地域・商店街の為の数字で成果がでている個店活性化 ·...
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Oraculum Free Report Vol.5
地域・商店街の為の数字で成果がでている個店活性化
◆ 地域商業の現状
大型ショッピングモールの郊外出店の影響、後継者不在など、さまざまな理由か
ら店をたたむ商店経営者が少なくありません。リーマンショック以降も厳しい商
環境が続いており、地域商業や商店街は疲弊しています。
古くからの商業スポットを歩いても人通りは少なく、シャッターを閉ざした店舗
が目立ちます。
地域商業の衰退は、すなわち地域の個人消費の落ち込みです。個人消費が低迷す
ればその地域の景気が低迷します。
また、町に活気がなくなること。これも大きな問題です。
最近、「商店街は地域のライフラインである」との主張もあちこちで耳にします。
住民の日常生活を支える存在なのだから活性化が必要だという論調です。個店や
シャッター通りを活性化しなければ、高齢化の進む社会において、ライフライン
も維持できません。
地域商業の活性化は、さまざまな社会的課題と直結しています。換言すれば、地
域商業の活性化が、さまざまな社会的問題の解決にもつながります。
◆ 地域ぐるみでワクワク系マーケティングを導入
地域商業の活性化が叫ばれる中、各地の商工会議所や商工会から「地域ぐるみで
ワクワク系マーケティングに取り組んでみたい」との問い合わせが増えてきまし
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た。
弊社では、8年以上前から地域商業の活性化に取り組んでおり、栃木、福岡、京
都、岡崎、山口などで成果を上げ、2010年10月には栃木県商工会連合会か
ら感謝表彰を受けました。
京都府山城区域商工会広域連携協議会「ワクワク系の店作り実践講座」は、すで
に第5期に入っています。わずか半年で前年同期比 200%を達成するなど大きな
成果を上げているケースが少なくなく、地域でワクワク系を導入する場合のモデ
ルケースになっています。
また、山口市ではこのプログラムを商店街に導入し、中心市街地における実績を
生み出しました。
ワクワク系の導入プログラムが実際どのように始まり、どのように進められてい
くか、これまでの取り組みを例にとってご説明しましょう。
◆ 京都・山城区域での導入実績
山城区域商工会広域連携協議会は、京都府八幡市・京田辺市・井手町・宇治田原
町の各商工会で構成される団体です。
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「ワクワク系の店作り実践講座」は、経営改善事業として京都府の承認を得たも
ので、地域に導入しやすく編集されたプログラムに基づいて進められます。
「始めた途端に成果が表れる」として毎年好評を得るなど、すでに5年も続いて
いるロングラン講座です。受講者のリピート率が高く、ほぼ 100%が2期以上に
わたって受講を希望します。経過と結果を明確に表すことができるため、事業報
告しやすい事業としても評価されています。
参加者は主に小売業・サービス業を営む経営者や従業員たち。毎年 10〜15 社を
募集し、1社当たり3名まで受講できるルールです。
カリキュラムは全5回で、8月~翌年1月の6ヶ月間にわたって開講されます。
弊社が主宰する「ワクワク系マーケティング実践会」の機能もフルに活用します。
講座のポイントは①正しい知識を知り、思考プロセスを理解すること②実践する
こと③仲間や同志と意見を交換すること④創発できる学びの場であること、の4
点です。
第1講でワクワク系の考え方や仕組みづくりを学び、以降は課題と目標達成に取
り組みます。実践の結果について自ら検証し、参加者同士で講評し合うのです。
第4講では、歳末商戦に合わせた実践課題を設定。最終講となる第5講でその報
告と講評が行われます。
講座を円滑に進め、理解を深めていただくために、原則として弊社のファシリテ
ーターが講座をサポートします。参加者が課題を実践しやすいようにヒントを与
えたり、講評の際に意見を出しやすいようリードしたりするのが役目であり、活
発に意見を出し合い、互いに学ぶ場のムードメーカーです。知識や技術をティー
