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研究紹介� 2006 農林水産省 MAFF 先端技術を活用した農林水産研究高度化事業� Research project for utilizing advanced technologies in agriculture,forestry and fisheries. Research and Development Agriculture Forestry Fishery

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研究紹介�2006

農林水産省 MAFF

先端技術を活用した農林水産研究高度化事業�Research project for utilizing advanced technologies in agriculture,forestry and fisheries.

Research and Development

Agriculture

Forestry

Fishery

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 �

農林水産省では、「農林水産研究基本計画(平成17年3月農林水産技術会議決定)」に従い、

①農林水産業の競争力強化と健全な発展、②食の安全・信頼の確保と健全な食生活の実現、③

美しい国土・豊かな環境と潤いのある国民生活の実現、④地球規模の食料・環境問題の解決、⑤

次世代の農林水産業の発展と新たな産業の創出を目指した研究を推進しているところです。�

その一環として、「先端技術を活用した農林水産研究高度化事業」を実施しており、これは、生

産及びこれに関連する流通、加工等の現場に密着した農林水産分野の試験研究の迅速な推進

を図るため、優れた発想を活かし、先端技術を活用した質の高い試験研究を促進することを目

的として、平成14年度から実施している競争的研究資金事業です。�

本事業では、平成17年度には58課題(平成14年度採択1課題、平成15年度採択48課題、平成1

6年度採択2課題、平成17年度採択7課題)終了しており、今回、その中から評価結果が高く、特に

普及・実用化の期待できる27課題の研究成果を紹介いたします。�

本書が農林水産業の生産現場で直面している問題の解決や地域産業の振興等様々な分野で

活用されれば幸甚です。�

 平成19年3月�

                    農林水産省農林水産技術会議事務局�

               先端産業技術研究課 産学連携研究推進室長�

はじめに�

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 �

LAMP法と黄化葉巻病常発地を活用した抵抗性トマト選抜法 3�

地域遺伝資源を活用した新野菜の育種による高機能性特産物の開発 4�

トマト一段密植栽培による高温期の高品質果実安定生産技術の確立 5�

施肥・灌水精密制御による品質保証できるトマトの袋培地生産技術 6�

内生細菌利用を基幹としたレタスビッグベイン病防除技術の開発 7�

寒締め野菜の高品質化シナリオの策定と生産支援システムの開発 8�

吸塩植物アイスプラントの佐賀県特産野菜化に関する研究 9�

養液・電照栽培によるパッションフルーツの省力・周年・多収技術 10�

難防除病害カンキツグリーニング病の拡大阻止技術の開発 11�

スプレーギクの作業軽便化装置開発による短茎・高回転生産技術 12�

都市空間、特に屋上・壁面緑化に向けた軽量・薄層基盤植物の開発 13�

拍動自動灌水装置を機軸とする資源利用型低コスト園芸技術の開発 14�

施設園芸生産のためのユビキタス環境制御システムの開発 15�

機能性有機質成型ポットを利用した環境保全型栽培技術 16�

青果物の生産履歴情報の効率的な収集・伝達・提供システムの開発 17�

生産から消費にわたる食農情報インフラの構築 18�

残留農薬評価のための地域特産作物の分類法及び迅速検出法の開発 19�

酵素急速含浸法を用いた硬さ制御技術・機能性食品素材の開発 20�

ネギ類成分の特性を生かした新規利用加工技術の開発 21�

生産現場対応型ウシ胚品質診断装置及び測定キットの開発 22�

超臨界水中燃焼法による家畜排せつ物からの熱エネルギー回収技術 23�

昆虫病原菌を利用したマツノマダラカミキリ成虫駆除法の確立 24�

自然素材活用型真壁仕様木造軸組み架構の開発 25�

導電性物質を利用した発熱合板の開発と木質系暖房用製品への応用 26�

沖合底びき網漁船における漁獲物高鮮度保持技術の確立 27�

輸入アサリの偽装表示対策技術開発 28�

遺伝子組換えトウモロコシBt10の定量分析法の開発 29

分 野�

野菜�

果樹�

花き�

生産施設�

繁殖�

資源利用�

病害�

加工�

品質�

表示�

生産�流通情報�

資材�

安全�

ページ�課    題   名�

研究 成果一覧�

農     業�畜産�

林業�

水産�

食 品 �

リスク管 理 �

(参考) 先端技術を活用した農林水産研究高度化事業の概要(平成19年度) 30

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先端技術を活用した農林水産研究高度化事業/研究紹介2006

 トマト産地のTYLCVによる黄化葉巻病被害の軽減による安定生産と、減農薬による安全・安心なトマトの安定供給を可能に

するために、LAMP法によるTYLCVの高精度で簡便な検出技術を核とした幼苗検定法とウイルス抵抗性トマト選抜法を開発し、

TYLCV抵抗性品種の育成素材の選抜と抵抗性の遺伝様式の解明を行います。�

愛知県農業総合試験場 園芸研究部  TEL 0561-62-0085

3

LAMP法と黄化葉巻病常発地を活用した抵抗性トマト選抜法�

ねらい・�目的�

1

(1)トマト植物体を突いたつまようじをLAMP反応の鋳型に用いる簡易なウイルス検出技術を開発し、被験トマトのTYLCV抵

抗性が簡易、迅速に判定できました(図1)。�

(2)ウイルス媒介虫のシルバーリーフコナジラミ(バイオタイプB)の大量飼育法、保毒化法、幼苗の個体接種法、集団接種法を

開発し、TYLCV簡易検定法と組み合わせた幼苗検定法を確立しました(図2)。�

(3)海外から導入したTYLCV抵抗性品種「ATHYLA」を選抜し、国内栽培品種「桃太郎ファイト」との交雑を行い、その後代か

らLAMP法と幼苗検定法により、わが国の生食用消費嗜好に適したTYLCV抵抗性のトマト系統を選抜しました。�

(4)幼苗検定法を利用し、トマト近縁種等から増殖抑制型の抵抗性素材を選抜しました。�

研究の�成果�

2

 LAMP法を用いた簡易なウイルス検出法と黄化葉巻病診断キットは、育種手法として利用可能であるとともに、産地で栽培苗

の感染判定やコナジラミの保毒率検定等に広く活用されています。選抜したTYLCV抵抗性系統は、F1品種の育成親として利

用し、実用品種の開発が見込まれます。�

普及・実用化�の状況�

3

分 野�

農業-�野菜病害�抵抗性育種�

適応地域�

全 国�1507

〔研究タイプ〕�

独創的現場シーズ活用型�

〔研究期間〕 �

2003年度~2005年度(3年間)�

〔中核機関・研究総括者〕�

愛知県農業総合試験場 矢部 和則�

〔共同機関〕 �

農研機構野菜茶業研究所�

海部南部農業協同組合鍋田トマト部会�

図1 LAMP法によるウイルス濃度の�   定量的な検出技術の開発�  (凡例はウイルス濃度)�

※ウイルス濃度が低いほど白濁開始の反応時間が遅く、増殖抑制型のTYLCV抵抗性の強弱が判定できます。�

図2 幼苗検定法の手順�

①1ヶ月シルバーリーフコナジラミを飼育したキャベツ2株(約700頭寄生)とTYLCV感染トマト1株を同一ケージ内に入れる。1週間コナジラミを保毒化させる。�②ケージ内に、本葉1葉期の被験トマト(128穴セルトレイ半数程度)を入れる。�

1週間 25℃ TYLCV接種�③コナジラミの回収及び殺虫後、育苗する。  10日間程度育苗後(網室)�④LAMP法によるウイルス濃度の測定を行う。 20日間程度育苗後(網室)�⑤観察による発病調査を行う。��⑥無病徴かつ体内ウイルス濃度の低い個体を選抜 ��

濁度�

LAMP反応時間�

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4

先端技術を活用した農林水産研究高度化事業/研究紹介2006

三重県科学技術振興センター農業研究部農業研究部 TEL 0598-42-6358

図1 開発した新品種候補�

図2 色彩的特徴を活かした浅漬け� 加工特産物‘かわり漬け’(仮)�

図3 系統52を用いた‘食べられる寄せ植え’�

 地域特産物は地域住民が誇りに思う共有の財産です。将来につながる新しい地域特産物を作り出すため、地域の農業者がハ

クサイと伝統野菜‘日野菜’を交配して得た遣伝資源を活用し、マーケティングリサーチに基づいた開発方向により、新しい野莱

を育成し、その新品種を素材とする加工製品を開発します。�

地域遺伝資源を利用した新野菜の育種による高機能性特産物の開発�

ねらい・�目的�

1

(1)ハクサイの緑色に対して日野菜の紫色は優性で1個の主働遺伝子に支配されていることがわかりました。紫色はアントシア

ニンによるものでアントシアニン含量が多い株ほど抗酸化活性が高い傾向がありました。�

(2)地域の現地圃場で選抜を行い自植によって固定を進め、優秀な2系統を育成しました(図1)。�

(3)濃い紫色よりも淡いピンク系の色が好まれたマーケティングリサーチの結果に従い、育成系統の色彩的特徴を活かした浅漬

け加工品を開発し商品化しました。また、育成品種を使った調理レシピを作りました(図2)。�

(4)育成系統の鑑賞適正を調査し‘食べられる寄せ植え’を開発しました(図3)。�

研究の�成果�

2

 育成した品種と加工製品は三重県伊賀地域の特産物として活用しています。本研究で実施した地域住民と一緒に特産物を作

り出す取り組みは、紀州や松阪地域など他の地域でも実施されています。�普及・実用化�の状況�

3

分 野�

農業-野菜�野莱・地域特産�

適応地域�

三重県�1508

〔研究タイプ〕�

独創的現場シーズ活用型�

〔研究期間〕 �

2003年度~2005年度(3年間)�

〔中核機関・研究総括者〕�

三重県科学技術振輿センター 森 利樹�

〔共同機関〕 �

独立行政法人野菜業研究所、社団法人大山田農林業

公社、農業者 奥 隆善�

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先端技術を活用した農林水産研究高度化事業/研究紹介2006

