タクティカル・デザイン|tactical design >>> 論考

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Chapter0: Necessity of Civic Pride 求められる市民の主体性 Chapter1: Limit of Modern City Planning 近代都市計画の限界 Chapter2: Tactical Urbanism タクティカル・アーバニズムへ Chapter3: Tactical Intrusion into Modern Cities 都市への戦術的介入 Chapter4: English Abstract Tactical Design: Practices for Commonalities through Interventing into the Modernised Cityscape Contents Tactical Design 6 10 18 26 50

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Tactical Designは、慶應義塾大学環境情報学部水野大二郎研究会のデザインリサーチプロジェクトである。近代都市の誕生から100余年、技術の発展とそれにともなう移動の加速が都市そのものの再発明を要求したことにより、私たち都市生活者の日常生活は劇的に変化した。都市の設計手法/対象/主体がめまぐるしく変化していく中で、資本が一極集中して著しい人口増加が生じてしまったのだ。衰退しつつある都市を転用するような創造的活動を通して、市民が都市に対する主体性を改めて獲得するとき、デザインという営為は何をなしえるだろうか。その可能性を「タクティカル・デザイン」という概念とその実践でとらえていく。

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Page 1: タクティカル・デザイン|Tactical Design >>> 論考

Chapter0: Necessity of Civic Pride

求められる市民の主体性–

Chapter1: Limit of Modern City Planning

近代都市計画の限界–

Chapter2: Tactical Urbanism

タクティカル・アーバニズムへ–

Chapter3: Tactical Intrusion into Modern Cities

都市への戦術的介入–

Chapter4: English Abstract

Tactical Design:

Practices for Commonalities through

Interventing into the Modernised Cityscape

Contents

Tactical Design–

6

1 0

1 8

2 6

5 0

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Chapter0

Necessity of Civic Pride

求められる市民の主体性–

Naoto Yoshioka+Yuka Yoshii+Rebecca Rébillé

吉岡直人+吉井優香+レビエ・レベッカ–

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8 –求められる市民の主体性|背景

1|背景–

本稿では、慶應義塾大学環境情報学部水野大二郎研究会のデザインリサーチプロジェクトである「Tactical Design」について述べる。 人や資本が都市にグローバルスケールで一極集中している現状は、2015年9月現在における「難民」問題からも明らかであろう。近代都市の誕生から100年あまり、私たち都市生活者の日常生活は劇的に変化した。というのも、技術の発展とそれにともなう移動の加速は、都市そのものの再発明を要求したからである。都市の設計手法、対象、主体がめまぐるしく変化していく中で、資本が一極集中して著しい人口増加が生じてしまったのだ。 一方で、衰退する都市を転用するような創造的活動も近年では多く見られるようになった。例えば、都市の間隙たる空きスペースがAirbnbに代表されるようなクラウド型サービスによって有効活用されている。このような視点は、日本においては震災以後の都市像とも大いに接続することになるだろう。一時的に断絶したライフラインのもと、市民がみずからの手で生活をすること、つまり市民の主体的な都市への関わり方が問われているのである。

現代都市においては、近代都市計画を前提とした巨大開発のみならず、市民がみずからの手でまちを知り、使い、暮らすことが必要であるといえる。実際のところ、それらは「タクティカル・アーバニズム」として部分的に実践されている。より多くの市民が都市に対して主体的になりえるこの都市型実践において、デザインという営為は何をなしえるのだろうか。その可能性を「タクティカル・デザイン」という概念と実践でとらえることが本稿の目的である。–

2|構成–

本稿は3章構成となっている。1章では、産業革命以降に行われてきた近代都市計画がトップダウン式からボトムアップ式に至るまでの変遷をたどることで、現代都市計画に求められる思想を浮き彫りにする。2章では、現代的な都市計画の潮流としてのタクティカル・アーバニズムを紹介し、一般市民が主体性を持って公共空間をデザインする意義を確認する。3章では、1章と2章を踏まえたタクティカル・デザインの実践およびオープンソース化の可能性についてまとめたあとに、今後の展望を明らかにしたい。

Chapter 0求められる市民の主体性–

Necessity of Civic Pride

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Chapter1

Limit of Modern City Planning

近代都市計画の限界–

Naoto Yoshioka+Rebecca Rébillé

吉岡直人+レビエ・レベッカ–

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12 –近代都市計画の限界|近代都市計画

 本章では、近代都市計画の理論的支柱となったル・コルビュジエ、ジェーン・ジェイコブス、アンリ・ルフェーブルそれぞれの思想に焦点を当てる。それを通じて、近代都市計画の理論的限界と現代都市への応用可能性を提示する。–

1|近代都市計画–

産業革命以降、19世紀の都市計画の最重要の眼目は高い人口密度、住居と工場の混在、スラムの拡大といった公衆衛生の問題であった。都市計画を含む社会実践の多くは、産業革命の成立以後に大量に生み出された労働者に対する福祉と安寧を提供することが目指された。特にル・コルビュジエ(Le

Corbusier)は、人口過密で悪化する近代都市を批判し、『輝く都市』[コルビュジエ

1968a]においてその対策を提示したことで知られる。–

1. 1 「仕事、余暇、睡眠」と分節化し、各機能に適した都市型を与えたこと–

産業革命によって都市での工業化が進んだことで公害が発生していた当時、都市計画によって仕事と余暇と睡眠を分けることで、「物質的にも感覚的にも

申し分のない最上の生活条件」[前掲書:

49]が揃い、問題の解決が図れると考えた。–

1. 2 自動車道路と高層建築群による機械時代の都市表現を見出したこと–

近世以降のヨーロッパから続く建築様式が主流であったという背景もあり、当時の建築家は過去の歴史的様式を深く理解した芸術的な作品をつくることが求められていた。しかし19世紀になると、新たに実験科学と応用の時代が始まり、機械が大量に出現した。それにともなって人間の生活や考え方にも変化が起こる[前掲書: 38]。 加えて、一定不変の性質を持った人工材料の安全度にもとづいた応力計算の科学的方法の出現によって技術もまた変化した[前掲書: 41]。 こうした背景から、コルビュジエは前時代の都市計画を、

平面的で、むしろ後ろ向きで博物館行きのものであり、もの真似にばかりふけっていた[コルビュジエ 1968: 20]

と批判し、機能主義、機械主義的な都市像の提案を目指した。 特にコルビュジエは来たる自動車中心社会を見越しており、

Chapter 1近代都市計画の限界–

Limit of Modern City Planning

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13 –近代都市計画の限界|近代都市計画批判

速度は夢ではなく、絶対の必要である。私は断言する、速度を自由にする都市は成功を自由にすると[コルビュジエ 1967: 177]

と、自動車専用道路の重要性と移動時間の短縮を訴えている。–

1. 3 スラム・クリアランス–

コルビュジエは都市計画にあたって、人口流入によって都市部に増加していたスラムを「結核菌だらけの古くさい隠れ場所」[前掲書: 201]と呼んでいるように、衛生問題を解決するためにスラム・クリアランスの必要性を感じていた。また、輝く都市の構想において、オープンスペースを確保するためにもそれらの地域を取り壊し、その地域には高層住宅を建てる必要があるとした。–

2|近代都市計画批判–

しかし、コルビュジエの主張はあまりにもトップダウン式の空間決定論に寄りすぎていたがゆえに、生活者の視点に重きをおく論客から批判を招いた。本稿ではその筆頭であるジェーン・ジェイコブスとアンリ・ルフェーブルを取り上げたい。–

