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木口日医誌 6 (3/4),239~244 〔1954> Polarographyによる癌反応(第1g報) 血清濾液反応とSH量に関する研究 佐藤矩康 吉原萬手 札幌医科大学内科学教室 (指導滝本教授・和田教授〉 Cancer Reqction by Means of Polarography On the Determination of SH-Group Related to Polarographical “Serum Filtrate Reaction” By Noi{iyAf u SArroH and MAM?Ei YosHiHARA Depuartment o!b lnternal Medicine, Sappo7”o Uni’versity of M (Direotθd伽Pγqプ. S. TA ffr,vo To&Pγ(ゾ. T.恥加) Polarography(以下P)による癌反応の造血成 績については先に柴田等1)によって報告されたが, 従来かかる癌反応に応用されているP濾液反応に 与るいわゆる濾液物質の本態に.関しては未だ不明 の点が多く,文献的にみるとBrdicka2)は癌1肛清 中に増加する病的蛋白質の分解産物で,Sulfosali- cylic Acid似下SSA)で沈澱しないSH化合物と 考え,またWaldschmidt-Leitz IL K. Mayer、)は血 清Mucoidの関与を説いているが,最近Winzler 等4)は氏等の単離したMucoproteinがその本態 であろうと推測し,癌及びある種の炎症でP反応 の陽性化とともに該物質がliiit液中に増加すること を指摘している。本来Brdicka及びWaldschmidt- L.がP法を癌診断に応用した端緒は血液内SH活 性の低下に注口したものであり,いわゆるP第1 反応についてはSH活性を同時に測定して多くは これを認めるに至っているが,濾液反応について はなお実証に.乏しく,これを決定づける段階には 至っていない。私共は,人血清SSA除蛋白濾液中 のSH基を化学的に,定量し, P蛋白波高似下PPW) との間に如何なる相関関係があるかを追及せんと● し,先ずSH基定量法としてこれまで報告されて いるHopkins5)のNitroprusside反応 SH:反応剤の上から大別した,酸化によるフェリ チアン法6)一一8),メルカプチッド形成によるアンベ 誠顔定法Ω)一’IL)〉,アルキル化によるヨードアセタミ ド法等13)・1“1)の中,Barron, Anson&Mirsky6)一 フェリチアン法が除蛋自剤として三塩化酷酸及び タングステン酸を使用している点に着目して, SSA除画面濾液においてもこの方法が可能ではな いかとの推測の下に以下の実験法を考案し,さら にこれを臨床的に応用して2,3知見を得たので一 括報告したい。 1)柴田・他:札幌医誌3,161(1952). 2) Brdicka, R.: Klin. Wschr. 17, 1411; 18, 305 (1939). 3) Waldschmidt-L. u. Mayer, K. Z. physiol. Chem. 227, 16 (1942). 4) Winzler, R. J. et al.: J. Clin. lnv. 27, 609; 617 (1948). 5) Hopkins: Bioehem. J. 15, 286 (1921). 6) Barron: Advanees Emzymol. 11, 223 (1951). 7) Anson: J. Gen. Physiol, 24, 399 (1941). 8)Mirsky, A. E.: 工Gen. PhysioL 24,709(19 9) Beneseh Beneseh Arch. Biochem. 19, 35 ユ0)Weissman, Schoenbach&Armis七ead Chem. 187, 153 (1950). 11) 岩縛。五琵K: [i本生到匙学編志 13,356 (1951). 12) Schoenbaeh, Armistead&Weissman: Exp. Biol. Med, 73, 44 (1950). 13)Rosner: 工Bio]. Chem。132,657(1940). 14) Mazur et al.: J. Biol. Chem. 187, 485 (195 239

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Page 1: Polarographyによる癌反応(第1g報) - COnnecting …Polarography(以下P)による癌反応の造血成 績については先に柴田等1)によって報告されたが,従来かかる癌反応に応用されているP濾液反応に

