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www.medscape.org/viewarticle/818257 SGLT2 阻害薬 – 2型糖尿病患者のための新しいパラダイム バーナード・ジンマン医学博士(Bernard Zinman, MD: こんにちは。 バーナード・ジンマンです。 私は、カナダのトロントで、トロント大学医学部教授とマウントサイナイ病院糖尿病センター 長を兼任しています。 さて、このプログラムのタイトルは「SGLT2阻害薬: 2型糖尿病のための新しいパラダイム」です。 今日はここに、私の友人や同僚も来ています。 私の右にいるのはミカエラ・ダイアマント(Michaela Diamant)博士です。 彼女は、オランダ、アムステルダムのVU大学医療センターの糖尿病学教授です。 その隣は、イギリス、バーミンガムのアストン大学で臨床科学教授を務めていらっしゃるクリ フォード・ベイリー(Clifford Bailey)博士です。 そして最後は、私のよき友であるビビアン・フォンセカ(Vivian Fonseca)博士。アメリカ、ルイジアナ州ニューオーリンズのチュレーン大学ヘルスサイエン スセンターで医学・薬学部教授を務めていらっしゃいます。 今日の議論は、持続性な高血糖、β細胞機能障害、及びインスリン抵抗性を特徴とするグルコ ース恒常性の調節不全としての2型糖尿病(T2DM)の病態生理についてです。 また、現在利用できるグルコース降下薬に伴う限界と、新規治療オプションの必要性について も話し合います。

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SGLT2 阻害薬 – 2型糖尿病患者のための新しいパラダイム

バーナード・ジンマン医学博士(Bernard Zinman, MD): こんにちは。 バーナード・ジンマンです。 私は、カナダのトロントで、トロント大学医学部教授とマウントサイナイ病院糖尿病センター

長を兼任しています。 さて、このプログラムのタイトルは「SGLT2阻害薬: 2型糖尿病のための新しいパラダイム」です。 今日はここに、私の友人や同僚も来ています。 私の右にいるのはミカエラ・ダイアマント(Michaela Diamant)博士です。 彼女は、オランダ、アムステルダムのVU大学医療センターの糖尿病学教授です。 その隣は、イギリス、バーミンガムのアストン大学で臨床科学教授を務めていらっしゃるクリ

フォード・ベイリー(Clifford Bailey)博士です。 そして最後は、私のよき友であるビビアン・フォンセカ(Vivian Fonseca)博士。アメリカ、ルイジアナ州ニューオーリンズのチュレーン大学ヘルスサイエン

スセンターで医学・薬学部教授を務めていらっしゃいます。

今日の議論は、持続性な高血糖、β細胞機能障害、及びインスリン抵抗性を特徴とするグルコ

ース恒常性の調節不全としての2型糖尿病(T2DM)の病態生理についてです。 また、現在利用できるグルコース降下薬に伴う限界と、新規治療オプションの必要性について

も話し合います。

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ナトリウムグルコース共輸送体2(SGLT2)阻害薬の作用機序について検討します。この薬剤

は、β細胞機能及びインスリン抵抗性に依存せずに、尿中グルコース排泄を直接標的にします

。 最後に、2型糖尿病患者のうち、どのような患者が、将来SGLT2阻害薬による治療に適した候

補となるかを検討します。

ではまず、地球全体に広がる2型糖尿病の蔓延について検討していきましょう。 これについては、クリフォード博士から説明していただきましょう。

クリフォード・ベイリー博士(Clifford Bailey、PhD、FRCP、FRCPath): 糖尿病は大変な勢いで増えています。 現時点で、地球上におそらく3億8000万人を超える糖尿病患者がいると思われます。さらに、

2035年までに、糖尿病患者の数は6億近くになると予測されています。 そのほとんど、約95%が2型糖尿病です。 糖尿病は中高年世代に発症する病気だと考えられがちですが、ご存知のとおり、いまや若年の

成人からさらには思春期の若者まで患者が広まっています。

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ですから、年齢分布に大きな地域的なばらつきが出てくることが予測され、地域によって異な

