医育機関で働く医師のワーク・ライフ・バランスに 関する実 …調査目的...

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第112回日本内科学会総会•講演会 医育機関で働く医師のワーク・ライフ・バランスに 関する実態調査 奈良県立医科大学 女性研究者支援センター 須崎康恵 水野文子 岡本希 車谷典男

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Page 1: 医育機関で働く医師のワーク・ライフ・バランスに 関する実 …調査目的 医学科学生が不安視する医育機関で働く医師のワーク・ ライフ・バランスの実態を明らかとし、医師の労働条件の

第112回日本内科学会総会•講演会

医育機関で働く医師のワーク・ライフ・バランスに 関する実態調査

奈良県立医科大学 女性研究者支援センター 

須崎康恵 水野文子 岡本希 車谷典男

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日本内科学会 CO I 開示

  須崎康恵

  演題発表に関連し、開示すべきCO I 関係に   ある企業などはありません。

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調査背景   奈良県立医科大学医学科全学生の将来像に関する意識調査結果          (2010年10月実施 対象学生男子430名,女子177名 有効回収率71%)

・全学生の9割近くが臨床医希望

・卒後10年目までは9割以上が大学病院や地域の中核病院で勤務希望 

・卒後10年目以降も大多数が大学病院や地域の中核病院で勤務希望

・男女ともにやりがいやワーク・ライフ・バランスを職場選択時に重視

・大学病院や地域の中核病院で働く勤務医がワーク・ライフバランスを 上手くとれる環境にあると考える学生はおよそ1割

本学医学科学生は希望する職場(大学病院や地域の中核

病院)のワーク・ライフ・バランスに不安があり、女子学生で  その傾向が強い

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卒後6年目から10年目までは,主にどのような施設での勤務を希望 しますか

35.5%

53.7%

8.3%

0.8% 1.7%

45.6%

47.9%

1.9% 0.8% 3.8%

大学病院

地域の中核病院

中小の私立病院

診療所

その他

男子 女子

医学部学生の将来像に関する意識調査(2010年10月実施)抜粋

卒後10年目以降は,主にどのような施設での勤務を希望しますか

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大学病院

地域の中核病院

中小の私立病院

診療所

その他

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男子 女子

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医学部学生の将来像に関する意識調査(2010年10月実施)抜粋

卒後研修の後,職場選択をする上であなた自身が最も重要視することは何であると思いますか

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収入

やりがい

良好な人間関係を保て

キャリア向上に有利

仕事と生活の調和を上

手くとれる職場

その他

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男子 女子

大学病院や地域の中核病院で働く勤務医の労働環境はワーク・ライフ バランスを上手くとれる環境であると思いますか !"#$%

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思わない

わからない

男子 女子

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調査目的  

医学科学生が不安視する医育機関で働く医師のワーク・

ライフ・バランスの実態を明らかとし、医師の労働条件の

改善やキャリア形成に資する仕組みを構築する

調査対象と調査方法

奈良県立医科大学の全教職員を対象としたワーク・ライ

フ・バランスに関する調査票を作成。大学総務課を通じ

2014年1月に教職員に配布・回収し、職種や職階毎に調査結果を分析

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配布数と有効回収率

医師 非臨床系教員 看護師

医療技術 職員

事務・ 技術職員

合計 臨床系 教員

医員 臨床 研修医

基礎系 教員

看護学科 教員

配布数 237   198   91   63   33   957   271   525   2375  

回収数 176   92   56   63   26   798   256   401   1868  

回収率(%) 74.3   46.5   61.5   100.0   78.8   83.4   94.5   76.4   78.7  

有効回収数 123   92   56   48   21   798   256   392   1786  

有効回収率(%)

51.9   46.5   61.5   76.2   63.6   83.4   94.5   74.7   75.2  

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回答者属性(単位=%)

       

医師 非臨床系教員

看護師 医療技術 職員

事務  技術職員 臨床系

教員 医員

臨床 研修医

基礎系 教員

看護学科 教員

有効回答数

123 92 56 48 21 798 256 392

男性 88.6   65.2   67.9   60.4 4.8 10.7 48.8 28.8

女性 11.4   34.8   32.1   37.5 95.2 88.5 49.2 68.4

不明 0.0   0.0   0.0   2.1 0.0 0.9 2.0 2.8

子供の有無

いる 男性 88.1   53.3   7.9  

58.3 66.7 34.0 45.3 46.4 女性 42.9   40.6   0.0  

いない 男性 9.2   35.0   81.6  

39.6 33.3 55.3 48.4 44.1 女性 42.9   50.0   88.9  

不明 男性 2.8   11.7   10.5  

2.1 0.0 10.8 6.3 9.4 女性 14.3   9.4   11.1  

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医師の回答者属性

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満足度:仕事の質や内容

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満足度:仕事の量

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満足度:現在の給与・賃金の額

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満足度:研究,スキルの向上やキャリア向上に  費やせる時間

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満足度:休日・休暇の日数

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1週間当たりの総労働時間

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満足度:現在の労働時間

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医師 (臨床系教員+医員+臨床研修医)

n 満足である 不満である

 

271 36.5% 37.6%

1週間あたりの総労働時間      60時間未満      60時間以上

 

 129 134

 

 47.3% 26.  2%

 

 25.  6% 47.  0%

「現在の労働時間」満足度

Ø 医師は他業種と比べ1週間あたりの総労働時間が長いが          労働時間の満足度と不満度はほぼ拮抗している    Ø 1週間あたりの総労働時間が60時間未満では、満足である    割合が47.3%  と高く、60時間以上と比較すると労働時間の    満足度が有意に高い

