「振り返り」学習活動のすすめ -...

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M09-5008 隆史 振り返り」学習活動のすすめ 平成 22 年度 東京学芸大学 教職大学院 課題研究 成果物 準拠 課題研究「中学校社会科における社会認識の形成を支援する方法-『省察的な態度』と『振り返り』学習活動」 《教師を志す学生や,新任の教師に向けて》

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M09-5008 今 隆史

「振り返り」学習活動のすすめ

平成 22年度 東京学芸大学 教職大学院 課題研究 成果物

準拠 課題研究「中学校社会科における社会認識の形成を支援する方法-『省察的な態度』と『振り返り』学習活動」

《教師を志す学生や,新任の教師に向けて》

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目次 1. 学習の「振り返り」とは?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 2. なぜ,学習の「振り返り」が大切か?・・・・・・・・・・・・・・・3 3. 「自由に書いてみよう」-そのメリットとデメリット・・・・・・・・4 4. 本冊子が提案する「振り返り」学習活動とは-その1・・・・・・・・5 (「振り返り」学習活動の基本的な方針)

5. 本冊子が提案する「振り返り」学習活動とは-その2・・・・・・・・6 (振り返る際に意識させたい視点“5つのつけもの”)

6. 本冊子が提案する「振り返り」学習活動とは-その3・・・・・・・・7 (例:「ふり返りシート」,「中間まとめシート」,「最終まとめシート」)

7. 子どもの「振り返り」に対する教師のコメント ・・・・・・・・・・12 8. 「振り返り」の質をどう評価するか-中学校社会科を例に ・・・・・13 9. 生徒は自身の学びのようすをどのように意識しているか ・・・・・・15 10. 生徒の記述から-その1(学びのプロセス重視型)・・・・・・・・16 11. 生徒の記述から-その2(友達の考え,学び方重視型)・・・・・・17 12. 生徒の記述から-その3(バランス型)・・・・・・・・・・・・・18 13. まとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・19 14. おすすめ文献の紹介-さらに学びたい方へ ・・・・・・・・・・・20

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1. 学習の「振り返り」とは?

学習の「振り返り」(リフレクション)は,いまもむかしも様々な学びの場に

おいて実践されています。「学んだことを思い出し,心に残ったことを書いてみ

よう」という指導は,多くの教師にとってなじみの深いものではないでしょう

か。「そう言えば自分が子どものころ,授業の中でそういう機会がたくさんあっ

たな」という方もいるでしょうし,「現在,子どもたちにそういう指導をしてい

るよ」という方もいるでしょう。例えば…

このように,その形式は様々ですが,「学んだこと・経験したことを思い返し,

それに自分なりの意味づけをする」という行為は,学校教育の場に限らず,私た

ちの日常生活においても,広く行われているはずです。それは意図的に行われ

ることもあれば,意図せず行われることもあるでしょう。

本冊子は,学校現場における「振り返り」という行為(活動)について考察

し,その要点を解説したものです。内容は「振り返り」の教育的な意義から具

体的な手法,実際の効果等にわたります。これらはすべて,教職大学院におけ

る筆者の課題研究の成果に基づくものです。

「今日は,○○について学んだ。それについて,私は…と考えた。」

「いま,私は○○について学んでいる最中だ。これまでに△△が

できるようになった。次は,□□ができるようにがんばりたい。」

「今日まで,○○について学んできた。このことは,自分にとって とても良いことだったと思う。なぜなら…と思うからである。」

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ここで,一般的に行われていると考えられる学習の「振り返り」を,

…というように捉えて,話を進めていきたいと思います。このアウトプットの

方法(振り返った内容を表現する方法)には,様々なものが考えられるでしょ

う。例えば,

…といった方法です。ここで確認しておきたいのが,どのような方法を採用

する場合でも,振り返った内容は自分にも他者にも確認できるような形で残して

おくことが好ましいということです。つまり,他の人が見ても振り返った内容が

分かるような状態で残すということです。

なぜなら,学習者が振り返った内容に対しては,他者のコメントによってフ

ィードバックを行ったり,学習者同士で相互評価したり,もしくはコミュニテ

ィ全体で共有したりする,ということも考えられるからです。(そうした活動に

よっては学習者が自己の学びを相対化し,学びの質の高まりが期待できます)

