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OJTを効果的に行う学校体制の在り方
-メンターチームによる「OJTシート」を活用した
三つの場の設定を通して-
福岡市教育センター
若年層教員等人材育成に関する調査研究
長期研修員 近藤 里江
本市は,大量退職・大量採用時代を迎えており,今後の若手の人材育成の取
組は,喫緊の課題である。そこで本研究では,メンターがチームを組み,共通
理解,計画・実践,振り返りという三つの場を設定し,「OJTシート」を活
用して実践を行った。その結果,チームが高まりながら,ニーズのある課題設
定と焦点化されたOJTを計画的に行うことができた。このことから,人と場
とツールの計画的な運営は,OJTを効果的に行う学校体制に必要であること
が明らかになった。
E4-06
平成 26 年度
研究紀要
(第966号)
目 次
第Ⅰ章 研究の基本的な考え方
1 主題について ····················································· 若・長研- 1
(1)主題設定の理由 ··············································· 若・長研- 1
(2)主題及び副主題の意味 ········································· 若・長研- 3
2 研究の目標························································ 若・長研- 4
3 研究の仮説························································ 若・長研- 4
4 研究の構想························································ 若・長研- 4
5 研究の検証························································ 若・長研- 5
6 研究構想図························································ 若・長研- 6
第Ⅱ章 研究の実際
1 研究取組校における取組の概要 ····································· 若・長研- 7
(1)全体研修について ············································· 若・長研- 7
(2)メンターチームの編成について ································· 若・長研- 7
(3)場に応じたOJTシートの在り方 ······························· 若・長研- 7
2 若年層教員に向けたメンターチームによるOJTの実際 ··············· 若・長研- 9
(1)A教諭の実際
ア 課題意識とメンターミーティング ······························· 若・長研- 9
イ レベルアップミーティング ····································· 若・長研-10
ウ スモ-ルステップ目標 ········································· 若・長研-10
エ ふりかえりミーティング ······································· 若・長研-11
(2)B教諭の実際
ア 課題意識とメンターミーティング ······························· 若・長研-13
イ レベルアップミーティング ····································· 若・長研-13
ウ スモールステップ目標 ········································· 若・長研-13
エ ふりかえりミーティング ······································· 若・長研-14
(3)C教諭とD教諭の実際
3 チーム支援とOJTシートと三つの場の効果の考察
(1)チーム支援の効果について ····································· 若・長研-16
(2)実践における三つの場の効果について ··························· 若・長研-17
(3)OJTシートにおける効果について ····························· 若・長研-19
(4)実践後のアンケートから ······································· 若・長研-20
第Ⅲ章 研究のまとめ
1 研究の成果························································ 若・長研-21
2 研究の課題························································ 若・長研-22
資料等 ·································································· 若・長研-23
第Ⅰ章 研究の基本的な考え方
1 主題について
(1) 主題設定の理由
ア 全国における教職員を取り巻く現状から
近年の社会状況や子どもの変化等を背景に,学校現場を取り巻く課題は,複雑化・多様化して
いる。学校現場では,学力や規範意識の向上,地域との連携,保護者からの要望への対応等に関
して,これまでの経験や方法では対応できない状況が生まれている。さらに,各学校は教育活動
の取組とその成果を評価される存在になり,その責務が重大に
なっているといえる。
このような複雑な環境変化に対応できる人材を求められる中,
他県ではどのように人材育成を進めているのだろうか。神奈川
県立総合教育センターが全国に先駆けて,「学校内人材育成(O
JT)実践のためのガイドブック」,大阪府教育委員会が「OJ
Tのすすめ」を作成する等,各県で人材育成の手引きや調査研
究が次々と発表されている。特に東京都では,具体的な事例を
示した「OJT実践ガイドブック」が作成され,より実践を行
いやすくされており,さらに,平成22年からOJT推進指定モ
デル校事業を開始している(資料-1)。平成25年は,45校の小・
中学校でOJT指定モデル校が設置されている。これらのこと
から,どの都道府県でも,OJTの実践を通して教員の資質能
力の向上を図ろうという姿勢が見える。
イ 福岡市における教職員を取り巻く現状と課題から
本市においても,平成26年4月福岡市教育センターよりリーフレット「みんなで取り組もうO
JT注1」が全市の市立学校に配布された。その中には,メンター注2がメンティ注3に関わる上で
のポイントやOJTの視点で協働する機会や場面の提案が具体的に示されている。また,指導教
諭集中研修(平成24年福岡市教育センター)では,OJT推進の実践例をもとに成果と課題が整
理された「OJT推進の手引き」が配布された。また5年前から,長期研修員による若年層教員
等人材育成に関する研究が行われるなど,福岡市も喫緊の課題としてとらえていることが分かる。
しかし,現在の福岡市の教員の年代別の
人数を見てみると,最も多い割合は50代で,
次に多い割合が20代から30代前半,30代後
半から40代前半が最も少ないことが分かる
(図-1)。今後,急激な大量退職・大量採
用の時代を迎えるにあたり,退職する教員
の経験やノウハウ等を次の世代に確実に伝
え,受け継いでいくことが必要であり,現
在福岡市で行っている取組を確実に浸透さ
