日本消化器病学会 ibd evidence-based clinical …日本消化器病学会...

151
日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines for Inflammatory Bowel Disease IBD)2016 IBD 2016 2016

Upload: others

Post on 15-Apr-2020

1 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

日本消化器病学会炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン 2016

Evidence-based Clinical Practice Guidelines for Inflammatory Bowel Disease(IBD)2016

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 2: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

日本消化器病学会炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン作成・

評価委員会は,炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドラインの内容につい

ては責任を負うが,実際の臨床行為の結果については各担当医が負

うべきである.

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドラインの内容は,一般論として臨

床現場の意思決定を支援するものであり,医療訴訟等の資料となる

ものではない.

日本消化器病学会 2016 年 10 月 1 日

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 3: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 4: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— iv —

日本消化器病学会は,2005 年に当時の理事長であった跡見 裕先生の発議によって,Evidence-

Based Medicine(EBM)の手法に則ったガイドラインの作成を行うことを決定し,3年余をかけ,2009〜2010 年に消化器 6疾患のガイドライン(第一次ガイドライン)を完成・上梓した.6疾患とは,胃食道逆流症(GERD),消化性潰瘍,肝硬変,クローン病,胆石症,慢性膵炎であり,それまでガイドラインが作成されていない疾患で,日常臨床で診療する機会の多いものを重視し,財団評議員に行ったアンケート調査で多数意見となったものが選ばれた.2006 年の第 92 回日本消化器病学会総会の際に第 1回ガイドライン委員会が開催され,文献検索範囲,文献採用基準,エビデンスレベル,推奨グレードなど EBM 手法の統一性についての合意と,クリニカルクエスチョン(CQ)の設定など基本的な枠組みが合意され,作成作業が開始された.6疾患のガイドライン作成では,推奨の強さのグレード決定に Minds(Medical Information Network Dis-

tribution Service)システムを一部改変し,より臨床に則した日本消化器病学会独自の基準を用いた.また,ガイドライン作成における利益相反(Conflict of Interest:COI)が当時,社会的問題となっており,EBM 専門家から提案された基準に基づいてガイドライン委員の COI を公開した.菅野健太郎前理事長のリーダーシップのもとに学会をあげての事業として行われたガイドライン作成は先進的な取り組みであり,わが国の消化器診療の方向性を学会主導で示したものとして大きな価値があったと評価できる.日本消化器病学会は,その後,6疾患について「患者さんと家族のためのガイドブック」も編集・出版し,治療を受ける側の目線で解説書を作成することによって,一般市民がこれら消化器の代表的疾患への理解を深めるうえで役立ったと考えている.第一次ガイドライン作成を通じて,日本消化器病学会は消化器関連の Common Disease に関

するガイドラインの必要性と重要性の認識を強め,さらに整備する必要度の高い疾患について評議員にアンケートを行い,2011 年から機能性ディスペプシア(FD),過敏性腸症候群(IBS),大腸ポリープ,NAFLD/NASH の 4疾患についても,診療ガイドライン(第二次ガイドライン)の作成を開始した.一方では,これら 4疾患の診療ガイドラインの刊行が予定された 2014 年には,第一次ガイドラインも作成後 5年が経過するため,いわゆる Sunset Rule(日没ルール:作成から長期経過したガイドラインは妥当性が担保できないため,退場させる取り決め)に従い,先行 6疾患のガイドラインの改訂作業も併せて行うこととなった.2011 年 11 月 9日に 6疾患の第1回改訂委員会が開催され,改訂の基本方針が確認された.この際,クローン病については当初,厚生労働省の治療指針との兼ね合いからクローン病のみとした経緯があったが,改訂にあたっては潰瘍性大腸炎を含め炎症性腸疾患とすることが確認された.改訂版では第二次ガイドライン作成と同様,国際的主流となっている GRADE(The Grading of Recommendations

Assessment, Development and Evaluation)システムの考え方を取り入れて推奨の強さを決定することとした.このシステムは,単にエビデンスに基づいて推奨の強さを決めるのではなく,患者さんへの有益性,費用まで考慮し,たとえ比較対照試験であってもその内容を精査・吟味してエビデンスレベルを決定するなど,アウトカムにとって有用かどうかを重視する立場に立っており,患者さんの立場により則したガイドライン作成に有用と考えられた.また,完成後に

日本消化器病学会ガイドラインの刊行にあたって

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 5: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

日本消化器病学会ガイドラインの刊行にあたって

— v —

改訂版は Journal of Gastroenterology に掲載することが予定されており,世界的趨勢であるGRADE システムの考え方を取り入れることで国際的ガイドラインとしての位置づけを強化する狙いもあった.最新のエビデンスを網羅した改訂版は,初版に比べて内容的により充実し,記載の精度も高

まるものと期待している.最後に,ガイドライン委員会の前担当理事として多大なご尽力をいただいた木下芳一理事,

渡辺 守理事,ならびに多くの時間と労力を惜しまず改訂作業を遂行された作成委員会ならびに評価委員会の諸先生,刊行にあたり丁寧なご支援をいただいた南江堂出版部の皆様に心より御礼を申し上げたい.

2016 年 10 月

日本消化器病学会理事長

下瀬川 徹

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 6: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— vi —

委員長 三輪 洋人 兵庫医科大学内科学消化管科委員 荒川 哲男 大阪市立大学消化器内科学

上野 文昭 大船中央病院木下 芳一 島根大学第二内科西原 利治 高知大学消化器内科坂本 長逸 日本医科大学,医療法人社団行徳会下瀬川 徹 東北大学消化器病態学白鳥 敬子 日本膵臓病研究財団杉原 健一 光仁会第一病院田妻  進 広島大学総合内科・総合診療科田中 信治 広島大学内視鏡診療科坪内 博仁 鹿児島市立病院中山 健夫 京都大学健康情報学二村 雄次 愛知県がんセンター野口 善令 名古屋第二赤十字病院総合内科福井  博 奈良県立医科大学福土  審 東北大学大学院行動医学分野・東北大学病院心療内科本郷 道夫 公立黒川病院松井 敏幸 福岡大学筑紫病院臨床医学研究センター(消化器内科)森實 敏夫 日本医療機能評価機構山口直比古 聖隷佐倉市民病院図書室吉田 雅博 国際医療福祉大学化学療法研究所附属病院人工透析・一般外科芳野 純治 藤田保健衛生大学渡辺 純夫 順天堂大学消化器内科渡辺  守 東京医科歯科大学消化器内科

オブザーバー 菅野健太郎 自治医科大学

統括委員会一覧

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 7: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— vii —

協力学会:日本消化管学会,日本大腸肛門病学会協力機関:厚生労働科学研究費補助金難治性疾患克服研究事業「難治性炎症性腸管障害に関す

る調査研究」班

■ 作成委員会委員長 上野 文昭 大船中央病院副委員長 渡邉 聡明 東京大学医学部腫瘍外科・血管外科委員 井上  詠 慶應義塾大学病院予防医療センター

小俣富美雄 聖路加国際病院消化器内科加藤  順 和歌山県立医科大学第二内科国崎 玲子 横浜市立大学市民総合医療センター炎症性腸疾患(IBD)センター小金井一隆 横浜市立市民病院外科小林 清典 北里大学医学部新世紀医療開発センター小林 健二 亀田京橋クリニック消化器内科猿田 雅之 東京慈恵会医科大学消化器・肝臓内科田中 敏明 東京大学医学部腫瘍外科仲瀬 裕志 札幌医科大学消化器内科学講座長堀 正和 東京医科歯科大学消化器内科平井 郁仁 福岡大学筑紫病院消化器内科本谷  聡 JA 北海道厚生連札幌厚生病院 IBD センター

オブザーバー 鈴木 康夫 東邦大学医療センター佐倉病院消化器内科

■ 評価委員会委員長 松井 敏幸 福岡大学筑紫病院臨床医学研究センター(消化器内科)副委員長 金井 隆典 慶應義塾大学消化器内科委員 高橋 賢一 東北労災病院大腸肛門外科

野口 善令 名古屋第二赤十字病院総合内科渡辺 憲治 大阪市立総合医療センター消化器内科

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン委員会

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 8: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— viii —

1.改訂の経緯と目的潰瘍性大腸炎診療ガイドラインの初版として,厚生労働省難治性炎症性腸管障害に関する調

査研究班のプロジェクトグループにより開発された「エビデンスとコンセンサスを統合した潰瘍性大腸炎の診療ガイドライン」が 2006 年に公開された.続いて同研究班によりクローン病診療ガイドラインの開発が予定された時期に,日本消化器病学会により IBD を含む 6疾患の診療ガイドライン開発計画が立ち上がり,厚労省研究班は本学会と歩調を合わせ,共同開発することとなった.ただし,潰瘍性大腸炎ついてはその公表から年月が浅く,“double standard”を避けるため,クローン病のみを対象とした診療ガイドラインが開発され,2010 年に公表された.

その間 2009 年には,潰瘍性大腸炎診療ガイドライン初版の内容を生かしつつ新しいエビデンスの集積や新たに承認された治療法などを追加する改訂計画が,厚労省研究班において進行中であった.しかしながら日本消化器病学会により消化器 6疾患の診療ガイドライン改訂が計画され,2011 年には統一化された作成方法も定められたため,クローン病診療ガイドラインの改訂に合わせて潰瘍性大腸炎も含めた IBD 診療ガイドラインの最新版を作成することとなった.やや困難であった点は,潰瘍性大腸炎診療ガイドライン初版は,クローン病とは異なる作成手法を用いていたことである.したがって本 IBD 診療ガイドラインは,改訂というよりも新規作成に近く,予想を超えた時間と労力を必要とした.開発方法が異なるため,初版と改訂版の相違点は少なくない.要点を表1にまとめた.診療ガイドラインの目的は,言うまでもなく当該疾患の診療にかかわる医療提供者および患

者に,適正な診療指標を提供し,患者アウトカムを改善することにある.本診療ガイドラインでは,利用対象として IBD 患者を診る機会のある消化器医を中心とした医療提供者と想定して開発された.

2.改訂の手順1)診療ガイドライン改訂委員会の設立2011 年 7 月に日本消化器病学会の第 1回統括委員会が開催され,新たな 4疾患のガイドライ

ン作成と先行 6疾患の改訂が行われることが決定された.これを受け 2011 年 11 月に先行 6疾

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン作成の手順

表1 初版と改訂版の相違点初版 改訂版

対象疾患 CとCD(それぞれ別個) IBD(UCと CDを含む)開発方法

CQ(CD)CQ

GRADEシステムの概念を取り入れた,他の消化器疾患と共通の作成方法

推奨の対象推奨の決定 評価によるコンセン

サスを統合Delphi 評価

その他,診療領域,利用対象,使用目的,診療指標の範囲,診療介入法,アウトカム評価などについては同一

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 9: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン作成の手順

— ix —

患の第 1回改訂委員会が開催され,改訂の基本方針が確認された.また初版作成時の作成委員長および評価委員長は原則留任としたが,改訂委員会および評価委員会の構成員には次回改訂を考慮して一部若手を採用することが決定された.この決定により,新しい作成委員会と評価委員会が組織された.2)基本方針新規 4疾患および改訂 6疾患と共通の作成基準を原則的に用いた.すなわち海外の多くの診

療ガイドラインで用いられるようになった GRADE システムの基本概念をできるだけ取り入れ,①システマティックレビューによるエビデンス総体を重視した診療指標の作成,②エビデンスレベルと必ずしも相関しない推奨度の決定を基本方針とした.

3)作成方法�CQ は全面的に見直された.UC 診療ガイドライン初版は CQ 形式を取っておらず,また 2

疾患併合による肥大化に対処する必要があった.1.IBD の臨床像,2.診断,3.治療総論,4.IBD に対する治療介入法,5.潰瘍性大腸炎の治療,6.クローン病の治療,7.消化管外合併症,8.癌サーベイランス,9.特殊状況の IBD,の 9カテゴリーを構成し,計 59 の CQ を抽出した.

�各 CQ に対し,ステートメント(推奨の強さ,エビデンスレベル),解説,文献を順に記載した.�診療行為の保険適用の有無については解説に記載した.�エビデンス収集には,英文論文は MEDLINE,Cochrane Library を用い,日本語論文には

医学中央雑誌を用いた.各 CQ に対し 1983 年〜2012 年 6 月を文献検索期間とした.しかし第 1次検索が終了した時点の 2013 年 10 月のガイドライン統括委員会において,委託業者との契約解消が報告されたため,2次検索と論文の収集はすべて個々の作成委員に委ねられることとなった.また上記期間以外の論文検索も作成委員により行われた.

�論文のエビデンスレベルは,研究デザインにより high/moderate/low/very low の 4段階に初期設定され,研究方法の吟味によりバイアスリスクを評価し,必要な下方修正がなされた(上方修正されたものはなかった).最終的なエビデンスの質を A,B,C,D の 4段階で表した.GRADE システムの骨子ともいえる複数の論文の質的・量的合成は実際上困難で,代わりに既存のメタアナリシスを重視した.なお,最近では観察研究を量的に合成したメタアナリシスが決して少なくない.これらは介入研究のメタアナリシスとはエビデンスの質が当初から異なるため,引用文献には「メタ・観察」と付記して区別した.

�推奨の有無と強さの決定は,診療行為の介入に関するステートメントのみを対象とした.ステートメントの文言の適切性を 13 名の作成委員が独立して評価した.評価は 9段階で(9=最も適切,1=最も不適切),13 名の評価の中央値が 9または 8の場合を強い推奨(推奨する),7の場合を弱い推奨(提案する)とした(Delphi 評価).結果として全ステートメントで推奨合意(中央値 7以上)が得られたが,一部のステートメントで評価のばらつきがあり,再評価による合意形成を必要とした.

�作成委員会案を評価委員会に提出し,評価コメントを集約し担当作成委員にフィードバックし,必要な修正を行った.この過程をもう一度繰り返し,最終案が策定された.

�最終案は 2016 年 5 月 13 日〜27 日まで,日本消化器病学会のホームページに掲載されパブリックコメントを募集した.また最終案は厚労省研究班の IBD を専門とする医師に配信され意見を募った後,2016 年 7 月の研究班総会で報告され,質疑応答が行われた.日本消化器病学会員によるパブリックコメントと厚労省研究班員の意見を反映した修正が行われ,

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 10: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— x —

最終的に「炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン 2016」が策定された.4)厚労省研究班の協力潰瘍性大腸炎診療ガイドライン初版は厚労省研究班のプロジェクトグループにより開発され,

クローン病診療ガイドライン初版も同班の協力のもとに開発された.今回も厚労省研究班の協力を必要とした理由は,“double standard”を避けるためわが国唯一の診療ガイドラインを公表すべきと考えたこと,そして研究班より毎年公開される診療指針との整合性を図ることが必要であったことである.さらに日本の IBD 専門医のほとんどすべてが参加する研究班における意見交換や評価が,内容の妥当性を担保するうえで望ましいと考えられた.

3.使用法本ガイドラインは,IBD の疾患概念,診断,治療,経過観察などに関する標準的な内容を記

載し,臨床現場での意思決定を支援するものである.日本消化器病学会炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン作成・評価委員会のコンセンサスに基づいて作成し,記述内容に関しては責任を負うが,個々の治療結果についての責任は治療担当医に帰属すべきもので,日本消化器病学会および本ガイドライン作成・評価委員会は責任を負わない.また,本ガイドラインの記載内容は,医療訴訟などの法的根拠として用いられるものではない.

4.診療アルゴリズムの構成本ガイドラインでは,以下の診療アルゴリズムをフローチャートで示した.図は 9点となり,

煩雑との印象を持たれるかもしれないが,病態ごとに治療選択が異なる IBD では,最大限簡素化しているつもりである.�潰瘍性大腸炎の診断的アプローチ(図 1)�軽症〜中等症の活動期遠位潰瘍性大腸炎に対する寛解導入治療(図 2)�軽症〜中等症の活動期広範囲(左側を含む)潰瘍性大腸炎に対する寛解導入治療(図 3)�重症の潰瘍性大腸炎に対する治療(図 4)�寛解期の潰瘍性大腸炎に対する維持治療(図 5)�クローン病の診断的アプローチ(図 6)�活動期のクローン病に対する寛解導入治療(図 7)�クローン病の消化管合併症に対する治療(図 8)�寛解期のクローン病に対する維持治療(図 9)

5.今後の展望日本での IBD 診療の動向は海外からも注目されている.できるだけ早い時期に英語版を作成

し,日本における診療を広く海外に発信するため,学会誌等で公表する準備が進行中である.内外で現在開発中の IBD 治療薬は数多い.新たなエビデンスの蓄積や,新たな治療薬の承認

により,IBD の治療体系は今後数年で大きく変わる可能性が予測できる.4〜5年をめどに改訂が必要となることと思われる.

2016 年 10 月

日本消化器病学会炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン作成委員長

上野文昭

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 11: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— xi —

1.エビデンス収集初版で行われた系統的検索によって得られた論文に加え,今回新たに以下の作業を行ってエ

ビデンスを収集した.それぞれのクリニカルクエスチョン(CQ)からキーワードを抽出し,学術論文を収集した.

データベースは,英文論文は MEDLINE,Cochrane Library を用いて,日本語論文は医学中央雑誌を用いた.新規 CQ については 1983 年〜2012 年 6 月末,変更 CQ についても同期間を文献検索の対象期間とし,初版と同じ CQ については 2008 年〜2012 年 6 月末を文献検索の対象期間とした.また,2012 年 7 月以降 2015 年 3 月までの重要かつ新しいエビデンスについては,検索期間外論文として文献に掲載した.各キーワードおよび検索式は日本消化器病学会ホームページに掲載する予定である.収集した論文のうち,ヒトに対して行われた臨床研究を採用し,動物実験や遺伝子研究に関

する論文は除外した.患者データに基づかない専門家個人の意見は参考にしたが,エビデンスとしては用いなかった.

2.エビデンス総体の評価方法1)各論文の評価:構造化抄録の作成各論文に対して,研究デザイン 1)(表1)を含め,論文情報を要約した構造化抄録を作成した.

さらに RCT や観察研究に対して,Cochrane Handbook 2)や Minds 診療ガイドライン作成の手引き 1)のチェックリストを参考にしてバイアスのリスクを判定した(表2).総体としてのエビデンス評価は,GRADE(The Grading of Recommendations Assessment, Development and

Evaluation)システム 3〜22)の考え方を参考にして評価し,CQ 各項目に対する総体としてのエビデンスの質を決定し表記した(表3).

2)アウトカムごと,研究デザインごとの蓄積された複数論文の総合評価(1)初期評価:各研究デザイン群の評価

本ガイドライン作成方法

表 1 研究デザイン各文献へは下記9種類の「研究デザイン」を付記した. (1)メタ (システマティックレビュー /RCTのメタアナリシス) (2)ランダム (ランダム化比較試験) (3)非ランダム (非ランダム化比較試験) (4)コホート (分析疫学的研究(コホート研究)) (5)ケースコントロール (分析疫学的研究(症例対照研究)) (6)横断 (分析疫学的研究(横断研究)) (7)ケースシリーズ (記述研究(症例報告やケース・シリーズ)) (8)ガイドライン (診療ガイドライン) (9)(記載なし) (患者データに基づかない,専門委員会や専門家個人の意見は, 参考にしたが,エビデンスとしては用いないこととした)

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 12: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— xii —

�メタ群,ランダム群=「初期評価 A」�非ランダム群,コホート群,ケースコントロール群,横断群=「初期評価 C」�ケースシリーズ群=「初期評価 D」

(2)エビデンスレベルを下げる要因の有無の評価�研究の質にバイアスリスクがある�結果に非一貫性がある�エビデンスの非直接性がある�データが不精確である�出版バイアスの可能性が高い

(3)エビデンスレベルを上げる要因の有無の評価�大きな効果があり,交絡因子がない�用量–反応勾配がある�可能性のある交絡因子が,真の効果をより弱めている

(4)総合評価:最終的なエビデンスの質「A,B,C,D」を評価判定した.

表 2 バイアスリスク評価項目

選択バイアス

(1)ランダム系列生成詳細に記載されている

か(2)コンシールメント

組み入れる患者の隠蔽化がなされているか

実行バイアス (3)盲検化

検出バイアス (4)盲検化

症例減少バイアス

(5)ITT解析ITT 解析の原則を掲げて,追跡からの脱落者に対してその原則を遵守しているか

(6)アウトカム報告バイアス

 (解析における採用および除外データを含めて)(7)その他のバイアス

告・研究計画書に記載されているにもかかわらず,報告されていないアウトカムがないか

表3 エビデンスの質A:質の高いエビデンス(High)   真の効果がその効果推定値に近似していると確信できる.B:中程度の質のエビデンス(Moderate)   効果の推定値が中程度信頼できる.   真の効果は,効果の効果推定値におおよそ近いが,それが実質的に異なる可能性もある.C:質の低いエビデンス(Low)   効果推定値に対する信頼は限定的である.   真の効果は,効果の推定値と,実質的に異なるかもしれない.D:非常に質の低いエビデンス(Very Low)   効果推定値がほとんど信頼できない.   真の効果は,効果の推定値と実質的におおよそ異なりそうである.

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 13: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

本ガイドライン作成方法

— xiii —

3)エビデンスの質の定義方法エビデンスレベルは海外と日本で別の記載とせずに 1つとした.またエビデンスは複数文献

を統合・作成した統合レベル(body of evidence)とし,表3の A〜D で表記した.4)メタアナリシスシステマティックレビューを行い,必要に応じてメタアナリシスを引用し,本文中に記載し

た.

また,1つ 1つのエビデンスに「保険適用あり」の記載はせず,保険適用不可の場合に,解説の中で明記した.

3.推奨の強さの決定以上の作業によって得られた結果をもとに,治療の推奨文章の案を作成提示した.次に推奨

の強さを決めるために作成委員によるコンセンサス形成を図った.推奨の強さは,①エビデンスの確かさ,②患者の希望,③益と害,④コスト評価,の 4項目

を評価項目とした.コンセンサス形成方法は Delphi 法を用い,13 名の作成委員がステートメントごとに 9段階の尺度(1=きわめて不適切,9=きわめて適切)によりステートメントの適切性を評価し,その中央値を算出して表4に示す推奨の強さを決定した.1回目で中央値が 6以下の場合は,1回目の中央値と評価の幅を提示したうえで,再評価を行った.推奨の強さは「1:強い推奨」,「2:弱い推奨」の 2通りであるが,「強く推奨する」や「弱く

推奨する」という文言は馴染まないため,下記のとおり表記した.また,「Delphi 中央値」は推奨の強さの下段に括弧書きで記載した.推奨の強さを決定できなかった場合や,疫学・病態などの,CQ およびステートメント内容が推奨文章でない場合は,推奨の強さを「なし」と記載した.

4.本ガイドラインの対象1)利用対象:一般臨床医2)診療対象:成人の患者を対象とした.小児は対象外とした.

5.改訂について本ガイドラインは改訂第 2版であり,今後も日本消化器病学会ガイドライン委員会を中心と

して継続的な改訂を予定している.

表 4 推奨の強さ推奨度 Delphi 中央値

1(強い推奨) 8~9“ 実施する ”ことを推奨する“実施しない ”ことを推奨する

2(弱い推奨) 7“ 実施する ”ことを提案する“実施しない ”ことを提案する

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 14: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— xiv —

6.作成費用について本ガイドラインの作成はすべて日本消化器病学会が費用を負担しており,他企業からの資金

提供はない.

7.利益相反について1)日本消化器病学会ガイドライン委員会では,ガイドライン統括委員・各ガイドライン作

成・評価委員と企業との経済的な関係につき,各委員から利益相反状況の申告を得た(詳細は「利益相反に関して」に記す).

2)本ガイドラインでは,利益相反への対応として,協力学会の参加によって意見の偏りを防ぎ,さらに委員による投票によって公平性を担保するように努めた.また,出版前のパブリックコメントを学会員から受け付けることで幅広い意見を収集した.

8.ガイドライン普及と活用促進のための工夫1)フローチャートを提示して,利用者の利便性を高めた.2)書籍として出版するとともに,インターネット掲載を行う予定である.

・日本消化器病学会ホームページ・日本医療機能評価機構 EBM 医療情報事業(Minds)ホームページ

■引用文献1) 福井次矢,山口直人(監修).Minds 診療ガイドライン作成の手引き 2014,医学書院,東京,20142) Higgins JPT, Green S (eds). Cochrane Handbook for Systematic Reviews of Interventions version 5.1.0:

The Cochrane Collaboration http://handbook.cochrane.org/(updated March 2011)[最終アクセス 2015年 3 月 11 日]

3) 相原守夫,三原華子,村山隆之,相原智之,福田眞作.診療ガイドラインのための GRADE システム,凸版メディア,弘前,2010

4) The GRADE* working group. Grading quality of evidence and strength of recommendations. BMJ 2004;

328: 1490-1494 (printed, abridged version)

5) Guyatt GH, Oxman AD, Vist G, et al; GRADE Working Group. Rating quality of evidence and strength of

recommendations GRADE: an emerging consensus on rating quality of evidence and strength of recom-

mendations. BMJ 2008; 336: 924-9266) Guyatt GH, Oxman AD, Kunz R, et al; GRADE Working Group. Rating quality of evidence and strength

of recommendations: What is "quality of evidence" and why is it important to clinicians? BMJ 2008; 336:

995-9987) Schünemann HJ, Oxman AD, Brozek J, et al; GRADE Working Group. Grading quality of evidence and

strength of recommendations for diagnostic tests and strategies. BMJ 2008; 336: 1106-11108) Guyatt GH, Oxman AD, Kunz R, et al; GRADE working group .Rating quality of evidence and strength of

recommendations: incorporating considerations of resources use into grading recommendations. BMJ

2008; 336: 1170-11739) Guyatt GH, Oxman AD, Kunz R, et al; GRADE Working Group. Rating quality of evidence and strength

of recommendations: going from evidence to recommendations. BMJ 2008; 336: 1049-105110) Jaeschke R, Guyatt GH, Dellinger P, et al; GRADE working group. Use of GRADE grid to reach decisions

on clinical practice guidelines when consensus is elusive. BMJ 2008; 337: a74411) Guyatt G, Oxman AD, Akl E, et al. GRADE guidelines 1. Introduction-GRADE evidence profiles and sum-

mary of findings tables. J Clin Epidemiol 2011; 64: 383-39412) Guyatt GH, Oxman AD, Kunz R, et al. GRADE guidelines 2. Framing the question and deciding on impor-

tant outcomes.J Clin Epidemiol 2011; 64: 295-40013) Balshem H, Helfand M, Schunemann HJ, et al. GRADE guidelines 3: rating the quality of evidence. J Clin

Epidemiol 2011; 64: 401-40614) Guyatt GH, Oxman AD, Vist G, et al. GRADE guidelines 4: rating the quality of evidence - study limita-

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 15: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— xv —

本ガイドライン作成方法

tion (risk of bias). J Clin Epidemiol 2011; 64: 407-41515) Guyatt GH, Oxman AD, Montori V, et al. GRADE guidelines 5: rating the quality of evidence - publication

bias. J Clin Epidemiol 2011; 64: 1277-128216) Guyatt G, Oxman AD, Kunz R, et al. GRADE guidelines 6. Rating the quality of evidence - imprecision. J

Clin Epidemiol 2011; 64: 1283-129317) Guyatt GH, Oxman AD, Kunz R, et al; The GRADE Working Group. GRADE guidelines: 7. Rating the

quality of evidence - inconsistency. J Clin Epidemiol 2011; 64: 1294-130218) Guyatt GH, Oxman AD, Kunz R, et al; The GRADE Working Group. GRADE guidelines: 8. Rating the

quality of evidence - indirectness. J Clin Epidemiol 2011; 64: 1303-131019) Guyatt GH, Oxman AD, Sultan S, et al; The GRADE Working Group. GRADE guidelines: 9. Rating up the

quality of evidence. J Clin Epidemiol 2011; 64: 1311-131620) Brunetti M, Shemilt I, et al; The GRADE Working. GRADE guidelines: 10. Considering resource use and

rating the quality of economic evidence. J Clin Epidemiol 2013; 66: 140-15021) Guyatt G, Oxman AD, Sultan S, et al. GRADE guidelines: 11. Making an overall rating of confidence in

effect estimates for a single outcome and for all outcomes. J Clin Epidemiol 2013; 66: 151-15722) Guyatt GH, Oxman AD, Santesso N, et al. GRADE guidelines 12. Preparing Summary of Findings tables-

binary outcomes. J Clin Epidemiol 2013; 66: 158-172

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 16: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— xvi —

日本消化器病学会ガイドライン委員会では,ガイドライン統括委員と企業との経済的な関係につき,下記の基準で,各委員から利益相反状況の申告を得た.炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン作成・評価委員には診療ガイドライン対象疾患に関連する企業との経済的な関係

につき,下記の基準で,各委員から利益相反状況の申告を得た.申告された企業名を下記に示す(対象期間は 2011 年 1 月 1日から 2014 年 12 月 31 日).企業名は 2016 年 9 月現在の

名称とした.非営利団体は含まれない.

1.委員または委員の配偶者,一親等内の親族,または収入・財産を共有する者が個人として何らかの報酬を得た企業・団体役員・顧問職(100 万円以上),株(100 万円以上または当該株式の 5%以上保有),特許権使用料(100 万円以上)

2.委員が個人として何らかの報酬を得た企業・団体講演料(100 万円以上),原稿料(100 万円以上),その他の報酬(5万円以上)

3.委員の所属部門と産学連携を行っている企業・団体研究費(200 万円以上),寄付金(200 万円以上),寄付講座

※統括委員会においては日本消化器病学会診療ガイドラインに関係した企業・団体,作成・評価委員においては診療ガイドライン対象疾患に関係した企業・団体の申告を求めた

統括委員および作成・評価委員はすべて,診療ガイドラインの内容と作成法について,医療・医学の専門家として科学的・医学的な公正さを保証し,患者のアウトカム,Quality of life の向上を第一として作業を行った.利益相反の扱いは,国内外で議論が進行中であり,今後,適宜,方針・様式を見直すものである.

表 1 統括委員と企業との経済的な関係(五十音順)

1.エーザイ株式会社,大塚製薬株式会社2.アステラス製薬株式会社,アストラゼネカ株式会社,アッヴィ合同会社,アボットジャパン株式会社,EA ファー

マ株式会社,株式会社医学書院,エーザイ株式会社,MSD 株式会社,大塚製薬株式会社,オリンパスメディカルシステムズ株式会社,杏林製薬株式会社,ゼリア新薬工業株式会社,第一三共株式会社,大日本住友製薬株式会社,大鵬薬品工業株式会社,武田薬品工業株式会社,田辺三菱製薬株式会社,中外製薬株式会社,ファイザー株式会社

3.旭化成メディカル株式会社,あすか製薬株式会社,アステラス製薬株式会社,アストラゼネカ株式会社,アッヴィ合同会社,アボットジャパン株式会社,EA ファーマ株式会社,エーザイ株式会社,MSD 株式会社,大塚製薬株式会社,小野薬品工業株式会社,花王株式会社,株式会社カン研究所,杏林製薬株式会社,協和発酵キリン株式会社,グラクソ・スミスクライン株式会社,株式会社 JIMRO,株式会社ジーンケア研究所,ゼリア新薬工業株式会社,センチュリーメディカル株式会社,第一三共株式会社,大日本住友製薬株式会社,大鵬薬品工業株式会社,武田薬品工業株式会社,田辺三菱製薬株式会社,中外製薬株式会社,株式会社ツムラ,東レ株式会社,ファイザー株式会社,ブリストル・マイヤーズスクイブ株式会社,株式会社ミノファーゲン製薬,持田製薬株式会社,株式会社ヤクルト本社,ユーシービージャパン株式会社

表 2 作成・評価委員と企業との経済的な関係(五十音順)

1.なし2.アッヴィ合同会社,EA ファーマ株式会社,エーザイ株式会社,株式会社医学書院,株式会社ヤクルト本社,田辺三菱製薬株式会社

3.旭化成メディカル株式会社,アステラス製薬株式会社,アストラゼネカ株式会社,アッヴィ合同会社,EA ファーマ株式会社,エーザイ株式会社,エーディア株式会社,大塚製薬株式会社,杏林製薬株式会社,グラクソ・スミスクライン株式会社,株式会社 JIMRO,ゼリア新薬工業株式会社,第一三共株式会社,大鵬薬品工業株式会社,武田薬品工業株式会社,田辺三菱製薬株式会社,中外製薬株式会社,ビオフェルミン製薬株式会社,ファイザー株式会社,ブリストル・マイヤーズスクイブ株式会社,メルクセローノ株式会社,持田製薬株式会社,株式会社ヤクルト本社,ヤンセンファーマ株式会社

利益相反に関して

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 17: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— xvii —

第1章 IBDの臨床像

第2章 診断(1)内視鏡(組織採取を含む)(2)画像検査

第3章 治療総論

第4章 IBDに対する治療介入法

第5章 潰瘍性大腸炎の治療(1)軽症〜中等症の活動期遠位大腸炎(2)軽症〜中等症の活動期広範囲大腸炎(3)重症の活動期潰瘍性大腸炎(4)寛解期の維持治療(5)外科的治療

第6章 クローン病の治療(1)軽症〜中等症の活動期(2)中等症〜重症の活動期(3)重症〜劇症の活動期(4)肛門周囲病変(5)消化管合併症(瘻孔,狭窄,出血,膿瘍)(6)その他の消化管病変(7)寛解期の維持治療(8)外科的治療

第7章 消化管外合併症

第8章 癌サーベイランス

第9章 特殊状況の IBD

本ガイドラインの構成

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 18: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— xviii —

フローチャート

病歴①:主症状持続性・反復性の血性下痢・粘血便

大腸内視鏡検査(+生検組織検査)

病態把握と鑑別診断CBC,CRPを含む一般血液検査便の細菌学的・寄生虫学的検査X線,US,CTなどの画像検査

病歴②:最近の海外渡航歴,服薬,喫煙,家族歴などを聴取

身体所見:発熱,貧血,体重減少の徴候,腹部圧痛,直腸診

病変範囲「直腸炎型」,「遠位大腸炎型」,「左側大腸炎型」,「全大腸炎型」

重症度「軽症」,「中等症」,「重症」,「劇症」

他疾患特に感染性腸炎

潰瘍性大腸炎

【フローチャート1:潰瘍性大腸炎の診断的アプローチ】

※各フローチャート中の略語については,p.xxviii「略語一覧」を参照

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 19: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— xix —

フローチャート

活動期遠位大腸炎

5-ASA注腸療法(第一選択)

経口+注腸5-ASA併用(ステロイド注腸)

経口PSL 30~40mg/ 日

ステロイド抵抗例・離脱困難例

抗TNF製剤

タクロリムス

経口5-ASA

血球成分除去療法

※適切な内科的治療を行っても効果が不十分で,日常生活が 障害されるような例では外科的治療も考慮する

免疫調節薬(AZA・6-MP)

活動期直腸炎

5-ASA坐剤

寛解維持治療に移行

単独 or 併用

改善なし

改善なし

改善なし

改善 or 寛解

【フローチャート2:軽症〜中等症の活動期遠位潰瘍性大腸炎に対する寛解導入治療】

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 20: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— xx —

広範囲大腸炎

経口5-ASA製剤

改善なし or 迅速な治療必要

経口PSL 30~40mg/ 日

ステロイド抵抗例・離脱困難例

抗TNF製剤

タクロリムス

左側大腸炎

5-ASA注腸

血球成分除去療法

血球成分除去療法

免疫調節薬(AZA・6-MP)

改善 or 寛解

寛解維持治療に移行

ステロイド不適応

単独or併用

※適切な内科的治療を行っても 効果が不十分で,日常生活が 障害されるような例では外科 的治療も考慮する

【フローチャート3:軽症〜中等症の活動期広範囲(左側を含む)潰瘍性大腸炎に対する寛解導入治療】

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 21: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— xxi —

フローチャート

重症潰瘍性大腸炎

積極的な経静脈ステロイド治療PSL換算1~1.5mg/kg/ 日

大腸穿孔,大量出血中毒性巨大結腸症

緊急外科手術

外科的治療

改善なし

タクロリムス(シクロスポリン)

抗TNF製剤

血球成分除去療法

改善なし 改善あり

寛解維持治療に移行

【フローチャート4:重症の潰瘍性大腸炎に対する治療】

直腸炎・遠位大腸炎 広範囲大腸炎

経口5-ASA局所5-ASA

PSL依存・離脱困難例

抗TNF製剤による寛解例

AZA・6-MPによる寛解維持治療 再燃

寛解導入治療

単独or併用

抗TNF製剤継続投与

【フローチャート5:寛解期の潰瘍性大腸炎に対する維持治療】

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 22: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— xxii —

病歴慢性の腹痛,下痢,血便,発熱,体重減少,肛門病変(特に若年者)

大腸内視鏡検査+生検(終末回腸の観察を含む)

病態把握と鑑別診断:①一般検査CBC,CRP,アルブミンなどの血液検査

便の細菌学的・寄生虫学的検査

他疾患:潰瘍性大腸炎,急性虫垂炎,大腸憩室炎,腸結核,腸管ベーチェット病

など

クローン病

身体所見腹部圧痛,腫瘤触知,肛門病変

病態把握と鑑別診断:②画像検査単純X線,US,CT,MRI,造影X線CT/MR enterography,EGD小腸内視鏡,カプセル内視鏡

病変部位「小腸型」,「大腸型」,「小腸大腸型」

疾患パターン「炎症」,「瘻孔形成」,「狭窄」

重症度「軽症」,「中等症」,「重症」

【フローチャート6:クローン病の診断的アプローチ】

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 23: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— xxiii —

フローチャート

活動期クローン病

軽症~中等症

経口ステロイド

経腸栄養

SASP(大腸病変)

ステロイド抵抗・依存

抗TNF製剤

中等症~重症

経口ステロイド

経腸栄養

GMA(大腸病変)

