土圧(擁壁に作用する土の圧力を求める)pp · 内部摩擦角 φと粘着力cと...

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1 土圧(擁壁に作用する土の圧力を求める)pp.96土圧(擁壁に作用する土の圧力を求める)pp.96土圧: 土に接した構造物が土から受ける圧力あるいは土中で発 生する圧力 建設工事における問題: 擁壁,地下壁の設計 外部の土がいかなる横方向の力を及ぼすか (壁体に作用する土の横方向圧力) -1 壁体の動きとそれに伴う土の動き 2 3 土圧の定義と特徴 (a) 壁体停止(中立状態) 鉛直応力 v = t z 水平応力 h は鉛直応力に比例 h = K 0 v 静止土圧係数 (0.5) -2 壁の動きに伴う土圧状態の変化 4 (b) 壁体を前方に倒す場合 v = t z : 不変 水平応力 h は減少 減少 土圧係数 ☆ 壁を倒し続けると横方向応力は一定値を取る。 主働土圧状態 この時, 壁に作用する横方向応力=主働土圧 水平方向と鉛直方向の応力の比 K a = h / v を主働土圧係数と呼ぶ。 -2 壁の動きに伴う土圧状態の変化 土が24% のひずみを 生じた時 (1) 5 (c) 壁体を後方に押した状態 鉛直応力 v = t z : 不変 水平応力 h は増加 ☆ 壁を押し続けると横方向応力 h は一定値を取る。 工は右方へせり上がってくる。 受働土圧状態 この時, 壁に作用する横方向応力=受働土圧 水平方向と鉛直方向の応力の比 K p = h / v を受働土圧係数と呼ぶ。 -2 壁の動きに伴う土圧状態の変化 土が1520%程度の大 きなひずみを生じた時 6 -3 壁の変化に伴う土圧係数の変化

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Page 1: 土圧(擁壁に作用する土の圧力を求める)pp · 内部摩擦角 φと粘着力cと ... 9.2 設計用の土圧公式 22 壁の変形パターンと土圧分布 (a) 壁の頂部が固定

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土圧(擁壁に作用する土の圧力を求める)pp.96~土圧(擁壁に作用する土の圧力を求める)pp.96~

土圧: 土に接した構造物が土から受ける圧力あるいは土中で発

生する圧力

建設工事における問題: 擁壁,地下壁の設計

→ 外部の土がいかなる横方向の力を及ぼすか

(壁体に作用する土の横方向圧力)

図-1 壁体の動きとそれに伴う土の動き2

3

土圧の定義と特徴

(a) 壁体停止(中立状態)

鉛直応力 v=tz → 水平応力 h は鉛直応力に比例

h= K0v

静止土圧係数 ≒ (0.5)

図-2 壁の動きに伴う土圧状態の変化

4

(b) 壁体を前方に倒す場合

v=tz : 不変 → 水平応力 h は減少

→ 減少

土圧係数

☆ 壁を倒し続けると横方向応力は一定値を取る。

⇒ 主働土圧状態

この時,

壁に作用する横方向応力=主働土圧

水平方向と鉛直方向の応力の比

Ka= h/v

を主働土圧係数と呼ぶ。図-2 壁の動きに伴う土圧状態の変化

土が2~4%のひずみを生じた時

(1)

5

(c) 壁体を後方に押した状態

鉛直応力 v=tz : 不変 → 水平応力 h は増加

☆ 壁を押し続けると横方向応力hは一定値を取る。

→ 工は右方へせり上がってくる。 ⇒ 受働土圧状態

この時,

壁に作用する横方向応力=受働土圧

水平方向と鉛直方向の応力の比

Kp= h/v

を受働土圧係数と呼ぶ。

図-2 壁の動きに伴う土圧状態の変化

土が15~20%程度の大きなひずみを生じた時

6図-3 壁の変化に伴う土圧係数の変化

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図-4 主働および受動状態における土の破壊モードとすべり面の方向

~ 壁体背後の微小な土要素の変形状態 ~~ 壁体背後の微小な土要素の変形状態 ~

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内部摩擦角φと粘着力cとをもつような一般の土の主働土圧と受働土圧を, モ一ルの応力円とクーロンの破壊規準(τ=c+σtanφ)とを用いて求めてみよう。

いま, 土が水平方向に膨張しようとするときの応力状態は, 最大主応力

σ1=σv, 最小主応力σ3=σhである。このσ3=σh の値は, 図-1の左の小さなモー

ルの応力円の応力とクーロンの破壊規準の強度とのつり合いから決まる。

図-1 モールの応力円とクーロンの破壊規準

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であるから,△ABCにおいて,

(1)

σhは式(1)から,

(2)

主働土圧係数(coefficient of active earth pressure)KAは鉛直土圧σvに対する主働土圧σhの比である。

(3)

図-1のBが主働土圧の応力と強度とのつり合い点である。

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(4)

