岡山ふれあいセンターesco事業の紹介 -...
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── 実 施 例 ──
ヒートポンプとその応用 2016.11.No.90─ 35 ─
2.事業概要建物名称 岡山ふれあいセンター所 在 地 岡山市中区桑野715番地の2延床面積 13,248㎡階 数 地上2階(一部4階)構 造 RC造,地上2階(一部4階)用 途 高齢者福祉,生涯学習, 保健福祉(温浴施設あり)竣 工 年 1993年発 注 者 岡山市契約方式 シェアード・セイビング 改修工事資金は,ESCO事業者,設備はESCO 事業者所有(民間資金活用型)代表企業 新菱冷熱工業㈱(事業者,建設,維持管理)構成企業 JA三井リース㈱(金融)工事期間 2011年9月〜2012年3月ESCOサービス期間 2012年4月1日〜2022年3月31日条 件 ・省エネルギー率 10%以上 ・光熱水費削減最低保証額は削減 予定額の70%以上確保
1.はじめに 岡山市では,2006年(平成18年)に「岡山市環境保全行動計画(第Ⅱ期)」を策定し,市の事務事業にともない排出する温室効果ガスを10.9%以上削減することとしており,市有施設へのESCO事業の導入により,CO2の排出量を削減することをめざしている。 また,2008年(平成20年)に実施した地域省エネルギービジョンの重点行動計画・施策の一つとしてESCO事業の推進を挙げており,省エネルギー化の推進による環境負荷低減および温室効果ガス削減ならびに光熱水費の効果的な削減をはかるため,ESCO事業の導入が決定された。 このESCO事業推進の一環として導入された「岡山ふれあいセンター」を紹介する。
ESCO事業概略スケジュール 公 募 2010年10月 提 案 書 提 出 2010年12月 事 業 者 選 出 2011年1月 補 助 金 申 請 2011年6月 ESCO事業締結 2011年9月
■キーワード/ESCO・省エネルギー・太陽熱利用
新菱冷熱工業㈱ 中国支社 大 亀 徹 ・ 前 田 政 明 ・ 徳 久 雅 光
岡山ふれあいセンターESCO事業の紹介
写真-1 岡山ふれあいセンター外観
ヒートポンプとその応用 2016.11.No.90─ 36 ─
── 実 施 例 ──
⑪ 環境配慮型給湯システムの構築 既設灯油焚きボイラをガス焚きに燃料転換する コージェネ機器 5kW×1台導入し,排熱を給湯へ利用する
⑫ 太陽熱給湯システムの導入 太陽熱集熱パネル10枚を屋根に設置し,温浴施設の給湯に利用する(図-2,写真-3・4)
⑬ 温浴施設の廃熱利用システムの導入 風呂排水の熱を貯湯槽補給水の昇温に利用する
⑭ 衛生器具へ節水コマ取り付け 衛生器具へ節水コマを取り付け,上水利用量を削減する
⑮ 照明器具・誘導灯の省電力化 既設照明器具・誘導灯をLEDまたは省電力型に更新する
⑯ 熱源機械室の換気の見直し 冷温水発生機1台減に伴う換気量見直しと,1種換気を2種換気へ改修する
⑰ 空調機械室の換気ファンの発停制御追加 空調機械室換気ファンの運転をサーモ発停制御に改修する
3.省エネルギー手法と省エネルギー効果3-1 省エネルギー手法 採用した省エネルギー手法17項目を下記に示す。 また,図-1に高効率熱源機導入図を,図-2に太陽熱給湯システム図を示す。① 高効率熱源機の導入
既設冷温水発生機 250USRT×2台のうち1台を予備機とし,高効率空冷ヒートポンプチラー(冷房能力595kW)を新設する(図-1,写真-2)
② 燃料転換による環境負荷低減 既設灯油焚冷温水発生機をガス焚に燃料転換する
③ 冷温水搬送システムの効率化 冷温水2次ポンプへインバータ制御を追加する
④ 送風機搬送動力削減 空調機,送風機の風量調整を風量調整ダンパからインバータに改修する
⑤ 空調機のCO2制御による外気負荷低減 CO2濃度を測定し導入外気量を制御する
