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- PCT - 平成30年度知的財産権制度説明会(実務者向け)テキスト PCT 国際出願制度の概要 -特許協力条約(PCT)に基づく国際出願の仕組み- 平成30年度

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Page 1: PCT Î % Í!G· rPCT 30 <本テキストの内容に関するお問い合わせ先> 電話:03-3581-1101 国際出願の出願手続に関して (受理官庁)内線2643 日本への国内移行手続に関して

<本テキストの内容に関するお問い合わせ先>

電話:03-3581-1101

国際出願の出願手続に関して (受理官庁)内線2643

日本への国内移行手続に関して (指定官庁)内線2644

国際出願の制度全般に関して (国際出願室)内線2642

PCT国際出願制度の概要 

-

特許協力条約(P

CT

)に基づく国際出願の仕組み-

                                   

              

平成30年度       

 

               

特 

許 

平成30年度知的財産権制度説明会(実務者向け)テキスト

PCT国際出願制度の概要 -特許協力条約(PCT)に基づく国際出願の仕組み-

平成30年度

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(30ヶ月)

自国特許庁(受理官庁)

A国特許庁C国特許庁

C語翻訳文A語翻訳文

審 査

出願公告

審 査

+国内手数料

B語翻訳文

B国特許庁

特許協力条約(PCT)に基づく国際出願の手続フロー

(12ヶ月以内)

(優先日)

(18ヶ月)

各指定国で審査

特許査定権利化

パリ条約に基づく優先権を主張して基礎出願の日から12ヶ月以内にPCT国際出願をすることも可能出願人

国際調査・先行技術調査・新規性、進歩性、産業上の利用可能性の特許性に関する国際調査機関の見解の作成

このテキストの参照ページ

PCT国際出願制度の特徴 P.4

直接出願とPCT国際出願 P.3

PCT国際出願制度を利用するメリット P.7

国際調査 P.16

国際公開 P.17

国際予備審査 P.18

19条補正 P.19

発明の単一性 P.25

34条補正 P.20

国内移行手続 P.20

優先権主張の訂正、追加 P.22

優先権主張の取下げ手続 P.25

PCTの期間管理 P.28

PCTの費用 P.11

国際調査機関による見解書 P.17

PCT国際出願に関する情報の入手 P.31

PCT国際出願制度に関する問い合わせ先 P.39

明白な誤記の訂正 P.24

規則4.17の申立て手続 P.27

PCTに基づく国際出願

国際調査報告

国際調査機関による見解

特許性に関する国際予備報告(第Ⅰ章)

特許

特許

特許

補充国際調査(任意)追加的な先行技術調査

PCT国際出願の取下げ手続 P.25指定の取下げ手続 P.25

翻訳文の提出優先日から30ヶ月(国内移行期限)以内に翻訳文を各指定国が要求する言語で指定国特許庁へ提出する

各指定国の国内段階への移行

国際予備審査(任意)新規性、進歩性、産業上の利用可能性につい

ての予備的判断のための審査

特許性に関する国際予備報告(第Ⅱ章)(国際予備審査報告)

国際公開

出願にあたって最低限必要となる手数料 ※2018年10月1日現在

● 国際出願手数料

・国際出願の用紙の枚数が30枚まで : 153,800円

・30枚を超える用紙1枚につき : 1,700円

● 送付手数料 : 10,000円

● 調査手数料

・日本国特許庁が国際調査を行う場合 : 70,000円/156,000円

・欧州特許庁が国際調査を行う場合 : 227,600円

・シンガポール知的所有権庁が国際調査を行う場合 : 185,300円※手数料は為替の変動等により変更されることがありますので、必ず最新情報を御確認ください。

+国内手数料

(手数料)

(手数料)

(手数料)

CHF

優先日

0ヶ月 12ヶ月

各国特許庁への直接出願

PCT国際出願

A国出願日

国際出願日

16ヶ月 18ヶ月 30ヶ月

国際調査

(国際予備審査)

A国

B国

C国

D国

A国

B国

C国

(D国は国内移行しないことで経費節約)

国際公開

優先日

国際出願日(×国内移行の日)がそれぞれの国への出願日となる

B国出願日

C国出願日

D国出願日

「直接出願ルート」と「PCTルート」

特許性に関する国際予備報告 P.5

(優先期間)

(優先期間)

+国内手数料

(日本語) / (英語)

(補充国際調査)

基礎出願

基礎出願

各国それぞれの特許庁へ直接出願

各国それぞれの特許庁へ国内移行

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■■ ここののテテキキスストトににつついいてて

このテキストは、PCT国際出願制度の概要とその手続の基礎を理解したいという方のために作

成されたものです。複雑な説明はできるだけ簡潔にし、PCT国際出願制度の基本を御理解いただ

くことを優先しています。

本テキストでPCT国際出願制度の特徴を御理解いただいた上で、さらに具体的な手続や書類

の作成方法等について知りたい方は、知的財産権制度説明会(実務者向け)テキスト『特許協力

条約(PCT)に基づく国際出願の手続』も御参照ください。

※最新の各テキストは、特許庁ウェブサイトで御覧いただけます。

http://www.jpo.go.jp/oshirase/event/setumeikai/setumeikai-text/index.html

なお、巻頭の「見開きページ/特許協力条約(PCT)に基づく国際出願の手続フロー」を開くと、

PCT手続フローを御覧いただきながら、本テキストを読むことができます。

本文中に数字で脚注が付されている用語については、巻末に用語解説を掲載していますので

適宜御参照ください。また、本文中に「*」が付されている用語については、参照すべき条約・規

則をページ左側に掲載しています。

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目 次

見開き:特許協力条約(PCT)に基づく国際出願の手続フロー

第1章 PCT国際出願制度の概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・P.1

第1節 特許協力条約(PCT)に基づく国際出願とは ・・・・・・・・・・・・・・・・・P.1

第2節 PCT国際出願制度を利用するメリット ・・・・・・・・・・・・・・・・・P.7

第3節 PCT国際出願に必要な費用 ・・・・・・・・・・・・・・・・・P.11

第2章 PCT国際出願の手続 ・・・・・・・・・・・・・・・・・P.15

第1節 PCT国際出願の主な手続 ・・・・・・・・・・・・・・・・・P.15

第2節 PCT国際出願の様々な手続 ・・・・・・・・・・・・・・・・・P.22

第3節 PCT国際出願に関する情報の入手 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・P.31

PCT国際出願制度に関する各種問い合わせ先 ・・・・・・・・・・・・・・・・・P.39

用語解説 ・・・・・・・・・・・・・・・・・P.41

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第第11章章 PPCCTT国国際際出出願願制制度度のの概概要要

第1節 特許協力条約(PCT)に基づく国際出願制度とは

特許協力条約(PCT)1に基づく国際出願制度とは、ひとつの出願書類を条約に従って提出

することによって、PCT加盟国であるすべての国(2018年10月現在152か国)に同時に出願し

たことと同じ効果を得られる出願制度です。

<PCT国際出願制度の概要>

ある発明に対して特許権を付与するか否かの判断は、属地主義*のもと、

各国がそれぞれの特許法に基づいて行います。したがって、特定の国で特

許を取得するためには、その国に対して直接、特許出願を行うことが必要と

なります。

しかし、経済と技術のグローバル化を背景として、多くの国で製品を販売

したい、模倣品から自社製品を保護したい、などの理由から特許を取得した

い国の数は増加する傾向にあります。発明は、先願主義のもと、一日も早く

出願することが重要ですが、特許を取得したいすべての国に対して個々に

特許出願を行うことはとても煩雑です。また、多くの国に対して同日に、それ

ぞれ異なる言語を用いて異なる出願書類を提出することは、非常に困難で

す。

PCT国際出願制度は、このような煩雑さ、非効率さを改善するために利

用できる国際的な特許出願手続の制度です。PCT国際出願では、国際的

に統一された出願書類をPCT加盟国である自国の特許庁に対して1通だけ

提出すれば、すべてのPCT加盟国に対して「国内出願」を出願したことと同

じ扱い*を受けることができます。つまり、そのPCT国際出願に与えられた出

願日(国際出願日)は、すべてのPCT加盟国における「国内出願」の出願日

となります**。

すべてのPCT国際出願は、その発明に関する先行技術があるか否かを

調査する「国際調査2」の対象となります*。この国際調査の結果は「国際調

査報告3」として出願人に提供されます。その際には、その発明が新規性、

進歩性など特許取得に必要な要件を備えているか否かについて特許審査

官の見解(国際調査機関による見解書4)も示されますので、自分の発明を

評価するための有効な材料として利用することができます。

さらに、出願人の希望により、特許取得のための要件について予備的な

審査(国際予備審査5**)を受けることもできます(各国が行う特許付与のた

めの審査ではありません)。

多くの国に対してそれ

ぞれ出願することは、

非常に煩雑となる

PCT国際出願日は、

各国の出願日となる

PCT国際出願では、国際調査、国際予備審査

を利用することができ

* 条約第11条(4) ** 条約第11条(3)

* 条約第15条 ** 条約第33条

* パリ条約第4の2

- 1 -

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PCT国際出願制度を利用することで、出願人自らが特許取得の可能

性を精査し、厳選した国においてのみ手続を係属させ、費用の効率化、適

正化を図ることが可能となります。

<PCT国際出願制度において注意すべき点>

PCT国際出願は、あくまで国際的な「出願手続」であるため、その発明が、

特許を取得したい各国において権利を取得できるかどうかは、最終的には

各国特許庁の実体的な特許審査(実体審査)に委ねられています。

そこで、PCT国際出願制度の最後の手続は、PCT国際出願を各国の国

内手続に係属させるための手続*となります。PCT国際出願が国内手続に

係属された後は、それぞれの国の国内法令に従って処理されます。この

「各国の国内手続に係属させる」手続を「国内移行」手続と呼びます。国内

移行手続は、優先日6から原則30ヶ月までに各国が認める言語に翻訳した

翻訳文7を提出することによって行います。また、指定国が求める場合には

国内移行にかかる手数料を支払います。

<補足:PCT国際出願制度の成り立ち>

PCTという条約の成立が議論され始めたのは1966年です。当時、各国

特許庁は、増加し続ける特許出願に対する業務負担から処理滞貨が生じ

始めていました。また、出願人も各国に対して同じ出願を行うことの手続負

担を感じていました。そのような時代背景から、今日のPCT国際出願制度が

生まれました。

特許権を付与するか否

かの判断は各国の実

体審査に委ねられる

* 条約第22条 条約第39条

発明 特許出願

特許出願

特許出願

日本の出願日 韓国の出願日 豪州の出願日

各国特許庁に対して行う「直接出願ルート」とそれぞれの国での出願日

代理人

現地代理人

現地代理人

英語に翻訳

韓国語に翻訳

もし、ここで第三者が 類似の発明を 韓国で出願したら・・・

出願したい国が増えれば増えるほど…

①手続きは煩雑になる

②初期投資(以下)が拡大する。

・出願書類の翻訳

・現地代理人の費用

・通信費 など

- 2 -

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PCT国際出願制度を利用することで、出願人自らが特許取得の可能

