「コーヒーの森」とは・・・?‚³ーヒーの森だより6号...今回の「おたより」では、フィリピン・ベンケット州におけるコーヒーのアグロフォレストリー栽培による...

11
今回の「おたより」では、フィリピン・ベンケット州におけるコーヒーのアグロフォレストリー栽培による 災害に強いコミュニティ作りの2年目について進捗状況をお伝えします。 「 コ ー ヒ ー の 森 」 だ よ 第6号 2012 年 7 月 11 日発行 特定非営利活動法人 WE21 ジャパン 「コーヒーの森」とは・・・? ■事業概要:森林再生・災害防止と生活向上は、両者を同時に実現できなければ持続性が図るのが 困難です。2009 年 10 月に台風被害を受けたベンゲット州アンバサダー村コロス集 落において一般の樹種の間に換金作物(本活動ではコーヒー)を混栽する農法「アグ ロフォレストリー(森林栽培)」を用い、土地や生物の持続性・多様性を高めながら 森林再生と緑化を行なうとともに、現地の生活向上を図り、被災地の斜面地や水源に 植林を行なって、土砂崩れを防ぎ、水源を確保する活動を行なっています。 ■実施団体:WE21 ジャパン/コーディリエラ・グリーン・ネットワーク(CGN)(現地パートナー) ■実施地域:フィリピン・コルディレラ地方ベンゲット州 トゥブライ郡アンバサダー村コロス集落 ■実施期間:2010 年 10 月~2012 年 9 月(その後の継続も予定しています。) ■助成:(財)かながわ国際交流財団「かながわ民際協力基金」

Upload: others

Post on 09-Feb-2020

0 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: 「コーヒーの森」とは・・・?‚³ーヒーの森だより6号...今回の「おたより」では、フィリピン・ベンケット州におけるコーヒーのアグロフォレストリー栽培による

今回の「おたより」では、フィリピン・ベンケット州におけるコーヒーのアグロフォレストリー栽培による

災害に強いコミュニティ作りの2年目について進捗状況をお伝えします。

「 コ ー ヒ ー の 森 」 だ よ り

第 6号 2012年 7月 11日発行 特定非営利活動法人 WE21ジャパン

「コーヒーの森」とは・・・?

■事業概要:森林再生・災害防止と生活向上は、両者を同時に実現できなければ持続性が図るのが困難です。2009 年 10 月に台風被害を受けたベンゲット州アンバサダー村コロス集落において一般の樹種の間に換金作物(本活動ではコーヒー)を混栽する農法「アグロフォレストリー(森林栽培)」を用い、土地や生物の持続性・多様性を高めながら森林再生と緑化を行なうとともに、現地の生活向上を図り、被災地の斜面地や水源に植林を行なって、土砂崩れを防ぎ、水源を確保する活動を行なっています。

■実施団体:WE21ジャパン/コーディリエラ・グリーン・ネットワーク(CGN)(現地パートナー) ■実施地域:フィリピン・コルディレラ地方ベンゲット州 トゥブライ郡アンバサダー村コロス集落 ■実施期間:2010年 10月~2012年 9月(その後の継続も予定しています。) ■助成:(財)かながわ国際交流財団「かながわ民際協力基金」

Page 2: 「コーヒーの森」とは・・・?‚³ーヒーの森だより6号...今回の「おたより」では、フィリピン・ベンケット州におけるコーヒーのアグロフォレストリー栽培による