せていくことが,今後の学校現場を支える
素地になると考える。
資料-1 OJT実践ガイドブック (平成 22年度 東京都教職員研修センター)
図-1 福岡市の教職員の年代別の人数 福岡市教育デ-タブック平成 26 年5月
若・長研-1
ウ 福岡市におけるOJTに関する実態調査から
現場の声を聞くために,福岡市全小学校を対象
に,学校長,拠点校指導教員,校内指導教員,初
任者教員1年次~3年次を対象にOJTに関する
意識や課題のアンケート調査を行った。
(ア) 拠点校指導教員・校内指導教員へのアンケート
結果から(回収率 92.6%)
「OJTは必要であるか」という質問に対し,
87%が「とても必要」,「必要」と答えた。しかし,
「OJTの具体的な方法が分かるか」という質問
では,45%が「あまり分からない」,「分からない」
と答えている(図-2)。多くの教員がOJTの必
要性を強く感じているが,現場では具体的にどの
ようにOJTを行うか難しさを感じていることが
分かる。具体的な悩みを聞いたところ,「ゆっくり
指導する時間がない」,「一般常識をどのように身
に付けさせたらよいか悩んでいる」,「自分の指導
に自信がない」等が挙がった(表-1)。指導の不
安と同等に,その時間を捻出できない実態や,若
手教員との向き合い方にも,苦慮していること
が分かる。また,学校長へのアンケートでも(回
収率 89.6%),人材育成の悩みとしては,多様化
する若手教員の資質そのものや,多忙な実態に悩
んでいる様子がうかがえる(表-2)。
(イ) 若手教員へのアンケート結果から
では,若手教員はどういったことに悩みを感じ
ているのだろうか。学習指導力,生徒指導力,保
護者折衝力,校務分掌運営力の四つのうち,若手
教員が一番に感じている課題は,学習指導力であ
った(図-3)(回収率 97.3%)。内容としては,
「楽しい授業の作り方が分からない」,「発問の仕
方が分からない」等が挙がっていた。同
様に,生徒指導力では,「トラブルの指導
がうまくいかない」「支援を必要とする子
どもへの対応が分からない」等であった。
このことから,授業が思うように進まず,
それに伴って,クラスが落ち着かない実
態があるのではないかと考える。
表-2 学校長対象「人材育成においての悩みは ありますか」の回答の多かった順
内容 人数
意欲(受動的) 23 社会人としての常識 (服装・言葉・電話等) 16
話す・指導する・休ませる時間 15 コミュニケ-ション能力 14 身近なモデルの存在(中堅・ベテラン) 11 謙虚さ 7 みんなのために働くという意識 7
内容 人数
時間がない 23
一般常識の身に付けさせ方 18
指導教員自身の指導力の不安 15
社会人・組織人としての自覚 9
意欲(受動的) 8
謙虚さ 8
研修を位置づける体制 8
コミュニケ-ション能力 8
表-1 拠点校・校内指導教員対象「人材育成において の悩みはありますか」の回答の多かった順
図-2 指導教員対象「OJTの具体的な 方法が分かるか」の回答の割合
図-3 初任者1年次対象「特に,悩んでいる課題は何です か」の回答の割合
若・長研-2
若手教員は,こういった悩みを,誰に聞い
て解決しているのかを聞いたところ,「学年
の先生」,「指導教員の先生」が特に多かっ
た。
しかし,3番目以降からは,様々な教員が
挙げられているところからも,若手教員は,
学校の中で様々な立場の教員に相談して,課
題を解決していることが分かる(図-4)。
このことから,学年や指導教員の先生方に若
手教員の育成を一任するのではなく,学校全
体で指導の役割分担をしながら人材育成を
行っていくことが,望ましいと考える。
以上(ア)(イ)から,若手教員の資質や悩みを理解した上で育成できる効果的な学校全体の取組が必
要であると考える。
以上アイウの3点の理由から,効果的なOJTが行える学校体制の在り方を研究することは価値
があると考え,本研究主題を設定した。
注
注1 略さずには,On the job training という。「学校内における人材育成の取組を通じて個々
の教員の力量向上を図る営み」(みんなで取り組もうOJT)
注2 指導者
注3 被指導者
(2) 主題及び副主題の意味
ア 「OJTを効果的に行う学校体制」とは
メンティのニーズに対して,学校の職員が意図的計画的にOJTできる人材育成の位置付けが
なされた学校組織のことである。
イ 「メンターチームによる」とは
メンティ一人一人の課題解決を図るために,同学年の教員,拠点校指導教員,校内指導員年次
の近い教員,を中心とした4~5人のメンバ-で構成されたチームで支援することである。
ウ 「OJTシート」とは
以下の3種類のシートのことである。メンターがメンティの理解を深める「メンターシート」,
メンターやメンティが,課題の共通理解から具体的な手だてをたてる「レベルアップシート」,そ
れぞれの振り返りを促す「ふりかえりシート」である。
エ 「OJTシートを活用した」とは
「OJTシート」が,それぞれのミーティングが理解を深めたり,話し合いが焦点化したりす
るような役割を果たすことである。
オ 「三つの場」とは
具体的には,以下三つの場の工夫とする。
図-4 初任者1年次対象「悩みを相談しやすかった 相手は誰ですか」の回答の多かった順
若・長研-3
(ア) 共通実践を行うために,メンターチームが,メンティの課題やよさを共通理解する「理解の場」
(メンターミーティング)
(イ) 課題解決をめざした段階的なスモ-ルステップの目標を決め,支援を行う上での計画や役割分
担を決定する「計画・実践の場」(レベルアップミーティング)
(ウ) メンターの手だての有効性やメンティの成長を振り返る「ふりかえりの場」(ふりかえりミー
ティング)
カ 「三つの場の設定」とは
「理解」「計画・実践」「ふりかえり」の場が,一連の流れとして計画的に行われるよう位置
付けることである。
2 研究の目標
メンターチームによる「OJTシート」を活用した三つの場の設定を通して,OJTを効果的に行
う学校体制の在り方を明らかにする。
3 研究の仮説
メンターチームが,目的に応じて「OJTシート」を活用しながら,メンティの課題やよさを共通
理解したり,課題解決につながる目標や役割分担を決めたり,実践をふりかえるなどの場を工夫すれ
ば,採用1年次~3年次の若手教員のニーズに焦点化したOJTを行うことができる学校体制の在り
方を明らかにできるであろう。
4 研究の構想
(1) 研究の内容
ア 職員の共通理解のための全体研修
(ア) OJTに関する知識を深める研修
(イ) 実践に関する知識を深める研修
イ メンターチーム編成・メンティの決定
(ア) 管理職との打ち合わせ
① 同学年・拠点校指導教員・校内指導教員・年次の近い先生によるメンターチームの編成
② メンティのニーズ把握
ウ 三つの場の実践
(ア) 理解の場で行うメンターミーティング
メンターだけで,メンティのよさや課題を話し合う。
(イ) 計画・実践の場で行うレベルアップミーティング
メンティの目標を設定したり,メンターが支援を行うための役割を分担したりする。
(ウ) ふりかえりの場で行うふりかえりミーティング
メンターの手だての有効性やメンティの成長を振り返る。
(2) 研究の過程
ア 理解の場
全体研修・チーム編成・メンターミーティング
イ 計画・実践の場
若・長研-4
レベルアップミーティング・計画に基づいた実践
ウ 評価の場
ふりかえりミーティング・管理職からの称賛
(3)研究の手だて
ア 複数の視点と方向からOJTが行えるチームでの支援
イ 課題を克服するための三つの段階の場
ウ 話し合いやOJTの焦点化を図るシートの作成
5 研究の検証
(1) メンターチームの効果について
ア チームで,効果のある支援の取組ができたか。
イ 最適なメンバ-構成の在り方を明らかにできたか。