ったやり方で取り組む必要に迫られることになるでしょう。 ご存知のとおり、2型糖尿病の患者数にほぼ匹敵する勢いで耐糖能異常も増えています。そし

てこれもまた、私たちが取り組むべき問題を増やすことになるでしょう。 もちろん、肥満も増えています。 これらすべてが相まって、解決すべき大きな問題を呈しています。

ジンマン博士: すべての国に影響を及ぼしている世界的な問題です。 現在は2型糖尿病の病態生理についてかなり解明されており、それは、特定の治療法に関連し

て有用です。 ミカエラ博士、2型糖尿病の病態生理について説明していただけますか。

ミカエラ・ダイアマント医学博士(Michaela Diamant、MD、PhD): わかりました。 クリフォード博士も指摘していたように、最も重要な側面は、糖尿病が肥満の蔓延と並行して

いることです。 食生活の変化と運動不足が原因で肥満になった人は、インスリン抵抗性になります。 遺伝的な背景のために糖尿病になりやすいという人や、β細胞機能が低下している人は、高血

糖と糖尿病を非常に発症しやすいのです。 2型糖尿病の3つの主要な欠陥は、 肝臓でのグルコース産生の増加、末梢インスリン抵抗性(したがって、脂肪組織および筋肉細

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胞へのインスリン作用の低下)、およびβ細胞機能の低下です。 これらが、今日認識されている最も重要な側面であると私は思います。

ジンマン博士: 病態生理は患者によって異なる場合があると思います。

ダイアマント博士: そのとおりです。 2型糖尿病は非常に不均一性の高い疾患で、どちらかというとβ細胞分泌機能不全がより悪化

している人もいれば、インスリン抵抗性がより悪化している人もいます。

ジンマン博士: そうですね。 ビビアン博士、糖尿病の治療薬はたくさんありますね。 従来の高血糖治療薬の限界についてお話いただけますか。

ビビアン・A・フォンセカ医学博士(Vivian A. Fonseca、MD、FRCP): 今、インスリン抵抗性とβ細胞機能不全が非常に重要であることをミカエラ博士が説明してく

ださいましたが、それについて私もお話したいと思います。 高血糖そのものがそれら2つの状態を悪化させます。グルコース毒性と呼ばれるもので、非常

に急速に病気を進行させるのです。 そのこと自体が私たちに可能性を与えています。高血糖をなくし(しかも短期間に)、インス

リン感受性とβ細胞機能の両方を改善する可能性を与えています。 しかし、私たちは過去10~15年間に多くの新しい糖尿病治療法が出現するのを見てきました

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たくさんの治療法があることは幸いですが、どの治療法にも限界があります。 低血糖は、患者に多くの苦痛を伴う主要な制限因子であり、それらの発症は、有害な影響、入

院、心血管事象、及び死亡とも関連付けられます。 それ以上によく見られるのが体重増加です。皮肉なことに、私たちは患者に体重を減らすよう

に言っておきながら、体重増加を引き起こす薬を彼らに渡しているのです。 その他にも、重大な副作用、胃腸障害、骨折など、私たちがそれらの医薬品のすべてを効果的

に使いたくても使えないようにしてしまう多くの限界があります。 与えられた薬が気に入らなければ、患者は決められたとおりに薬服用を順守しない傾向があり

ます。 このような複数の限界があるため、私たちは糖尿病を治療するための新しいアプローチについ

て考えさせられることになります。

ジンマン博士: そのとおりです。 私たちは皆、血糖目標を達成したいと思っています。 残念なことに、私たちの努力に体重増加と低血糖リスクの増加が伴うことがあまりにも多いの

です。 ベイリー博士、プログラムをご覧の皆さんのために、現在の治療法と、それらの状況について

、ご説明くださいますか?

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ベイリー博士: わかりました。 私たちが直面しているのは、非常に不均一な状況であり、進行性の状況であり、併存症を伴う

状況です。そのような状況のために、治療の仕方がある程度制限されます。 多くの異なる治療があり、 それらのすべてが異なったやり方で作用し、疾患が進行するにつれて異なる時期にそれらすべ

てを必要とします。 2型糖尿病では、通常、メトホルミンが適切であれば、それを最初に使います。 メトホルミンは多様な方法でそれがインスリン抵抗性に対抗します。 次に、おそらくはβ細胞を刺激するために、おそらくはスルホニル尿素かメグリチニドを使う

ことを考えるでしょう。あるいは、すでにお聞きのように低血糖と、体重増加について非常に

注意深くなるかもしれません。 インクレチンを考慮するかもしれません。その場合、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP-4)阻害薬という可能性もありますし、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体アゴニストという可能性もあります。

これらの一方又は両方を使えば、グルコース誘導性インスリン分泌を増強又は強化し、グルカ

ゴンを抑制することができるでしょう。

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これらは、β細胞の正常な生理機能効果を正しい方向に進めることができます。 もちろん、ピオグリタゾンもあります。これは、本質的にインスリン感受性を高める作用のあ