チングすることはありません。
山城でのファシリテーターは、「これから始めようとする参加者がいて、先輩実
践者がヒントを与える。先輩はそうして後輩を導く一方、初心に返って物事を見
ることができるので、長く実践するほど実践力が深まるようです。彼らが互いに
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刺激し合い、向上していけるよう水を向けるのが私の役目でもあります」と語っ
ています。
同商工会の広域経営支援員・上村直樹さんはこの講座に長らく関わってきました。
「同業・異業種に限らず、講座を通じて交流できる場として活用していただいて
います。地域で実践するメリットは大きいですね。講座終了後もお互いに訪問し
合ったり、取扱商品を薦め合ったりと、交流を深めやすいのが魅力です」
同商工会では、これからも参加者同士が交流を深め、良い実践コミュニティがで
きるよう、さらに受講の輪を広げていきたいと考えています。
◆ 参加者の声その1
山城区域商工会広域連携協議会が主催する「ワクワク系の店作り実践講座」に参
加の一社、「京料理 以真」は、落ち着いた風情を醸し出す料理店。60 代の女性を
中心客層に、ランチタイムは稼働率 70%を下らない好調ぶりを維持しています。
しかし、本講座を受講する直前は廃業を考えるまでに追い詰められていました。
◆ 何から実践すればいいか分からなかった
経営者であり、料理人でもある中村正さんが料理の世界に足を踏み入れたのは 20
歳のときでした。そこで出合った京料理に魅せられて一念発起。各地の日本料理
店で修業し、29 歳で料理長に就任。料理人としての技術と、経営者としての手腕
を磨き、2007 年に自分の店をオープンしました。
開業に当たってマーケティングや販促手法も学びました。創業塾に通い、商圏内
の見込客名簿を入手し、情報誌やチラシを使って宣伝。しかし、数ヶ月経っても
お客さんの反応が得られません。自己資金は見る見る底をつき、銀行から追加借
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り入れをしつつ、どうにか店を切り盛りしていました。
翌年になっても思うような売り上げはつくれず、開業以来1年半にわたって赤字
が続きました。
「この夏が乗り越えられなければ店を閉めようと思っていました」と中村さん。
最後にもう一度賭けてみようと、ワクワク系の店作り実践講座の受講を決意。
ここが運命の分かれ道でした。
配布されたテキストと DVD を見た中村さんは、これまでの実践の意図をはっきり
と理解します。そして課題の「動機づけ」を実践。すると、いきなり前年同月比
200%を超える売り上げを手にしたのです。
「講座でワクワク系の理論をきちんと学び、仕組みを知ることで、それぞれの実
践プロセスが理解できました。実践する意味も分かったのです。あとは実践ある
のみでした」(中村さん)
伝えることの大切さを知った中村さんは、お客さんとの絆を築くことにも成功し
ました。
ワクワク系マーケティング実践会が毎月発行している会員向け情報誌は「アイデ
アの宝庫」と言われますが、中村さんもそこに掲載された事例をヒントに自分な
りに実践を重ねていきます。お客さんの反応は徐々に変わり、やがて数字にもつ
ながってきました。
「実践のすべてが必ずしも成功するわけではありません。しかし、失敗した方が
より検証を深めることができるし、気付きも多く得られます。このころからワク
ワク系を実践することが楽しくなり、お客さんの行動をより意識するようになり
ました」(中村さん)
◆ お互いに刺激し合える創発の場
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2期連続で講座に参加している中村さん。現在は妹の幸代さんも一緒に受講して
います。課題について考えるのは中村さんで、お客さんの反応を伝えるのは幸代
さんでの役目です。
「以前は売り上げを追うのに躍起となり、お互いにイライラすることがありまし
た」と幸代さん。
「今は実践についても2人で話し合うなど、和やかな雰囲気です」
顧客名簿は現在、約 1500 名。ニューズレターを隔月発行するほか、メルマガも