⑥ 空調機の間欠運転 所定の温度環境を維持しながら,空調機の間欠運転を行う
⑦ 送風機の損失トルクの削減 送風機のベルトに省エネ型ベルトを採用する
⑧ ナイトパージの採用 夏期早朝に排気ファンを運転し,室内のこもった熱と屋外の冷気を入れ替える
⑨ クールチューブ採用による外気負荷削減 既存トレンチを利用して外気を取り入れる
⑩ 低圧損型フィルタ採用による搬送動力削減 空調機組み込みの中性能フィルタを低圧損型に取り替える
図3-9-1
空調機・ファンコイルへ 空調機・ファンコイルへ改修後改修前
冷却塔 冷却塔
灯油焚冷温水発生機
250USRT
灯油焚冷温水発生機
250USRT
ガス焚冷温水発生機
250USRT
冷却塔
高効率空冷HPチラー(210HP)
冷却塔
ガス焚冷温水発生機
図-1 高効率熱源機導入図
写真-2 高効率空冷ヒートポンプチラー
ヒートポンプとその応用 2016.11.No.90─ 37 ─
── 実 施 例 ──
⑴ 削減計画値
⑵ 実績値-1(建物全体)
3-2 省エネルギー効果 表-1に建物全体での削減量と削減率の計画値を,表-2に熱源廻り(高効率熱源機導入と燃料転換)での削減量と削減率の計画値を,表-3に年間削減保証額を示す。 また,図-3〜5に建物全体での削減量,削減額,達成率を示す。図-6・7に熱源廻り(高効率熱源機導入と燃料転換)での削減量と達成率を示す。 表-4に省エネルギー手法の各項目での1次エネルギー削減率の計画値と年度ごとの実績値を示す。
図3-9-2
貯湯槽
加圧給湯ポンプ集熱循環ポンプ
太陽熱集熱パネル×10枚
給水用電動弁
還水用電動弁
日射
蓄熱タンク
図-2 太陽熱給湯システム図
表-1 全体削減量,削減率
表3-9-1
1次エネルギー
二酸化炭素 568,272
削減量(MJ/年)7,619,653
33.16
削減率(%)30.08
表-1 全体削減量,削減率
写真-3 太陽熱集熱パネル
写真-4 太陽熱蓄熱タンク
表-2 熱源廻り(高効率熱源機導入と燃料転換)削減量,削減率
表3-9-2
1次エネルギー
二酸化炭素 183,428
削減量(MJ/年)2,486,818
12.64
削減率(%)12.4
表-2 熱源廻り(高効率熱源機導入と燃料転換)削減量,削減率
表-3 年間削減保証額
表3-9-3
年間削減保証額(税抜き) 13,228 千円/年
表-3 年間削減保証額
0
20
40
60
80
100
120
01,0002,0003,0004,0005,0006,0007,0008,0009,000
図3-9-3
計画 24年度 25年度 26年度 27年度1次エネルギー削減量(GJ/年) 7,620 7,046 7,311 6,907 8,410計画値を100とした達成率(%) 100 92 96 91 110
(%)(GJ/年)
図-3 一次エネルギー削減量
85
90
95
100
105
110
115
500520540560580600620640660
図3-9-4
計画 24年度 25年度 26年度 27年度二酸化炭素削減量(ton-CO2/年) 568 558 563 552 640計画値を100とした達成率(%) 100 98 99 97 113
(%)(ton-CO2/年)
図-4 二酸化炭素削減量
90
95
100
105
110
115
120
12,00012,50013,00013,50014,00014,50015,00015,50016,000
図3-9-5
計画 24年度 25年度 26年度 27年度
削減額〔千円(税別)〕 13,228 13,544 14,236 13,235 15,577計画値を100とした達成率(%) 100 102 108 100 118
(%)〔千円(税別)〕
図-5 光熱水費削減額
ヒートポンプとその応用 2016.11.No.90─ 38 ─
── 実 施 例 ──
