木造ヨットうめぼしの航海:...
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木造ヨットうめぼしの航海:
問題対処と修理サポート
長航会小集合
2017年 11月18日
増田 潔:うめぼし
目 次
• 船の紹介と航海の概要
• 航海ルート&スタイル
• 実際に発生したトラブルとその対処方法
• インド洋横断で発生したトラブル
• ミンデロージブラルタルで発生したトラブル
• 設備の概要(ご参考)
• 地球半周の航海を終えて
船の紹介と航海の概要
• 2013年7月足立ヨット造船2003年製 木造ヨットを中古で
購入、岡山で補修改造、足立社長と試験航海で福岡まで
• LOA:8.03メートル、エンジン:VOLVO2030セールドライブ
• 風上への走りは15度が限界、アビームで6KT
• 2014年9月に博多湾を出航、沖縄まで
• 2015年は沖縄からマラッカ海峡経由でタイまで
• 2016年はインド洋南アフリカを経由して北大西洋のカーボ
ベルデ(ミンデロ)まで
• 2017年はジブラルタルから地中海、エーゲ海を経てトルコ
のマルマリスに行きトルコ沿岸エーゲ海をクルージング
航海ルート&スタイル
• 貿易風帯(喜望峰を回るルート)シングルハンド
• 寄港地での観光や現地の人とのふれあいを楽しむ、寄港地は現地で決める
• 安全第一(危ないところには行かない)
• 無理をしない(風が強い時は出航しない)、(最長1700マイル、19日間)
• 健康第一(長距離航海の場合は夜寝る)、(船酔いはつらい)
• 常にローコスト運営
• 食事食材は現地のものを優先
• 年数回は日本に帰って家族サービス
• 次はパナマ運河、南太平洋経由帰国
実際に発生したトラブルとその対処方法
• レベル1 (航海できないレベル)
• ブロベラ脱落(クレーンでリフトアップ、足立社長の出張対応)
• エンジン異音、振動で航行不能(ボルボ、セイルドライブの修理対応)
• エンジン停止(燃料パイプにゴミ)
• レベル2 (航海できるが、重要な問題)
• ボブステーのワイヤー部分切断(部品は日本から送付、交換は自分で)
• ツナタワーの溶接部分破断(マリーナ内業者の出張溶接修理)
• オートパイロット故障、AIS故障、セール破れ、アンカー
• レベル3 (航海に問題ないが、サポート必要)
• ライフラフトのチェックで見つかった(塩害による腐食)
• スリランカ沿岸で漁船が近づいたときに右舷にぶつかりスタンションが曲がる
• エアコン、GPS、雨漏り、冷蔵庫、船外機
レベル1 (航海できないレベル) • エンジン、ドライブ、プロペラが1台しか無いのは大きなリスク
• 台湾の碧砂港内でプロペラと胴体が脱落
• 対処は2馬力船外機をスイミングデッキに設置して元の係留場所に戻った
• クレーン車でリフトアップし足立社長出張で良品胴体を取り付け
• エーゲ海航海中に異音、プロペラが回らくなる
• 対処は帆走で港入口まで行き流されて入る
• 大きな港まで曳航、現地技術者とダイバーが修理
• 宝島でエンジンストップ(燃料パイプにゴミが詰まる)
• 初回は港近くまで帆走、漁船に救助依頼し曳航
• 2回目は洋上で自己修理(足立社長から電話指示)
• その他のエンジントラブル
• ミキシング詰まり冷却水に海水混入(2回)(足立社長作成手順書あり)
• フューズケーブル錆で断線
• セールドライブのギアオイル白濁2回
レベル2 (航海できるが、重要な問題) • バシー海峡横断時にボブステーのワイヤー部分切断
• 原因は航海中に何か固いものにぶつかったためと思われる
• 足立社長から交換部品を郵送して貰い交換は自分で(足立社長作成の手順書あり)
