医学・生命科学研究等に係る倫理指針 及びカルタヘ...

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令和元年6月21日 研究振興局 ライフサイエンス課 生命倫理・安全対策室 医学・生命科学研究等に係る倫理指針 及びカルタヘナ法に関する説明会 本資料掲載ページ(ライフサイエンスの広場) http://www.lifescience.mext.go.jp/bioethics/link.html

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令和元年6月21日

研究振興局 ライフサイエンス課

生命倫理・安全対策室

医学・生命科学研究等に係る倫理指針及びカルタヘナ法に関する説明会

本資料掲載ページ(ライフサイエンスの広場)http://www.lifescience.mext.go.jp/bioethics/link.html

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本日の内容

【第一部】 生命倫理関係

• 【特別講演】医学研究・臨床試験における患者・市民参加(PPI)について

• 生命倫理に関する総論

• 生命倫理に関する指針について

✓ ES関係指針

✓ 特定胚指針

✓ ゲノム編集指針

• 臨床研究法【第二部】 カルタヘナ法関係

• 【特別講演】ゲノム編集技術について

• ゲノム編集技術の取扱いについて

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「生命倫理」の歴史

国際

〇人を実際の対象とする医療や医学系研究における規範の制定(ナチス・ドイツの人体実験、米国等での人種差別的な医学実験等の歴史)➢ ヘルシンキ宣言(人間を対象とする医学研究の倫理的原則)(1964年、

世界医師会)

〇科学の発展に伴う社会や人類への影響の考慮➢ アシロマ会議(1975年)→→→ カルタヘナ議定書(2003年)➢ ヒトゲノムと人権に関する世界宣言(1997年、UNESCO)➢ 生命倫理と人権に関する世界宣言(2005年、UNESCO)

国内

1970年代 組換えDNA実験と環境に関する議論1980~90年代 脳死・臓器移植に関する議論1990年代 遺伝子治療に関する議論2000年前後 クローン技術、ヒト胚、ヒトゲノムに関する議論

生殖補助医療に関する議論

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ヒトES細胞の樹立に関する指針

ヒトES細胞の分配及び使用に関する指針

ヒト受精胚の作成を行う生殖補助医療研究に関する指針

ヒト受精胚に遺伝情報改変技術等を用いる研究に関する指針(策定中)

ヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律、特定胚の取扱いに関する指針

ヒトiPS細胞又はヒト組織幹細胞からの生殖細胞の作成を行う研究に関する指針

人を対象とする医学系研究に関する倫理指針

遺伝子治療等臨床研究に関する指針

臨床研究法

再生医療等の安全性の確保に関する法律

基礎的研究

臨床研究

医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律

ヒト

ゲノ

ム・

遺伝

子解

析研

究に

関す

る倫

理指

ライフサイエンス研究(ヒト)に関連する国の法令・指針の体系

※この他、関連法令、指針として「次世代医療基盤法」、「厚生労働科学研究における利益相反(Conflict of Interest:COI)の管理に関する指針」、「異種移植の実施に伴う公衆衛生上の感染症問題に関する指針」等※生物の多様性保護については、カルタヘナ条約及びカルタヘナ法に基づく枠組、動物実験については動物愛護法に基づく枠組みがある。

【臨床応用】人の生命・身体の安全

【ゲノム情報】人の個人情報

(プライバシー)

【ヒト胚】人のアイデンティティ種としてのヒトの地位

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生命倫理とは何か

難病を治したい、良い薬を作りたい

子供を産みたい、性的な自己決定権

優れた農作物を作りたい

人の生命・身体の安全

人の個人情報

人のアイデンティティ種としてのヒトの尊厳

Just an example…✓ 本人/子宮提供者/生まれる子供の安全は?

✓ 法律上の問題は?

✓ 国内で認められていない代理母出産との比較?

✓ 子宮提供への圧力は生じないか?

・生体臓器移植の比較社会学?

✓ (生物学的な)男性が子供を産みたいと言ったら?

✓ そもそも親子って何?幸せって何?

✓ お金がある人しかできないのでは?保険適用すべき?

ELSIEthicalLegalSocialIssues

社会への影響

「ヒト」や「生命」を根本的に理解したい

科学技術が社会・人間に与える影響

生命の尊重

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(慶應大学による子宮移植の計画)

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2010年ノーベル医学生理学賞ロバート・エドワーズ英ケンブリッジ大名誉教授受賞理由「体外受精技術の開発」

世界で初めて体外受精技術で生まれたルイーズ・ブラウン(Louise Brown)さん

ローマ法王庁(バチカン)

「エドワーズ教授を選んだことは不適当である」「深刻な道徳的疑問を引き起こす」「重要な科学的業績」だが「受精卵の段階で失われた多くの命を忘れることはできない」

「すばらしいニュースです。私と母は、彼が体外受精のパイオニアの一人として受けた栄誉を嬉しく思います。ボブに対する変わらぬ愛をお伝えしますと共に、彼と彼のご家族に心よりお祝い申し上げます」

日本では、1983年に初めての体外受精による子どもが誕生し、2016年には国内で5万4110人の体外受精による子どもが誕生(出生児の18人に1人)

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生命倫理は、本質的に多様である

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守るべき普遍的価値○人の尊厳の保持○人の生命及び身体の安全の確保○社会秩序の維持

法令 指針 倫理感

研究において守るべきと社会的に合意された最低限のルールこれがあることによって社会的な信頼の下、研究を進められる

個人・集団の価値観、道徳観、生命観

動的

動的

生命倫理は本質的に相対論であり、やる/やらないではなく、どういう場合にやる/やらないかの問題(条件、手続)

法律・・・国家-私人または私人間の権利義務関係を規定。罰則(懲役・罰金)可能。制定・改正の柔軟性・迅速性に欠ける。

指針・・・行政指導または学会等コミュニティの自主ルール。強制力を持った罰則不可。(抑止力としては、公表、除名、研究費配分取消等)

制定・改正について柔軟・迅速に対応できる。

我が国におけるライフサイエンス研究については、これまで、憲法23条に定める「学問の自由」の尊重(研究者・専門職コミュニティの自律尊重)や、社会情勢の変化や技術の進歩に適時に柔軟な対応が可能であることから、指針を中心とした規制体系を構築してきた。

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科学研究・医療と生命倫理

社会的受容(倫理的妥当性)

科学的合理性①②

①技術進展、技術普及(≒低廉化)、安全性の保証②ルール化・デュープロセスの確保(指針等)③利害衡量・調整④対話、インクルージョン

⑤価値観の変化(プラスマイナス双方に動き得る)

研究開発・実用化可能領域

社会が利益を受けるイノベーションのためには、「科学的合理性」と「社会的受容」(倫理的妥当性)双方が重なる領域を広げることが必要。

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【 ライフサイエンス研究におけるリスク 】

研究段階研究種類

基礎的研究・応用研究段階 臨床・食品等“市民”に直接関わる段階

ヒトゲノム・遺伝子解析研究 遺伝情報の漏洩 遺伝情報の悪用

医学系研究 個人情報の漏洩、望まない研究への使用(他の研究にも共通) 安全性(臨床研究)、個人情報の悪用

クローン、動物性集合胚研究 特定胚の過度の作成 クローン人間、交雑個体、人間の尊厳等

ES細胞の樹立 ヒト受精胚の過度の滅失、ES細胞由来生殖細胞からヒト胚作成 安全性(再生医療)

生殖細胞作成 作成した生殖細胞からヒト胚作成 人工生殖細胞による子の誕生

ART研究ヒト胚作成 ヒト受精胚の過度の作成 臨床への流用

ヒト受精胚ゲノム編集 ヒト受精胚の過度の滅失 安全性(遺伝子治療)、エンハンスメント

組換え・ゲノム編集 組換え生物漏洩、強毒性ウイルスの発生 食品安全性、強毒性ウイルスの悪用

基礎的研究 応用研究 臨床・食品等

研究段階

研究種類

安全性規制

市民の不安:研究内容が不明*→研究目的が不明→安全性が不明・医療、食品の安全性・遺伝情報の悪用

(試料・情報提供候補者となる場合あり)

市民との関係

【ヒト胚基本的考え方】科学的妥当性、社会的妥当性、安全性

(試料・情報提供者となる場合あり)

【生命倫理に係る法令・指針】科学的合理性、倫理的妥当性、インフォームド・コンセント、個人情報保護

*イノベーティブであれば あるほどわかりにくい

現状

研究段階に応じた適切な課題設定とルール(生命倫理の遵守と研究の推進の両立)

→デュープロセス、透明性確保 →科学的知見や社会的合意形成に基づく規制

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(特に基礎研究における)倫理審査委員会の役割

• 倫理審査で見るのは「科学的合理性」だけではない

⇒様々な社会的論点のある研究について、その時点において、社会に正当性・必要性を説明できるかの確認=社会的妥当性

*個人の「倫理感」ではなく社会通念に照らした説明責任

*個別プロジェクトに応じての相対的判断

・ 基礎研究と臨床研究・治験との本質的な違いの理解

*基礎研究は「想定の研究目的」の達成のみがゴールではなく、「やってみなければわからない」ことも多い(だから価値がある)

*それまでの科学的知見での合理的説明+プロセスコントロール

・ アカデミアの自律性

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生命倫理とイノベーション

ES細胞(胚性幹細胞, embryonic stem cells)1981年、マウスES細胞作成に成功1998年、ヒトES細胞作成に成功

iPS細胞(人工多能性幹細胞, induced pluripotent stem cells)2006年、マウスiPS細胞作成に成功2007年、ヒトiPS細胞作成に成功

ヒトの生命の萌芽である胚を滅失させるという倫理的問題※現在、ES細胞の樹立には、指針に規定された手続に基づき、生殖補助医療終了後に

使用しない受精胚を提供者の同意の下に使用

【京都大学CiRA作成資料より】

受精胚の使用という倫理的問題を解決

しかし、例えばES/iPS細胞の生殖補助医療への応用など共通の倫理的問題は存在する※現在、指針によりヒトES/iPS細胞から作成した生殖細胞の受精は禁止されている

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ELSIに関する科学技術コミュニケーションのあり方

○ヒトiPS細胞を用いた動物性集合胚研究に関する 一般市民および研究者の意識調査(2017年、京都大学iPS細胞研究所 藤田みさお教授等)

○「欠如モデル」への批判

2016年2月~4月一般市民520名(男女半数)、研究者352名(回収率約3割、回答者の男女比約7:3)へのアンケート

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本日の内容

• 生命倫理に関する指針について

✓ ヒトES細胞関連指針

・ヒトES細胞研究の概要

・ES指針の改正について

✓ 特定胚の取扱いに関する指針

✓ ヒト受精胚に遺伝情報改変技術等を用いる研究に関する倫理指針(ゲノム編集指針)

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ヒトES細胞の使用

ヒトES細胞とは

受精5~6日後(100細胞前後)

(0.2mm)

ヒトES細胞

胚盤胞

ヒト受精胚

内部細胞塊を培養へ

血液細胞

分化

神経細胞

生殖細胞

・ヒトES細胞 は、受精後5~6日程経過したヒト胚の内部細胞塊を特殊な条件下で培養して得られる細胞。

・1998年11月、米国で初めて樹立。(Thomson JA et al, Embryonic stem cell lines

derived from human blastocysts. Science. 1998 Nov 6; 282(5391):1145-7.)