学習者自身が学習の節目において,学習した内容や行った活

動等について,想起し直しアウトプットする活動

付箋を使ってキーワード

を整理する

図式化して整理する

文章で記述する

イラスト化する

以上の方法を組み合わせる

etc…

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2. なぜ,学習の「振り返り」が大切か? なぜ,学習の「振り返り」が大切だと言えるのでしょうか。それには,大き

く分けて次の3つのような理由があると考えられます。

(学校の現場に即し,学習者である「子ども」と,授業者である「教師」とい

う二つの立場からみてみましょう)

にとっての「振り返り」のメリットは,それが自己の学びや考えを

整理する良い機会になることです。(これを心理学の用語で「メタ認知」と呼ん

だりもします)

また,振り返った内容を蓄積しておくことにより,自己の学びの軌跡(がん

ばりのプロセス)が一目でわかるようになります。これを自己評価すれば自信

にもつながりますし,友だち同士による相互評価にも役立てることができます。

にとってのメリットは,子どもの日々のがんばりを「評価」に活かす

ことができることです。子どもの「振り返り」を見ることで(またはそれにコ

メントを書くことによって),その子どもに合った学習支援ができます。このプ

ロセスを評定に反映させることもできるでしょう。

また,「授業の内容が子どもたちに伝わっているかどうか」も,ある程度把握

することができます。うまく伝わっていないと分かれば,次回の授業で再度説

明したり,授業計画自体を修正したりといった手立てを打つことができます。

1. 自身の学びや考えを整理することができる

2. 学びの軌跡を評価に反映させることができる

3. 授業改善に活用することができる

学習者である「子ども」にとって

授業者である「教師」にとって

子ども

教師

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3. 「自由に書いてみよう」-そのメリットとデメリット

学校の教育活動において「振り返り」が行われる場合,教師から子どもに対

し,次のような指示がなされることがしばしばあります。

この指示は,子どもにとって特別な制約を課すものではありません。「のびの

びと自由に表現してほしい」という教師の思いが込められた指示です。

こうした指示を活かすことができるのが,いわゆる

「よくできる子」,もしくは「文章を書くことが得意な子」

です。特に前者のような子は,自分なりの学びに向かう

姿勢や態度が,おぼろげながらも形成されています。

何か感想文を書くような場合も,教師が「おっ,この

子は良いところに目を付けているな~」と思ってしまう

ような「視点」を持っていることが少なくありません。

こうした子たちは,学習した内容の重要な部分を見つけるのも得意です。時

に勘の鋭い子などは,教師が教材に込めた意図まで読み取ってしまうことがあ

ります。このように,特別な指示がない状態においても,彼らのように安定して

質の高い「振り返り」を行うことができれば,それは理想的であると言えます。

しかし,教室の中にいるのは上のような子ばかりではあり

ません。むしろ一般的にはまれでしょう。その他多くの子ど

もは,そうではありません。

特に「勉強に苦手意識を持っている子」や「自分を表現

することが得意でない子」は,上に挙げたような自由度の高

い指示に対し,当惑することが多いです。多くの場合,何を

書いたらいいのかが分からず,満足のいくような「振り返り」

ができません。彼らにとっての指示は,まさに思考の「ガードレール」なのです。

「心に残ったことや,感想などを自由に書いてみよう。」

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4. 本冊子が提案する「振り返り」学習活動とは?-その 1

前頁の内容を踏まえた上で,新たな「振り返り」の方法を提案するとすれば,

次のような“ねがい”に応える必要があるでしょう。

そこで,本冊子では上の“ねがい”に応えるべく,次のような方針を立てます。

ここから,新たな「振り返り」の方法=「振り返り」学習活動を組織していき

たいと思います。

ここで最も重要なのが,下線部の「振り返る際に意識してほしい視点」です。

これこそ,本冊子の提案する「振り返り」学習活動の肝になる部分です。

次頁では,この部分について解説していきます。

あらかじめ子どもに対し,振り返る際に意識してほしい視点を

明確に示す。その上で,振り返った内容をある程度自由に表現

できるような欄(記述欄)を設定する。

(「振り返り」学習活動の基本的な方針)

「できる子」にとっても,「勉強に苦手意識を持っている子」にとっても,

質の高い「振り返り」ができるような手立てを用意したい!