満足である:満足+まあ満足,不満である:少し不満+不満

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満足度:ワーク・ライフ・バランス

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  n=269   男性医師 n=206  (%)  

女性医師 n=63  (%)  

ワーク・ライフ・バランス

満足である 34.0   39.7  

不満である 38.8   23.8  

1週間の総労働時間

60時間以上 52.9   36.5  

60時間未満 44.7   58.7  

満足である:満足+まあ満足,不満である:少し不満+不満

男女医師の労働時間とワーク・ライフ・バランス

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    n=248  

男性医師 n=192  (%)  

女性医師 n=56  (%)  

子供あり n=131  

子供なし   n=61  

子供あり   n=19  

子供なし   n=37  

ワーク・ライフ・  バランス

満足である 35.1   32.8   47.4   37.8  

不満である 39.7   36.0   15.8   27.0  

1週間の  総労働時間

60時間以上 56.5   45.0   15.8   48.6  

50時間以上60時間未満 25.2   23.0   10.5   21.6  

50時間未満 18.3   24.5   73.7   21.6  

子供の有無別男女医師の労働時間とワーク・ライフ・バランス

満足である:満足+まあ満足,不満である:少し不満+不満

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下位職臨床系教員(学内講師・助教)の満足度

 n=50   満足度

ワークライフバランス満足度

満足である n=19  (%)  

不満である n=31  (%)  

仕事の質や内容 満足である 78.9   45.2  

仕事の量 満足である 68.4   32.3  

給与・賃金の額 満足である 15.8   3.2  

研究、スキルやキャリア向上に費やせる時間

満足である 63.2   16.1  

現在の労働時間 満足である 47.4   19.4  

1週間の総労働時間 60時間以上 36.8   74.2  

60時間未満 63.2   25.8  

満足である:満足+まあ満足  不満である:少し不満+不満

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上位職臨床系教員(講師以上)の満足度

 n=44   満足度 ワークライフバランス満足度

満足である n=26  (%)  

不満である n=18  (%)  

仕事の質や内容 満足である 92.3   33.3  

仕事の量 満足である 84.6   16.7  

給与・賃金の額 満足である 3.8   11.1  

研究、スキルやキャリア向上に  費やせる時間

満足である 46.2   5.6  

現在の労働時間 満足である 76.9   11.1  

1週間の総労働時間 60時間以内 50.0   50.0  

60時間未満 50.0   50.0  

満足である:満足+まあ満足  不満である:少し不満+不満

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ワーク・ライフ・バランス満足に対する調整済みオッズ比

説明変数  Variables 調整済みオッズ比 95%CI P  Value

下位職臨床系教員  (学内講師・助教)

1

医員 1.153   0.447-­‐2.972   .769  

臨床研修医 1.121   0.364-­‐3.448   .842  

上位職臨床系教員 .630   0.232-­‐1.706   .363  

仕事の質、内容の満足 4.037   1.558-­‐10.461   .004  

仕事の量の満足 1.727   0.664-­‐4.491   .263  

現在の給与・賃金の満足 1.479   0.539-­‐4.054   .447  

研究、スキル向上やキャリア向上に費やせる時間の満足

4.647   2.223-­‐9.712   .000  

休日・休暇の日数の満足 1.685   0.826-­‐3.436   .151  

週60時間未満の総労働時間 2.119   1.047-­‐4.290   .037  

現在の労働時間の満足 2.651   1.111-­‐6.329   .028  

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ワーク・ライフ・バランス不満に対する調整済みオッズ比

説明変数  Variables 調整済みオッズ比 95%CI P  Value

下位職臨床系教員  (学内講師・助教)

1

医員 0.622   0.254-­‐1.526   .300  

臨床研修医 0.399   0.118-­‐1.345   .138  

上位職臨床系教員 0.225   0.075-­‐0.675   .008  

仕事の質、内容の不満 5.154   1.742-­‐15.253   .003  

仕事の量の不満 1.153   0.412-­‐3.224   .786  

現在の給与・賃金の不満 2.097   0.781-­‐5.627   .141  

研究、スキルの向上やキャリア向上に費やせる時間の不満

4.458   2.098-­‐9.471   .000  

休日・休暇の日数の不満 2.191   0.985-­‐4.873   .054  

週60時間以上の総労働時間 1.782   0.854-­‐3.718   .123  

現在の労働時間の不満 4.855   2.164-­‐10.890   .000  

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結果

Ø ワーク・ライフ・バランスに満足する医師の割合は不満    と感じる割合と同等(35.5%)であり、看護師と比較する    と満足度が有意に高い  Ø 子供のいる女性医師は、医師の中で最も勤務時間が            短く、約半数(47.4%)がワーク・ライフ・バランスに満足    している  Ø 仕事の質・内容、研究・スキルやキャリア向上に費や    す時間および労働時間の満足度は、医師のワーク・    ライフ・バランスの満足度と有意な関連を認める  Ø 週の総労働時間が60時間未満であることは、ワーク・    ライフ・バランスの満足を有意に高め、下位臨床系    教員職は、上位臨床系教員職(講師以上)と比べ    有意にワーク・ライフ・バランスの不満を強める  

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総括

医師のワーク・ライフ・バランスを充実させるためには

長時間勤務の是正や能力開発、適切な人事異動等の

人事労務管理が医育機関に求められる