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維持整備業務に関する新たな契約 方式(PBL)の導入について (米英の導入事例等を中心に) 平成23年6月 防衛省経理装備局

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維持整備業務に関する新たな契約方式(PBL)の導入について

(米英の導入事例等を中心に)

平成23年6月

防衛省経理装備局

装 備 政 策 課

1

目 次

1. はじめに

2. PBLとは

3. 米国におけるPBLの動向

1 背景・目的・経緯

2 定義、契約形態

3 検討体制

4 導入プロセス

5 導入件数

6 成功事例概要

4. 英国におけるPBLの動向

1 背景・目的・経緯

2 定義、契約形態

3 検討体制

4 導入プロセス

5 導入件数

6 成功事例概要

5. PBL契約における失敗事例

1 概要

2 失敗事例を踏まえたPBL実施に

おける留意点

6. 成功に向けたポイント

2

1.はじめに

防衛関係費の推移

防衛関係費が抑制される中、装備品の高性能化等の要因により、維持・整備に係る

コストの割合が増加

平成17年度以降、維持・整備に係るコストが正面装備品等契約額を逆転しており、新規主要装備品の調達を圧迫

コスト抑制に関するこれまでの取り組み

装備品の定期修理間隔を延長するなどして、

維持・整備に係るコストの抑制

廃棄する装備品の部品の新規装備品への

転活用など、正面装備品等の契約額の抑制

更なるコスト抑制に対する取り組み

今後、更なる維持・整備コストの増加が予

測される中、抑制に係る新たな取り組みが必要

抑制に係る新たな取り組みの一つとして、PBLの導入についても検討

2,000

6,000

10,000

12,000

平成10年 平成11年 平成12年 平成13年 平成14年 平成15年 平成16年 平成17年 平成18年 平成19年

主要装備品・整備諸費(億円)

10,000

20,000

30,000

40,000

50,000

60,000

防衛関係費(億円)

防衛関係費防衛関係費

主要装備品等契約額主要装備品等契約額装備品等整備諸費に係る契約額装備品等整備諸費に係る契約額

8,000

4,000

2,000

6,000

10,000

12,000

平成10年 平成11年 平成12年 平成13年 平成14年 平成15年 平成16年 平成17年 平成18年 平成19年

主要装備品・整備諸費(億円)

10,000

20,000

30,000

40,000

50,000

60,000

防衛関係費(億円)

防衛関係費防衛関係費

主要装備品等契約額主要装備品等契約額装備品等整備諸費に係る契約額装備品等整備諸費に係る契約額

8,000

4,000

3

1.はじめに(つづき)

平成23年度以降に係る防衛計画の大綱及び中期防衛力整備計画

平成22年12月17日に閣議決定された防衛計画の大綱及び中期防衛力整備計画

において可動率を高い水準で維持するなど防衛力の運用に不可欠な装備品等の運用基

盤の充実を図ることとされている。

平成23年度以降に係る防衛計画の大綱(抜粋)

Ⅵ 防衛力の能力発揮のための基盤

(2)装備品等の運用基盤の充実

装備品等の維持整備を効率的かつ効果的に行い、可動率を高い水準で維持するなど防衛力の運用に不可欠な装備品等の運用基盤の充実を図る。

中期防衛力整備計画(平成23年度~平成27年度)(抜粋)

Ⅲ 自衛隊の能力等に関する主要事業

5 防衛力の能力発揮のための基盤

(5)装備品等の運用基盤の充実

装備品等の可動率をより低コストかつ高水準で維持できるよう、装備品等の維持整備について、国内外の先進的な事例も参考にして、維持整備に係る成果の達成に応じて対価を支払う新たな契約方式(Performance Based Logistics)の導入を図るとともに、業務全体の質の維持向上及び効率化に向けた抜本的な取組等にも着手して運用基盤の充実を図る。

4

1.はじめに(つづき)

