小児期上室頻拍の予後 カテーテルアブレーションの適応を考...

7
日本小児循環器学会雑誌 13巻6号 755~761頁(1997年) 小児期上室頻拍の予後 カテーテルアブレーションの適応を考えて (平成9年8月7日受付) (’1’1成9年11月17日受理) 井近本 横浜市立大学医学部小児科 川名 伸子 瀧聞 琢磨 山岡 貢二 小林 真理 柴田 利満 新村 key words:上室頻拍,小児期, WPW症候群,房室結節回帰性頻拍,カテーテルアブレーション 小児期の上室頻拍の予後を発生機序別に検討し,そのカテーテルアブレーション(CA)の適応にっい て考察した.対象は電気生理学的検査(EPS)にて房室回帰性頻拍(AVRT)または房室結節回帰性頻 拍(AVNRT)と診断された46例(男21例,女25例).初回の頻拍発作は6ヵ月より16歳の平均8.3 最終年齢は6歳より28歳の平均16.2歳,経過観察期間は2年より/7年の平均8.1年.顕性WPW症候群 伴うAVRT(MWPW)25例,潜在性WPW症候群に伴うAVRT(CWPW)9例, 3群に分けて検討した. ①MWPW:経過中に頻拍発作が消失した症例はなかった.薬物治療を必要とした15例のうち2例は 長期に薬剤を中止したが,その2例とも頻拍時の強い症状のためCAを施行あるいは施行を考慮した. ②CWPW:1例は頻拍発作が長期に消失した.3例がEPS後の経過観察中に!l歳より12歳でA波 性化した.③AVNRT:1例のみ頻拍発作が消失した.投薬を行った4症例とも著効を示した.長期の 薬剤投与は/例のみで,他の症例は比較的軽症であった.2例は副伝導路をbystanderとする顕性 WPW症候群であった.④CAは11例(MWPW 7例, CWPW 2例, AVNRT 2例)に 11歳より19歳の平均15.7歳であり,7例は長期投薬のため,4例は発作時の強い症状のためであった. 薬物治療を必要とするようなMWPWは発作が消失することはないため,投薬を長期に行うことなく CAを施行する方がよい. CWPWおよびAVNRTでは薬物治療を優先させ,経過をみてCAを施 ることが望ましい.但し,小児では種々の合併症を避けるため低年齢でのCAはできるだけ避けるべき であると考えられた. はじめに ヒ室頻拍に対するカテーテルアブレーション(以下 CA)はすでに確立された治療法となり,近年は小児例 に対する報告1)“)も多くみられる.しかしながら,小児 期においてはからだの大きさなどの制約因子もあり, また成長に従い焼灼部位が広がるといった実験結果8) 別刷請求先:(〒236)横浜市金沢区福浦3--9 横浜市立大学医学部小児科 安井 もあるため,その適応に際してはその予後を十分知っ たflで施行する必要がある.本稿では我々の施設で経 過観察している上室頻拍症例を発生機序別に検討し, 小児期におけるCAの適応およびその施行の時期につ いて考察した. 対象と方法 今回の対象は当施設にて観血的に電気生理学的検査 (以一ドEPS)を施行され,房室回帰性頻拍(以下 AVRT)または房室結節回帰性頻拍(以下AVNRT) Presented by Medical*Online

Upload: others

Post on 24-Oct-2020

0 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

  • 日本小児循環器学会雑誌 13巻6号 755~761頁(1997年)

    小児期上室頻拍の予後

    一カテーテルアブレーションの適応を考えて

    (平成9年8月7日受付)

    (’1’1成9年11月17日受理)

    井近本

      横浜市立大学医学部小児科

     清  川名 伸子  瀧聞

    琢磨  山岡 貢二  小林

    真理  柴田 利満  新村

    key words:上室頻拍,小児期, WPW症候群,房室結節回帰性頻拍,カテーテルアブレーション

                          要  旨

     小児期の上室頻拍の予後を発生機序別に検討し,そのカテーテルアブレーション(CA)の適応にっい

    て考察した.対象は電気生理学的検査(EPS)にて房室回帰性頻拍(AVRT)または房室結節回帰性頻

    拍(AVNRT)と診断された46例(男21例,女25例).初回の頻拍発作は6ヵ月より16歳の平均8.3歳,

    最終年齢は6歳より28歳の平均16.2歳,経過観察期間は2年より/7年の平均8.1年.顕性WPW症候群に

    伴うAVRT(MWPW)25例,潜在性WPW症候群に伴うAVRT(CWPW)9例, AVNRT 12例の3群に分けて検討した.