ヒトES細胞の特長

・ヒトES細胞は、人の体のあらゆる細胞に分化する能力(分化多能性)や、ほぼ無限に増殖する能力(自己複製能)を持つ可能性があることから、医療への応用が期待。

・一方で、ヒトES細胞は人の生命の萌芽であるヒト胚を滅失させて樹立されたものであることや、ヒトES細胞から生殖細胞(精子・卵子等)への分化を通じて個体の生成に結びつき得るため、慎重な配慮が必要。

ヒトES細胞の樹立

ES細胞研究の概要

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平成10年 (1998年) ヒトES細胞が初めて樹立(米国ウィスコンシン大学)

平成13年 (2001年)

平成19年 (2007年) 分配機関の設置に関する規定の整備

ヒトES細胞関連指針の主な経緯

樹立 及び 使用 に関する指針

平成21年 (2009年) 使用手続の簡素化、人クローン胚からの樹立に関する規定の整備

樹立 及び 分配 使用 に関する指針

大臣確認 届出

平成22年 (2010年) 生殖細胞の作成に関する規定の整備

平成26年(2014年)臨床利用に関する規定の整備

樹立 分配 及び 使用 に関する指針

文科・厚労 文科

平成31年(2019年)海外機関への臨床目的での分配、手続の簡素化

樹立 分配機関 に関する指針

文科・厚労 文科

使用

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分配機関

胚の提供機関(生殖補助医療機関)

胚の提供者

樹立機関 臨床利用機関使用機関

説明 同意・提供

受精胚 ES細胞

神経細胞

血球細胞血球細胞

※樹立機関、使用機関、臨床利用機関が同一機関の場合もある。

①ES細胞を樹立 ②ES細胞を用いて基礎研究 ③ES細胞を医療に利用

ES細胞研究の概要

ヒトES細胞研究の流れと関連規制

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ヒトES細胞の樹立に関する指針(文科省・厚労省共管)

ヒトES細胞の分配及び使用に関する指針(文科省所管)

再生医療等安全性確保法・医薬品医療機器等法

(厚労省所管)

分配機関

書面契約の上で分配

胚の提供機関(生殖補助医療機関)

胚の提供者

樹立機関 臨床利用機関使用機関

説明 同意・提供

樹立する前に、文科大臣・厚労大臣に樹立計画書の確認を受ける(樹立の必要性、方法等)

使用開始前に、文科大臣に使用計画書を届出

医療に用いる前に、法に基づき、厚労大臣に計画を提出

受精胚 ES細胞

神経細胞

血球細胞血球細胞

※樹立機関、使用機関、臨床利用機関が同一機関の場合もある。

ES細胞研究の概要

①ES細胞を樹立 ②ES細胞を用いて基礎研究 ③ES細胞を医療に利用

ヒトES細胞研究の流れと関連規制(現行ES指針:6/30まで)

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ヒトES細胞の樹立に関する指針(文科省・厚労省共管)

ヒトES細胞の分配及び使用に関する指針(文科省所管)

再生医療等安全性確保法・医薬品医療機器等法

(厚労省所管)

分配機関

書面契約の上で分配

胚の提供機関(生殖補助医療機関)

胚の提供者

樹立機関 臨床利用機関使用機関

説明 同意・提供

樹立する前に、文科大臣・厚労大臣に樹立計画書の確認を受ける(樹立の必要性、方法等)

使用開始前に、文科大臣に使用計画書を届出

医療に用いる前に、法に基づき、厚労大臣に計画を提出

受精胚 ES細胞

①ES細胞を樹立 ②ES細胞を用いて基礎研究 ③ES細胞を医療に利用

神経細胞

血球細胞血球細胞

※樹立機関、使用機関、臨床利用機関が同一機関の場合もある。

ES細胞研究の概要

ヒトES細胞研究の流れと関連規制(現行ES指針:6/30まで)

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※樹立の用に供されるヒト受精胚の要件・生殖補助医療に用いる目的で作成されたヒト受精胚であって、当該目的に用いる予定がないもののうち、提供者によるヒト受精胚を滅失させることについての意思が確認されているものであること。

・適切なインフォームド・コンセントを受けたものであること。・凍結保存されているものであること。・受精後14日以内のものであること。

提供者 提供機関 樹立機関 文部科学省

ヒト受精胚からES細胞を樹立するまでの手続の流れ

樹立責任者①樹立計画の作成

②計画了承の求め

⑤計画了解依頼

⑧計画の了解

⑨樹立計画の確認申請

⑫指針適合性確認

凍結受精胚の提供に係るIC手続

⑭連絡

樹立機関の長

⑯同意

文部科学大臣厚生労働大臣

各審議会

⑲提供者の個人情報匿名化⑳ICの確認通知、胚の移送

倫理審査委員会

③意見聴取④意見

倫理審査委員会

⑥意見聴取⑦意見

⑩意見聴取

⑪意見樹立機関の長

⑬計画実施の了承

提供機関の長

⑮説明

樹立責任者㉑樹立計画の開始

提供機関の長

倫理審査委員会

⑰意見聴取⑱意見

ICの確認

ES細胞研究の概要

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樹立機関

ヒトES細胞の樹立に関する指針(文科省・厚労省共管)

再生医療等安全性確保法・医薬品医療機器等法

(厚労省所管)

書面契約の上で分配

胚の提供機関(生殖補助医療機関)

胚の提供者

臨床利用機関

説明 同意・提供

樹立する前に、文科大臣・厚労大臣に樹立計画書の確認を受ける(樹立の必要性、方法等)

医療に用いる前に、法に基づき、厚労大臣に計画を提出

受精胚 ES細胞 血球細胞

※樹立機関、使用機関、臨床利用機関が同一機関の場合もある。

ES細胞研究の概要

①ES細胞を樹立 ③ES細胞を医療に利用

ヒトES細胞研究の流れと関連規制(現行ES指針:6/30まで)

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ヒトES細胞の分配及び使用に関する指針(文科省所管)

分配機関

使用機関

使用開始前に、文科大臣に使用計画書を届出

神経細胞

血球細胞

②ES細胞を用いて基礎研究

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使用機関 文部科学省

樹立機関or分配機関

ヒトES細胞の使用手続の流れ

使用責任者①使用計画書の作成

使用責任者⑧使用計画開始

使用機関の長

倫理審査委員会

文部科学大臣

②使用計画実施の求め

③意見聴取④意見

ヒトES細胞の分配

⑦計画の了承

使用機関の長

⑤届出

⑥届出受理の連絡

ES細胞研究の概要

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Page 22: 医学・生命科学研究等に係る倫理指針 及びカルタヘ …COI)の管理に関する指針」、「異種移植の実施に伴う公衆衛生上の感染症問題に関する指針」等

・千葉大学大学院医学研究院(2)

ヒトES細胞研究の実施機関及び研究計画数

・鹿児島大学大学院医歯学総合研究科(1)

・住友化学(株)(1)・大阪大学大学院医学研究科(5)・大阪大学大学院薬学研究科(1)

・公益財団法人神戸医療産業都市推進機構(1)・理化学研究所生命機能科学研究センター(1)

・理化学研究所脳科学総合研究センター(1)

・理化学研究所生命医科学研究センター(1)・国立医薬品食品衛生研究所(1)・東海大学(1)

・国立成育医療研究センター研究所(●)・国立成育医療研究センター研究所(8)・国立成育医療研究センター(1)・創価大学(1)・慶應義塾大学医学部(4)・東京医科歯科大学(1)・東京工業大学(2)・東京大学医科学研究所(3)・東京大学大学院医学系研究科(3)・東京大学大学院新領域創成科学研究科(1)・東京大学大学院理学系研究科(1)・国立国際医療研究センター(3)

・理化学研究所バイオリソース研究センター(○)・理化学研究所バイオリソース研究センター(1)・理化学研究所バイオリソース研究センター(1)・産業技術総合研究所(1)

・岐阜大学大学院医学系研究科(1)

・信州大学医学部(3)

樹立2機関、2計画(●)分配1機関、1計画(○)海外分配1機関、1計画使用40機関、延べ87計画

( )内数字は使用計画数2019年6月21日現在

・京都大学ウイルス・再生医科学研究所(●)・京都大学ウイルス・再生医科学研究所(6)・京都大学iPS細胞研究所(CiRA)(14)・京都大学医学部付属病院(1)・京都大学大学院医学研究科(3)・京都大学高等研究院物質-細胞統合システム拠点(2)・京都府立医科大学(1)・ロート製薬株式会社再生医療研究企画部(1)・ロート製薬株式会社ロートリサーチビレッジ京都基礎研究開発部(1)

・東北大学大学院医学系研究科(1)

・鳥取大学(2)

・名古屋大学医学部付属病院(1)・藤田医科大学(1)

・奈良県立医科大学(2)

・岡山大学(1)

ES細胞研究の概要

ヒトES細胞の樹立・分配・使用に関する計画について(一覧)http://www.lifescience.mext.go.jp/files/pdf/ESC_utilization_plan.pdf 21

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国内で樹立されたヒトES細胞株(2019.6.21現在)

指針に基づき使用されているヒトES細胞株の一覧http://www.lifescience.mext.go.jp/files/pdf/Available_ESC_lines_190426.pdf

ES細胞研究の概要

ヒトES細胞株の名称

樹立機関の名称樹立完了報告書

提出日

KhES-1

京都大学ウイルス・再生医科学研究所

2003.8.8

KhES-2KhES-3

2003.11.28

KhES-4KhES-5

2008.12.5

SEES1SEES2SEES3

国立成育医療研究センター研究所

2010.11.5

SEES4 2011.12.5

SEES5SEES6SEES7

2013.1.29

KthES11

京都大学ウイルス・再生医科学研究所

2018.5.7

KthES12 2018.12.7

KthES13 2019.4.11

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※使用計画により重複計上あり。

研究目的の主な分類(2019年6月21日現在) 計画数(※)

ヒトの発生、分化及び再生機能の解明

内胚葉系

肝細胞 6

膵細胞 6

腸細胞 1

外胚葉系神経細胞 13

感覚器系細胞(網膜等) 4

中胚葉系

造血系細胞 11

血管内皮細胞 3

心筋細胞 9

骨格筋細胞 2

腎細胞 1

骨細胞 2

脂肪細胞 1

間葉系細胞 2

生殖細胞 1

その他(網羅的研究等) 9

新しい診断法、予防法若しくは治療法の開発又は医薬品等の開発 37

国内のヒトES細胞研究の現状と使用計画の分類(実施中40機関, 87計画)

ES細胞研究の概要

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ヒトES細胞の取扱い(樹立・分配・使用)に関する関係指針の改正について

背景

改正指針の概要

◼ 平成26年、再生医療推進に向けた法制度整備に伴い、ES細胞の国内での使用条件を整備。その指針改正案に対し、CSTIより「研究に係る国際協力等の観点も踏まえ、ヒトES細胞の医療目的での海外機関への提供について、速やかに検討を行うことが望まれる」と指摘。

◼ このCSTI指摘及びES細胞を使用した研究の進捗に伴う手続きの見直しのため、文部科学省・厚生労働省において、ES関係指針の改正案を検討。

Ⅰ.ヒトES細胞の分配関係Ⅱ.ES細胞研究の進捗を踏まえた規定の見直し

✓ 海外機関への臨床目的での分配を可能とする。(現行指針では、基礎研究目的のみ可能)

✓ 臨床応用を目的とする場合などにおいて、使用機関からのES細胞の有償分配を可能とする。(樹立機関、分配機関からのES細胞の分配は従来通り無償を原則)

✓ 海外への分配については、従来の事前確認から事後報告制とする。(海外分配したES細胞の適切な扱いは、分配先との契約等により担保)

✓ 研究現場の実態に合わせ、研究計画書の記載項目の合理化、計画書の軽微変更等に関する規定の整備、倫理審査委員会の要件の再整理

✓ 指針の利用しやすさの観点から、ES細胞の「樹立」に関する指針(文科省・厚労省共管)、「分配機関」に関する指針(文科省)、「使用」に関する指針(文科省)に再整理

ES指針の改正について

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分配使用指針(文)

※ES細胞分配の主な経路を示したものであり、すべては網羅していない。※樹立機関、使用機関、臨床利用機関が同一機関の場合もある。

分配機関

国内

海外

樹立指針(文・厚)

提供機関

提供者

樹立機関

樹立計画

設置計画

ヒトES細胞株 使用機関B

使用計画

使用機関A使用計画

海外機関(基礎研究)

ヒトES細胞の分配関係の改正について

分配機関を経由したES細胞は分配不可

臨床利用機関

再生医療等提供計画/治験届

使用機関から他機関へのヒトES細胞の分配は原則不可(以下①②の場合を除く)

①加工ES細胞※を他の機関へ分配 ※「加工ES細胞」:遺伝子マーカの導入等をしたヒトES細胞

②ヒトES細胞を臨床利用機関へ分配

加工ES細胞は可

海外分配計画 海外分配計画

契約

改正前

ES指針の改正について

25

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分配機関指針(文)

使用指針(文)

分配機関

国内

海外

樹立指針(文・厚)

提供機関

提供者

樹立機関

樹立計画

設置計画

ヒトES細胞株

海外機関(基礎研究/臨床利用)

分配機関を経由したES細胞は分配不可

臨床利用機関

再生医療等提供計画/治験届

契約

主な改正点①使用機関から他の使用機関、海外機関への分配を可能にした。②使用機関からの分配については、必ずしも無償分配は求めないこととした。③海外機関への臨床目的での分配を可能とした。④海外分配計画を廃止し、分配先との契約等によりES指針に準じた取扱い要件を担保することとした。

有償可 有償可

有償可

海外分配を事前確認から事後報告に

指針を2つに分けて再整理

使用機関B使用計画

使用機関A使用計画

契約 契約契約

改正後

ES指針の改正について

ヒトES細胞の分配関係の改正について

※ES細胞分配の主な経路を示したものであり、すべては網羅していない。※樹立機関、使用機関、臨床利用機関が同一機関の場合もある。

26

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使用計画書の記載事項(新第10条)変更の手続(新第13,14条)

倫理審査委員会への付議

機関の長の了承

国への届出

1 使用計画の名称 必要① 必要①

必要①

2 使用機関の名称及び所在地、使用機関の長の氏名 不要 不要

3使用責任者

氏名

必要① 必要①略歴、研究業績、教育研修受講歴②

役割

4 研究者

氏名

不要(報告) 必要 必要略歴、研究業績、教育研修受講歴

役割

54 使用の目的・必要性意義必要① 必要① 必要①

65 使用の方法・期間

7 ヒトES細胞の入手先・細胞株の名称 必要 必要 必要

8 使用終了後の取扱い 必要 必要 必要

96使用機関の基準(施設・人員・技術的能力・規則・教育研修計画) 必要① 必要① 必要①

107 外国から提供されるES細胞の説明

11 その他必要な事項 不要(報告) 必要 必要

①計画書の実質的な内容に係らない軽微な変更は事後報告可とする。具体例はガイダンスで提示。②添付書類とし、更新不要。

追加・削除

ES指針の改正について 使用計画書記載事項ES使用指針(新指針)

