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WP509 (v1.0) 2019 2 20 japan .xilinx.com 1 © Copyright 2019 Xilinx, Inc. XilinxXilinx のロゴ、 AlveoArtixISEKintexSpartanVirtexVivadoZynq、 およびこの文書に含まれるその他の指定されたブランドは、 米国およびその他各国のザイ リ ン クス社の商標です。 すべてのその他の商標は、 それぞれの保有者に帰属し ます。 この資料は表記のバージ ョ ンの英語版を翻訳したもので、 内容に相違が生じる場合には原文を優先します。 資料によっては英語版の更新に対応していないものがあります。 ザイリンクス Zynq ® UltraScale+™ RFSoC は、 1 つのデバイスで RF 変換まで可能なプラ ッ ト フォームを提供し、 非常に要件の厳しいア プリケーションに対応します。 このよ うなデバイスのダイレク ト ンプリング RF 機能を よ り 正確に特性評価するには、 新しい性能 メ ト リ ク スが必要です。 ホワイ ト ペーパー : Zynq UltraScale+ RFSoC WP509 (v1.0) 2019 2 20 RF サンプリング データ コンバーターの 主要なパラ メーターの理解 概要 ダイレクト サンプリング RF デザインでは、データ コンバーターは通常、 SNR ENOB どの従来の メ ト リ ク スではな く 、 NSDIM3、 および ACLR パラメーターによって特性評 価されます。 ソフ ト ウェア定義無線および類似した狭帯域のユース ケースでは、 検知対象 帯域に混入するデータ コンバーター ノ イ ズ を定量化する こ と が よ り 重要ですが、 従来の データ変換メ ト リ クスはこの用途に適していません。 このホワイト ペーパーでは、 まず最初に、 従来の ADC パラ メーター、 すなわち SFDRSNRSNDR (SINAD)ENOB の基盤となる数学的関係を示し、 これらのメ ト リ クスがスー パーヘテロダイン レシーバーなどの広帯域アプ リ ケーシ ョ ンにおけるデータ コンバーター の特性評価に適している理由を示します。 次に、 これらのメ ト リ クスが、 SDR などのダイ レクト RF サンプリング アプ リ ケーシ ョ ンのよ う にデータ コンバーターが全ナイキス ト帯 域幅で機能しない場合には適していない理由を説明します。 NSDIM3、 および ACLR 導出 と 測定について、 ザ イ リ ン ク ス RF データ コンバーター評価ツールを使用して RF デー タ変換パラ メーターを測定する方法を含めて、 詳し く説明します。

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WP509 (v1.0) 2019 年 2 月 20 日 japan.xilinx.com 1

© Copyright 2019 Xilinx, Inc. Xilinx、 Xilinx のロゴ、 Alveo、 Artix、 ISE、 Kintex、 Spartan、 Virtex、 Vivado、 Zynq、 およびこの文書に含まれるその他の指定されたブランドは、米国およびその他各国のザイリンクス社の商標です。 すべてのその他の商標は、 それぞれの保有者に帰属します。

この資料は表記のバージ ョ ンの英語版を翻訳したもので、 内容に相違が生じる場合には原文を優先します。 資料によっては英語版の更新に対応していないものがあります。

ザイ リ ンクス Zynq® UltraScale+™ RFSoC は、 1 つのデバイスで RF 変換まで可能なプラ ッ ト フォームを提供し、 非常に要件の厳しいアプリ ケーシ ョ ンに対応します。 このよ う なデバイスのダイレク ト サンプリ ング RF 機能をよ り正確に特性評価するには、 新しい性能メト リ クスが必要です。

ホワイ ト ペーパー : Zynq UltraScale+ RFSoC

WP509 (v1.0) 2019 年 2 月 20 日

RF サンプリング データ コンバーターの主要なパラメーターの理解

概要

ダイレク ト サンプリ ング RF デザインでは、データ コンバーターは通常、 SNR や ENOB などの従来のメ ト リ クスではなく、 NSD、 IM3、 および ACLR パラ メーターによって特性評価されます。 ソフ ト ウェア定義無線および類似した狭帯域のユース ケースでは、 検知対象帯域に混入するデータ コンバーター ノ イズを定量化するこ とがよ り重要ですが、 従来のデータ変換メ ト リ クスはこの用途に適していません。

このホワイ ト ペーパーでは、 まず最初に、 従来の ADC パラ メーター、 すなわち SFDR、SNR、 SNDR (SINAD)、 ENOB の基盤となる数学的関係を示し、 これらのメ ト リ クスがスーパーヘテロダイン レシーバーなどの広帯域アプリ ケーシ ョ ンにおけるデータ コンバーターの特性評価に適している理由を示します。 次に、 これらのメ ト リ クスが、 SDR などのダイレク ト RF サンプリ ング アプリ ケーシ ョ ンのよ うにデータ コンバーターが全ナイキス ト帯域幅で機能しない場合には適していない理由を説明します。 NSD、 IM3、 および ACLR の導出と測定について、ザイ リ ンクス RF データ コンバーター評価ツールを使用して RF データ変換パラ メーターを測定する方法を含めて、 詳し く説明します。

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RF サンプリング データ コンバーターの主要なパラメーターの理解

はじめに真空管技術に基づくアナログ データ コンバーターは、 第二次世界大戦中にメ ッセージ暗号化システム用と して開発されました。 それ以来、 業界はデータ コンバーターの性能を定量化するための主要なパラ メーター (SNR、 SFDR、 ENOB など) を定義し、 採用してきました。 これらの歴史的なパラ メーターは、 ミ キサーとフ ィルターを使用してチャネルを選択する従来のアーキテクチャ と、 従来のナイキス ト レート (すなわち、 低周波数サンプリ ング) データ コンバーター用に開発されています。

近年、 ソフ ト ウェア定義無線 (SDR) アプリ ケーシ ョ ンに実装するための多くの新しい RF サンプリ ング データ コンバーターが開発されていますが、 従来のデータ コンバーターに採用されていたパラ メーターは、 RF サンプリ ング コンバーターを正確に特性評価できません。 特にダイレク ト RF サンプリ ング アプリ ケーシ ョ ンでは、 RF サンプリ ング データ コンバーターの動的性能を定義するために、 ノ イズ スペク トル密度 (NSD)、 3 次相互変調 (IM3)、 隣接チャネル漏洩電力比 (ACLR) といった新しい一連のパラ メーターが必要になり ます。