2. 1 ジェーン・ジェイコブス–

ジェーン・ジェイコブス(Jane Jacobs)は、建築家でも思想家でもないライターでありながら、国家主導のまちづくりか

ら住民主導のまちづくりへと流れを変えさせた人物である。その大きなきっかけとなったのが、1961年に出版された著書『アメリカ大都市の死と生』[ジェイコブズ 2010]である。本書においてジェイコブスは、「組織だった複雑性を持つシステム」である大都市には多様な用途/機能が経済的/社会的に絶え間なく支えあっている秩序があるとした。そして、これを無視した計画は問題を引き起こすだけとして、コルビュジエに代表される従来の都市計画を批判した。ジェイコブスは機能主義に立った都市計画/再開発プロジェクトに対して生活者の視点から批判し、活気ある都市のための多様性のある空間の条件を以下の4つに示した。–

2. 1. 1 混合一次用途の必要性–

その地区や、その内部のできるだけ多くの部分が、二つ以上の主要機能を果たさなくてはなりません。できれば三つ以上が望ましいのです。こうした機能は、別々の時間帯に外に出る人や、ちがう理由でその場所にいて、しかも多くの施設を一緒に使う人が確実に存在するよう保証してくれるものでなくてはなりません[前掲書 : 176] 。

ジェイコブスは有効性についても、それぞれの時間帯に街路を利用している人々が、本当に同じ街路を使っていなくてはならない、同じ街路をちがう時間帯に使っている人々の間で部分的に同じ施設を使う人々がいる、ある時間

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14 –近代都市計画の限界|近代都市計画批判

Chapter 1近代都市計画の限界–

Limit of Modern City Planning

208] 。また、街路を短くすることは手段であり、その目的は「多様性を生み出して都市計画者以外の多くの人々の計画を喚起すること」[前掲書:213]とも語られており、設計者の意図の乗り越えをうながすための要件としてもとらえることができる。–

2. 1. 3 古い建物の必要性–

地区は、古さや条件が異なる各種の建物を混在させなくてはなりません。そこには古い建物が相当数あって、それが生み出す経済収益が異なっているようでなくてはなりません[前掲書: 214] 。

都市に新しい建物ばかりがあると必然的に高家賃となり、その利用は経済的に限られたものとなる。すると、老舗や標準化されたものがあふれ、活気があって面白いものが少なくなってしまう。それを防ぐためには、新しい建物と古い建物が混合しているのが望ましい。多様性を生み出すためには、高収益事業、中収益事業、低収益事業に無収益事業が入り交じっている必要があるのである 。また、将来の収益性の観点から見ても、都市は一次多様性の混合と二次的多様性を育成するための古い建物の混合が必要だとしている[前掲書: 215- 223] 。

帯に街路にいる人々の混合比率が他の時間帯に街路にいる人々の混合比率とある程度近い構成を持たなくてはならない、とする3つの条件を示している。[前掲書: 188- 189] 。この具体的な成功例としては、フィラデルフィア市のリッテンハウス広場があげられている。アパートや各種多様な店、事務所といった多様な近隣の存在が異なる時間帯に様々な用途を持った利用者が公園を利用しているために、継続的な活気がもたらされている。–

2. 1. 2 小さな街区の必要性–

ほとんどの街区は短くなくてはいけません。つまり、街路や、角を曲がる機会は頻繁でなくてはならないのです[前掲書:

205] 。

失敗した都市地域に典型的に見られる構図としては、長い街区があげられている。自己孤立的な街路は多様性を損なわせ、単調で標準化された都市を生み出してしまう。都市に活気を持たせるためには、街路を短く多くして1つの目的地に対する経路の選択肢を増やすことが必要なのである。これにより引き合う場所の供給は大幅に増え、利便性の向上が期待できる[前掲書:206-

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15 –近代都市計画の限界|近代都市計画批判

スペースの喪失、延びきった道路網に対する多額の補修費の投入、経済資源の不平等な配分、コミュニティに対する一体感の喪失といった諸現象をもたらしたとされる。[川村・小門 1995]すなわちニュー・アーバニズムは、コミュニティ崩壊による米国社会問題の解決策として自動車への依存を減らし、生態系に配慮したうえで、人々が自分が住むコミュニティに強いアイデンティティが持てるような町の創造を提案したのである。 従来の近代都市計画が職と住の分離、自動車中心のモデルを想定していたのに対して、ニュー・アーバニズムでは、鉄道駅を中心に商業施設や住宅地が囲んだ徒歩主体のモデルを想定している。ニュー・アーバニズム誕生のきっかけとなった、メキシコ湾に面したフロリダ州シーサイドのまちづくりの特徴は、多様な用途の施設が共存する、主要施設に歩いてアクセスできるような適当なスケール感がある、地域性に配慮した変化に富んだ多様な表情を持っている、環境的配慮が成されていることがあげられる[松永 2005: 65] 。–

2. 2 アンリ・ルフェーブル–

ジェイコブスのみならず、社会学者のアンリ・ルフェーブル(Henri Lefebvre)も国家と専門家によって大規模に行われる都市計画に対して批判を浴びせたことで知られている。 1950年代半ばから1960年代にかけてのヨーロッパでは、都市への資本の流入と人口の集中が加速化し、国家に

2. 1. 4 「密集の必要性」–

十分な密度で人がいなくてはなりません。何の目的でその人たちがそこにいるのかは問いません。そこに住んでいるという理由でそこにいる人々の人口密度も含まれます[前掲書:228] 。

街路や公園や事業所を利用する大半はその地区の住人であるため、そこに十分な密度がなければ利用者が減少し、多様性は生まれないとした。また、住戸密度の低い所で過密が起こった場合は、周辺に気晴らしや逃避になる公共生活が少なくなることから、不正や無視が横行し治安が悪化するとして、適した住戸密度は治安維持にとっても重用であるという[前掲書: 236] 。 また、ジェイコブスは高密を排除することは過密問題の解決とは関係がないこととして批判した。もともと住んでいた人々を追い出し、他所に過密を招来させてしまうことで、近代都市計画のスラム・クリアランスの問題を悪化させるというのである[前掲書: 235] 。 ジェイコブスの指摘は以降の都市計画に影響を与え、1980年代以降のアメリカを中心とした「ニュー・アーバニズム」という新しい潮流が生まれるに至る。ニュー・アーバニズムは、自動車中心の郊外住宅開発による都心の空洞化に対する批判から誕生した。1995年に定められたアワニー原則によると、従来の郊外の開発パターンが、自動車への過度の依存によってもたらされる交通混雑と大気汚染、誰もが利用できるような貴重なオープン