配信しています。あいさつやメニュー紹介だけでなく、自分たちの生い立ちなど
自己開示に努め、お客さんとの絆を深めています。
講座を通じて、同業者や異業種のアイデア・取り組みに接したのは良い刺激。特
に異業種の実践に共感し、そこからヒントを得て自店のミッションを定めました。
最近取り組んでいるのは店内での物販。講座で知り合った仲間と協力するコラボ
レーションにも挑戦しています。
「これからも交流を深めながら仲間を増やし、互いに創発していきたい。今後の
目標は自店の壁を超えること。失敗を恐れずに実践していきます」
◆ 参加者の声その2
山城区域商工会広域連携協議会が主催する「ワクワク系の店作り実践講座」の参
加者をもう1社ご紹介します。
書籍販売店「一Q(いっきゅう)」は 1931 年の創業。古書販売業としてスタート
し、その後、新刊書籍販売に移行しました。
1階が新刊書籍、2階がゲームショップの店舗を長らく運営していましたが、新
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刊書店の新規出店攻勢を受けて状況が一変。当時の社長夫人で経理を担当してい
た中村弘子さんの発案で新刊店舗を閉店し、テレビゲームソフトと中古書籍販売
の複合店としてリニューアルオープン。2003 年、彼女が社長に就任して経営を立
て直しました、
◆ 企業の成長は人材の成長あってこそ
「ビジネスの世界は男社会です。女性の私が社長になるには相当の努力が必要で
した。各方面へ勉強に出かけ、セミナーや研修に積極的に参加しました」(中村
さん)
そんな中、商工会主催のセミナーで出会ったのがワクワク系マーケティング。本
を読んでぜひ自社に取り入れたいと思い、受講を決めました。
同社では社長だけでなく、従業員たちも研修会やセミナーに参加させています。
その理由について彼女はこう語ります。
「企業を成長させるには人材育成が必要です。一人の力や知恵では困難なことで
も、従業員が一丸となって立ち向かえば解決できる。従業員は利益を生み出して
くれる源泉なのです」
2期から3期を従業員と社長が受講し、4期には従業員だけが参加しました。
◆ 他店のアイデアが自店でも活用できる
従業員たちは講座で学んできたことを店舗で実践し、さらなるアイデアを出しま
す。店づくりの工夫や改善について自由に意見を言える社風を、社長自ら築いて
きたことが役に立ちました。
講座に参加した営業部長の橋本昌彦さんは、一連の活動についてこう語ります。
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「他店の実践から学ぶことができるのがいいですね。さらに、講座の中で実践発
表された他店のアイデアを自店でも活用できることが多い点も大きなメリット
です」
講座が5期目を迎えた今年、これまでの実践の集大成にしたいとの思いから中村
さんも再び参加しました。
組織ぐるみで実践ができている点においても、人づくり、店づくりに成功してい
る点においても好事例です。
◆ ワクワク系はお客を店に導くシステム
「これまで取り組んできたことには必ず成果が出ています。ゆえに、ワクワク系
には確かな説得力がある。他店のアイデアをひとつ知れば、いくつかのアイデア
の発想につながる。その中から利益が見込まれるものを抽出し、選んで、実践で
きるようになりました」(中村さん)
ワクワク系とは「お客が買いたくなる気持ちを詳しく分解し、教えてあげること
だ」と中村さんは考えています。その仕組みを学ぶために構築されたシステムな
のだと。
「中古書籍販売業界は、依然として厳しい局面にあります。競合が増加している
現状では、そのすき間を狙うことが肝心です。小阪さんの提唱する理論と実践法
は、それを探すのにぴったりですね」
今後は人材育成をさらに進め、自店でしか売れないものを開拓し、それをお客さ
んに提供することで地域に貢献したいと意欲を燃やしています。
山城区域商工会広域連携協議会の事業のいいところのひとつとして、すべての商
工会員を一律に活性化しようとしなかったこともあげられます。まずはやる気の
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ある人だけを集め、理論と実践を学んでもらう。