ザイ リ ンクスは以前から、 各種の SDR アプリ ケーシ ョ ンに対応する柔軟性の高いデジタル信号処理ソ リ ューシ ョ ンを提供してきました。 近年においては UltraScale™ アーキテクチャ プログラマブル ロジッ ク (PL)、 SD-FEC (Soft Decision FEC)、 マルチチャネル RF-ADC および RF-DAC を統合した、 業界初の Zynq® UltraScale+™ RFSoC を リ リースしました。 これらの RF-ADC (12 ビッ ト ) および RF-DAC (14 ビッ ト ) の NSD、 IM3、 および ACLR メ ト リ クスは、 ト ップク ラスのアナログ IC ベンダーが提供する同じ分解能ビッ トのデータ コンバーターに引けをと り ません。 しかも Zynq UltraScale+ RFSoC は、 消費電力の削減、 プログラマビ リティの向上、 集積度の向上を実現しています。 これらによ り、 Zynq UltraScale+ RFSoC を採用したシステム設計者は、 柔軟性の高い SDR アプリ ケーシ ョ ンを開発する と同時に、 競合他社のダイレク ト RF サンプリ ング ソ リ ューシ ョ ンに関連する多くの課題にも対処できます。

このホワイ ト ペーパーでは、 従来のデータ コンバーターの仕様と新しい RF サンプリ ング データ コンバーターの仕様を説明し、 RF サンプリ ング コンバーター用に推奨されるパラ メーターを取り上げます。

従来の ADC の仕様: SFDR、 SNR、 SNDR、 ENOB

スプリアスフリー ダイナミ ック レンジ (SFDR)スプリ アスフ リー ダイナミ ッ ク レンジ (SFDR) は、 スプ リアス成分が基本信号に干渉するか歪みを発生させる前の、 データ コンバーターが使用可能なダイナミ ッ ク レンジの測定によ く使用されます。 SFDR は、 出力に含まれるピーク スプ リアス信号の二乗平均平方根 (RMS) 値に対する基本正弦波信号の RMS 値の比と して定義され、0Hz (DC) からデータ コンバーターのサンプリ ング レートの 2 分の 1 (すなわち、 fs/2) までの周波数範囲で測定されます。 ピーク スプリ アス成分は、 高調波スプリ アスまたは非高調波スプリ アスです。

SFDR は次の式で計算できます。

式 1

または、 SFDR(dBc) = 基本信号の振幅 – 最大スプリアスの振幅

SFDR dBc( ) 20Fundamental Amplitude RMS( )Largest Spur Amplitude RMS( )--------------------------------------------------------------------------

log=

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RF サンプリング データ コンバーターの主要なパラメーターの理解

図 1 に、 Zynq UltraScale+ RFSoC の RF-ADC の SFDR と高調波性能を示します (240MHz で振幅が –1dBFS の信号を入力)。ZCU111 評価キッ トに含まれるザイ リ ンクス RF データ コンバーター評価ツールで測定する と、 SFDR = 79.0dBc になり ます。[参照 1]

上記の FFT 測定では、 最大スプリ アスは入力信号の 3 次高調波です。 データ コンバーターの SFDR は、 多くの場合、 入力信号の 2 次または 3 次高調波によって制限されますが、 注意深いフ ィルター設計と最適な周波数プランニングによ り、 通常は HD2 または HD3、 あるいはその両方を回避し、 SFDR を大幅に向上させるこ とが可能です。 HD2 と HD3 を除去した図 1 の SFDRxH23 は 86.42dBc です。

信号対ノイズ比 (SNR)信号対ノ イズ比 (SNR) は、 通常はデータ コンバーターのノ イズの定量化に使用されるパラ メーターです。 SNR はノ イズの電力に対する入力信号の電力の比であ り、 一般に dB で表されます。 式 2 に示すよ うに、 SNR は信号振幅と ノ イズ振幅の RMS 値を用いて計算するこ と もできます。

式 2

X-Ref Target - Figure 1

図 1: ザイリンクス Zynq UltraScale+ RFSoC の 12 ビッ ト RF-ADC (fin = –1dBFS@240MHz、 fs = 3.93216GSPS)、ザイリンクス RF データ コンバーター評価ツールで測定した SFDR

SNRPowersignalPowernoise--------------------------=

Amplitudesignal RMS( )

Amplitudenoise RMS( )-----------------------------------------------

2

=

20Vin RMS( )

VQ RMS( )------------------

log=

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RF サンプリング データ コンバーターの主要なパラメーターの理解

SNR は通常、 高周波数ではサンプリ ング ジッターのために低下します。 ノ イズには次の 3 つのソースがあ り ます。

• 量子化ノ イズ

• ADC の熱ノ イズ

• ジッターまたはサンプリ ングのばらつき ノ イズ

フルスケールの正弦波が入力される ADC では、理論的な最大 SNR は量子化ノ イズから導かれます。 SNR を表す式はも う 1 つあり ます。

式 3

この式は全ナイキス ト帯域幅に適用されます。 こ こで、 N は理想的な ADC のビッ ト数です。 この式によ り、 (高調波歪みを含まない) 理想的な N ビッ ト データ コンバーターに対する正弦波入力を想定する と、 全ナイキス ト帯域幅での可能な最善の SNR が求められます。 データ コンバーターの SNR は、 コンバーター自体の熱ノ イズとサンプリ ング ク ロ ッ クの位相ノ イズによっても制限されます。 入力信号の帯域幅がナイキス ト レート よ り も低い場合、 SNR は向上します。 この式の詳しい導出方法は、 「付録」 に記載されています。 合わせて [参照 2] も参照してください。

信号対ノイズおよび歪み比 (SNDR)SNDR (SINAD と も呼ばれる ) は、 入力が正弦波である場合の、 (DC を除く ) 出力側の (a) 総ノ イズ電力と (b) その他すべてのスペク トル成分の電力にその他のすべての高調波成分の電力を加えた和の RMS に対する、 信号電力の RMS の比です。

SNDR には全ナイキス ト帯域幅におけるすべてのノ イズと スプリ アスが含まれるため、 SNDR はデータ コンバーターの動的性能を測定するための主要なパラ メーターの 1 つと して採用されています。 SNDR は入力信号の品質を示します。 SNDR が高いほど、 ノ イズとスプリ アスから区別される入力電力が強いこ とを意味します。 SNDR は次の式で表すこ とができます。

