4インチ程度のディメンジョンランバーであれば、比較的乾燥が

容易。

断面の大きな心持ち柱角などを乾燥するような場合には、表面と内部の間に含水率の傾

斜(勾配)、つまりよく乾いているところと乾いていないところが同時に存在し、表面割れ

や内部割れのような損傷が生じやすくなる。

6.3.3 各乾燥方法の得失【☆】(文献1,p.106)

特に乾燥が困難なスギの柱角に用いられている乾燥方法には、天然乾燥、除湿乾燥、蒸

気式乾燥、燻煙乾燥、高周波・熱風複合乾燥のようなものがあり、これらを組み合わせた乾

燥方法もある。いずれの方法にも短所長所がある。

6.4 接着【難易度A】 6.4.1 構造用と造作用接着剤の違い【☆☆☆】

木材用の接着剤には構造用と造作用がある。造作用接着剤を構造用に使ってはならない。

6.4.2 木材用接着剤の種類【☆☆☆】

名 称 通称(俗称) 種別 色 耐水

性 耐久

性 使用

ホル

マリ

ユリア(尿素)樹脂接着剤 ユリア 造作 乳白

色 △ × ○ ×

メラミン樹脂接着剤 メラミン 造作 透明 ○ ○ ○ × フェノール樹脂接着剤 フェノール 構造 褐色 ○ ○ △ △ レゾルシノール樹脂接着

剤 レゾ 構造 褐色 ○ ○ △ △

水性高分子-イソシアネ

ート系接着剤 水性ビニルウ

レタン 構造、

造作 乳白

色 ○ ○ ○ ○

酢酸ビニル樹脂エマルジ

ョン接着剤 木工用ボンド 造作 乳白

色 × × ○ ○

6.5 たて継ぎと積層【難易度A】 6.5.1 たて継ぎ【☆☆】(文献1,p.119)

部材同士を繊維方向(長さ方向)に継ぐことをたて継ぎという。たて継ぎには、短い材

料の長さを長くするという意味と、節や目切れのような欠点を除去して強度を向上させる

という2つの意味がある。指と指とが組み合わさったような形態の接着継手を、フィンガ

ージョイントという。スカーフジョイントは歩止りが悪く、完全に硬化するまで圧締して

おく必要があるため、生産効率が悪い。

木口面同士の突き付け(バットジョイント)では、接着の強度はほとんど期待できない。

6.5.2 積層効果・配向・変形の抑制【☆☆】(文献1,p.131)

積層接着することの意味は、エレメントをまとめて結合し寸法を大きくすること、強度

特性を向上させること、バラツキを減少させること(積層効果)、膨潤収縮による木材の変

形を抑制することなどがあげられる。

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7. 木質建材 7.1 定義【難易度A】

7.1.1 木質建材、木質材料、エンジニアードウッド【☆☆☆】(文献1,p.38)

木質建材:数ある建築材料の中でも、木材(木質)を原料にしたものをいう。木質系材料

と呼ばれることもある。非常に広い意味を持つ用語であり、単なる製材や丸太、

防腐土台のような化学処理木材、さらには次に述べる木質材料もこの範疇に入

る。

木質材料:木材をいったんバラバラの原料エレメント(ひき板や単板など)に分解し、そ

れを接着剤などによって再構成した材料のことをいう。構造用と造作用の明確

な区分があることも使用上の重要なポイントである。

エンジニアードウッド:強度性能が工学的に保証された木質建材のことをいう。正確な英

語としては「Engineered Wood Products」である。わが国では「エンジニアリング

ウッド」という和製英語や、両者の頭文字から取ったEW(イーダヴリュー)と

いう表現もよく使われる。EWはすべて構造用である。

7.2 構造用と造作用の違い【難易度A】 7.2.1 接着剤と品質管理の差【☆☆☆】

木質材料には、大きな力のかかる構造部材に使われる「構造用」と、見た目や化粧性が

重視される造作用材に使われる「造作用」の2種類がある。構造用を造作用に使っても特

に問題はないが、造作用を構造用に使うことはできない。なぜなら、造作用では強度に関

する品質管理と保証が十分になされていないからである。木質材料に関連したトラブルや

誤解の多くは、この基本的な特性をユーザーが理解していないことが原因である。

7.3 建築材料としての長短所【難易度A】 7.3.1 長所【☆☆☆】

かつて、木材の長所として、次のような点が挙げられていた。

① 軽いわりには強い。

② 手に入りやすい。

③ 切削加工が容易である。

④ 温和な環境下では耐久性が高い。

⑤ 湿度調節機能がある。

⑥ 熱伝導率が低い。

⑦ 美的である。

⑧ 接合が容易である。

しかし近年、循環型社会の構築が求められ、材料の評価基準がCO2の排出量の少なさに重

きを置くようになってきた現代では、次のような木材の優位性が圧倒的に目立つようにな

ってきた。

① 加工にあまりエネルギーを必要としない。

② 燃やせるので、廃棄の際にエネルギー源として利用できる。

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③ 自然に腐らせることができるので、廃棄に多大なエネルギーを必要としない。

④ エネルギーをあまり使わずにリサイクルが可能である。

7.3.2 短所【☆☆☆】

木材には上に述べたような長所がある反面、

① 燃える。

② くるう。

③ 腐る。

④ 鉄鋼に比べ強度が低い。

⑤ 特性にバラツキがある。

⑥ 方向によって性質が異なる。

⑦ 節や割れなどが存在する。

ことが短所として挙げられてきた。

ところが、木材の加工技術が20世紀後半において飛躍的な進歩をとげたことによって、

このような短所が比較的容易に克服できるようになってきた。また、資源循環・環境調和

を目指すわが国の社会情勢を考慮すれば、これまで短所とされていた木材の特性も全くの

欠点とは言えないことが近年強く主張されるようになってきた。

7.4 保存・耐久性【難易度A】 7.4.1 木材の経年劣化【☆☆☆】

木材は温和な室内環境の中では極めて高い耐久性を示す。千年以上の歴史を持つ木製の

文化財が存在するのがその証拠である。屋外では光、熱、水分などにより表面が徐々に変

色し、風化する。

7.4.2 腐朽【☆☆☆】

木材腐朽にはセルロース、ヘミセルロースを分解する褐色腐朽、広葉樹に多くリグニン

も分解する白色腐朽、カビ類や細菌類によって表面が軟化する軟腐朽の3種類がある。腐

朽は自由水、適当な温度、酸素の3つが揃わなければ生じない。腐朽に対する耐朽性は樹種

によって大きく異なる。また、辺材より心材の方が耐朽性は高い。

7.4.3 虫害【☆☆☆】

木材を食害する虫の代表が、シロアリである。日本には16種類が生息しているが、現実

的に被害を及ぼしているのは、全国に分布するヤマトシロアリ、主に神奈川以西の温暖な

地域に分布するイエシロアリ、沖縄や奄美に分布する熱帯系のダイコクシロアリやタイワ

ンシロアリ、東京、神奈川、兵庫、和歌山等でスポット的に発見されているアメリカカン

ザイシロアリである。

耐犠牲が高い樹種として、ヒノキ、ヒバ、アピトン、チーク等が知られている。

シロアリ以外によく知られている害虫に、ナラやラワンを食害するヒラタキクイムシや

オオナガシンクイムシ、古建築でよく見られるシバンムシ等がある。

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7.4.4 耐火【☆☆☆】

木材の熱分解は温度が100℃を超えたあたりから徐々に始まる。樹種により異なるが、一

般に引火点は270℃付近、発火点は450℃付近である。木材は確かに燃焼するが、炭化層の

熱伝導率が低いため、燃焼の進行が遅くなる。したがって、大断面木材を用いた構造では、

燃え代設計が可能となる。

7.4.5 接着耐久性【☆☆☆】

接着の劣化に対する性質が「接着耐久性」である。一般的に木質材料の接着耐久性はム

クの木材のそれとは対照的である。すなわち、生物劣化に対しては比較的抵抗力が大きく、

逆に風化や老化に対しては抵抗力が小さい。

木材用接着剤の耐久性は、一般に酢酸ビニル<ユリア<メラミン<水性高分子イソシア

ネート系<フェノール<レゾルシノールであるが、耐用年数は使用環境や製品の種類、さ

らには耐候処理の方法によって大きく異なる。

接着製品である木質材料の場合、たとえ耐水性・耐久性の高い接着剤を用いた構造用木

質材料であっても、野ざらし・雨ざらしの状態で使用することは原則的に避けるべきであ

る。どうしても使用しなければならない場合はきちんとした防腐処理や耐候処理を施さな

ければならない。

8. 木質建材各論 8.1 軸材料【難易度A】

8.1.1 製材・集成材・たて継ぎ材・LVLなど【☆☆☆】(文献1,p.40)

1) 製材(角)

丸太を「のこ(丸鋸や帯鋸など)」で切断して軸状に形を整えたものが、「製材」あるい

は「製材品」である。製材は木質建材ではあるが、定義から考えても当然木質材料のグル

ープには含まれない。製材には寸法など使用上の制限が色々あるが、その利点は加工に要

するエネルギーが小さいことである。また、リサイクルの際に接着剤の存在に留意しなく

てもよい事も木質材料には見られない長所といえよう。

2) たて継ぎ材

製材した角材やひき板の端部を特殊な刃物を用いて指(フィンガー)のような形状に切

削し、そこに接着剤を塗ったのち繊維方向に接着接合したものが「たて継ぎ材」である。

カタカナで「フィンガージョイント材:略してFJ材」ともいう。

3) 集成材(軸)

たて継ぎされたひき板(ラミナ)を何枚も積み重ねて積層接着したものが「集成材」で

ある。ラミナは十分に乾燥されているので、製材に比べて寸法安定性が高い。たて継ぎと

積層という技術を使えば、原理的にはいくら長大な製品でも製造することができる。また、

ひき板は容易に曲げることができるので、湾曲した美しい製品を作ることが可能である。

製品としては、長押のような造作材から、ドームに使われる大断面集成材まで様々な寸法

のものがある。

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4) 単板積層材

単板を一方向にかつ平行にして何枚も積み重ねて積層接着したものが「LVL(Laminated

Veneer Lumber:エルブイエル:単板積層材)」である。集成材より歩止りが高いことが特徴

である。ただ、接着層が多くなるので接着剤の使用量は多い。この製品も比較的簡単に湾

曲させることができる。大きな原盤を切断して製品とするので、幅方向の寸法は自由に設

定できるが厚さ方向には制限がある。

5) PSL

単板を縦に裂いて短冊状にしたもの(ストランド)を平行に積層接着したものがPSL(ピ

ーエスエル:平行ストランド材:商品名パララム)である。単板を裂く理由は、それによ

って節のような欠点が除かれるからである。また、製造工程の自動化が容易になることも

その理由の一つである。大きな断面の原料ブロックを切断して製品とするので、断面寸法

は比較的自由に設定できる。

6) OSL

小径の丸太から直接ストランドを取り、それを一方向に並べて積層したものが、OSL(オ

ーエスエル:配向性ストランド材:商品名LSL)である。原料を余すことなく使えることが

大きな特徴である。製造技術的には後述するOSBから進化したものであり、原料樹種は北

米のアスペンなどである。強度的にはPSLに比べ劣るが、価格はPSLより安い。

これらの軸材系木質材料の共通の特長としては、原料が小さくても長く太い製品にでき

ること、乾燥されているのでくるいが少ないこと、均一性が高いので各種の性能が安定し

ていることなどがあげられる。もちろん、それぞれの製品によって用途・価格・性能は色々

である。

8.2 面材料【難易度A】 8.2.1 板・合板・ボード類【☆☆☆】(文献1,p.41)

1) 製材(板)