性を精査し、厳選した国においてのみ手続を係属させ、費用の効率化、適

正化を図ることが可能となります。

<PCT国際出願制度において注意すべき点>

PCT国際出願は、あくまで国際的な「出願手続」であるため、その発明が、

特許を取得したい各国において権利を取得できるかどうかは、最終的には

各国特許庁の実体的な特許審査(実体審査)に委ねられています。

そこで、PCT国際出願制度の最後の手続は、PCT国際出願を各国の国

内手続に係属させるための手続*となります。PCT国際出願が国内手続に

係属された後は、それぞれの国の国内法令に従って処理されます。この

「各国の国内手続に係属させる」手続を「国内移行」手続と呼びます。国内

移行手続は、優先日6から原則30ヶ月までに各国が認める言語に翻訳した

翻訳文7を提出することによって行います。また、指定国が求める場合には

国内移行にかかる手数料を支払います。

<補足:PCT国際出願制度の成り立ち>

PCTという条約の成立が議論され始めたのは1966年です。当時、各国

特許庁は、増加し続ける特許出願に対する業務負担から処理滞貨が生じ

始めていました。また、出願人も各国に対して同じ出願を行うことの手続負

担を感じていました。そのような時代背景から、今日のPCT国際出願制度が

生まれました。

特許権を付与するか否

かの判断は各国の実

体審査に委ねられる

* 条約第22条 条約第39条

発明 特許出願

特許出願

特許出願

日本の出願日 韓国の出願日 豪州の出願日

各国特許庁に対して行う「直接出願ルート」とそれぞれの国での出願日

代理人

現地代理人

現地代理人

英語に翻訳

韓国語に翻訳

もし、ここで第三者が 類似の発明を 韓国で出願したら・・・

出願したい国が増えれば増えるほど…

①手続きは煩雑になる

②初期投資(以下)が拡大する。

・出願書類の翻訳

・現地代理人の費用

・通信費 など

前頁の図は、外国で特許を取得したい場合に、各国の特許庁に対して

直接、特許出願を行う方法を示したものです。このような外国特許庁に対す

る直接的な出願は、「直接出願ルート」と呼ばれ、「PCTルート」と区別されま

す。また、外国から出願を行う外国人を、出願を受ける国の内国人と平等

に扱う原則(内国民待遇)を規定したパリ条約に由来して、「パリルート出願」

とも呼称されます。

直接出願は、権利を取得したい国にそれぞれ出願しなければなりません

が、各国の出願様式、出願方法に従う必要があり、全ての国へ同日に出願

することは非常に困難です。出願する国の数が2~3ヶ国程度であれば、手

続の煩雑さも限られた程度かもしれません。しかし、経済と技術のグローバ

ル化が進んでいる昨今では、ひとつの発明を数十カ国へ出願し、広く権利を

取得したいという傾向も多く見られます。各々の国で現地代理人を介して手

続することで出願費用もかさみ、各国での特許取得の可能性の高低にかか

わらず、翻訳費用の支出も必須となります。

加えて、直接出願は、同じ発明にかかる特許出願に対して、ほぼ同じ手

続処理(書類が適式に作成されているかを確認する「方式審査」、先行技

術の調査、出願の公開、実体審査など)をそれぞれの特許庁が重複して

行っている状況にあります。

このような直接出願における、①出願人にとっての手続の煩雑さと増大

する出願費用の問題、②複数の特許庁が同じ発明について類似の業務を

重複して行うことの非効率さ、に対して改善を図ったのがPCT国際出願制度

です。

PCT国際出願制度は、同じような願書の個別の方式審査や先行技術に

関する調査など、それぞれの国の特許庁が行っていた実体審査に至る前の

諸手続を条約により国際的に統一し、1本に「束ねた」特別な手続段階を創

り上げました。この「束ねた」手続の先には、それぞれ枝分かれした国内出

願が存在するという発想から、PCT国際出願は、「国内出願の束」と表現さ

れることがあります。

次の図は、外国の特許庁へ出願する際の「直接出願ルート」と「PCTルー

ト」について時間軸を中心に比較しています。

直接出願では、出願し

たい国が増えれば増え

るほど、同日の出願日

の確保は困難に、かつ

手続も煩雑となる

直接出願では、出願後

の処理を各国特許庁

が重複して行っている

PCT 国際出願制度

は、出願人と特許庁に

とっての経済性と効率

性を目的とした制度

- 2 - - 3 -

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<PCT国際出願制度の特徴>

1. PCT国際出願は、①一つの願書を、②母国語で作成し、③自国の特許

庁に提出することによって、④その日の時点で有効なすべてのPCT加

盟国に対して、⑤PCT国際出願と同日に各々の国に国内特許出願をし

たことと同様の効果が得られます。

①でいう願書は、「国際出願願書(PCT/RO/101)」と呼ばれる書類で、条約が規定する国

際的に統一された様式です。日本国特許庁のウェブサイトからも入手することができます。

③でいう自国の特許庁とは、PCTに加盟する各国の特許庁ですが、PCT国際出願願書の

受理という条約に則った機能を果たすことからPCTでは「受理官庁8」と呼ばれます。

また、④及び⑤で記載したように、PCT国際出願は、PCT加盟国すべてに出願したものとみ

なされます。PCT国際出願の時点で有効なPCT加盟国は、そのPCT国際出願が権利取得

のために今後国内移行をする可能性がある国として「指定をした国」として扱われます。ま

た、それら指定された国々は「指定国9」と呼ばれます。さらに、指定国の特許庁は、PCT国

際出願が国内移行されたのち、条約に則ってその機能を果たすことから「指定官庁」と呼ば

れます。

PCT国際出願制度は

外国への特許出願を

簡素化する

「直接出願ルート」と「PCTルート」

- 4 -

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<PCT国際出願制度の特徴>

1. PCT国際出願は、①一つの願書を、②母国語で作成し、③自国の特許

庁に提出することによって、④その日の時点で有効なすべてのPCT加

盟国に対して、⑤PCT国際出願と同日に各々の国に国内特許出願をし

たことと同様の効果が得られます。

①でいう願書は、「国際出願願書(PCT/RO/101)」と呼ばれる書類で、条約が規定する国

際的に統一された様式です。日本国特許庁のウェブサイトからも入手することができます。

③でいう自国の特許庁とは、PCTに加盟する各国の特許庁ですが、PCT国際出願願書の

受理という条約に則った機能を果たすことからPCTでは「受理官庁8」と呼ばれます。

また、④及び⑤で記載したように、PCT国際出願は、PCT加盟国すべてに出願したものとみ

なされます。PCT国際出願の時点で有効なPCT加盟国は、そのPCT国際出願が権利取得

のために今後国内移行をする可能性がある国として「指定をした国」として扱われます。ま

た、それら指定された国々は「指定国9」と呼ばれます。さらに、指定国の特許庁は、PCT国

際出願が国内移行されたのち、条約に則ってその機能を果たすことから「指定官庁」と呼ば

れます。

PCT国際出願制度は

外国への特許出願を

簡素化する

「直接出願ルート」と「PCTルート」

2. PCT国際出願願書の方式審査は、PCT国際出願を受理した受理官庁

によって国際的に統一された基準で行われます。

いったん国際出願日が認定されたPCT国際出願は、そのPCT国際出願が各指定国の特

許庁(指定官庁)に移行されたのちであっても、方式的な事項に関して各国の審査を再度

受けることはありません。書類上の適式性の審査は、受理官庁が条約基準で行う一回限り

です。

3. すべてのPCT国際出願は、その発明に関する先行技術があるか否かを

国際調査機関10が調査する「国際調査」の対象となります。国際調査の

結果は、「国際調査報告」として出願人に提供されます。

また、国際調査報告と同時に、その発明の特許性について特許審査官

から「国際調査機関による見解書」が示されます。さらに、2009年1月

より開始された補充国際調査11制度では、出願人の希望により、国際

調査(主調査)に加え、別の国際調査機関による調査(補充調査)を受

けることができます。

4. PCT国際出願は、出願人の希望により、特許性を判断する際の国際的

な一定基準を発明が満たしているか否かの予備的な審査「国際予備

審査」を受けることができます。その結果は「特許性に関する国際予備

報告(第Ⅱ章)12(以下、国際予備審査報告)」として出願人に提供され

ます。

国際調査報告、国際調査機関の見解書、国際予備審査報告は、出願人が後に権利を取

得したい指定国に国内移行させる際の重要な判断材料となります。また、国際調査報告を

受けた後にはPCT第19条に基づく補正13を、国際予備審査が行われているときには第34

条に基づく補正14を行い、PCT国際出願が特許になる可能性を高めることもできます。ただ

し、これらは予備的かつ非拘束的なものであり、特許付与のための最終的な特許性の判断

は、各指定官庁に委ねられています。

5. PCT国際出願を指定国に国内移行させる場合、その期限は優先日か

ら通常30ヶ月の期間が満了する前までです。その間、国際調査が行わ

れ、国際調査報告は、PCT国際出願(明細書、請求の範囲、図面)とと

もに国際的に公開(「国際公開15」)されます。国際公開は、優先日から

18ヶ月を経過した後速やかに行われます。

国際出願日から国内移行までの期間は「国際段階16」といわれ、手続は条約の拘束を受け

ます。他方、国内移行した後は、「国内段階」といわれ、各国国内法令が手続を規定してい

ます。PCT国際出願制度では、国際段階をいかに有効に、戦略的に活用するかが制度の

利便性を最大限に活用する鍵となります。もちろん、国際段階を早めに終え、特定の指定

国に早期に国内移行することも可能です。

6. PCT国際出願制度においては、出願人は、願書、明細書、請求の範囲、

図面などを受理官庁宛てに一通提出するだけで済みます。さらに、出

願人が受理官庁へ提出した願書に記載した事項を変更するための要

請については、WIPO国際事務局17が記録の変更を行います。その後、

PCT願書の方式審査

は、国際的な統一基準

で1回行われるのみ

すべてのPCT国際出

願は、先行技術調査が

国際的な統一基準で実

施される

PCT国際出願制度で

は、出願人の希望によ

り予備的な審査を国際

的な統一基準で受ける

こともできる

PCT国際出願制度で

は、指定官庁への書類

の送付などもWIPO国際事務局が一括して行

い、出願人の手間がな

PCT国際出願制度で

は、優先日から 30ヶ月

の期間内で出願を最終

的にどこの国へ国内移

行させるか否かをじっく

り検討できる

- 4 - - 5 -

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指定官庁が実体審査のために関係書類が必要となる場合であっても、

出願人に代わってWIPO国際事務局が必要な書類の写しを作成し、関

係する指定国からの要請に応じて送付します。

PCT国際出願においては、直接出願のように出願する国それぞれに書類を作成し提出

する必要がありません。出願人は、受理官庁に対して一通の書類を提出することで十分

です。なお、その受理官庁は自国の特許庁ですから、言語の問題、通信費の問題を考

えても効率的です。出願人に代わりWIPO国際事務局が指定国の要請に応じて必要な

書類の写しを作成し、関係するすべての指定国へ送付します。

7. PCT国際出願を各指定国に国内移行させるためには、優先日から

通常30ヶ月の期限が満了する前までに、指定国が認める言語に翻

訳した翻訳文を指定官庁に提出しなければなりません。さらに、指定

国が求める場合には国内移行にかかる手数料(国内手数料)を支払

います。

PCT国際出願を用いて権利を取得したい国の実体審査を受けるためには、所定の期限

までにその国の手続に係属させる「国内移行」手続が必要となります。国内移行以前の

国際段階ではひとつの手続の流れですが、国内移行後は、それが枝分かれし、それぞ

れの指定官庁における国内出願として処理されていくことになります。

■ コラム PCT国際出願制度の活用状況~発効40周年を迎えて~

特許協力条約(PCT)は、1978年の受付開始から今年で40年を迎えました。2004年に累計100万

件を超えたPCT国際出願の件数は、その後、2016年には世界で累計300万件を突破。特に2017年

2月には、国際公開されたPCT国際出願の累計も300万件を突破した旨、WIPOウェブサイトで大々的

に公表されました。

2017年のPCT国際出願件数を出願人居住国別にみると、最も多いのは米国で、全世界のPCT国

際出願の23.3%(56,624件)を占めています。第2位は中国で20.1%(48,882件)を占めています。

第3位は日本で19.8%(48,208件)、第4位にドイツ7.8%(18,982件)、第5位に韓国6.5%(15,763

件)と続きます。

PCT国際出願の国内

移行には、出願の翻訳

文を提出し、国内手数

料を指定国に支払う

- 6 -

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指定官庁が実体審査のために関係書類が必要となる場合であっても、

出願人に代わってWIPO国際事務局が必要な書類の写しを作成し、関

係する指定国からの要請に応じて送付します。

PCT国際出願においては、直接出願のように出願する国それぞれに書類を作成し提出

する必要がありません。出願人は、受理官庁に対して一通の書類を提出することで十分

です。なお、その受理官庁は自国の特許庁ですから、言語の問題、通信費の問題を考

えても効率的です。出願人に代わりWIPO国際事務局が指定国の要請に応じて必要な

書類の写しを作成し、関係するすべての指定国へ送付します。

7. PCT国際出願を各指定国に国内移行させるためには、優先日から

通常30ヶ月の期限が満了する前までに、指定国が認める言語に翻

訳した翻訳文を指定官庁に提出しなければなりません。さらに、指定

国が求める場合には国内移行にかかる手数料(国内手数料)を支払

います。

PCT国際出願を用いて権利を取得したい国の実体審査を受けるためには、所定の期限

までにその国の手続に係属させる「国内移行」手続が必要となります。国内移行以前の

国際段階ではひとつの手続の流れですが、国内移行後は、それが枝分かれし、それぞ

れの指定官庁における国内出願として処理されていくことになります。

■ コラム PCT国際出願制度の活用状況~発効40周年を迎えて~

特許協力条約(PCT)は、1978年の受付開始から今年で40年を迎えました。2004年に累計100万

件を超えたPCT国際出願の件数は、その後、2016年には世界で累計300万件を突破。特に2017年

2月には、国際公開されたPCT国際出願の累計も300万件を突破した旨、WIPOウェブサイトで大々的

に公表されました。

2017年のPCT国際出願件数を出願人居住国別にみると、最も多いのは米国で、全世界のPCT国

際出願の23.3%(56,624件)を占めています。第2位は中国で20.1%(48,882件)を占めています。

第3位は日本で19.8%(48,208件)、第4位にドイツ7.8%(18,982件)、第5位に韓国6.5%(15,763

件)と続きます。

PCT国際出願の国内

移行には、出願の翻訳

文を提出し、国内手数

料を指定国に支払う

第2節 PCT国際出願制度を利用するメリット

『外国へ特許出願をしたいが、PCT国際出願制度を利用すべき

か?』という課題を検討する際には、例えば、次のような点を明確にしたう

えで、PCT国際出願制度の利用を検討する必要があります。

✓ 特許を取得したいと考える国はいくつか

✓ どれだけ早期に、あるいはゆっくり特許を取得したいか

✓ 特許出願の準備と予算にどの程度の余裕があるか

✓ 発明にかかる技術の特性(地域性、技術革新のスピードなど)があるか

これら特許取得に関する状況が、外国特許庁への直接出願とPCT国

際出願との使い分けの判断基準といえます。PCT国際出願制度を上手に

活用している利用者は、制度に組み込まれたメリットを享受するだけでなく、

更に戦略的に活用しています。ここではいくつかのメリットを御紹介します。

ハイテク関連技術に関する特許出願を多くしているが、この分野の技術は、

他社の動向に特に注意しなければならないし、また技術が陳腐化するサイ

クルも早いのが通常である。そのような場合、特許出願にかかる初期投資

は最小限に留めておきたい。権利取得の可能性が見えてきたところで、必

要な経費をかけて権利化を検討していきたいと考えるが・・・

➢ PCT国際出願制度では、優先日から30ヶ月の各国への国内移行手続

猶予期間を有効に活用し、特許性の判断、市場動向の分析に費やし

たり、各国の代理人費用、各国特許庁が要求する各種手数料の支払

いを先送りしたりすることが可能です。

➢ ビジネスの進捗状況により、権利化すべき国も明確化されれば、無駄な国内移行手続や翻訳費用の支出を回避することが可能です。

現在、7つの特許出願を7ヶ国に直接出願している。しかし、現地代理人を

通じての通信や、それぞれの特許庁から要求される書類、証拠などに個別

に対応しなければならないので、手続が煩雑になっている。また、手続指令

に対する応答期間もまちまちで期間管理が面倒だ。さらに5つの特許出願

をしたいが、このような煩雑さを何とか解消できないものか・・・

➢ PCT国際出願は、出願することでPCT加盟国のすべての国に国内出

願したことと同様の効果があります。さらに、国際段階の手続のほとん

どを自国特許庁である、受理官庁に対して行うことができます。いくつ

かの手続は、WIPO国際事務局、あるいは国際予備審査機関に直接

行いますが、多くは自国内での手続が可能です。この点は、手続遂

行の容易さ、効率性からも、PCT国際出願制度の重要なメリットのひ

PCT国際出願制度を

利用するか否かの判

断は、そのメリットを十

分に踏まえて

メリット①:

出願にかかる初期投

資を最小化し、費用の

支払いを先送りするこ

とが可能

メリット②:

多くの手続先が自国特

許庁であるため、手続

が容易で効率的

- 6 - - 7 -

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とつです。

すでに出願した国内出願を基礎として、パリ条約に基づく優先権を主張しな

がら、8つの国で特許を取得したいが、優先期間の12ヶ月が終わろうとして

いる。このままだと英語、仏語、韓国語、ロシア語への翻訳と出願書類の作

成が間に合いそうにない。

8ヶ国での現地代理人の手配もすべて完了したわけではないし・・・

➢ ビジネスの実施が不確定な場合や翻訳などの準備が間に合わない場合、不測の事態が生じた緊急の場合など、優先権主張期間満了

直前まで待って、優先権主張を伴ったPCT国際出願を母国語で行う

ことができます。母国語で作成した願書を自国特許庁へ提出すること

で、出願したい8ヶ国をも含む、PCT加盟国すべてに有効な国際出願

日を確保することができます。

バイオの特許出願を多く出願しているが、この分野の出願は、後の臨床試

験に長い時間を要することが頻繁にある。したがって、権利化のための手続

は、比較的ゆっくりと進めたい。パリ条約に基づく優先権の主張を行っても、

優先期間の12ヶ月だけでは、到底準備期間として足りないのだが・・・

➢ PCT国際出願は、国内移行手続を行うまでに優先日から30ヶ月の猶

予期間があります。このパリ条約に基づく優先期間(12ヶ月)よりも長い

時間を有効に活用し、特許性の判断、市場動向の分析調査、規格標

準化のためのマーケティング活動、ライセンス交渉を行ったり、翻訳作

業に多くの時間をかけたりすることで、最終的に取得したい権利範囲を

検討する時間的猶予を持つことが可能です。

➢ もちろん、30ヶ月の国内移行期間が満了する前であっても、早期に手

続を進めることも可能です。

特許出願に際しては、出願コストを無駄にしないためにも、先行技術調査に

かなりの労力と費用を費やしている。特に、自前で調査資源が乏しい場合、

調査を外部委託したりすることもあり、費用対効果に常に敏感になってい

る。外国に直接出願するときには、まず出願し、出願日を確保することが大

切なので、調査もそこそこに出願することも多いが、何か良い方法はないも

のか・・・

➢ PCT国際出願制度では、国際公開される前に国際調査報告及び国際

調査機関による見解書が提供され、特許性の判断を得ることができま

す(任意で国際予備審査報告も入手可能です)。これにより、その後の

手続を断念し、翻訳や国内移行手続に関する支出を抑えることもでき

ます。また、早めの判断により国際公開前にPCT国際出願を取り下げる

ことで、当該技術の公開を避けることも可能です。

メリット③:

優先権主張期間満了

直前に母国語での出

願が可能

メリット④:

優先日から 30 ヶ月の

長い猶予期間がある

メリット⑤:

特許性判断のための

材料が提供される

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とつです。

すでに出願した国内出願を基礎として、パリ条約に基づく優先権を主張しな

がら、8つの国で特許を取得したいが、優先期間の12ヶ月が終わろうとして

いる。このままだと英語、仏語、韓国語、ロシア語への翻訳と出願書類の作

成が間に合いそうにない。

8ヶ国での現地代理人の手配もすべて完了したわけではないし・・・

➢ ビジネスの実施が不確定な場合や翻訳などの準備が間に合わない

場合、不測の事態が生じた緊急の場合など、優先権主張期間満了

直前まで待って、優先権主張を伴ったPCT国際出願を母国語で行う

ことができます。母国語で作成した願書を自国特許庁へ提出すること

で、出願したい8ヶ国をも含む、PCT加盟国すべてに有効な国際出願

日を確保することができます。

バイオの特許出願を多く出願しているが、この分野の出願は、後の臨床試

験に長い時間を要することが頻繁にある。したがって、権利化のための手続

は、比較的ゆっくりと進めたい。パリ条約に基づく優先権の主張を行っても、

優先期間の12ヶ月だけでは、到底準備期間として足りないのだが・・・

➢ PCT国際出願は、国内移行手続を行うまでに優先日から30ヶ月の猶

予期間があります。このパリ条約に基づく優先期間(12ヶ月)よりも長い

時間を有効に活用し、特許性の判断、市場動向の分析調査、規格標

準化のためのマーケティング活動、ライセンス交渉を行ったり、翻訳作

業に多くの時間をかけたりすることで、最終的に取得したい権利範囲を

検討する時間的猶予を持つことが可能です。

➢ もちろん、30ヶ月の国内移行期間が満了する前であっても、早期に手

続を進めることも可能です。

特許出願に際しては、出願コストを無駄にしないためにも、先行技術調査に

かなりの労力と費用を費やしている。特に、自前で調査資源が乏しい場合、

調査を外部委託したりすることもあり、費用対効果に常に敏感になってい

る。外国に直接出願するときには、まず出願し、出願日を確保することが大

切なので、調査もそこそこに出願することも多いが、何か良い方法はないも

のか・・・

➢ PCT国際出願制度では、国際公開される前に国際調査報告及び国際

調査機関による見解書が提供され、特許性の判断を得ることができま

す(任意で国際予備審査報告も入手可能です)。これにより、その後の

手続を断念し、翻訳や国内移行手続に関する支出を抑えることもでき

ます。また、早めの判断により国際公開前にPCT国際出願を取り下げる

ことで、当該技術の公開を避けることも可能です。

メリット③:

優先権主張期間満了

直前に母国語での出

願が可能

メリット④:

優先日から 30 ヶ月の

長い猶予期間がある

メリット⑤:

特許性判断のための

材料が提供される

■ その他のPCT国際出願制度のメリット

●日本語による出願の最終調整の機会を確保

➢ 外国への出願は、パリ条約に基づく優先権を考慮すると、優先日から12ヶ月以内に行う必要がありますが、この段階でPCT国際出願を行う

ことにより、出願内容の最終調整を日本語で行うことができ、権利取

得範囲のみならず、明細書における解決すべき課題と請求の範囲と

の整合性や実施例、文章構造などを十分に精査した上で、国内移行

手続をすることが可能です。

●審査請求手数料の軽減

➢ PCT国際出願が国内移行した際、いくつかの指定国では、国内手数

料が減額の対象となる可能性があります。日本では、日本国特許庁

が国際調査報告を作成したPCT国際出願が日本に国内移行した場

合、当該出願にかかる審査請求手数料が約40%減額されます。

・ 日本国特許庁が国際調査を行った場合の審査請求手数料:71,000円+(請求項の数×2,400円)(※)

・ 日本国特許庁以外の国際調査機関が国際調査を行った場合の審査請求手数料:106,000円+(請求項の数×3,600円)(※)

(※)2018年10月1日現在適用される額となります。

●途上国での特許性に関する国際予備報告の活用

➢ 特許性に関する国際予備報告は、条約上は各国特許庁の実体審査を拘束しないものの、一部の途上国では実質的に実体審査で参照さ

れることもあります。

●国際公開による仮保護の権利取得

➢ 国際公開により仮保護の権利が認められる国もあります。日本語による

PCT国際出願は、日本語で国際公開されるため、日本においてはその

時点から補償金請求権が発生します。米国においても、米国を指定し

ている英文明細書のPCT国際出願に関して国際出願日から仮保護の

権利が認められます。なお、PCT国際出願が英文以外でなされた場合

には米国特許商標庁が英文明細書を入手した日から仮保護の権利が

認められます。

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●翻訳の誤りに関する訂正

➢ PCT国際出願では、国内移行後に提出した翻訳文に誤りが判明した

とき、PCT国際出願の明細書、請求の範囲、図面に基づいて誤訳の

訂正をすることが可能です。

■ コラム 特許審査ハイウェイ(PPH)の活用

PPHは、出願人の海外での早期権利化を容易にするとともに、各国特許庁にとっては第1庁(先行

庁)の先行技術調査と審査結果を利用することで、審査の負担を軽減し、質の向上を図ることを目的

としており、第1庁で特許可能と判断された発明を有する出願について、出願人の申請により、第2庁

(後続庁)において簡易な手続で早期審査が受けられるようにする枠組みです。

日本国特許庁は、PCT国際出願の国際段階成果物を利用する特許審査ハイウェイ(PCT-PPH)プ

ログラムを2010年から実施しています。当該プログラムにおいては、PCT-PPHのガイドラインに示す一

定の要件を満たす場合に、特定の国際調査機関が作成した見解書や特定の国際予備審査機関が

作成した国際予備審査報告を利用して、早期審査を申請することができます。

PCT-PPHの活用は、ライフサイクルが短い技術や早期権利化が必要となる技術の保護に大きく寄

与します。早期権利化を目指す場合はPCT-PPHを活用し、国内移行の判断に時間をかけたい場合

は優先日から30ヶ月の猶予期間を利用する、といったようにPCT国際出願制度の戦略的な活用の幅

が広がりました。

PCT-PPHについての詳細は、特許庁ウェブサイトを御確認ください。

(http://www.jpo.go.jp/torikumi/t_torikumi/pph_pct/pct.htm)

C T

-PPHの活、ライフサイクルが短い技術や早期権利化が必要となる技術の保護に大きく寄与します。早た。

- 10 -

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●翻訳の誤りに関する訂正

➢ PCT国際出願では、国内移行後に提出した翻訳文に誤りが判明した

とき、PCT国際出願の明細書、請求の範囲、図面に基づいて誤訳の

訂正をすることが可能です。

■ コラム 特許審査ハイウェイ(PPH)の活用

PPHは、出願人の海外での早期権利化を容易にするとともに、各国特許庁にとっては第1庁(先行

庁)の先行技術調査と審査結果を利用することで、審査の負担を軽減し、質の向上を図ることを目的

としており、第1庁で特許可能と判断された発明を有する出願について、出願人の申請により、第2庁

(後続庁)において簡易な手続で早期審査が受けられるようにする枠組みです。

日本国特許庁は、PCT国際出願の国際段階成果物を利用する特許審査ハイウェイ(PCT-PPH)プ

ログラムを2010年から実施しています。当該プログラムにおいては、PCT-PPHのガイドラインに示す一

定の要件を満たす場合に、特定の国際調査機関が作成した見解書や特定の国際予備審査機関が

作成した国際予備審査報告を利用して、早期審査を申請することができます。

PCT-PPHの活用は、ライフサイクルが短い技術や早期権利化が必要となる技術の保護に大きく寄

与します。早期権利化を目指す場合はPCT-PPHを活用し、国内移行の判断に時間をかけたい場合

は優先日から30ヶ月の猶予期間を利用する、といったようにPCT国際出願制度の戦略的な活用の幅

が広がりました。

PCT-PPHについての詳細は、特許庁ウェブサイトを御確認ください。

(http://www.jpo.go.jp/torikumi/t_torikumi/pph_pct/pct.htm)

C T

-PPHの活、ライフサイクルが短い技術や早期権利化が必要となる技術の保護に大きく寄与します。早た。

第3節 PCT国際出願に必要な費用

近年、PCT国際出願に支払うべき手数料の額は全体的に低減される傾向にあります。また、電子的な

手続に対する手数料減額の制度も充実しつつあります。さらに、国内段階に移行した後にPCT国際出願に

対して適用される手数料(出願審査請求手数料など)の減額などを勘案すれば、PCT国際出願にかかる

費用は安くなってきました。

ここでは、PCT国際出願の費用の概算を、以下のような場合を想定し計算してみます(2018年10月1

日現在適用される額を用いた試算)。

・国内出願を基礎として優先権を主張し、

・日本語によるPCT国際出願をオンラインで出願し、

・日本国特許庁により国際調査が行われ、

・国際予備審査を請求した後に、

・日本へ国内移行手続を行い、出願審査請求を行う場合

0ヶ月 日本国特許庁に国内出願(PCT国際出願における優先権主張の基礎となる先の出願)

12ヶ月以内 PCT国際出願

13ヶ月以内 出願に伴う支払い(出願から1ヶ月以内)

●国際出願手数料

① 最初の30枚 153,800円

② 30枚を超える20枚

(1枚につき1,700円) 34,000円

●送付手数料 10,000円

●調査手数料 70,000円

○オンライン出願減額 -34,700円

16ヶ月以内 優先権証明書の提出(※)

(※) WIPO国際事務局に対し、デジタルアクセスサービス(DAS)を利用して優先権証

明書を入手するよう請求します。この手続きにかかる手数料は必要ありません。

請求方法は、PCT国際出願願書にアクセスコードを記載するか、PCT国際出願後

にWIPO国際事務局にアクセスコードを連絡するかのいずれかです。

また、平成28年3月20日より、条件を満たす場合には、日本国特許庁へのアクセ

スコード付与請求手続をすることなく、当該出願にかかるアクセスコードの入手が

- 10 - - 11 -

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可能となりました。DASについての詳細は特許庁ウェブサイトを御確認ください。

(http://www.jpo.go.jp/tetuzuki/t_tokkyo/kokusai/das_new_teishutsuhouhou.htm)

22ヶ月以内 国際予備審査請求に伴う手数料の支払い(予備審査請求から1ヶ月以内又は優先日

から22ヶ月の期間のうちいずれか遅く満了する期間内)

●予備審査手数料 26,000円

●取扱手数料 23,100円

30ヶ月以内

出願日から

3年以内 出願審査請求

○日本国特許庁が国際調査を行った場合は約40%減額

71,000円+(請求項数12×2,400円)

99,800円

(通常より66,200円減)

【試算合計】 396,000円

※手数料の詳細については、特許庁ウェブサイトを御確認ください。

(PCT国際段階 : http://www.jpo.go.jp/tetuzuki/ryoukin/kokuryo.htm)

(国内移行後 : http://www.jpo.go.jp/tetuzuki/ryoukin/hyou.htm)

【その他必要なコスト】

✔ 国内移行する国が要求する言語へPCT国際出願を翻訳する費用

✔ 現地代理人費用

✔ 指定国が要求する場合の国内手数料

✔ 指定国によっては出願審査請求料 など

【調査手数料の一部返還】

PCT国際出願願書のⅦ欄に、優先権主張の基礎となる先の国内出願などの必要情

報が記載されている場合であって、当該国内出願の審査の結果の相当部分を利用でき

るときは、日本語によるPCT国際出願の場合、国際調査手数料70,000円のうち28,000

円(英語によるPCT国際出願の場合、国際調査手数料156,000円のうち62,000円)を出

願人の請求により返還します。返還に関する詳細な条件及び手続については、特許庁

ウェブサイトを御確認ください。

(http://www.jpo.go.jp/tetuzuki/t_tokkyo/kokusai/researching_fee_return.htm)

なお、国際調査機関としての日本国特許庁は、他の国際調査機関又は他の国内官

庁が行った国際調査又は国内審査の結果による、調査手数料の払戻しは行いません

国内手数料 14,000円

- 12 -

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可能となりました。DASについての詳細は特許庁ウェブサイトを御確認ください。

(http://www.jpo.go.jp/tetuzuki/t_tokkyo/kokusai/das_new_teishutsuhouhou.htm)

22ヶ月以内 国際予備審査請求に伴う手数料の支払い(予備審査請求から1ヶ月以内又は優先日

から22ヶ月の期間のうちいずれか遅く満了する期間内)

●予備審査手数料 26,000円

●取扱手数料 23,100円

30ヶ月以内

出願日から

3年以内 出願審査請求

○日本国特許庁が国際調査を行った場合は約40%減額

71,000円+(請求項数12×2,400円)

99,800円

(通常より66,200円減)

【試算合計】 396,000円

※手数料の詳細については、特許庁ウェブサイトを御確認ください。

(PCT国際段階 : http://www.jpo.go.jp/tetuzuki/ryoukin/kokuryo.htm)

(国内移行後 : http://www.jpo.go.jp/tetuzuki/ryoukin/hyou.htm)

【その他必要なコスト】

✔ 国内移行する国が要求する言語へPCT国際出願を翻訳する費用

✔ 現地代理人費用

✔ 指定国が要求する場合の国内手数料

✔ 指定国によっては出願審査請求料 など

【調査手数料の一部返還】

PCT国際出願願書のⅦ欄に、優先権主張の基礎となる先の国内出願などの必要情

報が記載されている場合であって、当該国内出願の審査の結果の相当部分を利用でき

るときは、日本語によるPCT国際出願の場合、国際調査手数料70,000円のうち28,000

円(英語によるPCT国際出願の場合、国際調査手数料156,000円のうち62,000円)を出

願人の請求により返還します。返還に関する詳細な条件及び手続については、特許庁

ウェブサイトを御確認ください。

(http://www.jpo.go.jp/tetuzuki/t_tokkyo/kokusai/researching_fee_return.htm)

なお、国際調査機関としての日本国特許庁は、他の国際調査機関又は他の国内官

庁が行った国際調査又は国内審査の結果による、調査手数料の払戻しは行いません

国内手数料 14,000円

■ PCT国際出願が英語で作成され、出願人が、国際調査機関、国際予備審査機関として、日本国特許

庁ではなく欧州特許庁(EPO)またはシンガポール知的所有権庁(IPOS)を選択した場合には、いくつか

の手数料が、上記の手数料とは異なるので注意が必要です(2018年10月1日現在)。

● 欧州特許庁(EPO)を選択した場合

調査手数料 227,600円

予備審査手数料 1,830EUR

取扱手数料 175EUR

● シンガポール知的所有権庁(IPOS)を選択した場合

調査手数料 185,300円

予備審査手数料 830SGD

取扱手数料 280SGD

● 日本へ国内移行後の出願審査請求料

(請求項の数12の場合) 149,200円

※欧州特許庁(EPO)またはシンガポール知的所有権庁(IPOS)で国際調査が行われた

場合、日本の審査請求料の約10%が減額されます。

計算式:106,000円 +(請求項の数×3,600円)

■ 指定国によっては、国内手数料の減額を受けることができます。各国の情報は、WIPOウェブサイト

「PCT出願人の手引(PCT Applicant’s Guide)」に掲載されている各官庁の国内段階の欄(Annex)を

御覧ください。(http://www.wipo.int/pct/en/appguide/index.jsp)

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■ コラム 中小ベンチャー企業・小規模企業等を対象としたPCT国際出願にかかる手数料の軽減・交付金

中小ベンチャー企業・小規模企業等が日本語でPCT国際出願をする場合は、 PCT国際出願にかかる手数料の軽減・交付金を受けることができます。

<対象者> 個人事業主の場合(以下のいずれかに該当すること) ・ 従業員20人以下(商業又はサービス業は5人以下)の個人事業主 ・ 事業開始後10年未満の個人事業主

法人の場合(以下のいずれかに該当すること) ・ 従業員20人以下(商業又はサービス業は5人以下)の小規模企業(法人) ・ 設立後10年未満で資本金3億円以下の法人

※大企業の子会社など支配法人のいる法人は対象外です。

<対象手数料> ①産業競争力強化法に基づく手数料の軽減 (http://www.jpo.go.jp/tetuzuki/t_tokkyo/kokusai/tesuryou_keigen_shinsei.htm)

PCT国際出願時 ・調査手数料 ・送付手数料

予備審査請求時 ・予備審査手数料 ※各手数料を1/3に軽減します。

②国際出願促進交付金(http://www.jpo.go.jp/tetuzuki/t_tokkyo/kokusai/sokushinkouhu.htm)

PCT国際出願時 ・国際出願手数料 予備審査請求時 ・取扱手数料

※各手数料の2/3相当額を申請により交付します。

※手数料の軽減・交付金制度を利用するためには、所定の申請手続を行う必要があります。 本件支援措置は、その対象者の拡大などを含めた見直しを検討しております(2019年4月を予定)。 いずれも詳細については、上記特許庁ウェブサイトを御確認ください。

!! 手数料支払いを要請する不審な通知に関する注意喚起 !!