式 4

こ こで、 PSignal は検知対象信号の平均電力で、 PNoise と PDistortion はそれぞれノ イズ成分と歪み成分の平均電力です。 SNDR は、一般に dB (デシベル)、 dBc (キャ リ アを基準とするデシベル)、 または dBFS (フルスケールを基準とするデシベル) 単位で表されます。

SNDR を表す式はも う 1 つあり ます。

式 5

SNDR は SNR 仕様と THD 仕様を組み合わせたものであ り、 すべての望まし くない周波数成分と入力周波数を比較し、 これによってデータ コンバーターの動的性能の全体的な尺度を示します。

有効ビッ ト数 (ENOB)有効ビッ ト数 (ENOB) は、 データ コンバーターの全ナイキス ト帯域幅にわたる入力信号の変換品質 (ビッ ト単位) を特性評価するために採用されたパラ メーターです。 ENOB は、 コンバーターが理論的に完全なコンバーターであるかのよ うに動作するこ とを想定しています。 完全なデータ コンバーターにはまったく歪みがなく、 発生する ノ イズは量子化ノ イズだけであるため、 SNR は式 3 の SNDR に等し くな り ます (すなわち、 SNR(dBFS) = 6.02N + 1.76)。 したがって、次式のよ うに、ENOB は SNDR 仕様の別の表現です。

式 6

こ こで、 SNDR(dBFS) はフルスケール入力信号を想定しています。

ただし、 理想的でないデータ コンバーターにおける ノ イズには、 デバイスの熱ノ イズ、 出力コードの欠落、 高調波、 AC/DC の非直線性、 ゲイン誤差とオフセッ ト誤差、 アパーチャ ク ロ ッ クの位相ノ イズやジッターなども含まれるため、 SNDR と ENOB は低下します。 外部バイアス リ ファレンス と電源レール上のノ イズも、 ENOB を低下させます。 詳細は、 [参照 3] を参照して ください。

SNR 6.02N 1.76dB+=

SNDR 10PSignal

PNoise PDistortion+-----------------------------------------

10log=

SNDR 20 10SNR–10------------

10THD10----------

+10log=

ENOB N( )SNDR dBFS( ) 1.76–

6.02----------------------------------------=

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RF サンプリング データ コンバーターの主要なパラメーターの理解

しかも、 非直線性が原因で入力周波数と共に THD が低下するのと同じ理由で、 周波数が高くなるにつれて ENOB 値は低下します。 ENOB は SNDR から導かれ、 SNDR は THD と SNR によって決ま り ます。 データ コンバーターの正確な ENOB を示すために、 データシートには詳しい仕様と要件が記載されています。

上記の基準のため、 ほとんどのアナログ データ コンバーター IC ベンダーは、 一般的に (特にデータシートの表題で) 理想的なシナリオでの ENOB 値を強調する傾向があ り ます。 一方、 多くのシステム技術者や購買管理者は、 ENOB の測定値とデータシートの理想値が異なるこ とを疑問視しています。 ENOB の重要なポイン トは次のとおりです。

• データ コンバーターのデータシートの表題に通常記載されている 「ビッ ト数」 (12 ビッ ト または 14 ビッ ト ) は、 デジタル ビッ ト分解能または電圧分解能を指します。 これは ENOB とは関係あ り ません。

• ENOB は主に、 ノ イズ、 非直線性、 および入力周波数によって決ま り ます。

• ENOB は多くの外部の不確実性 (ク ロ ッ ク ソース、 電源など) によって低下します。

• ENOB は全ナイキス ト帯域幅 (DC ~ fs/2) で計算されます。

• SDR などのダイレク ト RF システムを解析する場合、 ENOB は適切なメ ト リ クスではあ り ません。

従来のデータ コンバーター メ ト リクスと SDR定義上、 SFDR、 SNR、 SNDR、 および ENOB はすべて、 シングル トーンの正弦波信号を入力したデータ コンバーターの全ナイキス ト帯域幅から得られる メ ト リ クスです。

図 2 に、 従来の高 IF スーパーヘテロダイン レシーバーのアーキテクチャを示します。 この例では、 1,800MHz の RF 入力が、1,500MHz のローカル オシレーター (LO) と ミ キシングされて、 300MHz の中間周波数 (IF) にダウン コンバージ ョ ンされます。この IF 信号は、 245.76MSPS で ADC をサンプリ ングするこ とによ り、 54.24MHz にエイ リ アシングされます。 この場合、 検知対象信号は ADC のナイキス ト帯域幅の大半を占有します。 したがって、 SNR および ENOB パラ メーターは、 ADC の動的性能の特性評価に使用するには有効です。

これをソフ ト ウェア定義無線 (SDR) に使用されるダイレク ト RF サンプリ ングと比較する と、 ENOB はデータ コンバーターを正確に特性評価できるパラ メーターではないこ とが明らかになり ます。 図 3 の SDR の例では、 検知対象信号を含む大きな帯域幅が RF-ADC によってサンプリ ングされ、 デジタル ド メ インでダウン コンバージ ョ ンとフ ィルタ リ ングが実行されます。ダイレク ト RF の実装で最も大きな問題となるのは、 ダウンサンプリ ングおよびフ ィルタ リ ングされる帯域内のアーチファ クトです。 帯域外の歪みは適切な周波数プランニングによって除去できるため、 全ナイキス ト帯域幅で定義される SNR、SFDR、 および ENOB は適切ではあ り ません。

最も重要なメ ト リ クスは、 全ナイキス ト帯域幅で定義される ENOB、 SNR、 SFDR ではなく、 感度です。 NSD、 IM3、 および ACLR は、 間引きされた検知対象帯域のノ イズと歪みの真の影響を反映するため、 RF サンプリ ング データ コンバーターの性能を定量化するのに適切なパラ メーターです。

X-Ref Target - Figure 2

図 2: 高 IF スーパーヘテロダイン レシーバーのシステム ブロック図

WP509_02_010719

90°0°

I

Q

NCO

ADC

DDC 122 490245 367

245.76MS/s

ChannelSelect

BandSelect

ImageReject

LO

1.5GHz

RF = 1800MHz

VGAAAF

BPF

IF = 180-360MHz

BPF BPF BPF

Fs

LNA

FPGA DFE

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RF サンプリング データ コンバーターの主要なパラメーターの理解

