r d 海底光システム建設・保守の効率化を実現する...

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NTT技術ジャーナル 2014.7 50 海底光システムの建設 ・ 保守 と評価技術 近年,急増する通信トラフィックの需 要に対応して,基幹伝送網である海底 光システムの新規構築およびデジタル コヒーレント光伝送といった新伝送方式 へのアップグレードがなされています. 海底光システムには,数100 kmの無中 継伝送システムから大陸間をつなぐ 1 万 km超の有中継伝送システムまで存 在します.海底光ケーブル建設時や建 設後の確認,運用中の故障診断等のさ まざまなケースにおいて,長距離に及ぶ 光ファイバの状態を把握する必要があ り,このような超長距離光ファイバの評 価にはコヒーレント光時間領域反射測 定 (C-OTDR: Coherent-Optical Time Domain Reflectometry) 技術 (1) が用いら れています.C-OTDRは,試験対象の 光ファイバの一端からパルス光を入射 し,光ファイバ中で発生する後方散乱 光(レイリー後方散乱光 *1 およびフレ ネル反射光)を受光 ・ 解析することで 光ファイバの損失や故障を評価する技 術です.また,この技術は後方散乱光 の受信にコヒーレント検波方式 *2 を採 用することで,優れた受光感度と,海 底伝送路内の光増幅中継器から出力さ れる自然放出光雑音 *3 の効率的な除去 を実現しています. 従来のC-OTDRの課題 最近の海底光システムの技術動向と して,伝送装置や光増幅中継器の高出 力化や低損失光ファイバの採用が進み, 経済的なシステムを実現するために無 中継伝送距離や光増幅中継間隔の長延 化が図られています.C-OTDRは,い わゆる光受信器のショット雑音限界 *4 に近い感度を誇る成熟した技術ですが, このような海底光システムの全体にわ たって評価を行うには,非常に多くの平 均化処理を行って信号対雑音比を改善 する必要があり,測定時間が数時間に 及ぶ場合があります(図1 ).このよう な長時間の測定は,海底光システム建 設時の設備使用時間や試験工程稼働負 担になるだけでなく,システム運用中の 障害発生時の迅速な故障点の特定にも 支障をきたす場合があります.このため, 海底光システムの建設 ・ 運用コスト低 減や高品質なシステム運用を行ううえ で,C-OTDRの測定時間短縮を目的と した高感度化に取り組むことには大き な意味があります. C-OTDRの感度向上手法 C-OTDRの感度を向上させるには, 入射するパルス光のパワーを大きくする ことがもっとも簡単な方法です.しかし ながら,海底光システムに用いられる光 増幅中継器では,光出力を一定のレベ ルに制御する機能が使用されており,こ の方法は用いることができません.そこ で,開発した光周波数多重型コヒーレ ントOTDR(FDM-OTDR: Frequency Division Multiplexing coherent-OTDR) (2) では,通常C-OTDRで用いられている 単一パルス光の代わりに周波数でコー ド化された光パルス列を用いています. 光周波数でコード化された光パルス列 を用いる測定の概要を図2 に示します. 従来の単一パルス光による測定に比べ, 光周波数の異なるN個のパルス光を光 ファイバに入射すれば, 1 回のパルス 光入射当りでN倍の波形を取得すること ができます.これは,波形の信号対雑 音比が 倍に改善されることを意味し ています.言い換えると,同じ結果を得 *1 レイリー後方散乱光:光ファイバに本質的に 存在する屈折率の揺らぎ(光の波長に比べ て十分小さなスケールでのランダムな密 度 ・ 組成揺らぎ等が原因)による散乱光. 従来から光ファイバの光損失測定や破断点 検出に利用されています. *2 コヒーレント検波方式:光周波数が信号光と 同じ(ホモダイン検波),あるいは若干異な る(ヘテロダイン検波)参照光を信号光に 混合し,両者により発生する干渉信号(ビー ト信号)を検出する方法. *3 自然放出光雑音:光増幅器で発生する光の 雑音の一種. *4 ショット雑音限界:量子力学で記述される 光の粒子(光子)としての性質に由来した 雑音(ショット雑音)により決まる,光受信 器の本質的な信号対雑音比限界. 海底光システム建設 ・ 保守の効率化を実現する 光周波数多重型コヒーレントOTDR技術 NTTアクセスサービスシステム研究所 ひろゆき / 戸 くにひろ / 伊 ふみひこ 海底光システム建設 ・ 保守の効率化を実現する,世界最高レベルの感度を有する コヒーレント光時間領域反射測定技術を開発しました.本技術は,光周波数多重に よる平均化効果を用いることで,建設 ・ 保守時の評価における試験時間を大幅に短 縮することができます.ここでは,NTTアクセスサービスシステム研究所が開発し た光周波数多重型コヒーレントOTDR技術の概要とその特徴を紹介します.  R & D 海底ケーブル 光ファイバ試験 コヒーレントOTDR