ウ スムーズなミーティング運営の在り方を明らかにできたか。
(2) 「OJTシート」の効果について
ア 3種類のシートの活用にあたって,それぞれ有効性が見られたか。
(ア) メンティの理解の深まり
(イ) メンティのニーズの共通理解によるOJTの焦点化
(ウ) 振り返りしたことでのそれぞれの高まり
イ 活用するにあたっての成果と課題は何か。
(3) 三つの場の効果について
ア メンターチームがメンティの課題やよさを共通理解できる場が効果的であったか。
(ア) 共通理解の場の設定した効果
(イ) メンティの人材育成の方向性の共通理解
イ 課題解決をめざした目標の段階的なスモ-ルステップ,支援を行う上での役割分担の場は,効
果的であったか。
(ア) 課題から目標を決める必要性
(イ) スモ-ルステップ目標の効果
(ウ) 役割分担した上での効果
ウ メンターの手だての有効性やメンティの成長を振り返る場は,効果的であったか。
(ア) 振り返りの有効性
(イ) 振り返りの在り方
若・長研-5
6 研究構想図
メンティの実践
ツ-ルの活用
OJTを効果的に行う学校体制の在り方
全体研修
OJTの理解と推進・体制づくりの必要性
「メンター シート」
「レベルアップ シート」
「ふりかえり シート」
②レベルアップミーティング
計画的な支援
意図的な支援
①メンターミーティング
メンティの理解
③ふりかえり ミーティング
ニーズのある支援
ふりかえり の場
メンター
メンター
メンター
計画
・
実践の場
理解の場
スモ-ル ステップ3
スモ-ル ステップ1
スモ-ル ステップ2
メンティ
学び
評価
管理職
チ-ム編成
若・長研-6
第Ⅱ章 研究の実際
1 研究取組校における取組の概要
(1) 全体研修について
研究取組校において実証を行う
にあたり,人材育成に関する理解を
深める研修と実証に関する理解を
深める研修を2回行った(資料-
2)。終了後アンケートをとり,O
JTに対する意識調査を行った。ア
ンケートでは,効果があるであろう
という期待と費やす時間に関して
の懸念が入り交じったものが多く
見られた(資料-3)。
(2) メンターチームの編成について
研究取組校には,初任者研修対
象1年次~3年次までの若手教
員が4名在籍している。1名に対
し,それぞれメンターチームを編
成し,実証を行った(表-3)。
チームのメンバ-構成は,研修員
と管理職の先生方で話し合い,協
力を依頼した。メンバ-構成は,次の三つの観
点で構成した。以下,若手教員をメンティ,指
導側の教員をメンターとする。
(3) 場に応じたOJTシートの在り方
学校の中でOJTのシステム化を構築する
際,メンティの理解を深めたり,誰が何をどの
ようにOJTしていくかを話し合ったり,それ
が目的に合わせて行われたか振り返ったりする場を,研修員が,「メンターミーティング」「レベ
ルアップミーティング」「ふりかえり」の場とした。そして,それぞれに応じた3種類のシートを
用意した。
ア 参考にしたOJTシートの共通点
この研究を進めるにあたって,以前の本市の長期研修
員,福岡市市役所,東京都教育委員会,訪問調査校,書
籍等で提案されているOJTシートを参考にし,検討を
行った。そして,シートは,記録で留まるのではなく,
OJTが意図的で計画的に進行するために,明確な項目,
また,誰もが使えるために,分かりやすく機能性があるものが必要であることが分かった。その
結果,共通点を4点見いだした(資料-4)。以下,それぞれのシートの特徴を述べたいと思う。
メンティ メンターチーム
A教諭(1年次) 同学年2名,拠点校指導教員,7年次の教諭
B教諭(3年次) 同学年2名,主幹教諭,4年次の教諭
C教諭(1年次) 同学年3名,拠点校指導教員,2年次の教諭
D教諭(2年次) 同学年3名,主幹教諭,3年次の教諭
メンバ- 観点
同学年の教諭 一番変容を見やすい
指導教員や主幹教諭 適切に指導でき,入り込みも
できる
年次の近い教諭 経験を共有しやすく,相談に
のりやすい関係を築ける
表-3 メンターチ-ムの内容
ミーティングからスモ-ルステップで,できるようになるのは,とても良いことだと思います。しかし,ミーティング等がとれるような時間の余裕が必要な分,難しい部分もあると思う。
資料-3 OJTに関する全体研修のアンケート
① 何をどのようにするか
② いつするか
③ OJT支援者は誰か
④ 最終評価者は誰か
資料-4 OJTシートの項目の共通点
表-4 チ-ム編成の観点
第1回OJT研修 目的 人材育成の必要性やOJTに関する知識を深める 時期 7月8日 16:10~17:00 対象 全教職員対象(33人) 第2回OJT研修 目的 OJTの振り返りと研究の目的や進め方を理解する。 時期 9月 12 日 16:10~17:00 対象 全教職員対象(25人)
資料-2 OJTに関する全体研修の概要
若・長研-7
イ 場に応じたOJTシートの工夫点
(ア)「メンターシート」
メンターシートは,メンターミーティングを行うときに
用いる。「メンターミーティング」とは,メンターが,メ
ンティの能力・性格・資質などを踏まえて得意分野や苦手
分野話し合い,人材育成の方向性の共通理解を図るために,
メンターだけで話し合う場のことである。「教科指導」「生
徒指導」「その他」の三つを「得意分野」「苦手分野」に
分けて書いてもらうことにした(資料-5)。まず,メン
ティに対して理解していることを一人で書いてもらう。そ
の後チームのメンター同士で,互いにメンティについて話
し合い,共通理解を行う。
シートの工夫は2点ある。1点目は,課題ばかりでなく,メンティのよさにも目を向けてもら
えるように,「得意分野」の項目を作成した。今まで見えていなかったよさを共通理解する機会
が得られると考えた。
2点目は,チーム全体で同じ視点でOJTを行えるように,メンティに成長してほしい点も話
し合えるよう,項目を作成した。成長させたい観点は,人によってばらつきがあると考える。メ
ンター全員が,成長させる方向性を共通理解させておくことは,支援が焦点化し効果があると考
えた。
(イ) 「レベルアップシート」
レベルアップシートは,レベルアップミーティングを行うときに用いる。「レベルアップミー
ティング」とは,メンターとメンティの全員でメンティの課題について話し合いながら,メンテ
ィが納得できるような共通した最終目標を決定していく場のことである。その際,スモ-ルステ
ップの目標,時期や期間,誰がどのようなOJTを行っていくかを決めて,書き込んでいく(資
料-6)。
シートの工夫は,3点ある。1 点目は,メンティの課題意識を尊重するため,最初にメンティ
から話すよう,上段に欄を設けたことである。アンケートの自由記述からも,自分の意見を伝え
ることをメンティが遠慮している割合が多かった。そこで,現時点で自分が何を得意とし,苦手
としているか,話すことでメンティ自身も
整理することにもつながると考えた。
2点目は,最終目標の解決をめざして,
スモ-ルステップで段階的な目標を設定で
きるようにした点である。まずは,できる
ことからステップアップすることで,メン
ティのやる気につながると考える。また,
メンター側も,同じレベルや方向性でOJ
Tを行うようになるため,効果があると考
えた。
3点目は,メンターに,OJTを行う上
でのそれぞれの役割分担を決めてもらえる
資料-5 メンターシート
得意分野
成長して欲しい点
資料-6 レベルアップシート
明確な 役割分担
メンティの課題意識
スモ-ル ステップ目標の具体的
な内容
若・長研-8
よう欄を設けたことである。メンター一人一人が具体的に何をするか共通理解することで,チ
ームとしてのメンティを支援する意識を高められると考えた。
(ウ) 「ふりかえりシート」