使用計画書記載事項、変更手続一覧(新第10~14条)(再掲)

27

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追加・削除

④使用の目的・意義、⑤使用の方法・期間

○ヒトES細胞の使用の要件(新第4条第1項)

・次のいずれかに資する基礎的研究であること。

-ヒトの発生、分化及び再生機能の解明

-新しい診断法、予防法もしくは治療法の開発又は医薬品等の開発

・科学的合理性及び必要性意義※を有すること。

※他の種類の細胞等による代替不可能性まで求めているものではないことを明確化

○禁止行為(新第5条)

-ヒトES細胞を使用して作成した胚の人又は動物の胎内への移植その他の方法によりヒトES細胞から個体を生成すること。ただし、クローン法第四条に定める特定胚を作成する場合であって、特定胚指針の適用を受ける場合にあってはこの限りでない。※

-ヒト胚へヒトES細胞を導入すること。

-ヒトの胎児へヒトES細胞を導入すること。

-ヒトES細胞から作成した生殖細胞を用いてヒト胚を作成すること。

※ただし書きは、ヒトES細胞を用いて動物性集合胚を作成した場合における動物胎内への移植禁止を除外する内容。

ES指針の改正について 使用計画書記載事項ES使用指針(新指針)

28

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○使用機関の基準(新第6条)

・必要な施設、人員を有すること。

-施設の管理体制(部外者の実験室等への立入禁止 or 保管庫の施錠)

-必要な実験装置(ヒトES細胞専用のCO2インキュベータ※、クリーンベンチ、保管庫等)

・ヒトES細胞の使用について遵守すべき技術的、倫理的事項に関する規則が定められていること。

・教育研修計画が定められていること。

⑥使用機関の基準

追加・削除

ES指針の改正について 使用計画書記載事項ES使用指針(新指針)

※ヒトES細胞と他の細胞との交差汚染を避けるため、インキュベータ内をパーティションで区切るなど適切な管理が行われれば、必ずしもヒトES細胞専用のCO2インキュベータを別途用意する必要はない。

29

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倫理審査委員会

ES分配使用指針(旧指針) ES使用指針(新指針)(参考)人を対象とする医学

系研究に関する倫理指針

構成要件

専門分野

生物学の専門家 生物学・医学の専門家等、自然科学の有識者

生物学・医学の専門家等、自然科学の有識者医学の専門家

法律の専門家

倫理学・法律学の専門家等、人文・社会科学の有識者

倫理学・法律学の専門家等、人文・社会科学の有識者

生命倫理に関する意見を述べるにふさわしい識見を有する者

一般の立場に立って意見を述べられる者

一般の立場に立って意見を述べられる者

一般の立場に立って意見を述べられる者

外部委員使用機関が属する法人に所属する者以外の者が2名以上

使用機関が属する法人に所属する者以外の者が2名以上

倫理審査委員会の設置者の所属機関に所属しない者が複数

男性・女性 各2名以上 各1名以上 各1名以上

委員数 最低5名 最低5名 最低5名

審査に参画できない者

研究者又は責任者との間に利害関係を有する者、責任者の三親等以内の親族

研究者等又は責任者との間に利害関係を有する者

(規定なし)

成立要件 (規定なし) 構成要件と同様の要件 構成要件と同様の要件

軽微な変更等に係る審査

(規定なし)当該倫理審査委員会が指名する委員による審査が可能

当該倫理審査委員会が指名する委員による審査が可能

改正点:使用計画の審査等を行う倫理審査委員会の要件を、「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」で規定されている要件に揃える。

ES指針の改正について ES使用指針(新指針)

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使 用 計 画 の 名 称(記載要領:研究の内容が簡潔に分かる名称を記載)

使 用 機 関 の 名 称(記載例)○○大学○○学部

所 在 地(記載例)〒○○-○○ ○○県○○市○○

使 用 責 任 者 の 氏 名(記載例)文科 ○○(もんか ○○)

使用の目的及びその意義記載要領:次のいずれかに資する基礎的研究を目的としていること。【第4条第1項第1号】・ヒトの発生、分化及び再生機能の解明・新しい診断法・予防法・治療法の開発、医薬品等の開発また、当該研究にヒトES細胞を用いる科学的合理性、意義について説明されて

いること。【第4条第1項第2号】なお、ヒトES細胞を使用する意義については、他の種類の細胞等による代替不

可能性まで説明を求めているものではないことに留意すること。

使用計画書記載要領ES使用指針(新指針)ES指針の改正について

ヒトES細胞使用計画様式http://www.lifescience.mext.go.jp/files/pdf/Form_hESCutilizationplan.docx

ヒトES細胞使用計画書

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使 用 の 方 法

記載要領:研究目的を達成するためのヒトES細胞の使用の方法について記載するとともに、計画に関わる範囲でヒトES細胞由来の分化細胞の取扱いについても記載すること。将来の医療利用を想定して動物実験等の非臨床試験を行う場合には、その方法についても記載すること。また、ヒトES細胞を他の機関へ分配する予定がある場合は、その旨を記載すること。その他、以下の事項に留意すること。・使用の方法が禁止事項に抵触するものでないこと。【第5条】・再生医療への利用を想定した基礎的研究(非臨床試験等)を行う場合は、臨床利用することについてのインフォームド・コンセントを受けたうえで樹立されたヒトES細胞を使用すること。【第4条第3項】

・生殖細胞の作成を行う場合には、生殖細胞の作成を行うことについてのインフォームド・コンセントを受けたうえで樹立されたヒトES細胞を使用すること。

【第4条第3項】

期 間使用機関の長の了承日~ 年 月 日まで

使用計画書記載要領ES使用指針(新指針)ES指針の改正について

ヒトES細胞使用計画書

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使用機関の基準に関する説明記載要領:第6条に規定する要件を満たすことが分かるよう、以下の内容が記載されていること。

[設備]CO2インキュベータ※1、クリーンベンチ等の機器類や細胞凍結保存容器などが備え

られること。【第6条第1項第1号】

※1ヒトES細胞と他の細胞との交差汚染を避けるため、インキュベータ内をパーティションで区切るなど適切な管理が行われれば、必ずしもヒトES細胞専用のCO2インキュベータを別途用意する必要はない。

[管理体制]施錠管理による部外者の施設や実験室等への立入制限や、細胞凍結保存容器の施錠

管理などの措置がとられること。【第6条第1項第1号】

[教育研修計画]ヒトES細胞の取扱いに関する技術的能力及び倫理的な識見を向上させるための教

育研修計画が定められていることについて記載すること。【第6条第1項第2号】

使用計画書記載要領ES使用指針(新指針)ES指針の改正について

ヒトES細胞使用計画書

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外国で樹立されたヒトES細胞の樹立及び譲受けの条件に関する説明

記載要領:[国内で使用実績がある海外樹立ES細胞株※2を使用する場合]○当該ヒトES細胞株の名称及び入手先を記載すること。

※2これまで国内で使用実績のある海外樹立ES細胞は以下のHPに掲載。http://www.lifescience.mext.go.jp/bioethics/hito_es.html

[国内で使用実績がない海外樹立ES細胞株を使用する場合]○当該ヒトES細胞株の名称及び入手先が記載されていること。○当該ES細胞が以下の基準を満たしていること。・当該ヒトES細胞の樹立に用いたヒト受精胚が以下の要件を満たしていること。- 生殖補助医療に用いられなくなったものであること(当該胚が凍結されたものかどうかは問わない。)。-適切なインフォームド・コンセントを受けたものであること。-必要な経費を除き、無償で提供されたものであること。

・当該ヒトES細胞について、国外での研究使用が認められていること。○上記に関連する資料(MTA等)が添付されていること。

【第4条第3項】

使用計画書記載要領ES使用指針(新指針)ES指針の改正について

ヒトES細胞使用計画書

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氏 名 (記載例)文科 ○○(もんか ○○)

略 歴(記載例)・○○年○月~○○年○月:○○大学大学院医学研究科准教授・○○年○月~現在:同教授

研 究 業 績

記載要領:使用計画を遂行するに際に必要となる、技術的能力を確認するために必要な業績についてのみを簡潔に記載すること。

(記載例)[実績]・○○年○月~○○年○月:ヒトiPS細胞を用いた○○に関する研究[論文]・(著者名、論文名、雑誌名、日付、PMID)

教 育 研 修受 講 歴

記載要領:研究に関する技術的研修及び倫理的研修の受講歴を記載すること。

(記載例)[技術的研修]日付:○○年○○月○○日 機関:○○大学内容:ヒトES細胞の取扱いに関する技術的研修[倫理的研修]日付:○○年○○月○○日 機関:○○大学内容:ヒトES細胞の使用に関する指針について

(添付資料)使用責任者の略歴、研究業績及び教育研修の受講歴を示す書類

使用計画書記載要領ES使用指針(新指針)ES指針の改正について

○責任者は、倫理的な識見のほか、十分な専門的知識及び多能性幹細胞の取扱実績等の技術的能力を有していること。【第8条】

35

Page 37: 医学・生命科学研究等に係る倫理指針 及びカルタヘ …COI)の管理に関する指針」、「異種移植の実施に伴う公衆衛生上の感染症問題に関する指針」等

分配機関指針(文)

使用指針(文)

※ES細胞分配の主な経路を示したものであり、すべては網羅していない。※樹立機関、使用機関、臨床利用機関が同一機関の場合もある。

分配機関

国内

海外

樹立指針(文・厚)

提供機関

提供者

樹立機関

樹立計画

設置計画

ヒトES細胞株 使用機関B

使用計画

使用機関A使用計画

海外機関(基礎研究/臨床利用)

分配機関を経由したES細胞は分配不可

臨床利用機関

再生医療等提供計画/治験届

契約

主な改正点①使用機関から他の使用機関、海外機関への分配を可能にした。②使用機関からの分配については、必ずしも無償分配は求めないこととした。③海外機関への臨床目的での分配を可能とした。④海外分配計画を廃止し、分配先との契約等によりES指針に準じた取扱い要件を担保することとした。

有償可 有償可

有償可

海外分配を事前確認から事後報告に

指針を2つに分けて再整理

契約 契約契約

改正後

ヒトES細胞の分配に係る改正の概要(再掲)

ES指針の改正について

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臨床利用機関or海外機関

使用機関 文部科学省

使用責任者②分配状況報告書の作成

使用機関の長

倫理審査委員会

文部科学大臣

③報告書の提出

④報告書の写しの提出

①契約締結等のうえ、ES細胞を分配契約

ヒトES細胞の分配及び分配状況報告手続の流れ

使用計画実施中の手続ES使用指針(新指針)ES指針の改正について

指針改正で追加

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ヒトES細胞の海外機関への分配の要件

ES使用指針(新指針)ES指針の改正について

分配先との契約その他の方法により、次に掲げる要件を満たすこと。

①ヒトES細胞の使用が、当該海外機関が存する国又は地域の制度等に基づき承認されたものであること。

②ヒトES細胞の取扱いについて、 当該海外機関が存する国又は地域の制度等を遵守すること。

③分配を受けたヒトES細胞を、他の機関に対して分配しないこと。

④ヒトES細胞を使用して作成した胚の人又は動物の胎内への移植その他の方法による個体の生成、ヒト胚及びヒトの胎児へのヒトES細胞の導入並びにヒトES細胞から作成した生殖細胞を用いたヒト胚の作成を行わないこと。

⑤基礎的研究及び医療目的以外の利用を行わないこと。

⑥人クローン胚を用いて樹立されたヒトES細胞を分配しようとする場合、個人情報の保護のための十分な措置が講じられていること。

⑦上記要件に反することとなった場合は、直ちにヒトES細胞の使用を終了すること。

使用計画実施中の手続

指針改正で追加

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使用計画書の記載事項(新第10条)変更の手続(新第13,14条)

倫理審査委員会への付議

機関の長の了承

国への届出

1 使用計画の名称 必要① 必要①

必要①

2 使用機関の名称及び所在地、使用機関の長の氏名 不要 不要

3使用責任者

氏名

必要① 必要①略歴、研究業績、教育研修受講歴②

役割

4 研究者

氏名

不要(報告) 必要 必要略歴、研究業績、教育研修受講歴

役割

54 使用の目的・必要性意義必要① 必要① 必要①

65 使用の方法・期間

7 ヒトES細胞の入手先・細胞株の名称 必要 必要 必要

8 使用終了後の取扱い 必要 必要 必要

96使用機関の基準(施設・人員・技術的能力・規則・教育研修計画) 必要① 必要① 必要①

107 外国から提供されるES細胞の説明

11 その他必要な事項 不要(報告) 必要 必要

①計画書の実質的な内容に係らない軽微な変更は事後報告可とする。具体例はガイダンスで提示。②添付書類とし、更新不要。

追加・削除

ES指針の改正について 使用計画書記載事項ES使用指針(新指針)

使用計画書記載事項、変更手続一覧(新第10~14条)(再掲)

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Page 41: 医学・生命科学研究等に係る倫理指針 及びカルタヘ …COI)の管理に関する指針」、「異種移植の実施に伴う公衆衛生上の感染症問題に関する指針」等