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16 –近代都市計画の限界|近代都市計画批判

Chapter 1近代都市計画の限界–

Limit of Modern City Planning

2. 2. 2 シチュアシオニスト–

ルフェーブルの思想は1960年代に出現したシチュアシオニストにも多大な影響を与えている。シチュアシオニスト(シチュアシオニスト・インターナショナル)とは、1957年から72年にかけてフランスはパリを中心に活動した前衛芸術集団である。資本主義社会が生み出したトップダウン式の都市計画による支配的なモニュメントやイメージ–「景観(spéctacle)」を否定し、多様性に富んだ都市空間の「状況(situation)」の構築を目的とした。また、市民の消費の舞台である日常に着目しながら、創造的な実験社会を実現するための「漂流(dérive)」や「転用(détournement)」といった概念をつくりだした。『状況の構築へ–シチュアシオニスト・インターナショナルの創設』[シチュアシオニスト・インターナショナル 1994]でも述べられているように、シチュアシオニストは生き方を指図される世界の重圧に悩まされ、支配権力によって整備された都市環境の改変を目指した。そこで大きな役割を果たしたのが「心理地理学(psychogéographie)」である。心理地理学とは、「意識的に整備された環境かそうではないかにかかわらず、地理的環境が諸個人の情緒的な行動様式に対して直接働きかけてくる、その

よる都市計画や民間資本による都市開発が行われた。ルフェーブルは技術主義/構造主義が支配的となった当時の社会を都市と日常生活の観点から批判した。ルフェーブルによれば、工業化によって交換価値に還元されてしまった都市は完全な都市化–「都市社会」には至らない。「都市社会」とは、住民、使用者、現場にいる人々による主体的変革の可能性をはらみ、それらの人々が都市の組織化に介入して空間を我有化しうる社会である。すなわち、都市は複数の他者によって読み替え/書き換えが可能な場であり、誰もが主体性を持つことができる場であるとした[南後

2011: 234- 236] 。–

2. 2. 1 都市への権利–

また、ルフェーブルはその主著『都市への権利』[ルフェーブル 2011]において、身体を介した時間と空間の我有化にあたって、国家と民間資本による都市計画によって市民が「疎外」されてしまったのだという。しかし、都市を主体的に利用し使用価値を帯びた「作品」とすることで、再び「都市への権利」を獲得することができるとした。これも広く都市空間における市民の主体性の問題としてとらえることができる。

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17 –近代都市計画の限界|近代都市計画批判

を規定するという空間決定論に立っていたがゆえに、本来都市に「住む」主体である人々を度外視してしまったといえるだろう。その結果として、「プルイットアイゴー団地」や「ベルマミーア団地」に代表されるような犯罪の温床やスラムを生み出したことは周知の事実である。また、郊外のニュータウン構想に見られるように、本来使用されるべき都市空間が交換価値に還元され、「幸福のイデオロギー」を通じて消費の対象になったことで、住人の共同体や社会生活への主体性が失われてしまった。それを問題視したのが、他ならぬジェイコブスとルフェーブルであった。 いずれにせよ、求められるは住人が主体性の一部を担うボトムアップ式のまちづくりである。人々が主体性を取り戻すためには、まちを知り、使い、暮らす、個人による計画の乗り越えが必要なのである。しかし、そのためにはジェイコブスの議論だけでは不十分である。たしかにニュー・アーバニズムは都市生活者の視点を取り入れてはいるものの、その大がかりな都市計画は依然として多くの土地と資源を要求している。冒頭の難民問題などを鑑みても、人口が増加する今日の都市地域において適切でないことは明らかである。したがって、今日の都市計画はジェイコブスとニュー・アーバニズムのみならず、ルフェーブルの思想、そしてシチュアシオニストの「実践」を今一度再検証するべきなのではないであろうか。

正確な法則や効果の研究」であり、その研究に用いられる沢山の手法が紹介されている。[前掲書: 125]その手法のひとつに漂流という実験的行動様式があり、これは「変化に富んだ環境の中を素早く通過する技術」と言われ、「実験を連続的に行う期間」を示したりもする[前掲書: 138] 。すなわち、本来ならば通行が禁じられている場所にあえて侵入したりすることで、都市の設計者が意図しなかった新しい姿を見出そうとする試みであった。また、転用という手法は「転用使用法」において、プロパガンダの道具として今までの芸術ジャンルを越えるもの、ブルジョワの私的所有をなくすもの、そして秩序を破壊する「真剣なパロディ(parodique- sérieux)」として表されている[前掲書: 196] 。すなわち、転用とは国家や専門家によって設計された状況を、その意図とは異なる用途で利用する行為を意味している。–

2. 3 ニュー・アーバニズムの失効–

近代都市計画の変遷をたどるべく、ル・コルビュジエ、ジェーン・ジェイコブス、アンリ・ルフェーブルの思想をひもといてきた。それによって、国家や専門家主導によるトップダウン式の近代都市計画から、その神話が崩壊したあとのボトムアップ式の都市計画に至るまでの潮流を素描した。 1960年代当時、急速な人口流入や公害問題といった「混沌」を収めるためにはある程度の「秩序」が必要であったことは想像に難くない。しかし、コルビュジエの議論は空間が社会のあり方

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Chapter2

Tactical Urbanism

タクティカル・アーバニズムへ–

Yuka Yoshii + Ryo Nagara

吉井優香+永良凌–

Page 20: タクティカル・デザイン|Tactical Design >>> 論考

20 –タクティカル・アーバニズムへ|現代都市の歪み

 本章では、1章でも触れたタクティカル・アーバニズムという潮流を扱う。具体的には、2000年代以降における社会問題その他の状況を踏まえたうえで、タクティカル・アーバニズムの運動が登場したのはなぜか、そしてタクティカル・アーバニズムとは何かという問いに答えていく。–

1|現代都市の歪み–

1. 1 都市への人口集中化、著しい経済格差などの問題系–

国連「世界都市化予測2014」[United

Nations Department of Erouomic and Social

A�airs 2014]によれば、都市部の人口が農村部の人口に比べて増加する都市化の傾向にあるという。具体的には、2014年の時点で世界人口の54%が都市部に居住しているほか、2050年には66%まで増加すると予測されている。このデータは都市部と農村部の経済格差が広がりつつあるということを暗示している。 急激に都市に集中した人口を支えるためにはインフラや住宅の整備が必要不可欠になる。しかし、前章でも取り上げたように、資源不足や資金不足が課

題となっている現代においては、従来の国や行政がトップダウン式に行ってきた都市計画のプロセスは困難を極めている。–

1. 2 環境管理型権力–

一方、国家の権力行使の在り方も変化しつつあり、旧時代的な規律や訓練だけからなるものではない。新しい権力のインフラを担うのは、都市に張り巡らされた監視カメラや、携帯電話や電子マネーの利用履歴などの「情報」である。それらが刻一刻と記録する情報は、データサイエンティストやエンジニアの思惑と、セキュリティ化の意識からくる自己防衛的な市民感情に支えられて、単なる「監視」を通り越して暴走しつつあるともいえる。この背景を踏まえて、思想家の東浩紀は、環境としてのアーキテクチャが暗黙裡に人問を動かして管理する権力を「環境管理型権力」と名付けている[東浩紀 2002]。

我々を囲繞するアーキテクチャは、ジェレミ・ベンサムが提唱した囚人監視型システムことパノプティコンさながら、それ自体が支配の権カとして振る舞い始めているのである。–

Chapter 2タクティカル・アーバニズムへ–

Tactical Urbanism

Page 21: タクティカル・デザイン|Tactical Design >>> 論考

21 –タクティカル・アーバニズム|市民主体の都市型実践

Rebarの卓越はその方法をオープンソースで公開したところにある。体系化されたメソッドがインターネット上で公開されたことで、他の都市でも広く都市への介入が行われる土台が整ったのである。実際に、Parkletというプロトタイプがサンフランシスコの市の権力を巻き込んで実践された。サンフランシスコでは面積の25%が道路と公共権利通路である一方で、憩いのスペースが不足していることが問題視されていた。このプロトタイプが成功をおさめたことでPARK(ing)dayはより様々な都市で展開されることになったのだ。ここで興味深いのは、サンフランシスコ市という「公」民も参画している点だ。ただ単に「私」空間を形成するのではないタクティカル・アーバニズムは、社会的なステークホルダーとどのような関係性の上に成立しえるのか。幾つかの視点から以下に整理したい。

