ssc-ild診療 今後 の展望 リウマチ・膠原病内科の立場から...
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主催 日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社 開催日 2019年10月24日(木) 開催地 香川県高松市
今後の展望SSc-ILD診療 リウマチ・膠原病内科の立場から
Future Prospects
全身性強皮症(SSc)は全身の臓器の線維化、血管障害を特徴とする自己免疫疾患です。SScに伴う間質性肺疾患(SSc-ILD)は発現頻度が高いにもかかわらず、これまでSSc-ILD に対する治療を主目的とした適応症の治療薬はありませんでした。今回は、香川大学医学部附属病院 膠原病・リウマチ内科 病院教授 診療科長であり、オフェブのアドバイザリーボートメンバーの1 人である土橋 浩章先生に、SSc-ILD 診療の現状および今後の展望についてお伺いしました。
香川大学医学部附属病院 膠原病・リウマチ内科 病院教授 診療科長
土橋 浩章 先生
INDEX
SSc患者と診療の実態
SSc-ILD 治療とオフェブへの期待
SSc-ILD 治療における連携診療の重要性
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今後の展望SSc-ILD診療 リウマチ・膠原病内科の立場から Future Prospects
当科では年間100 例以上のSSc患者を診療しており(図1)、その半数以上がILD を発現しています。疾患背景として
中高年の女性が多いものの、関節リウマチ(RA)や全身性エリテマトーデス(SLE)などのほかの膠原病に比べると男性
の割合が高いのも特徴です。病型の内訳は、限局皮膚硬化型SSc(lcSSc)とびまん皮膚硬化型SSc(dcSSc)がほぼ半
々です。SSc 患者の多くがほかの医療機関からの紹介例で、レイノー現象や関節痛を契機に膠原病を疑い、確定診断の
ために当科に紹介され来院します。SScの最も代表的な初発症状はレイノー現象で、指によって虚血(白)、チアノーゼ(紫)
、過潅流(赤)の異なる相が同時に認められます(図2)。レイノー現象はSLE、シェーグレン症候群などのほかの膠原病
疾患でも認められるため、SSc と他疾患との鑑別が重要になります。肉眼で爪郭部に出血点を確認するほか、当院では
キャピラロスコピーを用いて爪郭部の毛細血管の状態をより詳細に観察します。SSc とSLE では潰瘍や出血点などの
肉眼所見は類似していますが、キャピラロスコピーで毛細血管を観察すると、SSc では配列の乱れ、減少、拡張が認めら
れる一方で、SLE では大きな変化は認められません(図3)。血液検査では抗RNA ポリメラーゼⅢ抗体、抗セントロメア抗
体、抗トポイソメラーゼⅠ抗体などの自己抗体を測定します。特に抗RNA ポリメラーゼⅢ抗体陽性の患者では腎クリー
ゼが生じる可能性があり、注意が必要です。また、臓器障害のスクリーニングとして間質性肺炎バイオマーカー(KL-6、
SP-D、SP-A)、心負荷バイオマーカー(NT-proBNP)を測定します。ILD 発現患者では、基本的に1 年に1 回、HRCT、呼吸
機能検査、心臓超音波検査を行います。SSc では肺癌を併発する患者も少なくなく、ILD が発現している状態では、単純
X線写真で肺癌を見落としてしまう危険性があるため、HRCT を行います。
SSc患者と診療の実態
香川大学医学部附属病院 膠原病・リウマチ内科 病院教授 診療科長 土橋 浩章 先生
香川大学医学部附属病院 膠原病・リウマチ内科 データよりhttp://www.med.kagawa-u.ac.jp/hosp/shinryoka/riumachi/#prettyPhoto
【外来患者数】総数 2058人
【入院患者数】総数 683人
1057人
331人109人
125人
179人
194人
63人
366人
108人
107人
37人
39人 16人10人
■ 関節リウマチ■ 強皮症
■ 全身性エリテマトーデス■ 混合性結合組織病
■ 多発性筋炎・皮膚筋炎■ 全身性血管炎 ■ その他
香川大学 膠原病・リウマチ内科における患者割合(平成30年度)
図1
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香川大学医学部附属病院 膠原病・リウマチ内科 病院教授 診療科長 土橋 浩章 先生
香川大学医学部附属病院 膠原病・リウマチ内科 病院教授 診療科長 土橋 浩章 先生 ご提供
レイノー現象血管障害により皮膚の色調が変化する虚血により白く変化している指と過潅流により赤く変化している指が同時に認められる
皮膚硬化手指・手背が浮腫性に腫脹し、皮膚が硬化する
皮膚潰瘍血管障害により手指先端に潰瘍が生じる
SScの典型的所見
図2
■ 皮膚潰瘍合併患者の爪郭のキャピラロスコピー。SSc患者(①~⑤)では配列の乱れ、減少、拡張が 認められるが、SLE(⑥)では正常に近い血管配列で、大きな変化は認められない。
香川大学医学部附属病院 膠原病・リウマチ内科 病院教授 診療科長 土橋 浩章 先生 ご提供
①SSc(初期) 軽度に拡張した血管
②SSc(活動期) 拡張した血管
③SSc(活動期) 巨大化した血管
④SSc(活動期) 出血点
⑤SSc(末期) 配列が乱れ、減少した血管
⑥SLE 正常に近い血管配列
SScとSLEのキャピラロスコピーの症例写真
図3
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当科では臓器障害のないSSc 患者に対しては、まずは血管拡張薬を投与しています。臓器障害がごく軽度の患者で
は外用薬、レイノー現象が強い、循環不全がある、潰瘍の既往があるなどの患者では血管拡張薬を使用します。皮膚硬
化が認められたり、呼吸機能低下(FVC が10%ずつ低下)がみられる患者にはシクロホスファミドなどの免疫抑制薬を
投与します。ただし、使用期間や使用量には限りがありますから、治療開始のタイミングを決めることが重要なポイント
になります。今後、SSc-ILD に対する治療薬としてオフェブが承認され、これまで有効な治療法がなかったILD が進行す
る患者に対し、有用な治療選択肢になると考えています。また、SSc では臓器障害や肺高血圧症の悪化の予測因子が未
だ明らかになっておらず、治療戦略が立てにくいのが現状ですが、過剰治療による有害事象に配慮しながら、早期治療
開始を検討することが重要だと考えています。今後、どの患者にどのタイミングでオフェブによる治療を行うのが最適な
のか、エビデンスの構築が期待されます。
SSc-ILD 治療とオフェブへの期待
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SSc は様々な臓器障害を引き起こす全身性疾患ですので、皮膚科、呼吸器科、腎臓内科、循環器科、心療内科、患者
のライフステージによっては婦人科など、複数の診療科との連携が極めて重要と考えています。当科ではディスカッショ
ンやカンファレンスを通して各診療科との信頼関係を築いています。また、県内基幹病院の膠原病専門医は当科の出身
者が多いことや、地理的に県内の患者が当院に通院しやすいこともあり、病院同士の連携がスムーズにできていること
も特徴です。患者一人ひとりを丁寧に診察することを心がけ、問い合わせにはしっかりと返事をすることが最適な治療
の提供に繋がると考えています。
SSc-ILD 治療における連携診療の重要性
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香川大学医学部附属病院 膠原病・リウマチ内科 病院教授 診療科長 土橋 浩章 先生
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2020年 8月作成