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育児3 養育者の子どもの事故予防行動と日常の各 種育児相談相手の有無との関連−健やか親 21 最終評価・全国調査データから− 篠原 亮次 1 、山崎 さやか 2 、秋山 有佳 3 山縣 然太朗 3 1 健康科学大学 健康科学部、 2 健康科学大学 看護学部、 3 山梨大学大学院 社会医学講座 P2-021 【目的】 幼児の死因順位のうち不慮の事故は、常に上位にあること から養育者の子どもへの事故予防行動は重要である。近年、 社会構造の変化による人間関係の希薄化などから育児の孤 立化が問題となっており、育児能力の低下が懸念されて いる。このような状況下において育児の相談相手の存在は、 養育者の事故予防の知識獲得など育児サポートとして、育 児中の心の拠り所となる。そこで本研究では、健やか親子 21最終評価の全国調査データから、養育者の子どもの事故 予防行動と日常の各種育児相談相手の有無との関連を検討 する。 【方法】 対象は、 「健やか親子21」最終評価実施対象となった全国472 市区町村(各都道府県、約10か所)および平成25年3月から8 月の期間に1歳6か月健診(27,922名)、3歳児健診(26,971名) を受診した児の保護者である。方法は、各市区町村に『「健 やか親子21」の推進状況に関する実態調査票』の記入を依頼 した。また各市区町村の母子保健担当課から『親と子の健 康度調査アンケート』を乳幼児健診の対象となった保護者 に記入を依頼し、健診時に回収した。分析は、子どもの事 故予防に関する各項目の該当個数(1歳6か月:11項目、3歳: 10項目)を目的変数、育児の各種相談相手(11項目)の有無 を説明変数、母親の年齢、児の性別、児の出生順位、就業 の有無を調整変数とし、市区町村でネストした一般化線形 混合モデル(マルチレベル・ポアソン回帰分析)にて評価し た。 【結果】 事故予防に関する各項目の該当個数の平均値±標準偏差は、 1歳6か 月(全 個 数11)で8.7±1.7、3歳(全 個 数10)で8.1±1.6 であった。マルチレベル・ポアソン回帰分析において育児 の相談相手のうち、児の両年齢で共通していた有意項目は、 ポジティブ方向に「夫婦」、 「かかりつけ医師」、ネガティブ 方向に「インターネット」であった。調整変数では、 「出生順 位」と「就業の有無」で有意差が認められた。 【考察】 本分析では一般化線形混合モデルを使用し、地域性を考慮 した評価を行った。相談相手が「夫婦」、 「かかりつけ医師」 の場合、児の両年齢において事故予防行動へポジティブに 関連した。特に「かかりつけ医」の存在は育児の専門的知識 からのサポートと考えられ幼児期の相談相手として重要で ある。一方、 「インターネット」ではネガティブな関連がみ られ、このことは育児情報の多彩化や誤った情報の選択に 起因している可能性がある。 親になることによる地域愛着生成 増田 貴人 1 、古川 照美 2 、深作 拓郎 3 生島 美和 4 1 弘前大学 教育学部、 2 青森県立保健大学 健康科学部、 3 弘前大学生涯学習教育研究センター、 4 弘前学院大学 人文学部 P2-022 【目的】 親世代が地域に愛着を持ち、地域におけるよりよい育児環 境を創出できるような施策が必要である。本研究では、子 育てをしている対象者からのインタビューをもとに「地域 愛着」がどのように生成されているのかについて明らかに する。 【方法】 2つの町の保健師に対象者の選定を依頼した。インタビュー 調査は、B町5名、C町7名のフォーカスグループインタ ビューであった。インタビューは、地域特性について、親 になることによって変化したことにフォーカスをあてた。 インタビューの内容は個人情報を含まない逐語録にし、質 的データの分析手順に従い、地域のことを語っている部分 に着目し、前後の文脈との関係に注意しながら意味の読み 取れる単位で抽出し、できる限り語りや言葉に忠実にその 内容を表すようにコード化した。抽出したコードは意味内 容で分類、整理し、集めた群の内容を適切に表現する簡潔 な表題をつけてカテゴリ—化し、関連を考察した。なお本 研究は所属機関の倫理委員会の承認を得て実施した。 【結果】 B町は『いつでもすぐ参加できる小さなまち』『高齢者、学校、 自治会の出番が多い』『声かけあって話ができる環境』『近 所のことは代々、みんなが知っている』『子どもが少ないか ら逆に遊べる環境ではない』地域である。C町は『不便だけ ど住むのは嫌ではない』『子どもが少ないから逆に遊べる環 境ではない』としながらも、 『ご近所は代々から知っている』 『集まって何かをするのが好きな地域』である。親になるこ とによって地域のあり方(地域の存在)の変化を感じており、 B町の親は『親の地域へ貢献する姿をみて』きたことや、 『子 どもの地域への愛を感じて』、さらに『自治会への参加を通 じて居心地のよさの認識』を感じていた。C町の親は『子ど もを介して地域になじみ、地域に愛着がわき、地域をよく しようと欲がでる』『自身が子どもの頃の地域感覚と親に なってからの違いがある』『ここで仕事をし、住んでいくと いう覚悟』や『長く「ここ」で生活していくうちにできてくる 地域愛着』と感じていた。さらに、地域のつながりの感覚 を表現していた。 【考察】 地域愛着は夫の考え方や感じ方、子ども時代の自身の親が、 地域とどのようにかかわってきたかも、影響すると思われ、 そこに住んで生活していくという「覚悟」と今まで築かれて きた、永く広く密なつながりを壊すことなく生活していく 中で生成されてくるもと考えられた。 222 The 64th Annual Meeting of the Japanese Society of Child Health Presented by Medical*Online