る薬です。 複合糖質の消化速度を遅らせるアカルボースもあります。これは、複合糖質が主食である地域

で非常に有用です。 もちろん、世界の地域によっては、ブロモクリプチンやコレセベラムが適応であることもあり

、プラムリンタイドが利用できる場合もあります。 これらのすべてが利用できます。

そしてもちろん、SGST2類があります。今日は、新しいオプションとして、その作用機序にお

いてインスリンに依存しないこの薬物クラスに焦点を当てます。 そしてもちろん、インスリンがあります。 それらのすべてが、世界の様々な地域で利用できます。

ジンマン博士: ベイリー博士、ありがとうございました。 ダイアマント博士、ここで視聴者のために難しい課題を提供します。なぜならば、これは比較

的新しい薬物クラスであるからです。SGLT2の作用機序、SGLT2を目標とする根拠、尿中グル

コース排泄、そしてβ細胞に対するその効果について、背景を説明していただけますか。 よろしくお願いします。

ダイアマント博士: わかりました。たしかに難しい課題です。

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まず初めに、SGLT2がナトリウムグルコース共輸送体(sodium glucose co-transporters)の略であることを指摘しておきましょう。現在、2つのオプションがあることが

わかっています。 まずその1つ、SGLT2は、実際、尿細管の近位部に位置しており、グルコースの約90%を再吸

収する働きをします。 SGLT1は腸内に位置し、より少ないグルコースを再吸収します。 SGLT2を標的にした場合、この共輸送体を阻害することによって尿中にグルコースを排泄する

ことになるので、これは実際、絶好の標的です。

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これは1日におよそ60~80グラムになるので、グルコースが減り、グルコース毒性が軽減され

ますが、それだけでなく、フォンセカ博士のお話からもわかるように、エネルギーカロリーも

除去するので、結果的に体重が減ります。 そのことは、新規療法として非常に魅力的です。

ジンマン博士: ダイアマント博士にお聞きします。2型糖尿病の場合、SGLT2の異常はあるのですか。また、

それらの輸送体は上方調節されるのでしょうか。

ダイアマント博士: それは非常に興味深い質問です。 2型糖尿病ではSGLT2が上方調節されることが示されています。ということは、より多くのグ

ルコースが再吸収されます。 この特定の疾患では、この輸送体を標的にすることは、グルコース毒性を軽減しグルコースを

除去するための非常に合理的な方法です。 もう1つ、先ほども指摘されたように、これはβ細胞機能又はインスリン感受性に依存する必

要がないので、完全に異なった機序で高血糖に対処することになります。

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ジンマン博士: ありがとうございました。 2型糖尿病の管理への取り組みとして、非常におもしろくユニークですね。 では、世界で承認済みのSGLT2阻害薬はあるのでしょうか。 ベイリー博士、お願いします。

ベイリー博士: そうですね。現在、ダパグリフロジンとカナグリフロジンが世界各地で承認されています。 また、イプラグリフロジンは、少なくとも一カ国で肯定的な意見を得ていると思います。 この3つは、このプログラムが公開されるころまでに承認され、利用可能になっていることが

期待されます。 エンパグリフロジンもすでに承認申請されているので、これを含めると4つになります。また

、今後も多くが出てくるでしょう。 本質的にこれらの各薬剤はSGLT2をある程度阻害します。 これらは、かなり特異的に輸送体を標的にします。 これらの中には、SGLT1にわずかながら影響を与えるものもあれば、SGLT1に実質的に全く影

響を与えないものもありますが、ダイアマント博士が指摘したように、いずれも、1日に約70から80グラムの尿中グルコースを除去し、それによって血糖を降下し、そして願わくばカロ

リーを損失させて体重コントロールもする、というものです。

ジンマン博士: そうですね。

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フォンセカ博士、第3相試験の結果について何か予想できることはないでしょうか。それがわ

かれば、患者にどんな薬物応答性が期待できるかがわかり、臨床医の助けになります。 お話しいただけないでしょうか。

フォンセカ博士: 多くの治験薬が第3相を終え、公開されており、いくつかはまだ進行中です。 入手可能なデータの多くは、開発が早かったカナグリフロジンとダパグリフロジンに関するも