 第一花房の果実のみを収穫する短期栽培を繰り返し、集中的な制御で高糖度トマト果実を収穫する、一段密植栽培があります

が、夏季高温期(8月-10月収穫)の不安定な生産が周年安定生産の障壁となっており、その対応技術を開発します。�

九州沖縄農業研究センター 暖地施設野菜花き研究チーム  TEL 0942-43-8364

5

トマト一段密植栽培による高温期の高品質果実安定生産技術の確立�

ねらい・�目的�

1

(1)栽培槽内の培養液を、塩類ストレス開

始前はEC3dS/m以下、塩類ストレス

開始後から収穫開始頃までにECを

20dS/m程度まで直線的に上昇させ、

その後はEC20~25dS/mの範囲で

管理すると夏季高温期に糖度7度程度

の果実を生産できます(図1)。�

(2)栽植本数を1000本以下、着果数を3

果以下にすると夏季高温期に糖度7程度、

100g以上の果実を生産できます(図2)。�

(3)ハウスを密閉して45℃、1時間を目安

に高温処理を行うと、トマトの生育に影

響を与えずに、コナジラミ類やハモグリ

バエ類等の害虫密度を効果的に減らせ

ます。�

(4)夏季高温期の栽培において閉鎖型苗生

産システムで育苗すると、着果節位が

低くなり、全収量が増加するとともに尻

腐れ果が顕著に減少して可販果の一果

重や収量が増加しました。�

研究の�成果�

2

技術資料「一段密植栽培(保水シート耕方式)

による高糖度トマトの周年安定生産技術」

を作成・配布しました。(独)農研機構・野菜

茶業研究所のホームページからもファイル

のダウンロードが可能です。1ha規模のハ

ウスを有する農業生産法人により、本方式

を導入した高糖度トマトの周年生産への取

り組みが始まりました。�

普及・実用化�の状況�

3

分 野�

農業-野菜�

適応地域�

関東以南�1509

〔研究タイプ〕�

独創的現場シーズ活用型�

〔研究期間〕 �

2003年度~2005年度(3年間)�

〔中核機関・研究総括者〕�

農研機構九州沖縄農業研究センター 渡辺 慎一�

〔共同機関〕 �

神奈川県農業技術センター、農業者 �

曽川 政司・新門 剛�

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6

先端技術を活用した農林水産研究高度化事業/研究紹介2006

愛知県農業総合試験場農業工学グループ  TEL 0561-62-0085

 木材樹皮等の未利用資源をリサイクル利用した軽量・安価な培土の開発と、維持管理の容易な小型水分センサを開発して、

30Lの袋培地を利用した施肥・灌水精密制御システムを構築するとともに、トマトの長段どり年2作周年栽培のための栽培管理

マニュアルを策定します。�

施肥・灌水精密制御による品質保証できるトマトの袋培地生産技術�

ねらい・�目的�

1

(1)袋培地と水分センサを用いた施肥・灌水精密制御の組み合わせにより収量・品質の安定するトマト袋培地生産システムを開

発しました(図)。専用の培地を開発し、袋培地生産システムと合わせて特許を出願しました。�

(2)水分センサを利用した灌水制御、圧力補正機構を有する点滴チューブの使用、液肥と水を別々に給液することによる排液率

の低減技術等の開発を行い、従来の養液栽培に比べて同等以上の収量や品質を得ることができました。�

(3)定植・撤去方法の改善や無底ポット定植の利用により、従来の定植及び片づけ作業時間を50%削減し、作業の軽労化を図り

ました。�

(4)抑制作型7段と半促成長段作型14段の組み合わせによる年2作トマト周年栽培で収量32.8t/10a、平均糖度概ね6度の

収穫が得られました。�

(5)自家施工を前提とした施工方法と栽培管理方法を解説した「トマト袋培地栽培マニュアル」を作成しました。�

研究の�成果�

2

(1)袋培地生産システムは東三河地域のトマト農家を中心に60戸(6.8ha)に普及しています。メロン・イチゴ・花等にも広範囲

に利用可能です。�

(2)袋培地生産システムは、自家施工が容易であることから導入経費が削減できます。�

普及・実用化�の状況�

3

分 野�

農業-野菜�

適応地域�

全国�(施設・有特許)�

1515

〔研究タイプ〕�

地域競争型�

〔研究期間〕 �

2003年度~2005年度(3年間)�

〔中核機関・研究総括者〕�

愛知県農業総合試験場 榊原 正典�

〔共同機関〕 �

株式会社ケネック、三河ミクロン株式会社、豊橋農業

協同組合トマト部会

図 トマト袋培地生産システム�

水分センサ�

下敷シート�

防根シート�

無底ポット(9cm)�

袋培地�

点滴チューブ�

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先端技術を活用した農林水産研究高度化事業/研究紹介2006

 レタスビッグベイン病は土壌に生息するオルピディウム菌によって媒介される防除が非常に困難なウイルス病害です。そこで、

オルピディウム菌がウイルスを伝搬することを阻害する菌(内生細菌)を探索し、その菌の利用と他の防除法とを組み合わせて

効果的な防除法の体系化を図ります。�

近畿中国四国農業研究センター特産作物部  TEL 0877-63-8130

7

内生細菌利用を基幹としたレタスビッグベイン病防除技術の開発�

ねらい・�目的�

1

(1)安価に内生細菌を提供するため、種子への内生細菌の処理法を検討し、世界で初めて安定かつ長期的に種子中で内生細菌

を生存可能にするコーティング法を考案しました(図1、図2)。�

(2)レタスビッグベイン病の防除法として、化学的防除法、物理的防除法、耕種的防除法を併用した場合、相乗効果が得られるこ

とを実証し、防除技術の併用による煩雑な防除作業の簡便化を図りました。�

(3)内生細菌処理するレタス品種として、既存の抵抗性品種よりも抵抗性程度が高く、かつ優良実用形質を備えたレタス系統を

選抜、育成しました。�

(4)オルピディウム菌体内に存在するウイルスだけが汚染源になることから、土壌中から本菌の休眠胞子分離法を確立し、遺伝子

診断法によりウイルスの検出に成功しました。�

研究の�成果�

2

 内生細菌をコーティングした育成レタス系統種

子の使用、そしてそれを補完する各種防除法を組

み合わせて、レタスビッグベイン病発病地でその有

効性を検証し、既存品種を無防除で栽培した時の

3倍の収益が得られることを実証しました(図3)。�

普及・実用化�の状況�

3

分 野�

農業-野菜-病害�

適応地域�

全国�1528

〔研究タイプ〕�

広域ニーズ・シーズ対応型�

〔研究期間〕 �

2003年度~2005年度(3年間)�

〔中核機関・研究総括者〕�

農研機構近畿中国四国農業研究センター 石川 浩一�

〔共同機関〕 �

兵庫県農林水産技術総合センター、香川県農業試験場、�

(株)サカタのタネ�

図2 コーテング種子の発芽率と内生細菌の生存率�

図3 体系化防除の有効性�図1 コーテング種子�

減圧接種法�

コーティング加工� 低温除湿乾燥法�

コート剤�

種皮�

微生物�種子�種子�

A408TM潅注+内生細菌処理� 無処理�

A409 A411 シスコ�感受性�

シスコ�(抵抗性)

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先端技術を活用した農林水産研究高度化事業/研究紹介2006

農研機構東北農業研究センター寒冷地温暖化研究チーム  TEL 019-643-3462

 北国の冬の寒さを利用して、ホウレンソウやコマツナ等の菜っぱ類の甘さ・栄養価を高める寒締め栽培が普及拡大しています。

寒締め栽培では、暖かさが必要な生長と寒さが必要な甘さという相反する反応を上手にバランスさせることが肝要です。そこで、

生長期と寒締め期の環境調節シナリオを策定し寒締め栽培の安定化と品質向上を図ります。�

寒締め野菜の高品質化シナリオの策定と生産支援システムの開発�

ねらい・�目的�

1

(1)生長期のホウレンソウ生体重の推移をハウス内地温から推定する簡易生長モデルを開発しました。北海道から南東北まで

の広範囲にわたった適作期の判定、気象変化に応じたハウス管理法の提示、リアルタイムの生育予測などが可能です。�

(2)ホウレンソウの根の温度が10℃前後より低くなると、根の吸水が抑制され、その結果甘さ(糖度)が増すというプロセスを明

らかにしました。10cm深の5日間平均地温で、糖度の変化が推定でき、日射量による補正を加えるとさらに推定精度が高

まります。�

(3)栄養価(ビタミンC)は寒締めで増加、有害成分の硝酸は低下、シュウ酸は変化しないことを明らかにしました。�

(4)カブ、コスレタス、サラダホウレンソウなど、これまで寒締め対象とされていなかった品目・品種が、有望な新品目・品種である

ことを明らかにしました。�

(5)北海道でもホウレンソウの寒締め栽培が可能なことを明らかにし、早期出荷、通常栽培、高糖度栽培の3つの作型を確立しま

した。�

研究の�成果�

2

 以上の過程をまとめた

環境調節シナリオを策定

しました。寒締め 野菜は、

青森県(コマツナ70a)、

秋田県 (ホウレンソウ

240a)、岩手県(2500a)、

福島県(同160a)などの

地域で生産されています。�

普及・実用化�の状況�

3

分 野�

農業:野菜�

適応地域�

寒冷地�1532

〔研究タイプ〕�

広域ニーズ・シーズ対応型�

〔研究期間〕 �

2003年度~2005年度(3年間)�

〔中核機関・研究総括者〕�

農研機構東北農業研究センター 岡田 益己�

〔共同機関〕 �

岩手県農業研究センター、秋田県立大学、福島県農業試験場、農業

情報コンサルティング株式会社、JA十和田市農業技術センター�

図 寒締め野菜の高品質化シナリオ�

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先端技術を活用した農林水産研究高度化事業/研究紹介2006