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Page 1: P2-021 P2-022€¦ · 2つの町の保健師に対象者の選定を依頼した。インタビュー 調査は、b町5名、c町7名のフォーカスグループインタ ビューであった。インタビューは、地域特性について、親

育児3

養育者の子どもの事故予防行動と日常の各種育児相談相手の有無との関連−健やか親子21最終評価・全国調査データから−

篠原 亮次1、山崎 さやか2、秋山 有佳3、山縣 然太朗3

1健康科学大学 健康科学部、2健康科学大学 看護学部、3山梨大学大学院 社会医学講座

P2-021

【目的】幼児の死因順位のうち不慮の事故は、常に上位にあることから養育者の子どもへの事故予防行動は重要である。近年、社会構造の変化による人間関係の希薄化などから育児の孤立化が問題となっており、育児能力の低下が懸念されている。このような状況下において育児の相談相手の存在は、養育者の事故予防の知識獲得など育児サポートとして、育児中の心の拠り所となる。そこで本研究では、健やか親子21最終評価の全国調査データから、養育者の子どもの事故予防行動と日常の各種育児相談相手の有無との関連を検討する。

【方法】対象は、「健やか親子21」最終評価実施対象となった全国472市区町村(各都道府県、約10か所)および平成25年3月から8月の期間に1歳6か月健診(27,922名)、3歳児健診(26,971名)を受診した児の保護者である。方法は、各市区町村に『「健やか親子21」の推進状況に関する実態調査票』の記入を依頼した。また各市区町村の母子保健担当課から『親と子の健康度調査アンケート』を乳幼児健診の対象となった保護者に記入を依頼し、健診時に回収した。分析は、子どもの事故予防に関する各項目の該当個数(1歳6か月:11項目、3歳:10項目)を目的変数、育児の各種相談相手(11項目)の有無を説明変数、母親の年齢、児の性別、児の出生順位、就業の有無を調整変数とし、市区町村でネストした一般化線形混合モデル(マルチレベル・ポアソン回帰分析)にて評価した。

【結果】事故予防に関する各項目の該当個数の平均値±標準偏差は、1歳6か月(全個数11)で8.7±1.7、3歳(全個数10)で8.1±1.6であった。マルチレベル・ポアソン回帰分析において育児の相談相手のうち、児の両年齢で共通していた有意項目は、ポジティブ方向に「夫婦」、「かかりつけ医師」、ネガティブ方向に「インターネット」であった。調整変数では、「出生順位」と「就業の有無」で有意差が認められた。

【考察】本分析では一般化線形混合モデルを使用し、地域性を考慮した評価を行った。相談相手が「夫婦」、「かかりつけ医師」の場合、児の両年齢において事故予防行動へポジティブに関連した。特に「かかりつけ医」の存在は育児の専門的知識からのサポートと考えられ幼児期の相談相手として重要である。一方、「インターネット」ではネガティブな関連がみられ、このことは育児情報の多彩化や誤った情報の選択に起因している可能性がある。

親になることによる地域愛着生成

増田 貴人1、古川 照美2、深作 拓郎3、生島 美和4

1弘前大学 教育学部、2青森県立保健大学 健康科学部、3弘前大学生涯学習教育研究センター、4弘前学院大学 人文学部

P2-022

【目的】親世代が地域に愛着を持ち、地域におけるよりよい育児環境を創出できるような施策が必要である。本研究では、子育てをしている対象者からのインタビューをもとに「地域愛着」がどのように生成されているのかについて明らかにする。

【方法】2つの町の保健師に対象者の選定を依頼した。インタビュー調査は、B町5名、C町7名のフォーカスグループインタビューであった。インタビューは、地域特性について、親になることによって変化したことにフォーカスをあてた。インタビューの内容は個人情報を含まない逐語録にし、質的データの分析手順に従い、地域のことを語っている部分に着目し、前後の文脈との関係に注意しながら意味の読み取れる単位で抽出し、できる限り語りや言葉に忠実にその内容を表すようにコード化した。抽出したコードは意味内容で分類、整理し、集めた群の内容を適切に表現する簡潔な表題をつけてカテゴリ—化し、関連を考察した。なお本研究は所属機関の倫理委員会の承認を得て実施した。

【結果】B町は『いつでもすぐ参加できる小さなまち』『高齢者、学校、自治会の出番が多い』『声かけあって話ができる環境』『近所のことは代々、みんなが知っている』『子どもが少ないから逆に遊べる環境ではない』地域である。C町は『不便だけど住むのは嫌ではない』『子どもが少ないから逆に遊べる環境ではない』としながらも、『ご近所は代々から知っている』

『集まって何かをするのが好きな地域』である。親になることによって地域のあり方(地域の存在)の変化を感じており、B町の親は『親の地域へ貢献する姿をみて』きたことや、『子どもの地域への愛を感じて』、さらに『自治会への参加を通じて居心地のよさの認識』を感じていた。C町の親は『子どもを介して地域になじみ、地域に愛着がわき、地域をよくしようと欲がでる』『自身が子どもの頃の地域感覚と親になってからの違いがある』『ここで仕事をし、住んでいくという覚悟』や『長く「ここ」で生活していくうちにできてくる地域愛着』と感じていた。さらに、地域のつながりの感覚を表現していた。

【考察】地域愛着は夫の考え方や感じ方、子ども時代の自身の親が、地域とどのようにかかわってきたかも、影響すると思われ、そこに住んで生活していくという「覚悟」と今まで築かれてきた、永く広く密なつながりを壊すことなく生活していく中で生成されてくるもと考えられた。

222 The 64th Annual Meeting of the Japanese Society of Child Health

Presented by Medical*Online