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次期マイクロ波放射計の検討状況について
平成30(2018)年11月13日国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構
理事 布野 泰広
GOSAT-3プリプロジェクトチーム長 平林 毅
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資料5-2
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1.本日の説明内容
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宇宙基本計画の工程表改訂に向けた 中間取りまとめ(平成30年6月7日 宇宙政策委員会)[Ⅱ(1)-5]その他リモートセンシング衛星開発・センサ技術高度化(工程表11,12)・ 高性能マイクロ波放射計2(AMSR2)の後継センサである次期マイクロ波放射計について、GOSAT-3への相乗り搭載に向けて平成31年度中の開発フェーズへの移行を目指し開発研究を推進する。
水循環変動観測衛星(GCOM‐W)に搭載した高性能マイクロ波放射計2(AMSR2)の後継センサ(次期マイクロ波放射計)について、現在、JAXAにおいてGOSAT‐3との相乗りを前提として開発研究を実施中。
本日は、次期マイクロ波放射計の検討状況について説明する。
宇宙基本計画(工程表(平成29年度改訂))平成29年12月12日宇宙開発戦略本部決定より抜粋
宇宙基本計画工程表(平成29年度改訂)平成30年度以降の取組11 その他リモートセンシング衛星開発・センサ技術高度化■高性能マイクロ波放射計2(AMSR2)の後継センサである次期マイクロ波放射計について、GOSAT-3への相乗りを前提とした開発研究を実施する。
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2.マイクロ波放射計の利用状況• JAXAがこれまでに開発・運用を進めてきた高性能マイクロ波放射計(AMSR、AMSR-E、AMSR2)は、15年以上に及ぶ長期観測データを継続的に取得。国内外で利用が拡大し、気象や極域研究分野等で、国際的に重要な役割を担っている。
• 現在運用中のGCOM-W搭載AMSR2は、世界90か国以上の750を超える現業機関・研究機関・大学・民間企業等で利用され、特に、リアルタイム性の高い提供データは、気象庁、米国海洋大気庁(NOAA) 、欧州中期予報センター(ECMWF)など、世界各国の気象機関等で、日々、現業利用されている。
• 特に、NOAAは、AMSR2データが必須であるとして、毎周回データを受信する高緯度局の運用費を負担している。• リアルタイム性が高くかつ天候によらず取得可能な気象・海象情報は安全保障機関にも利用されている。
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JAXA 米国
全球観測蓄積データ(毎周回受信)
米国海洋大気庁(NOAA)• 政府関連機関、大学等へ配信
• ハリケーンセンターで定常利用
日本周辺観測リアルタイムデータ
気象庁
漁業情報サービスセンター
共同研究機関利用機関、他
[ユーザ機関]
天気予報ユーザ
漁業者
気候変動予測農業収量予測海氷予測極域航行支援その他
[ エンド・ユーザ]
準リアルタイムでのプロダクト配信
準リアルタイムでのデータ利用
・欧州気象衛星開発機構(EUMETSAT)から欧州31か国に配信・欧州の6気象機関(ECMWF、英国、ノルウェイ等)で現業利用中。さらに4機関で現業化を検討中
・その他の気象機関(豪、加、韓国)でも現業利用中
データ提供サイトに97か国約3000名がユーザ登録(平成29年10月現在)
NOAA直接受信局リアルタイムデータ
海上保安庁海況・海氷情報航行安全
日本周辺観測データはリアルタイムで受信し、観測から平均約16分以内に気象庁に配信。
世界中の一般研究者へWebサイトでプロダクト提供
準リアルタイムでのプロダクト提供
高緯度局NOAAが受信費用を負担
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海面水温
積雪深
海上風速
海氷
降水量(雨量)
土壌水分量
温暖化予測(IPCC)
漁場予測
用水計画
北極海航路運航情報
海氷長期予測
洪水予測
干ばつ指数
船舶安全航行情報
南極観測船着岸ルート選定
漁船の燃料削減
水資源確保
世界の温暖化政策へ反映
海運物流の確保
航海の自由・北極海資源確保
科学技術外交(GRENE事業)
食糧安全保障へ貢献
積算降雨(GSMaP)
観測量 モデル&シミュレーション 利用例と効果予測
注)赤外センサは雲の影響で全球観測不適
水蒸気量
気象庁数値予報システム 気象予報ひまわり・
GPM他気象衛星データ
エルニーニョモニタ
海外防災案件(フィリピン、ベトナム)
海外防災案件(バングラデシュ)
註)IPCC:気候変動に関する政府間パネル。
(世界標準の物差しとして利用)
地上計測データ他 各モデルで校正用に利用
安全保障分野海外利用(世界気象機関、米国NASA・NOAA・NRL他)