 アイスプラントは我が国の新たな食材として大きな需要が期待できることから佐賀県の特産野菜として、水耕栽培による安定

的な周年栽培技術の確立を図ります。また、佐賀県の干拓農地では作物への塩害が問題となっており、塩化ナトリウム吸収機能

が強いアイスプラントを生産して、塩類土壌修復も図ります。�

佐賀大学農学部応用生物科学科  TEL 0952-28-8724

9

吸塩植物アイスプラントの佐賀県特産野菜化に関する研究�

ねらい・�目的�

1

(1)根腐れ病、萎凋病が発生しない高温期以外はNFT耕で栽培できる技術を確立しました。高温期には固形培地を使った水耕

栽培によって病害の発生が無くなる技術を開発し、安定的な周年栽培を可能にしました(図1、表1)。�

(2)農家での実証栽培から流通・販売を実践することによって非常に高い需要が確認され、流通・販売ルートの確立と商品化の

実現がほぼ達成されました(図2)。�

(3)干拓地の除塩技術として導入するため、露地での移植栽培による定植適期等を検討し、9~10月定植で順調に生育しました。

簡易な雨よけビニールトンネルの併用、切り藁マルチで活着率が向上しました(図3、表2)。�

研究の�成果�

2

(1)野菜として好評な売れ行きと需要があり、早急な量産体制が望まれています。佐賀県北部山間地(富士町)において現地実

証試験を行うことになりました。�

(2)ファイトレメディエーション技術として干拓地塩性土壌に導入し、除塩効果を実証する必要があります。�

普及・実用化�の状況�

3

分 野�

農業-野菜�

適応地域�

佐賀県�1632

〔研究タイプ〕�

地域競争型�

〔研究期間〕 �

2004年度~2005年度(2年間)�

〔中核機関・研究総括者〕�

国立大学法人佐賀大学農学部 野瀬 昭博�

〔共同機関〕 �

佐賀県農業試験研究センター、農研機構・九州沖縄農業研究センター、

九州電力(株)・総合研究所生物資源研究センター、九州惣菜協会�

図3 9月定植での生育状況(定植8週後)�

表2 9月定植35日後の枯死率�

表1 異なる時期の水耕栽培における生育の違い�

図2 農家での実証栽培と試験販売状況�

図1 培地に籾殻燻炭を使用した固形培地耕�

栽培は秋~春で順調�売れ行きは好評で、高い需要を確認�

固形培地耕では夏季にも病害の発生なく、安定した栽培が可能。�水耕では、病害がなければ周年栽培可能。 �

9~10月定植で順調に生育�雨よけビニールトンネルで枯死率低下�

(2004~2005年)�

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10

先端技術を活用した農林水産研究高度化事業/研究紹介2006

鹿児島県農業開発総合センター果樹部  TEL 0994-32-0179

 亜熱帯果樹であるパッションフルーツの栽培に養液栽培や電照栽培等を導入することにより、土壌病害の回避や周年出荷に

よる収量の増加、あるいは作業の省力化による生産性の向上を図ります。さらに、パッションフルーツの機能性成分を生かした消

費拡大を図ります。�

養液・電照によるパッションフルーツの省力・周年・多収技術�

ねらい・�目的�

1

(1)培地組成、養液のEC濃度、銀イオン資材による除菌法の検討などを行いパッションフルーツのための循環式の隔離ベッド型

養液土耕システムを開発しました。�

(2)パッションフルーツの花芽形成には、波長が660nmの発光ダイオード赤色光が有効であることを明らかにし、電照栽培によ

る春期の収穫を可能にしました(図1)。�

(3)夏期の遮光と細霧冷房により秋期の収穫も可能になり、周年出荷体系が可能となりました(表1)。�

(4)養液土耕栽培に適した整枝法、せん定技術、ネットを用いた果実回収法、マルハナバチを用いた省力受粉法も明らかにしま

した。�

(5)養液土耕と電照栽培の組み合わせにより土耕栽培の2.5倍に当たる年間収量5t/10aを達成しました(表2)。�

(6)パッションフルーツの機能性成分であるアスコルビン酸含量、カロテノイドの種類、果皮中のアントシアニン含量、種子中の

脂肪酸の種類等を明らかにして消費拡大を図りました。�

研究の�成果�

2

 パッションフルーツの春実生産のための電照栽培は、鹿児島県曽於郡等の産地で取り組みが始まりました。光源は、現在のと

ころ白熱球を使用していますが、発光ダイオードを使用した電照装置の製品化、低価格化により更なる面積拡大が期待されます。�普及・実用化�の状況�

3

分 野�

農業-果樹�

適応地域�

西南暖�1518

〔研究タイプ〕�

地域競争型�

〔研究期間〕 �

2003~2005年度(3年間)�

〔中核機関・研究総括者〕�

鹿児島県果樹試験場 後藤 忍�

〔共同機関〕 �

鹿児島大学農学部、沖縄県農業試験場名護支場、(株)日本計器鹿児島製作所、

鹿児島ビニール株式会社、(独)国際農林水産業研究センター沖縄支所�

表2 養液土耕と補光がパッションフルーツの収量及び果実品質に及ぼす影響�

処理区�

LED区�

白熱球区�

無処理区�

36.64

夏実�

収量�(kg/樹)�

糖度�Bx.

クエン酸�%

29.44

28.48

8.43

冬実�

13.23

10.49

4,071

夏実�

10a換算�(kg)� 同左合計�

収量�

3,271

3,164

936

冬実�

1,469

1,164

15.6

夏実�

15.7

14.8

17.0

冬実�

17.0

16.8

3.05

夏実�

2.95

2.50

3.57

冬実�

3.38

3.30

5,007

4,740

4,328

注1 株間6.0m畦間1.5m 10a当たり111本植えで収量換算�

表1 細霧冷房と遮光が開花に及ぼす影響(2004年)

図1 発光ダイオード照射�

細霧+70%遮光区�

無処理区�

8/30

処理区�

9/22

3.7

開花開始日� 総花数/樹(個)�

1.5

有意性� **� **�

注 1.**は1%水準で有意差あり。 2.供試樹はポット植えを各処理3樹用いた。

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先端技術を活用した農林水産研究高度化事業/研究紹介2006

 世界的な大病害カンキツグリーニング病のゲノム解析と感染樹の生理学的な変化に関する解析を進め、発生地における診断

と防除体系の確立を図ります。�

九州沖縄農業研究センター研究管理監    TEL 096-242-7727

11

難防除病害カンキツグリーニング病の拡大阻止技術の開発�

ねらい・�目的�

1

(1)Tail PCR法を用いて病原細菌のゲノムの解析を行い、ゲノム構造を明らかにしました。東南アジアの分離株の塩基配列中

に4つの変異を検出した一方で、日本の分離株は全て同じ塩基配列であることを明らかにしました。この知見を基に簡易な

遺伝子診断法(ランプ(LAMP)法)の開発を行い、迅速診断を可能にしました(図1)。�

(2)感染樹では、症状の有無にかかわらず、葉の水溶性鉄濃度が著しく低下することを明らかにしました。これまでグリーニング

病の症状は亜鉛欠乏症に類似しているとされていましたが、定説を覆す新知見を得ました(図2)。�

(3)カンキツ33品種の抵抗性検定を行った結果、2品種で病原細菌がほとんど増殖しないことを世界で初めて明らかにしました。�

(4)媒介虫の発生生態に基づく最適化された薬剤防除で、徳之島では年2~3回の粒剤処理でミカンキジラミが極めて低密度に

抑えられることを実証しました。�

研究の�成果�

2

 日本と外国の分離株が簡易に識別され、また迅速検定法により、罹病樹の早期発見が可能となり、根絶事業に活用が期待され

ます。�普及・実用化�の状況�

3

分 野�

農業-果樹-病害�

適応地域�

南西諸島�1529

〔研究タイプ〕�

広域ニーズ・シーズ対応型�

〔研究期間〕 �

2003年度~2005年度(3年間)�

〔中核機関・研究総括者〕�

農研機構九州沖縄農業研究センター 皆川 望�

〔共同機関〕 �

広島大学大学院生物圏科学研究科、南九州大学園芸学部、鹿児島大学農学部、鹿児

島県果樹試験場、鹿児島県農業試験場、沖縄県農業試験場、農研機構果樹研究所�

図2 罹病樹に見られる鉄濃度などの低下�

図1 ランプ法とアズルB染色法による�   野外サンプルからの迅速簡易検出�

病原体のrplオペロン断片をLAMP法で増殖した後、電気泳動とエチヂウムブロマイド染色して検出した像(A)とナイロン膜にスポットした後AzurBで染色した像(B)。�(1から12は鹿児島県、沖縄県の野外サンプル。Hは健全カンキツ。Nは水)�

M

1500

A

B

1000

500

H N1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12

H N1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12

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12

先端技術を活用した農林水産研究高度化事業/研究紹介2006

愛知県農業総合試験場 山間農業研究所  TEL 0536-82-2029

 栽培期間を短縮して高回転生産を可能にするとともに、狭作業通路面積に適応できる灌水・薬剤散布、収穫物運搬機、ネット操

作軽便化装置を開発し、栽培実面積の拡大による高収益生産体系を確立します。�

スプレーギクの作業軽便化装置開発による短茎・高回転生産技術�

ねらい・�目的�

1

(1)定植後、長日処理による栄養生長期間を秋ギク品種は2週間、夏秋ギク品種は1週間確保すれば65cm長の切り花が収穫で

きます。�

(2)自走式薬剤散布機に散水アームを取り付け、120cm幅ベッドのサイドから灌水する装置を開発しました。少量多頻度灌水

制御器を用い、土壌水分がpF2.0になった時に1回に2mm灌水すると生育の揃いが良くなりました(図1)。�

(3)収穫した切り花を搬送するモノレール式の自走搬送機を開発しました。小型バッテリーを駆動源とし、容易にレールへの脱

着ができ、1回に150本を積載できます(図2)。�

(4)ネット一斉引き上げ管理が容易なネット操作軽便化装置を開発しました。改植時は最上部まで引き上げて耕耘作業等を行

います(図3)。�

(5)これまでの技術より1.5~2作多い年5作が可能になり10a 当たり年間25万本生産する生産体系を確立しました。�

研究の�成果�

2

 施設利用率向上に関心を示し始め、ベッド幅を拡幅(121cm)する農家が7戸現れてきました。�普及・実用化�の状況�

3

分 野�

農業・花き�

適応地域�

全国�(施設生産)�

1506

〔研究タイプ〕�

独創的現場シーズ活用型�

〔研究期間〕 �

2003年度~2005年度�

〔中核機関・研究総括者〕�

愛知県農業総合試験場 西尾 讓一�

〔共同機関〕 �

株式会社 大仙、有限会社ジャパンフラワードリーム�

図1 灌水施肥装置� 図2 切り花搬送装置�

図3 ネット操作軽便化装置�

ネットを一斉に引き上げて耕耘作畦する�

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先端技術を活用した農林水産研究高度化事業/研究紹介2006

 これまでの屋上緑化は、多肉植物や芝生による単一植栽が中心でした。それに加えて、既存建物には厳しい荷重制限が

あるため、屋上緑化の普及を妨げる要因となっています。一方、壁面緑化は、地被植物用として生産された植物を流用す

るため、壁面を覆うまでに長期間を要し、問題となっています。これらに対応できる多様な緑化植物の利用技術の開発を

図りました。�

東京都農林総合研究センター 都市環境科  TEL 042-528-0526

13

都市空間、特に屋上・壁面緑化に向けた軽量・薄層基盤植物の開発�

ねらい・�目的�

1

(1)既存建築物でも設置可能な「軽く・薄く・多様な植物が利用できる軽量・薄層コンテナ植物」「根鉢をシート状に育成したマッ

ト植物」「早期に壁面緑化が可能なつる性植物長尺苗」による屋上・壁面緑化技術を開発し、生産現場における普及性の高

い効率的な栽培様式を確立しました(図1)。�

(2)開発植物を利用した屋上緑化の環境緩和効果を明らかにしました。�

(3)アメニティ効果を的確に捉える評価法や脳血流量の変化による生理的評価法を開発しました。�

研究の�成果�

2

 「壁面緑化」推進のための「壁面緑化ガイドラインの作成(東京都)」、建築・設計・造園施工関係者や公共団体(教育関係者ほ

か)等を対象に「新素材による屋上・壁面緑化講演会(東京都庁)」を開催し、併せて開発した緑化素材を活用したモデル展示を

行い、実用化のための普及を図っています(図2)。�

普及・�実用化の�状況�

3

分 野�

農 業�花 き�都市緑化�

適応地域�

全国�1530

〔研究タイプ〕�

広域ニーズ・シーズ対応型�

〔研究期間〕 �

2003年度~2005年度(3年間)�

〔中核機関・研究総括者〕�

(財)東京都農林水産振興財団 �

東京都農林総合研究センター 橋本 智明�

〔共同機関〕 �

千葉県農業総合研究センター、東京農業大学農学部、京都府立大学人間環境学部、

農研究機構・花き研究所、東京コニファー研究会、いんばマット植物研究会�

薄層コンテナ植物�

千葉県済生会習志野病院�12000枚のマット植物�

東京ビックサイト�2400ポットの長尺植物�

愛・地球博ガスパビリオン�480枚の花のマット植物�

マット植物� 花のマット植物� 絡まないつる植物� つる性長尺植物�

図1 新たに開発された都市緑化用植物�

図2 総合評価としての実証例�

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14

先端技術を活用した農林水産研究高度化事業/研究紹介2006

 瀬戸内地域では水資源の有効利用技術の開発が重要です。そこで、少量の水を広い面積に灌水できるシステムを開発し

ます。�

近畿中国四国農業研究センター中山間傾斜地域施設園芸研究チーム  TEL 0877-62-0800

拍動自動灌水装置を機軸とする資源利用型低コスト園芸技術の開発�

ねらい・�目的�

1

(1)ソーラーポンプを利用した低コスト日射制御型拍動自動灌水装置を開発しました(図1)。日射量に応じて毎分10~20Lの

揚水を行い、タンク水位が一定に達すると高流速で20a程度の面積に配水し、少量多頻度の灌水を行います。�

(2)シリコンゴムの収縮圧で広い面積に散水可能なパルセーター装置を利用し、小流量の谷川の水を利用した1ha規模の茶園

灌漑も可能であることを明らかにしました。�

(3)施設栽培では、パイプハウス屋根面から集めた水をため池へ導入して塩類濃度を半分に低下させるとともに、エコフィルタ

ーで懸濁物質を5%以下に浄化した水を使用できます。�

(4)タンク内肥効調節型肥料溶出法を組み合わせると、慣用養液土耕栽培に比較して、マーガレットでは灌水量23%、施肥量

23%、キクでは灌水量30%、施肥量35%の削減が可能となり、品質・収量とも上回りました。�

研究の�成果�

2

(1)水道や電源が無くとも、少量の水源が確保できれば、農作物に対して自動灌漑を行うことができます。日射制御型拍動自動

灌水装置は17万円/20aで製作可能であり、市販養液土耕装置に比較して、超低コストです。日射量に応じた灌水施肥が可

能であることから、都市緑化等の農業分野以外での活用も期待できます。�

(2)香川県ではマーガレット栽培3a、キク栽培10a(予定)、ミカン園地20a、兵庫県の茶園1haに普及しています。�

普及・�実用化の�状況�

3

分 野�

農業-生産施設�

適応地域�

全国�1517

〔研究タイプ〕�

地域競争型�

〔研究期間〕 �

2003年度~2005年度(3年間)�

〔中核機関・研究総括者〕�

農研機構近畿中国四国農業研究センター 吉川 弘恭�

〔共同機関〕 �

香川県農業試験場小豆分場、株式会社 日進機械�

図1 日射制御型拍動自動灌水装置の概略�

出力55Wのソーラーパネル(A)で発電し、6Wの直流ブラシレスポンプ(B)を稼働させれば、日射量に応じた揚水ができる。拍動タンク(C)に一定量の水が貯水されると、排水弁が開いて、点滴チューブへ配水される。拍動タンクへの揚水量を①と②のバルブを操作すると作物の生育にあわせて灌水量を調節できる。�

(C)拍動タンクの構造�ソーラーポンプによる少流速の揚水で水位が上昇すると③のフロートが上昇し、⑥のフロートバルブをひき上げて一気に排水する。�

(A)ソーラーパネル�

(B)直流ポンプ�

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先端技術を活用した農林水産研究高度化事業/研究紹介2006

 施設園芸の国際的競争力をつけるために、低コスト、高性能で様々な環境制御機器構成に柔軟に対応できる自律分散型のユ

ビキタス環境制御システムの開発を図ります。システムの実用化に不可欠な低価格コンピュータのハードウェアおよびソフトウェ

アの開発を図るとともに、これらを組み込んだ、自律分散計測制御機器(ノード)の複数の機種がユビキタス環境制御システムと

して機能し、実際の植物生産を行えるモデル温室を構築します。�

東海大学 開発工学部    TEL 055-968-1211 内線4508

15

施設園芸生産のためのユビキタス環境制御システムの開発�

ねらい・�目的�

1

(1)ユビキタス環境制御システムを実用化するために必要な、本制御システムに適合した情報通信規約を策定しました。また、ノ

ード開発のために必要な機器に組み込むコンピュータ基板(USE)と基盤的ソフトウェア(EOLUS)を開発しました。さらに、

製品化可能な8機種の実用型ノードを開発し、各機種1台以上の実機の試作を完了しました(図1)。�

(2)面積972m2のPO系フィルム被覆鉄骨ハウスの環境制御システムとして、動作ノード (換気窓開閉ノード、暖房機ノード、カ

ーテン開閉ノード)、センサノード(室内気象ノード、室外気象ノード、風向風速ノード)、操作ノード(手動スイッチノード、簡易

コンソールノード)からなるユビキタス環境制御の基本システムを設置し、モデル温室を完成しました。各ノードはセンサ情

報に基づいて目的通りの制御を行いました(図2)。�

研究の�成果�

2

 開発した USEとEOLUSは、ユビキタス環境制御シ

ステム応用製品開発企業向けに一部販売を開始しま

した。成果は、ユビキタス環境制御システム協議会に

引き継がれ、協議会を通じて積極的な普及を推進し、

施設園芸の競争力強化に貢献します。�

普及・実用化�の状況�

3

分 野�

農業-生産施設�

適応地域�

全国�1652

〔研究タイプ〕�

広域ニーズ・シーズ対応型�

〔研究期間〕 �

2004年度~2005年度(2年間)�

〔中核機関・研究総括者〕�

東海大学 星 岳彦�

〔共同機関〕 �

農研機構野菜茶業研究所、(有)エヌアイシステム、

(株)誠和、ネポン(株)

図1 開発したコンピュータ基板(USE)

図3 モデル温室におけるトマトの�   栽培試験状況(2006/3/3撮影)