重症~劇症

入院・全身管理・抗菌薬

経静脈的ステロイド

早期の外科コンサルト

改善 or 寛解

寛解維持治療に移行 外科的治療

穿孔,大出血,腸閉塞,膿瘍,難治性病変,癌など

【フローチャート7:活動期のクローン病に対する寛解導入治療】

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 24: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— xxiv —

クローン病

瘻孔

抗菌薬,免疫調節薬,抗TNF製剤

狭窄

ステロイド・抗TNF製剤(炎症性狭窄)

出血

内視鏡・血管造影止血

内視鏡的拡張術(線維性狭窄)

インフリキシマブ

外科的治療

※:それぞれの病態に対し,外科的治療の適応の是非をまず検討する

※ ※ ※ ※

膿瘍

抗菌薬・経皮的ドレナージ

【フローチャート8:クローン病の消化管合併症に対する治療】

寛解期クローン病 抗TNF製剤による寛解例

抗TNF製剤長期投与AZA・6-MP経腸栄養・5-ASA製剤(選択肢のひとつ)

再燃

寛解導入治療

併用可

※禁煙を指導し,NSAIDs の投与に 注意する

【フローチャート9:寛解期のクローン病に対する維持治療】

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 25: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— xxv —

クリニカルクエスチョン一覧

第1章 IBDの臨床像

CQ 1-1 IBD の定義,病態は? ………………………………………………………………………2CQ 1-2 IBD の疫学は? ………………………………………………………………………………4CQ 1-3 UC の原因,危険因子は何か? ……………………………………………………………5CQ 1-4 CD の原因,危険因子は何か? ……………………………………………………………7CQ 1-5 IBD の病態・分類・重症度の評価は? ……………………………………………………9

第2章 診 断

CQ 2-1 IBD の診断はどのように進めるか?………………………………………………………14CQ 2-2 IBD を疑う症状,身体所見は?……………………………………………………………15CQ 2-3 IBD 診断に有用な臨床検査は?……………………………………………………………16

❶内視鏡(組織採取を含む)CQ 2-4 UC の診断に内視鏡はどのように用いるか? ……………………………………………17CQ 2-5 CD の診断に内視鏡はどのように用いるか? ……………………………………………19

❷画像検査CQ 2-6 UC の診断に画像検査はどのように用いるか?(内視鏡以外) ………………………21CQ 2-7 CD の診断に画像検査はどのように用いるか?(内視鏡以外) ………………………23

第3章 治療総論

CQ 3-1 IBD 患者は禁煙すべきか?…………………………………………………………………26CQ 3-2 IBD 患者は禁酒すべきか?…………………………………………………………………28

第4章 IBDに対する治療介入法

CQ 4-1 IBD 治療における 5-ASA 製剤の有益性・有害性と適応は? …………………………30CQ 4-2 IBD 治療における副腎皮質ステロイドの有益性・有害性と適応は?…………………32CQ 4-3 IBD 治療における免疫調節薬の有益性・有害性と適応は?……………………………34CQ 4-4 IBD 治療における抗菌薬,probiotics の有益性・有害性と適応は? …………………36CQ 4-5 IBD 治療における抗 TNF 製剤の効果は? ………………………………………………38CQ 4-6 IBD 治療における栄養療法の有益性・有害性と適応は?………………………………41CQ 4-7 IBD 治療における血球成分除去療法の適応と,治療効果および有害性は?…………43CQ 4-8 IBD の外科的治療の有益性・有害性は?…………………………………………………45

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 26: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— xxvi —

第5章 潰瘍性大腸炎の治療

❶軽症〜中等症の活動期遠位大腸炎CQ 5-1 軽症〜中等症の活動期遠位 UC 治療における 5-ASA 製剤の適応は? ………………48CQ 5-2 軽症〜中等症の活動期遠位 UC 治療における副腎皮質ステロイドの適応は?………50CQ 5-3 軽症〜中等症の活動期遠位 UC 治療におけるその他の治療の適応は?………………52CQ 5-4 直腸炎タイプの軽症〜中等症の活動期遠位 UC の治療は?……………………………54

❷軽症〜中等症の活動期広範囲大腸炎CQ 5-5 軽症〜中等症の活動期広範囲 UC 治療における 5-ASA 製剤の適応は? ……………56CQ 5-6 軽症〜中等症の活動期広範囲 UC 治療における副腎皮質ステロイドの適応は?……58CQ 5-7 軽症〜中等症の活動期広範囲 UC 治療におけるその他の治療の適応は?……………59

❸重症の活動期潰瘍性大腸炎CQ 5-8 重症の活動期 UC 治療における副腎皮質ステロイドの適応は?………………………61CQ 5-9 重症の活動期 UC 治療における免疫調節薬の適応は?…………………………………62CQ 5-10 重症の活動期 UC 治療における抗 TNF 製剤の適応は? ………………………………64CQ 5-11 重症の活動期 UC 治療における血球成分除去療法の適応は?…………………………66

❹寛解期の維持治療CQ 5-12 寛解期の UC 治療における 5-ASA 製剤の適応は? ……………………………………67CQ 5-13 寛解期の UC 治療における免疫調節薬の適応は?………………………………………69CQ 5-14 寛解期の UC 治療において抗 TNF 製剤はどのように用いるか? ……………………71CQ 5-15 その他の治療法はいつ適応となり,どのように用いるか?……………………………73

❺外科的治療CQ 5-16 UC に対する外科的治療の適応は? ………………………………………………………74CQ 5-17 UC の外科的治療ではどのような手術を行うか? ………………………………………76CQ 5-18 UC の外科的治療における合併症とその治療は? ………………………………………78

第6章 クローン病の治療

❶軽症〜中等症の活動期CQ 6-1 軽症〜中等症の活動期 CD の治療は?……………………………………………………82

❷中等症〜重症の活動期CQ 6-2 中等症〜重症の活動期 CD の治療は?……………………………………………………84

❸重症〜劇症の活動期CQ 6-3 重症〜劇症の活動期 CD の治療は?………………………………………………………86

❹肛門周囲病変CQ 6-4 CD の肛門周囲病変における内科的治療は? ……………………………………………88

❺消化管合併症(瘻孔,狭窄,出血,膿瘍)CQ 6-5 CD の消化管合併症①:瘻孔に対する治療は? …………………………………………90CQ 6-6 CD の消化管合併症②:狭窄に対する治療は? …………………………………………92CQ 6-7 CD の消化管合併症③:出血に対する治療は? …………………………………………94CQ 6-8 CD の消化管合併症④:膿瘍に対する治療は? …………………………………………96

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 27: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— xxvii —

クリニカルクエスチョン一覧

❻その他の消化管病変CQ 6-9 CD の上部消化管病変における治療は? …………………………………………………97

❼寛解期の維持治療CQ 6-10 寛解期 CD の再燃を予防するためにどのような生活上の注意が必要か?……………99CQ 6-11 寛解期 CD の再燃を予防するためにどのような治療を行うか? ……………………100

❽外科的治療CQ 6-12 CD の外科的治療の適応は? ……………………………………………………………103CQ 6-13 CD の外科的治療ではどのような手術を行うか? ……………………………………104CQ 6-14 CD の外科的治療における合併症とその治療は? ……………………………………106

第7章 消化管外合併症

CQ 7-1 IBD の消化管外合併症とその治療は? …………………………………………………110

第8章 癌サーベイランス

CQ 8-1 UC の癌のスクリーニングとサーベイランスは? ……………………………………114CQ 8-2 CD の癌のスクリーニングとサーベイランスは? ……………………………………116

第9章 特殊状況の IBD

CQ 9-1 IBD 患者における妊娠・出産の際の治療は? …………………………………………120CQ 9-2 高齢者の IBD における留意点は? ………………………………………………………123

索引 ………………………………………………………………………………………………………125

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 28: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— xxviii —

5-ASA 5-aminosalicylic acid 5- アミノサリチル酸6-MP 6-mercaptopurine 6- メルカプトプリンAZA azathioprine アザチオプリンBDP beclomethasone dipropionate ジプロピオン酸ベクロメタゾンCAP cytapheresis 血球成分除去療法CBC complete blood count 全血球計算CD Crohn’s disease クローン病CDAI Crohn’s Disease Activity Index クローン病活動指数CDEIS Endoscopic Index of Severity of Crohn’s disease クローン病内視鏡的重症度指数CPFX ciprofl oxacin シプロフロキサシンCRP C-reactive protein C 反応性蛋白CT computed tomography コンピュータ断層撮影CyA ciclosporin シクロスポリンEGD esophagogastroduodenoscopy 上部消化管内視鏡検査FIT fecal immunochemical test 免疫学的便潜血検査GMA granulocyte/monocytapheresis 顆粒球単球除去療法IBD infl ammatory bowel disease 炎症性腸疾患IFX infl iximab インフリキシマブ

IOIBD International Organization for study of Infl ammatory Bowel Disease

LCAP leucocytapheresis 白血球除去療法MNZ metronidazole メトロニダゾールMRI magnetic resonance imaging 磁気共鳴画像NSAIDs nonsteroidal anti-infl ammatory drugs 非ステロイド性抗炎症薬PPI proton pump inhibitor プロトンポンプ阻害薬PSL prednisolone プレドニゾロンSASP salazosulfapyridine サラゾスルファピリジンTAC tacrolimus タクロリムスTNF tumor necrosis factor 腫瘍壊死因子UC ulcerative colitis 潰瘍性大腸炎US ultrasonography 超音波検査

略語一覧

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 29: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

1.IBDの臨床像

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 30: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 2 —

解説

炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease:IBD)は慢性あるいは寛解・再燃性の腸管の炎症性疾患を総称し,原因不明の IBD の多くを占める潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis:UC)とクローン病(Crohn’s disease:CD)の 2疾患を本ガイドラインの対象とする.ともに原因不明で複雑な病態を有し,主として腸管を傷害し種々の臨床症状を呈する.

UC は大腸粘膜を直腸側から連続性におかし,しばしばびらんや潰瘍を形成する原因不明のびまん性非特異性炎症である.その経過中に再燃と寛解を繰り返すことが多く,腸管外合併症を伴うことがある.長期かつ広範囲に大腸をおかす場合には癌化の傾向がある 1).

CD は非連続性に分布する全層性肉芽腫性炎症や瘻孔を特徴とする原因不明の慢性炎症性疾患である.口腔から肛門まで消化管のどの部位にも病変を生じうるが,小腸・大腸(特に回盲部),肛門周囲に好発する 2).

IBD は遺伝的な素因に食餌や感染などの環境因子が関与して腸管免疫や腸管内細菌叢の異常をきたして発症すると考えられているが,原因は解明されていない.両疾患とも若年で発症し,腹痛,下痢,血便などの症状を呈し,再燃と寛解を繰り返しながら慢性に持続するため,日常の QOL は低下することが多い.また,関節,皮膚,眼など全身に腸管外合併症をきたすこともある.広範囲の病変を長期間有する UC 患者では大腸癌発生率が有意に高まり,また CD でも直腸

肛門管部を中心に大腸・小腸癌発生率が高いことが知られている.このため効率的なサーベイランス法の開発が期待されている.IBD 患者の生命予後は正常集団に比してわずかに低下するが,概して IBD は患者の生命予後に大きな影響を与える疾患ではないと考えてよい.

このように共通点や類似点が多いことから UC と CD は IBD と総称されているが,病変の部位,形態や病態は明らかに異なり,それぞれ独立した疾患と考えられる.診断・治療介入法や

Clinical Question 1-11.IBD の臨床像

IBDの定義,病態は?

CQ 1-1 IBDの定義,病態は?

ステートメント

● 炎症性腸疾患(IBD)は慢性あるいは寛解・再燃性の腸管の炎症性疾患を総称し,一般に潰瘍性大腸炎(UC)とクローン病(CD)の 2疾患を指す.

● UCは大腸粘膜を直腸側から連続性におかし,しばしばびらんや潰瘍を形成する原因不明のびまん性非特異性炎症である.

● CDは非連続性に分布する全層性肉芽腫性炎症や瘻孔を特徴とする原因不明の慢性炎症性疾患である.口腔から肛門まで消化管のどの部位にも病変を生じうるが,小腸・大腸(特に回盲部),肛門周囲に好発する.

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 31: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 3 —

経過観察もやや異なるため,鑑別する必要がある.しかし,時として IBD の特徴を有しながらも UC または CD と鑑別できない大腸病変例もあり,分類不能型 IBD と呼ぶことがある.

文献

1) Kornbluth A, Sachar DB; The Practice Parameters Committee of the American College of Gastroenterolo-

gy: Ulcerative colitis practice guidelines in adults: American College Of Gastroenterology, Practice Param-

eters Committee. Am J Gastroenterol 2010; 105: 501-523(ガイドライン)2) Lichtenstein GR, Hanauer S, Sandborn WJ; The Practice Parameters Committee of the American College of

Gastroenterology: Management of Crohn’s disease in adults. Am J Gastroenterol 2009; 104: 465-483(ガイドライン)

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 32: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 4 —

Clinical Question 1-21.IBD の臨床像

IBDの疫学は?

CQ 1-2 IBDの疫学は?

ステートメント

● IBD患者数は年々増加し,UC 16万人以上(人口 10万あたり 100人程度),CD約 4万人(同 27人程度)と類推される.

● UC,CDともに比較的若年に発症し,10歳代後半から 30歳代前半に好発する.● 欧米では IBD患者は特にCDにおいて女性に多い傾向があるのに対し,日本では男性に多い.● IBDの原因はいまだ明らかではないが,遺伝的素因を有する個体に様々な環境因子が関与し

て腸粘膜の免疫系の調節機構が障害されて炎症が生じると考えられている.

解説

日本おける IBD 患者数は年々増加し,平成 25 年度末の医療受給者証および登録者証交付件数から,UC では 16 万人以上(人口 10 万あたり 100 人程度),CD では約 4万人(人口 10 万あたり27 人程度)と類推される 1).しかしながら,全国的な疫学的調査は 1991 年以来行われておらず,近年の正確な罹患率・有病率は不明である.

UC,CD ともに比較的若年に発症し,10 歳代後半から 30 歳代前半に好発することが知られている.しかし,高齢発症の IBD は決してまれではないことに加え,IBD は生命予後が比較的良好で経過が長く,また近年高齢者人口が増加しているため,有病者は次第に高齢層へと移行し,今では高齢の IBD 患者を診る機会も増えている.

欧米諸国の IBD 罹患率・有病率は地域により差があるが,日本よりも高いことが多く,日本では男性優位であるのに対し,欧米では特に CD において女性に多い傾向がある.

IBD の原因はいまだ明らかにされていない.遺伝的素因を有する個体に様々な環境因子が関与して腸粘膜の免疫系の調節機構が障害されて炎症が生じるというのが,現在の国際的なコンセンサスである.血縁者内の IBD 罹患率がやや高いことが知られ,家族内集積例の報告もあることから,何らかの遺伝的機序が関与していることが推測されている.日本でも疾患感受性遺伝子の研究が進められているが,海外との差異もあり一定の結果が得られていない.

文献

1) 厚生労働省難病情報センターホームページhttp://www.nanbyou.or.jp[最終アクセス 2016 年 9 月 1日]

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 33: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 5 —

解説

約 1万人の UC 患者を含む 15 のゲノムワイド研究のメタアナリシスによると,163 の遺伝子座が慢性炎症性腸疾患と関連し,そのうちの 133 の遺伝子座が UC と関連している(Nature

2012; 491: 119-124 a)[検索期間外文献]).日本の多施設の症例対照研究によると,砂糖菓子の摂取は UC の発症と関連し,ビタミン C の摂取は UC の発症と負の相関を認める 1).喫煙と UC に関するメタアナリシス 2)によると現在の喫煙(current smoker)は UC 発症と負の相関を認め,オッズ比 0.58(95%CI 0.45〜0.75),一方,喫煙歴のあることは UC の危険因子である,オッズ比1.79(95%CI 1.37〜2.34).したがって,喫煙と UC との因果関係に関しては疑問が残る.また,喫煙に関しては UC 以外の疾患の危険因子であることを考慮する必要がある.2000 年のメタアナリシスによると,虫垂切除術の UC 発症に対するオッズ比は 0.31(95%CI 0.25〜0.38)である 3).経口避妊薬に関する 2008 年のメタアナリシスによると,UC 発症に対する相対危険度は 1.53(95%CI 1.21〜1.94)である 4).また,60 人の IBD 患者(UC 24 人,CD 36 人)を対象に行った米国での症例対照研究 5)によると NSAIDs の IBD の増悪あるいは新規発症に対するオッズ比は20.3(95%CI 2.6〜159.7)である.

Clinical Question 1-31.IBD の臨床像

UCの原因,危険因子は何か?

CQ 1-3 UCの原因,危険因子は何か?

ステートメント 推奨の強さ(Delphi 中央値)

エビデンスレベル

● UCと関連する複数の遺伝子座が報告されている. - C

● UCの原因は解明されていないが,ある種の食餌内容との関連が指摘されている. - C

● 喫煙はUCに対し防御的に働くとの報告もあるが,因果関係は明確ではない. - C

● 経口避妊薬の服用はUCの発症と関連し,NSAIDs は IBDの増悪,発症と関連がある. - C

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 34: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 6 —

文献

1) Sakamoto N, Kono S, Wakai K, et al. Dietary risk factors for inflammatory bowel disease: a multicenter

case-control study in Japan. Inflamm Bowel Dis 2005; 11: 154-163(ケースコントロール)2) Mahid SS, Minor KS, Soto RE, et al. Smoking and inflammatory bowel disease: a meta-analysis. Mayo Clin

Proc 2006; 81: 1462-1471(ケースコントロール)3) Koutroubakis IE, Vlachonikolis IG. Appendectomy and the development of ulcerative colitis: results of a

metaanalysis of published case-control studies. Am J Gastroenterol 2000; 95: 171-176(ケースコントロール)

4) Cornish JA, Tan E, Simillis C, et al. The risk of oral contraceptives in the etiology of inflammatory bowel

disease: a meta-analysis. Am J Gastroenterol 2008; 103: 2394-2400(メタ・観察)5) Felder JB, Korelitz BI, Rajapakse R, et al. Effects of nonsteroidal antiinflammatory drugs on inflammatory

bowel disease: a case-control study. Am J Gastroenterol 2000; 95: 1949-1954(ケースコントロール)

【検索期間外文献】a) Jostins L, Ripke S, Weersma RK, et al. Host-microbe interactions have shaped the genetic architecture of

inflammatory bowel disease. Nature 2012; 491: 119-124(メタ・観察)

1.IBD の臨床像

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 35: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 7 —

解説

約 15,000 人の CD 患者を含むゲノムワイド研究のメタアナリシスによると 163 の遺伝子座が慢性炎症性腸疾患と関連し,CD と関連する 140 の遺伝子座が報告されている(Nature 2012; 491:

119-124 a)[検索期間外文献]).日本の多施設の症例対照研究によると,脂肪摂取,砂糖菓子や砂糖,甘味料の摂取,不飽和脂肪酸,ビタミン E の摂取は CD の発症と関連がある 1).喫煙と CD

との関連に関するメタアナリシス 2)によると現在の喫煙,過去の喫煙のオッズ比はそれぞれ,1.76(95%CI 1.4〜2.22),1.30(95%CI 0.97〜1.76)である.2008 年のメタアナリシス 3)によると虫垂切除術の CD に対する相対危険度は 1.61(95%CI 1.28〜2.02)であるものの,各研究間の異質性が顕著なため妥当性には疑問がある.経口避妊薬に関する 2008 年のメタアナリシス 4)では,経口避妊薬服用中であることの CD に対する相対危険度は 1.51(95%CI 1.17〜1.96)である.また,60 人の IBD 患者(UC 24 人,CD 36 人)を対象に行った米国での症例対照研究 5)によるとNSAIDs の IBD の増悪あるいは新規発症に対するオッズ比は 20.3(95%CI 2.6〜159.7)である.

文献

1) Sakamoto N, Kono S, Wakai K, et al. Dietary risk factors for inflammatory bowel disease: a multicenter

case-control study in Japan. Inflamm Bowel Dis 2005; 11: 154-163(ケースコントロール)2) Mahid SS, Minor KS, Soto RE, et al. Smoking and inflammatory bowel disease: a meta-analysis. Mayo Clin

Clinical Question 1-41.IBD の臨床像

CDの原因,危険因子は何か?

CQ 1-4 CDの原因,危険因子は何か?

ステートメント 推奨の強さ(Delphi 中央値)

エビデンスレベル

● CDと関連する多数の遺伝子座が報告されている. - C

● CDの原因は解明されていないが,ある種の食餌内容との関連が指摘されている. - C

● 喫煙はCDの危険因子である. - C

● 経口避妊薬の使用はCDの発症と関連し,NSAIDs は IBDの増悪,発症と関連がある. - C

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 36: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 8 —

Proc 2006; 81: 1462-1471(メタ・観察)3) Kaplan GG, Jackson T, Sands BE, et al. The risk of developing Crohn’s disease after an appendectomy: a

meta-analysis. Am J Gastroenterol 2008; 103: 2925-2931(メタ・観察)4) Cornish JA, Tan E, Simillis C, et al. The risk of oral contraceptives in the etiology of inflammatory bowel

disease: a meta-analysis. Am J Gastroenterol 2008; 103: 2394-2400(メタ・観察)5) Felder JB, Korelitz BI, Rajapakse R, et al. Effects of nonsteroidal antiinflammatory drugs on inflammatory

bowel disease: a case-control study. Am J Gastroenterol 2000; 95: 1949-1954(ケースコントロール)

【検索期間外文献】a) Jostins L, Ripke S, Weersma RK, et al. Host-microbe interactions have shaped the genetic architecture of

inflammatory bowel disease. Nature 2012; 491: 119-124(メタ・観察)

1.IBD の臨床像

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 37: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 9 —

Clinical Question 1-51.IBD の臨床像

IBDの病態・分類・重症度の評価は?

CQ 1-5 IBDの病態・分類・重症度の評価は?

ステートメント

● UCの治療選択は,病期,病変範囲,重症度により異なる.CDでは病変部位の特定,疾患パターン,活動度・重症度の把握が重要である.

● UCの病期は,症状を呈し,内視鏡的に活動性の粘膜病変を認める「活動期」と,症状が消失し,内視鏡的に活動性の粘膜所見が消失する「寛解期」に分けられる.

● UCは病変の範囲により,「直腸炎型」,「遠位大腸炎型」(S状結腸まで),「左側大腸炎型」(脾弯曲部まで),「全大腸炎型」に分けることができる.

● UCの重症度を,臨床症状,徴候,血液検査所見などから,「軽症」,「中等症」,「重症」に分類する(表1).

● CDの病変部位は小腸・大腸(特に回盲部),そして肛門周囲に多く,「小腸型」,「大腸型」,「小腸大腸型」に分類される.

● CDの疾患パターンとしては,「炎症」,「瘻孔形成」,「狭窄」の 3通りに分類することが提唱されている.

● CD の活動度の指標として,クローン病活動指数(CDAI),IOIBD 指数,Harvey-Brad-shaw指数などが提唱されているが,一般診療で広く普及しているわけではない.

解説

IBD の病態は複雑であり,それを正確に把握することが適切な治療の第一歩といえる.UC の治療選択は,病期,病変範囲,重症度により異なる.CD では病変部位の特定,疾患パターン,活動度・重症度の把握が重要である.

UC の病期を,血便を訴え,内視鏡的に血管透見像の消失,易出血性,びらんまたは潰瘍などを認める「活動期」と,血便が消失し,内視鏡的には活動期の所見が消失し,血管透見像が出現する「寛解期」に分けるのが一般的である.また,病変の範囲により,「直腸炎型」,「遠位大腸炎型」(S 状結腸まで),「左側大腸炎型」(脾弯曲部まで),「全大腸炎型」に分けることができる.ただし,「全大腸炎」が大腸全域に病変を有する場合との誤解を生じかねないため,脾弯曲部を越えた病変を有する場合を「広範囲大腸炎」と称することがある.重症度の分類は厚生省下山班の基準を用いることが多く(表1),排便回数 1日 4回以下で,血便はあってもわずかであり,発熱,頻脈,貧血などの全身症候を伴わない場合を「軽症」とし,排便回数 1日 6回以上で著明な血便や発熱,頻脈,貧血などの全身症候を伴う場合を「重症」とし,その中間を「中等症」とする 1〜4).

CD の病変部位は小腸・大腸(特に回盲部),そして肛門周囲に多く,「小腸型」,「大腸型」,「小腸大腸型」に分類されるが,消化管のどの部位にも生じるだけでなく,腸管外合併症による全

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 38: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 10 —

身への影響も評価しなければならない.罹患部位により治療計画が異なることが少なくない.疾患パターンとしては,「炎症」,「瘻孔形成」,「狭窄」の 3通りに分類することが国際的に提唱されている.この疾患パターンの把握も治療選択のうえで重要である 5).さらに疾患の活動性を捉える必要がある.症状が軽微または消失する「寛解期」と種々の症

状のため日常生活に支障をきたす「活動期」では,自ずと治療法は異なる.クローン病活動指数(CDAI)6)は臨床研究における疾患活動性の評価基準として開発された指数であり,その妥当性も検証済みであるが,日常診療に用いるにはやや困難を伴う.IOIBD(International Organiza-

tion for study of Inflammatory Bowel Disease)指数は寛解期と活動期の区別のために用いることができる簡便な指標であるが,指数自体で治療選択が可能となるわけではない.臨床指標だけを用いる簡便な Harvey-Bradshaw 指数(Lancet 1980; 1: 514 a)[検索期間外文献])は CDAI との比較的よい相関が確認されている.一般臨床では患者の自覚症状や臨床所見,検査所見などから総合的に判断することが多い現状であるが,厚生労働省研究班では CDAI その他の指標を用いた重症度評価基準を提唱している(表2)(厚生労働科学研究費補助金難治性疾患等克服研究事業難治性炎症性腸管障害に関する調査研究班平成 24 年度分担研究報告書,2013: p43-45 b)[検索期間外文献]).

1.IBD の臨床像

表1 潰瘍性大腸炎の重症度分類(厚生省下山班)重症 中等症 軽症

1)排便回数 6回以上

重症と軽症との中間

4回以下2)顕血便 (+++) (+)~(-)3)発熱 37.5℃以上 (-)4)頻脈 90/ 分以上 (-)5)貧血 Hb 10g/dL 以下 (-)6)赤沈 30mm/hr 以上 正常注:

1)および2)の他に全身症状である3)または4)のいずれかを満たし,かつ6項目のうち4項目以上を満たすものとする.は6項目すべて満たすものとする.

の5項目をすべて満たすもの  ① 重症基準を満たしている.  ②15回 /日以上の血性下痢が続いている.  ③38℃以上の持続する高熱がある.  ④10,000/mm3 以上の白血球増多がある.  ⑤ 強い腹痛がある.(文献1より)

表2 クローン病の重症度分類(厚生労働省鈴木班)治療に際し,重症度分類を下記の項目を参考に行う.

CDAI 合併症 炎症(CRP値) 治療反応軽症 150~220 なし わずかな上昇中等症 220~450 明らかな腸閉塞など

なし明らかな上昇 軽症治療に反応しない

重症 450< 腸閉塞,膿瘍など 高度上昇 治療反応不良(文献 bより)

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 39: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 11 —

文献

1) 棟方昭博.潰瘍性大腸炎診断基準改訂案.厚生省特定疾患難治性炎症性腸管障害に関する調査研究班平成9年度報告書,1998

2) Trulove SC, Witts LJ. Cortisone in ulcerative colitis; final report on a therapeutic trial. Br Med J 1955; 2:

1041-10483) Hanauer SB. Inflammatory bowel disease. N Engl J Med 1996; 334: 841-8484) 松井敏幸.潰瘍性大腸炎診断基準改定(案).厚生労働科学研究費補助金難治性疾患対策研究事業難治性炎

症性腸管障害に関する調査研究班平成 21 年度総括・分担研究報告書,2010: p480-4885) Gasche C, Scholmerich J, Brynskov J, et al. A simple classification of Crohn’s disease; report of the Work-

ing Party of the World Congress of Gastroenterology, Vienna 1998. Inflamm Bowel Dis 2000; 6: 8-156) Bwest WR, Becktel JM, Singleton JW, et al. Development of Crohn’s disease activity index. National Coop-

erative Crohn’s Disease Study. Gastroenterology 1976; 70: 439-444

【検索期間外文献】a) Harvey RF, Bradshaw JM. A simple index of Crohn’s disease activity. Lancet 1980; 1 (8167): 514b) 松井敏幸.クローン病の診断基準(案).厚生労働科学研究費補助金難治性疾患等克服研究事業難治性炎症

性腸管障害に関する調査研究班平成 24 年度分担研究報告書,2013: p43-45

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 40: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

2.診 断

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 41: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 14 —

Clinical Question 2-12.診断

IBDの診断はどのように進めるか?

CQ 2-1 IBDの診断はどのように進めるか?

ステートメント

● IBDの診断は,病歴聴取と身体診察による特徴的な所見から疑診し,内視鏡をはじめとした画像検査の典型的な所見により確立する.

● しばしばUCとの鑑別が問題になるのは感染性腸炎である.● CDの急性期では急性虫垂炎,大腸憩室炎などに類似し,診断の最終段階で腸結核や腸管ベー

チェット病などとの鑑別が問題となる.● IBDの診断が得られたら,適切な治療介入のためにその活動性,病変範囲,重症度を評価する.

解説

IBD の診断は通常特徴的な臨床所見と内視鏡をはじめとした画像検査の典型的な所見により確立する.しかし,精度の高い画像検査でも鑑別困難な疾患は少なくないため,まず適切な病歴聴取と身体診察により鑑別診断を絞り込み,効率のよい診断戦略を立てることが正しい診断に至るために重要である.診断の第一歩は疑うことから始まる.繰り返す腹痛,下痢などの腹部症状を呈する場合は,

若年者はもちろん非若年者でも IBD を鑑別診断に含めるべきである.しばしば UC との鑑別が問題になるのは感染性腸炎であり,特にキャンピロバクター,腸管侵襲型病原性大腸菌,赤痢アメーバなどによる大腸炎との鑑別を要するため,便の細菌学的・寄生虫学的検査による除外診断が必要である.CD の急性期では急性虫垂炎,大腸憩室炎などに類似し,診断の最終段階で腸結核や腸管ベーチェット病などとの鑑別が問題となる.

IBD の診断が得られたら,適切な治療介入のためにその活動性,病変範囲,重症度を評価する.内視鏡や各種画像検査は病変範囲や重症度の把握にも有用である.さらに腸管合併症や腸管外合併症の有無や程度を臨床的に把握する必要もある 1, 2).診断基準については CQ 2-6(UC),CQ 2-7(CD)を参照のこと

文献

1) Kornbluth A, Sachar DB; The Practice Parameters Committee of the American College of Gastroenterolo-

gy: Ulcerative colitis practice guidelines in adults: American College Of Gastroenterology, Practice Param-

eters Committee. Am J Gastroenterol 2010; 105: 501-523(ガイドライン)2) Lichtenstein GR, Hanauer S, Sandborn WJ; The Practice Parameters Committee of the American College of

Gastroenterology: Management of Crohn’s disease in adults. Am J Gastroenterol 2009; 104: 465-483(ガイドライン)

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 42: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 15 —

Clinical Question 2-22.診断

IBDを疑う症状,身体所見は?

CQ 2-2 IBDを疑う症状,身体所見は?

ステートメント

● 持続性または反復性の血性下痢があり,腹痛や頻回の便意を伴う場合,特に若年者ではUCを疑う.

● 慢性の腹痛,下痢を呈し,血便,体重減少,発熱,肛門部病変などを伴う場合,特に若年者ではCDを疑う.

● UCの身体所見は非特異的であるが,病変範囲や重症度を反映した腹部圧痛,直腸診での粘血便を認めることが多い.

● CDでは病変部位に一致した圧痛や腫瘤を触知し,腸閉塞の徴候を認めることもある.しばしば肛門部病変により診断が得られることがある.

解説

UC の主症状は血性下痢であり,腹痛や頻回の便意を伴うこともある.したがって,持続性または反復性の粘血・血便,あるいはその既往があれば UC を疑う.最近の海外渡航歴,服薬状況(特に抗菌薬),家族歴などを聴取する.軽症例での身体所見では異常を認めないことが多いが,重症化するにつれ発熱,貧血,体重減少の徴候,腹部圧痛や直腸診で鮮血を認めるようになる 1).

CD の主症状も UC に類似するが,慢性の腹痛,下痢が多く,血便の頻度は UC に比べやや低く,UC でみられる粘血便は少ない.体重減少,発熱,肛門部病変を伴う場合可能性が高い.身体所見では病変部位に一致した圧痛や腫瘤を触知し,腸閉塞の徴候を認めることもある.しばしば肛門部病変により診断が得られることがある 2).

文献

1) Kornbluth A, Sachar DB; The Practice Parameters Committee of the American College of Gastroenterolo-

gy: Ulcerative colitis practice guidelines in adults: American College Of Gastroenterology, Practice Param-

eters Committee. Am J Gastroenterol 2010; 105: 501-523(ガイドライン)2) Lichtenstein GR, Hanauer S, Sandborn WJ; The Practice Parameters Committee of the American College of

Gastroenterology: Management of Crohn’s disease in adults. Am J Gastroenterol 2009; 104: 465-483(ガイドライン)

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 43: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 16 —

Clinical Question 2-32.診断

IBD診断に有用な臨床検査は?

CQ 2-3 IBD診断に有用な臨床検査は?

ステートメント

● 末梢血検査では貧血の有無や程度を評価し,白血球数(分画),血小板数により炎症の程度を推測できる.

● 炎症反応検査(CRP,赤沈)は疾患の活動性と相関する.● アルブミン値は栄養指標であるだけでなく,疾患の重症度の指標となる.● 便の細菌学的検査・寄生虫検査により感染性腸炎を除外する.● 炎症活動性のマーカーとして,便中カルプロテクチンが導入されつつある.

解説

臨床所見から IBD を疑ったら,画像検査と併行して血液や便などの検体検査を行う.末梢血検査は重症度の評価に有用であり,貧血の有無や程度を評価し,白血球数(分画),血小板数により炎症の程度を推測できる.炎症反応検査(CRP,赤沈)は疾患の活動性と相関するが,正常値が炎症の消失を意味するわけではないことに注意する.アルブミン値の低下は栄養指標であるだけでなく,疾患の重症度の指標となる.便の細菌学的検査・寄生虫検査により感染性腸炎を除外する.便潜血検査(FIT)を炎症活動性のモニタリングや粘膜治癒の評価に用いる方法もあるが,その有用性が十分検証されているわけではない(Am J Gastroenterol 2013; 108: 83-89 a)[検索期間外文献]).活動性を評価するバイオマーカーとして,従来の CRP,赤沈だけでなく,便中カルプロテク

チンが導入され,臨床応用される日が近い 1).

文献

1) Tibble J, Teahon K, Thjodleifsson B, et al. A simple method for assessing intestinal inflammation in

Crohn’s disease. Gut 2000; 47: 506-513(横断)

【検索期間外文献】a) Nakarai A, Kato J, Hiraoka S, et al. Evaluation of Mucosal Healing of Ulcerative Colitis by a Quantitative

Fecal Immunochemical Test. Am J Gastroenterol 2013; 108: 83-89(横断)

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 44: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 17 —

解説

臨床所見から UC が疑われる場合は,確定診断のために大腸内視鏡検査を行う 1〜4).UC に対する大腸内視鏡検査の適応は,確定診断のほかに,重症度の評価,治療効果の判定,発癌のサーベイランスなどであり,必要に応じて生検病理組織検査も行う.特に初回診断例では,可能であれば全大腸内視鏡検査を行って,腸管病変の性状や程度,罹患範囲などを検査し,同時に他の疾患を除外する.しかし,臨床的に重症と考えられる例では,内視鏡検査や前処置により病状が増悪する可能性があるため,早期に全大腸の観察にこだわる必要はない.腸管前処置には経口腸管洗浄液を用いるが,活動期で下痢や血便が頻回の場合は,無処置で内視鏡検査が可能な場合が多い.

UC の内視鏡所見として,典型的には血管パターンの消失,顆粒状粘膜,易出血性,潰瘍などの所見を連続性に認める 5).粘膜はびまん性におかされ,血管透見像は消失し,粗ぞうまたは細顆粒状を呈する.さらに,もろくて易出血性(接触出血)を伴い,粘血膿性の分泌物が付着しているか,多発性のびらん,潰瘍あるいは偽ポリポーシスを認める.なお,こうした所見のみで内視鏡診断が可能なわけではなく,あくまで消化器専門医が参考とする基準的所見である.また,これらの所見の存在が,必ずしも診断確定的ではないことに留意する必要がある.生検病理組織所見では,活動期には粘膜全層にびまん性炎症性細胞浸潤,陰窩膿瘍,高度の杯細胞減少がみられるが,これらは非特異的所見である 5).寛解期では腺の配列異常(蛇行・分岐),萎縮が残存する.なお,これらの所見は,通常直腸から連続性に口側にみられる.生検病理組織検査は,UC へのサイトメガロウイルス感染合併の診断に活用できる(J Crohns Colitis 2013; 7:

803-811 a)[検索期間外文献]).また,内視鏡所見で,直腸や左側結腸の炎症所見が乏しく,UC の確定診断に迷う症例では炎症の既往があるか確認するのに役立つ.

大腸内視鏡による腸管病変の重症度の評価は,治療方針を選択するうえで重要である.内視

Clinical Question 2-42.診断 ― ❶内視鏡(組織採取を含む)

UCの診断に内視鏡はどのように用いるか?

CQ 2-4 UCの診断に内視鏡はどのように用いるか?

ステートメント 推奨の強さ(Delphi 中央値)

エビデンスレベル

● 臨床所見からUCを疑ったら確定診断のために大腸内視鏡検査を行うことを推奨する.

1(9) D

● UCの確定診断だけでなく,重症度の評価,治療効果の判定,発癌のサーベイランスを目的として,大腸内視鏡検査を行うことを推奨する.