2|市民主体の都市型実践–

2. 1 タクティカル・アーバニズム–

トップダウン式に計画されてきた空間–それが実空間であれ、情報空間であれ–は、多種多様化した人々のニーズや欲求にもはや適合しないのではないか。そこで世界各地でカウンター的に生じている運動がタクティカル・アーバニズムである。それでは、タクティカル・アーバニズムとは一体何なのか、事例の一つとして、芸術家集団Rebarが2005年に行なったPARK

(ing)day [1] というプロジェクトを以下に紹介する。 PARK(ing)dayとは、数時間レンタルした道路脇の駐車スペースにベンチ、机、植物や自転車置き場といった要素を配置することで道路を公園にする(pavement to park)都市型実践である。

サンフランシスコにおけるParkletの 例[Pavement to Parks 2015]。

[1]

[1]

Page 22: タクティカル・デザイン|Tactical Design >>> 論考

22 –タクティカル・アーバニズムへ|市民主体の都市型実践

Chapter 2タクティカル・アーバニズムへ–

Tactical Urbanism

ると、元々は国や行政によって認可を受けていない「私」的な「民」の活動である。しかし、結果的により多くの市民のニーズを満たすことで、行政からの認可を受けた「公」的な活動に展開されていくことになる。このように、タクティカル・アーバニズムは「民」を主体として「私」と「公」をまたがる横断的な実践であることが見てとれる。–

2. 1. 2 公共私–

第二に「公共私」という組み分けからタクティカル・アーバニズムの可能性

2. 1. 1 官民公私–

第一に私たちの日常生活を規定する「官民公私」というフレームがあげられる。藪野祐三『ローカル・デモクラシーⅠ』[藪野 2005]によれば、ここでいう公/私が空間や機能というシステムを意味する軸であるのに対して、「官/民」はその担い手であるアクターを意味している。 Parkletの例では、芸術家集団という「民」が始めた活動がサンフランシスコ市という「官」を巻き込んだ活動にシフトしていった。タクティカル・アーバニズムをこの四象限にマッピング[2]す

[2] 藪野祐三「官民公私論」と「英語表記による官民公私論」を参考にした、官民公私論におけるタクティカル/アーバニズムのゾーニング。

[2]

Page 23: タクティカル・デザイン|Tactical Design >>> 論考

23 –タクティカル・アーバニズムへ|市民主体の都市型実践

は、「共」を取り戻す方法や態度が求められる。

つまり、今日においては「公」と「私」の揺らぎである「共」の空間 [3]を取り戻すことと、その手段が問われているということである。その手段としてもタクティカル・アーバニズムは有効なのではないだろうか。前出の官民公私のフレームにもあるように、個人的なニーズを満たすための「私」の活動が「公」の領域で実践されることで、誰のものでもあって誰のものでもない、より多くのニーズを満たす「共」の空間が構築されていると考えられるからだ。–

2. 1. 3 タクティカル・アーバニズムの六要素–

タクティカル・アーバニズムの実践には

をとらえたい。社会学者の加藤文俊は、恩田守雄の指摘を引用しながら「公共」という言葉についてこう述べている。

ぼくたちは、「公共」と「私」を対比させて語ることが多いが、じつは「公」(パブリック)と「私」(プライベート)のあいだに、「共」(コモンズ)の領域があった(ある)

ことを認識しておくが大切なのだ。「共」は、地域に暮らす人びとの共益が、私益や公益よりも優先される領域のことだ。「誰のものでもあって誰のものでもない場所」ということだろうか。かつては、わかりやすい形で「共」の存在が認知されていたが、現代社会では、もはや「共」は独自の領域をもちえず、その存在そのものが見えにくくなっているという。その結果、「供出」や「互助」の精神は希薄になる。身の回りの多くのことがらを、「公」か「私」かで判別してしまうからだ。人びととのかかわりについて考える際に

[3]

[3]「共」独自の領域の消失。「『ゆるさ』があれば(3)」[加藤 2015]より転載。

Page 24: タクティカル・デザイン|Tactical Design >>> 論考

24 –タクティカル・アーバニズムへ|市民主体の都市型実践

Chapter 2タクティカル・アーバニズムへ–

Tactical Urbanism

いくつかの共通する要素が存在する。建築家のAndrés Duanyは『TACTICAL

URBANISM』[Duany et al. 2015]序章において、タクティカル・アーバニズムは以下の六要素からなると説明する。

A|脱中心化(decentralized)–今までの国、行政、建築家に集中していた権力を分散するB|ボトムアップ(bottom- up)–市民自ら、自分たちの住む場を使い倒し、都市を自分たちの手に取り戻す。C|極端な可動性(extraordinarily agile)–

短時間でその場に作り上げられ、元どおりに戻すことができる。D|ネットワーク(networked)–ネットワークにより、他の都市の市民によって自分たちの都市で実践できるように公開され、波及していく。E|低コスト(low- cost)–小さな取り組みかつ既にあるものを利活用するため、費用が抑えられる。F|ローテク(low- tech)–専門的で高い技術を用いずとも、誰でも行うことができる。

これをParkletの例に当てはめると、活動の発端が芸術家集団という市民の集合であるという点、駐車場を数時間だけ簡単な手段で憩いの場に変えられる

という点、また、その手段がオープンソース化されているという点で一致することがわかる。–

2. 2 タクティカル・デザイン–

 タクティカル・アーバニズムの関連書籍をひもときながらその輪郭のスケッチを試みた。本章を締めくくるにあたって、前章の議論と照らし合わせながら「タクティカル・デザイン」という概念を定義しておきたい。Andrés

Duanyは、

ミシェル・ド・セルトーが『日常的実践のポイエティーク』で論じているように、戦略(ストラテジー)は権力者の有無を言わさぬ手段であり、戦術(タクティクス)はそれに対抗する無力な市民の手段である。前者は徐々に力を握り始めてきた後者に圧力をかけることで、互いに拮抗しているのが現状である。トップダウン式に計画されてきた都市を一般市民が改造し、自分たちのニーズを満たすようにインフラを読み替える様を観察することで、セルトーの理論は証明される。このようなインフォーマルなプロセス——ブリコラージュによってつくられる小規模な都市には、「共」的な性質が付与される[Ibid.: 10]。

Page 25: タクティカル・デザイン|Tactical Design >>> 論考

25 –タクティカル・アーバニズムへ|市民主体の都市型実践

と述べているが、ここでいう「読み替え」のニュアンスは、前章で述べたシチュアシオニストにおける「転用」のニュアンスと大きく重なっている。だとすれば、現代都市計画の潮流としてのタクティカル・アーバニズムは、トップダウン式に押しつけられた意味の読み替えと転用、いわば日常的実践としてのデザインによって成立しているのではないだろうか。正式な職業訓練を受けていない「野生のデザイナ」が、小さなデザインを戦術的かつ日常的に実践している。この構図を抽出することによってはじめて、タクティカル・デザインという概念を定義することができる。 タクティカル・デザインとは、個人という単位で行われる、もとある場所や人工物の読み替えと転用を通じた創造的行為である。それに対してタクティカル・アーバニズムとは、都市空間に対するタクティカル・デザインによって果たされる問題解決のひとつのかたちである。したがって、タクティカル・アーバニズムを通じて主体性を取り戻すことは、都市に埋没した「かかわりしろ」を目ざとく見つけて、生きのびるためのデザインを行っていくことに他ならない。 以上の議論を下敷きに、我々も都市を漂流してタクティカル・デザインを実践した。次章以降はそれに関して言及する。