それはリーダーの育成と呼んでもいいでしょう。地域におけるリーダーを育て、
それによって活性化を図る。そうして個店が強化され、そこからまた実践する個
店を増やすことで地域全体の強化につなげようとしているのです。
◆ 具体的な数字で成果がでる
参加各店は講座開催期間中に具体的に実践し、数字でわかる成果をだしています。
その一例をご紹介します。
家具店
実践前 :1ヶ月でふきんの売り上げ枚数410枚
実践結果:1ヶ月で同じふきんの売り上げ枚数703枚(171%アップ)
実践前 :1脚10万円の椅子を3ヵ月で2脚販売
実践結果:1ヶ月で同じ椅子を9脚販売、さらに検討中のお客様数名
中古書籍販売
実践結果:2008/8/1~8/19来店客数昨年対比 117%アップ
実践前目標:12月書籍買取目標20000冊
実践結果 :28308冊(目標比129%アップ、昨年比217%アップ)
燃料店
実践前 :ガス炊飯器を通常一年間で6台程度販売
実践結果:同じガス炊飯器を約1ヶ月3台販売
製茶
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前年 :年始の福袋約2000円を20個販売
実践年:同様の福袋を用意した40個完売
理美容店
実践結果:「女性専用の顔剃り&リンパマッサージ」件数が
昨年度比210%アップ
それぞれの数字が立派であることはもちろんですが、さらに素晴らしいことは、
仮説・実践・工夫を繰り返し、計画的に自分で売り上げを創っていることです。
講座の最終回には、成果を出した参加者は、何故その成果が出せたのか、さらに
数字を延ばすには何をしたらいいのかがわかっており、次の実践のアイデアが浮
かんでいます。
また、満足がいかない結果だった参加者も、何故できなかったのか、何が足らな
かったからなのか明確に説明できています。
◆ 陥りやすい2つの注意点(1)
実践が「正しい知識」に基づいているかどうか
このような地域における取組において、陥りやすい注意点に2つ触れておきまし
ょう。
まず、実践が「正しい知識」に基づいているかどうかです。
「正しい知識」に基づいていない場合、どうなるのでしょう。
例えば、商品が売れない場合、その理由は「商品に魅力がない」「価格が高い」「景
気が悪いのでお客さんが買い控えている」などとされることが多いです。
しかしワクワク系では「動機づけが足りないからだ」と考えます。そう考えるこ
とで、ではどうすればお客さんの買いたい気持ちのスイッチを押すことができる
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のかと、POPの文言・看板を置く位置・セールスレターの内容・イベントなど
を変え試行錯誤を繰り返すことができ、それが成果につながっていきます。
ところがここで「値段が高い」と定めてしまうと、打つ手は「値引き」となり、
状況が改善しないどころか、ますます悪化することもあります。
また、ワクワク系では顧客との絆作りのために例えばニューズレターを作成し顧
客に送付している会社があります。巷では、その意図・理由を正しく理解できて
いないことから、「他社のニューズレターを流用してもよい」「代行業社に任せて
も良い」と語られていることがあります。
しかし人の心理の研究や我々の実践からは、それではコミュニケーションの本質
からはずれてしまい、短期的には楽ができて効果的なように見えますが、長期的
には本質的な絆作りにつながらず、投資が無駄になってしまうことがわかってい
ます。つまりそれは「正しい知識」とは言えません。
このように、ビジネスの捉え方や基礎としている知識が異なると、ワクワク系と
は異なる発想が生まれ、異なる手が打たれます。だからこそ、「正しい知識」に
基づいた対策を考え、実践することが大事なのです。
◆ 陥りやすい2つの注意点(2)
単純なノウハウやマニュアルは、ワクワク系にはない
もうひとつの注意点は、「自分の力で売上げをつくることができるようになる」
ことがワクワク系の考え方の根底にあるので、こうすれば売れるという単純なノ
ウハウやマニュアルは、ワクワク系にはないということです。
ワクワク系では、実践する個々の店主や企業が、それぞれの事情にフィットした
独自のアイデアを通じて売上げをつくれるようになることを目指しています。つ