1(9) D

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 45: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 18 —

鏡で評価した UC の活動性の指標としては,Mayo endoscopy subscore,Rachmilewitz index などがある 6, 7).最近の臨床試験では Mayo endoscopy subscore が用いられることが多く,score 0

(正常または非活動性所見)または score 1(軽症:発赤,血管透見像の消失,軽度脆弱)を粘膜治癒と定義する報告が欧米を中心になされている.粘膜治癒を内視鏡で評価することは,寛解維持療法の選択や再発の予測などに役立つが,score 1 を粘膜治癒に含めることには異論もあり,長期的な解析が必要である.

文献

1) Hommes DW, van Deventer SJ. Endoscopy in inflammatory bowel disease. Gastroenterology 2004; 126:

1561-1573(ガイドライン)2) Kornbluth A, Sachar DB; Practice Parameters Committee of the American College of Gastroenterology:

Ulcerative colitis practice guidelines in adults: American College of Gastroenterology, Practice Parameters

Committee. Am J Gastroenterol 2010; 105: 501-523(ガイドライン)3) Mowat C, Cole A, Windsor A, et al. IBD Section of the British Society of Gastroenterology: Guidelines for

the management of inflammatory bowel disease in adults. Gut 2011; 60: 571-607(ガイドライン)4) Stange EF, Travis SP, Vermeire S, et al. European Crohn’s and Colitis Organisation (ECCO). European evi-

dence-based Consensus on the diagnosis and management of ulcerative colitis: definitions and diagnosis. J

Crohns Colitis 2008; 2: 1-23(ガイドライン)5) 松井敏幸.潰瘍性大腸炎の診断基準改訂案(平成 21 年度).厚生労働科学研究費補助金難治性疾患克服研

究事業 難治性炎症性腸管障害に関する調査研究(渡辺班)平成 21 年度総括・分担研究報告書,2010:

p484-4886) Schroeder KW, Tremaine WJ, Ilstrup DM. Coated oral 5-aminosalicylic acid therapy for mildly to moder-

ately active ulcerative colitis. A randomized study. N Engl J Med 1987; 317: 1625-1629(ランダム)7) Rachmilewitz D. Coated mesalazine (5-aminosalicylic acid) versus sulphasalazine in the treatment of

active ulcerative colitis: a randomised trial. BMJ 1989; 298: 82-86(ランダム)

【検索期間外文献】a) Fukuchi T, Nakase H, Matsuura M, et al. Effect of intensive granulocyte and monocyte adsorptive aphere-

sis in patients with ulcerative colitis positive for cytomegalovirus. J Crohns Colitis 2013; 7: 803-811(ケースシリーズ)

2.診断

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 46: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 19 —

解説

CD は全消化管をおかすが,病変の好発部位は大腸および回腸下部である.したがって,CD

の診断には X 線造影検査とともに内視鏡検査が必須である.特に臨床症状や一般検査から CD

が疑われる場合,診断の確定,炎症の範囲・程度の把握,および病理組織検査のために,速やかに回腸終末部の観察を含めた下部消化管内視鏡検査を行う 1〜4).なお,CT などで事前に骨盤内小腸の病変が疑われる場合は,通常の内視鏡検査だけでなく,透視下に回腸終末部までの内視鏡観察に加えて,逆行性造影を組み合わせることも有用である.IBD が疑われる症例では,下部消化管内視鏡所見から 89%の CD が UC と鑑別できると報告されている 4).CD に特徴的な下部消化管内視鏡所見は,非連続性または区域性病変(いわゆる skip lesion),敷石像,縦走潰瘍,不整形潰瘍,多発アフタ,狭小化・狭窄,瘻孔(内瘻・外瘻),肛門部病変などである.内視鏡で評価した CD の活動性の指標として,Endoscopic Index of Severity of Crohn’s disease

(CDEIS)などが提唱されているが,日常診療に用いるには複雑で計算に時間がかかるため一般的ではない 2).なお,最近では,診断だけでなく CD に合併する狭窄の治療に内視鏡を活用することがある.

CD において上部消化管病変は決してまれではなく,症状の有無にかかわらず高率(17〜75%)に認められる.CD における上部消化管病変として頻度の高いものは,胃における竹の節状外観,胃びらん・潰瘍,十二指腸びらん・潰瘍,十二指腸ノッチ状外観・縦走びらんなどである.日本の診断基準(厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患克服研究事業 難治性炎症性腸管障害に関する調査研究(渡辺班)平成 24 年度総括・分担研究報告書,2013: p43-45 a)[検索期間外文献])では,副所見として上部消化管と下部消化管の両者に認められる不整形潰瘍またはアフタがあげられており,CD の確定診断や鑑別診断のために上部消化管内視鏡検査による病変検索および生検病理組織検査(非乾酪性類上皮細胞肉芽腫の有無など)は有用である.特に下部消化管

Clinical Question 2-52.診断 ― ❶内視鏡(組織採取を含む)

CDの診断に内視鏡はどのように用いるか?

CQ 2-5 CDの診断に内視鏡はどのように用いるか?

ステートメント 推奨の強さ(Delphi 中央値)

エビデンスレベル

● 臨床所見からCDを疑ったら大腸内視鏡検査(回腸終末部の観察を含む)および生検による病理組織検査を行うことを推奨する.

1(9) D

● 上部消化管内視鏡検査も施行することが望ましく,特に下部消化管内視鏡検査にて確定診断が得られない場合や,上部消化管症状を訴える場合は積極的に行うことを推奨する.

1(9) D

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 47: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 20 —

内視鏡検査にて確定診断が得られない場合や,上部消化管症状を訴える場合は積極的に行うことが望ましい 1, 5).なお,CD の生検病理組織検査では,肉芽腫の診断に重点が置かれているが,生検での検出率は 26〜67%にとどまる 6〜8).また,結核や感染性腸炎,UC でも認めることがあることにも留意が必要である小腸病変が疑われるが,小腸 X 線造影検査など他の画像診断により病変を描出できない場合

には,カプセル内視鏡による検索が有用な場合がある 9).日本においても,事前にパテンシーカプセルにより腸管の開通性を確認する必要があるが,CD の確診例についても臨床使用が認められている.しかし,カプセル内視鏡による CD の診断基準や,エビデンスに基づく有用性については確立していないのが現状である 10).

文献

1) Hommes DW, van Deventer SJ. Endoscopy in inflammatory bowel disease. Gastroenterology 2004; 126:

1561-1573(ガイドライン)2) Mary JY, Modigliani R. Development and validation of an endoscopic index of the severity for Crohn’s

disease:a prospective multicentre study. Gut 1989; 30: 983-989(ケースシリーズ)3) Denis MA, Reenaers C, Fontaine F, et al. Assessment of endoscopic activity index and biological inflam-

matory markers in clinically active Crohn’s disease with normal C-reactive protein serum level. Inflamm

Bowel Dis 2007; 13: 1100-1105(ケースシリーズ)4) Pera A, Bellando AP, Calcera D, et al. Colonoscopy in inflammatory bowel disease: diagnostic accuracy

and proposal of an endoscopic sore. Gastroenterology 1987; 92: 181-185(ケースシリーズ)5) Witte AM, Veenendaal RA, Van Hogezand RA, et al. Crohn’s disease of the upper gastrointestinal tract:

the value of endoscopic examination. Scand J Gastroenterol Suppl 1998; 225: 100-105(ケースシリーズ)6) Schmitz-Moormann P, Schäg M. Histology of the lower intestinal tract in Crohn’s disease of children and

adolescents. Multicentric Paediatric Crohn’s Disease Study. Pathol Res Pract 1990; 186: 479-484(ケースシリーズ)

7) De Matos V, Russo PA, Cohen AB, et al. Frequency and clinical correlations of granulomas in children

with Crohn disease. J Pediatr Gastroenterol Nutr 2008; 46: 392-398(ケースシリーズ)8) Rubio CA, Orrego A, Nesi G, et al. Frequency of epithelioid granulomas in colonoscopic biopsy specimens

from paediatric and adult patients with Crohn’s colitis. J Clin Pathol 2007; 60: 1268-1272(ケースシリーズ)9) Dionisio PM, Gurudu SR, Leighton JA, et al. Capsule endoscopy has a significantly higher diagnostic yield

in patients with suspected and established small-bowel Crohn’s disease: a meta-analysis. Am J Gastroen-

terol 2010; 105: 1240-1248(メタ・横断)10) Bourreille A, Ignjatovic A, Aabakken L, et al; World Organisation of Digestive Endoscopy (OMED) and

the European Crohn’s and Colitis Organisation (ECCO). Role of small-bowel endoscopy in the manage-

ment of patients with inflammatory bowel disease: an international OMED-ECCO consensus. Endoscopy

2009; 41: 618-637(ガイドライン)

【検索期間外文献】a) 松井敏幸.クローン病診断基準(案)(2013 年 1 月改訂).厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患克服研

究事業 難治性炎症性腸管障害に関する調査研究(渡辺班)平成 24 年度総括・分担研究報告書,2013: p43-

45

2.診断

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 48: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 21 —

解説

UC の診断に際しては内視鏡検査が広く行われており,内視鏡所見と生検組織所見が確定診断に最も有用である 1, 2),(J Crohns Colitis 2013; 7: 982-1018 a), J Crohns Colitis 2013; 7: 556-585 b), J

Crohns Colitis 2012; 6: 965-990 c)[検索期間外文献])(表1).注腸 X 線検査は,狭窄などにより内視鏡が挿入不可能な場合の罹患範囲の確認や深部大腸の活動性評価に有効である a, c).腹部 US,CT(colonography を含む),MRI(colonography を含む)も同様の理由で行われているが,腸管の状態だけでなく,腸管外の情報も得られる a, b).前向き試験のメタアナリシスによると,診断に関する感度/特異度は US が 89.7%/95.6%,CT が 84.3%/95.1%,MRI が 93.0%/92.8%と報告されている 3).しかしながら,採択された論文の検討例には既存の IBD 患者が多く含まれており,診断確定目的での有用性に関する検証は十分ではない 4, a).日本の UC 診断基準には,これらの画像検査に関する記載はなく,補助的な検査として行われており 1),日本では診断確定目的の画像検査としての US,CT,MRI の使用は限定的である.治療前後の活動性の評価としては汎用されており,有用である.重症例では内視鏡検査が困難な症例も存在するため,各検査の特

Clinical Question 2-62.診断 ― ❷画像検査

UCの診断に画像検査はどのように用いるか?(内視鏡以外)

CQ 2-6 UCの診断に画像検査はどのように用いるか?(内視鏡以外)

ステートメント 推奨の強さ(Delphi 中央値)

エビデンスレベル

● 治療前後の活動性評価や合併症の確認のため,腹部超音波検査(US),CT検査,MRI 検査などを行うことを推奨する.

1(8) C

表 1 UCの診断基準(2010年 2月改訂版)次の a)のほか,b)のうちの1項目,および c)を満たし,他の疾患が除外できれば,確診となる.a)臨床症状:持続性または反復性の粘血 ・血便,あるいはその既往がある.b)①内視鏡検査:

i)粘膜はびまん性におかされ,血管透見像は消失し,粗ぞうまたは細顆粒状を呈する.さらに,もろくて易出血性(接触出血)を伴い,粘血膿性の分泌物が付着しているか,ii)多発性のびらん,潰瘍あるいは偽ポリポーシスを認める.

  ②注腸X線検査:i)粗ぞうまたは細顆粒状の粘膜表面のびまん性変化,ii)多発性のびらん,潰瘍,iii)偽ポリポーシスを認める.その他,ハウストラの消失(鉛管像)や腸管の狭小 ・短縮が認められる.

c)生検組織学的検査:活動期では粘膜全層にびまん性炎症性細胞浸潤,陰窩膿瘍,高度な杯細胞減少が認められる.いずれも非特異的所見であるので,総合的に判断する.寛解期では腺の配列異常(蛇行・分岐),萎縮が残存する.上記変化は通常直腸から連続性に口側にみられる.

(文献1より)

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 49: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 22 —

性を考慮して,個々の症例に応じた適切な画像検査を選択する必要がある 2, a).

文献

1) 松井敏幸ら.潰瘍性大腸炎診断基準(案).厚生科学研究費補助金特定疾患対策研究事業「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」班平成 22 年度総括・分担研究報告書,2011: p479-483

2) Mowat C, Cole A, Windsor A, et al. Guidelines for the management of inflammatory bowel disease in

adults. Gut 2011; 60: 571-607(ガイドライン)3) Horsthuis K, Bipat S, Bennink RJ, et al. Inflammatory bowel disease diagnosed with US, MR, scintigraphy,

and CT: meta-analysis of prospective studies. Radiology 2008; 247: 64-79(メタ・観察)4) Hollerbach S, Geissler A, Schiegl H, et al. The accuracy of abdominal ultrasound in the assessment of

bowel disorders. Scand J Gastroenterol 1998; 33: 1201-1208(非ランダム)

【検索期間外文献】a) Annese V, Daperno M, Rutter MD, et al. European evidence based consensus for endoscopy in inflamma-

tory bowel disease. J Crohns Colitis 2013; 7: 982-1018(ガイドライン)b) Panes J, Bouhnik Y, Reinisch W, et al. Imaging techniques for assessment of inflammatory bowel disease:

joint ECCO and ESGAR evidence-based consensus guidelines. J Crohns Colitis 2013; 7: 556-585(ガイドライン)

c) Dignass A, Eliakim R, Magro F, et al. Second European evidence-based consensus on the diagnosis and

management of ulcerative colitis part 1: definitions and diagnosis. J Crohns Colitis 2012; 6: 965-990(ガイドライン)

2.診断

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 50: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 23 —

2.診断 ― ❷画像検査

CDの診断に画像検査はどのように用いるか?(内視鏡以外)

Clinical Question 2-7

CQ 2-7 CDの診断に画像検査はどのように用いるか?(内視鏡以外)

ステートメント 推奨の強さ(Delphi 中央値)

エビデンスレベル

● 治療方針決定のため,または病変範囲,重症度および合併症の有無を把握する目的でX線造影検査や他の画像検査を行うことを推奨する.

1(9) C

● US,CT,MRI を主に治療前後の活動性評価や合併症の確認のために用いることを推奨する.

1(8) C

解説

CD の確定診断のためには,X 線造影検査(小腸造影,注腸 X 線検査,逆行性回腸造影)や内視鏡検査によって日本のクローン病診断基準における主要所見(縦走潰瘍,敷石像),副所見(消化管の広範囲に認める不整形〜類円型潰瘍またはアフタ)を確認することが極めて重要である 1),

(厚生科学研究費補助金特定疾患対策研究事業「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」班平成 24 年度総括・分担研究報告書,2013: p43-45 a)[検索期間外文献])(表1).実際,日本で確定診断された CD 患者の診断根拠は,87.4%が主要所見である縦走潰瘍または敷石像によると報告されている(J Gastroenterol 2014; 49: 93-99 b)[検索期間外文献]).日本の CD 診断基準には,US,CT,MRI などの画像検査に関する記載はなく,補助的な検査として行われている 1, a).一方,CD

は全消化管に病変をきたしうるため,大腸内視鏡検査や注腸 X 線検査で診断がついていても,大腸以外の消化管すなわち上部消化管や小腸の検索が必要である.治療方針の決定には病変部位(病型:小腸型,小腸大腸型,大腸型)や疾患パターン(モントリオール分類:炎症型,狭窄

表 1 クローン病の診断基準(2013年 1月改訂版)(1)主要所見  A.縦走潰瘍  B.敷石像  C.非乾酪性類上皮細胞肉芽腫(2)副所見  a.消化管の広範囲に認める不整形~類円形潰瘍またはアフタ  b.特徴的な肛門病変  c.特徴的な胃・十二指腸病変確診例:  [1]主要所見のAまたはBを有するもの.  [2]主要所見のCと副所見の aまたは bを有するもの.  [3]副所見の a,b,cすべてを有するもの.(文献 aより)

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 51: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 24 —

型,瘻孔形成型)を的確に把握することが重要である.必要に応じて上部消化管内視鏡,小腸造影,逆行性回腸造影,腹部 US,CT,MRI を併用し,これらを確認すべきである 2, 3),(J Crohns

Colitis 2013; 7: 556-585 c)[検索期間外文献]).カプセル内視鏡検査(CE)やバルーン内視鏡検査が普及しているが,狭窄病変を生じやすい CD に対して小腸造影は依然として小腸病変の検索に極めて有用である 2).CD 診断に対する有益性を各画像検査で比較検討した報告は多いが,診断確定に関する検討方法は統一されていない 4〜6).CE,CT(enterography),ileocolonoscopy および小腸造影を用いた前向き比較試験では,診断の感度/特異度は,CE で 83%/53%,CT で67%/100%,ileocolonoscopy で 67%/100%,小腸造影で 50%/100%と報告されている 7).小腸病変の検索を単一の画像検査でのみ行うことには限界があり,個々の症例の病態に応じて併用する必要がある.

US や CT,MRI では腸管壁の肥厚や周囲脂肪織の密度上昇で腸管炎症を評価可能であり,CT

や MRI では瘻孔や膿瘍形成の評価に役立つ 5).CT,MRI を用いた enterography や colonogra-

phy は,低侵襲で内視鏡検査により評価困難な狭窄合併例の病変確認や肛門部病変の評価に有用である 8),(Aliment Pharmacol Ther 2013; 37: 1121-1131 d)[検索期間外文献]).しかし,すべての施設で施行可能ではなく,腸管拡張に用いる前処置法(薬)などを含め,確立された方法はない現状にある.

文献

1) Yao T, Matsui T, Hiwatashi N. Crohn’s disesae in Japan: diagnostic criteria and epidemiology. Dis Colon

Rectum 2000; 43 (Suppl): s85-s93(横断)2) Van Assche G, Dignass A, Panes J, et al. The second European evidence-based Consensus on the diagnosis

and management of Crohn’s disease: definitions and diagnosis. J Crohns Colitis 2010; 4: 7-27(ガイドライン)3) Mowat C, Cole A, Windsor A, et al. Guidelines for the management of inflammatory bowel disease in

adults. Gut 2011; 60: 571-607(ガイドライン)4) Horsthuis K, Bipat S, Bennink RJ, et al. Inflammatory bowel disease diagnosed with US, MR, scintigraphy,

and CT: meta-analysis of prospective studies. Radiology 2008; 247: 64-79(メタ・観察)5) Panés J, Bouzas R, Chaparro M, et al. Systematic review: the use of ultrasonography, computed tomogra-

phy and magnetic resonance imaging for the diagnosis, assessment of activity and abdominal complica-

tions of Crohn’s disease. Aliment Pharmacol Ther 2011; 34: 125-145(メタ)6) Dionisio PM, Gurudu SR, Leighton JA, et al. Capsule endoscopy has a significantly higher diagnostic yield

in patients with suspected and established small-bowel Crohn’s disease: a meta-analysis. Am J Gastroen-

terol 2010; 105: 1240-1248(メタ・観察)7) Solem CA, Loftus EV Jr, Fletcher JG, et al. Small-bowel imaging in Crohn’s disease: a prospective, blinded,

4-way comparison trial. Gastrointest Endosc 2008; 68: 255-266(ランダム)8) Lee SS, Kim AY, Yang SK, et al. Crohn disease of the small bowel: comparison of CT enterography, MR

enterography, and small-bowel follow-through as diagnostic techniques. Radiology 2009; 251: 751-761(非ランダム)

【検索期間外文献】a) 松井敏幸ほか.クローン病診断基準(案).厚生科学研究費補助金特定疾患対策研究事業「難治性炎症性腸

管障害に関する調査研究」班平成 24 年度総括・分担研究報告書,2013: p43-45b) Hisabe T, Hirai F, Matsui T, et al. Evaluation of diagnostic criteria for Crohn’s disease in Japan. J Gastroen-

terol 2014; 49: 93-99(横断)c) Panes J, Bouhnik Y, Reinisch W, et al. Imaging techniques for assessment of inflammatory bowel disease:

joint ECCO and ESGAR evidence-based consensus guidelines. J Crohns Colitis 2013; 7: 556-585(ガイドライン)

d) Giles E, Barclay AR, Chippington S, et al. Systematic review: MRI enterography for assessment of small

bowel involvement in paediatric Crohn’s disease. Aliment Pharmacol Ther 2013; 37: 1121-1131(メタ)

2.診断

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 52: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

3.治療総論

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 53: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 26 —

Clinical Question 3-1

IBD患者は禁煙すべきか?

3.治療総論

CQ 3-1 IBD患者は禁煙すべきか?

ステートメント 推奨の強さ(Delphi 中央値)

エビデンスレベル

● UC患者では禁煙が病勢に悪影響を及ぼすとの報告もあるため,総合的な健康利益の観点から禁煙を促す際には,病勢の変化に注意しながら禁煙指導することを推奨する.

1(8) C

● CD患者に対し,禁煙指導することを推奨する. 1(9) C

解説

Beaugerie らは,診断の後に禁煙をした 32 人の UC 患者の予後を,禁煙前と禁煙後で比較し,禁煙後では活動期,入院,ステロイドや免疫抑制薬の使用期間が長かったと報告している.また,これら免疫抑制療法の投与期間は喫煙を継続した患者と比較しても長かったとしている 1).CD 患者において,喫煙者は外科手術のリスクが喫煙しない患者より高く,また術後の臨床的再発や再手術のリスクも喫煙しない患者に対して高率である 2),(J Crohns Colitis 2014; 8: 717-725 a)

[検索期間外文献]).CD 患者において,喫煙者はインフリキシマブに対する反応が減弱すると報告されている 3, 4).CD 患者において,タバコの摂取量に関しては,1日 10 本までの比較的軽い喫煙者でも,喫

煙しない患者との比較で活動期の期間が長く,免疫抑制薬使用期間が長いとの報告がある 5).カウンセリングとニコチン補充療法による Conses らの介入研究 6)によれば,1年以上禁煙に

成功した CD 患者は,再燃や副腎皮質ステロイドおよび免疫抑制薬使用が少なく,かつ,喫煙歴のない患者とほぼ同等と報告されている.

文献

1) Beaugerie L, Massot N, Carbonnel F, et al. Impact of cessation of smoking on the course of ulcerative coli-

tis. Am J Gastroenterol 2001; 96: 2113-2116(コホート)2) Reese GE, Nanidis T, Borysiewicz C, et al. The effect of smoking after surgery for Crohn’s disease: a meta-

analysis of observational studies. Int J Colorectal Dis 2008; 23: 1213-1221(メタ・観察)3) Parsi MA, Achkar JP, Richardson S, et al. Predictors of response to infliximab in patients with Crohn’s dis-

ease. Gastroenterology 2002; 123: 707-713(コホート)

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 54: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 27 —

4) Arnott ID, McNeill G, Satsangi J. An analysis of factors influencing short-term and sustained response to

infliximab treatment for Crohn’s disease. Aliment Pharmacol Ther 2003; 17: 1451-1457(コホート)5) Seksik P, Nion-Larmurier I, Sokol H, et al. Effects of light smoking consumption on the clinical course of

Crohn’s disease. Inflamm Bowel Dis 2009; 15: 734-741(コホート)6) Cosnes J, Beaugerie L, Carbonnel F, et al. Smoking cessation and the course of Crohn’s disease: an inter-

vention study. Gastroenterology 2001; 120: 1093-1099(非ランダム)

【検索期間外文献】a) Parkes GC, Whelan K, Lindsay JO. Smoking in inflammatory bowel disease: Impact on disease course and

insights into the aetiology of its effect. J Crohns Colitis 2014; 8: 717-725(メタ)

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 55: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 28 —

Clinical Question 3-23.治療総論

IBD患者は禁酒すべきか?

CQ 3-2 IBD患者は禁酒すべきか?

ステートメント 推奨の強さ(Delphi 中央値)

エビデンスレベル

● 禁酒を促す根拠はないが,活動性や合併症などの病状を考慮して,適宜,過度の飲酒を控えるよう指導することを推奨する.

1(8) D

解説

UC および CD 患者において,飲酒と疾患活動性や予後との関連に関する研究は少ない.しかし,IBD 患者は過敏性腸症候群患者と比較して,飲酒による症状の悪化をより多く訴えやすいと報告されている 1).

文献

1) Swanson GR, Sedghi S, Farhadi A, et al. Pattern of alcohol consumption and its effect on gastrointestinal

symptoms in inflammatory bowel disease. Alcohol 2010; 44: 223-228(横断)

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 56: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

4.IBDに対する治療介入法

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 57: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 30 —

解説

5-ASA 製剤(経口・局所製剤)の UC における寛解導入,維持の有効性,安全性については多くの RCT,システマティックレビューが存在する 1, 2),(Cochrane Database Syst Rev 2012; 11:

CD004118 a), Cochrane Database Syst Rev 2012; 10: CD000543 b), Cochrane Database Syst Rev

2012; 10: CD000544 c)[検索期間外文献]).日本で使用可能な経口メサラジン製剤であるペンタサとアサコールでは病変部へのメサラジンの送達方法に違いがあり,ペンタサが時間依存性放出製剤であるのに対し,アサコールは pH 依存性放出製剤である.両者の UC に対する有効性の直接的比較試験は存在するが,用量設定が不適切でありどちらが優れているかは一概にはいえず,臨床的にはほぼ差はない.経口サラゾスルファピリジン(SASP)は経口メサラジン製剤より UC の寛解導入率では差がな

いが,寛解維持に関しては優れている b, c).一方,SASP のほうが寛解導入使用時に副作用や不耐症例が多く,可逆性の男性不妊にも注意が必要である b).そもそも SASP は,5-ASA とスルファピリジンがアゾ結合した化合物で,腸内細菌の作用でアゾ結合が外れることにより,5-ASA が放出されて作用を発揮する.もう一方の分解産物であるスルファピリジンが多くの副作用の原因とされ,そのため 5-ASA だけを成分としたメサラジン製剤が開発された経緯がある.

CD における 5-ASA 製剤の効果をみたスタディは UC のものより圧倒的に少ない.SASP では 1970〜1980 年代の 2報の RCT にて CD の寛解導入の有用性が示されているが,ステロイドとの比較ではステロイドより劣ることが示されている 3).一方,メサラジン製剤では,ペンタサの 3報のメタアナリシスにて,プラセボより有意に CDAI を減少させることが示されているが 4),それが臨床的に有用なほどかどうかは疑問とされており,また寛解導入効果でプラセボに対す

Clinical Question 4-14.IBD に対する治療介入法

IBD治療における 5-ASA製剤の有益性・有害性と適応は?

CQ 4-1 IBD治療における 5-ASA製剤の有益性・有害性と適応は?

ステートメント 推奨の強さ(Delphi 中央値)

エビデンスレベル

● 5-ASA製剤は活動期UCの寛解導入に有効であり,寛解期UCの再燃予防効果も認められる. - A

● 5-ASA製剤のCDに対する効果はUCに対する効果より概して低く,活動期CDに対しては活動性を抑制する効果はあるものの,寛解維持の有効性は証明されていない.

- B

● 5-ASA製剤によるUCの発癌予防効果は確定的でない. - B

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 58: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 31 —

る有意差は示されていない 3).CD の寛解維持効果については,5-ASA 製剤は有効でないことが十分な N のある placebo controlled trial のメタアナリシスで示されている 5).一方,CD の手術後の再燃予防に関しては,一定の効果があることがメタアナリシスで示されているが,N の大きな 2つのスタディで有意差がないことや出版バイアスの可能性から,非常に確からしいとはいえない 6).5-ASA 製剤の UC からの発癌予防効果については複数のメタアナリシスがある.肯定的 7),

(Inflamm Bowel Dis 2015; 21: 2562-2569 d)[検索期間外文献])・否定的(Am J Gastroenterol 2012;

107: 1298-304 e)[検索期間外文献])いずれの結論のものもあり,現時点では確定的とはいえない.

文献

1) Ford AC, Achkar JP, Khan K, et al. Efficacy of 5-aminosalicylates in ulcerative colitis: systematic review

and meta-analysis. Am J Gastroenterol 2011; 106: 601-616(メタ)2) Marshall JK, Thabane M, Steinhart AH, et al. Rectal 5-aminosalicylic acid for induction of remission in

ulcerative colitis (Review). Cochrane Database Syst Rev 2010; 1: CD004115(メタ)3) Lim WC, Hanauer S. Aminosalicylates for induction of remission or response in Crohn’s disease (Review).

Cochrane Database Syst Rev 2010; 12: CD008870(メタ)4) Hanauer SB, Strömberg U. Oral Pentasa in the treatment of active Crohn’s disease: a meta-analysis of dou-

ble-blind, placebo-controlled trials. Clin Gastroenterol Hepatol 2004; 2: 379-388(メタ)5) Akobeng AK, Gardener E. Oral 5-aminlsalicylic acid for maintenance of medically-induced remission in

Crohn’s disease (Review). Cochrane Database Syst Rev 2009; 4: CD003715(メタ)6) Gordon M, Naidoo K, Thomas AG, et al. Oral 5-aminlsalicylic acid for maintenance of surgically-induced

remission in Crohn’s disease (Review). Cochrane Database Syst Rev 2011; 1: CD008414(メタ)7) Velayos FS, Terdiman JP, Walsh JM. Effect of 5-aminosalicylate use on colorectal cancer and dysplasia risk:

a systematic review and meta-analysis of observational studies. Am J Gastroenterol 2005; 100: 1345-1353(メタ・観察)

【検索期間外文献】a) Marshall JK, Thabane M, Steinhart AH, et al. Rectal 5-aminosalicylic acid for maintenance of remission in

ulcerative colitis (Review). Cochrane Database Syst Rev 2012; 11: CD004118(メタ)b) Feagan BG, MacDonald JK. Oral 5-aminosalicylic acid for induction of remission in ulcerative colitis.

Cochrane Database Syst Rev 2012; 10: CD000543(メタ)c) Feagan BG, MacDonald JK. Oral 5-aminosalicylic acid for maintenance of remission in ulcerative colitis

(Review). Cochrane Database Syst Rev 2012; 10: CD000544(メタ)d) O’Connor A, Packey CD, Akbari M, et al. Mesalamine, but not sulfasalazine, reduces the risk of colorectal

neoplasia in patients with inflammatory bowel disease: an agent-specific systematic review and meta-

analysis. Inflamm Bowel Dis 2015; 21: 2562-2569 (メタ・観察)e) Nguyen CG, Gulamhusein A, Bernstein CN. 5-aminosalicylic acid is not protective against colorectal can-

cer in inflammatory bowel disease: a meta-analysis of non-referral populations. Am J Gastroenterol 2012;

107: 1298-1304(メタ・観察)

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 59: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 32 —

Clinical Question 4-24.IBD に対する治療介入法

IBD治療における副腎皮質ステロイドの有益性・有害性と適応は?

CQ 4-2 IBD治療における副腎皮質ステロイドの有益性・有害性と適応は?

ステートメント 推奨の強さ(Delphi 中央値)

エビデンスレベル

● 副腎皮質ステロイドは強力な抗炎症作用を有し,UCおよびCDの寛解導入に有用である. - B

● 副腎皮質ステロイドに寛解維持効果はなく長期投与による副作用もあり,寛解維持に有用ではない. - C

解説

副腎皮質ステロイド単独での寛解導入効果については,UC,CD とも欧米で 1960 年代からRCT が行われ,メタアナリシスでもプラセボに対して寛解導入効果が示されている 1, 2).しかし,古い時代の RCT が多く,重症度,病変部位,ステロイドの種類,投与法,割り付けなどに het-

erogeneity があり,質の高いメタアナリシスとはいえないことに留意したい.新しいタイプの5-ASA 製剤,抗 TNF 製剤などの新しい治療法が登場しているので,適応となる重症度や病型は今後のスタディが待たれる.副腎皮質ステロイドには寛解維持効果がないことは繰り返し強調されているが,CD ではメタ

アナリシスで証明されている 3)ものの,UC では古い時代の RCT 2 本に過ぎない 4),(Digestion

1981; 22: 263-270 a)[検索期間外文献]).一方で,易感染性,耐糖能低下,創傷治癒遅延,骨粗鬆症など問題となる副作用が多いため,むやみな長期投与や高用量投与は避けるべきであり,寛解維持にも用いるべきではない.寛解導入に用いる場合にも,効果判定後には漸減中止することが必要であるが,漸減法については明確なエビデンスはない.高用量投与や止むを得ず長期投与せざるを得ない場合には,白内障,緑内障,副腎皮質機能不全に注意を払うとともに,ニューモシスチス肺炎に対する予防投与や骨粗鬆症に対するビスホスホネート製剤の投与(詳細は「ステロイド性骨粗鬆症の管理と治療ガイドライン 2014 年改訂版」(日本骨代謝学会ステロイド性骨粗鬆症の管理と治療ガイドライン改訂委員会編集)参照)が望ましい.

古典的な副腎皮質ステロイド(プレドニゾロンなど)に比べて全身性副作用を軽減したブデソニドは,CD に対する寛解導入効果を有するが,その効果は古典的な副腎皮質ステロイドよりやや低いことが示されている 5)(日本未承認).寛解維持については否定的である 6).

経口投与以外に,副腎皮質ステロイド静脈内投与による全身投与も行われているが,明確なエビデンスはない.また,UC に対しては,経肛門的投与法(注腸製剤,坐剤)も有効であるが,5-ASA 製剤と比較して寛解導入効果は低く,第一選択とすべきではない(第 5章参照).

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 60: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 33 —

文献

1) Ford AC, Bernstein CN, Khan KJ, et al. Glucocorticosteroid therapy in inflammatory bowel disease: sys-

tematic review and meta-analysis. Am J Gastroenterol 2011; 106: 590-599(メタ)2) Benchimol Eric I, Seow Cynthia H, Steinhart A Hillary, et al. Traditional corticosteroids for induction of

remission in Crohn’s disease. Cochrane Database Syst Rev 2008; 2: CD006792(メタ)3) Steinhart AH, Ewe K, Griffiths AM, et al. Corticosteroids for maintenance of remission in Crohn’s disease.

Cochrane Database Syst Rev 2003; 4: CD000301(メタ)4) Lennard-Jones JE, Misiewocz JJ, Connell AM, et al. Prednisone as maintenance treatment of ulcerative coli-

tis in remission. Lancet 1965; 285 (7378): 188-189(ランダム)5) Seow CH, Benchimol EI, Griffiths AM, et al. Budesonide for induction of remission in Crohn’s disease.

Cochrane Database Syst Rev 2008; 3: CD000296(メタ)6) Benchimol EI, Seow CH, Otley AR, et al. Budesonide for maintenance of remission in Crohn’s disease.

Cochrane Database Syst Rev 2009; 1: CD002913(メタ)

【検索期間外文献】a) Powell-Tuck J, Bown RL, Chambers TJ, et al. A controlled trial of alternate day prednisolone as a mainte-

nance treatment of ulcerative colitis in remission. Digestion 1981; 22: 263-270(ランダム)

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 61: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 34 —

Clinical Question 4-34.IBD に対する治療介入法

IBD治療における免疫調節薬の有益性・有害性と適応は?

CQ 4-3 IBD治療における免疫調節薬の有益性・有害性と適応は?

ステートメント 推奨の強さ(Delphi 中央値)

エビデンスレベル

● AZA/6-MPは寛解期UCにおいて再燃予防効果があり,特にステロイド依存例や 5-ASA製剤で寛解維持できない例の寛解維持療法に有効である.

- A

● AZA/6-MPは寛解期CDに対して,寛解維持効果がある.また,投与することは外科手術の回避に有用であり,さらに,手術後の臨床的再燃および内視鏡的再燃の予防にも有効である.また,IFXとの併用は,IFX単独より寛解導入率を上昇させる.

- A

● AZA/6-MPの使用はリンパ腫発生のリスクを上昇させる.また,その他の副作用としては悪心などの消化器症状,骨髄抑制,脱毛や膵炎などがあげられる.

- A

● TACは活動期UCの寛解導入に有効であるが,長期使用の有効性・安全性に関しては十分なデータはない. - C

● CyAは重症かつ難治の活動期UCにおける寛解導入療法として有効であり,それは IFXの効果と同等である. - C

解説

アザチオプリン(AZA)/メルカプトプリン(6-MP)の UC の寛解維持効果についての RCT は1970 年代にはじめて発表されている 1),(Cochrane Database Syst Rev 2012; 9: CD000478 a)[検索期間外文献])が,placebo control の RCT 自体は 4報程度と決して多くない.むしろ,長年の経験とそれに対する後ろ向き研究によってその効果について多く検証されている.

AZA/6-MP の CD の寛解維持効果に関するデータは UC よりも多い 2),(Am J Gastroenterol

2014; 109: 23-34 b)[検索期間外文献]).2000 年代以降では術後再発予防の前向きスタディがいくつか行われており,臨床的,内視鏡的再燃予防に有効性が示されている 3).また,10 報以上の後ろ向き解析のレビューで,初回手術を回避する効果についても有用性が示されている b).インフリキシマブ(IFX)と AZA の併用が,IFX 単独より CD の寛解導入率が上回るのは,1つの前向き placebo controlled study(SONIC study)で示されている(Cochrane Database Syst Rev 2013;

4: CD000545 c)[検索期間外文献]).AZA/6-MP によるリンパ腫発症リスクの上昇については,メタアナリシス 4),多施設大規模

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 62: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 35 —

コホート 5),米国の nation wide cohort(Gastroenterology 2013; 145: 1007-1015 d)[検索期間外文献])などで確認されている.いずれも 4倍程度のリスク上昇が報告されている.また,服薬中止によりリスクは再度減少する.IFX との併用で,まれに致死的な肝脾 T 細胞リンパ腫の発症をきたすことが知られており,IBD 患者では全世界で 40 例ほどの報告がある.そのほとんどが,35 歳未満の男性である(J Crohns Colitis 2014; 8: 31-44 e)[検索期間外文献]).AZA/6-MP その他の重要な副作用としては骨髄抑制があげられるが,好中球が 1,000/µL を切るような重篤な骨髄抑制は 1%程度とされる 6).タクロリムス(TAC)の UC の寛解導入の有効性を示した RCT は日本で行われた phase Ⅱ,

phase Ⅲの治験のデータのみである 7, 8).シクロスポリン(CyA)の重症かつステロイド抵抗性のUC に対する寛解導入効果をみた placebo controlled RCT は少数例の 1報 9)しかない.その後,IFX との比較試験で効果は同等であることが示されている(Lancet 2012; 380: 1909-1915 f)[検索期間外文献]).TAC,CyA とも腎障害の副作用がある.