木口日医誌  6 (3/4),239~244 〔1954>

Polarographyによる癌反応(第1g報)血清濾液反応とSH量に関する研究

    佐藤矩康 吉原萬手札幌医科大学内科学教室 (指導滝本教授・和田教授〉

Cancer Reqction by Means of Polarography (XIX)

  On the Determination of SH-Group Related to    Polarographical “Serum Filtrate Reaction”

              By .   Noi{iyAf u SArroH and MAM?Ei YosHiHARA

Depuartment o!b lnternal Medicine, Sappo7”o Uni’versity of Med’icivee

    (Direotθd伽Pγqプ. S. TA ffr,vo To&Pγ(ゾ. T.恥加)

 Polarography(以下P)による癌反応の造血成

績については先に柴田等1)によって報告されたが,

従来かかる癌反応に応用されているP濾液反応に

与るいわゆる濾液物質の本態に.関しては未だ不明

の点が多く,文献的にみるとBrdicka2)は癌1肛清

中に増加する病的蛋白質の分解産物で,Sulfosali-

cylic Acid似下SSA)で沈澱しないSH化合物と

考え,またWaldschmidt-Leitz IL K. Mayer、)は血

清Mucoidの関与を説いているが,最近Winzler

等4)は氏等の単離したMucoproteinがその本態

であろうと推測し,癌及びある種の炎症でP反応

の陽性化とともに該物質がliiit液中に増加すること

を指摘している。本来Brdicka及びWaldschmidt-

L.がP法を癌診断に応用した端緒は血液内SH活

性の低下に注口したものであり,いわゆるP第1

反応についてはSH活性を同時に測定して多くは

これを認めるに至っているが,濾液反応について

はなお実証に.乏しく,これを決定づける段階には

至っていない。私共は,人血清SSA除蛋白濾液中

のSH基を化学的に,定量し, P蛋白波高似下PPW)

との間に如何なる相関関係があるかを追及せんと●

し,先ずSH基定量法としてこれまで報告されて

いるHopkins5)のNitroprusside反応を初め,

SH:反応剤の上から大別した,酸化によるフェリ

チアン法6)一一8),メルカプチッド形成によるアンベ

誠顔定法Ω)一’IL)〉,アルキル化によるヨードアセタミ

ド法等13)・1“1)の中,Barron, Anson&Mirsky6)一s)の

フェリチアン法が除蛋自剤として三塩化酷酸及び

タングステン酸を使用している点に着目して,

SSA除画面濾液においてもこの方法が可能ではな

いかとの推測の下に以下の実験法を考案し,さら

にこれを臨床的に応用して2,3知見を得たので一

括報告したい。

1)柴田・他:札幌医誌3,161(1952).2) Brdicka, R.: Klin. Wschr. 17, 1411; 18, 305 (1939).

3) Waldschmidt-L. u. Mayer, K. : Z. physiol. Chem.

 227, 16 (1942).

4) Winzler, R. J. et al.: J. Clin. lnv. 27, 609; 617

 (1948).

5) Hopkins: Bioehem. J. 15, 286 (1921).

6) Barron: Advanees Emzymol. 11, 223 (1951).

7) Anson: J. Gen. Physiol, 24, 399 (1941).

8)Mirsky, A. E.: 工Gen. PhysioL 24,709(1941).

9) Beneseh & Beneseh : Arch. Biochem. 19, 35 (1948).

ユ0)Weissman, Schoenbach&Armis七ead:J. Bio1. Chem. 187, 153 (1950).

11) 岩縛。五琵K:  [i本生到匙学編志 13,356 (1951).

12) Schoenbaeh, Armistead&Weissman: Proe. Soc.

 Exp. Biol. & Med, 73, 44 (1950).

13)Rosner: 工Bio]. Chem。132,657(1940).

14) Mazur et al.: J. Biol. Chem. 187, 485 (1950).

