日本人が目指すべきリーダーシップスタイル、 正しい...

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日本人が目指すべきリーダーシップスタイル、 正しいリーダーシップスタイル開発の順序とは? 8,600人以上の日本人管理職のリーダーシップスタイル診断データから見えるもの WHITE PAPER

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Page 1: 日本人が目指すべきリーダーシップスタイル、 正しい ......渇望されるビジョン型リーダーと日本的なリーダーのあり方とは? 3 コーン・フェリーではリーダーシップスタイルを

コーン・フェリー・ヘイグループ株式会社TEL:03-6267-3600 FAX:03-5224-6528E-mail:[email protected]

コーン・フェリーは、グローバルな組織コンサルティングファームです。クライアントが戦略と人材をシンクロナイズさせることで優れたパフォーマンスを

発揮する支援をします。企業の組織構造やポジションとその責任を設計し、クライアントの戦略を実現する人材の採用・選抜を支援します。同時に、社員

の処遇・育成・動機付けといった課題についてもコンサルテーションを提供します。

www.kornferry.com© 無断複写・転載を禁じます。Korn Ferry 2018.

日本人が目指すべきリーダーシップスタイル、 正しいリーダーシップスタイル開発の順序とは?

コーン・フェリーの強み70年以上の歴史に裏付けられたサイエンスとグローバルな知見

8,600人以上の日本人管理職のリーダーシップスタイル診断データから見えるもの

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WHITE PAPER

Page 2: 日本人が目指すべきリーダーシップスタイル、 正しい ......渇望されるビジョン型リーダーと日本的なリーダーのあり方とは? 3 コーン・フェリーではリーダーシップスタイルを

 リーダーのあり方、リーダーが発揮すべきリーダーシップスタイルのあり方についてはさまざまな考え方が存在し、何が正しいという決定論的に語ることは難しい。ただ、いくつか一般的に言えることはありそうである。例えばビジョナリーなリーダー像である。 ビジョンで人を引っ張っていくビジョン型リーダーは、ビジネス界にとどまらずあらゆる分野で求められている。ビジネス界に目を向けると、国内ではソフトバンクの孫正義、ファーストリテイリングの柳井正など、海外ではアップルの故スティーブ・ジョブズ、テスラ・スペース Xのイーロン・マスクなど、大きなビジョンを掲げて人をひきつけ、人を動かす。 なぜ、ビジョン型なのか? コーン・フェリーが、2014年に今後求められるリーダーシップについて著した「Leadership 2030」でも課題提起しているが、グローバル化の進展、環境危機、人口動態の変化、デジタル社会などにより世界は大きく変化し、不確実性がますます高まっている。その結果、従来型のリーダーに求められていた確実・堅実に事業を推進することよりも、不確実な将来・事業環境を所与とし、多様な意見に耳を傾けた上で、組織として目指すべき姿を描き、それをビジョンとして語り、人を巻き込んで共創していくことが求められている。では、日本におけるビジョン型や共創を可能にする民主型のリーダー育成状況はどうなっているのだろうか? 本ペーパーでは、コーン・フェリーが蓄積した管理職のリーダーシップスタイルおよびその管理職が作り出している組織風土の診断結果データベースを分析することにより、この疑問に対する答えを探った。

渇望されるビジョン型リーダーと日本的なリーダーのあり方とは?

2

概 要 Executive Summary

コーン・フェリーではリーダーシップを6つの型で定義しており、リーダーはいくつかの型を持ち、状況に応じて発揮するのが望ましいことがわかっている(P.3)が、これまで、諸外国のデータとの比較により、日本人管理職は「ビジョン型」のリーダーシップスタイルの発揮度合いが低い一方、「民主型」の発揮度合いが高いことがわかっていた(P.3)。

今回は、これまで日本人管理職8,600人以上に実施してきたリーダーシップおよび組織風土診断のデータを分析した。

リーダーが発揮しているリーダーシップスタイルの数と、業績を大きく左右する「組織風土」の関係を分析した結果、効果的なリーダーとなるには3つ以上のリーダーシップスタイルを持つことが必要であり、4つのスタイルを持てば十分良好な組織風土を作れることがわかった(P.5)。

