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北海道におけるGISとWEBを活用した情報の収集と公開 誌名 誌名 森林計画学会誌 = Japanese journal of forest planning ISSN ISSN 09172017 著者 著者 金子, 正美 巻/号 巻/号 49巻1号 掲載ページ 掲載ページ p. 3-5 発行年月 発行年月 2015年12月 農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センター Tsukuba Business-Academia Cooperation Support Center, Agriculture, Forestry and Fisheries Research Council Secretariat

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Page 1: 北海道におけるGISとWEBを活用した情報の収集と公開北海道におけるGISとWEBを活用した情報の収集と公開 誌名 森林計画学会誌 = Japanese journal

北海道におけるGISとWEBを活用した情報の収集と公開

誌名誌名 森林計画学会誌 = Japanese journal of forest planning

ISSNISSN 09172017

著者著者 金子, 正美

巻/号巻/号 49巻1号

掲載ページ掲載ページ p. 3-5

発行年月発行年月 2015年12月

農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センターTsukuba Business-Academia Cooperation Support Center, Agriculture, Forestry and Fisheries Research CouncilSecretariat

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森林計画誌 49NO.1 '15

基調講演

北海道における GISとWEBを活用した情報の収集と公開金子正 美1,*

The Sharing and Disclosure of Environmental Information

U sing GIS and WEB in Hokkaido

Masami Kaneko 1 , *

1 .はじめに農業環境情報サービスセンター |

, , 一・・・・ー 一ー‘ー_- -...

酪農学園大学は,北海道の酪農の振興を目的として 傾斜度等

1933年に設立された農業系私立大学である。本学では,

農業生産性の向上,鳥獣被害対策,環境保全型農業の

推進を目的として,2011年,農業環境情報サーピスセ

ンターを設置した。このセンターでは,様々な分野の

空間情報を収集するとともに, GIS技術を活用した解

析を行い,これを広く公開することによって,地域の

活性化に取り組んでいる。本報告では,この農業環境

情報サーピスセンターの取り組みを紹介したい。

II.農業環境情報サービスセンターの概要

本センターでは, GIS,リモートセンシング, GPS,

インターネット技術を活用して情報の収集,解析,公

開を行っている(図-1 )。スタッフは GIS関係教員

5名,特任研究員 3名,事務系職員 3名の体制である。

このセンターは2000年に開設した GIS教育研究のた

めの GISルーム を拡張整備したもので,現在,ハー

ドウェアとして26台の解析用 PC,146台の教育演習

用の PC及びデータやソフトを管理するサーバー,大

判プリンター,スキャナ一等, GISに必要な機器を有

している。また,関連する機器として, Microdrones

宇土や DJIネ土のドローン, トリンプルネ土 ライカネ土,

ガーミン社の GPS機器,出前授業用のラップトップ,

タブレットなどを所有している。特に, ドローンは,

全国で最も早く 2008年に導入し現在,農地や森林の

観測等に活用している。関連するソフトウェアとして

は, GISソフトとして ESRIネ土の ArcGISキャンノTス

、、、、、、、、、、、、、

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サイトライセンスを導入している。

, , ,

これにより,学生は個人 PCにもインストールでき,

自宅でも GIS学習ができる環境となっている。また,

リモートセンシングソフトとしては, ENVI (60ライセ

ンス), ErdasIMAGINE (5ライセンス), PhotoScan,

Pix4D, eCognitionなどを装備している。

本学の学生は, 2年次から GIS及びリモートセンシ

ングの基礎を学び, 3年次, 4年次では,実習や卒業論

文作成など通じて GISの実践的な活用を行っている。

また,地域社会と連携を図るため,北海道,北海道

農業公社, JA道央,江別市,標茶町等と連携協定を

締結し空間情報を活用した環境保全,農業振興のた

めの研修,各種事業を展開している。さらに,国際航

業株式会社とは空閥解析に関する連携講座を設立し,

また, ESRIジャパン株式会社, 一般社団法人コンサ

ベーションインターナショナルジャパン, NPO法人

*連絡-別刷請求先 (Correspondingauthor) E-mail: kaneko@r依田o.ac.jpl 酪農学園大学環境共生学類 (069-8501 北海道江別市文京台緑町582)

Rakuno Gakuen University, 582, B山lkyodaimidorimachi,Ebetsu, Hokkaido, 068-8501

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Jpn. J. For. Plann. 49 NO.1 '15