軸材料の場合と同じく、木材を「のこ」で切断して板状に形を整えたものが、昔ながら

の「製材」の「板」である。当然、これも木質材料の範疇には入らない。軸材料の場合と

同じく、製材の板には幅方向の制限があって、大きな寸法の製品を得るのは困難である。

また乾燥に伴うくるいが生じやすい。もちろん加工に要するエネルギーが小さいことは製

材の大きな利点である。

2) 集成材(板)

幅の狭い板や角材を幅方向にならべて接着したものも「集成材」である。集成材は軸材

料としてばかりではなく、このような面材料としても使われる。ただし面材料としての集

成材は構造用材としてよりも家具の表板や内装材などへ利用されることがほとんどである。

3) 合板

単板(ベニア)を、90°づつ方向を変えながら重ねあわせ、奇数枚積層接着したものが

「合板」である。この直交積層によって製材の板では得られない狂いにくさと強度特性が

得られる。わが国で使われる合板の寸法は90×180cm(3尺×6尺)程度である。

合板はベニアから作られるので「ベニア板」、あるいはコンクリートの型枠に使われるの

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で「コンパネ」などと俗称されることがあるが、これらはいずれも正しい用語ではない。

4) パーティクルボード

使い途のない小径材や端材、あるいは建築廃材などを破砕機によってバラバラの小片(パ

ーティクル)にし、これに接着剤を噴霧してマット状に積み重ね、熱圧プレスによって圧

締接着した製品がパーティクルボードである。製造原料の種類から明らかなように、原料

の大きさや種類を選ばないところがこの製品の大きな特徴である。

5) OSB

小径の丸太からストランド(短冊状の削片)を取り、これをトランプのようにうまく並

べて(配向させて)、3層構成の合板のように上下層と中心層を縦横に直交させて積層接着

したものが、OSB(オーエスビー:配向性ストランドボード)である。OSBは使い途がなく

て利用されることのなかった北米のアスペン材などを、構造用材として有効に利用できる

よう開発されたものである。この製品の特徴はエレメントが長くまたそれが配向されてい

るため、パーティクルボードとしては強度が非常に高いことである。

6) ファイバーボード

パーティクルよりもさらに木片を小さく粉砕して繊維(ファイバー)にし、これを板状

に固めたものがファイバーボードである。比重が0.8以上のものが自動車の内装部品によく

用いられるハードボード、比重が0.35以下のものが断熱材や畳の中芯に用いられるインシュ

レーションボード、その中間の比重のものが家具などに用いられるMDF(中比重ファイバ

ーボード)である。

以上の説明からも明らかなように、これらの面材系木質材料も軸材系と同じように製品

の種類によってそれぞれ特性と用途が異なる。合板は寸法安定性と均一性を活かして、「板」

が必要なあらゆる所に使われる。集成材は階段の踏み板や手すりなど木目を活かせるよう

な造作材や家具に、パーティクルボードは家具の芯材や床下地に、OSBは強度の高さを活

かして屋根や壁や床の構造用材に、ファイバーボードは成形できる特性や均一性を活かし

て家具や自動車の内装などに用いられる。

9. 木質構造の種類と特徴 9.1 在来軸組構法【難易度A】

9.1.1 軸組構法の概要【☆☆☆】(文献2,p.19)

柱、梁、土台などの線状部材を点で繋ぎ構成する構法を、在来軸組構法という(同義:

在来構法)。鉛直方向の力を負担する柱、梁、土台の各部材と、水平方向の力を負担する筋

かいや火打ちまたは面材を用いた鉛直構面、水平構面からなる構造である。常に新しい工

夫を取り入れ、時代と共に発展してきた構法であるが、主な発展の要因としては、①職人

の熟練度や総対数の変化、②合板や金属部材などの建材・構造用部材への利用、③電動工

具の普及による生産効率の変化、などが挙げられる。

標準的モジュールは910㎜(約3尺)で設計する『尺モジュール(尺間)』であり、木取

りを軸芯で行うため、地域ごとに様々な断面の部材を使用している。施工時には約1日で棟

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木までを組上げ、屋根部分を先行して工事を行うことで部材が雨などに濡れにくく、工事

にも支障の少ない組み方となっている。

図9.1 軸組構法の架構(出典:日本建築学会、構造用教材)

9.1.2 在来軸組構法の構成【☆☆】

基礎は布基礎が一般的であるが、近年はべた基礎が増えている。1階床は、束で支えられ

た大引きを土台と同じ高さに910mm程度の間隔で配置し、大引きの上に根太を300mm内外

に通して床板を支える。2階床の場合は1階の大引きにあたる部分が小梁となる。近年は、

根太を省略して厚い構造用合板を直接載せる方法が増えている。軸組には450~500mm間隔

に間柱が立ち、外壁や内壁を支える。小屋は和小屋と呼ばれる形式が多いが、近年は小屋

裏を物置として利用する形式が増えている。現代の軸組構法は、“桁行き”と“梁間”の区

別がなくなってきており、構造形式が全般的に枠組壁工法に似てきている。

地震や風等の水平力には一般的に筋交いで抵抗するが、近年は筋交いの使用が減って、

合板の利用が増えている。特に、建物外周は断熱材を施工する都合から合板の利用が増え

ている。これらの水平力に抵抗するための鉛直構面を“耐力壁”と呼ぶ。耐力壁の量は、

小規模な場合には床面積当たりの必要量が建築基準法施行令に定められており、また、耐

力壁には“壁倍率”とよぶ強度の指標が定められている。こうした耐力壁を設ける事によ

る設計システムを「壁量設計」という。また、2000年の法律改正で耐力壁の平面的な配置

もルール化され、耐力壁に生じる力を伝達するための水平構面の役割も重要視されている。

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9.2 枠組壁工法【難易度A】 9.2.1 枠組壁工法の概要【☆☆☆】(文献2,P.19)

枠組壁工法は、昭和49年の建設省告示により一般的工法として認められた木質構造であ

り、規格寸法の線状部材(呼称:ランバー材)と面材を釘で留めつけることで構面を構成

し、それらを壁、床、屋根で組み合せて建物全体を一体として構成する構法である。ツー

バイフォー構法ともいう。ランバー材と面材で留めつけた鉛直構面(壁)は、鉛直力と水

平力の両方を負担するものであり、在来軸組構法の柱と筋交いの機能を併せ持った構面と

言える。

元々は、枠組壁工法の前身としてバルーン構法とプラットフォーム構法があり、札幌時

計台はバルーン構法でできている。アメリカでも初期はバルーン構法だった。釘の大量生

産と、蒸気機関による製材技術の発展により生まれた構法である。

枠組壁工法は、構造として使用される部材の樹種・断面が規格により統一されており、

規格は北米と同一の規格であるため、輸入した材料がそのまま使用することができる。規

格された断面の寸法を使用するため木取りを材面で追うことができ、継手が存在しないた

め木材に複雑な加工を施す必要がないが、ランバー材同士を組み合わせるときには使用す

る釘の長さや本数、ピッチ、継ぎ方によっては重ね代などが決められている。

施工時には、一階床組み、一階壁、二階床組みと、下層階から積み上げていくことから、

作業床を確保しながら安全に施工を進めることができる。しかし、屋根を掛けるまで7~14

日間を必要とするため、雨天時には材の濡れを考慮しながら作業を進めなければならない。

図9.2 枠組壁工法の概要(出典:日本建築学会、構造用教材)

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9.2.2 枠組壁工法の構成【☆☆】

床構面⇒壁構面⇒床構面⇒壁構面⇒屋根構面と積み重ねる構造で、木材で枠組みを形成

し、これに合板を釘打ちしてパネルを構成する。釘打ちを多用する構法である。

軸組構法の釘(N釘)とは異なり、胴径が太く施工後の検査も容易な、色分けされたCN

釘を使用する。釘の打ち方は、平打ち(F)、木口打ち(E)、斜め打ち(T)の3種類程度に

限定されており、設計、施工の合理性が確保されている。

材料は、樹種、使用区分、断面寸法が規格されたものを使用し、設計、施工の合理性が

確保されている。その他に、構造用集成材、PSL、Iビーム、OSB、MDFなども使用されて

おり、面材料は種類が多様で、密度や繊維の大きさ、混入材の種類などでいろいろな種類

がある。

9.3 木質プレハブ構法【難易度B】 9.3.1 木質プレハブ構法の概要【☆☆☆】(文献2,p.31)

プレハブという言葉は、プレファブリケーション(Prefabrication)-予め作る-という言

葉の略語で、プレハブ構法とは専用の工場などで予め作られた建築構成材を、建築現場で

組み立てる構造方法のことをいう。プレハブ構法は、構造体に使用される材料によって、

木質プレハブ構法、コンクリート系プレハブ構法、鋼鉄系プレハブ構法に分類される。

プレハブ構造は、構成部材を工場生産するので、条件を一定化でき品質管理しやすいな

どの利点がある。また、構造強度、居住性、生産数量などが一定水準以上であることを認

められた住宅を工業化住宅という。

木質プレハブ構法は、昭和30年代半ばから開発されたもので、構造用合板を枠材に接着

してパネルを構成する壁式構造であり、壁や床をパネルで構成する。当初は、枠組壁工法

も一種のプレハブ住宅として開発された。昭和35年にミサワホームが誕生し、ハウス55プ

ロジェクトやエスバイエルの構法などがある。通しパネル方式と大型パネル方式。

以前は、旧建築基準法38条の大臣の認定によって建てられていたが、現在は枠組壁工法

と同じ告示のもとで建てることができる。工業化住宅は(財)日本建築センターの自主事業に

なっている。

水平力に抵抗するのは、構造用合板を枠材に接着したパネルであるが、合板を枠材に接

着すると合板と枠材は一体となって挙動し、表面の合板にも応力が伝達される。このよう

な性能をストレススキン効果といい、このようなパネルをストレススキンパネルと呼ぶ。

接着パネルの構造性能は、ストレススキン効果によっている。

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図9.3 木質パネル構法の概要(出典:日本建築学会、構造用教材)

9.4 丸太組構法【難易度B】 9.4.1 丸太組構法の概要【☆☆☆】(文献2,p.30)

丸太や製材を横積みして、作る構造を丸太組構法という。校木で構成された壁は、だぼ

などでせん断性能を高め、通しボルトで浮き上がり力を拘束する。

丸太組構法技術基準告示に従って建てられており、総2階建てを建てる場合には、構造

計算が必要。

だぼの耐力を求める計算式が設定されており、だぼの本数で耐力が決定する。

日本には、校倉の倉庫が残っている。東欧の古い民家は、丸太組構法でできている。

繊維直角方向に鉛直荷重が加わることから、荷重および乾燥による、鉛直方向の収縮が

設計上の重要な課題となる。この収縮をセトリングという。

図 9.4 丸太組構法(出典:日本建築学会、構造用教材)

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9.4.2 丸太組構法の構成【☆☆】(文献2,p.30)

日本で作られる丸太組構法は、原則的に、交点から20cm以上突き出した積み方とする。

これをプロジェクトタイプという。交点から、外に突きでない方式をフラッシュタイプと

いう。校木の断面は、古くは丸太であったが、現在は製材したものが多い。丸い断面のも

のも製材したものが多い。日本の校倉は、五角形をしているが、この断面は日本独特なも

のという説がある。

図 9.5 校木の組み方(出典:日本建築学会、構造用教材)

図 9.6 校木の断面(出典:日本建築学会、構造用教材)

9.5 大規模木造【難易度B】 9.5.1 大規模木造の概要【☆☆☆】

長尺材を製造できるという集成材の特徴を活かした架構で、集成材により骨組みがつく

られ、特に大規模な建築物をいう。架構の形式には、柱・梁による「ポストアンドビーム

式」、湾曲した梁を用いる「アーチ形式」、立体的な「ドーム形式」などがあり、体育館な

どの構造に使われることが多い。多くは長期荷重で設計されている。

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25

図9.7 大断面木造建築の例(出典:日本建築学会、構造用教材)