使用計画の変更手続の流れ

使用機関 文部科学省

使用責任者①使用計画変更書の作成

使用責任者⑥変更された使用計画の実施

使用機関の長

倫理審査委員会

文部科学大臣

②使用計画変更の求め

③意見聴取④意見

⑤計画変更了承・変更の届出

ES使用指針(新指針)ES指針の改正について

指針改正に伴う変更なし

使用計画実施中の手続

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研究計画の実質的な内容に係らない変更に関する手続の流れ

【使用計画の実質的な内容に係らない変更】

・使用機関の基準に関する説明のうち、施設の名称の変更(施設が追加・削除となる場合を除く)

・国内で使用実績のある外国から分配されたヒトES細胞株の追加

・法令・指針等の改正に伴う用語の変更

使用機関 文部科学省

使用責任者①使用計画の変更

②使用計画変更書の作成

使用機関の長

倫理審査委員会

文部科学大臣

③変更書の提出

④変更の届出

使用計画実施中の手続ES使用指針(新指針)ES指針の改正について

指針改正で追加

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その他の手続

○使用の進行状況の報告(新第15条)-使用責任者は、ヒトES細胞の使用の進行状況を使用機関の長及び倫理審査委員会に随時報告。

-生殖細胞の作成を行う場合、使用責任者は、年1回以上、生殖細胞作成状況報告書を作成し、使用機関の長に提出。

-使用機関は、ヒトES細胞の使用に関する資料の提出、調査の受入れその他文部科学大臣が必要と認める措置に協力。

○研究成果の公開(新第19条)-ヒトES細胞の使用により得られた研究成果は、知的財産権及び個人情報の保護

等に支障が生じる場合を除き公開。

○使用計画の終了手続(新第16条)-使用責任者は、ヒトES細胞の使用を終了したときは、使用の結果を記載した報

告書を作成し、使用機関の長に提出。-使用機関の長は、報告書の写しを倫理審査委員会及び文部科学大臣に提出。

使用計画実施中の手続ES使用指針(新指針)ES指針の改正について

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経過措置について

改正指針は2019年7月1日から施行されます。7月1日以降に届出をする場合は新指針に基づく手続が必要となります。7月1日までに新指針に基づく使用計画の審査等を行い、7月1日以降に届出をすることは可能です。

なお、指針施行日(2019年7月1日)以前に届出されている使用計画は、指針施行日以後も有効であり、今般の指針改正に伴う使用計画書の切り替えは不要です。また、既に使用計画書に記載されている内容のうち、今般の改正で記載事項

から無くなった内容について指針施行日以後に変更があった場合であっても、当該変更に係る手続きは不要です。

ES指針の改正について

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本日の内容

• 生命倫理に関する指針について

✓ ヒトES細胞関連指針

・ヒトES細胞研究の概要

・ES指針の改正について

✓ 特定胚の取扱いに関する指針

✓ ヒト受精胚に遺伝情報改変技術等を用いる研究に関する倫理指針(ゲノム編集指針)

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動物性集合胚について

○動物性集合胚とは、ヒト以外の動物の胚(受精胚またはクローン胚)に、ヒトの細胞(ES細胞やiPS細胞など)を注入したもの

○クローン法(ヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律、平成12年11月成立)は、人クローン個体や、ヒトと動物のいずれであるか明らかでない個体の生成が、人の尊厳の保持等に重大な影響を与える可能性に鑑み、ヒト・動物の胚等を用いて作成される9種類の胚を「特定胚」として、その取扱いを規制する法律。

○動物性集合胚は特定胚の1つであり、クローン法における人又は動物の胎内移植禁止の対象ではないが、その取扱いは、クローン法に基づく特定胚指針(特定胚の取扱いに関する指針、平成13年12月告示)に従って行うこととされている。

2.法律上の位置付け

1.動物性集合胚とは

3.旧指針における動物性集合胚の作成・取扱い

○動物性集合胚は、以下の要件を満たす場合に限り、文部科学大臣に届け出た上で作成可能。

①移植用臓器の作成に関する基礎的研究を目的とすること②動物性集合胚を用いない研究では得ることのできない科学的知見が得られること③動物性集合胚を作成しようとする者が十分な技術的能力を有すること

○作成後は、原始線条が現れるまでの間(最大14日)、取り扱うことが可能。

○人又は動物への胎内移植は禁止。

【機密性○(取扱制限)】

精子

動物の受精胚 注入 受精 卵子

成長

動物性集合胚

ヒトの細胞

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動物性集合胚の取扱いの見直しに係る経緯

○平成24年12月 総合科学技術会議生命倫理専門調査会において、動物性集合胚を用いた研究の取扱いの見直しの可否及び見直しの場合の方向性につき、倫理的観点及び科学的観点から検討開始。

○平成25年8月 総合科学技術会議生命倫理専門調査会「動物性集合胚を用いた研究の取扱いについて」①ヒト臓器作成の確認、新たな疾患モデル動物の作成、多能性幹細胞の多能性の検証など新たな科学的知見

が得られる可能性を想定し、動物胎内への移植の必要性を考えることが適当。②有益性が高い他の目的の基礎的研究が想定されることから、特定胚指針の表現見直し(拡大)の検討が適

当。③科学的知見の増大により動物胎内への移植の是非を検討する前提が整ってきており、移植により得られる

可能性のある科学的知見の重要性に鑑み、科学的合理性・社会的妥当性に係る一定の要件を定め、限定的に動物胎内への移植を認めることが適当。

○平成22年 国内でヒトiPS細胞から動物性集合胚を作成する研究や臓器の欠損している動物に他の動物の臓器を作らせる研究(マウス-ラット、ブタ-ブタ)が開始。

○平成25年9月 文部科学省科学技術・学術審議会生命倫理・安全部会特定胚等研究専門委員会において、科学的、倫理的・社会的観点から検討開始(作業部会での科学的観点からの調査・検討、倫理的・法的・社会的観点からの検討、国内外の規制等の現状を含む総合的検討(日本人の宗教と倫理、動物福祉、動物性集合胚に関する意識調査、海外の規制状況、脳神経科学・生殖細胞研究等について、有識者11人からヒアリングをしつつ、平成30年3月まで18回審議)。

○平成30年3月 特定胚等研究専門委員会「動物性集合胚を用いた研究の取扱いについて」とりまとめ。

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「動物性集合胚を用いた研究の取扱いについて」(平成30年3月特定胚等研究専門委員会)(概要)

1.動物性集合胚の作成目的の拡大

○ 動物性集合胚の作成目的は、「移植用ヒト臓器の作成に関する基礎的研究」に限られているが、「多能性幹細胞の分化能検証」や「モデル動物の作成に関する研究」についても新たに容認することが適当。

○ その際、目的に関する規定については、新たな研究ニーズにも柔軟に対応できるよう、限定的に規定する方法ではなく、より包括的なものとすることが適当。

2.胎内移植、個体産生に関する考え方

(1)胎内移植及び個体産生の是非

○ 動物性集合胚の原始線条形成以降の取扱いや胎内移植、個体産生を可能とした場合、動物性集合胚から成長した動物の体内でヒトの組織や臓器を形成することができる可能性があり、上記1.の目的等において様々な研究上の意義が認められる。

○ 科学的な観点からの調査・検討の結果、動物性集合胚の胎内移植や個体産生を行った場合でも、生命倫理上の懸念を惹起しうるような「人と動物との境界が曖昧となる個体」※が生じる可能性は極めて低いと考えられる。

※①ヒトと動物の特徴が混ざった外見の生物、②ヒト細胞由来の脳神経細胞の影響によりヒトのような高次脳機能を持つ生物、③ヒト細胞由来の生殖細胞を持つ生物の交配から生じる生物

○ 各研究計画の審査等において、一定の要件(以下(2))を満たした場合、動物への胎内移植、個体産生を容認することができると考えられる。

※なお、海外の規制において、動物性集合胚の胎内移植や個体産生を禁止している例は見られない。

(2)胎内移植、個体産生を行う場合の要件

○ 当該研究について科学的合理性及び必要性を有すること。

○ 「人と動物との境界が曖昧となる個体」が産生されないことについて、先行研究等の知見を踏まえ十分な科学的説明がなされていることや、その産生を防止するための必要な措置がとられていること。

○ 動物性集合胚由来の個体の交配を防止するための措置がとられていることや、同胚由来のヒト生殖細胞の受精を行わないこと。

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特定胚指針の改正概要旧指針 改正指針

作成できる動物性集合胚の種類

・特段の規定なし(旧第2条)

・「一以上の動物胚と人の体細胞又はヒト受精胚の胚性細胞とが集合して一体となった胚」に限る。(第2条)

作成が認められる研究目的

・移植用臓器の作成に関する基礎的研究(旧第15条)

・左記規定を削除し、研究目的を拡大する。

動物性集合胚の作成要件

・動物性集合胚を用いない研究によっては得ることができない科学的知見が得られること・作成者が研究を行うに足りる技術的能力を有すること(旧第15条)

・変更なし(第12条)

動物性集合胚の取扱期間

・原始線条が現れるまでの間(最大14日)(旧第5条)

・左記規定を削除し、原始線条以降の取扱いを可能とする。

動物性集合胚の動物への胎内移植

・禁止(旧第7条) ・個別審査により、「動物への胎内移植」を認める。

作成・譲受後の動物性集合胚の取扱いのその他の要件

・人の胎内への移植禁止。・動物性集合胚を用いない研究によっては得ることができない科学的知見が得られること。

・作成者が研究を行うに足りる技術的能力を有すること・ヒトの生殖細胞を作成した場合には、他の生殖細胞との受精を禁止。

・交雑個体またはそれに類する個体の生成防止のための必要な措置を講じること。

・個体産生の場合は、他の個体と交配させないこと。(15条)

48

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精子

動物の受精胚受精卵子

成長

③動物の子宮への移植

④子宮内で成長

個体産生(出産)・成長

ヒトの臓器を持つ胎仔

⑤ヒトの臓器交配等の禁止

人の細胞iPS細胞

解禁

従来研究が認められていた範囲 特定胚指針の改正で、個別審査により研究可能となった範囲

②動物の受精胚にヒトiPS細胞を注入

①目的の臓器ができないようにしたもの

×

交雑個体生成防止のための必要な措置

研究イメージ(一例)

49

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ヒト-ブタキメラ胚の作製と移植評価

Figure 5; Wu J, et al. Cell, 2017

ヒト細胞の種類

ナイーブ型、中間型iPS細胞

動物胚の種類 ブタ

動物性集合胚の移植先

ブタ

移植期間 21-28日

分化制御 なし

胚盤胞補完法 なし

ナイーブや中間型のヒトiPS細胞のブタ胚盤胞注入と、移植後ブタ胚の分析実験手順の概略図

Figure S4; Wu J, et al. Cell, 2017

胚に細胞注入 母ブタから取り出した胎仔

正常な胎仔 成長が遅くなった胎仔

実験結果

2017年, アメリカソーク研究所, Wu J, Belmonte I et al.

雑誌名:Cell, vol.168, p.473-

論文名:Interspecies Chimerism with Mammalian Pluripotent Stem Cells.

(哺乳類多能性幹細胞の異種間キメラ)

概 要:ヒト多能性幹細胞の検証を目的として、ナイーブ型、中間型iPS細胞とブタ胚との動物性集合胚を作成し、ブタ胎内へ移植。胎生28日で解析し、ヒト細胞の寄与を確認した。

第98回特定胚等研究専門委員会(平成29年4月12日)阿久津委員発表資料より

動物性集合胚に関連した研究例

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生命倫理・安全部会

文部科学省

届出内容の指針への適合性について検討

意見聴取

届出

●:法律事項○:指針事項

研究機関

研究者

●作成・譲受の届出 (法6条)●研究計画と違う特定胚を偶然作成した場合の届出 (法9条)

●譲渡・廃棄の届出 (法11条)

指針に適合しない場合は、必要に応じて●60日以内に計画変更命令等(法7条)

●中止・改善等の措置命令(法12条)

●報告徴収(法14条)●立入検査(法15条)

倫理審査委員会

確認

申請

○指針への適合性を確認

作成の届出書

○特定胚を用いることの必要性

○適切なインフォームド・コンセントの取得

○細胞の無償提供

●届出後60日の実施制限(法8条)

●記録の作成、保存(法10条)

●個人情報の保護(法13条) 等

命令等

クローン技術規制法に基づく研究実施の流れ

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本日の内容

• 生命倫理に関する指針について

✓ ヒトES細胞関連指針

・ヒトES細胞研究の概要

・ES指針の改正について

✓ 特定胚の取扱いに関する指針

✓ ヒト受精胚に遺伝情報改変技術等を用いる研究に関する倫理指針(ゲノム編集指針)

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「ヒト受精胚に遺伝情報改変技術等を用いる研究に関する倫理指針」策定の背景

○近年、生物の遺伝子を狙いどおりに容易に改変できる「ゲノム編集技術」が開発され、生殖補助医療等の根治的療法の開発、疾患の治療法などに資する知見が得られる可能性。

○しかし、ヒト受精胚については、その初期発生、発育等について未解明な点が多く、ゲノム編集技術による次世代への遺伝的な影響等の課題もあることから、適切に研究を実施するための仕組みの構築が求められている。

