東日本大震災直後の若年層の生活行...

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東日本大震災直後の若年層の生活行 動及び幸福度に対する影響 (内閣府経済社会総合研究所 New Working Paperより) 京都大学こころの未来研究センター 准教授 内田由紀子 資料4

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Page 1: 東日本大震災直後の若年層の生活行 動及び幸福度に対する影響...目的と意義 目的:若年層(20‐39歳)に対して震災前後に行ったイン ターネットアンケートを用い、被災地以外におい

東日本大震災直後の若年層の生活行動及び幸福度に対する影響

(内閣府経済社会総合研究所 New Working Paperより)

京都大学こころの未来研究センター准教授 内田由紀子

資料4

Page 2: 東日本大震災直後の若年層の生活行 動及び幸福度に対する影響...目的と意義 目的:若年層(20‐39歳)に対して震災前後に行ったイン ターネットアンケートを用い、被災地以外におい

目的と意義

目的: 若年層(20‐39歳)に対して震災前後に行ったインターネットアンケートを用い、被災地以外において東日本大震災が与えた影響を、生活行動、人生観、幸福度、の3点から明らかにすること

意義①:次世代を担う若年層における震災への反応や行動・価値観の変化等の検討は、創造的復興という未来に向けて重要な役割

意義②:大震災の幸福度への影響の分析は、幸福度の研究にも示唆を与える

2

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先行研究

• 国内、海外問わず、震災の影響はほとんど直接の被災者に関するもの。– 心理、健康、収入、ストレス反応、住居など

• マクロ的なものは経済分野に限定されている

• 幸福度に関する研究の分野においても、震災などの自然災害が幸福度に与える影響を中心的テーマにした実証研究は見られない

• 震災が、被災者以外の国民全体の生活行動様式や価値観、幸福度に対する影響を分析した研究は行われていない

⇒本調査の特徴3

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データ

• 調査方法• 調査会社の登録モニターに対するインターネットアンケート

• 調査内容• 幸福度、雇用、家族関係など(第2回調査では上記に加え、

自身の幸福度における震災の影響や震災直後の生活行動等も調査をしている)

• 調査対象• 第1回 (平成22年12月下旬)全国、 20,000サンプル

• 第2回(平成23年3月下旬)東北6県及び茨城県を除いた全国、 16,000サンプル(うち10,744は第1回と同一サンプル)

4

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データの地域区分別割合

5

4.10%6.54%

35.83%

3.89%3.71%

10.53%

16.67%

5.43%2.74%

6.38% 4.20%

第1回調査の地区分類別割合

北海道地区

東北地区

関東地区

北陸地区

東山地区

東海地区

近畿地区

中国地区

四国地区

北九州地区

南九州地区

4.48% 0.00%

37.24%

4.14%4.02%

11.59%

18.48%

5.94%

2.88%

6.91%4.33%

第2回調査の地区分類別割合北海道地区

東北地区

関東地区

北陸地区

東山地区

東海地区

近畿地区

中国地区

四国地区

北九州地区

南九州地区

4.35%0.00%

37.45%

3.97%4.12%

11.55%

18.47%

6.14%2.95%

6.72% 4.28%

パネルデータの地区分類別割合

北海道地区

東北地区

関東地区

北陸地区

東山地区

東海地区

近畿地区

中国地区

四国地区

北九州地区

南九州地区

(備考)内閣府経済社会総合研究所「第1回、第2回あなたご自身に関する調査」、住民基本台帳人口より作成

4.45%0.00%

36.90%

4.29%4.01%

11.33%

18.04%

6.05%

3.08%7.08% 4.77%

東北地区及び茨城県を除く住民基本

台帳の地区分類別割合(20‐39歳)北海道地区

東北地区

関東地区

北陸地区

東山地区

東海地区

近畿地区

中国地区

四国地区

北九州地区

南九州地区

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人生観や価値観の変化

6(備考)内閣府経済社会総合研究所「第2回あなたご自身に関する調査」(パネルデータ)より作成

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人生観;人生観・価値観の変化内容(下位項目の平均点)と回答者比率

7

(備考)1.内閣府経済社会総合研究所「第2回あなたご自身に関する調査」(パネルデータ)より作成2.回答者比率は、例えば、結びつき重視については、まず項目1、3、9、10、 2 の平均点を個人毎に算出し、その平均点が4~5だった者の数をカウントするなどして構成比を算出。

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幸福感;幸福度の変化(パネルデータ)

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(備考)内閣府経済社会総合研究所「第1回、第2回あなたご自身に関する調査」(パネルデータ)より作成