米英におけるPBLの適用状況

PBLは米英において2000年頃から取り組まれている装備品等の維

持・整備業務を民間委託する手法の一つであり、維持・整備業務の作業量に

応じて対価を支払うのではなく、可動率や安全性といった装備品等のパ

フォーマンスの達成に対して対価を支払う契約方式。

その導入により可動率や信頼性の向上及びコスト抑制など、一定の効果。

米英では、主に固定翼及び回転翼航空機を中心にPBLの導入が進められ

ているところ、米国においてはPBL契約のうち70%弱、英国においては、

PBL契約のうち、55%弱を占める。

米国におけるPBL適用装備品の内訳

18%

9%

7%5% 2%

59%

固定翼航空機

ミサイルシステム

回転翼航空機

特殊車両

ロケットシステム

サポートシステム

英国におけるPartnering適用装備品の内訳

9.1% 1.8%

14.5%

40.0%14.5%

20.0%

固定翼航空機

装甲車

回転翼航空機

艦艇および潜水艦

施設器材

戦略情報システム

5

1.はじめに(つづき)

防衛省・自衛隊におけるPBLの導入に向けた検討

防衛省・自衛隊においても、厳しい財政状況の中、装備品等の質の維持・

向上を図りつつ装備品等の維持・整備に係るコストを抑制する必要があり、

米英において一定の効果が得られているPBLの導入検討については、積極

的に取り組むべき分野であるとの認識。

海外事例等を参考にしながら、部外専門家の意見も活用しつつ、費用対効

果・実施上の問題点を含む具体的な検討を実施する必要。

防衛省・自衛隊には、PBLの概念などの定義や、PBLの導入検討プロ

セス、その検討態勢等、検討する上で留意すべき事項が定められていない。

PBLの導入に向けた検討事項

PBL導入ガイドライン(仮称)の策定

PBLパイロット・モデルの検討

契約面の課題等に関する検討

6

1.はじめに(つづき)

○PBLの検討については、内局、各幕及び装備施設本部の課長級で構成する「装備品等の維持・整備業務の在り方検討IPT」を設置。○IPTの下に、班長・担当級で構成する作業グループ(WG)を設置し、細部事項について検討。

IPT構成メンバー内局:防衛計画課長、会計課長、装備政策課長(IPT長)、システム装備課長、艦船武器

課長、航空機課長各幕:首席後方補給官付後方補給官(補給)、会計課長、防衛課長、装備部筆頭課長 等装備施設本部:調達企画課長、原価管理課長 等

装備品の維持・整備の在り方検討IPT

・維持・整備業務の現状及び問題点の整理・維持・整備業務の改善の方向性・より効果的な民間委託の方式の導入に関する基本的な構想→ PBL導入ガイドライン(仮称)、PBLパイロット・モデルの検討・その他維持・整備業務に関し必要な事項

作業グループ(WG)(細部事項の検討)

IPTにおける検討事項

在り方検討IPT及び作業グループについては次官通達及び経理装備局長通知に基づき設置

7

2.PBLとは・・・

PBL(Performance Based Logistics)装備品等の補給・整備に係る業務について、部品の個数や役務の工数に応じた契約

を結ぶのではなく、役務提供等により得られる成果(可動率の維持、修理時間の短縮、

安定在庫の確保等)に主眼を置いて包括的な業務範囲に対し長期的な契約を結ぶもの

官民で合意した業務評価指標や目標値に対し、企業にその成果を達成する手段等の

裁量を拡大させると同時に、成果目標を達成した場合に報奨金や契約延長等のインセ

ンティブを与え、企業の自主的な改善や効率化活動を促し、品質を維持・向上しつつ

長期的なコスト低減を図ることを目指すもの

パフォーマンスの未達成時契約不履行・納期遅延時などペナルティが課される場合

ありなしコスト削減のインセンティブ

パフォーマンスに応じた対価の支払い

作業量に応じたい対価の支払い契約内容

目的や情報を共有するパートナー顧客と契約相手方官民の関係

複数年度(概ね5年)原則として単年度契約期間

作業に要する額(従来方式)>(PBL方式)

作業に要した額契約額

一般的なPBL契約従来の契約方式

8

2.PBLとは・・・

契約面に係る課題等

作業量に応じた対価の支払いから、パフォーマンスの達成に対して対価を支払うた

め、予定価格の算定方式の検討が必要。

契約時点において、官民で合意した可動率等のパフォーマンスが達成された場合の

インセンティブの付与方法(報奨金の支払い、2回目以降の契約保証等)に係る検討

が必要。

PBLは可能な限り長期間で契約を締結することが望ましいが、国庫債務負担行為

においては5箇年が最長とされているため、財政法の特例措置により5箇年以上の契

約を可能とする枠組みの検討が必要。

PBLのパフォーマンス設定については、官民の事前の合意が必要と考えるところ、

その調整にあたっては透明性等の確保に留意し、契約に至るスキームの検討が必要。

契約面に係る課題については、具体的な導入の検討を進めて行く中で、新たな課題

の生起も考えられる。それらについても課題解決に向けた検討を行う。

9

3.米国におけるPBLの動向

1. 背景・目的・経緯

1990 20102005200019951990以前 1990 20102005200019951990以前

1998~PBLの段階導入

・業務プロセス改革・物流支援戦略

・民間の業務改革やコスト削減手法の積極採用(SCM戦略等)