それぞれのスタイルと組織風土の相関関係を分析した結果、最も高いプラスの相関関係にあるのはビジョン型であるが、民主型でも良好な組織風土は醸成できると言える(P.6)。

6つのリーダーシップスタイルがどのように開発されていくかを分析すると、まず指示命令型、率先型に始まり、民主型、関係重視型もしくは育成型が続き、最後にビジョン型となることがわかった(P.7)。

この分析に基づき、リーダーシップ開発の道筋を、「視点」を「自分視点」と「他人視点」、「対象」を「個人対象(1 対 1)」と「グループ対象(1 対 多数)」の軸にわけ、フレームワークとしてまとめた(P.8)。

組織の業績を高めるビジョン型のリーダーシップスタイルを早期に獲得することは困難であり、まず日本人が得意とし、組織風土にもプラスの影響を及ぼす民主型を開発することが効果的な道筋であると言える(P.8)。

リーダーシップスタイルを4つ持つ場合に、もっとも良い組織風土をつくりだす組み合わせは、ビジョン型、関係重視型、民主型、育成型であることがわかった(P.9)。

管理職の階層レベル別にデータを見ると、レベルが上がっても、リーダーシップ開発が十分にされているとは言えない状況にあることがうかがわれる(P.10)。

コーン・フェリーのグローバルでの調査・研究によれば、これからの変化が激しく複雑で不透明な世界で成功を収めるのは、ビジョンを示すだけでなく、多様な人々の意見やアイデアに耳を傾けた上で、人と協働していく共創型のリーダーである。

上記のフレームワークに沿ってステップを踏んでリーダーシップスタイルを開発していくことによって、日本人は、ビジョン型と民主型を兼ね備えた、これからの世界で強さを発揮する共創型リーダーを目指せると考えられる。

Page 3: 日本人が目指すべきリーダーシップスタイル、 正しい ......渇望されるビジョン型リーダーと日本的なリーダーのあり方とは? 3 コーン・フェリーではリーダーシップスタイルを

3渇望されるビジョン型リーダーと日本的なリーダーのあり方とは?

 コーン・フェリーではリーダーシップスタイルを6つの型で定義している。指示命令型、ビジョン型、関係重視型、民主型、率先型、育成型である。コーン・フェリーは、グローバルのリーダーシップ診断のデータベースで、この 6つの型を発揮している管理職の割合の国別比較を行った(2013年 -図 1)。その結果、日本人の管理職のうち、ビジョン型のリーダーシップを発揮できている人は 19%にとどまり、比較した10カ国で最も低いことから、ビジョン型リーダーの育成には必ずしも成功していると

言えない。一方、共創を促進する民主型は日本人管理職の発揮度合いが最も高く(59%)、日本人管理職に特徴的なスタイルと言える。 ビジョン型リーダーが必要なことは論を待たないが、一方、これからの世界で求められる共創型のリーダーのあり方もあり、それを可能にする民主型のスタイルを日本人は得意としていると考えられる。この 2つのリーダーの型、またその育成の方向性について示唆を提供したい。

■ 6つのリーダーシップスタイル

図 1 リーダーが発揮している*リーダーシップスタイルの国別比較

指示命令型

日本 27% 19% 36% 59% 42% 37%

45% 27% 45% 26% 28% 58%

49% 34% 33% 34% 26% 43%

16% 36% 37% 42% 44% 32%

62% 42% 51% 36% 18% 55%

59% 45% 48% 55% 22% 50%

25% 45% 44% 32% 32% 43%

24% 47% 42% 31% 33% 42%

20% 48% 45% 43% 34% 37%

62% 48% 43% 40% 24% 48%

中国

フランス

ドイツ

インド

ブラジル

イギリス

米国

カナダ

イタリア

ビジョン型 関係重視型 民主型 率先型 育成型

*発揮している=診断スコアがグローバルで蓄積されたデータベースとの比較での67パーセンタイル以上(データベース全体の 67%のリーダーよりも高い結果である)