     ①MWPW:経過中に頻拍発作が消失した症例はなかった.薬物治療を必要とした15例のうち2例は

    長期に薬剤を中止したが,その2例とも頻拍時の強い症状のためCAを施行あるいは施行を考慮した.

    ②CWPW:1例は頻拍発作が長期に消失した.3例がEPS後の経過観察中に!l歳より12歳でA波が顕

    性化した.③AVNRT:1例のみ頻拍発作が消失した.投薬を行った4症例とも著効を示した.長期の

    薬剤投与は/例のみで,他の症例は比較的軽症であった.2例は副伝導路をbystanderとする顕性

    WPW症候群であった.④CAは11例(MWPW 7例, CWPW 2例, AVNRT 2例)に施行された.

    11歳より19歳の平均15.7歳であり,7例は長期投薬のため,4例は発作時の強い症状のためであった.

     薬物治療を必要とするようなMWPWは発作が消失することはないため,投薬を長期に行うことなく

    CAを施行する方がよい. CWPWおよびAVNRTでは薬物治療を優先させ,経過をみてCAを施行す

    ることが望ましい.但し,小児では種々の合併症を避けるため低年齢でのCAはできるだけ避けるべき

    であると考えられた.

              はじめに

     ヒ室頻拍に対するカテーテルアブレーション(以下

    CA)はすでに確立された治療法となり,近年は小児例

    に対する報告1)“)も多くみられる.しかしながら,小児

    期においてはからだの大きさなどの制約因子もあり,

    また成長に従い焼灼部位が広がるといった実験結果8)

    別刷請求先:(〒236)横浜市金沢区福浦3--9

         横浜市立大学医学部小児科 安井  清

    もあるため,その適応に際してはその予後を十分知っ

    たflで施行する必要がある.本稿では我々の施設で経

    過観察している上室頻拍症例を発生機序別に検討し,

    小児期におけるCAの適応およびその施行の時期につ

    いて考察した.

             対象と方法

     今回の対象は当施設にて観血的に電気生理学的検査

    (以一ドEPS)を施行され,房室回帰性頻拍(以下

    AVRT)または房室結節回帰性頻拍(以下AVNRT)

    Presented by Medical*Online

  • 756 (26)

    と診断された器質的心疾患のない46例である.男21例,

    女25例.初回の頻拍発作は6カ月より16歳の平均8.3

    歳,EPSを施行した年齢は2歳より20歳の平均11.7

    歳,最終年齢は6歳より28歳の平均16.2歳であった.

    初発よりの経過観察期間は2年より17年の平均8.1年

    であった.

     対象46例をEPSの診断により以下の3群に分け検

    討した.顕性WPW症候群に伴うAVRT(以下MWPW)25例,潜在性WPW症候群に伴うAVRT(以下CWPW)9例, AVNRT 12例である. AVNRT

    には副伝導路をbystanderとする顕1生WPW症候群

    が2例含まれている.また,AVRTは全例が副伝導路

    を逆伝導する通常型であった.AVNRTは11例が

    slow pathwayを順伝導しfast pathwayを逆伝導す

    る通常型であり,1例のみintermediate pathwayを

    逆伝導する希有型であった.副伝導路の局在はCAあ

    るいはマッピングを施行した症例はその所見により,

    施行していない症例はGallagherら9)の分類に従い心

    電図より診断した.また,投薬は発作の回数が多いか

    発作時心拍数が多く症状が強い症例に行った.

               結  果

     1.発生機序別初発年齢

     発生機i序別の初発年齢は図1に示すようにAVRT

    ではMWPW, CWPWともあらゆる年齢に及んでい

    るが,AVNRTでは7歳より12歳に集中していた.