・大量の在庫・肥大化したインフラ・誤配送・遅延の問題

・兵站支援業務システムの検討・成果合意文書化の確立・成果指標の導入による「パフォーマンスを購入する」という認識の確立

・冷戦の終結に伴う国防省のダウンサイジング・砂漠の嵐作戦での教訓(可視化されていないサプライチェーンの問題)

1991~取得業務に関する性能保証型への移行1940-1990

国防省

“Mass”Logistics

1990~取得改革の開始

1996~民間手法の積極採用の推進

1996~国防Joint

Vision 2010

米国におけるPBL導入の経緯

1990年代以前、米国軍は緊急時のリスク・ヘッジのため、大量の在庫を常時保持する一方、肥大化した物流網を利用していたため誤配送や遅延の問題が発生

冷戦終結に伴う国防予算の大幅縮小に対応するために取得改革やSCMなどの民間手法の採用が推進され、2001年にPBLの導入を正式に宣言

2003年からは、調達規模の大きい契約についてはPBL の適用を検討することを義務付け

10

3.米国におけるPBLの動向

2. PBL定義、契約形態

米国におけるPBLの定義

PBLとは、装備品の可動性向上や任務遂行支援を目的として、補給・整備業務の成果を購入する(成果を条件に役務等に対して契約を行う)という発想に基づく戦略である。

補給・整備業務の成果目標を達成するために、明確な役務分担と適正な成果を合意した上で長期契約が締結され、支援体制が構築される。

“A strategy for weapon system product support that employs the purchase of support as an integrated, affordable performance package designed to optimize system readiness. It meets performance goals for a weapon system through a support structure based on long-term performance agreements with clear lines of authority and responsibility.” DoD5000.1

Level 4MissionLevel 4Level 4MissionLevel 3

Weapon System

Level 3Level 3Weapon System

Level 2SubsystemAvailability

Level 2Level 2SubsystemAvailability

Level 1 DeliveryLevel 1 Level 1

Delivery

KPI(例)

KPI(例)

作業範囲(例)

作業範囲(例)

対象

(例)

対象

(例)

供給リードタイム在庫保証

供給リードタイム在庫保証

計画

物流

計画

物流

本体構成品本体構成品

エンジンの可用率エンジンの可用率

計画物流

整備

計画物流

整備

本体構成品本体構成品

機体の可動率機体の可動率

計画、物流、整備システム管理保全

計画、物流、整備システム管理保全

本体本体

任務遂行率任務遂行率

任務遂行のための全作業

任務遂行のための全作業

本体・関連機器本体・関連機器

米国におけるPBLの契約形態

米国におけるPBLは下に示すとおり定義されており、その特徴として「成果の購入」、「官民連携」、「長期契約」が挙げられる。

PBLの契約形態は4つのレベルに分類され、レベルが上がるにつれて委託作業範囲および委託対象物品が拡大し、民の責任範囲が拡大

11

3.米国におけるPBLの動向

3. 検討体制

IPTの体制(例) IPTメンバー(例)

コスト分析専門員技術専門家

プログラムマネージャー

プロダクトサポートマネージャー

在庫管理担当者

ロジスティックス担当官

ユーザー(運用担当者)

会計監査役

対外有償軍事援助(FMS)対象顧客

契約担当官

PBL IPT官の補給処

法廷弁護士

DLA国防兵站局

サプライヤー企業

コスト分析専門員技術専門家

プログラムマネージャー

プロダクトサポートマネージャー

在庫管理担当者

ロジスティックス担当官

ユーザー(運用担当者)

会計監査役

対外有償軍事援助(FMS)対象顧客

契約担当官

PBL IPT官の補給処

法廷弁護士

DLA国防兵站局

サプライヤー企業PM/PSM

プロダクトサポートインテグレーター

(PSI)