ふりかえりシートは,ふりかえりミーティングを行うと
きに用いる。「ふりかえりミーティング」とは,チームで
決めたスモ-ルステップ目標の期間の最後に,メンターと
メンティがそれぞれ自分が取り組んだ内容を振り返ったり,
メンティの伸びを認め,次の課題を確認したりする場のこ
とである(資料-7)。
シートの工夫は,2点ある。1点目は,メンターとメン
ティが互いに読み合えるように,アドバイスや感想を書い
てもらう欄を用意した。声かけだけで終わらず,記録とし
て残すことで,自分自身の変化をとらえられると考えた。
2点目は,スモ-ルステップの全てが終了した後に,管
理職の先生方にも目を通してもらい,アドバイスや賞賛の
言葉を残せるように,コメント欄を用意した。チームとしての実践で終わらせるのではなく,
管理職も共有することで,学校全体の共通理解の取組の一つになると考えた。
2 若年層教員に向けたメンターチームによるOJTの実際
H小学校にて,7月と9月に計2回のOJT研修会を行った。目的は,OJTの理解と実践の内容
を伝えて,協力を得ることだった。若年層教員は,1年次2名,2年次1名,3年次1名であった。
この若年層教員4名をメンティとしたメンターチームを結成し,9月~11月にかけて,チームによる
OJTの実践を行った。ここでは,A教諭とB教諭での実証の様子を,C教諭とD教諭については,
変化が顕著であった点について述べることにする。
(1) A教諭の実際
A教諭は,初任者1年次の教諭で,現在4年生の
担任をしている。担任をもった経験が少なく,学級経
営に不安を抱えている。メンターチームは,同学年の
教諭2人,拠点校指導教員,7年目の3年生担任の4
名で結成した。
ア メンターミーティング(15 分)
メンター4名にA教諭の得意分野と苦手分野を
事前に書いてもらい,全員発言してもらった(資
料-8)。得意分野では,A教諭の資料作成の能
力や穏やかに子どもに接する姿等が挙がった。ま
た,苦手分野では,授業の組み立て方や生徒指導
の方法が挙がった。全体で成長してほしい点を話
し合った結果,授業の型を知ってほしい,まず身
の回りの整理などに力を入れてほしいという点が
共通理解できた。その後のアンケートでは,メン
資料-8 A教諭のメンターミーティング
資料-7 ふりかえりシート
互いに 書く欄
管理職の先生方から
・彼の頑張っているところや得意なところ
を改めて知りました。
・見方が深まったというか,広がりました。
・自分が知らない面を聞くことができた。
・他学年なので,クラスの状況などが把握
できた。
資料-9 メンターのメンティへの新たな気付き
若・長研-9
ティに関して,初めて気付いた点を,全員が書いていた。つまり,メンター全員が,A教諭に
対する理解を,さらに深めたミーティングといえる(資料-9)。
イ レベルアップミーティング(35 分)
メンティのA教諭を入れて,5名で課題と目標につい
て話し合った(資料-10)。まず,A教諭からは,国語
分野の読みが苦手,子どもの意見をどう引き出すかが分
からない,日常指導をどう行えばよいかが分からない等
の課題意識が出された。次にメンター側からは,メンタ
ーミ-ティングで出た得意分野と成長してほしい点を伝
えた。
最終目標を決める際,A教諭とメンター側が,A教諭
の日常指導に課題を感じている点が一致していた。そこ
で,学習に取り組む姿勢を作っていくこととし,最終目
標を「学習規律を身に付ける」にした。
次に,スモ-ルステップの目標を決めていく際,クラ
スの雰囲気を落ち着かせるために,環境から整えること
にした(資料-11)。A教諭も「できるかもしれない」
と呟き,納得した様子であった。期間は,一週間ずつと
し,その度「ふりかえり」の場をとることを確認した。期
間内にできるようになることよりも,何に気をつけたら
よいのかポイントを理解することの方が大事であること
を共通理解した。
最後に,メンター側の役割分担を行った(表-5)。
学年主任が週に1回 10 分ほど,物構えや心構えの話をA
教諭の教室で行うことにした。同学年の教諭は,放課後
に職員室へ戻る途中などに,声を掛けることにした。拠
点校指導教員は,担当の火曜日を中心に,気が付いたこ
とをその都度,声を掛けていくことにした。年次の近い
教諭は,学年も教室がある階も違うため,放課後,相談
を受けるようにした。
ウ スモ-ルステップ目標
(ア) 教室環境の整美
環境の整美が目標になった理由として,黒板の周り
は整理されているものの,児童の机の横に不要な物を
かけている児童が多いこと,掃除のときに机の上に給
食セットがそのままになっていること,帰りに床のゴ
ミが目立つことが挙げられた。そこで,掃除の時間に
同学年の先生が一緒に指導することにした。また,机
の横にあるべきものを,A教諭や児童と確認し,その場で一緒に片付けた。この指導の様子をA
教諭に見せることで,どんな内容を,どんなタイミングで注意するのかを意識させた(資料-12)。
① 教室内の整美に努める。
② 授業開始と終了は,きちんと
あいさつをする。
③ 発表の仕方を工夫する。
資料-11 スモ-ルステップの内容
表-5 メンターの役割分担の内容
資料-10 レベルアップミーティングの様子
学年主任 教室へ行って,ポイント
を話す。
同学年 放課後,声かけする。
拠点校指導教員 担当の曜日に意識して,
声かけする。
年次の近い教諭 放課後,相談を受ける。
A教諭
資料-12 メンターが片付けのポイント を伝えている様子
若・長研-10
(イ) 授業開始と終了の挨拶
授業の始まりでは,挨拶の声がそろわないことや授業の準備を児童がしていないことが課題で
あった。そこで,拠点校指導教員が,声をかけるタイミングや準備のさせ方をA教諭に伝えた。
年次の近い教諭は,子どもたちはすぐには身につかない経験を話し,そろうまで何度となくやり
直し,できたらほめて根気強く指導をやっていく大切さをアドバイスしていた。
(ウ) 学習中の発表の仕方
発表がいつも同じ児童になってしまい,A教
諭自身も,どこで発表の場を作り,指名を工夫
したらよいのかが分からないことが課題であっ
た。研究主任の授業で,ほぼ全員の手が挙がっ
ている様子を見たA教諭は,拠点校指導教員か
ら,研究主任に直接話を聞くことをアドバイス
された。具体的に,授業の工夫点,挙手できる
ようになるためのポイントを教えてもらうこと
ができた(資料-13)。
エ ふりかえりミーティング
各スモ-ルステップで,チームが集まって,合計3回メンティとメンターの自己評価とメンテ
ィに対してのアドバイスを行った。
(ア) A教諭の変容
3回のふりかえりミーティングを終
えて,A教諭の各スモ-ルステップ目
標に対する自己評価は,すべて「△」
となった(表-6)。理由を分析する
と,アドバイスを受け,指導のポイン
トや声を掛けなければならないタイミ
ングは理解できたものの,なかなか実
行できない現状があった。今まで気にしていなかった新たなポイントを,忙しい毎日の中で常に
声をかけ,指導していくというところに,大きなハ-ドルがあったのである。そこで,指導の仕
方は分かったが,指導することができていないことを「ふりかえりミーティング」で述べること
になり,本人の自己評価は上がらなかった。
そこで,最終目標を算数の授業の場面に絞り,もう一度同じスモ-ルステップの目標で取り組
み,自信をつけていくことになった。そうして,2回目の実践を始めたころ,A教諭に変化が見
られてきた。授業の始まりと終わりの挨拶で,全員がそろうように声をかけ始める姿が見え始め
たのである。また,授業の指名方法にも工夫が見られ,前で発表をさせる場面を作ったりする変
化が見られ始めた。初めは,一日に1回あるかないかという回数であったものが,次第に2~3
回と除々に回数が増加していった。
指名方法の改善を行い出した頃から,