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5. 本冊子が提案する「振り返り」学習活動とは?-その 2

「振り返り」の際に子どもに意識させたい視点は,全部で「5つ」あります。こ

の5つの視点は,学習の「振り返り」に関する先行研究や実践を調査し,「振り返

りにおいて大切である」とされている要素を整理したものです。「○○づけ」の形に

表現を統一したので,この5つの視点を“5つのつけもの”と呼ぶことにします。

この“5つのつけもの”は,毎回の「振り返り」において,必ずしも5つ全

部意識させなければいけないというわけではありません。子どもの発達段階はも

ちろんのこと,意識のさせ方によっても取り入れ方は異なってくるでしょう。

次頁からは,この“5つのつけもの”を取り入れた「振り返り」学習活動の

ツールの一例を紹介します。(中学校の社会科の授業を対象に作成したものをい

くつか紹介します。これらはあくまでも一例にすぎません。授業者である教師

の工夫次第で,バリエーションは無限に広がるでしょう)

振り返る際に意識させたい視点…“5つのつけもの”

振り返る際に意識させたい視点…“5つのつけもの”

①「位置づけ」の視点

☞ いままでの自分と比べて,学習に取り組む姿勢はどうだったか。

②「関連づけ」の視点

☞ 自分の考えと比べて,友達の考えはどうだったか。

③「意味づけ」の視点

☞ 学習の流れの中で,自分が行った学び方にはどんな意味があったか。

④「価値づけ」の視点

☞ 学習した内容が理解できたか。自分なりの成長があったか。

⑤「方向づけ」の視点

☞ これからの学習に向けた目標や課題はあるか。

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例 1/3:「ふり返りシート」(授業ごと,B5サイズ,所要時間 3~5分)

6. 本冊子が提案する「振り返り」学習活動とは-その3

「裁判所のしくみⅡ-どうなる!?司法の未来」

①今日のあなたの学びのようすをふり返ろう。

学びのようす 自己評価

1. 今日の授業を真面目に受けることができた。 1 2 3 4

2. 友だちの意見や考えを良く聴くことができた。 1 2 3 4

3. 裁判員制度がどのようなものか理解できた。 1 2 3 4

4. 裁判員制度について,「賛成」と「反対」の両方の立場に立って考えることができた。 1 2 3 4

5. 次の授業に向けた目標や課題が見つかった。 1 2 3 4

②今日あなたが学習した内容をふり返ろう。

ふり返りシート

<今日のテーマ>

書き方の例:「私は○○と考えました。なぜなら…」(結論⇒理由の順)

ちなみに対応関係は以下の

通りです。

1⇒「位置づけ」

2⇒「関連づけ」

3⇒「価値づけ」

4⇒ 〃

5⇒「方向づけ」

「今日のテーマ」を空欄に

し,①の項目 3・4をカット

した場合,授業ごとに新た

なシートを準備する必要が

なくなります。

その日の授業のテーマで

す。子どもに自分で書かせ

ても良いと思います。

子どもがその日の学習内容を

振り返り,文章で記述する部分

です。教科によっては最初に書

き方の例を示してあげると,子

どもも書きやすくなると思い

ます。

子どもが自分の学びを振

り返り,自己評価をする部

分です。1~5の各項目に前

頁の“5つのつけもの”が

落とし込まれています。

この例では子どもの負担

を軽減するため,数字に○

(マル)をつけながら振り返れ

るようにしています。

( )年( )組( )番 名前(

/ ( )

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例 2/3:「中間まとめシート」(単元の中間※,B4サイズ,所要時間 40~50分)

※各問の文言を少し変えれば,「学期

の中間」に行う「中間まとめシート」

とすることもできます。

1 単元「わたしたちの政治」の前半でのあなたの学びのようすをふり返ろう。

①これまでのあなたの学習態度の「良かった点」と「反省したい点」は何か。

良かった点: 反省したい点: ②「いいな」と思う意見を言っていたのは誰か。それはどんな意見だったか。 友達の名前: 意見の内容: ③あなたの中で政治についての理解が深まったと感じたのは,どんな学び方をした 時か。その理由は何か。 学び方: 理由: ④「政治の学習」をして,あなたの中で「できるようになったこと」や「わかるように