PCT国際出願の出願人又は代理人宛に、WIPO国際事務局とは無関係の者から、手数料の支払いを

要請する通知が送付される事例が報告されています。当該通知には、個別の出願に関する具体的な

情報(例:国際出願番号や出願人の氏名、住所)が記載されていますが、WIPO国際事務局からの正式

な支払要請と誤解することのないよう御注意ください。

なお、条約に規定の無い手数料を支払ったとしても、条約に基づくPCT国際出願の法的効果は得ら

れません。手数料の支払いを要請する通知が送付された場合、条約に規定された手数料納付である

かどうか、その内容に充分御注意ください。

疑わしい場合には、特許庁出願課国際出願室又はWIPO国際事務局にお問い合わせください。また、

WIPOウェブサイト(http://www.wipo.int/pct/ja/warning/pct_warning.html)上では、実際に送付された

PCT国際出願の処理とは無関係な通知の写しを見ることができます。

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■ コラム 中小ベンチャー企業・小規模企業等を対象としたPCT国際出願にかかる手数料の軽減・交付金

中小ベンチャー企業・小規模企業等が日本語でPCT国際出願をする場合は、PCT国際出願にかかる手数料の軽減・交付金を受けることができます。

<対象者>個人事業主の場合(以下のいずれかに該当すること)・ 従業員20人以下(商業又はサービス業は5人以下)の個人事業主・ 事業開始後10年未満の個人事業主法人の場合(以下のいずれかに該当すること)・ 従業員20人以下(商業又はサービス業は5人以下)の小規模企業(法人)・ 設立後10年未満で資本金3億円以下の法人※大企業の子会社など支配法人のいる法人は対象外です。

<対象手数料>①産業競争力強化法に基づく手数料の軽減

(http://www.jpo.go.jp/tetuzuki/t_tokkyo/kokusai/tesuryou_keigen_shinsei.htm)PCT国際出願時 ・調査手数料

・送付手数料予備審査請求時 ・予備審査手数料

※各手数料を1/3に軽減します。②国際出願促進交付金

(http://www.jpo.go.jp/tetuzuki/t_tokkyo/kokusai/sokushinkouhu.htm)PCT国際出願時 ・国際出願手数料予備審査請求時 ・取扱手数料

※各手数料の2/3相当額を申請により交付します。

※手数料の軽減・交付金制度を利用するためには、所定の申請手続を行う必要があります。本件支援措置は、その対象者の拡大などを含めた見直しを検討しております(2019年4月を予定)。いずれも詳細については、上記特許庁ウェブサイトを御確認ください。

!! 手数料支払いを要請する不審な通知に関する注意喚起 !!

PCT国際出願の出願人又は代理人宛に、WIPO国際事務局とは無関係の者から、手数料の支払いを

要請する通知が送付される事例が報告されています。当該通知には、個別の出願に関する具体的な

情報(例:国際出願番号や出願人の氏名、住所)が記載されていますが、WIPO国際事務局からの正式

な支払要請と誤解することのないよう御注意ください。

なお、条約に規定の無い手数料を支払ったとしても、条約に基づくPCT国際出願の法的効果は得ら

れません。手数料の支払いを要請する通知が送付された場合、条約に規定された手数料納付である

かどうか、その内容に充分御注意ください。

疑わしい場合には、特許庁出願課国際出願室又はWIPO国際事務局にお問い合わせください。また、

WIPOウェブサイト(http://www.wipo.int/pct/ja/warning/pct_warning.html)上では、実際に送付された

PCT国際出願の処理とは無関係な通知の写しを見ることができます。

第第22章章 PPCCTT国国際際出出願願のの手手続続

第1節 PCT国際出願の主な手続

自国特許庁(受理官庁)

PCT国際出願(国際出願)

特許

WIPO国際事務局が行う 国際公開

A国特許庁 C国特許庁

C語翻訳文A語翻訳文

審 査

出願公告

審 査

特許

特許

翻訳文の提出(優先日から30ヶ月(国内移行期限)以内に翻訳文を

各指定国が要求する言語で指定国特許庁へ提出する)

+国内手数料

B語翻訳文

特許性に関する国際予備報告(第Ⅱ章)(国際予備審査報告)

B国特許庁

PCT国際出願(「PCTルート」)と手続期間

国際調査報告

各指定国の国内段階への移行

国際調査報告

国際予備審査報告

(各国の審査は、国際段階における国際調査、

国際予備審査の報告に拘束されないが、

指定国の実体審査においては、実質的に

それらが参照されることも多い)

各指定国で審査特許査定権利化

国際予備審査(国際予備審査機関(IPEA)が行う、国際出願の

新規性、進歩性、産業上の利用可能性についての

予備的判断のための審査)

国際調査(国際調査機関(ISA)が行う国際出願の先行技術調査、

及び新規性、進歩性、産業上の利用可能性の

特許性に関する国際調査機関の見解の作成)

特許協力条約(PCT)で定められた言語、

方式に従って記載した国際出願書類を

受理官庁(自国特許庁)へ提出する

PCTに基づく国際出願

パリ優先権を主張して

基礎出願の日から12ヶ月以内に

PCT国際出願をすることも可能

出願人

PCT国際出願

WIPO国際事務局が作成する

特許性に関する国際予備報告(第Ⅰ章)

補充国際調査(補充国際調査機関 が行う

追加的な先行技術調査)

(12ヶ月以内)

国際出願の手続の主な期間

(優先日)

(30ヶ月)

(18ヶ月)

国際出願(パリ条約に基づく優先権を主張して出願

するときには基礎となる先の出願からヶ月以内に国際出願を行う)

WIPOが行う国際出願の国際公開

国内段階への移行は優先日から30ヶ月までに行う

基礎となる先の出願

出願人の任意により国際予備審査を請求できる

条約19条補正で請求の範囲の補正が可能

予備審査の期間中は条約34条補正で明細書、請求の範囲、図面の補正が可能

28ヶ月~29ヶ月頃まで「特許性に関する国際予備報告(第Ⅱ章)

(国際予備審査報告)」を受領

国際出願日

(22ヶ月)

19ヶ月以内に補充国際調査を

請求できる

- 14 - - 15 -

国際調査機関による見解書

(SISA)

16~17ヶ月頃

国際調査報告、国際調査機関による見解書を受領

12

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第2章では、PCT国際出願の各手続の概略を説明します。

※各手続の詳細及び出願書類の作成方法については、知的財産権制度説明会(実務者向け)テキ

スト『特許協力条約(PCT)に基づく国際出願の手続』を御参照ください。

(http://www.jpo.go.jp/oshirase/event/setumeikai/setumeikai-text/index.html)

■出願

PCT国際出願の出願人のうち、少なくとも1人が日本国民又は日本居住者で

あれば、日本国特許庁(受理官庁)*に出願することができます。また、WIPO国

際事務局は、すべてのPCT加盟国の国民又は居住者からのPCT国際出願を受

理官庁として受け付けています。

受理官庁としての日本国特許庁が受理するPCT国際出願の言語は、日本

語又は英語です。また、出願以降に出願人から受理官庁に提出する書類(手

続)の言語は、当該PCT国際出願と同じ言語を使用します。

受理官庁は、PCT国際出願が条約・規則に従って作成されている場合、国

際出願日を認定します。

国際出願日が認定されたPCT国際出願は、その出願日の時点で有効なす

べてのPCT加盟国を「指定した」ものとみなされます(みなし全指定)*。国を「指

定する」とは、PCT国際出願の手続をその後に各国の国内手続まで係属(国内

移行)させたい、つまり権利を取得したい国を特定することです。

国際出願日が認定されたPCT国際出願は、指定国における「正規の国内出

願」とみなされ、国際出願日は、各指定国における「出願日」とみなされます**。

PCT国際出願の出願人は、出願から1ヶ月以内に①国際出願手数料(WIPO

国際事務局が出願書類を処理するための手数料)、②送付手数料(出願書類を

受理官庁が処理し、必要書類をWIPO国際事務局、国際調査機関へ送付するた

めの手数料)、③調査手数料(国際調査機関による国際調査のための手数料)

を受理官庁に対して支払わなければなりません。日本国を受理官庁としてPCT

国際出願する場合、すべての手数料は日本円で支払います。

■国際調査

国際調査の目的は、PCT国際出願の請求の範囲に記載された発明に関連

のある先行技術を発見することです*。出願人に送付される「国際調査報告」に

手数料

PCT国際出願の提出先

* 条約第9条、

条約第10条、

規則19.1

国際出願日の認定

国際調査の概要

* 条約第15条(2)、

規則33

* 規則4.9(a)(i)

** 条約第11条(3)

- 16 -

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第2章では、PCT国際出願の各手続の概略を説明します。

※各手続の詳細及び出願書類の作成方法については、知的財産権制度説明会(実務者向け)テキ

スト『特許協力条約(PCT)に基づく国際出願の手続』を御参照ください。

(http://www.jpo.go.jp/oshirase/event/setumeikai/setumeikai-text/index.html)

■出願

PCT国際出願の出願人のうち、少なくとも1人が日本国民又は日本居住者で

あれば、日本国特許庁(受理官庁)*に出願することができます。また、WIPO国

際事務局は、すべてのPCT加盟国の国民又は居住者からのPCT国際出願を受

理官庁として受け付けています。

受理官庁としての日本国特許庁が受理するPCT国際出願の言語は、日本

語又は英語です。また、出願以降に出願人から受理官庁に提出する書類(手

続)の言語は、当該PCT国際出願と同じ言語を使用します。

受理官庁は、PCT国際出願が条約・規則に従って作成されている場合、国

際出願日を認定します。

国際出願日が認定されたPCT国際出願は、その出願日の時点で有効なす

べてのPCT加盟国を「指定した」ものとみなされます(みなし全指定)*。国を「指

定する」とは、PCT国際出願の手続をその後に各国の国内手続まで係属(国内

移行)させたい、つまり権利を取得したい国を特定することです。

国際出願日が認定されたPCT国際出願は、指定国における「正規の国内出

願」とみなされ、国際出願日は、各指定国における「出願日」とみなされます**。

PCT国際出願の出願人は、出願から1ヶ月以内に①国際出願手数料(WIPO

国際事務局が出願書類を処理するための手数料)、②送付手数料(出願書類を

受理官庁が処理し、必要書類をWIPO国際事務局、国際調査機関へ送付するた

めの手数料)、③調査手数料(国際調査機関による国際調査のための手数料)

を受理官庁に対して支払わなければなりません。日本国を受理官庁としてPCT

国際出願する場合、すべての手数料は日本円で支払います。

■国際調査

国際調査の目的は、PCT国際出願の請求の範囲に記載された発明に関連

のある先行技術を発見することです*。出願人に送付される「国際調査報告」に

手数料

PCT国際出願の提出先

* 条約第9条、

条約第10条、

規則19.1

国際出願日の認定

国際調査の概要

* 条約第15条(2)、

規則33

* 規則4.9(a)(i)

** 条約第11条(3)

は、関連があると認められた先行技術又は関連技術が記載された文献のリスト、

発明の分類(国際特許分類)、調査を行った技術分野、発明の単一性の欠如に

関する情報などが記載されます。

さらに、国際調査機関は、PCT国際出願の請求の範囲に記載された発明

が特許性(新規性、進歩性、産業上の利用可能性)を有するものと認められる

かどうか(それぞれの要件の特許性判断は、優先日が基準日)の審査官の見

解*を示した「国際調査機関による見解書」を作成し、出願人に送付します。国

際調査機関による見解書に示された特許性についての見解は、予備的かつ

非拘束的なものであるため、特許付与のための最終的な特許性判断は、各指

定官庁に委ねられています。しかし、多くの出願人が、その後の手続係属、特

に国内移行をするか否かの判断のための参考情報にしています。

■補充国際調査

上記の国際調査(主調査)に加えて、出願人の任意の請求により、別の国際

調査機関による国際調査を提供する補充国際調査*が、2009年1月から開始

されました。2018年10月時点の補充国際調査機関は、オーストリア特許庁(A

T)、欧州特許庁(EP)、フィンランド特許登録庁(FI)、ロシア特許庁(RU)、ス

ウェーデン特許登録庁(SE)、シンガポール知的所有権庁(SG)、ウクライナ国家

知的所有権庁(UA)、北欧特許庁(XN)、ヴィシェグラード特許機構(XV)、トルコ

特許庁(TR)です。

補充国際調査の目的は、発見される先行技術の言語の多様化にかんがみ、

複数の国際調査機関に調査を依頼することによって、国際段階で先行技術を極

力把握し、国内段階で新たな先行技術文献が発見される可能性を減少させる

ことです。

補充国際調査を請求する場合、出願人は、優先日から19ヶ月までに請求

書(PCT/IB/375)の提出と所定の手数料の納付をWIPO国際事務局に対して直

接行います*。

■国際公開

PCT国際出願は、優先日から18ヶ月を経過した後(出願人が早期公開を希

望することも可能)、速やかにWIPO国際事務局によって国際公開*されます。この

国際公開は、第三者に対して技術情報を提供する役割を果たしており、WIPOウェ

ブサイト「PATENTSCOPE国際・国内特許データベース検索」(第2章第3節参照)

上において電子的に行われます。

国際公開の内容**として、書誌ページ(国際出願日、国際出願番号、出願

国際調査機関による特許

性に対する見解(国際調

査機関による見解書)

* 規則43の2

国際公開は、電子的に

WIPOウェブサイト上 で行われる

* 条約第21条

** 規則48.2

補充国際調査の目的

* 規則45の2

補充国際調査の概要

補充国際調査の請求

(請求は任意)

* 規則45の2.1,2.2

- 16 - - 17 -

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人、指定国、要約などが記載された「フロントページ」)や明細書、請求の範囲、及

び図面の全文に加えて、国際調査報告、国際調査機関による見解書や、条約第

19条補正があった場合には補正後の請求の範囲なども合わせて掲載されます。

国際公開は、「日本語、アラビア語、中国語、英語、フランス語、ドイツ語、ロ

シア語、スペイン語、韓国語、ポルトガル語(「国際公開の言語」)*」で出願され

たPCT国際出願については、その言語で公開されます。それ以外の言語で出願

されたPCT国際出願は、出願人が翻訳した国際公開言語で公開されます。ただ

し、発明の名称、要約書、国際調査報告については、PCT国際出願が英語以外

の言語の場合、必ず英語の翻訳が添付され、国際公開の第三者に対する情報

価値がより高められています。

国際公開は、すでに出願されている発明を国際的に公表する効果のほか、

各指定国においては、その国が国内で未審査の出願を国内公開したときと同等

の法的効果*が発生します。

例えば、国内出願の公開によって「仮保護」(補償金請求権など)を認める

指定国の国内法の下では、国際公開されたPCT国際出願に対しても同じ保護が

認められます。日本語PCT国際出願が国際公開された場合には、日本国内で

は特許法第184条の10(国際公開及び国内公表の効果など)が適用されます。

■国際予備審査

国際予備審査は、PCT国際出願された発明の特許性に関する見解を、国

際調査機関による見解書に加えて入手したいとき、あるいは、PCT国際出願の

内容を補正したい場合などに、出願人が任意で請求する手続です。

発明の特許性に関しては、国際調査機関がその見解書をすでに作成してい

ます。したがって、多くの場合、特許性判断の材料としては国際調査機関による

見解書で十分と言えます。実際に、近年では予備審査請求の件数は減少し続

けています。

一方、依然として、国際予備審査に付加的な価値を認め、国際予備審査を

請求する出願人も多く存在します。例えば、国際予備審査を請求することによっ

て、明細書、図面、請求の範囲の補正が可能になるので、その補正の機会を利

用したい、あるいは補正後のPCT国際出願で改めて特許性を判断してほしい、

更に国際予備審査機関の審査官と対話を試み、その対話を通じてPCT国際出

願をより洗練させたい・・・などの「戦略的な」PCTの活用が考えられます。また、

2014年7月1日以降に予備審査請求のあった案件については、国際調査機関

が国際調査を行う時点においては未公開などの理由で調査できなかった文献

についても、国際予備審査の調査対象とすること(トップアップサーチ)になりまし

国際公開の言語

* 条約第29条

国際公開の効果

* 規則48.3

国際予備審査の概要

- 18 -

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人、指定国、要約などが記載された「フロントページ」)や明細書、請求の範囲、及