授業開始時に教科書準備ができてい
ない児童が半数以上いる状態から,
すべてのスモ-ルステップを終えて
1回目
△ ・机の横の整理をさせる。 ・掃除前に,机の上の荷物を片付ける。
2回目
△ ・あいさつで区切りをつけることへの意識をもっと 高めたい。
3回目
△ ・「はい」の返事や話し方など,まだまだ指導がで きずにいた。
表-6 A教諭の自己評価の変化
資料-13 研究主任からアドバイスを受ける A教諭
まずはどこから始めたらよいか,課題を見つけてもら
うことができた。いろいろな場面でたくさんの方に,
何度も指導していただくことができた。
資料-14 A教諭の振り返り
若・長研-11
ほぼ全員が準備をしている状態に変わっていった。A教諭のふりかえりから分析すると,今回A
教諭と子どもたちが変化した原因は,課題を明確にしてもらったことと,メンターチームによる
多方面のアドバイスであることが分かる(資料-14)。
その結果,最後の「ふりかえりミ-
ティング」では,A教諭の自己評価は,
「○」となった(表-7)。このとき
の「ふりかえりミーティング」では,
A教諭が気付くことができなかった
「ほめた」行動を,メンタ-が評価し
ていた。まだできていない部分への指
摘もあったが,ほめようとしている意
欲を,きちんと言葉にして伝えていた。
(イ) メンターの変容
では,A教諭のメンターチームは,
どう変わったのだろうか。実践前後で,
OJTを行った満足感に対する変化を
みると,全体的に「とても思う」が
50%増加した結果になった(図-5)。
一学期との違いを尋ねると,以前は,
互いにコミュケ-ションがなかなかと
れず,A教諭の考えや悩みが分からな
いまま話し合いが進んでいた。メンタ
ーも,どうにか改善したいという気持
ちがあったものの,変化は見られなか
った。しかし,メンターミーティング
やレベルアップミーティングを経て,
「初めて本人から悩みが聞けた。よさ
もたくさんあった。」と,A教諭の新
たな一面を見い出し,チームとしての
まとまりに変化が表れ始めた(図-6)。
A教諭が,できたことを一緒に喜び
合ったり,A教諭の悩みを互いに聞き
合ったりする姿が多く見られるように
なった。
実践後に,メンターにとったアンケートでは,ミーティングを通して,メンティの理解が深ま
り,関係が良好になったことが書かれていた(資料-15)。
(2) B教諭の実際
B教諭は,初任者3年次の教諭で,現在3年生を担任している。去年からの持ち上がりというこ
ともあり,クラス全体も非常に落ち着いている。B教諭の課題意識は,もっときめ細やかな教科指
導を行うにはどうしたらよいか,という点であった。同学年の教諭2人,主幹教諭,4年目の5年
一回目
△ ・学習規律,忘れ物をしないようにしたい。
二回目
△ ・子どもは発表のしかたを分かっている。教師側がもっと,子どもの出番をつくらないといけない。
三回目
○ ・まだまだ足りないが,歌のときなどほめていくことができた。授業中のほめ言葉を増やしていきたい。
表-7 A教諭の実践2回目の自己評価の変化
図-6 チ-ムでやったことは効果があった
図-5 メンターチ-ムの実践前後の満足度の結果
あまり話さなかったメンティが話をするようになり,クラスの様子やめざすところが分かってきた。ミーティングしていないときは,一方的でした。それが,メンティに合わせられるようになったと思う。
資料-15 メンターの振り返り
若・長研-12
生担任の教諭の4名で,メンターチームを結成
した(資料-16)。
ア 課題意識とメンターミーティング(14 分)
まず,メンター4名がB教諭の得意分野に
ついて話し合った。一学期に体育主任を経験
したことや,落ち着いてクラス運営を行って
いるところからも,たくさんのよさを共通理
解した。苦手分野では,自信がない面が見ら
れたり,応用力が乏しかったりするこ
とが挙げられた。最終的に,どんな課
題であろうと,本人が自信を持って取
り組めるよう,支援していこうと共通
理解した(資料-17)。
イ レベルアップミーティング(32 分)
次はメンティのB教諭を
入れて,5名で課題と目標
について話し合った。まず,
B教諭からは,教科指導全
般にわたって,方向性は分
かるが,具体的な指導の中
身がよく分からず自信がな
いという等の課題意識が出された。
最終目標を決める際,一番苦手意識をもっていた国語の
「話す・聞く」の単元では,3学期になってしまうため,
2番目に苦手意識のある理科学習に焦点をあてた。理科学
習は,毎日行われる教科ではないので,1単元ずつをスモ
-ルステップにした。
メンターの役割分担では,同学年の教諭の二人のうち一
人が先行授業を行い,子どもたちの反応から一番よい手だ
てを一緒に考えていくことにした。もう一人は,同時進行
で授業を提案し,B教諭と一緒に具体的な指導方法を考え
ていくことにした。主幹教諭と年次の近い教諭は,空き時
間を合わせて,参観し,アドバイスすることにした(資料
-18)。
ウ スモ-ルステップ目標
(ア) 理科学習における学習計画と板書の活用
メンターとメンティは,風と距離の関係をつかませる学
習では,子どもたちに何を学ばせていくかを考えさせるために,事前にめあてからまとめまでの
流れを,一緒に考えていた。また授業後には,書いた板書をそのまま使って,本時で実際に児童
がとまどった点,さらに改良すべき点を一緒に話し合った(資料-19)。板書を残せない場合は,
資料-19 板書を基にした教材研究
資料-20 撮影された板書を見て計画を 立てるB教諭
資料-17 メンターの新たな気付き
資料-18 目標設定と役割分担
資料-16 B教諭のメンターミーティングの様子
若・長研-13
デジタルカメラで板書を撮影しておき,それをB教諭に渡すなどの工夫をしていた(資料-20)。
B教諭は,いったん自分で考え,どうしても分からないところを尋ねていた。
(イ) 実験の場作りや方法の考え方
次の単元は,一日を通して,日なたと
日かげの特徴を調べる学習内容が主だっ
た。子どもたちは,グル-プを組んで時
間ごとに調べに行っていた。
そこで,事前に年次の近い教諭と打ち
合わせし,どのタイミングで観察し,ま
とめていくかを話し合っていた(資料-
21)。
また,子どもたち自身が実験のやり方
を考えられるようにするという課題に向
け解決するために,教師から促すのでは
なく,授業中に実験の方法を尋ね,一緒
に考えていく時間を確保したパタ-ンを
意識的に繰り返した。さらにB教諭は,
全員の子どものノ-トに「考察の作り方」
を貼ることを自ら考えた。理科学習に対
して,メンターから聞いたことだけでな
く,自分からよりよいものにしようとす
る態度が育っていると考えられる。
エ ふりかえりミーティング
各スモ-ルステップが終わるたびに,
チームで集まって,合計2回メンティと
メンターの自己評価とメンティに対して
のアドバイスを行った。
(ア) B教諭の変容
スモ-ルステップ目標ごとに「ふり
かえり」を行ったB教諭の自己評価は,
2回とも「○」であった(表-8)。
理科学習において,どうしても自信が
もてなかったB教諭は, 理科学習そのも
のに苦手意識をもっていた。
しかし,メンター全員から問題意識のもたせ方や予想の立て方を,教えてもらったことで,少
しずつ理解が深まっていったといえる。また,実際に行ったことを基に話したり,板書を通じて
改善点を指摘されたりしたことは,より具体的な手立てになったといえる。2回目は,メンター
の意向により,メンティが授業を先行し,自分で考えたことを実践して自信をつけさせることに
した。そして,取組に対して賞賛を行ったり,アドバイスを行ったりした(資料-22)。
1回目
○ ・事前に一緒に考えてもらったり,板書を見せてもらったりすることで,理科学習の流れが分かり,自信をもってできました。
