pe ps pvc pp abs 5...26 第5 章...

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26 5 章 中国における廃プラスチックリサイクルの現状(動向) 廃プラの利用方法は大きく二つに分かれている。原材料としての再利用と燃料としての 利用である。リサイクルされる量の方が多く、主要な廃プラは PEPSPVCPPABS などである。 5.1 マテリアルリサイクル 5.1.1 フレーク化とペレット化 廃プラはフレーク化或いはペレット化し、プラ製品の再生材料として利用する。大量の 廃プラを輸入する企業と国内の回収加工企業の大半は再生樹脂を製造する。再生樹脂は製 品として直接に市場に流れ、販売されるケースと、プラ製品を製造する材料として企業な いで利用するケースの二パターンがある。 再生樹脂の製造プロセス 現在、中国の廃プラの再生樹脂の製造工程は、分類→粉砕・切断→洗浄→乾燥 →混合→溶融・混練→ペレット化、或いはペレット化しないで、フレーク樹脂に する。再生樹脂の製造プロセスは図表 5.1 に示す。 図表 5.1 再生樹脂の製造プロセス ② 主要設備 ★選別設備 大半の廃プラリサイクル企業は手で選別を行う。用途に応じてプラの素材、色、 サイズ等の性状別に分けている。手選別ラインを設置している企業もある。また、 僅かな大規模の回収処理企業は自動化選別設備が設置している。例えば、北京盈 創公司の PET ボトルの選別ラインではサイズ、色等に自動選別しその後ラベル捌 かしを行っている。自動選別ラインは図表 5.2 を参照。 廃プラ 分類 粉砕・切断 混合 溶融 押出 冷却 切断 製品 (ペレット) (フレーク) 洗浄 乾燥

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Page 1: PE PS PVC PP ABS 5...26 第5 章 中国における廃プラスチックリサイクルの現状(動向) 廃プラの利用方法は大きく二つに分かれている。原材料としての再利用と燃料としての

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第 5 章 中国における廃プラスチックリサイクルの現状(動向)

廃プラの利用方法は大きく二つに分かれている。原材料としての再利用と燃料としての

利用である。リサイクルされる量の方が多く、主要な廃プラは PE、PS、PVC、PP、ABS

などである。

5.1 マテリアルリサイクル

5.1.1 フレーク化とペレット化

廃プラはフレーク化或いはペレット化し、プラ製品の再生材料として利用する。大量の

廃プラを輸入する企業と国内の回収加工企業の大半は再生樹脂を製造する。再生樹脂は製

品として直接に市場に流れ、販売されるケースと、プラ製品を製造する材料として企業な

いで利用するケースの二パターンがある。

① 再生樹脂の製造プロセス

現在、中国の廃プラの再生樹脂の製造工程は、分類→粉砕・切断→洗浄→乾燥

→混合→溶融・混練→ペレット化、或いはペレット化しないで、フレーク樹脂に

する。再生樹脂の製造プロセスは図表 5.1 に示す。

図表 5.1 再生樹脂の製造プロセス

② 主要設備

★選別設備

大半の廃プラリサイクル企業は手で選別を行う。用途に応じてプラの素材、色、

サイズ等の性状別に分けている。手選別ラインを設置している企業もある。また、

僅かな大規模の回収処理企業は自動化選別設備が設置している。例えば、北京盈

創公司の PET ボトルの選別ラインではサイズ、色等に自動選別しその後ラベル捌

かしを行っている。自動選別ラインは図表 5.2 を参照。

廃プラ 分類 粉砕・切断 混合 溶融 押出 冷却

切断

製品

(ペレット)

(フレーク) 洗浄 乾燥

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図表 5.2 北京盈創公司の PET ボトルの自動選別設備