文献

1) Kahn KJ, Dubinsky MC, Ford AC, et al. Efficacy of immunosuppressive therapy for inflammatory bowel

disease: a systematic review and meta-analysis. Am J Gastroenterol 2011; 106: 630-642(メタ)2) Prefontaine E, Sutherland LR, MacDonald JK, et al. Azathioprine and 6-mercaptopurine for maintenance

of remission in Crohn’s disease (Review). Cochrane Database Syst Rev 2009; 1: CD000067(メタ)3) Peyrin-Biroulet L, Deltenre P, Ardizzone S, et al. Azathioprine and 6-mercaptopurine for the prevention of

postoperative recurrence in Crohn’s disease: a meta-analysis. Am J Gastroenterol 2009; 104: 2089-2096(メタ)4) Kandiel A, Fraser AG, Korelitz BI, et al. Increased risk of lymphoma among inflammatory bowel disease

patients treated with azathioprine and 6-mercaptopurine. Gut 2005; 54: 1121-1125(メタ・観察)5) Beaugerie L, Brousse N, Bouvier AM, et al. Lymphoproliferative disorders in patients receiving thiop-

urines for inflammatory bowel disease: a prospective observational cohort study. Lancet 2009; 374; 1617-

1625(コホート)6) Gisbert JP, Gomollón F. Thiopurine-induced myelotoxicity in patients with inflammatory bowel disease: a

review. Am J Gastroenterol 2008; 103: 1783-1800(メタ・観察)7) Baumgart DC, MacDonald JK, Feagan B. Tacrolimus (FK506) for induction of remission in refractory ulcer-

ative colitis. Cochrane Database Syst Rev 2008; 3: CD007216(メタ)8) Ogata H, Kato J, Hirai F, et al. Double-blind, placebo-controlled trial of oral tacrolimus (FK506) in the

management of hospitalized patients with steroid-refractory ulcerative colitis. Inflamm Bowl Dis 2012; 18:

803-808(ランダム)9) Shibolet O, Regushevskaya E, Brezis M, et al. Cyclosporine A for induction of remission in severe ulcera-

tive colitis (Review). Cochrane Database Syst Rev 2005; 1; CD004277(メタ)

【検索期間外文献】a) Timmer A, McDonald JWD, Tsoulis DJ, et al. Azathioprine and 6-mercaptopurine for maintenance of

remission in ulcerative colitis (Review). Cochrane Database Syst Rev 2012; 9: CD000478(メタ)b) Chatu S, Subramanian V, Saxena S, et al. The role of thiopurines in reducing the need for surgical resection in

Crohn’s disease: a systematic review and meta-analysis. Am J Gastroenterol 2014; 109: 23-34(メタ・観察)c) Chande N, Tsoulis DJ, MacDonald JK. Azathioprine or 6-mercaptopurine for induction of remission in

Crohn’s disease (Review). Cochrane Database Syst Rev 2013; 4: CD000545(メタ)d) Khan N, Abbas AM, Lichtenstein GR, et al. Risk of lymphoma in patients with ulcerative colitis treated with

thiopurines: a nationwide retrospective cohort study. Gastroenterology 2013; 145: 1007-1015(コホート)e) Magro F, Peyrin-Biroulet L, Sokol H, et al. Extra-intestinal malignancies in inflammatory bowel disease:

results of the 3rd ECCO Pathogenesis Scientific Workshop (III). J Crohns Colitis 2014; 8: 31-44(ケースシリーズ)

f) Laharie D, Bourreille A, Branche J, et al. Ciclosporin versus infliximab in patients with severe ulcerative

colitis refractory to intravenous steroids: a parallel, open-label randomized controlled trial. Lancet 2012;

380: 1909-1915(ランダム)

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 63: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 36 —

Clinical Question 4-44.IBD に対する治療介入法

IBD治療における抗菌薬,probiotics の有益性・有害性と適応は?

CQ 4-4 IBD治療における抗菌薬,probiotics の有益性・有害性と適応は?

ステートメント 推奨の強さ(Delphi 中央値)

エビデンスレベル

● CDに対して,抗菌薬が寛解導入に有効である可能性がある. - C

● また,抗菌薬投与により,CD痔瘻の排膿が軽減する. - B

● UCに対して,抗菌薬は寛解導入に有効である可能性があるが,使用する抗菌薬の種類や投与期間は確立されていない. - C

● また,UC術後の回腸囊炎(pouchitis)に対して有効である. - B

解説

IBD の発症に腸内細菌の関与が示唆されていることから,IBD に対して抗菌薬や,probiotics,prebiotics 投与による治療が試みられてきた(Nat Rev Gastroenterol Hepatol 2012; 9: 599 a)[検索期間外文献]).症状増悪因子としての腸内細菌叢の抑制以外に,菌血症・膿瘍・日和見感染などの予防・治療の作用のほか,一部の薬剤(シプロフロキサシン(CPFX),メトロニダゾール

(MNZ),マクロライド系薬など)は immunomodulator として作用する可能性も示唆されている 1).

活動期 CD に対して,2つのメタアナリシスで,CPFX,MNZ の単独または併用による寛解導入効果が示されている 2),(Exp Ther Med 2012; 4: 1051 b)[検索期間外文献])が,具体的な適応や投与法は確立されていない.1つのメタアナリシスで,CPFX,MNZ 投与によって CD の痔瘻の排膿が軽減することが示されている 2).

UC に対する抗菌薬投与の有用性について,2つのメタアナリシスで弱い有効性が報告されているが 3, 4, b),各 RCT によって投与薬剤や期間が異なっており,UC 寛解導入治療として推奨できない.過去のステロイド強力(大量)静注療法のレジメンでは,感染合併を想定して短期間予防的に広域抗菌薬を投与すると記載されているが 5),重症 UC に対する抗菌薬の治療効果は証明されておらず,感染合併を想定して投与した場合でも漫然と投与すべきではない.また,日本から,UC に対する抗菌薬 3剤併用(ATM)療法による有効性が報告されている 6).

UC 術後回腸囊炎(pouchitis)に対しては,CPFX,MNZ などの単独または併用が有効とされ,標準治療として投与される(CQ 4-8 参照)7).

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 64: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 37 —

抗菌薬による副作用として,MNZ の高用量長期投与による末梢神経障害に留意する.CPFX

のほうが副作用が少なく,受容性が高い.IBD に対する probiotics 投与は,VSL#3 や E. coli Nissle 1917(日本で未発売)に関する 3つの

メタアナリシスで,VSL#3 が UC に対して寛解導入および維持効果があることが示されたが,CD や回腸囊炎に対する有効性は示されていない 8, 9),(Inflam Bowel Dis 2014; 20: 21-355 c)[検索期間外文献]).

文献

1) Morikawa K, Watabe H, Araake M, et al. Modulatory effect of antibiotics on cytokine production by

human monocytes in vitro. Antimicrob Agents Chemother 1996; 40: 1366-1370(ケースシリーズ)2) Khan KJ, Ullman TA, Ford AC, et al. Antibiotic therapy in inflammatory bowel disease: a systematic

review and meta-analysis. Am J Gastroenterol 2011; 106: 661-673(メタ)3) Rahimi R, Nikfar S, Rezaie A, et al. A meta-analysis of broad-spectrum antibiotic therapy in patients with

active Crohn’s disease. Clin Ther 2006; 28: 1983-1988(メタ)4) Rahimi R, Nikfar S, Rezaie A, et al. A meta-analysis of antibiotic therapy for active ulcerative colitis. Dig

Dis Sci 2007; 52: 2920-2925(メタ)5) Truelove SC, Jewell DP. Intensive intravenous regimen for severe attacks of ulcerative colitis. Lancet 1974;

1: 1067-1070(ケースコントロール)6) Ohkusa T, Kato K, Terao S, et al. Newly developed antibiotic combination therapy for ulcerative colitis: a

double-blind placebo-controlled multicenter trial. Am J Gastroenterol 2010; 105: 1820-1829(ケースコントロール)

7) Holubar SD, Cima RR, Sandborn WJ, et al. Treatment and prevention of pouchitis after ileal pouch-anal

anastomosis for chronic ulcerative colitis (review). Cochrane Database Syst Rev 2010; 6: CD001176(メタ)8) Sang LX, Chang B, Zhang WL, et al. Remission induction and maintenance effect of probiotics on ulcera-

tive colitis: a meta-analysis. World J Gastroenterol 2010; 16: 1908-1915(メタ)9) Naidoo K, Gordon M, Fagbemi AO, et al. Probiotics for maintenance of remission in ulcerative colitis.

Cochrane Database Syst Rev 2011; 7: CD007443(メタ)

【検索期間外文献】a) Manichanh C, Borruel N, Casellas F, et al. The gut microbiota in IBD. Nat Rev Gastroenterol Hepatol 2012;

9: 599-608(メタ)b) Wang SL, Wang ZR, Yang CQ. Meta-analysis of broad-spectrum antibiotic therapy in patients with active

inflammatory bowel disease. Exp Ther Med 2012; 4: 1051-1056(メタ)c) Shen J, Zuo ZX, Mao AP. Effect of probiotics on inducing remission and maintaining therapy in ulcerative

colitis, Crohn’s disease, and pouchitis: meta-analysis of randomized controlled trials. Inflam Bowel Dis

2014; 20: 21-35(メタ)

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 65: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 38 —

Clinical Question 4-54.IBD に対する治療介入法

IBD治療における抗TNF製剤の効果は?

CQ 4-5 IBD治療における抗TNF製剤の効果は?

ステートメント 推奨の強さ(Delphi 中央値)

エビデンスレベル

● ステロイド無効あるいはステロイド投与中の中等症〜重症のUCの寛解導入において,抗TNF製剤は有効である. - A

● 炎症活動性を有するCDの寛解導入および寛解維持に抗TNF製剤は有効である. - A

解説

1.UCに対する効果メタアナリシスおよびランダム化比較試験(RCT)によると,ステロイド無効例あるいはステ

ロイド内服中の中等症あるいは重症の UC 患者の寛解導入に対して,インフリキシマブ 1)およびアダリムマブ 2)は有効である.投与初期に抗 TNF 製剤が有効であった症例における二次無効の割合は約 5年間の経過観察で約 60%と報告されている(J Clin Gastroenterol 2015; 49: 675-682 a)

[検索期間外文献]).

2.CDに対する効果2011 年のメタアナリシス 1)によると炎症活動性のある CD の寛解導入に対して,インフリキ

シマブもアダリムマブも有効である.また,前者は寛解期の CD の再発の予防に有効であるが,後者の再発予防に関しては現時点で疑問がある.米国,カナダ,ベルギー,フランスの合計 52の施設の多施設共同 RCT 3)によると中等症〜重症の CD でインフリキシマブ不耐症あるいは二次無効の患者の寛解導入に対してアダリムマブ初回 160mg,2週間後 80mg の投与は有効である.ステロイド依存性あるいは高用量のメサラジンあるいはステロイド抵抗性の中等症〜重症の CD 患者を対象に行った RCT 4)によると,インフリキシマブ単剤投与群よりもインフリキシマブにアザチオプリンを併用した群において,投与開始後 26 週間後の臨床的な寛解率は有意に高い.抗 TNF 製剤と免疫抑制薬を併用して寛解状態に入った CD 患者に対して,いつまで抗TNF 製剤の投与を続けるべきかどうかに関しては,現時点で不明である.ただし,ベルギー,フランスの合計 20 施設の 115 人の寛解期の CD 患者を対象とした前向きのコホート研究 5)によると,インフリキシマブの投与中止後 1年以内に 50%の患者において CD の再燃が観察された.CD の痔瘻に対して,抗 TNF 製剤の有効性が示されている(Gut 2014; 63: 1381-1392 b)[検索期間外文献]).

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 66: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 39 —

3.抗 TNF製剤の副作用抗 TNF 製剤の投与により肺結核,B 型肝炎などの感染症が活性化されることが報告されてい

る 6, 7).したがって,抗 TNF 製剤投与開始前に潜在性肺結核,B 型肝炎ウイルス感染症を否定しておくことが重要である.潜在性肺結核の診断には胸部 X 線に加えてツベルクリン反応およびinterferon-gamma release sssays を行う 8).B 型肝炎ウイルス感染症に関しては,HBs 抗原,抗HBs 抗体,抗 HBc 抗体などの検査を行う(B 型肝炎治療ガイドライン,2014 c)[検索期間外文献]).後ろ向き観察研究によると皮膚症状は約 30%に起こると報告されている(Ann Intern Med 2016;

164: 10-22 d)[検索期間外文献]),また,脱髄疾患や末梢神経障害も報告されている.UC 患者に対して寛解導入目的で投与されたインフリキシマブの副作用に関しては,2011 年

のメタアナリシス 1)によると,投与時の反応(投与時反応あるいは注射部位反応),頭痛,皮疹,関節痛のいずれも,プラセボ群と比較してその頻度に有意差は認められなかった.また,活動期の CD の寛解導入目的で投与された抗 TNF 製剤に関しても,感染,注射部位の反応,頭痛,腹痛,悪心・嘔吐,関節痛あるいは筋肉痛,発熱のいずれに関しても,プラセボ群と比較してその頻度に有意差を認められなかった.北米の CD 患者約 6,000 人を対象に行われた前向きコホート研究 9)によるとインフリキシマ

ブは重症感染症の有意な危険因子ではない[調整オッズ比は 0.991(95%CI 0.641〜1.535)].同じコホートを用いた前向きの観察研究(Am J Gastroenterol 2014; 109: 212-223 e)[検索期間外文献])によるとインフリキシマブ単独投与の悪性腫瘍発症に対する調整ハザード比は 0.59(95%CI 0.28〜1.22)であり,インフリキシマブ単独投与は悪性腫瘍に対する有意な危険因子ではない.ただし,チオプリン製剤と併用された場合,非 Hodgkin リンパ腫 10)や肝脾リンパ腫 11)の有意な危険因子である.また,インフリキシマブの効果をみる目的の RCT 12)の結果によると,プラセボ群に比べてインフリキシマブ投与群で抗核抗体,抗 DNA 抗体の出現頻度が有意に高い.また,アダリムマブの効果をみる目的の RCT 2)の結果によると,プラセボ群に比べてアダリムマブ投与群で注射部位の炎症あるいは白血球減少の出現頻度が有意に高い.

文献

1) Ford AC, Sandborn WJ, Khan KJ, et al. Efficacy of biological therapies in inflammatory bowel disease: sys-

tematic review and meta-analysis. Am J Gastroenterol 2011; 106: 644-659(メタ)2) Sandborn WJ, van Assche G, Reinisch W, et al. Adalimumab induces and maintains clinical remission in

patients with moderate-to-severe ulcerative colitis. Gastroenterology 2012; 142: 257-265(ランダム)3) Sandborn WJ, Rutgeerts P, Enns R, et al. Adalimumab induction therapy for Crohn disease previously

treated with infliximab: a randomized trial. Ann Intern Med 2007; 146: 829-838(ランダム)4) Colombel JF, Sandborn WJ, Reinisch W, et al. Infliximab, azathioprine, or combination therapy for Crohn’s

disease. N Engl J Med 2010; 362: 1383-1395(ランダム)5) Louis E, Mary JY, Vernier-Massouille G, et al. Maintenance of remission among patients with Crohn’s dis-

ease on antimetabolite therapy after infliximab therapy is stopped. Gastroenterology 2012; 142: 63-70(コホート)

6) Askling J, Fored CM, Brandt L, et al. Risk and case characteristics of tuberculosis in rheumatoid arthritis

associated with tumor necrosis factor antagonists in Sweden. Arthritis Rheum 2005; 52: 1986-1992(コホート)

7) Ryu HH, Lee EY, Shin K, et al. Hepatitis B virus reactivation in rheumatoid arthritis and ankylosing

spondylitis patients treated with anti-TNFalpha agents: a retrospective analysis of 49 cases. Clin Rheuma-

tol 2012; 31: 931-936(コホート)8) Kornbluth A, Sachar DB; Practice Parameters Committee of the American College of G. Ulcerative colitis

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 67: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 40 —

practice guidelines in adults: American College Of Gastroenterology, Practice Parameters Committee. Am

J Gastroenterol 2010; 105: 501-523(ガイドライン)9) Lichtenstein GR, Feagan BG, Cohen RD, et al. Serious infections and mortality in association with thera-

pies for Crohn’s disease: TREAT registry. Clin Gastroenterol Hepatol 2006; 4: 621-630(コホート)10) Siegel CA, Marden SM, Persing SM, et al. Risk of lymphoma associated with combination anti-tumor

necrosis factor and immunomodulator therapy for the treatment of Crohn’s disease: a meta-analysis. Clin

Gastroenterol Hepatol 2009; 7: 874-881(メタ・観察)11) Kotlyar DS, Osterman MT, Diamond RH, et al. A systematic review of factors that contribute to

hepatosplenic T-cell lymphoma in patients with inflammatory bowel disease. Clin Gastroenterol Hepatol

2011; 9: 36-41(メタ)12) Rutgeerts P, Sandborn WJ, Feagan BG, et al. Infliximab for induction and maintenance therapy for ulcera-

tive colitis. N Engl J Med 2005; 353: 2462-2476(ランダム)

【検索期間外文献】a) Ma C, Huang V, Fedorak DK, et al. Outpatient ulcerative colitis primary anti-TNF responders receiving

adalimumab or infliximab maintenance therapy have similar rates of secondary loss of response. J Clin

Gastroenterol 2015; 49: 675-682(コホート)b) Gecse KB, Bemelman W, Kamm MA, et al. A global consensus on the classification, diagnosis and multi-

disciplinary treatment of perianal fistulising Crohn’s disease. Gut 2014; 63: 1381-1392(ガイドライン)c) 日本肝臓学会肝炎診療ガイドライン作成委員会.B 型肝炎治療ガイドライン,2014(ガイドライン)d) Cleynen I, Van Moerkercke W, Billiet T, et al. Characteristics of skin lesions associated with anti-tumor

necrosis factor therapy in patients with inflammatory bowel disease: a cohort study. Ann Intern Med 2016;

164: 10-22(コホート)e) Lichtenstein GR, Feagan BG, Cohen RD, et al. Drug therapies and the risk of malignancy in crohn’s dis-

ease: results from the TREAT Registry. Am J Gastroenterol 2014; 109: 212-223(コホート)

4.IBD に対する治療介入法

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 68: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 41 —

Clinical Question 4-64.IBD に対する治療介入法

IBD治療における栄養療法の有益性・有害性と適応は?

CQ 4-6 IBD治療における栄養療法の有益性・有害性と適応は?

ステートメント 推奨の強さ(Delphi 中央値)

エビデンスレベル

● UCに対する経腸栄養療法,中心静脈栄養などの栄養療法単独での寛解導入効果は明らかではなく,薬物療法や血球成分除去療法を主体とすべきであり,安易に食餌制限を強いるべきではない.

- C

● 活動期CDに対する寛解導入療法として経腸栄養療法は有効である.経腸栄養療法は安全面で優れているが,治療に対する受容が困難な場合がある.

- C

● 成分栄養療法はCDの寛解維持に有効である. - B

解説

CD と異なり,UC に対しては栄養療法(経腸栄養療法,中心静脈栄養療法など)そのものに寛解導入効果はない 1).急性期の栄養管理は必要であるが,寛解導入目的で栄養療法を用いることは適切ではない 2).寛解期についても UC では CD と異なり,食餌療法や在宅栄養療法の有効性に関するエビデンスは存在しない.多くの患者は寛解期にあっても自主的に食餌制限を行い,乳製品などを回避する傾向がみられる 3).しかしながら,その再燃予防効果は明らかではなく,逆にカルシウムなどの欠乏が指摘されている 3).特に寛解期においては安易に不必要な食餌制限を行って,栄養維持を妨げたり,QOL を損なったりすべきでない.

活動期 CD に対する経腸栄養療法の寛解導入効果は,副腎皮質ステロイドと比べやや劣る(オッズ比 0.3 倍,95%CI 0.17〜0.52)ことがメタアナリシスで示されている 4).このため,欧米において成人 CD に対する栄養療法は,主に副腎皮質ステロイドの代用や急性期の栄養改善目的での使用にとどまっている 5, 6).一方,日本からは,成分栄養剤による経腸栄養療法は副腎皮質ステロイドと比べ寛解導入率が高く,特に腸管病変の改善に優れているとの報告があり 7),CD 治療指針では寛解導入治療の選択肢として示されている(厚生科学研究費補助金難治性疾患克服事業「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」班(渡辺班)平成 25 年度総括・分担研究報告書別冊,2014 a)[検索期間外文献]).経腸栄養療法は,副腎皮質ステロイドなどの薬物療法より安全面で優れている.しかし,受容性の面で治療継続が困難な場合もある 8).消化態栄養剤はアミノ酸やオリゴペプチドを窒素源とし脂肪の含有量が少ない経腸栄養剤であるため,腸管での消化吸収が容易である.消化態栄養剤のなかで成分栄養剤は,窒素源がアミノ酸で脂肪をほとんど含まない.半消化態栄養剤は蛋白質を窒素源とし,脂肪もある程度含有する経腸栄養剤である.

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 69: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 42 —

半消化態栄養剤のほうが,各種栄養素がバランスよく配合され,経口摂取は容易である.活動期 CD に対する各種経腸栄養剤の治療効果の差異については多くのランダム化比較試験がなされ,メタアナリシスでは消化態栄養剤と半消化態栄養剤の寛解導入効果に明らかな差を認めないことが示されている 4).したがって,消化態栄養剤と半消化態栄養剤で寛解導入効果に明らかな差を認めないともいえるが,日本では受容性や患者の嗜好などが考慮され,個々の症例に応じて選択されているのが現状である.経腸栄養療法は CD に対する寛解導入効果だけでなく,寛解維持にも有効である.総摂取カ

ロリーの半分を成分栄養剤で摂取すると,食餌指導のみと比べて有意に寛解維持効果が高いことが報告されている 9).しかし,有効性が証明される一方で,治療への受容性に課題があることも指摘されている 10).寛解維持に対するこれら 2つの試験では,各々有効性が示されているが,検討方法が異なっている 11).CD に根治的な治療がない現状では,長期にわたる寛解維持療法が必要となるが,経腸栄養療法を継続することは決して容易ではない.実臨床では受容性を考慮し,半消化態栄養剤など消化態栄養剤以外の栄養剤が用いられているが,これらの寛解維持効果については十分な検証がなされていない 12).

なお,近年,薬物療法特に抗 TNF 製剤と経腸栄養法の併用効果が期待されているが,質の高い臨床研究はない.

文献

1) Lochs H, Dejong C, Hammarqvist F, et al. ESPEN Guidelines on Enteral Nutrition: Gastroenterology Clin

Nutr 2006; 25: 260-274(ガイドライン)2) Mowat C, Cole A, Windsor A, et al. Guidelines for the management of inflammatory bowel disease in

adults. Gut 2011; 60: 571-607(ガイドライン)3) Jowett SL, Seal CJ, Phillips E, et al. Dietary beliefs of people with ulcerative colitis and their effect on

relapse and nutrient intake. Clin Nutr 2004; 23: 161-170(コホート)4) Zachos M, Tondeur M, Griffiths AM. Enteral nutritional therapy for inducing remission of Crohn’s dis-

ease. Cochrane Database Syst Rev 2007; 1: CD000542(メタ)5) Lichtenstein GR, Hanauer SB, Sandborn WJ; Practice Parameters Committee of American College of Gas-

troenterology: a management of Crohn’s disease in adults. Am J Gastroenterol 2009; 104: 465-483(ガイドライン)

6) Mowat C, Cole A, Windsor A, et al. Guidelines for the management of inflammatory bowel disease in

adults. Gut 2011; 60: 571-607(ガイドライン)7) Okada M, Yao T, Yamamoto T, et al. Controlled trial comparing an elemental diet with prednisolone in the

treatment of active Crohn’s disease. Hepatogastroenterology 1990; 37: 72-80(ランダム)8) Messori A, Trallori G, D’Albasio G, et al. Defined-formula diets versus steroids in the treatment of active

Crohn’s disease: a meta-analysis. Scand J Gastroenterol 1996; 31: 267-272(メタ)9) Takagi S, Utsunomiya K, Kuriyama S, et al. Effectiveness of an ‘half elemental diet’ as maintenance therapy

for Crohn’s disease: a randomized-controlled trial. Aliment Pharmacol Ther 2006; 24: 1333-1340(ランダム)10) Verma S, Kirkwood B, Brown S, et al. Oral nutritional supplementation is effective in the maintenance of

remission in Crohn’s disease. Dig Liver Dis 2000; 32: 769-774(非ランダム)11) Akobeng AK, Thomas AG. Enteral nutrition for maintenance of remission in Crohn’s disease. Cochrane

Database Syst Rev 2007; 3: CD005984(メタ)12) Matsui T, Ueki M, Yamada M, et al. Indications and options of nutria treatment for Crohn’s disease. A

comparison of elemental and polymeric diets. J Gastroenterol 1995; 30 (Suppl Ⅷ): 95-97(非ランダム)

【検索期間外文献】a) 中村志郎ほか.潰瘍性大腸炎・クローン病治療指針.厚生科学研究費補助金難治性疾患克服事業「難治性

炎症性腸管障害に関する調査研究」班(渡辺班)平成 25 年度総括・分担研究報告書別冊,2014

4.IBD に対する治療介入法

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 70: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 43 —

Clinical Question 4-74.IBD に対する治療介入法

IBD治療における血球成分除去療法の適応と,治療効果および有害性は?

CQ 4-7 IBD治療における血球成分除去療法の適応と,治療効果および有害性は?

ステートメント 推奨の強さ(Delphi 中央値)

エビデンスレベル

● 中等症〜重症UCに対する寛解導入治療として,血球成分除去療法は有用であり,安全性に優れる.週 2回の集中療法では,週 1回より寛解導入までの期間が短く,寛解率も向上する.

- C

● 大腸病変のある活動期のCDにおいて,薬物療法や栄養療法が無効あるいは適用できない場合,顆粒球単球除去療法(GMA)の併用を考慮することができる.

- D

解説

日本で UC 治療に用いられる血球成分除去療法(cytapheresis:CAP)には,顆粒球単球除去療法(granulocyte/monocytapheresis:GMA,アダカラム)と,白血球除去療法(leucocyta-

pheresis:LCAP,セルソーバ)の 2種類がある(2016 年現在).GMA は免疫吸着ビーズを充塡したカラムにより顆粒球・単球を除去し,LCAP はポリエステル不織布のフィルターにより,リンパ球を含む白血球・末梢血小板を除去する.両者の有効性の相違,使い分けに関するエビデンスはない.日本では,中等症〜重症の UC に対して CAP が保険治療として用いられる.欧米で行われた

sham カラムを用いた blinded RCT で,GMA に有意な治療効果を認めなかったとする報告がある 1).一方,中等症〜重症 UC に対する寛解導入効果についてメタアナリシスが 1報あり,安全性,ステロイド減量効果に優れていたと報告している 2).また,比較試験はないがステロイド未使用例でも高い有効性が報告され 3),ステロイドナイーブ例にも応用しうる.日本で行われた 1報の RCT(オープン試験)において,週 1回より週 2回で寛解導入までの期

間が短く,寛解率も向上する(54% vs. 71%)ことが示された 4).CD については,既存の薬物療法や栄養療法で改善の得られない,大腸病変を有する活動期症

例に対して GMA が有効であることが報告され 5),2010 年に保険適用となった.CAP は副作用が少ない安全な治療であるが,末梢血管確保が困難な例(脱水,貧血を含める)

では有効な血流量が確保できず,施行困難である.また,UC の広範粘膜脱落などの重篤例には治療効果が乏しいことが,実臨床で知られている.

エビデンスレベルは低く,保険適用外であるが,CAP による UC に対する寛解維持効果の報

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 71: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 44 —

告がある(Gut Liver 2012; 6: 427-433 a)[検索期間外文献]).CD に対する寛解維持効果については,症例報告が 1報あるのみである(J Clin Apher 2014; 29: 181-182 b)[検索期間外文献]).

文献

1) Sands BE, Sandborn WJ, Feagan B, et al; Adacolumn Study Group. A randomized, double-blind, sham-

controlled study of granulocyte/monocyte apheresis for active ulcerative colitis. Gastroenterology 2008;

135: 400-409(メタ)2) Zhu M, Xu, X, Nie F, et al. The efficacy and safety of selective leukocytapheresis in the treatment of ulcera-

tive colitis: a meta-analysis. Int J Colorectal Dis 2011; 26: 999-1007(メタ)3) Sigurbjörnsson FT, Bjarnason I. Leukocytapheresis for the treatment of IBD. Nat Clin Prac Gastroenterol

Hepatol 2008; 5: 509-516(ケースコントロール)4) Sakuraba A, Motoya S, Watanabe K, et al. An open-label prospective randomized multicenter study shows

very rapid remission of ulcerative colitis by intensive granulocyte and monocyte adsorptive apheresis as

compared with routine weekly treatment. Am J Gastroenterol 2009; 104: 2990-2995(ランダム)5) Fukuda Y, Matsui T, Suzuki Y, et al. Adsorptive granulocyte and monocyte apheresis for refractory

Crohn’s disease: an open multicenter prospective study. J Gastroenterol 2004; 39: 1158-1164(ケースコントロール)

【検索期間外文献】a) Fukunaga K, Yokoyama Y, Kamokozuru K, et al. Adsorptive granulocyte/monocyte apheresis for the

maintenance of remission in patients with ulcerative colitis: a prospective randomized, double blind,

sham-controlled clinical trial. Gut Liver 2012; 6: 427-433(ランダム)b) Tate D, Cairnes V, Valori R, et al. First successful use of leukocyte apheresis as maintenance therapy for

Crohn’s disease in the United Kingdom. J Clin Apher 2014; 29: 181-182(ケースシリーズ)

4.IBD に対する治療介入法

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 72: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 45 —

Clinical Question 4-84.IBD に対する治療介入法

IBDの外科的治療の有益性・有害性は?

CQ 4-8 IBDの外科的治療の有益性・有害性は?

ステートメント 推奨の強さ(Delphi 中央値)

エビデンスレベル

● 重症例や癌またはdysplasia 合併例では生命予後の改善が期待できる,また,内科的治療で改善のない原病による症状や治療薬による副作用,腸管外合併症などがある例ではQOLの改善が期待できる.

- D

● 縫合不全,腸閉塞などの術後合併症やUCでは回腸囊炎,CDでは小腸機能不全などを生じる可能性がある. - D

解説

UC,CD とも内科的治療では改善できない重篤な病態や癌または dysplasia に対し,生命危機の回避のために手術が行われる(絶対的手術適応)1),(J Crohns Colitis 2012; 6: 991-1030 a), 厚生労働科学研究費補助金難治性疾患克服研究事業「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」班平成25 年度分担研究報告書別冊,2014 b)[検索期間外文献]).原病による症状,腸管外合併症,薬剤の副作用などによって日常生活が障害されている症例

も手術適応で b),術後はこれらの改善によって,生活の質の向上が期待できる 2〜5),(Dis Colon

Rectum 2012; 55: 1131-1137 c)[検索期間外文献]).外科的治療の有害性もある.両疾患とも術後死亡はあるものの,その発生率は低い 6, 7),(Ann

Surg 2013; 257: 679-685 d)[検索期間外文献]).UC の標準術式である大腸全摘,回腸囊肛門(管)吻合術後には,縫合不全をはじめとする回

腸囊合併症や腸閉塞などを生じる可能性があるものの 6),回腸囊機能率(回腸囊が人工肛門による空置や切除を行うことなく貯留囊として機能している率)は約 95%と高い 8).女性では妊孕率が低下するとの報告もあるが,妊娠後の経過は良好であり,妊娠によって排便機能が悪化することはない 9).

CD 術後の縫合不全の発生率は 2〜14%である 10, 11).また,腸管病変が再発し,再手術が必要になる場合があり,残存腸管長の短縮により小腸機能不全をきたし,中心静脈栄養療法を要する場合がある(J Gastroeterol 2014; 49: 231-238 e)[検索期間外文献]).

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 73: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 46 —

文献

1) Mowat C, Cole A, Windsor A, et al. Guidelines for the management of inflammatory bowel disease in

adults. Gut 2011 60: 571-607(ガイドライン)2) Heikens JT, de Vries J, van Laarhoven CJ. Quality of life, health-related quality of life and health status in

patients having restorative proctocolectomy with ileal pouch-anal anastomosis for ulcerative colitis: a sys-

tematic review. Colorectal Dis 2012; 14: 536-544(メタ・観察)3) Da Luz Moreira A, Kiran RP, Lavery I. Clinical outcomes of ileorectal anastomosis for ulcerative colitis. Br

J Surg 2010; 97: 665-669(ケースコントロール)4) Thirlby RC, Land JC, Fenster LF, et el. Effect of surgery on health-related quality of life in patients with

inflammatory bowel disease: a prospective study. Arch Surg 1998; 133: 826-832(コホート)5) Tillinger W, Mittermaier C, Lochs H, et al. Health-related quality of life in patients with Crohn’s disease;

influence of surgical operation: a prospective trial. Dig Dis Sci 1999; 44: 932-938(コホート)6) De Silva S, Ma C, Proulx MC, et al.Postoperative complications and mortality following colectomy for

ulcerative colitis. Clin Gastroenterol Hepatol 2011; 9: 972-980(コホート)7) Tan JJY, Tjandra JJ. Laparoscopic surgery for Crohn’s disease: a meta-analysis. Dis Colon Rectum 2007; 50:

576-585(メタ・観察)8) Lovegroove RE, Tilaney HS, Herioy AG, et al. A comparison of adverse events and functional outcomes

after restrative proctocolectomy for familial adenomatous polyposis and ulcerative colitis. Dis Colon Rec-

tum 2006, 49: 1293-1306(メタ・観察)9) Cronish JA, Tan E, Terare J, et al. The effect of restorative proctocolectomy on sexual function, urinary

function, fertility, pregnancy and delivery: a systemati review. Dis Colon Rectum 2007; 50: 1128-1138(メタ・観察)

10) Resegotti A, Astegiano M, Farina EC, et al. Side-to-side stapled anastomosis strongly reduces anastomotic

leak rates in Crohn’s disease surgery. Dis Colon Rectum 2005; 48: 464-468(横断)11) 東大二郎,二見喜太郎,永川裕二,ほか.Crohn 病における縫合不全の予防と対策.日本大腸肛門病学会

雑誌 2009; 62: 818-822(横断)

【検索期間外文献】a) Dignass A, Lindsay JO, Sturm A, et al. Second European evidence-based consensus on the diagnosis and

management of ulcerative colitis: current management. J Crohns Colitis 2012; 6: 991-1030(ガイドライン)b) 潰瘍性大腸炎外科治療指針.厚生労働科学研究費補助金難治性疾患克服研究事業「難治性炎症性腸管障害

に関する調査研究」班平成 25 年度分担研究報告書別冊,2014: p8c) Kevin K, Turner O, Hyman Neil H. A comparison of the quality of life of ulcerative colitis patients after

IPAA vs ileostomy. Dis Colon Rectum 2012; 55: 1131-1137(横断)d) Fazio VW, Kiran RP, Remzi FH, et al. Ileal pouch anal anastomosis: analysis of outcome and quality of life

in 3707 patients. Ann Surg 2013; 257: 679-685(コホート)e) Watanabe K, Sasaki I, Fukushima K, et al. Long-term incidence and characteristics of intestinal failure in

Crohn’s disease: a multicenter study. J Gastroeterol 2014; 49: 231-238(コホート)

4.IBD に対する治療介入法

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 74: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

5.潰瘍性大腸炎の治療

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 75: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 48 —

Clinical Question 5-15.潰瘍性大腸炎の治療 ― ❶軽症〜中等症の活動期遠位大腸炎

軽症〜中等症の活動期遠位UC治療における 5-ASA製剤の適応は?

CQ 5-1 軽症〜中等症の活動期遠位UC治療における 5-ASA製剤の適応は?

ステートメント 推奨の強さ(Delphi 中央値)

エビデンスレベル

● 寛解導入に 5-ASA注腸療法を第一選択として用いることを提案する.

2(7) B

● 経口 5-ASA製剤単独でも有効であり,寛解導入に用いることを推奨する.

1(9) A

● より強力な効果が必要な場合は,経口・注腸 5-ASA製剤を併用することを推奨する.

1(9) B

● 5-ASA注腸療法はステロイド注腸療法と少なくとも同等以上の効果があるため,局所療法の第一選択とすることを推奨する.

1(8) B

解説

経口および局所 5-ASA 製剤の寛解導入における有効性は,数々の RCT やそれらのメタアナリシスにより確認されている 1, 2),(Cochrane Database Syst Rev 2012; 10: CD000543 a)[検索期間外文献]).経口と局所の有効性を比較した RCT,メタアナリシスは少なく,局所のほうが有効性は高いとするものと両者の有効性に有意差は認められないとするものがある 1, 3〜5).局所での 5-

ASA 粘膜濃度,患者のコンプライアンスなどを勘案して治療法を選択する必要があるが,欧米のガイドラインでは,局所投与を第一選択とするものが多い 6),(J Crohns Colitis 2012; 6: 991-1030 b)

[検索期間外文献]).局所製剤は経口薬に比べて投与が煩雑であるなどの理由でコンプライアンスの低下が危惧され,日本では経口薬のほうが好まれる傾向があり,厚生労働省研究班の治療指針では経口薬と局所製剤をほぼ並列に記載している.

経口の 5-ASA 製剤は古典的なサラゾスルファピリジン(SASP)と腸管内放出特性の異なる 2種類のメサラジン製剤が日本で使用できるが,メタアナリシスでは SASP とメサラジン製剤の有効性に有意差はみられない.SASP には不耐性や副作用の問題があり,日本ではメサラジン製剤のほうが好まれるが,特に米国ではコストの問題から SASP のほうが推奨されている.各種メサラジン製剤の有効性に違いはみられない.