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Chapter3

Tactical Intrusion into Modern Cities

都市への戦術的介入–

Naoto Yoshioka+Hidenori Okamoto+Rebecca Rébillé+Ryo Nagara

吉岡直人+岡本英宜+レビエ・レベッカ+永良凌–

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28 –都市への戦術的介入|アイディエーション

 近代都市計画とタクティカル・アーバニズムの潮流を整理することで、タクティカル・デザインという概念を定位した。本章ではそれを実践というかたちで応用していくわけであるが、都市空間における実践の意義を再確認するべく、いま一度ルフェーブルと加藤文俊の議論をおさらいしたい。 ルフェーブルは、都市から疎外されてしまった市民が「都市への権利」を獲得するための糸口を「作品」に見出した。この思想はシチュアシオニストにも影響を与え、「漂流」と「転用」をはじめとする多くの実践的な概念を生み出した。それらは我々がよりどころにしているデザインという手段の強度を担保している。また、加藤文俊が言及しているように、今日の社会では「私」と「公」の揺らぎとしての「共」を実現する手段が問われている。そして、コミュニケーションの場として設けられる「共」的空間を構築する手段としてもタクティカル・デザインは有効であると考えられた。「都市への権利」と「共」の獲得を通じて失われた主体性を取り戻す契機を探るべく、我々もタクティカル・デザインの実践を行った。

1|アイディエーション–

タクティカル・デザインを実践するにあたって、我々は「私」的空間である住宅、すなわち「暮らしの機能」を都市へと拡張することにした。 まずは日本の近代的汎用型住宅の原型とされる51c型を参考に、住宅におけるトイレやリビングといった生活空間の要素をブレインストーミングした。例えば、トイレなら洋式便器やペーパーホルダー、リビングなら本棚や新聞、あるいはその場を象徴する行動といったふうにである。そしてそれらすべての要素を空間に対応させるかたちでカテゴライズした[4] 。 また、これらを具体的に都市に持ち出すかたちを考えるべく、「暮らしの機能」を都市に埋没させる100案を捻出した[5] 。トイレならば公園の茂みを便器に見立てたり、風呂ならば水飲み場をシャワーに見立てたりと、都市空間に存在する要素を転用した表現方法を模索した。 ブレインストーミングを通じて、都市に暮らしの機能を拡張するには二種類の視点があることを発見することができた。それらは「室内から都市」へ向かう視点と「都市から室内」へ向かう視点としてそれぞれ整理できる。前

Chapter 3都市への戦術的介入–

Tactical Intrusion into Modern Cities

[4]

[5]

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29 –都市への戦術的介入|枯山水–都市に庭の機能を埋没させる

者が住宅が内包する構造と機能を考えたのち、それらに対応する都市の要素を見出すのに対して、後者は都市から転用可能な要素を見出す。それぞれミクロからマクロに室内を拡張する方向性と、マクロからミクロに都市を読み替える方向性からなる真逆の指向性を持っている。そこで、従来通り前者の拡張案を考える一方で、都市の要素も蒐集することにした。結果的として、都市から要素を見つける [6] よりも、室内から抽出した構造と機能を転用するアプローチの方が多くの案を出すことができた。だからといって前者に専念するのではなく、二つのアプローチを往来しながら室内と都市を結びつけて考えた。 最後に「暮らしの機能」を都市に埋没させた100案の中から面白いと感じられた10案を選定し、それぞれ100案まで拡張することで、合計1,000案を捻出する目標を設定した。以下が選定した10案である。なお、案はそれぞれ二つの要素の組み合わせからなっており、前の項が都市の、後の項が室内の要素に対応している。

A|室外機×干し物B|公園にある土管×寝室C|ゴミ捨て場×蚊帳D|駅の券売機×バーE|バス停×風呂F|公園×冷蔵庫G|電柱×定規H|階段×椅子I |電話ボックス×居間J |鉄棒×カーテン

案を拡張させるべく、都市/室内それぞれの要素を色/形/機能/テクスチャといった項目から分析し、類似する人工物やサービス、それに対する人の行動を放射状に書き出していった。 以上のような拡散と収縮のプロセスを経て、最終的にアイデアを2つに絞り、都市を漂流しながら実践を行った。なお、これらのプロセスはIDEO

社が体系化したデザイン思考の5つのステップ–共感 Emphasize/問題定義 De�ne/アイデア創出 Ideate/プロトタイピング Prototyping/検証

Test–を参考にしている。–

2|枯山水–都市に庭の機能を埋没させる–

第一の実践として、夜間の公園の砂場を転用して枯山水を描いた。枯山水とは、池や遣水といった水を用いることなく、石や砂の紋様で山水の風景を表現する庭園様式である。 砂場に模様を描くにあたって、まずは道具となる砂紋掻きを制作した。砂紋掻きとは砂利を引っ掻いた痕跡で紋様を描く特殊な器具である。トンボや熊手に似た形態をしているが、刃の形状が極めて特徴的で、三角形の頂点が地面と接することで砂や砂利をかき分けることができる。同様にして三角形の谷間によって均されることで、山脈のように並列な筋が残る仕組みとなっている。今回製作した砂紋描きは刃と柄の部分からなっている。木製の刃は、ホームセンターの木材をレーザー

[6]

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カッターで切り出した二種類の部品を組み合わせることで構成されている。同じく木製の端材からなる柄との接合部は、接着剤と金属部品を用いて固定した。 実践にあたっては、制作した砂紋掻きを都市に持ち出したうえで、藤沢市の公園18カ所に異なる紋様[7- 24] を描くことにした。警察官に職務質問をされることがあったものの、作業は徹底して深夜の23時から4時という時間帯で実施した。というのも、公園の砂場は子供が砂のお城やトンネルをつくって遊ぶことが想定された公共空間であり、夜間に利用されることが少ないからである。ジェイコブズによれば、一日の多くが利用されていない公園の状態は退屈/危険/空虚といったファクターをあわせ持ち、近隣に対して悪影響を及ぼす。しかし、人々が公園を「目的材」として利用するようになれば多様性から派生した活気が生まれるという[ジェイコブズ 同: 129]。人気のない夜間の公園を転用するという行為自体が、都市に活気をもたらす可能性をはらんでいるのである。

丸善の棚へ黄金色に輝く恐ろしい爆弾を仕掛けて来た奇怪な悪漢が私で、もう十分後にはあの丸善が美術の棚を中心とし

て大爆発をするのだったらどんなにおもしろいだろう。[梶井、 1925]

梶井基次郎の小説『檸檬』において、レモンは爆破のカタルシスを想起させる特別な異物として描かれる。丸善におけるレモンと同じように、公園における枯山水もまた異質な存在である。それでいて枯山水は、日が昇れば消されてしまうグラフィティ的な儚さも持ち合わせている。この一点において、我々の実践は犯罪ならぬ実践たりうるのである。