9.5.2 大断面木造の構成【☆☆】

大規模の建築で用いられるため、耐火に対する燃え代設計を考慮する必要がある。昭和

62年の法律改正によって燃え代設計が可能になった。

木材の燃焼速度は一般的に0.6~0.7mm/分と言われており、必要な燃え代の厚みは、集

成材の場合30分が25mm、45分が35mm、1時間が45mmなどと定められている。製材は、そ

れぞれ更に20mmを加えた数値とされている。スギは炭化が早いといわれているが、基本的

に比重の小さいものは燃えやすい。

接合形式などは「19.3 接合形式毎の設計」を参照。

10.接合の形式 10.1 継手・仕口【難易度A】

10.1.1 継手・仕口の種類【☆☆☆】(文献2,p.29)

継手・仕口は木材同士を切り削り加工して組み合わせたもので、継手は材料を直列(長

さ方向)に繋ぐ場合に用い、仕口は材料を直角又は斜めに繋ぐ場合に用いる。

様々な種類・形状の継手・仕口があるが、一般的な住宅の継手には『腰掛け鎌継ぎ』、仕

口には『腰掛蟻仕口』が用いられる。従来これらの加工には1棟あたり7~10日を要して

いたが、近年はプレカット加工機により、0.5~1日で加工することが可能となっている。

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図 10.1 継手・仕口(出典:日本建築学会、構造用教材)

10.1.2 継手・仕口の留意点【☆】

継手は、応力の小さいところに設けるのが原則である。継手には、不用意な欠き込みを

行うと予想しない破壊を起こすことがあるため、欠き込みの必要が生じた場合には、補強

も含めて十分考慮する。また、全体計画の中で床面を検討する際などに平行配置される梁

のそれぞれの継手は、連続させない等の注意が必要である。

継手・仕口は、主に純方向のせん断を負担するものとして配置する。せん断強度は、継

手・仕口の組合せ部分のめり込みにより決るため、使用する樹種により変化することを考

慮して設計する。また、梁の断面が大きくなっても、めり込み負担する面積が変わらない

継手・仕口を用いる場合は、受け金物を用いることなどを考慮する。

引張り強度は、繊維方向の割裂により脆性的に決るため(込栓などを使用するものは異

なる)、金物を併用して設計することを考慮する。

10.2 接合金物【難易度B】 10.2.1 接合金物の規格と種類【☆☆】(文献2,p.29)

従来の継手・仕口の側面に留め付けることで接合部を補強する金物を接合金物という。

機能としては、主に材料の端部に設け、引張りに効果を発揮するものが多い。

木造住宅用の金物として、Z・D・C・M・Sマークなどの規格があるが、これらは(財)日

本住宅・木材技術センターの独自の規格である(JIS A 5531の木構造用金物として一部Zマ

ーク金物と同一形状物も存在する)。

Zマーク金物・・・在来軸組構法用規格

Cマーク金物・・・枠組壁工法用規格

Mマーク金物・・・丸太組構法用規格

Dマーク金物・・・同等認定制度

Sマーク金物・・・性能認定制度

平成12年の建築基準法改正以降、簡易計算により設ける耐力壁の柱の端部には、接合金

物による補強を行うことが明記されている。

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主な Z マーク金物(在来軸組構法用) 主な C マーク金物(枠組壁工法用)

図 10.2 接合金物(出典:日本建築学会、構造用教材)

10.2.2 接合金物の留意点【☆】

各規格の接合金物は、それを留めつける釘などについても、形状・サイズ・防錆処理に

ついて規格されたものを使用することで性能を発揮するように作られている。

接合金物は、それぞれ定められた許容耐力を有しているため、その範囲内で設計を行う。

接合金物には、ボルトで接合するものと釘・ビスで接合するものが存在しており、耐力

の発揮の仕方にはそれぞれ特性があるので、併用して使用する場合には耐力特性を考慮し

て組合せを検討する必要がある。

10.3 構造金物【難易度B】 10.3.1 構造金物の種類【☆☆☆】(文献1,p.194-195)

接合金物はあくまでも継手・仕口が主として構造を支え、補強の意味で金物を使用して

いたが、構造金物は金物が継手・仕口の役割も兼ね、金物によって架構が成立つものをい

う。構造金物には、せん断と引張りを負担する接合金物と、モーメントを負担できる構造

金物が存在し、それらを使用した建物を設計する場合には、設計方法も異なる場合が多く、

注意を要する。

大断面木造の多くの接合部は構造金物による接合であるが、その建物に使用するために

設計された専用部品である場合が多い。一方、在来軸組構法では、継手・仕口の生産性向

上のための手段として、折り曲げ型の構造金物が普及している。

10.3.2 構造金物の留意点【☆☆】

接合する柱や梁の断面が比較的に小さいものを接合する場合に使用する構造金物は、せ

ん断・引張りの二方向の力に対して一つの接合部により負担するものがほとんどで、これ

らを踏まえた上で設計を行う。

接合する柱や梁の断面が比較的に大きいものを接合する場合に使用する構造金物は、モ

ーメントに抵抗できる構造のものが多い。モーメント抵抗性を有する構造金物の性能は幅

広く様々なタイプがあるため、その接合部のもつ特性と設計方法を考慮して使用する必要

がある。

接合部の直上に剛性の高い耐力壁を配置し、尚且つ、剛性の高い床構面の端部に接合部

を配置するなど、同時に大きな力が作用することが考えられる場合を考慮して設計を行う。

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また、使用環境をよく考慮して、金物の防錆処理や木部との取合いの耐久性を検討する。

10.4 接着接合【難易度A】 10.4.1 接着接合の種類【☆☆☆】

接着接合には、接着剤単独接合、接着剤併用接合がある。接着単独接合は、接合に接着

材のみを使用し、強度性能を確保したものをいう。接着併用接合は、接合に接着材とボル

ト・釘など併用して使用し、強度性能を確保したもので、剛性、強度、靭性を補完しあっ

て性能を確保するものをいう。

接着剤は、フェノール樹脂木材接着剤(JIS K 6802)と同等以上の性能をもつものを使用

する。一般的に、接着剤として使用されるものとして、レゾルシノール樹脂木材接着剤、

エポキシ樹脂接着剤、水性高分子イソシアネート系接着剤、ポリウレタン樹脂接着剤、メ

ラミン・ユリア共縮合樹脂接着剤があげられる。

10.4.2 接着接合の留意点【☆☆】

木材に加わる応力度が小さいので、許容応力度の小さい木造に適した接合方法である。

原則的には、木材部分と同一の強度、つまり、一体化された(接合してない)ものと同

等になる。ただし、破壊するときは靱性が乏しいので、原則的には他の接合方法と併用し

ない方が望ましい。

接着時には、圧締圧力と温度管理が重要であるが、接着する材料は含水率が20%を超え

ない範囲で、接着する二材の含水率の差が5%以内となるよう留意する。また、接着する

材面は、乾燥している状態で平滑にし、汚れがないものとする。品質管理の点から、現場

接着は原則的に認められていない。

硬化に関しては、圧締した状態を保って硬化を待つものと、高周波を加えることで硬化

を早めるものがある。高周波で硬化させるものは時間が短縮できる。

11.構造計画 11.1 構造計画の概要【難易度B】

11.1.1 構造計画の意義【☆☆☆】

木質構造に限った話しではないが、建築物が各種荷重に対して安全でしかも機能性、経

済性、使用性のバランスのよいものとなるために合理的な構造計画が必要である。

11.1.2 木質構造の特異性【☆☆☆】

a 木材

・異方性材料である ・脆性的な破壊をする可能性がある ・クリープ現象を起こす

・腐朽し易い ・蟻害を受け易い ・可燃性である

b 木質構造の接合部

・剛性が小さくなる(除 接着接合) ・クリープ現象を起こす

・接合部の変形が建物の変形を大きく支配

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11.1.3 解析のためのモデル化(接合部、骨組、耐力壁、床)【☆】(文献3,p.69)

接合部(継手と仕口)には、木組み、接着、接合具、鋼製部品によるものなどがあり、

これらを用いたときの剛性、耐力、変形能力などを適切に判断し、モデル化する必要があ

る。ピン接合、剛接合、半剛接合に適宜置換する。めり込みが無視できない接合部でも弾

性バネに置換するなど適切にモデル化する。剛床仮定が成り立たない場合は、その柔らか

さを適切に評価する。

11.1.4 全体計画【☆☆】(文献3,p.74-76)

地盤条件の把握、建物規模・形状の検討、構法の特徴とその選択、接合部の計画(強度・

剛性・初期すべり・継手位置)、剛性と靭性の確保、施工・保守・解体・リサイクルに対す

る考慮などが必要となる。

11.1.5 計算方法概要(仕様規定的設計、許容応力度設計)【☆☆☆】

二号建物(法第20条第二号:3以上の階数を有し、又は延べ面積が500m2、高さが13m若し

くは軒の高さが9mを超えるもの)に対しては構造計算が必要。四号建物(法第20条第四号:

階数2以下、かつ延べ面積が500m2以下、かつ高さ13m以下、かつ軒の高さ9m以下)に対し

ては一般的には、全ての項目に対して仕様規定的設計を行なっている。

a 壁量計算(壁倍率、壁量、必要壁量、4分割法)

b 許容応力度等計算

11.1.6 計算方法概要(限界耐力計算)【☆】

二号建物に対しては、一般的に仕様規定(全て)+ 許容応力度等計算を行なうが、仕様

規定(耐久性等)+ 限界耐力計算を行なうこともある。四号建物に対しても、全ての項目

に対して仕様規定的設計を行なうのではなくて、(耐久性等)+ 限界耐力計算を行なうこ

ともある。

損傷限界と安全限界の検証。

1自由度等価線形系としての評価、検討用地震応答スペクトル、耐震性判定基準。

11.1.7 二次設計における検討項目【☆☆】(文献3,p.108-114)

a 層間変形角:定義と意味(1/200 or 1/120 or 準耐火建築物では1/150)

b 剛性率:定義と意味(Rs≧0.6)

c 偏心率:定義と意味(Re≦0.15、ただし、四号建物ではRe≦0.30)

d 保有水平耐力:定義と意味(Ds)

11.1.8 ハイブリッド構造(混構造)【☆☆】(文献3,p.77)

立面的・平面的な混構造がある。いずれの場合も、地震力の分布の扱い方、異種構造間

の接合方法の2点について、純木造とは異なった検討が必要となる。ピロティ形式の場合、

壁の少ないピロティ部を木質構造で造るのは簡単ではなく、RCやSのような構造で作る場合

が多い。この場合、木造部分の剛重比(剛性と重量の比)と他構造部分の剛重比が近いと、

木造部分の地震力が極めて増大するので注意が必要である。平面的混構造では、各部分で

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の剛性及び水平構面の面内剛性、ねじれなどによる影響を考慮して水平力の分担を適正に

行わせるような配慮が必要となる。

また、鉛直荷重を受けると木造部分は仕口部分の緩みが締まることなどにより多少の沈

下を生じるのに対して、他部分は沈下をせずに不同沈下を生じる可能性があるので注意が

必要である。

11.1.9 構造設計事例【☆】

夢のある木質構造を示す構造設計例が示せるとよい。学生に対して(木質)構造系に対

して興味・夢をもたせる。

11.2 荷重・外力【難易度B】 11.2.1 固定荷重【☆☆☆】

建築物の各部分の自重が固定荷重である。建築物の構造、仕上げなどで異なるが、代表

的なものを以下に示す。

屋根:(瓦葺+葺き土あり:980N/m2)、(瓦葺+葺き土あり:940N/m2)、

(薄鉄板葺:200N/m2)

床:(板張:150N/m2)、(畳敷:340N/m2)

壁:(木造建築物の壁の軸組:150N/m2)、(木ずりしっくい塗:340N/m2)、

(鉄網モルタル塗:640N/m2)