5-ASA 注腸は 1日量 1g,2g,4g の比較で有効性に差を認めないため,投与量は 1g/日で十分である 3).経口の 5-ASA には用量効果反応関係が認められ,2.0g/日以上の投与量では 2.0g/

日未満に比べて有意に寛解導入率が高い.4.0g/日以上の高用量については,エンドポイントに

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 76: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 49 —

より評価が異なり,有用性に関する明確なエビデンスは得られていないが,中等症例に対しては高用量の投与が望ましい a).

5-ASA は経口または注腸療法単独よりも併用するとより効果が高いことが確認されている 7).したがって,一方に反応しない例やある程度症状の強い例では併用療法が推奨される.迅速な症状改善を期待して当初から併用することを第一選択とするガイドラインもある.5-ASA 注腸とステロイド注腸を比較した場合,5-ASA 注腸の優位性を示す成績が得られてお

り 1),5-ASA 注腸が第一選択である.5-ASA 注腸あるいは経口 5-ASA との併用で効果不十分な場合に,ステロイド注腸を考慮する.

文献

1) Marshall JK, Thabane M, Steinhart AH, et al. Rectal 5-aminosalicylic acid for induction of remission in

ulcerative colitis. Cochrane Database Syst Rev 2010; 1: CD004115(メタ)2) Ford AC, Achkar JP, Khan KJ, et al. Efficacy of 5-aminosalicylates in ulcerative colitis: systematic review

and meta-analysis. Am J Gastroenterol 2011; 106: 601-616(メタ)3) Cohen RD, Woseth DM, Thisted RA, et al. A meta-analysis and overview of the literature on treatment

options for left-sided ulcerative colitis and ulcerative proctitis. Am J Gastroenterol 2000; 95: 1263-1276(メタ)

4) Regueiro M, Loftus EV Jr, Steinhart AH, et al. Clinical guidelines for the medical management of left-sided

ulcerative colitis and ulcerative proctitis: summary statement. Inflamm Bowel Dis 2006; 12: 972-978(ガイドライン)

5) Regueiro M, Loftus EV Jr, Steinhart AH, et al. Medical management of left-sided ulcerative colitis and

ulcerative proctitis: critical evaluation of therapeutic trials. Inflamm Bowel Dis 2006; 12: 979-994(ガイドライン)

6) Kornbluth A, Sachar DB; Practice Parameters Committee of the American College of Gastroenterology.

Ulcerative colitis practice guidelines in adults: American College Of Gastroenterology, Practice Parameters

Committee. Am J Gastroenterol 2010; 105: 501-523(ガイドライン)7) Ford AC, Khan KJ, Achkar JP, et al. Efficacy of oral vs. topical, or combined oral and topical 5-aminosalicy-

lates, in ulcerative colitis: systematic review and meta-analysis. Am J Gastroenterol 2012; 107: 167-176(メタ)

【検索期間外文献】a) Feagan BG, MacDonald JK. Oral 5-aminosalicylic acid for induction of remission in ulcerative colitis.

Cochrane Database Syst Rev 2012; 10: CD000543(メタ)b) Dignass A, Lindsay JO, Sturm A, et al. Second European evidence-based consensus on the diagnosis and

management of ulcerative colitis part 2: current management. J Crohns Colitis 2012; 6: 991-1030(ガイドライン)

①軽症〜中等症の活動期遠位大腸炎

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 77: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 50 —

Clinical Question 5-25.潰瘍性大腸炎の治療 ― ❶軽症〜中等症の活動期遠位大腸炎

軽症〜中等症の活動期遠位UC治療における副腎皮質ステロイドの適応は?

CQ 5-2 軽症〜中等症の活動期遠位UC治療における副腎皮質ステロイドの適応は?

ステートメント 推奨の強さ(Delphi 中央値)

エビデンスレベル

● 経口および注腸ステロイドのいずれも寛解導入効果を有するが,通常は第一選択とはしないことを推奨する.

1(9) A

● ステロイド注腸の効果は 5-ASA注腸のそれと同等もしくは劣るため,第一選択として投与しないことを推奨する.

1(8) A

● 十分な量の経口 5-ASA製剤に局所療法(5-ASAまたはステロイド)を併用しても改善しない場合には,1日 30〜40mg程度の経口プレドニゾロン(PSL)を投与することを推奨する.

1(9) B

解説

活動期遠位大腸炎に対して,ステロイド注腸療法と経口ステロイド療法のいずれも寛解導入に有効であることが示されている 1, 2).ただし,全身の副作用が少ないブデソニド,ジプロピオン酸ベクロメタゾン(BDP)を用いた注腸剤が海外では利用可能であるが,日本では利用できない.

軽症〜中等症の活動期遠位大腸炎に対するステロイド注腸療法と 5-ASA 注腸療法を比較したメタアナリシスで,ステロイドと 5-ASA が同等であるという分析 3)と 5-ASA がより有効であるという分析 1, 4)が存在する.前者で用いられたステロイドは BDP であり,日本では使用できない.

活動期の遠位大腸炎に対する治療は,経口 5-ASA 剤と注腸療法の併用の効果が,いずれかの単独よりも有効であるが,十分量の経口薬と局所療法の併用が無効である場合に経口ステロイドが適応となる.UC の治療にステロイドが導入されたのは,臨床試験デザインに関する厳しさが要求されるよりずっと以前のことである.遠位大腸炎型 UC の治療におけるステロイドの有用性に関する質の高いエビデンスは希薄である.広範囲 UC を含めた活動期 UC に対する,経口ステロイドの寛解導入における有効性を検討したメタアナリシスでは,プラセボと比較して経口ステロイドは有効と考えられた 2).UC 患者の体格や栄養状態は一定しないため,ここに示した投与量を目安としながら個々の患者で調節することが望ましい.

ステロイド注腸と経口ステロイドのいずれも寛解維持効果はない.

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 78: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 51 —

文献

1) Marshall JK, Irvine EJ. Rectal corticosteroids versus alternative treatments in ulcerative colitis: a meta-

analysis. Gut 1997; 40: 775-781(メタ)2) Ford AC, Bernstein CN, Khan KJ, et al. Glucocorticosteroid therapy in inflammatory bowel disease: sys-

tematic review and meta-analysis. Am J Gastroenterol 2011; 106: 590-599(メタ)3) Manguso F, Balzano A. Meta-analysis: the efficacy of rectal beclomethasone dipropionate vs. 5-aminosali-

cylic acid in mild to moderate distal ulcerative colitis. Aliment Pharmacol Ther 2007; 26: 21-29(メタ)4) Marshall JK, Thabane M, Steinhart AH, et al. Rectal 5-aminosalicylic acid for induction of remission in

ulcerative colitis. Cochrane Database Syst Rev 2010; 1: CD004115(メタ)

①軽症〜中等症の活動期遠位大腸炎

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 79: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 52 —

Clinical Question 5-35.潰瘍性大腸炎の治療 ― ❶軽症〜中等症の活動期遠位大腸炎

軽症〜中等症の活動期遠位UC治療におけるその他の治療の適応は?

CQ 5-3 軽症〜中等症の活動期遠位UC治療におけるその他の治療の適応は?

ステートメント 推奨の強さ(Delphi 中央値)

エビデンスレベル

● 5-ASA製剤やステロイドに治療抵抗性のUCに対して,血球成分除去療法(CAP),インフリキシマブ/アダリムマブの使用を考慮することを推奨する.

1(9) C

● 抗菌薬は寛解導入に有効である可能性があるが,使用する抗菌薬の種類,組み合わせ,治療期間については確立されていない. - C

解説

軽症〜中等症の遠位大腸炎に対して,既存の 5-ASA 製剤,副腎皮質ステロイドによる治療が無効,効果不十分の場合には,中等症〜重症例に用いられる寛解導入治療を考慮する.主に外来での治療となるため,インフリキシマブやアダリムマブといった抗 TNF 製剤や血球成分除去療法などが候補となる 1)(治療法の詳細は CQ 5-10,5-11 を参照のこと).中等症〜重症例に対してはエビデンスのある治療法であるが,軽症〜中等症の遠位大腸炎に限ったエビデンスはほとんどない.抗菌薬による寛解導入治療は,遠位大腸炎に限らなければメタアナリシスで有効性が示され

ているものの,RCT によって抗菌薬の種類や投与期間がまちまちであり,寛解導入治療として推奨できる段階ではない 2).日本から 3剤併用による RCT の成績が報告されているが,追試されていない.日本で入手可能な probiotics に関しては,ほとんどデータがないため有効性の評価は不能で

ある.また,メタアナリシスでも probiotics の寛解導入での有効は示されていない 3).VSL#3 やE. coli Nissle 1917(日本では未発売)などでは一部有効性を認める RCT が存在する.

そのほか,魚油,ヘパリン,ニコチンなど様々な治療法が RCT での寛解導入効果が報告されているが,メタアナリシスで既存の治療法に対する有効性は示されておらず,また,日本での入手も不可能である 4〜6).

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 80: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 53 —

文献

1) Kornbluth A, Sachar DB; Practice Parameters Committee of the American College of Gastroenterology.

Ulcerative colitis practice guidelines in adults: American College Of Gastroenterology, Practice Parameters

Committee. Am J Gastroenterol 2010; 105: 501-523(ガイドライン)2) Khan KJ, Ullman TA, Ford AC, et al. Antibiotic therapy in inflammatory bowel disease: a systematic

review and meta-analysis. Am J Gastroenterol 2011; 106: 661-673(メタ)3) Mallon PT, McKay D, Kirk SJ, et al. Probiotics for induction of remission in ulcerative colitis. Cochrane

Database Syst Rev 2007; 4: CD005573(メタ)4) De LeyM, de Vos R, Hommes DW, et al. Fish oil for induction of remission in ulcerative colitis. Cochrane

Database Syst Rev 2007; 4: CD005986(メタ)5) Chande N, McDonald JWD, MacDonald JK, et al. Unfractionated or low-molecular weight heparin for

induction of remission in ulcerative colitis. Cochrane Database Syst Rev 2010; 10: CD006774(メタ)6) McGrath J, McDonald JWD, MacDonald JK. Transdermal nicotine for induction of remission in ulcerative

colitis. Cochrane Database Syst Rev 2004; 4: CD004722(メタ)

①軽症〜中等症の活動期遠位大腸炎

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 81: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 54 —

Clinical Question 5-45.潰瘍性大腸炎の治療 ― ❶軽症〜中等症の活動期遠位大腸炎

直腸炎タイプの軽症〜中等症の活動期遠位UCの治療は?

CQ 5-4 直腸炎タイプの軽症〜中等症の活動期遠位UCの治療は?

ステートメント 推奨の強さ(Delphi 中央値)

エビデンスレベル

● 直腸炎の寛解導入に 5-ASA坐剤を用いることを推奨する. 1(8) B

● 5-ASA坐剤にて効果が得られない場合には,経口の 5-ASA製剤と併用,あるいは,局所ステロイド製剤を考慮することを推奨する.

1(9) B

解説

遠位大腸炎に対する局所 5-ASA 製剤の有効性は証明されている 1〜4)ものの,直腸炎や坐剤に限ったメタアナリシスによるエビデンスはほとんどないが,RCT ではごく最近,日本からの報告でプラセボに対するメサラジン坐剤の有効性が示されている(Aliment Pharmacol Ther 2013;

38: 264-273 a)[検索期間外文献]).また,注腸製剤と坐剤の比較試験もほとんどないが,1980 年代に同等の効果と報告されている 5).病変範囲に対する薬剤の放出特性が十分であること,患者のコンプライアンスなどの要因を考慮したうえで,直腸炎に対してはメサラジン坐剤が第一選択とするガイドラインが多い(J Crohns Colitis 2012; 6: 991-1030 b)[検索期間外文献]).

日本ではメサラジン坐剤のほかに,サラゾスルファピリジン(SASP)坐剤も使用可能であるが,高いレベルのエビデンスはほとんどなく,またメサラジン坐剤に対する優位性についても明らかでない.よって,本ガイドラインでは SASP 坐剤を積極的に推奨はしない.

注腸薬でのエビデンスであるが,局所メサラジンの有効性は,1g を超えた用量反応性はみられない 2).また,メサラジン坐剤の 1日 1回 1g 投与は,500mg の 2回投与と同等の有効性が示されており 6),コンプライアンスから 1日 1回 1g 投与が推奨される.

経口の 5-ASA 単独投与は,メサラジン坐剤の有効性に劣るという報告があり 7),経口薬を使用する場合には,局所製剤との併用,もしくは pH 依存性放出製剤のメサラジン高用量が望ましい 8, b).メサラジン坐剤で効果不十分の場合の治療選択は,遠位(から左側)大腸炎に対するエビデン

スからの外挿である b).メサラジン坐剤不応例に対するエビデンスはないが,5-ASA 注腸療法も選択肢に入るであろう.局所ステロイド製剤の有効性は局所 5-ASA 製剤に劣る 1)が,メサラジン坐剤が効果不十分の場合に,副腎皮質ステロイド坐剤(ベタメタゾン坐剤など)が有効である可能性がある.

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 82: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 55 —

以上の治療に抵抗性の直腸炎に対する治療法としては,経口の副腎皮質ステロイド,抗 TNF

製剤,免疫調節薬を考慮するとともに,感染性のものなど潰瘍性直腸炎との鑑別診断が必要な疾患の可能性を考える必要もある b).

文献

1) Marshall JK, Thabane M, Steinhart AH, et al. Rectal 5-aminosalicylic acid for induction of remission in

ulcerative colitis. Cochrane Database Syst Rev 2010; 1: CD004115(メタ)2) Cohen RD, Woseth DM, Thisted RA, et al. A meta-analysis and overview of the literature on treatment

options for left-sided ulcerative colitis and ulcerative proctitis. Am J Gastroenterol 2000; 95: 1263-1276(メタ)

3) Regueiro M, Loftus EV Jr, Steinhart AH, et al. Clinical guidelines for the medical management of left-sided

ulcerative colitis and ulcerative proctitis: summary statement. Inflamm Bowel Dis 2006; 12: 972-978(ガイドライン)

4) Regueiro M, Loftus EV Jr, Steinhart AH, et al. Medical management of left-sided ulcerative colitis and

ulcerative proctitis: critical evaluation of therapeutic trials. Inflamm Bowel Dis 2006; 12: 979-994(ガイドライン)

5) Campieri M, Gionchetti P, Belluzzi A, et al. 5-Aminosalicylic acid as enemas or suppositories in distal

ulcerative colitis? J Clin Gastroenterol 1988; 10: 406-409(ランダム)6) Lamet M. A multicenter, randomized study to evaluate the efficacy and safety of mesalamine supposito-

ries 1g at bedtime and 500mg Twice daily in patients with active mild-to-moderate ulcerative proctitis. Dig

Dis Sci 2011; 56: 513-522(ランダム)7) Gionchetti P, Rizzello F, Venturi A, et al. Comparison of oral with rectal mesalazine in the treatment of

ulcerative proctitis. Dis Colon Rectum 1998; 41: 93-97(ランダム)8) Ito H, Iida M, Matsumoto T, et al. Direct comparison of two different mesalamine formulations for the

induction of remission in patients with ulcerative colitis: a double-blind, randomized study. Inflamm

Bowel Dis 2010; 16: 1567-1574(ランダム)

【検索期間外文献】a) Watanabe M, Nishino H, Sameshima Y, et al. Randomised clinical trial: evaluation of the efficacy of

mesalazine (mesalamine) suppositories in patients with ulcerative colitis and active rectal inflammation: a

placebo-controlled study. Aliment Pharmacol Ther 2013; 38: 264-273(ランダム)b) Dignass A, Lindsay JO, Sturm A, et al. Second European evidence-based consensus on the diagnosis and

management of ulcerative colitis part 2: current management. J Crohns Colitis 2012; 6: 991-1030(ガイドライン)

①軽症〜中等症の活動期遠位大腸炎

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 83: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 56 —

Clinical Question 5-55.潰瘍性大腸炎の治療 ― ❷軽症〜中等症の活動期広範囲大腸炎

軽症〜中等症の活動期広範囲UC 治療における 5-ASA製剤の適応は?

CQ 5-5 軽症〜中等症の活動期広範囲UC治療における 5-ASA製剤の適応は?

ステートメント 推奨の強さ(Delphi 中央値)

エビデンスレベル

● 経口 5-ASA製剤を第一選択として用いることを推奨する. 1(9) A

● 左側大腸炎に対して 5-ASA注腸製剤を用いることを推奨する. 1(8) A

解説

軽症〜中等症の活動期広範囲 UC に対する治療の第一選択は,経口 5-ASA 製剤または広義の5-ASA 製剤に含まれるサラゾスルファピリジン(SASP)である.両剤の寛解導入および腸管病変に対する有効性は,Cochrane review(Cochrane Database Syst Rev 2012; 10: CD000543 a)[検索期間外文献])でも確認されている.5-ASA 製剤の治療効果は用量依存性を認め,高用量(3g 以上)のほうが低用量(2〜2.9g)より寛解導入効果が有意に優れている.経口 5-ASA 製剤と SASP

の比較では,寛解導入効果や内視鏡で評価した腸管病変の改善効果に差はないとされる.なお,SASP は 5-ASA 製剤より安価で経済性には優れるが,副作用の発現頻度は 5-ASA 製剤より高く安全性では劣る.SASP による副作用の主体は 5-ASA と結合したスルファピリジンに由来すると考えられている.主な副作用として,発疹,頭痛,胃部不快感,男性不妊などがあげられる.日本で使用できる 5-ASA 製剤には,時間依存性メサラジン放出製剤(ペンタサ)と pH 依存性

メサラジン放出製剤(アサコール)があるが,投与量がほぼ同じであれば,有効性や安全性に差がないとされる.また,服薬回数が 1日 1回と従来の 1日 2〜3回でも,有効性や安全性に差はなく,受容性も同等であった.なお,日本では,1日 1回投与でよい 5-ASA 製剤は市販されていない.5-ASA 製剤の投与量と治療効果との関連について,個々の製剤ごとの比較では,投与量を増やしても寛解導入効果や安全性に差がないとする報告が多い.しかし,日本で使用できる時間依存性メサラジン放出製剤の,中等症 UC を対象とした RCT 1)では,2.22g/日より 4g/

日投与のほうが,臨床的有効性が高かった.また,pH 依存性メサラジン放出製剤を用いた大規模な RCT でも,中等症で過去にステロイドなどの治療歴がある中等症の患者では,高用量のほうが有効性が高いことが示されている 2).5-ASA 製剤の服用量と有害事象の発現頻度に関連がないとする報告が多いことからも,中等症 UC では最初から高用量の 5-ASA 製剤を投与することが勧められる.活動期の左側大腸炎型 UC に対しては 5-ASA 注腸療法も有効で,臨床的改善および寛解導入

効果を有している.5-ASA 注腸療法は,経口製剤より優れていることが複数の RCT のメタアナ

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 84: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 57 —

リシス 3)で確認されている.5-ASA 注腸製剤とステロイド注腸製剤の有効性の比較では,5-ASA

注腸製剤の優位性を示す報告が多く,安全性の面でも優れている.

文献

1) Hiwatashi N, Suzuki Y, Mitsuyama K, et al. Clinical trial: Effects of an oral preparation of mesalazine at 4g/day on moderately active ulcerative colitis: a phase III parallel-dosing study. J Gastroenterol 2011; 46:

46-56(ランダム)2) Sandborn WJ, Regula J, Feagan BG, et al. Delayed-release oral mesalamine 4.8g/day (800mg tablet) is

effective for patients with moderately active ulcerative colitis. Gastroenterology 2009; 137: 1934-1943(ランダム)

3) Cohen RD, Woseth DM, Thisted RA, et al. A meta-analysis and overview of the literature on treatment

options for left-sided ulcerative colitis and ulcerative proctitis. Am J Gastroenterol 2000; 95: 1263-1276(メタ)

【検索期間外文献】a) Feagan BG, MacDonald JK. Oral 5-aminosalicylic acid for induction of remission in ulcerative colitis.

Cochrane Database Syst Rev 2012; 10: CD000543(メタ)

②軽症〜中等症の活動期広範囲大腸炎

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 85: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 58 —

Clinical Question 5-65.潰瘍性大腸炎の治療 ― ❷軽症〜中等症の活動期広範囲大腸炎

軽症〜中等症の活動期広範囲UC治療における副腎皮質ステロイドの適応は?

CQ 5-6 軽症〜中等症の活動期広範囲UC治療における副腎皮質ステロイドの適応は?

ステートメント 推奨の強さ(Delphi 中央値)

エビデンスレベル

● 十分量の 5-ASA 製剤で改善がみられない場合には,1 日 30〜40mg程度のプレドニゾロンを投与することを推奨する.

1(9) C

● 臨床的改善を確認したら漸減を考慮し,漫然と長期間投与しないことを推奨する.

1(9) D

解説

UC に対するステロイドの効果についてはメタアナリシスで有効性が示されているが 1),古い文献が多く,ステロイドの種類や量もまちまちであり,エビデンスレベルとしては高くない.中等症までの UC に対するステロイドの最適な投与量というのは,必ずしも検証されておらず,海外では 40mg/日のプレドニゾロンというのが標準的である 2).一方,日本では,30mg/日のプレドニゾロンが使われることが多いが,40mg/日よりリスク・ベネフィットがよいのか悪いのかはわからない.20mg/日は 40mg/日に劣ることは検証されている 3).最適な投与期間および寛解後のステロイドの最適な漸減法についての報告は存在せず,海外

のガイドラインも経験則を述べているのみである 4, 5).効果は 1〜2週間で判断し,臨床的寛解導入後は,20mg/日までは 5mg/週を目安に漸減,それ以下では 2.5mg/週を目安に漸減する,というような方法が一般的である.

文献

1) Ford AC, Bernstein CN, Khan KJ, et al. Glucocorticosteroid therapy in inflammatory bowel disease: sys-

tematic review and meta-analysis. Am J Gastroenterol 2011; 106: 590-599(メタ)2) Mowat C, Cole A, Windsor A, et al. Guidelines for the management of inflammatory bowel disease in

adults. Gut 2011; 60: 571-607(ガイドライン)3) Baron JH, Connell AM, Kanaghinis TG, et al. Out-patient treatment of ulcerative colitis: comparison

between three doses of oral prednisolone. Br Med J 1962; 2: 441-443(ランダム)4) Lichtenstein GR, Abreu MT, Cohen R, et al. American Gastroenterological Association Institute technical

review on corticosteroids, immunomodulators, and infliximab in inflammatory bowel disease. Gastroen-

terology 2006; 130: 940-987(ガイドライン)5) Kornbluth A, Sachar DB. Ulcerative colitis practice guidelines in adults: American College of Gastroen-

terology, Practice Parameters Committee. Am J Gastroenterol 2010; 105: 501-523(ガイドライン)

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 86: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 59 —

Clinical Question 5-75.潰瘍性大腸炎の治療 ― ❷軽症〜中等症の活動期広範囲大腸炎

軽症〜中等症の活動期広範囲UC 治療におけるその他の治療の適応は?

CQ 5-7 軽症〜中等症の活動期広範囲UC治療におけるその他の治療の適応は?

ステートメント 推奨の強さ(Delphi 中央値)

エビデンスレベル

● ステロイド依存・抵抗例,何らかの理由で使用できない例では,血球成分除去療法(CAP)を行うことを提案する.

2(7) B

● 中等症以上のステロイド依存・抵抗などの難治例では,タクロリムスや抗TNF製剤を考慮することを推奨する.

1(8) C

解説

CAP の UC に対する寛解導入効果については日本からの論文を多く含んだメタアナリシスが1報存在し,有効性,安全性に優れている,と報告されている 1).さらに,日本で行われた RCT

において,週 1回よりも週 2回のほうが早期に寛解導入が可能である 2)ことが示された.ステロイド依存,抵抗例にも効果が期待できるが,比較試験はないものの,ステロイド未使用例ではより有効率が高いことが報告されている 3).したがって,何らかの理由でステロイドを使用できない症例にも使用を考慮してよい.タクロリムスの UC におけるプラセボを対照とした RCT は日本で行われたステロイド抵抗・

難治例に対する 2報のみ 4, 5)であるが,その有効性および低トラフ(5〜10ng/mL)群より高トラフ(10〜15ng/mL)群のほうが有効率が高いことが示されている.現在の推奨投与法は,1日 2回の経口投与で,トラフ値を 10〜15ng/mL になるよう調節し 2週間維持,その後,5〜10ng/mL

に減量する,というものである.抗 TNF 製剤(インフリキシマブ,アダリムマブ)は,いずれも,プラセボ対照にて難治例の

UC に対し寛解導入効果,52 週までの寛解維持効果が認められている.ただし,インフリキシマブとアダリムマブの直接比較試験は行われていない(J Crohns Colitis 2014; 8: 571-581 a), Ann

Intern Med 2014; 160: 704-711 b)[検索期間外文献]).インフリキシマブは 5mg/kg を 0,2,6週,その後 8週ごとに静脈内投与.アダリムマブは初回 160mg,2回目 80mg,3回目以降 40mg を2週間ごとに皮下注射する.その他として,抗菌薬の有効性を検討した placebo controlled trial は数報あり,メタアナリシ

スでは有効性が示されているものの,各スタディによって抗菌薬の種類や投与期間がまちまちであり,メタアナリシスとしての信頼性に問題がある 6).また,日本で入手可能な probiotics に関しては,ほとんどデータがないため有効性の評価は不能である.ただし,海外で発売されて

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 87: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 60 —

いる VSL#3 や E. coli Nissle 1917 などでは一部有効性を認める RCT が存在する 7).

文献

1) Zhu M, Xu, X, Nie F, et al. The efficacy and safety of selective leukocytapheresis in the treatment of ulcera-

tive colitis: a meta-analysis. Int J Colorectal Dis 2011; 26: 999-1007(メタ)2) Sakuraba A, Motoya S, Watanabe K, et al. An open-label prospective randomized multicenter study shows

very rapid remission of ulcerative colitis by intensive granulocyte and monocyte adsorptive apheresis as

compared with routine weekly treatment. Am J Gastroenterol 2009; 104: 2990-2995(ランダム)3) Sigurbjörnsson FT, Bjarnason I. Leukocytapheresis for the treatment of IBD. Nat Clin Prac Gastroenterol

Hepatol 2008; 5: 509-516(ケースシリーズ)4) Baumgart DC, MacDonald JK, Feagan B. Tacrolimus (FK506) for induction of remission in refractory ulcer-

ative colitis (Review). Cochrane Database Syst Rev 2008; 3: CD007216(メタ)5) Ogata H, Kato J, Hirai F, et al. Double-blind, placebo-controlled trial of oral tacrolimus (FK506) in the

management of hospitalized patients with steroid-refractory ulcerative colitis. Inflamm Bowel Dis 2012;

18: 803-808(ランダム)6) Khan KJ, Ullman TA, Ford AC, et al. Antibiotic therapy in inflammatory bowel disease: a systematic

review and meta-analysis. Am J Gastrotenterol 2011; 106: 661-673(メタ)7) Meijer BJ, Dieleman LA. Probiotics in the treatment of human inflammatory bowel diseases update 2011. J

Clin Gastroenterol 2011; 45 (Suppl): S139-S144(メタ)

【検索期間外文献】a) Thorlund K, Druyts E, Mills EJ, et al. Adalimumab versus infliximab for the treatment of moderate to

severe ulcerative colitis in adult patients naïve to anti-TNF therapy: an indirect treatment comparison

meta-analysis. J Crohns Colitis 2014; 8: 571-581(メタ)b) Denese S, Fiorino G, Peyrin-Biroulet L, et al. Biological agents for moderately to severely active ulcerative

colitis: a systematic review and network meta-analysis. Ann Intern Med 2014; 160: 704-711(メタ)

5.潰瘍性大腸炎の治療

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 88: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 61 —

Clinical Question 5-85.潰瘍性大腸炎の治療 ― ❸重症の活動期潰瘍性大腸炎

重症の活動期UC治療における副腎皮質ステロイドの適応は?

CQ 5-8 重症の活動期UC治療における副腎皮質ステロイドの適応は?

ステートメント 推奨の強さ(Delphi 中央値)

エビデンスレベル

● ステロイド投与を第一選択とすることを推奨する. 1(9) B

● 重症例では,1日量プレドニゾロン換算 1〜1.5mg/kg を経静脈的に投与することを推奨する.

1(8) C

解説

2007 年の重症 UC に対するステロイド治療の反応性に関するシステマティックレビューでは,32 の臨床研究がまとめられた.その結果,重症例のステロイド投与に対する反応率は 66%であり,約 1/3 の症例が短期間の間に手術となっている[重症例の手術率=404/1,201,34%(95%CI

31〜36%)]1).重症 UC に対する first line 治療としてのステロイド量を決定するスタディは唯一存在する.経

口 40mg/日の投与は 60mg/日と同様の効果を示し,60mg/日では副作用の頻度が高くなるとのことであった.したがって,高用量のステロイド投与を行う場合には,副作用(感染症,精神障害,血栓傾向など)に十分注意を要する 2).また,2012 年 ECCO ガイドラインでは,重症 UC

に対するステロイド投与量はメチルプレドニゾロン 60mg/24 時間(プレドニゾロン換算で80mg/日)あるいはヒドロコルチゾン 100mg を 1日に 4回投与を行うことが一般的であると記載されている(J Crohns Colitis 2012; 6: 991-1030 b)[検索期間外文献]).ステロイド治療反応性評価については,重症 UC 患者の場合,高用量ステロイド投与後,少

なくとも 7日間以内で行うべきであると報告されている 2).

文献

1) Turner D, Walsh CM, Steinhart AH, et al. Response to corticosteroids in severe ulcerative colitis: a system-

atic review of the literature and a meta-regression. Clin Gastroenterol Hepatol 2007; 5: 103-110(メタ)2) Hart AL, Ng SC. Review article: the optimal medical management of acute severe ulcerative colitis. Ali-

ment Pharmacol Ther 2010; 32: 615-627(メタ)

【検索期間外文献】a) Dignass A, Lindsay JO, Sturm A, et al. Second European evidence-based consensus on the diagnosis and

management of ulcerative colitis Part 2: Current management. J Crohns Colitis 2012; 6: 991-1030(ガイドライン)

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 89: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 62 —

Clinical Question 5-95.潰瘍性大腸炎の治療 ― ❸重症の活動期潰瘍性大腸炎

重症の活動期UC治療における免疫調節薬の適応は?

CQ 5-9 重症の活動期UC治療における免疫調節薬の適応は?

ステートメント 推奨の強さ(Delphi 中央値)

エビデンスレベル

● ステロイド治療に奏効しない重症UCに対して,シクロスポリンの経静脈投与を考慮することを提案する.

2(7) C

● ステロイド治療に奏効しない重症UCに対して,タクロリムス投与を考慮することを推奨する.

1(8) C

解説

シクロスポリン(CyA)はカルシニューリン(CN)に結合することで,転写因子である nuclear

factor of activated T cells の核内移行を阻害し,サイトカインの産生を抑制する.対象となる患者は重症 UC の場合がほとんどであり,中心静脈栄養下に 2〜4mg/kg の CyA を 24 時間持続投与で行う.Van Assche らによる検討では,CyA 4mg/kg と 2mg/kg 投与後 8日目での治療反応性に差が認められなかった 1).この結果から,2mg/kg が至適投与量と考えられている.CyA による治療を行う場合,持続的有効血中濃度の維持や副作用発現予防のため,血中濃度の測定は必須である.治療後 1週間程度で臨床症状の改善を認めるとされている.投与期間は原則 2週間以内である.それ以上の投与は副作用の危険が高くなる.CyA による副作用は,高血圧,てんかん発作,感覚異常,振戦,歯肉腫脹,多毛症,電解質異常,日和見感染,腎機能障害などがあげられる.Cochrane review では,CyA の重症 UC に対する治療効果を認めながらも,エビデンスは限られているとの結論であった 2).タクロリムス(TAC)は CyA と同様に CN 活性を阻害することにより,サイトカインの産生を

抑制する 3).対象となる患者は,ステロイド依存性,抵抗性 UC 患者である.通常,寛解導入を目的とし

た血中トラフ値は 10〜15ng/mL が推奨されている 4, 5).TAC による治療を行う場合も,CyA と同様に持続的有効濃度の維持や副作用発現予防のため,血中トラフの測定が必須である.TAC

投与後,ほとんどの患者は手の振戦やほてり感を訴える.頭痛については,軽いものから重篤(かなり強い)まで様々であり,重篤な場合は血中濃度を下げても持続する場合があり注意を要する.また,高濃度では腎機能障害が報告されているが,血中濃度を下げることで,腎機能は速やかに回復する.重症 UC に対する TAC の治療効果については,エビデンスの構築が必要である 3).また,重症例に対する TAC の推奨トラフ値は明らかでない.しかしながら,重症例においては血中トラフを早く上昇させることが寛解導入には必要である.症例に応じて TAC の内

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 90: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 63 —

服量を短期間で増量することを念頭に置く.高齢者にこれらの薬剤投与を行う際には,ニューモシスチス肺炎の発症に十分注意を払い,ST 合剤の予防内服を考慮する.

文献

1) Van Assche G, D’Hanes G, Noman M, et al. Rondomized, double-blind comparison of 4mg/kg versus

2mg/kg intravenous cyclosporine in severe ulcerative colitis. Gastroenterology 2003; 125: 1025-1031(ランダム)

2) Shibolet O, Regushevskaya E, Brezis M, et al. Cyclosporine A for induction of remission in severe ulcera-

tive colitis. Cochrane Database Syst Rev 2005; 1: CD004277(メタ)3) Baumgart DC, Macdonald JK, Feagan B. Tacrolimus (FK506) for induction of remission in refractory ulcer-

ative colitis. Cochrane Database Syst Rev 2008; 3: CD007216(メタ)4) Ogata H, Matsui T, Nakamura M, et al. A randomized dose finding study of oral tacrolimus (FK506) thera-

py in refractory ulcerative colitis. Gut 2006; 55: 1255-1262(ランダム)5) Yamamoto S, Nakase H, Mikami S, et al. Long-term effect of tacrolimus therapy in patients with refractory

ulcerative colitis. Aliment Pharmacol Ther 2008; 28: 589-597(ケースシリーズ)

③重症の活動期潰瘍性大腸炎

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 91: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 64 —

Clinical Question 5-105.潰瘍性大腸炎の治療 ― ❸重症の活動期潰瘍性大腸炎

重症の活動期UC治療における抗TNF製剤の適応は?

CQ 5-10 重症の活動期UC治療における抗TNF製剤の適応は?

ステートメント 推奨の強さ(Delphi 中央値)

エビデンスレベル

● 従来治療に抵抗するUCに対し,抗TNF製剤を投与することを推奨する.

1(8) A

● インフリキシマブは,ステロイド抵抗性UCに対するシクロスポリンとの比較試験において同等の効果を有する. - C

解説

UC においても抗 TNF 製剤は,海外の大規模多施設共同試験で,中等症〜重症で従来治療に抵抗例の寛解導入・寛解維持に有効であることが報告されている 1〜7),(Aliment Pharmacol Ther

2014; 39: 660-671 a), Ann Intern Med 2014; 160: 704-711 b)[検索期間外文献]).インフリキシマブは ACT-1/ACT-2 study 1)で,アダリムマブは ULTRA-1/ULTRA-2 study により 6, 7),それぞれ有用性が報告されているが,現在までに各種抗 TNF 製剤の比較試験は行われていない.このほか,インフリキシマブが CYSIF study にて,ステロイド抵抗性の中等症〜重症の UC において,シクロスポリンと同等との成績が示され(Lancet 2012; 380 (9857): 1909-1915 c)[検索期間外文献]),有効性は同等と報告されている.さらに,インフリキシマブが外科手術の回避に有効とする報告もある 5).様々なシクロスポリンとインフリキシマブの比較試験では,シクロスポリンの目標血中濃度の設定などにばらつきがあり,さらなる検討が求められる.

今後さらなるエビデンスの集積が必要であるが,従来治療に抵抗性の UC に対して抗 TNF 製剤は試みることが推奨される治療法である.

文献

1) Rutgeerts P, Sandborn W, Feagan BG, et al. Infliximab for induction and maintenance therapy for ulcera-

tive colitis. N Engl J Med 2005; 353: 2462-2476(ランダム)2) Jarnerot G, Hertervig E, Friis-Liby I, et al. Infliximab as rescue therapy in severe to moderately severe

ulcerative colitis: a randomized, placebo-controlled study. Gastroenterology 2005; 128: 1805-1811(ランダム)

3) Probert CS, Hearing SD, Schreiber S, et al. Infliximab in moderately severe glucocorticoid resistant ulcera-

tive colitis: a randomized controlled trial. Gut 2003; 52: 998-1002(ランダム)

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 92: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 65 —

4) Gisbert JP, González-Lama Y, Maté J. Systematic review: infliximab therapy in ulcerative colitis. Aliment

Pharmacol Ther 2007; 25: 19-37(メタ)5) Huang X, Lv B, Jin HF, et al. A meta-analysis of the therapeutic effects of tumor necrosis-α blockers on

ulcerative colitis. Eur J Clin Pharmacol 2011; 67: 759-766(メタ)6) Reinisch W, Sandborn WJ, Hommes DW, et al. Adalimumab for induction of clinical remission in moder-

ately to severely active ulcerative colitis: results of a randomised controlled trial. Gut 2011; 60: 780-787(ランダム)

7) Sandborn WJ, van Assche G, Reinisch W, et al. Adalimumab induces and maintains clinical remission in

patients with moderate-to-severe ulcerative colitis. Gastroenterology 2012; 142: 257-265.e1-3(ランダム)

【検索期間外文献】a) Stidham RW, Lee TC, Higgins PD, et al. Systematic review with network meta-analysis: the efficacy of

anti-tumour necrosis factor-alpha agents for the treatment of ulcerative colitis. Aliment Pharmacol Ther

2014; 39: 660-671(メタ)b) Danese S, Fiorino G, Peyrin-Biroulet L, et al. Biological agents for moderately to severely active ulcerative

colitis: a systematic review and network meta-analysis. Ann Intern Med 2014; 160: 704-711(メタ)c) Laharie D, Bourreille A, Branche J, et al. Ciclosporin versus infliximab in patients with severe ulcerative

colitis refractory to intravenous steroids: a parallel, open-label randomised controlled trial. Lancet 2012;

380 (9857): 1909-1915(ランダム)

③重症の活動期潰瘍性大腸炎

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 93: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 66 —

Clinical Question 5-115.潰瘍性大腸炎の治療 ― ❸重症の活動期潰瘍性大腸炎

重症の活動期UC治療における血球成分除去療法の適応は?