び図面の全文に加えて、国際調査報告、国際調査機関による見解書や、条約第

19条補正があった場合には補正後の請求の範囲なども合わせて掲載されます。

国際公開は、「日本語、アラビア語、中国語、英語、フランス語、ドイツ語、ロ

シア語、スペイン語、韓国語、ポルトガル語(「国際公開の言語」)*」で出願され

たPCT国際出願については、その言語で公開されます。それ以外の言語で出願

されたPCT国際出願は、出願人が翻訳した国際公開言語で公開されます。ただ

し、発明の名称、要約書、国際調査報告については、PCT国際出願が英語以外

の言語の場合、必ず英語の翻訳が添付され、国際公開の第三者に対する情報

価値がより高められています。

国際公開は、すでに出願されている発明を国際的に公表する効果のほか、

各指定国においては、その国が国内で未審査の出願を国内公開したときと同等

の法的効果*が発生します。

例えば、国内出願の公開によって「仮保護」(補償金請求権など)を認める

指定国の国内法の下では、国際公開されたPCT国際出願に対しても同じ保護が

認められます。日本語PCT国際出願が国際公開された場合には、日本国内で

は特許法第184条の10(国際公開及び国内公表の効果など)が適用されます。

■国際予備審査

国際予備審査は、PCT国際出願された発明の特許性に関する見解を、国

際調査機関による見解書に加えて入手したいとき、あるいは、PCT国際出願の

内容を補正したい場合などに、出願人が任意で請求する手続です。

発明の特許性に関しては、国際調査機関がその見解書をすでに作成してい

ます。したがって、多くの場合、特許性判断の材料としては国際調査機関による

見解書で十分と言えます。実際に、近年では予備審査請求の件数は減少し続

けています。

一方、依然として、国際予備審査に付加的な価値を認め、国際予備審査を

請求する出願人も多く存在します。例えば、国際予備審査を請求することによっ

て、明細書、図面、請求の範囲の補正が可能になるので、その補正の機会を利

用したい、あるいは補正後のPCT国際出願で改めて特許性を判断してほしい、

更に国際予備審査機関の審査官と対話を試み、その対話を通じてPCT国際出

願をより洗練させたい・・・などの「戦略的な」PCTの活用が考えられます。また、

2014年7月1日以降に予備審査請求のあった案件については、国際調査機関

が国際調査を行う時点においては未公開などの理由で調査できなかった文献

についても、国際予備審査の調査対象とすること(トップアップサーチ)になりまし

国際公開の言語

* 条約第29条

国際公開の効果

* 規則48.3

国際予備審査の概要

たので、より網羅的な調査結果に基づく見解を得るために国際予備審査を利用

することも可能となりました。

国際予備審査を請求する場合、出願人は、国際調査報告と国際調査機関

による見解書が出願人に送付された日から3ヶ月又は優先日から22ヶ月のうち、

どちらか遅く満了する日までに国際予備審査の請求書を提出し、手数料の支払

(請求書受理日から1ヶ月又は優先日から22ヶ月のうち、どちらか遅く満了する

日まで*)をする必要があります。

■補正の機会

外国の特許庁に直接出願する場合と異なり、PCT国際出願は、出願日を確

保した上で、発明の内容を後でじっくり改善できることも重要なメリットのひとつで

す。内容の改善に際しては、出願時の開示の範囲を超えることはできませんが、

例えば特許を取りやすい内容に補正する、あるいはより強い特許へと補正するこ

ともできます。

PCT国際出願を補正する際に考慮するポイントとしては、例えば、①出願時

から変化した市場動向を出願に反映させる、②国際調査、国際予備審査で指摘

された事項(否定的な見解など)を出願に反映させる、③国際標準の動向を出

願に反映させる、などが考えられます。

以下では、PCT条約で認める補正の機会について整理します。PCT国際出

願では、国際段階における条約第19条に基づく補正及び条約第34条に基づく

補正の2種類の補正に加え、国内移行後の補正も認められています。

・ 条約第19条に基づく補正(対象は請求の範囲のみ/1回に限り補正できる)

出願人は、国際調査報告を受領した後、国際調査報告の送付の日から2月

又は優先日から16月のいずれか遅く満了する期間内に、条約第19条に基づき、

請求の範囲を1回に限り補正することができます(「19条補正」)。また、出願人は、

必要により補正の内容を説明した簡単な説明書を提出することができます。

条約第19条に基づく補正の特徴と留意点は、以下のとおりです。

① 19条補正は、WIPO国際事務局に対して提出する*

② 19条補正は、出願時におけるPCT国際出願の開示の範囲を超えることは

できない**

③ 請求の範囲は、全文を単位として補正しなければならない

④ 19条補正によって補正された請求の範囲は、出願時の請求の範囲ととも

に国際公開される

⑤ 19条補正は、PCT国際出願の一部として各指定官庁に送達される

PCT国際出願制度を利用するメリットのひとつ

は、出願日を確保した後

に内容を補正できること

19条補正では、国際調査

報告の結果を受けて請求

の範囲を 1回だけ補正す

ることが可能

** 条約第19条(2)

* 規則57.3, 58.1(b)

* 規則46.2

- 18 - - 19 -

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・ 条約第34条に基づく補正(対象は明細書、請求の範囲、図面/補正の回数

に制限なし)

国際予備審査を請求した出願人は、書面による見解又は国際予備審査報告

の作成の開始前であれば、条約第34条に基づきPCT国際出願を補正することが

できます(「34条補正」)。また、国際調査機関による見解書に対する答弁書を、必

要により、34条補正とともに提出することができます。

条約第34条に基づく補正の特徴と留意点は、以下のとおりです。

① 34条補正は、国際予備審査機関に対して提出する*

② 34条補正の内容を踏まえた国際予備審査を実施してもらうためには、でき

る限り、国際予備審査の請求時、遅くとも国際予備審査が開始される前ま

でに提出する

(※34条補正は、規定では国際予備審査報告の作成が開始される前まで提出が可能ですが、確実に34条補正を踏まえた国際予備審査を実施してもらうためには、国際予備審査の請求時に1回目の34条補正を行うことをお勧めします)

③ 34条補正は、国際予備審査報告の附属書類として、WIPO国際事務局を

経由して各選択国に送達される

・ 各指定国へ国内移行した後に認められる補正(対象:明細書、請求の範囲、図面)

上記の2つの補正(19条補正、34条補正)に加えて、条約第28条(及び第

41条)は、国内移行の後にも、各指定官庁において補正の機会を設けることを規

定しています。この補正も、もちろんPCT国際出願時の開示の範囲を超えること

は原則認められませんが、最終的には各指定国の国内法令に従って、補正の

手続が行われます。

また、この補正のできる期間についても、各国の国内法令が国内出願に対し

て認めるのと同じだけの補正の期間が適用されます*。日本の場合は、特許法

第17条の補正がこれに該当しますので、PCT国際出願が特許庁に係属している

限り、補正を行うことができる原則となっています。

■国内移行手続

PCT国際出願が、権利を取得したい国において実体審査を受けるためには、

条約が規定する国際段階を経て、それらの国々へ国内移行手続*を行わなけ

ればなりません。さらに、権利を取得したい国への国内移行は、条約で決められ

た期間内(国内移行期限18:通常は優先日から30ヶ月以内)に行われなければ

ならないため、特に注意が必要です。

PCT国際出願を国内段階に移行させる手続は、以下のような手続を指定官

34条補正では、国際予備

審査の段階でPCT国際出願の明細書、請求の範

囲、図面を補正すること

が可能

国内段階に移行した後

も、PCT国際出願は補正

の機会が認められる

* 規則52.1(b)

国内移行には、①翻訳文

の提出、②国内手数料の

支払い、③PCT国際出願の写しの提出が必要

* 条約第22条(1)、

条約第39条(1)(a)

* 規則66.3

- 20 -

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・ 条約第34条に基づく補正(対象は明細書、請求の範囲、図面/補正の回数

に制限なし)

国際予備審査を請求した出願人は、書面による見解又は国際予備審査報告

の作成の開始前であれば、条約第34条に基づきPCT国際出願を補正することが

できます(「34条補正」)。また、国際調査機関による見解書に対する答弁書を、必

要により、34条補正とともに提出することができます。

条約第34条に基づく補正の特徴と留意点は、以下のとおりです。

① 34条補正は、国際予備審査機関に対して提出する*

② 34条補正の内容を踏まえた国際予備審査を実施してもらうためには、でき

る限り、国際予備審査の請求時、遅くとも国際予備審査が開始される前ま

でに提出する

(※34条補正は、規定では国際予備審査報告の作成が開始される前まで提出が可能ですが、確実に34条補正を踏まえた国際予備審査を実施してもらうためには、国際予備審査の請求時に1回目の34条補正を行うことをお勧めします)

③ 34条補正は、国際予備審査報告の附属書類として、WIPO国際事務局を

経由して各選択国に送達される

・ 各指定国へ国内移行した後に認められる補正(対象:明細書、請求の範囲、図面)

上記の2つの補正(19条補正、34条補正)に加えて、条約第28条(及び第

41条)は、国内移行の後にも、各指定官庁において補正の機会を設けることを規

定しています。この補正も、もちろんPCT国際出願時の開示の範囲を超えること

は原則認められませんが、最終的には各指定国の国内法令に従って、補正の

手続が行われます。

また、この補正のできる期間についても、各国の国内法令が国内出願に対し

て認めるのと同じだけの補正の期間が適用されます*。日本の場合は、特許法

第17条の補正がこれに該当しますので、PCT国際出願が特許庁に係属している

限り、補正を行うことができる原則となっています。

■国内移行手続

PCT国際出願が、権利を取得したい国において実体審査を受けるためには、

条約が規定する国際段階を経て、それらの国々へ国内移行手続*を行わなけ

ればなりません。さらに、権利を取得したい国への国内移行は、条約で決められ

た期間内(国内移行期限18:通常は優先日から30ヶ月以内)に行われなければ

ならないため、特に注意が必要です。

PCT国際出願を国内段階に移行させる手続は、以下のような手続を指定官

34条補正では、国際予備

審査の段階でPCT国際出願の明細書、請求の範

囲、図面を補正すること

が可能

国内段階に移行した後

も、PCT国際出願は補正

の機会が認められる

* 規則52.1(b)

国内移行には、①翻訳文

の提出、②国内手数料の

支払い、③PCT国際出願の写しの提出が必要

* 条約第22条(1)、

条約第39条(1)(a)

* 規則66.3

庁に対して行います**。ただし、③については、日本も含め、実際に要求する国

は少なくなっています。

① PCT国際出願が作成された言語が、指定官庁が認める言語でない

場合、PCT国際出願を認められた言語へ翻訳した「翻訳文の提出」

② 指定国の国内法令が定める場合、「国内手数料の支払い」

③ 指定国が、PCT国際出願の写しをWIPO国際事務局から未だ入手し

ていない場合には、「PCT国際出願の写しの提出」

出願人が、所定の期間内に国内移行手続を行わない場合、PCT国際出願

は、国内移行がなかった指定国に関しては、PCT国際出願としての効果を失い、

その国の「国内出願」を取り下げたことと同様の結果(多くの場合、そのPCT国際

出願は取り下げられたものとみなされる)となります***。

PCT国際出願が国内に移行した後は、当該指定国の「国内出願」と同等の

取り扱いとなります。したがって、その後の手続はそれらの国が定める国内法令

に従って手続を行います。なかでも、代理人の選任については、ほとんどの指定

官庁が、在外者が特許庁に対して直接手続することを制限しているため、国内

の代理人を立てた上で国内手続を遂行することを国内法令で求めています。

各国への国内移行手続については、WIPOウェブサイト「PCT出願人の手引

(PCT Applicant’s Guide)」に掲載されている各官庁の国内段階の欄(Annex)を

参考にしてください。(http://www.wipo.int/pct/en/appguide/index.jsp)

その他、参考情報

国内移行後は、PCT国際出願も国内出願として各

国の国内法令に従って取

り扱われる

*** 条約第24条

** 条約第22条(1)

- 20 - - 21 -

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第2節 PCT国際出願の様々な手続

前節でご紹介したPCT国際出願の主な手続以外にも、PCT国際出願制度に

おいては、出願人の利便性の向上、手続上の軽微なミスを救済することを目的

に様々な手続きが設けられています。

第2節では、PCT国際出願の様々な手続について、日本の出願人が日本国

特許庁にPCT国際出願を行い、その後の必要な手続を遂行することを想定しつ

つ、代表的なものを簡単にご紹介します。

■優先権の主張の訂正(補充)、追加

優先権の主張については、PCT国際出願時に誤って主張した場合、あるい

は、主張し損ねた場合に、訂正、追加することができます*。

優先権主張の訂正、追加は、以下の期間内に限り行うことができます。

①優先権主張の訂正、追加により優先日が変更されない場合

国際出願日から4ヶ月以内、または優先日から16ヶ月のどちらか遅く満

了する期間

②優先権主張の訂正、追加により優先日が変更される場合

国際出願日から4ヶ月以内、または次の期限が国際出願日から4ヶ月よ

りも遅い場合には、次の期限のうち早く満了する期限

(a)優先権主張の訂正、追加前の願書に主張された優先日から16ヶ月

(b)優先権主張の訂正、追加により変更される、新しい優先日から16ヶ月

<②優先権主張の訂正、追加により優先日が変更される場合の例>

PCT国際出願の手続を十分に理解し、制度的な

メリットを最大限に享受す

* 規則26の2

国際出願日

国際出願日から4ヶ月

誤った優先日

訂正された優先日

16ヶ月

16ヶ月

それぞれの優先日から16ヶ月のうち早く満了する日

優先権主張の訂正、

追加ができる期限

優先権主張の訂正、追加ができる

期限の大原則(国際出願日から4ヶ月)

- 22 -

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第2節 PCT国際出願の様々な手続

前節でご紹介したPCT国際出願の主な手続以外にも、PCT国際出願制度に

おいては、出願人の利便性の向上、手続上の軽微なミスを救済することを目的

に様々な手続きが設けられています。

第2節では、PCT国際出願の様々な手続について、日本の出願人が日本国

特許庁にPCT国際出願を行い、その後の必要な手続を遂行することを想定しつ

つ、代表的なものを簡単にご紹介します。

■優先権の主張の訂正(補充)、追加

優先権の主張については、PCT国際出願時に誤って主張した場合、あるい

は、主張し損ねた場合に、訂正、追加することができます*。

優先権主張の訂正、追加は、以下の期間内に限り行うことができます。

①優先権主張の訂正、追加により優先日が変更されない場合

国際出願日から4ヶ月以内、または優先日から16ヶ月のどちらか遅く満

了する期間

②優先権主張の訂正、追加により優先日が変更される場合

国際出願日から4ヶ月以内、または次の期限が国際出願日から4ヶ月よ

りも遅い場合には、次の期限のうち早く満了する期限

(a)優先権主張の訂正、追加前の願書に主張された優先日から16ヶ月

(b)優先権主張の訂正、追加により変更される、新しい優先日から16ヶ月

<②優先権主張の訂正、追加により優先日が変更される場合の例>

PCT国際出願の手続を十分に理解し、制度的な

メリットを最大限に享受す

* 規則26の2

国際出願日

国際出願日から4ヶ月

誤った優先日

訂正された優先日

16ヶ月

16ヶ月

それぞれの優先日から16ヶ月のうち早く満了する日

優先権主張の訂正、

追加ができる期限

優先権主張の訂正、追加ができる

期限の大原則(国際出願日から4ヶ月)

