双極性障害と強迫性障害に対する 新薬開発のための …...hypospadias epilepsy...
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双極性障害と強迫性障害に対する新薬開発のためのモデルマウス
千葉大学 大学院 理学研究院 化学研究部門
教授 坂根 郁夫
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従来技術とその問題点
双極性障害(BPD)や強迫性障害(OCD)の良いモデル動物(マウス)は未だ少ない(無い)。現在、BPD及びOCDの治療方法として、対症療法薬を用いるしかないので、本モデルマウスを用いると原因療法薬の開発に繋がる可能性がある。
• BPDに関しては、実際にBPDで変異や発現変動のあるタンパク質を標的にしたモデル動物(マウス)は無い。
• OCDに関しては、不安感と分離したモデル動物(マウス)は無い(ヒトのOCDは不安感とは分離している)。
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新技術の特徴・従来技術との比較
DGKη-及びDGKδ-KOマウスは従来のモデルマウスに比べ、よりヒトのBPDとOCDに近いモデルとなる可能性が高い。
• DGKη-KOマウスは、実際にBPDで変異や発現変動のあるタンパク質(DGKη)を標的にしたモデル動物(マウス)である。
• DGKδ-KOマウスは、これまでに無い不安感と強迫性が分離したモデル動物(マウス)である。
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ジアシルグリセロール ( DG ) ホスファチジン酸 ( PA )
DGK
PAP
Sakane et al. (2007) Biochim.Biophys. Acta 1771, 793-806
・DGとPAは2つの脂肪酸を含有する構造を取っており、その種類の違いにより、50種類以上の分子種が存在する。・DGとPAはセカンドメッセンジャーとして知られており、多様なタンパク質を制御する。
DGKの基質DGと、代謝産物PAの性質
ジアシルグリセロールキナーゼ (DGK)
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DGKアイソザイムと疾患
<Related disease>Melanoma
Bipolar disorder
Cancer invasion
Type II diabetes, OCD
Cancer, BPD
Hypospadias
Epilepsy
Autoimmune disease
Cancer
Parkinson’s disease
6[ 1 ] Baum et al. (2008) Molecular Psychiatry 13, 197-207, [ 2 ] Moya et al. (2010) Int. J. Neuropsychopharmacol.13, 1127-1128
ゲノムワイド関連解析より、DGKhはBDに関与する可能性がある[1]。
SNP
Name
NIMH German Combined
Case
frequency
Control
frequencyP-value
Case
frequency
Control
frequencyP-value P-value OR (CI)
rs9315885a 0.737 0.68 0.005 0.71 0.654 0.006 0.00011.26
(1.12–1.42)
rs1012053a 0.899 0.843 0.0002 0.882 0.826 1.5x10-5 1.5x10-8 1.59
(1.35–1.87)
rs1170191 0.868 0.82 0.003 0.849 0.8 0.0003 3.7x10-6 1.42
(1.23–1.65)
BDの患者の脳において、DGKη
のmRNA量が増加している[2]。
DGKhとBDの関連について
しかし、実際にDGKhとBDが結びついていることを、生体レベルで示す結果は存在しなかった。
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DGKh-KOマウスの行動解析行動活性
•行動切替回数 •オープンアーム進入回数
WT : n=8, KO : n=10 ** p< 0.01, ***p< 0.005
•不動時間
うつ傾向
抗不安活性
KO vs. WT BD治療薬
( LiCl )
行動活性
抗不安活性
うつ傾向
躁様行動
Isozaki, T. et al. J. Neurochem., 138, 448–456 (2016)
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DGKh-KOマウスのmicroarray解析
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DGKη欠損のセロトニン神経系への影響
n =5, *p < 0.05
DGKh欠損は、セロトニンの再取り込みを活性化していた。
SERT p-SERT / SERT
• SERTの発現量は変化しなかった。
• SERTのThr276のリン酸化 (活性化) が増加していた。
大脳皮質におけるセロトニントランスポーター(SERT)の発現量とリン酸化量
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DGKη欠損のセロトニン神経系への影響
脳内のセロトニンはSERTを通って、血液脳関門を通過する [1] 。血管とニューロンは接さず、脳脊髄液や、星状細胞を介して物質をやり取りする。脳脊髄液のセロトニン濃度が、血中セロトニン濃度に影響する可能性がある。
[1] Nakatani et al. (2008) Eur. J. Neurosci. 2466-2472
脳脊髄液のセロトニン濃度が血中セロトニンに影響する可能性
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DGKη欠損のセロトニン神経系への影響
n =7, *P < 0.05
DGKh欠損による血中セロトニン濃度への影響
DGKh欠損により、血中セロトニン濃度は上昇した。
DGKhの欠損により、セロトニンの分布の変動が起こっている?