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Page 1: R D 海底光システム建設・保守の効率化を実現する 光周波数多重型コヒーレントOTDR … · c-otdr 光増幅器 雑音により観測 できない区間

NTT技術ジャーナル 2014.750

海底光システムの建設 ・ 保守と評価技術

近年,急増する通信トラフィックの需要に対応して,基幹伝送網である海底光システムの新規構築およびデジタルコヒーレント光伝送といった新伝送方式へのアップグレードがなされています.海底光システムには,数100 kmの無中継伝送システムから大陸間をつなぐ 1 万 km超の有中継伝送システムまで存在します.海底光ケーブル建設時や建設後の確認,運用中の故障診断等のさまざまなケースにおいて,長距離に及ぶ光ファイバの状態を把握する必要があり,このような超長距離光ファイバの評価にはコヒーレント光時間領域反射測定 (C-OTDR: Coherent-Optical Time Domain Reflectometry) 技術(1)が用いられています.C-OTDRは,試験対象の光ファイバの一端からパルス光を入射し,光ファイバ中で発生する後方散乱光(レイリー後方散乱光*1およびフレネル反射光)を受光 ・ 解析することで光ファイバの損失や故障を評価する技術です.また,この技術は後方散乱光の受信にコヒーレント検波方式*2を採用することで,優れた受光感度と,海底伝送路内の光増幅中継器から出力される自然放出光雑音*3の効率的な除去を実現しています.

従来のC-OTDRの課題最近の海底光システムの技術動向と

して,伝送装置や光増幅中継器の高出力化や低損失光ファイバの採用が進み,経済的なシステムを実現するために無中継伝送距離や光増幅中継間隔の長延化が図られています.C-OTDRは,いわゆる光受信器のショット雑音限界*4

に近い感度を誇る成熟した技術ですが,このような海底光システムの全体にわたって評価を行うには,非常に多くの平均化処理を行って信号対雑音比を改善する必要があり,測定時間が数時間に及ぶ場合があります(図 1 ).このような長時間の測定は,海底光システム建設時の設備使用時間や試験工程稼働負担になるだけでなく,システム運用中の障害発生時の迅速な故障点の特定にも支障をきたす場合があります.このため,海底光システムの建設 ・ 運用コスト低減や高品質なシステム運用を行ううえで,C-OTDRの測定時間短縮を目的とした高感度化に取り組むことには大きな意味があります.

C-OTDRの感度向上手法C-OTDRの感度を向上させるには,

入射するパルス光のパワーを大きくすることがもっとも簡単な方法です.しかしながら,海底光システムに用いられる光

増幅中継器では,光出力を一定のレベルに制御する機能が使用されており,この方法は用いることができません.そこで,開発した光周波数多重型コヒーレントOTDR(FDM-OTDR: Frequency Division Multiplexing coherent-OTDR)(2)

では,通常C-OTDRで用いられている単一パルス光の代わりに周波数でコード化された光パルス列を用いています.光周波数でコード化された光パルス列を用いる測定の概要を図 2 に示します.従来の単一パルス光による測定に比べ,光周波数の異なるN個のパルス光を光ファイバに入射すれば, 1 回のパルス光入射当りでN倍の波形を取得することができます.これは,波形の信号対雑 音比が 倍に改善されることを意味しています.言い換えると,同じ結果を得

*1 レイリー後方散乱光:光ファイバに本質的に存在する屈折率の揺らぎ(光の波長に比べて十分小さなスケールでのランダムな密度 ・ 組成揺らぎ等が原因)による散乱光.従来から光ファイバの光損失測定や破断点検出に利用されています.