■優先権の回復

(1)優先権主張の自動的な維持

優先権主張を伴うPCT国際出願がパリ条約に基づく優先期間12ヶ月を超え

てなされた場合であっても、国際出願日が優先期間の満了の日から2ヶ月以

内である場合には、直ちに無効とはされず、国際段階の間、優先権主張は維

持されます*。

このように自動的に維持された優先権主張は、国際調査や国際予備審査に

おいても考慮されます。さらに、国際段階における期間(国内移行のための期

間も含み)計算の起算日として、取り扱われます。

ただし、このように維持された優先権主張について、国内段階移行後におい

て有効なものとするためには優先権の回復を請求する必要があります。

(2)優先権の回復

優先権を伴う国際出願が優先期間である12ヶ月の満了の日から2ヶ月以

内にされた場合、出願人の請求により、優先期間を遵守できなかった理由に

ついて各官庁が適用する優先権の回復基準(「故意でない場合」又はより厳し

い「相当な注意を払った場合」)を満たしているときには、優先権を回復するこ

とができます*。

そして、受理官庁で回復が認められた優先権は、原則、当該受理官庁と同

等の基準を採用する指定官庁、及びそれより緩い基準を採用する指定官庁

においてその効力を有します。

2015年4月1日以降になされたPCT国際出願について、出願人は日本国

特許庁に対し優先権の回復を請求することができます。日本国特許庁は、

「相当な注意を払った」にもかかわらず、優先期間を徒過してしまったと認めら

れる場合に優先権の回復を認めます。

ただし、国によっては、経過措置の適用を受けているために国内段階におい

て優先権の回復を請求できない場合があります。各国で採用する優先権の回

復基準は異なりますので、優先権の回復に関する各国の最新情報は、WIPO

ウェブサイトを御確認ください。(http://www.wipo.int/pct/en/texts/restoration.html)

優先期間12ヶ月の満了

後にPCT国際出願されても、優先日は国際段階

の間維持される

* 規則26の2.3、

第49規則の3

優先期間内にPCT国際出願できなかったことに

ついて、その事情によ

り、優先権の回復が認め

られる場合がある

* 規則26の2.2

日本は優先権の回復の

規定について、2015年4月より経過措置の適用を

撤回

- 22 - - 23 -

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■欠落補充

出願人が陥りやすいミス(例:明細書をコピーするに際して1ページが脱落し

たままPCT国際出願として提出してしまった/明細書を作成するときに行った

文書のカット&ペーストの際に、明細書の一部が脱落したままPCT国際出願と

して提出してしまった)を救済することを目的として、次の2つの補充の手続が

あります。

(1)欠落補充(国際出願日の後ろ倒し)

国際出願の「要素(※1)」又は「部分(※2)」が、当該国際出願に記載され

ていない(欠落している)場合、国際出願日が認定された後であっても、遅れ

て欠落要素又は部分を提出し、PCT国際出願に含めることができます*。

ただし、国際出願日は、欠落要素又は部分が提出された日に訂正されます。

(この例外として、以下(2)の手続があります)

欠落要素又は部分を提出することによって、国際出願日がくり下がることが

決定され、かつ出願人がそれを不利であると判断をした場合には、出願人は、

補充された欠落要素又は部分を改めて無視するよう受理官庁に請求すること

ができます。この場合には、当該欠落部分は提出されなかったものとみなされ、

当該規定に基づく国際出願日の訂正はなされなかったものとみなされます。

(※1)「明細書」の全部又は「請求の範囲」の全部

(※2)「明細書」の部分、「請求の範囲」の部分、「図面」の部分又は全部

(2)引用補充(国際出願日の維持)

PCT国際出願における優先権主張の基礎となる先の出願に、欠落要素又

は部分が完全に含まれていることを受理官庁が認める場合、いったん認定さ

れた国際出願日を変更させることなく欠落要素又は部分を補充できます*。

これを「引用による補充」といいます。

引用補充に関する手続の詳細については、特許庁ウェブサイトを御参照く

ださい。(http://www.jpo.go.jp/tetuzuki/t_tokkyo/kokusai/inyo_hojyu.htm)

■明白な誤記の訂正

出願人は、PCT国際出願、又はその他の書類に明白な誤記がある場合は、

優先日から26月以内に、その誤記の訂正を請求することができます*。 * 規則91

* 規則20.3、

規則20.5

*規則20.6

PCT国際出願時に明細書、請求の範囲、図面が

欠落している場合、後日

の補充が可能

- 24 -

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■欠落補充

出願人が陥りやすいミス(例:明細書をコピーするに際して1ページが脱落し

たままPCT国際出願として提出してしまった/明細書を作成するときに行った

文書のカット&ペーストの際に、明細書の一部が脱落したままPCT国際出願と

して提出してしまった)を救済することを目的として、次の2つの補充の手続が

あります。

(1)欠落補充(国際出願日の後ろ倒し)

国際出願の「要素(※1)」又は「部分(※2)」が、当該国際出願に記載され

ていない(欠落している)場合、国際出願日が認定された後であっても、遅れ

て欠落要素又は部分を提出し、PCT国際出願に含めることができます*。

ただし、国際出願日は、欠落要素又は部分が提出された日に訂正されます。

(この例外として、以下(2)の手続があります)

欠落要素又は部分を提出することによって、国際出願日がくり下がることが

決定され、かつ出願人がそれを不利であると判断をした場合には、出願人は、

補充された欠落要素又は部分を改めて無視するよう受理官庁に請求すること

ができます。この場合には、当該欠落部分は提出されなかったものとみなされ、

当該規定に基づく国際出願日の訂正はなされなかったものとみなされます。

(※1)「明細書」の全部又は「請求の範囲」の全部

(※2)「明細書」の部分、「請求の範囲」の部分、「図面」の部分又は全部

(2)引用補充(国際出願日の維持)

PCT国際出願における優先権主張の基礎となる先の出願に、欠落要素又

は部分が完全に含まれていることを受理官庁が認める場合、いったん認定さ

れた国際出願日を変更させることなく欠落要素又は部分を補充できます*。

これを「引用による補充」といいます。

引用補充に関する手続の詳細については、特許庁ウェブサイトを御参照く

ださい。(http://www.jpo.go.jp/tetuzuki/t_tokkyo/kokusai/inyo_hojyu.htm)

■明白な誤記の訂正

出願人は、PCT国際出願、又はその他の書類に明白な誤記がある場合は、

優先日から26月以内に、その誤記の訂正を請求することができます*。* 規則91

* 規則20.3、

規則20.5

*規則20.6

PCT国際出願時に明細書、請求の範囲、図面が

欠落している場合、後日

の補充が可能

■発明の単一性

国際出願は、「一の発明」又は「単一の一般的発明概念を形成するように

連関している一群の発明」について行う必要があります*(「発明の単一性の

要件」)。一群の発明が国際出願の請求の範囲に記載されている場合には、

これらの発明の間に1又は2以上の同一又は対応する特別な技術的特徴を

含む技術的な関係があるときに限り、発明の単一性の要件を満たします。

国際調査機関は、そのPCT国際出願が発明の単一性の要件を満たしてい

ない(ひとつのPCT国際出願に技術的な関連性の薄い複数の発明概念が存

在する)と認める場合、出願人に対して追加の調査手数料の支払いを求めま

す。審査官は、追加の調査手数料の支払いの有無に応じて、調査対象を決

定します。

■PCT国際出願の取下げ

出願人は、優先日から30ヶ月が満了するまでの間、PCT国際出願を取り

下げることができます*。PCT国際出願を取り下げた場合、指定国における国

内出願の取下げと同じ効果をもってPCT国際出願の効果が消滅します(指定

官庁がPCT国際出願の処理又は審査を開始している場合を除きます)**。

PCT国際出願の取下げは、PCT国際出願制度のメリットを有効に活用すれ

ば、国際調査の結果を得ながら、その発明の内容を国際公開させないことが

可能です。そのためには、国際出願取下書をWIPO国際事務局に優先日から

17ヶ月までに提出してください。あるいは、国際出願取下書を受理官庁に提

出する場合は、WIPO国際事務局において国際公開の技術的準備が完了す

る前までに、受理官庁からの取下通知がWIPO国際事務局に到達している必

要があるため、優先日から16ヶ月までに提出してください。

■優先権主張の取下げ

出願人は、優先日から30ヶ月が満了するまでの間、優先権の主張を取り

下げることができます*。

優先権の主張の取下げによって優先日に変更が生じる場合、その時点で

満了していない変更前の優先日から起算した期間に限っては、改めて期間

計算が行われ、変更後の新たな優先日から起算されます。

■指定国の指定の取下げ

PCT国際出願は、その出願日の時点で有効なすべてのPCT加盟国を指

* 規則90の2.1

** 条約第24条(1)(i) 規則90の2.6

* 規則90の2.3

* 規則13

- 24 - - 25 -

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定したものとみなされますが(みなし全指定)、出願人は、優先日から30ヶ

月が満了するまでの間、指定国の指定を取り下げることができます*。指定

を取り下げた場合、その指定国においては、国内出願の取下げと同じ効果

をもってPCT国際出願の効果が消滅します**。なお、優先権主張の基礎と

なる先の国内出願がみなし取下げとなる国(日本、韓国、ドイツ)の指定の

取下げは、PCT国際出願願書においても行うことが可能です。

■【要注意】「みなし全指定」と日本の国内優先権

「みなし全指定」のもと(日本を指定したものとみなされる)PCT国際出願

が、日本の国内出願を基礎出願(先の出願)として優先権の主張をする場

合、その優先権主張は、日本に関しては特許法第41条に規定する「国内

優先権主張」が適用されます*。その結果、国内優先権の基礎となる先の

出願は、その出願日から16ヶ月を経過したときに取り下げられたものとみな

されます**。

国内優先権の基礎となる先の出願がみなし取下げとなる事態を避ける

ためには、次の3通りの方法があります。

✓ 日本の指定「除外」 【いつ?】 出願時に、PCT国際出願願書(第Ⅴ欄)に設けられた日本の

チェックボックスにチェックをして日本の指定を除外する

【効果は?】 PCT国際出願は、当初から日本を指定しない出願となり、日本に対して国内移行できない

✓ 日本の指定「取下げ」 【いつまで?】 先の出願がみなし取下げとなる、先の出願の出願日から16ヶ月

よりも前に日本の指定を取下げる

【効果は?】 PCT国際出願は、指定国日本に対して国内移行できない

【手続様式】 「指定国の指定取下書」を受理官庁に提出

✓ 「国内優先権の主張の取下げ」 【いつまで?】 先の出願がみなし取下げとなる、先の出願の出願日から16ヶ月よ

りも前に国内優先権の主張を取下げる

【効果は?】 国内優先権の基礎となる先の国内出願と、国内移行したPCT国際出願の両方が、優先権に関係なく、ともに日本の国内手続に係属することになる

【手続様式】 「上申書」を受理官庁である日本国特許庁に提出

自動的な国内優先権の

適用と、先の出願のみな

し取下げの回避

* 規則90の2.2

** 条約第24条(1)(i)

* 特許法第41条第1項

** 特許法第42条第1項

- 26 -

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定したものとみなされますが(みなし全指定)、出願人は、優先日から30ヶ

月が満了するまでの間、指定国の指定を取り下げることができます*。指定

を取り下げた場合、その指定国においては、国内出願の取下げと同じ効果

をもってPCT国際出願の効果が消滅します**。なお、優先権主張の基礎と

なる先の国内出願がみなし取下げとなる国(日本、韓国、ドイツ)の指定の

取下げは、PCT国際出願願書においても行うことが可能です。

■【要注意】「みなし全指定」と日本の国内優先権

「みなし全指定」のもと(日本を指定したものとみなされる)PCT国際出願

が、日本の国内出願を基礎出願(先の出願)として優先権の主張をする場

合、その優先権主張は、日本に関しては特許法第41条に規定する「国内

優先権主張」が適用されます*。その結果、国内優先権の基礎となる先の

出願は、その出願日から16ヶ月を経過したときに取り下げられたものとみな

されます**。

国内優先権の基礎となる先の出願がみなし取下げとなる事態を避ける

ためには、次の3通りの方法があります。

✓ 日本の指定「除外」

【いつ?】 出願時に、PCT国際出願願書(第Ⅴ欄)に設けられた日本のチェックボックスにチェックをして日本の指定を除外する

【効果は?】 PCT国際出願は、当初から日本を指定しない出願となり、日本に対して国内移行できない

✓ 日本の指定「取下げ」

【いつまで?】 先の出願がみなし取下げとなる、先の出願の出願日から16ヶ月よりも前に日本の指定を取下げる

【効果は?】 PCT国際出願は、指定国日本に対して国内移行できない

【手続様式】 「指定国の指定取下書」を受理官庁に提出

✓ 「国内優先権の主張の取下げ」

【いつまで?】 先の出願がみなし取下げとなる、先の出願の出願日から16ヶ月よりも前に国内優先権の主張を取下げる

【効果は?】 国内優先権の基礎となる先の国内出願と、国内移行したPCT国際出願の両方が、優先権に関係なく、ともに日本の国内手続に係属することになる

【手続様式】 「上申書」を受理官庁である日本国特許庁に提出

自動的な国内優先権の

適用と、先の出願のみな

し取下げの回避

* 規則90の2.2

** 条約第24条(1)(i)

* 特許法第41条第1項

** 特許法第42条第1項

■PCT規則4.17に基づく申立て

PCT規則4.17に基づく申立て*は、出願人がPCT国際出願を国内段階に

移行した後に別々の指定官庁からその国の国内的要件**として頻繁に要求

される代表的な証拠事例に関して、出願人がその事実関係を国際段階で申

立て(宣言)すれば、いずれの指定官庁からも、それに関する証拠を要求さ

れないとする手続です。

ただし、申立てができる手続は、以下の5つの事項に限定され、それぞれ

の事例の内容も一般的、典型的な事例に限られています。これらの事例以

外は、申立てを提出することはできません。なお、申立てが提出された事項

であっても、指定官庁が合理的な疑義を発見した場合には証拠を要求され

ることもあります。

(i)発明者の特定に関する申立て

(ii)出願し及び特許を与えられる出願人の資格に関する申立て

(iii)先の出願に基づく優先権を主張する出願人の資格に関する申立て

(iv)発明者である旨の申立て(米国に国内移行するために提出する)

(v)不利にならない開示又は新規性喪失の例外に関する申立て

出願人

出願人

PCT国際段階

PCT国際段階

A語翻訳文

申立てを提出しない場合:各国官庁から証拠の提出が要求される

国内段階(各指定国)

国内段階(各指定国)

証拠

B語翻訳文

C語翻訳文

それぞれの指定国への証拠の提出は極めて

煩雑、かつ経費のかかる手続

PCT規則4.17に従い申立てを国際出願時に提出すれば、その内容に関する証拠は、原則として指定官庁から要求されない

指定国A

証拠

証拠

指定国C

指定国B

指定国A

指定国C

指定国B

証拠

証拠

証拠

申立てを提出すれば、指定官庁に対しても証拠の提出が不要

PCT規則4.17に基づく申立て制度

願書

A語翻訳文

B語翻訳文

C語翻訳文

願書

規則4.17の申立て

証拠を準備

* 規則4.17(i)~(v)

** 条約第27条、 規則51の2

- 26 - - 27 -

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■PCT国際出願における期間管理

PCT国際出願制度の手続には、出願人が遵守しなければならない多くの期間(期限)があり、しばし

ば複雑すぎるとの声もあります。事実、手続期間は多岐にわたりますが、PCTが提供するさまざまな

サービスを一定の期間内(国際段階)に効率よく配置する目的から、ある程度は避けられない制度の

仕組みです。

PCT手続における期間計算の基本

• 事象が生じた日の翌日を起算日とし(初日不算入)、その期間の最後の月(年)における当該事象が生じた日に応当する日に満了します(規則80)。

• 期間は、「優先日から○ヶ月」と規定する場合が多いです。PCT手続において「優先日」とは、優先権

主張の基礎となる先の出願のうち最先の出願日であり、優先権主張を伴わない場合は国際出願日

を優先日とします(条約第2条(xi))。

• 期間の末日が官庁の就業日でない(又は通常の郵便物が配達されない日の)場合、その期間は後続の最初の就業日に満了します(規則80.5)。

主要なPCT手続の期間

手続期間のうち、主要なものを以下にまとめました。PCTにおける期間計算の基本的な考え方とともに、

御活用ください。

注:典型的な期間を簡潔にまとめたもので、手続のすべての場合の期間を網羅したものではありません。

手続の種類 期限 【適用条文】 備考

P

C

T

優先権主張を伴うPCT国際出願 優先日から12ヶ月

【パリ条約4C(1)、条約8(2)(a)、規則2.4、4.10】

優先権の回復手続による救

済の可能性あり

国際出願手数料、送付手数料、

調査手数料の支払い

PCT国際出願の受理の日から1ヶ月

【規則14.1(c)、15.3、16.1(f)】

手続補正命令への応答 補正命令の発送日から2ヶ月

【規則26.2】

優先権証明書の提出 優先日から16ヶ月

【規則17.1(a)】

優先権主張の補充又は追加 優先日から16ヶ月又は国際出願日から4ヶ月のいずれか遅い方

【規則26の2】

優先日が訂正され、変更に

なる場合の期間計算は要

注意(P22参照)