まり、そういうアイデアの基礎となる知識や情報を増やし、アイデアが次々湧い
てくるような創造性を育て、その能力を高めていくことを重視しているのです。
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テキストを丸暗記すればテストの点数が上がる(=売上げが上がる)タイプのも
のではありません。
こう聞くと、初めてワクワク系に触れる方には難しく感じられるかもしれません
が、独自の創造性をいずれは発揮できるようになることを目標にしつつ、「先行
している人の取り組み事例を参考にして実践をスタートする」ことで、誰でもで
きるようになっていきます。
ときに初心者は何をしていいのか分からないと悩み、動き出せないまま最初の頃
の情熱を失っていくことがあります。しかし、真似ることから始められることで、
実践をスムーズにスタートできます。まずはそうしてスタートして、お客さんの
意識や行動がどう変化していくのか、売上げにどうつながっていくのかを観察・
計測し、次に活かしていく。そうしていくことで、自分独自のワクワク系のやり
方がつかめていくのです。
ワクワク系の場合、同業他店が成功した取り組みでも、そのまま自店に合うとは
限りません。逆に、同じ業種の事例だけでなく異業種からも学べることも多々あ
ります。
これまでも実践を始めた多くの方が、他社・他店の事例からヒントを吸収しつつ、
どうすれば自店の顧客や商品、サービスにあった取り組みができるか、自ら実践
し、改良しながら実践のレパートリーを増やして精度を高めていきました。
◆ 地域・団体で取り組む意義とは
山城区域商工会広域連携協議会は5期ということもあって、大勢の先輩がいます。
先輩が増えていくことで、成果を出しやすい環境が出来ていきます。また、身近
に真似る先輩がいない場合でも、ワクワク系マーケティング実践会では、これま
で会員が生み出してきたさまざまな実践事例やツールの活用支援や、全国の先輩
と会える機会を設けるなど、最初のステップをフォローしています。
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変化の速い現代の消費社会では、昨年“正解”だったものも、一年経つと変わる
こともあり、終わりはありません。お客さんを飽きさせないように変化し続けな
ければならないので、結構しんどいのも事実。ワクワク系の実践にもそういう面
はあり、孤独な闘いのようになりがちです。
そんなときに支えになるのが、ワクワク系の共通言語を持つ仲間たちの存在。特
に、地域の商業を活性化するためにワクワク系を導入する場合には、仲間がすぐ
そばにいるのは大きなメリットと言えるでしょう。業界団体などで取り組む場合
にも、同様のメリットが期待できます。
そんな地域・団体での取り組み成果をあげていくには、次の3つのポイントを意
識して行うといいでしょう。
◆ 成果を上げるポイント1:「リアルな場」を定期的に持つ
第 1 のポイントは、参加者が気軽に集まれる「リアルな場」を定期的に持つこと
です。
真似ながら実践を重ねていく中で成果が思うように上がらなかったり、よりよい
創造性を発揮したりするためには、どうすればよいのか悩みは尽きません。です
が飲み会などのスタイルで交流の場があると、仲間も同じような悩みを抱えてい
ることが分かり、先輩がその壁をどうクリアしたのかという話なども聞け、自分
が見落としていたことに気づけることが珍しくありません。特に地域の場合は異
業種が集まることから、業界の常識に縛られている部分に、他業種の人からの、
いい意味で“無責任な発言”が風穴を開けてくれることもしばしばあります。
場に集うことで、自分の取り組みや考えを口に出して話す「外化」ができると同
時に、仲間からの言葉で新たな気づきやアイデアなどの「創発」が生まれ、それ
が自分自身の理解や実践の「深化」も促してくれるので、場の力を活用しない手
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はありません。この時、場をリードしてくれる先輩がいると最強ですね。
◆ 成果を上げるポイント2:支援する役割の人がきちんと機能する
第2のポイントは、支援する役割の人がきちんと機能するということです。ワク
