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〔千葉医学 ㄷㄭㄷ6 ㄹ㜷䨠 フット再生肝における核酸前駆体利用の 䑩楳潰牯灹污浩湥 䑩捨汯牯慣整慴攠 による促進 久田俊和⪉肓排熎熐薋欀 正道牢 昭和5臼受付) ヒ㨺㨮 従来,種々の生化学的および薬理学的作用を持つことが知られる 捬楩獯灲潰祬慭楮e 捬楣桬潲- 潡捥瑡瑥 ⡄䅄䄩 によるラット再生肝における核酸前駆体利用の允進を確認し,さららにその 作用機作について,種々の放射性トレーサーを用いて検討した。数日間にわたり 䑁䑁 を腹 腔内に注射することにより,ラット再生肝の酸溶性画分および核酸内 慣汥湩湥 への⠱ 㑃J 景r- 浡瑥 および ㄴ䍝 杬祣楮e の取り込み, 䑎A 中への ㄴ䍝 捬敯硹瑨祭楣汩湥 および ㄴ䍝 捬敯硹畲楣汩湥 の取り込みはいずれも対照に比し促進された。とくに 捬敯硹瑨祭楣汩湥 の細胞内 フ。ーノレがきわめて小さいことを考慮すると, これらの放射性トレーサーの利用促進は核酸およ び核酸前駆体の合成促進を示すと考えられる。一方, 嬱㑃崠 景牭慴e 䑎䄭瑨祭楮e への取 り込みが比較的低いこと, また同じ 潮攭捡牢潮 単位前l 駆体であっても代射経路がやや異なる 嬳_ 䍝 獥物湥 瑨癭楮e への取り込みが 䑁䑁 により促進を受けにくいことから,かつて 示唆された 捬楩獯灲潰祬慭楮e 側鎖 浥瑨祬 基が 潮攭捡牢潮 前駆体として働く可能性を検討し た。倶,浥瑨祬 p すなわちし 3 位が ㄴC で標識された 䑁䑁 をラット 1 匹あたり μ䍩 注射し,再生肝における核酸塩基内への取り込みをしらべたが, その利用度は低かった。 䑎A 合成量を考慮して定量的に考察すると, 䑁䑁 の側鎖 浥瑨祬 基が核酸塩基生合成に 直接的かっ効率のよい前駆体として働くことはないと結論される。 䭥祷潲摳㨠 捬楩獯灲潰祬慭楮攠 捬楣桬潲潡捥瑡瑥 ⡄䅄䄩 ,核酸合成,核酸前駆体合成,再生月干 略語一覧:䑁䑁㨠 捬楩獯灲潰祬慭楮攠 捬楣桬潲潡捴慴攮 䑁䑁 は種々の興味ある生化学的および薬理学的効 示して以来,人々の興味はその特異な生物学的効果に向 果を有する薬物として知られている⢖搆쪂즊횂떂ト けられて来たように見える。さて, ㄹ㘳 年,岡ら はラッ 標識の前駆体の取 ㄴC ト再生肝の核酸内プリン塩基への この物質の歴史は錯綜しているが, B 1 の総説,文献 かつてアンズの核より抽出されビタミンに擬せられたパ り込みが,動物の 䑁䑁 処理によって約ㄮ 5 ないし 4 ンガミン酸幻に関する研究経過の中で, そのパンガミン 倍に上昇することを報告した。これは 䑁䑁 の作用と 酸の主要成分のーっとして合成されたのが 䑁䑁 であ して,また一方核酸およびその前駆体の合成調節に関し った。しかし 卡湴慲慴o がこの物質がラットに対す て重要な知見である。しかしその報告は予報であり,実 䭃N および 煵楮楮e の致死作用に括抗することを 験条件の詳細に関する報告はその後見られない。我々は 瞕泊 2 生化学教室 呏午䥋䅚唠 䡉十 吠A 呏䵏䭏 协乏䑁 䵁十䵉呉 吠䄠 呉䉁乁㨠 却業畬慴楯渠 批 䑩楳潰牯灹污浩湥 䑩捨汯牯慣整慴攠 潦 剡捬楯慣瑩癥 呲慣敲 䥮捯牰潲慴楯渠 楮瑯 乵捬敩挠 䅣楣汳 慮捬 䙲敥 乵捬敯瑩捬敳 楮 剥- 来湥牡瑩湧 剡琠 䱩癥爮 卥捯n 䑥灡牴浥湴 潦 䉩潣桥浩獴特 卣桯潬 潦 䵥捬楣楮e 䍨楢愠 啮楶敲獩瑹 䍨楢愠 ㈸〮 剥捥椠 癥搠 景爠 灵扬楣慴楯n ㅜ在ㄹ㜷⸠