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240 佐藤・吉原一Polarographyによる癌反応XIX 木し幌二二 1954

         実験方法

A。試  藥

 1) 0,1MPotassium ferricyanide(PF): 再結晶した

ものより調製し1”Cの暗所に保存する。保存により盲検値

の高くなることがある故,大体毎週新たに調製する必要が

ある。

 2)IM Phosphate buffer(PB): それぞれIMの

Potassium biphosphoricum及びPotassium Phosphate

を等量混和しpH 6.7の燐酸緩衝液を用意する。

 3) 20% Sulfosalieylie aeid (SSA) :

 4)Feでric sulfate gum ghatti(FSG):Folinls)の方

法に従ったが,私共はGum Ghattiの代りにアラビヤゴ

ム末を使用した。即ち溜水1¢にアラビヤゴム末20gを溶

し,一夜室温放置後濾過する。別に85%Hp,PQ; 75 cc ec

溜水100ccを加え,これにFe(SO4):}5gを溶解する。これ

をさらに上記アラビヤゴム溶液1¢中に加え,37℃卿卵器

中に2~3日放置する。その後1%KMnQi 15 ccを,振盈

しながら徐々に加えて調製を終る。

 5) Standard Cysteine Solution: 1M塩酸Cys七eine

のS七〇ck-Solutionより1cc中に0.1,0.2,03及び0.4μM

塩酸Cysteineを含有する溶液を調製する。これ等はそれ

ぞれ3.3,6.6,99及び13.2γのCysteine-SHを含むこと

になり,これを用いて規準曲線を作製する。

B.窯施法

 1)血清1,0 ecを溜水20ccで稀釈し,さらに20%

SSA 3.O ccを加えよく混和し,10分後東洋濾紙No.5で濾

過する。

(E)

e・yo

O,2S

e,2e

O.IS

e・Io

o,os

1・け・エ矧5’6岬”” 求h雛印押

 2)濾液2.Occを硝子栓附試験管にとり,1MPBO.2cc,

0.1MPF O,5 ceを加え5分間室温放置する。弐いでFSG

O.3ccを加える(この段階のSSA濃度は6.7%にあたる)。

 3)』これを70℃の恒温槽中に10分聞おき’,直ちに涜永

中3分叩放冷し,全量を20.Occまで稀釈して比色に供し

た(なおこの際私共はエルマ型光電式比色計Filter 66を用

いた>p得たる吸光係数より,血清中のSH量を次項の如く

して得た規準曲線についてCysteine-SHとして求める方

法をとった。

 4)規準曲線の作製:前記各濃度の塩酸Cysteine 1.O

cc及び20%SSA 1.O ccを硝子栓附試験管にとり,前顎同

様に操作する。ここに得られた規準曲線は第1図の如く原

点をとおりBeerの法則に一致する。

o

実験成績A.各種及懸川下の楡討

 1)各試藥間の量的決定について:Barron及びAnson

&Mirskyの方法について種々検討を行ったところ,これ

ら反応に与える各試葉は,そのメヂウムにおいて極めて不

安定てあり,わずかな試薬の量的変動に対しても澗濁を生

じたり或いは反応終末点の不鮮明な結果を招来することを

知った。検討の結果PB 02 cc PF O.5 cc FSG O.3 ccの時

が最も安鐸のように思われた。なお本法においては検体が

すでにSSA酸性であることからPBを除いて操作を行っ

て見たところPrussian blueの形成が見られず,緩衝液の

必要なことを知った。ついで上記操作及び量酌関係におい

て安完に保たれているメデウム申に最後にFSGを加え,

これをBarronの法に従い25分問暗所室温放置を行って

見たところ,三寿液並びに検体共にPrussian blueの形成

をみず比色値は零であったが,加温により呈色することを

知った。

 2)メヂウム中のSSA濃度と温度との関係: P用血

清SSA濾液をそのまま本法に応用するとそのメヂウム中

のSSA濃度は5.3%となり,このものは加温により発色す

るが漏濁を生じ測定困難となるため,ここに温度と濃度と

の関係を検討したところ,第2図の如き結果が得られた。

即ちメヂウムが呈色可能な温度においてSSA濃度が高け

ればメヂウムは楓濁から免かれるが,一方またSSA濃度

が或程度以上高くなると急激にSSA特有の色調が加わり,

盲検値の上昇を来たす難点のあることを知った。それ故瀕

濁及び盲検値の上昇を考慮した場合70℃,SSA濃度6.7%

(盲検値E;O.085)下が最も適当であった。

Fig. 1.