*2 コヒーレント検波方式:光周波数が信号光と同じ(ホモダイン検波),あるいは若干異なる(ヘテロダイン検波)参照光を信号光に混合し,両者により発生する干渉信号(ビート信号)を検出する方法.

*3 自然放出光雑音:光増幅器で発生する光の雑音の一種.

*4 ショット雑音限界:量子力学で記述される光の粒子(光子)としての性質に由来した雑音(ショット雑音)により決まる,光受信器の本質的な信号対雑音比限界.

海底光システム建設 ・ 保守の効率化を実現する 光周波数多重型コヒーレントOTDR技術NTTアクセスサービスシステム研究所

飯い い だ

田 裕ひろゆき

之 / 戸と げ

毛 邦くにひろ

弘 / 伊い と う

藤 文ふみひこ

海底光システム建設 ・保守の効率化を実現する,世界最高レベルの感度を有するコヒーレント光時間領域反射測定技術を開発しました.本技術は,光周波数多重による平均化効果を用いることで,建設 ・保守時の評価における試験時間を大幅に短縮することができます.ここでは,NTTアクセスサービスシステム研究所が開発した光周波数多重型コヒーレントOTDR技術の概要とその特徴を紹介します. 

R&D

海底ケーブル 光ファイバ試験 コヒーレントOTDR

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NTT技術ジャーナル 2014.7 51

R&Dホットコーナー

るための測定時間がN分の 1 に短縮されることを意味しています.このような方式は,古くからNTTより提案されていたものの(3),送信側で光周波数を精密か

つ高速に制御するデバイス,受信側で周波数多重数分の電気回路を構成する必要があり,性能面および装置規模 ・コストの観点から実用化には至っていま

せんでした.そこで我々は,この課題を克服するための開発に取り組みました.

図 ₂  画像のタイトル表記

25

20

15

10

5

0300250200150100500

図 1  海底光システムの構成とC-OTDRによる光ファイバ試験の概要

パルス光

後方散乱光強度

光増幅中継器 光ファイバ

後方散乱光

距離

(dB)

C-OTDR

光増幅器

雑音により観測できない区間

後方散乱光経路

上り心線

下り心線

(km)

図 2  C-OTDRとFDM-OTDRの測定原理比較

単一パルス光

繰り返し測定の平均(dB)

時間

f1 f2 fN

単一周波数の後方散乱光

光周波数コードパルス列

C-OTDR

繰り返し測定+周波数多重の平均

時間

時間

複数周波数の後方散乱光

FDM-OTDR

後方散乱光強度

(dB)

雑音レベル

(a)  C-OTDR (b)  FDM-OTDR

10log N dB

後方散乱光強度

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NTT技術ジャーナル 2014.752

FDM-OTDR技術我々が開発したFDM-OTDRの基本構

成を図 ₃ に示します.FDM-OTDRでは,1 台の狭線幅光源から出力される連続光の光周波数を外部変調器によって制御します.また,受信側では,複数周波数の後方散乱光を 1 台のコヒーレント光受信器で一括受信 ・ A/D(Analog/

Digital)変換した後,デジタル信号処理を用いて周波数分離を行う仕組みとなっています.そのため, FDM-OTDRの 基 本 的な 装 置 の 構 成は,従 来 のC-OTDRと変わらないため, C-OTDRとほぼ等しい装置規模 ・ コストで実現できる点が特徴です.■光周波数コードパルス列の生成

送信部における光パルス列の周波数

エ ン コ ード 処 理 は, 光SSB(Single Side Band)変調器*5を用いて,kHz以下の光周波数精度で行っています(図₄ ).光SSB変調器は,+ 1 次(もしく

図 3  FDM-OTDRの構成

f1 f2 fN

時間

挟線幅光源

光SSB変調器

光ファイバ

ローカル光

1台の連続波光源 外部変調器による光周波数コード生成

デジタル信号処理によるリアルタイム周波数分離(1台の受信器)