RF サンプリング データ コンバーターのアプリケーシ ョ ン

次に挙げるアプリ ケーシ ョ ンは、 使用可能な帯域幅が全ナイキス ト帯域幅よ り も狭い SDR システムの例です。

• 4G LTE (Long Term Evolution) マルチキャ リ ア

• 5G Massive MIMO (6GHz 以下)

• マイクロ波バッ クホール

• フェーズド アレイ レーダー

4G LTE マルチキャリア

ほとんどの先進国で 4G LTE の普及率は 80% を超えています。 4G LTE マルチキャ リ ア規格は、主に 700 ~ 3,800MHz の範囲内の周波数帯で運用され、 1 ~ 20MHz のスケーラブルなキャ リ ア帯域幅と最大 5 つの集約されたコンポーネン ト キャ リ アを使用します。

4G LTE では、 周波数分割複信 (FDD) と時分割複信 (TDD) の 2 つの主な方式で送信と受信の制御を実行します。 FDD で集約されるキャ リ アは 2 つの異なる周波数に分割されるため、 信号の送信と受信 (DL と UL) を同時に実行できます。 それに対して、TDD コンポーネン ト キャ リ アは、 DL と UL に同じ周波数と帯域幅を使用します。

こ こに示した 4G LTE 規格 (図 4) は、 SNR、 SFDR、 および ENOB が狭帯域 RF-ADC および RF-DAC の性能を評価するのに適していないこ とを理由付けする実践的な例と して掲載しています。 たとえば、 700MHz を中心とする 100MHz の帯域幅で 5 つの 20MHz チャネルが受信可能であ り、 システム内のデータ コンバーターが 4,000MSPS でサンプリ ングされる と します。

X-Ref Target - Figure 3

図 3: ダイレク ト RF サンプリング アーキテクチャのシステム ブロック図

RF-DAC

PLL

RF-ADC

PLL

BPF

AAF

LNA

Zynq UltraScale+ RFSoC

DUC

DDC

PA

WP489_03_052418

X-Ref Target - Figure 4

図 4: 4G LTE マルチキャリア信号スペク ト ラム、 700MHz を中心とする 5x20MHz 帯域幅 (4GSPS サンプリング)

WP509_04_012819

dBm

DC700 800 1400 1600 1900

fs/2

2000

MHz

Am

plitu

de

Nyquist Bandwidth

Signal Bandwidth5 x 20MHz BW

HD3

HD2

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RF サンプリング データ コンバーターの主要なパラメーターの理解

• 「信号対ノ イズ比 (SNR)」 で説明した SNR の定義に基づいて、 全ナイキス ト周波数範囲 (すなわち、 2,000MHz) にわたる量子化ノ イズの RMS が積分されますが、 4G LTE の実装で考慮に入れる必要があるのは、 20MHz のノ イズ チャネル帯域幅のみです。

• 同様に 「スプ リ アスフ リー ダイナミ ッ ク レンジ (SFDR)」 では、 2 次および 3 次高調波が、 SFDR 性能を制限するワースト ケースのスプリ アスであるこ とが明らかにされています。 したがって、 適切なチャネル フ ィルタ リ ング、 最適なサンプリ ング ク ロ ッ ク、 および適切な周波数プランニングを前提にする と、 SFDR は 100MHz のレシーバー帯域幅内では 4G LTE システムの性能に影響を与えません。 HD2 および HD3 の中心周波数は、 ナイキス ト ゾーン内でそれぞれ 1,500MHz と 1,750MHz に位置するため、 信号から除去できます。 このよ うな帯域外の高調波は、 システム内のバンドパス フ ィルターによって簡単に除去されます。

• 最後に、 4G LTE の性能は全ナイキス ト範囲にわたって特性評価されるわけではないため、 「有効ビッ ト数 (ENOB)」 は現実的なシステム性能メ ト リ クスを提供できません。 [参照 4]

5G Massive MIMO + 4G LTE マルチキャリア ソリューシ ョ ン

表 1 に示すよ うに、 3GPP は 5G ワイヤレス通信システム用に 2 つの周波数範囲 (FR1 および FR2) を指定しています。

費用対効果に優れた実装のためにカバレッジと容量の最適なバランスを確保する と、 FR1 (サブ 6GHz) については C バンドの 3,300 ~ 5,000MHz 帯が 5G 導入用の主な周波数帯となり ます。 この周波数帯を利用するこ との利点は、 (3GPP 規格の LTE/NR アップリ ンク共存機能を使用する ) 3,300 ~ 3,800MHz 帯と組み合わせるこ とができるため、 通信事業者はよ り高速で費用対効果に優れた C バンドの運用が可能とな り、 ネッ ト ワークの高密度化のコス ト をかけずに通信容量を拡張できます。

図 5 に、FR1 内の 100MHz の信号帯域幅を使用する 5G Massive MIMO に、3 つの 20MHz 信号帯域幅を使用する 4G LTE マルチキャ リ ア ソ リ ューシ ョ ンを加えた例 (中心周波数 3,500MHz、 4GSPS のサンプリ ング ク ロ ッ ク、 ナイキス ト ゾーン 1 へのフォールドバッ ク ) を示します。 HD2 と HD3 の中心周波数は、 ナイキス ト ゾーン 1 内でそれぞれ 1,000MHz と 1,500MHz に位置します。 5G 信号と HD2 の間には、 260MHz の分離帯域幅が存在します。 これはバンドパス フ ィルターが HD2 と HD3 を低減または除去するのに十分な広さです。 このシンプルな 4G LTE の実装では、 5G 実装下の合計信号帯域幅は 160MHz であ り、ナイキス ト帯域幅全体 (2,000MHz) よ り もはるかに狭くな り ます。 狭帯域システムの最適な周波数プランニングを注意深く選択するこ とによ り、 5G Massive MIMO と 4G LTE のいずれの通信システムについても、 SNR、 SFDR、 および ENOB メ ト リ クスでは RF データ コンバーターの真の性能を特性評価できなくな り ます。 [参照 5]

表 1: FR1/FR2 周波数の使用

周波数範囲 (FR) 名 周波数範囲 (MHz) 最大チャネル帯域幅 (MHz)

FR1 (6GHz 以下) 450-6,000 100

FR2 ( ミ リ波) 24,250-52,600 400

X-Ref Target - Figure 5

図 5: 100MHz + 3x 20MHz の信号帯域幅を使用する 5G Massive MIMO 信号スペク ト ラム (中心周波数 3,500MHz、 4GSPS のサンプリング クロック、 ナイキスト ゾーン 1 へのフォールドバック )

