sangyo2010 05a
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情報産業・職業論情報産業・職業論 五 五 第 第 22 部 第部 第 22 回回「所有」から「使用」への権利「所有」から「使用」への権利ビジネスビジネス
―音楽産業を事例に― ―音楽産業を事例に― Opening Theme Opening Theme 『絶唱カラオケマンの歌』 『絶唱カラオケマンの歌』山本まさゆき山本まさゆき 19921992 年,詞・曲年,詞・曲 :: 山本正之 山本正之
JASRAC JASRAC 守ろう著作権守ろう著作権 !!• 「悪者扱い」される「悪者扱い」される JASRAC(JASRAC( ネットではカネットではカ
スラックなる蔑称もスラックなる蔑称も ))• 社団法人日本音楽著作権協会社団法人日本音楽著作権協会• 音楽著作権の集中管理機構音楽著作権の集中管理機構• 音楽著作物使用のあらゆる局面音楽著作物使用のあらゆる局面で「著作権使用料」を取り立てで「著作権使用料」を取り立て• JASRACJASRAC の活動が日本人に著作の活動が日本人に著作権の重要性を知らしめてきた功績も権の重要性を知らしめてきた功績も
JASRACJASRAC の仕組みの仕組み• 著作権管理著作権管理 (( 信託信託 )) 業務業務• 文化庁長官による認可事業文化庁長官による認可事業
「禁止」が原則の著作権「禁止」が原則の著作権• 例外として列挙された適用除外の例外として列挙された適用除外の「公正利「公正利
用用 (( フェアユースフェアユース )) 」」以外は,以外は,著作権者の著作権者の明示的な許諾明示的な許諾 (( 同意同意 )) がない限り,著作物がない限り,著作物を使用することが禁止を使用することが禁止
• 許諾とは「契約」であり,当事者間の合意許諾とは「契約」であり,当事者間の合意• ところが「誰に許諾を求めればいいのか」ところが「誰に許諾を求めればいいのか」
(( 著作権者が誰なのか著作権者が誰なのか )) さえ不明なケースがさえ不明なケースが多い多い
集中許諾システム集中許諾システム• 著作権者から財産権を信託されている楽著作権者から財産権を信託されている楽
曲曲 (( 国内外合計国内外合計 720720 万曲万曲 )) に関しては,に関しては, JJASRACASRAC が権利者として許諾が権利者として許諾 (( 権利管理の権利管理の集中集中 )) 。申し込み,規定の使用料を支払え。申し込み,規定の使用料を支払えば著作物を利用できるば著作物を利用できる
• 強制許諾強制許諾なので,著作権者の意向に左右なので,著作権者の意向に左右されることなく,使用希望者を差別待遇されることなく,使用希望者を差別待遇することもないすることもない
• 他の著作物分野にはないシステム他の著作物分野にはないシステム
支分権支分権• 著作権著作権 (( 財産権財産権 )) の内容は,著作物の利用の内容は,著作物の利用
態様ごとにそれぞれ態様ごとにそれぞれ支分権支分権として著作権として著作権法に規定されており,著作者はそれぞれ法に規定されており,著作者はそれぞれの態様による利用についての独占的排他の態様による利用についての独占的排他的権利を有する的権利を有する
• 複製権,上演権・演奏権,上映権,公衆複製権,上演権・演奏権,上映権,公衆送信権,口述権,展示権,頒布権,譲渡送信権,口述権,展示権,頒布権,譲渡権,貸与権,翻訳権・翻案権,二次的著権,貸与権,翻訳権・翻案権,二次的著作物の利用に関する原著作者の権利作物の利用に関する原著作者の権利
JASRACJASRAC ができないことができないこと• 映画,映画, CMCM ,ゲーム,ゲームなどでの利用は使用料などでの利用は使用料
の算定が難しいので,の算定が難しいので, JASRACJASRAC ではなくではなく原原権利者と相対取引権利者と相対取引のケースものケースも
• JASRACJASRAC に信託しない権利者もいるに信託しない権利者もいる• 支分権単位で別の管理会社に信託すること支分権単位で別の管理会社に信託すること
もも (( 著作権管理業における競争著作権管理業における競争 ))• JASRACJASRAC は経済権のみ行使。は経済権のみ行使。「著作者人格「著作者人格
権」は判断できない権」は判断できない (( 人格権は譲渡や信託人格権は譲渡や信託の対象にならないための対象にならないため ))
ほかにも
• ブックオフなど新古書店やネットオークションなどでの中古 CDの売買
• 公共図書館での CD貸し出し (納品時の一時金=補償金はある )
• YouTube ・ニコニコ動画など 25サイト以外の動画共有サイトでの音楽利用– 「 TV ブレイク」が敗訴 (損害賠償金 9000 万円 )
– 他の共有サイトにも「正常化」を呼びかけ
JASRACJASRAC 使用料徴収額推移使用料徴収額推移2009 年度は 1094億 6429 万7713円。対前年度比で微減だが, 1000億円超の水準をキープ
レコード産業の生産額推移レコード産業の生産額推移
1998年度の 6074億円をピークに, 2008年度は 2962億円とほぼ半減。
JASRACJASRAC 使用料構成比使用料構成比
ダウンロードダウンロード (2008)(2008)
数量
:
千回
金
額
:
百万円
総額は 905億円で,パッケージの落ち込みのカバーに至らず。数量 ・金額とも伸び率は鈍化気味 (市場が飽和に近い ?)