• ビスケー湾横断時にツナタワーの溶接部分切断
• ツナタワーは揺れの影響が大きいためネジがゆるんだり溶接破断などトラブル多発
• マリーナ内の修理業者に依頼し出張溶接対応
• 航海中のオートパイロット故障
• 予備を含め3台共故障、マニュアルでティラーを握るのは他の作業ができず危険
• 南アフリカのレイマリン代理店で学習、以降は自分で修理(チェンジニア)
• 出航時2台、南アフリカ、カーボベルデ、マルマリスで各1台づつ購入、累計5台
• アンカーがあがらなくなるトラブル
• セーシェルでは50KG位ある大きな石を抱き込んだ
• エーゲ海では後から隣に係留したヨットのアンカーチェーンが引っかかった。
• 対処はアンカー外しロープの併用
レベル2 (航海できるが、重要な問題、続き) • セール破れ(2回)
• ジブセールのリーチ及びクルー部分の破れ
• 原因は強風航海中にシバーさせた時間が長かった
• 現地セールメーカーに持ち込み修理(南アフリカリチャーズベイ、マデイラ諸島フンシャル)
• メインセールのボルトロープとマストレール付近もかなり破れてきている
• トルコのマルマリスでセール一式新品発注
• AISの送信ができていない(AIS-700)
• タイのプーケットはAISがないと入国できない、このときは送受信ともに稼働していた
• その後はパソコンモニターに自艇、他艇ともに表示されるので稼働していると思っていた
• エーゲ海でイスラエル海軍退役軍人のヨットからAIS信号が出ていないと指摘
• トルコのマルマリスでトラブル原因切り分けの結果本体不良と判断、本体を新品に交換
• ウィンドラス故障
• ベアリングのグリースが固着して動かなくなった、アジズさんが修理
レベル3 (航海に問題ないトラブル) • ライフラフトの塩害による腐食
• 船検のためのライフラフト整備で見つかった
• ラフトをスターンのスイミングデッキ上に設置で海水が浸入
• ラフト膨張用エアタンクのバルブが錆びて腐食
• ラフトに内蔵している非常食なども水浸し
• スリランカ沿岸で漁船が近づいたときにうめぼしの右舷にぶつかりスタンションが曲がる
• スリランカ沿岸で漁船に缶ビール2本を提供
• それを聞いたのか他の漁船も近づいてきて話しかけてきた
• 近づき過ぎてスタンションに接触
• 南アフリカリチャーズベイでHENNYさんが新品に交換してくれた
レベル3 (航海に問題ないトラブル)続き
• エアコンの故障
• 現象を足立社長と共有、指示に従い切り分け、コントロールボックスの交換
• ギョジェキでアジズさんが修理、リモコンのプリント板接触不良
• GPS海図用アンドロイドタブレット
• PLAN2NAVが比較的ローコスト
• アンドロイドは不安定(時々ソフトがハングアップ)
• 長時間継続利用時の充電がうまくいかない(消費のほうが速い?)
• 昼間は画面を明るくしないと見えない(電力消費大きい)
• 現在はスマホを利用(充電問題は解決)
• GPSドングルを併用(GPS航跡ログ用)
• 海図は端末3台まで登録可能
レベル3 (航海に問題ないトラブル)続き
• 雨漏り
• 波がデッキ上にかかる時キャビンハッチ、換気扇、キャビン棚から海水が浸入
• 波がデッキ上を横に走るので隙間から漏れてくる
• これまでにパソコン2台故障
• 冷蔵庫(ENGEL2台)
• 2台目の冷蔵庫をキャビンの船底近くに設置
• ヒールして波がある時にビルジが電源コードにあたり腐食
• 船底近くの配線はシュリンクラップなど防水が必要
• テンダー用船外機(ホンダ空冷2馬力)
• マダガスカルでプラグ交換
• 地中海でキャブレターと燃料タンクの清掃
インド洋横断で発生した艇に関するトラブル
• バウ左舷に大きなこすりキズ(漂流物とぶつかったもの?)