WP509_05_123018

dBm

DC420 580 840 1160

HD2

17401260

fs/2

2000

MHz

Am

plitu

de

Nyquist Bandwidth

Signal Bandwidth100MHz + 3 x 20MHz BW

HD3

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RF サンプリング データ コンバーターの主要なパラメーターの理解

RF サンプリング データ コンバーターの仕様半導体プロセス ジオメ ト リの微細化と共に、 ト ランジスタの最大周波数 (fmax) は急速に向上しました。 それに伴い、 ダイレクト サンプリ ング通信アプリ ケーシ ョ ンに使用される RF サンプリ ング データ コンバーター製品の利便性と性能は大幅に向上しました。 その結果、 アナログ データ コンバーター メーカー各社は、 データシートで RF サンプリ ング データ コンバーターの性能を特性評価する際に、 ノ イズ スペク トル密度 (NSD)、 3 次相互変調 (IM3)、 および隣接チャネル漏洩電力比 (ACLR) を使用するこ とにおおむね合意しています。

ノ イズ スペク トル密度 (NSD)既に説明したよ うに、 SNR および ENOB メ ト リ クスは、 データ コンバーターの全ナイキス ト帯域幅を考慮に入れるため、 特に SDR アプリ ケーシ ョ ンでは、 今日の RF サンプリ ング データ コンバーターを特性評価するには適していません。 実際のアプリ ケーシ ョ ンでは、 多くの場合、 正確なバンドパス フ ィルターが検知対象帯域の周囲に適用されます。 また多くの RF サンプリ ング ADC には、 検知対象の信号帯域幅のみを抽出する間引き機能が搭載されています。 この両方の要因によ り、 検知対象帯域外のすべてのノ イズは常に除去されます。 NSD は、 データ コンバーターの帯域幅 1Hz あたりのノ イズのエネルギー量を示すため、 RF サンプリ ング データ コンバーターの性能を定量化するのに適したメ ト リ クスです。

NSD はしばら く前からデータ コンバーターに適用されていますが、 一部の技術者や IC 購買管理者はまだそれに慣れていません。 定義上、 NSD は RF-ADC のフルスケール入力トーンを基準とする周波数 1Hz あたりのノ イズ電力を指し、 一般に dBFS/Hz 単位で表されます。 NSD を適用すれば、 異なるサンプリ ング レート を使用する複数のデータ コンバーターのノ イズ性能を検討できます。

データ コンバーターの NSD を得るには、 第 1 ナイキス ト ゾーン全体で積分される ノ イズの電力に対する基本信号の電力の比と して定義される SNR の式から、 全ナイキス ト帯域幅での量子化ノ イズ電力の RMS 値を得る必要があ り ます。

式 7

式 8 には成分の単位も記載しています。

式 8

Pfundamental signal (dBFS) = 0dBFS とする と、 次の式が得られます。

式 9

この式は次のよ うに変形されます。

式 10

この NSD の式は、 異なるサンプリ ング周波数を使用する各種の RF サンプリ ング データ コンバーターを評価し、 SDR アプリケーシ ョ ンで周波数帯固有のノ イズが最も小さ くなるデバイスがどれかを調べるのに便利です。

4GSPS のサンプリ ング ク ロ ッ クを使用する理想的な 12 ビッ ト ADC の場合は次のよ うにな り ます。

NSD = – (6.02x12 + 1.76)(dBFS) – 10log10 (4GSPS/2)(Hz)

= – (74 + 93) dBFS/Hz

= –167dBFS/Hz

SNR dB( ) 10Pfundamental signal

Pnoise (over Nyquist BW)--------------------------------------------------- 10log=

SNR dBFS( ) Pfundamental signal dBFS( ) NSD dBFS/Hz( ) 10 fs2--- 10

Hz( )log+

–=

SNR dBFS( ) 0dBFS NSD dBFS/Hz( )– 10 fs2--- 10

Hz( )log–=

NSD dBFS/Hz( ) SNR dBFS( )– 10 fs2--- 10

Hz( )log–=

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RF サンプリング データ コンバーターの主要なパラメーターの理解

図 6 に、 このデバイスのノ イズ電力を示します。

理想的でないデータ コンバーターでは、 NSD の式は次のよ うになり ます。

式 11

式 11 のフルスケール SNRmeasured は、 直接測定するか、 またはベンダーが提供するデータシートで確認する必要があ り ます。詳細は、 [参照 6] を参照してください。

図 7 [参照 6] に示すザイ リ ンクス Zynq UltraScale+ RFSoC RF データ コンバーター評価ツールには、 RF-ADC の性能特性と して、 SNR の測定値 58.33dBFS と NSD の測定値 –151.25dBFS/Hz が表示されます (3.93216GSPS のサンプリ ング ク ロ ッ クを使用し、 Fout = 900MHz、 -1dBFS の正弦波を入力)。 これを上の式で検証する と、 次のよ うにな り ます。

RF-ADC NSD(dBFS) @ 900MHz = – SNRmeasured(dBFS) – 10log10(fs/2)(Hz)

= –58.33dBFS – 10log10(3.93216GSPS/2)

= –151.33dBFS/Hz

X-Ref Target - Figure 6

図 6: FFT スペク ト ラム内の SNR と NSD の図

WP509_06_010719

–40

–160

–120

dBF

S–80

012-Bit ADC Full Scale Input (dBFS)

Ideal ADC SNR:

SNR(ideal) = 6.02(12)+1.76dB = 74dB

(Quantization Noise Only)

Noise Floor (per Hz):

= 10 log (Fs/2) = 10 log (4GHz/2)

= 93dBNSD = –74 - 93 = –167dBFS

ENOB (N) = 12 bits

Fs = 4GSPS

NSD dBFS/Hz( ) SNRmeasured dBFS( )– 10 fs2--- 10

Hz( )log–=

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RF サンプリング データ コンバーターの主要なパラメーターの理解

3 次相互変調歪み (IM3)複素信号は、 同時に複数の周波数の成分を含みます。 コンバーターの伝達関数の非直線性は、 純音の歪みの原因となるだけでなく、 2 つ以上の信号周波数が相互作用して相互変調積を生成する原因となり ます。 この現象の結果は相互変調歪み (すなわち IM3) と呼ばれています。

