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平成31年 1月18日 経営管理本部 執行役員人事部長 能村 盛隆 大和ハウス工業における 定年延長と生涯現役への取り組み

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平成31年 1月18日

経営管理本部 執行役員人事部長 能村 盛隆

大和ハウス工業における 定年延長と生涯現役への取り組み

目次(アジェンダ)

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1.会社概要

2. 当社における制度の変遷(全体像)

3. 「65歳定年制」導入の背景

4. 「65歳定年制」の制度内容

5. 「シニア社員」の活用のポイント

6. 「アクティブ・エイジング制度」の内容

7. まとめ

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1.会社概要

○本社所在地:大阪市北区梅田3-3-5

○事業内容 :●住宅事業(注文住宅、分譲住宅、森林住宅)

●集合住宅事業(賃貸アパート、寮・社宅 等)

●流通店舗事業(商業施設、ショッピングセンター、ホテル 等)

●建築事業(物流施設、医療・介護施設、食品施設 等)

●マンション事業(分譲マンション)

●環境エネルギー事業(太陽光発電、省エネ・蓄エネ提案)

●海外事業(海外での不動産開発、工業団地開発)

●その他(都市開発事業、ロボット事業、農業事業など)

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1.会社概要

○創 業 :1955年(昭和30年4月5日)

○従業員数 :16,275人(単体:平成30年4月1日現在)

○平均年齢 :38才7ヶ月(平成30年4月1日現在)

○平均勤続 :14年1ヶ月( 同上 )

○資本金 :1,616億9,920万円

○売 上 高 :3兆7959億万円(連結・平成30年3月期)

1兆8142億万円 (単体・平成30年3月期)

○事 業 所 :本社・本店、東京本社・本店、

支社34ヶ所、支店45ヶ所、工場9ヶ所、

総合技術研究所(奈良市)

2. 当社における制度の変遷(全体像)

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シニア社員が「生涯活躍」できる道を段階的に拡充してきた。

2003年 60歳定年後の「嘱託再雇用制度」を導入

2006年 60歳定年後の「嘱託再雇用制度」の運用見直し

2007年 定年を60歳到達の「月末」から「年度末」に変更

2013年 「65歳定年制」の導入(定年年齢の引き上げ)

2014年 「65歳定年制」の運用見直し

2011年 「理事制度」を導入(60歳定年の例外措置)

「理事制度」の運用見直し

2015年 65歳定年後の再雇用制度である 「アクティブ・エイジング制度」を導入

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3. 「65歳定年制」導入の背景

「65歳定年制」の導入に踏み切った背景には何があったのか?

・少子高齢化による中長期的な労働人口不足への懸念

・定年を機に経験豊富な人財が社外へ流出(リタイア)

・一方、嘱託として会社に残った社員はモチベーションの低下

・増大する退職給付費用(企業年金)

経験豊富なシニア社員を戦力として囲い込み、 モチベーションを高い水準で維持してもらい、 企業年金の「もらい手」から「支え手」にまわってもらうには、 今の制度(嘱託再雇用制度)は社員にとって魅力的か?

・シニア雇用に対する社会的要請=改正高齢者雇用安定法

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3. 「65歳定年制」導入の背景

否、社員にとって決して魅力的とは言えない状況であった。

当時のシニア社員の声・・・

・頑張っても報酬は変わらない。やる気が出ない。

・組織の一員としての一体感を感じられない。

・自分に何が期待されているのかピンとこない。

・年金受給のほうが楽。無理したくない。

・若い奴に「嘱託さん」呼ばわりされた。

etc…

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3. 「65歳定年制」導入の背景

・「不安定な雇用(嘱託)」から「安定的な雇用(職員)」へ

・「硬直的な処遇」から「能力や実績が反映される処遇」へ

・「やってもやらなくても同じ制度」から「やれば報われる制度」へ

社員と会社の両者にとってウィン・ウィンの関係を築くには、

60歳からの社員の人生に対しても、

会社は大きく関与する責任がある。

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・原案:段階的な定年制延長制度

・・・61歳から65歳まで1年刻みで。

やる気を引き出せる制度を目指す。

・実施案:65歳定年制で一気に引き上げる方向へ。

60歳を迎えた年度末で退職金を支払う。

導入のポイントは退職所得控除の適用の可否。

税務当局に確認し適用可能との回答。→導入へ

報酬水準の見直し(大幅な引き上げ:賞与)

3. 「65歳定年制」導入の背景

3. 「65歳定年制」導入の背景

「65歳定年」を導入した結果、61歳以降の継続勤務を 選択する者の割合は9割を上回った。

9

65歳定年 導入

2018

92.1%

4. 「65歳定年制」の制度内容

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「不安定な雇用」から「安定的な雇用」へ

従前の「嘱託再雇用」 「65歳定年制」

雇用 形態

60歳で定年後、1年更新の嘱託として再雇用 (更新条件あり)