11.2.2 積載荷重【☆☆☆】

積載荷重は、建築物の用途で異なるので、原則としてその建築物の状況に応じて計算す

ることとされている。実況によらない場合は、表に与えられた数値を用いてよいが、床の

構造計算をする場合、大梁、柱又は基礎の構造計算をする場合、地震力を計算する場合の

3つに分けてある。床用>軸組・基礎用>地震力算定用のような関係がある。柱の引き抜

けに対しては、過大評価は危険側になることもある。

住宅の居室:(床用1,800N/m2)、(軸組・基礎用:1,300N/m2)、(地震力算定用:600N/m2)

11.2.3 積雪荷重【☆☆☆】

積雪荷重は次式で求められる。

積雪荷重(N) bS A dρ μ= ⋅ ⋅ ⋅

一般地域: 220(N/cm/m )ρ ≥ 、

多雪区域:特定行政丁の定めによるが一般には 230(N/cm/m )ρ ≥

A :屋根の水平投影面積(m2)、 d :垂直積雪量(m)、

bμ :屋根の形状係数(屋根勾配を β とする)

[ cos(1.5 )( 60 )β β ≤ ° , 0( 60 )β > ° ,1.0(屋根雪止め)]

雪下ろしの状況に応じて d を1(m)まで低減可能。

屋根全体に一様に分布しているより、その一部が溶けるなどして不均等な分布となる方

が不利。

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11.2.4 地震荷重【☆☆☆】

建築物の地上部分の地震力は以下のように求められる。

当該階(i階)における地震層せん断力: i i iQ C W= ⋅

当該階における地震層せん断力係数: 0i t iC Z R A C= ⋅ ⋅ ⋅

Z :地震地域係数(1.0~0.7)、

tR :建築物の弾性域における固有周期と地盤の関係に基づく地震入力の低減係数、

iA :地震層せん断力の高さ方向の分布係数、

0C :標準層せん断力係数 0C ≧0.2(地盤が著しく軟弱な区域の木造建築物では≧

0.3、必要保有水平耐力計算の場合は≧1.0)

11.2.5 風圧力(構造骨組用)【☆☆☆】(文献3,p.92-93)

風圧力は次式で求められる。 風圧力(N/m2) fW q C= ⋅

速度圧(N/m2) : 200.6q E V= ⋅ ⋅ 、

屋根の高さおよび周辺の状況に応じて算出される数値: 2r fE E G= ⋅ 、

地方区分ごとに定められた平均風速(m/s): 0V 、

風力係数: f pe piC C C= − (外圧係数-内圧係数)

よって速度圧は、建物の高さ方向に関係なく建物に固有、風力係数は建築物の断面形状、

部位によって変わるので風圧力も変わる。

11.2.6 風圧力(外装材用、屋根葺き材用)【☆】

屋根葺き材、外装材および屋外に面する帳壁に対して適用する。風圧力は、平均速度圧

にピーク風力係数を乗じて算出する。

11.2.7 その他の荷重(土圧・水圧・震動・衝撃)【☆】

建築物の実況に応じて、土圧、水圧、震動及び衝撃による外力を採用しなければならな

い。

11.2.8 許容応力度等計算に用いられる力の組み合わせ【☆☆☆】

固定荷重によって生じる力G,積載荷重によって生じる力P,積雪荷重によって生じる力S,

風荷重によって生じる力W,地震力によって生じる力Kの組み合わせを下表に示す。これか

らわかるようにK+Wの組み合わせは考えない。多雪区域では、暴風時にG+P+Wと

G+P+0.35S+Wの両方を検討する。さらに、柱の引き抜きを検討する場合は、実況に応じてP

を低減する。

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表11.1 許容応力度等計算に用いられる力の組み合わせ

力の種類 荷重及び外力

について想定

する状態 一般の場合

第86条第2項ただし

書きの規定によって

特定行政庁が指定す

る多雪区域における

場合

備 考

長期に生ずる

力 常時

G+P G+P

積雪時 G+P+0.7S

短期に生ずる

積雪時 G+P+S G+P+S

暴風時 G+P+W

G+P+W 建築物の転倒、柱の引

抜き等を検討する場

合においては、Pにつ

いては、建築物の実況

に応じて積載荷重を

減らした数値による

ものとする。

G+P+0.35S+W

地震時 G+P+K G+P+0.35S+K

11.2.9 限界耐力計算用の力の組み合わせ【☆】

11.2.10 品確法の荷重【☆☆】

等級1,2,3。

「付録 建築基準法と品確法との相異点(耐力壁量等)」を参照。

11.3 鉛直荷重に対する構造計画【難易度B】 11.3.1 鉛直荷重の地盤までの一般的な流れ【☆☆☆】(文献3,p.78)

固定荷重、積載荷重、積雪荷重などの鉛直荷重は、柱、梁などの軸組により荷重を 終

的に地盤まで流す。

11.3.2 架構配置の基本【☆☆☆】(文献3,p.79)

応力・架構剛性の均一化を図り、柱・耐力壁の配置は、上下階で一致させる。

基礎反力の均一化のために、構造耐力上主要な部分の基礎は鉄筋コンクリート造の布基

礎またはベタ基礎が望ましい。荷重を分担する軸組の下には必ず基礎を設け、土台あるい

は柱脚と緊結する。

極めて希

に発生す

る外乱

材料強度による耐力の確認 積雪時 暴風時

一般区域 G+P+1.4S G+P+1.6W

多雪区域 G+P+1.4S G+P+1.6W G+P+0.35S+1.6W

安全限界に対する確認

保有水平耐力の確認

建築物の転倒、柱の引き抜きなどを検討する場合、

Pを実況に応じて低減する。

希に発生

する外乱

許 容 応 力 度 設 計 損傷限界に対する確認

損傷限界耐力の確認 層間変形角≦1/200(1/120)

長期荷重G,P 積雪荷重S 風荷重W 地震荷重K 加速度応答スペクトルにより各

限界時の固有周期から算出

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11.4 水平荷重に対する構造計画【難易度B】 11.4.1 水平荷重の地盤までの一般的な流れ【☆☆☆】(文献3,p.81)

壁や屋根に加わった水平力は、小屋組と床組を通って各階の耐力壁を介して流され、

終的に基礎、地盤へと伝える。

11.4.2 水平耐力要素配置の基本(水平面、鉛直面)【☆☆☆】(文献3,p.84-85)

釣り合いのよい配置のために,耐力壁線上での耐力壁の配置に一定の方針や制約を設け

るのがよい。

平面を閉じた耐力壁線によって区画するのがよい。耐力壁線上の開口部の大きさには制

限が設けられており、プレハブ構法や枠組壁工法では、1つの耐力壁線上に設ける開口部

の幅は、4m以下とし、かつその幅の合計はその耐力壁線の長さの3/4以下となるように規定

されている。また、耐力壁線のずれが平面上で2m以内で、かつ床の面内剛性が確保されて

いる場合には1本の耐力壁線とみなせる。

隣接する耐力壁線相互の距離と耐力壁線で囲まれる1区画の面積(水平投影面積)に制

限が設けられている。一般に軸組構法では、耐力壁線相互の距離は8m以下(靭性の高い耐

力壁+床の高い面内剛性の場合は12m以下)、枠組壁工法では構造計算を行わない場合には

12m以下、プレハブ構法では8m以下(構造計算を行う場合は12m以下)としている。1区画

の水平投影面積は、枠組壁工法、プレハブ構法ともに40m2以下(剛な床構面がある場合に

は、60m2以下)が目安となっている。

上下階の耐力壁線を一致させるようにし、下階の壁の直上に耐力壁を設けるか、市松状

に配置するのがよい。

いわゆる品確法においても、次のようなものが別途導入されている。耐力壁線相互の

大間隔、構造計算との整合性を考慮した必要壁量、必要床倍率以上の存在床倍率の確保、

必要接合部倍率以上の存在接合部倍率の確保の導入などである。

11.4.3 水平構面の面内剛性確保【☆☆☆】(文献3,p.244)

床面・屋根面・小屋梁面を鉛直構面との水平力の伝達が確実なものとする必要がある。

そのためには床面や屋根面に火打ち材を入れる、面内剛性の高いパネルを配置する、構造

用合板や板材の張り付けによるダイアフラム化などの方法がある。

12. 木質構造の耐久性 12.1 耐久性計画【難易度A】

12.1.1 耐用年数【☆☆☆】

木質構造部材の耐用年数に影響する要因は、設計・施工条件として使用材料や構法の良

否、施工や維持管理の良否があり、環境・使用条件として気象、建設地域、建物の使い方

など、多岐にわたる。

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12.1.2 ライフサイクル【☆】

建物のライフサイクルコストは、企画設計、建物、維持管理、排気処分に大別され、ラ

イフサイクル期間における維持管理費の占める比率が比較的大きい。維持管理に必要な費

用のうち、経常的経費は保守管理費、運営管理費、一般管理費があり、臨時的経費は修繕

更新費、改良模様替費がある。

12.1.3 換気【☆☆☆】

小屋裏には、小屋裏給排気、軒裏給排気、軒裏給気・小屋裏排気、軒裏給気・排気塔排

気などの換気措置を行い、乾燥を心掛ける。床下換気については、「15.基礎の設計」を参

照。

12.1.4 結露現象【☆☆☆】

結露現象は、水蒸気を含んだ、暖かい空気が露点温度以下の冷たい壁面に触れることに

より起こる。結露する場所としては壁体表面および壁体内部とがある。結露防止策は、躯

体の断熱性能を確保する。

12.1.5 断熱材【☆☆】

屋根、外気などに接する天井・壁・床、開口部を断熱構造とする。

基礎断熱工法とは、床に断熱材を設けず、基礎の外側、内側または両側に地盤に垂直に

断熱材を施工し、床下換気口を設けない工法をいう。床下換気口を設けないため床下地盤

からの防湿を入念に行う。

さらに、開口部の断熱性能を高め、暖冷房の効率を高めるため、建具やガラスの仕様、

庇やカーテンなどの設置、開口部の機密性能などの検討が求められる。

12.1.6 床下防湿措置【☆☆】

地盤面から基礎上場までの高さを400mm以上とする。床下の防湿措置として、床下に厚

さ60mm以上のコンクリートまたは厚さ0.1mm以上の防湿フィルムで覆う。

12.1.7 外壁通気構造【☆☆】

通気構造とは、壁体内に通気経路を設けた構造で、外壁仕上げと軸組などの間に中空層

を設けるなど軸組が雨水に接触することを防止するための有効な措置が行われたものや、

軒の出を90cm以上設け、柱が直接外気に接する真壁構造がある。

12.1.8 雨仕舞【☆☆☆】

雨水が建物の中に浸入する注意箇所としては、屋根・外壁・開口部・バルコニーなどが

ある。これらには、雨押え、水返し、水たれ勾配、水切りなどを設け、シーリング材を充

分に充填し、水の浸入を防止する。

12.1.9 維持保全【☆☆】

保全とは、建物が存続する期間において、全体または部分の性能および機能を使用目的

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35

に適合するように維持することである。その内容は、修繕、更新、点検、保守、清掃など

である。

点検の主な部位や性能は、建物全体、構造躯体、基礎、床組、外壁、小屋組、などであ

り、共通項目として、生物劣化(腐朽・蟻害)、接合金物がある。

表12.1 保守点検項目と内容 部位 屋根 外壁 建具 内壁 天井 床

点検項目 仕上げ 下地

軒裏換気口

仕上げ 下地 水切り

床下換気口

雨戸 サッシ 網戸 雨どい

仕上げ 下地

仕上げ 下地

仕上げ 下地

日常における給排水管やガス管の維持管理(点検・清掃・修繕)のしやすさを配慮する。

12.1.10 劣化診断【☆】

劣化診断とは、建物または部材の劣化程度を調査・判断し、劣化外力の影響、設計、施

工、維持管理状態などとの関連性を把握することである。

診断の主な部位や性能は、建物全体、構造躯体、基礎、床組、外壁、小屋組、などであ

り、共通項目として、生物劣化(腐朽・蟻害)、接合金物がある。

表12.2 劣化現象の種類と内容 部位 基礎 床組 外壁 小屋組 木材 接合金物

劣化現象 および 性能低下

亀裂 破損

土台とのず

剛性低下 傾斜

ふくれ(浮

き)