○平成30年3月、総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)において、生殖補助医療研究を目的とするゲノム編集技術等の利用に関する第一次報告書をとりまとめ。現時点での臨床応用は不適当とするとともに、基礎的研究について、文部科学省及び厚生労働省において指針の速やかな策定が求められた。

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○文部科学省・厚生労働省においてゲノム編集技術等を用いる基礎的研究に係る「指針」の策定が速やかに行われることを期待する。

・研究目的:将来の生殖補助医療に資する可能性が有る生殖補助医療研究

・研究対象:生殖補助医療の際に生じる余剰胚

・対象となる技術の範囲:

① 「中間まとめ」におけるCRISPR/Cas9等のゲノム編集技術

② 従来からのウイルスベクター、プラスミド等を用いた遺伝子組換え等に関する技術

③ ゲノムDNAを切断せず、特定のゲノムDNAを標識する技術及び特定のゲノムDNAの遺伝子発現を増強・抑制する技術

④ ヒト受精胚へのミトコンドリア移植(導入)に関する技術

⑤ 上記①から④以外の遺伝子改変に関する技術

・留意事項:各機関の「倫理審査委員会」による審査及び「国」による「指針」への適合性について確認を行う2段階の手続とすること 関連する学会、患者等の組織、医療関係団体等と連携すること等

○ゲノム編集技術等を用いたヒト受精胚のヒト及び動物の胎内への移植は容認できない。

(※)「「ヒト胚の取扱いに関する基本的考え方」見直し等に係る報告(第一次)~生殖補助医療研究を目的とする

ゲノム編集技術等の利用について~」(平成30年3月29日 総合科学技術・イノベーション会議)

https://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/life/hitohaihoukoku1.pdf

(参考)総合科学技術・イノベーション会議の第一次報告書(※)の概要

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「ヒト受精胚に遺伝情報改変技術等を用いる研究に関する倫理指針」概要

○ 文部科学省及び厚生労働省では、CSTI第一次報告書を踏まえ、ゲノム編集技術をはじめとする遺伝情報改変技術等を用いた研究のうち、生殖補助医療目的に用いる予定がないヒト受精胚を用いた生殖補助医療の向上に資する基礎的研究を行うにあたり、当該研究に携わる者が遵守すべき事項を定める指針の策定に向けて両省合同による有識者会議で検討を行い、パブリック・コメントを経て、平成30年12月に指針案をとりまとめ。

○ 指針案について、CSTIにおける確認を経て、平成31年4月1日付けで告示、施行。

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項目 主な内容

目的○ヒト受精胚にゲノム編集技術その他の核酸を操作する技術を用いる基礎的研究について、ヒト受精胚の尊重、遺伝情報への影響その他の倫理的観点から、当該研究に携わる者が遵守すべき事項を定めることにより、その適正な実施を図る。

研究の要件○当分の間、胚の発生及び発育並びに着床に関する研究、ヒト受精胚の保存技術の向上に関する研究その他の生殖補助医療の向上に資する基礎的研究に限る。

ヒト受精胚の入手

<提供を受けることができるヒト受精胚の要件>

○生殖補助医療目的に用いる予定がないもののうち、提供者からヒト受精胚を滅失させることについての意思が確認されているものであること。

○適切なインフォームド・コンセントを取得したものであること。

○凍結保存されているものであること。

○受精後14日以内(凍結保存されている期間を除く。)のものであること。

○ヒト受精胚の提供は実費相当額を除き、無償とする。

取扱期間 ○取扱期間は原始線条が現れるまで(最大14日(凍結保存期間を除く))。

胎内移植の禁止

○研究に用いたヒト受精胚は、人又は動物の胎内への移植禁止。

○ヒト受精胚を人又は動物の胎内に移植できる設備を有する室内での研究禁止。

「ヒト受精胚に遺伝情報改変技術等を用いる研究に関する倫理指針」の主な内容

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「ヒト受精胚に遺伝情報改変技術等を用いる研究に関する倫理指針」の対象となる技術の範囲(イメージ)

ヒト受精胚

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<参考>CSTI第一次I報告書で示された対象とする技術の範囲

① CRISPR/Cas9等のゲノム編集技術

② 従来からのウイルスベクター、プラスミド等を用いた遺伝子組換え等に関する技術

③ ゲノムDNAを切断せず、特定のゲノムDNAを標識する技術及び特定のゲノムDNAの遺伝子発現を増強・抑制する技術

④ ヒト受精胚へのミトコンドリア移植(導入)に関する技術

⑤ 上記①から④以外の遺伝子改変に関する技術

遺伝情報改変技術等の種類

技術等の対象ゲノム編集技術

遺伝子工学(遺伝子操作)

細胞工学/生物工学 左記以外

ゲノムDNA【改変目的】

①CRISPR-Cas9 ②ウイルスベクター/プラスミド⑤紫外線⑤放射線

ゲノムDNA【改変目的でない】

③CRISPR-dCas9(標識・発現制御)

③ウイルスベクター/プラスミド⑤DNA脱メチル化阻害剤⑤DNA結合タンパク質

mRNA ③CRISPR-Cas13 ③ウイルスベクター/プラスミド ③siRNA, miRNA

ミトコンドリアDNA ①CRISPR-Cas9 ②ウイルスベクター/プラスミド ④ミトコンドリア導入

上記以外

・温度・pH・胚培養液・タンパク質

(核酸非結合)・低分子化合物

(核酸非結合)

核酸に直接結合して影響を及ぼすこ

とを目的(研究デザイン)とする場

合は、対象となり得る。

核酸に影響を及ぼす技術左記に類似する核酸を改変等する技術(CSTI第一次I報告書で例示)核酸を狙って改変等をする技術

「ヒト受精胚に遺伝情報改変技術等を用いる研究に関する倫理指針」の対象となる技術の範囲

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研究目的 遺伝子 胚の種類,数 研究概要 公表日,雑誌

中国①

中山大学

・ヒト受精胚へのゲノム編集

効率の確認・遺伝性難病予防目的

【HBB】βサラセミア症

(溶血性貧血)原因遺伝子。グロビン=ヘモグロビン成分。

3PN胚

86個

3前核胚に対しCRISPR/Cas9を用いてβサラセミア原因遺伝子(HBB)を欠損

(ランダム変異導入)させた。成功率5%

2015.4

Protein cell

中国②

広州医科大学

・ヒト受精胚へのゲノム編集

効率の確認・疾患予防(HIV感染予防)

【CCR5】HIVの感染受容体

遺伝子。ケモカイン受容体5。

3PN胚

213個

3前核胚に対し、CRISPR/Cas9を用いてHIVの感染受容体遺伝子(CCR5)を欠

損(ランダム変異導入)させた。

2016.4 J

Assist Reprod

Genet

中国③

広州医科大学

・ヒト受精胚(2PN胚)への

ゲノム編集効率の確認・遺伝性難病予防

【HBB】,【G6PD】グルコース

6リン酸欠損症(溶血性貧血)原因遺伝子。

新規作成胚

HBB:10個G6PD:10個

βサラセミア症又はグルコース6リン酸欠損症患者の配偶子を用いて、受精胚を新

たに作成し、CRISPR/Cas9のゲノム編集の修復効率を確認。HBBは2個中1個で成功。G6PDは2個中2個で成功。

2017.3

Mol GenetGenomics

中国④

広州医科大学

・ヒト受精胚への1塩基編集

技術(BE3)の確認

【HEK293 site 4】任意の

ゲノム配列,【RNF2】E3 ユビキチンリガーゼ RING2

3PN胚 25個3前核胚に1塩基編集技術(BE3)を用いて編集効率を確認(HEK293 site 4:

7/8, RNF8:7/8, HEK293 site 4&RNF8:9/9個で改変成功)。

2017.10

Protein cell

中国⑤

上海交通大学

・ヒト受精胚への1塩基編集

技術(BE3等)の確認

【HBB】,【FANCF】,

【DNMT3B】3PN胚 49個

3前核胚に1塩基編集技術(BE3等)を用いて編集効率を確認(効率

HBB/BE3:8/19, FANCF/saKKH-BE3:17/17, DNMT3B/saKKH-BE3:6/9)。

2017.10

Protein Cell

中国⑥

中山大学

・ヒト受精胚への1塩基編集

技術(BE3)の確認・遺伝性難病予防

【HBB】人クローン胚

35個

βサラセミア患者の人クローン胚を作成し、1塩基を置き換えるゲノム編集(塩

基編集)技術(BE3)を用いて原因遺伝子(HBB)の変異の修復を試み、23%以上の修復を確認した。

2017.11

Protein cell

中国⑦

上海科技大学

・ヒト受精胚への1塩基編集

技術(BE3等)の確認・遺伝性難病予防

【FBN1】マルファン症候

群原因遺伝子

新規作成胚

46個

マルファン症候群患者由来精子とICを受けて入手した未成熟卵をin vitroで成熟

させたものを顕微授精させ、染色体の一方のFBN1遺伝子が変異した胚を作成。1塩基編集技術(BE3等)により原因遺伝子(FBN1)を修復(BE3:16/18, YE1-

BE3 7/10, YEE-BE3 5/11, Control4/7個の改変効率)。

2018.8

Mor Ther

中国⑧

中国科学院神経科学研究所

・ヒト受精胚へのTild-

CRISPR法の確認

【OCT4】受精胚や胚性幹

細胞で特異的に発現している遺伝子,【GATA6】

3PN胚

ヒト胚への効率、精密な遺伝子編集法Tild-CRISPR(targeted integration with

linearized dsDNA-CRISPR)を開発(21/101割球, 10/14胚(従来法は各1/60, 1/9)の改変効率。3PN胚のOCT4/GATA6同時編集は4/137割球)。

2018.5

Dev Cell

中国⑨

オレゴン健康科学大学

・下記米・中・韓の論文の検

【MYBPC3】肥大型心筋症

原因遺伝子。ミオシン結合蛋白 C=筋原線維成分。

3PN胚

3PN胚を用いて、下記論文の検証を行った。CRISPR/Cas9による二本鎖DNA切

断は、内在DNAよりも外来ssODNを利用した相同組換えにより効率的に修復され、下記論文と異なる結果に。

2018.4 Mol

Reprod Dev

米オレゴン健

康科学大、中BGI社、韓基

礎科学研究院

・ヒト受精胚へのゲノム編集

効率の確認・遺伝性難病予防

【MYBPC3】新規作成胚

145個

肥大型心筋症患者の精子と正常な卵子から新たに受精胚を作成。受精胚を作成す

る際、同時にゲノム編集することで、修復効率が向上。コントロールに比べ25%(47%から72%に)変異が改善

2017.8

Nature

イギリス

フランシスクリック研究所

不妊の理解に資する発生学研

究(生殖補助医療研究)【OCT4】

前核期胚

37個

受精胚や胚性幹細胞で特異的に発現している遺伝子(OCT4)を欠損させて、受精

胚の発生における役割を調べた。OCT4が欠損したヒト受精胚は胚盤胞まで発生できなかった。

2017.9

Nature(2016.2

HFEA許可)

スウェーデン

カロリンスカ研究所

不妊の理解に資する発生学研

究(生殖補助医療研究)(不明) 2日齢胚 胚の発生に関する遺伝子を欠損させて、発生への影響を確認する

2016.9米公

共ラジオ局報道・論文未発表

ヒト受精卵ゲノム編集の基礎研究の動向(2018年1月時点)

平成30年5月30日 第1回ヒト受精胚へのゲノム編集技術等を用いる研究に関する合同会議(文科・厚労省)阿久津委員提出資料を元に文部科学省作成 59

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「ゲノム編集指針」に基づく主な手続きの流れ(1/3)

○研究計画開始までの流れ

※ ①~⑳は手続きの順番を表す。

※ 研究機関と提供機関が同一である場合、⑤~⑧は不要。また、研究機関の長、研究責任者及び研究実施者は、提供者の主治医を兼ねることができない。

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「ゲノム編集指針」に基づく主な手続きの流れ(2/3)

○研究計画の変更(あらかじめの手続が必要)

61

※ 変更内容が提供機関に関わらない内容の場合、提供機関の了解(⑤~⑧)は不要。※ 第5章第1の3の(2)「研究機関の名称及びその所在地並びに研究機関の長の氏名」、(10)「提供機関の名称及びその所在地並びに提供機関の長の氏名」の変更は、あらかじめの手続き不要。

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「ゲノム編集指針」に基づく主な手続きの流れ(3/3)

○研究計画の変更(変更後に届出手続が必要)

○研究進行状況報告、研究計画の終了

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○指針本文、ガイダンス等の資料、その他の関連情報は、

「文部科学省ライフサイエンスの広場生命倫理・安全に対する取

組」のウェブサイトに掲載されています。

http://www.lifescience.mext.go.jp/bioethics/index.html

○指針に基づく手続等について、御不明な点等がありましたら、以下

までお問い合わせください。

(お問い合わせ先)

文部科学省 研究振興局 ライフサイエンス課

生命倫理・安全対策室 生命倫理担当

E-mail: [email protected]