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Page 1: tbgトカフノィッj Oフpフ Diisopropylamine …...Recei ved for publicationC1¥ン ay31C1977. 172 vcraEcqqEk ウケ 1967NネC s~WャSノj_Oフャフ イ゚@¥オラトスェLフ

〔千葉医学� 53,171-176,1977J

フット再生肝における核酸前駆体利用の�

Diisopropylamine Dichloroacetate

による促進

久田俊和*園田智子水橘� 正道牢

(1昭和52年5月31臼受付)

ヒ:::.要 日

従来,種々の生化学的および薬理学的作用を持つことが知られる� cliisopropylamineclichlor-

oacetate (DADA)によるラット再生肝における核酸前駆体利用の允進を確認し,さららにその

作用機作について,種々の放射性トレーサーを用いて検討した。数日間にわたり� DADAを腹

腔内に注射することにより,ラット再生肝の酸溶性画分および核酸内� aclenineへの(14CJfor-

mateおよび� [1・14C]glycineの取り込み,� DNA中への� [2・14C]cleoxythymiclineおよび� [2・14C]

cleoxyuriclineの取り込みはいずれも対照に比し促進された。とくに� cleoxythymiclineの細胞内

フ。ーノレがきわめて小さいことを考慮すると, これらの放射性トレーサーの利用促進は核酸およ

び核酸前駆体の合成促進を示すと考えられる。一方,� [14C] formateの� DNA-thymineへの取

り込みが比較的低いこと, また同じ� one-carbon単位前l駆体であっても代射経路がやや異なる�

[3_14C] serineの� thvmineへの取り込みが� DADAにより促進を受けにくいことから,かつて

示唆された� cliisopropylamine側鎖� methyl基が� one-carbon前駆体として働く可能性を検討し

た。倶,IJ鎖� methyl基p すなわちし� 3位が� 14Cで標識された� DADAをラット� 1匹あたり� 50

μCi注射し,再生肝における核酸塩基内への取り込みをしらべたが, その利用度は低かった。�

DNA合成量を考慮して定量的に考察すると,� DADAの側鎖� methyl基が核酸塩基生合成に

直接的かっ効率のよい前駆体として働くことはないと結論される。�

Keywords: cliisopropylamine clichloroacetate (DADA),核酸合成,核酸前駆体合成,再生月干

略語一覧:DADA: cliisopropylamine clichloroactate.

DADAは種々の興味ある生化学的および薬理学的効 示して以来,人々の興味はその特異な生物学的効果に向

果を有する薬物として知られている(薬理効果に関して けられて来たように見える。さて,� 1963年,岡ら 4)はラッ

標識の前駆体の取14Cト再生肝の核酸内プリン塩基へのこの物質の歴史は錯綜しているが,)。1の総説,文献�

かつてアンズの核より抽出されビタミンに擬せられたパ り込みが,動物の� DADA処理によって約1.5ないし� 4

ンガミン酸幻に関する研究経過の中で, そのパンガミン 倍に上昇することを報告した。これは� DADAの作用と

酸の主要成分のーっとして合成されたのが� DADAであ して,また一方核酸およびその前駆体の合成調節に関し

った。しかし� Santaratoら3)がこの物質がラットに対す て重要な知見である。しかしその報告は予報であり,実

る� KCNおよび� quinineの致死作用に括抗することを 験条件の詳細に関する報告はその後見られない。我々は�

*千葉大学医学部第 2生化学教室

TOSHIKAZU HISA T A,TOMOKO SONODA,MASAMITI T A TIBANA: Stimulation by Diisopropylamine

Dichloroacetate of Raclioactive Tracer Incorporation into Nucleic Acicls ancl Free Nucleoticles in Re-

generating Rat Liver. Seconc!Department of Biochemistry,School of Meclicine,Chiba University,Chiba 280. Recei ved for publication,1¥在ay31,1977.