15) Folin, O. & Malmorus, H. : 」. Biol. Chem. 83, 115 (1929).

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6巻3!4号

(温度、’じ)

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佐藤・吉原:一Polarographyによる癌反応XIX

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量色域(十1

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           (5SAヌ農一度~!o)

Fig. Z.

 3)温度とPrussian Blue呈色との関係: SSA濃度

を6.7%とし温度を種々変化させて塩酸Cysteine 31.52γ

の吸光係数を求めると第3図の如き結果が得られた。即ち

温度の上昇とともにPrussian blueの形成は増強される

が,75℃においてすでに軽度ではあるが澗濁を生ずる。従

って吐きの場合同様温度条件は70℃が適当である。

  CE} e,t6・

241

b.t+

,b,1

場合のPrussian blue形成を検討するに第4図の如き結

果が得られた。即ち4~8分でほぼ最高度に発色し,その

後は10,15及び20分目まで何れも塁色度の変化が見られ                  ロず,30分目にはPrussian blueの沈澱が認められた。故

に本法における反応時間は10分が適当と考えた。

 5)Cysteine-SHとしての測定範囲について;規準液

作製にあたり塩酸Cysteine・SH 16.5 r以上の濃度では,架

状沈澱形成が認められ,これを防ぐためにアルギン酸ソー

ダ末使用等の工夫を試みたがこれまでのところ成功しなか

った。故に本法を用いてのSH基測定範囲は, SHとして

3.3~13.2γの間が最適と考える。

 6)回牧試験:同一血清濾液に一定量の塩酸Gysteine

を添加してその揚合回収される塩酸Cys七eine中のSH基

量を本法により測定した。第1表の如く添加したCysteine-

SHは平均96%以内で回収された。

第1表

創世濾液SH実測値

o so

Fig. 3.

3.5 r

添加塩酸Cysteine量

濾液塩酸Cysteine 液実測値

回収率(%)

O.1 pt M

(15.76 r)

7.0 r

106.0

3.5 r 3.9 r 3.9 r

O.2 xi M i O.1 pt M

(31.52 r)i(15.76 r)1

O.2 pt M

(31.52 r)

9,6T

92.4

7.0 r

93.9

10.3 r

96.9

Lo ÷O 7’5 tO

      {温度。ω

B。本法による臨床庶用成績

 本法を用いて正常人及び各種疾患患者血清SSA濾液中

のSH含量を測定し,患者血清については同時にPPW及

びこの場合の血肥総蛋白量を硫酸銅法により測定した。

第2表

 4)70t℃恒温槽中における:反雁時間の影響:塩酸Cy-

steine 31.52γを検体とし70℃恒温槽中の加温時間とその

  CE)e,t6

at午

。.10

Ptussianblve

;児澱

eJ

5’

          ロ ロリ 

・・’、・’2.’ `寺。

 Fig・4・

氏  名 年令

横田川高承佐高梅伊波

○○○○○○OOOO

2885109901

4322221122

8δ6δQT6♀♀孚♀

」血清SH

(mg/dの

1.050

1,050

1.050

0.990

0.975

0.990

0.975

0.990

1.025

1.050

 1.0145土0.0317

血清蛋白(g/de)

7,0

7.1

6.9

7.0

7.1

7.5

7.4

7.0

6.9

7.85

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242 佐藤・吉原、Polarographyによる癌反応XIX 木し幌医誌 1954