CDCD不況でも音楽は動ぜず不況でも音楽は動ぜず• (( シングルシングル )CD)CDからネットワークへ,頒布からネットワークへ,頒布メディアは遷移したが,「著作権使用料メディアは遷移したが,「著作権使用料徴収額」は現状維持基調徴収額」は現状維持基調 (( 他の分野に先駆他の分野に先駆けて,ノン・パッケージへの移行が進むけて,ノン・パッケージへの移行が進む ))
• 「「 (( 複製物の複製物の )) 頒布・所有」だけでなく,頒布・所有」だけでなく,「多様な局面での使用」で報酬を得ると「多様な局面での使用」で報酬を得るという著作権ビジネスが成立しているからいう著作権ビジネスが成立しているから
(豆知識 )インディーズ
• 日本レコード協会に加盟しない,独立 (自主製作 )系のレーベル• ヒップホップ系,パンク系に多い• 日本レコード協会の生産統計などにはカウ
ントされないが, JASRAC に信託するケースがほとんどなので,使用料徴収額データにはカウントされる
• 市場の実勢と統計との乖離が進む
HY= 東屋慶名(ひがしやけな )建設 レーベル
音楽著作権の分類音楽著作権の分類譲渡・共同使用
抵当
音楽著作権の流れ音楽著作権の流れ
• 著作者→音楽出版社に著作権を著作者→音楽出版社に著作権を譲渡譲渡• 音楽出版社→音楽出版社→ JASRACJASRAC に著作権をに著作権を信託信託• JASRAC→JASRAC→権利者として「使用料」を徴収権利者として「使用料」を徴収
し,音楽出版社にし,音楽出版社に分配分配するする• 音楽出版社は手数 料を控除して,著作者に音楽出版社は手数 料を控除して,著作者に
「使用料」を「使用料」を還元還元するする (( 著作者は出版社に著作者は出版社に対して報酬を請求する権利を持つ対して報酬を請求する権利を持つ ))
音楽の著作者のフトコロ音楽の著作者のフトコロ
• 著作者著作者は楽曲の著作権は楽曲の著作権使用料を還元され使用料を還元される権利る権利 (( 報酬を請求する権利報酬を請求する権利 )) を死後を死後 5050年まで有する年まで有する– ただし「抵当権設定」が可能なので,ただし「抵当権設定」が可能なので,税金未納・慰謝料未払いなどで「差し税金未納・慰謝料未払いなどで「差し押さえ」が可能押さえ」が可能
• 出版権は出版権は区分所有区分所有 (5(5 %とか%とか )) が可能が可能• 原盤権保有者から著作権者への還付もある原盤権保有者から著作権者への還付もある
CDの売上分配CDの売上分配 • 歌唱印税歌唱印税 =0.75=0.75 %% ((芸団協芸団協 == 隣接権隣接権 ))• 作詞作曲印税=各作詞作曲印税=各 2.752.75 %% (JASRAC)(JASRAC)• 原盤印税原盤印税 (5(5 ~~ 1010%% )) の還付の還付
40%
30%
15%
14%1%
レコード会社小売店原価著作権者歌唱者
アーティストの収入アーティストの収入• (1) (1) 作詞・作曲印税作詞・作曲印税 (JASRAC)(JASRAC)• (2) (2) 歌唱印税歌唱印税 ((芸能実演家団体協議会芸能実演家団体協議会 ))• (3)(3) 原盤印税の還付原盤印税の還付 (( 原盤制作会社原盤制作会社 ))• (4)(4) 二次使用著作権使用料二次使用著作権使用料 (JASRAC)(JASRAC)• (5) (5) テレビ,テレビ, CMCMなどの出演料などの出演料 (( 所属プロ所属プロダクションダクション ))
• (6) (6) 公認グッズのロイヤルティー公認グッズのロイヤルティー (( 同同 ))
トライアングル体制トライアングル体制• レコード会社=専属実演家契約レコード会社=専属実演家契約• 音楽出版社=著作権譲渡契約音楽出版社=著作権譲渡契約• プロダクション=マネジメント契約プロダクション=マネジメント契約
音楽出版社とは音楽出版社とは
• 音楽の著作物を管理し,原盤に録音し,著音楽の著作物を管理し,原盤に録音し,著作権の利用の開発作権の利用の開発 (TV(TV 番組や番組や CMCMとのタイとのタイアップアップ )) を図ることを業とする者を図ることを業とする者
• 作詞・作曲家は音楽出版社に権利を作詞・作曲家は音楽出版社に権利を譲渡譲渡し,し,その利用の対価その利用の対価 (( 報酬報酬 )) を受け取るを受け取る ((出版社出版社がが 2525 ~~ 3333 %の管理料を徴収%の管理料を徴収 ))