     2. M、UPWア

     対象25例を表1に示した.

     1)投薬例(図2)

     MWPW 25例のうち投薬を必要とした15例の経過

    は図2のようである.星印で示した5例にCAが施行

    された.投薬例では投薬を中止できることはあっても

    症例数

     10

     9 8 7 6 5

    4321・0

    口AVNRT.

    吻CWPW 一 一.        .

    ■ MWPW

    ●       .

    .        .        . Ill膠1

    一 一

    ■■ ■■     ■     ●     ■     ■ ● 「 . . ■ . . ■    ●     ■     ■     ■

    01 2345678910111213141516     年 齢  (歳)

    図1 発症機序別の初発年齢

    日小循誌 13(6),1997

    表1 WPW症候群症例

    性発症年齢 (歳) 副伝導路の局在

    薬剤投与例

    1 M 12 Lanしpara.2 M Il R.ant.3 M 1{〕 R.ant.4 M 10 Llat.#5 M 9 Lant.&R. pal’a.#6 M 8 Lanし#7 F 8 L.ant.8 F 8 R.P「)st,9 F 7 Rant lat.(multil〕le)#

    10 F 6 R.para.11 F 5 RanL para.#12 F 4 L.Post.13 F 2 R.Post.#]4 F 1 R.lat.15 F 0.5 R.ant.

    薬剤無投与例

    1 F 16 L.Post. Para.#

    2 M 14 R.ant.#3 F 13 R,ant.

    4 F 11 R.para,5 F 1〔〕 R,ant.6 F 1(1 R,ant.7 M 10 L.lat.8 F 9 L.Iat.

    9 M 6 R.lat.#/0 F 5 R.ant. para’

    123456789012345

    R.:right、 L.:Ieft, allt.:anterior、 Iat.:1ateral

    Post,:posterier, para.:paraseptal

    #はCAまたはマッピングにて診断

    一    一   一*  ■■■一* 一刎■■■■■■■■■*

    s-- ua■■■■■■■■■*

      一*〇  5  10  15 20 25歳    図2 MWPW(投薬例)の経過■:投薬期間,唖:無投薬で発作のある期間,□:

    無投薬で発作のない期間,*:カテーテルアブレー

    ション

    Presented by Medical*Online

  • 平成9年12月1日

    1 症例

    2

    3

    4

    5

    6

    7

    8

    9

    10

            ww*       mmzm      w

    一一llualvauaZEIIZZZZZEZZZZ- ww*lllllmmzmozuawnza

    123456789

    0

    症例

    5 10 15 20

    図3 MWPW(無投薬例)の経過  図の説明は図2と同じ

    -一一一翻■■■■■■*■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■t*llmmzmzznmmzva

    25 歳

    0 5     10    15    20

      図4 CWPWの経過  図の説明は図2と同じ

    25 歳

    経過中に頻拍発作が消失した症例はなかった.投薬を

    長期に中断した2症例のうち,症例5は頻拍が年に数

    回と少なくなったため投薬が中断されていたが,頻拍

    発作時脈拍が毎分200回を越え自覚症状が強いため18

    歳時CAを施行された.症例11も運動時の頻拍出現が

    持続するためCAを考慮したが,マッピングにて副伝

    導路がヒス束に非常に近接しデルタ波の出現が間敬性

    であり順行性不応期が長いためCAを施行しなかった.

     2)無投薬例(図3)

     MWPWのうち無投薬10例の経過は図3に示す通りである.頻拍発作の回数が少ない,あるいは短期間

    で自然停止するなどのため薬剤投与を行っていない症

    例である.これらの中でも経過中に頻拍発作が消失し

    た症例はなかった.2例にCAが行われたが,これら

    も頻拍発作時に動悸,めまいなどの症状が強いという

    理由によった.