亀裂 剥離 損傷

たわみ ふくれ(浮

き) 断面減少

錆化 汚れ 欠損

診断方法は、目視観察、簡易な工具・測定器具などにより劣化の程度を判定する。

12.2 防腐・防蟻・防虫【難易度A】 12.2.1 構造材【☆☆☆】

構造耐力上主要な部分で特に腐朽の恐れのあるものについては、腐朽しにくい材料また

は有効な防腐措置をした材料を使用する。構造材としては、含水率21%以下が望ましい。

12.2.2 薬剤処理【☆☆☆】

地盤面上1m以下の外壁の軸組および木質系下地材に防腐・防蟻措置を行う。

薬剤処理とは、有効な薬剤を塗布、加圧注入、侵漬、吹き付け、接着剤に混入したもの

をいい、現場処理と工場処理があるが、いずれも地下水汚染など、環境への配慮が求めら

れる。

12.2.3 浴室ユニット・ベタ基礎【☆☆☆】

浴室の軸組・床組・天井、脱衣室の軸組・床組に防水措置を行う。浴室にユニットを使

用することは、防水措置として効果的である。

鉄筋コンクリート造のべた基礎、布基礎の内周部の地盤上をコンクリートで覆ったもの

は、防蟻上有効である。

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12.2.4 土壌防蟻処理【☆☆】

土壌処理を行う部分は、外周部布基礎の内側および内部布基礎の周辺20cmならびに束石

などの周囲20cm以上とする。床下土壌面からのシロアリの侵入を阻止する防蟻シートを床

下の土壌面に敷設することも有効である。

12.3 金物の防錆【難易度B】 12.3.1 防錆処理の種類と特性【☆☆☆】

錆びの発生を防止し、外観と機能を守り、建物の寿命をのばす。処理の代表的なものを

以下に示す。

a電気亜鉛めっき処理:めっき面への美観・防食に配慮(塗装)が必要

bダクロダイズド処理:優れた耐蝕性と耐熱性を持つ銀白色の被膜を形成、

各分野で幅広く採用

cカチオン電着塗装:全表面に均一な膜厚で塗装されるので、優れた防錆力を持つ

13.部材の設計 13.1 引張材【難易度B】

13.1.1 断面設計【☆☆☆】

引張に対する断面設計は下記の式によるが、木材の節、切欠き、穴などの断面欠損の影

響を考慮した有効断面積を用いる必要がある。

/ ≤e tN A f

N :設計用軸方向引張力

eA :有効断面積

tf :許容引張応力度

13.1.2 有効断面積【☆☆☆】(文献3,p.122-123)

切欠き,孔を有する場合の有効断面積は下記の式によるが、断面欠損は1/4以下としなけ

ればならない。

(a)切り欠きを有する場合: ( ') 0.5= − ×eA b h h

(b)穴を有する場合: (1 / )φ= −eA h bh

ただし、b:材幅、h:材せい、h’:切欠き高さ、φ:穴径

13.2 圧縮材(単一材)【難易度B】 13.2.1 断面設計【☆☆☆】

圧縮に対する断面設計では座屈の考慮が必要であり、下式による。長期荷重に対しては

クリープの考慮、圧縮部材が他材と直交または斜交して接触する接合部ではめり込みの検

定が必要である。

/ ≤ kN A f

N :設計用軸方向圧縮力

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A :全断面積

kf :許容座屈応力度

13.2.2 許容座屈応力度【☆☆☆】(文献3,p.125)

許容座屈応力度は次式で表せる。

η=k cf f

η:座屈低減係数

cf :許容圧縮応力度

13.2.3 めり込みの検定【☆☆☆】

次式により部分圧縮(めり込み)の検定を行う。

/ θ≤ cN A f

N :設計用軸方向圧縮力

A :全断面積

θcf :繊維と角度θをなす方向の許容部分圧縮応力度

仕口の変形が構造物全体に及ぼす影響が大きいので十分な剛性を確保するよう注意が必

要である。

13.3 複合圧縮材の設計【難易度C】(文献3,p.131) 設計は単一圧縮材に準じるが、細長比の算定に当たって有効断面二次モーメントIeを用い

る。平行な2つの主材の間を数個のつなぎ材で止めた複合圧縮材では、各主材を柱として

つなぎ材の剛比kを有する梁と考えたラーメンの圧縮耐力に等しくなると考え、Ieを求めて

座屈荷重を算定する方法がある。

13.4 曲げ材(単一材)【難易度B】(文献3,p.138-140) 13.4.1 断面設計【☆☆☆】

曲げ応力度の検定を次式で行なう。

/ ≤e bM Z f

M :設計用曲げモーメント

eZ :有効断面係数

eZ Z= (全断面係数:切欠きがない場合),

0Z= (正味断面係数:圧縮側に切欠きがある場合),

00.6 Z= × (引張側にせいが1/4以下の切欠き),

00.45 Z= × (引張側にせいが1/3以下の切欠き)

bf :許容曲げ応力度(横座屈が起こる可能性があるときは低減の必要性。

適切な間隔の振れ止め材の必要性。)

せん断応力度の検定を次式で行なう。

/α ≤e sQ A f

α :形状係数

Q :設計用せん断力

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eA :せん断有効断面積

eA A= (全断面積:切欠きがない場合)

0A= (正味断面積:圧縮側に切欠きがある場合)

20 /A A= (引張側に切欠きがある場合)

sf :許容せん断応力度

13.4.2 スパンのとり方【☆☆☆】(文献3,p.135)

曲げ材のスパンは両支点の中心距離を原則とするが、方杖などの構造形式の場合は、ス

パンのとり方に注意する。ただし、柱の剛性や仕口のゆるみなどを考慮する必要がある。

13.4.3 たわみ制限(必要剛性)【☆☆☆】(文献3,p.136)

たわみには、長期載荷によって次第にたわみが増大するクリープたわみと、繰り返し荷

重や振動のときに生じる弾性たわみの2つがある。

クリープ後のたわみは、スパンlに対して次のようなたわみ制限値が推奨されている。

梁:l/300以下、 床板(板張り):l/500以下、 母屋:l/200以下

13.4.4 たわみの検討【☆☆☆】

通常の場合は、初期変形における 大たわみによる障害がないことを検討する。クリー

プ後の曲げ部材のたわみは、弾性たわみとクリープたわみの合計となるが、これによる障

害がないことを確かめる必要がある。振動による心理的不安を避けるには、一般に梁の振

動数として10Hz前後を避けたり、たわみの限度を2cmに抑えたりする必要がある。

梁などの変形又は振動によって建築物の使用上の支障が起こらないことを下式で確認す

ることが推奨されている。木造では変形増大係数=2である。

≤×固定荷重および積載荷重(地震力算定用)による 大たわみ 変形増大係数 1

部材の有効長さ 250

13.4.5 主軸以外に曲げを受ける場合【☆】(文献3,p.143,148)

主軸以外の方向に曲げを受ける材では、作用する曲げモーメントを2つの主軸x, yに分解し

て次式により設計する。 / /+ ≤x ex y ey bM Z M Z f

xM :x-x軸まわりの設計用曲げモーメント

yM :y-y軸まわりの設計用曲げモーメント

exZ :x-x軸に関する有効断面係数

eyZ :y-y軸に関する有効断面係数

13.4.6 変断面曲げ材(集成材)【☆】(文献3,p.161)

変断面曲げ材は、いわゆるテーパービームといわれているものである。勾配面に目切れ

が生じるのでこの影響のない程度の勾配にするか、勾配面にさらにひき板を積層接着する

のが望ましい。集成材の製造基準では通直部は1/10以下、湾曲部は1/15以下の勾配とし、こ

れを越える部分は有効断面とみなさない。

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13.4.7 湾曲材(集成材)【☆】

集成材で作成した湾曲材が曲げを受ける場合には以下のようなことに注意する必要があ

る。

許容曲げ応力度:曲率が大きいほど低減される。ラミナ厚と曲率半径との比率 /t ρ が大き

くなるほど低減は少なくなるが限界がある。

曲げモーメントが曲率半径を増す方向に働くとき:繊維と直角方向に引張が生じるので

注意必要。

曲げモーメントが曲率半径を減じる方向に働くとき:繊維と直角方向に圧縮が働き、許

容圧縮応力度以下に収める。

13.5 組み立て曲げ材(重ね梁および重ね透し梁)【難易度C】(文献3,p.153) 重ね梁としてメカニカルな接合具を用いて構成する圧入ジベル重ね梁や材を平行に重ね

て全接触面を接着した重ね梁、弦材の間につなぎ材を接着接合した重ね透し梁がある。重

ね透し梁の場合は、設計・施工の良否に大きく左右されせん断に対する剛性が低くなって

重ね梁より劣悪なものとなる場合があるので注意を要する。重ね梁を一体とみなしたとき

の断面二次モーメントIおよび断面係数Zに対して有効係数を乗じることにより求めた有効

断面二次モーメントIe、有効断面係数Zeを用いて設計を行なう。圧入ジベル重ね梁を例にと

ると、2主材の場合はIe=0.7 I, Ze=0.75Zであり、3主材の場合はIe=0.55 I, Ze=0.6Zである。

13.6 組み立て曲げ材(釘打ち充腹梁、接着充腹梁)【難易度C】(文献3,p.159) ウェブ材を斜めに釘で打ちつけた充腹梁やウェブとなる合板を上下の弦材に接着した接

着充腹梁がある。この場合も、適切な断面二次モーメント、断面一次モーメントや断面係

数を用いて断面設計を行なうことが大切である。

13.7 トラス梁【難易度C】 13.7.1 弦材の応力度【☆☆☆】

山形トラスでは、合掌に圧縮力が、陸梁には引張力が生じ、その大きさは支点に近いほ

ど大きくなる。平行弦トラスでは、上弦材に圧縮力、下弦材には引張力が生じ、その大き

さはスパン中央部に近いほど大きい。

原理的には部材に引張力・圧縮力の軸方向力のみが生じることになっているが、実際に

は合掌材に大きな曲げモーメントが作用するような納まりとなることも多く、この場合は

適切に評価する必要がある。応力は節点法、図解法、マトリクス法などによって求める。

13.7.2 たわみ計算【☆☆☆】

仮想仕事法、マトリクス法などによりトラスの変形を計算することによりたわみを求め

る。この際に、接合部の変形を適切に評価しないと実際と大きく異なることがある。

構面内座屈と構面外座屈の両方を検討する必要がある。

13.8 (曲げ+引張)材の断面設計【難易度B】 曲げを伴う引張材は、下式を用いて応力度の検定を行う。

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( )( ) ( )( )/ 1/ / 1/ 1e t e bN A f M Z f+ ≤

N :設計用軸方向引張力

M :設計用曲げモーメント

eA :有効断面積

eZ :有効断面係数

tf :許容引張応力度

bf :許容曲げモーメント

13.9 (曲げ+圧縮)材の断面設計【難易度B】 曲げを伴う圧縮材は、下式を用いて応力度の検定を行う。

( )( ) ( )( )/ 1/ / 1/ 1c e bN A f M Z fη + ≤

N :設計用軸方向引張力

M :設計用曲げモーメント

A :全断面積

eZ :有効断面係数

cf :許容圧縮応力度

bf :許容曲げモーメント

η:座屈低減係数

13.10 異樹種・異等級ラミナ構成曲げ材(集成材)【難易度C】(文献3,p.164) 2種以上の樹種または異等級のラミナによって構成された集成材の場合、曲げ設計に用