生命倫理関係の指針等に関する情報、お問い合わせ

63

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臨床研究法

厚生労働省 医政局 研究開発振興課

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経 緯

○ 京都大学医師等より、東京慈恵会医科大学、京都府立医科大学及び千葉大学が中心となって実施されたノバルティスファーマ社(以下「ノバルティス社」という。」)の降圧剤バルサルタンに関する研究論文について、血圧値に係る疑義が指摘され、学会誌等が相次ぎ京都府立医科大学の関係論文を撤回。(平成24年)

○ 今回の研究に、ノバルティス社の当時の社員が大阪市立大学非常勤講師の肩書きで関わっていたとの指摘があったことから、厚生労働省より、ノバルティス社から事情を聴取した上で、事実関係の調査及び再発防止等について、口頭で指導(以降、関連大学に対しても調査等の実施につき指導)。(平成25年5月)

○ 京都府立医科大学及び東京慈恵会医科大学は、データの操作が認められた、と内部調査の結果を公表。一方、ノバルティス社は、当時の社員による意図的なデータ操作等を行ったことを示す証拠は発見できなかった、と内部調査の結果を公表。(平成25年7月)

東京慈恵会医科大学京都府立医科大学 千葉大学 滋賀医科大学 名古屋大学

ノバルティスファーマ社の降圧剤ディオバン(一般名:バルサルタン)

臨床研究

データの操作・利益相反行為の疑い

ノバルティス社の当時の社員

(大阪市立大学非常勤講師)

関与

高血圧症治療薬ディオバン(一般名:バルサルタン)の臨床研究事案

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高血圧症治療薬の臨床研究事案に関する検討委員会(平成25年8月~平成26年3月)

ノバルティス社のディオバンに係る臨床研究事案について、事案の状況把握及び再発防止策等の具体的方策を検討。

【報告書抜粋】(平成26年4月)• 「臨床研究に関する倫理指針」の見直しの一環として必要な対応を図る

• 国は、平成26年秋を目処に、臨床研究の信頼回復のための法制度の必要性について検討を進めるべき

「臨床研究に関する倫理指針」の見直し(平成26年12月22日告示)

【新設された主な内容 等】研究の質の確保・被験者保護、研究機関と製薬企業間

の透明性確保のため、以下の規定を新設・充実。① 倫理審査委員会の機能強化と審査の透明性確保の

ための規定充実② 研究責任者の責務の明確化、教育・研修の規定充実③ データ改ざん防止のため、モニタリング・監査の規定新設④ 資料の保存に関する規定新設⑤ 利益相反に関する規定新設

健康・医療戦略(平成26年7月22日閣議決定)(抄)

• 2014年秋を目処に法制度を含めた臨床研究に係る制度の在り方について検討を進め結論を得、我が国の臨床研究の信頼回復を図る。

臨床研究に係る制度の在り方に関する検討会(平成26年12月11日にとりまとめ公表)

我が国の臨床研究の信頼を早急に回復するため、法制度を含めた臨床研究に係る制度の在り方について検討。【主な検討項目】

① 臨床研究の質の確保

② 被験者の保護

③ 製薬企業等の資金提供・労務提供にあたっての透明

性の確保及び臨床研究の実施機関における利益相反

管理他

⇒ 法規制が必要との結論

臨床研究の不正事案に関する検討の経緯

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公布の日(平成29年4月14日)から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日・・・平成30年4月1日

臨床研究法(平成29年法律第16号)の概要

臨床研究の実施の手続、認定臨床研究審査委員会による審査意見業務の適切な実施のための措置、臨床研究に関する資金等の提供に関す

る情報の公表の制度等を定めることにより、臨床研究の対象者をはじめとする国民の臨床研究に対する信頼の確保を図ることを通じてその

実施を推進し、もって保健衛生の向上に寄与することを目的とする。

臨床研究法の目的

1.臨床研究の実施に関する手続(1)特定臨床研究(※)の実施に係る措置

① 以下の特定臨床研究を実施する者に対して、モニタリング・監査の実施、利益相反の管理等の実施基準の遵守及びインフォームド・コンセントの取得、個人情報の保護、記録の保存等を義務付け。

② 特定臨床研究を実施する者に対して、実施計画による実施の適否等について、厚生労働大臣の認定を受けた認定臨床研究審査委員会の意見を聴いた上で、厚生労働大臣に提出することを義務付け。

③ 特定臨床研究以外の臨床研究を実施する者に対して、①の実施基準等の遵守及び②の認定臨床研究審査委員会への意見聴取に努めることを義務付け。

(2)重篤な疾病等が発生した場合の報告特定臨床研究を実施する者に対して、特定臨床研究に起因すると疑われる疾病等が発生した場合、認定臨床研究審査委員会に報告し

て意見を聴くとともに、厚生労働大臣にも報告することを義務付け。

(3)実施基準違反に対する指導・監督① 厚生労働大臣は改善命令を行い、これに従わない場合には特定臨床研究の停止等を命じることができる。② 厚生労働大臣は、保健衛生上の危害の発生・拡大防止のために必要な場合には、改善命令を経ることなく特定臨床研究の停止

等を命じることができる。

2. 製薬企業等の講ずべき措置① 製薬企業等に対して、当該製薬企業等の医薬品等の臨床研究に対して資金を提供する際の契約の締結を義務付け。② 製薬企業等に対して、当該製薬企業等の医薬品等の臨床研究に関する資金提供の情報等(※詳細は厚生労働省令で規定)の公表

を義務付け。

臨床研究法の内容

施行日

※ 特定臨床研究とは・ 薬機法における未承認・適応外の医薬品等の臨床研究・ 製薬企業等から資金提供を受けて実施される当該製薬企業等の医薬品等の臨床研究

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法制度による見直しの考え方

【見直し前】:倫理指針に基づく実施・指導体制

【見直し後】:法律に基づく実施・指導体制

・不透明な奨学寄附金(10億円)の提供・資金提供の公表は自主開示

研究不正に対する歯止めにならなかった

行政指導に強制力がない

倫理審査委員会医療機関の管理者

厚生労働大臣

製薬企業等

研究資金の提供

提出

意見

実施計画

・データ改ざんが行われていた・利益相反管理が不十分・記録が廃棄されていた

認定臨床研究審査委員会

厚生労働大臣

製薬企業等

研究資金の提供

実施計画

臨床研究に関する資金提供について、契約の締結

や公表を義務付け委員構成等について厚労大臣の認定を受けた審査委員会が実施計画

や有害事象対応を審査

改善命令、認定取消等

法律に基づく調査権限・監視指導

改善命令⇒停止命令⇒罰則(保健衛生上の危害発生・拡大防止のために必要な場合には、停止命令⇒罰則)

医師・歯科医師

申請

実施許可

臨床研究を実施する者

①計画を提出

③計画を届出

勧告⇒企業名の公表

指導

指導

指導

モニタリングや利益相反管理等に関する実施基準の遵守、記録の保存を義務付け

②意見

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医薬品等*の臨床研究 手術・手技の臨床研究

一般の医療

治験(承認申請目的の医薬品等の臨床試験)

特定臨床研究

未承認・適応外の医薬品等の臨床研究

製薬企業等から資金提供を受けた医薬品等の臨床研究

基準遵守義務

(GCP省令)基準遵守義務

基準遵守義務

(努力義務)

医薬品医療機器等法 臨床研究法

医療における規制の区分について

先端的な科学技術を用いる医療行為その他の必ずしも十分な科学的知見が得られていない医療行為についてその有効性及び安全性を検証するための措置について検討

高難度新規医療技術及び未承認新規医薬品等を用いた医療の提供については、①各病院ごとに提供の適否等を判断する部門の設置②当該部門を中心とした審査プロセスの遵守等を、・特定機能病院及び臨床研究中核病院については承認要件

として義務付け・その他の病院については努力義務とする。

(平成28年6月10日省令公布)※平成29年4月以降適用

*医薬品等:医薬品、医療機器、再生医療等製品

69

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「臨床研究法」に規定される遺伝子治療等臨床研究を実施する場合、臨床研究法の遵守すべき規定に加えて、改正指針の第1章、第3章に規定される項目を遵守する必要がある。

臨床研究法と遺伝子治療等臨床研究に関する指針

臨床研究法との関係

遺伝子治療等臨床研究に関する指針改正案第1章 総則第2章 遺伝子治療等臨床研究に関し遵守すべき事項等第3章 臨床研究法に定める臨床研究に該当する遺伝子治療等臨床研究に関し遵守すべき事項等

第3章において、臨床研究法による規定の他に、指針の上乗せとして遵守すべき事項

○ 有害事象発生時の手続き「疾病等」という介入治療との因果関係がある事項のみを報告の対象としているが、指針では、「有害事象」として因果関係の有無に関わらず報告の対象としている

○ 試料及び情報、倫理審査委員会の審査資料の保管期間を10年間とする遺伝子治療等を行う事での身体への影響を長期間フォローする必要があるため、臨床研究法に規定される保管期間よりも長期間となっている

○ 海外への試料・情報を提供する場合の手続き海外への試料・情報を提供する場合の手続きについて、指針で規定している

○ 厚生労働大臣への意見を求める手続き遺伝子治療等臨床研究の実施や研究計画書の変更にあたっては、臨床研究法の手続きに加え、指針においては、大臣に意見を求めるよう規定している

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令和元年5月31日現在

国立大学法人 学校法人 独立行政法人 地方独立行政法人

39 20 11 10

特定非営利活動法人一般社団法人一般財団法人

病院・診療所の開設者 合計

4 3 6 93

○認定臨床研究審査委員会数

臨床研究法 臨床研究法以外(治験等)

合計特定臨床研究 非特定臨床研究

1175 58 21 1256

○jRCTでの公表状況

臨床研究法の施行状況について第13回 臨床研究部会

参考資料3令和元年6月6日

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<東北厚生局>(5件)【青 森】 (大)弘前大学【岩 手】 (学)岩手医科大学【宮 城】 (大)東北大学【秋 田】 (大)秋田大学【福 島】 (地独)福島県立医科大学

<中国四国厚生局>(10件)【鳥 取】 (大)鳥取大学【島 根】 (大)島根大学【岡 山】 (大)岡山大学

(学)川崎医科大学【広 島】 (大)広島大学【山 口】 (大)山口大学【徳 島】 (大)徳島大学【香 川】 (大)香川大学【愛 媛】 (大)愛媛大学【高 知】 (大)高知大学

<近畿厚生局>(14件)【福 井】 (大)福井大学【滋 賀】 (大)滋賀医科大学【京 都】 (地独)京都府立医科大学

(大)京都大学【大 阪】 (地独)大阪市立大学

(大)大阪大学(独)国立病院機構大阪医療センター(学)大阪医科大学(地独)大阪府立病院機構大阪国際がんセンター(地独)大阪府立病院機構大阪急性期・総合医療センター

【兵 庫】 (学)兵庫医科大学(大)神戸大学

【奈 良】 (地独)奈良県立医科大学【和歌山】 (地独)和歌山県立医科大学

認定臨床研究審査委員会の設置状況(地方厚生局管轄別) 93委員会設置 (令和元年5月31日時点)

<北海道厚生局>(1件)【北海道】 (大)北海道大学

<関東信越厚生局>(38件)【茨 城】 (大)筑波大学【栃 木】 (学)自治医科大学【群 馬】 (大)群馬大学【埼 玉】 (学)埼玉医科大学【千 葉】 (独)国立がん研究センター東病院

(独)放射線医学総合研究所(大)千葉大学

【東 京】 (学)昭和大学(学)日本医科大学(学)慶應義塾(独)国立がん研究センター中央病院(独)国立国際医療研究センター(独)国立精神・神経医療研究センター(病診) 虎の門病院(学)順天堂医院(大)東京医科歯科大学(学)東邦大学医学部(独)国立病院機構東京医療センター(独)国立病院機構本部(学)日本大学医学部附属板橋病院(独)国立成育医療研究センター(大)東京大学(地独)東京都健康長寿医療センター(病診)服部クリニック(一社)日本先進医療医師会(学)慈恵大学(特非)皮膚の健康研究機構(学)東京医科大学(学)帝京大学(病診)盛心会タカラクリニック(一社) 日本肌再生医学会(特非)日本美容皮膚研究会

【神奈川】 (病診)沖縄徳洲会(学)北里大学(地独)横浜市立大学

【新 潟】 (大)新潟大学【山 梨】 (大)山梨大学【長 野】 (大)信州大学

<東海北陸厚生局>(13件)【富 山】 (大)富山大学【石 川】 (学)金沢医科大学

(大)金沢大学【静 岡】 (大)浜松医科大学

(病診)静岡県立静岡がんセンター【愛 知】 (病診)愛知県がんセンター

(独)国立病院機構名古屋医療センター(地独)名古屋市立大学(大)名古屋大学(学)藤田保健衛生大学(学)愛知医科大学(特非) JAPSAM

【三 重】 (大)三重大学

<九州厚生局>(12件)【福 岡】 (大)九州大学

(特非)治験ネットワーク福岡(独)国立病院機構九州医療センター(学)産業医科大学

【佐 賀】 (大)佐賀大学【長 崎】 (大)長崎大学【熊 本】 (大)熊本大学【大 分】 (大)大分大学【宮 崎】 (大)宮崎大学【鹿児島】 (大)鹿児島大学

(公社)鹿児島共済会【沖 縄】 (大)琉球大学

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(参考)臨床研究・治験の推進に係る基本的考え方平成31年3月29日厚生科学審議会 臨床研究部会 「臨床研究・治験の推進に関する今後の方向性について(2019年版)中間とりまとめ」より抜粋