     3.CWPW(図4)

     CWPW 9例のうち7例に投薬を行った.2例で投

    薬を中止し,そのうち1例では長期に頻拍発作が消失

    した.2例にCAが行われた.症例8は長期の薬剤投

    757 (27)

    123456789012

    0

      囲■■■■■■■■■*◎

    lllllRll-llllZlllllll

    an

    El!{lltlZl}llllllllll{IMIZ

      ua*一一lllZZIIEMitzmoMuaZZitlZZ◎

    5     10    15    20

      図5 AVNRTの経過  図の説明は図2と同じ

      ◎:WPW症候群

    25 歳

    与例であったが,高校卒業後の不規則な浪人生活のた

    め薬剤(procainamide, fiecainide, propranolol, ver-

    apamil)に抵抗性となりCAを行った.今回の46例中

    薬剤抵抗性といえるのはこの症例だけであった.症例

    1も長期薬剤投与例であるが同意が得られないためま

    だCAを行っていない.症例3,6,7の3例におい

    てEPS後の経過観察中/2,12,11歳で副伝導路が顕性

    化した.Gallagher分類ではそれぞれでleft anterior,

    left anterior, right anterior paraseptal(CA施行例)

    であった.

     4.AVNRT(図5)

     1例のみ頻拍が消失している.但し,数年の間隔を

    おいて起きることもあり,完全に頻拍が消失したとは

    いえない.投薬を行った4例では全例で著効を示した.

    症例2は投薬にて発作が消失したが,その後投薬を再

    開するほどではないが年に数回の短時間の動悸が残っ

    ている.CA施行例は2例である.12例中2例は副伝導

    路をbystanderとする顕性WPW症候群であった.2

    例ともマッピングあるいはCAにて確認された症例で

    ある.

     5.カテーテルアブレーション施行例

     CAは他施設で施行された症例を含め11例に行われ

    た.MWPW 7例, CWPW 2例(1例は顕性化後),

    AVNRT 2例,11歳より19歳の平均15.7歳であった.

    7例は長期投薬のため,4例はCA時に服薬はしてい

    なかったが頻拍時の脈拍が毎分200回を越えるなど発

    作時に動「季,めまい,嘔気などの強い症状のためであっ

    た.

              考  察

     カテーテルアブレーション(CA)はWPW症候群に

    Presented by Medical*Online

  • 758-(28)

    対する高周波通電法が1987年Borrgrefeら1°)によりは

    じめて臨床応用され,1991年にはJackmanら’1}の高

    い成功率の報告もあり急速に普及した.さらに1992年

    Jackmanら12)の房室結節リエントリ性頻拍における

    slow pathwayへのCAの報告もあり,上室頻拍に対

    するCAは成人では既に確立された方法となった.

    cost-effectivenes s’ 13)]“およびQOLの改善15)も得られ

    るためその適応は拡がっている.

     小児期においても成人に劣らない成績1)-3)が報告さ

    れ,合併症にも差はないという報告2)3}もある.また乳

    児例”r))や,心奇形に伴う症例6)7}においても施行されて

    いる.しかしながら,からだが小さい小児への応用に

    はいくつかの問題点がある.体重15kg以下では合併症

    が多いこと川,実験的に未熟心筋では焼灼部位が成長

    に伴い拡がる可能性のあること8}である.さらには放

    射線被曝,高周波通電法では少ないとされるが術後不

    整脈2)16)など未解決な点もあり,特に小児では症例を

    選んで施行することが望ましいと考えられる.小児の

    適応として第一にあげられるのは,薬剤抵抗性の難治

    例あるいは副作用のため投薬できない症例であるが,

    このような症例はごく少数例と思われる.そこで本稿

    では我々の施設で経過観察している.L室頻拍症例を発

    生機序別に検討し,その予後から小児期におけるCA

    の適応および施行の時期について考察した.