いる等価断面係数 qZ は、次式で求める。

/( / 2)q qZ I h=

qI :等価断面における中立軸に関する断面二次モーメント

等価断面の等価材幅は以下のように求める。 1 1 0 2 2 0/( / ), /( / )q qb b E E b b E E= =

b :実断面の材幅

0E :基準層(0層)を構成するラミナのヤング係数

1E :1層を構成するラミナのヤング係数

2E :2層を構成するラミナのヤング係数

せん断応力度の検定は次式による。

' /qy qy q syQS b I f≤

Q :せん断力

'qyS :等価断面における中立軸からyの距離より外縁側部分の中立軸に関する

断面一次モーメント qyb :等価断面における中立軸からの距離yの点の材幅

qI :等価断面における中立軸に関する断面二次モーメント

syf :等価断面における中立軸からの距離yの点にあるラミナの許容せん断応力度

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14. 壁の設計 14.1 鉛直荷重【難易度B】

14.1.1 軸組構法【☆☆☆】(文献2,p.24)

軸組工法とは、柱と横架材(梁・桁)によって構成された、軸組を主体とする構法であ

る。

図14.1 在来軸組構法(出典:日本建築学会、構造用教材)

14.1.2 通し柱【☆☆】

2階建ての場合、2階隅角部や構造上重要な軸組の交差部に通し柱を設ける。

14.1.3 管柱【☆☆】

管柱は上部の荷重を土台に伝える部材で、隅角部や壁交差部のほか、1820mmを越える長

い壁の中間に設ける。主要部材である柱を表しにした構法を真壁造といい、和室に用いら

れ、壁の骨組として柱の間に水平に貫を通す。柱を壁で隠した構法を大壁造といい、洋室

に用いられ、壁の骨組として柱の間に間柱を設ける。柱脚柱頭の接合部に関する規定が明

確化された。

14.1.4 間柱【☆☆】

壁の骨組として、柱の間に455mm間隔に間柱を設ける。

14.1.5 胴差【☆☆】

1階と2階の管柱の間に設けられた横架材を胴差いう。断面は105×150以上を標準とする。

平胴差交差部の補強には短冊金物を、隅各部の補強にはかね折金物を用いる。

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14.1.6 柱の座屈【☆☆】

土台と胴差や桁などの横架材間距離によって、座屈防止のための柱の小径が決まる。

14.1.7 土台のめり込み【☆☆】

上部荷重による、土台のめりこみを考慮し、断面は柱同寸以上とし、120角以上を標準と

する。

「13.部材の設計」を参照。

14.1.8 壁式構造【☆☆☆】(文献2,p.24)

代表的なものに枠組壁工法があり、枠組に構造用合板などを釘で打ち付けた壁体および

床で荷重・外力に耐える構法である。

図14.2 枠組壁工法(出典:日本建築学会 構造用教材)

14.1.9 壁枠組【☆☆】

耐力壁線相互の間隔は8m以下とし、耐力壁線に囲まれる面積は40m2以内とする。耐力壁

線に設ける開口部の幅は4m以下とし、耐力壁線の長さの3/4以下とする。

14.2 水平荷重【難易度B】 14.2.1 耐力壁の種類と倍率【☆☆☆】

地震や風などの水平力に対しては、耐力壁が抵抗する。耐力壁には、構造用合板やせっ

こうボードを用いた面材と筋かいなどがあり、釘の種類と間隔、断面寸法と金物が決めら

れている。耐力壁の配置は、外周壁の1/4以上、隅角部はL字に、上下階の位置は一致、耐力

壁で囲まれた面積40m2以下とする。

「11.構造計画」を参照。

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14.2.2 試験方法と評価方法【☆】

試験方法には、タイロッドを用いる方法と柱脚固定式があり、どちらも正負交番繰返し

加力とする。評価方法は、せん断変形角を求め、短期基準せん断耐力より短期許容せん断

耐力を算定し、壁倍率を算定する。算出された数値は0.5~5までの範囲の数値とする。

14.2.3 地震力【☆☆】

地震力に対する耐震壁量は、床面積に比例する。在来軸組構法の地震に対する必要壁量

の算出において、積雪荷重が考慮されていないので、多雪地域では危険側となるため、安

全な構造設計が求められる。

「11.構造計画」を参照。

14.2.4 風圧力【☆☆】

風圧力に対する耐風壁量は、見付面積に比例する。

「11.構造計画」を参照。

14.2.5 層間変形角【☆】

「11.構造計画」を参照。

14.3 壁量計算【難易度C】 14.3.1 有効壁量【☆☆☆】

必要壁量の根拠には、雑壁などの非耐力部分が建物全体の外力の1/3を負担するとしてい

る。従来の必要壁量の考え方において、ツーバイフォー構法では設定されている多雪区域

の壁量割り増しがないこと、セットバックした場合に適合しないことなどの問題点がある。

「付録.建築基準法と品確法との相違点(耐力壁量等)」を参照。

14.3.2 軸組の配置【☆☆】

耐力壁の配置は釣り合いよく配置するが、偏心の確認をおこなう。方法は、4分割法と

呼ばれる壁量による方法と偏心率を計算し0.3以下とする方法がある。

15. 基礎の設計 15.1 基礎の種類【難易度A】

15.1.1 各種の基礎【☆☆☆】(文献2,p.11)

基礎には、直接基礎と杭基礎があり、各種基礎の併用は不同沈下の原因となる。

平成12年建設省告示第1347号「建築物の基礎の構造方法及び構造計算の基準を定める件」

における地盤の長期に生じる力に対する許容応力度と基礎の種類の関係。

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図15.1 基礎の種類(出典:日本建築学会、構造用教材)

15.1.2 杭基礎【☆☆】

杭には支持杭、摩擦杭、場所打ち杭などがあり、既成杭には鋼管製とコンクリート製が

ある。

15.1.3 地盤改良工法【☆】

地盤改良法には、表層・置換・固結などがあり、改良をおこなう際は、周辺の環境汚染

に配慮する。そのほか、近年開発されたものとして小径鋼管多数本打ちなどがある。

15.2 地盤と地耐力【難易度A】 15.2.1 地盤【☆☆☆】(文献2,p.6)

支持地盤としては1万年前~100万年前に形成された洪積層が適し、1万年前以降に形成さ

れた沖積層は軟弱土である。地下水位の浅い均質な砂層では、地震の振動で、地盤が強度

を失い液状化が起こる。

図15.2 沖積低地部地層構成(出典:日本建築学会、構造用教材)

15.2.2 地盤調査【☆☆】

調査の目的は、地盤の地耐力および構成を知ることにある。事前調査には机上調査、現

場踏査がある。

15.2.3 試験方法【☆】

試験には、スウェーデン式サウンディングやボーリング、試験掘りなどがある。

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15.2.4 地業【☆☆】

基礎の下には、砂利締め地業をおこなう。捨コンは施工上必要だが、強度は期待できな

い。

15.3 布基礎の設計【難易度A】 15.3.1 構造計算手法【☆☆☆】

建物に作用する鉛直荷重と水平力により上部構造に生ずる引張り力に対し、充分な耐力

のある基礎を設計し、地盤の長期許容応力度に応じた寸法や配筋を決定する。

15.3.2 布基礎の配置【☆☆☆】(文献3,p.225)

布基礎の配置は、1階外周壁直下および1階内部耐力壁直下とし、布基礎交点間が4550mm

を超えた場合は、長さ450mmの控布基礎を設ける。

15.3.3 補強【☆☆】(文献3,p.225)

布基礎の弱点である、床下換気口およびコーナー部は補強する。

15.3.4 設備配管【☆☆】

基礎への設備配管によるスリーブは補強する。

15.3.5 アンカーボルト【☆☆】(文献3,p.168)

基礎と土台はアンカーボルトで緊結する。設置位置は筋かい上端部の柱下部および耐力

壁の両端とする。間隔は2730mm以内とし、埋め込み長さは250mm以上とする。

15.3.6 床下換気口【☆☆】

外壁の床下部に長さ4m以下ごとに有効面積300cm2以上の換気口、ねこ土台の場合は全周

に1m当たり有効面積75cm2以上の換気口を設ける。

15.4 ベタ基礎の設計【難易度C】 15.4.1 地耐力との関係【☆☆】(文献3,p.230)

地盤の長期許容応力度に応じて、寸法および配筋を決定する。配筋はシングルでも良い。

16. 床の設計(鉛直力) 16.1 床版の設計【難易度B】

16.1.1 床版の種類【☆☆☆】(文献3,p.236)

床版の種類には、製材床下地、合板床下地、縁甲板張り、複合床張り等がある。通常、

木質構造の床は組上形式のため、各部材相互の協力効果は期待できない。そのため各部材

は、単独の単純としてたわみや応力の計算を行う。

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16.1.2 床板の断面算定【☆☆】

床板の断面算定は固定過重、積載過重、衝撃過重等に対して行う。床板の断面算定につ

いては、積載荷重を1800N/m2で行えばそれで良い訳ではない。例えば、人の静止荷重(600

~800N)は歩行による衝撃を考慮すれば約2割増となり、800~1000Nの荷重が一点(根太

間隔中央)に作用した場合について応力・たわみを求めることになる。

16.1.3 有効幅、歩行剛性感【☆】

床板の種類や材料幅、相互協力の可否(実の有無等)別に、集中荷重的な鉛直荷重に対

する有効幅を考慮する。歩行時にたわみ変形が感じられるようだと質感を損ねてしまうた

め、人荷重に対しては十分な剛性感を確保すると共に、たわみの目標設計値を検討スパン

の1/600以下とするのが望ましい。

16.2 根太の設計【難易度B】 16.2.1 許容応力度、たわみ、クリープ【☆☆☆】

床版単位当たりの荷重、断面を想定し、単一部材として許容応力度(主に曲げの許容応

力度に対して)や、通常のたわみおよびクリープを考慮したたわみについて検討する。

16.2.2 根太1本への人過重【☆☆☆】

床板同様、等分布荷重に対して検討を行った後、根太1本への人荷重についても検討す

る。安普請感を与えないようにたわみを抑制すると共に、床鳴り等にも注意を要する。

16.2.3 負担幅、曲げおよびせん断許容応力度【☆☆】

根太1本当たりの負担幅に対する荷重を想定し、根太の曲げ・せん断の各許容応力度につ

いて検討する。固定および積載の等分布荷重によるたわみは、人荷重でスパンの1/600以下、

クリープ後でも1/300以下となるように留意する。

16.2.4 集中荷重【☆】(文献3,p.238)

根太等に集中荷重が作用する場合、根太は単独で集中荷重を受けるのではなく、床板を

介して隣接部材にも荷重が伝達される。これを 2 Way Actionという。

一般的な床板厚さと根太間隔、根太断面の場合、根太単独の場合に比して70~80%のた

わみに低減すると考えられる。なお、この効果は床板の一部に集中荷重が作用した場合で

あり、積載荷重のように床面全面に作用する荷重には効果ない。

16.3 梁の設計【難易度B】 16.3.1 大引、力根太、梁【☆☆☆】

大引・力根太・梁の設計については「13.部材の設計」に準じる。応力度と変形(たわみ、

クリープ後のたわみも含めて)を求め、許容値以下であることを確認する。

16.3.2 応力、変形(たわみ・クリープ)【☆☆】

居住性や質感に留意し、たわみは可能な限り少なくなるようにする。

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16.3.3 根太欠き等局部的な欠込み【☆】

通常、根太欠きや渡りアゴのような極めて局部的な欠き込みについては計算上無視して

も構わない。

16.3.4 床のたわみ【☆☆】

一般的な木造住宅の場合、床たわみが1~1.5cmであればクレームは少ないと言われてい

る。

16.4 ストレススキン効果【難易度C】 16.4.1 釘接合と接着接合による違い【☆☆】

床下地に合板等の面材を用いると、面材と梁との一体性が高まり一種の複合部材となる

が、面材を釘で止めている場合、接合部分で若干のすべりを生じるため複合効果は減ずる。

一方、硬く強固な接着剤で全ての面材と面材が受け材を介して接着されていれば、床板と

梁は一体と見なせる。

16.4.2 ストレストスキン効果の意味【☆☆】(文献3,p.241)