ワク系ではこのような立場の人のことを「ファシリテーター」と呼び、専門家の
育成もしていますが、商工会議所や商工会の事業として行う場合は、経営指導員
の方が受け持つこともできます。
ファシリテーターの役割は、定期的な場づくりをコーディネートすることとその
運営です。また、場の設定と運営以外に、ファシリテーターが参加者の店をこま
めに訪れて、モチベーションが持続するように補佐することができれば、さらに
成果につながります。
リアルな場では先輩を交えた会話が創造性のあるアイデアの源になりますが、先
輩には自分の商売があるので、後輩の店をこまめに見て回ることまではなかなか
できません。そこを補完できれば、特に実践初心者には効果的でしょう。
参加者自身が自力で売上げを作り出せる力を伸ばすには、創造性の発揮がカギに
なります。これは、例えば「財務諸表の見方」のように教えられるものではない
ので、サポートするファシリテーターに求められるスキルも、従来のコンサルタ
ントとは異なります。
ただ現時点では、ファシリテーションの正しい知識とスキル、基本的なワクワク
系の理解が十分な経営指導員などの方が現地にいらっしゃらないことがほとん
どですので、地域導入プログラムでの現状では、経験豊かな弊社公認のワクワク
系実践サポーターがこの任にあたっています。ファシリテーション+α(ワクワ
ク系の基本的なアドバイスや他地区での事例解説など)の働きをし、一層の成果
をあげています。
開催地の地元の人間ではありませんので、参加者のこまめな補佐については、主
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催者と連携をとり進めています。
◆ 成果を上げるポイント3:小さく始めて大きく広げる
第3のポイントは「小さく始めて大きく広げる」ことです。
商工会議所や商工会などの支援事業としてワクワク系の講座を開く場合、参加者
をどれだけたくさん集められるかを思案されるケースをお見かけしますが、むし
ろ「本当にやってみたい!」と熱意のあるメンバーだけを集めて小さく始めたほ
うがいいのです。これは新しい取り組みが広く普及していくための効果的な方策
として、学術研究でも明らかにされている事実です。
実際に地域単位で取り組む際は、まず対象となる方全員(例えば商店街の主催な
ら商店街のすべての店舗)に声をかけて講演会を催しますが、初回の講演に参加
する方は全体の 20%程度で、さらにそのなかの何割かの人が実際にワクワク系の
実践に入り、1 期生の活動が始まるというパターンが多いのですが、そのスター
トの仕方で良いのです。
参加者は、半年もすると成果が出て、何より商売に対する姿勢が変わります。仕
事が楽しくなってもくるので、周りから見ていると楽しそうで、それでいて数字
の成果も出ている。すると家族や同じ商店街の人たちなど、周囲の見る目が違っ
てきます。そういう過程を経て、カリキュラムの最終回には参加者自ら、大勢の
人を招いて、各社・各商店の発表会を行うことも多くありますが、最初の講演よ
り参加者はずっと増え、それが次期につながります。
そして翌年以降は、失敗も成功も含めた事例や実践の先輩も増えるので、新たに
参加する人は深化のスピードが上がりやすく、成果も早く出始めます。それがま
た、次期へのモチベーションへつながっていきます。
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そういう繰り返しによって、地域や団体にワクワク系の輪が広がっていくのです。
◆ 各種団体での取り組みには
ワクワク系ビジネスは、商工団体や商店街連合会などの支援事業はもちろん、任
意の集まりでも導入できます。
メーカーや問屋が販売店・販売代理店を活性化する取り組みです。この場合、主
催担当者が実際に個店を回ることを想定して(例えば、そのために最初から全国
の販売店から希望者を募るのではなく、地域を限定するなど考慮して)始めるこ
とがポイントです。
ここまで述べた注意点と取り組む際のポイントを踏まえ、全国にワクワク系の
「場」が広がることを願っています。
◆ 具体的なプログラム内容
具体的に導入プログラムがどのように始まり、どのように進められていくのかを、
これまでの例を参考にお見せしましょう。