通常、「デュアル トーン テス ト 」 を使用して各種の RF デバイス (特にデータ コンバーター ) の非直線的な動作、すなわち IM3 を測定します。 たとえば、 間隔が狭い 2 トーン入力信号 (f1, f2) を ADC といった RF デバイスに注入する と、 ADC が完全に直線的であれば、 入力信号とまったく同じ周波数に 2 つのトーンを含む出力が生成されます。 一方、 非直線的な ADC では、 相互変調歪み積 2f1–f2 および 2f2–f1 と高調波成分 nf1 および nf2 が生成されます。 図 8 に、 2 トーン テス ト を示します。

アプリ ケーシ ョ ンの中には (特に RF 信号処理に関連するアプリ ケーシ ョ ン)、相互変調積の影響を受けやすいものがあ り ます。たとえば、RF アプリ ケーシ ョ ンでは、3 次差積の 2f1–f2 または 2f2–f1 が入力周波数に最も近くなるため (ほかの項はデジタル フ ィルターで除去可能)、 これらの変調積は重要です。 この理由で、 RF アプリ ケーシ ョ ンに IMD が指定される場合、 IM3 以外の項は通常は無視されます。

変調信号に隣接する帯域に 「スペク トル再成長」 と呼ばれる追加の周波数成分を生成する RF 通信システムでは、 IM3 が重大な問題を引き起こす可能性があ り ます。 受信パス内では、 スペク トル再成長によって帯域外信号が検知対象信号に干渉する可能性があ り ます。 一方、 送信パス内では、 不良な IM3 が隣接チャネルに影響を与え、 それらのチャネルがワイヤレス プロ トコルの周波数マスクを渡せなくなる可能性があ り ます。 詳細は、 [参照 3] を参照して ください。

X-Ref Target - Figure 7

図 7: RF データ コンバーター評価ツールでの RF-ADC の NSD の測定 (900MHz)

WP509_07_123018

Am

plitu

de (

dBF

S)

HD3

HD2

External clock spurs (-79dBc)

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RF サンプリング データ コンバーターの主要なパラメーターの理解

Zynq UltraScale+ RFSoC RF-DAC の IM3 性能は、 図 9 に示すよ うに、 入力周波数 900MHz、 生成される 2 つのトーンの間隔 20MHz で -7.26dBm の信号を入力した場合、 IM3 は 2f1–f2 と 2f2–f1 相互変調歪み周波数の両方と も -85.63dBc になり、 優れているこ とがわかり ます。 Zynq UltraScale+ RFSoC RF-ADC の IM3 の測定には、 信号ジェネレーターから生成される、 900MHz で互いに 20MHz 離れた 2 つの –7dBm の信号を入力します。図 10 に示すよ うに、RF 評価ツールで測定された RF-ADC の IM3 は -78.08dBc です。 したがって、 RF-DAC と RF-ADC のいずれも、 2 トーン歪みテス トで優れた直線性をサポート し、 大きい周波数成分が新たに生成されるこ とはあ り ません。

X-Ref Target - Figure 8

図 8: 非直線的なシステムの IM3 の図

X-Ref Target - Figure 9

図 9: デュアルトーン入力による Zynq UltraScale+ RFSoCRF-DAC の IM3 の測定

WP509_08_010719

f1f2

Frequency

Non-linear

Frequency

Power

This is what happens when two tomesare input (f1 & f2) into non-linear system, i.e., mixing

Third-orderdistortionproduct

Intermodulationdistortion (IM3)y = ax3 + bx2 + c

f2 - f1 2f1 - f22f2 - f1

2f1 2f2

f1 + f2

Pow

er

Second-orderdistortionproducts

Third-orderdistortionproducts

4 GSPSADC

2f1 + f2 f1 + 2f2

2f1 3f2

1 Frequency Sweep

IM3 = -85.6dBc

1 Frequency Sweep

WP509_09_123018

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RF サンプリング データ コンバーターの主要なパラメーターの理解

隣接チャネル漏洩電力比 (ACLR)ワイヤレス通信需要の急増と共に、 割り当てられた周波数スペク ト ラムの混雑が激化しています。 今日のワイヤレス インフラス ト ラ クチャには、 よ り多くの契約者とモバイル機器に IP サービスを提供するために、 従来よ り もはるかに大きなデータ容量と帯域幅が要求されています。 無線通信インターフェイスを介して信号を送信中に、 信号から隣接チャネルに漏れる電力が隣接チャネルの伝送に干渉し、 無線システム全体の性能を低下させるこ とがあ り ます。

ACLR は、 3GPP 5G、 LTE、 および W-CDMA などのワイヤレス無線システム用に設計された、 主要な規格に準拠したスペク トラム測定手法です。 図 11 に示すよ うに、 ACLR は、 通信システムの隣接チャネルに放射または漏洩する電力に対する、 変調信号電力の比を特性評価します。 各種の通信プロ ト コルの条件内で、 チャネル帯域幅と隣接チャネルの間隔を変化させる機能が必要です。 テス ト対象デバイス (DUT) の ACLR の測定には、 一般に変調信号ジェネレーターまたは DAC が使用されます。

Zynq UltraScale+ RFSoC は、 8x8 または 16x16 チャネルの DAC と ADC を内蔵しています。 DAC と ADC の両方の ACLR 性能を測定するテス トは、 ループバッ ク モードで簡単に設定できます。

X-Ref Target - Figure 10

図 10: Zynq UltraScale+ RFSoCRF-ADC の IM3 の測定、 デュアルトーン入力 (RF データ コンバーター評価ツール)

WP509_10_123018

Am

plitu

de (

dBF

S)

IM3 = -78dBc

X-Ref Target - Figure 11

図 11: ACLR の図

WP509_11_123018

Output

Frequency

ACP Low

ACLR

ACP High

Carrier

Pow

er (

dBm

)

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RF サンプリング データ コンバーターの主要なパラメーターの理解