面材と根太や梁が強固な接着剤により一体化された床版の場合、T型断面の複合部材と

なって構造性能が向上する。これをストレススキン効果という。

16.4.3 根太の2 Way Actionとの違い【☆】

ストレススキン効果は、根太の設計の項で述べた2 Way Actionとはメカニズムが異なり、

また等分布荷重に対しても有効である。

16.4.4 有効幅、曲げ剛性【☆】(文献3,p.241)

面材や梁からなる複合部材の設計は有効幅を用いて算出するが、曲げ剛性EIは実験値を

用いる場合が多い。

17. 床の設計(水平力) 17.1 水平構面の意味と役割【難易度B】

17.1.1 水平構面の意味【☆☆☆】

水平構面とは、床面、小屋面、屋根面等、水平または水平に近い建物の面をいう。

17.1.2 水平構面の役割【☆☆】(文献3,p.242-243)

水平構面には鉛直荷重を支える他、地震力や風圧力などの水平力に対して建物が抵抗で

きるよう建物の平面形をできるだけ保持することで、水平抵抗要素である耐力壁へ応力を

伝達するという役割がある。

水平力を受けたとき各耐力壁線および耐力壁の存在しない軸組線の水平変位をできるだ

け等しくすることで、上階から伝わる層せん断力を下階の耐力壁線に伝達する。

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17.2 水平構面の種類と主な用途【難易度B】 17.2.1 水平構面の形式種類【☆☆☆】

木質構造における水平構面には、面材を張ったダイアフラム、火打材を用いた構面、製

材(斜め張り・根太(垂木)と直交張り)を用いた構面があり、住宅等に標準的に使用され

ている。この他、水平トラス等もあるが、こちらは木造校舎や体育館等の中・大規模建築

で使用される。

17.3 水平力に対する挙動【難易度C】 17.3.1 柔床と剛床【☆☆】

柔床とは転ばし根太形式(火打ちの有無は問わない)のような水平構面を指し、剛床と

は面材と梁や根太が密に釘打ちされたような強固に接合された形式をいう。

17.3.2 設計上は完全剛床仮定による偏心率【☆☆】

通常、水平力に対する木質構造の設計は、剛床仮定のもと耐力壁の(一定変形時の耐力

の)合計を建物の耐力とし、かつ剛床仮定のもとで偏心率も扱われている。

17.3.3 低剛性の水平構面の問題点【☆】(文献3,p.243)

建物にはさまざまな剛性をもつ耐力壁線や耐力壁の存在しない構面があるため、剛性の

低い水平構面が水平力を受けた場合、各耐力壁線がばらばらに変形し、弱い軸組線や耐力

壁線から各個撃破されてしまう。

17.3.4 剛床でない場合、各耐力壁線毎に検討【☆】

水平構面が柔らかく剛床仮定が担保できない場合、各耐力壁線の荷重負担について平面

的かつ立体的に構造安全性を検討する必要がある。

17.4 水平構面の水平力【難易度B】 17.4.1 ダイアフラムの優位性【☆☆☆】(文献3,p.245)

ダイアフラムのメカニズムはI型梁と同じで水平剛性が高い。剛性の高い床構面を得る

ためには、合板等の面材を直張りすることが有効である。

17.4.2 品確法上の床倍率の計算値と実験値【☆☆】

住宅の品質確保促進法においては、床倍率という考え方が導入されており、水平構面に

ついての構造安全性を担保している。

例:構造用合板24mmの直張四周釘打ちの場合、床倍率は3となる。

17.4.3 加力実験値【☆】(文献3,p.244)

在来構法における床組構成の水平加力実験によれば、火打ちの有無による剛性の差は明

確であり一応の効果はあると考えて良い。しかしながら、合板を下地として張ることで格

段に剛性を高めることができる。

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17.5 水平構面の設計(ダイアフラム)【難易度C】 17.5.1 水平抵抗メカニズム【☆☆】(文献3,p.246)

水平抵抗メカニズムとしてはI型梁と同じと考えて良く、外周部に配置された桁や胴差、

梁等がフランジとして曲げによる引張応力や圧縮応力に抵抗し、床面材がウェブとしてせ

ん断応力に抵抗する。床構面をダイアフラムとすると、床の水平構面が耐力壁線を支点と

したスパンに大きな梁せいの梁を架けたような効果を示し、その水平剛性は非常に高いも

のとなる。

17.5.2 面材の許容応力度【☆☆】(文献3,p.246)

面材はウェブとしてせん断応力に抵抗するため、面材の許容せん断応力度を検討する。

また、吹抜けや階段室等の開口部を設ける際、その周辺の面材には大きなせん断応力が発

生するため注意を要する。

17.5.3 フランジ部分の接合が大切【☆☆】(文献3,p.246)

フランジとして働く外周梁部材に継手を設ける場合、フランジの軸力を確実に伝達する

共に小さな変形で押さえることが重要である。また、開口四隅のフランジ部に相当する梁

およびその接合部にも大きな引張軸力が発生するため、ここにも帯金物等による補強を施

すことが重要である。

17.5.4 面材釘のせん断耐力【☆】

面材に入力されるせん断応力を梁等の軸材に伝達できる接合釘の種類および本数とする。

また、開口部周辺の面材には特に大きなせん断応力が集中する。このため、接合釘にも大

きなせん断力が発生する。釘の増し打ち等の補強が有効である。

17.5.5 ウェブ部分の目地接合が大切【☆】

ダイアフラムの設計で重要な点は、面材から面材へのせん断力を確実に伝達することで

あり、面材すべての目地の下には梁や合板受けを設け、個々の合板の外周すべてを釘打ち

することが必要である。

17.5.6 水平構面の変位(フランジの曲げ+ウェブのせん断)【☆】

ダイアフラムによる水平構面の面内変形は、曲げによるフランジ部(梁およびその接合

部)の変形とせん断応力によるウェブ部(面材およびその接合部)の変形の合算となる。

構面全体の変形はせん断変形が主体で曲げ変形は比較的小さい。

18. 小屋組の設計 18.1 屋根の形状【難易度A】

18.1.1 種類【☆☆☆】

屋根には、切妻および寄棟が多く用いられ、その他に、片流れ、入母屋、方形、陸屋根

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などがある。

18.2 屋根の構法【難易度B】 18.2.1 屋根葺材【☆☆☆】

葺材によって屋根勾配は異なり、瓦葺で4/10以上、屋根用化粧スレート葺で3/10以上、長

尺カラー鉄板葺で1/10以上が適当である。

18.2.2 野地板【☆☆】

屋根は耐力壁どうしを水平方向につなぎ、建物全体の構造特性に寄与する。屋根面の剛

性向上のため、構造用合板などを用いる。

18.2.3 陸谷【☆】

陸谷は雨漏りの原因となるので、極力避けたい。

18.2.4 下葺【☆】

防水のため下葺きとしてルーフィングを用いる。

18.2.5 和小屋【☆☆☆】(文献2,p.20)

小屋梁には曲げ力が作用するので、充分な曲げ強度およびせん断強度を持つ断面とする。

図18.1 和小屋(出典:日本建築学会、構造用教材)

18.2.6 棟木【☆☆】

断面は母屋の寸法以上とし、垂木の欠き込みを考慮し適切なものとする。

18.2.7 母屋【☆☆】

断面は90×90mm以上とし、間隔は910mm以下とする。

多雪区域では断面を105×105mm以上とする。

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18.2.8 垂木【☆☆】

軒先の吹上げ風圧に耐えるための断面を確保し、軒桁とはひねり金物で緊結する。

表18.1 軒の出と垂木寸法

軒の出 (mm) 455未満 455~750 750~910

寸法 (mm) 40×45以上 42×85以上 45×90以上

18.2.9 軒桁【☆☆】

断面は、荷重の状態およびスパンに応じて適切なものとする。

表18.2 スパンと軒桁寸法

スパン(mm) 寸法(mm) 1820 105×105 2730 105×180 3640 105×240

18.2.10 小屋束【☆☆】

断面は90×90mm以上とし、間隔は1820mm以下とする。

多雪区域では断面を105×105mm以上とする。

18.2.11 火打梁【☆☆】

配置は小屋組の隅角部および主要軸組の両端に設ける。鋼製火打(HB)を使用する。

18.2.12 隅木・谷木【☆】

寄棟屋根の場合に用いる。

18.2.13 枠組壁工法【☆☆☆】(文献4,p.112)(文献2,p.20)

各部材には軸力が作用するので、充分な圧縮強度および引張強度を持つ断面とする。

・垂木方式・・・小屋組は、垂木、天井根太および棟木で構成する。

・トラス方式・・・小屋組は、垂木、屋根梁、束をメタルプレートコネクターで緊結され、

トラスで構成する。

・屋根梁方式・・・小屋組は、屋根梁または耐力壁または支持壁によって支持された垂木で

構成する。

・軒のはりだし・・・軒をはりだす場合は、垂木と同寸の腕木、けらば垂木および配付け垂

木で構成する。

・垂木・天井根太・・・垂木間隔は650mm以内とし、垂木と天井根太を充分に緊結する。

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図18.2 軒のはりだし(出典:日本建築学会、構造用教材)

18.3 小屋梁の設計【難易度B】 18.3.1 応力・変形・(たわみ・クリープ)【☆☆☆】

「13. 部材の設計」を参照。

18.3.2 松丸太【☆☆】

梁に松丸太等を用いる場合は、軒桁との仕口はかぶと蟻掛けとし、羽子板ボルト(SB等)

で緊結する。

18.3.3 寸法・間隔【☆☆】

断面は、荷重の状態およびスパンに応じて適切なものとする。

表18.3 スパンと小屋梁寸法

梁間隔(mm) スパン(mm) 寸法(mm)

1820以内

1820 末口120 105×120

2730 末口150 105×180

3640 末口180 105×240

18.3.4 小屋筋かい・振れ止め【☆】

小屋組の転倒を防止するため、小屋筋かい・振れ止めを小屋束および棟木、母屋に止め

付ける。

19.接合部の設計 19.1 木質構造の接合部特性【難易度B】

19.1.1 接合部について【☆☆☆】

接合部は、建物が存在し続ける間は何かしらの応力が作用するため、短期的な応力だけ

でなく、継続的に作用する応力についても十分考慮する必要がある。また、木質材料の接

合部を設計する場合、応力の作用する方向と、木質材料の繊維方向を十分考慮して設計を

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行う必要がある。さらに、木材の割裂などの脆性的な破壊をさせないように考慮する。接

合部の破壊は、建物倒壊にも直接影響を及ぼす可能性があるため、その設計にあたっては、

常に安全側で設計を行うようにする。

構法別の接合部について纏めると次のようになる。

・一般的な在来軸組構法においては、鉛直力を負担することを主とした接合部や、構面

の隅角部には材料同士を引寄せて固定しておく重要な役割をもつ接合部がある。接合

方法は、木材同士の仕口を補強するようなものから、鋼材を介してボルトやピンで接

合するものまで多種多様である。

・枠組壁工法の接合部の多くは釘によるもので、せん断力を負担するものが多い。

・木質パネル構法などのプレハブ住宅では、構面を構成する部位に接着剤を使用するも

のもあり、構面同士の接合もボルトや釘、ビスなど特徴のある接合をもつ場合が多い。

・大断面木造では、アーチや門型のフレームの端部は主に鉛直力とせん断を負担するよ

うな接合形式が多いが、モーメントも負担する半剛節接合なども見られる。

接合具の種類は、ボルト、釘、ネジ、ドリフトピン、ラグスクリューや、ジベル、メタ

ルプレートコネクター、グルーラムリベット、接着などがある。それぞれの接合は特徴が

異なるため、建物に作用する応力を十分考慮し選択する必要がある。(「10章 接合の形式」

及び「20章 接合具・接合金物」参照)