のです。 それらはいずれもほぼ同等の効果を示しています。真の直接比較の治験はないことをここで私

は強調しておかなくてはなりませんが、多かれ少なかれグルコースと糖化ヘモグロビン(A1c)は等しく低下しています。 A1cの平均低下率は、どの背景療法が行われていたかや、ベースラインA1cに依存して、約0.6~1%です。多様な患者でそれらの試験が行われてきました。

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このスライドは、2種類の薬剤の患者における、メトホルミン単剤療法との組み合わせにおい

ての単剤療法を示しています。

これは、スルホニル尿素とメトホルミンに加えたシタグリプチンとの直接比較です。最後に、

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非常に後期のステージの患者でインスリンをメトホルミンと併用した場合です。これらは例外

なく有効性を示しています。 ですから、有用なものだと思います。 他の作用機序に依存せずに、この相加機序は血中グルコースをいっそう低下させることができ

ます。

ジンマン博士: これらは尿細管を通じた機序によって作用するので、腎機能障害のある患者が十分な効果を得

ないであろうことは明らかです。したがって、腎機能が良好でなくてはなりません。

フォンセカ博士: そのとおりです。 初期の治験は、腎機能が比較的良好な患者を被験者として行われました。 腎機能が低下するにつれてグルコースのろ過機能が低下し、再吸収を阻止できなくなるという

のが腎機能障害の論理上の作用です。 糸球体濾過速度(GFR)が30未満では全く作用しません。 45未満でもほとんど利益はありませんから、利点はほとんどないでしょう。 GFRが60未満の場合は安全性について考慮すべき点がいくつかありますが、これについては後

にお話します。

ジンマン博士: ダイアマント博士、これらの薬剤の忍容性はどうでしょうか。 忍容性が高いのでしょうか。 副作用は多いのでしょうか。 それらに関する博士の印象をお話しいただけますか。

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ダイアマント博士: これまでに公開され、発表されてきた治験を見ますと、いずれにおいても忍容性は実際かなり

良好です。 実際、最もよく認められた副作用は尿路感染症と生殖器真菌感染症です。 また、高齢者においては、たとえばループ利尿薬を使っている場合は特に、浸透圧利尿による

低血圧の可能性があります。 一般には、よく忍容されています。

ジンマン博士: そうですね。 いずれの薬剤でも、性器真菌感染症は明らかに第3相治験で上昇しており、これは男性と女性

の両方に影響し得るもので、特に割礼を受けていない男性で亀頭炎があり、当然ながら女性に

、カンジダ感染が見られます。 ここにいらっしゃる3人の方に、尿管感染症についてお話しいただけないでしょうか。 尿管感染症の上昇は顕著ですか、それとも、わずかでしょうか。 何か兆候はありますか。 ではまず、フォンセカ博士からお願いします。

フォンセカ博士: 今ここで何を話しているかを認識することが非常に重要だと思います。 臨床試験では、確認バイアスが多く見られます。

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尿検査が要求されているので、尿を調べる。そして、糖尿病でごく一般的に見られる無症候性

細菌尿を認めます。 そして、通常は無視するような感染、白血球及び細菌を、尿路感染症として扱い、そのレッテ

ルを貼ります。 とはいえ、尿中にグルコースがあるというまさにその作用機序によって、一部の人に感染が生

じやすい傾向はあり得ます。 それが一時的ことなら問題ないと思いますが、再発する場合は、私は別の治療法を選択するか

もしれません。

ジンマン博士: そうですね。 ベイリー博士、コメントはありますか。

ベイリー博士: はい。これはほとんどの症例で管理可能だったと思います。 真菌感染の症例は明らかな増加がありましたが、尿管感染の増加はそれほどでもありませんで

した。 ほとんどが症候性で、あまり大きな問題なく管理されています。 感染症の病歴のある被験者は最も影響を受けやすい患者であるため、おそらく、それらの患者

にはこれらの薬剤が投与されるべきではなかったのです。

ジンマン博士: ダイアマント博士、何か付け加えることはありますか?

