札幌市の中長期的な成長可能性 調査・分析業務 【報告書 ......・quality of...

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平成31年3月 株式会社北海道二十一世紀総合研究所 札幌市の中長期的な成長可能性 調査・分析業務 【報告書】 札幌市委託

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平成31年3月

株式会社北海道二十一世紀総合研究所

札幌市の中長期的な成長可能性 調査・分析業務 【報告書】 札幌市委託

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目 次

Ⅰ.はじめに .................................................................. 1

1.調査の背景・目的......................................................... 1

2.調査検討の前提 .......................................................... 2

3.調査項目・内容 .......................................................... 3

(1)都市の成長・発展に着目した指標の設定・収集 ........................... 4

(2)国内他都市との比較分析 ............................................... 4

(3)海外都市との比較分析 ................................................. 4

(4)札幌市の目指すべき方向性とその実現に向けた施策の検討 ................. 4

Ⅱ.都市の成長・発展に着目した指標の設定、収集 ................................. 5

1.国内都市ランキングにみる比較指標 ......................................... 5

(1)森記念財団「日本の都市特性評価」における指標 ......................... 5

(2)日経グローカル「SDGs先進度」における指標 ............................ 6

2.海外都市ランキングにみる比較指標 ......................................... 7

(1)総合ランキング ....................................................... 7

(2)住みよさランキング ................................................... 8

(3)スタートアップランキング ............................................. 8

3.札幌市の中長期的な成長可能性に向けて重視すべき指標 ........................ 9

(1)成熟社会における札幌市の成長・発展とは ............................... 9

(2)札幌市が世界に認められる都市となるための要件・方向性 ................ 12

(3)経済の質的成長にかかる指標 .......................................... 21

(4)都市の社会的成長にかかる指標 ........................................ 23

Ⅲ.国内他都市との比較分析 .................................................... 25

1.比較対象都市 ........................................................... 25

2.経済の質的成長にかかる指標の比較分析 .................................... 26

(1)経済の強さ・人材 .................................................... 26

(2)イノベーション・スタートアップ ...................................... 38

(3)文化・交流.......................................................... 43

3.社会的成長にかかる指標の比較分析 ........................................ 50

(1)生活・コミュニティ .................................................. 50

(2)安全・環境・快適性 .................................................. 58

4.札幌市の強み・弱み...................................................... 64

Ⅳ.海外都市との比較分析...................................................... 66

1.比較対象都市のスクリーニング ............................................ 66

(1)スクリーニングの基準 ................................................ 66

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(2)スクリーニング ...................................................... 68

2.比較対象都市の概要...................................................... 70

3.経済の質的成長にかかる指標の比較分析 .................................... 72

(1)経済の強さ・人材 .................................................... 72

(2)イノベーション・スタートアップ ...................................... 80

(3)文化・交流.......................................................... 84

4.社会的成長にかかる指標の比較分析 ........................................ 89

(1)生活・コミュニティ .................................................. 89

(2)安全・環境・快適性 .................................................. 95

5.札幌市の強み・弱み...................................................... 98

Ⅴ.札幌市の目指すべき方向性とその実現に向けた施策の検討 ..................... 100

1.札幌市の目指すべき方向性 ............................................... 100

2.実現に向けた施策の検討 ................................................. 102

(1)既存産業の高付加価値化、付加価値の高い産業の育成・強化 ............. 102

(2)ダイバーシティの推進 ............................................... 104

(3)スタートアップ都市として評価されるまちづくり ....................... 106

(4)北海道全体の発展に資する札幌観光 ................................... 109

(5)健康・コミュニティを柱としたまちづくり ............................. 113

(6)災害に強いまちづくり ............................................... 116

(7)暮らし・活力・環境を重視する交通体系 ............................... 119

(8)札幌型スマートシティの形成 ......................................... 123

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Ⅰ.はじめに

1.調査の背景・目的

・札幌市では、「札幌市まちづくり戦略ビジョン(平成 25~34 年度)」策定から 5 年が経過し、次

期戦略ビジョンの本格的な策定検討に備え、国内はもとより国外の優れた取組を学びつつ、目指

すべき都市像や将来を見据えた新たな施策展開の方向性等を検討していくことが求められてい

る。

・本業務は、特に、本格的な人口減少社会の到来を前にしつつも、札幌市が、将来にわたり都市の

活力と生活の質を高めながら、持続可能な成長、発展を遂げていくために、「都市の成長可能性」

をテーマにし、他都市との比較を基にした課題の抽出、その解決に向けた施策の方向性を検討す

ることにより、今後の先導的な施策の展開につなげていくものである。

【「札幌市まちづくり戦略ビジョン(平成 25~34年度)」】の全体像

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2.調査検討の前提

・次期札幌市まちづくり戦略ビジョンは、2023~2032 年度を対象とするものと考えられる。この

間、我が国では、下記の事象の進展が予想される。

◆少子高齢化の進展と生産年齢人口の減少が加速

・我が国はすでに少子高齢化の進展に伴い、人口減少社会に突入している。今後 2032 年に

向けては、特に生産年齢人口の減少が加速することが問題視されている。

◆グローバル化の進展

・今日、世界は、各国経済の相互依存度の高まり、企業やNGO等の活動の世界的な広がり、

科学技術、特に情報通信技術の目覚ましい進歩、短時間に国境を越えた移動を可能にする

大量交通手段の登場、国際的なメディアの発達などによって、(一部保護主義的な動きは

あるものの)急速にグローバル化が進んでいる。

・特に観光面においては、国では 2020 年に訪日外国人旅行者 4,000 万人という目標を掲げ

ているなど、急速にグローバル化が進展している。

◆IoT、ビッグデータ、人工知能(AI)、ロボットなどの技術革新

・自然や社会のあらゆる活動、情報がデータ化され、それがネットワークにより連携され、

リアルタイムに分析を行い、新たなサービスや製品の社会実装が可能となることが予想さ

れている。

◆環境・エネルギー問題の深刻化と環境問題への意識の高まり

・気候変動や温暖化の影響、エネルギー問題等身近な問題として環境問題に対する意識がま

すます高まるとともに、企業経営においても環境対応は必須となり、企業経営における環

境対応に対するリスクを極小化し、チャンスを極大化する経営システムや経済社会システ

ムの再構築の必要性が増大するものと考えられる。

・一方、この間札幌市においては、以上に加えて下記事象が想定される。

現在~ インバウンド観光の増加(オーバーツーリズム※の弊害も)

都市部におけるホテル、高層マンションの建設ラッシュ

都市部における地価上昇

郊外における空き家の増加

人手不足の深刻化

インフラ更新の必要性

2025 年 (仮称)新 MICE 施設供用開始

2030 年 北海道新幹線札幌延伸開業、冬季オリンピック開催

※オーバーツーリズム:観光地が耐えられる以上の観光客が押し寄せる状態

・本業務では、これらの事象を前提に、どのような都市を目指すか、どのようなまちづくりを進め

るのか等について検討するための基礎データを収集・分析するとともに、国内外の都市との比較

から、札幌市の特徴、強み、弱みを明らかにし、札幌市の目指すべき方向性やその実現に向けた

施策等について検討する。

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3.調査項目・内容

・本業務では、成熟社会(人口減少社会)における都市の成長・発展とは何か、その参考となる国

内外の都市はどこか、それを何で評価していくべきかを明らかにするとともに、札幌市の特徴、

強み、弱みを把握し、今後目指すべき方向性とその実現に向けた施策を検討することにある。

【調査項目】

①都市の成長・発展に着目した指標の設定、収集

人口や経済指標のみならず、都市の持続可能な成長、発展の可能性を示す指標を複数設定し、

その指標の収集、整理を行う。

②国内他都市との比較分析

①の指標をもとに、政令指定都市をはじめとする国内主要都市との比較分析を行い、札幌市

の特徴、強み、弱みを、根拠を示しつつ明らかにし、整理して提示する。

③海外都市との比較分析

海外の成長著しい都市、生産性の高い都市など、札幌市がターゲットとすべき都市を複数選

定した上で、①の指標をもとに比較分析を行い、札幌市の特徴、強み、弱みを、根拠を示しつ

つ明らかにし、整理して提示する。

④札幌市の目指すべき方向性とその実現に向けた施策の検討

上記分析をもとに、中長期的な持続可能な成長・発展を遂げるために、札幌市が目指すべき

方向性やその実現に向けた施策等について検討を行う。

【検討フロー】

①都市の成長・発展に着目した指標の設定、収集

④札幌の目指すべき方向性とその実現に向けた施策の検討

③海外都市との比較分析 ②国内他都市との比較分析

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(1)都市の成長・発展に着目した指標の設定・収集

・以下に示す既存の都市ランキングから、都市を評価する指標を収集・整理するとともに、札幌市

の中長期的な成長・発展に着目した指標を設定する。

国内都市ランキング ・森記念財団「日本の都市特性評価」

・日経グローカル「SDGs 先進度」

世界都市ランキング ■総合ランキング

・Global Power City Index(GPCI、森記念財団)

・Global Cities Index(GCI、ATKearney)

・Global Cities Outlook(GCO、ATKearney)

・Cities of Opportunity(PwC)

・The Global Financial Centres Index(GFCI、Financial Centre Futures)

■住みよさランキング

・Quality of Living Ranking(Mercer)

・Global Liveability Index(The Economist Intelligence Unit)

・Quality of Life Survey 2018(Monocle)

■スタートアップランキング

・Startup Cities Index(Nestpick)

・Innovation Cities™ Index 2018(2thinknow)

(2)国内他都市との比較分析

・上記(1)で設定した指標について、政令指定都市を比較対象とする。またその中から規模や国

内での役割等の類似性を鑑み、特に、仙台市、神戸市、広島市、北九州市、福岡市と比較する場

合もある。

・以上の分析から、札幌市の特徴、強み、弱みを整理する。

(3)海外都市との比較分析

・以下のスクリーニングで比較対象海外都市を抽出する。

・各ランキング上位 50 位の都市を抽出

・首都及び高度なグローバル都市機能を有する都市を除外

・札幌市または札幌都市圏の人口・経済規模が同程度の都市を抽出

・札幌市の特徴(第三次産業中心、観光、住みよさ等)と比較し、特徴が似た都市を抽出

・上記(1)で設定した指標について、比較対象海外都市と比較分析する。

・以上の分析から、札幌市の特徴、強み、弱みを整理する。

(4)札幌市の目指すべき方向性とその実現に向けた施策の検討

・以上の検討を踏まえ、中長期的な持続可能な成長・発展を遂げるために札幌市が目指すべき方向

性や実現に向けた施策等について検討する。

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Ⅱ.都市の成長・発展に着目した指標の設定、収集

1.国内都市ランキングにみる比較指標

(1)森記念財団「日本の都市特性評価」における指標

・森記念財団では、都市の力を定量・定性データをもとに相対的かつ多角的に分析し、都市の強み

や魅力等の都市特性を明らかにする目的で「日本の都市特性評価」を調査、公表している。

・「日本の都市特性評価」では、都市を構成する要素として、「分野」を 6(経済・ビジネス、研究・

開発、文化・交流、生活・居住、環境、交通・アクセス)設定している。また、それぞれの分野

において、主要な要素を表す「指標グループ」を 26 設定し、さらにはそれらの要素を構成する

「指標」を 83 設定している。

・以下に、「日本の都市特性評価」における指標を示す。

森記念財団「日本の都市特性評価」指標一覧

資料:日本の都市特性評価 2018(森記念財団)

分野 指標グループ 指標名

刑法犯認知件数の少なさ

交通事故死亡者数の少なさ

火災発生件数の少なさ

空き家率の低さ

医師の多さ

病院・診療所の多さ

平均寿命・健康寿命

合計特殊出生率

保育所の多さ

子どもの医療費支援

高偏差値高校数

社会教育費

要支援・要介護高齢者の少なさ

地域包括支援センターの多さ

居住環境の満足度

新規住宅供給の多さ

住宅の広さ

住宅のバリアフリー化率

小売事業所密度

飲食店舗密度

コンビニ密度

可処分所得

物価水準の低さ

住宅コストの低さ

リサイクル率

CO2排出量の少なさ

再生可能エネルギー自給率

EVスタンドの多さ

自然環境の満足度

都市地域緑地率

水辺の充実度

年間日照時間

気温・湿度が快適な日数

空気のきれいさ

公共交通の利便性

鉄道駅・バス停密度

交通渋滞の少なさ

航空交通の利便性

高速鉄道の利便性

インターチェンジ数

都市のコンパクトさ

通勤時間の短さ

駅のバリアフリー化率

安全・安心

健康・医療

育児・教育

市民生活・福祉

居住環境

生活利便施設

生活の余裕度

環境パフォーマンス

自然環境

快適性

都市内交通

都市外アクセス

移動の容易性

分野 指標グループ 指標名

付加価値額

地域内支出

昼夜間人口比率

従業者数

賃金水準

高等教育修了者割合

若手人材の転入出

女性就業者割合

外国人就業者割合

高齢者就業率

新設事業所割合

労働生産性

特区制度認定地域数

対事業所サービス従業者割合

新規オフィス供給面積

フレキシブル・ワークプレイス密度

財政力指数

経常収支比率の低さ

実質公債費比率の低さ

将来負担比率の低さ

学術・開発研究機関従業者割合

トップ大学数

論文投稿数

グローバルニッチトップ企業数

観光地の数・評価

文化財指定件数

景観まちづくりへの積極度

イベントの数・評価

名物料理数

文化・歴史・伝統への接触機会

宿泊施設数

高級宿泊施設客室数

イベントホール数

観光案内所・病院の多言語対応

休日の人の多さ

行楽・観光目的の訪問の多さ

国際会議・展示会開催件数

観光客誘致の積極度

自治体SNSフォロワー数

魅力度・認知度・観光意欲度

経済規模

雇用・人材

人材の多様性

ビジネスの活力

ビジネス環境

財政

研究集積

研究開発成果

観光ハード資源

観光ソフト資源

受入環境

交流実績

発信実績

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(2)日経グローカル「SDGs先進度」における指標

・日経グローカルでは、国連で採択された SDGs(持続可能な開発目標)の実現に向けた全国の都

市の取組について、持続可能性(サステナビリティ―)の観点から独自に調査を実施し、「経済」

「社会」「環境」のバランスのとれた発展に各市がどれだけつなげているかを評価している。

日経グローカル「SDGs 先進度ランキング」指標一覧

分野

指標

グループ 項目 分野

指標

グループ 項目

経済 経済 1 人当たり課税所得 社会 交通 コミュニティーバスの有無

1 人当たり農業産出額 地域乗合タクシーの有無

1 人当たり製造品出荷額 公共交通の利便性向上策

1 人当たり小売業商品販売額 TDM と MM の取り組み

平均住宅地価 自転車道・レーンの整備

財政 実質公債費比率 駅のバリアフリー化

将来負担比率 環境 エネルギー 再生可能エネルギーの市町村別導入容量

社会 人口 過去 5 年間の人口増減率 省エネ施設・設備の助成制度

子ども・若者比率 再生エネルギーの助成制度 太陽光

外国人比率 再生エネルギーの助成制度 蓄電池

将来推計人口(2045 年)変化率 再生エネルギーの助成制度 太陽熱温水器

SDGs 女性管理職比率 再生エネルギーの助成制度 高効率給湯器

障害者雇用率 再生エネルギーの助成制度 木質バイオマス

有給休暇取得率 再生エネルギーの助成制度 風力

受動喫煙防止条例 再生エネルギーの助成制度 小水力

貧困対策含む子ども・子育て支援の実施事業 再生エネルギーの助成制度 その他

いじめ防止のネットワーク設置 庁舎の省エネ対策の有無

公立小中学校のエアコン設置 環境 1 人当たりごみ排出量

ダイバーシティの取組 ごみのリサイクル率

自治会加入率 汚水処理人口普及率

SDGs 担当部署の有無 1 人当たりの自動車 CO2排出量

SDGs の設置目標数 環境基本計画策定・改定の有無

まちづくり 立地適正化計画 環境施策の測定と公表

空き家率 グリーン購入の指針の有無

1 人当たり都市公園面積 グリーン購入の取り組み

生活 日常サービスの徒歩圏充足率 重金属類調査

各施設の徒歩圏人口カバー率 河川等の水質測定

基幹的公共交通路線の徒歩圏人口カバー率 地下水の水質測定

公共交通沿線地域の人口密度 大気の測定局設置

通勤通学における公共交通の機関分担率 地球温暖化対策の計画策定の有無

保育所の徒歩圏 0~4 歳人口カバー率 公用車における環境車導入の有無

高齢者徒歩圏における医療機関がある住宅

の割合 環境車の比率 次世代車普及のための助成制度等

高齢者徒歩圏における公園がある住宅の割合 生ごみ処理機購入に対する助成の有無

公園緑地の徒歩圏人口カバー率 食品ロスと減らす取り組み

防災・減災 ハザードエリア面積の割合

条例に基づく、開発事業者が守るべきルール の設定 最寄り緊急避難場所までの平均距離

災害時のタイムライン(防災行動計画) 景観条例の有無

資料:日経グローカル No.355

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2.海外都市ランキングにみる比較指標

(1)総合ランキング

①Global Power City Index(GPCI、森記念財団)

・森記念財団都市戦略研究所は、2008 年に「世界の都市総合力ランキング」(GPCI)の発表を開

始して以来、毎年そのランキングを更新している。最新の 2018 年版では、世界を代表する主要

44 都市を選定し、都市の力を表す 6 分野(「経済」「研究・開発」「文化・交流」「居住」「環境」

「交通・アクセス」)における 70 の指標に基づいて評価を実施している。

②Global Cities Index(GCI、ATKearney)

③Global Cities Outlook(GCO、ATKearney)

・アメリカの世界的な経営コンサルティング会社 A.T.カーニーによるグローバル都市指標のレポ

ート。2008 年から開始されたランキングであり、代表的な世界都市指標の一つになっている。

世界主要 135 都市を評価の対象としており、「ビジネス活動」(加重平均 30%)、「人的資本」(同

30%)、「情報流通」(同 15%)、「文化的経験」(同 15%)、「政治的関与」(同 10%)の 5 つの分野、

合計 27 の測定基準による総合評価によって順位を決めている。

④Cities of Opportunity(PWC)

・世界最大級のプロフェッショナルサービスネットワークである PwC の分析レポート「Cities of

Opportunity 7‐世界の都市力比較 2016」。本レポートでは、都市を活性化する主要素(都市力)

について 10 の領域・67 の指標を用いて分析した結果を、ランキング形式で公表。対象都市は 30

都市。

⑤The Global Financial Centres Index(GFCI、Financial Centre Futures)

・イギリスのラフバラー大学の地理学部がベースとなって行われている有力な世界都市研究グル

ープの一つである「グローバリゼーションと世界都市研究ネットワーク」(GaWC)によるランキ

ング。世界都市の評価基準はビジネス分野にほぼ特化しており、会計、広告、法律、経営コンサ

ルタント、金融など特定の高度サービス企業のオフィスの立地、充実度、都市間におけるグロー

バルな連結性などから評価している。

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(2)住みよさランキング

①Quality of Living Ranking(Mercer)

・マーサー・ヒューマン・リソース・コンサルティング社が、450 以上の都市の調査に基づき、地

域の生活環境を評価したランキング(2018 年)。このランキングは、世界 231 都市を 10 のカテ

ゴリー内にある 39 の評価基準によって順列している。以下は 10 のカテゴリーと主要な評価基

準である。

■10 のカテゴリーと主要な評価基準

・政治と社会環境(政治の安定性、犯罪、法律など)

・経済環境(貨幣両替の規制、銀行サービス)

・社会文化環境(個人の自由に対する規制、メディアの自由度や検閲)

・医療と健康(病院でのサービス、医療サービス、感染病、下水処理、廃棄物処理、大気汚染

など)

・学校と教育(インターナショナルスクールの存在と利用)

・公共サービスと交通(電気、水道、交通機関、交通渋滞など)

・レクリエーション(レストランの種類の豊富さ、ミュージカル、映画館、スポーツやレジャ

ー施設)

・消費財(食肉と魚、果物と野菜、生活用品、アルコール飲料、自動車)

・住居(住居、設備、補修サービス)

・自然環境(気候、自然災害の記録)

②Global Liveability Index(The Economist Intelligence Unit)

・英経済誌「エコノミスト」の調査部門「エコノミスト・インテリジェンス・ユニット」により発

表されている「世界の都市の住みやすい都市ランキング」。このランキングは、世界中の 140 の

都市を安定度、保健医療、文化・環境、教育、インフラの 5 つのカテゴリーの評価をもとにラン

キングを決定している。

③Quality of Life Survey 2018(Monocle)

・イギリスのビジネス・ライフスタイル雑誌「Monocle」に掲載されている「Quality of Life Survey

2018 ランキング」。世界の 25 都市における「生活の質(QoL)」をランキングしている。

(3)スタートアップランキング

①Startup Cities Index(Nestpick)

・Nestpick による新興企業がビジネスに参入する際のスタートアップとしての環境をランキング

(世界の 85 の都市を選定)。このランキングは、5 つのカテゴリー(生態系、給料、社会的な保

安と利益、生活コスト、生活の質)に区分されている。

②Innovation Cities™ Index 2018(2thinknow)

・2thinknow がイノベーション・シティーズの統計調査に基づいて、世界における 500 の革新的な

都市をランキングにしたもの(2018)。評価基準は、文化財、人材とインフラ、マーケット・ネ

ットワークという3つの要素があり、その要素は 162 の指標に細分され評価が行われている。

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3.札幌市の中長期的な成長可能性に向けて重視すべき指標

(1)成熟社会における札幌市の成長・発展とは

・「都市の成長・発展」に関して、これまでは人口や域内総生産の規模の拡大を志向してきたとい

える。

・札幌市においても、これまで人口は増加を続け、2019 年 2 月 1 日時点で 1,965,956 人と推計さ

れており、人口規模では、国内政令指定都市では横浜市、大阪市、名古屋市に次いで4番目の規

模である。しかし、人口の増加幅は近年減少傾向にあり、国立社会保障・人口問題研究所の推計

によると、札幌市の人口は、2025 年をピークに減少に転じ、2045 年には 2015 年比で約 15 万人

減少するものと推計されている。

・また、経済面では、札幌市の市内総生産(名目)は 1995 年までは順調に拡大していたが、その

後はバブル経済の崩壊やリーマンショックの影響もあり、ほぼ横ばいで推移し、2015 年度 6 兆

5,667 億円で、経済規模では国内政令指定都市では、これまで横浜市、大阪市、名古屋市に次い

で 4 番目であったが、近年、福岡市、神戸市に抜かれ、6 番目となっている。

資料:国勢調査(総務省統計局)

資料:県民経済計算(内閣府)

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・札幌市、仙台市、広島市、福岡市(札仙広福)は、支店経済都市と呼ばれることがある。

・2016 年経済センサスから、三大都市圏を本社とする支所・支社・支店の事業所数及び従業者数

は、広島市よりは多いものの、福岡市、仙台市よりも少ない。これは、後背圏域の違いからくる

ものと考えられる。

・全事業所及び従業者数に対する割合でみると、札仙広福の中で最も小さい。支店経済による規模

の拡大が限界に達しているともいえる。

資料:2016 年経済センサス

資料:2016 年経済センサス

札幌市・仙台市・広島市・福岡市の人口・面積・域内総生産比較

0%

5%

10%

15%

20%

25%

30%

0

2,500

5,000

7,500

10,000

12,500

15,000

札幌市 仙台市 広島市 福岡市

三大都市圏を本社とする支所・支社・支店の事業所数・割合

0%

5%

10%

15%

20%

25%

30%

35%

0

50,000

100,000

150,000

200,000

250,000

300,000

350,000

札幌市 仙台市 広島市 福岡市

三大都市圏を本社とする支所・支社・支店の従業者数・割合

市 県(振興局) 地方 市 県(振興局) 地方 市 県(振興局) 地方

195.2 237.5 538.2 1,121 3,540 83,424 6.19 8.15 18.96

108.2 233.4 898.3 786 7,282 66,952 4.23 9.48 33.89

119.4 284.4 743.8 907 8,480 31,922 4.71 11.94 29.92

153.9 510.2 1,301.6 343 4,987 36,782 6.73 18.86 44.96

札幌 1.5% 1.9% 4.2% 0.3% 0.9% 22.1% 1.1% 1.5% 3.5%

仙台 0.9% 1.8% 7.1% 0.2% 1.9% 17.7% 0.8% 1.7% 6.2%

広島 0.9% 2.2% 5.9% 0.2% 2.2% 8.4% 0.9% 2.2% 5.5%

福岡 1.2% 4.0% 10.2% 0.1% 1.3% 9.7% 1.2% 3.5% 8.2%

資料: 人口:国勢調査(2015年)

面積:全国都道府県市区町村別面積調(国土交通省国土地理院)

域内総生産:県民経済計算(2015年度)。ただし、石狩振興局は2014年度。

地方:札幌(北海道)、仙台(東北6県)、広島(中国5県)、福岡(九州7県)

札幌

仙台

広島

福岡

人口(万人) 面積(k㎡) 域内総生産(兆円)

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・このように、都市の成長を人口規模や経済規模の拡大に求めるのではなく、「成熟社会における

都市の成長・発展」として、下記2つの視点が必要と考えられる。

経済の質的成長 総人口、特に生産年齢人口が減少していく中で、単に経済規模の拡大だけ

を追求するのではなく、女性や高齢者の社会進出の促進や労働生産性、付

加価値の向上など、経済の質的成長が重要視される。

都市の社会的成長 札幌市は、積雪寒冷地で人口約 196 万人を有する世界に類を見ない都市で

あり、かつはっきりとした四季、緑豊かな街並みなど、自然に恵まれた環

境を有している。人口減少社会の到来に対し、経済面だけでなく、こうし

た都市固有の魅力を活かし、地域の暮らしを支え、発展させる社会的成長

が重要視される。

・この「経済の質的成長」「都市の社会的成長」を成し遂げることにより、成熟社会における札幌市

の成長・発展につながることが期待される。

・加えて、都市間競争のグローバル化が進む中、札幌市においても、中長期的な成長可能性を果た

していく上でグローバル化は不可欠であり、上記の経済の質的成長、都市の社会的成長を世界か

ら認められるものとしていくことが必要である。

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(2)札幌市が世界に認められる都市となるための要件・方向性

①札幌市の国際的ポジショニング

・地球規模で都市化が進展しており、その中でもグローバル化した流動的な人材や企業、投資を惹

きつける都市こそが、「国際競争力」を有する「世界都市」といえる。

・我が国では、東京が、世界の主要都市との競争を勝ち抜くために、国際空港の機能向上・アクセ

スの改善や外資系企業へのインセンティブ付与といった施策によって、都市の魅力アップと国際

競争力の強化に取り組み、「世界都市」としての国際競争力を高めている。

・東京以外の日本の地方中枢拠点都市においてもグローバル競争は不可避であり、都市の規模や地

理的特性、身の丈に合ったグローバル化に対応した政策の立案・実行が求められている。

・都市の国際競争力においては、人口・経済の集積が重要な要素といえ、実際に「世界都市」とい

われている多くの都市は首都であり、人口・経済規模の大きな都市である。

・一方、札幌市は首都ではなく、また、人口・経済の集積からみても、The Brookings Institution

「Global Metro Monitor」によると、世界の 300 都市圏のうち、都市圏人口では世界 162 位、都

市圏 GDP では 162 位、一人当たり GDP では 189 位、雇用者数では 159 位、総務省「世界の統

計 2018」による都市の人口では、札幌市は 302 市中 128 位、「Demographia World Urban

Areas2018」による札幌都市圏人口は 1,064 都市圏中 216 位と、必ずしも高いとはいえない。

・しかし、世界では首都ではなく、人口・経済規模が札幌市と同程度でも、国際競争力が高く、国

際的にも評価され一定の存在感を示している「世界都市」が存在する。

・札幌市においても、中長期的に成長を図る上でグローバル化は不可欠であり、首都ではなく、札

幌市と人口・経済規模が同程度でも、世界都市として国際競争力が高く、国際的にも評価され一

定の存在感を示している都市と比較し、国際的な地位を高めていくための札幌市の方向性、課題

等を検討する意義があるものと考えられる。

Global Metro Monitor による 札幌市のランキング

資料:Global Metro Monitor

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世界の都市の人口

資料:世界の統計 2018(総務省)

順位 都市名 人口(千人) 順位 都市名 人口(千人) 順位 都市名 人口(千人)