部下に対して「即座の服従」を求める。上司から部下への指導というよりも「何をすべきか」という具体的な指示、命令により部下を従わせようとする。

部下に「長期的な方向性、目指すべきビジョン」を示す。上司、部下の間に双方向のコミュニケーションが見られ、独自のビジネス展望を持つ。

組織のメンバー同士の「調和」を求め、対立を回避しようとする。部下と友好的な関係を築くことを最重要視し、そのことに多くの時間を割く。

部下の「積極的参画」を求める。部下の合意を得ることにより、部下から自主的な参画意欲を引き出す。

自ら「規範」を示し、業務処理に対する高い要求水準を設定する。自分自身がモデルとなって部下や組織を牽引する。

部下の「長期的、計画的育成」に取り組む。各自の目指す姿に照らしながら、強み・弱みを「教える」のではなく「気づく」よう部下を導く。

指示命令型

ビジョン型

関係重視型

民主型

率先型

育成型

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 組織の業績はさまざまな要因によって左右されるが、コーン・フェリーでは、人・組織の観点から、組織パフォーマンスに対するリーダーシップスタイルと組織風土の影響度合いを実証研究を通じて検証している。効果的なリーダーシップスタイルは、良好な組織風土を作り出し、よって高いパフォーマンスを生み出す(リーダーシップは組織風土に対する約 70%の説明要因、組織風土は企業パフォー

リーダーシップスタイルと組織風土

マンスに対する約 30%の説明要因)。 コーン・フェリーは組織風土を 6つの軸から診断している。柔軟性、責任、基準、評価・処遇、方向の明確性、チームコミットメントである。各軸はグローバルで蓄積されたデータベースと比較してのベンチマーキングで、0-100%のスコアで診断している。ゆえに一般的にスコアが高いほうが、より良好な組織風土を作り上げていると言える。

リーダーシップスタイルと組織風土

■ 組織風土の6つの軸

効果的なリーダーシップスタイルは良好な組織風土を作り出し、よって高いパフォーマンスを生み出す

4つのリーダーシップスタイルを持てば良好な組織風土を作り上げることができる

良い仕事をすれば認められ処遇されると感じ、その認知の結果が業績の基準として直接的および差別化要因として関係付けられているか。

業績の向上と最善を尽くすことに上司が傾注しているか。

自分たちに多くの権限が委譲されているか。

職場における制約感がないか。

各自への期待内容を理解し、その期待が組織の上位目標や目的とどのように関連しているかを理解しているか。

組織に所属することへの誇り、必要なときには本来以上の努力を提供し、全員が共通した目的に向かっているという信頼を感じているか。

基準

責任

柔軟性

評価・処遇

方向の明確性

チームコミットメント

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 日本人管理職 8,612人のリーダーシップスタイルおよび組織風土の診断データで、リーダーが発揮しているリーダーシップスタイルの数と組織風土スコアの合計(6つの軸のスコアの合計値)の関係を示したのが図 2である。一般的に、リーダーはさまざまな状況に対処する必要があり、複数のリーダーシップスタイルを使い分けることが求められる。よって実践しているリーダーシップスタイルの数が多い方が、より効果的なリーダーといえる。しかしながら 6つのリーダーシップスタイルを全て使いこなす必要があるかというと、そうではないことがデータからわかる。 図 2を見ると、管理職が使っているリーダーシップスタイルが 1つと 2つの場合には組織風土スコ

リーダーシップスタイルの数と組織風土

アはほぼ同じであり、3つ以上で組織風土スコアが改善していく。これは効果的なリーダーとなるためには 3つ以上のリーダーシップスタイルを持つことが必要であることを意味している。またリーダーシップスタイルの数が増えるにつれて組織風土スコアも上がっていくが、4つと 5つではほぼ同スコアになり、これは 4つのスタイルを持てば効果的なリーダーシップが発揮され、十分良好な組織風土を作り上げることができることを意味している。 リーダーシップスタイルは 3から 4つ程度持つのが良さそうである、ということがわかったが、次の問いは、ではどのようなリーダーシップを持つのが適切か、ということになる。