Ⅰ.「新薬・新医療機器等の開発」と「診療の最適化のための研究」のバランス疾病の予防、早期診断、早期治療に対する国民の期待は高く、革新的な医薬品、医療機器等の研究開発の推進

が引き続き必要である。また、質の高い医療の提供には、市販された医薬品同士を比較し診療ガイドラインの改善につなげることや、医薬品を用いない手術・手技に係る研究など、診療の最適化に係る臨床研究も重要である。こうした「新薬・新医療機器等の開発」と「診療の最適化のための研究」をバランス良く進めることが重要である。

Ⅱ.人材育成の強化と財政的リソースの効率化研究開発の高度化等に伴い、研究実施に加え、研究開発を支える人材育成を強化するとともに、人材等のリ

ソースをより一層効率的に活用する必要がある。我が国全体で必要とされる臨床研究・治験数も踏まえ、臨床研究中核病院とその支援先機関に求められる役割や体制を整理するとともに、研究者及び研究支援人材の質向上も含め、研究開発の効率性を高める必要がある。

Ⅲ.リアルワールドデータの利活用促進質の高い診療・研究の実現や、特に高い資源投入が要求される開発後期の臨床試験規模の適正化等を図るため、

欧米と同様、薬事分野をはじめとして、リアルワールドデータの利活用の促進が重要である。

Ⅳ.小児疾病・難病等の研究開発が進みにくい領域の取組既存の臨床研究中核病院や製薬企業等による取組の下では、必要とされる研究開発がなかなか進まない疾病領

域、すなわち小児疾病や難病等の重要な領域の臨床研究・治験に関しては、国として、領域を特定した取組が必要である。

Ⅴ.国民・患者の理解や参画促進国民・患者の臨床研究・治験への理解や参画が十分でないことも臨床研究・治験を進める上で課題となってい

るとの指摘がある。国民・患者の臨床研究・治験に関する理解や参画を促す取組が必要である。

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①カルタヘナ法について(遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律)

【第二部】カルタヘナ法関係研究開発段階におけるゲノム編集の利用により作成した生物の取扱いについて

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生物多様性条約(CBD:Convention on Biological Diversity)

■経緯1992年 5月 採択 (5月22日 → 国際生物多様性の日)1992年 6月 国連環境開発会議(リオ・地球サミット)で署名1993年 5月 日本が条約を締結1993年12月 条約発効

■条約の目的①生物の多様性の保全 ⇒カルタヘナ議定書②生物多様性の構成要素の持続可能な利用③遺伝資源の利用から生ずる利益の公正で衡平な配分

■締約国数 196ヶ国・地域 [EUを含む 、米は未締結]

・「特定の希少種や原生自然の保護」から、より広い「生物多様性の保全」へ・将来世代にわたる「持続可能な利用」の確保

カルタヘナ法制定の背景(生物多様性条約の概要)

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「第一種使用等」、「第二種使用等」の二つの使用形態により、必要な措置や手続きが異なる

○ 第一種使用等 環境中への拡散を防止しないで行うもの。 例:野外栽培試験等・「第一種使用規程」、「生物多様性影響評価書」を提出し、主務大臣の承認を受ける必要

○ 第二種使用等 拡散防止措置を講じて行うもの。 例:閉鎖空間での微生物実験等・拡散防止措置を必ず執るよう規定 (実験のレベル等に関わらず全ての組換え実験が対象)・執るべき拡散防止措置が省令に定められていない場合には、その都度、大臣の確認を受ける。

・遺伝子組換え生物等に関する情報提供(法第26条)、輸出入時の措置(法第27~29条) 等

国際的に協力して生物の多様性の確保を図るため、遺伝子組換え生物等の使用等の規制に

関する措置を講ずることにより、カルタヘナ議定書の的確かつ円滑な実施を確保。

研究開発 商業化・実用化 臨床研究

環境省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省の6省による共同所管法

カルタヘナ法の概要

遺伝子組換え生物等の使用等

その他の規定

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申請機関

遺伝子組換え生物について、・第一種使用規程を定める・生物多様性影響の評価をする

文部科学大臣環境大臣

学識経験者からの意見聴取(会合形式(原則公開)または書面審査)

意見募集(パブリックコメント)の実施(30日間実施)

承認

申請

使用規程に従い、研究利用

研究開発段階の第一種使用等について

研究開発段階の遺伝子組換え生物等を第一種使用等する場合、

①『第一種使用規程』や『生物多様性影響評価書』を文部科学大臣・環境大臣へ提出

②国は学識経験者の意見を聴取し、パブリックコメントを行った後に、当該遺伝子組換え生物の

使用が生物多様性に影響しないと認める場合に承認

例:植物なら、野生生物に対する、①競合における優位性、②有害物質の産生性、③交雑性

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研究開発段階の第二種使用等について ①(全体の概要)

○拡散防止措置の決定にあたっては、 「研究二種省令(研究開発等に係る

遺伝子組換え生物等の第二種使用等に当たって執るべき拡散防止措置等を

定める省令)」等に基づいた拡散防止措置を執り、実験を実施する。

○ 研究二種省令では、第二種使用等を

① 遺伝子組換え実験(第五条)

② 保管(第六条)

③ 運搬(第七条)

に分類。

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保管、運搬時の拡散防止措置(実験中の一時的な保管、運搬を除く)は二種省令第6、7条に規定

研究開発段階の第二種使用等について ②(「保管」・「運搬」)

保管

運搬

遺伝子組換え生物等保管中

取扱注意

取扱注意

・所定の場所に保管

・容器だけでなく、設備の見やすい箇所に、遺伝子組換え生物等を保管している旨を表示

※ 遺伝子組換え生物を提供する場合等には提供先に文書で情報提供することが必要

・実験時に執るべき拡散防止措置のレベルが高い場合には、破損しても漏出・逃亡しない構造の容器に入れる

・最も外側の容器の見やすい箇所に、取扱いに注意を要する旨を表示

漏出や逃亡などが起こらない容器に入れる。(図のように、試験管を用いる場合には、しっかり密封してください)

遺伝子組換え生物等保管中

遺伝子組換え○○

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研究開発段階の第二種使用等について ③(概要)

申請機関 文部科学大臣

申請

確認

研究開発段階の遺伝子組換え生物等を第二種使用等する内、遺伝子組換え実験を行う場合、実験に用いるすべての生物等の特性に応じた拡散防止措置(P1、P2Aなど)を執る。

②省令・告示に措置が定められていない場合(二種省令別表第一に該当する場合)

①省令・告示に定められた措置を執る場合

○ 各研究機関において、遺伝子組換え実験計画の精査

・法令を十分に理解した上で、実験計画を策定・特に、拡散防止措置については、機関内で十分に精査(各機関で遺伝子組換え審査委員会を開催し、過去の研究、論文等を基に議論 等)

・法令等に即し、機関の責任の下、実験を実施

・機関内で十分に精査した上で、文部科学省へ拡散防止措置等の確認申請・確認を受けた後、申請内容及び法令等に即し、機関の責任の下、実験を実施

組織の責任者、研究の専門家、安全管理責任者、法律の専門家、外部有識者など

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①法律 (平成15年6月18日公布)・・・目的、定義、規制の枠組み、命令、罰則等

②主務大臣を定める政令(平成15年6月18日公布)・・・各措置に係る主務大臣の分担の考え方

③手数料を定める政令・・・生物検査の手数料

⑤法律第3条の規定に基づく基本的事項(6省共同)(平成15年11月21日公布)・・・施策の実施に関する事項(省令等の制定や諸手続の考え方等)、使用者が配慮すべき事項等

⑥第一種使用等による生物多様性影響評価実施要領(6省共同)(平成15年11月21日公布)・・・第一種使用規程の承認を受けようとする者が行う生物多様性影響評価の項目及び手順等

⑨ ⑦に基づく告示(文)(平成16年1月29日公布)・・・認定宿主ベクター系のリスト、実験分類ごとの生物のリスト等

⑩ ⑧に基づく告示(財・厚・農・経・環共同)(平成16年1月29日公布)・・・GILSP取扱い遺伝子組換え生物等のリスト

第一種使用等関係 第二種使用等関係

カルタヘナ法及び関連政省令等の全体像

④法施行規則(6省共同)(平成15年11月21日公布)第一種使用等と第二種使用等の共通事項(生物及び技術の定義の詳細、第二種使用等と見なす措置の詳細、承認・確認の除外、情報提供、輸出、②に基づく主務大臣の詳細等

第一種使用等に関する事項(承認手続、学識経験者からの意見聴取)

生物検査に関する事項

【政令】

【法律】

【省令】

【告示】

⑦研究開発等に係る第二種使用等に当たって執るべき拡散防止措置を定める省令(文・環共同)<二種省令>(平成16年1月29日公布)・・・第二種使用等に関する事項(執るべき拡散防止措置の内容、確認手続)

⑧産業利用等に係る第二種使用等に当たって執るべき拡散防止措置を定める省令(財・厚・農・経・環共同)(平成16年1月29日公布)・・・第二種使用等に関する事項(執るべき拡散防止措置の内容、確認手続)

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②ゲノム編集技術で得られた生物の取扱いについて(環境省における議論)

【第二部】カルタヘナ法関係研究開発段階におけるゲノム編集の利用により作成した生物の取扱いについて

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【環境省における議論】平成30年5月 中央環境審議会自然環境部会

→ゲノム編集技術の利用により得られた生物のカルタヘナ法上の法的整理に係る検討を開始することを決定。

7月 同部会遺伝子組換え技術等専門委員会

8月 同委員会ゲノム編集技術等検討会→ゲノム編集技術で作成された生物の法律上の整理及び取扱いについて素案を作成・決定

8月 同部会遺伝子組換え技術等専門委員会→同検討会で提出された素案をもとに、法学・科学の両面から更に議論を行い、カルタヘナ法上の規制範囲及び規制対象外となった生物の取扱案をとりまとめ。

9月~10月 パブリックコメント(30日間)→賛成・反対含め183件の回答が提出。

平成31年1月 中央環境審議会自然環境部会→同部会遺伝子組換え技術等専門委員会で決定された取扱案を報告。

2月 環境省から関係省庁に周知通知を発出→当省含むカルタヘナ法関係5省庁に対し、同部会で報告された取扱いの所管団体への周知及び具体的な取扱いについての検討を要請。

ゲノム編集で作成された生物の取扱いの議論の経過

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○ 環境省の中央環境審議会自然環境部会遺伝子組換え技術等専門委員会において、ゲノム編集技術を用いて得られた生物のカルタヘナ法上の対象範囲について議論。

○ その結果、外来の核酸を導入しない生物は規制対象外であり、外来の核酸を導入する生物については、規制対象とし、規制対象外となった生物の具体的な取扱いについては、所管省庁において定めることとする案が取りまとめられた。

ゲノム編集技術で得られた生物の規制対象範囲について

※1 適切な拡散防止措置を執った環境で使用する場合においては、情報提供は不要

塩基の欠失、挿入または置換

自然修復

塩基の欠失、挿入または置換

ゲノム編集酵素(核酸を含まない)

鋳型DNA(細胞外で加工した核酸)を導入

ゲノム編集酵素(核酸を含むor含まない)

○ 細胞内でゲノムDNAを切断し、修復時のエラーにより変異を導入

○ 細胞内でゲノムDNAを切断し、修復時のエラーにより変異を導入

規制対象外 規制対象

カルタヘナ法に基づき使用情報提供の上使用※1

自然修復

ゲノム編集酵素(核酸を含む)

※2 交配等により、移入した核酸又はその複製物が残存していないことが確認できた生物は、遺伝子組換え生物等に該当しない。

各省庁で分野に応じた具体的な取扱いを作成

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○ 細胞内でゲノムDNAを切断し、修復時に鋳型DNAに沿って変異を導入

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カルタヘナ法上の遺伝子組換え生物等に該当する(規制対象)

カルタヘナ法上の遺伝子組換え生物等に該当しない(規制対象外)

拡散防止措置

の執られた

施設以外

【第一種使用】

法第4条に基づいて、生物多様性影響評価を踏まえて大臣が承認した使用規程に沿って使用する。

当該生物の使用前に、生物多様性影響に係る考察等について、主務官庁に情報提供を行う。

拡散防止措置

の執られた

施設

【第二種使用】

法第12条に基づき省令に定められた拡散防止措置、又は、法第13条に基づき大臣の確認を受けた拡散防止措置を執って使用する。

法第12条に基づき省令に定められた拡散防止措置、又は、当該生物の使用に当たって、施設、設備その他の構造物を用いることその他必要な方法により施設等の外の大気、水又は土壌中に当該生物が拡散することが防止されるものとして主務官庁の認めた措置を執って使用する。