第 3 表

患 老 名

oO

o五 十 〇

厚奥永落豊寺鈴

oooooo○

o

年令

62

33

59

53

74

32

20

57

54

17

20

20

性 臨床診断名 血清SH(mg/dの

6

6

6

9

9

6

9

6

9

9

6

6

9

腹部腫瘍胃

瘍癌

潰臓

  癌

嚢 癌

胸 膜 炎

同  上

肝 硬 変

同  上

悪、性高血圧

慢性腎炎ネフローゼ

同  上

1.695

1.050

3.495

1.620

2.100

ユ.200

1.050

1.755

1.275

1.620

IA40

1.560

1.275

  P?W (mm)

W■W・■半1腱

25

23

19

30

28

20

30

・10

13

20

12.5

10

10

30

24

23

32

31

23

34

16

15

23

19

21

20

〈.T’)

(,+)

(+)

ci一)

(±)

(一り

(一)

〈一)

(±)

(・一)

(・.)

(,”)

血溝蛋白量

(9/dの

 .ew-w,)

3S

30

2S

2G

IS

IO

s

■●

一,

‘Pro七ei噂7シζ)

7,0

S・o

7,0

be

so

呼。

ヌ。,

ee 一

4.7

6.0

5.52

5.4

5.4

6.7

7.18

59

6.5

8.05

4.0

3.22

o

3.22

9 の

。.9 1.。1.Il.ユt.3陣1・s l・らi.7 1・92」3・s

               (SH顎)

C PPW一 IVi )

    一・クo

zs

20

Js

to

s

o

..

Fig. S. (1)

ひ¶ 1.σ1.ti,z t.3 好 1、5 {61.7t.82.けぢ

               ( SH ”’:’11iidi )

Fig. 5. (2)

リ o・r’.。μ1、2’31.旧.∫1る1.71、8気ガ3.5’

                 (SH ’”Y’ dl)

Fig. 6.

 その結果は第2表の如く正常人血清濾液では大体一一・iEHの

値を示し,平均1.0145±0.0317mg/dtであった。これに

対し悪性腫瘍及び炎症性疾患を主とする患者血清について

は第3表の如くかなりの動揺が認められるが全般的に高値

を示し,これをPPW及び血二二蛋白量との間についてみ

ると第5図(1),(2)及び第6図の如く必ずしも特定の平行関

係は認められなかった。またこの場合平均値の差を正常人

血清濾液のSH値との問に推計学的吟味を試みたが,分布

不均一のために不可能であった。

総括並びに考按

Barron及びAnSQn&Mirskyのフェリチアン法により

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6巻3/4号 佐藤・吉原・一P61arographyによる癌反応XIX 243