なったこと」は何か。 ⑤「わたしたちの政治」の前半をふり返った上で,後半でがんばりたいことは何か。

2「わたしたちの政治」の前半で学習した内容をふり返ろう。

書き方の例:「学んできたこと」⇒「そこから考えること」⇒「そう考える理由」

中間まとめシート

/ ( ) ( )年( )組( )番 名前( )

「中間まとめ」と

は,単元や学期の

中間に行う「振り

返り」のことで

す。子どもが前頁

の「ふり返りシー

ト」をポートフォ

リオに蓄積して

いる場合,それを

見返しながら単

元前半を振り返

るよう指導する

と良いでしょう。

1は子どもが単

元の前半での自

身の学びを振り

返り,文章で記述

する部分です。こ

こでの問①~⑤

は,“5つのつけ

もの”の①~⑤の

視点にそれぞれ

対応しています。

子どもが単元前

半の学習内容を

振り返り,文章で

記述する部分で

す。「ふり返りシ

ート」と同様,教

科によっては最

初に書き方の例

を示してあげて

もいいと思いま

す。

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☆ ★ ☆ 2 について,班員みんなからの一言コメント ☆ ★ ☆

◆みんなのコメントを読んで,新しく気付いたことがあれば,書きましょう。

<コメントの書き方(例)>

1.「賛成」 「○○の点はとてもいいと思います。」

「私もそう思います。」

2.「質問」 「○○についてはどのように考えますか。」 3.「意見」 「私だったらこう考えますが,どうですか。」

左のことを意識しながらコ

メントを書いてあげよう。 お互いの学びが深まるよ。

名前( )

名前( )

名前( )

名前( )

名前( )

班員同士で 2 の

「振り返り」を読み

合い,感想を一言コ

メントとして書き

合います。このねら

いは,①友達の「振

り返り」を読むこと

で新たな発見をす

ること,②友達同士

でコメントを書き

合うことでその発

見を共有すること,

の 2点です。こうし

た「学び合い」や「相

互評価」について

は,事前にそのねら

いを生徒に話して

聞かせてから実施

すると良いでしょ

う。

一言コメントの書

き方は事前に示し

てあげると良いと

思います。重ねて友

達のため,そして自

分のためを思って

心をこめて書くよ

う子どもたちに伝

えると良いでしょ

う。

子どもが友達にもらったコメントを読ん

だことで,どのような収穫があったかを

書く部分です。子ども自身が相互評価の

効果を実感することや,教師が子どもの

変容を確認するといったことに設定のね

らいがあります。

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例 3/3:「最終まとめシート」(単元の最後※,B4サイズ,所要時間 40~50分)

1 単元「わたしたちの政治」を通してのあなたの学びのようすをふり返ろう。

①「わたしたちの政治」を通してのあなたの学習態度について

(1)最も「真剣に頑張ろう」と意識できたのはどんな場面か。その理由は何か。 場面: 理由:

(2)「ここを改善すれば,もっとよく学べる」と思う部分はどこか。その理由は何か。 部分: 理由: ②「いいな」と思う意見を言っていたのは誰のどんな意見か。その理由は何か。 友達の名前: 意見の内容: 理由: ③あなたの中で政治についての理解が最も深まったと感じた時,どんな学び方をし ていたか。学びが深まったと感じた理由は何か。 学び方:

理由:

④「わたしたちの政治」を学習して,あなたの中で「できるようになったこと」と「わ

かるようになったこと」は何か。(それぞれ何個でもよい) できるようになったこと:

わかるようになったこと:

⑤「わたしたちの政治」をふり返った上で,今後の学習でがんばりたいことは何か。

最終まとめシート / ( )

( )年( )組( )番名前( )