• 一台目のオートパイロットが壊れた(方向が定まらず)2台目にバトンタッチ
• アカ漏れ一晩で10CM、マリンエアコンの海水フィルタから漏れ(取水バルブの損傷)
• スターンのタワーのボルトが6カ所以上緩み、風力発電機の支柱も外れる。(締めなおし)
• 冷蔵庫が動かなくなる(電源コードが錆びて切れる)
• ジブシートが擦れて一部表皮が破れ、ジブセール(リーチとフット)のほつれ
• メインセールのボルトロープとマストレールの間のほつれ
• イリジウムのアンテナ部分故障で8日間音信不通になった
ミンデロージブラルタルで発生した艇に関するトラブル
• ツナタワー後部ステンレス溶接部の破断
• オートパイロットが3台共不調で自律帆走や自分で舵を握って帆走
• 自律帆走の影響でレーダーリフレクタが脱落しジブセールリーチが破れた
• メインキャビンの天井ハッチから海水が漏水して蒲団が濡れてしまった
• 左舷の船名板が無くなった(何か固いものにぶつかったものと思われる)
• 15KGアンカーが定位置から外れボルト曲がりとハルにキズ
• ブームバングのブロックのステンレス部分が破断
• エンジンヒューズボックスの錆でケーブル破断
• 軽油携行缶からの軽油漏れ(波で動かないように固定することで回避)
参考情報1 航海機器 • CHART PLOTTER NFUSO NF-882で8インチ(台湾まで地図を含め利用、水深計,GPSで利用)
• 日本と台湾以外ではNF-882の地図がサポートされていない
• レーダーはKODENのMCD-921で8インチ(夜間航海時を含めほとんど使っていない)
• アンドロイドのタブレット端末(FUJITSUのARROWS)にPLAN2NAV(C-MAP)
• タブレット3台からスマホ2台に切り替え(電源問題)
• 地図は地域ごとに有料で購入し対応
• パソコンにOPEN-CPN+C-MAPを搭載し、AISで他船の位置を確認(かなり有益)
• 風速計
参考情報2 無線や通信機器
• イリジウム9555(毎月5000円)SMSで双方向通信:キャッチャー宮原さん
• HFアマチュア無線ICOM IC-706:気象FAX受信用として利用
• VHFアマチュア無線TM-D710:当初APRS利用を想定したがまったく使用していない
• 船舶用VHF ICOM M504J:めったに使わない
• 船舶用VHF ICOM ICM36J:マリーナとのやりとりに利用
• WIFIルータ(ソニーのスマホ、NECルータ):国毎のSIMを入れて利用
• 携帯電話(ソニーのスマホ):LINEやメール、天気予報など
参考情報3 うめぼしの電気系統 • バッテリーはディープサイクルバッテリーACDELCOのM31MF、115Aを4台搭載
• 1台はエンジン起動専用で、3台はハウス使用。3枚の100Wの太陽光パネル
• ハウス用に400ワット風力発電機1台
• インバーターはAPCNEW 2000W(PURE SIGNWAVE)
• エンゲル冷蔵庫2台は100Vと12Vの両方の電源に対応
• 12V系: 航海灯、航海計器類、オートパイロット、ウィンドラス、各種ポンプ類、無線機器一式、CDステレオなど
• 100V系: エアコン9000BTU、電子レンジ、ウォシュレット、パソコン、タブレット、プリンタ、蛍光灯、扇風機、洗濯
機、コーヒーメーカー、ドライヤー、電動工具など
• 運用としては冷蔵庫やポンプ類はつけっぱなし、その他は使うときにスイッチを入れる。
• エアコンは陸電が無い時はエンジンかガソリン発電機を使う。(ガソリン発電機は使ったことがない)
• バッテリーの電圧はいつもモニターして 12.8VでFULL、12.0V以下にはならないよう注意
地球半周の航海を終えて
• 一番苦しかったのはカーボベルデからラスパルマス
• 16日間の風上への航海、雨漏り、ヒール、セール、オートパイロット4台共故障
• 足立さんのサポートが大きい
• クルーザー初心者の私でも何とかなった
• 工具、予備部品一式を含めて揃えてもらった
• マルマリス整備ではハル塗り替え、ステーコーン交換、エンジン点検整備、アンカーチェーン1本化など
• 航海時はキャッチャー宮原さんがサポート
• 長距離航海時は毎日ブログにアップ、天気予報などをSMSで送信
• 各地での出会い
• 各地で多くの人に助けてもらい情報をもらい、そしてふれあいが楽しい
• 各地の美味しいものを堪能(果物、チーズ、ワイン、オリーブオイル、ハーブなど)