60歳で「役職定年」となるが、 引き続き、期間の定めのない職員として処遇

異動 無い 原則として、無い

退職金 60歳定年退職時に支給 (3月末定年→4月支給)

・60歳到達年度に支給 (従前と同じタイミング)

・それ以降の積立は無い

企業 年金

有期雇用社員の規定 にて積立

引き続き、職員の規定にて 積立(約3倍の水準差)

4. 「65歳定年制」の制度内容

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「能力や実績が反映される処遇」、「やれば報われる制度」へ

従前の「嘱託再雇用」 「65歳定年制」

基本給 60歳到達時の「資格級」と「毎年の査定」により変動

同左

手当 原則、対象外 職員対象の手当が復活 (住宅手当、単身赴任帰省旅費、 職種毎のインセンティブ給 等)

賞与 年間2ケ月の固定 一般社員と同様に、組織業績および個人査定により変動 (支給率は2/3程度)

年収 水準

定年前の5~6割 役職定年前の6~7割

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S/A B C D/E

G1・2/L1・2 ○○万円以上

+○万円

○○万円

+○万円

○○万円

+○万円

○○万円

+○万円

G3・4/L3・4 ○○万円以上

+○万円

32万円

+8万円

○○万円

+○万円

○○万円

+○万円

G5・6/L5・6 ○○万円

+○万円

○○万円

+○万円

○○万円

+○万円

○○万円

+○万円

G7~9/L7~9 ○○万円

+○万円

○○万円

+○万円

○○万円

+○万円

○○万円

+○万円

4. 「65歳定年制」の制度内容

(ご参考)毎年の基本給決定のしくみ

資格級

定期査定

※例の場合、「32万円」が基本給、「8万円」がみなし残業手当となる。 (みなし残業は、最低保証額として、残業30時間分に相当。 実際の残業がこれを超える場合は、超過分を別途支給する)

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S A1 A2 A3 B1 B2 B3 C1 C2 C3 D E

Ⅲ 4.8

赤Ⅰ

赤Ⅱ

赤Ⅲ

個人の査定ランク

所属事業所(営業所)のランク

4. 「65歳定年制」の制度内容

(ご参考)賞与支給率決定のしくみ

※シニアの場合、「4.8ケ月」×2/3=「3.2ケ月」の支給となる。

4. 「65歳定年制」の制度内容

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その他、「65歳定年」に合わせて各種制度の再整備を行った。

(1)ライフデザインセミナー

60歳に到達する年度の5月~7月に、当社グループの リゾートホテルにて、1泊2日で実施している。 ①役職定年後(61歳以降)の人事制度の説明 ②キャリアデザイン(シニア社員としての心構え) ③マネーデザイン(年金や老後のお金) ④ヘルスデザイン(健康)

(2)「60歳到達記念品」と「特別休暇」

従前の「定年退職記念品」を踏襲。 役職定年後、最初の一か月間(4月)を「特別休暇」とし、 30万円分(最大)の旅行券とギフトカードを贈呈。 (退職所得控除の対象)

4. 「65歳定年制」の制度内容

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(3)永年勤続表彰

従前の「20年」、「30年」に加え、「40年表彰」を新設。 40年表彰者には、本社で式典を実施し、会長・社長から 記念社章(プラチナバッチ)を贈呈。 (ちなみに、これまでも20年に「銀」、30年に「金」を贈呈)

(左から、プラチナ、金、銀) (一番右は、勤続20年未満の通常の社章)

5. 「シニア社員」の活用のポイント

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役職定年後の「シニア社員」の役割を3コースに分け、 各人に期待される役割を明確にした。(2014年の制度改定)

理事コース

メンターコース

生涯現役コース (プレイヤーコース)

役職定年

6 0 歳 到 達

年度末

(3月末) 新年度~

(4月以降) 年度中

約10%

約15%

約75%

(現状の 分布)

※コース分けは固定ではなく、2年目以降の見直しも可能。

5. 「シニア社員」の活用のポイント

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それぞれのコースに期待される役割とは?

理事コース

役職定年の例外。 余人をもって代え難い者であり、60歳到達後も引き続き、 ライン長(支店長、部長、室長 etc.)の役割を担う。 「常務理事」、「理事」、「副理事」の3ランクを導入。(2014年) 働きによって、2年目以降の昇格が可能な制度とした。 (2年目以降に「メンター」から「理事」に昇格する者もいる) なお、報酬は、60歳到達以前と同水準としている。

5. 「シニア社員」の活用のポイント

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メンターコース

指導的立場から、自身が培ってきた人脈・経験・知識を伝承することを主たる業務とする。

(対象)一定ランクのライン長経験者の内、事業所長・部門長の

推薦に基づき、役員が推挙した者。

シニア社員の10%を上限(目安)とする。

※ただし、現在は推薦が多く、枠を超えている状況。

(呼称)シニアメンター

(処遇)メンター手当(5万円/月)が支給される

5. 「シニア社員」の活用のポイント

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生涯現役コース(プレイヤーコース)