図2 開発ノードの一例: カーテン開閉ノード�

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16

先端技術を活用した農林水産研究高度化事業/研究紹介2006

北海道農業研究センター根圏域研究チーム  TEL 011-857-9241

 広域流通と取り扱いの容易な資材化技術の確立が求められている家畜堆肥や、線虫や土壌病害の対抗植物として栽培されて

いるマリーゴールドやエンバク野生種などの機能性有機物を成型加工してポットを作り、これを利用して作物を栽培する技術を

開発します。さらに有機質成型ポットの移植機の開発も行います。�

機能性有機質成型ポットを利用した環境保全型栽培技術�

ねらい・�目的�

1

(1)牛糞堆肥を用い、壁面肉厚を概ね3mmまで薄化した、各種の作業に耐え得る成型ポットを開発しました。その際、移植後は

土壌中で速やかに分解するようにしました(図1)。�

(2)移植作業の省力化を図るために大苗用(外径120mm円形、深さ100mm)と小苗用(50mm角、深さ60mm)の堆肥ポ

ット移植装置を開発し、特許を申請しました(図2)。 �

(3)塩類濃度が低い堆肥で作った堆肥ポットは作物の生育抑制を起こしません。�

(4)機能性有機物であるヒトデや野生エンバクを混合した成型ポットで育苗したジャガイモのそうか病罹病率は低下し、品質が

向上しました。マリーゴールドを混合した成型ポットではトマト青枯病の抑制効果が確認されました(図3)。�

(5)マリーゴールド茎葉粉末25%+牛糞堆肥ポットは、セル苗とほぼ同等の収量を示すとともにネグサレセンチュウ抑制効果が

認められました。�

研究の�成果�

2

堆肥ポット移植装置の一部は既にモニター販売を開始しています。�普及・実用化�の状況�

3

分 野�

農業-資材�

適応地域�

全国�1540

〔研究タイプ〕�

広域ニーズ・シーズ対応型�

〔研究期間〕 �

2003年度~2005年度(3年間)�

〔中核機関・研究総括者〕�

農研機構北海道農業研究センター 野副 卓人�

〔共同機関〕 �

(有)環境資源応用技術開発研究所、本田農機工業株式会社�

図2 開発した有機ポット移植機�

図3 マリーゴールド混合ポットの�  トマト青枯れ病に対する効果�

写真は左から対照(ビニールポット)、バーミキュライト(100%)ポット、マリーゴールド(30%)ポット�

家畜排泄物�(例えば牛糞)�

有機質成型ポット�(左はビニールポット)�

機能性有機物�(例えばマリーゴールド)�

図1 堆肥・機能性有機物から有機質成型ポットの製造�

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先端技術を活用した農林水産研究高度化事業/研究紹介2006

 青果物でも生産・加工・流通段階における情報を効果的かつ効率的に追跡・遡及できるトレーサビリティシステムの開発が要請

されています。そこで、携帯電話等を使った効率的な生産履歴情報の記録と、青果物に貼付したICタグや2次元コードをリンクさ

せた流通履歴の記録により、高い精度で情報を管理し、消費者や流通業者に迅速に提供するシステムを開発します。�

中央農業総合研究センター マーケティング研究チーム    TEL 029-838-8422

17

青果物の生産履歴情報の効率的な収集・伝達・提供システムの開発�

ねらい・�目的�

1

(1)生産・流通履歴情報のうち、消費者の80%以上が必要とするのは「産地名」、「安全性等の認証」、「出荷日」、次いで60%以

上が必要とするのは「品種名」、「栽培方法」、「農薬使用状況」、「販売業者名」、「収穫日」でした。ただし、青果物に対して

不安や不満がある時には、「生産者の連絡先」、「温度履歴」、「栽培方法確認者名」、「生産者名」、「取引履歴」は通常時より

も10%以上高くなります(図1)。�

(2)フィールドサーバに内蔵されたビデオカメラで撮影する圃場映像と収穫コンテナなどに装着したICタグ(ID)をリーダライタ

の無線LAN機能で紐付けすることにより、圃場段階での青果物の偽装・すり替えを効果的に抑制できます(図2)。�

(3)トレーサビリティを実現するための情報媒体として、コンテナ等のリサイクル可能な集合包装にはICタグを使用するのが効率

的ですが、リサイクルが困難な店頭販売用の個包装にはコストの低い2次元コードを使用するのが現実的です(図3)。�

研究の�成果�

2

 圃場や市場といった同一場所で多様な作業が重複して実施される青果物の生産流通実態に即して、正確かつ効率的に履歴を

追跡・遡及のできる流通履歴データベースとWebベースのデータ検索システムを開発し、インターネットで迅速に履歴情報を提

供できるようにしました。�

普及・実用化�の状況�

3

分 野�

農業-�トレーサビリティ�

適応地域�

全国�1537

〔研究タイプ〕�

広域ニーズ・シーズ対応型�

〔研究期間〕 �

2003年度~2005年度(3年間)�

〔中核機関・研究総括者〕�

農研機構中央農業総合研究センター 佐藤 和憲�

〔共同機関〕 �

埼玉県農林総合研究センター、群馬県農業技術センター、静岡県柑橘試

験場、早稲田大学、株式会社日立製作所、大日本印刷株式会社�

図1 消費者が必要とする生産・�   流通履歴情報�

図2 フィールドサーバで撮影された�   レタス圃場�

図3 収穫コンテナとフィールドサーバ映像の�   紐付け概念図�

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18

先端技術を活用した農林水産研究高度化事業/研究紹介2006

食品総合研究所食品工学研究領域計測情報工学ユニット  TEL 029-838-8047

 産地側の生産管理データベースを中心とした全農安心システムと食品総合研究所が開発・運用中の情報開示システムである

青果ネットカタログ「SEICA」の両システムを、XML Webサービスで連携させ、さらに消費者とのコミュニケーション機能を付

加して、生産者には栽培指導や消費ニーズを、流通業者には出荷情報や販促手段を、消費者には生産物情報や意見交換の場を

オンデマンドで提供できる情報インフラを構築します。�

生産から消費にわたる食農情報インフラの構築�

ねらい・�目的�

1

(1)農産物の生産情報データベースである青果ネットカタログ(以下、SEICA)に、全農の安心システムで記帳されたデータが

自動的に連動してSEICAに転送される仕組みを構築したことで、現場の記帳データが手間をかけずに情報開示に反映され

るようになりました。�

(2)電話で簡単に音声メッセージをSEICAに登録できるシステムを開発し、入力された生産者の音声メッセージを店頭で流せ

る店頭端末を開発しました(図1)。�

(3)携帯電話で簡単に生産情報を閲覧できるQRコード付き識別ラベルの作成ソフトを開発し、利用方法(マニュアル)とともに

SEICAのWebサイトで自由にダウンロードして使えるように一般公開しました。�

(5)SEICAのデータを外部システムにて店頭でのニーズにあった形に再加工して情報提供するWebサイトを構築しました。現

在「いばらき農産物ネットカタログ」(http://ibrk.jp)として実運用に至り、県農産物のブランド化に貢献しています。またシ

ステムと連動した店頭端末を開発し、産地と連携しながら、カスミ、エコス、東急ストア、高島屋等において、実証実験を行い、

その有用性と問題点を確認しました(図2)。�

研究の�成果�

2

 安心システムは既に140以上のJAで使われており、今回のシステム連携により、双方のシステムの利用者が増えると期待さ

れます。SEICAの高度化により、登録数が増え、2006年11月現在で、約7000品目に至っています。�普及・実用化�の状況�

3

分 野� 適応地域�

全国�1538

〔研究タイプ〕�

広域ニーズ・シーズ対応型�

〔研究期間〕 �

2003年度~2005年度(3年間)�

〔中核機関・研究総括者〕�

農研機構食品総合研究所 杉山 純一�

〔共同機関〕 �

株式会社 全国農業協同組合連合会、茨城県農林水産部�

農業-�トレーサビリティ�

図1 音声メッセージと登録�

図2 いばらき農産物ネットカタログ�

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先端技術を活用した農林水産研究高度化事業/研究紹介2006

 登録農薬が少ない地域特産作物の農薬残留特性をグループ毎に明らかにし、作物分類に基づいた的確で効率的な農薬登録

を可能にします。また食の安全・安心を確保するため生産現場で簡便に使用できる農薬残留分析法を開発します。�

農業環境技術研究所 研究コーディネーター    TEL 029-838-8430

19

残留農薬評価のための地域特産作物の分類法及び迅速検出法の開発�

ねらい・�目的�

1

(1)ニガウリの残留農薬濃度の減少速度はキュウリに比べやや遅く、ズッキーニはキュウリとほぼ同じであること、イネ科雑穀類

のヒエ、アワ、キビ、あるいはセリ科の13作物、スイートマジョラムを除いたシソ科11作物のそれぞれの農薬残留特性は類

似していることを明らかにし、グループ分けできることを示しました(図1)。�

(2)テブフェノジドとクロロタロニル用のイムノアッセイキットを開発し、多くの作物の残留分析に適用できる性能を持っているこ

とを示しました(図2)。�

(3)イミダクロプリド、クロルフェナピル、クロロタロニル等のイムノアッセイキットの基本性能を評価(感度、測定範囲、溶媒耐性

等)し、葉菜類、根菜類、果菜類、穀類等の各種農産物に対する利用法を確立しました。�

(4)マラチオンやフェニトロチオンに対するイムノアフィニティーカラムを作製し、対象農薬を効率的に精製できることを明らか

にしました。�

研究の�成果�

2

 クロロタロニル用キットはすでに販売を開始しており、16都道府県の24JAで活用されています。�普及・実用化�の状況�

3

分 野�

農業-安全�

適応地域�

全国�1501

〔研究タイプ〕�

研究領域設定型�

〔研究期間〕 �

2003年度~2005年度 (3年間)