1 ◎メキシコシティ 21,497 71 済南(チーナン) 3,000 141 ◎キト 1,778

2 ◎北京(ペキン) 19,610 72  プエブラ・トラスカラ 2,987 142 モントリオール 1,763

3 イスタンブール 14,657 73 貴陽(クイヤン) 2,985 143 ◎ブダペスト 1,759

4 上海(シャンハイ) 14,349 74 ◎アディスアベバ 2,979 144 スマラン 1,758

5 ◎ブエノスアイレス 13,880 75 ◎ブラジリア 2,977 145 イスファハン 1,756

6 ムンバイ 12,442 76  ドゥアラ 2,948 146 ヴァドーダラー 1,752

7  サンパウロ 12,038 77  サルバドール 2,938 147 ◎ルサカ 1,747

8 ◎モスクワ 11,918 78 ケソンシティ 2,936 148 メルシン 1,745

9 デリー 11,035 79 仁川(インチョン) 2,914 149 ◎ワルシャワ 1,735

10 ◎ジャカルタ 10,374 80 トロント 2,876 150 ◎クアラルンプール 1,732

11 ◎リマ 10,039 81 スラバヤ 2,875 151  クマシ 1,730

12 ◎ソウル 9,835 82 ◎ヤウンデ 2,874 152  レオン 1,729

13 重慶(チョンチン) 9,692 83 ◎ローマ 2,868 153 ヴィシャーカパトナム 1,728

14 ◎東京都(特別区部) 9,273 84 ブルサ 2,843 154 ピンプリ・チンチワッド 1,728

15 ◎ダッカ 8,906 85 ラクナウ 2,817 155 ◎コナクリ 1,660

16 ニューヨーク 8,538 86  淄博(ツーポー) 2,817 156 ディヤルバクル 1,654

17 広州(クワンチョウ) 8,525 87 ◎キエフ 2,804 157  マラカイボ 1,653

18 バンガロール 8,495 88 高雄(カオシュン) 2,777 158 ダバオ 1,633

19 武漢(ウーハン) 8,313 89  ムワンザ 2,773 159  レシフェ 1,626

20 ◎バンコク 8,305 90 カーンプル 2,768 160  パレンバン 1,623

21 ◎テヘラン 8,154 91 マシュハド 2,766 161  サンタクルス 1,616

22 ◎ロンドン g 8,136 92 台中(タイチョン) 2,731 162 キャラジ 1,615

23 ◎ボゴタ 7,980 93 ◎アルジェ 2,713 163 フェニックス 1,615

24 天津(ティエンチン) 7,499 94 シカゴ 2,705 164  オークランド 1,614

25 香港(ホンコン) 7,337 95 大阪市 2,691 165  バルセロナ 1,607

26 ◎カイロ 7,249 96 台北(タイペイ) 2,656 166 ◎アクラ 1,594

27  深圳(シェンチェン) 7,009 97  フォルタレザ 2,610 167 カローカン 1,584

28 ハイデラバード 6,993 98 チッタゴン 2,592 168 ◎プノンペン 1,571

29  リオデジャネイロ 6,499 99 ◎平壌(ピョンヤン) 2,581 169  フィラデルフィア 1,568

30 東莞(トンクワン) 6,446 100  グアヤキル 2,531 170 福岡市 1,539

31 アフマダーバード 5,634 101  ベロ・オリゾンテ 2,513 171 神戸市 1,537

32 シンガポール 5,607 102 バンドン 2,498 172  メッカ 1,535

33 ◎サンティアゴ f 5,561 103  メデジン 2,487 173 ハタイ 1,534

34 瀋陽(シェンヤン) 5,303 104 大邱(テグ) 2,450 174 大田(テジョン) 1,533

35 ◎アンカラ 5,271 105 ナーグプル 2,406 175  コルドバ 1,525

36 ヤンゴン 5,210 106  カリ 2,395 176 光州(クァンジュ) 1,517

37 ◎リヤド 5,188 107 ◎タシケント 2,393 177  ノボシビルスク 1,511

38  サンクトペテルブルク 4,991 108  ヒューストン 2,303 178  アルマティ 1,508

39  グアダラハラ 4,853 109 名古屋市 2,296 179 ◎カンパラ 1,507

40 チェンナイ 4,647 110  アンタルヤ 2,288 180  ダカリーヤ 1,503

41  モンテレイ 4,540 111 メダン 2,247 181 タブリーズ 1,495

42  シドニー 4,526 112 ◎パリ 2,244 182 サンアントニオ 1,493

43 スラト 4,502 113  トルーカ 2,225 183 マカッサル 1,489

44 コルカタ 4,497 114 ◎バクー 2,215 184 ◎ハラレ 1,485

45 西安(シーアン) 4,482 115  ブリスベーン 2,209 185  ポルトアレグレ 1,481

46  アビジャン 4,395 116 桃園(タオユェン) 2,190 186 川崎市 1,475

47  ダルエスサラーム 4,365 117 アダナ 2,183 187 京都市 1,475

48  アレクサンドリア 4,358 118  タンゲラン 2,140 188 ◎ワガドゥグー 1,475

49  メルボルン 4,354 119 コンヤ 2,131 189 シーラーズ 1,461

50 成都(チョントゥー) 4,334 120 ◎ハバナ 2,130 190  ミュンヘン 1,450

51 イズミル 4,168 121  マナウス 2,094 191  ゴイアニア 1,449

52 新北(シンペイ) 4,054 122 ◎ドドマ 2,084 192  ベレン 1,446

53 ロサンゼルス 3,976 123 ◎カラカス 2,082 193 ロサリオ 1,444

54 ◎カブール 3,817 124  カルユービーヤ 2,054 194  フアレス 1,436

55 ◎アンマン 3,753 125 インドール 1,994 195  ハリコフ 1,431

56 横浜市 3,725 126  ティフアナ 1,968 196 ◎ウランバートル 1,418

57 南京(ナンキン) 3,624 127  パース 1,959 197 サンディエゴ 1,407

58 ◎ベルリン 3,520 128 札幌市 1,952 198  エカテリンブルク 1,387

59 哈爾浜(ハルビン) 3,482 129 ガジアンテップ 1,932 199 モースル 1,384

60  ジッダ 3,431 130  クリチバ 1,894 200 マニサ 1,380

61 釜山(プサン) 3,389 131 シャンルウルファ 1,892 201 ◎モンテビデオ 1,380

62  カサブランカ 3,352 132 ◎ブカレスト 1,849 202 ◎ベオグラード 1,369

63 大連(ターリエン) 3,245 133 ターネー 1,841 203 カイセリ 1,341

64 長春(チャンチュン) 3,226 134 台南(タイナン) 1,840 204  シャルキーヤ 1,340

65 ◎マドリード 3,186 135 ◎ウィーン 1,840 205  グアルーリョス 1,337

66 ◎ナイロビ 3,134 136 ◎バマコ 1,810 206  ミラノ 1,331

67 プネー 3,124 137 ボーパール 1,798 207  ラ・ラグナ 1,328

68  ギーザ 3,122 138  ハンブルク 1,787 208 カルガリー 1,319

69 ジャイプル 3,046 139 コジャエリ 1,780 209 ダラス 1,318

70 昆明(クンミン) 3,035 140 ◎マニラ 1,780 210  ザンジバル 1,304

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世界の都市圏の人口

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資料:Demographia World Urban Areas2018

注 :54 位~175 位省略

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②世界で評価されている都市(世界都市)の要件

・世界都市(world city)とは、主に経済的、政治的、文化的な中枢機能が集積しており、世界的な

観点による重要性や影響力の高い都市のことである。

・アメリカのシンクタンクであるシカゴ国際問題評議会(Chicago Council on Global Affairs)は、

「何がグローバル都市を作るのか?(What Makes a Global City?)」という題名でグローバル都

市の定義や傾向を定めている。主な内容な以下の通りである。

What Makes a Global City?(Chicago Council on Global Affairs)における世界都市の要件

・Global cities drive the global economy.

世界経済をリードしている。

・They are large, but size alone is not enough.

都市規模が大きい傾向にあるが、それだけでは十分ではない。

・They are magnets for the best and brightest from around the world, including their nations’ young people.

国内の若者なども含む、世界の人々を惹きつける魅力がある。

・They thrive on great universities, provide good schools for children, and solid education and skills development for the workers needed to support a city.

大学など高等教育が発展しており、子供や労働者にも充実した教育環境を提供している。

・They have large foreign-born populations. Immigrants are attracted to jobs in global cities and, once there, add new blood and verve to the urban vitality.

外国人の人口が多い。移民を惹きつける仕事があり、その情熱、気迫が都市のバイタリティーを高めている。

・They are global taste-makers and cultural capitals. Museums, symphonies, theaters, restaurants, sports, and nightlife are a cause and effect of a global city. Global citizens want to have fun.

文化的な中心地である。博物館、劇場、レストラン、スポーツ、ナイトライフなどが充実している。

・They are destinations. Tourists share their impressions and experiences with others, creating the buzz needed to attract more visitors.

デスティネーション、いわば目的地であり、観光客にとって魅力的である。

・They are politically engaged. National capitals have an advantage, but non-capital global cities also have consulates, think tanks, and international conferences.

政治的影響力があることは有利な条件である。首都ではないグローバル都市も領事館、シンクタンク、国際会議などを有する。

・They are hubs of connectivity. Their infrastructure, including major airports and top-flight broadband, link them around the clock with other global cities.

国際的なハブであり、グローバルな連結性が高い。都市圏にメジャーな国際空港がある。

・They are led by global visionaries. Global city leaders understand their cities’ place in the global economy, and sell this global focus to voters for whom all politics may be local.

グローバル都市に必要な先見の明のある指導者がいる。

・They value high quality of life. This includes public transit, a clean environment, safe streets, good health care, and efficient and honest local government.

生活の質が高い。公共交通機関、クリーンな生活環境、治安の良さ、ヘルスケア、地方政府の効率性などが発展している。

・They are open. National policies that limit immigration, restrict trade, censor the media or digital communication make it harder for global cities to thrive.

オープンである。移民、デジタルコミュニケーション、トレードの制限などが少ない。報道の自由度が高い。

Page 21: 札幌市の中長期的な成長可能性 調査・分析業務 【報告書 ......・Quality of Living Ranking(Mercer) ・Global Liveability Index(The Economist Intelligence

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・以上の世界都市の要件に札幌市を当てはめると、以下の通りである。

世界都市の要件 札幌市の状況

世界経済をリードしている。 世界経済をリードしているとまではいえない。

都市規模が大きい傾向にあるが、それだけでは

十分ではない。

都市規模は必ずしも大きいとはいえない。

国内の若者なども含む、世界の人々を惹きつけ

る魅力がある。

道内から人をひきつけている。

観光目的以外での国内外から人々を引き付け

る魅力には欠けている。

大学など高等教育が発展しており、子供や労働

者にも充実した教育環境を提供している。

北大・札医大は国際的にも評価されている。

高偏差値高校が多い。

インターナショナルスクールがある。

外国人の人口が多い。移民を惹きつける仕事が

あり、その情熱、気迫が都市のバイタリティー

を高めている。

外国人が少ない。

文化的な中心地である。博物館、劇場、レスト

ラン、スポーツ、ナイトライフなどが充実して

いる。

ハード面の施設数は充実。

デスティネーション、いわば目的地であり、観

光客にとって魅力的である。

外国人観光客の増加傾向(外国人にとっても魅

力的な観光地として認識されてきている)。

政治的影響力があることは有利な条件である。

首都ではないグローバル都市も領事館、シンク

タンク、国際会議などを有する。

国際会議開催件数では国内上位。

国際的なハブであり、グローバルな連結性が高

い。都市圏にメジャーな国際空港がある。

新千歳空港の存在。

グローバル都市に必要な先見の明のある指導

者がいる。

生活の質が高い。公共交通機関、クリーンな生

活環境、治安の良さ、ヘルスケア、地方政府の

効率性などが発展している。

生活の質は高く、住民の満足度も高い。

オープンである。移民、デジタルコミュニケー

ション、トレードの制限などが少ない。報道の

自由度が高い。

外国人材への対応が課題。

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③世界都市の類型と札幌市の目指すべき方向

・アメリカの総合不動産大手の JLL は、世界の都市を、それぞれ共通する成長過程、課題及び命題

から、以下の 10 種類の都市グループに類型化し、特定している。

JLL 世界都市の類型

資料:JLL and The Business of Cities 2018 年 1 月

確立された世界都市 ・世界で傑出した存在感を有し、グローバルでの役割及びその訴求力に優れた実績を誇

る。取引活動、企業及び資本並びに人材、そして各種機関の集中度が最も高い都市グ

ループ。

ビックセブン ・都市としてのスケール、グローバルリーチ、クオリティとその影響力を有機的に結合

させている。結果として、クロスボーダー投資家や多国籍企業が最初に注目する都市

となっており、国内外の人材を惹きつけ、取引や国際会議、教育、観光分野においても

魅力がある。しかし、これらの都市は継続的成長の維持に関し最も大きな課題に直面

しており、また外部要因である地政学的不透明感に大きな影響を受けている。

挑戦者たち ・国内の経済圏と海外の経済圏へのゲートウェイとしての接続性、効果的な都市規模と

市場の大きさ、世界資本からの信頼度、潤沢な人材、多数の都市における多様な産業

等、上位都市が持つ都市的資産の多く、ないしはほとんどを獲得してきている。

新たな世界都市 ・所得が高く、効率的なインフラと魅力的な生活の質を提供し、犯罪や公害、交通渋

滞、不平等といった負の外部要因が少ない都市グループ。

イノベーター ・イノベーション・エコシステムの最先端にいる世界的大手企業や公的機関を多数抱え

ている。これらの都市は外国直接投資のスコアが高いだけではなく、新たな技術に特

化した現地企業の成熟した高生産性システムからも恩恵を受けている。

・これらの都市の多くは、ライフスタイルや洗練された多様性のある文化をより広くア

ピールし、その技術的優位を補完するという点においては今のところまだ部分的にし

か成功していない。とはいえ、生活の質・快適さのパフォーマンスは、富を生み出す

業界に勤務する人材誘致には十分な水準である場合がほとんどである。

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ライフスタイル

シティ

・「新たな世界都市」の中でも非常に住みやすい居住環境を備えた小グループであり、生

活の質と都市の魅力が最も強力なブランド資産となっている。コンパクトで中密度の

都会生活、秀逸な公共スペースや公共サービス規格が世界的な共感を呼び、高等教育、

クリエイティブ産業、観光、科学等の主要輸出市場の成長を後押ししている。

・これらの都市に共通する資産は、交流やコラボレーションを促進する快適な都市基盤

への継続的な投資を可能にする安定した都市運営である。その都市運営は、環境、デ

ザイン、医療の技能分野に加えて、とりわけニッチな専門的知識やテクノロジーの業

界を惹きつけている。

インフルエンサー ・各種の機関や影響力が集中する「新たな世界都市」の中の小グループであり、その世

界的な役割は、多国籍機関や観光事業、交易機能を抱えていることと密接に関係して

いる。これらの都市は、政府間や法律・貿易関連の国際的意思決定の調整・促進に関し

て普遍的役割を果たしているか、もしくはその筆頭候補地となっている。このことは

同時に、外交、安全保障、メディア、高等教育やその関連業界が集積していることも意

味している。

・政治的・地理的条件に恵まれ、世界的な役割とアイデンティティを継承してきた。成

長に関するジレンマとしては、他のニッチな活動においても優れた位置付けを獲得す

るため、継承してきたステータスを活用しつつも今後多様化を目指すべきか否かとい

う判断を巡るものであることが多い。

新興世界都市 ・新興国の大規模な都市で、国内消費者の旺盛な需要と事業創出を背景に、国際的な貿

易や投資先としても地位を確立しつつある都市グループ。

メガハブ ・金融、ビジネスサービス、不動産、企業本社や小売業の中心地として能力を発揮する

ようになり、高等教育、科学、医療が目覚ましく進歩している。これらの都市は、より

巨大な、そして多くの場合、成長拡大している国内市場に貢献しており、その国の経

済の国際化における接続ターミナルとして役割を果たしている。

エンタープライザ

・ビジネスや企業のハブ都市で構成されるこのグループは、事業機会が創出される主要

地であり、国内やより広域の地域から労働者が集まる。製造業よりサービス業に特化

していることが多く、国内経済においては最大規模の都市であり、ここ数年はビジネ

ス環境の優位性を積極的に活用している。今ではビジネスサービス、エンジニアリン

グ、金融及び小売業の企業が数多く存在し、クリエイティブ業界にも強みがある。概

して、長期にわたる好景気の恩恵を享受しており、貧困や所得不平等といった問題も

大幅に減少させている。

パワーハウス ・テクノロジー、通信、接続性の急速な発展は、バリューチェーンにおいての地位を向

上させるべく低付加価値経済からのシフトを試みる都市が増加していることを意味し

ている。多くの都市において、伝統的製造業はより割安な労働力を求めて転出し、徐々

に資本集約型、設計・技術重視の業務に置き換わっている。

・主に中国都市で構成され、強力な国家支援の恩恵を享受しているが、今や国家政策は

規範的ではなくなってきており、価格のみならず産業の集積度においても競争力を維

持することが急務となっている。

ハイブリッド ・新たに登場した世界都市の多くは、「新興世界都市」か「新たな世界都市」の特性を有

しているが、その両方の特性を兼ね備えた「ハイブリッド」のグループも存在し、ドバ

イが最もよくこれを体現している。これらの都市は「新たな世界都市」同様に中規模

であり、専門的な市場で競い、国内及び周辺地域内で同等の競合都市よりも生活しや

すさの点で優れている。その一方、労働力や市場へのアピール等の総合的なプロファ

イルは、「新興世界都市」に非常に近い。

国内成長エンジン ・安定的な先進国に所在し、大規模な国内市場へのアクセスの恩恵を受け、安定した需

要があり、競合相手が比較的少ない都市である。これらの都市の競争力は総じてサー

ビスや供給機能を中心としたものとなっている。所在企業は、周辺地域を含む商圏内

に存する富裕で信頼性の高い市場に対してサービス提供しており、また国際市場へも

日用品その他の製品を安定的に供給している、もしくはその両方を行っている。その

結果、これらの都市は就業率が比較的高く、人材確保の国際化は重要な命題となって

いない。

資料:JLL and The Business of Cities 2018 年 1 月

Page 24: 札幌市の中長期的な成長可能性 調査・分析業務 【報告書 ......・Quality of Living Ranking(Mercer) ・Global Liveability Index(The Economist Intelligence

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・以上の類型に当てはめると、札幌市は、現状では「国内成長エンジン」が最も近い類型となるも

のの、人口・経済規模では「国内成長エンジン」と類型化されている他都市(アトランタ、ダラ

ス、ヒューストン、名古屋、大阪)と比較すると、その規模は小さいといわざるを得ない。

・むしろ札幌市が持つ住みやすい居住環境や高等教育機関の集積、クリエイティブ産業や IT 産業

の集積、観光都市といった特徴を活かし、都市類型の中でこれらを成長エンジンとしている「ラ

イフスタイルシティ」へと発展を遂げていくことが望まれる。

■「ライフスタイルシティ」に類型されている都市

・オークランド、ブリスベン、コペンハーゲン、ハンブルグ、ヘルシンキ、メルボルン、

オスロ、バンクーバー、チューリッヒ

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(3)経済の質的成長にかかる指標

・経済の質的成長に関して、以下の3分野をとりあげる。

■経済の強さ・人材

・経済の強さは、単に経済規模だけで評価されるわけではなく、一人当たり GDP で評価され

ている。

・我が国では、労働力人口の減少が不可避な将来において、都市には、就業に関して制約のあ

るなしに関わらず、さまざまな人が活躍できるまちづくりが必要とされている。このため、

経済のリソースとして、女性、高齢者、外国人材の活躍が不可欠である。

・以上を踏まえ、ここでは「経済の強さ」「人材の豊かさ・多様性」について評価指標を設定

する。

■イノベーション・スタートアップ

・次代へと牽引する産業の発展には、闊達なイノベーションによるクリエイティブな企業の育

成・創出、さらには、これを担うクリエイティブ(創造的)な人材の集積が必要である。世

界都市として評価されているイノベーションの拠点となる先進地域は、才能のある人材を

引き付け、創造的な知を生み出し、世界のイノベーションのほとんどを担っている。

・以上を踏まえ、ここでは「スタートアップ環境」「ICT 環境」「大学」「研究開発」について

評価指標を設定する。

■文化・交流

・グローバル化に伴い海外旅行をする人の数は増え続けており、今後も確実に増え続ける海外

旅行者に訪問先として選んでもらうことは、都市にとって重要な課題といえる。観光客の誘

致は、単に観光産業の振興というだけでなく、都市の認知度・魅力度の向上につながり、ひ

いては外国人からも選ばれる都市、住んでみたい都市、働きたい都市へとつながることが期

待される。

・以上を踏まえ、ここでは「観光客」、「観光資源」、「コンベンション」、「航空交通」について

評価指標を設定する。

Page 26: 札幌市の中長期的な成長可能性 調査・分析業務 【報告書 ......・Quality of Living Ranking(Mercer) ・Global Liveability Index(The Economist Intelligence

-22-

・以上を踏まえ、具体の経済の質的成長を評価する指標として、以下の指標を設定する。

重視する分野 経済の質的成長にかかる指標 項番

国内比較 海外比較

経済の強さ・人材 Ⅲ-2-(1) Ⅳ-3-(1)

経済の強さ GDP Ⅲ-2-(1)-①-a Ⅳ-3-(1)-①-a

労働生産性 Ⅲ-2-(1)-①-b Ⅳ-3-(1)-①-b

産業構造 Ⅲ-2-(1)-①-c Ⅳ-3-(1)-①-c

人材の豊かさ・多様性 労働力 Ⅲ-2-(1)-②-a Ⅳ-3-(1)-②-a

女性の活躍 Ⅲ-2-(1)-②-b Ⅳ-3-(1)-②-b

高齢者の活躍 Ⅲ-2-(1)-②-c Ⅳ-3-(1)-②-c

外国人材の活躍 Ⅲ-2-(1)-②-d Ⅳ-3-(1)-②-d

イノベーション・スタートアップ Ⅲ-2-(2) Ⅳ-3-(2)

スタートアップ環境 スタートアップ・エコシステム Ⅲ-2-(2)-①-a Ⅳ-3-(2)-①-a

新規開業 Ⅲ-2-(2)-①-b Ⅳ-3-(2)-①-b

ICT 環境 コンピュータ環境 Ⅲ-2-(2)-②-a Ⅳ-3-(2)-②-a

大学 大学のグローバル評価 Ⅲ-2-(2)-③-a Ⅳ-3-(2)-③-a

研究開発 特許件数 Ⅲ-2-(2)-④-a -

研究開発 Ⅲ-2-(2)-④-b -

文化・交流 Ⅲ-2-(3) Ⅳ-3-(3)

観光客 観光客数 Ⅲ-2-(3)-①-a Ⅳ-3-(3)-①-a

観光資源 世界遺産への近接性 Ⅲ-2-(3)-②-a Ⅳ-3-(3)-②-a

宿泊施設の充実度 Ⅲ-2-(3)-②-b Ⅳ-3-(3)-②-b

芸術鑑賞の充実度 Ⅲ-2-(3)-②-c Ⅳ-3-(3)-②-c

オリンピック開催実績 - Ⅳ-3-(3)-②-d

コンベンション 国際会議開催件数 Ⅲ-2-(3)-③-a Ⅳ-3-(3)-③-a

航空交通 旅客数 Ⅲ-2-(3)-④-a Ⅳ-3-(3)-④-a

航空交通の利便性 Ⅲ-2-(3)-④-b -

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-23-

(4)都市の社会的成長にかかる指標

・都市の社会的成長に関して、以下の2分野をとりあげる。

■生活・コミュニティ

・人は都市の基本的な構成要素である。人については、人口規模だけでなく、人口構成、人口

動態から将来的な持続可能性を評価する必要がある。

・また、都市の中で自分らしく豊かな生活を送る上では、生活と仕事のバランス、賃金水準、

生活のコストも重要な要素といえる。

・以上から、生活・コミュニティの評価に関して、「人口構成」「人口動態」「生活と仕事のバ

ランス」「金銭的な豊かさ」「生活のコスト」の評価指標を設定する。

■安全・環境・快適性

・都市の中で安心して日常生活を営む上では、犯罪や災害などに対する安全が確保され、一人

一人が健康に暮らすことができ、公害のない快適で利便性の高いことが求められる。

・住民が安心して住み続けられ、また外から選ばれる都市となるためには、この安全性・環境

・快適性は、不可欠な要素といえる。

・そこで、都市の安全性・環境・快適性の評価に関して、「犯罪等の少なさ」「災害リスクの少

なさ」「医療の充実度」「汚染の少なさ」「都市のコンパクトさ」「公共交通の充実度」の評価

指標を設定する。

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-24-

・以上を踏まえ、具体の都市の社会的成長を評価する指標として、以下の指標を設定する。

重視する分野 都市の社会的成長にかかる指標 項番

国内比較 海外比較

生活・コミュニティ Ⅲ-3-(1) Ⅳ-4-(1)

人口構成 平均年齢 Ⅲ-3-(1)-①-a Ⅳ-4-(1)-①-a

高齢者比率 Ⅲ-3-(1)-①-b Ⅳ-4-(1)-①-b

人口動態 人口増加率 Ⅲ-3-(1)-②-a Ⅳ-4-(1)-②-a

合計特殊出生率 Ⅲ-3-(1)-②-b Ⅳ-4-(1)-②-b

平均寿命 Ⅲ-3-(1)-②-c Ⅳ-4-(1)-②-c

生活と仕事のバランス 年間労働時間 Ⅲ-3-(1)-③-a Ⅳ-4-(1)-③-a

通勤・通学時間 Ⅲ-3-(1)-③-b -

金銭的な豊かさ 賃金水準 Ⅲ-3-(1)-④-a Ⅳ-4-(1)-④-a

生活コスト 家賃水準 Ⅲ-3-(1)-⑤-a Ⅳ-4-(1)-⑤-a

物価水準 Ⅲ-3-(1)-⑤-b Ⅳ-4-(1)-⑤-a

安全・環境・快適性 Ⅲ-3-(2) Ⅳ-4-(2)

犯罪等の少なさ 犯罪件数 Ⅲ-3-(2)-①-a Ⅳ-4-(2)-①-a

交通事故死亡者数 Ⅲ-3-(2)-①-b -

火災発生件数 Ⅲ-3-(2)-①-c -

災害リスクの少なさ GDP リスク Ⅲ-3-(2)-②-a Ⅳ-4-(2)-②-a

医療の充実度 人口当たりの医師数 Ⅲ-3-(2)-③-a Ⅳ-4-(2)-③-a

人口当たりの病床数 Ⅲ-3-(2)-③-b Ⅳ-4-(2)-③-b

汚染の少なさ CO2 排出の少なさ Ⅲ-3-(2)-④-a -

空気のきれいさ Ⅲ-3-(2)-④-b Ⅳ-4-(2)-④-a

都市のコンパクトさ 人口密度 Ⅲ-3-(2)-⑤-a Ⅳ-4-(2)-⑤-a

公共交通の充実度 駅・バス停留所の徒歩圏人口カバー率 Ⅲ-3-(2)-⑥-a -

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-25-

Ⅲ.国内他都市との比較分析

1.比較対象都市

・札幌市は、人口約 196 万人を有する国内では大都市であり、大都市ならではの特徴、強み、弱み

を有している。

・このため、地方自治法において国内で大都市と位置付けられている政令指定都市を比較対象とす

る。

・また、その中から規模や国内での役割等の類似性を鑑み、特に、仙台市、神戸市、広島市、北九

州市、福岡市と比較する場合もある。

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-26-

2.経済の質的成長にかかる指標の比較分析

(1)経済の強さ・人材

①経済の強さ

a.GDP

【GDP】

・札幌市の市内総生産は、2015 年度で 6 兆 5,667 億円(名目)で、ほぼリーマンショック前の水

準に戻っている。

・他都市との比較では、福岡市よりは小さく、神戸市とほぼ同規模である(わずかに神戸市を下回

っている)。

【GDP の伸び】

・市内総生産の伸び(名目)は、2006 年度から 2015 年度、2009 年度(リーマンショック後)か

ら 2015 年度ともに、6 市中最下位。

・業種別に 2006 年度から 2015 年度にかけて、6 市平均の伸びを上回っているのは、札幌市では

「農林水産業」「卸売・小売業」「情報通信業」「保健衛生・社会事業」の4業種のみ。

・一方、仙台市、福岡市では、それぞれ 11 業種、12 業種となっている。

資料:札幌市統計書(市民経済計算)

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-27-

資料:各市統計書

資料:各市統計書

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-28-

資料:各市統計書

-5.0% 0.0% 5.0% 10.0% 15.0% 20.0%

1.農林水産業

2.鉱業

3.製造業

4.電気・ガス・水道・廃棄物処理業

5.建設業

6.卸売・小売業

7.運輸・郵便業

8.宿泊・飲食サービス業

9.情報通信業

10.金融・保険業

11.不動産業

12.専門・科学技術、業務支援サービス業

13.公務

14.教育

15.保健衛生・社会事業

16.その他のサービス

経済活動別市内総生産 年平均伸び率(2006→2015年度)

札幌市

仙台市

神戸市

広島市

北九州市

福岡市

6市平均

Page 33: 札幌市の中長期的な成長可能性 調査・分析業務 【報告書 ......・Quality of Living Ranking(Mercer) ・Global Liveability Index(The Economist Intelligence

-29-

b.労働生産性

・札幌市の労働生産性(民営事業所、付加価値額/従業者数)は、455.8 万円/人(2016 年)と、

全国平均を下回っており、政令指定都市 20 市中 14 番目と低い部類に属する。一番高い大阪市と

比較すると、245.5 万円/人の開きがある。

・札幌市の主要産業(従業者数 5,000 人以上の業種)でみると、他都市と同様に「宿泊業、飲食サ

ービス業」の低さが際立っており、その中でも札幌市の労働生産性は最も低い。

・札幌市の主要産業の一つとしてあげられる観光業における労働生産性の向上が課題といえる。

資料:経済センサス-活動調査(付加価値額÷従業者数で算出)

資料:経済センサス-活動調査(付加価値額÷従業者数で算出、)

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

7,000

8,000

大阪市

名古屋市

仙台市

横浜市

全国

神戸市

川崎市

浜松市

福岡市

千葉市

静岡市

京都市

広島市

さいたま市

札幌市

岡山市

北九州市

相模原市

新潟市

熊本市

堺市

労働生産性(2016年)(千円/人)

0.0 200.0 400.0 600.0 800.0

サービス業

(他に分類されないもの)

医療,福祉

宿泊業,飲食サービス業

卸売業,小売業

建設業

産業分類別の労働生産性(2016年)

札幌市

仙台市

神戸市

広島市

北九州市

福岡市

(万円/人)

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-30-

c.産業構造

【産業分類別従業者数からみる産業構造】

・札幌市の従業者数(公務を除く)は、2016 年では約 839 千人で、比較対象6都市の中では2番

目に多い。ただし、2012 年には 6 市中第 1 位であったが、2016 年には福岡市に抜かれている。

・札幌市で従業者の多い業種は、「卸売業、小売業」(約 192 千人)「医療、福祉」(127 千人)「宿

泊業、飲食サービス業」(84 千人)である。

・2012 年から 2016 年にかけて就業者数の増減でみると、札幌市は約 7 千人の増加であり、福岡市

の 38 千人増、仙台市の 25 千人増、神戸市の 18 千人増と比較すると、微増にとどまっている。

従業者数の増加した業種としては、「医療・福祉」(22 千人増)、「複合サービス業」(4 千人増)、

「教育、学習支援業」(3 千人増)があげられる。

資料:経済センサス

0

100,000

200,000

300,000

400,000

500,000

600,000

700,000

800,000

900,000

1,000,000

2012年 2016年 2012年 2016年 2012年 2016年 2012年 2016年 2012年 2016年 2012年 2016年

札幌市 仙台市 神戸市 広島市 北九州市 福岡市

産業分類別従業者数

R サービス業(他に分類されないもの)

Q 複合サービス事業

P 医療,福祉

O 教育,学習支援業

N 生活関連サービス業,娯楽業

M 宿泊業,飲食サービス業

L 学術研究,専門・技術サービス業

K 不動産業,物品賃貸業

J 金融業,保険業

I 卸売業,小売業

H 運輸業,郵便業

G 情報通信業

F 電気・ガス・熱供給・水道業

E 製造業

D 建設業

C 鉱業,採石業,砂利採取業

A 農業,林業,B 漁業

(人)

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【経済活動別市内総生産からみる産業構造】

・産業構造を経済活動別市内総生産からみると、製造業の比率が低く、不動産業、保健衛生・社会

事業、金融・保険業が高いのが特徴的である。

資料:各市統計書

資料:各市統計書

0

1,000,000

2,000,000

3,000,000

4,000,000

5,000,000

6,000,000

7,000,000

8,000,000

札幌市 仙台市 神戸市 広島市 北九州市 福岡市

経済活動別市内総生産(名目、2015年度)

16.その他のサービス

15.保健衛生・社会事業

14.教育

13.公務

12.専門・科学技術、業務支援サービス業

11.不動産業

10.金融・保険業

9.情報通信業

8.宿泊・飲食サービス業

7.運輸・郵便業

6.卸売・小売業

5.建設業

4.電気・ガス・水道・廃棄物処理業

3.製造業

2.鉱業

1.農林水産業

(百万円)

0%

20%

40%

60%

80%

100%

市内総生産経済活動別構成比(名目、2015年度)