Chapter 3都市への戦術的介入–

Tactical Intrusion into Modern Cities

[7]

30 –都市への戦術的介入|枯山水–都市に庭の機能を埋没させる

Page 31: タクティカル・デザイン|Tactical Design >>> 論考

31 –都市への戦術的介入|枯山水–都市に庭の機能を埋没させる

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32 –都市への戦術的介入|枯山水–都市に庭の機能を埋没させる

–[8 ]網代円行下原公園にて。

–[9 ]市松原谷公園にて。

–[10]海波下土棚公園にて。

–[11]観世水下原公園にて。

Chapter 3都市への戦術的介入–

Tactical Intrusion into Modern Cities

Page 33: タクティカル・デザイン|Tactical Design >>> 論考

33 –都市への戦術的介入|枯山水–都市に庭の機能を埋没させる

–[12]片男波中丸公園にて。

–[13]菊水円行公園にて。

–[14]立波桐谷公園にて。

–[15]うねり/汀線大塚戸公園にて。

–[16]山波とどろき公園にて。

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34 –都市への戦術的介入|枯山水–都市に庭の機能を埋没させる

Chapter 3都市への戦術的介入–

Tactical Intrusion into Modern Cities

–[17]丸渦丸岡公園にて。

–[18]右渦/左渦第二下土棚公園にて。

–[19]大波長後第二公園にて。

–[20]大渦四ツ辻公園にて。

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35 –都市への戦術的介入|枯山水–都市に庭の機能を埋没させる

–[21]流水高倉公園にて。

–[22]水紋円行下原公園にて。

–[23]鑓水長後新屋敷公園にて。

–[24]獅子紋上原公園にて。

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36 –都市への戦術的介入|椅子–都市に居間の機能を埋没させる

Chapter 3都市への戦術的介入–

Tactical Intrusion into Modern Cities

3|椅子–都市に居間の機能を埋没させる–

第二の実践として、ビルの壁面に設置されたモニターをテレビに見立てた居間を構築した。具体的には、本来は車両の逸脱を防止するための舞台装置であるガードレールを椅子に「転用」するためのツールキットをデザインした。 椅子らしさ/面白さ/容易さを担保しつつ、いかにして心地の良い「状況」を構築するかということを念頭に、まずは都内に散在するガードレールのパイプ径や高さを正確に計測した。これによって、地域間における規格の差異を包摂する設計を行うことができる。 それに平行して、インスピレーションを得るための観察およびスケッチを街頭で実施する。成果としては、ガードレールに脚を引っ掛けたり、もたれかかるようにして座る小学生の姿をしばしば確認することができた。ガードレールに沿って横並びで共空間を展開せざるを得ない様や、椅子の背や座面といったそこにはないものを読み替える様から発想を得たところで、椅子のプロトタイピングへと踏み切った。 椅子のプロトタイピングは5人のプロジェクトメンバーがそれぞれ実施した。いつでも/どこでも/だれでもつくれるようにという配慮から、いずれもホームセンターなどで手に入る簡単な素材を転用している[25- 30] 。

–[25]

ロール式の椅子。ダンボールを折り曲げることで、状況に適した椅子の高さや 形を設計することができる。ダンボールの波形構造に由来する軽さと強さが特徴。

Page 37: タクティカル・デザイン|Tactical Design >>> 論考

37 –都市への戦術的介入|椅子–都市に居間の機能を埋没させる

–[26]

廃材を転用した椅子。材木店で裁断された板のあまりが一般的な椅子の座面と同じであったために、無料で譲り受けた。それを「都市の幸」として素材に転用し、板と紐で座面をくくりつけた。

–[27]

ありあわせのもののブリコラージュによる椅子。ホームセンターで売っているパイプとロープに加え、義務教育以降は倉庫にしまわれがちな縄跳びを転用した。座面に塩ビ製の縄跳びを用いることで、座り心地の良い椅子となっている。

–[28]

ダンボールを素材にハニカム構造を応用して設計した椅子。アコーディオン状に伸び縮みするので持ち運びやすい。また、軽さに反して人の重量にも耐えられる強度を持っている。表面に木目のテクスチャを貼ることで、アットホームな外観を表現した。

–[29]

レーザーカッターで切り出した合板の骨組みを、ウレタンマットでガードレールごと縛り付けた椅子。釘やボルトといった固定部品を一切使用せずに座面を固定しており、脚部に集中する使用者の体重が椅子を自立させる力として働く。特殊なパーツを増やすことなく椅子らしさを演出した。

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Chapter 3都市への戦術的介入–

Tactical Intrusion into Modern Cities

[30]

38 –都市への戦術的介入|椅子–都市に居間の機能を埋没させる

Page 39: タクティカル・デザイン|Tactical Design >>> 論考

37 –都市への戦術的介入|椅子–都市に居間の機能を埋没させる

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40 –都市への戦術的介入|都市に居住空間そのものを埋没させる

Chapter 3都市への戦術的介入–

Tactical Intrusion into Modern Cities

4|都市に居住空間そのものを埋没させる–

第一、第二の実践を踏まえて、「暮らしの機能」にとどまらず、「暮らしの空間」を持ち出す実践を行った。 居住空間のなかには、内部に別の空間を持つ要素が存在する。例えば、寝室のベッド、脱衣所のカーテン、居間のこたつといった人工物は、いずれも内部と外部を分離するサーフェスからなる「コンテナ」である。これらは家族や同居人が共存しうる室内において、よりパーソナルな居心地を提供している。この二重の空間構造が部屋の要ともいうべき居心地を成立させているのだとしたら、それを都市に持ち出すことは、居住空間そのものを埋没させることと言えるのではないだろうか。部屋そのものを持ち運べるのだとすれば、「都市にひきこもる」という倒錯した状況を構築することすらできることだろう。都市生活に主体的でない市民–とりわけ現代の社会問題にもなっているひきこもりにとって、このような状況を構築することは都市へ繰り出す動機となりうる。以上の仮説を踏まえて、6人のプロジェクトメンバーが3班に別れてプロトタイピングを実施した[31- 33] 。

第二の実践に引き続き、いずれもホームセンターなどで手に入る簡単な素材を転用しているが、日常生活に耐えうるツールキットとしての強度を高めるべく、デジタル工作機械を用いて共通のロゴやディテールを配したブランディングを行っている。–

5|都市の居住空間を公開する–

第三の実践の展示とフィールドワークを踏まえて、オープンソース化を見すえつつ、第四の実践としての改良を継続して行った。 具体的な改良点としてはふたつあげられる。一つ目は、既存のツールキットの完成度を高めた点である。たとえば寝室のベッドに対応していたテントの場合、その個の構造は踏襲しつつ、メタボリズムからヒントを得たモジュールの設計思想をとりこむことで、互いに着脱可能な共同住宅をゲリラ的に構築することが可能になった。また、脱衣所に対応していたカーテンは、枠の角度による要請からふたつの壁面を必要としていたが、固い枠を半円状に曲げられる塩ビ製のパイプに切り替えたことで、幅広い空間に対応させられるようになった。