コヒーレント光受信器

A/D変換器とPC

フーリエ変換

図 4  光周波数コードパルス列の生成

f1 f1 f2 f3f2f3

搬送波

γ

(γ+)

+1次サイドバンド

挟線幅光源

光SSB変調器

任意波形発生器

変調信号

時間1 2 3

各周波数の持続時間=パルス幅に対応

隣接周波数間隔変

調周波数

光周波数

光パルス列

時間

f2f1

f3

*5 光SSB変調器: ₂ つのサブマッハツェンダ(MZ: Mach-Zenhnder)導波路がメインのMZ導波路の各アームに並列に配置された構造の変調器.入力した電気信号の周波数分だけ光信号の周波数をシフトさせる機能を持ちます.

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NTT技術ジャーナル 2014.7 53

R&Dホットコーナー

は- 1 次)の変調側波帯に周波数変調を加え,それ以外のキャリア周波数成分,高次側波帯成分を抑圧するようにバイアス制御されます.光SSB変調器は設定したパルス幅(測定する距離分解能に対応)の時間ごとに電気信号の周波数を段階的に変えることで,光周波数でエンコードしたパルス列を生成します.FDM-OTDRにおける周波数多重数は,受信帯域によって制限され,また後述する周波数チャネル間クロストークの影響を受けるため,受信帯域の範囲内で最適化された周波数多重数と隣接周波数間隔を設計しています.■デジタル信号処理による周波数分離

光ファイバに光周波数コードパルス列を入射すると,複数周波数の後方散乱光が混在して検出されます.コヒーレント検波された後方散乱光のビート信号は,A/D変換後のデジタル信号処理によってサンプリング間隔ごとにフーリエ変換され,各々の周波数成分の時間波形を取得します.この処理を 1 回の測定,すなわち光周波数コードパルス列を光ファイバに入射する繰り返し時間内にリアルタイムで実施し,多重数分の時間波形を平均化します.したがって,前述のとおり,FDM-OTDRでは, 1 回の測定で得られる信号対雑音比を 倍に改善が可能なため,同じ品質のOTDR波形を得る場合には,少ない平均化回数で測定時間を大きく短縮することができるようになっています.

周波数チャネル間のクロストーク設計

FDM-OTDRは,前述のように光周波数多重 ・ 分離を行っているため,従来のC-OTDRにない課題として,周波数チャネル間クロストークによる波形歪みの影響を設計することが重要になります.その波形歪みの概略図を図 5 に示します.一般に,海底光システムの評価では,光増幅中継器の利得(dB)の2 倍程度の急峻な反射率のレベル差が想定されます.このレベル差において,周波数チャネル間クロストークの影響が

あると,光増幅中継器手前の区間や反射点といった急峻な反射率変化が発生するイベントにおいて,図 5 のような波形歪みが発生します.このような波形歪みは,光ファイバの損失分布を観測できない区間(デッドゾーン)が広がり,もしくは光ファイバ上の位置を特定する空間分解能という点で,性能劣化となります.このような影響を周波数チャネル間クロストークと呼び,この抑圧がFDM-OTDRを設計するうえで非常に重要です.我々が開発したFDM-OTDRでは,受信時のデジタル信号処理において適切なデジタルフィルタを用いて個々の周波数成分の信号に含まれるサイドローブ*6を低減する工夫や,適切な隣接周波数間隔を設計しています.これ

により,空間分解能を維持できる十分なレベルまで周波数チャネル間クロストークを抑圧できるようになっています.

FDM-OTDRの基本性能次に,開発した40波(40周波数)多

重FDM-OTDRを用いて得られる測定結果の一例を紹介します.

従来技術としてC-OTDR(周波数多重なし)の場合と比較した測定結果を図 6 に示します.同じ条件(213回の平均化回数,1 kmの空間分解能)で測定を

*6 サイドローブ:信号の周波数特性のうち,もっともピークの大きい主要部をメインローブといいます. サイドローブはそれ以外の減衰域にあたる領域を指します.