水産庁(JAFIC)
気象庁NOAAECMWF
関連機関
JICA/ADB
地方自治体・農水省
環境省・IPCC他
文科省・外務省
国交省・経産省・海運業者
海上保安庁・海運業者・気象会社
農水省
NASA,NRL,NOAA他
「我が国の地球観測の将来計画に関する提言」(タスクフォース会合・リモートセンシング分科会)より引用4
(参考)マイクロ波放射計に関する観測データと実業との相関説明
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(参考)マイクロ波放射計の利用例
• 気象分野(米国海洋大気庁(NOAA))での利用例NOAAはハリケーン監視などでGCOM-W搭載AMSR2のデータを定常利用しており、静止気象衛星では把握できない目の位置や風の強さ・降雨などの内部構造を把握してハリケーンの進路予測を改善。
米国領土全域をカバーするため、現在、直接受信局を5局利用してGCOM-Wリアルタイムデータを取得している。
• 漁業分野での利用例AMSR2海面水温データは、漁業情報サービスセンター(JAFIC)が作成する漁海況情報に定常的に利用されており、漁船の漁場選定などに活用。→漁海況情報の利用により、漁船の燃油を16%節減
(NOAA提供)
GCOM-W AMSR2輝度温度画像米国静止気象衛星雲画像(GOES-13)
米国海洋大気庁(NOAA)による2014年ハリケーンARTHORの観測例 GCOM-Wでは、発達したハリ
ケーンの目や雨の分布が明確米国の静止気象衛星では雲の下のハリケーンの内部構造は分からない
5(JAFIC提供)
JAFICは、平成25年宇宙開発利用大賞内閣総理大臣賞を受賞
赤外センサでは上空に雲があると海面水温は観測できない
マイクロ波放射計は雲を透過して海面水温を観測することが可能
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2012年9月16日衛星観測史上最小面積
(参考)マイクロ波放射計の利用例
• 長期の極域海氷モニタリングAMSR-E~AMSR2の15年以上にわたるマイクロ波放射計観測をベースに作成された極域の海氷気候データセットは、地球上の全海氷面積の「年間最大値」及び「年間最小値」が、観測史上最小を記録したことを明らかにした。
極域の海氷面積の継続監視は、全天候で広範囲に観測可能なマイクロ波放射計が必須であり、長期継続観測の大きな効果である。
JAXAマイクロ波放射計海氷密接度気候データセットによる北極と南極をあわせた全球海氷面積の季節変動
② 2017年2月9日時点で15,716,332 km2を記録。これまでの最小値16,219,388 km2(2006年1月25日)を更新。
① 2016年は、11月に形成されるピークが例年よりも小さく、「年間最大値」の最小を記録。
2016年後半~2017年初旬のAMSR2観測データは、平年よりも北極海氷の成長が鈍く、かつ南極海氷の減少ペースが大きいことを捉えており、全球の海氷面積が最小記録を更新し続けた原因を示唆している。
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北極海海氷分布の変化
AMSR‐E
AMSR2
2002年9月8日の海氷分布
Aqua/AMSR-E
大きく減少
GCOM-W/AMSR2
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3.次期マイクロ波放射計の目的• 全球高頻度観測や高空間分解能の優位性により世界各国で利用が定着したマイクロ波放射計(AMSR, AMSR-E, AMSR2)の成果を維持・継続する。
• ①高周波チャネル搭載による観測対象の追加、及び②地上処理高度化によるプロダクトの高分解能化等の取り組みにより、台風進路予測の向上や沿岸漁場での利用など、新たな利用ニーズに応える。
• これにより、世界各国でより一層の社会実装を図るとともに、気候変動対応活動の判断指標や評価指標として国際的に定着することを目指す。
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(参考)次期マイクロ波放射計の利用例
• 気象分野及び水産分野での新たな取り組み
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現業システムによる予報結果では200km以上の台風中心位置の誤差がある
青線:現業システムによる予報結果赤線:現業システムに183GHz帯輝度
温度を同化した予報結果黒線:実況結果
気象分野
豪雨・台風等の範囲や進路、盛衰の予報精度向上
高周波数チャネルのマイクロ波放射計データを数値気象予報に組み込むことにより、予報精度向上
(Megha-Tropics/SAPHIRの利用例)
高周波数チャネルによる高層水蒸気量観測 水産分野
赤点●:サバ・イワシの2014年漁場位置
カツオ・マグロ等の沖合・遠洋漁場での漁業利用から、大陸棚周辺(沿岸から約20km以遠)でのイワシ、サバ、アジ等を新たに対象
出典:JAFIC
地上処理高度化によるプロダクトの高分解能化
気象庁「数値予報解説資料(数値予報研修テキスト)第48巻(平成27年度)」より抜粋