※各問の文言を少し変えれば,「学期

の最後」に行う「最終まとめシート」

とすることもできます。

「最終まとめ」と

は,単元や学期の

最後に行う「振り

返り」のことで

す。これも「中間

まとめ」と同様,

ポートフォリオ

の中身を見返し

ながら行うよう

指導すると良い

でしょう。

始めに“5つのつ

けもの”の各視点

に即して自身の

学びのようすを

振り返り,次に学

習内容について

振り返る,という

基本的なスタン

スは「中間まと

め」と同様です。

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2「わたしたちの政治」で学習した内容をふり返ろう。

書き方の例:「学んできたこと」⇒「そこから考えること」⇒「そう考える理由」

(今後の学習に活かせそうだと思うことがあれば,それについても書いておこう。)

3 来年度,「わたしたちの政治」を学ぶ後輩たちへアドバイスを一言書いて

あげよう(図やイラストを用いて書いてもよい)。

先生からのコメント

「他者へのアドバ

イス」という形式

を通して,子ども

の学習の成果や課

題のエッセンスを

読み取ることを目

的としています。

時間配分等を考

え,可能だと判断

した場合に付け加

えてみると良いで

しょう。

教師から子どもに

向けた返事のコメ

ントです。学習の

支援(13 頁に詳細

を記載)にも関わ

る重要なポイント

ですので,次頁で

この書き方につい

て解説します。

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7. 子どもの「振り返り」に対する教師のコメント

大人になったわれわれにも,こんな思い出があるはずです。ここでは,7~11

頁まで掲載した「振り返り」学習活動のツールを例に,教師によるコメントの

書き方について考えてみます。

教師が書くコメントは,子どもの学びに対する支援のメッセージとなります。

全ての場面においてたくさんのコメントを書いてあげれば,子どもは喜ぶでし

ょう。しかし,これは教師にとって手間と時間のかかる作業です。そこで,毎

回の授業後に用いる「振り返りシート」や単元の中間に用いる「中間まとめシート」

においては“3文字返事”を推奨します。これは,

「どこが?」「だれの?」「なぜ?」「どうして?」「わけは?」「どのように?」

…といった「問い」の形で書く返事です。子どもに「問い」を意識させること

で,次の時間の「振り返り」の質が変わってきます。

また,よく書けている記述に対しては,その記述に下線を引き,◎を付ける

だけでもよいです。コメントを加えるならば「ここはとてもよい」というように,

子どもの学びを「容認」する言葉を書きます。

このように,「振り返り」に対するコメントは,「問い」と「容認」の2種類

が便利です。「最終まとめシート」のように比較的長めのコメントを書きたい場

面においても,この2つの視点を意識して書くと良いでしょう。

これによって,教師から子どもに向けた返事にメリハリが生まれるとともに,

教師の負担を軽減することができます。

先生が書いてくれたコメントを読んで,一層やる気になった!

先生のコメントが,課題を解決するヒントになった!

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8. 「振り返り」の質をどう評価するか-中学校社会科を例に

学習した内容についての「振り返り」※を教師が評価するとき,そこには何

かしらの“規準”(めやす)が想定されている必要があるでしょう。

「評価」という語を「子どもに対する働きかけ」という視点から見れば,大

きく分けて次の2つの意味があると考えられます。

一般的に「評価」の意味といえば後者の「評定」のみにスポットが当たりが

ちですが,本冊子では前者の「支援」に着目したいと思います。(「この具体的

な手立ての一つが,例えば前頁で述べたような「教師によるコメント」です)

「支援」という意味に着目したとき,評価の“規準”は,子どもの発達段階

によって変わってきます。たとえば,学習した内容がまるで理解できていない,

的外れに思われるような「振り返り」があったとします。それをみた教師は残

念に思うかもしれません。しかし,その「振り返り」をした子が,実はふだん

何も書けない子であり,その日に限って一行だけ文章を書いてくれたのだとす

れば,それは大いに認めてあげるべきだと言えるでしょう。

また,その“規準”は,教師が学習指導において何を大切にしているかでも

ずいぶん変わってくるでしょう。この授業ではこれを伝えたい,この単元では

こんな力を身に付けさせたい,この教科では…といった具合です。

つまり,「振り返り」の質を評価するにあたっては,どこでも・だれにでも当

てはまるような“規準”はありません。子どものそばにいる教員が,個々の状

況や自身の教育観に基づいて設定する必要があります。(注意:ただし,「評価」

の意味を「評定」として捉える場合,その“規準”はできるだけ客観性のある

もの,厳密なものを設定する必要があります)