CQ 5-11 重症の活動期UC治療における血球成分除去療法の適応は?

ステートメント 推奨の強さ(Delphi 中央値)

エビデンスレベル

● 血球成分除去療法は,重症の活動期UCのステロイド減量効果が認められ,寛解率向上のための治療選択肢のひとつとして考慮することを推奨する.

1(8) C

● より早期に寛解率を向上させるため,血球成分除去療法は週 2回以上行うことを推奨する.

1(8) C

解説

血球成分除去療法は,中等から重症の活動性 UC において既存の薬物療法に比較して,ステロイド減量効果に優れ(オッズ比 10.49,95%CI 3.44〜31.93),有効率(オッズ比 2.88,95%CI

1.60〜5.88)や寛解率(オッズ比 2.04,95%CI 1.36〜3.07)を向上させる治療法であることが,メタアナリシスの結果から示されている 1).一方,重篤な有害事象は,既存薬物療法に比較して少なく(オッズ比 0.16,95%CI 0.04〜0.60),安全な治療オプションである 1).しかし,メタアナリシスで解析された論文には RCT が少なく,血球成分除去療法の有効性を示す質の高いエビデンスは不足している.オープン試験ではあるものの,前向き RCT の結果から,血球成分除去療法は既存の週 1回法

に比べ,週 2 回治療を行うほうが,寛解導入までの期間が短く(28.1 日に対し 14.9 日,p<0.0001),寛解率も向上する(54.0%に対し 71.2%,p=0.029)ことが,日本の多施設共同研究から示されている 2).なお,血球成分除去療法は,重症 UC に単独で行うことは少なく,他治療との併用による治

療選択肢として考慮する.

文献

1) Zhu M, Xu X, Nie F, et al. The efficacy and safety selective leukocytapheresis in the treatment of ulcerative

colitis: a meta-analysis. Int J Colorectal Dis 2011; 26: 999-1007(横断)2) Sakuraba A, Motoya S, Watanabe K, et al. An open-label prospective randomized multicenter study shows

very rapid remission of ulcerative colitis by intensive granulocyte and monocyte adsorptive apheresis as

compared with routine weekly treatment. Am J Gastroenterol 2009; 104: 2990-2995(ランダム)

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 94: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 67 —

Clinical Question 5-125.潰瘍性大腸炎の治療 ― ❹寛解期の維持治療

寛解期の UC治療における 5-ASA 製剤の適応は?

CQ 5-12 寛解期のUC治療における 5-ASA製剤の適応は?

ステートメント 推奨の強さ(Delphi 中央値)

エビデンスレベル

● 臨床的・内視鏡的寛解を維持するために,経口 5-ASA製剤を 1日2g以上投与することを推奨する.

1(9) A

● 遠位型大腸炎の寛解維持を目的として,5-ASA局所療法を行うことを推奨する.

1(8) A

解説

UC に対する経口 5-ASA 製剤の寛解維持効果は,Cochrane review(Cochrane Database Syst

Rev 2012; 10: CD000544 a)[検索期間外文献])で解析されているが,臨床面のみならず腸管病変の寛解維持にも有効である.なお,5-ASA 製剤の寛解維持効果は低用量より高用量のほうが優れており,1日 2g 以上の投与が望ましいとされる.なお,広義の 5-ASA 製剤に含まれるサラゾスルファピリジン(SASP)の寛解維持効果は,5-ASA 製剤と同等かやや優れており,効果は用量依存性に向上する.しかし,用量増加に伴い,副作用や不耐症状の発現が多くなるため,寛解維持のためには 1日量 2g または 3g 程度が選択されることが多い.5-ASA 製剤の服薬回数による寛解維持効果の比較では,1日 1回投与と従来の 1日 2〜3回投

与で,寛解維持効果に明らかな差を認めない a).服薬への受容性も同等とされるが,臨床試験での成績であり,実臨床においては服薬回数が多いことが受容性の低下に関連することが報告されている 1).服薬への受容性の低下は再燃の誘因になる可能性があり,5-ASA 製剤の寛解維持効果を保つためには 1日 1回投与のほうが望ましい.個々の 5-ASA 製剤の用量比較試験の成績では,投与量が増えても寛解維持効果は変わらないとする報告が多く,時間依存性メサラジン放出製剤を用いた検討でも,1日 1.5g と 3.0g の投与で有効性に差を認めなかった 2).なお,日本で 1日 1回投与が可能であるのは時間依存性メサラジン放出製剤のみであり,最大投与量は 1回 2.25g である.

遠位型 UC に対する 5-ASA 局所療法(坐剤および注腸製剤)の臨床的・内視鏡的寛解維持効果は,Cochrane review(Cochrane Database Syst Rev 2012; 11: CD004118 b)[検索期間外文献])などで確認されており,その効果は経口 5-ASA 製剤と同等とされる.なお,5-ASA 局所製剤の投与量を増やしても,寛解維持効果が向上しないことが少数の報告で示されている.日本で使用可能なメサラジン注腸製剤は,1日 1g 投与が効果的で安全であるとされる.また,経口 5-ASA

製剤に,週 2回の 5-ASA 注腸療法を併用することにより,寛解維持効果を高めることができる

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 95: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 68 —

とする報告 3, 4)もあるが,少数例での成績のため今後の追試が必要である.なお,寛解維持療法として 5-ASA 局所療法を長期間継続するのは難しい場合も多く,患者の受容性に十分な配慮が必要である.

文献

1) Hawthorne AB, Rubin G, Ghosh S. Review article: medication non-adherence in ulcerative colitis-strate-

gies to improve adherence with mesalazine and other maintenance therapies. Aliment Pharmacol Ther

2008; 27: 1157-1166(ケースシリーズ)2) Fockens P, Mulder CJ, Tytgat GN, et al. Comparison of the efficacy and safety of 1.5 compared with 3.0 g

oral slow-release mesalazine (Pentasa) in the maintenance treatment of ulcerative colitis. Dutch Pentasa

Study Group. Eur J Gastroenterol Hepatol 1995; 7: 1025-1030(ランダム)3) d’Albasio G, Pacini F, Camarri E, et al. Combined therapy with 5-aminosalicylic acid tablets and enemas

for maintaining remission in ulcerative colitis: a randomized double-blind study. Am J Gastroenterol 1997;

92: 1143-1147(ランダム)4) Yokoyama H, Takagi S, Kuriyama S, et al. Effect of weekend 5-aminosalicylic acid (mesalazine) enema as

maintenance therapy for ulcerative colitis: results from a randomized controlled study. Inflamm Bowel

Dis 2007; 13: 1115-1120(ランダム)

【検索期間外文献】a) Feagan BG, MacDonald JK. Oral 5-aminosalicylic acid for maintenance of remission in ulcerative colitis.

Cochrane Database Syst Rev 2012; 10: CD000544(メタ)b) Marshall JK, Thabane M, Steinhart AH, et al. Rectal 5-aminosalicylic acid for maintenance of remission in

ulcerative colitis. Cochrane Database Syst Rev 2012; 11: CD004118(メタ)

5.潰瘍性大腸炎の治療

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 96: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 69 —

Clinical Question 5-135.潰瘍性大腸炎の治療 ― ❹寛解期の維持治療

寛解期の UC治療における免疫調節薬の適応は?

CQ 5-13 寛解期のUC治療における免疫調節薬の適応は?

ステートメント 推奨の強さ(Delphi 中央値)

エビデンスレベル

● ステロイド依存または離脱困難例では免疫調節薬(AZA/6-MP)を投与することを推奨する.

1(9) A

解説

ステロイド依存または離脱困難例では免疫調節薬の投与が推奨される.寛解導入後にアザチオプリン(AZA)を継続することにより,50%前後からさらに高い寛解維持率が得られることが多くの研究により報告されている.また,複数の RCT の結果,寛解維持とステロイド減量に関して免疫調節薬が有意な効果を示すことが知られている 1〜4),(Cochrane Database Syst Rev 2012;

9: CD000478 a)[検索期間外文献]).免疫調節薬の投与量は AZA で 1.5〜2.5mg/kg/日,メルカプトプリン(6-MP)で 0.75〜

1.5mg/kg/日が推奨されているが,日本人では代謝の問題から副作用が生じやすいことが知られている.また,6-MP は日本では保険未承認であるため AZA より開始し,AZA が適切に使用できない場合に 6-MP の使用を検討する.一般には AZA は 25mg/日程度から開始し,副作用と効果を慎重に観察する必要がある.また,AZA 単独療法による寛解維持効果は,5-ASA とAZA を併用した場合と同等であり,5-ASA 併用の有益性を認めないとの報告があるが 4),これに対する専門家の評価は十分ではなく,実際に 5-ASA 製剤が維持療法として併用されていることが多い.また,5-ASA を高用量で使用しても安定した寛解維持が困難な場合,AZA や 6-MP

を併用し寛解維持を行うこともある.AZA+5-ASA 併用例では AZA の分解が阻害され,骨髄抑制などの副作用が現れやすいので注意が必要である.投与開始後数週間で問題が生じなければ長期投与の忍容性は比較的良好であり,懸念されていた悪性腫瘍発生のリスク増加に関しても否定的と報告されている.シクロスポリン(CyA)やタクロリムス(TAC)の寛解維持効果は,十分な検討はなく現段階で

は不明であるため 5, 6),CyA や TAC で寛解導入した後は,AZA や 6-MP にて寛解維持を行う.

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 97: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 70 —

文献

1) Katz S. Update in medical therapy of ulcerative colitis. J Clin Gastroenterol 2002; 34: 397-407(メタ)2) Hawthrone AB, Logan RF, Hawkey CJ, et al. Randomised controlled trial of azathioprine withdrawal in

ulcerative colitis. BMJ 1992; 305: 20-22(ランダム)3) Gisbert JP, Linares PM, McNicholl AG, et al. Meta-analysis: the efficacy of azathioprine and mercaptop-

urine in ulcerative colitis. Aliment Pharmacol Ther 2009; 30: 126-137(メタ)4) Mantzanis GJ, Stakianakis M, Archavlis E, et al. A prospective randomized observer-blind 2-year trial of

azathioprine monotherapy versus azathioprine and olsalazine for the maintenance of remission of steroid-

dependent ulcerative colitis. Am J Gastroenterol 2004; 99: 1122-1128(ランダム)5) Shibolet O, Regushevskaya E, Brezis M, et al. Cyclosporine A for induction of remission in severe ulcera-

tive colitis. Cochrane Database Syst Rev 2005; 1: CD004277(メタ)6) Baumgart DC, MacDonald JK, Feagan B. Tacrolimus (FK506) for induction of remission in refractory ulcer-

ative colitis. Cochrane Database Syst Rev 2008; 3: CD007216(メタ)

【検索期間外文献】a) Timmer A, McDonald JW, Tsoulis DJ, et al. Azathioprine and 6-mercaptopurine for maintenance of remis-

sion in ulcerative colitis. Cochrane Database Syst Rev 2012; 9: CD000478(メタ)

5.潰瘍性大腸炎の治療

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 98: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 71 —

解説

抗 TNF 製剤の UC に対する有用性は,506 本の臨床研究のメタアナリシスの結果から,寛解導入(RR 2.45,95%CI 1.72〜3.47)のみならず寛解維持(RR 2.00,95%CI 1.52〜2.62)にも有効であると結論されている(Aliment Pharmacol Ther 2014; 39: 660-671 a)[検索期間外文献]).インフリキシマブ(IFX)で寛解導入された既存治療抵抗性 UC では,CD に準じ引き続き 8週間隔ごとの計画的維持投与を継続することにより,さらに少なくとも 52 週後までの長期有効性が確認されている 1).IFX 維持投与を継続した場合,54 週以内に大腸全摘術を要する頻度は 9.5%で,プラセボ投与群での 17%に比べて有意に(p=0.02)低い 2).よって,WOG 治療指針 3)には「IFX

維持投与は,手術リスクを軽減する点からも継続を熟慮すべき」と記載されている.一方,「寛解維持にも有用」と結論された大規模臨床試験(The Active Ulcerative Colitis trial 1

and 2:ACT1/ACT2)においても,寛解維持を目的にしたプラセボ対照の再無作為化は行われておらず,真の寛解維持効果を実証したエビデンスではない 1)ことから,適切な維持投与期間は不明であり,他の寛解導入治療後での IFX による寛解維持効果も不明である.なお,アダリムマブも IFX 同様に寛解導入時有効例での,寛解維持を目的にした長期投与の有効性は示されている 4).

文献

1) Rutgeerts P, Sandborn WJ, Feagan BG, et al. Infliximab for Induction and Maintenance Therapy for Ulcer-

ative Colitis. N Engl J Med 2005; 353: 2462-2476(ランダム)2) Sandborn WJ, Rutgeerts P, Feagan BG, et al. Colectomy rate comparision after treatment of ulcerative coli-

tis with placebo or infliximab. Gastroenterol 2009; 137: 1250-1260(ランダム)3) D’Haens GR, Panaccion R, Higgins PDR, et al. The London position statement of the World Congress of

Clinical Question 5-145.潰瘍性大腸炎の治療 ― ❹寛解期の維持治療

寛解期のUC治療において抗TNF製剤はどのように用いるか?

CQ 5-14 寛解期のUC治療において抗TNF製剤はどのように用いるか?

ステートメント 推奨の強さ(Delphi 中央値)

エビデンスレベル

● 抗TNF製剤で寛解導入された中等症〜重症UCでは,寛解維持を目的に抗TNF製剤の長期投与を行うことを推奨する.

1(8) B

● 抗 TNF製剤による寛解維持により,手術回避率を高めることができる. - B

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 99: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 72 —

gastroenterology on biological therapy for IBD with the Europian Crohn’s and Colitis Organization: When

to start,When to stop, Which drug to choose, and How to predict response? Am J Gastroenterology 2010;

106: 199-212(ガイドライン)4) Sandborn WJ, van Assche G, Reinisch W, et al. Adalimumab induces and maintains clinical remission in

patients with moderatr to severe ulcerative colitis. Gastroenterol 2012; 142: 257-265(ランダム)

【検索期間外文献】a) Stidham RW, Lee TC, Higgins PD, et al. Systematic review with network meta-analysis: efficacy of anti-

tumor necrosis factor-alpha agents for treatment of ulcerative colitis. Aliment Pharmacol Ther 2014; 39:

660-671(メタ)

5.潰瘍性大腸炎の治療

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 100: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 73 —

Clinical Question 5-155.潰瘍性大腸炎の治療 ― ❹寛解期の維持治療

その他の治療法はいつ適応となり,どのように用いるか?

CQ 5-15 その他の治療法はいつ適応となり,どのように用いるか?

ステートメント 推奨の強さ(Delphi 中央値)

エビデンスレベル

● 5-ASA製剤,チオプリン系免疫調節薬,抗TNF製剤以外の他の治療法は明らかな寛解維持効果がないため,用いないことを推奨する.

1(8) C

解説

寛解維持効果が期待された probiotics の再発率は,メサラジン製剤での 34.1%に対して,40.1%と非劣勢が認められず(オッズ比 1.33,95%CI 0.94〜1.90),寛解導入 1年までの再発率がプラセボでの 92%に対して probiotics では 75%と優越性も検証されなかった(オッズ比 0.27,95%CI 0.03〜2.68)1).タクロリムスで寛解導入された難治性 UC に対する 3ヵ月以上の長期投与や,白血球除去療

法で寛解導入された UC に対する月 2回の施行が,新たな寛解維持治療として期待されているが,エビデンスが存在せず,その寛解維持効果は不明である.

文献

1) Naidoo K, Gordon M, Fagbemi AO, et al. Probiotics for maintenance of remission in ulcerative colitis.

Cochrane Database Syst Rev 2011; 12: CD007443(メタ)

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 101: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 74 —

Clinical Question 5-165.潰瘍性大腸炎の治療 ― ❺外科的治療

UCに対する外科的治療の適応は?

CQ 5-16 UCに対する外科的治療の適応は?

ステートメント 推奨の強さ(Delphi 中央値)

エビデンスレベル

● 大腸穿孔,大量出血,中毒性巨大結腸症,大腸癌または highgrade dysplasia,内科的治療が奏効しない重症例には手術を行うことを推奨する(絶対的適応).

1(9) D

● 適切な内科的治療を行っても効果が不十分な場合や,原病,腸管外合併症,薬剤の副作用により日常生活が障害されている例は手術を行うことを推奨する(相対的適応).

1(9) D

解説

外科手術の遅れは術後合併症を増加させるため,内科的治療への反応性や薬物による副作用あるいは合併症などに注意し,必要に応じて専門家や外科医の意見を聞き,遅れがないように判断する必要がある 1),(厚生労働科学研究費補助金難治性疾患克服研究事業「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」班平成 25 年度分担研究報告書別冊,2014 a)[検索期間外文献]).

生命の危機となるような病態に対する外科手術の適応は明らかである 1),(J Crohns Colitis 2012;

6: 991-1030 b)[検索期間外文献]).重症あるいは,劇症例でステロイド大量静注療法,血球成分除去療法,シクロスポリン持続静注療法,タクロリムス経口投与,抗 TNF 製剤療法などの十分な内科的治療で効果が得られない症例は絶対的手術適応である a).

重症例や予備力の低い高齢者では,手術の遅れが術後合併症の発生率を上げるため,適切な時期に手術を考慮すべきである 2, 3).相対的手術適応では疾患の程度や患者の状態に大きな幅があり,一律に適応を決めることは

困難である.狭窄や low grade dysplasia があり癌合併の可能性が高いと考えられる例も相対的手術適応に

あげられるが a),癌合併の判断は困難であり,手術適応は慎重に判断すべきである(J Crohns

Colitis 2012; 7: 1-33 c)[検索期間外文献]).手術の決定には患者に対して手術に関連する事項を十分に説明し,個々の身体的状況や社会

的背景,患者の意志をすべて考慮したうえで,消化器内科医と外科医が連携をとり,患者を含め,三者で十分な協議をする必要がある 1, b).

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 102: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 75 —

文献

1) Mowat C, Cole A, Windsor A, et al. Guidelines for the management of inflammatory bowel disease in

adults. Gut 2011 60: 571-607(ガイドライン)2) Randall JSB, Warren BF, Travis SP, et al. Delayed surgery for acute severe colitis is associated with

increased risk of postoperative complications. Br J Surg 2010; 97: 404-409(コホート)3) 池内浩基,山村武平,中埜廣樹,ほか:高齢者潰瘍性大腸炎手術症例の予後の検討.日本大腸肛門病学会

雑誌 2007; 60: 136-141(横断)

【検索期間外文献】a) 潰瘍性大腸炎外科治療指針.厚生労働科学研究費補助金難治性疾患克服研究事業「難治性炎症性腸管障害

に関する調査研究」班平成 25 年度分担研究報告書別冊,2014: p8b) Dignass A, Lindsay JO, Sturm A, et al. Second European evidence-based consensus on the diagnosis and

management of ulcerative colitis: currnet management. J Crohns Colitis 2012; 6: 991-1030(ガイドライン)c) Van Assche G, Dignass A, Bokemeyer B, et al. Second European evidence-based consensus on the diagno-

sis and management of ulcerative colitis: special situations. J Crohns Colitis 2012; 7: 1-33(ガイドライン)

⑤外科的治療

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 103: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 76 —

Clinical Question 5-175.潰瘍性大腸炎の治療 ― ❺外科的治療

UCの外科的治療ではどのような手術を行うか?

CQ 5-17 UCの外科的治療ではどのような手術を行うか?

ステートメント 推奨の強さ(Delphi 中央値)

エビデンスレベル

● 待期手術では大腸全摘,回腸囊肛門吻合術あるいは,回腸囊肛門管吻合術を標準術式として行うことを推奨する.

1(9) D

解説

外科手術の目的は本疾患の標的臓器である結腸,直腸の切除であり,原則的に大腸の全摘あるいは亜全摘を行う 1),(J Crohns Colitis 2012; 6: 991-1030 a)[検索期間外文献]).大腸全摘,回腸囊肛門(管)吻合術は,自然肛門温存術式であり,術後の QOL が良好で,待

機手術の標準術式として選択されることが多い.術後の 1日排便回数は 5〜6回で,漏便を認める場合があるものの,回腸囊機能率(回腸囊が人工肛門による空置や切除を行うことなく貯留囊として機能している率)は高い.回腸囊肛門吻合術は根治性が高く,回腸囊肛門管吻合術は漏便が少なく,肛門機能が良好である 2〜4),(Ann Surg 2013; 257: 679-685 b)[検索期間外文献]).

重症例や緊急手術では通常,結腸(亜)全摘,回腸人工肛門造設,S 状結腸粘液瘻造設または,Hartmann 手術を行う.

肛門機能,年齢,社会的背景などを考慮して,大腸全摘,回腸(永久)人工肛門造設術や結腸亜全摘,回腸直腸吻合術が行われることがあり,これらの QOL も良好である 5),(Dis Colon Rec-

tum 2012; 55: 1131-1137 c)[検索期間外文献]).大腸粘膜が残存する術式では術後に癌,dysplasia の発生に留意する必要がある.海外のシステマティックレビューでは本症に対する腹腔鏡下手術は開腹手術に対して優位性

がないと報告されている 6).腹腔鏡下手術の適応を決定する際には外科医の判断が重要であり,本法に熟練した施設で施行されることが望ましい 7).術式を決定する際には患者の状態や社会状況を考慮し,患者と外科医,内科医が十分に協議

する必要がある.

文献

1) Mowat C, Cole A, Windsor A, et al. Guidelines for the management of inflammatory bowel disease in

adults. Gut 2011 60: 571-607(ガイドライン)

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 104: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 77 —

2) Heikens JT, de Vries J, van Laarhoven CJHM. Quality of life, health-related quality of life and health status

in patients having restorative proctocolectomy with ileal pouch-anal anastomosis for ulcerative colitis: a

systematic review. Colorectal Dis 2012; 14: 536-544(メタ・観察)3) Michelassi F, Lee J, Rubin M, et al. Long-term functional results after ileal pouch anal restrative procto-

colectomy for ulcerative colitis: a prospective observational study. Ann Surg 2003; 238: 433-441(コホート)4) Kirat HT, Remsi FH, Kiran RP, et al. Comparison of outcome after hand-sewn versus stapled ileal pouch-

anal anastomosis in 3109 patients. Surgery 2009; 146: 723-729(コホート)5) Da Luz Moreira A, Kiran RP, Lavery I. Clinical outcomes of ileorectal anastomosis for ulcerative colitis. Br

J Surg 2010; 97: 665-669(ケースコントロール)6) Ali A, Keus U, Heikens F, et al. Open versus laparoscopic (assisted) ileo pouch anal anastomosis for ulcer-

ative colitis and familial adenomatous polyposis. Cochrane Database Syst Rev 2009; 1: CD006267(メタ・観察)

7) 日本内視鏡外科学会(編):炎症性腸疾患に対する腹腔鏡手術ガイドライン.内視鏡外科診療ガイドライン2008 年版,金原出版,東京,2008: p54-64(ガイドライン)

【検索期間外文献】a) Dignass A, Lindsay JO,Sturm A, et al. Second European evidence-based consensus on the diagnosis and

management of ulcerative colitis: currnet management. J Crohns Colitis 2012; 6: 991-1030(ガイドライン)b) Fazio VW, Kiran RP, Remzi FH, et al. Ileal pouch anal anastomosis. Analysis of outcome and quality of life

in 3707 patients. Ann Surg 2013; 257: 679-685(コホート)c) Kevin K, Turner O, Hyman Neil H. A comparison of the quality of life of ulcerative colitis patients after

IPAA vs ileostomy. Dis Colon Rectum 2012; 55: 1131-1137(コホート)

⑤外科的治療

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 105: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 78 —

Clinical Question 5-185.潰瘍性大腸炎の治療 ― ❺外科的治療

UCの外科的治療における合併症とその治療は?

CQ 5-18 UCの外科的治療における合併症とその治療は?

ステートメント 推奨の強さ(Delphi 中央値)

エビデンスレベル

● 縫合不全や腸閉塞が発生する場合があり,必要に応じて手術療法を行うことを推奨する.

1(9) D

● 回腸囊炎(pouchitis)に対しては抗菌薬などによる治療を行うことを推奨する.

1(9) B

解説

免疫抑制効果の強い治療によって感染性合併症を併発することがある.特にステロイド投与例では創感染を含む感染性合併症の増加や吻合術での縫合不全の危険性があり,術前の減量,術式の選択,術後管理について留意する 1),(厚生労働科学研究費補助金難治性疾患克服研究事業

「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」班平成 25 年度分担研究報告書別冊,2014 a)[検索期間外文献]).標準術式である大腸全摘,回腸囊肛門あるいは肛門管吻合術の術後合併症として,縫合不全

を含む pelvic sepsis は 4〜10% に生じる(Ann Surg 2013; 257: 679-685 b), Int J Colorectal Dis

2012; 27: 843-853 c)[検索期間外文献]).その他,瘻孔形成,吻合部狭窄,回腸囊炎などの回腸囊関連合併症の可能性があるが 2),回腸囊機能率(回腸囊が人工肛門による空置や切除を行うことなく貯留囊として機能している率)は 10 年で約 95%と高い 3, b, c).腸閉塞の合併頻度は 15%程度で,手術を要する場合がある 4, b, c).

回腸囊炎は欧米では 30%程度に生じるとされ,日本より高頻度である.回腸囊炎の治療にはメトロニダゾールとシプロフロキサシンが使用されるが,後者のほうが副作用の出現率が低い 5),

(J Crohns Colitis 2013; 7: 1-33 d)[検索期間外文献]).抗菌薬による治療に反応しない症例や再発を繰り返し,慢性化する症例への治療法は確立されていない.

女性では大腸全摘,回腸囊肛門(管)吻合術後に妊孕率は低下するものの,妊娠後,出産までの経過は良好で,排便機能に妊娠は影響するものの,出産後には回復する 6).

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 106: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 79 —

文献

1) Mowat C, Cole A, Windsor A, et al. Guidelines for the management of inflammatory bowel disease in

adults. Gut 2011; 60: 571-607(ガイドライン)2) Heuschen UA, Allemeyer EH, Autschbach F, et al. Risk factors for ileal J pouch-related septic complica-

tions in ulcerative colitis and familial adenomatous polyposis. Ann Surg 2002; 235: 207-216(コホート)3) Ikeuchi H, Uchino M, Matsuoka H, et al. Surgery for ulcerative colitis in 1000 patients. Int J Colorectal Dis

2010; 25: 959-965(コホート)4) Lovegrove RE, Tilney HS, Heriot AG, et al. A comparison of adverse events and functional outcomes after

restorative proctocolectomy for familial adenomatous polyposis and ulcerative colitis. Dis colon Rectum

2006; 49: 1293-1306(メタ・観察)5) Holubar SD, Cima RR, Sandborn WJ, et al. Treatment and prevention of pouchitis after ileal pouch-anal

anastomosis for chronic ulcerative colitis (review). Cochrane Database Syst Rev 2010; 6: CD001176(メタ)6) Cornish JA, Tan E, Teare J, et al. The effect of restorative proctocolectomy on sexual function, urinary func-

tion, fertility, pregnancy, and derivery: a systematic review. Dis Colon Rectum 2007; 50: 1128-1138(メタ・観察)

【検索期間外文献】a) 潰瘍性大腸炎外科治療指針.厚生労働科学研究費補助金難治性疾患克服研究事業「難治性炎症性腸管障害

に関する調査研究」班平成 25 年度分担研究報告書別冊,2014: p8b) Fazio VW, Kiran RP, Remzi FH, et al. Ileal pouch anal anastomosis. Analysis of outcome and quality of life

in 3707 patients. Ann Surg 2013; 257: 679-685(コホート)c) de Zeeuw S, Ali UA, Donders RART, et al. Update of complications and functional outcome of the ileo-

pouch anal anastomosis: overview of evidence and meta-analysis of 96 observational studies. Int J Col-

orectal Dis 2012; 27: 843-853(メタ・観察)d) Van Assche G, Dignass A, Bokemeyer B, et al. Second European evidence-based consensus on the diagno-

sis and management of ulcerative colitis: special situations. J Crohns Colitis 2013; 7: 1-33(ガイドライン)

⑤外科的治療

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 107: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

6.クローン病の治療

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 108: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 82 —

Clinical Question 6-16.クローン病の治療 ― ❶軽症〜中等症の活動期

軽症〜中等症の活動期CD の治療は?

CQ 6-1 軽症〜中等症の活動期CDの治療は?

ステートメント 推奨の強さ(Delphi 中央値)

エビデンスレベル

● 大腸の軽症〜中等症活動期CDに対しては,サラゾスルファピリジン(SASP)またはステロイドを投与することを提案する.

2(7) B

● 小腸病変に対しては経腸栄養療法またはステロイド全身投与を選択することを推奨する.

1(8) B

● ステロイド依存症例,ステロイド抵抗症例では抗TNF製剤の使用を考慮することを推奨する.

1(9) A

解説

CD の重症度分類は複数提唱されており,日本では CDAI その他の指標を用いた重症度評価基準を厚生労働省研究班が提唱している(CQ 1-5 参照).一般臨床では患者の自覚症状や臨床所見,検査所見などから総合的に判断される.ここでは「外来通院が可能で経口摂取が可能であり,かつ脱水,発熱,腹部の圧痛,閉塞,10%を超える体重減少などの所見を認めない症例」などを想定している.軽症〜中等症の活動期 CD に対する SASP の有効性はメタアナリシスで示されている 1).この

メタアナリシスによると,有効性は大腸病変に限られ,その効果も小さくステロイドの効果に劣る.活動期 CD に対するメサラジンの有効性はいくつかの研究で示されており 2〜5),臨床の現場でもしばしば用いられて有効なことがある.しかし,最近のメタアナリシスでは 5-ASA 製剤は高用量でも寛解導入にはプラセボと同等の効果しかないことが示されている 1, 6).

活動期 CD の寛解導入におけるステロイドの有効性はメタアナリシスで示されている 7, 8).特に15 週以上にわたり投与した場合が有効であった 7).ただし,至適な用量および投与期間は不明である.プラセボあるいは低用量 5-ASA と比較し副作用の発現率は高かったが,副作用による臨床試験離脱はプラセボ群や低用量 5-ASA 群と変わらなかった.欧米では,回腸〜右側結腸病変に対して,全身の副作用が少ないステロイドであるブデソニドが用いられる.

経腸栄養療法とステロイドを比較したメタアナリシスでは,ステロイドが効果に優れるという結論が示された 9).中等症の活動期 CD で,特にステロイド依存例またはステロイド抵抗例では抗 TNF 製剤の使

用が選択肢となる 10〜12).また,既存の薬物療法や栄養療法で改善の得られない,大腸病変を有

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 109: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 83 —

する活動期症例に対して顆粒球除去療法が有効であることが報告されている 13).抗菌薬に関するメタアナリシスでは,抗菌薬が寛解導入に有効である可能性が示唆された.

しかし,研究された抗菌薬の種類と組み合わせが多く,結果の解釈に注意を要する 14).

文献

1) Lim WC, Hanauer S. Aminosalicylates for induction of remission or response in Crohn’s disease. Cochrane

Database Syst Rev 2010; 12: CD008870(メタ)2) Hanauer SB, Strömberg U. Oral pentasa in the treatment of active Crohn’s disease: a meta-analysis of dou-

ble-blind, placebo-controlled trials. Clin Gastroenterol Hepatol 2004; 2: 379-388(メタ)3) 棟方昭博,樋渡信夫,武藤徹一郎,ほか.メサラジン経口放出調節製剤 N-5ASA のクローン病に対する臨

床効果.多施設による至適用量設定試験.薬理と治療 1994; 22: S-2531-S2554(非ランダム)4) Singleton JW, Hanauer SB, Gitnick GL, et al. Mesalamine capsules for the treatment of active Crohn’s dis-

ease: Results of a 16-week trial. Gastroenterology 1993; 104: 1293-1301(ランダム)5) Prantera C, Cottone M, Pallone F, et al. Mesalamine in the treatment of mild to moderate active Crohn’s

ileitis: Results of a randomized, multicenter trial. Gastroenterology 1999; 116: 521-526(ランダム)6) Ford AC, Kane SV, Khan KJ, et al. Efficacy of 5-Aminosalicylates in Crohn’s Disease: Systematic Review

and Meta-Analysis. Am J Gastroenterol 2011; 106: 617-629(メタ)7) Benchimol EI, Seow CH, Steinhart AH, et al. Traditional corticosteroids for induction of remission in

Crohn’s disease. Cochrane Database Syst Rev 2008; 2: CD006792(メタ)8) Ford AC, Bernstein CN, Khan KJ, et al. Glucocorticosteroid therapy in inflammatory bowel disease: sys-

tematic review and meta-analysis. Am J Gastroenterol 2011; 106: 590-599(メタ)9) Zachos M, Tondeur M, Griffiths AM. Enteral nutritional therapy for induction of remission in Crohn’s dis-

ease. Cochrane Database Syst Rev 2007; 1: CD000542(メタ)10) Dignass A, Van Assche G, Lindsay JO, et al. The second Europian evidence-based consensus on the diag-

nosis and management of Crohn’s disease: Current management. J Crohns Colitis 2010; 4: 28-62(ガイドライン)

11) Ford AC, Sandborn WJ, Khan KJ, et al. Efficacy of biological therapies in inflammatory bowel diswase:

Systematic review and meta-analysis. Am J Gastroenterol 2011; 106: 644-659(メタ)12) Akobeng AK, Zachos M. Tumor necrosis factor-alpha antibody for induction of remissin in Crohn’s disase.

Cochrane Database Syst Rev 2004; 1: CD003574(メタ)13) Fukuda Y, Matsui T, Suzuki Y, et al. Adsorptive granulocyte and monocyte apheresis for refractory

Crohn’s disease: an open multicenter prospective study. J Gastroenterol 2004; 39: 1158-1164(ケースコントロール)

14) Khan KJ, Ullman TA, Ford AC, et al. Antibiotic therapy in inflammatory bowel disease: a systematic

review and meta-analysis. Am J Gastroenterol 2011; 106: 661-673(メタ)

①軽症〜中等症の活動期

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 110: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 84 —

解説

ここでの中等症〜重症とは,海外で定義されている「CDAI が 220〜450 で,軽症〜中等症に対する治療が無効であった症例,あるいは,発熱,有意な体重減少,腹痛あるいは腹部圧痛,(閉塞を伴わない)間欠的な悪心・嘔吐,有意な貧血が顕著な症例」などを想定している(Clin

Gastroenterol Hepatol 2016; 14: 348-354 a)[検索期間外文献]).CD の寛解導入におけるステロイドの有効性はランダム化比較試験で示されている 1, 2).しかし,

ステロイドには寛解維持効果はない 3)ため,ステロイドを減量中の症状増悪,中止後短期間の再燃あるいは中止後に再燃を繰り返す例ではアザチオプリン(AZA)やメルカプトプリン(6-MP)などの免疫調節薬の併用を考慮する.AZA または 6-MP が副作用のために使用できない場合には,海外ではメトトレキサートも有効とされ使用されている 4, 5).ステロイド無効例あるいは免疫調節薬無効例に対する抗 TNF 製剤の有効性は,単回投与ある

いはスケジュールされた連続投与のいずれでも証明されている 6〜12).既存の薬物療法や栄養療法で改善の得られない,大腸病変のある活動期 CD に対し,顆粒球

単球除去療法(GMA)の適応追加が 2010 年に国内承認された 14).

Clinical Question 6-26.クローン病の治療 ― ❷中等症〜重症の活動期

中等症〜重症の活動期CD の治療は?

CQ 6-2 中等症〜重症の活動期CDの治療は?

ステートメント 推奨の強さ(Delphi 中央値)

エビデンスレベル

● 経口ステロイド(プレドニゾロン 40mg/日程度)を投与することを推奨する.

1(8) A

● 寛解導入効果はステロイドと同等かやや劣るが,経腸栄養療法も考慮することを提案する.

2(7) C

● ステロイド抵抗例では,抗TNF製剤の投与を考慮することを推奨する.

1(9) A

● 大腸病変に対して,薬物療法や栄養療法が無効あるいは適用できない場合には顆粒球単球除去療法(GMA)を考慮することを提案する.

2(7) C

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 111: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 85 —

文献

1) Summers RW, Switz DW, Sessions JT Jr, et al. National Cooperative Crohn’s Disease Study: results of drug

treatment. Gastroenterology 1979; 77: 847-869(ランダム)2) Benchimol EI, Seow CH, Steinhart AH, et al. Traditional corticosteroids for induction of remission in

Crohn’s disease. Cochrane Database Syst Rev 2008; 2: CD006792(メタ)3) Steinhart AH, Ewe K, Griffiths AM, et al. Corticosteroids for maintenance of remission in Crohn’s disease.