     顕性WPW症候群の自然歴において乳児期発症例

    では頻拍が消失することが多い17}というのが特徴であ

    るが,小児期でも頻拍例の53%は頻拍が消失するとい

    う報告18}がある.今回の症例では頻拍が消失すること

    はなかったが,これは今回の対象にEPSをした症例と

    いうバイアスがかかっていることによるものかもしれ

    ない.成人の報告19)ではlo年の経過観察で95%(40例中

    38例)に頻拍が持続している.今回の症例は頻回の発

    作あるいは頻拍時心拍数が多く症状が強いなどの理由

    でEPSを行ったものである.そのため, short runな

    ど軽症例や,当初の薬物治療にて頻拍がコントロール

    された症例は今回の対象に含まれていない可能性もあ

    る.逆に今回の症例のようにEPSまで施行しようとい

    う症例は副伝導路の伝導性がよく頻拍が継続するもの

    と考えられるが,このような症例では投薬を長期に行

    うことなくCAを施行する方がよいと思われた.また,

    無投薬例でも頻拍時の症状が強い症例は同様に考えて

    よいと思、われた.

     CAの重大な合併症のひとつが房室ブロックであ

    る.Greeneら2°)はCAによる完全房室ブロックは全体

    日本小児循環器学会雑誌 第13巻 第6号

    の1.6%,AVNRTでは3.2%(124例中4例, sl()w

    pathwayへのCAのみでは68例中{〕例)に,Fenelら21}

    はAVNRTの6.1%(194例中12例, slow pathwayへ

    のCAのみでは51例中3例)に生じたと報告している.

    房室結節へのアブレーションでは焼灼断而積が60%以

    下では電気生理学的に異常を認めず,80~100%の狭い

    範囲で1度よりIII度の房室ブロックが生じると報告22)

    されている.心臓の小さい小児では焼灼部位と房室結

    節との距離が短くなるため潜在的な障害も考慮しなけ

    ればならない.21歳以トの報告23)ではII度あるいはIII

    度の房室ブロックは全体の1.2%に生じ,AVNRTで

    は1.6%,right anteroseptalでは2.7%と少ないが,

    right midseptalでは10.6%と高率に生じている.

     合併症を避けれるためには,個々の体格,焼灼する

    部位を考慮しCAの時期を決定することが必要であ

    る.房室ブロックをきたす可能性の高いAVNRT,

    MWPWではright anteroseptal, right rnidseptalの

    CAは体格の小さいうちは避けるべきであろう.また,

    Saulら8}の実験的に焼灼部位が拡がるとされる未熟心

    筋がヒトでは何歳にあたるのかは不明であるが,考慮

    すべきことである.Paulら24)は6週の子豚では焼灼部

    位は拡がらないという実験結果を報告しているが,右

    側のCAでは右冠動脈に細胞浸潤が及び,後に狭窄を

    きたす症例があるとしている.いずれにせよ,低年齢

    での積極的なCAは好ましくなく,特に右側副伝導の

    CAでは注意が必要である.現時点において,我々の施

    設では薬剤でコントロール可能な症例は成人のからだ

    の大きさに近づく10歳過ぎを目安にCAを考えてい

    る.WPVV症候群の致死的不整脈である偽性心室頻拍

    も小児期にはほとんどないこと18)もCAを急ぐ必要の

    ない理由のひとつである.ただし,左側自由壁の副伝

    導路ではカテーテルの固定が容易で成功率が高いこと

    もあり,年齢をさげてもよいであろう.

     CWPWでは1例ではあるが頻拍が長期に消失し

    た.成人例でも30例中1例に消失をみているIE).

    CWPWでは副伝導路の局在がEPSをしなければわ

    からないこともあり,薬物治療を優先させ経過をみて

    CAを施行することが望ましいと考えられる.また,副

    伝導路が11歳よりユ2歳で顕1生化した症例が9例中3例

    あったことより,CWpWではこの年齢まで待つこと

    もひとつの手段かもしれない.この3例は経過観察中

    繰り返し心電図および運動負荷心電図を記録されてい

    たがそれまでA波は認めなかった.

     前述したようにAVNRTのCAの…番の合併症は

    Presented by Medical*Online

  • ’十rコ戎9/]三12HIH

    房’室ブロックである.現在一般に行われるslow path-

    wayの焼灼では房室ブロックは少なくJackmanらは

    1.3%と報告IL)しているが,小児では注意が必要であろ

    う.幸いなことにAVNRTは12例中11例が7歳以上

    と比較的年長で初発したが,Koら25)も6~10歳に多

    く発症すると報告している.比較的軽症が多く,薬剤

    特にverapamilへの反応もよい26)ことから,小児期で

    は薬物治療を優先させからだが十分大きくなってから

    CAすべきと考えた.今回の症例では軽症化するもの

    の頻拍は消失しなかったが,成人では37例中4例に頻

    拍が消失したと報告19)されている.