図 5  周波数チャネル間クロストークによる波形歪みの影響

(a) 周波数チャネル間クロストークが  許容レベル以下の場合

光増幅中継器

反射点

距 離

後方散乱光強度

波形歪み

距 離

後方散乱光強度

正常なOTDR波形

(b) 周波数チャネル間クロストークが  許容レベルを超えた場合

中継器手前や反射点で歪んだOTDR波形

図 6  FDM-OTDRの測定結果例

(dB)

距 離

C-OTDR40波多重FDM-OTDR

波長:1550 nm

(km)

7.8 dB

後方散乱光強度

-60

-40

-20

0

20

5004003002001000

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NTT技術ジャーナル 2014.754

行った場合,従来技術に対して約₇.₈ dBの信号対雑音比の改善が達成されています.これは,40周波数多重の場合の理論値である約 ₈ dBとほぼ一致しています.また,FDM-OTDRを用いることで従来技術の約40分の 1 の測定時間で同じ結果を得られることを意味しています.光増幅中継器手前の反射率が急激に変化する地点の拡大図を図 ₇(a)に示します.FDM-OTDRによる測定波形は,C-OTDRによる波形と比較すると,もっとも低い反射率レベルでわずかにクロストークの影響がみられるものの,周波数チャネル間のクロストークの影響は,36 dB以上抑圧されています.ファイバ遠端のフレネル反射点を図 ₇(b)に示します.これより,クロストークによって位置精度が劣化することなく測定できます.

以上のように,我々が開発したFDM-OTDR技術は,C-OTDR技術の空間分解能を維持したまま,測定時間を大幅に短縮できます.

今後の展望海底光システムの建設 ・ 保守時の試

験稼働を大幅に削減可能であるFDM-OTDR技術について概説しました.ここ

では,40波多重FDM-OTDRの基本性能について紹介しましたが,本技術は特に装置構成を変えることなく周波数多重数の拡大を容易に行うことができます. 研 究 段 階 で は200波多重FDM-OTDRも実 現しています(4).FDM-OTDRの性能,すなわち周波数多重数の拡大は,A/Dコンバータの受信帯域やデジタル信号処理に要する時間に大きく依存します.近年では,広帯域なA/DコンバータやFPGA(Field Progra-m mable Gate Array)等のハードウェアFFT(Fast Fourier Transform)処理を高速に行うモジュールの進歩が速く,本技術を取り入れていくことで測定時間を数百分の 1 に短縮することも可能であり,今後のさらなる性能向上が期待されます.

■参考文献(1) 泉田:“コヒーレントOTDR技術,” O plus E ,

Vol.24, No.₉,pp.₉₇4-₉₇₉,2002.(2) H. Iida, Y. Koshikiya, F. Ito, and K. Tanaka:

“High-Sensitivity Coherent Optical Time Domain Reflectometry Employing Frequency-Division Multiplexing,” J. Lightw. Technol.,Vol.30, No.₈, pp.1121-1126, 2012.

(3) M. Sumida: “Optical time domain reflectometry using an M-ary FSK probe and coherent detection,” J. Lightw. Technol., Vol.14, No.11, pp.24₈3-24₉1, 1₉₉6.

(4) H. Iida, K. Toge, and F. Ito: “200-subchannel Ultra-High-Density Frequency Division

Multiplexed Coherent OTDR with Nonlinear Effect Suppression,” in Proc. Opt. Fiber Commun., Anaheim, CA, U.S.A., March 2013.

(左から) 伊藤 文彦/ 飯田 裕之/ 戸毛 邦弘

 光ファイバ網の保守 ・運用の稼働削減につながる新技術の研究開発を,今後も進めていきます.

◆問い合わせ先NTTアクセスサービスシステム研究所 アクセスメディアプロジェクト 媒体設備運用グループ

TEL ₀₂₉-₈₆₈-₆₁₁₀FAX ₀₂₉-₈₆₈-₆₁₁₆E-mail toge.kunihiro lab.ntt.co.jp

図 7  測定波形の拡大図

0

(dB) (dB)

距 離

(a) 光増幅中継器の地点 (b) ファイバ遠端のフレネル反射点

距 離

C-OTDR40波多重FDM-OTDR

(km) (km)

後方散乱光強度

後方散乱光強度

30

20

10

0

-10

-20410408406404402400398396

-40

-30

-20

-10

380370360350340330320

10

光増幅中継器

36

フレネル反射点

3 dB分解:< 1 km