- 28 -

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■PCT国際出願における期間管理

PCT国際出願制度の手続には、出願人が遵守しなければならない多くの期間(期限)があり、しばし

ば複雑すぎるとの声もあります。事実、手続期間は多岐にわたりますが、PCTが提供するさまざまな

サービスを一定の期間内(国際段階)に効率よく配置する目的から、ある程度は避けられない制度の

仕組みです。

PCT手続における期間計算の基本

• 事象が生じた日の翌日を起算日とし(初日不算入)、その期間の最後の月(年)における当該事象が生じた日に応当する日に満了します(規則80)。

• 期間は、「優先日から○ヶ月」と規定する場合が多いです。PCT手続において「優先日」とは、優先権

主張の基礎となる先の出願のうち最先の出願日であり、優先権主張を伴わない場合は国際出願日

を優先日とします(条約第2条(xi))。

• 期間の末日が官庁の就業日でない(又は通常の郵便物が配達されない日の)場合、その期間は後続の最初の就業日に満了します(規則80.5)。

主要なPCT手続の期間

手続期間のうち、主要なものを以下にまとめました。PCTにおける期間計算の基本的な考え方とともに、

御活用ください。

注:典型的な期間を簡潔にまとめたもので、手続のすべての場合の期間を網羅したものではありません。

手続の種類 期限 【適用条文】 備考

P

C

T

優先権主張を伴うPCT国際出願 優先日から12ヶ月

【パリ条約4C(1)、条約8(2)(a)、規則2.4、4.10】

優先権の回復手続による救

済の可能性あり

国際出願手数料、送付手数料、

調査手数料の支払い

PCT国際出願の受理の日から1ヶ月

【規則14.1(c)、15.3、16.1(f)】

手続補正命令への応答 補正命令の発送日から2ヶ月

【規則26.2】

優先権証明書の提出 優先日から16ヶ月

【規則17.1(a)】

優先権主張の補充又は追加 優先日から16ヶ月又は国際出願日から4ヶ月のいずれか遅い方

【規則26の2】

優先日が訂正され、変更に

なる場合の期間計算は要

注意(P22参照)

手続の種類 期限 【適用条文】 備考

国内優先権主張の基礎とされた

先の出願のみなし取下げを回避

するための日本国指定の取下げ

先の出願日から16ヶ月

【特許法42条、特許法施行規則28条の4、実用新案法9条】

PCT規則4.17に基づく申立ての

提出(任意の手続)

出願の時(受理官庁に提出)

優先日から16ヶ月(WIPO国際事務局に提出)

【規則4.17、26の3.1】

調

国際調査機関による国際調査報

告及び国際調査機関の見解書

の作成

国際調査機関における調査用写しの受領から3ヶ月又は優先日

から9ヶ月のいずれか遅い方

【規則42.1、44.1】

調査用写しは、通常、優先

日から13ヶ月までに調査機

関に送付される

国際調査報告受領後の請求の

範囲の補正(19条補正)

(任意の手続)

国際調査報告の発送日から2ヶ月又は優先日から16ヶ月のうち

いずれか遅い方

【条約19(1)、規則46.1】

補正はWIPO国際事務局に

直接提出する

調

補充国際調査の請求 (任意の手続)

優先日から19ヶ月

【規則45の2.1(a)】

請求はWIPO国際事務局に

直接提出する

補充国際調査手数料、補充国

際調査取扱手数料の支払い

補充国際調査請求書の受理の日から1ヶ月

【規則45の2.2(c)、45の2.3(c)】

補充国際調査機関による補充国

際調査報告の作成

優先日から28ヶ月

【規則45の2.7(a)】

国際予備審査の請求 (任意の手続)

国際調査報告などの発送日から3ヶ月又は優先日から22ヶ月

のうちいずれか遅い方

【規則54の2.1(a)】

20ヶ月の国内移行期限を

依然有する国に関しては、

要注意

予備審査手数料、取扱手数料の

支払い

国際予備審査請求書の提出日から1ヶ月又は優先日から22ヶ

月のうちいずれか遅い方

【規則57.3(a)、58.1(b)】

- 28 - - 29 -

Page 36: PCT Î % Í!G· rPCT 30 <本テキストの内容に関するお問い合わせ先> 電話:03-3581-1101 国際出願の出願手続に関して (受理官庁)内線2643 日本への国内移行手続に関して

手続の種類 期限 【適用条文】 備考

国際予備審査手続における明細

書、請求の範囲、図面の補正

(34条補正) (任意の手続)

特許性に関する国際予備報告(第Ⅱ章)(国際予備審査報告)

の作成が開始されるまでの間

【規則66.1(b)】

国際予備審査の請求と同

時に行うことが望ましい

国際予備審査機関による特許性

に関する国際予備報告(第Ⅱ

章)(国際予備審査報告)の作成

優先日から28ヶ月、国際予備審査の開始(規則69.1)から6ヶ

月、国際予備審査のための翻訳文(規則55.2)の受領日から

6ヶ月のうち最も遅い日

【規則69.2】

指定国(選択国)への国内移行 優先日から30ヶ月

(経過措置を適用し、優先日から20ヶ月を国内移行期限とする国に

ついては、国際予備審査請求をしない限り優先日から20ヶ月)

【条約22(1)、39(1)】

移行期限徒過の回復による

救済の可能性あり

(指定国は裁量により30ヶ

月よりも長い期間を定める

ことができる)

過誤納による手数料の返還

(特許庁に支払う手数料)

過誤納の手数料を納付した日から1年

【国際出願法18条3項、特許法195条12項】

■ コラム WIPOウェブサイトが提供する『PCT期間計算システム(PCT Time Limit Calculator)』

最先の優先日(優先権主張をしない場合は国際出願日)などを入力することで、国際公開予定日や国内

移行期限など、国際段階のさまざまな手続期限日がわかります。掲載場所は

ただし、このシステムでは機械的に期限日を計算表示しているだけですので、WIPO国際事務局や各国国

内官庁の閉庁日は考慮されていません。あくまでも目安として御利用ください。

- 30 -

P34を参照してください。

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手続の種類 期限 【適用条文】 備考

国際予備審査手続における明細

書、請求の範囲、図面の補正

(34条補正)(任意の手続)

特許性に関する国際予備報告(第Ⅱ章)(国際予備審査報告)

の作成が開始されるまでの間

【規則66.1(b)】

国際予備審査の請求と同

時に行うことが望ましい

国際予備審査機関による特許性

に関する国際予備報告(第Ⅱ

章)(国際予備審査報告)の作成

優先日から28ヶ月、国際予備審査の開始(規則69.1)から6ヶ

月、国際予備審査のための翻訳文(規則55.2)の受領日から

6ヶ月のうち最も遅い日

【規則69.2】

指定国(選択国)への国内移行 優先日から30ヶ月

(経過措置を適用し、優先日から20ヶ月を国内移行期限とする国に

ついては、国際予備審査請求をしない限り優先日から20ヶ月)

【条約22(1)、39(1)】

移行期限徒過の回復による

救済の可能性あり

(指定国は裁量により30ヶ

月よりも長い期間を定める

ことができる)

過誤納による手数料の返還

(特許庁に支払う手数料)

過誤納の手数料を納付した日から1年

【国際出願法18条3項、特許法195条12項】

■ コラム WIPOウェブサイトが提供する『PCT期間計算システム(PCT Time Limit Calculator)』

最先の優先日(優先権主張をしない場合は国際出願日)などを入力することで、国際公開予定日や国内

移行期限など、国際段階のさまざまな手続期限日がわかります。掲載場所はP.34を参照してください。

ただし、このシステムでは機械的に期限日を計算表示しているだけですので、WIPO国際事務局や各国国

内官庁の閉庁日は考慮されていません。あくまでも目安として御利用ください。

第3節 PCT国際出願に関する情報の入手

特許庁では、さまざまな媒体を活用しながら、PCT国際出願制度を利用

する方々に対して最新情報をわかりやすく提供しています。特許庁ウェブ

サイト(http://www.jpo.go.jp/indexj.htm)や各種資料を御活用いただき、

PCT国際出願制度の活用にお役立てください。

特許庁ウェブサイトのトップページより、以下の順序で、PCT国際出願の手続に関するHPにアク

セスできます(以下、画面については2018年10月1日時点のものです)。

特許庁の

PCT関連情報の提供

トップページの「制度から探す」から

「国際出願」をクリックしてください。

「特許協力条約(PCT)に基づく国際出願に関して」

をクリックしてください。

- 30 - - 31 -

Page 38: PCT Î % Í!G· rPCT 30 <本テキストの内容に関するお問い合わせ先> 電話:03-3581-1101 国際出願の出願手続に関して (受理官庁)内線2643 日本への国内移行手続に関して

ご覧になりたい項目をこちら(左記)

から選択してください

- 32 -

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ご覧になりたい項目をこちら(左記)

から選択してください

PCT国際出願手続のページについてのご案内

(http://www.jpo.go.jp/seido/kokusai/kokusai_shutugan1/shutugantetuzuki/index.html)

PCT 国際出願に関する Q&A

はこちらへ

PCT願書、国際予備審査請求書の様式

はこちらへ

WIPO のホームページ(日本語版)

はこちらへ

- 32 - - 33 -

Page 40: PCT Î % Í!G· rPCT 30 <本テキストの内容に関するお問い合わせ先> 電話:03-3581-1101 国際出願の出願手続に関して (受理官庁)内線2643 日本への国内移行手続に関して

WIPO国際事務局によるPCT国際出願に関する情報提供は、年々充実

しています。特に、WIPOウェブサイトでは日本語による情報提供も充実し

ています。本テキストで随所に引用しているPCTの条約本文や規則の本

文も、日本語で提供されています。また、「PCT出願人の手引(PCT

Applicant’s Guide)」や毎月発行される「PCTニュースレター」も日本語版

が掲載されており、手続について役に立つ最新情報を入手することができ

ます。

WIPO日本語版ウェブサイト (http://www.wipo.int/pct/ja)

WIPOの PCT関連情報の提供

PCTニュースレターの日本語抄訳

(最新情報、実務的なアドバイス掲載)

へのリンク

(国際公開(P17)、出願検索(P35)に関連)

PCT締約国一覧へのリンク

PCT 条約、PCT 規則、実施細則本文

の日本語訳へのリンク

期間計算システムへのリンク

(P30 コラム参照)

PCT出願人の手引へのリンク

(出願手続、各国への手続に関する情報を掲載)

- 34 -

PATENTSCOPEへのリンク

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WIPO国際事務局によるPCT国際出願に関する情報提供は、年々充実

しています。特に、WIPOウェブサイトでは日本語による情報提供も充実し

ています。本テキストで随所に引用しているPCTの条約本文や規則の本

文も、日本語で提供されています。また、「PCT出願人の手引(PCT

Applicant’s Guide)」や毎月発行される「PCTニュースレター」も日本語版

が掲載されており、手続について役に立つ最新情報を入手することができ

ます。

WIPO日本語版ウェブサイト (http://www.wipo.int/pct/ja)

WIPOの PCT関連情報の提供

PCTニュースレターの日本語抄訳

(最新情報、実務的なアドバイス掲載)

へのリンク

PatentScopeへのリンク

(国際公開(P17)、出願検索(P35)に関連)

PCT締約国一覧へのリンク

PCT 条約、PCT 規則、実施細則本文

の日本語訳へのリンク

期間計算システムへのリンク

(P30 コラム参照)

PCT出願人の手引へのリンク

(出願手続、各国への手続に関する情報を掲載)

日本語による検索をはじめとして、個別のPCT国際出願に関する情報

ベース検索」を通じて拡大しています。

WIPOの 出願検索サービス 「PATENTSCOPE」

言語を選択できます

出願番号や、出願人氏名、国際特許分類など

検索したい項目を入力します。

複数の条件を入力して検索することもできます。

日本語キーワードでの検索も可能です。

(検索対象外の出願もあります)

- 34 - - 35 -

出願番号や公開番号による照会機能に加え、特定の技術用語を用い

たキーワードによる検索も可能となっています。自分自身の出願の公開情

報を確認することにとどまらず、関心のある技術分野の出願傾向を探るこ

とや、特定の出願の各国への国内移行状況を調査するといった様々な使

い方が可能となっています。

PATENTSCOPE (http://patentscope.wipo.int/search/ja/structuredSearch.jsf)

提供は、WIPOウェブサイト上の「PATENTSCOPE 国際・国内特許データ

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個別の出願に関する各種情報は以下のように表示されます。国際

公開の内容に加え、一定期間経過後には、その出願に関する各種情

報が閲覧可能になります。

(個別の出願のページ)

(※)2017年7月のPCT規則改正に伴い、自国に国内移行した出願に関する情

報は、すべてのPCT加盟国によってWIPO国際事務局に対して提供されるこ

ととなりました(規則86及び95)。しかし、提供している場合でも、そのタイミ

データベース検索」における国内移行情報は、あくまでWIPO国際事務局が

入手した範囲内であり、国内移行した国として表示されない場合でも、その

PCT国際出願がその国へ国内移行されていることもあります。この点を踏ま

えて利用するように、WIPO国際事務局も注意を促しています。

明細書、請求の範囲 国内移行した国の情報(※)

国際公開公報、国際調査報告、

国際予備報告、優先権書類 など

- 36 -

ングは国によって異なります。 よって、「PATENTSCOPE 国際・国内特許

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個別の出願に関する各種情報は以下のように表示されます。国際

公開の内容に加え、一定期間経過後には、その出願に関する各種情

報が閲覧可能になります。

(個別の出願のページ)

(※)2017年7月のPCT規則改正に伴い、自国に国内移行した出願に関する情

報は、すべてのPCT加盟国によってWIPO国際事務局に対して提供されるこ

ととなりました(規則86及び95)。しかし、提供している場合でも、そのタイミ

ングは国によって異なります。よって、「PATENTSCOPE国際・国内特許

データベース検索」における国内移行情報は、あくまでWIPO国際事務局が

入手した範囲内であり、国内移行した国として表示されない場合でも、その

PCT国際出願がその国へ国内移行されていることもあります。この点を踏ま

えて利用するように、WIPO国際事務局も注意を促しています。

明細書、請求の範囲

国内移行した国の情報(※)

国際公開公報、国際調査報告、

国際予備報告、優先権書類 など

■ コラム WIPOが提供するオンラインポータルサイト 『ePCT』

WIPO国際事務局がウェブサイト上でPCT国際出願に関する情報提供を充実させている点はここまで

御紹介したとおりです。これに加えて、WIPO国際事務局は、出願人がWIPO国際事務局に対して行う

手続に関してオンライン化を進めています。

現在、WIPO国際事務局が特に力を入れているのが、「ePCT」というサービスです。

ePCTとは、WIPO国際事務局が提供する、出願人と各官庁間のPCT国際出願に関する手続をイン

ターネット上でリアルタイムに行うためのオンラインポータルサイトです。2018年10月現在、WIPO国際

事務局と一部官庁(日本は未対応)に対する手続のみ利用可能ですが、対象となる官庁や手続、機

能は順次拡充されています。現在では、日本語を含む国際公開10言語でePCTをご利用いただけま

す。

ePCTは、WIPOホームページ上でWIPOユーザーアカウントを作成することで利用可能であり、PCT中

間書類の提出や、新規性や進歩性に関する第三者情報提供を行うことができます。

また、ePCTのすべての機能を利用するためには、上述のWIPOユーザーアカウントに加え、電子証

明書やワンタイムパスワードによる認証が必要です。これらの高度な認証方法を設定することにより、

出願手続、出願情報の閲覧、手続履歴の参照など、更に多くの機能を利用することが可能となりま

す。

なお、ePCTはウェブベースのシステムであり、インターネットブラウザを使ってアクセスするため、ユー

ザは特別なソフトウェアをインストールする必要がありません。また、システムが常時更新されるため、

常に最新のバージョンをご利用いただけます。

ePCTの最新情報については、ePCTのサポートトピックの「What’s new in ePCT for applicants?」

で御確認ください。

<参考:WIPO提供のセミナー資料>

http://www.wipo.int/export/sites/www/about-wipo/en/offices/japan/pdf/3_epct.pdf

<ePCTポータル>

https://pct.wipo.int/LoginForms/epct.jsp

- 36 - - 37 -

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本テキストは、PCT国際出願制度の基礎を理解し、利用を検討することを目的としたもの