Page 41: タクティカル・デザイン|Tactical Design >>> 論考

41 –都市への戦術的介入|ツールキットのオープンソース化

 二つ目は、一般市民の実践をうながすべく、ツールキットの制作の難易度を下げた点である。たとえば、第三の実践におけるこたつは、レーザーカッターによるアルミ蒸着シートの切り出し、接着剤の塗布、ステッチの縫製といった一連の工程に三十時間強の作業時間を必要とするものであった。この作業時間の短縮と、ミシンという身体知によらない制作を可能にするべく、カッティングシートによる無縫製衣服を検討した。これによって、アイロンとカッターさえあれば初心者でも服を制作することができるようになった。–

6|ツールキットのオープンソース化–

前章で紹介したPARK(ing)dayのように、オープンソースというかたちで波及に成功しているタクティカル・アーバニズムの実践は数多く見られる。また、インターネットを通じて専門家が市民を支援する「User- generated

Urbanism」[Bela 2015: 149]と呼ばれる都市計画のプロセスが、従来のトップダウン式/ボトムアップ式の括りにおさまらない設計手法として評価されている。インターネットやソーシャルメディアによってリソースの共有が容易になることで、プロジェクトの波及効果が高まっているのである。ことデジタルファブリケーションの文脈において、これらの潮流はオープンデザインという言葉で表されている。 我々の実践においては、砂紋掻きと

ガードレールを用いた椅子の設計図[34-

37] に加え、第四の実践における成果物をTumblr上でオープンデータ化するこ と に し た(http://tacticaldesign.tumblr.

com/)。公開のプラットフォームとしてTumblrを採用した背景には、真に市民による都市計画を波及させるためにはギークよりも一般市民を包摂するべきであるということ、「リブログ」という機能によって投稿をスクラップできること、タグ付けに対応していること、グループプログという機能を用いて不特定多数の市民がアカウントをシェアすることで、アカウントそのものをプラットフォームとして機能させられることといった利点があげられる。また、既存のプラットフォームの転用という解決策は、第二章でも述べた本研究の思想にも即していると考えられる。 公開するデータは主に三つに分けられる。一つ目は、その作品がどのような形状と機能を持っているかということを示す投稿である。具体的には、投稿ひとつあたりに数枚の写真と150W程度のキャプションがあてがわれている。二つ目は、作品の詳細と制作方法を示したpdf文書である。しかし、Tumblr

上にはドキュメントファイルをアップロードできないことから、その公開にあたってはウェブ上で書類を書籍のように閲覧することができるサービス「issuu」を転用するにいたった。そして三つ目は、作品に必要なデータである。具体的には、3Dプリンタやレーザーカッターの加工に用いるRAWデータを圧縮ファイルとして共有する。 制作プロセスの記述にあたっては、

Page 42: タクティカル・デザイン|Tactical Design >>> 論考

42 –都市への戦術的介入|都市に居住空間そのものを埋没させる

Chapter 3都市への戦術的介入–

Tactical Intrusion into Modern Cities

[31] [32]

[33]

Page 43: タクティカル・デザイン|Tactical Design >>> 論考

43 –都市への戦術的介入|都市に居住空間そのものを埋没させる

–[31]

電柱を転用するテント。電柱は都市にありふれていて誰もが容易にアクセス可能であり、強度も優れている。鬼怒川の決壊時(2015年9月10日)にも電柱にしがみつき一命を取り留めた人もおり、非常時においても支えになり得る人工物である。その高さと強度をもつ電柱を転用し、非常時にも発見されやすくかつ利用者にやすらぎを与える素材を用いた。

–[32]

都市の熱源を転用するこたつ。平面充填構造のアルミ蒸着シートからなる裏地が十分な保温性と柔軟性を持つため、表地は好みに応じる。ファスナーで連結するモジュール仕様で、普段は外套として着用できる。普段着として持ち運ぶことで、都市でのすれ違いがゲリラ的な団らんに転じる契機となる。–[33]

都市で人目を遮るためのカーテンとそれを有意の壁面に設置するためのキット。カーテンの布地は人目に触れる外側を都市に埋没することを意図し、ファブリックプリンターで柄を出力、プリントした。また、即興的にキットを収納すると、バッグとしても使用できる。

Page 44: タクティカル・デザイン|Tactical Design >>> 論考

44 –都市への戦術的介入|都市の居住空間を公開する

Chapter 3都市への戦術的介入–

Tactical Intrusion into Modern Cities

[34] [35]

[36]

Page 45: タクティカル・デザイン|Tactical Design >>> 論考

45 –都市への戦術的介入|都市の居住空間を公開する

–[34]

都市へテントを持ち出して設置した結果、正四面体という形状は連結可能であるという示唆を得た。そこで3Dプリンタによって骨組みを結ぶ各頂点のジョイントを出力し、それぞれの面にテントを拡張できるようにした。一人のためではなく、複数人のための共同住宅を設えることで、個人の実践を都市計画の域に拡張することができる。–[35]

実際に都市で団らんを楽しむことで、二つの反省が生じた。第一に、用いる布が純白では「こたつ」ではなく「ティータイム」にしか見えないということである。第二に、制作に三十時間強の時間がかかるうえに、ステッチを多用するとなると、初心者による再現が難しいということである。これらの反省を踏まえ、布を一般的なこたつに近いフリースに変更し、縫製をカッティングシートによる熱圧着で代用した。–[36]

最初のプロトタイプは、骨格の制約によって二つの壁面が交差する隅を見つける必要があり、設置できる空間が限られていた。そこで、素材に塩ビ製のパイプを取り入れることで、骨格そのものを半円状に曲げる構造を採用することにした。これによってカーテンそのものが立体的にせり出し、一面の壁にも設置することができる。また、布やジョイントといった部品を取り外し可能にすることで、より多くの状況に対応させることができるようになった。

Page 46: タクティカル・デザイン|Tactical Design >>> 論考

[38]

[37]

Sheet B Daijiro Mizuno Lab | Tactical Design >>> バッグウォーマー | Bag Wormer Scale = 1/10

1120 mm

1100 mm

960

mm

640

mm

320

mm

縫いしろ

ジョイント

鉄パイプ

[39]

Chapter 3都市への戦術的介入–

Tactical Intrusion into Modern Cities

46 –都市への戦術的介入|ツールキットのオープンソース化

Page 47: タクティカル・デザイン|Tactical Design >>> 論考

Sheet B Daijiro Mizuno Lab | Tactical Design >>> バッグウォーマー | Bag Wormer Scale = 1/10

1120 mm

1100 mm

960

mm

640

mm

320

mm

縫いしろ

ジョイント

鉄パイプ

–[37]

http://tacticaldesign.tumblr.com/

–[38]

issuuにアップロードしたpdf文書。初心者でも理解できるように、写真と図をベースにした構成になっている。

–[39]

第四の実践におけるテントを、第三角法による正投影図法を用いて図示したもの。設計図にこのような図面を適宜織り込むことで、世界中の誰もが同じ構造を再現することができるようになる。