16.その他のサービス

15.保健衛生・社会事業

14.教育

13.公務

12.専門・科学技術、業務支援サービス業

11.不動産業

10.金融・保険業

9.情報通信業

8.宿泊・飲食サービス業

7.運輸・郵便業

6.卸売・小売業

5.建設業

4.電気・ガス・水道・廃棄物処理業

3.製造業

2.鉱業

1.農林水産業

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②人材の豊かさ・多様性

a.労働力

【労働力人口・労働力率】

・札幌市の労働力人口(就業者+完全失業者)は、約 89 万人(2015 年、国勢調査)で、政令指定

都市の中では4番目に多い。

・一方、労働力率(15 歳以上人口に占める労働力人口の割合(労働力状態不詳を除く))は 57.8%

(2015 年、国勢調査)と、政令指定都市 20 市中 17 番目と低い部類に属する。

・札幌市では今後人口減少時代を迎えるにあたり、労働力人口については、非労働力人口の活用の

余地があるといえる。

資料:2015 年国勢調査(総務省統計局)

50.0%

55.0%

60.0%

65.0%

70.0%

0

200,000

400,000

600,000

800,000

1,000,000

1,200,000

1,400,000

1,600,000

1,800,000

2,000,000

札幌市

仙台市

さいたま市

千葉市

川崎市

横浜市

相模原市

新潟市

静岡市

浜松市

名古屋市

京都市

大阪市

堺市

神戸市

岡山市

広島市

北九州市

福岡市

熊本市

労働力人口・率(2015年)

労働力人口 労働力率

(人)

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b.女性の活躍

【女性の労働力率】

・札幌市の女性の労働力率は 48.1%(2015 年、国勢調査)で、全国の 50.0%を下回り、政令都市

中 17 位と低い部類に属する。最も高い川崎市とは 5.8 ポイントの差がある。

資料:2015 年国勢調査(総務省統計局)

【女性の年齢階層別労働力率】

・女性の労働力率をグラフ化した際、学校卒業の 20 代でピークとなったのちに、出産・子育てを

迎える 30 代で底を打ち、子育てが一段落した 40 代で上昇する M の曲線となることを M 字カー

ブといい、結婚を含めたライフイベントに左右される日本女性の働き方を象徴している。これは、

育児と仕事の両立が難しい、育児休暇などが整備されていない、柔軟な働き方ができないなどの

理由によるものといわれている。

・札幌市においても、女性の労働力率は M 字カーブとなっているが、2010 年と 2015 年を比較す

ると、その解消が進んでいる。ただし、これは、全国と比較すると、40 歳代以降の労働力率の上

昇が顕著でないことの裏返しでもある。

・札幌市では、結婚・出産・子育て時の労働力率の減少を抑制するとともに、子育てが一段落した

40 代以降の労働力率の向上が課題といえる。

42%

44%

46%

48%

50%

52%

54%

56%

全国

札幌市

仙台市

さいたま市

千葉市

横浜市

川崎市

相模原市

新潟市

静岡市

浜松市

名古屋市

京都市

大阪市

堺市

神戸市

岡山市

広島市

北九州市

福岡市

熊本市

女性の労働力率(2015年)

Page 38: 札幌市の中長期的な成長可能性 調査・分析業務 【報告書 ......・Quality of Living Ranking(Mercer) ・Global Liveability Index(The Economist Intelligence

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資料:2015 年国勢調査(総務省統計局)

【女性の従業上の地位】

・女性の従業上の地位でみると、札幌市は他の比較対象都市と比べて、「正規の職員・従業員」の占

める割合が小さく(36.4%)、神戸市とともに「パート・アルバイト・その他」の占める割合が大

きい(札幌市 44.1%、神戸市 45.0%)。

資料:2015 年国勢調査(総務省統計局)

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

女性の年齢階層別労働力率(2015年)

札幌市(2010年) 札幌市(2015年) 全国(2015年)

0.0%

20.0%

40.0%

60.0%

80.0%

100.0%

札幌市

仙台市

神戸市

広島市

北九州市

福岡市

女性の従業上の地位

従業上の地位「不詳」

家庭内職者

家族従業者

雇人のない業主

雇人のある業主

役員

パート・アルバイト・その他

労働者派遣事業所の派遣社員

正規の職員・従業員

Page 39: 札幌市の中長期的な成長可能性 調査・分析業務 【報告書 ......・Quality of Living Ranking(Mercer) ・Global Liveability Index(The Economist Intelligence

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c.高齢者の活躍

【高齢者の労働力率】

・札幌市の高齢者(65 歳以上)の労働力率は、2015 年国勢調査では 18.9%で、全体、男女とも政

令指定都市の中で最も低く、労働力率の高い京都市とでは約 8 ポイントの差がある。

・札幌市では、働きたいと考える高齢者の希望をかなえ、また、人口減少の中で潜在成長力を引き

上げるためにも、高齢者雇用の促進が望まれる地域といえる。

資料:2015 年国勢調査(総務省統計局)

0.0%

5.0%

10.0%

15.0%

20.0%

25.0%

30.0%

35.0%

40.0%

45.0%

全国

札幌市

仙台市

さいたま市

千葉市

横浜市

川崎市

相模原市

新潟市

静岡市

浜松市

名古屋市

京都市

大阪市

堺市

神戸市

岡山市

広島市

北九州市

福岡市

熊本市

高齢者(65歳以上)の労働力率

全体 男 女

Page 40: 札幌市の中長期的な成長可能性 調査・分析業務 【報告書 ......・Quality of Living Ranking(Mercer) ・Global Liveability Index(The Economist Intelligence

-36-

d.外国人材の活躍

【外国人居住者数】

・札幌市に居住する外国人数は、8,820 人(2015 年、国勢調査)と、政令指定都市の中では 16 番

目であり、人口に占める割合は 0.45%と政令指定都市の中では最も少ない。

資料:2015 年国勢調査(総務省統計局)

【外国人就業者数】

・札幌市における外国人就業者数は、3,482 人(2015 年国勢調査)であり、比較対象6都市の中で

は 4 番目である。

・外国人材の受入・活用は、イノベーションの促進、若い労働力の確保、社内の活性化、国内外で

の事業推進の円滑化等のメリットがあり、そのための環境整備、外国人材に選ばれるまちづくり

は、札幌市の重要な課題の一つといえる。

資料:2015 年国勢調査(総務省統計局)

0.00%

0.50%

1.00%

1.50%

2.00%

2.50%

3.00%

3.50%

0

10,000

20,000

30,000

40,000

50,000

60,000

70,000

80,000

90,000

札幌市

仙台市

さいたま市

千葉市

横浜市

川崎市

相模原市

新潟市

静岡市

浜松市

名古屋市

京都市

大阪市

堺市

神戸市

岡山市

広島市

北九州市

福岡市

熊本市

外国人居住者数及び割合

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

14,000

16,000

札幌市 仙台市 神戸市 広島市 北九州市 福岡市

国籍別外国人就業者数(2015年)

その他

ペルー

ブラジル

アメリカ

イギリス

インド

ベトナム

インドネシア

タイ

フィリピン

中国

韓国,朝鮮

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【留学生数】

・(独)日本学生支援機構の外国人留学生在籍状況調査によると、国内の高等教育機関等における外

国人留学生(在留資格「留学」で滞在している外国人学生)は、平成 30 年 5 月 1 日現在で 298,980

人であり、近年大幅に増加傾向にある。

・比較対象都市の属する都道府県で比較すると、北海道は 3,923 名(平成 29 年 5 月 1 日時点)と、

他県と比べて少ない状況にある。

・札幌市では、外国人材の受入・活用のためにも、留学生を増やすとともに、卒業後札幌市で働け

る環境整備が望まれる。

資料:外国人留学生在籍状況調査((独)日本学生支援機構)

注) 平成 30 年 5 月 1 日現在

主要大学の外国人学生の割合

主要大学 外国人学生の割合

札幌市 北海道大学 10%

仙台市 東北大学 11%

神戸市 神戸大学 7%

広島市 広島大学 7%

北九州市 九州工業大学 4%

福岡市 九州大学 12%

資料:The Times Higher Education World University Rankings 2019

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

北海道 宮城県 兵庫県 広島県 福岡県

留学生数

Page 42: 札幌市の中長期的な成長可能性 調査・分析業務 【報告書 ......・Quality of Living Ranking(Mercer) ・Global Liveability Index(The Economist Intelligence

-38-

(2)イノベーション・スタートアップ

①スタートアップ環境

a.スタートアップ・エコシステム

・都市の成長において、市民生活のバックポーンとなる産業の発展は重要な要素の一つである。産

業発展を先導するのは、都市が持つ多様性、寛容性、ビジネスを生み出す風土・資源であり、こ

れが、需要の創出、新しい製品やサービスの開発、雇用の創造の源泉となっている。

・特に、GAFA に代表されるように、次代へと牽引する産業の発展には、闊達なイノベーションに

よる企業の育成・創出が必要であり、都市には、クリエイティブ(創造的)な人材が起業したい

と思う都市としていくことが求められる。

・イノベーションの担い手であるスタートアップ企業は重要な存在であり、今後、国際競争力の向

上のため、スタートアップ・エコシステム(グローバルにインパクトを生み出す起業家やスター

トアップ企業、イノベーション企業が自律的、連続的に生み出される仕組み)を強化し、世界で

勝てるスタートアップ企業を次々と創出することが急務となっている。

・スタートアップ・エコシステムの構成要素は、「大学」「お金を出す団体」「スタートアップを支

援する法律事務所、会計事務所」「研究機関」「スタートアップ新団体」「大企業」からなる。

スタートアップ・エコシステム

資料:Wikipedia Start-up Ecosystem

・スタートアップ・エコシステムの評価として、2thinknow「Innovation Cities™ Index 2018」にお

ける比較対象都市のランクを以下に示す。

・札幌市は、145 位であり、「Innovation Cities」として国際的に一定の評価を得ているといえる。

順位 クラス

札幌市 145 位 HUB

仙台市 - -

大阪市(神戸を含む) 45 位 NEXUS

広島市 260 位 NODE

福岡市 127 位 HUB

資料:2thinknow「Innovation Cities™ Index 2018」

注:イノベーション・シティのクラス ・Nexus:世界のトップ数パーセントの都市 ・Hub Cities:キーとなる分野で革新的なチャレンジャー都市 ・Node Cities:世界的に競争力がある都市 ・Upstart:世界的に競争力がある方向に向かっている都市

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b.新規開業

・企業の新規開業(起業,創業)は、競争とイノベーションを促し、雇用創出と経済成長をもたら

し、地域の活性化に貢献する。また、人は自己実現、仕事と育児の両立、社会・地域貢献等、様々

な目的や動機をもって起業を選択するので、起業はさまざまな生き方や働き方を可能にするとい

う点でも重要である。

・札幌市の新設事業所の割合は、12.3%(2014 年~2016 年、2016 年経済センサス、)で、仙台市、

福岡市よりは低い。

・開業率は、比較対象都市の中で中位にある。

資料:2016 年経済センサス

資料:経済センサス

0.0%

2.0%

4.0%

6.0%

8.0%

10.0%

12.0%

14.0%

16.0%

札幌市 仙台市 神戸市 広島市 北九州市 福岡市

新設事業所割合(2016年経済センサス)

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②ICT環境

a.コンピュータ環境

【コンピュータ教育環境】

・札幌市の学校における教育の情報化の状況をみると、教育用コンピュータ 1 台当たりの児童生徒

数は 6.4 人で、政令指定都市中 6 位、比較対象 6 都市の中では北九州市(5.5 人)に次いで 2 位

となっている。

・札幌市には IT 関連企業の集積があり、これらの企業等と連携して、プログラミング教育、教育

の情報化を推進することが考えられる。

学校における「コンピュータの設置状況」及び「インターネット接続状況」

(平成 30 年 3 月 1 日現在)

市区町村別

教育用コンピュータ

1台当たりの児童生

徒数(人/台)

普通教室の電子

黒板整備率

普通教室の

LAN 整備率

普通教室の無線

LAN 整備率

インターネット接

続率(100Mbps

以上回線)

札幌市 6.4 10.6% 97.2% 17.7% 100.0%

仙台市 8.4 9.5% 98.9% 19.6% 100.0%

さいたま市 11.7 30.6% 99.7% 24.8% 97.6%

千葉市 9.0 7.9% 100.0% 100.0% 0.0%

横浜市 6.9 5.9% 97.3% 5.5% 86.6%

川崎市 6.7 15.8% 96.5% 7.8% 100.0%

相模原市 9.3 1.5% 100.0% 7.9% 0.0%

新潟市 6.2 24.0% 98.8% 7.5% 100.0%

静岡市 5.1 14.9% 94.4% 92.6% 83.2%

浜松市 7.6 11.7% 97.9% 91.6% 4.1%

名古屋市 10.4 37.0% 99.5% 28.7% 100.0%

京都市 5.2 26.2% 100.0% 49.3% 100.0%

大阪市 3.4 20.0% 93.9% 32.5% 100.0%

堺市 7.7 7.4% 100.0% 69.5% 100.0%

神戸市 8.7 15.1% 98.7% 3.8% 100.0%

岡山市 9.4 3.5% 71.6% 9.1% 96.2%

広島市 7.1 10.2% 100.0% 0.3% 90.7%

北九州市 5.5 12.6% 100.0% 0.7% 100.0%

福岡市 13.5 16.8% 95.3% 5.3% 99.1%

熊本市 12.3 7.4% 99.6% 0.0% 0.0%

資料:学校における教育の情報化の実態等に関する調査(文部科学省) 注1)「教育用コンピュータ1台当たりの児童生徒数」は、平成 29 年 5 月 1 日現在の児童生徒数を「教育用コンピュータ総

台数」で除して算出した値。

注2)「普通教室の電子黒板整備率」は、電子黒板の総数を普通教室の総数で除して算出した値。

注3)「普通教室の LAN 整備率」は、LAN を整備する普通教室の総数を普通教室の総数で除して算出した値。

注4)「普通教室の無線 LAN 整備率」は、無線 LAN を整備する普通教室の総数を普通教室の総数で除して算出した値。

注5)「教員の校務用コンピュータ整備率」は、校務用コンピュータの総数を総教員数で除して算出した値。

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③大学

a.大学のグローバル評価

・英国の教育専門誌タイムズ・ハイヤー・エデュケーション(THE)による「世界大学ランキング」

及び、THE とベネッセグループの協力のもとに評価した「THE 世界大学ランキング 日本版 2019」

にランク入りしている6都市の大学を以下に示す。

・札幌市では、北海道大学と札幌医科大学が「世界大学ランキング」に入っており、上位 1000 校

に2校ランクインしているのは、6市の中では札幌市だけである。

THE 世界大学ランキング

ランク入りしている大学及び評価

大学名 THE

世界の順位

THE 世界大学ランキング 日本版 2019 での評価

総合 教育リソース 教育充実度 教育成果 国際性

札幌市 北海道大学 401-500 79.3 74.3 81.7 93.7 72.8

札幌医科大学 801-1000 48.4-49.5 79.0 - - -

仙台市 東北大学 251-300 80.2 82.5 80.9 95.6 63.2

神戸市 神戸大学 601-800 68.0 66.7 73.2 80.0 52.7

神戸市外国語大学 - 57.2 36.8 63.7 53.4 85.0

甲南大学 - 48.4-49.5 54.6 - 49.9 -

兵庫県立大学 1001+ - - - - -

広島市 広島大学 601-800 71.8 66.7 78.2 74.0 69.3

県立広島大学 - 42.0-44.1 49.0 - - 41.8

北九州市 九州工業大学 801-1000 - - - - -

北九州市立大学 ― 52.7 34.8 72.2 48.3 57.4

福岡市 九州大学 401-500 79.5 76..9 77.2 96.9 73.4

福岡女子大学 - 58.0 51.9 74.2 - 80.3

西南学院大学 - 48.4-49.5 - 67.0 52.4 53.6

福岡大学 - 45.6-46.7 38.2 63.9 46.0 36.0

福岡工業大学 - 44.2-45.5 40.7 65.8 33.2 -

資料:「THE 世界大学ランキング 日本版 2019」、THE「World University Rankings 2019」

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④研究開発

a.特許件数 特許件数

・研究成果として、特許件数についてみると、札

幌市は製造業の集積が少ないこともあり、政令

指定都市中 14 位と低位である。

2014 年 2016 年

件数 件数 順位

札幌市 3,516 3,584 14

仙台市 4,426 4,446 12

さいたま市 5,128 5,346 10

千葉市 4,707 4,945 11

横浜市 45,403 47,152 3

川崎市 54,851 46,140 4

相模原市 2,398 2,301 18

新潟市 1,629 1,674 19

静岡市 2,480 2,499 16

浜松市 13,528 13,173 7

名古屋市 55,247 58,818 2

京都市 36,626 37,093 5

大阪市 139,453 141,541 1

堺市 3,052 3,287 15

神戸市 22,594 23,687 6

岡山市 2,400 2,471 17

広島市 8,040 8,539 8

北九州市 7,929 7,681 9

福岡市 3,894 4,000 13

熊本市 839 885 20

資料:RESAS

b.研究開発

・北海道、宮城県、兵庫県、広島県、福岡県の研究開発実施企業数、研究開発費を比較すると、北

海道は特に研究開発費が少ない。

資料:RESAS

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(3)文化・交流

①観光客

a.観光客数

・札幌市の観光入込客数は、2017 年度で 1,527 万人となっており、他都市と比較すると宿泊客が

多いことが特徴的である(北海道の延べ宿泊者数は、東京都、大阪府に次ぐ全国第3位)。

・外国人観光客については、統計データのない神戸市を除く 5 都市の中で、札幌市の入込数が最も

多くなっている。

・経済波及効果の大きい観光は、急速に成長するアジアをはじめとする世界の観光需要を取り込む

ことにより、地域活性化、雇用機会の増大などの効果が期待できる。さらに、世界中の人々が日

本の魅力を発見し、伝播することによる諸外国との相互理解の増進も同時に期待できる。

・訪日観光の振興と同時に、国内旅行振興も重要である。そのため、地域が一丸となって個性あふ

れる観光地域を作り上げ、その魅力を自ら積極的に発信していくことで、広く観光客を呼び込み、

地域の経済を潤し、ひいては住民にとって誇りと愛着の持てる、活気にあふれた地域社会を築い

ていくことが不可欠である。

資料:各市 HP

注) 福岡市のみ 2016 年度数値

外国人観光客数

資料:各市 HP

2013年度 2014年度 2015年度 2016年度 2017年度

札幌市 外国人宿泊者数(人) 1,054,727 1,415,680 1,917,602 2,093,732 2,571,989

外国人延べ宿泊者数(人) 1,361,301 1,804,999 2,438,803 2,509,576 3,092,824

仙台市 外国人宿泊者数(人) 55,871 68,834 115,947 128,450 168,632

広島市 外国人観光客数 530,000 657,000 1,029,000 1,612,380 1,519,000

北九州市 外国人観光客(人) 132,000 167,000 252,000 349,000 682,000

福岡市 外国人延べ宿泊者数 807,000 1,201,000 2,095,000 2,711,000

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②観光資源

a.世界遺産への近接性

・札幌市近郊には、世界遺産は存在しない。

・比較対象都市では、広島市(原爆ドーム、厳島神社)に世界遺産がある。また、神戸市、福岡市

は近郊に世界遺産が存在している。

資料:(公財)ニッポンドットコム HP

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参考:札幌市の観光資源

・公益残団法人日本交通公社の「観光資源台帳」に登録されている札幌市の観光資源は、以下のと

おりである。

札幌市の観光資源

資料:観光資源台帳((公財)日本交通公社)

自然・人文 種別名称 資源ランク

自然 植物 札幌のライラック B

人文 集落・街 すすきの B

人文 郷土景観 札幌市中央卸売市場 B

人文 郷土景観 二条市場 B

人文 庭園・公園 大通公園 A

人文 庭園・公園 モエレ沼公園 A

人文 建造物 豊平館 B

人文 建造物 札幌市時計台 B

人文 建造物 北海道庁旧本庁舎 B

人文 年中行事(祭り・伝統行事) さっぽろ雪まつり A

人文 年中行事(祭り・伝統行事) YOSAKOIソーラン祭り B

人文 動植物園・水族館 札幌市円山動物園 B

人文 博物館・美術館 北海道立総合博物館 B

人文 食 ビール園のビールとジンギスカン A

人文 食 札幌ラーメン A

自然 山岳 無意根山 B

人文 神社・寺院・教会 北海道神宮 B

人文 建造物 北海道大学 B

観光資源ランクの定義

S:特A級資源

A:A級資源

B:特別

地域観光資源

わが国を代表する資源であり、世界に誇示しうるもの。日本人の誇り、日本の

アイデンティティを強く示すもの。人生のうちで一度は訪れたいもの。

特A級に準じ、わが国を代表する資源であり、日本人の誇り、日本のアイデン

ティティを示すもの。人生のうちで一度は訪れたいもの。

その都道府県や市町村を代表する資源であり、その土地のアイデンティティを

示すもの。その土地を訪れた際にはぜひ立ち寄りたいもの。また、その土地に

住んでいる方であれば一度は訪れたいもの

資源名称

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b.宿泊施設の充実度

・衛生行政報告例(平成 29 年度)による札幌市のホテル-旅館営業の施設数・客室数は、以下の

とおりである。ホテル客室数は、大阪に次いで多い。

・代表的なホテル予約サイトで 5 つ星のホテルは、Expedia:0、Five Star Alliance:0、Booking.com:

13。

ホテル・旅館の施設数及び客室数

資料:厚生労働省「衛生行政報告例 平成 29 年度」

代表的なホテル予約サイトに掲載されている

5 つ星ホテル数

Expedia Five Star

Alliance Booking.com

札幌市 0 0 13

仙台市 0 0 1

神戸市 1 0 12

広島市 0 1 1

北九州市 0 0 0

福岡市 1 0 8

資料:各予約サイト HP

施 設 数 客 室 数 施 設 数 客 室 数

札幌市 186 27,077 90 3,302

仙台市 133 14,593 72 2,489

さいたま市 61 3,729 31 399

千葉市 38 6,833 86 2,956

横浜市 141 16,936 80 1,626

川崎市 30 2,557 28 662

相模原市 27 2,237 54 1,091

新潟市 81 7,750 120 1,399

静岡市 57 4,403 121 2,129

浜松市 56 6,148 146 2,871

名古屋市 46 9,610 258 20,766

京都市 211 23,899 364 5,273

大阪市 411 61,090 377 9,563

堺市 9 957 62 2,596

神戸市 136 13,540 130 2,958

岡山市 76 6,854 89 2,018

広島市 87 11,546 135 3,042

北九州市 96 8,730 62 904

福岡市 187 24,927 94 3,212

熊本市 25 3,654 177 5,918

ホテル営業 旅館営業

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c.芸術鑑賞の充実度

・森記念財団「日本の都市特性評価」による札幌市のイベントの数・評価は、政令指定都市では京

都に次ぎ2番目の評価。イベントホール数は、横浜、大阪、京都、福岡に次ぎ5番目の評価とな

っている。

資料:日本の都市特性評価(森記念財団)

注)イベントの数・評価:トリップアドバイザーの「観光」における「イベント」の数とその口コミ数をそれぞれ指数化し合算した値。 イベントホール数:文部科学省「平成 27 年度社会教育調査」における「劇場、音楽堂等」の数と、代表的なホテル予約サイトに掲載されている宿泊施設のうち「ハイクラス」に区分され、バンケット(宴会場)のあるホテル数の合計値。

0

20

40

60

80

100

札幌

仙台

さいたま

千葉

横浜

川崎

相模原

静岡

浜松

名古屋

新潟

京都

大阪

堺 神戸

岡山

広島

北九州

福岡

熊本

イベントの数・評価、ホール数

イベントの数・評価 イベントホール数

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③コンベンション

a.国際会議開催件数

・企業等の会議(Meeting)、報奨旅行(Incentive Travel)、国際会議・学術会議・学会等(Convention)、

展示会・イベント(Exhibition/Event)の頭文字を取り、多くの集客交流が見込まれるビジネス

イベント等の総称として用いられている「MICE」は、高い経済効果や国際的なブランド力の向

上に繋がるものと期待されている。

・札幌市の国際会議開催件数、参加者数は増加傾向にあるものの、福岡市、神戸市とは、件数、参

加者数の面で、まだ少ない状況にある(特に外国人参加者数が少ない)。

・札幌市では、多くの集客交流が見込まれるビジネスイベントである「MICE」を、本市を含めた

北海道経済の成長を牽引する分野の一つとして位置づけ、「MICE」の誘致強化に取り組むことが

必要と考えられる。

国際会議開催件数

2008

2009

2010

2011

2012

2013

2014

2015

2016

2017

2017 年

外国人

参加者数

2017 年

国内

参加者数

2017 年

参加者

総数

札幌市 77 82 86 73 61 89 101 107 115 116 8,098 人 45,415 人 53,513 人

仙台市 63 60 72 40 81 77 80 221 115 120 3,765 人 79,270 人 83,035 人

神戸市 94 76 91 83 92 93 82 113 260 405 11,321 人 94,932 人 106,253 人

広島市 32 24 25 24 37 50 50 59 76 87 4,729 人 52,204 人 56,933 人

北九州市 47 50 49 38 45 57 73 86 105 134 7,168 人 32,863 人 40,031 人

福岡市 172 206 216 221 252 253 336 363 383 296 14,319 人 136,710 人 151,029 人

資料:2017 年国際会議統計(日本政府観光局(JNTO))

「中・大型」国際会議の開催件数

2008 年 2009 年 2010 年 2011 年 2012 年 2013 年 2014 年 2015 年 2016 年 2017 年

札幌市 18 20 13 8 13 14 11 10 14 15

仙台市 9 9 10 1 14 4 6 15 13 10

神戸市 19 20 23 8 21 18 15 22 20 20

広島市 3 4 3 8 10 10 7 7 7 13

北九州市 8 10 10 11 8 20 22 19 17 11

福岡市 23 18 25 22 26 19 33 31 36 22

資料:2017 年国際会議統計(日本政府観光局(JNTO))

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④航空交通

a.旅客数

・新千歳空港の乗降客数は、年間 2,309 万人(平成 29 年度)で、国内では5番目に多い。

・このうち、国内線の乗降客数は年間 1,960 万人で、国内では羽田空港に次ぎ2番目、国際線の乗

降客数は年間 349 万人で国内では7番目となっている。

資料:空港管理状況調書(国土交通省)

b.航空交通の利便性

・森記念財団「日本の都市特性評価」による空港までのアクセス時間、航空運航・輸送実績等から

みた航空交通の利便性評価では、札幌市は、政令指定都市の中で大阪に次いで 6 位となっている。

資料:日本の都市特性評価(森記念財団) 注)航空交通の利便性:(1)Google マップで算出される各市区役所から最寄りの空港までのアクセス時間(平日

朝 10 時到着、自動車による移動)を指数化した値、及び(2)国土交通省「平成 28 年航空輸送統計年報」の「第 3 表 国内定期航空路線別、区間別、月別運航及び輸送実績」を用いて算出した、各市区役所から最寄りの空港の国内線就航都市数を指数化した値の 2 つの数値にもとづいて計算したスコア。

0

20

40

60

80

100

札幌

仙台

さいたま

千葉

横浜

川崎

相模原

静岡

浜松

名古屋

新潟

京都

大阪

堺 神戸

岡山

広島

北九州

福岡

熊本

航空交通の利便性

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3.社会的成長にかかる指標の比較分析

(1)生活・コミュニティ

①人口構成

a.平均年齢

・札幌市の平均年齢は 46.2 歳(平成 27 年国勢調査)で、政令指定都市の中では若い方から 16 番

目であり、高い部類に入る。

・平均年齢の若い5都市は、川崎市、福岡市、仙台市、さいたま市、広島市である。

・比較対象6都市では、福岡市、仙台市、広島市が若い部類に入るのに対し、札幌市、神戸市、北

九州市は高い部類に入る。

・札幌市と福岡市では、約 3 歳の差が生じている。

・また、平成 17 年の平均年齢と比較すると、札幌市は 3.9 歳上昇しており、政令指定都市の中で

は、最も差が生じている。

平均年齢

資料:国勢調査(大都市比較統計年表より)(総務省統計局)

全体 (順位) 男 (順位) 女 (順位) 全体 (順位) 男 (順位) 女 (順位) 全体 (順位) 男 (順位) 女 (順位)

札幌市 46.2 16 44.6 15 47.6 16 42.3 9 40.9 9 43.5 9 3.9 18 3.7 18 4.1 18

仙台市 44.3 3 42.9 3 45.6 4 40.5 3 39.3 2 41.6 3 3.8 17 3.6 17 4.0 17

さいたま市 44.3 4 43.2 7 45.4 3 41.2 4 40.2 4 42.1 4 3.1 11 3.0 12 3.3 12

千葉市 45.4 11 44.4 13 46.4 10 41.7 6 40.9 7 42.6 5 3.7 16 3.5 16 3.8 16

川崎市 42.8 1 41.7 2 43.9 1 40.3 1 39.4 3 41.3 1 2.5 2 2.3 2 2.6 2

横浜市 44.9 9 43.7 9 46.1 7 41.9 7 40.9 8 42.8 7 3.0 9 2.8 9 3.3 11

相模原市 44.8 8 43.9 10 45.8 6

新潟市 46.8 18 45.1 18 48.4 18 43.5 15 41.9 14 45.0 16 3.3 14 3.2 15 3.4 13

静岡市 47.5 19 45.8 20 49.1 19 44.1 17 42.7 18 45.4 17 3.4 15 3.1 14 3.7 15

浜松市 46.2 15 44.7 16 47.6 15 43.0 12 41.6 13 44.4 12 3.2 12 3.1 13 3.2 9

名古屋市 45.0 10 43.6 8 46.3 9 42.4 10 41.2 10 43.6 10 2.6 4 2.4 4 2.7 3

京都市 45.9 14 44.2 12 47.5 14 43.0 13 41.4 11 44.6 13 2.9 7 2.8 10 2.9 5

大阪市 45.8 13 44.5 14 47.0 12 43.6 16 42.4 16 44.7 15 2.2 1 2.1 1 2.3 1

堺市 45.8 12 44.2 11 47.2 13 42.8 11 41.6 12 44.0 11 3.0 8 2.6 5 3.2 8

神戸市 46.6 17 45.1 17 48.0 17 43.4 14 42.1 15 44.6 14 3.2 13 3.0 11 3.4 14

岡山市 44.7 6 43.0 5 46.3 8 42.1 8 40.6 6 43.5 8 2.6 3 2.4 3 2.8 4

広島市 44.4 5 43.0 6 45.8 5 41.6 5 40.3 5 42.8 6 2.8 5 2.7 7 3.0 7

北九州市 47.5 20 45.3 19 49.4 20 44.5 18 42.6 17 46.2 18 3.0 10 2.7 6 3.2 10

福岡市 43.1 2 41.6 1 44.5 2 40.3 2 38.8 1 41.6 2 2.8 6 2.8 8 2.9 6

熊本市 44.8 7 43.0 4 46.4 11

平均年齢(H17) 平均年齢の差(H27-H17)平均年齢(H27)