〔中核機関・研究総括者〕�

(独)農業環境技術研究所 遠藤正造�

〔共同機関〕 �

埼玉県農林総合研究センター、福島県農業試験場、宮城県農業・園芸総合研

究所、神戸大学、(社) 日本植物防疫協会、(株) ホリバ・バイオテクノロジ-�

図1 シソ科作物における散布3日後の農薬残留指数� 図2 開発したクロロタロニル測定キット1�

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20

先端技術を活用した農林水産研究高度化事業/研究紹介2006

 植物組織を凍結後、減圧にすることで植物組織内に酵素を速やかに導入し、植物組織の形状を保ったまま、組織内で酵素を働

かせる開発技術(凍結含浸法、特許第3686912号)を使い、植物組織の硬さ制御技術への応用、その際に生じる水溶性食物繊

維やオリゴ糖を利用した付加価値の高い食品の製造技術への応用を図ります。�

酵素急速含浸法を用いた硬さ制御技術・機能性食品素材の開発�

ねらい・�目的�

1

(1)酵素反応条件を調節することにより、素材を任意の硬さに制御する技術を開発しました。�

(2)硬さ制御素材内には、酵素作用により水溶性食物繊維が増加するなど、含浸する酵素剤を選択することにより、素材内の機

能性成分を増強させることも可能です。�

(3)硬さ制御素材の品質(栄養素、色調等)は、従来の加熱処理品と比較して遜色ないことを明らかにしました(図1)。また、真

空調理に応用し、「形状を保持したまま軟らかい」という硬さ制御素材の特徴を生かした食品の製造技術(図2)を開発しま

した(特願2006-186855)。�

(4)硬さ制御素材の安全性について、そしゃく嚥下困難者を対象に臨床評価を行ったところ、誤嚥もなく良好でした。また、嚥下

困難者用食品のための離水防止技術(特願2006-083367)と嚥下造影検査食の製造技術を開発しました(特願2006-024332)

(図3)。�

研究の�成果�

2

(1)健康増進法の定める「そしゃく困難者用食品」の基準に合致し、しかも元の形状を保持した軟らかい食品の製造が可能で、三

島食品(株)では、レトルトタイプの高齢者・介護用食品の製品化に成功しました(特開2006-223122)。�

(2)これまで硬くて利用できなかった未利用資源を軟らかくし、食品素材として利用することができるなど、様々な応用が検討さ

れています。�

普及・実用化�の状況�

3

分 野�

食品�

適応地域�

全国�(特許)�

1520

〔研究タイプ〕�

地域競争型�

〔研究期間〕 �

2003年度~2005年度(3年間)�

〔中核機関・研究総括者〕�

広島県立食品工業技術センター 坂本 宏司�

〔共同機関〕 �

県立広島大学、株式会社アンデルセンサービス、三島食品株式会社�

図1 タケノコの試作品� 図2 形状はそのままでババロアのように軟らかい�

図3 レンコンへの造影剤の含浸�

広島県立食品工業技術センター    TEL 082-251-7431

硬さ制御素材(左)は歯茎でつぶせるほどの軟らかい素材である(右)。嚥下困難者が目でも味わうことが可能になる。�

光学像(左),X線像(中央),蛍光X線像(右)�造影剤濃度を高めると良好なX線像が得られる。�造影剤含浸素材は、医療用検査食として、医療分野での応用が期待される。�

Page 22: Research project for utilizing advanced technologies in ...Research project for utilizing advanced technologies in agriculture,forestry and fisheries. R esearch and D evelopment Agriculture

先端技術を活用した農林水産研究高度化事業/研究紹介2006

 ネギ属野菜は特有の成分を持ち、体調調節作用の他にも有用な作用を持つと考えられます。そこで有用成分の効率的な抽出

法と利用・加工技術を開発し、需要の拡大を図ります。�

農研機構 食品総合研究所 流通安全部  TEL 029-838-8008

21

ネギ類成分の特性を生かした新規利用加工技術の開発�

ねらい・�目的�

1

(1)タマネギ中の有用成分を二酸化炭素による超臨界抽出法で効率的に抽出する方法を開発しました。また、ラッキョウの抗腫

瘍成分はジメチルスルホキシドで効率よく抽出され、抗腫瘍作用は根盤部が強いことを明らかにしました。�

(2)市販のタマネギオイルの主成分はジプロピルトリスルフィド、ジプロピルジスルフィド、メチルプロピルトリスルフィドであり、こ

れらが褐変抑制成分であることを明らかにしました。カットレタスやカットリンゴの褐変の原因になるアクリルアミドの生成

はトリスルフィドで強く抑制され、ジスルフィドにも効果がありますが、モノスルフィドには抑制作用がないことを明らかにしま

した(表1)。�

(3)カットレタスは1/10量の切断したニラ、ネギ等と一緒に包装することにより10℃で数日間褐変しないことを明らかにしまし

た(図1)。�

(4)タマネギ破砕物を酵素処理し、90%以上の収率でタマネギエキスを製造する方法を開発しました。これを原料としてチップ

ス、ゼリーを試作しました(図2)。一方、加熱したタマネギから搾汁して辛味のないタマネギジュースの製造法を開発しまし

た(図3)。�

(5)ラッキョウの甘酢漬けをそのま

まの状態で入れたかまぼこの

製造法を開発しました(図4)。�

研究の�成果�

2

 カットレタスの褐変抑制技術は

製造工場で試験段階です。辛味の

ないタマネギジュースは平成18年

6月から製造販売しています。ラッ

キョウ入りかまぼこは企業による商

品化が進んでおり、近く販売の予定

です。�

普及・実用化�の状況�

3

分 野�

食 品�

適応地域�

全 国�1531

〔研究タイプ〕�

広域ニーズ・シーズ対応型�

〔研究期間〕 �

2003年度~2005年度(3年間)�

〔中核機関・研究総括者〕�

食品総合研究所 永田 忠博�

〔共同機関〕 �

北海道立食品加工研究センター、鳥取県産業技術センター、

三栄源、エフ・エフ・アイ株式会社�

Page 23: Research project for utilizing advanced technologies in ...Research project for utilizing advanced technologies in agriculture,forestry and fisheries. R esearch and D evelopment Agriculture

22

先端技術を活用した農林水産研究高度化事業/研究紹介2006

株式会社機能性ペプチド研究所  TEL 023-646-2525

分 野�

畜産-繁殖�

適応地域�

全 国�1542

 受精胚やクローン胚を受胚牛に移植した時の受胎率、ひいては正常産仔生産性の向上を目的とし、胚の酸素消費量を定量的

に計測する診断ソフトを設計・制作し、そのソフトを活用してウシ受精胚及びクローン胚の品質を診断する低コストの装置と胚の

酸素消費量を正確に計測する胚品質診断用測定キットの開発を行います。�

生産現場対応型ウシ胚品質診断装置及び測定キットの開発�

ねらい・�目的�

1

(1)胚診断装置に特化した試作機の微小電流計測部と電極駆動部を一体化したデモ機を設計・製作後、初心者ユーザーでも胚

の呼吸量を半自動で測定できるコンパクトで低コストの実用的装置を設計・製作しました(図1)。�

(2)診断装置のセンサー部分である微小電極を汚染しない測定液(ERAM-2)や胚の呼吸量を高感度かつ迅速に測定できる多

検体セルを開発しました。�

(3)新規に開発した測定キット(測定液、多検体セル)を利用して、ウシ胚の呼吸活性と発生能、凍結融解後の胚発生能に相関が

あることを示しました。�

(4)胚の呼吸活性(酸素消費量)のバラツキを極力抑制するための最適条件を明らかにし、胚品質診断基準の精度を高めた測

定ソフトを設計・制作しました。�

(5)胚品質診断基準の仕様に沿った半自動測定ソフトを開発し、このソフトが新装置で機能することを確認しました。�

(6)胚呼吸活性の高い胚は、移植実証試験において受胎率が高い傾向を示すことを確認しました(表1)。�

研究の�成果�

2

 ウシ胚の客観的品質評価法として活用し、凍結に適した胚や受胎性の良い胚の選択に利用が期待できます。また本装置は胚

の呼吸活性(酸素消費量)を指標とした品質評価に適用できることから、ウシ以外の動物種(ヒト、マウスなど)にも応用できます。�普及・実用化�の状況�

3

〔研究タイプ〕�

広域ニーズ・シーズ対応型�

〔研究期間〕 �

2003年度~2005年度(3年間)�

〔中核機関・研究総括者〕�

株式会社 機能性ペプチド研究所 星 宏良�

〔共同機関〕 �

北斗電工株式会社、東北大学�

胚発育段階�受胎頭数/移植頭数(受胎率)�

桑実胚�

初期胚盤胞�

胚盤胞~�

基準胚呼吸活性�(×10-14mols-1)�

0.75�

1.10�

1.43�

7/19(36.8%)�

5/10(50.0%)�

9/21(42.9%)�

11/17(64.7%)�

11/17(64.7%)�

12/23(52.2%)�

基準値以下� 基準値以上�

図1 コンパクト、低コスト、�   操作性の良い実用的ウシ胚�   品質診断装置�

表1 呼吸測定胚の移植実証試験�

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先端技術を活用した農林水産研究高度化事業/研究紹介2006