リーダーシップスタイルの数と組織風土

組織風土調査合計スコアの平均値(6つの評価軸別スコアの和)

発揮しているリーダーシップスタイルの数

173

0 1 2 3 4 5 6

185224

293

352 365 371

サンプル数 842 2,521 2,006 1,276 1,293 601 73

図 2 発揮しているリーダーシップスタイル数別の組織風土調査スコア(N=8,612)

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 6つのリーダーシップスタイルと組織風土の関係を見ると(図 3)、組織風土に対して最も効果的なのはビジョン型で、次が民主型となる。指示命令型と率先型は関係がマイナスになっていることから、この 2つのスタイルは時と場合によりマイナス影響を及ぼしてしまうスタイルと言える。 ビジョン型がなぜ求められているかがこの組織風土との関係、ひいては業績への意味合いから明

効果的なリーダーシップスタイル

確になったが、必ずしもビジョン型をリーダー全員の最終ゴールとする必要はなく、民主型でも良好な組織風土をつくり上げることができると言える。それぞれのスタイルが、組織風土のどの軸に影響を与えるかを見ると(図 4)、民主型のスタイルは、特に評価・処遇に対して好影響を与え、また柔軟性、責任、方向の明確性においても好影響を与えることがわかる。

効果的なリーダーシップスタイル

育成型率先型民主型関係重視型ビジョン型指示命令型

-0.07

-0.35

0.27

-0.11

0.09

-0.07

0.24

0.170.190.22

0.260.24

0.110.070.06

0.18

0.120.17

0.2 0.19

0.05

0.26

0.180.13

0

0.06

-0.07-0.03

-0.06-0.06

0.12

-0.01

0.120.160.17

0.12

柔軟性

責任

基準

評価・処遇

方向の明確性

チームコミットメント

柔軟性

責任

基準

評価・処遇

方向の明確性

チームコミットメント

柔軟性

責任

基準

評価・処遇

方向の明確性

チームコミットメント

柔軟性

責任

基準

評価・処遇

方向の明確性

チームコミットメント

柔軟性

責任

基準

評価・処遇

方向の明確性

チームコミットメント

柔軟性

責任

基準

評価・処遇

方向の明確性

チームコミットメント

図 4 「リーダーシップスタイル 」と 「組織風土」の各軸の相関関係 (相関係数*)

*個別のリーダーシップスタイルと組織風土との偏相関係数(他のリーダーシップスタイルの影響を統計的に排除した数値)

0.29

0.16

0.22

0.15

-0.04-0.07

育成型率先型民主型関係重視型ビジョン型指示命令型

図 3 「リーダーシップスタイル 」と 「組織風土」の相関関係 (相関係数*)

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 リーダーシップ開発にはある一般的な道筋があり、仮にビジョン型のリーダーシップスタイルを目指すとしても一足飛びにビジョン型リーダーになるのは現実的には簡単でない。日本人のリーダーが発揮するリーダーシップスタイルの数と、リーダーシップスタイルの出現率の関係が図 5および図 6である。リーダーシップスタイル獲得の順番として、

リーダーシップ開発の道筋

まず、指示命令型もしくは率先型で始まり、民主型、関係重視型もしくは育成型、そして最後にビジョン型となることがわかる。つまり日本人にとってビジョン型はもっとも獲得が難しいスタイルと言える一方、民主型は比較的早く獲得のできるスタイルと言える。

リーダーシップ開発の道筋

654321(N=2,521) (N=2,006) (N=1,276) (N=1,293) (N=601) (N=73)