ただ、プログラムは、前年の各地、各団体でのプログラム導入活動の状況や成果を
踏まえて、毎年改善されていきますので、あくまでも過去の例を土台にした参考と
してご覧ください。
◆ はじめに:ワクワク系マーケティング公開講演会開催
内 容:中小規模小売サービス業者を対象に「ワクワク系マーケティング」の
公開講演会
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目 的:地域の中小規模小売サービス業経営者の「マーケティング力」を育成
する観点から「ワクワク系マーケティング」の総論・しくみづくりに
ついて学び、実践講座への参加を促す。
講 師:オラクルひと・しくみ研究所 代表 小阪裕司
主催者の役割:案内・集客に関する一切
◆ 次に:ワクワク系の店作り実践講座全5回開催
内 容:売上高、利益の増加を目指す少人数制実践型講座全5回
① 「理論・事例講座」:ワクワク系(感性価値創造)の総論・事例講座
② 「実践の促進」:ワクワク系マーケティング講習・実践
各回の内容、教材に基づく課題と目標を設定し、次回に課題検証、
質疑、参加者によるディスカッションを実施ファシリテーターが実
践の検証、促進支援を実施
③ 「実践課題の取組み」:学習内容に基づき、歳末実践課題を設定し各
自現場で実践を行う
④ 「取組み課題の検証」:現場での取組み課題の報告、検証を実施する
目 的:意欲ある小規模小売・サービス業者に対して少人数制実践型マーケテ
ィングセミナーを実施することにより、活力ある地域リーダーとなる
商業主を育成し、地域の活性化をはかる
講 師:オラクルひと・しくみ研究所 代表 小阪裕司
ファシリテーター:オラクルひと・しくみ研究所公認実践サポーター
主催者の役割:(事業の担当者・参加個店の担当者)
① 参加者集客・案内に関する一切
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② 全講座の会場準備と開催連絡・課題推進のための個店フォロー・課
題回収・講座当日用の課題資料PCデータ化・各講座の司会・全ス
ケジュールへの参加・必要に応じて懇親会の設定など
教 材:「ワクワク系マーケティング実践会」の教材
テキスト「ワクワク系マーケティング実践術本編・資料編」
DVD:「ワクワク系マーケティング実践術」
月刊情報誌:「感性のマーケティング&マネジメント情報誌」など
その他、当実践会の各種機能を活用
◆ 全体スケジュール
日程 内容 担当講師
5~6月 ワクワク系マーケティング公開講演会 小阪裕司
8月 第一回「ワクワク系の店作り実践講座・講義」
ワクワク系の考え方・しくみづくり総論
次回までの実践課題提示(動機付け)
小阪裕司
9月 第二回「ワクワク系の店作り実践講座・実践」
提示された課題、目標に基づく検証、質疑、
参加者によるディスカッションを実施
次回までの実践課題提示(顧客コミュニティ)
ファシリテーター
公認実践サポーター
10月 第三回「ワクワク系の店作り実践講座・実践」
提示された課題、目標に基づく検証、質疑、
参加者によるディスカッションを実施
次回までの実践課題提示(顧客コミュニティ)
ファシリテーター
公認実践サポーター
11月
第四回「ワクワク系の店作り実践講座・実践」
提示された課題、目標に基づく検証、質疑、
参加者によるディスカッションを実施
歳末実践課題の設定と具体的取組み策定
ファシリテーター
公認実践サポーター
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11~12月 出張サポート(個店訪問相談・アドバイス) ファシリテーター
公認実践サポーター
1 or 2月 第五回「ワクワク系の店作り実践講座」
歳末実践課題報告会・講評
*次年度開催に向け公開講座とする場合が多い。
小阪裕司 氏
注1) このスケジュールは商工会・商工会連合会などが主催する場合のモデルスケジュ
ールです。詳細は個別のご相談の上決定致します。
注2) 各講座の時間は、約3時間です。参加者の営業終了後、夜の時間帯に開催される
ことが多いです。
注3) 「自発的な実践姿勢を促す」「講座時間を有効に活用」「主催者の投資金額低減」
などの理由により、各メソッドのレクチャーはDVD教材を活用しての自主学習
にて進行します。