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b.高齢者比率

・65 歳以上の人の割合は、24.9%(平成 27 年国勢調査)で、政令指定都市の中では小さい方から

12 番目であり、現状では高齢化の進展は中位といえる。

資料:平成 27 年国勢調査(総務省統計局)

・一方、国立社会保障・人口問題研究所による将来人口推計では、札幌市は他の政令指定都市と比

較して高齢化のスピードが速く、2035 年には政令指定都市の中で高齢化率が神戸市に次いで 2

番目に高くなると推計されている。

資料:国立社会保障・人口問題研究所

全体 (順位) 男 (順位) 女 (順位)札幌市 24.9 12 22.3 11 27.2 11

仙台市 22.6 3 20.2 3 24.8 3

さいたま市 22.8 4 20.5 4 25.0 4

千葉市 24.9 11 22.9 13 26.8 9

川崎市 19.5 1 17.1 1 21.9 1

横浜市 23.4 5 21.0 5 25.8 5

相模原市 23.9 7 21.8 9 26.0 7

新潟市 27.0 17 23.9 16 29.9 18

静岡市 28.6 19 25.5 19 31.5 19

浜松市 26.4 14 23.7 14 29.1 14

名古屋市 24.2 8 21.4 8 26.9 10

京都市 26.7 15 23.8 15 29.2 15

大阪市 25.3 13 22.7 12 27.7 13

堺市 26.9 16 24.3 17 29.3 16

神戸市 27.1 18 24.6 18 29.4 17

岡山市 24.7 10 21.8 10 27.4 12

広島市 23.7 6 21.3 6 26.0 6

北九州市 29.3 20 25.6 20 32.6 20

福岡市 20.7 2 18.1 2 23.1 2

熊本市 24.2 9 21.3 7 26.7 8

65歳以上の割合(%)

2015年 2020年 2025年 2030年 2035年 2040年 2045年

札幌市 24.9 28.3 30.3 32.4 34.6 37.6 39.7

仙台市 22.6 25.8 28.3 30.7 33.3 36.8 39.4

さいたま市 22.8 24.6 25.7 27.3 29.5 32.4 34.0

千葉市 24.9 27.0 27.9 29.3 31.7 35.0 36.6

横浜市 23.4 25.2 26.2 27.8 30.3 33.1 34.6

川崎市 19.5 20.9 21.7 23.3 25.6 28.4 30.1

相模原市 24.0 26.7 28.2 30.0 32.8 36.2 38.0

新潟市 27.0 29.8 31.3 32.6 34.2 36.8 38.6

静岡市 28.6 30.8 31.8 32.9 34.6 37.1 38.1

浜松市 26.4 28.9 30.6 32.0 33.7 36.2 37.6

名古屋市 24.2 25.4 26.0 27.1 28.9 31.4 32.9

京都市 26.7 28.2 28.9 30.1 32.0 34.7 36.4

大阪市 25.3 26.3 26.3 27.1 29.0 31.8 33.4

堺市 27.0 28.7 29.0 29.7 31.4 34.3 35.8

神戸市 27.1 29.6 31.1 32.7 34.8 38.0 39.7

岡山市 24.8 26.1 26.9 27.7 28.8 31.2 32.6

広島市 23.8 25.8 26.8 27.9 29.5 32.2 33.7

北九州市 29.3 31.8 32.8 33.5 34.6 36.6 37.8

福岡市 20.7 22.9 24.2 25.5 27.3 29.9 31.7

熊本市 24.2 26.6 28.3 29.6 30.9 32.8 34.2

総人口に占める65歳以上人口の割合(%)市区町村

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②人口動態

a.人口増加率

・2015 年を 100 とした時の 2020~2045 年の推計人口の指数を以下に示す。

・札幌市の人口は 195 万人(2015 年国勢調査)で、政令指定都市では、横浜市、大阪市、名古屋

市に次いで4番目である。

・国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、札幌市の人口は 2025 年をピークに減少に転じ、

2045 年には 2015 年比約 15 万人減少するものと推計されている。ただし、2045 年においても政

令指定都市中第 4 位の人口規模となっている。

・他の政令指定都市と比較すると、2035 年には、さいたま市、川崎市、福岡市以外の都市で人口減

少を迎え、2045 年には、静岡市、北九州市では 2015 年の約 8 割にまで減少する。札幌市の人口

減少の進捗度合いは中位であるといえる(2045 年:20 市中 9 位)。

資料:国立社会保障・人口問題研究所

2015年 2020年 2025年 2030年 2035年 2040年 2045年

札幌市 100.0 101.1 101.2 100.4 98.6 95.8 92.5

仙台市 100.0 100.2 99.0 96.9 93.8 89.9 85.3

さいたま市 100.0 102.5 103.8 104.3 103.9 103.0 101.7

千葉市 100.0 101.1 100.7 99.4 97.5 95.4 93.1

横浜市 100.0 100.3 99.7 98.5 96.8 94.8 92.5

川崎市 100.0 102.9 104.8 105.9 106.2 105.9 105.1

相模原市 100.0 99.8 98.6 96.6 94.1 91.4 88.4

新潟市 100.0 99.1 97.4 95.0 92.2 88.8 85.0

静岡市 100.0 97.8 95.0 91.6 88.0 84.3 80.5

浜松市 100.0 99.4 98.1 96.3 94.0 91.3 88.3

名古屋市 100.0 100.7 100.5 99.7 98.4 96.7 94.7

京都市 100.0 99.8 98.4 96.5 94.0 91.1 87.9

大阪市 100.0 99.9 99.0 97.3 95.1 92.5 89.6

堺市 100.0 98.9 96.8 93.9 90.7 87.4 84.3

神戸市 100.0 99.3 97.4 94.9 91.7 88.1 84.3

岡山市 100.0 100.8 100.7 100.1 98.8 97.2 95.1

広島市 100.0 101.1 100.9 100.0 98.4 96.4 94.0

北九州市 100.0 97.7 94.6 91.3 87.7 84.0 80.2

福岡市 100.0 104.0 106.7 108.4 109.0 108.7 107.5

熊本市 100.0 100.3 99.9 99.0 97.6 95.6 93.2

平成27(2015)年の総人口を100としたときの総人口の指数市区町村

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b.合計特殊出生率

・札幌市の合計特殊出生率は 2015 年で 1.18 と、政令指

定都市の中では最も低く、東京区部よりも下回ってい

る。出生率の向上は、札幌市にとって重要な課題の一

つといえる。

資料:人口動態調査(厚生労働省)

c.平均寿命

・平均寿命、健康寿命は、男女とも政令指定都市の中でさほど大きな差はない。

平均寿命及び健康寿命

資料:平均寿命/市町村別生命表(厚生労働省)。健康寿命/厚生労働科学研究補助金「健康寿命及び地域格差の要因分析と健康増進対策の効果検証に関する研究(平成 28~30 年度)」。

2010年 2015年 2010年 2013年 2016年 平均 2010年 2015年 2010年 2013年 2016年 平均

札幌市 79.8 80.7 69.55 70.71 71.34 70.54 86.6 87.2 73.18 73.37 72.89 73.15

仙台市 80.6 81.7 70.42 71.99 72.26 71.56 86.8 87.6 74.42 73.66 74.59 74.23

さいたま市 80.1 81.4 71.50 71.80 72.13 71.81 86.6 87.3 73.92 73.51 74.28 73.90

千葉市 80.0 81.2 71.93 72.69 72.18 72.27 86.6 87.0 73.06 73.86 74.92 73.95

横浜市 80.3 81.5 70.93 71.42 71.83 71.39 86.8 87.3 73.68 75.69 74.83 74.89

川崎市 80.0 81.1 69.29 71.93 71.84 71.02 86.7 87.6 73.59 74.42 74.28 73.92

相模原市 80.5 81.2 71.43 71.54 72.35 71.77 86.9 87.4 74.63 74.57 75.35 74.53

新潟市 79.6 81.3 69.47 71.00 72.02 70.83 87.3 87.6 75.94 73.88 75.20 74.22

静岡市 79.5 80.9 71.28 71.73 72.53 71.85 86.6 87.1 73.68 75.06 73.91 74.53

浜松市 81.2 81.6 72.98 72.86 73.19 73.01 86.6 87.6 75.94 76.82 76.19 76.32

名古屋市 79.2 80.6 70.48 70.92 72.47 71.29 86.3 86.7 73.68 74.29 75.86 74.61

京都市 80.0 81.5 70.14 70.13 71.55 70.61 86.7 87.4 74.34 72.73 82.82 73.30

大阪市 77.4 78.8 68.15 67.92 69.20 68.42 85.2 86.2 72.12 71.95 73.92 72.66

堺市 79.0 80.4 69.55 71.07 71.46 70.69 85.9 86.8 71.86 72.16 73.60 72.54

神戸市 79.6 80.9 70.10 69.51 72.54 70.72 86.0 87.0 73.33 72.08 73.83 73.08

岡山市 79.6 81.5 69.01 71.59 71.65 70.75 87.2 87.9 72.71 73.36 74.42 73.50

広島市 79.9 81.4 70.01 71.60 72.25 71.28 87.0 87.6 72.23 73.03 72.66 72.64

北九州市 78.9 80.4 68.46 70.13 71.93 70.17 86.2 87.1 72.20 74.33 74.01 73.51

福岡市 79.9 81.1 70.38 71.07 71.04 70.83 86.7 87.7 71.93 72.99 75.22 73.38

熊本市 80.9 81.9 72.41 72.41 87.1 87.8 74.00 74.00

平均寿命 平均寿命 健康寿命

女性

健康寿命

男性

2000年 2005年 2010年 2015年

東京区部 1.01 0.95 1.08 1.21

札 幌 1.07 0.98 1.09 1.18

仙 台 1.26 1.11 1.20 1.30

さいたま - 1.20 1.38 1.42

千 葉 1.25 1.21 1.35 1.37

横 浜 1.27 1.18 1.31 1.38

川 崎 1.29 1.18 1.30 1.43

相模原 - - 1.28 1.33

新 潟 - - 1.31 1.37

静 岡 - 1.22 1.42 1.43

浜 松 - - 1.57 1.61

名古屋 1.29 1.21 1.36 1.42

京 都 1.19 1.08 1.17 1.24

大 阪 1.23 1.15 1.26 1.26

 堺  - - 1.43 1.54

神 戸 1.23 1.15 1.29 1.37

岡 山 - - 1.45 1.49

広 島 1.33 1.28 1.47 1.52

北九州 1.38 1.30 1.48 1.59

福 岡 1.17 1.08 1.25 1.33

熊 本 - - - 1.56

合計特殊出生率

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③生活と仕事のバランス

a.年間労働時間

・年間就業日数 250~299 日の人の週間就業時間をみると、札幌市は、60 時間以上の人の割合が

15.6%と全国平均の 12.4%より高く、また、政令指定都市の中でも最も高くなっており、長時間

労働をしている人の割合が大きい。

資料:平成 29 年就業構造基本調査(総務省統計局)

b.通勤・通学時間

・札幌大都市圏の通勤・通学時間は、11 大都市圏の平均より短くなっている。

資料:平成 28 年社会生活基本調査(総務省統計局)

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

全国

札幌市

仙台市

さいたま市

千葉市

東京区部

横浜市

川崎市

相模原市

新潟市

静岡市

浜松市

名古屋市

京都市

大阪市

堺市

神戸市

岡山市

広島市

北九州市

福岡市

熊本市

年間就業日数250~299日の人の週間就業時間

75時間以上

65~74時間

60~64時間

49~59時間

46~48時間

43~45時間

35~42時間

35時間未満

単位:分

11大都市圏 平均時間 片道換算

札幌大都市圏 73 36.5

仙台大都市圏 71 35.5

関東大都市圏 102 51

新潟大都市圏 70 35

静岡・浜松大都市圏 70 35

中京大都市圏 80 40

近畿大都市圏 86 43

岡山大都市圏 74 37

広島大都市圏 74 37

北九州・福岡大都市圏 76 38

熊本大都市圏 65 32.5

全国 82 41

平日の通勤・通学時間(11大都市圏比較)

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④金銭的な豊かさ

a.賃金水準

・札幌市の賃金水準は、比較対象都市と比べると、北九州とともにやや低い水準にある。

資料:従業者1人当たり賃金水準/総務省統計局「平成 24 年経済センサス-活動調査結果」における「給与総額」と

「福利厚生費総額」の合計を「従業者数」で除して算出した値。

札幌市 仙台市 神戸市 広島市 北九州市 福岡市

A~B 農林漁業 2,425 2,108 3,159 2,122 1,573 5,048

C 鉱業,採石業,砂利採取業 11,432 2,757 - x 4,454 3,362

D 建設業 4,068 4,552 3,810 4,577 3,466 3,838

E 製造業 3,475 3,968 5,133 4,246 4,360 6,850

F 電気・ガス・熱供給・水道業 9,352 11,214 5,785 10,339 7,245 11,548

G 情報通信業 5,925 5,360 5,662 5,991 4,822 5,288

H 運輸業,郵便業 3,988 3,178 4,653 3,337 4,429 4,057

I 卸売業,小売業 3,029 3,120 3,891 3,125 2,669 3,179

J 金融業,保険業 5,164 5,477 5,786 6,080 3,317 5,016

K 不動産業,物品賃貸業 3,001 2,909 3,582 3,150 2,502 3,713

L 学術研究, 専門・技術サービス業 4,575 4,289 4,876 4,300 4,264 4,318

M 宿泊業,飲食サービス業 1,389 1,577 1,229 1,227 1,188 1,405

N 生活関連サービス業,娯楽業 2,055 2,187 2,056 2,074 1,486 2,840

O 教育,学習支援業 4,050 3,837 4,262 3,429 3,779 3,941

P 医療,福祉 3,995 3,655 3,129 3,265 3,531 3,390

Q 複合サービス事業 4,299 2,514 4,808 5,030 3,964 4,463

R サービス業(他に分類されないもの) 2,030 2,353 3,015 2,485 2,053 2,347

計 3,347 3,682 3,789 3,552 3,174 3,823

従業者1人当たり賃金水準(千円/年)

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⑤生活コスト

a.家賃水準

・「全国消費実態調査」では、札幌市の住宅コストは安いとはいえない。

・「平成 25 年度住宅・土地統計調査」では、延べ面積 1 ㎡当たりの家賃は 6 市中 2 位と安い。単価

が安い分、広い家に住むことができるともいえる。

資料:総務省統計局「平成 26 年全国消費実態調査 都道府県別 家計

収支に関する結果」に掲載されている「住居費」と「持ち家

(現住居)の帰属家賃」の合計値。

資料:平成 25 年住宅・土地統計調査(総務省統計局)

資料:平成 25 年住宅・土地統計調査(総務省統計局)

0

10,000

20,000

30,000

40,000

50,000

60,000

70,000

80,000

90,000

札幌市 仙台市 神戸市 広島市 北九州市 福岡市

住宅コスト(円/月)

0

200

400

600

800

1,000

1,200

1,400

札幌市 仙台市 神戸市 広島市 北九州市 福岡市

延べ面積1㎡当たり家賃(円/月)

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

札幌市 仙台市 神戸市 広島市 北九州市 福岡市

1住宅当たり延べ面積(㎡)

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b.物価水準

・総務省統計局「小売物価統計調査(構造編)2016 年」に掲載されている「大費目別消費者物価地

域差指数(全国平均=100)」の、「持家の帰属家賃を除く総合」より算出した値を以下に示す。

・札幌市の物価水準は、国内他都市と比較して必ずしも低いとはいえない。

物価水準

資料:小売物価統計調査(構造編)2016 年(総務省統計局)

2014年 2015年 2016年

札幌市 98.7 98.7 99.1

仙台市 98.4 98.5 98.7

神戸市 101.3 101.6 101.5

広島市 98.5 99.3 99.0

北九州市 97.1 97.8 97.2

福岡市 97.7 98.3 97.6

Page 62: 札幌市の中長期的な成長可能性 調査・分析業務 【報告書 ......・Quality of Living Ranking(Mercer) ・Global Liveability Index(The Economist Intelligence

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(2)安全・環境・快適性

①犯罪等の少なさ

a.犯罪件数

・札幌市の刑法犯認知件数は、近年減少傾向にあり、人口 1 万人当たりでみると、6 市中第 2 位。

資料:各市 HP

b.交通事故死亡者数

・札幌市の交通事故死亡者数は 2015 年で 25 人であり、人口 1 万人当たりでみると、政令指定都

市の中で最も少なくなっている。

資料:平成 27 年全国市区町村別交通事故死者数((公財)交通事故総合分析センター)

c.火災発生件数

・昼間人口 1 万人当たりの建物火災出火件数でみると、政令指定都市の中で少ないほうから 16 番

目であるが、他都市と比較して特段高いということはない。

資料:平成 30 年版 消防白書(総務省消防庁)

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②災害リスクの少なさ

a.GDP リスク

・GDP リスクとは、イギリスのロイズ銀行がケンブリッジ大学ジャッジ・ビジネススクール内ケ

ンブリッジ・リスク研究センター(Cambridge Centre for Risk Studies)との共同研究を通じて、

最大級の人為的災害及び自然災害の脅威によって大都市が被りうる経済的な影響を予測した都

市リスク指標である。世界主要 301 都市を対象に、人為的災害や自然災害の 22 の脅威によって

予想される損害の規模と発生確率に基づく損失額を GDP リスク量として予測している。

・札幌市の GDP リスク率(GDP リスク量/GDP)は、国内他都市と比較して若干低い程度であ

る。

資料:ロイズ「ロイズ都市リスクリポート」(2017 年 2 月)

Page 64: 札幌市の中長期的な成長可能性 調査・分析業務 【報告書 ......・Quality of Living Ranking(Mercer) ・Global Liveability Index(The Economist Intelligence

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③医療の充実度

a.人口当たりの医師数

・札幌市の人口 10 万対医療施設従事医師数は 322.9 人で、政令指定都市の中では7番目に多い。

資料:平成 28 年医師・歯科医師・薬剤師調査(厚生労働省)

b.人口当たりの病床数

・昼間人口1万人当たりの病床数では、熊本市、北九州市についで3番目に多い。

資料:平成 28 年医療施設調査(厚生労働省)

0

50

100

150

200

250

300

350

400

450

札幌市

仙台市

さいたま市

千葉市

横浜市

川崎市

相模原市

新潟市

静岡市

浜松市

名古屋市

京都市

大阪市

堺市

神戸市

岡山市

広島市

北九州市

福岡市

熊本市

人口10万対医療施設従事医師数(平成28年)

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④汚染の少なさ

a.CO2排出の少なさ

・札幌市の CO2排出量は 15,159tCO2(2015 年度)で、昼間人口で除すと、比較対象 6 都市の中

で平均的な水準である。

・特徴としては、産業部門の排出量が少なく、民生部門の排出量が業務、家庭とも他都市に比べて

高い。

資料:環境省「地球温暖化対策地方公共団体実行計画(区域施策編)策定支援サイト」の「策定支援ツール・事

例」に掲載されている「部門別 CO2 排出量の現況推計」2014 年度の各市区町村の CO2 排出量合計値を昼間人口(万人当たり)で除して算出した値。

b.空気のきれいさ

・大気環境測定値をみると、窒素酸化物の濃度は、比較対象 6 都市の中で 3 番目に高い値となって

いるが、PM2.5 の濃度は最も低くなっている。

資料:国立環境研究所「大気環境月間値・年間値データ」における「窒素酸化物(NOX)」の濃度と「微小粒子状物

質(PM2.5)」の濃度において、全測定局の年間平均値

0

2

4

6

8

10

12

14

16

札幌市 仙台市 神戸市 広島市 北九州市 福岡市

昼間人口一人当たりCO2排出量(tCO2/人)

産業部門 民生部門 運輸部門 一般廃棄物

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⑤都市のコンパクトさ

a.人口密度

・札幌市の人口密度は、市域面積が広いため、政令指定都市の中では小さい方である。

・DID 人口密度でみると、政令指定都市の中では平均レベルである。

資料:2015 年国勢調査(総務省統計局)

資料:2015 年国勢調査(総務省統計局)

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⑥公共交通の充実度

a.駅・バス停留所の徒歩圏人口カバー率

・駅またはバス停留所の徒歩圏(それぞれ 800m、300m)の人口カバー率でみると、札幌市は政令

指定都市の中では6番目に高い。

資料:平成 29 年度「都市モニタリングシート」(国土交通省)

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

札幌市

仙台市

さいたま市

千葉市

横浜市

川崎市

相模原市

新潟市

静岡市

浜松市

名古屋市

京都市

大阪市

堺市

神戸市

岡山市

広島市

北九州市

福岡市

熊本市

駅またはバス停留所徒歩圏人口カバー率(%)

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4.札幌市の強み・弱み

・前項 2.~3.の国内他都市との比較から、札幌市の特徴、強み・弱みを整理すると、以下のとおり

である。

国内他都市との比較にみる札幌市の特徴、強み・弱み

分野 強 み 弱 み

経済の強さ・

人材

◆人口規模・労働力人口規模ともに、横浜、

大阪、名古屋に次いで第 4 位(政令指定

都市中)。

◆経済規模(市内総生産)も、2015 年度時

点では第 4 位であったが、現在は、大阪、

横浜、名古屋、福岡、神戸に次いで第 6

位(同上)。

◆経済規模は大きいものの、成長率が鈍化

しており、直近の市内総生産は福岡、神

戸を下回る。

◆過去 5 年あるいは 10 年の経済成長率は、

比較対象 6 都市中最下位。

◆すでに労働力人口が減少(少子高齢化、

若者の転出超過の影響)。

◆労働生産性は全国平均を下回り、政令指

定都市中 14 位と低水準(特に宿泊・飲

食、サービス業)。

◆女性の労働力率、高齢者の労働力率はと

もに低く、女性の労働力率は政令指定都

市中 17 位、高齢者の労働力率は同最下

位。

◆外国人居住者数は、政令指定都市中 16 位

で、対人口比は同最下位。

イノベーシ

ョン・スター

トアップ

◆海外機関によるスタートアップ・エコシ

ステムの評価は世界 145 位で、広島より

も高く福岡と同程度(イノベーション都

市として一定の評価)。

◆新設事業所の割合は、比較対象 6 都市中、

福岡、仙台に次ぐ 3 位で、開業率も中位

に位置する。

◆コンピュータ教育環境は、政令指定都市

中第 6 位、比較対象 6 都市中第 2 位。

◆海外機関による世界大学ランキングに北

海道大学、札幌医科大学がランク入り(比

較対象 6 都市の中で 2 校あるのは札幌市

のみ)。

◆他都市に比べて大企業の本社集積、製造

業の集積が薄いこともあり、特許件数は

政令指定都市中 14 位。

◆都道府県の比較となるが、北海道は産業

全体・非製造業ともに研究開発費の水準

が低い。

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文化・交流 ◆観光入込客数は、比較対象 6 都市中、神

戸、仙台、福岡より少ないが、宿泊客及

び外国人観光客が多いのが特徴。

◆ホテルの客室数は、大阪に次いで第 2 位

(政令指定都市中)で、5 つ星ホテルも

10 箇所を超える。

◆イベントの数・評価(指数化)は京都に

次いで第 2 位、イベントホール数は、横

浜、大阪、京都、福岡に次いで第5位(政

令指定都市中)。

◆航空交通の利便性評価(指数化)は、川

崎、横浜、さいたま、相模原、大阪に次

いで第 6 位(政令指定都市中)。

◆宿泊施設は充実しつつあるが、観光資源

の量・種類としては市内だけでは限界。

◆国際会議開催件数・参加者数は増加傾向

にあるが、福岡、神戸、仙台との差は大

きい。

◆中・大型の国際会議件数も福岡、神戸よ

り少ない。

◆新千歳空港では国内線の乗降客数は多い

が、国際線の乗降客数は中部、福岡、那

覇よりも少ない。

生活・コミュ

ニティ

◆通勤・通学時間は、大都市圏はもとより

全国平均に比べても短い。

◆比較対象 6 都市の中で、住宅コストはそ

れほど安くないが、面積当たり家賃が安

く、1 住宅当たり延べ面積が大きい。

◆高齢化が急速に進展し、平均年齢は政令

指定都市中 16 番目に高い。福岡、仙台、

広島は若いグループに位置する。

◆政令指定都市の中で将来の人口減少度合

は中位にあるが、合計特殊出生率は依然

低い水準にある(政令指定都市の中で最

も低い)。

◆長時間労働(週 60 時間以上)をしている

人の割合が多い。

◆賃金水準は、比較対象 6 都市中、北九州

に次いで低い。製造業、サービス業が低

い水準にある。

安全・環境・

快適性

◆犯罪件数の少なさは、比較対象 6 都市中、

広島に次いで第 2 位、交通事故死亡者数

は政令指定都市の中で最も少ない。

◆人口当たり医師数は第 7 位、人口当たり

病床数は、熊本、北九州に次いで第 3 位

であり(政令指定都市中)、医療環境が充

実。

◆CO2 排出量は平均的な水準であるが、

PM2.5 の濃度は最も低い(比較対象 6 都

市中)。

◆駅またはバス停留所の徒歩圏人口カバー

率は、政令指定都市中第 6 位で、公共交

通の利便性は高いグループに位置する。

◆市域面積が広いため、人口密度は低いグ

ループに位置する(政令指定都市中)。た

だし、DID 人口密度は平均的な水準。

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Ⅳ.海外都市との比較分析

1.比較対象都市のスクリーニング

(1)スクリーニングの基準

・7~8 ページに示した海外都市比較指標各ランキングの上位 50 都市を抽出(計 117 都市)

・首都を除く

・札幌市と同じ人口規模(100~300 万人)あるいは札幌都市圏と同じ人口規模(200~500 万

人)の都市を抽出

・住みよさランキングでランクインしている都市に絞り込む

・高度なグローバル都市機能を有する都市を除く

海外都市比較指標各ランキングの上位 50 都市⇒計 117 都市

No 地域区分 都市名 国名 都市区分 GPCI GCI GCO PWC GFCI Mercer EIU Monocle Nestpick 2thinknow

1 アジア 札幌 145

2 アジア 東京 首都 3 4 14 13 6 50 7 2 47 1

3 アジア 京都 17

4 アジア 大阪(京都、神戸含む) 28 50 39 22 3 45

5 アジア 福岡 37 22

6 アジア 名古屋 34

7 アジア 北京 中国 首都 23 9 47 19 8 37

8 アジア 香港 中国 9 5 8 3 35 14 27

9 アジア 上海 中国 26 19 20 5 35

10 アジア 広州 中国 19

11 アジア 青島 中国 31

12 アジア シンガポール シンガポール 首都 5 7 5 3 4 25 37 21 1 6

13 アジア ソウル(仁川含む) 韓国 首都 7 12 45 14 33 8 12

14 アジア 釜山(蔚山含む) 韓国 44

15 アジア ドバイ UAE 29 28 42 16 15 29 33

16 アジア アブダビ UAE 首都 50 26

17 アジア イスタンブール トルコ 首都 34 26 25

18 アジア クアラルンプール マレーシア 首都 32 49 17 40

19 アジア 台北 台湾 首都 35 45 38 32

20 アジア バンコク タイ 首都 36 43 48

21 アジア ジャカルタ インドネシア 首都 41 29

22 アジア ムンバイ インド 43 28

23 アジア テルアビブ イスラエル 43 25 6 44

24 アジア ドーハ カタール 首都 34

25 ヨーロッパ ダブリン アイルランド 首都 44 33 37 34 41 23 49

26 ヨーロッパ ロンドン UK 首都 1 2 3 1 2 41 48 43 2

27 ヨーロッパ グラスゴー UK 50

28 ヨーロッパ マンチェスター UK 36 34

29 ヨーロッパ エディンバラ UK 43 46 19

30 ヨーロッパ ケマイン諸島 29

31 ヨーロッパ バミューダ 30

32 ヨーロッパ ジャージー 47

33 ヨーロッパ モナコ モナコ 46

34 ヨーロッパ パリ フランス 首都 4 3 4 6 23 39 20 20 17 9

35 ヨーロッパ リヨン フランス 40 31 26

36 ヨーロッパ ナント フランス 36

37 ヨーロッパ トゥールーズ フランス 50

38 ヨーロッパ アムステルダム(ロッテンダム含む) オランダ 首都 6 22 6 35 12 17 16 14 18

39 ヨーロッパ レイキャビーク アイスランド 首都 43 37

40 ヨーロッパ フランクフルト ドイツ 15 29 29 10 7 13 18

総合ランキング 住みよさランキング スタートアップランキング

Page 71: 札幌市の中長期的な成長可能性 調査・分析業務 【報告書 ......・Quality of Living Ranking(Mercer) ・Global Liveability Index(The Economist Intelligence

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No 地域区分 都市名 国名 都市区分 GPCI GCI GCO PWC GFCI Mercer EIU Monocle Nestpick 2thinknow