19.1.2 接合部設計の留意点【☆】

接合部の設計にあたっては、比重(樹種)、設計断面、荷重角度、接合具の個数・配置・

間隔、荷重条件、偏芯、木材の含水率などの影響を考慮する。

接合具・接合方法の種類によって許容耐力時の変形量は異なるため、異なる接合方法を

併用して用いるような接合形式を採用する場合は、併用する接合部材の負担割合によって

は所定の耐力を発揮できないこともあり、許容耐力の数値のみを合算させるようなことは

避けなければならない。

また、木材・木質材料は、湿潤状態に長期間さらしておくと、腐朽菌などの影響により

設計どおりの耐力を発揮しにくくなるため、雨掛かり、防水、止水などを考慮した寸法お

よび形状で設計する。

19.1.3 変形の重要性【☆☆☆】(文献3,p.256)

一般的な住宅規模の断面の木造の建物を設計するには、変形の計算が重要である。接合

部をピンと仮定するのが一般的だが、その場合は、計算による変形量が実際の変形量と大

きく異なることがある。また、接合部の初期ガタ(遊び)や長期的な変形(クリープ)に

ついても考慮して設計する必要がある。

19.1.4 めり込み【☆】

木材が破壊するときには、曲げ・引張は共に靱性に乏しい壊れ方をするが、めり込みは

変形能力がある(木材の繊維直角方向のヤング係数は繊維方向の1/25~1/50であるため)。

木造の変形能力は、接合部のめり込みによるものである。めり込みには、『部材の中間部の

めり込み』と『部材の端部のめり込み』がある。

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めり込みは、破壊とは直接関係しない場合が多いため、場所によっては、強度や許容応

力度という概念がなじまないこともある。例えば、一般に柱脚接合部などは、めり込みの

確認を行っていない。

19.2 設計方法【難易度C】 19.2.1 ピンと半剛節【☆】

線形部材を組合せて構成される木質構造の中でも、比較的断面の小さい部材は接合部を

ピンとして設計するが、木造の接合部をピン接合とするだけでは、正しい変形量を求める

ことができない。また、木造は、剛な接合部とすることも困難で、回転剛性を有する「半

剛節」の接合部となる。

19.2.2 試験法と評価法【☆☆】

試験法は、実際の接合の状態と応力の作用する方向に応じて定める。例えば、横架材の

端部の受け金物が鉛直荷重によるせん断力を負担する場合は、H型の形状の横棒部分に加力

して偏心のかからないような試験を行う。許容応力度は降伏耐力と 大耐力の2/3の低い値

による。許容耐力時の変形にも注意すべき。

部材の設計と同様に、荷重継続による許容値への影響(Duration of Load / DOL)を考慮す

る。ちなみに、木造建物は50年間の耐用年数を想定している。

また、接合部も部材と同様の考え方でクリープを考慮する。

19.2.3 マルティプル効果【☆】

マルティプル効果とは、接合具が複数になることによる強度の増加低下効果のこと。一

般的には、接合具の数の倍数にはならないことをいう。また、単に複数本になることの他

に、複数列になることによる効果などもある。鋼板挿入接合や合わせ梁接合の場合、接合

具の円形配置による効果などもマルティプル効果に含める。例えば、モーメント抵抗接合

では、回転中心から 外縁の接合具が許容値に達する時をもって、接合部全体の許容耐力

を算定する。

接合部の破壊のタイプ(破壊モード)が変わることがないか、検証することが重要。

19.2.4 使用環境条件【☆】

水にどの程度濡れる可能性があるかによって、強度を調整する。「事故的な水かかり」と

「常時湿潤状態」に分けられる。

19.3 接合形式毎の設計【難易度C】 19.3.1 ピン接合【☆☆】(文献2,p.32)

木材は、許容応力度が小さく、また、めり込みを生じやすいので、ピン接合は、できる

だけ鋼材によって構成する。

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図 19.1 ピン接合(出典:日本建築学会、構造用教材)

19.3.2 モーメント抵抗接合【☆☆】(文献2,p.32)

柱梁接合部などで、回転剛性を有する半剛節の接合部を、モーメント抵抗接合という。

以下のように、鋼板添え板釘打ち、引張ボルト型接合、合わせ梁型接合、およびそれら

の複合型などがある。めり込みが剛性に支配的である。

図 19.2 モーメント抵抗接合(出典:日本建築学会、構造用教材)

19.3.3 その他の接合の特徴【☆】

梁受け金物は、部材(木材)強度と金物強度の弱い方で決定される。木材に割裂が入る

ものが多い。柱脚の引き寄せ金物はの許容値はN値計算に用いられる。柱脚の引き寄せ金物

は、ボルト締め、ラグスクリュー打ち、釘打ち、ビス留めがあり、近年はビス留めが増え

ている。

柱の軸心に取り付ける接合は、一般的な引き寄せ金物(HD金物)に比べて、金物が露出

しないだけでなく、柱の曲げによる方向性(有効、無効)がない。

20.接合具・接合金物 20.1 接合の原則【難易度A】

20.1.1 接合の種類と考え方【☆☆☆】

せん断を負担する接合、引張を負担する接合、及びせん断と引張りを同時に負担するも

のがある。それぞれ接合する部位について、短期的・長期的な条件を考慮して、釘・ビス・

ボルト・その他接合具を選択する。例えば、釘などは原則的に釘の引き抜き方向で引張を

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負担させてはならない。

その他の例として、在来軸組構法の面材耐力壁の釘は、短期的な検討と共に雨掛かりや

耐久性の条件を考慮することが必要である。

20.1.2 せん断接合【☆☆☆】(文献5,p.224)

主材と側材を、釘・ビス・ボルト・ドリフトピン・ラグスクリューなどの棒状の接合具

で貫通し、力を伝達できる部位をせん断に抵抗する接合部の総称。

主なせん断に抵抗する接合部は下図の通り。

図 20.1 ボルトのせん断接合の形式

(出典:日本建築学会、木質構造設計規準・同解説)

20.1.3 許容耐力【☆☆☆】(文献5,p.109)

主な条件として、主材、側材の厚みと支圧強度(木材の場合は繊維方向により異なる)

と、接合具の径により予測することができる。近年では接合部が降伏する際の接合具の変

形も含めて検討し、予測することが可能となっている。

実験による荷重変位曲線を完全弾塑性モデルへの置き換えることで、降伏時の耐力と

大耐力の2/3のどちらか小さい値を短期基準せん断耐力することができる。この際の試験体

はN=6以上で行い、統計的処理に基づく下限値を含めて、ばらつきを考慮する。

図 20.2 完全弾塑性モデル

(出典:日本建築学会、木質構造設計規準・同解説)

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20.2 釘【難易度A】 20.2.1 釘接合の特徴【☆☆☆】(文献3,p.282)

主材と側材と接合具のあそび(初期ガタ)がなく、先穴が不要で、接合が容易である。

許容せん断耐力は、釘の素材の基準強度と直径の2乗に比例し、主材と側材の関係により

求めた値を用いて許容せん断耐力を算定することができる。

許容引抜き耐力は、主材と側材の比重と、釘径と打ち込み長さ、荷重の継続期間、含水

率などの条件を考慮しておく。また、釘の頭部径と側材の比重を検討し、脆性的な破壊に

至る釘の頭抜けがおこらないように考慮しておくこと。

20.2.2 許容耐力【☆☆☆】

許容耐力は、釘の直径の1.8乗に比例するとしていた。

近は、釘もヨーロッパ型降伏理論で説明することができる。

木ねじの許容耐力も釘と同じように、考えることができる。

20.3 ボルト【難易度A】 20.3.1 降伏モード【☆☆】(文献5,p.225)

主材と側材に穿孔を施しボルトで貫通し留めつけたもの。釘やドリフトピンに比べて、

変形性能が高く、靭性の高い接合部を設計する場合に有効。ただし、配置間隔や縁端距離

を守らないと、靱性に乏しい破壊モードが発生する。ボルトの長さと直径の比(L/d)によ

って破壊のモードが大きく変化するので、8~10以下で用いる。

変形が大きくなると、ロープ(引張)効果が見られる。ヨーロッパ型降伏理論で、許容

耐力が導かれている。

図 20.3 ボルト接合の破壊形態

(出典:日本建築学会、木質構造設計規準・同解説)

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20.4 各種コネクター【難易度A】 20.4.1 ドリフトピン【☆☆】(文献2,p.32)

丸鋼を切断しただけで、安価な接合具。ただし、先穴を正確にあけることが必要。

許容耐力の算定方法は、ボルトと同じで、ヨーロッパ型降伏理論によっている。降伏モ

ードをいくつか仮定して、 も強度の小さいモードで決定される。

ドリフトピンの長さと直径の比(L/dという)によって、破壊のモードが大きく変化する

ので、8~10以下で用いる。ロープ(引張)効果がない。鋼板挿入接合は、あそびを発生さ

せないために、鉄板どうしを高力ボルト接合するものが多い。

図 20.4 ボルト、ラグスクリュー、ドリフトピン

(出典:日本建築学会、構造用教材)

20.4.2 ラグスクリュー【☆☆】

ボルトとねじをくみあわせたもので、接合耐力はボルトと同様。

反対側の座金の要らないボルト。

引張強度も期待でき、材軸方向に取り付けたディテールも見られるが、一般的には、せ

ん断力を負担するように用いる。

20.4.3 メタルプレートコネクター【☆☆】

屋根組みや床梁のトラスに用いる。単位面積当たりの許容値に、面積を乗じて計算する

方法が一般的。加力方向による低減がある。

プレスで鉄板を打ち抜いて製作する。

20.4.4 ジベル類【☆☆】(文献2,p.32)

ブルドックジベルやアペルリング、シアプレートなどがある。いずれも、木材間に挿入

して、木材のせん断性能を向上させるもの。ボルトと併用するのが一般的。

ジベルによって、せん断のメカニズムが異なる。シアプレートは、中間に通したボルト

のせん断に期待したもの。

いわゆる「遊び」の発生は、ジベルの種類によって異なるので注意する。ブルドックジ

ベルは、いわゆる遊びがない。

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図 20.5 ジベル類(出典:日本建築学会、構造用教材)

引用文献 ・・・本文中で引用している文献 1) 林 知行著:ウッドエンジニアリング入門,学芸出版社,2004年

2) 日本建築学会編:構造用教材,日本建築学会,1995年

3) 杉山英男 編著:木質構造(第4版),共立出版,2008年

4) 枠組壁工法建築物設計の手引き・構造計算指針編集委員会編:2007年枠組壁工法建築物

設計の手引き,(社)日本ツーバイフォー建築協会,2007年

5) 日本建築学会編:木質構造設計規準・同解説 -許容耐力・許容応力度設計法-,日本建

築学会,2006年

参考文献 ・・・参考にして頂きたい文献 1) 日本木材学会編:木質の物理,文永堂出版,2007年

2) 秋田県立大学木材高度加工研究所編:コンサイス木材百科,(財)秋田県木材加工推進機

構,2002年

3) 日本建築学会編:建築材料用教材,丸善,2006年

4) 平井卓郎,宮澤健二,小松幸平 編:木質構造,東洋書店,2004年

5) 有馬孝礼,高橋徹,増田稔 編:木材科学講座9 木質構造,海青社,2001年

6) (財)日本住宅・木材技術センター編:木造軸組工法住宅の許容応力度設計,(財)日本住

宅・木材技術センター,2008年

7) (財)日本建築センター編:丸太組構法技術基準解説及び設計・計算例,工学図書,2003