2回目
○ ・考えられる子たちで考えている感じなので,もっとめあてのときに,何をするのかを十分に確認をとったり,問い返したりして,思考が途切れないようにしたい。
表-8 B教諭の自己評価の変化
同学年の教諭だったので,聞きやすかったです。また,「私はこうだった。」と体験を交えていろいろ教えていただけた。やり方といよりも,理科学習の進める考え方を教えてもらえたので,自信がついた。
資料-22 B教諭の振り返り
図-7 メンターが,実践前後で変わったと思うところ
資料-21 放課後に,計画を立てる様子
若・長研-14
(イ) メンターの変容
実践後に,メンター全員に実践前後に変わったと思
うところを尋ねた結果である(図-7)。「自分自身
の学び」を全員選ぶ結果となった。また,自由記述で
は,B教諭の熱心な姿に,ひたむきに努力する姿勢を
学んだとあった。これらのことから,理科学習を教え
るにあたって,自分の理科学習の考え方をもう一度見
直し,B教諭に教えることで教材研究を深めたことに
つながったといえる。つまり,OJTを行うことは,
メンティだけでなく,メンターの学びにつながること
が分かる。学びだけでなく,B教諭との関わり方にも
変化があった。学年主任の教諭の感想からは,理科学
習指導そのものを伝えると同時に,B教諭のニ-ズに
重きをおいて,関わろうとしていたことが分かる(資
料-23)。この後の聞き取りで,B教諭とメンターが
関わるほどに,関係は良好になったと実感しているこ
とも分かった。
(3) C教諭とD教諭の実際
C教諭とD教諭については,実際の中でも顕著だった
点を述べたい。
まず,C教諭は,初任者1年次の教諭で,現在2年生
を担任している。新卒なので,教諭としても社会人と
しても初めての経験ばかりである。C教諭の課題意識
は,子どもたちが掃除をなかなかしないことにあった。
掃除中はもちろん,昼休みが終わっても時間通りに帰
ってこないこともしばしば見受けられた。同学年の教
諭3人,拠点校指導員,2年目の1年生担任の教諭の
5名で,メンターチームを結成した。
C教諭の学年は,掃除の指導の在り方を学年全員で,
もう一度共通理解した(資料-24)。これは,学年の
先生方全員が,自分自身の掃除の指導を見直すきっかけになったと答えている。スモ-ルステップ
の目標も「時間」「道具の使い方」「協力」といった取りかかりやすいものにしていたため,C教
諭は,期間中は集中して指導にあたり,学んだことをすぐに子どもたちに伝えていた。子どもたち
は,2,3日で変化が見られ始め,時間に合わせて行動したり,机を持ち上げて協力して運んだり
する姿が見られた。
年次の近い先生は,週に一度掃除の時間に,クラスを交換することで,具体的なアドバイスをする
ことができた(資料-25)。この取組は,自分のクラスも見られることになり,互いのクラスが自
然と掃除の指導に力が入った結果となった。
どんなことがメンティには必要で,その
うちの自分は何を伝えられるか,また伝
えられたかを考えるようになった。
資料-23 学年主任の感想
資料-24 学年で箒の使い方を確認する様子
資料-25 年次の近い教諭と掃除時間を交換 した様子を伝え合う様子
資料-26 チ-ムでない教諭の音楽の 指導の様子
若・長研-15
D教諭は,初任者2年次の教諭で,現在1年生を担任している。課題意識は,子どもたちに楽しく,
そして,正確な音程で歌うことができる指導であった。同学年の教諭3人,主幹教諭,3年目の3
年生担任の教諭の5名で,メンターチームを結成した。
学習発表会も近いため,学年合同の練習で,指
導のポイントを伝えたり,指導の役割分担を行っ
たりして,自信をもたせることにした。学年全体
で歌を初めから教えていくための段階は,理解し
たもののなかなか歌そのものの指導は難しいよう
であった。そこで,学年で音楽の指導をしてくだ
さっている教諭に来ていただき,朝の会の時間に
指導のポイントを教えていただくことになった
(資料-26)。D教諭は,短時間で子どもの歌声
がみるみる変化していくのを目の当たりにして,
何をどのように教えていけばいいのか理解してい
った。翌日,D教諭のみで指導が行われたが,指
導の仕方が大きく変わり,子どもたちが大きな声
ではっきり歌う姿が見られた。視覚的にも分かる
ようにポイントを掲示し,口の開け方などを具体
的に指導していた(資料-27)。参観していた同
学年や年次の近い先生から称賛の声をかけても
らい,自信につながったことをふりかえりミーテ
ィングで話していた。
少しずつ自信がついていることは,C教諭とD
教諭の自己評価からも窺える(表-9)。
3 チーム支援とOJTシートと三つの場の効果の
考察
メンティのニーズに焦点化したOJTが行うこと
ができる学校支援の仕組みを作っていくには,どの
ような内容が必要だろうか。明らかにするために,
次の3つの効果の考察を述べていきたい。
(1) チームで支援する効果について
ア チーム支援のアンケート結果から
チーム支援については,非常に高い達成度が
得られた(図-8)。実践前も,学年として動
いていたり,メンティに関わってきたりしてい
た。しかし,今回の実践において,改めて視点
をもって取り組むことで,さらに意識が高まっ
たといえる。メンティに対しての新たな気付き
の共通理解がチーム支援を高め,効果的なOJTにつながったのではないかと考える。
図-8 「チ-ムで支援したことは効果があっ た」の回答の割合
表-9 C教諭とD教諭のスモ-ルステップ ごとの自己評価の変化
一回目 二回目 三回目
C教諭
○ ○ ◎
D教諭
△ ○
・多数の目で意見を聞いたり,指導できたりし
たから。
・いろんな視点からの支援をメンティだけでな
く,自分も学ぶことができた。
・私一人ではとても若手を見れないから。
資料-28 チ-ムで支援したことに効果があったと思う理由
資料-27 D教諭が意識させるポイントを 掲示して指導している様子
若・長研-16
イ チームであることの成果と課題
成果は2点ある。1点目は,複数の目があることで,複数の視点でOJTを行い,伸びや課題
をとらえやすいということである。また,メンティだけでなく,メンター側の学びもほぼ全員が
感じており,メンティを中心にして,互いに学び合う機会になっているといえる。
2点目は,精神的な負担の軽減である。メンター側は,常に自信をもって指導できるとは限ら
ない。仮に,自信をもって指導している場合でも,若手指導の全てを任されることになると,一
人の負担が増えたり,偏った見方になったりする可能性もある。しかし,チームで,しかも役割
分担されていることで,自分がするべきことが焦点化されていることは,メンターにとって負担
にならなかった原因だと考える(資料-28)。
課題は,共通理解するための時間である。今
回は,4~5人のチームで実践を行った。人数
が増えれば増えるほど,ミーティングは長くな
り,共通理解するのも時間がかかった。しかし,
人数が少なすぎると,話し合いが活性化せず,
意見が偏るおそれがある。また,予定時間を考
えると,多すぎても一人ひとりの意見が短くな
り,話したい内容が伝えられないということに
つながる(図-9)。
以上の成果と課題からも分かるように,ミー
ティングの質の高さと時間の短縮を考えて,チ
ームの支援を行うことが大事であることが分か
った(資料-29)。
(2) 実践における三つの場の効果について
ア メンターミーティング
「メンターミーティング」の必
要性について,「とても思う」「や
や思う」を合わせると 95%の教諭
が,「必要だ」という結果になっ
た。また,「とても思う」「やや
思う」を合わせると 100%の教諭
が,ミーティングの前後で,メン
ティの見方が深まったという結果
であった(図-10)。メンターミ
ーティングを設定することは,メンテ