 家畜排せつ物の排出量は全国で約9000万トンと非常に多く、適正処理されていないと悪臭問題や地下水汚染等の環境問題

を引き起こします。そのために、悪臭や後処理の必要な副生物を発生することなく、家畜排せつ物をそのまま完全燃焼させる超

臨界水燃焼技術を開発するとともに、この時に得られる熱エネルギーを発電や暖房等に有効利用する効率的なシステムの構築

を図ります。�

静岡大学 工学部  TEL 053-478-1165

23

超臨界水中燃焼法による家畜排せつ物からの熱エネルギー回収技術�

ねらい・�目的�

1

(1)世界に先駆けて、家畜排せつ物を連続的に超臨界水中燃焼処理するためのベンチプラントを製作しました。(図1)�

(2)豚ぷんを650℃、15MPa、15分の滞留時間で10時間連続処理すると、豚ぷん中の炭素はほぼ100%燃焼し、排水中の有

機炭素は平均4ppmまで低減できました。(図2)�

(3)排水中には微量のアンモニアや硝酸、亜硝酸イオンが溶解していましたが、窒素分の合計は平均3ppm程度であり排水基準

の100ppmを大きく下回りました。�

(4)豚ぷん中の窒素成分は大部分が無害な窒素ガスになりました。ごく一部が亜酸化窒素に転換しましたが、排ガス中の濃度は

平均5ppm程度に抑えられ、またNOxの生成はありませんでした。�

(5)図1の装置を用いて超臨界水中燃焼により家畜排せつ物の100時間連続処理を行った結果、閉塞などの問題なく連続処理

が可能な装置であることを実証しました。�

(6)理想的には、豚ぷん1トン(含水率80wt%)の処理に必要なエネルギーは4.2×106kJ必要とし、処理後には7.1×106kJ

のエネルギーが排出されます。そのため、差し引き2.9×106kJの余剰の熱エネルギーを回収・利用できることがわかりま

した。�

研究の�成果�

2

 今後、本研究で開発した装置をベースにして、装置のスケールアップを図っていく予定です。�普及・実用化�の状況�

3

分 野�

畜産・資源利用�

適応地域�

全 国�1546

〔研究タイプ〕�

広域ニーズ・シーズ対応型地域�

〔研究期間〕 �

2003年度~2005年度(3年間)�

〔中核機関・研究総括者〕�

静岡大学 佐古 猛�

〔共同機関〕 �

静岡県中小家畜試験場、室蘭工業大学�

図1 連続式超臨界水中燃焼装置�

図2 排水中の有機炭素濃度と�   炭素の燃焼率の経時変化�

内容積16L、処理量10kg/日、最高使用温度650℃、最高使用圧力20MPaのベンチプラント。�

有機炭素�

炭素の燃焼率�

経過時間[h]�

炭素の燃焼率﹇%﹈�

排水中の有機炭素濃度﹇PPM﹈�

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24

先端技術を活用した農林水産研究高度化事業/研究紹介2006

森林総合研究所 森林昆虫研究領域昆虫管理研究室  TEL 029-873-3211

分 野�

林業-病害�

適応地域�

本州以南�1550

 マツ材線虫病で枯死したマツの木の中に生息するマツノマダラカミキリを昆虫病原菌ボーベリア・バッシアーナに感染させて

殺し、環境に影響の少ない方法で、枯死木を処理するために、使用する菌株の製剤化に向けた特性を明らかにするとともに効果

を実証し、微生物農薬としての登録を図ります。�

昆虫病原菌を利用したマツノマダラカミキリ成虫駆除法の確立�

ねらい・�目的�

1

(1)使用する菌株の培養適温と高温耐性を明らかにし、最適な液体培地と不織布製剤用の培地を開発しました。�

(2)人工飼育の容易なキボシカミキリの日齢の若い成虫を代替昆虫として利用する製剤の生物検定法を開発しました。�

(3)各地の野外試験で、不織布製剤の施用によって羽化脱出した成虫を14日以内にほとんど殺虫することができました。�

(4)感染虫は摂食量が減少し、死亡数日前からほとんど後食しなくなります。その結果、マツノザイセンチュウの枝への侵入が阻

止でき、防除効果が期待できます。�

研究の�成果�

2

 本研究で得られた成果(データ)をもとに、Beauveria bassiana F-263株の不織布製剤を微生物農薬として登録しました。�普及・実用化�の状況�

3

〔研究タイプ〕�

広域ニーズ・シーズ対応型�

〔研究期間〕 �

2003年度~2005年度(3年間)�

〔中核機関・研究総括者〕�

独立行政法人森林総合研究所 島津 光明�

〔共同機関〕 �

秋田県森林技術センター、滋賀県森林センター、�

東京農工大学、日本大学、鹿児島大学、日東電工株式会社�

図2 Beauveria bassiana接種虫と無接種虫が枝に伝播させた線虫数のちがい��

図1 Beauveria bassiana�   F-263株の温度別菌糸成長(14日後)�

図3 野外における死体上の�   Beauveria bassiana �   F-263の分生子数�

野外における成虫駆除試験�

菌株の生物農薬化�

施用した菌の動態解明�

表1 全期間にわたる試験結果の概要(成虫殺虫率%)�

(井筒屋)�鹿大�(日東)�滋賀森林セ�日大�農工大�秋田�島根�福岡�佐賀�山口��

95�52�94�97�92�96�99�93�-�-�-

2003�解放区��

2004解放区��

閉鎖区�2005

解放区��

閉鎖区�

88�61�95�83�71�100�89�96�92�100�-

-�100�-�96�-�-�100�94�-�-�-

-�-�100�71�-�98�91�-�-�-�90

-�95�-�91�-�-�96�98�-�-�93

年度�試験他�

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先端技術を活用した農林水産研究高度化事業/研究紹介2006

 地域産材の利活用を促進させることを目的として、林地で葉枯らし乾燥され、その後ストックヤードで桟積み天然乾燥された

骨太スギ製材(15cm角)を用いた真壁仕様の木造住宅を開発します。�

京都大学生存圏研究所  TEL 0774-38-3674

25

自然素材活用型真壁仕様木造軸組み架構の開発�

ねらい・�目的�

1

(1)木造軸組架構の基本となる構造として、通し柱と土台に15cm角のスギ正角材を用い、一つの構面を材幅15cm、材せい

24cmのスギ平角材を挿し肘木構法により構成し、直交する方向の構面を厚さ4cm、材せい24cmのスギ厚板2枚を挟み

梁構法によって構成する2方向半剛節ラーメン軸組架構を開発しました。�

(2)挟み梁構面には、1枚が56.5cm×52.3cm×6cm、重さ約20kg程度のプレファブ土壁(図1)を所定枚数挿入して小壁、腰

壁、袖壁等のいわゆる「雑壁」を構成する壁体を作製し、その現場施工性と耐力壁としての性能を評価しました。�

(3)厚さ4cm、材せい24cmの厚板を柱の間に落とし込んで構成するいわゆる「落とし板壁」構面(図1)の水平せん断性能を実

験的に評価しました。�

(4)厚さ35mmのスギ厚物合板を熱盤プレスで効率的に製造する方法を開発しました。この方法によれば、たとえ35mmの厚

物合板でも比較的短時間に接着が完了し、薄物同様の信頼性の高い合板を得ることができました。�

研究の�成果�

2

(1)上記の成果は、生存圏研究所に

建設された木造「エコ住宅」の基

本構造要素に採用されました。�

(2)エコ住宅の構造計算は、上記の

実験結果で得られたデータを利

用して大地震に対しても安全で

あること確認しました。�

(3)新開発の圧密化木ダボや高密度

竹釘等の自然素材接合法を多用

する事で、環境に負荷を掛けない、

21世紀に相応しい、真に健康的

な木造軸組み構法住宅の実現が

可能です。�

普及・実用化�の状況�

3

分 野�

林業-加工�

適応地域�

全 国�1513

〔研究タイプ〕�

独創的現場シーズ活用型�

〔研究期間〕 �

2003年度~2005年度(3年間)�

〔中核機関・研究総括者〕�

京都大学生存圏研究所 小松幸平�

〔共同機関〕 �

徳島県立農林水産総合技術センター、�

ティエスウッドハウス協同組合�

図1 自然素材を活用した真壁仕様の木造軸組架構の基本となる構造�

プレファブ�土壁パネル�

パネル用骨組�49×100��

落し板壁�

大引�120×120

土台�150×150

柱�150×150

梁�150×240

鋏梁�2ー40×240

小梁�120×180

小屋梁�150×240

両くさび�60×25 L180

鋏梁�2ー40×240

肘木60×100

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26

先端技術を活用した農林水産研究高度化事業/研究紹介2006

北海道立林産試験場技術部合板科  TEL 0166-75-4233(393)�

分 野�

林業-加工�

適応地域�

全 国�1524

 合板製造時に用いる接着剤に導電性物質を混入し、その接着層に通電することで発熱する発熱合板の基本特性を明らかにし

つつ、デスクヒーターやパネルヒーターなどのパーソナル暖房製品や、床暖房、壁暖房などの住宅暖房システムの開発を図りま

す。�

導電性物質を利用した発熱合板の開発と木質系暖房用製品への応用�

ねらい・�目的�

1

(1)電気用品安全法に適合させるために、絶縁性能などの安全性を確立しました。また、発熱性能に関する基本的な特性を明ら

かにしました。�

(2)フラットなパネルヒーター、フットヒーターや成型加工を応用した暖房機能を有する椅子の試作を行い、その性能を調べまし

た(図1、図2)。�

(3)床暖房や屋根融雪に応用可能な発熱パネルを開発しました。このパネルは床暖房や壁暖房、屋根の下地に共通で用いるこ

とができます。�

(4)合板工場で発熱合板を製造する方法を確立しました。�

(5)試験棟を建設し、床暖房への応用可能性を確認しました。また、屋根融雪試験も行いました(図3、図4)。�

(6)木質系暖房用製品の市場調査を行い、好ましい製品開発コンセプトを決定するための基礎資料としました。�

研究の�成果�

2

 製品化するための製品認定の作業を行っています。床暖房などについては、施工性の改善等を検討し、システムとして提案で

きるようにしています。�普及・実用化�の状況�

3

〔研究タイプ〕�

地域競争型�

〔研究期間〕 �

2003年度~2005年度(3年間)�

〔中核機関・研究総括者〕�

北海道立林産試験場 西宮 耕栄�

〔共同機関〕 �

北海道合板株式会社�

図1 フットヒータ� 図2 発熱性能を有する椅子�

図3 発熱パネルによる屋根融雪試験の様子� 図4 発熱パネルによる床暖房試験�

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先端技術を活用した農林水産研究高度化事業/研究紹介2006