EnVion環境保全事務所とは包括的連携協定を締結し

コンサベーション GISコンソーシアムを立ち上げ,

情報の公開サーピスを行っている(後述)。

E 酪農学園大学の空間情報解析及びシステム開発事例

本項では,本センターが実施してきたプロジェクト

の一部を紹介したい。

①工ゾシカの GPS首輪の開発と行動解析

近年,北海道ではエゾシカの爆発的増加により,年

間50億円を超える農業被害が発生している。また,エ

ゾシカによる交通事故も増加し,大きな社会問題と

なっている。さらに,エゾシカは,高層湿原や高山帯

など希少な植物群落にも侵入し,生態系への被害も深

刻となっている。しかしながら,これまでエゾシカの

行動は解明されておらず,科学的データに基づく対策

が難しい状況あった。このため,本センターでは,総

務省の SCOPE事業として, Zigbeeという無線規格

を活用して安価で簡単に操作のできる GIS首輪を開

発しこれをエゾシカに装着しこの位置情報を

WEBGISで発信するシステムを構築した(図-2)。

また,空中写真の解析から,銀"路湿原におけるエゾシ

カの移動ルート及び個体数の増加傾向について明らか

にし対策に結び付ける研究を実施している(1 )。

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図-2 工ゾシカ GPS首輪の開発と WEBGISによる情

報公開システム

-4-

②空中写真及び衛星画像による植生変化の抽出

北海道では,大雪山系の一部の地域において,約30

年の聞に,お花畑がチシマザサの群落に置き換わるな

ど,人為的影響がほとんどないと考えられる高山帯に

おいても植生の変化が確認されている。これは,近年,

積雪量が少なくなり,また雪解けが早まったのが原因

と考えられている。このような減少を空間的定量的に

把握するため, 1970年代に撮影された空中写真と現在

の写真及びALOS/PALSARの解析から,大雪山五色

が原の調査対象地域においてチシマザサが拡大してい

る場所の特定とその原因を探った。その結果,東側斜

面を中心に面積率で10%以上のチシマザサの拡大が見

られること,またその地域は土壌の乾燥が顕著である

地域であることが判明し 植生変化の原因解明が進ん

だ (2)。

同様に,高解像度衛星IKONOSやALOS/A VNIR -

2PALSARを利用して,造林未済地の抽出手法の検

討を北海道立総合研究機構林業試験場と共同で手法開

発を行い, GISとリモートセンシング技術による簡易

で効率的な手法が構築された。

③情報収集・公開システムの開発

当センターでは,空間情報を簡便な手法で収集し,

ピジ、ユアルかつリアルタイムに公開するシステムの開

発に取り組んできた。特に,近年のクラウド技術とモ

パイル技術の進歩が著しいことから,これらの技術を

活用したシステム開発を進めている。

図-3は,江別市消防局と共同で取り組んで、いる無

線とタブレットを活用した防災用情報収集及び位置情

報表示システムである。このシステムでは,携帯電話

と簡易デジタル無線を併用し市販のタブレットを使

用することにより,携帯電話の電波が届かない地域に

おいても,安価で確実な情報伝達の仕組みを構築した。

また,集められた情報はサーバー上に蓄積し,異なる

機関が構築しているサーバーと接続しマッシュアップ

という手法により主題図を作成できる WEBGISサイ

図-3 タブレツ卜 (Android)で開発した防災用位置

情報共有システム

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森林計画誌 49NO.1 '15

図-4 農業環境情報サービスセンターの将来像

トを構築している。また 前述したコンサベーション

GISコンソーシアムでは,国土地理院や環境省が公開

している空間情報を, GISソフトで簡易に利用できる

よう ,情報公開サイトを開設し,無償のデータダウン

ロードサーピスを行っている (http://cgi匂.jp/)。

N.今後に向けて

本センターでは,今後,農業と環境保全のために,

空中写真,衛星画像を含む様々な空間情報をマルチス

ケールで収集し,地域に設置した気象センサーなどの

情報とリアルタイムで収集解析できるシステムを構築

し,これを WEB上で公開できるマッシュアップGIS

の仕組みを検討している。このためには,システム開

発といった技術的な側面のみならず,これを活用でき

る人材の育成が重要である。将来的は,農業及び環境

情報の集約化,共有化を図り ,これらを公開しオープ

ンな利用のできるシステムを構築し,アジアを中心と

した発展途上国に展開し,一元的な空間情報のプラッ

トフォームを構築していきたいと考えている(図-4)。

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引用文献

( 1 )日野彰彦,金子正美 (2014)森林リモートセン

シング第4版一 基礎から応用まで ,加藤

正人編, 日本林業調査会, 316

(2 )金子正美,星野仏方,雨谷教弘 (2014)空間情

報を用いた高山帯の植生変化と環境変動のセン

サス,地球環境(19)1, 13 -21,

(2015年9月30日受付)

(2015年9月30日受理)