富士ゼロックス情報システム株式会社様 -...

2
富士ゼロックス情報システム株式会社(以降、富士ゼロックス情報システム)は、 これまで人間系で行っていた、引合から受注に至る販売プロセスをシステム化す る BPM(Business Process Management)システムを構築した。構築基 盤として採用したのは、intra-mart for BPM だ。柔軟性の高い承認ワークフ ローを効果的に配置することで、BPM システムそのものの構造をシンプルにし て、開発生産性・運用・保守性を高めることに成功。プロダクトアウトを脱却して、 マーケットインへと発想・体制転換する一大改革の羅針盤としても、この BPM システムを活用していく。 富士ゼロックス情報システム株式会社 本 社:神奈川県横浜市西区みなとみらい 3 丁目 6 番 1 号 みなとみらいセンタービル 設 立:1984 年 9 月 21 日 資本金:1 億円(富士ゼロックス株式会社全額出資) 従業員:430 名(2010 年 10 月現在) 概 要:富士ゼロックス株式会社のソフトウェア開発子会社。 ドキュメント管理、オブジェクト指向、セキュリティ、 ネットワーク基盤などの高度な技術力を主軸に、多 種多様な業種・業態向けに多彩なソリューションを 開発してきた実績を活かして、「お客様の戦略的ビジ ネス環境のデザイン」を目指す IT ソリューションプ ロバイダ。 URL:http://www.fxis.co.jp/ 分断していた人間系プロセスと システムプロセスをつなぐ 「これまでは人間系の業務プロセスとシス テムの動きが分断されていました、これをつ なぐことで、人間系のプロセスを『見える化』 し、改善していくために構築したのが BPM システムです」と、富士ゼロックス情報シス テム株式会社 取締役の内田直知氏は語る。 同社では、1998 年に、BPR(ビジネスプロ セス改革)を入念に行ったうえで SAP ERP を導入して、基幹系ではクリーンデータを一 元的に把握できるしくみが整った。 「しかしビジネスは、確定した数値だけで 動いていくものではありません。ERP にク リーンデータを登録するまでの前プロセス、 つまり、商談にかかわるすべてのプロセスを モニタリングできるしくみを作る必要があり ました」と内田氏は語る。 今回開発されたシステムは、プロダクトアウト からマーケットインへ、企業全体の取り組み視 線を根本的に変革していくための道具でもある。 「ビジネススタイルの変化に対応する事は 掛け声だけでは実現できません。お客様の ニーズを事実として把握できるしくみを作る のが、マーケットインの第一歩なのです。い ままで、受注という成果があがるより前に発 生してはすぐに消えてしまっていた情報を逃 がさずにキャッチし、分析して、そこにビジ ネスニーズがあるのならわれわれの動き方や 体制を変えてお客様のさまざまな要求に対応 していかなければなりません。お客様のニー ズを把握するうえで、人間系プロセスをモニ タリングできるシステムの構築が不可欠でし た」と、ビジネスプロセスマネジメント事業 部 ERPソリューション部 部長の崔宰源(チェ ジェウォン)氏は熱を込めて語る。 「日本企業の BPM」に適した機能を 網羅した intra-mart for BPM BPMの定石は「着眼大局、着手小局」である。 つまり個々のプロセスの継続的な改善を行い ながら最終的には全社全プロセスの全体最適 を目指すものであり、富士ゼロックス情報シ ステムがまず着手したのは、ビジネスプロセ スマネジメント事業部における引合から受注 に至る販売プロセスのシステム化である。 「BPM を成功させるには、改善効果を確認 しながら適用範囲を拡大するスモールスター トが基本となりますので、最初に選ぶプロセ スはすぐに効果が出るテーマを選ぶことが大 切です。当社の場合は、BPR およびオブジェ クト指向による業務プロセス分析を長年にわ たって積み上げてきましたので、『受注前プ ロセス』こそが最大の改善ポイントだという 絞り込みを迅速に行うことができました」と、 ビジネスプロセスマネジメント事業部チーフ エンジニアの小松稔氏は語る。 BPM システムを構築する基盤として intra- mart を選んだのは、富士ゼロックス情報シス テムが求めた次のような要件をすべて満たし ていたからである。 第 1 に、 「BPM デザイナー」 「BPM エンジン」 「BAM 」「ポータル」「サービス統合ツール」 という、BPM システム構築に必要なコンポー ネントがすべてそろっている。 第 2 に、世界標準の表記法である BPMN (Business Process Modeling Notation)でビジ ネスプロセスをモデリングできる。 第 3 に、SAP ERP と親和性が高い。BAPI をはじめ、必要に応じてさまざまなインター フェースを駆使しながら、SAP のシステムの 流れを業務の視点で串刺しにしたシステムを 構築しやすい。 第 4 に、BPM に加えて、承認ワークフロー の機能を備えている。 第 5 に、 「組織」「役職」の概念を持っており、 日本企業のやり方に合ったアクセス権限設定 富士ゼロックス情報システム株式会社様 人間系プロセスとシステムプロセスをつなぐBPMシステムを構築。 市場ニーズのいち早い把握・分析を可能にして、 マーケットインへの発想転換を推進 富士ゼロックス情報システム株式会社 ビジネスプロセスマネジメント事業部 ERP ソリューション部 部長 崔 宰源(チェ ジェウォン)氏 富士ゼロックス情報システム株式会社 取締役 内田 直知氏