製造会社A 製造会社B 製造会社C DLA

契約

(国防省内組織との契約)

任務遂行者(War fighter)

成果合意文書(IPTメンバーとの交渉に基づき作成)

米国においてはPBL導入のプロセスを12に分けて定義

IPTは装備品のライフサイクルの段階を踏まえ、官民の様々な関係者の参画が推奨

12

3.米国におけるPBLの動向

4. 導入プロセス

Step1:装備品に対する

要求の確認Step2:

プロジェクトチームの編成

Step4:成果指標の

策定

Step5:支援統合責任者の

選定

Step6:官民の役務分担策定

Step7:SCM戦略の策定

Step8:成果合意文書(PBA)の策定

Step9:BCA分析の実施

Step10:PBL契約の締結

Step11:資金計画の管理

Step12:導入と継続的監視

1

2

3

PBL締結までの検討期間(米海軍)

要求基準の定義 成果指標合意と契約交渉

ビジネスケース分析

0ヵ月 6カ月 12カ月 18カ月

契約締結

Step3:現状把握

(既存の成果水準)

PBL導入のプロセス適用可能性判断チェックポイント

米国においてはIPTによりPBLの導入の検討や管理を実施

PBLの適用可能性はStep1、Step9、Step10の3回のチェックポイントを通じ判断

検討開始から契約締結までの期間を目標設定することで、契約締結までの期間の短縮化。(一例:海軍では、妥当な準備期間を約18カ月に設定)

13

3.米国におけるPBLの動向

5. PBL導入件数

PBL適用装備品の内訳(装備品種類) PBL適用装備品の内訳(適用対象)

18%

9%

7%5% 2%

59%

固定翼航空機

ミサイルシステム

回転翼航空機

特殊車両

ロケットシステム

サポートシステム

32%

68%

本体本体構成品

これまでに実施されたPBL契約は、航空機(68%)やミサイルシステム(18%)を対象とするものが多い

適用対象の構成比は本体が68%、本体構成品が32%で本体を対象とする契約が多い

米国防省では調達規模の大きい契約(ACAT I&II)に対し、PBLの導入を検討することを義務づけているが、2005年時点で該当するプログラム220件のうち、PBLの導入件数は76件

14

3.米国におけるPBLの動向

6. PBL成功事例概要

後方支援に関する業務基盤を有するロッキードマーチン社が機体全体の可用性を保証する契約を締結。契約項目や契約データ要求リストも簡素化した上でコストや利益を官民でシェアする方式により、支払い金額の妥当性を向上。

3:Weapon System

F117ナイトホーク

4

GE Aircraft Engine社が供給と品質の双方を保証する契約を締結。品質保証に関するKPIとして、ロジスティック応答時間や部品可用性、性能保証を加え、それが達成できるように民に裁量を付与し、サプライチェーンの見直し等を実現。

2:Subsystem Availability

F404エンジン(F/A-18)

2

国外の駐屯地などでも頻繁に使われている携行対戦車ミサイルに関し、ジャベリンジョイントベンチャー社が使える構成品をタイムリーに提供することを保証する契約を締結。国外輸送の効率化を図るために民間産業でのノウハウを活用するためDHLに輸送業務を委託。その結果、ターンアラウンドタイム(本国輸送+工場修理+海外輸送時間)を17日で実現。

2:Subsystem Availability

ジャベリン3

AAI社と、前線近くの可動式整備施設での整備、問題解析、修理、LRU、SRUの交換などを行う契約を締結。民の任務遂行状況を評価するためのKPI としてシステム可用性、任務遂行力などを設定。

4:Missionシャドー5

米海軍が保有する航空機16機種(固定翼、回転翼)23種類のタイヤに関し、ミシュラン社が他社のタイヤも含めた供給を行う契約を締結。ロッキードマーチン社が物流全般を担当し、需要予測に基づく適正な発注及び輸送を行うことで、在庫量の削減と供給リードタイムの短縮を実現。

1:Delivery航空機

タイヤ

1概要(成功要因等)PBL導入レベル対象装備品№

15

3.米国におけるPBLの動向

航空機用タイヤ(Delivery保証)

海軍所有航空機16機種23種類のタイヤに関し、主契約会社と包括業務契約を締結

背景

1999年、海軍ではすべて海軍省でタイヤの供給管理を実施。地理的に分散した倉庫で約5万個の在庫を抱え、それに伴う管理コストが肥大化タイヤ種別毎に製造業者と個別に契約を締結し、事務手続きに多くの作業負荷