Cochrane Database Syst Rev 2003; 4: CD000301(メタ)4) Feagan BG, Rochon J, Fedorak RN, et al. Methotrexate for the treatment of Crohn’s disease. The North

American Crohn’s Study Group Investigators. N Engl J Med 1995; 332: 292-297(ランダム)5) Alfadhli AAF, McDonald JWD, Feagan BG. Methotrexate for induction of remission in refractory Crohn’s

disease. Cochrane Database Syst Rev 2005; 1: CD003459(メタ)6) Targan SR, Hanauer SB, van Deventer SJ, et al. A short-term study of chimeric monoclonal antibody cA2

to tumor necrosis factor alpha for Crohn’s disease. Crohn’s Disease cA2 Study Group. N Engl J Med 1997;

337: 1029-1035(ランダム)7) Hanauer SB, Feagan BG, Lichtenstein GR, et al. Maintenance infliximab for Crohn’s disease: the ACCENT

1 randomized trial. Lancet 2002; 359: 1541-1549(ランダム)8) Hanauer SB, Sandborn WJ, Rutgeerts P, et al. Human anti-tumor necrosis factor monoclonal antibody

(adalimumab) in Crohn’s disease: the CLASSIC-I trial. Gastroenterology 2006; 130: 323-333(ランダム)9) Colombel JF, Sandborn WJ, Rutgeerts P, et al. Adalimumab for maintenance of clinical response and

remission in patients with Crohn’s disease: the CHARM trial. Gastroenterology 2007; 132: 52-65(ランダム)

10) Peyrin-Biroulet L, Deltenre P, de Suray N. Efficacy and safety of tumor necrosis factor antagonists in

Crohn’s disease: meta-analysis of placebo-controlled trials. Clin Gastroenterol Hepatol 2008; 6: 644-653(メタ)

11) Ford AC, Sandborn WJ, Khan KJ, et al. Efficacy of biological therapies in inflammatory bowel disease: sys-

tematic review and meta-analysis. Am J Gastroenterol 2011; 106: 644-659(メタ)12) Dretzke J, Edlin R, Round J, et al. A systematic review and economic evaluation of the use of tumour

necrosis factor-alpha (TNF-α) inhibitors, adalimumab and infliximab, for Crohn’s disease. Health Technol

Assess 2011; 15: 1-244(メタ)13) Fukuda Y, Matsui T, Suzuki Y, et al. Adsorptive granulocyte and monocyte apheresis for refractory

Crohn’s disease: an open multicenter prospective study. J Gastroenterol 2004; 39: 1158-1164(ケースシリーズ)

【検索期間外文献】a) Peyrin-Biroulet L, Panes J, Sandborn WJ, et al. Defining disease severity in inflammatory bowel diseases:

current and future directions. Clin Gastroenterol Hepatol 2016; 14: 348-354

②中等症〜重症の活動期

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 112: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 86 —

解説

日本における難治性炎症性腸管障害に関する調査研究(鈴木班)の作製する「潰瘍性大腸炎・クローン病 診断基準・治療指針」では「劇症」の概念はなく,CADI が 450 以上を一律に「重症」として取り扱っているが,ここでの重症〜劇症とは,「経口ステロイド投与にもかかわらず症状が持続する症例,または高熱,持続性嘔吐,腸閉塞,反跳痛,悪液質,膿瘍などをきたした症例」を想定している 1).重症〜劇症例は原則として入院のうえ,積極的な全身管理が必要である.経口投与後のステ

ロイドの吸収は一定ではなく,経静脈投与のほうが薬物動態学的に有利である 2)ため,経静脈投与を優先する.ステロイドに関しては,2つのプラセボとの比較試験と,6つの 5-ASA との比較試験があり,有用性が示されている 3).また,重症例に対する抗 TNF 製剤(インフリキシマブおよびアダリムマブ)の効果に関するエビデンスは多数認められ,膿瘍などの感染症の合併症を否定,あるいは改善できれば,選択肢として考慮できる 4〜10).さらに,劇症例に対しても抗TNF 製剤の効果に関するエビデンスは限定的であるが,選択肢のひとつとして考慮できる.循環動態の不安定な重症例,腹膜刺激症状のある症例,抗 TNF 製剤無効症例などは外科的治療の適応となるため,早期の外科コンサルトが望ましい.

Clinical Question 6-36.クローン病の治療 ― ❸重症〜劇症の活動期

重症〜劇症の活動期CD の治療は?

CQ 6-3 重症〜劇症の活動期CDの治療は?

ステートメント 推奨の強さ(Delphi 中央値)

エビデンスレベル

● 原則として入院のうえ,必要に応じて絶食,輸液,輸血を考慮し,感染の徴候があれば抗菌薬を開始することを推奨する.

1(9) D

● 感染を除外し,ステロイド(プレドニゾロン換算 40〜60mg/日)を経静脈的に投与することを推奨する.

1(8) A

● ステロイド抵抗例では,抗TNF製剤の投与を考慮することを推奨する.

1(9) A

● 全身状態不良例,抗TNF製剤不応例では,早期の外科コンサルトを考慮することを推奨する.

1(9) D

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 113: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 87 —

文献

1) Hanauer SB, Sandborn W; Practice Parameters Committee of the American College of Gastroenterology.

Management of Crohn’s disease in adults. Am J Gastormterol 2001; 96: 635-643(ガイドライン)2) Shaffer JA, Williams SE, Turnberg LA, et al. Absorption of prednisolone in patients with Crohn’s disease.

Gut 1983; 24: 182-186(ケースシリーズ)3) Benchimol EI, Seow CH, Steinhart AH, et al. Traditional corticosteroids for induction of remission in

Crohn’s disease. Cochrane Database Syst Rev 2008; 2: CD006792(メタ)4) Targan SR, Hanauer SB, van Deventer SJ, et al. A short-term study of chimeric monoclonal antibody cA2

to tumor necrosis factor alpha for Crohn’s disease. Crohn’s Disease cA2 Study Group. N Engl J Med 1997;

337: 1029-1035(ランダム)5) Hanauer SB, Feagan BG, Lichtenstein GR, et al. Maintenance infliximab for Crohn’s disease: the ACCENT

1 randomized trial. Lancet 2002; 359: 1541-1549(ランダム)6) Hanauer SB, Sandborn WJ, Rutgeerts P, et al. Human anti-tumor necrosis factor monoclonal antibody

(adalimumab) in Crohn’s disease: the CLASSIC-I trial. Gastroenterology 2006; 130: 323-333(ランダム)7) Colombel JF, Sandborn WJ, Rutgeerts P, et al. Adalimumab for maintenance of clinical response and

remission in patients with Crohn’s disease: the CHARM trial. Gastroenterology 2007; 132: 52-65(ランダム)

8) Peyrin-Biroulet L, Deltenre P, de Suray N. Efficacy and safety of tumor necrosis factor antagonists in

Crohn’s disease: meta-analysis of placebo-controlled trials. Clin Gastroenterol Hepatol 2008; 6: 644-653(メタ)

9) Ford AC, Sandborn WJ, Khan KJ, et al. Efficacy of biological therapies in inflammatory bowel disease: sys-

tematic review and meta-analysis. Am J Gastroenterol 2011; 106: 644-659(メタ)10) Dretzke J, Edlin R, Round J, et al. A systematic review and economic evaluation of the use of tumour

necrosis factor-alpha (TNF-α) inhibitors, adalimumab and infliximab, for Crohn’s disease. Health Technol

Assess 2011; 15: 1-244(メタ)

③重症〜劇症の活動期

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 114: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 88 —

解説

CD の肛門周囲,肛門管を含めた局所の病態評価は,経験のある外科医,肛門科医による診察が望ましく,必要に応じて麻酔下での検索を行う 1),(厚生科学研究費補助金特定疾患対策研究事業「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」班平成 21 年度総括・分担研究報告書,2013 a)[検索期間外文献]).画像検査としては内視鏡検査,CT,MRI および経肛門的超音波検査が有用であり,これらの検査で肛門,直腸周辺の炎症性変化を評価して,まず外科的治療の必要性を適切に判断することが重要である 1, a).免疫調節薬(アザチオプリンなど)の痔瘻に対する有効性はメタアナリシスで示されている 2).

実地臨床ではメトロニダゾールなどの抗菌薬が用いられることがあるが,治療効果に関しては限定的なエビデンスしかない(Gastroenterology 1980; 79: 357-365 b)[検索期間外文献]).

インフリキシマブについてはランダム化比較試験により,CD の瘻孔性病変(対象の 90%が痔瘻)に対する寛解導入効果が示されている 3).また,寛解維持についても有効性が認められている 4).アダリムマブに関しては維持投与試験におけるサブ解析で瘻孔性病変への有効性が示されている 5).なお,抗 TNF 製剤の投与を行う場合には,事前に膿瘍などの感染がコントロールされていることを確認する必要がある.

Clinical Question 6-46.クローン病の治療 ― ❹肛門周囲病変

CDの肛門周囲病変における内科的治療は?

CQ 6-4 CDの肛門周囲病変における内科的治療は?

ステートメント 推奨の強さ(Delphi 中央値)

エビデンスレベル

● 肛門周囲病変は経験のある外科医か肛門科医の診察および各種画像検査によって,まず外科的治療の適応を適切に判断することを推奨する.

1(9) D

● 痔瘻の内科的治療として,免疫調節薬を用いることを提案する. 2(7) C

● 膿瘍などがコントロールされている場合は,痔瘻の内科的治療として抗TNF製剤を考慮することを推奨する.

1(8) A

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 115: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 89 —

文献

1) Van Assche G, Dignass A, Reinisch W, et al. The second European evidence-based Consensus on the diag-

nosis and management of Crohn’s disease: Special situations. J Crohns Colitis 2010; 4: 63-101(ガイドライン)

2) Pearson DC, May GR, Fick GH, et al. Azathioprine and 6-mercaptopurine in Crohn’s disease: a meta-

analysis. Ann Intern Med 1995; 122: 132-142(メタ)3) Present DH, Rutgeerts P, Targan S, et al. Infliximab for the treatment of fistulas in patients with Crohn’s

disease. N Engl J Med 1999; 340: 1398-1405(ランダム)4) Sands BE, Anderson FH, Bernstein CN, et al. Infliximab maintenance therapy for fistulizing Crohn’s dis-

ease. N Engl J Med 2004; 350: 876-885(ランダム)5) Colombel JF, Sandborn WJ, Rutgeerts P, et al. Adalimumab for maintenance of clinical response and

remission in patients with Crohn’s disease: the CHARM trial. Gastroenterology 2007; 132: 52-65(ランダム)

【検索期間外文献】a) 二見喜太郎.クローン病肛門部病変に対する治療指針の作成.厚生科学研究費補助金特定疾患対策研究事

業「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」班平成 21 年度総括・分担研究報告書,2013: p53-54b) Berstein LH, Frank MS, Brandt LJ, et al. Healing of perineal Crohn’s disease with metronidazole. Gastroen-

terology 1980; 79: 357-365(ケースシリーズ)

④肛門周囲病変

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 116: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 90 —

解説

CD では,腸腸瘻などの内瘻や腸皮膚瘻などの外瘻を時に合併する.無症状の瘻孔に対する治療の適否に関してはコンセンサスが得られていない 1).

瘻孔に対する内科的治療には抗菌薬,免疫調節薬,抗 TNF 製剤がある.①抗菌薬治療については,プラセボ比較試験はほとんどない.しかしながら,メトロニダゾー

ルやシプロフロキサシンで,症状改善効果ならびに瘻孔閉鎖が期待できる 2〜4).②海外のランダム化比較試験のメタアナリシスにより,免疫調節薬の有効性は示されている

[オッズ比 3.09(95%CI 2.45〜3.91)]5).③抗 TNF 製剤については,インフリキシマブ,アダリムマブ,セルトリズマブによる維持療

法中の患者では 50%以上の瘻孔閉鎖または完全閉鎖に有効である.ただし,短期間(4〜18 週間)では,その有効性は確認されてはいない 6).また,抗菌薬と抗 TNF 製剤との併用は痔瘻に対する治療効果を上げるとの報告がある(Gut 2014; 63: 292-299 a)[検索期間外文献]).

④抗 TNF 製剤は腸管皮膚瘻を有する(腸管狭窄や複雑瘻孔が存在しない)CD 患者の 1/3 に有効との報告がある(Am J Gastroenterol 2014; 109: 1443-1449 b)[検索期間外文献]).一方,内瘻に対する抗 TNF 製剤の治療効果は乏しい.内科的治療で改善が得られない場合には外科的治療を考慮する.内瘻で高度な吸収不良障害

や,尿路感染を繰り返す場合,外瘻で腸液漏出過多や,肛門周囲の疼痛をおよび膿瘍形成を伴う場合などは外科手術の適応となる 1).

Clinical Question 6-56.クローン病の治療 ― ❺消化管合併症(瘻孔,狭窄,出血,膿瘍)

CDの消化管合併症①:瘻孔に対する治療は?

CQ 6-5 CDの消化管合併症①:瘻孔に対する治療は?

ステートメント 推奨の強さ(Delphi 中央値)

エビデンスレベル

● 痔瘻に対する薬物療法として,抗菌薬,免疫調節薬および抗TNF製剤などを考慮することを推奨する.

1(9) C

● 腸管皮膚瘻に対しては,腸管狭窄や複雑瘻孔が存在しない場合,抗TNF製剤投与を考慮することを推奨する.

1(8) D

● 膿瘍を形成する瘻孔および高度な吸収不良障害を認める内瘻は外科的治療を行うことを推奨する.

1(8) D

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 117: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 91 —

文献

1) Judge TA, Lichtenstein GR. Fistulizing Crohn’s disease. Kirsner’s Inflammatory Bowel Diseases, 6th Ed,

Sartor RB, Sandborn WJ (eds), Saunders, Edinburgh, 2004: p700-7162) Keshaw H, Foong KS, Forbes A, et al. Perianal fistulae in Crohn’s disease: current and future approaches

to treatment. Inflamm Bowel Dis 2010; 16: 870-8803) Tozer PJ, Burling D, Gupta A, et al. Review article: medical, surgical and radiological management of peri-

anal Crohn’s fistulas. Aliment Pharmacol Ther 2011; 33: 5-22(メタ)4) Vavricka SR, Rogler G. Fistula treatment: the unresolved challenge. Dig Dis 2010; 28: 556-5645) Pearson DC, May GR, Fick GH, et al. Azathioprine and 6-mercaptopurine in Crohn disease: a meta-analy-

sis. Ann Intern Med 1995; 123: 132-142(メタ)6) Peyrin-Biroulet L, Deltenre P, de Suray N, et al. Efficacy and safety of tumor necrosis factor antagonists in

Crohn’s disease: meta-analysis of placebo-controlled trials. Clin Gastroenterol Hepatol 2008; 6: 644-653(メタ)

【検索期間外文献】a) Dewint P, Hansen BE, Verhey E, et al. Adalimumab combined with ciprofloxacin is superior to adalimum-

ab monotherapy in perianal fistula closure in Crohn’s disease: a randomised, double-blind, placebo con-

trolled trial (ADAFI). Gut 2014; 63: 292-299(ランダム)b) Amiot A, Setakhr V, Seksik P, et al. Lond-term outcome of enterocutaneous fistula in patients with Crohn’s

disease treated with anti-TNF therapy: a cohort study from the GETAID. Am J Gastroenterol 2014; 109:

1443-1449(コホート)

⑤消化管合併症(瘻孔,狭窄,出血,膿瘍)

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 118: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 92 —

解説

腸管狭窄には炎症に伴う粘膜浮腫や,腸管線維化などによる狭窄がある.炎症主体の狭窄ではステロイドなどの抗炎症治療で改善することもある 1).抗炎症治療で症状が改善しない場合は線維化による狭窄を考え,狭窄長,狭窄数,潰瘍の有無などから,内視鏡的拡張術の適応を検討する.内視鏡的拡張術の適応については,①狭窄長が 5 cm 以下で弯曲が高度でない,②狭窄に関連

した瘻孔や膿瘍が存在しない,③狭窄部位に深い潰瘍が存在しない,などがあげられる.特に②に該当しない場合は,外科的処置を考慮する.内視鏡的拡張術に関するメタアナリシスでは,拡張術を受けた CD 患者の 58%で治療効果を

認めている(平均観察期間 33 ヵ月).また,4 cm 以下の狭窄では,外科的手術の回避につながるとの報告であった 2).日本でも,拡張術および免疫調節薬や生物学的製剤との併用で,CD 患者の手術回避効果が期

待できると報告されている(Dig Endosc 2012; 24: 432-438 a), Dig Endosc 2013; 25: 535-543 b)[検索期間外文献]).

文献

1) Sandborn WJ, Feagan BG, Hanauer SB, et al. A review of activity indices and efficacy endpoints for clinical

trials of medical therapy in adults with Crohn’s disease. Gastroenterology 2002; 122: 512-5302) Hassan C, Zullo A, De Francesco V, et al Systematic review: endoscopic dilatation in Crohn’s disease. Ali-

ment Pharmacol Ther 2007; 26: 1457-1464(メタ)

Clinical Question 6-66.クローン病の治療 ― ❺消化管合併症(瘻孔,狭窄,出血,膿瘍)

CQ 6-6 CDの消化管合併症②:狭窄に対する治療は?

ステートメント 推奨の強さ(Delphi 中央値)

エビデンスレベル

● 炎症所見を伴う狭窄には短期間のステロイドの投与あるいは抗TNF製剤の投与を推奨する.

1(8) D

● 薬物療法のみで狭窄症状が改善しない場合,内視鏡的拡張術または外科的治療を行うことを推奨する.

1(8) C

CDの消化管合併症②:狭窄に対する治療は?

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 119: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 93 —

⑤消化管合併症(瘻孔,狭窄,出血,膿瘍)

【検索期間外文献】a) Ono Y, Hirai F, Matsui T, et al. Value of concomitant endoscopic balloon dilation for intestinal stricture

during long-term infliximab therapy in patients with Crohn’s disease. Dig Endosc 2012; 24: 432-438(ケースシリーズ)

b) Honzawa Y, Nakase H, Matsuura M, et al. Prior use of immunomodulatory drugs improves the clinical

outcome of endoscopic balloon dilation for intestinal stricture in patients with Crohn’s disease. Dig Endosc

2013; 25: 535-543(ケースシリーズ)

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 120: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 94 —

Clinical Question 6-76.クローン病の治療 ― ❺消化管合併症(瘻孔,狭窄,出血,膿瘍)

CQ 6-7 CDの消化管合併症③:出血に対する治療は?

ステートメント 推奨の強さ(Delphi 中央値)

エビデンスレベル

● 全身管理を行い,内視鏡,血管造影による止血を試みることを推奨する.

1(8) D

● 薬物療法としてはインフリキシマブを投与することを推奨する. 1(8) D

● 保存的治療で止血が得られない場合は外科的治療を行うことを推奨する.

1(9) D

CDの消化管合併症③:出血に対する治療は?

解説

CD では,まれに大出血を認める.まず,絶食,補液による保存的治療を積極的に開始し,腸管の安静を図る.薬物治療として,ステロイドやインフリキシマブが有効であったとする報告がある 1, 2).また,免疫調節薬が下部消化管病変からの出血リスクを軽減するとの報告もある(Dig

Liver Dis 2012; 44: 723-728 a)[検索期間外文献]).可能な場合は内視鏡的止血を試みる.血管造影ではバソプレシン動注や動脈塞栓療法が奏効したとの報告があるが 3, 4),動脈塞栓療法では腸管虚血による腸管壊死の問題がある.内科的治療で止血困難なときは,外科的治療が必要となる.初回の大量出血に対する手術率は 20〜90%,保存的治療後の再出血に対する手術率は 30〜35%と報告されている 5, 6).

文献

1) Belaiche J, Louis E. Severe lower gastrointestinal bleeding in Crohn’s disease: successful control with

infliximab. Am J Gastroenterol 2002; 97: 3210-3211(ケースシリーズ)2) Aniwan S, Eakpongpaisit S, Imraporn B, et al. Infliximab stopped severe gastrointestinal bleeding in

Crohn’s disease. World J Gastroenterol 2012; 18: 2730-2734(ケースシリーズ)3) Homan WP, Tang CK, Thorbjarnarson B. Acute massive hemorrhage from intestinal Crohn’s disease.

Report of seven cases and review of the literature. Arch Surg 1976; 111: 901-905(ケースシリーズ)4) Alla VM, Ojili V, Gorthi J, et al. Revisiting the past: intra-arterial vasopressin for severe gastrointestinal

bleeding in Crohn’s disease. J Crohns Colitis 2010; 4: 479-482(ケースシリーズ)5) Robert JR, Sachar DB, Greenstein AJ. Severe gastrointestinal hemorrhage in Crohn’s disease. Ann Surg

1991; 213: 207-211(ケースシリーズ)

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 121: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 95 —

6) Belaiche J, Louis E, D’Haens G, et al. Acute lower gastrointestinal bleeding in Crohn’s disease: characteris-

tics of a unique series of 34 patients. Belgian IBD Research Group. Am J Gastroenterol 1999; 94: 2177-2181(ケースシリーズ)

【検索期間外文献】a) Kim KJ, Han BJ, Yang SK, et al. Risk factors and outcome of acute severe lower gastrointestinal bleeding in

Crohn’s disease. Dig Liver Dis 2012; 44: 723-728(ケースシリーズ)

⑤消化管合併症(瘻孔,狭窄,出血,膿瘍)

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 122: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 96 —

解説

CD では腸管壁全層性病変に伴って膿瘍が認められることがあり,日本の報告では,頻度は約10%とされている 1).膿瘍の診断には,CT,MRI,超音波検査などが有用である 2).治療として,基本的に絶食,輸液管理を考慮する.加えて,広域スペクトラムの抗菌薬の投与,可能な場合は経皮的に排膿を行う.排膿法には,CT ガイド下,あるいは超音波ガイド下の経皮的ドレナージ,あるいは外科的に小切開を置いてドレナージする方法がある 3, 4).経皮的ドレナージでコントロールできない症例や,再発例は手術が必要となる.膿瘍が合併する場合,責任腸管を同定しその切除を伴う外科的治療を考慮する.ACCENT Ⅱの報告から,IFX 使用は膿瘍再燃と関与しないこと 5),また膿瘍ドレナージ後の抗

TNF 製剤投与が再燃予防に有効である症例報告もある.このことから,膿瘍再発を繰り返す難治症例では原則手術であるが,適切なドレナージ後,症例によっては抗 TNF 製剤の投与を考慮してもよい.

文献

1) Yamaguchi A, Matsui T, Sakurai T, et al. The clinical characteristics and outcome of intraabdominal

abscess in Crohn’s disease. J Gastroenterol 2004; 39: 441-448(ケースシリーズ)2) Potthast S, Rieber A, Von Tirpitz C, et al. Ultrasound and magnetic resonance imaging in Crohn’s disease:

a comparison. Eur Radiol 2002; 12: 1416-1422(ケースシリーズ)3) Gervais DA, Hahn PF, O’Neill MJ, et al. Percutaneous abscess drainage in Crohn disease: technical success

and short- and long-term outcomes during 14 years. Radiology 2002; 222: 645-651(ケースシリーズ)4) Gutierrez A, Lee H, Sands BE. Outcome of surgical versus percutaneous drainage of abdominal and pelvic

abscesses in Crohn’s disease. Am J Gastroenterol 2006; 101: 2283-2289(ケースシリーズ)5) Sands BE, Blank MA, Diamond RH, et al. Maintenance infliximab does not result in increased abscess

development in fistulizing Crohn’s disease: results from the ACCENT II study. Aliment Pharmacol Ther

2006; 23: 1127-1136(メタ)

Clinical Question 6-86.クローン病の治療 ― ❺消化管合併症(瘻孔,狭窄,出血,膿瘍)

CQ 6-8 CDの消化管合併症④:膿瘍に対する治療は?

ステートメント 推奨の強さ(Delphi 中央値)

エビデンスレベル

● CT,超音波,MRI などの画像診断の後,抗菌薬投与,経皮的ドレナージや切開排膿を行うことを推奨する.

1(9) D

● 膿瘍治療後の抗TNF製剤の使用は膿瘍再発のリスクを軽減する. - D

CDの消化管合併症④:膿瘍に対する治療は?

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 123: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 97 —

解説

CD の上部消化管病変に対する治療のエビデンスはないが,活動性炎症性病変には,PPI,ステロイド,チオプリン製剤 1, 2),インフリキシマブ 3)が有効だったとする報告がある.また,日本では,5-ASA 粉砕投与の有効性に関する報告がある 4).胃十二指腸狭窄について,単発で短い病変では内視鏡的バルーン拡張術が有効な場合がある 5).

内視鏡的バルーン拡張術が困難または無効の場合,手術(胃空腸吻合術,狭窄形成術など)を検討する 1, 2),(J Crohns Colitis 2013; 7: 791-796 a)[検索期間外文献]).エキスパートの意見を重視して作成された 1件のレビューでは,狭窄を伴わない CD 上部病

変には PPI を第一選択とし,次にステロイド,チオプリン製剤,インフリキシマブによる加療を行うことが推奨されている,狭窄病変には,内視鏡的バルーン拡張術を第一選択とし,PPI の次に,ステロイド・チオプリン製剤・手術が推奨されている 6).なお,CD 上部消化管病変の存在は,その後の疾病進行の予後規定因子であるとする報告があ

る(Am J Gastroenterol 2014; 109: 1026-1036 b)[検索期間外文献]).

文献

1) van Hogezand RA, Witte AM, Veenendaal RA, et al. Proximal Crohn’s disease: review of the clinicopatho-

logic features and therapy. Inflamm Bowel Dis 2001; 7: 328-3372) Mottet C, Juillerat P, Pittet V, et al. Upper Gastrointestinal Crohn’s Disease . Digestion 2007; 76: 136-1403) Ando Y, Matsushita M, Kawamata S, et al. Infliximab for severe gastrointestinal bleeding in Crohn’s dis-

ease. Inflamm Bowel Dis 2009; 15: 483-484(ケースシリーズ)

Clinical Question 6-96.クローン病の治療 ― ❻その他の消化管病変

CQ 6-9 CDの上部消化管病変における治療は?

ステートメント 推奨の強さ(Delphi 中央値)

エビデンスレベル

● エビデンスは乏しいが,活動性炎症性病変に対し,プロトンポンプ阻害薬(PPI),ステロイド,チオプリン製剤,インフリキシマブなどの投与を考慮することを提案する.

2(7) D

● 浮腫性狭窄が疑われる場合はステロイドやチオプリン製剤を投与し,線維性狭窄が疑われる場合は内視鏡的バルーン拡張術または手術(胃空腸吻合術,狭窄形成術)を検討することを推奨する.

1(8) D

CDの上部消化管病変における治療は?

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 124: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 98 —

4) 長又博之,島居 明,和泉元喜,ほか.Mesalazine 粉末の投与により胃病変の改善をみたクローン病の 1例.日本消化器病学会雑誌 2000; 97: 1261-1266(ケースシリーズ)

5) Matsui T, Hatakeyama S, Ikeda K, et al. Long-term outcome of endoscopic balloon dilation in obstructive

gastroduodenal Crohn’s disease. Endoscopy 1997; 29: 640-645(ケースシリーズ)6) Mottet C, Vader JP, Felley C, et al. Appropriate management of special situations in Crohn’s disease

(upper gastro-intestinal; extra-intestinal manifestations; drug safety during pregnancy and breastfeeding):

results of a multidisciplinary international expert panel-EPACT II. J Crohns Colitis 2009; 3: 257-263

【検索期間外文献】a) Tonelli F, Alemanno G, Bellucci F, et al. Symptomatic duodenal Crohn’s disease: is stricture-plasty the

right choice? J Crohns Colitis 2013; 7: 791-796b) Magro F, Rodrigues-Pinto E, Coelho R, et al. Is it possible to change phenotype progression in Crohn’s dis-

ease in the era of immunomodulators? Predictive factors of phenotype progression. Am J Gastroenterol

2014; 109: 1026-1036(ケースシリーズ)

6.クローン病の治療

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 125: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 99 —

解説

喫煙は CD の難治化や再発に関与していることが示され 1),禁煙によって難治化や再発率の改善も示されている 2).2006 年の 9つの研究をまとめたメタアナリシスでは,喫煙が CD を悪化させるリスクはオッズ比 1.76(95%CI 1.40〜2.22)と報告されている 3).頻回あるいは過剰の飲酒は腸管を障害する恐れがあり,控えるべきである.また,CD では栄養療法が治寮効果を発揮することから,不規則で偏った食生活は CD の再燃要因になりうると考えられる.

心理的ストレスと再燃との関連性も示されている 4).できるだけストレスを避けるか,ため込まない工夫が望まれる.NSAIDs は消化管障害を生じるだけでなく,CD の再燃や増悪の要因となることが知られているので,できるだけ服用を避け,鎮痛薬や解熱薬が必要な場合はアセトアミノフェンもしくは COX-2 阻害薬の短期間投与で代用することが望ましい 5, 6).

文献

1) Sutherland L, Ramcaran S, Bryant H, et al. Effect of cigarette smocking on recurrence of Crohns disease.

Gastroenterology 1990; 98; 1123-1128(コホート)2) Cosnes J, Carbonnel F, Beaugeriel, et al. Smoking cessation and the course of Crohn disease; an interven-

tion study. Gastroenterology 2001; 120; 1093-1099(コホート)3) Mahid SS, Minor KS, Soto RE, et al. Smokingand inflammatory bowel disease: a meta-analysis. Mayo Clin

Proc 2006; 81: 1462-1471(メタ)4) Mawdsley J, Rampton D. Psychological stress in IBD: new insights into pathogenic and therapeutic impli-

cations. Gut 2005; 54; 1481-14915) Felder J, Korelitz B, Rajapakse R, et al. Effects of nonsteroidal anti-inflammatory drugs on inflammatory

bowel disease; a case-control study. Am J Gastroenterol 2000; 95; 1949-1954(ケースコントロール)6) Lichtenstein GR, Hanauer SB, Sandborn WJ. Management of Crohn’s disease in adults: ACG practice

guidelines. Am J Gastroenterol 2009; 104: 465-483(ガイドライン)

Clinical Question 6-106.クローン病の治療 ― ❼寛解期の維持治療

CQ 6-10 寛解期CDの再燃を予防するためにどのような生活上の注意が必要か?

ステートメント 推奨の強さ(Delphi 中央値)

エビデンスレベル

● 喫煙者には禁煙を指導することを推奨する. 1(9) B

● 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の過剰投与を避けることを推奨する.

1(8) C

寛解期CDの再燃を予防するためにどのような生活上の注意が必要か?

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 126: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 100 —

解説

1.チオプリン製剤アザチオプリン(AZA)とメルカプトプリン(6-MP)は,寛解維持期におけるステロイド減量

離脱効果とともに,長期寛解維持に対しても有効であることが示されている.投与量としてはAZA で 1.0〜2.5mg/kg/日,6-MP ではその半分量が目安となるが,有効性は低用量より高用量で優れるとされている(AZA の寛解維持効果オッズ比 2.32(95%CI 1.44〜3.49),6-MP の寛解維持効果オッズ比 3.32(95%CI 1.40〜7.87)1, 2)).しかし,AZA と 6-MP は重篤な副作用を発現する可能性があること,効果と副作用発現に至る投与量には個人差があること,推奨投与量は欧米人を対象に決定されており,日本人ではより少量投与でも効果と副作用を発現する可能性があることなどを十分に考慮する必要がある.チオプリン製剤による寛解維持中の CD 患者に対して,AZA の中断による再燃への影響を検討した 3つの研究が統合解析(163 人の CD 患者を対象)された.その結果,AZA 継続は CD の再燃を抑えることに有用であることが明らかとなった 3).2年を超えた投与継続が有効であるとの報告から,寛解が維持され副作用の出現を認めない限りは 3〜4 年間は投与を継続することが有用と思われる(RR relapse with AZA=0.39,95%CI 0.21〜0.74)4).2009 年のメタアナリシスの結果では,術後のチオプリン製剤の投与が内視鏡的再燃を抑制するとの報告がなされた 3).

2.抗 TNF製剤2011 年のメタアナリシスを参考とする 5).5つの臨床試験のメタアナリシス(1,390 人の CD が

対象)からは,抗 TNF 製剤はプラセボ群に比し,luminal CD 患者の再燃予防に有用であること

Clinical Question 6-116.クローン病の治療 ― ❼寛解期の維持治療

CQ 6-11 寛解期CDの再燃を予防するためにどのような治療を行うか?

ステートメント 推奨の強さ(Delphi 中央値)

エビデンスレベル

● 寛解維持を目的としてチオプリン製剤(AZA/6-MP)を投与することを推奨する.

1(9) B

● 抗 TNF製剤により寛解導入された例では,抗TNF製剤の定期的投与を続けることを推奨する.

1(9) B

● 経腸栄養療法および 5-ASA製剤を寛解維持療法の選択肢として考慮することを推奨する.

1(8) C

寛解期 CDの再燃を予防するためにどのような治療を行うか?

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 127: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 101 —

⑦寛解期の維持治療

が示された(RR of relapse=0.71,95%CI 0.65〜0.76).したがって,インフリキシマブ 5mg/kg

あるいは 10mg/kg の 8週間ごとの投与,アダリムマブ 40mg/週(日本では未承認)・2週の投与,certolizumab 400mg・4週の投与は各生物学的製剤に反応した患者の寛解維持に有効である.ただし,長期投与に関連した安全性についての評価はまだ十分ではない.

3.経腸栄養療法長期の寛解維持療法として,経腸栄養療法は安全性が高いという利点を有する一方,受容性

や利便性の点から,在宅で長期間完全経腸栄養を行うことは困難を伴う.部分的な経腸栄養であれば受容性・利便性の向上が期待でき,また摂食の楽しみも享受可能となる.経腸栄養とプラセボ(食餌制限なし)とを比較したランダム化試験は,2つしかない.しかしながら,1日摂取エネルギー量の 30〜50%相当を経腸栄養剤で補うことにより,通常食のみ摂取に比べ寛解維持率が有意に高いことが示された 6〜8).1 年を超えた期間でのエビデンスはないが,受容性と利便性で問題がなければ,可能な限り継続することが望ましいと思われる.

4.5-ASA製剤2010 年のレビューでは,内科的治療による寛解導入後の寛解維持に 5-ASA 製剤の投与はプラ

セボ群に比して,有効性はないと報告されている 1).一方,2011 年の Cochrane review では,9つの RCT を統合解析した外科的治療による寛解導入後の患者に対する 5-ASA 製剤の寛解維持効果は,プラセボ群に比較して再発抑制にやや有意であることが示唆された 9).しかしながら,この結果の解釈には注意を必要とする.

5.在宅中心静脈栄養小腸病変を有する CD 例で狭窄や穿孔などによる広範囲小腸切除あるいは頻回の手術に伴う

小腸切除によって残存小腸が 1m 以下になった場合は,もはや腸管から十分な栄養分の消化吸収が期待できない.したがって,必要量な栄養補給を自宅で可能にするために中心静脈にカテーテルを留置し,患者自身あるいは家族が点滴管理可能な状態で維持できる処置をする 10).

文献

1) Akobeng AK. Review article: the evidence base for interventions used to maintain remission in Crohn’sdisease. Aliment Pharmacol Ther 2008; 27: 11-18(メタ)

2) Pearson DC, May GR, Fick G, et al. Azathioprine for maintaining remission in Crohn’s disease. Cochrane

Database Syst Rev 2000; 2: CD000067(メタ)3) Peyrin-Biroulet L, Deltenre P, et al. Azathioprine and 6-mercaptopurine for the prevention of postopera-

tive recurrence in Crohn’s disease: a meta-analysis. Am J Gastroenterol 2009; 104: 2089-2096(メタ)4) Kahn KJ, Dubinsky MC, et al. Efficacy of immunosuppressive therapy for inflammatory bowel disease: a

systematic review and meta-analysis. Am J Gastroenterol 2011; 106: 630-642(メタ)5) Ford AC, Sandborn WJ, Khan KJ, et al. Efficacy of biological therapies in inflammatory bowel disease: sys-

tematic review and meta-analysis. Am J Gastroenterol 2011; 106: 644-659(メタ)6) Takagi S, Utsunomiya K, Kuriyama S, et al. Effectiveness of an half elemental diet as maintenance therapy

for Crohns disease; a randomized -controlled trial. Aliment Pharmacol Ther 2006; 24; 1333-1340(ランダム)

7) Yamamoto T, Nakahigashi M, Abbi R, et al. Impact of long term enteral nutrition on clinical and endo-

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 128: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 102 —

scopic disease activity and mucosal cytokines during remission in patients with Crohn’s disease; a

prospective study. Inflamm Bowel Dis 2005; 11: 580-588(非ランダム)8) Akobeng AK, Thomas AG. Enteral nutrition for maintenance of remission in Crohn’s disease. Cochrane

Database Syst Rev 2007; 18: CD005984(メタ)9) Gordon M, Naidoo K, Thomas AG, et al. Oral 5-aminosalicylic acid for maintenance of surgically-induced

remission in Crohn’s disease. Cochrane Database Syst Rev 2011; 19: CD008414(メタ)10) Jutta K, Heidi P, Peter L. Management of the short bowel syndrome after extensive small bowel resection.

Best Pract Res Clin Gastroenterol 2004; 18: 977-992

6.クローン病の治療

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 129: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 103 —

解説

ステートメントを改訂するに至る新しいエビデンスはないものの,ステートメントに関する利益が高いことに関しては,経験的に多くの内科医および外科医の同意が得られている.狭窄に対しては,外科的治療ではなく,内視鏡的拡張術が選択されることもあるが,その適応症例に関しては制限があり,その施行に関しては外科的治療のバックアップのもとに行うべきである 1).膿瘍に関しては,最終的には外科的治療の適応と考えられるが,抗菌薬投与と経皮ドレナージにて,緊急手術を回避できる可能性はある 2).

文献

1) Erkelens GW, van Deventer SJ. Endoscopic treatment of strictures in Crohn’s disease. Best Pract Res Clin

Gastroenterol 2004; 18: 201-207(メタ)2) Feagins LA, Holubar SD, Kane SV, et al. Current strategies in the management of intra-abdominal abscess-

es in Crohn’s disease. Clin Gastroenterol Hepatol 2011; 9: 842-850(メタ)

Clinical Question 6-126.クローン病の治療 ― ❽外科的治療

CQ 6-12 CDの外科的治療の適応は?

ステートメント 推奨の強さ(Delphi 中央値)

エビデンスレベル

● 穿孔,大量出血,癌合併,内科的治療により改善しない腸閉塞,膿瘍に対し外科的治療を行うことを推奨する(絶対的適応).

1(9) D

● 難治性狭窄,内瘻,外瘻,内科的治療無効例,難治性腸管外合併症(発育障害,壊疽性膿皮症など),難治性肛門病変に対し外科的治療を行うことを推奨する(相対的適応).