ここで,子どもの「振り返り」を評価する際の“規準”(めやす)の一例を

示してみたいと思います。対象は,中学校における社会科の授業です。

「支援し え ん

」☞ある時点までの学習の成果を見取り,学習改善のための支援を行う

(✍関連ワード:個人内評価,形成的評価)

「評定ひょうてい

」☞ある時点までの学習の成果を見取り,成績付けをする

(✍関連ワード:目標に準拠した評価,総括的評価)

※7~11 頁掲載の「ふり返りシート」では問②,

「中間まとめシート」・「最終まとめシート」で

は問 2 に当たります。

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「自分の担当する教科で育成すべきことは何か」を考えるに当たり,まずは

『学習指導要領』を参考にしてみましょう。その上で,教科指導に関する本を

読んだり,ベテランの先生のお話を伺ってみたりするとよいでしょう。一般に

中学校社会科では,育成すべきこととして,次の2つがあると言われています。

ここでは,①に着目してみましょう。社会科の授業を通し,「社会の事物や事

象をどのように理解しているか」ということを,生徒の「振り返り」記述から見

取ることを考えます。ここで,次のような問いが浮かんできます。

教科指導に関する本を読んだり,ベテランの先生のお話を伺ったりする中で,

例えば以下のような要素を考えたとします。

この例では,「振り返り」記述のレベルが 1→2→3となるほど,「『社会認識』

の質が高い」と判断します。これが評価の“規準”(めやす)になります。

ただし,こうした“規準”を設定して評価を行う際は,以下の2点が大事です。

前頁から述べてきたように,「振り返り」の質を評価することは,同時に支援

(指導)をすることでもあります。これがいわゆる「指導と評価の一体化」です。

① 社会の事物や事象が何か分かること

② 社会の事物や事象について判断し,自分の考えを述べること

(☞ 公民こうみん

的てき

資質し し つ

の育成)

(☞ 社会しゃかい

認識にんしき

の育成)

レベル 1 ☞個別の事物や事象について,その存在やしくみを理解している。

レベル 2 ☞複数の事物や事象のつながり(因果関係など)を理解している。

レベル 3 ☞レベル 1,2を通し,社会に対する見方や考え方,感じ方を変化させている。

生徒の「振り返り」の記述の中に,どのような要素がみられたら,

「社会認識」の質が高いと判断できるのだろう?

◆ 授業の内容や構成も,設定する“規準”を意識したものであること

◆“規準”からはみ出す子どもたちの学びも,ある程度は認めてあげること

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9. 生徒は自身の学びのようすをどのように意識しているか?

筆者の研究では,「『振り返り』の際に生徒は“5つのつけもの”(6 頁参照)

をどのように意識しているか」を測るためのアンケート調査を実施しました。

アンケート結果の分析から,生徒の“5つのつけもの”に対する意識の仕方に

は,大きく分けて3つの“型”(傾向)があることが明らかになっています。

友達の考え,学び方重視型

いま これまで これから

①「位置づけ」の視点

今までと比べて,真面目

に頑張れたかな?

⑤「方向づけ」の視点

これからは○○を目標

に頑張っていこう。

④「価値づけ」の視点

今日はどんなことを

学習したかな?

②「関連づけ」の視点

今日友達はどんなこと

を言っていたかな?

③「意味づけ」の視点

今日はどんな学び方を

したかな?

学びのプロセス重視型

①②③④⑤の視点

ぜんぶ大事だね。

バランス型

時間の流れ

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ここからは,実際に生徒が書いた「振り返り」記述の一部を紹介していきた

いと思います。対象とする生徒は,前頁で紹介したそれぞれの “型”の性質に

最もよく当てはまる3人の生徒です。

授業は,中学 1年の社会科,公民的分野の単元(13時間構成)で行いました。

【学びのプロセス重視型】 【この型の生徒が重視しているとみられる視点】

①「位置づけ」の視点

☞今までと比べて,真面目に頑張れたかな?

④「価値づけ」の視点

☞今日はどんなことを学習したかな?