SERTは取り込みが促進されている。セロトニン全体の量は変化していない。
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Mania-like behavior of DGKh-KO mice may be caused
by abnormality of serotonin distribution.
DGKh-KOマウスの表現型を示す機構
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DGKh-KOマウスでは36:3-, 38:3-, 40:5-, 40:4-, 40:3-PA
が有意に減少した。
n = 4, *** p < 0.005
DGKh-KO/ WT (%)
DGKh欠損によるマウス脳のPA分子種量変化
DGKh-KOマウスではPUFAを含むPA分子種が選択的に減少した。
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n = 6,* p < 0.05, *** p < 0.005
18:2-, 20:5-LPA were decreased.
DGKh-KO マウスの血中LPA分子種濃度
DGKh欠損によるマウス血液中のLPA分子種量変化
バイオマーカー?
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DGKアイソザイムと疾患
<Related disease>Melanoma
Bipolar disorder
Cancer invasion
Type II diabetes, OCD
Cancer, BPD
Hypospadias
Epilepsy
Autoimmune disease
Cancer
Parkinson’s disease
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DGKδ-KOマウスの行動解析Usuki, T. et al. Brain Res., 1648, 193–201 (2016)
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新規物体探索試験
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1
2
1
23
4
Control DGKδ-KOA
Prim
ary
cort
ical neuro
ns
0
20
40
60
80
100
**
0 1 2 3
Control
DGKd-KO
Primary cortical neurons
Perc
enta
ge o
f
neuro
ns (
%)
B
DGKδ-KOマウスの脳神経の形態
Usuki, T. et al. Brain Res., 1648, 193–201 (2016)
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DGKδ-KOマウスの脳内セロトニン量
大脳皮質におけるセロトニントランスポーター(SERT)の発現量
大脳皮質におけるセロトニン量
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DGKδとSERTの相互作用
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DGKδ-KOマウスの表現型を示す機構
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想定される用途
• BPD及びOCDの病態解明のツール。
• BPD及びOCDの治療薬開発の評価系。
• BPD及びOCDの診断法開発の評価系。
• BPD及びOCDの症状を軽減する食品の開発の評価系。
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実用化に向けた課題
• 現在、既にモデルマウス(DGKη-及びDGKδ-
KOマウス)は取得済みで、実用化に向けた大きな課題は特に無い。
• DGKη-及びDGKδ-KOマウスがそれぞれBPD
及びOCD様の表現型を示す機構には明らかになっていない点があるが、最近、両者ともセロトニン神経系の異常が関与すること(互いに異常の状態は異なる)を示すデータが得られている。
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企業への期待
• BPD及びOCDに興味を持つ、製薬企業・食品企業との共同研究・ライセンス供与を希望。
• BPD及びOCDの病態解明のツール、治療薬
開発の評価系、診断法開発の評価系、症状を軽減する食品の開発の評価系が必要な企業には、本技術の導入が有効と思われる。
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本技術に関する知的財産権• 発明の名称 :DGKηノックアウトマウス及びこれを用いた方法
• 出願番号:特願2016-220080
• 出願人 :千葉大学
• 発明者 :坂根郁夫
• 発明の名称 :DGKδノックアウトマウス及びこれを用いた方法
• 出願番号:特願2017-004729
• 出願人 :千葉大学
• 発明者 :坂根郁夫
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産学連携の経歴
• 2008年-2009年 JST 地域イノベーション創出総合支援事業シーズ発掘試験発掘型
• 2009年-2010年 JST 地域イノベーション創出総合支援事業シーズ発掘試験発展型
• 2009年- 製薬企業A社と共同研究実施(DGKη-KOマウスも含む)
• 2010年-2011年 JST A-STEP FS探索タイプ
• 2011年-2012年 JST A-STEP FS探索タイプ
• 2013年-2014年 JST A-STEP FS探索タイプ
• 2014年-2015年 JST A-STEP FS顕在化タイプ
• 2017年- 製薬企業B社、C社と共同研究実施
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お問い合わせ先
千葉大学 産業連携研究推進ステーション
産業連携コーディネーター 小柏 猛
TEL 043-290 - 3565
FAX 043-290 - 3519
e-mail [email protected]