図 12 に、 ACLR 測定のユース ケースを示します。 20MHz の 64QAM LTE キャ リ アを 5 つ使用する 42 IQ 変調信号が、 送信パス内でデジタル ベースバンドで生成され、 8 倍に補間され、 2 つの DAC チャネルで最大 3,500MHz にミ クシングされます。 1 つのチャネルは周波数スペク ト ラム アナライザーに接続され、 も う 1 つのチャネルは外部の Mini-Circuits ZRL-3500+ アンプを介して ADC にループバッ ク されます。 3,500MHz の RF 信号は 8 分の 1 に間引きされ、 ベースバンドまで ミ クシングダウンされます。 ク ロ ッキング方式は、 RFSoC データ コンバーターのサンプリ ング ク ロ ッ ク と して 3,932.16MHz が使用され、 ベースバンド サンプリ ング ク ロ ッ ク と して 491.52MHz が適用されます。

Rohde & Schwarz FSW26 スペク ト ラム アナライザーを使用し、 DAC の動的性能を解析しました。 図 13 に、 サンプ リ ング周波数 3,932.16MHz の PLL を内蔵した Zynq UltraScale+ RFSoC DAC によって生成される送信出力 3,500MHz での 64QAM 変調方式による 5つの20MHz マルチキャ リ アに関するスペク ト ラム アナライザーの ACLR 測定結果を示します。 Tx1 および Tx5 チャネルからのオフセッ トが 20MHz の場合 (アナライザー画面の 「Adj」 )、 上側および下側隣接チャネルの ACLR はいずれも約 -67dBc になり ます。 オフセッ トが 40MHz の場合 (アナライザー画面の 「Alt1」 )、 ACLR は両方と も –68dBc になり ます。

X-Ref Target - Figure 12

図 12: Zynq UltraScale+ RFSoC の ACLR 測定のユース ケース

X-Ref Target - Figure 13

図 13: RF-DAC の ACLR の測定 (3,500MHz で 5x20MHz の 64QAM 変調)

WP509_12_010719

BB X8Interpolation

DAC

RF SpectrumAnalyzer

SignalConditioning

RF = 3500MHz

RF = 3500MHz

RF

Loo

pbac

k

IQ Baseband NCO (+3500MHz)

BB X8Decimation

ADC

IQ Baseband NCO (–3500MHz)

fBB = 491.52MHz fS = 3932.16MHz

XCZU25/27/28 = 8T8RXCZU29 = 16T16R

WP509_13_123018

1 ACLR NCAN 1Rm Clrw

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RF サンプリング データ コンバーターの主要なパラメーターの理解

Zynq UltraScale+ RFSoC RF-ADC の ACLR は、 図 14 に示すよ うに、 DAC から ADC へのループバッ ク構成で測定した値は 61.42dBc になり ます。

5G NR 基地局に関する 3GPP 5G の要件 [参照 7] によ り、 送信パスのシステム全体の ACLR 放射制限は、 キャ リ ア信号に関して –45dB です。したがって、Zynq UltraScale+ RFSoC の優れた ACLR 性能によ り (ザイ リ ンクスのデータシート DS926 [参照 8] を参照) 、 システムのその他の部分 (パワー アンプなど) に大きなマージンを確保できるため、 設計が容易になり ます。

まとめSNR および ENOB は、 全ナイキス ト帯域幅にわたって正弦波信号が入力される設定においてデータ コンバーターの特性評価と解析によ く使用されるパラ メーターです。 これらの従来のメ ト リ クスは、 ダイレク ト サンプリ ング アプリ ケーシ ョ ンには推奨されません。 これは、 デザインでダイレク ト サンプリ ングに使用される RF データ コンバーターは、 全ナイキス ト帯域幅で動作する必要がないためです。 ダイレク ト サンプリ ング デザインに使用されるデバイスを評価するには、 NSD、 IM3、および ACLR パラ メーターの方が適切です。 このよ うなユース ケースでは、 検知対象帯域に混入するデータ コンバーターのノ イズを定量化するこ との方が重要です。 つま り、 さまざまな RF アプリ ケーシ ョ ンでシステムのデザイン パフォーマンスを正確に評価するには、 それぞれに異なるパラ メーター仕様が必要とな り ます。 狭帯域アプリ ケーシ ョ ンと従来の広帯域アプリケーシ ョ ンのいずれについても、 帯域内ノ イズ、 スプリ アス信号、 歪みを使用に適したメ ト リ クスで正確に測定するには、 適切な RF データ処理ソ リ ューシ ョ ンを選択する必要があ り ます。

マルチチャネル ダイレク ト サンプリ ング RF-ADC を搭載した Zynq UltraScale+ RFSoC のリ リースによ り、 ザイ リ ンクスのデバイス ファ ミ リは、 単一デバイスによるフル機能のソフ ト ウェア定義無線 (SDR) の実装など、 最も厳しい RF 処理の条件を満たせるよ うにな り ました。 これはザイ リ ンクスが達成した業界初の成果の 1 つです。

詳細は、 japan.xilinx.com/RFSoC を参照してください。

X-Ref Target - Figure 14

図 14: RF-ADC の ACLR の測定 (5x20MHz、 64QAM 変調、 3,500MHz、 ループバック モード )

WP509_14_010919

ACLR = 61.47dBc

Am

plitu

de (

dB)

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RF サンプリング データ コンバーターの主要なパラメーターの理解

参考資料注記: 日本語版のバージ ョ ンは、 英語版よ り古い場合があ り ます。

1. ザイ リ ンクス Zynq® UltraScale+™ RFSoC ZCU111: RF データ コンバーター評価ツール (ウェブサイ トのダウンロード ページ)。

2. Carusone, Tony Chan; Johns, David A.; Martin, Kenneth W.: 『Analog Integrated Circuit Design』 (第 2 版、 2012 年)。 Hoboken, NJ: John Wiley & Sons, Inc.