本事業は,平成23年度住宅・建築物高効率エネルギーシステム導入促進事業費補助金を取得して事業を実施したため,計画値の省エネルギー達成が必須条件で検証を進めた。 ESCOサービス初年度より,削減保証額では計画値を達成することができていたが,省エネ削減率では,計画値を下回っていた。特に熱源機器の達成状況が低かったため,原因と対策を進めた。原因 ガス焚冷温水発生機の運転時間が計画値よりも多
く,それに伴う補機関係の運転時間も多くなることでエネルギー使用量が増えた。
対策 ・ガスの総使用量は把握できるが,個別機器ごとのガス量が把握できないため,使用量データが収集できる監視ポイントを追加し,冷温水発生機の運転状況を把握できるようにした。
・ガス焚冷温水発生機の起動を抑えるために,サーモ設定を見直し,メインを空冷ヒートポンプチラーとし,不足分をガス焚冷温水発生機による運転方式に変更した。
上記対策を施すことで,2015年度(平成27年度)は,熱源機器の削減率が大幅に改善でき,全体では省エネ削減率を達成した。 省エネルギー手法項目ごとの削減率では,空調機・送風機の省エネベルトによる削減効果が想定を下回ったが,ポンプ・送風機のインバータによる制御や,空調機の間欠運転,照明器具の省電力化等がエネルギー削減に大きく寄与している。
4.おわりに 今後も,岡山ふれあいセンターの関係者の方々のご協力のもと継続的にきめ細かい運転を行うことで,熱源関連のエネルギー削減量も計画値をクリアできるように管理していきたい。 最後に,本事業でお世話になっている岡山市および岡山ふれあいセンターの関係者の方々に感謝申しあげます。
⑶ 実績値-2 (熱源廻り 省エネルギー手法項目1+2)
⑷ 実績値-3
500
1,000
1,500
2,000
2,500
3,000
3,500
図3-9-6
計画 24年度 25年度 26年度 27年度1次エネルギー削減量(GJ/年) 3,183 1,095 1,374 1,032 2,587計画値を100とした達成率(%) 100 34 43 32 81
0
20
40
60
80
100
120(%)
0
(GJ/年)
図-6 一次エネルギー削減量
図3-9-7
計画 24年度 25年度 26年度 27年度二酸化炭素削減量(ton-CO2/年) 216 102 112 103 191計画値を100とした達成率(%) 100 47 52 48 88
0
20
40
60
80
100
120(%)
0
50
100
150
200
250(ton-CO2/年)
図-7 二酸化炭素削減量
項目 計画値 24年度 25年度 26年度 27年度
①,② 12.43 4.33 5.44 4.08 10.2
③ 5.23 6.86 6.09 6.3 6.79
④ 1.49 3.31 3.29 3.29 3.29
⑤ 0.4 0.18 0.18 0.18 0.18
⑥ 2.4 3.55 3.55 3.55 3.55
⑦ 0.43 0 0 0 0
⑧ 0.01 0.01 0.01 0.01 0.01
⑨ 0.02 0.07 0.07 0.07 0.07
⑩ 0.06 0.06 0.06 0.06 0.06
⑪ 0.07 0.97 1.58 1.17 0.5
⑫ 0.16 0.25 0.33 0.24 0.23
⑬ 0.08 0.02 0.02 0.03 0.06
⑭ 0.03 0.03 0.03 0.03 0.03
⑮ 6.71 7.76 7.64 7.75 7.75
⑯ 0.33 0.32 0.32 0.32 0.32
⑰ 0.15 0.14 0.14 0.16 0.15
計 30.00 27.86 28.75 27.24 33.19
表-4 省エネルギー手法項目ごとの1次エネルギー削減率
表3-9-4
* 省エネルギー手法については「3-1 省エネルギー手法」参照
表-4 省エネルギー手法項目ごとの1次エネルギー削減率