営業、設計、工事、アフターサービス、管理等のベテランプレーヤー として、現業の第一線で活躍し、結果を出す。

(呼称)シニアエキスパート(管理職格)

シニアスタッフ(主任、一般職格)

(処遇)職種毎の成果給(例:販促手当等)は、

現役社員と同様に支給される。

5. 「シニア社員」の活用のポイント

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理事コース

メンターコース

生涯現役コース (プレイヤー コース)

60歳未満

(役職定年前)

シニア社員

(役職定年後)

A支店 支店長

A支店 理事・支店長

B支社C事業部 工事部長

本社 安全管理部 シニアメンター

D支店E営業所 営業所長

D支店駐在 営業推進部 シニアエキスパート

F支店G営業所 設計課長

F支店 品質保証部 シニアエキスパート

(再配置の具体例)

H支店I営業所 工事担当者

H支店I営業所 工事担当者(シニアスタッフ)

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5. 「シニア社員」の活用のポイント

(60歳以降の処遇イメージ)→ 61歳以降も処遇の引き上げあり

61歳 62歳 63歳 64歳 65歳

60歳到達

副理事(新設)

理事

常務理事(新設)

61歳以降職員(メンターコース)

61歳以降職員(生涯現役コース)

6 0 歳 到 達

部門長

教育・指導役

プレー

ヤー

(アクティブエイジング制度)

定年退職

役職定年

6. 「アクティブ・エイジング制度」の内容

65歳定年以降の「嘱託再雇用制度」を導入(2015年)。 年齢の上限に縛られることなく、働き続けることが可能に。

職員

シニア職員

(シニアメンター /シニアエキスパート /シニアスタッフ)

嘱託再雇用

(1年更新)

60歳 (役職定年)

65歳 (定年)

アクティブ・エイジングとは… =生活の質を落とさず、社会と関わりを持ちながら年齢を重ねるという考え方

年齢上限 なし

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制度導入時の想定では70歳程度までの適用を考えていたが、制度概要をマスコミに発表する際に、特段、適用年齢の上限を提示しなかったため、「生涯現役制度」というネーミングを報道関係者が使用した。

6. 「アクティブ・エイジング制度」の内容

「本人の意欲」があり、かつ、「会社から必要とされている」ことを 再雇用の条件としている。

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推薦 事業所長、部門長からの推薦があり、 担当役員が認める者

査定 直近1年間の査定が標準以上

健康状態 通常勤務に耐えうる (直近1年の病気による不就労20日以下)

(再雇用の条件)

6. 「アクティブ・エイジング制度」の内容

「地域や家庭とのつながりも増やして欲しい」との思いから、 あえて週4日勤務としたが、収入は一定水準を確保。

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(処遇条件)

身分 嘱託で1年更新

給与 200,000円/月 ※企業年金を合わせると65歳までと遜色ない水準

賞与 業績評価・個人評価による (社員の1/2程度の支給率)

勤務形態 原則、週4日の勤務(週休3日)

福利厚生 寮・社宅については、職員時の扱いを継続 (但し、住宅手当は無し)

6. 「アクティブ・エイジング制度」の内容

定年退職者の7割が「アクティブ・エイジング」を選択。 会社にとっても、貴重な戦力の確保につながっている。

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定年到達

人数

再雇用

人数 再雇用率

4/1時点

適用者

2015年 33人 13人 39% 14人

2016年 55人 37人 67% 48人

2017年 66人 48人 73% 100人

2018年 69人 39人 57% 123人

※当該年度以外に退職したOBを当制度で採用することもあるので、「再雇用人数」の単純合計と「4/1時点適用者数」は必ずしも一致しない。

人件費はコストか投資か?

人件費は、コストでもあり投資でもある。両面から見る必要がある。

弊社(人事部)は投資の側面を重視。

新制度導入によるコスト増が仮に10億円だとしても、10億円の投資のチャンスが増えたと認識する。

投資をすれば必ず会社に利益として戻ってくる。利益を求める姿勢が大切。

社会的背景(少子高齢化、労働力人口の減少は不可避)に対して、一企業としてできることは何か。身近な存在としての「シニア層」に着目するのは必然の流れとも言える。

結果的に、 65歳定年制導入以後の経営数値(売上高、利益)は右肩上がりとなっている。

創業100周年の2055年に10兆円の売上を達成するためには、シニア人財の最大限の活用は必須であるという共通認識を経営層と共有することが重要なポイントとなる。(コスト以上に会社に利益をもたらす層がシニア層)

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7. まとめ

シニア層に対する今後の期待は「大」

年齢に拘らない人財活用は必ず会社に利益をもたらす。

人が利益の源泉。➡「事業は人なり」を実践する。

高齢化社会において「年齢7掛け」の時代へ。

「高齢者は高度で豊富な経験を積んだ貴重な人財である」と、経営トップが心底信じ、年齢に拘らず仕事を任せてこそ成果を引き出すことができる。

シニア層の活用において、経営トップの理解は不可欠である。

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7. まとめ

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