3. National Instruments / ホワイ ト ペーパー 『Understanding Frequency Performance Specifications』 (2017 年)。

4. National Semiconductor / Kulchycki, Scott: 『Software Defined Radio: Don’t Talk to Me about ENOBs, Part 1』、 『Part 2』。 EETimes RF & Microwave Designline (2010 年)。

5. Huawei Technologies Co., Ltd. / パブリ ッ ク ポ リシーの位置付け: 『5G Spectrum』 (2017 年)。

6. アナログ ・ デバイセズ / Beavers, Ian: 『ノ イズ スペク トル密度: ADC の新しいメ ト リ クス?』

7. ETSI / 技術仕様、 3GPP TS 38.101-1 v15.2.0 リ リース 15: 『5G; NR; ユーザー端末 (UE) の無線送信および受信』 (2018 年)。

8. ザイ リ ンクス データシート 『Zynq UltraScale+ RFSoC データシート : DC 特性および AC スイ ッチ特性』 (DS926: 英語版、日本語版)

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RF サンプリング データ コンバーターの主要なパラメーターの理解

付録

信号対ノイズ比の式 SNR = 6.02N + 1.76dB の導出

図 15 に示すよ うに、 理想的な ADC コンバーターの量子化誤差 VQ を考えます。

VQ = V1 – Vin;

V1 = Vin + VQ

こ こで、 V1 は量子化信号、 Vin は理想的な ADC の入力信号です。

Vin はランプ入力信号である と します。 したがって、 図 16 に示すよ うに、 結果の V1 は DAC からの出力のため、 階段状になります。 [参照 2]

VQ は Vin と V1 の差をとった結果であ り、 ノ イズ信号 VQ(rms) の RMS 値は次式で求められます。

式 12

DC ~ fs/2 の全ナイキス ト帯域幅で測定される RMS 量子化ノ イズは、 次式で求められます。

式 13

X-Ref Target - Figure 15

図 15: 量子化ノイズを調べるためのセッ トアップ

X-Ref Target - Figure 16

図 16: 図 15 のセッ トアップに基づく V1、 Vin、 および VQ の関係

WP509_15_11219

A/D D/A

V1Vin

VQ

B

+–

V1

Vin

t(Time)

WP509_16_11219

t(Time)

VQ

1/2VLSB

T

–1/2VLSB

VQ rms( )1 T ---- VQ

2

T 2⁄–

T 2⁄

td=

1 T ---- VLSB

2 t– T

----- 2

T 2⁄–

T 2⁄

td=

VLSB2

T 3 ---------- T 3

3 ------

T 2⁄–

T 2⁄

=

VQ rms( )

VLSB12

---------=

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RF サンプリング データ コンバーターの主要なパラメーターの理解

理想的なデータ コンバーターでは、 SNR は次式で求められます。

式 14

入力 (Vin) は正弦波と します。 ピーク振幅は Vref/2 です。

式 15

を式 15 に代入する と、 次のよ うになり ます。

式 16

(全ナイキス ト帯域幅)

SNR 20Vin rms( )VQ rms( )-----------------

10log=

SNR 20Vin rms( )VQ rms( )-----------------

10log=

20Vref 2 2( )⁄

VLSB 12( )⁄--------------------------

10log=

VLSBVref2N--------≡

20

Vref 2 2( )⁄Vref2N-------- 12( )⁄

-------------------------

10log=

20 2N128

--------× 10log=

6.02N 1.76+( ) dB=

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RF サンプリング データ コンバーターの主要なパラメーターの理解

改訂履歴次の表に、 この文書の改訂履歴を示します。

免責事項本通知に基づいて貴殿または貴社 (本通知の被通知者が個人の場合には 「貴殿」、 法人その他の団体の場合には 「貴社」。 以下同じ ) に開示され

る情報 (以下 「本情報」 といいます) は、 ザイ リ ンクスの製品を選択および使用するこ とのためにのみ提供されます。 適用される法律が許容す

る最大限の範囲で、 (1) 本情報は 「現状有姿」 、 およびすべて受領者の責任で (with all faults) とい う状態で提供され、 ザイ リ ンクスは、 本通知

をもって、 明示、 黙示、 法定を問わず (商品性、 非侵害、 特定目的適合性の保証を含みますがこれらに限られません)、 すべての保証および条

件を負わない (否認する ) ものと します。 また、 (2) ザイ リ ンクスは、本情報 (貴殿または貴社による本情報の使用を含む) に関係し、起因し、関

連する、 いかなる種類・性質の損失または損害についても、責任を負わない (契約上、不法行為上 (過失の場合を含む)、 その他のいかなる責任

の法理によるかを問わない) ものと し、 当該損失または損害には、 直接、 間接、 特別、 付随的、 結果的な損失または損害 (第三者が起こした行

為の結果被った、 データ、 利益、 業務上の信用の損失、 その他あらゆる種類の損失や損害を含みます) が含まれるものと し、 それは、 たとえ

当該損害や損失が合理的に予見可能であった り、 ザイ リ ンクスがそれらの可能性について助言を受けていた場合であったと しても同様です。

ザイ リ ンクスは、 本情報に含まれるいかなる誤り も訂正する義務を負わず、 本情報または製品仕様のアップデート を貴殿または貴社に知らせ

る義務も負いません。事前の書面による同意のない限り、貴殿または貴社は本情報を再生産、変更、頒布、 または公に展示してはなり ません。

一定の製品は、ザイ リ ンクスの限定的保証の諸条件に従う こ と となるので、https://japan.xilinx.com/legal.htm#tos で見られるザイ リ ンクスの販売

条件を参照して ください。 IP コアは、 ザイ リ ンクスが貴殿または貴社に付与したライセンスに含まれる保証と補助的条件に従う こ とになり ま

す。 ザイ リ ンクスの製品は、 フェイルセーフと して、 または、 フェイルセーフの動作を要求するアプリ ケーシ ョ ンに使用するために、 設計さ

れたり意図されたり していません。 そのよ うな重大なアプリ ケーシ ョ ンにザイ リ ンクスの製品を使用する場合のリ スク と責任は、 貴殿または

貴社が単独で負う ものです。 https://japan.xilinx.com/legal.htm#tos で見られるザイ リ ンクスの販売条件を参照してください。

自動車用のアプリケーシ ョ ンの免責条項オートモーティブ製品 (製品番号に 「XA」 が含まれる ) は、 ISO 26262 自動車用機能安全規格に従った安全コンセプ ト または余剰性の機能 ( 「セーフティ設計」 ) がない限り、 エアバッグの展開における使用または車両の制御に影響するアプ リ ケーシ ョ ン ( 「セーフティ アプリ ケー

シ ョ ン」 ) における使用は保証されていません。 顧客は、 製品を組み込むすべてのシステムについて、 その使用前または提供前に安全を目的

と して十分なテス ト を行う ものと します。 セーフティ設計なしにセーフティ アプリ ケーシ ョ ンで製品を使用する リ スクはすべて顧客が負い、

製品の責任の制限を規定する適用法令および規則にのみ従う ものと します。

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いただきます。 なお、 このメール アドレスへのお問い合わせは受け付けており ません。 あらかじめご了承ください。

日付 バージョ ン 内容

2019 年 2 月 20 日 1.0 初版