です。ある特定のPCT国際出願の案件については、それぞれの事情とそのときの処理のタイ

ミングが異なりますので、国際出願番号などで案件を特定したうえで、特許庁やWIPO国際

事務局の各担当に御照会ください。

- 38 -

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本テキストは、PCT国際出願制度の基礎を理解し、利用を検討することを目的としたもの

です。ある特定のPCT国際出願の案件については、それぞれの事情とそのときの処理のタイ

ミングが異なりますので、国際出願番号などで案件を特定したうえで、特許庁やWIPO国際

事務局の各担当に御照会ください。

PCT国際出願制度に関する各種問い合わせ先

【日本国特許庁へのお問い合わせ】

電話: 03-3581-1101

・PCT国際出願の出願手続に関して

審査業務部 出願課 国際出願室 受理官庁担当 内線 2643

・日本への国内移行手続に関して

審査業務部 審査業務課 方式審査室 指定官庁担当 内線 2644

・PCT国際出願の制度全般に関して

審査業務部 出願課 国際出願室 企画調査班 内線 2642

【WIPO国際事務局へのお問い合わせ】

(1) WIPO/PCT一般相談:PCT Infoline(原則英語)

電話:(41-22)338-8338

Fax :(41-22)338-8339(※)

E-mail :[email protected]

お問い合わせに際し、国際出願番号が付与されている場合は国際出願番号を電子メールのタイトル

(主題)に記載してください。また、メール本文と主題は英語(半角英数字)となりますが、照会内容は、

日本語で記載し添付ファイルで送信することが可能です。

<日本語サポート> 電話:(41-22)338-9916

(不在の場合にはPCT Infolineにお問い合わせください)

(2) 日本国特許庁を受理官庁として出願した個別のPCT国際出願に関する質問

① 国際出願番号の末尾が00~49のPCT国際出願に関して(日本語可)

電話:(41-22)338-7407

Fax :(41-22)338-9090(※)

E-mail:[email protected]

② 国際出願番号の末尾が50~99のPCT国際出願に関して(日本語可)

電話:(41-22)338-7408

Fax :(41-22)338-7010(※)

E-mail:[email protected]

(3) 受理官庁としてのWIPO国際事務局(RO/IB)(英語のみ)

電話:(41-22)338-9222

Fax :(41-22)910-0610(※)

E-mail:[email protected]

- 38 - - 39 -

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(4) ePCTに関する質問:PCT eServices Help Desk(原則英語)

(日本語を希望する場合は、その旨お電話でお伝えください)

電話:(41-22)338-9523

Fax :(41-22)338-8040(※)

E-mail: [email protected]

(※)WIPO国際事務局へのFAX送信が上手くいかない事例が増えております。FAXをご利用にな

る場合は、FAX送信直後に上記(2)①又は②のPCT担当チームへ電話または電子メールを

送ることを強くお勧めいたします。また、WIPO国際事務局への書類の提出には、ePCTのド

キュメントアップロード機能のご利用を強くお勧めしております。

- 40 -

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(4) ePCTに関する質問:PCT eServices Help Desk(原則英語)

(日本語を希望する場合は、その旨お電話でお伝えください)

電話:(41-22)338-9523

Fax :(41-22)338-8040(※)

E-mail: [email protected]

(※)WIPO国際事務局へのFAX送信が上手くいかない事例が増えております。FAXをご利用にな

る場合は、FAX送信直後に上記(2)①又は②のPCT担当チームへ電話または電子メールを

送ることを強くお勧めいたします。また、WIPO国際事務局への書類の提出には、ePCTのド

キュメントアップロード機能のご利用を強くお勧めしております。

用語解説

1 特許協力条約 (Patent Cooperation Treaty : PCT)

特許にかかる発明を多くの国々に出願する際の出願人の労力、費用的な負担を軽減し、かつ

各国特許庁が行う手続負担と重複業務の軽減を目的として、1970年6月にワシントンで採択さ

れた条約です。1978年に条約が発効し、日本も同年10月からの加盟国です。

PCTは、「発明の保護のための出願並びにその出願にかかる(先行技術)調査及び(予備的な)

審査における協力」などを目的としており(条約第1条)、PCT国際出願をした発明が各国におい

て特許を受けられるかどうかについては、各国の実体審査に委ねられています。

2 国際調査 (International Search)

PCT国際出願の請求の範囲について関連のある先行技術を発見することを目的として、国際

調査機関(International Searching Authority: ISA)(用語解説10参照)が行います(条約第15

条)。

3 国際調査報告 (International Search Report : ISR)

国際調査機関は、国際調査機関による調査用写しの受領から3ヶ月、又は優先日から9ヶ月

のうちいずれか遅く満了する期間までに、国際調査報告を作成します。国際調査報告には、国

際調査を行った分類、関連する技術に関する文献、発明の単一性に関する注釈などが記載さ

れます(条約第18条)。

4 国際調査機関による見解書 (Written Opinion of the ISA : WOSA)

国際調査機関は、国際調査報告を作成すると同時に、国際調査機関による見解書を作成し

ます。国際調査機関による見解書には、出願された発明が特許性(新規性、進歩性、産業

上の利用可能性)を満たしているか、条約に定める要件を満たしているかなど、PCT第34条

(2)に掲げる要件に対しての肯定、否定の見解が記載されます。国際調査機関による見解

書に対して、出願人は国際予備審査を請求することで、反論、抗弁の機会が与えられます

(規則43の2.1)。

5 国際予備審査 (International Preliminary Examination)

PCT国際出願は、出願人の請求により国際予備審査の対象となります。国際予備審査は、請

求の範囲に記載されている発明が、新規性、進歩性、産業上の利用可能性を有するものと認

められるかどうかについて、予備的な、かつ拘束力のない見解を示すことを目的として国際予

備審査機関(International Preliminary Examining Authority: IPEA)が行います(条約第31条、

条約第33条)。

6 優先日 (Priority Date)

PCT国際出願に関する多くの期間を計算する起算日となる優先日は、①PCT国際出願が優先

権の主張を伴う場合、その優先権主張の基礎となる出願の日をいい、②基礎となる出願(国

内出願、PCT国際出願など)が2件以上ある場合には、そのうちの最先の出願の出願日となり

ます。また、優先権の主張を伴わないPCT国際出願の優先日は、③PCT国際出願の国際出

- 40 - - 41 -

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願日です(条約第2条)。

7 翻訳文 (Translation of International Application)

出願人は、PCT国際出願の明細書、請求の範囲、図面の文言、要約を、指定官庁が定める所

定の言語に翻訳した翻訳文を提出します(条約第22条、条約第39条)。ただし、所定の期間

内に手続をすることができなかったことについて「正当な理由」があるときは、その理由がなく

なった日から2月以内で期間の経過後1年以内であれば所定の期間徒過後の手続が許容さ

れます。

また、19条補正、34条補正が国際段階で行われた場合には、それらの翻訳文も国内移行期

限内に提出しなければなりません。その提出がない場合、19条補正、34条補正は国際段階で

行われなかったものとみなされます。

8 受理官庁 (receiving Office : RO)

PCT国際出願の出願を受け付ける官庁であり、通常は出願人がその居住者、又は国民である

締約国の国内官庁(特許庁)が受理官庁となります。受理官庁は、PCT国際出願を点検し、条

約に従って処理をします(条約第10条)。

9 指定国 (designated State)/指定官庁 (Designated Office : DO)

PCT国際出願願書において、出願人が発明の保護を求めるために指定した加盟国です。また、

その加盟国の官庁は、指定官庁と呼ばれます(条約第4条)。

10 国際調査機関 (International Searching Authority : ISA)

国際調査を行う機関であり、人員及び資料に関する最小限の要件を備えた国内官庁及び政

府間機関の中から、PCT同盟総会の承認を得て、当該国内官庁又は政府間機関などと

WIPO国際事務局との取決めの締結を条件として選定されます(条約第16条)。

11 補充国際調査 (Supplementary International Search : SIS)

2009年1月より開始された制度で、出願時に選択する国際調査機関による国際調査に加え

て、出願人の希望により別の国際調査機関による国際調査を提供するものです。複数の国

際調査報告を得ることによって、国際段階で先行技術を極力把握し、国内段階で新たな先

行技術文献が発見される可能性を減少させることを目的としています(規則45の2)。

12 特許性に関する国際予備報告(第Ⅱ章) (International Preliminary Report on Patentability

(PCT Chapter II) : IPRP(II))(=国際予備審査報告)

国際予備審査機関によって作成される発明の特許性に関する報告書です。特許性に関する

報告とは、PCT国際出願の請求の範囲が、新規性、進歩性、産業上の利用可能性の基準に

適合しているかどうかに関して、各請求の範囲毎に「有」「無」を表記するものです。さらに、結論

を裏付ける文献を列記し、場合により必要な説明や他の意見を付します(条約第35条)。

国際予備審査を希望する場合には、国際調査報告及び国際調査機関による見解書が出願

人に送付された日から3ヶ月か、優先日から22ヶ月の期限のうち、どちらか遅く満了する日まで

に請求書を国際予備審査機関に直接提出しなければいけません(規則54の2.1)。

- 42 -

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願日です(条約第2条)。

7 翻訳文 (Translation of International Application)

出願人は、PCT国際出願の明細書、請求の範囲、図面の文言、要約を、指定官庁が定める所

定の言語に翻訳した翻訳文を提出します(条約第22条、条約第39条)。ただし、所定の期間

内に手続をすることができなかったことについて「正当な理由」があるときは、その理由がなく

なった日から2月以内で期間の経過後1年以内であれば所定の期間徒過後の手続が許容さ

れます。

また、19条補正、34条補正が国際段階で行われた場合には、それらの翻訳文も国内移行期

限内に提出しなければなりません。その提出がない場合、19条補正、34条補正は国際段階で

行われなかったものとみなされます。

8 受理官庁 (receiving Office : RO)

PCT国際出願の出願を受け付ける官庁であり、通常は出願人がその居住者、又は国民である

締約国の国内官庁(特許庁)が受理官庁となります。受理官庁は、PCT国際出願を点検し、条

約に従って処理をします(条約第10条)。

9 指定国 (designated State)/指定官庁 (Designated Office : DO)

PCT国際出願願書において、出願人が発明の保護を求めるために指定した加盟国です。また、

その加盟国の官庁は、指定官庁と呼ばれます(条約第4条)。

10 国際調査機関 (International Searching Authority : ISA)

国際調査を行う機関であり、人員及び資料に関する最小限の要件を備えた国内官庁及び政

府間機関の中から、PCT同盟総会の承認を得て、当該国内官庁又は政府間機関などと

WIPO国際事務局との取決めの締結を条件として選定されます(条約第16条)。

11 補充国際調査 (Supplementary International Search : SIS)

2009年1月より開始された制度で、出願時に選択する国際調査機関による国際調査に加え

て、出願人の希望により別の国際調査機関による国際調査を提供するものです。複数の国

際調査報告を得ることによって、国際段階で先行技術を極力把握し、国内段階で新たな先

行技術文献が発見される可能性を減少させることを目的としています(規則45の2)。

12 特許性に関する国際予備報告(第Ⅱ章) (International Preliminary Report on Patentability

(PCT Chapter II) : IPRP(II))(=国際予備審査報告)

国際予備審査機関によって作成される発明の特許性に関する報告書です。特許性に関する

報告とは、PCT国際出願の請求の範囲が、新規性、進歩性、産業上の利用可能性の基準に

適合しているかどうかに関して、各請求の範囲毎に「有」「無」を表記するものです。さらに、結論

を裏付ける文献を列記し、場合により必要な説明や他の意見を付します(条約第35条)。

国際予備審査を希望する場合には、国際調査報告及び国際調査機関による見解書が出願

人に送付された日から3ヶ月か、優先日から22ヶ月の期限のうち、どちらか遅く満了する日まで

に請求書を国際予備審査機関に直接提出しなければいけません(規則54の2.1)。

一方、出願人が国際予備審査を請求しない場合、国際調査機関による見解書が、WIPO国際

事務局によって新たな報告として加工され、英訳が付されます。この報告書は、「特許性に関

する国際予備報告(第Ⅰ章)と呼ばれます。「特許性に関する国際予備報告(第Ⅰ章)」の内

容は、国際調査機関による見解書と同一の内容です。なお、「特許性に関する国際予備報告」

に(第Ⅰ章)又は(第Ⅱ章)と付記されているのは、PCTの第Ⅰ章に規定された手続(国際予備

審査を請求しない手続)の中で生成された報告書又は、条約の第Ⅱ章に規定された手続(国

際予備審査を請求する手続)の中で生成された報告書であるためです。

13 PCT第19条に基づく補正 (Amendments under Article 19)

国際調査報告の送付の日から2ヶ月、又は優先日から16ヶ月のうちいずれか遅く満了する

期間までに出願人が1回に限り行える請求の範囲に対する補正(PCT国際出願時における

開示の範囲内)で、WIPO国際事務局に補正書を提出します(条約第19条)。

14 PCT第34条に基づく補正 (Amendments under Article 34)

国際予備審査の請求をした出願人が、請求の日から国際予備審査報告の作成までの期間

内に行うことができる明細書、請求の範囲及び図面に対する補正(PCT国際出願時における

開示の範囲で)で、国際予備審査機関に補正書を提出します(条約第34条)。

15 国際公開 (International Publication)

国際公開は、PCT国際出願の明細書、請求の範囲、図面(該当する場合)、要約、国際調査

報告、19条補正などを掲載した国際的な出願公開です。PCT国際出願の優先日から18ヶ月

を経過した後、速やかに行われます(条約第21条)。

国際公開の効果は、審査を経ていない国内出願の強制的な国内公開について、当該指定

国の国内法令が定める効果と同一とされています。(条約第29条)

16 国際段階 (International Phase)

PCT国際出願が出願され、国際出願日が付与されてから、そのPCT国際出願が指定国の国

内段階に移行するまでの期間をいいます。

国際段階の手続は、条約や規則において手続が規定されており、国内移行後に各国の国内

法令の規定に従う「国内段階(National Phase)」とその性格を異にしています。

17 WIPO国際事務局 (International Bureau of WIPO : IB)

WIPO国際事務局は、知的所有権の保護の促進、諸同盟国の管理に関する協力の確保を

目的とする国連の専門機関の一つである「世界知的所有権機関(World Intellectual

Property Organization : WIPO)」に設置されたPCT国際出願制度を統括する事務局で、ス

イス(ジュネーブ)に置かれています。WIPO国際事務局は、PCT同盟の管理業務、同盟の諸

機関の事務局としての職務、公報その他の刊行物の発行を行います(条約第55条)。

18 国内移行期限 (Time limit for entering the national phase)

国内移行期限とは、PCT国際出願を、国内で実体審査を受けるための国内手続に係属させ

る手続(国内移行手続)を行わなければならない期限です。通常、優先日から30ヶ月です

が、各国によっては31ヶ月、32ヶ月と、若干の猶予を与えて国内移行期限としている指定

国(選択国)もあります。

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<本テキストの内容に関するお問い合わせ先>

電話:03-3581-1101

国際出願の出願手続に関して (受理官庁)内線2643

日本への国内移行手続に関して (指定官庁)内線2644

国際出願の制度全般に関して (国際出願室)内線2642

PCT国際出願制度の概要 

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特許協力条約(P

CT

)に基づく国際出願の仕組み-

                                   

              

平成30年度       

 

               

特 

許 

平成30年度知的財産権制度説明会(実務者向け)テキスト

PCT国際出願制度の概要 -特許協力条約(PCT)に基づく国際出願の仕組み-

平成30年度