10010010010010010099

70

1009889

44

90

38

9690

26

45

85

1725

16

63

20

3

40

1

18

30

32

指示命令型

関係重視型

ビジョン型

関係重視型

民主型

育成型

指示命令型

ビジョン型

関係重視型

率先型

育成型

指示命令型

ビジョン型

民主型

率先型

指示命令型

関係重視型

民主型

率先型

育成型

指示命令型

ビジョン型

関係重視型

民主型

率先型

育成型

指示命令型

ビジョン型

関係重視型

民主型

率先型

育成型

リーダーシップスタイルの数

ビジョン型

率先型

民主型

育成型

現れるリーダーシップスタイル

指示命令型率先型

民主型関係重視型育成型

ビジョン型

図 5 発揮するリーダーシップスタイル数によるリーダーシップスタイルの出現率  (N=8,612) (%)1

46

58

6959 60

図 6 発揮するリーダーシップスタイル数によるリーダーシップスタイルの出現率  (N=8,612) (%)2

10099

90

59

16

1

100

70

3845

63

46

10010096

85

58

18

1009890

69

20

3

100

89

60

17

30

100

44

2625

4032

育成型率先型民主型関係重視型ビジョン型指示命令型

1 2 3 4 5 6 1 2 3 4 5 6 1 2 3 4 5 6 1 2 3 4 5 6 1 2 3 4 5 6 1 2 3 4 5 6

ビジョン型は、4つ以上のリーダーシップスタイルを開発できた段階で現れるスタイルで、最も難しいリーダーシップスタイルである。

リーダーシップスタイルの数

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 このリーダーシップ開発の道筋を、フレームワークを使って考えてみたい。フレームワークの軸は図 7に示しているが、「視点」を「自分視点(Own interest)」と「他人視点(Other's interest)」、「対象」を「個人対象(1 対 1)」と「グループ対象(1 対多数)」に分ける。(一般的な類型であり、個々人が必ずしもこのフレームワークに当てはまるものではない ) 第 1段階は、自分のやりたいことを自分で実践していく段階であり、働きかける対象は主に個人ベース。この段階でのスタイルは指示命令型と率先型となる。 第 2段階は、視点の幅が広がり、チームとしてやりたいことを、他人を巻き込みながら実践していく段階。この段階でのスタイルは民主型となる。 第3段階は、よりチームのメンバーの視点に立ち、メンバーがやりたいこと、求めていることを深く理解し、チームの個々人がやりたいこと、求めている

リーダーシップ開発の道筋のフレームワーク

ことを実現させる支援を行う段階。この段階でのスタイルは関係重視型、育成型となる。 第 4段階は、他者の思いを理解しつつ、それをどのようにグループとして実践していくかを考えて、関係者の総意をグループの力に束ねあげて業務を推進していく段階である。この段階でのスタイルはビジョン型となる。 ここまでで言えることは、リーダーシップの開発には道筋があり、リーダーは視点、対象を拡大していきながら、より効果の高いスタイルを獲得していくという一つのガイドラインがありそうだということである。また、ビジョン型は効果が高いスタイルであるものの、日本人にとっては獲得が最も難しく、アスピレーションとしてリーダーシップの最終ゴールに設定する一方で、日本の文脈では効果的な民主型のリーダーシップで組織を率いていくことも現実的なリーダーシップ開発の目標と言えるだろう。

リーダーシップ開発の道筋のフレームワーク

他人(Other's interest)

個人(1対 1)

グループ(1対 多数)

自分(Own interest)

率先型指示命令型

1

育成型関係重視型

3

民主型2

ビジョン型4

視点

対象

図 7 リーダーシップ開発における視点と対象の変化

リーダーシップの開発には道筋があり、リーダーは視点・対象を拡大していきながら、

効果の高いスタイルを獲得していく”

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9メインスタイルとして用いるリーダーシップと補助的リーダーシップスタイル

 リーダーシップ開発には、スタイル獲得の順番があることを見てきたが、高い成果を生むリーダーシップを発揮するために、効果的なスタイルの組み合わせは何か? ということを考えたい。 図 8は 4つのリーダーシップスタイルを獲得した場合、どのスタイルの組み合わせが最も効果的かを示したものである。6つのスタイルがあるので、4つスタイルを保つ場合、組み合わせは 15通りあるが、出現率が 3%未満は実際にはあまり見られない組み合わせであり範例になりにくいと考えると、現実的にありえる組み合わせは 6通りしかない。どの組み合わせが最も効果的かと言うと、組織風土との関係からも想像できるように、ビジョン型、関係重視型、民主型、育成型の組み合わせが最も