総合ランキング 住みよさランキング スタートアップランキング

41 ヨーロッパ ベルリン ドイツ 首都 8 16 18 11 13 21 6 4 14

42 ヨーロッパ ミュンヘン ドイツ 32 7 39 4 25 1 15 21

43 ヨーロッパ ハンブルク ドイツ 41 20 18 8 9 42

44 ヨーロッパ デュッセルドリフ(ケルン含む) ドイツ 27 6 28 18 24

45 ヨーロッパ ナンバーグ(フルース含む) ドイツ 24

46 ヨーロッパ シュトゥットガルト ドイツ 28 16

47 ヨーロッパ ドレスデン ドイツ 28

48 ヨーロッパ ケルン ドイツ 30

49 ヨーロッパ ライプツィヒ ドイツ 32

50 ヨーロッパ カールスルーエ ドイツ 41

51 ヨーロッパ オスロ ノルウェー 首都 26 27 25 33 36

52 ヨーロッパ ヘルシンキ フィンランド 首都 32 16 10 2 46

53 ヨーロッパ ストックホルム スウェーデン 首都 11 39 11 7 23 33 11 5 28

54 ヨーロッパ ウィーン オーストリア 首都 17 21 25 1 1 3 38 19

55 ヨーロッパ コペンハーゲン デンマーク 首都 18 42 23 9 9 5 11 39

56 ヨーロッパ マドリッド スペイン 首都 22 13 49 15 49 39 7 25 38

57 ヨーロッパ バルセロナ スペイン 24 23 40 43 30 19 34 30

58 ヨーロッパ リスボン ポルトガル 首都 38 12 45

59 ヨーロッパ ブリュッセル ベルギー 首都 25 10 22 27 29 46

60 ヨーロッパ チューリッヒ スイス 16 33 13 9 2 11 4 7

61 ヨーロッパ ジュネーブ スイス 30 36 16 27 8 14

62 ヨーロッパ バーゼル(ミュルーズ含む) スイス 10

63 ヨーロッパ ベルン スイス 首都 14

64 ヨーロッパ ローマ イタリア 首都 34 48 47

65 ヨーロッパ ミラノ イタリア 31 40 35 18 42 46 48 40

66 ヨーロッパ プラハ チェコ 首都 47 28 35

67 ヨーロッパ ブルノ チェコ 31

68 ヨーロッパ ブダペスト ハンガリー 首都 34

69 ヨーロッパ ルクセンブルク ルクセンブルク 首都 21 18 24

70 ヨーロッパ バレッタ マルタ共和国 首都 49

71 ヨーロッパ ワルシャワ ポーランド 首都 37 39

72 ヨーロッパ モスクワ ロシア 首都 33 14 20 21 48

73 ヨーロッパ サンクトペテルブルク ロシア 46

74 北アメリカ ニューヨーク アメリカ 2 1 2 2 1 45 42 4

75 北アメリカ ロサンゼルス アメリカ 12 6 30 12 16 5

76 北アメリカ サンフランシスコ アメリカ 13 20 1 5 14 31 49 3 3

77 北アメリカ シカゴ アメリカ 19 8 15 10 17 47 44 44 11

78 北アメリカ ボストン アメリカ 20 24 8 13 35 42 27 7

79 北アメリカ ワシントンDC アメリカ 首都 27 11 24 36 48 38 24

80 北アメリカ マイアミ アメリカ 30 44 45 26

81 北アメリカ アトランタ アメリカ 35 26 50 20

82 北アメリカ ヒューストン アメリカ 41 9 17

83 北アメリカ シアトル アメリカ 48 32 44 47 21 15

84 北アメリカ ダラス アメリカ 46 31

85 北アメリカ フェニックス アメリカ 36

86 北アメリカ フィラデルフィア アメリカ 41 32

87 北アメリカ ホノルル アメリカ 36 23

88 北アメリカ ピッツバーグ アメリカ 32

89 北アメリカ ミネアポリス アメリカ 40

90 北アメリカ オースティン アメリカ 13 29

91 北アメリカ ダラス・フォートワース アメリカ 13

92 北アメリカ サンディエゴ アメリカ 23

93 北アメリカ デンバー アメリカ 31

94 北アメリカ ポートランド アメリカ 41

95 北アメリカ オーランド アメリカ 50

96 北アメリカ トロント カナダ 14 18 12 4 11 17 8 10 8

97 北アメリカ オタワ カナダ 首都 19

98 北アメリカ バンクーバー カナダ 21 37 17 18 5 6 15 22 25

99 北アメリカ モントリオール カナダ 27 21 24 22 19 22

100 北アメリカ カルガリー カナダ 33

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(2)スクリーニング

①首都を除く都市圏人口 200~500万人の都市

・27 都市を抽出

No 地域区分 都市名 国名 都市区分 GPCI GCI GCO PWC GFCI Mercer EIU Monocle Nestpick 2thinknow

総合ランキング 住みよさランキング スタートアップランキング

101 南アメリカ ブエノスアイレス アルゼンチン 首都 38 25 24

102 南アメリカ サンパウロ ブラジル 40 31 26

103 南アメリカ メキシコシティ メキシコ 首都 39 38 22

104 アフリカ カイロ エジプト 首都 44

105 アフリカ ヨハネスブルグ 南アフリカ 42 23

106 アフリカ ケープタウン 南アフリカ 首都 38

107 アフリカ カサブランカ モロッコ 28

108 アフリカ モーリジャス 49

109 アフリカ ナイロビ ケニア 30

110 オセアニア シドニー オーストラリア 10 15 19 9 7 11 5 13 20 10

111 オセアニア メルボルン オーストラリア 17 10 20 16 2 9 12 16

112 オセアニア キャンベラ オーストラリア 首都 30 4

113 オセアニア ブリスベン オーストラリア 22 24

114 オセアニア パース オーストラリア 21 15

115 オセアニア アデレード オーストラリア 29 10

116 オセアニア オークランド ニュージーランド 首都 3 12 23 40 43

117 オセアニア ウィリントン ニュージーランド 45 15 26

No 地域区分 都市名 国名 都市圏人口

1 オセアニア シドニー オーストラリア 4,820,700

2 ヨーロッパ バルセロナ スペイン 4,730,300

3 北アメリカ ボストン アメリカ 4,725,601

4 北アメリカ サンフランシスコ アメリカ 4,572,807

5 北アメリカ フェニックス アメリカ 4,459,692

6 ヨーロッパ フランクフルト ドイツ 4,453,200

7 オセアニア メルボルン オーストラリア 4,432,800

8 アフリカ カサブランカ モロッコ 4,085,600

9 北アメリカ モントリオール カナダ 4,011,200

10 ヨーロッパ ミュンヘン ドイツ 3,905,100

11 北アメリカ シアトル アメリカ 3,663,399

12 アジア テルアビブ イスラエル 3,597,300

13 北アメリカ ミネアポリス アメリカ 3,491,620

14 アジア ドバイ UAE 3,332,500

15 北アメリカ サンディエゴ アメリカ 3,250,477

16 ヨーロッパ ハンブルク ドイツ 3,244,500

17 ヨーロッパ シュトゥットガルト ドイツ 3,176,100

18 ヨーロッパ カールスルーエ ドイツ 3,081,900

19 北アメリカ デンバー アメリカ 2,746,768

20 ヨーロッパ マンチェスター UK 2,633,800

21 北アメリカ バンクーバー カナダ 2,476,600

22 北アメリカ ピッツバーグ アメリカ 2,361,681

23 北アメリカ ポートランド アメリカ 2,343,984

24 北アメリカ オーランド アメリカ 2,305,746

25 オセアニア ブリスベン オーストラリア 2,294,900

26 ヨーロッパ リヨン フランス 2,239,500

27 オセアニア パース オーストラリア 2,041,400

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②2つ以上で住みよさランキング入りしている都市に絞り込み

・14 都市を抽出

③札幌市と特徴の異なる都市、高度なグローバル都市機能を有する都市の除外

・上記 14 都市のうち、シドニーは経済首都として機能していること、ボストンは大学や企業の研

究所が数多く立地し、高度な研究・教育クラスターを形成していること、サンフランシスコは、

JLL の類型の中で「確立した世界都市」に位置づけられていること、フランクフルトは国際的な

金融センターとしての機能を有していることから、それぞれ除外し、以下の 10 都市を比較対象

都市として抽出した。

No 地域区分 都市名 国名 都市圏人口

Mercer

Quality of Living

Ranking

EIU

Global

Liveability Index

2018

Monocle

Quality of Life

Survey 2018

1 オセアニア シドニー オーストラリア 4,820,700 11 5 13

2 ヨーロッパ バルセロナ スペイン 4,730,300 43 30 19

3 北アメリカ ボストン アメリカ 4,725,601 35 42

4 北アメリカ サンフランシスコ アメリカ 4,572,807 31 49

5 ヨーロッパ フランクフルト ドイツ 4,453,200 7 13

6 オセアニア メルボルン オーストラリア 4,432,800 16 2 9

7 北アメリカ モントリオール カナダ 4,011,200 22 19

8 ヨーロッパ ミュンヘン ドイツ 3,905,100 4 25 1

9 北アメリカ シアトル アメリカ 3,663,399 44 47

10 ヨーロッパ ハンブルク ドイツ 3,244,500 20 18 8

11 北アメリカ バンクーバー カナダ 2,476,600 5 6 15

12 オセアニア ブリスベン オーストラリア 2,294,900 22 24

13 ヨーロッパ リヨン フランス 2,239,500 40 31

14 オセアニア パース オーストラリア 2,041,400 21 15

No 都市名 国名 JLLの類型

1 バルセロナ スペイン インフルエンサー

2 メルボルン オーストラリア ライフスタイルシティ

3 モントリオール カナダ -

4 ミュンヘン ドイツ ライフスタイルシティ

5 シアトル アメリカ イノベーター

6 ハンブルク ドイツ ライフスタイルシティ

7 バンクーバー カナダ ライフスタイルシティ

8 ブリスベン オーストラリア ライフスタイルシティ

9 リヨン フランス -

10 パース オーストラリア -

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2.比較対象都市の概要

■比較対象都市の世界ランキング

・各種の都市ランキングにおける比較対象海外都市のランキング及び各都市の概況を以下に示す。

■バルセロナ

・スペイン・カタルーニャ州の州都であり、バルセロナ県の県都である。人口はマドリードに次い

で国内で 2 番目の都市である。

■メルボルン

・オーストラリア・ビクトリア州の州都で、オーストラリア大陸南東部、ポート・フィリップ湾に

面したヤラ川河口の港湾都市。

■モントリオール

・カナダ・ケベック州の都市。セントローレンス川沿いに位置し、アメリカ合衆国との国境や、カ

ナダのオンタリオ州との州境に近い。人口は国内で 2 番目の都市である。

■ミュンヘン

・ドイツ・イーザル川河畔にあり、バイエルンアルプスの北側に位置する都市。バイエルン州最大

の都市であり、同州の州都。人口は国内で3番目の都市である。

■シアトル

・アメリカ合衆国・ワシントン州北西部キング郡にある都市。同州最大の都市かつ同郡の郡庁所在

地である。また、太平洋岸北西部最大の都市かつアメリカ西海岸有数の世界都市でもある。人口

は国内で 23 番目の都市である。

■ハンブルク

・ドイツの北部に位置し、エルベ川河口から 100km ほど入った港湾都市。国際海洋法裁判所があ

る。人口は国内で 2 番目の都市である。

森記念財団 PWC Financial Centre Futures Mercer EIU Monocle Nestpick 2thinknow

都市名GPCI

GCI GCOCities of

OpportunityGFCI

Quality of

Living

Ranking

Global

Liveability

Index

2018

Quality of

Life

Survey

2018

Startup Cities

Index

Innovation

Cities™ Index

2018

バルセロナ 24 23 40 43 30 19 34 30

メルボルン 17 10 20 16 2 9 12 16

モントリオール 27 21 24 22 19 22

ミュンヘン 32 7 39 4 25 1 15 21

シアトル 48 32 44 47 21 15

ハンブルク 41 20 18 8 9 42

バンクーバー 21 37 17 18 5 6 15 22 25

ブリスベン 22 24 54

リヨン 40 31 26 66

パース 21 15 105

住みよさランキング総合ランキング スタートアップランキング

ATKeaney

Page 75: 札幌市の中長期的な成長可能性 調査・分析業務 【報告書 ......・Quality of Living Ranking(Mercer) ・Global Liveability Index(The Economist Intelligence

-71-

■バンクーバー

・カナダ・ブリティッシュコロンビア州南西部に位置し、同州最大の都市。人口は国内で 8 番目の

都市である。

■ブリスベン

・オーストラリア・クイーンズランド州南東部(サウス・イースト・クイーンズランド地域)に位

置する州都。シドニー、メルボルンに次ぐ 3 番目の都市である。

■リヨン

・フランスの南東部に位置する都市で、オーヴェルニュ=ローヌ=アルプ地域圏の首府。メトロポ

ール・ド・リヨンの県庁所在地である。1996 年にサミットが行われた。1989 年以降は国際刑事

警察機構(インターポール、ICPO)の本部が置かれている。人口は国内で3番目の都市である。

■パース

・オーストラリア・西オーストラリア州の州都である。人口は 200 万人(都市圏人口。パース市の

人口は約 9000 人)を超え、同州では最大、国内では 4 番目の都市である。

比較対象都市の都市圏及び属する州・地域の面積・人口・GDP

比較対象都市 州・地域 面積(㎢) 人口(人) GDP(百万 USD)

都市圏 州・地域 割合 都市圏 州・地域 割合 都市圏 州・地域 割合

札幌 北海道 2,655 83,456 3.2% 2,201,839 5,352,000 41.1% 68,038 167,356 40.7%

バルセロナ カタルーニャ州 2,618 31,923 8.2% 3,986,088 7,408,290 53.8% 175,545 270,113 65.0%

メルボルン ビクトリア州 10,007 227,590 4.4% 4,599,141 6,068,040 75.8% 180,909 241,657 74.9%

モントリオール ケベック州 12,140 1,365,130 0.9% 4,326,501 8,321,890 52.0% 148,855 284,072 52.4%

ミュンヘン バイエルン州 5,495 70,550 7.8% 2,804,480 12,843,500 21.8% 190,886 617,196 30.9%

シアトル ワシントン州 15,575 172,348 9.0% 3,728,606 7,288,000 51.2% 275,326 395,448 69.6%

ハンブルグ ハンブルグ 755 7,193 10.5% 1,787,410 3,193,316 56.0% 122,311 166,163 73.6%

バンクーバー ブリティッシュコロ

ンビア州 2,986 925,186 0.3% 2,427,468 4,757,660 51.0% 97,877 183,104 53.5%

ブリスベン クイーンズランド州 15,887 1,734,190 0.9% 2,318,501 4,844,470 47.9% 90,920 192,056 47.3%

リヨン オーヴェルニュ=ロ

ーヌ=アルプ地域圏 3,669 69,711 5.3% 1,951,439 7,933,200 24.6% 89,722 277,120 32.4%

パース 西オーストラリア州 6,437 2,532,420 0.3% 2,002,114 2,617,170 76.5% 119,255 163,322 73.0%

資料:OECD.Stat 注) 面積/2016 年、人口/都市圏は 2015 年,州・地域は 2016 年、GDP/2014 年

Page 76: 札幌市の中長期的な成長可能性 調査・分析業務 【報告書 ......・Quality of Living Ranking(Mercer) ・Global Liveability Index(The Economist Intelligence

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3.経済の質的成長にかかる指標の比較分析

(1)経済の強さ・人材

①経済の強さ

a.GDP

・札幌都市圏の 2014 年における GDP 及び一人当たりの GDP は比較対象都市の中で最も低く、

その伸び率も低位にある。GDP が低いのは、2010 年の購買力平価をもとに評価されていること

も要因と考えられる。

都市圏 GDP と年平均伸び率

資料:OECD.Stat

注) 実質価格、実質購買力平価、基準年 2010 年

一人当たり都市圏 GDP と年平均伸び率

資料:OECD.Stat

注) 実質価格、実質購買力平価、基準年 2010 年

2004年 2009年 2014年 2004→2014年 2009年→2014年

札幌 68,328 64,777 68,038 0.0% 1.0%

バルセロナ 167,935 181,302 175,545 0.4% -0.6%

メルボルン 147,302 159,874 180,909 2.1% 2.5%

モントリオール 133,358 138,853 148,855 1.1% 1.4%

ミュンヘン 164,858 168,588 190,886 1.5% 2.5%

シアトル 207,532 240,629 275,326 2.9% 2.7%

ハンブルグ 152,478 155,632 166,163 0.9% 1.3%

バンクーバー 81,220 88,375 97,877 1.9% 2.1%

ブリスベン 67,575 81,808 90,920 3.0% 2.1%

リヨン 76,715 82,507 89,722 1.6% 1.7%

パース 66,554 94,814 119,255 6.0% 4.7%

都市圏GDP(百万USD) 年平均伸び率

2004年 2009年 2014年 2004→2014年 2009年→2014年

札幌 31,982 29,796 30,964 -0.3% 0.8%

バルセロナ 40,300 44,384 43,858 0.8% -0.2%

メルボルン 40,446 39,653 40,335 0.0% 0.3%

モントリオール 34,035 33,802 34,690 0.2% 0.5%

ミュンヘン 65,373 63,732 68,938 0.5% 1.6%

シアトル 65,696 70,467 75,078 1.3% 1.3%

ハンブルグ 48,893 48,960 52,494 0.7% 1.4%

バンクーバー 38,292 38,618 40,824 0.6% 1.1%

ブリスベン 37,058 39,550 39,851 0.7% 0.2%

リヨン 42,532 43,956 45,349 0.6% 0.6%

パース 43,779 54,512 60,275 3.2% 2.0%

一人当たり都市圏GDP(USD) 年平均伸び率

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b.労働生産性

・札幌都市圏の労働生産性は低位にあり、その向上は、札幌市の今後の重要課題であるといえる。

都市圏労働生産性

資料:OECD.Stat 注) 実質価格、実質購買力平価、基準年 2010 年

参考:比較対象都市の属する州・県の GDP

資料:OECD.Stat

注) 実質価格、実質購買力平価、基準年 2010 年

比較対象都市 データの州・地域GDP

(百万USD)年次

札幌 北海道 167,356 2014年

バルセロナ カタルーニャ州 291,229 2016年

メルボルン ビクトリア州 256,100 2016年

モントリオール ケベック州 300,992 2016年

ミュンヘン バイエルン州 643,855 2016年

シアトル ワシントン州 432,556 2016年

ハンブルグ ハンブルグ 125,460 2016年

バンクーバー ブリティッシュコロンビア州 199,993 2016年

ブリスベン クイーンズランド州 205,998 2016年

リヨンオーヴェルニュ=ローヌ

=アルプ地域圏284,015 2016年

パース 西オーストラリア州 156,048 2016年

比較対象都市 データの州・地域 1人当たりGDP 年次

札幌 北海道 $30,992 2014年

バルセロナ カタルーニャ州 $39,224 2016年

メルボルン ビクトリア州 $42,205 2016年

モントリオール ケベック州 $36,169 2016年

ミュンヘン バイエルン州 $49,961 2016年

シアトル ワシントン州 $59,352 2016年

ハンブルグ ハンブルグ $69,742 2016年

バンクーバー ブリティッシュコロンビア州 $42,036 2016年

ブリスベン クイーンズランド州 $42,522 2016年

リヨンオーヴェルニュ=ローヌ

=アルプ地域圏$35,680 2016年

パース 西オーストラリア州 $59,625 2016年

2013年 2014年 2015年

札幌 .. 76,164 ..

バルセロナ 82,356 83,461 84,273

メルボルン 78,178 .. ..

モントリオール .. .. ..

ミュンヘン 107,630 107,940 108,562

シアトル .. .. ..

ハンブルグ 93,358 93,355 93,792

バンクーバー .. .. ..

ブリスベン 78,428 .. ..

リヨン 91,440 92,069 92,916

パース 121,269 .. ..

都市圏労働生産性(USD)

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c.産業構造

・比較対象都市の産業構造の概況は、以下のとおりである。

■バルセロナ

・カタルーニャ地方の中心で,スペイン第 1 の港湾・工業都市。金属、自動車、航空機、電気機器、

化学、繊維工業、製紙工業などが立地する。

・また、A.ガウディゆかりの地でもあり、市内にはサグラダ・ファミリア聖堂など多くの建築物が

ある。ガウディによるカサ・ミラ、グエル公園、グエル邸 (1984 登録) やドメネク・イ・モンタ

ネルによるカタルーニャ音楽堂、サン・パウ病院 (1997 登録) などは世界遺産の文化遺産に指定

されており、多くの観光客が訪れる。

■メルボルン

・オーストラリア第 2 の金融センターであり、多くのオーストラリアの大企業の本社(4 大銀行の

うち 2 行の本店)が立地しており、オーストラリアではシドニーに次ぐ金融センターである。

■モントリオール

・フランス文化の薫り高い異国的な雰囲気、美食の町、石造りの住宅街、街中にある数多くの教会、

石畳のヨーロッパ調の旧市街の街並みなどから観光客向けに「北米のパリ」と宣伝されている。

■ミュンヘン

・ミュンヘンはドイツの都市の中でも強力な経済力を持つ都市で、市北部のオリンピアシュタディ

オン近辺には世界有数の自動車メーカー BMW の本社があるほか、シーメンス(電機)、MAN

AG(トラック・バス・産業用エンジンの製造)、リンデグループ(ガス)、ローデ・シュワルツ(電

機)などの大企業が本社機能を置いている。

■シアトル

・シアトルは世界の航空・宇宙産業の中核をなすボーイングをはじめ、マイクロソフト、アマゾン、

スターバックス、シアトルズベストコーヒーなど、世界に名を知られる大企業の誕生の地である。

特にアマゾンの経済効果が大きく、企業城下町とも呼ばれる。

■ハンブルク

・鉄道と高速道路網によって中央ヨーロッパの諸都市とむすばれ、ドイツ最大の物流拠点となって

いる。

・近年ハンブルクは産業構造改革の一環として技術集約産業の誘致に熱心で、多くの多国籍企業が

拠点をおいている。エアバス社が専用滑走路をもつドイツ最大の工場を置いている他、ハンブル

ク空港にはルフトハンザ・テクニック社がある。

■バンクーバー

・カナダで最大の産業都市の一つである。林業と鉱業の拠点でもあり、最近ではソフトウェア開発、

バイオテクノロジー、映画産業の中心地になっている。毎年多くの観光客が集まり、アラスカや

カナダ国内への重要な入り口でもある。

・金融センターとしての評価も高く、カナダではトロントやモントリオールに次ぐ。

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■ブリスベン

・ブリスベンの経済は主に第二次、第三次産業の発展が顕著に見られる。第二次産業では精油、船

内荷役、製紙、金属加工術、クイーンズランド鉄道の鉄道工場などがある。第三次産業では、一

般的に市中心部に建設された高層商業ビルや、近年作られた近接郊外の商業団地で IT、金融サ

ービス、高等教育、公共機関などが発展している。観光業はブリスベンへの観光だけではなく、

クイーンズランド州の玄関口としても機能し、ブリスベンの重要な産業である。

・伝統的にブリスベンは、シドニーやメルボルンに本拠地を構える大企業の支社・支店が集中する

支店経済都市のような性質を持っている。

■リヨン

・フランスにおける金融センターの一つであり、多くのフランスの銀行の本店が置かれている

■パース

・西オーストラリア州は鉱物資源が豊富であるが、特に金、鉄鉱石、ニッケル、アルミナやダイヤ

モンドといった資源の度重なる発掘ラッシュによって都市は成長した。

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比較対象都市の産業構造

札幌 バルセロナ メルボルン モントリオール

ミュンヘン シアトル ハンブルク バンクーバー

ブリスベン リヨン パース

産業別生産高のシェア,2014

Business/Finance

:ビジネス/金融

Trade and Tourism

:貿易と観光

Local/Non-Market

:地方公務/非営利

Transportation:運輸

Manufacturing:製造

Construction:建設

Utilities:公益事業

Commodities:商品

資料:Global Metro Moniter

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②人材の豊かさ・多様性

a.労働力

・労働力の状況をデータが所在する生産年齢人口(15~64 歳人口)及びその伸びで比較すると、

札幌市はバルセロナ、ハンブルグとともに、生産年齢人口が減少に転じている都市である。

都市圏生産年齢人口と年平均伸び率

都市圏生産年齢人口 年平均伸び率

2004年 2009年 2014年 2004→2014年 2009→2014年

札幌 1,497,900 1,475,066 1,407,453 -0.6% -0.9%

バルセロナ 2,874,940 2,771,364 2,667,789 -0.7% -0.8%

メルボルン 2,498,786 2,786,744 3,062,027 2.1% 1.9%

モントリオール 2,727,156 2,866,720 2,893,261 0.6% 0.2%

ミュンヘン 1,753,770 1,798,193 1,872,483 0.7% 0.8%

シアトル 2,217,727 2,405,144 2,541,113 1.4% 1.1%

ハンブルグ 2,118,729 2,118,380 2,098,058 -0.1% -0.2%

バンクーバー 1,514,179 1,643,553 1,683,105 1.1% 0.5%

ブリスベン 1,251,843 1,425,892 1,548,072 2.1% 1.7%

リヨン 1,200,387 1,244,951 1,288,535 0.7% 0.7%

パース 1,043,410 1,199,260 1,351,113 2.6% 2.4%

資料:OECD.Stat

比較対象都市が属する州・県の労働力人口

比較対象都市 データの州・県 労働力人口 年次

札幌 北海道 2,650,000 2014 年

バルセロナ カタルーニャ州 3,782,600 2017 年

メルボルン ビクトリア州 3,289,620 2017 年

モントリオール ケベック州 4,495,700 2017 年

ミュンヘン バイエルン州 7,127,400 2017 年

シアトル ワシントン州 3,643,880 2016 年

ハンブルグ ハンブルグ 1,005,100 2017 年

バンクーバー ブリティッシュコロンビア州 2,600,700 2017 年

ブリスベン クイーンズランド州 2,520,770 2017 年

リヨン オーヴェルニュ=ローヌ =アルプ地域圏

3,642,100 2017 年

パース 西オーストラリア州 1,430,500 2017 年

資料:OECD.Stat

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b.女性の活躍

【女性の労働力率】

・比較対象都市の属する州・県の女性の労働力率でみると、北海道は低い。

比較対象都市が属する州・県の女性の労働力率

資料:OECD.Stat

【女性の就業率】

・比較対象都市が属する国の女性の就業率を比較すると、以下のとおりである。

・我が国は、OECD35 か国中 16 位で、ドイツ、カナダ、オーストラリアより低い。

資料:OECD「Employment Outlook」

比較対象都市 データの州・県 女性の労働力率(%) 年次

札幌 北海道 44.7 2014年

バルセロナ カタルーニャ州 56.1 2014年

メルボルン ビクトリア州 58.1 2014年

モントリオール ケベック州 60.7 2014年

ミュンヘン バイエルン州 56.8 2014年

シアトル ワシントン州 55.6 2014年

ハンブルグ ハンブルグ 57.6 2014年

バンクーバー ブリティッシュコロンビア州 59.5 2014年

ブリスベン クイーンズランド州 59.8 2014年

リヨンオーヴェルニュ=ローヌ

=アルプ地域圏50.5 2014年

パース 西オーストラリア州 59.8 2014年

0

10

20

30

40

50

60

70

80

スペイン

フランス

アメリカ

日本

オーストラリア

カナダ

ドイツ

OECD諸国の女性(15~64歳)の就業率(2016年)

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c.高齢者の活躍

【高齢者の労働力率】

・比較対象都市の属する国の高齢者の労働力率を比較すると、日本は最も高くなっている。

高齢者の労働力率(2017 年)

高齢者の労働力率(%)

65-69 歳 70-74 歳 75 歳+ 65 歳+

日本 45.4 27.5 9.0 23.5

スペイン 5.9 1.6 0.2 2.1

オーストラリア 27.0 - - 13.0

カナダ 27.3 13.6 0.5 14.2

ドイツ 16.3 7.1 1.8 7.0

アメリカ 32.3 19.6 8.1 19.3

フランス 6.9 2.8 0.5 3.1

資料:OECD.Stat

注)ドイツ・アメリカの 75 歳+は 2016 年値

d.外国人材の活躍

・比較対象都市の属する州の外国人の割合を比較すると、以下のとおりである。

・札幌市の外国人の割合は 0.45%(H27 国勢調査)で、比較対象都市に比べ極めて低位にある。

比較対象都市が属する州・地域の外国生まれの人の割合(2015 年)

比較対象都市 データの州・地域 外国生まれの人の

割合(%)

札幌 - 0.45

バルセロナ カタルーニャ州 14.1

メルボルン ビクトリア州 32.8

モントリオール ケベック州 15.0

ミュンヘン バイエルン州 15.7

シアトル ワシントン州 17.4

ハンブルグ ハンブルグ 19.6

バンクーバー ブリティッシュコロンビア州 31.2

ブリスベン クイーンズランド州 25.5

リヨン オーヴェルニュ=ローヌ=アルプ地域圏 11.9

パース 西オーストラリア州 39.3

資料:OECD.Stat

注) 札幌市は、国勢調査による札幌市の外国人割合

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(2)イノベーション・スタートアップ

①スタートアップ環境

a.スタートアップ・エコシステム

・Nestpick によるスタートアップ環境の都市ランキング(世界 85 都市)では、比較対象都市 10 都

市の中で 7 都市がランキングされているが、札幌市はランキングされていない。

・2thinknow「Innovation Cities™ Index 2018」によるスタートアップ環境の都市ランキング(世界

500 都市)では、札幌市は 145 位にランキングされているが、比較対象都市は全てそれよりも上

位にランキングされ、高い評価を受けている。

スタートアップ環境世界都市ランキング

資料:Nestpick Startup Cities Index

2thinknow Innovation Cities™ Index 2018

b.新規開業

・Global Entrepreneurship Monitor の最新版の報告書(GEM 2018 Global Report)によれば、最

近の日本における懐妊期の起業家の比率、誕生期・幼児期の起業家の比率 TEA(Total

Earlystage Entrepreneurial Activity:総合起業活動指数)は OECD 加盟国の中では最も低いレ

ベルである。国際的に比較可能な指標で見ても日本の起業活動は極めて低調であり、先進工業

国の中で最低水準である。

都市名Nestpick

Startup Cities Index

2thinknow

Innovation Cities™

Index 2018

札幌 145

バルセロナ 34 30

メルボルン 12 16

モントリオール 22

ミュンヘン 15 21

シアトル 21 15

ハンブルク 9 42

バンクーバー 22 25

ブリスベン 54

リヨン 26 66

パース 105

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世界各国の開業率(2018 年)

・比較対象都市の属する州・県の開業率を以下に示す。

・一方、札幌市の開業率は、2014-2016 年で年平均 6.1%であり、オーストラリアの各地域に比べ

て、極めて低調である。

比較対象都市が属する州・地域の開業率

資料:OECD.Stat

注)札幌市の開業率は経済センサス

比較対象都市 データの州・地域 開業率(%) 年次

札幌 - 6.1 2014-2016の年平均

バルセロナ カタルーニャ州 10.04 2014年

メルボルン ビクトリア州 11.76 2016年

モントリオール ケベック州 4.67 2015年

ミュンヘン バイエルン州 -

シアトル ワシントン州 -

ハンブルグ ハンブルグ -

バンクーバー ブリティッシュコロンビア州 -

ブリスベン クイーンズランド州 12.00 2016年

リヨン ローヌ=アルプ地域圏 10.75 2015年

パース 西オーストラリア州 10.94 2016年

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②ICT環境

a.コンピュータ環境

【ブロードバンド環境】

・州・県で比較すると、北海道は他の地域に比べて、ブロードバンドにアクセスできる世帯の割合

が低い。

比較対象都市が属する州・地域のブロードバンド世帯割合

資料:OECD.Stat

比較対象都市 データの州・地域ブロードバンド

世帯割合(%)年次

札幌 北海道 61.0 2015年

バルセロナ カタルーニャ州 76.0 2015年

メルボルン ビクトリア州 77.0 2015年

モントリオール ケベック州 79.6 2013年

ミュンヘン バイエルン州 86.0 2015年

シアトル ワシントン州 83.0 2015年

ハンブルグ ハンブルグ 91.0 2015年

バンクーバー ブリティッシュコロンビア州 89.6 2013年

ブリスベン クイーンズランド州 78.0 2015年

リヨン ローヌ=アルプ地域圏 76.0 2015年

パース 西オーストラリア州 79.0 2015年

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③大学

a.大学のグローバル評価

・各都市にある主要な大学を以下に示す。

・他都市にある大学は、札幌市よりもランクが上位であり、かつ学生数、留学生の割合が高い。

各都市主要大学の世界ランキング及び学生数、留学生割合

主要大学 THE 順位 学生数 留学生割合

札幌 北海道大学 401-500 位 18,114 10%

札幌医科大学 801-1000 位 1,332 n/a

バルセロナ Pompeu Fabra University 135 位 11,523 13%

Autonomous niversity of Barcelona 145 位 32,223 16%

University of Barcelona 201-250 位 46,002 10%

メルボルン University of Melbourne 32 位 45,030 42%

Monash University 69 位 49,728 35%

Victoria University 301-350 位 11,920 19%

RMIT University 401-500 位 32,151 27%

モントリオール University of Montreal 90 位 37,311 23%

ミュンヘン LMU Munich 32 位 35,389 16%

Technical University of Munich 44 位 39,726 24%

シアトル University of Washington 28 位 45,476 16%

ハンブルク University of Hamburg 135 位 29,584 14%

バンクーバー University of British Columbia 37 位 53,566 30%

ブリスベン Queensland University of

Technology

201-250 位 33,931 16%

リヨン Claude Bernard University Lyon 1 401-500 位 16,034 13%

パース University of Western Australia 134 位 18,510 26%

資料:World University Rankings 2019(THE:The Times Higher Education)