      WpW症候群にAVNRTが合併することは稀なこ

    とではなくYeeら27)は95例中3例(3コ%),Kuckら28)

    は125例中7例(5.6%)と報告している.今回は顕性

    WPW症候群27例中2例が副伝導路をbystanderと

    しAVNRTを発生機序とするものであった.これは

    WPW症候群のCAにおける注意点といえる.

      なお本論文の要旨は第32回小児循環器学会(1996年7月,

    大阪)にて発表した.

                     文  献

    1)Kugler JD, Danford DA, Deal BJ, Gillette PC,

      Perry JC, Silka MJ, Van Hare GF, Walsh EP:

      Radiofrequency catheter ablation for tachyarr・

      hythmias in Children and ado|eSCentS. N Engl J

      工>led ]994;330:148ユ ー1487

    2)Van Ilare GF, Witherell CL, Lesh MD:

      Follow-up of radiofre(luency catheter ablation

      in chilclren:Results in 100 consecutive patients.

      J AIn Coll Cardiol 1994;23:1651  1659

    3)Park JK, Ilalperin BD, McAnLllt>t JH, Kroll J,

      Silka  MJ二 Comparison  of radiofrequency

      cathter ablation pr(,cedures ill children, adoles-

      cents, and adults and the innpact of accessory

      pathway]ocation. Am J Cardiol 1994;74:786-

      789

    4)Case CL, G川ette PC, Oslizlok PC, Krlick BJ,

      Blair HL: Radiofrequency catheter ablation

      of incessant、 medicallv resistant su-

      praventricular tachycardia ill illfallts and sniall

      children. J A111 Coll Cardiol 1992;20:1405-

      1410

    5)Erickson CC, Walsh EP, Triedman JK, Saul JP:

      Efficacy and safety of radiofrequerlcy ab|ation

      in infalユt and young children <18 months of

      age. Am J Cardiol I994;74:944 947

    6)Van Hare GF, Lesh MD, Stanger P: Radiofre-

      (luency catheter ablation of supraventricular

      arrhythmias in patients with congenital heart

    759-(29)

    )[~

    )8

    )9

    lo)

    /1)

    12)

    13)

    14)

    15)

    disease: Results and technical considerations.

    JAm Coll Cardiol l993;22:883 890

    Levine JC、-Calsh EP、 Saul JP: Radiofrequen-

    cy ablation of access()ry pathways associated

    with congenital heart disease inculuding heter-

    otaxy syndrome. Am J Cardiol l993;72:689

    693

    Saul, JP, Ilulse JE、 Papagiam〕is J, Van Praagh

    R,Walsh EP: Late enlargement of radiofre-

    quency lesions ill illfant la】nbs. Implications for

    ablation procedures in srnal]children. Circula-

    tion 199・1;90:492  499

    Gallagher JJ, Pritchett ELC, Sealy WC, Kasell

    J、Wallace AG: The preexcitation syndromes.

    Prog Cardiovasc Dis 1978;20:285-327

    Borggrefe M, Budde T、 Podczeck A、 Breithardt

    Gl High frequenc}°alternating curl’ent abla-

    tiolコof an access()ry pathway in hしIlnan, J Am

    Coll Cardiol 1978;10:576--582

    Jacklnan WM, Wang X, Friday KJ, Romali CA,

    MoClelland JH, Twidale N、 Ilazlitt HA, Prior

    MI, Margolis PD, Calame JD, Overh(,ld ED,

    Lazzara R:Catheter ablation of accessory

    atrioventricular pathways (~Volff-Parkinson-

    White syndrolne)by radiofrequenc}’current. N

    Engl J N・’led 1991;324:16{}5-1611

    Jackman WM, Beckman KJ、 McClelland JHT

    Wana X、 Friday KJ, Rorr】an CA、 Moulton KP、

    Twidale N, Ilazlitt IIA, Prior MI, Oren J,

    Overholt ED、 Lazzara R: Treatment of su-

    praventricular  tachycardia  due  toatrioventriculal『nodal reentry by radiofrequen-

    cy catheter ablation of sl()w-pathway conduc-

    tion.NEnglJMedl992;327:313-318KalbHeisch SJ、 Calkins H, Langberg JJ, EI-

    Atassi R, Le〔m A, Borganelli M, Morady F:

    C()mparison of the cost of radiofrequency cath-

    eter modification of the atr()ventricuユar node

    and  medical therap}・ for drug-refractory

    atrioventricular node reentrant tachycardia. J

    Aln Coll Cardiol 1992;19二1583  1587

    110genhuis W, Stevens SK, Wang JB, Manolis

    AS, Estes M III, Paulker SG:Cost-

    effectiveness  of radiofrequency  ablation

    compared  “Tith  other strategies ilユ Wolff-

    Parkinson-“rhite syndrolne. Circulation 1993;

    88(pt 2):437- 446

    Bubien RS, Kllotts-Dolson SM, Plumb VJ, Kay

    GN: Effect of radiofre(luency catheter abla-

    tion on health-related quality of life and activ-

    ities of daily living ill patients with recurrent

    arrhythlllias. Circulation ]996;94:1585-.1591

    Presented by Medical*Online

  • 760-(30)

    16)Chen SA、 Chiang CE、 Tsang WP, Ilisa CP

       Wang DC, Yeh IIL T{ng CT, Chiou CW, Yang

       CJ, Kor〕g CW, Wallg SP, Chiang BN, Chang

       BN, Chang MS:Recureent conduction in

       accessory pathyvay and possible new arrhyth-

       mias after radiofrequency catheter ablation.

       Am HeartJI993;125:381 387

    17)Perry JC, Gars(.m A: Supraveritricular ta-

       chycardia due to VVolff-Parkit〕son-VVhite syn-

       drome in children:Early disappearance and

       Iate reccurence. J AIn Coll Cardi{}l l990;16:

       1215・-1220

    18)新村一郎,小野ますみ,原コ寿夫,牧 隆敏,戸塚

       武和,斎木和夫,真一ト’和宏:WPW症候群小児の経

       過観察.日小児会誌 1986;90:228-236

    19)Chen SA, Chiang CE, Tai CT, Lee SH、 Chiou

       CW、 Ueng KC, Wen ZC, Cheng CC, Chang MS:

       Longitudinal clinical and electrophysiological

       assessment of patients with symptomatic

       Wアolff-Parkins on- N]V”hite syr)drome and

       atrioventricular node reentrant tachycardia’

       Circulation 1996;93:2023-2032

    20)Greene TO, Huang SKS、 Wagsdhal AB, Mitt-

       leman RS, Pires LA, Mazzola F, Andress JD:

       Cardiovascular cornplications  after  radio-

       freuency catheter ablation of supraventricular

       tachyarrhythmias. Am J Cardio11994;74:615

         617

    21) Fenelon G,(1’Avila A、 Malacky T, Brugada P:

       Proglコotic significance of transient c(〕mplete

       atrioventricular block during radiofrequency

       ablation of atrioventricular node reentrant ta-

       chycardia. Am J Cardiol l995;75:698 702

    口本小児循環器学会雑誌 第13巻 第6号

    22)

    23)

    24)

    25)

    26)

    27)

    28)

    Tanaka M、 Satake S, Kawahara Y, Sugiura M、

    IIirao K、 Tanaka K Kawara T, Masuda A,

    Nishikawa T、 Kasajima T: Patho|ogicaI

    aspects of radiofrequency catheter ablation of

    the carine atrioventricular node and bundle of

    His. Act Pathol Jpn 1991;41:487 498

    Schaffer MS, Silka MJ、 Ross BA, Kugler JD,

    Inadvertent atrioventricular block  during

    radiofreuency catheter ablation、 Circulation

    1996;94:3214-3220

    Paul T, Bokenkamp R, Malmert B, Trappe IIJ二

    Coronary artery involvenient early and late

    after radiofrequency current application in

    young pigs、 Am Heart J 1997;113:436-440

    Ko JK, Deal BJ、 Strasburger JF. Benson DW:

    Supraventricular tachycardia mechanisms and

    their age distribution in pediatric patients. AIn

    JCardio]1992;39:1028  1032

    安井 清,瀧聞浄宏,佐近琢磨,佐川浩一,岩本真

    理,山岡貢二,真下和広,柴田利満,新村一郎:小

    児期における発作性上室性頻拍に対するver-

    apamilの効果一電気生理学的検査法による検討

    と長期径口投与における効果 .日小循誌 1995;

    11:659-666

    Yee Y, Klein GJ: Atrioventricular nodal re-

    entry ill the、Volff-Parkinson・XVhite slldrome. J

    EIectrocardio]ユ985;ユ8:295 297

    Kuck KH, Kunze KP, Schluter M, Bleifeld W:

    Spontaneous terminati(m of reciprocating ta-

    chycardia  owillg  to  interaction  of duaI

    atriox,・eritricular nodal pathways in patieTls with

    an accessory pathway. Am J Cardiol 1985;56:

    872 876

    Presented by Medical*Online

  • 平ノ戎9年ll2ノ」1日 761-(31)

    Clinical Course of Pediatric Patients with Supraventricular Tachycardia:

              Indications for Radiofrequency Catheter Ablation

    Kiyoshi Yasui, Nobuko Kawana, Kiyohiro Takigiku, Takuma Sakon,

           Kouji Yamaoka, Hirohide Kobayashi, Mari Iwamoto,

                 Shibata Toshimitsu and Ichir()Niimura

               Yokohama City University・, School of Medicine

       To determine the indications for radiofrequency catheter ablation(CA), we investigated the

    clinical course of pediatric cases with paroxysmal supraventricular tachycardia(SVT). The

    study population cons{sted of 46 patients(21 males and 25 females)who were diagnosed with

    atrioventricular reentrant tachycardia(AVRT)or atrioventricular nodal reerltrant tachycardia

    (AVNRT)by electrophysiological studies。 The mean follow-up period was 8.lyr(from 2 to l7

    yr). Initial episodes of tachycardia occurred between the ages of 6 mo and 16 yr(average 8.3yr).

    Age of the patients at this study ranged from 6 yr to 28 yr(average 16.2yr). The clinical course

    was examined by dividing the patients into three groups:(1)25 patients with AVRT associated

    with(manifest)Wolff-ParkillsonWhite syndrolne(MWPW),(2)9with AVRT associated with

    concealed WPW syndrome(CWPW)and(3)12 cases of AVNRT.

       (1)In the MWPW group, no case showed complete elimination of episodes of tachycardia

    during the study period.15 patients required antiarrhythrnic drug therapy because of severe

    sylnptoms durillg episodes of tachycardia. We stoPPed the medication in two of the 15 patients

    because the frequency of the episode decreased. However, the two patients have had severe

    symptoms during SVT.(2)In the CWPW group, episodes of tachycardia disappeared in only one

    patient within long follow-up period. Delta-wTaves in ECG were observed at ages ll in one patients

    and at ages 12 in two patients during the period of observation after the electrophysiological

    study.(3)In the AVNRT group, SVT did not recur in one patient vv・ithout medication. Four

    patients who required antiarrhythmic drug therapy responded to medication. One patient

    required long-term medication, whereas all others had only mild symptoms. Two cases had WPW

    syndrome with bystander accessory-pathway conduction.(4)CA was performed in ll cases(7,

    MWPW group;2, CWPW group;and 2, AVNRT group). The ages of the patients ranged from

    ll to 19 yr. Seven patients had Iong-terln medication and four patients showed severe symptoms

    during episodes of tachycardia.

       Since the patients with MWPW required a long-term therapy with antiarrythmic drugs to

    treat SVT, CA may be preferable. We prefer drug therapy to CA in pediatric patients with

    CWPW and AVNRT, because SVT disappeared in some patients and SVT was successfully

    controlled by medication in these groups.

    Presented by Medical*Online

    0755075607570758075907600761