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172 久田俊和・園田智子・橘 正道�

1967年以来, ピリミジン合成を中心に核酸前駆体合成の

調節機構をしらべて来たが只上記の� DADAの効果は

一つの調節機構をさぐる重要な糸口であると考え,その

効果をさらに詳しく検討した。ここに得られた結果は,

本化合物がラット再生肝における種々の核酸前駆体の利

用を促進することを確認すると共に,� DADAのmethyl

基が核酸塩基合成における効率のよい前駆体とはならな

いことを示した。

実験方法

すべての実験で生後約� 50日の� Wistar系雄性ラット

〈体重130-150g)を用いた。これは日本ラット(埼玉)

より購入し,普通固型食を自由摂取させた。�

DADAは三共製薬より入手した。 トレーサーに用い

た各種標識化合物,� (2_14CJ deoxythymidine (51 mCi/

mmol), (14CJ formate (36mCi/mmol), (1・14C]gTycine

(61mCi/mmol),[2・14CJdeoxYllridine (61mCi/mmol,

および� L・P・14C] serine (54 mCi/mmol)はすべて�

Radiochemical Centre (英)より購入した。また (iso・�

propy1,3・14CJDADA(3.1 mCi/mmol)および� [iso・�

propyl・2_14C]DADA (6.4mCi/mmol)は Colombini

らの方法6)により合成したもので,その合成は第一化学

薬品に依頼した。

一夜絶食させたラットに12時30分頃,部分肝切除を行

った。切除法は� Higgins& Andersonの方法7)に従い

肝臓重量の60-70%に当たる� 3葉を切除した。ラット体

重� lkg当たり� DADA100mgを手術前日より� 3日な

いし� 4日間,午前� 9時30分に腹腔内注射した.対照群に

は生理的食塩水を腹腔内注射した。

標識化合物はすべて生理的食塩水に溶かし,腹腔内注

射で投与した。標識化合物の投与一定時間後にラットを

と殺し,肝臓を後述の方法により分析した。

肝j臓の� RNAおよび� DNAを� Schmidt& Than・�

nhauserの方法的により分画し, 過塩素酸により加水分

解し9L炭末カラムを通し,水飽和� n-butanol-濃アンモ

ニア水� (100: 1,v/v)を溶媒とするベーノ、ミークロマ

トグラフィ� 10)により, 塩基を分離した。 また酸溶性の�

aclenine nllcleoticle は塩酸加水分解の後,� aclenineと

して精製した。それぞれ分離精製した塩基について,紫

外部吸収による定量および、放射能測定を行った。a

実 験 成 績

1. 種々の放射性前駆体利用に及ぼす効果

部分肝摘出術をはさんで計4日間, ラットを� DADA

で処理し,術後24および48時間の時点における� [HC]

formateの核酸塩基� aclenineおよび� thymineへの放

射能の取り込みを見た結果が� Table 1である。酸溶性

の遊離ヌクレオチド中の� aclenine,および� RNA,DNA

の� adenineのいずれへの取り込みも� DADA処理によ

って1.5-2.2倍に及ぶ促進を受けた� (24時間).� 48時間

では促進率に多少の変化が見られた。� DNA-thymineへ

の取り込み上昇は� adenineに比して軽度あるいは認め

られないことは注目に値する。次にプリン骨格合成の前

駆体である� [1.14CJglycineの取り込みを追跡した結果

が� Table2に示しである。� formateの場合と同様に�

DADAはその� aclenineへの取り込みを促進し, その

倍率は� 4倍以上に及んで、いる。なおこの上昇率の相違は,

トレーサーの種類によるものでなく実験の各セットによ

る差と思われるが,その要因はあきらかでない。� Table1

での上昇率はたまたま最低のものであり,� DADAの効�

Table 1. Effects of DADA on [14C] formate incorporation into aclenine

nucleotides and nucleic acids of regenerating rat liver.