47 –都市への戦術的介入|ツールキットのオープンソース化

Page 48: タクティカル・デザイン|Tactical Design >>> 論考

48 –都市への戦術的介入|ツールキットのオープンソース化

Chapter 3都市への戦術的介入–

Tactical Intrusion into Modern Cities

専門性が必要とされない簡易な工程かつ記述とすることを心がけた。実際のところ、本研究で設計した作品はデジタル工作機械さえあれば初心者でもDIY感覚で制作することができる。 また、設計図をデータとして公開することは市民の「かかわりしろ」を広げることに直結する。というのも、ツールキットの詳細は個々の環境に応じて改変可能であるべきだからである。枯山水であれば砂の面積や性質によって刃の形状が変わってくるほか、椅子であればガードレールのパイプ径や高さ、座れる人数といった目的は無視できない。数値の微調整を通じてデザインプロセスに参画できるのも、ラップトップで編集可能なデータならではの特徴である。 「暮らしの機能」を持ち出すべく砂紋掻きと椅子の設計を、「暮らしの空間」を持ち出すべくベッド、カーテン、こたつの設計を行ってきた。また、それらの設計図をオープンデータとして公開する意義を確認した。 しかし、我々の実践はいまだ個人的実践の域にとどまっており、市民を巻き込んだ都市型実践のスケールには展開できていない。「都市への権利」の獲得、そして「共」的空間の生成には、ワークショップの開催が必要不可欠である。

したがって、我々がラボでプロトタイピングした成果を実空間/情報環境に広がるフィールドに委ねるべく、より綿密なデザインリサーチの設計をしていくことが今後の展望である。

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6|参考文献五十音順、アルファベット順

東浩紀「情報自由論第3回」『波状言論』http://www.hajou.org/infoliberalism/3.html、2015年11月8日アクセスアンソニー・フリント『ジェイコブズ対モーゼス』渡邉泰彦訳、鹿島出版会、2011年アンリ・ルフェーブル『都市への権利』森本和夫訳、筑摩書房、2011年梶井基次郎「檸檬・ある心の風景」http://www.aozora.gr.jp/cards/000074/�les/424_19826.html、2015年11月8日アクセス加藤文俊「『ゆるさ』があれば(3)」http://blog.cloveken.net/entry/2015/04/25/203616、2015年11月8日アクセス川村健一、小門裕行「サステナブル・コミュニティ」http://web.kyoto-inet.or.jp/org/gakugei/mokuroku/tosi/sasutain/ahwahnee.htm、2015年11月8日アクセスシチュアシオニスト・インターナショナル『状況の構築へ–シチュアシオニスト・インターナショナルの創設』木下誠訳、インパクト出版会、1994年ジェーン・ジェイコブズ 『アメリカ大都市の死と生』山形浩生訳、鹿島出版会、2010年滝波章弘「ギド・ブルーにみるパリのツーリズム空間記述–雰囲気とモニュメントの対比」 https://www.jstage.jst.go.jp/article/grj1984a/68/3/68_3_145/_pdf、2015年11月8日アクセス南後由和「ルフェーブルは、都市をどのようなものとして捉えたのか?」『都市への権利』アンリ・ルフェーブル著、森本和夫訳、筑摩書房、2011年松永安光 『まちづくりの新潮流』彰国社、2005年藪野祐三『ローカル・デモクラシー「I」–分権という政治的仕掛け』法律文化会、2005年ル・コルビュジエ『建築を目指して』吉阪隆正訳、鹿島出版会、1967年ル・コルビュジエ『ユルバニスム』樋口清訳、鹿島出版会、1967年ル・コルビュジエ『輝く都市』坂倉準三訳、鹿島出版会、1968年BELA, J. (2014) “User-Generated Urbanism and

49 –参考文献|五十音順、アルファベット順

the Right to the City” in HOU J., SPENCER R., WAY T. and YOCOM, K. (eds.) Now Urbanism: � e Future City is Here . Routledge. pp.149-164.LYDON, M. & GARCIA, A. (2015) TACTICAL URBANISM: Short-term Action for Long-term Change . Island Press.Pavement to Parks. (2015) San Francisco Parklet Manual . [Online] Available from: http://pavementtoparks.sfplanning.org/docs/SF_P2P_Parklet_Manual_2.2_FULL.pdf. [Accessed: 15th Nov 2015]

United Nations Department of Economic and Social A�airs, Population Division (2014) World Urbanization Prospects: � e 2014 Revision , [Online] Available from: http://esa.un.org/unpd/wup/FinalReport/WUP2014-Report.pdf. [Accessed: 8th Nov 2015]

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Chapter4

English Abstract

Tactical Design:Practices for Commonalities through Interventinginto the Modernised Cityscape–

Rebecca Rébillé

Page 52: タクティカル・デザイン|Tactical Design >>> 論考

52 – English Abstract

1|Background–

It is said that, by 2050, 70% of

the world population will reside in

cities. Accordingly it is forecasted

that economic, environmental,

cultural, political, social, and spatial

inequalities continue to grow rapidly

with the increase of urban population.

Meanwhile, many begin to realize

that the notion of “Tactical” approach

towards issues as such is suggesting a

new means to reclaim the dynamism of

cities.

In Japan, at least, using public spaces

tactically is a matter of survival since

lifeline can be temporary cut off due

to natural disasters. Whilst it is easy

to criticize top-down urban planning

approach, one has to consider bottom-

up urban planning -the citizens’

tactical approaches to city making- and

create urban conditions which allow

improvised use of public spaces.––

2|TheoryTactics for Modernised Cityscape

To put it in another way, citizens

need to know how to be familiarized

themselves with the city they live,

work and play. It is in this context

that “Tactical Urbanism” holds a key

to regenerate civic pride as well as the

rights to the city.Tactical Urbanism

“creates tactile proposals for change

instead of plans or computer-generated

ponderings that remain abstract” by

using “short-term, low-cost and scalable

interventions and policies”. Despite

its informal character often described

as Guerilla tactics, Tactical Urbanism

never loses “sight of long-term and large

scale goals”(Lydon & Garcia 2015).––

3|PracticeTactical Design

Tactical approaches are described

as a new potential, which “could

inform design visions for the

outcomes of contemporary urban

inequality.”(Gadanho 2014). We are

conducting practice-led research on

tactical approaches towards urban

landscape to reexamine the alternative

use of places and artifacts in the built

environment.

Chapter 4English Abstract–

Tactical Design:Practices for Commonalities through Interventing into the Modernised Cityscape

Page 53: タクティカル・デザイン|Tactical Design >>> 論考

4| Reference–

GADANHO, P. (2014) Uneven Growth:

Tactical Urbanisms For Expanding

Megacities . The Museum of Modern

Art.

LYDON, M. & GARCIA, A. (2015)

TACTICAL URBANISM: Short-term

Action for Long-term Change . Island

Press.

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–水野大二郎研究室『Tactical Design』発行:2016年03月03日 第二刷––編集:水野大二郎太田知也中村健太郎永良凌岡本英宜–デザイン:岡本英宜–執筆:岡本英宜永良凌吉岡直人レビエ・レベッカ吉井優香木許宏美–発行者:〒252-0082 神奈川県藤沢市遠藤5322慶應義塾大学 水野大二郎研究室–––本書の複写/複製/転載を固く禁ずる。(c) 2016 Daijiro Mizuno All rights reserved.

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–Daijiro Mizuno LaboratoryTactical DesignPublished on: 3 March 2016––Editors:Daijiro MizunoTomoya OhtaKentaro NakamuraRyo NagaraHidenori Okamoto–Design: Hidenori Okamoto–Writers: Naoto YoshiokaRyo NagaraHidenori OkamotoRebecca RébilléYuka YoshiiHiromi Kimoto–Publisher: 5322 Endo, Fujisawa, KanagawaDaijiro Mizuno Laboratory, Keio University–––No part of this publication may be reproduced.(c) 2015 Daijiro Mizuno All rights reserved.

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