Upload: others

Post on 26-Mar-2020

6 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: 富士ゼロックス情報システム株式会社様 - intra-mart富士ゼロックス情報システム株式会社(以降、富士ゼロックス情報システム)は、 これまで人間系で行っていた、引合から受注に至る販売プロセスをシステム化す

富士ゼロックス情報システム株式会社(以降、富士ゼロックス情報システム)は、これまで人間系で行っていた、引合から受注に至る販売プロセスをシステム化する BPM(Business Process Management)システムを構築した。構築基盤として採用したのは、intra-mart for BPM だ。柔軟性の高い承認ワークフローを効果的に配置することで、BPM システムそのものの構造をシンプルにして、開発生産性・運用・保守性を高めることに成功。プロダクトアウトを脱却して、マーケットインへと発想・体制転換する一大改革の羅針盤としても、この BPMシステムを活用していく。

富士ゼロックス情報システム株式会社本 社:神奈川県横浜市西区みなとみらい 3 丁目 6 番 1 号

みなとみらいセンタービル設 立:1984 年 9 月 21 日資本金:1 億円(富士ゼロックス株式会社全額出資)従業員:430 名(2010 年 10 月現在)概 要:富士ゼロックス株式会社のソフトウェア開発子会社。

ドキュメント管理、オブジェクト指向、セキュリティ、ネットワーク基盤などの高度な技術力を主軸に、多種多様な業種・業態向けに多彩なソリューションを開発してきた実績を活かして、「お客様の戦略的ビジネス環境のデザイン」を目指す IT ソリューションプロバイダ。

URL:http://www.fxis.co.jp/

 分断していた人間系プロセスと システムプロセスをつなぐ

 「これまでは人間系の業務プロセスとシステムの動きが分断されていました、これをつなぐことで、人間系のプロセスを『見える化』し、改善していくために構築したのが BPMシステムです」と、富士ゼロックス情報システム株式会社 取締役の内田直知氏は語る。 同社では、1998 年に、BPR(ビジネスプロセス改革)を入念に行ったうえで SAP ERPを導入して、基幹系ではクリーンデータを一元的に把握できるしくみが整った。 「しかしビジネスは、確定した数値だけで動いていくものではありません。ERP にクリーンデータを登録するまでの前プロセス、つまり、商談にかかわるすべてのプロセスをモニタリングできるしくみを作る必要がありました」と内田氏は語る。

 今回開発されたシステムは、プロダクトアウトからマーケットインへ、企業全体の取り組み視線を根本的に変革していくための道具でもある。

 「ビジネススタイルの変化に対応する事は掛け声だけでは実現できません。お客様のニーズを事実として把握できるしくみを作るのが、マーケットインの第一歩なのです。いままで、受注という成果があがるより前に発生してはすぐに消えてしまっていた情報を逃がさずにキャッチし、分析して、そこにビジネスニーズがあるのならわれわれの動き方や体制を変えてお客様のさまざまな要求に対応していかなければなりません。お客様のニーズを把握するうえで、人間系プロセスをモニタリングできるシステムの構築が不可欠でした」と、ビジネスプロセスマネジメント事業部 ERP ソリューション部 部長の崔宰源(チェ ジェウォン)氏は熱を込めて語る。