ィの見方の深まりにつながったといえ
る。その理由から分析すると,今まで
のメンティとの関係からでは見えなか
ったよさや課題を,他のメンターから聞くことができたことが大きい(資料-30)。また,ミー
ティング中の話の内容を視点別で分析すると,人が人を見るときに,同じように見ているとは限
らず,先入観や関わる時間帯によって,違う見方をしていることが分かった。
図-10 メンターミーティングの必要性とメンティの見方の深まり
・人材育成の視点を明確にもち,話の論点を外さない。 ・メンターやメンティの人間関係を把握し,話を進め られる。 ・雑談も含めてミーティングとする。
資料-29 ミーティングのポイント
図-9 「話しやすいと思う人数は,どれですか」 という設問の結果
(人)
・自分が気付かない面を,他の人から学ぶことができた。 ・頑張っているところ,得意な面を改めて知りました。 ・自分が関われていなかったことに気付いた。
資料-30 メンティに対して見方が深まったと思う理由
若・長研-17
イ レベルアップミーティング
(ア) 課題解決をめざした目標の段階
的なスモ-ルステップ
「レベルアップミーティング」の
必要性について,「とても思う」「や
や思う」を合わせると 100%の教諭
が,「必要だ」という結果になった
(図-11)。その理由から分析すると,
メンティの課題意識を具体的に聞く
ことで,メンターも,特に重要視す
る課題を共有することができる。そ
して,メンティは自分にとってニ-
ズのある課題を支援してもらえるこ
とになり,納得した取組ができるか
らと考える。何より一緒に考えを話
し合うことで,チーム全体がメンテ
ィの課題を共通理解し,焦点化した
支援を行うことができた(資料-31)。
しかし,課題からスモ-ルステッ
プを決める難しさでは,「とても思う」「やや思う」を合わせると 54%の教諭が,難しさを感じて
いた。例えば,メンティが国語の「話す・聞く」の領域に苦手意識があるにもかかわらず,三学期
にしか単元がなく,実践が難シートいう場合があった。また,本来なら期間をもっと長くおいて,
メンティへの支援の経過を見ていくところを,実証のために約 1 ヶ月という期間で設定したため,
目標達成をできるかどうか疑問のまま,
計画をたてることになったためと考える
(資料-32)。
(イ) OJTを行う上での役割分担
スモ-ルステップの目標が決まった後,
メンターがどのようにOJTを行う「役
割分担」についての効果について,「と
ても思う」「やや思う」を合わせると 93%
の教諭が効果があったと感じていた
(図-12)。
理由を分析すると,大きく2点あった。
1点目は,いつまでに何をすればよいか
が明確になるということ。2点目は,分
担ということで,一人だけが支援の責任
を負うというイメージからみんなで支
援していくというイメージをもつことが
できたことであった(資料-33)。
資料-33 役割分担したことは効果があったと思う理由
・計画をたて,見通しを持ち,心構えができること で,子どもによい指導ができる。 ・すべてを一人でするのは,難しいので,分担され ているとやりやすい。 ・見る視点が定まってよい。
・具体的に話し合うのが,大事だと思った。 ・より課題が明確になるから。 ・一緒にというのが,大事だと思う。
資料-31 課題から目標を考える場は,必要だと思う理由
資料-32 スモ-ルステップの目標を決めるのが難 しかったと思う理由
・単元の兼ね合いが難しい。 ・目標の設定が早すぎる。 ・子どもかメンティか,どちらの目標か分からなく なった。
図-12 「メンターにとって,役割分担したことは効果が あったと思いますか。」という設問の割合
図-11 課題から目標を考える場の必要性とその難しさ
若・長研-18
しかし,4チームとも,この役割分担を決め
る 際,特に時間がかかり話し合いが難航して
いた。支援というと,わざわざ時間をとって指
導をしたり,何かスキルを改めて教えたりする
といった,特別なことをしなければならないと
いう先入観から,新たに考えを生み出さなけれ
ばと,難しさを感じてしまっていたのではない
かと考える。
ウ ふりかえりミーティング
各スモ-ルステップで,10 分程度の「ふりか
えりミーティング」を行う必要性について,「と
ても思う」「やや思う」を合わせると 93%の教
諭が,必要であると感じていた
(図-13)。理由を分析すると,
時間を設定することで,皆で実
践のよさを確認できたり,次へ
の成果につなげたりすることが
できたと考える(資料-34)。
また,「ふりかえり」をす
ることは,実践の内容に関わ
ってくるため,締め切りの役
目を果たす姿が見られた。
必要性が高いことは分かったが,
内容に関しては,少し疑問の声も
あった。それは,メンティのでき
ていないところのアドバイスが長
引いてしまい,自信をつける時間
よりも課題を追求する時間が長く
なってしまった場合である。また,場をわざわざ設定しなくても,学年会等で気を張らずにやる
方が,堅くならずに本音で話せて,効果が上がるという意見もあった(資料-35)。人間関係や
それぞれの個性にもよると思うが,司会が話し合いの論点をはっきりさせ,時間との兼ね合いを
うまく考えて進めていくことが重要と考える。
(3) OJTシートにおける効果について
ア 時間について
3つのミーティング場面の平均時間をまとめた表である(表-10)。シートにあらかじめ書く
時間は含んでいないため,これよりも若干時間は長くなると考えられる。回を重ねても,それぞ
れのミーティングにかかる時間は,大きく見られなかった。さらに,2回目・3回目の「ふりか
えり」の時間を比較したところ,かかった時間にさほど差は見られなかった。このことから,目
標の内容によって,メンティへのアドバイスや「ふりかえり」の時間に増減があり,ミーティン
ミーティング場面 平均時間
メンターミーティング 18分4秒
レベルアップミーティング 34分8秒
ふりかえりミーティング 9分30秒
資料-34 ふりかえりの場は必要だと思う理由
・お互い知っているようで,分かっていない。評価しあうことで, よりよく見ることができる。 ・そういう場がないと,互いに評価しないと思う。 ・やりっぱなしではなく,振り返ることで,何ができていて,何が 不足か分かると思う。
図-13 メンターにとって,ふりかえりの場は 必要だと思いますか。
資料-35 ふりかえりの場は必要だと思わない理由
・文面にするのも大事ですが,日々の会話一言も大事。 ・できるだけ学年会の時間を確保し,コミュニケ-ションする中で, お互い話をすることが大事。
表-10 4チ-ムの各ミーティングの平均時間
若・長研-19
グにかかる時間は,話の内容に左右
されることが分かった。
イ 内容について
3つのOJTシートに関するア
ンケート結果である(図-14)。
(ア) メンターシートの効果について
メンターシートは,「表になっ
ている点が見やすく書きやすい」
「長所・短所がはっきりした」とい
う肯定的な意見が 94%であった。
これは,得意分野と領域を表にする
ことで,メンターはメンティに対し
ての理解度を客観的に見ることができたと考える。
(イ) レベルアップシートの効果について
レベルアップシートは,「シートがあれば,目的分担などがはっきりする」「課題がはっきり
する」と,シートを使うことによって,役割分担や課題をはっきりさせる記入欄を設けたことは
有効だったと分かった。さらに,ミーティング中に,「矢印に沿って進めばいいから,簡単だ。」
という声からも,フロ-チャ-ト式にして話し合う論点を書き込んでいたことで,次に何をすれ
ばいいか見通しがもちやすく,話し合いをスム-ズに進めることができた。実際に,今現在のメ
ンティの悩んでいる課題の中から一つの課題を絞る際,様々な観点から,優先順位をみんなで話