Specific radioacti vi ty (cpm/μmol)

Time after Treatment Adenine Thyminehepatectomy

Acicl-sol uble RNA DNA DNA 一一一一一一一�

24 hrs Control 4010土1250 556土� 88 233土� 72 346:!: 88

DADA 6040:1:1070 1050:1:147 504土229 442:1:276

48 hrs Control 4170士2030 585:1:280 317土131 331土� 28

DADA 7250:1:2770 1220:1:479 422:1:118 307土� 88

Rats receivecl claily intraperitoneal injection of DADA (100mg/kg body weight) for conseCll-

tive 3 or 4 days. At the seconcl clay,partial hepatectomy was performed. [14C] Formate (6μCi, 0.17μmol) was injected intraperitoneally to the rat 2 hrs before sacri五ce.Each value represents

the mean土stanclarclcleviation of three animals.

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ラット再生肝における核酸前駆体利用の� DiisopropylamineDichloroacetateによる促進� 173

Table 2. Effects of DADA on [1・14C]glycine incorportion into acicト soluble and nucleic acicl adenine of regenerating live1'.

Specific radioactivity 0f adenine (cpm/μmol) Treatment

Acid-soluble RNA DNA

Control 791, 948 140,166 83,101

DADA 2270,3490 555,786 253,273

Rats were given intraperitoneal injection of [1・14C] glycine (6μCi,3.8μmol) 48

hrs after partial hepatectomy and sacri五ced4 hrs after the injection. Each group consist-

ecl two animals and the values for each animal are listed.

果がこれより下廻ることはなかった。

(?OH {ogwt¥

U) 生じた可能性である。そこで細胞内プールが極めて少

×� 昌弘�

n

u

n

u

n

U

t

u

n

上記の効果が見かけ上のもので,核酸あるいは前駆体

の真の合成速度には相違がない可能性が残されている。

すなわち,中間体の細胞内プーノレが変化し,投与された

内�

放射性物質の稀釈率が上下して放射能の取り込みに差を

l

ZQ の� [2・14C]deoxythymidineの取り込みは部分肝摘出術

後18および30時間に� 2つのピークを示したが,いずれのEA 時間においても� DADA処理ラットでの取り込みは対

照を上廻った。なお(14C]deoxythmidine取り込みの�

h去� 〈�

回。� h£とち唱。-古川�

なく, 細胞膜透過も速い� deoxythymidineを用いた成

績が� Fig. 1に示されている。 ラット再生肝� DNAへ

-MU

'18 24 30 36 42 48

ズムとのかね合いによる10ものと思われる。以上の結果

を総合すると DADAは核酸および核酸前駆体の合成に

Time after partial hepatectomy (hrs) 促進的に作用すると考えてよい。

2.Fig. 1 Effects of DADA on [2・14C] deoxy- one-carbon単位前駆体としての可能性

thymidine incorpo1'ation into DNA 従来,� DADAのアミン部分の側鎖� methyl基が物質

。。� 一回一�

島一山�

of regenerating rat liver. [214C] 合成の前駆体として働く可能性が示唆されていた 。12)・�

Deoxythymidine (3.8X 106cpm,0.1 [14C] fo1'mateのような� onecarbone単位前駆体の利‘

pmol) was intraperitoneally injected

to each rat 2 h1's before sacrifice. 用が允進することは,一応上記可能性に否定的である

Each point represents the value of が,� one-carbonプーノレの不均一性� (Fig. 2参照)を考

a single animal. DADA treated えその可能性をさらに検討した。すなわち代謝地図上,�

(・-・); Control (0-0) DNA-thymineの側鎖� methyl基の効率よい前駆体に�

deoXYllridine ~ dUMP ↑t TMP 一 - t -_,.TTP

sel'lne N5,Nl0-Methylene H.1 folate one-carbon llni ts

formate ニー� N1'l-FormyI H.1 folate 二 二� N5.Nl0_Methenyl H 4 folate

~/glycine pllrine ring一一ー� AMPー+一一..ATP

Fig. 2. Relationships between one-carbon units and nucleotides biosynthesis

2峰性は手術施行時刻とラット肝� DNA代謝の日周リ

申巴明日�

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174 久田俊和・間間智子・:橘 正道�

Table 3. E任ects of DADA on [3・14C]serine ancl [2-HC]cleoxyuridine

incorporation into DNA of regenerating rat liver.