 「日本企業の BPM」に適した機能を 網羅した intra-mart for BPM

 BPMの定石は「着眼大局、着手小局」である。つまり個々のプロセスの継続的な改善を行いながら最終的には全社全プロセスの全体最適を目指すものであり、富士ゼロックス情報システムがまず着手したのは、ビジネスプロセスマネジメント事業部における引合から受注に至る販売プロセスのシステム化である。 「BPM を成功させるには、改善効果を確認しながら適用範囲を拡大するスモールスタートが基本となりますので、最初に選ぶプロセスはすぐに効果が出るテーマを選ぶことが大切です。当社の場合は、BPR およびオブジェクト指向による業務プロセス分析を長年にわたって積み上げてきましたので、『受注前プロセス』こそが最大の改善ポイントだという絞り込みを迅速に行うことができました」と、

ビジネスプロセスマネジメント事業部チーフエンジニアの小松稔氏は語る。 BPM システムを構築する基盤として intra-mart を選んだのは、富士ゼロックス情報システムが求めた次のような要件をすべて満たしていたからである。 第 1 に、「BPM デザイナー」「BPM エンジン」

「BAM※」「ポータル」「サービス統合ツール」という、BPM システム構築に必要なコンポーネントがすべてそろっている。 第 2 に、世界標準の表記法である BPMN

(Business Process Modeling Notation)でビジネスプロセスをモデリングできる。 第 3 に、SAP ERP と親和性が高い。BAPIをはじめ、必要に応じてさまざまなインターフェースを駆使しながら、SAP のシステムの流れを業務の視点で串刺しにしたシステムを構築しやすい。 第 4 に、BPM に加えて、承認ワークフローの機能を備えている。 第 5 に、「組織」「役職」の概念を持っており、日本企業のやり方に合ったアクセス権限設定

富士ゼロックス情報システム株式会社様人間系プロセスとシステムプロセスをつなぐBPMシステムを構築。市場ニーズのいち早い把握・分析を可能にして、マーケットインへの発想転換を推進

富士ゼロックス情報システム株式会社ビジネスプロセスマネジメント事業部 ERP ソリューション部

部長崔 宰源(チェ ジェウォン)氏

富士ゼロックス情報システム株式会社取締役

内田 直知氏

Page 2: 富士ゼロックス情報システム株式会社様 - intra-mart富士ゼロックス情報システム株式会社(以降、富士ゼロックス情報システム)は、 これまで人間系で行っていた、引合から受注に至る販売プロセスをシステム化す

SOA・BPMアプリケーション

が柔軟にできる。 第 6 に、低価格である。導入・構築時の費用はもとより、多数の社員が利用するときのライセンス料の合計金額も格段に安価である。 第 7 に、intra-mart は開発プラットフォームであり、BPM に限定することなく拡張性・発展性が豊かである。 「特に重要なのが、日本企業の多数の利用で磨かれてきた柔軟性の高い承認ワークフローを備えていることです。さまざまな分岐や差し戻し対応などを承認ワークフローに任せることで、BPM そのもののデザインをシンプル化できるのです」と、ビジネスプロセ

スマネジメント事業部 ERP ソリューション部 チーフエンジニアの伊藤明宏氏。 「日本企業が、いままでシステム化していなかった人間系のプロセスをシステム化するうえで、役職ベースで動く承認ワークフローをスムーズに BPM に取り込めるということはきわめて重要です」と崔氏は強調する。