し合うことができていた。
(ウ) ふりかえりシートの効果について
ふりかえりシートは,「自由記述で,少ない量だったので,よかった」という肯定的な意見が
多かったが,一方で,「時間をとるのが難しい」という意見が挙げられた。今回は,スモ-ルス
テップの期間が短く,そのため振り返りが頻繁に行われるような実践になってしまい,ふりかえ
りそのものより,書くことの方に追われたことが原因と考える。見通しの段階で,ふりかえりミ
-ティングの設定まで考えて期間を設定する必要があると考える。
(4) 実践後のアンケートから
ア 実践後の満足度から
図-15 は,実践後のアンケー
トで,全員のメンティとメンタ
ーに,OJTに関しての満足度
を調べた結果である。満足度の
高い方を見てみると,「とても
思う」「やや思う」の合計は実
践前の 49%から,実践後は 72%
へと 22%の上昇が見られた(図
-15)。
理由を見ると,みんなで取り
組めたという実感やメンティと
図-15 実践前後のOJTをやってよかったと思った割合
図-14 「シートは,使いやすかったですか。」
若・長研-20
のよりよい関係が築くことがで
きたことへの満足感がうかがえ
る。また,内容を見ても,自己
の高まりやチームの関係性の高
まりを感じていた(資料-36)。これは,メンティの結果も含まれている。つまり,メンティだけ
でなくメンターも一緒に行動し,考えていくOJTによって,共に学び合える場になっているとい
える。
次に,満足度が低い方を見てみ
ると,実践前には0%だった「思
わない」が,実践後は7%上昇し
ていた。理由を見ると,学年会な
ど話し合いが削られたことやメンター自身が行ったOJTに対して,効果が感じられなかったこと
が分かる(資料-37)。チームとしての頑張りやメンティの成長には高い評価であるのに対し,自
分自身に対しては厳しい評価となった。
その原因の一つに,計画的と意
図的なOJTに対しての個人のと
らえ方が違うことが考えられる。
レベルアップミーティングで,ど
んなに役割や計画を立てていたにしても,日々の仕事の中で,確実に行っていくことは,大変難し
さを感じているのが分かる(資料-38)。さらに,今回の実証に関して,研修員の要望により 1 ヶ
月以内という期間指定をせざるを得ず,この期間では成長を見たり,自信をつけたりするには,短
すぎる取組となった。
大事なことは,人材育成の計画を行い,実践への声掛けを行う意識とそれを遂行できる核となる
リ-ダ-が必要であると考える。さらに,それを組織的な取組として位置付け,学校全体で共通意
識としてもっておくことで,チームとしての働きが活発化していくのではないかと考える。
第Ⅲ章 研究のまとめ
1 研究の成果
(1) チーム支援の効果について
メンターがメンティ一人だけに関わる場合と比べ,精神面でも負担感が少なく,前向きに取り組
むことができた。また,メンティの視点からも,多くの支援を受けることができた。全体を通して,
メンターがチームとして関わることは,メンティ,メンターともに,コミュニケ-ション力や協調
性の伸びが見られ,良好な関係を築くことに効果があり,チームの高まりにもつながったといえる。
特に,メンターやメンティ双方に,指導力の向上に高い有効性が見られた。
(2) 「OJTシート」の効果について
それぞれの特性をもった三種類のシートは,ミーティングを進める上での有効性が明らかにな
った。ミーティングの内容を視覚的にもとらえ,話し合うことが焦点化されたため,それぞれの
ミーティングを目的に沿って進めることができた。シートを整理し,書き記すことで,話し合い
の足跡を残すこととなり,メンティとメンターの気持ちやアドバイスを具体的に交流することが
できた。
資料-37 OJTをやってよかったと思わない理由
・必要な打ち合わせが削られる。 ・全研への取組と OJT の実践の時期が重なっていたからよかった。 しかし,OJT だけの効果ともいえない。
資料-38 意図的・計画的にできたと思わない理由
・週目標があり,分かりやすかったが,できないときもあった。
・目標は明確だったが,取り組む期間が短かったと思う。
資料-36 OJTをやってよかったと思う理由
・1つのことに絞った取組は大変有意義でした。 ・普段忘れかけたところに目を向け,学年一緒に取り組めたから。 ・メンティの関係が近くなった。
若・長研-21
(3) 三つの場の効果について
メンティを理解し,課題から一緒に目標や手立てを考え,振り返るといった一連の場の設定は,
互いに納得しながら課題意識を共有でき,意図的計画的に目標に向かって解決する姿となった。メ
ンティに対する共通理解が指導の共通性につながり,より効果を生んだ。
2 研究の課題
(1) スモールステップ目標の設定について
三つの場は,それぞれの必要性が明らかになった。共通した最終目標を話し合い,設定すること
は,大変有効であった。しかし,その後のスモールステップで目標を細分化する話し合いには時間
がかかり,スモールステップの目標の設定が難しい面があった。最終目標に向かって,スモールス
テップで段階的に取り組むメンティや学校の実態を踏まえて柔軟な選択の必要があると考える。
(2) ふりかえりミーティングについて
ふりかえりミーティングでは論点の明確化と設定の難しさに課題が残った。ふりかえりミーティ
ングでは,メンティの成長につなげられるよう,話し合いの目標の確認が必要であると考える。ま
た,計画的な実施できるような時間の設定と十分な効果が得られる期間の設定をすることで,さら
にふりかえりミーティングの充実につながると考える。
(3) チームの在り方について
本研究のチーム編成の観点は,同学年,拠点校指導員,年次の近い教諭の3点であった。しかし,
計画通りに進めるにあたって,突発的なトラブルなどに対して難しい面があった。実証中,学校全
体のOJTの広がりを考えると,チームの枠を基準としながら,柔軟なチームの在り方を検討して
いくことが望ましいといえる。
若・長研-22
資料等
引用文献
1 福岡市教育委員会 福岡市の教育デ-タブック P62 (平成26年)
参考文献
1 福岡市教育委員会 福岡市の教育施策 (平成26年)
2 浅野 良一 学校におけるOJTの効果的な進め方 (平成21年)
3 髙階 怜治 組織活性化を目指すマネジメント 教育開発研究所 (平成21年)
4 山本 政男 「新採教員」育て方・伸ばし方 教育開発研究所
有村 久春 「学校のPDCA」シリ-ズ №5 教育開発研究所 (平成18年)
5 佐竹 勝利 こんなとき,こう臨む教員評価・人材育成 教育開発研究所 (平成18年)
6 柴田 悦子 若年層教員を対象としたOJTにおける指導教諭の在り方
福岡市教育センター研究紀要第881号 (平成23年)
7 福岡市教育センター みんなで取り組もうOJT (平成26年)
8 栃木県教育委員会 「学校力」・「教師力」を高めよう (平成19年)
9 NPO 法人日本標準教育研究所
小学校教師の意識についてのアンケート実施報告書- (平成25年)
10 大阪府教育委員会 次世代の教職員を育てるOJTのすすめ ~学校で育てるために~
(平成20年)
11 東京都教職員研修センター OJT実践ガイドブック (平成22年3月)
12 宇都宮 純一 若年教員の学級経営力の向上に関する研究
福岡教育大学教職大学院 研究報告会 (平成26年2月)
13 中尾 ゆうすけ これだけ!OJT (平成22年12月)
14 内村 政光 OJTで部下がおもしろいほど育つ本 (平成24年9月)
研修員
近 藤 里 江 (筥松小学校教諭)
研究指導者
振 原 直 子 (研修支援課 主任指導主事)
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