Specific radioacti vty (cpm/μmol) Radioacti ve preCl1rsor Treatment

Adenine Thymine

[;1・14C] Serine Control 200::t60 137土� 92

DADA 173,254* 113,284申�

[2・14C] DeoxYl1riclicle Control 465土289

DADA 637::t398

Rats were given intraperitoneal injection of [3・14C]serine (2μCi,0.03μmol) 22hrs

after hepatectomy and sacri五cecl2hrs after the injection. The values are means土stancl-

ard error of three anima1s except for those inclicated as be10w.

* The values for each single anima1 are listecl.

なると考えられる� [3_14C]serineと, 一方ピリミジン環

そのものの前駆体となる� [2・14C]deoxyuridineの� DNA

内� thymineへの取り込みとを比較した� CTable 3)。

見られるように� [3・14C]serineよりの取り込みはほとん

ど促進されないが,� [2・14C]cleoxyuriclineのそれは促進

されており,� DADAの� methyl基が前駆体として働ら

くことを一応肯定しうる成績である。なお各群3匹の値

の偏差が大きいが,前述のようにこの原因は不明であ

る。ラット成熟度,給餌条件,手術時間等を厳密に規制

しているが,実験セットあるいは各個体による偏差が非

常に大きい場合があった。�

diisopropy 1amineの� methy1基が� one-carbon単位前

駆体として働く可能性を最終的に検討するには,放射性

トレーサーを用いるのがよい。� methyl基に標識された�

[isopropyl-1,3・14C] DADAおよびもう� 1個の別の炭素

が標識された� [isopropyl-2・14C]DADAを用いた。ま

ず体内での代謝の概略を知るため,マウスに� [isopropy1-

1,3・14C]を1.6,amol,5 pCiを腹腔内に注射し,その挙

動を見た。� 8時間内に尿に89%,呼吸� C02に1.1%の

放射能が回収され,� 8時間の時点で肝臓に� 0.7%が残存

していた。� [isopropyl-2-14C]DADAの場合には,尿お

よび呼気� C02にそれぞれ65および� 0.9%回収され,肝

臓には� 0.3%残存していた。 この成績は� DADAの排

世が速みやかで・あり,炭素骨格の� C02への酸化はごく

限られていることを示している。この結果に基づいて,

部分肝摘出を行ったラットに上記の放射性� DADAを投

与し,� 4時間後における肝核酸塩基の放射能を分析し

た(Table4)。ここで明らかなことは,� 1匹あたり� 50μCi

という比較的大量を投与したにもかかわらず,� DNA-

thymine,DNA-および� RNA-aclenineのいずれへの�

14Cの取り込みが50cpm/μmol以下と少ないことであ

る。� DNA-thymine 1μmol について� [isopropy1-1,

3・14C]DADAに由来する炭素の� μmol数を計算すると,�

0.032nmol以下となる。一方� [14C]deoxythymineから�

DNA-thymine 1μmolへ取り込まれた量を求めると,�

Fig. 1の成績から� DADA処理の場合0.12ないし0.78

nmolと計算される。� [14C]DADAの値の� 4 ~25倍に

相当する。このことは,� DADAの� methy1基が� DNA-

Table 4. Incorporation of raclioactivity of [isopropy1-1,3-14C]DADA or

[isopropyl-2・14C1DADAinto nuc1eic acicls of regenerating rat liver.

Specific raclioactivity (cpm/μmol)

Raclioacti ve precursor Treatment Adenine Thymine

RNA DNA DNA

山町�

山�

[Isopropy 1-1,3・14C]DADA C

D

C

D

A

M

A

D

d

A

d

A

30 44 49

20 39 19

[Isopropyl-2-14C] DADA 17 42 29

18 45D 11

Rats were given intraperitoneal injection of [isopropyl-1,3・14C]DADA or [isopropyl-2・�

14C] DADA (50μCi,15 mg) 18 hrs after hepatectomy and sacri五cecl4 hrs after the inj-

ection.