★粉砕(選別)設備

粉砕(選別)設備はいろいろな種類がある。汎用型設備もあるが、一般的には

各処理企業が自社のニーズなどに応じて設備を設計し導入している。

★洗浄設備

廃プラの洗浄設備は様々であり、専門の設備会社から調達する企業もあるが、

ほとんどの処理企業は自社が生産する製品に応じて設備を設計し導入している。

各種の洗浄設備は図表 5.3 を参照。

図表 5.3 各種の洗浄設備

中塑機械公司フィルムの洗浄設備 安徽郎渓錦富公司洗浄設備

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北京盈創公司 PET ボトル洗浄設備

開隆機械公司フレコン袋・セメント袋洗浄設備

★プラの成型機

――射出成型機

現在、中国のプラスチック製造設備のうち、射出成型機が半数を占めている。

製品から見ると、玩具、文具、日用品、家具、リフォーム資材は大きな割合を占

めている。その次は大型家電製品、例えば、テレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコン、

PC などの筐体の製造。80 年代以降、中国の射出成型機業界は急速に発展し、年

間 20%以上の増加率で生産量を増えている。浙江省寧波、広東省東莞、順徳等は

主要な製造基地となっている。各種射出成型機は図表 5.4 を参照。

図表 5.4 各種射出成型機

済寧通佳公司射出成型機

徳潤機械公司小型射出成型機

――押出成型機

押出成型は再生樹脂を製造するコア設備で、押出、冷却と切断は一式となって

いるのが一般的である。押出成型機はさまざまで、単軸押出成型機と 2 軸押出成

型機がある。加熱方式から見ると電気加熱式、コンデンサ加熱式と高周波加熱式

ごみ排出 ごみ箱 ごみ回収

ステーション

中継

ステーション

埋立て場

ごみ保管場

スカベンジャー 廃プラ スカベンジャー

廃棄物回

収市場

廃棄物

集約地

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となっている。PP、PE、ABS などのプラ加工は単軸押出成型機に向いている。