各航空機のタイヤ需要の変動やそれに伴う各業者の供給リードタイムのばらつきが、頻繁な欠品、取得未達成を招き、可用性に悪影響(国内供給に平均60日)

契約概要

2000年5月、海軍が提案要求書(RFP)を発出。一般競争入札を経て、2001年2月にミシェラン社を主契約企業として契約を締結

基本5年の固定価格型契約(5年のオプション契約を2回まで更新可)海軍所有航空機16機種(固定翼、回転翼)に対応した23種類のタイヤの供給型契約(推定契約額:6,740万ドル)サブ契約(民民間)でロッキードマーチン社が需要予測、在庫管理、修理管理、輸送業務といった物流統合に関する業務を統括

16

3.米国におけるPBLの動向

航空機用タイヤ(Delivery保証)

海軍所有航空機16機種23種類のタイヤに関し、主契約会社と包括業務契約を締結

タイヤ補給率 在庫保有率

成果目標

補給率: 95%(緊急需要が発生した場合は最大2倍までの補給率を担保)供給リードタイム:国内は2日、国外は4日以内

効果

補給率:95%以上(05年時点で98.7%)供給リードタイム:国内33時間、国外59時間(平均値)09年時点で$46Mの削減効果を達成(主に在庫管理コスト、修理保全コスト)

注:PBL開始前の平均補給率81%

注:PBL開始時の在庫保有量5万本。05年度時で1.3万本に減少

17

4.英国におけるPBLの動向

1. 背景・目的・経緯

国防予算の大幅削減のもと国防産業の維持方策が検討される中で、データ共有による業務改善やサプライチェーン統合の取り組みが推進され、2005年にはPartneringの検討が正式に義務付け

英国におけるPartnering導入の経緯

2000 2010~200920082007200520011990~ 2000 2010~200920082007200520011990~

国防産業戦略PartneringHandbook発行

国防産業政策

HIOS

ATTACHPAC

SKIOS

AJT FSTA

▲DLO設立

データ共有による業務改善

サプライチェーンの統合を推進

・「ゆりかごから墓場まで」・Value for money・官民連携の更なる推進、具体的な参画への要請

PBLの段階的導入

・将来像の提示・情報戦略の必要性・官民連携の必要性

1991~調達改革「調達技術情報戦略(LITS)」

・陸海空で調達方法がバラバラ・技術情報と調達情報が分断

1999~民間企業向け調達ガイドライン発行

1999~PFI推進ガイド

▲DE&S設立▲IPTの編成

・国防省と企業によるPartnering契約に関し、政策とプロセスを記述したガイドブックを発行

18

4.英国におけるPBLの動向

2. Partnering定義、契約形態

Partneringの契約形態は3つのレベルに分類され、レベルが上がるにつれて、委託作業範囲および委託対象物品が拡大し、民の責任範囲が拡大

英国におけるPartneringの契約形態

Traditional

SparesInclusive

Contracting forAvailability

Contracting forCapability

•供給リードタイム

•在庫保証

•可用性

•可動率

提供者は合意した任務遂行上の要求を満たすことに責任を持つ提供者は合意した任務遂行上の要求を満たすことに責任を持つ

提供者は、合意した成果目標に基づく装備品・構成品の可用性・可動率に責任を持つ。そのために必要な在庫管理・部品供給・基地での整備業務を遂行する

提供者は、合意した成果目標に基づく装備品・構成品の可用性・可動率に責任を持つ。そのために必要な在庫管理・部品供給・基地での整備業務を遂行する

小 大民側の責任とリスク

•任務達成度提供者は、構成品の需要予測及び供給に責任を持ち、補給処での整備を一部遂行する

提供者は、構成品の需要予測及び供給に責任を持ち、補給処での整備を一部遂行する

契約の進化段階

共通の成果目標達成に向けた、具体的なパートナリング契約(官民連携契約)に基づく調達方法である。

“a procurement approach that uses partnering specific terms and conditions to enable the successful delivery of joint objectives”.