 沖合底びき網漁船における省人・省力化を図る漁獲物の冷却システムを開発します。さらに、陸揚げ後の漁獲物について科学

的分析を行い、鮮魚や加工原料としての市場での付加価値を高める、漁獲物の合理的な高鮮度保持技術の確立を目指します。�

北海道立中央水産試験場 加工利用部(主任研究員 阪本正博)  TEL 0135-23-8703

27

沖合底びき網漁船における漁獲物高鮮度保持技術の確立�

ねらい・�目的�

1

(1)船上での滅菌海水と砕氷による冷却海水浸漬とフィッシュポンプ方式による陸揚げを行う省力な漁獲物の冷却システムを開

発しました(図1)。�

(2)省力船上で冷却海水浸漬を行ったホッケなどは、従来の氷掛けに比べ鮮度保持効果が認められました(表1)。�

(3)滅菌海水を用いフィッシュポンプ方式により陸揚げしたホッケ、スケトウダラは従来のモッコ網を用いたクレーン方式に比べ、

表面の一般生菌数を百分の一に低減させることができました(図2)。�

(4)省力船が陸揚げしたホッケの産地取引価格は一般船に比べ、徐々に価格が上昇しました。これは鮮度保持の取り組みにより

差別化が図られた効果です。�

(5)スケトウダラ、ソウハチガレイの鮮度保持に適したシャーベット海水氷の冷却条件を明らかにしました。1~2%塩分のシャー

ベット海水氷が最も効果的でした。�

研究の�成果�

2

 省力船が陸揚げしたホッケは鮮度が良好で付着する菌数の少ないこと等から、フライ素材、調味加工品等フィレー加工品として

流通され始めました。これにより、年間6千万円以上の新たな市場(末端価格)が誕生しました。�普及・実用化�の状況�

3

分 野�

水産-品質�

適応地域�

全 国�1526

〔研究タイプ〕�

地域競争型�

〔研究期間〕 �

2003年度~2005年度(3年間)�

〔中核機関・研究総括者〕�

北海道立中央水産試験場 成田 正直�

〔共同機関〕 �

小樽機船漁業協同組合、(社)北洋開発協会�

図1 省人・省力化を図った漁獲物の冷却システム� 図2 ホッケおよびスケトウダラの魚体表面の一般生菌数�省力船はフイッツュポンプ方式、�一般船はクレーン方式で陸揚げ後の拭き取り検体�

表1 省力船で陸揚げしたホッケの鮮度保持効果�

省力船は冷却海水浸漬 一般船は従来の氷掛け�

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28

先端技術を活用した農林水産研究高度化事業/研究紹介2006

(独)水産総合研究センター・瀬戸内海区水産研究所 業務推進部 業務推進課  TEL 0829-55-0666

分 野�

水産-産地表示�

適応地域�

全 国�1788

 市場では、国内産以上の輸入アサリが流通しており、2005年の統計では約70%程度が中国から輸入されていますが、流通

品のなかには産地が正確に表示されていない事例が見られ、アサリの産地表示に関する国民の疑念が高まっています。そのた

めに、アサリについて確度と信頼性の高い産地判別技術の開発が喫緊の課題です。�

輸入アサリの偽装表示対策技術開発�

ねらい・�目的�

1

(1)輸入量の多い中国産と国内産アサリの識別に関して、生鮮品のみならずあらゆる加工品にも適用可能なPCR-RFLPによる

判別技術を開発しました(図1、2)。�

(2)(1)に加えて、DNAデーターベースやマイクロサテライトを特定することにより、将来的にはさらに詳細な識別も可能となる

基礎を築きました。�

研究の�成果�

2

成果をマニュアル化し、実際の検査を行う(独)農林水産消費技術センターへ受け渡し、検査現場で活用されています。�普及・実用化�の状況�

3

〔研究タイプ〕�

緊急課題即応型�

〔研究期間〕 �

2006年度(1年間)�

〔中核機関・研究総括者〕�

(独)水産総合研究センター 浜口 昌巳�

〔共同機関〕 �

(株)東和科学�

図1 国内産及び中国産アサリの�   判別用PCR-RFLPの結果�  (MはDNAマーカー)�

図2 輸入アサリ判別の流れ�

国内産�中国産�

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29

先端技術を活用した農林水産研究高度化事業/研究紹介2006

 各国での安全性審査の承認を経て販売されていたBt11系統の種子に、我が国で安全性が確認されていない遺伝子組換えト

ウモロコシBt10系統が混入していたことが判明し、緊急にBt10系統を定量する技術の開発が必要となりました。そこで、混入

率を測定できる組換えDNA検知技術の開発を図りました。�

食品総合研究所GMO検知解析ユニット    TEL 029-838-8079

29

遺伝子組換えトウモロコシBt10の定量分析法の開発�

ねらい・�目的�

1

(1)Bt10系統定量検知用のPCR用プライマーの特異性が高いことを確認するとともにPCRの反応条件を最適化しました。ま

た、Bt10系統の定量PCR分析法において安定した検量線を作成するために必要となる標準分子のプラスミドの構築、高度

精製、製造を行い、試薬としての提供を可能としました。�

(2)分析法としての妥当性を確認するためにブラインド試料を作製し、均一性を確認後、協力試験機関に配付し、試験室間共同試

験を実施して測定機種ごとに混入率を算出するための係数(内標比)を決定するとともに、ブラインド試験のデータを統計解

析し、開発した分析法の妥当性を確認しました。�

(3)妥当性の確認された定量法を用いることで、わが国に輸入されるトウモロコシにBt10系統の混入が見つかった際には、そ

の混入率を測定することで量的なリスク管理が可能となりました。�

研究の�成果�

2

 分析に必要となる標準分子プラスミド、PCR用プライマー、TaqMan_プローブを試薬として販売しています。�普及・実用化�の状況�

3

分 野�

リスク管理�

適応地域�

全国�1785

〔研究タイプ〕�

全国領域リスク管理型�

〔研究期間〕 �

2005年度(1年間)�

〔中核機関・研究総括者〕�

農研機構食品総合研究所 日野 明寛�

〔共同機関〕 �

独立行政法人肥飼料検査所、株式会社ニッポンジーン�

Bt10を特異的に検知するPCR条件の検討�

PCRで増幅したDNAをプラスミド上につないで安定した検量線を作成する�

特異的にBt10を検

知できるように設計�

Bt10系統検知用�標準プラスミドDNA

Non-GM

   �

トウモロコシ�

Bt11

GA21

T25

Event 176

Bt10

Non-GM

ダイズ�

GM

ダイズ�

オオムギ�

コムギ�

コメ�

GMトウモロコシ�

トウモロコシ�内在性配列の検知�

Bt10�特異的配列の検知�

試薬として供給し、標準分析法とする。�

Bt11 Zein Bt10 H M G

SSIIb

(K:各組換え品種特有の定数)�

Bt10系統の混入率算出�

GM混入率=� ×� ×100Bt10しか持っていないDNA配列の数�

トウモロコシ特有のDNA配列の数� K

1

一定時間にどれだけDNAが増幅したかを調べ、Bt10の混入率を測定�

Page 31: Research project for utilizing advanced technologies in ...Research project for utilizing advanced technologies in agriculture,forestry and fisheries. R esearch and D evelopment Agriculture

30

目的・趣旨�

  本事業は、生産及びこれに関連する流通、加工等の現場に密着した農林水産分野の試験研究の迅速な推進を図

るため、優れた発想を活かし、先端技術を活用した質の高い試験研究を促進することを目的として、研究課題を

産学官連携による共同研究グループから公募し、採択された案件に対し研究を委託するものです。�

応募資格�

  本事業は、下記のⅠ~Ⅳセクターのうち2以上のセクターの研究機関から構成される共同研究グループでの応募

が必須となります。共同研究グループを構成する機関は、国からの委託を受ける中核機関と、中核機関からの委

託を受ける共同機関から構成されます。�

    セクターⅠ 都道府県、市町村及び公立試験研究機関�

    セクターⅡ 大学及び大学共同利用機関�

    セクターⅢ 独立行政法人、特殊法人及び認可法人�

    セクターⅣ 民間企業、公益法人、NPO法人、協同組合及び農林漁業者�

事業の概要�

① 研究領域設定型研究�

A 全国領域設定型研究�

ア.一般型�

農林水産施策推進上必要な全国ベースでの研究領域に対応した研究であって、イ.以外のもの�

イ.リスク管理型�

食品安全、動物衛生及び植物防疫施策の推進上必要な全国ベースでの研究領域に対応し、行政と密接

に連携して行う研究�

ウ.輸出促進・食品産業海外展開型�

農林水産物・食品の輸出促進のための生産、流通等の技術開発に関する研究及び食品産業の海外展開

のための製造・加工等の技術開発に関する研究�

B 地方領域設定型研究�

農林水産施策推進上必要な地方ベースでの研究領域に対応した研究�

② 地域活性化型研究�

A 地域競争型研究�

地域固有の特産作物等地域資源又は地域の技術シーズを活用し、地域産業を活性化する研究�

B 広域ニーズ・シーズ対応型研究�

複数の地域が抱える共通問題を効果的かつ効率的に解決するための研究�

C 現場連携支援実用化促進型研究�

コーディネート機関による連携調整の下、地方大学をはじめとする産学官の研究機関等の関連機関がネッ

トワークを形成し、研究成果の普及・実用化を加速化させる研究�

③ 府省連携型研究�

他府省の基礎・基盤的研究で生まれた技術シーズや他分野の研究成果を農林水産分野に積極的に応用する

研究�

④ 緊急課題即応型調査研究�

農林水産分野の緊急課題に対応して1年以内の短期間で実施する調査研究�

研究期間�

  原則3年以内�

公募時期・審査方法�

  研究課題の公募は1~2月に行い、外部専門家による書面審査、ヒアリング審査の結果に基づき 採択課題を決定。�

[応募・採択状況の推移]

平成14年度 平成15年度 平成16年度 平成17年度 平成18年度�

266 389 483 457 365�

30 54 83 94 101�

11% 14% 17% 20% 27%

応募件数�

採択件数�

採択率�

(参考)先端技術を活用した農林水産研究高度化事業の概要�(平成19年度)