1(9) D

CDの外科的治療の適応は?

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 130: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 104 —

解説

本疾患では術後に再発し,複数回の再手術を要する場合もある.切除断端の健常部の長さは再発に影響しないため 1),内科的治療で改善しない症状の原因となっている病変部腸管の小範囲切除とする.また,瘻孔,炎症などによって巻き込まれた正常腸管や他臓器の処置や膿瘍ドレナージを要する場合がある.狭窄に対し,狭窄形成術として Heineke-Mikulicz 法,Finney 法,Jabouley 法などが行われ

る.術後再発率は腸管切除術と差がなく,腸管の温存が目的である 2).腸管吻合法(端端,端側,側側,機能的端端吻合)では,機能的端端吻合が端端吻合と比べて

縫合不全の合併率が低く,再発までの期間を延長する報告と 3),対立する報告があり 4),意見の一致をみていない.腹腔鏡手術は開腹手術に比べ,整容性,腸管運動の回復,入院期間に優位性があるとの報告

や 5),非劣性を示す報告がある 6).また,再手術例や膿瘍,瘻孔の合併例などでは,腹腔鏡手術の適応を慎重に考慮し,専門施設で行うことが望ましい 7).

難治性肛門病変に対して,腸管病変の内科的治療に加え,メトロニダゾール,シプロフロキサシンなどの薬物療法を行う.最も多い痔瘻ではこれらで改善しない場合,シートン法を行い,さらに免疫調節薬や抗 TNF 製剤などを併用する場合や人工肛門造設術,あるいは直腸切断術を行う場合がある 8).日本では直腸肛門管癌の報告が多く,近年増加しつつあり,直腸肛門病変の治療を行う際に

は留意が必要である 9).

Clinical Question 6-136.クローン病の治療 ― ❽外科的治療

CQ 6-13 CDの外科的治療ではどのような手術を行うか?

ステートメント 推奨の強さ(Delphi 中央値)

エビデンスレベル

● 狭窄,瘻孔などに対し,病変部腸管の切除術または,前者で可能な症例には狭窄形成術を行うことを推奨する.

1(9) D

● 内科的治療で改善しない難治性肛門病変に対し,シートン法などの局所治療や人工肛門造設術,直腸切断術を行うことを推奨する.

1(9) D

CDの外科的治療ではどのような手術を行うか?

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 131: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 105 —

⑧外科的治療

文献

1) Fazio VW, Marchetti F, Church M, et al. Effect of resection margins on the recurrence of Crohn’s disease in

the small bowel: a randomized controlled trial. Ann Surg 1996; 224: 563-571(ランダム)2) Yamamoto T, Fazio V W, Tekkis PP. Safety and efficacy of strictureplasty for Crohn’s disease: a systematic

review and meta-analysis. Dis Colon Rectum 2007; 50: 1968-1986(メタ・観察)3) Simillis C, Purkayastha S, Yamamoto T, et al. A meta-analysis comparing conventional end-to-end anasto-

mosis vs. other anastomotic configurations after resection in Crohn’s disease. Dis Colon Rectum 2007; 50:

1674-1687(メタ・観察)4) McLeod RS, Wolff BG, Ross S, et al. Recurrence of Crohn’s disease after ileocolic resection is not affected

by anastomotic type: results of a multicenter, randomized, controlled trial. Dis Colon Rectum 2009; 52:

919-927(ランダム)5) Lesperance K, Martin MJ, Lehmann R, et al. National trends and outcomes for the surgical therapy of ileo-

colonic Crohn’s disease: a population-based analysis of laparoscopic vs. open approaches. J Gastrointest

Surg 2009; 13: 1251-1259(コホート)6) Dasari BV, McKay D, Gardiner K. Laparoscopic versus Open surgery for small bowel Crohn’s disease.

Cochrane Database Syst Rev 2011; 1: CD006956(メタ)7) Dignass A, Assche GV, Lindsay JO, et al. The second European evidence-based consensus on the diagnosis

and management of Crohn’s disease: current management. J Crohns Colits 2010; 4: 28-62(ガイドライン)8) Van Assche G, Dignass A, Reinisch W, et al. The second European evidence-based consensus on the diag-

nosis and management of Crohn’s disease: special situations. J Crohns Colits 2010; 4: 63-101(ガイドライン)

9) 篠崎 大.クローン病と下部消化管癌―本邦の現況.日本大腸肛門病学会雑誌2008; 61: 353-363(ケースシリーズ)

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 132: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 106 —

解説

腸切除によって残存小腸 150 cm 以下になった症例では水分電解質,栄養補給ができなくなる場合があり,これらに対しては経静脈栄養療法や在宅中心静脈栄養療法を併用し,補給する必要がある(J Gastroenterol 2014; 49: 231-238 a)[検索期間外文献]).本症では術後早期から腸管病変が再発し,内視鏡による検索では回盲部切除術後の回腸結腸

吻合部の再発は 1年以内に 72%と高率である 1).また,再手術率は 5年で 16〜43%,10 年で 26〜65%と報告されている 2, 3).術後再発は臨床的再発より病変の出現(形態的再発)が先行し,その診断には内視鏡検査をは

じめとする画像診断が有用である 4).術後再発予防について Cochrane review では以下のように述べられている.メトロニダゾール

はプラセボより効果があったものの,副作用が多かった.メサラジンとアザチオプリン(AZA)/

メルカプトプリン(6-MP)はプラセボと比べ,臨床的再発と内視鏡的な高度な再発の予防に効果があり,メサラジンは AZA/6-MP はより内視鏡的な再発率は高いものの副作用は少なかった.インフリキシマブ,ブデソニドには有用性を示す十分なデータがなかった 5).以上のように再発予防法として確立されたものはなく,対象,開始時期,使用薬剤,副作用,

耐容性,費用などを考慮して,予防法を決定する必要がある.

文献

1) Rutgeerts P, Geboes K, Vantrappen G, et al. Natural history of recurrent Crohn’s disease at the ileocolic

anastomosis after curative surgery. Gut 1984; 25: 665-672(コホート)2) Williams JG, Wong WD, Rothenberger DA, et al. Recurrence of Crohn’s disease after resection. Br J Surg

Clinical Question 6-146.クローン病の治療 ― ❽外科的治療

CQ 6-14 CDの外科的治療における合併症とその治療は?

ステートメント 推奨の強さ(Delphi 中央値)

エビデンスレベル

● 術後短期では縫合不全,腹腔内膿瘍,腸閉塞などがあり,保存的治療,手術療法を行うことを推奨する.

1(9) D

● 術後長期では小腸機能不全症例があり,栄養療法を行うことを推奨する.

1(8) D

CDの外科的治療における合併症とその治療は?

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 133: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 107 —

1991; 78: 10-193) 福島恒男,杉田 昭,馬場正三,ほか.Crohn 病術後再発因子の検討.厚生省特定疾患難治性炎症性腸管

障害調査研究班平成 7年度研究報告書,1996: p58-60(ケースシリーズ)4) Dignass A, Assche GV, Lindsay JO, et al. The second European evidence-based consensus on the diagnosis

and management of Crohn’s disease: current management. J Crohns Colits 2010; 4: 28-62(ガイドライン)5) Doherty G, Bennett G, Patil S, et al. Interventions for prevention of post-operative recurrence of Crohn’s

disease. Cochrane Database Syst Rev 2009; 4: CD006873(メタ)

【検索期間外文献】a) Watanabe K, Sasaki I, Fukushima K, et al. Long-term incidence and characteristics of intestinal failure in

Crohn’s disease: a multicenter study. J Gastroenterol 2014; 49: 231-238(コホート)

⑧外科的治療

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 134: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

7.消化管外合併症

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 135: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 110 —

解説

IBD の腸管外合併症には,腸管病変の活動性と関連があるもの(末梢関節炎の一部,結節性紅斑,上強膜炎,口腔内アフタなど)と,関連しないもの(壊疽性膿皮症,ブドウ膜炎,仙骨関節炎,強直性脊椎炎,原発性硬化性胆管炎など)がある.いずれにしろ腸病変の炎症を積極的にコントロールすることが必要である.関節炎に対してはサラゾスルファピリジンなどの 5-ASA 製剤が第一選択となる.NSAIDs は,

腸病変を悪化させる恐れがあるため使用すべきではないが,COX-2 阻害薬の短期間の投与は比較的安全である 1, 2).壊疽性膿皮症にはステロイドの局所または全身投与を行う 3, 4).ステロイド抵抗性の壊疽性膿皮症に対して血球成分除去療法(CAP)が有効であったとする症例報告がいくつかある 5〜7).眼病変のうち,ブドウ膜炎では視力障害をきたす可能性があるため,ブドウ膜炎が疑われた段階で速やかに眼科医へのコンサルトを行う 8).

IBD 患者以外も対象に含めたランダム化比較試験および非ランダム化比較試験にて,インフリキシマブの壊疽性膿皮症,関節炎,ブドウ膜炎,強直性脊椎炎などに対する有効性が報告されている 9, 10).原発性硬化性胆管炎は CD よりも UC で合併することが多く,胆管癌および大腸癌のリスク

が上昇する.

Clinical Question 7-17.消化管外合併症

IBDの消化管外合併症とその治療は?

CQ 7-1 IBDの消化管外合併症とその治療は?

ステートメント 推奨の強さ(Delphi 中央値)

エビデンスレベル

● IBDの腸管外合併症には,腸管病変の活動性と関連がある末梢関節炎の一部,結節性紅斑,上強膜炎,口腔内アフタなどと,腸管病変の活動性と関連しない壊疽性膿皮症,ブドウ膜炎,仙骨関節炎,強直性脊椎炎,原発性硬化性胆管炎などがある.

● 腸管病変が活動期にあれば,まず炎症をコントロールする治療を行うことを推奨する.

1(8) D

● 壊疽性膿皮症には局所あるいは全身ステロイドを第一選択とすることを推奨する.

1(8) D

● 腸管外合併症に対して抗TNF製剤の投与を考慮することを提案する.

2(7) B

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 136: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 111 —

文献

1) El Miedany Y, Youssef S, Ahmed I, et al. The gastrointestinal safety and effect on disease activity of etori-

coxib, a selective cox-2 inhibitor in inflammatory bowel disease. Am J Gastroenterol 2006; 101: 311-317(ランダム)

2) Sandborn WJ, Stenson WF, Brynskov J, et al. Safety of celecoxib in patients with ulcerative colitis in remis-

sion: a randomized, placebo-controlled, pilot study. Clin Gastroenterol Hepatol 2006; 4: 203-211(ランダム)

3) Reichrath J, Bens G, Bonowitz A, et al. Treatment recommendations for pyoderma gangrenosum: an evi-

dence-based review of the literature based on more than 350 patients. J Am Acad Dermatol 2005; 53: 273-

283(ケースシリーズ)4) Binus AM, Qureshi AA, Li VW, et al. Pyoderma gangrenosum: a retrospective review of patients charac-

teristics, comorbidities and therapy in 103 patients. Br J Dermatol 2011; 165: 1244(ケースシリーズ)5) Ohmori T, Yamagiwa A, Nakamura I, et al. Treatment of pyoderma gangrenosum associated with Crohn’s

disease. Am J Gastroenterol 2003; 98: 2101-2102(ケースシリーズ)6) Fujimoto E, Fujimoto N, Kuroda K, et al. Leukocytapheresis treatment for pyoderma gangrenosum. Br J

Dermatol 2004; 151: 1090-1092(ケースシリーズ)7) Okuma K, Mitsuishi K, Hasegawa T, et al. A case report of steroid and immunosuppressant-resistant pyo-

derma gangrenosum successfully treated by granulocytapheresis. Ther Apher Dial 2007; 11: 387-390(ケースシリーズ)

8) Assche GV, Dignass A, Reinisch W, et al. The second European evidence-based consensus on the diagno-

sis and management of Crohn’s disease: special situations. J Crohns Colitis 2010; 4: 63-101(ガイドライン)9) Brooklyn TN, Dunnill MG, Shetty A, et al. Infliximab for the treatment of pyoderma gangrenosum: a ran-

domised, double blind, placebo controlled trial. Gut 2006; 55: 505-509(ランダム)10) Braun J, Brandt J, Listing J, et al. Treatment of active ankylosing spondylitis with infliximab: a randomised

controlled multicentre trial. Lancet 2002; 359: 1187-1193(ランダム)

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 137: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

8.癌サーベイランス

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 138: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 114 —

Clinical Question 8-18.癌サーベイランス

UCの癌のスクリーニングとサーベイランスは?

CQ 8-1 UCの癌のスクリーニングとサーベイランスは?

ステートメント 推奨の強さ(Delphi 中央値)

エビデンスレベル

● 発症から 8年後にスクリーニング目的の大腸内視鏡検査を行うことを推奨する.

1(8) C

● スクリーニング大腸内視鏡検査ののち,左側大腸炎型,あるいは全大腸炎型のUC患者では,1〜2年に一度のサーベイランス内視鏡を行うことを推奨する.

1(8) C

● 大腸内視鏡検査時の生検は,ランダム生検よりも,色素などを用いた狙撃生検を行うことを推奨する.

1(8) B

解説

UC 患者における大腸癌の罹患率は一般人口より有意に高い.住民を対象にしたコホート研究を集めたメタアナリシス 1)によると,UC 患者全体における大腸直腸癌の標準化罹患比は 2.39

(95%CI 2.1〜2.73)であり,全大腸炎型の UC における標準化罹患比は 4.8(95%CI 3.9〜5.9)であった.2010 年の米国消化器病学会の推奨 2)によると,UC 患者すべてにおいて,発症後 8年後のスクリーニング大腸内視鏡検査,その後左側大腸炎型あるいは全大腸炎型の UC 患者においては 1〜2年に一度のサーベイランスが推奨されている.発症時期が不明な症例では 8年以上の経過症例としてスクリーニング大腸内視鏡検査が勧められる.また,原発性硬化性胆管炎

(PSC)と診断された患者においては,PSC の診断後は年に一度のサーベイランスが望ましいとされている.慢性期の UC 患者を対象としたクロスオーバー研究やランダム化比較試験を用いたメタアナリシスによると,0.1%のインジゴカルミン 3),または 0.1%のメチレンブルー(Scand J

Gastroenterol 2014; 49: 222-237 a)[検索期間外文献])を用いた色素内視鏡は白色光を用いた内視鏡検査より,上皮内腫瘍の検出率が有意に高かった.米国においては,慢性期の UC 患者における大腸癌のサーベイランスの方法として,白色光を用いた内視鏡においては,10 cm ごとに 4個の生検をランダムに行うことに加えて,肉眼上悪性所見が疑われる部位の生検を加えることが勧められている 2).

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 139: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 115 —

文献

1) Jess T, Rungoe C, Peyrin-Biroulet L. Risk of colorectal cancer in patients with ulcerative colitis: a meta-

analysis of population-based cohort studies. Clin Gastroenterol Hepatol 2012; 10: 639-645(メタ・観察)2) Farraye FA, Odze RD, Eaden J, et al. AGA technical review on the diagnosis and management of colorectal

neoplasia in inflammatory bowel disease. Gastroenterology 2010; 138: 746-774(ガイドライン)3) Rutter MD, Saunders BP, Schofield G, et al. Pancolonic indigo carmine dye spraying for the detection of

dysplasia in ulcerative colitis. Gut 2004; 53: 256-260(非ランダム)

【検索期間外文献】a) Omata F, Ohde S, Deshpande GA, et al. Image-enhanced, chromo, and cap-assisted colonoscopy for

improving adenoma/neoplasia detection rate: a systematic review and meta-analysis. Scand J Gastroen-

terol 2014; 49: 222-237(メタ)

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 140: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 116 —

解説

CD 患者においては,大腸直腸癌発症の危険はやや上昇している程度であるが,小腸癌の発症リスクはかなり高い.米国ミネソタ州の住民を対象にした研究 1)では,CD 患者の大腸直腸癌と小腸癌の標準化罹患比はそれぞれ,1.9(95%CI 0.7〜4.1),41.1(95%CI 8.5〜120)であり,一般人口に比較して,CD 患者は小腸癌の罹患率が著しく高い.一方,日本人の 770 人の CD 患者での検討では,大腸直腸癌(肛門管癌を含む)の標準化罹患比は 3.23(95%CI 1.28〜5.29)と有意に高い(J Gastroenterol Hepatol 2013; 28: 1300-1305 a)[検索期間外文献]).2010 年の米国消化器病学会の推奨 2)によると,CD 患者すべてにおいて,発症後 8年後のスクリーニング大腸内視鏡検査,その後 1/3 以上の大腸病変を有する患者においては 1〜2年に一度のサーベイランスが推奨されている.8年以上の罹病期間を有し,大腸の 1/3 に病変を有する米国内の CD 患者 259人を対象に行われた縦断研究 3)によると,4回目のサーベイランス目的の大腸内視鏡(最初の時点からの時間の中央値 7.2 年)の時点での異型上皮あるいは大腸癌の確率は 22%であった.スクリーニングおよびサーベイランスの具体的方法に関しては,肉眼的に疑わしい場所に加えて,10 cm おきに 4箇所ずつからの無作為な採取を追加するべきかどうかは明らかになっていない.一方,日本においては,欧米と異なり直腸肛門管癌の合併が多いとされ,10 年以上経過した直腸,肛門病変(潰瘍,狭窄,痔瘻)を有する患者においては,直腸指診,内視鏡下の生検,ブラッシング細胞診,腫瘍マーカー(CEA,CA19-9),骨盤 CT/MRI による年 1回のサーベイランスが勧められている(Crohn 病に合併した小腸,大腸癌の特徴と予後―第 10 報,2015 b)[検索期間外文献]).

Clinical Question 8-28.癌サーベイランス

CDの癌のスクリーニングとサーベイランスは?

CQ 8-2 CDの癌のスクリーニングとサーベイランスは?

ステートメント 推奨の強さ(Delphi 中央値)

エビデンスレベル

● 発症から 8年後に一度スクリーニング大腸内視鏡検査を行い,大腸の 1/3 以上に病変を有する患者の場合は,その後 1〜2年に一度のサーベイランス内視鏡を行うことを提案する.

2(7) D

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 141: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 117 —

文献

1) Jess T, Loftus EV Jr, Velayos FS, et al. Risk of intestinal cancer in inflammatory bowel disease: a popula-

tion-based study from olmsted county, Minnesota. Gastroenterology 2006; 130: 1039-1046(コホート)2) Farraye FA, Odze RD, Eaden J, et al. AGA technical review on the diagnosis and management of colorectal

neoplasia in inflammatory bowel disease. Gastroenterology 2010; 138: 746-774(ガイドライン)3) Friedman S, Rubin PH, Bodian C, et al. Screening and surveillance colonoscopy in chronic Crohn’s colitis.

Gastroenterology 2001; 120: 820-826(コホート)

【検索期間外文献】a) Yano Y, Matsui T, Hirai F, et al. Cancer risk in Japanese Crohn’s disease patients: investigation of the stan-

dardized incidence ratio. J Gastroenterol Hepatol 2013; 28: 1300-1305(コホート)b) 杉田 昭ほか.難治性炎症性腸管障害に関する調査研究. 潰瘍性大腸炎,Crohn 病に合併した小腸,大腸癌

の特徴と予後―第 10 報―Crohn 病に合併した直腸肛門管癌の surveillance program 確立についての提案,2015(ケースシリーズ)

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 142: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

9.特殊状況の IBD

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 143: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 120 —

解説

IBD は若年者に好発するため,妊娠・授乳時にどのように治療を行い安全に出産・授乳をさせるが重要な課題である.主治医は,患者が安全に子どもを持てるよう,産婦人科,小児科医と協力しながら管理にあたる.一方,妊娠は一定の確率で合併症(流産,先天形態異常など)が起こるデリケートな問題であることを主治医が理解し,患者に説明する(ヒトのベースラインリスク:自然流産 15%,不妊 10%,先天形態異常 3〜5%)(産婦人科診療ガイドライン―産科編 a)

[検索期間外文献]).寛解期の IBD 女性患者の妊孕性は,健常者と同等である.活動期 CD 例では,不妊率が増加

する(J Crohns Colitis 2015; 9: 107-124 b)[検索期間外文献]).女性 UC 患者では,大腸全摘,回腸肛門吻合術後に不妊率が 3倍の 48%に増加するが 1),人工授精により妊娠は可能である.サラゾスルファピリジン(SASP)投与を受けている男性患者は受胎能力が低下するが,投薬中断により正常に戻る 2).活動期 IBD 合併妊娠では,早産,低出生体重のリスクがわずかに増加するが,IBD が寛解を

維持していれば,概ね安全に妊娠・出産可能である 3〜5, b),(Nat Rev Gastroenterol Hepatol 2014;

11: 116-127 c), Aliment Pharmacol Ther 2013; 38: 847-853 d)[検索期間外文献]).IBD 患者の妊娠については近年海外でデータが集積され,妊娠中の母体および胎児への最大

のリスクは IBD の疾患活動性であり,治療による有益性が投薬リスクを上回り,妊娠中も継続すべきとする意見が主流となっている b〜d).日本人のデータはまだ少ないが,海外同様の結果が報告されている 5, 6),(BMC Res Notes 2013; 6: 210 e)[検索期間外文献]).

日本医薬品集(添付文書)には,ほとんどの薬剤で妊娠・授乳中の投与を避けるよう記載されているが,日本産婦人科診療ガイドラインに記載されている妊娠中に配慮すべき薬剤には,日本で一般的に使用される IBD 治療薬は含まれていない a).

Clinical Question 9-19.特殊状況の IBD

IBD患者における妊娠・出産の際の治療は?

CQ 9-1 IBD患者における妊娠・出産の際の治療は?

ステートメント 推奨の強さ(Delphi 中央値)

エビデンスレベル

● IBD患者の妊娠・授乳中の治療について,個々の症例に応じて有益性と有害性を考慮し,患者と主治医が話し合い,選択することを推奨する.

1(9) C

● IBD合併妊娠では,多くは治療による有益性が投薬による有害性を上回るため,原則的に妊娠中も治療を継続することを推奨する.

1(9) B

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 144: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 121 —

1.妊婦への投薬メトトレキサートは催奇形性のエビデンスがあり,妊娠中の投与を避ける 7).栄養療法中は,

ビタミン A 過剰摂取に注意する 7)(妊娠前 3 ヵ月〜初期 3 ヵ月はレチノール当量上限:3,000µgRE,エレンタール 1包:216µgRE).SASP には抗葉酸活性があり,神経管閉鎖障害のハイリスクと考えられる.葉酸投与による予防のエビデンスはないが,妊娠前から 3ヵ月まで1日 4〜5mg の葉酸投与を行うことが望ましい(日本では 1錠 5mg の葉酸錠(フォリアミン)が処方可能)a).アザチオプリン,シクロスポリン,タクロリムスは,日本の添付文書で妊婦への投与は禁忌とされているが,臨床的に有意な催奇形性・胎児毒性は証明されていない 7, c),

(Inflamm Bowel Dis 2013; 19: 15-22 f)[検索期間外文献]).これら薬剤の投与を受けている女性患者の妊娠が判明したら,投与の必要性を判断し,中止可能と判断されれば中止,継続が望ましいと判断される場合は胎児リスクを説明したうえで投与を継続する a).インフリキシマブ,アダリムマブは,妊娠中期以降は胎盤を能動的に通過し新生児へ移行するので,妊娠中期以降の投与について,中止可能と判断されれば中止を検討する b),(Am J Gastroenterol 2013; 108: 1426-

1438 g)[検索期間外文献]).

2.授乳中の投薬母乳栄養は児の感染症罹病や死亡率を低下させるので,誤った情報から授乳を中止すること

がないよう配慮する a).ほとんどの薬剤は程度の差はあれ母乳中に分泌されるが,5-ASA,SASP,プレドニゾロン,抗 TNF 製剤は授乳中に投与しても大きな問題はない 7〜9, a).メトロニダゾール,シプロフロキサシン,シクロスポリン,タクロリムス,メトトレキサートは乳汁から児に移行するため,授乳期は可能な限り投与を避ける 7, 8, a, c).

インフリキシマブ,アダリムマブの投与を受けた母から生まれた児は免疫抑制状態にある.生後 6ヵ月頃まで BCG および生ワクチン接種を控える 9),(小児の臓器移植および免疫不全状態における予防接種ガイドライン 2014 h)[検索期間外文献]).妊娠・授乳における薬剤投与の絶対的安全性のエビデンスはなく,常に新しい情報が追加さ

れるので,主治医は産科主治医と協力し,最新の情報にアクセスする努力をする.厚生省事業としての国立成育医療研究センター「妊娠と薬情報センター」(http://www.ncchd.go.jp/kusuri/

index.html)は最新データが更新され,患者自身もアクセスし情報入手が可能で有用である.

文献

1) Waljee A, Waljee J, Morris AM, et al. Threefold increased risk of infertility: a meta-analysis of infertility

after ileal pouch anal anastomosis in ulcerative colitis. Gut 2006; 55: 1575-1580(ケースコントロール)2) O’Moráin C, Smethurst P, Doré CJ, et al. Reversible male infertility due to sulphasalazine: studies in man

and rat. Gut 1984; 25: 1078(ケースコントロール)3) Bortoli A, Pedersen N, Duricova D, et al. Pregnancy outcome in inflammatory bowel disease: prospective

European case-control ECCO-EpiCom study, 2003-2006. Aliment Pharmacol Ther 2011; 34: 724-734(ケースコントロール)

4) Stephansson O, Larsson H, Pedersen L, et al. Congenital abnormalities and other birth outcomes in chil-

dren born to women with ulcerative colitis in Denmark and Sweden. Inflamm Bowel Dis 2011; 17: 795-801(ケースコントロール)

5) Naganuma M, Kunisaki R, Yoshimura N, et al. Conception and pregnancy outcome in women with

inflammatory bowel disease: a multicentre study from Japan. J Crohns Colitis 2011; 5: 317-323(ケースコ

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 145: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 122 —

ントロール)6) Sato A, Naganuma M, Asakura K, et al. Conception outcomes and opinions about pregnancy for men with

inflammatory bowel disease. J Crohns Colitis 2010; 4: 183-188(ケースコントロール)7) Briggs GG, et al. Drugs in Pregnancy and Lactation, 9th Ed, Lippincott Williams & Wilkins, Philadelphia,

20118) Ito S. Drug therapy for breast-feeding women. N Engl J Med 2000; 343: 118-126(メタ)9) Cheent K, Nolan J, Shariq S, et al. Case report: fatal case of disseminated BCG infection in an infant born to

a mother taking infliximab for Crohn’s disease. J Crohns Colitis 2010; 4: 603(ケースシリーズ)

【検索期間外文献】a) 日本産科婦人科学会,日本産婦人科医会(編・監修).産婦人科診療ガイドライン―産科編 2014,日本産

科婦人科学会事務局,東京,2014(ガイドライン)b) van der Woude CJ, Ardizzone S, Bengtson MB, et al. The second European evidence-based Consensus on

reproduction and pregnancy in inflammatory bowel disease. J Crohns Colitis 2015; 9: 107-124(ガイドライン)

c) Nielsen OH, Maxwell C, Hendel J. IBD medications during pregnancy and lactation. Nat Rev Gastroen-

terol Hepatol 2014; 11: 116-127(メタ)d) Tavernier N, Fumery M, Peyrin-Biroulet L, et al. Systematic review: fertility in non-surgically treated

inflammatory bowel disease. Aliment Pharmacol Ther 2013; 38: 847-853(メタ)e) Ujihara M, Ando T, Ishiguro K, et al. Importance of appropriate pharmaceutical management in pregnant

women with ulcerative colitis. BMC Res Notes 2013; 6: 210(ケースコントロール)f) Akbari M, Shah S, Velayos FS, et al. Systematic review and meta-analysis on the effects of thiopurines on

birth outcomes from female and male patients with inflammatory bowel disease. Inflamm Bowel Dis 2013;

19: 15-22(メタ)g) Gisbert JP, Chaparro M. Safety of anti-TNF agents during pregnancy and breastfeeding in women with

inflammatory bowel disease. Am J Gastroenterol 2013; 108: 1426-1438(メタ)h) 日本小児感染症学会.小児の臓器移植および免疫不全状態における予防接種ガイドライン 2014,協和企

画,東京,2014(ガイドライン)

9.特殊状況の IBD

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 146: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 123 —

Clinical Question 9-29.特殊状況の IBD

高齢者の IBDにおける留意点は?

CQ 9-2 高齢者の IBDにおける留意点は?

ステートメント 推奨の強さ(Delphi 中央値)

エビデンスレベル

● 高齢者 IBDの治療は,基本的には一般年齢患者と同様であるが,重症例では診断や手術の遅れが生命予後にかかわることを念頭に置き,手術のタイミングを適切に判断することを推奨する.

1(9) C

● 1剤以上の免疫抑制療法に抵抗する難治例では,早期に専門医へコンサルトすることを推奨する.

1(9) C

解説

高齢者 IBD は,重症度,臨床経過などの病態に,若年者と大差はないとする報告が多く,治療は,基本的に若年者と同様である 1),(Aliment Pharmacol Ther 2014; 39: 459-477 a)[検索期間外文献]).しかし,高齢者は臓器予備能が低く,併存疾患を持ち,内服薬が多いため,治療の際は薬剤の副作用や相互作用に注意する a).高齢者 IBD は,腸結核を含む感染性腸炎,薬剤性腸炎,虚血性腸炎など鑑別すべき疾患が多

く,診断が遅れることがある 2).また,若年者に比べて栄養状態の悪化や,日常生活制限によるADL 低下をきたしやすい a),(厚生労働省科学研究費補助金難治性疾患等克服研究事業,難治性炎症性腸管障害に関する調査研究分担研究報告書,平成 22-25 年度総合研究報告書,2014 b)[検索期間外文献]).特に静脈血栓症や感染症などの合併は,生命予後にかかわる a).免疫抑制治療による感染症(サイトメガロウイルス感染症やニューモシスチス肺炎)や,ステ

ロイドによる骨塩量減少,高血糖,副腎機能低下,精神症状,カルシニューリン阻害薬による腎障害,抗 TNF 製剤による心不全などは,若年者より高齢者で出現しやすい a, b).高齢者への抗 TNF 製剤の適応は若年者と同等であるが,治療反応性が低く,重症感染症と死

亡のリスクが高いとする報告がある 3).潜在性結核のリスクも高く,投与前に十分な検査を要する a).高齢者 IBD は,手術時期の遅れにより,大出血や中毒性巨大結腸症などの合併症を起こしや

すい.また,術後肺炎などによる周術期死亡が高率だったとする報告がある(Surg Today 2014;

44: 39-43 c)[検索期間外文献]).そのため,免疫抑制治療薬が 1剤で効果不十分の場合は,早期の手術適応も念頭に置いて専門医にコンサルトすることが推奨される a).高齢者 UC の手術術式について,肛門括約筋機能から永久人工肛門を考慮したり,QOL に配

慮し回腸直腸吻合術が選択される場合もあるが,回腸囊肛門(管)吻合術の禁忌ではなく,肛門

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 147: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 124 —

括約筋機能が保たれていれば若年者と同等に行うべきとされる a).

文献

1) del Val JH. Old-age inflammatory bowel disease onset: a different problem? World J Gastroenterol 2011;

17: 2734-27392) Fujimoto T, Kato J, Nasu J, et al. Change of clinical characteristics of ulcerative colitis in Japan: analysis of

844 hospital-based patients from 1981 to 2000. Eur J Gastroenterol Hepatol 2007; 19: 229-235(ケースコントロール)

3) Cottone M, Kohn A, Daperno M, et al. Advanced age is an independent risk factor for severe infections

and mortality in patients given anti-tumor necrosis factor therapy for inflammatory bowel disease. Clin

Gastroenterol Hepatol 2011; 9: 30-35(ケースコントロール)

【検索期間外文献】a) Gisbert JP, Chaparro M. Systematic review with meta-analysis: inflammatory bowel disease in the elderly.

Aliment Pharmacol Ther 2014; 39: 459-477(メタ)b) 三浦総一郎.高齢者炎症性腸疾患診療の現状把握.厚生労働省科学研究費補助金難治性疾患等克服研究事

業,難治性炎症性腸管障害に関する調査研究分担研究報告書,平成 22-25 年度総合研究報告書,2014: p146-

151c) Ikeuchi H, Uchino M, Matsuoka H, et al. Prognosis following emergency surgery for ulcerative colitis in

elderly patients. Surg Today 2014; 44: 39-43(ケースコントロール)

9.特殊状況の IBD

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 148: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 125 —

欧文索引

A5-ASA 製剤 30, 48, 56, 67

CCDAI 10CDEIS(Endoscopic Index of Severity of Crohn’s dis-

ease) 19colonography 24Crohn’s disease(CD) 2cytapheresis(CAP) 43

Eenterography 24

Ggranulocyte/monocytapheresis(GMA) 43, 84

HHartmann 手術 76Harvey-Bradshaw 指数 10

Iileocolonoscopy 24inflammatory bowel disease(IBD) 2IOIBD(International Organization for study of

Inflammatory Bowel Disease)指数 10

Lleucocytapheresis(LCAP) 43

MMayo endoscopy subscore 18

Ppouchitis 36, 78probiotics 37, 52, 73

RRachmilewitz index 18

SS 状結腸粘液瘻造設 76

Uulcerative colitis(UC) 2

和文索引

あアザチオプリン 34, 69, 84, 100アダカラム 43アダリムマブ 38, 52, 59, 64, 71, 86, 101

いインフリキシマブ 38, 52, 59, 64, 71, 86, 101

え栄養療法 41遠位大腸炎型(UC) 9炎症性腸疾患(IBD) 2―の疫学 4―の重症度 9―の診断 14―の病態 9―の分類 9

か回腸人工肛門造設 76回腸囊炎 36, 78回腸囊肛門(管)吻合術 76潰瘍性大腸炎(UC) 2―の危険因子 5―の原因 5―の重症度分類 10―の診断基準 21

活動期(UC) 9, 82, 86顆粒球単球除去療法 43, 84寛解期(UC) 9

索 引

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 149: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

— 126 —

索 引

き喫煙 5, 7, 99狭窄 92禁煙 26禁酒 28

くクローン病(CD) 2―の危険因子 7―の原因 7―の重症度分類 10―の診断基準 23

クローン病活動指数 10

け経口避妊薬 7外科的治療 45, 74, 76, 78, 103, 104, 106血球成分除去療法 43, 66血性下痢 15結腸(亜)全摘 76

こ抗 TNF 製剤 38, 59, 64, 71, 86, 100抗菌薬 36, 52広範囲大腸炎 9肛門周囲病変 88高齢者 123

さサーベイランス 114, 116左側大腸炎型(UC) 9サラゾスルファピリジン 30, 48, 54, 56, 67

しシクロスポリン 35, 62出血 94出産 120小腸型(CD) 9小腸大腸型(CD) 9

すスクリーニング 114, 116

ストレス 99

せセルソーバ 43全大腸炎型(UC) 9

た大腸型(CD) 9大腸全摘 76大腸内視鏡検査 17タクロリムス 35, 59, 62, 73

ち腸管狭窄 92腸内細菌 36直腸炎型(UC) 9

に妊娠 120

の膿瘍 96

は白血球除去療法 43

ふ副腎皮質ステロイド 32, 50, 58, 61ブデソニド 32, 50

めメサラジン 30, 48, 54, 56, 67メルカプトプリン 34, 69, 84, 100免疫調節薬 34, 62, 69, 84

ろ瘻孔 90

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 150: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

2016 年 11月 10日 第 1 刷発行2018 年 3 月 30日 第 2 刷発行

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン 2016

編集 一般財団法人日本消化器病学会理事長 下瀬川 徹〒104-0061 東京都中央区銀座 8-9-13 K-18ビル8階電話 03─3573─4297

印刷・製本 日経印刷株式会社

発行 株式会社 南 江 堂発行者 小立鉦彦〒113-8410 東京都文京区本郷三丁目42 番 6 号電話 (出版)03─3811─7236 (営業)03─3811─7239ホームページ http://www.nankodo.co.jp/

The Japanese Society of Gastroenterology, 2016定価は表紙に表示してあります.落丁・乱丁の場合はお取り替えいたします.

Printed and Bound in JapanISBN978─4─524─26782─8

本書の無断複写を禁じます.   〈(社)出版者著作権管理機構 委託出版物〉本書の無断複写は,著作権法上での例外を除き禁じられています.複写される場合は,そのつど事前に,(社)出版者著作権管理機構(電話 03̶3513̶6969,FAX 03̶3513̶6979,e-mail: [email protected])の許諾を得てください.

本書をスキャン,デジタルデータ化するなどの複製を無許諾で行う行為は,著作権法上での限られた例外(「私的使用のための複製」など)を除き禁じられています.大学,病院,企業などにおいて,内部的に業務上使用する目的で上記の行為を行うことは私的使用には該当せず違法です.また私的使用のためであっても,代行業者等の第三者に依頼して上記の行為を行うことは違法です.

Evidence-based Clinical Practice Guidelines for Inflammatory Bowel Disease(IBD) 2016

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016

Page 151: 日本消化器病学会 IBD Evidence-based Clinical …日本消化器病学会 炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016 Evidence-based Clinical Practice Guidelines

2016 年 11月 10日 発行

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン 2016

編集・発行 一般財団法人日本消化器病学会理事長 下瀬川 徹〒104-0061 東京都中央区銀座 8-9-13 K-18ビル8階電話 03─3573─4297

印刷・製本 日経印刷株式会社

制作 株式会社 南 江 堂〒113-8410 東京都文京区本郷三丁目42 番 6 号電話 (出版)03─3811─7236 (営業)03─3811─7239

落丁・乱丁の場合はお取り替えいたします.転載・複写の際にはあらかじめ許諾をお求めください.

The Japanese Society of Gastroenterology, 2016Evidence-based Clinical Practice Guidelines for Inflammatory Bowel Disease(IBD) 2016

複製・転載禁止 © The Japanese Society of Gastroenterology, 2016

炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2016,南江堂,2016