MoD Defence Commercial Directorate “Partnering Handbook for Acquisition Teams”

英国におけるPartneringの定義

19

4.英国におけるPBLの動向

3. Partnering検討体制

英国においては国防装備支援庁(DE&S)が国防省内の関係部署を集結し、整備、教育、訓練、能力向上など装備品の運用段階も見据えながら、多様な知見を有する関係者を交えて全般的な検討を進めていくIPTを設置

2003年4月にIPTと英国の中長期的な国防戦略との整合性を取るための支援組織としてITASを設置

Partnering検討体制(例)

ITASはMoDに対する独立したテクニカルアドバイスチーム

MoD(DE&S)

MoDMoD(DE&S)(DE&S) ITASITAS

IPT(官民混合)

IPTIPT(官民混合)(官民混合)

プライム(民)プライムプライム(民)(民)

サブ(民)サブサブ(民)(民)

サブ(民)サブサブ(民)(民)

20

4.英国におけるPBLの動向

4. Partnering導入プロセス

PartneringはCADMID管理モデルに基づく6段階の導入プロセスで定義しており、2つのチェックポイントで適用可能性が判断され、2年から2年半が準備期間となる

C A D M I DAssessmentConcept ManufactureDemonstration DisposalIn-service

Initial GateInitial Gate Main GateMain Gate PBL導入開始

・運用者要求基準文書(URD)の作成・IPT の編成・予算の確保

・Initial BCA実施・KPIと初期目標設定・Initial Gateの申請

・プライム企業選定

・成果目標の見直し

・契約内容の見直し

・役務分担の設定

・入札又は随意契約

・契約の締結

・製造(新規調達の場合)・Main Gateで合意したSRDとURDとの整合性確認

・パフォーマンス監視

・民側への業務移管

(PBLへの移行期間)

・技術要求基準文書(SRD)の作成・契約先候補企業へのSRD開示・民との連携

・最終BCA実施・Main Gateの申請

SSE(承認プロセス) サービスインと継続的な監視・補給・維持業務

・合意した目標に対するパフォーマンス維持

・継続したTCO削減努力・アップグレード・改良の実行

・用途廃止フェーズ

・適切な廃棄計画

・分解点検・回収

・廃棄、他国への転売

又は民間への払い下げ

契約及び移行期間

Partnering導入のプロセス

12ヶ月程度 8ヶ月程度 8ヶ月程度

21

4.英国におけるPBLの動向

5. Partnering導入件数

国防省では、2005年の「国防産業戦略」において、国防の全取得プログラムにおいてPartneringを検討することが義務づけられており、2010年10月時点で55件の適用事例あり

装備品本体を対象とするPartneringは航空機及び装甲車が中心。契約方式別内訳ではAvailability契約が主流。これはPartnering契約を段階的に進化させていくことが強く意識された結果、現在では多くの契約がAvailability契約に移行している結果であると推測

Partnering適用装備品の内訳(装備品種類) Partnering適用装備品の内訳(契約方式)

9.1% 1.8%

14.5%

40.0%14.5%

20.0%

固定翼航空機

装甲車

回転翼航空機

艦艇および潜水艦

施設器材

戦略情報システム

4%

74%

22%

Spares InclusiveAvailabilityCapability

22

4.英国におけるPBLの動向

6. Partnering成功事例概要

2000年以降、人件費の増大、飛行隊による管理コストの上昇などの問題が顕在化しはじめていたため、コスト削減施策として、2006年5月、マーシャル・エアロスペース社をプライム企業として24年間の可用性保証を行うPartnering契約を締結。ハーキュリーズにはJタイプとKタイプの2種類があり、型固有の部品や整備があることを考慮し、ロッキードマーチン社、ロールスロイス社がサブ契約業者として関与。

Availabilityハーキュリーズ(C-130J&K)

3

官所有の練習機の補給・整備業務に関し民間がノウハウを有していたことから、更なる民間への委託業務範囲の拡大が検討された結果、部品の補給及び機体の整備に加え、後方業務である訓練生への飛行訓練教育の任務を民間委託することとし、アセント社(ロッキードマーチン社とバブコック社の合弁)と任務保証を行うPartnering契約を締結。(2011年からサービス開始予定)

CapabilityホークAJT4

冷戦終結に伴う軍の規模の縮小を背景に整備コストを20%削減することが目標とされ、ハリヤーとトルネードに関して後方整備基地の再編と整備業務の変革の推進を決定。具体的な施策として「整備基地業務の集約(戦闘機ごとに整備基地及び整備レベルを集約)」、「リーン手法の導入(整備プロセスを迅速化)」、「インセンティブ制度の導入(成果達成時にインセンティブを付与)」が実施され、ローイスロイス社、BAEシステムズ社とPartnering契約を締結し、効率化及びパフォーマンスの向上を促進。