人血清SSA濾液についてSH測定を行うべく工夫考案した。

 原法の論拠はpH 6.8の常温で

  2Protein-SH+2Ferricyanide一.Protein S-S+

  2Ferrocyanide

の如く遊離した全SH基と反応し,この場合還元された

Ferrocyanideが酸性メヂ砂ム申で,硫酸鉄と反応して

Prussian blueを形成するところにあるが,ここに形成ざ

れたPrussian blueは容易に沈澱する欠点を有している

ので,これを安定させるためにGqm gha七ti等の保護膠質

作用を必要とするのである。私共の場合もこの沈澱形成を

避けるために最も困難を来した。即ち上述の如く規準曲線

作製にあたっては比色範囲に限界を設け,さらに反応条件

の1吟味を二二検討して,発色時間,温度条件,試薬配分等

に亘る考慮を重ねた次第である。かくして一応は臨床応用

上一定傾向を把握し得ることが出来,SSA濾液中のSH測

定が可能であると考えたのであるが,.なおここに2,3の問

題が残されていることを認めないわけにいかない。即ち本

法は血清SSA濾液内のSHについてCysteine-SHとして

測定したものであるが,これが如何なる分子状態にあるSH

基であるかに関しては遺感ながら明瞭には指摘することが

出来ない。しかし上述の論拠に立ってこれを健康者につい

て応用したところは大体一定の値を示し,悪性腫瘍及び炎

症疾患では一般に高値を示す傾向にあった。かかる病的血

清のSSA濾液内に増加する因子が何を意味するかについ

てはBrdickaiG)のProteDse説に始まり今日では電気泳動

的Vc a-Globuline}こ随伴するWinzleri7)のMucoprotein

が認められており,これがSSA濾液のPPWに支配的な役

割を演じているともいわれている。私共の成績も’SSAで

除蛋白操作を施しても沈澱しない部分に含まれる因子とし

て大体かかるMucoproteinようの物質が関与しているで

あろうことは,MucoproteinそのものがSに富む分解で

あり,また本法による以上の病的血清内に増量している成

績が諸家の報告1‘り曜ゆにも一致する点から,容易に推測さ

れるところである。また血清蛋白が直接関与しない点につ

いては事実同時に測定した総蛋白量の増減により影響され

ないことからも明かであるが,さらにかかるSH量の増加

が1血清蛋白質の如何なる分屑の変動と関係があるかについ

ては,その細部に亘って検討する必要があるが,今回は調

査し得なかったのでこれまでの範囲ではこれを明かにする

ことが出来ない。

 次ぎに本実験を意図した主要目的であるPPWとの関係

であるが,PPWの上昇を示す場合にはSHの増加が認め

られるが,他方PPWの正常範囲においても本法によるSH

増加が観察された。このことは本法によって測定された

SSA濾液中のSH:基のみがPPWの波高上昇を演ずるもの

ではなく,PPWについてはその間にさらに復雑な要約と

して従来もいわれるCyStine S-Sは勿論.かかる方法に与

るSH基以外の条件が当然関与すると考えなけれぽならな

いからである。また本法の意味するこころが電流滴完法門

によるSH基と平行するか否かの吟昧についても問題が残

っていることは勿論である。

 何れにしても以上の方法の考案によって測定し

得たところはPPWの上から見たSH基量と全面

的に平行しないことだけは事実である。

結 論

 フェリチアン法の各種条件を検討し,人血清

SSA除蛋白濾液中のSH基をCysteine SHとし

て測定する方法を考案した。

 正常入血清濾液につてはほぼ一定したSH含量

を得ることが出来,これを各種患者血清にも応用

してその成績より臨床的な応用価値を見出した。

また教室におけるP的研究と平行してその濾液反

応との関係をみたが全面的な平行関係を認めるこ

とは出来なかった。

               (同召禾029.9.20受f寸)

16) Brdicka, R.: Acta Union lnternal. Contra Cancer

  3, 13 (1938).

17)Winzler, R.」. et al.二J. Clin. Invest,27,609(1948).

18) Mayer, K: Z. physiol. Chem. 275, 116 (1942).

19) Albers: Biochem. Z. 306, 236 (1940).

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244      燃・吉原一一P・1…9・・phyによる癌反応XIX    札幌医誌1954

                                       Summary

                                       

       Fg・the e・tim・ti・n・f SH val・・i・h・m・n・e・a th。・Ferri。yanid。 M。th,ri・’w。6

   examined, using sulfosalicylic acid as deproteinzing agent.

       SH・・1…in n・・m・1・e・a・filt・at・w・…el・ti・・ly…h・ngeab1・, whil・・n・th・・th・・

   h・・d・ig・i丘ca・t i・crea・e・were・b・e・v・d i・・ev・・al di・ea・ed・・nditi・n・i.・。.・, can,e,。f

   stomach, hepatoma and exudative Pleurisy・etc.          ・

       It was・b・etv・d th・t th・v・・i・ti・n・f SH v・1ues see皿・d t・be sca・cely,el。t。d t。

   polarographic(丘1trate)wave heights.

                                                           (Received Sept.20,1954>.