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ラット再生肝における核酸前駆体利用の� DiisopropylamineDichloroacetateによる促進� 175

thymineの� methyl基の源として働くことを部分的に

肯定するが,それが� deoxythymidineのように効率の

よい前駆体となることを否定するものである。� isopro-

pyl基の� 2位炭素も程度は低いながら利用されている。�

2位炭素および� 1,3位炭素も� COzとなって核酸塩基合

成に利用される可能性が十分にあり,� Table 4の取り

込みのすべてが,� one-carbon単位のそれと見なすこと

はできない。 したがって� DADAの� methyl基供与体

としての効率は上の計算をさらに下廻ることになる。

上と同様の実験を正常ラットについて行なったとこ

ろ,� adenine中への取り込みは同様に見られたが,� th-

ymine中への取り込みは� 2cpm/pmol以下と低かった。�

Table 4の数値は低いながら再生肝における� DNA合

成を反映したものであることがわかる。

考 察�

DADAは再生肝における核酸塩基前駆体の利用を充

進させることが本実験によって確認された。放射性トレ

ーサーの利用充進が常に核酸およびその前駆体の合成促

進を示すものではないが,ここに提示された成績は,核

酸合成の促進を強く示唆している。

さてその合成促進をもたらす生化学的機作は興味を呼

ぶところである。この課題を追究するさいに先ず解決し

ておくべき問題は,� DADAのアミン部分の側鎖� methyl

基が� one-carbon単位の前駆体として働くか否かであっ

た。コリン欠乏脂肪肝に対して� DADAが括抗する 13)

事実はこの仮説を支持するものである。しかし,� 14Cで

標識した化合物を用いた実験結果(Table4)は� DADA

が効率のよい� one-carbon供与体となることに否定的で

ある。この結果は� DADAが直接的な合成前駆体として

ではなく,むしろ合成経路に間接的に作用することを

示唆し,今後はその方面の可能性を探るべきと思われ

るo Kraushaarら1)によってまとめら.hているように,�

DADAには血管拡張など循環系への作用が知られてい

るので,このような効果を通じて,� ATP準位を変化さ

せ,あるいは前駆体の透過性を促進し,核酸およびヌク

レオチド合成に作用する可能性もあろう。�

SUMMARY

Diisopropylamine c1ichloroacetate (DADA),an

agent which has been known to have a variety

of biochemical ancl pharmacological effects,is

shown in the present experiments to stim111ate

the utilization of radioactive precursors for syn-

thesis of nl1cleic acic1s and free nucleotides in

regenerating rat liver. The precursors used are

[14C] formate,L-[3・14C]serine,[1・14C]glycine,[2・�

14C] deoxythymicline,and [2・14C] cleoxyuridine.

Since the intracel1ular pool of deoxythymicline

is considered to be very small,the stimulatecl

incorporation of the injected radioactive cleoxy-

thymidine may not be the resul t of alterecl

changes in its pool size,but indicate enhancecl

synthesis of DNA. The incorporation of (14C]

formate and L・P・14C]serine,tracers of one-carbon

unit metabolism,into adenine of free nucleotides,

RNA,and DNA was considerably stimulated by

treatment of animals with DADA,while the

incorporation into DNA-thymine was rather

limitec1. These observations are consistent with

the supposed role of the diisopropylamine moiety

of DADA as a methyl group c1onor in '[,/:'VO.

This possibility was examined by following the

raclioactivity incorporation into DNA-thymine

from [isopropyl-1,3・14C]DADA or [isopropyl-2・�

14C] DADA. A signi:ficant incorporation dicl

oceur,but only to sllch a low extent that it does

not support the sl1ggested role of DADA as a

c1irect,e伍cientone-carbon grOl1p clonor for syn-

thesis of nucleic acid bases.

文献�

1) Kraushaar,A. E.,Schunk,R. W. und Thym,

H. F.: Zur Pharmakologie c1es Diisopropy-

lamins. Arzneim. -Forsch. 13,109-117,19.63.

2) Krebs,E. T.,Krebs,E. T. Jr.,Beard,H.

H.,Malin, R., Harris,A. T. and Bartlett,

C. L.: Pangamic acid sodium: A newly

isolated crystalline water-soluble factor. Inter.

Record. Mecl. 164,18-23,1951.

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