宿主に細胞外で加工した核酸を移入した生物か

移入した核酸又はその複製物が残存しないことが確認できた生物か

NO

カルタヘナ法上の遺伝子組換え生物等に該当する(規制対象)【第一種使用、第二種使用】 (下表参照)

YES

YESNO

ゲノム編集技術の利用により得られた生物のカルタヘナ法上の整理 及び取扱方針

環境省作成資料

ゲノム編集技術の利用により得られた生物であってカルタヘナ法に規定された「遺伝子組換え生物等」に該当しない生物の取扱いについて

(注1)遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律(平成15年法律第97号)(注2)宿主と同一の分類学上の種に属する生物の核酸のみを用いた場合(いわゆるセルフクローニング)、自然条件において宿主の属する分類学上の種との間で核酸を交換する種

に属する生物(ウイルス及びウイロイドを含む)の核酸のみを用いた場合(いわゆるナチュラルオカレンス)については、施行規則第2条第1号(イ、ロ)及び第2号に該当するため、「遺伝子組換え生物等」に該当しない(本取扱方針の対象外)。 85

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③ゲノム編集技術で得られた生物の取扱いについて(研究段階における取扱い)

【第二部】カルタヘナ法関係研究開発段階におけるゲノム編集の利用により作成した生物の取扱いについて

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○ 細胞外で加工した核酸を含む生物、もしくは核酸の有無を確認していない生物については、環境省における整理のとおり、従前どおり法に基づく遺伝子組換え生物等として取扱う。

最終産物に細胞外で加工した核酸を含む、確認していない場合

鋳型DNA(細胞外で加工した核酸)を導入

塩基の欠失、挿入または置換

ゲノム編集酵素(核酸を含むor含まない)

規制対象

カルタヘナ法に基づき使用

自然修復

ゲノム編集酵素(CRISPR/Cas9等、核酸を含む酵素)

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○ 細胞内でゲノムDNAを切断し、修復時のエラーにより変異を導入

○ 細胞内でゲノムDNAを切断し、修復時に鋳型DNAに沿って変異を導入

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○ 最終的に得られた生物に細胞外で加工した核酸を含まないことを確認した生物については、開放系・閉鎖系に応じて対応が異なる。

最終的に得られた生物に細胞外で加工した核酸を含まない場合

自然修復

ゲノム編集酵素(核酸を含まない)

鋳型DNAを導入

ゲノム編集酵素(核酸を含むor含まない)

規制対象外 規制対象

カルタヘナ法に基づき使用

自然修復

ゲノム編集酵素(核酸を含む)

○ 開放系(屋外ほ場等)での使用等使用機関は、使用に先立ち、必要事項を記入した報告様式を文部科学省 生命倫

理・安全対策室に提出する。

○ 閉鎖系(研究室内等)での使用等使用機関は、これまでの遺伝子組換え生物等と同様にカルタヘナ法関係法令に定

められた適切な拡散防止措置またはこれと同等の措置を講ずる。

規制対象外の生物の取扱い

移入した核酸又はその複製物が残存していないことが確認できた生物である場合

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○ 使用機関は、使用に先立ち報告様式に必要事項を記入の上、文部科学省生命倫理・安全対策室に提出する。

最終産物に細胞外で加工した核酸を含まない場合(開放系での使用)

使用機関は、使用に先立ち当該生物に導入した変異が生物多様性影響を及ぼさないことを確認し、当該生物の周辺情報を報告様式に従い記入、文部科学省生命倫理・安全対策室に提出する。(※提出にあたっては、まずは生命倫理・安全対策室にご相談下さい。)

必要に応じ、学識経験者に照会

学識経験者

・ゲノム編集技術により得られた生物の名称

・使用等の内容

・使用等をする場所(名称・住所)

・宿主の名称(和名・英名・学名)

・宿主の自然環境における生理・生態学的特性

・使用したゲノム編集技術の種類・導入方法

・細胞外で加工した核酸の移入・残存の有無

・改変した遺伝子等の名称・機能・予想される機能の変化

・改変生物の形質の変化(当該改変により生じた変化、改変以外による変化)

・生物多様性影響が生ずる可能性についての考察

・緊急連絡先(所属・役職・氏名・住所)

・緊急時の対応

・その他

報告する内容

報告事項を記載・提出

疑義がある場合は、必要な追加情報等を求める

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○ 使用機関は、使用に先立ち報告様式に必要事項を記入の上、文部科学省生命倫理・安全対策室に提出する。

最終産物に細胞外で加工した核酸を含まない場合(開放系での使用)

ゲノム編集技術により得られた生物の名称

使用等の内容

宿主の自然環境における生理・生態学的特性

当該生物の宿主又は親生物の属する分類学上の種の名称及び当該生物の特性等の情報を含めることにより、他の生物と明確に区別できる名称とすること。

当該生物について行う一連の使用等について、栽培その他育成(具体的な使用内容を記載)、加工、保管、運搬及び廃棄のうち該当する使用等を列記し、「及びこれらに付随する行為」と付記すること。

生息・生育可能な環境の条件、繁殖または増殖の様式、有害物質の産生性、我が国における具体的な生息・生育域を簡潔に記載すること。

使用等をする場所

使用等を限定する場所の具体的な地域名若しくは施設の名称及び所在地を具体的に記載すること。

宿主の名称

ゲノム編集技術により得られた生物の分類学上の名称を和名、英名及び学名を記載すること。

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最終産物に細胞外で加工した核酸を含まない場合(開放系での使用)

改変した遺伝子等の名称・機能・変化

細胞外で加工した核酸の移入・残存の有無

移入した核酸の構成、移入方法、除去した方法及び残存の有無を確認した方法(a. PCR法、b. サザンブロッティング法、c. その他(具体的に記載))及びその解析結果について概要を記載し、具体的なデータを添付すること。

1)標的とした遺伝子等の名称を記載すること。2)標的とした遺伝子等の発現により産生されるタンパク質等の機能を記載すること。3)標的とした遺伝子等に改変をした場合に生ずると理論上考えられる機能の変化について概要を記載すること。

使用したゲノム編集技術の種類・導入方法

当該生物の作成の過程で使用した人工ヌクレアーゼの種類(a. CRISPR/Cas9、b. TALEN、c.

ZFN、d. その他(具体的に記載))を記載し、その移入方法(a. 人工ヌクレアーゼそのものを宿主の細胞内に移入、b. 人工ヌクレアーゼ遺伝子を組み込んだベクターを宿主の細胞内に移入、c. 人工ヌクレアーゼ遺伝子を宿主のゲノムに挿入、d. その他(具体的に記載))を記載すること。

改変生物の形質の変化

1)標的とした遺伝子等の配列に対して生じた変化(a. 挿入、b. 欠損、c. 置換)を記載し、当該改変により付与された生理・生態学的特性について宿主と比較し、特徴的な要点を記載すること。2)1)で記載したもの以外の変化が見られた場合は、その内容を記載すること。

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最終産物に細胞外で加工した核酸を含まない場合(開放系での使用)

緊急時の対応

その他

生物多様性影響が生ずる可能性についての考察

当該生物を使用等した場合に生物多様性影響が生ずる可能性について、遺伝子組換え生物等の第一種使用等による生物多様性影響評価実施要領(平成15年財務省・文部科学省・厚生労働省・農林水産省・経済産業省・環境省告示第2号)の別表第二に掲げる項目ごとに考察を簡潔に行い、それらを踏まえた総合的な考察を簡潔に記載すること。

緊急連絡先

所属機関の名称及び職名、氏名、住所を記載すること。

生物多様性への影響が生ずるおそれが否定できない等の緊急時の連絡体制、緊急措置について記載すること。

当該生物の取扱いについて検討する委員会の設置状況、委員長名、検討日、当該生物の不活化処理の具体的な措置内容及びその他特記事項(該当ある場合)を記載すること。

・競合における優位性:野生植物と栄養分、日照、生育場所等の資源を巡って競合し、それらの生育に支障を及ぼす性質に係る評価の内容を記載。

・有害物質の産生性 :野生動植物又は微生物の生育又は生育に支障を及ぼす物質を産生する性質に係る評価の内容を記載。

・交雑性 :近縁の野生植物と交雑し、当該変異をそれらに伝達する性質に係る評価の内容を記載。・総合的評価 :上記評価結果を踏まえた総合的な判断の結果・考察を記載。

例)植物の場合

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○ 最終的に得られた生物に細胞外で加工した核酸が含まれないことを確認した場合、当該生物を実験室などの閉鎖系において使用等する場合は、従前の法に基づく遺伝子組換え生物等と同様に、使用等する生物に応じた適切な拡散防止措置の下、取扱ってください。

最終産物に細胞外で加工した核酸を含まない場合(閉鎖系での使用)

最終産物に細胞外で加工した核酸を含まない生物

遺伝子組換え生物等

実験

保管

運搬

研究二種省令

研究二種省令に基づき使用

研究二種省令を

参照し、使用※

※適切な拡散防止措置を執らない場合は、届出が必要です。

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○ 使用機関は、これまでの遺伝子組換え生物等と同様に、カルタヘナ法に定められた適切な拡散防止措置またはこれと同等の措置を講ずる。

最終産物に細胞外で加工した核酸を含まない場合(閉鎖系での使用)

拡散防止措置の設定に二種省令を参照できる場合

拡散防止措置の設定に二種省令を参照できない場合

生命倫理・安全対策室に事前に照会 必要に応じ、学識経験者

(遺伝子組換え技術等専門委員会)に照会

組換え委員会

これまでの遺伝子組換え生物等と同様に、あらかじめ安全委員会において安全な取扱い等について検討し、生物の病原性に合わせた適切な拡散防止措置を二種省令を参照して設定し、使用機関の管理・責任の下使用する。

二種省令別表第一に掲げる基準に該当する場合は、執るべき拡散防止措置が定められていないことから、事前に生命倫理・安全対策室に照会の上、使用する。

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○ 遺伝子組換え生物等と同様に、あらかじめ安全委員会において安全な取扱い等について検討し、生物の病原性に合わせた適切な拡散防止措置を二種省令を参照して設定し、使用機関の管理・責任の下使用する。

拡散防止措置の設定に二種省令を参照できる場合

例1 植物を使用する実験⇒植物(クラス1)に変異を入れることから、二種省令を参照し、宿主(クラス1)と核酸供与体(該当なし)の内、クラスの高い方に合わせ、P1Pとして使用する。

例2 宿主の実験分類がクラス2である真菌を使用する実験⇒クラス2である真菌に変異を入れることから、二種省令を参照し、宿主(クラス2)と核酸供与体(該当なし)の内、クラスの高い方に合わせ、P2として使用する。

例3 宿主の実験分類がクラス1である細菌を動物に接種する実験⇒クラス1である細菌に変異を入れ、これを動物に接種することから、二種省令を参照し、宿主(クラス)と 核酸供与体(該当なし)の内、クラスの高い方に合わせ、P1Aとして使用する。

拡散防止措置の設定の考え方

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○ 二種省令別表第一に掲げる基準に該当する場合は、執るべき拡散防止措置が二種省令に記載が無いため、生命倫理・安全対策室に事前に照会する。

拡散防止措置の設定に二種省令を参照できない場合

例1 自立的な増殖力及び感染力を持つウイルスを使用する実験

例2 宿主の実験分類がクラス3である微生物を使用する実験

例3 上記に該当する生物を動物または植物に接種する実験等

事前に照会すべき例

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○ ゲノム編集技術の利用により得られた生物のうち細胞外で加工した核酸を含まないことを確認した生物を譲渡し、もしくは提供し、又は委託して使用等させようとする場合は、以下(a)~(e)の項目を譲渡先に伝える。

最終産物に細胞外で加工した核酸を含まない場合(譲渡について)

(a)当該生物がゲノム編集技術の利用により得られた生物のうち細胞外で加工した核酸を含まないことを確認した生物である旨

(b)閉鎖系において使用等している旨(該当する場合)

(c)当該生物の種類の名称(名称が無い場合はその旨)

(d)既に主務官庁に届出を提出している場合はその旨

(e)譲渡者の氏名及び住所(法人にあっては、その名称並びに担当責任者の氏名及び連絡先)

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○ 本取扱いについては、各機関において遵守いただくよう徹底をお願いします。

○ 産業段階の取扱い等については、別途所管省庁に問合せてください。

さいごに

今回の取扱いについては、研究段階のものであり、他分野における取扱いについては、各所管省庁にお問合せください。

(環境省HP 「ゲノム編集技術を活用される方へ」より抜粋)

移行期間について

各機関で令和元年10 月以降に使用計画が出される生物については、この通知に従うものとし、令和元年9月末日までに使用等している生物(計画提出予定を含む)については、令和元年12 月末日までに順次切り替えを行うようにしてください。

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○関連資料はこちら○

文部科学省のHP「ライフサイエンスの広場」

生命倫理・安全に対する取組

遺伝子組換え実験

【URL】http://www.lifescience.mext.go.jp/bioethics/anzen.html#kumikae

□遺伝子組換え生物の第一種使用等、第二種使用等について

□説明会資料等

□カルタヘナ法について(動画)

□カルタヘナ法に関する説明会資料

□過去の不適切な取扱い事案について

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