• 複 数 の音楽出版社が共同で版権管理も複 数 の音楽出版社が共同で版権管理も• 原盤製作会社と共同原盤権も原盤製作会社と共同原盤権も
原盤製作会社原盤製作会社
• 自ら資金を提供してスタジオを借り,スタ自ら資金を提供してスタジオを借り,スタジオ・ミュージシャンやエンジニアの協力ジオ・ミュージシャンやエンジニアの協力を得て,マスターテープを得て,マスターテープ (( 原盤原盤 )) を製作しを製作し「原盤権」を取得「原盤権」を取得
• 一次使用者であるレコード会社に「複製一次使用者であるレコード会社に「複製権」を許諾して著作権使用料権」を許諾して著作権使用料 (10(10~~ 1515 %% ))を受領を受領
• 「単独原盤」と「共同原盤」「単独原盤」と「共同原盤」
放送放送• ブランケット契約ブランケット契約:放送局の放送事業収:放送局の放送事業収入入 ((売上高売上高 )) の一定の掛け率の一定の掛け率 ((通常の局は通常の局は1.51.5 %% )) を音楽著作権使用料とみなすを音楽著作権使用料とみなす
• 放送局は放送局は JASRACJASRAC に対して,使用した楽に対して,使用した楽曲のデータを提供する曲のデータを提供する (JASRAC(JASRAC が権利者が権利者に分配する場合の基礎データに分配する場合の基礎データ ))
• IPIPマルチキャストなど“ネット放送“はブマルチキャストなど“ネット放送“はブランケットの対象にならないランケットの対象にならない
レンタルCDレンタルCD• 貸与権貸与権。月間貸与回 数 に応じて芸団協お。月間貸与回 数 に応じて芸団協お
よびよび JASRACJASRAC に使用料を支払う→に使用料を支払う→歌唱者歌唱者と著作者と著作者。。レコード会社レコード会社 ((隣接権者隣接権者 )) にはには納品時に徴収納品時に徴収 ((サーチャージ方式,アルサーチャージ方式,アルバムバム 330330円,シングル円,シングル 8585 円円 ))
• 貸与禁止期間貸与禁止期間。アルバムは翌々週土曜日,。アルバムは翌々週土曜日,シングルは火~水発売は当該週の水曜シングルは火~水発売は当該週の水曜(( アルバム扱いのケースもアルバム扱いのケースも ))
カラオケカラオケ• カラオケカラオケ :7395:7395 億円市場億円市場 ((微減微減 ))• 店舗面積・定員などで事業者が使用料を支店舗面積・定員などで事業者が使用料を支
払い払い
ネットワーク配信使用料ネットワーク配信使用料• インタラクティブ配信インタラクティブ配信。最低使用料月。最低使用料月額額 50005000円。円。ダウンロード型ダウンロード型は情報料は情報料のの 7.77.7%または%または 3.853.85 円~円~ 7.77.7円円
• ストリーム型ストリーム型は月間情報料は月間情報料 ((広告料広告料 )) のの11~~ 3.53.5 %。%。
• 個人の「非商用配信」個人の「非商用配信」も,も, 11 曲月額曲月額 151500円円 (10(10 曲曲 10001000円円 )) で利用可能。で利用可能。
http://www.jasrac.or.jp/network/
私的録音録画補償制度私的録音録画補償制度●録音機器標準価格の 65 %相当額の 2%。ただし上限 1,000円
●記録媒体標準価格の 50%相当額の 3%MD, DAT ,録音用 CD-R(W)
まとめ 1
• 音楽著作権の分野では,著作権の集中管理システムがあるので,パッケージ→ネットへの環境変化に伴う影響は比較的に軽微 (レコード会社の経営は大打撃だが )
• 文芸・映画など他の著作権分野では,同種のシステムがないため,パッケージの衰退が市場全体の衰退につながる
まとめ 2
• 使用者からすると,他の分野は許諾を誰に求めればよいかが不鮮明
• 結果として「無許諾使用」になった場合,莫大な損害賠償を請求されるおそれも
• JASRAC の場合,データベースで確認し,許諾を申請し,使用料を支払えば,大手をふって著作物を使用できる
まとめ 3
• 著作物のあらゆる使用シーンから著作権使用料を強制的に徴収する JASRAC のような組織は,使用者からすると煙たい存在
• 権利者からするとありがたい存在。なぜなら,パッケージ販売はえてして一過性で終わるが,使用は長期間にわたって続き,寝ていても報酬が入ってくる