効果的であり、出現率も 44%と最も高い。ここから言えることは、リーダーシップが開発されるにつれて、組織風土にあまり良くない影響を与える指示命令型や率先型は次第に使わなくなっていくということである。 では、これらの理想的な 4つのスタイルを持つリーダーになった場合、指示命令型と率先型はどのように使っていけばいいのだろうか? 全く使わない、時折使うなど、効果的な使用方法はあるのだろうか? 答えは、指示命令型は「基本は使わないほうがよく、必要最小限で本当に必要なときにだけ用いる」、そして率先型は「時には用いても悪影響はないが、あまり頻繁に用いない」というのがコツのようである(図 9-1,2)。

メインスタイルとして用いるリーダーシップと補助的リーダーシップスタイル

407 44%

1%

2%

1%

8%

2%

1%

18%

14%

3%

1%

5%

371356353348

308302300297296293

264

出現率3%以上の組み合わせ

出現率(%)指示命令型組み合わせ 組織風土調査合計スコア

123456789

101112

ビジョン型 関係重視型 民主型 率先型 育成型

図 8 リーダーシップスタイルを4つ持っている場合の各組み合わせによる組織風土調査スコア

必要なときのみ (33%以下)

たまに (34-49%)

時々 (50-66%)

よく使う (67%以上)

必要なときのみ (33%以下)

たまに (34-49%)

時々 (50-66%)

よく使う (67%以上)

412

385

377

374

491

198

219

251

指示命令型の実践 組織風土調査合計スコア*

* ビジョン型、関係重視型、民主型、および育成型の4つのリーダーシップスタイルを発揮している人における平均値

N数

-27403

398

397

380

231

229

291

408

率先型の実践 組織風土調査合計スコア*N数

-17

図 9-1 指示命令型の使用と組織風土調査スコア 図 9-2 率先型の使用と組織風土調査スコア

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10

 理想的には職位・役職が上がるに連れて、より高度なリーダーシップが期待され、発揮していることが望ましい。しかしデータを見る限り、日本の管理職に関しては、必ずしも、理想とするレベルまでリーダーシップを開発できていないと言えそうである(もしくはリーダーシップに関係なく、年齢など立場を踏まえて、“そろそろ上の職位・役職に ”ということになっている可能性もある)(図 10)。 シニアレベルのマネジャーのスタイルをエントリーレベルのマネジャーと比較すると、確かにビジョン

職位・役職別のリーダーシップ開発の現状

型を発揮する人が増えているものの、ビジョン型や育成型といった上位リーダーに必要なスタイルの開発は不十分である。また、指示命令型と率先型の比率も上がっており、引き続きこれらのスタイルを使用している。つまり、全体的に見ると職位・役職が上がってもリーダーシップスタイルは変わらず、リーダーとしての進化はあまりしていないということである!(獲得しているリーダーシップスタイルの数も 2から 2.2とあまり増えていない。)

職位・役職別のリーダーシップ開発の現状

初期のリーダーシップ開発

 リーダーシップ開発はキャリアを通じて行っていく長い道のりである。あなたが初期のリーダーである場合、リーダーシップスタイルは 1つしかなく、そのスタイルは率先型か指示命令型である可能性が高い(率先型の可能性は 46%、指示命令型の可能性は 32%)。そしてその時の組織風土の状況は芳しくない可能性が高い(図 11)。 では、もしあなたの 1つ目のリーダーシップスタイルが率先型の場合、次にどのリーダーシップスタ

イルを開発すべきか? 関係重視型か民主型が開発しやすく、かつ組織風土へよい影響を及ぼすことができる。もし 1つ目が指示命令型の場合は民主型か育成型が望ましい。間違ってはいけないのは率先型か指示命令型のどちらかのリーダーシップスタイルを持つ場合に、得意である、業務に必要であるからといって、もう片方のリーダーシップスタイルを開発してしまうことである(率先+指示命令型)。この組み合わせはどちらか片方の時