これまでに実施した活動

1)新たに 12 名が参加!広がるアグロフォレストリーモデル農場づくり

1 年目の参加者 10 名に新たに 12 名が加わりました。参加者選考の基準は以下のとおりです。

① 最低 5000 平方メートルの私有地をアグロフォレストリーモデル農場として利用することができ

ること。

② 最低 300 平方メートルの私有地を有機的な農業資材作り(堆肥、木酢)とその実践のための有

機農場として利用することができること。

③ コーディリエラ・グリーン・ネットワークによって実施される講習会やミーティングに参加す

ること。

④ アグロフォレストリーモデル農場にコーディリエラ・グリーン・ネットワークの指導に従い、

コーヒーとともにアルヌスやカリエンドラといった森林樹種を混栽すること。

⑤ 事業に関連したそのほかの活動にも積極的に参加すること

⑥ 新規の参加者として 1 年目から継続する参加者に承認を得られること。

選考の結果、以下の 12 名が新たに加わり、参加者の総数は 22 名となりました。

1. ジュリアンマリーフロレモン Julien Marie Floremon

2. オーガスタ ダリン Agusta Darines

3. べトリング バグトン Berting Bugtong

4. マーク セベロMark Severo

5. ロザリンダ アベレラ Rosalinda Abellera

6. アイリーン オダノス/ロイダ アグタス

7. ソフィア アニバン Sofia Aniban

8. マイマ バオンMyma Baon

9. タイナン ワンジ Taynan Wansi

10.フロレンス ナバス Florence Nabus

11.ロゼリーナ バカネス Rosenia Bacanes

12.ジョセリンオルチーノ Jocelyn Olchino

参加者 22 名が各 0.5ha をアグロフォレストリーモデル農場として植樹するので、事業 2 年目の植樹

エリアの総面積は 11ha となります。モデル農場候補地は事業担当の森林専門官と CGN スタッフが

訪問し、事業に適切であるかどうかを判断しました。実際の植樹作業は雨期開始(6 月)とともに

始まります。

CGN は参加者 22 名による Coroz Organic Growers Association(COGA)という団体を結成し、将来のコ

ーヒーの収穫時のマーケティングなどに備えることとしました。COGA を正式な団体として労働雇

用省(Department of Labor and Employment)に認可申請を行ったほか、トゥブライ町役場に有機農

業団体として登録をします。

Page 3: 「コーヒーの森」とは・・・?‚³ーヒーの森だより6号...今回の「おたより」では、フィリピン・ベンケット州におけるコーヒーのアグロフォレストリー栽培による

2)事業 1 年目のアグロフォレストリーモデル農場のメンテナンス

2011 年 11 月に事業 1 年目のモデル農場 7ha において、草刈りと施肥を行ないました。1 年目か

らの参加者の中にはすでに CGN の指導により堆肥作りをそれぞれの農場で開始している人もいて、

2012 年 4 月までにはすべての参加者が堆肥施設を完成させる予定です。

3)苗木場の施設追加と苗木育成

苗木場にて 2012 年 2 月までにアルヌス 2000 本、コーヒー4000 本、竹 320 本の計 6320 本の育苗

を開始しました。また、苗木の有機栽培のために、2011 年 11 月、木酢採取施設を設置しました。

施設はアジア学院(栃木県)で実践されているとてもシンプルな構造のもので、地域の資源を資材

として作ることができ、また資本のない参加者の誰もがそれぞれの農場で実践できるものです。

また、2011 年 12 月には 2 種の堆肥施設の設置を開始しました。一つはミミズ堆肥施設で、大き

な箱と小さな三つの箱から成っています。もう一つの堆肥施設はアグロフォレストリー農場で使う

ためのボカシ作りを目的とした簡易なプレスチックシートの屋根付きの施設です。(写真参照)

事業 1 年目で CGN の指導により育成した苗木は生育し、2011 年 12 月のクリスマス・パーティに

て参加者に管理の受け渡しを行いました。8000 本のコーヒーと 1200 本のアルヌス、10000 本のカ

リエンドラです。

崖状の斜面に植樹されたコーヒー

Page 4: 「コーヒーの森」とは・・・?‚³ーヒーの森だより6号...今回の「おたより」では、フィリピン・ベンケット州におけるコーヒーのアグロフォレストリー栽培による

設置した苗木場

コーヒーの苗木

Page 5: 「コーヒーの森」とは・・・?‚³ーヒーの森だより6号...今回の「おたより」では、フィリピン・ベンケット州におけるコーヒーのアグロフォレストリー栽培による