Availability(構成品)→Availability(本体)

ハリヤー、トルネード

2

従来契約では多数の会社と構成品ごとの契約を締結していたが、装備品のライフサイクルの最適化に向けアグスタ・ウェストランド社が可用性保証を行う長期のPartnering契約を締結。第1段階は部品の可用性を保証するものであったが、第2段階では機体全体の可用性に拡大し、飛行時間(ターゲット飛行時間に対する割合(%)、可動可能な飛行隊数、訓練機の可動性)と機体の保守性の双方を設定。

Availability(構成品)→Availability(本体)

シーキング1

概要(成功要因等)PBL導入レベル対象装備品No.

23

4.英国におけるPBLの動向

シーキング(英海・空軍)(Availability保証)

継続的進化を意識した官民連携の推進事例

背景

従来契約では、30社以上の企業と60件以上の部品供給等の契約を締結2005年3月、アグスタ・ウェストランド社と長期(シーキングの退役予定の2018年まで)のPBL契約を締結し契約企業を1社に集約当該契約は、装備品の全ライフサイクルにおける補給・維持への可動性契約の導入を視野に、部品供給保証契約から、航空機本体の可動性とエンジンの可用性保証契約へ発展

•搭載電子機器

•本体可用性•技術支援

2005年

従来(Non PBL)

2005年~部品供給保証

(アグスタウェストランド社)2008年~

エンジン可用性(ロールスロイス社)

Phase I

保証内容

2007年~本体可動性

(アグスタウェストランド社)

Phase II

•エンジン可用性

2007年 2018年

24

4.英国におけるPBLの動向

シーキング(英海・空軍)(Availability保証)

Phase2(2007年)から、飛行時間や機体の保守に関する指標を設定した可用性保証契約へステップアップ

後方支援 前線

部品

技術支援

機体

飛行時間

機体の保守性

1. ターゲット飛行時間に対する割合(%)

2. 機体の保守性

3. 可動可能な飛行隊数

4. 訓練機の可用性

成果指標(インセンティブ)成果指標(インセンティブ)

民側 官側

25

4.英国におけるPBLの動向

シーキング(英海・空軍)(Availability保証)

正確なデータ収集と契約先とのデータ交換は、実績を正しく評価するために必要不可欠

成果目標とモニタリング

期待効果

飛行時間 約90%期待の保守性 (達成)

飛行隊可動率 (達成)

訓練機の可動率 (達成)

従来契約と比較して12年間で9,000万ポンド(約120億円)のコスト削減につながると試算

飛行時間(70%~120%)

機体の保守性(数値非公開)

稼働可能な飛行隊数(数値非公開)

訓練機の可用性(数値非公開)

26

5.PBL契約における失敗事例

1. 概 要

GAOのレポートでは、複数のPBL契約において次契約に必要な予算を確保できず、契約の継続が困難となっていることを記載。主原因は「想定外のコスト発生」、「ビジネス

ケース分析を実行した時の前提条件が不適切であり予定を超える費用が必要」である

と分析されているが、個々の事例における具体的な原因は明らかにされていない。この

ような問題を回避しPBL契約を成功に導くためには、安定した予算の確保に向け、検

討段階から資金計画を策定することが重要。

移動式指揮

管制システ

ム等

(米国)

契約継続の

不可

3

21機の主翼の設計・開発のPBL契約においては、設計ミスにより製造コストが当初予定の3倍に押し上げられ、予算上の制約から最終的には9機のみが製造対象となった。設計ミスの根本原因は民間のBAEシステムズ社が官民IPTの主体となっていたため、本来官民がそれぞれの専門知識を活かして共に検討・検証を行うべきところ、民側に