単軸押出成型機の製造工程が簡単で、処理能力が高く、生産コストが低いメリッ

トがあるため、一般的に使われている。また、混練造粒機を使用する企業もある。

特徴としては高温で廃プラを完全に溶融する必要がなく、造粒する過程で、プラ

の本来の性質が変わらない。各種の設備は図表 5.5 を参照。

図表 5.5 各種の設備

科達化工機械公司電気加熱式押出成型機

汕尾市皆富公司高周波加熱式押出成型機

環球同創科技発展公司単軸押出成型機

奔達塑料機械廠 2 軸押出成型機

安徽錦富公司混練造粒機

安徽錦富公司混練造粒製品

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5.1.2 廃ペットボトルのリサイクル

廃 PET の利用は主に繊維、PET フレーク、非食品用容器などである。最近では、建設資

材や食品容器の製造なども始まっている。

① 食品容器の原材料の製造

北京盈創再生資源回収有限公司は先進的な技術を導入し、廃ペットボトルを利

用し再生ペレットを製造している。製品はアメリカとヨーロッパの基準に達し、

中国衛生部と国家質量監督検験検疫総局の安全性評価に合格し、食品容器(ボト

ル)の製造原料として利用することが許可された。中国で唯一、食品容器(ボト

ル)に利用できる再生樹脂を製造する企業である。現在、当社の再生ペレット原

料を売却し飲料容器を製造する企業はコカ・コーラ製品の飲料ボトルの製造を開

始した。

② 繊維の製造

廃 PET フレークで繊維の製造プロセスは図表 5.6 に示す。繊維を製造する場合

は、原料の清潔度の要求が高いため、複数回の洗浄をするのが一般的である。ま

た、PET 樹脂と普通の樹脂を混合し作られたペレットは、比較的に低レベルの製

品を製造するのは利用される。

図表 5.6 繊維の製造プロセス

5.1.3 廃 ABS のリサイクル

① ABS ペレットの製造

ABS は主に電気製品、テレビ筐体、計器、自動車か装飾材料などに使われ

ている。廃ABSのリサイクルのプロセスは、まず電気メッキ品とペンキ品に分け、

次は電気メッキやペンキを落としてから、洗浄、粉砕、ペレット化する。

広州広鋼 MBA 塑料新技術有限公司は、中国で廃 ABS のリサイクルの最大

規模、先進技術を持つ企業の内の 1 社である。ペレット化プロセスは図表 5.7 を参

照。主要設備は図表 5.8 を参照。

廃 PET ボトル 洗浄 選別 粉砕 押出(繊維化) 製品

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図表 5.7 廃 ABS のペレット化プロセス

図表 5.8 広鋼 MBA 塑料新技術公司の主要設備

湿式分離設備

ペレット化設備

② 再生 ABS 製品の製造

再生 ABS 樹脂はいろいろな種類の製品を製造することができる。例えば安徽郎

渓錦富塑料製品有限公司は再生 ABS 樹脂でスーツケースを製造し、よく売れてい

る。スーツケースの製造プロセスは図表 5.9 に示す。成型機は図表 5.10 を参照。

図表 5.9 スーツケースの製造プロセス

ABS

PP

HIPS

乾式

分離

乾式

分離

選別 1

金属 付着物 PP

選別 2

混合

ペ レ

ッ ト

HIPS

廃 ABS 粉砕 ペレット 板状加工 成型 切断 組立

端材粉砕回収

製品

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図表 5.10 スーツケースの成型設備

5.1.4 再生建設資材の製造

① 木材・プラスチック再生複合材の製造

最近、廃プラを利用したプラスチック木材の製造が始まっている。プラスチッ

ク木材は、工業廃プラ或いは農業用廃プラ(PE、PP、PVC、ABS など)に、木

粉や農業廃棄物などの植物繊維、更に添加剤をいれ、一定な比率で配合して作ら

れる。原材料の組成としては、廃プラは約 6 割を占めている。

木材・プラスチック再生複合材は木材とプラスチックの性質を合わせ持ってい

る。木粉の繊維の中までプラスチックが詰まり、一体化しているため木の繊維が

水分を吸収しにくく、腐朽菌にも侵されず、防腐・防蟻性が高い。天然木材に比

べて材質が硬く、磨耗性が高い。洗いやすい、軽いなどの特徴がある。多様な機

能性により、屋内外を問わず、幅広く使える。例えば、公園施設用パーゴラ、ベ

ンチ、庭園、道路の柵などさまざまなニーズに応じて使える。

図表 5.11 木材・プラスチック再生複合材の使用例

広東恵東美新塑木型材製品有限公司は中国で木材・プラスチック再生複合材の

製造のモデル企業であり、廃 PE と籾糠やわらなどの農業廃棄物を混合し、木材・

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プラスチック再生複合材を製造している。生産プロセスは図表 5.12 に示す。再生

製品は図表 5.13 に示す。

図表 5.12 恵東美新公司の製造プロセス

図表 5.13 恵東美新公司の再生製品

② プラスチックれんがの製造

プラスチックれんがの製造プロセスが簡単で、低品位の廃プラも利用できる。

一般的な製造プロセスは図表 5.14 に示す。北京の某製紙工場は古紙と廃プラ、汚

泥、焼却灰などを利用してプラスチックれんがを製造している。廃プラは約

30~40%を占めている。プラスチックれんがは図 5.15 を参照。

廃 PE

農業廃棄物

(天然繊維)

添加剤

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図表 5.14 プラスチックれんがの製造プロセス

図表 5.15 北京の某製紙メーカーのプラスチックれんが

③ パイプの製造

パイプは一般的に洗浄済みの廃プラとバージン材料と一定の比率で配合し製造

される。内蒙包頭東利塑料公司の製品は代表的で、例として挙げた。洗浄済廃 PE

(図表 5.16 を参照)、バージン PE、とポリエステルが混合しパイプを製造する。

製造プロセスは図表 5.17 に示す。

図表 5.16 包頭東利公司のパイプを製造する廃プラ

廃プラ 粉砕

焼却灰

炉残渣

汚泥

など

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図表 5.17 包頭東利公司の再生パイプの製造プロセス

5.1.5 再生包装製品の製造

プラスチックの包装製品は主にスーツケース、ビール瓶ケース、フレコン袋、ボトル容

器などさまざまな製品を製造している。以下は例を挙げて説明する。

① スーツケースの製造

安徽郎渓錦富塑料製品有限公司は中国での大規模なスーツケースを製造する企

業である。スーツケースは少量なナイロン繊維と金属部品を除く、全て廃プラを

利用して作られている。製造プロセスは図表5.18に示す。製品は図表5.19を参照。

図表 5.18 郎渓錦富塑料製品有限公司製造プロセス

廃 PE

バージン PE

ポリエステル

不良品

廃プラ 選別 粉砕 洗

押出

ペレット組立

附属

部品

混練

ペレット

製品 成型

端材

廃水処理

循環利用 循環利用

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図表 5.19 郎渓錦富塑料製品公司の製品

② ビール瓶ケースの製造

ビール瓶ケースはほとんど廃プラを原材料で作られている。利用不可の古いケ

ースも破砕し再び新ケースを製造する。製造プロセスも、技術も簡単で、小規模

なリサイクル企業が製造するのが多い。製造プロセスは図表 5.20 に示す。

図表 5.20 ビール瓶ケースの製造プロセス

③ フレコンバックの製造

廃プラを利用してフレコンバックを製造する企業が多く、一般的な製造プロセ

スは図表 5.21 に示す。

図表 5.21 フレコンバックの製造プロセス

④ ボトル容器の製造

廃プラとバージン材料を混合しボトル容器を製造する企業はたくさんある。包

頭桂華塑料公司は廃 PET 或いは廃 HDPE とバージン樹脂を混合し、その製造プ

廃プラ

廃ビール

瓶ケース

廃プラ 破砕 洗浄

乾燥

押出

ペレット化 紡糸 編む 製品

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ロセスは図表 5.22 を示す。

図表 5.22 ボトル容器の製造プロセス

5.2 サーマルリサイクル

5.2.1 再生燃料油の製造

中国は廃プラを油化する技術のレベルが低く、設備は簡易である。大半は小規模な企業

がやっている。これらの企業のほとんどは、汚水処理施設や残渣処理工程がなく、二次汚

染が引き起こされている。安全面の対策もなく、火災や漏れ、爆発などの事故が起こるリ

スクが高い。

5.2.2 助燃材としての焼却

近年、中国の生活水準が高くなるにつれ、生活ごみの可燃物の含有率も高くなり、焼却

発電による処理方法が増えている。

廃 PET

廃 HDPE

選別

粉砕

洗浄

乾燥

押出

成型

製品

バージン

樹脂