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(3)文化・交流

①観光客

a.観光客数

・国際的な市場調査会社であるユーロモニターインターナショナルが発表した「外国人訪問者数世

界 TOP100 都市」の最新版によると、100 位までにランクインしている比較対象都市は以下のと

おりである。

・このランキングに札幌市は掲載されていないが、札幌市の 2017 年度の外国人観光客は約 257 万

人で、メルボルン、バンクーバーに匹敵する規模であり、最下位(100 位)のクラビ(タイ)216

万人を上回っている。

外国人訪問者数

2017 年

外国人訪問者数(千人) 2018 年推計値

札幌 2,572.0 -

バルセロナ 6,530.1 6,726.0

メルボルン 2,741.4 3,033.1

モントリオール 圏外 -

ミュンヘン 3,829.2 4,036.7

シアトル 圏外 -

ハンブルグ 圏外 -

バンクーバー 2,999.1 3,209.1

ブリスベン 圏外 -

リヨン 圏外 -

パース 圏外 -

(参考)東京 9,531.6 9,703.2

(参考)大阪 6,605.9 6,726.0

(参考)京都 3,147.8 3,279.6

(参考)千葉 2,353.3 2,533.2

資料:ユーロモニターインターナショナル「外国人訪問者数世界 TOP100 都市」

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②観光資源

a.世界遺産への近接性

・各都市とも市内または州内に世界遺産を抱えている。

各都市の世界遺産

世界遺産 札幌 市内なし

北海道には、知床半島がある バルセロナ カタルーニャ音楽堂とサン・パウ病院

アントニ・ガウディの作品群 メルボルン ロイヤル・エキシビジョン・ビルディング、カールトンガーデン モントリオール 市内なし

ケベック州には、ケベック旧市街地がある ミュンヘン 市内なし

バイエルン州には、「ヴュルツブルク司教館、その庭園群と広場(1981年)」、「ヴィースの巡礼教会(1983 年)」、「バンベルクの町(1993 年)」、「レーゲンスブルクの旧市街とシュタットアムホーフ(2006 年)」、「バイロイト辺境伯歌劇場(2012 年)」の 5 箇所。

シアトル 市内なし ワシントン州には、オリンピック国立公園がある

ハンブルク ハンブルクの倉庫街とチリハウスを含む商館街 バンクーバー 市内なし

ブリティッシュコロンビア州には「カナディアンロッキー山脈自然公園群」「スカングアイ(アンソニー島)」「クルエーン/ランゲル=セントエライアス/グレイシャーベイ/タッチェンシニアルセク」がある

ブリスベン 市内なし クイーンズランド州には、広大なサンゴ礁の島々「グレートバリアリーフ」、太古の歴史を今に伝える熱帯雨林地帯「クイーンズランド州湿潤熱帯地域」と「ゴンドワナ多雨林」、哺乳類の化石保存地区「リバースレー」、世界最大の砂の島「フレーザー島」がある

リヨン リヨン歴史地区 パース オーストラリア囚人遺跡群

資料:(公社)日本ユネスコ協会連盟資料から作成

b.宿泊施設の充実度

・Expedia で 5 ランクのホテル数及び全ホテル数を検索すると、以下のとおりである。

・札幌市は特にハイクラスホテル数で、他都市より少ない。

各都市のホテル数

ハイクラスホテル数 ホテル数

札幌 0 309

バルセロナ 73 7,213

メルボルン 25 1,321

モントリオール 7 543

ミュンヘン 10 501

シアトル 2 557

ハンブルク 18 394

バンクーバー 8 365

ブリスベン 17 575

リヨン 7 706

パース 12 535

資料:Expedia HP

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c.芸術鑑賞の充実度

・世界的な旅行ガイド誌を出版する Lonely Planet 社の、各市の紹介ページに掲載されている「Top

experiences」(魅力的な体験)の数は以下のとおりである。

・札幌市のページには、「Top experiences」として紹介されているものはない。劇場・コンサート

ホールの数でみると、札幌市は、Lonely Planet の WEB サイト:Sapporo entertainment で、1 か

所(札幌ドーム)掲載されている。

各都市の魅力的な体験先数

Top experiences 数

札幌 -

バルセロナ 10

メルボルン 10

モントリオール 10

ミュンヘン 9

シアトル 11

ハンブルク 8

バンクーバー 9

ブリスベン 9

リヨン -

パース 8

資料:Lonely Planet 社 HP

d.オリンピック開催実績

・スポーツイベントは一度に最も多くの人が集まって行われ、都市に活気をもたらすことやその集

客力がもたらす経済効果が期待される。

・比較対象都市のうち、オリンピック開催実績のあるのは、下記のとおりである。

・比較対象都市の中で、冬季オリンピックの開催都市は、札幌市とバンクーバーだけである。

各都市のオリンピック開催実績

夏季オリンピック 冬季オリンピック

札幌 - 1972 年

バルセロナ 1992 年 -

メルボルン 1956 年 -

モントリオール 1976 年 -

ミュンヘン 1972 年 -

シアトル - -

バンクーバー - 2010 年

ブリスベン - -

リヨン - -

パース - -

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③コンベンション

a.国際会議開催件数

・UIA「国際会議統計」をもとに、比較対象都市が属する国及び比較対象都市の内、ランクインし

ている都市における国際会議の開催件数を以下に示す。

・UIA 統計による 2017 年の国際会議開催件数を上位 30 位までを都市別でみると、比較対象都市

では、バルセロナ、モントリオール、リヨンがランクインしている。

国際会議開催件数(2017 年)

国別国際会議開催件数

(2017 年)

日本 523

スペイン 422

オーストラリア 183

カナダ 242

ドイツ 374

アメリカ 575

フランス 422

バルセロナ 193

モントリオール 146

リヨン 65

資料:国際会議統計(UIA)

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④航空交通

a.旅客数

・比較対象都市は、それぞれ国際空港を有しており、それぞれの年間利用者数は、以下のとおりで

ある。

・新千歳空港は、年間利用者数から見れば、比較対象都市と比べて遜色ない。

各都市近郊の国際空港年間利用者数

国際空港 年間利用者数 年次

札幌 新千歳空港 2,271 万人 2017 年

バルセロナ バルセロナ=エル・プラット空港 4,413 万人 2016 年

メルボルン メルボルン空港 3,632 万人 2017 年

モントリオール モントリオール・ピエール・エリオット・トルドー国際空港

1,540 万人 2016 年

ミュンヘン ミュンヘン国際空港 4,226 万人 2016 年

シアトル シアトル・タコマ国際空港 4,574 万人 2016 年

ハンブルク ハンブルク空港 1,600 万人 2016 年

バンクーバー バンクーバー国際空港 2,140 万人 2016 年

ブリスベン ブリスベン空港 2,324 万人 2017 年

リヨン リヨン・サン=テグジュペリ国際空港 840 万人 2014 年

パース パース空港 1,243 万人 2017 年

資料:新千歳/千歳市 HP バルセロナ・ミュンヘン・シアトル・ハンブルグ/Wikipedia、 メルボルン・ブリスベン・パース/オーストラリア政府インフラ運輸地域経済局統計 モントリオール/カナダの運輸事情(国土交通省) リヨン/フランスの空港改革及び自治体の空港運営の現状( (一財)自治体国際化協会)

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4.社会的成長にかかる指標の比較分析

(1)生活・コミュニティ

①人口構成

a.平均年齢

・比較対象都市が属する国の中位年齢は以下のとおりである。

・日本とドイツは、ともに中位年齢が高い。

比較対象都市が属する国の人口構成、中位年齢(2015 年

資料:国連統計

b.高齢者比率

・札幌市の高齢化率は、比較対象都市の中で最も高くなっている。

高齢者比率

資料:OECD.Stat

総人口

(%)

日本 127,975 51.1 -0.09 13.0 26.0 46.3

スペイン 46,398 50.9 -0.17 14.9 18.9 43.2

オーストラリア 23,800 50.2 1.46 18.8 15.0 40.5

カナダ 35,950 50.4 1.02 16.0 16.1 37.4

ドイツ 81,708 50.8 0.20 13.1 21.1 45.9

アメリカ 319,929 50.5 0.72 19.2 14.6 37.6

フランス 64,457 50.9 0.45 18.3 18.9 41.2

2015年(増減率は2010年→2015年)

年平均増減率

(%)

15歳未満

人口割合

(%)

65歳以上

人口割合

(%)

中位

年齢

(歳)

0-14歳 15-65歳 65歳+

札幌 11.5% 64.1% 24.4%

バルセロナ 14.6% 66.7% 18.7%

メルボルン 18.3% 68.3% 13.5%

モントリオール 16.6% 67.4% 15.9%

ミュンヘン 13.8% 67.6% 18.6%

シアトル 18.5% 69.3% 12.2%

ハンブルグ 13.6% 66.3% 20.1%

バンクーバー 14.9% 70.2% 14.9%

ブリスベン 19.8% 67.9% 12.4%

リヨン 19.3% 65.1% 15.5%

パース 18.9% 68.3% 12.8%

2014年

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②人口動態

a.人口増加率

・大都市圏でみた場合、札幌市の人口増加率は、他の大都市圏と比較してバルセロナに次いで低い。

都市圏人口の推移

都市圏人口 年平均伸び率

2005年 2010年 2015年 2005→2015年 2010→2015年

札幌 2,153,356 2,179,167 2,201,839 0.2% 0.2%

バルセロナ 4,150,698 4,068,394 3,986,088 -0.4% -0.4%

メルボルン 3,697,372 4,105,857 4,599,141 2.2% 2.3%

モントリオール 3,949,233 4,146,066 4,326,501 0.9% 0.9%

ミュンヘン 2,532,191 2,655,203 2,804,480 1.0% 1.1%

シアトル 3,198,265 3,448,049 3,728,606 1.5% 1.6%

ハンブルグ 3,126,211 3,183,734 3,193,316 0.2% 0.1%

バンクーバー 2,146,681 2,298,162 2,427,468 1.2% 1.1%

ブリスベン 1,866,210 2,108,348 2,318,501 2.2% 1.9%

リヨン 1,818,378 1,897,326 1,951,439 0.7% 0.6%

パース 1,544,977 1,781,132 2,002,114 2.6% 2.4%

資料:OECD.Stat

b.合計特殊出生率

・比較対象都市が属する国の合計特殊出生率を以下に示す。

・日本は、ドイツ、スペインと並んで低位にある。一方、オーストラリア、アメリカ、フランスの

出生率は高い。

比較対象都市が属する国の合計特殊出生率

資料:国連統計

2000-2005 2005-2010 2010-2015

日本 1.30 1.34 1.41

スペイン 1.29 1.39 1.33

オーストラリア 1.77 1.95 1.89

カナダ 1.52 1.64 1.61

ドイツ 1.35 1.36 1.43

アメリカ 2.04 2.05 1.88

フランス 1.88 1.98 1.98

合計特殊出生率

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c.平均寿命

・比較対象都市が属する州・地域の平均寿命を以下に示す。

・各都市ともにさほど大きな差異はないが、シアトル(ワシントン州)がやや短くなっている。

比較対象都市が属する州・地域の平均寿命(2014 年)

比較対象都市 データの州・地域 平均寿命

(出生時平均余命)

札幌 北海道 82.7

バルセロナ カタルーニャ州 83.4

メルボルン ビクトリア州 82.7

モントリオール ケベック州 81.5

ミュンヘン バイエルン州 81.3

シアトル ワシントン州 79.9

ハンブルグ ハンブルグ 80.6

バンクーバー ブリティッシュコロンビア州 82.3

ブリスベン クイーンズランド州 81.9

リヨン ローヌ=アルプ地域圏 83.5

パース 西オーストラリア州 82.6

資料:OECD.Stat

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③生活と仕事のバランス

a.年間労働時間

・UBS「価格と所得に関する調査報告書」から、年間労働時間、年間休暇日数を示すと、以下のと

おりである。

・日本は、他国と比較して、年間労働時間が長く、休暇日数が少ないといえる。

年間労働時間指数及び年間休暇日数指数(2018 年)

資料:価格と所得に関する調査報告書(UBS)

年間労働時間の指数 年間休暇日数の指数

(NYを100とした時) (NYを100とした時)

日本(東京) 97.6 121.5

スペイン(バルセロナ) 86.7 210.5

オーストラリア(シドニー) 95.4 127.2

カナダ(モントリオール) 95.2 123.7

ドイツ(ミュンヘン) 89.4 187.9

フランス(リヨン) 87.4 187.8

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④金銭的な豊かさ

a.賃金水準

・UBS「価格と所得に関する調査報告書」から、年間所得、1時間当たりの収入を比較すると、日

本(東京)は年間所得で最も高く、1 時間当たり収入でも上位にある。

年間所得及び1時間当たり収入(2018 年)

年間所得(USD) 1 時間当たり収入(USD)

日本(東京) 45,641 22.86

スペイン(バルセロナ) 29,903 16.86

オーストラリア(シドニー) 45,165 23.15

カナダ(モントリオール) 45,422 23.33

ドイツ(ミュンヘン) 45,554 24.89

フランス(リヨン) 34,303 19.18

資料:価格と所得に関する調査報告書(UBS)

・各大都市圏及び州・県の可処分所得を比較すると、以下のとおりである。

・札幌市の収入は低く評価されている。これは購買力平価で評価されているためと考えられる。

世帯当たり可処分所得

世帯当たり可処分所得(USD/年) 年次

札幌 21,362 2013 年

バルセロナ -

メルボルン 38,054 2016 年

モントリオール 38,802 2016 年

ミュンヘン 38,751 2013 年

シアトル 53,882 2016 年

ハンブルグ 31,075 2013 年

バンクーバー 34,471 2016 年

ブリスベン 40,977 2016 年

リヨン 29,823 2016 年

パース 46,324 2016 年

資料:OECD.Stat

注) 実質購買力平価、基準年 2010 年

一人当たり可処分所得(2015 年)

比較対象都市 データの州・地域 一人当たり可処分所得(USD/年)

札幌 北海道 17,848

バルセロナ カタルーニャ州 19,447

メルボルン ビクトリア州 24,513

モントリオール ケベック州 19,706

ミュンヘン バイエルン州 26,203

シアトル ワシントン州 40,619

ハンブルグ ハンブルグ 25,315

バンクーバー ブリティッシュコロンビア州 23,293

ブリスベン クイーンズランド州 26,102

リヨン ローヌ=アルプ地域圏 21,760

パース 西オーストラリア州 31,803

資料:OECD.Stat

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⑤生活コスト

a.物価水準・家賃水準

・UBS「価格と所得に関する調査報告書」から、比較対象都市(データがない場合はその国の都市)

の物価、住宅コストを比較すると、東京の物価(総支出)が高く(ニューヨークとほぼ同レベル)、

住宅コストは、ミュンヘンと東京が同レベルである。

物価指数及び住宅コスト(2018 年)

物価素数

(NY を 100 とした時)

住宅コスト

(NY を 100 とした時)

日本(東京) 99.49 50.9

スペイン(バルセロナ) 70.26 39.2

オーストラリア(シドニー) 91.30 56.2

カナダ(モントリオール) 81.37 17.8

ドイツ(ミュンヘン) 82.98 47.9

フランス(リヨン) 79.44 25.9

資料:価格と所得に関する調査報告書(UBS)

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(2)安全・環境・快適性

①犯罪の少なさ

a.犯罪件数

・犯罪件数について、州・県の人口 10 万人当たりの殺人率からみる。

・北海道の殺人率はカタルーニャ州、バイエルン州と並んで低位にある。

比較対象都市が属する州・地域の殺人率(2014 年)

比較対象都市 データの州・地域 人口 10 万人当たり殺人率

札幌 北海道 0.6

バルセロナ カタルーニャ州 0.6

メルボルン ビクトリア州 0.8

モントリオール ケベック州 1.3

ミュンヘン バイエルン州 0.6

シアトル ワシントン州 2.3

ハンブルグ ハンブルグ 1.0

バンクーバー ブリティッシュコロンビア州 1.6

ブリスベン クイーンズランド州 0.8

リヨン ローヌ=アルプ地域圏 1.2

パース 西オーストラリア州 1.3

資料:OECD.Stat

②災害リスクの少なさ

a.GDP リスク

・GDP リスクとは、イギリスのロイズ銀行がケンブリッジ大学ジャッジ・ビジネススクール内ケ

ンブリッジ・リスク研究センター(Cambridge Centre for Risk Studies)との共同研究を通じて、

最大級の人為的災害及び自然災害の脅威によって大都市が被りうる経済的な影響を予測した都

市リスク指標である。世界主要 301 都市を対象に、人為的災害や自然災害の 22 の脅威によって

予想される損害の規模と発生確率に基づく損失額を GDP リスク量として予測している。

・札幌市は対象都市と比較して GDP リスク率(GDP リスク/都市 GDP)が高い。

GDP リスク

都市 GDP(億ドル) GDP リスク(億ドル) GDP リスク率

札幌 74.12 1.18 1.59%

バルセロナ 158.28 2.55 1.61%

メルボルン 234.62 2.09 0.89%

モントリオール 162.79 1.12 0.69%

ミュンヘン 251.87 1.72 0.68%

シアトル 876.55 7.21 0.82%

バンクーバー 123.11 0.86 0.70%

ブリスベン 124.04 0.96 0.77%

リヨン 110.51 0.91 0.82%

ハンブルク 170.71 1.23 0.72%

パース 146.42 1.12 0.77%

資料:ロイズ都市リスク指標レポート(2017 年 2 月)

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③医療の充実度

a.人口当たりの医師数

・州・県の人口当たりの医師数を比較すると、札幌市は平均よりやや少ない。

比較対象都市が属する州・地域の千人当たり医師数

資料:OECD.Stat

注) 札幌市は、平成 28 年医師・歯科医師・薬剤師調査(厚生労働省)

b.人口当たりの病床数

・州・県の人口当たりの病床数を比較すると、札幌市は平均より少ない。

比較対象都市が属する州・地域の千人当たり病床数

資料:OECD.Stat

注) 札幌市は、平成 28 年医療施設調査(厚生労働省)

比較対象都市 データの州・地域 千人当たり医師数 年次

札幌 - 3.2 2016年

バルセロナ カタルーニャ州 3.6 2015年

メルボルン ビクトリア州 3.7 2015年

モントリオール ケベック州 2.4 2016年

ミュンヘン バイエルン州 4.3 2015年

シアトル ワシントン州 2.7 2014年

ハンブルグ ハンブルグ 6.1 2015年

バンクーバー ブリティッシュコロンビア州 2.4 2016年

ブリスベン クイーンズランド州 3.7 2015年

リヨン ローヌ=アルプ地域圏 3.3 2016年

パース 西オーストラリア州 3.5 2015年

比較対象都市 データの州・地域 千人当たり病床数 年次

札幌 - 20.0 2016年

バルセロナ カタルーニャ州 38.3 2015年

メルボルン ビクトリア州 27.6 2012年

モントリオール ケベック州 - -

ミュンヘン バイエルン州 82.2 2016年

シアトル ワシントン州 17.0 2009年

ハンブルグ ハンブルグ 71.9 2016年

バンクーバー ブリティッシュコロンビア州 26.2 2015年

ブリスベン クイーンズランド州 28.0 2012年

リヨン ローヌ=アルプ地域圏 62.8 2014年

パース 西オーストラリア州 24.2 2012年

Page 101: 札幌市の中長期的な成長可能性 調査・分析業務 【報告書 ......・Quality of Living Ranking(Mercer) ・Global Liveability Index(The Economist Intelligence

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④汚染の少なさ

a.空気のきれいさ

・PM10 及び PM2.5 のレベル、大気汚染に係る環境データを以下に示す。

・札幌市は、比較対象都市の中で比較的空気がきれいな都市といえる。

空気のきれいさ

大気中微小粒子状物質濃度(μg/m3)

大気汚染評価 PM10 PM2.5 年次

札幌 19 10 2012 年 18.75

バルセロナ 24 14 2016 年 63.17

メルボルン 19 8 2014 年 22.50

モントリオール 16 10 2013 年 27.37

ミュンヘン 20 12 2016 年 22.35

シアトル 12 6 2014 年 20.00

ハンブルグ 19 14 2016 年 27.13

バンクーバー 12 7 2013 年 18.03

ブリスベン 15 7 2016 年 14.96

リヨン 22 15 2016 年 50.62

パース 15 8 2016 年 17.66

資料:大気中微小粒子状物質濃度は WHO DataBase 大気汚染評価は、Numbeo doo のオンラインデータベース「NUMBEO」によるアクセス時点での

評価で、値が 0 の場合は非常に低いと認識され、値が 100 の場合は非常に高いと認識される。

⑤都市のコンパクトさ

a.人口密度

・大都市圏の人口密度を比較すると、以下のとおりである。

・札幌都市圏は、バルセロナに次ぎ人口密度が高い。

・また、コア面積の割合は、シアトルに次ぎ高い。

都市圏の人口密度

資料:OECD.Stat

都市圏 人口面積

(㎢)

コア面積

(㎢)

人口密度

(人/㎢)

コア面積割合

(%)

札幌 2,201,839 2,655 1,309 829 49.3

バルセロナ 3,986,088 2,618 681 1,523 26.0

メルボルン 4,599,141 10,007 2,905 460 29.0

モントリオール 4,326,501 12,140 1,623 356 13.4

ミュンヘン 2,804,480 5,495 311 510 5.7

シアトル 3,728,606 15,575 15,575 239 100.0

ハンブルグ 3,193,316 7,193 738 444 10.3

バンクーバー 2,427,468 2,986 1,468 813 49.2

ブリスベン 2,318,501 15,887 1,131 146 7.1

リヨン 1,951,439 3,669 520 532 14.2

パース 2,002,114 6,437 1,153 311 17.9

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5.札幌市の強み・弱み

・前項 2.~4.の海外都市との比較から、札幌市の特徴、強み・弱みを整理すると、以下のとおりで

ある。

海外都市との比較にみる札幌市の特徴、強み・弱み

分野 強 み 弱 み

経済の強さ・

人材

◆右記のとおり経済規模は最下位である

が、都市圏人口・生産年齢人口は比較対

象 11 都市中 8 位に位置する。

◆高齢者の労働力率は、国内他都市の比較

では低い水準にあるが、海外都市との比

較では高いと想定される(国データでの

比較)。

◆都市圏人口の規模に比べて都市圏 GDP、

一人当たり都市圏 GDP が小さく、とも

に比較対象 11 都市の中で最下位。

◆経済成長率が鈍化しており、都市圏

GDP、一人当たり都市圏 GDP ともに、

低位グループに位置する。

◆労働生産性は、2013~2015 年の水準をみ

ると、最も低い数値を記録。

◆生産年齢人口は、バルセロナ、ハンブル

グとともに減少に転じている(他の 8 都

市は増加)。

◆州・地域データでの比較となるが、人口

に占める外国人の割合は非常に少ない。

イノベーシ

ョン・スター

トアップ

◆海外機関によるスタートアップ・エコシ

ステムの評価は世界 145 位であるが、比

較対象 11 都市の中では最も低い。

◆別の海外機関によるスタートアップ環境

の都市ランキングでも、比較対象 11 都

市のうち 7 都市は 40 位以内に入ってい

るが、札幌市はランキング対象外。

◆開業率も、バルセロナ、オーストラリア

各地域に比べて低い。

◆海外機関による世界大学ランキングで

は、いずれの都市も札幌市(2 大学)より

上位にあり、学生数を多く抱え、留学生

の割合が高い。

文化・交流 ◆外国人観光客数は、バルセロナ、ミュン

ヘン、バンクーバー、メルボルンに次い

で第 5 位と想定される(比較対象 11 都

市中)。

◆他都市に比べて世界遺産への近接性が弱

い。

◆世界規模の旅行予約サイトにおいて、比

較対象 10 都市の中で唯一ハイクラスホ

テルの登録なし。

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◆比較対象 11 都市の中で、冬季オリンピ

ックが開催されているのは札幌市とバン

クーバーのみ。

◆海外専門メディアによる都市紹介サイト

において、劇場・コンサートホールとし

て札幌ドームが掲載。

◆新千歳空港の年間利用者数は、対象比較

11 都市の空港と比べても見劣りしない。

◆海外専門メディアによる都市紹介サイト

において「Top experiences:魅力的な体

験先数」の掲載がない(札幌市、リヨン

以外は掲載)。

◆国際会議開催件数の世界上位都市に、バ

ルセロナ、モントリオール、リヨンがラ

ンクインしており、札幌市の開催件数と

は差が大きい。

生活・コミュ

ニティ

◆国内他都市と比較して札幌市の平均年齢

は高い。日本は比較対象 11 都市の国に

比べて高いため(国データの比較、中位

年齢)、札幌市は海外都市との比較でも高

いと想定される。

◆高齢者比率は、比較対象 11 都市の中で

最も高い。

◆国内他都市と比較して札幌市は労働時間

の長い人の割合が多い。日本は比較対象

11 都市の国に比べて長いため(国データ

の比較、年間労働時間指数)、札幌市は海

外都市との比較でも長いと想定される。

◆世帯当たり・一人当たりの可処分所得は、

比較対象 11 都市の中で最も少ない。

安全・環境・

快適性

◆州・地域データでの比較となるが、犯罪

件数(殺人率)の少なさは、比較対象 11

都市の中で最も少ない。

◆人口当たり医師数・病床数は、比較対象

11 都市の中で中位にあり、見劣りしな

い。

◆PM10 及び PM2.5 のレベルは中位であ

るが、総合的な大気汚染評価は、ブリス

ベン、パース、バンクーバーに次いで第

4 位。

◆人口密度は、国内他都市の比較では低い

グループであるが、海外都市の比較では

バルセロナに次いで高い。

◆海外機関による「GDP リスク率(人為的

災害及び自然災害の経済的影響予測)」

は、国内他都市との比較では低いほうで

あるが、海外都市との比較ではバルセロ

ナに次いで高い。

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Ⅴ.札幌市の目指すべき方向性とその実現に向けた施策の検討

1.札幌市の目指すべき方向性

・本調査で設定した 5 つの重視する分野ごとに、札幌市の目指すべき方向性とその実現に向けた施

策を提案する(次ページ表の①~⑧)。

・最初の「経済の強さ・人材」の分野に関しては、国内外都市に比べて劣っている経済成長や生産

性への対応の面から「①既存産業の高付加価値化、付加価値の高い産業の育成・強化」とした。

また、女性および高齢者の就業率や外国人就業への対応の面から「②ダイバーシティの推進」と

した。

・「イノベーション・スタートアップ」に関しては、国際的な評価は一定程度あるものの、国内では

経済規模が大きいにもかかわらず新設事業所割合や開業率が低いことへの対応から「③スタート

アップ都市として評価されるまちづくり」とした。

・「文化・交流」に関しては、海外都市に比べて見劣りする観光資源への対応、地域連携による観光

の客層拡大への対応、国内外都市に比べて劣っているコンベンション振興への対応から「④北海

道全体の発展に資する札幌観光」とした。

・「生活・コミュニティ」に関しては、加速する高齢化・出生率停滞・全世代の健康づくりへの対

応、および経済成長・高齢者就業への対応から「⑤健康・コミュニティを柱としたまちづくり」

とした。

・「安全・環境・快適性」に関しては、海外都市に比べて災害リスク(GDP リスク率)が高いこと

への対応、および直近の地震災害の経済的社会的影響の大きさをふまえて「⑥災害に強いまちづ

くり」とした。また、国内外都市に比べて劣っている経済成長や生産性への対応、観光振興・コ

ンベンション振興への対応、超高齢時代・環境・コンパクトシティへの対応から「⑦暮らし・活

力・環境を重視する交通体系」とした。この交通体系については、「経済の強さ」「文化・交流」

「生活・コミュニティ」「安全・環境・快適性」の分野を横断する方向性・施策として取り上げ

た。

・最後に、経済成長・生産性への対応、スタートアップへの対応、観光客へのインフラ対応、進化

する ICT への対応、環境への対応、都市経営の効率化への対応など、上記の 5 分野を横断する

総合的なテーマとして「⑧札幌型スマートシティの形成」とした。

・次ページ以降では、8 つの方向性それぞれについて背景・潮流を整理し、都市比較の結果と併せ

てその点もふまえた施策を提案する。また、現行の市の取り組みとできるだけ重複しない施策案

とした。

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重視する分野 目指すべき方向性・施策案

■ 経済の強さ・人材

経済の強さ ① 既存産業の高付加価値化、付加価値の高い産業の育成・強化

・既存産業の高付加価値化

・新産業の創出

・高度人材育成

人材の豊かさ・多様性 ② ダイバーシティの推進

・多様な人材が活躍する環境整備

・高度な外国人材の誘致・活用促進

■ イノベーション・スタートアップ

スタートアップ環境

大学

研究開発

③ スタートアップ都市として評価されるまちづくり

・イノベーターの育成、スタートアップ企業の支援体制の強化

・北大等の最先端の「知の活用」と「産業の創出」

・高度な外国人材の誘致・活用促進【再掲】

■ 文化・交流

観光客

コンベンション

④ 北海道全体の発展に資する札幌観光

・北海道のゲートウェイ都市としての機能強化

・MICE の振興

・都市の魅力向上

・観光関連産業の振興

■ 生活・コミュニティ

⑤ 健康・コミュニティを柱としたまちづくり

・健康を支える新しいコミュニティづくり

・多世代が参加・交流する健康づくり事業

・健康・スポーツ関連産業の振興

■ 安全・環境・快適性

災害リスクの少なさ ⑥ 災害に強いまちづくり

・強靭なハード・インフラ整備・更新

・地域防災力の充実・強化

・災害時の昼間流入人口問題への対応

・首都圏等のバックアップ機能の発揮

都市のコンパクトさ

公共交通の充実度

⑦ 暮らし・活力・環境を重視する交通体系

・DX(デジタルトランスフォーメーション)時代に貢献する基盤づくり

・新しい技術の活用に向けた官民連携と社会実装の促進

上記分野を横断して

総合的な観点から

⑧ 札幌型スマートシティの形成

・イノベーターの育成、スタートアップ企業の支援体制の強化【再掲】

・誰もが ICT の利便性を享受できる基盤づくりの推進

・ポスト「環境首都・札幌」の推進

・新たな交通システム・サービスの推進

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2.実現に向けた施策の検討

(1)既存産業の高付加価値化、付加価値の高い産業の育成・強化

①背景・潮流

・IoT やビッグデータ、人工知能等の活用に伴うデジタル化の進展により、従来の産業構造が破壊

されつつある中、各国ともに強い危機感を持ちながら、この劇的な変化への対応を急いでいる。

こうした中、我が国では、経済社会全体をスマート化する Society 5.0 という大きなコンセプト

を打ち出すとともに、生産性革命の実現に向けた取組みを推進しているところである。今後本格

的な人口減少社会を迎える我が国において、テクノロジーを活用した生産性の向上は喫緊の課題

であり、官民が一体となって具体的な取組みを推進することが求められている。

・他方、デジタル化に伴う産業構造の劇的な変化に対応しながら、政府が掲げる GDP600 兆円経

済を実現するためには、設備や人材への投資を通じた生産性の向上に加え、Society 5.0 時代にお

ける新たな高付加価値産業の創出を加速することが不可欠である。そのためには、経済成長の牽

引役である個々の企業の具体的な取組みを踏まえながら、今後の有望産業へ資源を集中投下する

ことが重要となる。

・デジタル化の進展に伴う産業構造の変化について、例えば、自動車産業では、自動運転や次世代

自動車(電気自動車、燃料電池自動車等)、ライドシェア等の登場による大きな転換期を迎えて

おり、また金融業界においてもフィンテックベンチャーによる革新的な金融サービスの創出に伴

う大きな変革が起きている。こうした Digital Disruption が起こるなか、今後の国際競争を勝ち

抜くためには、世界と戦うための戦略を官民連携のもとで具体化するとともに、我が国産業の発

展を支える横断的なデータ共有基盤を整備しながら、今後の有望産業へ我が国のリソースを重点

的に投入することが不可欠である。

・我が国では、政府の「未来投資戦略 2017」において、Society 5.0 の実現に向けた 5 つの戦略分

野(移動革命、健康寿命の延伸、フィンテック、サプライチェーンの次世代化、快適なインフラ・

都市づくり)を打ち出したところであるが、デジタルトランスフォーメーション(DX)に伴う

急速なビジネス環境の変化に対応しながら、我が国産業の国際競争力を強化するためには、マー

ケットの最前線で戦っている個々の企業の意見を吸い上げながら、重点戦略分野を絶えずアップ

デートしていくことが重要である。

・以上を踏まえて、日本経済団体連合会では 2018 年 4 月に「新たな高付加価値産業の創出に向け

た環境整備」を取りまとめている。

・札幌市においても、高付加価値産業の育成に向けて、地方自治体として考えられる施策・環境整

備を展開していくことが求められる。

②札幌市の将来像

・札幌市は国内他都市との比較において、GDP の伸び、労働生産性ともに低い状況にある。また、

海外都市との比較においても、GDP の伸び、一人当たり GDP、労働生産性ともに低位にある。

・こうした点を克服し、次代の社会経済環境に即した産業構造を形成していく必要があり、中長期

的には以下の都市像が期待される。

◇ものづくり産業と IT 産業のボーダレスな業種形成により、北海道産業全体の生産性向上に

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貢献するとともに、北の試作・開発センター都市として存立。