24 25 27

16 18 22

32 36 34

47 56 52

49 48 52

32 34 29

発揮するリーダーシップスタイルの数

リーダーシップスタイル エントリーレベル マネジャー 差(  -  )

指示命令型

ビジョン型

関係重視型

民主型

率先型

育成型

A 中堅レベル マネジャーB シニアレベル マネジャーC C A

+3

+6

+2

+5

+3

-3

2.0 2.2 2.2

図 10 職位・役職レベル別リーダーシップスタイルの発揮度*(%)

*診断スコアがグローバルに蓄積されたデータベースとの比較で 67パーセンタイル以上のマネジャーのパーセント

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11初期のリーダーシップ開発

より更に組織風土を悪くしてしまう可能性が高い(図 12)。 また、ビジョン型が理想的なので、ビジョン型を早期に開発しようとしがちであるが、2つ目のリーダーシップスタイルとして開発しようとしても、その可能性は 1%程度であり、あまり現実的でない。このようなリーダーは、ビジョンを提示しようとがんばってみるものの空回りして、結局は開発できないということになりかねない。リーダーシップスタイルには順番、スタイル毎の親和性・組み合わせがあり、このルールを無視しての開発はかなりの困難を伴うと考えていただきたい。

 ここで述べてきたことは、リーダーシップ開発、特にリーダーシップスタイルの開発の一般論を示す

ものであり、無論、業種、職種、置かれている状況によって開発すべきリーダーシップは異なる。しかしながら、リーダーシップ開発には一定の順番、組み合わせがあり、闇雲に開発しても、時間を浪費することになってしまう。よってここで示されているのは、コーン・フェリーのデータベースの分析によって導き出された効果的なリーダーシップ開発の指標と考えていただければ幸いである。 リーダーシップ開発は長い道のりで、キャリアを通じて少しずつ磨いていくものである。しかしながら、日本全体として優れたリーダーの育成が急務と言われており、また個人のレベルでも充実したキャリアの追求が求められている現在において、効率的にリーダーシップを開発してくことの重要性はますます高まっている。コーン・フェリーは、これからも皆様のリーダーシップ開発のパートナーとして、貢献していきたいと考えている。

43

27 28

1727

19 22

32

2217

51

28

指示命令型 リーダーシップスタイルのみ 率先型 リーダーシップスタイルのみ

必要とされる下限値 (35)必要とされる下限値 (35)

チームコミットメント

方向の明確性

評価・処遇

基準

責任

柔軟性

チームコミットメント

方向の明確性

評価・処遇

基準

責任

柔軟性

図 11 指示命令型または率先型のみ発揮している場合の組織風土(%)

1つ目に発揮するリーダーシップスタイルと組織風土調査スコア 2つ目に発揮するリーダーシップスタイルと組織風土調査スコア

図 12 1つ目および 2つ目のリーダーシップスタイルと組織風土

162

223

240

173

301 231(7%) 345(0%) 264(1%) 259(5%) 235(2%) -

153(26%) 283(1%) 231(3%) 236(32%) - 235(2%)

237(6%) 318(1%) 273(14%) - 236(32%) 259(5%)

243(2%) 415(1%) - 273(14%) 231(3%) 264(1%)

NA(0%) - 415(1%) 318(1%) 283(1%) 245(0%)

- NA(0%) 243(2%) 237(6%) 153(26%) 231(7%)

360

32%

0%

3%

18%

46%

1%

出現率(%) 指示命令型組織風土調査合計スコア ビジョン型 関係重視型 民主型 率先型 育成型リーダーシップスタイル

指示命令型

ビジョン型

関係重視型

民主型

率先型

育成型

XXX(X%)組織風土調査スコア

出現率

リーダーシップ開発にむけて

Page 12: 日本人が目指すべきリーダーシップスタイル、 正しい ......渇望されるビジョン型リーダーと日本的なリーダーのあり方とは? 3 コーン・フェリーではリーダーシップスタイルを

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