ダイアマント博士: 私もそう思います。 影響を受けやすい人たちに関しては、本当に慎重にしなくてはならないと思いますが、発症し

た場合、かなり容易に管理できます。

ジンマン博士: この薬剤クラスについてのこれまでの話から考えて、最も適切であろうと思える患者プロファ

イルはどのようなものでしょうか。ベイリー博士にお聞きします。

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ベイリー博士: はい。 私たちが聞いている製品特性と多かれ少なかれ一致しています。 第1に、患者がメトホルミンを忍容しない場合、高血圧の可能性のある太り過ぎの人への使用

を考慮してもよいと思います。 メトホルミンを投薬中で、コントロールを持続できない患者の場合、特に肥満の患者、そして

当然、患者の体重減が好ましい場合に、非常に優れた追加療法となる可能性があります。

ジンマン博士: それについて、まだ話していませんでした。 通常の体重減はどのぐらいですか。

ベイリー博士: 典型的には、約2.5~3キロの体重減です。これは、それらの薬剤のそれぞれでかなり一貫性が

あり、また経時的にも一貫性があります。 2~4年間続けられた試験で、かなり一貫した体重減が認められています。 おそらく、患者の典型をここで選ぶとしたら、メトホルミンでコントロールを失った人になる

だろうと思います。さらに付け加えるならば、 それは、太り過ぎの人、肥満の人であり、 高血糖にさせてはいけない人たち。そういう人たちが候補になるんじゃないでしょうか。

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ジンマン博士: そうですね。 そして、腎機能が良好であること。

ベイリー博士: はい。 先に言われてしまいましたが、そのとおりです。腎機能が良好であることは重要です。

フォンセカ博士: いくつかの注意点があります。

複数の血圧降下療法を受けている人には少し注意が必要です。特に、ループ利尿薬とアンジオ

テンシン変換酵素(ACE)阻害薬の場合、血圧をかなり下げる可能性があるので、転倒などが

懸念されます。それと、長期の安全性データがまだありません。

ジンマン博士: そうでしたね。

フォンセカ博士: 現在、長期の心血管転帰を評価する試験が進行中です。 低密度リポ蛋白コレステロールのわずかな増加が認められていますが、まだ心血管事象の増加

という解釈はされていません。いずれわかるでしょう。 特にACE阻害薬及びアンジオテンシン受容体ブロッカーを処方されている患者にカリウムの上

昇がとくに見られますが、これらはほとんどの患者に処方しているものです。 そういったことを注意して見守る必要があります。そして、腎機能がやや劣っている患者、た

とえばGFRが60未満の患者の場合、軽い脱水症状になる可能性がありますから、最高用量を使

わないほうがよいかもしれません。 少し慎重にしましょう。

ダイアマント博士: それと、どんなタイプの患者を選択できるかということに関して、私は、インスリンを使って

いる患者も挙げます。 インスリン投薬計画を強化したくないと望んでいる場合にSGLT2阻害薬をトライするのがよさ

そうだと思われる試験の結果が出ています。

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通常、そのような場合は高用量のインスリンが必要なので、ますます肥満になります。ですか

ら、この薬は非常に助けになると思います。 β細胞機能とインスリン感受性から独立しています。これは、より進行した糖尿病患者のもう

一つのグループです。

ジンマン博士: では、ここでまとめに入りましょう。 近位ループにある、腎臓のSGLT2輸送体を標的にする新しい薬剤クラスについて、いろいろと

お話を伺ってきました。 糖尿病では、SGLT2輸送体の活性が高まり、したがって通常より多くのグルコースがそのポイ

ントで再吸収されるということがわかりました。 SGLT2は、グルコースコントロールの改善に関して興味深い標的です。 SGLT2阻害薬は尿中に入るグルコースを増やします。医学生やインターンだったころ、私たち

4人の誰もが、それは避けるべきことだと教わりました。しかし、この新しい薬剤クラスは、

尿を介して過剰なグルコースを除去することができ、実際に3つの非常に好ましい効果を与え

ることを示しています。 つまり、A1cの低下と、ダイアマント博士が指摘したカロリーの損失による体重減と、血圧の

降下です。 それらはまさに、私たちが治療法に求めている特性です。

明らかに、安全性、特に心血管疾患に関する安全性を判断するために、さらに長期的な試験の

必要があります。 性器真菌感染症の増加が認められています。 より深刻なのは尿管感染ですが、これまでのところ尿管感染はより少なく、プラセボと比較し

ても差はごく僅かです。

お聞きになったとおり、すでに2種類が承認済みであり、さらに多くが承認されるだろうとい

うことです。 これらの大規模試験の結果や今後の展開が興味深いですね。

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ダイアマント博士、ベイリー博士、フォンセカ博士、非常にためになるお話しをありがとうご

ざいました。 そして、視聴者の皆さん、どうもありがとうございました。 このプログラムの内容が皆さんの知識となり、理解を提供でき、2型糖尿病の患者さんの管理

に役立つことを願っております。

スタイルおよび簡潔さのために内容に編集が加えられています。