⑤「方向づけ」の視点

☞これからは○○を目標に頑張っていこう。

<<<「振り返り」記述の一部 >>>

⇒第 7時。政治の学習を通し,「事象の理由」を学ぶことの大切さに気付いている。また,

そのことを今後の学習に向けた目標として捉えている。

⇒第 10 時。その日の学習内容に対する理解の度合いがよく分かる。3 行目の「すごい仕

事だと思う。」という気付きに対しては,大いに褒めてあげたいところ。

⇒第 12時。学習の始めと終わりでの政治に対する理解の違いを,自分なりに分析している。

10. 生徒の記述から-その1(学びのプロセス重視型)

A男くん(成績は中位層)

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【友達の考え,学び方重視型】 【この型の生徒が重視しているとみられる視点】

<<< 授業ワークシートの一部 >>>

⇒第 6時。友達の意見を聴く中で「いいな」と感じたものをメモしている。(赤い点線部)

<<< 「振り返り」記述の一部 >>>

⇒第 7時。前時で注目した友達の意見と,その意見を言った友達の名前が書かれている。

⇒第7時。前時で注目した友達の意見を,自身の意見に取り入れている様子がうかがえる。

⇒第 13時。友達の意見を取り入れることを,自分なりの良い学び方の一つと捉えている。

11. 生徒の記述から-その2(友達の考え,学び方重視型)

B子さん(成績は中位層)

②「関連づけ」の視点

☞今日友達はどんなことを言っていたかな?

③「意味づけ」の視点

☞今日はどんな学び方をしたかな?

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【バランス型】 【この型の生徒が重視しているとみられる視点】

<<< 授業ワークシートの一部 >>>

⇒第 6時。友達の意見を聴く中で「いいな」と感じたものをメモしている。

<<< 「振り返り」記述の一部 >>>

⇒第7時。前時の友達の意見を取り入れることで,政治に対する考え方を変化させている。(赤の下線)

12. 生徒の記述から-その3(バランス型)

C子さん(成績は上位層)

特定の視点に偏ることなく,5つの視点をバランスよく

意識できているとみられる。

⇒第 12時。自身の成長を的確に分析している。「政治のしくみ一つひとつに理由があること」

に感銘を受けているようすが分かる。

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13. まとめ

本冊子の目的は,「振り返り」学習活動を切り口に,「子どもの学習をどのよう

に支援していくか」という「評価」論の一つの側面について,できる限りシンプ

ルに噛み砕いて説明する,というところにあります。

筆者の専門は中学校社会科であり,本冊子で紹介する個々の事例は,基本的

にはそれに即したものとなっています。しかし,「振り返り」の際に子どもに意

識させたい“5つのつけもの”や,子どもの学習内容を評価する際の“規準”(め

やす)を設定するプロセス,「振り返り」に対するコメントの書き方などは,校種・

教科の別を問わず,通じる内容かと思います。

本冊子で示した基本的な部分を押さえた上で(もしくはアレンジした上で),

ぜひとも色々な場面で「振り返り」学習活動を実践してみてください。また,そ

れの発展として子どもの「振り返り」を「評定」に加味するといったことにも

挑戦してみて頂きたいと思います。これは筆者が示せなかった点の一つであり,

また教育の現場では決して無視することのできない事柄でしょう。

ここまで本冊子をお読み頂き,「振り返り」学習活動に興味を持たれた方は,

ぜひ次頁に掲載する「おすすめ文献」のリストにも目を通してみてください。

また,いつか機会がありましたら,本冊子の元となった筆者の研究論文「中学校

社会科における社会認識の形成を支援する方法-『省察的な態度』と『振り返り』

学習活動」につきましても,ご一読頂けますと幸いです。読者さまのご意見やご

指導を心よりお待ちしております。

最後になりますが,本冊子に述べた内容は,教育の現場においてまだまだ未

熟者の筆者が,2年間に渡る実践と研究の行き来の中で,わずかながらにつか

んだものです。教師を志す大学生や,新任の教師の方々にとって,この内容が

ほんの少しでも実践・研究上の足がかりとなれば,筆者にとってはこの上ない

幸いです。

ここまでお読み頂き,どうもありがとうございました。

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14. おすすめ文献の紹介-さらに学びたい方へ

◆佐藤真[編]『各教科等での「見通し・振り返り」学習活動の充実 その方策と

実践事例』(教育開発研究所,2009)