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幸福感の評定時の大震災の想起

9(備考)内閣府経済社会総合研究所「第2回あなたご自身に関する調査」(パネルデータ)より作成

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地震の想起の有無と幸福度の変化

10(備考)内閣府経済社会総合研究所「第1回、第2回あなたご自身に関する調査」パネルデータより作成

幸福度「現在、あなたはどの程度幸せですか

「とても幸せ」:10点~「とても不幸せ」:0点 交互作用:

F(1, 9468) = 5.96, p<.015)

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地震の想起の有無と幸福度判断基準

11(備考)内閣府経済社会総合研究所「第2回あなたご自身に関する調査」パネルデータ、平成21年度国民選好度調査より作成

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地震の想起の有無と実際・理想の幸福度

12(備考)内閣府経済社会総合研究所「第1回、第2回あなたご自身に関する調査」パネルデータより作成

理想の幸福状態(「不幸せだけを感じている状態:0点、幸せと不幸せが半々くらい:5点、幸せだけを感じている状態:10点)

幸福度「現在、あなたはどの程度幸せですか「とても幸せ」:10点~「とても不幸せ」:0点

5.000

5.500

6.000

6.500

7.000

7.500

2回目実際 理想の幸福状態

地震想起有り

地震想起なし

交互作用:F(1, 9470) = 84.47, p<.001

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幸福度;重回帰分析

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• 女性(+)

• 結びつき重視(+)

• 虚無感(-)

標準化係数

t値 有意確率ベータ性別(男=1女=2) .048 5.117 .000学歴 .018 1.997 .046第1回の幸福感 .664 70.768 .000

変化:結びつき重視 .100 9.165 .000

変化:個人努力重視 .009 .872 .383

変化:虚無感 ‐.048 ‐5.119 .000

Y3

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まとめ

• 利己的な行動はあまり見受けられず、全体としては被災地に思いをはせ、関係性をリソースとしようとする意識を強めている傾向

• ただし、若年層には2つの階層に分かれていると考えられる点は留意が必要– 幸福度を判断する際に今回の東日本大震災について思い浮かべた人たちは、震災前からもともと幸福度が高く、震災後にさらに高まる傾向にあった

– 東日本大震災について思い浮かべなかった人たちは震災前から幸福度が低く、震災後も高まっていなかった

• 関係性のネットワーク、個々人の共感性などが日本社会のレジリエンスを支える可能性

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限界

① 直接の被災者の心の動きはとらえられず

② 若年層と他の年代の比較の必要

③ インターネット調査特有の問題

④ 低幸福度層の要因分析:第1回目調査結果

の精査により、今後より詳細な検証は可能

15

Y4

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<参考>生活行動(全体的な傾向)

16(備考)内閣府経済社会総合研究所「第2回あなたご自身に関する調査」より作成

リスク退避行動 利他的行動 節電

0%10%20%30%40%50%60%70%80%90%100%

ペットボトルや電池など、自宅用の生活必需品の購入

保存食・非常食、非常用持出袋、家具転倒防止器具な

ど、自宅用の防災用品の購入

摂取制限・出荷制限が行われている産地で生産された農

産物などの買い控え

産地に関係なくほうれん草など葉物野菜の買い控え

可能な限り西の地域への旅行や移動

海外への旅行や移動

義援金、ボランティア団体などへの募金

支援物資などの寄付

被災者支援のためのボランティア活動(被災地以外も含

む)

照明などのこまめな消灯

コンセントからプラグを抜くなどによる待機電力の抑制

暖房機器の温度設定の変更や利用の抑制

今回の地震以前から行っており、特

段、変わっていない

実際に今でも行っている

実際に少しだけ行ったが、今は行って

いない

実際には行っていないが、行おうかと

かなり思った(思っている)

実際には行っていないが、行おうかと

少し思った(思っている)

全く行おうと思わない(全く行っていな

い)

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<参考>生活行動居住地と生活必需品の購入行動

17(備考)内閣府経済社会総合研究所「第2回あなたご自身に関する調査」より作成

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

北海道

栃木県

群馬県

埼玉県

千葉県

東京都

神奈川県

新潟県

富山県

石川県

福井県

山梨県

長野県

岐阜県

静岡県

愛知県

三重県

滋賀県

京都府

大阪府

兵庫県

奈良県

和歌山県

鳥取県

島根県

岡山県

広島県

山口県

徳島県

香川県

愛媛県

高知県

福岡県

佐賀県

長崎県

熊本県

大分県

宮崎県

鹿児島県

沖縄県

以前から行っている

今でも行っている

少しだけ行ったが、今は行って

いない

かなり思った

少し思った

全く思わなかった

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<参考>生活行動子どもの有無と生活必需品の購入行動

18(備考)内閣府経済社会総合研究所「第2回あなたご自身に関する調査」より作成