受働土圧係数(coefficient of passive earth pressure)Kpは鉛直土圧σvに対する受働土圧σh'の比である。

(5)

(6)

受働土圧σh'は, 土が水平方向に圧縮されようとするときに生じ, 最大主応

力σ1= σh', 最小主応力σ3= σvになる。 σ1= σh'の値は図-1の右の大きなモー

ルの応力円とクーロンの破壊規準のつり合いで決まる。

B'点がそれである。△AB'C'で,

σh'は式(4)から,

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式(2), (5)はランキン・レザール(Resal)の土圧と呼ばれる式で, ある点の土

圧の大きさを求めることができる。その分布の形は静水圧的分布になる。

砂質土(c=0)の主働土圧σh, 主働土圧係数KAは,

また, 受働土圧σh', 受働土圧係数KA'は,

(7)

(8)

(9)

(10)

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粘性土(=0)の主働土圧σhと, 受働土圧σh'は次のようになる。

σh = σv‐2c=γz - 2c (11)

σh‘ = σv+2c=γz+2c (12)

式(11)で地表面, すなわちz=0ではσh = -2cとなり, 地表面に2cの引張応力を

生じる。土は長い時問にわたって引張応力に抵抗できないから, 地表面から

下方へクラックが生じる。この引張クラックの深さhcは式(11)でσh =0とおいて

求める。

擁壁の背後の土の引張クラックに雨水が湛水するようなときには, 水圧を

外力として擁壁に作用させることがある。

(13)

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Coulomb(クーロン)土圧

ランキン土圧を求める際には,壁体が鉛直で,また,背後の表面は水平であると仮定.→ 水平面と鉛直面にせん断力が作用していない→主応力面

現実問題: 壁体傾斜,背後地表面の傾斜 →クーロンの土圧論

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主働土圧状態: 主動状態における土塊の動きとそれに作用する力の方向

■すべり面上に作用する応力R :すべり面に直角な方向とΦなる傾きをなしている.■壁面上で土塊に働く力Qa : 壁体は一般に滑らかではなく,摩擦力が働く

→ この面はすべり面ではない δ<Φ■土塊の重さW

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受動土圧状態: 受動状態における土塊の動きとそれに作用する力の方向

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W, R, Qa : 大きさと方向が分かっているのはWのみ.力の釣合いから,RとQaの大きさを求める.

Qaが壁面に作用する主動土圧の合力

土圧合力の求め方:αを変化させてQaの最大値を求める.

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Coulombの土圧合力を求める方法 : 図式方法と解析的方法

解析:力の多角形を考慮して,QaまたはQpをαの関数で表わしておき,それをαで微分して,dQa/dα=0またはdQp/dα=0になるようにαを決めて,土圧合力の表現式を求めることに他ならない.式を表わすと次のようになる.

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図式解法:

図(c)に示すように,まず水平からφなる角度をなす直線BS(S-線と呼ぶ)を引いておく.そして,このS-線からπ-ω-δなる角度をなす直線BL(L-線と呼ぶ)も引いておく.次に,点C1を地山の表面上に任意に選び,これとB点とを直線で結び,これをすべり面と仮定する.

すべり線が与えられれば,すべり土塊ABC1の部分の面積に単位体積重量を乗ずることにより,この土塊の重量W1を求めることが出来る.このW1を適当なスケールでS-線上の長さBD1で表わす事にすると,点D1が定まる,次に,点D1を通りL-線に平行な直線を引き,これとすべり線との交点E1を決める. → 三角形D1BE1は,力の多角形と相似形

D1E1の長さが,土圧Qaを表わす. → この作業を繰返し行う.

数多く仮定されたすべり面に対し,土圧合力を求め,C-線とS-線の距離が最長になるようなものを探すことにより,土圧合力の最大値を見つけることが出来る.

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擁壁の安定

(1)すべりに対する安定

(2)転倒に対する安定

PV:土圧合力の鉛直成分(kN)PH:土圧合力の水平成分(kN)W:コンクリート擁壁の自重(kN)tan :擁壁底面と基礎地盤との摩擦係数

a : 擁壁のつま先とWの重心のとの水平距離(m)b : 擁壁のつま先とPVの作用点との水平距離(m)H : 擁壁底面とPHの作用点との鉛直距離(m) 21

9.2 設計用の土圧公式

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壁の変形パターンと土圧分布

(a) 壁の頂部が固定 (b)壁全体が一様に前に動く (c)中央部で回転

壁の下部が前方に移動するような壁体の動きが存在する時,土圧は底部小さく,中央部で最大値をとるような分布形状を呈する.

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矢板土留壁に作用する土圧

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9.3 埋設管に作用する鉛直土圧

(a) 溝型変形: 比較的硬い地盤にトレンチを掘って埋設管を置く場合(b) 突型変形: 原地盤に埋設管を敷設し,盛土を行う場合

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溝型 突出型