意思決定権が偏り、十分なチェック機能が働かなかったことが根本原因であると考えら

れている。このような問題を事前に防ぐためには、官民各々の専門知識・スキルを踏ま

えた上で、PBL導入の検討および検証体制を構築することが重要。

ニムロッド

(英国)コストの増大2

PBL導入当初は可動率の目標の未達成が発生。これは、PBL導入と並行して補給処

の統合などが進められた結果、整備環境が変化したため、その変化に対応しきれな

かったこと、設定されていた目標値が高めであったことに起因。その後、補給処の統合

が完了し、新たな整備環境での運用の習熟に伴い、徐々に可動率が増加し、また、目

標値を適正な値に設定したことにより、目標達成に至った。このように、移行期間や環

境の変化等に伴う一時的な目標の未達成に対しては、ペナルティを科さないこと、また、

成果目標値を官民両者が納得できるように定期的に見直すことで、民間企業の継続的

な改善活動を促すことが重要。

ハリヤー

(英国)成果目標の

未達成

1

概要及び失敗要因事例観点No.

27

5.PBL契約における失敗事例

2. 失敗事例を踏まえたPBL実施における留意点

米・英で経験された失敗を回避するためには、BCAの適切な実施、データ収集基盤の確立、適正な契約期間の確保、官側の管理体制の確立、長期的な予算確保などの取り組みが重要

長期にわたりプログラムを実行するための安定した予算確保はPBL契約の成功にとって重要。

予算の確保契約継続

PBL契約の成熟度が増すにつれて、民に与える裁量を増やしつつ、官は全体の監督として主要マイルストーンにおける意志決定、変更、提案内容に関し常時、民とともに正確に検証できる体制を確立。

管理体制

PBL契約の条件で業務を委託された企業の「学習期間」、「初期投資の回収」、「工夫改善によるコスト削減と信頼性向上へのインセンティブ」を考慮し、ある一定期間以上の長期契約を考慮。

契約期間コスト削減

正確なデータを収集し管理する仕組みは、BCAの更新及び民の工夫改善を促す適切なインセンティブを付与するために必要。

データ収集基盤

PBL検討段階における契約条件の設定及び導入後の実績をモニタリングするためにもBCAの実施は必須。そして、「生きた文書」として常に最新のデータに基づき更新することで、継続的に官民の工夫改善を促すことが可能。

BCAの実施成果目標の達成

概要留意点観点

失敗事例を踏まえたPBL実施における留意点

28

6.PBL導入の成功に向けたポイント①

装備品の特性の考慮、官民の密接な連携、民間手法の積極的な活用、明確な指標の設定、安定した予算確保、客観的な監視、継続的な改善努力などが重要

•妥当な契約金額や業績評価指標設定を行うため契約形態を段階的に進化•民の自助努力を引き出す目標とインセンティブを設定し、民側主導で改善工夫の提案を促す•プライム企業は統合能力が必要•契約を共につくりあげ、官民が補給・整備を共同して実施することが大切

契約

•ビジネスケース分析はPBL導入前の実施に加え、実際の運用実績に基づいて更新BCA

•すでに民に委託している業務範囲、民が保持するスキルを基本として検討を開始•民の手法(サプライチェーン戦略、リーン手法、コスト管理手法等)を積極的に採用することがコスト削減・品質向上に大きく寄与

•精度の高い需要予測に基づく、適正な発注および輸送計画•PBL開始後も導入初期においては万が一に備えたバックアップ・プランを保有

補給・整備方法

•任務を遂行する官が最大限のメリットを享受するように業績評価指標を設定•測定及び管理が可能で明確な業績評価指標•関係者間で成果の進捗を共有できる仕組み

業績評価指標

•装備品毎に官民共同の検討体制(IPT)を構築し、従来のやり方にとらわれることなく、民の創意工夫、改善の提案を積極的に取り入れる姿勢

戦略

•装備品の特性(例.技術的性質、用途、退役までの年数、経済性等)からPBLの適用の可否および内容(業務の委託範囲・保証範囲 等)を判断

適用装備品

内容観点

29

6.PBL導入の成功に向けたポイント②

装備品の特性の考慮、官民の密接な連携、民間手法の積極的な活用、明確な指標の設定、安定した予算確保、客観的な監視、継続的な改善努力などが重要

•対象装備品の補給・整備業務におけるパフォーマンスを継続的にモニタリング•正確な情報収集及び適切なデータ交換に必要な情報管理を徹底

効果

•正確なデータ収集、管理を可能とするシステム基盤の整備•適切な業績評価指標の検証のためにデータ交換(共有)を明文化•客観的な監視体制(IPT)の確立

監視

•長期契約を前提とするPBL契約においては、安定した予算の確保資金計画

内容観点