◇新しい IT クラスター形成を担う、将来の成長拡大が期待される市場分野を開拓する IT 産

業の集積。

◇IT を中核にサービスサイエンスといった概念を導入した生産性の高い建設業、サービス業

等が活躍。

◇イノベーション創出の領域において、地域間・業種間・官民のコラボレーションが活発な都

市として存立。

③実現に向けた施策案

○既存産業の高付加価値化

・札幌市に存在するテクノロジーの掘り起こしとマッチング支援

・ノウハウ・資金・税制面にかかる機械化・IT 化の導入支援

・企業連携・業界連携・異業種連携を促す通信基盤・データ利活用基盤の整備

○新産業の創出

・交通・通信・物流・再開発など新しい社会インフラ整備とからめた新事業の発掘・育成

・シェアリングエコノミー、サブスクリプションなど今後の業態トレンドとなる事業化支援

・ヘルスケア、医療、シニアなど今後の成長市場をターゲットとした事業化支援

○高度人材育成

・イノベーションを具現化するマルチスキル人材等の育成

・AI・ビッグデータ人材育成拠点の整備

・企業のコスト軽減を図る人材育成ツールのシェアリング支援

■参考:日本経済団体連合会「新たな高付加価値産業の創出に向けた環境整備」より

【有望産業】

①自動運転 ②革新的素材 ③次世代蓄電池 ④ロボット

⑤フィンテック ⑥次世代物流システム

【産業横断的な施策】

①産業構造のグランドデザインの具体化

②抜本的な規制改革の推進

③海外の活力の取り込み:・クラスターへの誘致強化

・行政手続の簡素化・電子化

・外国人材の受入れ促進

④協調領域の明確化及びデータ利活用基盤の整備

⑤産業の新陳代謝の促進:・リスクマネー供給の拡大

・企業人材の育成・確保

・人材の流動化促進に資するリカレント教育の拡充

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(2)ダイバーシティの推進

①背景・潮流

・近年、国籍、性別、年齢などにこだわらず多様な人材を積極的に活用しようという考え方・キー

ワードとして「ダイバーシティ」がある。

・とりわけ労働力人口の減少が不可避な将来において、都市には、就業に関して制約のあるなしに

関わらず、さまざまな人が活躍できるまちづくりが必要とされている。

・また、働き方改革の議論においても、個々が持つ能力を十分発揮できることや生産性向上に資す

ることなど、働きやすい環境づくりの面で多様性を重視することが求められている。

・人口構成や経済状況が大きく変化するなか、社会のあらゆる組織で人の多様性に配慮した取り組

みが必要となっており、中長期的にみると地域全体でダイバーシティを推進する必要性が高まっ

ている。

・“多様性”は、上記のような雇用・就業だけではなく、海外市場への展開拡大、異文化の融合・多

様な人材の交流によるイノベーション創出など、いろいろな面から成長都市の要素となることが

期待される。

資料:日産自動車 HP

②札幌市の将来像

・札幌市は、女性の労働力率、高齢者の労働力率に関し、国内他都市と比較して低位にある。また、

外国人就業者数、留学生数についても、国内他都市や海外都市と比較して低位にある。

・こうした点を克服し、多様な人材が活躍し、次代の交流拠点都市・イノベーション都市となるよ

うな就業環境・事業環境・都市環境を形成していく必要があり、中長期的には以下の都市像が期

待される。

◇札幌市は、多様性を受け入れる風土が評価されており(野村総研による成長可能性都市ラン

キング)、アメリカ西海岸の都市に負けない先進的な都市としての地位を確立。

◇サービス化、ソフト化が顕著である札幌市の産業構造の中で、外国人、女性、高齢者が多方

面で活躍。

◇働き方改革に関しても、多様性を受容するワークスタイルや都市環境が実現されるなど、先

進的な都市として確立。

◇現行ビジョンにある“心豊かにつながる共生のまち”、また、ポジティブな意味での“成熟都

市”という面からは、インクルージョンという概念も重要であり、200 万人規模の包摂都市

として世界に発信。

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③実現に向けた施策案

○多様な人材が活躍する環境整備

・女性や高齢者をはじめとする多様な人材の就業支援体制の強化

・女性の社会復帰・高齢者を対象とした新しいリカレント教育・連携大学院の開設

・ダイバーシティ経営実践企業の認定

○高度な外国人材の誘致・活用促進

・留学生の誘致対策強化(市内及び近郊の大学、道、経済界などとの連携による効果的な留学生

誘致事業の推進)

・留学生の市内企業への就職支援(市内企業への留学生就職促進に向けたマッチング機会の充実

強化)

・外国人研究者を呼び込む仕掛けづくり、研究交流拠点の整備(アート・イン・レジデンスの研

究開発版等)

・外国人市民の総合相談窓口機能の拡充(外国人の市内企業への就職支援や様々な生活情報を提

供する総合相談窓口機能の拡充)

■参考事例

国・都市 概 要

オランダ

アムステルダム

(82 万人)

・オランダはもともと多様性を認める国柄で、ダイバーシティの実現に

力を入れている。首都であるアムステルダムは世界一 LGBTQ フレン

ドリーな都市として有名である。

・このような人々の平等を祝うイベント「ゲイ・プライド」、中でも、特

に有名な「運河パレード」では、毎年多くの観光客が訪れている。

ニュージーランド

オークランド

(161 万人)

・世界各国からの移民が多く、居住者の 4 人に 1 人が海外生まれと言わ

れており、多文化が交わる都市である。

・また、2018 年世界生活環境調査-都市ランキング(評価項目:政治、

教育、犯罪、交通、娯楽など)で第 3 位と世界的にみて生活の質が高

い都市として評価されている。

オーストラリア

ニューサウスウェー

ルズ州

・オーストラリアにおける留学生受入数は、米国、英国に次いで世界で

3番目に多く、2017 年3月現在、48 万人(連邦政府教育訓練省統計)。

・また、高等教育機関を卒業した留学生の 48%(約 1,890 人)が引き続

きオーストラリアで生活しており、そのうち 73%(1,379 名)が就職

している(連邦政府教育訓練省統計)。

・特に留学生が最も多いニューサウスウェールズ州では、州内閣府によ

り、シドニーをはじめとする州内地域における留学生数の増加、留学

生の学生生活の質の向上、地域社会への貢献を目的に、2014 年に Study

NSW 設立。

・Study NSW では、学校、ビザ、物価、住居、公共交通機関、医療保険、

入学後の支援制度、就職、インターンシップ、留学生対象イベント等、

留学した及び留学を希望する学生やその家族が必要となる情報を集約

したウェブサイト「Study Sydney」を開設している。

・また Study NSW は、州内教育機関と連携し、2015 年よりシドニー国

際空港到着ゲート出口に歓迎デスクを設け、到着した留学生を対象に

住宅や交通機関等の情報提供やアドバイスを無料で行っている。

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(3)スタートアップ都市として評価されるまちづくり

①背景・潮流

・都市の成長において、市民生活のバックポーンとなる産業の発展は重要な要素の一つである。産

業発展を先導するのは、都市が持つ多様性、寛容性、ビジネスを生み出す風土・資源であり、こ

れが、需要の創出、新しい製品やサービスの開発、雇用の創造の源泉となっている。

・特に、次代へと牽引する産業の発展には、闊達なイノベーションによるクリエイティブな企業の

育成・創出、さらには、これを担うクリエイティブ(創造的)な人材の集積が必要である。

・イノベーションの拠点となる少数の先進地域は、才能のある人材を引き付け、創造的な知を生み

出し、世界のイノベーションのほとんどを担っている。才能のあるクリエイティブな人々は、経

営資源の集中によって生じる生産優位性や、規模の経済、知識のスピルオーバー(漏出(拡散)効

果)を見込めるからこそ集積し、クリエイティブな企業の創出が特定の地域に集中している。

・このように、イノベーションにとって地理的な集中は必要条件であり、都市の経済的な成長と繁

栄は、高水準のクリエイティブな才能を一定量引き付けることができるエリアで生まれている。

・札幌市では、古くはテクノパークや札幌バレーに象徴される IT 企業の集積を図り、近年ではバ

イオ産業の集積を進めてきた実績がある。

・札幌市には、北海道の歴史的経緯や人口集積を背景とした寛容性、開放性、進取性、知的刺激と

いうクリエイティブな人材の吸引に必要な風土がある。このような特性を活かし外部の力を活か

すとともに、そこで集まり、出会った異質な才能が活躍できる、すなわち、互いに高め合う、競

争する、共創する仕組みにより、新しい価値や需要を創出するビジネスを推進する施策づくりが

期待される。

②札幌市の将来像

・札幌市は、2thinknow「Innovation Cities™ Index 2018」におけるスタートアップ・エコシステム

の評価として 145 位であり、「Innovation Cities」として国際的に一定の評価を得ているといえ

る。

・一方、国内他都市の比較においては、新設事業所割合、開業率ともに中位にあり、また、海外都

市の開業率の比較においては、極めて低調である。

・こうした点を克服し、次代をけん引する新たな企業が次々と生み出されるよう、スタートアップ・

エコシステムを強化していく必要があり、中長期的には以下の都市像が期待される。

◇グローバルに活躍できるイノベーターの育成やスタートアップ企業の支援体制が確立。

◇失敗を恐れずに果敢に挑戦する起業マインドが都市全体で醸成。

◇高い志を抱き、革新的な技術やビジネスモデルで社会課題を解決するような優秀なスタート

アップ企業が集積し、世界に新しい価値を提供。

◇国内外の起業家、研究者、クリエイター、デザイナー、パフォーマー等が行き交うとともに、

投資家へのアピールが活発な都市として存立。

◇北海道における研究開発の中心都市・ハブ都市として、その役割と投資がさらに拡大。

③実現に向けた施策案

○イノベーターの育成、スタートアップ企業の支援体制の強化

・さっぽろ産業振興財団の機能強化

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・支援機関、大学・研究機関等の連携による札幌版スタートアップ・エコシステムの構築

○北大等の最先端の「知の活用」と「産業の創出」

・北大等の最先端の研究成果を活かしたベンチャー企業創出のための、オープンイノベーション

のさらなる推進

・AI、ビッグデータ、ブロックチェーン、医療・バイオ等の先端技術にかかる実証フィールドの

提供

・外部専門人材(札幌市出身の大学 OB 等)とのネットワーク形成と起業支援・コーディネート

体制の強化

○高度な外国人材の誘致・活用促進【再掲】

・外国人研究者を呼び込む仕掛けづくり、研究交流拠点の整備(アート・イン・レジデンスの研

究開発版等)

■参考事例:スタートアップ・イノベーション

都市名 取組等

横浜市

・市民や企業と連携しながら課題解決を進めるオープンイノベーション

の取り組みが盛んな都市。2017 年にオープンイノベーション推進本部

を設立し、オープンデータの活用促進等により、この活動を加速化。

神戸市

・神戸医療産業都市を掲げ、神戸医療産業都市推進機構を中核的支援機関

として、産官学医の連携・融合の促進により革新的な医療技術の創出し、

神戸経済の活性化に取り組んでいる。

福岡市

・福岡市では 1980 年代から IT 関連産業の振興に力を入れ、これが奏功

し、大手エレクトロニクス企業の研究・開発施設をはじめとして、多く

のシステムインテグレーター企業が集積。IT 関連産業の集積という素

地があり、その後の Web システム企業やデジタルコンテンツ企業の誕

生、成長につながっている。

・IT やクリエイティブ分野の企業や若手起業家が多く集まり、「企業が人

を呼び、人が企業を呼ぶ」好循環が生まれている。

京都市

・平成 27 年 3 月に京都市において、今後の成長が期待されるライフサイ

エンス関連産業の振興に向けた「京都市ライフイノベーション推進戦

略」を策定。

・同戦略では、京都の大学等が得意とする分野と京都の企業が得意とする

技術を組み合わせ、最大限の相乗効果が発揮される分野として「次世代

医療分野」、「地場資源活性化分野」「健康・福祉・介護分野」の3つの重

点分野を設定。京都市ライフイノベーション創出支援センターを拠点と

して大学等のシーズ発掘、企業とのマッチング機能をさらに強化。

仙台市

・東日本大震災を一つのきっかけとして、全国や海外から志ある起業家が

集まり、こうした動きとともに、地元でも新たな企業が生まれている。

・仙台市もその動きに伴走する形で、仙台市起業支援センターの設置、東

北の起業家向け育成集中支援プログラムの実施等により若手起業家の

育成・支援に取り組んでいる。

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■参考事例:スタートアップ・エコシステム

都市名 取組等

シアトル ・シアトルとその周辺に、アマゾン・ドット・コムやマイクロソフト、グ

ーグルやフェイスブック、中国のテックジャイアントなど AI 関連の大

手企業とそのエンジニアが集積し、スタートアップが続々と起業するエ

コシステムができている。

バンガロール ・バンガロールは、インド南部カルナータカ州の州都であり、近年では「イ

ンドのシリコンバレー」という異名で呼ばれるほど、世界中の政府・企

業から注目を浴びている。

・急速な経済成長と爆発的な人口増大によって、あらゆる市場が拡大して

いるインドにおいて、国内に約 5000 社も存在するスタートアップの大

多数がバンガロールに集中している。

・従来から、国内有数の研究施設や一流の工科大学、マイクロソフトやオ

ラクル、Infosys など大手 IT 企業が集積しており、近年ではベンチャー

キャピタルやアクセラレーションプログラム、ハッカソン、コワーキン

グスペースなども増えている。

・バンガロールのエコシステムには主に以下の 3 つの特徴がある。

①インドの資本が集中

②ソフトウェアの技術に明るい若い人材が豊富

③シリコンバレーとの繋がり

深圳 ・深圳は、中華人民共和国の広東省に位置する都市であり、近年「ハード

ウェアのシリコンバレー」と呼ばれるほどに経済都市として世界から注

目されている。中国は巨大な経済・人口の規模と国際的な政治関係から、

ますます存在感を高めているが、中でも深圳はハードウェア製品のサプ

ライチェーンが構築されたことや、国家主導で急速な都市開発が進めら

れていること等があいまって、スタートアップや大企業がますます集積

してきている。海外企業の進出も増えているものの、中国企業や中国人

が非常に多いことも特徴的である。

・エコシステムとして主に以下の 3 つの特徴がある。

①分厚いサプライチェーンの構築

②政府の統一的なバックアップ

③ハイテク企業やコワーキングスペースの集積

ラトビア

(196 万人)

・2016 年にスタートアップ企業に対する社会税、所得税を減ずる特別法

案が採択。また、起業家がラトビアを訪れる際の特別なビザをつくり、

投資を促進するための基金を設けた。これにより、多くのスタートアッ

プ企業を生み出している。

・さらに、ラトビア国内の大学では、学術に加えビジネスプログラムを開

設し、特にフィンテック分野の人材輩出に力を入れ、経済学や金融、e-

バンキングや起業、イノベーションに関するコースを増やしている。

大韓民国

大邱テ グ

(247 万人)

・ヘルスケア産業育成に力を入れており、6 つの医療教育機関、約 3,200

の医療機関、2 万 7 千人余りの医療人材を有し、難病の研究や治療で世

界に認められている。

・また、ICT ベンチャーを支援するテクノパーク、デジタル産業振興院、

ウエアラブルデバイス、バイオやロボットを産学連携で研究している先

端医療複合団地等を拠点とする先端医療産業インフラを有し、韓国を代

表する医療のメッカとなっている。

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(4)北海道全体の発展に資する札幌観光

①背景・潮流

・2017 年度に札幌市を訪れた観光客は約 1,527 万人となり、過去最高の数値となった。また、全

国的に外国人観光客が増加するなか、札幌市においても外国人観光客が増加し続け、2017 年度

における外国人宿泊者数は約 257 万人となり、札幌市の地域経済に大きな影響を与えている。

・今後の観光をとりまく環境変化として、2019 年のラグビーワールドカップの日本開催、2020 年

の東京オリンピック開催のほか、2030 年度末の北海道新幹線の札幌延伸、また北海道への LCC

の就航の増加可能性などを考慮すると、インバウンドを中心とする道外からの観光客の増加が期

待される。また、テクノロジーの側面からは、AI など情報通信技術の革新に伴う観光の IT 化が

進むと考えられる。

・一方、道内のみならず全国的にも少子高齢化や人口減少に伴い市場規模が縮小していることから、

今後は、全国的に観光客誘致に向けた競争の激化が予想される。こうしたなか、札幌市は北海道

観光の中心都市であり、北海道観光全体を牽引していくことが求められる。

・さらに、北海道胆振東部地震では風評被害の影響も含めて、インバウンドを中心に北海道旅行の

キャンセルが相次ぐなど、北海道全体の観光客数の入込が減少した。前述のとおり札幌市は北海

道観光の中心都市であることから、緊急時でも対応できる観光地であるほか、風評被害を払拭す

るための役割も今後担うことが求められる。

・高い経済効果や国際的なブランド力の向上が期待される「MICE」については、札幌市における

国際会議開催件数は増加傾向にある。しかし、都市としての規模や魅力度等の MICE 誘致・開催

に有利となる条件は優れているものの、札幌市の MICE 関連施設にホールと展示場が併設され

ていないなど施設面での課題もあり、今後は大規模な MICE の開催機能を備えた施設整備や周

辺自治体との連携強化が求められる。

②札幌市の将来像

・札幌市は、市内への観光客の入込増のみならず、観光客の地方への分散誘導や富裕層の個人客等、

これまで北海道観光が弱いとされてきた客層の入込を増やすことが求められており、中長期的に

は以下の都市像が期待される。

◇札幌市内及び周辺地域や道内中核都市との連携も視野に、インバウンドの FIT 化(個人海外

旅行)への対応、伸び悩んでいる北海道内を含めた国内観光客の獲得に向けた対応、高齢化

などを背景としたハード面・ソフト面のバリアフリーへの対応、さらに夜間観光など魅力あ

る新たな観光の創造。

◇札幌市は ICT 企業が集積しており、今後は空港・バス・その他公共交通情報等の効果的把

握、観光客の観光行動や動態の効果的把握、効果的な業務オペレーションの推進や観光情報

の効果的発信などの面で観光産業と融合し、ICT を活用した観光の先進地として存立。

◇札幌市内には観光系の教育機関も蓄積しており、札幌市内における観光振興のみならず、札

幌市で養成した観光人材の道内地域への輩出、人材間連携なども視野に入れた北海道全体の

観光人材の育成にも貢献。

◇札幌市内で大規模な国際会議や展示会などが数多く開催され、会議等の参加者以外にも多く

の来訪者が訪れている。周辺自治体と連携し関連したアフターコンベンションやエクスカー

ションなども充実。

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③実現に向けた施策案

○北海道のゲートウェイ都市としての機能強化

・Wi-Fi 環境の拡充

・全ての人が訪れやすいハード・ソフトのバリアフリー化

・各種案内の多言語化

・北海道全体のためのプロモーション

・デジタルマーケティング(観光実態の可視化、継続実施)

・AI や IoT 実証による情報収集・提供

・災害時の外国人観光客対策

○MICE の振興

・MICE の競争力強化

・MICE 体制強化支援

・人材育成

○都市の魅力向上

・ナイトエンターテイメントの魅力向上

・「食」の魅力アップ

○観光関連産業の振興

・違法民泊対策

・宿泊施設等の多言語対応の推進 ・経営強化のためのセミナー実施や人材育成

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■参考事例:ゲートウェイ都市としての取組

都市名 取組等

福岡市 「WITH THE KYUSHU」

■事業ミッション

○九州の拠点都市としての役割を認識し、「WITH THE KYUSHU」とし

て、九州各地の自治体と連携し、九州の発展につなげることを目指し

てさまざまな取組みを推進。

■主な取組

○九州広場

福岡市役所前のイベントスペース『九州広場』を無償で提供し、九州

各地の観光・物産展を月 5~6 回程度開催。

○九州情報コーナー

福岡市役所1階ロビーで、九州各地の観光案内リーフレットの配布や

ポスターを掲示するほか、九州自治体のPR動画を放映。

○福岡市・九州離島広域連携事業

九州のゲートウェイ機能を有する福岡市と空・海の直行便(1時間程

度)で結ばれる離島が連携し、各々の地域が持つ魅力や福岡市からの

アクセス利便性を国内外に発信。

【連携自治体:壱岐市、屋久島町、対馬市、五島市、新上五島市】

○Free Wi-Fi 認証連携

福岡市無料公衆無線 LAN サービス『Fukuoka City Wi-Fi』と、大分

市・別府市・由布市の三市が共同で取り組む大分県市町村無料公衆無

線 LAN『Onsen Oita Wi-Fi City』との認証連携し、訪日外国人旅行者

等の利便性向上を図る。

○MICE等を活用した各種イベント等

・九州MICE商談会・ファムトリップ

九州へのMICE誘致に向けて、海外バイヤーや海外メディアを招聘

し、九州各地の自治体、コンベンション協会等が参加する商談会等を

実施。

・ライオンズマーケット 2016

世界約 140 の国・地域から訪れる 3 万 5 千人のライオンズクラブ国

際大会参加者に向けて、九州各地の魅力を発信する「ライオンズマー

ケット」を実施。(各自治体や観光協会等が観光、食、名産品などを紹

介するブースを設置)

・Food EXPO Kyushu

国内外のバイヤー及び一般消費者に向けて、広く九州の食を発信する

「国内外食品商談会」、「九州うまいもの大食堂」を実施。

○被災地支援に関する取組み

「WITH THE KYUSHU」の理念のもと、市民や企業の協力のもと、

福岡市として被災された地域への支援に取り組んでいる。

支援実績:東日本大震災の被災地支援に始まり、平成28年熊本地震、

平成29年7月九州北部豪雨、平成30年2月台湾東部沖における地震、平

成30年6月大阪府北部を震源とする地震災害、平成30年7月豪雨、平成

30年9月北海道胆振東部地震災害に対し、人的・物的支援、義援金支援

などを実施。

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■参考事例:食と観光

国・都市 概 要

スペイン

サン・セバスチャン

(19 万人)

・「美食の聖地」として知られ、食でまちづくりを成功させた街である。

旧市街地においしいピンチョスがあるバルが数多くあり、食べ歩きが

楽しめる。料理業界の伝統的な弟子制度を廃止し、レシピ等を共有す

る「料理のオープンソース化」を実現したことで、街全体の食のレベ

ルの向上につながった。

・また、料理専門学校「ルイス・イリサール」を中心に伝統的な料理、

新しいバスク料理の創造、料理業界では珍しいオープンマインドの精

神が培われている。

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(5)健康・コミュニティを柱としたまちづくり

①背景・潮流

・近年、我が国においては、人口減少および少子高齢化の進展とともに地方における過疎化と地域

間格差が進んできており、各自治体においては、少子化対策として出産・子育て対策、過疎化対

策としての雇用の場の創出、後継者対策、定住人口の確保など、各種戦略の立案が模索・検討が

進められている。

・このような地域戦略の立案に当たっては、産業振興・雇用等の経済面に加えて、経済活動の担い

手である住民の健康増進とそれを支える生活環境の向上が検討課題であり、これは定住人口の確

保の観点からも重要な地域政策の柱といえる。

・また、人口減少・高齢化、認知症高齢者の増加、医療・介護費の財政負担増が課題となるなか、

健康無関心層の行動変容促進により健康づくり・介護予防をいかに推進するかが喫緊の課題とな

っている。

・とりわけ健康づくりに関して、近年では、健康行動に対するインセンティブの導入、異業種によ

るヘルスケアビジネスの参入を契機とした官民連携による健康サービスの提供、健康寿命延伸住

宅の開発など、民間活力を積極的に生かすことで健康長寿を図る動きがみられている。特に、ヘ

ルスケア分野での技術応用の進展は著しく、センサー等により個人の健康データを自動的に取得

し、AI が個人の健康状態等を管理・指導する仕組みなどがあり、さらに技術が進歩すると、顔の

表情などから健康状態を把握できるようになる。

・このような健康増進および生活環境の向上を目指すまちづくりにおいては、公共だけの対応には

限界があることから、官と民(住民)の連携促進も必要であり、例えば、市民コミュニティを媒

介とした推進体制があげられ、そのためには住民自らが主体的に参加・行動していくこと(コミ

ュニティを再生すること)が求められている。

・また、上記のような「健康とコミュニティ」を要素としたまちづくりを想定すると、他都市でも

動きがみられるように“スポーツ”を切り口とした取り組みが考えられる。

・札幌市は、オリンピック開催都市であり、2030 年冬季オリンピック・パラリンピック招致の検

討も進めている。さらに、スポーツ球団の活動や大規模スポーツイベントの開催などがあり、ス

ポーツは市民にとって身近なもので、都市のイメージとしても結び付きやすい。市民は参加・鑑

賞の両面からスポーツの楽しみを享受しており、健康とコミュニティを両立する要素となりうる。

・例えば、札幌市の気候的な特性を生かす側面から市民の冬季の運動量の確保や除雪ボランティア

の推進など、スポーツを広義に捉え地域の課題解決ツール(コミュニティツール)として活用す

ることも期待される。

・さらに、スポーツへの参加拡大にはスポーツ・運動の無関心層の掘り起こしが必要であり、例え

ばスポーツ×IT による「スポーツのエンターテイメント化」の推進など、スポーツ×異業種の組

み合わせによる新たな産業を創出できる可能性もある。

②札幌市の将来像

・札幌市は国内他都市と比較して、平均年齢が高く、高齢化率は中位にあるがそのスピードは速い。

海外都市との比較でも高齢者比率は高い状況にある。

・政令指定都市の中で、将来の人口減少度合は中位にあるが、合計特殊出生率は最も低く、この状

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況が続くとますます高齢者比率が高まることとなり、それに対応した都市環境の整備が必要とさ

れる。

・また、「経済の強さ・人材」の面では新しい産業の創出、高齢者の活用促進が必要とされ、上記の

指標が含まれる「生活・コミュニティ」以外でも、健康・コミュニティは方向性・施策検討のテ

ーマとなりうる。

・こうした課題を踏まえて、市民の健康づくりや市民コミュニティを高次化していく必要があり、

中長期的には以下の都市像が期待される。

◇シニア層を中心した道内市町村からの人口流入等への対応が充実し、健康を支えるコミュニ

ティづくりの先進地として国内外に発信。

◇ヘルスケア分野に関して、官民連携の取り組み、異業種・異分野を掛け合わせた取り組みが

活発な都市として存立。

◇新しいコミュニティ(健康につながるワクワク感・刺激等)が形成され、若者から高齢者ま

で多世代の市民参画や市民交流が活発な都市として存立。

◇健康・スポーツにかかるコミュニティ形成をベースに、歴史・文化、学校教育・生涯学習、

地域コミュニティ(町内会・自治会等)再生、企業のスタートアップ支援など幅広く展開。

③実現に向けた施策案

○健康を支える新しいコミュニティづくり

・女性就労支援とシニアビジネス(シニア起業家、リタイア人材等)を連動させる仕組みづくり

・アート×まちづくり、先端技術×まちづくりの推進(札幌国際芸術祭、NoMaps、メディアア

ート推進などに連動した市民コミュニティ形成)

・運動と遊びとエンターテイメントを包含するスポーツ市民コミュニティの形成

○多世代が参加・交流する健康づくり事業

・サピカポイントの活用など公共的なインフラと連動した健康づくりプロジェクト推進

・マラニックや食文化体験教室など若者から高齢者まで幅広い層が参加する健康づくりイベント

推進

○健康・スポーツ関連産業の振興

・ヘルステックを推進する IT・ものづくり産業の創出・支援

・市民協働型の実証フィールドの創出(スーパー、再開発ビル、商店街、IoT 推進ラボ、NoMaps

等の活用)

・ヘルスケア、医療、シニアなど今後の成長市場をターゲットとした事業化支援【再掲】

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■参考事例:ヘルスケア・コミュニティ

都市名 取組等

仙台市

フィンランドと共同で進める「仙台フィンランド健康福祉センタープロジ

ェクト」では、フィンランドと日本の企業・大学が連携し、フィンランド

型福祉と日本の福祉を融合させた、高齢者の自立に役立つ健康福祉機器・

サービスの開発・提供と、地域住民の健康増進を推進。

横浜市(港北区)