カリエンドラの苗木

アルノスの苗木

Page 6: 「コーヒーの森」とは・・・?‚³ーヒーの森だより6号...今回の「おたより」では、フィリピン・ベンケット州におけるコーヒーのアグロフォレストリー栽培による

農場と炭焼き釜(炭と木酢液を有機農業に使用)

炭焼き釜でできた炭

炭焼き釜の前に立つプロジェクト参加者

Page 7: 「コーヒーの森」とは・・・?‚³ーヒーの森だより6号...今回の「おたより」では、フィリピン・ベンケット州におけるコーヒーのアグロフォレストリー栽培による

村びとによる堆肥づくりの様子(草などを細かくしている)

農場の納屋 農場の水タンク(苗木場の水もここから供給)

給)

農場脇の堆肥置き場 ミミズ堆肥場

Page 8: 「コーヒーの森」とは・・・?‚³ーヒーの森だより6号...今回の「おたより」では、フィリピン・ベンケット州におけるコーヒーのアグロフォレストリー栽培による

4)講習会の開催

以下の講習会を 2012 年 3 月末までに開催しました。

① 持続可能な農業実践のための技術トレーニング講習会(2011 年 11 月 18 日)

② 苗木作りと農業における木酢液使用に関する講習会と近隣の木酢施設訪問(2011 年 12 月 17

日)

③ 農家の副収入源としての豆腐作りとおからを使った家畜の飼料作り講習会(2012 年 2 月 4

日)

④ コロス集落と隣のナルセブ集落の保育園児を対象とした環境教育ワークショップ(2012 年 3

月 7-8 日)

5)有機農場づくり

1 年目から講習会の内容に加えてきた有機農業の技術指導により、参加者はコーヒー栽培だけで

なく野菜にも有機栽培技術を生かしていきたいという希望を持ち始めました。事業ではアグロフォ

レストリーの技術指導と同時に有機農業指導を積極的に推し進めることとし、上記の参加者の選定

条件にあるようにすべての参加者が少なくとも 300 平方メートルの有機農場を始めることを条件と

しました。また、有機農業資材作りの簡易な施設をすべての参加者がそれぞれの農場に作ることを

推奨しました。3 月末までに 9 人の参加者が木酢施設を作り、3 人の参加者が堆肥場を併設した農

場でペッチャイ(葉菜の一種)、ナス、レタスなどの有機栽培を開始しました。

今後実施する活動

1)COGA の認証に向けての手続き継続(4 月中に完了予定)

2)アルヌスと竹の植樹(4 月&5 月)

3)参加者すべてが各々の有機農場にて野菜栽培を開始(4 月&5 月)

4)1 年目にアグロフォレストリーモデル農場に植樹したコーヒー苗木に対する施肥と草刈り(5 月)

5)新たなモデル農場のコーヒーの苗木植樹のための整地、草刈り、穴掘りなどの準備作業(4,5,6 月)

6)苗木の事業地への運搬(6,7 月)

7)モデル農場へのコーヒー、アルヌス、カリエンドラの植樹(7,8,9 月)

8)3 回の講習会開催(4 月,5 月,6 月)

当初の計画との差異とその理由

1)参加者の人数とエリア

10 名の予定から希望者が増えて 12 名となり、モデル農場のエリアも 10ha から 11ha に拡張しま

した。

Page 9: 「コーヒーの森」とは・・・?‚³ーヒーの森だより6号...今回の「おたより」では、フィリピン・ベンケット州におけるコーヒーのアグロフォレストリー栽培による