実況から200km(気象庁業績指標(台風中心位置の予報誤差)の目標値))の円
沿岸から20km
沿岸から100km
沿岸から20㎞以遠の情報提供で沿岸漁場も対象とする
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4.進捗状況と今後の計画
• 国際気象機関をはじめとする国内外から、GCOM-Wによる観測継続や後継ミッションに対する要望が多く寄せられており、これらを踏まえて次期マイクロ波放射計の検討を実施している。
• JAXAにおいて、平成30年6月に次期マイクロ波放射計のミッション定義審査を終え、現在、システム要求設定に向けた検討を実施中である。今後、システム要求審査を実施する。
• 衛星の開発・打ち上げコスト削減を図り、より効率的に進めるために、GOSAT-3との相乗り搭載を前提として検討している。衛星システムとしての成立性に関しては技術的な目途が得られている。
• 次期マイクロ波放射計は、平成31年度の開発着手を目指し、システム要求を踏まえて、機能追加や精度向上、部品再開発等のための開発研究を進める。
• 全体開発計画については、今後、環境省殿と連携して具体的な検討を進め、これと整合するように次期マイクロ波放射計の開発計画を設定する。
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参考
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• JAXAは、海洋観測衛星「もも1号」(MOS-1)搭載のマイクロ波放射計(MSR)の開発・運用成果を活かし、高性能マイクロ波放射計(AMSR)及び改良型高性能マイクロ波放射計(AMSR-E)を開発し、それぞれ、「みどりⅡ」(ADEOS-Ⅱ)及び米国衛星Aquaに搭載された。
• AMSR-Eは約9年5ヶ月間観測を継続し、広域の定量的な土壌水分の分布、雲に影響されない全天候型海面水温の分布など、これまでにない長期継続的なデータセットを作成・提供。現業・研究分野での利用を切り拓いた。
• AMSR-E運用終了後、「しずく」(GCOM-W)搭載のAMSR2が観測を引き継ぎ、合わせて15年以上に及ぶ長期観測データを継続的に取得。国内外で利用が拡大し、気象や極域研究分野等で、国際的にも重要な役割を担っている。
(参考)マイクロ波放射計の継続・発展について
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AMSRMSRAMSR2 AMSR2後継
1987年~ 2002年~2011年 2012年~ 2020年代AMSR‐E/AMSR2の継続・発展
• 23GHz, 32GHzの2チャネル•アンテナ開口径0.5m•空間分解能23~32km•観測幅317km
• 6周波数帯14チャネル•アンテナ開口径1.6m•空間分解能6~74km•観測幅1450km
•搭載校正源を改良し、校正精度を向上。
• 7GHz帯にチャネルを追加し、地上電波干渉波の影響を低減。
AMSR‐E特に、低周波チャネル(7,10GHz)の高分解能化化高周波チャネル追加による固体降水(降雪)の観測
AMSR‐Eの観測を継承
GOSAT‐3との相乗りを前提とし検討中
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AMSR2データ無の予測
2012年7月12日0時から3時間の降雨実測値
【AMSR2による降水予測の改善】 海上の水蒸気場を把握できるAMSR2データの同化により、降水予測(降水強度と予測位置)が改善
[mm]
[mm]
[mm]
(気象庁提供)
実測値
AMSR2データ有の予測
AMSR2による降水予測の改善の事例
九州中央部の激しい雨(黒点線丸部分)について、AMSR2データ無では予測できていないが、AMSR2データを活用することで予測できるようになっている
(参考)気象分野の利用例(降水予測の改善)
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(参考)次期マイクロ波放射計の特徴
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AMSR3
AMSR2Aqua AMSR‐E
Coriolis Windsat
GPM GMI
HY‐2 MWRI
FY‐3 MWRIMETOP‐SG MWI
Megha‐Tropiques MADRAS
DMSP SSMI/S
1
10
100
1000
0.25 0.50 0.75 1.00 1.25 1.50 1.75 2.00 2.25
観測周波数
[GHz
]
アンテナ開口径 [m]高性能
(高空間分解能)
広帯域・多周波であるほど多機能
次期マイクロ波放射計:高周波帯域を追加し、観測帯域も世界レベルを目指す高周波
(高空間分解能が得られる)
低周波数は、実用的な空間分解能を得るために大型のアンテナが必要
走査型・多周波マイクロ波放射計のアンテナ開口径と観測周波数
AMSR2は開口径2mのアンテナにより、世界最高の空間分解能を有する。
高周波数は短い波長に対応した高精度なアンテナが必要
広い観測帯域