ラグビーワールドカップ 2019 や東京 2020 大会を念頭に、港北区民が、

自分が行ったスポーツに関するデータ(スポーツデータ)を収集・分析・

考察する力を養う取組を行うとともに、スポーツデータに関するオープン

データ推進のための取組を実施。

横浜市

よこはまウォーキングポイントでは、市民だけではなく事業所単位での登

録により、事業所同士で歩数ランキングを競える仕組みを導入し、企業の

健康経営の推進も図る。

神戸市

日本初となる本格的な「ソーシャル・インパクト・ボンド」を導入し、糖

尿病性腎症等の罹患者で人工透析に至るリスクが高い人を対象に、受診勧

奨及び保健指導を実施し、重症化を予防する事業を実施。民間資金と活力

を生かしたヘルスケアを推進。

松本市

健康寿命延伸都市を総合計画に掲げ、住民の健康づくりとヘルスケア産業

の創出の同時実現に向けて、分野横断的な部署間連携、官民連携によりバ

ラエティに富んだ健康づくり施策を推進。

新潟市

健康づくりとまちづくりを一体的に進める「健幸都市」を推進。運動支

援事業、新潟未来ポイントの導入と公共交通の整備、歩行空間の整備など

を推進し、歩いて健康になるまちづくりとまちのにぎわい創出を図る。

京都市 【ポータルサイトの立ち上げ】

京都市 自治会・町内会&NPO おうえんポータルサイト

応援します!みんなで進めるまちづくり

構成・情報

・地域を良くしたい 自治会・町内会情報

・社会を良くしたい NPO 情報

・つながり合いたい 自治会・町内会と NPO の連携

・多様な主体との協働による地域の活性化

→札幌市の「マチトモ」に NPO との連携を加えたもの

■参考事例:スポーツシティ

国・都市 概 要

オランダ

ロッテルダム

(62 万人)

政府から「スポーツシティ」として認定を受け、スポーツを通じて市民だ

けでなく、観光客の積極的な参加を促している。観光ツアーにスポーツ参

加を盛り込み、誰もが気軽にトライできるよう、様々なプロジェクトを掲

げられている。

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(6)災害に強いまちづくり

①背景・潮流

・近年我が国では、東日本大震災、西日本豪雨災害など自然災害が多発している。また、南海トラ

フ地震や首都直下地震、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震の発生する確率が高まってきており、

国土強靭化、自然災害等に対するレジリエンスの向上がますます重要視されてきている。

・世界的にみても、近年、災害、テロ攻撃をはじめ、様々なインシデントが頻発しており、人命を

守り、被害及び損失を軽減し、社会活動にとって不可欠な諸機能を必要最低限のレベルで確実に

維持させるため、災害対応力の強化の重要性がますます高まってきている。

・札幌市は、自然災害の少ない都市とされてきたが、過去には石狩川の氾濫や先の北海道胆振東部

地震では清田区や東区で液状化の被害が発生するなど、災害に無縁の都市とはいえない。また、

北海道胆振東部地震では、ブラックアウトや風評被害もあり、インバウンド観光に多大な影響を

与えた。災害に強いまちづくりを進めることは、今後の都市の成長を図る上で必須の要件となっ

ている。

・以上に対応して、今後の都市には、災害を未然に防ぐことに加え、たとえ災害が発生したとして

も、被害を最小限に食い止め、社会活動にとって不可欠な諸機能を必要最低限のレベルで確実に

維持するとともに、早急に復旧できる体制を構築することが求められている。

・また、災害対応能力の強化のためには、地方自治体等による「公助」に加え、地域住民自らの備

えによる「自助」、地域住民同士が支え合う「共助」の取組を一体的に推進することが不可欠で

ある。特に高齢化が一層進展する我が国、札幌市においては、地域社会における共助の果たす役

割が一層増大することが予想され、災害時における要援護者対策や雪下ろしなどの場面において

高齢者等を地域ぐるみで支援することが重要な課題となっている。

・さらに、札幌都心地域には、通勤・通学者や観光・買物等を目的とした人々が、平日・休日を問

わず互いに往来している。仮にこのような都市部の直下または周辺で大規模な地震が発生した場

合、鉄道・バス等の大量交通手段が停止することにより、都市部へ流入している人々の帰宅が困

難な状況となるため、被災地へ大量の滞留者が発生し、社会的混乱、膨大な物資負担、応援活動

の妨げ等の問題が生じる可能性がある。このため、発災直後に避難・帰宅対象者が必要とする情

報を適時・的確に収集・提供できる手段や仕組み及び体制を整備し、避難・帰宅行動時に避難・

帰宅対象者が安全かつ迅速に行動できるようにしておく必要がある。

②札幌市の将来像

・本調査では、「安全・環境・快適性」の面において災害リスクをとりあげ、ロイズ銀行とケンブリ

ッジ大学の共同研究による GDP リスクを指標とし国内外都市と比較した。国内他都市との比較

では低いほうであるが、海外 10 都市との比較ではバルセロナに次いで高い状況にある。

・また、災害対策の強化は、「経済の強さ・人材」の面においても企業誘致・人材誘致に間接的に寄

与し、「文化・交流」および「生活・コミュニティ」の面においても、観光客への対応、超高齢時

代への対応にもつながることとなる。

・前記のとおり、札幌市は自然災害の少ない都市とされてきたが、先の北海道胆振東部地震の経験

をふまえて経済的影響、市民生活面での影響を想定すると、災害に強いまちづくりをさらに推進

する必要がある。中長期的には以下の都市像が期待される。

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◇災害を未然に防ぐ強靭な都市を構築するとともに、たとえ不測の災害が生じた場合でも、レ

ジリエンスを備えた都市、防災・減災意識の高い都市を構築し、市民が安心して暮らせる都

市、国内外から安心して来訪してもらえる都市として存立。

◇札幌市は、大規模自然災害が少なく、地理的に首都圏や関西圏から一定程度離れており、南

海トラフ地震や首都直下地震等による大規模災害が発生した場合に、同時被災のリスクは低

いことから、救助・救援活動や迅速な復旧・復興に貢献することに加え、首都圏等に集中し

ている諸機能のバックアップ体制の構築・リスク分散等に積極的に貢献。

◇自然災害のリスクが小さいことは、国内外の企業が日本での事業展開を検討する際、アピー

ルポイントの一つとなるものと考えられる。札幌市は自然災害のリスクが小さく、かつたと

え災害が起こったとしてもレジリエンスを備えた都市となり、海外からも評価され、企業等

の立地が促進。

③実現に向けた施策案

○強靭なハード・インフラ整備・更新

・大規模な地震や集中豪雨等が発生しても、大規模な災害を発生させない強靭なハード・インフ

ラの整備・更新(特に、老朽化しているインフラの長寿命化・更新)

・住宅、建造物等の耐震化・老朽化対策の推進

○地域防災力の充実・強化

・適切な災害情報の提供及び体制の整備

・ハザードマップの周知

・自主防災組織の組成

・地区防災計画の策定

○災害時の昼間流入人口問題への対応

・発災直後に避難・帰宅対象者が必要とする情報を適時・的確に収集・提供できる手段や仕組み

及び体制の整備

○首都圏等のバックアップ機能の発揮

・リスク分散のための企業立地の推進・誘致

・道外の大規模災害に備えた災害対応能力の強化

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■参考事例

都市名 取組等

100RC 100RC はロックフェラー財団により創設されたプロジェクトで、21 世紀に入って拡大しつつある社会的、経済的、物理的課題を念頭に、世界中の都市と提携してレジリエンス向上に取り組む。 以下 3 つの世界的傾向がもたらす悪影響に対処しようとする都市の取り組みをサポートすることを目的とする。 ・都市化

都市人口が急増している。世界の人口は今世紀半ばに 90 億人に達し、その 7 割が都市部に居住すると推定される。多くの人々が壊れやすい生態系で暮らし、危険にさらされている人々の数は空前の規模に達している。

・グローバル化 都市間のつながりは、かつてないほど緊密であり、1 都市で発生したシステム障害が全世界に波及する恐れがある。

・気候変動 気候変動は都市システムに新たな社会的、財政的、政治的課題を生じさせている。

100RC は 2 つの問題の解決を目指す。 1. 都市は複雑な縦割り構造の生態系である。 2. 既存の解決策は都市に適合しないか、または効率的に届けられていない。 日本では、富山市、京都市が選定されている。 参考:京都市の現状について

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(7)暮らし・活力・環境を重視する交通体系

①背景・潮流

・今後想定される将来的な人口減少、少子高齢化の急速な進展、経済活力の低下、低炭素型都市の

実現などの課題のある中で、総合的な交通体系の確立は喫緊の課題である。特に道内では増加す

るインバウンド需要への対応、JR 北海道の赤字路線存廃問題、バス・タクシーの運転手不足等の

課題に対応していくことが求められている。

・一方、札幌市では、公共交通利用者の減少、短距離での自動車利用の増大、免許・自動車を持た

ない高齢者の増加などの課題を抱えている一方で、北海道新幹線札幌延伸という新たな展開・局

面を迎えようとしている。また、札幌市の持つ都市機能を北海道内で活用し、北海道全体が活性

化するためにも、交通の果たす役割は大きいといえる。

・また、自動運転、カーシェアリング、IT を活用したタクシー配車、空飛ぶ車等新たな交通・モビ

リティ分野の革新が進むことが予想される。

・札幌市では、札幌市独自の将来交通に対する「基本的な考え方」(~2030 年度)および 10 年間

の短・中期計画となる「交通戦略」を取りまとめ、平成 24 年(2012 年)1 月に「札幌市総合交

通計画」として策定している。

・本調査では、この「基本的な考え方」を踏襲しつつ、下記にあげた計画策定後の環境変化等を踏

まえた目標を「新しいモビリティサービスの普及拡大によるスマートモビリティ社会の実現と経

済活性化」とし、それに焦点をあてた施策を提案する。

「札幌市総合交通計画」策定後の環境変化

【社会的要素】

・人手(運転手)不足

・高齢者ドライバーによる事故の増加

・高齢者の運転免許証自主返納等に伴う移動弱者の増加

・インバウンドの拡大(交通需要の拡大・多様化) など

【技術的要素】

・自動運転・自動走行技術の進展

・IoT や AI を活用した新しいモビリティサービスの登場

・MaaS(マルチモーダルの一括検索・予約・決済サービス)

・カーシェア・ライドシェア・デマンドバス・マイクロトランジット(需要に応じて運行

ルート等を柔軟に変更するデマンドバス運行サービス)・相乗りタクシー

・貨客混載・ラストマイル配送無人化 など

②札幌市の将来像

・前項(1)でも述べたとおり、札幌市は経済成長・生産性の面で国内外都市に後れをとっているこ

とに加え、「文化・交流」の面では、北海道全体と共栄する観光振興、国際コンベンション振興へ

のインフラ対応、「生活・コミュニティ」および「安全・環境・快適性」の面では、超高齢時代へ

のインフラ対応、環境への対応、コンパクトシティへの対応が必要とされる。

・今後はこうした点に寄与する新しい交通体系を構想・整備していく必要があり、中長期的には前

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記の「新しいモビリティサービスの普及拡大によるスマートモビリティ社会の実現と経済活性化」

も包含した以下の都市像が期待される。

◇引き続き道内における国際的なビジネス・観光の拠点として機能するとともに、北海道全体

にその効果を行き渡らせる交通体系を確立。

◇観光・物流・医療などで大きな魅力や安心を有する拠点と、国内外との交流・連携を支える

2 空港、3 港湾、新幹線駅との連携強化を図ることにより、様々な人と人、地域と地域をつ

なぐ交通体系を実現。

◇高齢者から子供まで、誰もが安全・安心に暮らすことができる公共交通を軸とした利便性の

高い交通体系、環境負荷を低減させ、豊かな自然環境と持続的に共生していくために、適切

な交通手段が選択できる交通体系を実現。

◇積雪寒冷地における自動運転等の技術開発をリードする都市として存立。

③実現に向けた施策案

○DX(デジタルトランスフォーメーション)時代に貢献する基盤づくり

・交通関連情報のデジタル投資促進と連携・利活用拡大のため基盤整備

・積雪寒冷地における自動運転の実証プロジェクト推進

○新しい技術の活用に向けた官民連携と社会実装の促進

・MaaS(マルチモーダルの一括検索・予約・決済サービス)を展開する企業の発掘・育成と社会

実装

・新たな移動手段を提供、既存の交通手段の利便性を向上するサービスを展開する企業の発掘・

育成

・物流サービスの高効率化、省人化・無人化を実現するサービスを展開する企業の発掘・育成

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■参考:「札幌市総合交通計画」(基本的な考え方:2011 年度~2030 年度の 20 年間)

●計画理念の考え方

札幌市は、歴史・文化資源を含め北海道内で最も高度な都市機能が集積しており、自然公園

や森林資源など、都市にとって重要な要素を十分に保持していることが大きな特徴です。

また、夏は冷涼、冬は積雪寒冷な気候といった、北国らしい特徴的な環境・風景を有している

ほか、国際港湾や国際空港が近接し、ひと・もの・情報等の国際交流の促進が可能な極めて恵

まれた条件も備えています。

札幌市はこれまで、人口が増加すると共に都市の規模が拡大してきました。

しかしながら、経済成長の鈍化、地球環境問題の深刻化など様々な課題に直面しており、特

に、近い将来、全国的にもかつて経験したことがない本格的な人口減少・超高齢社会の到来が

予測され、札幌市においても同様の予測がされています。

こうした時代潮流の大転換期を迎えるにあたり、地域の特徴的な資源・特性を活かして、人

口減少下においても都市機能の持続的発展・成長を目指したまちづくりが求められています。

札幌市総合交通計画においては、将来都市像の実現を交通の面から支えるために、「暮らし」、

「活力」、「環境」の3つの視点を重視する中で、「公共交通と自動車」、「整備と活用」、「行政、

市民・企業、交通事業者の役割」といった3つのバランスを考慮した都市交通を目指し“計画理

念”を設定しました。

●3つの視点

○暮らし

日常生活を支える各拠点において、それぞれの特性に応じた多様な都市機能の集積を図ると

ともに、北国の文化を承継しながら、お年寄りから子供まで、誰もが安全・安心に暮らすこと

ができる、公共交通を軸とした利便性の高い交通体系を実現します。

○活力

都心部には、道内・国内外と交流・連携する多様で高度な機能の集積を誘導する必要があり、

産業・流通、田園地域との連携強化を図りながら、北海道経済を牽引し、その機能を持続・発

展させる市民活動・経済活動を支援する交通システムを実現します。

また、観光・物流・医療などで大きな魅力や安心を有する拠点と、国内外との交流・連携を

支える2空港、3港湾、新幹線駅との連携強化を図ることにより、様々な人と人、地域と地域

をつなぐ交通体系を実現します。

○環境

地球温暖化などの環境負荷を低減させ、豊かな自然環境と持続的に共生し、公共交通の利用

促進等による適切な自動車利用を誘導し、適切な交通手段が選択できる交通体系を実現しま

す。

●3つのバランス

○公共交通と自動車

「公共交通を軸とした交通体系の確立」と「適切な自動車交通の実現」による「公共交通と

自動車」のバランス。

○整備と活用

“つくる”から“活かす”“上手につかう”といった視点の転換に伴う「整備と活用」のバランス。

○行政、市民・企業、交通事業者の役割

「公共交通の維持」や「地球温暖化対策」に対する「行政、市民・企業、交通事業者の役割」

のバランス。

●基本方針

○暮らし ・地域特性に応じた『拠点のまちづくり』を支える公共交通と自動車

○活力 ・道都さっぽろの顔となる『都心まちづくり』を支える

・さっぽろの『都市観光』を支える

・圏域連携のための『広域交通』を強化する

○環境 ・交通システムの充実により『環境首都・札幌』の実現を支える

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■参考:IoT や AI が可能とする新しいモビリティサースの類型

資料:経済産業省「IoT や AI が可能とする新しいモビリティサースに関する研究会」中間整理

サービス内容

ラウンドトリップ型借り受けたステーションへの返却を前提としたカーシェアサービス

近年ではスマホアプリにより予約/借受/返却手続きが可能に

ステーション型 借り受けた場所と異なる場所に返却することができる、乗り捨て型のカーシェアサービス

フリーフロート型 決められたエリア内であれば、道路上やこうきゅ駐車場など自由に乗り捨てることができるカーシェアサービス

所有する自家用自動車を、利用者間で貸し借りできるカーシェアサービス

通常の路線バスをベースに、予約があった場合に限り運行するサービス

利用者の需要に応じて高頻度で運行ルート・時刻を更新して運行する乗合バスサービス

タクシー配車 配車アプリ等により、高効率にタクシー配車を行うサービス

相乗りタクシー 配車アプリ等を用い、同方向に移動する利用者のマッチングを行い、まとめて効率的に運送するサービス

ライドヘイリング 一般ドライバーが自家用車を用いて乗客を運送するサービス

カープーリング 同方向への移動者同士のマッチングを行うサービス

複数の交通モーダル(鉄道・バス・タクシー・カーシェア等)を統合し、

アプリを通じた一元的な検索・予約・決済を実現したサービス

荷主と物流の担い手のマッチングサービス

旅客運送事業者による貨物運送と、貨物運送事後湯者による旅客運送の両方を含んだ、

ヒトとモノの混載運送サービス

ラストマイル配送でドローンを含む無人配送ビークルを活用した配送サービス

アプリ等を用い、月極や個人の駐車場を一時的に貸し借りすることを可能とするサービス

既存のモビリティサービスのインフラを活用し、

フードデリバリー提供や広告・クーポン配信等を活用した消費誘導を行うサービス

車両のコネクテッド化を通じた、メンテナンス、業務オペレーション等の高度化サービス

C2C

サービス分類

定路線型

準自由経路型(マイクロトランジット)

B2C

C2C

B2C

コネクテッドカ―サービス

移動サービスと周辺サービスの連携

駐車場シェアリング

ラストマイル配送無人化

貨客混載

物流P2Pマッチング

マルチモーダルサービス

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(8)札幌型スマートシティの形成

①背景・潮流

・交通網やエネルギー不足、少子高齢化の進展など様々な都市課題が顕在化する中、あらゆる課題

解決を目的としてスマートシティに注目が集まっている。スマートシティとは、ICT、AI、IoT

等の先端技術を用いて、基礎インフラと生活インフラ・サービスを効率的に管理・運営し、環境

に配慮しながら、人々の生活の質を高め、継続的な経済発展を目的とした新しい都市の概念であ

り、都市の規模を問わず、生活、環境、経済活動、教育、交通、行政等の分野で模索されている。

・スマートシティが注目を浴びた当初(2000 年代)は、電気・ガスなどのエネルギー消費を街全体

で効率化するといった環境問題の解決が主要テーマとなっていたが、現在では、エネルギー以外

にも交通や防災、医療などの様々なインフラに ICT の先端技術を適用し、街の運営の効率化や

住民向けサービスの向上を実現する試みが始まっている。

・スマートシティのフレームワークについては、ウィーン工科大学が開発したモデルがある。ウィ

ーン工科大学では、本フレームワークに基づき、欧州の都市の評価を行っている。

【ウィーン工科大学が開発したスマートシティのフレームワーク】 スマートエコノミー Innovative spirit(先進性)

Enterpreneurship(起業家精神) City image(都市のイメージ) Productivity(生産性) Labour Market(労働市場) International integration(国際統合)

スマートピープル Education(教育) Lifelong learning(生涯学習) Ethnic plurality(多民族) Open-mindedness(オープンな心)

スマートガバナンス Political awareness(政治意識) Public and transparent administration(公開と透明性)

スマートモビリティ Local Transport System(ローカル交通システム) (Inter-)national accessibility(国際的なアクセス) ICT-infrastructure(ICT 基盤) Sustainability of the transport system(交通システムの持続性)

スマートエンバイロンメント

Air quality(no pollution)(空気のきれいさ) Ecological awareness(環境意識) Sustainable resource management(持続可能な資源管理)

スマートリビング Cultural leisure facilities(文化レジャー施設) Health conditions(健康状態) Individual security(セキュリティ) Housing quality(家の質) Education facilities(文教施設) Touristic attractiveness(観光魅力) Social cohesion(社会的結束)

・とりわけ地球規模で深刻化する環境・エネルギー問題への対応において、スマートシティ推進に

より持続可能性を保持しながら資源やエネルギーなどを利用していく循環型社会へと変革して

いくことが求められている。このため、様々なレベルで、省資源、省エネルギー、ゼロ・エミッ

ション、3R、RE100 などの取り組みが進められている。このうち、特に重要視されているのが、

地球温暖化対策、豊かな自然共生社会の実現、循環型社会の形成の 3 点である。

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・札幌市では「札幌市 ICT 活用プラットフォーム」を組織化し、スマートシティを推進している。

センサー等を通じた多様なデータの収集・蓄積と、これを観光、交通、健康といった幅広い分野

へ活用したプロジェクトを推進するとともに、積雪寒冷地特有の除雪や凍結といった課題を解決

することで、①生活の向上、②経済の活性化、③行政の信頼性・透明性の向上を図っていくこと

が期待される。

・蓄積したデータを民間が有効に利活用できる仕組みづくりや、データ利活用者とのマッチングを

推進しデータ流通の活性化と新たな価値創造を推進するとともに、収益モデルと運営組織の確立

による持続可能なプラットフォーム運営基盤を実現することが重要である。

②札幌市の将来像

・先にも述べたとおり、札幌市は経済成長・生産性・人材多様性の面で国内外都市に後れをとって

いることに加え、「イノベーション・スタートアップ」の面ではエコシステムの創出・強化、「文

化・交流」の面では観光客へのインフラ対応、「生活・コミュニティ」及び「安全・環境・快適性」

の面では、進化する ICT の教育への対応、環境への対応、都市経営の効率化が必要とされる。

・こうした点を克服するためにも、次代の社会経済環境に即した新しい都市インフラの形成、いわ

ば札幌独自のスマートシティへと変貌していく必要があり、中長期的には以下の都市像が期待さ

れる。

◇様々な都市課題が顕在化する中、AI、IoT、ブロックチェーン等の先端技術を用いて、基礎

インフラと生活インフラ・サービスを効率的に管理・運営し、環境に配慮しながら、住民の

生活の質の向上、都市の魅力を向上、継続的な経済発展を実現。

◇6つの分野「スマートエコノミー、スマートピープル、スマートガバナンス、スマートモビ

リティ、スマートエンバイロンメント、スマートリビング」を柱に、先端技術を活用して少

子高齢化や経済の活性化などの様々な都市課題を解決することで、生活の向上、経済の活性

化、行政の信頼性・透明性の向上を実現。

◇「環境首都・札幌」として、低炭素社会の構築、自然環境・生物多様性の保全、循環型社会

の構築等に積極的に取り組み、世界に誇れる「環境首都・札幌」へと進化し、世界に向けて

発信。

③実現に向けた施策案

○イノベーターの育成、スタートアップ企業の支援体制の強化【再掲】

・さっぽろ産業振興財団の機能強化

・支援機関、大学・研究機関等の連携による札幌版スタートアップ・エコシステムの構築

○誰もが ICT の利便性を享受できる基盤づくり(スマートリビング)の推進

・ICT を活用した各種の生活サービス、観光客サービスの充実(及びそのための行政の支援)

・ICT 教育の充実(学校教育、生涯教育の充実、情報弱者への対応等)

・公共情報(ビッグデータ)のオープンデータ化・プラットフォーム化とビジネスに生かす仕組

みづくり

・行政手続きのオンライン化

・公共施設・インフラ等の管理運営システムの刷新

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○ポスト「環境首都・札幌」(スマートエンバイロンメント)の推進

・再生可能エネルギー導入促進

・地域分散型エネルギーシステムの導入促進

・スマートメーターと EMS の連携による省エネ・省 CO2 の推進(見える化)

○新たな交通システム・サービス(スマートモビリティ)の推進

・環境にやさしい公共交通システムの構築

・官民連携による新たな交通サービスの提供(MaaS 等)

・新千歳空港・丘珠空港と連動した ICT 活用促進とアクセス強化

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■参考事例:スマートシティ

国・都市 概 要

アメリカ ポートランド (65 万人) ※姉妹都市

・リノベーション型の再開発、公共交通が整備され、歩いて移動できるコンパクトなまちづくりが行われ、「全米で最も住みたいまち」「最も環境にやさしい街」として評価されている。

・地球温暖化対策を進めながら人口増加と経済成長を両立している「環境未来都市」であるとともに、住民参加のまちづくりでも有名。

フィンランド ヘルシンキ (63 万人)

・カーシェアリングサービスは街中で見かけられるようになり、一部の地方公共団体や企業によって実験的にバイクシェア等も行われている。

・さらに、自動運転や AI、オープンデータ等を掛け合わせ、従来型の交通・移動手段にシェアリングサービスも統合して次世代の交通を生み出す動きが欧州から出てきている。それが MaaS(Mobility-as-a-Service)であり、ヘルシンキはその先進的な取組を行っている都市として有名。

オーストリア ウィーン (184 万人)

・歴史的建造物とスマートシティを調和し、観光産業のさらなる発展を目指し、観光客や市民の QOL 向上に最も力を入れている。バスの電動化や路面電車の省エネ化の推進、究極の低炭素化の交通機関である自転車の普及にも努め、自転車の使用を前提とした公営住宅の提供などを推進。

・人の流れを監視し混雑状況を解析し制御する「クラウドダイナミクス」により、観光客が快適に旅行できる環境を提供。

ドイツ ハンブルク (179 万人)

・ヨーロッパ・グリーン・キャピタルにも選ばれた環境都市。2020 年から公共バスの温室効果ガス排出量をゼロにすることを決め、風力発電の余剰電力を利用した水素ステーションを設け、2003 年より水素バスを導入。また、ドイツのメディアの中心地でもあり、ドイツ通信社、北ドイツ放送をはじめ多くの民放、ドイツ最大規模の新聞社、雑誌社が拠点を置く。

・国際会議や見本市の開催地としても国際的に高く評価されており、世界一多くの領事館を擁する都市としても知られ、情報の発信拠点となっている。

スペイン バルセロナ (161 万人)

・スマートシティの草分けであるとともに、オリンピックを契機に観光都市として発展するために必要なインフラ整備などのインバウンド政策を施行し、スペイン随一の観光都市となった。その一方で、観光公害が深刻化し観光客の削減につながる政策に乗り出した。

ドイツ ミュンヘン (145 万人) ※姉妹都市

・ドイツ国内の IoT 分野の先駆的地域で、IT 企業とデジタル技術に力を入れている。2014 年に欧州の ICT ハブ拠点として、ロンドンとパリを抑えて選ばれた。

・また、2025 年までに再生可能エネルギー電力率 100%を達成することを目指し、風力、太陽光、地熱、バイオマス発電の導入、電気自動車によるタクシーサービスなどを進めている。さらに、世界最大規模のビール祭りオクトーバーフェストには海外からの観光客も多い。

エストニア (132 万人)

・国をあげてスマートシティへ取り組み、「世界最先端の電子国家」「eHealth先端国」とも呼ばれており、IC チップ搭載型の ID カードにより、医療機関をはじめとする 99%の公共サービスにアクセスできる。

・小学生~高校生を対象とした早期 IT 教育をはじめ、大学でのテクノロジー人材育成にも力を入れており、スカイプをはじめとする有力なスタートアップ企業を生み出している。

シンガポール (561 万人)

・役所での手続きや税金、電話料金等の支払いにおいても ICT 化が進んでおり、アジアにおける ICT 先進地である。

・また、「スマート国家構想」を背景にデジタル医療が発展しており、2016年以降、公立病院や民間機関から、ヘルスケア系アプリのリリースが続き、患者やその家族と医療現場がアプリを通して情報共有をすることで、患者体験の質向上と医療現場の効率化につなげている。

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■参考事例:エネルギー

都市名 取組等

横浜市 横浜市は、2010 年に経済産業省から「次世代エネルギー・社会システム実証地域」に選定され、横浜スマートシティプロジェクト(YSCP)実証事業を推進してきた。家庭や業務ビルをはじめ、既成市街地でのエネルギー需給バランスの最適化に向けたシステムの導入などを、日本を代表するエネルギー関連事業者や電気メーカー、建設会社等 34 社と横浜市が連携して取り組んできた。 2015 年からは、YSCP で培った技術やノウハウを生かし、「実証から実装」へと展開するため、新たな公民連携組織である横浜スマートビジネス協議会(YSBA)を設立し、防災性・環境性・経済性に優れたエネルギー循環都市を目指している。 【YSCP の概要】 1. 大規模な再生可能エネルギーの導入

1-1:3 エリアにおける再生可能エネルギーの導入 1-2:市内福祉施設等への太陽熱エネルギーの導入 1-3:ビルへの河川水ヒートポンプの導入

2. 一般世帯向けのエネルギーマネジメント(HEMS) 2-1:3 エリアにおける HEMS の導入 2-2:集合住宅における燃料電池、蓄電池を組み合わせたエネルギーマネジ

メント 3. 事業者向けのエネルギーマネジメント(BEMS)

3-1:3 エリアにおける BEMS の導入 3-2:蓄電池付 BEMS の導入 3-3:ビル群のエネルギー制御と地域間連携

4. 地域での熱エネルギーマネジメント 4-1:都市廃熱を活用した高温熱供給配管の整備調査 4-2:地域冷暖房を活用したエネルギーマネジメント 4-3:地域冷暖房エリアにおける「見える化」による省 CO2 効果検証 4-4:次世代型地域冷暖房の実現に向けた熱源水ネットワーク整備

5. 地域エネルギーマネジメントシステムと大規模ネットワークとの相互補完 5-1:3 エリアにおける CEMS の導入

6. 次世代交通システム 6-1:3 エリアにおける EV の大量導入と充電インフラの整備 6-2:充放電対応 EV を用いたエネルギーマネジメント

7. ライフスタイルの革新 7-1:ライフスタイルの革新

8. 推進体制 8-1:YSCP 推進体制の整備

神戸市 「ベストバランスエネルギー都市」「みどりあふれる都市」「生活を楽しむ都市」を3つの柱に、公民一体となって 2020 年に向けた 20 のプランに取り組み、低炭素社会の実現、エネルギーの安定供給とコスト低減等にチャレンジしている。 【水素スマートシティ神戸構想の推進】 ・水素サプライチェーンの構築や水素エネルギー利用システムの開発など新

たな時代を切り開いていくための先導的な取組みを地元企業等と連係し積極的に進めている。

・水素サプライチェーンの構築 ・水素エネルギー利用システムの開発(水素発電の実証中) ・家庭用燃料電池システムの普及促進 ・水素ステーションの整備 ・地元中小企業の参入促進

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川崎市 川崎市では、低炭素で持続可能な社会の構築に向け、多様な主体と連携しながら、エネルギーの最適利用と ICT やビッグデータの利活用によるスマートシティの推進に向けた取組を進めている。 こうした取組の 1 つとして、エネルギー需要の大きな大規模施設が密集する川崎駅周辺地区を対象に、エネルギーの効率的利用や、市民等の利便性・快適性の向上と安全・安心の確保を目指したスマートコミュニティの構築に向けて、学識経験者・事業者・市民活動団体等で構成する「川崎駅周辺地区スマ―トコミュニティ事業委員会」を発足し、検討を進めている。