2)苗木場での育成中の苗木の樹種の変更

当初の計画ではカリエンドラの苗木を 1000 本育苗することになっていましたが、アルヌスの苗

木に変更しました。事業を担当している森林専門官の観察で、コロスの土壌ではアルノスの方が根

付き率が高いこと(1 年目に植えたカリエンドラの枯死率が高かった)、種子が入手しにくいこと、

カリエンドラは 1 年目に大量に 1 万本を育成しており十分な数であること、アルヌスは生育後、枝

などが木酢液の材料としても有効活用できることが理由です。

3)有機農業プログラムの追加

事業は当初はアグロフォレストリーに特化していましたが、コーヒー収穫までの 3-5 年の間の

収入源が大きな問題であることから有機農法による野菜栽培を参加者に対して指導することにしま

した。また、災害時に備えた副収入源として家畜飼育の指導も有効であると判断し、有機的な家畜

飼育の指導も取りいれていくことにしました。

4)講習会の回数とテーマの修正

上記3)を受けて講習会のテーマにも有機農業と家畜飼育に関連するテーマを組み込むことにし

ました。また、国際協力事業団(JICA)主催の幼児向け環境教育ファシリテイター養成講座にコー

ディリエラ地方から CGN スタッフを含む教育・環境関係者が参加する機会があり、その実践とし

てコロス集落とお隣のナルセブ集落の保育園児向けに予定にはなかった環境教育ワークショップを

実施しました。

現状での課題とその解決策

当事業の参加者は 2009 年 10 月の台風ぺペンの被災者ですが、ほとんどが家屋が全壊あるいは半

壊しています。また参加者の一部は災害後の政府機関の土壌調査により強制移住を命ぜられていま

す。政府主導の移住事業は災害から 2 年たった 2011 年になって、ようやく本格的に動いています。

この移住事業は政府が決めた移住地に移住を命じられた住民が、支給された建築資材(ブロックや

鉄棒、木材、セメント、屋根用のトタン板など)を使用してそれぞれ自分で建築するというもので

す。他の台風ぺペンの被災地の多くではすでに移住が完了している中で、コロス集落は移住プログ

ラムの実施が最も遅れている場所の一つだということで、トゥブライ自治体政府は 3 月末を期限と

して被災民に早急な建築を奨励しています。

労賃が支払われない中で、被災した住民たちは日銭を稼ぐための労働に従事しながら少しずつ建

築作業を続けてきており、3-5 年後の収穫ではじめて収入につながるという当事業のために時間を

割く余裕のない参加者が多くスケジュールは遅れ気味でした。しかし、自治体が定めた 3 月末の期

限までにほとんどが建築作業を終えており、今後は今までより多くの時間を当事業に割くことがで

きると思われます。

被災後にコロス集落に入り生計向上事業を行っていたいくつかの NGO はすでに撤退しており、

コーヒー収穫までの 3-5 年の間に参加者が収入を得ていくための手段が必要とされています。

Page 10: 「コーヒーの森」とは・・・?‚³ーヒーの森だより6号...今回の「おたより」では、フィリピン・ベンケット州におけるコーヒーのアグロフォレストリー栽培による

日々の生活に必要な収入を得るため、参加者を含むコロス集落住民の中には廃山となった鉱山から

流れ出ている砂金収集を再開する者が後を絶ちません。参加者のニーズに合った、短期で収入を得

られる有機農業分野の生計向上事業の紹介も本事業に含めていくことが必要と思われます。

当初予算との差異とその理由

まずは為替レートの変動により、予算時と現在では誤差が出てきています。

予算よりも大きめの金額で予算以上の支出を今までに行ったのは、苗木用ビニールポット、竹、木

酢液詩採取施設のドラム缶。予算より多少小さな支出で済みそうなのは、種代、ホース代。

収穫が始まると、こんな作業が開始されます!

コーヒーの実摘みの様子

コーヒーの実の

皮取りの機材

Page 11: 「コーヒーの森」とは・・・?‚³ーヒーの森だより6号...今回の「おたより」では、フィリピン・ベンケット州におけるコーヒーのアグロフォレストリー栽培による

コーヒーの身の皮取りの様子

(水につけておくプロセス)

皮取りの機材

コーヒーの実の

種皮取りの様子

コーヒー豆

特定非営利活動法人 WE21ジャパン

〒221-0052横浜市神奈川区栄町 11-5栄町第 2ビル 3階 TEL:045-440-0421 FAX:045-440-0440 E-mail:[email protected] URL: http://www.we21japan.org