⇒「振り返り」学習活動に関する様々な実践事例が紹介されています。

◆中村享史『「書く活動」を通して数学的な考え方を育てる算数授業』(東洋館

出版社,2002)

⇒小学校算数科で行う「振り返り」について述べられています(「学習感想」

という名称が用いられています)。本冊子で紹介した“3文字返事”はこの

文献に載っています。

◆堀哲夫[編]『一枚ポートフォリオ評価 中学校編』(日本標準,2006)

⇒編者の先生は理科教育がご専門です。「一枚ポートフォリオ」というツール

を用いた「振り返り」の方法が,豊富な実践事例とともに述べられています。

◆文部科学省『中学校学習指導要領解説 総則編』(ぎょうせい,2008) ⇒学習の「見通し」と「振り返り」をセットにした「見通し・振り返り」学

習活動の重要性が繰り返し述べられています。

◆岩田一彦『社会科固有の授業理論・30の提言―総合的学習との関係を明確にする

視点 (社会科教育全書)』(明治図書,2001)

⇒たとえばこのような本が,「自分の担当する教科で育成すべきことは何か」

を考える際に参考になるかと思います。あくまでも一例です。

◆田中耕治『日本標準ブックレット No.12 新しい「評価のあり方」を拓く-「目

標に準拠した評価」のこれまでとこれから-』(日本標準,2010)

⇒近年の学力や評価をめぐる諸問題について,概説的に述べられています。

全 61ページで,たいへん読みやすいです。

◆西岡加名恵『教科と総合に活かすポートフォリオ評価法~新しい評価基準の

創出に向けて~』(図書文化社,2007)

⇒近年の教育評価に関する議論の紹介とともに,ポートフォリオ評価の方法

とその意義について述べられています。章末のQ&Aでは,学校現場での

問題に対する筆者の提案が示されており,参考になります。

◆R.K.ソーヤー[原編],森敏昭・秋田喜代美[監訳]『学習科学ハンドブック』(培

風館,2009) ⇒近年の学習科学についての研究を網羅しています。「振り返り」に関連する

事柄もいくつか載っています。特に大学生~大学院生向けです。

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本冊子へのご意見,活用されてのご感想等ございましたら,

今隆史([email protected])まで頂けますと幸いです。

追記…教職大学院で課題研究に取り組む後輩に向けて

入学当初,筆者が考えていた研究テーマはこの冊子の内容とはまっ

たく異なるものでした。テーマが現在のものになったのは,1 年目の11 月に入ってからです。テーマを変えた理由は,実習での経験に関連して 2つあります。すなわち,現実の子どもの実態をみて,①「なぜこのようなことが起こるのだろう」という疑問を持ったこと,②「子ど

もたちのここをもっとよくしてあげたい」という必要感(切実感)を

持ったこと,です。逆に考えれば,筆者の場合,入学時に掲げていた

研究テーマには,実体験に即した問題意識がなかったと言えます。 実践を通して目的(子どもに身に付けさせたい力や態度)を見つけ,

それを実現するための手段(手立て)を大学院で学ぶというのが,教

職大学院における研究の基本的な在り方だと思います。これが逆転し

ていると,やはりいつまでも「このテーマのままでいいのか…」と考

え込むことになると思います(それも大事なプロセスだとは思います

が)。筆者がテーマを変えたのは,このことに気が付いた時でした。 筆者が課題研究を通して学んだ最も大きなことは,研究のスキルで

はなく,先に述べた「目的」と「手段」に対する考え方です。“全ての

教育活動にはねらいがある”とはよく言われますが,このことの大切

さです。そういった意味では,「実践」と「研究」は全くの別物ではな

く,本質的には重なる部分があるのだと思います。このような見方を

することができるようになったのは,この 2年間があってのことです。この見方については,現職の教員となって実践の引き出しを増やして

いく中で,更に磨いていければと思っています。 これから課題研究に取り組むみなさんも,もし研究に詰まることが

あれば,「目的」と「手段」を意識した見方を試してみてください。共

に学び合う日を楽しみにしています。 平成 22年度卒業生 M09-5008 今 隆史