 BPM 基盤の構築から BAM 分析画面 の開発に至るまでの生産性が大幅に向上

 intra-martの承認ワークフローを効果的に活用しながら、営業、開発の部門の枠を越えた受注前プロセスの管理システムが出来上がった。 「プロセスの制御および SAP ERP との連携部分のほとんどがコーディング無し。たとえば『再見積』は、複数の分岐がループを描く複雑な業務プロセスですが、必要最低限のルールの設定で実現可能。BAM での顧客別集計、引合件数カウント、プロセスごとの時間測定なども、データ取得の設定やグラフ作成部分についてはノンプログラミングで実現できました」と小松氏は開発生産性の高さを指摘する。 「当社の BPM システムは、システム、サービス、ビジネスプロセス、ヒューマン・インターフェースという 4 階層構成にしていますが、ここまで論理的に深く追求しても、システム構築そのものはスムーズ。SAP ERP 上の複数モジュールをすべて Web サービス化してつないだ SOA ベースの堅牢な BPM システムを構築できました」と伊藤氏は補足する。 物理的な紙のドキュメントを使ったビジネスプロセス制御を実現できたのは、ドキュメントカンパニーを標榜してきた富士ゼロックスの関連会社ならではの快挙だ。デジタル複合機との連携ミドルウェアを intra-mart に組み込むことにより、これまで実現が困難であったシステム外の紙の流れとシステムの流れの統合を果たした。

 ビジネスチャンスの宝庫である 「失注」が見える化

 BPM システム構築により、ビジネスプロセスマネジメント事業部では、営業担当者が入力した情報をもとに原価計画担当者が引合の適否を検討したり、営業担当者が上長承認を得ながら見積書提出・注文書送付・受注登録などを行う受注前プロセスを、システム化することに成功した。 「業務処理そのものもスピードアップしますが、営業会議で KPI を分析して、次の営業分析タイミングを、半年に一度から四半期毎に短縮する予定です」と内田氏。 人間系プロセスとシステム系プロセスがつながったため、ビジネス変化へタイムリーに対応しながら、次の手を打っていけるのだ。 「受注につながらなかった『失注』が見えるようになったのも大きな成果です。失注というのは、実は、マーケットイン情報の宝庫。失注理由を分析して、われわれが何に選択と集中をすべきかを的確に経営判断していくことで、今後、お客様に対する価値提供の姿勢も変わっていくはず。業務プロセスも改善されますし、メンバーの意識も変わっていくでしょう」と内田氏は意欲的に語る。 今後は、受注から購買プロセス全体までへBPM システムのカバー領域を拡張していくとともに、経費精算や工数集計など、フロント系のシステムも intra-mart 基盤に載せ換えて柔軟に連携させていく計画だ。 「上長が外出中でも承認処理ができるよう に、スマートフォン対応も検討します」と崔氏。 intra-mart の柔軟な基盤上で、社員の動きをお客様視点で俯瞰できる環境を手に入れた富士ゼロックス情報システムは、さらなるプロセス改革にチャレンジを続けていく。

富士ゼロックス情報システム株式会社様人間系プロセスとシステムプロセスをつなぐBPMシステムを構築。市場ニーズのいち早い把握・分析を可能にして、マーケットインへの発想転換を推進

※ BAM:Business Activity Monitoring。ビジネスの実行状況や実績を計測・モニタリングすること

見積書

引合登録

原価計画登録 見積

見積承認

受注承認

見積顧客提示

注文書入手 受注

注文書Process Gatewayfor Apeos(PGA)

intra-martワークフロー

intra-mart BPM

スキャン印刷

BAM

SAP ERP(SDモジュールへ連携)(SDモジュールへ連携)(PSモジュールへ連携)

ドキュメントによるビジネスプロセス制御を実現

PGAが添付されているQRコードを読み、自動的に対応するビジネスプロセスを特定

ドキュメント管理

ドキュメント系の

プロセス

人間系の

プロセス

システム系の

プロセス

intra-mart

現在準備しているレポート・ 平均経過時間グラフ・ 経過時間のばらつきグラフ・ 受注率(失注率)メーター・ 案件辞退理由別件数推移グラフ・ 失注理由別件数推移グラフ など

受注伝票登録

見積伝票登録

計画原価登録

3つのプロセスをビジネスプロセス

で統合

3つのプロセスをビジネスプロセス

で統合

富士ゼロックス情報システム株式会社ビジネスプロセスマネジメント事業部 ERP ソリューション部

チーフエンジニア伊藤 明宏氏

富士ゼロックス情報システム株式会社ビジネスプロセスマネジメント事業部

チーフエンジニア小松 稔氏

受注前プロセスのシステム化に成功

受注前プロセスをシステム化。これまで分断されていたドキュメント系、人間系、システム系の3系統のプロセスを、ビジネスプロセスで統合したという大きな意義もある。※ PGA とは、印刷やスキャンのアクティビティを intra-mart とつなぐために、富士ゼロックス情報システムが開発したミドルウェア。